1 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 13:32:16.80 F+ahUxTQ0 1/33




扶桑「そうなのよ……」

扶桑「あの子、大掃除中に重い荷物を持っちゃったの……」

雪風「それは大変!」

扶桑「だから医務室の湿布とコルセットがほしいんだけど……」

扶桑「私はこの後出撃なの……」

雪風「じゃあ、私がとってきますね!」

扶桑「ほんと……?ありがとう……」ナデナデ

雪風「えへへ」





元スレ
【艦これ】雪風「えっ!山城さんがぎっくり腰?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453609936/

3 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 13:37:55.65 F+ahUxTQ0 2/33



雪風「えっ!湿布が切れちゃってるんですか?」

明石「うん……そうなのよ」

明石「ここも酒保の分も、私が発注忘れちゃってね」

明石「雪風、ごめんね……」

雪風「そうなんですか……」シュン

明石「……あ、そうだ!」

雪風「?」



4 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 13:42:10.63 F+ahUxTQ0 3/33



明石「雪風、今時間ある?」

雪風「はい!非番です!」

明石「そっか、じゃあ……」ガサゴソ

明石「私のお金を渡すから、これで湿布を買ってきてくれない?」

明石「この辺りには何もないから、隣町まで行ってもらうことになるんだけど……」

雪風「分かりました!大丈夫です!」

明石「ほんと?ありがとうね!」



5 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 13:47:40.49 F+ahUxTQ0 4/33



雪風「……あれっ」

雪風「明石さん!お金がおおいのでかえします!」

明石「ふふっ、いいの!」

明石「バス代もいるし……」

明石「ついでに皆に内緒で、美味しいものでも食べてきて」ニコッ

雪風「おいしいもの……!」キラキラ

雪風「ありがとうございます!」ニコッ

明石「じゃあ……お願いね?」

雪風「はい!いってきます!」



6 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 13:55:01.20 F+ahUxTQ0 5/33




ドタドタドタ…
ドーン!


雪風「きゃっ!」

提督「おぉーうぁ!」

バサッ バラッ……

提督「ゲェーッ、資料の山がっ」アタフタ

雪風「ご、ごめんなさい!」ペコッ

提督「あ、あぁ……いいよいいよ」

提督「怪我はなかったか?」

雪風「はい!」

提督「そっか」ホッ



7 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:01:43.00 F+ahUxTQ0 6/33



提督「そんなに急いでどうしたー?」

雪風「今から湿布のおつかいと」

雪風「内緒でおいしいものを食べにいくんです!」

提督「そ、そうか……まぁいいや」

提督「今度からは鎮守府の中、走ったらだめだからな?」

雪風「はい!気を付けます!」

雪風「では!」



8 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:07:48.91 F+ahUxTQ0 7/33




提督「やれやれ……」ピラッ

提督「……」ピラッ

提督「ん?」ピラ…

提督「あ、この写真!」

提督「こんなところに挟まってたのか」

提督(カーチャンと昔飼ってた犬が写ってる)

提督(……今はカーチャン一人か……)

提督(……)


提督(近いうちに帰ってやるか)フフッ




9 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:14:29.90 F+ahUxTQ0 8/33



雪風(こうやってバスを待つのは久しぶりです)

雪風(もうすぐおおみそかなので外は寒いですが……)

雪風(ズボン!コート!マフラー!)バッ

雪風(これでへっちゃらですね!)ニコッ



ブロロロrrr……


雪風(……どうやらバスがきたみたいです!)


……
…………
………………



12 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:19:47.50 F+ahUxTQ0 9/33



ブロロロロrrrrr……

(あー……立つのダリィ……)イライラ

(あぁちくしょう、あの変態おやじ……)

(うちの店でべたべた触りやがって……)

(常連がなんだってんだ……クソッ)

(……今日も来やがんのかな……)

(いっそ……辞めてやろうかこんな仕事)

(……いや、頭の悪いアタシじゃ、こんな仕事しか……)

(腹のガキが生まれたら、ミルク代が出せなくなっちまう……)



13 : 見てくださってる方、ありがとうございます ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:26:16.90 F+ahUxTQ0 10/33



雪風「……」ジーッ

(……このガキ何見てやがんだ……)イライラ

雪風「」スッ

(ん?立った?)



雪風「あの!」

雪風「ここ、座ってください!」サッ

「え……?あ、アタシっ?」

雪風「はい!そうです!」

「え、いや、いいよっ……」



14 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:32:37.34 F+ahUxTQ0 11/33



「アタシ、そんな歳じゃないしっ」アタフタ

雪風「うぅ、でも……っ」シュン

雪風「お腹が重そうなんです!」

「……っ」

雪風「私はいいんです!ですから!」

「……」

「あぁ、ありがとう」フフッ

雪風「!」ニコッ



15 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:38:24.97 F+ahUxTQ0 12/33



エキマエ……エキマエデス
ツリセンノナイヨウ、トウニュウグチニ……

運転手「230円だよ」

雪風「はい!」チャリン

雪風「ありがとうございます!」


タタタッ……


(ありがとうございます!……か)

(……あんな子に育ってくれたらな……)サスサス

(……)

(……お腹の子にアルコールを与えてるようじゃ……)

(……だめだよな)



16 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:45:59.14 F+ahUxTQ0 13/33




(……)

(……決めた)

(今の仕事はやめる)

(ガキに誇れるまっとうな仕事をしよう)

(……これならお前の天国の父ちゃんも……)サスサス

(……喜んでくれるかな)ニコッ


………………
…………
……



18 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:52:52.97 F+ahUxTQ0 14/33




雪風(隣町に着きました!)

雪風「」グゥー

雪風「…………」

雪風(おなかがすきました!)

雪風(なので、先においしいものを食べます!)


ヒュゥ~……


雪風(……寒いので、温かいものが食べたいです!)




20 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 14:57:30.86 F+ahUxTQ0 15/33



店主「ハァ……」

店主(ここ三日の間、客は一人も来ていない)

店主(俺は20年、このラーメン屋をやってきたが)

店主(もう……限界だな)

店主(景気がよかったときにこっそり業務用の麺を使い)

店主(コストを下げるためにスープの質を低くしたせいで)

店主(客足がすっかり遠のいてしまった……)

店主(今じゃそれは止めたが、一度失った信用は……)

店主(……どうにもならんな)



22 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:05:00.03 F+ahUxTQ0 16/33



ガラッ

店主「!」

店主「へ、へいらっしゃい!」ガタッ

スタスタ…ガチャッ

雪風「ラーメンの大盛りっ!くださいっ!」

店主「あいよ」


店主(女の子が一人か……)カチャッ…

店主(……誰だっていい、もうこれが最後の客かもしれねえ)グツグツ



店主(どうせ最後なら、最高のラーメンを振舞おう)サッ…サッ…



23 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:08:44.64 F+ahUxTQ0 17/33



店主「へい、お待ちどうっ」スッ

雪風「わーい!ありがとうございます!」ニコッ

雪風「いただきます!」

ズズズー!

雪風「うん!」コクッ

ズズズ-!

雪風「うんうん!」コクコクッ


店主(……うまそうに食いやがるなぁ……)フフッ



24 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:13:43.60 F+ahUxTQ0 18/33



雪風「ごちそうさまでした!」ニコッ

雪風「おじさん!お会計おねがいします!」

店主「あはは、お代はいいんだ」

雪風「え?」

店主「この店……もう閉めることにするんだ」

店主「お嬢ちゃんが最後のお客さんだよ……ありがとうね」

雪風「え……えぇー!?」ガーン

雪風「そ、それは困ります!」オロオロ

店主「へ?」ポカン



25 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:21:14.34 F+ahUxTQ0 19/33



雪風「だって!ここのラーメンすっごくおいしかったからっ」

雪風「また来ようと思ったのに……」シュン

店主「えっ……ウチの……」

店主「……ラーメンが?」

雪風「……」コクッ

雪風「……おじさん!お金は受け取ってください!」

雪風「私はこれからもお客さんなんですから!」

雪風「これはおいしいって思った分の、おかえしなんです!」ニコッ

店主「!」



26 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:27:42.51 F+ahUxTQ0 20/33



雪風「お店、閉めないでくださいね!」

雪風「ゼッタイ!ですからねー!」

ガラッ


店主「……」

店主(おいしかった、か……)

店主(思い出してみれば……俺も駆け出しの頃は)

店主(美味そうに食う客の顔を見るのが一番の楽しみだったな……)

店主(……わすれていた初心か……)



店主(……へへっ、しゃーねぇ……店を閉めるのはもっと後にしてやらぁ)




27 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:33:25.79 F+ahUxTQ0 21/33



……
…………
………………

雪風(おなかいっぱいです!)ケプー


旅女「すみませーん!」

雪風「ふぇっ?」

旅女「写真、とってくださーい!」

雪風「はい!分かりました!」


パシャッ


旅男「よく撮れてるねぇ」

旅女「ありがとう!」

雪風「いえいえ!」

雪風「お幸せに!」ニコッ



28 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:39:58.94 F+ahUxTQ0 22/33



……
…………
………………



ヒュゥ~…


老人「うぅ……」

老人(さすがに、寒いな……)

老人(妻が逝き……家を売りに出して早一年)

老人(世間では……わしはホームレス……か)

老人(情けない話だが……)

老人(……こんな生き恥を晒してでも、わしはまだ生きたいのだな……)




29 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:44:12.06 F+ahUxTQ0 23/33




雪風「」テクテク

老人「お嬢さん……」フラッ

雪風「ひゃ!びっくりしました!」ビクッ

老人「あぁ……驚かせてすまないね……」

老人「時にお嬢さん……」

老人「ワシに……お金を恵んではくれんか……?」

雪風「へっ!お、お金……ですか?」アタフタ

老人「あぁ……」

老人「食うものに困っておるのだ……」




30 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:48:47.56 F+ahUxTQ0 24/33



老人「頼むよ……」

雪風「うぅ…………」オロオロ

雪風(この人、困ってるんだ……!)

雪風(……でも!)

雪風「ご、ごめんなさい!」

雪風「うちの山城さんが困ってるんです!」

雪風「……ですからお金は渡せません」シュン

老人「そうか……」



31 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:52:51.18 F+ahUxTQ0 25/33



雪風「本当に、ごめんなさい!」ペコペコ

老人「い……いやいや、いいのだ」

老人「こうなってしまったのは」

老人「お嬢さんのせいではない……」

老人「気にしないでくれ……うぅっ」ゴホッゴホッ

雪風「!」

雪風「おじいさん!せめて……これを!」スッ

老人「ゴホ……ん!?」



32 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 15:57:02.74 F+ahUxTQ0 26/33



老人「マフラーか?」

老人「い、いかん……君が風邪を引いてしまうぞ……」


雪風「いいえ……“雪風”はゼッタイ!」

雪風「大丈夫なんです!」

老人「っ!!」


雪風「私、そこの薬局におつかいにいくのでこれで失礼します!」

雪風「それでは!お体におきをつけて!」ダッ

タッタッタッタッ……


老人「……“雪風”か……」




33 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 16:02:09.31 F+ahUxTQ0 27/33




老人(……昔を思い出すのぉ……)

老人(……かつて駆逐艦“雪風”の乗組員だった頃を……)

老人(……雪風は幸運の船と、同期の連中に言われておった)


老人(……それは少し、違うな)フフッ

老人(あれは皆の極まった練度と……生きようとする毅然とした意志の賜物……だ)

老人(それが今のわしは……どうだ?)ゴホッゴホッ




34 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 16:08:01.80 F+ahUxTQ0 28/33




老人(…………暖かいマフラーだ……)

老人(これなら、外も出歩けるだろ……)

老人(……こんな老いぼれでもできる仕事を探す)

老人(老い先短い人生だが……)

老人(……結果を座して待つより、自ら手繰り寄せる)

老人(わしらには、やはりそれが性に合っとるんじゃ……)




老人(……そうですよね、寺内艦長……?)ポロ…ポロ…




35 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 16:13:11.89 F+ahUxTQ0 29/33



……
…………
………………


ヒュゥ~……


雪風「……」ブルブル

雪風「……」ブルッ


雪風「さすがに……寒いです……」




36 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 16:21:05.52 F+ahUxTQ0 30/33





山城「う……うぅ~ん……」グデー……

山城「……っいだだだだっ!」

山城「……不幸だわ……」グスッ


ガチャッ


雪風「山城さん!」

山城「あっ……雪風!」




37 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 16:25:11.30 F+ahUxTQ0 31/33




雪風「こちらが買ってきた湿布と」

雪風「医務室のコルセットです!」

雪風「今から!山城さんにこれを……」

山城「あなた、顔真っ赤じゃないの!」

雪風「ふぇ!?」

山城「首元、なにも巻かずに出て行ったの!?」

雪風「えと!そ、それは……」アタフタ

雪風「……えへへ」

山城「まったくもぉ」ハァ




38 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 16:30:36.32 F+ahUxTQ0 32/33




ギュッ

雪風「ひゃっ!」

山城「……あなた、やっぱり冷たいわ」

山城「でもこうすれば、少しは暖かいでしょ?」フフッ

雪風「でも!そんな姿勢じゃ……山城さんの腰が!」

山城「ふふっ、大丈夫」ニコッ

山城「こうやってあなたを抱くと、私も幸せを感じるの」ニコッ



山城「雪風……ありがとう」ギュ…

雪風「…………」

雪風「はい!」ニコッ



雪風「雪風も幸せ、感じちゃいます!」


――――――――――――fin―――――――――――――




40 : ◆9l/Fpc6Qck - 2016/01/24 16:31:59.41 F+ahUxTQ0 33/33

以上でこのお話はおわりになります

いつも以上に短い作品となりましたが

見てくださった方、楽しく書かせていただきありがとうございました

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