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605 : 以下、名... - 2015/11/23 12:39:08.88 se1+N6ta0 1672/1732




『エピローグ』



606 : 以下、名... - 2015/11/23 12:41:06.09 se1+N6ta0 1673/1732

――いつもの病室

上条「――」

上条(いつもの超絶硬いベッド――つーかバスタブ――と違い、寝心地の良さに寝返りを打って、はたと気づく) チラッ

上条(適度にスプリングが効いた、それでいて同じ姿勢で数日過ごしても鬱血しない!床擦れを起こさないグッドな柔らかさ!)

上条(高齢化が進み、中々体を動かせないお年寄りにも優しい寝具だ……!あぁ、このぬくもりに一生包まれていたい……!)

マタイ「――起きた瞬間に現実逃避は止めたまえ。というか今、私と視線が合ったね?」

マタイ「事後処理の多さに頭を抱えたくなる気持ちには共感するが、後回しにしても誰が片付けてくれるものでもない」

上条「俺が現実逃避しようとしてる原因はあなたじゃないでしょーかねっ!そりゃ目ぇ覚ました3秒後に発見したら『あ、お迎え来たかな?』って思うわっ!」

マタイ「人を死神扱いはよして貰おうか。一応これでも教理省の番人とも呼ばれていたんだ」

上条「中世まで異端審問会開いてた人らに言われても!……ていうか、お迎え?マジでお迎えじゃないの?」

マタイ「我々が対立しているか、と言えばNOである」

マタイ「昨日――いや、明け方までの騒ぎは何一つとして影を落としてはおらん」

上条「……いやあの、そうじゃなくてですね。こう、お約束的なのっつったら分かりますかね?」

上条「俺がですね、目を覚ましたらですよ?掛けてあるシーツが重いんですよ、人一人乗ってる、みたいな?」

上条「『なんだコレ?』みたいに、俺がゆっくり目覚めると、そこには突っ伏して寝る女の子の姿が!みたいな!」

上条「『そっか……こいつ、朝になるまで俺の事看ててくれたのか……ありがとな』とか言って髪撫でる展開じゃないんでしょーかねっ!?」

上条「だっつーのに現実は!俺の嫌いな現実は!目ぇ開けたら死神の親戚っぽいじーちゃんが綺麗な姿勢でパイプイスに座ってんだもんよ!そりゃ逃げたくもなるわ!」

上条「『あれ、?どこでフラグ管理間違えたかな?』ってロード画面呼び出す所だったよ!危ないわー、もう少しでロードしてたわー」

マタイ「話の意味が殆ど理解出来ていないが、ここは現実だから戻って来たまえ」

607 : 以下、名... - 2015/11/23 12:46:47.50 se1+N6ta0 1674/1732

上条「いや……聞くけど、他の連中は?実はもう既に粛正した後だとか言わないですよ、ね……?」

マタイ「返す返すも君は私を一体何だと思っているのかね?」

上条「ジジイになったアンデルセ○」

マタイ「試してみるか、若造?」 ググッ

上条「ジョークですから!冗談だからっそのっ拳は仕舞った方がいいと思うよっ!」

マタイ「……謝罪は受け入れよう。何故ならば君の憤りを招いた原因の一端は私もあるからだ」

上条「その心は?」

マタイ「つい今し方までレッサー君達を並べてお説教していたので、ここへ来る余裕はなくなってしまったのだよ」

マタイ「君を回収してからずっとだから……そうだな、大体5時間ぐらいかな?」

上条「何やったんだっ!?マタイさんをそこまで怒らせる程に何かやったんかっ!?」

マタイ「当人達から聞きたまえ。全員隣の病室で就寝しているがね。あぁそういえばレッサー君だけは違ったな」

上条「……いや、いないけど」

マタイ「『……オロシガネ、錆が浮いて切れ味が落ちたオロシガネを買いに行かないと……』等と、ぶつぶつ呟きながら外出してしまったが」

上条「オロシガネ?……卸し金?大根おろしでも作んのか?」

上条「あー、でも錆浮くぐらいにボロボロだったら、満足にすり下ろし出来なくて、大根がズタズタになっちまうんだけど……?」

マタイ「……業は深いものだな、マーリン卿」

上条「あぁっと、バカ話は置いておくとして……聞き辛いんだけど」

マタイ「私が部屋を出る時には、フレンダさんも一緒に眠っていたようだね」

上条「そっか、良かっ――た?」

マタイ「疑問形かね」

上条「事件が終ったのか、それともこれからまだ『ザ・処刑タイム!』的な展開になるのか分からねぇ、ない、からな」 スッ

608 : 以下、名... - 2015/11/23 12:52:50.26 se1+N6ta0 1675/1732

マタイ「立ち上がらないで佳い。蛮勇は勇気の親戚ではあるが、双子程は似ておらん故に」

上条「助けて貰っておいて何だけど、てか非常にゴメンナサイしたいんだが、それはそれ、これはこれっていうか」

上条「同じく助けて貰った相手に義理もあれば恩もある。それを返す以前に情が移れば、なぁ?」

マタイ「佳い。それはとても佳い事だが」

上条「が?」

マタイ「『魔神セレーネの帰還』事件、及び『濁音協会の残党』騒ぎに関してはもう解決済み、と言っておこう」

上条「……あい?」

マタイ「午後の便で帰る事になったのでね。挨拶ぐらいは――」

上条「……いや、あのフレンダは?てっきり『連れて帰る』とか、『監視下に置く』とか、そういう非人道的な方向で進むもんかと」

マタイ「『死者』であればそうなのであろう――が、彼女は『死者』に非ず」

マタイ「ヴァルキリエは珍しい存在だが……まぁ、その一点を以て我々ローマ正教が動きはしない。少なくとも表向きは、だが」

上条「ヴァルキリエ……?昨日も『団長』が言ってたっけか?――というかだ」

上条「昨日のアレはなんだったんだよ?マタイさんの武器をフレンダが召び喚してみたり、何?愛の力?それとも友情パワーかなんか?」

上条「しかも『団長』の話じゃ、最初っから『死者』じゃないって言うしさ!アリサと同じだって言われても、そうはいですか、って納得出来ねーよ!」

マタイ「『はいそうですか』が、混乱して逆になっているが――そうだな。順を追って話をしよう」

609 : 以下、名... - 2015/11/23 12:58:12.08 se1+N6ta0 1676/1732

マタイ「まず私の使っていた大鎌、『Sacred Death(ジョン・ボールの断頭鎌)』の謂われは憶えているかな?」

上条「昔の教会や政府に反発して、反乱起こした人だろ?最期は処刑されちまったけど」

マタイ「そうだ。あの鎌は当時のジョン=ボールが使っていた物――では、ない」

上条「ないんだっ!?……あぁいや、でもそうか。霊装って色々あるけど、オリジナルそのまま使ってる方が珍しいんだっけ?」

上条「『魔術的記号』を付加するために、伝説の神具と同じ名称にするとかなんとか」

マタイ「その理解で合っている――の、だが、あの鎌は少々特殊な由来の持ち主でもある」

上条「へー……ん?”持ち主”?」

マタイ「ボールの逸話上、あの鎌の特性は只の武器という訳ではない。それどころか武器かどうかすら怪しい」

上条「やだその前フリ超怖い」

マタイ「と、いうのもあの鎌は、ボールの死後、幾度も姿を現しては消えていく」

マタイ「第二次百年戦争では敵軍を狩る名も無き騎士の手に持たれ、ナポレオン戦争でも目撃されたと記録が残されている」

上条「それ、なんか都市伝説っぽいよな」

マタイ「然り。あの鎌は権力や共同体、組織といったものへ反逆する力なき者達の間を渡り歩いてきた」

マタイ「『理不尽な暴力に抗するための刃』、『断罪の鋼』、『敵味方皆殺し』と呼ばれた存在だ」

マタイ「非公式記録では1999年に日本の……藍仙、とかいう場所に”現し身”が顕現したとも」

上条「……そんな鎌をどうしてマタイさん持ってんの?ローマ正教の大幹部じゃん?」

マタイ「それはヒミツだ。長くなるし、若かりし頃の失敗は聞かれたくないものだよ――が」

マタイ「どうしても、と言うのであれば凍刃にでも聞きたまえ」

上条「うん?なんでじーちゃんの名前が……?」

610 : 以下、名... - 2015/11/23 13:01:42.38 se1+N6ta0 1677/1732

マタイ「そしてここ半世紀ばかり、飽くなき闘争と血煙――もとい、平和の象徴として私と共に在った訳だが」

上条「今更だよね?あんたが残念なイギリス人ボコったのって薄々見当は付いているからね?」

上条「本気と書いてキ×××と読む、全てにおいてマジモンのレッサーさん相手にして、見たところケガの一つもしてないですもんね?」

マタイ「それはそれとして――ジョン=ボールの話だ。大鎌とは別の軸の話」

上条「ん?処刑されたんだよな?」

マタイ「そう、彼”は”処刑されたな。が、しかし物語はそこでは終らん」

マタイ「彼には家族が居た。妻が居り、子供が居り、彼らはボールの死後も当然生き続ける訳だな」

上条「まぁそうだけど……生きづらくなかったかな?」

上条「言っちゃなんだけど、政府からすればクーデター未遂起こした人の家族だろ。迫害とかされなかったら良かったんだが」

マタイ「心配は要らんさ。実際現代まで続いておるのだからな」

上条「そっかー、それじゃ良かっ――」

上条「……」

上条「……んー……?」

マタイ「ここまでで不明瞭な点でもあったかな」

上条「って訳じゃあないんだが……びっみょーに、引っかかるような、引っかからないような」

上条「ま、まぁいいさ!続けてくれ!」

マタイ「承知した――君の心配は尤もでもある」

611 : 以下、名... - 2015/11/23 13:05:08.82 se1+N6ta0 1678/1732

マタイ「ボールは確かに民からは慕われておった。少なくとも彼らの暮らす街の近隣住民からは指導者と仰がれる程に」

マタイ「しかし、だからといってその外から来た余所者、また心ない人間からすればボールは只の反逆者である」

マタイ「よって名を変え、姓を変え、余計なトラブルから逃れようとしたのだ」

上条「あー、苦労はしてんだなぁ」

マタイ「ちなみにその時つけた名前はボールが住んでいた街の名前から取ったそうだよ」

マタイ「――そう、『Saint. Albans(セント・オールバンズ)』という都市からね』

上条「……」

マタイ「さっきからどうかしたかね?――あぁ、お腹が空いたのか。ならば私がリンゴでも剥こうか」

上条「やめてください。勿体なさ過ぎて、剥いたリンゴから芽が出て花を付けそうですから!」

マタイ「私達は代弁者に過ぎず、それ自体に価値などは無いんだがね」

上条「……いや、そういう話じゃなくて――その、せんと?おーるばんず?」

マタイ「元々はイギリスの守護聖人の名前から付けられたんだよ。こういうのは珍しくはない……セントルイス、あるだろう?アメリカの都市の」

マタイ「あれもフランス人が聖人列席されたルイ9世にちなんで付けた地名が元だ」

上条「あー……日本でもあったなぁ。源氏や平氏の落人伝説で、変わった苗字の子孫の人らとか」

上条「地名とかにも残ったり、逃げてる割には意外と自己主張強いんだなー」

612 : 以下、名... - 2015/11/23 13:07:44.88 se1+N6ta0 1679/1732

マタイ「それは貴人漂流譚と言う、別ジャンルの話なんだが……まぁいい。セント・オールバンズでは街の名前と同じ」

マタイ「ボールの家族達は紛らわしいのでもっと短縮形にした――さて、どんな家名だと思う?」

上条「そうだなぁ。セント・オールバンズ……ラノベ風にすんだったら『センオバ』?」

上条「もしくはスポーツチームの愛称だったら、『セイバンズ』――」

上条「……」

上条「……あるぇ……?」

マタイ「どこかで聞き覚えは?」

上条「セイ・バンズ、。セイ・ヴェンズ、セイヴェーンズ――」

マタイ「オールバンズの”Al”は後ろへ回り、”ル”と訛る」

上条「セイヴェルン、ズ」

マタイ「を、短くすれば?」

上条「――――セイ、ヴェルン……?」

マタイ「うむ」

上条「――――フレンダ!?フレンダ=セイヴェルン……っ!?」

マタイ「直系かどうか知らぬ。またただの同性の他人である可能性も高い」

上条「いやまさかっ!……冗談だろ?からかってるだけなんだよなっ?」

613 : 以下、名... - 2015/11/23 13:11:03.10 se1+N6ta0 1680/1732

マタイ「根拠としては無くもない。フレンダさんの異能、大能力だったかな?」

マタイ「それは『兵器庫艦(バックヤードキャロット)』。予め確保してある場所へ武器を置き、それを取り寄せるだけの能力」

上条「あんたがどうしてそれ知ってんだってツッコミは置いといて、それがどうしたんだよ?」

マタイ「おかしいと思わなかったかね――『どうして武器”だけ”なんだ』と」

上条「あー……認識の問題?」

マタイ「私の古馴染み曰く、『カッターナイフでも人は殺せる。スーパーマーケットでの買い物袋、コントとハンカチーフだけでも充分に』」

上条「そんな危険なヤローと俺は戦っていたのか……!」

マタイ「昨日のあれを言うのであれば、ただしじゃれていただけだよ。私も彼も」

マタイ「我が友人殿が得意するのは有り触れた軍隊格闘術だからな。軍事演習を積めば誰だって修められるさ」

マタイ「――が、ここでの焦点は『武器か否か』の境だ」

マタイ「能力とは科学的なものなのだろう?心のありよう、認識の問題と言い、それが実際に反映しているのであれば――」

マタイ「それは『魔法』のような話だと思わないかね?」

上条「って事は――フレンダ、魔術師なのか?」

マタイ「より正確には『原石』なのであろう。学園都市へ来る以前から能力を使えるのであれば、な」

マタイ「そしてそこへ私の推論を付け加えるのであれば、『どうして”武器”なのか?』と」

マタイ「別にコインだって構わないし、質量を考えれば紙の方が簡単そうなのに」

上条「それは……やっぱり、本人と武器の繋がりがある。縁があるって話じゃないか?」

マタイ「どう?幼子が武器に関わる環境にあったとは考えにくいが」

上条「それじゃ血筋と、か……」

マタイ「――そう、だな。結論から言えばフレンダさんの能力は異能”ではなかった”と私は考える」

614 : 以下、名... - 2015/11/23 13:14:39.36 se1+N6ta0 1681/1732

マタイ「それは『原石』として、『武具精霊(ヴァルキリエ)』として覚醒する”筈”だった彼女の、基本中の基本の能力」

マタイ「”己の半身となるべき武具を召び喚す”というだけ。ただそのワンステップに過ぎなかった」

上条「……よく分からないんだが、そのヴァルキリエってのは『聖人』の別名か何かかな?」

マタイ「然り。伝説級の武具に宿り、共に戦場を駆る異教の聖人をそう分類しておる」

上条「でも、それだったら何でフレンダは生前――って言い方は良くないが――は出来なかったんだ?」

マタイ「これも想像でしかないが、最初の一歩で躓いたのだろう」

上条「うん?」

マタイ「魔神になる力があり、資格があり、機会もあった――だが、必ずしもそうはならない。なれない者も居る」

マタイ「同様に『聖人』や『原石』としての力に覚醒せず、生涯を終えるものも居るであろうな」

上条「そう、かな?『聖人』は生まれつき運や身体能力が異常に良かったりすんだろ?」

上条「だったらどこかで誰か、魔術師に素質を見いだされて訓練を……」

マタイ「気づいたかね」

上条「……素質があれば、誰かに見いだされる。悪い意味でも目立って、しまう」

上条「神裂は魔術師――天草式に出会って『聖人』としての教育を受けた。順番は逆かも知れないが」

上条「――けど、今の時代。そうそう魔術師なんて居ない。レッサー達みたいにいい指導者に恵まれるのは稀、だ」

上条「そう、すると。『魔術』が廃れれば……」

マタイ「そう、だからこそフレンダ君は科学サイドに預けられた。『能力者』として」

615 : 以下、名... - 2015/11/23 13:19:50.88 se1+N6ta0 1682/1732

マタイ「もしもこれがそれなりの魔術の師に恵まれてさえいれば、『何故武器なのか?』を突き詰め、『ボールの血族』へとたどり着けただろう」

マタイ「しかし答えを求めた先にあったもの、科学では彼女の能力の解明など出来やしない。回答に近付く事すら出来なかった」

マタイ「その結果、『武器っぽいものを呼び寄せる便利な能力』として扱われ……まぁ、この様だな」

上条「……随分、回り道をして来たんだな――に、しても」

上条「一体どんだけの偶然が積み重なった結果なんだろうな……まずはフレンダが『原石』だったと」

上条「次にマタイさんが『ボールの大鎌』を持って魔神狩りに参戦してくれてーの」

上条「ドサクサに紛れてフレンダがいつの間にか復活してて、鎌はたまたまフレンダのアジト跡に占拠したレッサー達に渡ってて」

上条「『元々鎌とリンクする能力』だったフレンダの手に渡る……嘘のような話だなぁ」

マタイ「それは当然だろう。嘘なのだし」

上条「………………はい?」

616 : 以下、名... - 2015/11/23 13:21:01.24 se1+N6ta0 1683/1732

マタイ「上条君、これだけ、そうこれだけの偶然――『奇跡』が重なるなんて、世界は優しくはない。寛容ですらない」

マタイ「フレンダさんが『原石』である可能性、そしてその鍵となる『Sacred Death』がたまたま揃う偶然」

マタイ「しかもその鎌が彼女の支配する領域下へ持ち運ばれ、且つ極限にまで追い込まれた状態で召喚に成功?」

マタイ「どれだけの『奇跡』や『偶然』が重ねなればいけないのかね?」

マタイ「今までの話は『結果から出した推論』であって、必ずしも事実とは限らない」

上条「待てや、つーか待てよ!推論は推論だから間違ってるかも知れない、のは分かる!分かるけどさ!」

上条「でも、その言い方だと、どっかで嘘が紛れ込んでるような、誰かが何かを仕組んでるように聞こえるんだが……?」

マタイ「――『Crawling Chaos』」

上条「……這い寄る、混沌……?」

マタイ「そう、とあるマジ……ゅつ、しによって仕掛けられた大規模術式だ。私はその影響を心配してここへ残っていた」

上条「なんでここで噛むんだ?……いやいいけど、どんなの?」

マタイ「”現時点で解明されている”と、前置きをした上で言えば――」

マタイ「――『嘘が本当になる』、そうだ」

617 : 以下、名... - 2015/11/23 13:24:41.89 se1+N6ta0 1684/1732

――病室

上条「人並みに幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になるっ!!!!!!!!」

マタイ「見ていて泣きそうだから、自分に嘘を吐くのは止めてくれたまえ。そもそもその術式は効力を無くしておる」

上条「何で俺に一言言ってくれなかったんだよっ!?悪用なんて絶対しなかったのに!」

マタイ「歳の離れた友人として、まぁ強く否定はしないでおくが――この術式、何が質が悪いかと言えば『術者以外の効果を知った者の嘘は弾かれる』んだ」

上条「性格悪っ!?」

マタイ「”アレ”に性格、などという生易しいものがあるかはさておくとして、この魔術をかけた”モノ”は二つの嘘を現実化しようとした」

マタイ「一つが『スレンダーマン』だ」

上条「なんでここで嘘の都市伝説が出てく、る――もしかして、『ショゴス』かっ!?」

マタイ「正解だね。後々魔術的な意味を付加して『ザントマン』へと造り替えた。その素体として大量に」

上条「垣根は?垣根の体は?」

マタイ「あちこちへ撒いたのであろうな。核になっているのは恐らく」

マタイ「そしてもう一つ、『死人が墓から這い出る』という著しく冒涜的な嘘が現実になった」

上条「あぁ、それで。『常夜』前にもフレンダが居たりしたの――待て待て。なんでそんな事したんだよ?」

マタイ「仲間を再生させる目的だろう。幾ら『ショゴス』に記憶を上書きさせるとは言っても、其程精度も成功率も高くはなかったのだ」

マタイ「似たような術式を重ね、効果を高めようとした、と」

上条「……言われてみれば、『常夜』前の数日から、昨日ぐらいまで『あれ?これ現実じゃ有り得なくね?』的な事が起きてるような……?」

マタイ「昨日の夜に鳴護君が無茶をしたお陰で、今は効力を失っている。が、それらも『嘘が現実になった』副作用だろう」

上条「そうか……!だから俺も妙にエロくなったんだな……ッ!!!」

マタイ「それは君が思春期だからだね。妙齢の女性達に言い寄られ、性欲を持て余し気味なだけであろう」

上条「分かってたよ!分かってたけどそんなにはっきり言う事ないじゃないっ!」

618 : 以下、名... - 2015/11/23 13:26:34.75 se1+N6ta0 1685/1732

マタイ「……ともあれ、だ。そんな術式が続いていた以上、フレンダさんの話もどこかが都合の良い嘘が現実を書き換えられている、と私は思う」

マタイ「彼女がオリジナルの記憶を有しているのか、それは誰にも分からない」

マタイ「そもそもで言えば――あの夜、あの場所で君達が見たものは本当に幻覚だったのかな?」

マタイ「彼女はまだ『死者』であり、『団長』に揺さぶりかけられて屍体へ戻ろうしたのではないか?」

マタイ「そして彼女が生前のフレンダ=セイヴェルンさんと同じかどうか、その存在を許せるのかも分からない」

マタイ「他ならぬ、彼女自身も含め、だ」

上条「――それは」

マタイ「うん?」

上条「別に、嘘だって構わない、と俺は思う」

マタイ「……」

上条「マタイさんが言ってくれた事でさ?『人間が生きようと足掻く事が人間の証拠』だっけ?そんな感じで」

上条「……確かに生きようとする事は戦いで、誰だって同じで。けどそれは人だけじゃなくて獣も同じだ。植物も自然淘汰の意味では同じ」

上条「だったら人とそれ以外を分けるのは、他人を大事にするって事じゃねぇかな」

上条「誰を大事にしたり、自分を犠牲にしてまで守りたいモノがあれば」

上条「仲良くなるか――は、別にしても、理解し合える。したいと思う」

マタイ「……」

上条「マタイ、さん?」

マタイ「佳い、それで佳いのだ。そこからが始まりなのだ」

マタイ「手があれば繋ぐ事が出来る。ただそれだけの話を忘れずにおれば佳い」

上条「……ありがとう、ございます」

619 : 以下、名... - 2015/11/23 13:28:30.10 se1+N6ta0 1686/1732

マタイ「自身が出来なかった夢を、他人へ託すのは笑い話にもならんが――長くなって済まなかった。私はそろそろ行く」

マタイ「この街では思ったよりも有意義な体験をさせて貰ったよ。君や勇気ある少女達に心からの感謝と尊敬を」

上条「今度はどこへ?」

マタイ「闘いがあれば、どこへでも」

上条「……もう少し落ち着いて下さい、この世界のためにも!」

マタイ「アックアがな。彼の特性である『聖母との共鳴』は君達の戦いで失われたであろう?全ての罪から免罪されるという形質」

上条「あったなー」

マタイ「それを取り戻しにチュニジアにまで足を運び、『黒いマリア』の秘蹟を探索していたのだが、そこでトラブルがあったと聞く」

マタイ「」

マタイ「どうだね?良かったら君も――」

上条「逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!」

マタイ「清々しいばかりの現実逃避であるな。まぁ気が向いたら連絡してくれたまえ。あの男も君が来れば喜ぶであ――」

上条「あのっ、マタイさん」

マタイ「ふむ?」

620 : 以下、名... - 2015/11/23 13:29:51.27 se1+N6ta0 1687/1732

上条「……俺、さ。失敗ばっか、してて。上手い事なんか、全然やれなかったんだけど」

上条「マタイさんとか、他の人からは褒められるけど。他の人の力も借りてどうにか、って感じで、俺一人じゃ全然――」

マタイ「成功すれば佳い訳ではない。また失敗しても佳しとする訳ではあるまい」

上条「えっと、言っている意味が」

マタイ「信頼とは共に過ごした時間だ。また信頼とは共に悩んだ時間でもある」

マタイ「そしてまた信頼とは行動を以て得るものでもある……仮の話だ」

マタイ「鳴護アリサ君を巡る長い長い旅、君は幾つもの失敗をして来た。取り返しのつくものもあれば、そうじゃないものもあった」

上条「……はい」

マタイ「共に笑い、共に泣き、共に怒る。そうした経験が君達を強くし、そして絆もまたより強くした」

マタイ「想像してみると佳い。もしもあの旅の始まりに私が居て、フランスで『濁音協会』を粉砕してしまったら、今の君達は居ただろうか?」

マタイ「それとも君が『右手』の力を最大限に解放し、誰一人傷付けず世界を救ったとすれば?」

マタイ「今、君達の間にある、確固とした信頼が築けたかね?」

上条「……違ってた、でしょうね。それは」

マタイ「佳い。それで佳いのだ。力などは生きていればその内に身に付く、どうしても足りなければ補い合えば佳い」

マタイ「今の君達には文句を言いながらも、笑って手を取ってくれる仲間が居る」

マタイ「それは全て、君が持てる限りの力で精一杯『生きて』来た結果だよ。足りる足らぬに関わりなく、な」

上条「……俺は」

621 : 以下、名... - 2015/11/23 13:32:21.69 se1+N6ta0 1688/1732

マタイ「――あぁ、そうそう一つだけ告げるのを忘れていた。嘘ではない本当の話を」

上条「はぁ」

マタイ「君が私の親友、ク――もとい、ドゥーク○に足止めされていた時の話だ」

上条「ドゥー○ー言うな!確かに盛り上げる前にあっさり退場したり、噛ませっぽい雰囲気出してたけどもドゥ○クーさんじゃねぇから!」

マタイ「『家族はやはり佳いものだな』と、君の携帯電話へ着信があったのをしきりに感心していたよ」

上条「あー……あの、アホ着信ボイス。しかもメールの着信っぽいのに誰が仕込んだんだか」

マタイ「決まっているだろう、”彼女”に」

上条「……彼女?」

マタイ「君と数日間寝食を過ごし、同じ時間を共有し、携帯電話を手軽に見る機会があった人間――と、まで言わないと分からないかね」

上条「その条件からすると、フレンダしか居ないが……え、なんで?なんでフレンダが俺の携帯の着メロ弄ったんだろ……?」

マタイ「気づいて、欲しかったのだろうな」

上条「何、に?」

マタイ「君の携帯を自分が盗み見している、という事。つまり――」

マタイ「――君が彼女を理解したかったように、彼女もまた君に理解して欲しかったのだよ」

上条「フレンダが、俺を?」

622 : 以下、名... - 2015/11/23 13:33:21.06 se1+N6ta0 1689/1732

マタイ「でもなければわざわざ他人の持ち物を弄り、設定を変える意味が無い」

上条「い、いやでもさ。フレンダが最初に俺から逃げ出したのって、俺がフレンダの仲間と知り合いなのを隠してたのがきっかけで」

上条「だったら隠すんじゃ、ないですか?見てるってのがバレたら、警戒されるし」

マタイ「私に聞かれても困るよ。状況証拠からして、そんな悪戯を仕掛けるのは彼女しかおらん」

マタイ「結局の所、本人にしか分かりはしないのだがね」

上条「……そう、かな」

マタイ「ただし、これだけは忘れないで欲しい」

マタイ「『現実』がどれだけ嘘だったとしても、はたまたフレンダさん自身に胡乱な所があったとしても」

マタイ「あの時、我が親友殿の一撃を止めたのは、フレンダさんの意志によって引き起こされたものだ」

マタイ「その『偶然』は紛れもなく君達が起こしたんだよ」

上条「……俺達が」

マタイ「では今度こそさようならだ、上条君。出来れば敵味方で再会しない事を願っておるよ」

上条「……はい。本当にお世話になりましたっ」

623 : 以下、名... - 2015/11/23 13:35:00.31 se1+N6ta0 1690/1732

マタイ「――と、言って別れた相手の、実に9割5分で最悪の対面になったんだがな」

上条「やめてくれない?そうやって悪いフラグ積み重ねるのやめてくれないかな?」

マタイ「冗談だよ」

上条「当たり前だ」

マタイ「10割だな」

上条「お前もう帰れよ、なっ?」

マタイ「……それで佳いのだ。別れとはこうでなくてはいかん」

624 : 以下、名... - 2015/11/23 13:36:02.59 se1+N6ta0 1691/1732

――???

フレンダ「『――あー、うん、分かってる……うん、うん』」

フレンダ「『ていうかなんであんたに言われなきゃいけない訳よ?浜面のくせに!』」

フレンダ「『え?あー……あの子も?……血は争えない訳かー』」

フレンダ「『いやでもだって浜面だし?ていうか浜面だし?』」

フレンダ「『滝壺とくっついた時点で、残りの人生全部の運を遣ってる訳だからね?そこら辺を勘違いしない訳、あ?』」

フレンダ「『滝壺……んー、確かに可愛いしおっぱい大きいし、優良物件だとは思う訳だけど……』」

フレンダ「『……ま、悪い男に騙されて人生経験を積むのも良い訳よねっ!え、違う?』」

フレンダ「『素に戻って忠告しとくけど、あんた滝壺泣かせたら十中八九――いやぁ、まぁ良くて瞬殺される訳よ?分かる?』」

フレンダ「『まー精々――ってそんな話いい訳。つーかさっさと出せ』」

フレンダ「『いいからっ、ほらさっさとする訳!』」

フレンダ「『……』」

625 : 以下、名... - 2015/11/23 13:38:23.97 se1+N6ta0 1692/1732

フレンダ「『……も、もしもし?あたしあたし、分かる?』」

フレンダ「『――って詐欺じゃない訳よ!ネタって何よネタって!』」

フレンダ「『あー………………ゴメンゴメン!一年以上も放ったらかしにしたのはねー……あたしも、ほら色々あった訳です、えぇホント』」

フレンダ「『心配――うん、しない訳ないわよね。ごめん、本当に、ごめんなさい』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……その、ね。なんて言ったらいいのか……うん』」

フレンダ「『あたし、ね?学園都市を離れなきゃ――』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『あ、全然全然っ!?学費がどうとか、そういう事じゃない訳』」

フレンダ「『お金だったら、今まて通りにお姉ちゃんが何とかするから、あんたは心配しなくて良い訳』」

フレンダ「『そうじゃなくてね、こう方向性の違いって言うか。分からない?あたしも分かってない訳だけどさ』」

フレンダ「『学園都市のね、親戚って言うか、従兄弟――あー……外の機関?まぁイギリスに出戻りって訳ね、うん』」

フレンダ「『そこで勉強すれば、あたしの能力も――』」

フレンダ「『……』」

626 : 以下、名... - 2015/11/23 13:42:22.40 se1+N6ta0 1693/1732

フレンダ「『……ダメ。あんたは待ってる訳、ここで、この街で』」

フレンダ「『嫌い?……うんまぁ、あたしも正直好きじゃない訳。ぶっちゃけ嫌いよ』」

フレンダ「『人生これからだっつーのに、着たい服が死ぬ程あるっつーのに、ね。まぁまぁ』」

フレンダ「『……けど、今のあんたは不幸な訳?どう?』」

フレンダ「『友達も居るし、保護者っぽい人達も居て、幸せ?……そっかぁ、そう、ね』」

フレンダ「『……あたしもね。出来ればフレメアと――うん、だから、リハビリ?みたいな感じ?』」

フレンダ「『必要無いって思う訳だけど、その――ケジメ、かな?あたしを助けてくれた人に』」

フレンダ「『こんなあたしを信じてくれた人が居て、体を張って死にかけたバカが居た訳。物好きな訳よ、そいっっっつが』」

フレンダ「『でも、だからこそ』」

フレンダ「『あたしの命は、今の命はあたしだけのもんじゃなくってね?こう、色んな人に助けて貰った訳だ』」

フレンダ「『だから簡単には死ねないし、死んでなんかやるもんか――あ、ごめんね?訳分からない訳ねー?』」

627 : 以下、名... - 2015/11/23 13:44:26.19 se1+N6ta0 1694/1732

フレンダ「『……うん、まぁまぁまぁまぁ』」

フレンダ「『少しだけ、頑張ってみようって――』」

フレンダ「『――着飾らなくたって、綺麗じゃなくたって――』」

フレンダ「『――あたしは、あたしだから』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……ありがとって訳……あー、あとさ。変な質問だけど』」

フレンダ「『昔、川遊びに行ったの憶え――そうそう、うん、オールバンズに住んでた時に』」

フレンダ「『拾った石――あ、持ってる?ホントに?はー……』」

フレンダ「『……止めときなさい。カブトムシさんは石食べない訳!ていうか死んじゃう訳だから!』」

フレンダ「『そう、か……あった訳かー……うん?』」

フレンダ「『あぁいや別に、大した事じゃない訳。ただの確認って言うか、まぁ賭けに負けたって言うか』」

フレンダ「『んじゃ、メールアドレスは教えとくから。あ、そうだ、あんたブラって付けてたっけ?付けてる?』」

フレンダ「『それじゃくれぐれも!くれっぐれも!浜面の前で着替えたり、一緒にお風呂とかダメだからね?いやマジで気をつける訳?いい?』」

フレンダ「『”お、俺と一緒にお風呂ブヒヒヒヒィィィィィィィィィィッ!”とか言ったら、催涙スプレーぶっかけて逃げる訳よ?』」

フレンダ「『絹旗か、出来れば麦野の所へ。しっかり去勢してくれると思う訳だから』」

628 : 以下、名... - 2015/11/23 13:46:42.75 se1+N6ta0 1695/1732

フレンダ「『あ、そうそうアドレス――え?伝言?”アイテム”のみんなに?良い訳?』」

フレンダ「『下っ端――じゃなかった、浜面は?……あ、あぁ、良い?マル?マジで?』」

フレンダ「『滝壺……は、ヨロシクやってる訳だし――やらしく?ナイナイ、浜面にそんな甲斐性ある訳ない訳……あるのかないのか面倒臭いな!』」

フレンダ「『ま、居場所見つかったっつーんだったら、あたしがとやかく言う所はない訳だけど……あーでも、ね。もうちょっと選んで欲しかったな』」

フレンダ「『あたしヴィジョンじゃ、10年後に酒代せびる浜面の姿が……うん、まぁ幸せだって言うんだったら、良い訳だけどさ』」

フレンダ「『絹旗ー、もー、相変わらずB級映画ばっか見てそうだし……んー……あたしからは別に、まぁそこそこ元気でやってる訳だろうし』」

フレンダ「『むしろ絹旗がヘコんでる所が見たい訳。物理的にも精神的にも』」

フレンダ「『と、すると麦野――うん、麦野か』」

フレンダ「『……うん、それじゃみんな揃った時に言って、くれる訳?……うん、そう、浜面も一緒に。浜面も一緒にね!』」

フレンダ「『大事な事だから二度言った訳だけど、く・れ・ぐ・れ・もっ!浜面と、一緒にねっ!』」

フレンダ「『あー……えっと。麦野、麦野沈利さん』」

フレンダ「『……あたし、さ。前から思ってた、うん、そうねー……初めて面通しされた頃ぐらいかな?結構前から思ってた訳』」

フレンダ「『いつか、言わなくちゃなーとは思ってた訳だけど、ね。いい機会だし、言わせて貰う訳』」

フレンダ「『……』」

629 : 以下、名... - 2015/11/23 13:48:08.63 se1+N6ta0 1696/1732

フレンダ「『――麦野、その上下同じブラントで合わせる癖、何とかならない訳?ぶっちゃけ超絶ダサい訳よ、いやマジでマジで』」

フレンダ「『あぁうん、似合ってない訳じゃない訳ね?そこはまぁタッパあるしー、スタイルいいしー、まぁ良いっちゃ良い訳なんだけど……』」

フレンダ「『でもどう見てもOLのおばはんにしかね、うん、あんま言いたくない訳だけど、実年齢がプラス10ぐらいされて見える訳でさ』」

フレンダ「『……うん、その、これは墓場まであたしが持って行こうって思った話な訳だけど――一回行ったからノーカンね?』」

フレンダ「『あー、その、前にさ?カチコミしたじゃん?麦野がウッサいっつったチーマ×んトコ』」

フレンダ「『そん時ね、ボコったヤツが今の浜面みたいにパシリんなった――憶えてるかなー?……あぁまぁ、その子がさ、あたしに聞いてきた訳だ』」

フレンダ「『”あ、あの人に惚れたんですけどっ!娘さんは幾つの時の子ですかっ!?”』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……えっとね、麦野に惚れ込んだのは良い訳よ。別にね?きっとその子はデスザウラ○派だって訳だから、うん』」

フレンダ「『あたしみたいに正統派のゴジュラ○派とは違って、荷電粒子砲にロマンを感じる人だって居る訳だしね、そこは』」

フレンダ「『絹旗みたいなシールドライガ○も居れば、滝壺みたいなグスタ○が良いっての居る訳だし、まぁ人それぞれって訳よ、うん』」

フレンダ「『でもその、どっこで何を勘違いしたのは分っかんないんだけど、えっと……』」

フレンダ「『……絹旗をねー、麦野の娘だと……うん、思ってたらしくってねー……』」

フレンダ「『……』」

630 : 以下、名... - 2015/11/23 13:49:50.04 se1+N6ta0 1697/1732

フレンダ「『い、いやだってあたしは悪くない訳!あたし悪くない訳よ!』」

フレンダ「『だって絹旗と目と髪の色も似てる訳だし!サイケな性格もそっくりって訳!あたし言ったんじゃない訳だけどさ!』」

フレンダ「『それに当時の絹旗ってヒョウ柄の、どう見ても”ヤンママに着せられた感”する服着てたし!そっちも悪いと思う訳!』」

フレンダ「『だから、ね?こうもっと若々しい服を着た方がね、誰も得をしない訳で』」

フレンダ「『あんたからも、それとなーく、麦野を傷付けないように言っ――はい?』」

フレンダ「『え、何?聞いてたって、何を――』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『い、いや違う!違う訳よ麦野!これには事情がね、事情がある訳!』」

フレンダ「『そう、これはきっと――』」

フレンダ「『――敵の能力者の攻撃って訳!うんっ!』」

フレンダ「『”死ねっ”!?死ねって酷くない訳!?つーかあたし死んだわ!一回死んだ訳だし!』」

フレンダ「『そこら辺の事情を汲みなさいよ!あたしだって心理的にトラウマを負った訳だし!』」

フレンダ「『……え?トラウマは元々心理的なもの?そうなの?』」

631 : 以下、名... - 2015/11/23 13:53:14.61 se1+N6ta0 1698/1732

フレンダ「『あー……なんかね、こう、元気そうって言うかさ、電話口から浜面の悲鳴が聞こえ――うんっ!気のせいな訳よねっ!知ってた訳っ!』」

フレンダ「『正直、あんま前後の事憶えてないし……実感もないんだけど、さ。まぁ、うん』」

フレンダ「『何かね、あたしの能力、成長する余地があるんだとかで、うん。魔術?眉唾モンだけど』」

フレンダ「『だから、まぁちょっくら行ってくる訳。だから、その』」

フレンダ「『……あたしの妹を、お願いします』」

フレンダ「『……うん、うんっ』」

フレンダ「『――行ってくる、訳よっ!』」

632 : 以下、名... - 2015/11/23 13:55:08.95 se1+N6ta0 1699/1732

――CC学区 深夜

上条「えっと…マークマーク……」

上条「……あ」

マーク「こんばんは、お疲れ様です」

上条「あ、どもこんばんは。すいません、なんか昨日は約束すっぽかしちゃって」

マーク「あぁ別に良いんですよ。このクソ寒い中、朝までずっと待ってただけですから、えぇ」

上条「さーせんしたっ!この埋め合わせはいつかっ!」

マーク「いえいえ、お気になさらず。実はボスが」

上条「バードウェイが?」

マーク「――っていうコーヒー美味しいですよね?」

上条「話題の展開が強引すぎるだろ!また裏で何かやってんのかあの違法ロ×!」

マーク「それは実家に帰った時のお楽しみ――おっと、これ以上は言えません!」

上条「ほぼ言ってますよね?それつまり俺の実家であの悪魔が暗躍してやがるって事ですもんね?」

マーク「……俺に止められるとでも?」

上条「帰省したくねぇっ!年末帰って来い言われてるけど帰省したくねぇよなっ!」

マーク「でしたらお仕事ありますよ?愉快な仲間と一緒にイギリスですったもんだの大冒険!」

上条「お前らとは関わり合いになりたくないつってんだよコノヤロー!」

633 : 以下、名... - 2015/11/23 13:56:42.28 se1+N6ta0 1700/1732

マーク「いやあのですね?学園都市から戸籍のない人を海外出国、更には経歴ロンダリングで戸籍作成」

マーク「当面の生活費や、見習い程度にまで魔術を叩き込むってぇのは、最低でも6桁行くんですが」

上条「え、円で?」

マーク「ドルに決まってんだろ。つーかあんた、これ以上ボスに借り作ったら、マジで奴隷ルート確定すんぞ、あぁ?」

上条「大丈夫さっ!俺がDOGEZAをすれば数億ぐらいキャッシュで貸してくれるかも知れない友達が居るからっ!からっ!」

マーク「それ、返済先が変わるだけで実質は何も変わってないんじゃ……?」

フレンダ「ていうか希望的観測であって、何一つ根拠は無い訳よね」

上条「誰のためにやってると思ってんだっ!?そりゃ俺がしたいからに決まってるけども!」

フレンダ「セルフ完結しやがった訳ね」

マーク「まぁ、あんだけ格好つけといて、今更人様の責任には出来ないでしょうからねぇ」

上条「ウッサいな!つーかマークはなんでそんな事まで知ってやがる!」

マーク「話の流れて何となく、『あ、またか』みたいな?違います?」

上条「またの意味がサッパリ分からないですね?いやマジで」

634 : 以下、名... - 2015/11/23 13:57:32.48 se1+N6ta0 1701/1732

マーク「まー、我々に対する負債はいつか必ず取り立てるとして――こちらのお嬢さんを運べば良いんで?」

フレンダ「ヨロシクって訳ー」

上条「お前なんか軽くなった――いや、前から軽かったな。気のせいだったわ」

フレンダ「ツッコミが面倒臭くなって諦めたっ!?」

マーク「んで荷物はバック一つで良いんですか?ナントカという鎌は?」

上条「あーそう言えば……どこ行ったんだ、あれ?」

フレンダ「んーっと、ちっょと待つ訳」 ヒュインッ

マーク「ほう」

上条「初めて……じゃないが、殆ど初めてだかな。お前の能力見るのって」

フレンダ「あー、それがさー、聞いて聞いて?『兵器庫艦(バックヤードキャロット)』の能力が何かおかしくなってる訳」

上条「不安定だとか言ってたっけ、確か」

フレンダ「いや、安定したっちゃしたんだけど……その、この武器しか取り出せなくなった訳だ」

上条「あー……」

フレンダ「一応、今までとは違って『送り返す』のも出来るんだけど、さ。なんかこう、使い勝手が悪いっつーか」

マーク「……それ、『魔剣』としても有名ですよ?『円卓』には及ばないですが」

635 : 以下、名... - 2015/11/23 13:58:53.03 se1+N6ta0 1702/1732

上条「使う方がこんなんだから、まぁいいんじゃね?ショボイ持ち主だって分かれば、脅威度も低くなるだろうし」

フレンダ「ちょっと!誰がショボイって誰がっ!?」

上条「あー、もうウルサイウルサイ。さっさと行――」

???「――ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおっと待ったぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

フレンダ「だ、誰よっ!?」

上条「レッサーだろ」

レッサー(???)「上条さんの鬼っ!悪魔っ!高千穂っ!人のボケを途中で潰すなんて非道を!」

レッサー「そんな事しちゃいけませんって学校で教わりませんでしたかっ!?」

上条「特殊な養成学校でしかやってねぇよ!診療報酬と生活保護の不正受給させるようなブラックな学校ぐらいしかなっ!」

レッサー「とうっ!」 スタッ

フロリス「いや別にジャンプする程の高さじゃなかった、よね?」

ランシス「……お約束、必要……」

ベイロープ「あぁもう他の結社さんの前なのに……ッ!」

上条「あぁうん、マークさん。この件はどうか一つ、うん」

マーク「はい、何かのイベントだと思って流します」

レッサー「聞いて下さいよ!『それ』の所有権はこちらにあるんですからねっ!」

フレンダ「これ?この鎌?」

レッサー「イェエッスアイドゥ!」

ベイロープ「文法間違ってる」

レッサー「私達が死ぬ思いでボコられて!『あ、やっぱ鎌返しときゃ良かったなー』と割とマジで思ったんですから!さぁさぁ早く返して下さいなっ!」

フレンダ「あ、うん。どうぞ」 ヒョイ

レッサー「あ、これはご丁寧にどうも――って、良いんですかっ!?」

フレンダ「え、欲しい訳よね?これ?だったらどうぞっていうか」

636 : 以下、名... - 2015/11/23 14:00:57.47 se1+N6ta0 1703/1732

レッサー「……えっと……?」

フレンダ「ぶっちゃけダサい重い格好悪い訳。どっかに捨てても戻ってくるし、呪いのリ○ちゃん人形かと思った訳」

レッサー「何たる暴言を!いいですかー、コレにはですね、我らがブリテンの血と血と血の歴史が――」

フレンダ「ホントに縁起悪いなっ!?」

上条「……なんだこのカオス……」

鳴護「こ、こんばんわっ当麻君!」

上条「アリサまで来てたのか」

鳴護「うん、レッサーちゃん達帰るって言うし、お見送りしようと思ってお姉ちゃんに送って貰いました」

上条「まさか同じルートで帰るとは思いもしなかったが……うん?」

鳴護「何?あたしのリュックに何かついてるかな?」

上条「いや、ついてるじゃなくって。なんかこう、不自然に膨らんでんなって」

鳴護「んー?大したものは入れてなかった思うんだけど――」 ガサゴソ

マーリン「……」

上条鳴護「「……」」

マーリン「『ワイはマーリン!ブリテン一の魔術師やで!』」

上条「黙ってろ謎生物。映画のグレムリン並みに意味不明な生態しやがって!」

マーリン「てか一年戦争やのに次々と新MS出てくるってありえへんよね?ギリア○にーやん働かせ過ぎやっちゅーの」

上条「それ多分グロムリ×な?一目見た時『あるぇ?ぴっけるく○がガンダ○出てる?』って思ったけどもだ!」

鳴護「当麻君、そんなボケでも拾うんだ……?」

637 : 以下、名... - 2015/11/23 14:02:40.91 se1+N6ta0 1704/1732

上条「お前もイギリス帰れよ!何魔法少女量産すべくアリサにくっついてんだよっ!」

マーリン「最近の魔法少女は変身する時エゲツない脱衣するねんて。マジカルなシェフとか」

上条「――アリサ、今日から魔法少女頑張ってなっ!!!」

鳴護「当麻君っ欲望まっしぐらだよねっ!……ていうか、見たいんだったら別にいいのに」

上条「――はいっ、という訳ですねっ!本日のゲストはマーリンさんなんですけどもっ!」

マーリン「清々しいまでゲスい話題の転換法やねぇ。嫌いやない、決して嫌いやないけども」

上条「マジな話、あの鎌ってどうなの?フレンダ的に離して大丈夫か?」

マーリン「あかんて。離したら死のぉわ」

上条「……マジで?」

マーリン「うんマジで。っていうか、今のあの子の『本体』は鎌みたいなもんやし」

上条「ヴァルキリエだっけ?」

マーリン「武具精霊になっとぉ。やから、魔術的に切り離されたら……まぁ死ぬんちゃうの?実験しよぉ訳にもいかんし」

上条「アリサとは違うのか?」

マーリン「アリサはんは魔神の欠片、あの子ぉは『尸解仙(しかいせん)』やな」

上条「えぇっと……?」

マーリン「まぁ気にせんと。不老不死ゆうても仙人やないんやし、寿命になったらぽっくり死によぉわ」

上条「(……どういう事?)」 コソコソ

638 : 以下、名... - 2015/11/23 14:04:16.52 se1+N6ta0 1705/1732

マーリン「(ワイの推測やけど、アリサはんもあの子も『想い』とかが固まった存在なんよ)」

上条「(……あぁ、他の知り合いにもそういうの居るわ)」

マーリン「(本人が思えば思い込んだままの影響が、ダイレクトに肉体へ反映されよぉ。やから『不老不死』やって思い込めば、そうなるんよ)」

上条「(スゲぇな思い込み!)」

マーリン「(もしこれが徳を積んだ仙人やったら、何百・何千年平気で生きよぉんやけども、二人とも徳はおろか修行もしてへんよね?)」

マーリン「(んでまともな人間はそう思わへんよね?普通に年取って、普通に死によぉ。血が流れるだけでショック死もするし)」

上条「(ショック死の意味間違えてるが……まぁ分からないでもない)」

マーリン「(『ワイは歳とらへん!絶対にや!』ってぇ思い込もうとしても、普通は無理やって。歳とるって)」

マーリン「(その証拠に、アリサはんって『普通』に過剰な所あらへん?なんか無理して普通になろうしている感がある――いや、あったっちゅーか)」

上条「(それってもしかして、薄々自分の事に気づいていて、それでも他の人と同じが良いって?)」

マーリン「(としか思えへん……ま、心配は要らへんよ。アリサはんもあの子も、『自分は普通の人間や』と思っている以上、人間以外の何かにはならへん)」

マーリン「(もし何かの弾みで不老になったら、ワイがまとめて面倒看よぉわ)」

上条「(……悪い)」

639 : 以下、名... - 2015/11/23 14:06:18.43 se1+N6ta0 1706/1732

マーリン「うん、やからワイは日本に残ってアリサはんのマスコットをやね」

上条「おーいレッサー!お前らの先生忘れてんぞーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

マーリン「速攻裏切りよった!?」

レッサー「あ、すいません。これはつまらないモノをわざわざ」

マーリン「紅葉おろしだけはっ!絵的に綺麗な分だけよりエグさが引き立つ紅葉おろしだけは堪忍してぇな!」

上条「もふもふはどうでもいいが、今の話聞いてたか?」

レッサー「はい、ウチのランシスが軽く調べた所、一体化しているようで切り離すのは少々手荒な方法しかないようで」

上条「手荒?」

レッサー「えぇ、物理的にバッサリスッパリ後腐れなく」

上条「”少々”?それが”少々”?」

レッサー「なのでウチで、『新たなる光』で引き取る事にしましたよ、はい」

上条「へー……え?」

フレンダ「ちょっと待つ訳!そんなの聞いてない訳よ!?」

レッサー「『剣』を召んで扱う私達とは共通点もありますし、まぁ悪いようにはしませんて」

フレンダ「こっちのオッサンについてくのも不安な訳だけど、あんた達もあたしとそんなにそんなに歳変わらないし……?」

マーク「オッサン……」

レッサー「――ならフレンダさん!敢えて伺いますがっ!」

レッサー「あなたっもしかしてみょーに身体能力が高いとか、近接戦闘がやたら高いとかそういう心当たりはありません?せんせん?」

フレンダ「な、なによいきなり」

レッサー「正直に、どうです?」

フレンダ「んー………………っと、言われてみれば、思い当たる節がない訳でもない、かな?」

640 : 以下、名... - 2015/11/23 14:07:45.32 se1+N6ta0 1707/1732

レッサー「他にも電撃喰らったのにダメージが少なかったり、刃物で切られてるのにあんま痛みを感じなかったり」

フレンダ「切られるようなヘマはしなかった訳だけど……確かに!そう言えば第三位とやり合った時も!」

上条「また意外な所で意外――でも、ない名前が出て来やがったな」

レッサー「おかしいとは思いませんでしたか?何か他の人とは違う――かといって『能力』という訳でもないのにっ!」

フレンダ「そうよねっ!」

レッサー「それはフレンダさん、答えは簡単ですよ――あなたは、選ばれた……ッ!!!」

フレンダ「あ、あたしが?」

レッサー「世の中には『原石』と呼ばれる産まれながらしてに才能を持つ、極々一握りの人達が居ます――ですが!」

レッサー「その多くは才能を生かせる事なく一生を終える。あなたも心当たりありませんか?」

フレンダ「そうよっ!あたしもアポート前から使えたからスカウトされたのに、学園都市じゃ現状維持しか出来なかった訳!」

レッサー「それはですねー、ベクトルの違いなんですよねー、えぇはい」

レッサー「あなた方は『科学』という面で世界を解き明かそうとし、我々は『魔術』を使って世界を表そうとしました。その違い!」

フレンダ「そ、それってまさか……!?」

レッサー「そうです!あなたの才能は魔術サイドでこそ花開くモノであって、科学サイドが居場所ではなかったのですよ……!」

レッサー「さぁおいでませ我らが魔術結社(未満)『新たなる光』へっ!今ならたった数年で引き返しが出来ない魔術の真髄を伝授しましょうっ!」

フレンダ「マジで……!?」

上条「……あのー、もふもふ?」

641 : 以下、名... - 2015/11/23 14:08:41.34 se1+N6ta0 1708/1732

マーリン「はいな」

上条「レッサーにフレンダの事教えたんだ?」

マーリン「いや何も伝えてへんよ。口から出任せ言っとぉだけやね」

上条「それでも大体合ってんのがスゲェな!」

マーリン「代々の王様、カリスマっちゅーんか、口は上手いヤツ殆どやしなぁ。ま、エエけど」

上条「ていうか俺達が魔術使ったら、エラい目に遭う設定はどうなんだ?」

マーリン「フレンダはんは一回死んだから、あんのボケの呪いは解けとぉと思うわ。念のため、イニシエーションん時にもっかい解除してみるけど」

上条「呪い……?」

マーリン「あ、ほら、話まとまったようやし」

フレンダ「決めたわっ!あたし魔法少女になる訳っ!」

上条「おいレッサーテメー何吹き込みやがったっ!?ベクトル的に間違いでもないような、微妙に否定しづらいジャンルへ行ってんぞ!」

レッサー「いやあの、話をちょこっと盛ったら、つい」

上条「具体的には?」

レッサー「私達が魔法のプリンセスが治める魔法の国から来た事になっていましてね」

上条「間違ってない!間違ってはないが!エリザードさん見ちまうと、うんっ!なんだかなぁ!」

642 : 以下、名... - 2015/11/23 14:10:04.72 se1+N6ta0 1709/1732

マーク「……あのー、それで私はどうすりゃいいんで?こちらのお嬢さん方を連れ出すだけでいいんですか?」

上条「すいません、なんか話の流れでそんな感じに」

マーク「あー別にいいんですよ。話を聞くにウチよりか待遇は良さそうですしね。歳の近い者同士、仲良くやるのがいいでしょうな」

上条「本音は?」

マーク「これ以上ガキのお守りなんて真っ平ゴメンだ」

上条「あー……うん、魔術結社だもんね」

マーク「ボスには上条さんから伝えといて下さい。説明するのが面倒ですんで」

上条「一応聞いておくけど……」

マーク「脱出費用は基本料金5倍増し。ボスの機嫌次第では倍率が変わりますんで、まぁ頑張ってご機嫌取ってやって下さいな」

上条「ですよねー」

643 : 以下、名... - 2015/11/23 14:11:51.34 se1+N6ta0 1710/1732

レッサー「大変ですねー。なんでしたら肩代わりしましょうか?」

上条「気持ちは有り難いんだが……債務者が変わるだけで好転はしないだな、これが」

上条「どうせ踏み倒すんだったら、まだ大きな所の方がスルーしてくれるかも知れないし!」

マーク「聞いてますよー?まぁ別に放置されてもウチの財政はビクともしませんが、ボスは面白半分で無茶な取り立てするような人ですんで」

上条「人が折角忘れようとしてるのに!」

マーク「忘れるだけじゃ根本的な解決にはならないと思いますが……っと、そろそろお時間です」

上条「ん、それじゃお前ら、まぁ――」

フレンダ「――ちょ、ちょっと時間いい訳?」

マーク「まぁ3分ぐらいなら」

フレンダ「ん……っと、上条?よね?」

上条「あぁ」

フレンダ「その、色々ありがとって訳。感謝してる、から」

上条「あぁいいって別に。慣れてるっちゃ慣れているし、最初に言ったろ?『一身上の都合で』みたいな」

フレンダ「……よく拾う訳?」

上条「人よりは、まぁ少しだけ」

644 : 以下、名... - 2015/11/23 14:13:42.80 se1+N6ta0 1711/1732

フレンダ「あんま人拾うって体験ないと思う訳――だけど、あー、その、ね、なんつったらいいのかわっかんない訳だけどさ」

フレンダ「色々ゴメン。蹴ったり蹴ったり、あと蹴ったりスタンガン使ったりして、反省は――」

フレンダ「……」

フレンダ「――は、してない訳だけども!」

上条「しよう?そこはしようぜ?無辜の一般人相手に暴力振るったのは、これから改善しよう、なっ?」

フレンダ「あー……っとごめんなさい」

上条「いやだから別にいいって。お前は俺を一方的に痛めつけたー、とか思ってるんだろうけど、あれはあれで引き分けだったから」

フレンダ「引き分け?」

上条「だからまぁそんなに気にすんな。少なくとも俺の中ではイーブンになってるから」

フレンダ「へー、なんで?」

上条「いやほらさ、お前が俺をバチって転がした後、こう、俺の顔の脇で屈んだじゃん?」

上条「膝つかずにかかと揃えて、膝の上に両手乗せるっぽい格好で」

フレンダ「やった……かな?でもそれがどうして引き分けって訳なのよ?」

上条「パンツ見えたんだよ、うん」

フレンダ「……………………はい?」

645 : 以下、名... - 2015/11/23 14:16:04.10 se1+N6ta0 1712/1732

上条「確かにお前は俺を出し抜いた!あぁそれはその通りだろう!俺はお前に一杯食わされたさ!」

上条「だがしかぁし!俺はお前のパンツ、具体的には黒レースを見ている!」

上条「暗がりの中でありながらも至近距離でダイレクトに見えそれはまさに圧巻の一言に尽き!つまり――」

上条「――あの時、俺達は実質的には相打ちだっ――」

フレンダ「――せいやっ!」 ゲシッ

上条「そげぶっ!?」

フレンダ「死ね!っていうか死ぬ訳!なんでこんな時にそんな事言う訳よ!?ネタかっ!あたしはネタ要員かっ!?」

フレンダ「違う訳よ!もっと、こう、しんみりして『寂しくなるな……』的な空気じゃなかった訳!?あぁっ!?」

マーク「(……あれ、どう考えてもわざとですよねぇ?)」 ボソボソ

マーリン「(やんなぁ。上条はんは基本アホやけど、真の意味ではクレバーなお人やし、多分空気読んだ上でぶち壊しとぉだけやと思うわ)」 ボソボソ

上条「……」

フレンダ「っていうか聞いてる訳!?きーいーてーるーわーけーかーっ!?」 ガックンガックン

レッサー「もしもーし?オチてますからその人、追い打ちはそのぐらいにして下さいなー」

フレンダ「……あぁまた結局ちゃんとゴメン出来なかった訳……!」

646 : 以下、名... - 2015/11/23 14:18:08.86 se1+N6ta0 1713/1732

鳴護「ま、まぁまぁ!それよりもお時間大丈夫?そろそろ3分経っちゃってるんだけど?」

レッサー「あ、すいません。最後の台詞をムードたっぷりにもっう一回言って下さいませんか?」 カチッ

ベイロープ「おい変態自重しろ携帯で撮ろうとするな……って、本当に気絶してるのだわ」

フロリス「『聖人』ってのも嘘じゃないんじゃなーい?ま、なり損ないって話だけど――ランシス?」

ランシス「……んー……?」 ツンツン

レッサー「どうしました?まるで今から置き引きしようとしているストリートギャングみたいな挙動不審っぷりですよ?」

ラシンス「……いい事考えた……マーク、さん?」

マーク「さんは結構です。それで何か?」

ランシス「あと、二人増えても……大丈夫?」

マーク「何とかなります――が、二人ってのは……」 チラッ

上条「……」

鳴護「当麻君っ!?ダメだよ、勝手に誘拐するのは――って、ランシスちゃん?」 ギュッ

ラシンス「……ん」

鳴護「キャラに合わないぐらい、しっかりとした力であたしを掴んでるんだけど。ど、どうしたのかな?」

ラシンス「……だから”二人”……」

鳴護「待って!?え!?ていうか二人ってあたしも!?被害担当の当麻君だけじゃなくて!?」

647 : 以下、名... - 2015/11/23 14:19:45.83 se1+N6ta0 1714/1732

鳴護「レッサーちゃん!お友達の凶行を止めて!止めてあげ――」

レッサー「あ、ベイロープ。そっちの足持って下さいな。フロリスは手を」

鳴護「お仕事早いよねっ!後先考えないだけだと思うけど!」

フレンダ「あー……まぁあんたも誰か知らない訳だけど、生きてるだけで幸せだって思える訳よね?うんうん」

鳴護「その下り一回やりました!だからあたしの居場所はこっちであって――」 グッ

ランシス「……うん」

鳴護「えっと、ランシス、ちゃん……?」

ランシス「……幸せに、するから……っ!!!」

鳴護「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?ランシスちゃんルートは、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

鳴護「っていうか当麻君っ!?当麻君起きてるよねっ助け、助けてっ!?」

上条「……」 ゴソゴソ

鳴護「ほらこっそり写メ撮ろうとしているモノ!気絶したフリして撮ろうとしてるから!分かってるから!」

鳴護「だから、だからっ!」

フレンダ「……あのさ」 ポン

鳴護「は、はい?」

フレンダ「結局、死ぬ気になれば何でも出来る訳!ファィッ!」

鳴護「助けてーーーーーーーーーーーー!?おかーーーーーさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!」

フレンダ「あたし達の戦いはまだまだこれからって訳よね!」 グッ



――『胎魔のオラトリオ アフターシナリオ”死者の書”』  -終-

648 : 田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU - 2015/11/23 14:25:19.02 se1+N6ta0 1715/1732

投下は以上となります。お付き合い頂いた全ての方に深く深く深く感謝を
最後はやっぱりしょーもないオチでした、えぇ本当に

スレ立ててから約19ヶ月、文字数換算でトータル約137万語、まぁ色々ありましたが……あったかな?特になかったような
本当にありがとうございました。ではまた

652 : 以下、名... - 2015/11/23 23:18:54.10 0RTUU1B60 1716/1732

19か月間お疲れさまでした!次回作待ってます!
それとレッサーの買いに行ったオロシガネはどういう意味ですか?

659 : 以下、名... - 2015/12/01 12:50:29.07 lYGR21oS0 1717/1732

>>652

――『もみじおろし』


レッサー「ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃちゃん、ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃかちゃんちゃん♪」

ランシス「……ちゃかちゃちゃちゃちちゃちゃちゃちゃかちゃっちゃんっ……♪」

レッサー「ハーイやって来ました『新たなる光』の三分で出来るNice Cooking Show!!ゲストは昨日に引き続きランシスさんですっ!」

ランシス「いえーい……イマイチ人気ないぜー……」

レッサー「!今日のお料理はなんっと『もみじおろし』ですねっ!」

ランシス「……もみじおろし?」

レッサー「え?知りません?もみじおろし?あー、まぁJapanの西日本で薬味として使われるのが一般的ですねー」

ランシス「……大根おろしと、違うの?」

レッサー「の、一種だと思って下さいな。具体的には、すり下ろす前の大根に穴を空け、唐辛子やニンジンなどぶっ込みます」

レッサー「その大根をゴーリゴーリすり下ろせば――なんとっ!紅い色の大根おろしに早変わりっ!『もみじおろし』の完成ですっ!」

ランシス「わーい……」

レッサー「大根は種類やすり下ろした時間、はたまた季節によって辛みが変化します。同じ辛み大根(※という種があります)でも辛さは一定していません」

ランシス「それ……大丈夫?料亭屋さんで、使いづらくない?」

レッサー「心配ご無用っ!そんな時には『もみじおろし』で代用する事により、一定の辛さを保ったお料理を出せるってぇ寸法でさぁ!」

ランシス「へー……」

レッサー「色も綺麗ですし、ちょいと和的な辛みが欲しい時には是非付けたい一品!付け合わせと言って侮るなかれ!」

ランシス「ふーん……?」

レッサー「あ、でもですよねぇ。やっぱり唐辛子を入れるから辛くなるとはいえですよ、やっぱり大根は辛い方が美味しいと思うんですよね」

ランシス「辛くすり下ろせる秘訣、あるの……?」

レッサー「よくぞ聞いてくれましたっ!でーでんっ!」

ランシス「卸し金ー」

660 : 以下、名... - 2015/12/01 12:57:51.59 lYGR21oS0 1718/1732

ランシス「わー、パチパチパチパチ……」

マーリン「いや『まいど』やあらへんよ!?何この企画!?なんでワイ縛られとんの?」

レッサー「はーい、それじゃこの食材をですねー、卸し金に当てて-」

マーリン「ちょ、ちょう待ちぃ?あんな、この体勢ワイ的には非常に危険な気がす――」

レッサー「――力の限りおろしますっ!!!」 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリッ!!!

マーリン「ギニャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

ランシス「……あ、綺麗な緋色」

レッサー「裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者がっ!!!」

ランシス「あー、うん。教皇さんと繋がってた件……」

レッサー「巨乳派だと信じていたのに!よりにもよってちっぱいばかりが集まって!」

ランシス「話の主旨からズレてる……」

マーリン「――ってぇ待ちぃ!ワイの話を聞きぃよ!」

レッサー「我々を裏切ってジジイと内通されていたマーリンさん、一体どのようなお話ですか?」

マーリン「裏切りって……や、その、雑談しとっただけやんか!?その証拠に『手心加えてぇな(はぁと)』ってぇ釘刺しとったやん!」

レッサー「その釘がぶっとすぎんだろコノヤローって話ですよ!四一で足腰立たなくなるぐらいボコられてた挙げ句、朝までお説教ってどんな拷問ですかっ!?」

マーリン「……ま、まぁまぁ!マタイはんの『ほどほど』が『半殺し上等』レベルとまではワイも想像してへんかったけども!」

マーリン「でもアレやで!アンタらも悪いんやで!?分かるぅ!?」

レッサー「はい、ゴーリゴーリゴリーゴリッとな」 ゴリゴリゴリゴリッ

マーリン「あだだだだただだだだただっ!?地味に!地味にメッチャ痛くてリアクション取りづらいわアホが!」

ランシス「……体、少しだけすり下ろされてるのに……その感想、なんだ?」

マーリン「そぉや無ぉて!仮にアンタらへ情報渡しとぉだらどーするのん?っちゅー話や!」

661 : 以下、名... - 2015/12/01 13:05:35.67 lYGR21oS0 1719/1732

レッサー「あぁ上条さんが庇ってましたっけ、『死者』の」

マーリン「あんたの性格やと即滅殺や悪即バッサリとかしてたんちゃうんかっ!?えぇっ!?」

マーリン「そんな事してみぃや好感度はダダ下がるっちゅーねん!めっさ下がるわ!」

レッサー「先生のご指導の賜物です」 キリッ

マーリン「やめてくれへんかな?ワイが育てたみたいに責任転嫁するのんやめてくれへん?いやマジでマジで」

マーリン「『取り敢えずブリテンの敵は殺しとき』みたいな事言ぅてへんよね?カエル野郎は殺っとけみたいな言い方はしたけど」

ランシス「言ってる言ってる……」

レッサー「いいんですよっ別に!アレはアレで殺った後に号泣して、『私もこんなことしたくなかった……!』みたいに言っとけば!」

レッサー「しかもその後にっ!『今夜、一人になりたくないんです……だから、側に居て下さい……!』っときゃルート確定したってもんですよ、えぇっ!」

マーリン「ヤイヤイ言うなや!第一アンタアレやんかっ!?そんな腹芸出来るんやったら『濁音協会』本部乗り込んどぉ時になんでせーへんかったのよ!?」

レッサー「そ、それは……ホラ!色々あったんですよっ!」

マーリン「色々てなんや!色々て!ワイ知ってんねんで!なんやかんやチャンスはあったものの、全部が全部意識しすぎてフイにし――」

レッサー「――はーい、ゴリゴリゴリゴリっと」 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリッ!!!

マーリン「ギイィィィィィィィィニャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

レッサー「……と、言う感じで、綺麗にすり下ろせましたかー?どうですかー?」

マーリン「……」

ランシス「レッサー……ワタ、出てる……」

レッサー「あ、ちなみに鑑識のスラングで『もみじ』は”アスファルトで削られた仏さん”も意味しますんでー、使い方には注意しましょーねっ!」

ランシス「……どこで使うの……?」

レッサー「でわでわ皆さんっ!3分くらいクッキングまた明日っ!ばいばーーーーいっ!」

ランシス「明日は……マーリン風フォアグラ、です……」

ベイロープ「――って何やってるのよあなた達」

レッサー「今ですね、3分ぐらいクッキングの予行演習を」

ベイロープ「あ、ごめん。聞いといてなんだけど、お腹いっぱい――ってなにこれ?ハギス(※スコットランドのホルモンの腸詰め)?」 ヒョイッ

レッサーランシス「「あ」」

ベイロープ「ってマズっ!?半年振りにお風呂に入れた犬の風味がするわ!?」

レッサー「あー……ま、まぁ色々ありましたが!そんな訳で『もみじおろし』!ご家庭でも是非作って下さいねーっ!」

ランシス「胃薬、はい……」

ベイロープ「あ、はい、どう、も?」


-終わり-

668 : 以下、名... - 2015/12/08 11:49:31.06 PJAvCFjM0 1720/1732



レディリーと『アイテム』


669 : 以下、名... - 2015/12/08 11:51:55.84 PJAvCFjM0 1721/1732

――『アイテム』のアジト

浜面「……寝た?」

絹旗「滝壺さんが超寝かしつけている所です……っていうか、何なんですか?あの超ハピレスプリキュア?」

浜面「いやー……うん、なんかなー学校で流行ってるとかで」

絹旗「変身しないでダラダラッとしている、超B級映画みたいに超素敵でしたが!」

浜面「絹旗にはご褒美ですもんねー」

絹旗「超言いたい事があるんだったら超言えよ、あぁ?」

浜面「そ、そうやって直ぐ暴力振るおうとするのよくないっ!よくないよっ!女の子なんだからねっ!」

絹旗「浜面に女の子認定されても、それはそれで貞操の危機を超感じる訳ですけども」

浜面「あのさぁ絹旗さん?いい機会だから言わせて貰うけど、お前滝壺に変な事吹き込むの止めてくれねぇか?」

浜面「『男の半数は常にエロい事を考えてる』とか、微妙に否定しづらくて困るんだけど」

浜面「多分変な女性誌の受け売りだろうが、ありゃ事実に基づいてなんてないからね?ノリでデタラメ書いてるだけだぜ」

絹旗「ほぅ。では超違うんですか?」

浜面「半数じゃなくてほぼ全てだな」

絹旗「ダメじゃないですか超ダメじゃないですか」

浜面「わ、分かってないな!こないだタクシーの運ちゃんに聞いたけど、政治とスポーツの話は荒れるから、取り敢えず男の客はエロ振っとけば鉄板だって!」

絹旗「あぁそれ多分浜面が超エロそうな顔してたからだと思いますよ」

浜面「どういう顔?俺いつもエロそうなの?」

絹旗「具体的にはお風呂上がりで超薄着になった麦野を見る目ですね」

浜面「おっとそれ以上は言うなよっ!場合によっては侮辱罪で法廷で倍返しだからなっ!?」

絹旗「……侮辱罪というのはですね、こう、『本当の事を超言われてバカにされた』って事であって」

絹旗「って麦野からも超言ってやって下さいな、この浜面に」

麦野「……んー……」 ピッ

絹旗「麦野?超何やってんです?」

麦野「あーうん、今ちょっと浜面の携帯見てたんだけどね」

浜面「オマっ!?勝手に!?」

麦野「基本的にはエロサイトとエロサイトとエロサイトとパチスロ攻略サイトしか行ってないんだけど」

浜面「だって仕方がないじゃんかよ!マジハ○の新台が出るんだからねっ!」

浜面「しかも今回は恒例の『ハロウィンなんてクソ程も関係ない季節』を破って、ハロウィン終了から一ヶ月で発表したんだからさっ!」

絹旗「ちょっと意味が超分からないですね」

麦野「まぁ浜面のアレなのは今更だとして――」

麦野「――着信履歴の、この『大将』って人、アレよね?いつも面倒臭い事に首突っ込んでる人よね?」

670 : 以下、名... - 2015/12/08 11:53:29.76 PJAvCFjM0 1722/1732

麦野「そんな人とどーして長々と話してるのかにゃー?ねぇ、はーまづらぁ?」

浜面「そ、その年で『にゃー』とかキツ――」

麦野「顔面割られて泣く泣く話すのと、話してから顔面割られるとどっちが良い?」

浜面「そ、それじゃ話してから割られる方で!……ありゃ?トラップじゃん!どっちも割られるの確定じゃんっ!?」

絹旗「浜面が超不自然にネタに走るのは何かある証拠ですね」

浜面「や、やだなー君達!仲間を疑うもんじゃないアルよ?」

麦野「あるのかないのかビンタされてぇのか?あぁ!?」

浜面「ふっ!やるならやってみやがれ!俺はこう見えてもバニーさんの格好してビンタされるのが苦手だけどな!」

絹旗「超特殊すぎるプレイじゃないですかー」

麦野「『――もしもし?浜面仕上がいつもお世話になっております。あ、はい。その節はどうもありがとうございました』」

麦野「『それでですね、先程の件――えぇはい、浜面から少し聞いたんですけど、もっと詳しいお話を――』」

浜面「お前フザけんじゃねぇぞ!?ていうかそんなキャラじゃなかったじゃねぇかよ!?」

浜面「お前いつもいつも上条の前では猫被ってやがるから、最近お前の事『綺麗なお姉さん』だと勘違いしてやがるからなっ!」

麦野「『――え、本当に!?』」

浜面「言いやがった……くそ、何考えてんだ!」

麦野「『エロい店に二人で行く計画……?』」

浜面「そんな話してねぇよ!フレンダの話だ!」

絹旗「……はぁ、浜面は少し賢くなっても浜面は超浜面でしたか」

麦野「――と、いうよりも携帯から向こうの台詞が聞こえてこない時点で、ブラフだと気づかないかしらね」

絹旗「ていうか、どうせ超下らないエロネタだと思っていましたが、よりにもよって超々のネタだったとは」

麦野「ごめん。滝壺呼んできてくれない?あと」

絹旗「超寝てるかどうかも確認、ですね」

麦野「ん」

浜面「……え、な、何?」

麦野「ブラフ――ハッタリよ、ハッタリ。電話をかけた”フリ”をしただけ」

671 : 以下、名... - 2015/12/08 11:56:15.38 PJAvCFjM0 1723/1732

浜面「……あーっと、ね?麦野さん?」

麦野「事情はよく知らないし、まぁあんたが隠すんだから、私にはきっと面白くもないネタなんでしょうけど」

麦野「いっちょ前に女の子扱いされて嬉しいは嬉しい――でも」

麦野「あの子に関しての話で――『アイテム』の関する話で。あんた一人だけで独断で話を決めちまおう、ってのは認められない話よ」

麦野「都合の悪い事実は伏せて、自分一人でナントカしよう?――それが『仲間』って言うんだったら、あんたがもう一回やり直せるって言ったモンだったら」

麦野「今日で『アイテム』は解散した方がいいわ」

浜面「……麦野」

麦野「男を見せるんだったら滝壺にしなさいよ。使い所を間違ってる」

???「――いいじゃない。それでも貴女は喜んでいるのだから」

浜面「そ、そうなの?」

麦野「何言ってん――誰よっ!?」

???「私は――」

麦野「――よっと」 ガッ!!!

浜面「あぁバカっお前そんなデカい香水の瓶で殴りつけたら!」

麦野「どう考えてもまともな相手じゃないでしょうよ。絹旗にやられるよりはマシ……?」

浜面「……どーすんだよ、どう見てもガキ相手に、しかも顔面グッシャグシャじゃ……あ、あれ?」

???「――良いわ。女の子の顔を全力で潰してに来るなんて、素敵な性格なのね、貴女」

麦野「最低でも鼻は折った筈なのに……再生したっ!?」

???「顔面を砕かれたのは……いつ以来だったか忘れたけれど、相手の外見に惑わされず、何の躊躇も見せずに殴りつけるなんて。中々刺激的よね?」

麦野「――んだぁ?」

???「あら、怖いわ。そんなお顔だと、好きな男の子からも嫌われちゃうわよ?ね?」

麦野「この……ッ!」

浜面「わー、待て待て!多分この子も関係者だから!」

???「直接的ではないし、暇潰しに付き合ってあげているだけだけれどね」

絹旗「超何やってんですか?なんかドタバタと、鈍器のようなもので超殺人したような音がしましたよ?」

滝壺「……あ、また女の子」

???「さて、早くの皆さんが揃ったようだし、改めて自己紹介――私は、レディリー。レディリー=タングルロードよ」

レディリー(???)「『神託巫女(シビル)』としては物語を紡ぐよりも、未来を語る方が正しいのでしょうけど、今日はお話をしましょう」

レディリー「皆さんには数奇な運命を辿った、『死者』の話なんて如何かしら?」

672 : 以下、名... - 2015/12/08 11:57:57.69 PJAvCFjM0 1724/1732

――『アイテム』のアジト

レディリー「――のが、今までの動きね。何か分からない所はあったかしら?」

浜面「あぁーっと、はい!先生!」

レディリー「どうぞ」

浜面「分からない所が分かりません!」

レディリー「あなたのお友達とそっくりそのままの姿と記憶を持っている――”かも、しれない”スワンプマンが現れた」

レディリー「このままでは『死者』として処分されそうになってる、だと思うわ」

絹旗「超ツッコミたい所は多々あるんですが……まず、一つ」

絹旗「その『死者』のフレンダというのは、生前――以前の、わたし達が知っているフレンダと超違うんですか?」

レディリー「肉体は別の物から構成されているわね。存在自体はこれからの展開でどうとでも変わるでしょうけれど」

絹旗「じゃ、じゃあ!アレですよ!魂とか、そういうのがあって!フレンダを超再現しているとか、そういうのは!」

レディリー「えぇそうね。彼女の魂はしっかりと再現されているわ」

滝壺「……だったら!」

レディリー「――と、言えば満足かしら?それともご不満?」

絹旗「やっぱり顔面超割りましょうこのクソビッチが」

レディリー「あらご不満だったようね?でも、それは確かめようがないのよ」

レディリー「魂のあるなしなんて定義がある訳じゃないし、仮に記憶が以前とどこが違うだなんて、本人ですらも分かってないわ」

浜面「いや……それは、分かるんじゃねーのか?友達や家族だったらさ」

レディリー「昨日の夜と今朝のあなた。どちらも同じ人物だけれど、その記憶が寸分違わぬものであると言えるのかしら?」

レディリー「こうやって話している間にも、古い記憶から少しずつ消えていくのに、あなたはその全てを憶えていると?」

浜面「それは……あー」

レディリー「それとも記憶が100の内99保たれていれば”本人”であって、50を切れば別人なの?」

レディリー「ある日突然、事故で記憶がなくなってしまったら?そう、割り切れるものじゃないでしょう?」

麦野「……お前の言いたい事は分かったわ。クソムカツクけど、どっかのクソヤローがフレンダ使ってなんかしようって事はね」

麦野「それで?お前は私達に何させたいのよ?まさかボランティアで人の感情引っかき回して来やがった、とかそう言うんじゃないのよね?」

レディリー「あら怖い。そんなに目をつり上げると赤ずきんを食べちゃうオオカミさんみたいよ?」

麦野「真面目に答えろクソガキが!」

673 : 以下、名... - 2015/12/08 11:59:50.89 PJAvCFjM0 1725/1732

レディリー「私がやって欲しいのは露払いよね」

絹旗「……フレンダの?」

レディリー「えぇ。さっきも言ったけれど彼女には敵が多くてね。その一つ――狂信者達を、こう、殺さない程度に、ね」

滝壺「……なんでそんな人達が……?」

レディリー「内緒。ただ、科学の街で魔術師が能力者のチンピラに倒されるのは、まぁよくある事よね、と言っておくわ」

浜面「チンピラて……!」

レディリー「あぁ返事はしなくて結構よ。場所と時間は伝えたから、その気になったら来て頂――」

麦野「――最後に聞かせて」

レディリー「信じたくなければ構わないのよ?それもあなた達の決断だし、私は尊重するわ」

レディリー「気に食わなければ逆に邪魔するのも素敵よね、くす、くすくすくすくすっ」

絹旗「……超イカレてますね、この子」

レディリー「そうね、おかしいわよね、私――でも、ね?」

レディリー「あなた、そうあなた達は正気なのかしら?本当に?言い切れる?」

絹旗「超言い切れますよ、当たり前じゃないで――」

レディリー「――だってあなた達、本当はフレンダさんなんてどうだっていいんでしょう?」

絹旗「そんな訳ないじゃないですか、超何言って――」

レディリー「だったらどうしてあなた達、フレンダさんを殺した相手に復讐しないのかしら?」

レディリー「『本当』に仲の良い関係だったら、仇の一つでも取ってあげればいいのに、ねぇ?」

絹旗「――っ!」

浜面「――お前っ!」

レディリー「あら気に障ったのかしら?だとしたらゴメンナサイね、私は何も知らないのだから」

レディリー「……そうよね。お友達が死んだんですもの、感情の整理が追い付かなくなる事もあるかも知れないわ。ううん、きっとそう」

レディリー「――けれど、そういうフレンダさんは被害者だったのかしら?」

滝壺「何が……言いたいの?」

レディリー「私が聞いた限りだと、彼女は『暗部』とか言う組織に居たらしいの。そこで非合法な活動をしていたとか」

レディリー「だとすれば、当然色々な恨みを買っているわよね。フレンダさん”は”」

レディリー「それが正当なもの――か、は別にしても、それこそ他人の人生を狂わせたり、終らせたりしてるかも知れない」

レディリー「と、なれば当然復讐の対象になるかも。ここに居る全員が」

レディリー「そういう人に殺されたら、あなた達はどうしていたの?どうすべきだったの?」

絹旗「それはっ!――他に仕様がなかったんであって!」

レディリー「『あなた達は被害者であって加害者ではない。騙されたのだから仕方がない』」

レディリー「――と、言って素直に納得してくれる相手だと良いわよね?くすくすっ」

麦野「……」

浜面「おいテメー、いい加減にしとけよ!」

674 : 以下、名... - 2015/12/08 12:02:25.30 PJAvCFjM0 1726/1732

滝壺「……」

浜面「俺達がどんな思いでやり直したのか、また『アイテム』を始めたのか!お前になんて分かる訳がな――」

レディリー「――『心の中で姦淫するものは、それ即ち現実にしたのと等しい』――」

浜面「あぁ?」

レディリー「聖書のどこに書いてあったのは忘れたけど、姦淫の罪についてあのボウヤがそう語った言葉があるわね」

レディリー「内心であっても悪い事を考えてしまえば、それは実際に罪を働くのと同義である、という強烈な罪の意識を植え付ける手法」

レディリー「……でも誘惑に駆られてはしても、実際に行動へ起こすのは極めて稀。空想家と犯罪者を一緒くたにしてしまうのは、まぁ相応しくはないわね」

浜面「だから、何の話を――」

レディリー「けれど、けれどね?実際に計画を立て、武器を用意して、ある人を殺そうとしたとしましょう。”ある人”が」

レディリー「”ある人”は幸い、不幸な人によって計画を邪魔され、人殺しにはならずに済んだのだけれど、あなたはどう思うのかしら?」

浜面「ど、どうって」

レディリー「彼女には留守になりがちでも優しい夫と、そしてどこへ出しても恥ずかしくない娘が居るのよ」

レディリー「中学二年生、そうフレンダさんと同じぐらいの年頃の、ね」

浜面「……そ、それが何だって!」

レディリー「その子は『暗部』になんて関わり合いはないし、善悪で言えば特定人物への通り魔と自販機キックを除けば、まぁ善だけの道を歩いた来たの」

レディリー「お父様も素敵な方よ。途上国でよくある悲劇を食い止めるため、可愛い奥様に拗ねられながらも飛び回っているわ」

レディリー「そんな二人の、良き妻であり、良き母親である彼女を”その人”は殺そうとしたのよ。酷い話よね?」

浜面「あ、ぁ、ああっ……!」

レディリー「考えた事はなかった?それともあなたには想像力がなかった?」

レディリー「他人を容易く踏みにじっておいて、いざ自分達へ累が及びそうになると『他に方法が無かった』のかしら?」

麦野「仲間、を」

675 : 以下、名... - 2015/12/08 12:06:02.58 PJAvCFjM0 1727/1732

レディリー「そうね。お仲間を大切にするのはとてもとても素晴らしい事よ、心の底からそう思うわ」

レディリー「でもそう思うのだったら、どこかで、いつか必ず自身の行為の報いを受ける前に、悪意の連鎖から抜けだそうとはしなかったの?」

レディリー「それとも『自分達は特別でいつまでもこの生活が続く』なんて思っちゃったの?」

麦野「……」

レディリー「あなた達が生き方を変えたのは良い事よ、それはね」

レディリー「でも、年長者から言わせて貰えれば、いつか、誰かから身に覚えのない『負債』の精算を求められるかも知れないから、覚悟しておくと良いわ」

浜面「――お前は」

レディリー「何?」

浜面「お前はそんな事言え――」

レディリー「私はつい少し前――あぁ一年前か、この世界軸では――に、10万人規模の無差別虐殺を起こそうとした女よ?それがどうかしたの?」

浜面「……っ」

絹旗「……ここまで喧嘩を超売られて、わたし達が手を貸すとでも?」

レディリー「結果はもう識っているもの。あなた達に覆らせるのであれば、とても素敵なのだけれど」

レディリー「それじゃあまた会いましょう」  パタンッ

676 : 以下、名... - 2015/12/08 12:08:16.66 PJAvCFjM0 1728/1732

――『アイテム』のアジト

浜面「……なんちゅーか、変なガキだったな」

絹旗「超同意です。わたしが言うのも超なんなんですけど」

浜面「だっよなー」

絹旗「あ、すいません滝壺さん。浜面の顔面超割っても構わないですか?」

浜面「構うよ!?それ割ったら取り返しがつかなくなっちゃうから!?」

滝壺「……わたしたちに隠し事をするんだったら、オシオキ、必要かも?」

浜面「そりゃ内緒にしてたのは悪かったけどさ!」

麦野「……」

絹旗「麦野?超大丈夫ですか?」

麦野「……あぁ、うん、大丈夫、よ?少し驚いただけだから」

浜面「まぁ――アレだ、真面目な話、『アイテム』はこれ以上関わらない方がいいと俺は思う」

滝壺「……ふれんだの話、なのに」

浜面「酷な言い方……か、どうか分からねぇが、フレンダは『終った』話なんだよ。当事者が居なくなっちまって」

浜面「その、なんつーか、フレンダのそっくりな子には悪いとは思うが、俺達は動くべきじゃないと思う」

絹旗「俺達は、ですか?」

浜面「あぁ、俺は行くよ。大将――最初に連絡くれた奴は、なんだかんだ世話になってるし、バレちまった以上、隠す意味も無いし」

浜面「フレンダの件がないにしても、それはそれ、これはこれでさ」

677 : 以下、名... - 2015/12/08 12:10:07.05 PJAvCFjM0 1729/1732

滝壺「わたしも」

浜面「滝壺とフレメアと待っててくれよ、な?フレンダ関係だし、勘違いしたバカが出て来やがる可能性もあるし」

絹旗「だったらわたしは浜面を超お手伝いしましょうか。どうせ一人じゃ何も出来ないんですから」

浜面「ヒデぇな!?その通りだけどよ!」

絹旗「あのロ×に超一発お見舞いしたいですし、まぁ――」

麦野「――ちょっと待って」

絹旗「はい?」

麦野「私は――うん、私は『アイテム』として動くべきだと思うわ……いや、『アイテム』だからこそ、動かなきゃいけない」

浜面「やー、あのな?あぁっと」

麦野「その――子、が、フレンダかどうか。それは関係ない」

麦野「魂が同じかも知れない。記憶が同じかも知れない。本来死んでいたフレンダを”継ぐ”存在かも知れない」

麦野「そういうのも、全部関係なくてだ」

浜面「……じゃ、何だって言うんだよ?」

麦野「私はクソッタレだ。仲間をぶっ殺し、その死骸に縋り付いているような最低の女よ」

麦野「筋は通っていないし、自分達の事を棚に上げている。そう、思うわ」

絹旗「それは、超仕方がないんじゃないかと」

麦野「……けど、けれどね?ここであのロ×ババアが言っていたように、開き直ってのは違う」

麦野「また『暗部』へ戻りましたー、なんて言ったらそれはもう最悪よ」

滝壺「……」

麦野「気に入らないバカはぶっ飛ばすし、そうじゃないバカもぶっ飛ばす。それは変わらないわ、ただ、その」

麦野「筋は通さないと。隣で眠っている子も含めて、そういう……なんて言うかな、最後の最後で惨めったらしく縋り付いているもの?」

麦野「それを全て投げ出して、逃げ出してしまったら……多分、私は」

麦野「……もう二度と、胸を張れないような気がする。何に対しても、誰に対しても」

滝壺「……うん」

絹旗「そう、ですね。はい」

浜面「俺としちゃ、ニアミスするような可能性も減らして欲し――」

麦野「――っていうのが、建前ね?」

浜面「建前かよ!?結構しんみりとしてたのに!」

678 : 以下、名... - 2015/12/08 12:12:17.86 PJAvCFjM0 1730/1732

麦野「フレンダのニセモンだか、ホンモノだかは別にどうでもいい。一度会ってみたい気はするけど」

麦野「……それよりも何よりも、『アイテム』のメンバーの姿を勝手に造りやがって、しかも他の連中を振り回してるのよね?」

麦野「これ、ちょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっと!頭に来るわよ、ねぇ?」

絹旗「おっ、麦野超悪い顔になってますよー

麦野「フレンダモドキを造りやがった野郎の思惑はさておき、『アイテム』に喧嘩売ったんだ。然るべき落とし前はつけてあげないといけないわねぇ」

浜面「(あ、あのさ?)」

滝壺「(なに?)」

浜面「(い、いいのかな?麦野さんがキリングなマッスィーン風になってんだけど!超怖いんですけど!)」

滝壺「(元気があって……まぁいいんじゃ?)」

浜面「(ていうか今までそれっぽい事言ったのは建前で、要は『喧嘩売られてテッペン来てる!』って結論はどうかな!)」

浜面「(具体的にはフレンダ殺った時とメンタル一個も成長してない気がするしな!)」

滝壺「(……べつに、そのふれんだモドキがふれんだだってた証拠はない訳だし、今はこれで良いと思う)」

浜面「(でもさ?真っ当な人間じゃないかもって)」

滝壺「(もし、以前のよう感じに少しでも戻れる可能性があるんだったら、わたしたちに取っては些細な事、かな)」

浜面「(滝壺……)」

麦野「――まぁ、それはそれとして、浜面があたし達に黙ってた件についてなんだけど」

浜面「あ、ごめんボク塾の時間があるからこれで失礼――げふっ!?」

麦野「ナイス絹旗」

絹旗「いえいえ、超お構いなく」

浜面「待ってよ!?俺は善意で隠してたんであって!決して、そう!決してお前らに対する裏切り的な気持ちは無いさ!」

麦野「滝壺に誓って?」

浜面「イエスッあいあむっ!俺の愛はインフニィットさ!」 キリッ

絹旗「――では、こちらにある。『バニーさんランド優待券』とは超なんでしょうね?」

679 : 以下、名... - 2015/12/08 12:16:05.22 PJAvCFjM0 1731/1732

浜面「いやあの、これはだな。夜の繁華街で会った謎のナイスミドルさんから頂いたドォリィムランドゥ(巻き舌)へのチケットなんだよ!」

浜面「これを使えば遙かなるカダスへ行けるって!ボクが子供の頃の夢なんだよ!純粋なね!」

浜面「オイ知ってるか?バニーさんは、外国の方にあるドリームランドにしか自生してないらしいぜ?」

絹旗「それはただの出稼ぎと超違わないんじゃ……?」

浜面「そんな訳ないよ!だって本人がそう言っ――――――あ」

麦野「――はいっと言う訳で罰ゲーム確定した訳ですが絹旗さん。今日の罰ゲームはなんでしょうか?」

絹旗「そうですねぇ。あまり強烈なものだと鼻面の友人関係に超支障を来しかねないので」

浜面「絹旗さん、俺浜面。鼻面じゃないです」

浜面「あと人間関係に支障を来すような罰ゲームつて何よ!?それもう拷問って言わねぇか!?」

絹旗「――じゃーじゃん」 コトン

浜面「ビン……?調味料の、だよな」

麦野「タバスコね」

浜面「凄く……赤いです……ッ!!!」

絹旗「はっまっづっらの、超いいとっこ見ってみたいっ。あ、それっ、いっき、いっき、いっき……」

浜面「ヤバいって!これ地味に内蔵がおかしくなるヤツじゃんか!?ノリでやっちゃいけないの!」

浜面「ていうか『アイテム』のドS担当はやっぱり絹旗じゃねぇのか!?麦野の影に隠れてやがるけども!」

麦野「――ねぇ、浜面」

浜面「な、なんだよ!怖い顔したってやらないからな!」

麦野「フレンダモドキを黙ってた件は――」

浜面「――飲んでやるよ!よっしゃ!男の生き様見とけやゴラァ!!!」

滝壺「がんばれー、わたしはそんなはまづらを応援している……」

浜面「どうせ応援してるんだったらねっと早く止めて欲しかったが!……うし!」

ゴキュゴキュゴキュゴキュッ

絹旗「うわ、マジで超飲みやがりましたね」

麦野「ていうか、これ本物なの?水で薄めてあるとか、着色料ついてるとか、テレビ的なヤラセはないのね?」

絹旗「冷蔵庫にあったのですね。最後にピザ食べたの忘れるぐらいに前ですし、そろそろ超処分しようと思っていたんで、まぁ?」

浜面「……」

滝壺「……はまづら?」

浜面「ぶほおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!?」

三人「「「」ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」」」

680 : 以下、名... - 2015/12/08 12:19:54.26 PJAvCFjM0 1732/1732

――決行当日 深夜の路地裏

レディリー「――なんだかんだ言って予定通りの時間ね」

麦野「気に食わねぇが、それはそれ、これはこれ、よ」

レディリー「まぁ良いのだけれど……そっちのボウヤが、顔面腫れ上がらせているのは」

浜面「……」

絹旗「超ご褒美ですね」

レディリー「あら素敵。愛の形は様々よね」

浜面「……扱いが……!」

麦野「んーで、私達はどいつをぶっ殺せば良いの?狂信者、だっけ?」

レディリー「聖堂騎士は一人を除いて帰還した後で、残ったのは改宗組のクルセイド達ね」

レディリー「元々は信仰や宗教にも関わり合いがなかった人達が、シスター・リドヴィアに感化――いいえ”感染”した狂信者ども」

レディリー「聖堂騎士よりは格段に弱いけれど、”神のため”と言えば喜んで死に急ぐ、厄介と言えば厄介よね」

絹旗「なんでそんなキチガ×がフレンダモドキを超狙ってんですか?ロ×?ペ×?」

レディリー「本人達は十字教の教えを敬虔に護っている”つもり”。特に最初から組織の一部じゃなかったのだし、活躍を見せたいんでしょうね」

レディリー「ヨーゼフとしては、『木原』とぶつかった時の捨て駒として持ってきていたんでしょうけど、ここへ来て自らを縛る枷になると」

麦野「ソイツらを半殺しにすりゃいい訳か」

レディリー「殺しちゃうと第四次世界大戦になりかねないから、気をつけると良いわ――あぁそうそう」

レディリー「もしも”彼女”が。あなた達の知っている誰によく似た”彼女”が」

レディリー「その手で運命を変えられれば、今回の事件の主犯はこちらへ逃げてくる事になるわ」

麦野「ふーん?」

絹旗「……それは、超良い事を聞きましたね」

滝壺「……ん」

レディリー「それじゃ行きましょうか」

浜面「――そうだな、『アイテム』しゅっぱ――」

絹旗「浜面、超置いていきますよ」

浜面「あっはい今行きます――っておかしくねぇか!?俺がキメ台詞言ってんのに!?」

麦野「何遊んでんのよ」

浜面「いや決めたじゃん!ジャンケンで決めたじゃんか!こう、なんかビシッと決める時には俺も一枚噛むって!」

浜面「じゃないと俺の役割が!俺のポジ的に『あの子、必要かな?』って思われちゃうでしょーが!」

麦野「あーうん、何か主犯ぶっ殺す時には言わせてあげるから。それで我慢しなさい」

浜面「絶対だからな!?俺は信じてるからな!?」

浜面「も、もし破られたら全員でバニーさん――って聞いてよぉ!?ボケを誰も聞いてないってどういう事!?」

浜面「だからぁ何度も言ってるけどぉ、俺の存在意義を――」


-終わり-

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