※関連
最初: 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
前回: 上条「デートの定番は?」美琴「遊園地!」心理「映画館」垣根「特別な場所なんていらねぇさ」【中編】
上条「・・・はぁ、しかし今年も早かったよな」
垣根「またそれかよ」
上条「だってそれしかないだろ?」
美琴「そうよね・・・来年もあっという間に終わるのかしらね」
心理「そうに決まってるじゃない」
19090「・・・なんというか、少し寂しいですよね」
一方「時間はすぐに過ぎていくもンだろ」
番外「なになに?詩人になっちゃって」
食蜂「一方通行ったらキモーイ!」
一方「・・・」
吹寄「でも実際そんなもんよね」
テクパトル「・・・来年はもっといい年になるといいな」
19090「なりますよ、絶対に」
■■「私は。もっと出番がもらえればそれでいい」
削板「俺は健康でいられたらいいかな」
黒子「わたくしは来年も、治安を維持できるように祈りたいですの」
打ち止め「うーん・・・ミサ・・・私も、元気でいられたらいいな!」
エツァリ「・・・自分は来年も地味なのでしょうか」
垣根「それは簡単には変わらないだろうな」
エツァリ「ですよね・・・」
上条「・・・エツァリはまだいいさ、まともなほうだから」
美琴「問題は・・・垣根よね」
垣根「あぁ?俺はエツァリと違って変態じゃないんだけど」
上条「たしかにエツァリは変態だけど、それ以外は至って普通だろ?」
エツァリ「」
心理「大丈夫よ、最近はわりと垣根も落ち着いてきてるから」
美琴「アンタと二人きりの時だけおとなしくてもね・・・」
食蜂「ねぇ、彼氏っていると楽しいもんなの?」
美琴「な、なによいきなり?」
食蜂「垣根は心理定規の前だと態度が変わるんでしょ?」
心理「えぇ、普通の彼になるわよ」
食蜂「それって、なんだかんだで心理定規の前だと素でいられるからじゃない」
吹寄「垣根は本当は真面目なの?」
心理「そうよ、信じられないでしょうけどね」
食蜂「だから・・・恋人ってそんなにも大切なものなのかなって思ってね」
垣根「特別に決まってるだろ、恋人以外の相手なんざ目に入らないくらいになるぞ」
吹寄「よく言うわよ・・・」
垣根「お前のことだってちゃんとフったじゃんか」
吹寄「!あれは黒歴史だから言うんじゃないわよ!」
食蜂「なになに?吹寄って垣根に告白したのぉ?」
垣根「そりゃあもう」
心理「やめなさい、人の愛情を笑い話にするなんて最低よ」
垣根「分かってるって」
美琴「・・・恋人は特別よ、いるだけで幸せになれるもん」
御坂妹「うらやましいかぎりです・・・」
テクパトル「一番大切で、一番身近な存在になるよな」
上条「誰よりも守りたい人だしな」
一方「・・・月並みな台詞になるけどよ、命を懸けてもいいって思えるンだぜ」
番外「バ、バカじゃないの・・・」
ショチトル「顔真っ赤じゃないか」
番外「うるさい!」
食蜂「そうなんだ・・・」
打ち止め「でも焦って作る必要もないと思うな!」
一方「ガキがいっちょ前に語ってンじゃねェよ」
打ち止め「むきーっ!」
御坂妹「ですが、本当に愛している人とだけ付き合いたいものですよ」
上条「な、なんで俺を見ながら言うんだ?」
御坂妹「・・・」
美琴「と、当麻は私のものなんだから!」
御坂妹「分かりましたか?これが恋人というものですよ」
食蜂「よく分かったわ、とりあえず傍から見てるとイライラするわね」
吹寄「・・・はぁ、ホントよね」
■■「私には。彼氏なんてきっとできない。ふふふふふ」
エツァリ「だ、大丈夫ですよ・・・みなさん魅力的ですから」
■■「そういうことを誰にでも言う男は。得に彼氏にはしたくない」
エツァリ「」
上条「・・・食蜂は好みのタイプとかあるのか?」
食蜂「そうねぇ・・・いじり甲斐がある男の子かなぁ」
テクパトル「最悪だなおい」
食蜂「冗談よ・・・私のことを一人の女の子として見てくれる人がいいわねぇ」
美琴「・・・なんか昔の私の理想と似てるわね」
食蜂「やっぱり、超能力者同士よね」
垣根「超能力者は一人の人間として見られることが少ないからな」
削板「そうだよな・・・なんか珍しいものを見るような目で見られるし」
黒子「超能力者だけではないですわ、ある程度の能力者ならばみんな通る道ですの」
一方「・・・昔はただのクソガキだったのにな」
美琴「うん・・・いつからこんなにみんなと違うようになっちゃったのかな・・・」
上条「俺達はそんな風に思ってないからな!」
エツァリ「そうですね、我々だってかなり変わっているのですから」
■■「一々相手の地位なんて気にしていられない。私が話してるのは地位じゃなくてあなたたちだから」
垣根「・・・ありがとよ」
心理「あなたたちみたいな人ばかりなら、世の中はもっと素敵なのにね」
19090「・・・ですが、私たちだけだからこそ特別だと感じられるのでしょうね」
御坂妹「そうですね・・・」
黒子「少し嬉しいのが複雑ですの」
美琴「世の中がみんなこうだったらいいなって気持ちと、私たちだけがこの幸せを味わっていたいっていう気持ち・・・か」
垣根「別にそれはエゴなんかじゃないと思うぜ」
上条「・・・少しわがままなのかもしれないけどな」
19090「・・・こんな幸せ、昔は考えることも出来ませんでしたね」
美琴「私も・・・当麻みたいな素敵な人と出会えてよかったわ」
垣根「・・・俺もだな」
削板「ははは!これは自分の手で掴んだ幸せだ、もっと胸を張れ!」
上条「・・・そうだな、俺が望んだ俺の幸せなんだ!」
番外「熱いねぇ」
打ち止め「この熱さが二人の魅力なんだよ!」
吹寄「・・・上条はその情熱を勉強に回してほしいわね」
上条「う・・・」
■■「上条君は。成績最悪」
ショチトル「あのな、しっかり勉強しないといけないぞ」
一方「お前オリ・・・御坂を養うンだろ」
美琴(あ、初めて御坂って言われたかも)
上条「そ、そうだけどさ・・・」
19090「・・・でも、普通の高校ではどれくらいの勉強をするのですか?」
上条「さ、三次元の何とか」
垣根「定理くらい言えよ」
御坂妹「・・・学校は勉強だけなのですか?」
上条「あ、いや・・・」
吹寄「・・・昼休みとかはみんな楽しいんじゃない?」
御坂妹「昼休み?」
垣根「弁当食ったり外で遊んだりする時間だ」
19090「そ、それは楽しそうですね」
■■「二人は。学校には行っていないの?」
御坂妹「あ、その・・・」
心理「あら、珍しいことかしら」
一方「俺たちも行ってねェからな」
エツァリ「というよりも、行っているほうが少ないのでは?」
食蜂「うわぁ、ヤンキーの集まりなわけねぇ」
ショチトル「そう言うな」
上条「・・・はぁ、年が明けて少ししたらまた補習か・・・」
削板「上条、真面目に授業出てるか?」
黒子「上条さん、ちゃんと授業を受けないとテストで点は取れませんの」
吹寄「そうよ、だいたい授業中寝てばかりだから・・・」
美琴「ね、寝てるの!?」
番外「そりゃ点数も悪いよね」
打ち止め「かっこ悪いよ」
一方「お前さァ・・・成績悪いのは自業自得だろォ」
上条「だって!!英語の授業とか分かるかよ!?」
垣根「あー、自分に理解できない文字の羅列って眠気を誘うんだぜ、お経聞いてると眠くなるのと同じで」
上条「だろ!?」
垣根「まぁ高校生レベルの英語が理解できない時点で終わってるけどな」
上条「」
テクパトル「お・・・あと10分か」
美琴「早いものよね・・・」
食蜂「来年はみんなと仲良くできたらいいなぁ・・・」
美琴「みんなって?」
食蜂「・・・取り巻きよ、でもあいつら全員なんかよそよそしいからなぁ・・・」
ショチトル「お前が怖いんだろう」
一方「精神操作なんて能力、誰だって距離置きたくなるからな」
食蜂「そうよねぇ・・・」
心理「でも、信頼できる人間になれば問題ないわよ」
垣根「食蜂は絶対に無闇に人の心を操作したりはしない、って思わせればいいんだよ」
食蜂「で、できるかしら?」
垣根「できるできないじゃなくてやるんだよ」
食蜂「わ、わかった!!」
■■「ふふふ。また一人。メインが増えてしまった。もう収拾がつかない」
吹寄「何の話?」
一方「・・・来年は筋肉が少しはつきますよォに」
食蜂「また平和な願いねぇ」
御坂妹「モヤシですからね」
19090「もう救いようのないモヤシですからね」
美琴「生まれつきのモヤシだもんね」
番外「むしろモヤシの生まれつきだもんね」
一方「お前ら並べ」
上条「美琴に手を出そうってか!?」
テクパトル「二人に手ぇ出すんじゃねぇ!!!!」
一方「・・・冗談だよ」
垣根「ワーオ、上条君もテクパトルもカッコイイー」
上条「気持ち悪いからやめろよ・・・」
エツァリ「・・・テクパトルと削板さんはまだ鍛えるんですか?」
テクパトル「おう、日々是鍛錬ってやつだな」
削板「これからもずーっとだな!」
黒子「・・・ですが、怪我には気をつけてくださいですの」
削板「おう!!」
御坂妹「テっくん、鍛えるのはいいですが食事は美味しいものにしてくださいね」
テクパトル「分かってるって・・・」
19090「む、胸板が・・・分厚いのは素敵です」
食蜂「へぇ、胸板フェチ?」
■■「分厚い胸板は。服を着ていると太って見える」
吹寄「あ、それは分かるわね」
一方「・・・それくらいに憧れるよなァ・・・」
垣根「お前はガリガリだからな・・・」
番外「余計に憧れるんだろうね」
心理「ま、ほどほどにしときなさいな」
打ち止め(ミサカは一方通行のマッチョな姿を想像してこの前笑い死にそうになったなぁ・・・ってミサカはミサカは思い出し笑い・・・)クスクス
美琴(な、なんか打ち止めが笑ってる・・・)
ショチトル「・・・テクパトルって昔から鍛えてたっけ?」
テクパトル「うーん・・・仕事でなんだかんだ直接戦闘になるときのためにな」
エツァリ「たしかに・・・自分も少々の鍛錬はしていましたね」
テクパトル「それで、学園都市に来てからヒマを持て余してしまってな」
一方「ヒマだったから鍛えたのかよ・・・」
美琴「それでそのレベルってすごいわよね・・・」
テクパトル「まさか就職に役立つとはな」
上条「俺も特技作らないとな・・・」
■■「上条君は。詐欺師とかどう?」
上条「なんでだよ!?」
吹寄「結婚詐欺ね」
食蜂「あー、似合う似合う」
上条「ねぇから!!」
美琴「・・・当麻はホントフラグ魔よね・・・」
垣根「呆れるほどにな」
上条「知らないうちに建ってたんだよ・・・」
美琴「・・・私もいつの間にか建てられてたし」
テクパトル「それは怖いな」
打ち止め「音もなく忍び寄るフラグ・・・」
番外「その正体は、悲しい恋・・・」
■■「吹寄は。よく魔の手にかからなかった」
吹寄「だって上条はタイプじゃないもの」
一方「・・・上条、てめェそろそろ自重しろよ」
上条「いやいや!!最近はテクパトルのほうがひどいぞ!?」
テクパトル「そうか?まだまだだろ」
ショチトル「私達のいないときもフラグ建てまくってるくせに」
上条「そ、そうでもないって!!」
エツァリ「人助けは最近されているんですか?」
上条「そりゃ・・・路地裏に連れて行かれた女の子助けたり財布落とした女の子助けたり道に迷ってる女の子に道教えたり・・・」
美琴「・・・なんで女の子ばっかりなの?」
御坂妹「・・・女の子だけを助けているのでは?」
上条「ち、違うから!偶然だって!」
19090「ですが、女の子以外を助けたことはあるんですか?」
上条「ありますからね!?」
削板「人助けはいいけど、下心は感心しないな」
上条「だから違うんだよ!」
一方「最低だな」
食蜂「見損なったわ」
心理「上条君の魅力の一つでもあるけどね」
垣根「魅力(笑)だな」
美琴「・・・当麻、その体質を治しなさい」
上条「治せるなら治したいですよ・・・」
テクパトル「・・・上条は性格がいいからな、モテそうだ」
一方「そォだな・・・まァ一部からは恨みも買いそォだが」
削板「うーん・・・やっぱり正義とは時として憎まれるものだな!」
■■「正義なんて。私の巫女さんパワーでぶち壊す」
吹寄「落ち着いて姫神・・・」
打ち止め「いつもの発作?」
吹寄「そ、そんなのじゃないわよ」
食蜂「・・・垣根は性格で損してる感じよねぇ」
垣根「あぁ?なんでだよ」
ショチトル「不真面目だし」
黒子「プレイボーイですの」
心理「あら、男はそれくらい行動的なほうがいいわよ」
垣根「分かってるな」
御坂妹「・・・垣根はチャラいです」
ショチトル「その点エツァリは一途だぞ」
一同「・・・」
エツァリ「な、なぜ黙るのですか?」
上条「いや・・・一途でもなぁ・・・」
一方「変態だからな」
削板「なんかなぁ・・・」
美琴「ストーカーだし」
吹寄「近寄りたくはないわね」
■■「むしろ視界にも入れたくない」
食蜂「ひくわよねぇ」
美琴「レズのアンタは言えないでしょ」
食蜂「レ、レレレレレレレズちゃうわ!!!!!」
番外「え、そうなの?」
食蜂「違うわよ!!!」
上条「レズなのか・・・」
食蜂「違う!」
垣根「・・・意外と一番マシなのは削板じゃねぇか?」
黒子「そうに決まっていますの!!!」
心理「たしかに・・・優しいものね」
■■「フラグは白井一人だし」
吹寄「・・・体力もあるし・・・」
食蜂「顔もいい」
番外「うん、それは同意見だね」
削板「ははは!!そりゃ嬉しいな!!」
御坂妹「ですが、たまにうるさいというか・・・」
打ち止め「暑苦しいよね」
19090「そうですね・・・それがなければ完璧ですが」
ショチトル「完璧な人間などいないのさ」
垣根「俺は?俺はぁ?」
美琴「その時点で完璧じゃないわよ」
テクパトル「・・・そろそろだな」
19090「では、カウントダウンの準備ですね」
美琴「・・・ねぇ、みんな」
垣根「なんだよ」
心理「来年もよろしく、でしょ?」
美琴「う、うん!」
上条「みんな、これからも仲良くしてくれよな」
テクパトル「俺は忙しくなるけどな」
一方「ンな言い訳してンな、ヒマあったら遊べよ」
番外「そうだね、テクパトルも友達じゃん」
テクパトル「分かってるよ」
垣根「さて・・・」
垣根がゆっくりと立ち上がる
美琴「?何するの?」
垣根「新年が明ける瞬間にジャンプ」
上条「マジでやるのかよ・・・」
食蜂「バカみたい」
垣根「じゃあなんでお前は立ち上がってるんだよ」
食蜂「ひ、一人じゃかわいそうだからよ!!」
垣根「お前もジャンプしたいんだな」
食蜂「!!ち、違うわよ!」
削板「ははは!!じゃあ俺も!」
黒子「・・・な、なんだかおかしな空気ですの」
ショチトル「私もジャンプしよっと」
■■「私も。目立ちたい」
打ち止め「ミサ・・・私も!!」
上条「はぁ・・・なんだかそんな雰囲気になってきたな」
垣根「ほれ、みんなも」
心理「・・・仕方ないわね」
エツァリ「あと30秒ですか・・・」
垣根「今年のうちに言いたいこととかは?」
上条「うーん・・・」
美琴「別に・・・来年に言えばいいもの」
番外「一方通行、あのプリン食べたの私だったんだ」
一方「はァ!?てめェ黄泉川が食ったって言ってただろォが!!」
削板「ははは!!仲良しだな!」
御坂妹「くだらない会話ですね」
黒子「・・・みなさん、始まりますの」
上条「あぁ」
一同がテレビを見つめる
その中では、リポーターが嬉しそうに時計を見つめていた
上条「カウントダウン、せーの!!!」
美琴「10!!」
垣根「9!!」
一方「8」
食蜂「7!!」
エツァリ「6」
■■「5」
吹寄「4」
テクパトル「3!」
番外「2!!」
上条「1!!飛ぶぞ!!!」
みんながぽん、と軽く地面を蹴る
くだらない考え
子供っぽい行動
でも、みんなでやるのが特別なように感じて
それぞれが、笑顔を浮べる
ただ
上条「あれっ!?」
上条はやっぱり不幸で
地面を蹴ろうとした瞬間、自分の足の下にクッションがあることに気づいた
そして
上条「いてぇ!!!」
みんなが宙に跳んでいる中、上条は地面に顔面をぶつけた
上条「!!新年は!?」
「明けました、新年明けましておめでとうございます!!」
テレビのリポーターが笑顔で国民のみなさんに語りかけている
上条「ふ、不幸だ・・・」
美琴「だ、大丈夫・・・?」プルプル
上条「な、なんか笑ってないか!?」
心理「あら、そんなことないわよ」クスクス
■■「ダサい」
吹寄「上条らしいわね・・・」
垣根「だっせー!!」
ショチトル「ははは、ドンマイ」
上条「ち、ちくしょう・・・」
打ち止め「ヒーローさんはなんでわざわざ地面に転がったの?」
番外「ひゃはははは!!ダメだってそんなこと言ったら!!!!!!!!」
垣根「だっせぇ!もうだっせぇよヒーロー!!!!!!!!!」
美琴「ふ・・・ふふ・・・あはは!!!!!!!!!!」
上条「わ、笑うなよ!!」
削板「ははは!!笑顔を作るのはいいことだ!!!!!!!!」
上条「よ、よくねぇけど・・・もういいや・・・」
美琴「ひー・・・ひー・・・と、とにかく!!」
美琴が目元の涙を拭いながら一同を見渡す
垣根「オーケー、分かってるよ・・・」
心理「じゃあ・・・せーの」
一同「明けましておめでとうございます!!!!」
上条「・・・さて、寝ましょうか」
垣根「はぁ?ナメてんのかよお前」
心理「そうよ、夜はこれからじゃない」
上条「いやいや!!明日初詣じゃないの!?」
ショチトル「初日の出も見るんだよな?」
垣根「おうよ、今寝たらもう起きれないだろ?」
上条「だからって徹夜!?」
テクパトル「・・・そうなるとは思ってた」
■■「私は。構わない」
吹寄「まぁ一日くらいなら・・・」
御坂妹「そうですね」
上条「心理さん!反論して!」
心理「上条君、諦めなさい」
上条「俺!?」
美琴「はぁ・・・どうするの?これから」
垣根「朝までテレビを見るんだよ」
上条「なんて不健康な・・・」
削板「テレビは新年で盛り上がってるな」
上条「さっき明けたばかりだもんね、もう寝ようぜ!!」
一方「・・・ごちゃごちゃうるせェな、もォ諦めろ」
上条「うぅ・・・」
御坂妹「しかし・・・私だけここにいてよかったのでしょうか」
テクパトル「他のみんなは?」
御坂妹「いじけてますね」
テクパトル「あ、明けましておめでとうって言っててくれ」
御坂妹「みんな笑顔になりました」
テクパトル「現金だなおい!!」
上条「はぁ・・・ん?垣根は酒飲むのか」
垣根「おう、さすがにジュースだけじゃ足りないからな」
テクパトル「俺もくれ」
心理「私もいいかしら」
垣根「あいよ」
ショチトル「・・・またお酒か」
削板「飲みすぎはよくないぞ!」
一方「・・・つゥかよ、白井は見過ごしていいのか?」
黒子「・・・抵抗するだけムダですの・・・」
■■「ふふふ。世の中は力が全て」
吹寄「・・・うわ、匂いが強いわね・・・」
食蜂「でも綺麗な色・・・」
美琴「ホントよね・・・」
テクパトル「ぷはー・・・うめぇ・・・」
エツァリ「おじさん臭いですよ」
打ち止め「なんかヨミカワと同じ匂いを感じる・・・」
番外「うんうん、酔いつぶれてるよねいつも」
ショチトル「・・・テクパトル、飲みすぎだぞ・・・」
美琴「一気飲み・・・」
テクパトル「・・・はぁ、俺は酔いにくいから大丈夫だって」
19090「そういえば、テっくんは酔っていませんね」
テクパトル「まぁ・・・それなりに強いからな」
上条「・・・それって結構強い酒だろ?」
テクパトル「まぁな」
心理「ふふ・・・これくらいが一番いいのよ」
吹寄「な、なんか酔ってない?」
心理「酔ってないわ、ただ溺れてるだけよ」
美琴「ダメじゃない・・・」
黒子「テクパトルさんはたしかもうかなりの老齢ですのよね?」
テクパトル「老齢言うな!!・・・自分でも正確な年齢は分からないな」
上条「そうなのか?」
エツァリ「えぇ、自分達は戸籍をつけませんでしたから」
ショチトル「親なんていないしな」
テクパトル「たぶん・・・25・・・くらいかな・・・?」
一方「見た目は20くらいだけどなァ」
番外「もしかして、意外と童顔?」
テクパトル「年齢がわからんからなんとも言えないな・・・」
19090「・・・そうとなると、エツァリさんとショチトルも正確な年齢は分からないのですか?」
ショチトル「あぁ、そうだぞ」
エツァリ「あまり気にすることでもないですけれどね」
番外「まぁ年齢なんてね」
御坂妹「そうですね」
美琴「・・・そういえば、アステカってどんなところなの?」
テクパトル「ん?アステカか・・・」
ショチトル「そうだな・・・なんといえばいいか」
エツァリ「魔術的な話になりますよ」
上条「あぁ、いいぞ」
テクパトル「今なら・・・そうだな、メキシコ辺りに一時期大きな文明を築いたのがアステカだ」
ショチトル「そこにはアステカ神話という、少しマイナーな神話があるんだよ」
垣根「へぇ・・・」
エツァリ「オメテオトル、という創造神がそもそもの起源とされています」
テクパトル「そして、オメテオトルが作り出したケツァルコアトルとテスカトリポカの二大神が、そのあと創造を行っていったんだ」
ショチトル「そしてな・・・アステカで一番有名なのは生贄の儀式だろうな」
吹寄「い、生贄?」
エツァリ「えぇ」
テクパトル「テスカトリポカは闇・・・というか、夜の神様なんだ」
ショチトル「そして、朝・・・太陽の神はウィツィロポチトリとなっている」
エツァリ「この二人は敵対していたんですよ」
上条「ほうほう・・・朝と夜の神様の戦いか・・・」
御坂妹「なんだかいかにもオカルトですね」
テクパトル「もしもテスカトリポカが勝ってしまったら、世界は闇に支配される」
ショチトル「古代アステカの人々はそれを恐れたんだ」
上条「・・・なるほどな・・・」
エツァリ「そのため、ウィツィロポチトリに生贄として人の心臓を捧げたんですよ」
食蜂「・・・え、えげつないわね・・・」
心理「でも、神話ってそういうものよね」
エツァリ「その時、人の心臓を取り出すのに使ったのが黒曜石の槍です」
上条「お前たちの使ってるのと同じ・・・だな」
エツァリ「我々の槍は、トラウィスカルパンテクートリの力を使っているのですよ」
ショチトル「金星の神であり、激しく燃えさかる槍を持っていた神だ」
テクパトル「まぁ、太陽神に反抗したせいで槍を頭に跳ね返され、イツラコリウキになったんだがな」
上条「?槍は太陽の神様に心臓を捧げるための道具だったんだろ?」
■■「その槍の神様が太陽の神様に反抗するなんて。ちょっと矛盾している」
テクパトル「いや、最初に言った人々が心臓を捧げていたのはウィツィロポチトリだ」
エツァリ「一方、トラウィスカルパンテクートリが逆らったのはトナティウ、という別の太陽神だったんですよ」
一方「・・・いくつも神様がいるのな」
ショチトル「だがな、トラウィスカルパンテクートリの力は絶大だ」
テクパトル「金星の光は、あらゆる災いをもたらすと信じられていたんだ」
エツァリ「ですから、トラウィスカルパンテクートリの武器であった槍を模倣することでその力の一部を我々は武器にしていたのですよ」
垣根「・・・なかなか難しい話だな」
美琴「でも・・・それってチートよね」
テクパトル「いや・・・制御を間違えば恐ろしいことになるし、魔術は魔力を精製するのに体力をかなり消費する」
ショチトル「そうだな・・・なかなか厳しいぞ」
上条「・・・にしても、聞いたことがあるのはケツァルコアトルだけだな・・・」
吹寄「ゲームとかでも使われる名前よね」
テクパトル「ケツァルコアトルはわりと有名な神だからな」
ショチトル「マヤ文明ではククルカン、として奉られていたようだな」
美琴「ククルカンも聞いたことあるわね」
黒子「・・・魔術側というのは、神話が深く関係しますの?」
テクパトル「神話、過去の戦・・・宗教的な話はなんでもな」
エツァリ「ロンギヌスの槍なども存在しますからね」
ショチトル「・・・オカルトな世界だからな、なかなか一般人は踏み入れないさ」
19090「な、なんだかすごい話ですね・・・」
ショチトル「まぁ、科学側にも何人かはそういうのに詳しいやつがいるだろ」
上条「アレイスター・・・土御門もかな」
美琴「?土御門さんって魔術に詳しいの?」
上条「あぁいや!あいつってそういうの好きなんだよ」
削板「ふーん・・・科学側にもそういうのに詳しいヤツはいるのか・・・」
一方(詳しい・・・ねェ)
■■「・・・おっと。魔術の話になってしまった」
吹寄「魔術側からは、何か私達に聞きたいことはないの?」
テクパトル「特には・・・こっちに住んでるからある程度は分かるしな」
ショチトル「そうだな」
打ち止め「・・・そういえば、超能力者の人は月にどれくらい稼げるのかな?」
垣根「あぁ?なんだよいきなり」
上条「それは気になるな」
垣根「・・・まぁ、月・・・そうだな・・・」
美琴「お、億単位・・・よね」
吹寄「億!?」
ショチトル「お、億ってあの億か!?」
垣根「あぁ」
一方「なンだよ、そンなに珍しいか?」
削板「学園都市からしたら、俺たちの力を応用すればいくらでも利益があげられるからな・・・」
食蜂「そうよねぇ・・・私も力の応用はできそうだし」
黒子「お、恐ろしいですの・・・」
■■「これが。凡人と天才の差」
御坂妹「・・・すごいですね・・・」
打ち止め「ゲコ太グッズ買い放題だね!」
美琴「うん!!」
上条「基準がそこかよ!!」
垣根「ま、異常な稼ぎだとは思うな」
食蜂「甘いもの食べてもそんなにお金使わないし・・・」
美琴「余ったら次に回しちゃうもんね」
削板「そうだよな・・・サプリメント買っても全然だ」
一方「・・・どォにかして使わないとな」
上条「うらやましい・・・」
■■「私も。お金がほしい」
エツァリ「ですが、ありすぎるのも考え物では?」
テクパトル「そうだな・・・ちょうどいい稼ぎってのがあるからな」
美琴「うん・・・そうよね」
ショチトル「美琴は何にお金使うんだ?」
美琴「えっとね・・・ゲコ太に・・・お菓子に・・・」
黒子「お姉さまったら・・・昔からそうですの」
ショチトル「・・・なんとも美琴らしいな」
19090「もう少し、派手に使わないんですか?」
美琴「派手にって言ってもね・・・」
垣根「億を遊びなんてないからな」
心理「そうよね・・・」
番外「・・・アナタは何に使うの?」
一方「・・・服とかコーヒーとか」
上条「うわ・・・また安っぽい趣味だな・・・」
一方「そンなもンだろ」
垣根「俺もそこまでは使わないな・・・心理定規に使われるし」
心理「あら、最近はそうでもないじゃない」
黒子「心理定規は服を買いすぎですの」
上条「いいよな・・・そんなに金があったらやりたいことなんでも出来そうだ」
美琴「当麻のやりたいことって?」
上条「そうだな・・・まずスーパーのセールを遠目から見て・・・」
ショチトル「・・・なんともひもじい目的だな」
上条「金持ってたら、やっぱり庶民を見下すんじゃないんですか!?」
御坂妹「それは間違ってますね」
■■「悪趣味」
食蜂「上条もえげつないわねぇ」
上条「う・・・」
吹寄「上条・・・さらに見損なったわ」
上条「元から見損なってたのか・・・」
美琴「でも、当麻は貧乏だからキャラが確立してるわよね」
上条「そうかな・・・?」
垣根「金に余裕のある上条は上条じゃない」
ショチトル「金か・・・私もほしいといえばほしいな」
エツァリ「何か必要なものでも?」
ショチトル「免許を取りたい」
エツァリ「車ですか・・・自分もほしいですね」
テクパトル「なんだ、ショチトルって免許持ってなかったのか」
ショチトル「まだ取れる年齢でも・・・ってお前持ってるのか?」
テクパトル「一応な」
19090「は、初耳ですよ?」
テクパトル「二輪だがな」
上条「おぉ・・・なんかアメリカンとか似合いそう・・・」
一方「俺も免許くらいはほしいなァ」
■■「今は。免許も取るのに時間が掛かる」
美琴「と、当麻とドライブ・・・」ポーッ
上条「お、落ち着け美琴!!」
垣根「・・・新年の会話じゃねぇよな・・・」
美琴「で、でも普段と変わらないじゃない」
食蜂「そうよねぇ・・・どうせ同じ一日だし」
上条「・・・初日の出って何時だったっけ?」
心理「そうね・・・5時半にでも出れば間に合うわよ」
上条「了解・・・寝たいな」
美琴「ダメよ、今日は徹夜なんでしょ?」
削板「そうだぞ上条!!」
上条「あぁもう!!さりげなく寝られそうな空気だったのに!!」
御坂妹「空気読めない人ですね」
番外「冷めるね」
上条「だって眠いんだぜ!?」
垣根「はいはい、面白い面白い」
上条「冗談じゃねぇよ!!??」
垣根「・・・にしても、年が明けたって実感は湧かないもんだな」
ショチトル「いいんじゃないか?」
エツァリ「朝になればイヤでも実感が湧きますよ」
上条「そうかな・・・」
垣根「ま、適当に話して時間潰そうぜ」
上条「そうだな・・・」
■■「ではまず。私の出番について」
上条「話さないからな」
そのあと、みんなでくだらない話をして過ごす
意外と時間はすぐに過ぎていった
そして、朝が来る
初日の出まであと1時間ほど
一同は適当に顔を洗い、外へと向かった
フレンダ「・・・はぁ、下界は正月正月って騒いでる訳よ」
ゴーグル「そうっすね」
フレンダ「・・・いいなぁ・・・私もみんなと初詣とかしたかったなぁ・・・」
ゴーグル「みんなって誰っすか?」
フレンダ「アイテムのみんなに決まってるじゃん」
ゴーグル「あぁ、じゃあ行ってみますか」
フレンダ「うん、行こう」
フレンダ「え、行く?」
ゴーグル「行きたいんじゃないんすか?」
フレンダ「ちょ、ちょっと待ってよ!!行ける訳!?」
ゴーグル「行けますよ」
フレンダ「ど、どうやって!!」
ゴーグル「亡霊というか幽霊というか」
フレンダ「そ、そんなことできる訳?」
ゴーグル「出来ますよ、俺何回もやってますから」
フレンダ「・・・あ、相手には見える訳?」
ゴーグル「見えないっすよ、基本」
フレンダ「そ・・・それじゃ結局意味ない訳よ・・・」
ゴーグル「・・・基本って言ったじゃないっすか・・・」
フレンダ「も、もしかして特例がある訳!?」
ゴーグル「うーん・・・でも、難しいっすよ?」
フレンダ「どうする訳よ!?」
ゴーグル「AIMって知ってますか?」
フレンダ「そりゃ知ってる訳よ」
ゴーグル「あれって、時として人間の形を生み出すらしいんすよ」
フレンダ「へぇ・・・」
ゴーグル「それを利用するんす」
フレンダ「どうやって?」
ゴーグル「AIMの渦の中に飛び込んでもうそのあとはグチャグチャと」
フレンダ「ごめん、冗談はやめてほしい訳よ」
ゴーグル「いや、マジっすよ」
フレンダ「・・・でも、それって出来る訳?」
ゴーグル「まぁ・・・よくは分かんないんすけどね」
フレンダ「・・・世の中そんなオカルトがあるのかしら」
ゴーグル「知らないっすよ、でもやったことありますから」
フレンダ「し、信じられない訳よ・・・」
ゴーグル「それじゃ、俺だけで行ってきます」
フレンダ「ひ、一人にする訳!?」
ゴーグル「だって信じられないんでしょ?」
フレンダ「し、信じるから!」
ゴーグル「・・・あと、AIMの微妙な動きとかで消えそうになったりもしますよ」
フレンダ「そ、そうなの?」
ゴーグル「・・・途中で消えるかもしれません」
フレンダ「き、消える?」
ゴーグル「それにフレンダさんは麦野に殺されたんすよね?」
フレンダ「そ、そうだけど・・・」
ゴーグル「もしかしたら、傷付けるかもしれませんよ?」
フレンダ「・・・それでも、会いたい訳よ」
ゴーグル「はぁ・・・仕方ないっすね、行きますよ」
ゴーグル男が先に歩いていく
下の世界は、そろそろ午前の4時になる頃だ
フレンダ「・・・ねぇ、なんでそんなこと教えてくれた訳?」
ゴーグル「だって泣きそうな顔してましたから」
フレンダ「泣きそうだったかな」
ゴーグル「なんか死にそうな顔もしてました」
フレンダ「それは結局余計だった訳よ」
ゴーグル「お、あったあった」
フレンダ「?何もない訳よ」
ゴーグル「違いますよ、ここがちょうど学園都市の中心部の真上なんすよ」
フレンダ「・・・で?」
ゴーグル「AIMが最も集まる場所は中心部っす」
フレンダ「うん、で?」
ゴーグル「じゃあ行きましょうか」
フレンダ「ま、待って!!どうやって行く訳よ!?」
ゴーグル「落ちます」
フレンダ「は?」
ゴーグル「こっから下に・・・」
フレンダ「い、いやいや!!危ないから!!」
ゴーグル「じゃあここで待っててください」
フレンダ「い、意地悪ぅ!!」
ゴーグル「じゃ・・・行きますか?」
フレンダ「・・・い、行くわよ!」
ゴーグル「んじゃ」
ゴーグル男がぎゅっとフレンダの手を握る
その感触に、フレンダは少しドキリとしてしまう
フレンダ「な、何?」
ゴーグル「はぐれたらまずいんで」
フレンダ「そ、そうね!」
ゴーグル「・・・」
フレンダ「?どうした訳?無口だけど」
ゴーグル「いえ、俺はどうしようかなって」
フレンダ「垣根たちには会わない訳?」
ゴーグル「会わないほうがいいんで」
フレンダ「・・・」
ゴーグル「じゃ、行きますよ」
二人が雲の隙間に体を落とす
風を感じる
落ちていくのが分かる
そして
二人は、AIMの渦の中に飲み込まれた
上条「さて・・・そろそろ行くか」
垣根「おー・・・」
美琴「・・・今になってなんでテンション低くなってるのよ」
垣根「眠気がやってきました」
削板「ははは!!だらしないなぁ、一日の徹夜くらいで!!」
一方「・・・ねみィ・・・」
19090「・・・どうにか初日の出だけでも・・・」
ショチトル「あー・・・どこに見に行くんだ?」
垣根「そうだな・・・どこがいい?」
吹寄「考えてなかったの?」
打ち止め「じゃあ・・・展望台がいいな!」
■■「この近くに。あったかな」
食蜂「あぁ、あるわよん♪」
黒子「まぁ、どこですの?」
上条「・・・心当たりないんだけど・・・」
食蜂「あれあれ、最近出来たタワーがなかったっけ」
心理「あぁ・・・たしか学園都市で一番高いタワーだったわよね?」
ショチトル「そんなのあるのか?」
エツァリ「たしかニュースでちらっと聞きましたね」
美琴「じゃあそこでいい?」
番外「うん、いいよ!」
御坂妹「美味しいものとか売っているでしょうか」
ショチトル「あるのか?」
食蜂「うん、いろいろあるらしいわよ」
テクパトル「・・・正月は混みそうだな・・・」
一方「・・・人混みかよ・・・」
削板「いいじゃないか、楽しそうだし」
美琴「そうよ、二人とも元気出しなさい!」
ショチトル「では、向かうでござる」
エツァリ「その話し方はなんですか」
上条「・・・なぁ」
垣根「なんだよ」
上条「・・・混みすぎじゃないか?」
上条はタワーの前に並ぶ人混みを見つめていた
ざっと300人は並んでいる
御坂妹「・・・耐え切れないですね・・・」
一方「やってられるかよ・・・」
エツァリ「・・・どうしますか?」
テクパトル「はぁ・・・ちょっと飲み物買ってくるよ・・・」
御坂妹「あ、お願いしていいですか?」
テクパトル「あぁ」
19090「では私は・・・そうですね、コーヒーでも」
御坂妹「同じく」
テクパトル「了解」
■■「あ。私は・・・」
テクパトル「行ってくる」
■■「」
上条「美琴、何がいい?」
美琴「じゃあ・・・スポーツドリンクかな」
上条「了解」
垣根「・・・ねみぃ・・・」
心理「あなたは行ってくれないの?」
垣根「体力がありましぇん」
一方「・・・なげェ列だな・・・」
垣根「きたねぇ花火だ・・・」
エツァリ「・・・少し眠くなってきましたね・・・」
食蜂「そうねぇ・・・」
吹寄「・・・まぶたが・・・重い・・・」
美琴「はぁ・・・あれ?」
美琴が列の前のほうを見る
そこには、見慣れた顔の四人が並んでいた
麦野「・・・くっそ・・・長い列ね・・・」
浜面「そう言うなよ・・・っていうか行きたいって言い出したのはお前だろ・・・」
絹旗「超めんどくさいです・・・っていうか、初日の出までに登れるんですかね」
滝壺「たしか、ここは1500人は収容できるはず」
浜面「収容って言い方・・・」
麦野「・・・なんだよ、くそ・・・」
浜面「いらつくなよな・・・」
麦野「メルトダウナーぶっ放そうかな」
浜面「それはやめろよ!!」
垣根「・・・何やってんだあいつら」
心理「私達と同じ考えじゃないの?」
美琴「ちょっと行ってくる」
食蜂(第四位・・・ね)
美琴「麦野さん、お久しぶり」
麦野「あ?あぁ、御坂じゃねぇか・・・彼氏は?」
美琴「今飲み物買いに・・・」
絹旗「ほら浜面、それが男の理想ですよ」
滝壺「はまづら、飲み物買ってきて」
浜面「いやいや!!待ってくれよ!」
麦野「・・・てかいつものメンバー勢ぞろいなのな」
美琴「うん、みんなで初日の出が見たくて」
麦野「ふーん・・・お前たちもか」
浜面「考えることはみんな一緒か・・・」
絹旗「超定番ですからね・・・」
滝壺「こんなスポットが出来たのは嬉しいよね」
麦野「・・・ここまで混んでるとは思わなかったけどな」
美琴「私も・・・」
麦野「・・・にしても御坂は相変わらず・・・」
美琴「?なになに?」
麦野「・・・子供趣味な服着てるよな・・・」
美琴「む、麦野さんだっておばさんくさい・・・」
麦野「あぁ!?今なんて言った!?」
美琴「お、おばさんくさいって言ってるのよ!!」
麦野「てめぇ!!ここで昔の続きでもやるか!?あぁ!?」
美琴「ふふん、全快状態なら余裕だもん」
麦野「この野郎!!」
心理「はいはいそこまで」
二人が言い合っていると、パンパンと後ろから手を叩く音が聞こえた
美琴「心理定規・・・」
麦野「なんだよ、邪魔すんな」
心理「正月早々大声で喧嘩しないの」
麦野「ちっ・・・」
美琴「・・・子供っぽいとか言われたんだもん・・・」
心理「美琴は子供っぽいし麦野さんはババァよ」
美琴「何よ!?」
麦野「てめぇ喧嘩・・・」
心理「何?事実を言ったまでよ?」
美琴「で、でもね!」
麦野「・・・ちっ、てめぇは相変わらずすかしやがって・・・」
心理「どうでもいいけど、浜面君が困ってるわよ」
麦野「・・・」
浜面(あっぶねぇ・・・この姉ちゃんが来てなかったら今頃は・・・)
絹旗「浜面、心理定規のことを超見てますね」
滝壺「はまづら、浮気はダメ」
浜面「違うから!」
麦野「・・・浜面、てめぇは昔から・・・」
浜面「違うんだって!」
美琴「・・・まぁ、私は戻るから」
心理「私も、仲良くしなさいよね」
麦野「あぁ、お前らもな」
心理「あなたたちと違って仲良しだから心配しないで、お・ば・さ・ん」
麦野「てめぇ!!!」
浜面「ま、まぁまぁ!!心理定規の姐さんも冗談はやめて!!」
心理「じゃ、麦野さんの世話よろしくね」
浜面「あ、あぁ!!」
垣根「・・・何しに言ったんだお前ら」
心理「ちょっとからかいに」
美琴「心理定規はからかいすぎよ・・・」
心理「あれくらいいいじゃない」
垣根「・・・麦野ががん見してるんだけど」
心理「気にしないの・・・ほら、進んだわよ」
食蜂「・・・そろそろ入れるわねぇ」
ショチトル「やっとか・・・」
御坂妹「・・・あ、テっくんとお義・・・上条さんも帰ってきましたよ」
上条「はい、美琴」
美琴「ありがと!」
テクパトル「ほれ」
19090「ありがとうございます」
御坂妹「いやぁ、テっくんは優しいですね」
テクパトル「ほれ、姫神」
■■「?私のも。買ってきてくれたの?」
テクパトル「あぁ・・・コーヒーでよかったか?」
■■「さ、さっきのスルーはツンデレ?」
テクパトル「いや、何かが違う」
一方「・・・いいから進め」
上条「あぁ、そうだったな」
黒子「・・・やっと登れますのね」
打ち止め「楽しみだね!」
垣根「・・・おぉ、綺麗な景色だ」
心理「素敵ね・・・」
上条「・・・すげぇ、垣根の家も見える・・・」
美琴「垣根の家が大きすぎるだけよね・・・」
一方「・・・いい景色だな」
一同が展望台から外を眺める
地平線の彼方が少し明るくなり始めている
上条「・・・そろそろだな」
美琴「一年の始まりね・・・」
食蜂「やっと始まったって感じね」
吹寄「・・・今年も健康でいられるたらいいわね」
ショチトル「そうだな・・・」
テクパトル「仕事・・・上手くいきますように」
削板「みんなと楽しくいけますように!!」
ショチトル「・・・お、登ってきた」
眩しい太陽が昇り始める
周りの学生達も声を上げる
テクパトル「・・・綺麗だな・・・」
番外「すげぇ・・・」
19090「こんなに眩しいものなのですね・・・」
美琴「・・・そうね」
上条「いいな・・・なんか」
垣根「・・・さて、始まったぜ今年も・・・」
心理「そうね・・・」
垣根「・・・これから初詣だな」
心理「えぇ、どこに行く?」
垣根「おっとその前に」
垣根「着物に着替えなきゃなぁ!!」
上条「はぁ・・・結局着物着るために一回家に帰ってきたんだよな・・・」
垣根「安心しな、みんなの着物はそれぞれあるから」
美琴「ホント・・・なんでもある家よね」
心理「私がいろいろと買ってるおかげよね」
垣根「自重しろよ・・・お前ばっかが金使ってるじゃねぇか・・・」
テクパトル「・・・にしても、着物はきついな」
心理「あなたと削板は筋肉質だから少し窮屈かもしれないわね」
テクパトル「少しじゃない、かなりだよ」
削板「ははは!たしかにきついな!」
19090「テっくん、似合ってますよ?」
テクパトル「あぁ、お前もな」
19090「//」
食蜂「・・・私も久しぶりに着物なんて着たわね」
一方「・・・なンか緩いンだけど」
打ち止め「ガリガリだからだね」
番外「アナタ、もっと鍛えなよ」
一方「うるせェな・・・今年は頑張るンだよ」
テクパトル「あぁ、そうしてくれ」
■■「・・・私は。あまり着物を着ても変わらない」
吹寄「・・・胸がきつい」
美琴「・・・なんか自慢みたいに聞こえる・・・」
御坂妹「うらやましいかぎりですよね」
番外「いやぁ、胸がきついなぁ!」
美琴「あぁもう!うらやましいからやめてよ!」
ショチトル「・・・やっぱり着物は気に入らないな」
エツァリ「我々の着ている服と大分違いますからね」
黒子「ではそろそろ行きますの」
垣根「あ、ちなみにそれぞれのカップルで別れて行動だからな」
食蜂「え、なんかそれってずるくない?」
上条「いいだろ?」
吹寄「・・・独り身をバカにしてる発言ね」
打ち止め「ちっ・・・これだから大人はイヤだなぁ」
一方「ロリの舌打ち・・・」
心理「新しいジャンルに目覚めないの」
テクパトル「じゃあ・・・さっさと行こうか」
御坂妹「・・・ちくしょう・・・独り身は辛いです・・・」
一同が近くの大きな神社へと向かう
道はかなりの数の学生で混んでいた
その中を上手く歩いていく
着物を着ている学生が大半なため、少し不思議な光景になっていた
普段ならば学生服で埋め尽くされる学園都市
それが今だけは色とりどりな着物で飾られている
食蜂「なんか幻想的よねぇ」
吹寄「いいわよね・・・新年って感じがして」
削板「みんな気合い入ってるな・・・」
黒子「この日のために着物の用意をされる方も多いはずですの」
番外「学園都市の中じゃあんまり着る機会ないからね」
ショチトル「ここぞって時に着ないといけないんだな」
美琴「うん、成人式とか結婚式なんてないに等しいもん」
19090「・・・あ、見えました」
垣根「んじゃ・・・そろそろ別行動に入りますか」
黒子「了解ですの」
食蜂「じゃ、私は吹寄と姫神と行くから」
食蜂が二人の手を取って駆けていく
打ち止め「じゃあ・・・ミサカは10032号と行くね、ってミサカはミサカは告げてみたり」
一方「あァ?俺達と一緒じゃねェのかよ」
打ち止め「見せ付けられるだけなんてイヤだもん!ってミサカはミサカはそっぽ向いてみる!」
御坂妹「では行きましょうか、上位個体」
打ち止め「うん!」
テクパトル「・・・じゃ、俺達も行くか」
19090「はい!」
ショチトル「じゃ、正午くらいに集合でいいか」
上条「あぁ、みんな楽しんでな!」
垣根「お前もな」
手を振って一同がバラバラになる
カップルだけの初詣
少し特別な雰囲気である
上条「美琴、なんか買いたいものとかあるか?」
美琴「うーん・・・まずはお参りからかな」
上条「了解」
屋台に囲まれた道の中を二人は歩いていた
参拝客は多いが、わりとスムーズに進んでいる
よく見ると巫女さんが整理をしているようだ
毎年毎年混雑してしまうため、神社側も対策を練ったのかもしれない
上条「でもやっぱり混んでますね・・・」
美琴「みんなお願いしたいこととかあるのよ」
上条「オカルトなんて信じてない学園都市でも神頼みはするんだよなぁ」
美琴「正月に一々そんな夢のない話なんてしてられないじゃない」
上条「まぁ・・・そうなのかもな」
美琴「正月といったら神社で初詣、これは昔からの慣習だし」
上条「・・・そうだな」
上条がくるりと辺りを見回す
着物を着た学生が大半
中には空気を読まない学生服の学生もいるにはいるが
みんなが楽しそうに何かを話している
今年の目標、新年の挨拶
宿題の進み具合はどうかとか、着物が似合っているとか
そんなくだらない話で盛り上がっている
超能力開発を受けている学生といっても所詮は青春している学生なのだ
普通の学生となんら変わりはしない
上条「なんか、ほのぼのするよな」
美琴「うん、当たり前だけど微笑ましい光景よね」
上条「・・・美琴、着物似合ってるな」
美琴「当麻もカッコイイわよ」
上条「はは、ありがとう」
上条が美琴の頭に手を乗せる
綺麗に盛られた髪が少し反発してくる
上条「・・・なんかお人形さんみたいだな」
美琴「そう?」
上条「あ、写真撮ろうかな」
上条がカメラを取り出す
美琴「ちょ、ちょっと・・・恥ずかしいじゃない」
上条「ほら、寄って寄って」
上条が美琴の隣に立ち、顔をぐっと近付ける
美琴の体からほのかに香水の香りがしてドキリとしてしまう
普段ならそんなものはつけていないはずだ
初詣だから特別につけてきたのだろう
そういう時に気配りをするのはいかにも女の子という感じがする
美琴のような男勝りな性格でもしっかり女の子なのだ
上条「可愛いな・・・」
美琴「な、何言ってるのよ」
上条「はい、撮りますよー」
美琴「え、ちょっと待ってよ!」
美琴が慌てたように言うがそれを無視してシャッターボタンを押す
そういうのには慣れているのか、美琴は一瞬で写真に映るときの表情を作る
だが顔は真っ赤なままだ
上条「あ、真っ赤ですね」
デジカメのディスプレイを見ながら上条が苦笑する
美琴「いきなり撮るからよ!ほら、さっさとお参りしちゃうわよ!」
美琴が上条の手を取って無理矢理引っ張る
どうやら照れ隠しのつもりらしい
上条「美琴、声が裏返ってる」
美琴「うるさいわね!」
この二人の初詣は
いつもと変わらない、初々しく微笑ましいものだった
垣根「さて、お参りも済んだか」
心理「えぇ」
一同と分かれた後、真っ先にお参りの列に並んだ二人はすでにお参りを済ませていた
垣根「何をお願いしたんだ?」
心理「あなたとずっと一緒にいられますように」
垣根「去年もそんな感じじゃなかったか?」
心理「じゃああなたは何をお願いしたのよ」
垣根「ずっとお前を抱きしめていられますように」
心理「私と同じようなことじゃない」
垣根「ちげぇよ、俺は守る側だから」
心理「はぁ・・・まぁいいけどね」
心理定規が呆れたようなつぶやく
垣根「さて、なんか食べたいもんとかあるか?」
心理「徹夜で飲んでたのよ?わざわざこんな時間から食べたくはないわよ」
垣根「・・・屋台はここぞとばかりに並んでるな」
心理「みんな朝ごはん食べてないんじゃない?」
垣根「どうせカウントダウンしてすぐに寝たんだろうな」
心理「そして初日の出ギリギリに目が覚めて朝ごはん食べないで見に行ったんでしょうね」
垣根「んなベタなことなんてやるヤツいるのかね」
心理「徹夜してた私たちが偉そうには言えないわよ」
垣根「まぁそうだな」
垣根が心理定規の手を握る
心理「あら、どうしたの?」
垣根「あっちにベンチあるからさ、一旦座ろうぜ」
心理「えぇ」
二人がベンチに腰掛ける
ずっと立ちっぱなしだったため、少し足が疲れていた
垣根「いい休憩になるな」
心理「そうね・・・こうやってあなたの隣にはいられるし、文句ないわよ」
垣根「そりゃ光栄ですよ」
心理「・・・ねぇ、垣根」
垣根「なんだよ」
心理「私のこと、ずっと抱きしめてくれるの?」
垣根「出来るならな」
心理「じゃあ、今も抱きしめてくれるのかしら」
垣根「お前が望むならいつだって」
心理「じゃあ、お願いしていい?」
垣根「しゃあねぇな」
小さく笑ってから、垣根が心理定規の華奢な体を抱きしめる
力を込めすぎると壊れてしまうのではないかと思ってしまう
彼女の、ガラス細工のように細い体が
今の、幻想のような幸せが
心理「・・・もっと強く抱きしめて」
垣根「分かった」
ぎゅっと、力強く抱きしめる
心理「・・・ありがとう」
垣根「壊れたりしないか?」
心理「私が守ってあげるから大丈夫よ」
垣根「そうか」
心理「・・・?」
垣根「あ?どうしたよ、遠くなんか睨んで」
心理「・・・なんでもないわ、誰かに見られているような気がしただけよ」
垣根「なんだよ、気味悪いな」
心理「気のせいだから大丈夫」
心理定規が垣根にキスをする
垣根「・・・俺達の幸せをうらやましく思ってる誰かが見つめてたんじゃないか?」
心理「あら怖い」
おでこを合わせて、二人がクスクスと笑う
この二人の初詣は、いつもと同じような静かなものだった
エツァリ「ショチトル、あまり走らないでくださいね」
ショチトル「早く早く!お前は遅すぎる!」
エツァリ「あまり走ると人にぶつかりますよ」
ショチトル「まったく!今はそれどころではないんだ!」
エツァリ「列に並ぶのはもう少し後でもよくありませんか?」
ショチトル「良くない!このままじゃ正午までにお参りが終わらないぞ!」
エツァリ「ですが・・・先程から屋台をじっと見ていますよね?」
ショチトル「!ちょっと誘惑に負けそうになっているだけだ、気にするな!」
エツァリ「負けそうなんですか・・・少しなら買っても構いませんよ?」
ショチトル「ホントか!?ならタコ焼きが食べたい!」
エツァリ「分かりました、ちょっと待っていてくださいね」
エツァリが屋台に並ぶ
その後ろにショチトルも並ぶ
エツァリ「あの・・・あなたは向こうで座っていて構わないのですよ?」
ショチトル「お前といたいんだ、気にしなくていいさ」
エツァリ「それは嬉しいですね」
ショチトル「なんで苦笑するんだ、そこは強く抱きしめるべきではないか?」
エツァリ「あぁ・・・申し訳ありません、そこまで気が回らなくて」
ショチトル「いや、だったら今からでもいいから抱きしめろ」
エツァリ「ですがこんな人前では恥ずかしいでしょう」
ショチトル「いいから抱きしめろよ!」
エツァリ「は、はい」
あまりの剣幕に驚きながらもエツァリがショチトルを抱きしめる
ショチトル「よし、私は満足だ」
エツァリ「それはよかった」
ショチトル「・・・あとはタコ焼き食べるだけだな」
エツァリ「あなたはタコ焼きが好きなんですか?」
ショチトル「美味しいものが好きなんだよ」
エツァリ「はは・・・そうですか」
ショチトル「呆れるな」
エツァリ「呆れてませんよ・・・タコ焼きを一つ」
エツァリがタコ焼きを注文する
少しして屋台のおじさんがタコ焼きを差し出してくる
エツァリ「はいどうぞ」
ショチトル「よし、じゃああっちのベンチに座って食べようか」
エツァリ「そうしましょうか」
二人が並んでタコ焼きを食べ始める
この二人の初詣は、やはり地味なものだった
一方「・・・はしゃぐな」
番外「ゲコ太ストラップだよ!?しかもここ限定!」
一方「どォせゲコ太のアニメーション会社の回し者・・・って聞けよ」
番外「買っていいでしょ!?上位個体も喜ぶよ!?」
一方「はァ・・・しゃあねェな」
一方通行が金を差し出す
番外「?足りないんだけど」
一方「あァ?二つなら釣りがくるだろォが」
番外「三つ、アナタの分も買うんだから」
一方「いらねェよ」
番外「なんでさ!お揃いがいいんだって!」
一方「ンなダサいもン買ってられっか」
番外「・・・そっか、ミサカと同じものはイヤなんだ」
番外個体が目元に涙を浮かべる
一方「ンなこと言ってねェけどな!だ、だから泣くンじゃねェよ!」
番外「買ってくれる?」
一方「あァ!お前とお揃いがいいからなァ!」
番外「ありがとう、アナタは優しいね!」
一方「・・・なンかのせられた気がするンだけどよ」
番外「気にしない気にしない」
一方「ちっ・・・打ち止めも喜ぶンだろォな」
番外「なに?ミサカより上位個体のほうが大事だって言いたいの?」
一方「ンなわけじゃねェけどよ・・・なンかこっ恥ずかしいンだよ」
番外「大丈夫、アナタはなんだって似合うから」
一方「これは似合わねェな」
番外「あ、これ三つ」
番外個体が屋台の店員に金を差し出す
ゲコ太のストラップが三つ差し出された
番外「はい、一個はアナタのね」
一方「・・・こいつをどォしろって言うンだよ」
番外「携帯にでもつけてみたら?ギャップが狙えるじゃんか」
一方「お断りします」
番外「つまんねぇ!せめてノリツッコミしなよ!」
一方「うるせェな!俺は芸人じゃねェンだ!」
番外「見そこなった!早く携帯につけてよ!」
一方「文章の繋がりが無さすぎンだよ!」
番外「いいから!」
一方「よくねェよ!やっぱり買って損だったなァ!」
番外「うわぁ性悪!最低!」
一方「うるせェなこのガキ!」
番外「このモヤシ!」
一方「あァ!?」
番外「なに!?やるつもり!?」
一方「・・・ちっ、つまンねェな」
ぽつりと一方通行がつぶやく
番外「・・・ミサカといてもつまんないんだ」
一方「てめェに無理矢理合わせるのは苦手なンだよ」
番外「じゃあアナタの好きなようにしていいよ?」
一方「俺の好きなように、か」
一方通行が考える
彼が好きな日常は
番外個体のわがままに振り回されて、それにため息をつきながらも付き合って
それが幸せで
一方「・・・いや、今のままでいいかもな」
番外「でしょ?なら早く行こう」
番外個体が一方通行の手を取り、お参りの列へ引っ張っていく
二人の幸せは、全く同じ形をしていた
削板「・・・」
黒子「・・・」
二人はお参りの最中だった
神頼みなんて、他人任せにするのはあまり好きではなかった
だがたまにならこういうのも悪くはないだろう
何より二人には神様に頼んででも叶えたいことがあった
削板は、様々な問題を抱えた学生を見てきた
能力開発が上手くいかず、途中で挫折した学生
あろうことかそれを他人のせいにし、非行に走った学生
それに巻き込まれ、他人を逆恨みした学生
そんな悲劇を見て見ぬ振りをする学生
何かを起こしたいと思っても、何も変えられなかった学生
様々な問題は、未だに学園都市の中に渦巻いていた
それらの問題を、削板は悲しく思っていた
自分にもっと力があれば
そんな悲劇を無くすことが出来るのではないか
今の、何かよく分からない不安定な力ではなく
誰かのために、何かのために振るえる正義の力が欲しかった
誰かに認められるためではない
ただ、削板軍覇が削板軍覇の道を貫き通すために
力が欲しかった
削板(神様、俺にもっと力を与えてくれ)
削板(誰かを救う力を、何かを変える力を)
削板(・・・そして、黒子を世界一幸せにしてやる力を)
一方の黒子は、様々な悩みを抱えていた
自分の力不足
学園都市の堕落
モラルの低下
風紀委員に入れば、それらん変えられると信じていた
実際、少しは改善されたのかもしれない
体力はついた、正義の道を歩んでいるとも信じている
だが、彼女が救うことが出来た人の数なんて片手で足りるほどだった
ほとんどの罪人は、また罪を繰り返してしまう
彼女は救うことが出来なかった
正しい道を歩む手助けさえ、まともにしてあげることが出来なかった
それが焦りとなってしまい、ただ仕事をこなすかのようにスキルアウトや不良、風紀を乱す者を捕まえていた
誰かを助けるためではなく、自分が自分であるために風紀委員を続けているようなものだった
だが、それを変えてくれたのは削板だった
彼が正義を教えてくれた
必要なのは力ではないと教えてくれた
彼の持っている力は、能力なんかではない
誰かを助けたいという純粋な気持ちだった
かつての黒子が持っていたものだった
それで、誰かを助けることが出来るのだ
そう教えてくれたのは、愛する削板だった
だから、彼女は願う
黒子(・・・わたくしはまだまだ軍覇さんから学ばなければならないことがありますの)
黒子(ですから、出来るならば一生軍覇さんのそばにいられますように)
正義を愛する二人の初詣は、とてもまっすぐなものだった
テクパトル「美月、お願いは済んだか?」
19090「はい、でも内緒ですよ?」
テクパトル「ははは・・・気になるな」
19090「テっくんとずっと一緒にいられるように、ってお願いしました」
ニコリと19090号が微笑む
テクパトル「俺もだ、同じだな」
19090「同じですね」
テクパトル「・・・なんか食べたいものとかあるか?」
19090「そうですね・・・特には」
テクパトル「・・・あ、りんご飴」
テクパトルがりんご飴の屋台を発見する
彼はりんご飴が大好物なのだ
あの食べにくさがなぜか彼の探究心をくすぐってしまう
19090「?りんご飴が食べたいんですか?」
テクパトル「あぁ、お前も食べるか?」
19090「ではお願いします」
テクパトルがりんご飴の屋台に並ぶ
わりと若い学生・・・彼からしたら若い学生が並んでいる
今思えば、学生ばかりの学園都市で自分のような大人はかなり珍しいのではないだろうか
そんなことを考えながら、りんご飴を二つ購入する
テクパトル「はいよ」
19090「ありがとうございます!」
19090号が早速りんご飴に舌を這わせる
一瞬、その舌の動きを目で追ってしまう
悲しいかな、それが男の性なのだ
19090「?どうかしましたか?」
テクパトル「あぁいや、なんでもないよ」
慌てたように笑ってから、テクパトルもりんご飴をかじり始める
ほどよい飴の甘さが、疲れた体に染み渡っていくようだ
テクパトル「はぁ・・・相変わらず美味いな」
19090「テっくんはなんでりんご飴が好きなんですか?」
テクパトル「初めて食べた時に心を鷲掴みにされたんだよ」
19090「へぇ・・・テっくんって意外と子供っぽいんですね」
テクパトル「うーん・・・そうなのかもしれないな」
19090「きっとそうですよ」
苦笑しながら、また19090号が飴に舌を這わす
じっとそれを見つめていたら何やら危ない気がしたので、テクパトルは自然と視線を逸らしてしまう
19090「?どうしたんですか?さっきから様子がおかしいですよ」
テクパトル「・・・なんか舌遣いがエロいからな」
19090「!な、何言ってるんですか!」
テクパトル「いやいや!ホントに!」
19090「・・・そ、そんなことを言われても・・・舐めないと食べられませんから」
テクパトル「あぁ・・・だから気にしなくていいからさ」
19090「は、はい」
テクパトル「よ、よし」
そうは言われても一度そんなことを伝えられたらどうも気になってしまうものだ
結局、二人の初詣は少し気まずいものになってしまった
食蜂「・・・なんか、周りもカップルばかりねぇ」
吹寄「・・・仕方ないわよ」
■■「私は。なぜか怒りを覚えている」
食蜂「見せ付けるようにイチャイチャしてるもんねぇ」
吹寄「・・・はぁ・・・いいな」
吹寄がぽつりとつぶやく
彼女だって、女の子なことには変わりないのだ
色気がないとか鉄壁とか言われてはいるが
もちろん、普通の女の子と比べたらガードは固い
それでも、そんな固いガードを破ってくれる人が現れるのを待っていた
過去に一人だけ、彼女の心に触れてくれたバカな男がいた
だが彼はすでにほかの幸せを手に入れていた
それについて今更グダグダと言う気にはならない
とにかく、吹寄はあまり恵まれてはいなかった
色恋沙汰に関しては恵まれてはいなかった
■■「まったく。私だって彼氏くらいほしい」
食蜂「まったくの同意見ねぇ」
■■「吹寄はどう?」
吹寄「うーん・・・素敵な人がいたらいいけどね」
■■「素敵な人・・・」
食蜂「上条とかぁ?」
吹寄「あれはあんまり素敵な気がしないわ」
■■「優しいけれど。ちょっとバカすぎる」
食蜂「ふーん・・・じゃあ神様にでもお願いしてみる?」
■■「素敵な人に出会いたいって?」
食蜂「そうそう。いいんじゃない?」
吹寄「そうね・・・せっかくだから頼んでみましょうか」
女三人が寂しそうに笑う
恋人のいない人間にとって、カップルの集まる場所ほど辛いところはない
三人は一度大きなため息をつく
そして、胸の中に熱い思いを秘めながら参拝の列に並んだ
打ち止め「・・・ミサカは何をお願いしようかな・・・ってミサカはミサカは必死に思案!」
御坂妹「そこまで必死に考えなくてもいいのではないでしょうか」
打ち止め「ダメ!ミサカはみんながあっと驚くようなお願いをするんだから!ってミサカはミサカは自分で自分のハードルを上げてみたり!」
御坂妹「どうでもいいですが、ミサカはすでにお願いが決まっていますよ」
打ち止め「なにぃ!?どんなの!?」
御坂妹「みなさんが今年一年も幸せでいられますように、というものです」
打ち止め「つまんない!もっと恐ろしいのじゃないと、ってミサカはミサカは頭を抱えてみたり!」
御坂妹「・・・ならば、世界がミサカの物になりますように」
打ち止め「あと一ひねり!ってミサカはミサカは更なる黒さを要求してみたり!」
御坂妹「・・・金がほしい」
打ち止め「それだ!ってミサカはミサカは・・・って、一方通行はたくさんお金持ってるから関係ないや!ってミサカはミサカは再び思案してみる!」
御坂妹「ですから、そこまで必死に考えなくても・・・」
打ち止め「ダメなんだってば!ってミサカはミサカは必死に知恵をしぼってみたり!」
打ち止めがうがー!と叫びながら頭を抱える
10032号はそれを呆れながら見つめていた
御坂妹「はぁ・・・」
御坂妹「ガキのお守りは疲れますね」
打ち止め「ガキじゃないもん!ってミサカはミサカは反論してみたり!」
御坂妹「その反応がガキなんですよ」
麦野「・・・お参りは済んだか?」
浜面「あぁ・・・お前は?」
麦野「・・・悪いけど、神様なんかに願う気にはならなくなったよ」
絹旗「・・・そうですか」
上条達のいる神社の端で、アイテムの四人は話していた
滝壺「やっぱり、フレンダのこと?」
麦野「・・・今更何をって思うかもしれないけどな」
浜面「・・・なぁ、あいつはお前を恨んでないと思うぜ?」
麦野「お前に言われても仕方ないんだよ・・・私を許せるのはフレンダだけだ」
絹旗「じゃあ・・・もう許されることはないじゃないですか」
滝壺「むぎの、それじゃずっと辛いだけだよ?」
麦野「・・・んなことは分かってるんだよ」
麦野「・・・でも、忘れられるわけないだろ」
フレンダ「・・・麦野・・・」
ゴーグル「どうするんすか?行きますか?」
フレンダ「・・・傷つけちゃうかな」
ゴーグル「さぁ、それは分かりませんよ」
フレンダ「・・・でも、結局私はバカな訳よ」
フレンダ「・・・どんなに辛い思いをするとしても、結局あそこに帰りたいんだからさ」
ゴーグル「じゃ、いってらっしゃい」
フレンダ「・・・アンタは?」
ゴーグル「近くを散歩してきます」
ゴーグル男が手を振ってその場を去る
残されたのはフレンダだけだ
フレンダ「・・・」
なんと言えばいいのかは分からない
許してもらえるのかは分からない
だが
フレンダ「私の家はあそこにある訳よ」
フレンダは歩いた
彼女が大好きだった、「四人」の元へ
ゴーグル「さて、ヒマっすね」
ゴーグル男は一人歩いていた
フレンダの後を追うのは野暮だと考え、一人で神社の中をうろついていた
その時
ゴーグル「・・・垣根さんじゃないっすか」
少し遠くのベンチに垣根の姿を見つけた
隣には心理定規が座っている
かなり幸せそうだ
昔からお似合いだと思っていた二人
付き合ったらきっと素敵なカップルになるだろうと思っていた二人
彼が憧れた垣根と、かつて彼が愛した心理定規
そんな二人がカップルになっている
うらやましかった
だが自然と笑みがこぼれてしまう
彼の見慣れた光景がそこにはあった
素敵な二人が話していて
それを少し遠くから自分は見つめていて
それが、スクールの頃の当たり前な光景だった
ゴーグル「・・・」
心理定規がゴーグル男のいるほうを見つめてきた
なぜか、木陰に隠れてしまう
見つかってしまっても大した問題ではない
だがなぜか
あの二人の元には行かないほうがいいと感じてしまった
ゴーグル(そりゃそうに決まってますよね・・・)
もしも彼が行ってしまえば
あの二人が捨てたはずの「スクール」がそこにもう一度現れてしまうのだから
だから
ゴーグル「辛いもんっすね」
ぽつり、と言葉が口から出てしまう
暗部を捨てたあの二人に、暗部を思い出させてはいけない
たとえ自分が辛い思いをしたとしても
彼は垣根に憧れていた
いつもすぐに仕事を終わらせる、切れ物な彼が
自分の大好きな心理定規を虜にしてしまった、彼が
自分に優しく接してくれた彼が
そして、心理定規を幸せにしている彼が
大好きだった
彼は心理定規を愛していた
深い愛ではなかったかもしれない
垣根が抱いているのに比べれば小さすぎる愛だったかもしれない
だが
暗部にいながらもどこか優しかった心理定規が
時々、女の子らしいところを見せる心理定規が
いつも仕事が終わると飲みに誘ってくれる心理定規が
そして、垣根に優しく抱きしめられている心理定規が
彼は大好きだった
ゴーグル「・・・あそこは俺の帰る場所じゃないっすよね」
寂しそうに苦笑してから、ゴーグル男が歩き出す
垣根と心理定規のいる場所から遠ざかるように
スクールにいた頃は
垣根や心理定規と分かれる時には決まって「また明日」なんて言っていた
まるで友達にでも対して言うかのように
まるで家族に対して手を振るかのように
それが彼の幸せだった
たった一つの幸せだった
だから
ゴーグル「それじゃ・・・さよならですね」
ゴーグル男はつぶやいた
周りの学生達は嬉しそうに、幸せそうに笑っている
ただ彼だけが、悲しい表情をしていた
フレンダ「・・・」
頭がクラクラとする
あの麦野がいる
自分を殺した麦野が
麦野「裏切ったアンタが悪いんだから、怨まないでよね」
あんなことを言った麦野が
少し吐き気が込み上げる
幽霊でも吐き気を覚えるんだな、なんて場違いなことわ考える
まだ麦野達は自分に気づいていないようだ
今なら逃げ出すことも出来る
何もなかったかのように帰れる
ゴーグル男と合流して、「麦野達とは喧嘩しちゃった」なんて適当な嘘をついて
また天国に戻ればいいのではないか
それが一番平和に済む方法だ
頭では理解していた
だが、心のどこか奥深くは、あそこに帰りたいと願っていたのだ
どんどん、体は前へと進んでいく
そして
浜面「!?フレンダ!?」
とうとう
後ろに戻ることは出来なくなった
滝壺「フ、フレンダ・・・?」
絹旗「ち、違いますよね!?見間違え・・・」
フレンダ「や、やっほー・・・久しぶり・・・な訳よ」
麦野「・・・フレンダなのか?」
麦野がフレンダを睨みつける
やっぱり
やっぱり、麦野は自分を嫌っている
フレンダ「あ、あはは・・・あんまりヒマだから化けて出ちゃった訳よ・・・」
浜面「ど、どうなってんだよ!?ていうかお前・・・」
滝壺「幽霊なの?」
フレンダ「ま、まぁ細かい話は・・・」
麦野「なんで今更帰ってきやがったんだよ」
雪が降っていた
だが、それとは比べものにならないほどの冷たい声がフレンダに突き刺さった
フレンダ「そ、それは・・・」
浜面「麦野!フレンダなんだぞ!?な、なんかよくはわかんないけど・・・」
麦野「学園都市の医療技術か?AIMの利用か?てめぇは実は肉体再生の能力者だったか?んなことはどうでもいいんだよ」
麦野がさらに強く、フレンダを睨みつける
その目には怒りがあった
かつてフレンダを粛清したときと同じ怒りが
麦野「なんで今更戻ってきた」
フレンダ「あ・・・」
何かを言おうとしても言葉にならない
伝えたいことはたくさんあるのに
謝りたい気持ちでいっぱいなのに
滝壺「むぎの、そんなこと・・・」
絹旗「そうですよ・・・フレンダ、よく・・・」
麦野「・・・帰れ」
浜面「おい麦野!てめぇずっと後悔してたんじゃ・・・」
麦野「帰れよ!」
麦野が初めて大声を上げた
周りを歩いている何人かの学生は驚いたように麦野を見つめている
おそらく、ただの仲間内の喧嘩に見えることだろう
麦野「・・・アイテムにお前の居場所はない、お前はアイテムを裏切っただろうが」
フレンダ「・・・」
麦野「・・・フレンダ、ここはお前の居場所じゃない、帰れ」
フレンダ「わ、私は・・・」
麦野「今から10数える、時間をあげるわ・・・その間に消えなさい」
フレンダ「・・・麦野」
麦野「10、9、8、7、6・・・」
冷たい声だ
だがなぜか、少し震えているように聞こえた
寒いわけではないのだろう
ならどうして
フレンダがやって来たことが恐ろしいわけでもないはずだ
麦野はそんなことに怯えるほどやわな神経はしていない
フレンダ「・・・麦野」
麦野「・・・」
麦野がカウントをやめる
その目がフレンダを一直線に見つめている
フレンダ「・・・ごめんね、麦野」
麦野「何がだよ」
フレンダ「アイテムを裏切ったことも・・・私を殺させちゃったことも」
麦野「・・・私が悪いんじゃないか」
フレンダ「・・・でもね、私は結局そんなややこしいことはどうでもいい訳よ」
フレンダが歯を食いしばる
そうしなければ、今すぐ泣いてしまいそうだったから
フレンダ「暗部の組織だったとか能力者の集まりだったとかはどうでもいい訳よ」
浜面「フレンダ・・・」
フレンダ「ここが・・・私の居場所なのよ」
麦野「・・・」
フレンダ「許してもらえるならなんでもする訳よ!土下座だってするしパシりにだってなっていい!だから・・・」
麦野「フレンダ、お前は私を恨んでるだろ?」
フレンダ「恨んでなんかいない訳よ!」
麦野「嘘ついてんじゃねぇよ!」
滝壺「むぎの、落ち着いて」
麦野「本当は私を今すぐ殺したいんだろ!?なのに周りにこいつらがいるから我慢してるだけなんじゃねぇのか!?」
フレンダ「麦野・・・」
麦野の口から流れるのは恐怖だった
今までどれだけ悔やんだのだろうか
いきなり、殺した相手が目の前に現れたのだ
パニックになっているのかもしれない
麦野「なんだよ!ここが居場所だって!?そんなわけないじゃないか!」
フレンダ「嘘じゃないわよ!」
麦野「私はお前を殺した張本人なんだぞ!?そんなところを心から居場所だなんて思ってるわけがねぇだろ!」
絹旗「麦野!」
麦野「言ってみろよ!私を本当は殺したいんだって!本当のことを言ってみろよ!」
フレンダ「・・・麦野」
フレンダの胸を悲しみが締め付けた
あの麦野が、こんなにも自分のことで後悔していたなんて
それが嬉しく、そして辛かった
フレンダ「・・・麦野」
フレンダが麦野に近づく
麦野「・・・フレンダ・・・」
フレンダ「・・・私の知ってる麦野はそんなに弱くない訳よ」
フレンダ「いっつも高慢でいっつも厳しくていっつも冷たくて」
フレンダ「ちょっと優しくなったって思ったら裏があって・・・そのくせ不機嫌なときは誰にでもあたるし」
フレンダ「・・・でもね・・・私は結局、そんな麦野が大好きな訳よ」
フレンダ「今も昔も・・・大好きな訳よ」
麦野「・・・恨めよ・・・なんで恨まないんだよ・・・」
フレンダ「恨める訳ないじゃん・・・そんなに苦しんでる麦野を攻められる訳ないじゃん・・・」
麦野「フレンダ・・・すまない・・・すまない・・・」
麦野がフレンダの手を握る
涙が次々に地面へと落ちていく
フレンダ「ほら、自慢の美人さんが台なしな訳よ」
その涙を、フレンダがそっと拭う
フレンダ「・・・麦野、私はアイテムが好きな訳よ」
フレンダ「浜面が欠けても滝壺が欠けても、絹旗が欠けても・・・」
フレンダ「そして麦野が欠けてもダメな訳よ・・・結局、みんなが私の家族なの」
麦野「・・・言うじゃねぇか」
フレンダ「・・・ねぇ、私はここにいていいのかな?」
浜面「当たり前だろ!」
絹旗「まぁ鯖缶はないですけどね」
フレンダ「えぇ!?ひっどーい!」
滝壺「フレンダ、お帰り」
フレンダ「あ・・・うん」
フレンダ「ただいま、フレンダ戻った訳よ!」
麦野「・・・AIMの応用・・・」
浜面「ふーん・・・天国かぁ」
滝壺「なんかすごいね」
絹旗「それで?そのゴーグル男はどこですか?」
フレンダ「あ、忘れてた訳よ」
フレンダが慌てて辺りを見回す
どうもすぐ近くにはいないらしい
フレンダ「ちょっと探してきていい?」
絹旗「もちろん、気をつけて」
フレンダ「すぐ戻ってくる訳よ!」
麦野「・・・ちゃんと帰ってこいよ」
フレンダ「当たり前!」
フレンダが駆け出す
あのいけ好かないゴーグル馬鹿はどこにいるのか
フレンダ「あ、いたいた!」
ゴーグル「・・・あ、フレンダさんじゃないっすか」
フレンダ「何してた訳よ」
ゴーグル「適当にふらついてましたよ、フレンダさんは?」
フレンダ「みんなと仲直りした訳」
ゴーグル「そうですか、よかったじゃないっすか」
フレンダ「・・・なんか、帰るのがイヤになっちゃったけど」
ゴーグル「帰らなくてもいいんじゃないっすか?」
フレンダ「え、いいの?」
ゴーグル「別に問題ないっすよ、大体ここにいること自体が本来なら問題なんすから」
フレンダ「あ、そっか」
ゴーグル「・・・アイテムの仲間達と暮らすんすか」
フレンダ「うん!やっと帰ってこれた訳よ!」
フレンダが嬉しそうに腰に手を当てる
その慎ましい胸を張ってみるが、どうやらゴーグル男にはあまり効き目がないらしい
ゴーグル「・・・おめでとうっす」
フレンダ「それでね、みんながアンタにも会いたいらしい訳よ」
ゴーグル「遠慮しときますよ、アイテムは敵だったんすよ?しかも麦野は俺を殺したヤツですし」
フレンダ「ま、まぁ会ってみるだけ・・・」
ゴーグル「遠慮しときますよ」
フレンダ「・・・ノリ悪いヤツ・・・」
ゴーグル「はは・・・仕方ないっすよ」
ゴーグル男が困ったように笑う
フレンダ「・・・ねぇ、アンタは垣根達のとこに帰るんでしょ?」
ゴーグル「帰んないっすよ」
フレンダ「?なんで?あの二人に会いたかったんじゃない訳?」
ゴーグル「・・・俺が帰ったらスクールになっちゃうじゃないっすか」
フレンダ「なんでダメな訳よ」
ゴーグル「あの二人は垣根帝督と心理定規っす、スクールの構成員じゃないんすよ」
フレンダ「で、でもアンタはあの二人が・・・」
ゴーグル「大好きっすよ?だから帰らないんです」
フレンダ「な、なんで!?家族みたいなもんじゃなかったの!?」
ゴーグル「・・・俺が行っても何も変わらないっすよ」
ゴーグル男がどこか遠くを見つめる
ゴーグル「あの二人は今が一番幸せなんです、邪魔なんて出来ないっすから」
フレンダ「そんな・・・」
ゴーグル「・・・俺はわりと幸せでしたよ、あんなに優しい二人と出会えたんですから」
フレンダ「で、でも一人ぼっちになっちゃう訳よ!」
ゴーグル「昔は一人ぼっちでしたよ、スクールに入ってから変わっただけっす」
フレンダ「・・・じゃ、じゃあアイテムに来ればいい訳よ!あそこならきっと・・・」
ゴーグル「いいんすよ、もう」
ゴーグル男が首を振る
それがフレンダの心を狂わせる
フレンダ「な、なんで!?一人が怖くない訳!?」
ゴーグル「・・・当たり前なんすよ、俺にとっては」
フレンダ「ほ、ほら!アイテムに来れば美味しいものが食べられる訳よ!」
ゴーグル「天国にもありますよ」
フレンダ「楽しいとこにも行ける訳よ!」
ゴーグル「天国にもありますよ」
フレンダ「みんなと笑える訳よ!」
ゴーグル「笑う必要がないんすよ、俺には」
フレンダ「・・・じゃ、一人でもいいから学園都市で暮らせば!寂しかったら私が会いに・・・」
ゴーグル「AIMってのは不安定っす、二人の実像を保っていられる時間は短いんす」
フレンダ「だから・・・」
ゴーグル「一人の実像ならある程度もつはずっす」
フレンダ「だからなんなのよ!?アンタはまた一人にするつもり!?」
ゴーグル「フレンダさんはもう一人じゃないじゃないですか」
フレンダ「私じゃない、アンタ自身をよ!」
ゴーグル「それでいいんです、何も背負わないで済むなら」
フレンダ「ゴーグル馬鹿!そんなの私が許さない訳よ!」
ゴーグル「・・・俺が天国に帰れば、フレンダさんの体は安定します」
フレンダ「そんなこと関係ない訳よ!」
ゴーグル「もういいんですよ、失うのはもうイヤなんすよ」
フレンダ「最初から失うなんて決め付けたらダメな訳よ!」
ゴーグル「・・・フレンダさん、あなたは幸せっすね」
フレンダ「だから私がアンタにも幸せを・・・」
ゴーグル「フレンダさん、俺には幸せは重過ぎるんすよ」
フレンダ「なんで!?アンタはずっと幸せになりたかったんじゃない訳!?」
ゴーグル「・・・無理なんすよ」
ゴーグル男が笑う
ゴーグル「・・・俺の居場所はスクールだけでした、そのスクールはもうないんすよ」
フレンダ「垣根と心理定規はまだいる訳よ!」
ゴーグル「・・・フレンダさん、あなたは幸せになってください」
フレンダ「待って!アンタとお別れなんてなんかイヤな訳よ!」
ゴーグル「なんでっすか」
フレンダ「天国に行って不安だった私に手を伸ばしてくれたじゃない!」
ゴーグル「興味本位っす」
フレンダ「一緒に天国散歩したじゃない!」
ゴーグル「目的地に向かっただけっす」
フレンダ「・・・一緒にくだらない話・・・したじゃない」
ゴーグル「ヒマ潰しっす、特別な意味なんかなかったんすよ」
フレンダ「・・・なんで・・・アンタは一人になろうとする訳よ」
ゴーグル「一人が好きなんすよ」
フレンダ「嘘!アンタは誰よりも温もりを・・・」
ゴーグル「時間っす、そろそろどっちかが消えないといけないっす」
フレンダ「やだ・・・」
ゴーグル「ならこのまま二人仲良く天国に帰りますか?」
フレンダ「でも・・・」
ゴーグル「・・・帰ってきたらダメっすよ、あなたの居場所はアイテムだけなんすから」
フレンダ「・・・本当にお別れな訳?」
ゴーグル「・・・天国にはなんでもありますから・・・あんまり辛くはないっす」
フレンダ「・・・馬鹿ね、結局アンタは馬鹿な訳よ」
ゴーグル「慣れてますよ、そう言われるのも」
フレンダ「・・・麦野は超能力者、絹旗と滝壺は大能力者・・・AIMの大きさもでかい訳よ・・・二人の実像も賄えるんじゃない?」
ゴーグル「賄えますね」
フレンダ「・・・それでも天国に帰りたい訳?」
ゴーグル「当たり前じゃないっすか、もう地上に俺の居場所はないんすよ」
フレンダ「・・・ゴーグル馬鹿」
ゴーグル「・・・じゃ、ここまでっすね」
ゴーグル男が空を見上げる
ここから空を眺めるのもおそらく最後になるだろう
ゴーグル「・・・天国に唯一替えがないのはフレンダさんっすね」
フレンダ「・・・他に死んだ人を探せばいい訳よ」
ゴーグル「フレンダさんほど馬鹿はいないっすから」
フレンダ「・・・最低ね」
ゴーグル「・・・フレンダさん」
ゴーグル男がフレンダの手を握る
フレンダ「・・・何のつもり?」
ゴーグル「お別れの握手っす、これで・・・」
垣根「おー、いたいたいたよん、見つけたよん」
ゴーグル「!?」
ゴーグル男が驚いたように振り返る
AIMと融合している今なら分かる
その異常なまでのAIMの持ち主は
垣根「よぉ、ずいぶん見ない間にメルヘンになったもんだなぁ」
かつて彼が憧れた男のものだった
ゴーグル「な、なんで垣根さんが・・・」
垣根「心理定規のヤツがお前に似た人影を見たって言うんでな、ちょっと探してたんだよ」
垣根が笑いながらフレンダを見つめる
垣根「よぉ、お前も久しぶりなんじゃねぇか?」
フレンダ「再会はしたくなかった訳よ・・・」
垣根「・・・ゴーグル馬鹿」
垣根が彼を呼ぶ
それだけで、ゴーグル男は過去を思い出してしまう
三人で作戦を練ったこと
三人で飲みに行ったこと
三人で家族のまね事をした日々のこと
ゴーグル「・・・なんで」
垣根「てめぇが俺らに接触したら昔の闇を思い出す?」
垣根「見下してんじゃねぇよ三下」
垣根がゴーグル男に一歩近づく
それだけでもかなりの恐怖を植え付ける
ゴーグル「・・・だってそうじゃないっすか・・・あなたは心理定規さんと・・・」
垣根「幸せだぜ、だからなんだよ」
ゴーグル「俺が戻ったら!またあなたは暗部にいた頃を思い出すでしょう!?あなただけじゃない、心理定規さんだって・・・」
垣根「俺は心理定規を全てから守るって決めたんだ、今更暗部の過去が襲ってこようが守り抜くんだよ」
ゴーグル「そんな簡単に・・・」
垣根「簡単にはいかないだろうな、普通のヤツなら」
垣根「だが俺にはその常識は通用しねぇ」
垣根「何が暗部だ、何が過去だ」
垣根「てめぇは逃げてるだけだ、失うものを無くすために何一つ手に入れようとしない」
垣根「くだらねぇな」
ゴーグル「あなたに何が分かるんですか!全てを手に入れたあなたに・・・」
垣根「お前と俺の違いはたった一つだ」
ゴーグル「・・・力っすか」
垣根「ちげぇな、向いている方向だ」
ゴーグル「・・・」
垣根「てめぇは後ろを見ている、後ろから迫ってくる過去と向き合っちまってんのさ」
垣根「後ろを振り向けば過去が迫ってくる、前を見据えれば未来の不安が先にある」
垣根「だがな、前を見れば未来の希望も見えるんだ」
垣根「決まってしまってる過去を見るか、可能性のある未来に賭けるか」
垣根「それだけの違いだ、今からだっててめぇは幸せを手に入れられるんだぜ?」
ゴーグル「・・・俺は」
ゴーグル「・・・俺はあなたと違って強くない」
ゴーグル「前からそうでした、垣根さんはいつも前を見ていた・・・強い相手にも向かっていった」
ゴーグル「俺には出来ませんよ」
垣根「フレンダの目を見てそれを言えるか?」
ゴーグル「・・・」
垣根「てめぇが手に入れたたった一つの可能性、それはフレンダだろ」
垣根「俺や心理定規と再び暮らすのは無理かもな、だがアイテムならどうだ?フレンダならどうだ?」
ゴーグル「・・・そんな無謀な真似・・・」
垣根「本当は望んでるんだろ、お前は誰よりも幸せを求めていそうだからな」
ゴーグル「・・・俺には無理っすよ」
垣根「やるんだよ」
ゴーグル「・・・」
垣根「フレンダ」
フレンダ「な、なに?」
垣根「お前らがここにいる理由は・・・なんとなく分かる、俺の知り合いに同じ方法でやってきては姉孝行してるバカがいるからな」
垣根「・・・ゴーグル馬鹿を頼む、こいつの可能性はお前だけが持ってるんだ」
フレンダ「・・・ゴーグル、いいの?」
ゴーグル「・・・垣根さん」
垣根「なんだよ」
ゴーグル「ありがとうございました」
ゴーグル男が深く頭を下げる
垣根「構わねぇよ、行きな」
ゴーグル「はい!」
ゴーグル男がもう一度フレンダの手を取る
ただし、今度は別れを告げるためではない
ゴーグル「・・・これからもよろしくっす」
フレンダ「・・・よろしくな訳よ」
二人がアイテムのいる場所へと駆けていく
それを垣根は見つめていた
ふと後ろから声を掛けられる
心理「あらあら、ゴーグル君はフレンダに・・・ねぇ」
垣根「なんだよ、見てたのか」
心理「かつての仲間よ?気にはなるじゃない」
垣根「あれがゴーグル馬鹿だって確信は?」
心理「さぁ?ただなんとなくそうじゃないのかってね」
垣根「そうかよ」
垣根が興味なさそうに息を吐く
垣根「・・・幸せ、か」
垣根「お前も早いとこ答えを見つけられるといいな」
上条「さて・・・お参りも済みましたね」
美琴「ねぇ、これからどうするの?」
上条「そうだな・・・どうしようかな」
美琴「屋台でなんか買ってみる?」
上条「なんか買いたいのか?」
美琴「あっちにゲコ太があったの!!」
上条「ま、またゲコ太ですか・・・」
美琴「呆れないでよ!」
上条「まぁいいけどさ・・・美琴、さすがに中学二年生でああいうのは子供っぽいぞ?」
美琴「う・・・分かってるわよ・・・」
上条「その子供っぽさも美琴の魅力だけどさ」
美琴「えへへ//」
上条「・・・ん?打ち止めと御坂妹だ」
打ち止め「あぁもう!!お姉様とヒーローさんはイチャイチャイチャイチャ!!ってミサカはミサカは怒りを覚えて拳を握ってみたりぃぃぃ!!!!」
御坂妹「ファッキュー!!ファッキューですよ!!」
上条「ま、なんだよ急に・・・」
御坂妹「あー!!!頭なんかナデナデしやがってぇ!!」
美琴「う、うらやましいの?」
打ち止め「うらやましいんだよ!ってミサカはミサカは鈍感な二人に凍て付く視線!」
御坂妹「上位個体、この二人のイチャイチャはどうやっても止められませんよ」
美琴「な、何よ・・・」
御坂妹「・・・あなたたちのイチャイチャは独り身にとって死刑宣告に近いです」
美琴「い、いいじゃない!!自由よ!」
打ち止め「こうなったらジハードだぁ!!ってミサカはミサカはこの前小説で覚えた言葉を使ってみたり!!」
上条「そ、それは違うぞ・・・?」
打ち止め「ミサカだってイチャイチャしたいもん!!ってミサカはミサカは頭を抱えてみたり!!」
上条「か、彼氏とか・・・作れば?」
打ち止め「出来ないんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
美琴「な、泣いてる!?」
御坂妹「あーあ、泣かせましたね」
上条「俺が悪いの!?」
美琴「ほ、ほら!!打ち止めは可愛いから大丈夫よ!!」
打ち止め「・・・ホント?」
美琴「が、学校とか通えば・・・多分彼氏も・・・」
打ち止め「・・・一方通行みたいな人はいるかな?ってミサカはミサカは涙目で訴えてみたり」
美琴「あ、あれはいないかも」
打ち止め「・・・じゃあダメだよ・・・」
上条「一方通行みたいなのが好みなのか?」
打ち止め「うん!だって優しくて強いもん、ってミサカはミサカは笑顔で答えてみたり!」
美琴「や、優しいの?」
御坂妹「ミサカはお義兄様のほうが優しいと思いますが」
上条「な、なんで体を密着させようとするんでせう?」
美琴「こら!!略奪愛なんて許さないわよ!!」
御坂妹「ちっ・・・」
上条「なんか妹が怖いんですけど!?」
打ち止め「ダメだよ10032号、リア充にとってヤキモチは栄養素なんだよ、ってミサカはミサ・・・」
美琴「な、何よそれ!?」
打ち止め「・・・」ジトー
御坂妹「・・・おや?あれは麦野さんでは?」
美琴「え?あぁ、ホントだ」
四人のいる場所から少し遠いところに麦野がいる
上条「?金髪の子となんかヘッドギアみたいなのつけてるヤツは知らない・・・」
美琴「あ、あいつ・・・」
麦野「・・・久しぶりね」
ゴーグル「どうも」
絹旗「あ、麦野にやられたゴーグルマンです」
麦野「まさか本当にアンタだったとはね」
ゴーグル「・・・フレンダさん、信用されてなかったみたいっすよ?」
フレンダ「そ、そんなことない訳よ!!」
絹旗「いえ、超信用できません」
浜面「もとはといえば裏切ったから麦野に殺されたんだしな」
滝壺「大丈夫、私はそんなフレンダに鯖缶をあとで買ってあげる」
フレンダ「な、なんかこの空気も久々な訳よ・・・」
ゴーグル「・・・アイテムってもっと殺伐としてたかと思ってました」
浜面「昔はそうだったけどな・・・」
麦野「・・・ゴーグル野郎、一応詫びとくよ」
ゴーグル「いいっすよ、別に生きようが死のうが当たり前の世界でしたから」
絹旗「なんかドライな性格ですね」
ゴーグル「そうっすか?」
麦野「で?お前はどうすんだよ」
ゴーグル「ここはAIMが濃いんすね」
滝壺「うん、とっても気持ちいいよね」
ゴーグル「・・・あなたはたしかそういうのを応用した能力でしたね」
滝壺「えっへん」
浜面「・・・なぁ、アンタはこれからどうすんだ?」
ゴーグル「そうっすね・・・垣根さんに説得されちゃったっすからね・・・」
麦野「・・・アイテムにくるか?」
ゴーグル「それは勘弁を」
ゴーグル男がケラケラと笑う
ゴーグル「アイテムに入るくらいなら一人でいいっすよ」
絹旗「・・・どうやって暮らすんですか」
ゴーグル「さぁ・・・適当に金は稼ぎますよ」
浜面「ま、まさかまた暗部に・・・」
ゴーグル「いや、それは・・・?」
絹旗「?どうしたんすか」
ゴーグル「なんかあっちの人たちがめっちゃ睨んできてるんすけど」
麦野「あ?あぁ、御坂・・・」
フレンダ「あー!!あのときの電撃使いな訳よ!!!」
美琴「・・・行ってみましょう、なんか面白そうだし」
上条「い、いいのか?」
打ち止め「じゃあミサカはまたふらついてくるね!」
御坂妹「あの中にもカップルはいますからねちくしょう」
上条「おう、じゃああとでな」
フレンダ「わー!?なんか近づいてきてる訳よ、もしかしてあのときの決着を!?」
滝壺「フレンダ、落ち着いて」
美琴「やっほー」
麦野「よう、やっぱお前らもここだったか」
フレンダ「わー!!殺される!!もう私は死んでるけど!!!」
上条「?どういうことだ?」
浜面「幽霊なんだよ、こいつ・・・」
美琴「ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ幽霊ぃぃ!!??」
フレンダ「な、なんかビビってる訳よ」
美琴「・・・も、もしかしてAIMとか利用してる?」
ゴーグル「よく分かりましたね、そうっすよ」
美琴「なーんだ・・・ってアンタ誰」
ゴーグル「あ、どうも・・・」
上条「なんかヘッドギアつけてる?」
ゴーグル「これゴーグルっすよ」
上条「ふーん・・・ん?」
上条・美琴「ゴーグル?」
ゴーグル「はぁ」
美琴「も、もしかして垣根の部下だった人?」
ゴーグル「あれ、垣根さんの知り合いっすか?」
上条「おー!!話に聞いてたゴーグル君か!!」
ゴーグル「話されたんですか?」
上条「とっても不憫だったんだろ!?」
美琴「たしか心理定規に恋してたのよね?」
ゴーグル「・・・な、なんか悲しいことを・・・」
フレンダ「なになに?」
美琴「・・・アンタも死んでたの?」
フレンダ「いやぁ、いろいろあってね」
麦野「・・・そうだ、フレンダも一応御坂に謝っとけ」
フレンダ「な、なんで!?」
麦野「いいから」
フレンダ「だ、だって・・・」
浜面「フレンダ、相変わらず意地悪いな」
絹旗「超往生際が悪いです」
滝壺「フレンダ、がんばって」
フレンダ「う・・・そ、その・・・ごめんなさい」
美琴「いいわよ別に・・・アンタたちもいろいろあったんでしょ」
フレンダ「そ、そうな訳よ!!」
上条「開き直るなよ・・・ところで、ゴーグルは垣根にはあったのか?」
ゴーグル「まぁちょっとだけ」
美琴「?垣根たちのところには戻らないの?」
ゴーグル「あの二人の邪魔はできないっすよ」
上条「なんか・・・不憫・・・」
ゴーグル「言わないでください」
浜面「・・・そういえば、上条のダンナたちは垣根たちと合流しないのか?」
上条「正午には合流するけど・・・まだ8時だし」
絹旗「あれ、まだそんな時間ですか」
麦野「・・・ホントだな」
ゴーグル「・・・時間の感覚がなんか久々っすね」
フレンダ「そうね・・・なんか懐かしい訳よ」
上条「じゃあ・・・その間暇つぶしかな」
ゴーグル「じゃ、俺はこれで」
フレンダ「え、どこ行くの?」
ゴーグル「別にお参りしたいこともないっすから、帰りますよ」
麦野「帰る宛とかは?」
ゴーグル「・・・ないっすけどね」
滝壺「・・・じゃあどうするの?」
ゴーグル「適当にホテルでも探しますよ」
フレンダ「そ、それでいいの?」
ゴーグル「でも他にやることもないっすから」
ゴーグル男が苦笑してからくるりと振り返る
麦野「・・・アイテムには来ないのか?本当に・・・」
ゴーグル「遠慮するって言ったじゃないですか、一人のほうが気楽っすよ」
手を振ってからゴーグル男が歩いていく
その素振りが、少し垣根に似ている
上条「・・・垣根に憧れてたんだな」
絹旗「でも・・・垣根は隣に心理定規がいますよね」
浜面「・・・あいつの隣には誰もいないのかな」
フレンダ「・・・ねぇ、麦野」
麦野「なんだよ」
フレンダ「正午にここで待ち合わせでいい?」
麦野「・・・あぁ」
滝壺「?フレンダどうしたの?」
フレンダ「ちょっとね」
麦野「・・・恋か」
フレンダ「全然違う訳よ」
フレンダが靴をトントン、と鳴らす
フレンダ「あいつにはちょっと世話になっただけ」
滝壺「フレンダにも、居場所が出来たんだね」
フレンダ「私の居場所はここな訳よ!じゃああとで!!」
フレンダがゴーグル男のあとを追いかける
上条「・・・青春だよなぁ」
美琴「青春ね」
麦野「・・・」
絹旗「?どうしたんですか麦野」
麦野「私も・・・」
麦野「彼氏候補がほしい・・・」
一同「・・・がんばって」
テクパトル「リンゴ飴は正義だよな」
19090「そうですね・・・でもちょっと大きいのがネックです」
テクパトル「大きいからこその食べ応えじゃないか?」
19090「うーん・・・どうなんでしょうか」
エツァリ「おや、テクパトルと19090号さん」
テクパトル「ん、エツァリとショチトル・・・ってなんだその大量の食べ物は・・・」
ショチトル「おなかが減ったんだよ」
19090「タコ焼き、ヤキソバ、リンゴ飴に綿菓子・・・」
テクパトル「ジャンボ餅にそば・・・」
エツァリ「・・・いつから食いしん坊キャラになったんですか」
ショチトル「食いしん坊担当があまり出てこないのでな、私が代わりだ」
19090「?」
テクパトル「そういうのは避けろよ・・・」
ショチトル「お前たちはリンゴ飴だけか」
テクパトル「さすがにこの時間からそんなには食べたくないんだよ」
19090「・・・ショチトルはよく食べられますね・・・」
エツァリ「そうですよね・・・」
ショチトル「美味しいものは別腹だぞ?」
テクパトル「別腹がメインを越えてるな」
エツァリ「・・・無理をせずゆっくり食べてくださいね」
ショチトル「あぁ、たこ焼き美味い・・・ご飯がほしい」
19090「?炭水化物と炭水化物ですか?」
ショチトル「それこそが至高だぞ」
テクパトル「いや・・・太るぞ?」
ショチトル「こうやって、グラマラスな体は出来上がる」
19090「ほ、本当ですか!?」
テクパトル「待て、そんなに食いつくな」
ショチトル「いいか?若いうちはバンバン食べてボンボン大きくならないとダメなんだぞ」
19090「お、おぉ・・・」
テクパトル「だまされるな・・・」
エツァリ「・・・見ているだけで吐き気がする量ですね・・・」
ショチトル「あぁ・・・美味い・・・」
テクパトル「たこ焼きはソースがいいよな」
ショチトル「醤油一択だろ」
19090「いえいえ、案外マヨネーズも」
エツァリ「そのままがいいですよ」
ショチトル「そして、これからたこ焼きに何をかけるか論争が始まる」
テクパトル「煽るな」
ショチトル「でもさ、お好み焼きは米と一緒に食べるけどたこ焼きはそんなに米とは食べないよな」
テクパトル「あぁ・・・そういえばそうかもな」
19090「お好み焼きを米と食べるんですか?」
ショチトル「お米の上に乗せたたこ焼きは、舞台に立ったお姫様みたいに輝くぞ」
テクパトル「意味が分からん」
エツァリ「・・・ですが、食べ過ぎると太る組み合わせですね」
19090「なるほど・・・ショチトル、たこ焼き一つもらっていいですか?」
ショチトル「あぁ、いいぞ」
テクパトル「あ、俺もいいか?」
ショチトル「もちろん」
エツァリ「では自分も」
ショチトル「やらん」
エツァリ「」
ショチトル「冗談だ、あーん」
エツァリ「・・・ツンの破壊力が高すぎますよ」
ショチトル「・・・にしても平和だな」
テクパトル「あぁ・・・」
四人が遠くを見つめる
そこには、一方通行と番外個体、削板に黒子の四人がいた
削板「みんな楽しそうだな!」
黒子「えぇ、いいことですの」
番外「でもさ、こういうときって問題起こすバカが現れるよね」
一方「あァ・・・そォだな」
黒子「風紀委員がここにいますの」
一方「・・・着物着てるならなんの迫力もねェよ」
削板「ははは!!俺もいるぞ!」
番外「なんか着物の削板は怖いね」
一方「問答無用でぶっ飛ばしそうだからな」
黒子「暴れん坊将軍みたいな感じですの」
削板「この印籠が目に入らぬかぁ!!!」
番外「それは水戸黄門だね」
一方「ボケが微妙だな」
削板「くっ・・・」
一方「・・・つゥかよ、問題起こしてもいいンじゃねェか?」
黒子「問題ですの!!!」
削板「見ない振りは良くないぞ!」
一方「・・・誰かが止めるだろ・・・」
番外「うわぁ、誰かがやってくれる精神」
一方「俺は手伝わないからな」
削板「正義の心を持ってみろよ!!!」
一方「遠慮しときますゥ」
番外「・・・あ、なんか女の子が泣いてる」
一方「!?」
削板「あー・・・風船が樹に引っかかってるな」
黒子「ちょっと行って・・・」
一方「お嬢さン、どォして泣いてるンだ?」
ロリ「あのね・・・風船がひっかかっちゃったの・・・」グスン
三人「」
一方「ちょっと待ってな」カチッ
黒子(あ、チョーカーのスイッチ入れましたの)
削板(本気だ)
番外(超本気だ)
一方「ふざけンじゃねェぞこのクソ野郎がァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」
一方通行が樹に触れる
その瞬間、謎の揺れが樹を襲う
一方「はン」
ロリ「すごーい!!風船が落ちてきた!」
一方「よかったなァ」
ロリ「ありがとう、お兄ちゃん!」
一方「はァ・・・いいことしたぜェ・・・」
削板「・・・」
黒子「お、お疲れ様ですの」
一方「あ?あァ」
番外「・・・ロリだから助けたんだね!!!」
一方「当たり前だろォが」
番外「くっ・・・」
削板「犯罪予備軍じゃないか・・・」
一方「ロリはなァ、正義なンだよ」
番外「最低!小さいから助けるのね!!!」
一方「小さいから助ける?ふざけンな、大きいのに助ける価値はねェ」
黒子「言い切りましたの」
削板「将来に一抹の不安を感じるな」
番外「もうダメかもしんね」
一方「・・・まだ9時か」
削板「まだそんな時間か」
黒子「なにか暇つぶしがあれば・・・」
番外「じゃあおみくじは?」
番外個体がおみくじを売っている店を指差す
神社の前で堂々とおみくじを売るとはなかなか図太い店だ
削板「いいんじゃないか?」
一方「並ぶか」
黒子「えぇ」
四人が列の最後尾に並ぶ
前に並んでいるのは見慣れない格好をした二人だった
一人は金髪の女子高生
もう一人はよく分からないものを頭につけている青年
一方(・・・こいつら)
ゴーグル「・・・あの、なんでフレンダさんまで来てるんすか?」
フレンダ「アンタがかわいそうだった訳よ」
ゴーグル「いや、かわいそうじゃないっすよ」
フレンダ「かわいそうな訳よ」
ゴーグル「・・・俺は一人のほうがいいんすけど」
フレンダ「なに?この超絶美人女子高生のフレンダ様に逆らう訳!?」
ゴーグル「超絶と美人は間違ってますよね」
フレンダ「間違ってない訳よ!!!」
ゴーグル「・・・あ、もしかして寂しいんですか」
フレンダ「さ、寂しくなんかないし」
ゴーグル「・・・おみくじ・・・見られたくないんすよねぇ・・・」
フレンダ「?なんで?」
ゴーグル「・・・俺ってクジ運悪いんすよ」
フレンダ「へぇ・・・凶とかひく訳?」
ゴーグル「・・・白紙とかひいたことありますよ」
フレンダ「うわ、すごい訳よ」
ゴーグル「だから他人には見られたくないんですってば・・・」
黒子「・・・なにやらカップルのようですの」
一方「・・・あァ・・・そォだな」
削板「ははは!!初々しいな!!!」
番外「仲良しっぽいね」
ゴーグル「・・・あの、フレンダさんはなんで俺についてくるんすか」
フレンダ「だって友達だし」
ゴーグル「友達じゃないっすよ・・・」
フレンダ「はぁ!?じゃあなんで今までずーっと一緒だった訳よ!?」
ゴーグル「一週間だけじゃないっすか」
フレンダ「それでも!!友情は芽生えるの!!!」
ゴーグル「俺の心の中ではまだ種さえ撒かれてないんすけどね」
フレンダ「ひっどーい・・・」
黒子「あら、ただのお友達のようですの」
一方「・・・」
番外「どうしたの?険しい顔しちゃって」
一方「なンでもねェよ」
ゴーグル「・・・大体、もとはといえばフレンダさんと行動したのだってヒマだったからっすよ?」
フレンダ「この脚線美に惹かれた訳よね!?分かってるってば!!!」
ゴーグル「・・・心理定規さんのほうが何倍もいいっすよ」
フレンダ「うっわ・・・傷つくぅ・・・」
ゴーグル「大体、フレンダさんは俺の好みじゃないし」
フレンダ「アンタの好みって心理定規みたいなの?」
ゴーグル「平たく言えば」
フレンダ「より詳しく言うと?」
ゴーグル「普段は何を考えてるか分からなくて、若干妖艶な雰囲気を出していても好きな人の前では素を曝け出してしまい、それに恥を覚えつつも素直な心を隠せずに甘えてしまうお姉さんタイプ、あと一つ言うなら胸がでかくてスラっとした長身、もしくは逆に小柄でそれでも強がってしまうツンツンしたタイプの女性っすかね、フレンダさんは常に素だしお姉さんでもなければ胸もでかくないので俺の好みじゃないっす」
フレンダ「なんか恐怖を感じた訳よ」
ゴーグル「とにかく、フレンダさんには興味ないっす」
フレンダ「・・・そう言われるとなんか悲しいんだけど」
ゴーグル「そうっすか」
削板「あの男・・・根性がないな!!」
黒子「女性を泣かせるのは男として最低ですの」
番外「っていうか変態チックだね」
一方(・・・ストーカーにショタコンに義妹属性・・・暗部には変態ばっかだったンだなァ、俺もだけど)
フレンダ「・・・私はアンタのこと、嫌いじゃないけど」
ゴーグル「フレンダさんってどんな男が好みなんすか?」
フレンダ「優しくていい人だったら見た目は関係ない訳よ・・・人間の原型を留めていれば」
ゴーグル「へぇ・・・てっきり面食いかと思ってました」
フレンダ「だってさ・・・小さい頃から優しくなんてしてもらったことないから、ちょっと頼りがいある人がいたらキュンってしちゃう訳よ」
ゴーグル「ふーん・・・まぁ分からなくもないっすけどね」
フレンダ「アンタってちょっとは頼りがいあるし」
ゴーグル「ないっすよ」
フレンダ「・・・まぁ垣根に比べたらスクールの中じゃ地味だけどね」
ゴーグル「あの人とは比べられたらダメっすよ・・・あれに勝てるのなんて世界でも数人じゃないっすか?」
フレンダ「性格は最悪な訳よ!!能力使って私を追い詰めて・・・情報を吐くかここで愉快な死体になるか選べ、時間は10秒だ、なんて言ってきたし!!!」
ゴーグル「麦野と同じっすよ、それが仕事・・・」
フレンダ「でもさぁ!!周りのものを一通り破壊して能力の強さを見せ付けてからな訳よ!?」
ゴーグル「最初から傷付けないあたりあの人は優しいっすよ、俺なんか麦野さんと顔を合わせてすぐでしたから・・・あ、って言った瞬間に至近距離からズドン」
フレンダ「うわ、だっさ・・・」
黒子「?何の話でしょうか」
削板「・・・というか、立ち聞きなんていけないぞ!」
番外「そうだね、堂々と聞いてきます」
一方「おい待てよ・・・」
番外「はぁーい」
ゴーグル「?なんすかこの人?」
フレンダ「・・・なんかあの電撃使いにそっくり」
番外「ねぇねぇ、あなたたちさっきから何話してるの?」
ゴーグル「・・・あの、あなたに教える必要はないっすよね?」
番外「いいじゃんいいじゃん、私ヒマしてるから話してよ」
フレンダ「・・・何コイツ」
ゴーグル「・・・あの・・・どちら様?」
番外「あぁ、ツレとお参りに来たんだけどヒマでヒマで・・・」
ゴーグル「あ、いや・・・」
フレンダ「・・・ちょっとゲームの話をしてただけな訳よ」
番外「ふーん・・・それにしてはリアリティーがあったけどなぁ」ニヤニヤ
ゴーグル(・・・めんどくさいっすね)
フレンダ「・・・そのね・・・」
心理「あら、番外個体じゃない」
ゴーグル「!?」
心理「・・・お久しぶり、元気みたいで安心したわ」
ゴーグル「お、お久しぶりっす!!」
フレンダ「・・・」
心理「ごめんね、この子私の知り合いなのよ」
番外「えー、心理定規、知り合いなの?」
心理「友達よ、ごめんねゴーグル君」
ゴーグル「い、いえ!!」
ゴーグル(迂闊だったぁ!!!垣根さんが言うには心理定規さんが俺っぽい人影を見たらしかったから・・・)
ゴーグル(そりゃここに心理定規さんがいても不思議じゃないけどなんかやべぇ!?)
フレンダ(うっわ・・・ホントすかしてるわね・・・この女)
心理「ほら、番外個体・・・謝りなさい」
番外「ちぇー・・・ごめんなさい」
フレンダ「わ、分かればいい訳よ」
心理「あなたはフレンダね・・・お久しぶり」
フレンダ「垣根と並んで会いたくなかった相手な訳よ・・・」
心理「あらひどい・・・私もおみくじしようかって思ったのよ」
ゴーグル「か、垣根さんは?」
心理「彼はそういうの興味ないって・・・上条君とかと一緒・・・って上条君は知ってるかしら」
フレンダ「さっき会った訳よ」
心理「そう」
フレンダ「・・・アンタもすっかり表の住人って訳ね」
心理「あら、うらやましいのかしら」
フレンダ「・・・いけ好かない訳よ」
心理「・・・嫉妬?憎悪?それとも憧れ?」
フレンダ「・・・相変わらずムカつくぅ・・・」
番外(な、なんか蚊帳の外・・・)
ゴーグル「心理定規さん、その・・・」
心理「知ってるわよ、あなたたちがどうやって体を保ってるのか・・・面白い現象だけど、ヒューズ風斬と違って1から存在を作り上げたわけじゃなく、ベースとなる人間がいたからすんなり実像になれるのかもね」
フレンダ「な、なに?」
心理「あなたには分からないでしょうね」
フレンダ「ーーっ!!!結局ムカつく訳よ・・・」
ゴーグル「あ、心理定規さん!!前譲りましょうか!?」
心理「遠慮しておくわ、最後尾はすぐそこだし・・・この子も後ろに引きずっていかないと」
番外「ぶぎゃー」
心理「ほら、しっかりなさい」
番外「・・・なに?心理定規とこのヘッドギア野郎はどういう関係?」
心理「だから友達よ」
番外「あっやしーい」
心理「と も だ ち よ」
番外「はい」
心理定規が列の最後尾へ並ぶ
そこにはちょうど一方通行たちもいた
黒子「あら・・・あちらの方はお知り合いでしたの?」
心理「えぇ、一方通行も知ってるんじゃないかしら」
削板「?お前も知り合いか?」
一方「・・・まァな」
心理「面白いでしょ、あのゴーグル」
黒子「何の機械ですの?」
心理「さぁ」
番外「謎の機械・・・ま、まさか!!女子だけの服が透明に見える機械!?」
心理「それはないわよ」
一方「・・・大方身体能力をあげるか、脳波を整えて擬似的に戦闘力を高めてるンじゃないのか?」
黒子「?なぜ一般人がそのようなことを?」
一方「・・・さァ」
心理「謎のままにしておきましょうよ」
ゴーグル「・・・はぁ・・・」
フレンダ「・・・何溜め息ついてる訳よ」
ゴーグル「あ、いや・・・」
フレンダ「・・・心理定規に会えてよかったじゃない」
ゴーグル「なんか不機嫌っすね」
フレンダ「・・・あいつは苦手な訳よ」
ゴーグル「そうなんすか?」
フレンダ「・・・アンタもなんか焦ってたじゃん」
ゴーグル「そりゃ・・・まさか会うとは思わなかったんで」
フレンダ「・・・でも楽しそうだったじゃない」
ゴーグル「・・・まぁ、仲間ですからね」
フレンダ「・・・そう」
ゴーグル「やっぱ素敵な人っすよ」
フレンダ「すかしてて嫌い」
ゴーグル「・・・フレンダさん、機嫌直してくださいよ」
フレンダ「はーあ・・・これでおみくじもダメだったら最悪な訳よ」
ゴーグル「・・・それは避けたいですね」
フレンダ「・・・ねぇ」
ゴーグル「はい?」
フレンダ「私と心理定規、どっちのほうがいい女だと思う訳?」
ゴーグル「・・・心理定規さんのほうがいいと思います」
フレンダ「なっ・・・」
ゴーグル「でも、最近はフレンダさんも素敵に思えますよ」
フレンダ「・・・それ、ホント?」
ゴーグル「えぇ」
ゴーグル「まぁ好みじゃないっすけど」
フレンダ「結局最後で台無しな訳よ」
上条「・・・」
美琴「ほ、ほら!!当麻元気出して!!!」
上条「・・・」
上条は肩を落としていた
一方通行たちが並んでいるのとは別のおみくじを引いた
お金を払い引いたおみくじ
よっしゃぁ、開くぞと思って気合を入れた瞬間
突風が吹いておみくじが飛ばされたのだ
追いかけることもままならず
おみくじは、ドブの中へと落ちていった
もはや大凶だろう
こんなことが起きるのだから大凶に違いない
上条「不幸だ・・・結果を見る前にお別れなんて・・・」
美琴「ほ、ほら!!これで今年の不幸は・・・」
上条「はは・・・初日から無駄金を払うという不幸・・・」
美琴「う・・・」
上条「・・・美琴、お前はどうだった?」
美琴「うん、大吉」
上条「はは・・・よかったな」
美琴「・・・恋愛運ね、恋人と幸せになれますって!!」
美琴がおみくじを広げる
たしかに、恋人と幸せになれる、というようなことが書かれていた
上条「お・・・なんか嬉しいな」
美琴「ね、一緒に幸せになれるわよね?」
上条「あぁ・・・頑張るよ!」
美琴(よかった・・・)
上条「・・・さて、気を取り直して屋台でも見て回りますか!!!」
美琴「うん!!」
二人が手を握り合って歩き出す
屋台を見て回るだけでも、なかなかの時間潰しになる
上条「お・・・ヤキソバだ」
美琴「食べる?」
上条「うーん・・・でもあーんって出来ないよな」
美琴「や、やりたいの?」
上条「あぁ・・・じゃあ何がいいかな」
美琴「でも・・・全部熱いわよね」
上条「いやいや!!ふーふーと冷やしてくれる女の子はかなり可愛いんですよ!?」
美琴「な、なんかマイナーな趣味ね・・・」
上条「そうでもな・・・って垣根?」
上条が熱弁の途中で歩みを止め、ベンチを見つめる
そこでは垣根が空を見上げていた
というよりものびていた
上条「ど、どうしたんだ?」
垣根「・・・眠い」
上条「はぁ?」
垣根「あの雲ってさ、布団みたいに柔らかいのかな、フワフワってしてるのかな」
美琴「あれ、元は水よ」
垣根「あぁ・・・水蒸気みたいなんだ・・・」
上条「・・・相当参ってるみたいだな」
垣根「・・・なんだ、上条か・・・」
上条「いまさら!?っていうかクマがヤバいぞ!?」
垣根「ちくしょう・・・誰だよ大晦日は徹夜だって言ったのは・・・って俺か」
美琴「一人でノリツッコミ・・・」
垣根「あぁちくしょう・・・心理定規早くおみくじ買ってきてくんねーかな・・・」
上条「買いに行かせたのかよ・・・」
美琴「・・・元気出しなさいよ」
垣根「あぁ・・・空が青い・・・」
上条「・・・っていうか、俺たちのとこでは心理さん見なかったぞ?」
垣根「おみくじなんていろいろ売ってるからな・・・」
上条「あぁ・・・別の場所か」
美琴「じゃあしばらく掛かるんじゃない?他のところはかなり混んでたし・・・」
垣根「くっそ・・・誰かと話さないと眠くなるんだよ・・・」
上条「俺たちと話してるだろ・・・」
垣根「・・・あぁ、上条か・・・」
上条「あぁもう!!なんかオルソラみたいになってるぞお前!!!」
垣根「!?オルソラ!?天使のオルソラがいるのか!?」
上条「いや、違う・・・」
垣根「なんだよ期待させんなよ死ねよ・・・」
美琴「か、かなり疲れてるのね・・・寝ればいいのに」
垣根「・・・コーヒー買ってきてくれ」
上条「やだ」
垣根「」
美琴「ねぇ、垣根はおみくじ買わないの?」
垣根「だから興味ないんだって」
上条「お前ってそういうの好きそうだけどな」
垣根「好きじゃねーよ、他人になんで運命を任せるんだよ」
上条「・・・なんか現実的だな」
垣根「あぁくそ・・・コーヒー!!!」
美琴「はぁ・・・そこの自販機でいい?」
垣根「ミコっちゃんマジ天使」
美琴「・・・その呼び方やめてよ」
垣根「いいから早く・・・もう能力が暴走しちゃうかも・・・」
上条「み、美琴!!」
美琴「わ、分かった!!!」
美琴が自販機の元へ走っていく
コーヒーは120円、お釣りを取る時間がもったいないのですぐに120円を入れて購入する
美琴「よし!!当麻、パース!!!」
走るよりも投げたほうが早い
そう判断した美琴が上条に缶コーヒーを投げてよこす
上条「ナイス!!」
それを受け取り、すばやく垣根に渡す
上条「ほら、垣根!!」
垣根「オーケー、ミコっちゃんパース」
上条「飲めよ!!!!」
垣根「あぁ・・・そうだったな」
垣根が振りかぶって投げようとしていたコーヒーを開ける
垣根「・・・あぁ・・・うめぇ・・・」
上条「か、かなり満足してるな・・・」
美琴「はぁ・・・能力の暴走とか冗談でも言わないでよ・・・」
垣根「・・・こりゃ、うめぇ・・・」
上条「お、クマがなくなった」
垣根「くまなく探すんだな」
美琴「何をよ」
垣根「はぁ・・・いやぁ、目が覚めたぜ・・・目がシャキッ!!!!」
上条「やめろ」
垣根「・・・?そういえばお前らはおみくじ買ったのか?」
上条「俺はなくしたけどな・・・」
美琴「でも私のは最高な結果だったわよ」
垣根「ふーん・・・上条は相変わらずなのな」
美琴「そうね・・・」
上条「笑うなよな・・・」
垣根「いいじゃねぇか、お前らしくて」
上条「そんならしさはいらなかった・・・」
垣根「・・・まぁ結果オーライだろ」
美琴「うん、私と幸せになれるでしょうって結果だったし」
垣根「そりゃ何より」
上条「・・・そういえば、吹寄たちは何してるのかな」
垣根「さぁ・・・」
美琴「きっと仲良く回ってるんじゃない?」
上条「食蜂にとっては初めての初詣かもな」
美琴「そうね・・・楽しめてるといいわね」
垣根「姫神もいるし、大丈夫だろ」
上条「いや、吹寄も言ってくれよ」
垣根「あぁ?あぁ・・・そんなのもいたな」
上条「まだ眠いのかお前!?」
垣根「・・・おっぱい」
美琴「はぁ・・・向こうは眠気に襲われてないといいけどね」
上条「そうだな・・・」
二人も垣根に習って空を見上げる
綺麗な雲が浮かんでいた
吹寄「・・・中吉か、まぁまぁね」
食蜂「・・・小吉、悪くもないわね」
■■「・・・凶」
吹寄「・・・姫神、大丈夫よ」
■■「ふふふ。これで私も。不幸なキャラになれる」
吹寄「あ・・・いや」
食蜂「上条は他にフラグもあるからね」
吹寄「・・・そうだったわね」
■■「あぁ。それはダメ」
吹寄「・・・ねぇ、何する?」
食蜂「そうねぇ・・・どうしようかしら」
■■「適当に。ナンパでもしてみよう」
食蜂「無理矢理フラグ属性を立てようとしないの・・・」
吹寄「・・・はぁ、ヒマよね・・・正午はまだだし」
食蜂「・・・しかも、このメンバーじゃこれといった面白いこともないもんね」
吹寄「・・・そうよね」
■■「どうしよう」
食蜂「まぁ適当にぶらつかない?」
■■「それでいいかも」
吹寄「・・・じゃ、行きましょうか」
■■「うん」
三人は適当に歩き出す
食蜂「・・・はぁ、ヒマよねぇ」
■■「地味キャラはこんなもの」
吹寄「・・・そんなこと言わないで」
食蜂「・・・はぁ」
食蜂「とりあえず、正午まで目立てるようにいましょう」
■■「おー」
テクパトル「・・・お前・・・まだ食うのかよ・・・」
19090「・・・朝にそんな食べられるんですか・・・」
ショチトル「?夜中にずーっと食いつづけたお前建ちが悪いんだぞ?」
エツァリ「・・・しかし、屋台の食べ歩きなんて・・・」
ショチトル「そういうお前も結構食べてるだろ」
エツァリ「自分は嗜む程度にですよ」
テクパトル「はぁ・・・」
ショチトル「ん?なんか向こうでやってるな」
19090「あ、琴の演奏みたいですね」
テクパトル「へぇ・・・そんなのやるのか」
エツァリ「珍しいですね、行ってみますか?」
ショチトル「あぁ、行くか」
四人は少し屋台から離れたところへ歩いていく
テクパトル「お・・・綺麗だな」
19090「む・・・着物の女性に弱いんですか?」
テクパトル「いや・・・琴の話だよ」
19090「お、お姉様ですか!?」
テクパトル「ちげぇよ!!!」
ショチトル「なんだ、学生なのか・・・」
エツァリ「しかし上手なものですね・・・」
テクパトル「あぁ・・・いい音色だ」
ショチトル「・・・春の海か、正月らしいな」
19090「そうですね・・・」
テクパトル「なんか心が洗われるような音色だな」
エツァリ「・・・やっと正月っぽい感じになりましたね」
ショチトル「そうだな・・・」
テクパトル「・・・春の海か・・・」
19090「?どうしましたか?」
テクパトル「いや、テレビとかでもよく聞くよな・・・ってさ」
ショチトル「・・・そうだな、CMとかもな」
エツァリ「馴染み深いですよね」
テクパトル「・・・聞いてると眠く・・・なってくる・・・」
19090「はっ!!テっくん、寝たらダメですよ!?」
テクパトル「だってさ・・・寝てないんだぞ・・・?」
ショチトル「たしかに・・・寝てないよな」
エツァリ「垣根さんに眠らせてもらえませんでしたからね・・・」
テクパトル「あぁくそ・・・眠い・・・」
19090「た、たしかに眠くなるメロディーですが!!」
ショチトル「よし、テクパトル・・・そこに直立しろ」
テクパトル「はぁ?」
ショチトル「目を覚ましてやる」
テクパトル「・・・あぁ」
テクパトルが無防備に立ち尽くす
一体何をするというのか
ショチトル「・・・目を覚ますようにな、気合を入れるんだ」
テクパトル「あぁ・・・ビンタとか・・・」
ショチトル「その類だ」
ショチトルが構える
気になるのは脚を思いっきり下げていることだ
まるでどこかに蹴りを
ショチトル「金的!!!!」
テクパトル「ぐぉぁっ!?」
喰らわせるかのように
19090「テっくんーー!!!!!」
エツァリ「ショ、ショチトル!!!何をやって・・・」
ショチトル「ふっ・・・目が覚めただろう・・・」
テクパトル「てめぇ・・・おぉ・・・」
ショチトル「ほれ、めちゃくちゃ目が開いてるじゃないか」
テクパトル「・・・あぁ・・・な、なんか目がかすんで来た・・・」
19090「テっくん!!ダメです!!!!」
ショチトル「さぁ、エツァリ、琴の音色に耳を傾けようじゃないか」
エツァリ「そ、その・・・テクパトルのうめき声が聞こえてきますが」
ショチトル「さぁ」
テクパトル「」
19090「テっくんーーーーー!!!!!!!!!」
ショチトル「・・・これで、よかったのじゃ」
ショチトル「おかげで私も目立てるからな」
テクパトル(・・・こいつは・・・許さん・・・)
麦野「・・・」
浜面「滝壺、あーん」
滝壺「あーん」
絹旗「はぁ・・・イチャイチャしてますね」
麦野「・・・てめぇも男いるじゃないか」
絹旗「ちょ、超勘違いですよ!?」
麦野「あの海原ってのに入れ込んでるんだろ?」
絹旗「ち、違いますから」
浜面「ん?なんだよ絹旗」
滝壺「きぬはたも好きな人が出来たの?」
絹旗「ち、違いますよ!?」
麦野「・・・フレンダも男がいるし・・・」
浜面「でもゴーグルにはその気はないみたいだったけどなぁ」
アイテムの四人は神社の前の石段に座っていた
通行人のジャマになるのなんて気にしていない
アイテムはもともと暗部にいた人間達だ
周りの迷惑を気にするなんてことはほとんどなかった
麦野「はぁ・・・いいよな、青春してるやつらは」
絹旗「む、麦野もすればいいじゃないですか!!」
麦野「・・・喧嘩売ってるのか?」
滝壺「むぎのは大丈夫、素敵だから」
麦野「はぁ・・・素敵なだけじゃ世の中やっていけないのよ?」
浜面「素敵ってのは否定しないんだな」
麦野「なに?アンタは否定したいの?」
浜面「あ、いや!!!」
絹旗「・・・超うろたえてますね」
滝壺「はまづら、負けないで」
浜面「お、おう!!!」
麦野「・・・なぁ、私って魅力がないのかな・・・」ズーン
滝壺「魅力的だよ、むぎの」
絹旗「というか、本当に麦野に彼氏がいないのが不思議ですよね」
浜面「俺もそう思ってたな・・・実はいるんじゃないのか?」
麦野「・・・そこに並べ、一人ずつぶち抜いてあげるから」
浜面「ふ、不機嫌だぁ!?」
絹旗「・・・好みはどんな人なんですか?」
麦野「・・・いいだろ、ほっとけよ・・・」
滝壺(・・・本格的に落ち込んでる)
浜面「・・・誰か紹介しようか?」
麦野「いいわよ、どうせスキルアウトのやつらでしょ?野蛮なのは嫌いよ」
浜面(お前が言うのか・・・)
絹旗「・・・超運がないだけですよ」
麦野「・・・そうかな」
絹旗「そうですよ、フレンダはまた超偶然ですし」
滝壺「そうだよ、むぎの」
浜面「・・・そんなに焦らなくてもいいんじゃねぇの?」
麦野「・・・そうだといいけどな」
麦野が空を見上げる
空には綺麗な雲が浮かんでいる
麦野(いつか・・・)
麦野(好きな人と並んであの空を見上げられたらいいな)
とてもロマンチックで子供っぽい考え
麦野はヌイグルミを抱きながら寝る人間だ
彼女もまた、一人の恋を夢見る女性なのである
ゴーグル「・・・な、なんか後ろから視線を感じるんすけど」
フレンダ「・・・心理定規でしょ」
二人はまだおみくじの列に並んでいた
かなり長い列だからか、あまり進まない
フレンダ「・・・あ、また来た訳よ」
ゴーグル「!?」
心理「ねぇ・・・さっきからあなたたち見てて思ったんだけど」
ゴーグル「な、なんっすか!?」
心理「・・・もしかして、二人ってそういう関係?」
フレンダ「」
ゴーグル「いや、違いますよ!!誰がこんな色気ない女を・・・」
フレンダ「ちょ、ちょっと!!そこはまごつくところでしょ!?」
ゴーグル「か、勘違いはイヤなんすよ!!」
心理「ふーん・・・フレンダはどうなのよ」
フレンダ「き、気安く呼ばないでほしい訳よ!」
ゴーグル「心理定規さん・・・俺たちそんなんじゃないっすよ・・・」
心理「ふーん・・・でもあなたって意外と女性経験ないでしょ?フレンダは可愛い部類だから・・・」
ゴーグル「俺にだって好みくらいありますよ!!」
フレンダ「き、傷つく訳よ!!!」
心理「・・・そう、じゃあどんな人が好みなの?」
ゴーグル「どっ・・・」
ゴーグル男が言葉に詰まる
まさか「あなたがどストライクです」なんて言えるわけない
ゴーグル「あ、あれですよ・・・大人な女性とか・・・」
心理「ふーん・・・具体的には誰?」
ゴーグル「だ、誰とかじゃなしに!!」
フレンダ「・・・何、心理定規はからかいに来た訳?」
心理「・・・あら、不機嫌ね」クスクス
フレンダ「っ・・・アンタは嫌いなのよ」
心理「・・・そうね、あなたと私はまったく違うタイプだもの」
心理定規が少しいたずらな笑みを浮べる
そういう、大人な人間がフレンダは嫌いだった
年相応に振舞えばいいものを、なぜか実年齢よりも年上のように振舞う人間が
フレンダ「・・・すかしてんじゃないわよ」
心理「あなたには言われたくないわね」
フレンダ「私はすかしてなんかない訳よ!!」
ゴーグル「ちょ、ちょっと・・・心理定規さんもからかいすぎっすよ」
心理「・・・ゴーグル君、正直この子は信用しないほうがいいわよ」
ゴーグル「!な、なんでですか?」
心理「知ってるでしょ?彼女が麦野さんに粛清された理由」
ゴーグル「・・・」
心理「・・・この子はね、平気で人を裏切るのよ?」
フレンダ「そ、それは・・・」
心理「・・・だから」
ゴーグル「裏切られなければいいんすよね?」
心理「・・・」
ゴーグル「いいんですよ、騙されていても・・・結局俺は一人ですから」
フレンダ「ゴーグル・・・」
ゴーグル「・・・騙され続けていれば、それは現実になるんじゃないんすか?」
心理「・・・覚悟は?」
ゴーグル「ないっすよ、裏切られても別にショックなんかじゃないですし」
心理「はぁ・・・本当にフレンダのことを信じてるわけじゃないのね」
ゴーグル「心理定規さん、心配してくれてたんすよね」
心理「当たり前でしょ、昔の仲間なのよ?いくら外道だったとはいえね」
ゴーグル「・・・俺を試したんすよね?」
心理「えぇ、フレンダもごめんなさいね、あなたの子供らしさが少しうらやましいのよ」
フレンダ「・・・性格悪い訳よ」
心理「ふふ・・・自覚はあるから心配しないで」
ゴーグル「・・・心理定規さん、垣根さんとはどうっすか?」
心理「幸せよ、とっても」
ゴーグル「そうっすか・・・安心しました」
心理「あら、どうして?」
ゴーグル「二人は暗部にはもったいないくらいの優しい人でしたから」
心理「・・・あなたもよ」
ゴーグル「俺は誰も信じられないような人間っすよ?」
心理「・・・そう」
ゴーグル「・・・ただ・・・あなたと垣根さんは信じてました、これだけは本当です」
心理「それは光栄ね」
ゴーグル「・・・すいません、今更戻ってくるつもりじゃなかったんですけど」
心理「いいじゃない、あなたの選んだことなんでしょ?」
ゴーグル「はい」
フレンダ「・・・心理定規、一つ聞きたい訳よ」
心理「あら、何?」
フレンダ「・・・ゴーグルの居場所はスクールだけだったのよ」
心理「えぇ」
フレンダ「・・・今から・・・ゴーグルをもう一度受け入れる気はない?」
心理「どういうことかしらね」
フレンダ「もう一度・・・スクールを再建するつもりはない?」
心理「ないわよ、ゴーグル君だってそれは望んでいないでしょ?」
ゴーグル「・・・分かるんすか」
心理「長い付き合いだったからね」
フレンダ「・・・アンタも結局、冷たい訳よ」
心理「あら、自分の幸せを守るので精一杯よ?」
ゴーグル「それでいいんすよ」
心理「ありがとう」
フレンダ「・・・」
心理「それじゃ・・・そろそろあなたたちの番ね」
ゴーグル「・・・心理定規さん」
心理「なに?」
ゴーグル「・・・俺、あなたのことが好きだったんすよ」
心理「・・・」
三人の間に沈黙が流れる
最初に口を開いたのは心理定規だった
心理「知ってるわよ」
ゴーグル「あれ、気づいてたんすか」
心理「・・・薄々ね」
ゴーグル「・・・一応・・・伝えておかないとけじめがつかないので」
心理「あら、諦めの間違いじゃない?」
ゴーグル「・・・そうっすね」
心理「ふふ・・・じゃあ、お断りしておくわ」
ゴーグル「・・・心理定規さん、ありがとうございます」
心理「何が?私は何もしてあげてないわよ」
ゴーグル「・・・人を信じることを教えてくれたのはあなたと垣根さんでした」
心理「・・・そうね」
ゴーグル「・・・それのお礼を言いたかったので」
心理「ほら、あなたたちの番じゃない」
心理定規が前を指差す
おみくじの番が来ていた
ゴーグル「じゃあ・・・」
心理「フレンダ、ゴーグル君のことをよろしく」
フレンダ「は、はぁ?」
心理「それじゃ、またね」
心理定規が背を向けて去っていく
心理(・・・誰も信じられない、ね・・・)
心理(だったらどうしてあなたはフレンダといるとき、笑顔なのかしらね)
一方「あァ?またからかいに行ってたのかよ」
番外「趣味悪いよ」
心理「告白されてきたわ」
黒子「は、はい!?」
心理「あのゴーグル君によ」
削板「こ、告白!?」
心理「断ったわ、それに彼も過去形だったし」
番外「な、なんて言われたの?」
心理「好きだったって」
一方「・・・なンて言ったンだよ」
心理「お断りする、ってだけよ」
削板「そ、それでいいのか?」
心理「あら、他に何があるかしら?」
黒子「も、もっと素敵な人が現れる・・・とかですの」
心理「そんなこと言ったら私のことをまだ思い続けちゃうでしょ?」
番外「そ、そうだけどさ・・・」
心理「冷たく断ればひどい女になれるのよ?」
黒子「は、早く忘れてもらえると?」
心理「そういうことよ」
心理定規が笑う
一つの言葉にも、そこまでの意味を込めるのだ
削板「お、大人だな・・・」
心理「・・・そうね」
一方「・・・それがお前の特徴ってか」
心理「・・・えぇ」
心理「だからこそ、素直に言葉に出来る彼女がうらやましいのよ」
番外「?」
フレンダ「やった!!大吉な訳よ!!見て見て!!」
ゴーグル「どれどれ・・・お、恋愛運いいじゃないっすか」
フレンダ「運命の人はすぐ近く?浜面かな」
ゴーグル「あの人彼女持ちじゃないっすか」
フレンダ「あ、アンタはどうだった訳よ」
ゴーグル「・・・大凶っす」
フレンダ「だっさー!!!めちゃくちゃダサい訳よ!!!」
ゴーグル「・・・」
フレンダ「し、しかも恋愛運最悪!!好きな人にフラれるでしょうって!!さっきフラれたばっか!!」
ゴーグル「・・・」
フレンダ「き、金運!!!お金は今年ほとんど入らないって・・・あ、当たりそうな訳よ!!!」ゲラゲラ
ゴーグル「・・・」
フレンダ「健康運・・・け、怪我に・・・見舞われ・・・ぷっ・・・」
ゴーグル「・・・」
フレンダ「あはは!!アンタ運なさすぎな訳よ!!」
ゴーグル「・・・」
フレンダ「あ、あれ?なんか怒ってる訳?」
ゴーグル「・・・違いますよ、この上に書いてあることっす」
フレンダ「ん?どれどれ・・・一番近くにいる人があなたを助けてくれるでしょう」
ゴーグル「・・・フレンダさんっす」
フレンダ「何が?」
ゴーグル「そばにいるの・・・」
フレンダ「・・・」
フレンダ「だっせぇ!!!!めちゃくちゃ信じてる訳よ!!!!」
ゴーグル「ア、アンタだって信じてるじゃないですか!!!」
フレンダ「良いことは信じる訳よ!!!」
ゴーグル「最低じゃないっすか!!」
フレンダ「ふん、当然」
ゴーグル「くっ・・・」
フレンダ「・・・でもまぁ、アンタもよかったじゃん」
ゴーグル「何がっすか・・・」
フレンダ「大凶引いて、好きだった人にはフラれて」
ゴーグル「・・・よくないっすよ」
フレンダ「これからはもう怖いことないでしょ?失うものもないし」
ゴーグル「・・・そうっすけど」
フレンダ「ま、これからまた見つけていけばいい訳よ」
ゴーグル「・・・一人でいいっすよ、別に」
フレンダ「つまんなーい」
ゴーグル「・・・はぁ」
フレンダ「あ、麦野発見!!石段に座るとからしくない訳よ!!!」
ゴーグル「・・・ただのヤンキーじゃないっすか」
フレンダ「ほら、行こう行こう!!」
ゴーグル「はぁ・・・仕方ないっすね」
麦野「・・・あぁ?フレンダか」
フレンダ「むーぎの!何辛気臭い顔してる訳よ?」
麦野「・・・」
フレンダ「麦野?」
麦野「あぁ、いや・・・」
絹旗「フレンダがいるのが嬉しいんですよね?」
麦野「ち、ちが・・・」
フレンダ「む、麦野ぉ!!」
麦野「あぁ!!抱きつくなぁ!!」
フレンダ「やっぱり麦野は優しい訳よぉぉ!!!」
麦野「くそ!!離れろ!!」
浜面「・・・なんか懐かしいな」
滝壺「うん、やっぱりフレンダがいないとね」
ゴーグル「・・・アイテムもなんだかんだ仲良しなんすね」
絹旗「?あぁ、いたんですか」
麦野「気づかなかったな」
ゴーグル「いいっすよ、すぐにいなくなりますから」
絹旗「うわ、超キレてますよ」
浜面「おい、そんなにからかうなって・・・フレンダの恩人だぞ?」
フレンダ「べ、別に恩人じゃないし!!!」
麦野「・・・一応礼は言っておくわ」
ゴーグル「遠慮しときます」
絹旗「な、なんか絡みにくいですね・・・」
滝壺「掴みどころがないよね」
ゴーグル「・・・」
フレンダ「あ、ほら!!みんなでどっか行かない!?」
滝壺「じゃあ、屋台でも回る?」
絹旗「あ、いいんじゃないですか?」
麦野「じゃあ行くか」
浜面「おう」
ゴーグル「じゃあ俺は・・・」
フレンダ「はい、アンタも行く訳よ!!」
ゴーグル「えぇ!?」
フレンダ「当たり前でしょ、おみくじの結果を信じるべきよ!」
ゴーグル「で、でも・・・」
フレンダ「レッツゴー!!」
浜面「おう!!」
ゴーグル「えぇ・・・」
正月の神社の中
アイテムは、元の姿に戻った
長い長い時を経て
そして、一人の少年はそのアイテムに振り回されることになる
ゴーグル「こ、これが不幸ってやつっすね」
そんなことを言いながら、しかし彼は笑っていた
上条「・・・あ、心理さん」
心理「あら上条君と美琴もいたの?」
美琴「やっほ・・・垣根がうだうだ言ってるわよ」
心理「あら、だらしないじゃない」
垣根「仕方ないだろ・・・こっちは疲れてるんだよ・・・」
上条「じゃ寝ればよかったじゃないか・・・」
垣根「寝るなんてなぁ!大晦日の夜に寝るなんてなぁ!許されないんだよ!」
美琴「・・・でも結果として今は眠いんでしょ?」
垣根「・・・うるせぇ」
心理「まったく・・・はい、あなたの分よ」
垣根「はぁ?いらねぇよ」
心理「いいから開きなさいよ」
垣根「・・・お前はどうだったんだ?」
心理「吉、まぁ金運は良かったわよ」
垣根「がめついな」
心理「・・・ほら、あなたもよ」
垣根「ったくよ・・・」
垣根がため息をついてからおみくじを開く
そこには「大凶」の文字があった
垣根「よし、こいつは紙飛行機にしてお空の彼方へフライトさせよう」
心理「あら、どうだったのよ」
垣根「大凶」
心理「・・・見せて」
心理定規が垣根からおみくじを受け取る
恋愛運、金運、健康運、それら全てが最悪だった
美琴「あらら・・・悲惨な内容ね」
上条「・・・俺も多分大凶だったから気にするなよ」
垣根「気にしねぇよ・・・第一こんなもんで運命が変わるなら誰も苦労しねぇさ」
心理「ふーん・・・恋愛運は最悪・・・好きな人と喧嘩するかも、ですって」
垣根「あーそうかい」
心理「・・・このおみくじは私を怒らせたいようね」
垣根「やめろよみっともない・・・」
心理「・・・あなたってこういうの好きそうなのに」
垣根「・・・嫌いなんだよ」
心理「そう」
上条「・・・なぁ、垣根」
垣根「なんだよ」
上条「・・・お前と心理さんは多分喧嘩はしないぜ?」
垣根「知るかよ、する時はするししないときはしないんだよ」
上条「・・・そうか」
美琴「ねぇ、これから何するの?」
心理「私は正午までゆっくりしたいわね」
垣根「だべるか」
上条「あと2時間か・・・まぁ悪くないけどな」
美琴「じゃあそうしましょう」
四人はベンチに腰掛け、くだらない日常会話を始める
まだ正月は始まったばかりだった
御坂妹「・・・上位個体、先程から何をしているのですか」
打ち止め「おみくじの内容を何回も確認してるの!ってミサカはミサカは答えてみたり!」
御坂妹「何回見ても内容は変わりません、凶だったことは変わりません」
打ち止め「分かってるけど否定したい事実なの!ってミサカはミサカは頭を抱えてみたり!」
御坂妹「あとあまり人前でその語尾は出さないほうがいいですよ」
打ち止め「これがミサカのアイデンティティーなんだよ!ってミサカはミサカは睨みつけてみたり!」
御坂妹「はぁ・・・テっくんが散々言っていた理由が分かりますね」
打ち止め「?」
御坂妹「・・・ミサカ口調はたしかに目立ちすぎますから」
打ち止め「そんなこと気にしなくていいんだよ!ってミサカはミサカは・・・」
御坂妹「!しっ!」
10032号が突然打ち止めの口を押さえる
その視線の先には三人の知り合いがいた
吹寄「はぁ・・・周りがカップルだらけだと辛いわね」
■■「本当に。辛い」
食蜂「気にしないのが一番よ」
吹寄「・・・初詣の時くらい手を放したり出来ないのかしらね」
■■「カップルは。一定時間以上手を放していたら死ぬ生物だから」
吹寄「そうなの?」
食蜂「なんかそれ納得できる皮肉ね」
■■「・・・私も。誰かと手を握り合いたい」
食蜂「彼氏もいないから無理よねぇ」
吹寄「・・・ん?あれ、御坂さんのいとこの・・・」
食蜂(・・・妹達ね)
御坂妹「どうも」
■■「ここに。独り身が集まった」
打ち止め「そうだね・・・」
吹寄「・・・あなたたちもすることがないの?」
御坂妹「まったくないですね・・・」
食蜂「・・・じゃあ五人で行動する?」
御坂妹「えぇ、そうしましょう」
独り身五人組が歩き出す
周りの幸せそうなカップルに毒を吐きながら
テクパトル「・・・あぁ、なんとか回復してきた・・・」
ショチトルに股間攻撃を喰らってから約15分
テクパトルの体力はどうにか平常に戻ろうとしていた
ちなみに股間を蹴り上げた張本人はベンチに座ってリンゴ飴を食べている
その反省していない態度にいらつきながらもテクパトルはゆっくりと立ち上がる
テクパトル「・・・着物の上からダイレクトに響くってどんな威力の蹴りなんだよ・・・」
19090「テっくん、大丈夫ですか?」
テクパトル「あぁ、なんとか・・・あぁ!さすろうとしなくていいから大丈夫だから!」
19090「あ、はい・・・でもなんだか腫れて・・・」
テクパトル「生理現象なんだ仕方ない!」
19090「!ふにゃぁぁ!」
テクパトル「今更事の重大さに気づいたか・・・」
エツァリ「あ、テクパトル・・・回復しましたか」
テクパトル「てめぇの彼女のせいで大変な思いをしたぞ」
エツァリ「あはは・・・自分に言われましても」
テクパトル「せめて反省するように叱ってくれよ!」
ショチトル「ん?何が?」
テクパトル「てめぇだ!反省しやがれすっとぼけ!」
ショチトル「あぁ、反省反省」
テクパトル「反省しろよ!」
19090「テっくん、落ち着いてください・・・」
テクパトル「女のお前には分かるまい!この股間を蹴られる独特の痛みが!」
ショチトル「中にはそれが快感に繋がるヤツもいるんだろ?問題ないじゃないか」
テクパトル「俺はそんな特殊な性癖を持ってねぇんだよ!」
エツァリ「・・・ショチトル、謝っておきましょう」
ショチトル「ちぇー、すいませんでしたシャチョさん」
テクパトル「ちょっとそこに立て」
ショチトル「・・・すまなかったってば、反省してまーす」
テクパトル「てめぇふざけてんじゃねぇ!マジでこっちは死にそうだったんだ!」
19090「さ、さすったほうがいいですか!?」
テクパトル「公衆の面前で何言ってるんだよお前は!?」
エツァリ「おやおや、公開プレイというものですか」
ショチトル「ま、まさかこんなとこで手コ・・・」
テクパトル「てめぇらぁぁぁ!アステカの誇りすらも忘れたか裏切り者!」
ショチトル「人としての誇りは忘れてないから安心してくれ」
テクパトル「今分かった!敵味方は関係ない!お前達はとりあえず倒さなければならないと!」
エツァリ「ほぅ・・・ならば受けて立ちましょう!」
テクパトル「エツァリぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
エツァリ「テクパトルぅぅうううううううう!!!!!!!!」
二人のアステカ出身の男
胸に抱えるのは「誇り」と「遊び」
正反対のそれらの戦いは、今始まった!
フレンダ「結局、ゴーグルはなんか暗い訳よ」
ゴーグル「仕方ないじゃないっすか」
ゴーグル男はため息をついていた
彼は今、アイテムの面々と行動している
理由は単純
フレンダがアイテムの一員だから
別に彼女と行動しなければならないという決まりはない
だが現在もっとも近しいのがフレンダであるというだけだ
麦野「ほら、早く歩きなさい」
フレンダ「あぁゴメンゴメン・・・」
浜面「・・・タコ焼きうめぇ・・・」
滝壺「このヤキソバも美味しいよはまづら」
絹旗「・・・はぁ、海原さんがいたら超最高なんですが・・・」
麦野「誘わなかったのかよ」
絹旗「なんでも親戚一同で新年会らしいですよ」
麦野「へぇ、お偉方の親戚かなんかなの?」
絹旗「そうみたいですね」
浜面「いいじゃんか、玉の輿」
絹旗「別にお金に恋したわけじゃないですから」
滝壺「はまづら、夢がないよ」
浜面「じょ、冗談だっての!」
フレンダ「結局浜面は昔と変わらず金が好きな訳よ」
浜面「仕方ないだろ!?こちとらスキルアウトだったんだ!」
フレンダ「うわぁ野蛮」
絹旗「不良だったことを自慢げに言うなんて超ちんけです」
麦野「浜面、少し大人気ないわよ」
浜面「ここぞとばかりに集中放火!?」
フレンダ「まったく・・・?どうしたのゴーグル」
ゴーグル「・・・なんでもないっすよ」
絹旗「さっきから超無口ですが」
ゴーグル「・・・慣れないだけっすよ、敵同士だったんすから」
麦野「・・・冷めること言ってくれるじゃない」
ゴーグル「・・・馴れ合うつもりはないですよ」
フレンダ「ちょ、ちょっと・・・」
ゴーグル「・・・それになんだか俺には理解出来ないっすから」
麦野「何が?」
ゴーグル「アイテムの雰囲気を知っているのはアイテムの皆さんだけっすよ」
浜面「そりゃそうだけどさ・・・」
ゴーグル「今更俺が知ろうなんて無理な話っす」
麦野「・・・そうか?」
ゴーグル「俺はあなたたちの仲間じゃないっす、ただ一緒に行動しているだけですから」
フレンダ「あーもう!意地なんか張らないで素直に仲間に入れてって言えばいい訳・・・ちょ、ちょっとどこ行こうとしてんのよ!」
ゴーグル「・・・やっぱり俺は一人がいいっす」
滝壺「寂しいよ、一人は」
ゴーグル「寂しいと感じるのは温もりを知っている人だけっすよ」
絹旗「・・・あなたは知らないんですか」
ゴーグル「捨てましたよ」
ゴーグル男がため息をつく
ゴーグル「俺はもともとアイテムに加わるつもりはなかったんで・・・それじゃあ」
フレンダ「あ・・・」
ゴーグル「なんかあったら連絡ください」
フレンダ「携帯とかの番号知らない訳よ!」
ゴーグル「あぁ、じゃあ連絡も取れないし俺とはここでお別れっすね、それじゃ」
フレンダ「垣根の説得で幸せを探すつもりになった訳じゃなかったの!?」
ゴーグル「やっぱり色々と難しいっすよ」
麦野「逃げるのか」
ゴーグル「・・・」
麦野「私は暗部から上手く抜け出したぞ」
滝壺「あなただって出来るよ」
ゴーグル「抜け出したつもりになってるだけっすよ」
浜面「・・・つもりでもいいじゃねぇか、今は幸せだぜ?」
ゴーグル「・・・垣根さんもずいぶんと丸くなってましたよ、やっぱり俺は光の世界にはいられません」
フレンダ「・・・一人になりたい訳?」
ゴーグル「そうかもしんないっすね」
フレンダ「・・・分かった、アンタがそれでいいなら」
絹旗「フレンダ・・・」
フレンダ「ありがと、ちょっと寂しいけど仕方ない訳よ」
ゴーグル「それじゃ」
ゴーグル男が頭を下げて去っていく
彼には分からなかった
垣根は言っていた
お前は前を向いていなかっただけだと
だが、そもそも闇の中に前後などあるのだろうか
ゴーグル男は闇から抜け出していない
抜け出したいなんて願望もない
垣根や心理定規はうらやましいし、幸せになりたいとも思っている
だが
今更自分が何をすればいいのだろうか
他人の模倣か
過去の清算か
何をしても彼には普通の生活なんて出来ない
アイテムのように心が繋がった仲間がいるわけではない
垣根のように守りたい誰かがいるわけではない
ゴーグル「結局、俺には無理っすよ」
ぽつりとつぶやいてゴーグル男は神社を後にする
周りで響く笑い声が全て自分に向けられているように聞こえた
一方「・・・あァ?なンで俺があの実験をしてたか?」
番外「うん、気になったから」
ベンチに腰掛けた二人はそんな話をしていた
削板や黒子と分かれ、二人だけで神社の敷地内をうろついていたのだ
一方「・・・そォだな・・・誰も傷つけたくなかったからかもな」
番外「?でも傷つけてたじゃん」
一方「・・・最強の超能力者ってことは俺を倒せば最強になれるだろ」
番外「うん、手っ取り早いしね」
一方「・・・それじゃ誰かを傷つけるだろォが」
番外「・・・だから絶対になりたかったの?」
一方「あァ・・・今考えたら間違いだらけだったがな」
番外「ふーん」
一方「で、なンでそンなこときくンだよ」
番外「なんかさ、お姉様はアナタのことをどう思ってるのか気になってさ」
一方「オリジナルがか」
番外「複雑なんじゃないかな・・・だって自分の妹達を殺したのはアナタでしょ?」
一方「・・・だが救ったのも俺だった、か」
番外「一体どうやって和解したの?」
一方「あいつが上条を探してうろついてた時にちょっとな」
番外「ふーん・・・アナタはその時どうだったの?」
一方「・・・怖かったな」
番外「怖かった?」
一方「・・・妹達は俺に殺されるために作られた・・・そォだろ?」
番外「うん、そうだよ」
一方「・・・つまり、一応そこには一種の決まりがあったンだ」
番外「殺されて当たり前、か・・・狂ってるけどまぁ分かるかな」
一方「俺もそォだ」
一方通行がつまらなそうに息を吐く
あまりあのことを話したくはないのだろう
一方「自分から絶対になりたいって頼ンだンだ、殺されてよォが文句はなかった」
番外「・・・でも・・・お姉様だけは違った」
一方「上条は実験の内容を知った上で首を突っ込ンできた」
一方「・・・オリジナルは違ったンだ」
番外「・・・善意からDNAを提供したのに、知らない間にそんな実験に使われていた・・・」
一方「自分のせいでもねェのに妹達のことで苦しンだ」
一方「・・・あいつが一番の被害者だった、それは間違いないンだよ」
番外「そして一番傷ついた人・・・か」
一方「・・・あいつだけは俺を殺す権利があったンだ」
番外「・・・アナタは・・・お姉様を見掛けた時に能力を使わなかったの?」
一方「当たり前だろ、あいつになら殺されても仕方なかったンだ」
番外「・・・」
一方「まァ電撃一発で済ンだけどな」
番外「・・・やっぱり、怖かった?怨まれるのが」
一方「・・・あァ」
番外「アナタは誰も傷つけたくないから実験を始めたのに・・・いつしか無関係のお姉様まで傷つけていた」
一方「・・・周りが見えなくなってたンだろォな」
番外「それだけじゃ正当化出来ないほどの惨劇だったけどね」
一方「だからよ・・・今も少し不安なンだ」
番外「お姉様が恨んでるんじゃないかって?」
一方「・・・あいつと二人きりには何度かなったけどよ、未だに緊張するな」
番外「ふーん・・・ミサカにはよくわかんないや」
番外個体が頭の後ろで腕を組む
一方「・・・とにかく、あいつには俺は一生謝り続けるつもりだ」
番外「許してもらうため?」
一方「許さないでもらうためだ」
番外「・・・アナタは変わったね」
一方「何がだよ」
番外「前は実験の話には背を向けてたけど、今は向き合ってる」
一方「・・・割り切れたとは思わねェ、ただいつまでも下を向いてるわけにもいかねェンだ」
番外「陽を見るためには上を向け、か」
一方「あァ」
番外「ミサカ、そういうのは嫌いじゃないよ」
一方「そォかよ」
一方通行が鼻で笑う
馬鹿馬鹿しい会話だ
正月の陽気な雰囲気の中でするような話ではない
一方「まァでもな」
一方「俺もあの太陽は嫌いじゃねェ」
「ちっくしょぉ!!なんなんだよあいつら!?」
彼はスキルアウトの少年
お金がなくて困っていたため、神社にお参りに来ていたいかにも弱そうな学生から財布を奪ったところだ
神社はこの季節初詣で人が集まるためそういうことには便利だった
いや、便利なはずだったのだが
(聞いてねぇよ!!いつから神社はガードマン雇ったんだよ!?)
彼は恐怖していた
彼を追いかけるのは一人の男と一人の女
まさか着物を着てカモフラージュもしているなんて
(き、来やがった!!っていうか足速すぎるだろ!!!)
男だって仮にも犯罪を何度も犯してきたスキルアウトの一員だ
逃げ足には多少の自信はある
しかし、ハンターの速さは異常だった
黒子「待ってくださいですの!!!」
削板「くっそ!!根性がねぇやつだ!!!」
「ま、待てって言われて待つヤツはバカなんだよ!!」
黒子「ちっ・・・着物は擦れて演算に集中できないですの・・・というかこの人混みの中で空間移動は危険ですの・・・」
削板「よーし!!俺に任せろ!!」
削板がその場にしゃがみこむ
削板「えーい!!!すごーいジャーンプ!!!!」
「いやいやそんなの・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
削板の体がビヨーンと空高く跳ぶ
軽く10mは跳んだのではないか
そしてクルクル、と体を回転させながら男の前へ着地する
削板「どうだ!!!」
「どうだ、じゃねぇよ!!!お、お前はなんなんだ!?肉体強化系か!?」
削板「何かと聞かれりゃ答えをやろう、誰かと言われりゃすぐ名乗ろう!!」
削板「心は燃える、陽は燃える!!!心のどこかで燃え盛る!!」
削板「敷かれたレールは削いでいく、目の前の壁は突き破る!!!」
削板「愛と勇気と根性と!!!たった一つの正義感!!」
削板「俺が!!!学園都市に七人しかいないLEVEL5、そのナンバーセブン!!!」
削板「削板軍覇!!!!!!」
「ちょ、超能力者!?ふざけんなよ!!」
男が顔を青くしながら駆け出そうとする
しかしその首筋を削板が掴む
強すぎる腕力
男は一歩も動くことが出来ない
「あぁくそ!!こうなったら!!!」
あまり騒ぎを起こしたくはないが、自分の保身のためなら仕方ない
「死ねぇ!!」
黒子「!?拳銃!?」
男が削板の喉元に銃の照準を合わせる
その距離わずか50cm
いくら超能力者でも、銃弾を直接くらえば死ぬことは変わりない
所詮は人間
そう思っていた時期が、男にもありました
「ははは!!」
パァン!!と乾いた音がする
だが、削板の体は直立したままだった
「は・・・はぁ!?」
削板「いってぇ!!お前、根性がないぞ!」
「な、なんで立ってられるんだよ!?」
削板「喉元にフンッ!!て力を入れたら跳ね返・・・」
「せねぇよ!!おかしい・・・あぁ痛い痛い!!」
削板が男の腕を捻り上げる
寂しく、拳銃がその腕から落ちた
黒子「はぁ・・・ジャッジメントですの」
「て、てめぇ・・・ジャッジメントかよ・・・」
削板「神妙にお縄につけぇ!!」
「ち、ちくしょう・・・」
男はうなだれた
意味の分からない能力を使う男
あまりにも的確な追跡をしてくる女
もしもこんなジャッジメントが蔓延っていたら
「くそ・・・もう、犯罪はできないのか・・・」
削板「するんじゃねぇ!!!」
「ぎゃうぅぅん!!!!」
続き: 25スレ目 上条「熱い思いは!」美琴「止められない!」心理「燃える心は」垣根「バーニングハート!」
※編集中です。近日中に公開します。