1 : 以下、名... - 2015/10/26 16:38:49.95 osninqsso 1/620








タッタッタッタッ… ハァッ ハァッ

タッタッタッ ハァッ ハァッ…



ガラッ

さやか「恭介ぇっっ!!」

恭介「うぃーす」ピッ

さやか「え……」ヘナヘナ ガクッ…

恭介「床にへたり込んでないでさあ、そこに座りなよ。

   見舞いに来てくれたんだろ?」

さやか「あんたは……あんたは……」ゼーハーゼーハー

元スレ
上条恭介「幻想御手?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445845129/

2 : 以下、名... - 2015/10/26 16:42:58.38 osninqsso 2/620

ダダダッ

さやか「事故に遭ったって聞いたからあたし、

    メチャクチャどんなに心配したと思ってんの!!

    しかも昨日って、ついさっき知らされて……」

恭介「ごめん。僕からさやかには知らせないように頼んだんだ。

   手術終わったの夜遅くだったし、昨日は色々と君に見せられない状態だったから」

さやか「(ハッ)その……手……」

恭介「幸い他の所はまぁ精密検査まだだけど大丈夫な感じなんだけど。

   左手はもうヴァイオリンは無理だってさwww」

3 : 以下、名... - 2015/10/26 16:47:03.67 osninqsso 3/620

さやか「―――」

恭介「つれーわwwwマジつれーわwwww…………さやか?」

さやか「……なんで……なんで……なんでそんなに元気なの!?」

恭介「そう来るかwww

   言ったじゃんww 昨日は僕だって大泣きしてたんだぜwww」

さやか「昨日は……ってそんなにすぐ切り替えられるもんなの?

    なんであんたが……!」

恭介「仕方ないよ……僕のせいだからさ。

   相手の人は飛び出した僕が悪いのに精一杯尽くしてくれて、申し訳ないほどだったよ。

   今は、もし他にケガ人が出てたらって今頃怖くて、そうならなくて感謝してる」

4 : 以下、名... - 2015/10/26 16:51:05.19 osninqsso 4/620

さやか「バカ……バカ……! そんなんじゃないでしょ……バカ……!」

恭介「だから本当にさやかには悪かったって言うか……、

   そういう風な顔になってほしくなくてどう伝えたら、て考えてたんだけど」

さやか「余計な気を回してんじゃないよ……、

    だってあんた……子どものころから目指してた道が断たれたんだよ?

    昨日の今日で平気な訳ないじゃない」

恭介「実はそうなんだ。ぶっちゃけこれからどうしよう?」

さやか「ブッwww ククク…ッ」プルプル

恭介「肝心な所で笑うなwwww」

さやか「クククク…ッ ハァーッ ……あたしは何したらいいの? あんたに何ができるの?」

5 : 以下、名... - 2015/10/26 16:55:16.13 osninqsso 5/620

恭介「勉強して今の医学では治せないケガを治せる医者になってくれ」

さやか「‥。あーそれあたしは無理だわ」

恭介「早えぇww」

さやか「て言うかあんたが自分でやって。……他に何ができる?」

恭介「じゃ、そこにいてくれる?」

さやか「わかったわ」

恭介「僕は寝る」

さやか「おい」


6 : 以下、名... - 2015/10/26 16:55:51.77 osninqsso 6/620

Eden

Kalafina、作詞・作曲・編曲:梶浦 由記

7 : 以下、名... - 2015/10/26 16:59:55.51 osninqsso 7/620







――――
―――
――


さやか「はぁ~~」

恭介「傷病人の前ででかい溜息つくなよ」

さやか「もう退院近いんだからケガ人じゃないでしょ」

恭介「学校行きたくねぇww もっと休みてぇwww」

さやか「学校の教材ちゃんとやってる? あの転校生を見習ってほしいわ」

恭介「ああ、心臓の病気で長いこと入院してた、て子か。

   転校初日の自己紹介も終わらない内に鹿目さんに熱烈なプロポーズをしてきたっていう」

さやか「どういう覚え方してんの。ただまどかの手を取って、

    『わたしも魔法少女になったから一緒に頑張ろうね』とか何とか言ってただけ」

恭介「……鹿目さんと旧知の仲でもなかったんだろ」

さやか「まぁそこらへんはもういい。今はちょっと妬けるくらい仲良くしてるから」

8 : 以下、名... - 2015/10/26 17:04:01.38 osninqsso 8/620

恭介「妬けるくらい?」

さやか「放課後にあたしと仁美が誘っても、

    二人して『ちょっと用事があるから』、てさっさと帰っちゃったりね」

恭介「それは転校してきたばかりだから色々回るところがあるとか」

さやか「だったら仁美やあたしだって一緒に力になったり遊んだりできるじゃん。

    まどかもまどかよ……」

恭介「その子の誘いを鹿目さんが断れてない状況?」

さやか「違う。あの子優しいからそういうトコあるけど、

    転校生の子とは相思相愛ってか自分からも普通に仲良くしてる感じ。

    て言うかむしろその子のほうが内気ですぐには人と打ち解けられない性格っぽいから」

9 : 以下、名... - 2015/10/26 17:08:10.68 osninqsso 9/620

恭介「だったら鹿目さんに任せて、

   徐々にその子がさやか達ともつるめるようになるまで待つしかないんじゃね」

さやか「だから仁美とそう思ってあの子たちを見守ってるんでしょ!」

恭介「はい」

さやか「はぁ~~っ。(バフッ)痛っ」

恭介「いや僕の膝が痛いんだけど」

さやか「足はほとんど痛めてなかったでしょー。

    なんでよりによって治らない部分が演奏に必要なとこなんだよ……」

恭介「僕の甘さだったんだな。登山中の転落事故で、

   手をかばったために自らの滑落をとめられず助からなかったヴァイオリニストもいる。

   僕は弾けなくなって初めて、自分にとって音楽がどれだけ大事か思い知らされてるのに」

10 : 以下、名... - 2015/10/26 17:12:13.81 osninqsso 10/620

さやか「……」

恭介「……鹿目さんが放っておけないとは、よっぽど内気な子なんだね」

さやか「(ゴロ…)その子だっていい子だって分かんの。

    凄い純朴ってか苦手なことでもいつも一生懸命なの伝わってくるし。

    勉強だって最初のほうつまずいてたけど今じゃ……ん!?」

さやか「(ガバッ)あんた勉強してんの?

    授業聞いてるあたしでもそれなりについてけないんだけど」

恭介「持ってきてくれた分はやってるよ。出来てるかは別問題だけど。

   さやかこそついてけないのに毎日ここに来て大丈夫なの?」

さやか「あたしは元々のそれなりを維持出来てればいいもんね。そう思うんなら早く退院しろ。

    あと、CD見つけて来たよ」ガサ

11 : 以下、名... - 2015/10/26 17:16:16.03 osninqsso 11/620

恭介「それなりの意味違うし。

   つーか、クラシックばかりの持ってきやがってwww

   完全にイジメだろこれwwww」

さやか「あんた何だかんだでクラシック音楽には詳しいでしょ。

    プロの演奏者になれなくてもそういう部分は伸ばしていったほうがいいと思う」

恭介「だとしても今くらいは聴きたくねーよww

   せめてポップスとか他のジャンルの持ってこいよww」

さやか「甘い。

    そんな一見無駄な回り道も気がつけば一つも無駄じゃありませんでした、何てね。

    苦しいことから逃げなかった人だけに許される言葉よ。

    あ、あたしみたいに何の才能もない人間なら別よ。

    別に楽しいことだけ追ってればいいんだから」

12 : 以下、名... - 2015/10/26 17:20:19.68 osninqsso 12/620

恭介「僕が特別だから苦しい目に遭えとかww 勝手に決めんなよwww」

さやか「そりゃそうだわ。

    自分が特別だっていう矜持とか自負なんて傲慢な本人の思い込みでしかない。

    でも音楽家って例外なくそれを持ってるはずだし、

    その中の一握りの人が運良く世間に認められただけの話でしょ。

    恭介、あんたは自分でどっち側の人間だと思うの。

    子供のころから遊びたいことも我慢して積み重ねてきたモノが、

    ここで放り出してしまえるぐらいの価値しかないって思うんなら、

    そのCDだって売るなり割るなりすればいいじゃん」

恭介「いやその放り出すにも左手動かないんすよwww」

13 : 以下、名... - 2015/10/26 17:24:21.63 osninqsso 13/620

さやか「はっきり言わせてもらうよ。

    恭介、あんたは少なくとも同年代の誰より抜きんでたモノを持ってる。

    いいえ、あんたほど人の心を打てる演奏ができるヴァイオリニストはいなかった。

    神様はあんたに贈り物をした上で裏切ったんだよ。

    あんたがその神様を裏切るかどうかはあんたの自由だし、好きにすればいい。

    じゃあね」ガタッ 

恭介「……」

さやか「(スタスタ…ピタ)後ね……早く学校来なよ。仁美とか、クラスの子心配してるから」

恭介「……ありがとな、さやか」

さやか「……」ガラガラ‥


恭介「(クスッ)一体どっちが傲慢なんだよ……」

15 : 以下、名... - 2015/10/26 17:28:23.41 osninqsso 14/620


~~エレベーター内~~


さやか「恭介……。……あたしの左手なんて……」


~~鉄橋~~

トボトボ

さやか「あー夕焼けがきれいだなあ」

『だったらいっそ死んだほうがいいよね……』

さやか「そこまで高尚な感性は持ち合わせてねーよ! ってどこだここ?」キョロキョロ…ハッ

マミ「暁美さんの指定したとおり、ドンピシャだったみたいね」ジャキッ

さやか(輝いてる! え、鉄砲……?)

ほむら「時間帯、場所……間違いありません。こいつです」サッ

さやか「あ、暁美さん!? 何コスプレしてんの!? その筒みたいなの何?」

まどか「ほむらちゃんのおかげだね!」チャキッ

さやか「まどか、あんたもか」

16 : 以下、名... - 2015/10/26 17:32:29.00 osninqsso 15/620

まどか「さやかちゃん、動かないでね……」キリキリ…

さやか「ほおおお」

パゥッ! バシュッ!

まどか「ほむらちゃん、今だよ!」

ほむら「はいっ! (タタタ…ッ)えいっ」ポーン

ドカーン!! ギャアアア…

さやか「うわおっ!」

ほむら「はぁはぁ……」ヘタリ

まどか「さやかちゃん、大丈夫!?」タタタ

さやか「お、おう……」

17 : 以下、名... - 2015/10/26 17:36:32.19 osninqsso 16/620

まどか「よかった。ほむらちゃん、やったね!!」ガバッ

ほむら「は、はい……」ニコ…

ウェヒヒ… ピョンピョン

マミ「美樹さやかさん、ね? ごめんね。

   すぐそこに使い魔が迫っていたからああするしかなかったの……」

さやか「いえ、助けてくれてありがとう……」チラ チラ

マミ「どうしたの?」

さやか「(ヒソ)……あの、もういいでしょうか……?」

マミ「何が?」

さやか「すみません。背後で爆発したのにベタな反応しかできなくて……。

    何せ突然で……撮り直しとかできませんよね?」

マミ「あ、ああ……」クスクス…

QB「彼女達は魔法少女。魔女を狩る者たちさ」

さやか「これはカメラですか?」

QB「おい」       

18 : 以下、名... - 2015/10/26 17:40:37.07 osninqsso 17/620


~~マミの部屋~~

コポポ…

マミ「やはり豪胆の持ち主ね。

   今まで巻き込まれた人であんな冷静な人はいなかったわ。どうぞ」クスクス

さやか「どうも。いや~、大分パニクってたよ。

    まどかとほむらがすごい美人の後ろにいたから、

    あー、二人ともなんかの撮影のエキストラやってたのかと。

    (ズズ…)紅茶うま!」ハァーッ

マミ「口に合ってよかったわ」ニコ

まどか「すぐそう思い込めるなんて、さやかちゃん、すごいよ」

19 : 以下、名... - 2015/10/26 18:15:59.12 osninqsso 18/620

さやか「(モグ…)あんた達が言ってくれないのがいけないんでしょ、それならそうと……、

     ケーキうま!」

まどか「だってそれは……、さやかちゃんを……」

さやか「よいよい。考えたらあたしだって逆の立場なら言わないさ。

    ほらほら、辛気臭い顔してちゃせっかくのケーキが台無しだ。

    マミさんもまどかもほむらも紅茶が冷めないうちに飲みなって」

ほむらマミ「クスクス……」

さやか「ん? 何?」

ほむら「だって、まるで自分がもてなしているみたいで……」クスクス…

まどか「さやかちゃん、逆だよ」

さやか「うるさーい、あんまり美味しくて舞い上がっちゃってたんだよ。

    ……ふふ、でもほむらがあたしにも笑ってくれてちょっと嬉しいかも」

ほむら「あ……」

さやか「改めて、マミさん、ほむら、それにまどか。危ないところを助けてくれてありがとう」

20 : 以下、名... - 2015/10/26 18:20:02.43 osninqsso 19/620

マミ「わたしたちもあなたを助けられてよかった。特に鹿目さんたちはね」

まどか「てひひひっ。ほむらちゃんがあそこに魔女が出るんだ、て教えてくれたの」

さやか「へー、そういう予想って出来るもんなの。その……、魔女って敵が出る場所とか」

ほむら「は、はい……。時々は」

マミ「全て分かるわけではないにしても、

   暁美さんのおかげで以前のソウルジェム頼りに探す方法よりもとても助かってるわ。

   今回みたいに犠牲者が出る前に魔女や使い魔を倒すことができるから」

ほむら「いえ、そんな……。わたしなんかより巴さんの理論に基づいた方法のほうが確実です」

さやか「それにしても、あたしの知らないところでこんな危険を冒してたのね……」

QB「マミ達も新たな戦力が加わってくれればもっと安全に戦えると思うんだ」

21 : 以下、名... - 2015/10/26 18:24:24.79 osninqsso 20/620

マミ「キュゥべえ、美樹さんにとっても大事な決断なんだから急かしてはダメよ」

さやか「……マミさん、願い事って自分のためのものじゃないとダメなのかな」

QB「別に契約者自身が願い事の対象である必要はないよ。前例がないわけじゃないし」

マミ「……美樹さん、どういうこと?」

さやか「あたしの知り合いにね、あたしより困っている人がいて、そいつのためとか……」

マミ「それって上条くんのこと?」

さやか「おい、まどか……。どうして初対面の人が恭介のことを知ってるんだ」

まどか「テヘヘ……」

マミ「ごめんね。鹿目さんからあれこれ聞かされて、

   わたしにとってはあなたが初めて会う気がしないくらいなの」

22 : 以下、名... - 2015/10/26 18:28:43.40 osninqsso 21/620

まどか「あ、そういえばマミさんって上条くんの手、ケガを治す魔法で治せませんか?」

ほむら「あ! 確かに……!」

さやか「ケガを治せる魔法なんてあるの?」

まどか「うん! すごいんだよ、魔女に操られてひどいケガした人だって治せるんだから。

    ね、マミさん!」

マミ「……そ、そうね。一度、彼に会わせてもらって……」

さやか「……うーん、やっぱ会ったばかりで迷惑かけたくないし。

    あたしが願いごとで治してもらうわ」

まどか「えっ!? な、何で!?」

ほむら「そんな、わざわざ魔法少女になって危ない目に遭う必要はないですよ」

23 : 以下、名... - 2015/10/26 18:32:50.66 osninqsso 22/620

まどか「そうだよ。わたし、さやかちゃんが仲間になってくれたら嬉しいよ。

    でもマミさんが治してくれるなら願いごとにしなくても……」

さやか「……ねえ、マミさん。ほんとは治せないんでしょ?」

マミ「……ごめんなさい」

まどほむ「……!」

ほむら「そ、それはお医者さんに治せないほど重いケガだから……?」

マミ「もちろんそれもあるわ……。でもわたし自身の能力の問題がいちばん大きい」

まどか「そんなことないですよ! きっとマミさんなら……」

マミ「ええ。ダメもとと言ったら失礼だけど、

   美樹さん、それから彼本人さえよければわたしの全力を使わせてほしい」

24 : 以下、名... - 2015/10/26 18:36:55.13 osninqsso 23/620

さやか「ありがとう、マミさん。でも嘘つかなくていいんだよ」

マミ「……」

まどか「さやかちゃん、マミさんは嘘なんて――」

さやか「嘘っていうか、もっと大事なことを話してないっていうか。

    なんかもっと複雑な問題なんだけど、それを全部しょいこんで、

    自分一人のせいにしてる気がするんだよね、なんとなく……。

    恭介やあたしの力になりたいと思ってくれてるのは分かるんだ。

    それだけですっごくあたしは励まされてんだから苦しまないでほしいんだよ」

マミ「……美樹さん。鹿目さんから聞いてたとおりの人ね。

   打ち明けたところ、ありのまま分かってることを話すと、

   ただの言い訳にしかならないことなんだけど、ここは甘えさせてもらうわ」

まどほむ「……!」

25 : 以下、名... - 2015/10/26 18:40:56.60 osninqsso 24/620

マミ「なぜなのかは分からない。ただ、天の配剤とか、試練とか、業とか、……運命とか。

   魔法とは本来それらを超えて望みを叶えるはずのものだし、

   だからこそ必要以上にみだりに扱ってはいけないとわたしは思うんだけど、

   ……魔法で超えられないときがあるの」

ほむら「それって、巴さんの能力的に、ってことなんですか?」

マミ「深い傷を治すに足る魔力の強さ、そのしきい値の問題ではなくて、

   魔法が効力を発揮しない。それが実感としか言えないわ。

   経験的に、試みる前から『これは無理だ』って、

   なぜか分からないけど分かるようになるの」

ほむら(確かに、鹿目さんが言ってたように、ひどいケガの人を治せるなら、

    巴さんは能力的には上条くんの手も治せてもおかしくない……)

26 : 以下、名... - 2015/10/26 18:44:58.61 osninqsso 25/620

まどか「マミさん、それじゃ上条くんの手は……」

マミ「……ごめんなさい。今のわたしには……」

まどか「……ううん、わたしこそ。マミさん、さやかちゃん、ごめんなさい」

マミ「……もう一つだけ、ひどく無神経なことを言うようだけど、

   叶えたいことがどうでもよくなった頃になるとふと叶うこともある。

   そういう意味では希望がないわけじゃないわ」

ほむら「……ど、どうでもよくなるなんて……」

マミ「全て忘れろ、って意味じゃない。ただ、今どうしようもないことなら、

   今やるべきことに集中して前に進むしかない。

   現実を直視するって、何もかも最初からあきらめて受け入れるって意味じゃなくて、

   現状を今あるもので変えられる、超えられるか、視野を広げて吟味したうえで、

   それが今すぐにできないことなら、時間をかけて尽力で変えていくってことだと思う。

   変えたいものが環境なのか自分の内面なのかはその人によるんだろうけど、

   環境なり考え方なり行動なり、可能な小さな変化を継続して積み重ねていけば、よ」

まどか「う、うーん……?」

27 : 以下、名... - 2015/10/26 18:48:59.99 osninqsso 26/620

マミ「……わたし、何もできないくせに偉そうなことを……」

さやか「いや、聞けてよかったと思ってる。まどか、話フッてくれてありがとう。

    マミさんも話してくれてありがとう。

    うん、あたしが願いを叶えて恭介の手を治してもらうよ」

マミ「……奇跡や魔法でしか叶えられない願いなら、

   それが叶ったあとのその先の結果まで責任を背負うことになるわ。

   どんなにわたし達があなたのせいじゃないと言っても、

   あなたは自分で自分を追い詰めて背負ってしまう……そういうものよ。

   願いを叶えるのがあなた自身ならまだいい。

   でも人の願いをあなたが叶えるというのなら、

   あなたは下手をすると重荷に潰されかねないわ」

まどか「マミさん……?」

さやか「……」

28 : 以下、名... - 2015/10/26 18:53:28.81 osninqsso 27/620

マミ「鹿目さんからの話を聞く限り、わたしは美樹さんをそういう人だと思う。

   しかも、彼のことを慮って、あなたは上条くんに、

   彼を助けたのが自分だと伝えることもしないでしょうしね……」

ほむら「そんな……」

さやか「マミさん、ありがとう。……でもね、あたしは恭介に伝えるよ」

マミ「!」

さやか「伝えて、背負わせる。

    あたしに助けられたからってそれで何かに囚われて人生が狂ってしまうなら、

    上条恭介はそこまでの器だったってことだよ」

29 : 以下、名... - 2015/10/26 18:57:30.61 osninqsso 28/620

まどか「さやかちゃん……」

マミ「……魔女との戦いは命がけよ。それに日常的に時間を割かなければならなくなるし、

   大事な約束があっても必要に応じて務めを果たさなければいけないときもある。

   急がないで、その望みと引き換えならこれからどんな苦しいことも我慢できるか、

   それともそうじゃないか、一度じっくり考えてほしいの」

さやか「……ほんとのこと言うとね、そんな純粋に恭介のためだけに願うわけじゃないんだ。

    あいつの夢を叶えた恩人になりたいって気持ちもある。

    それと同時に、ただあいつの奏でる音色をもう一度聴きたい、って気持ちもある。

    両方ともがあたしの本音だから……。

    そりゃ危険なことに首突っ込むんだもの、後悔なんてしたくないしさ……、

    でもそうできる、って分かってて今そうしないならあたしは絶対後悔する。

    ……そんなワガママ通すんだから、あたしは決して後悔しないよ」

30 : 以下、名... - 2015/10/26 19:01:33.09 osninqsso 29/620

まどか「ね、ねえ……。さやかちゃん、やっぱり上条くんに相談してからのほうがいいよ。

    上条くんだって、さやかちゃんを危険な目に遭わせてまで治りたくないはずだよ」

さやか「かもね。だから、事後承諾ってのがミソなんだよ。

    あいつが信じようが信じまいがあたしには恩人だっていう自己満足が残る。

    あたしとあいつと絶交するようになっても、腕は治ったって結果があいつには残る。

    治ったあと伸びるか駄目になるかはあいつの勝手だし。

    でもあいつに背負わせるのは、あくまでも知らない内に押しつけられた結果でなきゃ。

    だって、相談してしまったら、あたしが願いを叶えるかどうかの責任まで、

    あいつに背負わせることになっちゃうもん」

まどか「……」

マミ「そこまで……。もう何も言わないわ。あなた達が幸せであるように祈ってる」

QB「じゃ、いいんだね」

さやか「うん、魔法少女になるわ。やって」

ピカーッ コオオオオ……

QB「君の祈りは却下された。契約は不成立だ」ヒュゥ~ン…

31 : 以下、名... - 2015/10/26 19:05:36.72 osninqsso 30/620



~~病室~~

恭介(左手に何か変な感覚が…? いや気のせいか……)


~~マミの部屋~~


さやか「こんなのってないよ! あんまりだよ!」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「痛々しそうに見るなー!」

さやか「ねえ、どうして? あたしは恭介を助けたいだけなの!

    どうして叶えてくれないの?」

ほむら「美樹さん……」

さやか「哀れむような目で見るなー!」

QB「僕にもなぜこうなってしまうのか分からないんだけどね。

   計算によると、まず上条恭介の左手が願いによって治癒した場合、

   彼を中心とした半径約100km圏内にいる人間のうち、

   左腕を失っている状態にある者、或いは左腕が動かない状態にある者が全て、

   その機能を回復してしまうらしい」

32 : 以下、名... - 2015/10/26 19:09:45.68 osninqsso 31/620

さやか「大いに結構なことじゃない」

QB「とんでもない。君の将来性にかんがみてもこちらは割に合わないよ。

   君が願ってもないことを勝手に叶えたおかげで、

   他の少女たちが願いを叶えるはずだった機会そのものを奪ってしまう可能性は否めない。
   
   君がその当事者たち以上に起こったことに対して感情が揺れ動くとは考えにくいもの。

   まさかこんなことが起きるとは思わなかったが、

   判明した以上そんなリスクの大きい取引には応じられないんだ」

さやか「そんな訳の分からないこと言わないでよ。どんな願い事でも叶えてくれるんでしょ?」

QB「こちらとしても残念だが……。

   期待させてしまってすまないが、今回は縁がなかったということで」

33 : 以下、名... - 2015/10/26 19:13:54.45 osninqsso 32/620

さやか「はぁ……」ガク

マミ「落ち込まないで、美樹さん……。これでよかった、て思える日が来るかもしれないわ」

ほむら「どうか元気を出して下さい……」

まどか「そ、そうだよ。もしかしたら、上条くんのケガだっていつか治せるお医者さんが……」

さやか「……かもね」

まどか「うん、だから……」

さやか「でもその頃にはヴァイオリニストになるには遅すぎると思うわ……」

まどか「あ……ぅ……」

さやか「……しょうがないよね、ナッハハ……。

    でもここんとこ現実を受け入れなきゃ、って気を張ってばかりだったから、

    ちょうどよかったわ。

    先に進む前にもしも治るなら、て一回位はとことん考えてもいいはずだもんね……。

    みんな、ありがとう。

    そういう機会を与えてもらっただけでも無意味じゃなかったんだと思う」

34 : 以下、名... - 2015/10/26 19:17:57.88 osninqsso 33/620

マミ「美樹さん、その意気よ」

さやか「うん! 少し元気出てきた」

まどか「う、うん……」

さやか「何だぁ? ほら、まどかも元気出しなってー。うりうり」

まどか「もう、立場が逆だよ……」

ほむら「ふふ……」

35 : 以下、名... - 2015/10/26 20:24:08.16 osninqsso 34/620


~~玄関~~


さやか「マミさん、ケーキご馳走さまでしたー」

マミ「お粗末さまでした。

   美樹さん、ぜひまた家に来て。魔法少女でなくても、あなたとは友達でいたいから」

さやか「え、本当にいいの? 何か色々甘えちゃいそうだなぁ」

マミ「安心して。同じ見滝原の先輩として、びしびしアドバイスしちゃいますから」

まどか「それじゃマミさん、また明日」

マミ「気をつけてね」

ほむら「失礼します」

36 : 以下、名... - 2015/10/26 20:28:18.88 osninqsso 35/620


~~帰り道~~


さやか「じゃあここで。……そういえば、なんか愚痴っちゃってごめんね。

    危険な目に遭ってるのはあんた達なのに……」

まどか「そんなこと気にしなくても……」

ほむら「こちらこそ何も力になれなくて……。わたしに出来ることがあれば……」

さやか「いや何言ってんの。まどかもほむらも命の恩人の上に、

    今日はマミさんとあんた達のおかげでだいぶ元気が出たよ。

    それじゃね、バイ」ピッ スタスタ…

まどか「うん。またあした」


トボトボ

まどか「……さやかちゃんも上条くんもかわいそうだよ。

    どんなに頑張っても治る見込みがないなんて……」

ほむら「ええ……。でも、きっといいことありますよ、美樹さんたちなら」

37 : 以下、名... - 2015/10/26 20:32:33.81 osninqsso 36/620



~~病室~~

ガラガラ

さやか「ないんだったら作ればいいのよ!」

恭介「!? さやか、帰ったんじゃないのか? て言うかもう夜だぞ!?」

さやか「恭介、結婚しよう! あたしがあんたの子どもを産むわ!」

恭介「うん、分かった。分かったから落ち着け。……一体何があった?」

さやか「ほむらとまどかは魔法少女になって忙しくしてたってこと!

    あとあんたは知らないでしょうけど、三年生の巴マミさんって人も!

    あたしが魔女に襲われて危ないところを救われたのよ」

恭介「(ギシ…)オーケー。付き添っていってあげるから今すぐ病院に行こう。

   大丈夫だ。僕は君を見捨てないとも」ヒシ

さやか「(バッ)だからそんな目で見るなー! 本当にあったんだから!」

恭介「(ペチ)はぁ……。じゃ、詳しく、順を追って話してくれ」ギシッ…

38 : 以下、名... - 2015/10/26 20:36:27.65 osninqsso 37/620

―――
――

さやか「……で、さっきまどかとほむらと別れて家に向かって帰ってたってわけ。

    信じてくれた?」

恭介「いや」

さやか「だったら何のために話させたの!?」

恭介「明日、鹿目さんと暁美さんをここに連れてきてくれ。

   二人が本当だと言って、目の前で変身でもしてくれたら信じるさ」

さやか「ったく疑り深いなあ」

恭介「それはともかく家に帰ってたはずがなぜここに戻って僕に結婚を申し込むことになる?」

さやか「あ、別に相手は仁美でもいいのよ」

恭介「どうしてそう思うのか、順を追って、話してくれ」

39 : 以下、名... - 2015/10/26 20:40:30.68 osninqsso 38/620

さやか「まず歩きながら考えてた。

    あんたの左手は今の医学じゃ治せない。キュゥべえにも叶えてもらえない」

恭介「うん」

さやか「でもあんたの才能を受け継いだ子どもなら超一流のヴァイオリニストになる」

恭介「さあね」

さやか「というわけで」

恭介「繋がらねえよ!」

さやか「何言ってんの。それしかないじゃん」

恭介「色々言いたいことがあるけど、特に結論の向こう側に対してだね。うん、そうだ。

   親の果たせなかった夢を押し付けられた子どもの悲劇だか喜劇だかは、

   こうして始まるんだな」

40 : 以下、名... - 2015/10/26 20:44:33.37 osninqsso 39/620

さやか「あれだけ息子の自主性を大切にしてくれてるおじさんとおばさんを持ってよく言うわ」

恭介「……。わかったよ。一つの可能性として頭に入れといても損はない斬新な考え方だ。

   わざわざ知らせに来てくれてありがとう」

さやか「うんうん、分かればよろしい」

恭介「ただね、年頃の女と男が夜遅くに二人っきりで話す事柄でもないだろ」

さやか「ああ、まあ……。そろそろ帰るわ」

恭介「はいよ。おつかれさん」ギシ

さやか「え、どうしたの」

恭介「送ってく」

さやか「いや、いいって」

恭介「気にすんな。上着着て、裏口使えばバレないし」

さやか「だから、あんたが何か起こすとあたしが困るから」キッ

恭介「……人通りのない道選ぶなよ」

さやか「うん。じゃね」

恭介「鹿目さん達によろしく」

さやか「はいはい」ガラガラ


恭介「……。(ハァーッ)」ガク

41 : ◆Y4NjDgz4uE - 2015/10/26 20:48:37.61 osninqsso 40/620



~~次の日、放課後~~


仁美「さやかさん、これから少し時間あります?」

さやか「あー、今日はまどか達と恭介の見舞い行くんだわ。仁美も来る?」

仁美「いえ。出来れば、さやかさんと二人でお話したいことがあるのですけど」

さやか「ああ‥、わかった。まどか、ほむら、悪いけど先行っててくれる?

    受け付けの人に言えば分かるから」

まどか「……うん、また後でね」

ほむら「あ、じゃお先に……」

43 : ◆Y4NjDgz4uE - 2015/10/27 12:50:04.83 0D7NAuHmo 41/620


~~病院への道~~


ほむら「何だか……緊張しますね。わたしたちだけだと」

まどか「そっか、ほむらちゃんは上条くんに会うの初めてだもんね」

ほむら「それもありますけど、普段からお見舞いに行ったことのないのに今日だけ来て……、

    わたしたちが帰ったあと、かえって寂しくさせてしまうような……」

まどか「……」

ほむら「ごごめんなさい!

    わたし、自分がそうだったからなんてひねくれてますよね、ああ…」

まどか「ううん、今日ほむらちゃんがいてくれてよかった。

    わたしだけだったら上条くんがそうかもしれない、て考えることもしなかったもん」

ほむら「で、でも変に気を遣うより自然体の方がいいと思うんです」

44 : 以下、名... - 2015/10/27 12:55:44.08 0D7NAuHmo 42/620

まどか「そうだなあ。実はわたしもちょっとドキドキしてるの。

    わたしは上条くんのお見舞いのためというより、

    さやかちゃんが上条くんのことを話してる様子が楽しみで今までついていってたから。

    さっき帰っちゃおうかな、って迷ったんだけど」

ほむら「上条くんが鹿目さんとわたしに会いたいそうなんですよね」

まどか「どうせなら元気づけてあげたいもんね。上条くんって演歌は聴くのかな」

ほむら「さぁ……、音楽を志してる人なら一通りは知ってるんじゃないでしょうか」

まどか「話が合えばいいけど……、

    そもそもどうして急にわたしたちと会いたいと思ったんだろ?」

ほむら「うーん、退院が近いからクラスの雰囲気を美樹さん以外の人から聞きたかったとか」

まどか「あ、そうか。だったらほむらちゃんのこととか先生のこととか……」

ほむら「えっ。わ、わたしもですか?」

まどか「だってほむらちゃんが呼ばれてるんだもん。きっとそうだよ」

ほむら「そ、そんな……」

45 : 以下、名... - 2015/10/27 12:59:36.87 0D7NAuHmo 43/620



~~ショッピングモール内のファーストフード店~~


さやか「で、話って?」ヂュー

仁美「……恋の相談ですわ」

さやか「ん」ピタ 

コト…

仁美「……実は長い間、まどかさんやさやかさんに秘密にしていたことがありますの」

さやか「うん」

仁美「ずっと前から、わたし、上条恭介くんのことお慕いしてましてたの」

さやか「‥うん」

仁美「……さやかさんはわたしに何か言うことはないんですか?」

46 : 以下、名... - 2015/10/27 13:06:25.71 0D7NAuHmo 44/620

さやか「……話をつけなきゃいけないんだね」

仁美「……わたしの上条くんに対する気持ち、気付いていたんですの?」

さやか「仁美はあたしの気持ちに気付いてたんだね」

仁美「……」

さやか「……」

さやか「……恭介の左手がもう治らないことは知ってる?」

仁美「ええ。やっぱり……」

さやか「やっぱり?」

仁美「昨日のあなた達の会話からなんとなく」

さやか「……?」ピク

47 : 以下、名... - 2015/10/27 13:10:41.68 0D7NAuHmo 45/620

仁美「魔法少女がどうとかも聞こえましたけど……」

さやか「ああ、願い事で叶えてもらえたらな、って思ったんだけど、

    世の中そうそう都合よくいかなくてさ。

    ……あんたに約束してほしいことがあるの。

    恭介との子どもを世界一のヴァイオリニストにして」

仁美「……逃げますの?」

さやか「うん」

仁美「……!」

さやか「これでも昨日一晩考えたんだよ。

    ……まさか今日あんたが決めにくるなんて思わなかったけど。

    だって、どう考えてもあたしと仁美じゃ敵いっこないもん。

    あんた頭いいし、品行方正だし、あたしより優秀な子どもを産めるに決まってる。

    ……それに、こんなこと言っちゃいけないけどあたしん家よりお金持ちだからね……」

仁美「……ふざけないでください」

48 : 以下、名... - 2015/10/27 13:14:44.32 0D7NAuHmo 46/620

さやか「……!?」

仁美「彼の子どもをヴァイオリニストにする?

   わたしがどうだから、あなたがどうだからどんな子どもが生まれる?

   そのこととあなたとわたしの上条くんに対する気持ちの深さと何の関係がありますの?

   いいえ、何より許せないのは今のあなたの考えだと、

   あなたにとって上条くんは何なんですの?

   手前勝手な将来設計図に置いていかれた上条くんの人生はどうなりますの?

   彼が今まで音楽に懸けてきた思いを……、あなたやわたしの彼への思いを……、

   全てそのための道具だと言いたいんですか!!」

さやか「それは……」

仁美「あなたがそんなことでは……一体どうやってわたしは……」

さやか「仁美!?」

仁美「……」

ザワザワ ヒソヒソ

さやか「と、とにかく出よう? ほら」

49 : 以下、名... - 2015/10/27 13:18:49.18 0D7NAuHmo 47/620


~~病室~~


まどか「‥こんにちは~」

ほむら「失礼します」

恭介「あ、やあ、いらっしゃい。

   鹿目さんと……君が暁美ほむらさんだね?」ボー

ほむら「はい。あの……、お疲れですか?」

恭介「ちょっと昨日寝付けなくてね……。あ、気にしないで」

まどか「無理したら体に悪いよ。今日は……」

恭介「いや、待って。君たちの話を聞かなかったら今日も眠れなさそうだ」

50 : 以下、名... - 2015/10/27 13:22:52.47 0D7NAuHmo 48/620

ほむら「と、言うと……?」

恭介「昨日の夜、さやかが突然ここに来て僕と結婚して子どもを産むとか言うんだ」

まどか「そんなとこまで考えてたなんて……さやかちゃん……」

恭介「それはまだいい。いきなり言い出すのがおかしいとはいえ、これに比べたらね……。

   次に言うには、君たちが魔法少女で、学校の先輩と一緒に、

   魔女から自分を助けてくれたって……」ガク

まどか「あ、ははは……(……そういえば)」

ほむら「あ、ああ……(内緒にして、て言うの忘れてた)」

まどか「と、とりあえず、どんな話だったか教えてくれるかな…」

恭介「うん。あ、掛けてて……」

51 : 以下、名... - 2015/10/27 13:26:54.95 0D7NAuHmo 49/620


―――
――


恭介「……僕が聞いたのはこれだけ」

まどか「そうなんだ……(うわー)」

ほむら「話してくれてありがとうございます(全部話しちゃってる)」

恭介「僕を心配し過ぎたせいでさやかの頭がおかしくなっちゃったのかと思うと……」

ほむら「大変でしたね。事故に遭われて辛いのに……」

恭介「いや。それは自業自得っていうか……納得してるんだ」

ほむら「自業自得……?」

52 : 以下、名... - 2015/10/27 13:30:58.39 0D7NAuHmo 50/620

まどか「……?」

恭介「……いいかい、さやかには言うなよ」

まどか「うんうん」

恭介「あの時……、ふと見たら道の反対側に黒猫がいたんだ」

まどか「――」

ほむら「……黒猫?」

恭介「うん。ほら、猫ってさ、飛び出す時は飛び出すって決めてかかるだろ。

   あの体勢だったわけ。それで……」

ほむら「横切ろうとした猫を助けようと……」

恭介「いや。猫は飛び出さなかった」

53 : 以下、名... - 2015/10/27 14:07:31.32 0D7NAuHmo 51/620

ほむら「?」

恭介「暁美さんは知ってるかな。鹿目さんやさやかは通学路に使ってるけど。

   結構幅が広い道路だったから声だけじゃ届かなそうだったんで、

   大声を挙げながら向かっていったら、別の方向へ逃げてった。

   で、結果的に道に飛び出したのは僕だけだったっていう……」

ほむら「はぁ……。ゆ、勇気ありますね…」

恭介「うん。どうかな。あんなに車が近くまで迫ってると知ってたら違ったかもしれない」

ほむら「……」

まどか「……そうだったんだ。さやかちゃんも不思議がってたの、

    見通しがいいのにどうして事故に遭ったんだろうって」

54 : 以下、名... - 2015/10/27 14:11:34.46 0D7NAuHmo 52/620

恭介「まあ普通はそう考えるよね。なんとかお茶を濁したけど。

   こんなことさやかにも親にも言えたものじゃないからね」

まどか「でも話してくれて、助けてくれてありがとう。

    その黒猫、多分わたしもよく知ってる子だと思う」

恭介「そうなの? だとしても、助けたと言えるかどうか……」

まどか「ううん、ほむらちゃんの言うとおり上条くんは勇気あるよ」

恭介「……。二人にそう言われたら少し心が軽くなったよ。

   ありがとう、人に話すのは初めてなんだ」

まどか「そっか……。秘密、話してくれたんだ……」

ほむら「あの、美樹さんのこと上条くんはどう思ってるんですか」

恭介「さやかを? ……冗談にしろ本気にしろ、そう言ってくれることは嬉しいさ。

   正直、あいつとは結婚するんじゃないかなあというか、

   あいつ以外にいるのかなあと前から思ってる」

55 : 以下、名... - 2015/10/27 14:15:38.26 0D7NAuHmo 53/620

ほむら「はぁ……」

恭介「ただね……、そうなるにしろならないにしろ、

   問題なのは自分がどんな人間になってるかってことだろ。

   結局何がしたくて、今どうするのかという……。

   さやかに言われるまでもなく、僕には音楽しかない、それも演奏するほうが好きだ。

   だが弾けないヴァイオリンを前にしてどうするのかってとこまで来て、

   今そこで止まってる状態なんだよ」

まどか「うん……」

恭介「あ、そんな深刻な顔しないで。思いつめてるわけじゃないんだ。

   ……こういう風に整理できるのも、じっと見守ってくれてる父さんと母さん、

   それから人の心に土足で踏み込んでくる幼馴染のおかげだね」ニッ

ほむら「ふふ……」

恭介「そういえばさやかは?

   あいつ志筑さんまで変なことに巻き込みそうだったから釘を刺しておかないと……」

まどか「あ、さやかちゃんなら仁美ちゃんと……」

恭介「遅かったか」

56 : 以下、名... - 2015/10/27 14:19:39.73 0D7NAuHmo 54/620


~~ショッピングモール内のトイレの個室~~


仁美「……。本当はあなたとは……上条くんが退院してからお話するつもりでした」

~~隣の個室~~

さやか「そう…」

~~~~

仁美「でもわたし……。昨夜稽古事の帰りにあなたを見かけましたの」

~~~~

さやか「……」

57 : 以下、名... - 2015/10/27 14:24:37.47 0D7NAuHmo 55/620

~~~~

仁美「あなたを尾けて……、扉越しであまり聞こえませんでしたけどわかりましたわ。

   あなた方の間に割り込む余地など無いと」

~~~~

さやか「恭介の気持ちなんて勝手に想像しただけじゃわからないってさっき言ったじゃん」

~~~~

仁美「いえ。さやかさんこそが恭介くんにとってたった一人のマドンナです」

ジャーッ ガチャ

さやか「っ」ガチャッ

仁美「……あなたこそ、彼をただどこまでも支えて下さい。

   わたしが言いたいのはそれだけですわ」

さやか「仁美……」

仁美「この話は終わりにしましょう。明日からはまどかさんと暁美さん、あなたと、

   大切なお友達としてこれまでどおりにありたいと思っています」

ペコ‥ スタスタ…  ガチャ


さやか「…あたしは……」

58 : 以下、名... - 2015/10/27 14:28:56.21 0D7NAuHmo 56/620


~~病室~~


まどか「ねえ、さやかちゃんが来てない間、上条くんって何してるの?」

恭介「ここの本棚に置いてある古い漫画を読んだり、さやかの持ってきたCDを聴いたり……、

   あ、勉強はしてるよ。勉強はしてます。うん」

ほむら「CDって……もしかして、これ?」

恭介「そう」

まどか「いつの間にか、こんなに増えてたんだね」

恭介「ほとんど見舞いに来るたんびにだったからなあ。

   でもこれ、廃盤になったけどいい演奏のものが結構あったりして。

   ちょっとやそっとの手間じゃ、これだけ揃えられないよ。

   レアなCDを見つける天才でもなければ」カタ カチャ

59 : 以下、名... - 2015/10/27 14:33:02.87 0D7NAuHmo 57/620

ほむら「何かお薦めの曲ってあります?」

恭介「うーん。(カチャ カチャ…)これはどうかな」スッ

ほむら「モーツァルトのクラリネット協奏曲……」ソッ

恭介「クラリネット奏者がカール・ライスター、指揮はネヴィル・マリナー。

   これはモーツァルトの晩年の…………」

まどか「どうしたの?」

恭介「君たち、最近身内に不幸があった?」

まどか「‥ううん?」

ほむら「…いいえ」

恭介「……ならいいかな。ねえ、モーツァルトとベートーヴェンって違うよね」

60 : 以下、名... - 2015/10/27 14:51:54.26 0D7NAuHmo 58/620

まどか「違う人だものね」

恭介「うん。鹿目さんなら鹿目さん、暁美さんなら暁美さんみたいに、

   それぞれの人生があって、どちらがどうとか他人が言うことじゃないんだろうけど。

   でも考えてしまうんだ。

   モーツァルトは天才で、ベートーヴェンは努力家だとか。家庭環境の違いとか。

   モーツァルトもベートーヴェンも病や人生には苦しんだけど、

   前者は作曲時の人生の調子と、曲調がかけ離れたものだったのに対して、

   後者は耳が聴こえないという絶望や、親族問題、政治・社会問題とか人生そのものに、

   真正面から向き合って苦悩を乗り越えていくプロセスが作曲に反映されてる」

ほむら「そういうイメージがありますね……」

61 : 以下、名... - 2015/10/27 14:56:02.50 0D7NAuHmo 59/620

恭介「こうしてみると、二人は互いに対になる存在だ……、と言いたくなるんだけど、

   簡単にそうは言えないジレンマみたいなのがあって……」

ほむら「ジレンマ?」

恭介「ベートーヴェンの方さ。

   モーツァルトは三十代半ば、ベートーヴェンは五十代半ばに亡くなった。

   前者はレクイエム自体は未完だったけど、その音楽性はもう完成の域にあった。

   でも後者は……」

まどか「……完成しなかったの?」

恭介「第九や弦楽四重奏曲第十五番みたいに、苦悩をつき抜けて喜びにとか、

   病癒えて神に感謝を捧げるという境地は、彼の人生に裏打ちされた真実だよ。

   ベートーヴェンの辿り着いたものは腹の底から人を揺さぶるほどの力を持ってる。

   でも人生は真実に辿り着いた所できれいに終わってくれないんだ。

   実際、彼は亡くなる前年から、息子のように面倒を見ていた甥が自殺を図ったり、

   自身は立て続けに複数の病魔に襲われたりと、これでもかってくらいの目に遭った。

   結局、病気は治らずにそのまま悪化して……」

ほむら「……」

62 : 以下、名... - 2015/10/27 15:00:08.09 0D7NAuHmo 60/620

恭介「モーツァルトだって、意地悪な人に出世を阻まれたこともあったし、

   その天賦の才を活かしきるのに労を惜しまなかったろうけど、

   人生に向き合う態度として悲壮なものは、きっと生来好まない人なはずだよ。

   ヨーロッパじゅうを演奏旅行する傍らで音楽について貪欲に学習をしたり、

   色んな人生経験を重ねていくうちに、その内面が作品に自然と反映することがあっても、

   少なくとも芸術は一種、至上の世界として別格に捉えていたと思うんだ。

   いっとき貴族からもてはやされた割に作曲の依頼はだんだんと減っていって、

   その晩年は生活が困窮していた。盛大とも言えるベートーヴェンの葬儀に比べて、

   共同墓地の一画というほかは正確なお墓の位置も分からないくらい。

   でも、その現実から切り離されたように、そのCDの曲調は清澄そのものだ。

   モーツァルトが諦観の境地にあったと言うなら分かるよ。

   でも、ベートーヴェンがそうだとしたら、悔しいじゃないか。

   だってヒューマニズムの体現者が敗北したのか、ってなるだろ。

   突きつけられる問題から逃げずに向き合ってきたために、

   越えても越えても新しい苦しみだけが襲ってきてさ。

   ずっと人生と戦ってきたってのに……」

63 : 以下、名... - 2015/10/27 15:04:13.60 0D7NAuHmo 61/620

ほむら「それはベートーヴェン本人にしか分からないことじゃないでしょうか。

    それに、彼だってそんな大問題だけでなく友人や大切な人と過ごすこと、

    あるいは日常生活のささいなことに楽しみを見出したりしてたかもしれないでしょう」

恭介「――そうだね。暁美さんの言う幸せな側面も含めて、

   ベートーヴェンはその最期のときにも人生を肯定したかもしれない。

   でも『違う、こんなものじゃない!』と苦しんだとしても彼らしい」

ほむら「どちらにしても死ぬまで必死に生きたんでしょうね」

恭介「そこまでいくと、モーツァルトとベートーヴェンは対なのかもしれない」

64 : 以下、名... - 2015/10/27 15:08:22.39 0D7NAuHmo 62/620

ほむら「ふむ……」

まどか「……」

恭介「あ、ごめん。なんか暗い話して。

   さやかにもらったCDを聴いてたら考えちゃってさ」

まどか「ううん。ぜんぶは分からなかったけどそういう話を聞いたら、

    なんだかわたしも聴きたくなった」

恭介「そう? さやかの携帯プレーヤーにダビングするつもりだから、

   それでよかったら聴いてみて」

ほむら「はい」

まどか「ありがとう。それじゃ、わたし達そろそろ帰るね」

恭介「うん、来てくれてありがとう。楽しかったよ」

ほむら「お大事に。失礼します」

ガラガラ…

65 : 以下、名... - 2015/10/27 15:12:25.62 0D7NAuHmo 63/620


~~病院のロビー~~


まどか「上条くん、元気そうでよかったね」

ほむら「ええ、退院が楽しみですね」

まどか「そうだね。ねえ、ほむらちゃん……、あのね」

ほむら「はい?」

まどか「ここに来ると入院してたときのこと思い出したりする?」

ほむら「今でも時々来るのでそういう感覚はないような……」

まどか「え?」

ほむら「あ、大丈夫です。経過観察のためで、悪くなったからではありませんから。

    でもどうして?」

まどか「上条くんの病室を出てから、少しいつもより元気そうじゃないな、というか……」

66 : 以下、名... - 2015/10/27 15:17:01.90 0D7NAuHmo 64/620

ほむら「それは…、病院の廊下を歩くときは決して笑わないようにしよう、て決めましたから」

まどか「……?」

ほむら「元気ですよ。心配してくれてありがとう」ニコ

まどか「よかった。元気ならいいの。

    ……あれ、ほむらちゃん、ソウルジェムが光ってるよ」

ほむら「え?」スッ

まどか「うん、わたしのも」チカチカ…

ほむら「え……そんな……」

QB「反応が弱いな……。使い魔だろうか」

まどか「だったら近くかな?」

67 : 以下、名... - 2015/10/27 15:21:04.82 0D7NAuHmo 65/620

QB「遠くにいる魔女に反応してるのかもしれないけど、一応敷地内を廻ったほうがいいね」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「あっ、いえ……。早く探し出しましょう!」

まどか「うん!」


~~病室~~

恭介「あ、肝心なこと聞くの忘れてた」

68 : 以下、名... - 2015/10/27 15:25:06.29 0D7NAuHmo 66/620


~~病院裏、駐輪場~~


QB「おかしい……。そんなに移動していないのに反応の強まり方が急激過ぎる。まさか……」

まどか「あっ! あそこ!」

QB「グリーフシードだ! 孵化しかかってる!」

まどか「わ、わたし達の魔法で何とかできない? キュゥべえも呑み込んじゃえない?」

QB「こうなってしまってはどちらも無理だ。この魔女は強いよ。

   君たちが叩いてもむしろ孵化の手助けになる危険性のほうが大きいし、

   もう僕が呑み込める状態じゃない。卵から出てきた魔女と対決するしか方法はないよ」

ほむら「巴先輩を呼びましょう!」

まどか「うん!」ピッピッ…

69 : 以下、名... - 2015/10/27 15:33:20.49 0D7NAuHmo 67/620


まどか「……駐輪場の辺りです。……はい、分かりました」ピッ

まどか「急いで応援に向かう、先に結界に入って魔女を逃がさないように見張っていて、って。

    あと、場所が場所だから迷い込んだ人がいないか、

    魔女の孵化まではそちらを優先して保護につとめて、って」

ほむら「分かりました。……あらかじめグリーフシードがここにあることを知っていたら」

まどか「分かるときと分からないときがあるんでしょ? ほむらちゃんのせいじゃないよ」

QB「むしろ孵化する前に発見できた幸運に感謝しよう。

   君たちのお陰で大勢の人を救えるんだ」

まどか「そうだよ! 準備はいい? ほむらちゃん」フワァッ

ほむら「‥はい!」フワァッ

QB「大きな魔力を使って刺激しないように気をつけて。

   魔女がかえる引き金になってしまう恐れがあるからね」

まどほむ「了解!」

スゥッ

70 : 以下、名... - 2015/10/27 15:37:23.30 0D7NAuHmo 68/620


~~魔女の結界内~~


恭介「どわ~~はっは!!」


ほむら「……今の叫び声」

まどか「上条くんだね」

QB「いきなりマミの懸念が当たってしまった」

まどか「魔女の手下に襲われてるのかも。行こう、ほむらちゃん!」

ほむら「ええ!」

タタッ

71 : 以下、名... - 2015/10/27 15:42:55.58 0D7NAuHmo 69/620


ピョコピョコ ゾロゾロ

恭介「はっはっはっはっ……」ダダダ

まどか「上条くーんっ!」タタタ…

恭介「(ハッ)は、はひっ……」ダダダ

まどか「使い魔たちに追われてる……! キュゥべえ、やっつけるよ?」

QB「しょうがないな。魔力を使うなら覚悟しておいて」

まどか(チラ)

ほむら(コクッ)

まどか「上条くん、こっちへ! ……ほむらちゃん、お願い」

72 : 以下、名... - 2015/10/27 15:46:58.22 0D7NAuHmo 70/620

ほむら「はいっ」

カチャッ パシッ

恭介「……(あの筒みたいなのって!?)」ダダダ

カチッ

恭介「鹿目さん、暁美さん!」ダダ…

まどか「そのまま走って!」

恭介「ええ!?」ダダッ

ほむら「ここに置きます!」ポイ タタッ

まどか「離れろ~っ」タタッ

恭介「つまり……」ダダ

ピョコピョコ ゾロゾロ…

ドカーン!! 

恭介「のわあっ」

73 : 以下、名... - 2015/10/27 15:51:02.19 0D7NAuHmo 71/620

モウモウ…

バシュッ バシュッ

恭介(鹿目さん……!?)

ほむら「気をつけて! まだいます!」カチャッ パシッ

まどか「(ハッ)ほむらちゃん、後ろ!」

ほむら「!!」クルッ

恭介「くっ……!」ダッ

パシン ギュオオオ…!

使い魔「ギギィ……!」

‥カツン

ほむら(使い魔がグリーフシードに変化した!?)

74 : 以下、名... - 2015/10/27 15:55:35.15 0D7NAuHmo 72/620

恭介「な、何だ? 今の倒したってこと?」

ほむら「ええ、まあ……」

まどか「上条くん、ほむらちゃんを助けてくれてありがとう!」バシュッ

恭介「どういたしましてというかこちらこそ二人とも、助けてくれてありがとう!」タタ

まどか「ところで上条くん、病室にいたのにここに迷い込んじゃったの?」

恭介「いや、鹿目さんと暁美さんに聞きたいことがあって、

   探しているうちにいつの間にか」ギュオオ… カツン

まどか「聞きたいことって何?」キリキリ…

恭介「君たちが魔法少女だって話、本当?」タタ

まどか「うん! 黙っててごめん! 後で詳しく話すから……」バシュッ

恭介「いや、大体の話は……」

ブサッ

恭介「痛ってええええっ!!」

75 : 以下、名... - 2015/10/27 15:59:37.80 0D7NAuHmo 73/620

ほむら「退がってください!」カチッ

恭介「えええ」タタ

ポーン

ドカーン!

恭介「ありがと……。テテ……」

ほむら「こちらこそ。でも大丈夫ですか? 手下だからって素手で殴るなんて無茶ですよ」ハッ

恭介「(クルッ)おかしいなあ、さっきまでは――」パシン

使い魔「キィィ!」

ギュオオオ… カツン

恭介(左手なら効くのか……!)

76 : 以下、名... - 2015/10/27 16:03:40.37 0D7NAuHmo 74/620

まどか「とにかくほむらちゃん、上条くんを外へ……」

ほむ「鹿目さんをここに置いていけません!」

まどか「わ、わたしそんなに頼りないかな……」ニヒヒ

ほむら「そ、そうじゃなくて、今はバラバラになると危ないです」

恭介「こちらこそ足手まといですまないけど、今は三人一緒のほうが安全そうだから」

まどか「……。じゃあマミさんが来るまで! みんな、お互いに気をつけて!」バシュッ

ほむら「はい!」カチャッ

恭介「わかった!」タタ


77 : 以下、名... - 2015/10/27 16:07:43.90 0D7NAuHmo 75/620

~~路上~~


さやか「……」トボトボ

QB「さやか!」

さやか「ん、キュゥべえじゃん」

QB「上条恭介が魔女の結界に迷い込んでしまった。魔女はまだグリーフシードの中だが、

   使い魔や結界の迷路そのものの危険にさらされてる」

さやか「なっ……! それどこよ!」

QB「見滝原市立病院の敷地一帯だ」

さやか「(クルッ)くっ!」ダッ

QB「落ち着くんだ。今、まどかとほむらが彼の護衛に当たっている」トトト

さやか「大丈夫なの!?」ダダダ

QB「正直それが手一杯の状況だ。

   マミが駆け付けるのがギリギリ魔女の孵化に間に合うか否かのタイミングになるだろう。

   三人がかりでも、上条恭介を守りながらではどうなるか……」トトト

さやか「あたしも魔法少女になって応援に行く!」ダダダ

78 : 以下、名... - 2015/10/27 16:11:46.93 0D7NAuHmo 76/620

QB「それなら結界の入り口まで案内しよう。

   彼の左手のこと以外なら何でもいいから早く僕に願い事を!」トトト

さやか「あーもう、分かったわよ!」

ピカーッ

さやか「さあ、早く行こう!

    なんかこう、テレポーテーションとかできないの!?」ダダダ

QB「それは魔法少女によるかな。(ピョン)少なくとも今の君なら魔力で飛翔できる。まず―」

バッ ヒュオオッ

QB「話聞けよ」

79 : 以下、名... - 2015/10/27 16:16:22.66 0D7NAuHmo 77/620


~~魔女の結界内~~


まどか「次々に現れてくる……」バシュッ

恭介「一応近寄って来るから倒してるけど、

   今さらだけどやっぱり倒さないとマズイの?」ギュオオ カツン

ほむら「一見無害そうだとしても魔女の手下ですから、

    油断するとどんな危険があるか分かりません」

ゾゾゾ ピョコピョコピョコ…

恭介「……あの数は本能的に危険だって分かるわ」

まどか「囲まれる……!」ジリ…

ほむら「わたし、行きます!」

80 : 以下、名... - 2015/10/27 16:20:29.77 0D7NAuHmo 78/620

恭介「へ?」

まどか「上条くん、ほむらちゃんに掴まって!」パシ

恭介「……失礼」パシ

サッ カシン

ピタ…

恭介「停まった……」

ポイポイポイポイポイッ ピタピタピタピタピタ

ほむら「今、時間を停止しています。停止解除後まもなく起爆しますから、今のうちに圏外に。

    わたしから手を離さないでください」

恭介「わかった」

81 : 以下、名... - 2015/10/27 16:24:32.87 0D7NAuHmo 79/620

タタタ…


カシン

ドドドカーン!!

恭介「凄え……」

QB「気をつけて! 魔女が出てくるよ!」

恭介「な、なんだコイツ! いつの間にいたんだ!」バッ

まどか「上条くん待って! キュゥべえだよ!」

恭介「キュゥべえって……ああ」

QB「やれやれ、男の子に僕の姿を知覚させるのは久しぶりだけど、

   やはり君たちにとっては僕の印象は好ましいものではないようだね」

82 : 以下、名... - 2015/10/27 16:28:35.58 0D7NAuHmo 80/620

恭介「いや悪かった。敵と勘違いしたんだ。違う状況なら君とも交流を深めたいもんだが」

QB「それは奇遇だ。僕の方も君に興味があるけど、今はお互いそれどころじゃないね」

恭介「ああ。あれが魔女だって? 思ってたよりずいぶん小さいんだな」

ほむら「あれじゃただのぬいぐるみ……何かおかしい……」

ピョコピョコ ゾロゾロ…

恭介「また手下がたくさん出てきた」

ほむら「どうしよう、もう爆弾が……」

まどか「ほむらちゃん、やっぱり上条くんを外に連れてって」キリキリ…

ほむら「そんな! 時間を停めるからみんなで逃げようよ!」

まどか「でもマミさんが来るまで……!(ハッ)」

ほむら「え?」

パパパパパパパウ!!!

83 : 以下、名... - 2015/10/27 16:32:41.01 0D7NAuHmo 81/620

マミ「お待たせ!」サッ

まどか「マミさん……」

マミ「そんな顔しないの。ここで気を抜いたら今まで頑張った分が水の泡よ」ジャキッ

まどか「は、はい……」ゴシゴシ

マミ「あの卓に付いているのが魔女ね?」

ほむら「はい、そうです……」

マミ「長引くほど不利だから一気に決めるわよ。わたしが緊縛するから、鹿目さんはとどめを。

   撃てる?」

まどか「はいっ!」

マミ「暁美さん、鹿目さんのフォローをお願い!」タッ

ほむら「はいっ」

84 : 以下、名... - 2015/10/27 16:36:43.68 0D7NAuHmo 82/620

タタッ

ガンッ グラ…  ポテ

パウッ パウッ  シュルシュルシュル…ッ ギュウ…

マミ「鹿目さん、今――」

魔女「ムグッ」

ボオオオッ

マミ「え‥」

まど「あっ…」

ほむら「危ない!」カシン

ピタ…

85 : 以下、名... - 2015/10/27 16:42:31.06 0D7NAuHmo 83/620

ほむら「巴さん!」タタッ パシ

マミ「(ハッ)……暁美さん、ありがとう。危うくあの世行きだったわ」

ほむら「(ホッ…)」

マミ「爆弾まだある?」

ほむら「いえ、使い魔に全部使ってしまって……」

マミ「そう。せっかく大口開けてくれてるんだし、内部から爆破すればと思ったんだけど…」

ほむら「なるほど……!」

マミ「わたしが撃つか……(ハッ)。――暁美さん、時間停止を解除して」スタ…

ほむら「え?」スタ…

マミ「早く!」

86 : 以下、名... - 2015/10/27 16:46:33.31 0D7NAuHmo 84/620

ほむら「は、はい」カシン

ガオ……ッ!? キョロ

クルッ  スタッ

マミ「わたしを食べられる?(ジャキッ)さあ、こっちよ!」パウッ

ビィンッ

マミ(弾かれる……!)

まどか「マミさん!」

マミ「鹿目さん、暁美さん! その男の子を連れて結界の外へ出なさい!

   二人とも、もう十分戦ったわ。後はわたしに任せて!」ジャキキッ

ほむら「どうして、いきなり……(ハッ)」

まどか「いつの間にソウルジェムがこんなに……」

87 : 以下、名... - 2015/10/27 16:50:57.61 0D7NAuHmo 85/620

マミ「急いで! 自分の身も守れなくなるまえに撤退しなさい!

   さっきみたいに使い魔が押し寄せても掩護できないわよ!」パウッパウッパウッ

シュルシュルシュル… ギュウッ…

まどか「嫌だよそんなの!」

ほむら「そいつ、今までの魔女とはワケが違います! 先輩一人では危ないです!」

マミ「言ってくれるわね……、

   どうしてわたしの後輩は聞き分けのない子ばかりなのかしら!」ジャコンッ

ヌルッ

マミ(リボンをすり抜けた!? ……確かに最悪の相性ね)

恭介「巴さん! 僕なら大丈夫です。なんか分からないけど戦えます!」

88 : 以下、名... - 2015/10/27 16:56:14.39 0D7NAuHmo 86/620

マミ「……! あなたもしかして……」

ほむら「そうだ! わたしたちもさっきのグリーフシードで回復すれば」カチャッ ゴソ

ガオッ

マミ「くっ!」バッ

恭介「くそっ」ダッ

まどか「か、上条くん!」

ほむら「(ハッ)何を……!」

89 : 以下、名... - 2015/10/27 17:05:19.83 0D7NAuHmo 87/620

恭介「おーい、こっちだ!早く来いよ!」ブンブン

マミ「なっ……!」

ガオオッ

恭介「うおおおおっ」ダダダ

パシンッ

ボヨヨーン!

まどか「魔女がでっかくなっちゃった!」

恭介「うわあああああああああああああ」

ザキン

スタッ  チン

恭介「さやか……?」

90 : 以下、名... - 2015/10/27 17:09:24.03 0D7NAuHmo 88/620

~~病院裏、駐輪場~~


ギュオオオッ  カツン

マミ(両断した……?)

まどか「さやかちゃあん!」タタッ

ほむら「美樹さんっ」タタ…

さやか「?」

ガバッ ウェヒヒ…!

まどか「まさかさやかちゃんが来てくれるなんて思わなかったよ!」

さやか「ムム…、水臭いことを申すな。嫁が危機だって聞いて助けに来ないわけないじゃん」

まどか「よ、嫁って…」

ほむら「誰のことですか?」キラン

91 : 以下、名... - 2015/10/27 17:14:02.94 0D7NAuHmo 89/620

さやか「んっひひ…。こやつのことじゃ、のう、まどか?」

ほむら「そーやってあなたは鹿目さんを困らせるんですねそれならわたしにも考えが」

さやか「あんたもあたしの嫁になる?」

ほむら「な、何をふざけた…、(コホンッ)……美樹さんも、魔法少女になったんですね」

さやか「ああ、うん…」

ソッ スタスタ…

マミ「美樹さん、ありがとう。さっきは危ないところだったの」

さやか「あ、いや…、マミさんたちが無事でよかったなって…」カキカキ

マミ「魔女を倒したらこれを忘れないで取っておいて。仕留めた美樹さんのものだから」スッ

さやか「何、これ」クリクリ

92 : 以下、名... - 2015/10/27 17:23:10.52 0D7NAuHmo 90/620

マミ「グリーフシード。ソウルジェムに近づければ、

   魔力を消費することでソウルジェムに溜まる穢れを取り去ってくれるわ。

   それで消耗した魔力も元通りになるから」

さやか「…。えっと、あの、あたし、マミさんの仲間に入れてもらえないかな?」

マミ「…え?」

さやか「あたし新米でこんな基本的なことも分からないし…」

QB「戦いに必要な知識ならその都度、僕が教えてあげられるよ」

さやか「それだけじゃなくてもっと色々……、

    教えてもらうってだけじゃなくて、マミさんの仲間になりたいんだ、

    その…、まどかとほむらもいるし」

93 : 以下、名... - 2015/10/27 17:27:23.83 0D7NAuHmo 91/620

マミ「ふふ、最後の一言が本音かしら?」

さやか「キツいなあ、ハハ…」

ギュッ…

さやか「……!」

マミ「こちらこそ歓迎するわ。……ありがとう」

さやか「どもー」ハハ…

ユル…

まどか「――さやかちゃん、よろしくね」

ほむら「よろしくお願いします」

さやか「…(ニコッ)。じゃ、じゃあさ、これマミさんお願い」

94 : 以下、名... - 2015/10/27 17:32:51.57 0D7NAuHmo 92/620

マミ「お願いって……グリーフシードの管理も魔法少女として大事なことよ」

さやか「だからこそベテランのマミさんにお任せすれば万全!ってことで」

マミ「もう……ではお任せされたので言います。

   鹿目さん、暁美さん、美樹さんも。みんなソウルジェムを出して」

まどほむさや「はい」スッ

マミ「じゃあ美樹さん、順番を決めてソウルジェムを浄化してあげて」

さやか「えー、それじゃ結局マミさんがやって――」

マミ「いいから。あと、一つのグリーフシードでは4人分のソウルジェムは浄化しきれないわ。

   今回は美樹さんの功績が一番大きいから、

   誰のソウルジェムの穢れを多く取るか、つまり優先順の決定権はあなたにある。

   でも、ここに立っている子は誰であれ、危険を冒して魔女の結界に侵入し、

   戦いの場において何らかの貢献をしている点を考慮して――」

まどか「~~マ、マミさん、いつもそんな難しいことを考えてたんですか?」アセッ

95 : 以下、名... - 2015/10/27 17:36:57.50 0D7NAuHmo 93/620

マミ「(クル)」コク

さやか「(クル)……あんたたち、いつもはこれどうやってんの?」

まどか「てへへ、さやかちゃんみたいに大体いつもマミさんにお任せなの。

    それでわたしやほむらちゃんがやるときでも、なんとなく見よう見まねで、

    ソウルジェムがたくさん濁ってる子から先に回復させてるよね」チラ

ほむら「(コク)ええ。功績が、と言われてみれば確かにそうなんですけど今まであんまり……」

さやか「じゃそれでいいんじゃない。

    ……ええと、ほむら、まどか、マミさん、あたし、と……」

カチ カチ カチ カチ フゥゥ…

さやか「こんな感じ…」

マミ「あら、このグリーフシード一つで皆のソウルジェムの穢れを全て取り切れたのね……。

   浄化が終わったらキュゥべえにそのグリーフシードを渡して」

96 : 以下、名... - 2015/10/27 17:41:08.08 0D7NAuHmo 94/620

さやか「キュゥべえに? ほい」ツ

QB「(コローン)……きゅっぷぃ」

さやか「おお」

マミ「あの男の子もわたしを助けようとしてくれたみたいだけど、

   グリーフシードは必要ないわよね?」ニコッ

恭介「ごめんなさいもうしません」ペコ

さやか「あれ、あんた病室に戻んなくていいの?」

恭介「まだいたの的な顔で言うなよ。君は魔法少女にならなかったんじゃないのか?」

さやか「ぁあ!?」ギロッ

ツカツカツカ グイッ

さやか「あんたのせいでマミさん達が危ない、って言うから飛んできたんじゃない!」

恭介「…そうか。悪かった。…ありがとう、君が来なきゃ死んでた」

97 : 以下、名... - 2015/10/27 18:28:11.20 0D7NAuHmo 95/620

さやか「……」

マミ「お二人さん。……上条くん、ね?

   それ、キズは浅いけど血が出てるわ。手当てしましょう」

恭介「あ、これくらいなら…」

QB(マミ、彼の左手を治癒すると半径100kmにまで――)

マミ(治すのは左手じゃないわ)

QB(しかし万が一……)

マミ(意識不明の重体を治そうとするなら左手を含む全身に魔法をかけざるを得ないかもね。

   でもこの場合、魔法は右手という局所にかけるだけで済むわ。

   回復魔術――もし魔術なら魔力を降臨させるための最低限のスペースが要るだろうし、

   必然的に彼の全身もそのスペース内に収まるから、

   結果としてあなたが危惧する状況が発生することになるでしょうね。

   でも魔法は理を超えて直接結果を出すわ。

   右手のキズだけを治す。それなら問題ないでしょう。それにむしろ……)

QB(わかったよ、マミ)

98 : 以下、名... - 2015/10/27 18:32:13.95 0D7NAuHmo 96/620

マミ「ここは行きがかりよ。それに看護師さんが驚いちゃうでしょう?」

恭介「‥お願いします。あの、巴マミさんですよね」

マミ「ええ。自己紹介の必要はなさそうね」

恭介「さやかから聞いてます。巴さん、それから鹿目さんと暁美さんも、

   昨日と今日、さやかと僕を助けてくれてありがとう」

まどか「てひっ」

ほむら(ニコ…)

マミ(ニコッ)

ポウ…

マミ「ところで美樹さん、わたし達が危ない、って誰が知らせてくれたの?」

QB「僕だよ。正確には僕の仲間かな」

さやか「え、あんたさっき話してたキュゥべえ……と違うの?」

99 : 以下、名... - 2015/10/27 18:37:03.48 0D7NAuHmo 97/620

QB「魔法少女は世界中で必要とされているし、

   彼女たちと契約するのに僕一人では手が回らないからね。

   僕らはお互い意識を共有することができるんだ」

さやほむまど「へぇ……」

マミ「わたしも初耳だわ。……これでよし。他にケガはない?」

恭介「あ、大丈夫です。ありがとう」

QB(彼の左手は治癒していない。それに周辺の多数の人間にも影響は出ていないと見えるね。

   マミが前に言ったように君にはそもそも治せないケガなのか、

   君が注意を払ってくれたからか、そのどちらとものおかげか分からないけどよかったよ)

100 : 以下、名... - 2015/10/27 18:41:29.39 0D7NAuHmo 98/620

マミ「……」

恭介「何すか?」

マミ「あ、ううん。魔女に襲われても動じないところとか、

   あなた達って似たもの夫婦だな、って思ってたの」

恭介「夫婦じゃないですけど、小さい頃からの付き合いですからね」チラ

さやか「‥フン」

マミ「ふふ……」

ほむら「巴先輩、あの……」

マミ「どうしたの? 暁美さん」

ほむら「その上条くんのことでさっき不思議なことがあったんです。

    これ、見て下さい」カチャッ

カッコロカッコロコロコロ… ピタピタピタピタ

マミ「グリーフシードがこんなに!?」

101 : 以下、名... - 2015/10/27 18:45:32.72 0D7NAuHmo 99/620

恭介「いつの間にか消えてると思ったら、

   君もしかしてあれ一つ一つ時間を停めて拾ってたの!?」

ほむら「貴重品ですから(キラン)。つまずいたりしても危ないですし」

マミ「……30個以上あるわ。

   どれもだいぶ穢れが溜まっている状態ではあるけど、それにしてもこの数は……」

ほむら「上条くんが使い魔を変化させて得られたものです。一体どうやったんですか?」

恭介「いや、(ヒョイ)こういう風に、(ポテッ)左手に当てただけで…」

QB「あっ! ダメだ!」

恭介「え?」

ギュゴゴゴ…!

まどか「魔女が出たーーっ!!」

102 : 以下、名... - 2015/10/27 18:50:41.80 0D7NAuHmo 100/620

―――
――


マミ「(ハァッハァッ…)……上条くん、

   とりあえず魔女やグリーフシードには触らないでくれるかしら」

恭介「すみませんすみません」

QB「いや、マミ。今倒した魔女のグリーフシードを彼の左手に載せてみてくれないか」

さやか「ちょっ、キュゥべえ! 正気なの?」

QB「確かめたいことがある」

マミ「…分かったわ。でもその前にこのグリーフシードでみんな魔力を回復してから……」

QB「悪いが、一度でも使ってしまってからでは確かめられないことなんだ」

103 : 以下、名... - 2015/10/27 18:54:45.35 0D7NAuHmo 101/620

マミ「そう……じゃ暁美さんが拾ってくれていたグリーフシードから使いましょう。

   上条くん、いいかしら?」

恭介「どうぞ。皆さんで勝手にご自由に使ってください」

マミ「ありがとう。どれもほとんど黒色に染まっているから、

   せいぜい一人のソウルジェムを少し浄化する程度にしか使えなさそうね。

   美樹さん、気をつけて。

   限度を超えて穢れを吸わせすぎると今みたいに魔女がかえってしまうから」

さやか「怖っ。あ、でも今の戦いあたし戦力になれてなくて、

    ほとんど魔力使ってないから……」

マミ「少しでも魔力を消費したなら、回復できる時に回復しておいたほうがいい。

   魔女との戦いの最中に回復する暇があればいいけど、なかなかね……」

さやか「そりゃ命取りだわ。やっぱ使う」カチ スゥゥ…

104 : 以下、名... - 2015/10/27 18:58:48.04 0D7NAuHmo 102/620

・・・

QB「真っ黒になったグリーフシードは僕が回収するよー」

ポン ポン ポン ポン ポン ポン ポン…

QB「‥きゅっぷぃ」

ほむら「皆が全快するのに三分の一くらいを使ってしまいましたね」

まどか「キュゥべえ、お腹大丈夫?」

QB「大丈夫だよ。僕にとっても思わぬ収穫だ」

マミ「本当は場所を変えたいところだけど、あなたはここの患者だものね。

   ……じゃあ、さっきの魔女のグリーフシード、上条くんの手に載せるわよ。

   みんな、一応戦う準備はしておいて」

恭介「(ゴクッ…)」

トン

105 : 以下、名... - 2015/10/27 19:02:50.55 0D7NAuHmo 103/620

コォオオ…

マミ「これは……グリーフシードに何が起こっているの?

   さっきと違って魔女が孵化する様子はないわね」

QB「やっぱり……。もういいだろう。マミ、グリーフシードを拾って」

スッ

マミ「(ジッ)……上条くんに触れる前より、たくさんの量の穢れを、

   ソウルジェムから吸い取ってくれるのかしら?

   何となく、見た目はそのままなのに、さっきとは圧倒的に違うようだわ。

   はっきりとは感じ取れないけど、魔力の気配が大きくなったような……」

QB「恐らくそうだろう。これで恭介の左手の秘密が分かったよ」

マミ「そう…」

さやか「何……何なのさ、恭介の左手の秘密って!」

マミ「待って、美樹さん。冷えてきたわ。上条くん、病室にお邪魔してもいいかしら」

恭介「あ、はい、どうぞ…」

107 : 以下、名... - 2015/10/27 19:07:07.03 0D7NAuHmo 104/620

~~病院のロビー~~


マミ「あそこの自販機で温かい飲み物でも買っていきましょうか。みんな何がいい?」

さやか「ブラックで」キリッ

まどほむ「(キョロ)あ、自分で……」

マミ「今日はおごらせてね。みんな本当によく戦ってくれたんだから」

ほむら「それじゃ……。わたしも、コーヒーなら何でもいいです」

まどか「えっと、わたしもコーヒーで……、

    あの、コーンポタージュがあったらそっちをお願いします」

マミ「了解。上条くんは?」

恭介「あ、僕はいいです」

マミ「こちらがお邪魔するんだから遠慮しないで」

恭介「はぁ、じゃ、コーヒー、お願いします」ペコ…

108 : 以下、名... - 2015/10/27 19:11:09.78 0D7NAuHmo 105/620

~~病室~~


まどか「あぁ…、缶の底にこんなに残っちゃった……」ジワジワ

ほむら「ちゃんと飲み切るの難しいですよね。最近は飲み口が広くなったり、

    スクリュー式のフタつきのも売ってるみたいですけど……」カチ フゥゥ…

さやか「よく振って、すぐ開けて、一気に飲み干せばいいんじゃない」

ほむら「……美樹さんって、身じろぎもできないくらい熱い湯船に浸かってそうですね」ソッ

さやか「どういう意味でい。あ、ほら、キュゥべえ。

    さっきの恭介の左手がどうとか、早く説明してよ」

QB「……きゅっぷぃ。

   その左手には魔力、あるいはそれに類する力を増幅する作用があるらしい」

109 : 以下、名... - 2015/10/27 19:15:16.41 0D7NAuHmo 106/620

マミさやほむまど「……!」

さやか「どうしてそんな妙な…」

QB「君、最近、何かその力が宿るきっかけになるような変わったことはなかったかい?」

恭介「ありすぎて見当がつかないな(フーッ、フーッ)」ズズ…

さやか「……きっとあたしが昨日願い事をしたせいだよ」

QB「いや、恐らくそれ以前だね。

   その契約の成立直前に僕が探りを入れた時点で、

   すでに恭介の左手にはその力があったから」

恭介「それじゃ分からないな。

   不思議体験に縁のある人間ではなかったし、事故に遭う人だってたくさんいるだろうし。

   強いて言うなら周りにいてくれる人の有難さを痛感したくらいか」

110 : 以下、名... - 2015/10/27 19:19:21.12 0D7NAuHmo 107/620

QB「それも取り立てて言えることでもないね。まあ、謎ならそのままでもいいよ」

恭介「にしても拳さえ握れない左手が何かの役に立つとはね…」

QB「役に立つどころか、君の左手は魔法少女と魔女の戦いに革命をもたらすことだろう」

ほむら「それって、グリーフシードに関わることで……」

QB「その通りだよ、ほむら。

   使い魔に対しては触れただけでグリーフシードに変える力であり、

   魔女を倒した時に入手できるグリーフシードに対してはこれを強化する力と言える」

まどか「魔力を増幅する力で、何でそんなことができちゃうの?」

QB「まどか、さっき壁に突き刺さっていたグリーフシードを思い出してごらん。

   あれは元々魔女から分裂した使い魔が、

   この世の穢れを巻き込み人の生命力を奪い取って成長した後の姿だ。

   穢れや人の生命エネルギーを養分にしてある程度成長すると、グリーフシードに変化し、

   まるで蛹のように殻を割る時を待つんだよ」

111 : 以下、名... - 2015/10/27 19:23:23.19 0D7NAuHmo 108/620

まどか「じゃあ上条くんがそれを早回しにしちゃうのか」

QB「そうイメージしたほうが分かりやすいかもしれないね。

   魔女から生まれたての使い魔ならともかく、

   たいていの使い魔はすでに大小の差はあれ世の穢れをまとっているから」

ほむら「でもそれだと孵化、というより羽化ですね」

QB「確かに君の言う通りだね。慣習的に孵化という言葉を用いても構わないかい?」

ほむら「ええ。時間が経てば自然とさっきみたいに魔女が孵化するの?」

QB「その点は昆虫の変態とは異なるね。

   時間はあくまでグリーフシードに穢れが満ちて孵化するのに必要な因子に過ぎない」

ほむら「グリーフシードに穢れが満ちる……(ハッ)」

112 : 以下、名... - 2015/10/27 19:46:18.94 0D7NAuHmo 109/620

まどか「え? ほむらちゃん、何か分かったの? なんか分からなくなってきた」

QB「ほむら、君から説明してあげてくれないか。僕の話はよく、分からないと言われるんだ」

ほむら「じゃ、キュゥべえ、間違ってたら訂正して。

    使い魔は成長するとさっきみたいに目立たない場所でグリーフシードになる」

まどか「わたし達に見つからないためだね」

マミ(……上条くん)

ほむら「うん。さっきみたいに孵化が近くなるまでソウルジェムも反応しない代わりに、

    きっと一番無防備な状態なのよ。グリーフシードになると身動きが取れなくなるから」

恭介(え!? 巴さんですか?)

113 : 以下、名... - 2015/10/27 20:06:02.51 0D7NAuHmo 110/620

まどか「うん」

マミ(美樹さんにその肌がけ掛けてあげて)

ほむら「それから、その場所に留まって世の中の穢れを吸収していくんだわ。

    わたし達のソウルジェムから穢れを吸い取るように」

恭介(あ、はい…)ソッ…

まどか「そうか! それで真っ黒になって…」

さやか「うー? むにゃ…」ゴソ

まどか「さ、さやかちゃん、寝てたの?」

ほむら「そういえば、昨日今日急なことばかりですもんね…」

恭介「ベッド使う?」

さやか「いや、横になったら本格的に寝れそうだわ。これ飲んだら大丈夫だから続けて」ズズ…

114 : 以下、名... - 2015/10/27 20:10:23.02 0D7NAuHmo 111/620

QB「今のほむらの説明で合ってるよ。

   付け加えるなら、グリーフシードの状態では人の生命エネルギーを奪わない。

   だからマミは見逃してるんだ」

まどか「そうだったんだ……!」

ほむら「使い魔や魔女から人々を守ることに優先順位を置いて……やっぱり巴先輩ですね」

マミ「グリーフシードは孵化直前になるまでソウルジェムで探知できない以上、

   通りがかりで、しかも早期発見でしか芽を摘むチャンスがないわ。

   魔法少女と同じように魔女のあいだにも縄張り争いがあるのか、

   この場の穢れを盗るなと言わんばかりに、

   魔女が通りがかりでグリーフシードを結界内に取りこんでくれることもある。

   魔女は巻き込んだ穢れを自身の魔力に変換するから結界内は意外に穢れがないの。

   その目もかいくぐられた場合……。

   けれど、見つける目が多くなれば芽を摘む機会も増えると思う。暁美さん、続けて」

115 : 以下、名... - 2015/10/27 20:15:17.10 0D7NAuHmo 112/620

ほむら「……上条くんの左手はグリーフシードの魔力だけでなく、

    そこに溜め込んだ穢れまで増幅してしまうのね。

    だから使い魔を変化させて得られたグリーフシードに左手が触れると、

    さっきみたいに魔女がかえってしまった……」

QB「そういうことだ」

まどか「でもさっき魔女が落としたグリーフシードは上条くんが触っても大丈夫だったよね」

ほむら「ええ。

    左手が触れても魔女が孵化しないということは、それには穢れが無い、ってこと?」

116 : 以下、名... - 2015/10/27 20:19:19.53 0D7NAuHmo 113/620

QB「そうだよ」

ほむら「意外ね……。確かキュゥべえは、

    上条くんの左手は、魔女が倒された時に落とすグリーフシードを強化する、

    って言ったよね。

    『強化する』って、巴先輩が言ったように、

    より多くの穢れをソウルジェムから取り去ってくれるようになる、

    って意味なんだろうけど……、

    そもそもグリーフシードっていったい…」

QB「そこまで知ろうとする子は、最近ではマミくらいだね」

ほむら「巴先輩、教えて下さい。グリーフシードって何なんですか」

マミ「わたしがキュゥべえから聞かされたのは、呪いという魔力の結晶体だということ」

117 : 以下、名... - 2015/10/27 20:23:39.86 0D7NAuHmo 114/620

ほむら「呪い……」

まどか「街の人達の心に絶望を撒き散らすんだよね」

マミ「ええ。呪いによって集めた穢れを、魔女の口づけによって人々に植え付けていく。

   かわりにその犠牲者から、生きようとする前向きな意志、生命力を奪いさる。

   そういう意味じゃ、穢れは、人間の負の心……絶望と言い換えてもいいかもしれないわ」

ほむら「呪いが穢れを集める?」

マミ「魔女や使い魔の持つこの魔力にはこの世の穢れを引き寄せる性質がある。

   グリーフシードによるソウルジェムの浄化はこの働きを利用したものよ。

   魔女や使い魔は穢れや人の生命力を養分にしているけど、

   グリーフシードの本質は純粋な魔力の結晶なの」

118 : 以下、名... - 2015/10/27 20:27:43.08 0D7NAuHmo 115/620

ほむら「魔女が落としたグリーフシードは呪いだけで構成された結晶だと……」

マミ「わたし達のソウルジェムが魔力を使うほど穢れを溜め込んでしまうのと逆に、

   魔女のグリーフシードはわたし達との戦闘で魔力を使うほどに、

   その源の一つである穢れを消費していく。

   わたし達に倒されるときには、純粋な呪いの結晶になっているらしいわ」

ほむら「たいていの魔女を倒したときに落とすグリーフシードは、

    ソウルジェムの浄化には1、2回程度しか使えませんよね。

    でも中にはとても強い魔女もいて、彼女達が持っているグリーフシードは、

    ソウルジェムの濁り具合にもよるけど、多くの回数まで浄化に用いることができる。

    それはやっぱり……」

119 : 以下、名... - 2015/10/27 20:31:46.69 0D7NAuHmo 116/620

マミ「魔力のエネルギー源である、人から奪った生命力や世の中から集めた穢れを使い果たし、

   グリーフシードには僅かに残った呪いだけが閉じ込められてる状態だとも言えるわね。

   魔女がその霊体を維持できる最低限の魔力の比率は共通なのだと仮定したら、

   強い魔女ほど、グリーフシードに残される呪いもその量が多くなると考えられる」

ほむら「それにしても呪いが、純粋と言うのはちょっと違和感が……」

QB「純白の白も純粋だと言えるけど、漆黒の闇の黒も純粋だと言えるだろう」

マミ「魔法少女のソウルジェムが祈りという魔力で満たされているのと比べると、

   やはり魔女達とわたし達は対になっている存在なのね」

ほむら「対……それはおかしいですね。わたし達は皆ソウルジェムを持ち歩いているけど、

    全ての魔女がグリーフシードを持っているわけではないんでしょう」

さやか「難易度高いなあ、それ」

120 : 以下、名... - 2015/10/27 20:35:47.91 0D7NAuHmo 117/620

マミ「確かに時々しか落とさないのよ。言われてみれば変ね……。どうしてかしら」

さやか「みんな持ってるけど、マミさんが鉄砲の弾で壊してなくなっちゃったとか」

まどか「さやかちゃん……」

QB「その通りだよ」

マミさやほむまど「え!?」

QB「魔女を産みだした後、殻だけになったグリーフシードは消滅する。

   生まれて日が浅い魔女は、まだ魔力の中枢となるグリーフシードを造り出すほど、

   霊体として成熟していないことが多い。

   だからその意味では全ての魔女が持ち歩いてるとは言えないけど……」

マミ「穢れや人の生命力を集め強力になった魔女ならどうなの?」

121 : 以下、名... - 2015/10/27 20:39:59.56 0D7NAuHmo 118/620

QB「必ずグリーフシードを宿していると言っていい。

   魔力を効率よく運用できる核となるし、

   それに君たちに倒されても、遺したグリーフシードに穢れさえ満ちれば、

   彼女たちは復活できるという保険になるからね」

マミ「え……じゃ……?」オロ

QB「その反応からすると、

   マミ、君はまさか無意識にグリーフシードを撃ち抜いていたのかい?」

マミ「そんなの分からないわ。

   ただ、その魔女ごとに急所らしいと見当をつけたところを狙っているだけよ」

QB「どうりでね。戦闘時において研ぎ澄まされた君の射手としての目が仇になったわけだ。

   魔女を陥落寸前まで追い込んでおきながら、

   どうしてそこでグリーフシードを破壊するのか訳が分からなかったんだよ」

122 : 以下、名... - 2015/10/27 20:44:01.55 0D7NAuHmo 119/620

マミ「やだ…何てことを」

QB「普通の子は狙ってもできないどころか、

   そもそもグリーフシードに狙いをつけることが出来ないんだ。

   あれはまず爆弾が炸裂しても壊せないほど頑丈だし、

   壊されれば魔女は終わりだからその身のどこかに隠しているんだよ。

   まあ、たまたま必殺の一撃が命中して、ということはあるけど、

   君みたいにしばしば一発必中を達成することは……」

まどか「もうやめて……。キュゥべえ、褒めてるのかけなしてるのか分からないよ」

QB「いや、マミは大したものだよ。大技のティロ・フィナーレといい、あの技も……」

123 : 以下、名... - 2015/10/27 20:48:02.90 0D7NAuHmo 120/620

マミ「だ、駄目よ!」ワタワタ

ほむら「先輩……?」

マミ「あ、あははは、後輩の前で無知をさらすとはとんだ失態だわ」

さやか「でもあたし、マミさんでもそういうことあるんだ、って安心したかも」

マミ「美樹さん、駄目なところを見習ってもらっては困ります」

さやか「んふふ…」ニッ

マミ「もう…」クスクス

まどほむ「ふふ…」

124 : 以下、名... - 2015/10/27 20:52:04.36 0D7NAuHmo 121/620

恭介「あの、せこい質問なんだけどさ……」

QB「何だい、恭介」

恭介「その魔女が落としたグリーフシードをさ、

   ずっと左手に載せていればそれだけ魔力を増幅できるわけで……」

QB「載せる時間は数秒が無難だろうね。

   個々のグリーフシードによって収められる量の差はあるけど、

   限界を超えると大爆発を起こすだろうから」

恭介「分かった。2、3秒にしとくわ」

さやか「もうちょっと頑張れよ」

125 : 以下、名... - 2015/10/27 20:56:05.95 0D7NAuHmo 122/620

まどか「ねえ、キュゥべえ。魔女ってどうして生まれるのかな」

QB「魔女は魔法少女と違って、動かすべき肉体を持たない、霊体だけの存在だ。

   彼女たちもまた絶望に端を発し、呪いとして発現した。

   そしてこの世に絶望を撒き散らしながらさまよい続けているんだよ」

まどか「…それって、魔女もかわいそうだよ……」

QB「だからって放っておけば、人々が犠牲になるんだよ。それに、戦いに迷いは禁物だ」

まどか「……うん、分かってる。町の平和を守らなきゃ」

恭介「この左手があれば、僕も君たちの役に立てるんだよな」

QB「そうだとも。グリーフシードを巡っての魔法少女同士の衝突も緩和できるだろう」

マミ「……わたしはむしろ逆だと思うわ」

126 : 以下、名... - 2015/10/27 21:01:08.58 0D7NAuHmo 123/620

まどか「え……?」

マミ「キュゥべえ、上条くんのような力を持った人は他にいるの?」

QB「いや、今まで彼のような者はいなかったし、現在も恭介ただ一人しかいないね」

マミ「だとしたら、仮に上条くんが加わるとすると、

   見滝原は条件の公平性を欠くと他の街の魔法少女から思われるようになるわ。

   彼一人の行動範囲は限られるもの。

   上条くんの左手を巡って、見滝原が魔法少女同士の戦場になってしまうことは避けたい」

ほむら「……確かにその恐れはありますね」

マミ「それだけじゃなくて、なぜその左手に力が宿ったのか、いつまでその力があるのか、

   何も分からないでしょう。

   仮に一時的なものだったとしても、一度立った噂は面倒なものよ。

   だったら初めから彼は関わるべきじゃない」

127 : 以下、名... - 2015/10/27 21:05:28.30 0D7NAuHmo 124/620

QB「君の言うことは正しいけど、もったいない話だなあ。

   せっかく十分な数のグリーフシードを手に入れられるというのに」

マミ「仕方ないわ。第一、その左手以外に上条くんには身を守る術がないし、

   魔女相手には却って相手を助長してしまう。

   戦いの場においては魔法少女の足を引っ張ってしまうわ。

   あなたには悪いけど、これはわたし達の戦いなの」

恭介「巴さんの言う通り、あなた方の戦いだ。でも話を聞いた以上、さやかを放っておけない」

マミ「話を理解した上で、見守るっていう考え方はできない?

   祖国に恋人を置いて出征する兵士は現代にもいるでしょう」

128 : 以下、名... - 2015/10/27 21:09:30.14 0D7NAuHmo 125/620

恭介「今聞いた限りの話は理解できていると思います。でも、それを受け入れられるかは別だ。

   公の制度として認知されているものじゃない以上、

   あなた方こそ何の保証もない身分でしょう。

   いえ、それは僕が口を出していいことじゃない。

   でも、この左手の力がもし一生続くものだったら?

   自分が代わりのいないたった一人の衛生兵だと分かっていて、

   一生それに目を背けて生きていろと? そんなのはご免だ」

マミ「……」

恭介「……」

さやか「わかった、わかった!

    マミさん、あたしが恭介を守るよ。あたしが巻き込んだようなもんだし。

    恭介がいるときには責任もって、他の子に迷惑かからないようにするからさ。

    お願いします」

129 : 以下、名... - 2015/10/27 21:22:46.46 0D7NAuHmo 126/620

マミ「(フゥ…)こんなことになるんじゃないかと思ったわ。

   あなた達って本当に同じなのね……」

まどか「マミさん、いいの?」

マミ「わたしが止めたって、その様子じゃどうせ来るでしょう。

   彼のおかげで助かることは確かに多いでしょうし。

  (上条くん、一度しか言わないから聞いて。自分の人生を大事にしなさい。

   あなたにしか出来ないことは他にあるはずよ。

   一度、要員として加われば、きっと戦況があなたを振り回す。

   だけど美樹さんのためにも、自分を見失わないでほしい)」

まどか「やったあ!」

130 : 以下、名... - 2015/10/27 21:28:03.38 0D7NAuHmo 127/620

マミ「これからお願いすることもたくさんあるだろうけど、よろしくね。

  (肩ひじ張らずに考えて。あなたはあなた。魔法少女のように自ら縛られることはない)」

恭介「こちらこそ、迷惑かけると思いますが、頑張るのでよろしくお願いします。(……)」

ほむら「賑やかになってきましたね」

マミ「まあでも、入院患者に手伝ってもらうわけにはいかないわね。

   その病院服でなくなってからでないと。あと、それから……、

   そうそう、忘れるところだった。上条くんの左手の力に名前をつけたらと思うんだけど」

さやか「マミさんの必殺技みたいな?」

マミ「ええ。ラ・マーノ・ファントマーティカでどうかしら。幻想の手、という意味なの」

131 : 以下、名... - 2015/10/27 21:32:11.21 0D7NAuHmo 128/620

恭介「はあ……、具体的な性質を表すほうが通じやすくなるんじゃないでしょうか…。

   あと英語の方が分かりやすいかと」

マミ「そう? それならね……“幻想御手”(レベルアッパー)はどう?」

恭介「あ、それなら覚えやすくていいと思います」

マミ「じゃあ決まりね。あら、随分長い時間お邪魔したわ。美樹さん、これから家に来ない?

   ささやかだけど、あなたが仲間に加わってくれた記念のお祝いをしたいの」

まどか「わたしも! 途中でお、おこづかい出して何か…」

さやか「まどかー、無理しなくていいんだぞ」

132 : 以下、名... - 2015/10/27 21:36:15.33 0D7NAuHmo 129/620

まどか「む、無理なんかしてないよ」

ほむら「わたしもご一緒させてください」

さやか「当たり前じゃん! パーッとやろ!」

まどか「だからマミさんの家なんだって……」

マミ「美樹さんの言うとおりよ。今日くらいは楽しくやりましょう!

   それじゃ、上条くん、失礼します」

まどか「じゃあね、また今度ね」

ほむら「退院までお大事になさってください」

恭介「ありがとう。これからよろしく」

さやか「勉強さぼんなよ。さ、行こ行こ」

ガラガラ…


恭介「‥すっかり暗くなったな。もうこんな時間か…」

スタスタ

恭介「……えらいことになったな」


133 : 以下、名... - 2015/10/27 21:40:35.49 0D7NAuHmo 130/620

~~数日後、夕方 さやかの家のアパートの前~~

スーッ

さやか「フゥーッ」シャキッ

まどか「さやかちゃん」

さやか「おう、お待たせ」

ほむら「いざ初陣ですね……。あれ、その包みは…」

さやか「ああ、これ? 歩きながら話すわ。さあ、出発!」

134 : 以下、名... - 2015/10/27 21:44:41.54 0D7NAuHmo 131/620

スタスタ…

ほむら「鞘から剣が抜けない!?」

さやか「うん。なんか瞬間接着剤で固めてんじゃないかと思うくらい動かないんだわ」

まどか「でも上条くんが襲われていたとき、剣で魔女を斬ったよね」

さやか「不思議だよねー。あの時以来全然だめ」

ほむら「そ、そう言えばあの後同じ魔女が飛び出したとき、

    美樹さん剣を使ってませんでしたね……」

さやか「うーん、どうしたものか」

ほむら「…本当に抜けないんですか?下手な洒落のつもりじゃないでしょうね」

さやか「芸人さんみたいに体張ってギャグやるわけないじゃん!」

まどか「何で抜けないんだろうね……」

さやか「うん。キュゥべえが言うにはさ……」

135 : 以下、名... - 2015/10/27 21:49:32.92 0D7NAuHmo 132/620

~~~

QB「そりゃそうだろう。さやかの物じゃないもの」

さやか「えっ? どういうことよそれ!」

QB「その剣はね、かつてある国の王が、国を平定するため、

   国民の運命を背負って大地を駆けていたときにその身に帯びていたものだ。

   現代の一般市民である君に抜けるはずがない」

さやか「ちょっと待て! だったら何であたしが今持ってんのよ!」

QB「おおかた、君が魔法少女になるための祈りに何かしら通じるところがあったんだろうね。

   いわば助太刀のために、一時貸与されたものと見るべきだろう」

136 : 以下、名... - 2015/10/27 21:53:37.74 0D7NAuHmo 133/620

~~~

さやか「……ということらしいんだ」

ほむら「…世界征服でも願ったんですか?」

さやか「どんなキャラ把握してんだよ! くそーっ、使えない武器渡されてもなあ…」

まどか「もしかしてその包みが代わりの武器?」

さやか「ん? ああ、そうだった。じゃーん」シュッ

まどか「‥バット…」

ほむら「まさか人の名前まで使って……!」

さやか「その方向で発想すんのやめ! マミさんの魔法で強化された、特製のバットなんだぞ」

まどか「さ、さやかちゃん、自分の魔法使わなかったの?」

さやか「一応やってみた。でも逆にヒビが入っちゃってさー」

137 : 以下、名... - 2015/10/27 21:57:44.12 0D7NAuHmo 134/620

まどか「……」

さやか「そんな目で見るなー! あたしだって困ってるんだよ」

まどか「でも使えない剣なら、さやかちゃんのところに来てくれるはずないよ。

    きっと抜けるようになるよ」

ほむら「……まあ、確かに武器として使うなら似た形のものの方が、

    剣が抜けたときのために慣れておけますよね」

さやか「うん。いつ抜けるようになるかなあ……」

ほむら「…あ」

さやか「何?」

ほむら「……いえ、口にしてしまうと本当になりそうで」

138 : 以下、名... - 2015/10/27 22:01:47.59 0D7NAuHmo 135/620

さやか「気になるじゃん、言ってよ」

ほむら「……もしかして、対ラスボス専用兵器かと」

さやか「…それまであたし、バットで戦わなきゃいけないってこと!?」

まどか「だ、大丈夫だよ。バット一本で地球を危機から救う主人公だっているんだよ?」

さやか「むしろバットが全面的に肯定されてるよ!」

ほむら「それにまあラスボス戦になったからって抜けるとも限りませんし」

さやか「…何てことを言ってくれるんだ、君たちは!?」

ほむら「逆フラグです。逆フラグに賭けたのです」

まどか「そ、そうだよ。逆フラグだって言っちゃえば……あれ?」

さやまどほむ「…………」

まどか「よし! 切り替えていこう!」

さやか「よし!」

ほむら「よし!」

139 : 以下、名... - 2015/10/27 22:05:51.01 0D7NAuHmo 136/620

~~夜の公園~~


さやか「とりゃっ! えいっ!」ドコッ ボコッ

魔女「モガッ モガッ」ジタバタ

さやか「じれったい……。

    ジャングルジムに引っ掛かってる魔女なんて、バット振って叩けないよ!」

まどか「さやかちゃん、気をつけて……」

さやか「このっ(ボコ)。(ハァハァ…)きりがない……。まどか、とどめ刺して!」

まどか「う、うん……」キリキリ…

バシュッ

さやか「(シャッ)うひょっ!」バッ

スタッ

ほむら(鹿目さんが外した……?)

140 : 以下、名... - 2015/10/27 22:09:58.15 0D7NAuHmo 137/620

まどか「さ、さやかちゃん! 大丈夫?」

さやか「ああ……。まどか、頼むよ~」

まどか「ごめんなさい‥」

ほむら「美樹さん、退避を! わたしが行きます」タタ

さやか「任せた!」ダッ

ポーン

ドカーン バラバラ…

ピューッ

さやか「ジャングルジム壊れて魔女が自由になっちゃったよ!」

ほむら「あら、きれい……。星空を飛び回る流れ星なんて」

さやか「みとれてる場合かっ」バッ ヒュオッ

142 : 以下、名... - 2015/10/27 22:14:01.38 0D7NAuHmo 138/620

キュルキュル…ッ

さやか「ええい、ちょこまかと……。うおりゃーー!」

ガンッ フラフラ…

さやか「まどか、そっち行ったぞ! 今だっ」

まどか「うっ……う…」キリ…

ほむら「鹿目さん!」カチャッ パシ

手下「ウワン ウワン…」ババッ

ほむら「くっ!(時間を…)」サッ

――チュンッ

パァンッ キラキラ キラキラ… キラ…

まどか「あ…」

143 : 以下、名... - 2015/10/27 22:18:05.06 0D7NAuHmo 139/620

さやか「(スタッ)よぉし、一丁上がりっ」

ほむら「グリーフシード、落としませんでしたね」スタスタ…

さやか「おお? さてはまどか、やっちゃったのか?」

まどか「ううん。わたしが射る前に魔女は……。さやかちゃんのおかげだよ」

さやか「そう? 拾えなかったのは残念だけど初めてにしちゃ上出来っしょ。

    ハッハッハ……さ、早くマミさんの家に戻ろうっ」スタスタ

まどか「そ、そうだね…」スタ…

ほむら「…さっき、何か聞こえた気が……」

さやか「何してんのほむら、行くぞー」

ほむら「あ、はい」

ほむら「……」

ペコッ タタ…


144 : 以下、名... - 2015/10/27 22:22:11.71 0D7NAuHmo 140/620

~~マミの部屋~~


マミ「気づかれちゃったかしら……」

QB「1.86km。また記録を伸ばしたね、マミ」

マミ「風や重力の影響を受けない弾に記録も何もないでしょう。またグリーフシードに?」

QB「見ての通り命中だ。あらゆる遮蔽物や結界さえも突き破って、

   魔女だけを仕留めるその魔弾……今夜も冴えわたるね」

マミ「(ハァ…)そうほめられたものではないわ。まず格下の相手にしか通用しないし、

   あの弾には着弾までに通過した物体を即座に修復する分まで魔力を込めているから、

   その消費はティロ・フィナーレを上回る。

   それに第一、名前を付けていい技でもないのだし」

145 : 以下、名... - 2015/10/27 22:26:14.70 0D7NAuHmo 141/620

QB「君は自分でその技をずいぶん嫌うね。どうしてだい」

マミ「‥とにかくあの子たちにしゃべっちゃ駄目よ。暁美さんは薄々勘付いてるみたいだけど」

QB「僕に口止めする訳なら理解できるね。彼女たちの成長を願ってるんだろう」

マミ「ええ。鹿目さん、昨日の病院での話を聞いてから気落ちした様子だったけど、

   その影響が出たのね……」

QB「魔女を狩ることに疑問を持ち始めたんだね。時々そういう子はいる」

マミ「考えてみれば当然のことなのよ。

   それまで普通に暮らしていた子がある日を境に魔女と戦う使命を課されるんだから。

   自分が食べるために、生きるために生き物を殺す人間の本質と、

   魔女を倒しグリーフシードを得て、魔力を回復している魔法少女の営みは酷似している。

   ただ日常の生活を送っているだけでも少しずつ魔力は消耗しているから、

   ジリ貧で魔女に殺されないためにも、魔女を倒しグリーフシードを手に入れるしかない」

146 : 以下、名... - 2015/10/27 22:30:16.62 0D7NAuHmo 142/620

QB「ずいぶん消極的な考えだがそうとも言えるね」

マミ「自分の身の安全の問題だけなら、病院裏にあったようなグリーフシードを探して拾えば、

   魔女との戦いは最低限で済ませることができる、そんな道もあると思う。

   でももし魔法少女としての使命を考えるなら。

   誰かを守るために魔女を倒すということは、

   自分の裁量で生かす命と殺す命を選ぶことに他ならない。

   いいえ、そのことにすらあの子は今まで気がつかなかった。

   わたしは気づいても向き合おうとしなかった事実にね。

   そのことは成長、というより余裕かもしれないわ。

   今までは自分が戦いの中で死なないようにするのに必死だったから。

   でも、魔女は命ある存在とは言えないとか、人の世に災いをもたらすからとか、

   どんなに正当性を主張しても、自分の都合で、

   ある存在の、この世に存在する権利を奪っている事実を否定することはできない」

QB「そういう運命を、願いを叶えることと引き換えに君たちは受け入れたんだろう」

147 : 以下、名... - 2015/10/27 22:34:20.90 0D7NAuHmo 143/620

マミ「ええ。それが義務であることは救いと言えるかもしれない。わたしにとってはね。

   でも鹿目さん…、あの子が何を願って魔法少女になったのか、

   彼女から聞いたことはないけど、どういう願いかは想像できるわ。

   あの子は、打ち捨てられた誰からも顧みられない存在に、

   何も考えず寄り添ってしまう子だから。

   幼子のように、淋しさに震える存在を感じ取って、

   手を差し伸べてしまう心の持ち主だから。

   自分がすくいとれる力量もわきまえず、後先考えずそんなことをすれば、

   たちまち自分も引きずりこまれる。

   それを嘲笑う人がいるかもしれない。

   それは尤もよ、手順も考えずにたった一人で救おうなど思い上がったことだもの」

148 : 以下、名... - 2015/10/27 22:38:23.57 0D7NAuHmo 144/620

マミ「でも人は、本当は救ってもらいたいってばかり考えているわけじゃないわ。

   確かに緊急的な救出を必要としている人もいるけど。

   でもだいたいは、誰にも分かってもらえない辛さを打ち明けたとき、

   ただ側に寄り添ってくれる人がいるだけで励まされるものよ。

   そんなの、教えられてできることじゃない。鹿目さんはそんな人なの。

   あの子と出会って、わたしは変わった。

   ただ自分がいつ一人で死ぬかと怯える日々からあの子は解き放ってくれた。

   だってわたしにとって、あの子ほどこの世に大切な存在はないもの。

   あんな心の持ち主がこの世にいてくれる、

   それ以上に価値あるものなんてこの世にはないわ。

   あの子を守るためなら、わたしは手段を選ばない。

   そして、そう思っているのは多分、わたしだけではないはず。

   暁美さんのあの子を守ろうとする目は、まるで何かに駆られるようにさえ感じる。

   きっと彼女も鹿目さんと出会って変わったの。

   美樹さんだって、上条くんと鹿目さんへの照れ隠しにおどけたのだろうけど、

   それでも開口一番鹿目さんのために駆け付けたのだと言ったわ。

   あの子こそがわたし達の中心、あの子はわたしたちにとっての希望なの」

149 : 以下、名... - 2015/10/27 22:42:29.27 0D7NAuHmo 145/620

マミ「そんな稀有な心の持ち主だからこそ難しいのでしょう、気づいてしまったからには……。

   彼女は、魔女が、ただ次々に迫りくる悪意ある存在、とは思えなくなってしまった。

   物事には必ずその起こりがあるように、魔女もまた由来があって存在する、

   同じ命として対等な存在だと認識してしまった。

   ましてやその由来には、絶望という、極めて人間的な感情が絡んでいると。

   曲がりなりにも人格を持つ存在だと。

   そこまで分かって、ただ倒さねば自分も人々も殺されるから殺すのか、

   それとも他に何か意義を見いだせるか……。

   前者はわたしよ。ただの化け物であることは自覚してるわ。

   でも、今なら、わたしや暁美さん、美樹さんが彼女を守れる今だからこそ、

   鹿目さんにはそこに向き合うチャンスがある。

   わたしが考える間もなく通り過ぎてしまった事柄に、

   彼女は何かを見出すかもしれない。結局無理かもしれない。

   彼女が、ただ彼女らしく進んでいってほしいと願うばかりよ」

150 : 以下、名... - 2015/10/27 22:47:00.45 0D7NAuHmo 146/620

マミ「無論、魔法少女として強くなっていることが望まれる。

   ……『ワルプルギスの夜』。半ば冗談で話題にしがちだけど、

   もしその存在の噂が、魔法少女の成長を促すためのただの警句でなく、

   実在する脅威を語るものだったとしたら。

   いずれにせよどの魔法少女にとっても、

   倦まず弛まずと思わせるのには十分なものだわ。

   ――あの子、今頃どうしてるのかしら……」

QB「まどか達は今こちらに向かっているところだよ。

   でもあの三人にはまだワルプルギスの話をしてないだろう?」

マミ「……外は冷えてるでしょう。お茶の用意をしましょうか」スッ



続き
上条恭介「幻想御手?」【2】

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