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蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目【前編】
蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目【中編】
739 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/03 23:00:11.00 jNYF8vHKo 319/430夜遅くですが、更新を開始しまーす。
えー、ツッコミ増やせやクソボケとの事ですが、フィアンマとか一方通行が
頑張ると思うので勘弁して下さい!
まぁ『天使同盟』内じゃなくてもツッコミ出来そうな人は周りにいるのでご心配なく。
今回から一端覧祭編に入ります。
それでは、よろしくお願いします!
――――――――――――――――――――――
「良いのか?」
「何が」
学園都市の第七学区。そこに聳える通称『窓のないビル』の内部。
分厚く、得体の知れない何らかの書物を読みながら、学園都市統括理事長を務める『天使同盟(アライアンス)』の構成員エイワスは
本来の統括理事長であるアレイスター=クロウリーの疑問に対して返事をする。
「『素養格付』の件だよ。 君にとってあのリストの重要度はさほどでも無いかもしれんが、
その他にとってはそうではない。 特に上層部、そして"彼ら"にとってはな」
「『アイテム』、か? 今更そんなものが我々にとっての障害になるとでも?」
「だが連中は『天使同盟』に辿り着いたぞ」
アレイスターは弱アルカリ性培養液で満たされた巨大なビーカーの中で逆さに浮いたまま、
空間に表示されている複数のモニターの一枚に目を向ける。
そこに映し出されていたのは闇から抜けだした『アイテム』の構成員。数は四。
各々が『天使同盟』を引きずり出すために学園都市を奔走している。
大凡、『天使同盟』である可能性が極めて高い一方通行、そして『素養格付』の存在を
一般学生の手にも渡る広告に堂々と記載したドラコ=アイワズに狙いを絞っているのだろう。
そんなドラコ=アイワズ――――エイワスもアレイスターと同じようにモニターに視線を向け、
「『素養格付』は単なる宣伝文句に過ぎないのだがな……。 まぁ、あの広告のせいで
さっきまで上層部から抗議の連絡が殺到していたけど」
「あなたは一応、この学園都市は存続させていかなければならないと言っていたな。
しかし『素養格付』の存在が学園都市全体に発覚してしまえば、それも儘ならなくなるぞ。
最悪、学園都市全ての住人が反旗を翻すかもな」
アレイスターの懸念にエイワスはつまらなそうに息を吐いて、
「君は自分が読んでいる漫画の舞台である世界が危機に陥った時、その世界を助けに行くのか?
そうじゃない、漫画の中の世界が危機的な状況になれば、大抵はその漫画に登場するキャラクターが
世界の危機を救ってくれる。 読者が横槍を入れる余地はないだろう?」
元々興味がなかったのか、エイワスは『アイテム』の四人が表示されているモニタから
目を離し、スッと指を軽く動かして消去した。
「現状も同じだよ。 『天使同盟』の存在を脅かすような連中が現れれば、『天使同盟』が解決する。
私はその様子をこのつまらない空間からただ黙って傍観するだけだ」
「だがあなたとその他では決定的な違いがある。 確かに漫画の中の世界が危機に陥った時、
読者はその世界に対して干渉する事は出来ないが、あなたにはそれが出来るという点だ。
予め定められていた運命をねじ曲げ、自分好みの色に上から染め上げてしまう。
だから私もあの時、あなたに敗れてこんな情けない状況になっているんだ」
「それは神の所業だよ」
「あなたはその神の召使だろう?」
パタン、と。エイワスは読んでいた分厚い書物のページを閉じる。
聖守護天使の称号を持つ金髪の怪物は、まるで間もなく孵化する卵を前にして高揚感を感じているような
表情をしていた。
同時に、その表情の中にはわずかな『覚悟』のようなものも窺える。
「ともかく、『アイテム』は問題ない。 彼らが一方通行達に直接接触できるのは
早くても明日頃だろう。 『天使同盟』の存在、内情に至った。 そこまでは私の予測範囲内だ」
エイワスは付け加えるように言った。
「そして、恐らくこれからもな」
「『天使同盟』の素性の発覚はあなた達にとってデメリットしかないと踏んでいたが……。
少なくとも一方通行達にとってはそうであるようだが、あなたは違うのだな」
「世界は狭い。 永遠に『天使同盟』の存在を隠蔽し続けることなど出来んよ。
だからその先の未来も視野に入れておかなければならない。 結果によっては
私は『天使同盟』のために世界を一掃するし、世界のために『天使同盟』を滅ぼす」
「世界の事象には必ず『抑止力』が生まれる事を知らないわけではあるまい?
それは無論、あなたも含まれている。 あなたが『抑止力』であると同時に、
あなたに対する『抑止力』も芽を出しつつある事は理解しているんだろうな?」
「もちろん」
背を預けていたビーカーから離れ、エイワスは音もなく歩いた。
そして振り返る。ビーカーの中にいる敗者、世界最強最悪の魔術師を見て、エイワスは笑みを浮かべて言う。
「それが、『天使同盟(アライアンス)』の本質だ。 一方通行も無意識に理解しているのだろうな」
さて、明日は忙しくなりそうだとエイワスは大きく背伸びをし、アレイスターの前から姿を消した。
すこぶる愉快で愉しそうな表情をしていたエイワスに何一つ関われない事に、アレイスターは
わずかな寂寥感を覚えるのだった。
――――――――――――――――――――――
結局、『天使同盟』の面々は一夜漬けを諦めて、明日の一端覧祭に備えて眠ってしまった。
一方通行、風斬氷華、垣根帝督の三人はそれぞれが読み込んでいた参考書を傍に置いたまま、
すやすやと寝息を立てている。
そんな平和な光景を、フィアンマはベランダに続く窓越しに見つめていた。
「今日は一段と疲れたな……。 人間にとって当たり前の日常が、こんなにもキツいもんだったとは」
学園都市の夜景が一望出来る手すりに背を預け、フィアンマは深くため息をついた。
軽く首を後ろに回す。学園都市の建造物のあちこちに、窓から漏れる光が確認できた。
何せ急な一端覧祭の決定だ、まだ準備が出来ていない所があるのだろう。
新学園都市統括理事長、エイワスの我侭に振り回されたがために広がる街の夜景は、
その窓から漏れる淡い光で綺麗に彩られている。
「疲れた……」
そんな夜景を見ながら、『右』を象徴する魔術師が再び短く息を吐いた。
今日のフィアンマはたった一日で『初体験』をし過ぎた。
今朝、"仲間"と食卓を囲んで取った朝食。『神の右席』時代はそんな習慣は存在しなかった。
ごく普通の人間が当たり前のように行うスーパーマーケットでの買い物。年配の女性の恐ろしさを知った。
不老不死の実験によって自由を得られぬサンプルとして扱われる哀れな女。
だがそんな生体サンプルがフィアンマに贈る暖かさは、彼の身に確実に染みていた。
学校。学び舎。普通の人間なら誰もが通う勉学に励むための施設。
友人という繋がりを築くための居場所。
そこでフィアンマは二人の『知り合い』が出来た。名前は……忘れた方が彼女たちのためかもしれない。
しかし覚えている。彼女たちが見せた、ありふれた表情。
自分の発言にいちいち驚いてくれたり、自分の勘違い発言を冗談だと捉え、笑ってくれたりもした。
「いつ以来だ……。 子供の時分でもあんな事があったかどうか」
それは、フィアンマがまだ見たことのない『世界』だった。
何の面白みもない、盛り上がるような点もない。特筆すべき事態もない、人間によっては
つまらないとさえ思える日常の世界。
だがフィアンマから言わせれば、血も流れない、諍いも無い。
周囲から恐怖や憎悪が練り込まれた視線が飛んでくる事もない。
彼が今日という日に見た小さな小さな世界は、少なくとも彼にとってつまらない世界ではなかった。
「お前も、人間が織り成すこんなありふれた日常に憧れていたのか?」
言いながら、魔術師は横に視線を投げる。
そこにはいつものように、ベランダから月を眺める大天使の姿があった。
「mgtxmpknudgtenanzazez」
「ふん、そうか……」
予想通りの答えが返って来た事に、フィアンマは失笑する。
ミーシャと自分の心境が同じであるということが、なぜだか笑えた。
と、
「fhorjs………」
「ん?」
「jjyidxnkjehresx、piyjxa。 ……edcfbjbcwxpjyxuzkfszc」
「………………は?」
別の位相から届くミーシャの"正しい言葉"を傍受したフィアンマは、ただ呆然とするしかなかった。
「……確かにあの戦争の影響で属性は正されたが……、だからと言ってそんな事が許されるか。
お前、少し舞い上がりすぎなんじゃないのか? そんな事をすれば一方通行達が、いや、そもそも
隠蔽工作も儘ならんぞ。 仮に『暴発』すれば、俺様でもどうにも出来んかも知れん」
「kgflbdonh♪」
「お前にとっての"それ"と、その他の人間にとっての"それ"は解釈の違いに差がありすぎるだろうが……」
ミーシャ=クロイツェフの思いもよらぬ企みを誰よりも早く知ったフィアンマは、
呆れる以外のリアクションが取れなかった。
彼は部屋で静かに眠る一方通行達を見ながら、
「……まぁ好きにしたらいい。 こいつらなら、"下手すれば乗ってくれるかもしれんしな"・
しかしそれを実行するとなるとその、お前の言う『ラストオーダー』とかいう子供が
最も被害を被るんじゃないのか? 言っておくが、俺様はフォローせんからな」
そう言い残して、フィアンマは部屋へ戻っていった。
間もなく開催される大イベントを少しだけ、本当に少しだけ楽しみにしながら。
――――――――――――――――――――――
『清教派』の魔術師である神裂火織がロシアで撃破された報告を受けたローラ=スチュアートは
まるで動揺する素振りも見せず、小さく息を吐いて言った。
「まぁ、十中八九。 エイワスの仕業に違いなきでしょうね」
「クイト……。 『第一九学区事件』時、エイワスはクイトという偽名を使って
上条当麻とあの子に接触したことを認めています」
イギリス、ロンドン。イギリス清教の『最大主教(アークビショップ)』のために用意された
このランベスの宮という官邸の敷地内で、ローラとステイル=マグヌスが密会を行っていた。
内容はロシア成教への襲撃。首謀者はクイトと名乗る所属不明の魔術師。
当時、ロシア成教本拠地には神裂火織の他に、『明け色の陽射し』のレイヴィニア=バードウェイ。
『殲滅白書』のワシリーサ、サーシャ=クロイツェフなど錚々たる魔術師達が揃っていたのだが、
クイトという魔術師によって軒並み撃破されてしまっていた。
「目的は?」
「現在もクイトの行方捜索と並行して調査されていますが、判明していません。
……もっとも、エイワスは学園都市にいるのでしょうが、あんな化物を捕らえるとなると
イギリス清教の全勢力をかけても実行出来るかどうか―――」
「ふふ、エイワスがどこにいるのかなど、どうでも良き事だわ。
それに目的は大体予測出来る………」
「?」
ステイルの報告を遮るように言ったローラの言葉は、どこか意味深だった。
「……で、どうするんです? ミーシャ=クロイツェフの時と同じように、
また僕にエイワスを捕らえるよう派遣しますか? 言っておきますけど、
不可能です。 アレイスター=クロウリーですら手に負えない怪物を、
たかが一魔術師である僕がどうにか出来るわけがない」
「分かりているわよ」
「では、どのように?」
ローラはロシア成教襲撃に関する情報が記載された報告書をつまらなそうに眺めながら、
「ひとまずは放置、で構わぬでしょう。 イギリス清教と『天使同盟』は非公式とはいえ
同盟を組んでいる関係。 ここでエイワスに向けて刺客を差し向けたるというのは、
内部での抗争に繋がりたる。 そんなくだらぬ事を、私のイギリス清教でさせるわけには
いかぬのよ」
「しかし、身内である神裂火織まで沈められているとなると、エイワスはイギリス清教を
敵に回しても構わないと考えているのでは?」
「あの怪物がそんな愚かしい考えなど持ち合わせたるわけがない。 冷たき言い方になりけるけど、
ロシア成教の件に関しては事故だったと思いたる他ないわね。 幸い、神裂もほぼ無傷で
現場に復帰出来たるようだし? 実質、イギリス清教に損害は無きなのよ」
「せめてクイトに利用された"あの子"と上条当麻には
クイトの件について報せておいた方がいいのでは?」
「あーダメダメ。 そんな事したら私が動きにくくなろうものよ。
私、どちらかと申せば我慢弱き方なりけるのだから」
何とも自分勝手な言い分だったが、イギリス清教の最大主教とはこういうヤツなのだ。
表ではこうしてのらりくらりと適当な言い方で場を収めるが、裏では悪魔も身震いするような
『何か』を考えている女狐。
ステイルもそれは重々承知しているのか、それ以上の反論はせずローラの前から姿を消した。
「………。 さて、」
ステイルが居なくなり、優しい香りを運んでくるそよ風を感じながらローラは薄く微笑む。
「とは言え、やはり『天使同盟』は扱い難きじゃじゃ馬なりけるわね。 現状、
エイワスの勝手な行動を『天使同盟』の連中は放置……というより、知りもせぬ
と言ったところかしら」
柔らかな湯気が立つ紅茶が入ったティーカップを口元に運び、優雅な動作で一口飲む。
「アレイスターも動けぬ今、ここで私がのんびりと傍観の立場に佇むだけでは
つまらぬというもの。 ここは一つ、『天使同盟』に粉をかけておいた方が良きかしらね」
そう言って、ローラは懐から一枚の紙とペンを取り出した。
鼻歌を交えながらキュッキュと、紙に魔術的記号が加えられた文字を書いていく。
通信用の護符だった。それも国と国との間でも会話ができるような遠距離タイプの護符だ。
「あー、あー。 聞こえたるかしらー? いきなりで悪しきなのだけれど、
………うんうん、だからお疲れのところで申し訳なきと言っとろうに」
通信先の相手は、ついさっき話題に出た神裂火織だった。
現在はもう既に復帰し、イタリアで別件の任務をこなしている最中だった。
ローラはさして気も遣わず用件を伝えた。それを聞いた神裂の息を呑む音を聞き、
イギリス清教の最大主教は意地悪そうな笑みを浮かべるのだった。
「そちらの任務が片付きたら、学園都市へ向かってちょうだいな♪
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー、一方通行をランベスの宮に招待したるわよ」
――――――――――――――――――――――
一発、二発、三発と。花火のような発砲音が連発して学園都市に響いた。
しかしそれは決して銃声などという物騒な音ではなく、ある催し物の開催を知らせる音だった。
学園都市上空には太陽光発電システムで駆動している『飛行船』が緩やかな速度で飛んでいた。
飛行船の腹には大型のテレビ画面が搭載されており、普段は学園都市の住人に天気予報や重大な報せを
告知する役割を果たしているのだが、今日はデカデカと、こんな文字が華やかなイメージ映像と共に
表示されていた。
『本日より学園都市全域で、一端覧祭が開催されます』
一端覧祭。
学園都市で行われる世界最大規模の巨大文化祭。本来は一一月末頃に開催されるこの文化祭は、
例の『第一九学区事件』の影響で開催予定日が未定のまま延期されていた。
しかし学園都市統括理事長の意向で急遽開催が決定し、学園都市は大覇星祭とはまた一味違った
装飾で彩られていた。
入学希望者のための学校見学、オープンキャンパス。一部の学校では『能力』を大勢の人間に披露することで
効果テキメンのアピールを実行してみたりと、各学校で行われる催し物は十人十色だ。
「超局地的台風でも発生してくれりゃこンな日を迎えずに済ンだけどなァ」
「そ……そんな事言わずに……せっかくですから、目一杯楽しみましょうよ」
飛行船のテレビ画面をベランダから遠目に見ながらボヤく学園都市最強の超能力者、一方通行は
何とも憂鬱な面持ちだった。
大災害によって一端覧祭の中止が決定されればいい、という彼の願いも虚しく、
今日の天気はこれでもかと言わんばかりの快晴だった。青すぎるにも程がある青空が学園都市を覆う。
「dfmgogjk高揚mcfgtrie」
「この天使、これから皆でピクニックにでも行くと勘違いしてるんじゃないのか?
これから長点上機学園に向かうのに、なぜ鞄に大量の菓子を詰め込んでいるんだ」
「放っとけよ。 それより俺達は何にも持っていかなくていいのか?」
朝から既に一〇回くらいため息をついている一方通行と、その隣で佇んでいた風斬氷華が同時に後ろを振り向く。
『グループ』の隠れ家として使われているアパートの一室。その部屋ではミーシャ=クロイツェフと垣根帝督、
そして『天使同盟』の新メンバーであるフィアンマが一端覧祭に向けての最終準備をしていた。
「教科書やら資料やらは全部長点上機が用意してンだろ。 つか、ただ公開講座するだけ
なンだ。 別にそンな大袈裟な準備する必要ねェだろ」
「詳しい話はエイワスさんに聞かないといけないはずなんですけど……、
そのエイワスさんがまだ姿を見せないっていうのは一体……」
「あいつ一人だけ抜け駆けしようとしてるんじゃねえのか?」
『天使同盟』はこの日、長点上機学園で特別公開講座を実施する事になっていた。
もちろん、一方通行達が『天使同盟』である事は学校側には伏せており、
あくまで特別講師という名目で行うという事だ。
平易に言えば、一方通行達はこれから学園都市ナンバーワンのエリート校、長点上機学園で
『教師』として務める、という訳である。
無論、一方通行も風斬氷華も垣根帝督も学園都市で人に教鞭を取った経験など無いし、
フィアンマは魔術サイドの魔術師であるため、そのような経験をする機会すらない。
さらにミーシャ=クロイツェフに至っては天使である。神話などでは天使は人に救いの言伝を
送ったりするが、"彼女はあくまで現実世界の天使"だ。
人間に学園都市の専門的な知識を教示する事はおろか、これから具体的に何をするのかさえ分かっていない可能性もある。
実際、ミーシャは現在必死になって布の鞄にお菓子を詰め込んでいる。
フィアンマの言ったとおり、マジでピクニックか遠足か何かにでも行くのだと勘違いしているのかもしれない。
一方通行は心底うんざりとした調子で、
「そもそも長点上機の連中もどォかしてやがるぜ。 どォせエイワスに言われて
ほいほいと首を縦に振って承諾したンだろォが、俺達が余計な世話焼かなくても
長点上機学園なら入学希望者なンざ星の数ほどいるだろ」
「星の数ほどいようが入れるのはほんの一握りなのが長点上機学園だろ。
長点上機は学園都市の中でも一番倍率の高い学校だ、そこに学園都市の第一位や第二位を
呼んだら信頼度が安定するんだよ。 他の学校も目を見張るものがあるけど、やっぱ
長点上機学園は格が違うな、って。 いわば、俺達は客寄せパンダの役割なんだな」
「そこに魔術師である俺様や本物の大天使まで投入する意味が理解出来んのだが」
最もらしい事を言うフィアンマに風斬は苦笑いを浮かべながら、
「長点上機学園は特別講師が私達であることを宣伝しているんでしょうか……?
私達も持ってるあの紙は正門前とかで配っていたみたいですけど……、
第一位や第二位が来るって宣伝しないとこの講座に人を集めるのは難しいんじゃないですか……?」
「知った事かよ。 来なきゃ来ないで気楽じゃねェか」
始まる前から既にやる気ゼロですオーラを放出しながら、一方通行は部屋へ戻っていった。
やる気があろうと無かろうと一端覧祭は既に開催されている。
いくら第一位の怪物といえど、学園都市全体が動くこの巨大文化祭には抗えないのだ。
だがまだ彼らは知らない。
この文化祭が、『天使同盟』を崖っぷちに追い詰める血の文化祭になってしまう事を。
760 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/03 23:42:47.36 jNYF8vHKo 340/430はい、ここまでです。ちょっと間が空いてしま申し訳ありません。
まぁ特別、盛り上がるような話は無かったですが……いつものことですね。
ローラとかもっと書きたいなと思いました。
試しに『天使同盟』で大覇星祭とかやらせてみたいんですが、
もう時期的に遠すぎて無理なんですよね、ちょっと残念です。
次回から『天使同盟』によるカオスな授業が始まります。
次回更新は三日以内。
それでは、今日もありがとうございました!
次回予告に『天使同盟』が勢揃いするのも珍しい。
【次回予告】
「えらい遠回りしてきたな……」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)
「わー……ここが長点上機学園かぁ。 霧ヶ丘女学院にいた時期もありましたけど、
こうして間近で見るのは初めてだなぁ……」
『天使同盟』の構成員・AIM拡散力場の集合体――――――風斬氷華
「xncdew人気者aqeufcn」
『天使同盟』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ
「御早う、学園長。 報告通り、特別講師を連れてきたぞ」
『天使同盟』の構成員・学園都市統括理事長代理――――――エイワス
「これって給料とかもらえるんだよな? タダ働きはごめんだぞ」
『天使同盟』の構成員・学園都市第二位の超能力者『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督
「(こ、この野郎……。 なぜ俺様が即興で考えた偽名を既に把握している……!?)」
『天使同盟』の構成員・元『神の右席』の魔術師――――――フィアンマ
782 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/05 20:57:56.25 GO1zjqlOo 342/430こんばんわ、更新を開始します。
長点上機学園には上でも言われている通り、確か布束が在籍していますが
このSSでの彼女は原作通りの末路を辿ってしまっています。
一端覧祭編なんですが、そう呼べるほど一端覧祭を満喫しないっていう……
やはり本命は彼らとぶつかった時で、一端覧祭はその踏み台でしょうか。
そんな感じで始めます!
――――――――――――――――――――――
――学園都市・第七学区 『グループ』の隠れ家
一方通行「ぶっつけ本番にも限度ってモンがあンだろ……。 どれほどの時間をかけて
やるのかも聞いてねェし。 開催中は毎日やンのかこれ」
風斬「休憩くらいはほしいですよね……」
ガブリエル「lkjfemx待機lzloojfbe」シーン
フィアンマ「ミーシャには誰かが着いていないと危険なんじゃないか?」
垣根「つか長点上機学園ってどこにあるんだっけ? 第一八学区だったか?」
エイワス「おはよう、諸君。 準備の方は出来ているみたいだな」
風斬「ひゃっ……!」ビクッ
垣根「毎度毎度、心臓に悪い登場の仕方すんじゃねえよ」
一方通行「オマエ……よくここまで勝手に話を進めてくれやがったな……」
ガブリエル「ljrurg出発bxghgf」
エイワス「そう急くなミーシャ=クロイツェフ。 少しだけ補足説明させてくれ」
フィアンマ「補足もクソも、俺様は大部分の説明すら聞いておらんのだが」
エイワス「これから皆には長点上機学園で特別公開講座を実行してもらう」
一方通行「目的はなンだ? そもそも何で俺達がそンなくだらねェ真似しなくちゃならねェンだ」
エイワス「ん? せっかくの一端覧祭だぞ、愉しまなきゃ損ではないか」
垣根「俺達は今それどころじゃねえだろうよ」
エイワス「何か予定が?」
風斬「あの……私達の今後についてもっと詳しく話すとか……。
フィアンマさんの加入だって、私と天使さんと垣根さんにとっては
急な出来事だったんですよ……?」
ガブリエル「……」ボー
垣根「とにかくお前は急すぎるんだよ」
フィアンマ「俺様が不本意に訪れた学舎も、急な開催告知を受けて
慌てていた様子だったぞ。 どうせお前が決めた事なんだろう?」
エイワス「クレームが多すぎて処理しきれんな」
一方通行「オマエが自分で増やしてるよォなモンだろォが」
風斬「大体、この特別講座……人は集まるんでしょうか?
講義を受けてくれる生徒さん達がいないと意味がなくなるんですけど……」
エイワス「宣伝活動については問題ない。 私の方で手配しているからね」
一方通行「手配?」
エイワス「街の上空を飛行している船のテレビ画面を見てみろ」スッ
ガブリエル「?」
『本日、長点上機学園にて行われる特別講習にはアイドル顔負けの美女やイケメン講師をお招きしております。
中にはなんとあのレベル5も……!? 素敵で知的な講師の下で、充実した一端覧祭を満喫しましょう!
――長点上機学園――』
一方通行「宣伝で真っ赤な嘘ついてンじゃねェよ! 大体、美女とか
ウチにゃ風斬くらいしかいねェだろォが!!」
風斬「あ、え、……わ、私ですか……?///」
垣根「そうだよな。 イケメンってのも俺にしか当て嵌らねえし」
ガブリエル「lutsn寝言zagfog」
一方通行「しかもレベル5が居ることを示唆するよォな事まで書きやがって……」
エイワス「宣伝は大袈裟に告知してなんぼだよ」
ガブリエル「……」ボー
エイワス「理解したかな? ミーシャ=クロイツェフ」
ガブリエル「! kdfe了解lzmc」ピクッ
フィアンマ「……」
エイワス「とりあえず現地へ向かおうか。 詳細は学園長に挨拶をしてからだ」
一方通行「たまには嫌な予感以外の予感を覚えてェぜ……」ハァ
――――――――――――――――――――――
――学園都市・第一八学区 長点上機学園正門前
エイワス「到着したぞ」
一方通行「えらい遠回りしてきたな……」
エイワス「こそこそと目障りな鼠が走り回っていたものでな」
一方通行「?」
風斬「わー……ここが長点上機学園かぁ。 霧ヶ丘女学院にいた時期もありましたけど、
こうして間近で見るのは初めてだなぁ……」
垣根「この辺懐かしいな、前に『アイテム』とやりあった時にこの学区に来たわ」
ガブリエル「cnspe豪華jfreivn」キョロキョロ
フィアンマ「第七学区の隣にあるというのに、ガラリと雰囲気が変わるもんだな」
ヒソヒソ…… ザワザワ……
一方通行「……既に注目の的になってンのはどォいう訳だ」
エイワス「長点上機だからな、君も書類上でこの学園に籍を置いているのだろう?
君の事も知っている学生がいるのではないか?」
フィアンマ「どちらかというとミーシャの方に視線が集まっているようにも見えるが……」
ガブリエル「xncdew人気者aqeufcn」テレテレ
風斬「天使さん、そのフード……取らないようにしてくださいね」
垣根「どうも居心地が悪いな」
一方通行「さっさと中に入るぞ」
――長点上機学園内部・学園長室
エイワス「失礼」ガチャ
学園長「うっ……!!」ギクッ
一方通行「あン?」
風斬「し、失礼します……!!」カチコチ
垣根「緊張し過ぎじゃねえのお前?」
ガブリエル「jxffdck失礼opsdhj」
フィアンマ「ここに来る間にどれだけ注目されたか……」ゲンナリ
学園長「ど、ドラコ君……。 よく来てくれた……」
一方通行「なンでキョドってンだこのジジイ」
エイワス「御早う、学園長。 報告通り、特別講師を連れてきたぞ」
学園長「う、うむ………」ダラダラ
風斬「あの……大丈夫ですか? すごい汗ですけど……」
学園長「あ、あぁ、問題はないよ……。 余計な心配をかけて申し訳ない」
学園長(ドラコ=アイワズ……、忘れもしない。 いつだったか、急に私の前に
姿を現したかと思ったら、気づけば私は彼女の転入手続きの書類に判を押していた……。
本来ならドラコ=アイワズのような得体の知れん怪物を交えた講座など開きたくはなかったが、
どういう訳か統括理事会から彼女たちを講師として招き、講座を行うよう義務付けられた……)
エイワス「学園長」
学園長「な、何だ」ビクッ
エイワス「紹介しよう。 右から、学園都市第一位の一方通行」
一方通行「……」
学園長「ああ、よろしく頼む。 君が講師として来てくれたのは何とも頼もしい。
学園都市での君の知名度は一国の大統領より上だからな」
一方通行「おべンちゃらはいらねェンだよ、クソうぜェな」ギロッ
学園長「ぐ……」タジッ
学園長(……噂通りの恐ろしい少年だな。 だが、彼が来訪してきた事による
利益は非常にデカい。 色々良くない噂も飛び交っているようだが、
我が校に第一位が講師として来たという事実が、長点上機の信頼を絶対のものにするはずだ。
ここに在籍してるクセにちっとも通学して来ないのはいただけんが、まぁ問題はない)
学園長「そ、それで……」
エイワス「次に、風斬氷華。 彼女は以前、霧ヶ丘女学院に在籍していた経歴を持っている」
風斬「よ、よろしくお願いします……!」
学園長「うむ、よろしく頼む」
学園長(良かった……まともな学生もいるじゃないか。 霧ヶ丘女学院……、
常盤台レベルの学院生が来たとなればこれもまた旨味になる。
……少々立体映像っぽい雰囲気があるのが気になるが、さすがはイレギュラーな
能力者ばかりを集めた霧ヶ丘の生徒、と言ったところか)
エイワス「そして彼は垣根帝督。 学園都市第二位の超能力者だ」
学園長「えっ」
垣根「これって給料とかもらえるんだよな? タダ働きはごめんだぞ」
学園長「報酬はドラコ君に全て譲渡する契約になっている。
よろしくな、垣根君」
学園長(おいおいおいおい!!! 第二位!? レベル5の第二位まで招集したのか
ドラコ=アイワズ!! 『未元物質(ダークマター)』……本物か?
いや、彼女の事だ。 第一位が呼べるのなら第二位も呼べるのだろう……。
長点上機から研究所を作りたいと思えるほどの極めて珍しい能力、『未元物質』。
これは長点上機創立以来の入学希望者で溢れ返るかもしれん……)グフフ
エイワス「こちらは火野=E=神作。 私が独自のルートを利用して連れてきた
『未知の法則』に関するスペシャリストだ」
一方通行「火野?」
風斬「火野……?」
垣根「火野?」
フィアンマ(こ、この野郎……。 なぜ俺様が即興で考えた偽名を既に把握している……!?)
学園長「よ、よろしくな火野君」
学園長(……書類上には『魔術師』と記載されていた男か。 『未知の法則』……、
もしあの噂が本当なら、長点上機は新たな方針を築けるかも知れん……。
統括理事会の目を盗んでその法則を掴むのはリスクが高いが、その価値はあると見た)
エイワス「そして最後に、彼女がミーシャ=クロイツェフだ」
ガブリエル「cxmfrti宜敷kggjois」
学園長「……………よろしくお願いします」
学園長(そうだ、こいつなんだ。 この連中の中ではこいつが一番ヤバいんだ間違いなく!!
こいつから滲み出ている雰囲気がどう考えても人間のそれではない……!!
さっきの言葉も訳の分からん方向から飛んできたし……なんかノイズ混じってたし。
書類には『御使』とか記載されていたが、さっぱり意味が分からん)
学園長「な、なぁドラコ君……」オドオド
エイワス「何だ、さっきから滝のように汗を流している学園長」
学園長「こ、こちらの……ミーシャ君はなぜそのような服装で……?」
エイワス「何か問題が?」
学園長「い、一応ここは学び舎なのでな。 きちんと正装はしてもらわねば困るのだが……」
一方通行「それ言ったら俺だって私服だぞ」
風斬「わ、私も霧ヶ丘の制服なんですけど……」
垣根「細けえ事にこだわってんじゃねえよ、バラバラにすんぞテメェ」
学園長「そ、そうだな。 制服の自由制度を望んでいる学生も多い昨今、
そういったフリーな出で立ちも窮屈感を覚えなくて良いかもしれんな」
エイワス「以上、六人で特別講座を開始するが……よろしいかな?」
学園長「異論はない(ありすぎて唱える気にもならん)。 各自、しっかりと
教鞭を取り、長点上機学園のために講師を務めてくれたまえ」
一方通行「いちいち指図すンじゃねェよ、顎吹き飛ばしてやろォか」
垣根「何様のつもりなんだよクソジジイ、ぶっ殺されてえのか?」
フィアンマ「俺様は俺様のやり方で指導させてもらう、口は挟むな」
風斬「が、頑張ります……!」
ガブリエル「kdpsid空腹amdjfjg」グー
学園長(泣きたくなってきた……この歳で……)
エイワス「おっと、そういえばまだ伝達事項が残っていたな」
学園長「?」
エイワス「長点上機学園で行うこの特別講座は今日だけの
限定イベントとして取り扱わせてもらうので、そこの所よろしく頼むよ」
学園長「な……っ」
一方通行「あァ? オマエの事だから一端覧祭中は全日程この特別講座で
埋めてくると思ってたンだが、珍しい事もあるじゃねェか」
垣根「じゃあ明日以降は俺達も自由行動って訳かよ」
風斬「だったら色んな学校の催し物を見て回りたいなぁ……」
エイワス「私が抱えている『別件』が想定以上の速度で進行していてね。
一端覧祭で時間を稼ぐ必要が無くなったんだ」
一方通行「あァそォかい。 もっとも、俺達はオマエに縛られるつもりは
さらさら無かったけどな」
ガブリエル「mzxcbf歓喜vxgrojo」ワーイ
フィアンマ「だったら今日の講座をさっさと終わらせて、俺様はおとなしくしているか」
学園長「ちょ、ちょっと待ってくれ!! そもそもこの特別講座は
文化祭開催期間中全ての日程で執り行われる予定だったはずだ!!
君の都合だけで勝手にキャンセルされても困る!!」
エイワス「さて、何のことやら」
学園長「この契約書を見てみたまえ! この条件項目3-7に……あれ!!?」
ガブリエル「?」
学園長「………じょ、条件項目の3-7が……無い……だと……」
エイワス「一体どうしたと言うのかね」
学園長(どういう事だ……!? 今朝も書類を漏れ無く確認したはず……、
その時には確かにあの条件も記載されていたのに……!!)
一方通行(打ち止めや番外個体はどォしてンだろォか。 ……たまには構ってやらねェとな)
エイワス「君達はゆっくりと一端覧祭を愉しめばいい。 年に一度の祭りだからな」
風斬「はい」
垣根「どうすっかなぁ、適当に街ブラブラするか」
エイワス「私個人から薦めるならば常盤台中学だろうか。
高位能力者が見せるショーも見応えがあるし、何より華がある」
一方通行(常盤台……か。 俺ァ死ンでもいけねェな)
風斬(ヴェントさんも誘ってどこかに行きたいな)ワクワク
エイワス「ミーシャ=クロイツェフ。 君もこの街では何かと行動が制限されて
窮屈していたのではないか? 良い機会だと思って羽を伸ばしたまえ」
ガブリエル「nmxgro了承ckgpod」パキパキパキパキ…
フィアンマ「『羽を伸ばす』とはそういう意味ではない」
学園長「(な、何じゃこいつ……背中から氷が……) って、そうじゃなくて!!」
エイワス「何か?」
学園長「それだけは勘弁願いたい!! どうか開催期間中はこの長点上機で……」
エイワス「………学園長」
学園長「……?」
エイワス「人は、過ちを犯す生物だ」
学園長「は?」
エイワス「人が犯す過ちには様々な種類がある。 殺人、窃盗、誘拐、監禁、
薬物摂取や詐欺、戦争や占領、支配なども人によっては過ちと捉える事もある」
学園長「そ、それがどうした」
エイワス「まぁ、あとは着服だったり裏切りだったり脅迫だったり……
私にとっては瑣末事でしかないが、それも過ちと言えるかもしれない」
学園長「何が、言いたい?」
エイワス「それと、浮気。 とか?」
学園長「…………ッ!!?!?」ドクン
エイワス「いやぁ、私も知らなかったよ。 "統括理事会を交えた職員会議は何と一週間にも及び、
それがグアムで行われるようなものだったとはね"」
学園長「ご、ご……が……ッ!!!?」
風斬「?」
エイワス「ま、そんな話はさておき。 学園長、特別講座は今日限りという事で……よろしいかな?」
学園長「う……うぅっ……わ、わかりました……」グスッ
一方通行「なンで泣いてンだ」
802 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/05 21:23:16.29 GO1zjqlOo 362/430お待たせしました、本日はここまでです。
このままでは学園長がストレスで倒れそうですね、こんな問題児軍団を
たった一人で相手に出来る辺り、さすがは学園都市最高峰の学び舎の長と言ったところか。
一端覧祭が当たり前のように連日開催設定になっていますがご了承ください。
原作じゃまだやってないから勝手に決めました。
次回更新は三日以内。
それでは、今日もありがとうございました!
【次回予告】
「(ど、どど、どうして何で……? うう……誰か助けて……)」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・AIM拡散力場の集合体――――――風斬氷華
「先の『第一九学区事件』にて、現実では考えられない現象が多数目撃されているな。
その前の第三次世界大戦でも同様に。 これらは未だ原因が判明していないが、
錯綜する諸説紛々の中にはこれを『時代と時代の分かれ目』と指摘する声もある。 即ち、時代の境目とは……」
『天使同盟』の構成員・学園都市統括理事長代理――――――エイワス
「mcktrio贈呈zalgieh」
『天使同盟』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ
「『オカルト』の定義や見解は論者やその時代によって様々だが、概括に並べると
神秘学、数秘学、神智学、人智学、言霊、神道霊学、錬金術、まぁ、宗教も一種のオカルトに
定義される事もあるな」
『天使同盟』の構成員・元『神の右席』の魔術師――――――フィアンマ
「…………………………」
『天使同盟』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)
「………何で誰も来ねえんだよ」
『天使同盟』の構成員・学園都市第二位の超能力者『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督
816 : VIPに... - 2011/08/05 23:23:42.44 ry5Ri2Vlo 364/430学園長に失礼な態度とる理由がわからん
ぶっちゃけ不快
821 : VIPに... - 2011/08/06 00:14:04.25 dhD1/1rG0 365/430>>816
だな。
一方さんとていとくんがただのDQNにしか見えない。
>一方通行「いちいち指図すンじゃねェよ、顎吹き飛ばしてやろォか」
>垣根「何様のつもりなんだよクソジジイ、ぶっ殺されてえのか?」
いくらなんでもこれはないわ。
822 : VIPに... - 2011/08/06 00:24:24.16 JTNr82J5o 366/430ただのDQNならどれだけマシだろうかと
まあぶっちゃけギャグ描写に一々突っ込むでない
824 : VIPに... - 2011/08/06 01:08:58.43 aumcrggIO 367/430おいおいレベル5が年上に敬意を払う描写が一度でも原作にあったか?
あって冥土返しくらいだろ。
825 : VIPに... - 2011/08/06 01:13:17.88 LOB9fG6DO 368/430>>816 >>821も夏だねえってスルーで終わる話だ
みんなクールに落ち着こう
827 : VIPに... - 2011/08/06 03:28:15.21 K7uL08570 369/430原作でもこの二人はこんなもんだろ
不快に感じるのは勝手だけど、空気悪くなるからいちいち話題に出すなよ
832 : VIPに... - 2011/08/06 08:19:13.59 aumcrggIO 370/430この二人の中では大人はクソっていうのが固定観念になってるところもあるしそこまでおかしい訳ではない。
857 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/07 19:19:42.86 QhSXQyf0o 371/430いや本当に、どうお詫び申し上げたらよいのかわかりません。
不快感を覚えてしまわれた方には申し訳ないとしか言い様がありません……申し訳ない。
確かにあのシーンはギャグなのですが、首を傾げてしまう方がいても不思議ではありません、
これからは自重しつつ、よく考えて書いていきますのでどうかご容赦を。
そんなわけで、今日も更新します。
今回からいよいよ長点上機学園にて特別講座が始まりますが……、
案の定というかお約束というか、そんな大して盛り上がら(ry
メインはこれ終わった後でしょうか。どうかお付き合いいただければと思います。
それでは、よろしくお願いします。
フィアンマ「……で、今回の活動内容の詳細は」
エイワス「うん。 各自、用意された教室に赴き、そこで授業を行ってもらう。
午後の一時までだ。 何、そんな難しい事を要求しているわけではないよ。
ただそれらしく、講座としての形を成していればそれで構わない」
学園長「いや……そんな投げやりでは困るんだが」
垣根「投げるっつーか、今すぐ放棄してえところなんだけどな。
俺、昼前には病院に行かないとなんだけど」
エイワス「承知している、構わず通院してくれたまえ」
垣根「承知してんのかよやっぱり……」
一方通行「教室のスペースはどれくらいなンだ、何人くらいが訪問してくると想定してる?」
エイワス「席の数は大体四〇ほどだが……それ以上の数が来ても
立たせて授業を受けさせれば問題はないだろう」
フィアンマ「そんなに人が集まるもんなのか?」
風斬「いろんな意味で集まりそうではありますけど……」
一方通行「曲がりなりにも学園都市に並ぶ学園の最高峰だからな。
俺達の講座が目的じゃない人間も来るだろ。 つかそっちの方が多いくらいだ」
エイワス「在学生への説明は?」
学園長「既に終えている。 無論、君達の詳しい素性は秘匿してな」
エイワス「結構。 では九時より開始する。 各自、自分が最もリラックス出来る
状態で待機していたまえ」
風斬「あぁー……なんだか緊張してきました」ドキドキ
ガブリエル「xdgor大丈夫lzcfhi」
一方通行「おいエイワス、レベル5の触れ込みの件についてはどォ処理すンだよ」
エイワス「と、言うと?」
一方通行「学園都市のレベル5ってのがどォいう立場に置かれてるか、知らねェ訳じゃねェだろ」
エイワス「学園都市の上層部は抑えていると言ったはずだが」
垣根「レベル5の半分くらいが『暗部』と関わってるだろ」
一方通行「この街の暗部はまだ蠢いてやがる。 解体されてねェ組織の連中が
挙って長点上機に沸いて来やがったらどォ対処すンだ」
風斬「は、半分も……暗部にいるんですか……?」
一方通行「垣根、今の暗部はオマエが思っている状態とは違いがある」
垣根「ああ? 一〇月に『スクール』他、三、四程度の組織が壊滅した事は知ってるが、それだけだろ」
一方通行「俺はまだ『グループ』に身を置いている立場だが、例えば第四位とかは違うぞ」
垣根「あれ、『原子崩し(メルトダウナー)』ってまだ生きてるだろ? だったら残りカスどもで
新たな組織が発足したんじゃねえのか。 暗部ってのは"そういうもんだろ"」
エイワス「『アイテム』は再結成しているよ、学園都市の『闇』から抜け出してな」
垣根「暗部から抜けただぁ? どうやって」
一方通行「事情は知らねェが、戦争の中で『何か』を掴ンだらしいな」
垣根「ふーん」
一方通行(……いや待てよ? 『アイテム』再結成の鍵となった要素。
俺はそれを誰かから聞いたよォな気がすンだが……)
垣根「他のレベル5は?」
一方通行(クソ、なンで思い出せねェンだ?)
エイワス「第三位と第五位は深く『闇』に関わっていない。 第六位は……、
"あれは立ち位置が特殊すぎて何とも言えないな"。 第七位も、
暗部の存在こそ知っているものの、直接的な関わりはない」
風斬「じゃ、じゃあ実質、暗部に関わっているレベル5って……」
一方通行「……あれ? 俺だけかよ」
エイワス「そんな第一位に、一端覧祭という警備体制が限界まで敷かれた状況で、
学園都市最高峰の長点上機に踏み込むというリスクを抱えてまで接触してくると思うか?」
一方通行「……」
エイワス「安心しろ、万が一の時は私が出張るさ」
一方通行「その一言で全て片付いちまう所が、俺がオマエを疎ましく思う要因なンだよ」
学園長(聞いてはならない話を聞いてしまった気がする……)
――――――――――――――――――――――
他にも、魔術結社が学生に混じってフィアンマに接触してくるんじゃないかとか、
垣根帝督の回収を目的に暗部が襲撃してくるのではないかとか、ミーシャ=クロイツェフを
狙って聖人辺りが数千人くらいが派出されたりするかもしれないとか、
とにかくエイワスが一方通行達に意見を仰がず得手勝手に話を進めてしまったこの特別講座は
上記のように懸念材料が絶えなかった。ちっとも嬉しくない豊作状態だった。
午前九時。『天使同盟(アライアンス)』もとい、エイワス主催の長点上機学園特別公開講座の幕が開く。
「わっ、わっ………!」
用意された教室の、教卓に置いていたAIM拡散力場に関する資料を読み漁っていた
風斬氷華は、慌てたような声を出した。
講座開始から二分ほどが経過した頃だろうか。静寂に包まれていた教室内に響いた音は、
横開きの扉がゆっくりと開けられた音だった。
檻の中にいる猛獣の姿を確認するような挙動で、長点上機ではないどこかの学校の制服を着た
女子学生が戦々恐々と室内の様子を覗く。
女子生徒は教壇に立つ眼鏡の―――それも同い年くらいの少女を見て一瞬怪訝な顔を見せたが、
ややあって何かに安心したように息を吐き、丁寧に頭を下げて室内へ入ってきた。
「えっと……講師の方、ですよね?」
「は、はひ」
講習生より講師の方が神経を張り詰めていた。講習生の女子学生が
リラックスした様子で席に着くのとは対照的に、風斬は直立不動の状態で
頭の中の三角柱をギシギシと、人間で言うなら心臓をバクバクと、爆々と鼓動させていた。
大勢の人間の前で講義を行うというのも緊張するが、こうしてマンツーマンで、
しかも今初めて出会ったばかりの人間と授業をするというのは、風斬には辛いものがあった。
それでもやはり、何十人という数よりは一人や二人くらいの方が幾許かマシかと思い始めたところに、
「失礼しまーす」
「ここ? AIM関係の教室って」
「ここであってほしいよね。 残りの教室はなんかヤバい雰囲気がプンプンしてたし」
ぞろぞろと。決壊したダムから溢れ返る大量の濁水のように、いや、純粋な気持ちで
講義を受けに来た学生を濁水に例えるのは些か失礼だろうか。
何れにせよ、最初に入室してきた女子学生を皮切りに、間断なく湧き出る湯水のように
大勢の学生達が風斬氷華専用の教室へと足を運んできたのだ。
あっという間だった。四〇程度の席ではまるで足りなかった。立ったままの状態で
講義を受けなければならない学生が続出する始末だった。
ついさっきまで物音ひとつしなかった室内が、賑やかな喧騒で塗り潰される。
(ど、どど、どうして何で……? うう……誰か助けて……)
大勢の視線を浴びる風斬氷華という名の教師が最初に求めたのは、注目ではなく救済だった。
『天使同盟』や魔術サイドの人間たちとこれまで関わり、談笑してきた事実もあるため失念しがちだが、
本来、風斬氷華は臆病で、どちらかというと人見知りをするタイプの人間、ではなく人工天使だ。
そんな彼女はこれから長点上機学園の授業風景や、単純な"為になる"知識を求めてきた六〇余人の
学生達に教示をしなければならない。
風斬はこれまで感じたことのないプレッシャーによって萎縮してしまっていた。
かつてはあの最強にして最高の大魔術師、アレイスター=クロウリーにたった一人で
立ち向かった程の彼女ではあるが、この重圧は質が違いすぎた。
(ほ、他のみんなはどうなってるのかな……)
風斬は教卓の下側に仕込まれた"それ"を確認するため、目線だけ下に動かす。
"それ"、とは。五つの小さな液晶画面だった。
その五つの画面には、教室の斜め右後ろの視点で教室内の様子が映し出されていた。
この風斬がいる教室にも、教壇の風斬から見て左側の角の教室に小さなカメラが仕込んである。
メンバーがメンバーだ。いつ、誰が、どんなトラブルを起こしても対応出来るように
エイワスが(いつかは知らないが)予めセットしておいた物だ。
AIM拡散力場の専門講座を受け持つ講師、風斬てんてーの第一声を待つ
大勢の学生達の視線を矢のように受けながら、風斬はまず他の構成員の様子を液晶画面越しに窺ってみた。
――――――――――――――――――――――
こいつが人にモノを教えるという事が、まるで神から人類へ天啓を送るような
錯覚を覚えてしまうエイワスの教室。
そんな金髪の怪物が教壇に立つ教室は、風斬の教室ほどではないにせよ多くの人間で賑わっていた。
既に何人か立ち見での授業を余儀無くされる程度には、授業風景は完成していた。
本来、こうして大衆の面前に晒してはならないはずの、暗部の最奥部に位置する『ドラゴン』は
満足気な笑みを浮かべて佇んでいる。
いや、佇んでいるという表現は適切ではない。エイワスは教卓の上に腰をかけ、
足を組んでいた。
エイワスの出で立ちはなんかエロ漫画に出てくる女教師のような、正装ながらも
如何わしい雰囲気を醸し出すスーツだった。
下はピチっとしたミニスカであり、そこから伸びるお御足はストッキングで覆われていて、
ウェーブがかった金髪を指で弄り、目元にはこれまた如何にも女教師が使用していそうな
細いフレームの眼鏡が確認できる。
胸元はあからさまに強調されており、今にもはち切れんばかりだった
組んだお御足はかなり際どい角度に置かれており、講義を受けに来た男子生徒は
どこに視線を向ければいいのかと困る反面、ごくりと生唾を飲む始末だった。
そんな情けない人間をエイワスは見下すように、挑発するような視線で見る。
こいつは一体これから何の授業を執り行うつもりなんだ。
「さて……早速だが講義を執り行おうか。 議題は『時代の変革・流れ・変革によって変わる人間』について……。
君達も知っての通り、時代はこれまでに何度もその姿を変化させていった。 原因は様々ではあるが、
変革を齎す存在はそのほとんどが君達人間である。 先の『第一九学区事件』にて、現実では考えられない
現象が多数目撃されているな。 その前の第三次世界大戦でも同様に。 これらは未だ原因が判明していないが、
錯綜する諸説紛々の中にはこれを『時代と時代の分かれ目』と指摘する声もある。 即ち、時代の境目とは……―――」
およそ科学の総本山である学園都市、その最高峰と名高い長点上機学園で行う講義ではなかった。
時代の変革など、学園都市に生きる人間にとっては時代は常にこの街が先取りしていると考えている人間も多いだろう。
しかしこの教室に集まった学生達はそうではない。学園都市が先導し、人類を新時代へと導くのだとは考えていない。
そういう考えが無いのではなく、それはあくまで複数存在する意見の一つであり、学園都市だけが時代の手綱を引いている
訳ではなく、『外』の世界にもその手綱を引ける法則が存在しているのではと考えている学生達が集まっているのだ。
エイワスの時代に関する講義に、学生達は真剣に耳を傾けていた。
存外、この金髪の怪物もこのような催し物に真面目に取り組む気持ちは無いわけではないらしい。
――――――――――――――――――――――
その教室は、風斬やエイワスのように賑わってはいなかった。
席もいくつか空いており、教室内にいる学生の年齢も千差万別だった。
小学校高学年辺りと窺える学生や、それ未満の幼い子供もいた。
「………………………………………」
「msvprg美味laoieuf」
「……あの、先生。 講義を始めて欲しいのですが……」
「………」
その教室の講師は、ミーシャ=クロイツェフといった。
この世界からは観測できない、別の位相から降臨した本物の大天使なのだが、学生達はその事実を知らない。
知っていたら、知ってしまったら今頃パニックに陥っているだろう。
身長二メートル以上の長身は、ぶかぶかで長袖のポンチョ、貫頭衣のような衣服で覆われている。
頭部を覆い隠すフードが付いている特徴を鑑みると、貫頭衣というよりはローブに近いかもしれない。
そんなミーシャ先生を前に、学生達は困惑の色を隠せなかった。
ミーシャは教卓の上に腰掛け、足をぷらぷらと振りながら鞄に詰め込んだ菓子を頬張っている。
時折声を出して何かを言うが、ノイズが混じっている上に訳の分からない方向から声が飛んでくるので
何を伝えたいのか要領を得なかった。伝達の御使なのに。
学生達は『別位相の観測・その理論と存在証明』という、もはや宗教の域に突入しているような(数学的に位相を説明することは可能だが)
内容の講習を受けに来たのだが、その講師がこの有様では困惑するのも無理はない。
これで平然としていられる者がいたら、そいつこそが別位相からやってきた存在である。
「あ、あの……………」
「mcktrio贈呈zalgieh」
「? あ、いえ……結構です……」
スナック菓子を掌に乗せて学生の前に差し出すミーシャ。このようなジェスチャーがあるので
辛うじてコミュニケーションは取れるのだが、そんな原始人と現代人が出会って行うようなコミュニケーションではなく、
ここにいる学生達はもっと高度な講習を求めている。
そんな学生達の為になる講習を執り行う義務を背負っているはずのミーシャ=クロイツェフは、
「……………」
「せ、先生。 そろそろ開始して欲しいのですが……」
「?」
フィアンマの懸念は的中した。
案の定、ミーシャ=クロイツェフは今から自分が何をすればいいのか具体的にも漠然的にも分かっていなかった。
困惑と怪訝が程良くミックスされた十数人の視線を浴びる天使は、ただ首を傾げてキョトンとするだけだった。
ただ学生達が何かを自分に求めている事は薄々感じたのか、ミーシャは仕方なくといった調子で
自らの能力を行使し、虚空から生み出した『水』を空中で弄び始めた。
――――――――――――――――――――――
「『オカルト』の定義や見解は論者やその時代によって様々だが、概括に並べると
神秘学、数秘学、神智学、人智学、言霊、神道霊学、錬金術、まぁ、宗教も一種のオカルトに
定義される事もあるな。 最もポピュラーなオカルト枠は『幽霊・スピリット』か。
総合的にも個人的にも、『目に見えん概念、触れる事の出来ん法則』がオカルトのそれとされている」
「先生が今述べた例以外にも、オカルトに定義されるものは存在すると思うのですが」
「その通りだ。 この惑星で流れてきた歴史の中で、今でこそ当たり前のようにお前達が
勉学に励んでいる科学、能力も過去ではオカルトと呼ばれてきた。 学園都市の『外』の
人間にとっても、お前達が行使する能力がオカルトじみていると考えている者もいるだろう」
「原因が判明していない事象や現象は全てオカルトに定義されるのですか?」
「一概にそうとも言えんよ。 オカルトは元々は『レッテル』として利用されてきた言葉だ。
互いが口論をし、己の理論こそが正当であると自負している者が、対する者を『オカルト』
呼ばわりする時代もあったしな。 その現象を認めたくないと頑なに拒む者が、本来ならば
オカルト扱いすべきでないそれをオカルトだと断定するケースもある。 一九世紀のヨーロッパでは………」
赤い髪の"魔術師"、フィアンマが教卓周辺を緩慢に歩みながら学園都市の学生に演説をしていた。
講義内容は単純に『オカルトの定義』。学園都市という科学に溢れた街でオカルトを専攻して研究している
機関や学校はごくまれである。
そんなオカルトを取り扱うここ、フィアンマの教室はやはり閑散としていた。
議題、講師共に不可解であるミーシャの教室よりも、さらに学生の数が少なかった。
両手の指でも事足りる程度の人数でしかなかい。
しかし、
「この学園都市という科学を集中的に取り扱う街にも、『原石』と呼ばれる者が存在しているだろう」
「『原石』……?」
「知らんのか? まぁ、俺様も詳しくは知らんのだがな、この機会に知っておいても損はないぞ。
『原石』とは学園都市の人工的な手段、即ち『開発』に頼ることなく超能力を発現した能力者の総称だ。
『原石』は特に力の強さよりその稀少さが注目されている。 お前達が普段行なっている開発によって
発現する能力より、その力や方向性が極めて異なっているケースが多いようだな」
「それは、カリキュラムによる測定結果の誤差の範疇に収まるものではないのですか?」
「それすらも分かっておらん、判明しておらんのだよ」
「じゃあ『原石』もまた……」
「そう、オカルトという定義に含まれるかもしれんな。 『原石』をオカルトというカテゴリに
嵌め込むかどうかも、個人の意志が決めることだ。 お前達のような通常の能力者にとっては
『原石』はオカルトかもしれんが、『原石』本人にとってはそれが当たり前なんだ。
未知=オカルト。 極論を言えば宇宙の『端』ですらオカルトであると言えるかもしれんが、
オカルトという言葉は本来、そこまで広義的に使用されるもんじゃないんだよ」
フィアンマの弁舌に学生達は真剣に耳を傾け、うんうんと頷きながら手元のノートにペンを走らせる。
高校や大学、どこの学校でも日常的に見られる授業風景そのものだった。
フィアンマの弁舌に学生達は真剣に耳を傾け、うんうんと頷きながら手元のノートにペンを走らせる。
高校や大学、どこの学校でも日常的に見られる授業風景そのものだった。
フィアンマはほぼ完璧に、講習としての態を成し、保っていた。
もちろん外堀だけでなく、中身も充実している。
オカルトの基礎知識から徐々に段階を踏み、自然に講義内容の深部へと学生を導いていくフィアンマの講師っぷりは、
下手をすればその辺の教師よりも有能なように思える。
もちろん、ここでもフィアンマはフィアンマではなく、火野神作という偽名を用いて講師を務めている。
オカルト。しかし『魔術』という実際に存在する未知の法則であるキーワードは直接使わず、
それでいて学生達をオカルトの真髄に引き込んでいた。
案外、フィアンマはこうして人にモノを教える職業が向いているのかも知れない。
本人は絶対に否定するだろうが。
ちなみに十数人程しかいない学生の内、なぜか八割くらいが女子生徒だった。
――――――――――――――――――――――
そして、垣根帝督の『物理法則の理解・応用による能力の向上』。
一方通行の『一から学ぶ学園都市の能力の基礎・無能力(レベル0)から低能力(レベル1)への第一歩』。
彼らが受け持つ議題である各々の教室は――――。
「……………………………………………………………………………………………」
「……………………………………………………………………………………………」
誰も。
誰もいなかった。閑散している、どころの話ではない。皆無。虚無。絶無。
正確には各教室の教卓に一方通行と垣根が佇んでいるため人はいるのだが、
彼らの講習を受けに来る学生が誰一人いなかった。
しん……と静まり返る二人の教室内に、よその教室の声や廊下から聞こえてくる楽しげな会話が虚しく響く。
垣根帝督は教卓の下側に仕込まれた五つの液晶画面をくだらなそうに見つめながら、
長点上機学園から『天使同盟』の構成員全員に支給された小型ヘッドマイクのスイッチを入れる。
耳にかけられたマイクのダイヤルを回し、通話先の相手を一方通行に設定して垣根は唸るように言った。
『…………なぁ、講習開始時間って九時からだったよな?』
『そォだな』
『もう三〇分は経過してるぞ』
『それがどォした』
『………何で誰も来ねえんだよ』
『理由は大体察してンだろ? 誰が好き好ンで俺らみたいなのが講師の講習に来るンだよ』
『……クソッたれ。 始まる前は面倒くさくてしょうがなかったが、
いざ誰も来ねえとなるとなんか虚しいっつーか、腹立ってこねえか?』
『別に』
九時になってからしばらく、一方通行がいる教室の扉を開く学生も何人かはいた。
だが一方通行の射抜くような眼光(彼自身は睨んでいるつもりはない)に怯み、室内に足を踏み入れる事なく
震えながら逃げていってしまうのだ。
加えて、彼ら二人は悪い意味で有名である事も理由として考えられた。
特に一方通行は第七学区や第六学区でずいぶんと派手に暴れまわっている。
あのどうしようもなくくだらないデート計画の時などが顕著だ。
垣根帝督の場合はそれすらない。垣根が室内に入った時以降、彼の教室の扉は一ミリも動いていない。
学園都市の第二位という優秀すぎる超能力者から講義を受けられるという絶好のチャンスだというのに、
誰も来ないとは何事かと彼が憤慨するのも無理はない……のかもしれなかった。
880 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/07 19:54:33.08 QhSXQyf0o 394/430ここまでです。
よく考えたら立って講義受けるってのも変な気がしますが……無い事もない、かな?
ミーシャはやはりこうなってしまいましたが、風斬とエイワス、フィアンマは
割と真面目に講義に取り組んでいるのでした。
一方通行と垣根は取り組みようもありません。誰も来ないのですから。
しかし次回、そんな彼らの教室にも訪問者が……?
次回更新は三日以内。
それでは、今日もお付き合いいただきありがとうございました!
学園都市でもオカルトの研究をしてるところがあった気がしますが、どこだったかな……
【次回予告】
「俺は垣根帝督だ。 ここは『物理法則の応用』について重点的に講義する教室。
……テメェら常盤台の生徒だよな? エリート様がこんなクソ講習に何で顔を出すかね」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督
「…………"見られてンな"。 明らかに俺達を、いや、この学校を監視してる誰かがいる」
『天使同盟』のリーダー・学園都市最強の超能力者――――――一方通行(アクセラレータ)
908 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/09 23:37:49.66 dW7vBDXNo 396/430ちくしょう、すっかり遅くなっちまった。
こんばんわ、更新を開始します。
前回始まった特別講座。風斬とエイワス、フィアンマは真面目にやっていますが
ミーシャはやはり案の定でした。彼女らしいですが。
もっとひどいのは第一位と第二位のツートップ。
まず人が来ないのだからどうしようもない。
しかしそんな彼らの教室にも変化が……?
そんな感じで、よろしくお願いします!
垣根は両足を教卓の上に乗せて椅子に座るという、講師らしからぬ態度で話を続ける。
『俺達、もう帰ってもいいんじゃねえのか?』
『考えろ、むしろこの状況は好都合じゃねェか。 学生共に邪魔される事なく
俺とオマエで「監視」が出来る。 そォ考えりゃイイだろ』
『監視?』
垣根は眉をひそめながら目線を落とし、液晶画面を見る。
風斬はいつもの調子でおどおどしながらもしっかりと講習を行えているようだ。
気のせいか、風斬が担当する教室には男子学生が目立つように思える。
エイワスとフィアンマも、特に問題なく講習を進行しているようだった。
問題はミーシャ=クロイツェフなのだが――――、
『そうか。 そういやこの講習は「漁網」の役割も兼ねてんだったな』
『特にフィアンマとガブリエルの教室は注意深く観察しとけよ。
少しでも"学園都市のそれじゃねェ雰囲気"を纏ってるヤツがいたら連行する』
『雰囲気……、モニタ越しに気配を探れってか?』
『暗部の時分は日常茶飯事だったろ。 眼ェ鈍ってンじゃねェだろォな?』
『誰に言ってんだ第一位。 今から現場復帰しても問題ねえってなもんだ』
言いながら、一方通行も垣根帝督もミーシャとフィアンマの画面に注目する。
現時点では怪しいと思われる人間はいなかった。
フィアンマの教室では彼の授業を学生達が熱心に聞いているし、ミーシャの教室では
ホワイトボードに落書きをし始めた天使に便乗して何人かの小学生がキャッキャとお絵かきを楽しんでいる。
どうやら真面目に講習を受けに来た他の学生は呆れて帰ってしまったようだ。
『……長点上機の名前に泥塗ってねェかこれ?』
『放っとけよ、こうなる事は大体予想付いてたし、まさかこのガキの中に
ミーシャを狙ってるヤツなんていねえだろ。 それよりよぉ、』
『あン?』
垣根は風斬が映っている画面に接近しながら、意地の悪そうな顔で言う。
『風斬ん所の学生、どう考えても講習じゃなくて風斬目当てで来てる輩がいるだろ』
『………』
風斬氷華は異性から見ても同姓から見ても可愛いと言える容姿をした女の子だ。
当然、中にはそんな保護欲を掻き立てる彼女の雰囲気に、蜜に誘われた蜂のように
この教室に入った男子学生もいるだろう。
実際、数多くの学生達の一部は、風斬をちらちらと一瞥しながら声を潜めて怪しげに会話をしている。
『如何わしい視線が集中してるじゃねえか。 守ってやった方がいいんじゃねえの? 王子様』
『喧嘩売ってンだな?』
『俺は忠告してやってんだぜ』
『………何かあったらすぐに飛ンでいけるよォにはしてある』
やっぱりな、と垣根はからかうように笑う。
だが風斬氷華の身に、もしくは他の構成員の身に何かがあれば即座に対応出来るよう
身構えているのは垣根帝督も同じだった。
と、
「ん?」
垣根がいる教室の扉がゆっくりと開く音がした。
ほんの数センチ、室内の様子をおっかなびっくり確認するような調子で開いたその隙間から
少女らしき者の声がわずかに漏れている。
『悪いな一方通行』
『どォした?』
『お客さんだ。 "悪い意味で"じゃねえぞ、ちゃんとした学生みてえだな。
悪いがマイクでの通信は切らせてもらう、あとは一人でよろしくなー♪』
『何? おい、ちょっ――――』
一方通行の返事を待たず、垣根は一方的に通信を切った。
「入ってこいよ、この教室に用があるんだろ?」
そう呼びかけると、わずかに開いた隙間がさらに広がっていく。
現れたのは二人の少女だった。
「えっと……、し、失礼します」
「失礼します……」
二人の少女の制服に、垣根は見覚えがあった。
確かあれは、常盤台中学で支給される制服だったはずだ。
――――――――――――――――――――――
垣根帝督は適当な調子で常盤台中学の生徒を出迎えた。
現在、学園都市は一端覧祭の真っ最中だ。無論、学園都市の五本指に入る
常盤台中学も、一端覧祭中のみ部分的に一般開放される事もあって忙しいはずなのだが、
生徒の二人はその合間を縫ってここへ訪れたのだろうか。
この、怪しい連中が主催の特別講習に。
「ま、適当に座れよ。 どこでも空いてるぜ」
「は、はいっ」
「失礼致します……」
自虐気味に着席を促す垣根に、女子生徒二人はガチガチに緊張しながら
数十秒以上かけてようやく最前列の席へ座る。
二人。
「たった二人なら大仰な講義なんざ必要ねえか。 テメェらみてえな
物好きは他にもうやってこねえだろうしな」
そう言って垣根は教卓の上に腰をかけた。一時的とはいえ講師だという自覚があるとは思えない態度だ。
しかし常盤台の二人はそれを注意するでもなく、ただ視線をあちこちに泳がせるだけだった。
垣根は軽くため息をつき、頭を掻きながら自己紹介を始める。
「俺は垣根帝督だ。 ここは『物理法則の応用』について重点的に講義する教室。
……テメェら常盤台の生徒だよな? エリート様がこんなクソ講習に何で顔を出すかね」
「あ、え、っと……やはりここは学園都市の頂点に立っておられる素晴らしい学園ですし……、
そのような学び舎で勉学に励むことが出来るというのは非常に良い経験になると思いまして」
「ふうん。 まぁこの少人数だ、お嬢さん達の名前くらいは聞いておこうかな」
二人は逡巡し、必死で緊張をほぐしながら自己紹介をした。
「わ、わたくしは湾内絹保と申します。 常盤台中学の一年生、水泳部に所属しております。
能力は強能力(レベル3)の『水流操作(ハイドロハンド)』です」
「わたくしは泡浮万彬と申します。 同じく常盤台中学の一年生で、水泳部に所属。
彼女と同じ、『水流操作』の能力を会得しておりますわ」
(わたくし……、"~ますわ"。 ハッ、マジのお嬢様じゃねえか)
漫画とかでたまに見る、いわゆる『お嬢様言葉』。
それをこんなに長々と生で聞いたことのない垣根は失笑を隠す事を忘れていた。
「あ、あの……何か粗相な振る舞いを犯してしまいましたでしょうか……?」
「ああいや、別に。 『水流操作』か……『念動力(テレキネシス)』の派生能力だな。
正直そういう系統の能力は専門外なんだがな……。 まぁ、どうにでもなるだろ。
それじゃあ早速始めるか。 えーっと、どうすりゃいいんだっけ」
垣根は持参してきた参考書を適当に捲りながら講義内容を頭の中で構築していく。
そんな彼をしばらく見つめていた湾内と泡浮は、何かを覚悟したように顔を見合わせ、
「あの、垣根さんっ!」
「あん?」
垣根の名を呼んだのは二人の内、黒髪のロングヘアーの女の子、泡浮万彬だった。
もう片方、茶髪のミディアムボブ風な髪をした湾内絹保は固唾を呑んで泡浮を見守っている。
垣根は突然、しかも若干テンパリ気味に名を呼ばれたことに怪訝な表情で返す。
「何だよ?」
「あの……わたくしの事、覚えていらっしゃいませんか?」
「?」
首をわずかに傾げることで返事をする垣根だったが、泡浮からの返事が来なかったため
目線を上げて思い当たるフシを探ってみる。
「………………。 いや、覚えてねえっつーか、俺とお前は初対面じゃねえのか?
どっかで会ったっけ?」
「あの、その……。 わたくし以前、強面の殿方に絡まれていた時がありまして……。
わたくしがどう対応しようか困っているところを、あの……垣根さんに助けていただいたのですけれど……」
「………………」
垣根は再び記憶の海に飛び込む。
一〇月九日以前まで、彼は『スクール』という学園都市の暗部で活動をしていた。
その頃の自分はというと、特別粗暴でもなかったが人助けをする性格だったとは思えない。
そうなると必然、泡浮の話は『天使同盟(アライアンス)』加入後という事になる。
その時期に垣根が行った人助けといえば――――。
「………あー。 あーあー、あれか。 俺が一方通行とデートしてた時か」
「で、デート……!?」
「いや違う、あのクソ野郎とただ出掛けてた時だ、デートとか何言ってんだ俺」
それは『第一九学区事件』よりさらに前の時期に遡る。
黄泉川愛穂主催のクソイベント、『天使同盟逢引計画(エンジェルズ・スポット)』。
『天使同盟』内の構成員で一方通行とデートしようぜという、どういう脳の構造をしていれば
そんな計画を思いつくのかというこのデートプランで、垣根帝督はトップバッターを務めた。
折も折とて、垣根帝督と一方通行はスキルアウトに絡まれる女子学生を発見したのだ。
何でもない、ただの気まぐれだった。普通の人間だって、道に落ちている石ころを
たまには蹴飛ばしたくなるだろう。垣根にとってその女子学生を助けるという行為は、
そんなものでしかなかった。
「長点上機学園で特別講習が行われるというので足を運んでみましたら……、
複数の教室の中に垣根さんの姿をお見かけしましたので、改めてお礼を申し上げたくて……」
その時助けた少女が、そういえば泡浮万彬のような女の子だった気がする。
あの場では垣根が例を言おうとする泡浮を適当にあしらい、さっさと行ってしまったのだが
なんと健気な事か、泡浮はあの時の事を未だに覚えていたようだ。
「そういやお前だったかな。 んなどうでもいい事よく覚えてたなぁ」
「ど、どうでもいいだなんて……! わたくし、あの時は本当に困っていましたので、
垣根さんには感謝の気持ちで一杯なんです」
「別にいいって言っただろ。 それと、あん時は俺にはもう関わんなっつったはずだがな」
「それは垣根さんが、御自分の事を『外道』だと思い込んでいらしたからなのでは……?」
「ああ?」
確かにあの時、垣根は自分のような『外道』には関わるなと言って
泡浮の礼も無視して立ち去った。しかし、
「やっぱり、垣根さんは御自分で思っていらっしゃるほど『外道』などでありませんわ」
「知ったような口聞いてくれるじゃねえか」
「も、申し訳ありません……。 でも、」
泡浮は俯き、机の下で指をもじもじしながら搾り出すように言った。
「垣根さんが本当に『外道』なのでしたら……こうして講習を開くなんて事は
いたしませんし、わたくし達をこうして迎え入れてくれはしないでしょう?」
「………」
反論出来なかった。
どうやら垣根帝督という男は、自分が思っている以上に"変わってしまったらしい"。
わずかではあるが、学園都市の、日常の『光』に足を踏み入れてきているらしかった。
『天使同盟』として、だけではなく。
こうして、『光の住人』と抵抗なく会話を続けられるほどには。
「改めて、あの時は本当にありがとうございました」
「わたくしの方からもお礼をさせてください。 わたくしの大事な
友人を助けていただいて、感謝しておりますわ」
泡浮と湾内はわざわざ席から立ち上がり、深々と頭を下げた。
面前でこんな真っ直ぐに礼を言われた経験などほとんど無かった垣根帝督は
素直に照れてしまった。どう反応したらいいのか分からず、視線を二人の方に向けられない。
「チッ、大袈裟なんだよ。 こういうの、俺の立ち位置じゃねえと思うんだけどなぁ」
「そんな事はありませんわ」
「はいはいそうかよそうですか。 で、テメェらはそんな事を言うためだけに
ここへ来たってのか? ここにいる俺を見つけたのは偶然みてえだけど」
「いえ、もちろん講義の方も受けさせていただきますわ。 何と言っても
長点上機学園。 わたくし達のような能力者でも大歓迎と言うのですもの、
ここで色々な事を学んで、プラスにしていきたいと考えておりますわ」
「わたくし達、ここ最近の『身体検査(システムスキャン)』で伸び悩んでおりまして……」
「結局、やらなきゃならねえって訳か。 ま、死ぬほど暇だったし、
人様にモノを教える資格なんざねえけど、付き合ってやるよ。 ただし、病院行かなきゃならねえから
昼前までだけどな。 お前ら揃って『水流操作』だったな、だったらまずは水を用意しねえと……」
こうして垣根もようやく講習を開始する事が出来た。
長らく『天使同盟』、及びそれに関連した人物としかまともに会話をしてなかった彼は、
とても新鮮な気持ちで講習を進行するのだった。
――――――――――――――――――――――
―――と、いうわけで長点上機学園特別講習開始から数時間が経過した。
序盤は緊張で上手く呂律が回らなかったり頭が回らなかったりで散々だった風斬氷華も
既に場慣れしたのか、自分の知りうる限りのAIMに関する知識を学生達に説明していた。
学生達も最初の方はこんな同い年くらいの少女で大丈夫か、と不安を隠し切れなかったが、
今は風斬の言葉にしっかりと耳を傾け、熱心にノートを取っている。
エイワスが担当する教室は、妙な雰囲気が室内を満たしていた。
金髪のエロ教師は序盤から変わらず、歌うようにずっと時代について語っているが、
学生達はポカンと口を開いているだけだった。
エイワスが何を言っているのかわからない、のではなく。
およそ人間から出る弁論とは思えぬ、人智を凌駕した講義内容に圧倒されているようだ。
今ここで新たな宗教が確立してもおかしくない雰囲気だが、大丈夫なのだろうか。
ミーシャ=クロイツェフが担当する教室は、もはやキッズルームと化していた。
室内では下は幼稚園から上は小学校低学年くらいの子供達がやりたい放題はしゃぎ回っている。
貫頭衣に身を包み顔や容姿が窺えない天使に臆することなく、何人かの子供は
ミーシャにじゃれついて一緒に遊んでいた。不思議なことに、ミーシャは子供に懐かれる傾向があるらしい。
あの一方通行ですら感じる事の出来た『母性』を、子供達も無意識に感じているのだろうか。
フィアンマの教室では小テスト的な筆記試験が行われていた。
長点上機の教員に頼み、ノートパソコンとプリンタを用意させ、講義と並行してテスト用紙を
作成するというとんでもない業を実行してのけたのだ。
テスト内容はもちろん、『オカルト』に関する問題ばかり。ついさっき行った講習の内容の復習から、
教わった内容から思考を発展させて新たな答えを導かせる応用問題など、即席の並行作業で
作成したとは考えにくい代物だ。
もちろん、その間もフィアンマは注意深く周囲を警戒しているが、魔術師らしき者の
気配は感じられなかった。
垣根帝督は常盤台中学の泡浮万彬、湾内絹保を相手に『水流操作』の能力向上に励んでいた。
彼の『未元物質(ダークマター)』と比べると平凡な能力ではあるが、突き詰めればこれも物理法則で
解釈できる能力なので垣根でも問題なく講習は進行できた。
が、それ以上に垣根と二人の間では談笑が目立っていた。
垣根も本当の意味での一般人と会話を繰り広げるのが楽しいのだろうし、
お淑やかに微笑む湾内以上に泡浮は心底嬉しそうに、楽しそうに彼と話をしていた。
そして、
「……………………………………………」
そんな五人の様子を卓上下に設けられた五つのモニタ越しに眺める一人の少年。
学園都市最強の超能力者、一方通行。
彼の講習内容は『一から学ぶ学園都市の能力の基礎・無能力(レベル0)から低能力(レベル1)への第一歩』。
他の五人と比べると遙かに分かりやすく、明確な議題なはずなのだが。
「…………ここまで誰も来ねェとなると、誰かの陰謀なンじゃねェかと疑っちまうな」
信じ難いことに、一方通行の教室には未だに誰一人として入室していなかった。
ちょっと扉を開けて中を覗き、一方通行の姿を見て一目散に逃げ出す。
今はもう、そんな光景すら見られなくなっていた。
だが第一位はその事に関して落ち込みはしなかった。彼の性格と経歴上、数時間以上
たった独りという状況など慣れているという言葉では表現しきれないほど、慣れているから。
それに、
「…………"見られてンな"。 明らかに俺達を、いや、この学校を監視してる誰かがいる」
そろそろ昼前に差し掛かろうかという時間帯になった頃、一方通行は感づいた。
見られている。観られている。漠然と、もやもやとした感覚でしか無いが、視線を感じる。
距離は曖昧、不明瞭。果てしなく遠いとも取れるし、案外近いとも予測できる、絶妙な位置取り。
だが確信出来る点が二つ。
(……明らかに俺、っつか俺達が目的の監視だよなァこれ。 そンで持って、
相手は俺達の正確な位置までは確認できてねェ。 仕掛けてこねェのは
長点上機学園っつゥ場所も考慮してのことか? 警備員も配備されてンだろォし……)
それが『長点上機学園には一方通行や垣根帝督というレベル5がいる』程度の認識ならまだ対応できる。
しかし『長点上機学園には一方通行や垣根帝督、風斬氷華やエイワス、ミーシャ=クロイツェフやフィアンマで
構成された「天使同盟(アライアンス)」という組織がいる』という認識での監視なら、厄介極まりない。
929 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/09 23:58:48.32 dW7vBDXNo 417/430中途半端ですが今回はここまでです。
ここらでちょっと懐かしきフラグを回収しちゃおうかなと。
覚えてないという方はもしよろしければ初期の方のデート計画の
お話をご一読してみてください。垣根さん、より垣根様の方が良かったかな……
Q. 『天使同盟逢引計画』で垣根が助けた常盤台中学の女の子は
湾内や泡浮のような喋り方じゃないと思うんだけど?
A. よく聞こえない。 もう一度繰り返せ!
Q. 垣根帝督があの時に助けた女の子はお嬢様口調じゃない。
よってここで泡浮達が出てくるのは不自然だと思うんだけど。
A. こちら>>1。 よく聞こえないぞ。 もう一度言え!
Q. 垣根帝督が助けた女の子はどう考えても泡浮じゃない。 つまり、
ここで泡浮が助けられた女の子だという設定は明らかに後付けじゃないの?
A. くそっ! 通信妨害か……
次回更新は三日以内。
それでは、今日もありがとうございました!
930 : VIPに... - 2011/08/10 00:00:43.48 1G37wYhSo 418/430無理矢理押し通しやがったこの>>1www
【次回予告】
「……御坂? 第三位の『超電磁砲(レールガン)』の知り合いかオマエ」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)
980 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/11 22:35:35.01 I3vIQYNDo 420/430
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313069422/
いやー、早くも次スレを立てる事となりました。これもひとえに皆様のおかげでございます。
そして私、新訳二巻はまだ見ていないので何とも言えません……申し訳ないww
しかしやはり、原作あってのこのSSと言いますか。
とりあえず投下してこのスレ終わらせますので、よろしくお願いします。
今回は一方通行の教室にも変化が起きます。
それでは、よろしくお願いします!
『天使同盟』の全貌が発覚するのは、『天使同盟』にとって最も避けたい事態だ。
今も感じ取れるこの視線をエイワスが見逃すはずはないと思うが、あの化物は世界最強の気紛れ天使。
敢えて見逃し、泳がせ、それを観測して"愉しむ"などと考えていてもまるで不自然ではない。
エイワスにとっては、『天使同盟』ですら玩具の一つに過ぎないのだから。
(講習終了まであと一時間と少し……。 さて、どォ処理するべきか)
小さな電子音が教室内の静寂を波立たせる。
一方通行が所持する携帯電話がメールを受信した音だった。
一方通行は多少面倒くさそうに携帯電話を開き、メールを確認する。
送信相手は打ち止めだった。彼は一時間ほど前からこうして打ち止めとメールをする事で
暇を潰していたのだ。
『それでね、ミサカ独自のネットワークから(ミサカネットワークじゃないよ!)新しいアドレスを
ゲットしたのってミサカはミサカはミサカだけの極秘事項をあなたにだけ特別に報告してみる。
相手の人がまだメールに慣れていないのか内容は滅茶苦茶だけど、多分悪い人じゃないと思うって
ミサカはミサカはこれ以上の事はまだナ・イ・ショって可愛いこぶってみたり!』
(あァ? 何言ってンだこのクソガキ……オマエのメールの内容の方が滅茶苦茶だっての)
わざわざメールの文章にまで『~ってミサカはミサカは……』を打つアホ毛の少女に
呆れた一方通行は、返信メールを送らず携帯電話を閉じてしまった。
(他のヤツらも気付いているとは思うが、念の為に連絡しておくか。
特に垣根の野郎はそろそろ病院へ向かわなきゃならねェしな)
一方通行は耳にかけている小型ヘッドマイクのスイッチを五人全員と連絡がとれるようダイヤルを切り替え、
長点上機学園を、ないしは『天使同盟』をどこからか監視している者がいるという内容を小声で伝える。
当然、一方通行と違って他の五人は今も講義中だ(ミーシャはそうではないようだが)。
返事は返って来ない。
だが伝えるだけで充分に意味はある。一方通行はスイッチを切ると天上を仰いでため息をついた。
(講習終了時間まで惰眠でも貪っちまうか……)
どうせこのまま待っても誰も来やしないと判断した一方通行は、
暖房の駆動音だけが虚しく響く教室で一眠りしようとした。
だが、そのだらしない考えはわずか二秒で打ち砕かれる。
「失礼しまーす!!!」
ガラガラガラピシャァッ!!!、と。雷轟の如く一方通行がいる教室の扉が開かれた。
鼓膜を突き破らんとするその音に、一方通行は思い切り顔を歪ませる。
「はぁ……ぜぇ……! ま、まだやってますよねここ!? 講習を受けに来たんですけども!」
「………」
矢鱈滅多に元気満々な女の子だった。年齢は定かではないが、制服からして
中学生っぽかった。全速力でやってきたのか、呼吸が弾んでいる。
一方通行は半ば追い払う調子で紅い眼光を少女に飛ばすが、そもそもこの少女は一方通行と目を合わせない。
彼を怖がっているのではなく、教室内の様子を首を忙しなく動かして確かめているようだ。
「うっわぁぁ~~~~~~………!! ここが学園都市最高の学園、長点上機かぁ~!
さすがにナンバーワンってだけあって設備も充実してるなぁ~…………。
そんな長点上機学園が無能力者も大歓迎、って謳うんだからこれは来るしかないよね」
(ヤバい、誰かは知らねェがとンでもなくウザってェガキが来やがった……)
「おりょ? おーい、アケミー!! むーちゃん、マコちん!
早く来なよ、すっごいよ長点上機の教室!」
しかも一人ではないらしい。一方通行はこの世の絶望に直面したような表情を浮かべ……そうになるのを堪えていた。
あと一時間弱乗り切ればこの退屈で非生産的なイベントから開放されると思っていた矢先にこれだ。
あまり感心できる態度ではないが、一方通行はつい扉の前ではしゃぐ少女に当たってしまう。
「おいクソガキ」
「えっ。 あ、はい!」
「うるせェンだよ、ちったァその口閉じれねェのか」
「あ、あはははー……すみません」
一方通行の威圧にさすがの活発少女も堪えたのか、少しだけ大人しくなった。
程なくして少女の友人三人が合流し、彼女たちはおっかなびっくり教室内に入ってきた。
――――――――――――――――――――――
「柵川中学一年、佐天涙子でーす。 で、この子達はあたしの友達、
アケミにむーちゃん、そんでマコちん!」
「よろしくお願いしまーす」
「しまーす」
「よ、よろしくお願いします…………」
「……」
すこぶる不機嫌な顔を隠そうともせず、一方通行は突然やってきた四人の中学生を睨む。
柵川中学の生徒、佐天涙子を始めとした愉快で素敵な仲間達は明るく自己紹介をしながらも
やはりまだ緊張を解せていないようだった。
「何しに来たンだよ」
「え、何しにって……講習を受けに来たんですけど」
佐天は至極真っ当、当然の返事をするが、一方通行にとってはそれが一番面倒だった。
最初の方こそ誰も講習を受けに来ない事に苛立っていたが、講習終了まで残り一時間くらいの頃に
やってこられるのもまた面倒極まりなかった。
「あたし達、揃いも揃って無能力者(レベル0)なんですけど、そんなあたし達でも
長点上機学園で能力向上プログラムを受けられるって聞いて、自分とこの
学校の手伝いとか放棄してここまで来ちゃったんです」
「あ、そォ……」
「まだ時間ありますよね? お手柔らかにお願いします!」
「……」
佐天涙子と名乗る黒髪ロングの女の子は強面な一方通行にも臆せず話しかけているが、
残りの三人の女の子は彼の放つ刺々しいオーラに尻込みしているようだった。
特にマコちんと呼ばれたツーテールの女の子はさっきから一向に一方通行の顔を見ようとしない。
(……どォやらこいつらじゃねェらしいな。 隙だらけすぎて毒気抜かれちまいそォだ)
長点上機学園を射抜くような視線は、弱々しくもまだ続いている。
最初は佐天涙子達がこの視線の正体で、自分を襲撃しに来たのかとも考えたが
彼女たちの様子からしてそれはないと一方通行は判断した。
「オマエら全員講習に参加するって方向でイインだな?」
「あ、むーちゃんとマコちんは見学です。 実際に講習を受けるのは
あたしとアケミだけなんですけど、大丈夫ですか?」
「構わねェよ」
こんな講習に見学もクソもあるのかと思ったが、とにかく早く終わらせたいという気持ちが
一方通行に適当な返事を吐かせる。
「オマエらの能力は」
「あたしはレベル0の『空力使い(エアロハンド)』です!」
「私はレベル0の『念動力(テレキネシス)』でーす」
どちらも学園都市ではポピュラーな能力だった。
無能力(レベル0)から低能力(レベル1)に昇格するのは実を言うとかなり大変なのだが、
彼女たち次第ではそれも夢ではないかもしれない。
だがやはり、あと一時間程度でどうにかなる問題ではなかった。
もっとも、これはあくまで講習であり、レベルアップを確約させるような事は
広告にもどこにも記述されていないはずなので気にする必要は無いのだが。
「この特別講習に超能力者(レベル5)がいるって聞いたんですけど、本当ですか?
あ、ルイコがなんかレベル5の一人と友達らしいんですけど、もしかして……?」
「ち、違うよアケミ。 あたしのレベル5の友達は御坂さんだよ、この人じゃない」
「……御坂? 第三位の『超電磁砲(レールガン)』の知り合いかオマエ」
そうですそうです! と何故か嬉しそうに佐天は首を縦に振る。
この様子からしてどうやら本当に第三位の超能力者、御坂美琴の友人らしい。
ますます面倒な事になりそうだ、と一方通行はあからさまにため息をついてみせた。
993 : ◆3dKAx7itpI - 2011/08/11 22:49:41.67 I3vIQYNDo 430/430とりあえずこのスレでの投下はここまでです。
残り半分くらいは新スレより行いますので、お手数ですが上記のURLからお越しください。
あ、埋まりそうになければ私が適当に埋めておきますので!
このスレで応援してくださった方、本当にありがとうございました。
そして出来れば、次スレもよろしくお願いいたします。
次スレ
蛇足 とあるフラグの天使同盟 参匹目
なんだか姑みたいなコメントばかりで申し訳ありません。
楽しませて頂いて感謝しています。