2 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:28:10.15 7Urpz8qKi 1/40

 2011年8月11日
 メイクイーン+ニャン2

フェイリス「凶真、凶真」

岡部「…ん、どうしたフェイリス」

俺は、今さっきフェイリスによって運ばれてきたコップ…に刺さっていたストローに口をつけ、
ゆっくりとその中身であるアイスコーヒーを吸い上げていた。
が、そのフェイリスに名前を呼ばれ、ストローから口を離す。

フェイリス「明日、何の日か分かるかニャ?」

岡部「明日…ハッ!ま、まさか!」

フェイリス「そう。明日は、猛者の魂が集結する宴。死と隣り合わせの、萌えによる大規模な戦争が始まる日ニャ」

岡部「な…に?つまり…どういうことだ?」

フェイリス「要するにコミマが始まるのニャン」

岡部「ああ、コミマか…そういえばまゆりとダルも張り切ってたな」


元スレ
フェイリス「凶真、C80に出陣ニャ」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1314102420/

3 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:31:01.12 7Urpz8qKi 2/40

フェイリス「だから、凶真も…フェイリスと一緒に行くニャ」

岡部「うーむ…行ってもいいが…お前一人でもいいのではないか?」

フェイリス「もう、凶真は鈍感ニャ!女の子の誘いは喜んで引き受けるものニャ!」

フェイリスの声が突然大きくなる。俺への痛い視線が集結する。
…いつものことながら、この視線は慣れないな。

岡部「今回も一応言っておくが3日全てに参加するほど俺に体力はないぞ」

フェイリス「1日だけでいいニャン。凶真でも楽しめそうなのは…14日の最終日とかどうかニャ?どうかニャ?」

岡部「何日でもいい。その日は何があるのだ?」

フェイリス「まどか☆マギカとか、シュタゲとか、けいおん!とか、禁書目録、超電磁砲とかの男性向け同人誌かニャ?」

岡部「なるほど。ほとんどが知っているアニメだ」

フェイリス「やっぱりニャ!凶真でも知っていそうなアニメを挙げてみたんだニャ~」

岡部「…そうか」


6 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:33:29.41 7Urpz8qKi 3/40

岡部「まあいい。では作戦内容の確認だ」

岡部「決行日は2011年8月14日。集合は…」

フェイリス「朝の4時30分…場所は秋葉原駅前」

岡部「承知した。共にこの地獄を戦い抜こう。俺が唯一認めし戦友よ」

フェイリス「…う、うん」

岡部「ん?どうした、フェイリス」

フェイリス「いや…何でもないニャ。当日、楽しみにしてるニャーよ!」

岡部「ああ」

一瞬、フェイリスの様子がおかしかったようにも見えたが…
あえて気にしないことにした。聞いても答えてはくれないだろうから。

7 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:36:29.59 7Urpz8qKi 4/40

 8/13 19:30
 ラボ

岡部「ふむ…これで全部か」

俺は、フェイリスからメールで送られてきた、
コミマに最低限必要な物のチェックリストと睨めっこしながら、翌日の準備をしていた。
コミマはとにかく体力が奪われる。夏であるなら尚更だ。
特に水分補給はしっかりしておけ、と念を押された。

ラボには俺とダルしかいない。まゆりは明日のコミマの準備で家に帰ってしまったし、
紅莉栖はアメリカにいる。コミマに行くどころの話ではない。

岡部「ダミー用の財布とか本当に要るのだろうか…?」

ダル「オカリンも明日コミマ行くん?」

岡部「ああ。…ダルは昨日今日と連続だろう。疲れないのか?」

ダル「ま、僕にとってはコミマを楽しみに今まで生きてきたようなもんだし」

岡部「…愚問だったな。倒れないように気をつけろよ」

ダル「分かってるって。でさオカリン。頼みたいことがあるんだけど」

岡部「何だ?」

ダル「明日、販売列の大混雑が予想されているサークルがあるんだお」

岡部「…ほう、聞こうか」

9 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:38:57.08 7Urpz8qKi 5/40

ダル「その名も、『まどか屋さん』。内容はまどか☆マギカのイラスト本なんだけどさ、描いてる面子が豪華過ぎるんだぜ」

ダル「キャラデザの蒼木うめてんてーとか、魔女のデザインを担当した劇団イヌカレーとか」

ダル「メインキャラの中の人までこれに携わってる」

岡部「半ば公式本ではないか」

ダル「だろ?素晴らしいだろ?でさ、オカリンにこれを…買ってきてもらいたいんだよね」

岡部「!?」

ダル「いやー、僕は周るとこいっぱいあってさ…オカリンなら暇そうだなって…」

岡部「大混雑するんだろう?…すまん。こればかりは俺の一存で決めるわけにはいかんのだ」

ダル「誰かと一緒に行くん?」

岡部「まあ、そんなところだ。すまんな」

ダル「ちぇっ。仕方ない、僕が並ぶしかないな」


10 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:41:36.18 7Urpz8qKi 6/40

ダル「それじゃ僕はそろそろ帰るお」

そう言って、ダルはラボを後にした。
窓からダルの姿を見送った俺は、適当に本を取り出し、ソファに横たわり、
それを開いて顔に乗せた。

岡部「コミマ…か…」

俺はほどなくして浅い眠りにつく。


 8/14 4:30
 秋葉原駅前

岡部「フェ、フェイリス…これは…」

フェイリス「さ、凶真。あれに乗るニャン♪」

次の日、時間ぴったりに私服姿でやってきたフェイリスが指差したのは、見覚えのあるリムジン。
そう、フェイリスの家…秋葉家が所有しているものだ。
運転手は、執事の黒木さん。勤務時間外だと言うのにわざわざ呼び出して来てもらったらしい。
俺はフェイリスに促されるまま、前から2列目の座席に座る。

11 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:44:16.21 7Urpz8qKi 7/40

フェイリス「それじゃ黒木。ビッグサイトの東方面まで行って欲しいニャ」

黒木「かしこまりました」

後ろから、運転席にいる黒木さんに指示を出すフェイリス。
こういうところを見ると、そういえばこいつは大金持ちのお嬢様だった…と改めて思う。

フェイリス「凶真。どうしたのニャ?」

岡部「いや、なんでもない」

走り出すリムジン。
窓から外の様子を見てみる。この時間にしては交通量が多い気がする。
言うまでもなく、コミマ効果だな。

フェイリス「ふふっ」

岡部「…?何故笑う?」

フェイリス「ニャハハ、ごめんニャ。ただ、凶真が景色を眺める横顔が素敵だったから」

12 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:47:19.27 7Urpz8qKi 8/40

俺は、ふうっとため息をつく。
本来ならば男として喜ぶ台詞なのだろう。だが、フェイリスとなると話は別だ。
こいつは男が喜ぶ坪をいとも簡単に押さえてしまう。恐らくこれも打算からくる言葉。
フェイリスからこういうことを言われたら、必ず「からかうな」と返すようにしている。

岡部「…からかうな」

フェイリス「からかってなんか、ないニャ」

岡部「…」

フェイリス「さっきの凶真の顔、すごく凛々しかったニャ。その髪型と髭さえ整えれば、どんな子だって一瞬で落ちちゃうニャ」

岡部「お前は俺を買いかぶりすぎだ」

フェイリス「ニャニャ~…凶真って意外と鈍感なんだニャ」

岡部「…?」

意味深な言葉しか話さないフェイリスとの会話。
それが終わる頃には、車は東京ビッグサイトに到着していた。
時刻は朝の5時30分。既に歩道は人という人で埋め尽くされている。

ビッグサイト近くの歩道で車を降りた俺達は、少し歩いた先にできていた待ち列に並んだ。

14 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:50:23.81 7Urpz8qKi 9/40

 7:30
 東京ビッグサイト東
待ち列でフェイリスの持ってきた小型の椅子に座りながら、携帯で@ちゃんねるの書き込みを見る。
これは最近知ったことなのだが、コミマスレではコミマ当日になると、
無名の戦士達が自分や自分の周りで起こった出来事を語る。
それが何者かの手によってまとめられていく。
1日目、2日目のまとめを見る限りでは、アホみたいな出来事は最早定番と化しているようだ。

岡部「…朝5時40分くらいから並び始めているのに前の列には人が大勢いるな」

@ちゃんねるの書き込みを見ながら、フェイリスに話しかける。

フェイリス「ほとんどが、前の日から来ている人ニャ」

岡部「そこまでするか…?」

単純に驚愕する俺。
いくら楽しみにしている祭りだから…とはいえ、前の日から並ぶというその根性が俺には理解できない。
だが、研究のためなら徹夜することも厭わない俺。
そんな感覚で彼らも前日から来ているのだろうか?

フェイリス「本当はやっちゃいけないことニャ。主催者側も取り締まりたくて仕方がないのニャ」

岡部「なら何故取り締まらない?」

フェイリス「色々と弊害があるのニャ…イベントを取り仕切るのって予想以上に大変にゃーよ?」


15 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:53:56.06 7Urpz8qKi 10/40

岡部「お前が言うとやけに説得力があるな」

フェイリス「そうかニャ?」

岡部「ああ」

何故ならこいつは秋葉原そのものを仕切る存在だからだ。

フェイリス「前日から並ぶ行為については批判的な意見が多いニャ。@ちゃんにも、書き込みないかニャ?」

岡部「書き込み?」

フェイリス「徹夜組は死ね、的な描き込みニャ」

岡部「ああ、いっぱいあるな」

フェイリス「それが何を意味するか…凶真なら分かるはずニャン」

岡部「要するに迷惑行為すんな、と」

フェイリス「そういうことニャ」

16 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 21:57:54.20 7Urpz8qKi 11/40

 10:15

岡部「流石に疲れてきたな…飲料も底をついている」

入場時間は過ぎている。列はまだ動かないのか、と痺れを切らしている俺。
落ち着きがなくなるのを感じる。そのせいか体力の消耗もさっきと比べてやや早い気がする。

フェイリス「凶真、後ちょっとの辛抱ニャ」

フェイリスがそう言った瞬間…列が動いた。
ここまで動けばもうあとは歩いて入場するだけだ。

岡部「フェイリス。分かっているな」

フェイリス「勿論ニャ。東京ビッグサイトに点在するサザンクロス。向かうは、δ方面ニャ」

岡部「あ、ああ」

岡部「(まるで意味が分からんぞ)」

18 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:01:08.31 7Urpz8qKi 12/40

 10:25
 東4~6

岡部「お前は何の本を買うんだ?」

フェイリス「雷ネットは外せないニャ!あとシュタゲと、それから、それから…」

岡部「…張り切ってるな」

俺は目的を持って来たというわけではなく、フェイリスの付き添いとしてやってきただけ。
まあ、シュタゲには興味があるのでその本を出しているサークルが密集している場所に着いたら少し見て行く程度。
あとは、まゆり。ルカ子を強制連行するとか言って張り切っていた。
ルカ子のコスプレ姿が見られるのなら、それはそれで良い。
後でコスプレ広場に行ってみるか。

岡部「そういえばフェイリス。まどか屋さんって知ってるか?」

フェイリス「勿論ニャ。でもフェイリスはそこまで並ぶのはちょっとニャ~…」

フェイリス「だから予め買ってくるよう知り合いに頼んであるニャ」

岡部「なるほど…そういう手段もあったな」


同時刻 まどか屋列

ダル「徹夜組UZEEEEEE!フェイリスたんに頼まれてたティロフィナーレ本買えなかったらどうすんだよ!」

19 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:04:47.25 7Urpz8qKi 13/40

 11:30
 
岡部「フェイリスの奴…よく体力が保つな…」

俺の両手には、フェイリスが買った同人誌(ときどき抱き枕カバー)が詰め込まれた紙袋。
俺は、サークルの人と談笑しているフェイリスを遠くから見ていた。

フフッ、と微笑してみる。
その時…後ろから、誰かが抱きついてくる感触。胸の感触が伝わる。
後ろを見る。そこには…フェイリスのコスプレをした女。

岡部「!?」

俺の驚きに呼応したかのように、抱きついてきた女が身体を離す。

???「ご、ごめんなさい」

そう言って、その女はそそくさと去って行った。

岡部「何だったんだ、あれは…」

21 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:08:00.13 7Urpz8qKi 14/40

 11:40

フェイリス「にゃ~、戦利品がいっぱいニャ」

岡部「う、うむ…よかったな」

フェイリス「…でも、これは前哨戦ニャ」

岡部「…え?

入場からずっと、東ホールでいろいろと買い漁っていたフェイリス。
どんどん重くなっていく紙袋だったが、これがまた重くなるのかと思うとため息をつかずにはいられない。

岡部「…ふう」

そろそろ疲れが見えていた俺。そろそろ休もう…と、隣を歩くフェイリスに話を切り出そうとした瞬間。先に口を開いたのはフェイリスだった。

フェイリス「…凶真」

岡部「…?」

22 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:11:30.09 7Urpz8qKi 15/40

フェイリスが不機嫌そうな顔でこちらを見ている。
俺、何かしたか?…もしかしたら、さっきの女に抱きつかれていたところを見ていて、
それに対して不機嫌なのかも知れないな…
などと推測を巡らせていたが、それは正しくなかった。

フェイリス「ポケットに手を入れてみるニャ」

岡部「ポケット…?」

ズボンのポケットに手を突っ込む。…あれ。ない。
ポケットに入れておいた、財布が…

岡部「財布がないぞ!…まさか」

フェイリス「やられたニャ。どこかでスられたんだニャ」

スられた…まさかさっきの女!?

岡部「くそっ、やられた…あの女だ」

フェイリス「盗られたのは…本物の方かニャ?」

岡部「いや…ダミーだ。
『フゥーハハハ!こいつは偽物だ。引っ掛かったな機関の手先め!』と手書きで書いた紙束が入っている」

フェイリス「ニャハハ、凶真らしいニャ」

岡部「とにかく、フェイリスのコスを着た奴には気をつけなければ」

23 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:14:03.55 7Urpz8qKi 16/40

フェイリス「ニャ?そのスリはフェイリスのコスを着ていたのかニャ?」

岡部「ああ。コスプレ広場でもないのにな」

フェイリス「ニャハハ…全くだニャ。さあ、マユシィのところに行こうかニャ?」

岡部「その前に休ませてくれ」

フェイリス「凶真はもうお疲れかニャ?」

岡部「うむ。俺は体力がないのだ」

俺は、東ホールに備え付けてあった椅子にフェイリスと腰かけた。

24 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:17:10.29 7Urpz8qKi 17/40

12:00
東ホール

ダル「ティロフィナーレ本、手に入れたぜ…!売り切れるかと思ってヒヤヒヤしたお…」

ダル「そうだ、GET記念に@ちゃんへ本の表紙を投下するお!フヒヒ」

ダル「…ん?なんぞこれ?」


291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 11:51:06.16 ID:cidvUSDE0
>>208
ワロスダミー財布なくなってたwwww

中略

フェイリスコスに注意はしろよ


ダル「ぐぬぬ…おのれ、フェイリスたんコスでスリを働くとは…許せないお…!」

ダル「…ん?あそこにいるのは…」

25 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:20:13.26 7Urpz8qKi 18/40

 同時刻
 東ホール

俺とフェイリスは、東ホールにある椅子に腰掛け、休息を取っていた。
あの程度で音を上げるとは…。狂気のマッドサイエンティストとしての俺の体力のなさを恨む。
だが…

岡部「だいぶ疲れも取れてきたな」

フェイリス「本当かニャ!それじゃそろそろマユシィのところに…」

ダル「オォォォォオオオオカァァアアアアアアアリィィィイイイイイイインンンンンン!!!!!」

フェイリスの言葉を割るように、突如として大声でこちらに駆け込んできたダルが俺の視界に入ってくる。気分的にダルの顔面のドアップなど見たくないのだがな。
何故俺にばかり不幸が降りかかるのだ。

ダル「なんでオカリンがフェイリスたんと一緒にいるんだお、そもそもオカリンが昨日言ってた一緒に行く相手って…」

ああ…この流れは…俺には分かるぞ。これはダルの嫉妬からくる尋問が始まるフラグだ。だから今はそんな気分ではないのに。

岡部「ダル…言いたいことは分かるが後にしてくれ。こっちはスリに遭ってそういう気分ではいられんのだ」

ダルの言葉を無理矢理遮る。その俺の言葉に、ダルの目が丸くなる。

ダル「…マジ?」

26 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:24:01.52 7Urpz8qKi 19/40

岡部「ああ、大マジだ。盗られたのはダミーの方だったがな」

ダミーだったとはいえ、普通にスられたのは精神的にかなりダメージが大きかった。
俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だぞ。
そこら辺にいるような機関のエージェントに出し抜かれているようでは…。
要するに俺のプライドが許せなかったのだ。

ダル「実はさ、@ちゃんでフェイリスたんコスの女がスリやってるって騒ぎになってるんだお」

岡部「…何だと?」

急いで携帯から@ちゃんねるにアクセスする。
スレを見てみると…なるほど、確かに騒ぎになっている。

フェイリス「ニャ~…これは地味に困ったことになったニャ~」

岡部「安心しろ。お前よりだいぶレベルの低いコスだった。間違われることはまずない」

それに、今のフェイリスは私服だ。
フェイリスコスといえばメイド服が定番だろうから間違えようにも間違えられるわけがない。

ダル「ま、そういうことだから気をつけた方がいいお。それじゃ」

そう言ってダルは去って行く。

岡部「さて、俺達も行くか」

フェイリス「マユシィのところかニャ?」

岡部「ああ」

27 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:26:30.68 7Urpz8qKi 20/40

ダル「あっ…本渡し忘れてたお…」

ダル「まあいいか、後でまた会った時に渡そう」


 12:25
 コスプレ広場

俺とフェイリスは、コスプレ広場へと足を運んだ。
ここでは文字通り、コスプレイヤーがコスプレをしている。
ネタに走って笑いを取るコスプレをする人もいれば、ガチでそのキャラになりきる人もいる。

岡部「…確かこの辺りだったはずだが…」

コスプレ広場に唯一あるトイレ。
俺は、ここ周辺で待っているようにとまゆりに言われていたのだ。

フェイリス「マユシィはどんなコスで来るのかニャ~」

岡部「まゆりは多分コスプレはしないだろう…俺の目的は奴だ」

フェイリス「奴?」

岡部「ほら…来たぞ」

俺が指差したのは。
笑顔でこちらに向かってくるまゆり…ではなく。
まゆりに手を引かれて渋々とした顔でこちらにやってくる、女にしか見えない男。
漆原るか。通称ルカ子。
こいつのコスプレを見ることが、今日の目的だ。

29 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:29:42.99 7Urpz8qKi 21/40

まゆり「オカリン、来てくれたんだね~」

岡部「うむ。…それよりルカ子のそのコスプレは」

まゆり「ブラチューの星来オルジェルだよ~」

るか「まゆりちゃん、恥ずかしいよ…」

いつもはコスプレに関することになると断っているというのに、何故今回は応じたのか…
心境の変化、というやつだろうか。
…どう見ても本人は嫌がっているようにしか見えんぞ。まゆり。

まゆり「そういえばオカリン、今は一人?さっきはフェリスちゃんと一緒にいたけど」

岡部「…なに?フェイリスならここにいるでは―――」

いるではないか、と言おうとフェイリスがいた俺の隣を見ると、いつの間にかいなくなっている。
どこへ行った…?

まゆり「フェリスちゃんにも見せてこなくちゃ!それじゃオカリン、またねぇ~」

るか「ま、まゆりちゃん!岡部さんに見せたらもうこの格好しなくていいって―――」

まゆり「るか君、こっちだよ~」

るか「えええー…」

まゆりはルカ子の話などまるで聞いていない。
少し後を追って見てみると、撮影希望者に普通に写真を撮らせているまゆり。
助けてやった方がいいのだろうか?

30 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:33:04.65 7Urpz8qKi 22/40

フェイリス「凶真」

後ろから白衣を引っ張られる。この声はフェイリスか。
やれやれ、と頭の中で思いながらも後ろを振り向く。

岡部「フェイリス。突然いなくなるとはどういうことだ?」

フェイリス「ニャハハ。実はちょっと興味のあるコスプレしてる人がいて…」

岡部「釣られていたわけだな」

フェイリス「その通りニャ」

まゆりと入れ違いになってしまったわけだな。
おかげでルカ子が更に恥ずかしい目に遭うではないか。

岡部「さっきまでまゆりとルカ子がここにいたのだ。ルカ子のコスプレはなかなかよかったぞ」

フェイリス「ニャニャ!?それは一度見ておかなきゃいけないニャ!」

フェイリスはまたしても走ってどこかへ行ってしまった。
…すぐに戻ってきたが。

フェイリス「マユシィとるかニャンの周りにカメラマンがいて近づけなかったニャ」

岡部「ルカ子…がんばれ」

俺は、ルカ子がいる方角へ向けてそっと敬礼をした。

32 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:36:18.35 7Urpz8qKi 23/40

13:00
東4~6

岡部「そういえばこっちはまだ見ていなかったな」

フェイリス「そういうことニャ。さあ、凶真!行くニャァァアア!」

岡部「ハイテンションすぎるだろフェイリス…」

まだ昼飯も食ってないのに。どこからそんな元気が湧いてくるのだ。


フェイリス「あっ!この新刊くださいニャ!」

岡部「…この紙袋はどこまで重くなるんだ?」

俺の不安など意にも介さず、同人誌を買っては紙袋に入れるフェイリス。
たまに同人誌以外のもの…サークルが用意した購入者特典なども紙袋に入る。

フェイリスが買った同人誌は、ざっと数えただけでも30は軽く超えている。しかも現在進行形でその数は増えている。
1冊500円換算だとしても1万5千円は最低でも使っていることになる。
流石、としか言いようがない。

34 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:39:37.46 7Urpz8qKi 24/40

 13:30

フェイリスは相変わらず同人誌をメインにいろいろと買い漁っている。
しかもフェイリスの場合は普通にサークルの人と話が弾む。
ノリのいい人と悪い人を見分け、話す相手を選んでいるようにも見えるが…。

たまに、メイクイーンの常連なんかとも出くわして、握手を求められたりもしている。
決まってそいつらは俺を見るなり悪意のこもった眼差しになる。
フェイリス曰く、『凶真はダルニャンと並んで常連さんの間でもかなりの有名人ニャ』ということらしい。
ダルは分かるが何故俺まで有名になっているのだ。


フェイリス「ふにゃあ~、だいたい欲しいものは買えたニャ~」

岡部「企業ブースには行かなくてよかったのか?」

フェイリス「FESのライブには昨日行ってきたから大丈夫ニャ!販売されているものは1日目に買ってきたニャン」

岡部「…そうか」

適当に返事を返す俺。…そんな中、ある異変に気付いたのも俺。
後ろを見渡すと、さっきから俺達の後をつけているであろう人物が複数人いるのだ。

36 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:42:24.32 7Urpz8qKi 25/40

俺はウキウキ気分になっているフェイリスの肩を叩いた。

フェイリス「ニャッ?凶真、どうしたのニャ?」

岡部「…何者かに尾けられている」

携帯を見る。時刻は13:45。
携帯を耳に当て、いつものように『俺だ』から始まる一人通話をしようとしていた。
だが、突然耳がブルブル振える感触。携帯が着信を知らせるバイブの振動だ。
誰だ、こんな時に…

岡部「もしもし」

ダル『あぁ、オカリン?僕だけど。今どこにいるん?』

岡部「ダルか。ここは東の…5だな」

ダル『あー、やっぱり』

岡部「やっぱり?どういうことだ」

ダル『@ちゃんに目撃情報が書き込まれたんだお。フェイリスが東5に男と一緒にいるって』

岡部「なん…だと…?」

@ちゃんの書き込みで『フェイリス』と言っているということは、間違いなくフェイリスのコスを着たスリのことだろう。
面倒なことになりそうだ。

37 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:45:35.75 7Urpz8qKi 26/40

ダル『誰かに尾けられたりしてない?』

岡部「現在進行形で思いっきり尾けられている!というか何故間違えられた!フェイリスは私服だぞ!?」

ダル『だよなあ。つーか間違えるなんてありえねーっしょ。
本物のフェイリスたんをまがいもののコスプレ如きと間違えるなんて』

岡部「だが現に奴らは本物をスリだと思い込んでいる。
俺達はなんとかして逃走を図るから、お前は引き続き@ちゃんの書き込みをチェックしろ」

ダル『オーキードーキー。気をつけろよオカリン。VIPの連中は執念深いぜ』

岡部「うむ。では切るぞ!」

俺は携帯の通話を切った。

フェイリス「凶真、今のって…」

岡部「面倒なことになった。@ちゃんの連中が俺達をスリだと思い込んでいる」

フェイリス「えっ…」

岡部「とりあえず逃げるぞ!」

俺とフェイリスは、混雑を抜けた瞬間に、早歩きへと歩き方を変えた。
さて、どう逃げよう。

39 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:48:25.56 7Urpz8qKi 27/40

 14:00
 休憩所

ダル「うわー…オカリンの状況がどんどんまずくなっていく一方だお…」


928:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 13:48:17.33 ID:FAt3NZ9W0
フェイリスいたぞ!
けど男と一緒にいる

942:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 13:49:16.40 ID:uMPZ6JGu0
>>928
\オッカリーン/

949:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 13:50:53.92 ID:hOXh7h7K0
>>928
オカリンだな


ダル「うーむ…ちょっと書き込んでみるか」

41 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:51:51.30 7Urpz8qKi 28/40

ダル「そのフェイリスたん、本物じゃね、っと…投稿」


67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 14:01:21.00 ID: VbUqwgKm0
白衣の男と一緒にいたんだろ?
そのフェイリスたん、本物じゃね?

80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 14:01:46.69 ID: 0/QlrWx/0
>>67
ダル乙

83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 14:01:48.23 ID: VbSexgKm0
>>67
ダル乙wwwwww

91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 14:02:04.90 ID: VbFaRIsm0
>>67
バレル・タイターさん何やってんすかwwwwwwww


ダル「ぐぬぬ…」

42 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:55:13.12 7Urpz8qKi 29/40

 14:30
 ビッグサイト・バス乗り場

岡部「はあ、はあ…ようやく逃げられたな」

フェイリス「ふにゃあ…」

俺とフェイリスはあれから…少し歩いた後、人混みに紛れて逃走した。
今頃@ちゃんはフェイリスの話題でもちきりなのだろう。
バス乗車の列に並びながら、俺達は息を整えた。

フェイリス「一体何だったのかニャ…あれ…」

岡部「ちょっと待ってろ」

俺は携帯を取り出し、@ちゃんにアクセスする。
やはり、スレの書き込みはフェイリスの話題でもちきりだった。
今は戦利品うpの流れになっていてフェイリスの話はあまり出ていないが…
テンプレとなっているまとめには、フェイリス狩りというワードがある。

岡部「…フェイリス狩り、か」

フェイリス「まったく、迷惑な話だニャ」

俺の携帯を横から覗き見るフェイリス。
その表情は笑ってはいなかった。
ちょっと怖い。

44 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 22:58:19.96 7Urpz8qKi 30/40

フェイリス「ところで凶真」

岡部「ん?」

フェイリス「その、フェイリスのコスを着た人って、本物のフェイリスと間違えるほどレベル高かったのかニャ?」

岡部「いや、お前と比べたら天と地ほどの差がある」

フェイリス「どっちがかわいかったニャ?」

岡部「どっちが、って…」

フェイリス「どっちニャ?」

上目遣いでこちらを見てくるフェイリス。
…何故だろう、俺には一つの答えしか与えられていないような気がしてならない。
こんなに人がいる中でこの台詞を言わされるのは恥ずかしいのだが…

岡部「お、お前の方が可愛かった…ぞ」

フェイリス「凶真、本当かニャ!?フェイリスは嬉しいニャ!」

フェイリスが抱きついてくる。密着すれば当たるものが普通に当たっている。
そして、案の定周りの注目を浴びる。
『リア充かよ』という憎悪の念に満ちた声が聞こえる。
はあ、早くバス来ないかな。

45 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:01:42.07 7Urpz8qKi 31/40

 15:10
 秋葉原

浜松町を経由し、秋葉原まで戻って来た俺とフェイリス。
今日は最終日だからか、コミマ帰りの人間でごった返している。
恐らくとらのあなは更にカオスなことになっているのだろう。

岡部「これからどうする?」

フェイリス「えーと…とりあえず戦利品のチェックがしたいから、フェイリスの家まで来てもらえないかニャ?」

岡部「分かった」

俺達はとりあえず、東京タイムズタワー最上階のフェイリスの家に向かった。
その途中、コミマの企業ブースのものと思われる横長の袋を持っている人の姿をちらほら見かける。
コミマ帰りの人間はかなり多そうだ。

47 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:04:56.63 7Urpz8qKi 32/40

 15:20
 フェイリスの家

フェイリスの家に着いた。今朝…というか早朝、俺達をビッグサイトまで送ってくれた黒木さんはいないようだ。
俺はまず、ソファに今まで持たされていた重い紙袋を置いた。
肩が痛い。割とマジで。

フェイリス「凶真、お疲れ様ニャ」

岡部「うむ…」

ここまで来れば安心だろう。色んな意味で。
俺は胸を撫で下ろし、ソファに腰掛けた。

フェイリス「今日はありがとニャー。凶真がいなかったら、あんなにいっぱい本を買えなかったニャ」

フェイリスが俺の隣に腰掛ける。

岡部「まあ、フェイリスが楽しめたのならいい。ラボメンを楽しませるのもこの鳳凰院凶真の…」

と言いかけたところで、俺の言葉が続かなくなった。
フェイリスが突然、俺に体重を預けてきたから。
体重を預けてきたと言っても、かなり軽いので会話に支障は出ないはずなのだが、相手が女の子であれば話は別だ。
…猫耳が顔にちくちくと刺さる。痛い。

49 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:07:54.79 7Urpz8qKi 33/40

岡部「フェイリス?どうした」

フェイリス「ん…ちょっと疲れちゃったニャ」

岡部「俺の肩を枕代わりにするのはいいが、猫耳が刺さって結構痛い」

フェイリス「…凶真、もしかして誘ってるニャ?」

岡部「…は?」

フェイリスは猫耳を外すと、『秋葉留未穂』モードに変身する。
ニャンニャン言わなくなり、物腰も落ち着いた雰囲気のものとなる。
…それだけなのだが、そのギャップがたまらなく可愛いのも事実だ。

フェイリス「猫耳を取れ、って言ってるように聞こえるニャ」

岡部「取ってくれ」

あくまで、顔がチクチクして痛いから。
そう、痛いから、猫耳を取ってくれと言うのは仕方がない。
別に、留未穂モードのフェイリスを見たかった訳ではない。
自分で自分を強引に納得させた。

52 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:10:51.57 7Urpz8qKi 34/40

猫耳を取るフェイリス。

フェイリス「これで、いいかな?」

岡部「あ、ああ」

俺に体重を預けっぱなしのフェイリス…いや、留未穂。
留未穂の風変わりな髪の毛が俺の肩にまとわりついてくる。…いい匂いだ。
どんどん心臓の鼓動が速くなる俺。
何故ここまで無防備な姿を晒せるのか。俺だって男だぞ。襲うぞ。
いや、襲っちゃダメだろ!働け俺の理性!
相反する考えが頭の中で混在している。

フェイリス「ふふっ。凶真、今いやらしいこと考えてたでしょ」

言葉にならない擬音を発する俺。図星である。
そう、どんな考えもこいつにはすぐに見破られる。

フェイリス「よかった」

岡部「へ?」

フェイリス「ううん、なんでも」

何故、その発言から『よかった』に発展するのか。
俺には『チェシャ猫の微笑』などはないから、その言葉に秘められた真意など分かるはずもない。

53 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:13:37.35 7Urpz8qKi 35/40

 16:00

それから、何もしないうちに30分が経った。
そういえば、フェイリスの家に来たのは戦利品のチェックとか言ってなかったか。
俺を自分の家に誘い込む口実だったわけだな。…見事にしてやられた。
まあ、悪い気はしないのだが。
フェイリスは相変わらず俺に寄りかかったまま。
今、この家には俺とフェイリスの二人しかいないが、そろそろこっぱずかしくなってきた。

岡部「フェイリス、いつまでこうしていればいいのだ?」

フェイリス「…」

岡部「フェイリス?」

フェイリスからの返事がない。
そっと、そっと顔を覗き込んでみた。
…寝ている。静かに寝息を立てて寝ている。
よく考えたら、コミマであれほど活発に動いていたのだ。そりゃ疲れもするだろう。
その上スリに間違われて逃げ回っていたこともあったからな。

岡部「…弱ったな」

仕方がないので、フェイリスをお姫様抱っこしてベッドまで運んでやった。
お姫様抱っこ…一度やってみたかったのは内緒だ。

54 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:17:12.90 7Urpz8qKi 36/40

 18:30

フェイリス「んー…あれ、もしかして寝ちゃったのかな」

岡部「おはよう、お姫様」

俺はベッドの近くに備え付けてあった椅子に腰かけ、フェイリスが起きるのを待っていた。
…いや、俺は嘘を言った。実は90分くらい寝てた。

フェイリス「おはよう、凶真。お姫様って、何それ」

もう、おはようの時間じゃないのに、俺もフェイリスもあえて『おはよう』と言った。
ベッドの上で微笑するフェイリス。

岡部「お姫様はお姫様だ」

さっきフェイリスをお姫様抱っこしたから、なんとなくそう呼びたくなった。
ただ、それだけだ。

フェイリス「だったら、凶真は…」

フェイリス「私の王子様だね」

岡部「王子様…か。悪くない響きだな」

フェイリス「もう1年前から言ってることなのに」

岡部「…そういえばもうそんなになるか」

今は2011年。フェイリスと知り合ったのが2010年だから、確かにそうなる。時の流れは速いものだな。

57 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:19:06.21 7Urpz8qKi 37/40

 19:30
 
俺とフェイリスはそれから暫くの間、何気ない会話で談笑し、
完全に日が落ちた頃に、フェイリスの家を出てラボへ向かった。
別れ際に、『メイクイーンのフェイリスを1日奴隷にできる券』をフェイリスからもらった。
…子供の時に両親に渡したような、『肩たたき券』を彷彿とさせる。
どう考えても即興で作りました、という匂いがプンプンするのだ。
俺がこれを使うことは多分ないだろう。

頭の中で色々と考え事をしているうちに、いつの間にか大檜山ビルの階段を登っていた。
何も考えず、2階の部屋…ラボのドアを開ける。
そこには、思いがけない人物がいた。


紅莉栖「岡部!久しぶり」

岡部「…紅莉栖!?」

牧瀬紅莉栖。2010年夏、日本に滞在していた天才少女。アメリカ在住。
秋以降はアメリカに戻り、メールでしか連絡を取っていなかった少女が今、目の前にいる。
その突然とも言える再会に、俺は驚くことしかできなかった。

58 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:21:31.79 7Urpz8qKi 38/40

岡部「日本に来るならメールの1通くらい入れればよかったものを」

紅莉栖「ごめん。皆を驚かせたくて」

やれやれ、とため息をつく。

岡部「ところで、何故日本に?また留学か?」

紅莉栖「ううん。明日からコミマでしょ?」

岡部「…え?」

紅莉栖「夏コミって8月15日からじゃなかった?」

岡部「…」

確かに去年の夏コミは8月15日からだった。だが、毎年同じ日に開催するとは限らない。
今年の夏コミは、8月12日から14日まで。つまり今日で終わりなのだ。

岡部「今年のコミマは12日から14日だぞ」

紅莉栖「…は?」

59 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:23:26.29 7Urpz8qKi 39/40

岡部「だから、今年のコミマは14日までで…その…今日で終わりなのだ、クリスティーナ」

紅莉栖「そんな…信じられない…!」

絶望に打ちひしがれ、orzの体勢を取る紅莉栖。
かけてやる言葉が見つからない。

紅莉栖「アレとかアレとか…買う物リストアップしてたのに…!」

岡部「そこまでやっておいて何故日程を間違えるのだ」

紅莉栖「うっ、うっ…だって、だって…」

紅莉栖「ううっ…こんなの、あんまりじゃない…!」


これは気の毒…いや、むしろ自業自得だ。
それから紅莉栖は日本に滞在している間ずっと、その話を俺に持ちかけてきた。
積もる話もあっただろうに。

余談だが、結局俺の財布をスっていったフェイリスコスの女は捕まらなかったらしい。
本物のフェイリスを取り逃がして、諦めてしまったのか、それとも…
謎は深まるばかりである。


おしまい

62 : 以下、名... - 2011/08/23(火) 23:26:28.62 7Urpz8qKi 40/40

これでおしまいです

なんというか、ただのスリだったら話題にもほとんど登らなかったと思うんだよね
ゴスロリのスリがいました→実はフェイリスたんコスでした
だったからあそこまで話題になったと思っている

コミマのSSは以前にも書いたけど、こっちは割と現実味を持たせてみた…つもりだがどうだっただろう。
とりあえず、支援、保守ありがとニャンニャン!

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