1 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:36:27.59 XbQHt1gr0 1/13

雪乃「……寝顔は意外とまともなのよね」

八幡「……」スー、スー

雪乃「はあ。……起きなさい、比企谷君。朝よ」ペシン

八幡「……ん?んう」

雪乃「起きたかしら?」

八幡「……お前今デコピンした?」ボー

雪乃「ええ。あなたがあまりに起きないから。もう九時よ」

元スレ
雪乃「起きなさい、比企谷くん」八幡「……」スー、スー
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1388241387/

3 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:36:58.71 XbQHt1gr0 2/13

八幡「おう。……なあ、俺、三限の日は十二時まで寝てたいって前に言わなかったか?」

雪乃「言ったわね。そしてそれは即却下したわ」

八幡「だったけか」

雪乃「ええ」

八幡「……おはよう、雪ノ下」

雪乃「おはよう、比企谷くん」

八幡「顔洗ってくる」テクテク

雪乃「はい」

4 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:37:31.76 XbQHt1gr0 3/13

シャー、ジャバジャバ

八幡「……」フキフキ

八幡(雪ノ下雪乃。彼女とこんな半同棲のような生活を続けて、もう一年近くになる)

八幡(同じ大学の別の学部に入学した俺達)

八幡(大学ってのは、同じキャンパスであっても、学部学科が違えば、なかなか知り合いと顔を合わさないもんだ)

八幡(ただ、俺と雪ノ下は住んでるアパートが隣同士だった。まあ、雪ノ下のはアパートというよりマンションだが)

八幡(そこで入学してしばらく経ったある日、事件が起きた)

6 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:38:03.71 XbQHt1gr0 4/13

八幡(雪ノ下にストーカーが出たんだ)

八幡(少し遅れて気づいた俺は、何かを考える前に走って、雪ノ下の家に向かった)

八幡(インターホンを鳴らして。玄関越しに聞こえたのは、とても怯えて憔悴しきった声だった)

八幡(そして問題解決に向けて、俺は動き出した)

八幡(その時に取ったいくつかの対策の一つとして、雪ノ下が俺の家に。俺が雪ノ下の家に泊まった。俺が現行犯で捕まえるために)

八幡(以来、犯人を警察に突き出し、事件が解決した後も。雪ノ下はなにかとうちに来るようになった)

八幡(どうにも恩返しがしたかったようなので。雪ノ下が満足するまでの間、しばらくは放っておこうと決めたのだが)

雪乃「比企谷くん。いつまで顔を洗っているの。朝ご飯、とっくにできてるわよ」

八幡(どうも最近は、俺の方もこの生活を『意外と悪くない』と感じてたりする)

8 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:38:46.50 XbQHt1gr0 5/13

―――朝食を食べ終わった後。二人ともこたつに入ってコーヒーをすすりながら

八幡「お前、今日何限だったっけ」

雪乃「三限と、五限」

八幡「ふうん。お前って講義と講義の間の時間、何してんの」

雪乃「読書とか、自習よ。高校の時と変わらないわ」

八幡「相変わらずだな」

雪乃「あなたも似たようなものでしょう」

八幡「まあ、否定はしない。でも今はたまに男とつるんでるよ」

八幡(男と言っても、親交があるのは一人だけだけど)

雪乃「へえ」

八幡「何その顔」

雪乃「人間が心底驚いた時、きっとこんな顔よ」

10 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:39:20.32 XbQHt1gr0 6/13

八幡「お前な……。俺だって、一人の時間の方が好きってだけで、別に友だち嫌いってわけじゃないからな」

雪乃「ええ、その友達ができなかっただけなのよね。だから余計に驚いてるのよ」

八幡「あっそ。お前、自分の言葉が結構ひどいこと知ってる?」

雪乃「さあ。……でも、よかったわね」

八幡(そう言ってほほ笑む雪ノ下は、意外とほんとうに嬉しそうだった)

八幡「まあな。あ、そうだ雪ノ下。俺今日晩飯いらねえ」

雪乃「え?……いえ、別に今日も作るなんて言ってないでしょうまだ」

八幡「でも言っとかないと後から文句言われそうだしな」

雪乃「それで、理由は?」

八幡「明日、ゼミの発表でな。準備しないといけないから、大学から何時に帰るか分からん」

雪乃「そう。……頑張ってね」

八幡「まあ、ほどほどにやるさ」

11 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:39:52.38 XbQHt1gr0 7/13

―――昼ごろ、大学の前

八幡「じゃあな」

雪乃「ええ。また明日」

八幡「おう。……あ、そうだ雪ノ下」

雪乃「何?」

八幡「朝飯、いつもさんきゅな。美味いぞ」

雪乃「そ、そう。じゃあまたね比企谷くんちゃんと講義受けるのよ」スタスタ

八幡「母ちゃんかよお前は。ほいよ、じゃあまた」

雪乃(自分でも、早口で、顔が赤かったのが分かった。あの男は、たまに卑怯。いつも卑怯だけど、ああいうのは本当に卑怯だ)スタスタ

雪乃(意図せずに顔が緩むから、できるだけやめてほしい。ああいうのは)スタスタ

12 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:40:22.44 XbQHt1gr0 8/13

―――八幡、ゼミにて

「で。ハッチはまだ、例のあの子と付き合ってないの?」

八幡「ん」カタカタ

「そうなんだ。なんで?」

八幡「んー」カタカタ

「ハッチ、パソコンの世界に入りすぎ。今は恋バナしよーぜー」

八幡「お前、先週終わらせたからってうぜえ。俺は発表明日なんだよ」クル

「まーまー。コーヒー入れたからさ。ちょっと休憩すべき」

八幡「ちゃんと砂糖入れたか?」

「入れた入れた、たっぷりね」

八幡「っそ」ズズズ

13 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:40:53.86 XbQHt1gr0 9/13

「それで、例の雪ノ下さんの話」

八幡(目の前でニコニコしている熊みたいな体のこの男は、ゼミの同期)

八幡(基本一人でいることの多い奴なのだが、話してみると朗らかで、穏やかな奴だ)

八幡(ある意味、俺が初めて獲得した貴重な同性の友人。だって戸塚は天使で、材木座は知り合いだしな)

八幡(ただ、ケーキ作りが趣味で、好きな話は恋バナというのがたまに傷だが)

八幡「別に、付き合うとか付き合わないとか、そういう対象じゃない。だいたい、見たことあんだろ。釣り合わないんだよ」

八幡(色んな意味で、な。きっと、雪ノ下もそう思ってるだろう)

「ふうん?でも、半同棲はしてる」

八幡「それだって、あいつが義理人情でやってるだけだ。別に色っぽいことなんか一つもない」

14 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:41:33.46 XbQHt1gr0 10/13

「ハッチがそう言うなら、本当なんだろうね」

八幡「そうだよ。勘ぐるな、めんどくさい」

「はは、ごめんごめん。面白いから」

八幡「なにがだよ」

「なんでもないよ」

(多分君は気づいてないだろうけど、この話をしてる時の君の表情って、たまに照れたように唇を尖らせる)

(それが、面白いんだ。見てて楽しい)

「まあ、ハッチのそういうところ、結構すきだよって話」

八幡「……お前、ホモじゃねえだろうな。俺、男は戸塚以外認めねえぞ」

「違うよー。僕、彼女いるし」

八幡「けっ、知ってるよ。そら、休憩おわり。続きするから手伝え」

「はーい」

15 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:42:05.39 XbQHt1gr0 11/13

―――日付が変わりそうなぐらいの深夜、八幡帰宅

八幡「はー、さむ」ガチャ

八幡(ん?部屋の電気ついてる)

テクテク

雪乃「……」スー、スー

八幡「……ただいま、雪ノ下」

八幡(こたつに突っ伏して、穏やかな寝息を立てる雪ノ下がいた。傍には、読みかけらしい本が置いてある)

八幡「いい匂いするな……ああ」

八幡(台所のコンロの上には、とん汁とおでんの入った鍋がそれぞれ置いてあった。冷蔵庫には書置きが貼ってある)

雪乃『準備、お疲れ様です。とん汁とおでんは温めなおして食べてください。冷蔵庫にはサラダが入ってます。食べた食器は流しに置いといてください』

八幡(こいつ、手紙だと敬語になるんだよな……)

17 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:42:58.08 XbQHt1gr0 12/13

八幡(なんだろう。今、俺が感じているこの気持ち。これを言葉にしたらなんて言うのか、俺は知ってる)

八幡(でもその気持ちは、今までずっと、俺を苦しめるものでしかなかった。俺の黒歴史を量産するものでしかなかった)

八幡(今回も、そうなのだろうか。それとも、違うのだろうか)

八幡(まあ、どう転ぶのかはまだ分からないが)

八幡(いつか、雪ノ下に伝えるときが来るのだろうか。この気持ちを)

八幡(とりあえず今は。目の前のご飯を頂こう)

八幡「……いただきます」

八幡(彼女を起こさないようにそっと声をかけて、俺はコンロに火をかけた)




25 : 以下、名... - 2013/12/28(土) 23:44:16.49 XbQHt1gr0 13/13

我ながら短すぎた
終わりです
でも続編考えてるのでまた書ききったらスレ立てます

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