189 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします - 2010/06/06 00:53:33.53 jovEjkQ0 1/57

時系列的にはアニメ超電磁砲の第一話であった銀行強盗から数日後辺りです。
でもまだ『連続虚空爆破事件』が解決していなかったり、佐天さんがレベルアッパーの存在を知らなかったりといった、もしもストーリーになっております。

・オリキャラじゃないけどオリキャラ有り
・オリ能力有り
・若干のキャラの性格変更有り

上記の内容は受け付けない! という方はスルー推奨です。

前半は台詞形式、後半は地の文入りです。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-5冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1275661269/

190 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 1/55 - 2010/06/06 00:58:31.85 jovEjkQ0 2/57

ある日の柵川中学の教室にて……

佐天「うーいーはーるーん!」バサッ

初春「きゃあっ! い、いきなり何するんですか佐天さん!」

佐天「今日は青のストライプかー」

初春「人の話聞いてますか!?」

佐天「最近青系の色が多いけど、何で?」

初春「そ、それはもう夏ですし、気分的に寒色を選びたくなるというか……って、そうじゃなくてですね!」

佐天「いやー、やっぱり朝は初春のパンツを見ないと元気が出ないというか何というか」

初春「もっと他の事で元気を出してください!」

佐天「それは無理っ!」

初春「ぅええぇー……」

佐天「あっ。そんな事より」

初春「そんな事とは何ですか、そんな事とは」

佐天「近くに新しいクレープ屋さんができたみたいなんだけど、知ってる?」

初春「いえ、知りません。どんなクレープ屋さんなんですか?」

佐天「なんかね、見た事も聞いた事も無いようなクレープが揃ってるんだって!」

初春「……少し怪しい雰囲気がありますが、気になりますね」

佐天「でしょう? それで今日の放課後に食べに行こうかなあって思ってるんだけど、初春も一緒に行かない?」

初春「今日の放課後……ですか? わかりました。今日は風紀委員(ジャッジメント)の仕事も無いので大丈夫です」

佐天「よーし、じゃあ初春。放課後よろしく!」

初春「はーい」

191 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 2/55 - 2010/06/06 01:00:10.64 jovEjkQ0 3/57

――

放課後

佐天「ねえ初春?」

初春「何ですか? 佐天さん」

佐天「ここはどこ?」

初春「クレープ屋さんの前です」

佐天「それは新しくオープンしたクレープ屋さん?」

初春「いいえ。いつも通っているクレープ屋さんです」

佐天「……」

初春「……」

佐天「ああああぁぁーもうっ! 何で新規オープンしたばかりのお店が臨時休業なんかになってるのー!?」

初春「まぁまぁ佐天さん、落ち着いてください。周りの人にも迷惑ですよ」

佐天「これが落ち着いていられるかーっ!!」

初春「その佐天さんの言っていたお店について少し調べてみたんですけど、臨時休業になった理由はニつあるみたいなんです」

佐天「理由? ……で、その理由って何なの?」

初春「まず一つ目はですね、そのクレープ屋さんのクレープの味にあるそうなんです」

佐天「味? そういえば見た事も聞いた事も無いようなクレープ……っていう情報だったけど」

初春「お店のメニューとしては『黒酢バナナ』『空豆豆腐』『イカ墨キムチ』『いくらカルボナーラ』『いちごおd」

佐天「ストップ! 初春! ちょっと想像しただけで気分が……」

初春「その、あまりにも味が酷すぎるためにメニューを再検討しようと思ったらしく、一時的に臨時休業を取ろうとしたみたいです」

佐天「というか、何故そんなメニューが会議を通過できたんだろ。……ん? 取ろうとしたって、どういう事?」

初春「はい。そこが二つ目の理由であり、今回の臨時休業の直接的な原因だそうです」

佐天「直接的な原因?」

192 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 3/55 - 2010/06/06 01:01:38.59 jovEjkQ0 4/57

初春「例のクレープ屋さんに今日の臨時休業について問い合わせてみた所、本日販売を予定していたクレープの材料がごっそり無くなっていたそうなんです」

佐天「それってもしかして、泥棒とか?」

初春「泥棒……なんですかね。そのお店の周囲の監視カメラの映像を確認してみたんですが……」

佐天「?」

初春「そのお店の店員でもない、ある一人の人物がクレープ屋さんの中へと進入しているんです」

佐天「ならその人が犯人なんじゃないの」

初春「おそらくそうなんでしょうけど、私としてはどうも納得できない部分があるというか……」

佐天「納得出来ない部分?」

初春「その人物は、クレープ屋さんに手ぶらで進入して、手ぶらで何の体型の変化も無く外へと出てきたんです」

佐天「……特に不自然なことなんて無いと思うけど。だって空間移動(テレポート)とかなら簡単でしょ」

初春「確かにその線もあるにはあるのですが……。材料の無くなった跡が空間移動(テレポート)を使ったものとは思えないんです」

佐天「それって、綺麗に無くなっていないとか?」

初春「いいえ、佐天さん。材料は綺麗に無くなっていたそうです。ですが【綺麗】の言葉の通りに。まるで――舐めとられたかのように」

佐天「っ!?」

193 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 4/55 - 2010/06/06 01:02:33.79 jovEjkQ0 5/57

初春「空間移動(テレポート)といっても、その材料全てを移動させている訳ではありません。例えば、苺の種が一つ落ちた所でその人はまず気には留めませんよね?」

佐天「じゃあ、その犯人は……」

初春「『移動系能力』でないとするなら、その場で身体の中に収めたとしか言えないんです」

佐天「それってつまり、食べたって事?」

初春「でもそれだと外に出てきたときに体型の変化が起きているです。材料は決して少なくは無い量なんですから」

佐天「……ねえ、初春。その人物って誰なの?」

初春「監視カメラの映像では顔の部分が見えていないので、誰かまでは特定できないんですけど……」

佐天「(ゴクリ)」

初春「体格からみて性別は女性。服装は白い修道服を着ていて……そうですね、まるでシスターさんのような格好でした」

佐天「シ、シスター? 何それ、その犯人はコスプレ趣味でもあったっての!?」

初春「さぁ。一応警備員(アンチスキル)に通報しますかって聞いてみたんですけど、この件に関してはしないそうです」

佐天「え、どうして?」

初春「どうやら今日する販売する予定だった材料以外にも、売れ残った材料――つまり処分する予定だった材料も無くなっていたそうなんです」

佐天「それって……『処分してくれて助かった』って事?」

初春「大体はそういう事でしょう。売れ残りが多すぎて捨てるに捨てれなかったんでしょうね」

佐天「ええぇー……。そんなのって、あり?」

初春「あり……なんじゃないんですか?」

194 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 5/55 - 2010/06/06 01:03:21.29 jovEjkQ0 6/57

――

佐天「初春はストロベリークレープだよね。はい!」スッ

初春「あ。ありがとうございます佐天さん」

佐天「それにしても、なんであたし達はここのクレープを食べてるのかねー」

初春「それは佐天さんがあの後『今日はクレープを食べないと気が済まないーっ!』なんてワガママを言ったからですよ」

佐天「ワガママじゃないもん!……ところで初春はいつの間にさっきの事を調べたの?」

初春「例のクレープ屋さんの事についてですか?」

佐天「そうだよう。だってここに来るまでは初春、あたしとしゃべってたじゃん」

初春「私はしゃべっていたというか、『そうですね』しか口にしていませんよ?」

佐天「ええ!? いや、あたしは確かに初春と会話をしていたはず――」

初春「会話じゃなくて愚痴でしたよ。愚痴。なのでもう適当に受け流してればいいかなー、なんて」

佐天「ちょ、初春それ酷くない!?」

初春「いやぁ。あのときは佐天さんの愚痴を聞く暇も体力も心もありませんでしたから」

佐天「う、初春が黒い……」

初春「最近は白井さんも愚痴ばっかりで。『どこの馬の骨ともしれない殿方のおかげでお姉様の帰りが遅くなっている』だとか何とかうるさいんですよ」

佐天「あ、もしもし? 白井さん?」

初春「えっ!? ま、まま待ってください佐天さん! さっきの事は謝りますから! だから白井さんには――」

195 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 6/55 - 2010/06/06 01:04:04.23 jovEjkQ0 7/57

――

佐天「まったく。これに懲りたら、これからはあたしの話をちゃんと聞かないと駄目だからねっ!」

初春「は、話ならちゃんと聞きますけど……」

佐天「うむ。それでよい」

初春「はあ……」

佐天「……そういえば前にここに来たときは銀行強盗が出たんだっけ?」

初春「そうですね。そのときは御坂さんや白井さんが撃退しましたけど。――佐天さん、あのときの怪我はもう大丈夫ですか?」

佐天「大丈夫、大丈夫! でもさ、あのときの御坂さん格好良かったよねー」

初春「常盤台のエースの名は伊達じゃないって事ですよ」

佐天「すごいなー。レベル5かあ。あたしもあんな風になれるかなぁ」

初春「佐天さんはまず授業を真面目に受ける事から始めた方がいいですね」

佐天「なにおう! そんな事を言うなら、初春の頭の花をむしり取ってやるー!」グワッ

初春「ああ! や、やめてください佐天さん!! これは私の大事なトレードマークなんです!」

佐天「あはは! 本気にしちゃって頭の花を押さえて涙目になってる初春かわいいー」

初春「うう……。ひどいですよ佐天さん……」

佐天「ごめんごめん! ……ねえ、初春?」

初春「?」

佐天「もしだよ? もしあたしがレベル5になったとしても、初春はあたしの親友でいてくれるよね?」

初春「当たり前じゃないですか。何でそんな事を聞くんですか?」

佐天「何ていうかさ、あのときの御坂さんを見てたら、なんだか自分とは別世界の人に見えちゃったんだよね」

初春「……でも」

佐天「もちろん、御坂さんや白井さんがレベルだけで人を判断するような人達じゃないってことはわかってるよ。わかってるんだけどさ……」

初春「佐天さん……」

196 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 7/55 - 2010/06/06 01:04:45.84 jovEjkQ0 8/57

佐天「今までのあたしの高位能力者への気持ちは単なる羨望でしかなかったのに、実際にあの力を目にしちゃってからはその気持ちの中に妬みや劣等感が混じるようになっちゃった……」

初春「……」

佐天「あたしは初春にはそんな風に思って欲しくないし、思いたくもない。だから初はr」

初春「佐天さん!!」ダキッ

佐天「! う、うう初春!?」

初春「佐天さんは佐天さんなんです! 佐天さんはよく授業中に寝たり、私のスカートをめくったりして、それを軽い気持ちでやったりする面倒臭がり屋ですけど!」

佐天「ちょ、ちょっと初春。落ち着いて!」

初春「でも! 私はそんな佐天さんが好きなんです!! たとえ佐天さんがレベル5になっても、その中の第一位になっても、それこそ私とは別世界の人になっても、この気持ちは変わりません!!」

佐天「初春……」

初春「佐天さんは私の親友です!! 誰に何と言われようと、佐天さんの気持ちを裏切るような行為は絶対にしません!!」

佐天「っ! ……」

初春「では、逆に質問しますね。――佐天さんがレベル5になっても、私は佐天さんの親友でいていいですか?」

佐天「ぅ……、ういはるーっ!!」ダキッ

初春「大丈夫ですよ、佐天さん。私はいつまでも佐天さんの親友ですから」

佐天「初春~。……ありがとね」グス

初春「……はい」グス

197 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 8/55 - 2010/06/06 01:05:21.42 jovEjkQ0 9/57

――

佐天「はあー。柄にもなく泣いちゃったなぁ」

初春「でもたまには泣く事も悪くはないと思いますよ」

佐天「そうだね。……ところで初春?」

初春「はい?」

佐天「さっき初春に色々と酷い事を言われた気がしたんだけど」

初春「さ、さあ~。何の事ですか?」

佐天「しらばっくれない!」

初春「い、いえ。私は知らないフリなんてし、ししていないですよ」

佐天「ちょっとどもってるし。ああ、初春があたしの事をいつも授業中は寝てて、初春のパンツを脱がせるナマケモノだと思っていただなんて!」

初春「わ、私はそこまで誇張して言っていませんよ!」

佐天「……という事は、言った事については認めるんだね?」

初春「はっ! ……はめましたね」

佐天「そんな悪い初春には、暑さで枯れないように頭の花に水をかけてあげよう」

初春「ふえ? じょ、冗談ですよね?」

佐天「冗談に決まってるよ~」ゴソゴソ

初春「とか何とか言いながらカバンからおもむろにミネラルウォーターを取り出さないでください!」

佐天「勘違いしないでよ初春。これは初春が暑そうにしてるから、水をあげようと思ったんだよ……(頭の花にね)」ボソ

初春「今ボソっと『頭の花にね』と言いましたよね!? やっぱり私の花が狙いなんじゃないですか!」

佐天「ふっふっふ。そこまでばれたなら仕方ない。覚悟しろー!」ダッ

初春「わ、わわあ! こっち来ないでください!」ダッ

佐天「それが親友に対する態度かー! 初春ー!」

初春「それとこれとは話が別ですよぉ!」

198 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 9/55 - 2010/06/06 01:06:06.63 jovEjkQ0 10/57

――

佐天「ハァ、ハァ」

初春「ハァ、ハァ」

佐天「あああぁぁ、あづい……」

初春「ハァ、それは夏です、ハァ、からね」

佐天「ハァ、暑い暑い。水飲もう」

初春「私も――あ、あれ?」

佐天「どしたのー初春ー」

初春「もう中身が空っぽになっちゃってて……」

佐天「じゃあ、この水あげるよ!」

初春「え!? い、いいんですか?」

佐天「いいっていいって。だってあたし達、親友でしょ?」

初春「あ、ありがとうございます。佐天さん!」

佐天「初春は上の口と下の口、どっちから飲みたい?」

初春「む。そんなの決まってるじゃないですか。しt――」

佐天「……」ニヤリ

初春「……ま、まんなかの口からいただきますっ!」

佐天「チッ」

初春「舌打ちしないでくださいよ」

199 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 10/55 - 2010/06/06 01:06:47.12 jovEjkQ0 11/57

佐天「さてと。とりあえずクレープも食べ終わった事だし。これからどうする? って、初春。さっきからなに時間気にしてるの?」

初春「いえ、そろそろ時間だなぁと思いまして」

佐天「時間って何が?」

初春「夕立ですよ」

佐天「え、夕立? 何それ聞いてないよ!」

初春「今日の朝のニュースで言っていたじゃないですか」

佐天「いやあちょっと、今日の朝はすべりこみギリギリセーフな時間に起きたからニュースとか見てる時間が無かった」

初春「はあー。その様子だと折りたたみの傘は持ってきていないんですね」

佐天「ぐう……。あ、雨が降る前に帰ればいいじゃん!」

初春「あーそれは無理でしょうね」

佐天「な、何で」

初春「だって――あと23秒後には降り出すでしょうから」

200 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 11/55 - 2010/06/06 01:07:29.08 jovEjkQ0 12/57

佐天「えええぇぇーっ!? どど、どうしよう!? ……あ、そうだ。初春! 初春は傘持ってるんだよね? 入れてくれない?」

初春「えー。どうしましょうかねー」

佐天「っ……な、何が望みなの?」

初春「いやー、私としては今までの私に対する態度について改めてもらえたらなーなんて」

佐天「そ、それはスカートめくりも……?」

初春「あ・た・り・ま・え・ですっ!」

佐天「う、…ぐ」

初春「ほらほらーもう後10秒もありませんよー」

佐天「(初春へのスカートめくりは私のアイデンティティー! これを捨てるくらいならもういっそのこと……)」

初春「6、5」

佐天「(いや、でもやっぱりずぶ濡れで帰るのは……もうすぐ始まる夏休みに風邪の状態で入るのは……)」

初春「4、3」

佐天「……っ! 今まですみませんでした! これからは態度を改めますから、傘の中に入れてください!!」

初春「ハイ、どうぞ」バサッ

佐天「」ダッ

ザーーーーーー!

佐天「はあぁぁ~。さようなら……あたしのアイデンティティー……」

初春「何この世の終わりを見たかのような顔をしているんですか」

201 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 12/55 - 2010/06/06 01:08:02.59 jovEjkQ0 13/57

――

佐天「…………」

初春「佐天さん、聞いてますか? 雨も降ってきましたし、とりあえず帰りましょうか」

佐天「…………」

初春「返事が無いって事は肯定の反応とみなしますからね。ほら、ついてきてください。佐天さん」

佐天「……あ……の……」

初春「そういえば最近ネットで色々な噂があったりするんですよ」

佐天「……うい……スカ……くり」

初春「『ビルの間を跳び回るサムライカウボーイ女』とかありえないですよね。そもそも何を言っているのかわかりませんし」

佐天「……いは……ンツ……」

初春「『ニケタ単位のハンバーガーを注文する巫女さん』とかどうですか? これならいるかもしれませんね。まあ、巫女さんが見つかればですけど」

佐天「……たし……ゆめ……」

初春「後は――『どんな能力も効かない能力を持つ男』なんて格好良いですよね。もしかしたらレベル5だったりするかもしれませんね」

佐天「…………」

初春「……さっきから何落ち込んでるんですか?」

佐天「!! あれだけ露骨な強迫をしておいてそれは無い!」

初春「強迫なんてしていませんよー。私はただ交渉をしただけです」

佐天「う……。こ、こんな初春なんて嫌いだー!」ダッ

初春「あっ、佐天さん! そんな急に走ったら――」

――ドンッ!

佐天「きゃあ!」

「うおっ!」

ドシャッ

202 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 13/55 - 2010/06/06 01:08:48.83 jovEjkQ0 14/57

初春「あーあー、だから言ったのに……大丈夫ですか? 佐天さん」

佐天「あ、うん。私は尻餅をついただけだかr」

「ああああああああああぁぁぁぁァァァああ!!」

佐天初春「っ!?」

「今日の特売で買った御一人様一パック限り七八円の卵×2があああぁぁ!! くそっ、こんな事になるんだったら寮の前まで吹寄に持ってもらえばよかった!」

初春「(あ、あの人誰ですか?)」ヒソヒソ

佐天「(多分、あたしがぶつかっちゃった人……)」ヒソヒソ

「はあー。今日は朝からビリビリに絡まれるわ、そのせいで遅刻して小萌先生に怒られるわ、それに何故か嫉妬した青髪ピアスが襲ってくるわ、挙句の果てには吹寄に頼み込んで一緒に買ってもらった卵も俺の身体と一緒に水溜りの中にダイブしてしまうなんて……」

初春「(とりあえず謝った方が良いですよ)」ヒソヒソ

佐天「(う、うん。そうだよね)」ヒソヒソ

「ああぁーもうっ、なんたる不幸ー!!」

佐天「あ、あのう。すみません。大丈夫ですか?」

「ん? ああ。俺は大丈夫だけど……。あんたの方こそ平気だったか?」

佐天「あ、あたしは全然大丈夫です! あの、それよr」

「そうか。それは良かった。今度からはちゃんと前を見て歩けよ?」

佐天「は、はい。すみませんでした」

「よし! わかったなら結構! じゃあな――」

佐天「ま、待ってください!」

「ん? 何だ?」

佐天「私がぶつかったせいであなたの制服と買い物袋をぐちゃぐちゃにしてしまって……」

「あぁ。その事ならもう気にするな。こんな事は俺の中じゃ日常茶飯事だしな。って、自分で言ってて悲しくなってくる……」

佐天「はぁ。で、でもあたしがやった事には変わらないので、その、お詫びをさせてください」

「お詫び? いやいやいやいや、そんなのいいって。俺はお前が謝ってくれたからもう満足大満足なのですよ!」

203 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 14/55 - 2010/06/06 01:09:44.77 jovEjkQ0 15/57

佐天「いえ、あたし……こういう事にはきっちりケジメをつけた方が良いと思うんです」

「ケジメねえ。……じゃあ制服のクリーニング代と買った商品の代金、払ってくれんのか?」

佐天「それを払えばいいんですね? わかりました」ゴソゴソ

「だあああぁぁ!! 待てよ、待ちたまえ、待ちなさい三段活用! そんなの冗談に決まってんだろうが!?」

佐天「じゃあ、な、何をすれば良いんですか」

「そうだなー。……じゃあお前がとなりにいる頭がお花畑の子にスカートめくりをしたら許してやる」

佐天「…………」

初春「……(あの、佐天さん?)」ヒソヒソ

佐天「……(初春……お願い!)」ヒソヒソ

初春「(えええぇぇ! い、嫌ですよ! 絶対に嫌です!!)」ヒソヒソ

佐天「(そこを頼むよー初春ー!)」ヒソヒソ

初春「(だ、大体さっきもうそんな事はしないって約束したばかりじゃないですか!)」ヒソヒソ

佐天「(でももう退くに退けなくなっちゃったんだよお。ほら、あの人もこっち見てるし)」ヒソヒソ

初春「(う……。で、でも嫌なモノは嫌なんです)」ヒソヒソ

佐天「(ここで見せたってどうせもうこの人とも会うことは無いし、何より確実なんだよ!)」ヒソヒソ

初春「(ふぐ……うぅ……)」

佐天「(初春!)」ヒソヒソ

初春「…………」グス

佐天「…………」

「……あ、あのう」

佐天初春「……?」

「な、何かすみませんでしたーっ!!」

佐天初春「!?」

「お願いですからヒソヒソ話しながら上条さんの事を汚物を見るような目で見ないでください!」

204 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 15/55 - 2010/06/06 01:10:43.55 jovEjkQ0 16/57

佐天「い、いや、そんな目で見ていた訳では――」

「とりあえずさっきの俺の言った事は綺麗サッパリ記憶から抹消してください! そして未来永劫思い出そうとしないでください!!」

佐天「は、はぁ」

「……はあー。なぁ、もういいだろ? 俺は別にお前に何かをさせるつもりは無いんだけど」

佐天「い、いえ。そういう訳にはいきません」

「別に俺はお詫びをしてもらいたいなんて思ってないし、もう困ってもいないんだけどさぁ」

佐天「でもあたしはここでケジメをつけないと、ずっと心に引っかかりを持っちゃう気がするんです」

「ふうん、そういうもんかねえ」

佐天「そういうもんなんです」

「……お前は明日の放課後空いてるか?」

佐天「あ、はい。一応空いてます」

「じゃあ明日の放課後、一緒に付き合ってくれ」

佐天「は、はい?」

「集合場所は……ここでいいか。お前がぶつかってきたここな。時間は午後四時半ぐらい。それじゃあな!」タッタッタ

佐天「あ、あの! って、行っちゃった」

205 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 16/55 - 2010/06/06 01:11:24.81 jovEjkQ0 17/57

初春「……どうするんですか? 佐天さん」

佐天「どうするって、そりゃあ行く……けど」

初春「ちょっと危なくないですか?」

佐天「で、でもあの人はそういう感じじゃなかったと思う」

初春「それでも用心するに越した事はありません。……明日は私も行きます」

佐天「ええ!? う、初春は無関係なんだから別に――」

初春「私は風紀委員(ジャッジメント)です! それは学園都市の治安維持及び犯罪防止のためにあります!」

佐天「初春……」

初春「明日、私は佐天さんの護衛としてついていきます。それでいいですか?」

佐天「う、うん。わかった。でも初春、あんたって明日風紀伊員(ジャッジメント)の仕事があったんじゃ」

初春「おや?もう雨は止んでましたね。では佐天さん、私はこれから行く所があるのでここで失礼します」タッタッタ

佐天「あ、うん。また明日ね……」

206 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 17/55 - 2010/06/06 01:12:05.78 jovEjkQ0 18/57

――

翌日

佐天「よし、着いた。今の時間は午後四時二十分。あの人より遅れて登場なんて締まらないからね」

佐天「でも一応用心のために大声を出せるようにした方がいいかな……」

初春「あ、いたいた佐天さん!」

佐天「うひゃああぁ!!」

初春「わあっ!? きゅ、急に大きな声出さないでくださいよ。びっくりするじゃないですかー」

佐天「考え事してるときに後ろからいきなり声をかけてくるからでしょ!」

初春「考え事って何ですか?」

佐天「あー何でもない何でもない。それより初春、風紀委員(ジャッジメント)の仕事はどうしたの?」

初春「それなら心配無用です。簡単な仕事は昨日の内に終わらせちゃいましたから」

佐天「ふうんそっか。……あれ? 初春、携帯鳴ってるよ」

初春「あ、ほんとだ。――はいもしもs」

『初春!! 貴女いつの間に貴女の面倒な仕事をわたくしがするように仕向けたんですの!』

初春「何を言っているんですか白井さん? ちょっと仰っている意味がよくわからないんですけど」

『まさか初春? 昨日非番である貴女が支部に来ていたのは、今日のわたくしに面倒な仕事を押しつけるための工作をしていたからですの?』

初春「あっはっはっは。ばれちゃいましたかー」

『ばれちゃいましたかー、じゃありませんの!!』

初春「それに仕方が無かったんですよ」

『ほう。わたくしに仕事を押しつけてまで暇をつくったその愚かな理由とやらについて、詳しく説明していただきましょうか』

初春「そーですねー。……簡単に言うと、佐天さんの貞操の危機なんです」

佐天「ちょ、初春!?」

『え? そ、それはー……マジ、ですの?』

初春「マジです。大マジです」

207 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 18/55 - 2010/06/06 01:12:53.77 jovEjkQ0 19/57

佐天「や、やめてよ初春! 何話してんのかわかんないけど嫌な気しかしないよ!?」

『何やら佐天さんのような声が聞こえてくるんですけれども……』

初春「まあとりあえずこれから佐天さんは男の人と会うので、私は佐天さんの護衛としてついていきます」

『はあ。しかし初春? 貴女もしその方に佐天さんが襲われそうになっても助けに入れるんですの?』

初春「入りますよ! 私は風紀委員(ジャッジメント)なんですから!」

『入る、ではなく入れるかと聞いていますの。貴女は戦闘向きの能力も力もない。後方支援向きの風紀委員(ジャッジメント)ですのよ』

初春「そ、そんな事はわかってますよ……」

『ならもしそんな事態に発展しそうなら、貴女がその状況に首を突っ込む前に通報なさい』

初春「う……」

『貴女が突っ込んで逆に事態を悪化させるような事になったら本末転倒ですの』

初春「…………」

『……わたくしは心配しているんですのよ。佐天さんはもちろん、初春の事も』

初春「……わかってますよ」

『では初春。何かあったらすぐに連絡を入れるんですのよ?』

初春「はい。わかりました」

『……もちろん、今日やってくれた落とし前はきっちりとつけさせていただきますの』

初春「えーと、何の事ですか?」

『あ、固法先輩。ちょっとお話しなくてはならない事が』

『うん? 何かしら?』

初春「わあー! そ、そうですね。今度黒蜜堂のフルーツゼリー奢りますからっ!」

『今日初春は風邪を引いたらしく、お休みだそうですの』

『あら、そう。お大事にね』

初春「あ、危なかったぁ」

『……初春? 約束を破ったら頭の花だけ空間移動(テレポート)してさしあげますの。では』ピッ

208 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 19/55 - 2010/06/06 01:13:28.18 jovEjkQ0 20/57

初春「ふぅ。……あ、お待たせしました佐天さん」

佐天「待ったというか結構聞こえちゃってたんだけどね」

初春「とにかく私は問題無いんで大丈夫です。それよりあの人はまだでしょうか?」

佐天「うーん、もう約束の時間から5分くらい過ぎてるんだけど……。――あ、あの人かな?」

初春「こっちに気づきましたね」

「ハァ、ハァ。悪い! 待たせちまった!」

佐天「いえいえ、あたし達そんなに待っていませんから」

「てか、俺としては本当に来てるとは思わなかったんだけどな」

佐天「? どうしてですか」

「昨日の待ち合わせ場所とか時間の説明が適当だったろ?」

佐天「確かに結構早口で言ってましたけど」

「それでお前が理解できていなければ、そのお詫びとやらもうやむやにする事ができたんだけど……」

佐天「でも、あたしは今ここにいますよ?」

「そこなんだよ! なんであの唐突な言葉の約束を理解して覚えてられたんだよ! お前は一度聞いた事なら何でも覚えられる天才ちゃんかちくしょうっ」

佐天「は、はあ」

「ま、いいや。来たんだったらちょっと付き合ってもらうけど」

佐天「はい。わかりました」

「そっちの頭がお花畑の子も来るのか?」

初春「わ、私も佐天さんと一緒に行きます! あと、頭がお花畑の子じゃありません! 初春と言います」

「そうか。いや、上条さんとしては人数が多い方が助かるからむしろ大歓迎ですよ」

佐天「あのあたしは佐天涙子って言います。あなたの名前は……」

上条「俺か? 俺は上条。上条当麻だ」

209 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 20/55 - 2010/06/06 01:13:55.93 jovEjkQ0 21/57

佐天「上条さん、ですか。それでこれからどこかに行くんですか?」

上条「あぁ。……ちょっと戦場にな」

初春「せ、戦場?」

佐天「それって危ない場所だったりするんですか?」

上条「そうだな。確かにあれは弱肉強食の世界だから、一分一秒の油断が命取りになるかもしれない」

佐天「そこで……何をするんですか?」

上条「そんなの決まってんだろ。食料調達だよ。いやあれは明日への力の源と言っても過言ではないか」

初春「(何言ってるんだろう)……それで私達はその手伝いをすればいいんでしょうか」

上条「手伝いっていうか……最後に大仕事をしてもらうだけだよ」

佐天「でもあたしにはそんな大変(?)な仕事できないと思います。あたしはレベル0ですよ?」

上条「レベルなんて関係ない。とにかくお前達がいてくれるだけで、俺は戦える」

佐天「……(この人本気でこんな事言ってんのかな。ボケじゃないのかな)」

上条「とりあえず、お前達に迷惑をかけるつもりはないから」

佐天「はぁ、わかりました」

上条「そんじゃあさっさと行こうぜ。時間もそんなに無いし」

210 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 21/55 - 2010/06/06 01:14:46.85 jovEjkQ0 22/57

――

道中

佐天「(あたし達には迷惑かけないとか言ってたけど)」ヒソヒソ

初春「(でも警戒していた方がいいですよ。何らかの能力を使ってくる可能性もありますし)」ヒソヒソ

佐天「(……やっぱりそう言うと思った)」ヒソヒソ

初春「(いざというときのために情報を収集しておきましょう)」ヒソヒソ

上条「♪~」

初春「あの、ちょっと質問してもいいですか?」

上条「おう。上条さんに答えられる範囲であれば何でもいいぞ」

初春「上条さんって高校生なんですか」

上条「ああ。高一だ。初春たちは中学生か?」

初春「はい。そうです」

佐天「中学一年ですっ!」

上条「ははっ! 元気だなぁ佐天は」

佐天「そういう上条さんはちょっと何か疲れてる雰囲気がありますけど」

上条「いや、ちょっと朝にビリビリ中学生に絡まれてな……」

佐天「はぁ」

初春「その、ビリビリ中学生ってどんな人なんですか」

上条「常盤台のお嬢様なんだけど口は悪いし、年上に敬意を払わないがさつな態度。多分まだ反抗期が抜けてねーんだな。そして見つかったら電撃撒き散らしながら追いかけてくんだぜ? こえーったらありゃしねえ」

初春「(そんな人あのお嬢様学校にいるんでしょうか?)」ヒソヒソ

佐天「(能力は同じみたいだけど御坂さんとは大違いだね)」ヒソヒソ

初春「でもその人って常盤台の方ですから能力者なんですよね」

上条「まぁそうだな」

佐天「という事はその人の相手をしている上条さんも何かの能力者だったりするんですか」

211 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 22/55 - 2010/06/06 01:15:15.95 jovEjkQ0 23/57

上条「どうなんだろうなぁ。確かに少し特殊な能力を持ってるっちゃ持ってるけど、俺はレベル0だよ」

初春「レベル0で能力がわかっているなんて珍しいですね」

上条「でもいないことは無いだろ」

佐天「(レベル0なのに能力者……あたしは……)」

上条「つっても、俺はスプーン一つも曲げられないような、レベル0の中でも底辺の位置にいるんだけど……な……」

初春「? どうかしたんですか?」

上条「……上条さんの通過予定ルートに空き缶が転がっている……」

佐天「はい?」

初春「あーどれだけ注意してもポイ捨てする人はするんですよねー。ちょっと私捨ててきます」

上条「待ったあぁ!!」

初春「な、何ですか」

上条「俺にはわかる。わかっていますとも。これは拾いに行こうとしたらその空き缶が足元に転がってきてずっこけるっていう転倒フラグだなっ!?」

佐天「いやいや。それはちょっと大げさ過ぎじゃあ……」

上条「いいや。俺の不幸体質を舐めないでもらいたい」

初春「ふ、不幸体質ですか」

上条「そうだ。俺の不幸によって初春が転び、それによって起きるラッキースケベなシーンの後に訪れるであろう気まずい空気に上条さんは耐えられそうにないんです!」

初春「……あの。もう佐天さんが拾ってゴミ箱に捨てに行っちゃいましたよ」

上条「なっ! 人の話は最後まで聞きなさいと学校の先生に教わらなかったんですか!?」

初春「ほらー佐天さん。上条さんが怒ってますよ? 早く戻ってきてください」

佐天「いやー、なんだか長くなりそうだったか――」

コロコロ

佐天「らああぁ!?」スッテン

初春「さ、佐天さん!!」

212 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 23/55 - 2010/06/06 01:16:18.00 jovEjkQ0 24/57

上条「あーだから言わんこっちゃない」

佐天「いてて……」

初春「大丈夫ですか? 佐天さん」

上条「まぁ流石に別方向から違う缶が転がってくるのは予想外だったけどな――っと、この缶コーヒーあんたのだよな」

「……わりィな」

佐天「……上条さんが不幸体質っていうのは、あながち間違いじゃないかもしれない……」

上条「俺も伝染したのを見たのは初めてだけどな……。ごめんな、俺のせいで」

佐天「上条さんは何も悪いことはしてないじゃないですか」

初春「その不幸体質って上条さんの特殊な能力というものに何か関係があったりするんですか?」

上条「さあ。俺にもよくわからねえな。俺の不幸体質は生まれつきだし」

佐天「じゃあ小さいころからよく転んだりしてたんですか?」

上条「それはまだ軽い方だな。昔は石を投げられたり、酷いときはテレビ番組で疫病神とか言われたり、借金まみれの男に追い掛け回されて包丁で刺された事もあったらしい」

佐天「え……」

初春「酷い……」

上条「それは『外』での事なんだけどな。で、小学校入学のときに迷信のない世界、科学最先端の学園都市に送られたんだけど……」

佐天初春「……」

上条「結局俺の不幸の原因はわからずじまい。まぁ以前のような暴力沙汰にはなっていないけどな」

佐天「……あの」

上条「はいはいっ! 暗い話はこの辺で終了! そろそろ戦場に着くからなー」

213 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 24/55 - 2010/06/06 01:17:12.80 jovEjkQ0 25/57

――

上条「さあ着いたぞ。ここが今日の戦場だ」

佐天「……え?」

初春「あのここって」

上条「ん? 本日の激戦区の大手のスーパーですよ」

佐天「……あたし達はここで何をするんですか?」

上条「あぁ。今日の午後五時から始まるタイムセール品の一つ、『御一人様一点限り四個入り一パック二十円の卵』の人数合わせで一緒にレジに並んでくれれば上条さんは明日を生きることができまっす」

佐天「そ、そんな事でいいんですか」

上条「そんな事はなんだあああぁぁ!!」

佐天初春「っ!」

上条「これから俺は明日への生きる希望を掴み取るために戦場に向かう。だがその希望は欲張って一人で持ち帰るためにはあまりにも心身ともに負担がかかり過ぎるんだ」

初春「あ、あの」

上条「そんな状況を打破するためには方法は一つしかない。そうっ! 心を許せる戦友にその希望を託す事なんだ!!」

佐天「(上条さんこそ人の話を聞いた方がいいと思う)」

上条「そんな訳で佐天達にはその人数合わせになってもらう」

初春「はあ、そういう事なら早く行きましょうよ。もうすぐ五時ですよ」

上条「いいや。お前達をあの戦場に連れて行くことはできない」

佐天「何でですか」

上条「これから起きる奪い合いにお前たちの身体が耐えられるとは思えない」

初春「じゃあ……」

上条「お前達はこのスーパーの入り口辺りで待っていてくれ。卵を取り終えたら佐天達を呼ぶからそのときに来てくれると助かる」

佐天「わかりました」

上条「よし。それじゃあ十分くらいで戻ってくるからな! それまで待っててくれよー」タッタッタ

214 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 25/55 - 2010/06/06 01:18:08.25 jovEjkQ0 26/57

――

佐天「やっぱり危ない人じゃなかったね初春」

初春「そうですねー。ちょっと、というかかなり変わった方でしたけど」

佐天「でも話してて楽しかったよね」

初春「あれー佐天さん。もしかしてちょっと気になっちゃったりしてますか?」

佐天「ぶっ! な、なな何言ってんの初春! そんな訳無いじゃん!」

初春「ありゃりゃ、顔が赤くなってる所を見ると図星でしたか」

佐天「っ」

初春「正直上条さんのどこに惚れたのかわかりませんが、私は佐天さんの恋を応援しますよっ」

佐天「う、初春のバカあああぁぁ!!」ダッ

初春「だから急に走ったら危ないですよ――」

――ドンッ!

佐天「きゃっ」

「ッ!」

佐天「あ、すみません」

215 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 26/55 - 2010/06/06 01:18:49.96 jovEjkQ0 27/57

「ッてえな。あーこれ骨イっちまったかもしれねえなぁ」

佐天「え、そんな強くはぶつかっていな」

「ああっ!? 何口答えしてんだこのガキ。ぶっ殺されてぇのか!」

初春「やめてください! ちゃんとぶつかった事については謝ったじゃありませんか!」

「何だテメエ?」

初春「風紀委員(ジャッジメント)です!」

「ほう。こりゃいいところで会った。おいッ! お前らちょっと来い!!」

「何だよ」

「ん? 誰だこのガキ」

「あぁ、コイツ風紀委員(ジャッジメント)なんだってよ。ちょっとこいつで“アレ”の性能を試してみようぜ」

「なるほど、そりゃイイ考えだ」

「お花の嬢ちゃん、ちょおっと俺等と一緒に来てくんねえかな?」グイ

初春「や、やめてくださいっ!!」

佐天「ちょ、ちょっと! 初春には手を出さないでよ!」

「ウゼェなぁ。おい、こいつも連れて行っちまおうぜ」

「試す相手は一人でも多い方がいいってな。オラッ!」ガシ

佐天「い、嫌っ! 離して!!」

216 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 27/55 - 2010/06/06 01:19:44.22 jovEjkQ0 28/57

――

とある少年が入った第七学区のスーパーマーケットは食料品はもちろん、家電や衣服売り場、書店、ゲームセンター、さらにはフードコート等も揃える比較的デパートに近いものだった。
様々な商品を取り揃えたそのスーパーは常に客足が途絶える事は無く、特に週一で行われる食料品の激安価格のタイムセールは、奨学金の支給額が少ない学生にとっては嬉しい恒例行事となっている。

そんなスーパーから五十メートルほど離れた場所に佐天と初春はいた。
より正確に説明すると、ほとんど人気の無い通りにある裏路地に、武装無能力集団(スキルアウト)によって連れてこられていた。
日本の夏の夕方はまだまだ明るいはずなのだが、この裏路地はその事実を裏返してしまうほどに暗い。
建造物の配置や構成上、空からの日光は一切なく街から漏れる僅かな日光や街灯の明かりしかないのだから当然だ。
しかし今はこの平衡感覚が狂ってしまったかのような気分の悪さが、彼女らの視界を暗くしてしまっている主な原因かもしれない。


(何でこんな事になっちゃったんだろう)


道幅一メートル強の裏路地で見ず知らずの者たちに囲まれている佐天はそう思った。
彼女のすぐ横には見知った友人がいる。

初春飾利。

今は膝を地面につき、身体をくの字に曲げてうずくまっている。
その痛々しい雰囲気のせいなのか、心なしか頭につけている花の量が減っているように見える。

数分前、『こんな事をしてもすぐに他の風紀委員(ジャッジメント)や警備員(アンチスキル)に拘束されますよ!』と警告をしていたが、近くにいた集団の一人に腹を殴られてからは動かなくなってしまった。

「お前何やってんだよ。一回目でダウンさせちゃ意味ねえだろ」

「仕方ねーだろ。肉体強化(ビルドアップ)を使ったとはいえ、風紀委員(ジャッジメント)が一発で沈むなんて思ってなかったんだからよぉ」

「でもまぁ。これでオレ達の力が本物だって証明されたな」

武装無能力集団(スキルアウト)なのに何で能力の話をしているんだろう、と考えるだけの思考を取り戻した佐天だったが、それはすぐに中断させられる。

「まぁいいや。ちょっと金取るためにもさっさと剥いちまおうぜ」

剥かれる。
その意味を理解するのに数秒を要した。
そして理解した佐天は全身の毛が逆立つような感覚に身体を支配された。

217 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 28/55 - 2010/06/06 01:20:43.10 jovEjkQ0 29/57

「でも駒場は女子供を襲うのを嫌ってなかったか?」

「いいんだよ。駒場の野郎の事なんか」

「そうそう、こっちの方が楽だし楽しいしねー」

逃げよう。でもどうやって?
見た所目の前の武装無能力集団(スキルアウト)の人数は七、八人。
武器らしき物は所持していないみたいだが、中学生の女の身体能力じゃ走って逃げてもすぐに追いつかれる。
それに、すぐ横には初春もいる。見捨ててなんていけるはずがない。

「じゃあさっそくこの花の風紀委員(ジャッジメント)からやっちまおうぜ」

「ああ、そうだな。これまで能力によって虐げられてきた苦しみを味あわせてやる」

そう言った一人男が初春に触ろうと手を伸ばす。
その光景を横目で眺めていた佐天は、頭の中で気が狂う程の大音量の警報が鳴り響くのを感じた。

初春に触らせてはならない。

その言葉を脳が理解したときには、すでに佐天の手は動いていた。
佐天の手は横で苦しんでいる彼女を護るように、荒々しく乱暴に伸びてきていた悪の手を叩く。

パチィンッ!

「あ? 何のつもりだこのガキ」

佐天は初春と手を叩いた人物の間に入り手を大の字に広げ、心の赴くままに言い放った。

「初春はあたしの親友なの!! あんた達なんかには絶対手を出させないんだからっ!!」

言ってしまった。でも後悔はしていない。してたまるもんか。
その言葉を叫んだとき、視界の隅にいた初春の身体がピクンと動いたように見えたのは気のせいだろう。

「ほおう? じゃあテメエから手を出してやるよッ!!」

手を叩かれた男が水泳の飛び込みをするように佐天の身体に跳びついてきた。
突然の事に咄嗟の反応ができなかった佐天は簡単に身体を押し倒される。
仰向けに押し倒された佐天はすぐさま起き上がろうとするが、身体が動かない。
その原因は目で確認する前に感じ取れた。マウントポジションをとられている。
地面にはゴミ捨て場のように雑誌や新聞紙などが散乱していて、そこに野良猫でも住みついているのだろうか、糞尿のような臭いが漂っていた。

「さあって、どうしてやろうかなぁ?」

「確かお前『精神系能力』だろ? ソイツで試してみろよ」

「おほッ、そりゃあイイ考えだ」

218 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 29/55 - 2010/06/06 01:21:27.59 jovEjkQ0 30/57

精神系能力。詳しい事はわからないが、その名前だけでこれから何をされるのかはわかる。
記憶を覗かれるのか、心を読まれるのか、はたまた洗脳されてしまうのか。
少なくとも自分の心が蹂躙される事だけは自覚できた。

「い、いや……」

無駄だとわかっていても声が出る。
長い間塞き止めていた涙も溢れ出す。
それが逆に相手を興奮させるという事もわかっていた。
それでも、出さずにはいられなかった。

――あたしの大切な唯一の思い出を汚されたくない!

「ギャハハッ! いいねえ、イイ反応だよお。そそるねぇ!」

案の定、歪んだ喜びを見せた男は佐天の頭に悪魔の手を伸ばす。

佐天は再びこう思った。


(何でこんな事になっちゃったんだろう)


確か武装無能力集団(スキルアウト)の一人にぶつかる前に、同じような形でぶつかった人がいた。
その人はこう言ってたっけ。

『今度からはちゃんと前を見て歩けよ?』

そうだよね。ちゃんと前を見て歩かなかったあたしのせいだよね。
これはあたしの自業自得。責められても文句は言えない。

でも初春は何も悪くない。だって何も悪いことはしてないもん。
それなのに初春はあたしのすぐ傍で傷つき倒れている。


――あたしのせいだ。


あたしにこの武装無能力集団(スキルアウト)を倒せるだけの能力(チカラ)があれば。
あたしに初春を助け出せるほどの能力(チカラ)があれば。


――あたしに、能力(チカラ)があれば。

219 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 30/55 - 2010/06/06 01:22:58.35 jovEjkQ0 31/57

でもいくら望んだ所でそれは叶わない。
そんな窮地に陥れば力が覚醒する、なんて夢物語はあるはずがない。


――それでも、奇跡を願わずにはいられない。


こんな三メートル先も霞んで見えなくなるような暗い裏路地に、誰かが助けに来てくれるとは思えない。
近道としても利用しなさそうな裏路地なので、誰かが通りがかることも期待できない。


――それでも、救世主(ヒーロー)が助けに来てくれることを願わずにはいられない。


仰向けのまま佐天は、首をわずかに日の光が差す方へと向けた。
そしてその動作を終えると、次に光に向けて手を伸ばした。

まるで、この【闇】から助け出してほしいように。
まるで、その【光】に助けを求めるように。



ふと光は閉ざされる。
一瞬、佐天は希望の光が完全に消えたかのように思えた。
しかしすぐに脳が働き『違う』と認識すると、その本当の意味を理解しようと思考をめぐらせる。
だがその前に、武装無能力集団(スキルアウト)でない男の声が聞こえてきた。


「テメエら、何やってんだよ」


それは、少し前まで聞いていた、あの懐かしい少年の声だった。

220 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 31/55 - 2010/06/06 01:23:49.48 jovEjkQ0 32/57

――行間――

「い、いない……」

上条当麻はつい先程まで一緒にいた彼女達、佐天と初春を探していた。

(おっかしいなあ。入り口辺りで待っててくれって言ったはずなんだけど)

現在上条の両手には四個入り一パック二十円の卵が、右手に一つ、左手に一つ、計二つある。
本当は三人分を取りに行くはずだったのだが、まるでどこぞの世界的お祭フィーバー状態と化していた卵売り場からは二つしかもぎ取れなかった。
いや、取れただけでもマシではあるのだが。

しかしそれも、レジを通せなければ意味が無い。

上条は彼女達の名前を何回か呼んでみたが返事はおろか、姿すら見えない。
タイムセールの品はほぼ売り切れ、客の人数は減っているので見逃している、何てことは無いはずなのに。

(これはまさか……ドタキャンされた?)

と上条は一瞬、人間不信に陥りそうだったがすぐに別の可能性を考えた。

「ああそうか。トイレか」

世の女性達から『デリカシーの欠片もない男』と罵られても反撃できないような一言を口走る上条。
それだけならまだよいのだが、彼は無自覚でこういう事を言う野郎なので余計にタチが悪い。

とりあえずもう少しだけ待ってみるか、と視線を店内へと向ける。

すると、見覚えのある人物が視界の端に映った。

その人物は地下一階からこの上条のいる一階へとエスカレーターで上って来ている。
確か地下一階は様々なコインロッカーがズラっと並んでいるような階層のはずだ。
コンビニの袋しか入らないようなロッカーもあれば、一般家庭レベルの二メートル弱の冷蔵庫すら入ってしまうようなロッカーもある。
一体何のために使っているのかただの高校生でしかない上条にはサッパリわからないが、ひとまずその階層から上ってきた人物に声をかけた。

「おーい! ビリビリ!」

「…………」

――……無視?

(いやいや待て待て。ここは冷静に上条さんと一緒に状況の整理をしよう☆ 今、俺とアイツとの距離は五メートル前後。小さな声では聞こえづらいかもしれんが、俺のさっきの声はそれなりに張っていたはず! だってビリビリの傍を歩いてた通行人が痛い子を見てしまったかのような顔をしてたもん!)

221 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 32/55 - 2010/06/06 01:25:01.73 jovEjkQ0 33/57

以下悶々と考えた上条はもう一度声をかけた。

「おおぉい!! ビリビリぃ!!」

「…………」

――……またですかこの野郎。

いい加減痺れを切らした上条は例のシカトビリビリお嬢様の方へと足を進める。
右手に持っていた一パックの卵を左手の一つに重ねて、右手で彼女の肩を叩き呼び止めた。

「おいビリビリ。無視すんなって」

「はい? 何か御用でしょうか?」

――……あれ。誰この子。

上条はまるで母親と間違えて他人に話しかけてしまったかのような気まずさを感じた。
つまりそれほどの温度差があったのだ。
いや、外見は完璧にあのビリビリ中学生。
まあ変なゴツイ軍用ゴーグルをつけていたり、彼女の背丈程はありそうな黒い楽器ケース(?)のような物を背負っているが、それでも容姿はビリビリと一切変わらない。

「え、あれ? ビリビリじゃ……ない?」

「ビリビリとは誰を指しているのかはわかりませんが、ミサカの名前はミサカです、とミサカは返答します」

「ミ、ミミミサカ?」

「はい。ミサカです」

ミサカ。
そういえばビリビリが『私の名前は……』とか何とかよく言っていた気がする。
でも正直今俺の目の前にいる少女が、あの乱暴な口調のビリビリとは思えない。
ひとまず一番ありえるであろう質問をしてみた。

「あ、あのさぁ。お前って双子とかいる?」

「オリジナル、という事であればミサカにはお姉様がいます、とミサカは質問に答えます」

前半部分が意味不明だったが、お姉様、という事はおそらくあのビリビリがこの少女にとっては姉となる訳だ。

……上条は何だかこの子がとっても不憫に思えた。
ビリビリに一日に一回会うか会わないかくらいのペースの上条ですらげんなりしてしまう程疲れるのに、毎日会っているとなると上条には想像もつかない。
一応確認を取るようにまたミサカと名乗る少女に質問した。

222 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 33/55 - 2010/06/06 01:26:11.01 jovEjkQ0 34/57

「多分俺、お前の姉貴の事知ってると思うんだけど。電撃使いだろ?」

「お姉様をご存知なのですか? とミサカはやや驚きの表情を見せます」

「……お前も結構苦労してるんだな」

「仰っている意味がよくわかりませんが」

ふと一度スーパーの入り口へと視線を向けたが、未だに佐天達は現れない。
いつまでもここで待っているのも面倒なので

「お前、今時間あるか?」

「ナンパのお誘いでしょうか、とミサカは妹達史上初のナンパ体験に身体を強張らせます」

「ちげーよ! これからこの二つの卵を買いたいんだけど、御一人様一点限りなんだよな」

「それはつまり、ミサカはあなたが御一人様一点限りなのに二つも取ってきてしまったことの尻拭いをさせられるという事ですね? とミサカは予想してみます」

「くっ、合っているけど違うぞ! 俺は人と待ち合わせていたから間違えて二つも取ってきた訳じゃない!」

「ではその方と買われれば良いのではないでしょうか? とミサカはあなたの情報から最適かつ最良な選択肢を提案します」

そんな事はわかっていますよセニョリータ。

もちろんできる事なら佐天達と買った方が、上条としてもスムーズに事が運ぶのでそちらを選びたいのだが。
実際入り口に待ち合わせしている彼女達が見当たらないのだから仕方が無いのだ。

「……いや、何かいないんだよね」

「見捨てられたという事ですね。可哀想に、とミサカは若干の含み笑いを隠しつつ、あなたに同情します」

「があああぁぁっ! ビリビリの顔と声で言われているのがすんげー腹立つ!!」

「まぁまぁ落ち着いてください、とミサカはあなたを宥めます。仕方ないですね。ミサカも少しなら時間に余裕があるので、あなたの尻拭いに付き合ってあげましょう、とミサカは優しい態度を見せつつも心の中で嘆息します。はぁー」

「表面に出てるぞ。……いや、ありがとうございます」

そういう訳で上条は、ミサカと名乗る少女と一緒にレジへと向かう事にした。
タイムセールの時間は終わったとはいえ、夕暮れ時なので夕飯の材料を買いにきた学生達でレジは長蛇の列をなしている。
上条達は近くのレジの列の最後尾に並んだ。

223 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 34/55 - 2010/06/06 01:26:54.31 jovEjkQ0 35/57

「…………」

「…………」

き、気まずい。
あのビリビリはこっちから話しかけなくても向こうからドンドン喋ってくるから気にしていなかったが、どうやら妹さんは受け手らしい。
上条も基本は相手の話に相槌を打つようなタイプなので、このタイプの二人が合わさるととんでもなく空気が重くなる事を上条は思い知った。

空気を変えるためにも上条は、あっそういえば、と何かを思い出したかのようにミサカに話題を振った。

「なぁ。お前って何でそんなゴツイゴーグルかけてんの?」

「ミサカはお姉様のように電子線や磁力線を目で追う事ができないので、それらを見えるようにするための器具が必要なのです、とミサカは懇切丁寧に説明します」

「…………」

「あの、聞いていますか?」

何を言っているのかわからない事は、恥ずかしい事ではないですよね?
この流れは非常にマズイ、と思った上条はミサカが背負っている黒いケースに目が行き、それに話題を変える事にした。

「聞いてる聞いてるっ。……そのお前が背負っているのって楽器ケースだよな? 何かの楽器が入ってんのか?」

「……ZXC741ASD852QWE963'とミサカは符丁の確認を取ります」

「……は?」

もう一度言う。何を言っているのかわからない事は、恥ずかしい事ではないですよね?
上条の脳では初めの方に言った『ZX』あたりしか頭に入っていない。
何らかの楽器の通称だろうか、と適当に考えていると

「やはり答えられないようですね。ではこの中身について教えることはできません、とミサカは否定の言葉を述べます」

と意味深な事を言われたが、特に知りたいと思っていた訳でもなかったので『そうか、ならいいや』と軽く流した。

そんな感じでミサカと会話をしていたら上条の会計まで後一人の所まできていた。

「おっ、もうすぐだな。ちゃんと俺の付き添いと思われるように近くにいてくれよ」

224 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 35/55 - 2010/06/06 01:28:23.56 jovEjkQ0 36/57

――

レジでの会計を終えた上条は、本日の戦利品である卵をスーパーの袋で包み買い物袋に入れつつ、ミサカに話しかけた。

「いやー、わざわざ付き合ってくれてありがとな」

「ミサカはあなたに付き添っていただけですから、とミサカは謙遜しつつあなたのお礼を受け取ります」

いやほんとありがとな、と上条は返事をしながら卵を買い物袋に入れ終える。

上条はミサカと共にスーパーの自動ドアを通り、外へと出る。
もう日も傾きつつあるはずなのに、ジメジメと湿気のある熱気が身体を包んだ。

今更ながらに思ったが、ミサカはあの名門常盤台中学の制服を着ている。
確か常盤台中学は門限に厳しいものだと風の噂で聞いたことがあったような気がする。
もしかしたら今の時間は門限的に危ない時間なんじゃないだろうか。
引き止めてしまった事により門限が過ぎてしまい、こっ酷く怒られたりしないだろうか、とかお嬢様の世界を全く知らない上条は在りもしない事をぐるぐると考え知恵熱を出していると、ミサカの口が動いた。

「ではミサカはこれから実験の方へと向かいますので、失礼してもよろしいですか? とミサカは確認を取ります」

実験、と聞いて少し引っ掛かったが、常盤台中学は能力開発面でも群を抜いていると聞く。
これから能力開発の授業でもするのかもしれない。
やっぱ常盤台のお嬢様スゲーなんて思いつつ、上条は答えた。

「ああ。今日はほんと助かった。……っと最後に一つ聞いていいか?」

「はい。何でしょう」

「お前の名前、何て言うんだ? ミサカって名字だろ? 一人称だと普通は名前なんじゃないのか」

「ミサカの名前はミサカです。正確に言うならばミサカは検体番号(シリアルナンバー)九六二七号です、とミサカは答えます」

「……うん。お前が電波ちゃんだという事はよーくわかった。もう言及はしないぞ。俺の名前は――」

「もう時間なので本当に失礼します、とミサカは別れ挨拶をします。……さようなら」

「え、あぁ。じゃあな……」

なんだか急いでいたようだったけど、本当に付き合わせて大丈夫だったんだろうか。
ミサカという少女は足早にスーパーを離れ、数十秒後にはもう見えなくなっていた。

「さて、と。俺も帰りますかね」

225 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 36/55 - 2010/06/06 01:29:12.07 jovEjkQ0 37/57

結局スーパーで別れて以来、今の今まで佐天達とは会っていない。
無事に家に帰ってくれていればいいんだけどな、と上条は佐天と初春の顔を思い浮かべながら自分の寮へと歩き始め――

(今、見えた『物』は何だ?)

上条にとっては見た事のある、だがそこに在ってはならない『物』が、スーパーから十メートル先の歩道の地面に落ちていたような気がした。
いやまさか、と現実から目を背けたくなったが確認せずにはいられない。
その『物』に近づいて行くにつれて、胸の奥からぞわぞわと気分の悪い感情が増幅されていく。

『物』を既にハッキリと目視できる程に近くまで来た。
その『物』を手に取り、目の前に持っていく。


――それは、初春が頭部につけていた花飾りの『造花』だった。


それだけならまだ良かったかもしれない。
造花なら落ちてしまっても、それは特に不思議なことではない。

しかし、上条が見た物は一つの造花だけではなかった。

上条のいる地点を始点に、幾つもの初春の造花が約五メートル間隔で道の奥へと向かって落ちている。
その光景はまるで宇宙の空のようなコンクリートの上を、明るい星が輝きを点々と繋いでいるようだった。

上条は手に取っていた造花を拾い、それを買い物袋の中へと入れる。
そして次の造花の落ちている場所へと向かい、拾って買い物袋の中へ入れる。
これを十回程くり返した上条は、また次の造花を探す。

しかしそこから造花は見つからなかった。

その代わりにいかにもな路地裏が、最後の造花の落ちていた場所から伸びていた。


上条当麻は迷わない。

その道がどんなに暗闇に呑まれていようと、彼は歩みを止める事はない。

その道の先で二人の少女が襲われているのを、音だけでだが確認できた。

もう、やる事は決まっている。

彼は口を開く。

上条当麻は迷わない。

それは彼にとって当然の事なのだから――

226 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 37/55 - 2010/06/06 01:29:39.87 jovEjkQ0 38/57

――

「テメエら、何やってんだよ」

佐天は上条の言葉を耳にしたとき、安堵の気持ちと共に、疑問の気持ちもあった。

何でこの場所がわかったんだろう。

現実、佐天の位置からでは上条の姿は確認できない。
声はすぐ近くから聞こえたのに、だ。
助けて、と言葉を出したかったが、口から吐き出されるのは嗚咽だけだった。

「あぁん? 誰だよ、お前」

「……離れろよ」

「聞こえねぇなぁ。小せえ声出してんじゃ――」

「そいつらから離れろっつってんだろっ!!」

彼は佐天たちが聞いた事もない程の大きな声で叫ぶ。
その突然の大声に武装無能力集団(スキルアウト)、そして佐天と初春も肩を震わせた。

しかし佐天はその声を聞いて、心の奥底では安心していた。

武装無能力集団(スキルアウト)に囲まれ、『精神系能力』の男に跨られ、救援もレベル0のたった一人の少年しか来ていないのにも拘わらず。

佐天は上条の言葉を聞いて、安心していた。

理由なんてわからない。理屈なんて説明できない。
それでも彼の言葉には大きな力がある事は確信できる。

その少年の言葉は、佐天の心を優しく包みこんだ。

227 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 38/55 - 2010/06/06 01:30:42.52 jovEjkQ0 39/57

――

そこへ武装無能力集団(スキルアウト)の一人が、得体の知れない人物に焦りを抱いたのか、手の平から卵のような火の玉を生み出した。
その火の玉は徐々に大きさを増していき、人間の頭のサイズにまで膨れ上がると、巨大化した火の玉を上条の声が聞こえた方向に向けて投げ出した。
巨大な火の玉は緩い虹のような孤を描き、上条の身体を襲った。

ボオオォォ!

一瞬、目の前が明るくくすんだオレンジ色に染まり、武装無能力集団(スキルアウト)の顔や体型などが露になる。
そこにはもちろん、上条当麻の姿もあった。
上条は特に身構えていなかった。
彼は右手を左肩辺りまで持っていき、火の玉が身体にぶつかるその瞬間、右手を迫る火の玉に向けて斜め下に一気に振り下ろす。

バシュゥンッ!

と、空気の切り裂くような音が鳴ると同時に、上条がいた地点を中心に火の粉が四方八方に飛び散った。

その結果、彼の周りの地面や壁の一部分が燃える。
燃えやすい雑誌などが近くにあったせいだろうか。
その光景は後火が残る火事現場のようだった。

火の玉の直撃を喰らった上条は、まだ部分的に燃えている地面の中心にいた。
普通に喰らっていれば彼の身体は炎に包まれて地面に崩れ落ちて、のた打ち回っているだろう。

だが、彼は悠然と立っていた。
それも、火傷一つなく。

228 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 39/55 - 2010/06/06 01:31:35.63 jovEjkQ0 40/57

上条を除く、その場にいた全員がその事実を見て、言葉を失い、固まった。
火の玉を投げた武装無能力集団(スキルアウト)はもちろん、佐天や初春もだ。
一体今何が起きた?、その一言が彼らの頭の中を反復していた。

一瞬の静寂の時間。
その時間を破ったのは、一人の少年の足音だった。

コツ、コツ。

足音はどんどん近づいてくる。
そして足音に連なるように、地鳴りのように低い、しかしハッキリとした声が響いた。

「もう一度だけ言うぞ。そいつらから離れろ」

武装無能力集団(スキルアウト)は、その上条の迫力に一瞬恐怖を感じる。
佐天に跨っていた『精神系能力』の男も畏怖したのか、佐天から離れて立ち上がり、標的を佐天から上条に変更した。

武装無能力集団(スキルアウト)の一人は上条の動きに警戒しながら言う。

「お前、何者だ?」

それに対し上条は苛立ったような口調で返す。

「何者かなんてどうだっていい。俺はテメエらがその子達を悲しませた事に怒ってんだよっ!」

「ほう、そうかい。でもオレ達はそれが目的なんだよ――なあッ!!」

人道的に最悪の答えを出したその男は、近くに落ちていたアルミ缶を拾い、それを上条に放り投げる。

229 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 40/55 - 2010/06/06 01:32:12.97 jovEjkQ0 41/57

――

ようやく身体を動かせるくらいには回復した初春は、その投げられたアルミ缶を見て、自分が今調べている一つの事件を思い出していた。

『虚空爆破(グラビトン)事件』

『量子変速(シンクロトロン)』の能力者がアルミを爆弾に変えて引き起こしていると言われている事件。

まさか、と思ったときにはもう遅い。
初春は上条に危険を知らせようとしたが、口からは口内の唾液しか出ない。
アルミ缶が若干妙な形にねじれ始めるのを見たとき、もう間に合わない! と反射的に目をつぶろうとする。

霞む視線の先には上条の姿があった。
彼はメキメキと音を立てながら近づいてくるアルミ缶を見ている。
常人なら『虚空爆破(グラビトン)事件』の事を知らなくても、変化を続けるアルミ缶が近づいてきたら、誰でも恐怖を感じて身を引くだろう。

そんな状況でも、上条の顔には焦りの表情一つすら浮かんでいなかった。

上条は芯だけ残った林檎のような形にまで変形したアルミ缶を、右手で掴み取る。

バシュゥンッ!

先程の火の玉のときと同じような音が、薄暗い路地裏に響き渡った。
その音はまるで空気の抜けていく風船みたいに、能力が一気に失われているような音だった。

アルミ缶は、爆弾からただのアルミ缶に戻った。

230 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 41/55 - 2010/06/06 01:32:45.61 jovEjkQ0 42/57

――

またも起きた不思議な現象に、武装無能力集団(スキルアウト)は何で爆発しないんだ、とやや動揺の色を見せる。

その動揺を待っていたかのように、上条はアルミ缶を投げた男に向かって勢いよく走り出す。

「うおおおおおおぉぉぉォォ!!」

動揺していた『量子変速(シンクロトロン)』の男は反応が遅れ、気づけば上条は既にその男の懐に潜り込んでいた。

「ッ!」

「おおおおああぁぁ!」

と、上条は叫びながら『量子変速(シンクロトロン)』の男の顔を、右手で(アルミ缶を握りながら)殴り飛ばした。

ゴキッ、という嫌な音がした。
殴られた男はほんの一瞬宙に浮いて、地面へと沈んだ。
その男はピクリとも動かない。

一連の動作を終えた上条は佐天たちのいる方へと顔を移し、言った。

「お前らは早く逃げろ!! ここは俺が食い止める!」

佐天は今までの出来事に呆然としていたので、何を言われたのかわからなかった。
でも、彼は助けに来てくれた。
それだけは理解する事はできた。
なので佐天はこう答える。

「え、あ、あの。一緒に逃げましょう」

その言葉に彼は佐天に背を向けたまま、武装無能力集団(スキルアウト)に目を向けたまま答える。

「そしたらコイツらは誰が止めるってんだ! 俺達が集まって逃げたっていずれ捕まっちまうだろ!」

上条はこの状況で狙われている人物が自分一人だったら、彼は迷わず逃げているだろう。
一人なら戦う、二人なら危ない、三人以上なら逃げる、というのが彼のモットーなのだ。

しかし現状は違う。
武装無能力集団(スキルアウト)の人数は七、八人。
そして狙われているのは上条に加えて、佐天と初春。
上条はこの二人を連れながら逃げ切ることは不可能だと、これまでの経験から推測していた。

それでも諦めきれないのか、佐天は食い下がった。

231 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 42/55 - 2010/06/06 01:33:18.68 jovEjkQ0 43/57

「で、でも、それじゃあ上条さんが――」

「俺の事なら大丈夫だ。そう簡単にはやられはしねえよ。だから、早く逃げろッ!!」

それでも彼は、後ろにいるであろう佐天に向かって、逃げろと叫んだ。

そのとき、僅かに冷静さを取り戻した武装無能力集団(スキルアウト)が、上条に向かって言う。

「ああぁぁ! お前が何者なのかとかもうどうでもいいわ! まずはお前からぶっ殺してやる」

「上等だコラ! テメエらなんて返り討ちにしてやる――よぉ!!」

そう叫び返すと同時に、上条は武装無能力集団(スキルアウト)の近くの一人に体当たりを仕掛ける。

ドムッ

と相手の鳩尾に向かって突っ込んだ上条は、相手の肉からそんな音が聞こえた気がした。

上条は体当たりを仕掛けた人物と共に地面に倒れこむ。
すぐさま起き上がり喰らわせた人物の意識が無いことを知ると、次の標的を探しながら状況の確認をする。

上条の周りには合計八人の武装無能力集団(スキルアウト)がいた。
その内二人は上条が上条が倒している。
つまり、残りの人数は六人。

正直、上条はこのケンカに勝てるとは思っていない。
佐天と初春が逃げたのを確認できたら、一目散に逃げる予定だ。
だからそのためにも、今は時間を稼がなくてはならない。

――ならないのだが、突然背後から背中に向けて鋭い衝撃が走った。

「ぐ……がああああああああぁぁぁぁァァぁぁ!!」

衝撃は後に激痛へと変わり、全身の力が瞬間的に失われる。
上条の身体は重力に身を任せるように、文字通り力なく地面へと倒れこんだ。

上条はナイフで刺されたのではないかと思った。
だが上条の身体からは血らしきものは出ていない。
やがて消えゆく意識の中で、こんな会話が聞こえた。

「くッハハハ! やっぱすげえな。お前の『肉体強化(ビルドアップ)』」

「まぁな。もうコイツはしばらく痛みで動けねえだろうよ」

「じゃあもうさっさとやる事やっちまおうぜ。オレ達の本来の目的を思い出してみろよ」

232 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 43/55 - 2010/06/06 01:33:53.77 jovEjkQ0 44/57

――

武装無能力集団(スキルアウト)はくるりと、身体を初春の方へと向けて近づきだした。

佐天はその光景にデジャヴを感じながらも、再び初春の前に立ち塞がった。
前は大の字になって立ち塞がったが、今は地に肩膝をつけ、腕もほとんど持ち上がらない。
それはこの緊迫した状況が長時間続いたため、心身共に衰弱しきっているからだろう。
そんな状態でも佐天は言う。

「言ったでしょ」

初春は絶対に護ってみせる。
そうさっき言ってしまった以上、守らないわけにはいかない。
だから佐天は再び言う。

「初春はあたしの親友だって! だから、絶対に手は出させないッ!!」

この気持ちは、この気持ちだけは、誰にも負けないと断言できる。
想いの中でも、この気持ちは絶対に負ける事は無いと断言できる。

――それでも、その想いは、たった一つの能力(チカラ)によって打ち崩される。

「いい加減邪魔だからどいてくんねぇかな?」

武装無能力集団(スキルアウト)の一人、先程上条を殴った『肉体強化(ビルドアップ)』の男が、そう口にした。
佐天は反応相手の言葉に反応使用としたが、その前に『肉体強化(ビルドアップ)』の男は佐天の頭を片手で掴む。
徐々に掴む力が大きくなり、グゥと呻き声を上げる佐天に構わず、その男はさらに力を加えた。
頭蓋骨を直接掴まれているような激痛に耐えていた佐天だったが

フッ

と、足元にあった感覚が無くなった。
何事かと思い足を精一杯伸ばしてみたが、スカスカと空回りしてどこにも引っ掛からない。

佐天は持ち上げられていた。いや、掴み上げられていた。
人間の片手の握力のみで頭だけを掴んで、彼女の身体を宙に浮かせている。

『肉体強化(ビルドアップ)』の男は掴み上げている佐天に向けて言う。

「もう、無能力者は黙って転がっていろよ」

そんな言葉を佐天は耳にした気がした。
気がした、というのはその『肉体強化(ビルドアップ)』の男が突然彼女の頭を離したからだ。
重力に従って落ちてくる佐天の身体に、その男が思い切り膝蹴りをする。

ゴスッ!

「ゴフああァァぁ!!」

233 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 44/55 - 2010/06/06 01:34:42.73 jovEjkQ0 45/57

脇腹辺りを蹴られた佐天は、体が再び空へと浮き、初春の傍の地面にグシャッと落ちた。

痛い。痛い。
息を吸いたいのに吸えない。
息を吐きたいのに吐けない。
人間として当たり前の事をしたいのに、それができない。

佐天は自身の力の無さに激しく絶望した。
自分は何も悪い事をしていないはずなのに、正しい事をしていたはずなのに。
自分の親友を護りたいと思っていただけなのに。

それは、たった一つの能力(チカラ)によってねじ伏せられた。

初春の下へ武装無能力集団(スキルアウト)が手を伸ばし始める。
佐天にはその手が、もはや悪魔の手などの表現では生温いと感じて見えた。
悪魔などではない、卑劣で傲慢で凶悪な人間の手だ。

佐天は初春の方へと目を向ける。
もう身体は動かせるようだったが、立ち上がれる程の力は無さそうだった。
今は膝を曲げてハの字に広げ、片手をお腹に添えて座り込んでいる。

初春の身体は震えていた。
それは恐怖によるものなのか、傷の痛みによるものなのか、佐天にはわからない。
でも、初春が苦しんでいるという事は佐天にもわかった。

――あたしに、初春を護れるだけの能力(チカラ)があったら。

――こんな奴らなんかに負けない、強い能力(チカラ)があったら。

そこで、初春の声が聞こえたような気がした。
佐天は初春の口元を目を細めて見る。
初春の口は僅かながらに動き、言葉を発する。
その言葉は耳では聞き取る事ができなかったが、口の動きから目で読み取る事ができた。

初春はこう言っていた。

(大丈夫ですよ、佐天さん)

234 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 45/55 - 2010/06/06 01:35:27.66 jovEjkQ0 46/57

――

初春の片手は彼女のお腹に添えられている。

しかし、もう片方は?

彼女のもう片方の手は佐天のいる位置からは見えなかったが、その手には携帯電話が握られていた。
携帯電話の液晶画面には通話中と表示されている。
通話相手は、何かあったらすぐに連絡を入れろ、と言っていたあの『風紀委員(ジャッジメント)』であった。



武装無能力集団(スキルアウト)の手は、初春のもう目と鼻の先まで迫っている。
佐天は自分の不甲斐なさに本気で憤っていた。

もう、駄目なのかと。

もう、奇跡なんて起きないのだろうかと。

後悔の気持ちばかりが佐天の心の中を埋め尽くしていった。
そこへ――

「そこまでですわ、貴方達」

凛とした女の声が聞こえた。
声の聞こえた方を見ると、そこには数日前に佐天が出会っていた少女が立っていた。
その少女は言う。

「風紀伊員(ジャッジメント)ですの。暴力未遂の現行犯により、拘束します!」

少女の格好は半袖の白いブラウスにサマーセーター、灰色のプリーツスカートという、あの有名な常盤台中学の制服姿だった。
髪型は茶髪のツインテール、そして右腕に風紀委員(ジャッジメント)の腕章を付けたその少女の名は、

「……し、白井さん?」

235 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 46/55 - 2010/06/06 01:35:59.28 jovEjkQ0 47/57

「もう大丈夫ですわよ佐天さん」

そう言って佐天に優しく微笑むと、白井は武装無能力集団(スキルアウト)の方へ向きを変え、そして言う。

「随分とわたくしの友人と同僚を可愛がってくれたようで」

武装無能力集団(スキルアウト)の『肉体強化(ビルドアップ)』の男はこう返す。

「あぁ。つっても、まだまだ本番はこれからなんだけどなあ」

その言葉を聞いて白井の身体は震えた。
それは相手に恐怖を感じたからではない。
友人を、同僚を傷つけられた、目の前の武装無能力集団(スキルアウト)への怒りによるものだった。

「……今はわたくし非常に機嫌が悪いので、手加減はできませんがよろしいですわよね?」

「ふん。できるもんならやってみや――」

『肉体強化(ビルドアップ)』の男は最後まで言葉を紡ぐ事は無かった。
男が言葉を発している間に、白井は空間移動(テレポート)で男の後方上空へと移動し、その男の後頭部に強烈なドロップキックをお見舞いしたからだ。

「が……ッ」

悲痛の声を上げた『肉体強化(ビルドアップ)』の男は蹴られた勢いのまま地面へうつ伏せに倒れこむ。

蹴り終えた白井は空中から落下しながら、地面に倒れている男の服めがけて、太ももに忍ばせてある鉄矢を空間移動(テレポート)させた。

キン、キン、キン!

白井の空間移動(テレポート)した鉄矢はその男の着ていた服を貫通し、地面のコンクリートすらも貫通した。
それでもその男の体内に鉄矢を直接空間移動(テレポート)させなかった。
それは白井の中にもまだ慈悲という心が残っているからだろう。
だが、

「大人しくしていてくださいまし。これ以上抵抗するのなら、本気で鉄矢を体内にぶち込みますわよ」

白井の限界は案外、ぎりぎりの所まできているのかもしれない。

「さて、次の相手はどなたですの?」

白井は指と指の間に鉄矢を挟みながら宣言した。

236 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 47/55 - 2010/06/06 01:37:10.74 jovEjkQ0 48/57

――

警備員(アンチスキル)が現場に到着したときには、白井が全ての武装無能力集団(スキルアウト)の拘束を完了させていた。
ほとんどの武装無能力集団(スキルアウト)は白井が片付けたのだが、全てではない。

武装無能力集団(スキルアウト)の内、二人程は白井が現場に到着したときには、既にのびていた。
どうやら白井よりも先に、今気絶し地面に倒れているツンツン頭の少年が助けに入ったらしい。
彼は見たところ外傷は無さそうだが、念のため病院に連れて行った方がいいかもしれない。
白井はそのツンツン頭の少年に手を触れて、路地裏から出るために空間移動(テレポート)しようとする。

しかし、何故か空間移動(テレポート)が発動しない。
その後に何度か空間移動(テレポート)を試してみたが、それでも能力が発動する事は無かった。

白井は何故発動しないのかあらゆる可能性について考察しようとしたが、やめた。
今日は初春から無駄に仕事を増やされていたので疲れているのだ。
先程の戦闘で集中力が乱れているせいなのかもしれない、と勝手に結論づける。

仕方がないので少年の肩を担いで路地裏から出ようする。
と、そこへとある女の警備員(アンチスキル)が白井にこう話しかけてきた。

「あれ? その少年、月詠センセのとこの生徒じゃん」

「ご存知なのですか?」

「あぁ。その少年は私が外まで連れていく」

白井はその女の警備員(アンチスキル)にツンツン頭の少年を任せると、次に佐天達の下へ向かった。

237 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 48/55 - 2010/06/06 01:38:10.50 jovEjkQ0 49/57

白井はまず佐天に話しかける。

「大丈夫でしたか? 佐天さん」

「え、あぁ。はい。何とか」

次いで初春に声をかける。

「初春も。怪我は大丈夫ですの?」

「はい。大丈夫です。……あの、白井さん」

「何ですの?」

「……えと、……その」

初春は何か言い淀んでいる様子だった。
その様子にやや怪訝な表情を顔に浮かべた白井だったが、初春は意を決したように言う。

「本当にすみませんでした。私が護衛すると言っておきながら、こんな結果になってしまって……」

何だ、そんな事か。
もちろんそんな思った事をそのまま口にしては、彼女との信頼関係にドーヴァー海峡並の深い溝ができてしまいそうなので、別の解答をする。

「まったく、本当ですの。だから初春は前衛戦闘には向いていないと言いましたのに……」

「…………」

「……まぁ。貴女が無事で何よりですわ初春」

「白井さん……」

「人には向き不向きというものがありますの。貴女はわたくしにできない事をやりなさい。その代わり、わたくしは貴女にできない事をやってさしあげますの」

「……はい。ありがとうございます。白井さん」

白井は初春の元気付けを終えた所で、ふとある事に気づいた。

「そういえば、佐天さんはどちらに行ってしまわれたのでしょう?」

「あれ? さっきまで一緒にいたはずなのに……。佐天さーん?」

238 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 49/55 - 2010/06/06 01:38:53.86 jovEjkQ0 50/57

――

佐天は少し前まで白井と初春と一緒にいたが、何だか居づらい空気になってしまったために、彼女は路地裏から外に出ていた。

そこでまず目にしたのは、警備員(アンチスキル)が彼らの護送車に武装無能力集団(スキルアウト)を乗せている所だった。
その護送車の近くで、あの少年が女の警備員(アンチスキル)の一人と話している。

というより、若干少年の方が何かを訴えているような感じだ。

佐天は護送車の陰に隠れて会話を聞いてみる。

「いやだから何で俺まで警備員(アンチスキル)と一緒に行かなきゃならないんだよ」

「そんな事言ってとぼけてもダメじゃん。お前が武装無能力集団(スキルアウト)を殴った事はもう裏が取れている」

「それは被害者と思われた女の子を助けるために仕方なく――」

「それもわかってるじゃんよ。でも少年は一般人じゃんか、まずは事情を知るためにも私と一緒に来てもらう」

助けてくれた彼がヤバそうな雰囲気になっていたので、助け舟を出そうと佐天はその会話に口を挟む。

「あ、あの」

「ん、何だ? 君は確か被害者の女の子じゃんか。怪我は大丈夫だったか?」

「はい、もう大丈夫です。あの、上条さんはあたしと初春を助けようとしただけで、その、何も悪い事はしてないんです。だから――」

佐天は必死に上条を守れるような言葉を模索しながら話そうとするが、上手く声に出ない。
しどろもどろな口調になり、それが焦りを生み、脳の回転を鈍らせる。
そんな佐天の様子を見ていた女の警備員(アンチスキル)は、

「ぶっ、あっはっはっはっは!!」

何故か、大声で笑い出した。

予想外の行動を取られてポカンと呆気に取られていると、女の警備員(アンチスキル)はやがて落ち着いたのか佐天に言う。

「いやー悪い悪い! 別に私はこの少年をどうにかしようって思っている訳じゃないじゃん」

「え、じゃあ何で……」

「うーん、そうだなー」

239 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 50/55 - 2010/06/06 01:39:46.78 jovEjkQ0 51/57

女の警備員(アンチスキル)はどうしようかなー、と言った様子で上条と佐天を交互に見て、決心したのかよしと呟いて言った。

「私は今回の立役者である少年から今日の武勇伝を聞こうと思っただけじゃん♪」

……何だそれ?
話の内容がイマイチ理解できない佐天だったが、その言葉に上条はすぐに反撃した。

「うおおおおおい! アンタそれは職権乱用じゃないのか!!」

「何を言ってるじゃん少年。私は面白い馬鹿を可愛がるのが好きなだけなんだけど」

「それ答えになってないですよね!?」

「まぁまぁ、落ち着くじゃん。ところで少年、君はこの買い物袋に見覚えはあるかな?」

と女の警備員(アンチスキル)はどこから取り出したのか、佐天もどこかで見た事のあるような買い物袋を上条の前にかざした。
佐天がそれが何か思い出す前に、目の前に突きつけられた上条は瞬時に反応する。

「そ、それは俺の買い物袋!」

「やっぱり少年のだったか。中身はまだ確認していないが――」

「ちょ、返してください! その中には俺の今日と明日を生き抜くための卵が入ってるんです!!」

バッとひったくるように女の警備員(アンチスキル)から買い物袋を受け取る上条。
そういえば佐天と初春は御一人様一パックの卵のために一緒に並ぶ約束だったのだが、こんな事態になってしまったので約束を果たせていない。
それでも上条の言葉から推測するに誰か知り合いでも見つけて買う事ができたのだろう、と佐天は思いながら心の中に生まれた罪悪感を振り払っていると、

「ああああああああああああぁぁぁぁぁァァァァあああっ!!」

「「ッ!?」」

突然の上条の叫び声に身体を跳ねらせて驚く佐天と女の警備員(アンチスキル)。
何事かと思い、佐天は上条に声をかける。

「ど、どうかしたんですか上条さん?」

「…………た、たま……ご……が」

「はい?」

佐天は何かあったのだろうかと思い、上条に買い物袋の中身を見せてもらう。

「うわ……」

240 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 51/55 - 2010/06/06 01:40:41.65 jovEjkQ0 52/57

そこには、スーパーの袋の中に収められていた卵と、初春の髪飾りにあったような造花が入っていた。
だが、卵は殻の中に入っている状態ではなく、一つ残らず割れていて、それはもう言葉には表せない悲惨な状態である。
横から覗いてきた女の警備員(アンチスキル)も、これは……ドンマイじゃん、と彼女にしてはかなり低いトーンの声だ。

不幸だ……、と土下座の格好をしながら呟く上条に、女の警備員(アンチスキル)がいたたまれなく思ったのか声をかける。

「ま、まぁ、少年。こんな事も一年にニ、三回はあるもんじゃんか」

「……ふ、ふふふ。年に二、三回、ねえ。…………」

「……そ、そうだ! 私と一緒にきてくれたら今日は少年に御馳走してやるじゃん!」

「! ほ、本当ですか、黄泉川先生!?」

先程までのどんよりテンションはどこへ行ったのか、上条は一気に身体を起こして黄泉川と呼んだ女の警備員(アンチスキル)に確認を取る。

「もちろんだ。今日は少年の武勇伝を肴にして一緒に盛り上がろうじゃんよ!」

「あぁ、上条さんには黄泉川先生が女神に見えます……」

話がどんどん進んでいく中で佐天は少し蚊帳の外にいた。
何故なら上条は佐天の全く知らない人物と親しげに何かを話していたからだ。
そのため話の内容が掴めなかったので、会話の中に入る事ができなかったのである。
しかし上条が女の警備員(アンチスキル)の事を『黄泉川先生』と言っていたため、彼女は上条の学校の先生なのだと知る事ができた。

おかげでようやく今までの二人の関係性による会話の意味を理解した佐天に、上条が声をかけてきた。

「佐天はもう大丈夫か?」

「あ、はい! もう大丈夫です。あの、今日は本当にありがとうございました」

「いんや、俺は感謝されるような事はしてないよ。ほとんど何もできなかったしな」

「……でも、来てくれたときは本当に嬉しかったです」

「佐天達が無事で俺も嬉しかったよ。俺はこれから先生とメシ食べに行くから、ここでさよならだな」

えっ、と佐天は突然の別れの言葉にやや戸惑いの表情を作る。
頭の中がパニック状態になり、言葉を口に出す事ができないでいると、女の警備員(アンチスキル)が上条の言葉に違和感を覚えたのか彼に追求する。

241 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 52/55 - 2010/06/06 01:41:48.48 jovEjkQ0 53/57

「おい少年。メシを奢るとは言ったが、何もこれからと言った覚えはないじゃんよ」

「えっ!? いやだって一緒についていったら――」

「その前に私は警備員(アンチスキル)としての仕事をしなければならないんだ。そこら辺の事情は察して欲しいじゃん?」

「……ふ、不幸だ」

もう彼が行ってしまう。
何か話しかけなくては、と佐天はたった今思いついた話題を上条に持ちかける。

「あの、上条さん」

「ん、何だ?」

「あたし約束破っちゃいましたね」

「今回の事は仕方がないだろ。まぁ、卵はぐちゃぐちゃになっちまったけどな……」

「じゃあ今回のお礼も兼ねて、またあたしが一緒について行きますよ!」

彼とはまだ離れたくない。
気になっている、という点もあながち間違いではないのだが、佐天はそれ以上に今回の件について迷惑をかけてしまったと罪悪感を抱いているのだ。
それでも彼はある意味予想通りの答えを返してきた。

「いや、今日はきてくれただけでも助かったし、これ以上俺の不幸が佐天に迷惑をかけるのもあれだしな」

「あたしは大丈夫ですよ! だから上条さん――」

そこへいつの間にか警備員(アンチスキル)の高速車両に乗り込んでいた女の警備員(アンチスキル)が、急かすような口で上条に話しかける。

「少年。そろそろ行くじゃんよ。早く乗ってくれ」

「あぁ。わかった」

そう上条は彼女に返すと、佐天の方へと向き直して言った。

「じゃあまたな佐天。初春にもよろしく言っておいてくれよなー!」

「え、あ……」

上条は軽く手を振りながら、女の警備員(アンチスキル)が乗っている高速車両の中へと姿を消す。
そして数秒の間もなく上条の乗った高速車両は発進し、あっという間に見えなくなってしまった。

242 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 53/55 - 2010/06/06 01:42:45.78 jovEjkQ0 54/57

――

あまりの別れの速さに呆然としていると、背後から親友の声が聞こえてきた。

「あー佐天さん、いつの間に路地裏から出ていたんですか」

佐天は声をかけられた事に気づくと、慌てて平静を装いながら答える。

「い、いやー何だかさっきの空間に風紀伊員(ジャッジメント)じゃないあたしがいたら邪魔かなー、なんて」

「そんな事ありませんよ。ねえ、白井さん?」

「そうですわよ。それに佐天さんは怪我人なのですから、あまり歩き回らない方がよろしいかと」

「あ、あははは。あたしはもう大丈夫ですよ! ほら、この通り!」

と言うと、佐天はくるりと横に一回転し、身体の無事をアピールする。
それでも初春は心配そうな顔つきで言う。

「本当に大丈夫ですか佐天さん。無理はしないでくださいよ?」

「だいじょーぶだいじょーぶ。それより初春の方こそどうなのさ」

その質問は初春の代わりに白井が答える。

「初春はお腹に違和感を感じているそうですので、わたくしと共にこれから病院に向かいますわ」

「そうですか……」

白井の言葉に続き、初春が提案をする。

「佐天さんも一応検査を受けた方が良いですよ。後になって後遺症が残ったりしたら大変ですから」

白井も初春の言葉に賛成し佐天に言う。

「ええ。万が一、という事があるかもわかりませんので。佐天さんも一緒に行きましょう」

佐天は少しやりたい事があったが、初春の事も心配だったので、初春と白井の提案にわかったと同意する。

その言葉を聞くと白井は佐天と初春の肩に手を置いて、こう言った。

「それでは参りましょう。私の空間移動(テレポート)を使えば一瞬ですわよ」

243 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 54/55 - 2010/06/06 01:43:39.56 jovEjkQ0 55/57

――

佐天は今、柵川中学の女子寮の自分の部屋にいる。

あの後、初春と一緒に検査を受けたが内臓等に損傷は無く、打撲という事だけで済んだ。
これは運が良かったのか悪かったのかわからないが、今日起きた出来事に関しては間違いなく悪いと言い切れる。
佐天と初春は大事に至る事も無かったので、軽い治療を受けた後に白井に空間移動(テレポート)でこの女子寮まで送ってもらった。

今、初春は自室で休んでいる。

しかし佐天にはやる事があったので、休んでいる訳にはいかなかった。


――あたしにも能力(チカラ)が欲しい。


初春はその能力(チカラ)によって傷つけられた。
佐天は初春が傷つけられているとき、見ている事しかできなかった。


――あたしにも初春を護る能力(チカラ)が欲しい。


途中に助けにきてくれた彼もレベル0とは言っていたが、火の玉を右手一本で消し去っていた。
特殊な能力だろうが何だろうが、少なくともそれは佐天と初春を助けた能力(チカラ)であった。


――あたしにも初春を助けられるだけの能力(チカラ)が欲しい。


白井は武装無能力集団(スキルアウト)をあっと言う間に拘束した。
それに加えて空間移動(テレポート)という能力(チカラ)を使い、一瞬で佐天と初春を病院まで連れて行った。


――あたしにも初春を救えるだけの能力(チカラ)が欲しい。


とにかく、佐天は能力(チカラ)が欲しかった。

244 : 佐天「……幻想御手(レベルアッパー)?」 55/55 - 2010/06/06 01:44:16.63 jovEjkQ0 56/57

佐天はパソコンを起動し、ネットで能力レベルを上げる情報を調べる。
もちろん佐天にだってどうすればレベルが上がるかなんてわかっている。
それぞれの能力に合った時間割り(カリキュラム)をこなし、日々努力すればレベルは上がる、と。

でもそれは、能力が発現していなければ意味がない。

佐天涙子は能力が発現していない。
だから今はどんな情報でもいい、レベルを上げるヒントになる事なら何でもいい。

佐天はレベルを上げる方法についての情報があるリンクを片っ端から開いた。
そしてパソコンの画面上に浮かぶ文字や絵図を流しながらどんどん読み進める。
役に立ちそうな情報があればメモに取り、無ければすぐにそのウィンドウを閉じる。

そんな作業を続けて数十分後、気になる情報を見つける。
どこにでもありそうな掲示板のコメント欄の一つに、こう書いてあった。

“『――』を使っただけで、一気にレベルが上がっちまった(笑)”



「……幻想御手(レベルアッパー)?」

end.

245 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします - 2010/06/06 01:46:20.32 jovEjkQ0 57/57

以上です。
初SS製作で緊張しまくり……

書き始めた当初は、
佐天さんがスキルアウトに襲われる→上条さんがそげぶ→佐天×上条のいちゃいちゃを書こうと思っていたのに、どうしてこうなった。

スキルアウトの能力は大体レベル2~3相当です。
『肉体強化』の能力は能力名のまんま、筋力アップみたいなものです。
そいつの一撃喰らって打僕で済むのって疑問は、スキルアウトがまだ能力を扱いきれていないと脳内保管してください。

一応時系列と佐天さんがレベルアッパーを知った動機以外は、原作に矛盾が無いように作ったつもりなのですがいかがだったでしょうか?
指摘などをしてもらえると嬉しいです。

てか地の文難しすぎる……
上手くかける書き手さん尊敬します。

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