雪乃「……その書いた作文はみんなの前で発表したりするのかしら」
娘「今度の授業参観で発表するんだって」
雪乃「そう……それにしても、何故その内容なのかしら。両親のことを書くのなら、もっと他にあると思うのだけれど」
娘「先生、あわよくば参考になるものなら実践するって言ってたよ。あ、これ内緒ね」
雪乃「ああ……そういえばあなたの担任って……」
娘「で、どうやってお父さんと出会ったの?」
雪乃「私たちは高校の時に初めて出会ったのだけれど、同じ部活に所属していたのよ」
娘「ふーん、どんなの?」
雪乃「奉仕部といって、かんたんに言えば、困った人の手助けをする部活だったわ」
娘「へー、お母さんはともかく、お父さんもそんなまじめだったんだ。意外」
雪乃「いえ、お父さんは自分から入ったわけではないのだけれど……」
元スレ
雪乃「両親が出会った経緯を聞いて作文にする宿題?」娘「うん」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1386122526/
娘「え、じゃあどうして?」
雪乃「ええと、それは」
雪乃(……この内容を作文にして、発表?)
雪乃「お父さんは当時、その、素行不良だったのだけれど」
娘「え!お父さんってワルだったの!?」
雪乃「そうね、良かったとは、言えないわね」
雪乃「ひねくれもので、誰も周りにはよせつけなくて」
雪乃「でも成績が悪いわけではなかったのよ。文系なら上位ではあったし」
娘「へー、お父さんが。へー」
雪乃(……この子、なにか勘違いをしているような気が)
娘「ね、ね、かっこ良かった?当時のお父さん」
雪乃「そうね……容姿は決して悪くはなかったのだけれど……目がk、いえ」
娘「目が?」
雪乃「目が……餓えたはい、いえ、狼のようだったわね」
娘「へー!」
娘「でも、そんなお父さんが、どうして人助けのクラブに?」
雪乃「それは、彼の態度に手を焼いた教師が、自分の手には負えないと、学校一優秀だったお母さんに任せたからよ」
娘「お母さんは昔からすごかったんだね!」
雪乃「ええ、教師が彼を半ば強制的に私と同じ部に入れたの」
娘「お父さん、それでよくその部に入ったね。わるだったのに」
雪乃「それは……彼は初めて会った私に一目惚れしたのよ。だから部活へは毎日きちんと来ていたわ」
娘「へー!」
八幡「(あいつ何言っちゃってんの……)」
八幡(一目惚れどころか、最初の印象は最悪だったんですけど・・・)
雪乃「それでいきなり付き合ってくれなんて言ったのよ」
娘「本当に!?」
八幡(いやいや嘘教えるなよ)
雪乃「でももちろん、振ってやったわ!」
八幡(確かに友達になってくれと言って拒否はされたえけどな・・・地味にショックだったし)
雪乃「でも諦めの悪い彼は毎日部室に通ってなんとか私を振り向かせようと必死だったわね」
八幡(必死どころか一日も話さない日もあったな)
娘「どんなことしてお母さんを振り向かせようとしたの?」
雪乃「えっと・・・そう!クッキーを焼いて持ってきてたりしてたわ!」
八幡(!?)
娘「お父さんクッキー作れるの!?」
八幡(おい、事実から歪みすぎだろ。焼いたの俺じゃなくて由比ヶ浜!)
雪乃「でも、そんなに美味しくなかったわ」
娘「なーんだ、こんど作ってもらおうと思ったのに・・・」
八幡(俺の知らないところで娘の好感度が下がっている!しかも事実無根の嘘で!)
雪乃「それで私が美味しくないって言ったら、もう捨てる!なんて言うから全部食べてあげたのよ」
娘「お母さんって昔から優しかったんだね!」
八幡(あれ・・・無理矢理美味しそうに食べてたのは由比ヶ浜じゃなかったか?)
雪乃「べつに彼があまりにも可哀想だったから食べてあげただけよ」
娘「お父さん喜んでた?」
雪乃「え、ええ・・・もちろん」シドロモドロ
八幡(あいつには高校時代自分が言った台詞を思い出して貰いたい・・・虚言は吐かないとはなんだったのか)
娘「他には、他には?」
雪乃「ほ、他には・・・そう!一緒に買い物に行ったときにクレーンゲームでぬいぐるみをとって貰ったことがあったわ!」
娘「おお!それはポイント高い!」
八幡(小町の口癖が娘にまで感染しているだと!?)
娘「買い物ってデートだよね!?どっちが誘ったの!?」
雪乃「もちろんあっちからよ。わたしはそんなに乗り気じゃなかったんだけど、彼がどうしてもって言うからしょうがなくね」
八幡(俺の記憶が正しければアレはデートなどではなく、ガハマのプレゼント選びで。しかも、あいつが誘ったんじゃなかったか?)
娘「お父さん、初デートだから張り切ってプレゼントなんてしたんだね!」
雪乃「そ、そうね・・・きっとそうだと思うわ」
娘「もうお父さんはお母さんにメロメロだったんだね!」
雪乃「多分ね・・・」
娘「他は?他は?」
雪ノ下「そうね・・・他・・・!夏休みに一緒にキャンプに行ったわ!」
娘「二人で行ったの!?」
雪乃「え、ええ・・・もちろん」
八幡(おい、事実とかけ離れてるにも程があるだろ!?)
娘「二人っきりのキャンプに誘うなんてお父さん勇気あるね!」
雪乃「部活だから何て行って強引に連れて行ったのよ!」
娘「お父さん大胆!」
雪乃「それで川で遊んだり、星を見たり、肝試しなんかもしたわね」
八幡(まあ確かに全部やったけども・・・)
娘「ロマンチックだね!」
雪乃「あとは・・・文化祭で一緒に実行委員をやったわ!」
娘「おぉ!青春っぽい!」
雪乃「だけどすごく忙しかったから私が体調を崩してしまったの。そしたら彼がお見舞いに来てくれたのよ」
八幡(まあ嘘ではないな・・・すぐに帰ったけど)
娘「それで、それで!?」
雪乃「私は彼が来てすぐに寝てしまったのだけど。彼は一晩中看病しててくれたのよ」
娘「おぉ!お父さんポイント凄い高い!」
雪乃「それでそんな彼を見て私も好きになったの・・・」
娘「お父さんの努力が報われたんだね!」
八幡(そんな事実は一切無かったな・・・確かにすこしデレはじめてはいたけど)
雪乃「それで私は文化祭の最後でライブで彼の為の歌を歌ったのよ」
娘「お母さんも大胆!」
雪乃「彼は気付いてなかったみたいだけどね」
娘「えーお父さんポイントひくーい!」
八幡(・・・歌ったのは由比ヶ浜であってお前ではなかったけどな。確かに歌詞はあれだったけど)
雪乃「それで修学旅行、自由行動が多かったから私は彼と一緒に回ったわ」
娘「両想いで修学旅行なんて羨ましい!」
八幡(まあ一緒には回ったよな・・・由比ヶ浜もいたけど)
雪ノ下「それで最後の夜に彼から告白してきたの」
娘「おぉ!お父さんがんばった!」
八幡(確かに告白したな・・・海老名さんに)
雪乃「この位でいいかしら、参考になった?」
娘「うん!お母さんありがとう!」
雪乃「そう。じゃあ、私は買い物に行ってくるわね」
娘「行ってらっしゃい!」
八幡(見事なまでの虚言だったな。しかも由比ヶ浜の存在が完全に消されてたし・・・まあいいか下手に本当のこと教えて娘にこの世の残酷さを教えるのもあれだしな)
娘「お父さん、お父さん!」
八幡「なんだ?」
娘「それで今の話ってどこから嘘だったの?」
八幡「・・・どうしてそう思うんだ?」
娘「だってお母さん嘘付く時は目があわないもん」
八幡(嫌な感じで娘の成長を実感させられた・・・賢くなったなぁ)
娘「それにお父さんいつも言ってるもんね!世界はうそとぎまんに満ちてあふれてるって!」
八幡(これから家でネガティブなことを口に出すのはやめよう、娘によろしくない影響を与えそうだ)
娘「それで、どこからが嘘?」
八幡「・・・いや、嘘じゃない、全部本当だ」
娘「そうなの?」
八幡「ああ、俺は最初からお母さんのことが大好きだったからな」
娘「ふーん・・・そっか・・・」
八幡(あ、信じてないなコイツ)
娘「じゃあ、私作文書いてくるね!」
八幡「おう」
・・・
八幡(その後、見つけた作文にはこんなことが書かれていた)
私のお父さんとお母さんは嘘つきだけど、とても仲が良いです
おしまい