関連
狩人「目指すは伝説級ハンター!」【1】
狩人「目指すは伝説級ハンター!」【2】


531 : 以下、名... - 2015/06/07 12:02:39 Y9Zogchs 491/1043



―――――――――――


数日後の昼頃

密林


露出女「そっちに行ったよ! 狩人!」

狩人「ああ!」

狩人「でやああああっ!」

     ブウンッ!(亜空間タックル)

     バゴォッ!

狩人「ヘベッ!?」

娘ハンター「だ、大丈夫ですか!?」

532 : 以下、名... - 2015/06/07 12:03:23 Y9Zogchs 492/1043



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ?」

狩人「…………」

狩人「……また1乙したのか」

救助アイルー「そろそろガノトトス、狩猟される頃だと思うニャ」

救助アイルー「早く行かないと、剥ぎ取り損ねるニャ」

狩人「そ、そうか……早く行かないと!」

救助アイルー「頑張ってくれニャ」

533 : 以下、名... - 2015/06/07 12:04:13 Y9Zogchs 493/1043



―――――――――――


露出女「おー、帰ってきたか」

娘ハンター「あ、大丈夫ですか?」

ハンター(女)「早く剥ぎ取りしなよ?」

狩人(……本当に終わってるし)

狩人「お、おう……」

―――――――――――

狩人「はあ……間に合った」

狩人「でも、なんかほとんど任せてごめん……」

露出女「お疲れ!」

娘ハンター「調子の悪い時もありますよ」 クスッ

ハンター(女)「そうそう」

534 : 以下、名... - 2015/06/07 12:05:40 Y9Zogchs 494/1043



―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 集会所


狩人「あの、どうもありがとうございました」

露出女「いやいや。 礼を言われるほどの事じゃねーよ」

娘ハンター「これでHR3ですね。 おめでとうございます」

露出女「けどまあ……どうしてもってんなら」

露出女「ひとつだけ頼みを聞いてくれねーか?」

狩人「え? ああ、俺に出来る事なら」

ハンター(女)「んふふ、やっぱそれ狙いか」

狩人「……?」

露出女「あんたの髪の毛を一本くれないか?」

535 : 以下、名... - 2015/06/07 12:06:47 Y9Zogchs 495/1043


狩人「髪の毛……ですか?」

ハンター(女)「そう! ぜひちょうだい♪」

娘ハンター「お、お願いします……」///

狩人「は、はあ……」

     ピッピッピッ…

狩人「これでいいんですか?」

露出女「そう! これでいいの♪ あんがとねー♪」

ハンター(女)「じゃ! またねー!」

娘ハンター「私、しばらく、ふもと村に居ますから、また誘ってください」

娘ハンター「それじゃ」

536 : 以下、名... - 2015/06/07 12:07:48 Y9Zogchs 496/1043


狩人「あ、ああ……また」

狩人「…………」

狩人(……何なんだ、この展開)

狩人(みんな(特に女性ハンター)手のひらを返した様に接してくる)

狩人(どうやら俺の髪の毛が目当てだったみたいだが……)

狩人(しかも全員上位ハンターだよな?)

狩人(……わからん)

????「……ただのゲン担ぎだ」

狩人「え?」

狩人「!」

狩人「あ、あんたは!? イケメン!!」

537 : 以下、名... - 2015/06/07 12:09:01 Y9Zogchs 497/1043


イケメン「……いかにも俺はイケメンだが」

イケメン「どこかで会っていたか?」

狩人「白々しい! 何も知らない俺を騙して、クエストの報酬だまし取っただろ!」

イケメン「! ……そういう事か」 ハア…

狩人「あの時の金、返せ!」

イケメン「いいから落ち着け」

イケメン「お前の言う『イケメン』の顔には、頬に傷跡が無かったか?」

狩人「何が傷跡だ! そんな事でもう騙され……え?」

イケメン「ここだ。 この部分に傷跡が無かったか?」

     イケメンは、自分の頬にトントンと指で指し示す。

     もちろん傷跡など無い。

狩人「……確かに」

イケメン「まったく……」

538 : 以下、名... - 2015/06/07 12:10:14 Y9Zogchs 498/1043


イケメン「君に迷惑をかけたのは、俺の双子の兄の方だ」

イケメン「名前もベテラン、という名前でな」

狩人「はあ!?……偽名まで使っていたなんて」

狩人「ギルドにバレたらタダじゃ済まないのに……」

イケメン「俺も迷惑している」

イケメン「おそらく、クエの受注は君にさせたのだろう?」

イケメン「ギルドは受注者以外の素性は余り確かめない」

イケメン「そこを上手く突いているんだよ」

狩人「……ギルドは黙認しているんですか?」

イケメン「ある意味な」

539 : 以下、名... - 2015/06/07 12:11:50 Y9Zogchs 499/1043


イケメン「もっとも被害者が初心者ばかりで、極端に訴える者がいない」

イケメン「内容も少し気をつければ住む事だし、被害金額も少なく」

イケメン「告発自体を恥ずかしいと考えて、泣き寝入りする者がほとんどだ」

イケメン「君もその口か?」

狩人「…………」

イケメン「……やれやれだな」

狩人「よ、余計なお世話だ!」///

狩人「あんたも身内なら、もっと注意してやれよ!」

イケメン「兄は俺の言う事なんて聞きゃしないよ」

イケメン「まったく……兄のしでかした事で何度、嫌な目に合わされた事か……」

イケメン「……というか、なぜ、兄の話になったんだ?」

狩人「あんたが俺に声をかけてきたんじゃないか」

狩人「なんか、ゲン担ぎがどうとか……」

イケメン「あー……そうだったな」

540 : 以下、名... - 2015/06/07 12:14:35 Y9Zogchs 500/1043


イケメン「さっきの……お前の髪の毛を欲しがったのは」

イケメン「下位ハンターがG級モンスターを打ち破ったと聞いて」

イケメン「それにあやかりたいんだよ」

狩人「……なるほど」

イケメン「G級に上がるには努力はもちろんだが……」

イケメン「運の要素も強い」

イケメン「幸運を手にした者の一部は、効果がありそうだからな」

狩人(聞いていると切なくなる話だ……)

イケメン「まあその分、クエを手伝ってもらえたんだ」

イケメン「よしとしておくんだな……じゃ」

狩人「…………」

541 : 以下、名... - 2015/06/07 12:15:45 Y9Zogchs 501/1043



―――――――――――


狩人の家


狩人「……ただいま」

板前アイルー「おう! けえってきたかニャ、旦那!」

板前アイルー「お疲れ様だニャ!」

狩人「おう……」

板前アイルー「……なんか元気ねぇけど、どうかしたかニャ?」

狩人「いや、何でもない」

狩人「今日はさっぱりしたもの……刺身とかいいかな」

板前アイルー「ガッテンだニャ!」

狩人「金はまだあるか?」

板前アイルー「問題ないニャ!」

542 : 以下、名... - 2015/06/07 12:16:56 Y9Zogchs 502/1043


     ドサッ…

狩人「ふう……」

狩人(…………)

狩人(……待てよ?)

狩人(俺でこれなら……少女の奴はもっとすごいんだろうな)

狩人(何もなくたって、彼女の髪の毛ならお守りになりそうだし)

狩人(欲しがる男は多そうだなぁ……)

狩人(…………)

狩人(俺ももらおうかな)

狩人(……まてまて、何かそれはダメすぎな気がする)

543 : 以下、名... - 2015/06/07 12:18:24 Y9Zogchs 503/1043



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

少女「おはよう、狩人」

狩人「ああ、おはよう少女」

少女「見事にガノトトス倒したんだってね」

少女「おめでとう」

狩人「……倒したっていうか」

狩人「むしろ倒してもらったって言う方が正しいと思う」

少女「……たくさんの女の子に囲まれて良かったわね」 フンッ

狩人「俺の髪の毛目当てだったんだよ」

少女「髪の毛?」

544 : 以下、名... - 2015/06/07 12:19:22 Y9Zogchs 504/1043


少女「なるほど……ゲン担ぎね」

狩人「少女も野郎ハンターからクレクレ言われているんじゃないのか?」

少女「全くないけど……」

狩人「え? そうなの?」

少女「うん」

狩人「へー……ちょっと意外だな」

狩人「俺なんかより、よっぽど御利益ありそうなのに」

少女「…………」

少女「……欲しい?」

狩人「ん?」

少女「私の髪の毛」

545 : 以下、名... - 2015/06/07 12:20:12 Y9Zogchs 505/1043


狩人「……考えはしたけど」

狩人「なんか、いろいろダメな気がするから……」

少女「……そう」

狩人「それよりHRも同じになったし」

狩人「何か狩りに行かないか?」

少女「それもそうね」

少女「じゃあ……レイアはどう?」

狩人「ああ、ちょうどいいかも」

狩人「話には聞いていたし、ランクが上がったらやってみたかったんだ」

少女「なら問題ないわね」

少女「火炎攻撃は離れてても飛んできて厄介だから、よく見て覚えて」

狩人「わかった」

546 : 以下、名... - 2015/06/07 12:21:08 Y9Zogchs 506/1043



―――――――――――


砂漠のとあるエリア


ロートル「はあ!」

     ズバズバズバッ!

ロートル「ふう……ドスゲネポスを狩るのも飽きてきたな」

ソロ「そう言うな、ロートル」

ソロ「これも目的のためだ」

ロートル「……わかっているさ」

ロートル「…………」

547 : 以下、名... - 2015/06/07 12:22:27 Y9Zogchs 507/1043



―――――――――――


砂漠村 集会所


ロートル「ふう……」

????「よう。 クエは順調か?」

ソロ「む……?」

????「おっと、こいつは失礼」

????「俺はイ……ベテラン、という名前のハンターだ」

ベテラン「よろしく」

ロートル「よろしく。 ロートルだ」

ソロ「よろしく。 ソロだ」

ベテラン「少し話をしたいんだが、構わないか?」

ベテラン「挨拶がわりに一杯おごろう」

548 : 以下、名... - 2015/06/07 12:23:26 Y9Zogchs 508/1043


     コト…

ロートル「……で? 話とは?」

ベテラン「まあまあ。 その前に少し聞きたいんだが」

ベテラン「おたくら、何を狩りに来たんだ?」

ベテラン「今の時期、砂漠なら上位クラスのガノトトスってトコなのに」

ベテラン「ここ数日ドスゲネポスしか狩っていないな?」

ロートル「……片手剣の素材を集めているだけだ」

ソロ「ついでにダイミョウザザミも狩っている」

ベテラン「なるほど。 もっともらしい理由だ」

ベテラン「だが……」

ベテラン「俺はふと、ある事に気がついた」

549 : 以下、名... - 2015/06/07 12:25:29 Y9Zogchs 509/1043


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「最初の疑問は武器と防具の属性だ」

ベテラン「ドスゲネポスを狩るのに水属性で火炎耐性の防具」

ベテラン「おまけにかなりの鎧玉をつぎ込んだ重装備……」

ベテラン「どう考えてもドスゲネポス相手とは思えねぇ」

ロートル「……他に防具を持っていないだけだ」

ロートル「どんなモンスター相手でもこれを使っている」

ロートル「武器は使い慣れているから、としか言い様がないな」

ベテラン「……ま、そういう言い訳は、ごもっともだな」

ベテラン「が、ここからは俺の推測だ」

ベテラン「おたくらはドスゲネポスを目的にしているんじゃないと仮定した場合」

ベテラン「ひとつだけ思いつく共通点が見えてきた」

550 : 以下、名... - 2015/06/07 12:26:25 Y9Zogchs 510/1043


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「おたくらはドスゲネポス……いや、クエのモンスターが目的なんじゃない」

ベテラン「砂漠の『あるエリア』のクエを受注しまくっているんだ」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「水属性で火炎耐性の防具……」

ベテラン「まるで火山のモンスターを狩りに行く装備だ」

ベテラン「何が目的なんだ?」

ベテラン「今の時期の砂漠には似つかわしくないぜ?」

ロートル「……そう言われてもな」

551 : 以下、名... - 2015/06/07 12:27:01 Y9Zogchs 511/1043


ロートル「ベテラン……とか言ったな」

ロートル「君の言う通り、怪しく見えても」

ロートル「俺たちはドスゲネポスを狩りに来ただけ……それだけだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「やれやれ……どうやら警戒されているみたいだな」

ベテラン「じゃ、今日はここまでにしておく」

     ガタタ…

ベテラン「機会があったら、俺も『ドスゲネポス狩り』に参加させてくれ」

ベテラン「ぜひな」

ロートル「まあ考えておくさ」

ベテラン「期待してるぜ……ふふふ」

     スタ スタ スタ…

ロートル「…………」

552 : 以下、名... - 2015/06/07 12:28:31 Y9Zogchs 512/1043


ソロ「……ガブラス野郎め」

ロートル「油断も隙もないな……」

ロートル「だが……確かに人数は欲しいところだ」

ソロ「気持ちは分かる」

ソロ「しかし、俺たちは何度も裏切られてきたからな」

ロートル「ああ……」

ロートル「何度もな……」

ソロ「…………」

ロートル(古龍殺し(エルダーキラー)を狙っている事を感づかれてはダメだ)

ロートル(G級を目指すハンターならば、この情報は喉から手が出るほど欲しいモノ……)

ロートル(絶対に他のハンターに気取られてはいけない)

ロートル(信頼して出し抜かれた事は一度や二度では無いからな)

553 : 以下、名... - 2015/06/07 12:34:12 Y9Zogchs 513/1043


ロートル(だが……時間が経てば経つほど)

ロートル(あのベテランとかいうハンターの様にカンのいい奴が出てくる)

ロートル(早く出現しろ……テオ・テスカトル)

ロートル(…………)

ロートル(狩人達が同じ上位ハンターならな……)

ロートル(信頼もできるし、修行という名目もできて怪しまれずに済むのに)

ロートル(…………)

ロートル(ふ……いかんな)

ロートル(まだまだヒヨっ子のあいつらを頼ろうとするなんて)

ロートル(ましてやロクな装備もなしで古龍殺し(エルダーキラー)に付き合わせるとか)

ロートル(何を考えているんだ……俺は)

554 : 以下、名... - 2015/06/07 12:35:16 Y9Zogchs 514/1043



―――――――――――


森丘




     ギャオオオオオオオオッ!!



狩人「くっ……!」

狩人(こんな所まで咆哮の影響が来るのかよ!)

     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「怒ったわ!」

少女「ここからが正念場よ!」

狩人「わかった!」

555 : 以下、名... - 2015/06/07 12:35:50 Y9Zogchs 515/1043


狩人(これがリオレイア……!)

狩人(火炎攻撃は厄介だし、目が退化しているフルフルと違って)

狩人(狙いもバッチリで隙が少ない!)

狩人(だが……!)

     ブウウンッ!

狩人(テールアタック!) 回避!

狩人「でやあああああああっ!」

     ドガァッ!!

     ギャオオオオオ……

狩人(基本的な動きや動作はフルフルとほぼ同じだ!)

狩人(懐に入ってしまえば……)

556 : 以下、名... - 2015/06/07 12:36:26 Y9Zogchs 516/1043



     ザクッ!!


狩人(こっちのモノだ!)

狩人「はあああああああああっ!」


     グルルル……(後ずさり)


少女「!」

少女「ダメ! 狩人! 下がって!」

狩人「へ?」


     ギャアアッ!(サ○ーソルト)


狩人「あべばっ!?」

557 : 以下、名... - 2015/06/07 12:37:39 Y9Zogchs 517/1043



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ?」

狩人「…………」

狩人「……また1乙か」 ハア…

救助アイルー「毎回思うけど」

救助アイルー「あんたは本当に頑丈だニャ」

狩人「……ヤられてたら意味がないよ」

558 : 以下、名... - 2015/06/07 12:38:40 Y9Zogchs 518/1043


救助アイルー「何言ってるニャ」

救助アイルー「レイアの宙返りテールアタックをまともに食らって」

救助アイルー「その程度で済んでるなんて、フツーありえないニャ」

狩人「……褒めても何も出ないぞ?」

救助アイルー「下位のレイアとはいえ」

救助アイルー「あいつの最大最強の攻撃方法だニャ」

救助アイルー「フツーの下位ハンターなら良くて一日中気絶」

救助アイルー「悪ければ体中の骨が砕けて再起不能ニャ」

狩人「……ウソだよな?」

救助アイルー「大真面目な話だニャ」

559 : 以下、名... - 2015/06/07 12:39:59 Y9Zogchs 519/1043


     タッ タッ タッ

少女「狩人!」

狩人「え? 少女?」

少女「だ、大丈夫!?」

少女「私が分かる!?」

狩人「も、もちろん分かるし、大丈夫だよ」

少女「…………」

少女「は――っ……」 ヘナヘナヘナ…

救助アイルー「……とまあ」

救助アイルー「このくらいの心配される攻撃力なのは間違いないニャ」

狩人「…………」

少女「で? 狩人は大丈夫なの?」

救助アイルー「助けたこっちが驚いてるくらい元気だニャ」

560 : 以下、名... - 2015/06/07 12:41:13 Y9Zogchs 520/1043


少女「そう……良かった」

救助アイルー「じゃ、俺はもう行くニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……なんか、ごめん」

少女「ううん、狩人が無事なら……」

少女「…………」

狩人「少女?」

少女「ねえ、狩人」

少女「あなた……モンスターの書物、読んでいないの?」

561 : 以下、名... - 2015/06/07 12:42:05 Y9Zogchs 521/1043


狩人「!!」

狩人「あ……あ~……その……」

少女「…………」

狩人「……すまん」

少女「……私に謝る事じゃないわ」

少女「ねえ、狩人」

少女「モンスターの書物は、判明している事柄すべてを載せている」

少女「貴重な情報源よ」

少女「弱点部位、弱点属性、罠の効きやすさ、行動や習性、食性すらも書いてある」

少女「初めてのモンスターに挑むのなら、最低限、読んでおかないといけないものなのよ」

少女「ハンターとして」

狩人「…………」

562 : 以下、名... - 2015/06/07 12:43:07 Y9Zogchs 522/1043


少女「今日はこの程度で済んだけど」

少女「明日は分からない」

少女「あなた自身の身の安全の為に、一度は目を通しておいて?」

少女「せめて、今日狩るモンスターの部分だけでもいいから」

狩人「そ、そうだな……うん」

狩人「分かったよ……」

少女「……本当に?」

少女「本当に分かってるの?」

狩人「分かってるよ」

狩人「ちゃんと読むよ……モンスターの書物」

少女「…………」

563 : 以下、名... - 2015/06/07 12:44:02 Y9Zogchs 523/1043


少女「なら、いいわ」

少女「とりあえず今回は、私が一通り教えるから」

狩人「ああ、頼む」

少女「そうね……まず攻撃方法だけど」

少女「狩人が受けた宙返りテールアタックと、もう一つ要注意な攻撃があるわ」

狩人「うん」

少女「これは通常の火炎攻撃と動作がほぼ同じだから見分けがつきにくいけど」

少女「怒った時にやると思えばいいと思う」

少女「普通は単発だけど、三連続で、しかも左右に角度をつけて撃ってくるわ」

狩人「三連続か……角度ってどれくらいだ?」

少女「それほどないと思うけど、一度見れば分かると思うわ」

狩人「ふむふむ」

少女「それから……」

564 : 以下、名... - 2015/06/07 12:44:57 Y9Zogchs 524/1043




     少女の説明は分かりやすく、的確で

     その後のレイアの狩りは問題無く終了した。



     …………

     だけど……

     このままでいい事はない。

     いい加減に言っておかなければ……




565 : 以下、名... - 2015/06/07 12:45:49 Y9Zogchs 525/1043




     下手をすれば、彼女にも迷惑をかけてしまう。

     いや……少女だけじゃない。きっと他のハンターにだって……





     …………





     もしかしたら彼女に……俺は軽蔑されるかもしれない。




566 : 以下、名... - 2015/06/07 12:47:18 Y9Zogchs 526/1043



―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


少女「報酬は受け取った?」

狩人「ああ」

少女「そう」

狩人「……俺の1乙で少なくなってしまったな。 ごめん」

少女「いいよ、このくらいで謝らなくても……」

少女「それよりもモンスターの書物、ちゃんと読むのよ?」

狩人「……あ、ああ」

少女「それじゃ、また明日」

狩人「…………」

567 : 以下、名... - 2015/06/07 12:48:05 Y9Zogchs 527/1043


広場


     タッ タッ タッ

狩人「少女!」

少女「え? 狩人?」

少女「どうしたの?」

狩人「…………」

狩人「……実は」

狩人「話したい事があるんだ」

少女「え? ……うん、何?」

568 : 以下、名... - 2015/06/07 12:48:43 Y9Zogchs 528/1043


狩人「ここじゃちょっと……」

狩人「そうだな……少女の家に行ってもいいか?」

少女「……いいけど」

少女「いったい何のはn」

少女「!」

少女(……も)

少女(もしかして……もしかしたら)///

少女(もしかする……かも!?)///

少女「…………」///

少女「……大事な話……なの?」///

狩人「ああ……俺にとっても少女にとっても」

少女(わ、私にとっても!?)///

569 : 以下、名... - 2015/06/07 12:49:33 Y9Zogchs 529/1043


狩人「とにかく、二人だけで話がしたいんだ」

狩人「頼む、少女」

少女「う、うん……分かった」///

少女「で、でも! ちょっと時間をちょうだい」///

狩人「え? 時間?」

少女「家……少し散らかってるから、片付けたいのよ」///

狩人「い、いや、俺は気にしな」

少女「私が気にするの!」///

少女「とにかく……そうね」

少女「一時間くらいしたら来て」

狩人「……分かった」

570 : 以下、名... - 2015/06/07 12:50:11 Y9Zogchs 530/1043


少女(…………)

少女(大事な話……)

少女(狩人と私にとって……)

少女(おまけに二人きりでって……)

少女(…………)

少女(……こ、これは)///

少女(間違いない……よね?)///

少女(そんなに経験ないけど……)

少女(両思いになれる……のよね?)///

少女(~~~~~っ!!)///

571 : 以下、名... - 2015/06/07 12:50:57 Y9Zogchs 531/1043



―――――――――――


一時間後

少女の家


     コン コン

狩人「少女、俺だ。 狩人だ」

     キィ…

少女「い、いらっしゃい……」///

狩人「…………」

狩人(……着替えたかったのは分かるけど)

狩人(この前並に気合の入った格好だな……)

狩人「……何か、気を使わせたみたいだな」

少女「う、ううん、そんな事ないよ!?」///

少女「そ、そういう気分ってだけだからっ」///

572 : 以下、名... - 2015/06/07 12:52:29 Y9Zogchs 532/1043


狩人「えと……入っていいか?」

少女「!」

少女「あ、う、うん。 どうぞ、入って」

狩人「お邪魔します」

     パタン

―――――――――――

少女「…………」///

狩人「…………」

少女「……え、えと……お茶でも出すね」///

狩人「あ、いや……そんなに気を使わないでくれ」

狩人「これから話す事は、そんなにいい話じゃないし……」

573 : 以下、名... - 2015/06/07 12:53:06 Y9Zogchs 533/1043


少女「……え?」

狩人「…………」

狩人「……実はな、少女」

少女「う、うん」///

狩人「俺……前からずっと言わなきゃ、って思ってた事がある」

少女「そ、そう……」///

狩人「出だしで躓(つまず)いて、集会所に出入りしにくくなったから」

狩人「必要ない様に感じていたけど……」

狩人「今日みたいな事が起きて、やっぱり言わないといけないって痛感した」

少女(……ん?)

狩人「今まで黙っていてごめん、少女」

狩人「実は……俺……」

少女「…………」

574 : 以下、名... - 2015/06/07 12:54:06 Y9Zogchs 534/1043










狩人「字が……読めないんだ」










579 : 以下、名... - 2015/06/13 10:22:26 pS/m6xf6 535/1043


少女「…………」

少女「……え?」

少女「字が……読めない?」

狩人「……ああ」

少女「……ちょっと待って」

少女「そんな訳ないでしょう?」

少女「だったらハンター試験はどうなるの?」

少女「筆記試験もあったじゃない」

狩人「あれは答えが選択式の試験だし……」

狩人「他のハンター受験者の話を聞いて一番右を選んで書いておけば」

狩人「とりあえず合格点には届くって知ってたから」

少女「……名前はどうしたの?」

狩人「孤児院に居た時、それだけは教えてもらって書ける様になったんだ」

580 : 以下、名... - 2015/06/13 10:23:09 pS/m6xf6 536/1043


少女「…………」

少女「……そうだったの」


少女(そうだ……狩人は……)

少女(孤児院出身者だった)

少女(一応学校はあるけど……辺境、それも特に猟区に近い村なんかは)

少女(そういった施設が無い事が多いって聞く)

少女(さらに国や地域で修学制度も違うし、彼のようなハンターが居てもおかしくない)

少女(…………)

少女(これは……ハンターの需要と供給のバランスで)

少女(ある程度、黙認されている事なのかも知れない)

少女(私だって……ハンター試験の問題をお金で解決した)

少女(…………)

581 : 以下、名... - 2015/06/13 10:24:06 pS/m6xf6 537/1043


狩人「…………」

狩人「この前の……G級ティガ襲来で」

狩人「少女にメモを渡された時、焦ったよ」

少女「!」

狩人「ティガがどんなものか、だいたい知っているって程度だったし」

狩人「とにかく、あの時はティガというモンスターに対して備えるって事しか」

狩人「俺には出来なかった」

少女「…………」

少女「……結果的には、それで助かった側面もあるわね」

少女「私のメモ、持っていけたら罠を……としか書いてなかった」

582 : 以下、名... - 2015/06/13 10:25:13 pS/m6xf6 538/1043


狩人「そうだったのか」

狩人「ロートルさんの言う通り、本当にツイてたんだな……俺たち」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「……あ」

狩人「ん?」

少女(字が読めない……という事は)

少女(調合書も読めない、という事)

少女「……まさか」

少女「狩人、もしかして今まで……」

少女「秘薬とか強走薬とか……飲んでない……の?」

583 : 以下、名... - 2015/06/13 10:26:37 pS/m6xf6 539/1043


狩人「……それがどういう飲み物なのかも知らないよ」

少女「」

狩人「…………」

少女「…………」

少女「……狩人がどうしてよく3乙するのか」

少女「今、やっと分かったわ」

狩人「…………」

少女「クエの受注はどうしてたの?」

狩人「受注書類には場所と仕事内容(狩猟や捕獲が色分けされている)」

狩人「それに討伐モンスターの絵が書いてある。 あれで判別していたんだ」

狩人「それに受付嬢さんに『ガノトトスのクエある?』とか聞けば出してくれるし」

少女「……なるほど。 確かにあったわね」

少女(やっぱりギルドは……ある程度の黙認をしているんだわ)

584 : 以下、名... - 2015/06/13 10:27:20 pS/m6xf6 540/1043


少女「……ともかく」

少女「読み書きができないっていうのは結構な問題ね」

狩人「…………」

少女「事情はわかった」

少女「狩人、早めに打ち明けてくれてよかったわ」

狩人「……え?」

狩人「怒らないのか?」

少女「どうして私が怒らないといけないのよ?」

狩人「いろいろ迷惑かけたし……」

少女「…………」

少女「……そうね」

少女「でも、気に病む必要はないと思う」

585 : 以下、名... - 2015/06/13 10:28:26 pS/m6xf6 541/1043


狩人「……そうか?」

少女「ギリギリだったけど、まだ取り返しがつく段階だし」

少女「反省が出来るのなら、これから何とかすればいいのよ」

狩人「少女……」

少女「でも」

少女「これは……そうねぇ」

少女「女さんに相談してみるべきだと思う」

狩人「女に?」

少女「狩人、確か……数字は分かってたわよね?」

狩人「ああ、足し算と引き算はできるし、数字や単位はある程度分かる」

狩人「孤児院で数字がわからないと、大変だからな」

少女「何が大変なの?」

586 : 以下、名... - 2015/06/13 10:29:21 pS/m6xf6 542/1043


狩人「主に買い物で必要だった」

狩人「買い出しで金額とか間違えたら、ものすごく怒られたし……」

少女(子供を働かせる孤児院だったのかしら……)

少女「……なるほど」

少女「となると……」

少女「やっぱり彼女にお願いするのが一番だと思う」

少女「読み書きはすぐに出来るものじゃないし、私はハンターとしての仕事もある」

少女「その点、女さんなら仕入れはあるけど割と村に居るし」

少女「識字に関する資料を集められる情報も持っていると思うわ」

狩人「……よくわからないけど」

狩人「女が適任、って言いたいんだな?」

少女「ええ」

587 : 以下、名... - 2015/06/13 10:30:38 pS/m6xf6 543/1043


少女「もちろん私も手伝うわ」

少女「でも、しばらく狩人は、狩りを休む必要があると思う」

狩人「……そっか」

狩人「せっかくランク上がったばかりなのにな」

少女「毎日休む必要はないわよ」

少女「例えば3日勉強して1日狩りをして1日休む」

少女「こんな風にすればいいのよ」

狩人「なるほど。 少女は頭がいいな」

少女「この程度……ううん、とにかく今はG級ティガの報酬で余裕もあるし」

少女「いい機会だと思ってやればいいと思う」

狩人「そう……か。 そうだな」

狩人「じゃ、明日さっそく女に相談してみるよ」

588 : 以下、名... - 2015/06/13 10:31:33 pS/m6xf6 544/1043


少女「うん、それがいいと思うわ」

狩人「ありがとう、少女」

狩人「俺、少女に打ち明けて良かった」

少女「ふふ、どういたしまして」

狩人「それじゃ、帰るよ」

少女「ええ、またね、狩人」

     パタン…

少女「…………」

少女「……字が読めない、か」

589 : 以下、名... - 2015/06/13 10:32:16 pS/m6xf6 545/1043


少女(…………)

少女(でもそれは、多少時間がかかっても何とかできる事柄)

少女(だけど……秘薬もなしで今まで戦ってこれたなんて)

少女(とてつもない身体能力……)

少女(…………)

少女(……いくら努力したって、私は絶対に得る事ができない才能だわ)

少女(…………)

少女(羨ましい……)

590 : 以下、名... - 2015/06/13 10:33:23 pS/m6xf6 546/1043



―――――――――――


翌日の朝

ストア裏 女の家


「」

「字が読めない!?」

狩人「ええ……」

「あきれた……でも結構難しい言葉を知ってるのに」

「!」

「ちょっと待って……字が読めないって事は」

「秘薬とか鬼人薬とか作れないだろうから、飲んだ事が無いって事!?」

591 : 以下、名... - 2015/06/13 10:34:34 pS/m6xf6 547/1043


狩人「そうです」

「」

狩人「少女にも同じように驚かれた」

「……狩人がよく3乙する理由が分かった」

狩人「それも少女に言われたよ」

「…………」

「あんたって……ううん、何でもない」

狩人「?」

(秘薬なしで、今まで3乙しながらも狩りを続けてこれたって事は)

(もしかしたら狩人は……とんでもない才能を持っているのかも……)

「とにかく、要件はわかったわ」

「私もお店があるから毎日は無理だけど……協力するわ」

592 : 以下、名... - 2015/06/13 10:35:13 pS/m6xf6 548/1043


狩人「ありがとう、女」

「となると……教材がいるわね」

「まあ、何とかなるか」

「とりあえず今夜、狩人の家に行くわ」

狩人「ああ、分かった」

狩人「しばらくは雪山での採取クエをやる事にする」

「そうね。 それがいいと思う」

「それじゃ、今夜」

狩人「ああ」

「…………」

(……う~ん)

593 : 以下、名... - 2015/06/13 10:36:13 pS/m6xf6 549/1043



―――――――――――


その日の夜

狩人の家


「とりあえず目標を決めてかかるわ」

狩人「目標?」

「そう、目標!」

狩人「具体的には?」

「まずはこの本を読める様になろう」つ(絵本)

狩人「わかった」

狩人「……けど、なんか子供っぽい表紙の本だな」

「でも、読めないんでしょ?」

狩人「……はい」

594 : 以下、名... - 2015/06/13 10:37:38 pS/m6xf6 550/1043


「それじゃ最初に基本的な事から始めないとね」

「読み書きって、文字通り『読んで』『書かない』と覚えられないのよ」

狩人「はい」

「そこでまずは……『こんにちは』とか『さようなら』とか」

「そういうのを何度も書いて覚えてね」

狩人「何度も、か……」

「うんうん、気が滅入るよね」

「でも私たちは、そういう教育を受けて、字が読めるし書ける様になったのよ」

狩人「教育……」

「そうよ」

「さ、英雄への道も一歩から」

「書いて書いて、書きまくって覚えるの!」

狩人「は~い……」 ←若干涙目

595 : 以下、名... - 2015/06/13 10:38:41 pS/m6xf6 551/1043




     こうして、文字を読める様になる勉強が始まった。

     お手本を見て、お盆位の大きさの黒板に

     チョークで繰り返し、繰り返し

     『こんにちは』を書いていった……



     正直面倒くさいことこの上ないが

     文字が読めれば、最初のホットドリンクだって

     どういう効果なのかラベルを読んで理解できたんだ。




596 : 以下、名... - 2015/06/13 10:39:38 pS/m6xf6 552/1043








     そう思いつつも……

     やっぱり面倒くさかった。 ううっ……








597 : 以下、名... - 2015/06/13 10:40:25 pS/m6xf6 553/1043



―――――――――――


数日後の午前中

砂漠村 集会所


ベテラン「よお、お二人さん」

ソロ「…………」

ロートル「……またあんたか」

ベテラン「まあまあ。 そう言わずに俺も参加させてくれ」

ベテラン「ドスゲネポス狩りに」

ロートル「…………」

ロートル「わかった」

ソロ「……おい、ロートル」

ロートル「いいんだ、ソロ」

ベテラン「へへっ、ありがとうよ」

598 : 以下、名... - 2015/06/13 10:40:59 pS/m6xf6 554/1043


ソロ(……本当にいいのか、ロートル)

ロートル(どこまで気がついているのか知らんが)

ロートル(装備は俺たちの属性をしっかりと真似してきている)

ロートル(HRも6だ)

ロートル(足でまといにはならんだろう)

ソロ(…………)

ロートル(それにここで断ったら返って怪しまれる)

ロートル(一度つき合わせて、ドスゲネポス狙いだと思わせておけばいい)

ソロ(…………)

599 : 以下、名... - 2015/06/13 10:41:54 pS/m6xf6 555/1043


ロートル(古龍が出たら出たで構わないだろう)

ロートル(運がよければ、みんな揃ってG級になれる)

ロートル(古龍殺し(エルダーキラー)は、人手があればありがたいからな)

ソロ(…………)

ソロ(背に腹は代えられない、か……)

ソロ(分かった、ロートル)

ロートル(よし)


ロートル「よろしくな、ベテラン」

ソロ「よろしく」

ベテラン「ああ、よろしく!」

600 : 以下、名... - 2015/06/13 10:42:29 pS/m6xf6 556/1043


※注 それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ギルドナイトセーバー)
防具:レウスS装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(蒼刃剣ガノトトス)
防具:レイアS装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ランス(アクアンスピア)
防具:クック(亜種)U装備一式

601 : 以下、名... - 2015/06/13 10:43:21 pS/m6xf6 557/1043



―――――――――――


砂漠のとあるエリア


     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……まあ信用されてないのは分かるが」

ベテラン「もう少し口数があってもいいんじゃないのか?」

ロートル「……そんなんじゃない」

ロートル「ソロ……気づいているか?」

ソロ「ああ。 様子がいつもと違うな」

ベテラン「様子?」

602 : 以下、名... - 2015/06/13 10:44:23 pS/m6xf6 558/1043


ロートル「いつもならゲネポスの群れがここに居るんだが……」

ロートル「見当たらないな」

ベテラン「へえ?」

ベテラン「だが、ツガイだったら群れのない時もあるぜ?」

ソロ「……確かにな」

ベテラン「ここんとこ、おたくらがドスゲネポス狩りまくったせいで」

ベテラン「単純に居なくなったんじゃねーの?」

ロートル「かもしれん」

ベテラン「へっ……」

ベテラン「にしちゃあ……嬉しそうだな、あんたら」

ベテラン「いよいよお目当てのモンスターが……ってとこか」

603 : 以下、名... - 2015/06/13 10:45:06 pS/m6xf6 559/1043


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「……そろそろ何を相手にするのか」

ベテラン「教えてくれないか?」

ロートル「見ればわかるさ」

ロートル「嫌でもな」

ベテラン「ふん……」

ベテラン(どうやら、ただならぬ相手みたいだな)

ベテラン(火炎耐性の防具に水属性の武器……)

ベテラン(普通ならグラビモス、ってところだが)

ベテラン(砂漠にグラビモスが出たなんて聞いたこともねぇ)

ベテラン(いったい何を狙ってんだ……?)

604 : 以下、名... - 2015/06/13 10:45:54 pS/m6xf6 560/1043




     ゴガアアアアアアア……



ロートル「!」

ソロ「!」

ベテラン「……!?」

ロートル(ついに……)

ロートル(ついに来たか!)

ロートル「クーラードリンクを飲み直せ!」

ロートル「ベテラン、これから長丁場になる。 覚悟しておけ」

ベテラン「あ、ああ……」

605 : 以下、名... - 2015/06/13 10:47:24 pS/m6xf6 561/1043


ベテラン(何だ……? 今の鳴き声)

ベテラン(正直、聞いた事もない鳴き声だったぞ)

ベテラン(…………)

ベテラン(火炎耐性……水属性の武器……)

ベテラン(知らない鳴き声……)

ベテラン(そして……こいつらの秘密めいた行動……)

ベテラン(…………)

ベテラン(っ!!)

ベテラン「ま……まさか!?」

ロートル「気がついたか? ベテラン」

ベテラン「……正気か、お前ら。 俺がいなかったら二人で……」

ベテラン「いやそれよりも、どうやって古龍の情報を……」

ロートル「そんな話は、終わってからいくらでも話してやるさ」 クスッ

606 : 以下、名... - 2015/06/13 10:48:22 pS/m6xf6 562/1043




     鳴き声の主は

     この目の前の砂丘を越えれば見えるだろう。



     G級ティガをも圧倒する古龍……

     それを上位装備で倒そうというのだから、並大抵の実力では

     敵う事なく終わることも珍しくない。



     だが――

     それでも、自身がG級ハンターになる為にはやるしかないのだ。

     衰えが見え始めた自分が手に出来るチャンスは……もう少ないのだから。




607 : 以下、名... - 2015/06/13 10:49:13 pS/m6xf6 563/1043




     これで死んだら

     狩人や少女はどう思うだろうか……

     先輩らしい事を多少した程度だし

     それほど悲しみはしないだろうな。



     そんな事を少し考え、ロートルは迷いを払うかの様に首を振る。

     そして、おもむろに背中に携えた愛用の双剣を引き抜き、構えると

     気合と抑揚を込めて、口を開く。




608 : 以下、名... - 2015/06/13 10:50:48 pS/m6xf6 564/1043










ロートル「さあ、狩りの時間だ!!」










609 : 以下、名... - 2015/06/13 10:52:27 pS/m6xf6 565/1043


※補足説明

識字率について尋ねられた人が居ますが
具体的に何%かは決めていません。

モンハン世界では銃器(ボウガン)などの武器もありますし
作り手側の竜人族の識字率は高いものと推測できますが
ハンターの識字率及び、教養は低いのではないかと思います。

ゲームをやっていて特に気にした事はなかったんですが
2年くらい前に甥っ子(当事4歳)とモンハン4をしばらくやっていて
「クック行くー」と言って自分でクエを受注して、ものすごく驚きました。

どうやったのか聞いたら、クックの絵で判断していたので
他のモンスターの絵はわかっているのか尋ねてみると、ほぼ正解。
ここから今回のエピソードを思いつきました。

610 : 以下、名... - 2015/06/13 10:53:20 pS/m6xf6 566/1043


このSSの狩人がやらかしている失敗は、ほとんど>>1の失敗なんですが
私の場合は初心者で秘薬なんかの存在を『知らなかった』んです(汗)

友人に聞いて「え!? そんなのあるの!?」状態……
>>1がそれに気がついたのはシェンガオレンに対峙した後で
友人も驚いていましたw

最後に、ゲームではキークエを受注したハンターのみですが
このスレでは古龍殺し(エルダーキラー)のみならず
クエに参加した条件を満たしたハンターは
ランクアップ対象モンス討伐に成功すれば、全員めでたくランクアップします。

622 : 以下、名... - 2015/06/20 07:02:19 /QOfnGOA 567/1043



―――――――――――


狩人の家


狩人「こうして おひめさまは」

狩人「わるいりゅうを たおして かえってきた はんたーと」

狩人「すえながく く……ろ? くろしまし……」

「く『ら』しました」

狩人「……くらしましたとさ」

狩人「めでたし めでたし」

狩人「ふう……」

623 : 以下、名... - 2015/06/20 07:03:17 /QOfnGOA 568/1043


「うん。 こんなに短い間に随分読めるようになったわね?」

狩人「ははは……」

狩人「いや、字って分かる様になったら結構おもしろくてさ」

狩人「今まで単なる……うーんと……記号?みたいに思ってたモノが」

狩人「ああ、そういう意味か、って分かって……何て言うか」

狩人「そう! 世界が違って見える感じなんだ」

「ふふ、そっか」

狩人「…………」

「狩人?」

狩人「ん? あ、いや。 ちょっと気になった事があって」

「何が気になったの?」

624 : 以下、名... - 2015/06/20 07:04:08 /QOfnGOA 569/1043


狩人「この絵本ではさ」

狩人「主人公のハンターは、一人で討伐に行ってるけど……」

狩人「俺たち現実のハンターだって最大4人までしか参加できない」

狩人「もっと大勢でやれば、楽にモンスターを狩れるのにな……と思って」

「ああ、そういう事」

狩人「何か知ってるのか?」

「少しヤな話もあるんだけど……表向きはね」

「救助するネコタクアイルーの確保が厳しいってのがあるわ」

「例えばハンターひとりにだいたい3~4人のアイルーが付くけど」

「10人のハンターでそれをやると、凄い人数のアイルーが必要になる」

狩人「ハンターひとりひとりに付けていたのか……」

狩人「あれって一つのクエに3~4人だと思ってた」

625 : 以下、名... - 2015/06/20 07:04:53 /QOfnGOA 570/1043


「最初はそうだったのかもね」 クスッ

「でもそれだとハンターが複数で一人が乙した場合」

「残されたハンターの安全が確保しにくくなるわ」

狩人「なるほど……確かに」

「もう一つは同士打ちを防ぐ、という目的があるわ」

「ラオシャンロンみたいな巨大モンスターならともかく」

「ドスギアノス程度で10人一斉に斬りかかったらどうなると思う?」

狩人「うわぁ……想像したくない」

「ふふ、そうよね」

「とまあ、ここまでが表向きの理由」

狩人「裏の理由があるのか」

626 : 以下、名... - 2015/06/20 07:05:42 /QOfnGOA 571/1043


「もちろん」

「ある意味、至極真っ当で、情けない理由……」

狩人「?」

「分配される報酬が少なくなるからよ」

狩人「……あ~」

狩人「でも、一番納得もできる理由だなぁ……」

「ホントね」 クスッ…

狩人「それじゃ、話を戻すけど」

狩人「次はどうしたらいい?」

「そうねぇ……基本的には同じなんだけど」

「絵本をこれだけ読めるのなら、もう少し難しいの行ってもいいかもしれないわね」

狩人「調合書とかは まだ無理か?」

「う~ん……じゃあ一度、1ページだけ試してみましょうか?」

狩人「調合書、持ってくるよ」

627 : 以下、名... - 2015/06/20 07:06:44 /QOfnGOA 572/1043


「そういえば、狩人は回復薬を調合できたっけ」

「どうやって覚えたの?」

狩人「ハンター講義の時、これだけは最低限覚えておけって」

狩人「目の前で実演してくれたから覚えたんだ」

「なるほど」

(……見たり聞いたりした事なら出来るんだ)

(それにしても今まで回復薬のみで戦って来たなんて)

(よく生き残れたものね……)

「それじゃ1ページだけ、読めないところや単語を指差してくれる?」

「私が読むから」

狩人「ああ、頼むよ」

628 : 以下、名... - 2015/06/20 07:07:26 /QOfnGOA 573/1043



―――――――――――


「……って読むのよ」

狩人「ふむふむ……」

「意味は分かる?」

狩人「ああ、大丈夫だ」

「うんうん」

「狩人って、頭良いね」

狩人「え? そ、そうかな……」

「今までは知らなかったってだけだから」 クスッ

「物覚えは早いし、言葉の意味はしっかり把握してる」

「頭良い証拠よ」

狩人「ははは……何か照れるな」///

629 : 以下、名... - 2015/06/20 07:08:01 /QOfnGOA 574/1043


「じゃあ、今日はここまでにしとくね」

「私、これから仕入れに行かないといけないから2~3日はお休みよ」

狩人「そうか……いつも悪いな」

狩人「そうだ、昼飯くらいは奢らせてくれ」

「んーそうね。 ご馳走になろうかな♪」

狩人「よし。 おーい、板前アイルー」

「あら? キッチンアイルー雇ったんだ? いつの間に?」

狩人「うん。 ついこの前」

     タッ タッ タッ

板前アイルー「あいよー! 旦那、お呼びかニャ?」

狩人「昼飯、俺と女の分、作ってくれないか?」

狩人「おっと……くれぐれも冒険はするなよ?」

630 : 以下、名... - 2015/06/20 07:08:44 /QOfnGOA 575/1043


板前アイルー「ニャハハ……旦那、わかってるニャ!」

板前アイルー「メニューは何にするニャ?」

狩人「俺は肉料理」

狩人「女は何がいい?」

「うーん……そうねぇ」

「焼き魚定食……みたいなのできる?」

板前アイルー「お任せあれニャ!」

狩人「じゃ、これ材料費……100z(ゼニー)くらいで足りるか?」

板前アイルー「お釣りがくるニャ!」

板前アイルー「んじゃ、少々お待ちくださいニャ!」

     タッ タッ タッ

「……ちょっと元気すぎるアイルーね」

631 : 以下、名... - 2015/06/20 07:09:16 /QOfnGOA 576/1043


狩人「ははは……まあな」

狩人「でも仕事はきっちりしてくれるし、本当に助かってる」

狩人「一度雇うと、手放せなくなるかも」

「あーそれ。 ハンターの人からよく聞くわ」

「給金が高いから一般の人は縁遠いんだけどね」

狩人「毎月1000z(ゼニー)もいるからな……」

「わっ! そんなにするんだ」

「私の月給の6分の1くらいだよ、それ」

632 : 以下、名... - 2015/06/20 07:09:59 /QOfnGOA 577/1043


狩人「へえ……女って結構いい稼ぎなんだな」

「えー? そうでもないと思うけど?」

「部屋の借り賃とか、その他もろもろ引くと、手元に残るのはほんの僅か……しくしく」

狩人「俺がハンターやり始めた頃は、間違いなくそれより低かったよ」

狩人「部屋代は要らないから助かってたけど……」

狩人「そうじゃなかったら、とっくにこの村を追い出されてると思う」

「3乙ばっかりしてたもんね」 クスッ

狩人「……ヤなこと思い出さないでくれ」 ハア…

     アハハ…

633 : 以下、名... - 2015/06/20 07:15:36 /QOfnGOA 578/1043



―――――――――――


砂漠のとあるエリア


ロートル「うおおおおおおおおっ!!」


     ズバッズバッズバッ!


ロートル「ソロ!」

ソロ「おうさ!」


     ブウンッ!  ドガァッ!!

     ギュアアアア……


ベテラン「ヒュー! やるねぇ……」

634 : 以下、名... - 2015/06/20 07:16:32 /QOfnGOA 579/1043


ベテラン(さすがにテオ・テスカトルを見た時は、腰が抜けそうになったが)

ベテラン(あの二人の動き……おそらく何回かやり合った事があるみたいだな)

ベテラン(初見なら しばらく見とけと言われて、ここから観戦させてもらっているが)

ベテラン(前足の攻撃範囲は広いみたいだし、大きな隙は火を吹いた時くらいか)

ベテラン(それにしてもあの二人、それ以外の少ない隙を突いて……いや)

ベテラン(ロートルが主に隙を作り出して、ソロが強力な一撃を与えている)

ベテラン(……見事な連携だ)

ベテラン(…………)

ベテラン(だが……)


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ベテラン(怒ったみたいだな。 問題はここからだ)

635 : 以下、名... - 2015/06/20 07:17:27 /QOfnGOA 580/1043




     ズガッ! ドガッ!



ソロ「ぐっ……!」(防御姿勢) ビリビリビリッ…!

ソロ(ただの前足攻撃なのに、何度受け止めてもキツいなッ……!)

ソロ「ロートル!」

ロートル「おおっ!」


     ズバッズバッズバッ!


ベテラン(うへぇ……今度は役割を変えたのか?)

ベテラン(双剣の乱舞技はスイッチが入っちまったら、止められねぇってのに……)

636 : 以下、名... - 2015/06/20 07:18:12 /QOfnGOA 581/1043



     ギュアアアア……


ベテラン(!!)

ベテラン(いいタイミングで怯んだな……運のいいことで)


     ブワワワ…… チリチリチリッ


ベテラン(!? なんだあれ? 何か粉みたいなを撒き散らしている……?)

ソロ「赤! 近距離!」

ロートル「おうっ!」 回避!


     ガチンッ!  ボボボボボボボンッ!!


ベテラン「」

ベテラン「んなっ!? 爆発した!?」

637 : 以下、名... - 2015/06/20 07:19:22 /QOfnGOA 582/1043


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ソロ「ふー……ふー……ふー……」


     グルルル……


ベテラン(こいつはおったまげたぜ……どういう理屈で爆発したのか分からねーが)

ベテラン(粉振りまいたと思ったら爆発した。 知っていないと確実にやられていたな)

ベテラン(しかも近距離って言っていた。 という事は……遠距離もあるって事か?)


ロートル「はあああああああっ!」


     ズバッズバッズバッ!


ロートル(くっ……切れ味が!)

ロートル(もうこんなに刃こぼれしているのか……!)

638 : 以下、名... - 2015/06/20 07:20:12 /QOfnGOA 583/1043


ロートル「ソロ! 時間だ!」

ソロ「! 分かった!」

ベテラン(時間?)

ソロ「…………」つ(閃光玉)


     ブンッ…   カッ!!

     ギュアアアア……


ロートル「よし! 一度下がるぞ!」

ソロ「ベテラン! そこの洞窟へ入れ!」

ベテラン「ああ、分かったぜ!」

639 : 以下、名... - 2015/06/20 07:21:21 /QOfnGOA 584/1043



―――――――――――


砂漠の洞窟


ロートル「はあっはあっ……ふー……」

ソロ「ふう……」

ベテラン「…………」

ベテラン「それにしても見事なもんだな、お二人さん」

ベテラン「聞くまでもないが、テオとやり合った事があるのか?」

ロートル「……ああ。 5年くらい前にな」つ(砥石)

ソロ「…………」つ(砥石)

     シャッ… シャッ…(砥石使用中)

ベテラン「5年も前かよ……」

640 : 以下、名... - 2015/06/20 07:22:35 /QOfnGOA 585/1043


ベテラン「にしちゃ、かなり息の合った連携だ」

ベテラン「まるで毎日テオ相手に練習していたかの様だったぞ」

ロートル「……悔しい思いをしたからな」

ロートル「俺もソロも……」

ソロ「…………」

ベテラン「……まあ、その辺りは聞かないでおいておく」

ロートル「どうだ、ベテラン」

ロートル「やれそうか?」

ベテラン「へっ……正直、最初はブルっちまったが」

ベテラン「今はやる気満々だぜ」

ロートル「そうか」

641 : 以下、名... - 2015/06/20 07:23:56 /QOfnGOA 586/1043


ベテラン「おっと、再戦の前に一つ聞いておきたい事がある」

ロートル「なんだ?」

ベテラン「お言葉に甘えて、テオの攻撃方法をじっくり見させてもらったが」

ベテラン「あの爆発。 あれはどういう理屈なんだ?」

ベテラン「いや、それはどうでもいいな……」

ベテラン「近距離とか言っていたが、見分け方を教えてくれ」

ロートル「ほう。 よく見ているな」

ロートル「俺も理屈は知らん。 が、赤い粉だと奴の近距離で爆発して」

ロートル「黄色い粉だと遠距離で爆発するんだ」

ベテラン「なるほど……赤で近距離、黄色で遠距離ね」

ベテラン「覚えたぜ」

642 : 以下、名... - 2015/06/20 07:24:29 /QOfnGOA 587/1043


ベテラン「んじゃ、行きますか」

ベテラン「俺は二人の邪魔にならないよう、援護に徹するぜ」

ベテラン「もちろんヤバそうなら間に割って入る」

ベテラン「それでいいか?」

ロートル「ああ。 それでいい」

ソロ「…………」

ベテラン「ソロのあんちゃんもそれでいいかい?」

ソロ「……ああ」

ベテラン「へへっ……ま、信用できねーのは分かるが」

ベテラン「もうちょっと愛想よくできないのかねぇ」

ソロ「……この顔は生まれつきなんでな」

ソロ「無駄口はそのくらいでいいだろう」

ソロ「行くぞ」

643 : 以下、名... - 2015/06/20 07:25:25 /QOfnGOA 588/1043




     古龍テオ・テスカトル

     外見は赤い表皮に覆われ、龍の羽こそあるが

     肉食獣に近い見た目で鳴き声もそれに準じている。



     大きな特徴として、その頭に冠の様な角があり

     また、近づくだけで衣服に火が付く様な高温の体温であるため

     別名『炎王龍』との異名を取る。



     性格は凶暴で縄張り意識が強く

     火山や砂漠など、暑い地域に生息している。




644 : 以下、名... - 2015/06/20 07:26:54 /QOfnGOA 589/1043




     もちろん下位ハンターが手を出していい相手ではない。

     上位でもトップクラスの実力者や

     G級ハンターでないと、生き残る事すら難しい相手なのである。



     もし、テオ・テスカトルを見かけた時

     その実力に達していないと思うのなら

     自分の存在を気づかれる前に逃げる事をお勧めする。

     それは恥ではない。

     テオに限らず古龍相手ならば、生存をかけた逃走であるのだから。




645 : 以下、名... - 2015/06/20 07:27:31 /QOfnGOA 590/1043


ロートル「はあっ!」

     ズバッズバッズバッ!!

ロートル(……そろそろか?)


     ゴアアアアアアアッ!!


ロートル「……やっぱり鳴いてきたか」

ロートル「はあっ!」

ベテラン「どぉうりゃあああああっ!!」つ(ランス)

     ザクッ! ザクッ! ザクッ!

ベテラン「よっと」(防御姿勢)

     ドゴォッ!!

ベテラン「ぐっ……くっ!!」 ビリビリビリビリッ!

646 : 以下、名... - 2015/06/20 07:28:39 /QOfnGOA 591/1043


ベテラン(ただの前足攻撃なのに、なんてクソ重い一撃だ……!)

ベテラン(まともに食らったら、ヤバイなんてもんじゃねぇぜ!)


ソロ「はあああああああああっ!!」(タメ3)


     ドガァッ!!

     ギュアアアアアアッ……


ロートル「! すっ転んだ!」

ロートル「叩き込め!」

ベテラン「言われなくてもぉぉっ!」(突進)

ソロ「おおおおっ……!」(タメ3)

     ドガガガガガガガッ!!

647 : 以下、名... - 2015/06/20 07:29:23 /QOfnGOA 592/1043



―――――――――――







     数時間後










648 : 以下、名... - 2015/06/20 07:30:48 /QOfnGOA 593/1043


砂漠の洞窟


ロートル「はあっはあっはあっ……!」

ソロ「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

ベテラン「はあっはあっはあっ……くそっ」

ベテラン「どんだけ……はあっはあっ……タフなんだよ……ひー、ひー……」

ロートル「くっ……覚悟は……していたが……はあっはあっ……」つ(砥石)

ソロ「ぜぇ……ぜぇ……」

ソロ「ちょっと……言っておきたいんだが……ぜぇ」つ(砥石)

ベテラン「なんだ……? 足を引きずっているの……はあっはあっ……」

ベテラン「見かけたとかか……?」つ(砥石)

     シャッ… シャッ…(砥石使用中)

ソロ「生命の粉塵(同じエリアの味方ダメージを回復するアイテム)の残りが後ひとつだけだ……」

ベテラン「ちっ……悪い知らせかよ……」

649 : 以下、名... - 2015/06/20 07:31:54 /QOfnGOA 594/1043


ベテラン「俺はあと……二つだな」

ロートル「俺は使い切った……それと、もっと悪い知らせがある」

ベテラン「聞きたくねーなぁ……」

ソロ「……何だ?」

ロートル「グレートはおろか、強走薬も使い切ってしまった」

ベテラン「……くそっ」

ロートル「…………」

ロートル「これからは作戦を変えるぞ」

ベテラン「どうすんだ?」

ロートル「シンプルに自分の事は、自分で何とかする」

ソロ「……仕方ないな」

651 : 以下、名... - 2015/06/20 07:32:47 /QOfnGOA 595/1043


ロートル「幸い、ここまで俺たちは1乙もしていない」

ロートル「奇跡はきっと起こせるさ」

ベテラン「……へっ」

ベテラン「そういうの、嫌いじゃねーぜ」 ニヤッ

ロートル「ただし、大きなダメージを負ったら、この洞窟に逃げ込んで回復するんだ」

ロートル「もう閃光玉も効果が薄くなっている」

ロートル「各自の判断で撤退して体制を整えるんだ」

ソロ「……そうだな」

ソロ「それしかないだろう」

ベテラン「ああ、俺もそれでいいと思う」

ロートル「よし」

ロートル「……行くぞ!」

652 : 以下、名... - 2015/06/20 07:33:50 /QOfnGOA 596/1043



―――――――――――


夕方

砂漠のとあるエリア


ロートル「でやああっ!!」


     ズバッ! ズバッ!


ベテラン「このっこのっ!!」

ベテラン「いい加減、くたばりやがれ!!」


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ソロ「ぐっ……しまった!」

653 : 以下、名... - 2015/06/20 07:34:47 /QOfnGOA 597/1043



     ドゴオッ!!(突進攻撃)


ソロ「ぐあああああああああっ!!」

ロートル「ソロッ!」

ロートル「くそおおおおおおおおっ!!」


     ズバッズバッズバッ!!


ベテラン「! やけになるな! その間合いで乱舞技は……!」


     ズガァッ!!


ロートル「ぐぎゃああああっ!!」

ベテラン「言わんこっちゃねぇ!!」

654 : 以下、名... - 2015/06/20 07:35:51 /QOfnGOA 598/1043


ベテラン「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」つ(ランス)


      ドドドドドドドドドドドドッ!(突進攻撃)

      ズガガガガガッ!!


ベテラン「今のうちだ! 下がれ!」

ロートル「……すまんっ」


     ギュアアアアアッ!!

     ドガァッ!! ゴギャッ!!


ベテラン「ぐっ……くっ……!!」(防御姿勢)

ベテラン(くそったれっ……!)

655 : 以下、名... - 2015/06/20 07:37:32 /QOfnGOA 599/1043


砂漠の洞窟


ロートル「はあっ……はあっ……」

ソロ「ぜえっぜえっぜえっ……」

ロートル「ソロ……大丈夫か……?」

ソロ「……心じゃ……ぜえっ……やる気は、あるんだがな……」

ソロ「くそっ……もう回復薬すら使い切ってしまった……」

ロートル「……そうか。 あとは任せて休んでおけ」

ロートル「俺とベテランで何とかする……はあっはあっ……グビッ」つ(回復薬)

ソロ「……お前も……それ最後じゃないのか……?」

ロートル「……実を言うと……クーラードリンクも使い切っている」

ソロ「はっ……それは一大事だな……」

ロートル「なに……なんて事ないさ……ふふ」

ソロ「ふふふ……」

656 : 以下、名... - 2015/06/20 07:38:32 /QOfnGOA 600/1043


ベテラン「うおおおおおおおおおおっ!?」


     ガチンッ! ボボボボボボボボンッ!!


ベテラン「ひー! あ、あぶねえ!」


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ベテラン「くっそお……! 怒りすぎだろーが!!」

ベテラン「このおっ!!」


     ザクッ! ザクッ! ザクッ!



657 : 以下、名... - 2015/06/20 07:39:18 /QOfnGOA 601/1043



     ギュアアアアアッ!!

     ドガァッ!! ゴギャッ!!


ベテラン「ひえええええっ!!」 バックステップ回避!

ベテラン「はっ!? し、しまった! 壁際に追い詰められ……」


     グワアッ!!


ベテラン「わわっ!? ちょ、タンマ!!」


     ズバッ!!

     ギュアアアアア……


ベテラン「…………」

ベテラン「……へ? 生きてる?」

658 : 以下、名... - 2015/06/20 07:40:39 /QOfnGOA 602/1043


ロートル「大丈夫か!?」

ベテラン「ロートル!」

ベテラン「すまねぇ……助かったぜ」

ロートル「いい。 これで貸し借りなしだ」

ベテラン「ああ、そうだな!」

ベテラン「うおおおおおおおおおおっ!!」つ(ランス)

ロートル「でやあああああああああっ!!」


     ドガガガガガガガガッ!!

     ギュアアアアアッ……


ベテラン「はあっ……はあっ……」

ロートル「はあっ……はあっ……」

659 : 以下、名... - 2015/06/20 07:41:56 /QOfnGOA 603/1043



     ズルルッ… ズルルッ…


ベテラン「!」

ロートル「!」

ベテラン「あの野郎、足を引きずってやがるぜ!」

ロートル「ああ! もう一息だ!」

ロートル「もう一息で……」


     バサッ…


ベテラン「あ……」

ロートル「な……!?」

660 : 以下、名... - 2015/06/20 07:42:55 /QOfnGOA 604/1043



     バサッ バサッ バサッ…


ベテラン「…………」

ロートル「…………」

ベテラン「あの高さ……」

ベテラン「……エリチェン……じゃねーな」

ロートル「…………」

ロートル「……そ……だ」

ロートル「……うそだ……うそだ……」



ロートル「うそだあああああああああああああああっ!!」



ベテラン「…………」

661 : 以下、名... - 2015/06/20 07:43:40 /QOfnGOA 605/1043




     砂漠の地平線に夕日が沈んでゆく。

     そして砂の大地に、あらん限りの絶叫が響いた。



     傷つき、足を引きずりだした古龍テオ・テスカトルは

     その翼をはためかせ、沈みゆく太陽に向かって羽ばたいていく。



     ……それはまるで




662 : 以下、名... - 2015/06/20 07:44:42 /QOfnGOA 606/1043









     ロートルを、ハンター達を

     あざ笑うかの様だった……









663 : 以下、名... - 2015/06/20 07:46:03 /QOfnGOA 607/1043


今回のエピソードは、P2Gをやった事がある方はお分かりだと思いますが
実は原作ゲームでも古龍退治でこういう事があります。

簡単に言うと、普通の討伐クエより時間が短く設定してあるのに
ある程度以上のダメージを与えて30分が過ぎると強制終了となるんです。
何が【古龍は傷つき去っていった】だぁー!! 倒しきらせろー!!
と、何度PSPを叩きつけそうになった事か……

ただ、ゲームでは、再び同じ古龍が現れたとき(場所は違う事あり)
ダメージを負った状態で現れるので無駄にはなりません。
が……開始5分以内で終わることもあり
さらにイラッとする事態になったりもしますw

という所で、今日はここまでです。
お付き合い、ありがとうございました。

667 : 以下、名... - 2015/06/20 11:19:33 xGLjbk0k 608/1043


5がハンター世界では不吉な数字ってのは説明しないのかな?

669 : 以下、名... - 2015/06/20 18:28:54 cAsoRYSA 609/1043

>>667
P2Gからっていうし知らんのじゃね?
不吉な数話ってココットで聞けるんじゃないっけ?

670 : 以下、名... - 2015/06/21 07:10:51 HE6GVzOQ 610/1043

>>667 >>669
一応それなりに知ってはいたんですが、あえて無視しました。
>>1の解釈で、どうにも腑に落ちない設定だったので……
モンスター側がこちらの事情を考慮してくれる訳はないし
ハンター側が、自らを縛ってどうするの?と、前々から疑問に思っていたので
>>1自身が納得できる理由をこのスレで使ってみました。

671 : 以下、名... - 2015/06/21 07:11:44 HE6GVzOQ 611/1043



―――――――――――








     半月後











672 : 以下、名... - 2015/06/21 07:12:32 HE6GVzOQ 612/1043


午前中

狩人の家


狩人「……っと」

狩人「これが秘薬か」

少女「うん。 そう」

狩人「回復薬にもグレートとかあるし……」

狩人「調合って奥が深いな」

少女「奥が深いとは思わないけど……」

少女「すごいハンターを見た事があるわ」

狩人「すごいハンター?」

少女「すごい、と言うか、器用、と言うか……」

673 : 以下、名... - 2015/06/21 07:13:21 HE6GVzOQ 613/1043


少女「ババコンガに追いかけられながら調合していたのよ」

狩人「ぶっ!?」

狩人「嘘だろ!?」

少女「エリチェンしてからやればいいのに……と思ったけど」

少女「調合し終わったら、また戦っていたわ」

狩人「……すごいんだか、無駄な才能というか」

狩人「判断が難しいな」

少女「まあ出来るにこした事はないとは思うけど」

少女「調合書開きながらやってるのにも驚いたわ」

狩人「……もうそれ曲芸でお金取れるレベルだな」

少女「それにしても字、大分読める様になったんだね」

674 : 以下、名... - 2015/06/21 07:14:33 HE6GVzOQ 614/1043


狩人「にひひ、まあな」

狩人「女が辞書っての持ってきてくれて」

狩人「知らない単語が出てきたら、これを調べて読んでるよ」

少女「そこまで出来るようになったんだ……」

少女「狩人って頭いいね」

狩人「女にも言われたけど、そうなのかな?」

少女「だって普通は、子供の頃から何年もかけて覚えていく事なのよ?」

少女「狩人は覚え始めて一ヶ月、経ってないし」

狩人「ふうん……」

狩人「まあ何て言うか、こう……出来なかった事が出来る様になっていってるという」

狩人「実感がすごくあってさ」

狩人「それが楽しいし、世界が違って見える気がするんだよ」

少女「そうなんだ」

675 : 以下、名... - 2015/06/21 07:15:25 HE6GVzOQ 615/1043


狩人「まあ、まだ調合書1巻目の半分くらいしか読めてないけど」

少女「うふふ」

     トコ トコ トコ…

板前アイルー「旦那、もうそろそろ昼だニャ」

板前アイルー「どうするニャ?」

狩人「もうそんな時間か」

狩人「少女、どうする? 一緒に食うか? もちろん奢るぜ?」

少女「そうね。 じゃ、お願いするわ」

狩人「んじゃ、俺はいつもの肉料理」

狩人「少女は?」

少女「んー。 魚の煮付け……みたいなのできる?」

板前アイルー「できますニャ! まどもわぜる」

676 : 以下、名... - 2015/06/21 07:16:39 HE6GVzOQ 616/1043


狩人「何だよ、まどもわぜるって……」

板前アイルー「何か、れでーに対しての親愛の言葉って聞いたもんで……」

狩人「相変わらず覚えた事、すぐ使いたがるな……」

狩人「おっと、くれぐれも冒険はするなよ?」

板前アイルー「……ニャハハ、分かってますって旦那!」

狩人(やる気だったな、こいつ……)

狩人「ほい、100z(ゼニー)」

板前アイルー「ガッテン承知だニャ!」

板前アイルー「少々お待ちくださいニャ!」

     タッ タッ タッ

少女「元気なキッチンアイルーね」

狩人「それはいいんだけど、時々俺で新メニューの実験しようとするんだよ……」

677 : 以下、名... - 2015/06/21 07:17:30 HE6GVzOQ 617/1043


少女「そういえば、いつだったか……」

少女「猫飯でお腹壊したって言ってたっけ」

狩人「黙ってやるな、とは言っておいたんだが」

狩人「この前、調味料間違えたとかって 言い訳してきたし」

狩人「何でこっそりやろうとしたがるのか……」 ハアッ…

少女「解雇すれば?」

狩人「それも考えたんだけど……そこ以外は真面目に完璧なんでな」

狩人「まあ、あいつの個性だと思って、そのままにしてる」

少女「個性……か」

少女「そういう意味じゃ、私のコックアイルーはどれも無難な感じね」

少女「時々、材料を焦がしたりしてダメにしちゃったり」

少女「食器を割ったりしてごめんなさいって言ってくるわ」

678 : 以下、名... - 2015/06/21 07:18:29 HE6GVzOQ 618/1043


狩人「そうなのか」

狩人「板前アイルーはそういうの無いよ」

少女「ちょっと羨ましいかも」 クスッ

狩人「でも時々雇い主で実験します」

少女「やっぱり羨ましくないわ」

狩人「ははは……」

少女「ふふふっ」

狩人「…………」

狩人「そういやさ」

少女「ん?」

狩人「昨日、集会所に行って少し気になったんだけど」

狩人「なんか、ハンターの数が少ないな?」

679 : 以下、名... - 2015/06/21 07:19:35 HE6GVzOQ 619/1043


少女「あ、それ私も気になってるのよ」

少女「どういう訳か、上位の……それも」

少女「HR6のハンターばかり、急に姿が見えなくなってるの」

狩人「へぇ……」

狩人「どうしてなのかな?」

少女「さあ……でもHR6のハンターに限って、というのが」

少女「何か関係しているのかもね」

狩人「HR6か……」

狩人「…………」

狩人「ロートルさん達は、どうしてるのかな」

少女「そうね……あれっきり何の連絡もないから」

少女「さっぱり分からないわ」

狩人「…………」

680 : 以下、名... - 2015/06/21 07:20:47 HE6GVzOQ 620/1043



―――――――――――


砂漠村 集会所


     ワイ ワイ ガヤ ガヤ

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……あれから、あの場所のクエを受注しにくくなったな」

ロートル「……そうだな」

ソロ「……ギルド観測所・所員の報告を聞いてたのが居たんだろう」

ソロ「ネコタクアイルーから、という事もあるかもしれん」

681 : 以下、名... - 2015/06/21 07:21:46 HE6GVzOQ 621/1043


ロートル「結局……こうなったか」

ベテラン「正式な古龍討伐依頼はG級扱いだし」

ベテラン「俺たち上位ハンターは『偶然遭遇』しないと、ありつけないからな」

ソロ「……古龍は、現れた場所にまた舞い戻ってくる」

ソロ「それは周知の事実……」

ロートル「…………」

ロートル「くそっ……」

ベテラン「…………」

ソロ「…………」

682 : 以下、名... - 2015/06/21 07:22:18 HE6GVzOQ 622/1043


ロートル(……またか?)

ロートル(また、なのか……?)

ロートル(…………)

ロートル(5年前も……この前の半年間も)

ロートル(最終的には別のハンター達が仕留める結果に……)

ロートル(…………)

ロートル(ここからは、あの場所のクエの奪い合いになる)

ロートル(時間が経てば経つほど、受注が難しくなっていく……)

ロートル(…………)

ロートル(……いや、諦めるな)

ロートル(まだ……チャンスはある)

ロートル(きっと……)

683 : 以下、名... - 2015/06/21 07:23:48 HE6GVzOQ 623/1043



―――――――――――


さらに数日後の朝

ふもと村 集会所


狩人「…………」

狩人「あ」

狩人「ババコンガの依頼がある」

少女「おはよう、狩人」

狩人「少女。 おはよう」

少女「どうしたの?」

狩人「ああ、ババコンガの依頼があってな」

684 : 以下、名... - 2015/06/21 07:25:00 HE6GVzOQ 624/1043


少女「ババコンガかぁ……という事は密林ね」

狩人「そう」

狩人「俺たち下位ハンターは、ここでしかババコンガを狩れないからな」

狩人「上位の沼地って猟区が、よく出るんだっけ?」

少女「正解。 でもランクアップ対象モンスターだから」

少女「必ず狩らないといけないし……面倒なモンスターよね」

狩人「ははは……モンスター書物を読んだけど」

狩人「ウ○コぶつけてくるんだってな……喰らいたくねぇ」

少女「私は出来れば、もう二度と狩りたくないわ……」

狩人「ははは……」

狩人「それじゃ、ちょっと行ってきていいか?」

685 : 以下、名... - 2015/06/21 07:25:30 HE6GVzOQ 625/1043


少女「うん。 これを狩猟できたら、狩人も上位ランクアップクエを」

少女「受注できるようになるね」

狩人「そうだな」

少女「帰ってきたら、一緒に上位ランクアップクエに挑戦かも?」

狩人「そうそう上手く行くかな……」

狩人「ドドブランゴだっけ?」

狩人「今、待っている状態なんだよな?」

少女「うん」

少女「ドドブランゴはシーズンがある訳じゃないから」

少女「基本待つ事になるのよねぇ……」

狩人「こっちの都合に合わせて出てくれたらいいのにな」

少女「ふふっ、ホントだね!」

     ハハハ…

686 : 以下、名... - 2015/06/21 07:26:41 HE6GVzOQ 626/1043


狩人「じゃ、持っていくもの準備し直して行ってくる」

少女「うん」

少女「頑張ってね」

狩人「ああ」

狩人「……それにしても」

狩人「さらにハンターが居なくなってるな……?」

少女「うん……原因は何なのかしら?」

狩人「帰ってくる頃には、分かっているといいんだが」

狩人「ともかく、行ってくるよ」

少女「ええ」

687 : 以下、名... - 2015/06/21 07:27:35 HE6GVzOQ 627/1043




※狩人の装備


武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式




688 : 以下、名... - 2015/06/21 07:29:11 HE6GVzOQ 628/1043



―――――――――――


密林

BC(ベースキャンプ)


狩人「ふう……やっと着いた」

狩人(いつも思うけど、どうしてここだけこんなに遠いのかなぁ)

狩人(さて、愚痴っててもしょうがない)

狩人(初見な上にまた一人……まあ今回はハンターが少なかったからだけど)

狩人(難易度高くなるのは事実だからな)

狩人(消臭玉に閃光玉と罠……)

狩人(思いつく限りの準備はしてきたつもりだ)

狩人(そして……)

     ゴソゴソ…

狩人「秘薬!」つ(秘薬)

689 : 以下、名... - 2015/06/21 07:30:14 HE6GVzOQ 629/1043


狩人(飲んだハンターの耐久力を引き上げる効果がある)

狩人(これも最初から知っておけば……)

狩人(って、それは言いっこなしだな)

     ゴクゴク… シュオオオッ!!

狩人「おおっ!?」

狩人「なんか……うまく言えないが」

狩人「ちょっと強くなった気がするな!」

狩人「よし、回復薬グレートに、その予備として調合分も持ってきている」

狩人(……ハチミツなんて使い道を知らなかった時は売っぱらってたからなぁ)

狩人(今からすると、何てもったいない事をしてたのかって思うぜぇ……) トホホ…

狩人(よし、準備万端)

狩人(待ってろよ、ババコンガ!)

690 : 以下、名... - 2015/06/21 07:31:12 HE6GVzOQ 630/1043



―――――――――――


     フゴッ フゴッ

狩人(居たいた……全身ピンクの体毛の牙獣種)

狩人(普通のコンガと見分ける一番の特徴は、頭にある黄色いトサカみたいな毛)

狩人(まあ大きさで だいたい分かる気もする……)

狩人(いずれにしても、間違いなくコンガの親分格、ババコンガだな)

狩人(…………) ゴソゴソ…

狩人(…………)つ(ペイントボール)

狩人(よっ……と) ブンッ!

     ヒュ―――…… ベチャ!

狩人「……でやあああああっ!!」

691 : 以下、名... - 2015/06/21 07:31:50 HE6GVzOQ 631/1043



     ドガアッ!!

     アオオオォッ……


狩人「先制攻撃成功!」

狩人「ここで……タメ3!」


     バキッ!


狩人「ぶげっ!?」

狩人(い、意外と素早い!?)

狩人「くっ……」

692 : 以下、名... - 2015/06/21 07:32:38 HE6GVzOQ 632/1043



     ブロロオオオオオオオオオンッ!!


狩人(怒ったか……まあ当然だな)


     フゴッ! フゴッ! フゴッ!

     ドドドドドドドドドッ!!


狩人「うおっ!」(防御姿勢) ガシッ!

狩人(あの時のティガに比べたら大した事はないけど)

狩人(この突進は要注意だな……)

狩人「おりゃあああっ!!」


     ドガァッ!!



693 : 以下、名... - 2015/06/21 07:34:06 HE6GVzOQ 633/1043



―――――――――――


狩人「…………」

狩人「ふう……」

狩人「とりあえず倒せたけど……」

狩人「臭ぇ……」

狩人「剥ぎ取りもあんまりしたくないなぁ……」

狩人「…………」

狩人「消臭玉使えば、多少はましかな?」

     ザシュ… ベリリ…

狩人「…………」

狩人「……おえっ」

694 : 以下、名... - 2015/06/21 07:35:37 HE6GVzOQ 634/1043



―――――――――――


数日後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「あ~……やっと帰ってきた」

狩人「一応、体も装備も洗ったけど」

狩人「まだ臭う気がするなぁ……」

     ソ、ソンナ! デスガ…

狩人「……ん?」

狩人(ハンターが……ひとりも居ないな?)

狩人(それにあれは、村長さんに女……受付嬢さんと何の話をしているんだろう)

狩人(やけに深刻そうだけど……)

695 : 以下、名... - 2015/06/21 07:36:40 HE6GVzOQ 635/1043


狩人「あのー……」

「!」

村長「か、狩人!」

「良かった……帰って来たんだね!」

狩人「ど、どうかしたんですか?」

狩人「ハンターが一人も居ませんけど……」

「…………」

「狩人、最初から話すわね」

狩人「あ、ああ……」

「まずね……3~4日くらい前に」

「ドドブランゴが現れたの」

狩人「はい」

696 : 以下、名... - 2015/06/21 07:38:19 HE6GVzOQ 636/1043


「それ自体は普通のこと」

「特に気にするべき事案じゃない……でも」

「次の日、さらにドドブランゴがもう一頭現れた」

狩人「…………」

「それだって珍しいけど、まあ無かった事じゃないわ」

「だけど……」

「昨日になって、全部で4~5頭ものドドブランゴに増えていたの!」

狩人「!?」

「こんな事は、さすがに初めてよ……」

「ブランゴじゃなく、ドドブランゴが群れになって現れるなんて……!」

「最新のギルド観測所の話だと、今は、もう2~3頭増えているかもしれないって」

狩人「い、一体どうして!?」

697 : 以下、名... - 2015/06/21 07:39:38 HE6GVzOQ 637/1043


「…………」

「狩人、もうそれは問題じゃないわ」

狩人「え……?」

「今、受付嬢さんから、ギルドからの避難勧告が伝えられたの」

狩人「!?」

「今朝、参加できるハンター総出で討伐隊が結成され、出発したけど」

「全部で8人しかいない」

狩人「なっ……!?」

狩人「それで避難って……」

狩人「! そ、そうだ、少女は!?」

「……もちろん討伐隊に参加してる」

狩人「」

698 : 以下、名... - 2015/06/21 07:40:50 HE6GVzOQ 638/1043


「受付嬢さんの話では……」

「雪山周辺の集落全部に避難勧告が出ているそうよ」

「理由はわからないけど……」

「どこの村も強いハンターが遠征しているそうで」

「こんな状態で、この数のドドブランゴ相手では……難しいと判断したみたい」

狩人「難しいって……!」

狩人「じゃあ討伐に行ったハンターは、どうなるんですか!?」

「………っ」

村長「狩人……」

村長「どう言い繕っても結果は同じ事だから、私がはっきり言うよ」

狩人「…………」

699 : 以下、名... - 2015/06/21 07:41:53 HE6GVzOQ 639/1043











村長「ただの……時間稼ぎにしかならない、という事だ……」











700 : 以下、名... - 2015/06/21 07:42:48 HE6GVzOQ 640/1043


狩人「」

狩人「そ……そんな!!」

狩人「じゃ、じゃあ……少女や、他のハンターを」

狩人「見捨てるって言うんですか!?」

「…………」

村長「…………」

受付嬢「…………」

狩人「……っ!」

     ダッ!!

「!!」

「狩人! 待って!!」

     ギュッ!

狩人「止めるな! 女!」

701 : 以下、名... - 2015/06/21 07:43:38 HE6GVzOQ 641/1043


「あなた一人が行って、どうにかなるの!?」

狩人「っ!!」

狩人「…………」

「狩人……落ち着いて聞いて」

「今、ギルドが総出で近隣の村や街に、この異常事態を知らせに回ってる」

「だけど、どうやっても上位ハンターがここに来るまで」

「3日以上はかかってしまうのよ……!」

狩人「…………」

「私だって……こんなのは嫌よ……!」

「でも、他にどうすればいいの?」

「少女ちゃん達が居てくれたからこそ、逃げる時間ができた」

「今は……早く避難しないと、雪山を降りてきたドドブランゴに対抗する手段が」

「私たちには全くないのよ!!」

702 : 以下、名... - 2015/06/21 07:44:39 HE6GVzOQ 642/1043


狩人「……っ」 ギリッ…

狩人「…………」

狩人「……く」

狩人「くっ……そおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

村長「…………」

村長「……皆に知らせてくる」

村長「もう時間が無いからね……」

     スタ スタ スタ…

狩人「ぐっ……くっ……くそっ……くそぉっ……うぐっ……」

「ごめん……狩人……ごめ、ん……」

「ごめんなさい……少女ちゃん……ひっく……」

703 : 以下、名... - 2015/06/21 07:45:35 HE6GVzOQ 643/1043




     ……この世の中は、本当に理不尽だ。

     こういう事態が起きた時

     自然の営みとか、神様って奴の気まぐれとか

     何かしらそう理屈づけて語る奴が多い。

     でも……どんな奴でも必ず最後にこう付け加えるんだ。



     『仕方ない』



     ああ、そうさ。 その通りだ。

     『仕方ない』んだよって……納得するしか無いんだよな。

     弱いから……




704 : 以下、名... - 2015/06/21 07:46:26 HE6GVzOQ 644/1043




     …………



     だけど……俺はハンターだ。

     弱くても……ハンターなんだ。

     モンスターを狩る、ハンターなんだ!



     俺は……俺は……




705 : 以下、名... - 2015/06/21 07:47:13 HE6GVzOQ 645/1043










     俺は、ハンターだ!






   



716 : 以下、名... - 2015/06/28 07:44:04 N5KSyVGo 646/1043



―――――――――――


雪山


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「くっ……!」

モブハンター1「くそっ! こっちにも一頭いるぞ!」

ロン毛ハンター「いったい何匹いるんだ!?」


     ドバァッ!!


モブハンター2「うわあああああっ!!」

モブハンター2「」 ドサッ…

モブハンター3「くっそおおおおおおおっ!!」

717 : 以下、名... - 2015/06/28 07:45:00 N5KSyVGo 647/1043


少女「だめ! やけにならないで!」

少女「!」

少女「あっちのドドブランゴ、雪塊を投げてくるわ!」

ロン毛ハンター「固まるな!」

ロン毛ハンター「巻き添えを食うぞ!」


     ドド―――――ンッ!!


少女「きゃあっ!」

ロン毛ハンター「くっそおおおおおっ!!」

718 : 以下、名... - 2015/06/28 07:45:57 N5KSyVGo 648/1043


モブハンター1「」 ドサッ…

モブハンター3「」 ドサッ…

少女「ああ……」

ロン毛ハンター「畜生!」

ロン毛ハンター「もうだめだ! 一時撤退しよう!」

少女「分かったわ!」つ(閃光玉)


     ブンッ!  カッ!

     オオ――――ン……


少女「洞窟に向かいましょう!」

ロン毛ハンター「賛成だ!」

モブハンター4「はあっ……はあっ……」

     タッ タッ タッ…

719 : 以下、名... - 2015/06/28 07:46:50 N5KSyVGo 649/1043



―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「くっ……みんな、怪我はない?」

ロン毛ハンター「ああ、なんとかな。 俺は擦り傷程度だ……」

モブハンター4「こっちも一応大丈夫だ……」

少女「そう……とりあえず朗報ね」

ロン毛ハンター「くそっ……それにしても数が多すぎる」

ロン毛ハンター「昨日言ってた4~5頭より絶対多く居るぞ……」

720 : 以下、名... - 2015/06/28 07:47:47 N5KSyVGo 650/1043


少女「ええ……そうね」

少女「それにドドブランゴ達で連携しているようにも思える」

少女「一匹だけでも厄介なのに……」

ロン毛ハンター「それのせいで一匹に集中砲火を浴びせられないしな……」

ロン毛ハンター「くそっ……」

モブハンター4「どうする?」

モブハンター4「正直、お手上げだ……」

モブハンター4「少なくとも もう数の上で敵いっこないぞ」

少女「…………」

少女(冷静に考えなくても撤退しかない)

少女(でも……それじゃあドドブランゴ達が雪山を降りてきてしまう)

721 : 以下、名... - 2015/06/28 07:48:57 N5KSyVGo 651/1043


救助アイルー「ニャ! ここに逃げ込んでいたのかニャ!」

少女「!」

少女「救助アイルー!」

ロン毛ハンター「おお、ネコタクのアイルーか!」

ロン毛ハンター「ちょうどいいところに……ん?」


モブハンター1「」

モブハンター3「」


救助アイルー「…………」

モブハンター4「……おい、なんで乙ったハンターを」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)に連れて行かないんだ?」

モブハンター4「それに……どうして二人だけなんだ?」

722 : 以下、名... - 2015/06/28 07:50:16 N5KSyVGo 652/1043


救助アイルー「…………」

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)には、もう戻れないニャ」

救助アイルー「すぐ手前のエリアに2頭のドドブランゴが陣取ってて……」

救助アイルー「乙ハンターを抱えながら通るのは……無理だと判断したニャ」


一同「!?」


救助アイルー「乙ハンターが二人なのは……これが精一杯だったからニャ」

救助アイルー「今の俺たちの人数と技量の限界というだけニャ……すまないニャ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「なんてこった……」

ロン毛ハンター「下山する事も出来ないなんて……」

723 : 以下、名... - 2015/06/28 07:51:11 N5KSyVGo 653/1043


モブハンター4「……とりあえず」

モブハンター4「ここで救助を待つしかないんじゃか?」

モブハンター4「俺たちのみじゃ、どうしようもない」

ロン毛ハンター「確に……と言いたいが」

ロン毛ハンター「BC(ベースキャンプ)の手前まで降りてきているのなら」

ロン毛ハンター「奴ら、いつ猟区外へ行ってもおかしくないぞ」

ロン毛ハンター「今は、上位ハンターが極端に不足している異常状態……」

ロン毛ハンター「俺たちの救助は、いつになるのか……」

モブハンター4「なら、その手前のドドブランゴ達だけを倒せばいんじゃないのか?」

モブハンター4「2頭だけなら俺たちだけでも何とか……」

724 : 以下、名... - 2015/06/28 07:52:16 N5KSyVGo 654/1043


ロン毛ハンター「仲間を呼ばれたらどうする?」

ロン毛ハンター「下手に戦えば、返ってBC(ベースキャンプ)に戻れなくなるぞ」

モブハンター4「じゃあどうしろって言うんだ!?」

モブハンター4「ここにいる乙ハンターだって、早く何とかしないと死んじまうぞ!?」

ロン毛ハンター「俺にだってわからねーよ!」

ロン毛ハンター「くそっ……どうしてこんな事に……」

少女「…………」

少女「……ひとつだけ、私に提案がある」


一同「!」


ロン毛ハンター「提案?」

モブハンター4「聞かせてくれ」

少女「その前にまず……救助アイルー」

少女「あなただけなら、BC(ベースキャンプ)に戻れる?」

725 : 以下、名... - 2015/06/28 07:53:20 N5KSyVGo 655/1043


救助アイルー「それなら問題なくできるニャ」

少女「そう……」

少女「ここからは推測も入っちゃうけど」

少女「今日、ふもと村に帰ってくる予定のハンターが一人いるわ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「上位か?」

少女「残念ながら下位よ」

少女「でも、ドドブランゴと戦う条件を満たして帰ってくる」

モブハンター4「あんたと同じ、ランクアップ直前ハンターか」

モブハンター4「で?」

726 : 以下、名... - 2015/06/28 07:54:07 N5KSyVGo 656/1043


少女「救助アイルーにふもと村まで行ってもらって」

少女「彼に助力を仰ぐわ」

少女「まず、BC(ベースキャンプ)手前のドドブランゴの相手をしてもらって」

少女「その隙に乙ハンター二人をネコタクアイルー達で」

少女「BC(ベースキャンプ)に連れて行ってもらう」

ロン毛ハンター「ちょっと待ってくれ」

ロン毛ハンター「さっきも言ったが、仲間を呼ばれたらどうするんだ?」

少女「…………」

少女「私達が雪山に打って出て囮になれば」

少女「数の多い、こちらに気を取られるはずよ」

ロン毛ハンター「」

モブハンター4「」

727 : 以下、名... - 2015/06/28 07:58:49 N5KSyVGo 657/1043


ロン毛ハンター「しょ、正気か? あんた……」

ロン毛ハンター「またあれだけのドドブランゴとやり合おうってのか!?」

少女「やり合う必要はないわ」

少女「あくまで囮……引きつけておくだけ」

少女「少し戦う素振りを見せて、引く」

少女「それを繰り返せばいい」

モブハンター4「し、しかし!」

少女「上手く行けば、乙ハンター達も狩りに復帰できて」

少女「私たちの下山も可能になるかもしれない」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

728 : 以下、名... - 2015/06/28 07:59:55 N5KSyVGo 658/1043


少女「どの道、賭けになる」

少女「ここで救助を待つのが私たちにとっては一番安全だけど」

少女「この乙ハンター二人は治療できないから助からない」

少女「かと言って、私たちだけで打って出ても結果は目に見えている」

少女「また、ふもと村に狩人……さっき私の言ったハンターが」

少女「都合よく帰っているかどうかも分からない」


一同「…………」


少女「救助アイルーをふもと村に向かわせるのは」

少女「状況を把握したい、というのもある」

少女「最悪……私たちを見捨てて避難しているかもしれないわ」

ロン毛ハンター「っ!!」

モブハンター4「!!」

729 : 以下、名... - 2015/06/28 08:00:53 N5KSyVGo 659/1043



一同「…………」


ロン毛ハンター「……確に上位ハンターが極端に居ない上に」

ロン毛ハンター「俺たちがボロ負けしたのは、ギルド観測所が把握しているだろうしな」

モブハンター4「ふもと村含め、周辺の村とかも同じ状況だったし」

モブハンター4「住民の安全を考えたら、やりかねないな……」

少女「…………」

ロン毛ハンター「いいだろう」

ロン毛ハンター「あんたの策、乗ってやる」

少女「!」

モブハンター4「……やるしかなさそうだな」

モブハンター4「幸い、回復薬のたぐいはタップリ残っている」

モブハンター4「使う暇が無かったからな……」

730 : 以下、名... - 2015/06/28 08:01:54 N5KSyVGo 660/1043


少女「……ありがとう」

ロン毛ハンター「礼は及ばんさ」

ロン毛ハンター「自分の命の為でもある」

ロン毛ハンター「それにこの二人をただ見捨てるのも寝覚めが悪いしな」

モブハンター4「まあどの道、あんたの言うハンターが居なかったら」

モブハンター4「そこで終わりだけど……」

少女「…………」


少女(……本当は居ない方がいい)

少女(狩人は……こんな無茶な作戦で命を散らしていいハンターじゃない)

少女(きっと、とんでもなく強くなれる才能を秘めている)

少女(私なんて遠く及ばないような……)

731 : 以下、名... - 2015/06/28 08:02:58 N5KSyVGo 661/1043


少女(…………)

少女(でも……私……)

少女(まだ死にたくないよ……!)

少女(あなたにもう会えなくなるのも……嫌……)

少女(…………)

少女(……私は……わがままね……)

少女(…………)

少女(ごめんなさい……狩人)


少女「……それじゃ救助アイルー」

少女「往復でどれくらいの時間がかかるかしら?」

救助アイルー「ふもと村なら……だいたい2時間ってとこニャ」

732 : 以下、名... - 2015/06/28 08:04:10 N5KSyVGo 662/1043


少女「2時間……乙ハンター達は、それまで持ちそう?」

救助アイルー「ひどい外傷は見当たらないし、脈もしっかりしているニャ」

救助アイルー「凍えさせなければ、たぶん大丈夫ニャ」

少女「分かった。 凍えさせないようにできるだけ気を配るわ」

救助アイルー「それは部下たちに任せてあるニャ」

救助アイルー「ホットドリンクもあるから問題ないニャ」

少女「そう。 じゃ……お願いね」

少女「あなたが帰って来なかったら……私たちはここで救助を待つ」

救助アイルー「……わかったニャ」

救助アイルー「じゃ、行ってくるニャ!」

     タッ タッ タッ…

733 : 以下、名... - 2015/06/28 08:05:04 N5KSyVGo 663/1043



―――――――――――


ふもと村 狩人の家


狩人「…………」

狩人「…………」

板前アイルー「旦那」

狩人「……ん?」

板前アイルー「どうするんだニャ?」

板前アイルー「本なんて読んでる時じゃねぇと思うニャ」

狩人「…………」

狩人「少女達を助けに行くつもりだ」

板前アイルー「……左様ですかニャ」

734 : 以下、名... - 2015/06/28 08:05:58 N5KSyVGo 664/1043


狩人「……短い間だったけど」

狩人「ありがとうな」

狩人「本当に助かったよ」

板前アイルー「…………」

板前アイルー「なあ、旦那」

狩人「ん?」

板前アイルー「せめて、あっしの飯を食ってから行きやせんかニャ?」

狩人「……冒険は無しだぞ」

板前アイルー「もちろんニャ」

板前アイルー「今のあっしにできる、最高の猫飯を食って行ってくだせぇニャ」

735 : 以下、名... - 2015/06/28 08:06:55 N5KSyVGo 665/1043


板前アイルー「どうぞだニャ」

狩人「いただきます」

     ムシャムシャ モグモグモグ…

―――――――――――

狩人「ありがとう、板前アイルー」

狩人「とても旨かっ……」

狩人「……!?」

     シュインッ!!

狩人「こ、これは……!?」

板前アイルー「いかがですかニャ?」

狩人「なんか……秘薬を飲んだ後みたいだ」

板前アイルー「たぶん、その通りだニャ」

狩人「どういう事だ?」

736 : 以下、名... - 2015/06/28 08:07:50 N5KSyVGo 666/1043


板前アイルー「これはあっしの故郷に伝わる秘伝の猫飯でして」

板前アイルー「旦那のお役に立てれば、と思って作りましたニャ」

狩人「……なんで今頃」

板前アイルー「実は人によっては、拒絶反応でお腹を壊したりする食材が含まれてまして」

狩人「おい!?」

板前アイルー「悪いと思いましたけど」

板前アイルー「普段の食事にその食材を少しずつ混ぜて」

板前アイルー「旦那の体を慣れさせてましたニャ……」

狩人「それなら最初から言ってくれよ……」

板前アイルー「これまで雇ってもらえた旦那には、全て断られてきましたんで……」

板前アイルー「旦那も強くなれるかもしれないけど、お腹を壊すモノを」

板前アイルー「体を慣らしてまで食べたいとは思わねぇでしょ?」

狩人「まあ……そうだな」

737 : 以下、名... - 2015/06/28 08:08:36 N5KSyVGo 667/1043


板前アイルー「実は、本当はこれでも完璧じゃねぇですニャ」

板前アイルー「もっとすごい効果のある猫飯なんですが」

板前アイルー「今のあっしの腕前では、これが限界……」

板前アイルー「許してくだせぇ……旦那」

狩人「…………」

狩人「……今の飯、本当に旨かった」

狩人「また食いたい」

板前アイルー「旦那……!」

狩人「じゃ……行ってくる」

板前アイルー「へい! 必ず……必ず! 戻ってきてくだせぇニャ!」

狩人「ああ……」

738 : 以下、名... - 2015/06/28 08:09:21 N5KSyVGo 668/1043



―――――――――――


ふもと村 集会所


受付嬢「いいえ、ダメです」

受付嬢「許可できません」

狩人「なら……勝手に行かせてもらうだけだ」

受付嬢「ですが!」

「狩人!」

「バカ! もうダメなのよ!」

「あなた一人行ったって、何も変えられないのよ!!」

「無駄に死にに行くのと同じなんだから!!」

739 : 以下、名... - 2015/06/28 08:10:12 N5KSyVGo 669/1043


狩人「…………」

狩人「……でも」

「え……?」

狩人「俺はハンターだ」

狩人「このまま逃げ出して、少女達を見捨てたら……」

狩人「きっと後悔すると思う」

「なに、かっこいいこと言った!みたいな顔してるの!?」

「ふざけないで!!」

「命がかかってるのよ!?」

「少女ちゃんを助けに行って、あなたが死んだら、何にもならないじゃない!」

狩人「女、分かってくれ……」

「分からないわよ!!」

740 : 以下、名... - 2015/06/28 08:11:07 N5KSyVGo 670/1043


救助アイルー「……取り込んでる所、ごめんだニャ」


一同「!?」


狩人「お前は……救助アイルー! 無事だったか!」

救助アイルー「そっちも元気そうで何よりニャ」

狩人「それで!? 少女達は無事なのか!?」

救助アイルー「今話すニャ」

―――――――――――

救助アイルー「……という状況ニャ」

「…………」

狩人「そうか、分かった」

741 : 以下、名... - 2015/06/28 08:12:10 N5KSyVGo 671/1043


狩人「受付嬢さん、女」

狩人「俺、行ってくるよ」

狩人「もう討伐じゃない。 少女達の下山を助けてくる」

狩人「それなら、みんな揃っての避難だ」

「…………」

「……分かったわ」

「でも……相当に危ない道よ?」

「全員が生きて帰ってくる事は……難しいと思う」

「その事は忘れないで」

狩人「ああ。 肝に銘じておく」

狩人「女も他の人たちと一緒に逃げてくれ」

狩人「草原村で落ち合おう」

「……うん」

742 : 以下、名... - 2015/06/28 08:13:00 N5KSyVGo 672/1043


※ それぞれの装備と状況


行方不明

モブハンター2(HR 4)

武器:片手剣
防具:ハンターS装備一式


死亡

モブハンター5(HR 3)

武器:太刀
防具:フルフル装備一式


モブハンター6(HR 4)

武器:ハンマー
防具:ハイメタS装備一式

743 : 以下、名... - 2015/06/28 08:13:51 N5KSyVGo 673/1043


乙中

モブハンター1(HR 4)

武器:太刀
防具:ギアノスS装備一式


モブハンター3(HR 5)

武器:弓
防具:ガンナー用ギザミS装備一式

960 : 以下、名... - 2015/07/13 22:42:02 edtHvh.A 674/1043


健在

モブハンター4(HR 4)

武器:ハンマー
防具:ゲネポスS装備一式


ロン毛ハンター(HR 5)

武器:双剣
防具:フルフルS装備一式


少女(HR 3)

武器:ライトボウガン
防具:ガンナー用ザザミ装備一式


狩人(HR 3)

武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式

745 : 以下、名... - 2015/06/28 08:17:37 N5KSyVGo 675/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人「…………」

救助アイルー「じゃ、手はず通り、合図が来たら頼むニャ」

狩人「わかってる」

狩人「……少女によろしく言っといてくれ」

狩人「必ず生き残ろう、と」

救助アイルー「分かったニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

746 : 以下、名... - 2015/06/28 08:19:03 N5KSyVGo 676/1043


狩人(ドドブランゴ……別名『雪獅子』の異名を取る全身真っ白の牙獣種)

狩人(ブランゴを束ねるリーダーであり、大きな特徴として)

狩人(鋭く、大きな牙を持つ)

狩人(ドスギアノスの様に群れを従え、統率の取れた動きで)

狩人(ハンターに襲いかかってくる、厄介なモンスター)

狩人(…………)

狩人(動きが俊敏で、慣れるまでは攻撃を当てるのにも苦労する)

狩人(ドドブランゴの攻撃方法は幾通りか有り)

狩人(突進攻撃や大きなモーションの後に行う 飛びかかり攻撃は)

狩人(よく見ていれば、避ける事はそれほど難しくない)

狩人(が、地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は)

狩人(相当に悪辣な攻撃だ)

747 : 以下、名... - 2015/06/28 08:19:55 N5KSyVGo 677/1043


狩人(さらに巨大な雪の塊を投げてきたり、ブレスを吐いて)

狩人(ハンターの動きを大きく制限する『雪ダルマ』状態にする事も)

狩人(…………)

狩人(……それが、最低でも2頭同時……か)

狩人(…………)

狩人(いや、困難なクエなのは最初から分かっていた)

狩人(一応対抗手段は用意してある)

狩人(消散剤は持ってきた。 走り回るだろうから強走薬も作れるだけ作ってきた)

狩人(…………)

狩人(少女……)

748 : 以下、名... - 2015/06/28 08:20:59 N5KSyVGo 678/1043



―――――――――――


雪山の洞窟


     タッ タッ タッ

救助アイルー「お待たせニャ!」

少女「救助アイルー!」

少女「待ってたわ……」

モブハンター4「それで? 状況はどうなっている」

―――――――――――

救助アイルー「という事で、BC(ベースキャンプ)で待機してるニャ」

少女(狩人……!)

ロン毛ハンター「よし、何とか首の皮一枚つながったな」

少女「ええ……でも、ここからが正念場よ」

ロン毛ハンター「わかっているさ」

749 : 以下、名... - 2015/06/28 08:22:00 N5KSyVGo 679/1043


救助アイルー「それじゃ、俺は乙ハンターのところに行くニャ」

救助アイルー「ああ、それから狩人は必ず生き残ろうって……囮役、頑張ってくれニャ」

少女「うん……ありがとう、頑張るわ」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

モブハンター4「さて、行きますか」

ロン毛ハンター「雪山の地形は大丈夫か?」

少女「問題ないわ」

少女「ドドブランゴに分断されないよう気をつけましょう」

750 : 以下、名... - 2015/06/28 08:24:14 N5KSyVGo 680/1043



―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター(ひょー……居るいる)

ロン毛ハンター(今のところ3匹か……)

少女(まず、私がペイント弾でマーキングしていくわ)

少女(その後、少し戦って山頂方向へ向かい、脇道にそれて洞窟へ入る)

少女(こんな感じでどうかしら?)

モブハンター4(先がどうなってるのか、分からないから不安だ……)

モブハンター4(だが、雪山にいるドドブランゴを引き付けないと意味がないからな)

モブハンター4(OK。 それで行こう)

ロン毛ハンター(よし。 合図の爆弾も用意できてる。 いつでもいいぞ)

少女(……分かった。 始めるわ)

751 : 以下、名... - 2015/06/28 08:25:28 N5KSyVGo 681/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人(…………)

狩人(…………)


     ……ドドーン


狩人「!!」

狩人「よし、始まったな」つ(強走薬) グビッ

     シュイン!

狩人「少女……頑張ってくれ」

狩人「行くぞ!」

752 : 以下、名... - 2015/06/28 08:26:19 N5KSyVGo 682/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くの洞窟出口付近


救助アイルー(始まったかニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(正直、あいつじゃドドブランゴ2頭同時なんて)

救助アイルー(もって5分……というところだニャ)

救助アイルー(何としてもこの二人を早く気づかせて、戦列に復帰させないと)

救助アイルー(いくらあいつでも死んでしまうニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(雪山の方も……どこまで持つのか……)

救助アイルー(…………)

753 : 以下、名... - 2015/06/28 08:27:13 N5KSyVGo 683/1043



     ザッ ザッ ザッ…


狩人「…………」


     グルルル……?


狩人「……さて、どうなるかな」つ(ペイントボール)


     ヒュッ ヒュッ… ――――ンッ ベチャ! ベチャ!


狩人(まずは……様子を見るだけでいい)

狩人(救助アイルー達に注意が向かない様にしないと……!)

754 : 以下、名... - 2015/06/28 08:28:15 N5KSyVGo 684/1043



     ゴアアアアアアアッ!!


狩人「まずは威嚇か……!」


     ググッ……バッ!


狩人「……!」 回避!

狩人(なるほど……あれが大きな動作からの跳びかかり攻撃か!)


     バキッ!


狩人「ぐっ!」

狩人(別の一頭からの攻撃……!)

狩人(これは……相当に厄介だ!)

狩人「このおっ!」

755 : 以下、名... - 2015/06/28 08:29:21 N5KSyVGo 685/1043



     ブウウンッ! ドガッ!

     グアアッ!


狩人「うしっ!」

狩人(だけど大剣の溜め攻撃は、しない方がいいな)

狩人(今は倒す事より、あいつらの注意を引き、動きを見る)

狩人(これに徹するんだ!)


救助アイルー「…………」

救助アイルー(おいおい……何があったのか知らないけど)

救助アイルー(俺はあいつを過小評価してたみたいだニャ)

救助アイルー(いつの間にあんなに冷静な行動を取れるように……)

救助アイルー(いや、それどころじゃないニャ)

756 : 以下、名... - 2015/06/28 08:30:18 N5KSyVGo 686/1043


救助アイルー「いいか、野郎ども」

救助アイルー「もうすぐドドブランゴ達が怒るニャ」

救助アイルー「俺たちはそれを確認した後、全速力でBC(ベースキャンプ)に戻るニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)に戻った後」

救助アイルー「医療班を除いた1班2班は、雪山のハンターの援護に向かってくれニャ」

救助アイルー「残りは、俺と共にここのハンター達を援護するニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「よし」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「…………」

757 : 以下、名... - 2015/06/28 08:31:14 N5KSyVGo 687/1043




     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!



救助アイルー「ミッションスタート!!」


―――――――――――


狩人「……!」

狩人(よし、いいタイミングだ! 救助アイルー!)

狩人「うおおっ!!」


     ザシュッ!!

     グガアアッ!!



758 : 以下、名... - 2015/06/28 08:32:04 N5KSyVGo 688/1043



―――――――――――


雪山 山頂付近


     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「ちっ、この程度で怒ってんじゃねーよ!」

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

少女「ペイントは済んだわ! そこの脇道に行くわよ!」

モブハンター4「わかった!」

モブハンター4「オラァッ! そこをどきやがれ!!」つ(ハンマー)


     ドゴオッ!!


少女「上手い! スタンを取った!」

759 : 以下、名... - 2015/06/28 08:32:51 N5KSyVGo 689/1043



―――――――――――


雪山 中腹付近の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「確認できるペイントの煙は……全部で……はあっはあっ……8頭かしら」

ロン毛ハンター「通りで……ふうっふうっ……敵わないわけだな」つ(回復薬G)グビッ

モブハンター4「くそっ……はあっはあっ……何でこんな数のドドブランゴが……!」

少女「残念だけど、これで全部かどうかは分からない」

少女「それに……」

760 : 以下、名... - 2015/06/28 08:33:36 N5KSyVGo 690/1043


ロン毛ハンター「ああ、分かってる。 みなまで言うな」

ロン毛ハンター「俺たちの仕事はこれで終わりじゃない」

モブハンター4「最後まで持つかなぁ……」

ロン毛ハンター「今から泣きごと言ってどうする」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りとか、確認しとけ」

モブハンター4「わかってるよ……」

モブハンター4「あと2発だ」

ロン毛ハンター「俺は5発丸々残ってるぞ」

少女「私は3発と調合で10個作れるわ」

ロン毛ハンター「そいつは頼もしいな」

モブハンター4「唯一とも言えるいいニュースだぜ」

少女「急いで山頂手前付近の出口に向かわないと……さ、行くわよ」

761 : 以下、名... - 2015/06/28 08:34:17 N5KSyVGo 691/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


救助アイルー「よし!」

救助アイルー「医療アイルー以外の1班2班は予定通り雪山のハンター援護へ!」

救助アイルー「それ以外は、俺について来いニャ!」

     ニャー!

救助アイルー「今回は異常事態ニャ!」

救助アイルー「普段は禁じられている出過ぎたサポートも俺の責任で許可するニャ!」

救助アイルー「ハンターの命を守る事に全力を尽くすんだニャ!!」

     ニャー!!

762 : 以下、名... - 2015/06/28 08:36:14 N5KSyVGo 692/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くのエリア


狩人「ぐあああああああああっ!!」


     グルルル…


狩人「く、くそっ!」


     バキッ!


狩人「ぐはっ!?」

狩人(くそったれ……! もう1頭の死角からの攻撃がキツいっ!)

狩人(……いや、やけになるな)

狩人(冷静になれ! もっと集中するんだ!)つ(回復薬G) グビッ

763 : 以下、名... - 2015/06/28 08:38:32 N5KSyVGo 693/1043




     狩人は確かに成長していた。

     事前にモンスターの情報を知り

     調合の知識や薬効を理解し

     状況を見、頭で考え、冷静に行動していた。

     それは目を見張るほど素晴らしい成長ぶりである。




764 : 以下、名... - 2015/06/28 08:39:41 N5KSyVGo 694/1043




     だが……



     決定的に足りないものがひとつだけあった。

     才能がどれだけあろうとも

     それは……時間をかけなければ得る事ができないのである。




765 : 以下、名... - 2015/06/28 08:40:26 N5KSyVGo 695/1043



     ゴアアアアアアアッ!


狩人(雪塊攻撃!)

狩人(何度も見たぜ!) 回避!


     グルルル…


狩人「!?」

狩人(もう一匹が……居ない!?)

     地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は

     相当に悪辣な攻撃だ

狩人「!!」

766 : 以下、名... - 2015/06/28 08:41:07 N5KSyVGo 696/1043


狩人(しまっ―――)



     ド  ガ  ア  ア  ッ !!



狩人「がっ……」



     ゴ  キ  ン  ッ !!



狩人「」

767 : 以下、名... - 2015/06/28 08:41:52 N5KSyVGo 697/1043











狩人「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」











768 : 以下、名... - 2015/06/28 08:42:42 N5KSyVGo 698/1043




     狩人の右腕から鈍い音と同時に

     強烈な痛みが彼に襲いかかる。




     そう……

     狩人は、複数同時の討伐モンスターを相手に戦った『経験』が

     圧倒的に足りていなかった。




777 : 以下、名... - 2015/07/04 19:20:12 Dd/kherE 699/1043



―――――――――――


雪山 山頂手前付近



     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女(くっ……! ペイントの効果を消してるのが、もう何頭か居る!)

少女(…………) チラッ…

少女(山頂に2頭……ここに3頭、脇道付近に1頭……)

少女(そして、BC(ベースキャンプ)近くに2頭)


     ゴアアアアアアアッ!


ロン毛ハンター「ちっ、また怒りやがったか!」

モブハンター4「そろそろ移動じゃないか!?」

778 : 以下、名... - 2015/07/04 19:20:52 Dd/kherE 700/1043


少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ… カッ!

     グアアアア……

少女「今のうちよ!」

ロン毛ハンター「ヒュー……いつもながら3頭同時に見事なもんだ」

モブハンター4「これが終わったらギルカ交換してくれ」

少女「無駄口叩かない!」

少女「あなた達、私よりHR上なんでしょ!?」 ←HR 3

ロン毛ハンター「……そうですね」 ←HR 5

モブハンター4「……すみません」 ←HR 4

少女「さ、早く行くわよ」

     タッ タッ タッ…

779 : 以下、名... - 2015/07/04 19:21:37 Dd/kherE 701/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前エリア



 痛い     痛い  痛い         痛い
              俺……どうしたんだ……?

   あれ? 何を…           痛い
痛い     ヤバイ…               痛い        痛い
                   ああ……
         痛い     痛い          痛い

    ドドブランゴから逃げないと……
                        苦しい……
   ここは……?         何が……?     少女……
 痛い      痛い      痛い      痛い
      ドドブランゴ……?
                       くそっ……
        痛い

780 : 以下、名... - 2015/07/04 19:22:50 Dd/kherE 702/1043




     ドサッ!!



狩人「がふっ!!」

狩人「……ぐ……くっ……はっ……」


     ドドブランゴの「地中急襲」の直撃を寸前で避けた狩人だったが

     代わりに右腕が犠牲になった上に、結局数メートル上空に突き上げられ

     地面に叩きつけられる結果となった。

     その落下の衝撃で意識が飛びそうになるが

     何とか持ちこたえるものの……朦朧(もうろう)とするのはさすがに抑えられなかった。


狩人「はっ……はっ……」

781 : 以下、名... - 2015/07/04 19:23:22 Dd/kherE 703/1043




     ゴアアアアアアアッ!



狩人「!」


     まるで勝ち誇ったかのような

     ドドブランゴ達の雄叫びでようやく意識がはっきりする。

     ヨロヨロと立ち上がり、首を軽く振ると

     狩人は自分の右腕を見る。


狩人(……くっ)

狩人(痛みの場所から そうだと思ったが……折れてるな……これ)

狩人(おまけに……武器まで失った……くそっ……!)

782 : 以下、名... - 2015/07/04 19:24:15 Dd/kherE 704/1043


狩人(だけど……)

狩人(最後まで諦めるものかっ!)


     狩人は、剥ぎ取り用の小さなナイフを左手に構える。

     だがこれは、剥ぎ取るために作られたものなので

     討伐用の武器とは比べ物にならないほど貧弱で脆い代物だった。


狩人(……これがダメになったら、噛み付いてでも戦ってやる)

狩人(さあ……かかってこい、ドドブランゴ!)


     威勢のいい事を考えているが

     どう見ても悪あがきでしかない……


狩人「はあっ……はあっ……」

783 : 以下、名... - 2015/07/04 19:25:20 Dd/kherE 705/1043




     だが、そんな狩人を見て

     ドドブランゴ達は少々戸惑っていた。

     これだけ圧倒的に不利な状況で大ダメージを受け

     ましてやあの奇妙な道具(武器)も失い

     自分たちに抗う術(すべ)などないハズ……


     だが、いま目の前に居るこの小さいのは

     それでも立ち上がり、何かを取り出して

     圧倒的に有利である自分たちを睨みつけ、戦う姿勢を崩さないでいる。

     何かあるのか……?


     ドドブランゴ達は、本能的に狩人を警戒してしまったのだった。



784 : 以下、名... - 2015/07/04 19:26:10 Dd/kherE 706/1043



     グルルル…


狩人「はあっ……はあっ……」


     一方、狩人の方に余裕など少しもない。

     正直、立っているだけでも辛い、という状況だった。


狩人(……何とか……武器を……!)

狩人(ドドブランゴの後ろにある大剣を拾わないと……!)


     狩人は もう冷静ではなかった。

     痛みで気を失いかけながら考えた事は、ただ”勝つ事”のみ。

     根拠など何もなく、自分の武器さえ取り戻せば何とかなる、と

     思い込んでいるにすぎない……


狩人「はあっ……はあっ……」

785 : 以下、名... - 2015/07/04 19:27:16 Dd/kherE 707/1043




     ゴガアアアアアアアッ!



狩人「!」

狩人「く……うおっ」 回避!

狩人「ぎ……ああああっ!」


     しびれを切らしたドドブランゴの突進に思わず避けたが

     その動きだけで激痛が狩人の体を駆け抜ける……!


狩人「はあっはあっはあっ……」

786 : 以下、名... - 2015/07/04 19:28:16 Dd/kherE 708/1043


狩人(痛ぇ……たった……これだけの動作で……)

狩人(どうすればいい……)

狩人(どう……すれば……)


     あまりの痛みに気が遠くなる狩人。

     ついには、剥ぎ取りナイフすらも落としてしまった……


狩人「はあっ……はあっ……」

狩人(もう……ダメ……かな……)

狩人(…………)

狩人(……女……君の言う通りになってしまったよ……)

狩人(俺一人じゃ……何も変えられなかった……)

狩人(…………)

787 : 以下、名... - 2015/07/04 19:29:05 Dd/kherE 709/1043



     ドドブランゴの一頭が、飛びかかりの前動作を始めるのが見えた。

     狙いはもちろん狩人だ。


狩人(…………)

狩人(畜生……)



     カッ!!


     ゴアアアアアアアッ!?



狩人(!?)

狩人(閃光……玉!?)

788 : 以下、名... - 2015/07/04 19:29:44 Dd/kherE 710/1043


救助アイルー「3班は右のを!」

救助アイルー「4班は左の注意を引くんだニャ!」

救助アイルー「乙ハンターは居ないから、いつもより軽い仕事だニャ!」

     ニャー!!

救助アイルー「大丈夫かニャ!?」

狩人「救助……アイルー……うっ」

救助アイルー「……折れているニャ」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「状況が変わったニャ!」

救助アイルー「3班! このハンターをBC(ベースキャンプ)へ!」

救助アイルー「3班のドドブランゴは、俺が何とかするニャ!」

     ニャ!?

789 : 以下、名... - 2015/07/04 19:30:34 Dd/kherE 711/1043


救助アイルー「時間がもったいないニャ!」

救助アイルー「早くしろニャ!」

     ニャ……ニャー!!


―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


     ガラガラガラ…

3班アイルー「状況! 右、前腕部骨折!」

医療アイルー「了解!」

3班アイルー「俺たちは戻るニャ!」

医療アイルー「こっちも済んだらすぐ行くニャ!」

790 : 以下、名... - 2015/07/04 19:31:24 Dd/kherE 712/1043


医療アイルー「さ、この布を噛むニャ!」

狩人「……え? ぐもっ」

医療アイルー「他の連中は、患者を抑えるニャ!」

     ニャー!

医療アイルー「時間が惜しいから荒療治ニャ!」


     コキッ パキョ…

     グギギギギギギギギギギギギギ……コキンッ✩


狩人「―――――――――――ッ!!!!?」

医療アイルー「添え木……固定完了!」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「」

791 : 以下、名... - 2015/07/04 19:32:11 Dd/kherE 713/1043


医療アイルー「ほれ、起きるニャ」 ペチペチ

狩人「……う、う~ん……」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「え……?」

狩人「あ、ああ……持ってるけど」

医療アイルー「じゃあ回復薬……できればグレートと秘薬を飲んで休んでいるニャ」

医療アイルー「安静にして一日一回は回復薬Gと秘薬を飲んでいれば」

医療アイルー「3日後くらいに治っているニャ」

狩人「そうなのか……わかっ」

狩人「って! 休んでなんていられないんだよ!」

医療アイルー「お前は意識こそ失わなかったけど」

医療アイルー「武器を手放した段階で乙扱いになるニャ」

792 : 以下、名... - 2015/07/04 19:33:01 Dd/kherE 714/1043


狩人「し、しかし!」

医療アイルー「……その腕じゃ、どの道足でまといニャ」

狩人「……っ」

医療アイルー「けど、お前はよくやってくれたニャ」

医療アイルー「おかげで二人のハンターを治療できたニャ」

狩人「!」

医療アイルー「だから、休んでいてくれニャ」

医療アイルー「乙から復帰したハンターが、きっと何とかしてくれるニャ!」

医療アイルー「じゃ……」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

793 : 以下、名... - 2015/07/04 19:33:57 Dd/kherE 715/1043



―――――――――――


雪山 山頂付近


モブハンター4「くそっ!」

ロン毛ハンター「雪塊、来るぞ!」


     ドガァァァァンッ!!


少女「はあっはあっ……そろそろ潮時」


     ガウウウウッ!!


少女「きゃあっ!!」

ロン毛ハンター「野郎!!」

モブハンター4「大丈夫か!?」

794 : 以下、名... - 2015/07/04 19:34:34 Dd/kherE 716/1043


少女「っ……な、何とか……」

ロン毛ハンター「脇道に入るぞ!」


     グルルル…


少女「!」

ロン毛ハンター「なっ!?」

モブハンター4「ま、待ち伏せ……だと!?」


     ガアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くそっ! だめだ、散れっ!」

795 : 以下、名... - 2015/07/04 19:35:17 Dd/kherE 717/1043


モブハンター4「畜生!」

     バババッ!

少女(いけない……このままじゃ分断される!)


     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女「はあっはあっはあっ……!」

少女(今、このエリアには4頭……)

少女(確認した最大の頭数から単純計算でBC(ベースキャンプ)近くのを除けば)

少女(残りは2頭ということ)

少女(なら……!)

少女「このまま、それぞれでエリアチェンジしよう!」

ロン毛ハンター「!」

モブハンター4「!」

796 : 以下、名... - 2015/07/04 19:36:00 Dd/kherE 718/1043


ロン毛ハンター「ちっ……!」

モブハンター4(それしかないか……!)

ロン毛ハンター「わかった!」

モブハンター4「洞窟で落ち合おう!」

少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ!  カッ!

     グアアアア…

―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

797 : 以下、名... - 2015/07/04 19:36:55 Dd/kherE 719/1043



     ゴアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くっ!?」

ロン毛ハンター(どうやら……貧乏くじは俺が引いたみたいだな……)

ロン毛ハンター(くそったれ!)

ロン毛ハンター「だが、何としてもそこを通してもらうぜ!」

ロン毛ハンター「うおおおおおおおおおおおっ!!」

―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「! 良かった……あんたは無事だったか」

少女「ええ……はあっはあっ……なんとか、ね……」

798 : 以下、名... - 2015/07/04 19:37:31 Dd/kherE 720/1043


モブハンター4「……という事は」

少女「…………」

少女「助けに行きましょう」

少女「彼が行ったルートは、たぶん、山頂の手前に出る場所」

少女「すぐに行かないと命に関わ……」


ロン毛ハンター「……大丈夫だ」


少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「無事だったか!」

ロン毛ハンター「…………」

799 : 以下、名... - 2015/07/04 19:38:08 Dd/kherE 721/1043


モブハンター4「……?」

モブハンター4「どうした?」

少女「どこか、怪我でも?」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「……ネコタクアイルーが一人死んだ」

ロン毛ハンター「俺を庇って……」

少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「……そうか」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りは、後どれくらいある?」

800 : 以下、名... - 2015/07/04 19:38:58 Dd/kherE 722/1043


モブハンター4「……俺は使い切った」

少女「私は……あと2発」

ロン毛ハンター「……俺も使い切ってる」

ロン毛ハンター「正直、これはヤバイ状況だ」

ロン毛ハンター「俺たちの行動は、だいぶ奴らに読まれている上に」

ロン毛ハンター「頼みの閃光玉も無くなりかけている」

少女「…………」

モブハンター4「……囮のアタックもあと一回できるかどうか」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)手前の2頭は、どうなったんだ?」

モブハンター4「こっちはそろそろ限界だぞ……」

少女「…………」

801 : 以下、名... - 2015/07/04 19:39:43 Dd/kherE 723/1043


少女「でも、信じて合図を待つしかないわ」

少女「ネコタクアイルーも加わってくれるのなら、多少私たちの負担も減る」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

ロン毛ハンター「……しょうがない、か」

モブハンター4「よし、思い切って今度は逆ルートで行ってみないか?」

モブハンター4「単純だが、少しは時間稼ぎになると思うが?」

少女「そうね……試してみる価値はあると思う」

少女「じゃ、今度は中腹あたりの出口から山頂を目指して」

少女「山頂手前の洞窟を目指しましょう」

ロン毛ハンター「ああ、わかった」

モブハンター4「早いとこ合図来てくれよぉ……」

802 : 以下、名... - 2015/07/04 19:40:55 Dd/kherE 724/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前付近



     ゴアアアアアアアッ!!


救助アイルー「ギニャアアアアアッ!!」

3班アイルー「隊長! もう下がるニャ!」

3班アイルー「乙ハンターも復帰して今戦ってくれているニャ!」

救助アイルー「かはっ……」 ビチャ…

3班アイルー「医療アイルー!」

3班アイルー「来てくれニャ!」

救助アイルー「はあ……はあ……」

962 : 以下、名... - 2015/07/13 22:44:27 edtHvh.A 725/1043


救助アイルー「誰か……ハンターに……」

救助アイルー「合図の仕方を……教えるニャ……」

3班アイルー「分かってるニャ! だからもう休むニャ!」

医療アイルー「……!!」

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「……ここは僕に任せるニャ」

医療アイルー「BC(ベースキャンプ)に連れて行くから……」

3班アイルー「任せたニャ!」

     タッ タッ タッ…

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「…………」

804 : 以下、名... - 2015/07/04 19:42:30 Dd/kherE 726/1043



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


     タッ タッ タッ…

狩人「!」

医療アイルー「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「救助アイルー!?」

狩人「だ、大丈夫か!?」

医療アイルー「…………」

医療アイルー「……静かに見てやって欲しいニャ」

狩人「え? で、でも俺……」

805 : 以下、名... - 2015/07/04 19:43:14 Dd/kherE 727/1043


医療アイルー「……っ」

医療アイルー「内蔵をしこたまやられてて……手の施しようがないニャ……!」

狩人「っ!!」

医療アイルー「だから……看取ってやってくれニャ」

狩人「だ……だから……って」

医療アイルー「僕は……まだ仕事が残ってるニャ!」

医療アイルー「ここで放り出したら、隊長は僕を怒るニャ!」 グスッ…

狩人「!」

医療アイルー「……頼んだニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

806 : 以下、名... - 2015/07/04 19:44:20 Dd/kherE 728/1043


救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「…………」

救助アイルー「……ふふふ……そんな顔するな……」

救助アイルー「俺が……自分の判断で……やった事ニャ……」

狩人「……けど」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「やっぱり……アイルーじゃ……」

救助アイルー「どうやっても……討伐モンスターには……勝てないみたいだニャ……」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「昔は……オトモアイルーとして……」

救助アイルー「旦那さんと……フィールドを……駆け回ってたニャ……」

狩人「…………」

807 : 以下、名... - 2015/07/04 19:45:00 Dd/kherE 729/1043


救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……旦那さん……守れなかったニャ……」

救助アイルー「目の前で……グラビモスの……ブレスで……」

救助アイルー「……俺は……悔しかった……ニャ」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「何度も……何度も……自分がハンターだったらって……」

救助アイルー「そうしたら……仇(かたき)を討って……やれるのにって……」

救助アイルー「考えたニャ……」

狩人「…………」

808 : 以下、名... - 2015/07/04 19:45:52 Dd/kherE 730/1043


救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……こうやって……ハンターを救っていけば……」

救助アイルー「いつか……俺の旦那さんの無念を……晴らしてくれるって……」

救助アイルー「そう考えるように……して……この仕事……始めたニャ……」

狩人「……そうだったのか」

救助アイルー「はあ………はあ………」

救助アイルー「なあ……新人ハンターさん……」

狩人「……なんだ?」

救助アイルー「俺は……頑張れたかニャ……?」

救助アイルー「旦那さんは……喜んで……くれるかニャ?……」

狩人「当たり前だ」

狩人「きっと……笑顔でお前を迎えてくれるさ」

809 : 以下、名... - 2015/07/04 19:46:56 Dd/kherE 731/1043


救助アイルー「ふふふ……そうか………」

狩人「…………」

救助アイルー「あんたみたいな……ハンターを……最後に……救えて……」

救助アイルー「本当に……良かった……ニャ……」

狩人「ああ……俺も感謝してる」

狩人「そしていつか、お前の主より強くなって」

狩人「グラビモスだって、ラオシャンロンだって」

狩人「一人ででも倒せるくらいになってみせるさ……!」

救助アイルー「ふふふ………はあ………はあ………」

救助アイルー「……期待…………してるニャ」

狩人「絶対に裏切らないよ」

救助アイルー「ふふふ…………」

810 : 以下、名... - 2015/07/04 19:47:35 Dd/kherE 732/1043


救助アイルー「…………」

救助アイルー「あんたが……そういう…………ハンターになった……」

救助アイルー「武勇伝を……」

狩人「…………」

救助アイルー「……あっちで……」

救助アイルー「旦那さんと…………聞け……るの…………」

救助アイルー「……楽…………し……み………………に…………」

救助アイルー「」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「救助……アイルー……」

救助アイルー「」

811 : 以下、名... - 2015/07/04 19:48:17 Dd/kherE 733/1043


狩人「…………」

狩人「……っ」

狩人「……ぐっ……うくっ…………ぐっ…………」

狩人「……うあ……ああああっ……ぐっ……くっ……」

狩人「バカ……野郎っ……ひぎっ…………ぐっ……くっ……」

狩人「何で……ぐくっ……何で、だよっ……うあっ………はっ…」

狩人「ひぎっ……うっ、うっ……ぐっ……うあっ……はっ……」

狩人「あああっ……ぐっ……ひぎっ……くっ……うっ……ああっ……」

狩人「……ひうっ……ぐっ……くっ……ぎっ……くあっ……」

812 : 以下、名... - 2015/07/04 19:48:53 Dd/kherE 734/1043




     ……俺が、救助アイルーを看取って

     泣いていると……



     ドドブランゴを倒した、という合図である

     大タル爆弾の炸裂音が響いてきた。



     ……これで、やれる事は一応全部済んだ。

     けど……




813 : 以下、名... - 2015/07/04 19:50:15 Dd/kherE 735/1043









     下山してきた少女達も含め

     喜んでいる者は、誰ひとりとしていなかった……









814 : 以下、名... - 2015/07/04 19:50:59 Dd/kherE 736/1043



―――――――――――


翌日の昼

草原村 仮設テント


「狩人!」

「それに……少女ちゃん」

狩人「……やあ、女」

狩人「怪我したけど何とか帰ってきたよ……」

少女「すみません……討伐できなくて」

「ううん……謝る必要はない」

「むしろ、私たちの方こそ許しを請う立場よ……」

「何しろ我が身可愛さに少女ちゃん達を見捨てて逃げたんだから」

少女「…………」

狩人「…………」

815 : 以下、名... - 2015/07/04 19:51:39 Dd/kherE 737/1043


「……でも」

「ここへ生きて帰ってきてくれて」

「本当に良かったわ……」

少女「…………」

狩人「…………」

「ここには駆け足で来てくれたHR6のハンターが、ついさっき何人か着いたの」

「明日にはもっと来る予定よ」

「今は……体を休める事に専念して」

少女「ええ」

狩人「そうさせてもらうよ……」

816 : 以下、名... - 2015/07/04 19:52:26 Dd/kherE 738/1043



―――――――――――


砂漠村 集会所


ギルド連絡員「急報!」

ギルド連絡員「現在、雪山猟区にて、ドドブランゴが大挙して襲来!」

     ザワッ……!

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」

ギルド連絡員「繰り返す!」

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

817 : 以下、名... - 2015/07/04 19:53:05 Dd/kherE 739/1043


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ソロ「……?」

ロートル「…………」

ソロ「……ロートル?」

ロートル「! ……なんだ?」

ソロ「なんだ?は、無いだろう?」

ソロ「ふもと村に戻る準備をしないと」

ロートル「…………」

ソロ「……おい、ロートル」

818 : 以下、名... - 2015/07/04 19:53:51 Dd/kherE 740/1043


ロートル「……大丈夫だろう」

ロートル「俺やお前がいなくたって……」

ロートル「何とかなるさ」

ソロ「…………」

     バキッ!

ロートル「ぐっ……!」 ドサッ…

ベテラン「…………」

ソロ「……今のは聞かなかった事にしてやる」

ソロ「さあ、ふもと村に帰る準備をするんだ」

ソロ「俺たちは、ふもと村の村付きハンターなんだぞ」

ロートル「…………」

ロートル「…………」

ロートル「……わかった」

ベテラン「…………」

819 : 以下、名... - 2015/07/04 19:54:43 Dd/kherE 741/1043



―――――――――――


翌日の昼

草原村 墓地


ネーコ「……そうですか」

ネーコ「救助アイルーさん、そんな事を……」


ネコタクアイルー一同「…………」


狩人「…………」

狩人「なあ、ネーコ」

ネーコ「はい?」

820 : 以下、名... - 2015/07/04 19:55:28 Dd/kherE 742/1043


狩人「もしかしたら……ネコタクアイルーって」

狩人「救助アイルーみたいな 元オトモアイルーなのか?」

ネーコ「…………」

ネーコ「半分くらいは……その通りです」

ネーコ「もう半分はご主人様と生き別れ、とういうわけでなく」

ネーコ「ただ給金がいいから、という理由できている元オトモアイルーです」

ネーコ「人間とあまり変わりませんよ」 クスッ…

狩人「そうか……」

狩人「でも、みんな元オトモアイルーなのか」

ネーコ「ええ」

ネーコ「ネコタクアイルーの条件にありますので……」

821 : 以下、名... - 2015/07/04 19:56:45 Dd/kherE 743/1043


狩人「…………」

狩人(救助アイルー……)

狩人(俺……必ずあの約束を守るよ)

狩人(…………)

狩人(でももし守れなかったら……)

狩人(その時は遠慮なく、俺を蹴っ飛ばしてくれ)

狩人(…………)

狩人(だから……)

狩人(あっちでもまた会おうな……)

狩人(救助アイルー)

822 : 以下、名... - 2015/07/04 19:58:52 Dd/kherE 744/1043





     今回のドドブランゴ襲来で犠牲になったのは

     ハンターが3人 ネコタクアイルーのアイルーが2人……



     覚悟こそそれなりにしていたが

     俺にとって、最も辛く、苦い経験となった……





823 : 以下、名... - 2015/07/04 20:00:16 Dd/kherE 745/1043



―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオオ……












824 : 以下、名... - 2015/07/04 20:01:06 Dd/kherE 746/1043




     ここは雪山の遥か北に位置する場所。

     見渡す限り……白く凍てつく氷の大地。

     一見すると息づくものはなく

     常に吹雪が渦巻いていた。





     が……







825 : 以下、名... - 2015/07/04 20:02:01 Dd/kherE 747/1043


雪山深奥



     ズシン… ズシン… ズシン…



     



     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!










826 : 以下、名... - 2015/07/04 20:03:19 Dd/kherE 748/1043







     付近の山と見間違うほど巨大で大きい何かが突然吠えた。

     生き物、というのには躊躇(ちゅうちょ)するそれは

     何かに導かれるように南に向かって進み始めた……







839 : 以下、名... - 2015/07/13 19:42:26 edtHvh.A 749/1043



―――――――――――








     約一週間後










840 : 以下、名... - 2015/07/13 19:43:12 edtHvh.A 750/1043


午後

雪山 山頂付近


狩人「くらえ、ドドブランゴッ!!」


     ドガアッ!!

     グアアアアッ…


狩人「よしっ」


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

     アオオオッ……!


少女「狩人! 今よ!」

狩人「はああああっ!!」(タメ3)


     ドガアッ!!


841 : 以下、名... - 2015/07/13 19:44:18 edtHvh.A 751/1043




     あれから一週間が過ぎた。



     あの時の俺たちの頑張りが功を奏したのか

     結局、雪山を降りてきたドドブランゴは一匹もおらず

     ふもと村を含め、雪山周辺の村々にも被害は全く出ずに済んだ。



     そしてロートルさん達を含め

     駆けつけてきたHR6のハンター総数は60人を超え

     雪山に来たドドブランゴ達は一掃された。




842 : 以下、名... - 2015/07/13 19:45:04 edtHvh.A 752/1043




     だけど、それからも1~2日に一頭くらいの頻度で

     ドドブランゴは現れ続け

     ギルド含め、雪山周辺住民にも動揺が広がっていた。



     何かの前触れではないかと……



     無論、ギルド側も事態を重く見て

     調査隊を派遣する事を決めた。

     のだが……




843 : 以下、名... - 2015/07/13 19:45:42 edtHvh.A 753/1043



―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


狩人「ふう……」

少女「狩人、もう腕は問題ないみたいね」

狩人「ああ」

狩人「けど骨が折れるのって、もの凄い激痛なんだぜ……」

狩人「あの痛みは もう味わいたくないよ」

少女「それは……ごめんなさい、狩人」

狩人「ん?」

狩人「何で謝るんだ?」

844 : 以下、名... - 2015/07/13 19:46:43 edtHvh.A 754/1043


少女「だって……」

少女「私が助けを求めて、複数のドドブランゴを相手にさせたから……」

狩人「……いや、気にしなくていいんだよ」

狩人「俺も少女の事、助けたかったし……」///

少女「!」 ドキッ

少女「そ、そう……」///

受付嬢「お待たせしました」

受付嬢「こちらが今回のドドブランゴ討伐の報酬です」

     ドサッ

受付嬢「そして、これがHR4のギルドカードになります」

受付嬢「これでお二人共、正式に上位ハンターですね」

845 : 以下、名... - 2015/07/13 19:47:45 edtHvh.A 755/1043


狩人「ありがとう、受付嬢さん」

狩人「これで上位の猟区に行けるんだな……」

受付嬢「はい」

受付嬢「ただし、塔はHR5から」

受付嬢「樹海猟区はHR6からになります」

狩人「そうですか……まだまだ先は長そうですね」

受付嬢「ええ。 それでは、上位に上がった際の注意点を説明いたします」

狩人「注意点?」

受付嬢「まず……これまでの猟区より危険なモンスターが出没するため」

受付嬢「支給品の配送が遅れる事が多々あります」

受付嬢「ぶっちゃけると、ほぼ毎回、猟区到着時には『無いもの』と思ってください」

846 : 以下、名... - 2015/07/13 19:48:53 edtHvh.A 756/1043


狩人「そうなんですか……」

受付嬢「上位猟区配送員の人員確保は難しくなっておりますので……すみません」

狩人「わかりました」

少女(これは……今まで以上に準備を心がけないと)

少女(猟区に着いて『クーラードリンク忘れた!』なんて)

少女(シャレにならなくなるわ……)

少女(…………)

少女(……たぶん、狩人は事の重大さに気が付いてない気がする)

狩人「他には何かありますか?」

受付嬢「猟区の砂漠なのですが」

受付嬢「上位から”夜の砂漠”に行くクエが登場します」

狩人「はい」

847 : 以下、名... - 2015/07/13 19:49:45 edtHvh.A 757/1043


受付嬢「これまで下位クエでは昼間ばかりだったので知らないでしょうが」

受付嬢「砂漠は夜になるとホットドリンクが必要になるくらい冷え込むんです」

狩人「……冗談ですよね?」

受付嬢「信じられませんか……」

受付嬢「理屈はまだ分かっていないのですが、本当に『そうなる』ので」

受付嬢「これからの砂漠クエ受注の際、時間帯をよく見て、注意してください」

狩人「はあ……」

狩人(あんなに暑い砂漠なのに……本当かなぁ?)

受付嬢「以上が上位に上がった際の注意点です」

受付嬢「これまで以上にできるだけ無理せず、少しずつ強くなってください」

狩人「はい」

少女「わかりました」

848 : 以下、名... - 2015/07/13 19:50:22 edtHvh.A 758/1043



―――――――――――


ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

狩人「あ……あの荷車」

狩人「まだ調査隊、出発していないのか」

少女「ギルド側は調査隊の護衛にG級ハンターを付けたいみたいなんだけど」

少女「なかなか応じてくれるG級ハンターが居ないみたい……」

狩人「HR6のハンターなら、たくさん居るのに……」

少女「未知の……ううん、モンスターのテリトリーに入っていくのだから」

少女「どんな不測の事態になるのか、分からない」

少女「それに備えてG級ハンターの護衛を付けたいのよ」

849 : 以下、名... - 2015/07/13 19:51:16 edtHvh.A 759/1043


狩人「それは分かるんだけどな……」

少女「特に今回は山あいで天候が安定しない地域だから」

少女「気球観測ができないし……」

狩人「…………」

     スタ スタ スタ…

ロートル「……お」

狩人「あ……」

少女「ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「……その様子だと」

ロートル「ドドブランゴ討伐、成功したみたいだな」

850 : 以下、名... - 2015/07/13 19:51:55 edtHvh.A 760/1043


狩人「はい」

少女「上位ハンターになれました」

ロートル「そうか……おめでとう」

狩人「ありがとうございます」

ロートル「じゃ……」

     スタ スタ スタ…

狩人「あ……」

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……ロートルさん」

狩人「帰ってきてから様子がおかしいな……」

少女「うん……」

851 : 以下、名... - 2015/07/13 19:53:12 edtHvh.A 761/1043



―――――――――――


ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

ロートル「タンジアビールにモス煮込みを頼む」

     アイヨー

ロートル「ふう……」

ベテラン「……よお」

ロートル「!?」

ロートル「ベテラン……なぜここに居る?」

ベテラン「ま……気まぐれってやつさ」

852 : 以下、名... - 2015/07/13 19:54:01 edtHvh.A 762/1043


ベテラン「ねーちゃん、俺は黄金芋酒に刺身盛り合わせな」

     ハーイ

ベテラン「ふう……」

ロートル「…………」

ベテラン「……もう知ってるかも しれねーが」

ベテラン「砂漠のテオ……討伐されちまったよ」

ロートル「…………」

ロートル「……そうか」

ベテラン「お前さんがふもと村に向かって、2日後の事だった……」

ロートル「…………」

ロートル「で? それをわざわざ伝えに、こんな所まで来たのか?」

ベテラン「…………」

853 : 以下、名... - 2015/07/13 19:55:50 edtHvh.A 763/1043


     オマチー ソッチノオキャクサンモー

ロートル「おう」

ベテラン「ありがとよ」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「なかなか旨いな」

ロートル「ここは刺身より煮物の方が旨いぞ」

ベテラン「そうか……今度試してみる」

ロートル「……で? 何でここへ?」

ベテラン「……深い意味はねーよ」

ベテラン「ただ……」

ロートル「ただ?」

854 : 以下、名... - 2015/07/13 19:56:48 edtHvh.A 764/1043


ベテラン「ソロの兄ちゃんがお前を殴った時」

ベテラン「俺も殴られた気がした」

ロートル「…………」

ベテラン「結局……俺は残って、古龍殺し(エルダーキラー)のおこぼれに預かろうとしたが」

ベテラン「おたくら同様、怪しまれて相手にされなかったよ……」

ロートル「…………」

ベテラン「何でかね……」

ベテラン「ソロの兄ちゃんの方が正しいのは分かってるんだが」

ベテラン「お前の事を応援したかった」

ロートル「…………」

855 : 以下、名... - 2015/07/13 19:57:33 edtHvh.A 765/1043


ベテラン「けど……俺はそうしなかった」

ベテラン「目の前にある、細い一本のチャンスって名前の紐を掴みたかったし」

ベテラン「面倒事に巻き込まれるのも、お前さん達の関係を悪くするのも避けたかった」

ロートル「…………」

ロートル「……そんなに気にする事じゃないだろう?」

ロートル「流れのハンターなら、当たり前の事じゃないのか?」

ベテラン「まあな……」

ベテラン「だが、テオ討伐の報を聞いて……ものすごく後味が悪くなった」

ロートル「…………」

ベテラン「こんな事……何度もあった、経験したハズなのに」

ベテラン「逃げるテオを見た後のお前の絶叫を どうしても思い出しちまう」

ロートル「!」

856 : 以下、名... - 2015/07/13 19:58:09 edtHvh.A 766/1043


ベテラン「…………」

ベテラン「ねーちゃん、黄金芋酒、おかわり」

     ハーイ

ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「すまなかった、ロートル」

ロートル「…………」

ロートル「……いいさ」

ロートル「もう……」

     ガヤ ガヤ…

857 : 以下、名... - 2015/07/13 19:59:01 edtHvh.A 767/1043



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


狩人「さて……新しい猟区、さっそく行ってみるかな」

狩人「……ん?」

狩人「!!」

     ツカ ツカ ツカ!

狩人「おい! あんた!」

ベテラン「あん?」

狩人「その頬の傷……間違いない!」

858 : 以下、名... - 2015/07/13 19:59:53 edtHvh.A 768/1043


狩人「イケメンの兄貴だな!」

ベテラン「っ!」

狩人「あの時はよくも騙してくれたな!」

狩人「騙し取った金、返せ!」

ベテラン「な、何の事だぁ~??」

ベテラン「何か証拠でもあんのか?」

狩人「まだしらばっくれる気か!?」

     ザワ… ザワ… ナンダ? ケンカカ?

ベテラン「い、いいから落ち着けって」

狩人「落ち着いてられるか! だいたいあんたが……」

ロートル「どうした? 狩人?」

狩人「ロートルさん! 聞いてください!」

859 : 以下、名... - 2015/07/13 20:00:42 edtHvh.A 769/1043


狩人「――という訳で」

狩人「このハンターから、お金を騙し取られたんですよ!」

ロートル「……なるほど」

ロートル「ベテラン、何か反論は?」

ベテラン「反論も何も……俺はこんな奴しらねぇし」

ベテラン「言いがかりは よしてもらいたいってだけだが?」

狩人「この……!」

ロートル「落ち着け、狩人」

狩人「でも、ロートルさん!」

ロートル「いくらやられたんだ?」

狩人「は? ……750z(ゼニー)ですけど」

860 : 以下、名... - 2015/07/13 20:01:26 edtHvh.A 770/1043


     ゴソ ゴソ…

ロートル「ほら、この財布をやる」

ロートル「中に1000z(ゼニー)くらいは入っているから」

ベテラン「!?」

狩人「はあ!?」

ロートル「金さえ戻れば文句は無いのだろう?」

狩人「え? い、いや、それは……」

ロートル「いいから。 それで抑えておけ」

狩人「…………」

ベテラン「…………」

狩人「……わかりました。 けど」

狩人「そんなハンター、庇っても何もならないと思いますけどね」

狩人「じゃ……」

861 : 以下、名... - 2015/07/13 20:02:37 edtHvh.A 771/1043


ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……何してくれてんだよ」

ベテラン「礼なんて言わねぇからな?」

ロートル「ああ。 そんなもの気にしていないさ」

ロートル「狩人の奴は、人を信じすぎるきらいがあるから」

ロートル「お前や俺みたいに、ロクでもない人間が居る事を知らないといけない」

ベテラン「…………」

ベテラン「けっ……だからって、お前にまで不信を抱かせるこたぁねーだろ」

ロートル「そうとも」

ロートル「お前が一番いやがるだろうから、ああしたんだ」

862 : 以下、名... - 2015/07/13 20:03:25 edtHvh.A 772/1043


ベテラン「…………」

ロートル「…………」

ベテラン「……ロートル」

ロートル「なんだ?」

ベテラン「お前って……いい性格してるな」

ロートル「おいおい。 今頃気がついたのか?」

     ハハハ…

―――――――――――


沼地 BC(ベースキャンプ)


狩人「全く……」

少女「何を怒ってるの? 狩人?」

狩人「ロートルさんの事なんだが……」

863 : 以下、名... - 2015/07/13 20:03:56 edtHvh.A 773/1043


狩人「――って事があったんだよ」

少女「ふうん……」

狩人「何だってロートルさんは、あんな奴を庇ったんだか……」

少女「それは私にも分からない……けど」

狩人「けど?」

少女「ロートルさんが何の考えもなしに そんな事はしないと思う」

狩人「…………」

少女「きっと、深い何かがあるんだよ」

狩人「……そうかな?」

少女「うん」

864 : 以下、名... - 2015/07/13 20:04:52 edtHvh.A 774/1043


少女「……世の中ってさ」

少女「何もかもが、こう……善と悪、みたいに分かりやすいモノじゃないし」

少女「そういう風に決めつけて見ちゃうと……世間って、小さく見えて……」

少女「!」

狩人「……?」

狩人「少女?」

少女「……何でもない」

狩人「??」

少女「とにかく」

少女「私たちは目の前の採取クエに集中しないと」

少女「ね?」

狩人「あ、ああ……」

少女「…………」

865 : 以下、名... - 2015/07/13 20:05:27 edtHvh.A 775/1043


少女「…………」


少女(昔……)

少女(私を引き取ってくれた、おばさんに)

少女(同じ事を言われた……)

少女(…………)

少女(……私は)

少女(悪い奴を悪いと言って何が悪いの!……って)

少女(言い返したっけ……)

少女(…………)

少女(皮肉なものね……) クスッ…

866 : 以下、名... - 2015/07/13 20:06:15 edtHvh.A 776/1043



―――――――――――




ふもと村 集会所


狩人「あー……戻ってこれた……」

少女「日帰り、行けるかと思ったけど……」

少女「ぬかるみに足を取られて、想像以上に疲れる上に時間も掛かるわね」

狩人「ああ……今度は沼地猟区近くの村に泊まって帰ろう」

少女「マップで見ると森丘猟区より近くなのに……」

少女「……ん?」

867 : 以下、名... - 2015/07/13 20:07:14 edtHvh.A 777/1043




     ✩急募✩

     調査隊ビバーク品輸送員、護衛のハンターを

     募集しています。

     条件はHR6以上でG級モンスター及び

     古龍との遭遇・戦闘経験のあるハンターです。

     報酬などはギルド員と直接交渉で……




868 : 以下、名... - 2015/07/13 20:08:10 edtHvh.A 778/1043


狩人「調査隊……ビバーク品?」

少女「簡単に言うと食料や体を温める暖房用の燃料の事よ」

狩人「何でそんな物がいるんだ?」

少女「たぶんだけど……」

少女「雪山のかなり奥地まで調べるつもりなんだと思う」

少女「この前も言ったけど、天候の関係で気球観測は出来ないし」

少女「そうなると、食料やその他備品は歩いて持っていくしかない」

狩人「ふむふむ」

少女「でも、一人で運んでいける荷物の量は限界があるし」

少女「それでは限られた距離しか奥に行けないわ」

狩人「うん」

少女「だから中継地点を設けて、そこに食料品や燃料を備蓄しておけば」

少女「より遠くへ行く事ができる様になる」

狩人「なるほど!」

869 : 以下、名... - 2015/07/13 20:08:58 edtHvh.A 779/1043


狩人「この募集の紙は、それを運ぶ人達の護衛ハンターを求めているのか」

少女「そういう事ね」

狩人「…………」

狩人「……という事は」

狩人「本命の調査隊護衛のG級ハンターも見つかった……という事か?」

少女「うん。 少なくともその目処が立ったのだと思う」

狩人「いよいよ動き出すのか……」

     テク テク テク…

ロートル「狩人」

狩人「あ……ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「俺とソロとベテランは明日の朝、ビバーク品輸送部隊の護衛で出発する」

870 : 以下、名... - 2015/07/13 20:09:38 edtHvh.A 780/1043


狩人「!」

少女「!」

狩人「……そうですか」

狩人「ソロさんはともかく、ベテランって、あのハンターですか?」

ロートル「ああ」

ロートル「狩人がどう思っていようが、腕は立つからな」

狩人「…………」

少女「どのくらいで帰ってきます?」

ロートル「一応、往復で約一週間から10日……と言われている」

少女「わかりました」

少女「ふもと村の事は、私たちに任せてください」

ロートル「頼む」

871 : 以下、名... - 2015/07/13 20:10:11 edtHvh.A 781/1043


     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人「大丈夫かな……」

少女「そういえば……ロートルさん」

少女「この前の遠征について、何も言ってくれないね」

狩人「ああ……」

狩人「あのベテランとかいうハンターに騙されてないといいんだが」

少女「さすがにそれは大丈夫だと思うけど……」

少女「でも今回の急な話。 随分あっさり行くのを決めた気がする」

狩人「いけないのか?」

少女「報酬の部分が曖昧なのが気になるの」

872 : 以下、名... - 2015/07/13 20:10:58 edtHvh.A 782/1043


狩人「ギルドと交渉……って書いてあるな」

少女「うん」

少女「破格のお金や素材じゃないのが、どうもね……」

狩人「そういうのを求められる、って事じゃないのか?」

少女「確かにそれは考えられる話だけど……」

少女「ごめん、うまく言えない」

狩人「そうか……」

狩人「じゃ、そろそろ俺たちも休むか」

少女「そうね」

少女「お疲れ様、狩人」

狩人「ああ、お疲れ様」

873 : 以下、名... - 2015/07/13 20:53:30 edtHvh.A 783/1043



※それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ゲキリュウノツガイ 火属性)
防具:ガノスU装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(ブルーウィング 火属性)
防具:ザザミU装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ランス(シェルクロウランス)
防具:フルフルS装備一式

874 : 以下、名... - 2015/07/13 20:54:35 edtHvh.A 784/1043



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ…

ベテラン「よお」

ロートル「おはよう」

ソロ「……おはよう」

ソロ「ベテラン、その武器……火属性じゃないな?」

ベテラン「ああ。 火属性、あるにはあるんだが……まだちょいと力不足なんでな」

ベテラン「迷ったんだが、こっちにした」

ソロ「そうか」

ベテラン「寒い地域のモンスターは、どうも苦手だ……」

875 : 以下、名... - 2015/07/13 20:55:24 edtHvh.A 785/1043


ロートル「……ハンターの集まりが悪いな」

ロートル「昨日聞いていた通りなら、8人の予定だったと思うが……」

ベテラン「寝坊して遅れてるんじゃねーの?」

ロートル「だったらいいんだが……」

     タッ タッ タッ

観測所員「すみませーん」

観測所員「護衛のハンターさん、何人か風邪を引いてしまって参加できないそうです」

     ザワッ…!

ベテラン「おいおい……大丈夫なのか?」

観測所員「と、私に言われましても……」

観測所員「ですが、全部で5人もいらっしゃいますし」

観測所員「もう予定は変えられないので、このまま出発します」

876 : 以下、名... - 2015/07/13 20:56:40 edtHvh.A 786/1043


ロートル「……やれやれだな」

ソロ「5……か」

ソロ「何事もなければいいが」

ベテラン「おや? ソロの兄ちゃん、迷信を信じる口か?」

ソロ「多少はな」

ベテラン「へっ……5だろうが、9だろうが、数字は数字」

ベテラン「いちいち気にしてたら、その若さで涼しげなヘアースタイルになるぜ?」

ソロ「……その軽口を叩く癖。 直した方がいいと思うぞ」

ロートル「まあまあ。 その辺りにしておけ」

ロートル「それよりも古龍の情報を優先して貰える、という報酬は魅力だ」

ロートル「参加できなかったハンターは無念だと思っているだろう」

877 : 以下、名... - 2015/07/13 20:57:25 edtHvh.A 787/1043


ベテラン「おおともよ」

ソロ「……確かにそれは言えるな」

ロートル「昨日話した通り」

ロートル「観測所は今回の騒動の原因、古龍クシャルダオラと見ている」

ロートル「閃光玉は多めに持ってきたか?」

ベテラン「モチのロンだぜ」

ソロ「俺も調合分を含めて持ってきている」

ロートル「よし」

ロートル「もうひとつの候補はラージャンらしいがな……」

ベテラン「そうだったら、おたくら死ぬな」

ロートル「他に鍛えている防具がない……その時は尻尾巻いて逃げるさ」

ソロ「クシャルダオラ前提で考えたからな……」

878 : 以下、名... - 2015/07/13 20:58:17 edtHvh.A 788/1043



―――――――――――








     3日後の夜










879 : 以下、名... - 2015/07/13 20:59:10 edtHvh.A 789/1043






     ビュオオオオオオオオ……





雪山奥地 調査隊中継地点 ビバーク予定地 洞窟テント内


ベテラン「う~さむさむさむ……」

ロートル「見張り、ご苦労さん」

ロートル「あまり旨くないが、モス煮込みだ。 温まるぞ」

ベテラン「ほっ、ありがてぇ……」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「熱っ……はふはふ……ふう……あったまるぜ」

880 : 以下、名... - 2015/07/13 21:00:23 edtHvh.A 790/1043


ロートル「結局、クシャルダオラは襲来せず……か」

ベテラン「ここらでもドドブランゴのみだったな」

ベテラン「しかも並の奴ばかり……原因の『何か』は、もっと奥地みてーだぜ」

ロートル「…………」

ロートル「……それはしょうがない」

ロートル「モンスターが俺たちの都合を考えてくれる訳はないからな」

ベテラン「ちげーねぇ」

     ハハハ…

ベテラン「……明日はいよいよ帰還、か」

ロートル「何事もなく済めば、それでいいさ」

ロートル「命あっての物種だ」

881 : 以下、名... - 2015/07/13 21:01:02 edtHvh.A 791/1043


ベテラン「ほお? ずいぶんあっさりしてるな」

ロートル「今回のドドブランゴ襲来で命を落としたハンターは3人も居る」

ロートル「ネコタクアイルーにも犠牲が出た」

ベテラン「…………」

ロートル「俺たちハンター全員が『そうである』必要はないし、強制もできん」

ロートル「が……自分より若いハンターが命を散らさずに済むよう務めるのは」

ロートル「俺たちにとって、最低限の役割なんじゃないだろうか……」

ベテラン「…………」

ベテラン「……かも知んねぇな」

ベテラン「ハンターやってりゃ、誰だってG級目指したいの同じだが」

ベテラン「さすがに今回は、醜態さらしちまった気がする」

ロートル「……そうだな」

882 : 以下、名... - 2015/07/13 21:01:43 edtHvh.A 792/1043


ロートル「さあ、休んでくれ」

ロートル「時間になったら起こす」

ベテラン「ああ。 休ませてもらうぜ」


―――――――――――


??「……ラン……ベテラン」

??「起きてくれ」

ベテラン「……ん」

ベテラン「…………」

ベテラン「……ソロの兄ちゃん」

ベテラン「……もう……交代の時間か……ふあああっ」

ソロ「違う」

883 : 以下、名... - 2015/07/13 21:02:30 edtHvh.A 793/1043


ベテラン「はあ?」

ソロ「ともかく、起きて外に出てくれ」

ソロ「帰り道が無くなった」

ベテラン「……何言ってるんだ?」

ソロ「いいから早く」

ベテラン「??」

―――――――――――

     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「起きたか、ベテラン」

ベテラン「……どうした、ロートル?」

884 : 以下、名... - 2015/07/13 21:03:34 edtHvh.A 794/1043


ロートル「しっ……声を絞れ、ベテラン」

ベテラン「はあ?」

ロートル「百聞は一見にしかず……とりあえず、声を上げないように」

ロートル「あの巨大モンスターを見てくれ」

ベテラン「……!?」

ベテラン(巨大モンスター!?)

ソロ「…………」

     スッ…

ベテラン「」

ベテラン「なっ……何だ、ありゃ……!?」

ベテラン「あんなの知らねぇぞ……!?」

885 : 以下、名... - 2015/07/13 21:04:16 edtHvh.A 795/1043




     ベテランが驚くのも無理は無かった。

     いつの間にか吹雪は止み、視界が開けていたのだが

     ロートルに促(うなが)され、岩の影からこっそりと覗いたら

     昨日、自分たちが来た道を塞ぐように

     巨大な『何か』が横たわっていたのだ。



     ……いや、もっと正確に言うと

     寝息を立て、寝ていたのだ。




886 : 以下、名... - 2015/07/13 21:05:21 edtHvh.A 796/1043




     大きさは縦に約10~15m。

     丸まっているので全長は推定だが、尻尾を含めると

     軽く50mは超える、と、言ったところか……



     そいつは全身を真っ白なウロコ状の甲殻に包まれ

     全体的に流線型の体型をしている。

     特徴的なのは顔面の顎。

     スコップ状の形で、そのまま地面を掘れそうな感じだった。




887 : 以下、名... - 2015/07/13 21:06:11 edtHvh.A 797/1043


ロートル「俺も見た事がない」

ロートル「吹雪が止んだので、帰り道の確認をしに来たら」

ロートル「『あれ』が居たんだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「……今回のドドブランゴ騒動は」

ソロ「ああ……たぶん『あいつ』のせいだろう」

ベテラン「…………」

ベテラン「しかしでかいな……ラオシャンロンくらいは ありそうだ」

ロートル「……ともかく、これはまずい事になった」

ロートル「ラオシャンロンは国の軍隊の協力や準備してた防衛設備」

ロートル「そしてHR関係なく、ハンター総出で事に当たって何とかしているのに」

ロートル「あんな奴、たった5人のハンターで相手にできるモンスターじゃない」

888 : 以下、名... - 2015/07/13 21:07:12 edtHvh.A 798/1043


ソロ「ましてや、どんな攻撃をするかもわからん」

ソロ「しかも……」

ベテラン「くそったれ……帰り道を塞がれたら、逃げる事もできねーじゃねーか」

ロートル「その通りだ」

ロートル「ともかく今は、奴がどう動くか見極めてからでないと行動できん」

     スタ スタ スタ…

観測所員「何事ですか? こんな朝早く……」

ロートル「しっ……静かに」

ロートル「見た事もない巨大モンスターが寝ている」

観測所員「!!」

ロートル「ゆっくりと……息を殺して『何』なのか、見極めてくれ」

観測所員「……わかりました」

889 : 以下、名... - 2015/07/13 21:07:57 edtHvh.A 799/1043



     スッ…


観測所員「……!!」

ロートル「……どうだ? 何か分かるか?」

観測所員「…………」

観測所員「……わ……私の記憶が正しければ」

観測所員「あれは……おそらく……」



観測所員「崩竜……ウカムルバス……!」



一同「…………」

ロートル「崩竜ウカムルバス……詳しい情報はあるか?」

890 : 以下、名... - 2015/07/13 21:08:47 edtHvh.A 800/1043


観測所員「残念ながらありません」

観測所員「ウカムルバスが最後に確認されたのは……確か50年くらい前で」

観測所員「当時の雪山周辺は、まだ未開の土地……」

観測所員「ラオシャンロン同様、何年かに一度の割合で回遊しているのではないか?」

観測所員「と、推測されただけです」


一同「…………」


ロートル「ほぼ、情報はなし、か……」

ソロ「ラオシャンロンと同じように回遊する、と推測した根拠はあるのか?」

観測所員「……大きさから、そう推測されたと記憶してます」

ベテラン「こいつはキツいねぇ……」

891 : 以下、名... - 2015/07/13 21:09:55 edtHvh.A 801/1043


ベテラン「こっちは戦える奴は5人。 非戦闘員は多数」

ベテラン「おまけによく知らねぇ デカブツ相手で、逃げ道が塞がれちまったときた」


一同「…………」


ロートル「ともかく、確かめたい事もある」

ロートル「一度ビバーク地点まで下がるぞ」

―――――――――――

     ザワ ザワ… ドウスンダヨ…

ロートル「みんな、落ち着いてくれ」

ロートル「ここは洞窟で、とりあえず奴には見つからない」

     …………

ロートル「よし」

892 : 以下、名... - 2015/07/13 21:10:47 edtHvh.A 802/1043


ソロ「ロートル」

ロートル「戻ったかソロ」

ロートル「どうだった?」

ソロ「残念だが……お前の懸念が当たっていた」

ソロ「観測所員の話だと、計画されていたルートは」

ソロ「8年前の雪山奥地探索ルートを元に作られているが」

ソロ「ざっと調べた限り、奴の通った跡は見事にそのルートに沿っていた」

ロートル「……そうか」

ベテラン「俺たちは、やっこさんの通った獣道を探索ルートに選んでいたって事か……」

ロートル「回遊する、という言葉を聞いて、ふと、な……」

観測所員「……通りで通りやすいわけですね」

ロートル「…………」

893 : 以下、名... - 2015/07/13 21:11:20 edtHvh.A 803/1043


ロートル「俺の考えとしては、3つある」

ソロ「……聞こう」

ロートル「一つ目は、迂回ルートを選択して一刻も早く帰還する、だ」

ロートル「だが、これは予定されていないルートを通る事になる為」

ロートル「遭難の危険性があるし、たぶん時間もかかる」

ロートル「そうなったら手持ちの食料や燃料が、どこまで持つか不安になる」


一同「…………」


ロートル「二つ目は、ここで救助を待つ事」

ロートル「ウカムルバスの目的は何なのか分かっていないので」

ロートル「ふもと村の方向へ向かっている、とも言い切れない」

ロートル「ここには調査隊本隊の食料や備品もあるので」

ロートル「原状、我々が一番安全な方法とも言える」

894 : 以下、名... - 2015/07/13 21:12:08 edtHvh.A 804/1043


ロートル「しかし……奴がふもと村の方角へ向かっていった場合」

ロートル「俺たちの救助は遅れに遅れる事が予測される」


一同「…………」


ロートル「最後の選択肢だが……」

ロートル「俺たちハンターが奴の囮となり、非戦闘員たちだけで帰還してもらう事」


一同「!!」


ロートル「……正直、一番危険な策だと思う」

895 : 以下、名... - 2015/07/13 21:12:54 edtHvh.A 805/1043


ロートル「囮になるハンターはもちろん、逃げる非戦闘員も」

ロートル「ギアノスやブランゴ等のモンスターの脅威にさらされる」


一同「…………」


ロートル「だが同時に最も早く、迫ってくるウカムルバスの危険や」

ロートル「救助の求めを伝えられる可能性が高い」

ロートル「同じルートを進んでくる後発隊に接触できるしな」


一同「…………」


ロートル「他に何か、いい考えはあるだろうか?」

観測所員「……ひとつ聞きたいんですが」

ロートル「何だ?」

896 : 以下、名... - 2015/07/13 21:14:50 edtHvh.A 806/1043


観測所員「囮になったハンターは……どうなるんですか?」

ロートル「もちろんあいつを適当にあしらったら……」

ロートル「ここで救助を待つさ」

ロートル「死ぬつもりなんて、これっぽっちもない」

観測所員「…………」

観測所員「私は……3つ目の選択肢を選びます」

     ザワ…!

ベテラン「……こいつは意外だったな」

ベテラン「一番反対すると思ってたぜ」

観測所員「私だって安全に行きたいですよ」

観測所員「でも……ふもと村含め、この脅威を雪山周辺の皆さんは知りません」

観測所員「リスクを冒してでも、伝えなければならない事だと思います」

897 : 以下、名... - 2015/07/13 21:15:29 edtHvh.A 807/1043



一同「…………」


ロートル「ハンター含め、みんなもよく考えてくれ」

ロートル「自分が『どうすべき』なのかを……」


一同「…………」


―――――――――――


約一時間後

ウカムルバス 就寝地点


     グルルル…zzz グルルル…zzz



898 : 以下、名... - 2015/07/13 21:16:27 edtHvh.A 808/1043


ベテラン「……まだ寝てやがるな」

ロートル「どの道、あいつが起きだしたら俺たちが通ってきたルートを進む」

ロートル「退路を絶たれてるのは変わらんさ」

ベテラン「へっ……違ぇねぇ」

ベテラン「なら、こっちの思惑通り動いてもらおうぜ」

ロートル「ああ。 手はずは?」

ソロ「できている」

ソロ「例の洞窟で非戦闘員は待機して、合図を待っているぞ」

ロートル「そうか……」

ベテラン「じゃ……最終確認と行くか」

899 : 以下、名... - 2015/07/13 21:17:01 edtHvh.A 809/1043


ベテラン「俺たちハンターは、囮としてあのデカ物をこの先の開けた窪地へ誘導」

ベテラン「その隙に非戦闘員は元来た道を使って帰還」

ベテラン「大体はこうだな?」

ロートル「ああ」

ロートル「しばらく奴に付き合って、時間を稼ぐが」

ロートル「俺たち囮のハンターは、あの洞窟に立て籠って救助を待つ」

ベテラン「合図は大タル爆弾で……だったな?」

ロートル「雪崩が心配だが、他に手段がないからな……」

ベテラン「……よし」

ベテラン「そろそろ、おっぱじめるとするか」

ソロ「……いつでもいいぞ」

ロートル「わかった」つ(ペイントボール)

     ブンッ ……―――ンッ ベチャ!

900 : 以下、名... - 2015/07/13 21:18:09 edtHvh.A 810/1043



     グルルル…


ベテラン「おーおー……あのでかい図体で、あんなのでも起きるんだな」

ロートル「先に行け」つ(強走薬グレート)

     グビッ …シュインッ!

ソロ「わかった。 気をつけろよ」

ベテラン「頼んだぜ!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「……ああ」

901 : 以下、名... - 2015/07/13 21:19:49 edtHvh.A 811/1043


※ここで ウカムルバス戦闘 のBGMを流すといいかもです。

902 : 以下、名... - 2015/07/13 21:20:34 edtHvh.A 812/1043




     ゴアアアアアアアッ!!



ロートル(まずは威嚇……定番だな)


     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


ロートル「!?」

ロートル「くっ……!」 回避!

ロートル(思ったより素早い……あの図体で かなり動けるみたいだな)

ロートル「はあっ!」

     ズバッ! ズバッ!

903 : 以下、名... - 2015/07/13 21:21:15 edtHvh.A 813/1043


ロートル「…………」

ロートル(こんな程度じゃ全然ダメージにならんな……)

ロートル(ラオシャンロンもハンターに切り刻まれながら)

ロートル(その歩みを止めないと聞く……)


     ガアアアアアアアアアアッ!!


ロートル「!!」

ロートル(どうやら、こいつは気が短いらしい)

ロートル「くっ!」

     ダダダダダダダダッ!

―――――――――――

904 : 以下、名... - 2015/07/13 21:22:06 edtHvh.A 814/1043


ベテラン「おっ……もう来た」

ベテラン「どうやら頭に血が上りやすい質(たち)の様だな」

ソロ「かえって好都合だ」

ソロ「そっちの準備はいいか!?」


     他のハンター達(ガンナー)は手を挙げて

     OKのサインを送りかえす。


ソロ「よし……」

ソロ「…………」

ソロ「…………」

ソロ「…………」

ソロ「今だ!!」

905 : 以下、名... - 2015/07/13 21:22:42 edtHvh.A 815/1043



     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

     ドオオオオオオオンッ!!


ベテラン「しゃ! いいタイミングだぜ!」

ソロ「これだけ引き離せば大丈夫だろう」

―――――――――――

ロートル「!」

ロートル(どうやら、作戦の第一段階は成功のよう……)

ロートル「……!?」

906 : 以下、名... - 2015/07/13 21:23:35 edtHvh.A 816/1043




     不意に

     ウカムルバスは、ロートルから目を離す。

     何かに気がついた様に自分の後方へと目線を移すと

     その方向へ自分の体の向きを変えた。



ロートル「な……何だ?」

ロートル「…………」

ロートル「!!」

907 : 以下、名... - 2015/07/13 21:24:33 edtHvh.A 817/1043




     その目線の先には――

     慌てて洞窟から逃げ出そうとする非戦闘員達の姿が見える。



     この距離で、俺というハンターを目の前にして

     なぜそっちへ……というロートルの疑問は

     次の瞬間、すぐに分かる事となった。




908 : 以下、名... - 2015/07/13 21:25:20 edtHvh.A 818/1043







     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!






ロートル「――っ!!」

ベテラン「」

ソロ「」

909 : 以下、名... - 2015/07/13 21:26:26 edtHvh.A 819/1043




     たぶん水ブレス……

     ガノトトスが使う、貫通性の高い、直撃を食らうと

     下位の防具なんぞ簡単に穴を開けるヤバイやつ。

     アレだ。 それはすぐわかった。



     だが、破壊力が比較にならない!!



     ブレスを吐いた途端、地面の氷や大岩を巻き上げ

     大地ごと非戦闘員達の姿が……消えてしまった!!




910 : 以下、名... - 2015/07/13 21:27:18 edtHvh.A 820/1043


ベテラン「マ……マジかよ」

ソロ「…………」

ロートル「…………」


     モンスターの驚異的な力は

     ハンターであれば、誰でもある程度は分かっている。

     が……

     こいつ……ウカムルバスの この攻撃は

     想像をはるかに超えた破壊力だった。

     故に……ハンター達の動きが一瞬止まる――


ソロ「……!」

ソロ「ロートル! 止まるな!」

ロートル「っ!!」

911 : 以下、名... - 2015/07/13 21:28:02 edtHvh.A 821/1043



     ブオッ!


ロートル「うおっ!」 回避!


     すんでのところでウカムルバスの前足攻撃を避けるロートル。


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ロートル(くそっ!)

ロートル(非戦闘員の安否確認に行きたいが……おそらく全員……)

ロートル(…………)

ロートル(完全に俺の見積りが甘かった)

ロートル(どうする?)

ロートル(あの洞窟に逃げ込んでも あの攻撃をやられたらおしまいだ!)

912 : 以下、名... - 2015/07/13 21:28:48 edtHvh.A 822/1043


ベテラン(これで本当の意味で逃げ場が無くなったな……)

ベテラン(もう囮なんて意味がねぇ)

ベテラン(できる選択肢は……)

ソロ(残った5人でそれぞれ逃げ散るか……)



     戦って勝つしかない!



ベテラン(……正直、あいつに手を出した瞬間、終わっていたのかもな)

ソロ(まさか……ラオシャンロン以上の化物が居るとは……)

ロートル(くそったれ……!)

913 : 以下、名... - 2015/07/13 21:29:38 edtHvh.A 823/1043




     だが、ロートル達以外のハンターは

     『逃げる』という選択を選んだ。

     振り返り、ウカムルバスを確認しながら逃走するハンター達……



ベテラン「ちっ……あいつら!」


     そう舌打ちしつつ、ベテランも気持ちはよく分かっていた。

     が、すぐにその選択は正しくない事を悟る。



914 : 以下、名... - 2015/07/13 21:30:33 edtHvh.A 824/1043







     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!







915 : 以下、名... - 2015/07/13 21:31:26 edtHvh.A 825/1043




     逃げ出したハンター達は文字通り

     『消し飛んだ』……

     通常、モンスターに限らず

     獣という存在は、逃げるものほど追いかける性質がある。

     決して間違いではないが、今回の場合は

     『一斉に別方向へ』逃げないと意味がないのだ。




916 : 以下、名... - 2015/07/13 21:32:17 edtHvh.A 826/1043


ロートル「くそぉっ!!」

     ズバッズバッズバッ!!

ベテラン「ちくしょおおおおおおおおっ!!」つ(ランス)

     ドドドドドドドドドドッ!!(突進攻撃)

ソロ「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

     ドガアッ!!


     ガアアアアアアアアアアアッ!!


ベテラン「!?」

ロートル「!?」

ソロ「!?」

917 : 以下、名... - 2015/07/13 21:33:07 edtHvh.A 827/1043



     ほとんどなし崩し的に……いや

     ヤケクソ気味に攻撃を仕掛けたロートル達。


     だが、ウカムルバスの行動に異変が見えたため

     若干引いて様子を見る。


     ズズウゥ……


ロートル(あの巨体で立ち上がるのか……!)

ベテラン(だが、そんなのはラオシャンロンだってやってるぜ!)

ソロ(ラオシャンロンなら……大きな隙になったはず!)

918 : 以下、名... - 2015/07/13 21:33:42 edtHvh.A 828/1043




     ロートル達は、ラオシャンロンの例に当てはめ

     この後、咆哮を仕掛け 長い時間の隙があると予測した。

     確かにその予測は間違いでは無かった。





     ゴアアアアアアアッ!!




ロートル「ぐっ!?」

ベテラン「がっ!?」

ソロ「ごふっ!?」

919 : 以下、名... - 2015/07/13 21:34:14 edtHvh.A 829/1043




     見えない壁に体を叩き付けられた様な衝撃……!

     これはティガレックス等に見られる

     強烈な咆哮による音波ダメージと原理は同じだ。

     しかし、これもティガとは比較にならないほど強力で範囲が広い!

     ロートル達は、完全に間合いを見誤り

     それぞれの後方へ吹き飛ばされる!



ベテラン「く……くそっ……たれ……!」

ベテラン「は、反則……だろ……こんなの……」つ(回復薬G) グビッ

ロートル「はあっ……はあっ……」つ(回復薬G) グビッ

ソロ「ぐっ……くっ……」つ(回復薬G) グビッ

920 : 以下、名... - 2015/07/13 21:35:18 edtHvh.A 830/1043


ソロ「…………」

ソロ「…………」 ゴソゴソ…

ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「閃光玉……!」

ソロ「……効いてくれたか」

ロートル「これで、とりあえず一息つけるな……」

ソロ「ロートル。 このまま逃げてくれ」

ロートル「!?」

ベテラン「…………」

921 : 以下、名... - 2015/07/13 21:35:52 edtHvh.A 831/1043


ロートル「何を言って……」

ソロ「俺たちの中……大剣、ランス、双剣で一番身軽なのはお前だ」

ロートル「……!」

ソロ「俺はありったけの閃光玉でお前を援護する」

ソロ「もう一度 強走薬を飲んで、この場から脱出しろ」

ロートル「し、しかし!」

ベテラン「そういう事なら、お任せするぜ。 ソロの兄ちゃん」

ソロ「…………」

ロートル「! ベテラン……お前!」

ベテラン「ほれ、やっこさん、もう治ったみたいだぜ?」

922 : 以下、名... - 2015/07/13 21:36:37 edtHvh.A 832/1043



     グルルル…


ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「ロートル、ここで俺たちが全滅したら」

ソロ「誰がウカムルバスの驚異を伝えるんだ?」

ロートル「!!」

ベテラン「……そういうこった」

ベテラン「んじゃ、俺は行くぜ!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「だ、だが! ソロ!」

923 : 以下、名... - 2015/07/13 21:37:19 edtHvh.A 833/1043


ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「早くしろ」

ソロ「そう長くは持たない」

ロートル「……っ」

ロートル「…………」

ロートル「……生きろよ、ソロ」

ソロ「ああ。 頑張るさ」

     ダッ!!

924 : 以下、名... - 2015/07/13 21:38:14 edtHvh.A 834/1043



     ガアアアアアアアアッ!


ソロ「例の水ブレスは、撃たさせんぞ!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…

―――――――――――

ソロ(これで……最後!)つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


925 : 以下、名... - 2015/07/13 21:38:51 edtHvh.A 835/1043


ソロ「…………」

ソロ(ロートル……どのくらい逃げられただろうか)

ソロ(…………)

ソロ(あんたには振り回されてばかりだった気もするが)

ソロ(救われた事も多かった……)


     グルルル…


ソロ(…………)

ソロ(……そういや礼。 言ってなかったな……)

ソロ(あんたとの狩りは、いつだって)

ソロ(楽しかった)

926 : 以下、名... - 2015/07/13 21:39:33 edtHvh.A 836/1043


     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「!?」

ソロ「閃光玉!? いったい誰が……」

ベテラン「黄昏(たそがれ)てんじゃねーよ、ソロの兄ちゃん」

ソロ「ベテラン!?」

ベテラン「よっ……と!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


927 : 以下、名... - 2015/07/13 21:40:36 edtHvh.A 837/1043


ベテラン「もう、ほとんど一瞬で回復してるな……」

ソロ「…………」

ソロ「なぜ……」

ベテラン「おりゃ」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「……何でだろうな」

ベテラン「けどよ」

ベテラン「俺だって……ハンターの端くれだ」

ソロ「…………」

928 : 以下、名... - 2015/07/13 21:41:23 edtHvh.A 838/1043


     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン(…………)

ベテラン(俺は……出来のいい弟にいつも比べられていた)

ベテラン(そいつは弟のせいじゃねぇ。 んなこたぁ分かってる)

ベテラン(けど……足掻けば足掻くほど、惨めな結果に終わっていった……)

ベテラン(……そしていつしか、それも恥とは思わなくなった)

ベテラン(…………)

ベテラン(最後くらい……カッコつけても)

ベテラン(いいだろーよ……)

929 : 以下、名... - 2015/07/13 21:42:08 edtHvh.A 839/1043


     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「これで手持ちが尽きた!」

ベテラン「調合するから、しばらく頼んだぜ!」

ソロ「分かった!」


     ガアアアアアアアア!


ソロ(立ち上がった! また咆哮か!)

930 : 以下、名... - 2015/07/13 21:42:59 edtHvh.A 840/1043



     咆哮が来る。

     そう判断したソロは、大剣で防御姿勢を取る。

     が……大剣の防御姿勢は、目の前に大剣をかざす為

     一時的に視界を遮ってしまう、という些細な弱点があった。


ベテラン「!!」

ベテラン「違う! 咆哮じゃない!」

ベテラン「逃げ――」

931 : 以下、名... - 2015/07/13 21:43:50 edtHvh.A 841/1043






     ド  ズ  ン  ッ !!





     立ち上がったウカムルバスは

     そのままソロに対し、ボディプレスを仕掛けてきた。

     ウカムルバスの重量は見た目の推測でも

     おそらく1000tは下らないだろう。

     防御なんて関係ない。

     ソロは……防御ごとウカムルバスに押しつぶされてしまった……




932 : 以下、名... - 2015/07/13 21:44:49 edtHvh.A 842/1043


ベテラン「くそったれ!!」



     目の前で起こった出来事を悲しんでいる暇すらない。

     早く調合を終えないと、次、ああなるのは自分だ!

     ベテランはそう思って調合を急いだのだが……


     そのせいで、ウカムルバスが尻尾を振り上げたのに

     気が付くのが遅れた。



ベテラン「っ!」

ベテラン「テールアタックか!?」

ベテラン(だが、さすがにこの距離なら――)

933 : 以下、名... - 2015/07/13 21:45:37 edtHvh.A 843/1043




     ズ  ゴ  オ  ッ !!



ベテラン「がっ……!?」

ベテラン(うそ……だろ……)

ベテラン(………まさか…ここまで)

ベテラン(とどく……なんて……!)

     ドサッ!

ベテラン「がふっ!!」

ベテラン「…………」

ベテラン「ゲボォッ……」 ビチャビチャ…

934 : 以下、名... - 2015/07/13 21:46:28 edtHvh.A 844/1043


ベテラン(…………)

ベテラン(あー……こりゃ……体中の骨……逝ったな……)

ベテラン(…………)

ベテラン(痛いんだか……だるいんだか……)

ベテラン(もう……わかんねぇ……な)


     ガアアアアアアアア!


ベテラン(…………)

ベテラン(…………)

ベテラン(へっ……ソロの……兄ちゃんよぉ……)

ベテラン(どうやら……5って……数字……)

ベテラン(迷信なんかじゃ……無かった……みた)

935 : 以下、名... - 2015/07/13 21:47:20 edtHvh.A 845/1043







     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!







936 : 以下、名... - 2015/07/13 21:48:01 edtHvh.A 846/1043



―――――――――――


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ロートル(強走薬が切れたか……)

ロートル(…………)つ(強走薬グレート) グビッ

     シュイン!

ロートル(…………)

ロートル(……くそ)

ロートル(休んでいられん)


     ビュオオオオオオオ……


ロートル(天気まで悪くなってきた……)

ロートル(…………)

     タッ タッ タッ…

937 : 以下、名... - 2015/07/13 21:48:44 edtHvh.A 847/1043



―――――――――――







     数日後









938 : 以下、名... - 2015/07/13 21:49:24 edtHvh.A 848/1043


午前中

ふもと村 加工店


職人「どこかキツいところは無いか?」

狩人「ええ、大丈夫ですよ」

狩人「オウビートS装備、いい感じです」

職人「そうか」

職人「そっちはどうだい?」

少女「……大丈夫です」

少女「デザイン以外、問題ないですよ」

職人「はっはっはっ!」

少女「…………」

狩人「お、俺は可愛いと思うぞ、うん!」

939 : 以下、名... - 2015/07/13 21:50:14 edtHvh.A 849/1043


少女「……どうしてパピメルS装備って」

少女「蝶蝶(ちょうちょ)の羽みたいなデザインになるんですか?」

職人「そりゃ女性用の防具だからだよ」

職人「オウビートに比べて、より軽量化したり」

職人「体型に合わせた結果、こうなるんだ」

狩人(……その理屈が全然わかりませんけどね)

少女(……同じ素材なのに、どう見ても別物なんですけど)

少女「ともかく、ありがとうございました」

少女「デザインは別にしても ようやく上位の防具ができたわね」

狩人「ああ。 ありがとう職人さん」

職人「どういたしまして」

940 : 以下、名... - 2015/07/13 21:50:52 edtHvh.A 850/1043



―――――――――――


狩人「さて、これからどうする?」

狩人「俺はできたら、沼地のフルフルをやりたいんだが……」

少女「…………」

狩人「少女?」

少女「きょ、今日は……休まない?」

狩人「……まだ気にしてるのか」

狩人「あれは一応、誤解を解いたと思うが……」

少女「…………」///

941 : 以下、名... - 2015/07/13 21:51:33 edtHvh.A 851/1043


狩人(いつだったか……)

狩人(俺の髪の毛目当てで女の子ハンターが寄ってきた事があるが)

狩人(昨日、集会所で少女も欲しいと言ってきた)

狩人(……ここまでは問題なかったんだけど)

狩人(『代わりに私のも挙げるね』と言った事で、集会所が静まり返った)

狩人(俺と少女は訳が分からなかったけど……)

狩人(たまたまそこに居あわせた女が説明してくれた)

少女(……何で女の子が男にあげる場合は『下の毛』限定なのよ)///

少女(顔から火が出るほど恥ずかしかった……)///

狩人(……通りで少女にクレクレ言う男ハンターが居ない訳だ)

狩人(そんな奴、ただの変態でしかないからな……)

942 : 以下、名... - 2015/07/13 21:52:05 edtHvh.A 852/1043


少女「……もう恥かきついでに」

少女「これ……あげるわ」つ(お守り)

狩人「え?」

少女「わ、私の髪の毛よっ」///

少女「言っとくけど、下品なモノは入れてないからね!?」///

狩人「! ……あ、ああ」///

狩人「ありがとう、少女。 嬉しいよ」///

少女「そ、そう……」///

少女「…………」///

少女(……ほ、本当は)///

少女(一本だけ……)///

943 : 以下、名... - 2015/07/13 21:52:52 edtHvh.A 853/1043


狩人「じゃあ……どうする?」

狩人「今日は休むか?」

少女「うん。 お願い」

狩人「わかった」 クスッ

少女「ふふっ」 ニコッ


     ガアアアアアアアア……


狩人「!?」

少女「!?」

     ザワッ…

狩人「今の……何だ!?」

少女「分からない。 分からないけど……」

944 : 以下、名... - 2015/07/13 21:53:51 edtHvh.A 854/1043









     モンスターの叫び声なのは間違いない。









945 : 以下、名... - 2015/07/13 21:54:45 edtHvh.A 855/1043


狩人「いったいどこから……」 キョロキョロ…

少女「…………」





     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!






狩人「」

少女「」

946 : 以下、名... - 2015/07/13 21:55:30 edtHvh.A 856/1043




     その日は、さ……

     天気も良くて、爽やかな風も吹いて

     本当にいい日になるなって、そんな気持ちにしかなれない

     穏やかな日だった。



     ……けど




947 : 以下、名... - 2015/07/13 21:56:21 edtHvh.A 857/1043





     この一撃で……

     それは、ただの幻想だって……



     思い知らされる事になったんだ……





948 : 以下、名... - 2015/07/13 22:04:08 edtHvh.A 858/1043

という所で、今日はここまでです。
このスレだけで終わらせるつもりだったけど
ロートル達の奮闘は書きたかった……
前回、泣く泣く救助アイルーの奮闘は削ったのになぁ……
すまねえ救助アイルー……

そんな訳で次スレに続きます。
一応残り2話くらい?と考えてますので。
お付き合いありがとうございました。



続き
狩人「目指すは伝説級ハンター!」【4】


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