※関連
最初: 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
前回: 上条「結婚指輪は!」美琴「給料三か月分!」心理「君への愛は」垣根「プライスレス!」【4】





元スレ
上条「これからもよろしく、美琴」美琴「うん//」垣根「俺も俺も」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333693818/

1 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/06 15:30:18.90 jF3Xn67l0 1/838

1スレ目 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13045/1304506297.html
2スレ目 美琴「当麻♪」上条「なんだ、美琴」垣根「俺も仲間に入れて」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13053/1305377166.html
3スレ目 上条「美琴、愛してる」美琴「私も♪」垣根「俺も♪」心理「ジャマしないの」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306063255/
4スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「えへへ//」垣根「速さが足りない」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306724889/
5スレ目 上条「放さないからな」美琴「うん♪」垣根「話さないからな」心理「しゃべりなさいよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307282872/
6スレ目 上条「抱きしめようか?」美琴「うん//」垣根「抱こうか?」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307709819/
7スレ目 上条「守り続けるからな」美琴「うん//」垣根「これがリア充です」心理「あなたもよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308139244/
8スレ目(番外編) 美琴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308667506/
9スレ目 上条「結婚に必要な物は?」美琴「愛!」心理「お金」垣根「念のため三行半」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308992651/
10スレ目 上条「まずは!」美琴「そのふざけた!」心理「幻想を!」垣根「守るのこそ愛だ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309355502/
11スレ目 上条「マイホームか・・・」美琴「い、いいわね//」心理「そうね」垣根「欠陥住宅か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309860801/
12スレ目 テクパトル「あの月はもう、空には出ない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310283821/
13スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「//」垣根「心理定規可愛いハァハァ」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310641032/
14スレ目 上条「恋といえば!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311066610/
15スレ目 上条「旅行かぁ・・・」美琴「どこ行く?」垣根「ヤっちゃうのか?」心理「黙って」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311506386/
16スレ目 上条「愛って何かな」美琴「守ること?」心理「信じること」垣根「疑い続けることさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311939697/
17スレ目 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312451177/
18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/
19スレ目 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313206497/
20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/
21スレ目 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313987737/
22スレ目 上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1314/13145/1314512717.html
23スレ目 上条「海外旅行!」美琴「イギリス!」心理「ご飯がまずい」垣根「ひもじいよぉ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1315/13152/1315277970.html
24スレ目 上条「デートの定番は?」美琴「遊園地!」心理「映画館」垣根「特別な場所なんていらねぇさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316091462/
25スレ目 上条「熱い思いは!」美琴「止められない!」心理「燃える心は」垣根「バーニングハート!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316955436/
26スレ目 上条「異性のどこが好き!?」美琴「優しさ!」心理「温かさ」垣根「声」テクパトル「背中」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318038036/
27スレ目 上条「恋は!」美琴「儚く!!」心理「愛は」垣根「虚しく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321338251
28スレ目 上条「立てば芍薬!」美琴「座れば牡丹!」心理「歩く姿は」垣根「ラフレシア!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323430856/
29スレ目 上条「好きと叫んでも!」美琴「心は遠く!」心理「貴方を呼んでも」垣根「振り向かず!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1325230092/
30スレ目 上条「結婚指輪は!」美琴「給料三か月分!」心理「君への愛は」垣根「プライスレス!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1329021080/

2 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/06 15:31:14.84 jF3Xn67l0 2/838

キャラ紹介

上条・・・美琴の彼氏、主人公であり、正義感溢れていたがいまやただの不幸な人
美琴をかなり愛しています

美琴・・・ヒロイン
ツンデレがデレデレになってます
上条さんにメロメロ
フリンフォン全国ランキング一位

垣根・・・イケメルヘンからギャグまでなんでもござれ
心理定規と付き合ってます、フリーダム
たまにツッコミ

心理定規・・・垣根の嫁
ていとくんに踊らされながらも彼を支えます
ツッコミですがたまにボケ

エツァリ・・・本シリーズで地味なキャラの一人
ショチトルと付き合ってる変態ツッコミ

ショチトル・・・地味キャラだった一人
エツァリと付き合ってます、自称ドMの実際ドM
ボケも心理定規に奪われる

削板・・・熱い男
黒子の彼氏、地味なはずがわりとキャラが濃い

黒子・・・ですの
削板の彼女、でもお姉さまも相変わらず好きなのでご安心を

一方・・・歪みないセロリ
番外個体の彼氏、そしてロリコン、意外とまともになった

番外個体・・・一方の嫁
やっとセロリと付き合うことに、マジ可愛いよワースト
わりと奥手

テクパトル・・・美月こと19090号と恋人に、さまざまな苦難も乗り越えイチャイチャリア充、背中フェチ
背中について語ると止まらない人

19090号・・・テっくんの嫁
通称美月
テクパトルと結ばれましたが未だに照れ屋さん、そしてエロい

20000号・・・変態
しかも、テっくんでヤったこともある変態 、たまに男前

14510号・・・セロリのことが好きな乙女
めちゃくちゃ乙女

10033号・・・セロリのことが好きな乙女
恋する乙女は強かった

御坂妹・・・可愛いです
なぜかツッコミに

17600号・・・やや遅れて合流した妹達
意外と男前、おっとこまえー

■■・・・名前が思い出せないキャラ
まさかの存在感、可愛さ
準レギュ、というかエツァリよりも輝いてる気がする

吹寄・・・垣根に告白、失恋するもやはり友達がいいと気づいた強いキャラ
まさかの準レギュ、そしてツッコミ、おっぱい吹寄

ウイーハルさん・・・違った、初春
削板、黒子の出番でたまに登場

13577号・・・かつて20000号に公開オ○ニーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
まさかの復活、でもトラウマは奥底に眠る

10039号・・・かつて20000号に公開オナ○ーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
磁石のNよりもSが好き

3 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/06 15:35:46.64 jF3Xn67l0 3/838

食蜂・・・レズ、美琴に恋してる
最近本当の友達が出来て喜んでいる

打ち止め・・・一方通行と番外個体の娘ポジション
しかし寝取りを企んでいるという噂もある

麦野・・・魅力的なはずなのにアイテムで唯一恋の香がしなかったが、青ピと若干近しくなる
がんばれおばさ・・・お姉さん

絹旗・・・超可愛い超キュートな超ヒロイン
海原に淡い恋心を抱いている
絶賛パンチラ

浜面・・・リア充爆ぜろ

滝壺・・・浜面の彼女
ときどき黒い、実は腕力が半端ない

フレンダ・・・空から帰ってきた我らがアイドルな訳よ!
美人でスレンダー、完璧なスタイルな訳よ!
ゴーグル男なんて好きじゃない訳よ!

ゴーグル・・・スクールの中で一番地味だった人
語尾が「~っす」とかいう、若者口調
なぜかフレンダと共にこの世に戻ってきた
冷え性、甲斐性なし、天然ボケ


アレイスター・・・冷蔵庫
だったが復活、テクパトルの家に居候

海原・・・絹旗にフラグを立てた男
エツァリではなく、こちらは本物
エツァリと鉢合わせした時に、エツァリの真実の愛を目の当たりにして衝撃を受ける
時を経て変わったエツァリ、彼の愛を受けたショチトル
それは、まるで海原と絹旗の関係に拍車を掛けているようだった
彼は不器用だ、そして時に卑怯である
敬語を使うことによって他人と距離を置き、常に笑顔であるがために自分の内心を探らせない
そんな彼にとって、エツァリとショチトルの間にある何かしらの燃えているものは衝撃的だった
ズキズキとした痛みは、かつてエツァリに剥がれた腕の傷か
いや違う、彼の心に空いてしまった大きな隙間の痛みだった
人が生まれてきたのはなぜか
愛を持つためか、世の中に絶望するためか、明日を見るためか過去に逃げるためか
まだ若い海原には分からない
その名の通り、広い海原の中にまるで小さなカヌーを浮べているような、虚無感と絶望感
たどり着くことの無い未来という名の地平線に、彼はただ手を伸ばすだけだった
彼がそこで知ったのは、愛ではなく絶望だった
遠すぎるオアシスを求めた彼は、やがて少しずつ泥沼へと沈んでいく
鳴呼しかし、彼に救いの手を差し伸べる者はいない
誰かが呼ぶ声さえも、今の彼には地獄の呪詛にさえ聞こえていた
彼にはもう、何もわからない
そう、思った彼の元に、誰かが手を差し伸べた。鳴呼それは、悪魔か天使か
涙を拭いた彼は、そっと足に力を入れた。全ては前へ進むため
絶望の淵にいるのならば、そこに一遍の華を咲かせれば
暗闇の中にいるのならば、誰かの灯りになれたなら
彼は、もう一度立ち上がった。全ては前へ進むため、全ては明日を目指すため
手を伸ばした先に何もなかったとすれば、彼には最早終息などないのかもしれない
だがそれ故に、彼はまだ歩き続けられる。世界を救うために、大切なあの人を守るために
いつかこの世界は滅んでしまうかもしれない

だけど

なにも、こんな悲劇的な結末じゃなくてもいいはずだ

海原は笑った

笑って、右手をそっと伸ばした。特別な力などなかった彼が、たった一度だけ
誰かのヒーローになるために


10月32日

海原光貴は54度目の死を迎える

4 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/06 15:37:38.80 jF3Xn67l0 4/838

スレ内容

上琴、未元定規がメインのギャグ、というかただのギャグ

一方通行×番外個体
テクパトル×19090号
削板×黒子
エツァリ×ショチトル
浜面×滝壺
俺×サトリナ
ゴーグル×フレンダ

などおかしなカップリングがあります

何もおかしいところはない



ほのぼの、グダグダ、原作崩壊、キャラ崩壊、マンネリが嫌いな方はご覧にならないほうがいいかと

あと、一部オリキャラ化していますのでそこもご了承を


注意事項

速さが足りないコメ、やろうじゃないのよ

これが最終スレになります

でも特別な最終回みたいなのはしません

ご了承を





17 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 16:38:20.81 gaeemkQb0 6/838


麦野「…」

麦野沈利

学園都市に7人しかいないlevel5

その第四位である超能力者だ

だがまぁ、今はそんなことはどうでもいい

なぜなら


麦野(…どの服にすればいいのよ…!!)


今の彼女は、一人の女の子になっているからであって


事の発端は、昨日の昼間だった

あんまり鳴ることのない彼女の携帯が、絹旗から教えてもらった意味の分からない音楽を奏でたことからだ

めんどくさい、と思いつつもやることがなかった彼女は携帯を手に取った

そして、目を疑った

あの青髪ピアスから「デートせぇへん?」

というメールが届いたのだ

デート


すなわち


麦野(あぁぁぁぁぁぁ!!!!やっぱり青髪君だって女の子の服装とか気にするわよねぇ!!)


麦野にとって、初めてと言ってもいいほどの出来事なのだ


18 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 16:42:15.43 gaeemkQb0 7/838

麦野(…ワンピースなんて子供っぽいわよね…でもドレスは…)

麦野(…っていうか、ドレスなんてあの垣根の女と一緒みたいで嫌ね…)

麦野(…あ、ジーパン…)

麦野(…)

麦野(…スカートでいいかしら)

麦野(でもスカートだとやっぱりミニかしら…青髪君、そういうの好きそうだし)

麦野(…でもそしたら脚が見えちゃうなぁ…)

麦野(…)

麦野(…コートで隠すのもいいかもね)



絹旗「…麦野が超真剣な顔で服を睨んでるんですけど…」

フレンダ「ねぇ、なんかあったのかな?」

ゴーグル「…多分、断捨離じゃないっすか?」

浜面「…捨てるのか、あれ?」

滝壺「違うよ、はまづら」

浜面「?もしかして、お前…理由を知ってるのか」

滝壺「うん…むぎのはね、今とっても悩んでるの」

絹旗「ど、どうしてですか!?」



滝壺「脚が太いから」


麦野「滝壺、表出ろよ」



19 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 18:07:59.24 gaeemkQb0 8/838


滝壺「…つまり、むぎのはデートに誘われたんだね」

麦野「…そうなんだよなぁ…」

浜面「そんなの普通にジーパンとかでいいじゃねぇか」

麦野「…それ、私に喧嘩売ってるの?」

フレンダ「…麦野は脚がたくましいから、そんなの無理な訳よ」

麦野「てめぇも調子乗るなよフレンダ!!」

フレンダ「ひぃっ!!」

ゴーグル「…あの、だったらショートパンツはどうですか?」

麦野「…だから脚が…」

ゴーグル「そこは網タイツで誤魔化すんすよ」

一同「」

ゴーグル「…な、なんで引いてるんですか…」

絹旗「…ゴーグルはそういう趣味でしたか」

ゴーグル「ち…違いますよ!!!ただ足のシルエットを誤魔化すにはぴったりでしょう!?」

浜面「分かるぜ…俺も網タイツはぐっとくるからな!!」

ゴーグル「だから違うって言ってるじゃないっすか!!!」

フレンダ(…網タイツかぁ…)




20 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 18:33:41.21 gaeemkQb0 9/838

滝壺「…でも、脚のシルエットを誤魔化すにはちょうどいいはず」

麦野「…周りから変な目で見られないか心配なのよね…」

フレンダ「今日日網タイツ履いてる子なんてたくさんいる訳よ」

絹旗「そうそう、むしろいいパンチになるじゃないですか」

麦野「…だといいけど」

浜面「まぁさ、デートなんだから相手の好きな格好をするのが一番だよな」

麦野(…青髪君の好きな格好か…)



青ピ「あっはあ!!メイドさんは最高やでぇ!!」

青ピ「あっはあ!!巫女さんときたらたまらんなぁ!!」

青ピ「あっはあ!!ナースってばもう最高やんかぁ!!」

青ピ「あっはあ!!OL風の服装って素敵やねぇ!!」



麦野「…多分、かわいい子が着てればなんでもいいんだと思うわ」

ゴーグル「…どういう人なんすか…」

浜面「…すっげぇな、ちょっと尊敬する」

滝壺「そんなはまづらは応援出来ない」



21 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 20:17:33.27 gaeemkQb0 10/838


麦野「…はぁ」

結局、ゴーグル男が提案した服にしてしまった

麦野(…なんで網タイツなのかしら)

フレンダの影響で足フェチになったのだろうか、と考えながらも麦野は歩いた

目指すは青髪との待ち合わせ場所

すれ違う男達がチラチラと麦野を見ている

麦野(…これは、いい意味での視線なのかしら)

いい意味での視線である

麦野(…にしても、まだまだ暑いわね…そろそろ世間は夏休みも終わりだっていうのに)

ギラギラと照りつける太陽は、女の敵だ

この頃になるとテレビなどで「残暑が云々」とか言っているが、普通に考えてまだまだ暑さは真っ盛りな気もする

麦野「…暑いわね…」

青ピ「ほんまやねぇ」

麦野「…」クルリ

青ピ「こんにちは、麦野さ…」


麦野「あ、ああああああああ青髪君!?」

青ピ「な、なんでそんなに焦ってるん?」

麦野(いきなりなんで後ろにいるのよ!?)

麦野「こ、こんにちは…」

青ピ「ごめんなぁ、急に声かけたりして」


22 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 20:24:36.87 gaeemkQb0 11/838

麦野「あれ…でも待ち合わせ場所までかなり遠いけど」

青ピ「あぁ、途中で麦野さん見つけたから声掛けたんやで」

麦野「そっか…ビックリした」

青ピ「あはは、驚いた麦野さんも可愛かったで」

麦野「そ、それ何…」

麦野(…?驚いた麦野さん…も?)

麦野(も!?も!?)

青ピ「それで麦野さん、なんで今日はまた網タイツなん?」

麦野「ふぇぁっ!?」

青ピ(ウルトラマンみたいな声やなぁ)

麦野「そ、そうね…今日はいつもと違う感じにしたかったのよ」

青ピ「へぇ…でも網タイツなんて、大胆やねぇ」

麦野(あぁやっぱりそうよね!!こんなのってなんか誘ってるみたいな格好よね!!)

青ピ「…似合ってるなぁ」

麦野「そ、そう?」

青ピ「あっはあ!!なんか大人の色気って感じやね!!」

麦野「い、色気…」

青ピ「やっぱこう…ところどころ見える肌と黒い生地のコントラストが妙なエロスを醸し出してると思うんよ!全部を見せるショートパンツではなく、あえてつぎはぎで肌が見える網タイツ!!見たいという欲求を半分は叶えつつも、残り半分は焦らしているという飴と鞭の共存!!その後で全てを見せてもらえるのか、はたまた見せてはもらえないのか、しかしこのまま焦らされていたいと思う自分がいるのも嘘ではない、それが網タイツやでぇ!!」

麦野(あぁ、なんか青髪君っぽい)


23 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 20:32:36.18 gaeemkQb0 12/838

青ピ「…あれ、でも麦野さんって結構…」

麦野「な、なに?」


青ピ「脚がっしりしてるんやね」

麦野「」


麦野(あぁぁぁ!!やっぱり青髪君も太い足とかよくないわよねぇ!)

青ピ(太腿とかに挟まれたら気持ちよさそうやなぁ)


青ピ「でもボク、細すぎる女の子よりムッチリしてる子のほうが好きやけどな」

麦野「」


麦野(よっしゃぁぁぁぁ!!!)


青ピ「あ、それよりどこ行こうか?」

麦野「え、あぁ…青髪君はどこに行きたい?」

青ピ「そうやな…ゲーセンとか」

麦野「ゲーセン…?なんで?」

青ピ「あれ、麦野さんゲーセン嫌いなん?」

麦野「き、嫌いじゃないけど…」

青ピ「あ、ごめんなぁ…デートで行くような場所ちゃうよね」

麦野(わ、分かってくれてる…)



24 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 20:36:56.72 gaeemkQb0 13/838

青ピ「ほな、水族館でも行く?」

麦野「す、水族館?」

青ピ「そうそう、水族館」

麦野「…そういえば、水族館って行ったことない」

青ピ「あれ、なんやそうなん?」

麦野「うん、子供の頃から色々忙しかったし」

青ピ「へぇ…」

青髪か驚いたような顔をする

麦野「…じゃあ、連れて行ってくれるかしら」

青ピ「えぇよ」

青ピがなんの躊躇もなく麦野の手を握る

麦野(!?)

青ピ「えーっと…バスはそろそろやし、ちょうどえぇ時間やね」

麦野「え!?あぁ、今日もいい天気ね!!」

青ピ「?」

麦野「さ、は、早く行きましょうよ遊園地!!」

青ピ「水族館やって、麦野さん」



25 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 20:45:23.06 gaeemkQb0 14/838



麦野「…すごい、これが水族館…」

水族館の入り口で、既に麦野は面食らっていた

イルカをモチーフにした入口、その周りには細かいマップが書かれている

麦野「…イルカのショーってなに?」

青ピ「イルカが飛んだり回ったりするんやで」

麦野「あ、テレビで見たことあるわね」

青ピ(ほんまに来たことないんやね…)

麦野「…ねぇ、早く入りましょうよ!!」

青ピ「あ、もしかしてごっつ楽しみやったりするん?」

麦野「そ、そんなことないわよ!?ただちょっと経験してみたいし!!」

青ピ(…チラチラ水族館見てるなぁ…可愛らしいわぁ)

麦野「…ねぇ、入らないの?」

青ピ「入るで、行こう」

麦野(よ、よっしゃぁ!!!)

青ピ「…えーっと、二人で1500円やね」

麦野「え、安いのか高いのか分からないわね…」

青ピ「この規模の水族館なら安い価格やで」

麦野「そうなんだ…」



26 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 20:53:12.48 gaeemkQb0 15/838

青ピ「えーっと、1500円…」

麦野「え、あ、私が出すわよ!!」

青ピ「えぇってえぇって、こういう時は男の子が出すもんやって」

麦野「そ、そういうもんかしら」

青ピ「このためにバイト頑張ったんやし」

麦野「えっ…」キュン

青ピ「あ、受付のお姉さんや!!こういう格好えぇなぁ、セクシーでかわい…あ、1500円ですね、あ、はい、すいません」

麦野(わ、私のためにバイトを…)カァッ

青ピ「ほな麦野さん、行きましょか」

麦野「う、うん…」



麦野(…そういえば、こうやって男の子と二人きりになるって…今までほとんどなかったのよね)

青ピ(…麦野さんみたいな美人とデートなんて、ボクぁ土御門を超えたんや!!)

垣根(水族館って大好きだ、メルヘンだから)

麦野「…」

青ピ「…」



麦野青ピ「えぇぇぇぇぇ!?」

垣根「よぉ」



麦野青ピの水族館デート、余計な二人はオマケだよ編スタート





27 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:00:13.15 gaeemkQb0 16/838


麦野「な、なんで垣根がいるのよ!?」

垣根「はぁ?なんで俺が水族館にいたらいけねぇんだよ」

青ピ「べ、別にそういうわけやないけど…」

麦野(くそ…ぶち壊しだ…)

青ピ(…垣根、最低やで…)

垣根「いやぁ、今日はいい天気で外に出たくなってなぁ!!」



垣根「来ちゃったのさ、すいぞきゅかんに!!」

青ピ(噛んでるやん)

麦野(噛んでるわ)

垣根「そういえば、お前達はなんでここに?」

青ピ「そ、それはやなぁ…」

麦野「…デートなのよ、だから邪魔しないで…」

青ピ「そ、そうなんやって…」



垣根「デート!?マジ!?」

麦野「ほ、本当なんだから…」

垣根「聞いたかよ一方通行!!!」

青ピ麦野「」


一方「あァ?なンだよ」



28 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:08:27.40 gaeemkQb0 17/838

垣根「デートだって!!こいつらデートだって!」

一方「えェ!?デートォ!?」

麦野「だ、第一位…なんでアンタまでいんのよ!?」

垣根「なんでって、二人で来たんだし」

青ピ「あ、あの…なんで彼女とじゃないんか分からないんやけど」

垣根「心理定規は今、家でゆっくりと保湿しているところだからな」

一方「番外個体は今、家でゆっくりと急いでるンだよ」

麦野「あぁそう、じゃあ二人で水族館を楽しんで…」

垣根「待てよ」ガシッ


垣根が麦野の肩を掴んだ

クルリ、と麦野は振り向いた

その首筋には、まるで死神の鎌が掛けられているかのような重圧が感じられた


垣根「誰が、逃がしてやるって言ったかな」

青ピ「な、なんでやねん!?ボク、今回結構大事なこと言うつもりなんやけど!!」

垣根「あぁ、じゃあ続きはwebでいいじゃんか」

青ピ「よくないやんか!!!」

麦野(だ、大事なことって何かしら…)



29 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:12:26.88 gaeemkQb0 18/838

一方「なァ、一緒にイルカさン見ようぜ」

青ピ「遠慮したいんやけどなぁ…」

麦野「…アンタ達さ、空気が読めないって言われたことない?」

垣根「…」



垣根「え、こいつ何言ってんの?」

一方「マジ空気読めてないンですけどォ」

麦野(うぜぇ)

青ピ「ま、まぁまぁ…垣根達は何か見たいのとかあるん?」

垣根「あぁ、まずはアシカだよな」

一方「はァ!?まずはヒトデって約束だったじゃねェかよォ!!」

垣根「アシカ!!!」

一方「ヒトデ!!!」

垣根「アシカ!!!!!!」

一方「ヒトデ!!!!」

垣根「ヒトデ!!!!!!!!」

一方「お前ってやつはァ…」フフッ

青ピ(なんやねんこれ)

麦野(頭痛くなるわ)



垣根「じゃあまずはアシカな」

一方「あァ」

青ピ「えぇぇぇぇぇ!?」



30 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:19:40.16 gaeemkQb0 19/838


麦野(…隙を見つけて逃げ出せばいいかしら…)

垣根や一方通行の後ろに着きながら、麦野は考えていた

ちなみに入り口から入ってすぐは大きな水槽があるのだ

そこには小さな魚からサメまでが共存している

青ピ「あ、やっぱりこの薄暗い感じが好きやな」

麦野「ホント…幻想的」

垣根「その幻想をぶち殺す!!」

一方「ダメだ!!壊さないでェ!!!」

麦野「…垣根の一言であっちの女の子が泣き出しそうになったわね」

一方「てめェ垣根ェ!!!!」

垣根「あぁ!?お前だって共犯だろうが!!!」

一方「ロリを泣かせるとかマジ最低なンですけどォ!!!」

垣根「そ、そんなこと言われたら私…」ウルウル

一方「あ、ご、ごめン…お前のこと、最低なンて俺は…」

垣根「いいの…私、所詮は冷え性の女…」


青ピ「あ、麦野さん麦野さん、サメがおるで」

麦野「あ、ホント…なんか頭の形おかしい」

青ピ「シュモクザメやね」

麦野「へぇ…これってたしかハンマーヘッドシャークよね、洋名」

青ピ「そうなんや、麦野さん物知りやねぇ」

麦野「そ、そうかな?」カァッ


31 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:34:07.00 gaeemkQb0 20/838


垣根「いやん!!見てよ一方通行、このサメったらあっちの小魚食べちゃった//」

一方「おいおいマイハニー、そンな冗談は子供が泣くからやめたまえ」

垣根「あらぁ、でもこのサメ、なんだか獰猛そうよね」

一方「何言ってるンだい、俺だって夜は…獰猛だろ?」キリッ

垣根「あぁん!!さっすがダーリン//」


麦野「…あ、ジンベエザメ」

青ピ「でかいなぁ…でもかなり穏便なサメなんやっけ」

麦野「そうそう、小さいプランクトンとかが餌で…」


垣根「あぁぁ!!タコがいるタコ!!!」

一方「マジかよ!!マジオクトパスなンですけど!!!」

垣根「それを言うならカスケードンだろ、一方通行!!」

一方「ははは!!そうだったなァ!!」

麦野「あぁもう!!アンタ達うるさいのよ!!」

垣根「うるせぇ!!網タイツなんか履きやがって!!!」

麦野「なっ…」

一方「誘ってンのか?あァ?」

麦野「う、うっさい!!これは…そ、その…」



32 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:45:27.73 gaeemkQb0 21/838

青ピ「麦野さんオシャレやんか、えぇやん」

垣根「網タイツだぜ?こんなの誘う格好…」ハッ!!

一方「まさかお前…青髪を誘ってンのか…」

麦野「へぁっ!?」

垣根「マジかよ!!!」

一方「…引くぜェ…」

麦野「ち、違う違う!!だって私脚太いから短いズボン履いたらこういうの着ないといけないし…そ、それにいっつもコートばっかり着てるからオシャレの方法とか…わ、わかんないし…」グスン

垣根「正直すまんかった」

青ピ「…でも、一方通行の服装もウルトラマンやん」

一方「」

麦野「ウ…ウルトラマン…」プルプル

垣根「ウルトラマン…www」

青ピ「それに垣根やって、なんで着ぐるみ着てんねん」

垣根「ウサギだぜ、可愛いだろ」

麦野(いつの間に着替えたのよ…)

垣根「ピョン!!なんて//」

一方「」

青ピ「…それより、ボク達はもう行くから二人は…」

垣根「次はタツノオトシゴがいるコーナーだな、行くか」

青ピ(あ…やっぱそうなんや)


33 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:51:51.98 gaeemkQb0 22/838


垣根「…タツノオトシゴってな、悲しい伝説があるんだ」

麦野「何よいきなり」

タツノオトシゴが入った水槽を見て、垣根が小さく笑う

垣根「…どうしてタツノオトシゴが海に住んでるか知ってるか?」

青ピ「そういえば知らないなぁ…」

垣根「…こいつはな、海の畔に住んでいた一人の女子に恋をした哀れな竜だったのさ」

麦野「…へぇ」

垣根「…竜って言ったら、そりゃ神様の使いやらなんやらで…正直、人間なんかよりよっぽど偉い生き物なんだ」

麦野「そりゃそうよね」

垣根「…竜だって、その恋が間違っているとは知っていた」

青ピ「…」

垣根「…でもな、そいつはいつまでも女子に思いを抱いていた、何十年も」

麦野「な、何十年…」

垣根「…その女子はやがておばあさんになってしまった、それでも竜は思い続けた…ずーっと、同じ場所からその女子を見つめていたんだ」

垣根「惰性なのか何なのか、竜にさえ分からなかった…ただ、なぜかその女子だけを愛していたんだ」

青ピ「…」

垣根「…でもな、竜と違って人間には寿命がある」


垣根「ある日…その女子は、亡くなってしまった」

一方(ウルトラマン…)


34 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/09 21:59:38.15 gaeemkQb0 23/838

垣根「…竜は涙を流した、それは途轍もなく溢れ出す涙だった」

垣根「…ずっと泣いていた竜の遥か下には、いつの間にか海が出来ていた」

垣根「…女子が住んでいたのよりもずっと大きな海が」

垣根「…絶望してしまった竜は、そのまま悲しみのままに…海へと身を投げた」

垣根「…悲しみという名の海の中に、竜は沈んでしまったんだ」

麦野「…それからというもの…タツノオトシゴが生まれたのね…」ウルウル

青ピ「なんて感動的な話なんや…」ウルウル

垣根(全くのデタラメだっていつ言おうかな)

一方「…なァ」

垣根「なんだよ」

一方「…いい話だなァ…」ウルウル

垣根(お前もかよ)

一方「…俺、タツノオトシゴ好きになっちまったよ…」

青ピ「ボクもやなぁ…もう少し見ておきたいわぁ」

麦野「私も…」

垣根(…)



垣根(シリアスな雰囲気になりおったwwwww)



37 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:08:51.69 gtPQ1TLB0 24/838

麦野「・・・」

麦野(って違う違う!いつの間にか垣根の存在を許してしまってたわ!)

一方「なァ、次はどこ行くンだよ」

垣根「そうだな・・・ラッコもいいけど、カニが見たいな」

一方「カニいいよなァ」

垣根「美味しいもんな」

青ピ「・・・水族館でそれは言ったらあかんやろ」

垣根「・・・なんで?」

青ピ「メルヘンぶち壊しやんか」

垣根「!?」


垣根「なんてこった・・・俺は自らこのメルヘン空間を壊していたのか・・・!」

一方「今更かよ」

垣根「・・・一方通行・・・俺はもう、メルヘンを語る資格はない・・・」

すっ、と垣根が着ぐるみを脱ぐ

中にはいつもの格好をした垣根

垣根「・・・俺には、着ぐるみを着る資格はない」

一方「はァ?」



38 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:09:20.33 gtPQ1TLB0 25/838

垣根「あげます」

一方「いらねェ」

麦野「・・・!」

麦野(待って・・・今垣根は、一方通行との会話に夢中になってる!)

麦野(今なら青髪君と二人きりに・・・)

麦野(・・・!って、なんで私は二人きりになるのを期待してんのよ!)

青ピ「・・・なぁ、垣根も一方通行も・・・あんまり邪魔しないでほしいんやけど」

垣根「あぁ?」

青ピ「・・・ボクなぁ、今日だけは麦野さんと二人きりがいいんやけど」

麦野「!」

一方「へェ・・・なンでだよ?」

青ピ「・・・ここでは言えへんけど」

垣根「ヒューヒュー!ってことは、麦野と二人きりがいいのか!」

青ピ「・・・まぁ、そうなんや」

一方(・・・作戦成功だな)

垣根(あぁ・・・麦野に青髪を意識させる、見事な作戦が)

一方(・・・こォでもしねェと麦野はなンだかンだ、二人きりになるのを避けそうだからな)

垣根(・・・正確には、シリアスな雰囲気で二人きりになるのを、な)




39 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:09:48.56 gtPQ1TLB0 26/838

垣根「で?麦野も二人きりがいいのか」

麦野「え、あ・・・」

一方「どォなンだよ、青髪と二人きりになりたいンじゃねェのか」

麦野「わ、私は・・・」

麦野がパニックに陥る

二人きりになりたい、なんて認めてしまうのはなぜか怖かった

麦野「違う!違うから気にしないで、みんなで楽しめばいいじゃない!」

垣根「」

一方「」

青ピ「え・・・」

麦野(あぁぁ違うのにぃ!)

垣根「・・・青ピ、ちょっといいか」

青ピ「え、なんやの?」

垣根が青ピの腕を引っ張る

垣根「いいから・・・一方通行と麦野はそこで待っとけ」

一方「・・・あァ」



40 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:10:15.93 gtPQ1TLB0 27/838


スタスタ、と垣根は青ピの手を引っ張りながら近くのトイレに駆け込んだ


垣根「あぁぁぁ!作戦失敗だよ!」

青ピ「な、なんのことやねん・・・」

垣根「いいか、麦野はお前と二人きりになりたいとは思っていた!」

青ピ「な・・・ならなんでボクらの邪魔したんよ!?」

垣根「邪魔じゃないんだよ!いいか、二人きりになりたいとは思っていたが、あいつにはその理由が分からなかったんだよ!」

青ピ「・・・理由?」

垣根「・・・青ピ、お前はなんで麦野と二人きりになりたいんだ」

青ピ「な、なんでって・・・」

青ピは恥ずかしくもなさそうに、さらりと言う

青ピ「ボク、麦野さんのこと好きやし」

垣根「そうだよな・・・お前は気づいてるんだ」

だが、と垣根が頭を抱える

垣根「麦野はまだ自分の気持ちの正体に気づいちゃいない」

青ピ「・・・」

垣根「・・・そんな状況でお前と二人きりになってみろ・・・お前、今日あいつに告白するつもりだったろ」




41 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:10:42.29 gtPQ1TLB0 28/838

青ピ「な、なんでそないなことまで知ってんねん・・・」

垣根「・・・ゴーグル馬鹿っていうヤツが、最近麦野とお前が仲良しだって言って・・・いや、それはいいんだ」

話を戻すぞ、と垣根が釘を打つ

垣根「・・・曖昧な感情のままお前に告白されたら、麦野はどうすると思う」

青ピ「・・・混乱するやろうね」

垣根「だろ・・・だから、あいつにはまず自分の気持ちに気付くことが必要なんだ」

青ピ「・・・」

垣根「これは友人としての警告なんだ・・・いいか、麦野に今日告白したいなら、あいつに気持ちを気づかせなきゃ・・・」

青ピ「あのな、垣根」

青ピがため息をつく

呆れているような、笑っているような

そんな、複雑なため息だ

青ピ「・・・たしかに、麦野さんは多分・・・まだボクのことを好きだって思ってないとは思う」

青ピ「今告白しても混乱させる、それも分かってる」

青ピ「・・・垣根や一方通行のやってくれたことは、ボクにとってはプラスなんかもしれへん」



42 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:11:15.57 gtPQ1TLB0 29/838

垣根「なら・・・」



青ピ「でもな、これはボクの恋なんや」

垣根「!」

青ピ「垣根にも一方通行にも関係ないんやで」

垣根「で、でもよ・・・」

青ピ「・・・心配してくれてるんはありがたい、友達としてそれは感謝してる」


青ピ「でもな、ボクはボクのやり方で麦野さんに気持ちを伝えないといけないんやって」

垣根「!」

青ピ「垣根や一方通行の提案した方法で告白が成功して、麦野さんと付き合えたら・・・そら、幸せなんかもしれないわ」

青ピ「・・・せやけど、それはボクの方法やないんや」

青ピ「・・・他の人ならそれでえぇんかもしれない、けどボクはボクの方法やないとあかんのや」

垣根「・・・」

青ピ「もし、自分の方法で麦野さんへの告白が失敗したら・・・また、自分の方法でやり直す」

青ピ「・・・簡単な話やんか、ボクは麦野さんにボクを好きになって欲しいんやから」



43 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:11:51.18 gtPQ1TLB0 30/838

垣根「・・・本気なんだな、お前」

青ピ「?」

垣根「・・・麦野が美人だから好きだ、とか・・・そういうわけじゃなかったんだな」

青ピ「当たり前やんか」

ケラケラ、と青ピが笑う


青ピ「ボク、目が見えなくて耳が聞こえなくても・・・きっと麦野さんを好きになったと思うけどなぁ」

垣根「・・・」

青ピ「・・・初めてやったんやで、一緒にいて安心できる人」

青ピ「一緒にいて楽しい人はたくさんおるけど」

垣根「・・・分かった、お前は・・・麦野を愛してるんだ」

青ピ「そうやとえぇな」

垣根「・・・悪かった、俺達は邪魔だったんだな」

青ピ「えぇって、ボクらをからかいたかったわけやないんやろ」

垣根(それもちょっとあるんだけどな)

垣根「あぁ、お前らを応援したかったんだ」

青ピ「なら大丈夫、ボクは頑張るから」



44 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:12:17.14 gtPQ1TLB0 31/838

垣根「・・・分かった」

青ピ「そろそろ戻らないと、麦野さんを待たせたらあかんから」

垣根「・・・あぁ」




一方「・・・」

麦野「・・・」

一方「お前、あいつのことどう思ってンだよ」

麦野「・・・垣根?」

一方「とぼけンな」

麦野「・・・青髪君は素敵だと思うわよ」

一方「・・・それだけか」

麦野「・・・だったらなんなのよ」

一方「お前よォ・・・あの青髪って野郎のこと、好きなンじゃねェのか」

麦野「あ・・・青髪君は・・・その・・・」

顔を赤くしながら、麦野が言葉を濁らせる

一方「・・・」

麦野「・・・素敵だと思うけど・・・」

一方「けど?」

麦野「でも、私みたいな・・・」




45 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:12:52.36 gtPQ1TLB0 32/838





青ピ「麦野さーん!お待たせ!」

麦野「あ、青髪君・・・」

一方「あァ?垣根はどうしたンだよ」

垣根「ちゃんといるぜ」

一方「・・・」

垣根「・・・麦野、すまなかったな」

麦野「は、はぁ?」

垣根「興味本位で二人を冷やかしたなんて、さすがにやりすぎた」

一方「お、お前・・・」

垣根「・・・これから邪魔したりはしない、だから二人で楽しんでくれ」

麦野「え、あぁ・・・それならいいけど」

垣根「・・・じゃあな、上手くやれよ青髪」

青ピ「もちろんやって!」

納得がいっていない表情の一方通行を引っ張り、垣根が二人から離れる

麦野「ね、ねぇ・・・垣根となにかあった?」

青ピ「特になんもないで」

麦野「ならいいんだけどさ・・・」



46 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:13:17.16 gtPQ1TLB0 33/838

青ピ「それより、デートの続きやろ!」

麦野「あ・・・そうだったわね」

青ピ「行こうか」

再び、青ピが麦野の手を握る

今度は正真正銘、二人きりだった


のだが


垣根(こちらスネーク!)

一方(同じくスネーク!)

垣根(二人合わせて!)


垣根一方(スネーク!)

二人は、決して飽きたりはしていなかった

一方(はン・・・乗りかかった船だ、だったら泥船だろうが最後まで見届けてやるよ!)

垣根(青髪がなんて言って告白するか気になるしな!)

一方(なによりあの麦野の面白い瞬間が撮れそうだからなァ)

垣根(カメラは用意したか)

一方(当たり前だろォが)

47 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 16:13:43.93 gtPQ1TLB0 34/838



麦野「・・・そろそろイルカのショーだったかしら」

青ピ「麦野さん、イルカとか好きなんやね」

麦野「に、似合わないわよね・・・分かってるんだけどさ」

青ピ「?」

麦野「絹旗とか浜面とかにいつも趣味が子供っぽいって言われるから・・・」

青ピ「そんなことないと思うけどなぁ」

麦野「え・・・?」

青ピ「ボク、麦野さんはきっと純粋なんやと思う」

麦野「私が純粋?」

青ピ「そや、だから動物が好きやったりするんやろ」

麦野「・・・でも・・・私、純粋なんかじゃないわ」

青ピ「ボクが純粋やって言うんやから、純粋なんやで」

麦野「な、なにそれ?」

青ピ「僕の前にいる麦野さんは純粋やってこと」

ニコリ、と笑ってから青ピが先を指差す

青ピ「早く席とっておかないと座れなくなるで」

麦野「そ、そうね!」



48 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 17:14:05.52 gtPQ1TLB0 35/838


麦野「やった、一番前の席が空いてる!!」

青ピ「あらら…みんななんか後ろの席とかに座ってるなぁ」

麦野「きっとイルカを間近で見るのが恥ずかしいのよ」

青ピ「そんなもんなんかなぁ?」

麦野「それより、楽しみね!!」

青ピ(…ほんまにイルカのショー、見たことないんやなぁ)

麦野「…!係員のお姉さんが入ってきたわ!!」

青ピ「…そういえば、イルカのショーって結構水が跳ね…」


「みなさん、こんにちはー!!」

「こんにちはぁぁぁ!!!!」


青髪のそんなつぶやきは、子供達の歓声に掻き消された

麦野「…子供達って、こういう時の一体感はすごいわよね」

青ピ「そら、楽しんでるんやろうな」

麦野「…いいなぁ」

青ピ「麦野さんも今楽しめばえぇやんか」

麦野「!そ、そうね!!」

青ピ「あ、イルカさん達が上がってきたで」

麦野「ほ、本当!!めちゃくちゃ可愛いわね!!」


49 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 17:24:44.15 gtPQ1TLB0 36/838

「では、まずはイルカさんのジャンプです!!お姉さんが笛を吹くと、イルカさんはジャンプするんですよ!!」

「すごーい!!!」


青ピ(…ジャンプ…)

麦野(み、見てみたい!!!)

青ピ(!!も、もしかしてプールの間近に誰も座ってなかったのは…)



垣根(おぉぉぉ!!俺達も前に座ろうぜ一方通行!!)

一方(打ち止めのために写真撮るンだァ!!)


「せーの!!」

お姉さんが笛を吹いた

青ピだけは気づいていた

もしかしたら、誰も前に座っていなかったのは


麦野「あ、イルカが跳んで…」


バッシャーン!!!



水しぶきが、かなりかかるからなのでは、と





50 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 17:32:17.06 gtPQ1TLB0 37/838


麦野「…」

イルカショーは無事に終了した

しかし、麦野の心は些か無事ではなかった

青ピ「あっちゃー、二人ともビッショビショやね」

麦野「ホント…」

青ピ「?そんなにがっかりすることなんかないで」

麦野「だ、だってさ…せっかくのデートなのに」

青ピ「もしかしてお気に入りの服やったん?」

麦野「そ、そうじゃなくて…こんなんじゃ、青髪君も嫌でしょ?」

青ピ「嫌やないって、むしろビショ濡れの女の子のなんて素敵なものが拝めて最高やでぇ!!」

麦野「そ、そう?」ドキドキ

青ピ「あ、でもこれから水族館回るのはきっついなぁ…」

麦野「まぁ…かなり濡れてるからね」

青ピ「しゃあないし、今日は帰ろっか」

麦野「そうね…また一緒に来てくれる?」

青ピ「もちろん!!」



垣根(…)ビッショリ

一方(…)ビッショリ


51 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 17:40:22.33 gtPQ1TLB0 38/838

デートの帰り道というのはなんとも寂しいものだ

それも、不本意な形で終わったデートならばなおさら

麦野(…もうすぐ…私の家の近くね)

はぁ、と麦野がため息をつく

本当なら今頃、青ピと水族館に残っているはずだった

麦野(まぁ…イルカを責めてもしょうがないけど)

青ピ「あ、喉乾いてへん?」

麦野「?」

青ピ「ほら、ここの公園に自販機あるから」

麦野「あ、いいけど」

青ピの提案に乗り、麦野も公園へと入る


横がかなりへこんだ自販機で、ヤシの実サイダーを買ってから二人はベンチに座った


麦野「…なんか、ちょっと残念だったわ」

青ピ「なんで?」

麦野「…デート、すぐ終わっちゃったから」

青ピ「あはは…垣根達にも邪魔されたしなぁ」

麦野「そうそう…本当に、踏んだり蹴ったりよ」


52 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 18:38:44.97 gtPQ1TLB0 39/838

青ピ「…なら、最高のデートに今から変えないといけないんやね」

麦野「?」

青ピ「…あのな、麦野さん」

そっと青ピが麦野の手を握る

麦野「な、なななななに!?」

青ピ「ボク、麦野さんのことめっちゃ好きなんやで」

麦野「!?」

青ピ「そりゃあもう、毎日毎日考えては苦しんでしまうほど大好きなんやでぇ!!!」

クネクネと体をくねらせ、青ピがそんなことを言う

麦野「そ、それって…」

青ピ「告白やで、人生初の告白なんやぁ!!!」

麦野「で、でも私ってそんなにいい女じゃ…」

青ピ「ボクにとっては最高の女性なんやって」

麦野「そ、それに…それに、私は…人に愛されるような人間じゃないのに」

青ピ「?」


青ピ「でもボク、麦野さんのこと愛してるけどなぁ」

麦野「あ、愛してる!?」


53 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 22:03:19.17 gtPQ1TLB0 40/838

青ピ「…せやから、そんなこと言わないでほしいんやで?」

麦野「…それは…」

青ピ「…ボク、麦野さんのこと大好きやから」

麦野「…」

青ピ「それで、麦野さんはどうなん?」

麦野「わ、私!?」

青ピ「ボクのこと、嫌いかな?」

麦野「き、嫌いなわけないじゃない!!」

焦ったように、麦野が否定する

それを見て、少し青ピはほっとする

麦野「…た、ただ…」

青ピ「ただ?」

麦野「こ、こんなに私のことを好きになってくれた人なんて初めてで…なんか、ちょっとどうしていいか分からないのよ」

青ピ「…そっか、それも無理ないよなぁ」

麦野「でも…でもね」

青ピ「?」



麦野「私も…きっと、青髪君のことが大好きなんだと思う」




垣根(えんだぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!!!)

一方(いやァァァああああああああああ!!!)



54 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 22:16:23.25 gtPQ1TLB0 41/838


青ピ「…そうなん?」

麦野「な、なんで驚いてるの?」

青ピ「いや…てっきり返事は保留されるんちゃうかな、って思ってたから」

麦野「そ、そりゃ…少しは時間欲しいのよ」

色々考えたいこともあるし、と麦野が付け加える

麦野「…でもさ、ここまで真剣に考えてくれている人の告白を…保留なんてこと、ひどいじゃない」

青ピ「それじゃ、付き合ってくれるん?」

麦野「つ、付き合う!?」

青ピ「そういうことになるんやで?それでもええならボクは嬉しいけど」

麦野「それは…」

青ピ「…ええんやって、ボクいつまでも待つから」

麦野の手を放した青ピが、空になったジュースの缶をゴミ箱に放り投げる

カランカランという小気味いい音が響いた

青ピ「…1年でも2年でも、10年でも100年でも」

青ピ「麦野さんのこと、ずーっと好きやと思うから」

麦野「…私のどこが好きなの?」

青ピ「うーん…」



青ピ「…どこやろ」

麦野「は?」


55 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 22:20:38.48 gtPQ1TLB0 42/838

青ピ「そんな具体的なこと、分からないんやけど」

麦野「じゃ、じゃあなんで私のこと好きだなんて言えるのよ…」

少しムスッとしながら麦野が尋ねる

青ピ「多分逆なんやって」

麦野「逆?」

青ピ「特別な理由もなく、どこがいいのかとかそんな細かいことも分からないけど…それでも一緒にいたいって思うのが、ボクにとっての好きなんや」

麦野「…青髪君…」

青ピ「せやから、ボクは麦野さんのことが大好きや」

麦野「…ありがと、本当に嬉しいし…なんか安心した」

青ピ「…」

そろそろ日が傾いてきたな、と青ピは空を見つめて思った

真夏の日が傾くのは遅い、おそらくすでに午後の3時近いだろうか

青ピ「…さて、そろそろ帰りましょうか」

麦野「か、帰るの!?」

青ピ「なんで驚いてるん?」

麦野「わ…私の答えとか聞かなくていいの?」

青ピ「うーん…別に聞かなくてもええかな」

麦野「…君って本当に不思議よね」

青ピ「掴みどころがないってのは自覚あるけどなぁ」


56 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 22:23:35.94 gtPQ1TLB0 43/838

麦野「…ごめんね、しばらく考えたいかな」

青ピ「…分かってるって、断られなかっただけボクも安心した」

麦野「…あ、あのさ」

青ピ「?」

麦野「…キス、まだだったよね」

青ピ「そうやね、そんな関係やなかったし」

麦野「…いいよ、キスくらいなら」

青ピ「…」

じーっと青ピが麦野の唇を見つめる

見れば見るほど整った顔立ちだ

唇も、程よい潤いを持っている

青ピ(…本当なら、キスしたいんやけどね)

小さく笑ってから



青ピ「今日はええよ」

そう答える

麦野「…そっか、嫌だった?」

青ピ「…そういうんは、付き合ってからしたい主義なんや」

麦野「あれ、もしかして意外と恋愛には真面目だったりするの?」

青ピ「え、意外かな?」

麦野「かなり意外」クスクス


57 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 22:30:48.55 gtPQ1TLB0 44/838

青ピ「…真面目なんやで、ボクって」

麦野「…それはなんとなく分かってる」

青ピ「さて、ボクはこっちなんやけど…麦野さんとはたしか別方向やったっけ」

麦野「送ってくれるっていう発想はないの?」

青ピ「そしたら別れるのがもっと辛くなるやん」

麦野「別に今世の別れってわけじゃないんだから…」

青ピ「あはは、それにボクなんていなくても麦野さんは大丈夫やん」

麦野「…大丈夫じゃないわよ」ボソッ

青ピ「?なんか言ったん?」

麦野「ううん、なんでもない」


蒸し暑い公園の中で、二人がくるりと別方向を見つめる

そっちに向かって歩き出すのが、少しだけ残念だ

青ピ「あ、そうやった」

麦野「?なにか忘れた?」

青ピ「そんなに大切なことやないんやけどね」

麦野のほうを見つめた青ピが、笑ってからそっと呟いた



青ピ「またな」



58 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 22:39:14.94 gtPQ1TLB0 45/838


青ピ「…」

麦野と別れた青ピは、公園の入り口に向かっていた

青ピ「いつまで隠れてるつもりなん?」



垣根「へぁぁっ!?」

青ピ「ずーっとボク達のことつけてたやろ」

一方「お、お前気づいてたのかよ…」

青ピ「当たり前やんか」

垣根「麦野は気づいてなかったみたいなのに…」

青ピ「あはは、麦野さんは緊張してたんとちゃうかな」

一方「…お前は緊張してなかったのかよ」

青ピ「そんなんとちゃうって、ほんならな」

テクテク、と青ピは歩いていく


青ピ「…」

少し蒸し暑いが、いい天気だなと彼は思っていた

青ピ(…あぁ、そっか)

自分の心が晴れ晴れとしているからなのか、と



59 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/11 23:01:25.28 gtPQ1TLB0 46/838




フレンダ「おかえり麦野…!?」

家に帰りついた麦野を見て、一同は驚愕した

麦野「たっだいまー…」

浜面「ど、どうしたんだよその服!?」

麦野「ん?あぁ、これは…」

絹旗「お、男に濡らされたんですか!?」カァッ

麦野「…はぁ?」

ゴーグル「麦野さん…いきなりそれは、さすがに段階を踏まないと…」

フレンダ「きーっ!私の麦野が盗られたわけよ!!」

麦野「だ、誰がアンタのよ!?それに青髪君のせいじゃなくて…」

滝壺「…自分から濡れるなんて、むぎのったら大胆」

麦野「なんでそうなんだよ…」

絹旗「…む、麦野!!どうでしたか、大人の時間は!?」

麦野「だ、だから違うんだってば!!」

フレンダ「わ、私もいつかゴーグルと…」ポーッ

ゴーグル「…なんか女性って怖いっす」

浜面「あ、それは同感だな」

麦野「あぁもう!!違うってのに!!!」

麦野が頭を抱え、大声で叫ぶ




麦野「不幸だぁぁぁぁ!!!!」



61 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/12 14:55:02.97 /vaXW4fB0 47/838


フレンダ「…ねぇ、ゴーグル」

ゴーグル「なんすか?」

アイテムの家

そのリビングで、ふとフレンダがゴーグル男に声をかけた


フレンダ「そのゴーグルってさ…いつまで着けてるつもり?」

ゴーグル「?」

フレンダ「普段から結構つけてるけど…どうして?」

ゴーグル「いやまぁ…体の一部みたいなもんですし」

フレンダ「…昔からずーっと着けてるの?」

ゴーグル「スクールに入ってから…えーっと、仕事の時はずっと」

フレンダ「あのさぁ…」

ゴーグル「はい」



フレンダ「ぶっちゃけ、そのゴーグルってダサい訳よ」

ゴーグル「」



ゴーグル男の災難編



62 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/12 16:06:36.85 /vaXW4fB0 48/838

フレンダ「…なんかさ、ぱっと見て意味が理解できるものじゃないし…それにデザインもなんか土星の輪っかみたいだし」

ゴーグル「…そ、そんなこと…」

フレンダ「…ぶっちゃけ、ゴーグルの中でも余分な部分な訳よ、ゴーグルって」

ゴーグル「…それじゃ、俺の名前は…」

フレンダ「あ、そのためにだけはなってた訳よ」

ゴーグル「…名前のためだけ…」

ゴーグル男は肩を落とす

そりゃたしかに、彼だって自分の着けているゴーグルをかっこよすぎるとは思わない

しかし、長年着けているこのゴーグルには愛着が湧いている

ゴーグル「…俺はこのゴーグル好きなんですけどね…」

フレンダ「…あのさ、たまには違うゴーグルとかサングラスとか、掛けてみたら?」

ゴーグル「…サングラスですか…?」

ゴーグル男とフレンダが、彼のサングラス姿を想像する



ゴーグル「ぶっはwww」

フレンダ「似合わない!!絶対似合わない訳よwwww」

ゴーグル「自分で言うのもなんすけど、気持ち悪くなりそうっすwww」

フレンダ「まぁ元からおかしいけどね」

ゴーグル「おい」


63 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/12 16:28:03.67 /vaXW4fB0 49/838



ゴーグル「…ったく、フレンダさんはなんも分かってないっす…」

まだ暑さの残る夏の道

ミンミンと鳴く蝉を鬱陶しがりながら、ゴーグル男は歩いていた

ちなみに彼にしては珍しく、一人でだ

ゴーグル(…そりゃ…たしかに、結構重いし…鬱陶しいこともありますよ)

頭に着けたゴーグルを見つめながら、ゴーグル男は考えた

ゴーグル(…でも、これは俺にとっては大事なものですし…)

ゴーグル(そ、それにいっつも帽子被ってるフレンダさんも同じようなもんですよね!!)

無理やりな解釈で、どうにか自分のゴーグルを正当化する





「ねぇねぇ、見て見て!!あのお兄ちゃん、変な輪っか着けてる!!」

「ホントだー、変なの」



ゴーグル(あぁぁ!!やっと自分のゴーグルに自信を持ったところだったのにぃ!!)

子供の冷たい一言で、彼は自信を再び無くす

そういえば、今までも街中を歩くとチラチラ見られていた気がする


64 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/12 16:31:16.62 /vaXW4fB0 50/838

ゴーグル「…はぁ…なんなんすか、この常にアウェーな感じは…」ガックリ



心理「なに肩落としてるのよ」

ゴーグル「ふぇぇぁっ!?」

心理「…なんでそんなに驚いてるの?」

ゴーグル「あービックリした…心理定規さんじゃないっすか」

心理「…こんにちは、こんな暑いのに何してるの?」

ゴーグル「あ、あぁ…散歩ですよ、心理定規さんは?」

心理「ちょっと買い物をね」

ゴーグル「買い物?」

ゴーグル男が心理定規をじっと見つめる

だが、彼女の手にはまだ買い物袋がない

つまり、まだ買い物はしていないのだろうか

ゴーグル「で、でも垣根さんと一緒じゃないなんて珍しいですね」

心理「あぁ、垣根なら今部活なのよ」

ゴーグル(ぶ、部活?あの垣根さんが?)

心理「…それより、ちょっと時間ない?」

ゴーグル「あ、あぁ…ありますけど」

心理「よかった」

ゴーグル「?」


65 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/12 16:36:45.86 /vaXW4fB0 51/838

心理「ついでだから、私の買い物についてきてくれない?」

ゴーグル「は、はぁ…」

心理「ちょっと荷物持ちが欲しかったのよね」

ゴーグル「…なんか、心理定規さんってたくましくなりましたよね…」

心理「あらそう?」

ゴーグル「…昔はもっとおしとやかだったのに…」ハァ

心理「…今だっておしとやかじゃない」

ゴーグル「いや、まぁそうなんですけど…」

心理「ほらほら、文句言わないでついてきてよ」

手をヒラヒラとさせてから、心理定規が先に歩き出す

ゴーグル(…仕草も垣根さんに似てきましたし…)

心理「ちょっと…荷物持ちはイヤだったのかしら」

ゴーグル「あぁいや…でもそれを喜ぶ人ってほとんどいないっすよ?」

心理「…それもそうね」

ゴーグル「…ヒマだったからいいですけどね…」

心理「ありがと…そういえば、フレンダは?」

ゴーグル「あー…今は一緒じゃないっすよ」

心理「珍しいわね」



66 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/12 16:41:46.97 /vaXW4fB0 52/838

ゴーグル「そうっすか?」

心理「もしかして…喧嘩とかしたの?」

ゴーグル「そんなんじゃなくて…このゴーグルのこと、馬鹿にされたんすよ」

心理「あら、そうなの?」

ゴーグル「デザインがダサいって…」

心理「…」

心理定規が、しばしゴーグルを見つめる

心理「まぁたしかに…オシャレとは程遠いけど」

ゴーグル「そ、そんな自覚くらいはありますよ…」

心理「…そうだ、なんなら私が荷物持ちしてくれるお礼に何か買うわよ」

ゴーグル「え、でもなんか悪いっすよ」

心理「…フレンダにヤキモチ妬かれちゃうから?」クスクス

ゴーグル「そ、そんなんじゃないっす!」

心理「じゃあいいじゃない、とびっきりカッコイイ頭に着けるものを買ってあげるから」

ゴーグル「鍋とかっすか?」

心理「あなたってそういう趣味だったのね」

ゴーグル「すいません、違いますから許してください」


67 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/12 16:50:23.76 /vaXW4fB0 53/838


心理「…それにしても…本当にあなたってそのゴーグル着けてないと見分けつかないわよね」

ゴーグル「…ひ、ひどいっすよ…」

心理「ちょっとだけ上条君に髪型似てるし…」

ゴーグル「…特徴ないからこれ着けてるんですよ…」

心理「…でも、しっかりオシャレしたら結構カッコイイと思うんだけど」

ゴーグル「いいですよオシャレとか…大体、間近に信じられないほどのイケメンがいますから」

心理「垣根?」

ゴーグル「垣根さんっす」

心理「…はぁ、あなたってつくづく大変よね…オシャレな人は他にいるし、キャラは他の人が濃いし…」

ゴーグル「…正直、自分の影の薄さには気づいてますよ…」

心理「…災難よね、それって」

ゴーグル「災難ですよ…」



上条「ふっふふーん、ふっふふーん、ふっふっふーん…ってあれ、心理さんとゴーグルじゃないか」

心理「あら、こんにちは」

ゴーグル「お久しぶりっす」

上条「久しぶり」



68 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/13 17:06:30.64 QEqyJDqz0 54/838

ゴーグル「…あの、上条さんも一人ですか?」

上条「そうなんだよ…美琴は今垣根と部活だからさ…」

ゴーグル「?御坂美琴さんって…たしか常盤台中学じゃなかったですか?」

心理「あぁ、垣根が無理やり部活に引き入れたのよ」

ゴーグル「な、なんすかそれ」

上条「おかげでヒマなんだよな…」

ゴーグル(…!も、もしかしてこれはチャンスなんじゃ!?)

ゴーグル「じゃあ、俺達と一緒に買い物行きませんか?」

上条「買い物?」

心理「えぇ、ゴーグル君のゴーグル代わりになるものを探すのよ」

上条「…なんかややこしいな」

ゴーグル「…俺一人じゃ荷物持ちはきついっす…」

上条「あぁ、心理さんが買い物するのか」

心理「レディとしては、出来る限りオシャレに気を遣いたいのよ」

上条「美琴もおんなじこと言ってたな」

心理「あら、そう」


69 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/13 23:22:04.29 QEqyJDqz0 55/838

ゴーグル「…お願いしますよ上条さん」

上条「まぁいいけど…せっかくのデート、邪魔していいのか?」

ゴーグル「そ、そんなんじゃないっすよ」アタフタ

心理「そんなに否定されると傷つくわよ」

ゴーグル「え、あ、いや!!心理定規さんと買い物できるのは嬉しいっすよ!!」

心理「フレンダが聞いたらなんて言うか」

ゴーグル「う…」

上条「まぁいいや…さっさと買い物終わらせようぜ」

心理「えぇ」

ゴーグル「…そうっすね」



珍しい組み合わせの三人は、ショッピングモールへと向かった

ゴーグル男の頭に着いたゴーグルを見て、やはり人々は好奇の視線を投げかける

ゴーグル(い、今まで意識してなかったけど…こりゃたしかに注目されてますね…)

ゴーグル(…恥ずかしいようなイラつくような…)



心理「さて、着いたことですし…最初はあなたのゴーグル代わりのものから買いましょうか」

ゴーグル「お、俺のですか?」


70 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/13 23:32:53.64 QEqyJDqz0 56/838

上条「…そういえば、そのゴーグルってそんなに大事なのか?」

ゴーグル「大事というか…体の一部っす」

心理「…でも、そんなのずっと着けてると体に負担が掛かるわよ」

ゴーグル「…え?」

心理「首や肩に重さが掛かれば、自然と神経が悪くなるわ…それに無理に重さを支えようと前傾姿勢になれば腰にも負担が掛かるもの」

上条(な、なんだか難しい話だ)

心理「…それ、普段から着けてるの?」

ゴーグル「…家にいる時とかは…まぁ、半々くらいですかね」

上条「い、家で着けてるのか!?」

ゴーグル「…ま、まぁ」

上条「…ちょっと貸してくれよ」

上条が手を差し出す

ゴーグル「どうぞ」

上条「…」



上条「って重い!!これめちゃくちゃ重いから!!!!」

心理「…金属製ですもの」

ゴーグル「…そういや、たしかに外してるときは首が楽ですね」

上条「こんなの着けてたら本当に体悪くするぞ!!」

ゴーグル「え、えへへ…そうっすかね?」

上条「褒めてないからな!!」



71 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/14 09:01:27.65 sjIvHvhu0 57/838

ゴーグル「・・・それにしても、サングラスやらネックレスやらニット帽やら・・・かなり揃ってますね」

心理定規の指定した店に入ってすぐ、ゴーグル男は感嘆の声を上げた

心理「当たり前じゃない、私が選んだ店なんだから」

上条「どこからその自信はくるんだ・・・」

心理「あら・・・上条君ったら冷たいのね」

上条「い、いや・・・冷たくしてるつもりは」

心理「・・・あなたに冷たくされると、少し悲しいわ」

上条「は、はいぃ!?」

心理「嘘よ、あんまり真に受けないで」

上条「・・・心理さん、最近辛辣だよな」

心理「あら・・・じゃあ、優しくしてあげましょうか?」

ずいっ、と心理定規が上条に迫る

上条「あ、いや!結構です!」

心理「もう、本当は優しくしてほしいんじゃないの?」

上条「あぁもう!ゴーグル、助けてくれ・・・」


ゴーグル「・・・ニット帽ってなんか頭締め付けすぎですよね」

上条「試着してるぅぅ!」




72 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/14 09:02:00.01 sjIvHvhu0 58/838

心理「へぇ・・・普通にオシャレな男の子みたいよ」

ゴーグル「お、男の子って・・・」

ニット帽を脱ぎながら、ゴーグル男がため息をつく

心理定規より彼のほうが年上なのだが、なぜか「男の子」呼ばわりだ

ゴーグル「・・・で、似合ってましたか?」

心理「そうね・・・普段のあなたに見慣れてるから少し違和感はあったけど」

上条「でも、そんなのすぐに無くなるし・・・」

心理「・・・よくよく考えたら、素材はいいんだから必要なのはコーディネーターよね」

ゴーグル「は・・・はい?」

心理「分かった、私がフレンダをあっと言わせるような服を選んであげるから」

ゴーグル「な、なんでそんな流れになるんですか!?」

心理「やっぱり・・・フレンダは優しい男に弱そうだから・・・」

上条「あ、こういうふわふわしたニット帽とか似合いそう」

心理「こっちにはシュワちゃんが掛けてるみたいなサングラスが」

ゴーグル「・・・」

なぜだろう

二人がジリジリと歩み寄ってくる

あぁ、と彼は笑った

これが着せ替え人形の気持ちなのか、と



73 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/14 21:13:53.02 sjIvHvhu0 59/838


ゴーグル「…」

心理「そうだ、こっちのシャツなんかも似合いそうね」

上条「えー、こっちのひげメガネは?」

心理「ふふ…ならこのマフラーは…」

ゴーグル「あの」

上条「ん?どうした、ゴーグル」

ゴーグル「…俺、帰っていいですか」

上条「え…なんで?」

ゴーグル「なんで?じゃないっすよ!!おかしいでしょ、俺は今日ゴーグルの代わりになるものを買ってもらうためにここに来たんです!!」

心理「だから今選んでるじゃない」

ゴーグル「どう考えても遊んでるでしょ…」

心理「はぁ…分かったわ、ならこのニット帽でいいんじゃないの?」ハァ

ゴーグル(うっわーやる気ねー)

上条「…そういえば、心理さんは何買いに来たんだ?」

心理「そうね…とりあえずTシャツと」

上条ゴーグル「ティ…Tシャツぅ!?」

心理「?」


74 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/14 21:24:06.07 sjIvHvhu0 60/838

上条「心理さんって、Tシャツとか着るのか…」

ゴーグル「も、ももももしかしてその下には何も着ないとか!?」

心理「は…はぁ?」

ゴーグル「あ、あれっすよ…裸ワイシャツのTシャツ版ですよ!!」

上条「あぁ!!それ、たしかに心理さんはやってそうだな!!」

心理「…そんなことして何になるのよ?」

ゴーグル「垣根さんを誘ったり」

心理「…あのね、私だって家の中でずーっとドレスじゃないのよ?寝る時はドレスじゃなくてネグリジェ着たりもするし」

上条「心理さんがネグリジェ…」ゴクリ

ゴーグル「…なんか、途轍もなく似合いそうですね」

心理「…いいから、Tシャツ一緒に見てくれない?一人って思われるのは嫌だから」

上条「あ、あぁ…いいけど」

ゴーグル「…あの、出来る限り早く選んでくださいね」

心理「分かったから、早く行きましょう」

上条(…絶対時間掛かるよな…)

ゴーグル(フレンダさんもかなり時間掛けますからね…女性の買い物は長いっす)


78 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/15 10:32:38.46 faudMQbW0 61/838

心理「これとこれとこれと・・・あとそっちのも買いたいわね」

上条「・・・」

ゴーグル「・・・」

心理定規が指定した店に来てすぐ、男二人は口をあんぐりと開けていた

心理「あら、どうしたのよ」

上条「あの・・・心理さんは、ここに来る前からどんな服を買いたいか決めていたわけで?」

心理「大体わね・・・たとえばこのTシャツ、ちょっと胸元が開いててセクシーでしょ?」

ゴーグル「で、でもよくこれがここにあるって知ってましたね」

心理「?知らなかったけど」

ゴーグル「じゃ・・・じゃ、もしかして今見ただけで買うって決めたんすか!?」

心理「えぇ」

上条「おかしいから!ほら、試着したりとか値段を見たりとか・・・」

心理「あなたと違ってある程度お金はあるのよ」

上条「ぐはぁ!胸に突き刺さる言葉だなぁ!」

ゴーグル「・・・胸元が開いたTシャツを買いたかったんすか」

心理「えぇ、あとこっちのジーパンはデザインが好き」

上条「こ、このミニスカは・・・」




79 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/15 10:33:09.20 faudMQbW0 62/838

心理「垣根に着て見せたいから」

上条「ま、まさか見せたいだけ!?」

心理「垣根がね・・・私、ミニスカも似合うんじゃないかって言うから」

少し顔を赤らめながら、心理定規が言う

上条(に、似合うだろうけどさ・・・)

ゴーグル(心理定規さんって歳相応の服装は普段しないですからね・・・)

心理「・・・あ、ついでに今ミニスカ着てみましょうか?」

上条「な、なんでこれは試着するんだ?」

心理「あら・・・あなた達にも見せてあげようかって」

ゴーグル「・・・ぜ、是非」

上条「えぇ!?ゴーグル、お前心理さんの生足が見たいだけだろ!」

ゴーグル「だ、だってこんなチャンスほとんどないっすよ!?」

上条「そうだけど・・・」

心理「垣根に見せる前に、あなた達に似合ってるか判断してほしいし」

上条「・・・まぁ、それくらいなら」



82 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/15 22:14:42.60 faudMQbW0 63/838


上条「…」

ゴーグル「…」

今更ながら、自分たちは何をしているのか

上条には美琴という、愛している女性がいる

彼女のことが大好きで、本当に心から愛していると豪語できる

ゴーグル男も、最近やっと自分の気持ちに気づいてきた

フレンダという女性を誰よりも愛しているのは自分だ

そして、それをとても嬉しく思っている

二人とも、心に決めた女性がいる


のに


上条(…なんでだろう、心理さんのミニスカが見られるってだけで少しばかり胸が高鳴るんですけど)

ゴーグル(…フレンダさんにはない色気がありますからね)

試着室の前で罪悪感半分、期待半分で二人は待っていた


心理「ねぇ、あんまり似合ってないと思うけど…笑わないでね?」

そんな声が試着室の中から聞こえる

上条「い、いやいや!!心理さんだったらなんでも一通り着こなせるだろ!!」

ゴーグル「そ、そうっすよ!!」



83 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/15 22:18:04.46 faudMQbW0 64/838

心理「…でも、本当になんか微妙なのよね」

上条「そ、そうなのか?」

心理「…やっぱりやめようかしら」

上条「えぇぇぇ!?じゃあ待ってた俺達の時間はどうなるの!?」

ゴーグル「そうですよぉ!!」

心理「…あ、もしかして期待してたのかしら」

上条「そ、そんなんじゃないけどさ…」

心理「…まぁ、たしかに人から見てもらわないと評価はできないし」

バン、と試着室のドアが開けられる

聊か乱暴なのは照れ隠しだろうか


心理「ど…どうかしら」カァッ

上条「」

ゴーグル「」



上条(…あぁ、なんなんだろうこの謎の感動は)

ゴーグル(そういえば…フレンダさんとのデートの買い物では、こういう風なイベントはありませんでした…)

上条(じゃーん、似合う似合う!?みたいなことは聞かれるけど…こ、これ似合ってるかな…?なんて不安そうな目で見てくるという素敵イベントはなかった!)

ゴーグル(でも、心理定規さんはこう…恥じらいがありますね)

心理「なにジロジロ見てるのよ…そんなに似合ってない?」


84 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/15 22:22:04.61 faudMQbW0 65/838

上条「い、いや!!なんかめちゃくちゃいいと思う!!」

ゴーグル「心理定規さんって、白いミニスカとか似合うんですね…いっつも赤とかのドレス着てたから知りませんでした」

心理「…そうかしら、ちょっと肌と色が近いから派手さがないわよね…」

裾をピラピラとさせながら、心理定規が顔をしかめる

上条「わぁぁ!!裾をそんなにピラピラさせたら見えますから!!」

心理「?あぁ、もしかしてミニスカの中が見えるのを危惧してるの?」

ゴーグル「あ、当たり前じゃないっすか!!」

心理「へぇ…一応エチケットは弁えてるのね」クスクス

上条「し、心臓に悪いからやめて…」

心理「でも大丈夫、中には黒のスパッツ履いてるし」ピラッ

上条ゴーグル「わざわざめくって見せるなぁ!!!」

心理(初心ねこの子達)



上条「…はぁ、まぁ似合ってるんだし買ったらどうだ?」

心理「そんなに言われたら買うしかないわね」

ミニスカをカゴに放り込んだ心理定規は、また服を吟味し始める

心理「…このキャミソールとかもいいわね」

ゴーグル「…あ、あの」

心理「?どうかした?」


85 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/15 22:24:56.39 faudMQbW0 66/838

ゴーグル「なんか…今日の心理さん、いつもと違う服装を選びたがってますけど…なんでっすか?」

心理「あぁ、それは垣根がね…」



垣根「お前、いっつも外出る時ドレスしか着てないけどさ」

垣根「ニックネームドレスの少女とかになるぜ、そのうち」

垣根「本名もないし、多分お前のエッセイとか出たらそうなるな」

垣根「あれ、エッセイって自分で書くからそういうことはないのか」



心理「って言ったから…」

上条「あぁ…つまり、外出する時の服が欲しいのか」

心理「まぁ、そういうことよ」

ゴーグル「…で、でもこのキャミソールは…」

ゴーグル男はなぜか乗り気ではない

心理「?あんまりあなたはこういうの、好きじゃないの?」

ゴーグル「いえ、これフレンダさんが前にいいなって言ってたから…」

心理「…」

上条「…」



上条心理「一途だ」

ゴーグル「な、何がっすか!?」


86 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/15 22:29:17.24 faudMQbW0 67/838

上条「…俺の好きな人が選んだ服は、他の誰にも着せられない!!」

心理「あぁ、それはヒロインだけが着ることを許された衣装なのだから…」

ゴーグル「…それに、このキャミソール…胸が開きすぎっす」

上条「…じゃあ心理さんはこっちのワイシャツとかかな」

心理「あら…また白いのね」

上条「心理さんってあんまり黒は合いそうじゃないからな」

心理「あら、黒の網タイツとか似合うって垣根は言ってくれたけど」

上条「ぶふぉぁっ!?」

心理「な、なに噴出してるのよ…」

ゴーグル「垣根さんの前ではそんな格好してるんすか!?」

心理「たまに、ね」

上条(いいなぁ!!俺も美琴に網タイツ履かせたい!!!)

ゴーグル(…垣根さん、あなたが羨ましいっす…)

心理「まぁいいわ…ワイシャツなら普段から着られそうだし」

上条「…試着の間、また俺達は待っておくのか」

心理「あら、それがあなた達の役目じゃない」

ゴーグル「そ、そうっすけど…」



心理「それに、女性の着替えの間も楽しめないようじゃ男として失格よ」

バタン、と試着室のドアが閉められる

理不尽だな、と二人は思った

88 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:06:15.05 xB0o7Wxv0 68/838



上条「・・・なぁ」

ふと、上条がゴーグル男に呼び掛ける

ゴーグル「なんすか?」

上条「・・・冷静に考えたら、なんで俺達はこんなことしてるんだろうな」

ゴーグル「・・・まぁ・・・心理定規さんのワイシャツ姿が見たいからですかね」

上条「・・・完全に変態だよな、俺達」

ゴーグル「・・・年下の女性にワイシャツ着せて喜んでるんですからね」

上条「・・・でも美琴はワイシャツも似合いそうだな・・・」

ゴーグル(あ、この人割とマジだ)

上条「なぁ、ゴーグルはワイシャツとかぐってくるタイプか?」

ゴーグル「俺は・・・どっちかと言えばTシャツ派ですかね」

上条「へぇ・・・」

ゴーグル「下は何も着てないで、Tシャツだけとかいいですよね」

上条「裸Tシャツか・・・でもさ、やっぱりワイシャツのほうがよくないか?」

ゴーグル「ボタンとボタンの間から肌は見えますからね」

上条「だよな!」

ゴーグル「でもワイシャツはこう・・・なんかちょっと体のラインが見えにくいですよ」




89 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:06:52.80 xB0o7Wxv0 69/838

上条「そ、そうかな」

ゴーグル「Tシャツならある程度ラインも見えて・・・」




心理「・・・あなた達って、ムッツリだったのね」

上条「どわぁ!?いつ着替え終わってたんですか!?」

心理「・・・あなたとゴーグル君がTシャツ派かワイシャツ派かを言いはじめた辺りかしら」

ゴーグル「わ、わりと最初じゃないっすか」

心理「はぁ・・・あなた達に判断してもらっていいのか疑問になってきたわ」

呆れたような顔をする心理定規

彼女は今、ワイシャツを着ている

上条「へぇ・・・心理さんが着てるとどこかのキャリアウーマンみたいだな」

心理「あら、眼鏡とか掛けてみましょうか?」

ゴーグル「・・・でも、しっかりボタン留めてますね」

心理「・・・残念ね、下にはちゃんと履いてます」

ゴーグル「そ、それはまた別の話ですから」

心理「・・・で、どうかしら」

上条「かなり似合ってるな・・・なんか、色気溢れてるし」

心理「・・・そう、ありがと」



90 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:07:19.13 xB0o7Wxv0 70/838

上条「心理さんってさ、絶対何着ても似合うだろ」

心理「へぇ・・・そんなに言ってくれるなんて嬉しいわね」

ずいっ、と心理定規が上条に顔を近付ける

ほのかに香ってくる香水の匂いにドキリとしてしまう

上条「な、なんですか!?」

心理「優しい男は大好きよ、私」

上条「はぁ!?」

ゴーグル「上条さん・・・あなたってそうやって女性に付け入るんですか」

上条「違う違う!」

心理「ねぇ、あなたはどんな服が私に似合うと思う?」

上条「なんで俺に聞くんだよ・・・」

心理「あなた、一応垣根と同世代じゃない」

上条「垣根とはかなり好み違いそうだけどな・・・」

心理「いいから」

上条「じゃあ・・・」

上条が辺りをくるりと見回す

美琴に着せてみたい服を、この際指定してみるのもありだろうか




91 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:08:02.86 xB0o7Wxv0 71/838

上条「このパーカーは?」

心理「パーカー?」

ゴーグル「グレーのパーカーっすね・・・ちょっと生地が柔らかそうな」

心理「へぇ・・・あなたってもしかして、女の子がパーカー着てるのにぐってくるの?」

上条「そういうんじゃないけどさ・・・美琴が着たら似合いそうだなって」

心理「あら、本当に美琴大好きなのね」

上条「そりゃ・・・」

心理「・・・私もパーカーなんて着たことないし・・・試しに着てみましょうかしら」

ゴーグル「・・・パーカーって似合う人と似合わない人がいますよね」

心理「あ、ついでにこっちのグレーのミニスカと合わせてみましょ」

上条「ミ、ミニスカとパーカーの組み合わせはまずくないか!?」

心理「?」

上条「た・・・漂うエロスがあるじゃないか!」

心理「あなたってもしかして・・・エツァリ君と同じくらい変態なの?」

上条「あ、それは普通に傷ついた」

ゴーグル「・・・心理定規さん、早く着て下さいよ」

心理「あなたも・・・そんなに楽しみ?」

ゴーグル「早く帰りたいっす」

心理「・・・」

一瞬頭に青筋を浮かべてから、心理定規は試着室に入った



92 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:08:31.29 xB0o7Wxv0 72/838

上条「・・・あのな、ゴーグル」

ゴーグル「はい」

上条「女性との買い物の時に早く帰りたいは・・・その、禁物だぞ」

ゴーグル「え」




心理「・・・どうかしら?」

少しばかりオーバーサイズのパーカーを着た心理定規

ブカブカの袖に、手が半分ほど隠れている

パーカーの丈によってミニスカも半分ほど隠れていた

さらに、なぜか彼女はフードまで律儀に被っていた

美しい金髪がその中から少しだけ見えている

上条(やばい・・・なんかどこかの女優さんみたいだ!)

ゴーグル「・・・すっげぇ・・・」

心理「何がすごいのよ」

ゴーグル「前々から綺麗だとは思ってましたけどここまでとは」

心理「・・・じゃ、これも買いましょうか」

カゴにパーカーを突っ込む心理定規

いきなり脱がれて二人は一瞬焦ったが、中には着てきたドレスがあった

上条(・・・っていうかドレスの上からパーカー着るか?)




93 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:08:58.80 xB0o7Wxv0 73/838

ゴーグル「あの、他に何か買うんですか?」

心理「いいえ、さすがにこれ以上はないわね」

上条「はぁ・・・でもかなり買うんじゃないか」

心理「カードで払うから大丈夫よ」

上条(さすが金持ち)




心理「さて・・・ゴーグル君には荷物持ち、お願いするわね」

ゴーグル「やっぱりそうですよね・・・」

心理「代わりに何か奢るわ、何食べる?」

ゴーグル「え、いいんですか?」

心理「ついでに上条君も」

上条「じゃ・・・じゃ、ハンバーガーでいいかな」

心理「・・・そんなのでいいの?」

上条「う・・・だってさ!いくら金持ちとはいえ年下の女の子に大金出させるわけにはいかないだろ!」

心理「はぁ・・・あなたって本当にモテそうね」

上条「な、なんですかいきなり」

心理「でもハンバーガーなんてやめなさい、カロリー高いから」

ゴーグル「・・・心理定規さんは自分が食べたくないだけじゃ・・・」



94 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:09:36.46 xB0o7Wxv0 74/838

心理「当たり前でしょ、レディに高いカロリーは禁物なんだから」

上条「美琴はあんまり気にしてないけどな」

心理「それはあの子が特殊なの・・・」

羨ましいくらいよ、と吐き捨ててから心理定規がショッピングモールのマップを見る

心理「・・・ここのレストランとかどうかしら」

ゴーグル「・・・イタリアン・・・」

上条「・・・イタリアン・・・」

心理「あら、もしかしてイタリアンは口に合わない?」

上条「口に合わないとかじゃなくて・・・なんか緊張するんだよな」

ゴーグル「しかもこの店、たしか結構高いんじゃ・・・」

心理「あら、たまに垣根と来るしそれほどでも」

上条ゴーグル「それほどだよ!」



上条「・・・はぁ、何食べよう」

心理「エツァリ君なら女体盛りとか言いそうね」

上条「言いそうだな・・・」

ゴーグル「女体盛りってなんすか?」

心理「あなたはまだ知らなくていいわ・・・それで、何にする?」

上条「・・・とりあえず、涼しくなれるものかな」

心理「あら、じゃあ」

ピッ、とマップのある場所を指差す

心理「蕎麦屋とかどう?」


95 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:14:06.39 xB0o7Wxv0 75/838



上条「…なんかさ…ショッピングモールの中にあるとは思えない雰囲気だよな」

蕎麦屋に入ってすぐ、上条は呆れ半分だった

どう考えてもショッピングモールの中にあるとは思えない、高級感溢れる店内

学生が通うショッピングモールと、かなり違う世界といった感じがする

心理「…へぇ、全座敷が畳なんていいじゃない」

ゴーグル「…っていうか…なんで店の中に池があるんですか」

心理「あら、蕎麦屋ってそんなものよ」

上条(違うだろ…)

心理「…へぇ、メニューも綺麗だし…いいじゃない、中々」

上条「あれ、心理さんもここは初めてなのか?」

心理「なに?私との初があって嬉しかった?」

上条「あ、いや…」

ゴーグル「…なんか慣れてる感じでしたから」

心理「いちいち店に入ってリアクションなんてしてられないわよ」

そう言いながら、心理定規は店員に人数を伝えに行く

心理「ほら二人とも、こっちだって」

上条「あ、は、はい…」

ゴーグル(…俺達ってなんか情けねぇ…)


96 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:17:34.82 xB0o7Wxv0 76/838


心理「私はざる蕎麦でいいわ」

上条「…俺は月見蕎麦かな」

ゴーグル「この時期にこれまた熱いのを…」

上条「え…だって蕎麦って言ったら月見だろ」

ゴーグル「俺は天ぷら蕎麦っすね」

心理「…ざる蕎麦ほど大人な蕎麦はないわよ」

上条「そ、そうか?ざる蕎麦って無難なのを選んでる気がしてならないな!」

心理「…言うじゃない、まるで私が蕎麦を初めて食べるみたいな言い方」

上条「そ、そこまでは言ってないけどさ…」

心理「ふん、いいわよ初心者で」

ゴーグル(…なんでむくれてるんですか)

上条「わ、悪かったって…」

心理「あ、おにぎりもついでに食べようかしら」

上条「カロリーが気になるんじゃなかったのかよ!?」

心理「…」



心理「…」ウルウル

上条「よし、俺もおにぎり食べようかなぁ!!」

ゴーグル「お、俺もっす!!」

97 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:23:11.62 xB0o7Wxv0 77/838


上条「…今更だけど…なんか俺達って、高校生二人が女子中学生を連れまわしてるみたいな感じだよな…」

ゴーグル「そ、それを言わないでくださいよ…若干ロリコンみたいな目で見られてそうで怖いっす」

心理「実際にそうじゃない」

上条(…美琴と付き合ってるから否定できない…)

心理「…それに、私ホステスみたいな服着てるからあなた達の印象最悪よ」

ゴーグル「うわぁぁぁ!!そういやそうだ!!」

心理「…ホステス中学生を連れまわす高校生二人…」

心理「…最低な男ね」

上条「そ、それは不可抗力だろ!!それに心理さんがそんな悪趣味な服着てるのが…」

心理「…悪趣味?」ピクリ

上条「だ、だってさ…さすがにドレスって…」

心理「大人の魅力があって素敵でしょ、柄物着てる子供っぽいのよりはマシよ」フン

上条「す、拗ねないでくれよ…」

心理「…」

上条(む、無言で睨まれるのが怖い…)

心理「…あ、電話掛かってきた…」

いいタイミングで、心理定規の携帯が鳴った

エチケットなのか、しっかりマナーモードにされていた


98 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:28:20.85 xB0o7Wxv0 78/838

心理「…ちょっと失礼するわね」

二人に断ってから、心理定規が小声で話し出す

上条(…こういうところは本当にしっかりしてるな…)

ゴーグル(…素敵っすね)


心理「…あ、垣根?なによ突然」

上条(…あぁ、垣根か)

心理「…今蕎麦屋に来てるの、お店で電話なんてはしたないからあんまり…え、メジャーリーグの結果?」

心理「知らないわよ、私蕎麦屋…え、株価の変動?」

心理「知らないわよ、私蕎麦屋に来て…なに?愛してる?」

心理「わ、私もよ」カァッ

上条(えぇぇぇぇ…)

ゴーグル(ねぇ…絶対にこんな会話はねぇっす!!)

心理「…そう、じゃあ熱中症に気を付けて…みんなにもよろしく」

心理「?上条君とゴーグル君がいるわ」

心理「えぇ、えぇ…伝えておくわ、それじゃあとで」

ピッ、と携帯を切る

上条「垣根だったのか」

心理「…えぇ、あとあなた達に垣根から伝言」

ゴーグル「?」



心理「心理定規に手出したらメルヘンなことになるぜ、ベイベー」

上条ゴーグル「」


99 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:31:15.32 xB0o7Wxv0 79/838


心理「…あ、みんなの分が来たわね」

上条「お、月見蕎麦月見蕎麦♪」

心理「…ざる蕎麦も美味しそうね」

ゴーグル「…天ぷらでっけぇ…」

心理「いただきます」

手を合わせて、頭を下げてから心理定規が蕎麦を食べる



なぜかフーフー、としてから


上条「…」

ゴーグル「…」

心理「…」

上条「なぁ、それってざる蕎麦…だよな」

ゴーグル「あ、熱くないんですよ、心理定規さん…」

心理「…ちょ、ちょっとだけ席立っていいかしら」

上条「?あ、あぁ…」

テクテク、と心理定規が席から離れる



心理(…)

心理(…恥ずかしい…)カァッ



100 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:35:39.57 xB0o7Wxv0 80/838


上条「あ、帰ってきた」

心理「…はしたなかったわね、ごめんなさい」

ゴーグル「あ、いえ…」

心理「…いただきます」

さっきのことはなかった、と言わんばかりにもう一度最初から始める心理定規

上条「…そういえば、月見蕎麦って最初に卵をかき混ぜる人と最後までとっておく人がいるよな」

ゴーグル「それはまぁ…好みの問題なんじゃないっすか?」

心理「私は月見蕎麦だったら…最初にかき混ぜるタイプね」

上条「へぇ、じゃあ俺と一緒か」

心理「…でもあんまりかき混ぜすぎると音が鳴ってはしたないわよ」

上条「」ギクリ


上条「…」ソーッ

心理「そ、そこまで静かにかき混ぜなくてもいいんだけど…」

ゴーグル「…昔から心理定規さんって礼儀に厳しかったっすね」

心理「そうかしら」

ゴーグル「…手を洗ったあとハンカチで手を拭け、とかいっつも言われてましたもん…」

上条「それ、なんかお母さんみたいだな」

心理「それ…褒めてるの?」

上条「ま、まぁ」


101 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:39:23.58 xB0o7Wxv0 81/838


心理「…そういえば…美琴と最近どう?」

上条「…まぁ、普通に仲良しだぞ」

心理「デートとかしてるの?」

上条「うーん…最近は家で二人きりとかかな」

ゴーグル「な、なんかそろそろ円熟期っていう感じっすね」

上条「…だってさ、暑いと外に出たくないだろ…」

心理「…白熊みたいね」

上条「…それに美琴がいればそれでいいんだしさ」

ゴーグル「…俺はそういうのダメっす…」

心理「あら、フレンダとずーっと一緒にいるじゃない」

ゴーグル「違いますよ…フレンダさん、暇さえあれば外に連れてけ外に連れてけってうるさいんすよ」

上条「へぇ…二人きりになった途端にせがんでくるタイプか」

ゴーグル「…おかげで俺は金が無くなる一方っす…」

はぁ、と深いため息をつく

上条「…でも、それでも好きなんじゃないのか?」

ゴーグル「…ま、まぁ」

心理「へぇ、羨ましいくらいの初々しさね」


102 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:43:33.52 xB0o7Wxv0 82/838


上条「…はぁ、食べた食べた…」

心理「おにぎりも美味しかったわね」

ゴーグル「蕎麦屋のおにぎりって、なんか美味しく感じますよね」

心理「海苔が美味しいわよね」

上条「それ、よく分かるな…」

心理「…さて、じゃあまた買い物に戻りましょうか」

上条「…え、まだ買うのか…」

心理「安心して、今度は下着だから」

ゴーグル「へぇ、下着っすか」

座敷から立ち上がり、上条とゴーグル男は店の出口へと向かい…



上条ゴーグル「はぁ!?下着ぃぃ!?」




店の支払いを済ませようとする心理定規に無理やり、自分たちの代金を渡してから数分後

心理「…たまには黒とか落ち着いてるのもいいかしら…」

上条ゴーグル「…」

なぜか三人は、女性下着売り場にいた


103 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 14:56:36.09 xB0o7Wxv0 83/838

上条「…あの、なんで俺達まで…」

心理「あ、この黒とかセクシーじゃない?」

ばっ、と心理定規が差し出したのは黒い派手な下着だった

ブラはレースで、大事な部分以外はそこそこ見えそうなものだ

パンツはというと、それはもうセクシーなんてものではなかった

絶対に恋人の前以外では着れないような代物だ

上条「…なぁ、聞いてますか?」

ゴーグル「…ま、まぁセクシーですけど…」

心理「試着してみましょうかしら」

上条「してもいいけど俺達には見せないでくれよ!!!」

心理「あら、どうして?」

ゴーグル「…それ、本気で言ってるとしたらビッチっすね」

心理「じょ、冗談よ…」

ゴーグル「…フレンダさんもなんかそういう下着着てるときありますね」

上条「…え、もうそこまで言ってるのか?」

ゴーグル「ち、違いますよ!!間違って着替えてる時に部屋に入っちゃったりとかして!!」

心理「で、そのあと脱がせたのね」

ゴーグル「んなわけねぇぇぇ!!」


104 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 15:02:13.88 xB0o7Wxv0 84/838


上条「…心理さんってさ、スポーツブラとか好きじゃないのか?」

心理「…あなた、マニアックなところをついたわね」

上条「そ、そういう意味じゃなくて!!!」

心理「…でも、スポーツブラって私には似合わないと思うのよね」

ゴーグル「そういうのって、どっちかっていったらスレンダーな人が似合いますよね」

上条「心理さんは…グラマーっていうか、セクシーって感じだからな」

心理「…そうだ、美琴にこれ買ってあげなさいよ」

上条「お、男は買いにくいんですよ…」

心理「私が買ってあげるから」

これでいいでしょ、と適当なスポーツブラを心理定規が指差す

上条「は、はい…」

心理「ゴーグル君はこれ、フレンダに買ってあげなさい」

ゴーグル「こ、これって…下着なんすか?」

心理「紐下着よ、ありがたがられるから」

ゴーグル「は、はぁ…」

心理(…下着はもういいかしら、次は靴ね)

上条(絶対まだ買い物続けるつもりだ…)



105 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 15:08:46.58 xB0o7Wxv0 85/838


上条「…あの、今度は靴ですか…」

ゴーグル「…もはや俺のゴーグルの代わりになるものを買うっていう建前は無くなりましたね…」

心理「…ブーツが買いたかったのよね」

上条「…一杯持ってるだろ…」

心理「はぁ…あなたってなにも分かってないわ、女性のこと」

上条「…」

心理「いい?女性っていうのは欲望の塊よ、愛する人だけでは物足りず、愛する人をずーっと縛り続ける方法を欲するの」

上条「あ、あの…それがブーツなんですか」

心理「えぇ、だから手伝って」

上条「…俺…ブーツ履いてる女の子にはぐってこないんだよな…」

心理(いや、そんなことどうでもいいんだけど…)

上条(絶対どうでもいいとか思ってるよな…)

心理「…じゃあ、どういうのがぐってくるのよ」

上条「うーん…」



上条「心理さんってさ、サンダルとか似合いそうだよな」

心理「…唐突ね、これまた」

ゴーグル「サンダルの心理定規さん…」



ゴーグル「ぶっはぁwww」

心理「…噴出さないでよ…」


106 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 15:19:24.50 xB0o7Wxv0 86/838

上条「…なんか心理さんっていっつも気取ってる感じがするからさ…」

ゴーグル「あぁ、たまにはだらしない格好の心理定規さんも見てみたいっすね…」

心理「…そうね、たしかにそうかもしれないわ」

上条「…まぁ心理さんがブーツがいいって言うならいいんだけどさ…」

心理「えぇ、じゃあブーツにするわ」

上条「えぇぇぇ!?今の流れでブーツにしちゃうのか!?」

心理「…サンダルにしてほしいの?」

上条「…は、はい」

心理「じゃあ、心理定規愛してるって言ったらいいわよ」クスクス

上条「な、なんですかそれは…」

心理「本気で言うわけじゃないじゃない、いいからいいから」

上条「はぁ…心理定規愛してる」

心理「録音完了っと…」

上条「ちょっと待ってぇぇ!!!それをどうするつもりなんですか!?」

心理「美琴に送り付けるのよ」

上条「ゆ、許してください…」

心理「冗談よ…まぁ、サンダルもいいかもしれないし、二人で選んでよ」

ゴーグル「え…俺達が選ぶんですか」

心理「えぇ、可愛いのをよろしく」



上条ゴーグル(どうすりゃいいんだ…)


107 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 15:24:02.66 xB0o7Wxv0 87/838


上条「…このキャラ物とか、なんか面白そうだよな」

ゴーグル「あ、それってたしか最近中高生を中心に人気が出てるんじゃなかったですか?」

上条「へぇ…たしかにこういう、ちょっとネタっぽいのって学生に人気出たりするけどな」

ゴーグル「…でも心理定規さんって、そういうのにあんまり興味なさそうですし…」

上条「…じゃあ、こっちは?」

ゴーグル「シンプルっすね…」

上条「…でもさ、このオシャレなタイプのサンダルっていいよな」

ゴーグル「…心理定規さんって、こういうのも…なんか似合いそうじゃないっすよね」

上条「…これは?」

ゴーグル「…」


ゴーグル(…子供がよく履いてる音が鳴るサンダル…)

上条(こ、これを心理さんが履いてたら…)


上条ゴーグル(は…ははははwww)



上条「心理さん、いいの見つかったぞ」

心理「?あら、なんか子供向けの音が鳴りそうなサンダルね」

上条「」ギクリ

心理「あら、踵の所を圧したら音がなるわね」ピュー

ゴーグル(バレた…)

心理「…」



心理「これ、人を殴るにはもってこいの形ね」

上条ゴーグル「」



108 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 15:28:15.01 xB0o7Wxv0 88/838


上条「いてて…結局自分で買うんじゃないか」

心理「あなた達がふざけたのを選ぶからよ」

ゴーグル「…それは正直申し訳なかったっす…」

心理「…あとは…なにがあるかしら」

上条「なぁ、もういいんじゃないか…?」

心理「…え…?」


上条「もう、終わりにしよう…」

心理「そんな…もう、終わりなの…?まだ始まったばかりじゃない!!」

上条「いいんだ、もう時間じゃないか…他にすることなんて、もうないんだ」

心理「でも…でも、私はまだ…!!!」

ゴーグル「あの、ミニコントするなら二人でお願いしますね」

心理「逃げないでよ、あなたに荷物持ってもらわないといけないんだから」

ゴーグル「うぅ…」

心理「…仕方ないじゃない、こんな多い荷物…私一人じゃ持てないし」

上条「あーあ…こういう時空間移動系の能力は便利…」



結標「はぁはぁ…男の子が一杯のショッピングモール…」ジーッ


心理「…」

上条「…」

ゴーグル「…」



三人(居たぁぁ…)



109 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 17:25:49.43 xB0o7Wxv0 89/838


結標「はぁ…どうして男の子の短パンってあんなに私の心を掴むのかしら、まるであの裾から覗く真っ白な脚は穢れを知らない男の子たちの感情をそのまま表しているようよ」

上条(…この人…一応空間移動系の能力者だよな…)

心理(話しかけたくないわ)

ゴーグル(…グループの結標ですよね…こんなキャラだったんすか)

結標「…?あなた達、さっきからなにジロジロ見てるのよ」

心理「不審者がいると思ったらあなただったのよ」

結標「…不審者?どこにいるの?」

上条「自覚ないのか…」

結標「もしかして、私のことを言ってるの?」

ゴーグル「それ以外誰もいないでしょうに…」

結標「…あなた達、間違ってるわね…本当の不審者は男の子達に手を出すものよ、でも私は見て愛でるだけ」

上条(十分不審者だろ…)

結標「いい?これは正当な愛情なのよ、私は変態ではあっても不審者ではないわ」

心理「質の悪い人ね」

結標「ほら、邪魔だからさっさとどこか行ってくれない?」

上条「…あ、そうだ」

上条がそもそもの話しかけた目的を思い出す

上条「お願いがあるんだけどさ」

結標「お願い?」


110 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 20:55:04.85 xB0o7Wxv0 90/838

上条「…この荷物、心理さんの家に運んでほしいんだけど」

結標「…何それ…」

上条の差し出した荷物を、結標がいぶかしげに見つめる

結標「…もしかして、今日買った荷物?」

心理「えぇ、そうなのよ」

上条「…でもかなり重いんだよな」

ゴーグル「だから、運んでほしいんすよ」

上条「ダメかな?」

結標「ダメ」

上条「な、なんで…」

結標「なんでって、私は今男の子達を愛でてるのよ」

上条「愛でてる…」

結標「…つまり、そういうことよ」

上条「…じゃ、じゃあなんかしたらやってくれるか?」

ゴーグル「そ、それならいいんじゃないっすか?」

結標「…誰が得するのよ」

心理「あなたが得するのよ」

結標「…たとえば?」

心理「…」



心理「この二人が短パンを…」

結標「却下」


111 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 21:36:10.83 xB0o7Wxv0 91/838

上条「…心理さん…」

ゴーグル「あなたって人は…」

心理「ちっ…じゃあなんだったらいいのよ」

結標「…そうね、私はお金にも困っていないし…正直、あなた達の荷物を運ぶ義理もないのよね」

心理「…そうね、じゃあ…」

心理定規が能力を使用する

しかし、それは結標相手ではない


道行く男の子達との距離単位を操作したのだ

距離単位は5、子供と親の距離


「あ、あれ?」

心理「ねぇ坊や、ちょっとこっちにおいで」

「う、うん」

不思議そうな顔をしながら、男の子はやってくる

結標「ふ、ふぉぉぉ!?」

心理(…私の能力を使えば、この子をあなたに懐かせることもできるわ)

結標(で、でも私はあくまで見守る…)

心理(…じゃあいいわ、私がこの男の子とあなたの距離をどんどん広げて…)

結標(そ、それはダメよ!!)

心理(じゃあ…いいかしら、荷物運び)

結標(…分かったわよ)

112 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 21:42:50.19 xB0o7Wxv0 92/838

上条「心理さん…」

ゴーグル「あなたって人は…」

心理「…じゃあ、どうすればいいのよ」

結標「私、お金にも困ってないし…正直、あなた達に手助けする義理はないのよ」

上条「そこをなんとか…な?」

結標「な、なによ…あなたに言われても関係ないわよ」ドキッ

上条「だ、駄目か?」

結標「う…」

心理(あ、これもうひと押しなんじゃない?)

ゴーグル(上条さん…さすがっす)

上条「頼む!!アンタにしか頼めないんだ!!!」

結標「そ、そんなこと言われても…」

上条「な、頼む!!」

両手を合わせ、上条が結標に頼み込む

結標「…し…仕方ないわね、あなたには一度助けてもらったことがあるし…」

上条「ほ、本当か!?」

結標「まぁ…一度だけだから」

結標が商品袋を見つめる

すると、一瞬でそれが宙へと消えた


113 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 21:57:23.45 xB0o7Wxv0 93/838

あれ、なんか変になった


上条「お、おぉ!!」

結標「…ちゃんとあなた達の家に送ってたから」

心理「…そういえば、どうしてあなた私達の家を知ってるの?」

結標「あら、小萌の知り合いだからよ」

上条「あぁ、そういえばそうだったな」

ゴーグル「…さて、荷物持ちは必要なくなりましたね」

結標「…私はもういいかしら」

上条「ありがとな、結標」

結標「な…あ、あなたに感謝されたくてやったわけじゃないんだから!!」

ふん!と言ってから結標は空間移動で宙へと消えた

上条「…あれ、結標ってツンデレだったのか?」

ゴーグル「…知らないっす」コソコソ

心理「ちょっと待ちなさい」

ゴーグル「は、はい?」

心理「どうして、逃げようとしてるの?」

ゴーグル「…い、いや…帰りたいっす」

心理「…なに?予定でもあるの?」

ゴーグル(な、なんの予定もない!!)

ゴーグル(でも…何か理由を作らなきゃ…!!そうだ!!!)



ゴーグル「フレンダさんとのデートがあるんす」

上条心理「ほほう…」ニヤニヤ

ゴーグル(…なんかうざいっす…)


114 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/16 22:06:44.70 xB0o7Wxv0 94/838


上条「…じゃあ、仕方ないな」

心理「そうね…私ももう帰らなきゃいけないし」

ゴーグル「そ、それは残念っすね」

上条「…じゃあ、俺もこれで」

心理「あら、女の子を一人で返す気?」

上条「…途中までご一緒しましょうか…」

心理「ふふ、よろしく」

ゴーグル「お、俺はこれからフレンダさんとの待ち合わせ場所まで行かないといけないんで!!」

そんな約束はないのだが、ゴーグル男は適当な場所に向かって走り出そうとする

あとでフレンダを呼び出せばいいのだ

ゴーグル(…ってあれ、別にフレンダさんとデートする必要はないはず…)

心理「あ、ゴーグル君」

ゴーグル「は、はい?」

心理「まぁ、上手くやりなさいよね」

ゴーグル「あ、は、はい」

上条「じゃあまたな!!」

ゴーグル「は、はい!!」



ゴーグル(…フレンダさんをデートに誘うしかないじゃないっすかぁぁぁ!!!)



117 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:32:50.47 A01HRAZN0 95/838

ゴーグル「・・・とは言ったものの・・・」

ショッピングモールから外に出たゴーグル男

フレンダを呼び出したまではよかったが、勢いだけで決めたデートだ

どこに行くのかなんて考えていない

ゴーグル(・・・というか、本当になんでデートをしようなんて思ったんすかね)

自分の気持ちが分からない、と彼は呆れた

呆れてはいたがなぜかそれが嬉しくもある

ゴーグル(・・・フレンダさんとデートっすか)

彼女と二人きりだと考えると、胸がトクトクと脈を打つ


フレンダ「ごめん、お待たせ!」

ゴーグル「あ、フレンダさん・・・」

しばらくしてから、フレンダが待ち合わせ場所に駆けてきた

慌てて出てきたのだろう、帽子が少しずれていた

ゴーグル「ほら、帽子・・・ずれてますよ」

フレンダ「あ、ありがと」

すっとフレンダの帽子を治したゴーグル男

少し指先に触れた金髪が、サラリと指から抜けていく

ゴーグル(・・・綺麗ですよね、本当・・・)

フレンダ「で・・・なんで呼び出したの?」


118 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:33:18.19 A01HRAZN0 96/838

ゴーグル「あぁ、デートなんてしたいかなぁ・・・なんて」

フレンダ「へぇ・・・アンタもやっと私の魅力に気づいてきたって訳よ!」

ゴーグル(だいぶ前からですけどね)

フレンダ「?どしたの、笑ったりして」

ゴーグル「いや・・・なんでもないっす」

フレンダ「でさ、どこ行くの!?」

ゴーグル「うーん・・・フレンダさんが行きたい場所でいいっすよ」

フレンダ「えー・・・いきなりだったからそんなの考えてない訳よ」

ゴーグル「・・・じゃあ・・・」

フレンダ「・・・もしかして、アンタもノープランだったの?」

ゴーグル「恥ずかしながら・・・」

フレンダ「はぁ・・・結局ゴーグルはいざという時に役に立たないタイプな訳よ」

ゴーグル「面目ないっす・・・」

フレンダ「じゃあ・・・適当にぶらつく?」

ゴーグル「そうしますか」




真っ暗な夜の街を、離れないように手を繋いで歩く

静か、という言葉と正反対な街の中は、ネオンや店内の明かりでドレスアップされている

完全下校時刻は過ぎているものの、夏休みで浮かれた学生達にそんなものは関係ない




119 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:33:49.66 A01HRAZN0 97/838

ゴーグル「・・・フレンダさんはもうご飯とか食べました?」

フレンダ「鯖缶食べちゃった」

ゴーグル「・・・いきなり呼んどいてなんですけど、鯖缶をデート前に食った女性って印象悪いっすよ」

フレンダ「はぁ!?ゴーグルは鯖缶の魅力を分かってない訳よ!」

ゴーグル「・・・ちゃんと歯磨きしてきましたか?」

フレンダ「私は一応常識人な訳よ!」

怒ったようなフレンダが、噛み付く勢いで言い返す

ゴーグル「・・・じゃあ、ご飯には行く必要ないっすね」

フレンダ「?アンタはご飯食べたの?」

ゴーグル「昼飯は食いましたよ」

フレンダ「昼飯って・・・もう夜なんだけど」

ゴーグル「だって俺が飯食ったらその間フレンダさんは暇でしょ?」

フレンダ「そ、それはそうだけど・・・気にしなくていい訳よ」

ゴーグル「遠慮しときますよ、そんなに腹減ってないですし」

フレンダ「ふーん・・・」

テクテク、と二人は歩く

目的はないのだが、なんとなく歩いていたかった

ゴーグル「・・・とはいっても、さすがにどっかでゆっくりしないといけませんね」




120 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:34:17.11 A01HRAZN0 98/838

フレンダ「うん・・・歩いてばっかなんてデートじゃない訳よ」

恋人なら何をしても恋人なのだが、生憎二人はまだその真理に到達していない

ゴーグル「じゃあ、この建物の中ででも休みますか?」

フレンダ「そうね、外装は清潔っぽいし・・・」

頷いたフレンダがその建物をよくよく見てみる

フレンダ「・・・あ、あれ?」

ゴーグル「?どうかしましたか?」

フレンダ「こ、この建物ってさ・・・」


フレンダ「ラブホ・・・なんだけど」

ゴーグル「」


どうしてこうなったのか、とゴーグル男は頭を抱えていた

足を休めたいとは思ったのだが、まさか自分が何気なしに指定した建物がラブホだったとは

そして


フレンダが顔を真っ赤にしながらもそれを許諾してしまうとは




121 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:34:48.44 A01HRAZN0 99/838



フレンダ「・・・その、さ」

ゴーグル「な、なんですか?」

フレンダ「ここって・・・そういうこと・・・する場所なんだよね?」

ゴーグル「べ、別に決まりではないんすよ」

フレンダ「・・・でも・・・」

フレンダがゴーグル男の掌に、自分の掌を重ねる

ゴーグル「ふわぁっ!?」

フレンダ「・・・私達もさ・・・その・・・」

ゴーグル「ま、待った待った!」

がしっ、とフレンダの両肩を掴む

このまま雰囲気に流されてはいけない

ゴーグル「フレンダさん、よく考えて下さい!」

フレンダ「わ、私はアンタとなら後悔なんてしない・・・っていうか、多分満足だし・・・」

ゴーグル「あぁぁそういう意味じゃねぇぇ!」

頭を振り、出来る限りフレンダを視界に入れないよう努める

ゴーグル「だから!まだ俺達は付き合ってないんすよ!」

フレンダ「じゃあ付き合ってよ!」



122 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:35:18.11 A01HRAZN0 100/838

ゴーグル「今言うんですか!?」

フレンダ「私はアンタのこと大好きだから!」

ゴーグル「お、俺だって大好きっすよ!」

フレンダ「じゃ、じゃあ・・・」

ゴーグル「話を聞いて下さいよ!」

フレンダはなぜか、慌てているようだった

ならば自分だけでも落ち着かなければならない

ゴーグル「その・・・だから、順序というか・・・そういうのを大切にしたいんです」

フレンダ「・・・ま、まずは・・・告白?」

ゴーグル「う・・・それはもう終わったこととして」

フレンダ「私、まだゴーグルに告白されてない訳よ!」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・」



ゴーグル「つ・・・付き合っていただけたら嬉しい・・・です」

フレンダ「よし、許す!」

ゴーグル「・・・あの、今更じゃないですか?」

フレンダ「?」




123 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:35:53.21 A01HRAZN0 101/838

ゴーグル「だってキスもしたことありますし」

フレンダ「キスなんて挨拶でもする訳よ」

ゴーグル「それは欧米人の常識っす・・・」

常識が通用しないことを自慢するなんて、ダサいとしか言いようがない

ゴーグル「・・・とりあえず、キスしていいっすか」

フレンダ「え?」

ぽかん、としたフレンダの唇を強引に奪う

ゴーグル「・・・俺、昔から・・・告白が成功したらキスするって決めてたんですよ」

フレンダ「へ、へぇ・・・悪くはない訳よ」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・」

どうしよう

二人ともそれを考えていた

ラブホにいるのだし、たった今恋人にはなった

つまり、別に「エッチ」なる行為をしても問題はない

ないのだが、別の意味で問題なのだ




124 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:36:25.97 A01HRAZN0 102/838

ゴーグル「・・・きょ、今日は勘弁してもらえませんか」

フレンダ「・・・なんで」

ゴーグル「・・・ムードを大切にしたいじゃないですか、偶然ラブホに来て・・・なんか勢いで告白した感じになってますし」

フレンダ「ラ、ラブホに来た勢いで告白したの!?」

ゴーグル「ち、違いますよ!ただ・・・なんかそんな感じになってますから」

フレンダ「あう・・・」

残念そうな表情のフレンダ

たしかに、年頃の男女がこういう所に来たら期待をしてしまっても無理はない

ゴーグル「だから・・・後日改めて告白したら、じゃダメですかね」

フレンダ「そ、その時は・・・しちゃうの?」

ゴーグル「か・・・可愛い下着でお願いします」

フレンダ「わ、分かった訳よ」


ゴーグル「・・・すっかり暗いですね」

1時間だけ休んだ後、二人はまた夜の街を歩き始めた

フレンダ「ねぇ、ゴーグル」

ゴーグル「なんすか?」

フレンダ「私達ってもうカップルなのかな」

ゴーグル「・・・俺はそう思ってますよ」

フレンダ「えへへ、ならよかった」

ゴーグル「・・・あの、フレンダさん」

フレンダ「なに?」

段々と静けさを取り戻す夜道に、ゴーグル男の恥ずかしそうな声はやけに響いた


ゴーグル「幸せに、なりましょうね」



125 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:37:48.56 A01HRAZN0 103/838






削板軍覇

彼は愛と根性の男だ

悪を砕くだけではなく、その悪が善の道に進めるように手助けさえする

そんな彼が口癖のようにいつも言うのは「根性」という言葉だった

最近はよく、「若者がダメ」だと言われる

もちろん、昔に比べたら様々な娯楽が溢れ、情報は氾濫し、風は靡き空は泣いている

だが、だが、と削板は声を大にして言う

あくまでダメなのは「若者」なのではない

「若者」の中に紛れている、一部の「根性無し」なのだと

根性の推移をご覧頂きたい(図1を参照)

1985年まで、若者の根性は毎年右肩上がりだった

人々が活気に溢れ、誰もが明日を夢見ていた

中にはその根性の使い道を誤り、いわゆる「ツッパリ」になる若者もいただろう

それでも、少なくとも今の若者よりは「根性」があったのではないか

1985年以降、日本の若者の根性は右肩下がりだ

ある学者の研究によると、2046年には日本の若者の根性は絶滅すると言われている

根性に替わる、新たな感情を生み出せ、という運動も各地で起きているらしい

それでも、削板軍覇はそれは違うと思っている




126 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:38:22.54 A01HRAZN0 104/838

「根性」は絶滅することなど決してない

悪や憎しみの中で、くすんでしまったように思えても、それは必ず人の心のどこかで小さく、しかし何よりも眩しい輝きを放っているはずなのだ

削板軍覇は現在、「根性」を人々に分け与える仕事に携わっている

助手の白井黒子と二人で救ってきた若者は数千人

今日はそんな二人の活躍を、ドキュメンタリー形式でご覧頂きたい




削板「あー・・・暑い・・・」

黒子「暑いですわね・・・」

二人の仕事はもっぱら、野外活動である

オフィスの中にいるだけでは、誰も救うことはできないと感じていた

削板「ん?あんなところで学生が不良に絡まれてるぞ!」

黒子「!行きますわよ、軍覇さん!」

削板「あぁ!」

悪事を見つけた瞬間、二人の目には強い光が宿る

「悪を駆逐するため」の光

そして、「悪を更正させるため」の光である





127 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:38:51.56 A01HRAZN0 105/838



黒子「風紀委員ですの!」

「げっ・・・ジャッジメントだ!」

「おい、ずらかるぞ・・・」

削板「そうは行くか!」

「!?てめぇ、いつから後ろに・・・」

削板「すごいパーンチ!」

「びぶるち!」

削板と白井は、共に能力者である

特に削板に関しては、「超能力者」であり、学園都市にも7人しかいないと言われるほどの人材だ

だがかつて、我々が単独で行ったインタビューの中で削板はこう語っていた



削板「いやぁ、能力があるかないかじゃないんだよ、そこに燃える根性があるかどうかなんだ!力なんて物は生れつき与えられたギフトでしかない、それを自慢するなんて何の努力もしていない人間がすることだ。本当に大切なのは生まれてからいかに努力したのか、その努力から何を手にしたのかなんだ」

削板「俺は自分が今までしてきた努力を誇りに思うし、それを人に聞かせても恥ずかしくないと思っている」

削板「だとすれば、それは俺だけではなく、俺がこれから出会う全ての人々にも言えることなんだ」

削板「能力が無くたって俺は戦うよ、人を変えるのは暴力じゃなくて優しさと根性なんだからな!」




その言葉通り、削板は殴り飛ばした不良にも手を差し延べる



128 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 15:44:39.70 A01HRAZN0 106/838

「な・・・なんだよ!お前みたいな超能力者に俺達の気持ちなんかわかるか!」

時としてその優しさが人を傷付けることはある

しかし、それでも削板は優しく手を差し延べる

削板「てめぇ!根性が足りないんだよ!すごいパーンチ!」

「びぎゃぁぁぁ!」

優しく、差し延べる



削板「全く…最近はひねくれたヤツらが多いな!!」

黒子「そうですわね…自分が努力しなかった結果を人に押し付けるなんて」

削板「…だからこそ、俺達が助けてやらなきゃならない!!」

削板軍覇は、男である

それも、極限までに日本男児の理想とも言えそうな

黒子「…そうですわね、私達の仕事であり、やるべきことですの!!」

白井黒子は、それを傍で支える

素晴らしい愛情、それは人々が忘れかけているものではなかろうか



129 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 16:08:18.99 A01HRAZN0 107/838


美琴「ここで、スタジオのほうに一旦戻ります…えー、司会は私、御坂美琴が務めさせていただきます」

美琴「そして、スタジオには4人の方々をお招きしています、まずは未元物質の垣根帝督さん」

垣根「はい、どうも」

美琴「右方のフィアンマさん」

フィアンマ「俺様のコメントに酔いしれろ」

美琴「ロリコンの一方通行さん」

一方「どォも」

美琴「そして、最後はエイワスさんです」

エイワス「ちょりっす」

美琴「えー…今のVTRの中で削板さんは、若者を正しい道に導く…と言っていましたが、そのことについては皆様どう思われますか」

一方「まずはこちらの図を見てほしいンですけどね」

垣根「この図には、年々の人々の優しさライセンスの多さをまとめているんですが」

一方「…これを見れば分かる通り、人々は優しさライセンスをなくしかけています」

垣根「これでは、たしかに誰かが導く仕組みが出来なければいけないと言えるでしょう」

美琴「なるほど…」

垣根「削板さんがこの役に就いているのは素晴らしいと思いますよ」

美琴「なるほど…失礼ですが、その理由をお聞かせ願いたいのですが」

垣根「老人や、最近の大人では今の若者を見ても、俺達が若かった頃は…という、あまり現実味のない話から始まってしまいます」

美琴「ふむふむ…」


130 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 16:15:35.89 A01HRAZN0 108/838

垣根「その点、削板さんは今の若者世代です、そのため彼の言葉には若者の視点からの意見が含まれています」

一方「重要なのは、若者には説教ではなく愛情が必要だということです」

美琴「なるほど…フィアンマさんはいかがですか?」

フィアンマ「俺様は、正義を振りかざすことはよくないと思う」

美琴「振りかざす…ですか」

フィアンマ「…正義とは、人にぶつけるためではなく悪にぶつけるためにあるのだと思う」

美琴「…」

フィアンマ「…つまり、悪人と言われる人間を救ってこその正義だ、悪をくじいただけで満足するのはただの欺瞞だと思うがな」

垣根「ふむふむ…そう考えると、今の若者たちは優しさライセンスを持っている大人を必要ともしていますね」

一方「一番いいのは優しさライセンスを持っている若者が手を差し伸べることですが」

フィアンマ「そうだな」

美琴「エイワスさんはいかが思われますか?」

エイワス「えー…そうですね、今のに加えるとすれば、最近の若者は様々な便利な道具に囲まれ過ぎていて、感情表現をあまりしなくなったことがあると思いますね」

エイワス「つまり、子供達が親とコミュニケーションを取れなかったため優しさを知らず…」

美琴「あ、ここでVTRの続きです」

エイワス「」



131 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/18 17:00:35.34 A01HRAZN0 109/838


削板「ただいまー」

削板軍覇は現在、学生寮に暮らしている

超能力者をはじめとする、大抵の高位能力者は名門校に通うものだ

しかし、彼だけは違う

特別な学校に行くことはなく、普通の学生寮で暮らしているのだ

その理由を、削板はこう語る

削板「例えば、高いインテリアがある部屋だったり、美味しい食事が食べられる店だったり…そうだな、ピアノが奏でられてるレストランでもいいけどさ」

削板「…そういう場所にいると、自分はとても特別な存在なんだって思ってしまうものなんだ」

削板「もちろん、そういう場所は非常に素晴らしいとは思う、心を休めるために時々行くなら最高の場所だと思う」

削板「でも、それがいつも暮らす学生寮になると、話は別なんだ」

削板「俺は自分がそこまで特別だとは思わないし、別に特別なヤツらと友達になろうとも思わない」

削板「どこに住んでいようと俺は俺だし、特別な場所に住まなければ俺じゃないなんてことにもならない」

削板「だったら、自分が落ち着く場所に住むのが一番じゃないかって思うんだ、そして落ち着く場所がたまたまここだったんだよ」


彼は、毎日必ずある日課を繰り返している


「一日100㎞のマラソン、1万回の腕立て伏せ、3万回の腹筋」


削板「あることを、継続して行うってのは単純に見えて、しかしとても難しいことなんです」

削板「今日は疲れてるから、明日するから今日だけは休む、なんてことになってしまうのがしばしばだと思う」

削板「でも、俺は少なくともそうなったことはない」

削板「なぜなら俺は、それを出来る人間だからだ」



133 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/19 16:30:22.23 aymsGzHW0 110/838


美琴「えー…スタジオに戻りまして、四人の専門家の方々と再び削板さんについて討論したいと思います」

一方「…今のVTRの中にもあった通り彼はあくまで自分は普通の人間だと言いたいのでしょうね」

垣根「それゆえに、日々の鍛練を欠かしはしません」

美琴「…なるほど、継続は力なり、という言葉を体現していると」

垣根「そう言って差し支えないでしょうね」

フィアンマ「だが、あれは努力をし続けることのむずかしさを教えているようにも聞こえるな」

美琴「それは、どのような?」

フィアンマ「彼の生活を見てみれば分かるが、そう簡単に続けられる日課を掲げてはいない」

フィアンマ「自分が毎日出来る範囲、しかし決して甘えてはいない日課…」

フィアンマ「傍から見ればただ当たり前のルーティンになってはいるが、それを欠かさず行うことは人間にとって非常に難しい」

垣根「たしかに、同じことを繰り返すことによって人は昇華されるのですね」

一方「…それと、彼は決して自分の正義を自慢してはいませンでしたね」

美琴「そうですね…自らの正義を信じ、しかしそれを振りかざしはしない」

垣根「…今の若者にとって、彼のような人間になることは容易ではないでしょう」

美琴「全く持ってその通りです」

エイワス「彼は…」

美琴「では、削板さんがいかにしてその強靭な精神を作ったかがわかりましたので、我々もそれに基づいてある実験を行いました、その結果をご覧いただきます」

エイワス「」


134 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/19 16:50:58.73 aymsGzHW0 111/838


我々が独自に入手した削板軍覇の日課、それの効果をある男性モデルも用いて実験してみました


ステイル「…なんで僕がこんなことを」

彼には、削板が行っている筋トレやマラソンを行ってもらいました


1日目


ステイル「…無理だ…」

彼の体は、早くも悲鳴を上げます

それほど、削板の行っている日課というのは、一般人にはきついものなのです

ステイル「…こんなもの…」

弱音を吐いてしまう被験者でしたが、どうにか筋トレを終えました

なお、100㎞以上のマラソンは人体に影響があるため、専門家の指導の下30kmまでに減らしました


ステイル「はぁ…はぁ…な、なんで僕がこんな…」

炎天下の元、マラソンを行うことによって体からはどんどんと水分が奪われていきます

ステイル「…む、無理だ…」


結局、被験者は一日目ではこのルーティンをこなすことが出来ませんでした


注 この実験は専門家の指導の下、十分な安全対策を取ったうえで行っております

皆様は真似をすることのないよう、お願いいたします



135 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/19 16:55:45.62 aymsGzHW0 112/838


ステイル「…筋肉痛がひどいのだが」

二日目、被験者の体に早くも異常が現れます

全身を襲う筋肉痛によって、体を起こすことさえままならないのです

ステイル「…分かったよ、またやればいいんだろう…」


ステイル「痛い!!」

被験者が37回目の腕立て伏せを行っていた時に、異変は起きました

なんと胸が攣ってしまったのです

ステイル「もう…やめにしよう…」



被験者の健康を考え、これ以上の実験は危険であるという結論に達したため、実験は終了しました




美琴「えー…今のVTRを見ていただいて分かる通り、削板さんの行っている日課は、常人ではとても真似できないものばかりです」

垣根「そうですね…それを、削板さんはずっと続けているのですね」

フィアンマ「健全な精神は健全な肉体に宿るが…健全な精神を持たなければ、肉体を作り上げる日課を続けることは出来ないのだな」

一方「どちらか片方ではなく、両方を極めないといけないンですね」

美琴「エイワスさんはいかが思われましたか?」

エイワス「…そうですね、彼がここまで努力を行えるということは何か理由が…」

美琴「ではその理由を探っていきましょう!!」

エイワス(…カンペ通りにしたのに…)



136 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/19 22:50:39.70 aymsGzHW0 113/838


削板「…これ、昔俺が自分で決めた目標なんだけどさ」

削板が取り出したのは、一枚の色紙

そこに書かれているのは、至極シンプルな言葉だった


「根性」


削板「昔、俺は根性がなかった時期がある」

削板「不良を見つけたら、とにかく殴り飛ばして…そして、それだけで満足してしまうことがあったんだ」

削板「でも、ある日俺は気づいた…それじゃ、結局俺もその不良たちと変わらないんじゃないのかって」

削板「…それから、俺は不良たちにも手を差し伸べることにしてみたんだ」

削板「すると…あることに気付いた、当たり前で、しかし重要なこと…」

削板「不良たちの中に、本当に腐ってる奴なんてほとんどいないということだ」

削板「もちろん、根っからのクズがいることも否定はできない…でも、大抵はただ反抗期に派手に暴れすぎてるだけってやつが多いのさ」

削板「…もしかしたら、彼らは俺達にもあったはずの可能性が具現化したものなんじゃないのかな」

削板「…俺は、そういうやつらに根性を教えてやりたいんだ」

削板「…たとえそれが無駄だとしても、俺はやりたいんだよ」

削板が、色紙を直す

とても丁寧に、そしてそれをしっかりと見つめながら、削板はそれを直した


削板「…さて、そろそろ俺は行かなきゃならないかな」

削板はまた、不良たちを更生させに向かう

たとえそれが、無駄だと笑われても



137 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/19 22:59:45.16 aymsGzHW0 114/838


美琴「さて…そろそろ、この番組も終盤になってまいりました」

垣根「…そうですね、最近の若者…という括りは悪いでしょうが、それにしても珍しい青年ですね」

一方「そォですね」

美琴「では最後に、スタジオに削板さんをお招きしてお話を聞きたいと思います」


パチパチパチパチ


削板「どうも…」

フィアンマ「…意外と腰が低いな」

削板「そうかな?」

垣根「…もう時間もあまりないので、短くお話をしてほしいですね」

美琴「削板さん、視聴者の皆様に何かメッセージをお願いします」

削板「うーん…そうだな、とりあえず…俺のことを、すごいなって思った視聴者のみなさん、それは間違いなんだ」

一方「間違い?」

削板「…たとえばさ、俺には力があるから、とか…俺には度胸があるから、と思っている人もいると思う」

垣根「実際にそうだと思いますが…」

削板「たしかに、そうなのかもしれないな」

削板「でもさ…それだけなんだ、誰だって勇気を持つことは出来るし、誰だって力を振り絞ることは出来る」

フィアンマ「…」





138 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/19 23:11:38.20 aymsGzHW0 115/838

削板「…よくさ、人は生まれたときに人生が99パーセント決まっているなんてことを聞く」

削板「その通りなんだ、金持ちの元に生まれれば不自由なく暮らせるし、医者の元に生まれれば医者になる可能性が非常に高くなる」

削板「モデルの子なら美形になるだろうし、親が不良なら子供もきっと非行に走る」

削板「…だとすれば、俺は残り1パーセントの可能性なんだ」

削板「生まれた時から持っていたわけではない、勇気や力を生み出して…それで人を救っている」

削板「救っている、ってのは自惚れかもしれないけど…でも、俺は少なくとも何かを変えているという自信がある」

削板「…そういうもんじゃないかな」

垣根「なるほど…」

美琴「素晴らしいですね…削板さんは、相当な努力をなさっているようですが…」

削板「それはちょっと違うかな」

美琴「…?」

削板「俺は、努力をするのが嫌いだって言う人をよく見てきた…努力が好きだって人も、たまにはいる」

削板「努力は実るって言う人もいれば…努力なんて意味がないと言う人も見てきた」



削板「でも、努力を語る資格がある人には、今まで出会ったことがない」

削板「…俺はさ、その努力を語る資格がある人になりたいんだ」

削板「…だからこそ、努力の真似事をしている…それだけなんだ」

削板「きっと、これを見ている人も何か頑張っていることがあるはずだ…それをずっと続けることが大切なんだ、俺がやってるようなことでなくてもいい、人に影響を与えるようなことでなくてもいい」

削板「ただ、自分がこれだと思ったことだけは貫き通してほしいかな」


139 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/04/19 23:18:21.17 aymsGzHW0 116/838


美琴「お別れの時間となりました、削板さん、およびお越しいただいたみなさんに感謝を申し上げます」

一方「どォも」

垣根「今日は有意義な時間を過ごせました」

削板「楽しかったよ、ありがとう」

フィアンマ「俺様も面白かったぞ」

エイワス「私も中々…」

美琴「ではみなさん、来週は海でマグロと共に泳ぐ男達~シャンパンファイトは命の飛沫~をお送りします、さようなら!」

エイワス「…」



ED  愛をとりもどせ





心理「…ん…?」

心理「…あら、夢だったのね…」

心理「…変な夢、しかもなんだかよく分からない人も出てきたし…」フアァ

心理「…マグロと共に泳ぐ男達…ねぇ」

心理「…」



心理「来週も楽しみにしとこうかしら」クスクス








続き: 上条「これからもよろしく、美琴」美琴「うん//」垣根「俺も俺も」心理「はいはい」【2】


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