関連
黒子「じゃっじめんと、ですの」【前編】

445 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/06/10 21:23:00.62 zLpHt0AKo 267/525


 今回も黒子の出番、超少ない
 ごめん
 次回は黒子メインの予定だから


タイトル「パン食い競争ですの」

446 : 「パン食い競争ですの」 - 2012/06/10 21:23:39.48 zLpHt0AKo 268/525


「何やってんだお前」

 学園都市7人しかいない超能力者(レベル5)の第二位、垣根帝督は尋ねる。
 それもそのはず。
 いつものように垣根が率いる「スクール」のアジトへ顔を出したところ、そこにいたのは心理定規とわっか君。

 因みにわっか君は本名不詳である。なんと本人にすらわからない。
 一方通行のように、自分ですら本名を知らない人間は学園都市では珍しいことではないので、垣根達もその辺りは追求しない。
 では、何故わっか君なのかというと、彼の能力に必要なアイテムのためである。

 彼は能力を発揮するときに、ゴーグルとバンダナのアイノコのようなものを額に巻いている。
 そこから伸びた無数のケーブルを、腰に付けた機械に繋いであるのだ。
 もっとも、普段から常に繋いでいるわけではなく、日常生活には全く必要ないものなのだけど。

 そのわっか君が、なぜか心理定規に土下座しているのだ。

「なんだそりゃ。なんか、新しい遊びか?」

「違うわよ」

 心理定規が答えた。

「よしんばそうだとしても、わっか君と二人だけで遊んでいるわけないでしょう?」

「まあ、てめえはまだしも、俺を除け者にするような根性がわっか君にあるとは思えねえけどな」

「あら」

「どうした?」

「貴方が『根性』なんて。第七位が伝染ったのかしら?」

「おいおい、そりゃあノーサンキューだ」

 そこまで話したところで、わっか君が顔を上げ、垣根の方に向いて姿勢を変える。
 そして再び土下座。

447 : 「パン食い競争ですの」 - 2012/06/10 21:24:14.94 zLpHt0AKo 269/525


「ああ? なんだそりゃ」

「垣根さん! お願いがあるッス!」

「あん?」

 垣根がわっか君を見下ろした。

「因みに、わっか君が私に土下座していたのは、貴方に取りなして欲しいから。つまり、私をあらかじめ味方につけておきたかったという事

よ」

 そこまでして、そして土下座までして頼みたいことがあるのか。
 グループのリーダーとして、垣根はメンバーの面倒をそれなりに見てきたつもりだ。
 それでもわっか君は土下座を選択した。それだけのことを頼もうとしているのだ。

「言ってみろよ。聞くだけは聞いてやる」

「未元物質を分けてください」

「なに?」

「垣根さんの未元物質を分けてください」

「待て待て」

「お願いしますっ!」

 確かに、一旦作り出した未元物質は垣根から離れても存続できる。
 他人に渡すということは可能だ。
 現に、とある理由から相当量の未元物質が木原病理に譲られている。


448 : 「パン食い競争ですの」 - 2012/06/10 21:24:41.52 zLpHt0AKo 270/525


「何に使うつもりだ」

「光学迷彩機能を持った未元物質で、俺の身体を包みたいんです」

「光学迷彩か……確かに、作れないことはない」

「垣根さん!」

「目的は何だ。何のためにそんなものを欲しがってる」

「それは……」

「それが言えないのなら、この話は無しだ」

「待ってください」

「だったら、素直に言うんだな」

 そして、垣根は心理定規に言う。

「おい。外してくれ。女の前じゃ言いにくい話もあるだろ」

 わかったわ、と心理定規は素直に部屋を出る。
 さあ、とわっか君に促す垣根。

「さて、これで少しは話しやすくなったか?」

「ありがとうございます」

「で、どうなんだ?」

「パン食い競争です」

「は?」

「常盤台で、パン食い競争の練習があるんです」

「はあ?」

449 : 「パン食い競争ですの」 - 2012/06/10 21:25:07.70 zLpHt0AKo 271/525


 わっか君は、片手に持っていたディバックを開けると、沢山のパンを取りだした。

「アンパン、ジャムパン、クリームパン、チョコパンです。お一ついかがですか?」

「いや、いらねえ」

 わっか君は、頭から垂れ下がるコードに次々とパンを装備していく。
 ぶら下がるパン。立ち上がるわっか君。
 わっか君の顔周りには、パンが垂れ下がっている状態だ。
 
「この状態で、台の上に乗ります」

 適当な椅子の上に登るわっか君。

「想像してみてください。未元物質の光学迷彩によって、俺がパン食い競争のパンを吊すための土台に見えている姿を」

 そう言われても。
 いや、想像は出来る。出来るが。

「えーと。それで、何がどうなるってんだ?」

「垣根さん。常盤台ですよ? 常盤台!」

「あ、うん」

「超電磁砲御坂美琴、心理掌握食蜂操祈を擁する常盤台ですよ!?」

「あ、はい」

「それだけじゃありません!」

 ぐっと拳を握り、天井に向かって突き上げる謎の情熱。

「婚后光子! 湾内絹保! 泡浮万彬! そして白井黒子! さらにはニューフェイス、白人美少女インデックス!」


450 : 「パン食い競争ですの」 - 2012/06/10 21:25:33.95 zLpHt0AKo 272/525


 わっか君の目は血走っていた。
 垣根は、心理定規を部屋から出したことを後悔していた。

「聞いてるんですか、垣根さん!」

「は、はい。聞いてます」

「それら、ツンデレ、ロリッ子、垂れ目、黒長髪、女王様と数々の属性を兼ね備えた美少女達が!!」

 帰りたいなぁ、と垣根は心から思った。
 常盤台が美少女だらけというのは認めるけれど。
 この情熱はどう見ても、何処かおかしな方向に流れているような気がする。

「パンに向かって走ってくるんですよ?」

「はい?」

「数々の美少女が、全力疾走でこのパンに向かって、ひいては俺に向かって走ってくるんです!」

「はあ」

「全力疾走で上気した顔で、パクパクと口を開いて俺の周囲に群がるんですよ!」

 なんで俺はこいつをスクールに入れたんだろうなぁ、と垣根は思う。

「想像してみてください! 自分の周囲に群がる、上気した顔で口をパクパクしている女子中学生を!」

「おい、バカ言うのもそろそろ……」


451 : 「パン食い競争ですの」 - 2012/06/10 21:26:01.66 zLpHt0AKo 273/525


 レベル5の演算能力は伊達ではない。
 それが、間違いだった。
 ほんの一瞬。ほんの一瞬の気の迷いで、垣根は想像してしまった。
 レベル5の演算能力をフルに駆使した想像力で。

「……おい、その距離まで近づいたら……その……当たるんじゃねえか? ぽにゅっ、と」

「垣根さん」

「ああ、当たるな。間違いなく。超電磁砲と白井黒子以外は!」

「垣根さん!」

「未元物質、好きなだけくれてやる!」

「垣根さん!!!」

「ただし、条件がある」

「なんですか」

「その頭につけてるコード。スペアがあるなら俺にもくれ」

「ま、まさか……」

「パン食いの土台、二つあっても構わねえだろう?」

「垣根さん……俺、俺、スクールに参加できて良かったッス」

「おいおい、涙は成功するまで取っておけ」

「はいっ!」

452 : 「パン食い競争ですの」 - 2012/06/10 21:26:30.60 zLpHt0AKo 274/525

 
 
 
 
 
 
 
「あ、もしもし、心理定規です。あ、白井黒子? 電話は久しぶりね。」
  (中略)
「うん。だから、パン食いの練習が始まったら、とりあえず土台を超電磁砲で吹き飛ばしちゃってね」
  (中略)
「第一位や第七位には私から連絡しておくから、あー、そうね、幻想殺しにも連絡しておくわ」
  (中略)
「ええ、もう、フルボッコで」
 
 
 
 
 


453 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/06/10 21:27:48.80 zLpHt0AKo 275/525


 以上、お粗末様でした

 次回はもうネタは決めているので大丈夫
 次は本当に黒子メインだから


 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

459 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/06/13 00:34:41.80 Sh/nToCLo 276/525

 予定変更して、思いついたネタを一つ。

「炎の転校生」北海道編を読み返していた思いついたネタです。

 タイトルは「囁きですの」

460 : 「囁きですの」 - 2012/06/13 00:35:15.99 Sh/nToCLo 277/525


 プチケンも眠る丑三つ時……

 美琴と黒子の部屋で物音がしている。
 黒子のベッドの中からゆっくりと起きあがる小柄な影。
 
 ……起きましたの

 勿論、黒子である。
 黒子は、暗闇に目を慣らすようにゆっくりと辺りを見回すと、やがてベットから静かに滑り降りる。
 そして、そっと美琴の枕元へ。

 !?

 途中、お姉さまの携帯電話を手で叩きそうになって動きを止める。
 これは先週、お姉さまが上条当麻とお揃いでカップル携帯として買い換えたもの。
 カップルで携帯を新規登録するとゲコ太ストラップがもらえるというキャンペーンをやっていたのだ。
 ちなみに、今週は今週で、友達ペアで新規登録すると先週とは別のゲコ太ストラップがもらえるというキャンペーンをやっている。
 恐るべし、携帯ショップ。
 だからお姉さまは、複数の携帯を持とうとしているのだ。ちなみに、ペアで一緒に登録しようと誘われているのは他ならぬ黒子である。
 しかし黒子は、今の携帯で非常に満足しているので新規に登録するつもりは全くない。

 まあ、それは余談だ。

 枕元にこっそり近づいた黒子は、お姉さまの耳元に囁く。

 ……木原印のハイエクセレントシュークリームですの
 ……一セット三個入りで1200円ですの
 ……ショコラセット、カスタードセット、モンブランセット、ストロベリーセットがありますの


461 : 「囁きですの」 - 2012/06/13 00:35:41.76 Sh/nToCLo 278/525

 
 ぴくり、と美琴が動き、黒子は慌てて自分のベッドに戻ると布団を被る。

 そろり
 そろーり

 布団からちょこんと頭を出すと、お姉さまが起きた気配はない。
 黒子はもう一度、そろそろとベッドから降り、お姉さまの枕元へと。

 そして囁き再開。

 ……モンブランとストロベリーは季節限定ですの
 ……人気がありすぎて、限定発売ですの
 ……毎週土曜日の朝八時から、各50セット限定発売ですの
 ……お一人様、各種一セット限定ですの

 ぴくり
 黒子はベッドへダッシュ。

 そろり
 そろーり

 囁き三度再開。

 ……木原印のハイエク(後略)
 ……一セット三個入りで(後略)
 ……ショコラセット、カスタード(後略)
 ……モンブランとストロベ(後略)
 ……人気がありすぎて、(後略)
 ……毎週土曜日の朝(後略)
 ……お一人様、各種一セ(後略)


462 : 「囁きですの」 - 2012/06/13 00:37:16.48 Sh/nToCLo 279/525


 翌日、いつもの四人組が集まっている。
 やっぱりいつものようにしばらくファミレスでお喋りしていると、

「こういうときは、何か甘いものがいいですよね」

「佐天さん、いつもそればっかり。甘いものばかりだと太りますよ?」

「ぶー、初春に言われたくないよ?」

「えー、ひどいですよ、佐天さん。そんなに甘いものばっかり食べてませんよぉ」

「甘いものねぇ……」

「御坂さん?」

「いいわね、甘いもの」

 我が意を得たり、と頷く佐天を尻目に美琴の言葉は続く。

「木原印のハイエクセレントシュークリームってのがあってね、一セット三個入りで1200円なのよ
 ショコラセット、カスタードセット、モンブランセット、ストロベリーセットがあって、モンブランとストロベリーは季節限定なの
 だけど、人気がありすぎて、限定発売でね、毎週土曜日の朝八時から、各50セット限定発売なのよ
 しかも、お一人様、各種一セット限定なの」

 立て板に水、と言うように突然流暢に説明を始めた美琴に、呆気にとられる佐天と初春。黒子の目はキラーンと光っている。

「あ、あれ?」

「御坂……さん?」

463 : 「囁きですの」 - 2012/06/13 00:37:53.77 Sh/nToCLo 280/525


「あれ、どうして私、こんなに木原のシュークリームに詳しいんだろ?」

「何処かで見たとか」

「うーん。覚えてないんだけど……ま、いいか」

 美琴はニッコリ笑って三人に言う。

「美味しいらしいから、食べてみましょうよ」

「え、でも、今の話だと、並ばないと……」

「木原さんに頼めばなんとかなるんじゃないかな」

「え、お知り合いなんですか?」

「うん、スイーツ木原のパティシエの木原数多って、一方通行の育ての親よ?」

「」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

464 : 「囁きですの」 - 2012/06/13 00:38:20.44 Sh/nToCLo 281/525


「あん? あー、もー、しょーがねえなぁ、みこっちゃんの頼みなら断れねえや。
おう、ところで、あの不幸野郎と別れてうちのモヤシと付き合う気は……あ、そう。ま、いいや」

 よっしゃ、持ってけ。と木原が差し出したのは、各種二セットずつのシュークリームセットである。
 勿論、お金はちゃんと払った。

 そして四人は、ハイエクセレントシュークリームを心ゆくまで堪能したのだった。

「ごちそうさまでした、御坂さん」

「ごちそうさまでした」

「いいのいいの、たまにはね。私だって先輩なんだし」

 ごちそうさまですの、お姉さま

「うん」

 黒子にも頷き、美琴は立ち上がって大きく伸びをする。

「でもちょっと、食べ過ぎちゃったかな」

 仕方ない。と美琴は思う。
 大事な可愛い後輩が、夜中に囁きに来るくらい食べたかったものだもの。
 耳元の囁きがくすぐったくて、それがなんとなく心地良くって、寝ているふりでやり過ごしたけれど。

 これくらいは……ね、黒子。

465 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/06/13 00:40:17.59 Sh/nToCLo 282/525

 
食蜂「アナタたち爆発しなさいよぉ!」みたいな感じで




 以上、お粗末様でした

 次回も黒子メインの予定


 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。


477 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/06/26 00:11:50.81 lWpUR66Bo 283/525

今回、予告していたものとは別のものなんだけど、色々とちょっとアレなので。
短くなった。


タイトル「モスキート倶楽部ですの」

短いよ?

478 : 「モスキート倶楽部ですの」 - 2012/06/26 00:12:28.17 lWpUR66Bo 284/525


 ここは絹旗が用意した会議室。

 一番奥に座っているのは黒子。
 そしてその正面には絹旗とフレメア。
 さらに少し離れたところには、包みを抱えた木原円周が座っている。

 黒子が、一同を見回しておもむろに頷いた。

 皆さん、集まりましたの

「そろそろですね」

 数は足りますの? 円周?

「うん。大丈夫。ちゃんと多めに持ってきているから。『木原』だから、そういうふうにしているよ」

 さすがは円周ですの
 
「それじゃあ、始めますか?」

 絹旗は、メンバーを指折り数え始める。

「白井さん、私、フレメア、円周で四人ですね」

 小さな円卓に座った四人。

 それでは円周、お願いしますの


479 : 「モスキート倶楽部ですの」 - 2012/06/26 00:13:04.66 lWpUR66Bo 285/525


「『木原』特製。レシピは数多おじさんと一緒だよ」

 包みを開く円周。ケースから取り出されるのは人数分+αのシュークリームである。
 ただしこのシュークリーム、何か様子がおかしい。
 形が歪だったり、焦げた色をしていたり。
 しかし、それは紛れもなく木原のシュークリーム。木原は木原でも、木原円周製だけれども。

「こんなとき、『木原数多』ならこう作るんだよね」

 そんなことを言いながら頑張って作った見習いシュークリーム。
 ハッキリ言って失敗作。
 だけど、コンビニスイーツに比べれば十二分に美味しい。見た目はちょっと、アレだけど。いや実際、ちょっとどころじゃないアレだけど。

 モスキート倶楽部、開催ですの

 黒子の力強い宣言。
 テーブルに着いた全員の前には、それぞれ小さなストローが。
 
 ぽすん、とストローがシュークリームの皮に刺さる。

 じゅるり

480 : 「モスキート倶楽部ですの」 - 2012/06/26 00:13:31.69 lWpUR66Bo 286/525


 はうっ

「ううう、超甘くてとろけそうです」

「美味しいにゃあ」

「『木原』だから当然だよね」

 皮は失敗したけれど。
 中身はレシピ通りだから大丈夫。

 お店には出せないけれど。
 美味しいから勿体なくて。

 だからみんなで、ストローでじゅるり。

 じゅるりじゅるり

 はうう

「超美味しいですゥ……」

「にゃあぁぁあぁあああ」

「『木原』だから……『木原』だから……」

 美味しさに全員トリップ中。

 幸せそうに弛緩しきったとろけた顔で、それでもくわえたストローは離さずに。

 シュークリームの皮にストローを差して、中身だけを吸い出すから、ここはモスキート倶楽部。
 命名、絹旗最愛。

 今日も四人は幸せだ。

481 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/06/26 00:14:46.23 lWpUR66Bo 287/525

 以上、お粗末様でした



 次回もこのメンバーの予定です

 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

491 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/08/02 00:41:13.50 wsQsTrAao 288/525

前回の予告とメンバー入れ替わった。
フレメア、那由他が佐天、初春に変更。
というか、この二人のほうが自然な展開だったわ……


タイトルは「講師ですの」

492 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:41:53.12 wsQsTrAao 289/525


 常盤台のレベルの高さは並みではない。
 何しろ現役中学生が、高校生相手に家庭教師が出来る程なのだから。

「じゃあ次、因数分解の公式はどれくらい覚えているの?」

「あ、それはさすがに覚えているんですよ、さすがの上条さんも」

 とある高校の寮部屋では、美琴が上条に勉強を教えていた。

「言ってみて」

「x^2 + 2xy + y^2 = (x+y)^2」

「他には?」

「x^2 - y^2 = (x+y)(x-y)」ドヤッ

「うん。二次の公式はわかった。三次は?」

「三……次……だと?」

「x^3 + 3x^2y + 3xy^2 + y^3を因数分解すると?」

「……」

「因みに二次の因数分解は一般的に中学校レベル、三次の因数分解は高校一年生レベルね」

「ぐ……」

「さあ次よ、次」

「うー」

「あんたねぇ。やりようによってはレベル5をあっさり撃破できる『幻想殺し』の持ち主ともあろうものが、情けないと思わないの?」

493 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:42:26.19 wsQsTrAao 290/525


「それとこれとは話が違うだろ。そもそも上条さんの能力には演算は必要ないのですよ?」

「その辺、削板さんと一緒よね」

「そうそう」

「でも削板さんは、バカだけど頭は悪くないわよ?」

「マジ?」

「単純計算の演算速度なら、一方通行、私、削板さんの順よ?」

「……垣根って、第二位じゃないのか?」

「あの人の演算能力って、未元物質生成制御のほうに特化され気味だから、純粋な四則演算にはソース割かれてないのよ」

 ふーん、と上条。

「ま、どっちにしろ、上条さんには縁のない話ですよ」

「ほらほら、諦めないで次の問題頑張る」

「そろそろ……休憩を……」

「まだ三時間しか経ってないじゃない。お昼ごはんだってまだよ?」

「昼飯まで休憩無し?」

「自分で言うのも何だけど、レベル5第三位が朝から家庭教師に来てるのよ? このチャンスを逃す手はないんじゃない?」

「うう……」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

494 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:42:52.80 wsQsTrAao 291/525


 その頃……

 ……

 黒子は寮の自室に届けられた手紙を凝視していた。

 ついに……黒子にも来ましたの
 緊急事態ですの
 招集ですの


「絹旗、どうしたの?」

「あ、滝壺さん、超出かけてきます」

「何処行くの?」

「なんか、白井さんからメールが」

「ふーん。帰りにお醤油買ってきて」

「超了解です」

 常盤台の寮の手前で、絹旗は二人を発見した。
 黒子のメールの内容からすると、この二人も呼ばれているはずだ。

「佐天さん、初春さん」

「あ、絹旗さんだ」

「やっほー」

 三人は連れだって、白井の部屋へと向かう。

495 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:43:19.08 wsQsTrAao 292/525


「超来ましたよ」

「白井さん、来ましたよ」

「こんにちわー」

 いらっしゃいませですの

 黒子は部屋を出ると、三人を別室へと案内する。

「教室?」

 そこは常盤台の特別教室だった。
 何故こんな所に? と不思議がる三人に、

 これを見てくださいの

 黒子は一枚の手紙を見せる。 
 
「なんですか、これ」

 初春が受け取り、読む。

「……つまり、白井さんが臨時の講師になると言うことですね」

 常盤台の生徒は、外部から講師として呼ばれる場合がある。今回は、黒子に白羽の矢が立ったと言うことなのだ。

「凄いことなんですか?」

 絹旗はイマイチぴんと来ていない。
 いつもそばにいるのがレベル5の麦野である。一見そうは見えない者もいるが……根性とか学ランとかハチマキとか……、
レベル5であれば外部の大学生の講義など片手で出来るような連中である。
 だから、麦野の片腕とも言える絹旗には今ひとつその凄さがわからない。

 でも、佐天と初春にはよくわかる。

496 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:43:45.50 wsQsTrAao 293/525


「凄い事じゃないですか」

「うんうん。私もそう思う」

「……それで、白井はどうして私たちを呼んだんですか?」

 練習ですの

 教える内容自体に不安はない。黒子だって常盤台である。
 ただ、一クラスの人数を前に上手く話すことが出来るかどうか。不安はそこだ。

「つまり、私たちを生徒役に見立てて練習したいと」

「ということは、白井さんが行くのは中学校?」

 そうですの

「わかりましたけど、三人じゃあ超足りませんよ?」

 そこは人形を使いますの

「人形ですか」

 もうすぐ運ばれてきますの

 そこへやってくる、台車に乗せた大荷物を引っ張るプチケンティウス。

 ご苦労様ですの

 台車に手を伸ばし、人形を次々とテレポさせる黒子。

「うわ」

「ひゃあ、なに、これ」


497 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:44:11.55 wsQsTrAao 294/525


「……人体模型ですね。学園都市製の細密人体模型。外部から来た人が本物の死体と間違えてアンチスキルに通報したっていう優れものですよ、佐天さん」

「何処のトムクルーズよ……」

「超リアルです」

 紹介致しますの
 人体模型1号さまですの

 次々と運び込まれる人体模型。

 人体模型2号さま、人体模型V3さま、人体模型マンさま……最後に、人体模型RXさま

「超不気味です!」

「これはちょっと……」

「うーん……」

 次に……

「まだあるんですか」

 白骨模型クウガさま、白骨模型アギトさま……最後に、白骨模型フォーゼさま

「あう……あう……あう……」

「初春、大丈夫?」

「初春さんがトラウマ超絶賛製造中です」

 困りましたの

「いや、そのシリーズやめましょう、と言うか、そんなものを常備している常盤台に超ドン引きです」

 数が揃えられるシリーズがこれだけですの

498 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:44:38.12 wsQsTrAao 295/525


「ちょっと待ってください」

 携帯電話を取りだして何処かへ電話する絹旗

「……そうです……大至急……馬面はちゃんと従ってればいいんです!」

 数分後、一台のバンがやってくる。

「おい、絹旗、なんだかわかんねえけど、頼まれた荷物持って……」

「あ、もう帰って良いですよ」

「は?」

「荷物だけ置いたらとっとと帰ってださい。こんな所にいると捕まりますよ?」

「いや、待て」

「白井さん白井さん、あんなところに見るからに犯罪者なスキルアウトがいますよ」

 じゃっじめんとですの

「ちょ、おま……」

「えーと、私もジャッジメントです」

「初春ちゃんまで!?」

 這々の体で逃げ出した浜面を見送った一同は、絹旗の持ってきた荷物を広げる。

 ぬいぐるみですの

「くまさんがいっぱいいます」

「うさぎさんもたぬきさんもいますよ」

499 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:45:08.87 wsQsTrAao 296/525


「あと、ばるたん」

 それは、お子様に大人気のぬいぐるみ一族、バルタニアファミリーである。
 ちなみに、シルバニ○ファミリーのバッタモンである。

「絹旗さん、これ……」

「バッタモンから溢れるC級感覚が超最高なんです」

 絹旗のC級好みは映画だけではないらしい。

「いいですけど。このぬいぐるみをどうするんですか?」

「このぬいぐるみを机の上に配置することによって、生徒が超沢山いるように思えるんです」

 早速ぬいぐるみを並べ始める一同。
 並べ終わると今度は三人それぞれの席に座る。

「白井先生、準備できました」

 はじめますの

 こてん

 うさぎがこけていた。

 こけましたの

 席へと駆け寄り、うさぎをきちんと座らせる黒子。
 そして教卓へ戻る。

500 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:45:34.60 wsQsTrAao 297/525


 今度こそ始めますの

 こてん

 くまがこけた。

 席へと駆け寄り、くまをきちんと座らせる黒子。
 そして教卓へ戻る。

 今度こそ……

 こてん

 きつねがこけた。

 席へと……(中略)

 あらいぐまがこけた。りすがこけた。ばるたんがこけた。

「あああああ」

「安定悪いですね、バルタニアファミリー」

「所詮、バッタモノだからね」

「おい」

 ばたばたと倒れていく生徒達。
 教卓に立ったまま、自らの無力を噛みしめる教師白井黒子。

 無力……ですの……

 生徒達を机に大人しくさせていることすら出来ない。いくら講義が出来てもこれでは意味がない。

501 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:46:01.33 wsQsTrAao 298/525


「白井さん! まだです!」

「諦めちゃ駄目です!」

「超頑張ってください!」

 初春が、佐天が、絹旗が走る。
 倒れるぬいぐるみ達を支え、補助し、座り直させる。

 こてん こてん こてん

「キリがありません」

「あーーー。こうなったら机に縫いつけます!」

「その必要はねェ!」
 
 ドン、と足下を踏みならす音。それと同時に直立し、きちんと座り直すぬいぐるみたち。

「こ、これは!?」

「足下を伝わるこの衝撃は、まごうことなくベクトル操作!?」

「あ、こんにちは。一方通行さん」

「よォ、面白そォなこと、やってンじゃねェか」

502 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:46:28.72 wsQsTrAao 299/525


 一方通行を先頭に、入ってきたのは垣根、麦野、削板、浜面、滝壺、フレンダ、結標、そして最後に食蜂。

「こいつに話聞いて、ピンと来たんでな。ちょっと顔出させてもらった」

 浜面を示す垣根。

「ついでに、暇そうな連中集めて即席の講義でもしてやろうかってな」

「いや、俺は講義なんて無理だから、人数合わせで座ってるだけだから」

「それでも結局ぬいぐるみよりはマシって訳よ」

「ま、テレポーター仲間だしね」

「あのね、黒子ちゃ……」

 一番後ろにいた食蜂が前へ出ようとしたところで

「あ、ここですわ」

「白井さん、水臭いですわ。私たちにも声をかけてくださればいいのに」

 婚后、湾内、泡浮の三人である。

「あ、あら、こんなにお客様が……食蜂さんまで」

「へえ、黒子って結構人望あるのね」

 てれてれ

「私はそんなしらいを応援してる」

「いや、あの」

503 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:46:55.47 wsQsTrAao 300/525


 再び背後に隠されてしまうけれど、頑張って前に出る食蜂。

「ところで黒子ちゃん、その講義依頼の手紙なんだけどぉ?」

 ひょいっと手を伸ばし、黒子の懐から手紙を抜き取る。

 なんですの?

「うん、ちょっと……」

 すぐに読み終え、首を傾げる食蜂。

「これ、御坂さん宛じゃなぁい?」

「へ」

「はい?」

 !?

「ほら、ここ」

 確かに、宛名は「御坂美琴」となっている。

「あらら」

「本当ですね」

「超ビックリしました」

 ……

「白井さん?」

 黒子は震えている。

「……恥ずかしがってる?」

「……まあね、これだけの人数の前で間違いでした、なんてね……」

504 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:47:21.89 wsQsTrAao 301/525


「ま、勘違いは誰にでもある。そう、気にすることはない」

「そうそう、落ち着け落ち着け」

 しゅん

 黒子が手紙を掴むと、その姿が消える。

「あ、テレポしちゃった」

「何処行ったの?」

「恥ずかしがって逃げたのか?」

「……結標、追うぞ」

「え? ちょっ、ちょっと、そんなこと言われてもそもそも何処行ったかわからないのに」

「北北西から電波が……」

「でかした滝壺!」

「よし、全員飛ばせ、結標」

「いや、私、自分を飛ばすのはちょっと……」

「トラウマ力なんて、ちょちょいっと消しちゃうゾ」

「え? あ、心理掌握!?」

「よし、飛べ、結標」

「あのねぇ……はぁ、わかったわよ。滝壺さん、ナビお願い」

「北北西……」

505 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:47:47.81 wsQsTrAao 302/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 その頃、上条は苦しんでいた。
 日頃使い慣れない脳みそがオーバーヒートを起こしているのである。
 幻想殺しに演算は要らないのだ。

「美琴センセー、きゅ、休憩を……」

「情けないわね……」

 それじゃあ、昼食込みの休憩でも、と美琴が言いかけた瞬間、

 しゅんっ

 ドアも壁も一切無視して室内にいきなり現れる人物一人。

「黒子?」

 お姉さまっ

 黒子の手に握られているのは一枚の手紙。
 突きつけられたそれを受け取った美琴はざっと目を通して、それが講師依頼だと知る。

「講師依頼来てたんだ」

 間違いがあって、黒子が受け取ってしまいましたの

「ああ、そうなんだ。え、もしかしてそれに気付いて急いで届けに来たの?」

 お姉さまのお手紙ですの

「うん。まあ、それはそうなんだ……」

 言いかけた美琴は絶句する。

506 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:48:14.34 wsQsTrAao 303/525


 ドアの向こうから聞こえる大音量。

「ここ? ここなの?」

「ここから、しらいのデンパが来てる」

「んー? なんか見覚えのある建物だね、初春」

「ドアの向こうに白井がいるはずだ!」

「ちょ、第七位さん! なんで構えてるのぉ!?」

「すごーいパーンチ!」

 ばこん、と吹っ飛ぶ上条家のドア。
 先頭で飛び込んでくるのは垣根と一方通行である。

「白井! いるのか?!」

 いますの

「突然消えるンじゃねェよ、驚くだろォが」

 失礼しましたの
 お姉さまに一刻も早くお手紙を……

「え、なに? なんなの?」

 事態についていけない美琴。

「あー、そういうことね」

 垣根たちの後ろから顔を出した麦野達はその姿に、面白いものを見つけた、というようにニヤリと笑いかける。

507 : 「講師ですの」 - 2012/08/02 00:48:44.89 wsQsTrAao 304/525


「みこっちゃん、こんな所でなにしてるのかにゃ~ん?」

「こ、これは、もしかして超逢い引き、というやつですか?」

「ふふふ、超電磁砲も隅に置けないって訳よ」

「きぬはた、ふれんだ、馬に蹴られるよ?」

「ありゃりゃ、御坂さん、もしかしてお邪魔でしたか?」

「佐天さん、駄目ですよ、邪魔しちゃ」

「麦野さん? 絹旗さん? フレンダさん? 滝壺さん? 佐天さん、初春さん?」

 あわわわと、ニヤニヤ笑いの一同を見渡す美琴。

「私たちもいますのよ? 御坂さん?」

「婚后さんたちまで?! なんで?」

「白井さんを捜していたらここに辿り着いた。それだけのことですわ」

「べ、別に私は、ただ、その、勉強をこいつに……あ」

 指さした先には、削板の吹っ飛ばしたドアの直撃を受けて悶絶している家主が一人。

「ふ、不幸だ……」



 その後、立派に講師をやり遂げた美琴は、上条の看病に付きっきりとなり、それはそれで満更でもなかったらしい。

 
 

508 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/08/02 00:49:13.57 wsQsTrAao 305/525


 以上、お粗末様でした



 

 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

514 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/08/09 00:48:22.80 z0I/vLixo 306/525

 今回はちょっとシリアス風味

 タイトルは「ネコですの」

515 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:49:02.25 z0I/vLixo 307/525


「そこまでだ」

 ステイルは静かに声をかけた。

「逃げ道はない。いや、正確には二つあるか」

 告げられた男はステイルを睨みつけ、背後を振り向き、そして止まった。
 男の視界に映るのは、長刀を掲げた聖人の姿。

「僕を倒すか、彼女を倒すか。好きな方を選べばいい」

 ステイルの歩みは止まらない。

「ま、彼女よりは僕のほうが楽かも知れないぞ?」

 男は……魔術師は両手を上げる。

「……降参しよう、ステイル・マグヌス」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

516 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:49:28.37 z0I/vLixo 308/525


 にゃあ

「ネコ……ですよね?」

 初春は首を傾げた。

「どうしてこんな所に?」

 ここは風紀委員詰所。野良猫が好んで立ち入ってくるような場所ではない。

「誰かの飼い猫かな?」

「かもしれませんね……って、佐天さん、いつの間に」

「ふっふっふっ。初春あるところ佐天さんありなのだよ」

「訳わかりませんよ」

 にゃあ

「ほら、ネコも呆れてます」

「えー、ネコにまで呆れられてるの? 私」

「そうですよ」

 にゃあ

「傷つくなぁ……」

 にゃあ

「あ、どっか行くんですかね」

「ネコちゃんバイバーイ」

 にゃあ

「……なんか、見覚えあるネコですね」

「あ、初春もそう思った? 私も」

517 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:50:17.93 z0I/vLixo 309/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 君たちのことだ。私の正体などとうに割れているのだろう?

 ああ、その通りだ。さすが女狐の狗どもだな。鼻が利くと見える。

 ふむ。
 確かに、君の言うとおりだ。私たちの狙いは禁書目録でもある。

 なに、ばれたところでかまわん。逆に、それ以外の目的で学園都市にやってくる敵対魔術師がいるなら教えて欲しいものだ。

 だが、私のみに関して言えば、狙いは禁書目録ではないよ。
 私程度の術者では禁書目録を狙うなどとてもとても。

 そう。能力者どもだよ。神の摂理に逆らうふざけた力の持ち主どもだ。

 私はこう見えても、全ての陣営の魔術師に敬意を持っているつもりだよ?
 魔術師と能力者は違う。あまりにも違いすぎるだろう。

 そうだな。レベル5を狙っても良かったのだが、私としては、レベル4以上なら誰でいいと思っていたよ。
 そう、誰でもよかったのさ。誰でも。
 まあ、彼女は不運なんだろうね。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

518 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:50:44.29 z0I/vLixo 310/525


 にゃあ

「ネコです。とミサカ・ライブラは近づきたいのを堪えながら冷静に指摘します」

「待ってください。ライブラとはどういう事ですか? とミサカ03号は尋ねます」

「シスターズそれぞれに12星座を当てはめたのですよ、とミサカ・ジェミニは答えます」

「では、ミサカは今後、ミサカ・ペガサスと呼称します」

「それは12星座ではない、とミサカ・アクィラは指摘します」

「プリキュアは黙ってろ、とミサカ・カプリコーンは罵ります」

 にゃあ

「それにしても、このネコはミサカ達の静電気を恐れないのですね、とミサカ・サジタリウスはネコを撫でながらほっこりします」

 にゃ……にゃ……あ

「どう見ても我慢してますよ、とミサカ・キャンサーは健気なネコに涙します」

 慌てて抱き上げていたネコを降ろす、ミサカ・サジタリウス。

 にゃあ

「ああ、ネコが逃げていきます。とミサカ・アテナは……」

「……アテナ? ……ちょお待てや」

 語尾を忘れる程の震撼……ミサカに走る……!


519 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:51:16.48 z0I/vLixo 311/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 目的かね?
 そんなもの、君たちにだってとうにわかっているだろう。
 科学と魔術の融和に反対する者は、君たちが思っている以上に多いのだよ。

 だから私はくさびを打ち込むことにした。
 ある種の実験、あるいはデモンストレーションと思ってくれてもいい。

 なに、ごくごく簡単な魔術だよ。君たちだってよく知っているかもしれないな。
 つまらん、しかし一応は由緒のある術式だ。
 人々の共同幻想、物語の上に成り立つ魔術の強固さ、知らぬ君たちでもあるまい?

 君たちも知っているだろう?
 こびとのルンペルシュティルツヘンを

 誰に?
 さあね。
 私は誰に術式をかけたのか……しらんよ。

 落ち着きたまえ。君たちが私の記憶を探ったとしても無駄だ。
 なにしろ、本当に知らないのだからね。
 私が知っているのは、彼女がレベル4らしいということだけ。
 さて、どう探すかね?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

520 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:51:43.77 z0I/vLixo 312/525


 とあるコンビニエンスストアでバイト中の原谷は、自動ドアから入ってくる二人連れにいつものように声をかけた。

「いらっしゃいま……」

「なんだ、こんな所でバイトしてるのか」

「げっ」

 削板と……珍しいことに食蜂のペアである。

「よし、これも何かの縁だ!」

「相変わらず声が無駄にでかい!?」

「ファミチキください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「だから、いきなりでけぇ声あげんな! うるせぇよ!」

 原谷と同じくしかめ面になった食蜂が、何を思ったか前に出る。 

(ファミチキください)

(こいつ直接脳内に・・・!)

(ナンバーセブンのバカ声力で耳がキーンとしてるんだけどぉ)

「あぁ。それはこいつが悪い。圧倒的にこいつが悪い」 

(早くふぁみちきを出すんだゾ)

「少々お待ち下さ……あれ、あんたら、後ろ」

 にゃあ

「あれ? ちょっと待ってくださいね。なんか、ネコが入ってきたみたいで」

(ネコ? いつの間に? あれ? あれ?)

「お前客か? 違うよな? ネコは金持ってないもんな。うん、悪いけど追い出すぞ」

(この感覚……黒子ちゃん!?)

 にゃあ

(待って! ちょっと待って!)

「はい?」

521 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:52:11.25 z0I/vLixo 313/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 王様からの無理難題に困っている男にルンペルシュティルツヘンは言いました。

 ああ、助けてやるとも。おいらがお前さんを助けてやるとも。

 だけど、その代わり娘はおいらの嫁になるんだ。

 いいか、おいらの名前を知ってるか?
 おいらの名前を言い当てられなかったら、娘はおいらのお嫁さんになるんだ。

 三日後に、また来るからな。

 ああ、助けてやるとも。お前さんを助けてやるとも。だけど娘はおいらの嫁さんだ。
 それが嫌なら、おいらの名前を答えてみろ。

 男は困ってしまいました。
 こびとの名前なんてわかりません。
 このままでは、娘はこびとのお嫁さんになってしまいます。
 どうしよう。
 どうしよう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

522 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:52:38.65 z0I/vLixo 314/525


「魔術……だと?」

 がぶり、とファミチキを食べながら削板は言う。
 インデックスやステイルと知り合いになっている以上、魔術の存在自体には今更疑問はない。

「……黒子ちゃんの記憶ではそうなってるんだけど」

「元に戻す方法は?」

「黒子ちゃんの名前を呼ぶこと」

「はぁ?」

「条件付きなのよぉ」

 名前を呼ぶ者の条件は二つ。
 一つは、心からの確信を持って呼ぶこと。
 一つは、黒子が魔術をかけられたことを知らないこと。

「おい」

 削板の口調にやや焦燥が混じる。
 そう、無理だ。
 二つの条件は矛盾している。
 魔術の存在を知らずに、どうしてネコの正体が黒子だと確信できるのか。
 ネコが黒子だと確信できる者が、どうして魔術を知らないのか。

 食蜂は黒子が魔術にかけられたことを知ってしまった。
 削板も同じく。

 だが、削板はクロコネコを抱き上げる。

 にゃあ

523 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:53:17.91 z0I/vLixo 315/525


「行くぞ」

「どこに?」

「決まってッだろ? これを解決するのは、いくら俺の根性でも無理だ」

「想像はつくけどぉ……うまくいくかしらぁ? 幸運力に自信はないわよ? あの人の彼氏、不運力の塊だし」

「運も根性も関係ねぇ……。……ってやつだ」

「聞こえなかったゾ?」

「……」

 いきなり無言の削板を不審に思った食蜂は、前に回り込んでその顔を見上げる。

「……その……二人の絆……ってやつだ」

 真っ赤になって明後日の方向を見ながら言う削板。

「もしかして、照れてる? ふぅん、変なところで照れるのねぇ」

「……」

「可愛いゾ☆」

「と、とにかく行くぞ!」

524 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:53:47.84 z0I/vLixo 316/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 さて、それでは、きみたちは私をどうする気かね?
 私を殺せば、レベル4を一人確実に見捨てることになるだろうが、それもまた結構。
 学園都市の能力者達も喜ぶだろうな。科学と魔術の融合はより強固に進められるだろう。
 なにしろ、そうそうたる魔術師が能力者一人を見殺しだ。

 ああ、失礼。殺したわけではないか。
 ネコのままにしておく……はて、これを何と表現すればいいのかな?

 ネコのママ……
 ネコまんま、なんてどうかね?

 おやおや、ステイル君、英国紳士ともあろうモノがこの程度のジョークで怒ってはいけないなぁ。

 ん? カンザキ……だったかな? 聖人もあろう者が何を焦っているのかな?
 
 別にいいんじゃないかな? 能力者の一人や二人。
 所詮魔術と科学は相容れぬもの。今なら君たちの過ちも、謝罪と共に受け入れようじゃないか。

 そもそも我々は……

 ん?
 なに?
 これは?

 鉄製の針?

 なんでこんなものが……
 いや、これは……
 突然ここに現れた?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


525 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:54:16.32 z0I/vLixo 317/525







 じゃっじめんと、ですの






526 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:55:00.22 z0I/vLixo 318/525


 御坂美琴は、白井黒子の隣で凶暴な笑みを浮かべている。
 その背後に陣取っているのは、削板軍覇と食蜂操祈。

「な、何故……」

「削板さんと食蜂さんが黒子を連れてきてくれたのよ」

「しかし、私の術式は……!」

 削板と食蜂が同時に笑った。

「理解力のない人ねぇ」

「根性もなさそうだな」


 美琴は削板の抱いたネコを見た瞬間、首を傾げた。
 本人も、その理由はわからない。
 それでも、その時、その瞬間、その刹那。
 美琴の中で何かが腑に落ちた。

 にゃあ

 そこに白井黒子がいる。

 理由も理屈も根拠もない。
 勘ですらない。

 ただ、わかってしまった。

 だから、口にした。

「何してるの? 黒子」

 にゃあ

 それが、ネコの最後の鳴き声だった。


527 : 「ネコですの」 - 2012/08/09 00:55:30.52 z0I/vLixo 319/525


 そして今、白井黒子は立っている。御坂美琴の横に。
 そこが自分の定位置だとでも言うように。


「ねえ、ステイルさん、そこにいるのが、ウチの黒子に手を出してくれた魔術師でいいのかな?」

「そのようだね」

「因みに、貴方達に引き渡した場合この男はどうなるの?」

「そいつの陣営が認めるかどうかにもよるが。取引材料だろうね。だから、怪我をさせてもらっては困る」

 ああ、とステイルは思いついたように付け加える。

「もっとも、僕が捕まえる前に傷ついていたというのなら、僕の知ったことではないね」

「ふーん。ところで、いつ捕まえるの?」

「二時間後ぐらいでどうだろう?」

「うん。いい感じ」

 きっかり一時間後、魔術師は学園都市に手を出したことを心から後悔した。
 それでもまだ、残りは一時間あったのだ。

528 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/08/09 00:55:57.31 z0I/vLixo 320/525



 以上、お粗末様でした



 

 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。



536 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/08/16 01:44:00.30 vqGKcHQ5o 321/525


一レスだけ、オマケ的なものと疑問解消を

上条さんはこの世界では魔術師と戦っていないので、「幻想殺し」が魔術に通じるかどうかが不明です。
因みに皆は「幻想殺し」を「対能力者用能力」と認識しているので、「対魔術」という発想はありません。


ついでに、超能力者の皆さんと、レベル4お一人に聞いてみましょう。

貴方にとって上条当麻とは?

「ただの三下だ。……ま、第二位よりは使えるンじゃねェか?」

「レベル差関係無しに誰とでも付き合えるなかなかの好漢だな」

「」(何を聞き違えたか、真っ赤になって電撃を漏らし始めたためインタビュー断念)

「あー、浜面より毛が三本多いわね」

「お馬鹿さぁんよねぇ。まあ、正義力?はたっぷりありそうだけど」

「あー、勘弁。アイツに下手に触られたらこっちのボクは消えてまうからね。友達づきあいも苦労してるんよ?」

「ああ見えて根性のある奴だぞ」

 おにいさま、ですの



537 : VIPに... - 2012/08/16 02:48:28.36 js5UybySO 322/525

六位の能力って

538 : VIPに... - 2012/08/16 09:25:38.38 6gYfkDYLo 323/525

むぎのんは何でそんなことを把握しているんだ

539 : VIPに... - 2012/08/16 09:31:27.58 3J5ezZ2u0 324/525

「猿は人間より毛が三本少ない」って言い回しがあるので、
上条がどうのこうのよりも、浜面を猿扱いしてるだけかと

542 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/08/29 23:55:34.68 AbDM0rRho 325/525

>>537

「多重存在」(コピーペースト)
分身を作り出す能力。
本体はインデックスと交換でイギリスへ留学中。
学園都市に残っているのは分身体なので、上条に下手に触られると消失してしまうと言う設定。

本編とは全く関係ないし、今後も出てこないはず。


>>539
その通りです


今回のタイトルは「パートナーですの」

543 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:56:09.55 AbDM0rRho 326/525


 学園都市中枢部の一室で。

「あー、なにこれ、どうやったらこんな無茶な演算結果が出るのよ」

「麦野さんぼやかないで、そこのバグは仕方ないのよ」

 目を血走らせた麦野と美琴の前には、大型のディスプレイ。
 そこには無数の数値が表示されていた。

 常人ならば羅列を見ただけでギブアップだが、そこはさすがのレベル5。
 二人とも、その数列のなす意味をきちんと解釈して咀嚼している。
 が、しかし。

「かかかかっ、この程度でギブアップたァ、所詮三位四位ですかァ?」

「違いねえな、ツートップとその格下には決して越えられねぇ壁があるって事だ」

「ああ?」

 一方通行と垣根の挑発だらけの笑い声に即座に反発するのは、当然のように麦野である。

544 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:56:38.02 AbDM0rRho 327/525


「ちょっとばかしそろばんが速いくらいで、粋がってんじゃねえぞ? 磨り潰すぞ、コラ」

「麦野さん、こっちに集中して!」

 麦野を窘める美琴の目は数列から離れず、その両手はキーボードをリズミカルに叩き続けている。
 
 四人が行っているのは試験、テストの類ではない。
 季節外れの集中豪雨と雷が学園都市を襲ったのは昨日のこと。
 予想を遙かに超えた被害を受け、学園都市内の中枢機能を司るメインシステムが一部停止してしまったのだ。
 そのうえ、復旧に必要な技術者達の詰め所までが被害を受け、死者こそないものの怪我人が出ているのだ。
 そこで、システム復旧に四人は駆り出されたわけである。
 因みに、削板はシステム周りの「物理的」被害の修復を、食蜂はシステム復旧に必要な怪我人のケアを、それぞれ

別処で手伝っている。

 本来学生のやるべき事ではないのかもしれないが、ここは学園都市、そして六人はレベル5である。それなりの、義

務というモノがあるのだ。
 
「あー、疲れた」

 そして、しばらくの作業が終わると、四人はそれぞれ順番に休憩に入る。

545 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:57:07.26 AbDM0rRho 328/525



「……絹旗、なんか飲み物買ってきて……」

「あー、黒子。私もお願い」

「超了解です」

 わかりましたの

 部屋の隅で待機していた二人が、急に生き生きと立ち上がって走っていく。

「ちっ、使いっぱか、俺も誰か連れてくりゃよかった」

 垣根がぼやくと麦野が笑う。

「ははっ。わっか男は豚箱だし、心理定規とは冷戦中だって?」

「うるせー、ブタ箱じゃなくて入院だ。ありゃお前らのせいだろうが」

「いや垣根さん、どう考えてもわっか君が悪いと思うんだけど」

546 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:57:41.27 AbDM0rRho 329/525



「恐ろしいところだぜ、常盤台……」

 (>>445-453「パン食い競争ですの」参照)

 因みに、常盤台突入直前で垣根は殺気を感じて引き返したため無事である。
 殺気を感じても突入したわっか君に栄光あれ。

「俺が死んでも、俺の魂は常盤台を永久に漂うんすよ、主に更衣室とか」

 それが垣根と交わした最後の言葉である。
 そしてその事件以来、垣根に対する心理定規の態度は冷たい。
 だから、今日も垣根は一人である。

「情けねェな、所詮第二位って事か?」

「うるせえ、お前だって一人だろうが。つか、お前は決まったパートナーそのものがいねえだろうが」

「……妹達、連れてきていいかなァ?」

「当面は無理だろな」

「くっ……」

547 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:58:08.38 AbDM0rRho 330/525


 そこへ、飲み物を買って戻ってくる黒子と絹旗。

「はい、ご苦労さん」

「ありがと、黒子」

 二人は持ってきたジュースを殆ど一息で飲み干してしまう。

「う……あー、生き返る」

「あー、美味しい、気持ちいいっ」

 飲み終えると、美琴はやや強引に黒子を引き寄せると膝に乗せる。

「黒子分補給……んー、癒される」

 膝に抱えた黒子を抱きしめながら、美琴は頬を黒子の頭にスリスリと擦りつける。

「疲れが取れる……あー、疲れが消えていく……もふもふ」

 黒子は真っ赤になっているけれど、抵抗しない。

 てれてれ


548 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:58:45.36 AbDM0rRho 331/525


「おいおい、一方通行、アレ見てみ、なんか第三位が凄いスキンシップを」

「……羨ましいなら、心理定規呼べば?」

「俺が心理定規にあんなことやったら間違いなくアンチスキル呼ばれる」

「あと、三下とか、削板とか、俺とか」

「俺フルボッコじゃねえか」
  
「お?」

「どうした」

「第四位が動いた」

「なんだと?」

 黒子と美琴をじっと見ていた麦野は、やおら絹旗を捕まえると、そのまま引きずり込むようにして膝の上に固定する。

「麦野?」

「嫌なら止めるけど?」

549 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:59:15.84 AbDM0rRho 332/525


「え」

「最愛分補給~~」

「ひゃ」

「髪の毛すべすべして気持ちいい……」

「あう……む、麦野……?」 

「んー?」

 上から絹旗の頭を両手で挟み込んだ麦野は、絹旗の頭を上向かせると、その額に自分の鼻がくっつくように接近する。

「嫌なら、止めるけど?」

 うりうり、とこめかみを刺激しながら麦野は笑って尋ねている。

「うー、超意地悪です」

「うっふふ、だって可愛いもの」

 ニコニコと笑いながら、これ見よがしに美琴に横目を向ける麦野。

「レベル4で一番可愛いものねぇ、絹旗は」

550 : 「パートナーですの」 - 2012/08/29 23:59:43.63 AbDM0rRho 333/525


 真っ赤になって、あうあうと呟く絹旗。
 麦野はそんな絹旗を全身で抱きしめている。

「ほぉ……」

 ぽそり、と美琴が呟いた。

「麦野さん、それはどういう意味かしら?」

「ん? 言葉通りだけど?」

 きゅっ、とさらに絹旗を抱きしめる。

「レベル4能力者で一番可愛いのは、ウチの絹旗最愛でしょ?」

「まあ、確かに、絹旗さんは可愛いわよね。麦野さんに横でちんまりとしている姿は可愛らしいわよ?」
「でもね、それはちょろ~っと、違うんじゃないかな」
「レベル4で一番可愛いのは」

 美琴は黒子に背中から抱きついた。

「誰が見ても、黒子じゃないかな?」

 おねえさま
 てれてれ

551 : 「パートナーですの」 - 2012/08/30 00:00:17.65 CWMnK6uho 334/525


「ねえ、黒子。一番可愛いのは黒子だよね」

 一番きれいなのはお姉さまですの

「ふふっ、ありがとね」

 そんな二組を呆然と眺めるレベル5のワンツートップ。

「何やってンだ、あいつら」

「まあ、目の保養にはなるな」

「レベル4で一番可愛い……ねェ?」

「……結標淡希と婚后光子にチクろうか」

「そこに滝壺入れねェと、浜面がうるせェぞ?」

「つか、あいつは問答無用で滝壺が一番可愛いって言うだろ」

「あァ、そりゃそォだな。よし、リア充爆発しろ」

「……こ、この第一位、無能力者……しかもスキルアウトのチンピラに嫉妬してやがる……」

 などと語り合っている間に、二組は少しずつエスカレートしていた。


552 : 「パートナーですの」 - 2012/08/30 00:00:48.42 CWMnK6uho 335/525


 完全に膝の上に載せた抱っこ状態。
 乗せられて抱っこされた二人は頬を染めて、それでも嬉しそう。
 抱っこしている二人は目がちょっと怖い。色んな意味で。

「まあ、確かに麦野さんから見た絹旗ちゃんは可愛いですよね。歳の差が大きいから」

「まあ、美琴ちゃん、黒子ちゃんにべったりだものねぇ。他に友達がいないから」

 破滅の音が二つ。
 睨み合う瞳と瞳。お互いを牽制し合う、第三位と第四位。
 それでもしっかとパートナーを抱きしめた両腕は揺るがない。
 
 まさに一触即発の危機を、黒子と絹旗は肌で感じ取っていた。
 なんとかクールダウンさせねばならない。
 二人は考える。
 一体、どうすれば。
 二人は辺りを見回した。そこには、第一位と第二位が。

「ん?」

 二人の視線に気付く垣根。

553 : 「パートナーですの」 - 2012/08/30 00:01:20.65 CWMnK6uho 336/525


「ほぉ……この俺に助けを求めるとはわかってるじゃねえか」
「この場を納めるには、この俺の常識の通用しねえ頭脳が必要だって事か」

 親指を立てる垣根、頼りがいのあるサムズアップである。
 そしてその拳をそのまま横倒しにすると、口づける。

!?

「!?」

「……ふっ、わかってくれたか……古今東西、女をクールダウンさせるのはいい男のキスと相場が決まっている」

「あァ、わかった。垣根くンは馬鹿ですか」

 新しい始まった二人のやりとりには目もくれず、黒子は美琴の手の中で身を捩る。具体的には向かい合わせになる

ように。

「どうしたの? 黒子」

554 : 「パートナーですの」 - 2012/08/30 00:01:47.12 CWMnK6uho 337/525


 黒子は手を伸ばし、美琴の頭を掴む。

「黒子?」

 そして額に、近づいて、

 ちう

 同じく絹旗も、こちらは麦野の頬に、

 ちう

「え? 黒子?」

「え? 絹旗?」

 まだ足りない。と二人は思いました。

 ちう
 
 ちう

555 : 「パートナーですの」 - 2012/08/30 00:02:13.22 CWMnK6uho 338/525


「!?」

「!?」

 ここでようやく状況に気付く美琴と麦野。

 ちう

 ちう

「あー、こっちはようやく見通しがついたぞ」

「ふぅ、さすがに治療力が尽きちゃうゾ」

 そして一段落つけて休憩がてらにやってきた削板と食蜂が見たものは。

 ちう

 ちう

556 : 「パートナーですの」 - 2012/08/30 00:02:43.87 CWMnK6uho 339/525


 お膝に乗せたパートナーから、ひたすらちうちうされて忘我の境地に浸っている第三位と第四位。
 それを見て声もなく笑っている第二位と、呆れている第一位。

「な、なによ、これ」

「おー、仲良いな」

「なんでこんな見せつけるようなことを……」

 むきゃあ、と爆発する食蜂。

「いいわ。こうなったら私だって絶対に可愛い♪パートナー見つけてやるんだから☆!!」
「手伝ってよね☆ 第七位♪」

「ん。いいけど、洗脳は許さんぞ?」

「わかってるんだゾ、それくらい」
 
 再び慌ただしく去っていく二人を見送る一方通行。
 そして笑いすぎて悶絶している垣根と、茫然自失で天国中の麦野と美琴に順に目をやる。

「……ま、いィか」

 垣根の頭を一発叩いて正気に戻すと、再び作業に戻るのだった。

557 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/08/30 00:04:06.85 CWMnK6uho 340/525

以上、お粗末様でした

次回は多分、食蜂パートナー決定編か、打ち止め登場編……だと思う


書いてて、なんとなく「削板食蜂」も良いかなあと言う気がしてきた……

566 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/09/17 22:28:50.62 jlVtY66ho 341/525

月日の経つのは早い。他の連載やってる方々偉すぎる



 さて、今回、メインは黒子じゃないです。

 タイトルは「責任ですの」
 

567 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:29:24.50 jlVtY66ho 342/525


「なんで俺がレベル5なんだ?」

 ある日、削板がそう尋ねた。

「俺は他のレベル5とは違うんだろ?」

 削板軍覇、彼は『原石』であり、通常の能力者とは一線を画している。

「『原石』が全員レベル5って訳じゃないんだろ?」

 削板の『原石』の中でも特別だと答えが返る。
 そして研究者は尋ね返した。

 レベル5が嫌になったか? と。

「いや」

 削板は答える。

「俺がもしレベル5じゃなかったなら、アイツの役に立つことができのかなと思ってな」


568 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:29:50.27 jlVtY66ho 343/525


 お役に立ちたいんですの?

「ん、なんというか、アイツはアイツなりの根性で頑張って……っておい、いつの間に」

 削板の前には、何かワクワクした表情の黒子が。

 がんばりますの
 食蜂先輩のお力になりますの
 削板さん、がんばりますの

「根性出すか?」

 こんじょーですの

 しゅたっ、と片手を突き上げたポーズの黒子。

「よし。まずは、候補者を捜すぞ!」

 おー

569 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:30:43.87 jlVtY66ho 344/525


「いいか、まず、パートナーってのは……」

 垣根帝督には心理定規
 御坂美琴には白井黒子
 麦野沈利には絹旗最愛
 
「この三組はほぼ確定だ」

 当然ですの

「そして、俺と一方通行は特に決まった奴はいないが、必要になったときの臨時パートナー候補は何人かいる」

 第六位はそれ自身が不在。
 食蜂操祈はパートナーが不在。

「パートナーってのは、それなりの格や能力がやっぱり必要だ」

 ……

570 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:31:11.21 jlVtY66ho 345/525


「何が言いたい?」

 削板さまのパートナーは……

「モツ鍋はああ見えて、スキルアウト最強の一角だぞ?」

 ……

「原谷はまあ……気にするな」

 え

「雲川の姉ちゃんは、超能力じゃねえけど有能ってやつだしな」

 ですの……

「……いや、俺のパートナーはどうでもいい。今は食蜂のパートナーの話だ」

 二人は知る限りの能力者から候補を絞る。

 例えば婚后光子。

「レベルは申し分ない。常盤台というのも高ポイントだ」

 婚后さまは既にお友達ですの

「だが、こいつはどっちかというと、パートナーと言うより、常盤台第三の女、って感じだな」

 あるいは結標淡希。

 テレポ仲間ですの

「今一番レベル5に近いレベル4だからな。臨時ならまだしも、誰かのパートナーにずっと収まるつもりはないだろ」

571 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:31:40.99 jlVtY66ho 346/525


 レベルは0だが、上条当麻。

「男は多分ダメだろう。それに、超電磁砲に怒られるだけじゃすまんだろうな」

 ダメですの

 ならば滝壺理后。

「アイテムの一員だからな」

 浜面さんや絹旗さんに怒られますの

「それなりの能力者で、他の連中と被って無くて……」

 頭を抱える削板。

「そんな奴いるのか?」

 あ
 いましたの

「マジか」

 マジですの

572 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:32:11.38 jlVtY66ho 347/525



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 食蜂操祈は、削板からの急な呼び出しに戸惑っていた。
 
(なんなのよ、もう……)

 メールの内容は一言、「パートナー候補を見つけたぞ」

(パートナー……ねぇ……)

 精神操作系能力者には共通の悩みがある。それは精神系能力第一位の食蜂操祈であっても例外ではない。
 周囲の目、というやつだ。それが食蜂のパートナー選びにも影響している。
 極端な話、能力で洗脳すればパートナーはいくらでも作れる。
 それを周囲も知っている。

 さて、第三者は食蜂のパートナーを見てどう思うのか。

「ぴったりなパートナーを選んだな」
「洗脳してパートナーにしたのか?」

 事実が前者であっても、後者と思われてしまえば意味がない。
 食蜂には、「思い」がわかってしまうのだから。

 だから、食蜂は選ばなければならないのだ。
 自分の精神操作が及ばない相手を。
 決して、操っていると「思われない」相手を。

573 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:32:36.11 jlVtY66ho 348/525

 
 食蜂に対抗しうるのは高レベル能力者、あるいは同系統の能力者。
 レベル5の食蜂にとって、高レベル能力者など六人しかいない。
 同系統……精神系能力者ナンバー2は心理定規である。彼女は既に垣根のパートナーだ。

(いないのよね……)

 一体削板はどんな人材を連れてきたというのか……
 半ば諦めながら、食蜂は伝えられた場所へと向かう。

(ん……?)
(ここは、常盤台だゾ?)

「おう、こっちだ」

 ごきげんようですの、食蜂さま

「……呼ばれたから来てあげたんだゾ☆ 感謝力を……あれ? 黒子ちゃんも?」

「白井がパートナーを見つけてくれてな。見事な根性だったぜ」

「え?」

 黒子の知り合いならば自分も知っているはず。
 その中にパートナーとして……

「え?」

 一人いた。

574 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:33:06.56 jlVtY66ho 349/525


 言われてみれば一人いる。
 例外として脳裏からは抜けていたけれど、確かに相応しい人材が。

「もしかして……」

「こんにちわなんだよ。みさき」

 インデックスが手を振っていた。

「インデックスちゃん」

 レベル5第六位との交換留学生である。魔術側としてそれなりの能力を持っているはずの人材。
 そして、なによりも、食蜂にとって重要なこと……

 インデックスは可愛い。
 それはもう、とっても可愛いのだ。
 黒子、絹旗と並べても引けを取らない可愛らしさだ。

「だけどぉ、問題はインデックスちゃんの能力なのよぉ」

「私には、完全記憶能力があるんだよ」

 確かに凄いけれど、それは超能力でも魔術でもない。

「できれば、私の能力に対抗できるものがいいのだけれど?」


575 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:33:35.06 jlVtY66ho 350/525


「それなら大丈夫だろう」

 そうですの

 二人の太鼓判に、食蜂は首を傾げる。

「私の歩く教会はあくせられーたや、ていとくの攻撃も防ぐんだよ」

「え。なにそれ怖い」

「みことの電撃も、しずりのビームも効かないんだよ」

「魔術力凄いわぁ」

「ああ、因みに、俺のすごいパンチも」

「……もしかして、幻想殺し?」 

 テレポで飛ばすことは出来ますの

「上条さんとは違うのね」

 攻撃は全部防ぐみたいなんですの

「防御力の特化力……面白そぉ☆」

576 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:34:09.84 jlVtY66ho 351/525


 ん? と再び食蜂は首を傾げる。

「防ぐのは物理攻撃力だけって事かしらぁ?」

「試したことはないけれど、多分、精神系能力にも対抗できるかも」

 ふむ。と食蜂は考える。
 物理的攻撃防御は、ハッキリ言って望んでいない。戦闘に赴くなら別だけど、今求めているのは日常のパートナー。
 戦闘の必要があるのなら、一方通行や垣根に話を通した方が楽だ。
 どちらかというと欲しいのは精神攻撃に対する防御力。

「インデックスちゃん?」

「なぁに?」

「試してみていい?」

「何をかな?」

「簡単な精神攻撃なんだけど」

「無茶するなよ?」

 削板が一応釘を刺す。

「わかってるわよぉ。ちょっと記憶を覗いてみるくらいならいいでしょお?」


577 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:34:59.75 jlVtY66ho 352/525


「……」

「そんなに信用力ないの? 操祈、悲しくなっちゃうゾ?」

 削板の胸元にぐいっと身体を寄せる食蜂。
 珍しく削板が慌てていた。

 そんな二人を余所にインデックスと黒子は、

「ちょっと心配かも」

 なにがですの?

「私の中には十万三千冊の魔道書と三千冊のコミックがあるんだよ」

 増えてますの!?

「日本のマンガはクールでエクセレントでエキサイティングなんだよ! 特にみことのお薦めのコミックは素晴らしいんだよ」
「完全記憶能力があっても二度読み三度読みしてしまうレベルかも!」

 お姉さま!?

「ほほぉ……」

 ピキッと、食蜂のこめかみから異音。


578 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:35:44.91 jlVtY66ho 353/525


「御坂さぁん……インデックスちゃんまで手懐けてるのねぇ……ふっふっふっ……ぼっち力満開の癖にぃ……」

 プンプン
 いくら食蜂さまでもお姉さまの悪口は許しませんの

「あ、ゴメンねぇ~、黒子ちゃん。操祈ったら悪い子ね☆ えーい」

 食蜂はこつんと自分の頭を叩く。

 わかっていただければよろしいですの

「えーと、もういいのかな?」

 二人のやりとりを眺めていたインデックスが言う。

「だから、私の中の魔道書を覗くと、みさきが大変なことになるかも知れないんだよ」

「ふふふっ、私を誰だと思ってるのかなぁ? カナァ?」

 ふふん、と胸を張る食蜂。
 横に並んで胸を張ってみる黒子。
 そして胸元を覗き込んでそっと涙する黒子。

 お姉さまに勝ち目はありませんの……

579 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:36:08.59 jlVtY66ho 354/525


「学園都市レベル5第五位心理掌握こと食蜂操祈。私の能力を舐めてもらっちゃ困るんだけどぉ?」

「よくわからないんだよ」

「インデックスちゃんの記憶を無作為に覗く訳じゃないの。ちゃんと選択力があるんだからね」

「それじゃあ、魔道書は覗かないの?」

「今回は……そうね、コミックだけを覗くことにしちゃうゾ」

「凄いんだよ、みさき」

「ふふーん」

「じゃあ、私も頑張って抵抗するかも」

「頑張ってね」

「うん! 任せるんだよ!」

 ダンボール箱ガンダムのポーズで食蜂に向き直るインデックス。
 その背後で何故か荒ぶる鷹のポーズを取っている削板。

「インデックス! 根性だ!」

 応援のつもりらしい。

「それじゃあ、覗いちゃうゾ☆」

 この段階で、大きなミスが二つ。

 一つは、食蜂の記憶覗きは「歩く教会」には攻撃と認識されていなかったこと。
 
 そしてもう一つは……

580 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:36:44.82 jlVtY66ho 355/525


 十万三千冊の魔道師の中には、「コミカライズ化」されていたものも混ざっていたこと。

 恐るべし、魔術サイド。

 そう。食蜂は魔道書だと気付かずに、コミックだと誤解してそれを覗いてしまったのだ。

 コミック版「屍食教典儀」
 コミック版「エイボンの書」
 「マンガでよくわかるネクロノミコン」
 「漫画:ナコト写本入門」
 「もし高校野球の女子マネージャーがルドウィク・プリンの『幼蛆の秘密』を読んだら」
 などなど

 繰り返す。恐るべし、魔術サイド。

「はうっ!」

 当然、無事で済むわけがない。
 凄まじいばかりの情報爆発がシナプスを焼き尽くさんと迸る。
 常人ならば瞬時に廃人、いや、生きるための最低限の活動すら休止するほどの精神衝撃。
 
 だが、しかし。

 食蜂操祈とて、幸か不幸か常人ではない。
 魔術サイドと双璧を為すべき科学サイドの申し子である。
 致命的な衝撃をシャットダウンするための操作を、ほぼ無意識で行っていた。

 冒涜の知識を和らげ、致命の情報を薄め、絶命即死を塗りつぶす。

 言い換えれば、コミックのヤバい部分を処理していた。
 墨塗り、トーン貼り、ホワイト消し、伏せ字、言い換え、発禁焚書である。

 一部は間に合わずに脳へと到達したけれど。

「ぎゃおんっ!」

581 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:37:06.59 jlVtY66ho 356/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 気が付くと、病院のベットに寝ていた。

 横を向くと、黒子、インデックス、削板が心配そうにこちらを見ている。

 気付きましたの

「みさき、ごめんなさいなんだよ」

「すまん!」

 半泣きの黒子とインデックス。削板は土下座。

「……ここは……」

 冥土返し先生の病院ですの

「本当に済まなかった。俺に根性が無かったばかりに……もっとよく考えれば良かったんだ」

 食蜂は自分の姿を見下ろした。

「黒子ちゃんが着替えさせてくれたの?」

 インデックスさんと一緒でしたの

「そう、ありがとう……」

 涙目の二人。そして未だに後頭部を向けたままの削板。

「あの……削板さん……?」

「すまなかった!」


582 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:37:36.92 jlVtY66ho 357/525


 なんでこの人はこんなに謝っているんだろう。
 問おうと黒子の顔を見ると、何故か視線を逸らす。
 インデックスを見ると、これまた逸らす。

 おい。何があった。

「黒子ちゃん、インデックスちゃん」

 黙る黒子、キョドるインデックス、ゲザる削板。

「黒子ちゃん……沈黙力はいらないのだけど」

 錯乱寸前で気絶してましたの

「うん、それは何となく想像が付くんだけどぉ?」

 色々と、出してはいけないものが……
 見せてはいけないものが……

「」

「垂れ流しだったんだよ……」

 インデックスの爆弾発言であった。

「」


583 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:38:08.51 jlVtY66ho 358/525


 食蜂がゆっくりと視線を下げる。
 そこには削板の後頭部。

「……見ら……れ……ちゃった?」

「食蜂! すまなかったぁぁぁああっ!!!」

「え……え……あの……」

 食蜂の救いを求める眼差しは、黒子の気の毒そうな眼差しに反射された。

「垂れ……流……し?」

 (涙とか、呪詛とか、常盤台に相応しくない悪口雑言とかを)垂れ流してましたの……

「(出してはいけない、一部紳士に垂涎の的の液体とかを)垂れ流してたの……?」

 黒子はしっかりこっくり頷いた。

 黒子とインデックスさんでお着替えは済ませましたの
 でも、削板先輩には見られてしまいましたの

「」


584 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:38:37.39 jlVtY66ho 359/525


 考えて欲しい。
 もし、これが削板と食蜂ではなく、上条と美琴だったらどうなっていただろうか。
 そう、美琴は能力フル暴走、辺りに電撃を撒き散らしていただろう。

 ここにいるのは食蜂操祈である。

 でもやっぱり暴走。

(削板さんにあんなのそんなのこんなの全部見られちゃった!!??)

 テレパシー暴走。

 そこにとどめを刺すインデックス。

「あ、ぐんはもみさきのお世話を手伝ってくれたんだよ」

「はいーーーっ!?」

「(涙で濡れた顔を)一緒に拭いてくれたんだよ」

「(出してはいけない、一部紳士に垂涎の的の液体とかで濡れた身体、具体的には射出口付近を)拭かれたのっ!?」

 食蜂操祈フル暴走。
 テレパシー大暴走。


585 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:39:22.64 jlVtY66ho 360/525


「すまなかったぁぁぁああっ!!!」

 削板は、インデックスに対する食蜂の読心について、安全面を甘く見ていたことを謝り続けている。
 三人の話はいつもの事ながら全く聞いていない。

(削板さんのお世話力……拭かれた……大事なところを……拭かれた)

 小爆発でも起こしたような勢いで真っ赤になる食蜂。
 
 尚、現在のところ、食蜂の心の叫びはテレパシー大暴走によってだだ漏れである。

(そんな恥ずかしいこと……)

 因みに食蜂本人による詳細な想像図付きである。

(そんな恥ずかしいことされたなんて……)
(責任取ってもらうしかないっ!)
(責任……お嫁さん?)

 大爆発のように真っ赤になる食蜂。

(もう、削板さんのお嫁さんになるしか……削板操祈になるしかない!)

「削板さん……責任、取ってね」

 え? と削板が顔を上げた瞬間。

「何やってんのよぉぉおおっ!!!」

 病室へ飛び込む人影。
 即座に室内に展開される電磁バリヤー。

586 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:39:43.22 jlVtY66ho 361/525


 お姉さま?

「みことなんだよ」

 何故かこちらも真っ赤な顔の美琴だった。

「え?」

 キョトン、と食蜂。

「あ、あ、あ、あんた、全部だだ漏れよ」

「え? え?」

「とりあえず電磁バリヤーでこれ以上の漏洩は防いだから、とっとと落ち着きなさいよね」

「だだ漏れって」

「アンタのテレパシー。再現映像付きで病院内絶賛放映中だったのよ」

「」

「黒子に話を聞いて、見舞いに駆けつけたのが私で良かったわ」

「」

「聞いてるの?」

 黒子が首を振った。

 食蜂さま、気絶してますの


587 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:40:19.89 jlVtY66ho 362/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 治療中の錯乱である。
 錯乱だと言ったら錯乱なのだ。
 忘れろ。
 忘れない人は心理掌握が直々に忘れさせる。
 いいから忘れろ。
 忘れたくない奴はすごいパンチ×5な。

 要約するとそのような内容の文章が関係者一同に配られたのは翌日のことだった。

「もう、パートナーいらなぁい」

 念のため入院した病室内、乾いた笑いで呟く食蜂。

「操祈はもぉ、一人でいいのぉ」
 
 全てを知った彼女の視線は、宙にさまよってウフフと笑っている。

 そんなところに姿を見せた黒子とインデックス。そして削板。
 削板が見舞いの果物をベッドサイドに置くと、黒子とインデックスは飲み物を買ってくると言い出す。
 そして出て行く二人。残された二人。

「あのな、食蜂」

「……なによ」

「いや……」

「珍しいのね、ハッキリ言えば?」

「……いいぞ」

「何が?」


588 : 「責任ですの」 - 2012/09/17 22:40:44.09 jlVtY66ho 363/525


「責任取ってもいいぞ」 

「ちょっと……」

「俺、レベル5会議の時にモツ鍋や原谷連れて行くのやめる。勿論、雲川の姉ちゃんも」

「同情なんて……」

「間違えた」

「は?」

「間違えた。言い直す」

「何をよ」

「責任取ってもいいぞ、じゃねえんだ」

「?」

「責任取らせろ」 

「……」

「俺に、取らせてくれ」

「……お馬鹿さん」

 病室の外からそっと眺めていた黒子とインデックスは、二つの影が重なることを確認してから自販機へ向かうのだった。

589 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/09/17 22:42:12.43 jlVtY66ho 364/525

以上、お粗末様でした


 某禁書通行SSでの、世界崩壊の一瞬で削板に惚れた雲川ってのが凄く印象に残ってるんですよね。
 某座標殺しSSでの、削板雲川組による学園都市治安維持ってのも好きだった。
 某電磁通行SSでの、未来の削板と神裂とか。
 小ネタだけど、根性定規ってのもあったなぁ。

 色々あるけれど、ここではこうなりました


 次回は、打ち止め登場の予定です

598 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/09/30 17:52:56.88 Km7hN2zko 365/525

台風が来たけど更新します


タイトル「打ち止めですの」

599 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:53:30.01 Km7hN2zko 366/525


 かつてとある研究所があった廃墟に一方通行は立っていた。
 時折周囲を見回し、人を待つ様子。

「こンなところまで呼び出しといてェ、なンの用なンですかねェ?」

 ようやく現れた人影に向かい、一方通行は敵意を隠そうともしない。

「まさか、復讐? なンて無駄なこと考えてンじゃねェだろォな?」

「それこそ、まさかだ」

 人影……天井亜雄はゆっくりと手を挙げた。

「今のこの私には、君を倒すどころか対抗する手段の持ち合わせもない」

「今の? はっ、過去万古から未来永劫まで、そンな手段は皆無だろ」

「そうだな、その通りだ」

「おい」

 一方通行の表情が変わる。
 敵意から当惑へと。

「何があった?」

600 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:53:57.23 Km7hN2zko 367/525


 目の前にいる男は天井。その認識に間違いはない。一方通行は己の認識に絶対の自信を持っている。
 だが、発する雰囲気が明らかに以前とは異なっているのだ。

「なにかあったと言われれば、答えはYESだ」

「悪ィが、クイズは好きじゃない」

「そうか。なら単刀直入だ」

 突然、天井は地面に座り込む。

「おい?」

「一方通行、頼みがある」

「おい、何の真似だ?」

「二人をしばらく面倒見てやって欲しい」

「はァ?」

「頼む!」

「いや、わけわかンねェ。そもそも二人って」

「こいつらだ」

 天井が手を振ると、二つの人影が現れた。

「な……」

 珍しくも一方通行が絶句する。 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


601 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:54:24.17 Km7hN2zko 368/525


 数日前、第五位食蜂操祈と第七位削板軍覇との交際が学園都市自治新聞によってすっぱ抜かれた。
 レベル5同士のカップルの前例はなく、学園都市内は非常に盛り上がったのだが……

「高レベル者同士のカップルは超お似合いですね」

 お似合いですの
 さすがは超能力者ですの
 食蜂さまですの
 削板さまですの

 絹旗と黒子もその話題で盛り上がっていた。
 なにしろ黒子は見届け人である。それを知った絹旗のテンションもメーターを振り切っている。

「超さすがですね、白井さんは」

 素敵なカップルですの

 手を繋いで喜び合う二人。

 あらあらうふふ、とそんな二人をほのぼのと眺めている周囲の人々。
 ここはオープンカフェテラス。
 甘くて冷たい氷菓系デザートとフレッシュな生ジュースが人気のお店。
 だけど絹旗の前には鉄板ナポリタン。
 黒子の前には小倉トースト。
 そう、ここは名古屋系喫茶店でもある。

602 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:54:53.47 Km7hN2zko 369/525


「玉子焼き美味しいです」

 あんこ甘いですの

 ひとしきり堪能すると、食後のデザートを頼んで再びカップル談義。 

「超グッジョブです、白井さん」

 ふふん
 
「超偉い偉い」

 なでりなでりと絹旗の手が黒子の頭を這い回る。
 満更でもない黒子は絹旗の手の下でごろごろとご満悦。

 絹旗さんにお返しですの

「超ふふんです」

 偉いですの

 なでりなでりと、今度は黒子が絹旗を撫でる。
 ふにふにとご満悦の絹旗。

「何やってんだろねぇ」

「ねぇ」


603 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:55:27.36 Km7hN2zko 370/525


 そんな二人を微笑ましく思いつつ、可愛さに悶えつつ、互いのパートナーに軽く嫉妬しつつ、麦野と美琴が別席から眺めている。
 二人の前にはそれぞれジュース。麦野のほうはあまり減っていないけれど、美琴のほうは殆ど飲み尽くされている。

「……あー、絹旗さん、ちょっと黒子撫ですぎじゃないかなぁ」

「白井も満更でもなさそうだけどねぇ」

「……黒子、撫でられるの好きだから」

「そうみたいだね」

「撫で足りないのかな? 普段からもっと撫でてあげた方がいいのかな?」

「ん? 美琴?」

「それとも、もしかして絹旗さんの撫で方がとっても上手いのかな?」

「おーい、美琴?」

604 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:55:55.07 Km7hN2zko 371/525


「どうしよう……黒子が私に撫でられるの嫌がるようになったらどうしよう……」

「もしもし?」

「『お姉さまは下手ですの』なんて言われたら、私、立ち直れないかも」

「おーい、もしもーし」

「ごめんね、黒子……私が下手で……御免ね……」

「おーい、第三位さーん。超電磁砲さーん?」

 一人上手に落ち込んでいく美琴と、慌てる麦野。

「ゴメンね、黒子……駄目なお姉さまでゴメンね。駄目なレベル5、英訳するとFUCKIN' LEVEL FIVE。FLFでゴメンね……」

「ちょっとアンタ、まるで酔っ……ん?」

 美琴の前のグラスを手に取り鼻へと近づける麦野。中身に気付き、ウェイターを呼ぶ。

「なにこれ、何でアルコールなんて出すのよ!」


605 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:56:23.52 Km7hN2zko 372/525


「え、あの、こちらのお客様が……」

 伝票を見ると確かにカクテルの名前。
 特に気にしていなかったけれど、どうやら美琴は知らずにカクテルを頼んでしまった様子。

「それにしたって、見た目で未成年かどうかくらいわかるでしょうに」

「申し訳ありません、こちらのお客様が飲まれるものだとは気付かずに……」

 ?

 何かに引っかかる麦野。

「んー。それはもしかして、あたしが飲むものだと思ったってことかにゃーん?」

「は、はい」

「あたしも未成年なんだけどねぇ?」

「なんですとっ?!」


606 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:56:51.23 Km7hN2zko 373/525


 麦野さんは思いました。

 あー、このウェイター、命いらないのね。
 うふふふふふ、それならビームビームビーム、さらにビーム。

 その時、ボフッと謎の音。

 音の出た方向に視線を合わせ、笑いを堪える絹旗を見つける麦野。

「き~ぬ~は~た~? オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」

「!? 白井さん! テレポお願いします! 白井さん!!!」

 自業自得ですの

「ひぃいいい」

 そこへ、

「何やってンだ、おまえら」


607 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:57:19.33 Km7hN2zko 374/525


「ああ? あー、第一位……か……」

 麦野絶句。
 隣で泣いていた美琴もギョッとした顔で一方通行を見ている。

「あー、お姉さまだ。はじめまして、ってミサカはミサカは頭を下げてみる」

「誰?」

「超誰ですか?」

 小さいお姉さまですの

「あァ、こいつは……」

「……どういうこと?」

 ゆらり、と目の据わった美琴が立ち上がる。

「この子……」

 美琴の問いに頷く一方通行。


608 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:57:49.25 Km7hN2zko 375/525


「そォいうこった」

「……コン」

「はァ?」

「ロリコン」

「はい?」

「変態! あんた、小学校時代の私なんか連れてどうする気よ! この変態!!」

「待て、待て待て待て!! なンか誤解してるぞっ」

 頷く麦野。

「なるほど、浮いた話を聞かないと思ったらロリコンだったのかい。そりゃ納得だ」

「こら待て、おい、なに勝手に決めてやがるンですかァ?」

 美琴が黒子と絹旗に駆け寄った。


609 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:58:15.94 Km7hN2zko 376/525


「黒子、絹旗さん、逃げて! 早く逃げなさい!!」

「おォい!? どういう意味!?」

「なんだ、第一位はロリコンだったんだ。そりゃあ、ミサカの魅力に靡かないはずだよねぇ」

 最初の一人、他の妹達に比べるといやに大人びた一人が姿を見せる。

「また増えた?」

「ハロー、お姉たまーん。ミサカは番外個体だよ、よろしくね。こっちのちみっこいのは打ち止め」

「ちみっこいって言わないでって、ミサカはミサカは抗議してみる」

「だから俺はロリコンなンかじゃねェっての」

「で、結局なんなのよ」

 黒子と絹旗を背後に庇って一方通行を睨みつけている酔っぱらールガンを宥めつつ、麦野は一瞬真面目な顔になる。

「天井、またなんかやった?」

「ま、天井絡みにゃ間違いねェが」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


610 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:58:43.99 Km7hN2zko 377/525


「この子は打ち止め。この子は番外個体だ」

「はじめまして一方通行、とミサカはミサカはご挨拶」

「やっほー、第一位。初めましてだね。ギャハハハ、話には聞いてたけれど、ホンットに白いんだねぇ」

 御坂美琴のクローンが二人。それも、一人はあからさまに若く、もう一人は大人びている。

「これはどういう事なんですかねェ? 天井くゥン?」

 クローンは作らないという約束。いや、作れなくなるように研究所は全て叩きつぶしたはず。
 仮に研究所の一つを隠蔽していたとしても、こうやってクローンを見せつければどうなるか。それがわからない相手ではないだろう。

 だから、一方通行は迷う。
 天井の真意を。

 地面に座り込んだままの天井は頭を下げた。いわゆる、土下座である。

「そのままでいい。頼む、せめて話を聞いてくれ」

「話だと?」

 次の瞬間、一方通行は愕然と目を見開く。


611 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:59:11.50 Km7hN2zko 378/525


「パパ?」

「お父たま?」

 二人のクローンが口々にそう言いながら、天井に駆け寄るのだ。

「なン……だと……?」

「話を聞いてくれるか、一方通行?」

「……あァ。内容によっちゃあ、心理掌握呼び出すぜ?」

「そう思われても、仕方ないだろうな……」

 ……君たちにクローン設備を破壊されたとき、私は諦めたわけではなかった。
 ……あの時、私の手元には二人のクローンを作り出す術が残されていたんだ。
 ……そして当時の私は、ひょんな事からこう思っていた。

 ……小学生は最高だぜ!

「よし、血液逆流と全身粉砕骨折とどっちがいい?」


612 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 17:59:39.60 Km7hN2zko 379/525


「待て落ち着け、話は最後まで聞いてくれ」

 ……私は「打ち止め」を生み出した。
 ……だが……だが、この子は私を「パパ」と呼んでくれたのだ。
 ……私はその瞬間悟った。己の罪深さを。
 ……これほど無垢な存在に私は何をしようとしていたのか……
 ……ああ……

 ……やっぱり小学生は最高だ。

「よし、全身皮剥に決定な」

「待て落ち着け、だから話は最後まで聞いてくれと」

 ……全てを失った私はクローン作成費用をひねり出すために働いていた。
 ……独りぼっちの打ち止めは、とても寂しがっていた。
 ……そして、クローン作成用の資材は一人分、いや、打ち止めに使わなかった分を入れるとやや多めに残っていた。
 ……そこで私は、予定外のクローンを産んだ。
 ……「番外個体」だ。
 ……しかし彼女も私を「お父さま」と……

「訂正するね。お父たまだよ」


613 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 18:00:12.41 Km7hN2zko 380/525


 ……私は二人の娘を得た。
 ……だが私にその資格はあるのか。
 ……娘二人に父と呼ばれる資格はあるのか。

「パパはパパだよ?」

「お父たまはお父たまでしょ?」

「……一方通行、私は今度こそ心を入れ替えた。この二人のために、真っ当に生きたいと思ったんだ」

「……」

「だから私は今から当局に自首する。きれいな身体となって、もう一度やり直したいんだ」

「それで、どうして俺が面倒をみることになるンですかねェ?」

「妹達を護るためだ」

「だから、どうして俺なンだ? レベル5は俺だけじゃねェ。そもそも妹達を助けたのも俺一人じゃねェだろォが」

「垣根帝督に任せる気か? 女子中学生目当てに常盤台に侵入しようとした男だぞ?」


614 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 18:00:40.54 Km7hN2zko 381/525


「なンで知ってンだよ」

「そして、御坂美琴は寮住まいだ。二人を引き取ることは出来ない」

「一緒に住むのが前提なのか?」

「これ以上冥土帰しの所に厄介になるわけにも行かないだろう」

「まァ、そりゃそうか……」

「麦野沈利の所には絹旗最愛やフレンダ・セイヴェルン、滝壺理后がいる」

「根性野郎はどうなンだ?」

「……食蜂操祈との新婚空間に二人を引きずり込む気か?」

「すまン」

「というわけで、残るは君だ」

「待て」

「番外個体はレベル4だ。君のパートナーとしても充分にやっていけると思うぞ」

 天井の再びの土下座。

「他に頼める者がいないんだ! 頼む! 私のためではない、二人のためだと思って!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


615 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 18:01:08.43 Km7hN2zko 382/525


「……っつゥ訳だ」

「それで、本気で引き取る気?」

「そうなりかねねェな」

「まさか、手ぇ出すつもりじゃないわよね?」

「誰が出すかボケ」

「まあ、打ち止めに手出す程鬼畜じゃないし、あの番外個体とやらは別の意味で安全か。あんた貧乳派だしね」

「!?」

「ん? まさか、気付かれてないと思ってた?」

「いや、待て、待て。いや、なンで……」

「そりゃね。私や結標、滝壺とかまるまる無視して、美琴や黒子ばっかり相手にしてるしねぇ……」

「……」

「冷や汗は反射できないの?」

「うるせェ」

「年下好きかと思ってたけど、食蜂や絹旗も眼中にないものねぇ」

「すいませン、お願いですからもォ黙っていただけませンか?」

「将来性のあるインデックスより、あのライン保ちそうな心理定規のほうが好みよね?」

「いやほンと、まじで勘弁してください」

616 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 18:01:37.15 Km7hN2zko 383/525




 そして、レベル5会議当日。

「おはよーう」

 おはようございますの

「ふぁあ」

「超眠いです」

 美琴、黒子、麦野、絹旗がまず会する。

「よぉ」

「皆さんごきげんよう」

 そして垣根と心理定規。

「やーん、ちょっと遅れちゃったぁ♪」

「第一位がまだだからビリじゃねえ、気にするな、みさきん」

「うん、ぐんにぃ☆」

 誰よ、あれは。
 うわ、超キモ!
 あんた挨拶しなさいよ。
 やだ、アレに近寄りたくない。
 みさきん、てなんだよ。ぐんにぃ、てなんだよ、もしかして、軍覇お兄ちゃんなのか?
 なにこれ、心理距離ゼロじゃないかしら、キモ。

617 : 「打ち止めですの」 - 2012/09/30 18:02:10.19 Km7hN2zko 384/525


 おはようございますの

 普通に挨拶してやがる……くっ、これが常盤台のマナーってやつか……
 白井さん超凄いです。
 さすが黒子……
 ああいうのに慣れてるのね、ジャッジメント。

 そこへ、

「こんにちわーっ! ってミサカはミサカは初めましての人の前でも元気いっぱい!」

 全員の視線が集まった。

「よ、よォ……」

 打ち止めの後ろから、全てを諦めて開き直った男の顔で現れる一方通行。

「ちょっとアンタ、なんで打ち止めなのよ……」

「番外個体のやろー……『めんどい、寝る』って……」

「うわ」

「尻に敷かれてるじゃねえか……第一位」

「はっ、羨ましいンですかァ? ていとくゥン?!」

「馬鹿言ってんじゃねえ! 尻に敷かれ……あ、いや、……羨ましい……のか?」

「ごめん帝督、私帰る」

「あ、待て! 心理定規! 今のはジョークだ! ジョークだから!!」

「ねえねえあなた、みんないつもこんな楽しそうなの? ってミサカはミサカは羨ましさを隠さず言ってみる」

「まァな」



 今日も学園都市は平和です。


618 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/09/30 18:04:06.12 Km7hN2zko 385/525

 以上お粗末様でした

 投下中に気付いたけれど、ラストのやりとりがなんか最終回っぽいな……

 いや、最後の話は決めてるからこれじゃないけどさ


 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

620 : VIPに... - 2012/09/30 19:23:26.91 HdlWjj5+o 386/525



あれ?貧乳好きならなんで絹旗にフレンダ無視してんだ?

623 : VIPに... - 2012/09/30 21:58:25.53 Km7hN2zko 387/525

>>620

……なんだろう。
アイテムには貧乳属性はいないという謎の勘違いが……

624 : VIPに... - 2012/10/01 00:19:30.50 cBBI4nEZo 388/525

絹旗は漫画版超電磁砲の表紙を剥がしたところにあるコメントだと貧乳じゃないっぽい事書いてあったりする
フレンダはつるぺただろうけど

625 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/10/13 16:17:30.27 D+bRjJ2Ho 389/525

ハロウィンスペシャル


タイトル「ハロウィンですの」

626 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:20:03.89 D+bRjJ2Ho 390/525


 学園都市にもハロウィンはある。
 未成年の多い学園都市では、中学生以下がお菓子を貰い、高校生以上がお菓子を渡すという習慣ができあがっていた。

 そんなハロウィンの日。
 とある隠れ家では……

 牙をつけて、マントを羽織った黒子。

 ヴァンパイアですの
 血を吸いますの
 ちうちう、と

 ネコミミと尻尾、肉球グローブを装備したフレメア。

「化け猫にゃあ。にゃあにゃあにゃあ」

 何故か秋田県名物なまはげの絹旗。

「ヒャッハー! 悪いごはいねがぁ?」

 それぞれの仮装に身を包んだ三人。

 トリックorトリートですの

「だいたいトリートがいい。お菓子にゃあ」

「ヒャッハー! お菓子を出さない超悪いごはいねがぁ!」

 絹旗は少し勘違いしていた。

627 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:20:55.42 D+bRjJ2Ho 391/525

 
 では、出発ですの
 
「三人だけですか?」

 途中で増えるかも、ですの

「だいたいわかった、にゃあ」

「貧乏人に用はないですよ。超金持ちを襲撃します。向こう一年分のお菓子を超ゲットしますよ」

「わかった。じゃあ浜面も半蔵もお兄ちゃんも駄目」

「フレメア? スキルアウトは貧乏ですか」

「みんなお家がない、にゃあ」

 ちなみに浜面も半蔵も駒場もちゃんとそれぞれの家はある。
 フレメアは、三人ともスキルアウトの溜まり場に住んでいると思いこんでいた。
 浜面に到っては、家がないのでアイテムアジトに出入りしているのだとフレメアは信じている。
 ぶっちゃけ、貧乏くさい格好なので仕方ない。(麦野談)
 フレンダはその勘違いに気付いているけれど、面白いので訂正していない。

 レベル5はお金持ちですの

「さすがは白井さんです。目の付け所が超GOODです」

 だけど、お姉さまと食蜂さまはまだ中学生ですの
 お菓子はもらえませんの

「麦野お姉ちゃんの所、行く?」

「順番に行きましょう。まずは第一位からです」

 参りますの
 ちうちう

「にゃあにゃあ」

「悪いごはいねがぁ」

628 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:21:24.10 D+bRjJ2Ho 392/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「で、みょうちくりンな格好したのが三人揃って、何の用なンですかねェ?」

 トリックorトリートですの

「むしろトリート。にゃあ」

「ヒャッハー! お菓子は消費ですよ! 超出しやがれ」

「そこの窒素女は正座しやがれ!」

「どうしてですか! 悪いごは超成敗!!」

「包丁振り回してンじゃねェ! うおっ、反射できねェ! マジでアブねェだろがっ!!」

「未元物質製の優れものですよ!」

「よし、あとで第二位殺す」

 ベクトルげんこつを受けて涙目で正座する絹旗。
 袋一杯のお菓子を受け取る黒子とフレメア。

「この待遇の違いには超納得いきません」

「……第四位はパートナーの教育間違えてンなァ……」

「あー! お菓子!」

 玄関口で騒いでいると、二人の少女が顔を見せる。

629 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:21:53.00 D+bRjJ2Ho 393/525


「何やってんの第一位。あー、絹旗ちゃん虐めて遊んでんだ、うわぁ、ロリでサディスト。サイテー」

「なに人聞きの悪いこと妄想してンだ、ハロウィンだろーが」

 別にハロウィンは女の子にげんこつして涙目にさせる行事ではない。

「なにそれ、ミサカそんなの知んない」

「……」

「なにやってんのさ、おチビ」

「MNWで聞いてみるよ、とミサカはミサカは交信中」

 お菓子を貰う日ですの

「黒子の言うことで大体あってる、にゃあ」

「お菓子をくれない悪い人を成敗……ぎゃわああ、ベクトルげんこつは止めてください……」
 
 ところで

 黒子吸血鬼の目がギラリと光る。

 お姉さまにそっくりなお子様とお姉さまですの

「はじめまして、ミサカはミサカはご挨拶してみる」

「あー、ミサカ達は、その……超電磁砲の親戚みたいなモンだから」

 親戚ですの
 お姉さまのお姉さまと言えばお姉さまも同然ですの
 白井黒子ですの
 コンゴトモヨロシクですの

 衣装のせいか、悪魔合体しそうな挨拶と共にぺこりと頭を下げる。

630 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:22:19.83 D+bRjJ2Ho 394/525



「うん。よろしく。貴女が白井黒子か。噂は聞いているよ、風紀委員の」

 じゃっじめんと、ですの

「ミサカは……番外個体って呼んでくれると良いよ」

「打ち止めだって、ミサカはミサカは自己紹介」

「フレメア・セイヴェルン、にゃあ」

「私は、悪いごはいね……ぎゃあっ!」

 三度目のベクトルげんこつで、頭から煙を噴いて俯せる絹旗。

 これ以上の滞在は絹旗の命に関わると判断した黒子とフレメアは、ミサカ一族の二人に別れを告げて一方通行のマンショ

ンを後にした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


631 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:22:47.58 D+bRjJ2Ho 395/525


 イラッシャマセー
 マイドドーモー
 ゴセンエンニナリマース

「わかってるよ、木原のハロウィンならこうするんだね」

「わかってるなら働け」

 お客さんで大賑わいのスイーツ木原では、円周がお家のお手伝いをしていた。

「フレメアちゃん達と遊びたかったよぉ……」

「あとで特製菓子もたせて行かせてやるから」

「本当?」

「まあまあ」

 カウンターに立ったままで満面の笑顔の円周から厨房の数多へと視線を移し、レジを打っていた病理も笑う。

「甘いですね、兄さんも」

「まだ子供なんだからいいじゃねえか」

「さて、私は円周ちゃんを諦めさせましょうか」

「それは本気で勘弁してやれ」

632 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:23:17.73 D+bRjJ2Ho 396/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「……ベクトルげんこつ怖いです……ベクトルげんこつ怖いです……」

「トラウマにゃあ」

 絹旗さんがおかしいですの

「……」

 立ち止まる絹旗。その視線は、黒子と絹旗の持つ紙袋へと。

「お菓子……」

「これはフレメアの戦利品」

 黒子のお菓子ですの

 しかし涙目の絹旗に、二人の同情の虫が疼く。

「しかたないからあげる」

 一つだけですの

 フレメアの手には麩菓子。黒子の手にはポン菓子。

「超ありがとうございます」

 絹旗は麩菓子を、フレメアは砂糖をまぶした棒カステラを、黒子はイカの足を囓りながら練り歩く。
因みに絹旗の片腕には未元包丁がそのままに。

633 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:23:45.93 D+bRjJ2Ho 397/525


 ちうちう

「にゃあにゃあ」

「悪いごはいねがぁ」

 麩菓子を食べ終えてポン菓子に替わる頃、三人は麦野のマンションの前に到着した。

「ここには麦野と滝壺さんがいるはずです。フレンダと浜面もいるかも知れません」

「お姉ちゃん、朝から見てないよ」

 行きますの

 インターホンをポチリ。

「言っとくけど、お菓子ならないから」

 第一声がそれ。
 こんにちは、でも、どなたですか、でもなく。

 三人は顔を見合わせる。

 もう一度絹旗がインターホンをポチリ。

「むぎ……」

「お菓子ないの」

 ……

「……にゃあ」

「悪いご、いだぁ!」

 フレメアと絹旗が黒子の手に捕まる。


634 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:24:13.50 D+bRjJ2Ho 398/525


「白井さん!」

 わかりましたの

 しゅん、とテレポート、マンションの中へ。
 絹旗は合い鍵を持っているのだけれど、そこはテンションというもので。

 走る三人は麦野の部屋の前へ。

 トリックorお菓子ですの

「お菓子にゃあ!」

「悪いごはいねがぁ!!」

「むぎの、やっぱり来たよ」

 ドアを開けたのは滝壺さん。

「しらいとふれめあは可愛いね」

 てれてれ

「にゃあにゃあ」

「滝壺さん、なまはげですよ」

「うん。きぬはたも可愛いよ」

 麦野が奥から顔を見せると、二つの袋を差し出した。

「まあ、あの程度で阻止できるとは思ってなかったけどね」

 トリックorトリートですの

「トリックorトリートにゃあ」

「お菓子くれない悪いごはいねがぁ!?」

「はい、これ」

 袋が二つ。

「絹旗はそこに正座」

「どうしてですか?」

「ハロウィン舐めんな」

635 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:24:41.89 D+bRjJ2Ho 399/525


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ううう……なんでなまはげは駄目なんですか」

 泣きながらトボトボと歩く絹旗に、黒子とフレメアはお菓子を分ける。
 先ほどの麩菓子とポン菓子のせいで喉が渇いたという訴えを考慮して、袋の中に何故か入っていた飲料を渡す。
 黒子からはドクペ。フレメアからは冒険活劇飲料サスケ。
 おでんサイダーやお汁粉オレンジに比べればどうと言うことはない。

「絹旗かわいそうにゃあ」

 そうですの……
 ……!!
 良いアイデアが

 3つの心がひとつになれば、1つのなまはげは百万パワーですの

636 : 「ハロウィンですの」 - 2012/10/13 16:25:14.24 D+bRjJ2Ho 400/525






 悪いごはいるんですのぉ!!

「悪いごはいにゃああ!」

「悪いごはいねがぁ!」

「まだやってンですかァ!?」

 学園都市を駆け抜けた三匹のなまはげは、通りすがりの第一位に即座に鎮圧されたという。



637 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/10/13 16:26:16.11 D+bRjJ2Ho 401/525

以上、お粗末様でした


 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

646 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/10/24 19:01:34.88 4nT2h9hOo 402/525


 今回短いです

 一応前回の続き。

 タイトル「枕ですの」

647 : 「枕ですの」 - 2012/10/24 19:02:18.59 4nT2h9hOo 403/525

 
 麦野が目覚めると、身体中に違和感。
 だけど不快なものじゃない。
 どちらかというと心地良い、だけど違和感。

 身体が動かない。
 機能に問題がある訳じゃない。誰かに抑えつけられているのがわかる。

(……おいおい、夜這いじゃないだろうね)

 時々ベッドに潜り込んでくるフレンダなら、とにかくこの場でぶっ飛ばす。それから罰として朝ご飯。
 しかし、この重さはフレンダではない。フレンダならばもっと軽い。

(!?)

 まさか、と思う。
 いや、まさかそんなはずは。
 アイツには滝壺という歴とした彼女がいる。色々あっても、肝心の所で滝壺を裏切るような男じゃない。
 そうでなければ、アイテムに近づいた無能力者などとっくに排除している。

 でも、しかし。
 しかしだ。
 アイツの視線を時々感じるのは事実。
 ちょっと短めのスカートの裾がはだけたときや、ボディラインをハッキリさせすぎたとき。
 
 違うと思う。アイツは……浜面はそんな奴じゃない。
 でも。
 でも。


648 : 「枕ですの」 - 2012/10/24 19:02:51.20 4nT2h9hOo 404/525


 もし万が一だったら?
 第一、身体に掛かるこの重みは女のものではない。確実に男一人分の重さだ。それも、ヒョロいもやし……例えば第一位……なんかじゃない。
 がっしりとした頼りがいのある……いや、暴力沙汰に適正のある身体つきの男のモノだ。

 だったらどうする?
 アイツは滝壺を裏切らない。それは信じている。
 でも、自分は?
 自分は滝壺を裏切らない?

 いや、待て。
 何を考えているんだ。

 麦野は寝起きとはいえ取り留めなく暴走する自分の思考に赤面していた。
 なんで浜面が夜這いに来たと決めつけているのだ。
 これではまるで……これではまるで……

 来て欲しいみたいではないか。

 違う、と危うく叫びかけ、麦野は完全に目を覚ます。

「ん?」

 思わず声に出してしまう違和感。
 確かに、身体に掛かっている重みは女一人分とは思えない。しかし……
 重みが四等分されているような気がする。


649 : 「枕ですの」 - 2012/10/24 19:03:22.36 4nT2h9hOo 405/525


 胸元。
 腹。
 下腹部。
 太股。

 視線を下に向けると、どこか見覚えのあるツインテール。

 ゆっくりと首を上げ、重みの正体に目を向ける。

(ああ……)

 そこでようやく麦野は思い出した。
 昨夜、ハロウィンに出遅れた円周が涙目で絹旗を訪れたのだ。
 木原が持たせたと思しき円周のお土産が大量にあったため、絹旗の友達を呼び出して、ついでにお泊まり会になったというわけだ。

 胸元で寝ているのは黒子。
 腹の上にいるのはフレメア。
 下腹部が絹旗で太股が円周。

 四人に枕にされている、というわけか。

 動けない。
 四人は実にいい笑顔で絶賛爆睡中。さすがに起こすのは躊躇う

 どうしようかと視線を彷徨わせていると……

650 : 「枕ですの」 - 2012/10/24 19:03:49.84 4nT2h9hOo 406/525


「」

 扉を少しだけ開けて覗き込む視線と目があった。

(滝壺?)

「……」

 まさしく滝壺だった。
 滝壺は手元のスケッチブックになにやら書き込むと、麦野に見える位置にそれを翳す。

【大丈夫。そんなむぎのを私は応援している】

(……何を応援するのよ、何を)

【ロリコン】

(……は?)

【幼女四人を侍らせて就寝。これはまぎれもなくロリコン】

(幼女って、二人は中学生だろうが)

【応援してる】

(おい)

 と、ここで麦野はスケッチブックの隅に書かれている小さな文字に気付いた。

【はまづらじゃないなら、どうでもいいよ】

(本音!?)

651 : 「枕ですの」 - 2012/10/24 19:04:18.16 4nT2h9hOo 407/525


 もぞり、と黒子が動く。

 ん……お姉さま……

(寝ぼけてるのね……)

 このまましばらくいてもいいかな、と麦野が考えていると、

 !?

 黒子がぱちりと目を覚ました。

 ……

 何か信じられないものを見た、という顔で自分が枕にしていたもの……麦野の胸を見ている。

 ……
 どなたですの?

 そこで麦野と目が合う。
 麦野の顔と胸、そして絹旗たちに視線を向けると、ようやく理解したのか頷く。

 おはようございますの

「ん、おはよう……あ、どうでもいいんだけどさ」

 はい、ですの

「あんた今、『この胸のサイズは御坂美琴じゃない?』って慌てて目覚ましたんじゃない?」

 ……

「別にいいけどさ」

 お、お姉さまの名誉は命に替えても守りますの

「うん。それ、答え言ってるからね」

652 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/10/24 19:04:47.01 4nT2h9hOo 408/525


 
 以上、お粗末様でした


 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

657 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/11/02 00:03:37.01 132gufMxo 409/525


 またも短い話
 
タイトル「頭ぷぅですの」

658 : 「頭ぷぅですの」 - 2012/11/02 00:04:57.95 132gufMxo 410/525


 …………

 ……

 いつの間にか黒子が寝ていることに美琴は気付いた。

 ここは常盤台の寮、美琴と黒子の二人部屋。
 時間は昼下がり。冬が近いとはいえ、この時間の日射しはまだまだ温かく、うたた寝にはまさに最適の時間。

 黒子はさっきから勉強机に座ったまま、微動だにしていない。
 美琴はゆっくりと近づくと、黒子が寝ていることを確認する。

(チャンス!)

 最近、黒子と美琴の間で流行っていること。
 それは、ちょっと前まで佐天が初春にしていたこと。

 スカートめくりではない。

 初春がマジギレしそうになったことに気付いた佐天が、しばらくの間スカートめくりを控えていた時期がある。
 その代わりに導入したのが……

 【頭ぷぅ】である。

659 : 「頭ぷぅですの」 - 2012/11/02 00:05:25.86 132gufMxo 411/525


 背後から、佐天が初春の後頭部を掴む。
 身長差で初春があたふたしている間に、佐天が口を開けて息を吸い込み、初春の頭に口を当てる。
 そして、頭髪と頭皮の間に温かい息を思いっきり吹き込むのだ。

「うひゃいっ!?」

 くすぐったいような、驚いたような、珍妙な顔でじたばたと暴れる初春。

「ふっふっー。面白いねぇ、初春は」
「じゃあもう一回」

 ぷぅ

「ひゃあああ」 

 けたけた笑う佐天とあうあう惚ける初春。

「何やってるのよ、初春さんも佐天さんも。ねえ、黒子」

 面白そうですの

「ん?」

 黒子は【頭ぷぅ】に興味を示し、その反応を見た美琴も

「うーん……」

 考え込んでいる。

660 : 「頭ぷぅですの」 - 2012/11/02 00:05:52.52 132gufMxo 412/525


 暫しの間を空け、美琴はおもむろに黒子の頭を掴んだ。

 お姉さま?

「ぷぅ」

 美琴の息を頭に吹き込まれた黒子は、えひゃい、と妙な声を上げる。

「あ、これ、面白いかも」

 美琴と黒子の間のコミュニケーションが、また一つ増えた瞬間だった。

 今もまた……
 寝ている黒子の頭にそっと美琴は近づいた。
 そして勢いよく、噛みつくように口を開けて黒子の後頭部に口を付ける。

「ぷぅ」

 うひょん

 妙な声と共に跳ね起きた黒子は、咄嗟に振り向く。
 そこには声を殺して笑っている美琴が。

 お姉さまの【頭ぷぅ】ですの……

「あはは、ごめん。黒子」

661 : 「頭ぷぅですの」 - 2012/11/02 00:06:19.74 132gufMxo 413/525


 むう
 仕返しですの
 目には目を、埴輪はお

「黒子、今アクセントおかしかったわよ」

 埴輪はお?

「それだと、埴輪が挨拶してる図しか浮かばない」

 埴輪、はお
 …………
 ……礼儀正しい土器ですの

「目には目を、歯には歯を」

 目には目を、歯には歯を 

「そうそう」

 目には目を、歯には歯を、【頭ぷぅ】には【頭ぷぅ】ですの

「ふふっ、いいわよ。かかってきなさい、黒子」

662 : 「頭ぷぅですの」 - 2012/11/02 00:06:52.31 132gufMxo 414/525


 黒子は容赦ない復讐者となりますの

 しゅん、と消える黒子。次の瞬間には美琴の背後へ。
 瞬間移動能力者による奇襲である。これを防げる者などいない

 ……はずだった。

 美琴はレベル5。身体の周囲には無意識の内に張り巡らされた微弱な電磁波が存在している。
 一度それを意識すれば、周囲の状況はほぼリアルタイムで把握できる。
 黒子の瞬間移動も例外ではない。
 出現した瞬間、黒子の位置は把握され、電気の速度で美琴に伝えられる。
 そして美琴の思考速度と反射神経はレベル5に相応しいものだ。

 体を逸らして黒子の突撃を避けた美琴は、目前を通り過ぎようとする黒子の頭を再び掴む。

 間髪入れず、【頭ぷぅ】

 えひょい

 黒子の珍妙な呻き。
 バランスを崩した黒子はそのままベッドへダイブ。

「黒子、ベットに飛び込むなんてお行儀が悪いわよ?」

663 : 「頭ぷぅですの」 - 2012/11/02 00:07:19.05 132gufMxo 415/525


 うう……負けませんの

 しゅん、しゅん、しゅん、複数回の連続テレポで攪乱に出る黒子。

「甘いわよ、黒子。何度テレポートしたって、無意味なんだから」

 頭上からの気配を避ける美琴。地面に落ちるのはゲコ太ぬいぐるみ。

「フェイント!?」

 足下に微かな振動。

「くっ」

 黒子はテレポートをしていない。
 空中を跳んでいるように見えたのはゲコ太ぬいぐるみ。
 黒子は美琴の注意をゲコ太ぬいぐるみに引きつけ、自らはチャンスを窺っていたのだ。
 地を蹴る黒子。

 飛び上がった黒子を、それでもギリギリで避ける美琴。

「もらった!」

 まだですの

 あらかじめ腰を捻っていた黒子が、空中で体勢を戻す。
 【頭ぷぅ】を狙った美琴の前には後頭部ではなく、黒子の顔が!

664 : 「頭ぷぅですの」 - 2012/11/02 00:07:59.17 132gufMxo 416/525


 これでお姉さまの【頭ぷぅ】は封じましたの

 しかし、動き始めた美琴は急には止まれない。
 空中で身体を捻った黒子も、これ以上は動けない。

 二人の顔が近づき、

 ……ちう

「……」

 ……

 突然開くドア。

「くろこ、みこと、!!……お邪魔したんだよ」

 インデックスは、そっとドアを閉める。 

「どうぞごゆっくり、なんだよ」

 慌てて二人はインデックスを追いかけるのだった。

665 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/11/02 00:08:31.50 132gufMxo 417/525


 以上、お粗末様でした


 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

672 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/12/06 23:37:22.07 b9m+j/x0o 418/525


 ごめんなさい。
 冬の祭典の準備をしてました

 では、

 タイトル「ゲコ太ですの」

673 : 「ゲコ太ですの」 - 2012/12/06 23:38:13.12 b9m+j/x0o 419/525


 街を歩く美琴。
 その後ろをついていく黒子。
 二人はお買い物の途中。お昼ごはんを食べ終わって、アクセサリーショップへ向かうところである。
 ふと、美琴が顔を向けた方向には大きな看板。そこには猫が描かれている。

「猫って可愛いわよね」

 可愛いですの

「ゲコ太には負けるけどね」

 ノーコメントですの

「あれ? ゲコ太、可愛いよね?」

 ノーコメントですの

「……黒子?」

 はい、ですの

「猫は可愛いわよね?」

 勿論ですの

「でも、ゲコ太には一歩及ばないわよね」

 ノーコメントですの

674 : 「ゲコ太ですの」 - 2012/12/06 23:38:40.98 b9m+j/x0o 420/525


「……あれ?」

 はい?

「うん、黒子、もう一度聞くね?」

 はい、ですの

「猫は可愛いわよね?」

 子猫最高ですの

「うんうん、子猫はとっても可愛いの。でもね、ゲコ太には紙一重で及ばないと思うのよ」

 ノーコメントですの

「あっれぇ~?」

 納得いかないという顔で立ち止まる美琴。

「えーと……」

 と、そこへ向こうから見知った顔が。

「あ、御坂さん、白井さん、こんにちわ」

 佐天さんと初春ですの

675 : 「ゲコ太ですの」 - 2012/12/06 23:39:06.85 b9m+j/x0o 421/525

 
「こんにちわ。二人とも今日はお買い物?」

「はい、初春のおニューパンツを買いに」

「違います。いつの間にそんなことが決まったんですか」

「初春のパンツは全部制覇したしなぁ……」

 じゃっじめんと、ですの

「そうですよ、白井さん、佐天さんを捕まえてください」

「ごめんなさい、白井さん、反省します」

 罪を憎んで人を憎まず、ですの

「さすがですね、白井さん」

「ところで二人に聞きたいことがあるんだけど」

「なんでも聞いてくださいよ! 御坂さんのお役に立てるなら」

 どん、と自分の胸を叩く初春。
 ぽよん、と自分の胸を叩く佐天。
 この擬音の差は永遠の謎である。
 ちなみに美琴が胸を叩くと、

 ぺたん

 となる。

676 : 「ゲコ太ですの」 - 2012/12/06 23:39:34.79 b9m+j/x0o 422/525


「二人とも、猫は好き?」

「普通に好きですよ?」

「可愛いですよね」

「そうよね、猫は可愛いわよね」

「ええ」

「可愛いですよ」

「でも、ゲコ太はもっと可愛いわよね」

「……ゲコ……太……?」

「……ゲ……コ太……?」

 顔を見合わせる二人。やがて、

「ああ!」

 佐天がポンと手を叩く。

「さすが御坂さん、レベル5! 物知りですよね」

「え?」

「マンチカンとか三毛猫みたく、ゲコタって種類の猫がいるんですね」

「ああ、うん……ごめん」

 お騒がせしましたの

 結局それからすぐに美琴と黒子は二人と別れた。

677 : 「ゲコ太ですの」 - 2012/12/06 23:40:02.32 b9m+j/x0o 423/525


「ゲコ太って私が思っている程メジャーじゃないのかな……」

 落ち込む美琴を、黒子は心配そうに見ている。
 そして、黒子は決意する。

 お姉さま、黒子は今からジャッジメントのお仕事がありますの

「あ、そうだったの?」

 失礼いたしますの

「うん、あんまり遅くならないようにね」

 はい、ですの

 黒子は美琴と別れると、とある店へと向かった。

678 : 「ゲコ太ですの」 - 2012/12/06 23:40:28.87 b9m+j/x0o 424/525


 そこは知る人ぞ知るマニアックな名店。着ぐるみ専門店「NINA‐CHARM」である。
 店主は元マイナーアイドルだったという噂もあるが、そんなことはどうでもいい。

「お客さんでごぜーますか?」

 捜し物ですの

「捜し物の気持ちになるですよ?」

 ……これ、ですの

 吊された大量の着ぐるみの中からゲコ太着ぐるみを見つけ出す黒子。

「ゲコ太……それは随分マニアックでやがりますね」

 これにしますの
 
「毎度ありでごぜーますよ」

 その夜の寮にて……

 御坂美琴の妙に嬉しそうな悲鳴を聞いて駆けつけた、通りすがりの婚后光子が発見したのは……

 鼻血を噴いて倒れている美琴。
 ゲコ太着ぐるみを着て困っている黒子。

 見なかったふりをしよう。そう、光子は心に誓ったのだった。


679 : 「ゲコ太ですの」 - 2012/12/06 23:41:00.61 b9m+j/x0o 425/525

 
 
 
 
 
 が、しかし。

 後日……

「あ、あの、泡浮さん、湾内さん、この蛇の着ぐるみに興味はございませんか?」

 思いっきり影響されていたりする。

680 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/12/06 23:41:39.42 b9m+j/x0o 426/525

 
 以上、お粗末様でした。

 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。


 以下、ちょっとオマケで一レス
 (見てないと思うけど)元ネタ作者様、失礼いたします

 うん。ちょっとやってみたかったんだ。

681 : 中二ですの - 2012/12/06 23:42:41.33 b9m+j/x0o 427/525


 気が付くと、黒子は知らない道を歩いていた。
 いや、知っている道なのだけれど、何故か現実感が妙に薄い。
 


 お姉……さま?

「あ、黒子だ」

 お姉さまですの

「うん」

 ……なんだか、違いますの

「黒子は凄いね。わかるんだね」

 不思議ですの
 どうしてですの?

「わかんない。まだ中二だし」

 お姉さまは中二ですの

「うん。黒子は中一」

 中一ですの

「あ、もう行かなきゃ」

 さよならですの?

「うん。それじゃあ、バイバイ」

 バイバイ、ですの
 

688 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/12/10 19:20:16.83 sJbDR1DFo 428/525


 中二美琴は可愛過ぎて困る


 えー、今回は、特別編というかなんというか、ちょいと今までとは違うテイストで……


 タイトルは「ミカンですの」

689 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:21:03.91 sJbDR1DFo 429/525


 その日、ジャッジメント支部に届けられたのは一箱のミカン箱。

「あれ、どうしたんですか、このミカン箱。なんか『日頃の働きに感謝御礼』って書いてありますけれど」

 いつものように姿を見せた初春が、先にいた固法に尋ねる。

「今朝方届けられたのよ。有難く戴きましょう」

「みかんか……休憩時間に食べましょうか」

「ええ。白井さんが来てからね」

「はーい」

 そしてそれぞれが書類仕事を始めて十分後。

「あれ?」

「どうしたの? 初春さん」

「ミカンの箱、開けました?」

「触ってもないけど」

「開いてますよ」

「え?」

690 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:21:36.02 sJbDR1DFo 430/525


 初春の顔を見て、その視線の先に目をやる固法。
 確かに、ミカン箱が開いている。
 いや、これは開いているというのか。

 それはまるで。

 内側から無理矢理押し開いたような。

「こ、固法先輩」

 初春が呟く内容は、固法には予想できた。
 なぜなら、今この瞬間、二人は同じものを見ているからだ。
 とても、信じられないものを。

「ミカンが……ミカンが……」

 ミカンが箱からその姿を現そうとしていた。
 誰も触れていないミカンが、勝手に……




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


691 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:22:18.21 sJbDR1DFo 431/525

 
「学園都市の技術の粋を尽くして製作されたミカンが脱走した」

「は?」

 急遽招集された超能力者一同の目が点になる。
 仕方なく、土御門はもう一度説明する。

「だからな、ミカン。ジャパニーズオレンジ」

「いやいや、わかンね」

 手を振る一方通行に土御門はにべもなく、

「わかれ」

「無理言うンじゃねェ」

「因みに自律行動が可能で、多少の自意識も持っている」

「それ、本当にミカンなの?」
 
 美琴の問いもスルー。

「学園都市のバイオ部門が総力を結集し、交配を重ねて作り上げた珠玉の名蜜柑らしい」

「くだらねェことやってンな、上も」



692 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:22:45.04 sJbDR1DFo 432/525



「因みにミカン三世代で完成した」

「短か! 速攻じゃねえか! おい」

「ミカン物質は黙ってろ」

「未元物質だから! あと、読み方は〝ダークマター〟だから! 〝みげんぶっしつ〟じゃないから!」

「詳しいことは、この記録を見てくれ。研究者達がミカンの特徴をまとめたPVだ。本来なら闇のバイヤーに流されるモノだったらしい」

 土御門が一枚のディスクを多機能デッキに挿入する。
 即座に、壁に埋め込まれたディスプレイに映像が映る。

「俺の名はミカン三世……」
(♪マシーンエントラーイ ヤッパッパッ~♪)

 バチュン、と音がしてディスプレイのあった場所に大穴が開いた。

「……いい加減にしねえと本気でブ・チ・コ・ロ・ス」

 原子崩しの余韻もそのままに、麦野が土御門を睨みつけていた。

「やれやれ、ちょっとしたジョークで場を和ませ……」

 バチュン

「まともに話すか、この部屋が海綿のアップみたいに穴だらけになるのか、どっちがいいかにゃーん?」

 要は、バイオ技術の粋を集めて作られたスーパーミカンの鎮圧依頼である。
 正直、レベル5の出番だとは思えない。

693 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:23:12.36 sJbDR1DFo 433/525

 
 素直に美琴がそう問うと、

「いやいや、ミカンの実力はマジだぜい?」

「つまり、根性の入ったミカンってことか」

 腕を組み、さも訳知り顔で頷く削板。

「すげェ、こいつ、納得してやがる」

「さすが原石、常識が通じねえ意味では俺以上か」

「さぁすがぁ、グンにぃ、根性力溢れてるぅ~☆」

「男に縁の無かった奴が一旦落ちるとこうなるんだねぇ……」

「麦野さん、お互い気をつけようね」

「いや、私は縁あるから」

「そうなの? いや、実は私もあるんだけど」

「なんだろうね、この見栄にまみれた女どもは」

「黙れミカン物質」

「おぉい! 定着させる気か!?」


694 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:23:38.80 sJbDR1DFo 434/525


 その頃、初春たちは……

「ああああ!!」

「初春さん!!」

「あ、あ、手が……私の手がぁあああ」

 入口は既にミカンによって占拠されている。
 閉じこめられた形の固法と初春は絶望的な反撃を強いられていたのだ。

「そ、そんな、初春さんの手が……こんな……これじゃあ……」

「あああ……」

 初春の手……いや、指にはそれぞれミカンが刺さっている。
 つまり、十個のミカンが十本の指に刺さっているのだ。

「こんな指じゃ、キーボードが打てません!!」

「くっ、外部との情報のやりとりをシャットアウトするなんて……こいつら、プロだわ」 

「こんな手じゃ、ご飯を食べることも出来ませんよ」

「諦めちゃ駄目よ、初春さん、イザとなれば犬食いという手もあるわ」

「ポシンタンですか?」

「いや、そうじゃなくて」

 遅れましたの

695 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:24:06.33 sJbDR1DFo 435/525


 二人の間に現れるのは、テレポーター白井黒子。
 出入り口がミカンで封鎖されていても黒子には一切関係ないのだ。

「白井さん、このミカン、徒者じゃないわ、気をつけて!」

 おいくらですの?

「無料じゃなくて」

「うう、白井さん、助けてください……」

 初春がミカンまみれですの
 
 黒子が手を差し伸べ、ミカンに触れる。
 消えるミカン。
 すると、どこからともなく飛んでくるミカンが初春の指に刺さる。

「はうっ、またミカンが」

 黒子がミカンを何処かへ飛ばす。
 ミカンが飛んでくる。
 初春の指に刺さる。

「あううう、もう駄目です。きっとこのまま私は、指先にミカンをつけたまま不自由に暮らしていくんです」

 黒子がミカンを飛ばす。
 ミカンが飛んでくる。
 初春の指に刺さる。
 黒子が飛ばす。
 飛んでくる。
 指に刺さる。
 飛ばす。飛んでくる。刺さる。
 飛ばす飛んでくる刺さる飛ばす飛んでくる刺さる飛ばす飛んでくる刺さる……

696 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:24:33.17 sJbDR1DFo 436/525


 ……ぜぇぜぇ……

「白井さん、大丈夫ですか?」

 ……もう合計50kgぐらい飛ばしたような気がしますの

「最初のミカン箱にだってそんなに入っていなかったわよ。一体どこからそれだけの量が」

 三人の視線がミカン箱へ。

 そこには、ぐもももももと溢れ出すミカン。

 ミカン、絶賛増殖中ですの
 UNLIMITED MIKANですの

「あれ、ミカンなの?」

「……多分」

 初春は何かを食べながら言う。

「甘くて美味しいです」

「初春さん、まさかと思うけど、何食べてるの?」

「ミカン美味しいです」

 美味しいですの

「白井さんも!?」

「かざり、遊びに来たんだよ」

 第四の声。それは出入り口から。
 そこにいるのは、満面笑顔のインデックス。

697 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:25:00.68 sJbDR1DFo 437/525


「ミカンごちそうさまなんだよ」

 入口を物理的に占拠していた大量のミカンを食べ尽くしたらしい。
 
 この瞬間、固法は勝利を確認した。

 インさん来た、これで勝つる!

「入口の横にミカンの山があるけれど、アレも食べていいのかな?」

 おそらくは、黒子が飛ばしたミカンだろう。

 てれてれ

 黒子が何かを想いだして身悶えする。

「どうしたの? 白井さん」

 佐天さんと一緒に来ましたの

「佐天さんは?」

 ドアの外で待ってましたの

 今はミカンの下である。ヘルマン・ヘッセもびっくり。

「とりあえず、ここにあるミカンは全部食べていいわよ」

「ありがとうなんだよ!」

「ミカンの下にあるものは食べちゃ駄目よ」

「わかったんだよ。鋭意努力するかも」

「絶対食べちゃ駄目よ?」

 そして魔術によって科学が救われようとしている頃……

698 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:25:45.17 sJbDR1DFo 438/525




「で、いつ出発するンですかァ?」

「おい、これじゃあこの騒動、いつまで経っても終わらねえぞ」

「仕方ないだろ」

 土御門がドヤ顔で一同を見回す。

「未完の騒動なんだから」






                                             おあとがよろしいようで

699 : 「ミカンですの」 - 2012/12/10 19:26:12.55 sJbDR1DFo 439/525


 以上、お粗末様でした。

 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

708 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/12/26 23:14:03.98 dwqYDEPBo 440/525

 前回はですね、じつは「アタック・オブ・ザ・キラートマト」みたくしようと思ったけどどうしてああなった



今回のタイトルは「大掃除ですの」

709 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:15:30.33 dwqYDEPBo 441/525

   
 はぁー

 ごしごし

 はぁー

 ごしごし

 太陽の光をキラリと反射するガラスに、黒子はご満悦の表情で腰に手を当てて頷いた。

 完璧ですの
 ピカピカですの

「白井さーん」

 足下から聞こえる声に、黒子は視線を落とす。

「そろそろ終わりそうですかー?」

 黒子は立ち上がると、下に向かって大きく手を振る。

 終わりましたの
 
「それでは、ポイントチャーリーへと移動いたしましょう!」

 了解ですの

710 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:15:56.82 dwqYDEPBo 442/525

 
 婚后光子率いる常盤台水磨部隊【ザ・ウォッシャー】は、速やかに次の建物へと移動する。
 それに従い、黒子も次の建物へとテレポート。

 黒子が次の建物の天辺にとりついたのを確認し、光子は湾内絹保に合図する。

「湾内さん、お願いいたします」

「了解ですわ」

 湾内が腕を上げると、周囲の女生徒が両手で抱えていたバケツから水柱が上がり、建物の天辺へと波のように襲いかかる。
 勿論、それは黒子を狙うものではない。
 黒子の足下、建物外壁を水柱は水流と化し、渦巻きながら流れていく。

「さすがは湾内さんですわ」

「あら、 泡浮さんこそ」

「泡浮さんの力が無ければ、こんなに重いバケツを持ってられませんもの」

 湾内絹保の「水流操作」で洗われる建物。その洗浄に使われる水は、 泡浮万彬の「流体反発」によって重さを軽減されているのだ。
 そして黒子は、湾内の水流操作では届かない細かい部分、天窓の隅などを掃除しているのだ。
 因みに黒子がやってる理由は、万が一足を滑らせて落下しても、空間移動を利用してあっさり着地できるからである。

 はぁー

 ごしごし

 はぁー

 ごしごし

711 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:16:26.46 dwqYDEPBo 443/525

 
 黒子は一生懸命に天窓を磨く。
 今日は年末恒例、常盤台大清掃日なのだ。
 普段の清掃では寮内、校舎内に限られているのだけれど、そこは能力者を多数抱える常盤台。
 能力を活用して年に一度は自分たちだけで校舎全体の清掃を行っているのだ。

 因みに、美琴は別の場所で電撃による通電殺菌中である。

「おりゃああああ!!」

「さすがは御坂さま、これだけの量が一度に殺菌できるなんて」

「常盤台の誇るレベル5ですわ。ああ、素敵」

「……」

「どうかなされました? 食蜂さん」

「あれだけ踏ん張って叫んでてもぉ、『素敵』って言われるのが常盤台の乙女力よねぇ。時々怖いゾ☆」

「御坂さんと食蜂さんは別格ですもの」

「神と精霊と乙女の名の下に悪しき使いは去るんだよっ!」

 叫びながら殺虫剤を撒いているのはインデックスだ。
 その横ではプチケンティウスが時々発見したゴミを燃やしている。

712 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:16:52.82 dwqYDEPBo 444/525

 
「……あの子の妙な元気力も、別格かしらぁ?」

「別の意味で、まさに別格ですわ」

「はぁ……。操祈、肉体労働には向いてないのにぃ」

 見るから怠そうな食蜂に、縦ロールの女生徒はとある忠告を思い出した。

 御坂美琴曰く、今の食蜂操祈を働かせる方法はこれだ、と。

「根性ですわ、食蜂さん」

「根性?」

「はい。根性力です」

「根性力だったら仕方ないわぁ」

 シャキンと立ち上がる食蜂。
 恋する乙女は無敵なのだ。

 そして黒子達は、おおかたの建物を終えていた。

 おー

 黒子はやり遂げた顔ですっくと立ち、周囲を睥睨している。
 高いところは気持ちいい。
 掃除を終えた所なのでさらに気持ちいい。
 誇らしげに胸を張り、黒子は景色を眺めていた。

713 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:17:19.51 dwqYDEPBo 445/525

 
「……らいさん!」

 おー

「白井さん!」

 おー
 お?

「白井さん」

 なんですの?

 下からなにやら慌てて叫んでいるのは婚后さん。

「見えてます!」

 ???

「見えてますのよ!!」

 ???

「し・た・ぎ」

 慌ててスカートを抑えしゃがみ込む黒子。
 確かに言われてみれば、下からは丸見えだ。しかも、堂々と仁王立ちまでしていたのだから。

 見られましたの……
 てれてれ

714 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:17:45.78 dwqYDEPBo 446/525

  
 それでも黒子は降りない。
 景色に見惚れているのだ。

 高いところに吹く風は気持ちがいい。季節を考えるとちょっと寒いけれど。
 実はちょっとどころじゃないけれど。
 いや、実際の所かなり寒いのだけれど。

 ぶるぶる

 黒子は建物から降りた。

 寒いですの

「ご苦労様ですわ」

 庭では、掃除後の炊き出しが始まっている。
 これもまた、常盤台恒例である。
 大鍋一杯のお汁粉が順に振る舞われていく。

 今年は何故か鍋が一個多くて、その鍋の前にはシスター姿の子が一人しかいないようだけど、黒子は気にしないことにした。

 あっつあつですの

 ふーふー

 ずるずる

 あつあつですの

「お餅も焼いてるわよ」

 いつの間にか、お姉さまも戻ってきている。

715 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:18:15.12 dwqYDEPBo 447/525

 
「お餅を、汁粉に入れるとぜんざいになるのよ」

 本当は地方によって色々あるのだけれど、学園都市ではお餅が入ってないものがお汁粉、お餅が入っているとぜんざい。
 とってもわかりやすい。

「お餅を貰いましょう」

 はいですの

 汚くないゴミ(廃材、古紙など)を燃やしているドラム缶の上の鉄板でたくさんお餅が焼かれている。
 当番となった何人かの生徒が忙しくお餅をひっくり返していた。
 ぷくりぷくりと膨れるお餅。
 間に合わずに破裂してしまうお餅もいくつかある。

「御坂さま、白井さん。お餅を幾つ入れましょうか?」

 二つ下さいまし

 担当生徒にお餅を二つもらい、とぽん、とお汁粉に入れる。
 お餅のお焦げがぱりぱりといいながら甘い汁に浸っていく。

「じゃあ私も二つ」

 お姉さまも二つ。

 はふ。あつっ、あつっ。
 
 お姉さまがぜんざいを熱そうにしているから

 ふーふー

 黒子はお姉さまのぜんざいにふーふー。

 ふーふー

「ありがとね、黒子」

 てれてれ
 

716 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:18:41.87 dwqYDEPBo 448/525

 
 そして黒子は自分のお餅を……
 
 あつっあつっ

 やっぱり熱い。

「ふーふー」

 お姉さまが冷ましてくれる。

 はふっ はふっ
 ずるっ

 熱々の甘々ですの

「美味しいね」

 はいですの

 ふーふー
 ずるずる
 はふはふ
 はふっはふっ

 お餅が無くなりましたの

 お代わりですの


717 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:19:11.29 dwqYDEPBo 449/525

 
「白井さん、今度は幾つですか?」

 四つですの

「白井さん、二つで充分ですよ」

 いえ、四つですの。二と二で四つですの

「二つで充分ですって」

 お汁粉もいただきますの

「……わかりましたよ」
  
 いただきますの

 四つの香ばしい匂いを放つお餅が、所狭しとお椀に浮いている。

「黒子、さすがに食べ過ぎじゃない?」

 今日は黒子は、沢山働きましたの

「お腹痛くならないようにね?」

 はい、ですの

 はふっはふっ 


718 : 「大掃除ですの」 - 2012/12/26 23:19:41.62 dwqYDEPBo 450/525



 空になった椀を隅のバケツに放り込んでぜんざいはおしまい。
 婚后さん達も食べ終えて、椀を所定の場所に集めている。
 椀は発泡スチロール製だから、このままゴミとして棄ててしまうのだ。

「お腹一杯になったね」

 ぽっかぽかですの

「黒子、暑くなったからって上着脱いだら駄目よ、風邪ひくわよ」

 お腹ぷっくぷくですの

「お餅食べ過ぎよ。部屋に戻ろうか」

 はい、ですの




 その夜黒子は、お腹がお餅のように膨れて破裂する夢を見ました。

 

719 : ◆NOC.S1z/i2 - 2012/12/26 23:20:17.16 dwqYDEPBo 451/525


 以上、お粗末様でした。

 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

729 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/02/02 23:11:00.37 /dhYxaCMo 452/525

今回はいつも以上に中身無しです

タイトル「にゃあにゃあですの」

730 : 「にゃあにゃあですの」 - 2013/02/02 23:12:15.50 /dhYxaCMo 453/525

 
 今日も黒子はパトロール。

 なんとなく怪しそうな路地を見つけて入ってみる。

 ……怪しいですの

 確かに妙な気配。
 獣臭いというか……ネコ臭いというか。

 にゃあ

 ネコですの

「黒子にゃあ」

 フレメアですの

「だいたい久しぶり。見回りご苦労にゃあ」

 にゃあ

 ネコもいますの

731 : 「にゃあにゃあですの」 - 2013/02/02 23:13:06.51 /dhYxaCMo 454/525

 
「学園都市生まれのスキルアウト育ち、ネコなやつらはだいたい友達にゃあ」

 それは初耳ですの

「嘘だから」

 嘘つきは脳から鉄針を突き刺しますの

「にゃあああああっ!!?!??」

 嘘ですの

「う、う……黒子が怖い……」

 泣く子ももっと泣くじゃっじめんとですの

 にゃあにゃあ

「うん、大丈夫」

 ネコに慰められているフレメア。

 そこで黒子は周囲に気付く。ネコまみれな周囲に。

 ネコだらけですの

732 : 「にゃあにゃあですの」 - 2013/02/02 23:13:39.51 /dhYxaCMo 455/525

 
 黒子の言葉通り、時にはネコがあふれかえっていた。まるでネコの国である。
 人間はフレメアと黒子だけ。
 でも、フレメアは普段からにゃあにゃあ言っているのでちょっと怪しい。

「ここはネコエリアにゃあ」

 なるほど、学園都市内にはネコの支配する空間というのもあるのだろう。
 なにしろ、噂ではカブトムシの支配している空間まであると言われている学園都市だ。ネコならまだ哺乳類なだけマシだろう。

 にゃあにゃあにゃあ

 猫の声がとてもよく聞こえてくる。

 ネコさんが沢山いますの

 ♪にゃんにゃにゃーん にゃんにゃにゃーん

 お葬式ですの

 ♪にゃにゃにゃにゃーん にゃにゃにゃにゃーん にゃんにゃんにゃにゃにゃにゃん にゃにゃにゃにゃん

 結婚式ですの

733 : 「にゃあにゃあですの」 - 2013/02/02 23:14:11.69 /dhYxaCMo 456/525

 
 色々とネコたちも忙しいらしい。イベント目白押しである。

 ♪にゃーんにゃっにゃにゃにゃにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃーん にゃにゃにゃ にゃーんにゃっにゃにゃにゃにゃっにゃっにゃっにゃっ

にゃっにゃーん

 ゼビウスですの!?!

 慌てて周りを見回す黒子だけど、ソルバルゥは飛んでない。おバキュラさまもない。むろんスペシャルフラッグなど見あたらない。
 お葬式はちょっぴり悲しいけど、仕方ない。結婚式はとってもおめでたい。

 でもゼビウスは困る。
 アンドアジェネシスはかなり困る。

「ネコが一杯増えて凄いことになってる!」

 何故か誇らしげなフレメア。
 しかしフレメアの言葉に間違いはなく、見渡すばかりのネコまみれ。学園都市中のネコを集めたような光景が広がっている。
 
 にゃあにゃあ

 困りましたの

734 : 「にゃあにゃあですの」 - 2013/02/02 23:15:03.76 /dhYxaCMo 457/525

 いつの間にか帰り道もネコに阻まれている。

「黒子のお姉ちゃんもネコと一緒、にゃあ」
 
 黒子はお姉さまの所に帰りますの

「にゃあ、フレメアも帰る! だいたいお腹減ったし」 

 フレメアが黒子の差し出した手を握る。

 にゃあにゃあ

 ネコが並んでいた。

 お見送りですの

「にゃあ! また来るにゃあ!」

 また来ますの

 にゃあにゃあ

 そして二人は、ネコさん達にお別れした。
 また、今度。
 

735 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/02/02 23:16:32.01 /dhYxaCMo 458/525

 
 以上お粗末様でした

 次回は、レベルアッパーか、カブトムシの予定


742 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/02/24 20:56:00.12 +ldwSs2bo 459/525

レベルアッパーネタを書いたつもりなのに、
よくわからないモノが出来ましたよ

今回は佐天さんがメインです
佐天さんが凄い能力を持つというネタです

タイトル「佐天無双ですの」


743 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 20:57:11.78 +ldwSs2bo 460/525

 
  
 静まりかえったメインストリートに立つ二人の少女。
 そこには普段のような通行人はいなかった。
 
 為す術もなく立ちつくすのは白井黒子。
 その前に立ちはだかるは、佐天涙子。

「白井さん。私はもう、昨日までの私じゃないんですよ」

 佐天さん……

「周りを見てください。もう、わかっているんでしょう?」

 言われるまでもない。
 黒子にはわかっている。いや、現実が見えている。あっけないほどの、完膚無き敗北の姿が。

 倒れ臥す一方通行、垣根帝督、上条当麻、浜面仕上。
 佐天から距離を取って様子を窺っているのは御坂美琴、麦野沈利、絹旗最愛、結標淡希。

「レベル5の人たちすら、こうなんですよ?」

 レベル4に過ぎない白井黒子に勝ち目はあるのかと、言外に佐天涙子は問うている。

 そう。レベル5第一位第二位、そしてレベル5を下す可能性を持つ二人。
 それらを全て退けた佐天に、黒子は勝利、いや、抗することができるのか。

744 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 20:57:44.49 +ldwSs2bo 461/525

 
 だが……
 いや、それだからこそ、黒子は言うのだ。

 じゃっじめんと、ですの

 ジャッジメントは退かない。退いてはならない。
 例え敗れることがあろうとも、退くことは決してない。それが黒子の誓い。それが風紀委員の誇り。

「そうですか、白井さんは、あくまでも私の邪魔をするんですね」

 佐天さん……今からでも

「遅くない、なんて言わないでくださいね」

 笑った佐天の表情は驚くほどに透き通っていて。
 それはまるで、全てを信ずる母親に託しきった赤子のように無防備で。 

「もう、何もかも手遅れなんです」

 力のない歪んだ笑いは自嘲か、それとも諦念か。

「私が、それに手を染めてしまった瞬間から」

 それでも黒子は言う。

 違いますの

745 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 20:58:11.39 +ldwSs2bo 462/525

 
 きっぱりと、一歩も退かずに黒子は言う。

 それは、違いますの

「遅いんです!」

 吐き捨てるように、佐天は叫ぶ。

「もう、遅いんです!」

 それは悲鳴だった。
 己の所行を悔いることによる、しかし自らの責任を逃げずに受け止める痛みへの悲鳴だった。

 違いますの

 それでも、黒子は退かない。
 退いてしまえば、一人の友を失うと知っているから。
 たとえそれが、どのような茨の道であろうと。

「私が……私が初春を……」

 誰に向ける言葉でもなかった。強いて言うならば、それは自分自身に向けられた言葉なのだろう。
 自らを責め、抉る言葉。

746 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 20:58:37.40 +ldwSs2bo 463/525

 
 違いますの

「同じ言葉ばかり……!」

 馬鹿にしているのか、と声を荒げようとして、佐天は気付く。
 それは黒子の決意なのだ。
 言葉を変えないのは、それが確固たるモノだから。
 他の言葉では表せないと、黒子自身が誰よりもよくわかっているから。

 違いますの

 ならば自分は、こう答えよう。

「違いませんよ」
 
 自分は既に手遅れだと言うことを証明しよう。
 救いの手を振り払おう。
 自らが、救うに値しない存在だと証明しよう。
 だから、自分を切り捨てて欲しいと訴えよう。

「白井さん……」

 名を呟いて、佐天は手を挙げる。
 いつの間に、こんなことになってしまったのだろう……

 そう、それが始まったのは……

747 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 20:59:04.73 +ldwSs2bo 464/525

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「最近の初春は、鉄壁だね」

「いつまでも佐天さんの思うままにはいきませんよ」

「むう、生意気な」

 このところ連続してスカートめくりに失敗している佐天の不満顔に、初春は胸を張る。

「修行が足りませんね」

「むぅ……どうしてやろうか」

 よし、スカートをめくろう。

「だから駄目ですって」

「ぬう……」

 佐天は考える。
 鉄壁防御の初春に弱点はないのか。スカートをめくる隙はないのか。

 そして行き着いた先は……

748 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 20:59:31.74 +ldwSs2bo 465/525

 
(無能力者は弱い、能力があれば捲れるんじゃないだろうか)
(力が欲しい。無能力者の私にはない力が)
(初春のスカートを捲れる力が!)

 何故か佐天は能力者を目指すことになった。
 とは言っても、目指したからと言ってなれるわけではない。目指すだけでなれるのなら、今頃学園都市は超能力者だらけだ。
 現実とは厳しいのである。
 だがしかし、抜け道というのは何処にでもあるわけで、能力育成についても例外ではなかった。

 幻想御手~レベルアッパー~ である。

 都市伝説もどきの噂として佐天もその存在は知っていた。
 服用者のレベルを飛躍的にアップさせ、無能力者であれば能力者にしてしまうと言う技術。
 それがいかなるモノなのかまではわからない。薬か、あるいは何らかの外科的手術か。

 いや、わからなかったのはついさっきまで。
 今の佐天は知っている。レベルアッパーを知っている。否、持っている。

 それはただの偶然か、あるいは彼女の執念が招いた必然か。

 そして佐天は……佐天涙子は、禁断の世界に足を踏み入れる。
 己の内に力を見出すために。
 あり得ざる能力を生み出すために。

749 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:00:10.91 +ldwSs2bo 466/525

 
「ごめんね、初春」

 佐天の腕が上がる。
 それは抗えぬ力。
 いかなる防御すら瞬時に無効化し、スカートが、まくれ上がる。

「そんな……」

 茫然自失の初春。それもそうだろう。鉄壁と信じた守りが、砂上の楼閣のように容易く、あまりにも容易く崩されたのだから。
 
「そんな……どうして……」

 佐天は己の力を知った。
 これが、己の力。
 鉄壁の防御などこの力の前には存在しない。
 いついかなる場合も、どのような場所であろうともスカートをめくり上げる力。

 下着露出(パンツアッパー)

 ちなみに、レベルアッパーと間違えて入手したことは内緒である。
 開発者は木山先生。そして共同研究者、布束〝ギョロ目可愛いよギョロ目〟砥信。
 いつもいつも痴女扱いされることにキレた木山先生が、「だったらみんな露出すりゃいいんじゃね?」との想いで開発した優れものである。
 あと、「ゴスロリが変な格好なんて言うんじゃねえ。そやったらみんな変な格好にしたらぁ」 との想いも込められている。

750 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:00:37.46 +ldwSs2bo 467/525

 
「この力で私は! 学園都市中のスカートを捲る!!」

 まくれ上がるスカート。次々と上がる少女の悲鳴。

「ちょ、なに、え、ぇえええ」
「きゃああああ、ってミサカはミサカは悲鳴を上げてみる」
「絶対等速さん! カメラ、カメラッスよ!!!」
「スカートがおかしいかも」
「捲れた。無様。」
「でかした、わっか君!」
「ふむ……突然足下から涼しくなったな」
「スカート捲れたまま平然と歩く美女だと……?」
「殿方がこちらを見ていますわ!」
「不埒な姦賊には相応の罰を!」
「ぶべっ!」

 誰かが婚后光子に吹き飛ばされる。

「はっはっー!! 見つからないように死角にテレポート! テレポート! テレポートぉっ」
「打ち止めのスカートを捲った奴がいるって聞いたンですけどォ?」
「……すんませんチョーシ乗ってましたごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 街の一角は混乱の極致である。
 そして駆けつける風紀委員。

751 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:01:04.60 +ldwSs2bo 468/525

 
 じゃっじめんとですの!

「駄目です! 白井さん! それ以上近づくと佐天さんの射程距離に!」

 初春の忠告より一瞬早く、佐天の手が動く。
 しかし、能力発動の瞬間も佐天の感覚は空を切る。それは、スカートを捲り上げるのではなく、空を掴む感触。

「……そっか。白井さんの能力は瞬間移動でしたね」

 黒子には通じませんの、黒子は逃げ切りますの

 距離を取った黒子の手が上がろうとしたとき、

「どけっ! 白井!」

「女の敵に超オシオキです!」

 麦野と絹旗が黒子の左右へと展開する。

「てめえっ!」

「行きますッ!」

 原子崩しの予兆の輝き、絹旗の突進。
 が、しかし!

752 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:01:32.41 +ldwSs2bo 469/525

 
「私の技は! 誰にもっ! 止めさせないっ!!」

 巻き上げられるように捲れる麦野のスカート。そして、捲れすぎて臍まで見えてしまう絹旗!

「なっ!」

「ぎゃうっ!?」

 思わずスカートを抑えた麦野の原子崩しが地面を貫き、臍まで見えた絹旗は真っ赤になって座り込む。
 
「原子崩しを撃つために私に腕を向けた瞬間、麦野さんのスカートは捲れ上がりますよ?」

「な……」

「そして、これがっ! 私の真力!!」

 そう。佐天の真の力はスカートめくりではない。それは、あくまでも真の能力への前奏曲(プレリュード)に過ぎない。
 彼女の能力の名は、下着露出(パンツアッパー)、その名を知れば容易に概要は想像できるだろう。
 いや、それどころではない。
 露出するのは下着ではない。
 繰り返して告げよう。露出するのは、下着では、ない!

「簡単なことですよ。作用と反作用。スカートを上へと捲る作用に対して生じる反作用、それは下への力!」

753 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:02:14.99 +ldwSs2bo 470/525

 
「……そんな、まさか……」

「下へと向かうのは! 下着!」

 スカートは捲り上がり、下着はずり落ちる。それが佐天涙子の真の能力であった!

「て、てめぇえええ!!!」

「にゃああああああああ!!!!」

 半泣き状態でスカートを抑えていた二人。その姿が突如として消えた。

「大丈夫?」

 結標淡希である。

「借りができたね」

「超感謝です」

「気にしないで、それより今はあの人、佐天涙子の暴走を止めること。このままだと、学園都市からスカート着用者は消えかねないわ」

 もともとスカートを穿くことの少ない者はいいだろう。
 例えば滝壺理后、あるいは黄泉川愛穂。
 だが、スカートを穿いている者はどうなる。そして、スカートから覗く生足をこよなく愛する紳士達は!


754 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:02:40.96 +ldwSs2bo 471/525

 
「許せねえ」

「ああ、てめえみてえなチンピラと同じ意見ってのは気にくわねえがな」

 浜面仕上、垣根帝督の二人が立ち上がった。

「女の子相手に乱暴はしたくないが、止めるぞ」

「はっ、そんな常識が俺に通用するとでも?」

 佐天涙子は慌てない。
 なぜなら、自分の力に絶対の自信を持っているから。

「スキルアウトと第二位さん?」

 だから佐天はただ、右腕を上げる。

 浜面と垣根は走る。
 佐天の能力はスカート特化、下着特化である。
 ズボンに対しては無力。ズボンを穿いている男にとっては恐れるべきものではない。
 もしかしたら、逆に脱がされるとかも知れないが、そこを恐れていては始まらない。
 第一、今周囲にいるのは麦野、絹旗、白井、結標、婚后達である。
 この場で例えズボンと下着を脱がされたとしても! それは一部の者にとってはご褒美に過ぎないのだから!!

 しかし、結論から言えば二人はもっと慎重に対処するべきだった。

 その能力はスカートに上向き、下着に下向きの力を与えるもの。そして、その力はズボンには無効。
 上向きの力は、ズボンをスルーして下着に掛かるのだ。
 つまり、男達の下着は上に向かって引っ張られる。

755 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:03:06.94 +ldwSs2bo 472/525

 
 それも、急激に、凄まじい力で。
 佐天の真の能力は必要ない。第一波の力だけで、男達は倒れ臥す。

 具体的には、タマを締め付けられて。

 倒れ、ビクンビクンと痙攣している浜面と垣根。

「浜面ーーーっ!!」

「垣根ーーーーーっ!!」

 ビクンビクン

「……くっ……こうなったら俺が……」

 上条当麻。幻想殺しを持つ男。
 確かに、佐天の力が如何に強大とは言え、上条の幻想殺しをクリアできるものではない。
 上条はただ、佐天の能力から股間をカバーすればいいのだ。

 具体的には、股間を押さえながら走ることになる。

 股間を押さえながら、女子中学生に向かって走る男。

 ただの変質者である。

756 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:03:35.52 +ldwSs2bo 473/525

 
「ちくしょおーーーーーっ!!!」

 それでも上条は走る。変質者にしか見えない姿で走る。
 誰かに動画を撮られていたら確実に捕まる姿で走る。
 そばで見ている美琴もちょっと引いているけれど、それでも走る。
「うわぁ」と麦野が呟いているけれど、それでも走る。
「超ないです……」と絹旗が呟いても、上条は走る。

 股間を押さえているため女走りになっているのが余計に変質者ムードを醸し出していても、それでも上条は走る!

「うおおおおおおおお!!!!」

 そして佐天に接近し、

「その幻想を!」

 幻想殺しの宿る腕を、つい癖で振り上げる。

「ぶち……」

 そして股間は無防備に。

「あ」

 美琴が呟いた次の瞬間、上条はもんどり打って倒れた。

 ビクンッビクンッ

 上条痙攣。

757 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:04:02.31 +ldwSs2bo 474/525

 
「何やってンですかァ? アホですかァ?」

 心底面倒くさそうな口調で一方通行が、さっきまで死角移動を始末していた一方通行がやってきた。

「どうやらあの力、ベクトル操作の下位互換と見た。俺なら確実にキャンセルできる」

「……私も行くわ」

 美琴が一方通行の前に立った。

「あァ?」

「あんた、手加減下手でしょ。佐天さんに大きな怪我させたくないの」

「スカート捲れてもいいのかぁ?」

 どこかでアステカ訛りの「よっしゃ」という声が聞こえたような気がした。

「短パン穿いてるし」

 なら最初から美琴が行けと言う意見もあるが、短パンまでずらされる可能性もあるのだ。
 いたいけな女子中学生が辱めを受けていい世界などない。

「やべェと思ったらすぐ逃げろよ」

「ええ、わかってる」

 二人は走った。

758 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:04:29.06 +ldwSs2bo 475/525

 
 ここで始めて、佐天の表情に焦りが生まれる。それもそのはず、一方通行には能力が通じないのだ。
 佐天の生み出す作用反作用をベクトル操作で打ち消しているのだ。

「くっ」

 佐天は考える。一方通行の演算を乱す方法を。
 そして、一つの手が。

「これでどうです!!」

 一方通行の視界に入った、全ての女性のスカートが捲れ、下着が下ろされそうになった。

「はっ、興味ねェ」

「ホモ!?」

「違ェ!!」

 ならば、と佐天は美琴に力を集中する。
 しかし、短パンは下着とは違い、腰の所での粘りが違う。簡単には下ろせない。
 逆にスカートは簡単に捲れ、美琴は抵抗すらしていないが、短パンが見えたところで恥ずかしいわけがないのだ。

「それならっ!」

 佐天は閃いた。短パンが脱がせないのならば、逆に吊ってしまえ、持ち上げてしまえ。
 そう、釣り上げて食い込ませ、超ハイレグにしてしまえ、と!

「え、ええええ?!」

 さすがに美琴の足が止まった。

759 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:04:59.39 +ldwSs2bo 476/525

 
「ちょ、ちょっと」

 慌てる美琴。

「な、なに、あ、駄目、ちょっと、これ」

 慌てる美琴。
 食い込む短パン!
 ガン見する一方通行!!

「おい」

 麦野のツッコミと共に、崩れ落ちる一方通行。

 ビクンッビクンッ
 一方痙攣。

 そして、その場から動けなくなっている美琴を回収する結標。
 着替えタイムを要求してその場を去る美琴。

「……スカートじゃない女も近づけないってことか……」

 麦野の呟きに、絹旗も頷く。

「男連中も超全滅です。というか、第一位第二位が駄目なら、誰が行くんですか?」

 行きますの

「白井?」

「超危険です。スカート捲れますよ? パンツ降りますよ?」

 じゃっじめんと、ですの

760 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:05:51.47 +ldwSs2bo 477/525

 
「白井……」

「それが……超風紀委員、ですか?」

 じゃっじめんと、ですの

 黒子は一歩、そして一歩と佐天へと近づく。

「白井さん。私はもう、昨日までの私じゃないんですよ」

 佐天の言葉に、黒子は頷いた。

「ちょっと待ったぁ!」

 !?

 黒子を押しのけるようにして立つのは、レベル5第七位、削板軍覇。

「嬢ちゃんの仕事の邪魔をするつもりはねえ。が、第一位と第二位、そして上条の無念。この俺が晴らす」

 第七位様…… 

「あと、名前忘れたけど、何かもう一人」

 浜面ですの

「無茶だ」

 止めに入ろうとした麦野を制止する一人。

761 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:06:17.88 +ldwSs2bo 478/525

 
「安心力たっぷりよぉ。レベル5第七位は無敵力なんだから」

「食蜂……」

「超心配です。いくらデタラメな第七位でも、男の弱点は……」

「だーいじょーぶ。心配要らないゾ☆」

 ほら、と食蜂が指さす方向、佐天の顔色に焦りが見える。

「……どういうことですか?」

 手応えはある。下着に力を注ぐ感覚はある。しかし、削板は顔色一つ変えていないのだ。

「どうした? 姉ちゃんの力、俺には通じないか?」

「なんで……」

「どういうことだ?」

 尋ねる麦野に食蜂は笑う。

「まさか、超ノーパン……」

 それならば、佐天は力の加減で気付いているだろう。
 削板は確実に下着をつけている。そして、力を注がれている。
 しかし、圧迫されていない。締め付けられていないのだ。

762 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:06:49.70 +ldwSs2bo 479/525

 
 何かがおかしい。
 下着はつけているのに、つけていない感覚。
 つけていないのにつけている感覚。
 
 下着にして下着に非ず。
 下着に非ずして下着。
 
 その矛盾の前に、佐天の演算は空転する。

「……簡単よ、軍にいは、ふんどしなのよ!」

「!!」

 佐天はふんどしを知らない。知らないものは演算できない。
 第一位一方通行すら、知らない物質~未元物質~を初見で演算することは出来ないのだ。
 佐天にとって未知の物体~ふんどし~は解析不可能だ。

「よし、食蜂、一つ聞いていいか?」

「何かしらぁ? 役に立たない第四位さぁん?」

「なんで、削板の下着をお前が知ってるんだ?」

「」

「あ、それ、私も超気になります。食蜂さん?」

「」

763 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:07:17.86 +ldwSs2bo 480/525

 
「あー、私も聞きたい。なんで?」

「え、どうして御坂さん、ここで復帰してくるの!?」

「私も気になるかも」
「まあ、殿方の下着に食蜂様がお詳しいとは……」
「ねえねえ何の話? ってミサカはミサカは興味津々」
「私も混ぜてくださいよぉ」
「え、食蜂さんが?」
「結局付き合ってるって訳よ」
「うそっ、第七位と?」
「五位と七位のカップルかぁ……」
「どうかなされたのですか?」
「大丈夫。そんなしょくほうを私は応援している」
「あ、 泡浮さん、湾内さん、こちらですわ」

 きゃいきゃいと集まる女性陣。

 いつの間にか話題は食蜂と削板の関係に。

「なになに、なにかあったの? 初春」

「あ、佐天さん、聞いてくださいよ。なんと、第五位と第七位のお泊まり愛ですよ」

「ええええ、マジ?」

「そうですよ、マジですよ」

 いつの間にか噂話に参入している佐天。
 スルーする初春。

764 : 「佐天無双ですの」 - 2013/02/24 21:07:50.80 +ldwSs2bo 481/525

 
 置いてけぼりの削板。

「えっと……もおいいのか? 姉ちゃん?」

 そんな削板の呟きも聞こえないように、女達は食蜂を喫茶店へと連行する。

「尋問開始ですね」

「たっぷり聞き出すわよ」

「あ、黒子、一番大きいVIPルーム予約してきてくれる?」

 承知しましたの
 しゅん、と消える黒子。

「おーい」

 かしましくも去っていく女達。

「……なんだったんだ?」

 ま、いいか。
 と削板もその場を去る。


 ビクンッビクンッビクンッビクンッ

 後には、痙攣を続ける男四人が残されていたという。


                                    終われ

765 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/02/24 21:08:28.44 +ldwSs2bo 482/525


 ……どうしてこうなった。

 以上、お粗末様でした。

 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

779 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/04 00:24:36.37 FuQsLJ9Bo 483/525

 今回ちょっと毛色が違います
 メインは垣根帝督です

 未元物質と心理定規について独自解釈有
 あと、キャラクターの過去とか捏造まみれ

 ……え、何を今更、ですか?



 タイトル「かぶとむしですの」

780 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:25:41.70 FuQsLJ9Bo 484/525

 
 
 
 
 ――対象B、名前は垣根帝督、と記されています

 ――能力は?

 ――不明ですが、レベル5候補と言っていいほどの演算能力を引き出されています

 ――家族は?

 ――『置き去り』のようです

 ――ちっ、あのモヤシ餓鬼と一緒か……
 
 
 
 

781 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:26:18.75 FuQsLJ9Bo 485/525

 
 風紀委員の見回り中、たまたまスイーツ木原の前を通った黒子は、そこに珍しい人物を見た。
 もっとも、その人物自体は黒子にとって珍しい相手ではない。こんな所で見かけたという事実が珍しいのだ。

「誰かと思えば、白井か」

 こんにちは、ですの

「風紀委員の見回り中か、ご苦労だな」

 寮監様は、お買い物ですの?

「昔の知り合いがいてな」

「よお、待たせたか? ん? 風紀委員の嬢ちゃんも一緒か、珍しいじゃねえか、てめえの連れとは」

「白井は見回り中に偶然通ったに過ぎん」


782 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:26:46.56 FuQsLJ9Bo 486/525

 
 黒子は対照的な二人を見比べる。

 寮監様と木原様、お知り合いですの?

「さっきも言っただろう。昔の知り合いだ」

「ま、腐れ縁って奴だ。おかけでこいつは、ウチのプリン食べ放題なんだがな」

「それを言うな」

「嘘じゃねえだろ?」

 寮監様、羨ましいですの
 スイーツ木原のプリンは学園都市一番のプリンですの

「おいおい嬢ちゃん、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。よし、一個食っていけ」

 戴きますの
 


783 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:27:18.54 FuQsLJ9Bo 487/525

 

 
  
 ――ねえねえ、ていとくん、ていとくん
 ――今日のご飯美味しかったね
 ――ねえねえ、ていとくん、ていとくん
 ――おとうさんとおかあさんって、知ってる?
 
 
 

 

784 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:28:13.76 FuQsLJ9Bo 488/525

 
「やあ、そこのお嬢さん」

 寮監と別れた後、公園のベンチでプリンを食べ終え、見回りを再開した黒子の動きが止まる。

 お嬢さんじゃありませんの
 黒子ですの

「ああ、それは済まないね、お嬢……いや、黒子さん」

 風紀委員として様々な怪異を目撃してきた黒子もさすがにこれには驚いていた。
 今までだって色々なものはいた。

 猫とか、クローンとか、犬とかパンダとか浜面とか。
 かえるゲコ太とか、スズメちゅんすけとか、うさぎラビ太郎、ラスカルなのは、とか。

「ん? どうかしたのかね?」

 いえ、なんでもありませんの

 他人の姿をじろじろ見るのはマナー違反である。
 黒子は頑張って視線を外した。

 ……か、かぶとむし、ですの

785 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:28:42.22 FuQsLJ9Bo 489/525

 
 どう見てもそれは、黒光りする立派なそれは、大きな、黒子の半分ほどもあるカブトムシなのだ。
 しかも、でかい。黒子が跨って乗れるほどの大きさである。

「どうしましたの? 貴方」

 女性の声に、黒子は二人を見回す。
 女性など何処にもいない。

「いや、どうやらこのお嬢さん……黒子さんを驚かせてしまったようでね」

「まあ、それはいけませんわ。ごめんなさいね、黒子さん。ウチの主人が馬鹿なことをやったみたいで」

 キョロキョロと辺りを丹念に見回した黒子は、ようやく声の主を見つける。
 そして、我が目を疑った。

「どうかしました? 黒子さん」
 
 ……冷蔵庫が喋ってますの

 白い家電がそびえ立っていた。

786 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:29:10.68 FuQsLJ9Bo 490/525

 
 
 
 ――しらねえよ、そんなの、見たことねえし
 ――おれにはおかあさんもおとうさんもいないよ


 ――あのねあのね、おとうさんはね、とっても強くて大きくて格好いいんだよ
 ――おかあさんはね、美味しいご飯をくれるの
 ――ていとくんにもきっといるよ
 
 
 

787 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:29:49.40 FuQsLJ9Bo 491/525

 
 失礼いたしましたの

 冷蔵庫にしか見えないけれど。
 大きなかぶとむしにしか見えないけれど。
 だけとその口調は紳士で、淑女で。
 礼儀正しくて。
 だから黒子は、礼儀を返すわけで。

 何か、御用ですの?

「人を捜しているんだが」

 どなたですの?

 くわがたとか、洗濯機を捜しているんだろうか。と黒子は一瞬失礼なことを考えてしまう。

「垣根帝督、という名前でね」

 !?
 第二位様ですの

788 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:30:16.75 FuQsLJ9Bo 492/525

 
「あ、ああ、今は学園都市第二位らしいね。私たちも誇らしいよ」

 かぶとむしと冷蔵庫が、学園都市第二位と知り合い。
 黒子は考える。
 もしかすると、この人達は外見で判断しては行けないのかも知れない。
 かぶとむしではないのかも知れない。考えてみれば人語を解しているではないか。
 だから黒子は、素直に尋ねた。

 失礼ですけれど、どなた様ですの?

「垣根帝督の父です」

「母です」

 !?
 第二位様は、かぶとむしと冷蔵庫のお子様ですの。
 ……
 ……?
 ありえませんの 

「長い間眠っていたようで、会うのは久しぶりだがね」

「とっても楽しみなのよ」

 黒子の混乱を余所に、二人?はとても嬉しそうだった。


789 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:30:51.70 FuQsLJ9Bo 493/525

 
 
 
 ――強くてかっこいい……
 ――美味しいごはん……

 
 

 ――所長、対象Bの能力が発現しました
 ――それが……
 ――はい、既知の能力には当てはまりません
 ――ええ、常識が通用しないと言ってもいいかも知れません

 
 
 

 ――これは、なにかな

 ――……かぶとむし。強くてかっこいいじゃん

 ――これは? 大きな箱があるけれど?

 ――冷蔵庫だよ、美味しいごはんが入ってる

 ――そうか

 ――お父さんは強くて大きくて格好いいものだって

 ――そうか

 ――お母さんは美味しいごはんをくれるって

 ――そうか

 ――あれ?
 ――なあなあ、所長。
 ――泣いてるの?

 ――いや

790 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:31:31.50 FuQsLJ9Bo 494/525

 
「いやあ、前から気になってたんスよ」
 
「あ?」

「垣根さんの未元物質あるじゃないですか」

「ああ」

「なんでも作れるじゃないですか。常識に反したものまで」

「ふっ、俺の未元物質に常識は通用しねえ」

「自分もお世話になってます」

 黙っていた心理定規が口を挟む。

「わっか君、次、変なことに帝督巻き込んだら、クビよ?」

「……勘弁して下さい、ちょっとしたお茶目じゃないスか」

「アレは立派な変態行為よ」

「ちょ、ちょっと、自分は変態じゃないッスよ」

「変態」

「よぉ変態」

791 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:32:00.12 FuQsLJ9Bo 495/525

 
「垣根さんまで!? いやいや、俺は変態じゃないでしょ、ほらほら、>>776さんだって認めてくれてますよ!!」

>>除去された変態性は査楽、絶対等速、佐天涙子に移り、

「ね? 絶対等速と死角移動と佐天涙子だけですよ?」

「それは、お前の影が薄いから忘れられただろだろ」

「そうね。帝督の言うとおりだと思うわ」

「ひでぇ……」

「で、君は何が聞きたいの?」

「いや、しょうもない好奇心なんスけどね?」

 わっか君の疑問を聞いた心理定規は、珍しく感心したような表情に。
 そして垣根も、軽く首を傾げている。

 未元物質垣根帝督が、その能力で一番最初に作ったものは何か?
 それがわっか君の好奇心だった。

「考えたこともなかったわ」

 心理定規が垣根に目を向ける。

「……最初に、か……」

 垣根は既に何かを思い出しているのか、その表情は妙に優しい。

「……」

「帝督?」

「垣根さん?」

「……ああ、最初に作ったのは……」

792 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:32:38.62 FuQsLJ9Bo 496/525

 
 
 
 
 ――やめるわ、ここ

 ――は? しょ、所長?

 ――辞めるっつってんだよ
 ――こんなくそったれな、ゴミためみてえな研究所は辞めてやるっつってんだよ

 ――し、しかしですね

 ――あの餓鬼が何つくったか見てねえのか?

 ――かぶとむしと冷蔵庫って聞きましたけど

 ――バカヤロー、あれは、あいつなりの「おとうさん」と「おかあさん」なんだよ

 ――は?

 ――そんなイメージしかねえんだよ。ここにいるかぎり、そうなっちまうんだよ 
 ――だから辞めるんだよ
 ――ここのツートップ……かぶとむし作った餓鬼と、反射膜作った餓鬼は俺が連れて行くからな

 ――無茶ですよ! 上から睨まれますって
 
 ――知るかっ

 ――二人は無理ですが、しかし!!

 ――あん?

 ――……一人なら、誤魔化せるかも知れませんよ

 ――なに?

 ――木原さんが一人、私が一人なら。何とかなるかも知れません

 ――てめぇ……

 ――捕まっても、一人は逃がせますよ

 ――てめえ、バカだろ

 ――それはもう、木原さんの助手ですから。あ、逃げ切ったら、所長特製のプリン、食べさせてくださいね

 ――食べ放題だ、絶対食いに来いよ 



793 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:33:28.97 FuQsLJ9Bo 497/525

 
「最初に作ったのは、かぶとむし。その次に作ったのは冷蔵庫だ」

「は?」

「え?」

 顔を見合わせるわっか君と心理定規。
 垣根に冗談を言っている様子はない。それどころか、普段滅多に見ない真面目な顔だ。

「かぶとむしって……あのかぶとむし?」

「冷蔵庫? 食べ物とかを冷やして保存する冷蔵庫?」

「そうだ」

「なんでまた、かぶとむしなんて……」

「強くて大きくて格好いいからだ」

「じゃあ、冷蔵庫は」

「美味しいご飯が入ってる」

 なにそれ、と言いかけて心理定規は口を閉じた。
 彼女の能力だからこそわかること。
 垣根帝督は、その二つに対して肉親相手への情愛と同じ心理距離を持っている、という事実。

「強くて大きく格好いい……美味しいご飯……」

 わっか君は照れたように言葉を続けた。

「ははっ、なんか、俺らが餓鬼の頃に見た、親父とお袋みたいッスね」

 垣根は一瞬驚いたように目を見開くと、次いで笑った。
 心理定規もわっか君も初めて見る、開けっぴろげで無防備な笑みがそこにあった。

「そうだよな。ああ、まったく、その通りだよな」

794 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:34:01.26 FuQsLJ9Bo 498/525


 
 
  
 
 ――あ……
 
 ――抵抗はやめとけ

 ――なんで……こんな早く……まだ、研究所から出てもないのに……

 ――とっくに監視されてたんだよ。ほら、今なら減俸で許してくれるってよ
 ――それか、所長の逃げた先に心当たりあるならさっさと吐け
 ――あ、いや、今となっちゃあ元所長か

 ――この子は、渡さない

 ――あー、そういうの、要らないんで
 ――とっとしろや。女痛めつけるのは、こう見えても趣味じゃないんだよ

 ――た、隊長!! 

 ――あ? 何慌ててやがる? 抵抗した奴はいいから撃て……って、なんじゃそりゃああああ!!? ぐっがぁぁああ!!

 ――……かぶと……むし?

 ――帝督を助けてやってください
 
 ――え? 冷蔵庫?
 ――いや、違う、貴方達は……
 
 ――息子をお願いします

 ――隊長!? くそっ! 裏に回った連中を呼べ!! 木原はもういい! 目の前のこいつを捕まえろ! 邪魔する奴は殺せぇ!!

 ――この中に、早く!

 ――しかし、貴方達は

 ――息子を、お願いします
 
 
 
 

795 : 「かぶとむしですの」 - 2013/03/04 00:34:31.07 FuQsLJ9Bo 499/525

 
 
 気がつくと、閉じこめられていた。
 
 泣きながら転げ出て、今まで自分のいたところが冷蔵庫の中だと気付いた。
 扉を開いて帝督を吐き出した冷蔵庫は傷だらけで、それでも敢然と立っていた。
 そして、冷蔵庫の前には同じく傷だらけのかぶとむしが、ピクリとも動かずに転がっていた。

「すまない……すまない……」

 一緒に冷蔵庫の中にいた女の人が泣いていた。
 見覚えのあるかぶとむしと見覚えのある冷蔵庫。

 垣根帝督は生まれて初めて、泣いた。

 それからもう二度と、泣かなかった。

 少なくとも、あと十五分は泣かない。

 黒子が、懐かしいかぶとむしと冷蔵庫を案内してくるまでは。





 未元物質に常識は通用しないのだ。


796 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/04 00:35:42.31 FuQsLJ9Bo 500/525

以上、お粗末様でした


 おー、ようやく800か


 感想などあれば、レス下さると嬉しいです。

 では、また。

806 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:32:47.33 NGwKvEm2o 501/525


さて、今回はサブタイトル無しで行こうと思います。

理由は最後に。

807 : VIPに... - 2013/03/25 00:33:28.33 NGwKvEm2o 502/525

 
 後でお買い物に行きますの
 明日は、調理実習がありますの

 携帯電話から相手に話しかけているのは白井黒子。

 それでは、お買い物前に伺いますの
 今からですの

 電話相手に現在位置を告げた黒子は、ふと前方に目をやった。

 !

 黒子のはるか前方、歩道橋から荷物を抱えて降りてくるのは上条当麻。
 その手には同じくスーパーマーケットの買い物袋。スーパー玉○学園都市店の袋である。 
 因みに、黒子が行く予定なのは成○石井学園都市店。
 これが貧富の差。レベル0とレベル4の差。上条当麻と白井黒子の生活レベルの差なのだ。



808 : VIPに... - 2013/03/25 00:33:55.58 NGwKvEm2o 503/525

 
 バーゲンセールに勝利でもしたのか、上条の足取りは軽い。
 両手に抱えた大きな荷物を軽々と持っている。
 と、その瞬間、上条は躓いた。
 荷物の一番上に置かれた缶詰が宙に浮く。
 缶詰はシーチキン。海鶏ことシーチキン。マグロorカツオの正体を隠匿しつつもチキンを名乗る謎の缶詰である。
 宙に浮いた缶詰を掴もうとした上条の手元が狂い、缶詰をさらに弾き飛ばしたような結果となってしまう。
 そして、シーチキンは飛んだ。
 クルクルと回転しながら飛んでいくシーチキン。銀色の輝きが目に眩しい。
 後を追って宙に舞う上条。買い物袋を左手一本で持ち直し、右手を伸ばして全力ジャンプで横っ飛びである。
 伸ばした腕がシーチキンをキャッチ。

「取った!」

 叫んだはいいけれど、上条の身体は空中に位置している。そして上条は無能力者。
 予想される落下点には、いつの間に現れたのか、女性が一人。
 ロングヘアに隙のないビジネススーツとハイヒール。いかにも仕事の出来る女性のスタイルだ。

……拙い!

 このまま女性にぶつかるのは危ない。無傷で済むとは思えない。自分は自業自得でいいとしても、女性を傷つけるわけにはいかない。
 それが上条クオリティ。
 不幸は自分のもの。他人に及ばすものではない!
 その上条の視界に入る街路樹の枝。枝を掴めば女性にぶつかることは避けられそうだ。しかし、両腕は買い物袋とシーチキンで塞がれている。
 

809 : VIPに... - 2013/03/25 00:34:22.29 NGwKvEm2o 504/525

 
 上条の決断は早かった。

 再び宙に飛ぶシーチキン。さらばシーチキン。
 シーチキンを手放し、街路樹の枝を掴んだ……ら、買い物袋が限界突破して破けた。

「ふ、不幸だーーーーーっ!!!」

 どんな力学の成果か、車道側へと飛ばされた買い物袋はどさりと転がり、そしてあっけなく車に轢かれた。
 だがしかし。
 だがしかし!
 女性への激突は避けられた。女性一人を救うことは出来たのだ!
 上条は自分に言い聞かせると、女性の無事を確認しようと目を向ける。

 無事ですの

 声は上条の背後から。
 そこには、女性をテレポで避難させた黒子の姿。

「あれ?」

 上条は悟った。
 シーチキンと買い物袋の犠牲は全くの無駄であったと。
 上条が何もしなくても、黒子のテレポで逃げ切れたのだと。

810 : VIPに... - 2013/03/25 00:34:48.24 NGwKvEm2o 505/525

 
「ふ……」

 不幸ですの

 黒子の言葉と同時に枝が折れて上条は落下する。

「おうっ」

 強く打った腰をさすりながら立ち上がり、未練がましく路上に散った食料品を眺める。

「ああ……一週間分の買いだめが……」

 ご愁傷様ですの

 実際、上条は不幸と言うよりは不運だ。
 少なくとも、今の学園都市では不幸ではない。
 上条の不運体質は、その幻想殺しと共に知る人ぞ知るレアスキルとして認識されているのだ。
 カテゴリーとしては無能力者だが、レベル5一同には半ば仲間として認められているのだから。

「また愉快なことやってんのか」

 だからこそ、こうやって気軽に声もかけられる。
 声をかけたのは垣根帝督。

「相変わらず、貧乏くせえな」

「ひでぇな、おい」

811 : VIPに... - 2013/03/25 00:35:15.80 NGwKvEm2o 506/525

 
 知り合いの声に顔を向けた上条の動きが止まる。

「どうした? 変な顔して」

 変な顔と言われても。
 これは仕方ないだろ、と上条は思う。

「なに、それ」

「あ?」

 垣根は足元を見る。
 足下は白い。白いは甲殻。甲殻はカブトムシの表皮。

「なんでカブトムシに乗ってるんでせう?」

「ああ、上条は初めてだったか」

 カブトムシから降りると、胸を張ってカブトムシに手を伸ばす。

「紹介しよう、親父だ」

「」

812 : VIPに... - 2013/03/25 00:35:42.37 NGwKvEm2o 507/525

 
「驚く気持ちはわかるが」

 お袋だともっとビックリするぞ、とは垣根も言わない。

「白井は知ってるんだよな」

 お久しぶりですの

 頭を下げる黒子、その頭上から、

「誰かと思えば、幻想殺しと未元物質か」

 黒子の脇の女性の言葉に、三人がギョッとした視線を向ける。
 一歩離れて身構える黒子。

 どなたですの?

「空間移動。私の声に聞き覚えは?」

「……てめぇ」

 垣根が未元物質展開の準備を整え、上条が拳を握った。

813 : VIPに... - 2013/03/25 00:36:09.34 NGwKvEm2o 508/525

 
 あ

 黒子が突然頷いた。
 女性の声に気付いたのだ。
 機器を介していたので少し違って聞こえていたけれど、これは紛れもなく、ついさっきまで携帯電話で話していた相手ではないだろうか。

「気付いたかね、空間移動」

 アレイスター様ですの?

「うむ」

「はいぃぃっ!?」

 叫ぶ上条。
 アレイスターって。
 学園都市統括理事長のアレイスター?
 思わず垣根を見る上条。

「……アレイスターの名前を詐称するぶっ飛び馬鹿がいるとも思えねえが……」

 いや、それ以前に。
 

814 : VIPに... - 2013/03/25 00:36:36.13 NGwKvEm2o 509/525

 
「……なんでOLの格好なんだよ!」

「性別など、些少な事象に過ぎないと言うことだ」

「趣味か? 趣味なのか?」

「……」

「シカトしやがった、むかつくな、こいつ」

 趣味ですの?

「うむ」

「白井には返事するのか」

「必要以上に男と語る舌などない」

「最低だ、こいつ」

 似合っているのが余計に腹立たしい。

815 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:37:02.44 NGwKvEm2o 510/525

 
「では、行こうか、空間移動」

 はい、ですの

「え?」

「白井? アレイスター、てめえ、何を」

 アレイスターが黒子になにやら耳打ちすると、二人の姿は消える。
 黒子のテレポートだが……

「……野郎、白井の力底上げしやがったな?」

 普段の黒子の限界距離ならば、垣根の未元物質で追えない距離ではないのだ。
 携帯電話を取り出す上条。

「垣根、御坂以外のレベル5に連絡頼む」

「ああ」
 
 
 
 
 




816 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:37:28.68 NGwKvEm2o 511/525

 
 
 
 
 
 その夜、普通に寮へと帰ってくる黒子。
 門限には十分間に合う時間なので、咎められる筋合いではない。

 ただいま帰りましたの

「黒子?」

「黒子ちゃん?」

「心配したかも」

 出迎えたのは美琴、食蜂、インデックスの三人だ。
 三人のただならぬ様子にキョトンとしている黒子。

 逆に三人は、普段と全く変わりない黒子の様子に気勢を削がれている。

 考えてみれば、別に黒子は連れ去られたわけでもない。

「いや、女装趣味の若作りなオッサンについていったって、十分アレだろ」

 その翌日、美琴をはじめとする主だった者の集まる席で、垣根は真顔でそう言った。
 頷く上条。
 そんなものかと首を傾げる美琴と食蜂。

817 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:37:55.83 NGwKvEm2o 512/525

 
「女装力とロリコン力の統括理事長さんねぇ……」

「ロリコン……」

「おィ、今俺を見ただろォ!?」

「話は変わるが打ち止め元気か?」

「よォし、戦争と行こォか、垣根くゥン」

 いつものような一方通行と垣根のじゃれ合いが始まったところで、麦野が美琴に尋ねる。

「白井に聞いてみれば? 美琴が聞けば素直に答えるでしょう、あの子」

「それが……」

「美琴?」

「内緒だって」

「え?」


818 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:38:22.10 NGwKvEm2o 513/525

 
「統括理事長にあったことは認めたけれど、何をしていたのか聞いたら、『お姉さまには内緒ですの』だって……」

 美琴は既に涙目である。

「あの子、私に内緒するようになっちゃた……どうしよう……麦野さん……」 

「……えーと……」

「黒子が……黒子が悪い子になっちゃった……」

 ついに泣き出す美琴。助けを求めるように辺りを見回す麦野。

「ショックよね。御坂さん」

 垣根についてきた心理定規が言うが、麦野にはピンと来ない話だった。

「だけど、白井だって隠し事の一つや二つ……」

「麦野さん、想像してみなさい」

「なにを?」


819 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:38:51.30 NGwKvEm2o 514/525

 
「……食蜂さん、お願い」

 心理定規に並ぶ食蜂。

「麦野さん、ちょっと想像力足りないかしらぁ? えいっ」

 構えたリモコンの先から迸る心理掌握の力。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちょっとアンタ達、何やってんのよ」

「麦野には秘密って訳よ」

「むぎのには内緒」

「だいたい内緒、にゃあ」

「フレンダ? 滝壺? フレメア? アンタ達ねぇ……。あ、絹旗、アンタは……」

「麦野には超内緒です」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「絹旗が!! 絹旗が悪い子にぃ……」

「あ、麦野さん泣いちゃった……」

820 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:39:23.80 NGwKvEm2o 515/525

 
「何やってンだ……お前ら……」

「えいっ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あなたには内緒だって、ミサカはミサカはプライバシー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「打ち止めァああああっ!!!」

 レベル5の三人が大泣きしているという地獄絵図が爆誕した。

「これが学園都市の誇る超能力者かい……」

「ステイルの言うとおりです。もう少し自分というものをしっかりと……」

「えいっ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ステイルとかおりには内緒なんだよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「インデックスううう!!」

「う~ううう、あんまりだ……HEEEEYYYY! あんまりだアアアア!」


821 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:39:59.54 NGwKvEm2o 516/525

 
 ルーンの天才と聖人も泣いた。聖人の泣き方は何かおかしい。
 阿鼻叫喚である。

 どうしよう、楽しくなってきちゃった。と食蜂は心の底から思う。

「えいっ」

 犠牲者がそこから二人増えたところで、さすがに削板が止めたという。
 そして泣き終わって、泣き腫らした顔をどうにか戻すまで一時間。
 翌日の作戦会議で一時間。
 結局は、三時間弱にわたる会議だった。

 そして、翌日。
 窓のないビルでは……

「いいのか? アレイスター」

「何のことかな?」

 カプセルの中に浮かんだアレイスターと話しているのは上条のクラスメート土御門元春である。
 いや、今の土御門は上条のクラスメートではない。
 アレイスター直轄の「グループ」のリーダーである。

822 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:40:25.53 NGwKvEm2o 517/525

 
「白井黒子のことだ。嗅ぎ回っているようだが?」

「構わん。あとしばらくの間の話だ」

「嗅ぎつけるより先にお役御免、というわけか」

「そういうことだ。白井黒子以外はどうだ?」

「布束砥信、雲川芹亜、木原那由他、枝先絆理、妹達、 姫神秋沙、ショチトル、トチトリ。そして、土御門舞夏」

 指を折りつつ名をあげる。

「今のところは皆、平穏無事だな」
 
「プラン通りだよ」

「なら、俺は現場に行かせて……」

 二人の間に突然現れる別の一人。
 結標淡希であった。

「どうした? 時間にはまだ早いが」

 窓も入口もないビルへの案内人として最近雇われるようになった結標である。ここへ土御門を運んだのも結標だ。

「それどころじゃないわ。嗅ぎつけられたみたいよ、あんたたちのやってること」

823 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:40:53.04 NGwKvEm2o 518/525

 
「なに?」

 アレイスターが手を動かすと、何もなかった壁面にモニターが現れる。そこに映されているのは外の様子。
 そこには、レベル5の面々と魔術師、聖人が集まっていた。

「なにこれ」

「ふむ。音声を拾ってみるか」

 アレイスターが再びなにやら操作すると、今度はスピーカーが現れる。

『ここに黒子が入ったの?』

『死角移動にストーカーさせたンだ、間違いねェよ』

『許すまじ理事長』

『黒子誘拐! 理事長はロリコンだった』

『どうやって中に入るべきか……』

「凄いことになってるにゃー」

「これ、デマよね?」

「君たちには私がロリコンに見えるのかね」

「……」

824 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:41:21.71 NGwKvEm2o 519/525

 
「よくわかった」

 因みに外では……

「まあ、とにかく、なんとかしてビルに入って」

 と絶句した麦野の視線を追う一同。
 そして同じく絶句する。

 いつの間にかビル周辺に等間隔で並んでいる、重機を人型に再構成したような機械たち。
 そのうち一台が集団に向き直る。

「なにあれ」

 食蜂がようやく呟いた瞬間。

 きゅいん
 音と高密度の衝撃が同時に走る。

「あァン!?」

 一方通行の手前で反射される砲撃。

825 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:41:47.24 NGwKvEm2o 520/525

 
「今のって……」

 美琴の呟きに、一方通行は頷いて続ける。

「おィおィ、超電磁砲ですかァ?」

 動き出す別の一台から放たれる一条の輝き。立ちはだかる垣根。
 展開される未元物質が、原子崩しの光条をせき止めていた。

「洒落んなってねえな、こいつは……」

 麦野がゆらりと動き、構える。

「猿まねかよっ!」

 真の原子崩しがまた別の一台を貫いたかのように見える。だが、それも一瞬の幻覚。
 機体表面で弾かれる原子崩しは、宙へと虚しく駆け上っていく。

「今の……」

「ベクトル反射ねぇ……」

826 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:42:14.97 NGwKvEm2o 521/525


「まさかこいつら」

 AI搭載駆動鎧〝MODEL LEVEL5〟

「なにあれ」

 ビル内部では、モニターを見ながら三人が会話を続けている。

「護衛用に作ってみたんだがね。どうやら暴走しているようだ」

「止めなくていいのか?」

「必要があるかね? 本物相手に」

「……高くつくと思うぞ」

「子供達の成長とは、心躍る情景じゃないか」

「言ってろ。俺は先に現場に行くぜよ」

「土御門」

「ん?」

「私はオムライスを頼む」

「んー」

827 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:42:56.79 NGwKvEm2o 522/525

 
 ――十分後


「Finally, お帰りなさいませ、ご主人様」

「ただいま満席。こちらにお名前を書いてほしい。空席が出来たら。呼ぶから」

 ビルに突入した一同は、地下にあるメイド喫茶の前で呆然と突っ立っていた。
 店内には、必死で笑いを堪えている土御門が見えている。

 先にメニューをご覧下さいまし

「……黒子?」

 違いますの

「白井?」

 違いますの
 謎のメイド喫茶店員ですの

「いや、どうみても黒子ちゃん」

 統括理事長直営会員制メイド喫茶の一店員ですの

「何やってンだ、あいつ」

 お仕事中ですの
 失礼しますの


828 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:43:23.63 NGwKvEm2o 523/525

 
「あ、御坂も来たのかー」

「舞夏? ここって」

「ん? 見ての通り、会員制メイド喫茶だぞ」

「会員制……」

「別にいかがわしい店じゃないからなー。普通のメイド喫茶だぞ。店員は各界選りすぐりだけどな」

「黒子が……」

「あー、あの子は、短期バイトしたお金でプレゼントを買いたいって言ってたぞ。奨学金じゃなくて、自分の働いたお金で買いたいって」

 舞夏の目が悪戯っぽく輝いた。

「そういえば、御坂の誕生日も近いなー」

 ぽん、と真っ赤になる美琴。

「あー、あんたはここにいなかった」

 麦野が美琴の肩に手を置いた。

「今日ここに来たのは私ら七人だけ。美琴はここには来なかった。それでどう?」

829 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:44:21.43 NGwKvEm2o 524/525

 
 
 三日後。
 美琴は黒子からの誕生日プレゼントを受け取りました。

 その後、黒子の誕生日の一ヶ月前、メイド喫茶は新人を短期で一人雇ったそうです。 

 

830 : ◆NOC.S1z/i2 - 2013/03/25 00:51:29.62 NGwKvEm2o 525/525

以上お粗末様でした


 今回のタイトルは
  「最終回ですの」

 というわけで一年以上もの間、お付き合いいただきましたが、これにて

 『黒子「じゃっじめんと、ですの」』

 終了とさせていただきます。

 また何か書くかも知れませんが、その時はよろしくお願いします。

因みに、禁書関係では

「インデックスの思い出」  

「ミサカとミカサ」

「ミサカの日々」

「ミサカの卵」 (以上、禁書総合スレ)

一方「俺にその資格があるとでも?」

なども書いてました。良かったら読んでやってください。

それでは、ありがとうございました。


html依頼は、3月最終日にします

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