※関連
最初: 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
前回: 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」【後編】





元スレ
上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314512717/

1 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 15:25:18.22 4CqPLF9n0 1/720

1スレ目 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13045/1304506297.html

2スレ目 美琴「当麻♪」上条「なんだ、美琴」垣根「俺も仲間に入れて」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13053/1305377166.html

3スレ目 上条「美琴、愛してる」美琴「私も♪」垣根「俺も♪」心理「ジャマしないの」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306063255/

4スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「えへへ//」垣根「速さが足りない」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306724889/

5スレ目 上条「放さないからな」美琴「うん♪」垣根「話さないからな」心理「しゃべりなさいよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307282872/

6スレ目 上条「抱きしめようか?」美琴「うん//」垣根「抱こうか?」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307709819/

7スレ目 上条「守り続けるからな」美琴「うん//」垣根「これがリア充です」心理「あなたもよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308139244/

8スレ目(番外編) 美琴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308667506/

9スレ目 上条「結婚に必要な物は?」美琴「愛!」心理「お金」垣根「念のため三行半」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308992651/

10スレ目 上条「まずは!」美琴「そのふざけた!」心理「幻想を!」垣根「守るのこそ愛だ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309355502/

11スレ目 上条「マイホームか・・・」美琴「い、いいわね//」心理「そうね」垣根「欠陥住宅か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309860801/

12スレ目 テクパトル「あの月はもう、空には出ない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310283821/

13スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「//」垣根「心理定規可愛いハァハァ」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310641032/

14スレ目 上条「恋といえば!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311066610/

15スレ目 上条「旅行かぁ・・・」美琴「どこ行く?」垣根「ヤっちゃうのか?」心理「黙って」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311506386/

16スレ目 上条「愛って何かな」美琴「守ること?」心理「信じること」垣根「疑い続けることさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311939697/

17スレ目 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312451177/

18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/

19スレ目 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313206497/

20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/

21スレ目 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313987737/

黒歴史 今日も学園都市には雨が降る
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1303/13037/1303730725.html


2 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 15:26:50.70 4CqPLF9n0 2/720

キャラ紹介

上条・・・言わずとしれたそげぶマン
美琴の彼氏、第一の主人公であり、正義感溢れます
美琴をかなり愛しています

美琴・・・ヒロイン
可愛いです、可愛いです、可愛いです
ツンデレがデレデレになってますが、それもまた(ry
上条さんにメロメロ

垣根・・・本シリーズでおそらくもっとも愛されてるキャラクター
イケメルヘンからギャグまでなんでもござれ
心理定規と付き合ってます、フリーダム
たまにツッコミ

心理定規・・・垣根の嫁
ていとくんに踊らされながらも彼を支えます
おそらく、心理定規タンハァハァって方もいるかと、俺もそうだ
ホント、マスコットキャラ

エツァリ・・・本シリーズで地味なキャラの一人
ショチトルと付き合ってる変態ツッコミ

ショチトル・・・地味キャラだった一人
エツァリと付き合ってます、自称ドMの実際ドM
もはや、ボケキャラ

削板・・・熱い男
黒子の彼氏、地味なはずがわりとキャラが濃い

黒子・・・ですの
削板の彼女、でもお姉さまも相変わらず好きなのでご安心を

一方・・・歪みないセロリ
番外個体の彼氏、そしてロリコン、意外とまともになった

番外個体・・・一方の嫁
やっとセロリと付き合うことに、マジ可愛いよワースト
わりと奥手

テクパトル・・・ダークホース
途中でレギュラーになったにも関わらずていとくんとならび本シリーズの目玉に
こんなはずではなかった
美月こと19090号と恋人に、さまざまな苦難も乗り越えイチャイチャリア充、背中フェチ

19090号・・・テっくんの嫁
勝手に美月と名づけました
後悔はしてません
テクパトルと結ばれましたが未だに照れ屋さん、そしてエロい

20000号・・・変態
しかも、テっくんでヤったこともある変態 、たまに男前

14510号・・・セロリのことが好きな乙女
めちゃくちゃ乙女

10033号・・・セロリのことが好きな乙女
恋する乙女は強かった

御坂妹・・・可愛いです
なぜかツッコミに

17600号・・・やや遅れて合流した妹達
意外と男前、おっとこまえー

■■・・・名前が思い出せないキャラ
まさかの存在感、俺には理解できない
準レギュ、というかエツァリよりも輝いてる気がする

吹寄・・・垣根に告白、失恋するもやはり友達がいいと気づいた強いキャラ
まさかの準レギュ、そしてツッコミ、おっぱい吹寄

ウイーハルさん・・・違った、初春
削板、黒子の出番でたまに登場

13577号・・・かつて20000号に公開オ○ニーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
まさかの復活、でもトラウマは奥底に眠る

10039号・・・かつて20000号に公開オナ○ーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
アンコは粒餡派らしい

3 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 15:27:23.93 4CqPLF9n0 3/720

スレ内容

上琴、未元定規がメインのギャグほのぼの

一方通行×番外個体
テクパトル×19090号
削板×黒子
エツァリ×ショチトル
俺×サトリナ

何もおかしいところはない

サトリナさんは俺の嫁

さだのりはジャガイモ

>>1は速さを極めようとしています、ヒマジンというツッコミはなしですw
ただし、ミサカ口調でいじめるように言うツッコミは大歓迎

Mではありません


あと、背中って素敵

それだけ



えー、ちなみに




背中は正義だから

異論は認めないから


グダグダ苦手な方は気分を害しちゃいます

高確率で、うん

今スレもリクエストは受けられません

リクっぽいカキコミはスルーしてしまいますがご了承を

5 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 15:28:58.66 4CqPLF9n0 4/720

もはや上琴ではなくなってきています

全員が主人公になっていますが、日常では誰もが主人公なんだぜ、という>>1のメッセージです

いや、ウソです

サトリナさんは俺の嫁です

サトリナさんは俺の嫁です

>>1が喜ぶコメは

ミサカ口調でけなすようなコメ

サトリナさんっぽい優しいコメのあとに、(と、サトリナが>>1の耳元で囁いていました)

それでも地球は回っている

すいません、冗談です


サトリナが可愛すぎて死にそう


禁則事項

リナさんでしゅっしゅすること

以上




11 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 16:03:44.00 4CqPLF9n0 6/720

さて、では始めますか

「一端覧祭」



上条「はぁ・・・」

上条は溜め息をついていた

一端覧祭、という行事がとうとう明日に迫っている

簡単に言えば、「文化祭」なのだ

ただ規模が恐ろしくでかい

12 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 16:05:52.62 4CqPLF9n0 7/720

学園都市全体で行う文化祭なのだ

さらに、入学希望者が学校に見学に行く日でもある

上条の学校はそこまでは人気は無いが

長点上機や常盤台などの一流校は、ここぞとばかりに一般解放を始める

ここでプラスイメージを作るためだ

だが、そんな入学者稼ぎも上条には関係ない

13 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 16:10:43.00 4CqPLF9n0 8/720

上条「はぁ・・・うちは滑り止めで受けるヤツが多いからな」

青ピ「そうやねぇ、他のとこみたいに躍起にならんでえぇしなぁ」

土御門「全く、ヒマな日々が続くぜよ」

そんな話をするのはいわゆる「デルタフォース」の三人

今、彼らはなんかよく分からない「パッチワーク」なるものを作っている

一日前に作るのか?と思う方もいるのだろう

彼らがサボったのがそもそもの間違いだったのだ

14 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 16:13:16.44 4CqPLF9n0 9/720

上条「はぁ・・・なんで俺が・・・」

吹寄「貴様が今日の今日まで一端覧祭の準備をサボっていたからよ」

後ろから冷たく言い放つ声がする

吹寄と■■だ

■■「上条君は。バカ」

上条「・・・はぁ、お前らはいいよなぁ・・・」

吹寄「私達はちゃんと準備したからよ」

15 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 16:19:16.29 4CqPLF9n0 10/720

上条「だってさぁ・・・」

土御門「いやぁ、俺達だってバンドとか劇ならちゃんとやってたぜぃ?」

青ピ「でもよりにもよって展示だけなんてヒマやもんなぁ」

吹寄「・・・貴様達は本当に・・・」

小萌「はいはーい!順調に行ってますか、上条ちゃん、土御門ちゃん、青髪ちゃん?」

青ピ「あっはぁ!!ちゃんとやってますよ、小萌センセ!!!」

■■「現金な人」

29 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 16:48:44.71 4CqPLF9n0 11/720

上条「はぁ・・・やる気が出ませんのことよ」

青ピ「小萌センセ、手取り足取り教えてぇな!!」

小萌「はいはーい、それ以上騒ぎやがったら、コロンブスの卵ですよ?」

吹寄「はぁ・・・貴様達以外のクラスメイトはみんな終わらせてるわよ?」

上条「マジか・・・」

土御門「はぁ、めんどくさいぜぃ」

38 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:30:59.88 4CqPLF9n0 12/720

上条「・・・はぁ、なんでパッチワークなんだよ?」

青ピ「そこまでオシャレなんかなぁ?」

吹寄「みんながやりたいって言うのよ」

■■「たしかに。手軽なわりにはいいものができる」

小萌「上条ちゃん、しっかり作らないともう一端覧祭は明日なのですよ?」

上条「はいはい・・・」

39 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:32:45.51 4CqPLF9n0 13/720

上条が少しずつ作業を進めていく

しかし、あまり手先の細かい作業は彼には向いていない

少しやっては首を回し、少しやっては肩を回し

上条「・・・はぁ、疲れるな・・・」

吹寄「貴様の自己責任よ」

青ピ「吹寄はいつも冷たいなぁ・・・」

吹寄「不良生徒には厳しくするのが私の信条よ」

40 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:34:55.24 4CqPLF9n0 14/720

■■「・・・吹寄。帰ろう」

吹寄「そうね、私達はやることないものね」

上条「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

青ピ「先に帰るんかいな!?」

土御門「ひどいぜよ!!」

吹寄「あぁ?」

三人「」

42 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:38:56.38 4CqPLF9n0 15/720

上条「・・・結局、俺達はあれから2時間も作業を続けることになった」

土御門「誰に言ってんだ、カミやん?」

上条「いや・・・だってこうでもしないと辛くてさ」

青ピ「ほんまやなぁ・・・」

上条「・・・うわ、もう暗くなってる」

どうにか作業を済ませ、三人は下校を始める

上条(こりゃ・・・なかなかに遅くなりましたね)

44 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:40:37.90 4CqPLF9n0 16/720

上条「・・・はぁ、結局俺は不幸・・・」


美琴「あ、当麻!!」

上条が肩を落としたのと同時、愛する美琴の声が聞こえた

上条「あれ?美琴?」

青ピ「・・・」

土御門(うっぜー・・・)

47 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:43:07.14 4CqPLF9n0 17/720

上条「なぁ、なんでいるんだ?」

美琴「わ、私もちょうど今終わったのよ!!」

美琴があたふたとする

上条「・・・でもさ、なんかタイミングよくないか?」

美琴「そ、それは・・・」

土御門「どうせずーっと待ってたに決まってるぜよ」

48 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:44:57.75 4CqPLF9n0 18/720

上条「そうなのか?」

美琴「ち、違うの!!ここにちょうどさっきまで可愛い子猫がいて!!」

青ピ「ここ、アスファルトがずっと続いてるんやけど」

美琴「し、知らない人に道を聞かれてたの!!」

上条「どこに行きたい人だったんだ?」

美琴「う・・・そ、そうよ!!体がここの門にひっついてたの!!」

49 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:46:57.65 4CqPLF9n0 19/720

青ピ「・・・カミやん、ボクたちは帰るからなぁ」

土御門「お幸せにー」

上条「な、なんてドライな友情!?」

青ピ「もうカミやんなんか友達ちゃうわ!!」

土御門「帰れよさっさと!!」

上条「じゃ、じゃあ・・・またな」

51 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:48:20.43 4CqPLF9n0 20/720

上条「・・・な、なんか・・・」

美琴「気を遣ってくれたのよ!」

美琴が嬉しそうに言う

実際は、「死ねよリア充」ということなのだが

上条「はぁ・・・まぁいいや」

美琴「でも当麻、なんでこんなに遅かったの?」

53 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:50:06.20 4CqPLF9n0 21/720

上条「一端覧祭の準備ですよ」

上条が溜め息をつく

美琴「あぁ・・・まだやってたの?」

上条「う・・・常盤台は一般解放とかあるんだっけ?」

美琴「うん、みんな張り切ってるわよ」

美琴が嬉しそうに笑う

こういう行事は好きなタイプなのだろう

54 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:51:33.82 4CqPLF9n0 22/720

上条「美琴は・・・前みたいにバイオリンやんの?」

美琴「うん、でも今年は普通の制服でね」

上条「なんで?」

美琴「わざわざオシャレな服を用意するのもめんどくさいもん」

ケロっと、美琴が答える

上条「えー・・・そこは可愛いの着ててほしいなぁ」

美琴「と、当麻も見に来るつもり!?」

56 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:52:46.67 4CqPLF9n0 23/720

上条「いやか?」

美琴「緊張するじゃない!!」

上条「ははは・・・でもいいだろ?」

美琴「い、いいけどさぁ・・・」

美琴が少し顔をしかめる

上条には、なんとなくそういう「お嬢様」っぽいところを見せたくは無かった

上条「はぁ・・・でも垣根たちは見学するのかもな」

57 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:53:59.14 4CqPLF9n0 24/720

美琴「・・・そういえばそうなるのね」

美琴が溜め息をつく

垣根が見学に来たら

なんか、バイオリン奪われた挙句に弾きだしたりされそうだ

上条「・・・俺達は展示でよかったのかもしれない」

美琴「どうかしら、あのバカのことよ?」

上条「だ、大丈夫だ!」

58 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:55:10.52 4CqPLF9n0 25/720

美琴「・・・明日からなんだ」

上条「明日からだな・・・」

二人が空を見上げる

大覇星祭のときと違い、すっかり秋の空だ

上条「・・・楽しみだな」

美琴「うん」

そんな会話をしながら、二人は上条の寮へと向かった

59 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:56:58.87 4CqPLF9n0 26/720


テクパトル「・・・みんな一端覧祭に行きたいわけか・・・」

19090「はい!!」

御坂妹「お姉様の勇姿を見届けます、とミサカはここに宣言します」

17600「トチトリも来るらしいからな」

13577「それは嬉しいですね、とミサカは顔を輝かします!」

20000「騒がしくなるなこりゃ」

テクパトル「・・・はぁ」

61 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 17:59:03.92 4CqPLF9n0 27/720

ミサカたちが一端覧祭に行きたい、と言い出したのは2時間前だ

そして今も現在進行形でそんなことばかりを話している

しかし、テクパトルとしてはあまり芳しくは無かった

テクパトル「・・・特殊メイクするのはいいけどさ、お前達たまに語尾が出るだろ?」

10033「?それがなにか?」

テクパトル「常盤台の中でミサカ・・・なんて言ったらな」

美琴はとても有名人なのだ

62 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:01:32.01 4CqPLF9n0 28/720

テクパトル「つまり・・・あれだよ、さすがにバレる可能性が高いんだ」

大覇星祭のときと違い、学園都市の中だけで行われるお祭り騒ぎだ

周りには当然、美琴のことを知っているものばかり

しかも、常盤台なんかはなおさらだ

もしも彼女達が美琴のクローンだなんて知られたら

テクパトル「・・・まずいよな」

63 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:03:10.16 4CqPLF9n0 29/720

19090「そ、それは・・・」

10039「・・・お姉様には迷惑はかけられませんね・・・」

ミサカたちが肩を落とす

テクパトル「・・・語尾を隠したとしても、特殊メイクだとバレたらまずいな」

大覇星祭はその特性上、若干セキュリティが甘い

しかし、一端覧祭はそうはいかない

一般解放なんかは、持ち物検査や身体検査があったりする学校もある

64 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:05:16.55 4CqPLF9n0 30/720

テクパトル「特殊メイクは使えないかもな・・・」

17600「たしかにな、特殊メイクはリスクが高い」

テクパトル「・・・なんとかしてはやりたいんだがな・・・」

テクパトルが頭をかく

彼はそんなに権力があるわけではない

上層部に「常盤台に顔パスできるような身分証明書くれよー」なんて言えるわけは無い

そんな証明書さえあれば、身体検査などなくなるから特殊メイクでもいいわけだが

66 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:07:19.24 4CqPLF9n0 31/720

テクパトル「・・・って、いるじゃないか!!」

テクパトルが家の中にある冷蔵庫を見つめる


アレイ「もーっと勝手にーこーいー・・・ん、なんだ?」

テクパトル「お前、キャラ変わってきてるよな」

アレイ「何を言う、私はいたって真面目だぞ?」

テクパトル「つう」

アレイ「かぁ」

テクパトル「変わったな、お前」

67 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:12:11.51 4CqPLF9n0 32/720

アレイ「で、今までノータッチだった私になんの用だ?」

テクパトル「・・・身分証明書がほしい」

アレイ「そういうのは役所に届け出るものだ」

テクパトル「さっきまでの話きいてたか?」

アレイ「特別な身分証明書か・・・難しい話だ、第一私に得が無い」

テクパトル「20000号」

68 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:13:16.38 4CqPLF9n0 33/720

20000「あいあーい」

20000号がアレイスターに近づく

アレイ「な、なにのつもりだ?」

テクパトル「得ならあるぞ?」

20000「ミサカのきっついお仕置きと、どっちがいい?」

アレイ「むしろ両方で!!」

テクパトル「じゃあ頼む」

70 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:14:57.11 4CqPLF9n0 34/720


御坂妹「これで・・・お姉様のバイオリンが聴けます・・・」ポワーン

19090「何を弾くんでしょうか・・・猫ふんじゃったでしょうか・・・」

17600「そこは新世界よりとか言おうぜ」

14510「バイオリン・・・生で聴くのは初めてですね・・・」ワクワク

テクパトル「はぁ・・・でも、大人しくしとけよ?」

御坂妹「分かっていますよ」

10039「語尾も控えますから!」

72 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:16:27.69 4CqPLF9n0 35/720

テクパトル「よかったな・・・これで一安心だ」

テクパトルがほっと溜め息をつく

少し、力が抜けた

テクパトル「じゃあ、飯でも食うか」

ミサカ一同「はい!!」

一同が食卓につく

なんか後ろで20000号がアレイスターにお仕置きしていたが、気にしないことにした

74 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:19:12.83 4CqPLF9n0 36/720


垣根「明日から一端覧祭か」

垣根が新聞を見つめながらつぶやく

心理「あら、もうそんな時期?」

心理定規は紅茶を淹れている

このカップルは、二人きりのときはこういったオシャレな雰囲気が専らだった

垣根「どうする?見に行くのか?」

心理「美琴がバイオリン弾くらしいわよ」

75 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:20:29.95 4CqPLF9n0 37/720

垣根「バイオリンねぇ」

興味がなさそうに垣根がソファーの上で寝返りを打つ

心理「あら、あなたはもっと食いつくと思ったわ」

垣根「なんでだよ?」

心理「あなたはそういうのが好きそうだから」

垣根「お祭り騒ぎがか?」

心理「えぇ」

76 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:21:45.75 4CqPLF9n0 38/720

垣根「別に興味はねぇよ、みんながいれれば騒げるんだし」

心理「・・・それにしても、大覇星祭では暴れてたじゃない」

垣根「その分メルヘンもしただろうが」

心理「浮気ともとれるようなメルヘンをね」

垣根「うるせーよ・・・」

はぁ、と垣根が溜め息をつく

垣根「ん、アッサムか」

77 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:22:50.81 4CqPLF9n0 39/720

心理「あなたも飲む?」

心理定規がティーカップを差し出す

垣根「サンキュー」

礼を言ってから、垣根が受け取る

この涼しい時期には、紅茶がありがたい

垣根「・・・まぁ、見には行くけどな」

心理「そうね、それがいいわよ」

79 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:25:21.64 4CqPLF9n0 40/720

垣根「・・・美味いな」

心理「そう、よかった」

嬉しそうに心理定規が微笑む

垣根「・・・あったけぇな」

心理「私が?」

垣根「・・・紅茶がだよ」

少し不機嫌そうに垣根が答える

80 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:27:34.06 4CqPLF9n0 41/720

垣根「・・・なぁ」

心理「なに?」

垣根「・・・ありがとよ、紅茶美味かった」

垣根がティーカップをテーブルに置く

中はすっかり空っぽになっていた

心理「あら、お口に合ったのかしら」

垣根「お前は俺の好きな湯加減とか分かってるからな」

81 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:29:25.15 4CqPLF9n0 42/720

心理「あなたのことならなんでも分かるわよ」

垣根「そうかい」

垣根がそっとソファーから立ち上がり、心理定規の隣に座る

心理「あら、何かしら」

垣根「何でもねぇよ」

心理定規の頬に、優しく垣根がキスをする

心理「・・・どうしたの?」

82 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:30:31.07 4CqPLF9n0 43/720

垣根「なんでもねぇさ、ただ幸せが嬉しくてな」

心理「そう?」

垣根「・・・腹、減ったな」

心理「何が食べたい?」

垣根「外にでも食いに行くか?」

心理「あら、いいじゃない」

垣根「じゃあ準備しろよ」

83 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:31:41.19 4CqPLF9n0 44/720

二人が準備を始める

垣根「お前なぁ・・・化粧とかいらないだろ」

心理「あなたは分かってないわね・・・女には必要なことよ?」

垣根「お前には必要ないってことだよ」

心理「あら、嬉しい」

垣根「・・・いや、だから早くしろよ」

心理「それとこれは別よ」

84 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 18:35:07.25 4CqPLF9n0 45/720

垣根「はぁ」

垣根は溜め息をついていた

彼には女心はよく分からない

垣根(・・・ただ、あいつの心だけは分かるんだよな)

そんなことを考えて小さく笑う

心理「お待たせ」

垣根「おう、じゃあ行くか」

二人が手を繋いで歩く

大きな影と、少し小さな影が並んで歩いていた

89 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 19:53:43.59 4CqPLF9n0 46/720

一方「あァ?常盤台に見学に行きたい?」

番外「うん、ミサカも上位個体も行ったことないから」

一方「ふざけンなよ」

打ち止め「ふざけてないよ!ってミサカはミサカは・・・」

一方「お前ら、オリジナルのクローンだってバレたらどォすンだよ」

番外「う・・・」

90 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 19:55:25.01 4CqPLF9n0 47/720

一方「いいか、俺は別に意地悪したくて言ってるわじゃねェンだ」

一方通行が二人を見つめる

今、家には三人だけだ

二人が一端覧祭のパンフレットを握っている

一方「お前らのことを考えて言ってンだぞ?」

打ち止め「でも・・・」

番外「ミサカたちは特殊メイクするから!」

91 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 19:58:51.88 4CqPLF9n0 48/720

一方「ふざけンなよな・・・こっちの身にもなってみろ・・・」

一方通行からしたら、災難でしかない

二人の正体がバレたら

そして、もしも全く無関係の研究者なんかが興味を持ち出したら

妹達の実験のことを知ったら

一方「・・・今の日常が崩れるかもしれねェンだよ」

打ち止め「・・・それはヤだ、ってミサカはミサカは肩を落としてみる・・・」

92 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:00:14.03 4CqPLF9n0 49/720

番外「・・・他のみんなは楽しむのかな・・・」

一方「知るか、俺達は少し特別な事情持ってンだから仕方ねェだろ」

一方通行がソファーから立ち上がる

番外「お風呂?」

一方「あァ」

短く返事をして、一方通行が風呂へと向かう


番外「・・・はぁ」

93 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:02:06.68 4CqPLF9n0 50/720

打ち止め「・・・でも、ミサカたちは事情があるから仕方ないよ・・・ってミサカはミサカは苦笑してみたり」

番外「そうだけどさ・・・」

番外個体がパンフレットを見る

とても楽しそうな風景が載っている

昨年の一端覧祭の様子らしい

番外「・・・行ってみたいな・・・」

打ち止め「・・・うん・・・」

94 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:04:22.14 4CqPLF9n0 51/720

一方「悪い、下着忘れた・・・」

リビングに一方通行が戻ろうとした

そこで彼が見たのは、肩を落とす二人だった

一方「・・・」

静かに、一方通行が脱衣所へ戻る

一方(・・・ちっ、あンな顔されてたらこのあとの飯がまずくなるからなァ)

一方通行が携帯を取り出す

95 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:06:59.82 4CqPLF9n0 52/720

一方「あァ・・・テクパトルか」

一方「・・・お前らはどォやって一端覧祭に行くンだよ」

一方「あァ、お前らのとこにアレイスターの野郎がいたか」

一方「・・・番外個体と打ち止めの分も頼ンでいいか?」

一方「・・・頼む、悪いな」

手短に通話を済ませ、もう一度一方通行がリビングへ向かう

一方「おい」

96 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:09:55.83 4CqPLF9n0 53/720

番外「あれ、どうしたの?」

一方「・・・一端覧祭って何時からだよ」

打ち止め「?明日の・・・8時、ってミサカはミサカはパンフレットを確認してみたり」

一方「・・・それまでには用意済ませろよ」

番外「!!連れてってくれるの!?」

一方「・・・まァな」

番外打ち止め「やったぁ!!!!」

97 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:12:50.53 4CqPLF9n0 54/720

一方「・・・ちっ、あンまはしゃぐなよ」

番外「お礼にミサカたちが一緒にお風呂に入ってあげるぅぅぅぅうううううううう!!!!!」

一方「は、はァ!?」

打ち止め「ミサカは背中流すね!!ってミサカはミサカは早々に役割分担!」

一方「ま、待てェ!!」


その日

一方通行は一度目の賢者タイムを迎えることになる

98 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:15:37.47 4CqPLF9n0 55/720


削板「黒子、ウイーハルさん、お疲れ様」

削板は風紀委員の支部にいた

黒子「・・・やっと・・・終わりましたの・・・」

初春「もう・・・終わりだね・・・」

二人は書類の山の上に突っ伏していた

大覇星祭の事後書類、一端覧祭の書類

はたまた、強盗や窃盗、傷害事件などのあとかたづけもある

100 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 20:57:34.66 4CqPLF9n0 56/720

削板「・・・大変だなぁ」

初春「・・・はい・・・」

黒子「もういやですの・・・」

これで明日が休みならまだいいだろう

しかし、一端覧祭を控えているのだ

普通の学校、なんていう忙しさではない

101 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:01:03.51 4CqPLF9n0 57/720

削板「お疲れ様、飲み物いるか?」

削板が缶コーヒーを差し出す

初春「ありがとうございます・・・」

黒子「はぁ・・・落ち着きますの・・・」

コーヒーの苦さが、体に染み渡る

疲れていた体にいくらか力が戻ってくる

削板「・・・明日からか」

102 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:02:47.72 4CqPLF9n0 58/720

黒子「はぁ・・・常盤台はまた一般解放ですの」

初春「私も行きます!」

黒子「招待状ありますの・・・はいな」

黒子が初春に招待状を渡す

それ一枚も、かなり高そうなものだ

初春「な、なんかめちゃくちゃ肌触りのいい紙ですね・・・」

黒子「そうでしょうか・・・?」

103 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:05:34.52 4CqPLF9n0 59/720

削板「さて・・・二人とも帰るんだろ?」

黒子「えぇ・・・軍覇さんもですの?」

削板「俺はこれから走ってくるよ」

削板が苦笑する

黒子は今日は付き合わなくていい、という意味の笑みだ

黒子「では、また明日ですの」

削板「あぁ、おやすみ」

104 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:09:46.95 4CqPLF9n0 60/720


黒子「ただいまですの・・・」

黒子が常盤台の寮に帰り着く

とはいっても、誰もいるわけではないが

最近、美琴はずっと上条の寮にいる

黒子「はぁ・・・疲れましたの」

ベッドにそのまま倒れる

風呂に入らなければという思いと、眠いという思いが全面戦争を起こす

105 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:14:09.22 4CqPLF9n0 61/720

黒子「・・・せめてシャワーだけでも」

無理矢理体を起こし、シャワーを浴びる

その暖かさで、次第に目が覚めてくる

黒子「・・・はぁ」

小さく溜め息をつく

シャワーの水音に掻き消されるほどの小さな溜め息だ

黒子(・・・明日からですのね)

106 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:16:23.59 4CqPLF9n0 62/720

一端覧祭

常盤台中学が一般解放を行う日だ

そして、美琴がバイオリンを演奏するのも決まっている

黒子としては、ぜひとも録画しておきたい

録画して保存版と鑑賞版と永久保存版を作りたい

黒子(・・・楽しみですの)

とても楽しみなイベントだ

107 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:18:45.01 4CqPLF9n0 63/720

黒子(・・・ふふ、軍覇さんも見に来てくださるようですし)

これで何事もなければいいのだが

黒子(・・・当日にならなければわかりませんのね)

きゅっ、とシャワーを止める

静寂に、体が包まれる

黒子「さて・・・」


黒子「一端覧祭・・・始まりですの!」

108 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:22:02.60 4CqPLF9n0 64/720


上条「んっ・・・」

美琴「はぁっ・・・」



この二人は、なぜだか少しくすぐったい感触を覚えて目を覚ました

なにやら昨日、ああいうことをしてそのまま眠ってしまったらしい

素肌とシーツが擦れていたのだ

上条「んー・・・おはよう・・・」

109 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:24:57.11 4CqPLF9n0 65/720

美琴「おはよ・・・ってなに触ってんのよ!!ダメだって!」

上条「目の前に柔らかいものがあれば・・・」

美琴「触るなぁ!!」

ぽか、と美琴が上条の頭をたたく

もちろんとても優しくだ

上条「おー、怖い怖い」

美琴「今日は一端覧祭でしょ!」

110 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:26:36.77 4CqPLF9n0 66/720

上条「あぁ・・・そういえば今日からか」

美琴「・・・昨日居残りしたばっかじゃない」

上条「イヤなことはすぐ忘れるんです!」

なぜか上条が胸を張る

それはつまり、過ちは忘れますということだ

美琴「はぁ・・・とにかく、私は急がないと」

上条「あれ、バイオリンの演奏って明日だろ?」

111 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:29:11.71 4CqPLF9n0 67/720

美琴「そうだけど、一応練習しときたいのよ」

美琴が溜め息をつく

上条「そういえば・・・なんの曲弾くんだ?」

美琴「・・・垣根に教えてもらった曲、私はバイオリンでは弾きにくいと思ったんだけどね」

上条「いつ教えてもらったんだよ?」

美琴「昨日の夜中」

上条「」

112 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:30:55.74 4CqPLF9n0 68/720

美琴「楽譜のコピーは寮のほうに送ってくれるらしい・・・」

上条「いやいや!!一日で出来るもんなのか!?」

美琴「ずーっと練習すればね、だから今日は一緒に回れないわ」

上条「うーん・・・じゃあ今日はクラスのみんなと回るか」

上条が頬をかく

できれば美琴と回りたかったが

美琴「・・・当麻には聞いてほしい曲よ」

113 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:33:21.26 4CqPLF9n0 69/720

上条「ラブソングなのか?」

美琴「・・・内緒」

美琴が顔を赤くする

上条「まぁ、楽しみにしときますよ」

美琴「うん、そうしてて」

美琴が立ち上がる

ああいうことのあとでそのまま寝たのだから、もちろん服は着ていなかった

114 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:35:09.20 4CqPLF9n0 70/720

上条「じゃ・・・今日は夜にだけ会えるんだな」

美琴「・・・この部屋にバイオリン持ってきていいかな?」

上条「いいけど・・・夜中には練習できないぞ?」

美琴「近くの公園でやるからいいわよ」

そう言いながら、美琴が制服に着替える

制服をわざわざ持ってきているあたりは計算高い

上条「そこまで練習したいのか?」

115 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:36:21.42 4CqPLF9n0 71/720

美琴「・・・ピアノは心理定規なのよ」

上条「え、一人じゃないのか?」

美琴「・・・昔は、一緒に演奏する人がいなかったから」

そう言って、美琴が上条のほうを見る

嬉しそうな顔で

美琴「でもね、今は当麻のおかげでいっぱい友達がいるの」

上条「・・・あぁ」

116 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:37:39.35 4CqPLF9n0 72/720

美琴「だから、私は足引っ張りたくないし」

上条「二人かぁ・・・いいなぁ」

美琴「・・・ボーカルは垣根よ」

上条「は?あいつに歌わせるのか・・・?」

美琴「うん・・・だって、男の人で歌うまいの垣根だし」

上条「男性アーティストか・・・」

美琴「う、うん!」

117 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:38:50.73 4CqPLF9n0 73/720

上条「・・・期待してる」

美琴「うん、期待してて」

美琴がそのままドアへと向かう

上条「朝飯は?」

美琴「んー・・・今日はいらないかも、練習しないと」

上条「大変だな・・・」

美琴「・・・当麻のためだもん」ボソッ

118 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:40:32.70 4CqPLF9n0 74/720

上条「?なにか言ったか?」

美琴「ううん、なんでも!」

そう言って、美琴がドアを開ける

眩しい陽射しが差し込んでくる

美琴「いってきます!!」

上条「あぁ、いってらっしゃい」


美琴の弾く曲はなんだろう、と考えながら上条は朝食を摂っていた

119 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:42:26.63 4CqPLF9n0 75/720

上条(・・・男性の曲か・・・)

上条(・・・垣根、ふざけるかもな・・・)

はぁ、と溜め息をついてから米を口に入れる

上条(・・・美琴、張り切ってたな)

自分のために練習するらしい

上条(よし、俺もちょっと覗きに行こう)

そう決めて、上条も手早く朝食を終えた

120 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:44:03.03 4CqPLF9n0 76/720


垣根「・・・おっせぇな」

心理「そう言わないの」

二人は、常盤台の体育館にいた

心理定規はピアノの椅子に座っている

垣根はマイクの前に立っている

美琴の協力者だ、と言ったら学校側が立ち入りを許可してくれた

ちなみに、体育館にもそれなりの数の生徒はいた

121 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:45:14.40 4CqPLF9n0 77/720

「・・・あれはたしか・・・」

「第二位の垣根さんでしたかしら・・・」


そんな会話が聞こえてくる

垣根「うーん・・・俺って人気者ぉ」

心理「珍しいだけよ」

それも間違いではなかった

今は、全ての学校が一端覧祭の最後の準備をする時間帯だ

122 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:49:13.69 4CqPLF9n0 78/720

その時間帯に、部外者が

しかも、体育館のステージにいるほうがおかしいのだ

垣根「ちっ・・・俺はパンダかよ」

心理「あら、羽根の生えるパンダなんていいんじゃない?」

垣根「よくねぇよ」

つまらない、といった感じでマイクをいじる

キーン、とハウリングする

123 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:54:26.39 4CqPLF9n0 79/720

心理「こら、迷惑よ」

垣根「だってさ・・・御坂のやつ遅いんだぜ?」

垣根が時計を見る

待ち合わせから、10分は遅れている

心理「少しくらいいいじゃない」

垣根「良くないね、俺は待ってるんだ!」

垣根が叫ぶ

124 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 21:58:56.09 4CqPLF9n0 80/720

垣根「いいか!!俺は朝早く起きてここに来た!」

心理「あ、来たみたいね」

垣根「てめぇ!!」

美琴「ご、ごめん・・・道が混んでた・・・」

心理「弾けそう?」

美琴「う、うん・・・」

垣根(ちっ・・・)

125 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/28 22:00:21.35 4CqPLF9n0 81/720

垣根「仕方ないな、練習するか」

美琴「よろしくね」

三人がそれぞれ準備を始める

そして、とうとう練習が始まった


始まった一端覧祭

美琴は、上条のために愛を奏でる

163 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:40:01.23 Bp6qv6Pl0 82/720

上条「はぁ・・・ヒマだな」

上条は一人寂しく歩いていた

常盤台に行って美琴の練習を見よう、と思っていたのだが

なんだか学び舎の園の入り口で入場拒否されてしまったのだ

どうも、中に入るには招待状、もしくは学び舎の園で勉学に励む本人と一緒でなければならないらしい

上条「・・・不幸だ」


164 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:40:31.11 Bp6qv6Pl0 83/720

そのため、仕方なく自分の学校に来ていた

青ピ「さっきからそればっかやなぁ」

土御門「にゃー、カミやんは可愛い彼女に会いたくて会いたくてたまらないんだにゃー」

■■「こんな時まで。君は色ぼけ」

上条「違うんだよ・・・はぁ」

上条がまたため息をつく

先程から何度ため息をついたことか


165 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:40:57.86 Bp6qv6Pl0 84/720

吹寄「貴様・・・展示を見ようとは思わないの?」

上条「はぁ?お前だって見に行ってないからここにいるんだろ?」

吹寄「私は貴様達の見張りよ」

上条「あーあ、今頃美琴は垣根と一緒に・・・」

吹寄「・・・なんでそこで垣根が出てくるのよ」

吹寄が眉をひそめる


167 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:41:31.54 Bp6qv6Pl0 85/720

青ピ「お、なんやなんや?吹寄はヤキモチ妬いてるんかいな」

吹寄「違うわよ、垣根がいると風紀が乱れるから心配してるだけよ!」

土御門「そのわりには不機嫌そうだにゃー」

■■「吹寄。本当のことを言うべき」

吹寄「本当なんだってば・・・というより、なんで御坂さんは垣根といるの?」

上条「美琴はなんでもバイオリン弾くらしくてさ」


168 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:42:03.22 Bp6qv6Pl0 86/720

土御門「はー・・・さっすが常盤台のお嬢様だにゃー」

上条「でもさ・・・なんか心理さんがピアノで垣根がボーカルをやるらしくて」

青ピ「・・・垣根がボーカル・・・」

吹寄「ごめん・・・頭が痛くなってきたわ」

上条「俺もだよ・・・」

一同が頭を抱える


169 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:42:32.48 Bp6qv6Pl0 87/720

一端覧祭が荒れるかもしれないのだ

上条「・・・とりあえず、俺達は今の平和を楽しむべきかもな」

吹寄「・・・垣根に壊される前に展示見ましょう」

土御門「そうしとくかにゃー」

少し疲れたような顔の五人

はぁ、とため息をついてから五人は展示を見に向かった



170 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:43:25.55 Bp6qv6Pl0 88/720




テクパトル「・・・はぁ」

テクパトルは安堵のため息をついていた

どうにかアレイスターが証明書を発行してくれたのだ

統括理事長直々の証明書

これさえあれば身体検査なんてされなくて済む

つまり、妹達の正体がバレずに済むのだ

だが、妹達はそれにはしゃぎすぎていた


171 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:44:11.65 Bp6qv6Pl0 89/720

御坂妹「よし、これで時代はミサカ達のものです!」

20000「イケメンはいねぇかぁ!」

17600「トチトリも来られてよかったな」

トチトリ「あぁ、安心したよ」

テクパトル「・・・はぁ」

もう一度テクパトルがため息をつく


172 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:44:48.48 Bp6qv6Pl0 90/720

今度は呆れているためだ

19090「テっくん・・・大丈夫ですか?」

テクパトル「・・・みんな、あんまりはしゃぐなよ」

10039「おぉ!見て下さい、ゲコ太を花で描いています!」

ミサカ一同「すげぇ!」

17600「・・・苦労かけるな、テっくん」


173 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:45:31.62 Bp6qv6Pl0 91/720

テクパトル「・・・気にするな」

テクパトルが無理矢理笑顔を作る

14510「うわぁ!ゲコ太が今度は風船で表されています!」

ミサカ一同「ほしい!」

テクパトル「・・・はぁ」

テクパトルが空を仰ぐ


174 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:46:21.71 Bp6qv6Pl0 92/720

とても綺麗な青空だ

一端覧祭の成功を祈っているかのような晴天

周りの学生は喜んでいる

しかし、テクパトルだけはそうではなかった

ミサカたちは相変わらず騒いでいる


テクパトル「・・・不幸だ」

ぽつり、とテクパトルがつぶやいた



175 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:47:21.88 Bp6qv6Pl0 93/720

美琴「よし・・・こんなもんかしらね」

三人だけの体育館で美琴は汗を拭っていた

バイオリンの練習をする、と言ったらほかの生徒が気を利かせてくれたのだ

心理「でも、本当にバイオリン上手ね」

美琴「そうかな?」

垣根「見掛けによらずな」


176 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:47:52.28 Bp6qv6Pl0 94/720

美琴「バカにしてんの・・・?」

バチッ、と美琴の前髪から火花が散る

しかしそんなのを気にも留めず、また垣根がマイクをいじる

垣根「ちょっと高音を拾いすぎじゃないか?」

心理「この曲はボーカルが高いからね・・・マイク変えないと少し聞きにくいかも」

垣根「だよな・・・まぁ接続は詳しいヤツにやってもらえばいいか」

三人が各々、適当に練習をする


177 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:48:27.13 Bp6qv6Pl0 95/720

美琴「ここは私が少し低めにしたほうがいいかな?」

心理「あら、主役は美琴なんだからバンバン出しちゃっていいわよ」

垣根「俺のもバンバン出させてくれ」

心理「下ネタはやめなさい・・・私はこのままの音量でいいかしら?」

垣根「あれかな、御坂のソロを作ったほうがいいかもな」

美琴「そ、そういうのはわざわざしなくてもいいわよ」


178 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:49:07.61 Bp6qv6Pl0 96/720


垣根「・・・お前も歌うとか」

美琴「な、なんでそうなる・・・」

垣根「この曲、お前の上条に対する気持ちにそっくりだろ?」

垣根が楽譜をヒラヒラと揺らす

英語の歌詞が書かれている

普通の学生には簡単には読めないだろう


179 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:49:56.15 Bp6qv6Pl0 97/720

だがここにいる三人は全員高位能力者なのだ

成績優秀なため、スラスラと読んでいける

心理「たしかに、美琴にお似合いな歌詞だと思うわよ?」

美琴「で、でも・・・歌うのは・・・」

垣根「俺の声で伝えても意味はないんだよ、お前自身の声で伝えてみろよ」

美琴「・・・さ、最後のサビだけよ?」


180 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:50:48.31 Bp6qv6Pl0 98/720

垣根「よし、じゃあ練習するか」

心理「がんばってね」

美琴「う、うん!」

美琴がマイクの前に立つ

バイオリンだけではなく歌うだなんて

今回の一端覧祭はいつもよりも忙しくなりそうだ

美琴はそう考えていた



181 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:51:29.37 Bp6qv6Pl0 99/720

一方「あンま急ぎすぎンじゃねェよ」

一方通行は学び舎の園に向かって歩いていた

前には打ち止めと番外個体がいる

打ち止め「早く早く!ってミサカはミサカは急かしてみたり!」

一方「こっちは杖ついてる身なンですゥ」

番外「情けないなぁ!」

ケラケラ、と番外個体が笑う

182 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:53:35.28 Bp6qv6Pl0 100/720

打ち止め「もう、早くしないと始まっちゃうよ!?ってミサカはミサカは・・・」

一方「あァ?もう一端覧祭は始まってンだろォが」

番外「違う違う、これだよ」

番外個体がパンフレットを渡す

一方「・・・ゲコ太の劇だァ?」

打ち止め「楽しそうでしょ!?ってミサカはミサカははしゃいでみたり!!」

一方「・・・なンでこンなのやってンだよ・・・」

183 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:55:25.14 Bp6qv6Pl0 101/720

番外「これは・・・中学校がやってるんでね」

一方「・・・小学生を呼び寄せようってか」

打ち止め「ねぇ、いいでしょ?ってミサカはミサカはお願いしてみたり!」

一方「ふざけンな、こっから遠いだろォが」

番外「・・・小学生の中にはロリがいっぱいいるんだろうなぁ」

一方「」ピクッ


一方「なンだと?」

184 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:57:02.69 Bp6qv6Pl0 102/720

打ち止め「そうだね・・・きっと、みんな劇に夢中なんだろうなぁ・・・ってミサカはミサカはぽつりとつぶやいてみたり・・・」

番外「しかも、劇に気を取られてポロリとか・・・」

一方「ロリのポロリ・・・」

一方通行が宙を見上げる

いい

めちゃくちゃいい

一方通行の目が輝く

185 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 18:59:03.88 Bp6qv6Pl0 103/720

一方「・・・行くかァ」

一方通行がくるりと向きを変える

番外「お、いいの?」

一方「・・・オリジナルの演奏は明日なンだろ?」

打ち止め「うん、そうだよ!ってミサカはミサカはうなずいてみたり!」

一方「・・・ならいいンじゃねェか」

番外(よし、計算どおり)

187 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 19:01:02.66 Bp6qv6Pl0 104/720

一方「・・・ところで、垣根はどこだよ」

番外「あれ、用事?」

一方「いや・・・あいつにちょっと話したいことがあってな」

打ち止め「?」

一方「・・・お前らには関係ないから気にすンな」

一方通行が溜め息をつく

なぜか、めんどくさそうに

188 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 19:03:10.15 Bp6qv6Pl0 105/720

打ち止め「もしかして、大事な話?ってミサカはミサカは訊ねてみたり」

一方「いや・・・あいつにCD借りたンだよ」

一方通行が持っていたバッグからCDを取り出す

パンクロックのようだ

番外「へぇ・・・垣根はCDめちゃくちゃ持ってるもんね」

一方「で、ついでに聞きたいことがあってよ」

打ち止め「聞きたいこと?ってミサカはミサカは確認してみたり」

189 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 19:05:00.24 Bp6qv6Pl0 106/720

一方「・・・このCDにな、なンでか1000円札が挟まってたンだよ」

番外「うん」

一方「それ、使っちまったンだよ」

打ち止め「え、勝手に?ってミサカはミサカは訊ねてみたり」

一方「・・・の、喉が渇いてたところにちょォど自販機があってよ・・・」

番外「そして、たまたまそのCDも持ってたと」

一方「あァ」

192 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:41:05.68 Bp6qv6Pl0 107/720

番外「・・・それを謝りたいのか」

一方「・・・まァ、借りを作るのはイヤだからなぁ」

打ち止め「素直じゃないね、ってミサカはミサカは呆れてみたり」

一方「・・・うるせェな」

番外「で、垣根はどこにいるのか気になる、と」

一方「あァ、携帯は留守だしなァ」

194 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:44:19.16 Bp6qv6Pl0 108/720

番外「・・・どっかで暴れてるんじゃない?」

一方「どっかって・・・」

打ち止め「・・・なんか、イヤな予感がするね、ってミサカはミサカは冷や汗をかいてみたり」

一方「・・・」

一方通行がそんな状況を想像する

一方(・・・早く見つけねェとな)


三人はゲコ太の劇を見に行くついでに垣根も探すことにした

196 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:47:14.44 Bp6qv6Pl0 109/720


エツァリ「やっと着きましたね」

ショチトル「あぁ」

地味な二人は上条の高校に到着したところだった

エツァリ「・・・なんだか、異様な雰囲気ですね・・・」

ショチトル「なに、なんだかんだ文化祭なのだぞ?内輪受けで盛り上がるものだろう」

エツァリ「そうでしょうかね・・・」

エツァリが周りを見渡す

199 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:50:17.56 Bp6qv6Pl0 110/720

ショチトル「そんなものだろう、文化祭なんて」

エツァリ「・・・にしても、かなりの盛り上がりですね」

周りでは学生がよく分からない衣装を抱えて走っている

劇でもやるのだろうか

エツァリ「・・・とりあえず、上条さんのところに行きましょうか」

ショチトル「おう、そうだな」


上条との待ち合わせ場所についた二人は、もう一度周りを見回す

200 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:52:56.70 Bp6qv6Pl0 111/720

エツァリ「・・・飾りつけなども細かいですね・・・」

ショチトル「校舎の壁にはどうやって弾幕をつけるんだろうな・・・」

エツァリ「・・・あれは、ヒモで吊るしてるのでは?」

ショチトル「なんだ、壁に糊で貼り付けてるんじゃないのか」

つまらなそうにショチトルがつぶやく

常識的に考えれば分かることなのだが

エツァリ「・・・おや、上条さんですね」

201 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:55:05.01 Bp6qv6Pl0 112/720

上条「おーっす・・・お待たせさん」

エツァリ「おや、御坂さんは一緒ではないのですか?」

ショチトル「・・・そんなに美琴に会いたいのか?」

エツァリ「いえいえ、いつもは上条さんといらっしゃるはずですから」

上条「美琴はバイオリンの練習だってさ」

ショチトル「へぇ、そういえばそうだったな」

上条「・・・垣根たちも一緒にやるらしいけどな」

202 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:57:06.10 Bp6qv6Pl0 113/720

エツァリ「・・・か、垣根さん・・・ですか」

エツァリが冷や汗をかく

上条「・・・あ、とりあえず俺たちの学校の劇でも見ていってくれよ」

ショチトル「お、劇か・・・なにやるんだ?」

上条「さぁ」

エツァリ「知らないんですか?」

上条「いや・・・まぁ」

203 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 20:59:57.22 Bp6qv6Pl0 114/720

上条が気まずそうに視線をそらす

上条は一端覧祭に関してはやる気が無かったのだ

当然、クラスでされた説明も聞いていない

そういえば小萌先生が何か劇について言っていたような気はするが

上条「とにかく・・・俺がお客さんを連れて来たなんてなったら、吹寄も見直してくれるんだよ!」

エツァリ「・・・真面目に参加してくれている、と?」

ショチトル「そんなに甘いかな」

204 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:01:52.18 Bp6qv6Pl0 115/720

上条「まぁまぁ、いいから!!」

上条が二人の手を引っ張っていく


上条「みんな、お客さん連れて来たぞ!!」

土御門「ん?エツァリかにゃー」

エツァリ「おや、お久しぶりですね」

■■「上条君が。お客さんを連れてきてくれた」

吹寄「明日は地球が滅びるわね」

上条「」

205 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:04:12.15 Bp6qv6Pl0 116/720

青ピ「で、このお二人さんは劇が目的なん?」

ショチトル「ん、そうだぞ」

■■「所詮。展示なんて地味なもの」

吹寄「せっかくだから私達の作ったパッチワークを見て行って!」

エツァリ「おや、パッチワークですか」

エツァリが壁に飾られているたくさんの作品を見つめる

エツァリ「・・・あの、上条さん」

207 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:11:56.10 Bp6qv6Pl0 117/720

上条「ん、なんだ?」

エツァリ「あの・・・これは何ですか?」

エツァリが上条の作品を指差す

題名は「終わりの始まり」

まったく、意味が分からない作品だ

上条「いや、いいだろ?」

エツァリ「真っ黒ですね」

208 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:13:50.06 Bp6qv6Pl0 118/720

上条「でも、黒ってよくないか?」

土御門「いわゆる手抜きだにゃー」

エツァリ「そういう土御門さんのも」

エツァリが土御門の作品を指差す

「メイド」という作品だ

エツァリ「あの、どこがメイドなんですか?真っ白ですけど」

209 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:15:30.64 Bp6qv6Pl0 119/720

土御門「メイドってのは、純白なんだにゃー」

■■「意味が分からない」

エツァリ「・・・■■さんのは・・・」

■■の作品は、なぜか端っこにあった

題名は「影」

なぜか、少し悲しげな雰囲気の作品だ

エツァリ「・・・なんだか、悲しげですね・・・」

211 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:17:23.63 Bp6qv6Pl0 120/720

吹寄「でもなんだか惹かれるわよね」

土御門「俺のも褒めてほしいぜよ」

上条「俺とお前は急ぎだったからな・・・」

ショチトル「お、吹寄のは丁寧だな」

吹寄の作品は「牧場」というタイトルだった

牛やら羊やらが刺繍されている

吹寄「無難なデザインだけど、そう言ってもらえてよかったわ・・・」

212 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:20:48.65 Bp6qv6Pl0 121/720

上条「ふーん・・・たしかに時間かけた感じだな」

吹寄「貴様たちと違って真面目にやったからよ」

土御門「はぁ、青ピはどうなんだにゃー?」

上条「いやいや、こいつも俺たちと同じ時間だったんだぜ?」

■■「サボり魔だったものね」

ショチトル「で、お前のはどれだ?」

213 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:23:44.48 Bp6qv6Pl0 122/720

青ピ「ん、ボクのはあれやでぇ」

青ピが教室の真ん中あたりを指差す

その辺りには、とても綺麗な作品が飾られている

エツァリ「・・・?どれですか?あの綺麗な作品の近くですか?」

青ピ「綺麗なのってどれなん?」

ショチトル「あの、なんか絵みたいなヤツ」

ショチトルが一つの作品を指差す

214 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:31:08.54 Bp6qv6Pl0 123/720

青ピ「あぁ、あれボクのやで?」

一同「」


上条「い、いや!!違うだろ!」

青ピ「ホンマやで?」

■■「・・・嘘・・・」

吹寄「・・・なんでこんなに上手いのよ・・・」

215 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:36:38.02 Bp6qv6Pl0 124/720

青ピ「ボク、指先器用なんやで?」

青ピが自分の作品を手に取る

題名は「パン屋の少年」

彼らしい題名だった

上条「・・・すげぇ、これマジで刺繍か?」

エツァリ「・・・細かいところまで・・・これは売れるレベルですよ?」

青ピ「そんなことないと思うけどなぁ」

216 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:38:43.33 Bp6qv6Pl0 125/720

吹寄「・・・貴様、これホントに一日で作ったの?」

青ピ「そうやけど、なんでなん?」

■■「・・・」

二人が自分達の作品を眺める

明らかに、青ピのほうが上手かった

時間をかけた二人のものより

■■「これが。世の中」

217 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:40:31.68 Bp6qv6Pl0 126/720

吹寄「・・・うらやましいわよ」

吹寄が溜め息をつく

学校の展示の中で、最もいい作品を作った生徒は表彰されるらしい

どうも、青ピにはその可能性がありそうだ

上条「すげぇな・・・手先器用なんだな」

青ピ「パン屋のバイトで鍛えられたんやで?」

土御門「・・・にしてもすごいにゃー・・・」

219 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:42:00.01 Bp6qv6Pl0 127/720

上条「はぁ・・・あ、劇がそろそろ始まる時間だぞ」

吹寄「あ、そうそう・・・二人も見ていくのよね?」

エツァリ「えぇ、もちろん」

ショチトル「じゃ、案内よろしく」

吹寄「じゃあ着いてきて」

吹寄が二人を体育館へ導く

もう、その中は暗くなっていた

220 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:44:48.86 Bp6qv6Pl0 128/720

削板「おー!!横断幕が綺麗だな!」

削板が大きな声を上げていた

そこは常盤台中学

黒子の紹介で入ることができたのだ

黒子「わたくしたちのクラスが作りましたの」

削板「へぇ・・・そりゃすげぇな」

初春「うわぁ!やっぱりお嬢様学校は違いますね!」

221 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:47:33.79 Bp6qv6Pl0 129/720

削板「しっかし・・・広い敷地だな・・・」

削板が辺りを見回す

学び舎の園

その中に、常盤台中学は聳え立っている

そこらへんの学校なんかでは比べ物にはならない広さ

充実している設備

そして、周りを歩く麗しのお嬢様たち

222 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:50:26.84 Bp6qv6Pl0 130/720

初春「・・・前に来たときも綺麗でしたけど・・・今はもっと綺麗です・・・」

初春がうっとりとした目で周りを見つめる

黒子「あら、今年はお姉様が垣根さんと心理定規と一緒に演奏をしますの、それが盛り上がるんですわよ?」

削板「へぇ、そりゃ楽しみだな!」

ははは!と削板が笑う

初春「でも、何を弾くんでしょうか?」

黒子「それは決まってないみたいでしたの」

223 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:54:29.82 Bp6qv6Pl0 131/720

削板「え、決まってない?」

黒子「少なくともおとといまでは迷っているようでしたの」

黒子が溜め息をつく

黒子「なかなかいい曲がなかったようで・・・」

削板「何かこういう曲が弾きたい、とかはなかったのか?」

黒子「ラブソングがいい・・・とかでしたの」

初春「ラブソングですか?」

224 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:56:27.27 Bp6qv6Pl0 132/720

黒子「えぇ・・・ですがなぜかは分かりませんの」

黒子が苦笑する

もちろん、上条に聞かせるためなのだろうが

それが確か、というわけではない

削板「ふーん・・・でも仮に決まってても、残り2日じゃ練習できなくないか?」

黒子「あら、お姉さまはそんなものではありませんわ」

初春「え、2日でできるようになるんですか?」

225 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:58:19.07 Bp6qv6Pl0 133/720

黒子「えぇ、お姉さまなら出来ますの」

黒子が体育館のほうを見つめる

今は、その中で美琴が練習しているらしい

つまり、弾きたい曲が見つかったのだろう

黒子「・・・楽しみですの」

削板「そうだな」


体育館からは、少しだけバイオリンの音が漏れていた

226 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 21:59:51.30 Bp6qv6Pl0 134/720

美琴「・・・こんな感じかな?」

垣根「お前が歌うときは心理定規のピアノだけになるか・・・ま、仕方ないよな」

心理「それよりいいの?学校側には美琴一人の演奏だって言ってるんでしょ?」

美琴「うーん・・・でも、私の弾きたいようにやれって言われてるから」

垣根「それ、お前一人でやれってことだろ?」

美琴「まぁいいでしょ、大丈夫よ」

心理「ホントに?」

227 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:01:01.86 Bp6qv6Pl0 135/720

美琴「うん、そこまで厳しくはないわよ」

美琴がバイオリンを軽く奏でる

彼女が弾くだけで、絵になってしまう

心理「・・・この曲でよかったの?」

美琴「うん、当麻は英語はわかんないけど・・・いいわよ、恥ずかしいもん」

垣根「はっ、素直じゃねぇな」

美琴「なによ」

228 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:03:07.75 Bp6qv6Pl0 136/720

垣根「・・・あれ、そうこうしてるうちにもう正午近いな」

美琴「あら、もうそんな時間?」

心理「これじゃ、今から見て回るのはきついわね」

美琴「あ・・・ごめん」

美琴が申しわけなさそうに謝る

垣根「いいっての、どうせ展示かつまんねぇ劇か体験入学しかねぇんだから」

心理「そうね・・・こっちのほうが楽しいわよ」

229 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:04:11.20 Bp6qv6Pl0 137/720

美琴「・・・ありがと」

美琴が手元のバイオリンに視線を落とす

明日の午後、これをみんなの前で弾くのだ

そして、上条への思いを歌に乗せる

美琴「・・・もうちょっと練習、いいかしら」

垣根「あぁ」

心理「始めましょう」

230 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:05:43.31 Bp6qv6Pl0 138/720


テクパトル「・・・なぁ、せっかく証明書もらったんだし常盤台・・・」

20000「え?お姉様の演奏は明日だよ?」

御坂妹「お姉様のついでに常盤台は見れればいいんですよ」

10039「そういうことですよ、テっくん」

テクパトル「・・・あぁ」

20000「なに?常盤台のかわいこちゃんを見たかったの?」

テクパトル「そうじゃねぇよ・・・」

231 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:06:42.04 Bp6qv6Pl0 139/720

テクパトルが溜め息をつく

別に、常盤台ではなくてもいいのだ

ただ学校を回ってくれたら

なのに


テクパトル「なんでゲコ太の劇を見続けてるんだよ・・・」

テクパトルが問いかける

そう、一同は今ゲコ太の劇を見ているのだ

232 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:08:00.92 Bp6qv6Pl0 140/720

17600「いや、ミサカもそれは聞きたいな」

トチトリ「よく飽きないな」

14510「飽きるわけがありません!!だってゲコ太ですよ!?」

19090「いくらテっくんでもゲコ太をバカにするのは許しません!」

テクパトル「はぁ・・・」

19090「あ、ウ、ウソですよ?」

テクパトル「そういう意味の溜め息じゃないよ・・・」

233 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:09:04.34 Bp6qv6Pl0 141/720

せっかくの一端覧祭

どうせなら、いろいろな学校を回りたいのだ

もちろん、上条の学校も

それに一流校を覗いてみたい気もするのだ

テクパトル「なぁ、俺だけ別行動・・・」

ミサカ一同「ダメです」

テクパトル「・・・だよなぁ」

234 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:13:32.35 Bp6qv6Pl0 142/720

19090「テっくんはゲコ太・・・嫌いですか?」

テクパトル「そうじゃなくてな・・・」

テクパトルは別に嫌いなわけではない

特別好きでもないが

ただ、何度も見たいものではない

さきほどから10回ほど繰り返して見ているのだ

235 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:16:46.43 Bp6qv6Pl0 143/720

テクパトル「・・・はぁ」

トチトリ「・・・そういえば、あれだ・・・ミサカたちの素体が明日バイオリン弾くんだろ?」

テクパトル「あぁ、そうそう」

テクパトルが大事なことを思い出す

テクパトル「でも・・・何弾くんだろうなぁ」

19090「・・・ですから、猫ふんじゃった・・・」

テクパトル「それはないからな」

236 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:18:56.63 Bp6qv6Pl0 144/720

トチトリ「・・・ん、もう正午回ったな」

テクパトル「そうだな・・・飯でも食うか」

御坂妹「こ、これが終わるまで!」

13577「そうですよテっくん!!!!!」

テクパトル「分かったよ・・・」

もう一度、テクパトルが溜め息をつく

舞台の上ではなぜかゲコ太が悪の組織と戦っていた

237 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:20:39.05 Bp6qv6Pl0 145/720


番外「・・・ねぇ、ご飯は?」

一方「分かってる」

打ち止め「おなか空いたー、ってミサカはミサカは駄々をこねてみたり!」

こちらの三人はとっくにゲコ太の劇から身を引いていた

さすがに何度も見るのは一方通行が許さなかったためだ

一方「あンなもン何度も見るもンじゃねェだろ」

238 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:22:09.69 Bp6qv6Pl0 146/720

番外「ん・・・まぁ2回も見れば飽きるね」

ケラケラと番外個体が笑う

彼女の姉達は現在進行形でどっぷりと浸かっているのだが

そんなことは知る由もない

一方「レストランでいいだろ」

打ち止め「おー!ってミサカはミサカは賛成のガッツポーズ!」

番外「ま、近いからね」

239 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:24:15.57 Bp6qv6Pl0 147/720

三人が適当にレストランに入る

中はあまり混んではいなかった

それも仕方ないだろう

体験入学が行われているため、大抵の学生は学食に行っているのだ

よほどの物好きか、学食に入れなかった学生だけがレストランには来ている

一方「何食うンだよ」

240 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:25:58.45 Bp6qv6Pl0 148/720

番外「ミサカたちはハンバーグでいいよ」

一方「・・・俺はステーキでいいか」

注文を終え、三人はぼーっとしていた

番外「明日はお姉様の演奏会かー」

打ち止め「楽しみだね、ってミサカはミサカはうなずいてみたり」

一方「バイオリンとか弾けるンだな、オリジナル」

番外「お嬢様だもん」

241 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:27:38.45 Bp6qv6Pl0 149/720

一方「・・・そォだな」

普段付き合っていても、そんな実感は湧かない

しかし彼女は一流のお嬢様なのだ

一方通行も高位能力者ではあるが、お坊ちゃまなんてガラではない

一方「・・・はァ」

一方通行が溜め息をつく

一端覧祭は、一日目の午後の部へと進んでいく

242 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:30:09.90 Bp6qv6Pl0 150/720

上条「・・・ロミオって、なんかカッコイイよな」

ショチトル「・・・ジュリエット、死んだのか?」

エツァリ「えぇ・・・悲しいですね」

青ピ「悲しい話やなぁ・・・」

上条たちは劇を見ていた

「ロミオとジュリエット」

とてもベタな劇だった

243 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:31:54.81 Bp6qv6Pl0 151/720

しかし、ベタだからこそ何度見ても泣けるものだ

吹寄「・・・そうね、悲しいわ」

土御門「そうか?俺はそこまでだにゃー」

■■「人でなし」

土御門「」

上条「感想は人それぞれだぜ?」

土御門「カミやんはいいヤツだにゃー・・・」

244 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:34:48.70 Bp6qv6Pl0 152/720

青ピ「・・・この後は何の劇やったっけ?」

吹寄「えっと・・・次は桃太郎よ」

土御門「桃太郎って・・・」

上条「でも、それもベタでいいんじゃないか?」

■■「ロミジュリのあとは。きついと思う」

エツァリ「ショチトル、寝ようとしないでください」

ショチトル(ちっ)

245 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:37:06.13 Bp6qv6Pl0 153/720

上条「・・・あ、でもこの劇見終える頃にはもう夕方だな・・・」

土御門「そうだにゃー・・・明日はいろいろ回ろうぜぃ?」

上条「・・・俺は明日は外せない用事が」

エツァリ「御坂さんの演奏会ですよね?」

上条「ん、そうそう」

吹寄「あら、私達も行っていい?」

上条「いいに決まってるだろ?」

246 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:38:33.53 Bp6qv6Pl0 154/720

■■「しっ。始まった」

上条「あ、はいはい」

一同が舞台に注目する

上条(・・・美琴、結局何を弾くんだろうな・・・)

上条(・・・俺のため、か)


劇の間、上条はずっとそんなことを考えていた

247 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:40:25.05 Bp6qv6Pl0 155/720


垣根「はぁ・・・終わったな」

美琴「うん、これなら上手くいきそう!」

美琴が満足げにつぶやいていた

あれからずっと練習をしていた

おかげで、三人の息はもうピッタリだ

心理「あら、もう夕方ね」

美琴「え、もうそんな時間!?」

248 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:42:51.07 Bp6qv6Pl0 156/720

垣根「あーあ・・・こりゃ他の学校はそろそろプログラム終わりだな」

心理「そうね・・・私達もいったんお開きにする?」

美琴「うん・・・ごめんね、遅くまで付き合わせて」

垣根「いいから胸揉ませて」

美琴「ダメ、じゃあまた明日!」

心理「次は本番ね」クスクス

美琴「うん!」

249 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:46:19.05 Bp6qv6Pl0 157/720


一端覧祭

その一日目が終わった

もともと、一日目はそこまで盛り上がるものではない

まずは体験入学が主なのだ

何しろやる気のあるうちに済ませないといけない

劇だのなんだのを散々やった後で体験入学などできないからだ

もちろん、上条たちの学校は体験入学する生徒なんてほとんどいないため初日からとばしているが

250 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:47:53.18 Bp6qv6Pl0 158/720


美琴「ただいまー」

バイオリンの練習を終えた美琴は、そのまま上条の寮へ帰ってきていた

上条「お、お帰り!遅かったな」

美琴「うん、長引いちゃってね・・・」

美琴がそっとバイオリンを壁に立てかける

倒れてしまわないかと上条はヒヤヒヤする

251 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:49:03.72 Bp6qv6Pl0 159/720

上条「・・・これからどうするんだ?」

美琴「ん、ちょっとしたら公園でもう一練習」

上条「・・・そうか」

上条が少しつまらなそうにつぶやく

せっかく美琴と二人なのに

美琴「出来る限り早く終わらせるから、待ってて?」

上条「はーい」

252 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:50:36.81 Bp6qv6Pl0 160/720

夕食を簡単に済ませた美琴は、すぐさま公園へと向かった

もちろん、あの公園だ

美琴(・・・よし、誰もいないわね)

周りが無人なのを確認してから美琴がバイオリンを弾きだす

美琴(・・・歌詞も覚えないと)

必死に練習する

ただ、上条のために

253 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:51:59.28 Bp6qv6Pl0 161/720

美琴(・・・ここは・・・こうのほうがいいかな?)

小さく、歌も練習する

こうやっていると、時間が流れるのが早い

歌い方を変えたり、弾き方を変えたり

そんな試行錯誤をするうちに、夜になっていた

美琴(・・・そろそろ帰らないとね)

美琴がバイオリンをしまう

254 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:53:15.86 Bp6qv6Pl0 162/720


美琴「ただいま・・・」

上条「ん、遅かったな」

上条はもうベッドの上にいた

美琴「うん、ちょっと熱中しちゃった」

上条「・・・疲れてる?」

美琴「・・・い、一回くらいなら大丈夫」

そう言いながら美琴がベッドに近づく

255 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/29 22:55:02.76 Bp6qv6Pl0 163/720

上条「・・・じゃ、お願いします」

美琴「うん」

そんな短い会話をしてから、二人は暑い夜を始める


美琴(・・・好きだよ、当麻)

行為の間も、ずっとそう考えていた

明日はそれを歌に乗せるのだ

美琴(・・・がんばろう)

そう考えたあと、美琴は快感の渦に飲まれた

264 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:43:43.01 01wJbqEB0 164/720

上条「ん・・・おはよう、美琴」

美琴「ふぁぁぁー・・・おはよう、当麻」



二人はベッドから体を起こし、目覚めのキスをしていた

上条「そういえば今日は美琴の演奏会ですね」

美琴「あ、忘れてた」


265 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:44:37.53 01wJbqEB0 165/720

美琴がため息をつく

あまり思い出したくはなかったらしい

上条「・・・俺への歌なんだっけ?」

美琴「そ、そういうわけじゃないわよ!ただ・・・ちょっと私の気持ちに似てるってだけ」

上条「まぁ、楽しみにしときますよ」

上条がニコリと微笑む

バイオリンの音色も楽しみなのには間違いないが、それ以上に美琴が何を歌うのかが気になる


266 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:45:06.37 01wJbqEB0 166/720

美琴「・・・今日は練習ないから・・・午前なら一緒に回れるわよ?」

上条「ホントか!?やったぁ!」

嬉しそうに上条が抱き着く

あまりの勢いに、そのままベッドに倒れ込んでしまう

美琴「あいた」

上条「あ、悪い・・・」


267 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:45:38.00 01wJbqEB0 167/720

美琴「・・・な、なんかこの体勢ってドキドキしちゃうわよね」

上条が美琴の上で四つん這いになっていて

まるで無理矢理押し倒したようになっている

実際、事故ではあるものの押し倒したのだが

上条「・・・あの、朝からはキツイですよ?」

美琴「しようなんて言ってないわよバカ!」


268 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:46:06.02 01wJbqEB0 168/720

美琴が上条の下から這い出す

顔が真っ赤になっている

上条「じゃあなんであんなこと言ったんだよ・・・」

美琴「す、素直な感想よ!」

上条「エッチですね、美琴は」

美琴「う、うるさいわね!」


269 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:47:02.57 01wJbqEB0 169/720

ふん、と美琴が顔を逸らす

上条「そんなに怒るなよ」

上条がそんな美琴の頬にキスをする

美琴「ん・・・じゃあ許してあげる」

上条「ありがと・・・で、今日は一緒に回れるんだよな?」

美琴「うん、午後はちょっと準備があるけど・・・午前なら大丈夫よ?」

美琴がパンフレットを見て日程を確認する


270 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:48:00.73 01wJbqEB0 170/720

バイオリンの演奏会は午後の3時からだ

準備は2時間もあれば出来るため、午前いっぱいは上条と一緒にいられるのだ

上条「じゃあ・・・どこ回ろうか」

美琴「あ、そういえば今日は黒子がメイド喫茶やってるはずよ」

上条「へぇ・・・常盤台もそういうことやるのか」

美琴「・・・私も前はメイドの格好させられたわね・・・」


271 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:49:15.59 01wJbqEB0 171/720

美琴が昔を思い出して苦笑する

あの時は黒子に写真を撮られまくった

今年は逆の立場になるのだ

もちろん、美琴は写真を撮ったりはしないが

上条「じゃあ、冷やかしついでに行ってみるか?」

美琴「うん、きっとドギマギするわよ!」


272 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:50:47.30 01wJbqEB0 172/720

クスクス、と二人が顔を見合わせて笑う

上条「さて、朝飯だな」

美琴「うん、一緒に作りましょ」

二人揃ってキッチンに立つ

当たり前の光景が、とても幸せに感じた


上条「・・・はぁ、食べ終わった・・・」


273 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:51:54.79 01wJbqEB0 173/720

ポンポン、と上条がお腹を叩く

朝食を終え、少しだけ休憩を取る

あと20分ほどしたら常盤台に向かう予定だ

美琴「・・・当麻、その・・・」

上条「ん、なんだ?」

美琴「私が・・・その、弾くのって洋楽なのよ」


274 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:52:37.77 01wJbqEB0 174/720

上条「洋楽かぁ・・・」

上条が驚いたようにつぶやく

てっきりクラシックでも弾くのかと思っていたのだ

上条「それで、どうした?」

美琴「一応垣根が歌うんだけど・・・当麻って英語分かる?」

上条「いや、バカだから分かりません」


275 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:53:53.78 01wJbqEB0 175/720

少し拗ねたように上条が答える

英語はもちろん、学校の勉強は全てわからないのだから

美琴「やっぱり・・・はい、これ」

美琴が一枚の紙を上条に渡す

真ん中が折り畳まれている

上条「?なんだこれ?」

美琴「歌詞カード・・・英語と和訳、両方書いてあるから」


276 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:54:35.42 01wJbqEB0 176/720

上条「お、サンキュー」

礼を言ってから上条が開こうとする

しかし、その手を美琴が掴んだ

美琴「ダメよ!今はダメ!」

上条「えぇ・・・だって気になるじゃないですか」

美琴「あ、あとのお楽しみ!だから私が演奏する時まで見ないでほしいのよ・・・」

上条「うぅ・・・俺の右手が・・・開け開けと・・・」


277 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:55:07.56 01wJbqEB0 177/720

美琴「お願い!」

両手をパン!と合わせて美琴がお願いする

かなり真剣に頼んでいるようだ

上条「・・・じゃあ、我慢するよ・・・」

美琴「ありがと!」

上条「・・・でもわざわざ作ってくれたのか?」


278 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:55:50.06 01wJbqEB0 178/720

美琴「うん・・・だって、私の気持ちが伝わらないとそもそも歌う意味もないじゃない」

上条「ん、それもそっか・・・って美琴が歌うのか?」

美琴「ち、違う!垣根が歌うってことよ!」

上条「あぁ・・・でも垣根は大丈夫なのかな?」

上条が心配そうに尋ねる

あの垣根のことだ、ふざけたりしてもおかしくはない


279 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:56:30.83 01wJbqEB0 179/720

美琴「練習のときは一回もふざけなかったわよ?かなり上手かったし」

上条「ふーん・・・あいつ、意外と真面目なときもあるんだな」

美琴「うん、ちょっと意外だった」

上条「・・・それじゃ、楽しみにしときますか」

上条が微笑む

早く演奏会になってほしいな、と思いながら



280 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:57:04.07 01wJbqEB0 180/720

上条「さて、そろそろ行きましょうか」

美琴「ん、そうね」

二人が立ち上がる

今から常盤台に向かえば、ちょうど開校と同時に到着出来るだろう

上条「さてさて・・・白井のメイド喫茶とはいかほどかな」

美琴「それは着いてのお楽しみね」

そんな会話をしながら、二人は上条の寮を出る


281 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:57:58.22 01wJbqEB0 181/720

土御門「お、カミやんもちょうど同じタイミングだったかにゃー」

ドアを開けてすぐに、土御門に遭遇した

上条「おっす・・・って舞夏もいるのか」

土御門「人の妹を名前で呼ぶんじゃねぇよ!」

舞夏「兄貴ー、私は別に構わないわけだがー?」

土御門「俺が構うんだにゃー!」


282 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:58:45.29 01wJbqEB0 182/720

美琴「あれ、土御門何してんの?」

舞夏「おー、御坂ー」

土御門「ん?なんだ舞夏、カミやんの彼女と知り合いかにゃー?」

舞夏「うん、いっつも二人で漫画対談をしているぞ?」

美琴「いっつもって・・・たまにじゃない」

美琴がため息をつく


283 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 10:59:46.66 01wJbqEB0 183/720

まさかここで友人に会うとは思わなかったからだ

いや、ちょっと待て

美琴は一瞬あと、そう考える

たしか土御門と舞夏は義理の兄弟だ

それがなぜ同じ部屋に泊まっているのか

いや、兄弟なら当たり前と思っても間違いはないだろうが

ただ、舞夏は義理の兄弟がドロドロになる漫画が好きだったりする


284 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:00:32.26 01wJbqEB0 184/720

つまり、実生活もそんなだったりするかもしれない

美琴「ねぇ土御門・・・アンタはなんでお兄さんのとこに泊まってたの?」

舞夏「それがなー・・・なんか空調が私の部屋だけ壊れてしまったんだよ」

全く困るよな、と舞夏がため息をつく

そういうとこは彼女もちょっと不幸だったりする

上条「なんだ、だから土御門のとこに?」


285 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:01:21.22 01wJbqEB0 185/720

土御門「そうだぜぃ、なんもやましいことなんか・・・」

美琴「でも、昨日はなんか喘ぎ声が聞こえてたけどなぁ」

美琴がぽつりとつぶやく

もちろんハッタリだ

第一、美琴も昨日は上条とそういうことをしていた

土御門「な、何ウソ言ってるんだにゃー!?」


286 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:02:17.52 01wJbqEB0 186/720

舞夏「御坂ー、むしろ喘ぎ声が聞こえてたのはそっちだぞー?」

上条「は、はぁ!?」

舞夏「いやー、兄貴が風呂に入ってるときにな、二人の部屋からギシギシという音と一緒に・・・」

土御門「カミやんてめぇ!やっぱりとっくの昔に卒業してたか!」

上条「いまさらかよ!」

美琴「ウ、ウソよね!?」


287 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:03:11.67 01wJbqEB0 187/720

舞夏「残念ながら証拠もあるわけでー」

舞夏が携帯のボイスレコーダーを再生する

なんだか、かなり生々しい美琴の喘ぎ声が録音されていた

美琴「!今すぐ消しなさいよ!」

舞夏「いやいや、こんな重要な証拠、消すわけにはいかないぞ?」

ニヤニヤと舞夏が笑う


288 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:03:57.22 01wJbqEB0 188/720

上条「な、なぁ舞夏!消してくれよ!」

舞夏「何度も言うが、こんな面白いものは消すわけにはいかないぞ?」

美琴「じゃあ無理矢理消すわよ?」

美琴が前髪からバチリと火花を散らす

電撃使いの彼女からしたら、それくらいの操作は簡単なのだ

舞夏「兄貴、助けてー!」


289 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:04:42.70 01wJbqEB0 189/720

白々しい演技をしながら舞夏が土御門の後ろに隠れる

土御門「カミやん、彼女を説得しろ、あと舞夏を呼び捨てにするな」

上条「いやいや!そんなもん録音してるほうが悪いだろ!」

上条が土御門に詰め寄る

土御門「ちっ・・・舞夏、消さないと超電磁砲が飛んでくるぜよ」

舞夏「まぁいいや、これで兄貴も証人だからなー」


290 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:05:36.68 01wJbqEB0 190/720

惜し気もなく舞夏が録音データを消す

どうにか上条達の秘密は守られた

上条「はぁ・・・で、二人は今からどこに行くんだよ?」

土御門「目的地は特に決まってない、ただブラブラしようと思ってるにゃー」

美琴「ふーん・・・」

舞夏「御坂達はどうするんだ?」


291 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:06:13.76 01wJbqEB0 191/720

美琴「常盤台に行くわ、黒子がメイド喫茶やってるから・・・」


舞夏「・・・メイド喫茶だぁ?」

舞夏が突然顔を強張らせる

それには理由があった

彼女は真のメイドを目指して日夜修業に励んでいる

そんな彼女からしたら、サブカルチャーとしてのメイドは、もはやメイドではなかった


292 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:07:08.67 01wJbqEB0 192/720

「お帰りなさいませ、ご主人様!」

とか

「いってらっしゃいませ、ご主人様!」

なんて言いつつ萌えを狙うことにメイドを利用するなんて

しかも、しかもだ

それでも普通のメイドのように料理をしたり掃除をしたりするならまだ許せる


293 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:08:08.17 01wJbqEB0 193/720

だがどうだろう

実際はよく意味のわからないニャンニャンじゃんけんなんかをしたり

はたまたご主人様にあーんをしたり

そんなもの、彼女はメイドだとは認めない

舞夏「ちょっと御坂、白井がメイド喫茶をしてるのか?」

美琴「うん、そうだけど?」


294 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:09:04.97 01wJbqEB0 194/720

土御門「それは是非ともお邪魔してみたいにゃー!」

上条「あ、じゃあ二人も一緒に行く・・・」

舞夏「ふざけるな!私が真のメイドさんというものを叩き込んでやろう!」

舞夏が腕まくりをする

目がマジになっている

美琴「あ、でもイベントの一貫としてやってるだけだからそこまで本気にならなくても・・・」


295 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:09:44.31 01wJbqEB0 195/720

舞夏「御坂は何も分かっていない!そんな催しに行った人間がメイドを勘違いするんだぞ!?」

土御門「メイドってそういうもんなんじゃないのかにゃー?」

舞夏「よし、兄貴のその認識を改めさせてやる!」

舞夏が三人をギロリと見つめる

逆らうなよ、と目が語っている

舞夏「行くぞ、メイド喫茶とかいうものへ!」


296 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:10:33.98 01wJbqEB0 196/720

美琴(な、なんか・・・)


上条(大変なことになってないか?)


舞夏「な、なんだこれは・・・」

常盤台に着いて早々、舞夏は息を飲んでいた

周りにはメイド、メイド、メイド

メイドばかりだった


297 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:11:13.66 01wJbqEB0 197/720

土御門「こ、これは天国かにゃー!?」

上条「すっげぇ・・・メイド喫茶っててっきり校舎の中でやるのかとばかり」

美琴「今、中は体験入学二日目なのよ」

上条「?まだ体験入学やってるのか」

美琴「うちはやって来る生徒が多すぎて一日じゃさばききれないのよ」

上条「・・・うちの学校とは全く逆だなぁ・・・な、土御門」


298 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:12:04.82 01wJbqEB0 198/720

上条が土御門に話題を振る

しかし返答はなかった

上条「土御門?」

土御門「これは・・・中には胸のでかい子、小さな子・・・いろいろな種族が混じってるにゃー・・・」

舞夏「・・・ダメだ上条、もう兄貴は自分の世界に入ってる」

両手を広げ、呆れたように舞夏が言う


299 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:12:39.21 01wJbqEB0 199/720

たしかに、土御門はもはやメイド以外は目に入っていないという感じだ

上条「お前・・・不審者扱いされるなよな?」

土御門「俺はメイドには手を出さないんだぜぃ!」

美琴「見てるだけでいいってわけね・・・」

舞夏「こんなのメイドじゃない!第一、メイドには談笑してる時間なんてないはずなんだ!」

舞夏が頭を抱えながら叫ぶ


300 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:13:33.18 01wJbqEB0 200/720

周りの生徒達が苦笑しながら舞夏を見つめる

舞夏はわりと有名な存在だ

彼女がメイドの正しいイメージを植え付けようと活動してるのも有名である

上条「まぁまぁ、あれはメイドという名前の優しさってことで」

舞夏「意味がわからないぞ上条当麻!」

美琴「にしても、黒子はどこなのかしら」


301 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:14:28.71 01wJbqEB0 201/720

美琴が辺りを見回す

だが、どこにも彼女の姿はない

代わりに、どこかで見た後ろ姿を発見した

ツンツンとした髪

その上に巻かれたハチマキ

このやや肌寒い中にも関わらず、半袖

そして何より、胸には大きく太陽が描かれたTシャツ


302 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:15:18.04 01wJbqEB0 202/720

上条「なんだ、あれって削板だよな?」

美琴「うん、きっと黒子を見に来たんじゃないかしら?」

上条「おーい、削板!」

上条が削板に手を振る

削板「お!上条達じゃないか!」

美琴「アンタも黒子を探してるの?」

削板「あぁ、招待状があったから入れはしたけどさ」

303 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:16:03.42 01wJbqEB0 203/720

上条「もしかして風紀委員の仕事でも入ったのかな?」

削板「いや・・・多分違うと思うけどな」

美琴「一端覧祭中はあんまり事件なんて起きないからね」

土御門「にゃー、今騒ぎを起こしても何にもならないからにゃー」

上条「ふーん・・・そうなんだ」

美琴「そうなんだって・・・説明あったでしょ」


304 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:16:53.87 01wJbqEB0 204/720

上条「いや・・・聞いてなかったんですよ」

上条がため息をつく

たしか小萌先生がトラブルを起こしたらスケスケミルミルだ、とか言ってた気がする

舞夏「じゃあ白井はどこなんだー?」

削板「多分、今は学校の中じゃないか?」

削板が常盤台の校舎を指差す


305 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:17:40.01 01wJbqEB0 205/720

上条「あぁ・・・準備中ってわけか」

美琴「メイド喫茶とか大変そうだもんね」

舞夏「ふふん、本物のメイドさんはそんなもんじゃないぞ!」

上条「はいはい・・・で、削板はどうするんだ?」

削板「ん、ほかに行くとこもないから待っとくよ」

美琴「私も待っとこうかなぁ・・・見るものないもん」


306 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:18:13.93 01wJbqEB0 206/720


土御門「俺はずーっとここにいてもいいけどにゃー」

舞夏「・・・まぁ、私も真のメイドさんを教えるためにいてやってもいいわけだがー」

上条「・・・じゃあ、もう少し待ってみますか」

上条達が削板の席の近くに座る

メイド喫茶と言っても、ただの学生が机と椅子を並べて「はい、メニューね」と言うだけのものとは違う

豪華なテーブルやティーセット、さらには一つ一つのテーブルに専属のメイドさん


307 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:18:49.25 01wJbqEB0 207/720

よくもまぁここまで本格的にやるな、と上条は感心する

しかし、上条はあんまりこういう状況には慣れていない

女の子がメイドの格好をして周りをうろちょろしてるのはどうも落ち着かなかった

「ご注文ありましたら何なりとお申しつけ下さい」

美琴「あ、じゃあ私アイスティー」

舞夏「私もー」


308 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:19:51.31 01wJbqEB0 208/720

削板「俺はミルクティーかな」

土御門「俺はこの手作りメイドチョコがいいにゃー」

上条「待て待て!土御門、お前はなんか場慣れしすぎてやいませんか!?」

土御門「にゃー、この程度でうろたえるなんてまだまだカミやんも子供だにゃー」

上条「子供でいいよ!お前はもう汚れた大人なんだなちくしょう!」

こんなヤツと友達だなんて!と上条が頭を抱える


309 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:20:37.44 01wJbqEB0 209/720

美琴「当麻、何か頼まないと申し訳ないわよ?」

上条「ん?あぁ・・・じゃあアイスコーヒー」

「畏まりました」

なぜかメイドさんが少し顔を赤くしながら去っていく

舞夏「やっぱり御坂は常盤台のアイドルなんだなー」

上条「あぁ、今の子が真っ赤だったのはそういう理由か」


310 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:21:32.26 01wJbqEB0 210/720

美琴「はぁ・・・別にアイドルになんかなれなくてもいいんだけどね」

美琴がため息をつく

彼女はそういう崇められるようなことが苦手だった

削板「でも慕われてるっていうのはいいもんだぞ!」

土御門「にゃー、カミやんの彼女にはもったいないにゃー」

美琴「なによ!当麻にだっていいところはあるもん!」


311 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:22:32.09 01wJbqEB0 211/720

舞夏「おー、御坂もなかなか大胆だなー」

舞夏が苦笑する

そんな大声を出したら、周りの生徒にまで丸聞こえだ

美琴「そんなこと関係ないわよ」

上条「美琴・・・なんて優しいんだ・・・」

土御門「あーあー、惚気ならよそでやってほしいにゃー」


312 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:23:27.65 01wJbqEB0 212/720


土御門が呆れたようにため息をつく

その時、後ろから声が聞こえた

黒子「まったく・・・見せ付けてくれますの」

それは、一同が待っていた人物の声だった

美琴「あ、黒子」

削板「お、黒子もメイドさんか?」


313 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:24:11.73 01wJbqEB0 213/720

黒子「軍覇さんがおられるとは・・・少し予想外でしたの」

黒子が苦笑する

どうやら、削板は常盤台の校舎のほうを見学するだろうと考えていたらしい

削板「可愛いぞ、黒子!」

黒子「あ、ありがとうございます!」

上条「あれ、白井はどこの専属なんだ?」

黒子「あぁ、ここの専属を引き継ぎましたの」


314 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:24:50.28 01wJbqEB0 214/720

黒子が少し遠くを指差す

先程注文を取りにきた生徒が少し怯えるような目で黒子を見ていた

美琴「・・・何したのよアンタ」

黒子「いえいえ、あくまで合法的にですの」

上条「合法的・・・」

上条が冷や汗をかく

そういえば、美琴とルームメイトになれたのも「あくまで合法的に」だったらしい

315 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:26:48.19 01wJbqEB0 215/720

上条「・・・にしても、白井もメイドかぁ」

上条が黒子をよく眺める

彼女がそういう格好をするのは珍しかった

黒子「あら、まじまじと見つめないでくださいな」

上条「あぁ、悪い悪い」

美琴「・・・」ムスッ

舞夏「上条当麻ー、御坂がヤキモチ妬いてるぞ?」

316 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:28:36.68 01wJbqEB0 216/720

上条「別にそういう目では見てないんだけどな」

呆れたように上条が言う

削板「そういえば黒子はずっとメイド喫茶なのか?」

黒子「まさか、お姉さまの演奏会のために午前だけですの」

美琴「・・・カメラとか持ってないでしょうね」

黒子「もちろん、持ってますの」

美琴「渡せ」

317 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:31:31.02 01wJbqEB0 217/720

上条「・・・はぁ、しかしメイド喫茶なんてよくやるな」

上条がアイスコーヒーを飲みながらつぶやく

黒子「将来、正しい接待ができるように、らしいですの」

美琴「・・・ちょっと堅苦しい接待よね」

削板「たしかにそうだな」

土御門「おー、あの子可愛いにゃー」

318 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:33:23.95 01wJbqEB0 218/720

舞夏「んー、なんかあっちに人だかりできてないかー?」

舞夏が少しと置くのテーブルを指差す

一つのテーブルに一人のメイド、が決まりだったはず

しかしなぜだか、そのテーブルには多くのメイドが集まっていた

上条「あれ?ホントだ」

美琴「なんかあったのかしら?」

上条「俺、ちょっと見てくるな」

319 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:35:04.78 01wJbqEB0 219/720

上条がそのテーブルへ近づく

なにやら、ワイワイと常盤台の生徒が騒いでいる

上条(?トラブルではなさそうだな)

一安心しながら、上条がそのテーブルにたどり着いた

そこには


垣根「はいはい、次は・・・そこのお嬢さんね」

垣根がいた

しかもなぜかメイド姿の女子生徒と写真を撮っている

321 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:37:20.04 01wJbqEB0 220/720

上条「・・・ちょっと失礼・・・」

女子生徒を掻き分け、上条が垣根の元にたどりつく

垣根「はいはい・・・って上条か」

上条「お前・・・なにやってんだよ・・・」

垣根「なにって、見ての通りだぜ?」

垣根が周りの女子生徒を見つめる

なぜだか、みんな顔が赤い

322 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:39:25.86 01wJbqEB0 221/720

上条「いや・・・心理さんは?」

垣根「ちょっとあいつは常盤台の中見てるらしい」

上条「・・・で、なんで写真?」

垣根「なんかお嬢さんたちが一緒に撮ってくれって」

垣根が周りの生徒を指差す

上条「・・・な、なんで垣根と写真を?」

意味が分からず、周りの生徒に垣根が訊ねる

323 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:41:02.20 01wJbqEB0 222/720

「あ、いえ・・・垣根さんは・・・その、素敵な殿方ですから」カァッ

上条「」


上条「あ、あなたはなんで?」

「か、垣根さんは・・・いわゆる二枚目ですので」カァッ

上条「」


上条「・・・垣根、お前この子達に何したんだよ?」

垣根「なんもしてねぇよ」

325 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:44:03.91 01wJbqEB0 223/720

上条「・・・だって、お前って普段は三枚目キャラだろ?」

垣根「はぁ?俺は普段は二枚目だっての」

垣根が紅茶を口にする

ムカつくことに、その動作がかなりオシャレに見える

垣根「それに、ここの生徒はみんな他の女と違って大人っぽいから素敵だんだよ」

さらり、とそういうことを言えるあたり彼はプレイボーイだ

「か、垣根さん・・・次は私と、お願いします!」

326 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:46:38.72 01wJbqEB0 224/720

垣根「お、いいぜ」

垣根がその生徒の肩に手を回す

「あ・・・」

上条「垣根・・・心理さんが見てたら怒られるぞ?」

垣根「あいつはそこまで懐狭くないっての」

垣根が笑う

垣根「あ、上条カメラ頼む」

327 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:48:19.51 01wJbqEB0 225/720

上条「はいはい・・・」

溜め息をついてから上条がカメラを受け取る

垣根「じゃ、はいチーズ」

ニコリ、と垣根が笑う

なんか女殺しな笑顔だよなー、と思いながら上条がシャッターを切った


垣根「よし、綺麗に撮れてるな」

上条「・・・はぁ」

328 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:50:36.44 01wJbqEB0 226/720

垣根「ところで上条はなんでこんなとこにいんだよ?」

上条「白井がメイド喫茶やってるっていうから、美琴とか土御門とかと冷やかしに」

垣根「え、マジかよ?」

面白いオモチャを見つけたような顔を垣根がする

上条「・・・お前、白井をバカにしたいんだな?」

垣根「もちろん」

垣根が椅子から立ち上がった

329 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:51:54.35 01wJbqEB0 227/720

上条「・・・やめとけよ・・・」

垣根「なんでだ?俺は、友の勇姿を見に行くだけだ!」

垣根が上条の手を無理矢理引っ張る

垣根「さぁ、案内しろ!」

上条「分かったよ・・・」

仕方なく、上条が元の席へ戻る


美琴「あ、当麻・・・」

330 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:54:06.37 01wJbqEB0 228/720

削板「お、垣根じゃないか」

上条「さっきの騒ぎの原因は垣根でしたー」

舞夏「お、垣根じゃないかー」

土御門「・・・舞夏、お前垣根と知り合いかにゃー?」

舞夏「この前ジュース奢ってもらった」

垣根「可愛い子には優しくするんだぜ?」

土御門「てめぇ垣根ぇぇぇぇぇ!!!!!!」

331 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:56:18.77 01wJbqEB0 229/720

垣根「お、白井じゃ・・・ね・・・ぇか」プルプル

垣根が黒子を見つめる

その瞬間、噴出しそうになった

黒子「・・・なんですの?」

垣根「で、ですの・・・」プルプル

黒子「今さらそこにツッコむんですの!?」

垣根「やべぇ!!ですのメイド!!」

332 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 11:58:38.58 01wJbqEB0 230/720

上条「おい・・・笑いすぎだろ」

垣根「はー、笑った笑った」

垣根が目元の涙を拭う

上条「・・・白井、怒るなよ」

黒子「・・・お、怒ってませんの」ゴゴゴ

美琴「はぁ・・・でも、ここに垣根がいるってことは心理定規もいるの?」

垣根「あぁ、校舎のほう見てるぜ」

333 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:01:14.94 01wJbqEB0 231/720

上条「心理さんってもう中学生の年齢だよな?」

垣根「・・・まぁそこはほっておけ」

垣根がヒラヒラと手を振る

上条「・・・あ、そういえばお前美琴と一緒に演奏会出るんだろ?」

垣根「おう、出るぜ?」

削板「・・・大丈夫なのか?」

土御門「常盤台の演奏会だからにゃー・・・ぶち壊し甲斐はあると思うぜよ・・・」

334 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:02:47.78 01wJbqEB0 232/720

垣根「だから真面目にやるっての」

はぁ、と垣根が溜め息をつく

垣根「俺って信用されてないのな」

黒子「日ごろの行いですの」

垣根「ひっでぇなですの」

黒子「・・・」

垣根「ダークマターですの!!!!」

335 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:06:11.34 01wJbqEB0 233/720

黒子「・・・はぁ、ですが本当に真面目にやってくださいな」

垣根「当たり前だろ」

垣根が美琴のほうを見る

垣根「御坂だって本気でやるらしいからな」

美琴「まぁ・・・ね」

舞夏「私も楽しみにしてるぞー?」

美琴「プレッシャーかけないでよ・・・」

336 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:09:02.72 01wJbqEB0 234/720

上条「・・・あ、そろそろ昼飯じゃないか?」

黒子「あら・・・では、こちらがメニューになりますの」

上条「え?昼飯のメニューもあるのか・・・」

黒子「常盤台は家庭科で料理を習いますの」

美琴「しかもフランス料理とかだもんね」

上条「す、すげぇな・・・」

削板「じゃ、このフランス料理のフルコースで」

337 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:11:33.43 01wJbqEB0 235/720

黒子「では少々お待ちくださいな」

黒子がお辞儀をしてから去っていく

土御門「・・・カミやんは午後、どうするんだにゃー?」

上条「美琴の演奏会があるからさ」

垣根「その前に時間があるだろ?」

上条「あー・・・青ピとか吹寄とかとどっか回るかな」

338 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:14:02.45 01wJbqEB0 236/720

垣根「そこは■■も入れてやれよ」

上条「あぁ、忘れてた・・・」

舞夏「兄貴はどうするんだー?」

土御門「そうだにゃー・・・カミやんとどっか回ってもいいぜよ?」

上条「お、じゃあどこ行く?」

土御門「うーん・・・」

削板「意外と回るところがないよな」

339 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:15:36.18 01wJbqEB0 237/720

上条「まぁなー」

一端覧祭は大抵、体験入学に力を入れている

そのため、これといってとびきり最高の見世物というのはないのだ

垣根「じゃあ、俺たちの練習でも見るか?」

美琴「そ、それはダメ!!」

垣根「あぁ?いいじゃねぇか」

美琴「楽しみがなくなるでしょ!!」

340 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:17:21.79 01wJbqEB0 238/720

垣根「はいはい・・・じゃあ適当にぶらついててくれよ」

垣根が溜め息をつく

上条「あ、料理来たみたいだな」

上条がつぶやく

黒子「お待たせなさいですの」

土御門「うお・・・すげぇ・・・」

舞夏「おー、なかなか悪くはないなー」

341 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 12:19:23.11 01wJbqEB0 239/720

黒子「それは安心しましたの」

ニコリ、と黒子が微笑む

垣根「じゃあ、手を合わせてください!」

一同「はい!!」

一同が手を合わせる

垣根「大きな声で!!いただきます!!!!」

一同「いただきます!!!!」


一同が昼食を始めた

太陽が真上に上る時間帯だった

347 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:08:14.17 01wJbqEB0 240/720

上条「はぁ・・・食った食った」

上条がおなかをさする

フランス料理はなかなかに美味しかった

美琴「さてと・・・私はそろそろ練習に行かないと」

美琴が時計を見つめる

時間は午後1時

あと二時間で演奏会だ

348 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:12:29.17 01wJbqEB0 241/720

垣根「俺もそうするか・・・心理定規呼んでくるな」

垣根が椅子から立ち上がり、校舎のほうへ向かう


上条「・・・削板は、これからどうする?」

削板「そうだな・・・もうちょっとここに残るよ、演奏会も常盤台であるんだろ?」

上条「あぁ、じゃあ・・・俺は土御門とどっか行くか」

土御門「にゃー、じゃあいったん学校に帰るかにゃー」

舞夏「私も行くぞー」

349 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:14:43.14 01wJbqEB0 242/720

三人がいったん学び舎の園から外に出る

上条「バスで行けば学校までは10分くらいかな」

舞夏「行こうかー」

土御門「にゃー」

バスに乗り、上条の高校へと向かう


吹寄「・・・はぁ、上条も土御門も・・・どこに行ったのかしら」

青ピ「まったくやなぁ」

350 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:16:23.91 01wJbqEB0 243/720

■■「・・・きっと。今頃こっちに向かっている」

吹寄「いや、あの二人はそんなに律儀では・・・」

そのとき、教室のドアががらりと開いた

上条「おーす!」

土御門「帰ってきたぜよ・・・ってなんでそんなヘンな顔してるのかにゃー?」

吹寄「・・・ま、まさか本当に来たとはね」

上条「?」

351 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:19:39.87 01wJbqEB0 244/720

青ピ「なんや、彼女さんの演奏会はまだなん?」

上条「あぁ、あと二時間くらいあるかな」

上条が答える

■■「・・・でも。わざわざこっちに戻ってきてもやることはない」

舞夏「えー、せっかく来たんだぞー?」

青ピ「あれ、舞夏ちゃんやん」

土御門「名前で呼ぶんじゃねー!!」

352 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:23:50.76 01wJbqEB0 245/720

上条「はぁ・・・じゃあ適当に話でもするか?」

■■「そうするしかない」

それから、一同は適当な話をした

時間というのは、意外と遅く過ぎていく

しかも、先に楽しみが待っていると余計に、だ

結局日常会話は30分も続かなかった

353 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:26:56.05 01wJbqEB0 246/720

上条「・・・まぁいいや、今から常盤台に向かえば着くのは2時だし・・・」

■■「そうね」

吹寄「じゃあ向かいましょう」

一同がまた常盤台へ向かう

こんなに行ったり来たりするのは初めてかもしれない

青ピ「結局なんの曲を弾くんやろうねぇ?」

上条「うーん・・・なんだろ?」

354 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:29:14.59 01wJbqEB0 247/720

土御門「にゃー、歌詞カードとかもらってないのかにゃー」

上条「ん、もらったぞ?」

舞夏「なんだ、じゃあ見ればいいじゃないかー」

上条「見るなって言われてんだよ・・・」

はぁ、と上条が溜め息をつく

上条「気になるけど・・・まぁあと1時間もすれば分かるんだからさ」

吹寄「楽しみね・・・バイオリンは精神を落ち着かせてくれるから」

355 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:32:38.28 01wJbqEB0 248/720

上条「そうだな・・・」

上条がバスから外を見つめる

徐々に、学び舎の園が近づいてくる

さっきもそこにいたわけではあるが

上条(・・・楽しみだな)

歌詞カードを握り締めながら

上条は笑っていた

359 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:48:01.76 01wJbqEB0 249/720


美琴「・・・はぁ、緊張する」

演奏会を前に、美琴は溜め息をついていた

垣根「なんでだよ?」

心理「美琴はそういうの緊張する人なのね」

美琴「・・・だって歌うのよ?」

垣根「そりゃ俺もだ」

垣根がケラケラと笑う

360 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:53:42.48 01wJbqEB0 250/720

垣根「にしても、バイオリンとかの演奏会のためにわざわざ時間裂くなんてな」

垣根がパンフレットを確認する

心理「あら、美琴は常盤台でも有名な生徒じゃない」

美琴「去年もその前もだったわ・・・」

はぁ、と美琴が溜め息をつく

垣根「ふーん、なかなかの優遇だな」

361 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 13:56:40.37 01wJbqEB0 251/720

心理「なんか、本当にうらやましいわね」

垣根「みんなから尊敬されてるんだもんな」

美琴「・・・そこまでいいもんでもないわよ」

はぁ、と美琴が溜め息をつく

垣根「そうか?いいんじゃねぇか?」

美琴「だってさぁ・・・周りからはめちゃくちゃ期待されるのよ?」

美琴がバイオリンを眺める

362 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:05:50.08 01wJbqEB0 252/720

心理「・・・それはたしかにプレッシャーかもね」

垣根「そうだな・・・プレッシャーになるだろうな」

美琴「はぁ・・・まぁ、いいんだけどね」

垣根「とにかく、今は集中してみようぜ」

垣根がマイクをいじる

そろそろ、演奏会が始まってしまう

心理「・・・時間も近づいてるし・・・美琴はその服でいいの?」

美琴「え、いいけど・・・」

垣根「もうちょっとオシャレしようぜ」

垣根が呆れたように言う

363 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:08:51.37 01wJbqEB0 253/720

垣根「心理定規は余ったドレスとかあるだろ?」

心理「えぇ、もちろん」

美琴「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

垣根「あぁ?なんだよ?」

美琴「だ、だってここから垣根の家まで遠いでしょ!?」

垣根「それが?俺が飛んで行けばすぐだぜ?」

美琴「心理定規のドレスってかなり派手じゃない!」

心理「あら、せっかくの演奏会なんだからいいじゃない」

美琴「なんでよ!!は、恥ずかしいじゃない!」

美琴が顔を真っ赤にする

さすがにたくさんの生徒の前で大胆な格好をするのは恥ずかしいのだ

垣根「はぁ、わかってねぇなぁ・・・」

美琴「な、なにがよ?」

垣根「上条も来るんだぜ?」

美琴「そ、そうだけど・・・」

垣根「自分の彼女の晴れ舞台だ、オシャレしてほしいに決まってるだろ?」

美琴「う・・・」

たしかに、垣根の言うとおりかもしれない

364 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:11:39.64 01wJbqEB0 254/720

垣根「だからよ、オシャレしようぜ」

垣根がケラケラと笑う

美琴「そりゃぁ・・・少し制服はそっけないかもしれないけどさ・・・」

心理「あら、じゃあいいじゃない」

心理定規がニコニコと笑う

垣根「そうそう、じゃあ持ってくるから・・・」

心理「垣根、私のクローゼット分かるかしら?」

垣根「おう、分かる分かる」

垣根が体育館から外に出る

美琴「どれくらいで戻ってこれるのよ?」

垣根「んー・・・20分もすればかな」

心理「あら、さすがね」

美琴「はぁ・・・仕方ないわね・・・」

垣根「じゃ、行ってきます!!」

垣根が翼を広げる


垣根「速さが足りない!!!!」

そんなことを言いながら

365 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:14:38.23 01wJbqEB0 255/720

美琴「・・・はぁ」

残された美琴は溜め息をついていた

心理「大丈夫よ、そんなに大胆じゃないのもあるから」

美琴「そこじゃないのよ・・・」

美琴が頭を抱える

問題は、黒子が写真を撮ることだ

ドレス姿の美琴なんて、よからぬことに使うのだろう

それが一番心配だ

それに、他の生徒達もキャーキャーと騒ぐのだろう

美琴「はぁ・・・イヤになるわね」

心理「いいんじゃない?別に」

美琴「・・・心理定規は注目されるの恥ずかしくないの?」

心理「あわ、散々今まで辛い思いはしてきたもの」

いまさらこんなことくらいなんでもないわよ、と心理定規が笑う

美琴「はぁ・・・プレッシャーに強いのね」

心理「30分前になって、いまさら緊張してても意味無いわよ」

美琴「そうかなぁ・・・」

367 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:17:18.33 01wJbqEB0 256/720

心理「気楽に行きましょう」

心理定規が適当にピアノを弾く

「エリーゼのために」だろうか

とても滑らかに指が動いていく

よくそんなに上手くできるな、と美琴さえもが感心する

それほどに上手い演奏だった

美琴「・・・昔からやってたの?」

心理「そうでもないわよ、経験はほとんどないもの」

美琴「へぇ・・・にしても上手ね」

心理「あら、ありがとう」

そんな会話をしながらも、彼女は一切ミスをしない

一種の才能だろうか、と美琴は感想を抱く

美琴(・・・これなら、私よりも心理定規のほうが注目されるかもね)

そうなってくれたら、美琴としても気楽で助かる

しかしそうはいかないだろう

美琴「・・・よし、もう考えるのはやめ!!」

心理「そうね、そっちのほうが美琴らしいわよ」

368 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:20:51.39 01wJbqEB0 257/720

美琴「・・・歌詞も覚えたし・・・」

もう一度美琴が歌詞を確認する

これを、もう少しで披露するのだ

心理「上条君、喜んでくれるといいわね」

美琴「うん・・・ちょっと心配」

美琴が苦笑する

こんな回りくどい方法で、上条は喜んでくれるだろうか

心理「大丈夫よ、上条君は美琴がしたことなら何でも喜びそうだもの」

美琴「そうかな・・・」

心理「大丈夫、自分を信じなさい」

心理定規がピアノから離れ、美琴の元へ来る

美琴「?どうしたの?」

心理「ちょっとしたおまじないよ」

そのまま、美琴の手を握る

369 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:24:46.14 01wJbqEB0 258/720

美琴「?」

美琴はわからない、といった感じで首を捻る

心理「ほら、米って書くのよ」

美琴「あ、聞いたことはあるわね・・・でもそれって、ただの迷信じゃない?」

心理「あら、夢がないわね」

クスクス、と心理定規が笑う

美琴「・・・だって、オカルトとか信じられないもの」

心理「それでもよ」

心理定規が美琴の掌に米を書いていく

美琴「・・・」

心理「・・・美琴、あなたはこんな場面に慣れてるでしょ?」

美琴「え?」

心理「大丈夫、あなたは強いもの」

そう言いながら、心理定規は美琴の手を放す

心理「・・・あなたは、とても強いのよ」

心理「誰かの視線を浴びて、光を浴びて、輝いて・・・」

心理「それでも、それに耐えることができるじゃない」

心理「大丈夫、あなたはとても強いから」


心理「私の知っている御坂美琴は、そんな人間よ」

370 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:28:07.46 01wJbqEB0 259/720

美琴「・・・ありがと」

心理「別に、お礼を言われるほどじゃないわよ」

微笑んでから、心理定規がまたピアノのところへ戻る

美琴(・・・なんだか、落ち着いたな・・・)


心理「美琴、もし緊張してるなら、私の能力でどうにかできるかもしれないわよ?」

美琴「・・・どうやって?」

心理「生徒達とあなたの距離を他人にするのよ」

美琴「他人に?」

心理「えぇ、知り合いだったらこしょばゆいかもしれないけど・・・それなら大丈夫でしょ?」

美琴「・・・」

美琴が考える

それはつまり、上条との心の距離も演奏中は他人になるということだ

そんなのでは、意味が無い

彼女が伝えたいのは

上条への、今の思いだから

美琴「ううん、大丈夫そう」

心理「そう、よかった」

371 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:33:09.88 01wJbqEB0 260/720

美琴(・・・当麻への思い・・・か)

もう一度、美琴が歌詞カードを確認する

そこにつづられているほど、彼女は素直には言葉にできない

美琴(・・・でも、これは歌なんだから・・・)

そうやって言い訳をしなければ恥ずかしくなってしまう

それほどに、上条への思いはストレートだった


垣根「よ、取ってきたぜー」

垣根がドレスを片手に帰ってきた

心理「お帰り・・・ちゃんと落ち着いたのを選んできた?」

垣根「おう、これでいいだろ」

垣根が差し出したのは、普段の心理定規のイメージとは違う落ち着いた感じのドレスだった

どこかの社交会に行っても問題ないほどのものだ

美琴「うん、これなら大丈夫」

心理「じゃあ着替えてきなさい、そろそろ時間よ」

美琴「うん・・・あ、二人とも!」

垣根「なんだよ?」

心理「なに?」

美琴「あ、あのさ・・・」

美琴が恥ずかしそうにうつむく

372 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:36:35.90 01wJbqEB0 261/720

美琴「あ、ありがと・・・協力してくれて」

垣根「は?」

きょとん、と垣根がする

そのあと、大きな声を上げて笑う

垣根「あはは!!なんだよそりゃ!!」

美琴「な、なによ!?」

垣根「いや、俺たちが元はといえばやりたいって言い出したんだぜ・・・?」

ヒーヒー言いながら、垣根がおなかを抱える

垣根「別にお前のためだけじゃねぇよ、俺は目立ちたがりだしさ」

美琴「な、なによそれ・・・」

心理「そうそう、私達も楽しい時間を過ごせるんだから」

垣根「だからよ、礼なんていらねぇよ」

心理「・・・というよりも、むしろ私達がお礼を言わないとね」

垣根「そうだな・・・ありがとよ、御坂」

美琴「べ、べつに・・・じゃあ着替えてくるから!!」

ドレスを抱えて、美琴はいったん自分の部屋に帰る

その横顔は真っ赤だった

373 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:40:45.31 01wJbqEB0 262/720

上条「・・・そろそろだな」

上条たちは常盤台の特設ステージの前に座っていた

周りにはたくさんの生徒が座っている

常盤台の生徒はもちろん、違う学校の生徒もちらほらと見かける

吹寄「やっぱり注目されてるのね」

■■「うらやましい限りね」

青ピ「カミやんの彼女さんはすごいなー・・・」

土御門「にゃー、だって常盤台の超電磁砲だぜぃ?」

上条「・・・そんなの関係ないだろ」

黒子「あら、どういうことですの?」

上条「あいつが超能力者だろうと、そうじゃなかろうと関係ないさ」

当たり前のように上条が答える

それが、どれほど美琴のとって嬉しいことなのだろうか

いつも超電磁砲として見られていた彼女

そんな彼女を一人の人間として見てくれているのだから

舞夏「・・・上条当麻はいい彼氏だろうなー」

土御門「にゃー、ムカつくぜよ」

エツァリ「まったくですね」

上条「な、なんでだよ!?」

374 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 14:44:26.96 01wJbqEB0 263/720

削板「あ、来たぞ!!」

特設ステージが暗転する

なんでも、ここは常盤台の視聴覚室らしい

視聴覚室といっても、体育館くらいの大きさだったが

そして、ステージだけがスポットライトに照らされる

そこにいたのは、ドレス姿の美琴だった

一瞬、誰もがその美しさに息を呑む

上条(き、綺麗だ・・・)

■■(・・・すごい。あれが人気者のオーラ)

吹寄(・・・綺麗ね・・・)

黒子(カメラ・・・はフラッシュが無粋ですわね)


美琴「・・・みなさん、今日は貴重な時間を割いていただき、ありがとうございます・・・」

美琴がマイクを通して礼を述べる

美琴「私も、みなさんに満足していただけるよう・・・」


垣根「あーあーあー、マイクテストー、ちょっとこれ高音高すぎじゃない?」

そんな演説をさえぎったのは

やっぱり、垣根だった

379 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:34:09.26 01wJbqEB0 264/720

垣根「おほん、えー・・・ここにいるのは御坂美琴ですが・・・」

美琴「・・・ねぇ、今私が・・・」

垣根「まぁまぁ、わざわざほかの人にお礼なんて言わなくてもいいだろ、ここに来た人達はお前の演奏を聞きに来たんだよ」

美琴「そうだけど・・・」

垣根「じゃあ、メンバー紹介でもしますか」

垣根が適当に進行していく

彼としては長々と話をしていたくはないのだろう

さっさと練習の成果を披露したいのだ

垣根「まずはボーカル!俺は垣根帝督です!」

ぱちぱち、と拍手が鳴る

垣根「続いてピアノは!俺の愛する心理定規!」

心理定規が手を振る


青ピ「・・・なんか盛り上がってるなぁ」

上条「・・・」ドキドキ

吹寄「・・・そんなに緊張するの?」

上条「そ、そりゃあもちろん!」

土御門「はぁ、惚気はやめてほしいにゃー」

上条「・・・何歌うんだろう」

一同がステージに視線を戻す


380 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:36:41.74 01wJbqEB0 265/720

垣根「そして最後!バイオリンは!ご存知御坂美琴!」

一斉に拍手が鳴る

美琴「・・・よろしくお願いします」

美琴が観客にお辞儀をする

そして、バイオリンを構える

シン、とした静寂に包まれた会場

美琴が、メロディーを奏で始める


上条「っと・・・歌詞カード歌詞カードっと・・・」

上条が歌詞カードを取り出す

書かれていた曲名は「BACK AT ONE」

上条(ブライアン・マックナイト・・・って誰だ?)

上条が知らない歌手だった

しかし、美琴の奏でるメロディーは綺麗だった

そして何より、和訳の歌詞を読んで上条は心を打たれた


垣根「Its undeniable That we should be together・・・」

垣根「Its unbelievable How I used to say that I'd fall never・・・」

381 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:39:43.42 01wJbqEB0 266/720

もうごまかせない

二人は結ばれるべきなんだ

信じられないよ この私が前までは

絶対に恋なんかしないと言っていたなんて…


「ビリビリって言うな!!」

「アンタがムカつくからよ!!」


垣根「The basis you need to know If you don't know just how I feel・・・」

垣根「Then let me show you now that I'm for real If all things in time・・・」

垣根「Ttime will reveal Yeah・・・」


まずは悟ること

もしもまだ気づいていないのなら

とにかく私のこの気持ちを…

そうしたら見せてあげたい

私の気持ちに嘘が無いことを

何もかもが、時が経てばわかる



「アンタの力になれるのよ!!」

「す、好きです、付き合ってください!」

382 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:43:48.85 01wJbqEB0 267/720

垣根「One - you're like a dream come true」

垣根「Two - just wanna be with you」

垣根「Three - Girl its plain to see」

垣根「That you're the only one for me, and」


一つ あなたはまるで、形になった夢のようで

二つ とにかくあなたと一緒にいたい

三つ ねぇ、こんなにはっきりしてるのよ

私にはあなたしかないって


「当麻、愛してる!」

「ずっと、一緒にいようね?」


垣根「Four - repeat steps one to three」

垣根「Five - make you fall in love with me」

垣根「If ever I believe my work is done then I start back at one・・・」


四つ 1から3のステップを繰り返して

五つ そうやって私のことを好きにさせるから

あなたが私を好きになったと思ったら

また最初から始めるわ


「当麻、私のこと好き?」

「・・・私は、当麻が大好き!」

383 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:47:29.37 01wJbqEB0 268/720

垣根「It's so Incrediable The way things work themselves out・・・」

垣根「And all emotional Once you know that its all about hey・・・」


本当に驚くわ

何もかも、勝手に進んでいくのね

しかも、とっても感情豊かに

ひとたび理解してしまえば


「当麻の考えてることなんて、全部分かるわよ」

「・・・また、明日ね」


垣根「And undesirable For us to be apart・・・」

垣根「Never would of made it very far・・・」

垣根「Cause you know that you got the keys to my heart Cause・・・」


願うべくもないわ

二人が

離れているなんて

無理は言わないわ

あなたはもう、私の心の鍵を手にしているんだから


「当麻は、私の心に触れてくれたのよ」

「・・・あのとき、アンタに救われたのよ」

384 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:49:43.13 01wJbqEB0 269/720

垣根「One - you're like a dream come true」

垣根「Two - just wanna be with you」

垣根「Three - Girl its plain to see」

垣根「That you're the only one for me, and」


一つ あなたはまるで、形になった幻想のようで

二つ とにかくあなたの隣にいたい

三つ ねぇ、こんなにはっきりしているのよ

私にはあなたしかいないの


「当麻、愛してる!」

「・・・幸せだなぁ」


垣根「Four - repeat steps one to three」

垣根「Five - make you fall in love with me」

垣根「If ever I believe my work is done then I start back at one・・・」


四つ 1から3までを何度も繰り返して

五つ そうやって私に夢中にさせるから

あなたが私を好きになったら

また最初から始めるわ


「当麻、早く!!」

「・・・一人にしないでね?」

385 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:52:18.19 01wJbqEB0 270/720

会場が静寂に包まれる

上条は、手元の歌詞カードではなく、美琴を見つめていた

もう、歌詞なんて見なくても分かっていた

美琴のことを、一番分かっているのは彼だから

その時、美琴がマイクの前に移動した

バイオリンから手を放し

周りの学生が少し驚いたような声を出す

それでも、上条は美琴だけを見ていた

気のせいか、美琴も彼を見ているような気がした

そして、そっと、彼女が歌いだす


美琴「Say farewell to the dark of night I see the coming of the sun・・・」

美琴「I feel like a little child Whose life has just begun・・・」

386 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:55:00.57 01wJbqEB0 271/720

夜の暗闇にさよならを

ほら、太陽が顔を出すもよ

子供みたいな気分になってるわ

人生はまだ始まったばかりなの


「・・・アンタに、あのとき助けられたのよ」

「アンタがいなきゃ、私はダメなの」


美琴「You came and breathed new life Into this lonely heart of mine・・・」

美琴「You threw out the lifeline Just in the nick of time・・・」


あなたが新しい生命を吹き込んでくれた

私のこの、孤独な心に

あなたの命綱を投げてくれた

際どいところで…


「美琴、愛してる」

「御坂美琴と、その周りの世界は俺が守る」


上条「・・・」

387 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 16:57:52.83 01wJbqEB0 272/720

土御門「・・・終わったにゃー」

美琴がステージ上でお辞儀をする

すると、場内からは大きな拍手が巻き上がる

吹寄「素敵だったわよ!」

■■「・・・なぜか。心を打たれた」

エツァリ「・・・素晴らしかったですね・・・」


テクパトル「・・・よかったな、見れて」

ミサカ一同「はい!」

トチトリ(・・・端っこだから、少し聞きにくかったがな)


一方「・・・くだらねェ歌詞だな」

番外「じゃあなんで泣きそうなの?」

一方「・・・目にゴミが入ったンだよ」

打ち止め(素直じゃないなぁ、ってミサカはミサカは苦笑してみたり)


黒子「・・・素敵でしたの」

削板「あぁ・・・いい歌詞だったな」

黒子「あのお二人にピッタリでしたわ」クスクス

389 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:01:22.58 01wJbqEB0 273/720

美琴(・・・終わったんだ)

演奏を終え、歌を終え

美琴は、しばしステージの上で固まっていた

なにか、気が抜けたようになってしまう

会場からはまだ拍手が鳴っている

中には涙ぐんでいる生徒もいた

垣根「・・・お疲れさん」

垣根が美琴に寄ってくる

美琴「・・終わったんだ」

垣根「あぁ、上条も喜んでるぜ」

垣根が上条の座っている席を指差す

上条は、ずっと拍手をしていた

たくさんの拍手に掻き消されそうで

でも、美琴の耳にはその拍手が届いていた

美琴「・・・よかった」

少し、目頭が熱くなる

彼女の思いは、上条に届いたのだろうか

歌に乗せなければ伝えられないような、恥ずかしくて照れくさい思いは

美琴「届いたのかな・・・?」

垣根「そりゃ、上条に聞かないとな」

390 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:05:11.19 01wJbqEB0 274/720

美琴「・・・当麻」

今すぐ、ステージから駆け下りたかった

でも、なぜかそれは出来なかった

足から力が抜けている

安心したのと、歌いきったのと

その両方で、体に力が入らなかった


観客は、それを間違って捉えていた

青ピ「あ、もしかしてまだ歌いたいんちゃう?」

■■「あぁ。そうかもしれない」

吹寄「そうね、ここはアンコールをするべきだわ!」

土御門(いや、違うと思うけど・・・まぁいいかにゃー)

舞夏「アンコール!!アンコール!!」

上条「アンコール!」


周りの学生もアンコールをし出す


テクパトル「あー・・・こりゃキツイな」

御坂妹「あとで垣根に今の歌のCDを借ります、とミサカは堅く決意します」

19090「ミサカにも貸してくださいね」

392 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:16:55.09 01wJbqEB0 275/720

垣根「お、アンコールされてんぞ?」

美琴「ま、待って!力が入らなくて・・・」

垣根「ははは!!そりゃ面白いな!」

心理「こらこら、助けてあげなさいよ」

心理定規がピアノのところから小声で垣根を叱る

垣根「いいだろ、面白いし」

美琴「な、なに弾くのよ?」

垣根「・・・じゃあ、マックナイトつながりで6.8.12でも歌うか?」

心理「あら、失恋の曲じゃない」

垣根「あ、そうだな・・・どうする?」

美琴「・・・ねぇ、洋楽じゃないとダメなの?」

垣根「それもそうだな・・・なんかバイオリンで弾けそうな歌あるのか?」

美琴「ん・・・でも、二人はいけるかしら?」

心理「有名な曲なら大丈夫よ?」

美琴「・・・じゃあ、よろしく」

美琴が力の抜けた体に無理矢理力を入れる

394 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:23:01.50 01wJbqEB0 276/720

上条「お、また弾くんだな!」

吹寄「あら、また垣根がボーカルね」

■■「それは。当たり前かも」


垣根「・・・じゃ、行くか」

垣根の目配せで演奏を始める

それは、誰もが知っている曲だった


エツァリ「・・・らいおんハートですね」

ショチトル「・・・いい歌だな」

吹寄「・・・」


垣根「君はいつも僕の・・・薬箱さ・・・」

垣根「どんな風に僕を・・・癒してくれる・・・」


美琴「笑う・・そばからホラ、その笑顔」

美琴「泣いたらやっぱりね・・・涙するんだね」


上条(・・・美琴)

美琴の涙を見たことがあるのは、おそらく上条だけだろう


395 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:31:17.87 01wJbqEB0 277/720

彼女の弱いところも

彼女の優しいところも

彼女の強いところも

上条は、全てを知っている

上条(・・・)

最初の曲も、そして今の曲も

美琴の、上条に対する思いなのだろうか


上条「・・・いい曲だな」

土御門「あぁ、いい曲だにゃー」

青ピ「・・・カミやん、幸せ者やなぁ」

397 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:35:46.56 01wJbqEB0 278/720

上条「そうだな、幸せだよ」

上条がステージを見つめる

美琴の歌声は、とても綺麗だった


美琴「・・・今日はありがとうございました」

歌い終わって、美琴がもう一度お辞儀をする

垣根「はい、どうもー」

垣根もお辞儀をする

全く調子が違う二人だ

しかし、拍手はステージの上の三人に向けられていた


削板「素敵だったぞ!」

黒子「お姉様ーー!!!!」

エツァリ「素敵でしたよ!!」

ショチトル「かっこよかったぞーー!!!」


美琴「・・・二人ともありがとね、本当に」

心理「あら、お礼はいらないって言ったじゃない」

398 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:42:50.88 01wJbqEB0 279/720

垣根「そうだぜ、友達じゃねぇか」

美琴「・・・でも、やっぱりお礼を言いたかったもん」

美琴が二人を見つめる

垣根「・・・そうかい、じゃあありがたく受け取っとくよ」

美琴「そうしといて」

ニコリ、と美琴が笑う

こんなことを頼める友達が、今はいるのだ

美琴「・・・心理定規もお疲れ様・・・ごめんね、なんだかちょっと裏方だったけど」

心理「いいのよ、私はそういう役だもの」

心理定規が苦笑する

垣根「でもよ、いいピアノだったぜ」

心理「あら、ありがとう」

美琴「・・・垣根の選曲もよかったわ、ありがとね」

垣根「そうかい、よかったよ・・・っと、そろそろステージから降りないとな」

垣根が会場を見つめる

まだ拍手は鳴り止まない

399 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:50:20.72 01wJbqEB0 280/720

美琴「・・・な、なんか当麻に会うのが恥ずかしいわね・・・」

ステージ脇に引いてから、美琴は急に現実を思い出した

あんな歌詞を歌ったのだ

しかも、上条のために

他の生徒だって、英語が分かったりもするだろう

公開プロポーズのようなものだ

垣根「いいじゃねぇか別に」

心理「そうね、いつもそんな感じじゃない」

垣根「そうそう」

美琴「で、でも・・・ドキドキするじゃない!」

美琴が顔を真っ赤にする

あんなふうに改めて言ってしまうと、緊張してしまう

垣根「どっちにしろ、どうせ会わないといけないんだぜ?」

心理「ほら、もう今会いに行きなさいよ」

美琴「い、今・・・?」

400 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 17:58:44.68 01wJbqEB0 281/720

垣根「お、いいじゃねぇか!!」

心理「でしょ?どうかしら」

二人がニヤニヤと美琴を見つめる

垣根「ほれ、1から3までを繰り返すんだろ?」ニヤニヤ

心理「ふふふ・・・」

美琴「わ、分かったわよ!!」

顔を真っ赤にしながら、美琴は観客席へと戻っていく

垣根「・・・よかったな、ホントに」

心理「うん、よかったわよ」

垣根「でもよぉ、上条のヤツはなんか鈍感だからな」

心理「そうよねぇ」

二人が溜め息をつく


上条「あ、美琴!」

美琴「や、やっほ・・・」

ドレス姿のまま、美琴は上条の元へやってきた

ステージでは、別の生徒がチェロやらハープやらを弾いている

404 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 19:06:52.79 01wJbqEB0 282/720

上条「・・・あ、あのさ・・・」

土御門「カミやん、惚気なら外でやってほしいにゃー」

上条「は、はぁ!?」

■■「ほら。さっさと二人で出て行って」

青ピ「そうやでぇ、ボクたちは寂しい独り身なんやから」

吹寄「・・・そっちのほうが御坂さんもいいんじゃない?」

吹寄が美琴に微笑みかける

美琴「あ、はい」

黒子「では、上条さん・・・お姉さまを連れて行ってくださいな」

上条「で、でも・・・」

土御門「カミやん、わかってないにゃー」

呆れたように土御門が言う

舞夏「上条当麻、こういうときは二人きりがいいんだぞ?」

上条「そ、そうなのか?」

405 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 19:10:27.91 01wJbqEB0 283/720

土御門「じゃあ、カミやん・・・」

青ピ「これ以上見せ付けるんやったら、ボクたちが怒るで?」

上条「あ、あぁ!!ありがとよ、みんな!!」

上条が美琴の手を引いて外へと出て行く

教師や生徒

その誰も、それを止めはしなかった


吹寄「・・・はぁ、うらやましいわね」

土御門「にゃー、妬けるぜぃ」

青ピ「でも、なんだかんだいいカップルやないか」

■■「そうね」

削板「・・・上条、上手くやってるかな」

一同が、上条と美琴の歩いていったほうを見つめる

黒子「きっと大丈夫ですの・・・だって」


黒子「上条さんは、お姉さまのたった一つの夢なのですから」

406 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 19:15:07.73 01wJbqEB0 284/720


上条「・・・ここらへんでいいかな」

上条と美琴は、学び舎の園の中にある噴水の前へ来ていた

常盤台からは10分ほど歩いただろうか

その間、ずっと二人は会話をしなかった

なぜか背中がこしょばゆかったのだ

上条「・・・」

美琴「ど、どうだった?」

上条「ん、バイオリンも歌も上手だったぞ?」

美琴「・・・そうじゃなくて」

美琴が少し不機嫌そうに言う

彼に言ってほしいのはそんなことではない

そう、もっと別の感想だ

美琴「・・・か、歌詞の内容よ」

上条「あぁ・・・そうだな」

恥ずかしそうに上条が頭をかく

上条「よ、よかったよ」

美琴「ど、どこらへんが?」

上条「そうだな・・・」

上条が美琴を見つめる

彼女とは、本当にいろいろな思い出があった

もちろん、いいものばかりではない

409 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 19:21:34.17 01wJbqEB0 285/720

たとえば出会った時

それは、上条は覚えていない

しかし、美琴から何度も話を聞いている

なんでも、彼女が不良に絡まれているのを助けたらしい

それから、ずーっとケンカ仲として付き合っていた

今の上条にもそれはなんとなく実感できる

彼に記憶がある限り、美琴との初対面は自販機の前でだった

あの時もいきなり電撃を飛ばされたのだ

今思えば、もしも上条がただの他人だったらそこまで強い電撃は打たなかっただろう

あの全力の一撃は、今まで何度もそれを打って、それでも上条が耐えてきたからだったのだろう

それほどまでに、二人は長い時間、ケンカ仲だったのだ

そして、彼女と何度か同じ時間を過ごした

彼女との帰り道は心地よかった

彼女と話していると、なぜか落ち着いた

彼女の笑顔はまぶしかった


妹達の件のときも、そうだった

彼女を守るために、彼は立ち上がった

何度も、何度も

416 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:11:24.15 01wJbqEB0 286/720

上条が、美琴を救ったのだ

誰にもすがることができず、孤独だった美琴を

ただ一人、上条だけが

上条「・・・いろいろさ、思い出せたんだよ」

美琴「・・・いろいろって?」

上条「俺が美琴と出会って・・・覚えてはないけど、美琴から聞いた話も含めて」

上条が噴水を眺める

とても綺麗な噴水だった

上条「・・・それにさ・・・あの歌って、俺の美琴に対する気持ちでもあると思うんだ」

美琴「・・・当麻の気持ち?」

上条「あぁ」

上条だって、美琴に救われたのだ

上条「・・・俺の右手ってさ、いろんな幸運も打ち消しちまうんだ」

417 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:15:38.41 01wJbqEB0 287/720

美琴「・・・うん、知ってる」

上条「だから、小さな頃から不幸だったみたいでさ」

上条が苦笑する

聞いた話では、昔は疫病神とさえ呼ばれていたらしい

そのため、彼はそれまで幸せだなんて思えることは何度かしかなかった

「インデックスを助けたこと」

「姫神を助けたこと」

「彼が、命を落とさなかったこと」

さまざまなことがあったが、それらは全て不幸の中での幸せだった

上条「・・・でもさ、美琴と出会えたのは・・・本当によかったと思う」

美琴「・・・で、でも・・・出会いはひどかったわよ?」

美琴が過去を思い出しながら答える

たしかに、その出会いはやや暴力的なものであった

上条「・・・でもさ、それでもいいんだよ」

上条が苦笑する

不幸も幸せも、感じ取る側の問題なのだから

上条「・・・俺は、美琴との毎日は幸せしかないと思うんだ」

美琴「幸せだけ?」

上条「あぁ・・・そうだよ」

418 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:21:10.80 01wJbqEB0 288/720

美琴「・・・ケンカするときも?」

上条「あぁ、あれも幸せだ」

美琴「た、たまに私が電撃出しちゃうときも?」

上条「あぁ、幸せなんだよ」

美琴「わ、私が嫉妬するときも?」

上条「あぁ、幸せだな」

上条が笑う

どれもが、彼にとっては幸せなのだ

そこに愛があるだけで、日常は特別な意味を持つ

たとえ、退屈な一日でも

美琴といられれば、それは大切な一日なのだ

上条「・・・俺が壊さなかった、守りたいって思ったたった一つの幻想だよ」

美琴「・・・幻想なんだ」

上条「あぁ、幻想だ・・・」

上条「お前はまるで形になった夢で・・・」

上条「そして、ずーっと一緒にいたいんだよ」

上条が美琴を抱きしめる

美琴「・・・歌詞そのままね」

上条「でもさ、そうなんだから」

美琴の頭をそっと撫でる

この瞬間も、幸せなのだ

420 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:28:56.77 01wJbqEB0 289/720

上条「・・・なぁ、美琴」

美琴「うん、なに?」

上条「もう一回歌ってくれない?」

美琴「な、なんでよ!!」

美琴が慌てて手を振る

さすがに、それは恥ずかしいようだ

上条「あはは・・・ウソだって」

美琴「・・・ウ、ウソなんだ」

上条「ん・・・まぁちょっとだけ本気だけどな」

美琴「そ、そう」

美琴がぎゅっ、と拳を握る

上条「どした?」

美琴「い、一緒になら・・・歌ってもいいわよ?」

上条「一緒に?」

上条がきょとんとする

上条「でも、英語無理だぞ?」

美琴「い、いいから!!」

美琴が歌詞カードを開く

421 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:39:20.03 01wJbqEB0 290/720

上条「ん・・・じゃあがんばってみるか」

美琴「い、いいわよね?」

上条「じゃあ、せーので歌うか」

美琴「う、歌わないのはなしよ!?」

上条「もちろん」

二人が歌詞カードを持つ

上条「せーの・・・」


上条「Its undeniable That we should be together・・・」

美琴「Its unbelievable How I used to say that I'd fall never・・・」

上条「The basis you need to know If you don't know just how I feel・・・」

美琴「Then let me show you now that I'm for real If all things in time・・・」

上条美琴「Ttime will reveal Yeah・・・」


恋に落ちるなんて、昔は思っていなかった

ただの友達だと思っていた

まさか、二人が付き合うなんて

一体、当時の二人を見ていたら誰が思っただろうか

423 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:43:46.12 01wJbqEB0 291/720

でも

この二人は、互いの気持ちに気づいたのだ

気づいてしまったのだ

相手を愛する気持ちに、相手が自分を思う気持ちに

そして、その気持ちを今はかけがえないと思っている


上条美琴「One - you're like a dream come true」

上条美琴「Two - just wanna be with you」

上条美琴「Three - Girl its plain to see」

上条美琴「That you're the only one for me, and」


そんな幸せは、まるで夢のようで

ただ、それは上条が壊せないたった一つの幻想だ

こんなにも相手と一緒にいたいという気持ちが強くて

自分には、相手しかいないと分かっていて


上条美琴「Four - repeat steps one to three」

上条美琴「Five - make you fall in love with me」

上条美琴「If ever I believe my work is done then I start back at one・・・」


何度も、それを繰り返して今の日常が出来上がっている

相手が自分を愛していることは分かっている

だから、また1から繰り返して、相手を思いやって

そんな毎日を繰り返す


424 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:49:34.40 01wJbqEB0 292/720


上条「・・・綺麗な噴水だよな」

歌を歌い終わった二人は、噴水の縁に座っていた

少し水しぶきが頬に辺り、それがまた気持ちいい

美琴「・・・うん」

上条「・・・なんか、不幸で水に落ちそうな予感がするんですが」

美琴「なによそれ」

美琴が苦笑する

だが、たしかにそんなこともありそうだ

上条「・・・ドレス似合ってるな」

美琴「ん、いまさら?」

上条「歌ってるときはそっちに集中してたんだよ」

上条が笑う

美琴「・・・どうかな、こういう私」

上条「すごく可愛いですよ?」

美琴「ほ、ホント!?」

上条「ホントホント」

うんうん、と上条がうなずく

425 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 20:55:16.05 01wJbqEB0 293/720

上条「・・・なんというか、こう・・・」

上条が美琴の胸元を見る

少し膨らんだ胸元が、妙に色気づいている

美琴「な、なによ?」

上条「・・・こう、ムラムラと・・・」

美琴「こ、こんなところで何言ってるのよ!?」

ポカポカ、と美琴が上条をたたく

上条「あいたたた」

美琴「な、なんでアンタはこういうロマンチックな雰囲気をぶち壊したがるの!?」

上条「うーん・・・俺の右手が真っ赤に燃える?」

美琴「それは関係ないでしょ!」

バチーン!!と美琴の前髪から火花が出る

それをなんなく上条が打ち消す

当たり前の光景だ

上条「ったく・・・別にぶち壊したつもりは・・・」

美琴「当麻は鈍感なのよ!」

上条「ん、でもさっきは素直に思いを歌に乗せましたよ?」

美琴「そ、それは別の話!」

美琴が顔を真っ赤にする

426 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:01:14.42 01wJbqEB0 294/720

上条「えー、せっかく一緒に歌ったのに・・・」

美琴「もう・・・とりあえず、今は雰囲気壊れちゃったわよ」

はぁ、と美琴が溜め息をつく

上条「・・・美琴」

美琴「な、なに?」

いきなり、上条が真剣な声になる

彼のそういったときの声は、美琴をドキリとさせるものがあった

上条「キス、していいか?」

美琴「い、いいわよ?」

上条が優しく美琴にキスをする

上条「・・・ロマンチックは俺には似合わないけどさ、こういうストレートなのは似合うだろ?」

美琴「・・・当麻はバカみたいに真っ直ぐだもんね」

上条「ちょっとひどくないか?」

美琴「ほめ言葉よ、バカ」

今度は美琴からキスをする

こういう時間は、最も幸せな時間だった

上条「・・・そういえば、二人きりですね」

427 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:06:03.16 01wJbqEB0 295/720

美琴「・・・うん、いつの間にかね」

必死に走ってきたため分からなかったが、今はこの場所には二人しかいない

さきほどまでのやり取りを見られていたら、と思うと恥ずかしいものがある

上条「・・・」

美琴「・・・なんか、ドキドキするわね」

上条「・・・そうだな」

こんな広い場所に二人だけなのだ

エツァリとかだったらヘンなことを考えるだろう

しかし、さすがにこの二人はまだ純粋なほうだった


美琴「・・・なんか、映画みたい」

上条「あ、それ分かるな」

そんな考えしか浮かばないのだから

上条「・・・俺たちが主人公ってことか」

美琴「当麻は・・・いつも主人公だけどね」

上条「?そうかな」

美琴「いーっつも厄介ごとの中心にいるじゃない」

上条「う・・・そうだな」

428 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:13:43.20 01wJbqEB0 296/720

美琴「・・・心配ばっかりかけるし」

上条「あー・・・そりゃ申しわけありません」

美琴「いっつも女の子ばっかり助けるし」

上条「そ、それは・・・偶然ですよ」

美琴「そのくせ、人には頼らないし」

上条「あれだって・・・その、人に辛い思いはさせたくないから」

美琴「人の気持ちを無視して突き進むし」

上条「・・・た、他人の気持ちを分かる人間はいないんだぞ?」

美琴「なーんか貧乏だからって怪我しても病院には行かないし」

上条「それは仕方ない」

美琴「・・・こうやって、強がるし」

上条「・・・」

美琴が少し辛そうにうつむく

上条「・・・あ・・・」

美琴「・・・でもね」

430 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:22:57.12 01wJbqEB0 297/720

美琴「・・・当麻って、心配してもらえるほど仲間がいるのよ?」

美琴「女の子にだって、好かれるような優しい人なのよ?」

美琴「自分で解決する力はあるし、真っ直ぐ進んで迷わないの」

美琴「・・・だから、私は・・・そんな当麻を待ち続けるの」

美琴「・・・アンタが遠くに行っても、待ってるのよ?」

上条「・・・ゴメン」

美琴「・・・待たされる身にもなったことある?」

上条「・・・ゴメン」

美琴「・・・バカ」

美琴が上条を抱きしめる

こうやっているときだけは、彼はここにいてくれる

最近はめっきりそんな厄介ごとはなくなった

でも、たまには不良に絡まれたり、車に轢かれかけたりしているらしい

そんな不幸体質の彼だ

いつまた大きな厄介ごとに巻き込まれるかも分からない

上条「・・・バカかもな、こんなに優しい美琴を待たせるんだから」

431 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:30:23.48 01wJbqEB0 298/720

美琴「・・・でもね、って言ったでしょ?」

上条「あぁ」

美琴「私、そんなアンタのことが好きなのよ」

上条「・・・あぁ、知ってる」

美琴「・・・だから、待ち続けるのよ」

美琴が噴水を見つめる

水しぶきは相変わらず彼女の頬を濡らしていた

もし今泣いてしまっても、水しぶきで誤魔化せるだろうか

美琴「・・・ホントは、アンタにはどこにも行ってほしくないのよ」

上条「・・・あぁ」

美琴「でも、アンタはきっと誰かが困ってたらまっすぐ助けに行きたい人なんでしょ?」

上条「・・・そうだな」

上条が溜め息をつく

頭で考える前に体が動くのだ

まるで、それが使命であるかのように

433 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:35:43.09 01wJbqEB0 299/720

上条「・・・美琴がもしも行ってほしくないって言うなら、俺は行かないよ」

ずっと前に、何よりも美琴を第一にすると決めたのだ

だから、もしも彼女がそう言うのならば彼はそれでもよかった

美琴「・・・バカね、アンタのそういう真っ直ぐなとこも好きなんだから」

はぁ、と美琴が溜め息をつく

本当はとても悩んでいるのだろう

行かないで、と素直に縋りつきたいときもあっただろう

ずっと隣にいてほしい、と懇願したかったときもあっただろう

それでも、彼女はそうはしなかった

彼女なりの強がりだった

美琴「・・・だから、私は待ち続けるわよ」

上条「・・・ずっとか?」

美琴「うん・・・だから、絶対に帰ってきなさい」

美琴「そして、真っ先に私に会いに来て・・・おかえりって言ってほしいのよ」

上条「・・・分かった、約束する」

上条が真剣な顔で頷く

434 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:39:47.73 01wJbqEB0 300/720

美琴「・・・こうやって約束したら、アンタは絶対帰ってきてくれるわよね」

上条「・・・あぁ、そうだ」

美琴「・・・ね、今はどこにも行かないわよね?」

上条「一端覧祭中にどこに行くんだよ」

上条が苦笑する

でも、彼はそういう騒動とは遠そうなときも何かの事件に巻き込まれたりしていた

今どこからかいきなり魔術師がやってきても、さほど不思議ではない

上条「・・・美琴、ちょっといいか?」

美琴「うん、なに?」

ぎゅっ、と上条が美琴を抱きしめる

放さないように

いや、自分が放れないようにか

上条「・・・今はここにいるからな」

美琴「・・・安心するわね」

上条「安心するか?」

美琴「うん、安心する」

437 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:46:20.33 01wJbqEB0 301/720

上条「じゃ、もう少しこうしとこうかな」

嬉しそうに笑いながら美琴を抱きしめる

上条「・・・なぁ、俺さ・・・誰よりも美琴を守るって決めてるんだ」

美琴「ん、分かってるわよ」

上条「・・・だから、美琴がこうしていてほしいならずっとこうしてるよ」

美琴「・・・当麻、ずーっと私のそばにいて?」

上条「・・・分かった」

上条が美琴の髪の毛に手を当てる

サラサラとした手触りが、上条の手に満たされる

上条「・・・よし、ちょっと上条さんかっこつけちゃいますよ!」

いきなり、上条が立ち上がる

もちろん美琴を抱きしめたままだ

美琴「わわっ!!」

上条「大丈夫か?」

美琴「ちょ、ちょっと!!なんで抱き上げるのよ!?」

438 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:51:03.71 01wJbqEB0 302/720

上条「ん、この体勢はきついか」

今のままでは美琴が必死に上条に抱きついていなければならない

そういう意味だと思った上条は、すぐに美琴の膝の裏に手を伸ばした

ひょい、と彼女の体を持ち上げる

いわゆるお姫様抱っこだ

美琴「そ、そういうこと言ってるんじゃないわよ!!」

上条「?でも疲れてただろ、さっきの体勢だと」

美琴「だ、だから・・・」

顔を真っ赤にした美琴だが、やがて諦めたように溜め息をつく

美琴「・・・で、どうやってかっこつけるの?」

上条「・・・こうやって」

美琴を抱きしめたまま、上条が少し噴水から離れる

そこの広場の真ん中に上条は立っているのだ

上条「なんか、劇の主人公とヒロインみたいだよな」

美琴「・・・そ、そうね」

上条「ずいぶんと広い舞台だよな」

440 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 21:56:34.39 01wJbqEB0 303/720

美琴「うん・・・とっても広い」

二人がそっと空を見つめる

こんな広い舞台に、二人は立っているのだ

上条「・・・でもさ、シナリオはないんだよな?」

美琴「うーん・・・でも、二人がこうやって出会えたのはなんか運命みたいじゃない?」

上条「上条さんの右手はそういうのは打ち消すんですよ?」

上条が苦笑する

そんな運命だなんて、簡単になくしてしまうのだろう

それなのに、美琴とは出会えたのだ

上条「・・・でもさ、シナリオなんてないほうがいいよ」

神様がもし物語なんて作ってるなら、そんな幻想はぶち殺してやる、と上条が笑う

上条「・・・なぁ、ちょっと早いかもしんないけど」

美琴「?何が?」

上条「・・・あー・・・そのさ」


上条「け、結婚・・・するんだよな?」

美琴「」

443 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 22:01:43.50 01wJbqEB0 304/720

その瞬間

美琴の顔が真っ赤に染まる

美琴「ふにゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

上条「そ、そんなに暴れるなよ!」

美琴がバタバタとしたせいで、上条が体をよろよろとさせる

少しずつだが、彼のよろめく体は噴水に近づいていく

あれ、ヤな予感がするよ、と上条は直感で感じた

上条「ま、まずいんだって!!」

美琴「ふにゃぁ!!ふにゃぁぁぁ!!!!!」

上条「日本語で!!ネコ語はダメですよ!!」

美琴「だ、だだだだ!!!!!!」

上条「なに言って・・・う、うおぉぁぁぁ!!??」

上条の足がとうとう、噴水の縁に当たった

不幸だ

彼は不幸だ

444 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 22:06:14.17 01wJbqEB0 305/720

上条「あぁもう!!」

美琴「ふにゃっ!?空が傾いて・・・」

そして

水面が二人を飲み込む

その瞬間、上条は大きな声を上げた


上条「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

バシャーン、と水音が広場に響いた


美琴「・・・ビショビショ」

上条「・・・お前が暴れるからだろ」

美琴「わ、私とのことは何もかもが幸せなんでしょ!?」

上条「・・・」

美琴を恨めしそうに上条が睨む

少しドレスが透けているのだが、今はそれどころではない

上条「はぁ・・・」

445 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 22:12:26.34 01wJbqEB0 306/720

美琴「・・・ねぇ、濡れたからちょっと着替えたいんだけど」

上条「・・・着替えは?」

美琴「常盤台の寮か・・・当麻の部屋」

上条「・・・さすがに常盤台の寮に濡れ鼠で帰るわけにはいかないか」

はぁ、と上条が溜め息をつく

上条「うちの寮はそんなに厳しくないから・・・いいかな」

美琴「ん、じゃあお願い・・・」

上条「はーい」

二人は上条の寮へ戻る

しかし、ビタビタと水が衣服から垂れてしまう

上条「あーあ・・・こんなことになっちゃいましたよ・・・」

美琴「・・・一端覧祭はまだ途中なのにね」

はぁ、と肩を落とす二人

上条「まぁ・・・俺がいきなりあんなことしたのも悪かったよ」

美琴「私も・・・もう少し落ち着けばよかったわ」

446 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/30 22:16:05.51 01wJbqEB0 307/720

上条「・・・お互い恨みっこはなしかな」

美琴「うん、そうね」

二人はそのまま歩き続けた


やっと上条の寮にたどり着いたとき、二人の体はすっかり冷え切っていた

上条「・・・寒い」

美琴「へっくち!」

上条「大丈夫か?」

美琴「うん・・・風呂入りたい」

上条「了解」

濡れた服のまま、二人は脱衣所へ向かう

もう一緒に入るのにためらったりはしない

上条「じゃ、入りましょうか」

美琴「はーい」

そして、二人は風呂へ入った






続き: 上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」【中編】


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