ルカ「同人誌?なんですかそれ」
まゆり「自分の好きなアニメや漫画を自分で描くんだよー」
ルカ「えぇ、無理ですよ。ボク絵なんか描けないです…」
まゆり「大丈夫だよ、みんな最初はそうなんだから!」
岡部「いかんぞ、まゆり。ルカ子が嫌がってるではないか」
ルカ「お、岡部さん…」
まゆり「ぶー。分かったよ。せっかくお金を儲けるチャンスなのに」
岡部「金…?おいまゆり、それはどういう事だ。答えろまゆり!!」
元スレ
まゆり「ルカくんと同人誌を描くのです」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1314407221/
まゆり「…という訳なのです」
岡部「アニメ化やゲーム化で印税がガッポガッポだと!?」
まゆり「可愛い美少女を残酷な目に合わせて、風呂敷をとにかく広げたら、大概は大ブレイクなのです!」
岡部「待てまゆり、大きく風呂敷を広げるのはいいがちゃんと畳む道筋を考えるのは骨が折れそうだぞ」
まゆり「それは大丈夫なのですー。最後になったら無理矢理辻褄を合わせればいいのです」
ルカ「そうは言っても、ミステリーとかならちゃんと犯行の手段を考えないと…」
まゆり「そんなの、検死でも発見されない未知の薬物とか出せばいいのですー」
岡部「まて待て!そんな適当な投げっ放し、狂気のマッドサイエンティストでもやらんぞ」
ルカ「…それに、そんな内容が分かったら誰も買ってくれないんじゃ」
まゆり「だから、話を分けて小出しにするのです」
岡部「小出し?どういう事だ、答えろまゆり!」
まゆり「広げた風呂敷がとっても気になる所で続きは次のコミケでー。って感じで引っ張るのです」
ルカ「確かにそれなら、食い付いてくれそうですね」
岡部「だがしかし、どの道最後はバレて、購入者のヒンシュクを買うのでは無いか?」
まゆり「そんなのまゆしぃの知ったこっちゃ無いのです。まゆりは札束を持って、銀座でシースーなのです!」
ルカ「銀座でシースーかぁ、いいですね!」
岡部「待てルカ子!まゆりに騙されるのではない。そんな事芸術作品を産みだす作家として、絶対に許される事ではないぞ」
まゆり「とぅっとぅるー、オカリンは大きな間違いをしているのです。私は作品を産みだしたいんじゃ無いのです」
岡部「な…何だと…。それはどういう事だ!?」
まゆり「まゆしぃはね…、お金を産みだしたいんだよ!」
ルカ「…なんて欲望に実直な…」ゴクリ
まゆり「いいじゃないオカリン。オカリンだってお金欲しいんだから同じ穴のムジナだよ!」
岡部「…ぐぬぬ。しかし、一般大衆を偽る事はマッドサイエンティストとしての誇りが」
ルカ「僕も神様に使える身として、少し罪悪感が…」
まゆり「もー、二人ともそんなに意気地無しと思わなかったです!プンプン、もうまゆしぃは一人でもやるのです」
バタン!
ルカ「行っちゃいましたね…。いいんでしょうか」
岡部「構わんよ。それに、そんな上手くいくものではないだろう。まゆりも絵に描いた餅だと気付いてすぐ帰ってくるだろう」
ルカ「そうか。…そうですよね」
一か月後
岡部「ふぅ…、下界では夏休みもそろそろ終わりを告げる頃か」
ルカ「あれからまゆりさんラボに来ませんね?」
岡部「大方自宅に籠って同人誌でも描いていたのだろう」
まゆり「とぅっとぅるー☆ジューシー唐揚げナンバーワーン」
バタン
岡部「噂をすればなんとやらだな。どうだったんだ、少しは売れたのかまゆり?」
まゆり「んー、ジューシー唐揚げの袋が邪魔で前が見えないのです」
ルカ「うわ、また沢山買ったんですね?」
まゆり「うん!同人誌が沢山売れたからなのですー」
岡部「ブワッハハハ!!ほれ見た事かまゆり!貴様が芸術を否定してまでやった大罪の結果がこの唐揚げの山だけだ」
まゆり「……クッチャクッチャ…。ペッ!…クッチャクッチャ…。ペッ!…」
岡部「……って、おいまゆり、貴様一体なにをしているのだ!!何故唐揚げを一口クチに含んでゴミ箱に吐き出す!?」
まゆり「まゆしぃ今日は唐揚げの皮が食べたい気分なのですー。だから残りは捨てちゃうのです」
岡部「ば、バカな事は止めろ!くっ、くっそぉぉ!」バッ
クッチャクッチャ
ルカ「岡部さんダメですよ!ゴミ箱の中の唐揚げなんか食べたらお腹を壊します」
まゆり「とぅっとぅるー!ジューシー唐揚げの皮ナンバーワーン☆」
岡部「まゆり貴様は間違っている…、唐揚げの皮だけでは腹など膨れはしない!」
まゆり「だったらまた揚げたてを買えばいいのですー。ほら、窓から外を見て見るのです」
ルカ「なんですかアレは…?唐揚げの屋台車」
まゆり「まゆしぃがジューシー唐揚げ社から買い取ったのでーす!」
岡部「や、…屋台車を買い取っただと!?狂言は止めろ。そんな金がどこに……はっ!?」
まゆり「…どうやら気付いたみたいだね。そう、まゆしぃの同人誌が大ブレイクしちゃったの」
ルカ「え!?まさか本当にあの設定で売れるなんて…」
まゆり「ほら、ご覧のありさまだよ!まゆしぃの預金通帳はゼロで一杯なのです」
橋田「ほらほらオカリンー。今話題の『魔法少女の鳴く頃に』の同人誌だお」サッ
岡部「…これはまゆりが描いていた同人誌か」
橋田「ん?何か言った」
岡部「いや、何でもない」ペラ
紅莉栖「へー、橋田も買ったんだ?その本、今人気あるみたいね」
橋田「可愛い美少女がボコボコの顔にされるんだけど、その背徳感で興奮するんだお!」
紅莉栖「私は謎が謎を呼ぶミステリアスな展開ね。どう推理しても仕掛けが解けないわ」
岡部「…間違っている…、貴様らは歪んでいる…!」
紅莉栖「な、なによ岡部?一人で難しい顔をして」
岡部「そもそも同人誌というのは、その作品を愛しているから描くものではないのか!?」
橋田「なんだお…いきなり?それはそうだけど…」
岡部「なら、この本の内容はなんだ。原作とかけ離れた鬱な展開は!」
紅莉栖「別にいいじゃない…、そういう愛情表現かもしれないし」
岡部「なら、この過剰にボコボコにされた醜い表現も必要なのか!…どうみても客を引き寄せる為のあざとい餌にしか見えない。これが、本当に作品を愛していると言えるのか」
橋田「…それは」
紅莉栖「だったら貴方が描いてみなさいよ」
岡部「な、なんだと!?」
紅莉栖「確かに過激かもしれないけれど、実際に沢山売れているんでしょ。ならそれを求めてる人がいるって事じゃない。需要と供給が成立っているわ」
岡部「それは話のすり替えだ!売れるからと言って描いていては本末転倒だ。言ったではないか、同人誌というのはその作品が好きだから描く!金などあくまでも副産物で…」
紅莉栖「はいはーい!分かった分かった。アンタは嫉妬してるんでしょ、この作者に」
橋田「オカリンの考え方は古いお。コミケなんてみんな儲ける為にやってるんだよ」
岡部「ぐぬぬ…!そんなバカな…コミケというのはそんなに歪んでいるのか」
紅莉栖「だったらストーリーはどうなのよ?この衝撃の展開は」
橋田「一体どうやって殺人を行なったのか予想もつかないお!」
岡部「(そんなものは当たり前だ…描いてまゆりでさえも考えていないのだぞ)」
紅莉栖「ほら、岡部も推理してみなさいよ。ネットでも盛り上がってるよ」
岡部「す…すまんダル!クリスティーナ!!」ダッ
バタン
『とぅっとぅるー☆まゆしぃは今ハワイでシースーなのです。御用の方は…』
ピッ
岡部「歪んでいる…、こんな未来俺が望んだ未来では無い…。この世界は歪んでいる」
鈴羽「だったら変えちゃえばいいじゃない」
岡部「バイト戦士…!貴様が何故ここに?」
鈴羽「アンタが岡部だね。私はこの世界の人間じゃない…未来から来たの」
岡部「その姿を見れば何となく分かる。俺に何の用だ」
鈴羽「私達の未来を変えて欲しいの…、コミケが滅ばない世界にして欲しい」
岡部「コミケが…!?どういう事だ。一体コミケに何が起こるんだ!?」
鈴羽「今から一か月後。お盆の時期に、一人の同人作家がコミケに現われるの…」
鈴羽「その同人作家は、一夜にして同人売上のトップに駆け上がるの…」
岡部「なんだと…、他の同人作家はどうした?」
鈴羽「敵わなかったよ…、相手の望むものを知りすぎているんだよ…。今までにない残酷な表現と先の見えないミステリー展開…どれも斬新だった」
岡部「だが、何故その同人作家が頂点に登ったくらいでコミケが滅ぶ?」
鈴羽「問題はその後だよ。次々に作品の続きを描いてはそれが全て大ブレイク…、ドラマCDにアニメ化、ゲーム化…」
岡部「…凄いな。飛ぶ鳥を落す勢いじゃないか…」
鈴羽「そして、運命の日は訪れる…。全ての謎が明かされる解答編の発売日」
岡部「それだけ人気なんだ…、大層盛り上がったんじゃないか?」
鈴羽「うん…、盛り上がったよ。逆のベクトルにね」
岡部「逆だと…?」
鈴羽「その作者は実は何もオチを考えて無かったんだよ…。死因は実は未知の薬物、動機は伏線無しのとってつけ」
岡部「ば、バカな!?そんなものは裏切りだ!今まで金を払い読み進んできた読者に対する冒涜だ!」
鈴羽「そう…。今まで絶賛していた読者も手の平を返して叩き出したの」
岡部「無理もない、当然だろう」
鈴羽「そして、コミケは一気に活気を失ったんだよ…」
岡部「バカな?他にも同人作家は沢山いるだろう!」
鈴羽「その頃には、コミケには二番煎じの作風しか残らなかったんだよ。グロと畳まれないミステリー…。その先は静かな衰退しかないよ」
岡部「たった一人の同人作家のせいでそんな事になるというのか…」
鈴羽「その作家の晩年も酷いもんだよ。批判に対して、『とぅっとぅるー☆私の作品は人を選ぶのです。辛口の唐揚げしか置いてないのに、人気になったおかけで味の分からない人まで来るようになったのです』とか言い出して」
岡部「うわぁ……。て、ちょっと待て、とぅっとぅるーだと?」
鈴羽「その作家の口癖だよ?それがどうしたのさ」
岡部「わ、分かったぞ…、お前の話から何度も感じていたデジャヴの謎が…」
鈴羽「デジャヴ?」
岡部「その作家は椎名まゆりだろう!魔法少女の鳴く頃にの」
鈴羽「な!?どうして知ってるのさ!」
岡部「よし、それなら話が早い!では早速まゆりを止めにいくぞ」
鈴羽「バカだね岡部は。私達が動くのは今月のお盆、コミケの日だよ」
岡部「そうなのか!?すまんすま…」ピク
鈴羽「無暗やたらに動いて歴史を変えたらいけないんだからね」
岡部「待て鈴羽。貴様、お盆だと言ったな?」
鈴羽「最初から言ってるじゃん!歴史が動く日だって。…ったく父さんと違って頭悪いんだから」
岡部「ほう…、では一つ聞くが、この時代に飛ぶタイマーをセットしたのは誰だ?」
鈴羽「世界一可愛い、この私だけど?」
岡部「…ふんっ!」ブン
ゴチンッ
鈴羽「痛っ!?何すんのさ岡部倫太郎!?」
岡部「阿呆はお前だ!?もうお盆はとうに過ぎて、まゆりは左団扇でワイハのシースーだ!」
鈴羽「うっそー!?あっちゃー…、日にちのダイヤル回し間違えちゃった…」
岡部「だったら早く行ってこい。もう一度タイムワープすれば良い事だろうが」
鈴羽「えー、イヤだよ。タイムワープの燃料後一回しか残ってないんだし。…元の時代に帰れないじゃん」
岡部「心配いらん。お前が歴史を改変すれば自動的にコミケが復活した世界線に飛ばされるから」
鈴羽「うーん…。なんだか怪しいなぁ…。やっぱりこの硫酸光線銃で」
岡部「待て待て!却下だ、却下!」
鈴羽「大丈夫だって、鉄筋のビルでも簡単に溶かしちゃうんだから!」
岡部「そういう問題ではない!それに今まゆりは海外だ」
鈴羽「海外ぃ…?ダメじゃん、私この時代のパスポート持ってないよ!」
岡部「どの道、そんな物騒な手段俺がさせんがな…」
鈴羽「そんなぁ…、じゃあどうするのよ!私がお父さんに怒られるんだよ」
岡部「…ダルにいい歳にもなってコミケに夢中になるのは止めなさいと伝えてくれ」
鈴羽「はぁ…仕方ないなぁ。分かったよ、私も学校宿題残ってるから早く帰らないと」
岡部「ん?帰る時間をお前が出発した直後にすれば良いだろう」
鈴羽「ダメだって。時空法が成立した未来じゃ、そういうズルをすると駅の改札みたいに引っ掛かるんだよ」
岡部「ほう…。タイムワープといえども万能では無いんだな」
鈴羽「そういうこと。それじゃまたね、岡部倫太郎」
岡部「あぁ、未来の俺にヨロシク言っておいてくれ」
鈴羽「んー、それは無理かなぁ。今はお墓だし」
岡部「な…なんだと!?お前の未来では俺はもう死んでいるのか」
鈴羽「ちょっ、早とちりしないでよ。ただの墓まいりだって!」
岡部「そ、そうなのか…。良かった…」
鈴羽「まゆしぃとか言ってたかな?キミの友達の墓参りだよ」
岡部「!?ま、まゆりが!どういう事だ、まさかSERNの仕業か!」
鈴羽「違う、違う。…なんだかストレスで唐揚げをヤケ食いして喉に詰まらせたとか、なんとか」
岡部「ストレスだと!?有り得ない…あのまゆりがストレスなど。絶対に有り得るものか!」
鈴羽「一回売れっ子を経験したら、その地位にしがみつきたいモンだからね。ストレスだって溜まるよ」
岡部「くっ…。作戦は変更だ、バイト戦士!必ずまゆりを同人の世界から救出すぞ!」
鈴羽「だから何よ、そのあだ名…。お父さんみたいに、世界一可愛い鈴羽って呼びなよ」
岡部「というわけで、このDメールを過去の俺に送れば全て解決というわけだ」
紅莉栖「でも、余り世界線を弄るのは良くないんでしょ…?私は反対よ」
岡部「ならば、この同人誌の物語の結末が実は投げっ放だった…という未来を選ぶか?」
橋田「イヤだお!こんな話の結末を聞いて、なおかつお金を注ぎ込むなんて出来ないお!」
岡部「ならば、やるしかあるまい。この歪んだ世界を…俺と、このDメールが駆逐するっ!!」
紅莉栖「仕方ないわねぇ…。この詐欺みたいな被害を無くすなら」
岡部「それだけではない。コミケの未来と、まゆりの命の為だ…」
橋田「ん?オカリンなんか言った?」
紅莉栖「…いまよ、岡部。放電現象が始まったわ!メールを」
岡部「頼むぞ!いっけぇよDメール!!」カチッ…!
まゆり「…ッカリーン!オッカリーン?」
岡部「はっ!?まゆり、どうしてここに?ハワイに行ってたんじゃ…」
まゆり「ハワイ…?そんなお金まゆしぃには無いよ」ムシャムシャ
岡部「ジューシー唐揚げ…。それ一袋だけなのか?」
まゆり「そうなんだよー、まゆしぃにもっとお金があれば屋台車ごと買うのに」
岡部「止めておけ…、それより同人誌はどうなった?」
まゆり「あれ?オカリン言わなかった?そこに在庫の山があるよ」
岡部「在庫…、という事は売れなかったのか。同人誌は」
まゆり「そうだよー、せっかくオカリンの言う通り、ルカくんに絵を描いてもらったのに!」
岡部「…そうか、よくやったぞルカ子!」
ルカ「何言ってるんですか…。僕がもっと絵が上手かったら沢山売れていたかもしれないのに」
まゆり「うーうん、全然上手いよ。みんな画伯って呼んでるよ」
ルカ「画伯…。それって褒められてるんでしょうか…」
岡部「構わん、ルカ子お前はもっと胸をはれ。お前は沢山の人間の心を…そして、まゆりの命を救ったんだからな」
まゆり「酷いよオカリン。まゆしぃはまだ生きているんだよ!」
終わり