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上条恭介「幻想御手?」【1】

151 : 以下、名... - 2015/10/27 22:54:18.34 0D7NAuHmo 147/620

~~数日後、教室~~


仁美「さやかさん、……さやかさん」

さやか「ん?」

仁美「もう、学校に音楽プレイヤー持ってくるの、禁止ですわよ」

さやか「ああ、悪いー。しまうわ」ガサゴソ

仁美「休み時間になるたびずっと聴いていたでしょう。

   まどかさんはまどかさんで朝から眠そうでしたし……」

まどか「(ティヒヒ)起きてたふりしてたのに仁美ちゃんにはバレちゃう。

     さやかちゃん、朝来るときも、わたし達そっちのけで聴いてたね」

さやか「うん、恭介に頼まれてんのよ」

152 : ◆Y4NjDgz4uE - 2015/10/28 11:23:01.73 VPNsCRPho 148/620

仁美「上条くんが? ということはクラシックですの?」

さやか「うん」

ほむら「もしかして、病室にあったCD落とした分ですか?」

さやか「そう。あれ全部みたい。よく聴いといてくれ、て」

まどか「ぜ、全部!?」

さやか「そうそう。まどかとほむらにこれ……」ゴソ

ほむら「あ、モーツァルトの――」

まどか「わざわざCD焼いてくれたんだ」

さやか「うむ」ホイ

まどか「ありがとう」ハシ…

ほむら「ありがとうございます」ソ…

153 : 以下、名... - 2015/10/28 11:27:18.85 VPNsCRPho 149/620

仁美「……あの、上条くん、いったいどうして急に…」

さやか「けっきょく左手は現代の医学では治せない、って主治医に言われたんだから、

    なんかね、左手と右手でヴァイオリンと弓を持ち替えて弾くようにしたみたい」

まどか「そんなこと、できるの?」

さやか「うーん…」

仁美「難しいですわね……。左右の指使いが全く異なることがただでさえ障害となるのに、

   今の上条くんは左手の指をほとんど動かすことができません。

   ヴァイオリンは弦に伝える力・振動のささいな違いがそのまま音色に反映されてしまう。

   たとえば握れない左手に弓を固定するのだとしたら、そのこと自体どう影響が出るか…。

   加えて弓を持つ手には、動きに合わせて微妙に指を曲げ伸ばすことが要求されますわ」

154 : 以下、名... - 2015/10/28 11:31:36.89 VPNsCRPho 150/620

ほむら「…やっぱり……」

さやか「でもあいつはもうやってる。今まで使ってたヴァイオリンは返して、

    おじさんに頼んで左利き用のを買ってもらった、て。
 
    ……あたしは頼まれたとおり聴くことくらいしか……」

ほむら「身に付けた技術だけがものを言う世界、

    要求されなければ、選ばれなければプロとして生き残れすらしないって。

    どんな仕事でもそうだとしても、それでもやっぱり特別に……」

まどか「……」

さやか「『やらなければいけないからやってるんじゃない。やりたいからやってるんだ』」

まどほむ「?」

155 : 以下、名... - 2015/10/28 11:35:58.05 VPNsCRPho 151/620

さやか「ほむらみたいにさ、あたしも大変だねって声かけたことあんの。ケガする前によ。

    そしたらそう答えたんだ。

    面倒臭いことばっかだけどそこは自分で勘違いしないって。

    ま、昔おじさんに叱られて考えたってこともあったみたいだけど。

    あたしにはもう『やるからやる』って風にしか見えないんだけどさ‥」チラ


中沢「上条、ケガはもういいのかよ……」

恭介「……ああ、だいじょうぶ……歩いて登校してきたし。そういえば病院で走ってたし」グタ

中沢「……なんかお前、全然大丈夫そうじゃないぞ」

恭介「大丈夫……眠くない」


まどか「さやかちゃんも行ってきなよ。今日まだ話してないんでしょ?」

さやか「あたしは…」

仁美「…」

さやか「…うん、行ってくる」

156 : 以下、名... - 2015/10/28 11:40:02.65 VPNsCRPho 152/620

中沢「おい美樹、上条寝てるぞ。こいつ大丈夫なのか?」

さやか「ちょっと本人に聞いてみるわ。恭介!」

恭介「ん…、おはよ‥」ムク‥

さやか「おはよう、って全く起きてないし。まず顔洗って――」ユサ

プーン

さやか「(ヒソ)…言いたかないけど臭うよ。お風呂入ってる?」

恭介「ああ……2、3日前入ったような…」

さやか「……あんた、今日からでしょ。

    まどかもいるんだから帰ったらシャワーくらい浴びときなよ」

恭介「うん……分かった…………」…クタ

さやか「……」

157 : 以下、名... - 2015/10/28 11:44:07.10 VPNsCRPho 153/620

スタスタ…

仁美「あの、お二人とも、ちょっとよろしいですか」

さやか「う、うん? なに、仁美」

仁美「アメリカに父の知り合いの医師がいるんです。神の手を持つと言われていて……」

さや(!)ピクッ

ムク…

仁美「上条くんと同じことを言われたピアニストが、

   その医師の手によって復帰したという実績もあります」

まどか「な、なんだってーー!」

仁美「(クル)あら、まどかさん、暁美さん…」

158 : 以下、名... - 2015/10/28 11:48:57.24 VPNsCRPho 154/620

ほむら「すごいことです、志筑さん!」ホムッ

仁美「いえ、まだ。診断結果によっては、

   せっかく上条くんが心機一転で頑張っているのに水を差すだけになるかもしれません。

   でも、諦めるのはまだ早いと思うんです。一度、上条くんも診てもらったほうが……。

   どうですか、さやかさん、上条くん」

ガタ…

さや「ぜひお願いします。助けて下さい」ペコ

仁美「……わかりました。ではさっそく父に頼んでみます。

   繰り返しになりますが、必ずしも…」

159 : 以下、名... - 2015/10/28 11:53:01.57 VPNsCRPho 155/620

恭介「分かってる。紹介してくれるだけで御の字だよ。今は今の練習しかできないんだから、

   とにかくできることや可能性には全部しがみつくだけだから。

   こうしちゃいられない、早く担当医の先生や親に相談しなくちゃ。(ガサガサッ)

   ああ、忙しくなってきたなあ。ごめん、先に帰るね。ありがとう、志筑さん!」ガタッ

タタタタ…

まどか「……上条くん、嬉しそう。よかったね」

ほむら「ええ。セカンドオピニオンがあるってこと忘れてました。

    わたしだって、両親があきらめずに必死にお医者さんを探してくれたおかげなのに……」

まどか「誰だって、お医者さんに現代の医学では治せない、なんて言われたら思いつかないよ。

    それにしても上条くんのあんな顔、久しぶりだね。

    脇目も振らずにバイオリンのことだけ」ティヒヒ…

160 : 以下、名... - 2015/10/28 11:57:39.25 VPNsCRPho 156/620

さやか「あれが本来のあいつだよ。……仁美、ありがとう」

仁美「……ぬか喜びの場合だったときのことも覚悟しておいてください。老婆心ながら。

   いつも側にいた人にしか掛けられない言葉がありますから。

   習い事の準備がありますので、みなさん、今日はここで」ペコ…

まどか「あ、うん。じゃあね、仁美ちゃん。またあした」


161 : 以下、名... - 2015/10/28 12:03:03.68 VPNsCRPho 157/620

~~夕方、駅前~~


恭介「ZZZ……」

まどか「上条くん」

さやか「おい、起きろ」

恭介「んへ?」ムク

まどか「ごめんね。待たせてたのに、起こしちゃって」

恭介「あふぁ……。あ、いや、気遣わないで。行こ」フラ

162 : 以下、名... - 2015/10/28 12:07:06.64 VPNsCRPho 158/620

~~電車の車両内~~

ガタンゴトン ガタンゴトン…

まどか「夕べの使い魔、逃げ足が速かったね」

さやか「あー、昨日はあやうく助けるはずの人殴るところだったわ。

    マミさんがいなかったらどうなってたか……」

まどか「わたしも分からなかったよ。

    あの使い魔が追っかけてたボール、人間が変えられた姿だったんだね」

さやか「ほんと、マミさんは何でも知ってるなあ……。

    くそー、自分のやろうとしてたことにショック受けてる間に逃げられたんだよなー。
 
    今日こそ……」

163 : 以下、名... - 2015/10/28 12:11:08.33 VPNsCRPho 159/620

まどか「そんなに気負わないで。昨日はその人を助けることができたんだから」

さやか「しっかし元の姿に戻すのにひたすらまりつきしなきゃいけないとは……。

    魔女のやり方って怖いくせに変に人間臭いというか、油断すると親近感湧きそうだ」

まどか「そうだよね……。わたしも、何だか最近…」

恭介「ぐ~…」

さやか「おーい。これから危険な目に遭うって分かってるかー。まどか、起こして」

まどか「降りる駅まで寝かせてあげようよ。ね?」

さやか「ふぅむ…」

まどか「……上条くんは一生懸命頑張っているところを、さやかちゃんが見ててくれるよね……」

164 : 以下、名... - 2015/10/28 12:15:14.55 VPNsCRPho 160/620

さやか「見ることしかできないけどな」

まどか「……でも、一生懸命頑張ってるのに、誰も見ていてくれなくて、

    誰にもそのことを分かってもらえなかったら、

    その人はどんな気持ちなんだろ……」

さやか「(グッ)まどか、あんたひょっとして悩んでたの? 悪い、あたし…」

まどか「ち、違う! わたしなわけないよ。

    さやかちゃんは昔からこうしてわたしのこと思いやってくれるし、

    それにマミさんもほむらちゃんも、わたしを見守ってくれてる。

    わたしのパパとママもタツヤも、笑顔でわたしを送り出してくれる……。

    わたしばっかり、こんなに幸せで……」

さやか「……?」

165 : 以下、名... - 2015/10/28 12:19:19.36 VPNsCRPho 161/620

まどか「ご、ごめんね。今から魔女退治なのに……」

さやか「…いや、そう受け止めてくれてるのはこちらもありがたいというか……。

    ま、単純な話、あたしがあんたのことを好きだからだよ」ドカ…

まどか「う、うん……ありがとう。…わたしも‥」

さやか「(ニコッ)好きだから、幸せになってくれるなら嬉しいというか、

    そこで寝てる奴にも言えるんだけどさ」

まどか「ふふ」

さやか「でもね…、あたし、恭介にはちょっと行き過ぎてたな……」

まどか「え?」

さやか「こいつにとって何が幸せとか、あたしが決めつけられることじゃなくてさ……」

まどか「ああ、うん……」

166 : 以下、名... - 2015/10/28 12:23:22.86 VPNsCRPho 162/620

さやか「もしかしたら、多分こいつにも今分からないことなんだよ、それって。

    だから出来るかどうか分かんないことまで手を出して、必死にもがいて……。

    仁美の言うとおりだよ。あたしはさっき浮かれそうになったけど、

    本人にとってはさ、受け入れ始めたときにまた希望と不安が降って湧いて、

    実は結構ストレスになったりしてるかもしれないんだよな」

まどか「さやかちゃん……。……上条くん、本当に頑張ってるんだね」

さやか「それはまどかも、だろ」

まどか「え?」

さやか「仁美が言ってたじゃん、ちゃんと寝てる?

    恭介みたいに重症じゃなくても、最近あんたさ……」

167 : 以下、名... - 2015/10/28 13:07:07.68 VPNsCRPho 163/620

まどか「あ、うん。だいじょうぶだよ」

さやか「水差すようなこと言いたくないけど、ひと言。

    『イヌもひともよるはねるもんだぜ◇ねろよ!』。

    迷ったときさやかちゃんはこの言葉を頼りにしてきた」

まどか「‥それは、あんまり……」

さやか「ん、何だって?」

まどか「見習いたくないなって…」

さやか「みなまでいうなっ!」

まどか「うぇひひっ」

168 : 以下、名... - 2015/10/28 13:12:03.78 VPNsCRPho 164/620

さやか「――うん。でもだからさ、あたしも頑張ろうと思うんだ。

    まどかのママみたいにはなれなくてもね。

    余計なことは考えずに、それなりにを維持して、今まで通り自分らしく頑張る。

    で、恭介を支えるよ。いつかそうなったら、こいつの子どもは、

    あたしとこいつの子どもらしく育ってくれればいい」

まどか「ふふ、そこは変わらないんだ」

さやか「変わらない? 前まどかに話したっけ?」

まどか「あっ、こ、こないだお見舞いに行ったときにね、

    さやかちゃんとどんな話してるのかなー、って教えてもらったの」

さやか「ほぉ…、なかなかやるではないか。

    決めた、これからもっとまどかを可愛がることにするわ」

まどか「えっ、ええーー」


169 : 以下、名... - 2015/10/28 13:16:31.96 VPNsCRPho 165/620

~~マミの部屋~~


ほむら「急に寒気が……!」

マミ「大丈夫?」

ほむら「はい。体の不調ではなく……」

マミ「ならいいんだけど。居間で好きに寛いでてくれていいのよ」

ほむら「いえ、手伝わせてください。もう治まりましたから、後で鹿目さんに聞いてみます」

マミ「?」ジュージュー ジャカジャカ

ほむら「それにしてもこんなに野菜使うんですね、スープに」ムキムキ…

170 : 以下、名... - 2015/10/28 13:21:59.81 VPNsCRPho 166/620

マミ「ふふ。今日はみんなで食べるからちょっと奮発したの」ジャカジャカ

ほむら「そうなんですか? でもそれじゃ…」トントン トントン

マミ「それに、一度作っておくと、結構持つし。朝温めるだけでいいから楽なの」ガラ

ほむら「いいですねー。わたしも覚えよう。あ、人参切りますか」チャポチャポ…

マミ「今はいいよ、ピーラー使うから。玉ねぎの上と下落としといてくれる?」シーッシーッ

ほむら「はい」タン タン

マミ「すごい、ジャガイモ早く切ってくれたね。よく料理するの?」ジャババ…ドサドサ

ほむら「はい……。退院してから一人暮らし、始めたばかりなんです」

マミ「そうだったの。大変でしょう」ジャカジャカ…

ほむら「はい。人参切りますね」トントン トントン

171 : 以下、名... - 2015/10/28 13:26:02.83 VPNsCRPho 167/620

マミ「ありがとう。水切ってるジャガイモと一緒にして、こっちに入れてちょうだい」ジャカジャカ

ほむら「わかりました」ドサドサ…

マミ「さて……玉ねぎをむきましょうか……!」ジュー ジュー…

ほむら「はい……!」

マミ「うぅ……」ボロボロ 

ほむら「しみる~」ボロボロ

マミ「……一人暮らしって、大丈夫なの? あなた、心臓が…」ボロボロ

ほむら「ええ、それで治してくれた先生のいる病院があるから、

    何かあったときでも、って」ボロボロ

マミ「なおさらご両親と一緒に住んでいたほうが……。あ、お鍋お願い」シャキ シャキ

172 : 以下、名... - 2015/10/28 14:13:54.34 VPNsCRPho 168/620

ほむら「わたしから言い出したんです。

    パパもママも、わたしのために何度も引っ越しして苦労させ続けたから……。

    何かなんて起こらない、この先生なら大丈夫だって。

    でも経過を見ながら安心のために近くに住んでいたいだけだから、

    パパの勤めている会社から元の部署に戻ってくれないか、って話が来てたみたいだし。

    大学になったらわたしも東京に戻るからって、

    思いっ切りわがままを言って……」ジュー ジュー

マミ「確かに無茶な話に聞こえるわ。お父さんとお母さんがよく許して下さったな、というか。

   でもあなたなりにご両親を気遣って言ったのでしょうけど……」パラパラ

173 : 以下、名... - 2015/10/28 14:18:00.17 VPNsCRPho 169/620

ほむら「みんな疲れていたから……。

    また入院することになったら、って気持ちはパパもママもあったと思うから、

    でもわたしは魔法少女になって、体もすこし丈夫になった実感があったから。

    だから逆に、この先生を信頼して縦えそうなっても治療はここで続ける。

    でもきっともう大丈夫だから、パパとママだけ先に元の家で元の暮らしに戻って、

    て押し切ったんです」ジュー ジュー 

マミ「それっていつのこと?」ジャーッ

ほむら「え…」ドキ

174 : 以下、名... - 2015/10/28 14:23:06.13 VPNsCRPho 170/620

マミ「……わたしは余計にそう思うのかもしれないけど、

   中学生のころならまだまだ親の側で甘えたいんじゃないかなあ、って思って。

   生活が軌道に乗ってからでも凄いことだけど、退院する前から決めてたのなら、

   とても勇気あると思うわ」ゴリーッ ゴリーッ

ほむら「そんなカッコいいものじゃ…。本当はそうしたい理由が他にあっただけで……」ジュージュー

マミ「…。その理由が何であれ、現にこうして一人暮らしで頑張ってるじゃない。

   わたしも仲間がいると思うと心強い」シュッ チャポ シュッ チャポ

ほむら「わたしのほうこそ。先輩はわたしよりずっと長く…………」ジュー ジュー

マミ「…でもね、同じ一人暮らしでも、わたしのほうが楽をしてるかもね」トン トン

ほむら「え……?」ジュー ジュー

マミ「ほら、この部屋わたしたちみたいな年頃の子が一人で暮らすには、

   広すぎると思わない?」パラパラ

175 : 以下、名... - 2015/10/28 14:32:10.88 VPNsCRPho 171/620

ほむら「あ…」ジュー ジュー

マミ「父と母はこの部屋と財産を遺してくれた…。

   ある日、突然途切れたけど愛おしい思い出もたくさんね」ジャババ… ザサッ

ほむら「……ここは、ご家族の家なんですね…」ジュー ジュー

マミ「ええ。‥ありがとう、代わるわ。後はわたしに任せて。

   お茶を淹れるから、先にあちらで待っててくれる」パラパラ
  
ほむら「はい」

176 : 以下、名... - 2015/10/28 14:36:23.81 VPNsCRPho 172/620

マミ「不思議なものね……。

   わたし、遠い親戚しか身寄りがいないから、ずっと一人ぼっちだと思ってた。

   でもあなた達とこの部屋で賑やかに過ごしたりするようになって、ようやく気づいたの。

   ずっと以前からわたしはこの家に守られていたんだって」ジュー ジュー

ほむら「最初にお邪魔したときから、

    温かく包んでくれるようで、素敵な部屋だと思ってました」

マミ「そう言ってくれると嬉しい。

   というのはね、家具こそ前より少しは変わったかもしれないけど、

   あちこちにね、家族の思い出と一緒に育ってきた部屋なんだ、

   って思えるようになったから」ジョーー… スタスタ  ドボーッ 

177 : 以下、名... - 2015/10/28 14:40:29.38 VPNsCRPho 173/620

ほむら「……そうですか」

マミ「それにこれからは、

   あなた達と思い出を作っていくことができる場所なんだし」ジョーー… スタスタ  タン カチッ

ほむら「そうですね。いつか、みんなで泊まりにきて…」

マミ「あら、あなたも美樹さんみたいになってきたわね」キリキリ キリキリ カパッ

ほむら「(ハッ)いつの間にこんな……!」

マミ「いつでも大歓迎だから、言ってね」ドポポ…

ほむら「ありがとうございます、楽しみにしてます。

    そう言えば、前に鹿目さんのお家に泊まらせてもらったとき、

    鹿目さんも巴先輩に来てもらったら嬉しいなって…」

マミ「わあ、嬉しい。楽しみだわ。あなたの部屋にもお呼ばれしようかしら」グツグツ…

ほむら「えぇ!? ……あ、あの、わたしの部屋なんて、まだ部屋と呼べるような場所じゃ…」

マミ「いえいえ、楽しみにしてます」スイ スイ スイ

ほむら「うう…」

178 : 以下、名... - 2015/10/28 14:44:49.24 VPNsCRPho 174/620

~~裏路地~~


さやか「……ここだ」フワァッ

QB「昨日の使い魔だね」

まどか「上条くん、気をつけて」フワァッ

恭介「ん…」

サアァァァァ…

使い魔「ブゥーン、ブブ、ブブブウーーンッ」

まどか「また逃げられちゃうっ」

さやか「追うぞっ」ダッ

――ギュンッ ザクッ

さやか「とわあ!?」ビクッ

179 : 以下、名... - 2015/10/28 14:48:54.84 VPNsCRPho 175/620

杏子「ちょっとちょっと、ここで何やってんのさ?」スタスタ 

まどか「え…あっ、風見野……」

さやか「ここ…、もしかしてあんたの縄張りだった?」

杏子「ああ。うん……? アンタ達、どこかで会ったことあるか?」パク ムグムグ

さやか「いや、覚えはないけど。とにかく勝手に踏み入っちゃってごめんなさい」

杏子「分かりゃいいんだけどさ。二人とも新入りみたいだし。

   ‥アンタも手広くやってるじゃないか」

QB「僕は、僕との契約を必要としている子達を探しているだけだよ」

杏子「‥そこの坊やは?」

180 : 以下、名... - 2015/10/28 14:52:58.48 VPNsCRPho 176/620

まどか「あ、上条くんは…」

恭介「zzz……」

まどか「って、立ったまま寝てる!?」

さやか「あたしの知り合い。どうしても魔女退治についていくって聞かなくてさ」

杏子「ふん。あんたの勝手だけど気をつけな。一般人を巻き込んで、いいことは一つもないよ」

さやか「気をつけるわ。ところでさっきの使い魔、追わなくていいの?

    早くしないと見失うんじゃ……」

杏子「ああ、そうか。(パク)教えといてやるよ。

   使い魔倒してもグリーフシードは手に入らねえ。

   4、5人ばかり喰えば魔女になるから、

   無駄な魔力を使わずにそれまで待つことだね」ムシャムシャ

まどか「え…?」

181 : 以下、名... - 2015/10/28 14:57:02.36 VPNsCRPho 177/620

さやか「……ということはあんたの街では、使い魔を狩らないんだね」

杏子「そうさ。命がかかってるんだ。

   ソイツに何言われてるか知らないけど、まず自分の身を守ることだけ考えな」

さやか「……あのさ、風見野の使い魔、あたしに狩らせてくれないかな。

    魔女には手を出さないから」

杏子「ハァ? 言ってる意味分かるか?

   タマゴ産む前のニワトリ絞めて回るようなもんだぞ?」

さやか「大丈夫、自分の回復はこっちでなんとかするから……。頼むよ」

杏子「駄目だね。将来魔女になる奴らを潰されちゃ、こっちがたまらねえ」

さやか「……」

杏子「だいたい、どうして使い魔を倒すことにこだわるのさ。

   人助けだの正義だの、その手の理由はごめんだよ」

さやか「……そうかもしれない」

182 : 以下、名... - 2015/10/28 15:01:28.21 VPNsCRPho 178/620

杏子「……!」スゥッ

さやか「キュゥべえと契約した時は、そこまで深く考えてなかったけど、今、納得はできるよ。

    自分が叶えたい願いのために、魔女や使い魔と戦うっていう義務を受け入れたんだ。

    それが人助けとか正義を指すのなら、それが魔法少女のやることだって言うのならさ」

杏子「(フゥ…)だから、契約の条件をあんたがそこまで履き違えなくてもいいんだって。

   魔女だけ狩ってりゃ、グリーフシードが手に入ってあんたも生き延びられるし、

   義務だって果たしてるんだよ」

さやか「あんたの言ってること、分かるよ。

    魔法少女を続けるのがどれだけ大変なのかはまだ分からないけど。

    ……でもね、あたしは自分の家族や友達やその家族が、

    あたしの知らないところで魔女や使い魔の犠牲になったりするのが怖い」

183 : 以下、名... - 2015/10/28 15:05:34.15 VPNsCRPho 179/620

杏子「いいかい。人間は魔女や使い魔より弱い。弱いから喰われる。

   その魔女より強いアタシたちが、魔女を喰うんだ。

   それがルールってもんだろ」

さやか「それでも、あたしに守れる力があるなら……。

    あたしはそうしたい。いや、そうしなきゃ起こってからじゃ取り返しがつかない。

    魔女や使い魔は同じ場所にずっといるわけじゃないんでしょ?

    あたしの家族や、友達やその家族だって、隣町なら行き来もするし。

    ……たとえあんたを押し退けてでも、使い魔だって狩らなきゃ」

杏子「(ハァーッ…)分からねえ奴だなぁ。誰もアンタに頼んでなんかないっつの」ガリガリ

184 : 以下、名... - 2015/10/28 15:09:57.08 VPNsCRPho 180/620

さやか「……」

杏子「……家に帰って頭を冷やしな、って言いたいとこだけど。(グシャグシャ)

   ‥その顔じゃ変わりそうもないね」 ポイ

さやか「昔っから、決めたことは我を通さなきゃ気が済まないタチでさ」

杏子「仕方ない。やってみな。…押し退けられるものなら」ギラリ

さやか「…悪いね」ニヤリ


185 : 以下、名... - 2015/10/28 15:14:49.61 VPNsCRPho 181/620

~~マミの部屋~~


マミ「ねえ、美樹さんのことどう思う?」

ほむら「うるさいけど優しくて強い人だと思いますが」ズス…

マミ「(スス…)ええ。とっても、特に人が困ってそうなところをみると強く反応してしまう。

   人の道としてやるべきことをその場その場で敏感に感じ取って、

   すぐに行動に移さずにはいられない。直情径行さが一番の魅力よね。

   わたしも彼女のそんなところが好きなんだけど……」カチャ

ほむら「それが何か……よくないことでも?」

マミ「……魔法少女は人々に希望を与える存在だわ。

   でもどうしても、自分の身を守ることと、

   人々を助けることのどちらかを選択しなければいけない局面もあるから……」

186 : 以下、名... - 2015/10/28 15:18:57.63 VPNsCRPho 182/620

ほむら「…」コク

マミ「そんな自分が情けなくて、殺された人よりも多くの人を助けられるようになろう、

   より多くの魔女を倒そうって切り替えてきた。

   わたしは選択の余地もなく魔法少女になった。

   そんな始まりだから切り替えることに抵抗が少ないと言える」スス…

ほむら「……」スス…

マミ「でも美樹さんのように人のために祈って魔法少女になった子は……」

ほむら「それは、分からないんじゃないでしょうか。結構たくましいし…」

マミ「そう。強い…、だからこそ切り替えかたが……」

ほむら「……?」

187 : 以下、名... - 2015/10/28 15:23:02.07 VPNsCRPho 183/620

マミ「鹿目さんや暁美さんに出会う前にね、初めてわたしの仲間になってくれた子がいたの」

ほむら「この街に、巴先輩の他に魔法少女がいるんですか?」

マミ「いいえ。その子はもともと風見野で、今もきっと…、魔法少女をやってると思う。

   お互いの街を行き来して、二人で協力して魔女を狩っていた。

   彼女もまた、人のために祈って魔法少女になった子なの」

ほむら「でも、自分の身を守ることを優先したことがあって……?」

マミ「いえ……。きっとそれよりも。慰めの言葉が見つからないほどだった。

   彼女は自分の祈りのもたらした結果を全て自分のせいだと、一人で背負ってしまったわ。

   今にして思えばそうするしか……」

188 : 以下、名... - 2015/10/28 15:27:45.45 VPNsCRPho 184/620

ほむら「……?」スス…

マミ「……あなたがさっき言ったように、その子と似ていたとしても、

   美樹さんも同じようになるかなんて、分からないわよね」

ほむら「心配されるのも分かりますが……」

マミ「……同じ心配でも、わたしは自分のためにしているわ。

   彼女の苦悩の深さを受け止めきれず、自分がひとりぼっちになることを恐れて……。

   それをまた繰り返すんじゃないかと」

ほむら「……先輩。先輩の背中を見つめる鹿目さんの眼差しにお気づきですか」

マミ「……」

ほむら「鹿目さんにとって、先輩は思い描く魔法少女の理想そのものです。

    それが先輩にとっては押し付けられた勝手なイメージだとしても、

    やはりその憧れは鹿目さんの励みであり奮起する糧であり……。

    そしてわたしにとっても、今の話を聞いた上でも、いえ聞いたからこそさらに、

    巴先輩を尊敬します」

189 : 以下、名... - 2015/10/28 15:31:48.75 VPNsCRPho 185/620

マミ「……ありがとう」

ほむら「‥生意気を言いますが、わたし達は皆それぞれ胸に抱いている祈りは違う。

    先輩が、鹿目さんや美樹さんやわたしを、どうやってまとめて導いていくか、

    そこにどれほど苦労されているか、わたしには想像も及ばない。

    せめてみんなが気持ち良く過ごせるよう、

    わたしなりに出来ることをしようと思ってはいますが……。

    きっとみんなも同じです。先輩に触発されてそうしようと思っているはずです」

マミ「ええ。感じているわ」

ほむら「……ですが、わたしたちは皆違うから……。

    どうかお願いです。一人になることを恐れないでください。

    わたしは、もし鹿目さんが巴さんから離れることになったら、鹿目さんにつきます。

    なぜならわたしは…、わたしは鹿目さんを守るわたしになりたいと願って、

    魔法少女になったから」

190 : 以下、名... - 2015/10/28 15:35:52.17 VPNsCRPho 186/620

マミ「(コク)暁美さん。わたしは今、初めて暁美ほむらという人間を目にした気がするわ」

ほむら「……」

マミ「…やはりそうだった。あなたもわたしと同じ……」

ほむら「え……?」

マミ「わたしも、あなた達より鹿目さんを選ぶ。

   魔法少女としての使命より、鹿目さんの安否を優先する」

ほむら「……!」

マミ「……もし、鹿目さんがあなたと共にわたしから離れることになっても、

   彼女さえそれでよければ、無事であれば構わないわ」

ほむら「……それはわたしがその時、巴さんの立場だとしても同じです。

    でも、鹿目さんは自分から離れることは絶対にないでしょう。

    先輩が彼女の存在を忘れないかぎり、先輩が一人になることはありません」

マミ「それでも、たとえあなたとわたしが道を違え離れることになっても、

   わたしとあなたが胸に抱く思いは変わらない」

ほむら「(コク…)……共に、それぞれに戦いましょう。鹿目さんのために」

マミ「ええ」コク


191 : 以下、名... - 2015/10/28 15:39:56.44 VPNsCRPho 187/620

~~裏路地~~


まどか「さやかちゃん……!」

さやか「……恭介が巻き込まれないようにお願い」

まどか「うん。でもそうじゃなくて……」

さやか「……さっそくこのザマじゃ怒られちゃうな。

    ごめん。あたしが恭介を守るって言ったのに」

まどか「違うよ……。あの子とさやかちゃんが戦うなんて、そんなの……」

さやか「……そのことも、ごめん。あの子もあたしも、同じワガママ同士みたいでさ。

    ちょっとケンカしてくる」ニッ


まどか「……キュゥべえ」

QB(主義主張のぶつかり合いだね。二人とも譲らないみたいだから、

   あの子との衝突を避けたいなら、まどか、君が力ずくででもさやかを止めるしかないよ)

まどか「う……」

192 : 以下、名... - 2015/10/28 15:45:33.52 VPNsCRPho 188/620

杏子「作戦タイムは終わりかい?」

さやか「へ? 違う違う。この子は無関係で、あたしが一人で揉め事起こしてるだけだから」

杏子「そうかい。どうでもいいけどさ、

   早いとこその腰にぶら下げてる得物を構えたほうがいいんじゃない」

さやか「あ、これは…」

杏子「まさかそのチャチな鈍器であたしの相手しようだなんて思ってないよねえ。
  
   どういうつもりか知らないがこっちは手加減しないよ。さあ、抜きな」

さやか「抜けないっ」

杏子「くっふふ…、アタシもナメられたもんだ……。行くよ!」ダッ

さやか「わああ!」

ガキョッ…!

193 : 以下、名... - 2015/10/28 15:49:36.95 VPNsCRPho 189/620

杏子(あたしの槍を片手で止めた……!?)

さやか「ああ、マミさん特製のバットが……」

杏子「マミ? ひょっとしてお前たち、巴マミの仲間か?」

さやか「そうだけど。あんたもマミさんの知り合い?」

杏子「‥前に世話になった。とにかく出直しといで。

   さっきの話じゃ、もともとこの街に狩りに来たわけじゃないんだろ?

   後からマミに文句を言われちゃ敵わないよ」

さやか「……そうだね。わかった。マミさんに話を通して、また来るよ。

    ……明日、この時間に、ここはどう?」

杏子「ああ、構わないよ。(ゴソ チュパ)ほんじゃ」クル スタスタ


さやか「…さて、帰るか。……恭介?」

恭介「(ハッ)つ、使い魔は?」

さやか「……」

194 : 以下、名... - 2015/10/28 15:53:38.56 VPNsCRPho 190/620

~~電車の車両内~~


恭介「すぴー」

まどか「……さやかちゃん。あのね」

さやか「うん」

まどか「さっきのあの子にね、上条くんのこと……」

さやか「そう思ったんだけど、この体たらくだしさ」

まどか「……」

さやか「……あたし、正直恭介には来てほしくないんだ。

    風見野まで度々足延ばしてるヒマなんてこいつにはないはずだし。そもそも…」

195 : 以下、名... - 2015/10/28 15:57:39.80 VPNsCRPho 191/620

まどか「そっか…、そうだよね……」

さやか「あ、いや、まどかが気を遣うことはないんだよ。

    魔女退治に付き合わなきゃ気が済まない、って本人が言ってるんだし」

まどか「……うん」

さやか「後ね、明日、まどかは来ちゃダメだよ」

まどか「え……!?」

さやか「マミさんがどう言うか分からないけど、多分反対されるだろうから。

    そうなったらあたしは……。とにかくあんたはマミさんの側にいなきゃダメ。

    いいね?」

まどか「…さやかちゃん……」

196 : 以下、名... - 2015/10/28 16:01:41.54 VPNsCRPho 192/620

――――
―――
――


~~マミの部屋~~


まどか「ごちそうさまでした」

さやか「ごちそうさまでした! あ~~っ、美味しかった! 家のスパゲティと全然違うわ。
 
    スープも温まったし、マミさんは本当に料理が上手いなあ」

マミ「あら、パスタは暁美さんがほとんど調理したのよ」

さやか「へえ、やるじゃん、ほむら!」

ほむら「お粗末さまでした。今日はどうでした?」

さやか「あー、実は使い魔追っていった先で、風見野に入っちゃってさ……」

197 : 以下、名... - 2015/10/28 16:05:42.10 VPNsCRPho 193/620

……

さやか「で、明日決着をつけよう、ってことになって……。マミさん、いいかな?」

ほむら「いいかな、って……」

マミ「……死ぬかもしれないわよ」

まどか「……!」

マミ「あなたの話が確かなら、わたしの知っている子で間違いないわ。

   あの子はもともと素質がある上に、もうベテランだから恐らく相当に強い。

   時間をかけて、話し合いで解決していくべきじゃないかしら」

さやか「……あたしの都合と、あの子の都合は折り合えないと思う。

    危険なのは分かってる」

198 : 以下、名... - 2015/10/28 16:09:43.35 VPNsCRPho 194/620

マミ「そう。わたしが出ていくと話がこじれるだけだから、その場にいられないわよ。

   あと、あなたの都合だから鹿目さんと暁美さんを巻き込んではだめ」

さやか「うん」

マミ「‥分かったわ。今日は早く帰って休みなさい」

さやか「ありがとう。マミさん」スクッ

まどか「マミさん……」

マミ「鹿目さんも。お疲れさま」

まどか「……」

ほむら「…片付けは任せて」ニコ

まどか「……ごめんね」コク

バタン カチャ

199 : 以下、名... - 2015/10/28 16:15:27.12 VPNsCRPho 195/620

スタ スタ

ほむら「……美樹さん、止めるべきだったんじゃないですか」

マミ「上条くんのことを持ち出してでも、ね。

   でも、使い魔をグリーフシードに変えられるからとあの子を丸めこんでも、

   あの子はいずれ美樹さんと対立する。根本的な考えが違うから」

ほむら「あの子って、さっき話していた子のことですよね」

マミ「ええ。……佐倉杏子さん」

ほむら「自分の後輩同士が殺し合いになっても構わない、と?」

マミ「……」

200 : 以下、名... - 2015/10/28 16:19:29.33 VPNsCRPho 196/620

ほむら「美樹さんなら佐倉さんとぶつかった結果、彼女を仲間に引き入れられるかもしれない。

    なぜなら佐倉さんだって最初は、人のために祈って魔法少女になった子だったから。

    美樹さんは、上条くんやわたし達の危機に駆けつけるために、魔法少女になった。

    もし佐倉さんが自分と共通したところを美樹さんに見い出せば、

    彼女も心を開いて、わたし達と共に戦ってくれるようになるかもしれない……」

マミ「暁美さん……」

ほむら「……わたしも、巴先輩と同じ考えです。だから美樹さんが話してる時、黙っていました。

    先輩を責めるふりをしたのは、さっきのお返しです」

マミ「……。……ふふふ」

ほむら「(ムッ)……何ですか」

マミ「いえ、ごめんなさい。

   ……あなたの言うとおり、それも仲間が増えれば、鹿目さんがより安全になるから」

ほむら「……ワルプルギスの夜に対して、ですね」

201 : 以下、名... - 2015/10/28 16:26:37.17 VPNsCRPho 197/620

マミ「……! キュゥべえから聞いたの?」

ほむら「いいえ」

マミ「ならいったいどうして……」

ほむら「……近いうちに必ず、話します」

マミ「…。わかった」

ほむら「…それにしても、他に道筋は……」

マミ「佐倉さんにもう一度仲間になってもらうにはこれしかない」

ほむら「うまくいくでしょうか」

マミ「むしろ狙い通りにいくほうがおかしいくらいね。

   佐倉さんと美樹さんの衝突の問題を、わたしの利益に結び付けて考えてること自体、

   狂気の沙汰だもの」

ほむら「それはわたしもです。二人が死ななくても、みんなばらばらになるかもしれない」

マミ「こういうとき、最後に道しるべになるのは自分の望みだけなのよ。

   それぞれの望みに従って皆が行動した結果、偶然にもその足並みが揃うことになったら、

   それは本当に感謝すべきことだわ」

ほむら「……」


202 : 以下、名... - 2015/10/28 16:30:40.23 VPNsCRPho 198/620

~~次の日、放課後~~

ガヤガヤ

さやか「……さーてと、行くか」

まどか「さやかちゃん、あの……」

さやか「ごめん、みんな。今日あたしちょっと用事あって、先帰るわ」

仁美「今日もですの。なんだか最近みんなが揃うことがなくて寂しいわ」

さやか「タハハ…、実はあたしたち、三年の先輩と組んで街を回ってるんだ。

    今日はそれと違う、個人的なことなんだけど」

仁美「街を回る……? 何かいけない道に誘われてるんじゃありませんか?」チラ

まどか「そ、そんなことは……」

ほむら「えっと……」

さやか「あ、そうだ。あれだよ、ボランティアってやつ?」

203 : 以下、名... - 2015/10/28 16:34:41.95 VPNsCRPho 199/620

仁美「そうでしたの。わたしもご一緒したいものですわ」

まどか「だ駄目だよ、仁美ちゃん!」

仁美「まあ、鹿目さんまで。ご自分はよくてわたしはダメだと、いけずしますのね」

まどか「ぁ…」

さやか「ま、まあほら、扱うモノに注意が必要だったりするからさ。

    仁美、色んな習い事で忙しいし万が一ってこと考えるとおすすめはできないかな……」

仁美「……それほど危険なことに、わたしの知らない内にあなたは……。

   (ガタッ)学級委員として早乙女先生に報告してきます」

まどほむ「ええっ」

さやか「ま、待って、仁美!」

204 : 以下、名... - 2015/10/28 16:41:50.14 VPNsCRPho 200/620

仁美「……上条くんはこのことを知っていますの?」

さやか「……ごめん。……恭介もあたしが巻き込んだ」

パァン!

まどほむ「!!」

シーン…   ザワ…

仁美「……」ガサ バタバタ…

ほむら「…!」タッ

さやか「待ってほむら」

ほむら(でも追わないと!)

さやか(いや、いいんだ。仁美は多分チクらないと思う)

205 : 以下、名... - 2015/10/28 16:46:01.32 VPNsCRPho 201/620

ほむら「……」

さやか「もう行かなきゃ」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「来ちゃ、ダメだよ」

まどか「……。わたし、マミさん家に行ってるね」スタ スタ

ほむら「…」

まどか(ほむらちゃん、お願い。一緒に来て)

ほむら「? じゃ、じゃあ、わたしも」スタスタ

さやか「……」

206 : 以下、名... - 2015/10/28 16:50:01.97 VPNsCRPho 202/620

恭介「zzz……」

さやか「恭介」ユサユサ

恭介「むにゃ…」ムク

さやか「あたしが出ない日くらい、ちゃんと家帰って寝てろ」

恭介「うん…」ガタ ガサゴソ

さやか「あたしはちょっとぶらぶらしてくから。じゃね」スタスタ

恭介「ああ…」ボー

207 : 以下、名... - 2015/10/28 17:02:01.13 VPNsCRPho 203/620

~~通学路~~


バタバタ

ほむら「(ハァハァ…ッ)どうしたんですか、こんなに急いで…」

まどか「ご、ごめん。大丈夫だった?」

ほむら「これくらい平気ですけど。巴さんと何か約束が?」

まどか「ううん。ほむらちゃん(ガシ)、お願い!

    さやかちゃんの先回りをしたいの。昨日のあの子の場所まで力を貸して!」ジッ

ほむら「ええ!? ど、どうするつもりなの?」カァ…

まどか「あの子もさやかちゃんも魔女を退治したい、って気持ちは同じだもの。

    探せばきっと仲良くする方法だってあるはずだよ。

    さやかちゃんはこうと決めたら変えない子だけど、

    あの子はもしかしたら説得すれば話し合いに応じてくれるかも…」

208 : 以下、名... - 2015/10/28 17:10:01.50 VPNsCRPho 204/620

ほむら「そんなの無理だよ。

    第一、その子から見たら鹿目さんは美樹さんの仲間に見えてるはずだし……、

    その子も耳を貸さないだけならともかく、危険な目に遭ったらどうするの?」

まどか「わたしだって、魔法少女だもの。それは――」

ほむら「巴さんだって、

    美樹さんとその子の問題に鹿目さんが立ち入っちゃいけない、って言うはずだよ?」

まどか「もしマミさんに怒られたら……そのときに謝る。

    でも……色々考えたけど、先回りするにはほむらちゃんに助けてもらわないとだめなの。

    ごめん、お願い……! このままだと昨日のケンカの続きになっちゃうよ。(ユル…)

    そうなったら……」

209 : 以下、名... - 2015/10/28 17:15:23.31 VPNsCRPho 205/620

ほむら「……」

スッ

まどか「ほむらちゃん……」ギュッ

ほむら「(キョロ)あっちに」スタスタ…

まどか「(コク)」スタスタ…

フワァッ

カシン ピタ

ほむら「……本当は今すぐ美樹さんを縛り上げたい気分なんですが」

まどか「…」

ほむら「今日足止めしたところで先延ばしになるだけですもんね……。

    昨日の場所、電車を使わなくても分かります?」

210 : 以下、名... - 2015/10/28 17:19:26.33 VPNsCRPho 206/620

まどか「(ホッ)うん、線路沿いの道を歩いていけば……。

     降りた駅の辺りまで行けば分かると思う」

ほむら「歩いていくのは体力的にも魔力的にもすこしキツいですね……。

    いったんわたしのアパートに寄って自転車を取りにいきましょう」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん……」

ほむら「(ニコ)お礼を言われるのはまだ早いです。さあ、早く行こう」

まどか「うん」

タタ…

211 : 以下、名... - 2015/10/28 17:23:27.55 VPNsCRPho 207/620

―――
――

~~風見野への道~~

キコキコ…

まどか「ほむらちゃん、やっぱりわたしが漕ぐよ……。わたしが言い出したことなんだから」

ほむら「(ハァハァ…)いえ、へっちゃらです。

     鹿目さんはその風見野の子を説得しなきゃいけないんだから……、

     わたしが万全の状態でそこまで届けるから……」キコキコ

まどか「……」ギュ

212 : 以下、名... - 2015/10/28 17:27:27.76 VPNsCRPho 208/620

―――
――

~~昨日の裏路地~~


まどか「もういいよ、本当にここまでで、もう着いたから、ほむらちゃん……!」

キィィッ 

ほむら「(ハァハァ…)ここでいいの……? あの子……?」

まどか「うん、そうだよ!」

カシン 

フラ…

まどか「ほむらちゃん!」ギュッ…

フラッ トット… 

ガシャンッ カララ…

杏子「ん?」

213 : 以下、名... - 2015/10/28 17:31:29.00 VPNsCRPho 209/620

ほむら「(ハァ、ハァ…)だいじょうぶ…だいじょうぶだから……」ヨロ ヨロ

まどか「足止めないで、わたしにつかまりながら、ゆっくり、そのまま歩いて……」スタ スタ

杏子「何だ、あんたら? 昨日のヤツはどうした?」

まどか「説明するからちょっと待って」スタ スタ

ほむら「……」ハァ ハァ…

杏子「……」

214 : 以下、名... - 2015/10/28 17:35:29.50 VPNsCRPho 210/620

――


ほむら「もう大丈夫だよ……、さあ、美樹さんが来る前に早く」

まどか「うん。わたしが戻るまでここで休んで待ってて」

ほむら「がんばって」

まどか(コク)スタ スタ…

杏子「……で? 結局マミに止められて顔合わせるにもばつが悪いからってんで、

   あんたがメッセンジャーとして来たのかい?」カリッ モグ…

まどか「ううん。さやかちゃんはもうすぐここに来るし、

    わたしがここに来ていることも知らない。わたしはあなたと話したくて来たの」

215 : 以下、名... - 2015/10/28 17:40:40.64 VPNsCRPho 211/620

杏子「(カプ)‥何だよ、話って」モグモグ

まどか「さやかちゃんとのケンカ、やめにできないかな」

杏子「…」ギョロ

まどか「あの子はね、思い込みが激しくて気が強くて、

    すぐ人とケンカを起こしたりもするけど、自分から仲直りできる勇気もあるの。
    
    それに、誰かのためと思ったら頑張りすぎちゃうくらい優しい子なの」

杏子「向こう見ずなのは昨日ので分かったよ。(サク)でも何の関係があんだよ」モグモグ

まどか「一人でいるよりも、仲間と一緒のほうがずっと安全に魔女と戦えるはずだよ。

    あなたは強い魔法少女らしいけど、マミさんだって危ないときがあったもの。

    みんなで……わたしも、わたし達で協力して魔女を倒せば、

    一人一人はそんなに魔力を消費しないで済むし、グリーフシードも分け合えるよ。

    使い魔は、その余ったぶんの魔力でそうしたい人が倒すとか……」

杏子「……なるほど。話は分かった。そっちが良ければあたしもそれでいい」

216 : 以下、名... - 2015/10/28 17:44:54.10 VPNsCRPho 212/620

まどか「……本当?」

杏子「ただし、あんたがあたしを止められたらの話だ」

まどか「――え?」

杏子「今のあんたの話は、ただのコトバだ。重みも何もない。

   ただの臆病者の言い逃れかどうか、

   昨日あんたに会ったばっかのあたしには分からないからね。

   互いに命を預けるってんなら当然だろ?」

まどか「……うん。わたしがあなたを止められればいいんだね」

ほむら「鹿目さん!」

まどか「ほむらちゃん、お願い。ここはわたしに任せて」

ほむら「うぅ~…」

217 : 以下、名... - 2015/10/28 17:51:54.99 VPNsCRPho 213/620

杏子「(チョン モグ…)別にいいんだぜ。二人で掛かってきても」

まどか「ううん。これはわたしとあなたの問題だから」

杏子「(ゴクン)……いいだろう」フワァッ 


~~見滝原、駅への道~~

さやか「あ、いけね。バットをマミさんに直してもらわないと」

218 : 以下、名... - 2015/10/28 19:38:32.37 VPNsCRPho 214/620

~~昨日の裏路地~~


杏子「……どうした? もう始まってんだぜ?」

まどか「…わたしはあなたとは戦わない」

杏子「…(ハァ~…ッ)ああ~~、なんかもう、うぜーなあ……」スタスタ

グサッ

まどか「ッッ!!」

ほむら「ああ!!」

杏子「そういうの勘弁してよ。

   武器持った相手に止めると言っといて戦わない、で済むか?」

まどか「くぅ~……ッ(ガクガク)」ポタ ポタ

219 : 以下、名... - 2015/10/28 20:01:51.70 VPNsCRPho 215/620

杏子「どうした? 何か言えよ。別に逃げてもいいけど?

   そこのメガネの子か昨日のあいつに任せてさ」

まどか「っ…ませる」ブルブル…

杏子「あん?」

まどか「済ませ…なきゃ…っ。魔法少女どうしが戦うなんてことしないで……」

ズポッ 

まどか「あぅ…ッ!!」ボタボタ

ほむら「ッッ!! ……ッッ」ギュゥ…

杏子「戦わずに済ませるなら余計に抑える力ってもんが必要だろうが。

   それを変身すらしないだと?」

まどか「わたしも、あなたも……、

    こんなことのために魔法少女になったんじゃないはずだよ……」

220 : 以下、名... - 2015/10/28 20:05:52.89 VPNsCRPho 216/620

杏子「…クソッ……! もういいから帰れよ!

   昨日のやつのほうがまだ物分かりが良かったぜ」

まどか「わたしは帰らないよ。……あなたとさやかちゃんが戦うのを止めてくれるまで」ポタ ポタ

杏子「(グイッ)これでもか」ブン

ダンッ ドサッ

まどか「ッかはッ…あぐ……」モソ

ほむら「鹿目さんっ!!」

まどか「ほむら……ちゃん…」モゾ

ほむら「この子には何言っても通じないよ。早く帰ろう? そのケガ、手当てしないと……」

まどか「だめ……。(ノソ…)さやかちゃんが……。(ググッ)…ッッ!!……」フラ…

杏子「……」

221 : 以下、名... - 2015/10/28 20:09:54.56 VPNsCRPho 217/620

ほむら「ならわたしが、あなたに代わってこの子を止める」

杏子「あんたはちゃんとあたしの相手してくれるんだろうね?」チキッ…

ほむら「いいですとも!」サッ

まどか「やめて!! 魔法少女どうしが戦っちゃいけない!

    わたし達は友達になれるんだよ? そうしたいと思いあえば、そうできるんだよ!?」

ほむら「(ハッ)!?……」

杏子「ロクに戦いもできねえ奴が何様のつもりだ……。

   あんたは魔法少女を何だと思ってるんだ?」

まどか「マミさんみたいな人だよ! 知ってるでしょう?

    魔女から人々を守るために危険を冒して戦って、

    人々を絶望の代わりに希望で包んであげる。

    それができるのはわたし達だけなんだから……」

222 : 以下、名... - 2015/10/28 20:13:54.57 VPNsCRPho 218/620

杏子「ああ、確かにマミは立派だとも。理想を掲げて、それを実行をしてる点でな。

   あいつやあいつに共感できる仲間だけでやってくれる分には構わない。

   でもあたしはあいつの理想が尊いもんだとはこれっぽっちも思わねえ。

   ただ、あいつの行動を支えるのに役立ってるのなら文句は言えねえってだけの話さ。

   勘違いするんじゃないよ。

   世の中の本当の姿ってのは、ただ強い奴が支配できて弱い奴は死ぬか虐げられるか、

   いずれにしてもただひたすら悲惨なだけだ。

   魔法少女だってそれは例外じゃない。現実ってもののルール内の存在さ。

   ただ普通の人間よりちょっと便利な力が使える。

   それならそいつを自分のためだけに役立てればいい」

まどか「どうしてそんなに一人で抱え込もうとするの……?」

杏子「…抱え込んでるだと……? あたしがか?」

223 : 以下、名... - 2015/10/28 20:17:55.33 VPNsCRPho 219/620

まどか「わたしには、あなたは一人で苦しんで、無理に一人で自分を納得させて、

    周りから自分を切り離しているように聞こえるよ。

    わたしだって同じ魔法少女のあなたに出会えたんだもの、友達になりたいよ」

ほむら「そ、そうよ……。敵は魔女だけで十分だわ。

    避けようとすれば避けられる争いをするなんて馬鹿げてる」

杏子「……」

まどか「ねえ…」

杏子「……あんたのお人好し加減はひとまずおくとして、

   魔法少女になるための祈りで自分の家族を壊しちまうような奴が、

   友達なんて作る資格あると思うか?」

まどか「え……?」

224 : 以下、名... - 2015/10/28 20:21:56.24 VPNsCRPho 220/620

ほむら(……家族を……?)

杏子「(ニヤ)……何だ、マミから聞かなかったのかい?

   とにかく、あいつみたいなやつばかりじゃない、ってことだよ。魔法少女は。

   マミだって自分が生きるために魔法少女になった。そいつが一番正しい形さ。

   あんたは人を助けるのが正しいと考えてるみたいだけど、

   助けられる側の都合も考えずに魔女から守ってやるなんて、ただのエゴじゃないのか」

まどか「それは……」

ほむら「……助けるのがこちらのエゴであることくらい、分かってる。

    そのことで恨まれるかもしれなくても、でもそれでも生きて、

    最後に生きててよかった、って思えるような人生を送ってほしい。

    それがこちらの願いなんだから……それしかないんだから」

まどか「‥ほむらちゃん……?」

225 : 以下、名... - 2015/10/28 20:25:56.99 VPNsCRPho 221/620

杏子「……そう思えるのなら、それはそれでいい。

   昨日のやつ……さやかってのも、それくらいはわきまえてるらしいね。

   全く、マミの周りには変なやつが集まってるんだな。

   ただし、感心はしないね。覚えてときな、希望の絶望のバランスは、差し引きゼロだ」

ほむら「……どういうこと?」

杏子「本来、魔女に食われて死ぬはずだった人間がいるとする。

   そこに介入して助けるという行為自体、自然の摂理に反してると思わないかい?」

ほむら「‥詭弁だわ」

杏子「そうか? 助けた人間が将来罪もない人を殺すとしたらどうだ?

   または自分が人助けしているその間に、自分の大切な人が殺されたとしたら?」

226 : 以下、名... - 2015/10/28 20:29:58.13 VPNsCRPho 222/620

ほむら「……魔法少女に限った話じゃない。誰にでもその立場に立たされる可能性はあるわ」

杏子「ああ。でも魔法少女にしか起こせないことだってあるだろ?」

ほむら「……!」

杏子「通りすがりの人間に関わる、ってことですらそんな危険性があるんだ。

   奇跡なんていう、ドでかい規模の希望で人のためになんぞ祈った日にゃ、

   目も当てられないほどの絶望が撒き散らされるって結末しか待ってないのさ」

ほむら(わたしが鹿目さんを助けるほど……、鹿目さんは前はこんなケガをしなかったのに。

    わたしが……)

杏子「分かるだろ、人のためにという考えじゃ、結局誰もが不幸になるだけだって。

   この力は全て自分のためだけに、使い切らなきゃいけないんだよ」

227 : 以下、名... - 2015/10/28 20:33:58.69 VPNsCRPho 223/620

まどか「‥それでも、わたしは魔法少女だから。誰かが魔女に襲われてたなら助けなきゃ……」

杏子「あたし達もグリーフシードがなきゃ魔力を回復できない。

   せいぜい魔女を倒したとき、迷い込んだ奴も結果的に生き残ってたらいいんじゃないの」

まどか「そんな…」

杏子「(ギロ)大体ね、アンタ人の話聞いてた? 『魔法少女だから』なんて語るんだったら、

   言ってみろよ。あんたは何のために魔法少女をやってるのさ?」

まどか「え……」

スタスタスタ グイッ…

杏子「あんたからは、人がどうとか、魔法少女が何だとか、

   さっきからぐるりのことしか聞こえてこないんだよっ。

   あたしを止めたいって意志があるなら、お座り人形じゃないんなら、

   あたしの目を見て言ってみろ、立派なこと言うならあたしに教えてみろ、

   そもそもあんたは何で生きてるんだ!!」ギュウッ…

まどか「…………」

ほむら「ちょっ、ちょっと!」

228 : 以下、名... - 2015/10/28 20:37:58.37 VPNsCRPho 224/620

~~マミの部屋~~


ポウ……

マミ「はい、終わったわよ」

さやか「ありがとう。……ねえ、マミさん。まどか、何か言ってた?」

マミ「鹿目さんが?」

さやか「もう帰っちゃったんでしょ?

    いや、マミさんに話したのをあたしが聞くのはまずいか」

マミ「え? 今日は来てないわよ、鹿目さん」

さやか「…(ハッ)! まさかあの子!!」バッ ダダダッ

マミ「ちょっと、美樹さん!?」


マミ「……」

スッ

229 : 以下、名... - 2015/10/28 20:41:58.33 VPNsCRPho 225/620

~~昨日の裏路地~~


杏子「アンタが魔法少女になったのは、ただの気まぐれか!?

   だとしても、半端な覚悟じゃ済まされねえ場所に足を踏み入れちまってんだよテメェは!

   あたしはあんたの問いに答えられるだけ答えたんだ、ごまかさずに言え、

   あんたは何で魔法少女をやってる?

   さあ答えろ、あたしを納得させるだけの理由がなきゃ許さねえぞ!!」ググッ

まどか「…わたし……、わたしは……」

杏子「聞こえねえ!! もっとでかい声で言え!!」

まどか「わたしなんか役立たずなんだもん!! 何の取り柄もなくて誰の役にも立てない、

    いつもいつも、さやかちゃんにも迷惑ばっかり掛けてるもん!!

    魔法少女になっても、さやかちゃんやマミさんやほむらちゃんにばっかり戦わせて!」

230 : 以下、名... - 2015/10/28 20:45:59.61 VPNsCRPho 226/620

ほむら(……鹿目さん…)

ユル… ドサ

杏子「……だったらしゃしゃり出てくる前に、取り柄を作ればいいじゃねえか」

まどか「でもあなたは今からさやかちゃんとケンカするでしょう!?

    どっちかが死んじゃうかもしれないんでしょう!?」

杏子「さあな。武器を握った者同士が戦うんだ。そうなるかもしれない。でも……」

まどか「だったら、わたしなんか生きてても意味がないんだから、

    さやかちゃんにわたしはたくさん助けてもらったんだから……!」

杏子「……ここで死ぬってのか」

ほむら(……!!)

231 : 以下、名... - 2015/10/28 20:51:11.19 VPNsCRPho 227/620

杏子「ならあたしの腕一本取るくらいの根性見せろよ」

まどか「嫌だ!! そんなの嫌だ!!」

杏子「自分の価値をテメェで見捨ててる奴なんて殺す意味ないだろうが。

   もういい、さやかってのとはあんたのいない場所で仕切り直すから」スタ…

ガシッ…

杏子「‥離せ」

まどか「嫌だ!! あなたがさやかちゃんと戦わないって約束してくれるまで離さない!!」

クル…

杏子「……分かった。望み通り、あんたを殺してやる」

232 : 以下、名... - 2015/10/28 20:55:12.41 VPNsCRPho 228/620

ほむら「!!」

まどか「…!」

杏子「脅しじゃねえ。この槍で、今からあんたの心臓を貫く。

   でも言っとくよ、ただの犬死にだ。あのさやかってのもさぞかし迷惑だろうねえ、

   勝手にあんたの死の責任を押し付けられて。

   うっとうしさのあまりすぐにあんたのことを忘れるんじゃない」チキッ…

まどか「いいよ」ジッ

杏子「…!」

グッ

233 : 以下、名... - 2015/10/28 20:59:13.04 VPNsCRPho 229/620

ほむら「やめなさい!!」フワァッ

杏子「(ピタ)…」チラ

ほむら「さもなくば穂先が届く前にわたしがあなたを殺す」ギラ

まどか(やめて…)

ほむら「……」

杏子(…なるほどね)ニッ

ほむら(!?)

グッ ブォッ

さやか(まどかが危ない!!)ダダダ

234 : 以下、名... - 2015/10/28 21:03:13.53 VPNsCRPho 230/620


カシン ピタ…

カチャッ パシッ

ほむら「…」スタスタ…

カチッ コト…

ギュッ…

まどか「(ハッ)……!! ほむらちゃん!?」

ほむら「もうそんなに長く時間を止められない。早くここから離れて」スタ…

まどか「だめだよ、魔法少女どうしが傷つけ合うなんて絶対おかしいよ!」

ほむら「‥鹿目さん、ひどいよ……。一番傷ついてるのは鹿目さんじゃない。

     わたし、あなたを死なせるためにここに運んだの!?」

まどか「(ハッ)!」

ほむら「……」

まどか「…」

グイッ

ほむら「!」ヨロ…

まどか「(パシッ)っっ」ポーン

ほむら「鹿目さ……あ」

まどか「さやかちゃん」

235 : ◆Y4NjDgz4uE - 2015/10/29 14:20:43.27 FE3xpsnXo 231/620


ドカーン!

さやか「うおお!?」

杏子「なっ……!?」

まどか「さやかちゃああん!!」パタパタ

さやか「……」プスプス…

まどか「嘘なんでこんなさやかちゃんさやかちゃん、さやかちゃんッッ!!」ペタペタサワサワ

杏子「……どういうことだ、おい? こいつ、死んでるじゃねーかよ!」

ほむら「いいえ、美樹さんは死にません!! 鹿目さんのためにも死んではいけないんです!

    さあ、目を覚まして!!」バシバシ

ムクッ…

さやか「……何? 何なの?」

236 : 以下、名... - 2015/10/29 14:24:47.89 FE3xpsnXo 232/620

ほむら「わたしのパイプ爆弾が美樹さんの目の前で炸裂したんです」

さやか「うむぁえか」ペタサワモミュモミュ

まどか「違わたわたわたしわたしわたしがわたしが(ギュッ…)」ガクガクガク ジワジワジワジワ

ほむら「か、鹿目さん……」

さやか「……」ユサユサユサ

まどか「ちゃ、かちゃ、かちゃ、か…、か、」ハァフゥハァフゥ…

さやか「ほむらー、袋ある? あんたの薬入れてるやつでいいからさ」

ほむら「あそこの鞄の中に(カチャッコロッ)。このグリーフシード鹿目さんに使って」スッ

タタタ…

さやか「まどかー、そんなに吸わなくていいぞー、普通でいいぞー」カチ フゥゥ…

まどか「ふはぁ、はぁ、はぁ、ふはぁ」

タタタ…

ほむら「紙ですけど」サッ

さやか「大丈夫、これでいい。まどかー、こん中で息しろー、大丈夫だぞー」ピト

まどか「……」スーハー、スーハー

237 : 以下、名... - 2015/10/29 14:28:48.93 FE3xpsnXo 233/620

――



杏子「なあおい」

さやか「ちょっと黙ってて。…約束は守るから」

杏子「……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「まどか、無理しないで帰りなよ。ほむらに送ってもらいな」

まどか「ううん」

さやか「……」

まどか「…わたし、何やって……。さやかちゃんに今まで助けられて…、

    それを負い目にばっかり感じて、けっきょく自分だけが可愛くて……」

さやか「それでほむらに協力を頼んだの?」チラ

238 : 以下、名... - 2015/10/29 14:32:49.96 FE3xpsnXo 234/620

ほむら「……」

まどか「…うん」

さやか「なるほど。相っ変わらずまどかはややこしいなあ。変に気にしすぎだよー」ポリポリ

まどか「ち、違うの、さっきまでそのことにも気づいてなくて、それでほ…」

さやか「前後関係なんてどうでもいいよ。誰だって自分が可愛いのは当然だけど、

    自分だけが可愛いってのはそりゃ言いすぎでしょ。あんた自分に対しても失礼だよ?

    自分だけが可愛いならわざわざあたしの先回りしてここに来るはずないじゃない」

まどか「でも……」

さやか「まあまずね、あんたの隣のお下げの子に、

    無茶をやらかすのに巻き込んだことを気づかってくれると、

    あたしの嫁としては嬉しいかなー、なんて思ったり……」タハハ…

239 : 以下、名... - 2015/10/29 14:36:51.72 FE3xpsnXo 235/620

まどか「……」チラ

ほむら「……」

さやか「い、いや、二人して沈んだ顔されるとさやかちゃんも困っちゃうよ……」

ほむら「(ノサ…)お気づかいなく。

     ……わたしがセットした爆弾を人気がない場所にとっさに除けようとして、

     あなたの存在に気づかず鹿目さんはそれを投げたんです。

     冷静に考えればそもそも爆弾を使わずに切り抜けられた局面でした。すみません」

まどか「‥違う、ほむらちゃんのせいじゃない……」

さやか「二人とも、事情はだいたい分かってるよ。

    事故なんだし、あたしはピンピンしてんだからもう気にしないで」

240 : 以下、名... - 2015/10/29 14:40:52.94 FE3xpsnXo 236/620

まどか「さやかちゃん、本当に大丈夫なの……」

QB「彼女は鞘の力に守られてるからね。ダメージからの回復力は人一倍だ」

杏子「お前いつからいたんだ」

QB「たった今さ。マミにこの場所への案内を頼まれたんだ」

杏子「何? マミが……!?」ハッ

まどほむさや「え…?」

スタ スタ

マミ「……元気そうね。佐倉さん」

杏子「ああ。あんたもな」

スタ…

恭介「さやか……?」

さやか「(ハッ)恭介。あんた何でここに……」

241 : 以下、名... - 2015/10/29 14:44:55.16 FE3xpsnXo 237/620

恭介「帰り道に巴さんに頼まれて運ばれてきた。

   理由はこっちが聞きたいんだけど。ところで君、今日は休みって言ってなかった?」

さやか「そ、それは……」

マミ「理由は幾つかあるわ。まず、やはり一度は戦うのを止めておかなければと思って」

さやか「マミさん、それは昨日…」

マミ「あなたじゃない。佐倉さん、こちらの条件を呑んだほうが身のためよ」

杏子「へっ……。数に物を言わされちゃな……」

マミ「いいえ。わたしはあなたとの交渉は全て美樹さん一人に任せる。

   だいたい、あなたを倒すのにわたし達の助力はいらないのだし」

杏子「……どういう意味だ」

242 : 以下、名... - 2015/10/29 14:49:01.76 FE3xpsnXo 238/620

マミ「言葉のとおりよ。こうしてあなたを目の前にして確信したわ。

   美樹さんとまともに戦えば、あなたは必ず命を落とす」

ほむら「……!?」

杏子「ハッタリを……」

マミ「昔のよしみで忠告してるのよ。美樹さんの魔法少女としての力はわたしを遥かに上回る」

さやか「ちょっ、ちょっと、マミさん……」

マミ「隠さなくていい。あなた自身が感じているはずよ。キュゥべえでさえ、

   あなたにそこまで素質があるとは思わなかったと言っていたけど……」

さやか「……」

杏子「面白れー。確かめてやろうじゃねえか……」

243 : 以下、名... - 2015/10/29 14:53:04.42 FE3xpsnXo 239/620

マミ「……あなたは一年前よりずっと強くなってる。それを認めた上の話だと……」

杏子「くどいぜ、マミ」

マミ「(フゥ…)ここに来た理由の続きだけど。美樹さんに押っ取る刀を届けにね」ゴソ

さやか「あ、バット!」

マミ「あなた家に何しに来たの」

さやか「ごめん。うっかりしてた。でも…、せっかく届けにきてもらって悪いんだけど、

    今回はこの剣を使うわ」

マミ「…でも……」

244 : 以下、名... - 2015/10/29 14:57:06.87 FE3xpsnXo 240/620

さやか「……この剣を貸してくれた人には乱暴に扱って申し訳ない。

    でもあんたと戦う事情が変わった。‥よっこいしょ」スタ… 

杏子「何だよ、事情って」

まどか「さやかちゃん……」

コツ

まどか「いた」

さやか「この子。…まどか、ごめん。あたし、こいつと戦うよ。こんなことしてる間にも、

    この街の人が魔女や使い魔に襲われてるかもしれないから、さっさと決着をつける」

まどか「……」

さやか「でも約束する。この風見野の子もあたしも命を落としたり、

    一生治らないようなケガをしたりさせたりはしないよ。

    まどかなら分かるでしょ?」チラ

恭介(何がどうなってるんだこれ……)

まどか「……」コク…

245 : 以下、名... - 2015/10/29 15:01:07.47 FE3xpsnXo 241/620

杏子「ずいぶんと大風呂敷を広げてくれたじゃないか。……傷付かずに済ませるだと?

   ったくどいつもこいつも――」

さやか「…もう傷付いてるでしょ」ボソ

杏子「――え?」

さやか「ごめん、マミさんの言う通りだよ。正直、あたしが勝つ。

    マミさんにバットを直してもらったのは、あんたと全力で遊びたかっただけなんだよ。

    何も分かってなかった……!」

マミ「……」

246 : 以下、名... - 2015/10/29 15:06:50.95 FE3xpsnXo 242/620

杏子「遊びだと……。人をナメるのも大概にしろ……!!」

さやか「ああ。だから、全力で手加減する」

杏子「……なあ、マミ…。もう始めちまってもいいんだろ……?」ワナワナ…

マミ「……ここに来た最後の理由はね」フワァッ 

スタスタ…

マミ「上条くん、左手を」

恭介「?」スッ

トン

恭介「あ、このグリーフシードには…」

ギュゴゴゴゴ…ッ

さやほむまど「!?」

247 : 以下、名... - 2015/10/29 15:11:20.73 FE3xpsnXo 243/620

~~魔女の結界~~


グルグル…

恭介「どわわっ、落ち…ないのか」フワフワ

さやか「こいつ、この前倒した…」

杏子「バ、バカな……っ。魔女の気配なんてこれっぽっちもなかったぞ!?

   マミ、お前いったい何を……」

マミ「暁美さん。あなた、そのソウルジェムはどうしたの。すごく濁ってるわよ」

ほむら「…」

マミ「グリーフシード持ってるでしょう?

   早く使えるときに使いなさい。あなたがここに何しに来たのか知らないけど、

   足元をおろそかにしてるようじゃ、ただの役立たずで終わるわよ」

248 : 以下、名... - 2015/10/29 15:49:36.05 FE3xpsnXo 244/620

ほむら「……鹿目さんが苦しんでる傍らで自分だけソウルジェムの魔力を回復するなんて……」

マミ「そんなの何の言い訳にもならない。

   誰かを助けたいならそれだけの余裕を持ってからにしなさい」

ほむら「‥はい…(カチ フゥゥ…)。あの、鹿目さんの治療をお願いします」

マミ「……」スーーッ…

まどか「あ、あの、わたしなんかよりさやかちゃん達を…」

マミ「あなたも同じことを言わせたいの?」

まどか「…」シュン

マミ「……」ポゥ…

まどか「……ありがとうございます」

249 : 以下、名... - 2015/10/29 17:04:07.37 FE3xpsnXo 245/620

杏子「おい、マミ! これはどういうつもりだ!?」

マミ「……あなた達が本気で戦うのなら、本来は人気のない山奥にでも場所を移すべきだわ。

   その手間を省いてあげただけ。魔女や使い魔はわたし達で抑えておくし、

   ――死体はちゃんとここに残していくから、心置きなく始めなさい」

まどか「――!!」

恭介(おいおい)

杏子「……ッ」

マミ「何か不満でも?

   あなたがそのつもりなら、今からでも美樹さんは話を聞いてくれると思うわよ。

   その可能性も考えてこの魔女を用意したんだから」

250 : 以下、名... - 2015/10/29 17:08:09.34 FE3xpsnXo 246/620

杏子「なっ……。魔女を用意しただと……?」

マミ「ちょっと前に町工場で集団自殺を起こさせようとした魔女……。

   そこを舞っている片羽の使い魔に捕まってごらんなさい。不器用なあなたに代わって、

   見せたくない過去や心情を周りのモニターが雄弁に語ってくれるわよ。

   話の通じない人が分かり合うのにはちょうどいい材料じゃないかしら」

杏子「て、てめぇ……」

さやか「マミさん、こんなことに恭介を……」

マミ「一応、上条くんの許可は取ったわよ」

さやか「でも、あたしが起こした面倒に引っ張りまわすなんて…」

マミ「分かってないのね。あなたが起こした面倒を解決するためじゃなくて、

   わたしに思惑があって上条くんを利用する必要があったの」

251 : 以下、名... - 2015/10/29 17:12:10.40 FE3xpsnXo 247/620

さやか「…! ひどい…、どんな思惑だよ……」

杏子「……」

恭介「いや別に僕は構わ」

さやか「あんたは黙ってて!!」

恭介「……」

さやか「……」

まどか「…マミさん、こんなやり方ないよ……、

    グリーフシードに眠ってた子を無理やり起こして、

    わたし達の都合で利用するなんて…」

マミ「あなたにそれを言う資格があるの? 鹿目さん」

252 : 以下、名... - 2015/10/29 17:16:12.07 FE3xpsnXo 248/620

まどか「え…?」

マミ「あなたは最近、来るには来るけどわたし達にばかり戦わせてるわね。

   自分だけ魔力を消費したくないの? それとも魔女に怖気づいたの?」

まどか「……!」

さやか「マミさん、そんな……」

ほむら「か、鹿目さん。巴さんは…」

マミ(暁美さん、抑えて。反感を向ける相手を一人に絞らせたいの)

ほむら「…!」

まどか「ほむらちゃん…?」

ほむら「……」

パタパタ パタパタ…

まどか「ほ、ほむらちゃん、危な――」

パゥッ! パゥッ!

バラバラッ……

まどか「あ……」

マミ「……いつまでも戦えないようじゃ、困るわよ」スッ

パゥッ パゥッ…

まどか「……」

ほむら「……」

253 : 以下、名... - 2015/10/29 17:20:15.63 FE3xpsnXo 249/620

恭介「走っても走っても前に進めない夢みたいな」バタバタ

杏子「……関係なさそうなやつがまた来てるな」

さやか「風見野の使い魔、あたしに狩らせてよ」

杏子「……いいとも、どうせならここでケリをつけようじゃないか。

   マミがせっかく用意してくれた場所を使わないのは勿体ないだろ?」

さやか「先輩想いじゃん」ニッ

杏子「(ニッ)…行くぜ」

さやか「おう」グッ

恭介「ちょっと待った! さやか、話がある。

   というか君が話してくれ、どうなってんだこれ?」

さやか「空気読めよ! 一から十まで話してる場合じゃないっての!」

恭介「知るか! 一から十まで話してくれ!」シャカシャカ

254 : 以下、名... - 2015/10/29 17:24:18.15 FE3xpsnXo 250/620

さやか「……」チラ

杏子「傍でわめきながら空中水泳されても目障りだ」クィッ

さやか「(ペコ)」スーッ

……

恭介「何てことだ‥、僕は肝心な時に寝てたのか……!」ガーン

さやか「身もフタもないことを言いなさんな」

恭介「でもそういうことなら話は簡単だ。僕が――」

ボスッ

恭介「ぐぷ」ユラ

さやか「!」

マミ「(チャッ)魔女や使い魔からはわたしが守っておくから」グィッ スーーッ

恭介「……」フヨフヨ~

さやか「……(コク)」クルッ

255 : 以下、名... - 2015/10/29 17:28:20.67 FE3xpsnXo 251/620

杏子「…もういいのかい」

さやか「ああ」

チキッ…  …ス

杏子(鞘に触れな―?)

さやか「うおおー!」バシュッ

杏子「ッッ」バシュ

ドスッ

さやか「ガハッ」ボトボト

杏子「なっ!?」

まどかほむら「!!」

256 : 以下、名... - 2015/10/29 17:32:35.55 FE3xpsnXo 252/620

杏子「…どういうつもりだ」

さやか「‥これは…、まどか、の分だ……」ボソ

杏子「…まどか……? あいつか」チラ

まどか「ぁああ……」ブルブル…

さやか「ワガママやってるあたしを止めようとして……、勝手に一人で思い詰めて…、

    ほむらまで巻き込んであたしとあんたを戦わせないように、って‥、

    あたし…、あたしには、そんな馬鹿な子の涙を拭う資格なんてないんだ……!」ボソ

杏子「…揃いも揃って……!!」ズッ ドボボ…

ザクッ

さやか「ッッッ」ギリリ

まどか「…ぁ…ぁ…………」ガタガタ

257 : 以下、名... - 2015/10/29 17:36:38.04 FE3xpsnXo 253/620

ほむら「み、美樹さん…!」

杏子「アンタ達の友情劇の片棒を担がされるのはうんざりなんだけどな。

   それで気が済むってんなら付き合ってやるよ」ズッ ドス

ザクッ ドッ… ガッ…

さやか「…へ…っっ。へ…、悪いね…えっっ…」ボソ

杏子(こいつ……!)ガシュ 

まどか「やめて……!! おねがい……!」ブルブル…

ガシ

杏子「! …ギブか」

さやか「…ビジュアルの問題で」

杏子「知ったことかよ」グッ

ググ…

杏子(…!? こいつ、血まみれの…、しかも片手で!?)ゾク

258 : 以下、名... - 2015/10/29 17:40:39.04 FE3xpsnXo 254/620

杏子「くっ」バッ スーーーッ

さやか「……」

杏子(もう傷口が塞がってやがる……)

さやか「…いざ尋常に」

杏子「…待ちくたびれたぜ」チキッ…

さやか「……大丈夫だと思うけど、いちおう言っておくよ。

    今からはゼッタイ本気出してね。頼むから」ス

杏子「へっ…、お前が言うな」

ヒュオ

ゴッ!!! 

ギャギャギャギャギャッッッ…!!!

杏子「…ッぐ」

ギッギキ

杏子「ぁ…あああああああっっ!?」バヒュンッッ クルルルルル

259 : 以下、名... - 2015/10/29 17:44:40.05 FE3xpsnXo 255/620

まどか「!!」

ほむら「なっ…!?」

さやか「…………っ」

クルクルクル…ッ  バッッ

杏子「っはぁはぁ……」

さやか「……(ホッ)」

杏子(…何だ今のは!? あたしの相手は貨物船か? エア・プレーンか!?

   受け切らなくて正解だった…、体中の関節が悲鳴を上げてやがる!)チラ

…パゥ  パゥ

杏子「マミのやつ、すっとぼけやがって……!

  (あのまま路地で戦って、今吹っ飛ばされた先がビルの壁だったら終わってたな。

   何が山奥で、だ。こうなることを見越して浮遊空間の結界で戦わせたのか?)」

260 : 以下、名... - 2015/10/29 17:48:41.34 FE3xpsnXo 256/620

さやか「……」ス

杏子(抜いてない…!?)

ヒュオ

杏子「!!」

バギンッ!!

杏子「ぐっ…!(重」ミシミシ
ュン
ガゴオッ

杏子(冗談じゃねえ……! 鞘ごと振り回すとかこいつ何考えてんだよ!?)ギシギシ

杏子「このっ!」ビュッ

さやか「っ」ツッ

杏子(紙一重で避けられた、来る!)

261 : 以下、名... - 2015/10/29 17:52:42.44 FE3xpsnXo 257/620

さやか「はっ!!」バギィッ…

杏子「!?」

ピシ…

杏子「(ハッ)(槍が!)」バッ ヒューーッ

さやか「……」クル…

杏子「……」キィィン… シュゥゥ…

さやか「…」

杏子「…どういうつもりだ」シュゥゥ…

さやか「あんたに勝つつもり」

杏子「ならなぜ今攻撃しない?」ゥゥ…

さやか「……」

杏子「ふざけるなっ!」バシュッ

262 : 以下、名... - 2015/10/29 17:56:45.70 FE3xpsnXo 258/620

さやか「…!」グッ

バララッ ブゥン

さやか(多節棍!?)グルグルッ 

さやか「くっ…」ビシ グッ グッ…

杏子「もらった!!」ジャララッ パシッ

まどか「さやかちゃん!」

パタパタ…

ほむら「まずいっ。両腕を封じられたわ!」カチャ パシ

杏子「終わりだよ!」ギュン

ガニッ…

杏子「なっ!?」

ほむら「足で白刃取り!? 何て身体能力なの!?」ポーン ドカーン

263 : 以下、名... - 2015/10/29 18:00:51.08 FE3xpsnXo 259/620

さやか「すごいなーこれ、忍者の短刀みたいじゃん」

杏子「このっ。汚ねえ足であたしの槍に触るな!」ギリギリ…

さやか「ぬはは、このさやかちゃんの鉄の鋏…、おぬしに破れるかな?」

まどか「さやかちゃん」

さやか「くっ…! やばい…!?」ジリジリ…

杏子「負けを認めるなら今だぜ……!」グググッ…

さやか「(ニコッ)なーんてね」

杏子「!?」

グイッ ゴン!

ほむら「挟んだまま押し下げた!! その反動で頭突きを食らわせたわ!」

杏子「が…」フラッ…

さやか「この隙に体を回転させて鎖の束縛を解く!」ガッ

264 : 以下、名... - 2015/10/29 18:04:53.70 FE3xpsnXo 260/620

杏子「さ、させるか…」グッ

さやか「うおりゃーーっ!」グルルーン

杏子「!?」グイッ

まどか「さやかちゃん、回る方向が逆だよ!?」

杏子「うぐ! うわああああっ!」ブンブン ピューン…

さやか「(ピタ)あれ、槍が元の形に戻ってる」パシ

ピュー  クル

杏子「くそっ……!」

さやか「ほい」ヒュン

杏子「…!」ルル パシッ

265 : 以下、名... - 2015/10/29 18:08:56.03 FE3xpsnXo 261/620

ほむら(え!?)

杏子「…なぜ返した」ユラ キュ…

さやか「えっ。………武器を持たない相手とは戦わない主義なんだよ」

ほむら(友達に忘れ物を投げ渡すみたいな気軽さだったけど)

杏子「(チッ)」バシュッ

ギィン

杏子「……何を考えてやがる」

さやか「……」

杏子「ハッ。いいさ。言わなきゃ確かめるまでのことだからね」

ガン ギン

さやか「たっ!」ブン

ドコオッ メキキッ…

266 : 以下、名... - 2015/10/29 18:12:58.44 FE3xpsnXo 262/620

杏子「ぐぎゃあああっ」

マミまどかほむら「!!」

さやか「そ、そんな……」

杏子「なんて面してんのさ」

さやかほむまど「え?」

マミ「!」

ガンッ

さやか「イテッ! 槍で叩くな!」

杏子「今、心臓刺せただろうが。これで借りは返したぜ」ニヤリ

さやか「ぬう。ほんとに忍者かよ。おっどろいたー」シャッ

杏子「あたしもな。けど忍術じゃねえ。幻惑の魔法とか言うらしいぜ」クルリ

さやか「どっちでも厄介なことには変わんないよ」ブン

ギィンッ

杏子「その心配はいらないよ。(ボソ)あたしだってあいつの見てる前ではもう使いたくねえ」

さやか「?」

267 : 以下、名... - 2015/10/29 18:16:59.44 FE3xpsnXo 263/620

パウッ パウッ

恭介「……んへっ? (ハッ)さ、さやか…! イテテ…ッ」サスサス

マミ「上条くん。手荒な真似して悪かったけど、

   幻想御手によって使い魔からグリーフシードを得られることを、

   このタイミングで持ち出すと却ってややこしくなるの。あの二人に任せて」ジャキッ

恭介「幻想御手?」

マミ「(クル)ごめんなさい……、意識を失わせたのが悪かったのかしら……。

   あなたの左手に宿った力のことなんだけど……」

恭介「あ、はい、いや、大丈夫です。思い出しました。

   ……確かに不用意に出しゃばりすぎた。

   却ってグリーフシードに関する火種を増やしてしまって、

   巴さんの心配していたとおりになってしまったかもしれないな」

268 : 以下、名... - 2015/10/29 18:21:00.15 FE3xpsnXo 264/620

マミ「……今回に限っては別の事情もある。

   わたしは、出来るなら風見野の佐倉さんに仲間に加わってほしい。

   美樹さんはその導入役ができると思って静観しているの」クルッパウッ

恭介「…! さやかを利用するつもりですか」

マミ「…ええ」

恭介「さやかにはそのことを……」

マミ「(クル…)はっきりとは伝えてない。

   でもあなたのことを利用するとは言ったわ」

恭介「分からないなあ…」カキカキ

マミ「それでもわたしには…」

恭介「いえ、そうじゃなくてですね……、

   それならそうとさやかに伝えれば済む話じゃないですか」

269 : 以下、名... - 2015/10/29 18:25:00.30 FE3xpsnXo 265/620

マミ「え?」

パシン ギュオオ…

恭介「ととっ、(ヒョイ)地面の上じゃないとやりづらいな……。

   あ、あの子の前でやらないほうがいいんでしたっけ!」クルッ

ガィンッ ギィンッ…

恭介「…よかった、気づいてないみたいだ……。使ってください」ポーン

マミ「(パシ)…伝えて済む話じゃないでしょう」カチ フゥゥ…

恭介「…あいつならそれくらい、喜んで引き受けると思いますよ。

   まあよっぽど間違えた頼まれごとなら断るでしょうけど。

   それでも巴さんの役に立ちたいと思ってるはずです。

   知り合って日は浅いけどさやかは巴さんを好いてるから」

マミ「……」

270 : 以下、名... - 2015/10/29 18:29:06.49 FE3xpsnXo 266/620

恭介「あ、でもあいつは、巴さんが佐倉さんって子に仲間になってほしいと思ってること、

   そのままに佐倉さんに伝えてしまうかもしれないな。
  
   ま、そこは言い含めておけばいいことですし……」

ジャキッ パウッ  バラバラ……

マミ「あなたに言われて、自分が間違えたってことに気付いたわ」

恭介「なら今からでもテレパシーで…」

マミ「わたしが間違えてたのは、美樹さんにあなたを利用したと伝えたこと。

   自分を悪く見せようとするあまり、

   徹頭徹尾かくしておくべきことを一端でも美樹さんに見せてしまった。

   これは自分を良く見せようとしてることの裏返しかもしれない。

   佐倉さんにも、あなたに何らかの力があると示唆したようなものだわ。

   これで使い魔からグリーフシードを得られると悟られることはないと思うけど、

   だとしてもうかつだった」

恭介「さやか以上に意固地な人を初めて見ましたよ。

   自分であいつを止められない僕が言うのも何なんですけどね……」

271 : 以下、名... - 2015/10/29 18:33:07.77 FE3xpsnXo 267/620

マミ「わたしの事情についてはここまででいいかしら。

   あなたは美樹さんの事情に気づいてる?」

恭介「ほら、そこだ」

マミ「え?」

恭介「分かってます。

   さやかが、僕がヴァイオリンになるべく集中できるように気遣ってるってことは。

   でもさやかを利用しようというあなたにとっては、

   さやかが幻想御手のことを黙ってくれてるだけで十分なはずだ。

   わざわざ僕に代弁する必要はない事柄です」

272 : 以下、名... - 2015/10/29 18:37:08.57 FE3xpsnXo 268/620

ジャジャキッ パパパウッッ!!

マミ「…それをあなたに伝えることであなたの動きを封じられる」

恭介「悪意をもってすれば幾らでもそういう解釈はできます。

   でも、違いますね。あなたはさやかと僕が似ていることを知っている。

   さやかが、自分の願いを叶えた結果を僕に背負わせてしまおうというくらい、

   思い込みが激しくて向こう見ずなことも知っている。

   そんなあなたなら、さやかの気遣いを僕に伝えたところで、

   何のつっぱりにもならないことくらい分かってるはずでしょう」

マミ「あなたは、人の言動を極端に善意をもって解釈するきらいがあるわね。

   素直さは度を越すとただの愚に過ぎないわ」ジャキッ

恭介「一見、善人に見えた人が少し利己的に動いただけで、

   自分の第一印象を全否定するのも同じくらい愚かだと思いますけど」

マミ「……」

273 : 以下、名... - 2015/10/29 18:41:09.61 FE3xpsnXo 269/620

恭介「…何だかんだ言いましたけど、結局さやかが好き勝手やってるだけなんですが。

   それも隣町の人たちが使い魔に食われるのを知っていて放っておけない、という理由で。

   それを見過ごすのは己の存在に関わるんだと思い込んでるみたいなんです。

   …当初はそれで自分が友達にも見捨てられて一人になっても、という覚悟でいた。

   けどそれは色んな意味で甘くて、間に入ろうとした鹿目さんが怪我をしてしまった。

   これはもう、さやかの正義観が崩れ去るような決定的な事態だったと思います。

   と同時にじゃあ自分の希望と鹿目さんの想いを両立することはできないか、

   という至極当たり前な考え方にさやかを引き戻した。

   それを探すことだけが救いというかそれしかないんでしょうね、今のあいつには」

マミ「…今はあなたが長々と話すのを聞いてる場合じゃない」パウッ

恭介「そうでしたね。…しゃべってないと辛いですよ、今何もできないから」

マミ「…誰でも、祈ることならできるわ。誰もが幸せであるようにと。

   それにあなたは、美樹さんを信じて見守ることも」ジャキッ

恭介「……」

274 : 以下、名... - 2015/10/29 18:45:10.34 FE3xpsnXo 270/620

ギィンッ ガァンッ

杏子(くっ…、握力が……)

さやか「はぁッ!」ブン

ツル

杏子「しまっ…」

さやか「!!」ググ゙ッ

マミ(止めるな!!)

さやか「え!?」

ドボォッ

杏子「ぐぅっ…ッ!」

275 : 以下、名... - 2015/10/29 18:49:12.85 FE3xpsnXo 271/620

さやか「……っ」

まどか「…っ!」

クルッ

さやか「なんで、なんでマミさん……、」

シャッ

さやか「(ハッ)っっ」バッ

杏子「よそ見してんじゃねえ……! あんたの相手はアタシだろうが」ハァ ハァ

さやか「……。もうこんなのやめよう?」タラ… ポタ

杏子「(スゥ)…ッッ!!」

ブォン

さやか「っ」クル

シャシャシャ

さやか「……」サササ

ガシッ

ほむら(多段突きの最中に片手で掴まえた…)

杏子「……!」ググ…ッ

276 : 以下、名... - 2015/10/29 18:53:13.53 FE3xpsnXo 272/620

さやか「ねえ、あんただって―」

杏子「…」パ 

さやか「!?」

バシュ ドカッ

さやか「ごぶっ…」

バキィッ

さやか「ぐ…」ユル…

杏子「…」パシッ グ

まどか「!!」

シャッ!!

ヒュッ――  ピタ

さやか「(ペッ)……なぜ戦うのをやめないの? 幾らあたしを叩いたってムダだよ?

    反対にあんたはすぐに回復しないし、フェアじゃないけど決まってるじゃん、もう…」

杏子「……あんたが、間違ってるからだ」

277 : 以下、名... - 2015/10/29 18:57:16.01 FE3xpsnXo 273/620

さやか「は?」

杏子「マミの言ったとおり、あんたは確かに強い。

   だからこそ、大きな力で人々を助けるほどに、その分だけ誰かが不幸になる。

   そんな危うい奴を野放しにできるか……っ!」

さやか「…よく分かんないけど、そればっかりとは限らないんじゃない?

    この力は、使い方次第で、いくらでも―」

杏子「その結果を背負うことになるのはアンタ自身なんだぞ!?

   どんなに腕を振るっても、希望を祈っても、

   世の中はそれ自体が、バランスを保てるように、

   起こした変化を、形を変えてでも等分に揺り戻す力を持ってるんだ。

   あんたが人のためにとった行動も結局は絶望を撒き散らすことにしか繋がらない!」

278 : 以下、名... - 2015/10/29 19:01:59.23 FE3xpsnXo 274/620

さやか「自分のことだけ考えて生きてるはずのあんたが、なんでそんな心配してんの」

杏子「あんたはかつてのあたしと同じ間違いをしてる。

   あたしみたいに積極的に正しいと思い込んでしてるわけでないにしても、

   たとえ自分のエゴで動いてるんだとわきまえ、

   その結果どんな目に遭っても自業自得だと覚悟していたとしても、

   人を救うための行動が逆に人を滅ぼしたとき、あんたはきっとあたしと同じ後悔をする。

   そうなると分かってて見過ごせないだろうが……!」

さやか「抽象的でよく分かんないよ。もっと具体的に話してくれる?」

杏子「長い話になる。今はそんな場合じゃねえだろ」

さやか「時間がもったいなくても周りをよく見て状況整理してから、て学んだばっかりでね。

    聞いたところであたしの考えが変わるとも思わないけど、

    片方が話があるってのに聞かずにしばき合うのもおかしいでしょ」

279 : 以下、名... - 2015/10/29 19:06:00.82 FE3xpsnXo 275/620

杏子「……あたしも前は人助けに燃えてるときがあったんだよ。

   あたしの親父に習ってさ。…親父は、この風見野にある教会の牧師をしていた。

   正直すぎて、優しすぎる人だった。

   教義にないことまで説教するほどにな。

   新しい時代を救うには、新しい信仰が必要だって、それが親父の言い分だった。

   勿論、信者の足はぱったり途絶えたよ。本部からも破門された」

さやか「そりゃ当然だわ。はたから見れば胡散臭い新興宗教だもん」

杏子「…あんたの言うみたいに、誰も親父の話を聞こうとしなかった。

   どんなに正しいことを、当たり前のことを話そうとしても、

   世間じゃただの鼻つまみものさ。

   あたし達は一家揃って、食うモノにも事欠く有様だった」

280 : 以下、名... - 2015/10/29 19:10:05.68 FE3xpsnXo 276/620

さやか「その新しい教えを広めようとしたのが間違いだった、て言うの?」

杏子「そんなわけがあるか! 親父は間違ったことなんて言ってなかった。

   ただ、人と違うことを話しただけだ」

さやか「……」

杏子「5分でいい、ちゃんと耳を傾けてくれれば、正しいことを言ってるって、

   誰にでも分かったはずなんだ。

   ……なのに誰も白い目で見るばかりで、真面目に取り合ってくれなかった。

   それが悔しくて、キュゥべえに頼んだんだよ。

   ……みんなが親父の話を、真面目に聞いてくれますように、って」

さやか「……それが、人のために祈ったことが、間違いだったと」

281 : 以下、名... - 2015/10/29 19:14:10.35 FE3xpsnXo 277/620

杏子「ああ。願い叶って、翌朝から親父の話を聞かせてくれと人が押し掛けてさ。

   毎日おっかなくなるほどの勢いで信者は増えてった。

   お袋も、親父が人の幸せを願って教えを広め回ったのが通じたんだと喜んでたし、

   親父は、働きにでて家計を支えてたお袋に感謝してた。

   妹もあたしも腹いっぱい食えるようになった……」

マミ「…」パゥッ

さやか「全然いいじゃん。その代わりにあんたが魔女と戦わなきゃいけなくなったにしても」

杏子「むしろ、あたしはバカみたい意気込んでたさ。

   いくら親父の説教が正しくたって、それで魔女が退治できるわけじゃない。

   だからそこはあたしの出番だって。

   あたしと親父で、表と裏から、この世界を救うんだって……」

さやか「そういう考え方はキライじゃないけど、

    父親に、信者が説教を聞いてくれるようになったのは自分のおかげだって伝えたの?」

杏子「話す必要なんかないだろ!? そうしなくても、みんな幸せだったんだから……!」

さやか「そう。まあ、親子だから複雑なのかもね」

杏子「……伝えたところで結果は同じだったと思うしな」

さやか「…どういうこと?」

杏子「あるとき、カラクリが親父にばれた」

さやか「……」

杏子「大勢の信者が、ただ信仰のためじゃなく、魔法の力で集まってきたんだってことがね。

   親父はあたしが何をどれほど語りかけても、返事してくれなくなったよ。

   酒を浴びるように飲んで一人で思い詰めて母さんと妹を道連れに無理心中しちまった」

ほむまど「……!!」

さやか「……」

282 : 以下、名... - 2015/10/29 19:18:24.38 FE3xpsnXo 278/620

杏子「あたしの祈りが、家族を―」

さやか「なんでそうなっちゃうのよ?

    そりゃ黙って勝手に魔法少女になったのは怒るだろうけど、

    それが思い詰める、ってのにどうやったら繋がんの?」

恭介(ハァ…)

杏子「あたしが、悪魔と契約しちまったんだと思い込んだんだよ。

   ま、こんな格好で槍を携えてるのを見たんだ。

   人々を教え導きたいと願っていたのに、自分は悪魔に踊らされていただけなんだ、てな。

   バレた時、おまえのせいでこんなに信者が集まったのか、人の心を惑わす魔女だ、

   って罵る位ブチ切れてたよ」フッ…

さやか「……よく分かった」

杏子「…なら、あんたも―」

さやか「分からない!!」

杏子「どっちだよ!?」

さやか「あんたがあたしに、同じ間違いをしないように言ってくれてんのは分かる。

    でも肝心のあんたの話が分からない。

    あたしの父さんは白髪も出てきたし、

    パンツは漂白してうんこの染みを取らないといけないときもしょっちゅうある。

    あたしの小さいころ会社の上司のやり方に反発して、

    辞表もっていってけんかしようとしたけど、

    母さんが3日口を聞かなかったからそうしないで、

    今でも黙々と同じ会社に勤めてる。自分一人なら転職してたかもしれない。

    でも母さんやあたしのために働いてるんだ。あんたはそれを間違いだと言うの?」

杏子「……」

283 : 以下、名... - 2015/10/29 19:22:25.17 FE3xpsnXo 279/620

さやか「あんたのようにキュゥべえを介して起こした奇跡でなくても、

    あたしの父さんも口にしなくても絶望することもあったのかもね。

    えっと、でもあんたの言いたいのって、

    普通起こらないことをキュゥべえに叶えてもらうから、バランスが狂うって話だよね。

    でも会社とか国がやることって大体そうじゃない?

    ある立場の人にとっては役立つことでも、別の立場の人は苦しんだり、

    どっかでバランス狂って、それがニュースになって、問題だってなるじゃん」

杏子「……それでも、どんなに腐ってても、奇跡によるものでなければ、それは条理の内さ。

   どんな苦しみであっても、奇跡の招く災厄に比べればよほどマシだよ」

さやか「あたしが風見野の使い魔を狩るのは奇跡じゃない。

    魔女や使い魔も、人々も、あたしも条理のうちだ」

杏子「そんな単純なモンじゃないよ……」

さやか「百歩譲ってそれも間違いだとしても、

    使い魔をほっとけばあたしの周りの人間が犠牲になるかもしれないんだよ。

    それこそ見過ごせない。

    世の中の全てが間違いでないからと言って、

    どうしてあたしが全て正しくないといけない道理がある!

    あたしは何もかも許せないよ……、

    あんたの父親の教えが何だったのか分からない。

    色眼鏡なしに話を聞いてあたしが共感できるような信仰なのかは分からない。

    でも新聞の社会面を読めば苦しい、ひどい目にあってる人はたくさんいるって分かる。

    この世に生まれてきたこと以外に落ち度なんてない人だっているかもしれない。

    あんたの父親がそんな人々まで救われることを願って、

    世の中すべての人々の幸せを願って、教えを説いて回っていたんだとしたら、

    間違ってるのは、端っから胡散臭い目で見てるあたし達の側だ……!(ジワジワ…)

    あんたの家族を食うや食わずやの状態に置いた父親にも疑問をもつけど、

    それでも、弱く思いやりのある人間にばかりタダシイ道理を強いて、

    強く無神経な人間ばかりがのさばってる世間のほうがぶっち切りにおかしいよ」

ジワジワ ゴボ…

マミ(美樹さんのソウルジェムが……!?)

284 : 以下、名... - 2015/10/29 19:26:27.02 FE3xpsnXo 280/620

さやか「あんたの父親だっておかしい。

    最初からあんたを魔女だと決めつけて、話を聞こうともしない。

    たとえあんたが勝手に自分の願いを叶えたのにしても、悪魔と契約したのだとしても、

    父親なら魔女になってしまった娘を救おうとするべきだ。

    なぜそんなことを娘がしたのか理解しようとするべきだ。

    まず娘を、自分の説く教えを信じるべきだ。

    それを事もあろうに全て投げ出した上、あんたの母親や妹まで巻き込んで死ぬなんて、

    最っ初から最後までただのダメ親父、いやダメ親父以下じゃないか!!」

杏子「親父のことを悪く言うなっ!! 親父はおかしくなってバカなことをしたけど――」

さやか「あんたもそうだ。これだけおかしい連中が周りにいるのにそれを責めもしない。

    ぜんぶ自分のせいでした、って勝手に背負って、

    自分の目指した理想だけはちゃっかり捨てちゃって正しい道理に従ってるだけじゃん。

    本当に救いたいと思う世の中なら、自分は破綻していてもやると決めたことを、

    ただ強くやり続ければいいじゃないか!

    正しいからやるんじゃない、正しいと信じたからやるんだ。

    今からでもそれを選べるんだよ? もう一度だけの奇跡を起こしてる、

    だから奇跡が起こす絶望だかバランスとかはもう心配しなくていいんだから!」ゴボ

恭介(言ってることがむちゃくちゃだ……)

杏子「どうしてそこまで意地を張んだよ!?」

さやか「意地を張ってんのはアンタの方だ! このいい子ちゃんのファザコン娘!!」ゴボゴボ

杏子「なに!? どっちが…」

さやか「もういい。(スッ…)この一撃であたしはあんたを押し退けて使い魔を狩りにいく。

    あたしの間違い、正せるものなら正してみろ!!」ゴボボ… ピキ  バシュッ

杏子「この分からず屋ーーッ!!」バシュッ

ズドオオオオンッ……!!

マミまどほむ「………!!」

さやか「がふっ……っ」ボタボタ

恭介「……ッ」

杏子「ぐっ……」

シーン… フワ フワ…

まどか「さやかちゃん……?」

285 : 以下、名... - 2015/10/29 19:30:27.51 FE3xpsnXo 281/620

パタパタ パタパタ…

ほむら「使い魔が!」

パゥパゥッ! バラバラ…

マミ「(グィッ)暁美さん、来て!」バシュッ

恭介「っと」ギュン

ほむら「は、はい! (バタバタ…)鹿目さん、わたし上手く動けないの!

    二人のとこまで連れてって!」

まどか「うん!」フワァッ パシ

スーーッ

マミ「……」ポゥ…

杏子「…うっ……」ピク

ほむら「二人の様子は?」

マミ「ケガの心配は二人ともいらない。それより美樹さんのソウルジェムを回復してあげて」

ほむら「はい」

パタパタ…

ジャキッ パゥッ バラバラ…

マミ「気を抜かないで。ここからよ」クル 

ほむら「……濁ってません」

マミ「…え?」

ほむら「美樹さんのソウルジェムは澄み切ってます。全然穢れが溜まってないわ。

    あれだけ激しく戦った後なのに……?」

マミ「見せて(パシ)……!?」

286 : 以下、名... - 2015/10/29 19:34:20.45 FE3xpsnXo 282/620

パタパタ…

恭介「っ」パシ ギュオオ… ヒョイ

まどか「マミさん!」

マミ「なに?」

まどか「この子のソウルジェムも……。いいでしょう?」

マミ「……そうね。グリーフシード持ってる?」

ほむら「わたしがやります。……鹿目さん、いいの?」

まどか「ごめん、わたしグリーフシード持ってなくて……」

ほむら「上条くんが手に入れてくれたのは、みんなが持ち切れない分をわたしが預かって、

    みんなの必要に応じて分け合うって決めたんだから気にしなくていいよ。

    そういう意味じゃなくて、この子は鹿目さんにケガさせたんだよ?」

まどか「……ごめん。お願い……」

ほむら「……」カチ フゥゥ…

マミ(……佐倉さんはそうとう消耗してるわ。

   美樹さんも衝突する寸前、急激に黒く濁るのが見えた。

   二人は衝突と同時に意識を失って…、暁美さんが見るまで回復の機会はなかったはず。

   グリーフシードを使わずにソウルジェムを浄化する方法なんてあるの?

   いえ、まさか……。

   溜め込んだ穢れを、燃焼させて魔力へと変えた……? だとしたら、まるで……)

ほむら「完了しました」

マミ「…(コク)」

まどか「でも二人とも気を失ってるよ。早く出ないと……」

マミ「……鹿目さん。その前にやることがあるでしょう」

まどか「…」

287 : 以下、名... - 2015/10/29 19:38:22.93 FE3xpsnXo 283/620

ほむら「……!」

マミ「あなたが魔女を倒して。

   自分だけ楽をしたいとか怖じ気づいたのでなければ証明しなさい」

まどか「……はい」スッ…

キリキリ…

まどか「…………」

マミ「どうしたの? 早く」

まどか「……っ」ピク ピク

ポーン ドカーン! 

まどか「…!」

ギュオオオ……


~~裏路地~~


カツン 

スタスタ… ソッ

ほむら「……」

マミ「……暁美さん」

ほむら「ちゃんと起動するかテストしたかったので」

マミ「場合を考えて」

ほむら「すみません」ペコ

マミ「……ここに二人を寝かせておくわけにもいかない。(スタスタ…)

   佐倉さんはわたしが部屋まで運ぶわ。あなたたちも美樹さんを連れてきてくれる?」

ほむら「わかりました」

マミ「(グッ ユサ)じゃあ、また後で」フゥ…

恭介「テレポーテーション!?」

マミ「まだいるわよ。空を飛んでいくのに姿が見えるとまずいでしょう?」

恭介「あ、確かに……。さっきも周りからは見えてなかったのか……」

マミ「さっきはわたしたちの周りをリボンで囲んで見えないようにしてたわ。

   町じゅうの人の姿が見えなくなったりしたら大変だから」

恭介「ああ、これか。自分で効果のコントロールができないものかなあ」

マミ「それはわたしからも望むわ。

   魔力であなたの体にまで浮力を伝えられたら、

   ひっつかむようなことをせずもっと丁重に運べたんだけど」

恭介「でも空から町を眺めるなんてなかなかできないからよかったです」

マミ「(クス)……上条くん。美樹さんをお願いね」

バッ ヒュオオ…

288 : 以下、名... - 2015/10/29 19:42:26.76 FE3xpsnXo 284/620

恭介「……」

ほむら「あの、上条くん。これの強化をお願いできますか」

恭介「あ、うん」スッ

トン コオオ……

恭介「君たち、大変だね」コオオ…

ほむら「慣れてますから」

QB「もう取ったほうがいいよ」

ほむら「(スッ)…これが魔力だけで満たされたグリーフシード……、玲瓏というのかしら」ジッ

恭介「あと、(ゴソ)これ、さっきの使い魔の」スッ

ほむら「ありがとう。もらうね」ソッ

カチャ スッ…

ほむら(巴さん。わざとわたしに魔女を倒させたの……?)

まどか「ほむらちゃん。わたし……」

ほむら「……」

恭介「…先にさやかをおぶって、巴さんの家まで行ってるよ」スタスタ

ほむら「上条くん、巴さんに衝かれたところ大丈夫?」

恭介「ああ、平気平気。かえって目が覚めたよ。(グッ)よっこいしょ…(ユサ)」

ほむら「駅はこっちのほうだったよ」

恭介「そうか。うーん、線路沿いに歩いていくよ」スタ スタ

ほむら「そう」

スタ スタ…

まどか「ほむらちゃん…、ごめん…。わたし、自分のことしか見えてなくて、

    ほむらちゃんがお願いを聞いてくれてここまで運んでくれたのに、

    わたしが死んだらほむらちゃんが責任感じちゃうのに……」

ほむら「……」

まどか「でもわたし、最初から死のうなんて決めてたんじゃないの。

    どうしてもさやかちゃんとあの子を止めたくて必死で…、

    いや、これも言い訳だよね……、でもほむらちゃんを騙そうなんて、

    それだけは思ってなくて、これだけは本当なの。

    ……でも、ほむらちゃんにとっては同じだ―」

ほむら「鹿目さん、わたしね。騙したとか責任とかそんなことより、

    ただあなたに無事でいてほしいの、あなただけは……。

    鹿目さんはわたしが魔女に魅入られて死のうかと迷ったとき、

    巴さんと一緒に来てわたしを助けてくれたじゃない……!」

まどか「え……?」

289 : 以下、名... - 2015/10/29 19:46:28.26 FE3xpsnXo 285/620

ほむら「(ハッ)あっ、えっと…、ま、魔女に立ち向かうのに、鹿目さんや巴さんは、

    わたしにとっていつも支えになってくれてるの。いてくれるだけで勇気が出てくるの。

    人に迷惑を掛けて役に立てない辛さは、わたしもあるから分かるよ。

    でもあなたの笑顔を楽しみにしている人があなたの周りにはたくさんいるじゃない。

    鹿目さんが負い目に感じることさえ、いとわずに許してくれる人たちが。

    それだけあなたは大切な人なんだから。    

    あなたが生きて、周りの人たちと幸せになってくれることが、

    それ自体が意味があることなんだから……、だから、もう絶対、

    自分を粗末にするようなことはしないで」

まどか「う、うん…。分かったよ。あんな勝手なことはしないよ。ごめんなさい…」

ほむら「あ…、謝ることないよ。わたしが鹿目さんに無事でいてほしいのと、

    鹿目さんが美樹さんに無事でいてほしいのとたぶん同じで、

    責める資格なんてわたしにはない。ただ、さっきは言わずにいられなくて…」

まどか「でも謝らなきゃ。わたしはほむらちゃんに心配かけたんだもの」

ほむら「(ニコ)もう気にしないで。さあ、巴さんの所へ行こう」

まどか「(コク)うん。今度こそわたしがほむらちゃんを運ぶよ」スタスタ

ほむら「でも鹿目さん、ケガを…」スタスタ

まどか「(クルッ)マミさんに治してもらったから、ほら、制服まで元通りだよ!

     わたしが保健委員なんだから、ほんとはこうしなきゃ!」スタスタ ガチャッ…

ほむら「わたしも、そう心配するほどでもないよ」

まどか「いいのいいの。あ、そういえば上条くん、マミさんち知らないよね」

ほむら「そうですね。わたしと鹿目さんが自転車で来てるから帰り道で追いついてくれる、

     そう考えて先に行ったんでしょうね」

まどか「そうかあ。気を遣わせちゃったね。ほむらちゃん、乗って」

ほむら「はい。じゃあお願いします」カタ…


続き
上条恭介「幻想御手?」【3】

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