JUM(水銀燈かわいいよ…)
JUM(あの視線、あの仕草、あの口調…何もかもが大好きだ)
JUM(人形に恋してしまうなんて、僕はもう人としてお終いなのかも知れないな…)
JUM(それでもいい。水銀燈のためなら僕は…人間になんて相手にされなくてもいい)
JUM「はぁ…」
真紅「JUM。お茶を淹れてちょうだい」
JUM「はぁ…水銀燈…」ボソボソ
真紅「ねぇJUM、聞いているの?お茶を淹れてほしいのだわ」
JUM「…はぁ…ん?真紅?どうした、僕になんか用事か?」
真紅「…」
元スレ
JUM「水銀燈に惚れてしまった…」
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1226325774/
JUM「水銀燈に惚れてしまった…」
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1226502974/
真紅「まったく、ぼーっとしてないで早く紅茶を淹れてちょうだい」
JUM「あー…ごめん、今ちょっと…あとでいいか?」
真紅「…もう。じゃあ抱っこしてちょうだい」
JUM「うん、後でな。今勉強してるから…」
真紅「…あとでしなさい。必ずよ」
JUM「うん」
真紅「…」
JUM「はぁ…」
真紅「勉強…してないじゃないの…」ボソ
―――30分後
真紅「ねぇJUM。そろそろ紅茶を淹れて欲しいのだけど」
JUM「はぁ…」
真紅「JUM!」
JUM「え?」
真紅「もう30分もここで待っているのだわ。紅茶は淹れてくれないのかしら」
JUM「あ、ごめん。ぼーっとしてたよ。今淹れてくるから待ってろ」
真紅「私も降りるわ。一緒に…」
ガチャ
バタン
真紅「一緒に下に行く…って言ってるじゃないの…」
真紅「まぁいいわ。紅茶を淹れて上がってきたら一緒に話でもしましょう」
真紅「…」
真紅「…」
真紅「遅いのだわ…」
―――30分後
真紅「JUM…」
真紅「何しているのかしら?紅茶を淹れるのにそんなに時間がかかるなんて…本当に使えない家来だわ」
真紅「…きっともうすぐよ。もうすぐ美味しい紅茶を持って…」
ガチャ
真紅「ほら!JUM、遅いわ。何をしていた…の…」
雛苺「うゆ?真紅?どうしたのー?」
真紅「雛苺…」
真紅「雛苺。JUMを見なかったかしら」
雛「JUM?リビングでテレビ見てたのよ?」
真紅「…紅茶を淹れていなかった?」
雛「台所には行ってないと思うのー」
真紅「…そう」うる
雛「真紅?泣いてるの?お目目がうるうるしてるのよ?」
真紅「馬鹿を言いなさい。私が泣くわけがないでしょう。それよりもJUMがテレビを?何か用事をしていたのではなくて?」
雛「うん。降りてきてすぐにソファに座ったのよ」
真紅「そんなはずはないわ。…そうだわ、のりに急用を頼まれたとか」
雛「のりは部活で居ないの」
真紅「そう、だったわね」
真紅「なぜ?私が何かしたの?」ぽろ
雛苺「泣かないで真紅…どうしたの?」オロオロ
真紅「!」グイ
真紅「な、泣いてないって言ってるでしょう!このお馬鹿苺!」
雛苺「だって…真紅泣いてるのよ…ほら、ハンカチ貸してあげるからお袖で拭いちゃだめなの」
真紅「…泣いてないわよ…」
雛苺「…真紅?どうしたの?」
真紅「…JUMが……いいえ、なんでもないわ。下に降りるわよ雛苺」
雛苺「はいなのー…」
JUM「はぁ…水銀燈…。なんであんなに可愛いんだ…君のせいで僕は…」
JUM「…水銀燈…」
トテトテ
真紅「JUM!」
JUM「うわっ、びっくりした!真紅か。どうしたんだ?」
真紅「…どうしたんだ、じゃないわ。紅茶は?」
JUM「紅茶?」
真紅「紅茶を淹れてくれるって言ったじゃない!」
JUM「あ!ごめん、忘れてたよ。すぐ淹れる」スッ
真紅「ちょっと待ちなさい!あなたどうかしたの?」
JUM「…別にどうもしないよ。紅茶淹れるからそこで待ってろ」
真紅「…」
コポポポポ…
カチャ
JUM「はい紅茶。雛苺も飲むだろ?」
雛苺「はいなのー!」
真紅「ありがとう」
ズズ…
真紅「美味しいわ。ねぇJUM、紅茶を淹れるのがうまくなったわね」
JUM「…」ぼー
真紅「午後の一時をこうしてお茶しながら楽しく過ごす…素敵なことだと思わない?」
JUM「…」ぼー
雛苺「ひ、ヒナはそう思うのよ、辛苦!」
真紅「…そうよね、雛苺。素敵な時間だわ…」
JUM「…」ズズ…
真紅「ご馳走様。ねぇJUM、少し話をしたいのだけど」
JUM「うん?ああ、なんだ?」
真紅「黙って紅茶を飲んでも美味しくないでしょう?何かお話しましょう」
JUM「うん、そうだな。…なんかあるか?」
真紅「え、と、それじゃあ…そうだわ、勉強は進んでいるのかしら?」
JUM「うーん…ぼちぼちかな。あんまりはかどってるとは言えないな」
真紅「まぁ。どうして?」
JUM「最近考え事があってさ。ま、たいしたことじゃないんだけど」
真紅「私でよければ相談に乗るわ」
JUM「いや…良いんだ。本当にたいしたことじゃないから」
真紅「そう…」
真紅「…そう。なら聞かないわ。でも元気を出してちょうだい」
JUM「うん…ありがとう」
真紅「…」ニコ
JUM「…最近さ、水銀燈来ないよな」
真紅「そうね。おかげ様で静かなのだわ」
JUM「次、いつ来るかな」
真紅「あら、水銀燈が居ないとさびしい?」
JUM「ば、ばか!毎度襲われるのにさびしいわけないだろ!」
真紅「ふふ、冗談よ」
雛苺「…?」
雛苺(今のJUMの反応…翠星石の癖にそっくりなの)
雛苺(核心をつかれると慌てて言い返す…もしかして、JUMは本当に寂しいのかもしれないの)
雛苺(もしそうなら…真紅がかわいそうなのよ…)
真紅「うふふ…ねぇJUM。さっきの約束を忘れてたわ。抱っこ」
JUM「抱っこ?珍しく甘えるなぁ。どうしたんだよ」
真紅「別になんでもないのだわ。お人形に抱っこはつきものよ。さぁ」
JUM「そんなもんか?」ヒョイ
真紅「クス…そんなものよ」ぎゅ
JUM「…」
真紅「ふふ…あったかいのだわ」
JUM(水銀燈をこんな風に抱っこできたらなぁ…)
JUM「ん?雛苺は抱っこいいのか?」
雛苺「うゆ…雛苺はいいのよ。真紅にゆずるの」
真紅「あら雛苺、遠慮しなくていいのよ」
JUM「お前が言うな。…ま、雛苺もして欲しいなら言えよ?」
雛苺「ありがとうなの!」
雛苺(真紅のあの幸せそうな顔見ると、邪魔なんてできないのよ…)
ガッシャーン!!
JUM「!」
真紅「!」
雛苺「…こんな時に、水銀燈なの…!?」
バサバサ
スタッ
水銀燈「お久しぶりぃ。ローザミスティカ…いただきに来たわよ」クスクス
JUM「あ…」
真紅「水銀燈…!!」
水銀燈「あら真紅ぅ。ミーディアムの膝の上で抱かれてるなんて…しばらく会わないうちに平和ボケしたんじゃない?」
真紅「なんですって…」
JUM(まずい…)ヒョイ
真紅「え…」
真紅「JUM?いきなり下ろすなんてどういうつもり?」
JUM「え…いや…」
水銀燈「クスクス…ミーディアムも嫌々抱っこしてたんじゃない?無様ね真紅」
真紅「何を…!ローズテイル!」シュバ
水銀燈「ふん…こんなの避ける必要もないわ」ポト
水銀燈「あなたどうしたのぉ?まさか本当に平和ボケで弱くなっちゃったんじゃない?」
真紅「そんな…ばかな事が…」
JUM(ごめん真紅…水銀燈を傷つけてほしくないんだ…)
水銀燈「興ざめねぇ。帰るわぁ」
JUM「な…ちょっと待てよ!」
雛苺・真紅「!?」
水銀燈「は?なによ。人間の分際で私を呼び止めるなんて」
JUM「あ…」
JUM(…緊張して話せない…)
水銀燈「…ふん。時間の無駄だったわぁ」
バサバサ…
JUM「水銀燈…」
真紅「…どうして…本当に私が弱くなったというの…?」
雛苺(違うのよ…)
雛苺(JUMはきっと無意識に真紅に力を与えるのを拒否したの…)
雛苺(…真紅、このままだといつか水銀燈にやられちゃうのよ…)
雛苺(JUM…真紅…どうしたらいいの…?)
真紅「…ごめんなさいJUM。窓を直すわね」
JUM「え?あ、うん」
真紅「…せっかくのブレイクタイムが台無しなのだわ…」
雛苺「真紅…」
JUM「…」
JUM「ごめん、僕は上に上がってるよ」
真紅「私も」
JUM「ん?」
真紅「私も…窓を直したら一緒に行くわ」
JUM「ごめん…しばらく一人になりたいんだ」
真紅「…」
真紅「…私…どうしちゃったのかしら…どうしてこんなに力が出ないの…」
雛苺「真紅が悪いんじゃないのよ…気にしないで」
真紅「でも!こんな状態で次水銀燈が襲ってきたら…!」
真紅「私はきっと負ける…!そしてローザミスティカもなくなって…JUMとも一緒に居られなく…」
雛苺「…」
真紅「…っ!!」
真紅「…今のは聞かなかったことにしなさい」
雛苺「わかってるの…」
真紅「どうしたら私の力は元に戻るのかしら…」
雛苺「うゆー…きっとJUMの調子が悪いからなのよ!JUMが元気になればきっと真紅も元に戻るの!」
真紅「そ、そうかも知れないわね。そうと決まったらJUMを元気付けないと!」
雛苺「そうなのよ!真紅、あいとー!なの!」
JUM「僕は…どうすれば良いんだ」
JUM「真紅は僕がしっかりしないと戦えないのに…」
JUM「でも僕は…水銀燈を傷つけて欲しくない」
JUM「戦いは避けられない…どうしたら…」
JUM「はぁ…水銀燈…」
コンコン
JUM「…真紅か?悪いけど一人にしてくれって…」
真紅『JUM…あの、私、紅茶を淹れたの。よかったら一緒にと思って…』
JUM「…ごめん。そんな気分じゃない」
真紅『…そう。私は下にいるから飲みたくなったら声をかけなさい』
JUM「うん。ありがとう…」
真紅『ええ。じゃあ下に降りるわ』
トタトタ
JUM「なにやってんだ僕は…!真紅は気を遣ってくれてるのに…」
JUM「真紅に辛く当たっても仕方ないじゃないか…」
雛苺「おかえりなさい!どうだったの?」
真紅「やっぱりだめだったわ。でも根気よく行かないとね」
雛苺「真紅、あいとー!ヒナは応援してるのよ!」
真紅「ありがとう。でも、JUMがああなってしまった原因はなんなのかしら…」
雛苺「うゆ…」
真紅「最近ずっと考え事をしてるみたいだし。雛苺、何か知らない?」
雛苺「ヒナにも…わかんないのよ…」
真紅「そう…」
トタトタ
真紅「!」
雛苺「JUMが降りてきたのよ!ほら真紅、あいとなの!」
真紅「ええ」
トタトタ
真紅「JUM!紅茶を飲む気になったかしら?」
JUM「うん。一杯いただくよ」
真紅「ええ、ちょっと待っていなさい。すぐに淹れてくるわ」スト
コポポポ…
JUM「ふぅ…」
雛苺「ねぇJUM。元気出してなの」
JUM「雛苺…」
雛苺「JUMが元気なくて、真紅はとっても心配してるのよ」
JUM「うん、わかってる。わかってるんだけどな」
雛苺「真紅が紅茶を淹れてくれるなんてめったにないの。好意を無駄にしちゃだめなのよ?」
JUM「そうだな。ありがとう雛苺」ニコ
雛苺「JUMが何で悩んでるかはわかんないけど、真紅もヒナもJUMの味方なの」
JUM「…うん」
カチャ
真紅「はい、JUM。淹れてあげたわ。冷めないうちに飲みなさい。雛苺も」
雛苺「はいなのー!」
ズズ…
JUM「なぁ真紅。水銀燈と戦うのは…もうやめることはできないか」
真紅「それは…私だって戦いたくはないわ。でもアリスを目指すのは私たちの宿命。避けられないわ」
JUM「…そうだよな。ごめん、大人げないこと聞いちゃったな」
真紅「…JUMが悩んでいるのはそのこと?」
JUM「…まぁ、そうかな」
真紅「アリスになれるのは一人だけ…いつか私も、JUMと別れなければいけない時が来るかもしれない」
JUM「そうだな」
真紅「でも私、がんばるわ。水銀燈にも勝って、きっと…」
JUM「…」
のり「ただいまー」
雛苺「あ、のりー!おかえりなさいなのー!」
真紅「おかえりなさい」
のり「ごめんねぇ遅くなって。すぐご飯にするからね」
雛苺「ねぇ今日のご飯は?花丸?ねぇ花丸?」
のり「うふふ、そうよ。賢くお留守番できたご褒美ね」
雛苺「うわぁーいなのー!」
真紅「のり、私も作らせて」
のり「え?」
真紅「私も手伝いたいの。いいでしょう?」
のり「ええ、いいわよ。一緒に作りましょう」
真紅(手料理を食べてもらって、JUMに少しでも元気になってもらえれば…)
雛苺「真紅…がんばるの!」
のり「真紅ちゃん、そこのお塩振ってくれる?」
真紅「こう?」フリフリ
のり「そうよ。あ、もういいわぁ。じゃあそのフライパンで焼きましょう」
真紅「…届かないのだわ。のり、椅子を取ってちょうだい」
のり「はい」スッ
真紅「ん…」よじよじ
ボッ
ジュウウ
真紅「ふぅ…難しいのだわ…」
ジュッ
真紅「きゃっ!」
のり「あらあら。火傷しちゃったの?大丈夫?氷で冷やしましょうね」
真紅「…待って。これくらい大丈夫なのだわ。これは最後まで焼かせてちょうだい」
のり「あらあら。じゃあそれはJUM君のね」ニコ
真紅「なっ…!!」
のり「うふふ。きっと喜んでくれるわよ」
真紅「…そうかしら」
のり「きっとそうよ。こんなにがんばってるんだもの」
真紅「…でも、美味しくできたかわからないわ」
のり「美味しいに決まってるわよぉ。はい、出来上がりね。あとは卵をのせて…」
真紅「あ!それも私がやるわ!」
のり「そう?じゃあお願いするわね」
真紅「…」そ~…
のり「…」クス
真紅「?どうしたののり?」
のり「ううん。真紅ちゃんは良いお嫁さんになりそうだと思って」
真紅「…!」
のり「もうJUM君のお嫁さんになって欲しいくらいだわぁ」ニコニコ
真紅「ば、バカな事を言わないで。さぁ出来たのだわ。JUMを呼んできてちょうだい」
のり「うふふ、せっかちさんなのね。でも真紅ちゃん、まだJUM君のしか終わってないわよぅ?」
真紅「!」
のり「残りは私が仕上げとくから、真紅ちゃんはJUM君呼んできてくれる?」
真紅「ええ、わかったわ」スト
コンコン
真紅「JUM、ご飯が出来たわ。下に降りましょう」
JUM『…もう少ししたら行くよ』
真紅「…みんなで一緒に食べましょう?」
JUM『うん。今行くから』
真紅「…わかったわ。下で待ってるから早く降りていらっしゃい」
JUM『うん、ありがと』
真紅「…」
トテトテ
真紅(抱っこして一緒に降りて欲しかったのだわ…)
真紅(でも今は我慢。JUMが元気になるまでは甘えてられないわ)
雛苺「JUMのハンバーグおっきぃのー…ヒナの倍くらいあるのよ…」
真紅「そ、そうかしら?気のせいではなくて?」
のり「うふふ、今日は我慢してあげてねヒナちゃん。じゃあ食べましょうか」
雛苺「いただきまーすなのー!」
のり「いただきます」
真紅「…」
のり「あら?真紅ちゃん食べないの?」
真紅「JUMを待つのだわ。もう少ししたら降りるって言っていたから」
のり「そう。じゃあ私も待ってるわぁ」
雛苺「ヒナも待つの!」
真紅「JUM、早く降りてこないかしら」
JUM「…ご飯か。そろそろ降りよう」
トタ
トタ
雛苺「あ!JUM下りて来たのよ!」
真紅「まったく。遅いのだわJUM。早く食べるわよ」
のり「あらあら」クス
JUM「ん…いただきます。あ?」
JUM「な、なんか僕のハンバーグでかくないか?」
真紅「そうかしら?気のせいよ。早く食べなさい」
JUM「うーん…こんなに食べられないと思うけどなぁ…」
真紅「…」
モキュモキュ
もぐもぐ
真紅「…」じー
JUM「うん?どうした真紅?」
真紅「どうかしら?」
JUM「どう?」
雛苺「今日のJUMのハンバーグはねぇ、真紅の手づくりなのよ!」
真紅「…私がわざわざ作ってあげたのよ。感謝して食べなさい。美味しいかはわからないけど…」
JUM「真紅…」
JUM(…真紅、そこまで気を遣ってくれたのか…)
JUM「うん、美味しいよ真紅。ありがとうな」
真紅「…!」ぱぁっ
JUM(好意を無駄にしちゃいけない、か)
JUM(そうだよな…ちょっとしょっぱいけど…。ん?)
JUM「真紅、その指どうしたんだ?」
真紅「これは…」サッ
のり「真紅ちゃん、料理してる時にやけどしちゃったのよぅ…」
JUM「真紅…」
真紅「こ、このくらいなんともないのだわ。早く食べなさいJUM」
JUM「…」ふっ
もぐもぐ
JUM「ふぅ…ごちそうさま」
JUM(もう食べられない…腹いっぱいだ…)
真紅「もういいの?」
JUM「あ、ああ…もう腹いっぱい…」
真紅「もし足りなかったら私のも食べていいのよ」サッ
JUM「う…」
真紅「最近元気ないでしょう?しっかり食べて元気を出しなさい」
JUM「いや、もう十分…」
真紅「そう…」シュン
雛苺(真紅子供みたいなの…)
JUM「じゃあ僕は部屋に行くよ」
真紅「…私も」
JUM「うん、一緒に行くか。ほら」
真紅「え?」
JUM「抱っこだろ?最近ちゃんとしてあげてなかったから…ほら」
真紅「JUM…!」ヒョイ
トタ トタ トタ
雛苺「JUM、喜んでくれたみたいでよかったの!」
のり「ふふ、本当ねぇ。真紅ちゃんもうれしそうだったわぁ」
のり「それにしても、JUM君はどうして元気なかったのかしらねぇ。お姉ちゃん心配…」
雛苺「…JUMね…水銀燈っていうドールの事が好きみたいなのよ」
のり「え…そうなの?」
雛苺「きっと真紅は気付いてないけど…」
のり「そう…でもこればっかりはしょうがないわね。JUM君の気持ちの問題だし…」
雛苺「なのよ。でもヒナは真紅を応援するの!」
のり「そうね。真紅ちゃんあんなに頑張ってるんだもんね。きっとJUM君も振り向いてくれるわぁ」
真紅「ねぇJUM。少しは元気になったかしら」
JUM「うん。気を遣ってくれてありがとう」
真紅「礼には及ばないのだわ」ニコ
JUM「…」
JUM(それでも僕は…水銀燈の事が…)
JUM(久しぶりに見た水銀燈…綺麗だったなぁ)
JUM(僕がもし水銀燈のミーディアムだったら…)
JUM(なにも迷う事なく、力を差し出せるのに)
真紅「JUM」
JUM(…何を言ってるんだ、僕は真紅のミーディアムだぞ)
JUM(こんな妄想をするだけでも、真紅に失礼だ…)
真紅「ねぇ」
JUM「…はぁ」
JUM「もう寝るよ…」
真紅「え」
JUM「なんか疲れた…おやすみ真紅」
真紅「お…おやすみなさい」
JUM「はぁ…」がばっ
真紅「…本当に寝るの?もう少し話を…」
JUM「ん?なに、真紅?」
真紅「いいえ、なんでもないのだわ。おやすみなさい…」
トテトテ
ガチャ
雛苺「うよ?」
真紅「…」
雛苺「JUMもう寝ちゃったのね」
真紅「…」
雛苺「でもでも!真紅のハンバーグ、JUM喜んでたのよ!よかったね真紅!」
雛苺「…真紅…泣いてるの?」
真紅「…泣いてないわよ」
雛苺「真紅…」
真紅「…雛苺。JUMは私のミーディアムよ」
雛苺「そうなの」
真紅「…私に…JUMのお人形の資格なんてあるのかしら」
雛苺「何言ってるの!あるに決まってるのよ!JUMは正真正銘真紅のミーディアムなの!」
真紅「私は…JUMが悩んでいても元気づけることもできない」
雛苺「そんなことないの。真紅の作った料理、JUM喜んでたのよ?」
真紅「…雛苺。本当は知っているんでしょう?JUMの悩んでいる理由を」
雛苺「うゆ…」
真紅「隠さないでいいわ。さっき、少しだけJUMの心が見えたから」
雛苺「…真紅」
真紅「私はJUMに愛されない…愛されないお人形なんて…」うる
雛苺「泣かないで真紅…」
真紅「…持ち主に愛されないお人形なんて…いらないわよね…」うる…
雛苺「そんなこと…」
真紅「それどころか…JUMが悩んでいた原因は私なのよ」ぽろっ
真紅「みじめだわ…」ぽろぽろ
雛苺「どうしてあきらめるの!」
真紅「…あきらめた…ヒグ…わけじゃないわよぉ…!でも…仕方ないじゃないっ…」ぽろぽろ
雛苺「じゃあどうしてそんな事言うの?」
真紅「JUMが誰を好きになっても…う…わ、私にはどうしようもないのだわ!」ぽろぽろ
真紅「私だって…私だってJUMのことが好きなのに…!愛してほしいのにぃ…」
雛苺「まだ終わったわけじゃないのよ真紅」
真紅「でも…私が弱くなった理由もそれが原因で…」
雛苺「じゃあ今からでも、JUMに好きになってもらえばいいのよ!」
真紅「…今から…」
雛苺「そうなの。きっとがんばれば、JUMも真紅の事を好きになるのよ!」
真紅「…」
雛苺「ほら、もう泣かないのよ真紅。泣いてもはじまらないの」
真紅「…ええ。ごめんなさい」
雛苺「泣いてちゃJUMに恥ずかしいのよ?」
真紅「…雛苺に説教されるなんて不本意だわ」グイ
雛苺「むぅー。でもその意気なのよ真紅!あいと!」
真紅「ええ。ありがとう雛苺。さすが私の家来なのだわ」
真紅「でも具体的にどんなことをすればいいのかしら…悔しいけれどJUMは水銀燈の事を本気で想っているわ」
雛苺「…うゆ。でもでも!JUMのために尽くせばきっとうまくいくの!」
真紅「そうね…。いつも世話になったから、明日からはJUMのために尽くしてみせるわ」
雛苺「そうなの!男は尽くす女に弱いのよー」ニコ
真紅「明日から私は生まれ変わるのだわ。明日から本気だす!」
雛苺「うふふ!真紅が元気になってヒナもうれしいの!」
真紅「じゃあ今日はもう寝ましょう。明日からは朝が早いわよ」
雛苺「はいなのー。おやすみなさい」
真紅「ええ。おやすみなさい」
バタン
カチャカチャ
雛苺「うゆ…?」
雛苺「こんな時間にかばんの外から物音がするの…」
雛苺「うー…目が冴えちゃったのよ」
ガチャ
真紅「あら、雛苺。起こしてしまったみたいね」
雛苺「真紅ぅ?」ゴシゴシ
雛苺「まだ4時半なのよー…何してるの…?」
真紅「お掃除よ。雛苺は寝てていいわ」
雛苺「おそうじ?こんな時間から?」
真紅「そうよ。JUMが目覚めたときに部屋がきれいなら気持ちいいでしょう?」ニコ
雛苺「…本当に生まれ変わったみたいなの」
雛苺「ヒナも手伝うのー!」
真紅「しーっ」ぴと
雛苺「うゆ?」
真紅「大きな声で話してはダメよ。JUMが起きてしまったらどうするの」
雛苺「うゆー…ごめんなさいなの。起きたときに部屋を綺麗にしといてびっくりさせるのね?」
真紅「え?」
雛苺「ちがうの?」
真紅「そんなつもりはなかったわ…ただJUMが起きたらかわいそうだと思って…」
雛苺「真紅すごいの…心から尽くす女になっちゃってるのよ…」
真紅「んしょ…」ごしごし
雛苺「はい真紅、雑巾もってきたのよ」
真紅「ありがとう。そのバケツの水を絞ってちょうだい」
雛苺「んにゅー…」ぎゅうう
雛苺「はいなの!」ぽとぽと
真紅「もう、ぜんぜん絞れてないじゃないの。まぁいいわ。これで…」ぽたぽた
真紅「JUMが大切にしているPCを拭いてあげるのだわ」
ごしごし
真紅「このボタンがいっぱい付いている台も埃まみれね…」ぽたぽた
ごしごし
雛苺「はい、乾拭き用の雑巾なの」
真紅「あら、気が利くわね。ありがとう」
ごしごし
真紅「ふぅ…机の上は綺麗になったのだわ」
雛苺「ほんと!ピカピカなのー!きっとJUMも喜んでくれるのよ!」
真紅「うふふ、そうかしら。さぁ次は床掃除よ」
真紅「…」
雛苺「うゆ?どうしたの真紅?」
真紅「……雛苺。椅子を取って頂戴。降りられないわ」
雛苺「終わったのー。真紅、お疲れ様なの!」
真紅「雛苺もお疲れ様。助かったわ。あらいけない。もう6時なのだわ」
雛苺「まだ何か用事するの?」
真紅「朝ごはんを作るのを手伝うのだわ。雛苺もきなさい」
雛苺「はいなのー!」
ガチャ
トテトテトテ
JUM「…」むく
JUM「ん…もう朝か…ふわ…ん~~~」
JUM「よっ…と。はぁ…今日も水銀燈の夢見られなかったな。いつになったら会いに来てくれるんだろう」
JUM「ん…?」
ぴかぴか
JUM「なんで部屋がこんな綺麗なんだ…?」
JUM「もしかしてあいつらが…?」
JUM「…」
トタトタトタ
雛苺「あ、JUMが起きてきたのよ!おはようなのー!」
真紅「あら、おはよう。珍しく早いわね。もう少し寝ててもよかったのに」
JUM「え?なんだよ、普段は早く起きろってうるさいくせに」
真紅「昨日は疲れていたみたいだから…気分はどう?寝てすっきりした?」
JUM「う、うん…」
真紅「そう。よかったわ」ニコ
JUM「う…」ドキ
JUM「な、なんか調子狂うな…」
真紅「はい、朝食よ。今日はフレンチトーストなのだわ」
コト
JUM「うん。ありがとう。姉ちゃんは?」
真紅「のりならシャワーを浴びているわ」
JUM「え…てことは、また真紅が作ってくれたのか?」
真紅「ええ。雛苺も作ったのよ」
雛苺「えへへ。ヒナはちょびっと手伝っただけなの!JUMのは真紅が焼いたのよ!」
JUM「そっか。ありがとうな」
真紅「ふふ、どういたしまして。コーヒーでいいかしら?」
JUM「うん。熱いのをお願いするよ」
雛苺(真紅…尽くす女が板についてるの)
雛苺(JUMもまんざらじゃなさそうなの)
雛苺(真紅がはじめからこれくらい素直だったら…)
真紅「はいJUM。コーヒーよ」
カチャ
JUM「うん、いただきます」ずず…
真紅「…」じー
JUM「?」
真紅「…」じー
JUM「な、なんだよ真紅。僕の顔になんかついてるか?」
真紅「いいえ。味はどうかと思って」ニコ
JUM「お、おいしいよ」
真紅「そう。よかったわ。今日の予定は?」ニコ
JUM「今日はー…昼前に図書館に行って勉強しようと思ってるよ」
真紅「お昼ごはんはどうするの?」
JUM「コンビニで済ますつもりだけど」
真紅「もったいないわね。私が作るわ」
JUM「え?どうしたんだよ真紅、らしくないじゃないか」
真紅「やっぱりそう?ふふ、いつもの恩返しなのだわ。素直に受け取りなさい」
JUM「そ、そうか。ありがとう。持ってくよ」
JUM「じゃあ行ってくるよ」
真紅「行ってらっしゃい。JUM、鞄は持った?お財布は?」
JUM「うん持ったよ…あ、財布まだだった」
真紅「もう。しょうがない子ね…どこにあるの?取ってきてあげるわ」
JUM「や、いいよ。自分で行く」
真紅「もう靴はいてるじゃないの。いいから待ってなさい。財布はどこ?」
JUM「あー…机だったかな」
真紅「わかったのだわ。すぐに持ってくるから待っているのよ」
トテトテ
真紅「んっ…せ…ん…せ…!」よじよじ
JUM(階段上るの僕の方が早いような…)
JUM(でもまぁ…いいか)ニコ
真紅「はぁはぁ…はいJUM、財布なのだわ」
JUM「うん…ありがとうな真紅」
なでなで
真紅「!」
JUM「じゃあ行ってくるよ」
真紅「…ふふ。行ってらっしゃい、気をつけて」
雛苺「いってらっしゃーいなのー!!」
ガチャ
バタン
真紅「…ふぅ」
雛苺「お疲れ様なの真紅!今日の真紅はなんだかJUMのお嫁さんみたいなのよ」
真紅「そうかしら?いつかそうなるといいわね。ねぇ雛苺」
雛苺「うゆ?」
真紅「私、ちゃんとJUMに尽くせていたかしら?」
雛苺「もうばっちりなのよー!!きっとJUMも真紅の事見直したのよ!」
真紅「うふ、ありがとう。私まだまだ頑張れるわ」ニコ
雛苺「なの!なんだか頑張ってる真紅はいつもより可愛いのー」
真紅「そう?不思議と無理してるつもりはないわ。好きな人のためなら尽くせるものね」
雛苺「真紅素直なの!」
真紅「さぁ次は洗濯物よ。雛苺も来る?」
雛苺「行く行くぅ!なの!」
真紅「じゃあリビングから椅子を持ってこないと。背が届かないのだわ」
雛苺「了解なのー。えっほえっほ!」
JUM「…」カリカリ
JUM「えーっと…?学校では今どのへんをやってるんだろう?」
JUM「とにかく自分の出来る範囲を進めるしかないよなぁ…」
カリカリ
JUM「ふむ…S系における位置ベクトルxμがS'系にどう変換されるかを考える、か」
JUM「この時、x0 = 0であるとすると、S系ではxμが原点と同時刻であることになるが、x'0 = γ(x0 − βx1) …つまり?」カリカリ
JUM「あ、なるほど。S'系で見たときには原点とは同時刻じゃなくなるんだな」カリカリ
JUM「ふぅ…結構進んだな…」
JUM「それにしても今日の真紅…一体どうしたんだろう?」
JUM「思えば最近、水銀燈のことで頭がいっぱいで真紅たちに気を配れてなかったかもな…」
JUM「…もしそれが原因だとしたら、真紅たちには可哀想なことをしちゃったな」
JUM「…水銀燈…」
JUM「どうやったら水銀燈は振り向いてくれるんだろう」
JUM「ああ。ダメだな。またこんな事ばっかり考えてる…」
巴「…桜田君」
JUM「あ、柏葉。よう」
巴「あれ、今日は驚かないのね。何か考え事でもしてた?」
JUM「あ、いや…うん、ちょっとな」
巴「そっか。勉強のことで?」
JUM「あ、うん。それもあるんだけどさ…」
巴「ふぅん。あ、数学ね?」ヒョイ
JUM「あ、ちょっと、見るなよ」
巴「…うん、正解。もうこんなところまで進んだのね」
JUM「…まだまだだよ。みんなに追いつかないと」カリカリ
巴「勉強のことだけじゃないみたいね。真紅や雛苺の事?」
JUM「…!」
JUM「…どうしてわかったんだ?」
巴「勉強のことだと桜田君そんな顔しないもの」
JUM「…そうかな」
巴「雛苺達がなにか悪いことしちゃったの?」
JUM「…逆だよ。僕があいつらに不義理なことをしてるんだ」
巴「深刻そうね。…私でよければ話くらい聞くわよ?」
JUM「…」
JUM(柏葉なら…相談しても大丈夫かな)
JUM「引かないで聞いてくれるか?」
巴「…ええ。もちろんよ」
JUM「実は…」
巴「…そう。その水銀燈というドールに惹かれてしまったのね」
JUM「おかしいだろ?人形に恋するなんて…」
巴「そんなことないわ。彼女達は生きているもの。私達となにもかわらないわ」
JUM「でも僕は…真紅のミーディアムなのに水銀燈のことを…」
巴「そればっかりはどうしようもないわ。桜田君の気持ちの問題だもの」
JUM「…」
巴「…桜田君の気持ちは桜田君のもの。誰かを好きになるのに、責任や義務感を一緒にするのはよくないわ」
JUM「そう、だよな…」
巴「私にも好きな人はいるけれど…それは純粋に私の気持ち。同情や責任なんかじゃないわ」
JUM「そうか。柏葉、好きな人いたんだな」
巴「…桜田君も、自分の気持ちには正直にならないとね」
JUM「僕は……」
JUM「………水銀燈が好きだ」
巴「…そう。でも、これだけは忘れないでいてあげて」
JUM「?」
巴「桜田君を慕っている雛苺や真紅…達…の気持ちを蔑ろにしてはいけないわ」
JUM「そうだな。うん、わかってる」
巴「彼女達はきっと桜田君の気持ちには気づいてる。それでもきっと、彼女達はあなたを慕い続けるわ」
JUM「…」
巴「…すぐに答えを出さなくてもいいわ。でも、彼女達にやさしくしてあげてね?」
JUM「…そうだな。ありがとう」
巴「どういたしまして…」ニコ
JUM「うん、すこし楽になったよ。ありがとう。柏葉に話してよかった」
巴「…ええ」
JUM「じゃあ今日は帰るよ。柏葉は?」
巴「…私も。途中まで一緒に帰るわ」
真紅「最後の一枚…」ぷるぷる
雛苺「真紅あいとー!あと1センチなの!」
真紅「く…!」ぷるぷる
ぱちっ
真紅「届いたわ!…ふぅ。これでおしまいね」
雛苺「ふいいぃ。一日家事お疲れ様なの~」
真紅「ええ、お疲れ様。もう夕方ね。そろそろJUMも帰って来る頃だわ」
雛苺「なのー。そろそろのりも帰ってくるかもなの!」
真紅「紅茶を淹れておきましょうか。行きましょう雛苺」
雛苺「はいなのー!」
トテトテ
コポポポポ…
雛苺「いただきまーすなの!」
真紅「いただきます」
す…かちゃ…
雛苺「おーいしいのー!やっぱり真紅の淹れた紅茶はすごくおいしいのよ!」
真紅「ありがとう。今日は本当によく手伝ってくれたわね」
雛苺「ヒナよりも真紅はずっと働きっぱなしだったの。大丈夫?」
真紅「平気よ。不思議と全然疲れないの。JUMに喜んでもらえるならって思うとね」
雛苺「…聞いてるこっちが赤くなっちゃうのよ…」
ピンポーン
雛苺「あ、JUMが帰ってきたの!お出迎えなのー!」
真紅「待ちなさい、私も行くわ!」
ガチャ
雛苺「おかえりなさーいなの!」
真紅「JUM、お帰りなさい。勉強ははかどった?」
JUM「うん、まぁまぁかな?」
真紅「そう、お疲れ様。雛苺と紅茶を飲んでるの。一緒にどうかしら?」
JUM「いただくよ。ありがとう」ニコ
真紅「うふふ…すぐに淹れるわ」
タッタッタ
コポポポポ…
JUM「あれ?家事ほとんど終わってるじゃないか。洗濯物まで畳んでる。もしかしてやってくれたのか?」
雛苺「なのよ!ヒナも真紅のお手伝いしたの!」
JUM「そっか。ありがとうな。ほら、お礼にお土産だ」ニコ
雛苺「うわぁーーいい!なの!真紅ぅ!JUMがうにゅう買って来てくれたのよ!」
真紅「あら!ありがとうJUM。はい、どうぞ」
カチャ
JUM「真紅もありがとう。家事やってくれたんだってな。助かるよ」
真紅「お礼なんていいのよ。私が好きでやっていることだから」ニコ
JUM「そっか。じゃあ僕も好きでお礼言ってるからいいんだよ」ニコ
真紅「うふふ…」
雛苺「うにゅーうにゅー幸せーなのー♪」ニコニコ
・
・
・
真紅「今日の夕食はどうだったかしら」
JUM「うん、今日もおいしかったよ。料理上手くなったよな」
真紅「ふふ。そういってもらえると嬉しいわ」
JUM「これからもよろしく頼むよ」
真紅「もちろんなのだわ。JUMに喜んでもらえると私も嬉しいもの」
JUM「はは、なんだそれ。…なぁ真紅」
真紅「なぁに?」
JUM「ありがとうな。色々気を遣ってくれて。真紅や雛苺…どれに柏葉のおかげでずいぶん心が軽くなったよ」
真紅「さっきも言ったはずよ。礼には及ばないのだわ」
JUM「そっか。さて…と。久しぶりにネットでもするかな」
真紅「隣で見ていてもいいかしら?」
JUM「うん、別にいいよ。見てて面白いものでもないだろうけど」
カチ
ウィイイイ……ン
JUM「あれ?」
カチ
ウィイイイ……ン
JUM「おかしいなぁ…?」
カチ
真紅「どうしたの?」
JUM「ん?PCの調子が悪いみたいでさ…」
カチ
カチ
真紅「今朝きちんと掃除したのに…」
JUM「掃除?なにしたんだ?」
真紅「なにって…雑巾で水拭きした後に乾拭きしただけよ」
JUM「水拭き?」
真紅「水拭き」
真紅「?」
JUM(真紅は僕のためを思ってしてくれたんだろう…)
JUM(あーあ。ディスプレイまで水拭きしてるなこりゃ)
JUM(ま…しょうがないか)
真紅「あの、JUM…?私、なにかまずい事をしてしまったかしら…」
JUM「ううん、たいしたことじゃないんだけどな」
真紅「もしかして…PCの調子が悪いのって私が触ったからなの?」
JUM「こういう精密機械に水はよくないんだ。掃除するには専用の道具があるんだ」
真紅「ご…ごめんなさい…」うる
JUM「いいんだ、僕のことを思ってやってくれたんだろう?次から気をつけてくれたらいいよ」
真紅「…JUM、ごめんなさい…私、悪気はなかったのよ…」
JUM「泣くなって、ほら。怒ってないから。な?」
JUM(以前の僕なら怒鳴り散らしていただろうな)
JUM(これも真紅の気遣いのおかげかな)
真紅「…」ぽろぽろ
JUM「ほら、もう泣き止めよ真紅」
真紅「…スン…ごめんなさい…もう大丈夫だわ…」グシグシ
JUM「こら、袖で拭くなって。はいティッシュ」
真紅「ありがとう…」グシグシ
JUM「せっかくなんだから話でもしてのんびりしようか。今の僕はPCなくても別に困らないよ」
真紅「本当に?」
JUM「本当だって」
真紅「…わかったわ。寝るまでお話しましょう」
JUM「そうだな。じゃあほら、こっち来いよ」
真紅「?」
JUM「目線が違うのもいやだろ?抱っこしてやるから」
真紅「…!…お言葉に甘えるわ」よじよじ ぽふん
JUM「またお前のおかげで僕は変われそうだよ、真紅」
真紅「そう?」
雛苺「…♪」ニコニコ
雛苺「もう9時なの…うみゅ…ヒナはもう眠いの…」
真紅「あら、本当ね。そろそろ眠らなくてはいけないわ。JUM、遅くまで付き合ってくれてありがとう」
JUM「僕こそ。また明日な」
真紅「ええ。お休みなさい」
雛苺「おやすみなさいなのー」
JUM「ああ、おやすみ」
バタン
JUM「…」
JUM「これで……良いんだよな」
コンコン
JUM「窓?カーテンの向こうに誰かいる?」
シャッ
水銀燈「くすくす」
JUM「!?」ドキ
水銀燈「あなたって本当にお馬鹿さぁん」
JUM「す、す、水銀燈!!」ドックン ドックン
JUM「ま、まさか……ローザミスティカを!?」
水銀燈「そんなわけないでしょう?だったらわざわざノックなんてしないわぁ」
JUM「それもそうか。真紅達は寝ちゃったぞ」
水銀燈「知ってるわぁ。だからこの時間に来たのよ」
JUM「……真紅達じゃないなら」
水銀燈「そ。あなたに用があるのよ」
JUM「な、なに……」
水銀燈「あなた、今の状態に満足していないんじゃない?」
JUM「そんな事はない!」
水銀燈「クス……必死になっちゃって。この前のあなたを見てると一目瞭然よ」
水銀燈「真紅に対して何か不満を持ってるわね?」
JUM「不満じゃない……」
水銀燈「あら?そうは見えなかったわよぉ。まぁしかたないわねぇ。アレはわがままな子だから」
JUM「あいつはわがままなんかじゃない!」
水銀燈「素直になりなさいよ。本当は契約なんて破棄したいんでしょう?」
水銀燈「契約を解いちゃいなさい。そしたら私が真紅をジャンクにしてあげるからぁ」
JUM「違う!僕は……!」
水銀燈「ふふ。だったら何が気にいらないの?」
JUM「僕は……水銀燈が好きなんだ!」
水銀燈「………………は?」
水銀燈「あなた頭おかしいんじゃないの?」
JUM「おかしいのはわかってるんだ」
水銀燈「私はお人形よぉ?いくら人間に相手にされないからって」
JUM「それでもいいんだ」
水銀燈「……あんたねぇ、自分が何言ってるかわかってるぅ?」
JUM「わかってて言ってるんだ。それでも僕は水銀燈が好きなんだ……」
水銀燈「気持ち悪いわね。あなたのドールは真紅でしょう」
JUM「……」
水銀燈「滑稽だわ。真紅もかわいそうにねぇ。自分のマスターがまさか敵に惚れてるなんてぇ」
JUM「真紅は知ってるさ」
水銀燈「え?」
JUM「あいつは僕が水銀燈に惚れてるのを知りながら、僕に尽くしてくれてる」
水銀燈「それでも私が良いって言うのぉ?真紅の気持ちを知っておきながら」
JUM「そうだ。それでもだ」
水銀燈「……冷徹な男ね」
JUM「自覚してるよ」
水銀燈「良いわ。あなたの気持ちはよくわかったわぁ」
JUM「え!?」
水銀燈「そこまで言うなら真紅との契約を破棄しなさぁい」
JUM「それは……」
水銀燈「あなたが契約を破棄して、ミーディアムの居なくなった真紅を私が倒す」
水銀燈「真紅のローザミスティカを奪った後なら……あなたをミーディアムにしてあげてもいいわ」
JUM「それは……」
水銀燈「できるのでしょう?私の為よ。あなたはどちらかしか選べない」
水銀燈「『二兎を追う者一兎をも得ず』だったかしらぁ。両方をキープなんて醜い真似は出来ないわよ」
JUM「うう……」
水銀燈「さぁ決めなさい。あなたは選べるのよ?こんな贅沢な選択肢はないわ」
JUM「僕は……」
JUM「……水銀燈が好きだ」
…カチャン
JUM・水銀燈「!?」
水銀燈「鞄が閉まった……」
JUM「まさか……真紅、起きてたのか?」
水銀燈「どうかしら。でも遅かれ早かれ真紅は知る事になるわぁ」
JUM「……」
水銀燈「さぁ、私の新しいミーディアム。取引は成立よ」
JUM「……うん」
水銀燈「いますぐにとは言わないわぁ。明日よ。明日真紅のローザミスティカを貰いに来るわ」
水銀燈「それまでに別れを済ませときなさい」
JUM「わかったよ」
水銀燈「……まさか私が誰かに愛される日が来るなんて、思ってもみなかったわぁ」クル
水銀燈「あなたって、本当にお馬鹿さん」
パタパタパタ……
JUM「……」
JUM「真紅……起きてたのか?」
JUM「聞いてたなら出て来てくれないか」
JUM「大事な話があるんだ」
JUM「話さなくちゃならないんだ。頼む、出て来てくれ」
JUM「……」
JUM「気のせいだったのか?」
JUM「そうだよな……真紅が起きたら、朝1番に話そう」
JUM「……ごめんな、真紅」
JUM「……」
JUM「ん……?」
JUM「!」がばっ
JUM「寝てたのか……?」
JUM「鞄は……開いてる」
JUM「もしかしたら夢だったなんて事は……水銀燈が来た事もなにもかも……!」
JUM「そうだよな。いきなり水銀燈が来て僕の告白を受け入れるなんて」むくっ
JUM「冷静に考えればそうだよな。そんな事あるわ……け……」
JUM「……羽根が落ちてる」
雛苺「ふぃー…今日も朝からおそうじとご飯、お疲れ様なの!」
真紅「ええ。雛苺も手伝ってくれてありがとう」
雛苺「ヒナも好きでやってる事だからいいのよー」
真紅「ふふ」
雛苺「じゃあJUMを起こしてくるの!それでお昼からは洗濯なのー!」
真紅「ああ、お昼からは良いのよ。今日のお仕事はこれでおしまい」
雛苺「うゆ?」
雛苺「どうしたの真紅?疲れちゃった?」
真紅「全然疲れてないわよ。でもお仕事はもうしなくて良いの」
雛苺「んうー……真紅が何言ってるかわからないのよ。JUMを起こしてくるのよ?」
真紅「待って!」
雛苺「?」
真紅「あ、その……もう少し寝かせてあげましょう。まだ起きるには早いのだわ」
雛苺「でももう9時なのよ?」
トタ トタ トタ
雛苺「あ、起こさなくても起きて来たの!」
真紅「そうみたいね。もう少し……もう少し寝ていても良いのだわ……」
雛苺「JUM!おはようなの!」
JUM「うん、おはよう」
真紅「……」
JUM「おはよう、真紅」
真紅「おはよう、JUM」
雛苺「今日も真紅が朝ご飯作ってくれたのよ!一緒に食べるのー!」
JUM「みたいだな。ありがとうな真紅。雛苺も」
真紅「もう、お礼はいらないって言ったわよ」
JUM「好きでお礼言ってるって言っただろ」ニコ
真紅「……」ニコ
モグモグ
雛苺「この目玉焼き美味しいのー!」
JUM「そうだな。真紅、ずいぶん上達したな」
真紅「うふふ。嬉しいわ」
JUM「あれ?ケチャップで文字が書いてる?」
[merci]
JUM「……」
真紅「本当?たまたまじゃないかしら」
JUM「クス……そうかもな」
真紅「……」じー
JUM「ん?」
真紅「味はどうかしらと思って」
JUM「決まってるだろ、美味しいよ」
真紅「そう。よかったわ」ニコ
雛苺「……?」
真紅「JUM、食後はコーヒーで良いかしら?」
JUM「今日は紅茶が良いな」
真紅「クス……そう。わかったわ、待っていなさい」
JUM「いや、今日は僕が煎れるよ。座ってろ」
真紅「そう?ありがとう」
雛苺「ねぇどうしたの?真紅、ねぇ!」
コポポポ……
カチャ
JUM「ほら。久しぶりだからうまく煎れられたかわからないけど」
真紅「ありがとう」
ス…
JUM「どうかな」
真紅「……とても……美味しいわ。良い子ねJUM」
JUM「そっか、よかった。ありがとう」
真紅「ごちそうさま。じゃあJUM、左手を出してちょうだい」
雛苺「え?え?」
雛苺「真紅何言ってるの?ねぇってばぁ!」
真紅「雛苺、ありがとう。あなたのおかげで私は誰も恨まないで済んだのだわ」
雛苺「やぁなのよ!なんで!?昨日まであんなに仲良しだったのよ!」
雛苺「そんなのひどいの!どうして契約を解くなんて言うの!?真紅は頑張ったのよ!」
雛苺「JUMも黙ってないで何か言うのぉ!う、う……うえぇぇん」
真紅「……さぁJUM。左手の薬指をこちらに」
JUM「……ごめんな、真紅」スッ
雛苺「JUM……!」ぽろぽろ
真紅「謝らなくていいのよ。良い子ね、JUM」ニコ
JUM「……」ぎゅ
ひょい
真紅「えっ?」
真紅「な、なにをしているのJUM!もう良いのよ、もう……!」
JUM「……」ぎゅう
真紅「私の決意を無駄にしないで……優しくしないで……」
真紅「離してJUM……わ……決心が鈍るじゃないの……!」
真紅「う……うう……」ぎゅ
真紅「いやよ……いやよJUM……!私を捨てないでぇ……!」ぽろぽろ
JUM「……よかった」
真紅「……え?」ぽろぽろ
JUM「真紅の本音が聞けないかと思ったよ……」
真紅「……」ぎゅう
JUM「ありがとう、そこまで想ってくれて。僕はその気持ちにこたえるよ」
真紅「JUM……!!」
JUM「ごめんな真紅、不安にさせて。僕はもう決してお前を捨てない。もう絶対にお前を不安にさせない」
水銀燈「……」
水銀燈「ふん。こうなる事なんて最初からわかってたわよ」
水銀燈「自分を捨てるようなミーディアムを真紅が選ぶはずがないもの」
水銀燈「……ふん。まぁどうせ期待なんてしてなかったけど」
水銀燈「私は所詮壊れた子。誰からも愛されないドール」
水銀燈「……出て行けなくなっちゃったじゃない」
雛苺「本当に、よかったの真紅……」ぽろぽろ
雛苺「うゆ?」チラ
水銀燈「!!」サッ
雛苺「……ねぇJUM。窓の外に水銀燈が来てるのよ」
JUM「え?水銀燈が…?」
真紅「水銀燈……JUM。きちんと話さないといけないのだわ」
JUM「うん。そうだな」
ガラガラ
JUM「水銀燈」
水銀燈「きゃあ!?」ビクゥ
JUM「水銀燈……きちんと話がしたい。中に入ってくれないか」
水銀燈「入れ……入らないわよ。話があるならここでしなさい」
JUM「……泣かないでくれ。ごめん」
水銀燈「!」
水銀燈「はぁ?泣いてるわけないじゃなぁい。真紅や雛苺じゃあるまいしぃ。お馬鹿さぁん!」
JUM「ああ。僕は大馬鹿だ」
水銀燈「……本当に……あなたはお馬鹿さんよぉ」
水銀燈「本当、そんなお馬鹿さぁんは死ななきゃ治らないわぁ」
JUM「……」
水銀燈「私なんかに惚れたなんて言うから……あなたは周りを傷つけたのよ?私は平気だけどぉ」
JUM「……でも、僕は本気で水銀燈が好きだった。それは嘘じゃないよ」
水銀燈「わかってるわよぉ。だからお馬鹿さんなの。次に会うときは覚えてなさぁい。憎き真紅と一緒にジャンクにしてあげるわ」
JUM「次……か」
水銀燈「次にしといてあげるわぁ」
JUM「……ごめんな」
水銀燈「もう謝られたくないわ。馬鹿にしないでちょうだい」
水銀燈「今度は選べるなんて思わないことねぇ」
JUM「……?」
水銀燈「察しなさいよ、お馬鹿さん。真紅を倒して、次は無理やりにでもあなたをミーディアムにするってことよ」
JUM「ああ。だけど、真紅は負けない」
水銀燈「……次、真紅を大事にしなかったらあなたもジャンクよ」
JUM「必ず大事にするよ」
水銀燈「ふん」
バサバサッ
水銀燈「お馬鹿さぁん……!!!」
真紅「水銀燈は帰ったのね」
JUM「うん……帰った」
雛苺「全部聞こえてたのよー」
JUM「な……!」
真紅「あれだけ馬鹿バカ怒鳴られたら嫌でも聞こえるのだわ」
雛苺「JUMは女の子を3人も泣かせたの。悪い子なのよ、めっ」
JUM「そうだな。自分でもそう思うよ」
真紅「大丈夫よ雛苺。JUMはもう絶対に女の子を泣かせるようなことはしないのだわ。ねぇJUM?」
JUM「約束するよ。もう絶対に泣かせないよ真紅。大事にするからな」
真紅「……ふふ。いい子ねJUM。さぁ、紅茶を飲みましょう。抱っこして頂戴」
真紅「ローズヒップでいいかしら?」
JUM「うん、ありがとう。僕も運ぶよ」
真紅「ええ。ありがとう」
雛苺「ヒナもヒナもー!手伝うの!」
JUM「おっと。気をつけてな雛苺」
雛苺「ねぇ真紅」
真紅「なぁに雛苺」
雛苺「あきらめないで頑張って良かったのよ♪」
真紅「そうね。本当にありがとう雛苺。感謝しているわ」
雛苺「ふふ、お礼はいいわ、なの!」
真紅「クス」
JUM「うん、おいしいな」
真紅「そうね。おいしいのだわ」
雛苺「真紅もJUMも元気になって幸せーなのよー♪」ニコニコ
おわり
おまけ
水銀燈「……」
バサッバサッ
スト…
めぐ「あ、水銀燈……来てくれたのね」
水銀燈「……ええ。ただいま」
めぐ「……」
水銀燈「……」
めぐ「……なにかあった?」
水銀燈「別にぃ。なにもないわぁ」
めぐ「嘘ばっかり……」
水銀燈「……ふん」
めぐ「目元の化粧が落ちてる……泣いてたの?」
水銀燈「泣いてないわよぉ。私が泣くわけないでしょう」
めぐ「そうね。ごめんなさい」
水銀燈「……ねぇめぐ。失恋」
めぐ「え?失恋?」
水銀燈「そうよ。失恋したの。格好悪いでしょう」
めぐ「そんなことないわ」
水銀燈「……なにかしらねぇ。悲しいんでもなくて、悔しいんでもなくて」
めぐ「私は恋愛したことないからわからないけど…辛いなら我慢するのは良くないわ」
水銀燈「……眠いわ。布団に入ってもいい?」
めぐ「ええ、どうぞ」サッ
水銀燈「……」もぞもぞ
めぐ「そんな頭まで布団かぶっちゃって…よっぽど辛かったのね。よしよし」なでなで
水銀燈「めぐ、耳を塞いでてちょうだい」
めぐ「はい」
おわり。読んでくれて&保守してくれてthxでした。