2 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:11:53.57 E2DGWpi8O 1/32

岡部 「なに!? ルカ子がさらわれただと?」

まゆり「う、うんっ! 二人で街を歩いてたらね、急に……」

ここは日本の、しかも秋葉原だぞ。 日は暮れたとはいえ、人通りは途切れない。

――誘拐。

そんな目立ちまくるような犯行が、おいそれとうまくいったりするのだろうか?

まゆり「みんな覆面で顔を隠してたけど、多分、ファンクラブの人たちだと思う……」

岡部 「ファンクラブ!?」

元スレ
岡部「左義長……だと?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1326791433/

3 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:13:27.43 E2DGWpi8O 2/32

岡部 「ルカ子のファンクラブって、学校の女子たちのか!?」

だとしたら、今頃ひどい目にあわされているかもしれない!

ダルが喜びそうなシチュエーションだが。

と、馬鹿な事を考えている場合じゃなかった。

頭を振って、変な想像を振り払う。

まゆりは息を切らせながら、だんだんと目には涙を溜め始めた。

まゆり「違うの。男の子たちが作った、るかくんのファンクラブだよ……」

岡部 「な、なんだってー!?」

色々ととんでもない事になっているな!

4 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:17:16.04 E2DGWpi8O 3/32

男子主体のルカ子ファンクラブだと?

おかしいだろ、ルカ子は男だ。

いやしかし……。

あの容貌に、あの性格。

人によっては、ルカ子を女よりも魅力的に感じる者もいるだろう。

そんな奴らが、奥ゆかしいルカ子に、とうとう我慢ならずに誘拐した?

もし本当にそうだとしたら、ルカ子はもっとひどい目にあわされる可能性がある。

ルカ子は痛々しいくらいに儚げで、かなり大人しい。

抵抗は出来ないだろう。

るか 『やっ……やめて、ください……っ!』

残酷すぎるビジョンが脳裏に浮かぶ。

岡部 「くっ……!」

6 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:20:20.47 E2DGWpi8O 4/32

心臓が有り得ないくらいに高鳴る。

反面、俺の顔からは血が引いていく。

きっと、端から見れば真っ青になっているだろう。

緊張から、手にはヒヤリと冷たい汗をかいていて。

俺は、上着の裾をギュッと握った。

なんて卑劣な。

下劣なクソガキどもめ。

絶対に許さない。

岡部 「まゆり! ルカ子がさらわれたのはいつ頃だ!?」

まゆり「え、えっと……!」

まゆりが、自分の腕時計に目を落とす。

まゆり「10分、くらい前だよ」

10分……か。

岡部 「……まだそう遠くへは行っていないな」

8 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:25:05.84 E2DGWpi8O 5/32

そいつらは、ルカ子を連れてどこへ行った?

とりあえず、そのような犯罪者集団が、ルカ子をさらったうえで

電車やバスなどの交通機関を利用するとは考えにくい。

まゆりから詳しく聞くと、ルカ子を担いだ連中は、神田明神通りから路地裏に逃げ込んだらしい。

そうなると、この付近に潜伏している可能性が高い。

ダル 「あっつぅー。死ぬー」

ふと、玄関の影からダルが姿を現した。

ここまで走ってきたのか、汗だくだ。

フェイリスの顔写真がプリントされた団扇で、せわしなく顔を扇いでいる。

9 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:29:39.80 E2DGWpi8O 6/32

ダル 「おーっす、オカリン」

岡部 「ダル!」

ダルには、ルカ子がさらわれたと聞いてすぐに、メールで召集をかけてあった。

ダル 「状況は理解してるのだぜ」

ダルはそう言うと、研究室に入ってPCを起動している。

ダル 「とりあえず僕は、るか氏の携帯の電波を追って、場所を特定してみるお」

岡部 「わかった。頼んだぞ、ダル。 俺は今からルカ子を探しに行く」

ダル 「オーキードーキー。任せとけって」

まゆり「ま、まゆしぃも行くよ!」

岡部 「……いや、まゆりはここに待機していろ」

まゆり「で、でも……」

まゆりが、俺の腕にしがみついてきた。

既にその顔は、涙でボロボロになっている。

岡部 「ここは俺を信じろ、まゆり」


10 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:32:34.14 E2DGWpi8O 7/32

相手はかなり過激な連中。

一緒に行けば、まゆりまでどうにかなってしまうかもしれない。

危険な目にあわせたくない。

心配そうな顔のまゆりを安心させるため、俺はその肩をポンポンとたたいた。

岡部 「まゆりよ」

まゆり「……?」

岡部 「お前は随時、ダルの情報をケータイから伝えてくれ。大事な役割だ」

まゆり「わ、わかった……。オカリン、無茶しないでね……?」

岡部 「わかっている。 それじゃあダル、頼んだぞ!」

ダル 「いいから、さっさと行けっつーの!」

ダルに急かされ、ラボを飛び出す。

11 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:34:42.94 E2DGWpi8O 8/32

階段を駆け下りた俺は、迷わず踵を返してブラウン管工房に飛び込んだ。

蒸し暑い。

薄暗い、ブラウン管の明かりだけが頼りの店内。

その奥で、ムキムキのオッサンが頭に汗をかきながらラーメンを啜っている。

岡部 「ミスターブラウン!」

天王寺「なんだ、岡部かよ」

店長は、こっちを見ようともしない。

自然と、俺の声はトーンを上げた。

岡部 「至急、この秋葉原を封鎖してほしい!」

天王寺「あ?」

そうまで言っても、まだ振り返ろうとしない。

岡部 「FB!」

俺はカウンターに手を突いて、店の奥の大男に向けて頭を下げた。

天王寺「……M3としての用件か?」

13 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:37:13.29 E2DGWpi8O 9/32

ラーメンを食い終えた店長が、肩でため息をつくと、のろのろと立ち上がった。

天王寺「詳しく話してみろや」

俺は、ルカ子がさらわれた事、そしてその実行犯たちが、まだこの辺りに潜伏している可能性が高い事

現在、ダルがその位置の特定を急いでいる事を説明した。

その間FBは、話に割り込む事もなく、黙って話を聞いていた。

岡部 「お願いだ……! 時間稼ぎさえしてもらえれば……場所が特定出来る――」

岡部 「……っ!?」

急に、胸ぐらを掴まれ。

そのまま、上半身をすごい力で引っ張り起こされる。

俺は、たまらず呻いた。

天王寺「ナメてんのか?コラ」

額がぶつかりそうな距離から、FBが冷めた視線で睨みつけてきていて。

天王寺「そりゃてめぇ、完全に私用じゃねえかよ……」

天王寺「そんなもんに、ラウンダーを回せると思ったのか? ああ?」

さっきまで汗だくだった顔からは、完全に汗が引いている。

14 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:41:11.01 E2DGWpi8O 10/32

その目には、ブラウン管工房の店長ではなく、ラウンダーFBとしてのゾクリとしてしまうような。

危険な、鋭さがあった。

岡部 「……くっ。 そこを何とか、お願い……します」

岡部 「大切な……仲間なんです」

ルカ子を助け出す。

たとえ反則技を使ったとしても、だ。

引き下がるつもりはない。

岡部 「お願いします……!」

俺はFBの視線を真っ直ぐに受け止めて、ギロリと睨み返す。

15 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:41:49.93 E2DGWpi8O 11/32

天王寺「チッ……」

ふと、店長が舌打ちをして。

ギリリと握られていた、俺の胸ぐらが解放される。

天王寺「……時間稼ぎだけだ」

岡部 「……っ!」

天王寺「ここで、ラウンダーどもを派手に動かしすぎる訳にはいかねぇ」

天王寺「だから、始末はてめぇでつけやがれ。 いいな?」

16 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:44:31.73 E2DGWpi8O 12/32

岡部 「か、感謝する!」

俺は回れ右をして、出口に向かう。

と、背後から―――。

天王寺「ヘマすんなよ。 下手したら、てめぇを処分しなきゃならねぇ」

心配してくれているのか、FBが忠告を飛ばしてきた。

残念ながら、オッサンのツンデレには興味が無い。

俺は、店のドアを乱暴に押し開けながら、手を挙げて応えた。

心配は要らない。

ルカ子と、実行犯さえ確保出来れば問題はない。

どうせ、全て終わった頃には、無かった事になっているのだから。

17 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:46:24.14 E2DGWpi8O 13/32

走りながら、辺りを見回してみる。

既に、秋葉原駅の前は騒然としていた。

どうやら電車が止まっているらしい。

駅前の広場には、駅に入れず立ち往生している者や、急遽、電車から降ろされた者たちでごった返していた。

状況が状況だけに、そこかしこから怒声が上がっている。

結構大事になっているようだ。

萌郁 「M3……!」

人ごみの中から、それをかき分けるようにして出てきた萌郁が走り寄ってくる。

俺は立ち止まらず、萌郁もそれにあわせて併走した。

岡部 「M4か。首尾はどうだ?」

萌郁 「問題ない。電車は止めた。 車道の方は検問をかけているみたい」

萌郁 「封鎖は、ほぼ完了しつつあるわ」

岡部 「そうか、よくやった」

ラウンダーたちが上手くやってくれたらしい。

これで、奴らもそう簡単に街を出ることは出来ないだろう。

19 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:50:10.66 E2DGWpi8O 14/32

走りながら、萌郁に手を差し出す。

岡部 「M4、銃を」

萌郁 「なっ……」

岡部 「早く渡せ!」

萌郁 「な、何が起こってるの?」

声を荒げながらも、俺の心にはまだ他人を見やるほどの余裕があった。

隣を走る萌郁は、頬が上気していて。

その様子からは、だんだんと息が上がってきているのが見て取れた。

残念だが、萌郁にこのまま付いて来られても、足手まといにしかならないだろう。

岡部 「後で話す。 お前は先に帰っていろ」

萌郁 「わ、わかった……」

萌郁が、シャツの下から銃を取り出し、辺りを見回しながら慎重に差し出してくる。

俺が銃を受け取ると、萌郁はそこで立ち止まり、人ごみの中へと消えていった。

20 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:51:45.40 E2DGWpi8O 15/32

悪いな、萌郁。

後で話すと言ったが、そんな事はない。

多分、そんな状況は永遠に来ない。

なにせ、お前には何があったのかすら理解出来ないだろうから。

21 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:54:26.32 E2DGWpi8O 16/32

俺は、一つ一つ路地裏を窺いながら、走る足を止めなかった。

さっきから走り続けているが、疲れは感じない。

しかし―――

いない。

ここにもいない。

ルカ子の姿を見つける事が出来ない。

一旦、引き返すべきだろうか。

そう思って立ち止まり、周囲に視線を走らせてみた。

空にはまだ藍色に橙色が入り混じっているものの、すっかり日は落ちて、大分暗くなってしまっている。

駅前が煌々とライトアップされ始めた。

まずいな……。

あれから、どれくらい時間が経った?

街を封鎖した事で、アドバンテージはこちらにあるものの、そもそもルカ子は無事なんだろうか。

23 : ローカル... - 2012/01/17(火) 18:57:20.34 E2DGWpi8O 17/32

この街には、思っていたよりも隠れ場所が多かった事に、無性に苛立つ。

こうしている間にも、ルカ子は助けを待っている。

数人のバカどもに囲まれて、死ぬほど怖い思いをしながら。

ルカ子の恐怖を想像して、鼻の奥がツンとするが、眉間に力を込めてこらえた。

……いや、待て。イライラするな。

冷静になれ。

そして、立ち止まっている場合ではない。 引き返している場合でもない。

今、俺のやるべき事は一つ。

ルカ子を見つけ出す。

そして、浅はかなクソガキどもに地獄を見せてやるのだ。

俺は、額に滲んでいた汗を拭い。

再び駆け出そうと、息を整えた。

24 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:03:17.98 E2DGWpi8O 18/32

そんな時、上着のポケットから着信メロディが流れてきた。

俺は、すぐさまケータイを取り出して耳に添える。

まゆり『もしもし、オカリン?』

まゆりの声の向こうでは、ダルの興奮しきったような奇声が聞こえる。

岡部 「まゆりか!」

まゆり『うん! るかくんの居場所がわかったよ!』

岡部 「よし、すぐに教えてくれ!」

まゆり『で、でも……』

まゆりが言い淀む。

岡部 「なんだ? どうした?」

まゆり『オカリン、一人で危ない事しちゃ、ヤダよぅ……』

スピーカーからは、まゆりの泣き出しそうな声。

25 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:05:56.11 E2DGWpi8O 19/32

岡部 「……心配いらない。その場所に、警察を案内するだけだ」

俺は、安心させるために、穏やかな声で話してやる。

まゆり『そ、そうなの……?』

岡部 「ああ、だから早く居場所を教えてくれ」

まゆり『わ、わかったよ……約束だからね? えっと―――』

26 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:09:16.10 E2DGWpi8O 20/32

目の前のドアを、力ずくに蹴破る。

この薄暗い雑居ビルの一室に、ルカ子は監禁されていた。

その周りを、見知らぬ男達が囲っている。

ドアが壊れる音に驚き、全員が一様にポカンとしてこちらを見つめてきた。

誘拐犯A「な、なんだお前は!」

男の一人がようやく声を発すると、他の連中からもどよめきが起こる。

見たところ、5人は居るようだ。

るか 「お、岡部さんっ!」

部屋の角に、身体を縛られたルカ子が座り込んでいて。

俺の姿を確認すると、堰を切ったように涙を流し始めた。

よかった。

見たところ、まだ何もされていないみたいだ。

安堵。

そしてすぐさま、怒りがわいてくる。

こいつら、揃いも揃って何てことをしやがる。

27 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:11:22.87 E2DGWpi8O 21/32

俺は、部屋の中に居る男たちを見渡した。

岡部 「……お前たち、よくも、うちのルカ子を怖がらせてくれたな?」

一人ひとり、睨みつけてやり。

岡部 「こんのぉ……HENTAIどもめがッ!」

大声で怒鳴ってやると、男たちがたじろいだ。

誘拐犯A「うっ……てめぇ、漆原の何なんだよ……か、彼氏か?」

るか 「……っ!」

またもや、部屋の中にどよめきが起こる。

この連中、かなりバカっぽい。

ルカ子は何故かうなだれてしまっているし。

岡部 「………いいや、仲間だ」

誘拐犯B「はは、ルカニャンを助けるために来たってのか?」

岡部 「ルカニャンって言うな!」

誘拐犯B「っ!」

28 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:14:41.73 E2DGWpi8O 22/32

誘拐犯A「へ、へっ。 威勢がいいのは認めるが、お前、一人じゃねえかよ?」

そう言って鼻で笑った一人が、歩み寄ってくる。

誘拐犯A「おい、お前ら!」

それに続いて、部屋の真ん中に躍り出ていた俺を、男たちが取り囲んだ。

皆がニヤニヤとこちらを見ている。

その中の一人の手には、ナイフらしきものが光っていた。

誘拐犯C「おら、死にたく無かったらさっさと跪けや、コラ」

こいつだけが特にヘラヘラと笑っていて、やたらとかんに障る。

29 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:17:38.80 E2DGWpi8O 23/32

勿体ぶるつもりの無かった俺は、銃を取り出すとすぐに天井に向けて発砲した。

天井からパラパラと何かが落ちてくる。

すると、それぞれから悲鳴があがり、何人かは腰を抜かしてその場に這いつくばった。

ルカ子も信じられないと言った顔で、ブルブルと震えている。

岡部 「逃げようとしたら殺す。次に声を上げても殺す。 それと、お前」

淡々と言いながら銃口を向けてやると、ナイフを持っていた男がわなわなとそれを落とした。

岡部 「ふむ、物わかりがよくて助かる」

岡部 「さて、全員窓際に並んでもらおうか?」

俺の指示に従い、さっきまでのにやけ面を失った男たちはそそくさと窓際に列を作った。

30 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:21:39.27 E2DGWpi8O 24/32

全員が手を挙げたのを確認すると、俺は落ちていたナイフを拾い

ルカ子を縛っていたロープを切って解放してやる。

るか 「お、岡部……さん?」

岡部 「ルカ子……待たせたな」

るか 「あ、い、いえっ! そ、それより……その人たちを……」

ルカ子が涙目で、男たちを振り返る。

岡部 「……ああ、安心しろ。殺したりはしないさ」

俺の発言に、全員がビクリとした。

岡部 「だがしかし!」

また、連中が揃って震え上がる。

31 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:23:59.46 E2DGWpi8O 25/32

岡部 「ルカ子に怖い思いをさせた償いはしてもらわねばならん」

るか 「えっ……!?」

それにこいつらは、あろうことか実際に誘拐までやってのけた連中だ。

ルカ子に危害を加えた事実に変わりはない。

岡部 「ファンならファンらしく、遠くから応援していれば良かったものを……ククク」

俺は、窓際に立たされた5人に歩み寄った。

全員が、背筋を伸ばして息を呑んでいる。

俺は冷ややかに笑って、ナイフを持っていた男の顎を掴んだ。

誘拐犯C「な、何を……」

岡部 「喜べ。 今回、貴様だけは無傷で帰してやろう」

誘拐犯C「えっ……?」

男たちが不安そうにキョロキョロと顔を見合わせた。

32 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:28:06.94 E2DGWpi8O 26/32

るか 「お、岡部さん……!」

ルカ子は俺の腕にしがみついている。

岡部 「だから、心配するな。こいつらを、お前から少し遠ざけるだけだ」

るか 「っ……」

それだけ伝えて、俺は、目の前の男の瞳を深く覗き込んだ。

誘拐犯C「……っ」

怯えた光が、こちらを見据えてくる。

岡部 「……これで終わりだ」

その真ん中には、ポカンと黒く、瞳孔が開いている。

岡部 「お前らとは、もう二度と、会うこともなかろう」

男の息が、まるで獣のように速くなっていく。

誘拐犯C「…………っ!」

その瞳孔から染み出すように、漆黒が俺の視界一杯に広がっていき。

耳なりが激しくなると。

俺の意識は、その闇に飲み込まれていった―――。

33 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:29:42.06 E2DGWpi8O 27/32

耳をつんざくような、ひどい音が頭の中に響き渡る。

両目には、指で力一杯に押さえつけられたような痛み。

たまらず、何度も目をしばたたかせる。

頭蓋の中でスクリューが回っているような気持ち悪さ。

めまいが激しく、足許がおぼつかない。

顔からは、脂汗が一気に噴き出して。

そして、数秒も経たないうちに、不快感の渦は遠のいていく。

グニャリと歪んだ視界が、波をうって元に戻った。

ふらついていた足にも、ようやく力が入り。

俺は、堅いアスファルトを踏みしめる。

34 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:30:54.79 E2DGWpi8O 28/32

辺りを見回す。

ここは……路地裏、のようだ。

まだ、空には日がある。

どうやら、上手くいったようだ。

ハッキング・シュタイナーが発動した。

誘拐犯B「おい、大丈夫かよ?」

覆面を被った男の一人が声をかけてきて。

その間抜けな格好に、俺は思わずマスクの下でニヤけていた。

誘拐犯C「……いいや? 大丈夫だ。問題ない」

誘拐犯B「そ、そうか? やけにフラフラしてたけど……」

35 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:32:47.41 E2DGWpi8O 29/32

誘拐犯A「あ、おい、来たぞ!」

路地裏から顔を出して、通りを窺っていた男が声を上げた。

男の指差す方に目をやると、まゆりとルカ子が談笑しながら歩いている姿が見える。

誘拐犯B「お、おっしゃ。 いいな、お前ら?」

誘拐犯A「おう。今なら人目も無いし、さっさと行こうぜ」

今にも駆け出そうとする男達。

俺はポケットを探って。

誘拐犯C「なあ、お前たち―――」

ナイフを、取り出した。

36 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:38:10.46 E2DGWpi8O 30/32

まゆりとルカ子がブラウン管を覗き込んでいる。

まゆり「うわぁ……」

るか 「こ、怖い、です……」

まゆり「ねぇねぇ、オカリン。この辺、大変な事になってるみたいだよ」

テレビの内容は聞こえていた。

なんでも、路地裏で4人が刺されたらしい。

岡部 「……えらく物騒な世の中だな」

岡部 「まゆりもルカ子も気をつけるように」

まゆり「う、うん……」

るか 「わかりました……」

二人は頷くと、またテレビに視線を釘付けにした。

38 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:40:08.91 E2DGWpi8O 31/32

―――と、そんな事が書き連ねられていたA4ノートを、俺は惜しげもなく炎の中に放り込んだ。

紅莉栖「ちょ、岡部。なによそれ」

岡部 「え?」

紅莉栖「左義長の炎に、そんなもの入れていいの?」

紅莉栖「……これって、お正月で使った飾りやなんかを燃やすのよね」

岡部 「いや、知らん」

紅莉栖「知らん、って……」

39 : ローカル... - 2012/01/17(火) 19:42:03.24 E2DGWpi8O 32/32

岡部 「燃えてしまえばいいのだ。あんなもの」

紅莉栖「……ははぁ? あれ、さてはあんたの厨二ノートだろ?」

岡部 「ぐぬっ……!」

紅莉栖「やっぱり図星か。 ね、岡部。拾ってきて?」

岡部 「いや待て! こ、殺す気か!?」

紅莉栖「……いいから、拾ってこい」

岡部 「……はい、行かせていただきます」

おわり

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