オタク「おい、ジャンプしろよ」
男「ううっ……」
オタク「いいから、ジャンプしろよテメェ!」
男「ひっ! わ、分かりました……」
元スレ
オタク「おい、ジャンプしろよ」男「ううっ……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1442838786/
男「ううっ」ピョン チャリーン
オタク「あんじゃねーかよ! 財布出せ、コラァ!」
男「は、はい……」
オタク「へへっ、こんだけありゃあ、欲しかったフィギュアが買えるな」
男「うぐぅ……」
オタク「さて、と……」
オタク「素直に財布出さなかったことを、後悔させてやらねーとなァ!」
男「ひっ、そんな……」
オタク「オラァッ! オラァァッ! オラァァァッ!」
ドゴッ! ドゴォッ! ドボォ!
男「がはっ! ぐほっ! げふっ!」
20××年、日本……
オタクの凶悪化は深刻な社会問題となっていた。
インターネットの普及や、有名人のオタク趣味カミングアウトなどの後押しを受け、
市民権を得たオタクは徐々に増長していった。
そして、増長は暴走へと姿を変え、
今やオタクは不良集団や暴力団をもしのぐ、一大反社会勢力と化してしまったのである。
ここで、彼らが起こした事件を一部、紹介していこう。
たとえば、アニメDVDやフィギュア、同人誌を買うための資金を得るために
恐喝を行うなどは日常茶飯事。
オタク「まだ持ってんだろ!? こんなんじゃアキバまでの電車賃にもならねーよ!」
DQN「も、持ってません……」
ヤンキー「許して下さい……」
ヤクザ「ひいい……」ジョボボボ…
オタク「テメーら! 親兄弟まで追い込みかけっからな!」
オタク「俺の痛車になにさわってんだ! あぁん!?」
通行人「さ、さわってないですよ! 近くを通り過ぎただけで……」
オタク「修理代一千万円払ってもらおうか!」
通行人「そんなぁ……!」
被害総額は年間数百億円にも上るという。
他にも、ネット上で問題行動をしている人間を発見したとする。
オタク「お、なんだこいつ、バカなことしてやがる。許せねえ!」カタカタ…
オタク「よぉ~し、吊るし上げてやるか」カタカタ…
今までであれば、当事者の本名、住所や家族構成を晒し上げることで、
社会的制裁を加えるだけだったのだが……。
オタク「ここが奴の家だ! 焼け! 燃やし尽くせ!」
オタク「肉親、友人、知人、ついでに赤の他人も徹底的に痛めつけろ!」
オタク「容赦すんじゃねーぞ! 俺たちが正義(ジャスティス)だ!」
ウオオォォォォォ!
ボォォォ…… メラメラ……
オタク「ハーッハッハッハッハ! メシウマだぜ!」
もはや彼らはネット弁慶ではない。
リアル弁慶――リア弁なのである!
他にも――
国内外を問わない無差別サイバー攻撃――
光学迷彩を施した改造大型ドローンによる要人襲撃事件――
痛戦車による国会議事堂爆破事件――
さらには某スポーツクラブで次々に結果にコミットしたオタクが誕生し、
弱点とされる肉体的な貧弱さも補強されてしまった。
もはやオタクに弱点は無い!
20××年――
世はまさにオタク地獄だったのである!!!
とあるBAR――
老人「マスター、ビール」
マスター「どうぞ」スッ
老人「ふぅ、まったく嘆かわしいわい」
白髪「まったくですな」
カウンターで愚痴をこぼす二人の老人がいた。
老人「ワシらが現役だった頃は、オタクはコソコソとつつましく生き、
自分のオタク癖をひけらかすなどありえなかった」
老人「“恥”の美徳があったのじゃ!」
老人「ところが今はどうじゃ!」
老人「自分からオタク趣味をひけらかすのは当たり前」
老人「履歴書の趣味の欄にも堂々とアニメ鑑賞だのフィギュア収集だの書く始末!
集団面接の最中にアニソンを合唱するオタクどももいたという!」
老人「実に嘆かわしい!」
白髪「そのとおりですな!」
老人「それだけではない」
老人「ワシらが現役の頃には、アニメの違法視聴など絶対ありえなかった!」
白髪「!? ――そ、そうです!」
老人「売上がどうのこうのと下らぬ論議をすることもなかった!」
白髪「そ、そのとおり!」
老人「嫁をとっかえひっかえするなど、言語道断じゃった! のう!?」
白髪「お、お、おっしゃるとおり!」
老人「……」グイッ
老人はグラスを一気に空ける。
老人「それだけなら、まだしもじゃ!」
老人「今のオタクは、かつてワシらが忌み嫌ったDQNといった連中に
成り下がってしまっておる!」
老人「いいや、はっきりいってしまおう! それ未満じゃ!
あんなもん、オタクの皮をかぶったただのテロリストじゃよ!」
白髪「まさしく!」
老人「はぁ~……」
老人「今のオタクどもに、昔のオタクたちが持っていた魂を取り戻させる方法、
なにかないものか……」
老人「のぉ、マスター」
老人「なにか、いい知恵はないかの?」
マスター「……」キュッキュッ
マスターは静かに口を開いた。
マスター「酒飲みの間でも、似たようなことはございます……」
マスター「たとえば、悪酔いして暴れることをステイタスと考える酒飲みや、
あるいは酒の味など全然楽しまず量だけを誇る酒飲み、なんてのが現れたりね」
老人「ほぉ」
老人「そういう時、マスターはどうするんじゃ?」
マスター「もちろん、手本を見せてやるんです」
老人「!!!」ビビビッ
老人「そうか、それじゃ!」
老人「ワシらが今のオタクどもに手本を見せてやるのじゃ!」
白髪「は、はぁ」
老人「そうと決まれば、マスター!」
老人「なにかワシらに……手向けの一杯を」
マスター「……」
マスター「どうぞ」スッ
老人「これは?」
マスター「“スカイ・ダイビング”です」
ホライトラムをベースに、ブルーキュラソー、ライムジュースをシェークした一杯。
老人「なるほど、空から飛び降りる気持ちで、とな」ニカッ
老人「……」グイッ
白髪「……」グイッ
老人「ふむ、さわやかな味じゃ」
老人「よし、今のオタクどもにワシら旧世代のオタクの意地を見せてやるんじゃ!」
白髪「は、はいっ!」
そして――
老人「おお、バッチリ決まっておるぞ」ビシッ
白髪「そうですかな?」ビシッ
メガネ、リュックサックにバンダナ、チェックのシャツといった
旧世代のコテコテのオタクファッションを身にまとった、腰の曲がった老人コンビ。
老人「今のオタクどもに、ワシらが手本を見せてやるんじゃ!」
白髪「はい!(ホントは怖いけど)」
彼らの目的地――それはもちろん、日本最大の同人誌即売会である。
500万人以上のオタクが集まるという巨大イベント。
ここで手本を見せれば、きっとオタクたちを改心させられると考えたのである。
イベント会場に乗り込んだ二人。
老人「すさんでおるのう……」
白髪「ひどいですなぁ……」
いたるところで飛び交う怒号。
殴り合い、乱交、ストリップショー、器物損壊、ドラッグ――やりたい放題であった。
老人「まったく、海外のスラム街の方がよっぽどマシじゃわい」
白髪「ホントですな……」
老人「しかし、オタクどものボスを改心させれば、きっとみんな元に戻るはずじゃ」
白髪「そんなもんですかねえ」
老人「いくぞ!」
白髪「はいっ!」
ボスは身長2メートルを軽く超える大男であった。
その太い腕には入れ墨をしている。
しかし、その入れ墨のデザインがアニメキャラだと気づいた時、老人は少し嬉しかった。
ボスオタク「あぁん? なんだテメェらは」
老人「ワシらは旧世代のオタクじゃ」
老人「貴様らの悪行を正しにやってきた」
ボスオタク「テメェらみたいなクソジジイが、オレらの悪行を正す!?
笑わせてくれるぜ!」
ボスオタク「生きてるだけで年金だの保険料だのを食いつぶす老害の分際でよ!」
ボスオタク「ヒャーッハッハッハッハッハッハ!!!」
老人「フッ、まるでなっとらんのう……」
ボスオタク「なに!?」
老人「真のオタクならば、そういう時はこう笑うもんじゃ」
老人「デュフフコポォ、オウフドプフォ、フォカヌポウ、などとな……」
ボスオタク「なんだと~~~~~~!?」
老人「ハッキリいうてやろうか」
老人「お前……いや、お前たちは――“にわか”じゃよ」
ボスオタク「!!!」プッツーン
どんなにオタクが変質しようと、変わらないものもある。
“にわか”
この三文字は、ボスオタクを瞬時に沸騰させた。
ボスオタク「野郎ども……このジジイを血祭りに上げろォォォォォ!!!」
老人「……来い!」
ボスオタク直属の、最凶オタク軍団が襲いかかってきた。
オタクA「死ねっ! 円盤チャクラム!」ヒュンヒュン
機動隊の盾すら真っ二つにするアニメBD、DVDが老人の体に何十枚と突き刺さる。
グサササッ!
オタクB「同人誌ソード!」ジャキンッ
ズバァッ!
丸められ、鋭利な刃物と化した同人誌が老人の体を切り裂く。
オタクC「フィギュアミサイル!」ブオンッ
ドゴォッ!
超合金美少女フィギュアが時速180キロで投げつけられ、老人の顔面に炸裂する。
ボスオタク「トドメだッ! テメェを消して、若者の負担を減らしてやるよ!」
ボスオタク「コスプレパンチ!!!」
ドゴォォォンッ!!!
アニメキャラのコスプレをしたボスオタクの、アフリカゾウすら沈める渾身の拳。
しかし、老人は倒れない。
ボスオタク「バ、バカな……なぜ倒れない……!?」
老人「倒れ、る……ものか……」
老人「円盤も、同人誌も、フィギュアも、コスプレも――どれも!
人を殺すためのもんではない!」
老人「だから……倒れるわけにはいかないのじゃよ……」
ボスオタク「ううっ……」
老人の気迫にひるむボスオタク。
白髪「まだ分からないのか!? 君たちは!」
ボスオタク「はうっ!」ギクッ
白髪「この人は身をもって、君たちに示したのだよ……!」
白髪「真のオタク魂を!」
ボスオタク「うっ……!」
ボスオタク「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
大粒の涙をこぼすボスオタク。
老人「分かってくれたか……」
ボスオタク「は、はいっ!」
老人「ならばよい……。これ以上、ワシからいうことはありやせん……」
老人「分かってくれて……嬉しい、ぞ……」ガクッ
ボスオタク「じいさぁぁぁぁぁん!!!」
じいさぁぁぁぁぁん……
数日後――
TVニュース『日本最大の反社会勢力“オタク”の活動が急速的に鎮静化し……』
白髪「ううう……よかったですなあ」
白髪「あなたの活躍は……無駄じゃなかった……」
老人は病院のベッドにいた。全治一ヶ月とのことだ。
老人「しっかも、散々円盤だの同人誌だのフィギュアだのを投げつけてくれたんじゃ!
もちろん全部タダでいただきじゃ!」
老人「これらを楽しまずして死ねるかい! うひょ~!」
白髪(もしかしてこの人、オタクの更生とかホントはどうでもよくて、
これが目当てだったんじゃ……)
― おわり ―
オタクのほうがずっと下なのになwww