※関連
最初: 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
前回: 上条「立てば芍薬!」美琴「座れば牡丹!」心理「歩く姿は」垣根「ラフレシア!!」【5】





元スレ
上条「好きと叫んでも!」美琴「心は遠く!」心理「貴方を呼んでも」垣根「振り向かず!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1325230092/

1 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 16:28:12.44 gtqWL0MT0 1/807

1スレ目 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13045/1304506297.html
2スレ目 美琴「当麻♪」上条「なんだ、美琴」垣根「俺も仲間に入れて」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13053/1305377166.html
3スレ目 上条「美琴、愛してる」美琴「私も♪」垣根「俺も♪」心理「ジャマしないの」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306063255/
4スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「えへへ//」垣根「速さが足りない」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306724889/
5スレ目 上条「放さないからな」美琴「うん♪」垣根「話さないからな」心理「しゃべりなさいよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307282872/
6スレ目 上条「抱きしめようか?」美琴「うん//」垣根「抱こうか?」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307709819/
7スレ目 上条「守り続けるからな」美琴「うん//」垣根「これがリア充です」心理「あなたもよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308139244/
8スレ目(番外編) 美琴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308667506/
9スレ目 上条「結婚に必要な物は?」美琴「愛!」心理「お金」垣根「念のため三行半」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308992651/
10スレ目 上条「まずは!」美琴「そのふざけた!」心理「幻想を!」垣根「守るのこそ愛だ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309355502/
11スレ目 上条「マイホームか・・・」美琴「い、いいわね//」心理「そうね」垣根「欠陥住宅か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309860801/
12スレ目 テクパトル「あの月はもう、空には出ない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310283821/
13スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「//」垣根「心理定規可愛いハァハァ」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310641032/
14スレ目 上条「恋といえば!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311066610/
15スレ目 上条「旅行かぁ・・・」美琴「どこ行く?」垣根「ヤっちゃうのか?」心理「黙って」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311506386/
16スレ目 上条「愛って何かな」美琴「守ること?」心理「信じること」垣根「疑い続けることさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311939697/
17スレ目 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312451177/
18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/
19スレ目 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313206497/
20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/
21スレ目 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313987737/
22スレ目 上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1314/13145/1314512717.html
23スレ目 上条「海外旅行!」美琴「イギリス!」心理「ご飯がまずい」垣根「ひもじいよぉ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1315/13152/1315277970.html
24スレ目 上条「デートの定番は?」美琴「遊園地!」心理「映画館」垣根「特別な場所なんていらねぇさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316091462/
25スレ目 上条「熱い思いは!」美琴「止められない!」心理「燃える心は」垣根「バーニングハート!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316955436/
26スレ目 上条「異性のどこが好き!?」美琴「優しさ!」心理「温かさ」垣根「声」テクパトル「背中」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318038036/
27スレ目 上条「恋は!」美琴「儚く!!」心理「愛は」垣根「虚しく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321338251
28スレ目 上条「立てば芍薬!」美琴「座れば牡丹!」心理「歩く姿は」垣根「ラフレシア!!」


黒歴史 今日も学園都市には雨が降る
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1303/13037/1303730725.html


2 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 16:29:02.87 gtqWL0MT0 2/807

キャラ紹介

上条・・・言わずとしれたそげぶマン
美琴の彼氏、第一の主人公であり、正義感溢れます
美琴をかなり愛しています

美琴・・・ヒロイン
可愛いです、可愛いです、可愛いです
ツンデレがデレデレになってますが、それもまた(ry
上条さんにメロメロ

垣根・・・本シリーズでおそらくもっとも愛されてるキャラクター
イケメルヘンからギャグまでなんでもござれ
心理定規と付き合ってます、フリーダム
たまにツッコミ

心理定規・・・垣根の嫁
ていとくんに踊らされながらも彼を支えます
おそらく、心理定規タンハァハァって方もいるかと、俺もそうだ
ホント、マスコットキャラ だったのになぜかだんだんとボケキャラへ

エツァリ・・・本シリーズで地味なキャラの一人
ショチトルと付き合ってる変態ツッコミ

ショチトル・・・地味キャラだった一人
エツァリと付き合ってます、自称ドMの実際ドM
ボケも心理定規に奪われる

削板・・・熱い男
黒子の彼氏、地味なはずがわりとキャラが濃い

黒子・・・ですの
削板の彼女、でもお姉さまも相変わらず好きなのでご安心を

一方・・・歪みないセロリ
番外個体の彼氏、そしてロリコン、意外とまともになった

番外個体・・・一方の嫁
やっとセロリと付き合うことに、マジ可愛いよワースト
わりと奥手

テクパトル・・・美月こと19090号と恋人に、さまざまな苦難も乗り越えイチャイチャリア充、背中フェチ
背中について語ると止まらない人

19090号・・・テっくんの嫁
通称美月
テクパトルと結ばれましたが未だに照れ屋さん、そしてエロい

20000号・・・変態
しかも、テっくんでヤったこともある変態 、たまに男前

14510号・・・セロリのことが好きな乙女
めちゃくちゃ乙女

10033号・・・セロリのことが好きな乙女
恋する乙女は強かった

御坂妹・・・可愛いです
なぜかツッコミに

17600号・・・やや遅れて合流した妹達
意外と男前、おっとこまえー

■■・・・名前が思い出せないキャラ
まさかの存在感、可愛さ
準レギュ、というかエツァリよりも輝いてる気がする

吹寄・・・垣根に告白、失恋するもやはり友達がいいと気づいた強いキャラ
まさかの準レギュ、そしてツッコミ、おっぱい吹寄

ウイーハルさん・・・違った、初春
削板、黒子の出番でたまに登場

13577号・・・かつて20000号に公開オ○ニーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
まさかの復活、でもトラウマは奥底に眠る

10039号・・・かつて20000号に公開オナ○ーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
磁石のNよりもSが好き

3 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 16:30:25.45 gtqWL0MT0 3/807

食蜂・・・レズ、美琴に恋してる
最近本当の友達が出来て喜んでいる

打ち止め・・・一方通行と番外個体の娘ポジション
しかし寝取りを企んでいるという噂もある

麦野・・・魅力的なはずなのにアイテムで唯一恋の香がしなかったが、青ピと若干近しくなる
がんばれおばさ・・・お姉さん

絹旗・・・超可愛い超キュートな超ヒロイン
海原に淡い恋心を抱いている
絶賛パンチラ

浜面・・・リア充爆ぜろ

滝壺・・・浜面の彼女
ときどき黒い、実は腕力が半端ない

フレンダ・・・空から帰ってきた我らがアイドルな訳よ!
美人でスレンダー、完璧なスタイルな訳よ!
ゴーグル男なんて好きじゃない訳よ!

ゴーグル・・・スクールの中で一番地味だった人
語尾が「~っす」とかいう、若者口調
なぜかフレンダと共にこの世に戻ってきた
冷え性、甲斐性なし、天然ボケ


アレイスター・・・冷蔵庫
だったが復活、テクパトルの家に居候

海原・・・絹旗にフラグを立てた男
エツァリではなく、こちらは本物
エツァリと鉢合わせした時に、エツァリの真実の愛を目の当たりにして衝撃を受ける
時を経て変わったエツァリ、彼の愛を受けたショチトル
それは、まるで海原と絹旗の関係に拍車を掛けているようだった
彼は不器用だ、そして時に卑怯である
敬語を使うことによって他人と距離を置き、常に笑顔であるがために自分の内心を探らせない
そんな彼にとって、エツァリとショチトルの間にある何かしらの燃えているものは衝撃的だった
ズキズキとした痛みは、かつてエツァリに剥がれた腕の傷か
いや違う、彼の心に空いてしまった大きな隙間の痛みだった
人が生まれてきたのはなぜか
愛を持つためか、世の中に絶望するためか、明日を見るためか過去に逃げるためか
まだ若い海原には分からない
その名の通り、広い海原の中にまるで小さなカヌーを浮べているような、虚無感と絶望感
たどり着くことの無い未来という名の地平線に、彼はただ手を伸ばすだけだった



4 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 16:31:00.34 gtqWL0MT0 4/807

スレ内容

上琴、未元定規がメインのギャグほのぼの

一方通行×番外個体
テクパトル×19090号
削板×黒子
エツァリ×ショチトル
浜面×滝壺
俺×サトリナ


何もおかしいところはない

サトリナさんは俺の嫁

ほのぼの、グダグダ、原作崩壊、キャラ崩壊、マンネリが嫌いな方はご覧にならないほうがいいかと

あと、一部オリキャラ化していますのでそこもご了承を


注意事項

速さが足りないコメ、やろうじゃないのよ

たまに筋肉動画を貼ります、耐性がない人はそっと戻るボタンを





963 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 18:34:30.31 gtqWL0MT0 6/807



垣根「・・・なんで俺がこんな格好しなくちゃならねぇんだぁぁぁ!!」

垣根は頭を抱えていた

季節は春、4月の末

この前のイギリスのあとは何一つ変わらない平凡な日常を送っていた




ある日美琴から、「ちょっと手伝って欲しいことがある」と頼みごとをされたのだ

学校が始まってるんですけど、と言ったところ「いや、休日のバイトみたいなのを手伝って欲しくて」と

それだけだと思っていた

どうせ、コンビニで「暖めますか」なんて言ったり、飲食店で「いらっしゃいませ」なんて言うんだと思っていた

なのに


垣根「・・・ゲコ太の着ぐるみなんてやってられるか・・・」

彼は今、ゲコ太になっていた

顔だけ垣根、体は蛙

その名は

垣根「ていとくん!!」キリッ


垣根「じゃねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」



上琴と未元定規、ゲコ太になってビラ配りの巻き



964 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 18:40:15.49 gtqWL0MT0 7/807

美琴「・・・さっきから何一人で叫んでるのよ」

垣根「おっかしいだろ!?なんでみんなゲコ太なんだよ!?」

美琴「失礼ね!!私と心理定規はゲコ子よ!!」

垣根「知らないからそんなマイナーなキャラクター知らないから!!」

美琴「マ・・・人気絶頂のゲコ太に何言ってるのよ!?」

垣根「なんなんだよ、大体俺はバイトを手伝って欲しいって・・・」

上条「いや・・・一応さ、この格好でビラ配りなんだよ」

垣根「おっかしいだろ!?ブタとかならいいよ、ゴレンジャイだったらファルコンの格好していきなり転んだ挙句、片足外れちゃってもいいくらい俺は着ぐるみ大好きだよ!?でもなんでカエルなんだよ!!」

美琴「だからカエルじゃなくてゲコ太!!」

垣根「なんでだよ!?」

上条「ゴールデンウィーク近いだろ?で、ちょうどゲコ太の新グッズが発売されるからそのビラを・・・」

垣根「なに!?ゲコ太の格好がしたかっただけ!?」

美琴「い、今ならバイトした人全員が限定ゲコ太ストラップ1個ずつもらえて・・・それがちょうど4種類なのよ」

垣根「あぁこれだよマニアだよオタクだよ!!集めたいものはどうやってでもとことん集める人だよ!!CDとかに握手券ついてたら何個でも買っちゃう人だよ痛い人だよ!!」

心理「静かにしなさい、そろそろ覚悟を決めないと」

垣根「心理定規・・・お前は何着ても可愛いけどカエルの口から顔が出てるあなたはどうにもシュールだよ!!」



965 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 20:02:12.32 gtqWL0MT0 8/807

上条「落ち着け垣根・・・」

垣根「はぁ・・・こんなお目目クリクリなだけのカエルのどこがいいんだよ・・・」

美琴「何よその言い方!?ゲコ太はね、ケロヨンの隣に住んでるおじさんで乗り物に弱いからすぐゲコゲコしちゃうのよ!!」

垣根「あぁそう!!ゲロが得意なんですね分かるよ!!」

美琴「いーえ分かってないわ!!大体、アンタ・・・」

心理「はいはい、静かになさいな」

パンパン、と心理定規が手を叩く

心理「・・・美琴、人の感性はそれぞれよ?あなたが可愛いって思うものを、そうではないと思う人もいるの」

美琴「で、でも・・・」

心理「あなた、ニシキヘビを可愛いって思う?」

美琴「それは・・・」

心理「世の中には好き嫌い、向き不向きってのがあるの・・・それは覚えておきなさい」

美琴「・・・はい」

心理「垣根、あなたもあなたよ?美琴が可愛いって思ってるものを本人の前で馬鹿にするなんて思いやりが足りないわ」

垣根「だ、だけどさぁ・・・」

心理「それに、今更騒いでも仕方ないのよ?だったら出来る限り恥を捨てましょう」

垣根「・・・仕方ねぇ・・・」

心理「最後に上条君」

上条「俺も!?」

心理「ほっぺたにご飯粒ついてるわよ」

上条「」



966 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 20:06:31.39 gtqWL0MT0 9/807

心理「さて・・・そろそろ時間だし、行きましょう」

四人がいるのは着替えのために用意された更衣室だ

女二人が着替えるときは、「男の誓い」なるものを結ばされて目隠しをされた挙句に隅っこで体育座りさせられ、壁に向かって今年の目標を呟かされた

美琴「・・・私・・・似合ってるかな?」

心理「えぇ、とっても素敵よ」

美琴「ほ、本当!?」

心理「あとで記念に写真でも撮ってみる?」

美琴「うん!!」ニコニコ

上条(・・・心理さんって、なんかお母さん的な立ち位置になってきてるな)

垣根「・・・よーし決めた、俺はゲコ太だ、俺はゲコ太だ・・・」

上条「・・・垣根、自分を見失うなよ」

垣根「ゲコッ?」

上条「早速見失ってんじゃねぇかちくしょう!!」

垣根「うっせーな、ボケだよボケ」

上条「はぁ・・・クラスメイトに見つかったりしないよな」

垣根「立った!!フラグが立った!!」

上条「・・・そうだな、こういう台詞は避けよう・・・」

心理「じゃ、行くわよ」



967 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 20:14:01.05 gtqWL0MT0 10/807


バン、と勢い良く更衣室のドアを開ける

目の前には、移動用の通路がある

ちなみのちなみに、ここはあるショッピングモールの職員用通路だ

つまり、四人はショッピングモールでビラを配ることになる

上条「・・・ノルマがあって、達成できればボーナスも出るんだっけ」

垣根「ゲームみたいだな、人生なんてゲームだけどさ」

心理「・・・でも、一人500枚ってすごいわよね?」

美琴「・・・午前と午後で、250枚ずつか・・・」

上条「・・・自給780円ってどうなんだろ」

垣根「学園都市では安いほうだろ・・・ちくしょう、羞恥プレイならもう少し高くしろっての」

心理「いいじゃない、ミニスカ履かされて腰振らされるよりはマシよ」

垣根「・・・そういう生々しい話はどうかと思う」

美琴「・・・ゲコ太ストラップ・・・」ウズウズ

垣根(こいつの頭の中、カエルのことしかねぇのかよ・・・一年中雨か?)

心理(・・・でも、このゲコ太っていうキャラクター、ヒゲが生えてるのね・・・ゲコ子とピョン子は違うのかしら?っていうかケロヨンが主人公なの?)

上条(・・・俺、絶対誰かに見つかる・・・)

それぞれが全く違うことを考えながら、通路を進んだ



968 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 20:42:27.93 gtqWL0MT0 11/807


上条「・・・すげぇ、やっぱり休日は人が多いな・・・」

垣根「・・・子供も多いし、わりといけそうだな」

美琴「そうね・・・」

心理「・・・なんか、やっぱり少し珍しい目で見られるわね」

通路から出た四人は、ショッピングモールの大通りの前に出た

学生が行き交う大通りを、少しもたつきながら歩く

着ぐるみでのビラ配り自体はわりと見る光景だが、何しろ中にいるのがあの「超電磁砲」や「垣根帝督」なのだ

それは、珍しい目で見られても不思議ではないだろう

上条「・・・なんか、注目されると恥ずかしいよな」

垣根「そうか?別にそうでもないけどさ」

心理「・・・でも、美琴と垣根が理由よね」

美琴「そうかな?」

垣根「・・・でも目立つってのはいいことだ、おかげで子供が集まってくるぜ」

垣根が指差した方向から、子供達が走ってくる

「ゲコ太とゲコ子だー!!」

垣根「おう、ゲコ太だぞー」

「お兄ちゃん、ゲコ太なの?」

垣根「あぁ、ゲコ太だぞ」

上条「お、おい垣根・・・」コソッ

垣根「なんだよ」



969 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 21:01:37.77 gtqWL0MT0 12/807

上条「も、もっとこう・・・子供の夢を壊さないようにだな・・・」

垣根「知るか・・・おいみんな、今度ゲコ太のグッズが新発売になるから買ってくれよな」

「ケロヨンはー?」

垣根「ケロヨンはお休み中だ、あとゲコ太をあんまり乗り物には乗せるなよ?」

「うん!」

垣根「よし、ゲコ太との約束だ」

ポン、と子供達の頭を撫でてから垣根がビラを渡す

垣根「じゃ、またな!!」

「バイバーイ!!」

美琴「・・・なんか・・・さ」

垣根「あぁ?なんだよ」

美琴「アンタって、子供には優しいわよね」

上条「・・・めちゃくちゃ自然な感じにしながらも優しいよな」

心理「・・・子供の相手とか慣れてるの?」

垣根「別に、ただああいう風にそっけなくてもいいから優しくしようってのが大切なんだよ」

美琴「・・・わ、私も負けないわよ!!」

上条「俺だって!」



971 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/30 21:36:46.38 gtqWL0MT0 13/807

心理「・・・ねぇ、そこのお嬢ちゃん」

「?私?」

心理「えぇ、あなたはゲコ太とか、興味ないかしら?」

「そんなにないけど・・・」

心理「ふふ・・・でも、ビラくらいもらってちょうだい」

「う、うん!」

心理「ありがとう、いい買い物が出来るといいわね」

「ありがと!!」

心理定規は、あまり大勢では来ていない子供を狙った

理由は簡単、そういう子供と自分が少し似ているからだ


美琴「ほらほら!!ゲコ太の新しいグッズはストラップよ!!」

「おー!!」

美琴は、なぜか子供の知り合いが多い

しかも、ゲコ太通なだけあってかなり詳しい情報も持っている


上条「よ、よし!!俺も・・・そこのお兄さん!!」


ゴーグル「・・・?はい、俺っすか・・・って」

上条「あ」

フレンダ「あれ」

垣根「おぉ?」




980 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 17:59:38.80 cWJNJ/IG0 14/807

ゴーグル「な、何やってんすかみなさん・・・」

フレンダ「えっと・・・ゲコ太とゲコ子な訳よ」

美琴「!わかる!?」

フレンダ「わ、わかるけど・・・なんで着ぐるみ?」

心理「・・・ビラ配りのバイトなのよ」

ゴーグル「・・・」

心理「何よ、あんまりジロジロ見ないで」

ゴーグル「あぁいや!なんか似合ってますね・・・」

心理「そう?」

上条「・・・まぁ、心理さんはわりとなんでも似合うタイプだからな」

美琴「・・・ねぇ、私は?」

ゴーグル「似合ってますよ、二人とも」

美琴「うーん・・・でもなんか動き辛いのよ、これ」

垣根「そうそう、なんか重いし・・・」

ゴーグル「・・・ぶっ」

垣根「あ?」

ゴーグル「あはははは!垣根さんはないっすよ、ゲコ太でしたっけ?さすがに似合ってませんよ!」




981 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:00:14.98 cWJNJ/IG0 15/807

フレンダ「ゴ、ゴーグル・・・」

ゴーグル「はぁ・・・はは!しかも顔だけやけにイケメンだから可愛らしいボディーとのギャップが・・・」

垣根「・・・お前、今笑ったか?」

ゴーグル「は・・・ってなんかめちゃくちゃ怒ってませんか!?」

垣根「ナメてやがるな・・・よほど愉快な死体になりてぇと見える」

上条「待った待った!ゲコ太の格好でそんな台詞はいただけません!」

フレンダ「ほ、ほら!ビラ配り頑張らなきゃダメなんだよね!?」

垣根「どけ、俺はそこの地味馬鹿ゴーグルを叩きのめさなきゃ気が済まねぇ」

ゴーグル「・・・そ、そんな格好で言われても・・・」

垣根「この野郎!」

美琴「やめなさいって・・・あ、ゲコ太の新しいグッズが発売になりましたー!」

心理「もしも興味があったら買って下さいね」

女二人はそんな喧嘩の最中でもしっかりとビラを配っていく

フレンダ「・・・じゃ、行こう」

ゴーグル「そ、そうっすね!」

上条「・・・そういえば、二人はなんでここに?」

ゴーグル「買い物っす・・・」

フレンダ「デートな訳よ!」




982 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:00:40.60 cWJNJ/IG0 16/807

ゴーグル「いや、ただの買い物じゃないっすか」

フレンダ「・・・垣根、やっぱりこいつぶん殴ってもいい訳よ」

垣根「よしきた」

ゴーグル「いやいややめて下さい!」

首を振りながら、ゴーグル男がフレンダの手を取る

ゴーグル「じゃあみなさん、頑張ってくださいね!」

フレンダ「ゲコ太のグッズ、私も買うからねー!」


垣根「・・・早速知り合いに見つかるなんてな」

心理「まぁ、あの二人ならまだマシよ」

上条「だよな・・・あんまり言い触らしそうにはないし」

美琴「・・・でも、幸先いいわよね」

垣根「皮肉たっぷりな言い方だなおい」

上条「・・・そうだな、このペースだとすぐに・・・」

垣根「あ、そこのお嬢さん」

「?私?」

垣根「君はゲコ太とゲコ子とケロヨンとピョン子、どれが好きかな」

「ゲコ太!」




983 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:01:13.75 cWJNJ/IG0 17/807

垣根「じゃあ、こっちにおいで」

「?」

近寄ってきた女の子を、垣根が優しく抱きしめる

「!」

垣根「携帯持ってるか?」

「う、うん」

女の子が自分の携帯を差し出す

垣根「御坂、写真撮ってくれよ」

美琴「う、うん・・・いいけどどうして?」

垣根「なぁ、パパとママ、好きか?」

「うん!でもね、最近はあんまり会えないんだ・・・」

垣根「・・・学園都市にいたら中々な・・・」

女の子の頭を優しく撫でながら、垣根が笑う

垣根「だから、ゲコ太との写真をパパとママに送ってあげな」

「うん!」

美琴「・・・撮るわよ」




984 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:01:48.99 cWJNJ/IG0 18/807

垣根の言葉に苦笑しながら、美琴が写真を撮る

女の子の笑顔が、とても可愛らしい

垣根「じゃあ、ゲコ太グッズもお金があったら買ってくれな」

「約束する!」

垣根「あぁ、約束だ」

「じゃあね、ありがとうゲコ太!」

垣根「おうよ」

手を振った後で、垣根が笑いながら心理定規に話し掛ける

垣根「・・・こういう偽善的な行動も、たまにはいいんじゃねぇかな」

心理「・・・そうね」

垣根「あぁ?なんだよ、なんか不機嫌だな」

心理「別に・・・あ」

目の前を通った男の子に、心理定規が声を掛ける

心理「ねぇ、坊や」

「?なに?」

心理「あなたはゲコ太とか好きじゃないかしら」

「えー、世の中はもうゲコ太じゃなくて仮面ライダーだよ!」

心理「あら、そうなの」

「うん!」




985 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:02:14.60 cWJNJ/IG0 19/807

心理「だったらお姉さんが抱きしめてあげなくてもいいのね」

「!?」

垣根「!?」

美琴「ちょ、ちょっと、心理定規・・・」

上条「待った!男の子をその毒牙にかけたら・・・」

心理「あら・・・ねぇ坊や、どう?」

「お、俺、お姉ちゃんみたいな美人は好きだぜ!」

心理「ふふ・・・あなた、将来女の子に人気が出るわよ」

男の子を抱きしめた心理定規がニコニコ笑う

垣根「あぎゃぁぁぁ!」

心理「・・・ね、あそこにいるお兄ちゃんもそこそこ人気なのよ」

「ふーん・・・お姉ちゃんとお兄ちゃんって付き合ってるの?」

心理「あら、ゲコ太とゲコ子はそんな関係じゃないわよ」

「そうなの?」

垣根「違いますぅ!俺達は付き合ってますぅ!」

心理「それじゃ坊や、またね」

「う、うん!」




986 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:02:47.86 cWJNJ/IG0 20/807

顔を真っ赤にしながら、男の子は走り去っていく

心理「どう?ヤキモチも中々妬けるでしょ」

垣根「・・・俺はただあの女の子に笑顔になって欲しかっただけだ・・・」

げんなりした表情で、垣根が他の通行人に声を掛けた

垣根「すいません・・・」

吹寄「はい・・・って」

垣根「あれ?」

その通行人は、吹寄と姫神だった

姫神「上条君に垣根・・・心理定規と御坂さんも」

吹寄「な、なんでそんな格好してるの?」

垣根「いや、ゲコ太グッズのビラ配りでさ」

上条「バイトしたら、限定のストラップがもらえるんだ」

姫神「・・・御坂さんのため。そういうこと?」

上条「そうそう」

吹寄「はぁ・・・なんというか、宿題もしないでこういうことをしてるなんて・・・」

上条「それは言わないでくれ・・・」

美琴「わ、私のために当麻は手伝ってくれてるのよ!」

吹寄「・・・まぁ、それは褒めてあげるわ」

姫神「好きな人に一途なのは。素直に偉いと思う」

心理「・・・そうだ、あなた達もビラ、もらってちょうだい」




987 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:04:01.37 cWJNJ/IG0 21/807

吹寄「あぁ、いいわよ」

心理「はい、これ」

垣根「姫神は俺から受け取るよな!?」

姫神「上条君。ちょうだい」

上条「あ、あぁ」

垣根「」

上条が姫神にビラを渡す

美琴「・・・二人は買い物ですか?」

吹寄「えぇ、せっかくの休みだから」

垣根「・・・姫神に嫌われてるのか俺・・・」

姫神「そういうわけだから。あまり長居は出来ない」

上条「あぁ、じゃあまたな」

吹寄「宿題、ちゃんとやりなさいよ」

そんな警告をしてから、二人が立ち去った


垣根「・・・嫌われてるんじゃない嫌われてるんじゃない・・・」ブツブツ

心理「鬱陶しいからやめなさいよ・・・」

垣根「・・・にしても、なんでこんなに知り合いがいるんだろうな?」

上条「そりゃ、このショッピングモールでかいからさ・・・」

垣根「・・・そういうもんか?」



988 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:07:29.53 cWJNJ/IG0 22/807



美琴「あ、すいません・・・」

麦野「はい、なんで・・・って超電磁砲じゃないの」

美琴「あれ?麦野さん・・・」

垣根「んだよ、お前もいたのか」

麦野「・・・な、なんだよその格好・・・」プルプル

垣根「ゲコーッ!!」

麦野「あははは!!だっせぇだっせぇ!!なんだよそのカエルはぁ!?」

美琴「カエルじゃないわよゲコ太よ!!」

麦野「あぁ、最近小学生を中心にして人気のあれ・・・」クスクス

垣根「御坂がその限定ストラップがほしいらしくてさ」

麦野「で?なんでそれでバイトに・・・」

心理「バイトをしないともらえないってわけ、しかも4パターンあるストラップだから私達も協力してるのよ」

麦野「へー、また物好きだな」

美琴「そういう麦野さんはどうしてここに?」

垣根「もしかしてフレンダ達のストーカーか?」

麦野「あぁ?あいつらもここに来てたのか・・・違うわよ、化粧品を買いに」

上条「化粧品かぁ・・・」



989 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:10:51.83 cWJNJ/IG0 23/807

麦野「アンタはそういうの興味ないの?」

美琴「うーん・・・ないってわけじゃないんだけど」

垣根「御坂はババァなてめぇと違って顔の作りがいいからな」キリッ

麦野「お前、ちょっと表に出ろよ」

垣根「それは着ぐるみから出ろって話か?あぁ?」

上条「お、おい・・・子供達が見てるからやめろって」

麦野「ちっ・・・」

垣根「はい、ゲコ太のグッズあるから買ってくれよなー」

美琴(・・・にしても、垣根は本当に子供に人気ね・・・)

麦野(あぁくそ・・・垣根ムカつく)

垣根「そうだ、お前もビラいるか?」

麦野「いらないわよ、興味ないし」

垣根「でもよ、こういう若者に人気な物のデータも集めないと、時代に置いてかれるぜ?」

麦野「・・・」

垣根「時代ってのは駆け足だ、追いつくのは難しいくせに止まってくれることはない、そこには結局一時の流行しかなく・・・」

麦野「あぁもういいわよ・・・もらえばいいんでしょ」

垣根「そういうこと、はい」

垣根がビラを麦野に差し出す



990 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:14:33.17 cWJNJ/IG0 24/807

麦野「いや、アンタからは受け取らないから」

垣根「は?」

麦野「超電磁砲、ちょうだい」

美琴「う、うん」

美琴が麦野にビラを渡した

垣根「待てよ!!なんで!?普通お前との組み合わせは俺だろ!?巷で人気の未元崩しだぜ!?」

麦野「そんな人気知らないし気味悪いから」

垣根「うっはぁ!!世の中の未元崩し派に喧嘩を売った発言、心理定規さんはどう思いますか!?」

心理「坊や、ゲコ太は好きかしら?」

「うん!!大好き!!」

心理「ふふ・・・いい子ね、子供はそうでなくちゃ」

垣根「うわぁノータッチだ!!一方その頃上条さんはこーんな意見を持っていた!!」

上条「・・・配り始めて1時間で70枚・・・となると、あと6時間くらいか・・・」

垣根「なんでシカトするんだよ!?シカトですか!?なら俺はみんながシカトする様をしかと見届けることにします!!」

美琴「・・・麦野さん、またね」

麦野「また」

垣根「帰った!!帰ったよ、もうイヤだよ!!!」

心理「落ち着きなさい」



991 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 18:18:37.07 cWJNJ/IG0 25/807

垣根「・・・ちくしょう、なんで俺がこんなことしなくちゃならねぇんだ・・・」

上条(また始まった・・・さっきも言ってたな)

垣根「俺ってさ、第二位だよ?すげぇ能力者なんだぜ、こんなことしなくても暮らしていけるんだぜ?」

美琴「はいはい・・・もういいから」

垣根「なのにさ・・・?あれ、あれってテクパトルだよな」

上条「ん?本当だ、あとミサカ達・・・か?」

垣根が指差した先には、テクパトルと妹達(特殊メイク済み)がいた

美琴「おーい、みんなー!!」


御坂妹「?・・・!!!ゲコ子がミサカに手を振っています、とミサカは・・・」

10033「こらこら10032号、その語尾は禁止・・・って本当ではないですか!!なんでですか、まさかミサカ達の魅力にカエル達も気づいてしまったのでしょうか!?」

13577「あのつぶらな瞳が可愛らしい・・・」

テクパトル「落ち着けよ・・・あれ、義姉さんじゃねぇか」

17600「あと、お義兄様、垣根、心理定規だな」

20000「うっへー、いい歳してなんて格好してんだろ、羨ましい」

テクパトル「・・・ビラ配りだな、きっと」

19090「・・・行きますか?」

テクパトル「呼ばれてるし・・・仕方ないか」



992 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 20:08:55.85 cWJNJ/IG0 26/807


垣根「あ、来た」

テクパトル「よぉ・・・ビラ配りか」

美琴「うん、ゲコ太ストラップの限定品がもらえるのよ!」

御坂妹「!そんな情報、知りませんでした・・・」

上条「いや・・・知ってるほうがすごいけどさ」

心理「あなた達はお買い物?」

19090「はい、ちょうど服も春物に替えないといけないので」

垣根「へぇ・・・お前達でも気にするんだな」

14510「ミサカ達をなんだと思っているんですか」

10039「こう見えてもオシャレさんですよ」

垣根「オシャレさんって言い方は今日日古いぞ」

テクパトル「・・・じゃあ、ビラ貰うか・・・」

テクパトルが美琴からビラを受け取る

テクパトル「・・・しかし、義姉さんは中々似合ってるな、可愛らしくていいよ」

美琴「そ、そうかな?」

テクパトル「あぁ、似合ってる」

ミサカ一同「・・・」

テクパトル(なんだこの冷めた視線は・・・)

垣根(おーねがいー!さーむいめーでーみーつーめーないでー!!)



993 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 20:12:36.01 cWJNJ/IG0 27/807

御坂妹「テっくんは相変わらずの平常運転ですね」

17600「ミサカ誑しのクソッタレだな」

20000「そうやってミサカ達のクリトリスに手を忍ばせても意味ないんだぞ!!」

テクパトル「さて、20000号はここに置いていくか」

20000「そ、そんな・・・全裸で放置なんて//」

テクパトル「なぁ・・・MNWがおかしいのか、こいつは」

17600「いや、頭がおかしいんだ」

心理「・・・あなた達、仲良しよね」

テクパトル「そりゃ、家族だからな」

垣根「ほらほら、家族の時間は大切にしな・・・じゃあまたな」

テクパトル「あぁ、頑張れよ」

上条「・・・あぁ」

テクパトルと愉快なミサカ達は去っていった


美琴「・・・すごいわね、知り合いがたくさん通るわ」

上条「・・・言い知れない不安に駆られるのは俺だけか?」

垣根「・・・いや、お前だけじゃないって」

心理「・・・私も、ちょっぴり不安よ」



17 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 20:32:23.73 cWJNJ/IG0 28/807



上条「・・・はぁ」

上条は溜め息をついていた

ゲコ太に扮して早2時間

彼の配り終えたビラは約120枚

残り380枚ほどだ

上条(・・・ボーナスを貰うには500枚配らないといけないんだよな・・・)

はぁ、ともう一度溜め息をつく

しかし垣根や心理定規のように魅力があるわけでも、美琴のように情報に精通している訳でもない

彼が四人の中で一番配った枚数が少ないのは仕方ないだろう


垣根「はい、興味あったら買ってくれよ」

心理「買ってくれたらお姉さん、喜んじゃうわよ」

美琴「最新のグッズを買ってこそのファンよ!!」

子供達を相手に、巧みな方法でビラを配っていく

これなら宣伝効果も中々だろうな、と感心する

上条(・・・でもな・・・)

ゲコ太やゲコ子がビラを配っている光景は中々シュールだ

上条自身も扮してはいるのだが



18 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 20:57:56.90 cWJNJ/IG0 29/807

上条「・・・そ、そこの僕・・・」

垣根「おーい、そこの坊主」

「?俺?」

垣根「ゲコ太とか興味あるか?」

「うん!!」

上条(ち、ちくしょう・・・俺は子供には人気がないのか!?)

垣根「ほれ、新しいグッズのビラ」

「ありがとう!!」

美琴「・・・当麻、当麻はもう少し柔らかい表情でいかないと」

上条「柔らかい表情・・・?」

美琴「なんか・・・ちょっと真面目すぎるのよ」

心理「アルバイトだけど、人と話すならもう少しフランクになりなさいな」

上条「そうか?」

上条が垣根を見つめる

たしかに、彼は少しぶっきらぼうな言葉遣いだが子供にサービスをしてあげている

写真を撮ったり頭を撫でたり抱きしめたり

上条(・・・そっか、垣根ってこういうのが好きだったのか・・・)

垣根「じゃあ、またな」

「うん!ばいばい!!」



19 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/12/31 21:29:28.63 cWJNJ/IG0 30/807

垣根「・・・いいな、こういうのってさ」

心理「・・・そうね、楽しいわ」

クスクス、と心理定規が笑う

美琴(・・・この二人って、絶対いい親になるわよね)

上条(・・・なんか、ほほえましいな)

垣根「あぁ?なんだよ、ジロジロ見やがって」

上条「なんでもないって・・・そろそろ休憩の時間だな」

美琴「うん、1時間くらい休んでいいんだっけ?」

上条「そうそう」

垣根「そんなに休んでもやることないけどな」

心理「あら、ゲコ太とゲコ子の私達よ?面白い昼食になりそうだけど」

上条「さーて!!昼飯昼飯!!」

垣根「ところでさ、一々着ぐるみ脱ぐのかな」

上条「・・・」

心理「・・・」

美琴「・・・」


一同「カップルのどっちかが脱いで、あーん作戦でいいか」



24 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/01 18:27:39.48 3tu3+Jla0 31/807

垣根「・・・で、なんで俺はゲコ太のままなんだ」

心理「あら、私があーん、ってしたほうが絵面的にはいいじゃない」

垣根「そういう問題じゃねぇと思うんだけどよ」

上条「・・・美琴はそれ、脱ぎたくないのか」

美琴「だ、だってせっかくゲコ子になってるのよ!?」

上条「いや・・・可愛いからいいんだけどさ、俺としてはあーんしてほしいんだよなぁ・・・」

美琴「家に帰ったら一杯してあげるから!」

上条「ならまぁ仕方ないか・・・はい、あーん」

美琴「あーん」

上条「・・・後で記念写真撮るか」

美琴「うん!」

垣根「・・・バカップルってやつだな、あぁ馬鹿馬鹿しいぜ」

呆れたように垣根が首を振る

上条「なんだよ・・・」

垣根「大体な、彼氏が彼女にあーんってするのはいいとしてもそれがゲコ子に・・・」

心理「はい、あーん」




25 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/01 18:28:09.40 3tu3+Jla0 32/807

垣根「な、なんでこのタイミングなんだよ・・・」

心理「いいから、あーん」

心理定規が卵焼きを垣根に差し出す

クールな顔のまま差し出してくるのがまたなんとも言えない妖艶さを秘めている

垣根「・・・あーん・・・」

上条「ほーら!お前達だってバカップルじゃねぇか!」

美琴「そうよそうよ!」

心理「あら、どこが馬鹿なのか教えてほしいわね」

ツン、とそっぽを向いてから心理定規が反論する

垣根「・・・大体、俺達はこんな格好してもテンション上がったりしねぇし」

上条「お、俺だってテンション上がってるわけじゃないからな!」

心理「あら、まんざらでもない感じに見えるけど?」

上条「そ、それは・・・」

心理「どうせ美琴が可愛いから満足なんでしょ?」

美琴「そうなの?」

上条「ま、まぁ簡単に言えばそういうことだけどさ・・・」

垣根「うっぜぇ!あぁ甘い甘い!」

上条「なんだよ・・・お前、なんか今日おかしいぞ?」




26 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/01 18:29:12.14 3tu3+Jla0 33/807

垣根「あぁそうだよおかしいよ・・・あのな、俺はゲコ太なんかになるつもりはなかったんだよ・・・」

心理「まだ言ってるの?」

垣根「・・・もっと普通のバイトがよかったのになぁ・・・」

上条「仕方ないだろ・・・」

垣根「・・・いや、百歩譲ってこのバイトでもいいんだよ」

美琴「どっちよ」

垣根「だがな、若干体が蒸れてきたんだよ」

上条「それは俺もだから我慢しようぜ・・・」

垣根「・・・痒いんだよ」

上条「か、痒い?」

垣根「背中が痒いんだよ!でも掻けないだろ!?未元物質使えばいいってか!?使ったが最後この着ぐるみは弾け飛ぶね、あぁ間違いない!」

心理「どうりでさっきからムズムズしてるわけね」

垣根「分かるか・・・?背中痒いのに掻けない時のこの辛さが、今のお前達によぉ!」

上条「い、いや・・・」

垣根「あぁもう痒いし蒸れるし最悪だよ!!」

心理「そんな夢のないこと言わないの」

垣根「ゲコ太中は汗でいっぱいだー!!」

美琴「や、やめてよ」



27 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/01 20:58:49.55 3tu3+Jla0 34/807

上条「・・・さて、着ぐるみ着ますか」

心理「そうね」

一旦着ぐるみを脱いだ二人が、再びカエルに変身した

上条「・・・はぁ、なんかやっぱり暑いな」

垣根「だろ?蒸れるだろ?」

美琴「蒸れるとか言わないでよ・・・」

心理「子供が聞いたら泣くわよ」

上条「そうそう・・・まぁ、子供の前ではしっかりやってるからいいけどさ」

垣根「ここでくらい愚痴らせろよ!」

美琴「はぁ・・・でもたしかに暑いわよね」

垣根「前髪が汗で額に引っ付いてるミコっちゃん可愛いよ」

美琴「な、何言ってるのよ!?」

上条「あ、でもホントにちょっとぺちゃってなってる」

心理「子供みたいね」

美琴「う・・・」カァッ

垣根「・・・さっさと直せばいいじゃねぇか」

美琴「だ、だってこれよ!?」

美琴が掌を見せる

水かきだ、カエルの手は水かきなのだ



28 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/01 21:02:20.46 3tu3+Jla0 35/807

垣根「そうだな、じゃあ我慢しようぜ」

美琴「・・・うぅ」

上条「・・・な、なんかでもちょっとセクシーだよな」

心理「そうね・・・風呂上りがセクシーなのと一緒かしら」

垣根「プールとかもそうだな、濡れた毛フェチみたいな」

美琴「・・・なんかエロい言い方ね」

垣根「なんでぇ?どこがエロいのか教えて欲しいなぁ」

美琴「さて・・・じゃ、そろそろ行きますか!!」

上条「おーし!!後半も頑張るぞ!!」

垣根(ツッコんでくれない・・・)

心理「垣根、いじけてないで行くわよ」

垣根「・・・おー」



上条「・・・しかし、ゲコ太ってそもそもなんで人気なんだろうな」

美琴「可愛いからよ」

垣根「両生類だからだろ」

心理「・・・まぁ、愛嬌はあるけどね」

垣根「・・・そうか?こんなキャラクターのデザインした携帯とか使ってるヤツいたら俺はドン引きだな」

美琴「」ドキッ



32 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:03:43.80 BdA04hgp0 36/807

垣根「大体よ、こんなキャラクターなんて小学生だから嵌まっても許されるんだぜ?」

美琴「な、なによ・・・」

垣根「・・・幼稚だぜ、御坂」

美琴「い、いいじゃない・・・」

チラシを少し見つめながら、美琴が反論する

そこに映っているキャラクターグッズはどれも、彼女には魅力的に見えた

上条「・・・そうだって、美琴の趣味を否定したら俺が許さないからな」

心理「・・・でも、たしかに子供っぽいわね」

美琴「心理定規までそういうこと言うんだ・・・」シュン

心理「ち、違うわよ!?子供っぽいから可愛いって言ってるの、だから、ね!?」

美琴「結局・・・幼稚ってことじゃない・・・」ウルウル

心理「そ、そうじゃないのよ・・・」アタフタ

美琴「・・・私、そんなに幼稚かな・・・?」

上条「いやいや!美琴は立派な中学生だって!」

心理「そ、そうよ!?それに普段はボーイッシュな美琴がファンシーグッズが好きなんて可愛くて素敵じゃない!」

美琴「・・・ホント?」




33 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:04:11.46 BdA04hgp0 37/807

上条心理「ホントホント!」

垣根「いーや、子供っぽい・・・」

心理「あなたは黙ってなさい」

垣根「」

美琴「えへへ・・・可愛いかな?」

上条「あぁ、上条さんはそんな美琴さんにメロメロですよ?」

美琴「//」

垣根「・・・坊主、ゲコ太好きか?」

「ううん、俺は興味ない」

垣根「だよな!背中に翼生えてるメルヘンな天使のほうがいいよな!?」

「それもなんか微妙」

垣根「あぁ?」

「か、かっこいいよな天使!」

垣根「だろ?ったくよ、なんだよゲコ太って」

「じゃ、じゃあね!」

垣根「あぁ」

心理「ちょっと、これでも私達はバイトしてるのよ?バイト先の商品を悪く言うようなことだけはしないでよ」

垣根「・・・分かってるよ」

イライラしながら、垣根が適当に通行人に声を掛けた




34 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:04:51.00 BdA04hgp0 38/807

垣根「すいません、そこのお嬢さん」

佐天「はい・・・って垣根さん!」

垣根「あぁ?佐天か」

初春「・・・何やってるんですか?御坂さんも・・・」

垣根「よぉ、お前は小さいから佐天に隠れて見えなかったぜ」

初春「な、なんでですか!」

美琴「久しぶり・・・ビラ配りしてるのよ」

佐天「ふーん・・・時給がいいんですか?」

美琴「ううん、それほどいいってわけではないけど・・・」

佐天「?あぁ・・・御坂さんってそのカエルマスコット、好きでしたね」

美琴「カエルマスコットって・・・」

垣根「ほら見ろ!これが普通の中学生の反応なんだよ!」

初春「あ、でも巷ではかなり人気ですよね」

美琴「そ、そうよね!?」

垣根「かーっ!人気人気って、人気さえあればそれがいいものなのかよ!」

心理「あんまり騒がないの」

佐天「あ・・・えっと・・・」

心理「心理定規でいいわよ、あなたは佐天さんね?」

佐天「は、はい!」




35 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:05:18.01 BdA04hgp0 39/807

心理(・・・たしか黒子と同学年だったけど・・・それにしては中々グラマーね)

佐天(すっごい美人・・・)

心理「・・・垣根、あなたって巨乳好きだったかしら?」

垣根「若干そっちに寄ってるかもな」

心理「・・・佐天さん、垣根に手は出さないでね」

佐天「は、はい」

上条「初春と佐天は買い物か?」

初春「はい!近くに美味しいスイーツの店があるんです!」

佐天「そのついでに寄ってみたんですよ」

美琴「へぇ・・・楽しそうね」

佐天「今度一緒に行きましょう!」

美琴「うん!」

垣根「・・・っと、一応お前らにもビラ配っとくな」

初春「ノルマがあるんですか?」

垣根「そうなんだよ・・・ったく、だるすぎてムカつく」

佐天「じゃあ、頑張ってくださいね!」

ニコニコと笑いながら、二人は去っていく



36 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:07:19.46 BdA04hgp0 40/807

上条「・・・さて、どんどん知り合いに会いますね」

心理「えぇ」

美琴「となると次は誰かな?」

垣根「そうだな、俺が思うに・・・」


一方「あンまりはしゃぐンじゃねェぞ」

打ち止め「こんなに楽しい買い物は久しぶりだぜ!ってミサカはミサカははしゃいでみたり!」

番外「あーあ、片手折れてなきゃもっと買うのになぁ」

一方「・・・自重ってのを覚えろよ」


垣根「・・・やっぱりあいつらは避けられないか」


一方(・・・なンだ、向こうから視線を感じるンだけどよ)

チラッ、と一方通行が上条達のいる方向を見る

一方(!?あ、あいつら何してやがるンだよ・・・)

一方(・・・手にビラを持ってるってことはアルバイトか)

一方(・・・オリジナルの野郎はなンか嬉しそうだな)

一方(あァ?垣根の野郎、手招きしてやがる)

一方(・・・仕方ねェ・・・)



37 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:19:02.27 BdA04hgp0 41/807

一方「おい」

打ち止め「なに?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」

番外「もしかして疲れちゃった?あーあ、これだから白モヤシは・・・」ケラケラ

一方「・・・あァそォかよ、せっかくいいもン見つけたのにな」

番外「!な、なになに!?」

一方「いや、どォせお前らがそこまで興味あるもンじゃねェしなァ・・・」

番外「き、気になるじゃん!!」

打ち止め「ねぇ、ミサカにだけ教えて!ってミサカはミサカは・・・」

番外「そういうのは無しだからね!!」

一方「・・・あれだよ」

あきれたように一方通行が上条達を指差す

番外「!?ゲコ太!?」

打ち止め「しかもお姉様だよ!ってミサカはミサカは指摘してみたり!!」

番外「マジじゃんか!!行こう行こう!!」

一方「ちっ・・・」

舌打ちをしながらも、一方通行は二人のあとについていく


上条「あ、来たな」

垣根「しっかし打ち止めは久々に見るな・・・」



38 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:55:33.77 BdA04hgp0 42/807

打ち止め「お姉様ー!!ってミサカはミサカはお姉様の胸に飛び込んでみたり!!」ポムッ

美琴「打ち止め、久しぶりね!」

美琴の胸元に飛び込む打ち止めを見て、番外個体がケラケラと笑う

打ち止め「な、なに?ってミサカはミサカは番外個体の不敵な笑みに恐れを抱いてみる・・・」

番外「ふん、上位個体ったらここぞとばかりに甘えちゃってさ」

肩をすくめ、呆れたように番外個体がもう一度笑う

一方「・・・お前らはバイトでそンな格好してンのか」

美琴「あ、アンタもいたんだ」

一方「いたら悪かったか?」

美琴「うっわ・・・それが義理の姉に対する態度?」

一方「うるせェな、愛想がないのは昔からだ」

上条「・・・なぁ、番外個体」

番外「ん?なに?」

上条「お前って、たしか妹達の中では一番年下になるんだよな?」

番外「そりゃ、最後に作られた個体だからね」

心理「じゃあ、打ち止めよりも年下?」

番外「うん」

上条「・・・お前、本当は美琴に甘えたいんじゃないのか?」

番外「は、はぁ!?」



39 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 20:59:08.68 BdA04hgp0 43/807

上条「ほら・・・さっきも打ち止めのこと、ちょっと羨ましそうに・・・」

番外「そ、そんなことないって!!」

垣根「なんだよ、お前甘えたい盛りか」

番外「違うんだってば!!」

美琴「甘えたいなら甘えていいのに・・・」

番外「き、聞いてよ人の話・・・」

一方「・・・オリジナル」

美琴「はぁ・・・なに?」

一方「番外個体も抱きしめてやってくれ」

番外「!?い、いいよそういうの!!」

一方「素直になれよ」

番外「べ、別にお姉様の抱擁なんか・・・」

垣根「そういえば、お前って妹達の負の感情を拾いやすいんだよな」

上条「そっか・・・打ち止めに、全部のミサカが嫉妬してたら・・・」

心理「ねぇ、本当はすっごく抱きしめて欲しいんじゃないの?」

番外「う・・・」

ウズウズ、と番外個体の中から何かがこみ上げる


番外「・・・べ、別にお姉様に抱きしめて欲しいんじゃなくて、ゲコ子に抱きしめて欲しいだけだから!!」

そんな言い訳をしてから、強く美琴に抱きつく



40 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 21:04:20.16 BdA04hgp0 44/807

美琴「よしよし」ナデナデ

番外「うっ・・・」カァッ

上条「あ、番外個体赤くなってるぞ!!」

一方「・・・お前なァ・・・」

番外「ち、違うんだってば!!あれだよ、この着ぐるみ暑いね!!」

心理「支離滅裂になってるわよ」

打ち止め(・・・番外個体もまだまだ子供だね、ってミサカはミサカは苦笑してみたり)

垣根「・・・よかったじゃねぇか、番外個体」

番外「ゲコ子に抱きつけたから嬉しいだけだし!!」

ふん、と番外個体がそっぽを向く

しかし、横顔は真っ赤になっていた

一方「・・・俺達はそろそろ行くからな」

上条「そうだ、ビラ受け取ってくれよ」

一方「・・・」

無言のまま、一方通行がビラを受け取る

彼には理解できないが、二人のミサカはこのカエルのキャラクターの虜なのだ

一方「・・・じゃあな、頑張れよ」

上条「あぁ」



41 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 21:38:18.38 BdA04hgp0 45/807


美琴「・・・番外個体も、なんだかんだ甘えたい年頃よね・・・」

心理「そうよ、あなたももうちょっと構ってあげなさい」

上条「でもさ、打ち止めと違って見た目が大人だからな・・・」

垣根「見た目じゃねぇだろ、人間は中身だって」

上条「あぁ、そうだな」

垣根「はーい、ゲコ太の新グッズが発売だよー」

心理「・・・それにしても、なんだか人通りが少なくなってきたわね」

美琴「まだお昼の2時半なのにね・・・」

上条「・・・多分、みんな昼飯に行ってるんだろ」

垣根「俺さ、あんまりショッピングモールの中のレストランって好きじゃないんだよな」

心理「あら、どうして?」

垣根「なんか通行人から見られてそうだろ?」

上条「そうか?」

垣根「・・・こう、プライベートを確保したいじゃんか」

美琴「わからなくはないけど・・・」

心理「意外と細かい性格ね」

垣根「いや、これだけは譲れねぇ」



42 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 21:48:35.14 BdA04hgp0 46/807

上条「・・・はぁ、子供達も少ないな」

垣根「・・・親子連れはいないけど、その代わり先生とかと来てる子もいるみたいだな」

心理「・・・学園都市にいると、親との生活なんて忘れちゃうわよね」

美琴「・・・そうね」

四人がしんみりとした表情になる

上条と美琴は親と離れて暮らしているだけだ

一方の垣根と心理定規は、そもそも親に捨てられている

仮にいたとしても、暗部に堕ちた人間を今更育ててくれるわけもない

垣根「・・・可愛そうでもあるよな」

美琴「・・・でもさ、子供はすごい力には憧れるものよね」

上条「うーん・・・やっぱり垣根とか美琴もそうだったのか?」

垣根「・・・俺は、どっちかっていったら優しいヒーローに最初は憧れてたな」

心理「あら、そうだったの?」

垣根「途中で狂った方向にも進んだが・・・今は悪くないところに戻ってきてるよ」

美琴「私はどうだろう・・・子供の頃は、あんまり難しく考えなかったから」

上条「へぇ・・・」

美琴「・・・ただ、やっぱりこの力があってこその私って気もするもん」

上条「・・・そっか」



43 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 21:51:58.13 BdA04hgp0 47/807

垣根「・・・大変だよな、親と離れて暮らすなんてさ」

美琴「・・・みんな、頑張ってるわよね」

心理「あら・・・あなたもそうじゃない」

美琴「そ、そうかな?」

心理「あんな素敵な両親を持ってて羨ましいわ」

垣根「美鈴さんも旅掛さんも、たしかにいい親だよな」

美琴「・・・たまに鬱陶しいけどね」

上条「でもさ、親なんてそんなもんだろ」

垣根「・・・あーあ、いいなぁ・・・」

ぽつり、と垣根が呟く

幼い頃の記憶なんてない、気がついたら学園都市にいたのだ

そして、知らない間に能力開発を受けて、知らない間に「未元物質」なんていうとんでもない力を手に入れていた

垣根「・・・子供が出来たらさ、俺は精一杯愛情込めて育てたいんだ」

心理「私も、こんな辛い思いはさせたくないもの」

上条「子供、かぁ・・・」

美琴「・・・こ、子供・・・」カァッ

心理「どうしてそこで赤くなったのよ」

美琴「な、なんでもない!!」



44 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 21:55:38.20 BdA04hgp0 48/807

垣根「・・・っと、今はバイト中だったな・・・」

美琴「そうそう、こんなしんみりしてる場合じゃないわよ」

心理「ふあぁ・・・ちょっと眠くなってきたわね」

垣根「そう言うな・・・」

上条「・・・あぁ、でもヒマだな」

美琴「・・・すいませーん、ゲコ太の・・・」

美琴が適当に通行人に声を掛ける


土御門「だからにゃー・・・ってあれ?カミやんじゃねーか」

上条「げっ」

青ピ「あれ?垣根に心理定規ちゃんに御坂さんやないの・・・どないしたん?そんな格好して」

上条(一番会いたくないヤツらだよ・・・)

垣根「バイトだよバイト」

土御門「バイトって・・・それ、子供向けのキャラクターだよな?」

心理「あら、私が母性をむき出しにして子供達にこのビラを配る姿ってダメかしら?」

青ピ「ううん!!すっごくえぇで!!」

心理「でしょ?だからよ」

土御門「いや、説明になってねぇし・・・カミやん、似合ってないぜぃ」

上条「心配するな・・・自覚はある」

垣根「おい」



45 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 22:06:55.96 BdA04hgp0 49/807

土御門「しかし・・・御坂と心理定規は本当に可愛いな」

美琴「そうですか?」

青ピ「カエルの女の子ってのもええなぁ!!」

心理「なんか複雑な心境になる台詞ね」

上条「・・・美琴が可愛いのは当たり前だろ」

土御門「うっわ、カミやんそんな臭い台詞を」

上条「なんだよ!!いいじゃねぇかよ!!」

垣根「・・・そうだ、青ピ」

青ピ「ん、なに?」

垣根「お前、麦野って知ってるよな」

青ピ「知ってるで、美人の麦野さんやろ?」

上条「そ、その覚え方は・・・」

垣根「・・・言っておくけど、あいつは半端ないほどの重い女だ・・・」

青ピ「なになに?もしかして未亡人!?はたまた人妻!?あっはぁ、萌えるわぁ!!」

垣根(こいつダメだ)

美琴「・・・その、麦野さんのこと、よろしくお願いします」

青ピ「?な、なんでそんな話になっとるん?」

美琴「え、まだ付き合ってないんですか?」

青ピ「っていうか、そういう関係ちゃうよ」

美琴「えっ」

青ピ「えっ」



46 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/02 22:10:06.34 BdA04hgp0 50/807

土御門「・・・いやぁ、カミやんのカエル姿なんて中々お目にかかれないぜぃ」

青ピ「吹寄と姫やんにも見せてあげたいわぁ」

上条「ご心配なく・・・もうあいつらには会ったよ」

土御門「なんだ、あいつらも来てたのかにゃー」

垣根「麦野もな」

青ピ「ふーん・・・なんでやろ?」

心理「・・・ところで、あなた達はなんでここに?」

土御門「買い物だぜぃ」

心理「男二人で?」

青ピ「・・・えぇやん、ボク達彼女いないし」

垣根「うっわー!!寂しい、めちゃくちゃ寂しい涙拭いてあげましょうかって言いたくなるくらい寂しい!!」

青ピ「ほっといてや!!リア充なんて消えればえぇんや!!」

上条「・・・はぁ、なんかこの会話が懐かしいよ・・・」

土御門「・・・っと、俺達がいつまでもだべってたら邪魔だな」

青ピ「ほんじゃまた・・・垣根、ちゃんと学校来ぃや」

垣根「あぁ、考えとくよ」

青ピ「カミやんもまたなー」

上条「あぁ」




53 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 10:33:35.30 H8X4vjPr0 51/807

垣根「あぁ・・・ヒマだ」

ゲコ太の中で、垣根が呟く

カエルになる理由がまだ納得出来ないが、やるからにはやるしかない

心理「・・・私はあと100枚ってところね」

垣根「俺もそんくらいかな」

美琴「私は70枚くらい」

垣根「お前はやっぱり情報に詳しいな・・・」

美琴「な、なんで呆れたような表情なのよ?」

垣根「・・・俺が中学生の頃はこんなガキっぽいのに嵌まらなかったから」

美琴「ガキっぽいってなによ!?」

垣根「・・・まぁ、御坂が好きなら否定しないけどさ」

美琴「そ、そう?」

垣根「・・・で?上条はあとどんくらいだ?」

上条「・・・多分200枚くらい」

心理「ねぇ上条君、あなた真面目に配ってた?」

上条「目の前で見てましたよね!?」




54 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 10:34:03.58 H8X4vjPr0 52/807

垣根「・・・おかしいだろ、同じ時間だけやってたんだぜ?」

美琴「当麻はなんていうか堅すぎるのよ・・・」

上条「う・・・」

垣根「おいそこの坊主、ゲコ太の新しいグッズ発売されるぞー」

「すげー!ゲコ太の兄ちゃんだ!」

垣根「おうよ、記念撮影でもするか?」

「うん!」

垣根は相変わらず、子供達との記念撮影を繰り返している

美琴「垣根みたいなファンサービスも必要よ?」

上条「子供達は垣根じゃなくてゲコ太のファンじゃないか・・・」

心理「細かいことはどうでもいいのよ、子供達の笑顔のために頑張らなきゃ」

美琴「・・・そ、そうよね!」

上条「・・・バイト限定のストラップが欲しかった御坂の台詞とは思えないな」

美琴「なんで苗字で呼ぶのよ!?」

上条「いえいえ、やっぱり御坂さんはすごいですね、子供達のために頑張ってたんですね」

美琴「な、なんかムカつく・・・」

心理「やめなさいよ・・・ったく、子供達に聞かれたら呆れられるわよ?」

上条「・・・分かってるけどさ・・・」

垣根「普通のバイトしたって考えればいいじゃねぇか、一応金は貰えるんだしよ」




55 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 10:34:43.54 H8X4vjPr0 53/807

子供と記念撮影を終えた垣根が戻ってくる

上条「って言ってもな・・・一日だけじゃ大して稼げないじゃんか」

美琴「お金のためじゃないわよ!ゲコ太ストラップと子供達のため!」

心理「子供達を先にしなさいよ・・・」

美琴「じょ、冗談よ」

上条「・・・あ、あれってエツァリとショチトルだよな?」

垣根「ん?ホントだ」

上条「おーい!エツァリ!ショチトル!」


エツァリ「?おや、上条さん達ですね」

ショチトル「なんだあの格好・・・やっぱり気が狂ったか?」

エツァリ「狂ってはいませんし、やっぱりって・・・」

ショチトル「・・・というか、上条達がいると分かった途端に敬語になるんだな」

エツァリ「癖ですよ」

ショチトル「ふん・・・まぁ話しに行くか」


上条「おっす・・・ちょっと久しぶりかな?」

エツァリ「そうですね・・・皆さんはビラ配りですか」




56 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 10:35:21.22 H8X4vjPr0 54/807

心理「正解よ」

ショチトル「ふん・・・そんな恥ずかしい格好を公衆の面前で晒すなんてとんだ変態だな」

心理「言い方を卑猥にしないで」

垣根「お前らはデートか?」

エツァリ「そのようなものですよ」

美琴「ふーん・・・いいなぁ」

ショチトル「そうだ・・・美琴、カエルっぽく鳴いてみてくれよ」

美琴「?なんで?」

ショチトル「いいから」

美琴「ゲコゲコ」

エツァリショチトル(可愛い・・・)

美琴「な、なんでうっとりした表情で見てくるのよ?」

エツァリ「あ、いえ・・・」

ショチトル「中々似合ってるな、美琴は」

美琴「ありがと!」

上条「・・・それはつまり、俺達は似合ってないってことか?」

エツァリ「上条さんは・・・なんというか、若干違和感がありますね」

ショチトル「垣根もだな・・・まぁ中身がイケメンだから問題ないが」




57 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 10:36:05.46 H8X4vjPr0 55/807

エツァリ「心理定規さんは似合ってますよ」

心理「そう・・・あんまりこういうのが似合っても嬉しくはないんだけど」

ショチトル「いいじゃないか、カエルも似合う心理定規」

心理「・・・そこはかとなく馬鹿にされてる気がするんだけど」

ショチトル「そんなことはないさ」

心理「まぁ・・・褒め言葉ってことにしておくわ」

ショチトル「・・・じゃあ、私達はこれで」

垣根「あぁ、デート楽しめよ」

エツァリ「はい、もちろん」

上条「じゃあな」

美琴「はい、一応配っておくわね」

上条「!俺も一枚やるよ!」

ショチトル「・・・ありがたく受け取っておくよ」

子供っぽいデザインのキャラクターには苦笑してしまうが、やはり友達の趣味は馬鹿に出来ない

そう思いながら、エツァリとショチトルは去っていった



58 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 10:52:21.27 H8X4vjPr0 56/807


垣根「・・・よーし!!あともうちょい!!」

美琴「・・・私、あと5枚だけ!!」

心理「多分美琴が一番乗りね」

上条「・・・不幸だ」

垣根「あはは!!お前だけまだどーっさり残ってやんのー!!」

心理「宿題と同じね」

美琴「タイムリミット・・・あと1時間ないわよ?」

垣根「俺達は余裕だな」

上条「あぁもう!!こうなったら上条さんが本気を出しちゃいますよ!!」

心理「今まではなんだったのよ」


上条「そこのお嬢ちゃん!!ビラを・・・」

「あー!!こっちのお兄ちゃんイケメンだー!」

垣根「おう、お嬢ちゃん、写真でも撮るかい?」

「うん!!」

上条「」

美琴「と、当麻ー!!!」




59 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 11:18:37.29 H8X4vjPr0 57/807


垣根「・・・俺は配り終わった」

心理「私も」

美琴「・・・あとは当麻だけね」

上条「不幸だ・・・なんで勇気を持って声を掛けたら垣根に奪われたんだよ!?」

垣根「やっぱり世の中顔だぜ」キリッ

上条「・・・あと10分・・・」

上条の手の中にどっさりと残るビラ

おそらく、まだ40枚はあるだろう

垣根「・・・よし、一人10枚で配ってみるか」

上条「い、いいのかよ?」

心理「いいじゃない、ルール違反になんかならないんだし」

美琴「そうね・・・協力するわよ」

上条「あ・・・ありがとう!!」

上条が三人にビラを渡す

垣根「おーし!!そこのお嬢ちゃん!!」

心理「ねぇ、坊や」

美琴「ほらほら!!新しいゲコ太のグッズが発売されるわよ!!」

上条「みんなー!!ゲコ太と写真、撮りたくないかー!?」




60 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 11:46:35.48 H8X4vjPr0 58/807


上条「く・・・配り終わった!!」

垣根「はー、結構四人でやればすぐだったな」

心理「時間も午後の5時だし・・・ちょうどいいんじゃない?」

美琴「こ、これでゲコ太のストラップが・・・!!」キラキラ

垣根「それが目的だよなやっぱ」

上条「俺は少しでも生活費の足しが欲しいよ・・・」

心理「じゃあ、管理人さんのところに行きましょう」

上条「あれ、そういう風に手渡しでもらうのか?」

美琴「うん、ここのショッピングモールで募集してたアルバイトだから」

垣根「そりゃ、常盤台の超電磁砲なら宣伝効果は抜群だもんな」

心理「あの御坂美琴も大好きなゲコ太、ってね」

上条「ふーん・・・さて、じゃあ行きましょうか!!」

垣根「おうよ!!」

美琴(ゲコ太・・・待っててね!!)


四人が、ショッピングモールの管理人室へと向かう



61 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 11:55:49.20 H8X4vjPr0 59/807


エイワス「あぁ、君たちが例のアルバイトか」

上条(な、なんだこの人?)

心理(・・・輝いてるわね)

垣根「そうそう、金を貰いに来たんだけど・・・アンタが管理人?」

エイワス「いや、私は代理だよ・・・ここの管理人は今少し手が放せないらしくてね」

美琴「そうですか・・・」

エイワス「・・・君は垣根帝督だな」

垣根「そうそう、知ってるとはさすがだな」

エイワス「なに・・・よく知っているよ」

エイワス(・・・しかし、アレイスターの直々の頼みというからなにかと思えば・・・こんな雑用を押し付けて)

垣根「ほら、金をくれよ」

美琴「ちょ、ちょっと・・・礼儀って物があるでしょ」

垣根「こいつは代理なんだろ?いいじゃねぇか」

エイワス「この封筒の中だ・・・あと、たしか何かの粗品もあると聞いたが」

エイワスがストラップを差し出してくる

4種類のゲコ太ストラップだ

美琴「あ、ありがとうございます!!」



62 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 12:06:53.95 H8X4vjPr0 60/807

エイワス「・・・どうやらビラというものも配り終えたようだな」

垣根「あぁ、だからボーナスもな」

エイワス「既にこの封筒の中にボーナス込みの給料が入っている、安心したまえ」

心理「あら、そうなの?」

エイワス「恐らく、元々期待されていたのだろうな」

上条(あっぶねぇ・・・俺はギリギリだったんだよな)

美琴「あぁ・・・か、可愛い・・・」ウルウル

エイワス「・・・私にはよく分からないが、人間というのはこういうものに興味があるらしいな」

垣根「俺達は違うぜ、金が欲しかったんでもない」

エイワス「そうなのか」

心理「・・・でも、楽しかったわね」

垣根「あぁ、面白かったって管理人に言っといてくれよな」

エイワス「承知した」

上条「それじゃ、俺達はこれで」

エイワス「あぁ、それではな」



63 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 12:22:02.70 H8X4vjPr0 61/807


美琴「はぁ・・・サリーと着物とチャイナ服とコマンドースーツのゲコ太!!」

4種類のストラップを見つめながら、美琴は笑う

上条「・・・チャイナ服は一番疑問だな」

心理「ゲコ太って男よね?」

美琴「こ、細かいことはいいじゃない!!」

垣根「・・・お、6000円入ってるな」

上条「!!6000円!?」

上条が嬉々として封筒を開ける

5000円札が一枚と、1000円札が1枚入っている

上条「はぁ・・・!!すっげぇ!!すげぇよ美琴!!」

美琴「うん、すごいわね!!」

二人はそれぞれ、全く別の理由で喜んでいる

垣根「・・・はぁ、それにしてもゲコ太の格好なんてもう二度としないだろうな」

心理「そうだ、記念写真撮りましょうよ」

上条「おっと、そうだったそうだった」

上条が携帯電話を取り出す

着ぐるみの手では掴みにくいが、なんとかそれを開いてカメラモードにする

上条「じゃあ、いくぞ!!」



64 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 12:26:05.01 H8X4vjPr0 62/807

垣根「はいはい、集まった集まった!!」

心理「垣根、少しそっちに寄ってよ」

美琴「当麻、もうちょっとこっち!!」

上条「あ、あぁ!!」

四人が顔を近づけ、携帯の画面にどうにか入ろうとする

垣根「あぁもう!!着ぐるみうざってぇ!!」

上条「そりゃそうだけど、そもそもこのために写真撮るんだから我慢しろ!!」

心理「あ、そろそろよ」

タイマーが音を鳴らす

美琴「はい、チーズ!!」

満面の笑顔を浮べた四人は、そのあとすぐにむさくるしい着ぐるみを脱いだ



上条「・・・はぁ」

垣根「ははは!!やーっぱお前は目閉じてるのな!!」

心理「ふふ・・・いいじゃない、上条君らしくて」

美琴「と、当麻・・・6000円稼げたんだから!!」

上条「あぁそうだな・・・」

上条の携帯のカメラフォルダには、少し残念な写真が残ることになった


上条「・・・不幸だ」




65 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 13:53:25.79 H8X4vjPr0 63/807


テクパトル「ふあぁ・・・」

テクパトルの朝は早い

仕事なんてそんなものだ、と思いながらベッドから体を起こす

隣で寝ている19090号を見て少し和んだ後、彼は一階へと向かう

寝ぼけた頭を覚ますために、冷水で顔を洗うようにしている

なんでも、暖かいお湯よりもそっちのほうが肌にも優しいらしい

別に美容には興味ないが、なんとなく健康にいいと聞くとやってしまうのがテクパトルだ

そしてその後で歯を磨く

朝飯を食べた後にもう一度磨くのだが、これも目を覚ますためのルーティンらしい

それらを終えた頃には、もう人前に出ても恥ずかしくないほどのシャキっとした雰囲気になっている

そして、朝飯

現在彼は減量期らしく、ある程度朝食のメニューを固定にしている

炭水化物や脂肪分を減らし、代わりにたんぱく質を多く摂っている

ツナ缶やササミなんかをよく食べているが、あれじゃあ味気のないエサだ


ミサカはそう思う



20000号のテクパトル観察日記編



66 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 13:57:22.79 H8X4vjPr0 64/807

テクパトル「・・・」

不機嫌、というわけではないけどなんだか少し楽しそうではない

そりゃあんな味気ないもの食べてるからだ

でも決して嫌がってはいない

体のため、なんて言ってるけどミサカとしては今くらいのテっくんが一番いいと思う

彼はなんでそこまでして鍛えてるのか

まぁミサカもちょっとダイエットとかは興味あるけれども

ちなみに、そういう食生活をしていると性欲はあまり湧かないらしい

19090号に少し同情するが、それもまた仕方ないことだろう

テクパトル「・・・なぁ、さっきからなにジロジロ見てるんだ」

20000「別に、人の生活を観察するのって楽しいぜ」

テクパトル「・・・悪趣味だな」

悪趣味、なんて言われるけどミサカはそうは思わない

人の生活を観察すれば、人間らしい生活というものが学べる

ミサカ達は若干そういうのが分からないから、時々こういうことも必要としている

学習装置じゃそれは学べなかったから

テクパトル「・・・お前も食うか」

20000「うんにゃ、いい」



67 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/03 14:07:56.66 H8X4vjPr0 65/807

テクパトル「そうか」

適当に言ってからまた食事を始めるテっくん

・・・でも、本当に味気無さそう

別にかわいそうとは思わないけど、少し不思議になる

20000「そこまでしてやる意味ってあるの?」

テクパトル「さぁな、世間的にはないかもしれないが俺にはあるよ」

かっけぇ

20000「・・・今日は仕事だっけ?」

テクパトル「あぁ、でも午前だけだよ」

20000「へぇ・・・そっか」

テクパトル「なんだよニヤニヤして」

20000「ううん、いつも大変そうだからさ」

テクパトル「好きなことが仕事なんだ・・・それは幸せだろ」

20000「そうだね」

こういう真面目なところは素直に尊敬できる

でも、意外とこれで変態だったりもするから人は見た目に寄らない

テクパトル「・・・ご馳走様」

20000「・・・味気ねー食事だね」

テクパトル「まぁな・・・」ハァ



74 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 20:36:37.10 zXnYAyX30 66/807


テクパトル「はぁ・・・」

ため息をつきながら、仕事に向かう服装に着替える

最近は暑くなってきたから、テっくんも半袖のTシャツを着てる

今までの経験から考えると、そろそろタンクトップになるはずだ

そんな彼も、さすがに仕事の時はある程度まともな服装を・・・

なんてことはあるはずがない、大体ジムで働いてるんだから普段のタンクトップとかで問題ないのだから

ただ、なんとなく仕事用のTシャツとか決めているらしい

20000「・・・大変だね」

テクパトル「みんなのためさ・・・それに俺のためでもあるからな」

さりげなくカッコイイことを言うのがテっくんだ

20000「・・・昼飯は何がいい?」

テクパトル「自分で作るよ・・・みんなはなんか美味いもんでも食べてな」

20000「うっはぁ・・・なんか減量期の力石を思い出すね」

テクパトル「目の前に林檎があったら俺もかじりつくさ・・・」

大きなため息をついてから、テっくんが立ち上がる

20000「んじゃ、いってらっしゃい」

テクパトル「あぁ、みんなをちゃんと起こしといてくれよ」




75 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 20:37:12.03 zXnYAyX30 67/807

20000「ひどいもんだよね、我が家の主人が出勤だって言うのにさ」

テクパトル「・・・お前はいつもそっちの立場だろ、みんなは普段はしっかり見送りしてくれるぞ」

20000「あれ?」

知らなかった

みんなミサカの見てないところで得点を稼ごうとしてたなんて!

テクパトル「・・・でもまぁ、今日は見送ってくれるからありがたいよ」

20000「寂しかったらミサカのこと・・・思い出してね・・・?」

テクパトル「いや、19090号がいい」

20000「ノリが悪いぜテっくんよ」

テクパトル「仕事の前から無駄に頭を使いたくないんだよ、じゃあな」

手を振ってからテっくんは玄関に向かう

ホントなら玄関まで見送ったほうがいいんだろうけど、ミサカはあんまりそういうことをしたくない

それは何か、最後まで見られたままになってしまうからだ

仕事の前のほんの一瞬くらいは、一人で気合いを入れさせてやりたい

20000「・・・さて」

17600号に特殊メイクを頼みたかったけどまだ寝てるみたい

テっくんの職場に潜入するのは難しいかもね

かといってミサカ達の生活なんてどうでもいいからなぁ




76 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 20:37:46.46 zXnYAyX30 68/807



時刻は午後の1時半

ガチャガチャ、と玄関の鍵が開かれる

それを聞いた途端、みんなは玄関に向かう

19090「テっくんが帰ってきました!」

10033「お疲れ様、と言うべきですよね?」

御坂妹「いえ、ここはお風呂にする?ご飯にする?それともわ・た・し?がいいはずです」

17600「疲れて帰ってきたテっくんにはそんなボケを捌く気力は残ってないはずだがな」

10039「ということは・・・」

13577「それを本気で捉えられてしまうんですか?」

14510「となると、それを言ってしまったらミサカ達を選ばれることに・・・」

すごい妄想力だ、と世間一般は思うだろう

たしかにそれは正論でもある

この一連の会話でどうしてそういう結果が出たのか

ただし、年頃の女の子なんてそんなものだ

自転車のサドル、という単語だけでもうムラムラしちゃうものだ

14510「・・・な、なるほど・・・」

10033「ミサカ達を選ばれてしまったら・・・」

御坂妹「・・・食べられてしまいますね、性的に」

13577「ふ、ふえぇ・・・」

10039「だ、誰がそんな破廉恥なことをしますか!」




77 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 20:38:21.19 zXnYAyX30 69/807

ガチャリ、と突然玄関のドアが開かれる

そういえばテっくんが帰ってきたんだった

みんなそれを忘れていたらしい、いきなり現実を突き付けられて焦っている

テクパトル「ただいま・・・」

ミサカ一同「お、お帰りなさい!お風呂にする?ご飯にする?それともわ・た・し!?」

しまった、なんてみんな思ってる

MNWが大荒れだぜちくしょう

17600号だけは最初の「お帰りなさい」で終わらせていた

さすがスネークだぜ

テクパトル「ご飯で」

さすがテっくんだぜ

まさか疲れて帰ってきた瞬間のあのボケを的確に捌くなんて

御坂妹「ふぇっ!?そ、そうに決まってますよね!」

10033「だ、誰も変な期待なんてしてませんよ!?」

10039「ミサカ達にはまだ早すぎますからね!」

14510「い、いやいや!そもそもミサカは一方通行という心に決めた相手が・・・」

19090「つ、ついノリで恥ずかしいことを言ってしまいました・・・」

テクパトル「お前は後でな・・・」

ミサカ一同「」



78 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 20:39:02.66 zXnYAyX30 70/807

ポン、とテっくんが19090号の頭を撫でる

ボン、と19090号の頭から湯気が出る

御坂妹「あぁ!これが幸せ真っ盛りな人間の図、ですよ!」

14510「かーっ!なんだか見せつけられてます!」

テクパトル「いいから飯にさせてもらうぞ」

ミサカ達のくだらない話を無視して、テっくんはリビングに向かう


テクパトル「・・・何がいいか」

それは食べたいものがたくさんあるか、食べたいものが決まらない時かのどちらかの台詞なはずだ

しかし、今のテっくんの言葉の中には「何が筋肉にとって一番いいか」という意味がある

つまり、彼の食生活は筋肉が優先なのだ

ミサカからしたら全く分からない世界だけど、アメリカなんかじゃわりと鍛えるのはポピュラーらしい

テクパトル「・・・って言ってもツナもささ身も飽きるしなぁ・・・」

19090「では玉子などは・・・」

テクパトル「・・・卵白だけで美味いものが作れたらいいんだけどさ」

19090「う・・・た、たまには減量中だなんて忘れてパーっと・・・」

テクパトル「それは俺もしたいんだけどさ・・・やっぱりついついセーブしちゃうんだよ」




79 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 20:39:40.52 zXnYAyX30 71/807

14510「中々困った趣味ですね」

13577「世間からは白い目で見られますよ」

テクパトル「周りからの評価なんて気にしてないって・・・努力ってのは実るにしろ実らないにしろ、明日には答えが出るんだよ」

10033「うわー、なんてカッコイイ台詞なんだー」

テクパトル「棒読みの賛辞をありがとう・・・」

テっくんが取り出したのはベイクドポテトだ

20000「あれ、それってタンパク質じゃなくね?」

テクパトル「さすがにタンパク質だけじゃ死ぬからな・・・」

あまり楽しそうな表情じゃないけど、これも趣味の一貫なんだろう

お金や時間を犠牲にする趣味が多い世の中で、食事の楽しみを犠牲にする趣味は珍しい

17600「・・・まぁ、サプリメントの栄養だけでも理論上は生きていけるからな」

テクパトル「あくまで理論上だろ・・・それに、俺はそこまでその理論に従いたくはないな」

いや、今まさに従ってるじゃないかと言いたくなるけども

テクパトル「・・・そうだな、まぁたまには楽しい食事も悪くはないか・・・」

19090「!で、ではミサカが作りますよ!」

10033「一人だけ抜け駆けするつもりですか!」

御坂妹「ですが19090号はすでにテっくんと付き合っていますから、抜け駆けというのとは少し違いますよ」

20000「まぁ、19090号が作るのが一番いいよ」




80 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 20:40:07.67 zXnYAyX30 72/807

テクパトル「・・・な、なんか今日の20000号はおとなしいな」

20000「別にいいじゃんか」

テクパトル「・・・まぁ」

頭をポリポリと掻いてから、テっくんがソファーに座る

テクパトル「・・・19090号、頼んでいいか?」

19090「はい!」

19090号はテっくんのご飯を作るためにキッチンに行った

手伝うのは野暮だと判断したのだろう、他のミサカ達も手を出そうとはしない

そのかわり、テっくんの近くに全員が集まって何かしら話し掛ける

14510「か、肩を揉んだりしなくてもいいですか!?」

13577「飲みたいものとかないですか!?」

御坂妹「えっと・・・と、とりあえず何かミサカ達にできることはありませんか!?」

テクパトル「あぁいや・・・特に今はないかな」

17600「・・・みんな、テっくんに何かしてあげたい気持ちは分かるがもう少し落ち着け」

ミサカ一同「は、はい」

さすがスネークだぜ



81 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 21:19:39.63 zXnYAyX30 73/807

テっくんは本当に真面目だと思う

彼ほどのいい意味でも悪い意味でも「頑固」な人間は、おそらくそうはいないだろう

テクパトル「・・・あれ、そういえばアレイスターは?」

13577「アレイちゃんは今お出かけ中ですよ」

テクパトル「・・・出かけてる?あいつが?」

17600「統括理事会の仕事なんだとさ」

テクパトル「あぁ、そういえばあいつは理事長か・・・」

テっくんが感心したように頷く

10039「なんだか尊敬の眼差しになっていますね」

テクパトル「そりゃ、人の上にいるなんて難しいことだからな」

14510「なんだか、人の上にいたことがある、というふうに聞こえますが」

テクパトル「・・・まぁな」

テっくんはミステリアスだ

こいつほどミステリアスな男は中々いない

19090「テっくん、ご飯が出来ましたよー!」

テクパトル「おう、ありがと」

こういうやり取りを見てると、テっくんは一途でもあるんだと感心する

ちょっと羨ましいけど



82 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 21:29:58.74 zXnYAyX30 74/807

テクパトル「・・・はぁ、そういえばこんなに美味しそうな料理は久々だ・・・」

19090「たまにはこういうのも食べないとダメですよ?」

テクパトル「分かってるけど、なんとなくなぁ・・・」

19090「・・・テっくんが作って欲しいと言ったら、ミサカはいつでも作りますよ?」

テクパトル「あぁ、ありがとな」

10033「はぁ・・・なんだか二人を見ていると新婚夫婦を想像してしまいますよ」

テクパトル「ん、そうか?」

19090「ふ、夫婦・・・」カァッ

御坂妹「はぁ、それで赤くなる辺りあなたはまだまだ初心ですよ・・・」

20000「まぁとっくにセッ○スしてるんだけどね」

ミサカ一同「」

テクパトル「20000号、ちょっとそこに正座しろ」

20000「だって事実でしょ」

テクパトル「事実か事実じゃないかは問題じゃねぇんだよ!!」

20000「なー17600号、テっくんがミサカの尻を狙ってるんだけど」

17600「狙ってねぇさ」

20000「ワーオ、クールに返されたぜ」



83 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 21:39:50.04 zXnYAyX30 75/807


テクパトル「・・・ご馳走様、美味しかったよ」

19090「それはよかったです」

テクパトル「さーて・・・じゃあ少ししたら、ちょっと出かけるからさ」

19090「?どこにですか?」

テクパトル「まぁ・・・ちょっと野暮用だよ」

19090「!?ど、どこですか!?」

13577「ほらテっくん、あなたの奥様は旦那様の動向が気になるようですよ」

御坂妹「しっかり伝えないとストーキングされてしまいますよ」

19090「そ、そんなことはないですよ!?」

20000「・・・彼女に言えないこととなると可能性は3つ」

10033「一つは彼女にサプライズプレゼントを買う場合」

14510「一つは彼女の親と連絡を取って、ひそかに結婚を企てている場合」

17600「そして最後は・・・浮気」

19090「!?」

テクパトル「残念だがそんな面白い展開はないぞ・・・ジムに行くんだよ」

ミサカ一同「・・・?」

17600「だが今日は午前の勤務だろ?」

テクパトル「今度は客として行くんだよ・・・一方通行も誘ってな」

20000「へぇ・・・」



84 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/04 21:58:42.20 zXnYAyX30 76/807

テっくんは本当に努力家だと思う

まぁその労力を筋肉に使うのはミサカには理解できないけど

テクパトル「じゃあまた出かけるけど・・・2時間したら帰ってくるはずだ」

19090「怪我には気をつけてくださいね・・・?」

テクパトル「あぁ、じゃあな」

手を振ってからテっくんは家から出て行く

本日二回目だけど、こういうことはたまにある

10039「・・・なんだか、ヒマになってしまいましたね」

20000「さて、テっくんがいないならミサカはやりたい放題・・・」

17600「あまり調子に乗るなよ」

20000「冗談だって・・・ねぇ、17600号は女の子同士とか興味ない?」ワクワク

17600「ないから近寄るな」

20000「ちぇー」

やっぱりテっくんがいないとヒマだね

早く帰ってきて欲しいよ



89 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 20:44:51.58 jqEx8baz0 77/807

テクパトル「ただいま・・・」

ミサカ一同「お帰りなさい!」

テっくんの一日の「労働」は終わった

仕事としての「労働」と趣味としての「労働」がある

テクパトルはその二つの「労働」を一日一日繰り返している

それらを終えた彼は本当の意味での休息を得るのだ

テクパトル「はぁ・・・一方通行も最近は頑張ってるんだよ」

14510「く、詳しく聞かせてください!」

10033「最近彼は何かに興味がありそうですか!?」

テクパトル「うーん・・・あいつはあんまりそういうことを話さないからな」

19090「では何について話すのですか?」

テクパトル「みんなは元気か、とかだよ」

御坂妹「・・・彼も、ミサカ達のことを気にかけてくれていますからね」

テクパトル「あとは義姉さんのことをなんて呼べばいいか、とかかな」

20000「セロリたんったらそんなことで悩んでるの?」

テクパトル「あいつ、あぁ見えてわりと神経質みたいだぞ」

17600「上位の能力者はどこかしら心におかしな点があるからな」




90 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 20:45:40.68 jqEx8baz0 78/807

テクパトル「一くくりにするのはどうかと思うけどな・・・」

そういえば昔のテっくんはかなりえげつない性格をしていたらしい

今の彼からは想像も出来ないが、平気で人を殺し、扱い、そして笑っていたらしい

そういうミサカ達だって昔はセロリたんと殺し合った仲だ

別にテっくんの過去を「血まみれ」なんて言うつもりはない

ミサカ達だって血まみれだった

そして、それを涙と汗で洗い流したんだから

テクパトル「・・・もう5時か・・・」

御坂妹「おやつの時間を過ぎてしまいましたね」

テクパトル「それはとっくの前の話だろ・・・そろそろ晩飯作らないとな」

19090「そうですね・・・昨日はミサカ達はトンカツでした」

14510「テっくんは質素な食事でしたけどね」

テクパトル「減量中に油で揚げた物なんて食べられないんだよ・・・」

10039「・・・テっくん、たまにはまともな物を食べないと・・・」

テクパトル「昼に食べたからいいよ・・・贅沢なんて毎回するもんでもないからさ」

ソファーに背を預けながら言うテっくん

輝いてるぜ



91 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 21:13:45.08 jqEx8baz0 79/807

テクパトル「・・・こうやって原始的かつ単純な生活をしていると、人間は一番充実した人生を送れるんだ・・・」

20000「そういうもんかな?」

テクパトル「少なくとも、ゲームに浸ったりテレビを見続けたりするよりはよっぽど楽しいよ」

19090「ですが・・・美味しいものを食べたいと思うのは人間の性ですよ?」

テクパトル「まぁそうかもな・・・」

興味のなさそうなテっくん

彼にとって食事というのは栄養の補給でしかないのだろうか

テクパトル「でもさ、みんなと顔を合わせて食べられればなんだって美味しく感じるよ」

御坂妹「そ、そうですか」

そういうことか

テっくんにとっては「食卓に家族で並ぶ」のが重要なことであって、その食卓に「何が並ぶ」かは関係ないのだ

テクパトル「はぁ・・・しかし、最近の俺の食事がエサみたいなのは認めるよ・・・」

13577「色がほとんどないですからね・・・」

10033「そのうち無色透明になるんじゃないですか?」

テクパトル「それは水だ・・・」

14510「・・・ですが、そんなものですよね?」

テクパトル「より効率のいい食事だ・・・」

テっくんが溜め息をつく



92 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 21:17:52.07 jqEx8baz0 80/807

御坂妹「そういえば、今はどれくらいのカロリーを摂っているんですか?」

テクパトル「・・・そうだな、2000キロカロリーくらいかな」

20000「それって結構多いんじゃないの?」

テクパトル「筋トレ趣味だったら自然と代謝がよくなるからな・・・」

10039「そうなんですか?」

テクパトル「あぁ、ダイエットをしたいなら有酸素だけじゃなくて筋トレも・・・ってなんでみんな目を輝かせてるんだ?」

19090「も、もう少し詳しく話してください!!!」

10033「そうですよ!!もっともっと情報をください!!」

テクパトル「い、いや・・・それだけだけどさ」

14510「そんなことはないでしょう!?さぁ、テっくんが短い間で一気に体重を減らす方法を教えてください!!」

テクパトル「お、女の子がしていいもんじゃないぞ・・・」

御坂妹「なんでですか!?」

テクパトル「こう・・・痩せたら胸も小さくなるしさ」

ミサカ一同「!?」

テクパトル「それに、女の子はふっくらしてたほうがいいぞ?」

19090「ミサカは・・・ふ、ふっくらしてません!!」

20000「よーし、ちょっとふっくらして来よう」

テクパトル「やめろ」



93 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 21:21:28.66 jqEx8baz0 81/807



テっくんは本当にダンディーというか、男らしい

ソファーに座っているだけでどこぞのマフィアみたいだ

そのくせ実は意外と几帳面で優しいから面白い

テクパトル「・・・いただきます」

だからこそ、こういう食事にも耐えられるのだと思う

ミサカ達の目の前には美味しそうなハンバーグがある

しかしテっくんの目の前にはササミにソースをかけただけでの適当なものしかない

10033「・・・あ、あの・・・」

19090「・・・ミサカ達も、その・・・」

テクパトル「いいっていいって、俺は趣味でやってるんだからさ」

御坂妹「で、ですが・・・」

テクパトル「・・・それに、仕事が仕事だからしっかり管理しないとな・・・」

17600「大変だなテっくん」

テクパトル「大変というよりも複雑だよ・・・こういうのって本当に健康にいいのかたまに迷うよ」

13577「だ、だったら一緒にハンバーグを・・・」

テクパトル「いや・・・これでいい」



94 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 21:25:20.41 jqEx8baz0 82/807

テっくんは哀れだ、とも思う

彼はどうしてそこまでして痩せたいのだろうか

20000「・・・ねぇ、なんで痩せたいの?」

テクパトル「・・・それはもう説明するのもだるい」

20000「でもさ、その食事って・・・女の子の普通の食事より少なくない?」

テクパトル「・・・そうだな」

20000「ねぇ、ちょっとはまともなもの食べようぜメーン」

テクパトル「誰だお前」

20000「・・・そうやって質素な生活してるの見てると、ミサカは胸が痛むよ」

テクパトル「あんまりない胸なのにな」

ピキーン、とMNWが青筋を立てる

御坂妹「それはミサカ全てに喧嘩を売ったということですね!?」

10039「ミサカ達は胸がないと言いたいのですね!?」

14510「そ、そりゃたしかにショチトルや心理定規みたいなスタイルではないですがそれでもマシなほうですよ!?」

テクパトル「・・・い、いや・・・そういう意味じゃなくてさ」

17600「というか、なんでミサカ達の胸が小さいと知ってるんだ?」

ミサカ一同「!?」

テクパトル「・・・お前ら、今まで俺がどれだけお前らの下着を選択したと思ってやがる・・・」



95 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 21:30:03.07 jqEx8baz0 83/807

19090「そ、そうですよね!!」

なんでか19090号は安心してそうだ

浮気でも疑ったのだろうか

20000「・・・もしかしてさ、ミサカ達の胸を見たことがあるの?」

19090「!?」

20000「・・・も、もしかしてミサカ達の風呂シーンを覗いて・・・」

テクパトル「聞いてたか?俺がお前達の下着を買ってきたんだぞ、19090号だけはついてきてくれてたけどかなり恥ずかしかったんだぞ」

御坂妹「・・・そういえばそうですね」

テクパトル「・・・はぁ、ご馳走様」

ポン、とテっくんが手を合わせる

ミサカ達はまだハンバーグが半分以上残ってる

14510「あ、あの・・・」

テクパトル「・・・なんだよ」

14510「ひ、一口だけ・・・どうですか?」

ミサカ一同「!?」

14510号がフォークに刺したハンバーグをテっくんに差し出す

19090「そ、そそそそそそそそそれはミサカの役目ですよね!?」

テクパトル「いや・・・いいんだってば」



96 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/05 21:36:31.08 jqEx8baz0 84/807

20000「あれ、どこ行くのさ?」

テっくんが玄関に向かっていく

テクパトル「庭だよ・・・ちょっと空が見たくてさ」

19090「そ、空ですか?」

14510「お、怒っちゃいましたか・・・?」

テクパトル「いや・・・気持ちは嬉しかったよ、ありがとう」

笑ってからテっくんは庭へと向かった

どうしようかな、ミサカも行きたいな

20000「あーあ、おなか一杯だぜ!!」

17600「・・・残ってるぞ」

20000「食べていいよ、ついでにミサカも」

17600「お前は食べない、ハンバーグはもらおう」

さすがスネークだぜ

17600「じゃ、行ってきな」

19090「ミ、ミサカも・・・」

20000「あーあー、たまにはテっくんと二人にさせてくれよ、ミサカだってたまには親父代理と二人になりたいのさ」

19090号がしぶしぶといった感じで頷いた



97 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:54:59.84 1EOUJg1k0 85/807



20000「やっほ」

テクパトル「ん?なんだ、もう食べ終わったのか」

庭に置いてある椅子に座ってたテっくんがミサカのほうを見てくる

真っ暗な中でも、テっくんはなんとなく目立っていた

20000「んにゃ、残した」

テクパトル「なんで残したんだよ・・・もったいない」

20000「だったらテっくんが食えばいいじゃんか」

テクパトル「遠慮するって言ったろ・・・座るか?」

20000「うん」

テっくんの隣に座るとなぜだか安心する

一方通行の近くにいるとドキドキするのと似ていて、でもそれとは違う感覚

20000「・・・なんで空を見たくなったの?」

テクパトル「俺が昔住んでいたアステカにはな、星に纏わる神話が伝わっていた」

20000「あぁ、聞いたことあるよ」

テクパトル「前に教えたかな」

小さく笑うテっくんは、本当に楽しそうだ

テクパトル「金星にはトラウィスカルパンテクートリ・・・そういった具合で、様々な星にはそれぞれ神がいると考える神話だ」




98 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:55:28.09 1EOUJg1k0 86/807

20000「ミサカには理解出来ないな・・・星なんてただのガスや塵の固まりだよ」

テクパトル「あぁ、俺だってそう思うさ」

ロマンというのはそこにあるわけではなく、勝手に人間が生み出したものに過ぎない

ミサカはそう思ってる

あの遠い星空を夢見るのは勝手だけど、その星空の全貌を解き明かした途端に興味を無くすのはいただけない

テクパトル「でもな、俺はそういった少し馬鹿みたいな考えも好きなんだよ」

20000「なんでさ、テっくんってリアリストっぽいイメージなのに」

テクパトル「つまらない世界だからこそ・・・夢くらいは持っていたいじゃないか」

20000「・・・」

テクパトル「・・・ガキの頃はな、本当にあの星には神様がいるんだと思ってた」

20000「今は違うんだよね?」

テクパトル「・・・ある時気づいたんだよ、神様なんていないかもしれないって」

そう語るテっくんはなぜか悲しそうだった

テクパトル「神様がいれば、世界はもっと幸せなはずだ・・・あるいはそもそも、不幸自体が存在しないか」

20000「だから、神様はいないか・・・ちょっと単純すぎる理由だね」

テクパトル「理由なんてどうでもいいんだ、結局俺は神という存在を信じられなくなった」

それに、とテっくんは続ける




99 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:56:04.78 1EOUJg1k0 87/807

テクパトル「俺がどういう行動を取るか決められるのは俺だけだ、だったら俺の人生での神は俺なんじゃないかな」

20000「・・・自分が神様か、宗教のお偉いさんが聞いたら発狂しそうな理屈だね」

テクパトル「・・・言い方はあれだがそれは真実さ、神に祈ったところで正しい答えを得られるわけがない」

もしそうならば、宗教戦争なんてものは存在しないのだから、とテっくんが苦笑する

20000「そういうもんかな」

テクパトル「あぁ・・・こうやって空を見てると、やっぱりあそこには神様なんていないと思うんだ」

20000「・・・あんな高い所じゃ息なんて出来ないもんね」

テクパトル「・・・あんな高い所から、地を這いずり回ってる俺なんか見えるわけがない」

20000「テっくんはもうそんな人間じゃないよ」

テクパトル「・・・あぁ、そうだな」

どこから持ってきたのか、テっくんがビールを取り出す

わざわざ冷蔵庫から持ってきたのかな

テクパトル「・・・月が綺麗なんだよ、ここからだと」

20000「ま、まさかここでミサカに告白!?」

テクパトル「そういう意味じゃないからな・・・」

冗談だよ、と笑ってからミサカも月を見上げる

綺麗だ




100 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:56:31.05 1EOUJg1k0 88/807

テクパトル「・・・19090号とまだ付き合う前にもさ、こういう月を二人で見上げたんだ」

20000「へぇ、そりゃ羨ましいばかりだね」

テクパトル「あいつを愛することが出来たから、今の俺はここにいるんだ」

20000「そうだね・・・たしかに、19090号はテっくんにとって一番大きな存在だ」

呆れるほど、テっくんは19090号を愛している

そして彼女もまた

テクパトル「・・・俺を誘ってくれたのはお前だったな」

20000「そうだっけ?」

テクパトル「何もかも無くして路頭にさ迷っていた俺に声を掛けてくれたじゃないか」

20000「あぁ・・・あの時はただの外国人だと思ってたよ」

テクパトル「いや、外国人なんだけどさ」

20000「・・・でもさ、ありゃ偶然だったのか運命だったのか分からないね」

テクパトル「過去のことなんてなんとでも言えばいいさ・・・結果として俺はここに居場所を見つけられたんだから」

テっくんがミサカのほうを見てくる

ビールを掲げ、まるで乾杯のようにしながら

テクパトル「・・・お前のおかげだ、普段のお前はふざけてるからこういう真面目な話は出来なかったが・・・今なら言える、本当に感謝してるよ」




101 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:57:09.83 1EOUJg1k0 89/807

20000「・・・どいたま」

そういうこと言われると背中が痒くなる

別にミサカは特別なことなんてしてないのに

テクパトル「・・・あのさ」

20000「何さ」

テクパトル「本当にありがとう、俺の人生を変えてくれたのは19090号だが・・・きっかけをくれたのはお前なんだ」

20000「・・・あー!もういいって、そういうの恥ずかしいから!」

テっくんは何も分かっちゃいない

テクパトル「な、なんだよ・・・こっちは真面目になってお礼言ってるのに」

20000「いいんだよ!テっくんはそれ以上にミサカ達に大切なものをくれてる、ギブアンドテイクだぜ!」

テクパトル「あ、あぁ」

20000「大体ね、家族の間にそんな他人行儀なんていらないの!一緒にいるのも当たり前、わざわざ感謝なんてするな!それに感謝するのは他人にだけでいいんだよ!」

テクパトル「!」

20000「・・・まぁさ、ミサカもテっくんには感謝してんだから・・・そういうこと、一人だけ抜け駆けして言わないでよ」

あぁ、恥ずかしい

頬を掻いてごまかしてみるけどなんかテっくんの肩が震えてる




102 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:57:53.32 1EOUJg1k0 90/807

ミサカがこういう話をするのっておかしいかな

テクパトル「ははは!お前ってホント、たまに信じられないほど真面目な時があるよな」

20000「・・・悪いかよ!」

テクパトル「いや・・・構わないよ」

またテっくんが空を見上げる

テクパトル「・・・なぁ、20000号」

20000「なに」

テクパトル「・・・これからも、俺達は家族だよな?」

あぁ、テっくんはやっぱり真面目な人間だ

だから、ミサカだってたまには真面目になってもいいよね

20000「当たり前じゃん、家族は一生家族だよ」

テクパトル「あぁ」

テっくんの観察日記、その結果

彼は馬鹿で真面目で優しくて、19090号のことになると必死になる男だ

そして、何よりミサカ達のことを考えてくれる男でもある





103 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:58:53.92 1EOUJg1k0 91/807




テっくんの観察日記、夜のテクパトル

テクパトル「・・・どうだ」

19090「んっ・・・はぁ」

テクパトル「・・・み、みんな寝たかな」

19090「た、多分・・・」


ちっちっちっ

ミサカはまだまだ寝てないぜ!

壁に盗聴器を仕掛けてるんだよ!

普段の19090号なら気づくかもしれないけど、今のあいつはエッチの最中だ!

つまり、微弱な電磁波なんか気づくわけがない

エッチが終わって落ち着いてから、盗聴器があることに気づくのさ!

ちなみにミサカは受信機片手、もう片手はパンツの中だ

17600「・・・おい、悪趣味だぞ」

20000「いいじゃんか、別にテっくんの喘ぎをオカズにするわけじゃないんだ」

17600「?違うのか」

20000「AVと同じだよ、誰の声でもいいけど聴覚的な刺激が欲しいの」

17600「お前はやっぱり変態だな・・・少し見直そうかと思ったがやはり」

20000「しっ!また始まったぜ!」





104 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:59:27.37 1EOUJg1k0 92/807



テクパトル「くっ・・・な、なんか締まりがよくなってるな・・・」

19090「!?そ、そんなこと・・・あっ・・・」

テクパトル「胸も感じやすくなってるし・・・」

19090「はぁっ・・・そんなこと・・・言わないでください・・・」

テクパトル「ごめんごめん・・・お前が可愛くてさ」

19090「うぅ・・・」


こりゃリアリティーがあるぜおい!

下手なAVの映像見るよりずっと興奮するね!

二人が今何してるか想像を膨らませるのがまた楽しいのなんの!

クチュクチュという卑猥な音が、ミサカのオーガズムを誘発する!

これだから盗聴はやめられない、時々してきたけど今回はあまりにも興奮してるよ

ちなみに壁に盗聴器を仕掛けた、と言っても穴を開けて埋め込んだのではなく壁に貼付けるタイプのヤツだ

学園都市の技術を使えば小型の盗聴器なんて楽に手に入る

安価で便利なんだから、まさに文句のつけようがない




105 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 14:59:56.67 1EOUJg1k0 93/807

テクパトル「・・・っ!」

19090「!っ・・・はぁ・・・」

テクパトル「はぁ・・・ちょ、ちょっと休ませてくれ・・・」

19090「はぁ・・・ん、激しかったですね・・・」

テクパトル「あ、あぁ・・・久しぶりだからさ」

19090「・・・そ、そうですね」


うっはぁ、19090号ってこんなに上気した声も出せるんだ

こりゃ普段とのギャップが果てしないね

録音したいけどそれはさすがに可哀相か

にしてもテっくんも絶倫だね

もう四回だよ四回

17600「・・・なぁ、いい加減やめたらどうだ」

20000「まぁまぁ、結構面白いんだってば」

17600「・・・あまり人のプライベートに手を出すようなことはしないほうがいい」

20000「分かってるって、ただちょっと興味あるじゃんか」

17600「・・・ミサカは知らないからな、盗聴器がバレたらお前、テっくんに相当怒られるぞ」

20000「その恐ろしさもまた一興!」

17600「ちっ・・・静かにしろよ、ミサカは寝るからな」

20000「あいよー!」



106 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 17:00:48.37 1EOUJg1k0 94/807


テクパトル「・・・な、なぁ・・・もう流石にきつい・・・」

19090「あ、あと一度だけ・・・」

テクパトル「!そ、そっか・・・分かった」

19090「あっ・・・」


ひゃー!!

こりゃたまらないね!!

ギシギシ軋むベッドの音も、妙にリアルだぜ!!

20000「なぁなぁ17600号!!お前もちょっと聞いてみなって!!」

17600「うるさいな・・・ミサカは眠いんだよ」

20000「えー、そう言わずにさぁ・・・テっくんの喘ぎ声、中々面白いぜ?」

17600「・・・残念ながらそういう趣味はないんでな」

20000「ちっ・・・」

17600「・・・なぁ、本当にバレたらまずいだろ」

20000「そうだね、まずいかも」

17600「・・・逃げ出したいよ、この場から」ハァ

なんで溜め息をつくのか、と問い詰めたくなる

こんな面白いことはないのに



107 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 17:03:48.76 1EOUJg1k0 95/807


テクパトル「はぁ・・・も、もうギブ・・・」

19090「はぁ・・・そ、そうですね・・・ん?」

テクパトル「ど、どうした?」

19090「・・・か、壁から微弱な電波を感じます・・・」

テクパトル「壁・・・!?」


あ、気づかれたっぽいな

音が聞こえなくなった

多分叩き潰されたんだね


テクパトル「20000号!!」

バァン、とミサカ達の部屋のドアが勢い良く開けられた

服を着てるってことは着衣プレイだったのかな?

それともわざわざ着てきたのかな

20000「いやぁ、激しいエッチでしたねテクパトル殿」

テクパトル「やっぱりてめぇか!!ちくしょう、さっきまで今日のお前はまともだと思ってた俺が恥ずかしいよ!!17600号、お前は聞いてなかっただろうな!?」

17600「誰に聞いてるんだよ」

テクパトル「よし・・・20000号、ちょっとこっちに来い」

20000「ちぇー」




108 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 17:12:55.67 1EOUJg1k0 96/807


19090「・・・テっくんの声を聞いてましたね?」

20000「正確には19090号の声も聞いてたけどね」

19090「な、なんて破廉恥なことを・・・」

テクパトル「・・・言い訳はあるか?あぁ?」

20000「いんや、するつもりはないしバツも受けるつもりだけどさぁ・・・幻滅したなぁ、19090号があんなにも卑猥な声を上げるような女だったなんて」

テクパトル「!お、おい・・・」

19090「そ、それは・・・」カァッ

20000「・・・いやぁ、これをみんなにバラしたらどうなっちゃうかなぁ?」ニヤニヤ

テクパトル「!!そ、それだけはやめろよてめぇ!!」

20000「んー、でもさでもさ、ミサカってそう言われると言いふらしたくなるんだよね」

19090「ど、どうすればいいのですか?」

20000「見逃してくれたらいいけど」

テクパトル「・・・分かったよ・・・今回だけだからな」

20000「いよーっ!!太っ腹だねテっくん!!」

テクパトル(この野郎・・・)

19090(あとで上位個体にお仕置きしてもらいましょう)




109 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 19:26:17.86 1EOUJg1k0 97/807

20000「まぁまぁ、今回は穏便に済ませたってことでいいじゃんか」

テクパトル「・・・録音なんてしてないだろうな」

20000「してるわけないじゃん、あとそれ聞いてオナってたのも5回だけだから」

テクパトル「・・・てめぇ、やったんだな!?」

20000「いやぁ・・・しかし、19090号の声は可愛かったなぁ・・・」

19090「・・・テっくん、この人おかしいです」

テクパトル「あぁ・・・やっぱりお前はおかしかったよ」

20000「ひっでぇな、その言い方」

テクパトル「はぁ・・・もういい、二度とこんなことするなよな」

20000「分かってるって」

テっくんったら恥ずかしがり屋さんだな

ミサカはそういうのオープンに出来るけどなぁ

テクパトル「・・・あぁそうだ20000号」

20000「なに?」

テクパトル「・・・今日一日、ずーっと俺を観察してただろ」

20000「」

テクパトル「まさか・・・日記とか書いてないだろうな」

20000「・・・も、もちろん」


テクパトルの観察日記、これにて終了だぜってミサカはお知らせするあばばばばばばば


110 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 19:29:26.11 1EOUJg1k0 98/807



垣根「・・・なぁ、もう5月だぜ」

心理「・・・そうね・・・」

垣根「・・・ゴールデンウィーク、もうあと二日で始まるぞ」

心理「そうね・・・」

垣根「・・・世間は行楽気分真っ盛りだろうな」

心理「いいわよね・・・お気楽で」

垣根「あぁ、お気楽だよな」

テレビのニュースを見つめながら、二人はソファーに寝転がっていた

何もする気がしない

こんなめんどくさいという感覚は初めてだ

何をするのもめんどくさい、鬱陶しい

短い会話さえも交わすのがきつい

垣根「・・・なぁ、これってあれか」

心理「・・・そうね、きっと世間一般で言うあれよ」


垣根心理「5月病・・・」


未元定規、5月病の巻



111 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 19:41:41.96 1EOUJg1k0 99/807

垣根「・・・なぁ、テレビ消せよ・・・うるさいんだ」

心理「いいでしょ・・・もう、リモコン取るのも面倒よ・・・」

垣根「・・・あぁ、そうだな・・・くっそ」

垣根がポリポリと頭を掻く

未元物質で電波を狂わせてもいいが、演算がめんどくさい

垣根「・・・あぁ、俺は今リモコンを取りました・・・」

心理「そういうシュミレーションはいいわよ・・・」

垣根「・・・うるせぇな・・・」

心理「・・・こういうとき、結標淡希の能力は便利よね」

垣根「あぁくそ・・・うぜぇ・・・」

テレビの中の笑い声がうるさい

二日酔いのときと同じで、笑い声や話し声が妙に大きく聞こえる

心理「・・・ご飯、どうする・・・?」

垣根「・・・知るかよ・・・上条にでも来てもらおうかな・・・」

心理「そうね・・・電話してよ」

垣根「はぁ?お前がしろよな・・・」

心理「ねぇ・・・垣根、あなたがやって」

垣根「はぁ・・・?」




112 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 19:48:22.81 1EOUJg1k0 100/807

心理「私動きたくないのよ・・・」

普段の彼女からは想像できないほどのだらけた姿だ

ドレスの肩紐も片方がはだけている

セクシーだな、と垣根は思う

しかしその露になった肩に触れたいとも思わない、だってめんどくさいから

垣根「・・・俺だって動きたくねぇよ・・・」

心理「・・・携帯、ポケットに入ってるんでしょ・・・?」

垣根「そりゃあるけどよ・・・」

心理「ねぇ・・・かーきーねー・・・」

垣根「あぁくっそ鬱陶しい・・・」

心理「何よ・・・彼女に言う言葉じゃないわよね・・・」

垣根「・・・分かったよやってやるよ・・・」

垣根が携帯を取り出す

電話帳を開いて上条に電話を掛ける

しかし、コールは何回鳴り響いても通話が始まらない

垣根「・・・なんだよ、あいつ・・・」

心理「・・・美琴とデートじゃないの・・・?」

垣根「・・・あの野郎・・・」



113 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 19:53:52.81 1EOUJg1k0 101/807

心理「はぁ・・・もういや、ねぇ垣根・・・」

垣根「なんだよ今日はあんまり話しかけるな・・・」

心理「何よそれ・・・ちょっと傷ついたわよ・・・」

垣根「・・・いや、別にそういう意味じゃなくてな・・・」

心理「・・・謝りたいなら抱きしめてよ」

垣根「それがめんどくさいんだよ・・・」

心理「・・・そうね、ちょっと分かるわよ・・・」

はぁ、と二人が溜め息をつく

そういえば朝起きてソファーに寝転がってから、そこから動いてない気がする

垣根「・・・俺達のテリトリーって狭いな・・・」

心理「はいはいそうね・・・」

垣根「あぁくそ・・・心理定規が辛辣だ・・・」

心理「・・・仕方ないでしょ・・・」

ぐったりしながら時計を見つめる

すでに時刻は正午だ

5月病というのは一日二日で治るものではない

つまり、ゴールデンウィークも恐らくはずーっとこのテンションだ

垣根「・・・なぁ、昼飯どうする?」

心理「もうその話はやめましょうよ・・・」




114 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 20:21:17.07 1EOUJg1k0 102/807

垣根「・・・あぁ、だりぃ・・・」

心理「寝ましょうか・・・」

垣根「そうするか・・・」

ゴロン、と二人が寝返りを打つ

そして、ウトウトと眠りに・・・


ピンポーン、という音のせいでつけなかった

誰かが訪ねてきたのだ

垣根「・・・うぜぇ・・・」

心理「誰よこんなときに・・・」

垣根「・・・心理定規、寝てていいぞ・・・」

垣根がだるい体を無理矢理起き上がらせる

心理「・・・ありがと」

垣根「・・・これで宅配便とかだったらブチ切れるな」

そう言いながら、玄関へと向かう


垣根「・・・誰だよ」

上条「おっす」

垣根「・・・あれ?」

美琴「やっほ・・・ヒマだから来ちゃった」

垣根「・・・あれ?」


垣根「結果オーライだと?」



115 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 20:31:06.14 1EOUJg1k0 103/807


心理「・・・あらいらっしゃい・・・」

上条「ど、どう・・・も?」

美琴「な、なんでこんなセクシーなことになってるの?」

心理「・・・別に、狙ってるわけじゃないわよ・・・」

美琴「・・・髪の毛ボサボサじゃないの・・・」

心理「・・・そうかもしれないけど・・・どうでもいいわよ・・・」

上条「ど、どうしたんだ?」

心理「・・・ちょっと整えるのがめんどくさいだけよ・・・」

ゆっくり体を起こす心理定規

まるで起きたばかりのような彼女の姿に、上条と美琴は戸惑ってしまう

美琴「・・・ね、ねぇ・・・?」

心理「・・・5月病よ・・・」

上条「そうなのか?」

垣根「ついでに俺もな・・・本当はお前達に来てほしくて上条の携帯に電話したんだけどよ」

上条「あぁ・・・家に忘れてきてさ」

垣根「てめぇ役立たずだな・・・」

美琴「ちょっと!!当麻になんてこと・・・」

心理「大声出さないで・・・うるさいから・・・」

美琴「ご、ごめんなさい・・・」



116 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/06 20:53:10.40 1EOUJg1k0 104/807

垣根「・・・でもよかった、お前達に昼飯作ってもらうから・・・」

美琴「そ、そうなの?」

心理「ごめんなさいね・・・」

上条「あ、あぁ・・・いいけどさ」

垣根「・・・頼むぜ・・・」

ぐったりとした垣根と心理定規を、上条が哀れそうに見つめる

上条「・・・にしても・・・なんか心理さんがセクシーすぎるんだけどなぁ・・・」

美琴「・・・なんか当麻が他の女の子にそういうのはイヤだけど・・・ちょっと同意しちゃうわね・・・」

心理「・・・ジロジロ見ないでよ」

上条「す、すいません・・・」

垣根「・・・今俺達は不機嫌だししかもめんどくさがりなんだよ」

美琴「な、なんか絡みにくいわね・・・」

心理「悪かったわね・・・」

心理定規が二人を睨みつける

上条「・・・こ、怖いから早く昼飯を・・・」

心理「何か言ったかしら」

上条「な、なんでもないですよ!!」

心理「・・・じゃあ、昼ごはんお願いするわね・・・」

美琴(・・・きょ、今日の二人は・・・なんか怖いわ)



123 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:43:19.63 2NKrlfR30 105/807

美琴「・・・にしても心理定規のだらけた姿って珍しいわね」

心理「そうかもね・・・いつもは真面目にやってるから・・・」

垣根「・・・そうだな・・・」

美琴「・・・垣根が元気じゃないのも珍しいわよ」

垣根「うるせぇな・・・お前は喋らなきゃ死ぬのかよ」

美琴「な、なによその言い方!?」

垣根「黙ってたら可愛いんだから少しは静かにしろよな」

美琴「かっ・・・」

美琴が顔を真っ赤にする

上条以外の男性に言われると素直には喜べない

しかし決してイヤなわけでもなく、反応に困ってしまうのだ

心理「・・・はぁ・・・美琴達は遊びに来たのよね?」

美琴「そうそう・・・でも邪魔だったかな?」

垣根「むしろありがたいぜ・・・昼飯作ってもらえるなんて」

心理「そうね・・・ありがとう」

美琴「これくらいどうってことないけど・・・」

垣根「・・・だりぃ・・・」




124 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:43:57.83 2NKrlfR30 106/807


美琴「・・・」

美琴が少し疑問に思う

5月病というのはここまで元気が無くなるものなのか

もちろん、それなりにやる気や元気は無くなるだろうが

美琴「ねぇ・・・風邪とかじゃないわよね?」

心理「熱なんてめんどくさいから測ってないけど・・・」

垣根「多分違うぜ・・・あぁだりぃ・・・」

美琴「・・・普段はしっかりしてる心理定規は・・・知らない間にこういうだらけた生活を求めてたのかしら」

心理「それはあるかもしれないわね・・・その反動がここにきて現れた、とか」

垣根「・・・御坂、あんまり話し掛けるなよ・・・返すのがだるい」

美琴「ご、ごめん」

垣根「・・・あぁいや、いいんだけどよ・・・」

美琴「・・・ねぇ、ホントのホントに風邪じゃないの?」

垣根「だから違うって・・・」

垣根がため息をつく

風邪のだるさなら気づくはずだ、それに二人一辺にかかるなど珍しいにもほどがある




125 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:44:43.82 2NKrlfR30 107/807

心理「・・・疲れが溜まってたってのもあるかもね」

美琴「疲れ?」

垣根「・・・イギリス行ったりバイトしたり・・・最近は緊張と緩和がありすぎた」

美琴「でも私達はなんともないわよ?」

心理「あなたも上条君も慣れてるからよ・・・」

垣根「・・・まぁ騒動に巻き込まれるなんて慣れたくはないけどな」

美琴「・・・そういうもんかしら」

垣根「・・・あぁ」

あくびをしてから、垣根が美琴に頼み事をする

垣根「・・・冷蔵庫から飲み物持ってきてくれねぇか?」

美琴「あのね・・・私はアンタの召し使いじゃないの」

垣根「・・・ゲコ太ストラップのためのアルバイト」

美琴「う・・・」

垣根「騙された俺達」

美琴「そ、それは悪かったけど・・・」

垣根「・・・あぁいいよ、そうだよな御坂は友達の困ってる姿を見てもなんとも思わないひどい人だからな分かってます」




126 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:45:23.66 2NKrlfR30 108/807

美琴「急に饒舌になったけど・・・結局は悪口よね」

垣根「・・・なぁー上条!」

上条「はいはい・・・飲み物だろ?」

キッチンから出てきた上条は、手に二本のペットボトルを抱えていた

上条「ったく・・・料理中にはキッチン離れたくないんだけどな」

心理「優しいのね・・・抱かれたくなっちゃうわよ」

上条「だ、抱かれ!?」

心理「ウソ」

上条「」

垣根「はぁ・・・水がうめぇ・・・」

美琴「・・・ミネラルウォーターとか買い溜めしてるんだ」

心理「私、あんまり水道の水は飲みたくないのよ」

上条「でも俺達といる時は普通に・・・」

心理「友達のいる時にそんなことゴチャゴチャ言うわけにもいかないでしょ・・・」

ミネラルウォーターを飲みながら、心理定規が苦笑する

心理「これでも一応あなた達には気を遣ってるのよ?」

上条「そうだったんだ・・・でも自然すぎて分からなかった」

美琴「・・・ねぇ、友達なら気遣いなんていらないのよ?」




127 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:46:02.05 2NKrlfR30 109/807

心理「・・・礼儀よ、水のことだけでそこまで細かく言いたくはないもの」

垣根「・・・水うめぇ・・・」

心理「・・・それより、キッチンはいいのかしら」

上条「おぉ!忘れてた!」

慌てて上条がキッチンに戻る

心理「料理を焦がす分には構わないけど・・・鍋とかフライパンは焦がさないでね」

上条「あっぶねぇ・・・ギリギリだったよ」

垣根「・・・そりゃ何よりだ」

美琴「・・・垣根、アンタがボケないだけでこんなに平和なのね」

垣根「うるせぇな・・・てめぇ、頭ぶち抜かれてぇか?」

美琴「ご・・・ごめん・・・」

心理「ちょっと垣根・・・美琴にそんなこと言わないの」

垣根「・・・ちょっと今の俺はバイオレンスなんだよ」

いらいらとした感じで垣根が美琴を睨みつける

美琴「そんなに疲れてるの?」

垣根「あぁ最悪だ」

上条「ったく・・・ほら、飯出来たぞ」

上条が野菜炒めの乗った皿を持ってくる

上条「悪いな・・・料理得意ってイメージかもしれないけどさ、あんまり手の込んだのは・・・」




128 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:46:27.98 2NKrlfR30 110/807

心理「いいのよ・・・それに野菜炒めってあっさりしてて食べやすいじゃないの」

垣根「そうだな・・・元気がない時にはもってこいだ」

ノソノソ、と二人が体を起こす

動作が緩慢すぎて面白く見えるが、それを口にしたらまた不機嫌な垣根に睨まれてしまう

美琴「・・・二人とも食べる元気だけはあるんだ」

垣根「食事すれば少しは元気が出るはずだ・・・」

心理「元気を出すために元気を出さないといけないのよ・・・笑えるわよね」

美琴「な、なんて投げやりなボケ・・・」

上条「言ってやるなよ美琴・・・」

垣根「なんだよ元気なお二人さん」

心理「いいわよね、気楽な二人にはこの倦怠感なんて分からないわよ」

美琴「・・・心なしか口調も厳しいわよね」

垣根「そりゃ悪かったな・・・上条、美味いぞこれ」

上条「そうか・・・心理さんは?」

心理「そんなに私のリアクションが気になるのかしら」

上条「・・・なんか垣根以上にグルメっぽいからさ」

心理「大丈夫よ、今すぐ旦那にいけるわ」




129 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:47:29.62 2NKrlfR30 111/807

美琴「と、当麻が旦那さん・・・」

垣根「・・・ごちそうさま」

垣根が箸を置く

しかし野菜炒めはほとんど減っていない

上条「や、やっぱり口に合わなかったんじゃ・・・」

垣根「そうじゃねぇよ・・・今はどんなレストランの料理でも食べ切れない自信がある」

上条「そんなに疲れてるのか・・・」

美琴「・・・他にほしいものとかない?」

垣根「ないよ・・・悪いな御坂、ちょっと機嫌悪くてよ」

美琴「いいわよ・・・それに本当に疲れてるみたいだし」

心理「・・・何から何まで悪いわね」

垣根「持つべきは友だよな・・・」

上条「ここで実感するのかよ」

垣根「あぁくそ・・・世の中はゴールデンウィークだって騒ぎ出す頃なのによ」

上条「あ・・・それで思い出した」

心理「何?何かあったの?」

美琴「・・・その、一緒に旅行に行かないかってさ」

垣根「は?」

心理「は?」


垣根心理「は?」

上条「なんで素なんだよ」




130 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:48:25.10 2NKrlfR30 112/807

垣根「待てよ、ゴールデンウィークにか?」

上条「あぁ・・・ホントはみんなで行きたかったんだけど、中々都合がつかなくてさ」

垣根「俺達とお前達だけ?」

美琴「ううん、あとエツァリさん達」

垣根「・・・懐かしい三組だなおい」

上条「でも二人がこんな感じじゃ仕方ないかもな・・・」

心理「待ちなさいよ、誰も行かないとは言ってないわ」

上条「い、行けるのか?」

美琴「でもちょっと遠出になるわよ?」

垣根「どこだよ?」

美琴「温泉巡ってホテルに泊まって・・・福岡なんだけどさ」

垣根「福岡か・・・ホークスの本拠地じゃねぇか・・・」

心理「私、ダイエー時代が好きだったわ」

垣根「今は応援歌のメロディーが無理矢理だからな」

上条「なんか元気になったな・・・」

美琴「楽しいことがあると人間は元気になれるのよ」

垣根「いいな、行こうぜ」

心理「で?いつ出発なのよ」

上条「明後日だけど」




131 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:49:20.24 2NKrlfR30 113/807

垣根「明後日か・・・それまでには5月病治さないとな」

心理「じゃあ今日はしっかり寝ないとね」

上条「あ、あの・・・」

心理「何?プランはあなた達に任せるわよ」

美琴「そ、そうじゃなくて・・・本当にそれまでで体調治せるの?」

垣根「出来るか出来ないかじゃねぇ、進むか辞めるかだ」

上条「ソファーにもたれながら言う台詞じゃねぇよな・・・」

垣根「了解・・・久しぶりに懐かしい三組での旅行か」

心理「悪くはないわね」

美琴「それを伝えに来たんだけど・・・すっかり忘れてたわね」

上条「垣根がゴールデンウィークって言わなかったらまだ思い出してなかったな」

垣根「・・・温泉かぁ、楽しくなりそうだ」

心理「疲れも取れそうね・・・じゃあお休み」

垣根「あぁお休み」

美琴「ま、待った待った!お休みじゃないわよ、私達はどうするの!?」

垣根「あぁ・・・ゴムなら棚の中にある・・・」

上条「そういうことを時間潰しにはしないからな!」

垣根「・・・適当に遊んどけよ・・・こっちは眠いんだ」

美琴「な、なんてわがままなの・・・」

垣根「まるでミコっちゃんみたいだ、ですね分かりますよお休み」

上条「だから!お休みってなぁ・・・」


132 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:50:24.71 2NKrlfR30 114/807

心理「何よ・・・私が目の前で寝てたらあなたは獣にでもなっちゃうのかしら」

上条「そ、そうじゃないけどさ・・・」

心理「ならいいじゃない・・・夕方まで眠らせて」

近くにあったクッションを抱き枕代わりにした心理定規が目を閉じる

コクリ、と頭が揺れているのがなんとも可愛らしい

美琴「ちょっと・・・」

上条「マジで心理さんは寝ちゃったよ・・・なぁ垣根」

垣根「なんだよ・・・お眠な俺はかなり不機嫌なんだぜ」

美琴「知らないわよ・・・あのね、旅行に行くなら一応アンタ達の意見も聞きたいのよ」

垣根「俺達の意見なんて気にしなくていいですから、お休みなさい」

上条「だーかーら!それじゃ話が進まないんだよ!福岡でお前達が回りたい名所とかも・・・」

垣根「俺、5月病」

美琴「知ってるわよ・・・だらけ方が半端じゃないもん」

垣根「俺、眠い」

上条「そこを我慢してくれ・・・よりメルヘンな、メルヘンな旅行にするためにはお前の意見が必要なんだって」

垣根「メルヘン・・・だと?」

美琴(掛かった!)

上条(こんな単純な手に引っ掛かるなんてな)




133 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 16:55:07.64 2NKrlfR30 115/807

垣根「仕方ないなちくしょう・・・メルヘンにするには俺みたいなメルヘンな男が意見してやらないとな」

美琴「そうなのよ・・・温泉と遊園地だけなんて寂しいでしょ?」

垣根「何日の予定なんだ」

上条「三泊四日」

垣根「なら長崎にも行こうぜ・・・出島は地味だけど景色は綺麗だぜ」

美琴「長崎かぁ・・・ちゃんぽんとカステラが食べたいわね!」

垣根「オランダ物産館にでも行くか・・・」

美琴「なにそれ?」

垣根「オランダのものが一杯売ってる坂の途中にある店だ」

上条「悪い、全くもって想像がつかない」

垣根「美味しいものが一杯あった、ソテツの花が植えられていた」

美琴(な、なんかホラーよね今の垣根・・・)

上条「・・・なるほど、そこにカステラがあるのか」

垣根「・・・あー、そうだよそうだから寝かせてくれ・・・」

美琴「あとはどこかしらね?」

上条「長崎って何か有名だっけか?」

美琴「うーん・・・平和記念公園とかかしら」

上条「あぁ、そこも行くか」

垣根「・・・聞けよ」



134 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 17:23:52.85 2NKrlfR30 116/807

上条「・・・さて、大体行くところは決まったし・・・」

垣根「もう寝ていいか・・・」

美琴「うん、私達も帰るわね」

垣根「・・・は、はぁ!?帰る!?」

上条「いや、なんでそこで驚いてるんだよ・・・」

垣根「晩飯は!?晩飯は作ってくれないの!?」

美琴「いつの間に作ることになってたのよ・・・」

上条「作らないからな・・・俺達だってこのあと予定あるし」

垣根「予定・・・だと?」

美琴「うん、ちょっとね」

垣根「・・・そうなの?」

上条「なんで泣きそうな顔なんだよ・・・」

垣根「・・・ちくしょう、リア充が・・・」

美琴「そういう台詞にも覇気がないわね・・・」

垣根「あぁちくしょう・・・お疲れ様でした・・・」

ゴロン、と垣根が寝返りを打つ

上条「じゃあ、俺達は帰るからな」

垣根「あぁ・・・またな」


上条と美琴がいなくなった部屋で、垣根はゆっくりと目を閉じた



135 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 17:59:52.51 2NKrlfR30 117/807


垣根「・・・あぁ・・・?」

目を開けると、体のだるさを思い出す

時計をちらりと見つめて、寝ていた時間が約3時間だったということを知った

垣根(・・・こうやって安心して眠れるってのはいいねぇ)

幸せを噛み締めながら垣根は体を起こす

寝たおかげか、先ほどよりは体も軽くなっている

とはいっても普段の本調子とは遠いが

垣根「・・・心理定規はまだ寝てるか」

スヤスヤと寝息を立てている心理定規は、起きる気配もない

脅かしてやりたくなってしまうがそれは少しかわいそうだろうか

垣根(・・・つうか旅行ってなんだよ・・・いきなりすぎるな)

上条達との会話を思い出して溜め息をついてしまう

いきなりそんなことを言われると困ってしまうものだ

もちろん、いやなわけではないが

垣根(・・・さて、それまでには5月病を治さないとな)

溜め息をつきながらコーヒーを淹れる

動作が緩慢すぎて自分でも呆れてしまう



136 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 21:25:28.38 2NKrlfR30 118/807

垣根(・・・にしても福岡か・・・前は鹿児島じゃなかったか?)

なぜか九州が多いのが気になるが、食べ物が美味しいのでこれといった不満はない

垣根(・・・博多美人とか気になるな)

博多には美人が多いと聞く

どれほどの美人なのかは分からないが、わざわざ「博多」と限定したジャンルがあるのだから相当なものだろう

垣根(・・・まぁ)

チラリ、とソファーに寝ている心理定規を見つめる

垣根(・・・このお姫様に勝てる女なんていないだろうけどな)

心理「ん・・・」

垣根「よぉ、起きたか」

心理「おはようございます・・・」

垣根「・・・なんで敬語なんだよ」

心理「あら垣根だったの・・・」

垣根「あのな、この家には俺とお前しか住んでないからな」

心理「・・・そうね、そうだったわ・・・」

寝ぼけ眼を擦りながら、心理定規が体を起こす

垣根「・・・旅行は長崎と福岡だってさ」

心理「あらそうなの・・・」



137 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 21:49:54.69 2NKrlfR30 119/807

垣根「・・・楽しみだな」

心理「そうね・・・でもそれより夜ご飯が心配よ」

垣根「・・・しまった、それがあったな」

二人が顔を見合わせてげんなりとする

心理「・・・出前にする?」

垣根「それがいいよなぁ・・・作りたくないし」

ゴロゴロ、と転がって携帯を手にする

寝るときにソファーの近くのテーブルに置いたのだ

それを取るのも若干めんどくさいが仕方ないだろう

垣根「出前かぁ・・・何がいいかな」

心理「寿司とかどう・・・?」

垣根「あぁ・・・そうだな、それでいいや」

時々使う寿司の出前を取るために電話を掛ける

垣根「・・・あぁ、俺だよ俺・・・ちげぇよ、金には困ってねぇ・・・」

垣根「出前頼みたくてよ、おう・・・おう、そうそういつもの頼む」

垣根「じゃあな」

面倒だから、短い会話だけで注文を済ませる

心理「それでよく伝わるわね・・・」

垣根「お得意さんだからさ」



138 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/07 22:00:15.26 2NKrlfR30 120/807

心理「・・・ねぇ、そっちの雑誌取ってくれない?」

垣根「これか・・・?」

心理定規が指差したのはファッション雑誌だ

しかし、彼女の年齢向けではなく大学生を対象としたものだ

垣根「・・・なぁ、年齢が違いすぎないか」

心理「中学生向けの雑誌なんて総じて子供よ」

垣根「・・・御坂に謝れよ」

心理「あら、そういう悪口ではないわよ・・・」

垣根「・・・なんかお前、元気になったな」

心理「別に、あなたとの会話は楽しいから」

パラパラと雑誌を捲りながら心理定規がそっけなく答える

垣根「・・・そりゃ嬉しい一言だ」

心理「・・・ねぇ、あなたはどうなのよ?」

雑誌から目を上げて、心理定規が訊ねた

垣根「俺も、お前との会話なら大丈夫そうだ」

心理「そう」

垣根「あぁ」

パラパラ、と雑誌を捲る音だけが部屋に響いた

少しだけ顔の赤い二人は、5月病の倦怠感に身を任せながら夜を過ごした




144 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:05:29.09 KKyV73ke0 121/807



上条「・・・福岡というのは素晴らしい所だ!」

垣根「ヤクザとか絡みの事件が多いけどな」

上条「博多美人って言葉さえある!」

垣根「発砲事件とかあるけどな」

上条「博多ラーメンは有名なんてもんじゃない、もはや一つのジャンルにさえなっている!」

垣根「手榴弾見つかったりするけどな」

上条「なんなんだよ!そんなに福岡が嫌いか!?」

美琴「当麻・・・あんまり垣根のボケに付き合ったらダメよ」

エツァリ「そうですよ、ボケはスルーしなければ永遠に続きますから」

ショチトル「しかし、リニアモーターカーなんて九州にまで通ってるんだな」

心理「学園都市の中と差があるとは言っても、日本の科学技術は世界でも随一ですもの」

垣根「そうそう、まぁ御坂が強力な電磁波発生させない限りは誤作動もないさ」

上条「な、なんかフラグを建ててしまった気が・・・」

美琴「大丈夫よ・・・さすがに能力を発動したりはしないから」

心理「それがいいわよ」

エツァリ「・・・しかし、御坂さんは外でも有名人なのでは?」

美琴「ま、まぁちょっとはね」

ショチトル「ちょっとなんてもんじゃないだろ」




145 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:06:11.71 KKyV73ke0 122/807

心理「学園都市のマスコットみたいなものですものね」

上条「たしか・・・外に弁論しに行ったりするんだっけ」

美琴「もう・・・せっかくの旅行なんだからそういう話は無しにして」

垣根「そりゃ悪かったな」

一同が乗っているのはリニアモーターカーだ

電磁石の仕組みを利用してなんたらかんたら、らしいが馬鹿な学生の上条には分からない

ただとにかく速いらしく、学園都市から福岡までわずか40分だ

そして既に20分は経過している

今は大阪の真上辺りかな、と適当な予想を立てながら外の景色を・・・

楽しむことは出来ない、機体の両側は壁で覆われていた

上条「・・・飛び出さないためかな」

ショチトル「そうなのか?科学の技術には全く知識がないからな・・・」

エツァリ「・・・飛んでいってしまうんでしょうか」

垣根「そういうことにしとけ」

美琴「でも新幹線だってトンネルの中がほとんどだし、変わらないわよ」

心理「速く目的地につけるのはいいけど・・・景色が楽しめないなら楽しさが半減よね」

座席に備え付けられていた雑誌を読みながら心理定規が悪態をつく

たしかに、移動中の景色を楽しむのも旅行の醍醐味だ




146 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:06:57.99 KKyV73ke0 123/807

上条「でも、すぐにつけるのは魅力だよな」

美琴「世界がぐんと縮まったって感じよね!」

ショチトル「そうだな、こんな離れた距離を一瞬で行き来出来るなんて」

エツァリ「科学技術とは恐ろしいものですね・・・」

垣根「アホかよ・・・海外とか遠い観光地に憧れるのは、そういう所は時間がなけりゃ行けないような夢の世界だからだ」

上条「そ、そうか?」

垣根「もしもアメリカとかイギリスに1時間で行ける機械が発明されてみろ、みんなこぞって旅行に行くだろうな」

心理「でもはたしてそれは旅行なのかしら?海外ってのは生涯で何度かしか行けないからこそ楽しいものなのよ」

垣根「世界の他の国なんて時間掛けて行くから楽しいんだよ・・・毎日行けるようになったら旅行の楽しみなんて無くなるな」

上条「な、なんか現実的な意見だな・・・」

美琴「・・・私はいろんな国に行けるのは楽しいと思うけどなぁ・・・」

心理「それだけ海外から人がやって来るのよ、犯罪や貿易なんかのリスクも考えたらそんな絵空事、叶えたくはないわね」

ショチトル「・・・こういうとこ辺り、お前達は冷静だよな」

エツァリ「そうですね・・・」

垣根「別に冷静なんかじゃねぇよ」

心理「・・・あ、博多ラーメンの広告も載ってる」

上条「どれどれ?」

心理「ほら・・・やっぱり九州なら豚骨ラーメンよね」

美琴「私、味噌が好きなんだけどな・・・」




147 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:07:33.69 KKyV73ke0 124/807

上条「俺は醤油かな」

ショチトル「醤油豚骨に決まってるだろ」

エツァリ「いえいえ、塩も捨て難いですよ」

垣根「まぁ九州の豚骨ラーメンは美味いからな・・・」

垣根も心理定規が持っている雑誌を覗き込む

安い宿から高いホテルまで載っていたり、温泉や観光地の地図が書かれたりしている

中々便利な雑誌だ

しかも「自由にお持ち帰り下さい」なんて書かれている

心理「・・・スポンサーでもついてるのかしら」

垣根「だろうな、こんな雑誌に載せられてたら計画立ててないヤツらはイチコロだ」

上条「ま、また現実的な話を・・・」

美琴「・・・ところで、二人とも体調は?」

心理「万全とまでは言わないけど、まずまずよ」

垣根「温泉とか入ったら癒されるだろうな」

エツァリ「・・・垣根さんと温泉が組合わさると覗きしか出てこないんですが」

垣根「お前だって喜んで付き合うじゃねぇか」

エツァリ「だ、誰が喜びますか!」

美琴「エツァリさん、私達はもう知ってるから大丈夫よ」

上条「そうだって、俺は変態なお前も友達だと思ってるからさ」

エツァリ「」



148 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:08:59.07 KKyV73ke0 125/807

ショチトル「・・・そういえば、泊まるホテルは決まったのか?」

美琴「うん、プールもついてるホテルよ」

心理「ますます昔の旅行を思い出すわね」

垣根「あぁ・・・そういや昔もそんな感じのホテルだったっけか」

ショチトル「懐かしいな・・・あのホテルで初めてお前達に会ったんだよな」

上条「そうそう・・・あの頃はまだ垣根と心理さん、付き合ってなかったな」

心理「でもファーストキスはあの旅行だったのよ?」

美琴「そうだったの?」

垣根「忘れたよそんな昔のこと・・・」

心理「あら、だったらどうして顔が赤いのかしら」

垣根「赤くねぇよ」

心理「赤いじゃないの」

垣根「あと、あのホテルじゃエツァリとショチトルが付き合いだしたな」

エツァリ「えぇ、ショチトルの色仕掛けに嵌りまして」

ショチトル「ふん、素晴らしい攻撃だっただろ」

上条「なんだよその告白は・・・」

ショチトル「洋画なんかでよくあるじゃないか」




149 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:20:23.71 KKyV73ke0 126/807

垣根「・・・にしてもリニアモーターカーは静かだな」

美琴「新幹線なんかと違って、かなり静音製に優れてるからね」

上条「ふーん・・・そうなんだ」

美琴「・・・中学校の理科の授業なんかで聞いたでしょ」

上条「き、記憶にございませんが」

美琴「知識は残ってるんでしょ・・・」

心理「・・・上条君がそんな難しい知識を持っているわけないでしょ」

上条「な、なんてひどい!!」

エツァリ「・・・おっと、もうすぐで着くみたいですよ」

ショチトル「この静かな旅も終わるな・・・」

エツァリ「・・・これからうるさくなりますよ」

上条「・・・そうだな」

垣根「あーあー、エツァリとショチトルが真面目キャラに転向しようとしてるよ怖いよー」

心理「安心しなさい、変態は簡単にまともにはなれないのよ」

エツァリ「・・・そんなこと言わないでください」

美琴「・・・さて、みんなそろそろ着くから荷物まとめてね」

一同「はーい」



150 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:40:19.80 KKyV73ke0 127/807


垣根「こ、ここが福岡・・・!!」

上条「すげぇ・・・なんか学園都市とは違った雰囲気だな」

心理「それはそうでしょ・・・私、福岡出身なのよね」

美琴「え、そうなの!?」

心理「ウソ」

美琴「」

上条「み、見渡す限りの博多だなぁ垣根!!」

垣根「ここは博多じゃねぇ、北九州市だ」

上条「」

エツァリ「・・・しかし、九州というともう少し田舎のイメージがありましたが・・・」

ショチトル「こうして来てみると、かなり都会だな」

上条「そ、そうだな・・・ここは北九州市だからな!!」

心理「さて・・・まずはどこに行く?」

垣根「昼飯でいいだろ」

地図を広げながら、垣根が答える

ラーメンにするか、それ以外にするかでまずは迷ってしまう



151 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 11:52:28.46 KKyV73ke0 128/807

垣根「よーし!!まずは博多ラーメンにしようぜ!!」

エツァリ「そうですね、到着早々ですし、まずはベタなものから」

美琴「たしか、博多ラーメンって麺の堅さを選んだりするのよね?」

上条「そうなのか?」

心理「細麺だけど、柔らかいのから堅いのまであるわよ」

ショチトル「柔らかいのが堅くなるのか」

心理「何か言ったかしら」

ショチトル「いいえ」

美琴「・・・それにしても、こんなに福岡って人が多いのね・・・」

上条「あぁ、なんか東京とかより多いな」

垣根「・・・いや、おかしくないか?福岡ってたしかに都会なほうだけどよ・・・」

心理「・・・仕方ないわよ、今はゴールデンウィークじゃない」

上条「?どういうことだよ?」

心理「ここは福岡よ・・・この時期ならあれがあるじゃない」

上条「・・・あれ?」


心理「どんたくよ、どんたく」

一同「ど、どんたく!?」



152 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 12:06:09.86 KKyV73ke0 129/807

心理「あら・・・わざわざこの時期だから福岡を選んだと思ったのに」

上条「し、知らなかった・・・」

美琴「どんたくってお祭りよね・・・?」

心理「えぇ」

ショチトル「ちくしょう!!着物を持ってきていないぞ!!」

エツァリ「自分としたことがこんなコスプレさせる機会を逃すなんて・・・」

上条「・・・美琴!!き、着物を買いに行くぞ!」

美琴「い、今から!?」

心理「もう、これからお昼よ?」

垣根「ラーメン食うんだろ?」

上条「あぁもう!!着物のほうが大事だろ!?」

垣根「はぁ・・・別にいいじゃねぇか、着物じゃなくても」

上条「よくないんだよ!!着物を着ながら大きな山車を見つめる、それがいいじゃんか!」

垣根「それはねぶただろ・・・どんたくはどっちかって言ったら演舞を見るお祭りだぜ?」

上条「どっちにしろ、着物がいいんだよ!!」

垣根「いやぁ・・・はっぴだろ」

美琴「と、とにかく昼ご飯食べながら考えましょ!!」

上条「・・・分かった」


153 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/08 12:49:57.33 KKyV73ke0 130/807


上条「・・・で、博多ラーメンの店に来たのですが」

垣根「・・・混みすぎだな」

美琴「・・・そもそも、人が多いのよ」

ショチトル「ふん・・・どんたくなんてえさに釣られた豚共が!!」

エツァリ「・・・列が長いですね・・・」

ゾロゾロ、と並んでいる列の中ほどに6人はいた

しかし、並んですでに20分ほど経ったにも関わらずほとんど列は進んでいない

垣根「・・・ちくしょう、陽射しが眩しいぜ・・・」

心理「そうね」

上条「・・・な、なぁ・・・なんで日傘を差してるんだ?」

美琴「っていうか・・・どこから持ってきたのよ?」

心理「こういうのを持ち歩くのは女性として当たり前よ?」

真っ白な日傘を差しながら、心理定規がクスクスと笑う

垣根「・・・でもな、列に並んでるときにそういうのを差してると嫌がられるぞ」

美琴「たしかに・・・ちょっとかさばるわね」

心理「前は上条君、後ろはエツァリ君よ?迷惑じゃないでしょ」

エツァリ(なんとなく傷つきました)



156 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 11:59:09.81 Hj9JMxWu0 131/807

垣根「・・・九州ってさ、5月でもかなり暑いんだな」

美琴「そういうもんなんじゃないの・・・」

上条「・・・しかも今晩はどんたくなんだろ?もっと暑くなるぞ・・・」

心理「そうね・・・下手をすれば死人まで出るらしいから」

ショチトル「そ、そうなのか・・・」

エツァリ「それはねぶたの話では?」

心理「どんたくでもたまに出るとか出ないとか」

美琴「ど、どっちなのよ」

上条「・・・とにかく、見るからには怪我にも気をつけないとな」

垣根「えー・・・参加するのかよ・・・」

心理「当たり前じゃない、せっかくどんたくがあるのよ?」

垣根「お前は山があったら登りたくなる人間かよ・・・」

上条「・・・いいじゃないか、せっかくの旅行なんだしさ」

美琴「そうそう・・・」

垣根「・・・あぁくそ・・・腹減った・・・」

腹ぺこキャラは他にいるぞ、と上条は言いそうになる

だが垣根の呟きも仕方ないだろう



157 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 11:59:51.99 Hj9JMxWu0 132/807

博多ラーメンの列に並び始めてもう30分以上立つ

今更他の店にするわけにもいかず、とりあえず我慢しているといった状況なのだ

今まで誰も文句を言いたがらなかったが、ここにきてとうとう垣根が耐え切れなくなったようだ

垣根「・・・なんで博多ラーメンなんて食べなきゃいけないんだよ・・・」

美琴「・・・当たり前の選択じゃない」

ショチトル「そうだぞ」

垣根「もっと他に食べられる物は一杯あるんだよ・・・」

エツァリ「・・・垣根さん、旅行は楽しまなければいけませんよ」

垣根「んなことくらい分かってんだよ・・・」

心理「ほら、少し進んだわよ」

美琴「えっと・・・あと5組が食べ終わったら私達の番ね」

垣根「長いんだよ・・・いいか、今食い終わったヤツらなんて1組か2組だ」

上条「まぁまぁ・・・」

垣根「・・・」

垣根がため息をつく

まだ5月病のだるさは残っているのだ

こんな体調でずっと立たされているなんて堪らない




158 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 12:00:23.15 Hj9JMxWu0 133/807

垣根「よくお前は堪えられるな・・・」

心理「あら・・・文句を言ってもよくならないなら、静かにしていましょうよ」

美琴「心理定規の言う通りよ・・・こんなところで文句言ったって意味ないじゃない」

垣根「分かったよ・・・」

携帯を取り出した垣根がめんどくさそうに答える

上条「な、何やってんだ?」

垣根「一方通行のヤツに自慢してんだよ」

エツァリ「彼にですか?」

ショチトル「なんだかリアクション薄そうだよな」

垣根「いや、結構面白いぜ」

メールの文面を見せながら垣根が笑う

「土産くらい買ってきてくれよな」という短い文章だった

美琴「?添付画像があるみたいだけど」

垣根「あぁ、これか」

画像を開いた垣根が再度、みんなにそれを見せる

番外個体と打ち止めが羨ましそうに駄々をこねている最中の画像らしい




159 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 12:04:45.12 Hj9JMxWu0 134/807

心理「あら・・・あの子達も誘ったのに」

垣根「調整と重なったんだってさ」

上条「だから来れなかったのか・・・」

エツァリ「少し気の毒ですね」

美琴「でも仕方ないわよ・・・今度また一緒に行けたら行きたいかな」

心理「そうね・・・お土産、楽しみにしててって返してよ」

垣根「言われなくてもそう返したさ」

心理「分かってるわね」

垣根「・・・にしても、旅行なんて久々だな・・・」

携帯をポケットに直しながら垣根が言う

美琴「・・・そうね、私も久しぶりかな」

エツァリ「こうやって平和な日常を暮らせるのは幸せですね・・・」

心理「・・・そうね」ジーッ

ショチトル(・・・心理定規、エツァリに対する態度が冷たいな・・・なんか足元睨みつけてるし)

エツァリ(・・・じ、自分は嫌われているのでしょうか・・・)

心理(・・・エツァリ君、言いづらいけど靴下が右左で違うのよね)

垣根(急いで準備してきたんだろうな)




160 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 12:13:49.61 Hj9JMxWu0 135/807


上条「・・・やっと俺達の番だ・・・」

垣根「首を長くして待ってたぜ・・・」

エツァリ「え、長くなってるんですか?」

一同「・・・」

エツァリ「・・・なんでもないです」

ショチトル「なぁ、こういうときって店に入る態度とか決まってるのかな?」

美琴「?どういうこと?」

心理「あら、美琴知らないの?九州の人間は店に入るとき一発ギャグをするのよ」

美琴「う、嘘よね?」

心理「ふふ・・・まぁ嘘だと思うなら何もしなくていいわよ、その代わり何も食べさせてもらえないでしょうけど」

美琴(心理定規が言ってるとなると・・・この情報は本当ね!!)

ショチトル「じゃあ入るか」

心理「えぇ」

ショチトル(・・・一発ギャグか・・・)

美琴(ど、どうしよう・・・)

心理(・・・冗談だって教えてあげたほうがよかったかしら?)

垣根(・・・ラーメンイケメン僕ツケメン!!ってウケるかな)



161 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 12:30:05.08 Hj9JMxWu0 136/807


上条「お邪魔しまーす」

「いらっしゃませー!」

美琴「ぜ、前転からの後方宙返り!!出来るかー!!」

ショチトル「イヤよイヤよも隙のうち!!」

エツァリ「さぁ!!俺の下半身のトラウィスカルパンテクートリを受けてみろ!!!」

垣根「ラーメンイケメン僕ツケメン!!」

「あ、あの・・・」

心理「ごめんなさいね、遠出してきたからテンションがおかしいのよ、寝てないの」

「は、はぁ」

一同「」

上条「え、えっと・・・6人です」

「ではこちらへどうぞ」

店員に案内された席へと座る


上条「・・・トンコツの匂いがするな」

心理「やっぱり博多ラーメンならトンコツよね」

美琴(・・・一発ギャグ・・・滑った・・・)

ショチトル(ちっ、分かりにくいボケだったか)

エツァリ(・・・なぜ下ネタにしてしまったのでしょうか)

垣根(・・・腹減った)





162 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 12:55:16.88 Hj9JMxWu0 137/807

上条「えっと・・・トンコツラーメンを」

垣根「みんなそれでいいだろ」

心理「えぇ」

「ではトンコツラーメンを6つでよろしいですね?」

上条「はい」

「少々お待ちください」

上条「・・・楽しみだなぁ・・・」

美琴「トンコツラーメンって美味しいわよね、ちょっと油っこいけど」

エツァリ「そうですね・・・自分はあっさりしたほうがいいんですけどね」

垣根「でもな、博多ラーメンはあまり濃くならないように麺を細くしてるんだよ」

上条「!!そういえば、麺の固さ・・・」

心理「何も言わなければ普通の堅さになるらしいわよ」

ショチトル「鹿児島のラーメンもそうらしいぞ」

垣根「まぁ、チェーン店じゃそんなこともないからな」

エツァリ「・・・九州は食文化が面白いですね」

心理「あなたの靴下も面白いわよ・・・」ボソッ

エツァリ「?なにか?」

心理「なんでもないわ」



163 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 13:43:11.33 Hj9JMxWu0 138/807

上条「あ、来た来た!!」

美琴「へぇ・・・トンコツラーメンの真骨頂って感じのコテコテ感ね・・・」

垣根「・・・すげぇ、底が見えねぇ・・・」

ショチトル「・・・なんだか濃そうな見た目だな」

心理「いただきます」

エツァリ「・・・なんだか朝には食べられないイメージですね・・・」

そんなことを言いながら一同が博多ラーメンを口にする

上条「あ、結構いい感じじゃないか」

美琴「うん、濃いけどくどい味じゃないわね!」

ショチトル「わー、味の宝石箱やー」

エツァリ「・・・細い麺としっかりした味のスープが絡んでいいですね」

ショチトル「わー、味の」

垣根「スープだけを飲むのは少しきついかもな」

心理「でも、スープだけが余ったら替え玉をすればいいのよ」

上条「あぁ、博多ラーメンって言ったら替え玉だよな」

美琴「ふーん・・・知らなかった」

心理「この濃い味なら替え玉でもしっかりした味が楽しめそうね」

ショチトル「・・・味の宝石箱やぁ・・・」ボソッ



164 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 13:55:48.23 Hj9JMxWu0 139/807

垣根「・・・替え玉、頼んでみるかな」

上条「俺も」

二人が店員を呼んで替え玉を注文する

美琴「・・・二人ともよく食べるわね・・・」

上条「だって美味しいからさ・・・」

美琴「もう、ほっぺたにネギついてるし・・・」

上条「え、どこ?」

美琴「ほら、ここ」

美琴が上条の頬についていたネギを取る

それを見ていた垣根とエツァリが、そっとネギをほっぺたにつける

垣根「心理定規ォォ!!ほっぺたにネギがついちゃった・・・」

エツァリ「ショチトル、ぜひともその舌で取っていただけたら・・・」

心理ショチトル「自分で取れ」

垣根エツァリ「」

美琴「・・・アンタたち、そういうのは天然でしちゃうからこそ母性をくすぐるのよ?」

垣根(・・・ネギ・・・)

エツァリ(ネギネギ・・・)


垣根エツァリ(ナーガネギフラメンコ、オレ!!)

心理(やめなさい)



165 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/09 14:14:31.92 Hj9JMxWu0 140/807

垣根「・・・あ、替え玉来たな」

店員の持ってきた替え玉が、ラーメンのどんぶりに入れられる

上条「へぇ・・・替え玉ってかなりお得だな」

心理「そうね、でも原価を考えればこれでもボッタクリよ?」

垣根「そういう現実的なことを言うな」

心理「あらごめんなさい」

ショチトル「・・・私は餃子も頼みたいな」

エツァリ「おや、あなたは餃子が好きなのですか?」

ショチトル「ラーメン食べたら一緒に食べたくなるだろ」

心理「ちょっと分かるけど・・・匂いがきついじゃない」

ショチトル「ふっふーん、学園都市製の口臭消しを持っている私には関係ない!!」

美琴「そんなの持ってきてるの?」

ショチトル「いざというときのためにな!!」

垣根「そもそも本当に女性らしいなら餃子なんて外では食わないけどな」

上条「そうだな・・・」

ショチトル「・・・いいもん、食べるもん」



174 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 17:34:51.18 0NET4HGz0 141/807

上条「なんだよ、いつもの美琴らしくないな・・・」

美琴「私だって女の子よ!?大体、当麻が思ってるよりずっとずっと乙女だもん!」

上条「ご、ごめん」

垣根「ぎゃーぎゃー喚いてる時点でお前は乙女じゃねぇよ・・・」

美琴「な、何よ・・・」

垣根「はいはい、とりあえずお勘定な」

垣根がパンパン、と手を叩いて席から立ち上がる

垣根「丼は端に寄せとけよ、店員が取りやすいようにな」

エツァリ「は、はい」

垣根「俺がまとめて支払っとくからお前達は外で待っとけ」

ショチトル「あ、あぁ・・・」

すたすたと垣根がレジに歩いていく

それをポカンと四人が見つめていた

心理「どうしたのよみんな、驚いたような顔して」

上条「・・・俺の知ってる垣根じゃない・・・」

美琴「なんなのよ・・・いきなり出来るイケメンになっちゃったわよ・・・」

ショチトル「ちょっと濡れた・・・」




175 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 17:35:30.49 0NET4HGz0 142/807

エツァリ「・・・なんというか、かなり手慣れた感じでしたね」

心理「あなた達ね・・・垣根のことをなんだと思ってるのよ」

上条「・・・もっと馬鹿やってるのが垣根だよな・・・?」

美琴「・・・あんなのただのカッコイイお兄さんよ・・・」

心理「はぁ・・・ほら、垣根が言ってたんだし外で待ってましょうよ」

エツァリ「はい・・・」

五人が店の外で垣根を待つ

道を行き交う人々は、美琴のほうを見て何やらヒソヒソと話をしている

上条「・・・やっぱり有名人なんだな」

心理「大覇星祭なんかはテレビで放送されたりやするから仕方ないわよ」

ショチトル「・・・イヤじゃないか、美琴?」

美琴「?大丈夫よ、慣れてるから」

上条「・・・あのさ、俺は美琴のことを超能力者だとかお嬢様だとか、そんなふうには見てないからな?」

美琴「あ、ありがとう・・・」

ショチトル「・・・さすが上条だな」

エツァリ「えぇ、御坂さんのことをしっかりと考えられています」




176 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 17:36:12.84 0NET4HGz0 143/807

上条「あんまり褒めるなよ・・・」

ポリポリ、と上条が頭を掻く

垣根「いーや、褒められるべきことだぜ、彼女を一人の女の子として見るのは大切なことだ」

上条「お、支払い終わったのか」

垣根「まぁな・・・」

心理「お疲れ様」

美琴「・・・垣根もわりと有名人になっちゃってるんじゃない?」

垣根「大覇星祭か?関係ないって、あくまであれは常盤台とか長点上機みたいな学校にスポットライトが当たるもんだからさ」

ショチトル「なるほどな・・・お前一人にスポットライトが当たることはないのか」

垣根「御坂は常盤台でお嬢様、容姿端麗って三拍子揃ってるからな」

美琴「な、なんか垣根が私のこと褒めてると気持ち悪い・・・」

垣根「そうか?」

上条「・・・なんか旅行に来た途端、垣根がいいヤツになったな・・・」

垣根「映画の時のジャイアンかよ・・・で?これからどこ行くんだよ」

上条「そうだな・・・夜はどんたくに行くとして、それまでは・・・」

美琴「福岡か・・・たしかホークスのドームがあったわよね?」

心理「あんなもの見ても何にもならないわよ」




177 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 17:36:45.13 0NET4HGz0 144/807

ショチトル「・・・野球好きな少年達が聞いたら泣き出しそうな台詞だな」

心理「それより、博多の街を練り歩きましょうよ」

垣根「・・・なんでそうなったんだよ」

心理「あら、あなただって博多美人を見てみたいでしょ?」

垣根「別に・・・あんま興味ねぇな」

上条「・・・いつもの垣根なら食いつきそうなのにな」

垣根「そうか?綺麗な女なんてゴマンといるじゃねぇか」

ショチトル「すごい台詞だな」

垣根「・・・他に観光地はないのかよ」

上条「あ、じゃあさ・・・太宰府天満宮、行ってみないか?」

垣根「お、いいなそれ」

心理「あら・・・恋愛成就とかなら喜ぶけど、あれって学業の神様じゃない」

上条「だからこそなんだよ!俺は学業を成就させたいんだ!」

ショチトル「いやに切実だな」

エツァリ「上条さん・・・そんなに成績がまずいんですか」

上条「・・・察してくれよ・・・な、いいだろ?」

垣根「景色が良さそうだし・・・何より名所だからな」

心理「はぁ・・・分かったわよ」

美琴「ここからならバスで1時間くらいね」

垣根「じゃあ行きますか」

上条「おう」





179 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 17:40:33.51 0NET4HGz0 145/807




上条「ここが太宰府天満宮・・・!」

垣根「なんて大きなフォルムなんだ・・・」

心理「へぇ・・・つまらないと思ってたけど見てるだけでも面白いかもね」

一同は太宰府天満宮の本殿を眺めていた

とはいってもまだ間近で見ているわけではない

かなりの参拝客の数で、列に並んでいるのだ

美琴「すごいわね・・・」

ショチトル「ふん、成績の悪そうなヤツらがわんさかいるな」

エツァリ「ショチトル・・・そういうことは言わないで下さい」

垣根「・・・にしても、長い列だな」

心理「・・・ラーメン屋といい、こんな行列も珍しいわね」

上条「・・・どんたくだからか?」

美琴「それは関係ないでしょ・・・」

ショチトル「・・・それで?上条はともかく、私達は何をする?」

エツァリ「・・・お参り・・・でしょうか」

ショチトル「ふん、神様はアステカのものしか信じていない」

上条「なに堅いこと言ってるんだよ・・・」

垣根「第一、ここは神様じゃなくて菅原道真を奉ってるんだよ」

ショチトル「・・・その菅原さんは偉い人なのか?」

垣根「・・・まぁ、すげぇヤツだったよ、あいつは」

心理「あなた誰よ」



180 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 17:52:22.50 0NET4HGz0 146/807


垣根「・・・じゃあ、俺は適当にぶらついとくよ」

心理「あら、あなたもお参りしなさいよ」

垣根「・・・俺は学問のこととか祈る必要がないからな、大体死んでる人間に自分の運命を任せたくもないしな」

ショチトル「聞いたか上条?」

上条「聞こえない聞こえない・・・」

美琴「・・・私も一応お参りしておこうかな、せっかく来たんだし」

エツァリ「自分もそうしましょう」

垣根「んじゃ、俺はあっちの巫女さんと話しとくよ」

心理「あなた・・・それがしたいだけでしょ」

垣根「ち、違うもん!!」

エツァリ「どうしてそこで駄々っこになるんですか・・・」

美琴「どうでもいいけど、あんまり遠くに行かないようにね?」

垣根「ミコっちゃんったら心配性だねぇ」

美琴「今度その呼び方したらぶん殴るわよ」

垣根「ごめんなさい」



181 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 21:07:10.67 0NET4HGz0 147/807


垣根「・・・はぁ、しかし人が多いな」

心理「・・・そうね」

垣根「・・・なぁ、なんでお前もついてきたんだよ」

太宰府天満宮の敷地内、そのおみくじ売り場に二人は来ていた

他の四人はまだ列に並んでいる

心理「・・・あなたが巫女さんにちょっかいを出さないか心配だからよ」

垣根「出さねぇよ・・・」

心理「あら、あなた結構プレイボーイじゃないの」

垣根「・・・で?おみくじやるのか?」

心理「当たり前じゃないの」

垣根「あぁそう・・・」

若干肩身の狭い思いをしながら、垣根は歩く

心理「なによ、私がいるのがいや?」

垣根「いやじゃねぇけどさ・・・」

心理「いいじゃない、別に一緒にいても」

垣根「・・・まぁ、お前と二人きりになれたのは嬉しいけどな」




182 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 21:21:29.41 0NET4HGz0 148/807

心理「・・・それにしても、おみくじも色々あるわね・・・」

垣根「・・・非科学的なものの代表だよな・・・」

心理「そう言いながら財布取り出すのね・・・」

垣根「俺はメルヘンなものが好きなんだ!!巫女さん、おみくじ一つ!!」

「500円になります」

垣根(・・・なんでこんなに高いんだ?)

心理(仕方ないでしょ、私も払うから)

垣根「・・・二つくれないか」

「えぇ、どうぞ」

垣根「1000円な、はいよ・・・」

それほど渋る感じもなく1000円札を垣根が差し出す

心理「あなたはどっちがいい?」

垣根「そうだな・・・」

購入した二つのおみくじを、じっと見つめる

中の結果が透けるわけはないが、なんとなく吟味してみたいものだ

垣根「・・・お前はどっちがいい?」

心理「・・・せーので指差してみる?」

垣根「おぉ、いいぜ」



183 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 21:41:25.82 0NET4HGz0 149/807

心理「せーの」

二人が指差したのは、右のおみくじだった

垣根「・・・やっぱりこっちがよさ気だよな」

心理「えぇ・・・なんか左はイヤな予感がするわね」

垣根「・・・ジャンケンでいいか?」

心理「いいわよ、私は左でも」

垣根「そ、そうなのか?」

心理「えぇ、あなたの不幸も引き受けてあげるわよ」

垣根「優しいな!!」

垣根が右のおみくじを手に取る

垣根「・・・でもさ、こっちがよかったらどうしよう」

心理「あなただって右を選んだじゃないの、別に構わないわよ」

垣根「じゃあ、せーので開けるか」

心理「えぇ、じゃあ・・・せーの!!」

二人が勢い良くおみくじを開ける


心理「・・・あら、中吉ね・・・恋愛運は最高、金運は少し・・・ね」

垣根「・・・」

心理「?どうしたのよ」



184 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/10 22:01:18.72 0NET4HGz0 150/807

垣根「大凶・・・だと?」

心理「あらホントね・・・」

垣根「恋愛運は最悪・・・金運も最悪!!」

心理「いいじゃない、今がどん底ならこれからあとは上がるだけよ」

垣根「・・・そうかな?」

涙目になりながら、垣根が訊ねる

心理「えぇ、それにあなたは私に幸せをくれたのよ?」

垣根「あ、あぁ・・・!!」

心理「ほら、だからそんな顔しないで」

垣根「なんか、自信が出たよ・・・」

心理(・・・私が譲らなかったら、垣根は当たりだったのに)

垣根「・・・で、おみくじは終わったけどこれからどうする?」

心理「そうね・・・もう戻る?」

垣根「えー、もう少し散策しようぜ」

心理「・・・そうね、じゃあ」

心理定規が垣根の手を取る


心理「・・・ちょっとだけ、二人きりで散歩しましょ?」

垣根「おうよ」



190 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 17:43:34.80 AJStJZqr0 151/807

上条「・・・やっと俺達の番か」

美琴「長かったわね・・・」

エツァリ「・・・そういえば、お賽銭はいくら入れればいいのでしょうか」

ショチトル「適当でいいんじゃないか」

上条「・・・学問の神様だし、ご縁が云々も関係なさそうだな」

美琴「そう?学問にご縁がありますように、っていうのは?」

上条「な、なんだかややこしくなってきたぞ?」

顔をしかめながら上条が財布を覗き込む

いくらお賽銭とはいっても大金を払うわけにはいかない

100円でさえ惜しいのを必死に我慢して払うのだから

エツァリ「・・・早くしないと後ろがつっかえてますよ」

美琴「どうする?私はもう決めたけど」

上条「そっか・・・ってなんで万札を取り出してるんだよ!?」

美琴「だ、だって当麻のお馬鹿は一万円くらい払わないと治りそうにないもん!」

上条「ひ、ひどい・・・」

ショチトル「ははは!間違いないな」

エツァリ「・・・自分は200円にしておきます」

ショチトル「どういう基準だったのか気になるが・・・私もそうしよう」

上条「・・・美琴、せめて1000円までにしてくれ」

美琴「じゃあそうするわよ・・・当麻はいくら払うの?」




191 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 17:44:06.72 AJStJZqr0 152/807

上条「・・・50円」

ショチトル「・・・うん、いいんじゃないか?賽銭なんて所詮は気持ちの問題だからな」

エツァリ「そうですね、頭が良くなりたいという願いがたった50円で叶えられると思ってるならそれでいいでしょう」

上条「・・・100円にしよう」

財布から100円玉を取り出し、賽銭箱に向かって投げる

ショチトル「おぉ、上手く入ったな」

エツァリ「えぇ、100円分の気持ちが叶うでしょうね」

ショチトル「たった100円分でも叶ったらいいな」

上条「なぁ・・・俺になんか恨みでもあるのかよ!?そして美琴はこっそり額を増やそうとするな!」

美琴「だ、だって当麻が少ない額しか払わないから!」

上条「あぁもう!いいか、これはあくまで気持ちを支払うもんなんだよ!」

ショチトル「たった・・・」

上条「お前は黙ってろ!」

ショチトル「・・・」

エツァリ「上条さん、それは強く言いすぎです」

上条「わ、悪い・・・」

ショチトル「か、上条・・・もっと厳しく言ってくれないか?」




192 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 17:44:33.29 AJStJZqr0 153/807


上条「・・・で、美琴はどうするんだ?」

ショチトル(放置プレイとはまたまたマニアックな)

美琴「そうね・・・1000円にしておくわ」

美琴が1000円札を賽銭箱に入れる

上条「・・・金持ちは違うな」

美琴「さて・・・当麻の学業もどうにかなるだろうし、一件落着ね!」

ショチトル「これからどうする?垣根達の姿が見えないが」

エツァリ「多分、二人きりで散策でもされているのでは?」

上条「ふーん・・・たしかにここは景色も綺麗だからな」

美琴「じゃ、じゃあ私達も・・・」

上条「俺達は四人で見て回るか」

エツァリ「えぇ、そうしましょうか」

美琴「」

上条「じゃあ行こうか」

美琴「当麻の馬鹿ぁぁ!」

上条「は、はいぃ!?」





193 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 17:45:15.27 AJStJZqr0 154/807


垣根「・・・あぁ?なんか今御坂の声が聞こえなかったか?」

心理「はぁ・・・あの子ったら、人の目を気にしないで叫んだわね」

垣根「お嬢様なんだからもう少しそういうの気にしろってな」

心理「あら、お嬢様じゃなくても一人の女性として、よ」

垣根「・・・お前が語ってると有り得ないほどの説得力だよな」

心理「ありがとう」

垣根「・・・」

垣根と心理定規は太宰府天満宮の敷地内を適当に散策していた

擦れ違う人達の中には家族連れや学生、はたまた自分の親戚のためのお守りを買いに来た年寄りなどがいる

誰も垣根の正体には気づいていないのだろう、特に注目されることもなく歩いていた

垣根「・・・御坂は大変だろうな、どこに行っても有名人だ」

心理「学園都市が学生を招き入れるときは決まって彼女を引き合いに出すものね」

垣根「努力で超能力者になった、容姿端麗で表向きはしっかり者だぜ?そりゃ万人に好かれるだろ」

心理「表向きはって・・・あなた、美琴が聞いてたら怒るはずよ」

垣根「怒られても怖くねぇよ」

心理「・・・美琴の能力じゃあなたには手も足も出ないから?」

垣根「別に、そういう理由じゃねぇよ」

心理「じゃあどうして?」




194 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 17:45:50.52 AJStJZqr0 155/807


垣根「あいつは絶対に人を傷付けるようなことはしないさ」

心理「あら、昔は上条君と喧嘩仲だったらしいけど?」

垣根「傷付けるっていっても相手が強いって信頼してたからだろ、上条が本当の無能力者だったらんなことしねぇよ」

心理「・・・随分と美琴のことを分かってるわね」

垣根「どんだけ友達やってると思ってんだよ」

心理「それにしても、中々の推察よ」

クスクスと心理定規が笑う

垣根「なんだよ、嫉妬なんてやめろよな」

心理「嫉妬じゃないわ、感心してるのよ」

垣根「はぁ?なんでだよ」

心理「あなたは昔から人を見る目があったから」

垣根「・・・あぁそう」

大した興味もなさそうに垣根が頷く

別に自分がどう思われていようが彼には関係ない

垣根「・・・ここって恋愛成就とかのお守りはねぇのかな」

心理「あら、私達の恋愛は叶ってるじゃない」

垣根「姫神と吹寄の分だよ・・・あいつらにも土産はいるだろ」

心理「なるほど・・・でもここって学問の神様よ?恋愛はあんまりなんじゃない?」

垣根「頭のいいヤツはあんまり女遊びしない、ってか・・・」




195 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 17:46:17.08 AJStJZqr0 156/807

辺りを見回しながら垣根が鼻で笑う

たしかに、ぱっと見たかぎりでは恋愛関係のお守りはなさそうだ

心理「・・・あら、あれはどうかしら」

垣根「あぁ・・・?なんだよ、恋愛関係のもあるじゃねぇか」

しかし、端っこのほうに一つだけ恋愛関係のお守りらしきものを売っている店があった

垣根「えーっと・・・なんだこりゃ?」

心理「・・・日本のものじゃないみたいね」

垣根「あぁ・・・初めて見たぞ」

その店にあるのは様々な国のお守りのようだった

よくもまぁ太宰府天満宮の敷地内で堂々と外国のお守りを売れるものだ

敷地代を払えばいい、というような問題なのだろうか

垣根「・・・あの、これはどんなお守りなんですか」

ハートの形をしたお守りを指差しながら垣根が店員に尋ねる

「これは相手の心の臓を意味しておりまして、これを肌身離さず持ち歩けば相手の心を自分の物にすることが出来るのでございます」

心理「デザインからするとアメリカよね」

「その通りでございます」




196 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 17:46:44.05 AJStJZqr0 157/807

垣根「・・・これでいいや、二人分下さい」

「1500円になります」

垣根「・・・この値段を聞くといかにさっきのおみくじがぼったくりだったか分かるな」

そんな悪態をつきながら垣根がお守りを購入する

「あぁ、お客様」

垣根「ん、なんだよ」

「先程言いました通り、それは意中の相手の心の臓を表しております」

垣根「・・・あぁ、だから?」

「無くされたり壊されたりしないように、さもなくば相手の心の臓も同じ目に遭いますよ」

心理「・・・なんて不吉なお守りなの」

「まぁ、あくまでお守りなので」

垣根「あぁ・・・サンキュー」

少々後味の悪い話だな、と思いながら垣根と心理定規は店を後にする

垣根「・・・もうそろそろみんなと合流するか」

心理「・・・えぇ、そうしましょう」

垣根がポケットから携帯を取り出し、連絡を取り出した




197 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 18:02:53.59 AJStJZqr0 158/807


その30分前

上条(・・・な、なんで美琴は怒ってるんだ・・・)

美琴(・・・せっかく二人きりになれるチャンスだったのに・・・)

ショチトル「・・・なんならこれから二人きりになるか?」

美琴「だ、誰も当麻なんかと二人きりになんかなりたくないわよ!!」

上条「な、なんだそのひどいツンデレは!?」

美琴「知らないわよ、この鈍感男!!」

エツァリ「まぁまぁ・・・上条さんも悪気があったわけではないですし」

ショチトル「そうだぞ美琴、それに今回の旅行はみんなで仲良く元気良く、がモットーだっただろ」

上条「初めて聞いたぞ・・・」

ショチトル「今決めた」

上条「あぁそう・・・」

美琴「・・・いいわよ、二人きりなんてなれなくても」ムスッ

上条「め、めっちゃ不機嫌だな・・・」

美琴「不機嫌じゃないわよ!!」

エツァリ(・・・駄々っこですね)



198 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 18:14:55.51 AJStJZqr0 159/807

ショチトル「美琴、そんなにツンツンするなよ」

美琴「だ、だって・・・」

上条「・・・その、二人きりになりたかったのか?」

美琴「そ、そうだけどさ・・・」

カァッ、と美琴が顔を赤らめる

上条(お、俺はなんて鈍感だったんだぁぁ!!)

エツァリ(それがあなたの最大の欠点ですね)

ショチトル(美琴、いじけちゃってるな)

美琴「・・・ま、まぁいいわよ」

上条「ごめんなさい・・・」

美琴「・・・その代わり、これから帰るまでに精一杯楽しませるように!!」

上条「は、はい!!」

エツァリ(尻に敷かれてますね・・・)

ショチトル(可愛そうな上条だな)

美琴「じゃあ・・・私達はこれからどうする?」

上条「・・・おみくじでもしますか?」

ショチトル「そうしようそうしよう双子葉類」

エツァリ「・・・なんですかそれは」

ショチトル「うるせぇツッコむな!!!」

エツァリ「」




199 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/11 20:42:34.00 AJStJZqr0 160/807

上条「・・・それにしても、おみくじもいろんな種類があるな・・・」

美琴「何がどう違うのかしら?」

ショチトル「書いてある内容じゃないか?」

エツァリ「・・・恋愛運に重きを置くものもあれば、仕事運に重きを置くものもあるのでしょう」

上条「俺は学運が気になるな・・・」

美琴「恋愛運は?」

上条「それはもう最高で決まってるからさ・・・」

美琴「そ、そう」カァッ

上条(今日の美琴はよく表情が変わるな)

ショチトル(可愛いぞ美琴)

美琴(・・・さ、最高なんだ・・・)

エツァリ(・・・それにしても、本当に様々な種類のおみくじがありますね・・・)

美琴「!!ゲコ太おみくじがある!!」

上条「本当だ・・・なんか無理矢理な感じが・・・」

美琴「私、あれにするから!!」

上条「あ、あれをお前が買うのか?」

美琴「・・・ダメかな?」ウルウル

上条「いやいや!!いいと思うけどさぁ!!」



200 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 16:54:32.72 dRKY8lPo0 161/807

美琴「・・・それで、当麻はどれにするのよ」

上条「・・・俺はこのベタなおみくじでいいかな」

上条があるおみくじの店の前で立ち止まる

学問の神様が奉られている太宰府天満宮の中にあるのだ、やはり学問関係のおみくじをしたいものだ

ショチトル「・・・中々人気みたいだな」

美琴「・・・おみくじなんて気休めなんだけどね」

上条「そんなこと言いながらゲコ太おみくじガン見してるじゃんか・・・」

美琴「あ、あれはゲコ太好きとして見てるだけ!」

エツァリ「・・・自分達もこのおみくじにしましょうか」

ショチトル「そうだな、他の種類もあまり変わらないだろうし」

鼻で笑ってから、まずはショチトルがおみくじを購入する

値段は500円

貧乏学生の上条には少々きついが仕方ない

エツァリ「どうでした?」

ショチトル「小吉か・・・恋愛運はあまり良くないが仕事運はいいみたいだな」

美琴「えっと・・・転勤してくる相手に注意して接しなさいって」

ショチトル「そもそも働いていないんだがな」



201 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 16:55:09.48 dRKY8lPo0 162/807

エツァリ「・・・引っ越してきた人に気をつけていればいいのでは?」

ショチトル「あんまりご近所さんとも絡まないから関係ないな」

美琴「次はエツァリさんよ」

エツァリ「さて・・・自分はどうでしょうかね」

料金を払い、おみくじを開く

エツァリ「おや、大吉ですね」

上条「すげぇ!」

ショチトル「どれどれ・・・恋愛運、仕事運、金運どれも最高じゃないか・・・」

エツァリ「なになに・・・新たな恋を芽生えさせるよりも今の相手を大切にしろ、と」

ショチトル「ほう、いい結果だな」

上条「これ・・・彼女がいないヤツが引いたらどうするんだろうな」

美琴「今好きな人を追い続けろ、って解釈でいいんじゃない?」

上条「ふーん・・・」

ショチトル「ふーんじゃない、次はお前だぞ」

上条「あ、あぁ・・・」

上条がしぶしぶ料金を払う

卵が何パック買えるか考えてしまうのはもはやデフォだろう

上条「・・・多分大凶だろうな」

美琴「そんなことないわよ!」




202 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 16:56:06.41 dRKY8lPo0 163/807

エツァリ「上条さんは恋愛運はすごそうですよね」

ショチトル「こいつは何もしないくせに女がわんさか周りにいるからな」

上条「べ、別にそういうわけじゃないだろ・・・」

美琴「・・・早く開けなさいよ」

上条「若干不機嫌になってませんか美琴さん!?」

美琴「・・・ほら、早く開けるの!」

上条「あ、あぁ」

頷いてから、上条はおみくじを開いた

上条「・・・凶」

美琴「凶・・・」

ショチトル「凶だな」

エツァリ「普通の凶ですね・・・」

上条「仕事は失敗するでしょう・・・恋愛は、今の相手と喧嘩してしまいます・・・」

美琴「金運はお金を落としてしまう・・・」

ショチトル「これ、大凶よりひどいんじゃないか」

エツァリ「・・・旅をするなら東へ向かえ、らしいですね」




203 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 16:56:39.88 dRKY8lPo0 164/807

上条「学園都市から思い切り西に来てしまいましたよ!」

美琴「・・・えっと・・・ほら、おみくじなんてただのイベントじゃない!」

ショチトル「そうそう、書いてあることが真実ではないぞ」

エツァリ「そこまで真剣になって受け止めることないですよ」

上条「みんな・・・ありがとう」

美琴「・・・でさ、私はゲコ太おみくじ買っていいの?」

上条「あぁ、もちろん」

美琴「ちょ、ちょっと待ってて!」

小学生と一緒に並んだ美琴は、自分の番を今か今かと待っている

お嬢様とはいっても、結局は一人の女の子なのだ

ここでは世間体も繕う必要がない

上条「・・・なんかさ、ああいう美琴が一番いいよな」

ショチトル「何を今更、お前はあの美琴に惚れたんだろ?」

上条「うーん・・・美琴の全部に惚れたんだけどな」

エツァリ「素敵ですね」

上条「・・・ロマンチックとか、オシャレな恋愛じゃないけどな」




204 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 16:57:24.42 dRKY8lPo0 165/807

はは、と小さく笑ってから上条が目を細める

上条(でもさ・・・幸せにはしてやれてるよな)

美琴「当麻!買っちゃった!」

手におみくじを握った美琴が嬉しそうに戻ってくる

とても綺麗な中学生がそんな行動を取っているからか、周りは少し不思議そうな顔をしていた

上条「よかったな、早く開けてみな」

美琴「うん!」

満面の笑みを浮かべながらおみくじを開く美琴

美琴「!大吉!大吉よ当麻!」

上条「マジかよ・・・」

ショチトル「どれどれ・・・恋愛運は最高、今の相手と近いうちに更なる発展があります」

エツァリ「金運もいいですね・・・何もしないでもお金が手に入るらしいですよ」

上条「・・・これ、子供が対象なんじゃなかったっけ」

美琴「はい、当麻!」

上条「?」

なぜか美琴はそのおみくじを上条に差し出す




205 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 16:58:17.21 dRKY8lPo0 166/807

上条「あの・・・なんで俺に差し出してるんですか?」

美琴「だって当麻にあげたいから!」

上条「いやいや・・・お前がゲコ太好きなんだろ、お前が持ってろよ」

おみくじの表にはゲコ太が描かれている

たしかに、ファンである美琴には堪らないグッズだ

美琴「・・・でもさ、アンタはおみくじ最悪だったじゃない」

上条「はは・・・それはまぁ、不幸だからな」

美琴「だったら大吉も持ってて」

上条「?」

美琴「・・・アンタが不幸だ不幸だって言うなら、その分私が幸せを分けてあげるから」

上条「美琴・・・」

美琴「それに・・・それに、私はこんなもの持ってなくても十分幸せだから」

上条「・・・いいよ、お前が持っててくれ」

美琴「で、でも・・・」

上条「いいんだよ、俺だって十分幸せだ」

美琴「!い、いいの・・・?」

上条「ゲコ太のグッズ、本当は手放したくないんだろ?」

美琴「うん・・・」




206 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 16:59:12.33 dRKY8lPo0 167/807

上条「だったら俺はいいよ、美琴が笑ってくれなきゃ幸せになんてなれないしさ」

美琴「じゃ、じゃあ・・・」

美琴がおみくじを握ったまま、上条の手を繋ぐ

美琴「こうすれば、二人とも大吉よね」

上条「あ、あぁ」

顔を赤らめながら、二人が微笑み合う

もはやエツァリやショチトルなんて眼中になかった

ショチトル(なんなんだこの甘い空間は)

エツァリ(自分は・・・ここにいていいのでしょうか)

ショチトル(大体なんだよ・・・あまりに幸せすぎるだろこの二人)

エツァリ(・・・甘すぎてコーヒーが飲みたくなってきました)

上条「!な、なんだよお前達!」

エツァリ「・・・いえ、微笑ましいと思いまして」

美琴「ぜ、絶対に呆れてたわよね!?」

ショチトル「そんなことないさ、甘すぎてびっくりしただけだ」

上条「そ、そんなにひどかったかな?」




207 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 17:00:07.49 dRKY8lPo0 168/807

ショチトル「全世界の独り身が嫉妬するぞ」

美琴「なによそれ・・・」

エツァリ「・・・おや、上条さんの携帯が光ってますよ」

上条「あ、本当だ」

ポケットの中で光る携帯を取り出す

上条「垣根だ、多分合流するんだろうな」

美琴「じゃあ早くしましょう・・・そろそろどんたくの会場に向かわないと」

ショチトル「・・・あまりどんたくにも長居はしたくないな」

美琴「ちょっと見たら帰るわよ」

エツァリ「相変わらずショチトルは人混みが苦手ですね」

ショチトル「うるさいのは嫌いだからな」

上条「垣根達はこっちにすぐ来るってさ」

美琴「じゃあ待ってましょ」

ショチトル「あぁ」





208 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 17:00:54.16 dRKY8lPo0 169/807



垣根「・・・あいつらはさっきの場所からあんまり動いてなかったみたいだな」

心理「へぇ・・・」

垣根「・・・なんだよ、なんかつまんなさそうだな」

心理「あなたとの時間が終わるのは悲しいに決まってるでしょ」

垣根「はぁ・・・いいじゃねぇかよ、今回の旅行はみんなで仲良く元気よくがモットーなんだから」

心理「あら、そんなモットーがあったのね」

垣根「いや、今勝手に決めた」

心理「それ、意味ないじゃない」

垣根「まぁまぁ、とにかく合流するぞ」

垣根が心理定規の手を引く

垣根「・・・そういえばさ、こんな神社みたいな場所に来るのは久しぶりじゃないか?」

心理「初詣以外では行かないものね」

垣根「・・・お前との仲が上手くいくように祈ればよかったかな」

心理「わざわざ祈る必要なんてないじゃない」

クスクスと笑いながら心理定規が答える

垣根「うーん・・・まぁそうかな」




209 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 17:01:53.23 dRKY8lPo0 170/807

心理「あなたって意外と信心深かったりする?」

垣根「まさか、無神論者だよ」

心理「へぇ・・・」

垣根「・・・神様なんてもんに自分の明日を任せるよりは自分に任せたほうがいいだろ」

心理「一理あるわね」

垣根「・・・大体、世界の誰もが神様に明日を任せたら、みんながみんな同じ明日を迎えるんだぜ?」

心理「そういうことになるわね」

垣根「だったら俺はそんな常識から飛び出した男になってやるよ」

心理「・・・あなたらしいわ」

垣根「お前はどうだ?」

心理「私は、あなたにだったら任せてもいいけど」

垣根「・・・じゃあ、お前の未来は俺が背負わなきゃな」

心理「お願いするわ」

垣根「あぁ」

ゆっくり歩きながら、二人が空を見上げる

学園都市から見える空と同じだった




210 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 17:02:28.09 dRKY8lPo0 171/807

垣根「・・・綺麗な空だな」

心理「えぇ」

垣根「・・・なぁ」

心理「なに?」

垣根「・・・いや、なんでもねぇ」

心理「・・・気になるじゃない」

垣根「別に、ちょっと呼びたかっただけさ」

心理「はぁ・・・」

垣根「・・・誰かが隣にいてくれるってのはいいもんだな」

心理「えぇ、温もりを傍で感じられるもの」

垣根「お、上条達だ」

心理「意外と近くにいたのね」

垣根「おっす!」

上条「あぁ、来た来た・・・」

ショチトル「おやおやお二人さんったら手なんか繋いじゃって・・・」

美琴「なになに?もしかして二人きりをそんなに楽しんでたの?」

ニヤニヤ、と二人が笑う




211 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 17:03:22.00 dRKY8lPo0 172/807

心理「えぇ、あなた達は二人きりにはなれなかったのね」

垣根「可哀相だなおい」

美琴「う、うるさいわね」

上条「・・・まぁまぁ、みんな集まったんだしどんたくの会場まで向かわないか?」

心理「そうね・・・ショチトルはいいの?」

ショチトル「あぁ、あんまり長居はしないからな」

垣根「これだから引きこもりは困るんだよな」

ショチトル「引きこもりじゃないからな!」

エツァリ「必死になると見苦しいですよ」

ショチトル「変態は黙ってろよ!」

エツァリ(ショチトルにだけは言われたくなかった・・・)

美琴「・・・さて・・・」

心理「たしか、この近くにバス停があったわよね」

エツァリ「えぇ、ありましたよ」

上条「じゃあ、行きますか!」

垣根「あぁ!」



212 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 21:15:03.16 dRKY8lPo0 173/807


上条「・・・えっと、どんたくってどんな祭りなんだっけ」

バスから降りた上条が、垣根に訊ねる

彼らが辿り着いたのは福岡市

博多どんたくなのに福岡市ってどういうことだよ、と上条は思っていた

垣根「簡単に言えば、どんたくパレードを見物する祭りだ」

心理「屋台がたくさん並んで、花火がパンパン打ち上がる祭りとは少し違うのよ」

美琴「ふーん・・・カーニバルみたいな?」

垣根「そういうこった」

エツァリ「なるほど・・・」

ショチトル「・・・少し面白そうだな」

上条「えぇ・・・もっと派手な祭りのほうが楽しくないか?」

ショチトル「ふん、日本の祭りは総じて騒がしいんだよ」

垣根「そう言うなよ、屋台の主と関わり合おうとする、日本人ならではの優しさがあるんだよ」

心理「そうだったの?」

垣根「・・・まぁ、どんたくもちょっとは屋台出るけどさ」

心理「既存のお店が屋台の代わりになることも多いみたいよ、おかげでラーメンなんかの店が繁盛するみたい」

美琴「ふーん・・・」



213 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/12 21:34:46.53 dRKY8lPo0 174/807

上条「・・・あれ、なんかもう始まってるな」

遠くでは既に人だかりが出来ている

美琴「・・・お祭りって普通は夜にあるんじゃないの?」

垣根「いや・・・今くらいの時間から始まるだろ」

心理「ほら、さっさと行かないと遅れちゃうわよ」

ショチトル「よーし!!なんだか楽しくなってきたな!!」

垣根「どんたくは飛び込み参加ありのやつもあるからな」

エツァリ「・・・ショチトル、あまりはしゃがないように」

ショチトル「何を言っている!!楽しまなければダメだ!!」

上条(な、なんだかやる気出してる・・・)

美琴(お祭りとか好きなタイプなのね・・・)

ショチトル「踊る阿呆に見る阿呆なら!!」

垣根「やっぱ踊らなきゃな!!」

心理「ちょ、ちょっと・・・」

垣根ショチトル「行くぞみんなぁぁぁ!!!」

一同「・・・はぁ」



219 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:38:45.71 54mOVaWd0 175/807



上条「・・・こういうときっていつもみんなとはぐれるよな」

人混みの中で上条はため息をついていた

隣にいる少女が頷く

しかしそれは美琴ではなかった

心理「・・・よりによってあなたと二人きりなんてね」

上条「垣根はショチトルと走って行ったからな・・・」

心理「となると美琴はエツァリ君とかしら」

上条「・・・まさか、きっと一人だろ」

心理「だといいわね」

クールな顔で心理定規が返すが内心はかなり焦っていた

何しろ二人がいるのは飛び込み参加のパレードの中だったからだ

このままでは周りの人達と一緒に踊らなければならない

心理「・・・どうにかしないと」

上条「そうだな、みんなで合流しないと・・・」

心理「そうじゃないわよ、早くここから逃げないとパレードに巻き込まれるわ」

上条「?そっちは別にいいけどさ・・・」

心理「良くないわよ・・・あなた、しゃもじ振り回したい?」

どんたくでは拍子木ではなくしゃもじを鳴らすのだ

そしてなぜか二人の手の中にはしゃもじがあった

さっき知らないおじさんに渡されたものだ、断る暇もなく握らされてしまった




220 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:39:13.98 54mOVaWd0 176/807

上条「いいじゃんか、せっかくどんたくに来たんだからさ」

心理「はぁ・・・私はパレードを遠くから見ていたかったのよ」

上条「いいじゃんか・・・ほら、楽しもうぜ」

心理「せめて垣根と二人だったら楽しめたんだけど」

上条「う・・・そういうこと言われると地味に傷つくのですが」

心理「だったらそれなりに楽しませてちょうだい」

心理定規が上条に手を差し出す

上条「・・・あの、これは一体・・・」

心理「ほら、エスコートしてちょうだいよ」

上条「いやいや!片手にしゃもじ二つ持てってこと!?っていうかそれって若干浮気に思えないこともないよな!?」

心理「そんなやましい意味じゃないわよ」

上条「だ、だけどさ・・・」

心理「あら、もしかして罪悪感?」

苦笑しながら心理定規が尋ねる

上条「・・・ほら、やっぱりそういうのは好きな人と・・・」

心理「私は上条君も大好きよ?」

上条「は、はいぃ!?」

心理「友達として」

上条「あ、そういう意味ですか・・・」




221 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:39:41.51 54mOVaWd0 177/807

心理「なに期待してるのよ、美琴が聞いてたら泣いてるわね」

上条「そういう冷やかしは心臓に悪いから・・・」

心理「でもエスコートしてほしいのは本当よ」

上条「・・・」

上条が頭の中でいろいろ考えを巡らせる

ここでエスコートしてしまえば美琴を裏切ることになるのではないか

しかし、かといってエスコートしなければ心理定規はこのお祭りを楽しめない

上条「手は繋がなくてもいいよな・・・」

心理「・・・あなたって男らしい人だと思ってたわ、幻滅した」

頬を膨らませながら心理定規がそっぽを向く

大人な彼女がそんな子供っぽい仕種をするとギャップがありすぎる

もうボディーブローのように効いてしまう

上条「・・・あ、あのさ、垣根にもしも見られたら俺の命が危ないし・・・」

心理「言い訳なんていくらでも出来るじゃない」

上条「ほ、本気だよ・・・」

心理「・・・はぁ、仕方ないわね」

心理定規が上条の手を強く握る




222 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:40:25.30 54mOVaWd0 178/807

上条「ちょ・・・」

心理「あなたがエスコートしてくれないなら、無理矢理させてあげるから」

ぐいぐいと心理定規が上条の手を引っ張る

上条「ていうかこの人混みから逃げたかったんじゃないのかよアンタは!」

心理「いいわよ、あなたが楽しませてくれれば」

上条「だから俺には無理ですから!」

心理「いいから、たまには垣根以外の男の子と楽しんでみてもいいんじゃないかしら」

上条「男の子って子供扱いされてるのが気に入りません!」

心理「あら、男として見てほしいのかしら」

上条「あなたがそう言うとなんとなく艶やかな台詞になるから遠慮しときます・・・」

心理「・・・あ、始まるわよ」

列が動きはじめた

今から逃げようとしても叶わないだろう

ならば

心理「踊るしかないわね・・・覚悟を決めましょう」

片手にしゃもじを握って、互いの手のしゃもじをぶつけ合う

心理「手を握りながらじゃこれしかできないわね」




223 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:40:53.18 54mOVaWd0 179/807

上条(というか美琴と同じくらい手が小さい・・・)

心理「でもまぁ音はなってるし問題ないわよね」

上条(そうだよな・・・大人な女性って感じだけど、心理さんだって美琴と同い年くらいだもんな)

心理「そもそも、なんでしゃもじなのかしら」

上条(っていかんいかん!こういうことを考えだしたら変に意識してしまいますよ!)

心理「ねぇ、聞いてる?」

上条「あぁもう!なんだこの居心地の悪さはぁぁ!不幸だぁ!」

心理「・・・私といるのが不幸なんて、失礼ね」




垣根「・・・走りすぎたな」

ショチトル「あぁ」

パレードを突っ切った二人は、なぜか遠巻きからそれを見つめていた

テンションが上がりすぎて、知らない間に列を横切ってしまったのだ

おかげで参加することは出来なかった

この次のパレードに混ざるしかないだろう

垣根「・・・心理定規ともはぐれちまった」

ショチトル「エツァリはどこだ・・・」

垣根「・・・」

ショチトル「・・・」




224 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:41:47.77 54mOVaWd0 180/807

垣根「なんかお前と二人って珍しくないか」

ショチトル「私は影が薄いからな」

垣根「ごめんなさい」

ショチトル「・・・しかしイヤな気はしないな」

垣根「あぁ?なんでだよ」

ショチトル「お前は男前だからな、周りの女が羨ましそうに私を見つめてくる」

垣根「なんなら抱きしめてやろうか」

ショチトル「は、はぁ!?それはダメだからな、絶対にダメだからな!」

垣根「冗談だ」

近くのベンチに腰掛け、パレードを見つめる

垣根「お前ってさ、変態のわりに純情だよな」

ショチトル「なんだその言い方」

垣根「褒めてるんだよ・・・エツァリ以外の男に興味なさそうだからさ」

ショチトル「あるわけないだろう、エツァリが好きなんだから」

垣根「エツァリのどんなとこが好きなんだ?」

ショチトルと二人になるのは珍しい

もしかしたらこれから先、こんなことはないかもしれない

だから今しかできない会話をしてみたかった




225 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:42:16.61 54mOVaWd0 181/807

ショチトル「うーん・・・あいつは昔から私に優しくしてくれたんだ」

垣根「優しくねぇ・・・それってさ、ちょっとずるいな」

ショチトル「なぜ」

垣根「自分に優しい男を求めるなんてわがままだ」

ショチトル「何を言う、お前だって心理定規には優しいじゃないか」

垣根「・・・そうだけどさ」

ショチトル「それに、あいつは真っすぐな男だからな」

垣根「真っすぐか?」

ショチトル「あぁ、自分の守りたいものを守り続けるヤツさ」

垣根「・・・でもあいつの初恋って御坂だよな」

ショチトル「それが一番ムカつく」

垣根「お、ヤキモチか」

ショチトル「・・・もちろん今のあいつは私が好きだが・・・初恋相手が私じゃないのはムカつくな」

垣根「そこまでヤキモチ妬くことか?」

ショチトル「もし心理定規の初恋相手が自分じゃなかったらどうだ?」

垣根「別にどうでもいいさ、人生で初めて好きになった相手が誰だろうと」

ショチトル「そういうもんかな・・・」




226 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 11:42:57.89 54mOVaWd0 182/807

垣根「あいつは俺にも恋をした、そしてそれが叶った・・・叶った恋は俺が初めてさ」

ショチトル「・・・」

垣根「それに、あいつが垣根帝督という人間に恋をしたのは初めてだ」

ショチトル「どういう意味だ?」

垣根「ファーストキスの相手なんてどうでもいいのと同じさ、俺とのファーストキスが絶対にあるんだから」

ショチトル「お前は独占欲がないのか・・・」

垣根「いや、一度掴んだなら絶対に放したくないけどな」

ショチトル「・・・そうか」

垣根「まぁとにかくさ、お前は初恋以外の全てを手に入れたんだ、気にするなよ」

ショチトル「おぉ、そう考えると中々いいな」

垣根「あいつの心はお前のもんさ、だったらそれでいいじゃねぇか」

ショチトル「・・・じゃあ次は私が尋ねていいか」

垣根「なんだよ」

ショチトル「お前、いつから心理定規を好きになったんだ?」

垣根「これまた随分と漠然とした質問だな」

ショチトル「お前と心理定規は同じ組織にいたんだ、最初からある程度近しかったはずだが」

垣根「最初はただの仕事仲間だったよ・・・まぁ可愛いと思ったことはあったけどな」



227 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/13 16:00:00.81 54mOVaWd0 183/807

ショチトル「ふーん・・・」

垣根「まぁ、途中からちょこっとは意識したけどさ」

ショチトル「それで、結局はいつから?」

垣根「・・・あいつが俺の帰りを待ってたって知ったときかな」

ショチトル「あの心理定規が?」

垣根「あぁ」

ショチトル「へぇ・・・」

垣根「・・・いや、んなことはどうでもいいじゃねぇか!!」

垣根がパレードのほうを指差す

しゃもじを鳴らしながら練り歩くそのパレードは、統率が取れているというよりは活気に溢れているという印象だった

垣根「俺達はあれに参加するためにやってきたんじゃねぇのかよ!?」

ショチトル「あぁ、もちろん!」

垣根「だったら!!どうやってあれに参加できるかを考えなきゃならねぇ!!」

ショチトル「よーし!!ならば、今から突撃するか!?」

垣根「いや・・・途中から参加するのはどうも気が引ける!」

ショチトル「じゃあどうする!?」

垣根「やはり!!次のパレードから参加しようぜ!!」

ショチトル(結局それか)



232 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:08:58.63 U3ndxNkA0 184/807

美琴(・・・一体どうしてこうなったのかしら)

パレードから離れるようにして歩きながら、美琴は肩を落としていた

エツァリ「・・・顔色が優れないようですが体調でも悪いのですか?」

美琴「あ、そうじゃなくて・・・」

どうして隣にいるのが彼なのだろうか

たしか、途中までは上条や心理定規もいたはずだ

垣根とショチトルを追い掛けるうちにはぐれてしまったらしい

美琴「・・・なんか、いっつも肝心な時に当麻はいないから・・・」

はぁ、とさらに美琴が肩を落とした

今回の旅行では、まだ二人きりの時間を作れていない

本当に何をやっているのだろうか

エツァリ「・・・仕方ありませんよ、連絡を取れば・・・」

美琴「こんなにうるさい中よ?どうせ相手の声が聞こえなくて・・・」

エツァリ「?メールは・・・」

美琴「・・・したわよ、でも返事が来ないの」

エツァリ「おかしいですね・・・電話には出られたのですか?」

美琴「ううん、そもそも電話は掛けてないから」




233 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:09:32.04 U3ndxNkA0 185/807

エツァリ「・・・電源が切れているとか」

美琴「・・・だとしたら意味ないわよね」

エツァリ「自分も一応、ショチトルにメールはしておきました」

美琴「エツァリさんも残念ね・・・せっかくショチトルと二人になれるチャンスだったのに」

エツァリ「いえ・・・自分はいつもショチトルと二人ですから」

美琴「いいなぁ・・・そういうの」

エツァリ「・・・御坂さんは上条さんと二人になれる時間は・・・」

美琴「学校があるから一日中ってわけにはいかないわよ・・・それに常盤台の寮にもたまには帰らないといけないし」

エツァリ「なるほど・・・」

エツァリが少し眉をひそめる

自分が上条の立場だったどうだろうか

やはり二人の時間を用意したがるだろう

エツァリ「・・・上条さんは自分との約束を守ってくださってはいますが・・・」

美琴「?約束?」

エツァリ「い、いえ・・・なんでもありません」

ごまかすように笑ってから、エツァリが近くの自販機の前に立つ

エツァリ「何か飲みますか?」



234 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:10:09.25 U3ndxNkA0 186/807

美琴「うーん・・・じゃあコーヒー、冷たいのがいいかな」

エツァリ「微糖でよろしいですか?」

美琴「うん、ありがとう」

微糖の冷たいコーヒーを買い、美琴に手渡す

まるで恋人みたいなやり取りだな、とエツァリは苦笑してしまった

美琴「・・・ねぇ、何かおかしい?」

エツァリ「いえ・・・少し昔を思い出しまして」

美琴「昔?」

エツァリ「・・・あなたにまだ恋心を抱いていた頃を」

美琴「あ・・・」

美琴が少し驚いたような表情になる

そういえば、美琴はかつてエツァリから好意を寄せられていた

最近は友人として付き合っているため、すっかり忘れていたが

エツァリ「あ、勘違いしないでください!今はもうそんな感情はありませんから」

安心させるようにエツァリが手を振りながら続ける

美琴「う、うん」



235 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:10:59.77 U3ndxNkA0 187/807

エツァリ「すいません・・・何か変な空気になってしまいました」

頭を掻きながら謝るエツァリ

美琴「・・・あのさ、なんで私のことなんか好きになったの?」

エツァリ「なぜって・・・あなたは自分が見てきた人々と違ったタイプでしたから」

美琴「・・・違ったタイプ?」

エツァリ「・・・あの頃の自分は友情や愛情というものをほとんど知りませんでした・・・ショチトルは自分を慕ってくれていたようですが」

美琴「エツァリさんは・・・あんまりショチトルを好きじゃなかったの?」

エツァリ「まさか、ただ家族のような存在でしたから・・・こう、女性として意識していなかったんですよ」

懐かしむようにエツァリが目を細めた

エツァリ「・・・テクパトルのような上司に気を遣い、ショチトルやトチトリといった仲間ともやはり友情を築けなかった・・・そんな自分にとって、あなたのような優しい人物は新鮮だったんですよ」

美琴「そっか・・・」

自分が上条に好意を抱いた理由と似ている、と美琴は思った

彼女が初めて触れた優しさであり、彼女に初めて触れてくれた温もりが上条だった

美琴「私たちって、もしかしたら似てるのかも」

エツァリ「はい?」

美琴「あぁ、気にしないで・・・」




236 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:12:08.69 U3ndxNkA0 188/807

エツァリ「・・・自分はあれから、本当に幸せな人生に変わることが出来ました」

美琴「私も・・・妹達の事件の頃からは想像できない平和な生活よ」

まさかあの一方通行と友人になるなんて

当時の自分が聞いたら気絶してしまう、と自嘲する

エツァリ「ショチトルの愛情に気づき、他人と友情を築き・・・いつの間にか普通の人々と同じ生活をしていました」

美琴「・・・きっかけをくれたのは当麻だった・・・歩いたのは私」

エツァリ「・・・こんな話をしていると、やはり愛する人に逢いたくなりますね」

美琴「うん・・・もう一回連絡取ってみようかな」

エツァリ「自分もそうしますよ」

二人が同時に携帯を取り出す

自分の愛する人と、連絡を取るために




上条(ま、まずいぞこの状況は!)

そんな美琴に愛されてる青年は、なぜか顔を赤らめていた

彼の右手の中には、小さな少女の手があった

心理定規のものだ

彼女はなぜか、上条と手を繋ぎながらパレードに参加していた




237 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:12:51.01 U3ndxNkA0 189/807

最初は乗り気でなかった彼女も、時間が経つに連れてどんどん楽しくなってきたようだ

今ではリズムに合わせてしゃもじを鳴らしている

その彼女が、楽しそうに笑いながら上条の手を引っ張っているのだ

彼女を女性として意識しているわけではないが、青春している青年ならこの状況で混乱しないほうがおかしい

上条「あ、あの・・・」

心理「ふふ・・・楽しいわね、上条君」

上条「は、はい」

自分といるからではなく、このパレード自体が楽しいのだろう

そんなことは分かっている

それでも少しだけ胸は高鳴ってしまって・・・

上条「っていかんいかん!俺には美琴という愛する女性がいるんですよ!?」

心理「?いきなり大声出して、どうしたのよ」

上条「心理さん!さすがにもう手を放してもいいんじゃないでしょうか!」

心理「あら・・・私なんかと手を繋いでいたくないのね・・・」

シュン、としょげたような演技をする

鈍感な上条にはそれが演技だとは見破れなかった

上条「ち、違う違う!ただやっぱり美琴に悪いからさ・・・それに垣根だってきっと怒るぞ!?」




238 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:14:01.04 U3ndxNkA0 190/807

心理「・・・私、あなたと手を繋いでいたいの・・・」

上条「!?」

そっと、心理定規が上条の肩に頭を乗せた

美琴のものとは違う、ほのかに甘いシャンプーの匂いが鼻をくすぐった

上条(な、ななななななんだこれ!?まさか浮気ルートに突入とかいうイベントはないよな!?っていうか俺は美琴がいるのに!)

心理(面白い反応ね・・・これも楽しいわ)

上条(心理さんだってなんかおかしいよな!?垣根のこと好きなはずなのに・・・)

心理「・・・?ねぇ、上条君」

上条「は、はい!」

心理「携帯、光ってるわよ」

上条「あ・・・いけね、マナーモードにしてたんだ」

心理定規に握られた右手を少しだけ動かす

心理「あら、左手で操作すれば?」

上条「いやいや!両手を使いたいんですが!」

心理「はぁ・・・分かったわよ」

ぱっ、と放された右手を使って携帯を開く

上条「美琴からだ・・・今、ラーメン屋の屋台の前にいるって」




239 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:14:30.03 U3ndxNkA0 191/807

心理「・・・あら?もしかしてあれじゃないの?」

上条「え、ホントだ・・・めちゃくちゃ近い」

心理「・・・パレードから逃げるように動いてるわね」

上条「混みすぎてて全く動けてないけどな」

心理「こんなに近くにいたのね・・・エツァリ君もいるわ」

上条「!?」

上条が目をこらす

だが、彼のいる位置からはあいにく美琴しか見えない

上条「な、なぁ・・・まさかとは思うけど、エツァリのヤツ・・・」

心理「?」

上条「美琴に変なこと、してないよな?」

心理「あら、してるわよ」

上条「」

心理定規がいとも当然のように嘘をつく

そしてそれに騙されるのが上条だ

心理「あ・・・!あんな大胆に・・・」

上条「な、何!?何をされてるの・・・」



240 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:15:10.60 U3ndxNkA0 192/807

心理「・・・美琴ったら、胸には自信ないはずなのに」

上条「あぁぁぁ!?胸を触られてるのか!?」

心理「あ、なんか真っ赤になってる」

上条「エツァリぃぃぃぃ!」

上条が突然駆け出す

右手は心理定規の束縛から解放されていた

つまり今の上条は自由の身だ

人混みを上手く掻き分けた上条がエツァリの元に着くまで、30秒ほどしか掛からなかった

心理(・・・まずいかしら)



上条「エツァリぃぃぃぃ!」

エツァリ「?おや、上条さん」

美琴「当麻!やっと会えた・・・」

上条「てめぇ美琴に何しやがったぁぁぁぁ!」

エツァリ「は、はい?」

上条「いいぜ!もしもてめぇがまだ美琴に手を出そうだなんて考えてるなら!」

上条が右手を握り締める




241 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:16:04.81 U3ndxNkA0 193/807

エツァリ「な、何か勘違いをされ・・・」

上条「まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!」

美琴「と、当麻!?」

エツァリの体が宙を飛んだ

理不尽なギャグ展開だな、と思いながらエツァリは流れ星になった


上条「・・・で、なんで心理さんはそんな嘘をついたんだ」

心理「ごめんなさいね、あなたをついからかいたくなったのよ」

美琴「・・・当麻は心理定規と二人きりだったんだ」

上条「あ、あぁ・・・」

美琴「・・・当麻にちょっかい出してないでしょうね」

心理「あら、手を繋いだり肩に頭を乗せたりはしたけど」

美琴「ーっ!」

心理「安心しなさいな、上条君はちょっとドキドキしただけだったみたいだし」

美琴「ときめいたのね!?ちょっととはいえ心理定規にときめいたのね!?」

上条「待て待て!俺は被害者だからな!」

エツァリ「・・・自分もです」




242 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:16:39.39 U3ndxNkA0 194/807

上条に殴られた頬をさすりながら、エツァリがため息をつく

上条「わ、悪かった・・・本当にすまない」

エツァリ「いえ・・・そんな嘘をつかれたら、自分もそうしたはずです」

エツァリが心理定規を睨みつける

心理「な、なによ・・・」

エツァリ「あなたは少々、人をからかいすぎですよ」

心理「う・・・」

エツァリ「・・・人を傷つける嘘はよくありません」

心理「わ、私・・・」

心理定規の目が潤みだす

エツァリ「は、はい!?」

美琴「ちょ、ちょっと・・・」

心理「私・・・軽い冗談のつもりだったの・・・ごめんなさい・・・本当にごめんなさい・・・」

エツァリ「い、いえ!自分も言い方がきつかったかもしれません!」

上条「ほ、ほら心理さん涙を拭いて・・・」

心理「いいのよ・・・私はあなた達を傷つけちゃったのよ・・・」




243 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:17:24.11 U3ndxNkA0 195/807

美琴(エツァリさん!)

エツァリ(こ、こんなにメンタル弱い人でしたっけ!?)

上条(あんな言い方されるのに慣れてないんだろ!)

エツァリ(そ、そうなんですか!?)

あたふたとする三人

彼らはその時気づいていなかった

後方から、怒りに身を震わせた垣根が近づいて来ていることに


ショチトル「ん?あれ、上条達だな」

垣根「お、ホントだ」

事の発端はショチトルが上条達を見つけたことだった

遠くにいると思い込んでいたが、それほど離れてはいなかったらしい

上条と心理定規はパレードの中に混ざっていた

ショチトル「上条がなんか怒りながら歩いてるな・・・」

垣根「あ、エツァリと御坂もいた」

ショチトル「!?エツァリが殴られた!」

垣根「上条、なんか怒ってるな」

ショチトル「心理定規が呆れながら止めに入ったな・・・」




244 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:17:58.71 U3ndxNkA0 196/807

垣根「上条・・・なんか驚いてるな」

ショチトル「美琴はあたふたしてるな」

垣根「・・・エツァリ、よく気絶しなかったな」

ショチトル「あぁ・・・?なんかエツァリ、心理定規を睨みつけてないか?」

垣根「なに?」

垣根がエツァリの表情に注目する

たしかに、何やら心理定規を睨みつけるような表情だった

垣根「・・・なんだ?」

ショチトル「!心理定規、なんか目が潤んでないか!?」

垣根「・・・あぁ?」

ショチトル「な、なんで・・・」

垣根「・・・」

遠巻きから見ていると、よく話が掴めない

だが垣根は勝手に話を組み上げていた

きっと上条は、エツァリが美琴にセクハラしているのを見つけて殴ったのだろう

美琴があたふたしていたのは、セクハラされた現場を上条に見られたからか




245 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:18:36.99 U3ndxNkA0 197/807

上条がそのあとエツァリに謝ったのは、やはり暴力は良くないからだろう

そして心理定規は呆れたように近づいた

エツァリはきっとこう言ったのだ、「心理定規、お前の乳も揉ませろよ、垣根に毎晩揉まれてるんだろ?」

あまりに露骨なセクハラに耐え切れず、心理定規は泣き出してしまったのだ

エツァリがなんかオロオロしているが、そんなことはどうでもいい

垣根「あの野郎、ムカついた」

ショチトル「おい、どこに行く」

垣根「決まってんだろ、心理定規の涙を拭くのは俺の役目だ」

愛する人のため、垣根は歩き出した

明らかに動機は間違ってるのだが


エツァリ「その・・・すいませんでした」

心理「・・・いいわよ・・・」

グスン、と心理定規が鼻をすする「真似」をした

そう、これも演技なのだ

上条やエツァリの困った反応は面白い

元々、若干いたずら好きな彼女はこういうことをよくしてしまう

それが不幸に繋がることもあり・・・



246 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 11:19:15.78 U3ndxNkA0 198/807



垣根「おい」


今まさに、そうであった

上条「あ、垣根・・・」

垣根「エツァリ、てめぇ心理定規に何しやがった」

エツァリ「ち、違いますよ!?自分は悪気があって言ったわけでは・・・」

垣根「てめぇの口からは下品な言葉しか出ねぇのかよ、あぁ?」

上条(いや・・・むしろかなり丁寧な注意の仕方だったよな)

エツァリ「たしかに自分も悪かったですが・・・しかし、彼女にも非はありますよ」

垣根「うるせぇ!心理定規が好きでセクシーに生まれたと思ってんのか!」

エツァリ「え?」

垣根「あ?」

エツァリ「あの、何を言って・・・」

垣根「いいぜ!もしもてめぇがそうやってごまかそうなんて言うのなら!」

心理(・・・ちょっと演技に力を入れすぎたかしら)

美琴「垣根!エツァリさんは悪く・・・」


垣根「まずはそのふざけた常識を覆す!」

エツァリ「なんでこうなるんですかぁぁぁぁ!」

未元物質の翼で叩かれたエツァリは、また流れ星になった



247 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 13:15:14.64 U3ndxNkA0 199/807



垣根「そろそろホテルへ行こうと思う」

エツァリ「」

美琴「そうね・・・どんたくももうそろそろ激しさを増す頃だし」

上条「逃げるときは早めに、だな」

ショチトル「よし、もう時間もいい頃だ」

ショチトルが時計を指差す

時刻は18時

今からホテルに向かえば夜ご飯にちょうどいい

上条「じゃあバスで・・・」

心理「ねぇ、エツァリ君はどうするの?」

美琴「・・・地面にのびてるわね」

垣根「なんで・・・なんでだよ!?あんなに元気だったじゃないか、主に下半身が!!そんなエツァリがどうしてこんなな避けない姿に!?主に下半身が!!」

心理「あなたのせいだ」

垣根「・・・冗談はおいといて、こいつはどうするかな」

エツァリの額をつま先でつつきながら垣根がため息をつく

ショチトル「・・・誰か運んでくれ」

上条「・・・そこで一斉に俺を見つめるのはやめてくれ」



248 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 13:18:32.14 U3ndxNkA0 200/807

垣根「お前って力持ちなんだろ」

心理「そうね、体力だけはムダに有りそうだし」

美琴「当麻、頑張ってね」

上条「・・・なんで俺が・・・」

文句を言いながらも上条がエツァリに肩を貸す

超能力者二人、女の子二人ににらまれては仕方ない

エツァリ「・・・申しわけ・・・ありません・・・」

上条「意識はあったのか・・・よかったよ」

心理「全く、誰のせいでこんなことになったのかしら」

一同「お前だ」

心理「さて、バスが来るまで時間がないわ・・・急ぎましょう」

上条(クールにごまかした・・・)

美琴(・・・心理定規がどんどんおかしくなっていくわ・・・)

垣根(・・・俺の立場はどこへ?)

上条「ホテルは結構豪華なとこを頼んだんだっけ」

美琴「うん、私が前に友達から聞いたところを・・・」

上条「そりゃ期待できそうだな」

エツァリ(・・・どこでもいいから休ませてください・・・)



249 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 13:23:36.40 U3ndxNkA0 201/807



上条「・・・そして俺達はホテルに辿り着いた」

垣根「そこは、とても普通のホテルとは思えないところだった」

ショチトル「壁一面にびっしりと蔦が生え、季節に合わない鷹の姿も見えていた」

美琴「え、えっと・・・中からは鼻の長い意地悪そうなおばあさんが出てきて!!」

心理「誰か止めなさい・・・普通の豪華なホテルじゃない」

垣根「そこは乗るべきだぜ」

心理「降りるわよ・・・」

6人は目の前のホテルを見上げていた

スパイダーマンが上から降りてきそうだな、なんていう意味不明な感想を抱く上条

中々オシャレな噴水や中庭もあるわね、と冷静に観察する美琴

メルヘンだぜ、と考える垣根

リムジンが停まっているということはそれなりの人が来るホテルなのだろう、とさらに冷静な分析をする心理定規

オモチャはあるかな、と情熱的な考えを持つショチトル

休みたい、と切実に願うエツァリ

垣根「・・・いいな、俺はこういう夜景が綺麗そうなホテルは好きだぜ」

美琴「・・・こんなところで恋人と二人きりになれるなんて最高ね・・・」

ショチトル「おぉ・・・そうだな」

心理「ほら、さっさと入るわよ」




250 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 13:27:28.45 U3ndxNkA0 202/807


「ようこそお越しくださいました」

ぺこり、と頭を下げる受付の女性

見た目は20代後半だろうか、とても礼儀正しく清潔感に溢れている

垣根「えっと・・・上条の名前で予約していた者ですが」

「はい、ご予約を承っております」

上条「あの、一体どこの部屋・・・」

垣根「お前は黙ってろ」コソッ

上条「はい」

垣根「すいません、少し疲れているもので・・・出来ればすぐに部屋のほうへ向かいたいのですが」

「上条様・・・はい、7階のスイートを一部屋ご予約となっております」

パソコンでデータを確認しながら、受付の女性が応答する

垣根「一部屋・・・?」

「6名様でのお越しとなっておりますが・・・」

垣根「はい、そうですけど・・・」

「6名様でしたら、スイート一部屋でお泊りになることが可能でございます」

垣根「・・・つまり、6人部屋ということに・・・」

「は、はい・・・そうなっております」

垣根「すいません、少しだけ待っていてください」

垣根が上条を引っ張っていく



251 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 13:31:25.07 U3ndxNkA0 203/807


垣根「てめぇ!!なんで2人を3部屋用意しなかった!!」

上条「だ、だって何名で来るのか聞かれたから6人ですって・・・」

垣根「電話予約かよ!!いや、それはどうでもいい!!」

上条「で、でもさ!!6人泊まれるんだし・・・」

垣根「そういうのはな!!6人です、って答えるんじゃなくて出来れば2人を3部屋予約したいのですが、って答えるんだよ!!」

上条「何人で来るか聞かれたから・・・」

垣根「お前は横断歩道を手上げていちいち渡る小学生か!!世の中テキスト通りには進まないんだよ!!」

上条「も、もしかして・・・二人きりになれない展開か!?」

垣根「今さらかよ・・・」

肩を落としながら、垣根が受付の前へ戻る


垣根「すいません・・・えっと、そのスイートは7階でしたっけ」

「はい、そちらのエレベーターにお乗りになっていただければ」

垣根「それじゃ、そうします」

柔和な笑みを浮べてから垣根が部屋のカードキーを受け取る

美琴「・・・行きましょう」

心理「・・・そうね」

ショチトル「あーあー、楽しい大人数の部屋だなー」

上条(み、みんな怒ってる!?)



252 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 13:36:43.06 U3ndxNkA0 204/807



エレベーターの中

1階から7階まで向かうのには、恐らくたった30秒も掛からないはずだ

しかしその短い時間は、上条にとってとても辛いものだった

垣根「よかったじゃねぇか、親睦会でも開けるんじゃねぇのか」

心理「そうね」

美琴「いいじゃない、思い出を語り合いながらみんなで、みんなで楽しみましょう」

エツァリ「・・・まぁまぁ、上条さんも悪気があってなさったわけでは・・・」

垣根「だからこそ余計にイラつくんだよ」

上条「ほ、本当にごめん・・・」

心理「・・・そんな真剣に謝られたら責めるに責められないけど」

ショチトル「・・・まぁ、ホテル側ももう少し気を利かせてくれればな」

垣根「こんなホテルに友達同士で来るなんてよっぽどだろ」

心理「そうよね・・・きっと同窓会か何かかと思われたのよ」

美琴「・・・普通は夫婦二人で来るのかな?」

垣根「恐らくはな・・・受付に書いてあっただろ、ワインパーティーなんてやるようなホテルだぜ」

上条「ワインパーティー!?」

垣根「子供も参加できるんだよ、金持ちのボンボンやらお嬢様が一杯いることだろうさ」

美琴「・・・どうする?せっかくだし参加してみる?」

ショチトル「・・・正装の貸し出し、あるかな」



253 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 20:59:18.94 U3ndxNkA0 205/807

垣根「こんだけのホテルだ、貸し出しくらいあるだろ」

エレベーターの階数表示を睨みつけるながら垣根が答える

美琴「着いたわね・・・」

上条「・・・みんな、本当にゴメン・・・」

ショチトル「気にするな、まぁこんな旅行もたまにはいいじゃないか」

心理「そうね、修学旅行みたいで楽しいかもしれないわよ」

エツァリ「修学旅行ですか・・・」

垣根「ほら、さっさと降りる」

垣根を先頭に上条達が部屋へと向かう

その廊下もまさに「豪華絢爛」の一言だった

ただ通るためだけの廊下なのにシャンデリアが飾られている

また、壁には絵画が飾られていた

垣根「中々いい趣味だな、上条がこのホテルを承諾したのは意外だ」

上条「・・・こんなに高いホテルなんて思わなかった・・・」

美琴「ちゃんと言ったじゃない・・・」

上条「だってさ・・・何個星だとか言われても実感湧かないだろ?」

エツァリ「そんな評価をされる時点ですごいホテルですよ」




254 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 20:59:46.75 U3ndxNkA0 206/807

心理「・・・贅沢な旅行ね」

ショチトル「あぁ、こんないいホテルなんて映画でしか見たことがない」

垣根「っと・・・この部屋だな」

カードキーを差し込み、垣根が部屋のドアを開ける

上条「・・・す、すげぇ・・・」

部屋の中も、廊下通り・・・いや、それ以上に豪華な内装だった

ベッドは見るからに柔らかそうな布団が叱れていた

ラジオなんて付いているようなベッドではなく、どこかの王室ご用達と言われても信じてしまうような物だ

テーブルも何やら職人の作った物のようだし、テレビもとても大きかった

心理「ふーん・・・一応テレビはあるのね」

垣根「当たり前だろ・・・いくら金持ちでも、ガキはテレビを見たがるもんだ」

ショチトル「家族連れを想定して作られている部屋なのかな」

垣根「6人部屋だぜ?他に何があるんだよ」

ズカズカと部屋の中に入っていく

上条「あれ・・・スリッパに履きかえないのか、この部屋」

美琴「・・・あのね、見るからに洋室じゃない」

上条「?」

垣根「安物のホテルじゃねぇんだ、靴のままだよ」




255 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 21:00:13.08 U3ndxNkA0 207/807

上条「マジかよ・・・カーペット汚れるんじゃないか?」

垣根「安心しな、フローリングだよ」

苦笑しながら垣根がベッドの上に荷物を置く

上条「!?そんな雑に・・・」

美琴「・・・まぁ、人間が寝るところなんだから荷物を置いても問題ないわよね」

ショチトル「私達も入ろうか」

エツァリ「そうですね・・・眺めるために来たわけではないですから」

心理「景色も良さそうね」

美琴「窓際のベッド、私でいいかな?」

垣根「いいけどよ、多分朝は冷えるぞ?」

美琴「う・・・厚着すれば大丈夫よ」

心理「安心なさい、九州の朝は暖かいから」

上条「・・・」

当たり前のように部屋に入った5人を上条は驚きながら見つめていた

美琴「?何やってるの?」

上条「なんでそんなに普通に振る舞えるんだよ!?かなり豪華なホテルだろ!?」

垣根「うるせぇな、ぎゃあぎゃあ騒いでいいような雰囲気じゃねぇってことくらい分かるだろ」




256 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 21:00:40.86 U3ndxNkA0 208/807

上条「わ、分かるけどさ・・・」

垣根「だったら静かにしてろ、少なくとも馬鹿みてぇに騒ぐよりはマシだ」

呆れたように言いながら、垣根が時計を確認する

ワインパーティーが始まるまであと20分程度だ

垣根「・・・今から服を借りれば間に合うかもな」

心理「私は借りなくていいわよ、普段からドレスだし」

美琴「いいわよね・・・私とショチトルは借りてこないと」

上条「や、やっぱりマナーとか厳しいのかな?」

垣根「あんまり細かく考えるなよ、ホテル側も客に楽しんでもらえたほうがいいんだよ」

上条「そっか・・・そうだよな」

心理「それじゃ、私は美琴とショチトルのドレスを見てくるから」

美琴「心理定規がいれば大丈夫かもね・・・」

ショチトル「じゃあ、行ってくるよ」

女三人が部屋から出ていく

垣根「・・・さて、俺達もスーツ借りてくるか」

上条「・・・スーツかぁ・・・」

就活なんかで着るものなはずのスーツが、まさかこんなにも早く活躍する機会が来るとは

エツァリ「垣根さんはスーツも似合いそうですね」

垣根「まぁ、そこそこだろ」

上条「・・・きついんだよな、スーツって」



257 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 21:06:11.92 U3ndxNkA0 209/807

垣根「きついけど、それが正装ってもんだ」

コキコキ、と首を鳴らしながら垣根が適当に答える

肩でも凝りやすい体質なのだろうか

エツァリ「自分達も行きましょう」

上条「はぁ・・・分かった」

あまり堅苦しい雰囲気は苦手だが、これも人付き合いというものだろう

将来仕事でこういう場面に出くわすかもしれない

いや、出くわしたいわけではないが

垣根「・・・じゃああいつらとは会場で待ち合わせってことでいいか」

心理定規の携帯にメールをしてから、垣根を先頭として部屋から出る

上条「・・・なぁ、どこで借りられるんだ?」

垣根「ボーイにでも聞こうぜ」

近くに駐在していたボーイに話を聞くと、専用の部屋があるらしかった

もちろん、レンタル料は取られるらしいが

垣根「ありがとうございます」

紳士たる態度で振舞った垣根を、ボーイも尊敬の眼差しで見つめる

上条(俺の知ってる垣根じゃない・・・)

エツァリ(・・・ここは、垣根さんに一任したほうがよさそうですね)



258 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 21:11:25.17 U3ndxNkA0 210/807

垣根「着いたぜ」

部屋の前には、これまたボーイが立っていた

垣根「スーツのレンタルをお願いしたいのですが」

「はい、レンタル料は5000円になっておりますが・・・」

上条「ごっ・・・」

垣根「構いません、失礼しても?」

「どうぞ」

丁寧なドアの開け方に感心しながら、上条は部屋の中へと向かう

そこは映画で見たことのあるような、見渡す限りのスーツの山だった

ここだけでそこらへんの衣類店を圧倒してそうだな、と感想を抱く

垣根「色は黒でいいよな」

エツァリ「えぇ、もちろん」

上条「で、出来ればきつくないのを・・・」

垣根「・・・きついもんだ、諦めろ」

身長で合わせるようにしながら、三人はスーツを選び終えた

三人とも標準的な体型だったため、身長以外のことは考えなくてもいい

削板やテクパトルだったら体がきつくて入らなかっただろうが



259 : ◆G2uuPnv9Q. - 2012/01/14 21:24:11.01 U3ndxNkA0 211/807

垣根「・・・さて、あとは綺麗に着こなすだけだな」

上条「ネクタイとかつけるのか?」

垣根「俺はつけるけど、お前達は好きにして構わないぜ」

エツァリ「・・・自分もつけましょう、よりフォーマルでしょうから」

上条「・・・じゃあ俺も」

垣根「・・・上条、お前はあんまりスーツ似合わないのな・・・」

上条「・・・だろうなぁ・・・」

父親もそうなんだから、と肩を落とす

垣根「・・・でもまぁ、御坂はきっと喜ぶぜ」

上条「そうかな?」

エツァリ「えぇ、きっと喜びますよ」

上条「・・・だといいな」

垣根「さて、着終わったんだしさっさと会場に向かおうぜ」

ネクタイをしゅっ、と締めながら垣根が呟く

その仕草がなんとも似合っているのが羨ましい

上条「・・・お前ってホント、見た目いいよな」

垣根「劣等感なんて捨てるためのものだぜ」

肩を竦めてから、垣根が部屋のドアを開ける


垣根「さーて・・・恋人をちゃんとエスコートしてやらないとな」








続き: 上条「好きと叫んでも!」美琴「心は遠く!」心理「貴方を呼んでも」垣根「振り向かず!」【2】


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