【関連】
暦「うそつきー!」 戦場ヶ原「あらあら仕方が無いわね」
神原「阿良々木先輩!BダッシュのBはBLのBだ!」
忍「お前さん、開いておるぞ?」
元スレ
暦「うそつきー!」 戦場ヶ原「あらあら仕方が無いわね」
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先日の騒動の後、公認どころか推薦すらされなくなった僕は、常時監視状態で家から出るのも一苦労で、忍とグタグタと会話する休日が多くなった。
「あー、ドーナツ食いてぇ」
「ほぅ、お前様がそういうとは、かかか」
いつもなら忍がいうセリフを僕が言う。
「笑い事じゃない。放任主義の両親にまで説教されてさ」
「まぁ、仕方が無い。何せ目撃証言が多過ぎた、ホテルへの出入りまで噂されておるからの」
「火憐と月火のあのジト目は耐えられないよ」
「そうじゃな。以前は『兄ちゃん、非行し過ぎ』と優しい言葉をかけた妹共も『不潔』の一言だからな、かかか」
忍はまるで他人事のように笑い飛ばす。
「月火に至っては、『金髪は妄想じゃなかった!部屋や風呂に連れ込んでる!』と両親の前で言うし……」
「まぁ、事実だけに反論できんわな。お前様もこの際、開き直れば良かったのではないか?」
「どう開き直るんだ?」
「『僕は魔王だ!きんぱちゅは~正義だ!風呂どころかあんな事もこんな事もしているぞ!』とな」
おい!噛んでる上に創作まで入ってるぞ!
それに、そんな事を言えば僕は病院送りになる。
「ま、人の噂も七拾五日。大人しくしていればよかろう」
「ああ」
「それに、ドーナツなら学校帰りでも良いではないか」
「そうなんだけど」
「お前様も一応は受験生であるから、勉強するのもいいと儂は思うぞ」
「へー、忍からそんな言葉が出るとは思わなかったよ」
「儂のあるじ様が『受験生』というのはカッコいいではないか?」
忍はまた勘違いしている。
受験生はそんなにカッコいい肩書でもステータスでもない。
「はぁ、しょうがない。寝る」
「さっき起きたのに、また寝るのか?」
「ああ、寝る」
「そうか、では―――」
忍が影から、ぬぅ、と出てきて僕の横で遊ぶ。
正確には、布団に包まった僕と同じように布団の中に現れ、布団に包まる。
「お前様、変な事をするでないぞ?」
「それはしろと言う意味か?」
「さぁ?どうかのう」
「残念だが、期待には応えられない。何せ、あと1分もしたら『剥がし屋』が来るからな」
「なんだ、もうそんな時間か。仕方が無い、では儂は帰るぞ、残念だが―――我があるじ様」
忍は軽く僕にキスし、スッと影の中に消えてしまった。
あれ以来、忍も結構大胆だ。
僕と忍の挨拶はキスだもんな。
で、20秒後にドアが開く。
「チッ」
いきなり舌打ちされた。
「お兄ちゃん、今日は金髪美人囲ってないの?」
「いや、今までいたけど、帰った」
開き直る僕。
「けっ、兄ちゃんの妄想なんて信じちゃダメだよ、月火ちゃん。アホがうつる」
アホ……
確かに、アホ毛は立っているが。
アホは無いだろ、せめて馬鹿と言ってくれ。
あ?アホ毛というが馬鹿毛とは言わないな。
何故だろ?
どちらも同じ意味なのに、馬鹿毛は無い。
もしかして僕は関西人なのか!
「何さっきからブツブツ独り言を言ってんのよ。布団干すから!」
そう言って、火憐は僕の布団を剥がす。
で、悲鳴。
家中に響き渡る二つの悲鳴。
「馬鹿!変態!」
「鬼畜!不潔!」
端的に今の僕を説明する火憐と月火。
そう、何故か僕は全裸だった。
どうせ、忍が遊ぶつもりで消し去ってしまったのだろうけど……
「別に僕が裸で寝てもいいじゃないか!」
なんて主張は認められず、僕の「お前様」を直視した火憐は涙目で剥がした布団を僕に投げつけた。
「兄ちゃんはそんな事だから―――」
「そんな事だからなんだ?」
「そんな事だから―――」
「だからなんだよ?言ってみろよ」
多分、火憐の中で何かがぶっ壊れたんだろう。
「大っ嫌い!」
ついに嫌われてしまった。
結構いい線まで妹を従順に育てた―――訳でもないが、それなりにフレンドリーな兄妹関係を構築していたが、ぶっ壊れた。
元の木阿弥。
以後、口を聞いて貰えなくなる。
まるで空気。
ま、致し方ない。
全部自分が起こした結果だからな。
「お前様、最近は諦めが良くなったな。この調子だと50年待つ必要も無かろうか?」
忍は嬉しそうに話す。
暫くして着替えてリビングに行き、コーヒーを貰うも室内は冷めた空気が支配する。
淹れたてのホットコーヒーがアイスコーヒーになるぐらい。
「暦も年頃だから色々とあると思うけど、妹はまだ幼いんだから……気を使ってね」
と、母さんに教育的指導される。
「ああ、気を付けるよ」
そんな僕と母さんの会話を聞きつつ、父さんは何も言わない。
この人はいつもそうだ。
僕と殆ど話さない。
原因?
前にも言ったけど、僕のポケモンカードを捨てられ、プチ家出して以来あまり話さなくなった。
そりゃ、僕が悪いんだけど、お互い歩み寄る事は無い。
互いに牽制し、互いの損得勘定だけで生きる。
だから、阿良々木家のもう一人の男性。
そんなポジション。
ただ、流石に今回の騒動では「一応世間体があるから」と一言だけ言った。
世間体ね、はいはい。
それでも、僕にとって守らなければならない家族である。
言えない事も沢山あるが……
この半年間の事を知れば―――月火の事を含めて、知った途端、この人たちの心は壊れる。
それぐらい、阿良々木家の住人は心が脆い。
よくよく考えれば、その中で僕だけ心臓に毛が生えるほど強靭なんだろう。
いつ死ぬか分からない恐怖より、いつ死ねるか分からない恐怖。
よくそんな状況で耐えてるな、僕。
と、家族や自分を分析したところで、この状況が改善される事も無いので、僕は出掛ける事にした。
「暦、どこに行くの?」
取り調べ開始。
「神原の家」
事情説明。
「本当に?」
疑われている。
「ああ、ちょっとな。呼ばれているんだ。何なら火憐連れて行こうか?」
無実を証明。
「いかなーい」
アリバイ消滅。
おやおや、神原と僕を天秤に掛けたら、僕との行動の方が重かったようだ。
早く帰って来なさいよと釘を刺され、出掛ける。
勿論、火憐と月火が携帯を取り出し、連絡網に情報を流しているのは百も承知。
『暦メーリングリスト』があるらしい。
ちなみに、購読者は姉妹や友人以外に、校内の学生の半数ぐらいとか。
ホストは勿論―――
どこで何をしていようと、僕は監視されている。
自転車を漕ぎ、神原邸へ向かう。
門の前では神原が待っていた。
「やぁ、阿良々木先輩。おはよう!」
流石はメーリングリスト、確実に情報は廻っているようだ。
「なぁ、阿良々木先輩。幾ら体に良いからと言ってマッパ睡眠後、年端もいかない妹達の前で曝け出すのは駄目だと思うぞ」
うわ……そんな事まで流されてるのかよ!
僕のプライバシーはどこに行った!
「ところで今日は何の用だ?」
「八九寺ちゃんと作った本の原稿が上がったので、読んで貰おうと思ったんだ」
「あー、前に言ってた薄い本か?」
「そうだ!原作は私、脚本は八九寺ちゃん、作画は私、アシスタントは八九寺ちゃん」
「へー、一応真面目に分担してやってるんだな」
「とりあえず、上がってくれたまえ」
そう言いながら、神原は携帯を弄る。
『先輩到着』
ちらっと覗き見た携帯の画面にはそうあった。
息する以外何も出来ないな、これでは。
神原の部屋に行くと、八九寺が居た。
そりゃまぁ、当たり前だが。
「八九寺~会いたかったぞ、このやろう!」
と、飛び付こうとした僕に神原が回し蹴りを入れる。
「はう!」
「先輩!まだ反省してないんですか?」
「ごめん……」
「先輩がそんな事だから―――」
「そんな事だから?」
「戦場ヶ原先輩の事も考えてください!」
「ん、ああ」
確かに、かの一件以来、戦場ヶ原の調子が悪い。
調子と言っても、体調ではなく、精神的な意味で。
「ヤンデレな戦場ヶ原先輩など、私は見たくない!」
―――あーあ、言っちゃった。
分かってたけど、言わなかったのに、言っちゃった。
というか、僕は最初からヤンデレだと思ってた訳だが。
ツンでヤンでデレでドロ。
この4つを上手く言葉に出来るなら、今年の流行語大賞は確実に取れる筈。
『取れる』で思いだしたが、『蕩れ』は流行らなかった。
僕は応援してたんだけどさ。
萌え強しと言ったところか。
あ、さっきの4つ纏めて言えば「ガハラサン」だな―――
「まぁ、なるべく気を使うよ」
「なるべく?」
「全力で!」
「本当に、彼氏としての自覚はあるのでしょうか?」
額にスクリーントーンの切れ端を付けた八九寺が横やりを入れる。
「まぁ一応は……」
「一応?ダメダメですね、ダメラギさん」
もう弁解する元気がなかった。
「で、出来た本はどれだ?」
「はい!これ!」
八九寺が嬉しそうに原稿を差し出す。
『さるかにがっせん』
「なにこのタイトル」
「ああ、それは―――私と戦場ヶ原先輩の百合本だ!」
「堂々と言うな!」
「というか、こういう薄い本は漫画やアニメを弄るもんだろ?」
「え?」
と、八九寺と神原が声をそろえる。
「何?僕、何か変な事言った?」
「さぁ?」
(阿良々木さんもヤキが廻りましたね)
(戦場ヶ原先輩に嬲られ過ぎておかしくなったか?)
「お前ら!聞こえてるぞ!」
「それは失礼。そんな状況説明はこっちにおいて―――」
「こっちって、どっちだよ」
「細かい事を気にしすぎです、この小舅が!」
「いつ僕がお前達の義兄弟になったんだ!」
「まぁまぁ、細かい事は気にせず、読んでくれたまえ先輩」
僕は渡された原稿を捲る。
「うわぁ……」
「ええっ……」
「はー……」
感嘆詞と溜息しか書けないわ!
ところで、この絵は誰が書いたんだ?
「それは私が書いたんだ、阿良々木先輩」
「神原って……こんな才能あったんだ!」
「いや、才能と言うか。利き腕の右で書くとこれだ!」
見せられた絵は、小学生の落書きレベルだった。
「これがどうやったら、こんなリアルな絵になるんだよ!」
「こっちが左手で書いた絵です」
もう一枚の絵を見せられる。
ゴッホやゴーギャンの再来か?と言うぐらい素晴らしい。
って、左手?
「ええ。この左手で書くと凄く上手に絵が書けるんだ」
「これは素晴らしい腕ですよ、私驚きました」
八九寺が褒めるほどの左腕。
そっか、そういう事か!
「猿真似」
神原の猿の手のもう一つの能力「猿真似」、キャノン砲以外の使い方が見つかって良かった。
「書きたいキャラの絵を見て、左手で書くと上手に書けたんだ」
へー、そりゃ良かった。
あと3年は本物の画家として食っていけるんじゃない?
「ところで、この『KAⅡ』って作者名?」
「ええ。私達二人でKAⅡです」
「なんて読むの?」
「『かに』に決まってるじゃないですか!」
かに?
KAで「か」、Ⅱは数字の「に」でカニ。
蟹って……
「それ以外に、怪異はローマ字表記で『K A I I』なのでKAⅡ。で、二人なのでⅡにも掛けてます」
本格的すぎて、少し驚いた。
というか、誰がそこまで上手く考えろと言った!
「ちなみに、今年の年末に販売するので、是非買いに来てください」
「1冊贈呈するっていう話じゃねーのか?」
「結構配布するまでにお金が掛かるんですよ。1冊500円なので10冊お願いします!」
本はイラネェ!こんな本、家に持ち帰ったら絶縁されるわ!
カンパと称して、僕は5000円をあげた。
「おお、先輩太っ腹だな」
「印刷代が賄えます!」
お前ら、本当に楽しそうだな。
「じゃ、僕はこれで帰るよ」
「奥付にカンパ感謝の名前入れておきますね」
「絶対に書くな!」
僕は念を押す。
昼飯を御馳走になった後、神原邸を出る事にした。
門を出る。
神原がカチカチとメールする。
「はぁ、今日はもう帰るか……」
どこに行こうと監視の目があり、逐一報告されるだけだろうし。
みんなメーリングリストに飽きるまで、ほとぼりが冷めるまで大人しくしよう。
神原の家を出て、角を曲がったところで僕はブレーキを握る。
「え?」
一瞬、忍が居た様に見えた。
が、次の瞬間それが見間違いである事に気付くと同時に、驚きが漏れた。
「ぬわ!」
「えへへ、暦お兄ちゃん確保」
千石だった。
確かに千石だが―――金髪だった。
「お前、その髪どうした!」
「えへ。暦お兄ちゃんが金髪好きって聞いたので、撫子も金髪にしてみた」
元々色白の千石が金髪に。
確かに、忍と少し似ているかも知れない。
外観だけだが。
「お前、そんな髪の色じゃ学校にも行けないだろ!」
「大丈夫だよ、帰る時はまた黒くするから」
「って、お金の無駄だろ!」
「心配しなくても大丈夫だよ、これがあるから」
千石は笑いながら靴墨を僕に見せる。
「え?千石、それで黒くなると?」
「大丈夫だよ、もう実験済みだから」
最近の中学生は馬鹿を通り越している。
墨汁で染めたり、靴墨で染めたり。
色々物の使い方を間違ってる。
「別に僕は金髪が好きって訳じゃない!」
「ふーん。おかしいな?撫子が得た情報だと、金髪にすると映画に行けたり、レストランに行けたり、ホテルに行けたりするって事だったけど?」
殆ど全部、筒抜けだった。
「いや、それが事実で有ったとしても、金髪だからって訳じゃない!」
「なんだ……」
「それに映画に行きたいなら言えば良いだろ?」
「だって、暦お兄ちゃん忙しそうだし」
「金髪にしたからって暇になる訳じゃない!」
そんな僕の説教もどこ吹く風、千石は僕の自転車の後ろにちょこんと座った。
「暦お兄ちゃん号、出発進行!」
「どこに行くんだよ」
「映画」
「映画はもういい」
「カラオケ」
「カラオケも僕の歌う歌はマイナーらしいので却下」
「ごはん」
「お腹は空いていない」
「ホテル」
「100%選択肢として間違ってる」
「じゃあ、どこでもいいからドライブ」
自転車でか?
それもタンデムで、ツーリング。
おまけにママチャリ。
「行ってくれないと。色々カチカチしちゃうぞっと」
笑顔で僕に話しかける千石。
しかし、目は恐ろしいほど怖かった。
まるで、メドゥーサの如く。
直視されたら石になるような視線だった。
蛇の怪異に、千の石……
ああ、成程。
強ち『メドゥーサ』であってもおかしくないな。
メドゥーサ、ゴルゴーン三姉妹の末っ子。
僕の妹達と一緒に遊んでいる時は、本当に3番目の妹みたいだった。
名前の意味は「女支配者」だったか。
以前読んだ神話の本にそんな事が書かれてたっけ。
女支配者、ラスボスってか。
忍野が言ってたのはこういう意味だったんだな。
「暦お兄ちゃん、どうしたの?」
「あ、いやなんでもない。なんでも」
「で、どこいく?」
「じゃあ、近所をひと廻りして、それから美容室な」
「なんで?」
「その金髪を元の黒髪に戻す」
「えー、大丈夫だって」
「駄目!」
僕は頑として許さなかった。
安易に染めた髪が、忍を冒涜しているなんて事は言わない。
心配というか、僕のせいで千石の人生が下げ方向に向かうのを阻止したかった。
中学生の毛染めは不良への第一歩だからな!
自転車を漕ぎ、美容室に向かう。
途中、千石が携帯を取り出しメールチェック。
「暦お兄ちゃん、これ」
『ターゲット、本通りを自転車で南下中。後部金髪あり』
「なんじゃこりゃ!」
既に僕達は監視の網に掛かっている。
とりあえず、本通りから裏通りへ右折し、様子見。
またメール。
『本通りから右折し西進。裏通りへ向かった模様』
続けて、メール受信の嵐。
『ロックオン』
『金髪?噂より小さい』
『タゲの上着、赤色パーカー』
『目的地不明、網拡大した方がいい』
酷い状況だ。
とりあえず、千石だけでもどこかに置いて行かないと、金髪美女=千石という間違った認識が出来てしまう。
それだけは何としても避けたかった。
だって―――ホテルにまで行ってるんだぜ?
それが中学生の千石だったと誤認されると、色々拙い。
というか、千石の人生にキズがつく。
僕の人生なんてどうでもいいのだ。
千石もまた、僕が守らなければならない人の一人だと気付いた。
「しっかり捕まってろよ!」
僕は出来る限りの力で自転車を漕ぐ。
段々と市街地から離れ、隣町へ向かう。
やっとメールの量が減ってきた。
『タゲ、ロスト』
『隣町か?』
『青い服に着替え、ワンマンで逃走』
段々と偽情報と言うか、情報者が多いほどノイズも増える。
ノイズが増えれば、そのノイズが次のノイズを発生させる。
多分、これで僕は逃げられる。
奴の策に勝てた!
ザマアミロ!
そう思うだけで、僕は全身に力が漲り、ペダルを漕ぐ足にも力が入る。
が、敵もそう甘くは無かった。
地響きにも似た足音が後方から響く。
振り向くと。上下ジャージで、少し長めの髪の女子が走ってきた。
僕は直ぐにそいつが誰か分かった。
と、同時に諦め半分な状態に。
「おーい先輩!どこに行くんだ!」
声を掛けられた時点で完全ロックオン。
もうひと踏ん張り、僕は加速する。
荷台に座った千石の事も忘れ、段差も気にせず突っ走る。
「痛いっ」
「だ、大丈夫か?」
「う、うん……暦お兄ちゃん、このまま逃げ続けるの?」
「ああ、完全に撒くまで僕は逃げる」
「そう。撫子、暦お兄ちゃんとならどこまでも逃げてもいいよ」
そう言いながら、千石は僕の腰をきつく抱く。
「こ、漕げん……」
ほぼ、立ち漕ぎの状態だったのに、座席に縛りつけられたような状態。
この状態で、BLダッシュの神原には勝てない!
頼むから、その手を!
……
火憐だぜ!
月火だよ!
なぁ、月火ちゃん、月火ちゃんのAAってじゃりん子チエのヒラメみたいだね
火憐ちゃん、酷いよ!ところで、みたんでしょ?
何をかな?
お兄ちゃんの……
言うなー!
で、どうだった?
何がどうなの?
え?ほら、形とかサイズとか
ば、馬鹿!そんなの覚えてない!
なんだ、残念!
自分で見ればいいじゃないか!
目が腐る!
次回、なでこスネーク99話「戦争」
おたのしみに!
詰んだ。
流石に、座り漕ぎで勝てる相手ではなかった。
僕の手の上から、その手はブレーキを握る。
自転車がこけない様、態勢を維持するのがやっとだった。
「先輩。あまり心配掛けるなよ」
神原は少し怒った顔をした。
「ごめん」
「なんで逃げるんですか?」
「いや、この状況だと誤解を生むし」
「誤解?」
「ほら」
僕は千石の方へ視線を配る。
「おお、金髪美……あれ?千石ちゃん?」
「そうだ」
「先輩!あなたって人は!中学生に手を出したのですか!」
「待て。というか、僕が中学生に手を出したからと言って、神原が怒れる立場じゃないだろ!」
「不純異性交遊とショタ・ロリは大きく違いますから!」
全く以て、意味不明な見解だ。
「あのな、神原。今から本当の事を言うから、それは信じてくれ」
「話にも依ります」
「まぁいい。あのな、僕が先日一緒に居た金髪女性は千石ではない」
神原は一瞬、僕の言葉を警戒したが、次第に自分の記憶と照らし合わせ何かを見つけたようだ。
「おお!確かに。あの日見た金髪女性はもっと髪も長かったし、身長も高かった!」
「うんうん、よく気が付いてくれました」
「じゃあ、この状況は何?」
僕は神原邸を出た後の事を話す。
神原は裏を取るように、千石に問いただす。
納得した神原は、
「うんうん、後輩思いの良い先輩だな」
と、僕を褒めた。
そこで全ては解決するはずだったが……
僕達が話している路肩に一台の四輪駆動車が停まる。
助手席から出てきたのは―――
戦場ヶ原。
「こ、こんいちは!ガハラさん!」
また噛んでしまった。
そんな僕をシカトし、戦場ヶ原は車の運転席側へ周り、窓から運転手に声を掛ける。
「ありがとう、お父さん。帰りは歩いて帰るので、もう行っていいわ」
おお、久しぶりに戦場ヶ原の父親を見た。
相変わらず寡黙でダンディだな。
チラッと僕の方を見て、声を掛ける。
「自慢の娘の彼氏君。あまり娘に寂しい思いをさせないでくれよ」
うわー、すげーショック。
一番言われたくない人に、一番辛辣な言葉をかけられた!
そのまま窓を閉め、車は走り去る。
「で、今日は全部確保できたのね」
戦場ヶ原はとても楽しそうに話す。
「先輩、これは!」
「神原、黙って。ノイズが多いと判断が鈍るわ」
「いや……」
「黙りなさい!」
辺りが静まり返った。
「あなたが―――そう。初めましてかしら?」
「えっと……」
千石は困ったのか、上手く喋れない。
「私、阿良々木君の彼女の戦場ヶ原。戦場ヶ原ひたぎ、以後宜しく」
「せ、千石、千石撫子です。えっと戦場ヶ原さん、はじめめままして・・・・・・」
「ふーん。千石撫子ね。今日からあだ名は泥棒猫でいいかしら?」
いつものように首を大きく反らしながら戦場ヶ原は話す。
「あの、私……」
突然、戦場ヶ原は千石の前髪を掴み、顎が上がる程に吊りあげる。
「何この汚い金髪は。ふざけているのかしら?切った方がいいんじゃない?」
左ポケットからハサミを取り出す戦場ヶ原。
「おい、戦場ヶ原止めろ!」
「止めてください…」
千石は怯えきっている。
「ふーん、小汚い猫なのに口答えは出来るのね?」
髪を離した戦場ヶ原が右手をポケットに入れる。
ヤバい、そっちは確実にカッターナイフが入ってる。
対峙したまま動かない二人。
いや、戦場ヶ原が千石を追い詰めている。
「おい、お前らやめろ」
「暦お兄ちゃん……」
「何が『暦お兄ちゃん』よ。阿良々木君に妹は二人しか居ないわ。妹の座まで奪うつもりなの?このドラ猫は!」
千石の肩が小刻みに震える。
そして、僕にこう言った。
「何この人?本当にこんな人が暦お兄ちゃんの彼女なの?撫子、こんな人なら負けないよ?」
千石が、あのか弱い千石が切れた?!
いつもとは違う表情で戦場ヶ原を睨みつける、
「あらあら、えらく強気ね。いつまでそんな事を言っていられるかしら?」
「負けません、絶対に」
戦場ヶ原のあおりで、より一層気を荒立てる千石。
その姿は―――まるで、メドゥーサの如くだった。
ピリピリとした空気が辺りを包む。
神原も不用意には動けず、顔に焦りが表れる。
千石は素手、戦場ヶ原は凶器持ち。
どう考えても千石に勝ちは無い。
それどころか、一生消えない傷を背負わなければならない。
頼む、千石。それ以上戦場ヶ原を刺激せず、隙があったら逃げろ!
僕はとりあえず、仲裁に入る。
「僕の話を聞いてくれないか?」
「もう阿良々木君に聞く話は無いわ。怪異ならいざ知らず、『普通』の人間に渡すなんてありえないわ」
戦場ヶ原は本気だ。
そして続けて言った。
「あの時も―――こうしていれば良かったのかもしれない」
やっぱり戦場ヶ原は気にしていた。
気にするなんて言葉で片すなんて出来ない、心に深い傷を負っていた。
そして、猫を―――千石にダブらせている。
「ねぇ、阿良々木君。もしかしたら、これでお別れかもよ?言ったわよね私」
「もういいから、止めろよ」
「本気の相手は殺すって」
「馬鹿な事を言うんじゃない!」
一瞬、僕の方を見た戦場ヶ原に隙が出来た。
神原が動く。
背後から羽交い絞めにし、両手を封じ、武器を出せなくした。
「戦場ヶ原先輩、これ以上は駄目だ!」
「よし!」
本当なら、ここで終わらなければならない筈だった。が……
「パンッ!」
千石が戦場ヶ原に平手打ちを入れた。
「わ、わたしも本気です!だ、だから、こ、暦お兄ちゃんは渡せません!」
ダメだ、全部ぶち壊し。
泥沼化決定。
どうせなら映画化決定にして欲しかった。
何より、虫も殺せなかった千石が、こうまで変ってしまった。
それは、戦場ヶ原が立腹している事より恐ろしい事だと直感した。
ラスボスが目覚めてしまった。
「へー、中学生だからって気を許したら、とんでもないわね」
「わ、私、負けませんから。暦お兄ちゃんの為なら何でも出来ます!」
「そう。なら私も本気で行かせて貰うわ、死になさいよ」
「戦場ヶ原も千石も、いい加減止めろよ」
僕の制止など聞く筈もない二人。
「少し場所を変えましょう。ここでは人通りが多過ぎるわ」
戦場ヶ原は突然歩き始める。
その間も僕が説得するが、両者とも全く聞く耳を持たない。
説得中の僕に神原が話しかける。
「なぁ阿良々木先輩。どうだろうか?この際だから素手で気が済むまでさせれば?」
「お前!幾らなんでもそれは駄目だろ」
「女同士の素手の喧嘩じゃ、人は死なない。良くて引っかき傷程度。それで収まるなら……」
「神原、僕は誰にも争って欲しくないんだ」
「あはは、それは無理だと思いますよ」
「何故?」
「だって、みんな阿良々木先輩の事が好きだから」
「は?」
「戦場ヶ原先輩も羽川先輩も千石ちゃんも、かく言う私もみんな阿良々木先輩が好きだ」
「だからって―――」
「真剣に好きだからみんな戦えるんですよ。覚えてませんか?私が忍野さんに頼まれて先輩とお札を貼りに言った時の事」
「えっと……?」
「あの二人、埋めてしまいましょうか?って話」
ああ、そんな話もあった。
たしか僕はこういった言った。
「もし、戦場ヶ原より先に神原に出会っていたら、付き合っていたかもしれない」と。
神原もまた然り。
そして冗談交じりに、戦場ヶ原と羽川を埋めると言った神原。
それらは、みんな本気だった。
冗談や笑顔の裏に隠された真実、それが「本気」
妹だって、火憐だって本気で言ったのかもしれない。
原因は全て僕。
なのに、僕には何も出来ない。
誰も守る事が出来ない。
みんなが選んだ一つ、その一つは何を選べるのだろうか?
何を選べば全て丸く収まるのだろう?
黒
駒
書き溜め終了、以後書き落とし
到着した先は、町外れの公園。
そろそろ日も暮れ、公園で遊ぶ子供はいなくなった。
「では、戦争を始めましょう」
戦場ヶ原は千石を睨みつける。
「分かりました」
そこには僕の知っている千石は居なかった。
千石も戦場ヶ原を見据える。
「二人とも気の済むまでご自由に。但し、平手のみ。自己責任でお願いします」と神原がレフリー役を買ってでる。
全部間違ってる。
何もかもだ!
僕はもう一度、止めに入った。
が、もう誰も聞いては居ない。
千石は戦場ヶ原を。
戦場ヶ原は千石を。
神原は戦場ヶ原のポケットを。
それぞれに凝視し、緊張感を伝える。
戦場ヶ原が動く。
千石の胸元を掴み、平手打ちを入れた。
その一発で、千石は出血。
しかし、そんな事を全く気にせず千石は戦場ヶ原の頬を叩く。
激しい平手打ち合戦。
止めようとした僕を、神原が制止する。
「私や羽川さんは、リングから降りた。でもこの二人はまだ降りていない。どちらかが降りるまで止めては駄目だ、阿良々木先輩」
「しかし―――」
「いいんじゃないの?気が済むまでやれば」
その声に驚き振り向くと、そこに羽川が居た。
「神原さんの言う様に、どちらかが降りるまでやればいいじゃない」
「でも……」
「阿良々木君は駄目ね。自分が愛されているって事に気付かないと」
「だからってこんなの間違ってる!」
「間違ってなんていないわ。女だって、時には争って何かを得る事があるの。今日は張り手合戦だけどね」
「だから―――黙って見ていてあげて」
羽川に説得され、僕はそれ以上何も言えなかった。
「ところで、なんで羽川がここに居るんだよ?」
「さぁ?何故でしょうか?メーリングリストは一つとは限らなくてよ?」
「……」
僕は二重に監視されていたのか!
もしかするとそれ以上かもしれない。
「それよりどっちが勝つかしら?」
「どっちでもいいよ」
「あら?勝って欲しい人がいるでしょ?」
僕は何も答えなかった。
すると羽川は
「と言う事は、意中の人は今リングに居ないって事かしら?」
「お前は何でも知ってるな」
「ええ、殆どの事は知っているわ。知らないのは少しだけ」
いつもと違うリアクションに僕は驚いた。
そして、羽川は二人の間に割って入り、制止した。
「これ以上戦ってももう無駄よ。勝者はここでは生まれないんだから」
そして、こっちを見て言った。
「そうよね。阿良々木君」
「ああ、いねぇよ」
「と言う事。だから、これ以上戦っても無駄よ」
僕の返事を聞いて、戦場ヶ原が僕の所にやってきた。
「阿良々木君、どういう事かしら?」
「ごめん。もうこれ以上戦場ヶ原とは付き合えない。付き合う自信も無けりゃ、そうしたいと思う気持ちも無い」
暫し沈黙。
「そう。なら仕方が無いわ。私は無理強いまでしてあなたを縛る気は無いわ、どうぞご自由に誰とでも好きにしてください。というか……彼氏クビ!」
千石もやってくる。
「暦お兄ちゃん……」
「千石。ごめんな。僕の為に戦わせてしまって」
僕はハンカチで、千石の鼻血を拭いてやる。
「べ、別に撫子、そんな事気にしないよ?」
「だからと言って、千石と付き合う事は出来ないんだ。千石の―――撫子ちゃんの気持ちはありがたいけど、やっぱ僕の中では火憐ちゃんや月火ちゃんと同列の、大事な妹の一人なんだ」
僕の話を聞き終えると、千石はそのままへたり込み、大きな声で泣き始めてしまった。
「さて、これで阿良々木君に惚れた人は全員振られちゃったね」
「ごめん」
「別に謝る事は無いと思うよ?みんな良い夢見たんじゃないかな?」
「誰かれ見境なく守ろうとする阿良々木君が悪いとは言わないけれど、守られると女性ってのはつい、勘違いしちゃうのよね」
僕の心が締め付けられる。
「それに何でもは守れないのよ。守れるのは―――1つだけ」
そういうと羽川は、戦場ヶ原と神原、千石に声をかけ、一つの場所に座らせた。
「さて、ここに敗者が全員揃いました。そろそろ勝者を紹介してくれてもいいんじゃないかな?阿良々木暦君」
全てを見透かした言葉だった。
僕が影に向かい、声をかける。
忍が少々不貞腐れた顔で出てきた。
「儂は見世物ではないぞ」
「ごめん」
「あ!この間の金髪美人さん!」
神原が指さす。
「って、あれ?もしかして―――」
「ああ、もしかしなくても忍だ」
「なにその巨大化!その身長にその胸!」
神原が驚く。
声には出さなかったが、戦場ヶ原も驚いていた。
勿論、千石も―――違う意味で驚愕し、腰を抜かす。
羽川だけ、全てを知っているかのように笑顔。
「阿良々木君が選んだのは忍ちゃんよね?」
「ああ」
僕は全部話した。
自分の事、忍の事、二人の関係、影の事、これからの事。
ただ、自分の妹の話だけは出来なかったけど。
「まぁ、それなら仕方が無いわね。私達はいつまでもこのままで居られる訳も無く」と戦場ヶ原。
「老けた自分と対照的に、好きな人がいつまでも若々しいのは苦痛以外の何ものでもなく」と神原。
「だから、その歩みに近い人を選ぶのは必定だよね?」と羽川が言った。
「撫子も頑張って若いままで―――」
「それは無理なのよ、人はいつか―――そんな老い行く人間が阿良々木君に惚れてはイケないのよ。だからここに居る全員、敗者で正解なの。阿良々木君が忍ちゃんを選んだのは必然であり、必定であり、自然な事」
羽川は全てをまとめてドヤ顔をした。
嫌な奴だ。
本当に、嫌な奴だ、阿良々木暦ってのは。
で、今回のオチ。
落ち過ぎだろ!ってぐらい落した。
戦場ヶ原も千石も神原も羽川も、全部落選!
で、僕を監視するメーリングリストも閉鎖され、晴れて自由の身になる。
学校は真面目に行ってる。
ただ受験勉強はもう止めた。
そんな暇があるなら儂と話せと、忍が毎夜五月蠅くて勉強どころではない。
というか、出来のいい奴は既に特別推薦やAO入試で合格が決まる季節に参考書を買う奴
「駄目な受験生」と羽川に教えられ、その地位の低さを実感したらしい。
「我があるじ様が落ちこぼれなど認めぬわ」と。
ちなみに、忍は夜な夜な家の中を徘徊する。
一応、玄関から入って、深夜には帰ると言う設定で、親は納得。
放任もここまで来ると駄目だな。
それでも、忍の為にミスタードーナツを買ってきて、冷蔵庫にしまっておいてくれる母さんには感謝している。
たまに、父親が買ってくる事もあるそうだ。
ちなみに、進路は既に決めてある。
親にも伝えた。
金の心配は要らないとまで言った。
忍の実家が大金持ちで、婿養子にいくと。
「ああ、好きにすればいい。ただ、奥さんはカードとは違う。大事にしろ」と父さんに言われた。
少し泣いた。でもカードの事が気になってその日は眠れなかった。
あと少し、高校生を続けるが、なるべく平穏で有って欲しい。と願う。
「お前様、本当にこれで良かったのか?」
「ああ、いいんだ。僕は自分を守る。だから僕は、お前を選んだ!」
おわり
269 : VIPに... - 2010/09/09 00:13:03.22 K4Zxvf.o 38/66いつも叱咤激励頂き、有難うございます。
一応、これでお話は終わりです。
多分これ以上は書けないような気もしますが、小ネタがあれば投下するので、30日間はそのままで。
以下、適当にレスとなります。
275 : VIPに... - 2010/09/09 01:21:02.20 d8Pj0YDO 39/661乙~
後日談が見てみたい
279 : VIPに... - 2010/09/09 07:18:22.71 K4Zxvf.o 40/66寝ながら考えた
・忍リベンジャー
・メメの日記
・暦マジシャン
全然後日談にはなってないなが。
お暇潰しにどうぞ。
昼休みに書きなぐったので、あまり面白くないかも知れませんが。
先日の騒動の後、推薦どころか立候補も出来なくなり、お気楽な生活をしていた。
「阿良々木先輩!大至急来てください!」
神原からの電話で叩き起こされる。
とはいっても、もう昼の12時。
最近は、『剥がし屋』が来なくなったので、ゆっくりと寝られる。
その代り、自分で布団を干さなければならないが……。
昨夜も、忍とドーナツ談義をし、夜更かしてしまった。
僕が子供の頃、街に『ダンキンドーナツ』ってのが有った話から、その店に行きたいと言いだした。
で、どこに店舗があるのかと検索したら、既に日本から撤退していた。
というか、海外最大のドーナツチェーンなら、僕より忍の方が行っていてもおかしくないんだが?
忍曰く、海外に居る時は殆どジャンクフードに手を出さなかったとか。
あ、そうか。
キスショットから忍になってからだな、ミスタードーナツを食べる様になったのは。
出来ればどちらが美味しいか食べ比べしたいらしい。
ダンキンドーナツ VS ミスタードーナツ
母体会社の名前をそのまま付けていれば、良く似た名前だな。
ダスキンドーナツと
ダンキンドーナツ。
多分、商標で訴えられるかも。
忍は、リースモップの会社が運営している事が不思議で仕方なかったようで。
その関係について延々と推論を述べた。
が、僕が途中でリタイア。
すごすごと布団に潜ると、あとからついてくる。
ちなみに、一緒に寝ているが僕の貞操も忍の貞操も守られている。
(10歳だと守れなかったって事は無いぞ!)
おやすみ、おはよう。
それだけで僕達は十分だった。
まぁ……多少の行為はするんだけど、男女が一緒の床に居てそれだけってのも遠慮がちな方だろう。
で、叩き起こされた僕は、眠い目を擦りながら問う。
「どうした?」
本当に大変な事が起きているなら、神原は走ってくるからな。
電話で大至急なんてのは、神原にとって少し急ぎ程度しかない。
「とんでもない物を拾った」と。
とんでもない物か。
「えっと、羽根は生えてないんだな?」
「はい」
「生きてる?」
「いいえ」
「動く?」
「いいえ」
「硬い?」
「いいえ」
何故か、イエスノークイズになってしまった。
「とりあえず来てください、凄いから」
それだけ言って、神原は電話を切ってしまった。
仕方がねぇ、とりあえず行くか。
僕は横で眠っている忍を起こす。
「ちょっと出掛けるから、戻る?それともここでそのまま寝る?」
忍は半目を開け、返事する。
「行く」
そういうと、布団から這い出し、ベットからずり落ち、僕の影に潜ってしまった。
やれやれ。
ドアを開けると火憐と月火が居た。
「ん?どうした?何やってるの、僕の部屋の前で」
「いや、兄ちゃんをそろそろ起こそうかなと……」
「ねー」
二人で言い合わせたかのような事を言う。
「あー、火憐。暇なら僕の布団、干しておいて」
「やだよー!そんなエッチぃ布団干せるか!」
「ん?それを言うなら、昔の方が汚かったかもな」
「え?」
「嘘嘘、冗談」
いや、本当だった。
僕はリビングで両親に挨拶し、いつものようにコーヒーを飲み、出掛ける旨を伝える。
今更、伝える事も無いんだが、一応世間体。
子供がどこかで何かあった時、全く知りませんでしたじゃ親が可哀想なので。
僕は買ったばかりの自転車で神原邸へ向かう。
あの100万円の束の残りで買った。
実は、春先に「貨幣は作り出せぬ」と言った忍がどうやってお金を作ったか聞いた。
で、返った答えが「札は紙だからな、硬貨は金属なので無理なのじゃ」と。
殆どお金を使う事のない忍は、お金=硬貨というのが概念であり、その中でも金や銀そのものを作り出す事は出来ないらしい。
それを作れるのは、『錬金』らしい。
成程、ご都合主義か。
紙幣は紙なので、服を作るのと何ら変わらないとか。
それを教えてくれたのが忍野だったらしい。
ちなみに、忍野が去る時に幾ばくかの金を作ったのかと聞けば、忍は黙ったままであった。
言いたくないなら、別に言わなくていいけどさ。
ママチャリと違い、変速機付きのマウンテンバイクは坂道も楽々で、いつもより早く神原邸に到着した。
「ごめんくださーい」と僕は玄関を開ける。
┣¨┣¨┣¨┣¨という効果音を言いながら、神原が走って出てきた。
「やぁ、阿良々木先輩!お待ちしておりました。どうぞどうぞ」
「こんちゃ。何かあったのか?」
玄関には神原家の住人のではない靴が何足か有った。
神原の部屋の扉を開ける前にその扉に吊るされた「漫画工房KAⅡ」という看板に目が行く。
本格的すぎて何も言えんな。
部屋の扉を開けると、一斉に部屋の中の瞳が僕を見る。
1,2,3,4と背後に神原。
戦場ヶ原、羽川、千石、八九寺と錚々たる顔触れ。
僕は一旦開けた扉を閉めたが、すぐ神原に押し込まれた!
何が始まるのでしょうか?
「よぉ……」
何故か全員、いや、羽川を除いた3人がジト目。
というか、僕には使徒にしか見えません!
「阿良々木君、こんにちは」と羽川が口火を切る。
「あ、ララちゃんお兄ちゃん……こんにちは」
おい、千石!何か間違ってるぞ!
「暦お兄ちゃんなんて言うのは抜け駆けよね?」と念を押すようにいう戦場ヶ原。
本当にどこまでも腹黒いというか、病んでるな。
「聞きましたよ、あらわざさん」
八九寺、ワザとだよな?ワザと!
「いえ、別に私は何も。あらすじさんが全員振ったなんて聞いていませんよ?」
「一通り聞いてるじゃないか!ていうか、また間違ってる!」
「で、怪異を選んだとかも聞いていません」
「じゃ、何を聞いたんだよ!」
「怪異は何も吸血鬼だけじゃありませんのよ?」
「え?」
「さぁ?選び間違ったかもしれませんね」
「えっとそれは……」
「私だけ立候補させてもらえませんでした!」
「おい!お前!お前は散々俺の事嫌いって言っただろ!」
「嫌よ嫌よも好きの内って日本語を知らないだなんて、あらびきさんはどこの国の人なんでこしょうか?」
「日本だよ!こはいらねぇよ」
早速、八九寺にいじめられた。いじられた。
「で、阿良々木先輩は何しに来たんだ?」
「神原!お前の電話で叩き起こされて来たんだろうが!お前ら全員相手に戦争しろってか!」
「ああ、そうだった」と、神原は右手の拳で、左掌をぽんと叩き、話始めた。
「今日、朝から八九寺ちゃんと次の薄い本の為に、風景撮影に行ったんだ」
「どこに」
「廃ビルの学習塾」
「何を書くつもりなんだよ!」
「まぁまぁ、慌てず話を聞いて欲しい」
「ああ」
「で、その途中で千石ちゃんと出会ったので3人で仲良くビルに行ったんだ」
「ちょっと待ってくれ。千石、お前はこのチンチクリンが見えるのか?」
「チンチクリンとは何ですか!」
僕は八九寺をシカトした。
「はい、見えるよ……ララちゃんお兄ちゃん」
「あーーーーー!もう!今まで通りでいいから!ていうか、なんで見えるんだよ!」
神原が口を挟む。
「先日の一戦後、家に帰ったら凄く怒られて、それっきり家に帰るのが辛いらしい―――先輩のせいだ!」
「え、僕?」
「ちゃんと美容院に連れて行ってあげないからだ!」
「靴墨は?」
「靴墨で金髪が黒くなる訳ないじゃない」と、殆ど知ってる羽川。
「おまけに、戦場ヶ原先輩との戦いで顔中腫らして―――娘が金髪で顔腫らして帰ったら、親は驚きますよ!」
「そこに僕の責任はあるのか?」
「全部」とみんなが声をそろえて言う。
ああ、これは魔女裁判だ!いや、吸血鬼裁判か。
なにはともあれ、千石もそうなってしまった事に少し後悔した。
「まぁ、そのお陰で千石ちゃんは八九寺ちゃんと出会えたんだ」
と神原がフォロー。
「そっか、災い転じて福となすって事か」
「ナス!うん、今度の武器はナスで行こう、八九寺ちゃん!」
「いいですね、それ」
きいちゃぁいねぇ……
ん?そうなると神原や戦場ヶ原はもうそろそろ家に帰りたくないって思うんじゃないのか?
「阿良々木君、本気で戦争をしましょうか?」
「何か失礼な事言いましたか?」
「いいわ、教えてあげる。あの後家に帰って泣いてたら、父が帰って来たわ」
「うわー『自慢の娘を泣かせやがって!』とか言ってなかった?」
「理由を説明したら『そうか……プッ、振られてやんのw』とあの顔で言ったので、30cmサシで叩きまくってやったわ」
「お前の父親は、僕と違うからそこまですんな!死んだらどうすんだよ!」
「それが……恍惚とした顔で『はぅ~ん』と言ったわ、あのドM。娘にしばかれて喘ぐなんて……あんな家、帰りたい訳ないでしょ!」
「ごめん、笑った」
「ピキ!」
戦場ヶ原の血管が切れた音がした。
「あ、いや凄い創作だなと思って」
「事実よ」
「そっか。で、神原は?神原は八九寺が居るから帰りたいだろ?」
「私?私は〆切りに追われている漫画家さ!」
「もう漫画家になったのかよ!」
「締め切りが近い、帰ったら編集さんが待ってる、でもネームが!あーもうかえりたくなー!と自分を追い込んでる」
ここにも御都合主義があった。
「もう何でもいいわ。いうか、八九寺に色塗っとけ。見えなくなっても塗料が見えるだろ!」
「おお!それは良い案だな。戦場ヶ原先輩の父の話と併せて、今度の本のネタにしよう」
神原がそこまで言い切った後、神原の頭は画鋲だらけだった。
「で、話戻せよ。前振り長すぎて苦情のレスがくるぞ!」
「すまん、先輩。話は戻りますが、学習塾で写真を撮っていたら、こんなノートを見つけたんだ」
「何そのノート?」
「多分、塾生の忘れものだと思ったのですが―――」
「ですが?」
「中をペラペラとめくると、白紙ページの後から日記が有ったのです」
「へー」
「それが……日記の主は恐らく忍野さんではないかと」
「なんだってー!」
その話を聞いて、神原と千石以外全員驚いた。
「とりあえず、最初から順番に読みますね」
3/16
ホワイトデーのお返しをするのが面倒になったので、あの街を出て二日。
ヒッチハイクで500km移動した。
これで追手からは逃げられるだろう。
今度の街は何か辛気臭い。
街全体が古ぼけている。
道行く女子高生に華のある子が全然居ない。
3人ほどマトモなのは居たが、メメっちの好みじゃなかった。
とりあえず、廃ビル発見。結界貼って住処にした。
今日の収穫、寝場所とノート1冊
僕「何これ?」
神「日記」
僕「いや、このメメっちって」
羽「プッ」
戦「多分、忍野さんの事よ」
神「自分で自分の事をメメっちと呼ぶとは、流石風来坊だな」
僕「次読んでみろよ」
3/17
コンビニと銭湯の場所を確認した。
セブンイレブンじゃなく、ファミマだった。
ローソンじゃなかっただけ、マシか。
情報屋に電話したら留守番電話だった。
仕事しやがれ!
とメメっちは、渋顔で言った。
羽「ププッ」
僕「あはは!渋顔って、そのままじゃん」
戦「仕事しろって無職がいうかしら?」
神「次行きますね」
3/18
銭湯で変な3人組に会う。
風呂屋で何の話かと思えば、吸血鬼の話。
これは面白そうな話を聞いた。
ところで、3人で背中の流し合いはどうかと思う。
真ん中の奴、どっち向いても洗わなきゃならないだろ。
メメっちのお気に入りの場所でやってたので、外で会ったら蹴ってやろうと思う。
羽「プププッ」
僕「3人組ってあいつらか!」
戦「知り合いなの?」
僕「ああ、一応。一人はもう―――」
忍「儂が食った」
僕「影から喋んな!」
神「次行く」
3/19
ぶらぶら歩いていたら、小学生発見。
大きなリュックを背負ってウロウロしてた。
んー、あれはなんだっけな?思い出せん?
メメっちも最近は物忘れが酷いな。
羽「ププププッ」
僕「これって八九寺の事じゃね?」
八「あ、そうかも。何か変なアロハのオッサンにつけまわされました!」
僕「ああ、間違いない。忍野だわ」
戦「あの人もロリコンだから」
僕「も、ってどういう意味?」
戦「さぁ?何かしら」
3/20
晩飯を買いに、コンビニへ向かう。
コンビニの前に、このあいだの3人組が居た。
蹴ってやろうと思ったが、逆にガン付けられた。
この野郎と思ったが、腹が減っていたので今日は止めにした。
そいつらの話によれば(盗み聞きしてやった!)、どうやらこの町に吸血鬼が居るらしい。
羽「プププププッ」
僕「案外忍野って小心者?」
戦「さぁ?損得勘定だけで動いてるんじゃないかしら?」
神「次」
3/21
今日こそは見つけたら蹴ってやろうと思ったら、逆に声をかけられた。
話してみれば結構いい奴らだった。
ただ、一応この街のルールを教えてやった。
ちなみに、メメっちの事を先輩と呼んでいた。
いい奴らじゃないか?
羽「ププププププッ」
僕「こいつ、街に来て1週間も経ってねえ!」
戦「やっぱり。詐欺師と同じ匂いがしたはずよ」
神「つぎいきまー」
3/22
今日も奴らが居るかと思って行ったが、コンビニ前に居なかった。
その代り、すげー美人が居た。
雑誌コーナーでるるぶを立ち読みしてた。
が、よく見たらこいつ吸血鬼じゃん。
メメっちは、るるぶの横にある、じゃらんに手を伸ばすフリをして吸血鬼の心臓GET!
吸血鬼は全然気付いてない。
というか、そんなに京都に行きたいのかと。
コンビニの帰り、公園で野宿してた3人組を発見。
店に女吸血鬼が居たと言ったら、段ボールハウスを突き破って大男が発進した。
メメっちも宿なしだが、こいつらは本物だな。
羽「プププププププッ」
僕「おい、忍!」
忍「……」
戦「こんな馬鹿に負けたの?私」
忍「馬鹿とはなんだ?」
神「はい、この話題終了!家壊されるのは困る。次」
3/23
暇~
3/24
腹減った…
3/25
気の弱そうな高校生から金を借りようと思ったら、そいつ彼女持ちでやんの。
風で彼女のスカートがめくれて、パンチラGET!
まぁ、今日はこれがオカズになるからお腹いっぱい。
メメっち、この1週間で3キロぐらい痩せた気がする。
羽「ププ……プンプン!」
僕「これって僕の事だよね?ていうか、カツアゲ!?」
戦「あら、あなた達付き合ってたの?」
僕「忍野の勝手な認識だろ!そのナイフ仕舞え」
神「おちついてください!」
3/26
昨夜は色々面白かった。
コンビニで見た女吸血鬼が3人組に追い回されていた。
心臓なしでも結構頑張るじゃん。
でも最後はフルボッコされて、逃げた。
昨日見かけた彼女持ちの高校生が噛まれた。
ちょっと驚いたが、全部食われなかったみたいだ。
ボロボロになっていたので、メメっちの住処を案内してやった。
一泊1000円位にはなるかな?
そのまま、朝になり腹が減ったので、なけなしの金で食パン購入。
6枚切りなので毎食1枚で二日はイケる。
公園のベンチで朝飯にしてたら、あの3人組が来てメメっちの食パンを勝手に食いやがった!
一人1枚ならいざ知らず、あの馬鹿でかい奴が3枚も食った!
そのまま逃げやがって!今度会ったら絶対に潰す!
羽「ププププププププッ」
僕「えっと……普通、見てたら止めない?」
忍「止めるぞ?儂が言うのも変だが」
戦「全部食われれば良かったのに」
僕「ええー!」
3/27
宿泊費貰えず。
その代り、可愛い寝顔を見た。
これはロリ雑誌に投稿すれば金になる。
が、日本じゃもう絶滅したからな。
ちなみにガキの方は眷族になったみたいだ。
羽「ふう」
僕「おーい、羽川さん。賢者になる要素あった?」
忍「ヌッコロヌ」
3/28
あの二人馬鹿だろ?
突然、太陽の下に出て焼けたり燃えたり。
久々にお笑いを見た気がする。
その晩、メメっちのパンを食った奴らを見つけた。
ちょっとだけ仕返しするつもりが、ついやり過ぎた。
あいつら、こそこそと逃げてやんの、ざまぁ!
ちなみに、眷族になった高校生に借金させてやった。
「ぷぷぷっぷうー、追加300万え~ん」
羽川が壊れ気味だ。
「なぁ、この日記いつまで続くんだ?」
「えっと、一応6月14日までありますが?」
「途中はもう面倒だし、最後読もうぜ」
「いや、結構途中に面白い事書いてありましたよ?戦場ヶ原先輩の事とか」
「貸しなさい」
そういうと、戦場ヶ原はノートを取りあげる。
そして、一人でその日記を読み、顔を真っ赤にしたと思ったら……
ビリビリとノートを破る。
というか、検閲。
自分の事を書かれているページを破り取ってしまった。
「おい!」
「何よ?」
「見せろよ」
「嫌よ」
「いいから」
「じゃあ、私と結婚してくれるなら見せるわ」
「ごめん、それ無理」
「あっそ」
僕達の関係は、雨降って地ぬかるむ。
もう修復なんて無理。
ま、それはそれで楽しかったりもする。
僕も人が変ったよな。
「阿良々木先輩、心配しなくても大丈夫です。内容は私の頭の中に全部入っていますから!この話で薄い本をつくりますから!買ってください」
次の瞬間、神原の口に消しゴム、鼻の穴に蛍光ペン、耳の穴にボールペン、瞼は瞬間接着剤が流し込まれ、頭頂部に分度器が刺さっていた。
「酷いよ、戦場ヶ原先輩」
「神原、その本を出す時は奥付に遺言を書きなさいよ?」
「八九寺ちゃん、八九寺ちゃん名義で出して!」
「嫌です!死にたくありません!」
「もう死んでるじゃん」と僕はツッこみたかったが、自粛した。
なのに、羽川が「もう死んでるよ?」と素で行ってしまった。
で、残っているのは殆ど最後の方だけ。
「神原、残ったページ読んでくれよ」
「あ、はい」
体から色々出しつつ、神原は続きを読む。
6/13
そろそろこの街ともお別れだな。
結構、あの高校生は面白かった。
というか、本気で弟子にしたいと思った。
弱い様で、芯がしっかりしていて、そのうえ人助けが大好き。
メメっちそっくりじゃん。
まぁ、メメっちの場合、それで褒められたり感謝されるのが嫌だから適当な事言ってるんだけどね。
今日は、彼と彼女がデートらしい。
上手くいけばいいねぇ、ま、無理だろうけど。
早かれ遅かれ、彼は別の人を選ぶ。
そういう筋書きになってる。
というか、僕の仕込み。
彼は……おっと誰か来たようだ。
羽「……笑えない」
戦「同じく」
僕「おい、最終日はどうなってんだ!」
神「あ、はい」
羽川と戦場ヶ原が額を突き合わせて何か話しあっていた。
忍野!逃げて!
6/14
ついに旅立つ日が来た。
忍ちゃんに作って貰った500万があるから当分の間、路銀には困らない。
前からハワイに行ってみたかったんだよね。
学生時代を思い出して、可愛い女の子を数人侍らして遊び倒そう!
で、忍ちゃんには僕が作った偽のミスタードーナツのタダ券をやった。
今頃、嬉しそうな顔をして店員に渡して「これ何?お嬢ちゃん」とか言われてるだろうな。
ま、彼が見つけて回収してくれればそれで良いし、見つけられず死んでしまえば彼は人間に戻る。
全ては彼次第。
50/50のゲームを仕込んだところで、僕はこの街を出る。
このノートを見つけた人へ。
この建物は手抜き建築なので、いつ崩れてもおかしくないよ?
もう少し人生を楽しみたいなら、直ぐにここから立ち去りなさい。
もし、このノートを僕の親愛なる友が拾ったなら……
恥ずかしくて、さよならは言えなかった。
でも、また逢いに来るから要らないよね?
というか、500万円無くなったら戻ります。
メメ
「以上です」
「あーあいつはやっぱあれだな」
「そうね、あれだわ」
「うんうん、あれよね」
「そうじゃ、あれじゃ」
「ですね、あれです、あれとしか思えません」
「良く分かりませんけど、あれです」
「ああ、あれです」
せーの
「お人よし」
「メメ日記」おわり
308 : VIPに... - 2010/09/09 21:13:30.52 K4Zxvf.o 66/66本日ここまで。
後日譚はまだ形になっていません。
とりあえず、誰がどうなるか希望があれば書いていてくれると参考になったりもします。
書けるといいな。ん?「後日譚」