1 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/25 07:56:01.40 AuEbIX6Lo 1/262



"私とミーシャ、友達だから―――――これからもずっと"


常盤台中学の女子生徒、御坂美琴は葛藤を全て飲み込み断言した。
友達のために暗闇と死闘を繰り広げた彼女の前に現れた人物とは……。

大天使の善意と厚意が、彼女の心を引き裂いていく―――


これぞ現代の 天使! 天使! 天使!

          ・ ・ ・
天界は、きみを迎えるための場所。


【本編】

一方通行「フラグ・・・ねェ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1285654962/

上記のスレがこのSSの『本編』にあたる最初のスレです。こっからグダグダと続いていきます。


元スレ
蛇足 とあるフラグの天使同盟 玖匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1340578561/

2 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/25 07:57:05.76 AuEbIX6Lo 2/262


【本編のエピローグ・続編】

蛇足 とあるフラグの天使同盟
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804166/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310210981/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 参匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313069422/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 肆匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316009458/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 伍匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1319277226/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 陸匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1322982536/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 七匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1327741451/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 捌匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1334985761/


上記のスレからの続きとなっています。もしお暇でしたら、ご一読を。



【関連】

◆本編

1スレ目
一方通行「フラグ・・・ねェ」【1】
一方通行「フラグ・・・ねェ」【2】
一方通行「フラグ・・・ねェ」【3】
一方通行「フラグ・・・ねェ」【4】

2スレ目
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」【1】
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」【2】
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」【3】
一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」【4】

3スレ目
一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」【1】
一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」【2】
一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」【3】

4スレ目
一方通行「フラグ・・・・・・だろォな」  垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」【1】
一方通行「フラグ・・・・・・だろォな」  垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」【2】
一方通行「フラグ・・・・・・だろォな」  垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」【3】

5スレ目
一方通行「フラグだと? って事ァ」  レッサー「私はあなたが好きって事です♪」【1】
一方通行「フラグだと? って事ァ」  レッサー「私はあなたが好きって事です♪」【2】
一方通行「フラグだと? って事ァ」  レッサー「私はあなたが好きって事です♪」【3】

6スレ目
一方通行「そンなフラグはヘシ折ってやる」  ヴェント「・・・・・・あ?」【1】
一方通行「そンなフラグはヘシ折ってやる」  ヴェント「・・・・・・あ?」【2】
一方通行「そンなフラグはヘシ折ってやる」  ヴェント「・・・・・・あ?」【3】

7スレ目
一方通行「いいか、フラグってのはなァ」 ガブリエル「vbhti素敵apfrgt」【1】
一方通行「いいか、フラグってのはなァ」 ガブリエル「vbhti素敵apfrgt」【2】
一方通行「いいか、フラグってのはなァ」 ガブリエル「vbhti素敵apfrgt」【3】

8スレ目
とあるフラグの天使同盟【1】
とあるフラグの天使同盟【2】
とあるフラグの天使同盟【3】

9スレ目
蛇足 とあるフラグの天使同盟

◆蛇足(続編)

1スレ目(9スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 壱匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 壱匹目【後編】

2スレ目(10スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目【中編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目【後編】

3スレ目(11スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 参匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 参匹目【後編】

4スレ目(12スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 肆匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 肆匹目【後編】

5スレ目(13スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 伍匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 伍匹目【中編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 伍匹目【後編】

6スレ目(14スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 陸匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 陸匹目【中編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 陸匹目【後編】

7スレ目(15スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 漆匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 漆匹目【中編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 漆匹目【後編】

8スレ目(16スレ目)
蛇足 とあるフラグの天使同盟 捌匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 捌匹目【中編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 捌匹目【後編】



【注意】

この蛇足(後日談)は【未完結】です。
あらかじめご了承ください。

3 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/25 07:57:35.58 AuEbIX6Lo 5/262




以下、留意点など。


・更新は基本的に三日以内です。時間帯は不安定。
・キャラ崩壊が起きています。ご注意ください。
・地の文と台本形式、両方でお送りします。
・誤字脱字のバーゲンセール。発見した方は厳しく指摘してやってください。
・書き溜めは多分尽きる事は恐らくないでしょう。

4 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/25 07:58:19.04 AuEbIX6Lo 6/262



                   【登場人物紹介・『天使同盟(アライアンス)』の構成員】


【一方通行(アクセラレータ)】


このSSの主人公。学園都市最強、超能力者(レベル5)第一位の『一方通行』の能力を持つ白髪の少年。
第三次世界大戦を経て大天使ミーシャ=クロイツェフに好意を抱かれてしまった哀れで幸せな男。
『第一九学区事件』後、ひょんな事から垣根帝督と衝突してしまうが、その事もあって一方通行は
他人(特に異性)との交流について真剣に考えるようになる。現在はフラグを立てた女性陣と真剣に
向き合い、自分という存在と方向を確立しようと奮闘している。


【ミーシャ=クロイツェフ】


『神の力(ガブリエル)』。本作のヒロインにして『天使同盟』の顔。水を司る本物の大天使。
第三次世界大戦で意思疎通をした一方通行に好意をよせ、以後は彼と共に人間界で生活する。
『第一九学区事件』で周囲の仲間達に救ってもらった後も学園都市に居座り自由奔放に暮らす。
現在、フィアンマと打ち止めを巻き込んで一方通行に贈る『サプライズ』を進行している。


【風斬氷華(ヒューズ=カザキリ)】


『天使同盟』に咲き誇る一輪の花。『天使同盟』内でも比較的常識を持ち合わせている健気な女の子。
油断をするとつい風斬がヒロインなのではないかと勘違いしてしまうほどヒロインをしている、はず。
『第一九学区事件』後も好意を寄せる一方通行相手になかなか積極的になれずにいるが、健気に彼を
遠くから見守っている。風斬氷華専用ルートが蛇足にて確定した。

5 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/25 07:59:10.20 AuEbIX6Lo 7/262




【エイワス】


「アレイスターを逆さまにぶら下げると『オロシテ!オロシテ!』と
 泣きわめく裏技を知って試してみたら 足がもげて地面に落下し、
 『ウオオオオオ』の断末魔とともに目玉が飛び出た。
 今まで生きてきて一番トラウマになった」



【垣根帝督】


学園都市第二位の超能力者(レベル5)、『未元物質(ダークマター)』の能力を持つ少年。
『第一九学区事件』で脳をひどく損傷し、能力と魔術が使用出来なくなってしまった。
現在はドレスの少女と共に過去に訪れた魔術サイドの地へ足を運び、能力と魔術を
取り戻す修行に専念している。一方通行同様、異性との向き合い方がわからないでいる。
一方通行との衝突の末、何の間違いか垣根帝督専用ルートが蛇足にて確定した。


【フィアンマ】


『天使同盟』最後の構成員。ローマ正教『神の右席』のリーダーを務めていた最上級魔術師。
様々な経緯を辿った末、『天使同盟』唯一の魔術師として加盟する事になった。
組織内でも比較的常識人ではあるが、それでもたまに意味不明のボケに走ってしまったりする。
現在はミーシャと打ち止めの協力を受けながら、とある『計画』を進行中なのだが…………。

6 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/25 08:01:12.40 AuEbIX6Lo 8/262



                    【閲覧可能エンドルート一覧】




・【風斬氷華育成計画 -AIM Simulation-】

・【兎追いしかの街 -Wonder land-】

・【闇喰らわぬもの祈るべからず -Saint-】

・【俺より強い奴に I need you -Advance-】 

・【???】 

・【第一位と第二位の垣根を越えて -Identity-】

・【ようこそ、全人類の皆様方 -Welcome to ALLIANCE-】

・【???】

・【???】

7 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/25 08:02:46.10 AuEbIX6Lo 9/262

テンプレはこんなもんかな……・
とりあえず最初のヤツはネタですのでご安心を。

新スレでもどうかよろしくお願いします。
例によって小ネタ投下しようかな……近い内に。

22 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:07:55.38 fXUaPzYRo 10/262


新スレへの書き込み、どうもありがとうございます。
前スレの埋め作業、感謝します。

とりあえず小ネタでもどうぞ。

23 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:08:29.86 fXUaPzYRo 11/262



―――【ファミレス】

ガブリエル「vjg来店lvt」ガチャ

店員「いらっしゃ…………あ、来たなスイッチ連打魔!」

ガブリエル「yivcds先手oycx必勝zodrwe」ダッ

店員「させるか!」タタタッ


          サッ


ガブリエル「feelt不覚oplu」チッ

店員「はあ……はあ……、スタッフ呼び出しスイッチは預からせてもらいます」ゴソゴソ

24 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:09:14.16 fXUaPzYRo 12/262


ガブリエル「cmor所望paqqm」

店員「はい、ご注文……の前に、これ、水をどうぞ」コトッ

ガブリエル「zfuxux」ゴキュゴキュ

店員「では改めて、ご注文承ります」

ガブリエル「……」ウーン

店員「またビーフハンバーグ定食ですか?」

ガブリエル「mcyc所望dxgp」

店員「あれ、今日は和風ハンバーグ定食ですか。 変えてきましたね」ピッ

25 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:09:41.08 fXUaPzYRo 13/262


ガブリエル「dxgpd」

店員「そんな訳ないじゃないですか……ハンバーグ以外に料理ありますよ。
   たまにはご飯系とかどうです? ていうかメニュー見ろっつーの」

ガブリエル「azif給水ixac」グビグビ

店員「勝手にお水飲まないでください。 いくらでもありますから」

ガブリエル「hkju至急enfw」

店員「はい、すぐにお持ちいたします。 今日は食器食べないでくださいね」

ガブリエル「kntjub……、wutia不本意iaan」

店員「コップもダメです。 では少々お待ちください」

26 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:10:26.05 fXUaPzYRo 14/262



~~~


店員「お待たせしました、和風ハンバーグ定食のお客さ……なにぃ!?」

ガブリエル「……」ピンポーン ピンポーン ピンポーン

店員「バカな、スイッチは確かに没収したはず……あ、あれ、無い!?」ゴソゴソ

ガブリエル「etp油断bu」ニヤリ…

店員「いつの間に……、てぇい!」シャッ


             バッキャーン

27 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:11:20.88 fXUaPzYRo 15/262


ガブリエル「!?」

店員「ふふふ、壊れてしまっては押せまい……」

ガブリエル「bms油断znfp」

店員「お待たせしました、和風ハンバーグ定食でございます。
   こちら鉄板が大変熱くなっておりますので……以下略」

ガブリエル「hwpr食waw」ガシッ

店員「出た……鉄板掴んで豪快に食べるっていう……相変わらずですね」

ガブリエル「yew美味skw」ムシャムシャ

28 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:12:13.21 fXUaPzYRo 16/262


店員「前ここで働いてた先輩に聞いたんですけど、夏にあなたと同じように
   そうやって鉄板持って食べてた学生がいたらしいですよ」

ガブリエル「fbsndcrur」フーン

店員「ふう……」ポスッ

ガブリエル「?」

店員「え? どうして仕事もせず隣に座るのかって?
   ちょうど今から私も休憩なんですよ」

店員「はあ……あと数日で新年だっていうのに、お客さん多いなあ」

29 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:13:29.73 fXUaPzYRo 17/262


ガブリエル「yhtffzw」

店員「あはは……ありがとうございます。 年末くらいゆっくりしたかった
   んですけど、人手が足りないらしくて、私も出勤させられてるんです」

店員「ついこの間給料上げてもらったんですけど……でもやってられませんよ」ハァ

店員「学園都市のバイトなんて対象が学生ばっかりだから、貰える給料なんて
   タカが知れてるんですよね。 学費減免があるからって……」

ガブリエル「zigfst苦労uwtc」ガツガツ

店員「それでも可愛い制服着れるからって事で働いてるんですけど……正直どう
   思います? ここの制服のセンス、何か方向おかしくないですか?」

ガブリエル「?」

30 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:14:16.00 fXUaPzYRo 18/262


店員「いやウェイトレスだからっていうのはまぁ理解に難しくないんですけど……
   やや露出し過ぎてる感あると思いません? 集客効果も兼ねてるんでしょうけど、
   半分くらいは店の趣味に走ってる気がしないでもないんですよね」

ガブリエル「pbs素敵dbib」

店員「え? そ、そうですか……? あ、ありがとうございます……///」テレテレ

店員「そういえばお客さん、今日は服着てないんですね。
   お客さんに『今日は服着てないんですね』って言うのも
   相当に凄まじいものがありますけど……」

ガブリエル「rwsjtebbh」

店員「あははは、クールビズって……使い方と時期間違えてますって。
   もうすぐ一二月終わるのにそんな格好じゃ風邪引きますよ?」

31 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:15:14.37 fXUaPzYRo 19/262


ガブリエル「wgz平気mib」

ガブリエル「gyz便乗wb」

店員「いや私は結構ですけど……私がここで全裸になったら何事かと思われるじゃないですか」

店員「学園都市でそんな自由に振舞ってるの、多分あなたくらいのものですよ。
   少し解放感溢れすぎてる感じは否めませんけど……ちょっと羨ましいかな」

ガブリエル「ywy天使tmxx」

店員「あー、天使だから……なるほど。 って、天使だから全裸でいいって理由も
   通るかどうか疑問ですけど。 っていうかお客さん、天使なんですか?」

ガブリエル「hes正答uzst」コクン

32 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:16:26.51 fXUaPzYRo 20/262


店員「ふーん……まぁ、こう言ったら失礼ですけど、人間って感じじゃないですもんね。
   あなたがあの白い人と初めてきた時からさりげなくそう思ってましたけど」

ガブリエル「haj秘密pbg」

店員「ふふ、誰にも言いませんよ。 秘密を知るのは好きですけれど、
   喋る趣味はないですから。 でも……そうですか、天使ですか」

ガブリエル「xeitjbjzu」

店員「んん……信じるっていうか、そう言われた方が納得出来るかな?
   だってあなたが『私は人間です』って言っても説得力に欠けますし」クスッ

ガブリエル「」ガクガクガク

店員「あははは、笑うところじゃないですよー。 自虐ネタじゃないですか」アハハ

33 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:17:34.59 fXUaPzYRo 21/262



「すみませーん、七番テーブルお願いしまーす」


店員「お断りしまーす」

店員「あなた、いつも一人でいらっしゃいますけど、あの白い人と
   来てくれたりしないんですか? また会いたいんですけど」

ガブリエル「……」

店員「なぜ沈黙で返す……。 あぁ、でもそういえば」

ガブリエル「?」

34 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:18:10.56 fXUaPzYRo 22/262


店員「こうやって会話出来るようになるまで大変でしたねー。
   なんていうかこう……コツを掴むまで苦労したというか」

ガブリエル「affni賜物kapyt」

店員「そうですね、努力はしますよそりゃ。 接客業である以上、
   お客さんとのコミュニケーションは欠かせませんからね」

ガブリエル「dunauk」ゲェップ

店員「はい、お粗末様でした。 私が調理してる訳じゃないですけど」

ガブリエル「az会計dt」

店員「九八〇円です。 あれ、今日はデザートいかないんですか?」

35 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:19:18.10 fXUaPzYRo 23/262


ガブリエル「atmcgfuw」

店員「クリスマスパーティで余ったケーキがまだ三ホールある?
   うわぁ……それ食べても大丈夫なんですか? 大丈夫か……」

ガブリエル「befh支払yme」

店員「お支払いはもちろん……?」

ガブリエル「ggwyz」テッテテー

店員「出ました、ブラックカード! セレブだなぁ……。
   ていうかこのカードで支払い出来るこの店もこの店ですけど」

36 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:19:57.63 fXUaPzYRo 24/262


ガブリエル「jtxu感謝cdjfu」ガチャ

店員「ありがとうございましたー、またのお越しを……、あ!」

ガブリエル「?」

店員「よいお年を!」

ガブリエル「よいお年を」

店員「……」

店員「ごく稀に普通に喋るんだよなぁ、あの子」

店長「ね、ねえ……お前なんでアレと会話出来てんの……?」

37 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/26 20:21:31.05 fXUaPzYRo 25/262


たまにはこんなごくフツーの、何でもない話もありですよね?

それではまた明日、新スレでの投下までお待ちください。
ありがとうございました!

40 : VIPに... - 2012/06/26 20:42:04.23 FAJd5Hn/o 26/262

店員さんマジパネェっす
フィアンマ以外の天使同盟より会話できてるんジャマイカ

43 : VIPに... - 2012/06/26 21:58:31.87 V8sVJwdDO 27/262

まさか、そういう超能力が発現したんじゃね?
原石って周囲の環境で発現するし。

52 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:08:59.87 QnTOMdT2o 28/262

>>43
それ面白いですね。ただ天使と会話が出来るって能力は
科学サイドではあまり価値がない気がしますけど……魔術サイドに移転させましょうか。

皆様こんばんわ。今日も更新をしていきたいと思います。

今回から一端覧祭六日目後半部に入ります。
『御使堕し(改)』のゴタゴタも終わり、ようやく日常を取り戻した
一方通行に待ち受ける展開とは……的な。

前回、フィアンマが一方通行に事情を説明したところの続きから始まります。

それでは、よろしくお願いします!

53 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:09:34.83 QnTOMdT2o 29/262



――――――――――――――――――――――


事の経緯を説明し終えた瞬間、フィアンマの顎に一方通行のアッパーカット(ベクトル込み)が
炸裂した事は言うまでもないというか、心中察すると言うべきであろう。


「お、お前……顎が消し飛ぶところだったぞ」

「この世から消し飛べ。 『神の右席』……やっぱリーダーだった
 オマエはぶっ飛ンだ思想をお持ちのよォで。 ふざけンなよマジで」


一方通行は握った拳をわなわなと震わせながら、彼が及んだ行為に憤っている。
学園都市のほぼ全住人がミーシャ化し、サーシャの魂を巻き添えにして魂の交換を
行ったと聞けば、それは確かに憤ってもおかしくはないのだが。

54 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:10:32.15 QnTOMdT2o 30/262



『第一の私見ですが一方通行。 まあそんなに彼を責めないでください。
 魂のトレードについては私も承諾した上での事ですし、その……ミーシャ化?
 という現象の意味はわかりませんが、それも無事に解決したのですから』

「トレードって、魂をトレーディングカードみたいな扱いすンなよ!
 オマエのリアルの魂だぞ? しかしこンな……ビン詰めって、なァ」

『第二の私見ですが、私もまさか魂の行き着く先がビンの中とは思いませんでした』

「魂ってこンなンなのかよ。 よくあるイメージの……霊魂? 人魂?
 おどろおどろしい感じではないンだな。 実体のねェ宝石みてェだ」


ビンの中身をジっと見つめながら、一方通行は感心しているのか呆れているのか
曖昧な事を言った。その隣でミーシャも一緒にサーシャの魂を覗き見ている。
フィアンマは顎を摩りながら立ち上がり、大きくため息をついた。

55 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:11:13.63 QnTOMdT2o 31/262



「こんなところだろう。 一方通行、俺様がお前に説明しなければならん事柄は」

「いや、まだ肝心の部分を俺は聞いちゃいねェだろ」

「?」

「三つ、まだ聞きてェ事があるンだが……。 なンで俺とオマエはミーシャ化現象を
 逃れる事が出来た? あァ、オマエの話を加味するとあのクソ無能力者もだったか」

「知らんよ」


フィアンマは一言で切り捨てた。

56 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:12:33.03 QnTOMdT2o 32/262



「……あえて考察するなら、俺様やお前が受けた謎の光。 あれが『選別』の
 意味を持っていたと考えられる。 あの光で胸を貫かれた人間は現象から
 逃れる事が出来るのだろう。 だがそれでも何故俺様とお前なのかは知らんが。
 っと、それと垣根帝督も同じ目に遭ったという報告をし忘れていたか」

「なら二つ目の質問だ。 ミーシャ化した人間、あるいは人外の一部が奇行に
 走った原因はなンだ? クソ無能力者もそォだったよォに、俺も特定の女に
 突然ガブリエルの如く抱きつかれた。 あの奇行には何の意味があったンだ」

「それもやはり、俺様は知らん。 現象を逃れた人間が特定の女の奇行を
 味わうという線は、残念ながら否定される。 俺様の下にはそのような
 女は一切現れなかったからな。 俺様が術者だったから……かも知れんが」

57 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:13:35.55 QnTOMdT2o 33/262


「不明瞭な返答ばかりだな、術者のクセに何もわかっちゃいねェ」

「今日誕生した大魔術だからな。 どのような効力を持つか詳しく検証する
 時間もない。 文句は言われて当然だが、俺様が言えるのはそれだけだよ」


ちっ、と一方通行は露骨に舌打ちをし、最後の質問を口にした。


「オマエ……つか、オマエらはなンのためにこンな魔術を発動しやがったンだ」

「当然の疑問だが、そんなもん俺様が聞きたいくらいだ。 いや、この『計画』に
 俺様も事情を知った上で一枚噛んでいるのは事実だが、それでも俺様が聞きたい
 くらいだと言いたい。 その答えは、そこの少女化した大天使様にでも聞け」

58 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:14:31.65 QnTOMdT2o 34/262


「『計画』……?」

「然り、『計画』」


変わって、ミーシャ=クロイツェフが言った。外見はまんまサーシャなので、
これがミーシャが喋っているという事に一方通行は違和感を拭えなかった。
ノイズまみれの意味不明言語がもはや当然となっていた上に、その言語を
彼はついさっきまで浴びるように聞いていたのだ。

サーシャの声を借りて普通の言語を扱えるようになったミーシャは続ける。


「私は貴方へ―――いわゆるプレゼントを贈りたいと願い、今回の計画を実行するに至った」

「プレゼントだァ?」

59 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:15:05.34 QnTOMdT2o 35/262


「そう、これまでの感謝の気持ちを、恩を、少しでも伝えたいと思った」

「……で、結果がこれじゃあ俺も素直にや喜べねェンだけどな。 確かに
 サプライズとしては成功してる、事実、俺はこれまで味わったモンとは
 まるで別種の絶望を味わったからな。 喜べねェっつか、ふざけンなだ」

「サプライズとしては、この俺様にすら成功してると言えるがな」


フィアンマの言葉に一方通行は眉をひそめる。


「そりゃどォいう意味だ? このサプライズにはオマエも加担してンだろォが」

「ミーシャ=クロイツェフがお前に贈ろうとしているサプライズは、
 学園都市の住人をミーシャ化してお前を驚かす事ではないんだよ」

60 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:15:52.02 QnTOMdT2o 36/262


「何?」

「あんなもんは、本来の目的を成就するための付随物に過ぎんかったのだ。
 しかも俺様はおろか、ミーシャ本人にとっても予想外のハプニングだ」

「その事実がまたサプライズになってンぞ! あの地獄絵図が前座だと!?」


学園都市ミーシャ化現象がただのハプニングに過ぎず、本命はまだ残されている。
その事実を知り、一方通行は愕然とした。あれを超える素敵なサプライズがこれから
自分に襲いかかる―――否、贈られるという。

61 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:16:26.58 QnTOMdT2o 37/262



「丁重にお断りさせていただきますゥ」

「もう遅い。 貴方へのサプライズ贈呈はカウントダウンを始めている」

「なンでサプライズなのにそンな死の宣告みてェな言い方になるンだ!?
 普通こォいうのは受け取る側はワクワクするモンだろ? 不安しかねェよ!」

「貴方へ捧げるサプライズは、まだ『到着』までに時間がかかる。
 胸を踊らせながら刻一刻と近づくXデーを待っているがいい……」

「怖いよォォォォ! なンだ、チョップで地球割っちゃいますとかか?
 ……そォいや聞き忘れたが、そのサプライズの具体的な内容は何だ?」

「ナ・イ・ショ」

「……」

62 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:17:24.79 QnTOMdT2o 38/262



これで外見があのミーシャ=クロイツェフだったら『キモい』のツッコミで
片付いていたが、今のミーシャは外見だけはサーシャ=クロイツェフなのだ。
そのミーシャが人差し指を唇に当てて、くりっとした瞳でウインクをすれば、
受けたのがワシリーサならキュン死していただろう。

問い詰めればあるいは答えてくれるのかもしれないが、そんな気にはなれなかった。


「クソが、分かったよ。 部屋の隅でガタガタ震えながらその時を待っててやる」

「感謝する」

「ぐ……」

63 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:19:19.42 QnTOMdT2o 39/262



いつものようにミーシャは一方通行の華奢な肢体に抱きつく。本来の流れなら
ここで一方通行が辛辣に跳ね除けるのだが、今のミーシャはサーシャだ。
彼は対処の仕方を散々迷った挙句、抱きつくミーシャをそのまま放置した。
今のミーシャならサバ折りを食らう危険性はあまり無いが、何せ見た目が可憐な少女だ。
突き飛ばすのはさすがの一方通行も躊躇ってしまうらしい。


「……問一。 何時もの如く、私を突き飛ばさないのか」

「いや……」

『第三の私見ですが、その、ミーシャ……私の体でそういう事をするのは控えてほしいのですが』

「問ニ。 何故だ?」

64 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:20:00.41 QnTOMdT2o 40/262


『第一の解答ですが、だってそれ、絵面で言えば私が一方通行に抱きついてるも同然ですし……』

「……」


瞬間、サーシャは確かに見た。見逃さなかった。

一方通行に抱きついたまま首だけ動かしてサーシャに顔を向け、にやり……と口角を歪めた瞬間を。


「貴方」

「う……」


あろうことか、増長したのかミーシャは一方通行の薄い胸板に顔をなすりつけ始めた。
天使の器の時の、身長二メートルを超えていた頃のミーシャでは出来なかった行為。
サーシャの身長は一方通行より若干低いため、それが可能となった。

65 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:21:01.51 QnTOMdT2o 41/262



『おいテメ……ミーシャ=クロイツェフ。 やめろと私は言いましたが』

「この肉体で接する事によって、彼の中に残っていた私に対する抵抗感が
 払拭されたと解釈した。 彼との絆を深めるためにこの肉体は必要不可欠
 であると考えられる。 サーシャ=クロイツェフ、申し訳ないが…………」

『いやいやふざけないでくださいよ!? ふぃ、フィアンマ! フィアンマ!』

「何だ……」

『第一の質問ですが「御使堕し(改)」はもう全ての過程を終えたのでしょう?
 だったらこれ以上ミーシャに私の体を器として利用させる必要性はありません。
 早いところ魂の再入れ替えをしてほしいのですが、お願いできますか?』

66 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:22:12.32 QnTOMdT2o 42/262



サーシャのお願いに、フィアンマは一方通行には聞こえないよう声を潜めて返した。


「いや、お前の肉体にミーシャを宿している内に俺様が『星の欠片』に干渉し、
 ミーシャの顕現を安定させなければならん。 それに……」

『……それに?』

「その後の事を考えておらんかった。 お前の魂を元の器に戻すにはどうしたらいいんだ?」

『嘘でしょう……』


とにかく一度『天使同盟』のアジトであるアパートに帰る事となった。
その道中、ミーシャは一瞬たりとも一方通行から離れることはなく、
それに対し捲くし立てるサーシャをフィアンマがビンを振ることで黙らせた。

67 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:22:57.84 QnTOMdT2o 43/262



――――――――――――――――――――――


「おや、あなたは確か以前私を未確認生物扱いした白い髪の子ですねー?」

「……」


アパートに帰ってきた一方通行を一番に迎えたのは、その外見から容易に想像出来る
甘ったるい声色で、しかし実はこの中の誰よりも年上である月詠小萌先生だった。


「…………なンで『二五〇年法』の被験体がここに居やがるンだ?」

「えと、先生、火野ちゃんにここで待機するよう言われたのですが」

68 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:23:45.64 QnTOMdT2o 44/262


「フィアンマくゥン」

「月詠、お前も無事に元に戻ったか。 重畳重畳。 さて、俺様は寝る」

「永眠しとくか?」


逃げるように部屋の奥へ引っ込もうとするフィアンマの足を引っ掛けて転ばし、
一方通行は電極のスイッチを切り替えて彼の体に馬乗りになった。
火野ちゃんもそれに対抗しようと『聖なる右』を現出させようと試みるが、
これがまた絶妙なタイミングで―――第三の腕は『本日終了』だった。


「俺の認識が甘かったよォだな。 風斬を除けば、オマエが『天使同盟』の中で
 一番の常識人だと思ってたンだが―――そのやンちゃっぷり、どこで習った?」

69 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:25:10.19 QnTOMdT2o 45/262


「一つ愉快な話を教えてやろう我らがリーダー。 昔、俺様が所属していた
 『神の右席』には月詠にそっくりの魔術師がいたんだ。 いや、もちろん外見が
 そっくりという訳ではないぞ。 口調が似ていてな。 その魔術師は左方のテッラ
 という名なのだが、残念ながらそいつは不慮の事故で他界していてな。 俺様も
 深く悲しんだものだ(棒)。 だがこの科学の総本山に、テッラの面影を残す女がいる
 じゃないか。 俺様は自然と月詠に親近感を覚え、仲を深めようと考えたんだ」

「そォか。 じゃオマエもそのテッラと同じとこ逝っとこォぜ」

「使用している漢字が物騒なそれになっているぞ……」

「説明しろ」

「御意」

70 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:26:24.49 QnTOMdT2o 46/262



ベクトルを操作され(火球術式も上手く発動できなくなっていた)為す術もないフィアンマは
一方通行にマウントポジションを取られたまま諦めたように小萌先生との出会いから現在までを
ダイジェスト形式で説明した。


「ちっ、また一人"事情"を知っちまった人間が増えたか……」

「今更『天使同盟』の存在を明かす事に頭を抱える必要もあるまい?」

「このチビガキに全てを説明しなくても、その大魔術の発動も含めて
 適当にごまかせるくらいの技量はあンだろォがオマエには」

71 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:27:12.25 QnTOMdT2o 47/262


「わからん。 俺様にも理解し難いが、とにかく月詠には全てを知っておいて
 もらおうと当時は思ったんだ。 それに、いちいちごまかすよりも全てを
 話した方がスムーズに進行出来るだろう。 変に誤解されても面倒だしな」

「……ふン」


彼の言う事にも一理あると考えた一方通行は渋々フィアンマを解放した。
よほど疲労していたのだろう、彼は弱々しく立ち上がると、普段色んな人間が
利用しているベッドに倒れこむように転がり、そのまま泥のように眠った。


「あの、何だかよくわかりませんが火野ちゃんを責めないであげてほしいのですよ。
 先生、『天使同盟』の事は誰にも口外したりしませんし、結果論になっちゃいますが
 ミーシャちゃんもこうして無事に戻ってきたのですから、これで万事解決なのですー」

72 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:27:48.07 QnTOMdT2o 48/262


「もォイイその話は。 家ぶっ壊されてちゃ仕方ねェしな。 あのアパートは
 多分誰かが―――他の部屋主が通報でもして修理にかかるンだろォが……、
 オマエ、それまでここで暮らすつもりか? もっと安全な場所を用意出来るが」

「とりあえず今日はここに泊まらせてほしいのですよー。 明日、何人かの
 知人に掛け合って、許可を得られたらそこでしばらく寝泊まりするので」

「そォかよ。 ま、適当に寛いどけ」

「時に貴方」


と、縁日に掬ってきた金魚を水槽に入れて眺めるかのように、サーシャ入りのビンを
ジーッと観察していたミーシャ=クロイツェフが口を開いた。

73 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:28:49.24 QnTOMdT2o 49/262



「風斬氷華やその他がこの部屋に帰還していないようだが」

「オマエにとってヴェントや麦野達はその他程度の存在なのかよ」


一方通行は―――ある意味ミーシャが原因と言っていい第七学区での
戦闘を思い出し、表情は歪めながら事情を説明した。説明、というか
一言で済ませただけだが。


「パクられちまったよ」

「問一。 パクられちまったとはどういう意味を有する言葉なんだ?」

74 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:29:52.31 QnTOMdT2o 50/262


「オマエの語彙力は変に極端だよな……。 アレだ、連行された。
 揃いも揃って第七学区で暴れて、風斬も、キャーリサも、ヴェントも、
 麦野も、絹旗も、多分全員警備員にしょっぴかれちまった」

「左様か。 ではこれから皆の救出に向かう意向をここに示す」

「余計ややこしくなるからやめとけ。 警備員にゃ黄泉川もいたし、
 適当に釈放してくれるだろ。 王女が連行されたのはマズいが……」


あとで黄泉川に連絡を入れておいた方がいいかもしれない、と一方通行は
深くため息をついてソファへ乱暴に座り込んだ。

75 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:30:38.43 QnTOMdT2o 51/262



「うーん、それにしても魂というものはこんなに綺麗なものだったのですねー……。
 これを持ってって学会に発表したらなんか賞がもらえるかもしれないのです」

『第一の質問ですが、私の魂を公に発表し、しかしどうやってビンの中の私を
 人間の魂だと証明するのですか? 補足説明しますと、別の人間の肉体を用意して
 私の魂をそこに入れて証明するという手もありますが、そうすると魂入れ替わりの
 連鎖が始まってしまいますので、……残念ですが結局証明は成り立ちませんね』

「このビンの蓋を開けたらアウトなのですかー?」

『第一の解答ですが、ビンの開封及びビンそのものの破損は当然ながらアウトです。
 補足説明しますと、このビンには結界術式が施されています。 恐らくフィアンマが
 即席でかけた術式なのでしょうが、通常の結界術式とはずいぶん作りが違いますし、
 即席であるためビンそのものの強化までには至っていません。 ビンの開封及び破損は
 術式解除に繋がる。 そうなれば私の魂を始発点にイス取りゲームが始まってしまうのです』

76 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:31:39.17 QnTOMdT2o 52/262



通常の結界術式と作りが大きく異なるのは、術式をかけたフィアンマが
『神の右席』仕様の体質である魔術師だからだろう。彼は基本的に既存の
魔術は使用できない体になっている。

それでも即興で施した程度の結界で魂という不明瞭なものをビンに封じる手際の良さは、
さすが右方のフィアンマと言える。ビンを開封するか、破損でもしない限り、
サーシャの魂が勝手に誰かを器として憑依するという事態は起こらない。


「って事ァ、オマエはしばらくそのビンの中で過ごさなきゃならねェのか」

『第二の解答ですがその通りです。 ……魂を交換した事を後悔はしませんが、
 それでもやはり暇でしょうがないという気持ちは生じてしまいますね。
 どういう仕組みなのか、視界は確保できているので人間の時とはまた違った
 景色を眺める事ができる新鮮さが、若干退屈を和らげてくれますが……』

77 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:32:26.60 QnTOMdT2o 53/262


「今のオマエは俺達が巨人に見えるンだろ?」

『第三の解答ですが、トイストーリーの玩具はこのような視点で世界を見ているのですね』

「魔術師なら妖精か何かで例えろよ……」


その後、一方通行、ミーシャ、小萌先生の三人はサーシャの魂が入ったビンの存在を
できる限り秘匿しておく事を決めた。『天使同盟』とその関係者には事情を話すが、
例えばサーシャの事が一般人の耳に届き、何らかの形で悪用されたら面倒だという
一方通行の提案だった。


「はい、出来たのですよー」

「こいつは俺が預っておく。 ここならうっかり落とすって事もねェだろ」

78 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:33:08.20 QnTOMdT2o 54/262



小萌先生にビンを紐でくくってもらい、一方通行はペンダントのように
紐を首に引っ掛けて、サーシャの魂入りビンを胸元にぶら下げた。


『だ、男性の胸元に密着し続けるというのもその……何やらアレですね』

「ビン越しだから問題ねェだろ?」

『第四の解答ですが、問題ありません。 ただあまり飛んだり跳ねたりは
 しないでほしいですね。 また魂酔いしてしまうと気持ち悪いので……』

「魂酔いなんてレアな体験、むしろ進ンで味わっておくべきじゃねェか?」

79 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:33:50.19 QnTOMdT2o 55/262


『とんでもないです。 あなた達は魂の状態でビン詰めにされて、
 それをシェイクされる経験を得ていないからそんな事が言えるんですよ。
 いやあ、千年パズルってこんな視点で世界を見ているのですね』

「魔術師なら霊装か何かで例えろよ……」


まあ千年アイテムもある意味霊装のようなものなのだが。


しばし休息をとった三人―――いや四人。次の展開を切り出したのはミーシャ=クロイツェフだった。


「私見一。 もうすぐ夕方に差し掛かるが、街を散歩したい」

80 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:35:06.23 QnTOMdT2o 56/262


「どォした急に」

「"会っておかなければならない人間がいる"。 それと、せっかく堂々と
 人前に出られる肉体をサーシャ=クロイツェフのおかげで手に入れたのだ、
 この機会に改めて学園都市を回ってみたいという気持ちが生じたのだが」

『ちょ……第二の解答ですが、人前に堂々と出られる格好じゃないですよそれ!
 いや私で私を否定するのも悲しすぎますが、せめて……そう、この部屋にある
 適当な衣服を借りてから出掛けてください。 もちろん、私も同行します』

「解答一。 その点に関しては先ほども同義的な発言をしたが、問題ない。
 サーシャ=クロイツェフの可憐さは衣服の違和感を無効化させる威力を持つ」

『いや……わ、私、そんなに可愛くないですよ……』

「何を言っているのですか、ミーシャちゃんはとっても可愛いのです!」

『いえ、月詠小萌。 確かに彼女はミーシャ=クロイツェフですが、
 体はこの私サーシャ=クロイツェフですので、お間違えのないよう』

81 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:36:02.58 QnTOMdT2o 57/262


「つか胸元でオマエに喋られると、まるで俺が喋ってるみてェに見えるなこれ」

『第一の私見ですが、なら私があなたの口調を真似て発言すれば問題ねェンじゃねェですか?』

「不愉快な上にどっかのチビガキとキャラ被るからやめろ」


という訳で、一方通行達は外出する事に決めた。小萌先生は晩ご飯の用意を
するとの事で部屋に残るようだ。自宅が消滅したばかりだというのにこの
適応力は流石としか言いようがない。


「風斬……つってもわかンねェか。 とりあえず"それらしい"女共が
 ここに帰ってきたら、適当に出迎えてやってくれると助かる」

「あいあいー、任されたのですー」


一方通行はミーシャ化現象が終わり、ようやく腰を落ち着けて考える事が
できるようになった暗部についての案件を頭の片隅に置きつつ、街へ赴いた。

82 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:40:10.68 QnTOMdT2o 58/262


風斬が常識人といいますが、彼女も結構ムチャクチャやってますよねえ……。
やっぱこいつらの中に常識人なんていないんだろうな……そりゃそうですけど。

という訳で今回の更新は以上でございます。

そして次回から一端覧祭六日目後半部の主な話に触れていきます。
そろそろあの話を回収したいので、それを六日目を使うことにしました。
肉体を手に入れたミーシャが気付いた一方通行の心とは……といった感じです。

そしてあの姉妹にも展開の変化が訪れたようです。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

83 : 次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/27 21:40:36.89 QnTOMdT2o 59/262




                          【次回予告】



「うおお……"気持ち悪"。 ミサカ好みの気持ち悪さだねこれ」
『妹達(シスターズ)』第三次製造計画(サードシーズン)で作られた御坂美琴のクローン――――――番外個体(ミサカワースト)




「それでは、オペレーション『勧誘取引(ネゴシエート)』を開始する!
 ってミサカはミサカはこの前やったゲームのセリフを真似てみたり!」
『妹達』の司令塔――――――打ち止め(ラストオーダー)




「人間誰しも心に『闇』を抱えているが、貴方の『闇』はよくない。
 私が堕天した際に衝突した貴方の『闇』が神の領域ならば、今の貴方が
 抱えている『闇』は路地裏のシミのようなもの、だろうか」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・サーシャの肉体に宿った『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ




「喋れるよォになったらなったで問題があるなオマエは。 オマエの
 言いたい事が全部伝わっちまうから、耳を塞ぐ事も出来やしねェ」
『天使同盟』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




94 : VIPに... - 2012/06/29 21:27:17.71 cRxN8VIno 60/262

そういえば遊戯王もオシリスとかラ-とかホルスがいたな

97 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:09:41.42 O2RAjw9Mo 61/262

>>94
その辺の有名なのは色んな作品で出ていますよね
ベタだけど嫌いじゃないわ

皆様こんばんわ。今日はゴールデンタイムでの更新です。
今日私が某ゴールデンゲームをクリアした事とは関係ありません。

今回は外出した一方通行達の話と、久々登場打ち止めサイドのお話。
そしてあの『御使堕し(改)』で馬鹿やったメス共の話をちょっと。

それでは、よろしくお願いします!

98 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:10:10.19 O2RAjw9Mo 62/262



――――――――――――――――――――――


外へ出た一向。ミーシャは思いっきり体を伸ばして大きく深呼吸をした。


「私見一。 うん、これが人間界の空気というものか、美味しい」

「そォいうセリフは普通森の中とかで言うモンだけどな。
 こンな薄汚ねェ空気が蔓延してるクソみてェな街じゃなくてよ」

「空気がまいうー」

「オマエそォいうのどこで覚えてくンの?」

99 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:10:43.13 O2RAjw9Mo 63/262



首を忙しなく動かし、物珍しげに学園都市を見回すミーシャ。
彼女が学園都市に来てからもうすぐ二ヶ月。物珍しさなどとうに
薄れているはずだが、人間の体を通して見る景色はまたひと味違うのだろうか。


「私見ニ。 気のせいか、周囲の視線が私に集中している気配を感じる」

『ほら……だから言ったじゃないですか。 そんな格好で出歩くから
 視線を集めてしまうんですよ。 以前、「天使の涙」の件で私も
 学園都市に赴きましたが、あの時は夜だった上に隠密行動でしたから
 目立ちませんでしたけど、今はまだ夕方前ですし……』

「しかし周囲から視線を浴びるという感覚を、私は以前の体でも充分に
 味わっているためさして気にならない。 さらに今なら例え誰かに
 声をかけられても人間言語で対応する事が出来る故、以前の体と比較すると
 この体は利便性が極めて高いと結論づける事が出来る。 喜ばしい限りである」

100 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:12:29.58 O2RAjw9Mo 64/262


『第一の質問ですが、その体……ちゃんと返してくれますよね?』

「……解答一。 案ずるなサーシャ=クロイツェフ。 この学園都市はその他の
 世界より科学技術が数十倍も進歩している。 貴女の体はクローン技術で――」

『……、? どうしました、急に黙って』

「いや、何でもない。 この冗談は何故か不謹慎極まりないものである気がするため、打ち切る」

『はあ……』

「なンの話してンだオマエら?」


ミーシャはなぜか一瞬湧き上がった身に覚えのない感情に首を傾げつつ、
一方通行の方を向いて話題を変えた。

101 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:12:59.37 O2RAjw9Mo 65/262



「問一」

「ンだよ。 つかどこに行くンだこれから」

「貴方は―――今度は何をその胸に抱えている?」

「?」


出し抜けにそんな事を聞かれた一方通行は、本当にミーシャが何を聞きたいのか
理解できず、困ったように眉をひそめた。

102 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:13:28.13 O2RAjw9Mo 66/262



「何の話だ」

「私見三。 ……勝手な真似だと反省した上で聞くが、先程貴方の胸に
 『耳を傾けた』時、貴方の胸―――心に、ひどく重い『闇』を感じた。
 私は心を"聴く"ことが出来る。 そういう者、存在だから」

「……、」


ミーシャ―――『神の力(ガブリエル)』は"伝達の御使"でもある、とどこかで聞いたのを
一方通行は思い出した。小萌先生のアパートの前で彼に抱きついたミーシャだが、ただ甘えたくて
抱きついた訳ではなかったらしい。

いや、甘えたいという気持ちもあっただろう。というかそれが八割くらいかもしれない。
だがその時、ついでに彼が今悩みを抱えてないかな、程度の気持ちで彼の心情を探ってみたところ、
彼の心に『闇』を感じた。だから言及してみた、というのが正解だろうか。

103 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:14:39.95 O2RAjw9Mo 67/262



「サーシャ=クロイツェフの肉体を器としている今の私では情報伝播能力が
 著しく低下しているが、それでもあれだけ『心』と密着すれば容易に対象の
 心情を読み取れる。 今の貴方の心にはわずかに、塵のように残っていた
 『闇』の残滓が、突発的に増幅している痕跡が読み取れた。 ……また何か、
 懸念事項を抱えていると推測できる。 何があったのか、教えて欲しい」

「……勝手に人様の心を覗き見てンじゃねェぞ」

「謝罪なら後にいくらでも。 しかし貴方、貴方のその『闇』はいけない。
 人間誰しも心に『闇』を抱えているが、貴方の『闇』はよくない」


その『闇』の、具体的になにが良くないのかを形容するための言葉が見つからないのか、
ミーシャの言葉は歯切れが悪かった。

104 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:15:10.18 O2RAjw9Mo 68/262


そして一方通行は分かっていた。ミーシャが指摘するその『闇』を何と言い表せばいいのか、
彼は反吐が出る程よくわかっていた。


「私見四。 私が堕天した際に衝突した貴方の『闇』が神の領域ならば、
 今の貴方が抱えている『闇』は路地裏のシミのようなもの、だろうか」


言い得て妙だ、と一方通行は思いはしたが口には出さなかった。
ミーシャが言った前者の『闇』は、恐らく『第一九学区事件』で悪魔と化した彼女が
襲われた、あえて名を呼称するなら『セト』と呼ばれる神の、その象徴の事だろう。

そして後者は、ミーシャはその正体を知らないが、路地裏のシミというイメージは概ね正解である。
だからこそ一方通行は―――

105 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:16:44.65 O2RAjw9Mo 69/262



「なンでもねェよ」

「私見五。 何でもない訳がない。 貴方が私に対して、否、その他全ての人間に
 対して何かをひた隠しにしようとしている心の流れを感じる。 ……外出という
 口実を利用して外へ出たのも、月詠小萌の前でこのような話をするべきではない
 と判断したためだ。 貴方の問題は、つまり私の問題でもあるから―――」

「違うな」

「?」


一方通行は歩みを止めて、うんざりとした調子で息を吐きミーシャの言葉を遮った。

106 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:17:28.39 O2RAjw9Mo 70/262



「喋れるよォになったらなったで問題があるなオマエは。 オマエの言いたい事が
 全部伝わっちまうから、耳を塞ぐ事も出来やしねェ。 ……イイか、確かに俺は
 今、とある懸念事項を抱えてる。 どォせごまかせはしねェだろォから、そこは
 ハッキリ吐いちまうよ。 だがな、今回の件に『天使同盟』は一切関係ねェ」

「……」

「『天使同盟』じゃなく、俺個人の問題だ。 一方通行っつゥ俺が抱える問題は
 オマエが抱える問題じゃねェンだよ。 『天使同盟』絡みならともかくとしてな。
 そして問題っつっても、楽勝だ。 こンなモン、『天使同盟』と比較にもならねェ
 くらい簡単な問題なンだよ。 だからオマエが干渉する必要はねェ、わかったか?」


そんなはずがない、とミーシャは思った。

107 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:18:00.76 O2RAjw9Mo 71/262


『天使同盟』がこれまでに立ち会った問題と比べると、それは確かに簡単なもの
なのかもしれない。だがそれでも、その『闇』は一方通行個人で解決できるような
それではないとミーシャは断言できた。


巻き込みたくないのだろう。今までも巻き込みたくないとは思えど結局巻き込んでしまった例も、
その逆の例もあったが、今回ばかりは本当の本当に―――誰も関わらせたくないのだろう。
しかしそれでも、ミーシャは彼を放っておく事は出来なかった。


「……」


放ってはおけないが、しかしここから更に言及しても彼が全てを話してくれるとも、
ミーシャには思えなかった。それどころか口論に発展し、彼の心を不必要に乱して
しまう危険性すらあった。ミーシャとしてはそれは言うまでもなく、望む所ではない。

108 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:18:47.75 O2RAjw9Mo 72/262


だったらここはさっさと退いてしまおう、という判断もまたリスクが大きかった。
ここで『わかった、もう何も聞かない』とあっさり退いてしまうと、それはそれで
一方通行に疑われる可能性があったからだ。『こんなあっさり諦めるとは、またぞろ
何か余計な真似を考えているのでは』という疑念を生じさせる訳にはいかない。

だからミーシャは駆け引きをした。自分の中だけで、絶妙に距離をはかり、

『本当は力になりたいけど仕方ない、今回は関わらない。 
 でも私はいつでも貴方の力になるから、いつでも相談してほしい』

とミーシャがそう割り切ってくれたか―――と一方通行が判断してくれるための、駆け引きを。

109 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:19:34.66 O2RAjw9Mo 73/262



「問二。 本当に、貴方個人で解決出来る問題なのか」

「俺を信用してねェのか?」

「解答一。 貴方に対する私の信頼は、今更語るまでもないと判断する。
 しかし、力になれるならなりたいというのが本音でもある」

「その気持ちだけで充分過ぎる。 ありがとよ」

「…………承知した。 貴方の問題の解決を、私は心から願う」

「そォしてくれ」

110 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:20:08.49 O2RAjw9Mo 74/262



とりあえずこの話題を無難な着地点へ降ろす事には成功したようだ。

だがあのミーシャが、一方通行という人間を心から愛する大天使が、ここで
引き下がる訳がない。


「……貴方。 先も言ったと思うが、私はこれから友人に会いに行かなければならない」

「あァ、言ってたなそンな事。 誰なンだ……ってのは、まァあえて聞かねェけどよ、
 いきなりその姿で会ってイイのか? その友人とやら、素の姿の時に知り合ったンだろ?
 サーシャの体でガブリエルですっつっても信用してもらえねェンじゃねェのか?」

111 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:21:04.96 O2RAjw9Mo 75/262


「解答ニ。 彼女の器は素晴らしく寛容であると私は捉えている。 何せ、
 貴方の言うところの『素の姿』の私を受け入れたのだ。 この姿なら
 むしろ接しやすいのではと考える。 いざとなったら抱きつけばいい」

「……なンだオマエ、俺だけじゃなく他のヤツにもあァやって抱きついてンのかよ」

「解答三。 案ずるな、浮気なんてしてない」

「そォいう事を心配してンじゃねェから!」


では後ほど、とミーシャは手を振りながらさっさと走り去ってしまった。
一応人間の姿とはいえ、一人で行動させてもいいのだろうかと心配になったが、
あとを尾けるのも躊躇われたため一方通行は放置する事にした。

失敗だった。今思えば。

112 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:21:35.72 O2RAjw9Mo 76/262



――――――――――――――――――――――


第七学区の4LDK高級マンション『ファミリーサイド』。
二号棟の一三階の一室で、携帯電話片手にベッドの上をころころ転がる幼女が一人。


「うーん……ってミサカはミサカは今か今かと待ち構えてるんだけど」


彼女の名は打ち止め(ラストオーダー)。第三位、御坂美琴の体細胞クローンの一人。
打ち止めは携帯電話を操作し、何度も何度もセンターへの問い合わせを繰り返して
新着メールが届いていないか確認作業をしていた。

113 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:22:25.41 O2RAjw9Mo 77/262



「やっぱ無理があったんじゃないの? 大天使様のサプライズにはさあ」

「あ、"もう体、大丈夫なの"? ってミサカはミサカは妹の
 番外個体の体の調子をお姉さんらしく心配してみたり」

「……大丈夫っつか、さっきまで何でミサカにあんな気持ちが
 沸いていたのか、胸掻っ捌いて確かめたいくらいなんだけどさ」


ちょうど打ち止めを一七歳くらいまで成長させ、しかし目つきはとんでもなく
悪どいこの少女は番外個体(ミサカワースト)。彼女もまた、経緯は多少異なるが
御坂美琴の体細胞クローンだ。

番外個体はつい先ほどまで、"とある変異"に襲われていた。

114 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:23:36.07 O2RAjw9Mo 78/262



「いきなりあの人に会いたいって騒ぎだすわ暴れだすわでびっくり
 したんだからってミサカはミサカは、でも気持ちは理解できるけど」

「あー汚点。 汚点汚点汚点汚点汚点! わっけわかんねえってーの。
 何でミサカが第一位のことを恋しく、愛しく思わなきゃならないの?
 うわー汚点だわ、ミサカ人生最大の汚点! もうこれ自殺もんでしょ」


一方通行に会いたくなった。急に。彼の顔が見たくなった。突然に。
彼のことが恋しくなった。唐突に。彼が愛しくなった……かは微妙だが。

とにかく、番外個体は一方通行のことを想って想って仕方がない、そんな状態が
続いていたのだ……不思議な事に。

115 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:24:14.75 O2RAjw9Mo 79/262



「なんで上位個体はそんな衝動に駆られなかったのかねえ?」

「ミサカはいつでも、二四時間三六五日、あの人のことを想ってるもん
 ってミサカはミサカはやや照れつつもはにかみながら答えてみる」

「その調子でヤンデレってくれたらミサカ的には面白いから、応援するけれど」


会話を終えた打ち止めは再び携帯電話のディスプレイとにらめっこを再開する。


「今日はもう、メール来ないんじゃない? つか来る保障なんてないでしょ最初から」

「でもミサカは"あちら"と"こちら"の橋渡しを任された重役なんだから、
 肝心要の最初のメールを待ち続けるのってミサカはミサカは虎視眈々と
 そのときを待ってみたり。 外の変化は確認したから来るはずなんだけど」

116 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:25:43.90 O2RAjw9Mo 80/262



どうやら打ち止めは『誰か』からのメールを待っているらしい。
番外個体の言葉から鑑みるに、そのメールが来る可能性はほぼ無いようだが。


そして、そのメールこそが、ミーシャ=クロイツェフ立案の一方通行への
サプライズ計画の『核』であることを、一方通行本人はもちろん知らない。
フィアンマが引き起こしたあの恐るべき現象が下準備である事実を、そして
この計画の中枢に打ち止めがいることを彼が知ればどうなるか、想像に難くない。


携帯電話でセンターへの問い合わせマラソンを繰り返してから、三〇分は経過しようという時だった。

117 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:27:05.12 O2RAjw9Mo 81/262



「え」

「?」


携帯電話のディスプレイを見つめていた打ち止めのくりっとした瞳が皿のように見開かれ、




「メールきたー! ってミサカはミサカは胸の鼓動が高鳴るのを感じつつ歓喜してみたり!」

「うそぉ!? マジで、見せて見せて!」




118 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:27:41.85 O2RAjw9Mo 82/262



あの番外個体までもが湧き上がる興奮を隠そうともせず、打ち止めの
転がるベッドの上にかぶりつくように飛びついた。


「本当に間違いないの? ただの普通メールだったりするんじゃない?」

「間違いないもん! ってミサカはミサカは断言してみる。 だってほら、」


メールを開く前の画面で確認できる相手のメールアドレスを指す打ち止め。
番外個体はごくりと喉を鳴らし、メールを開くよう促す。

119 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:28:16.07 O2RAjw9Mo 83/262



「うおお……"気持ち悪"。 ミサカ好みの気持ち悪さだねこれ」

「それでは、オペレーション『勧誘取引(ネゴシエート)』を開始する!
 ってミサカはミサカはこの前やったゲームのセリフを真似てみたり!」


地球という惑星の、日本という小さな島国の、学園都市という、世界から見たら小さな街で、


前代未聞、前人未到の"交渉"が始まった。

120 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:28:49.29 O2RAjw9Mo 84/262



――――――――――――――――――――――


――学園都市・『警備員(アンチスキル)』第七三活動支部 取調室


黄泉川「……」

風斬「……」

キャーリサ「……」

ヴェント「……」

麦野「……」

絹旗「……」

121 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:29:17.19 O2RAjw9Mo 85/262


黄泉川「さて……とりあえず、誰から尋問しようかね?」

風斬「あ、あの……黄泉川さん……」

麦野「つかここ狭いんですけどぉ」

絹旗「超帰宅していいですか?」

黄泉川「この『対超能力者用特別取調室』に展開されたAIMジャマーが
    ある以上、君たちはお姉さんに一切抵抗できないじゃんよ?」

風斬(うう……どおりでさっきから体の調子がおかしいと思ったら……)

122 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:30:37.45 O2RAjw9Mo 86/262


麦野「AIMジャマーって、警備員の支部如きに使用していいもんなのかよ」

黄泉川「対策されると面倒だから、この部屋の存在は限られた人間しか知らないけどね」

絹旗「七人しかいない能力者のための取調室とは、さすがレベル5は超VIP待遇ですね」

麦野「レベル5を捕まえて"取り調べ"ってかい。 のんきなもんだな」

ヴェント「さっさと話終わらせろよしち面倒くせえな……」

黄泉川「ていうか王女様? あなた様まで一体どういうつもりじゃんよ?」

キャーリサ「いやー、私にもよくわからないんだがな、とにかくうさぎに会いたくなって」

123 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:31:20.08 O2RAjw9Mo 87/262


黄泉川「うさぎ?」

ヴェント「私はそんなクソ王女の蛮行を止めようとして出張ったまでよ」

麦野「私もー」

絹旗「私もです。 ていうか、へえ、超王女でしたかあなた」

キャーリサ「学校の教科書くらい読みたまえよ君たち。 そしてふざけんな、
      私があそこへ来る前にお前ら暴れてただろっつーの!」

風斬「黄泉川さん……ごめんなさい」

黄泉川「ほおら、風斬はちゃーんと謝ってるじゃんか」

124 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:32:04.33 O2RAjw9Mo 88/262


キャーリサ「せんせーごめんなさい」

麦野「もうしませーん」

絹旗「超許してくださーい」

ヴェント「すみませんでしたー」

黄泉川「それで許されるなら警備員はいらないじゃんよ!」

麦野「もういいじゃんマジで。 被害者ゼロだったんでしょ?」

キャーリサ「建造物への被害も奇跡的に無かったって、さっき風斬似の
      警察がそー言ってたの。 ただの喧嘩だよ喧嘩」

黄泉川「いや舗装した道路ひっくり返ってんですけど^^;」

125 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:32:38.33 O2RAjw9Mo 89/262


ヴェント「確かにあの女、風斬に似てたわね」

風斬「そ、そうですか……?」

黄泉川「大体、どうしてお前ら喧嘩してたじゃんよ。 喧嘩の範疇に収まらない規模だったけど」

風斬「それは……ですね、その……」

黄泉川「なにせあの風斬まで鬼のように暴れ狂ってたからなあ、驚いたよ」

風斬「ごめんなさい……」

ヴェント「こいつらが嫉妬狂いだったからよ、私に対して」

126 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:33:10.67 O2RAjw9Mo 90/262


麦野「はあ?」

絹旗「よく言いますね。 大体私は第一位のことなんて超なんとも思ってませんから」

黄泉川「第一位? なんだ、一方通行絡みなのか今回の件は」

風斬「あ、一方通行さん自体は何も悪くないですからね!」

ヴェント「いいや、あの優柔不断クソ野郎が悪いのよ」

風斬「な……なんてことを言うんですか……!」

麦野「つか私ら、これからどうなんの?」

黄泉川「留置所じゃん」

キャーリサ「ちょ、私もか!?」

黄泉川「英国女王様にはきちんと伝えておくじゃんよ」

127 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:33:50.04 O2RAjw9Mo 91/262


キャーリサ「いやちょっとマジで勘弁してください黄泉川お姉さま」

麦野「あー最悪。 何であんなことしちまったんだ私……」

絹旗「あの時の私は超気が狂ってたとしか思えません……」

黄泉川「まあ何年もぶち込まれる訳じゃないじゃん、少しの間辛抱しろい」

麦野「黄泉川先生、本当に申し訳ありませんでした」

絹旗「もう二度と、あんな真似はしませんので超お許しください」

ヴェント「桔梗の就職先、私が何とか手回ししとくから、許してよ」

キャーリサ「母上だけにはチクらないでほしーし。 靴でも辛酸でも舐めるから」

風斬「本当にごめんなさい……」

黄泉川「お前ら調子良すぎじゃんよ……ったく」

128 : ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:36:30.08 O2RAjw9Mo 92/262


今回はここまでです。

序盤から雲行きが怪しくなって来ましたが、
一端覧祭六日目後半部とはまぁ、そういう事です。
あいつらとのいざこざが主になります。

そして打ち止め……何かやってますね。何をやってるかが
わからないと意見をくださった方が以前いらっしゃいましたが、
今回のこの話でわかっちゃったかもしれません。

次回も大体こんな流れで進行しまーす。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

129 : 次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI - 2012/06/30 19:37:22.64 O2RAjw9Mo 93/262




                          【次回予告】



「(こいつら、あのクソ無能力者の肉親……か)」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




「対象を発見。 約束通り、再び会いに来た」
『天使同盟』の構成員・サーシャの肉体に宿った『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ




「いや、アンタ誰?」
学園都市・常盤台中学の超能力者――――――御坂美琴




137 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:04:53.55 14JafiFio 94/262


皆さんおはようございます。今日も更新を開始したいと思います。

雨がヤバいです。歩道が川みたいになってて帰宅が大変でした。
雷も炸裂して……しかしそんな状況だと少しだけテンションが
上がる私の不謹慎な性分が苦を払拭してくれました。

今回はゲストが登場します。ゲストとか言っておきながら
かなり出番のある御坂とは違い、今回限りのマジゲストが
登場します。

では、よろしくお願いします!

138 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:05:21.07 14JafiFio 95/262



――――――――――――――――――――――


「今日、さ。 俺の母さんと父さんがウチに来ることになってるんだけど」

「う、うん」


なぜインデックスの身にあのような恐ろしい『異常』が発生したのか、
なぜ急にあらゆる女の子が上条の下に駆け寄ったのか、
そもそもインデックスに、というかこの街に一体何が起こったのか、起きていたのか。

それら全ての懸念事項はインデックスが元に戻った事によって上条の中で棚上げされた。
もう降ろされる事はないだろうが。そして上条当麻は今、学生寮の部屋でインデックスに
話を切り出した。

139 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:06:08.07 14JafiFio 96/262



両親の来訪。普段なら特に改まって話す必要のないことだが、
今の上条の環境ではきちんと彼女に話しておく必要があった。


「インデックスの事をちゃんと紹介しておこうと思うんだ」

「……ちゃんとって、つまり私の事をとうまはどう説明するつもりなのかな?」

「そ、それはだな……いや、だからそこをどうするか相談するために
 お前に話を切り出してるってのもあるんだけど。 ……そして問題は
 それだけじゃないんだけど、そこはお前もわかってるだろ?」

140 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:06:42.59 14JafiFio 97/262


「問題? 私をとうまのご両親に紹介するという事に匹敵する問題なの?」

「わかってねえのかよ。 ……実際、匹敵どころか凌駕してるかもだけど」


と、言いながら上条はポケットから何かを取り出し机の上に置いて
対面のインデックスに提示するようにした。

財布だった。彼の命と同義の物質だった。


「金がねえんだ。 我が上条宅は」

「それは上条家全体の家計が危機に陥ってるという意味なのかな?
 それともこの学園都市で暮らしていく上での生活資金が枯渇寸前
 という意味なの?」

141 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:07:34.89 14JafiFio 98/262


「後者でございます。 しかも枯渇『寸前』じゃねえ、氷河期に入っちまってんだ」


それを聞いたインデックスは呆れるでもなく憤慨するでもなく、表情を暗くさせた。


「……また私のせい?」

「え?」

「私がこのお祭りでいっぱい食べ物買ったりしたから、お金無くなっちゃった?」


信じがたい事にインデックスは『反省』しているようだった。
これまでの彼女の振る舞いを鑑みればそれはあり得ない心境の変化であった。
食い過ぎを反省する。あらゆる戦いを経て、そして上条当麻との暮らしを経て、
インデックスも心を大きく成長させているのだろうか。

142 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:08:26.88 14JafiFio 99/262


この場合、上条はインデックスの大きな前進に歓喜するべきなのだが、
しかし現実がそれをさせてはくれない。
上条はインデックス以上に表情を曇らせてその現実を彼女に明かした。


「……い、いやインデックス。 実はお前のせいじゃないんだ。
 まあ一端覧祭でお前の食費が普段の数倍に膨れ上がったのは
 事実だけど、それでも今回ばかりはお前に非は無いんだ」

「じゃあどうしてお金がないの?」

「わたくしめが金銭管理を怠った事が全ての原因にございます……」


そう言って上条は頭を下げた。下げすぎて額を机にぶつけてしまった。

143 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:09:16.96 14JafiFio 100/262


金銭管理の怠慢。上条がそれを犯してしまったがために彼らの家計が
音を立てて崩れたのだと上条は告白する。

しかしそれを受けてインデックスが抱いたのは疑問であった。
誰よりも金銭関係にうるさい(せこいという意味ではなく、管理が厳しい)彼が
散財という暴挙に果たして走るだろうか? 過去を振り返ってみても上条が無駄に
金を使いまくったというような心当たりがインデックスにはない。


「ブレーキが……ブレーキがきかねえんだ……」


何やらぶつぶつと呟いている上条に普通ではない雰囲気を察した
インデックスは慎重に言葉を選んでいく。

144 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:10:00.88 14JafiFio 101/262



「だ、誰かにお金をとられちゃったとかそういう可能性は?」

「ゼロだ、俺が管理してんだぞ!? 俺が管理して、その俺が
 俺が原因だと言っているのだからその真実は揺るがない!」

「そんな自信満々にお金がないって言われても返事に困るんだよ……」

「あの時から俺の金銭感覚が狂ったんだ……」

「……あの時?」


上条は何かに後悔するように頭を抱え、あの時の事を話し始めた。

145 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:11:00.22 14JafiFio 102/262



「ほら……いつだっけ。 俺ん家に一方通行が来た時の……。
 あいつがお前にメシ作ってくれた時の頃の話なんだけど」

「あ、うん。 もちろん覚えてるんだよ。 でもそれが何?」

「か、……金」

「?」

「金貰ったじゃん……一方通行から。 四〇〇万だっけ、そんくらい」

「うん、あれは私も驚いたんだよ! あくせられーたのちょっとした
 気遣いが私達の生活を潤してくれた決定的瞬間だったんだよ」

146 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:11:30.02 14JafiFio 103/262


「あの大金を手にしたせいで、俺の中の戒めっていうの? あれが壊れたんだ……」

「?」


未だ話が見えてこず、インデックスが首を傾げて上条の言葉を待つしかなかった。


「貧乏人が急にあんな大金を掴んじゃダメだったんだ!! 壊れるってそりゃ!
 金銭感覚! 今まで購入を我慢してたアレやこれが余裕で買えるんだぜ!?
 今まで我慢してた高級料理が余裕でおかわりできちゃうんだぜ!?
 急過ぎたんだ……一度『高みの味』を知ってしまったら簡単にはグレードを
 下げられない。 あの時、俺達の生活水準は大幅に上昇した。 一度高級車を
 乗り回したらもう二度と低ランクの車に乗れなくなるアレと同じ現象なんだ!
 いや俺、車なんて運転したことねえけど……とにかく言ってる事、わかるよな?」

147 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:12:14.46 14JafiFio 104/262


「富裕層の味を知ってしまったから……お金の使い方がわからなくなった?」

「富裕層って程の金額じゃなかったけど、でも四〇〇万は上条家にとっちゃ
 とんでもねえ大金だ。 高校生が手にしちゃいけねえ額だったんだ……。
 一方通行はあの時『端金だ』とか言ってたけど、あいつにとっては端金でも
 俺にとっちゃ大金だとどうしてあの時に認識出来なかったんだ……」


かなり前の話になる。一方通行が突然、上条の部屋を訪れた。
何の用事で訪れたのか上条は未だに知らない。インデックス曰く
『ご飯を作りに来てくれた』らしいが、それが何となく嘘である
ことを上条は察している。

いや、まあ今はそんな話ではなく、その一方通行が帰り際に大金を
施したのだ。上条の言うとおり高校生が手にするにはあまりにもあり余り過ぎる
大金を。一方通行からすればそれは『礼』だったらしいが、当時に上条は事情を
詳しく聞いておくべきだったのだ。というか断るべきだったのだ。

148 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:13:22.52 14JafiFio 105/262


しかしその大金を甘受した上条は徐々に金銭感覚というタガを外していった。
彼は湯水のように金を使いまくり―――


「でもあのお金はすぐになくなっちゃったはずなんだよ」

「手元に金が残る残らないの話じゃねえ! 一度大金を掴んじまった
 事実が問題なんだ! ……お前は気づいてなかったようだけど、
 ていうか俺も気づいてなかったんだけど、あれ以来も俺は金の使い方が
 荒くなる一方だった。 散財する程の金もねえクセに馬鹿みたいに、
 無計画に金を使って……。 拙い家計簿をつける事も無くなっていた。
 その結果がこれだ。 マジで謙遜抜きに俺は今、金がねえ」

149 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:13:56.17 14JafiFio 106/262



たまに自覚もしていた。どう考えても金を使いすぎてると
危惧することもあった。しかしその危機管理能力を金という
『幻想殺し』でも打ち消せない魔力が上から緩やかに塗り潰していった。


金は恐ろしい。理解していたはずの真理を改めて実感した上条当麻であった。


「認識が甘かった」

「でもとうま、それとご両親への紹介は何が関係あるのかな」

150 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:14:41.26 14JafiFio 107/262



インデックスは当初の話題に戻してみたが、しかし、しっかりと話は繋がっていた。


「金の管理もろくに出来ない息子がそれなりの歳の少女と同居する事を
 許してもらえるはずがないだろ……。 ただでさえ魔術サイド関連の
 事情説明もどうしようかって頭抱えなきゃいけないのに……」

「今までこうして生活してこれた事実を説明すればご両親もきっと―――」

「いや……特に母さんが厳しいからなこういうの。 最悪、俺とお前を引き離す事態に……」

「それだけは嫌!」


突然大声を張られた上条はビクッと体を強張らせた。

151 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:15:35.70 14JafiFio 108/262



「せっかくこうして一緒になれた矢先に離れ離れなんて絶対に嫌なんだよ!」

「インデックス……」

「気は進まないけど、今回だけはどうにかごまかすという方向でいくんだよ!
 その間にとうまは金銭面を整えて、私は食生活の改善を試みる。 食費を極力
 減らして家計の安定に貢献するんだよ。 私だってもう家族同然なんだから」


インデックスの言葉に上条の涙腺が刺激された。危うく涙をこぼすところだった。
彼女がパートナーとして真剣に同棲生活の安定を目指そうと奮闘してくれている。
それだけで上条当麻の憂鬱の大半が払拭されていった。


「……ありがとう、インデックス。 問題の解決にはなってねえけど、
 少しずつでも改善していけばいいよな。 俺達ならきっと出来る」

「うん! とりあえず今月は冷蔵庫の中身だけで凌いでみせるんだよ」


ところでここ日本には『三日坊主』という言葉が―――――。

152 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:16:23.63 14JafiFio 109/262



――――――――――――――――――――――


警備員の取調室にでも連行されたのだろう風斬以下数名の怪物女性陣どもを
さて迎えにでも行こうかと考え、しかし行ったら行ったで当時の状況説明を
要求された場合、口頭で説明をするにはあまりにも『オカルト』が絡みすぎて
おり、それならば監視カメラでも見てもらった方が早く、ならばそれは取調べの
際に見せられているだろうという推測に至り、じゃあわざわざ面倒に首を突っ込みに
行くのも馬鹿馬鹿しく思えてきて、では今日はどう過ごそうかと思案を巡らせ、


(ガブリエルのやつも感づいてやがったしな……やっぱ暗部の件を
 どォ処理するかを考えた方が生産的、いや解体的と言うべきか)


暗部の解体をどう実行するか本格的に考えようとしたところに、

153 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:18:25.79 14JafiFio 110/262



「何か考え事をしているらしいところ申し訳ない、ちょっといいかな?」

「あン?」


声をかけられた。


一方通行が振り返ると、そこにはこの一端覧祭の賑わいに少々参ったといった
表情を浮かべた、見た目三〇代後半、『気持ちどこかで見たことあるような』顔に無精ひげを生やした
男が柔らかい笑顔を彼に向けてきていた。

154 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:19:02.52 14JafiFio 111/262



「なンだ?」

「少し道を尋ねたくて。 って、あぁ、君がこの街の住人じゃなかったら
 あまり意味のない質問なんだけど……君は学園都市の学生さんかな?」

「……」


とりあえず警戒してみるか、と一方通行は軽く目を細めたが、それだけで
男は若干萎縮してしまった。ちょうど暗部のことを考えていた直後であるためか、
必要以上に鋭い視線を向けてしまったらしい。

155 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:19:46.85 14JafiFio 112/262



「す、すまない……取り込み中だったかな?」

「……問題ねェよ」


言いつつ、一方通行は心の中でため息をついた。こんなときに話しかけてきた
中年男性が鬱陶しくてついたわけではなく、彼は自分に、改めて呆れていた。
以前の―――どこまで以前なのかは彼も把握し難いが―――自分なら適当に威嚇して
追い払っていたシチュエーションだろうが、今はこうして名も知らぬ人間とまともに
取り合おうとしている自分に、彼は改めて『丸くなった』と自覚したのだ。

男は一方通行の返答に安心したのか、再び柔和な笑みを浮かべて質問をしようとしたところで、

156 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:20:54.89 14JafiFio 113/262



「あら。 あらあら刀夜さんったら、また私の目を盗んで
 女の子と談笑しているだなんて……うふふ、刀夜さんは
 女の子を漁りに、やはり学園都市へ赴いたのですか?」

「……」


ズズズズ……、と。あの一方通行が思わず一歩退いてしまうほどの、
そのなんとも言えぬ感情を渦巻かせた見た目二〇代後半の令嬢が
にこにこ笑顔で中年男性に歩み寄ってきた。


「え、ええ!? ただ当麻が通う学校までの道を尋ねただけなんだが、
 それもアウトなの!? というか、この学生さんは女の子でいらっしゃる?」

「あら、違うのかしら?」

157 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:21:34.05 14JafiFio 114/262


「ん、んん……言われてみるとそんな気も……。 中性的な
 顔立ち、うん、素直に綺麗だと思う。 いや、申し訳ない、
 私はてっきり男の子だと思って話しかけてしまって……」

「本当にもう……失礼よ刀夜さん」

「いや本当、母さんの言うとおりだよ。 すまなかったね、
 せっかくの文化祭だというのに、知りもしない男に
 男の子扱いされてひどく気分を害したと思う」

「話を進めて構わねェか?」


一方通行はこめかみをひくつかせながら、両手の指をパキポキと鳴らし、

158 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:22:22.32 14JafiFio 115/262



「用件は道案内だったよなァ? えェと、地獄への行き先でよかったか?」

「(か、母さん母さん! どうしよう、この子なんだかすごく怒ってるよ!)」

「(あら、あらあら。 もしかして気分を悪くさせてしまったのは
  私の方なのかしら? だとしたら、この子はやっぱり女の子?)」

「見りゃわかンだろォがァ!!」


一方通行の怒号に男は小さな悲鳴をあげて怯えてしまった。
しかし令嬢の方は『男の子……いえいえ、でもこの端正なお顔立ちは……』とか
言いながらマイペースに一方通行の性別がどちらかを推察している。

そこに、さらに話をややこしくさせる声が介入してきた。

159 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:23:02.49 14JafiFio 116/262



『第一の質問ですが、お二人はどちらへ向かわれる予定なのでしょうか?』

「あら、やだ刀夜さん。 やっぱり女の子じゃないの、うふふ」

「あ、あれ? 本当だ、今の可愛らしい声は間違いなく―――」

「オマエは黙ってろォ!」


一方通行は無関係の一般人の前で勝手に声を発したサーシャ=クロイツェフに
言ったのだが、中年の男は自分が怒鳴られたのだと勘違いしてしまい、
再び身を竦めてしまった。

160 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:24:18.40 14JafiFio 117/262



「あら……声色が二つ? 器用なんですね」

「いやそォじゃなくて……まァそれでもイインだがよ」

「ん? か、母さん! この子の首にぶら下がってる
 ペンダント……いやビン? ここから声が出てるんだよ!
 き、君、重ね重ね申し訳ないが、少し見せてもらえるかな?」


こういう非科学的な物に興味があるのか、男は一方通行の胸に顔を近づけて
まじまじとサーシャの魂入りビンを見つめ始めた。
いい具合の位置に男の顔があるため、一方通行は膝蹴りでもかましてやろうかと
考えたが、さすがに出会って数分の人間にそこまでアグレッシブな対応をするほど
彼も別に怒ってはいないためそれはやめておいた。

161 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:24:59.02 14JafiFio 118/262



首に提げておいた紐付きビンを興奮冷めやらぬ男に仕方なく渡して
(サーシャが何か講義してきたが無視した)、一方通行は女の方と
取り合うことにした。


「で、誰なンだよオマエらは」

「あら、これは申し遅れました。 私は上条詩菜と言います。
 あちらで不思議なビンに夢中になっている彼は上条刀夜。
 うふふ、あれでも刀夜さん、普段はあんな調子ですけれど、
 立派な外資系企業で勤めているんですよ。 ちなみに私は、」

「いや、そこまで聞きたくて尋ねたわけじゃねェンだが……、……」

162 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:25:32.05 14JafiFio 119/262



二人の名を聞いた一方通行は、警戒心をわずかだけ高めた。
別にこの二人がこれから自分に襲いかかる訳はないだろうが、
それでも彼にとって『上条』の名は特別な名であり、


(こいつら、あのクソ無能力者の肉親……か)


やや受け入れ難い名であった。


「以後、お見知りおきを。 あなたは?」

「……一方通行、でイイ」

163 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:26:01.62 14JafiFio 120/262


恐らく『外』から来た人間なのだろうという点と、『上条』という
苗字である二人―――夫婦にその名を名乗るのはどうかと一瞬迷ったが、
今まで一貫して『一方通行』を名乗っておいていまさら逡巡するのも
おかしいだろうという結論に至り、彼は能力名で自己紹介をした。


「あくせら……? あらあら、外国の女の子……いえ男の子……?」

「俺は男だ」

「あら、月刊コロコロコミックの……?」

「いや、くにおくンじゃねェよ!」

「じゃあ津雲むつみの……」

「俺には窓越しに会話できるよォなヒロインはいねェ!」

164 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:26:57.73 14JafiFio 121/262



どうして会ったばかりの主婦との会話で漫才を成立させることができるのか
一方通行には理解できなかった。当然別人であるのだが、一方通行はなぜか
上条詩菜とあの呑気なシスターが重なって見えた。


「それで、どこに行きてェンだ」

「私と刀夜さんには、上条当麻という息子がいるのですけれど、
 今日は私たち、当麻さんの学校へ足を運ぼうとこの街に赴いた
 次第でして……。 一方通行さんは当麻さんのこと、ご存知で?」

「……あのクソ無能、いや、あいつなら顔見知りだ」

165 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:27:34.24 14JafiFio 122/262



さすがに両親の前で息子のことを『クソ無能力者(レベル0)』と呼ぶのは
抵抗があったらしく、一方通行は言い直した。このあたり、彼は本当に
丸くなっている。


「よければ学校までの道筋を、口頭で構いませんので教えていただけると
 ありがたいのですが。 私も刀夜さんもここのところ忙しくて、なかなか
 文化祭に足を運べなかったんですよ。 当麻さん、ロシアで何かあった
 ようですし、長い間顔を見ていないもので……」

「……学校って言われてもな、そこまでは知らねェよ。
 その学校に関する情報を提供してくれりゃあ或いは」

166 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:28:20.02 14JafiFio 123/262


「月詠先生という、このくらいの背丈の先生が担任を
 なさってるのですが、何か心当たりがありませんか?」

「あの実験サンプルが通ってる学校か。 確か以前に
 芳川と行ったな……。 その学校なら―――」


一方通行は以前に一度車で向かっただけの道のりを正確に思い出しながら、
極めてわかりやすく現在地から学校までのルートを口頭説明した。


「あら、あらあら。 でしたら歩いて五分もかからないということですね。
 本当にありがとうございました。 大覇星祭の時はすぐに当麻さんに
 会えたから辿りつけたのですが……。 刀夜さん刀夜さん、いつまでそんな
 玩具に夢中なっているのかしら? 早く当麻さんの学校へ行くわよ」

167 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:29:15.72 14JafiFio 124/262


『お、オモチャ!? 第一の私見ですが、私はこれでもれっきとした人間で―――』

「おお、やっと喋った! いやすごいなあ学園都市の科学技術は。
 ええと、君。 これ、どういう仕組みで会話を成立させているんだ?」


しばらくの間、上条刀夜と詩菜、そしてサーシャの口論が続き、
詩菜が刀夜の耳を引っ張って立ち去った頃には街は夕焼け色に染められていた。


「……あれ?」


そして、上条夫妻からサーシャ入りのビンを返してもらっていない事に今更気付いた。

168 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/03 09:32:08.52 14JafiFio 125/262


今回はここまでです。

すみません、前回の次回予告ウソつきました。
ミーシャと御坂の話は次回以降になります。
配分ミスっちゃいました……。

よって次回予告は前回のものとなるので、今回は無しです。

で、上条夫妻ですが……正直この二人はあまり覚えていないのですが、
どうだったでしょうか。変じゃなかったかな。まあ二人の出番は恐らく
これが最後……だったはずです。

上条サイドも結構大変なことになってるようです。
一方通行の四〇〇万の話は多分誰も覚えてねえ。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

178 : VIPに... - 2012/07/04 13:36:46.70 +KszAdA20 126/262

もう各スレの性別設定覚えてないな
ここは男だったのか

184 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:49:54.77 2oago8coo 127/262

>>178
最初は曖昧にしとこうかとも思ったのですが、
フラグがどうこういうSS書いておきながら
実は女でしたという展開だと萎えるだろうなと思って
結構前から男確定場面入れたりしてます。銭湯の時とか。

しかし一方通行が『自分は男だと思い込んでるだけ』という展開も微レ存……なわけないか。

というわけでこんにちわ。更新します。

お金の話覚えてくれてる方いてくれて嬉しいです。
あれ本当はちょっとしたギャグで、しかも本編で片付けるはずだったのですが
忘れてて……仕方なく、結構な後付けを盛り込んで蛇足で触れました。

今回はミーシャと美琴が再会します。姿が変わり果てたミーシャに
美琴はどう反応するのか。そしてミーシャが彼女に話したこととは、的な。

それでは、よろしくお願いします!

185 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:50:26.51 2oago8coo 128/262



――――――――――――――――――――――


時間帯が時間帯であるために、常盤台中学の女子寮へは『不法侵入』という
形で訪問せざるを得なかった。常盤台中学の敷地内に一般人立入禁止の処置が
施されてしまったのだ。もっとも、女子寮は一端覧祭開催中であろうがなかろうが
許可無しには立ち寄れないのだが。


「御坂美琴の部屋……私の記憶が正しければこの辺りのはず。
 私自身の記憶とサーシャ=クロイツェフが保存している記憶が
 混合し、『思い出す』というシステムが上手く作動しないが……」

186 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:51:15.78 2oago8coo 129/262



その女子寮内に、侵入者はいた。

サーシャ=クロイツェフ。

ただしそれは外見上での話であり、彼女の魂はミーシャ=クロイツェフという
大天使のものに入れ替わっている。彼女は一方通行と街で一旦別れ、御坂美琴の下へ
訪れるために女子寮へ足を運んでいた。

侵入は容易……というわけでは決してなかった。絶妙なポイントに複数設置されている
監視カメラの監視網をかいくぐるのはミーシャからすれば容易以外のなにものでもなかったが、
女子寮にいた責任者(?)、メガネをかけた厳しい目つきの女性の警戒網が半端ではなく、
然しものミーシャも彼女の目を盗んで御坂美琴の部屋へ向かうのにかなり苦労した。

187 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:52:03.99 2oago8coo 130/262



廊下へ辿り着いたミーシャは壁に並ぶ複数の扉にそっと耳を近づけ―――るまでもなく、
軽く耳に意識を集中するだけで室内の音や声を拾えるため、それに徹した。
やがて、ある一部屋以外から聞こえた声はミーシャが知らない女子生徒のものだったため、
彼女はその例の部屋のドアノブに手をかけた。


「対象を発見。 約束通り、再び会いに来た」

「は?」


188 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:52:44.75 2oago8coo 131/262



果たしてミーシャが入った部屋には御坂美琴がいた。彼女はきょとんとした顔で
ミーシャを見ている。美琴は右手にトンカチ、左手にベニヤ板、口に何本かの釘を
咥えているという、常盤台中学の美琴ファンが見たらあるいは失神しかねないような
彼女のイメージにそぐわない出で立ちだった。

そして美琴のすぐ眼の前にはトラックでも突っ込んできたかのような、
壁一枚がほぼ丸ごと吹き飛んだ後の大穴があった。そこから常盤台の
景色が一望出来てしまう程度にはでかい穴であった。


「問一。 珍妙な状況であると見受けるが、何をしているのか」

「いや、アンタ誰?」

189 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:53:24.52 2oago8coo 132/262


「……問ニ。 それは俗に言う、『ボケ』であるか。 前フリ?
 必ずまた会いに来ると、私は貴女と約束したはずだが」

「はあ? あの、悪いんだけど……私、アンタとは初対面だと思うんだけど。
 大体そんな、それこそ珍妙な格好したやつと知り合いになってたら忘れる
 はずがないし。 真冬だってのにすごい服着てるなあ……どこのブランド?」

「……問三。 白井黒子の姿が見当たらないが、彼女はどこに?」

「黒子のこと知ってんの? あ、もしかして黒子の知り合い?
 あいつなら今日は『風紀委員』の仕事で遅くなるらしいけど」

「………………」

「…………あの~、もしもし?」

190 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:54:29.47 2oago8coo 133/262



途端に黙りこんでしまった、馬鹿みたいな服装をした外国人に
美琴は困惑しながらも返事をするよう促してみる。


「…………問四。 美琴、本当に私の事を忘れてしまったのか」

「私の名前も知ってる……? んん、駄目だ、思い出せない。でもその、
 腰にかけてる金槌とかバールを見る限り、壁の修復作業を手伝いに
 来てくれたとか? いやあ助かるわ、これどこぞのバカ天使がさ―――」

「理解した。 絶望的な解を美琴は私に提示してくれた」


そう言うとミーシャはガクッと膝をつき、思い切り項垂れてしまった。
放っとけば数分後には自殺してそうな雰囲気を唐突に纏い始めた彼女に
美琴は変な汗をかきながら慎重に声をかける。

191 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:55:23.13 2oago8coo 134/262



「そ、その……本当にごめん。 良かったら、さ、私とアンタが
 どこで出会ってどういう経緯で知り合ったのかを教えて―――」

「解答一。 私と美琴が初めて出会ったのは、恐らくこの学校のプール」

「プール?」


首を傾げる美琴に構わず、ミーシャは呪言のようにぶつぶつと『キーワード』を呟く。


「プールで私と戦闘を行った事も、自動販売機という飲料が収められた箱で
 飲料を入手する方法を教えてくれた事も、初春飾利と佐天涙子を誘拐した
 不届き者を協力して拘束した事も、私と美琴は既に『友達』である事実も、
 ―――――貴女はそれら全てを忘却の彼方へ置いてきてしまったのだな」

192 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:56:04.08 2oago8coo 135/262


「…………………………え、え。 ちょ、待ってアンタまさか」

「ゲコ太の下着を好んで着用する事も、美琴が心から想っている
 異性の存在も、私は決して忘れてはいないというのに」

「わーわー! それはすぐに忘れてもらって結構!」


遮るように叫んだ美琴は、ごくりと生唾を飲み込んで恐る恐る尋ねてみた。


「アンタまさか…………ミーシャ=クロイツェフ?」

「正答。 美琴が今口にした―――バカ天使である事を、ここに証明した」

193 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:56:47.40 2oago8coo 136/262



――――――――――――――――――――――


ミーシャ=クロイツェフは壁の修理に使用するベニヤ板を手に取り、
物珍しげに観察しながら美琴に一部始終を説明した。
省くべき点は省き、伝える必要性を感じない詳細はそれらしい理由を
加えて説明しながら、フィアンマが起こした『御使堕し(改)』で魂の
入れ替わりが生じ、現在はサーシャ=クロイツェフという人間の肉体を
器として借りていることを。


「―――て事は姿形はそのサーシャって子のものでも、中身……
 つまり記憶やら意識やらはミーシャって事になってる訳ね?」

194 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:57:37.84 2oago8coo 137/262


「賢答。 流石に理解が早い。 話が早くて助かる」

「じゃあさっきのも、せっかく会いに来たのに私がアンタの事を忘れて、
 っていうか魂が入れ替わって姿が変わってしまった事に私が気付かない
 から、それにショックを受けて落ち込んだって事か」

「正答」


ふむふむ、と美琴はベニヤ板に釘を打ち付ける作業を中断して、


「んなもん気付くわけないでしょうが!」

195 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:58:23.27 2oago8coo 138/262



ばきゃっ、とせっかく壁としての役割を果たしていたベニヤ板にトンカチを
叩きつけツッコミを入れた。外を歩いていた女子生徒がビクッと強張っている。


「えんぜるふぉーる? せふぃら? 何の呪文よそれ! 大体ねえ、
 いきなり訳のわからん馬鹿みたいな格好した女の子がやって来て
 『あ、見た目は全然違うけどアレは恐らく魂の入れ替わりを果たした
  ミーシャなんだな。 良かった、無事で』とか思う訳ないでしょ!?
 アンタ忘れてるかもしれないけど、私は非科学は専門外なのよ!」

「解答ニ。 しかし彼は―――私が最も想っている彼は、外見が
 サーシャ=クロイツェフである私の魂を一発で看破してみせた」

196 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:59:00.03 2oago8coo 139/262


「なにぃ……。 誰だか知らないけどそいつ、相当アンタに入れ込んでるわね。
 そいつ、火野じゃないんでしょ? いつか聞こうと思ってたんだけど、
 アンタの大切な想い人って誰なの? どうやら非科学サイドの人間らしいけど」

「解答三。 彼はこの街の能力者」

「え、マジで!?」


天使と共に日常を過ごしているというからには、その人物は当然"あっち側"の
人間なんだろうと踏んでいただけに、それが学園都市の能力者であると聞いた
美琴は驚愕を禁じ得なかった。

197 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 13:59:50.50 2oago8coo 140/262



「酔狂というか物好きというか……いや、そんな事言ったらその人に
 失礼だし私も人の事言えないか。 ねえ、その人今度紹介してよ」

「……? …………」

「ん? どうした?」

「解答四。 その話は保留しておくにしても、実は今日私が美琴の下を
 訪れた目的は、その人の事について相談があるからだと先に明言しておく。
 本当は単に姿が一時的に変わってしまった事の報告に来るだけの予定だったが」

「なんで保留するのよ……」

198 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 14:00:25.98 2oago8coo 141/262



あまり追求されたくないのだろうか、と美琴はひとまず話題の切り替えに乗っかり、


「その前に、私らの部屋の壁に派手な穴作った事を謝りなさいよ……。
 あのあと寮監に『人間双節棍』されてひどく叱られたんだから」


それは素直に詫びよう、とミーシャは腰から金槌を抜いてベニヤ板で壁の修復を
手伝い始めた。


「で、相談って? その人の事は私も知らないから相談に乗れるかわからないけど」

199 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 14:01:23.33 2oago8coo 142/262


「解答五。 彼が抱えている『闇』を、何とかして晴らしてあげたい」

「闇……?」


ミーシャらしからぬ物騒、陰鬱な言葉を聞き、美琴の表情に真剣味が帯びた。


「私見一。 彼が現在抱えている『闇』。 彼の心を"聴いてみた"ところ、
 どうやら彼が視ている『闇』はそのまま、この学園都市という街に向け
 られているように私は感じられた。 そこで美琴に問五を尋ねてみるのだが」

「?」

「学園都市の『闇』とは―――何を暗示しているものなのか」

200 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 14:02:33.01 2oago8coo 143/262



『心を聴く』という言葉に、美琴は人間として違和感を感じざるを得なかったが、
それはミーシャの口から出た『学園都市の闇』という言葉によって払拭された。
いや、上塗りされたと言った方が適切か。

なぜなら、美琴は知っているから。


「学園都市の……『闇』。 アンタの大切な人が、それに関わっていると?」

「あくまで私見でしかないが、しかし私自身は確信している。 闇――それも、
 ひどく汚く、醜い類の闇。 彼の心からそんな『闇』を聴き取る事が出来た。
 急に押しかけておいてこんな話をされても迷惑でしかないと思う、申し訳ない。
 口にし辛いのであれば言う必要はない。 知らないのならこの話は忘れて――」

201 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 14:03:06.09 2oago8coo 144/262


「それって、暗部の事だとしか思えないんだけど」

「……暗部?」


そういう美琴の表情は、忌々しい過去の記憶を思い出しているかのように
苦痛に歪んでいた。何か嫌な記憶でも掘り返してしまったかとミーシャは
失態を詫びたが、美琴は小さく笑って返してくれた。


「でも、そう……暗部。 学園都市の『闇』と言ったら、多分それは暗部の事」

「……問六。 美琴が有している暗部に関する情報を、私に説明する気はあるか。
 詳細説明に強制的要素は含まれない。 あくまで、私が個人的に欲しているだけで、
 説明したくないというのならそれで構わない。 あとは私が独自に調査を進める」

「私も詳しくは知らないけど……その片鱗に触れたことがあるのよ。
 出来れば暗部なんてアンタに関わってほしくないんだけど、アンタの
 大切な人が暗部に関わってるっていうなら、アンタは放っとかないでしょ?」

202 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 14:04:30.28 2oago8coo 145/262



やや逡巡し、それでもミーシャが首を小さく縦に振ると、


「だったら私も放っておけない。 暗部に首突っ込むアンタを
 放置してたらこの街がどうなるかわかったもんじゃないしね」

「……」

「私の知ってる限りの情報を渡す。 だから私にも協力させなさい、
 それが条件よ。 ま、アンタには借りもあるし、力になったげる」

「美琴、私はそんなつもりで―――」

「口答え禁止~」

「……その条件、了承した。 感謝する」


一端覧祭六日目。この日、本来ならば全く関連性も関係性も無かったはずの
三名の人物の心に、学園都市の暗部を解体させようと試みる決意が生まれた。

203 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 14:09:42.15 2oago8coo 146/262


今回はここまで……なんですが、ここまでが今日の投下予定だったのですが、
なんか思ったより少ないな……物足りないと思った方には申し訳ないです。
20レスを超えるくらいが私の投下量の目安なのですが。

そんなわけで、ミーシャは美琴に『闇』の正体を教えてもらいました。
詳細は次のお話でさらに教えてもらえるようです。
また、美琴もとある件で暗部に用があるのですが……それはあとちょっと先で。

そして次回、ミーシャがとんでもない事を思いついてしまいますが、
それが吉と出るか凶と出るか、という話を。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
なんかやっぱ個人的に物足りないので、近い内に適当な小ネタ流します。

204 : 次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/06 14:10:09.54 2oago8coo 147/262




                          【次回予告】



「彼に美琴を紹介しよう。 美琴に彼を紹介しよう。 どちらも私の大切な友達だと」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・サーシャの肉体に宿った『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ




211 : VIPに... - 2012/07/06 20:27:32.35 zY+S0Q4DO 148/262

あんのバカ天使とんでもないことを思い付きやがった…


ってか、ドレスネタで書き貯めてた時期が予想出来るなw

212 : VIPに... - 2012/07/07 08:28:44.36 KiB4pqvLo 149/262

あれは一話の進行が遅いから、ドレス登場回が半年くらい前な気がするが・・・・つまりここの>>1は・・・・?

213 : VIPに... - 2012/07/07 21:53:47.76 egh9qiTS0 150/262

>>1は一体どれほど書き溜めてるのか・・・

214 : VIPに... - 2012/07/07 22:06:16.80 XbjAeulDO 151/262

単純計算で半年分か…

つまり、後半年以上は続くわけだな

215 : VIPに... - 2012/07/08 02:53:41.31 aW1VwIMD0 152/262

書き溜め大放出祭りみたいなのやってくれないだろうか

>>1のペース乱れちゃうか、まずいか

216 : VIPに... - 2012/07/08 08:32:05.87 KDw0BSgDO 153/262

今のペースで十分

一気に読みたいなら完結してからまとめで読めばいい

217 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:52:15.36 6aGRkQmbo 154/262


軽く200レスくらい放出しましょうか?
まあそんな事やっても読むのが面倒になるだけですよねww

じゃ、小ネタ投下しまーす。よろしくお願いします。

218 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:52:49.56 6aGRkQmbo 155/262


―――【目指せレベル5コンプへの道(女王様編)】


美琴「―――で、ここがグラウンドね。 能力検定とかで使用されるの」

ガブリエル「……」フムフム

美琴「さすがに職員室やら私が居る寮以外の学生寮は
   案内しにくいっつーか出来ないんだけど」

ガブリエル「fjtyd無問題aotuvc」

美琴「あとはどうしよっか? 洋服店とか回ってみる?」

ガブリエル「……」ウーン

219 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:53:27.27 6aGRkQmbo 156/262


美琴「ていうか驚いたわよ。 急に常盤台を案内してほしいだなんて」

美琴「女子校に興味でも湧いたか? アンタも女の子(?)だし」

ガブリエル「fxiyr目的auer違dspir」

美琴「んーなになに? わかんないわよ、メールしてメール」

ガブリエル「……」ヤレヤレ

美琴「ため息つくなや! しょうがないでしょ、アンタの言語には
   特定のパターンも見受けられないし、あの赤い髪の男以外
   アンタの言語は完璧には理解出来ないんだから」

220 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:54:26.05 6aGRkQmbo 157/262


ガブリエル「situ店員prut」

美琴「ん? ……お、きたきた」ピッ

ガブリエル『今日、常盤台中学を訪れたのは確かに単純な好奇心も
      理由としてはあるが、目的はそれだけではない』

美琴「目的……って言い方がちょっと不気味だけど、じゃあ何?」

ガブリエル『まあ、ちょっと』

美琴「何よ教えなさいよ~、休日返上して案内してあげてん―――」


           バチィッ!!!


221 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:55:02.73 6aGRkQmbo 158/262


ガブリエル「!?」

美琴「がっ―――――痛ゥッ!!?」ズキッ


「みぃーさぁーかぁーさん♪」


美琴「くっ……。 あ、アンタ……」

ガブリエル「?」

美琴「……………………食蜂操祈」

222 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:55:43.88 6aGRkQmbo 159/262


食蜂「操祈ちゃんです☆ 久しぶりねぇ、同じ学校に通ってるのに
   どうしてかなかなか会えないからぁ、寂しかったんだゾ」

ガブリエル「oye何者bcke」

美琴「干渉電波飛ばしてくんなっつってんでしょ!?
   アンタ本気で私に喧嘩売ってんのか!?」

食蜂「だって呼んでも返事がこないからぁ……なんだか、
   そちらの怪しげな巨人とのお話に夢中みたいで?」

ガブリエル「cxut巨人aiec……」

食蜂「初めましてぇ、食蜂操祈でぇす。 えーとあなたは……
   御坂さんのご友人? それともぉ……まさか彼氏とか?」

223 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:56:27.62 6aGRkQmbo 160/262


美琴「アンタには関係ないでしょ!」

食蜂「御坂さんには聞いてないんだけどなぁ」

美琴「……」

美琴「ふっ」クスッ

食蜂「?」

美琴「こいつには関わらない方がいいわよ」

食蜂「どぉして? あ、……このガウンをすっぽり被って
   容姿力を隠してる辺り……何か危なげな組織の一員とかぁ?」

224 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:57:13.48 6aGRkQmbo 161/262


美琴「ま、アンタ程度じゃそれくらいの認識しか出来ないでしょうね」

食蜂「ふぅん、今日は随分強気なのねぇ御坂さん。 いつもだけど」

美琴「放っとけ! 普段の私は花も恥らう乙女だっつーの」ピロリン

ガブリエル『自分で言うなよ寒いから……』

美琴「いちいちメールでドン引きすんなや!」

食蜂「メール……?」

225 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:58:22.73 6aGRkQmbo 162/262


ガブリエル「zptimc初対面altrfd」

食蜂「!? …………」

美琴「あら、アンタのそんな顔が見れるなんて……休日返上した甲斐があったわ」ニヤニヤ

食蜂「なに? 今の」

美琴「驚いた? こいつは"こういう"ヤツなの、私達とは違うのよ」

食蜂「……」スッ

226 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:59:07.48 6aGRkQmbo 163/262


美琴「ちょっと! そのリモコンでどうするつもり?」

ガブリエル「?」

食蜂「そんな別にぃ、何も企んでないわよぉ」

美琴「……この女、私と同じ超能力者(レベル5)だから気をつけて。
   第五位の『心理掌握(メンタルアウト)』っていうんだけど」

ガブリエル「!!」

食蜂「人様の個人情報を勝手にバラさないでほしいんだけどぉ」

227 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 13:59:47.41 6aGRkQmbo 164/262


ガブリエル「ztux僥倖apicu」ワーイ

美琴「?」

食蜂「これは……握手を要求してるのかなぁ?」

美琴「え……ちょ、」ピロリン

ガブリエル『この人間と友達になりたい』

美琴「は、はあ!?」

食蜂(打鍵力パネェ……)

228 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 14:00:24.47 6aGRkQmbo 165/262


食蜂「ていうか何?」パシッ

美琴「あ、人の携帯勝手に取るな!」

食蜂「プライバシーを侵された仕返しってことでぇ♪ ……」ジー

ガブリエル「blpfh懇願xawqh」

食蜂「……どうやらぁ、そういうことみたいねぇ?」

美琴「ミーシャ! な……なんでこいつなんかと……」

食蜂「ミーシャさんていうんだぁ、ふふ、よろしくね?」ニコッ

美琴(何だよその無垢な笑顔は!?)

229 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 14:01:51.22 6aGRkQmbo 166/262


ガブリエル「cmsry歓喜avbrys」キャッキャッ

美琴「ミーシャぁ……」

食蜂「じゃあもっと友好力を築くためにぃ、二人っきりで
   お話がしたいんだけどぉ……適当な喫茶でもいい?」

ガブリエル「cnzgf勿論rtpyb」コクン

美琴「二人っきり!? ダメよ、私も同行させてもらうから」

食蜂「ひどいよぉ……どうしていつも私にそんな意地悪するのぉ……?」グスッ

ガブリエル「sotua美琴cepri」メッ

230 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 14:02:21.78 6aGRkQmbo 167/262


美琴「み、ミーシャ……アンタどっちの味方よ!?」

食蜂「友情(笑)に味方も敵も無いと思うんだけどぉ」

ガブリエル「kyux同意pcrut」

美琴「ぐ……。 で、でもミーシャはアンタの手には負えないわよ。
   まず第一に、アンタこいつの言語理解出来ないでしょ?」

食蜂「それで?」

美琴「私も完璧には理解出来ないけど……それでも多少は会話出来るのよ。
   私はこいつの友達、いえ、親友だからね。 悪いけど、アンタより
   仲が深い私が間に入らないとまともに友好を築くことは出来ないわ」

231 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 14:03:04.12 6aGRkQmbo 168/262


食蜂「うーん……」スッ ピッ

美琴「あ、リモコン……」

食蜂「手間かけさせるけどぉ……ちょっと何か喋ってみて?」

ガブリエル「dryhptxfmduumazdmbyywadzxgicw
      mudzfxthajjwdtmueydnhzacpwgus
      rpfjtnhrnmezbckwnzwkiwicuecpxijjn
      gsstfguhsbcjdtnimkhtmmjxnzzeaw」ペラペラ

食蜂(……単純な電波力やAIM拡散力場の影響じゃないわねぇ……。
   でも声帯、肺を使って空気を震動させただけで出せる音じゃない。
   鳥類と同じ感じ? いや、この機械力満載のノイズは生物とは違う)

232 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 14:04:30.82 6aGRkQmbo 169/262


食蜂「……だ・け・ど☆」

美琴「?」

ガブリエル「bxctwitexnmcimwpemhigbzgcr
      cepjfdkabaujkhycfurixuetdi
      afigeykmuzucrxpcdytzabrbyr」

食蜂「……要するに、『第七学区に行きつけのファミレスがあるから、そこでゆっくり話したい』?」

ガブリエル「!」スゲェ

美琴「う、うそぉ!?」

食蜂「言葉が通じる通じないで友達がどうとか……言ってましたっけぇ?」

美琴「うう……」タジッ

233 : 小ネタ投下中……  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 14:05:44.17 6aGRkQmbo 170/262


食蜂「そんな見識力の狭さでミーシャさんとお付き合いを?」

美琴「そ、そういうわけじゃ……」

食蜂「これっていわゆる運命力ってヤツぅ? 私達、良い友達になれそう♪」

ガブリエル「♪」コクコク

美琴「そんなぁ……」ガビーン

食蜂「じゃ、行きましょうかぁ? というわけで御坂さん、また後で」

ガブリエル『美琴、感謝する。 おかげで目的が達成出来た』

美琴「え……?」

食蜂(非科学……よねぇどう考えても。 ふふ、楽しそう)


―――続く……のか?

234 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/08 14:06:39.94 6aGRkQmbo 171/262


これもいつ書いたっけって感じなんですけどね……。

では、また更新時にお会いしましょう。ありがとうございました!

244 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:07:24.68 gpg1W9FIo 172/262


おはようございます、昨日小ネタ更新したばっかりですが
今日は蛇足の方を更新していきまーす。
相変わらずの嬉しい支援をありがとうございます。

で、放出ですが……試験勉強の邪魔になるならやめときましょうww
ていうかそうじゃなくても正直、放出出来る時間が取れなくて……
申し訳ないです、更新ペースはどうやらまだしばらく現状維持になりそうです。

そして今回のお話は御坂から暗部の情報をミーシャが聞きます。
さらにミーシャはまたしてもとんでもないサプライズを思いついてしまいます。

それでは、よろしくお願いします!

245 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:07:58.59 gpg1W9FIo 173/262



――――――――――――――――――――――


――学園都市暗部。


学園都市の管轄内で発生した事件、トラブルの対処と解決のために
選りすぐりの精鋭―――能力者を集めて構成された組織を、この街では
暗部と呼称している。

ここまで聞くと暗部も『警備員(アンチスキル)』や『風紀委員(ジャッジメント)』と
同じく、街の治安維持に積極的に貢献している市民の味方というように聞こえるかも
しれないが、しかしその実態は警備員や風紀委員とは程遠い。

246 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:08:41.79 gpg1W9FIo 174/262


暗部とは読んで字の如し学園都市の暗闇の部分。暗部は、学園都市が扱う情報の中でも
表沙汰に取り上げられない黒い部分を担当している。暗部には上層部やVIPの醜い、人間
としての感情が蠢き渦巻いているのだ。
要人の暗殺。『外』との何らかの交渉の際、学園都市側が有利になるための工作活動。
非公式な実験や研究の補助。障害となりうる街の能力者の排除。はては同じ暗部の
組織も、必要ならば抹消に動く。


それが暗部。もちろん、暗部には上層部や統括理事会、統括理事長も関与している。
むしろ彼らがその暗部を顎でこき使っていると言っていいだろう。
学園都市が持つ武器、武力。学園都市の裏の顔。それが―――――

247 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:09:41.26 gpg1W9FIo 175/262



「アンタの言う『闇』。 アンタもこの街の人間と何人も出会ってるかもしれないけど、
 その中に暗部の構成員がいたとして、それは不思議でも何でもない事なのよ。
 約二三〇万人という人口から考えたら暗部の数は少ないと思うけど、それでも
 いつどこですれ違っててもおかしくない。 暗部は今も街に溶け込んでいる」

「裏組織……。 様々な思想を持った人間が集まった街。
 そんな街に『闇』が生まれる事は必然的であると理解した」


美琴から暗部の情報を聞いたミーシャ=クロイツェフはふんふんと小さく頷きながら
暗部のおおよその仕組みと特徴を理解した。
彼女は美琴が淹れてくれたコーヒーを物珍しそうに観察しながら、ゆっくりとカップを
口元に持っていき一口含む。

248 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:10:56.18 gpg1W9FIo 176/262



「私も、だからその片鱗に触れたとはいえ詳しくは知らないのよ。
 アンタには言ってもわからないかも知れないけど、『〇九三〇』の
 時に対峙した黒ずくめの連中……、ロシアに行く時もそれっぽい
 人間に接触してるし、それに―――『あの子達』の実験の時も……」

「?」

「ま、要するにどんな思想や目的を掲げているとはいえ、私から
 言わせれば暗部の連中はろくでもない人間ばっかりだって事」

「その連中に―――彼も関わっている」

「あ、いや……ごめん」

249 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:12:07.32 gpg1W9FIo 177/262


「私見一。 謝罪の必要はないと私は考える。 彼は私にとって
 かけがえのない存在であるが、私は彼を善人であると、ましてや
 聖人であるとは思っていない。 大切だと思っているその対象を
 何の考えも無しに信じるだけで疑わない事を、愚かであると私は思う」


と、ミーシャは言う。人を信じて疑わない事は愚行であると、彼女は断言する。


ミーシャは基本的に彼―――、一方通行を信用している。必要な時にはいつだって
頼るし、彼が教えてくれる知識は真実前提で耳を傾けている。今後も彼は自分を
裏切ったり捨てたりしないであろうと、彼女は思っている。

しかしその一方で、ミーシャは一方通行を疑ったりする事もある。
彼は今ウソをついているんじゃないか、彼の考えより自分の考えの方が
正しいのではないか。そう思うことだって当然ある。

250 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:12:49.86 gpg1W9FIo 178/262


事実、彼女は今も一方通行を疑っている。彼がこの街の『闇』と関わっているのではないかと。
そしてそれは未だ確信には至らないものの、美琴の話を聴いてほぼ断定している。


だからミーシャは一方通行とただ『いい人』という視点だけでは視ていない。
一方通行にもきっと何か後ろめたい過去がある。そう認識している。
しかしそれを受け入れた上で、ミーシャは彼と今後も共に過ごしていきたいと考えている。
彼が暗部という『闇』と何らかの関わりを持っていたとして、それでもミーシャは彼を心の底から想う。

人間誰もが善人ではないように、ミーシャという大天使もまた、人間が思い描くような
聖なるだけの存在ではないから。

251 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:13:48.63 gpg1W9FIo 179/262



「問題は、その人の立ち位置よね」


話題を戻すように美琴は言った。


「問一。 立ち位置という言葉の意味するところは?」

「アンタのその、大切な人が仮に暗部に関わっていたとして、
 その人が暗部のどの位置にいるのかが重要ってことよ」

「問ニ。 それは暗部という組織の、どの階級に彼が位置しているか、という事か?」

252 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:14:57.02 gpg1W9FIo 180/262


「それは大した問題じゃないし、そこを議論するのはまだ早いと思う。
 アンタの言う彼が果たして暗部組織の一員なのか、それとも暗部による
 何らかの計画によって虐げられた被害者なのか。 まずはそこでしょ。
 後者ならともかく、前者だったら……言っちゃ悪いけど厄介極まりない」

「……」

「前者だったら、アンタが考えているその人の『闇』を晴らしてあげたい
 って考えが無駄に終わっちゃう可能性があるでしょ? もしそいつが
 そろそろ暗部としての活動を再開すると考えていたら、もしくは再開して
 いたとしたら、下手すりゃアンタは暗部の障害として狙われる事になる」

「私見ニ。 それは考えにくい」

253 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:15:28.27 gpg1W9FIo 181/262



ミーシャは前髪から覗くその瞳に強い力を込めながら否定した。


「美琴が提示する可能性を全て否定することは出来ないが、彼が今後、
 暗部が行う活動に積極的に参加する可能性を私は考慮できない。
 彼にそんな意欲が残っていたのなら、私と出会ってすぐにでも活動を
 始めていたはず。 これは信頼関係の問題ではなく、あくまで可能性の
 話であることを注釈しておく。 信じたくないのではなく、不自然という事」

「アンタとその人が出会ったのっていつよ?」

「解答一。 第三次世界大戦直後、私が一方的に彼に接触した」

「大戦後、か。 まぁ時期を聞いたところで、私は暗部の詳細な動きを
 知っている訳じゃないし、その辺はもう本人に聞くしかないわよね」

254 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:16:24.30 gpg1W9FIo 182/262



美琴は深くため息をついて、冷たい風が侵入してくるベニヤ板だらけの
壁を見つめながらしばし考えをまとめた。


「そいつが暗部の一部だった場合と被害者だった場合、
 アンタはそれぞれどういった対処をとるつもりなの?」

「解答ニ。 どちらにせよ私は暗部を破壊する方針を固めている。
 美琴の情報提供を受けて私から迷いが晴れた。
 彼の心を聴いたからこれだけは確信をもって言えるが、彼は
 暗部に対し積極的でない。 彼にとって暗部が不必要であるなら
 私は暗部を排除する。 当然、それには彼や暗部の『事情』を
 深く知る必要があるが……、でもやはり放置できるレベルではない」

255 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:17:18.85 gpg1W9FIo 183/262


「そういうと思ったわよ。 でもそれなら、私も協力するからね」

「……私見三だが、美琴はこれ以上関与しない方がいいと考える。
 情報提供という協力だけで私は充分だし、深く感謝している。
 私から話を振っておいて関わるなとは身勝手かもしれないが、
 この先のことまで関わっては、美琴だけじゃなく他の人間も危険に」

「条件、って言ったでしょ」


薄い笑みを浮かべながら、やんわりと突き放そうとしてくれるミーシャに美琴は言った。

256 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:18:04.83 gpg1W9FIo 184/262



「情報は教えるから私にも協力させろって言ったの、忘れてない?
 あの条件はまだ満たされていないわよ。 私の友達が暗部に牙を剥く
 って聞いて放っておけるわけないでしょうが。 それに個人的にも
 知りたい情報があるのよ、恐らくは暗部絡みで」

「しかし」

「しかしもクソもありません。 じゃあ私は勝手に独断で動くから」

「……それをされると私は困惑する。 私だって美琴を放置しておけない」

257 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:18:38.01 gpg1W9FIo 185/262


「じゃあ仕方ないわよねえ?」

「ちっ」

「露骨に舌打ちすんなや!」


それでもミーシャは、最後には笑顔で美琴に感謝を告げた。
心強い仲間を得た彼女は立ち上がり、


「彼と話をつけてくる。 結果は追って連絡する。 ……あ、」

258 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:19:05.45 gpg1W9FIo 186/262


「?」


突然衣服をまさぐりだしたミーシャは、やがて自分が着ている服にポケットが
無いことに気がつくと、


「迂闊。 携帯電話を『上』に置いてきたままだという事実を失念していた」

「上?」


連絡手段はこっちでどうにかするという旨の言葉を言い残し、ミーシャは一旦部屋から去って行った。

259 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:19:48.43 gpg1W9FIo 187/262



――――――――――――――――――――――


ミーシャ=クロイツェフのいう『彼』とは一方通行の事。
ミーシャ=クロイツェフのいう『会っておかなければならない人間』とは御坂美琴の事。
ミーシャ=クロイツェフは奇しくも第一位と第三位と繋がりを築いている。

いや、奇しくもという言葉は間違いかもしれない。なぜならこの繋がりは
ミーシャ自身の選択と行動で得たものだからだ。偶然はあまり絡んでいない。

260 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:20:32.93 gpg1W9FIo 188/262



「……」


暗部の解体。それに御坂美琴も参戦することが決まった。
ミーシャとしては望ましくない展開だったが、しかし自分が暗部と対立すると
彼女に話した時点でこうなることを、ミーシャは心のどこかで予感していた。
仮に今回の件で美琴の身に何かあれば責任は全てミーシャにある。


「……私にある」


少なくともミーシャはそういう心構えでいた。

261 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:21:44.83 gpg1W9FIo 189/262


その一方で、


「…………学園都市の超能力者(レベル5)、か」


実は美琴との会話を経て、この大天使はまた全然関係ない別の事柄について考えていた。


―――学園都市の超能力者は一体どのような人間関係なのか?


超能力者はこの学園都市に何人いるのだったか、とミーシャは記憶を振り返る。
正確な人数をどこかで聞いたような気がしないでもないが、確実に言えるのは
学園都市に存在する超能力者は極めて数が少ないということだ。

262 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:22:49.47 gpg1W9FIo 190/262



「やはり人数が少ないだけに、超能力者同士が接触する機会も多かったのだろうか。
 超能力者には超能力者だけの特別な実験が行われていると聞く。 その際に偶然、
 もしくは必然的に出会っていたりしていたとして……彼らの友好度とは如何程に」


超能力者自身の人間性ではなく仲の良し悪しに着目する。
この辺りやはりミーシャは人間とは少し違う考え方を持っている。
基本、友好と交流に重きを置く彼女ならではの着眼点である。


例えば、第一位と第二位は非常に仲が良い。少なくともミーシャの目にはそう映っている。
実際には犬猿の仲というか、事あるごとに衝突している方が多いのだが、それを仲が良いと
判断するミーシャの考えも決して間違いではないだろう。

263 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:24:53.07 gpg1W9FIo 191/262


例えば、第一位と第四位は……どうだろうか。
ミーシャからすれば、決して仲が悪い訳ではないというのが第一位と第四位の関係性だった。
互いが完全に心を許し気遣い合っているというレベルではないが、日常会話を交わす程度には
友好を築いているのではないか。これがミーシャの見解だった。

第二位と第四位についてはミーシャには分からなかった。二人が会話をしている場面を
見たことがないからだ。機会があればどちらかに聞いてみようかとミーシャは思った。

例えば残りは……第五位から第七位くらいまで超能力者がいたとして、その人間はどうなのか。
会った事がないためやはり分からない。いつか暇を見つけて捜してみようか、と考えた。

では、


「……彼と美琴はどうなのだろうか」

264 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:25:59.85 gpg1W9FIo 192/262



ミーシャは第一位と第三位の関係について推測し、やがてある事に気付いた。
打ち止めと番外個体という、美琴に酷似した姿の二人の少女の存在に。


「打ち止めと番外個体は彼と良い関係を築いているはず。
 ……確かあの『事件』の時も、彼は"ミサカ"と執拗に名乗る
 少女と電話で会話をしていた。 つまり彼と美琴には繋がりが……」


しかも第二位や第四位とは比較にならない程の強い繋がりがある。

という結論にミーシャは至った。そして、

265 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:27:09.41 gpg1W9FIo 193/262



「うん……じゃあ、それならば険悪な関係ということはないだろう」


そう決めつけた。決めつけてしまった。

とにかくミーシャ=クロイツェフは誰とでも友好関係を築きたい。
誰とでも仲良く、誰とでも友達。一人の少年に出会い過ごしていく内に
彼女の中ではその思いが特に強く濃く反映されていった。

それを楽しみとしていた。生きがいとしてきた。事実、その思いがままに
行動していくことで彼女の人間界での生活は素晴らしく充実していった。

266 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:27:56.75 gpg1W9FIo 194/262



「暗部との戦いは恐らく過酷なものとなる。 ならばそれが終わった後に
 少しでも彼と美琴の心が安らぐような何かを提供したい…………」


ミーシャ=クロイツェフに、悪気などは一切存在しない。


「彼に美琴を紹介しよう。 美琴に彼を紹介しよう。 どちらも私の大切な友達だと」


だからミーシャがそんなサプライズを考えついたとしても、誰も責められない。

267 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:29:44.26 gpg1W9FIo 195/262



「まずは暗部の件を片付けて、彼と美琴を会遇させる。 ……させるという時点で
 会遇ではないかもしれないが、二人にとっては急な出来事に驚愕を禁じ得ない。
 そして今夜は三人で過ごす。 そうすれば彼も美琴も、暗部絡みの嫌な思い出を
 忘れるはず。 心の蟠りを払拭し、明日を気持ちよく過ごす事が出来るはず」


そうなれば彼も美琴も喜んでくれるはず―――ミーシャはにっこりと微笑んだ。
もしかしたら自分が美琴に必要以上に彼の存在をひた隠しにしたのも、
心のどこかで二人をいきなり会わせて驚かせようという試みからの無意識による
ものだったのかもしれないと彼女は思った。


こういう感じで、今も裏で進行中の『サプライズ』を思いついたのだろう。
ミーシャの突然の閃きはいつも誰かが迷惑を被るが、しかし最終的には
皆が笑顔になって終わったケースも少なくない。

268 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:30:32.07 gpg1W9FIo 196/262


だから今回も必ず良い方向に進んでいく。大天使は確信していた。


「そうとなれば現時点で美琴の事を彼に明かす訳にはいかない。
 もちろん美琴にも。 ……うん、今日も楽しい一日になりそうだ」


ミーシャに悪気はない。全て良かれと思っての考えだ。


だが彼女は学ぶ必要があるのかもしれない。


善意や厚意は時に―――裏目に出てしまうことがあるのだと。
それが人間関係というものだと、彼女は学ばなければならないのかもしれない。

269 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:33:44.53 gpg1W9FIo 197/262


今回はここまでです。

ミーシャは悪くないんですよ。彼女は天使なだけにピュアなので、
みんな仲良くなれると信じているだけなんだ!

……この場面書き溜めしてる当時に新約3巻が発売されていればなぁ……良かったんだけどなぁ……。

ともあれ、果たしてミーシャの目論見通り事は運ぶのか。
そしてvs暗部の行方は如何に。
次回からは超久々のバトルパートに突入します。
といっても急に始まるわけではなく、そしてまともな戦闘無いですけど。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

270 : 次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/09 10:34:18.37 gpg1W9FIo 198/262




                          【次回予告】



「貴方が暗部に関わっていること、そしてそれに苛まれていること―――ぜーんぶお見通し」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・サーシャの肉体に宿った『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ




「キャラうぜェ……」
『天使同盟』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




284 : VIPに... - 2012/07/11 06:42:21.22 w6JwLHa/o 199/262

いまさらなんだが天使の思考(心)を読むというのは原典を読むと同義のように思えるようなキガス

少なくとも人間よりも上位の存在を理解したり干渉しようとするのはそれなりの代償(痛みとか色々)が必要(発生?)だったとwikiかなんかに書いてあったような。気のせいだったらそれでいいんだが

285 : VIPに... - 2012/07/11 09:48:23.34 oF7rkj2F0 200/262

とりあえず、みさきちすげぇでいいんじゃね?

286 : VIPに... - 2012/07/11 15:38:12.63 w6JwLHa/o 201/262

>>285
そっか、ならそれでいいや

287 : VIPに... - 2012/07/11 17:25:52.69 HF+5NpIIO 202/262

それでいいのかよw

296 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:49:10.86 NTIVVeG/o 203/262

>>284
そうですね。理解の範疇を超える存在への干渉には
相応のリスクを背負う必要があります。

前回の小ネタ、食蜂操祈がミーシャへの読心を試みましたが
あれ、成功していません。心を読んでも不明瞭で理解不能の
ノイズが送られてくるだけで、しかしかろうじて何となく
『第七学区のファミレス』がどうこう言っているような気がしただけです。
つまり食蜂がドヤ顔してたのも御坂に対するハッタリです。
でもそれでも何らかの悪影響が及ぶ可能性もありますが、そこはもう小ネタなので
気にしないで……というつもりで書いてみました。

ありがとうございます、こういうご指摘、本当に助かります。
気の弛みを引き締めることが出来るのでありがたいです。

ちなみにファミレスの店員はもうなんか……すごい人になってますが、
まあ彼女は放っておきましょう……。

297 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:51:28.80 NTIVVeG/o 204/262


で、ついでに更新もしちゃいます。蛇足の方の更新です。

前回ミーシャの相談を経て暗部解体に協力する事になった御坂。
今回はその旨を一方通行に伝え、いよいよ暗部との戦いに挑みます。

それでは、よろしくお願いします!

298 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:51:59.67 NTIVVeG/o 205/262



――――――――――――――――――――――


そしてこういう展開になると頭を抱えることになるのはやはり彼なわけで、


「……」

「――――以上で私からの事情説明を終了する。 貴方、私は
 全面的に貴方のバックアップに務めることをここに誓う。
 現時点での貴方の最優先懸念事項、暗部。 及びそれの解体、
 私と貴方が協力すればそれは非常に容易であると考えるが」


学園都市は夜を迎えていた。最終下校時刻などとうの昔に過ぎ去っている。
街は明日、一端覧祭最終日に備えて休息の形をとっていた。

299 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:52:32.68 NTIVVeG/o 206/262


しかし『天使同盟(アライアンス)』―――その一部、一方通行とミーシャ=クロイツェフの
夜はこれからだった。


「…………暗部の存在と、それを潰す算段を俺が立てていたこと、
 一体どォやって知り得た。 まさかエイワス辺りがオマエに
 余計なことを吹き込ンで動かしてるなンてオチじゃねェよな?」

「解答一。 私と貴方の間で隠し事、秘め事が生じることは意識ある者同士の
 交流故致し方ない面もあるが、しかし貴方。 その隠し事が看破されてしまった
 時の保証を私は約束していない。 よって私は『独自』の情報収集を経て、
 貴方が暗部に関わっていること、そしてそれに苛まれていること―――」


ミーシャ自分の面前に人差し指を持っていき、円を描くようにくるくると回しながら、

300 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:53:13.24 NTIVVeG/o 207/262



「―――ぜーんぶお見通し」

「キャラうぜェ……」


一方通行はビルの側面に乱暴に背中を預け、あからさまな舌打ちをしてみせた。


彼は夕方前頃のことを思い出す。ミーシャ=クロイツェフ、彼女が急に
自分の心の『闇』を指摘してきた事。"心を聴いた"とかなんとか言っていたが、
まさかあんなわずかな"ほつれ"から『一方通行は暗部に関わっており、それに
悩まされている』という点まで看破されてしまうとは思っていなかった。

301 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:54:19.79 NTIVVeG/o 208/262


だが、それでもさすがに心を聴かれたくらいで暗部の存在、関わりまで全てを
見通せるはずがない、一方通行は考える。つまり誰か、一方通行も知らない
『第三者』がいる。その第三者がミーシャ=クロイツェフの拙い推測を"肉付け"し、
穴だらけの推論を穴埋めしてしまったのだと。


「オマエにくだらねェ情報を吹き込みやがったのは誰だ」

「解答ニ。 そのような者は存在しない。 全て私が思考し、この現状に至った」


ミーシャ=クロイツェフは嘘をついた。一方通行が疑う第三者―――御坂美琴は
彼女に暗部の情報を自分の知りうる限り提供している。
ミーシャが美琴の存在を隠したのは彼女のことを慮ったからではない。
否、暗部に関する情報を漏らしたのが美琴だと一方通行に知られると、
一方通行が美琴に厳しく非難を浴びせてしまうのではないかと危惧したからだ。
二人の関係を知らないミーシャだからこその判断と言えるだろう。
そして二人の関係を知らないからこそ、ミーシャは……。

302 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:55:17.74 NTIVVeG/o 209/262



「あとのお楽しみ」

「あン?」

「何でもない」


それに一方通行に美琴のことを知られ、そちらに話題を持っていかれ、一緒に暗部を
解体する云々の話をうやむやにされたくなかったのだ。
この戦いに美琴も協力する以上、とてもまかり通せる嘘とは言えないが、
すぐにバレてしまう嘘ではあるかもしれないが、とにかく美琴が情報提供者だと
知られなければいいのだ。

303 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:56:02.49 NTIVVeG/o 210/262



―――どうせ事が終わったら、二人は嫌でも出会う事になるのだから。


「……」

「私見一。 信じてもらわなくても構わない」


嘘をついていなかったら、彼女はここで『信じて』と言っていただろう。

304 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:56:41.44 NTIVVeG/o 211/262



「私見ニ。 貴方にはこれから先も、ごく平穏に暮らしていてほしいと
 私は願っている。 それを実行する上で暗部が障害となりうるのなら
 私は全力を以て処理する所存である。 貴方に立ち塞がる障害は、
 私に立ち塞がる障害も同義だ。 ならば打破しなければならない」

「……、」

「そしてそれは私の一方的な私情であり、貴方はこれに対し同意する義務を持たない。
 多少強引な手段を使ってでもここで私の協力を拒絶することは貴方の自由だが、
 それでも私は退かないだろう。 貴方が首を縦に振って了承してくれるまでは」

「……、」

305 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:57:23.04 NTIVVeG/o 212/262


「つまり私は今、貴方を説得していると――――」

「ああァもォうぜェうぜェうぜェ! わかったら少し黙れクソったれ」


白いため息をつきながら、唐突に一方通行がミーシャの言葉を中断させた。


「参った、クソが。 降参だ、オマエの同行を認めてやる」


前髪で隠れてはいるが、それでもミーシャのキョトンとした瞳は窺うことが出来た。
突然の了承。許可がくだった。一方通行は彼女との協力体制を肯定したのだ。

306 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:58:08.63 NTIVVeG/o 213/262



「ったくよォ、オマエは天使じゃなくて疫病神なンじゃねェかと
 思っちまう。 ついオルソラとの会話を思い出しちまったぜ」

「?」

「もォイインだよ、『巻き込みたくない、巻き込ませない』論争は。
 うンざりだ。 『天使同盟』なンて集まり作っちまった時点で
 その議論は不毛になるンだろォよ。 テメェから一蓮托生ほざいて
 おいて、いざとなったら巻き込みたくありませンじゃ意味不明だからな。
 はいはいすいませンでしたァ、俺の考えが間違ってました謝罪しますゥ」

「問一。 では、」

307 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:58:52.61 NTIVVeG/o 214/262



一方通行は諦めたように、しかしどこか嬉しそうな、安心したような薄い笑みを浮かべて、


「言ったからには全力で協力……、いや、俺に利用されろよクソ天使」

「解答三。 感謝する」

「クソが……、サーシャの体借りて流暢に喋れるよォになったら
 余計うざくなったなオマエ。 マジで一回"向こォ"に還れや」

「解答四。 "あっち"になら既に一度帰還している―――否、」

「?」

308 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 09:59:44.39 NTIVVeG/o 215/262


「"あっちに向かう"、が今の私には正しく、相応しい。 私の帰る場所はここだけ」

「……? 前半の部分が引っかかるが、まァそォだな。 ここがオマエの居場所だ」


果たしてミーシャは一方通行との同行許可を得ることが出来た。
これで彼にまた尽くすことができる、その事実を深く噛み締め、
ミーシャはにっこりと笑顔を浮かべる。


「私見三。 これでまた彼に尽くすことが出来るし……、
 "他の女ども"を置いて大きくリードすることが出来た……。
 全ては計画通り、所詮下界の者共……私には敵わぬ」


くくく……と不気味に笑うミーシャに一方通行は得体の知れない悪寒に襲われたが、
追求したら何か『いけないスイッチ』を押してしまいそうな気がしたためスルーした。

309 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:00:33.01 NTIVVeG/o 216/262



話も一段落ついたところで、話題は本来の目的の具体案に移行する。


「問二。 それで、暗部の解体を具体的にどう実行するのか、
 貴方の意見を拝聴したい。 勢いで同行を申し出てはみたが、
 結局のところ私は暗部がどのような組織なのか知らないから」

「その場のノリで馬鹿みてェな連中の案件に首を突っ込ンでいる事を
 自覚しやがれ。 ……確かにオマエの言う通り、一度失った機会を
 再び手に入れたってンで暗部の解体を考えはしたが……。 しかし
 実際、どォやってそれを成すかまではまだ思案してる段階なンだよ」

310 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:01:35.95 NTIVVeG/o 217/262



言うは易し行うは難し。『暗部潰す』と口では一丁前に言えても、
じゃあやってごらんと促されたらどう行動すればいいかわからない。
レベル5第一位の一方通行ですら、一人では暗部は手に負えないのだ。

第二位の垣根帝督も、言うなれば暗部に飼われていた人間である。
第三位の御坂美琴も、暗部の片鱗に触れただけで絶望を味わった。
第四位の麦野沈利も、結局は暗部に散々振り回されていただけだ。

軍隊を投入したって果たして撃破できるかどうか。なにせ暗部とは
科学の総本山、学園都市の『闇』。ある意味一国を相手にするより
辛い組織だ。たった一人の子供がどうこう出来る問題ではない。

311 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:02:21.43 NTIVVeG/o 218/262



しかしたった今、その愚行に付き合ってくれるという仲間が増えた。
これで二人。しかしその協力者がそこらの能力者や魔術師では五十歩百歩。
巨象に歯向かう蟻が一匹増えたところで、二度踏みつけられて終いである。


だが、その協力者が人外の領域に位置する怪物だったらどうか。


「……初っ端から賭けになるな。 こンな会話をしてる時点で、しかし
 俺に何らかの干渉がねェって事は、『滞空回線(アンダーライン)』の
 機能は働いてねェらしい。 後は野となれ山となれで済めばイイが」

「?」

312 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:03:08.30 NTIVVeG/o 219/262


「あと一人……いや二人、戦力になるヤツがいりゃァかなり安定するンだが……、
 今から人手を集めるのはさすがに厳しいか……? だがやっぱ明日にしよォで
 片付けられる問題でもねェ。 ……やるしかねェか」

「私見四。 私に暗部の詳細情報を話してくれた人間は存在しないが……、
 私達がこれから望む戦いに協力してくれる者なら存在する」

「何?」


人手が足りないという一方通行の言葉を聞き、ミーシャはここで先ほど思った
『美琴が「情報提供者」』ではなく『「協力者」だと認識されるのは構わないかも知れない』という
考えを暴露してみることにした。

313 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:03:46.64 NTIVVeG/o 220/262



「補足説明すると、それは一人であり、しかし信頼出来る人間だ。
 そして私のかけがえのない友人の一人でもある。 つまり現状、
 我々は三人の戦力が揃っているということになる」

「……、友人だァ? そいつは―――」

「ここで詳しく話している暇は無いと、貴方も理解しているはず。
 事が済み次第必ず事情を説明することを約束するから、
 今は言及を避けてほしい。 戦力は現在三人、これが事実」


御坂美琴の名は念のため伏せておき、あとで必ず説明する約束をして
ミーシャは協力者の存在を明かした。一方通行なら協力者=情報提供者だと
看破してしまうかもしれないが、それによって美琴が非難を浴びてしまうかも
知れないが、もうそうなったら自分が間に入ってフォローしようと決めた。

314 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:04:18.17 NTIVVeG/o 221/262



「なンか気味が悪いが……、オマエの友人ってくらいだ、ロクなヤツじゃ
 ねェンだろ。 俺の、暗部の事情を知った上で協力するっつってンだろォ
 からな。 まァイイ、こォなりゃ使えるモンは何でも使ってやるまでだ。
 ……オマエの友人とは別にあと二人、"あいつら"も巻き込ンじまおうか」

「?」

「これで俺の想定通り事が運べれば上手くいく。 イイか、よく聞け―――」


どうやら第一位の頭脳にある一つの妙案が浮かんだようだ。
彼は概要をミーシャに伝え、一旦この場から解散する事にした。

315 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:05:07.88 NTIVVeG/o 222/262



――――――――――――――――――――――


白井黒子が風紀委員の勤務を終え帰宅し、就寝してからも美琴は
部屋にあるパソコンの前から離れることはなかった。
薄暗い室内に、彼女が操作するキーボードの打鍵音だけが寂しく鳴り渡る。


(『書庫(バンク)』へのハッキングはこれで二回目……三回目? だっけ。
 すぐ後ろで風紀委員が寝てるって状況の中、こんなことすんのはさすがに
 気が引けるけど……触発されたというか、こうなりゃとことんやるまでよ)


『書庫(バンク)』。学園都市の総合データベースである。

316 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:05:39.22 NTIVVeG/o 223/262



そこには学園都市に住む能力者のデータが網羅されており、風紀委員や
警備員が特定の人物の情報を得るために利用するのが主であるが、
能力者のデータが網羅されているという事実がある以上、当然今の美琴の
ように悪質なハックを仕掛けてくる者も少なくない。

が、美琴は何も悪意をもってハッキングを仕掛けているわけではなかった。
彼女は過去に数度、この『書庫』へハッキングを試みてみるが、その時に
閲覧した情報を他者や『外』に漏らすような愚行は働いていないし、
そんな人間でもない。


(『守護神(ゴールキーパー)』に悟られる前に何とか手がかりだけでも……)

317 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:06:20.54 NTIVVeG/o 224/262



理由はミーシャ=クロイツェフ、と言って過言ではないだろう。
彼女の口から出た暗部というワード。それが美琴をデータベースへの
ハッキング行為に至らせる原因となった。彼女はとある情報を得たく、
その情報にはもしかしたら暗部が絡んでいるのかも知れないと踏んだのだ。


そしてそれはあの忌まわしき『実験』の事―――ではない。


(一昨日に開催された学園都市製兵器の展示会……それに出展されてた
 兵器の一つ、どうもきな臭いのよね。 『第一九学区事件』で回収
 された駆動鎧をカスタムしたとかって話だけど、アレだけ他の兵器
 とは違う『匂い』を感じたし、それに"個人的にあの兵器は気に入らない")

318 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:07:19.47 NTIVVeG/o 225/262



もし美琴が現在、調査(という名のハッキング)をしている兵器が
暗部絡みの産物であるとしたら丁度いい、と彼女は考えていた。
その兵器を詳細を発見すれば、自分は自分の得たい情報を手に入れられるし、
それが暗部絡みの兵器だとすればその兵器を手がかりに更に暗部の深い部分を
探ることが出来るかも知れない。危険ではあるが、同時に一石二鳥。

ただその兵器の情報が『書庫』にあるかどうかは望み薄であったし、
それは美琴も承知していた。暗部が開発した兵器ならそれをわざわざ
『外』の人間の目にまで触れる可能性のある展示会に出展するわけが
ないし、『書庫』にあったとしても情報閲覧の可否を強引に突破できる
レベルのセキュリティではないだろう。あの『天使同盟ハッキング事件』以来、
データベースのセキュリティ保護体制は尋常ではないくらい厳しくなっている。

319 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:07:46.78 NTIVVeG/o 226/262


だが美琴には他に成せる手段が無かった。暗部解体の協力をミーシャと
約束したはいいものの、美琴には今の暗部がどういう状態であるかを
知る術と情報が圧倒的に不足していた。レベル5の第三位とはいえ、
彼女は『闇』と何の関係もないごく普通の一般学生。暗部の情報を
欲しい時に手に入れられる環境が無くて当然の立場なのだ。


だからこそ、およそ関係性の無いであろう拙い手がかりからでも
芋蔓式に情報を得ることが出来ないか、美琴は奮闘しているのだ。


(あった!)

320 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:08:20.22 NTIVVeG/o 227/262


一時間ほどパソコンのディスプレイと睨み合いをしていた頃だろうか。
美琴が知りたい兵器の情報が『書庫』に記載されているのを彼女は見つけた。
これで閲覧するまでに至ることが出来れば美琴の個人的な目的は達成された
ことになるが、この兵器が暗部絡みで、かつそこから暗部全体の情報を得られるかは
まだわからない。


(まず名称からしてムカつく……! 『Lost_Over.Modelcase――――』)


と、


「のわぁっ!?」

321 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:09:05.43 NTIVVeG/o 228/262



突然美琴が素っ頓狂な悲鳴をあげた。無意識の悲鳴であったため声量が大きく、
彼女は思わず口を手で塞ぐ。咄嗟に背後を向いて白井の様子を窺うが、幸いにも
彼女は美琴がもう聞き飽きてしまった寝言を呟き、快眠したままであった。


「な、何よこれ……?」


美琴が悲鳴をあげたのはもちろん驚いたからであり、驚愕したからであり、
そしてそれは二つの意味で驚いたからだ。

まず一つは、ミーシャが壊した壁の修理に使用していたベニヤ板が派手な音を立てて
破壊された点。悲鳴と重なったこともあり、白井や他の生徒、寮監が目を覚まさなかったのは
ちょっとした奇跡といっていいだろう。

322 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:09:32.68 NTIVVeG/o 229/262


そしてもう一点。ベニヤ板の壁が破壊された理由が―――豈図らんや『矢文』だったのだ。


このご時勢、しかも科学一辺倒の学園都市で矢文を受け取る経験など、恐らく美琴以外は
味わったことがないだろう。飛んできた矢はドラマのように部屋の壁にビシッと突き刺さる
ことなく、無様に床へ落下していた。壁を突き抜けた際に威力がほとんど吸収されたのか。

美琴はまず最大級の警戒をしながら矢が空けた穴を覗き、特におかしな様子は窺えない事を
確認すると床に落ちた矢を拾い上げた。本矧の部分に小包が結ばれている。中に何かが
入っているようだ。

323 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:10:30.70 NTIVVeG/o 230/262



「ひいっ……」


小包の中身を見て、美琴は表情を引きつらせた。粘土状の素材で作られた不気味な
人形が一体、袋の中に入れられていたのだ。埴輪……に近いかもしれないその人形は
非常に簡素な作りになっており、細かな部分は象られていない。


『問一。 霊装は無事に届いたか』

「ぎゃあ!」


いよいよ美琴は遠慮なく悲鳴をあげたが、それでも白井は目を覚ます事がなかった。
死んでいるのだろうか。

324 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:11:00.40 NTIVVeG/o 231/262


人形から声が響いた。怖がりの人間ならここで人形を蹴飛ばすか踏み潰す行為に出ても
不思議ではないが、美琴はすんでのところで思いとどまった。
その声―――というよりも、口調に聞き覚えがあったからだ。というか数時間前に聞いている。
あの独特の、遠まわしな、少々ウザい喋り方は間違いなく、


「あ、アンタ……ミーシャなの?」

『解答一、その通りだが……まさかまた身分の確認をされるとは思わなかった』

「当たり前でしょうが! 金髪少女の姿で現れたかと思ったら
 今度は気味の悪い人形の姿で、しかも矢文で飛んできて!
 アンタは気を衒わないと私と交流出来ない病気にでもかかってんのか!?」

325 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:11:51.68 NTIVVeG/o 232/262


『解答ニ。 その人形は私自身が模している姿ではなく、霊装だ』

「れいそう?」

『…………。 補足、今回の霊装は美琴側の言葉で言う、携帯電話』

「デザインが奇抜すぎる!」


ともあれ、どうやらその奇抜なデザインの人形に向かって喋る必要があるため、
美琴は露骨に嫌そうな表情を浮かべつつもそれを手に取った。

326 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:12:36.11 NTIVVeG/o 233/262



「で、何よ?」

『暗部の件についてだが、これから早速行動に移る』

「え、もう? ……相手が相手なだけに、もっと入念に準備して
 おいた方がいいと思うんだけど。 それってアンタの判断なの?」

『解答三。 私ではなく、彼の判断。 入念に準備をして叩かれるのを
 待つほど、暗部は暢気ではないとのこと。 あ、あん……何だったか、
 「あんだーらいん」? なるものが機能していない今が最大の好機で
 あるらしい。 急で申し訳ないが、今から行動することは可能か』

327 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:13:22.29 NTIVVeG/o 234/262


「……? ふうん……、どうやらアンタの言う彼ってのは、相当に
 暗部の事情をお知りのようね。 それでいて速攻カタをつける判断が
 下せる辺り、アンタの言う彼ってまさか"アイツ"じゃないでしょうね」

『?』

「何でもない。 今からか……、とりあえず私個人の現状じゃ動きようが
 無いし、アンタらの指示に従うわ。 私はどうすればいいわけ?」


最後にもう一度だけ白井の様子を入念に窺い、間違いなく就寝していることを
確認した美琴はミーシャの指示を霊装越しに待ってみた。

328 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:13:58.26 NTIVVeG/o 235/262



『解答四。 これから指定する病院へ速やかに移動してほしい。 当然、
 侵入という形になるが全ての責任は我々がとる。 安心してくれていい』

「病院……? そこが暗部組織の根城だなんて言わないわよね。
 侵入か、防犯セキュリティは私の能力で容易に破れるでしょうけど、
 場所が場所なだけに慎重にやらないとね。 それで、次は?」

『予め伝えておくが、我々と美琴は別行動。 我々が別の場所で「一悶着」を起こす』

「アンタらが向かう別の場所ってのが本命って事でいいのか? 何か
 腑に落ちないけど、私が病院に行く必要は当然あるんでしょうね?」

329 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:14:49.13 NTIVVeG/o 236/262


『彼から聞いた内容をそのまま伝えたほうが要領を得やすいと判断した。
 「俺が連中を出し抜いた際に妙な動きを見せる奴が院内にいたら迷わず潰せ」。
 彼は私にそう指示したが、それを美琴に実行してもらおうという事』

「んん……ややこしいわね。 つまり?」

『解答五。 美琴が暗部の情報提供者である事は彼には伏せたが、
 協力者が存在することは明確にしておいた。 その際、私は
 美琴と共に目標の本陣へ仕掛ける役割を務めると提案したが、
 彼がそれを拒否した。 協力者―――美琴に危険な役割を
 負わせたくないという判断からそうしたのだと私は考える』


美琴は今日、部屋でミーシャと交わした会話の内容を思い出す。

330 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:15:50.40 NTIVVeG/o 237/262


ミーシャは最初、『彼』が暗部に関わっているのかどうかさえ曖昧な様子だった。
それはつまり、『彼』はミーシャにそちら側の事情を知られたくないため教えて
いないという事。だから情報提供者の存在を隠した。

そして協力者に対しても極力リスクを減らし、自分がそれを被るという考え。

安直ではあるが、それを察するに『彼』の性格は―――


「―――極力、周囲の人間を巻き込みたくないって考えてるヤツって事か。
 暗部……いやもう元暗部になっちゃう訳か。 成程、バカだけど、実直
 というか……端的に言って、"お人好し"なのね。 ますます"アイツ"っぽい」

331 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:16:40.66 NTIVVeG/o 238/262


『私見一。 私個人の都合から彼の素性を明かすのはまだ避けたいのだが……
 どうしても知りたいのなら今ここで教えてもいい。 これは私が単に我儘を
 言っているだけで、美琴が求めるのであれば暴露もやぶさかではない』

「いやいや結構。 なんか暗部だのアンタだのとは全然別に、そいつに
 ちょっと興味が出てきたわ。 少し面白くなってきた。こうなりゃ私が
 独自に調査してそいつの正体明かして、アンタの事からかってやるから」


ミーシャ=クロイツェフという天使、人外が惹かれるほどの人間が学園都市に居て、
しかもそいつが能力者であるという点に美琴は注目した。
そして暗部に関わってはいるものの、既に足を洗う算段をつけており且つ解体する方針を定め、
それでいて他人は絶対に巻き込みたくない、そう考える人間。
美琴でなくとも、もしかしたら興味が湧く者もいるかもしれない要素が『彼』には満載だった。

332 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:17:29.92 NTIVVeG/o 239/262



「じゃ、私はその病院に行って、怪しい動きを見せたヤツを懲らしめればいいのね?」

『正答。 彼曰く、その連中は必ずそこにいるから、侵入の際には目撃されないよう
 厳しく用心しておくようにとのこと。 美琴、危険な状況に置かれたらすぐに逃げて』

「誰の心配してんだっつーの。 それじゃ、アンタも気をつけてね」

『了解。 また連絡する可能性があるため、霊装は所持しておいてほしい』


その後、ミーシャから作戦内容の詳細を聞いた美琴は、最後にパソコンで
調べていた情報を確認し終え、白井を一瞥して寮から出て行った。


美琴が調べていたのはとある『駆動鎧(パワードスーツ)』の情報であった。
どうも暗部辺りが絡んでいる匂いがする、曰く付きの怪物兵器。

彼女が目星をつけた駆動鎧は、"二機"。

333 : ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:23:42.38 NTIVVeG/o 240/262


今回はここまでです。

次回、対暗部パートになるわけですが……正直、バトルパートとはいえません。
ぶっちゃけると『天使同盟』で俺tueeeeな展開が繰り広げられます。
このSS、実を言うまでもなくあんまり無双的な事してないんですよね。
せいぜい対プライベーティア戦の時くらいで、あとは何かと苦戦しています。

なので対暗部は終始、圧倒的に『天使同盟』優勢で進行していきます。
つまらないと思われるかもしれませんが、たまにはこういうのも書きたかったので……。
どうかお付き合い願えればと思います。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

334 : 次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI - 2012/07/12 10:24:14.77 NTIVVeG/o 241/262




                          【次回予告】



「暗部組織同士の抗争の時と同じ手だ、覚えてンだろ? こォすりゃ
 オマエは強制的に電波に介入して俺に忠告せざるを得なくなる」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




「敵側の行動展開が予想以上に迅速であることを確認した。
 こちらも素早い対応をしないと―――勝ち目が無くなる」
『天使同盟』の構成員・サーシャの肉体に宿った『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ










以上、ここまでで、作者と思われる方の書き込みは終わっています。
もし、どこか別の場所で、続きが書かれているのであれば、ご存じの方がいらっしゃいましたら、教えていただきたいと思います。






356 : VIPに... - 2012/07/16 02:52:43.81 9dme2q7SO 243/262

あれ

358 : VIPに... - 2012/07/16 13:13:50.55 ie0tmtJio 244/262

なんかあったのかな
ちょっと心配

359 : VIPに... - 2012/07/16 17:00:10.37 ZJw7YmrAO 245/262

一日くらい待とうぜ

360 : VIPに... - 2012/07/16 20:57:36.74 I/y2rxNAO 246/262

最終日とはいえ連休だったんだし、家にいないんじゃないの

361 : VIPに... - 2012/07/17 02:44:29.00 EUPZGIBDO 247/262

更新が遅れるのは仕方ないが、連絡がないのが不安だな…

最悪携帯でも書き込めるわけだし…
なにか事故や病気じゃなければいいが……

362 : VIPに... - 2012/07/17 03:25:02.68 coZ9d93AO 248/262

今までほぼ有言実行だっただけに心配

各ルートを見届けるまで死ねないので早く帰ってきてください……




374 : VIPに... - 2012/07/18 18:56:22.72 5UMm/SvAO 250/262

生存報告が欲しい
マジで心配になってきた

375 : VIPに... - 2012/07/18 19:19:20.80 srz9MjI8o 251/262

この2年弱ずっと3日以内に定期更新してたのに、音沙汰なく更新遅れるのは初めてだな
マジで安否が不安

376 : VIPに... - 2012/07/18 21:42:13.63 vwlQ8Pbm0 252/262

大丈夫ですかね?      急病じゃなきゃいいんですけど  




760 : VIPに... - 2012/09/01 20:33:40.29 3cnaD9dv0 254/262

モニターが逝ったままなのかも
前スレ>>899でそう言ってなかった?

761 : VIPに... - 2012/09/01 20:59:38.33 MiC6UB3DO 255/262

>>760
それだけなら漫喫なり携帯なりでなんらかの報告があるべさ

769 : VIPに... - 2012/09/02 00:23:05.34 UjvuINSDO 256/262

まぁなんらかの理由で一時的に書けないだけならこのスレが落ちても新しく立て直してくれるだろう

だから>>1が過去ログを読み返した時のためにメッセージを…



1年でも2年でも待つから再開してくれ
今更再開しても…なんて考えずに再開してくれ

待ってるぜぇぇぇぇぇぇ




790 : VIPに... - 2012/09/11 04:45:00.98 tWTpPxNDO 258/262

タイムリミットが近いな…

面白いスレだったのに…残念だ……

791 : VIPに... - 2012/09/11 07:01:07.61 otwTpKZ1o 259/262

明日でhtml化かー

797 : VIPに... - 2012/09/12 11:02:14.28 MPaksagTo 260/262

2ヶ月と38分か

798 : VIPに... - 2012/09/12 17:52:28.04 RZo6Bri10 261/262

1さん、またいつか会える日を待ってるよ。

800 : VIPに... - 2012/09/12 18:37:40.71 UyLVHjaHo 262/262

残念 でも1が無事で
どこかで元気あるよう願ってる!
長い間楽しませてもらいました
ありがとう

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