※関連
最初: 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
前回: 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」【前編】
垣根「暑いな・・・」
垣根は放送席で団扇を扇いでいた
正直、観客席に見せる姿とは言えない
心理「情けないわよ垣根」
垣根「だって暑いしさ・・・はい、扇いであげるから」
垣根が心理定規に風を送る
サラサラの髪の毛が少し揺れる
心理「あらありがとう」
吹寄「ねぇ・・・その団扇のデザインが気になるのだけれど」
垣根「ん、これか?」
垣根の右手に握られた団扇
よく分からない冷蔵庫が描かれている
しかもドヤ顔の
なんだか見ているだけでコンセントを抜いて中の食材全てを腐らせたくなってしまうような憎たらしさだった
垣根「ていとうこだよ、うらやましいか?」
吹寄「てい・・・な、何それ?流行ってるの?」
心理「気にしないで、彼のオリジナルキャラクターだから」
垣根「違うしー、マスコットグッズ売られてるしー」
心理「あなたが無理矢理店に置いてるだけじゃない」
垣根「ち、違うしー」
心理「無理矢理店長さんを脅してまで置いてほしかったの?」
垣根「・・・わ、悪いかよ!?」
吹寄「いや、悪すぎるわよ」
心理「全く・・・」
はぁ、と心理定規がため息をつく
彼はこういうふざけたキャラよりもカッコイイキャラのほうが似合っているのだが
心理「あなたって役者よね・・・」
垣根「なんか似たようなことをコイツにも言われたよ」
垣根が吹寄を指差す
吹寄「だって・・・貴様はホントにキャラがコロコロ変わるじゃない」
心理「でもそこも魅力的よ?」
心理定規が垣根の肩に頭を乗せる
垣根「お、なんだなんだ?」
心理「こうやって甘えてみるのもいいんじゃないかしら?」
垣根「これこれ、公衆の面前なんだぜ?」
心理「あら、見せ付けてあげればいいじゃない」
垣根「おいおい・・・」
垣根が呆れたように言う
さきほどもこんなことをしていて吹寄のオデコアタックを喰らったのだ
過去の二の舞だけは御免だった
吹寄「・・・心理定規はホントに小悪魔よね」
嫌味ではなく、素直な気持ちを吹寄が口にする
たしかに心理定規は小悪魔といっていい性格だった
大抵の男なら少し甘えられただけで堕ちてしまうだろう
そして堕ちた先には地獄が待っているのかもしれない
心理「あら、甘えてさえいれば大抵の男なんていい気になってくれるのよ」
吹寄「・・・それ、結構な問題発言よね」
垣根「・・・他の男にもそんな甘えた声出してんじゃねぇだろうな」
垣根が少しふて腐れたように尋ねる
心理「あら、もしかしてヤキモチかしら」
垣根「・・・お前は俺だけのもんだからな」
垣根がずい、と心理定規に体を近づける
心理「・・・分かってるわよ」
心理定規が垣根の頬に指を滑らせる
幸い、観客は今行われている競技を見るのに夢中らしい
彼らがイチャイチャしているのに気づいているのは放送席にいるわずかな人員だけだ
そのほとんどが顔を赤らめて気にしないようにしていた
垣根「・・・心理定規」
垣根が心理定規の顎に手を当てる
少しだけ彼女の顔を上に上げた
潤いのある唇が、彼の唇の正面に来る
心理「・・・」
垣根「愛してるぜ、心理・・・」
セリフの途中で誰かにパカーン!と頭を叩かれた
垣根「いってぇ!てめぇ吹寄!」
吹寄「ち、違うわよ!」
垣根「は?」
吹寄は垣根の右にいる
では後ろにいるのは
黒子「・・・何をされていますの?」
黒子だった
恐らく空間移動で現れたのか
あまり人が多いところには移動しないはずなのだが
それはつまり、そこまでしてでも伝えなければならない急用があったのだろう
黒子「少しマイクを借りますの」
吹寄「あ、あの・・・」
黒子「あぁ、申し遅れましたわ」
黒子が肩に付けた腕章を示す
黒子「風紀委員の白井黒子ですの」
吹寄「あ、風紀委員・・・」
垣根「・・・てめぇ白井・・・俺の頭を殴るとはいい度胸じゃねぇか」
黒子「あら、こんなところでいかがわしい行動をなさっているあなたには言われたくありませんの」
垣根「御坂に未だにアピールし続けてるてめぇが言うんじゃねぇよ」
黒子「あらまぁ、人の胸を揉んでばかりいるあなたには言われたくありませんわね」
垣根「はぁ?てめぇレイプでもされてぇのかよ」
意味の分からない火花を散らす二人
その喧嘩を止めたのは心理定規だった
心理「黒子、あなた用事があったからここに来たんじゃなかったの?」
黒子「あら、そうでしたの」
吹寄「なんの用事なんですか?」
黒子「いえ・・・あまりに熱中症の方が多いもので」
はぁ、と黒子がため息をつく
かなり疲れているようだ
垣根「じゃあ熱中症に気をつけろ、ってアナウンスすればいいんだな?」
黒子「あら、アナウンスしていただけますの?」
垣根「・・・まぁ仕方ねぇからな」
垣根がマイクを握る
垣根「あーあー、選手のみなさん、水分補給はこまめにしてください」
垣根「熱中症は恐ろしいです、ヘタをすればポックリ逝ってしまうのですから」
垣根「まぁ、死んでもいいよ、とかいうバカはそのままで結構」
垣根「たった120円出せば飲み物は買えますよー」
垣根「この先の人生がその飲み物に救われるかもしれませんね」
垣根「人生があと60年くらいとしましょう」
垣根「一年当たりを2円で買えるんです、安いでしょう?」
垣根「ちなみに俺はゲータレードをオススメしておこう」
垣根「水分がどうしてもないのなら水道を使ってくれよな!」
垣根「綺麗な水が出てくるから、だってここは学園都市だし」
垣根「以上、熱中症でぶっ倒れるなんて笑い者だからな」
垣根がアナウンスを終える
黒子「・・・あの、そういうアナウンスとは・・・」
垣根「なんだよ、ああいう脅してる感じのほうがみんなは言うこと聞くんだよ」
ケラケラ、と垣根が笑う
黒子「たしかに分かりやすかったかもしれませんが・・・」
吹寄「でもちょっとおかしい内容だったわよ」
心理「こっそりCM入れてたわよね」
垣根「聞こえない」
垣根が耳を塞ぐ
黒子「はぁ・・・ですがありがとうございますの」
黒子が頭を下げる
アナウンスをする手間が省けてありがたかったのだろう
垣根「なに、畏まるこたぁねぇよ」
ヒラヒラ、と垣根が手を振る
黒子「ではわたくしはこれで」
ヒュン、と黒子の姿が消える
吹寄「・・・空間移動?」
心理「えぇ、かなり便利そうな能力よね」
垣根「あんなもん精密すぎて演算が難しいだろ」
垣根がバカにしたようにつぶやく
彼の能力は非常に応用がきくのだ
だからこそ、演算が難しいなんてバカに出来るのだ
大抵の学生は空間移動系と聞いただけで尊敬の眼差しを送るのだから
垣根「しっかし・・・この暑い中をすぐに移動できるのは楽かもな」
心理「歩いて移動したらかなり汗をかくものね・・・」
吹寄「風紀委員なら、情報伝達にも便利かもしれないわね」
垣根「あぁ、そういう考え方もあるな」
良くも悪くも、黒子に似合っている能力だ
覗きに応用するのだけはいただけないが
垣根「・・・あぁ、あちぃ」
垣根が机に突っ伏す
心理「あら・・・私ともっと熱くなりたくない?」
垣根「そういうのは夜にしようぜ・・・」
うだー、と垣根が体をジタバタさせる
吹寄「どうでもいいけど、そうやって貴様がジタバタすると机が揺れてうるさいのよ」
垣根「おらおらー、垣根がバイブレーターになっちゃったぞー、カーキネーターだぞー」
くだらない、と吹寄がため息をつく
吹寄「はぁ・・・それにしても暑いわね」
この中で競技を行っている選手達はホントに疲れるだろう
垣根「あぁ・・・こんな中にいたらそりゃ熱中症にもなるよな」
心理「仕方ない場合もあるんでしょうね」
吹寄「あなた達も水分補給はしっかりしなさいよ?」
吹寄が二人にスポーツドリンクを差し出す
垣根「サンキュー・・・」
心理「はぁ・・・まだあと1時間あるのね」
午前の部が終わるまでまだ時間はあった
早いとこ涼しいレストランにでも行きたい
心理定規はそんなことを考えながら重い息を吐いていた
初春「・・・あ、おかえりなさい白井さん!」
黒子「とりあえずアナウンスは成功しましたの」
削板「これで倒れる学生が減ったらいいけどな・・・」
初春「そう簡単にはいかないですよ」
初春が苦笑する
誰もが自分はそんなことにはならない、とたかをくくっているのだから
黒子「まったく・・・こちらの苦労も少しは考えてほしいですの」
削板「でもみんな軽症みたいでよかったじゃないか」
黒子「そ、それはそうですが・・・」
黒子が決まりが悪そうにうつむく
なんだか、愚痴をこぼした自分があまりにも子供っぽく思えたのだ
初春「でも愚痴もこぼしたくなりますよ」
初春が汗を拭う
この炎天下の中、人が倒れたと聞いてはその現場に移動し
担架にその人物を乗せたらまた本部にまで戻ってくる
そんな重労働をしばらく続けているのだ
正直、彼女達の体にも疲れが溜まっている
黒子「ですが、弱音を吐いているヒマはありませんの」
削板「そうだな、根性で乗り切るぞ!」
天に向けて拳を突き出す削板
かなり暑苦しい彼だが、こういうときは非常に頼りになる
黒子「はぁ・・・風紀委員は競技を楽しむこともままなりませんの」
初春「仕方ないですよ、結果だって近くの電光掲示板を見なきゃ分からないんですから」
黒子「そうですのね・・・」
風紀委員だって一応は学生の集まりなのだ
やはりクラスメイトや友人と馬鹿騒ぎをしたい
削板「・・・大変だよなぁ」
初春「誰かがしないといけないことですからね」
初春が苦笑する
彼女は体力があるわけではない
ただ、正義感だけは人一倍強かった
削板「そういえば、ウイーハルさんはなんで風紀委員になろうと思ったんだ?」
初春「・・・私は白井さんに憧れて、ですかね」
黒子「あら、わたくしに出会う前から志願していたのでしょう?」
黒子が驚いたように尋ねる
初春「たしかにそうですけど、でもあの時白井さんに励まされてなかったら絶対に辞めてましたよ」
初春が頭をかく
こんな話をするのは初めてだったかもしれない
黒子「あら・・・そうだったんですの?」
初春「はい・・・今はあんまり尊敬してないですけど!」
ニコリ、と初春が微笑む
黒子「初春・・・喧嘩を売っているならそう言ってくださいな」
初春「いえいえ、私は儲けられないなら売ったりしませんよ」
黒子「風紀委員としてあるまじきセリフですの・・・」
初春「白井さんの変態もあるまじき行動ですよ?」
黒子「あら、あなたのお花畑もですの」
二人が火花を散らす
仲良しだなぁ、と削板は一人微笑んでいた
テクパトル「はぁ・・・17600号は上手くやってるかな」
19090「大丈夫ですよ、きっと」
御坂妹「テっくんは心配性ですね」
テクパトルと愉快なミサカ達は観客席に座っていた
しっかりと水分補給をしながら競技を見ている
20000「あ、あっちの学生さんちょっと可愛くない?」
10039「な、なんで女性を見ているのですか!」
20000「ミサカ、両方いけるんだよ♪」
13577「だ、だからミサカ達にあんなことをさせたのですね!?」
20000「あ、なんならここでもう一回・・・」
テクパトル「やめろ」
はぁ、とテクパトルがため息をつく
膝の上で頬杖をつき、あくびをする
暑いうえに、今行われている長縄飛びはヒマなのだ
盛り上がるタイミングは分からないし、何より見ていて映えない
もっとやる競技があるだろ、と感想を抱いていた
ちなみに彼が思い浮かべていたのはボクシングやら柔道やらとあまり大覇星祭には関係ないスポーツばかりだったのだが
19090「テっくん、お菓子食べますか?」
テクパトル「ん・・・何があるんだ?」
19090「ガムとチョコとポテチと・・・」
テクパトル「いや、この暑さじゃチョコは溶け・・・」
19090「あぁ!チョコがドロドロになっています!」
御坂妹「ゲコ太型だったのに!」
20000「ハァハァ・・・こ、この溶けたチョコを全身に塗りたくったらテっくんは舐めてくれる?」
テクパトル「断る」
14510「どうせ19090号がやっていたら喜んで食いつくんですよ」
テクパトル「んなわけないだろ!」
頭を抱えながらテクパトルが否定する
どうもミサカ達の思考回路は一般とずれているらしい
おかげで退屈をしないのはありがたかったが
テクパトル「にしても・・・今日はまた一段と暑いよな」
19090「・・・そうですね・・・」
御坂妹「暑いですよね・・・」
ミサカたちがTシャツやらスカートやらをパタパタさせる
テクパトル「・・・そういう行動はやめたほうがいいぞ」
13577「おや、なぜですか?」
19090「・・・は、肌が見えるからですよ?」
14510「・・・なるほど」
20000「あれか、テっくんはミサカたちの柔肌を見ると勃起しちゃうのか」
テクパトル「ちげぇよ・・・」
10039「テっくん、なんだか疲れてますね」
20000「まさかもう賢者・・・」
テクパトル「だから違う!!!」
テクパトルは頭を抱えていた
20000号は変態すぎる
20000「ねぇ、勃起して辛いならミサカが・・・」
テクパトル「はぁ・・・もうイヤだ」
10033「おなかが空きました、テっくん」
御坂妹「テっくん、喉が渇きました」
19090「あ、あの競技はなんですか?」
テクパトル「俺は聖徳太子じゃない・・・」
もう一度
テクパトルは溜め息をついた
上条「・・・はぁ」
イン「あー!!このお菓子美味しいんだよ!」
インデックスはまだ食べ物を漁っていた
神裂「インデックス・・・そろそろ昼ごはんですよ?」
美琴「そんなに食べて大丈夫なの?」
イン「うん!!ちょっとおなかを温めないと!!」
ステイル「は、ははは・・・」
五和「で、ですが太ったら・・・」
イン「?私は太らないんだよ?」
クッキーをむさぼりながらインデックスが首を捻る
上条「あのなぁ・・・そういう問題じゃないんだよ」
イン「どういう問題?分からないかも」
上条「俺たちはこれから昼飯なの!!そんな光景見せられたら腹いっぱいになるんだよ!」
イン「じゃあ私の分け前が増えるの!?」
上条「なんでそうなんだよ!!」
上条が頭を抱えながらうめく
何しろ、目の前では未だにインデックスがクッキーを吸っているのだ
見ているだけでおなかが膨れる
これから自分が何かを食べるのさえイヤになるほど、インデックスはたくさんの量を食べていた
ステイル「だが、食べすぎは体に悪いよ?」
イン「?タバコのほうが悪いんだよ?」
上条「それはいいわけだ!!」
ステイル「ニコチンがない世界は地獄だ!」
イン「食べ物がない世界は阿鼻叫喚図なんだよ!」
美琴(よくやってられるわね・・・)ハァ
神裂(あの子は昔からよく食べましたね・・・)
上条「大体、ステイルが全部払ってるんだろ!?」
イン「そ、それは・・・」
上条「甘えてんじゃねぇよ!!」
上条が右手を握り締める
美琴(く、来るわねそげぶ!!)
五和(ま、間近で見るのは久しぶりです!)
神裂(・・・これはなかなか見ものですね・・・)
上条「なんでそうやって今の状況に甘えてるんだよ!?」
上条「ステイルはお前を思っていた!!だからお前にこうやって・・・」
ステイル「上条当麻、この子を悪く言わないでほしい」
上条「あ、今説教・・・」
ステイル「いいかい、僕の金なんだ」
ステイル「どう使おうが僕の自由だろう?」
上条「い、いや・・・」
美琴「と、当麻負けないで!!」
上条「お、おう!!」
ステイル「とにかく、君がどうこう言うことではないよ、文句言うならイノケンティウスだ」
上条「ごめんなさい」
美琴(あ、負けた)
神裂(負けましたね・・・)
五和(て、手加減をしたんですよ!)
上条「・・・そうだ、それより昼飯・・・」
上条がぽつりとつぶやく
美琴「まぁ・・・食欲は正直湧かないけどね」
ステイル「じゃあ、レストランにでも行こうか」
6人が立ち上がる
イン「昼ごはん♪」
インデックスだけは、まだ楽しそうだった
エツァリ「・・・穏やかな 夏の陽射しが 降り注ぐ」
ショチトル「70点」
エツァリ「おや、厳しいですね」
こちらの二人はなぜか俳句を読んでいた
トチトリがいないため、また二人なのだ
ショチトル「なんか・・・ヒマだな」
エツァリ「えぇ・・・テクパトルたちはどうでしょうか」
ショチトル「なに、任せていいだろう」
ははは、とショチトルが笑う
エツァリ「・・・そうですね、彼には暖かい家族もいますから」
ショチトル「しかし、ホームシックとはな」
ショチトルは少し驚いていた
トチトリはかなり精神的に強い少女だ
テクパトルに利用されたときも
そのあと、立派に立ち直った
そんな少女があそこまで泣き崩れるだなんて
エツァリ「それほど、家族は大切なのでしょうね」
ショチトル「そうだな・・・」
二人が苦笑する
エツァリ「・・・彼女も、普通の生活を手に入れたのですね」
ショチトル「・・・私達と一緒だな」
あの組織にいたころとは違う
普通の、平凡すぎる生活
エツァリ「・・・幸せですね」
ショチトル「それは、人それぞれさ」
もしかしたら
誰かは、あの組織が幸せだったのかもしれない
人を殺すことが幸せな人間
誰かを顎で使うのが幸せな人間
仕事だけをして生きるのが幸せな人間
そんな人間だって、あの組織にいただろう
エツァリ(そうだとは、信じたくないですがね)
ショチトル「それでも、あの組織が不必要だったと言い切れるのかな」
エツァリ「・・・どうなんでしょうか」
エツァリにはわからなかった
たしかに、彼は今幸せだ
テクパトルやショチトル、そしてトチトリもそうだろう
そして、トチトリと共に暮らしている家族も
エツァリ「ですが、中には組織の再編を狙っているものもいるでしょうね」
ショチトル「あぁ、そうだとも」
エツァリ「・・・いったい、幸せとはなんなのでしょうか」
ショチトル「そうだな、答えなど無いさ」
ショチトルが苦笑する
彼らは今幸せだ
組織と言うものを犠牲にしたうえで成り立っている幸せだ
ショチトル「・・・誰かを犠牲にした幸せか」
エツァリ「そうだとしても、自分はそれで構いません」
エツァリは今の幸せを手放すつもりはない
ショチトル「・・・幸せ、か」
ははは、とショチトルが苦笑する
エツァリ「・・・自分は、この幸せだけを守れたらそれでいいんですよ」
ショチトル「そうだな、私もだよ」
エツァリ「そろそろ昼時ですね」
ショチトル「・・・そうだな」
二人がレストランへ向かう
こういった幸せが、嬉しいのだろうか
ショチトル「そういえば、上条たちは競技に出ないのかな」
エツァリ「あ、そういえばそうですね」
ショチトルがパンフレットを広げる
競技の項目には、上条たちの高校は乗っていない
エツァリ「おや・・・今日もないのですね」
ショチトル「そうだな、大覇星祭なんて基本ヒマな時間のほうが長いらしいし」
エツァリ「では、行きますか」
大覇星祭5日目
そろそろ盛り上がりに欠ける時間帯になってきた
垣根「あー、昼飯だ昼飯」
垣根が放送席で弁当箱を広げる
吹寄「あら、今日は食べに行くんじゃないのね」
垣根「あぁ、作ってきたんだよ」
心理「どうりで朝早く起きてたわけね・・・」
吹寄「え、垣根って料理上手なの?」
垣根「あぁ、わりと得意だぜ」
垣根が弁当箱の中を吹寄に見せる
色とりどりの弁当だった
バランスも良さそうで、なおかつ美味しそうな弁当
女子でもここまで立派な弁当を作れる人は少ないだろう
吹寄「へぇ・・・美味しそうね」
垣根「心理定規のもあるぞ」
心理「あら、ありがとう」
心理定規が垣根から弁当箱を受け取る
心理「あなたのとは中身が少し違うのね」
垣根「そっちのほうが楽しいだろ、はい吹寄」
吹寄「・・・え、なに?」
垣根「なにじゃねぇよ、お前の分」
垣根がもう一つ弁当箱を差し出す
吹寄「・・・私の分なの?」
垣根「あぁ、一応ヘルシーにしといたぜ」
キリッ、と垣根が決める
吹寄「ありがと・・・」
パカっと蓋を開ける
たしかに、健康に良さそうな食材を使っている
しかし、それでも美味しそうなのは垣根の腕がいいからだろう
心理「あら、かなりヘルシーね」
横から心理定規が覗き込む
吹寄「・・・でも、少しカルシウムが少ないわね」
垣根「どこの栄養管理職だよ」
吹寄「逆にたんぱく質が多すぎるわね」
心理「テクパトルとかは喜びそうね」
吹寄「じゃあ・・・」
垣根「はいはーい!!しわとしわを合わせて!?」
吹寄「え?」
心理「幸せ!!」
垣根「ふしとふしを合わせたら!?」
心理「それはダメ!!」
吹寄(な、なにこれ!?)
垣根「ブルータス、お前もか!?」
心理「私も、そしてお前もだ!!」
垣根「鎧戸を!!」
心理「開けてくれ!!」
垣根「もっと!!」
心理「光を!!!!!」
垣根「いただきます!!!!」
心理「いただきます!!!!!!」
吹寄「い、いただきます・・・?」
垣根「捥ぐ捥ぐごっくん!!」
心理「捥がないで」
吹寄「?何目隠しを持ってきているの?」
垣根「説明しよう!目を閉じて何かを食べ、それが何だったかを当てるのだ!!」
心理「ちなみに、不正解だとこのビリビリジュースを飲まないとダメよ」
吹寄「そ、それで?」
垣根「二人が挑戦してくれ」
垣根「ちなみに!!目隠し外したらその時点で失格な」
吹寄「・・・ヘンなものは食べさせないでね」
心理「まぁ、そこは大丈夫よ」
垣根「じゃ、目隠し目隠し」
垣根が二人に目隠しをする
垣根「では、観客席のみなさん!!」
一同「いぇーーー!!!!」
垣根「盛り上がっていきましょう!!」
一同「ふぉーーーー!!!!」
垣根「では、二人にはヘッドフォンもしてもらいます」
心理「?」
垣根「観客席には何を食べたか伝えるんだよ」
心理「あぁ、なるほどね」
垣根「よし、ではヘッドフォンもつけたし・・・」
垣根が怪しい箱を取り出す
垣根「この中に、いろんな食材が書かれたクジが入ってる!!」
垣根「まずは!!この食材だ!」
一本、クジを引く
垣根「最初に二人が食べるのは、>>686!!!」
686 : VIPに... - 2011/08/16 12:21:30.97 qkKVhyywo 570/837プロテイン
垣根「プロテイン!!食べるというよりは飲むものだけどね!!」
一同「おー!!」
垣根「ちなみに、提供はチャンピオン社!!」
垣根「ホエイスタックプロテインはまさに王道!」
垣根「おそらく、全世界で最も飲まれているプロテインと言っていいでしょう!!!」
垣根「味はさまざま、もちろんたんぱく質を一回で25g程度も取れてしまいます!」
垣根「味だって、日本のものとは比べ物になりません!」
垣根「価格も安く、味もよし!」
垣根「今回は、クッキー&クリーム味、甘党にはたまらない一品です!!」
垣根(テクパトルの書いた説明文だがいいのかこれ?)
垣根がプロテインを水に溶かす
少し濃い目にして、できるかぎり分かりやすくする
垣根「じゃ、ヘッドフォン外すぞー」
垣根が二人のヘッドフォンを外す
心理「・・・観客席がヘンな盛り上がりを見せているのはなぜ?」
垣根「坊やだからさ」
吹寄「とりあえず、早くしてくれないかしら」
垣根「はい、これはちょっと飲み物だな」
心理「ちょっとじゃない飲み物があるの?」
垣根「バリウムとか」
心理「飲み物じゃないわね」
ゴクリ、と二人が飲む
心理「んっ・・・なんかちょっとドロドロしてない?」
吹寄「・・・ダマはないから、しっかり溶かしたのかしら?」
心理「・・・ねぇ、ヘンなものじゃないわよね?」
垣根「公衆の面前でヘンなものは飲ませねーよ、吹寄のほうが分かりやすいかも」
吹寄「うーん・・・ちょっと待って」
垣根「では、形容してみよう!!」
吹寄「え、何を飲んだのか当てる・・・」
垣根「オリジナリティー溢れる名前にしてあげよう!!」
垣根が無茶振りをする
吹寄「え、えっと・・・」
吹寄「ネバついた・・・」
心理「亜熱帯」
垣根「はい、こちらはこれからネバついた亜熱帯と呼ばれることになりました!!」
わー!!と観客席から声が上がる
吹寄「ねぇ、結局なんだったの?」
垣根「プロテイン」
心理「分かるわけないでしょ・・・」
垣根「はい、またヘッドフォン!!次は・・・」
垣根「>>693!!」
693 : VIPに... - 2011/08/16 12:30:48.75 bc0H0+OIO 577/837イ、インデックスさんや…
男の人はおおぐいの人は苦手なんやで?
ちょww
垣根「インデックスさん!!」
え?と観客席が首を捻る
垣根「えー、こちらにイカが用意されています」
垣根「これはもはや、インデックスと言っていいでしょう」
垣根が二人のヘッドフォンを外す
心理「・・・うわ、なんかコリコリしてるわね・・・」
吹寄「・・・ちょっとイカ臭くない?」
心理「・・・」
吹寄「・・・」
心理「ちょっと垣根、何してんのよ」
垣根「俺にチソコは一つしかないぞ」
吹寄「あれ、なんか吸盤があるわね」
心理「あ、分かったかもしれないわ・・・って言うかさっき答え出たわよね」
垣根「お、では答えは!?」
吹寄「イカ!!」
心理「ゲソ娘」
垣根「正解!!まさか二回目で正解とは!!」
垣根「いやぁ、なかなかに盛り上がってまいりました!!」
一同「いぇーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
女の子の少しエッチな反応が好きなのだろうか
観客席が異常に盛り上がっている
垣根「さぁ、次は・・・」
垣根「>>698!」
698 : VIPに... - 2011/08/16 12:38:12.81 rw8qLRs10 582/837酢豚のパイナップルいってみようか!
・・・案外わかりにくいと思うw
垣根「酢豚のパイナップル!!」
垣根「じゃあ、パイナップルに酢豚のエキスをたくさんつけましょうねー」
垣根がパイナップルを浸す
垣根「よーし、行って見よう!」
心理「・・・?甘い・・・かしら」
吹寄「え、ちょっとしょっぱくない?」
心理「あら・・・でもそう言われたら・・・」
心理「・・・シャリシャリしてるわね」
吹寄「えっと・・・甘くて、でもしょっぱくて・・・」
心理「シャリシャリしてるもの・・・」
吹寄「んー・・・なんだろ?」
心理「私が思うに、魚介系じゃないかしら?」
吹寄「うん、エビとかよね」
垣根(こいつらバカだべ)
心理「よし、じゃあ形容するわね」
垣根「あぁ、頼む」
吹寄「ダイビングが得意な」
心理「クソガリ」
垣根「はい、これからはこちらはダイビングが得意なクソガリになりました!!!」
吹寄「ん?パイナップル?」
心理「あぁ、酢豚に浸したのね」
垣根「あー、そろそろお時間ですね」
心理「まぁ、わりと楽しかったんじゃない?」
垣根「そうかもな」
吹寄「ではみなさん!!午後もがんばっていきましょう!!」
一同「おーー!!」
まだまだ暑い陽射しが差している
放送席の人員は必死に盛り上げようと苦戦していた
17600「で、ここがミサカたちのお気に入りの店だ」
17600号とトチトリは学園都市の中を散策していた
競技など興味はないし、他にやることもないからだ
トチトリ「・・・へぇ・・・」
17600「アクセサリとか好きか?」
トチトリ「あ、あぁ!!」
トチトリがうなずく
トチトリ「アクセサリには魔術的な意味が含まれるからな!」
17600「なるほどな・・・」
トチトリ「ただの十字架のネックレスでさえ、少し細工を加えれば霊装になってしまう!!」
17600「魔術ってのはなかなか面白いな」
17600号が興味深そうに訊ねる
トチトリ「ただ、体力を魔力に精製するから・・・」
17600「体力は減りやすい、か」
トチトリ「あぁ」
17600「長期戦になれば科学側が有利、その変わり異様性では魔術、か」
トチトリ「す、すごい理解力だな」
17600「なに、たまにテっくんから聞くからな」
ふふん、と17600号が胸を張る
そうしても、あまり胸が強調されないのは悲しかったが
トチトリ「・・・17600号は・・・なんでテクパトルと過ごしてるんだ?」
17600「ん、ミサカか?」
トチトリ「あぁ・・・正直、あいつとずっと一緒にいるのは疲れないか?」
トチトリが訊ねる
それも仕方の無いことだろう
昔のテクパトルは少し話をするだけでも疲れてしまうほどの人間だった
それと一緒に暮らすなんて
もちろん、今のテクパトルが変わったのはわかっているが
17600「・・・そうだな」
17600号が顎に手を当てる
当たり前のことをなぜ、と聞かれてもすぐには答えは出てこない
17600「・・・最初はミサカたちがお世話になってるから、だったな」
トチトリ「・・・それだけ、か」
17600「あぁ」
もし彼が他のミサカの世話をしていなかったら
そもそも二人は出会っていなかっただろう
17600「でも、過ごすうちに少しずつ分かっていったのさ」
トチトリ「・・・なにが?」
17600「テっくんのことさ」
17600号が笑う
その横顔は楽しそうだった
17600「あいつはバカなほど真っ直ぐだ」
トチトリ「・・・まぁ、昔もそうだったかもな」
17600「そして、その真っ直ぐな道は決して間違っていない」
トチトリ「そうかな・・・」
17600「そばにいるミサカたちが言うんだ、間違いないさ」
トチトリ「・・・だから一緒にいるのか?」
17600「居心地がいいからな」
トチトリ「・・・そうか」
トチトリがうつむく
トチトリ「・・・お前は」
17600「ん、なんだ?」
トチトリ「テクパトルのこと、好きなのか?」
17600「恋愛感情はないよ」
ははは、と17600号が笑う
17600「家族としては大好きだがな」
トチトリ「・・・そっか」
17600「お前も、今のテっくんはいいヤツだと思うだろ?」
トチトリ「誑しだがな」
17600「あぁ、それは否定できない」
トチトリ「だろ?」
二人が顔を見合わせて笑う
17600「でも、いいヤツさ」
トチトリ「そうだな」
17600「・・・ホント、いいヤツだよ」
ふと
17600号が真剣な顔をする
クローンである彼女達に優しくしてくれる
それはとても変わっていることだった
それを受け入れ、認めてくれる
17600「ホント、優しいよ」
トチトリ「いい家族だな」
17600「あぁ、自慢の家族だ」
トチトリ「・・・私の家族と同じくらい、な」
17600「お前の家族は暖かいか?」
トチトリ「あぁ、すっごくな」
17600「そりゃよかったな」
トチトリ「あぁ、幸せだよ」
17600「・・・ミサカは、今の生活が好きだ」
17600「お前もそうだろう?」
トチトリ「・・・この時間が好きだな」
17600「この時間?」
17600号が首を捻る
まるで彼女といるのが楽しいというように聞こえたのだ
トチトリ「あ、ヘンな意味ではなく!」
17600「あぁ、分かってるよ」
トチトリ「・・・お前はなんか、お姉ちゃんみたいな存在だな」
17600「・・・姉、か」
彼女の姉は
もっと強くて、もっと優しかった
17600「ミサカはお姉ちゃんなんてなれないさ」
トチトリ「?」
17600「さて、そろそろテっくんのところに帰ろうか」
もう競技は始まっている時間だ
競技場に帰れば会えるだろう
トチトリ「・・・あ、あのさ!!」
トチトリが声を上げる
17600号は立ち止まって振り返る
トチトリ「・・・た、楽しかったよ」
17600「そうか」
ニコリ、と17600号が笑う
あまり感情が豊かではない
それでも、その笑顔は嬉しそうだった
トチトリ「・・・ま、また」
17600「なんだ?」
トチトリ「また、さ」
顔を真っ赤にして
トチトリが17600号を見つめる
トチトリ「あとで、二人で話してくれるか?」
17600「?あぁ」
少し鈍感な少女
少し不器用な少女
二人の抱える感情はまったく違った
削板「あ、競技の始まる時間か」
削板がぽつりとつぶやいた
競技が始まった、ということはまた熱中症になる学生が増えるだろう
黒子「垣根さんにアナウンスはしていただきましたが・・・」
初春「それでも完全にいなくなるとは考えられないですね・・・」
削板「ま、数が減るならそれでいいさ」
スポーツドリンクを飲みながら削板が苦笑する
風紀委員の仕事というのは本当に様々だ
パトロールやら熱中症患者の介抱やら
よく耐えられるものだ、と心の中で感心する
初春「減るだけじゃダメです!もっと一人一人が自覚を持って解決策をとってくれないと!」
黒子「この大人数が全員、はい分かりました、なんて言うわけないですの」
初春「そんな現実的なことを言わないでください!」
削板「でも何人かは無視するヤツもいるんじゃないか?」
黒子「むしろ警告を真摯に受け止めて下さる方のほうが少ないと思いますの」
はぁ、と黒子がため息をつく
彼女としても選手全員がしっかりと対策をしてくれたほうがありがたいのだ
しかしまさか200万を超える学生全員がしっかり言うことを聞くなんて考えられない
悲しいことだがそれが事実だ
そして、彼女達風紀委員はそんな事実と向き合わなければならないのだ
初春「はぁ・・・佐天さんから一緒にスイーツ食べないかって誘われてるんですよね」
黒子「仕事を第一になさいな」
初春「だって!大覇星祭中限定のメニューですよ!?やっぱり気になるじゃないですか!」
黒子「邪念を捨てるのです、初春!」
二人がまた火花を散らす
よく飽きないものだ
削板「・・・はぁ、それにしてもヒマだな」
今は昼休みが終わってすぐは意外とヒマなのだ
熱中症だった患者も回復し、それぞれの競技へ向かっている
中にはやや重い症状のために病院に運ばれている者もいるが
黒子「これから忙しくなりますから、構えておかないといけませんの」
初春「はぁ・・・また患者にスポーツドリンクを渡す仕事が始まります・・・」
削板「どっかで聞いたようなネタだな」
黒子「?」
初春「・・・佐天さんは今頃・・・」
スイーツを食べているのだろう
とても、うらやましかった
佐天「あれ、誰かに呼ばれたような・・・」
■■「気にしなくていいと思う」
佐天「そうだよねー!」
佐天と■■
正直地味な二人である
なぜ、この二人が一緒にスイーツ店にいるのか
いや、二人ではない
御坂妹「お、こちらのケーキも美味しそうですね・・・」
19090「こっちはクッキーですか・・・」
20000「やっべぇ・・・こりゃ天国だぜ」
佐天「みんなも何か食べなよ!」
10033「では・・・」
テクパトル「・・・はぁ」
テクパトルと愉快なミサカたち
なぜか、佐天、■■と面識を持ってしまったのだ
佐天「ねぇ、テクパトルさんは食べないの?」
テクパトル「あぁ・・・今はいい」
■■「あなたは。空気を読まないのね」
13577「読めないんですよ」
テクパトル「ちげぇよ・・・」
14510「テっくん、食べなきゃ店の人に悪いですよ?」
テクパトル「・・・仕方ないな」
テクパトルが適当にケーキを探す
この店はケーキやらクッキーやら、スイーツをバイキングできるのだ
テクパトル(・・・甘そうだな)
いかにも女子が好きそうな商品ばかりだ
テクパトル(・・・いや、これは甘そうだな・・・)
テクパトルは別に甘いものが嫌いなわけではない
しかし、こうも暑い時期に甘ったるいものを食べたいとは思わない
テクパトル(・・・チョコケーキでいいか)
一つだけトレイに乗せ、彼はテーブルに帰る
19090「・・・一つだけ・・・」
■■「ダメな人」
テクパトル「仕方ないだろ・・・」
19090「で、ですがバイキングですよ?」
佐天「お金もったいないじゃん」
13577「そうですよ、テっくん」
テクパトル「・・・甘いものは今はいいんだよ・・・」
20000「もったいないぞ」
テクパトル「・・・」
他のメンバーのトレイを見る
ケーキにクッキー、ドーナッツやらモンブランやら
そんな甘いものばかり食べたら太るのでは、と心配になるほどスイーツが乗っている
テクパトル「・・・よく食えるな」
■■「甘いものは。別腹」
■■がケーキを口に運ぶ
御坂妹「テっくん、そんないやらしい目で見ないでください」
テクパトル「俺が見てるのはスイーツだ」
20000「え、スイーツに欲情してんの?」
テクパトル「んなわけあるか」
佐天「ほらほら、もっと食べなよ!」
佐天が身を乗り出しながらテクパトルに言う
そういう体勢は、胸元が見えそうになるのだ
普通の学生なら多少ドキドキとしてしまうだろう
しかし、テクパトルはミサカたちの下着姿なんて日常的に見ている
それに比べたら、興味のない女性の胸元などどうでもよかったのだ
テクパトル「・・・はぁ」
しぶしぶ、テクパトルがケーキを食べる
チョコの甘みが口に広がった
19090「どうですか、テっくん?」
テクパトル「どうって・・・」
テクパトルが言葉に詰まる
美味しい、それはたしかだ
しかしどう、と言われても形容しがたい
美味しい、と言ってもつまらないだろうし、かと言って、これといった例えもない
テクパトル「そうだな・・・」
佐天「うんうん!!」
■■「どんなコメントをするのか。気になる」
御坂妹「これは期待ですね」
テクパトル「・・・お前にも食べさせたくなったよ」
テクパトルが19090号を見つめながら言う
19090「・・・えっ?」
佐天「くぁーっ!!うらやましいね!!」
■■「こうやって。世界はカップルで埋め尽くされた」
13577「わら人形買ってきますね」
10039「落ちついてください、テっくんの頭にわら人形を打ち付ければいいんですよ」
10033「それは名案です」
テクパトル「いや・・・そのネタはマイナーすぎる」
14510「・・・真っ赤ですよ」
19090「あ、あわわわ!!」
テクパトル「?食べたいのか?」
■■「鈍感でプレイボーイ。上条君に似てる」
佐天「?誰?」
■■「ひどい人」
佐天「?」
テクパトル「上条と一緒にするな・・・」
御坂妹「いえ、そっくりです」
テクパトル「マジかよ・・・」
がっくり、とテクパトルが肩を落とす
あの上条と一緒
ということは、自分は相当不幸なのだろうと
重要な論点がずれているのには気づいていない
佐天「ほらほら、とにかくじゃんじゃん食べよう!!」
10033「おー!!」
女達は本当に甘いものが好きだ
食べ終わったと思ったらすぐにまた取りに行く
テクパトル(・・・太るぞ)
たった一人の男であるテクパトルは
そんな、失礼な感想を抱いていた
垣根「ほーほーほけきょ」
心理「季節はずれよ」
放送席では
未だに垣根がふざけている
垣根「あーあ、初日とか二日目は楽しかったのにな・・・」
吹寄「・・・仮にも実行委員である私の前で言わないでほしいわね」
垣根「えー」
垣根「だってさ、放送席が盛り上げなきゃいけないなんておかしいぜ?」
吹寄「そ、それはそうだけど・・・」
吹寄が少しうろたえる
必死に企画をしたのであろう、彼女だって今回の大覇星祭には自信を持っていたのだ
垣根「あー、つまんねぇよ」
吹寄「き、貴様・・・」
心理(あら、怒っちゃうわよ)
垣根「いいか、お前がしっかりしないからだぜ?」
吹寄「貴様!!それは少し言いすぎよ!!」
垣根「いやいや、だってよくよく考えろよ?」
垣根がプログラムを見直す
垣根「なんで綱引きのあとに大玉ころがしなの?」
垣根「普通はそこで二人三脚だろ?」
吹寄「そ、そういうものなの?」
垣根「心理定規もそう思うよな?」
心理「あら、私は綱引きのあとは借り物競争がいいと思うわ」
垣根「えー、時間掛かりすぎるじゃん」
吹寄「二人三脚もでしょ・・・」
垣根「いいか、綱引きとは集団と集団の戦いだった」
心理「えぇ、それはそうね」
垣根「つまり、それは個ではなく集団として戦ったんだよな?」
吹寄「そうだけど・・・」
垣根「二人三脚は素晴らしい」
垣根が腕を組む
今から語りますよ、というアピールだろうか
垣根「まず、足と足が密着する」
心理「・・・えぇ」
垣根「つまり、体は自然と距離がなくなる」
心理「・・・もちろん、離れられないわね」
垣根「そして、同じゴールを目指すだろ?」
吹寄「うん・・・それも分かるわ」
垣根「心も体も同じように重なるんだ」
心理「・・・たしかに、そういえば」
垣根「そして、何より肩を組む」
垣根「体が倒れそうになれば支えあう」
垣根「しっかり立てれば速さはどんどん上がっていく」
垣根「恋と似ていないか?」
心理「そうかしら」
垣根「俺は二人三脚が大好きだ」
吹寄「へぇ・・・」
垣根「セミの抜け殻と同じくらいに好きだ」
心理「そこまで好きじゃないのね」
垣根「・・・とりあえず、来年はもっと面白い大覇星祭にしろよな」
吹寄「・・・分かったわよ」
吹寄が溜め息をつく
心理「とりあえず、今は今に集中しましょ?」
垣根「あーい」
垣根がマイクを握る
垣根「いいか、みんな!!」
一同「おー!!」
垣根「盛り上がってるかい!?」
一同「いぇー!!!」
垣根「まだまだ、あと二日はあるんだ!!楽しんでいけよ!!」
一同「わーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
陽射しが暑い中
まだ、競技は続いていた
旅掛「うーん・・・」
旅掛は唸っていた
美鈴「うーん・・・」
美鈴も唸っていた
旅掛「・・・なぁ、どっちがいいと思う?」
美鈴「そうだね・・・」
二人は、服を見ていた
美鈴「ねぇ、美琴ちゃんってどういう服が好みなのかな?」
旅掛「子供っぽいの・・・はどうなのかなぁ」
そう
二人は、娘へ贈る服を選んでいたのだ
なかなか夫婦揃って訪れる機会は無い
そのため、少しでも親らしいことをしたかったのだ
美鈴「・・・これはまだ早いよね・・・」
旅掛「そ、そんな露出が高めなのは許さん!」
美鈴「でも、私が美琴ちゃんくらいのときは・・・」
旅掛「なにぃ!?美鈴、こんな色気のある服装を・・・」
美鈴「それ見てパパも興奮してたじゃん!」
旅掛「昔のことは忘れた!!美琴にはダメだダメだ!!」
美鈴「似合うのに!!」
旅掛「まだ早い!!」
美鈴「いいじゃん!!もう彼氏にはいるんだよ!?」
旅掛「そ、それはそうだけどさ!!」
美鈴「だから、美琴ちゃんもこういうの着たいと思うよ!?」
旅掛「うっ・・・」
美鈴「きっと、上条くんとの暑い夜はこういうの・・・」
旅掛「あぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!美鈴、言わないでくれ!!」
美鈴「美琴ちゃんは上条くんの彼女ー!!」
旅掛「言うなぁぁぁ!!」
美鈴「とにかく!!一着くらいこれ持ってていいんじゃない!?」
旅掛「くぉぉぉぉぉ!!!!」
美鈴「こういう可愛いショーパンくらい持っててもいいんじゃない!?」
旅掛「そりゃたしかに必要かもしれねぇけど!!」
美鈴「いい!?」
美鈴がずい、と旅掛に顔を近づける
旅掛「な、なんだよ!?」
美鈴「パパ、思い出して!!」
美鈴「私達の初デート!!」
旅掛「!!」
旅掛「あぁ・・・美鈴ちゃん遅いな・・・」
美鈴「ゴメン、旅掛くん!!」
旅掛「!!」
旅掛「な、なんかいつもよりオシャレだな・・・」
美鈴「えへへ・・・//」
旅掛「い、いつもより・・・スカート短くない?」
美鈴「・・・た、旅掛くんが喜ぶかなって」
旅掛「・・・あ、あぁ」
美鈴「い、いや?」
旅掛「いやいや!!めちゃくちゃいいよ!!」
美鈴「・・・た、旅掛くんのエッチ・・・」
旅掛「だ、だってしょうがないだろ!?」
美鈴「ど、どうして?」
旅掛「そ、そりゃ・・・」
旅掛「美鈴ちゃんがそんな格好してると、なんか可愛いからさ」
美鈴「あ、ありがとう//」
旅掛「・・・そ、そういえばそんなことも・・・」
美鈴「ね、パパは女の子の生足とか好きだったでしょ?」
旅掛「あぁ・・・そして美鈴の足は最高だった・・・」
美鈴「いい、それを上条くんも思ってるんだよ!?」
旅掛「なるほどなぁ・・・」
旅掛が納得する
旅掛「・・・しかし、懐かしいこと思い出したな」
美鈴「そ、それはいいから服・・・」
旅掛「あの頃はお互いにちゃん、くん付けだったな・・・」
美鈴「そ、そうだね・・・」
旅掛「若かったな・・・」
旅掛が微笑む
とても幸せそうだ
美鈴「・・・そ、そうだね」
旅掛「なぁ、美鈴ちゃん」
美鈴「ちょっと、恥ずかしいからやめてよ!!」
旅掛「ん、いやか?」
美鈴「ち、違うけど・・・」
旅掛「じゃあ、いいだろ美鈴ちゃん」
美鈴「そ、その呼び方やめてよパパ!!」
旅掛「ははは!!なんだか昔に戻ったみたいじゃないか!!」
美鈴「な、なによ旅掛くん!!」
旅掛「お、なんかドキリとしたぞ!?」
美鈴「ほ、ほらイヤでしょ!?」
旅掛「いや、嬉しいね!」
美鈴「な、なんでよ!?」
旅掛「ははは!!なんなら今からちょっとデートしちゃうか!?」
美鈴「い、いいわよやってやろうじゃない!!」
二人は終始大声だった
周りの客達は何のことかと見つめていた
旅掛「じゃあ、どこ行こうか美鈴ちゃん!?」
美鈴「ホ、ホテルとか!?」
旅掛「初デートまんまだな!!」ハハハ!
刀夜「・・・母さん、当麻はどこだろうか」
詩菜「まぁまぁ、どこにいるんでしょうか」
二人は息子を探していた
刀夜「・・・携帯の電源を切っているのか・・・」
刀夜が携帯を見つめながらつぶやく
どうも上条の携帯には通じないらしい
実際は、ただ単に充電切れなだけなのだが
刀夜「・・・はぁ、どうしようか母さん」
詩菜「・・・とりあえず、さきほど女性に優しくしていたことの言い訳を聞こうかしら」
ニコニコ、と詩菜が笑う
なぜか手に持っている日傘の柄がバキバキと音を立てている
詩菜「・・・刀夜さん?」
刀夜「そ、それは仕方ないだろう!?」
刀夜が腕を振る
刀夜「道に迷った人を・・・」
詩菜「そこを言っているんじゃないですよ?」
詩菜がもっと笑みを浮べる
だんだん、般若の顔になっている気がする
刀夜「そ、そこじゃなくて?」
詩菜「・・・あらあら、分からないのかしら」
刀夜「ひぃっ!」
詩菜「私は、刀夜さんが浮気をするんじゃないかと心配しているんですよ?」
笑いながら、詩菜が訊ねる
刀夜「そ、そんなことないさ!!」
刀夜が詩菜の手を握る
刀夜「私は母さんだけが好きだ!」
詩菜「まぁまぁ、本当かしら」
刀夜「昔から、ずっとそうだよ」
詩菜「まぁまぁ、だったら許してあげなきゃいけませんね」
刀夜「ありがとう、母さん!」
刀夜が嬉しそうに言う
こちらの夫婦は、少し静かな愛情だった
刀夜「・・・か、母さん・・・」
詩菜「あらあら、また女性に道を教えて・・・」ニコニコ
刀夜「はぁ・・・」
刀夜「不幸だ・・・」
一方「・・・」
番外「・・・ねぇ、どうしてこんなとこにいるの?」
一方「・・・疲れたンだよ」
番外「そ、それは分かってるけど・・・」
番外個体が目の前の建物を見つめる
怪しげな建物
そう、ラブホテルだ
一方「・・・クソが・・・」
一方通行が忌々しそうにつぶやく
道を歩いていたコーンロウの兄ちゃんに
「休めるとこねェか?」
と聞いたら
「あ、いいとこあるぜ」
と教えてもらったのだ
番外「ね、ねぇ・・・」
一方「・・・帰るぞ」
番外「で、でも休みたいんじゃないの?」
一方「・・・そォだけどよ」
一方通行が少し辛そうにつぶやく
彼は相当疲れているはずだ
早く休みたいに決まっている
一方「・・・ここはダメだろ」
番外「・・・ミサカはいいよ?別にそういうことするわけじゃないんだし」
一方「あァ?」
番外「あれ、もしかしてしたいの?」
ニヤニヤ、と番外個体が笑う
一方「あァ、したいぜ」
番外「は!?し、したいの!?」
一方「ウソだ」
けろっと一方通行が答える
番外「・・・じゃ、じゃあいいじゃん」
一方「・・・いいか」
一方通行が溜め息をつく
二人は建物の中へ入っていく
「えっと・・・学生の方ですか?」
一方「いや、学校には行ってねェ」
一方通行が答える
本当は籍自体は学校にもある
しかし、そもそも行ってはいないのだから通っているとは言えないだろう
番外「ミ・・・私も違うよ」
「では、二時間で?」
一方「あァ」
「ではごゆっくり」
一方「・・・」
番外「・・・シャワー浴びたら?」
一方「着替えがねェからな」
番外「あ、そっか」
一方「・・・ちっ」
舌打ちをしてから一方通行がベッドに横になる
フカフカ、とした感触だ
だが他のカップルがここでそういうことをしたと思うと、さすがに寝ようとは思えない
一方「・・・お前はどォすンだ?」
番外「とりあえず、飲み物はあるからゆっくりするよ」
一方「そォか」
番外「・・・ねぇ」
番外個体が少し小さな声で一方通行を呼ぶ
一方「なンだよ」
番外「・・・しないの?」
一方「しねェよ」
番外「な、なんで?」
一方「疲れてンだよ」
一方通行がゴロン、と寝返りを打つ
番外個体は、そんな様子に少し苛立ちを覚える
番外「・・・ミサカはしたいの」
一方「あァそォかよ」
番外「疲れてんのは分かるけどさ・・・」
一方「うるせェな・・・万年発情してンのか」
番外「だ、だってラブホだよ!?」
一方「ンなの関係ねェよ」
番外「・・・そ、そうだけどさ・・・」
一方「やりてェヤツはどこでもやるしやりたくねェヤツはやンねェよ」
番外「・・・ミサカはしたいなぁ・・・」
一方「・・・ちっ」
一方通行が体を起こす
番外「?なに?」
一方「ほれ」
一方通行が両手を広げる
まるで、飛び込んでこいと言わんばかりに
一方「ほらよ」
番外「・・・うん」
番外個体が一方通行の両腕の中に入る
番外「・・・ありがと」
一方「あァ」
番外「・・・ねぇ、しない?」
一方「・・・夜でいいだろォが」
番外「ん、ありがと」
一方「・・・」
二人がベッドに寝転がる
番外「ねぇねぇ、なんで空って青いの?」
一方「海が映ってるからだ、うるせェから寝ろ」
番外「・・・うるさい?」
一方「俺は寝たいンだよ」
番外「・・・じゃあ、ミサカも寝ようかな」
一方「そォしろ」
番外「・・・好きだよ、一方通行」
一方「あァ」
そっと、目を閉じる
少しして番外個体の寝息が聞こえてきた
一方(・・・お前のほうが早く寝てンじゃねェか)
一方通行が苦笑する
番外「・・・」zzz
一方「・・・」
はァ、と溜め息をつく
一日中歩いている、そんな生活が5日目なのだ
番外個体だって疲れているのだろう
一方(・・・寝るか)
目を閉じると、自然と眠気が襲ってくる
こうやっていると、本当に今の自分が無防備なんだと知る
過去の彼は、寝ている間でも能力による反射が適用されていた
しかし、今は違う
それでも眠れるということは、今が相当平和だということだ
それがいいことなのか悪いことなのか
一方通行はそんなことを思いながら、眠りに落ちた
美鈴「・・・ねぇ、いつまでデートするの?」
美鈴ちゃんは訊ねていた
旅掛「いやぁ、意外と面白いな、こういうのも!」
旅掛くんは喜んでいた
旅掛「あ、そういえば美琴はどこだろうな?」
美鈴「ん、服を渡すのは夜でいいんでしょ?」
旅掛「あぁ、そうだな・・・ふぁぁー・・・」
旅掛があくびをする
美鈴「あれ、旅掛くんはヒマなの?」
旅掛「美鈴ちゃんとのデートは楽しいさ」
美鈴「・・・ねぇ、普段の呼び方にしようよ」
旅掛「ん、そうだな」
美鈴「・・・パパ、美琴ちゃん・・・喜んでくれるかな?」
旅掛「まぁ、喜ばれなかったら俺たちが悪かったってことで」
旅掛が苦笑する
もしかしたら、自分達と娘の趣味は違うかもしれない
拒否されてしまう可能性もあるだろう
旅掛「・・・でも、きっと美琴は喜んでくれるさ」
美鈴「そうだといいなぁ・・・」
旅掛「・・・でも、ショーパンはやっぱ・・・」
美鈴「だって、上条くんも喜ぶよ!?」
旅掛「それはそうだが!!あの美琴がデレてるとこなんて!!」
美鈴「いっつもデレデレしてるじゃん!!」
旅掛「それとこれとは違うんだ!」
美鈴「男の子はみんなエッチさ!」
旅掛「そうだ、そしてそれが悔しいんだよ!」
美鈴「とにかく!!可愛いデザインだし喜んでくれるよ!」
美鈴が手に持った買い物袋を見つめる
ちなみに、上条にも一着買ったのだが
旅掛「・・・上条君はポロシャツとか好きなのか?」
美鈴「うーん・・・でも、ポロって似合う子が着るとかっこいいでしょ?」
旅掛「そうだけど・・・似合うのか?」
美鈴「さぁ?」
旅掛「・・・テクパトル君は似合いそうだけどな」
旅掛がつぶやく
彼らのもう一人の義理の息子だ
ちなみに、まだ一方通行とはご対面していない
美鈴「テクパトルくんはタンクトップ着てたよね」
旅掛「あぁ、かなりがっしりしてたな」
美鈴「うん・・・ポロシャツ似合いそうだよね」
旅掛「・・・そういえば、妹達には何も買わないのか?」
美鈴「う、そういえば・・・」
美鈴が顔をしかめる
なかなか人数が多いため、金が足りなくなりそうだ
かといって、安いものはいけない
娘と認めているからこそ、可愛がりたいのだ
美鈴「・・・美月ちゃんはテクパトルくんと付き合ってる、か」
旅掛「まさか、あの子にも・・・」
美鈴「うん、セクシーな服を買ってあげよう!」
旅掛「やめて!!そうやって若者の性風俗は乱れていくんだぞ!?」
美鈴「愛があるならノープロブレム!!!!!!!!」
旅掛「そんなわけない!主に俺が!」
美鈴「いい加減子供離れしろー」
旅掛「は、離れるだと!?」
美鈴「じゃあ、とりあえず服をまた見ましょうか!」
旅掛「いやだ!!セクシーなのはだめ!!」
美鈴「にゃはは!!買ってやるよ!!」
旅掛「やめてぇ!」
娘が増えた
それは、とても嬉しいことだった
旅掛「あぁもう!!不幸だなぁ俺は!!」
御坂妹「・・・ヒマになりましたね、とミサカはつぶやきます」
テクパトル「あぁ・・・そうだな」
19090「はぁ・・・ヒマですよね・・・」
テクパトルたちは佐天、■■と分かれてショッピングモールをぶらついていた
その中でトチトリ、17600号組と待ち合わせをしているのだ
テクパトル(上手くいったかな・・・)
13577「しかし、ここはにぎやかですね・・・」
13577号が辺りを見渡す
たくさんのカップルや親子でごった返していた
おそらくお土産を買いに来ているのだろう
テクパトル「あぁ・・・この人数のなかですれ違ったりしないだろうな」
携帯で、大体の場所は決めていた
14510「テっくん、少し休みませんか?」
テクパトル「ん、そうだな・・・ずっと歩いてきたしな」
10039「足がパンパンです・・・」
20000「足ん中がパンパンだぜー」
テクパトル「やめろ」
呆れたようにテクパトルが溜め息をつく
10033「・・・ですが、待ち合わせに遅れるのはダメでしょう?」
テクパトル「そうだな・・・そうかも」
テクパトルがうーん、と唸りながら考える
テクパトル「じゃ、俺だけ待ち合わせの場所に行ってくるよ」
19090「え、いいのですか?」
テクパトル「あぁ、お前たちはここらへんで待っててくれ」
御坂妹「・・・テっくん、あなたは誑しですね・・・」
テクパトル「はぁ?」
14510「じゃあ、ここで待っておきますね」
テクパトル「おう、行ってくるよ」
テクパトルがミサカたちの元から離れていく
19090「はぁ・・・疲れました・・・」
13577「暑いですからね・・・」
10039「お肌の敵ですね・・・」
御坂妹「・・・一方通行の反射がほしいです、とミサカは愚痴をこぼします」
美鈴「これは!?」
旅掛「だから!!早いんだってば!!」
14510「・・・どこかで聞いた声がします・・・とミサカは冷や汗をかきます」
10033「奇遇ですね、ミサカもです・・・」
20000「逃げたいんだけど」
御坂妹「・・・ち、近くですね・・・」
19090「行ってきますか?」
御坂妹「えぇ・・・あいさつはしておかないと」
テクパトルから礼儀はしっかりするように、と教わっている
それを律儀に守る辺りはいい子達なのだ
美鈴「だから!!いくらあの子達が若いからって、いつまでも守りに入ってたら・・・」
旅掛「イヤ!!むしろ俺が鉄壁のガードになりたいほどなんだぜ!?」
美鈴「あぁもう!」
19090「あ、あの・・・」
旅掛「ん?あれ、妹達じゃないか」
美鈴「なんでこんなとこに・・・っていうか今の会話聞いてた?」
御坂妹「・・・聞こえないほうが珍しいほどの大音量でしたよ・・・」
20000「ステレオ放送みたいだった」
10039「かなり大声でしたね・・・」
旅掛「あぁ、悪い悪い」
10033「それで、何を言い争いされていたのですか?」
美鈴「いやぁ、恥ずかしいことでさぁ・・・」
20000「?あと子供を何人作るとか?」
旅掛「そっちではなく」
20000「じゃあ、なんでミサカたちは胸が弱いのか、とか?」
旅掛「そっちでもなく」
20000「テっくんと19090号は何回ヤったのか、とか?」
旅掛「それは気になるなぁ!!」
19090「そ、そんなことダメですよ!!」
美鈴「えー?でも好きなんでしょ、テクパトルくんのこと」
19090「す、好きですけど・・・」
旅掛「ぐはぁっ!旅掛は19090のダメージを受けた!!」
20000「どこに?」
旅掛「心に、じゃないですか?」
20000「アンタのノリ、好きだよ」
旅掛「父親だからな」
美鈴「それでね、何を話してたかというと・・・」
御坂妹「あぁ、そうでしたそうでした」
旅掛「お前たちに服を買ってやろうと思ってな」
10039「!!ミサカたちにですか!?」
旅掛「あぁ、娘だろ?」
美鈴「自分の子供に服を買う、これ大人の役割ね!」
ミサカ一同「//」
美鈴「でもさ、何を買えば分からなくて、とりあえず19090号ちゃんの分は買ったの」
14510「・・・なぜ19090号の分だけ?」
旅掛「テクパトルくんを誘えるような服、って美鈴が言うからさ」
19090「そ、それは・・・」
ミサカ一同「19090号」
19090「はい?」
19090号が振り返ると
他のミサカたちが、羨望の眼差しを送っていた
テクパトル「おー、いたいた」
トチトリ「おっす・・・って、他のミサカは?」
テクパトル「疲れてるらしくて休ませてるよ」
17600「さすがテっくんだな」
テクパトルたちは、無事に合流していた
少し二人は待ったらしい
テクパトル「・・・トチトリ、どうだ?」
トチトリ「17600号と話してると、気が楽になったよ」
トチトリが嬉しそうに笑う
テクパトル「そうか・・・サンキューな」
17600「なに、友達なら当然のことさ」
17600号が微笑む
とても勇ましい笑みだった
テクパトル「じゃあ・・・他のミサカのとこに戻るか」
17600「あぁ」
トチトリ「おう」
三人がミサカたちの元へ向かう
美鈴「こらこら!!ケンカしないの!!」
旅掛「みんなの分を今から買うからさ!!」
ミサカ一同「いっつも19090号だけずるいです!!」
テクパトル「あれ、義父さんと義母さん」
美鈴「あぁ、ちょうどよかったテっくん!!」
テクパトル「そ、その呼び方・・・」
旅掛「テっくん、ケンカ止めてよ、頼むよ!」
テクパトル「アンタはやめろ」
旅掛「み、美鈴は特別なのか!?このミサカ誑し!!」
テクパトル「男にテっくんって呼ばれて嬉しいわけないだろ!!」
美鈴「そういうのはいいから!」
テクパトル「おっと・・・そうそう」
19090「テっくん!!助けてください!」
20000「ハゲちゃえ!!ハゲちゃえ!」
10033「ずるいですよ!!」
テクパトル「とりあえずお前ら・・・」
ミサカ一同「はい!?」
テクパトルが一同に近づく
テクパトル「騒がないようにしよう、な?」
そっと頭を撫でながら、注意する
それが
ミサカ誑しだった
828 : VIPに... - 2011/08/17 07:37:40.96 eFzMjX7DO 695/837テクパトルの参考資料請求しますとミサカは暗にどんな奴だっけ?と言う疑問を口にします
829 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/17 09:54:10.16 OK6NyXVG0 696/837>>828 エツァリたちのいた組織の指揮官だった
人としては最悪、仕事はまぁまぁできるヤツ
でも組織の上部が自分達の利益だけのために働いていると知って、上層部全員暗殺
その後方向性を失い裏切り者のエツァリを殺そうとする
原典を使い、一時はエツァリを圧倒するも原典に見限られ「死亡」
らしい
へぇ、死んだんだって思ってたけどいいキャラなので使ってみたww
続きは少ししたら
美鈴「ねぇ、19090号ちゃんはこういう服は嫌い?」
美鈴が先に買っておいた服を見せる
かなり露出度が高い服だった
19090「き、嫌いではないですが・・・恥ずかしいです」
顔を赤らめながら19090号が答える
旅掛「だよな!?やっぱりイヤだよな!?」
テクパトル「・・・こういう服は・・・な」
19090「ですが、お母さんが買ってくれたんですからありがたく受け取っておきます!」
美鈴「うん、いい子だね!」
嬉しそうに美鈴がうなずく
20000「・・・ねぇ、ミサカ達にも買ってよ」
御坂妹「そうです、19090号だけなんてずるいですよ」
美鈴「あぁゴメンゴメン、一緒に見ていこうか!」
13577「は、はい!」
ミサカ達と美鈴が一緒に歩いていく
少し後ろからテクパトルと旅掛は追い掛ける形になった
旅掛「・・・すっかり家族になったな」
テクパトル「・・・安心しましたよ」
テクパトルが苦笑する
最初は慣れないのでは、と不安がっていたがそれも無用だったようだ
旅掛「・・・上条くんと君には感謝しないとな」
テクパトル「・・・感謝なんていらないさ」
旅掛「君はそうかもしれないが・・・俺は礼を言っておきたいのさ」
旅掛がははは、と笑う
それは父親の顔だった
旅掛「娘達の世話をしてくれているんだろう、本当にありがとう」
テクパトル「礼を言われたくてやってるわけじゃないさ、俺の家族だから当たり前だろう」
彼にとってミサカ達は家族なのだ
家族と一緒に暮らして、世話をする
当たり前のことだった
旅掛「それでもさ」
テクパトル「・・・本当は義父さん達と暮らすほうがいいのかもな」
ぽつり、とテクパトルがつぶやく
少し寂しそうに
旅掛「まさか、今まで君と暮らしてきたんだろ?」
テクパトル「あぁ」
旅掛「だったら君と暮らすほうがいいに決まってるじゃないか」
テクパトル「そうだといいな」
旅掛「君はいいヤツだな、上条くんとそっくりだ」
テクパトル「・・・褒め言葉として受け取っておくよ」
旅掛「そうだと思ってくれ」
テクパトル「・・・もう少し、あいつらと暮らさせてもらってもいいかな」
旅掛「ずっとでもいいぞ」
テクパトル「・・・そうなったら幸せだな」
旅掛「君はあの美月って子と結婚するつもりかい?」
率直に、旅掛が尋ねる
親子の会話に遠慮などいらないからだ
テクパトル「あぁ・・・いつかはそう思ってる」
旅掛「あの子は君にとって特別かい?」
テクパトル「あぁ、俺を変えてくれたのさ」
テクパトルが目を細める
視線の先には19090号がいる
テクパトル「昔の俺は本当にクズだったんだ」
旅掛「ほぅ」
テクパトル「だが、俺はミサカ達に出会って優しさを持った、家族を持った」
テクパトル「そして・・・美月と出会って、愛を知ったんだよ」
嬉しそうに、テクパトルが頭をかく
テクパトル「こんなことを言ったら笑われるかもしれないな」
旅掛「そうだな・・・たしかに少しおかしな話だ」
テクパトル「昔の俺が聞いても笑うと思うよ」
テクパトルはいつでも昔の自分を忘れなかった
絶対に忘れない
過ちを犯したことは覚えていなければならないのだ
テクパトル「でもさ、俺はきっと・・・美月に出会うために生まれてきたんだと思うよ」
テクパトル「・・・だから、俺は幸せだ」
旅掛「そいつじゃダメだぜ」
旅掛「だったらもう君は生まれてきた理由を完遂したことになる」
テクパトル「おっと、じゃあやり直しだな」
テクパトル「俺は、美月と幸せになるために生まれてきた」
テクパトル「ずっと幸せでいるために、生まれてきたんだよ」
旅掛「お、いいじゃないか」
テクパトル「・・・とりあえず、ミサカ達が家族として認められてよかったよ」
旅掛「俺は元々知っていたからな」
旅掛が笑う
彼は学園都市の裏側とも関わりを持っていた
もちろん、今はあまり関わろうとは思わないが
旅掛「でも、美鈴はよく受け止めたと感心してるよ」
テクパトル「・・・ミサカ達と同じで、強い女性だな」
旅掛「妹達も強いのかい?」
テクパトル「・・・あぁ」
テクパトルは知っている
ミサカ達は昔、みな上条に恋をしていたことを
それでも、上条の幸せを願ったのだ
美琴と彼が付き合うことになったのを、しっかりと受け止めたらしい
彼と付き合っている19090号だって、その一人だったのかもしれない
それに少しだけヤキモチを妬いてしまう辺りは彼もまだ若いのだろうか
テクパトル「・・・強いよ」
旅掛「だったら安心したよ」
テクパトル「なぜ?」
旅掛「・・・弱かったらどうしようかと考えていた」
旅掛がテクパトルのほうを見る
安堵の表情を浮かべながら
旅掛「もしも弱かったら、俺達のとこに引き取ろうと思ってたんだよ」
テクパトル「そうか」
旅掛「学園都市はいろいろと難しいからな」
テクパトル「・・・また実験に巻き込まれるかもしれない、か」
旅掛「それだけじゃないけどな」
二人は知っている
学園都市には様々な問題があることを
周りからはクローンだと知られたら白い目で見られるだろう
それに人間のクローンなんて珍しいものだ
科学の総本山である学園都市からしたら、貴重な実験動物と言ってもいいだろう
そればテクパトルは気に入らなかった
テクパトル「生きた人間を動物呼ばわりだからな」
旅掛「動物も人間も命があることは変わらないさ」
テクパトル「俺は、動物と人間の命が同じだなんて綺麗なセリフは言えないさ」
そして、言える権利もなかった
人間の命を弄んだことさえあるのだ
なぜ動物の命を擁護できるだろうか
テクパトル「だが、俺はあいつらを人間だと思ってる」
テクパトル「そう思ってる限り、俺はあいつらを死なせない」
旅掛「・・・君は妹達が大好きなんだな」
旅掛からしたら嬉しいことだった
白い目で見られてしまうはずのクローン
それを受け入れるどころか、家族として扱ってくれている
どれだけ精神力の強い少年なのか
テクパトル「なに、俺よりよっぽど人間らしいからな」
旅掛「君も十分人間臭いさ」
テクパトル「それはミサカ達に教えてもらったものだよ」
旅掛「なるほどな」
テクパトル「・・・守ってみせたいのさ」
テクパトルが拳を握り締める
その拳一体どれほどの人間を傷つけてきただろう
守ってきた人とは比べものにならないほど多くを傷つけてきたはずだ
テクパトル「こんな、クズみないなヤツにも誰かを守れるということを」
テクパトル「俺だって誰かを愛せるということを」
テクパトル「俺自身に証明してみせたいんだよ」
旅掛「自己満足のためか?」
テクパトル「道を誤らないためだ」
ため息をつきながら、テクパトルが答える
もしも昔からミサカ達と知り合いだったら
まともな人生を送れていたのだろうか
そんなこと、今の彼には分からなかった
美鈴「ん?二人とも、遅いよ!」
旅掛「あぁ悪い悪い!」
話し込んでしまったせいか、前を行く女性達とかなり差が広がっていた
テクパトル「走るか」
旅掛「おう!」
二人が家族の元へと向かう
本当にいいものだ、なんてテクパトルは思っていた
こうやって父親や母親を得ることさえ出来てしまった
かつて、人を殺しても手に入らなかった幸せ
それを、彼は手に入れてしまったのだから
19090「テっくん、みんなの服を選んであげてくださいね!」
テクパトル「あぁ、任せてくれよ」
旅掛「いやぁ、うらやましいぞテクパトル君!」
美鈴「モテモテだねぇ!」
テクパトル「冷やかさないでください、行くぞみんな」
御坂妹「はい!」
17600「久々の服購入、だな」
10033「では行きましょう」
当たり前の光景
家族っていいな、とテクパトルは幸せを噛み締めていた
美鈴「ねぇねぇ!!こういうセクシーなのはどうかな!?」
20000「ふへへ!!ミサカ興奮しちゃうぞ!」
旅掛「まだ早いからな!!」
やっぱよくないかも、とテクパトルは溜息をついた
エツァリ「・・・」
ショチトル「なぁ、なんで私達は周りから声を掛けられないの?」
エツァリ「・・・カップルですから、ナンパはされないでしょう」
ショチトル「違う、違うんだよ」
ショチトルが指を振る
ショチトル「地味だからだよ」
エツァリ「言わないでください」
ショチトル「競技にも参加してない、他のメンバーとも合流してない」
エツァリ「もう、いいんですよ・・・」
ショチトル「私達に需要があるか?否、ない!!!」
エツァリ「いえ、需要・・・ってなんの話ですか」
ショチトル「よく考えろ、上条はそこにいるだけで美琴の力になっている」
エツァリ「えぇ、そうですね」
ショチトル「垣根はボケ、ツッコミ、メルヘンといろんな人間を演じられる」
エツァリ「器用ですからね」
ショチトル「美琴はどうだ?」
エツァリ「学園都市のマスコットと言っていいかと」
ショチトル「心理定規は?」
エツァリ「セクシー要員、でしょうか」
ショチトル「分かるか?」
ショチトル「それぞれが重要な役割を持っている」
エツァリ「・・・?一方通行さんは?」
ショチトル「お前、学園都市最強だぞ?」
エツァリ「あ、それもそうですね」
ショチトル「じゃあ、聞こう」
ショチトル「私の役割は?」
エツァリ「あなたがいれば自分は強くなれます」
ショチトル「//」
エツァリ「ですが、自分達はこういった静かな恋が似合ってますよ」
ショチトル「そうかもな」
ショチトルがスポーツドリンクを飲む
ショチトル「・・・ぬるいな」
エツァリ「えぇ・・・この暑さですから」
ショチトル「太陽を打ち落としたい」
エツァリ「いえ、それはおかしいですよ」
ショチトル「はぁ・・・ヒマだなぁ」
エツァリ「ヒマですねぇ・・・」
少し暑い陽射しの中
競技場からは歓声が聞こえる
地味な二人は、静かな昼間を過ごしていた
垣根「はい、次はチアダンスでーす!!」
心理「・・・前もやってたわよね」
垣根「うっせーな!!観客席の男達はそういうのを求めてんだよ!!」
そうだそうだ!!と声が上がる
時間は午後の2時
日は空の真上に昇っている
垣根「いいか!!男とはパンチラが好きなんだ!!」
吹寄「貴様!!アナウンスでなんてこと・・・」
垣根「チアガールの見せパン?」
垣根「そんなんで興奮するかよ!!」
垣根「見せるの前提のパンツなんてなぁ!」
垣根「殺されるの前提でこっちに向かって仲間になりたそうな顔するスライムくらいやる気無くすって言ってんだよ!!!」
心理「へぇ」
垣根「なぁ!?」
吹寄「・・・私は貴様のこと、理解できないわ」
心理「ゴメン、その考えは私も理解できないわ」
垣根「・・・なん・・・だと?」
垣根が凍りつく
そう、彼はそういう人間だ
隠されたものが見たいのだ
そこにあると分かっていても
手を伸ばしても掴めない
胸やパンツ、下着や夢
それらは垣根の中ではイコールなのだ
そう、彼にとって夢とおっぱいはイコールなのだ
男の夢だ、届かぬ夢だ
垣根「いいか!!俺はおっぱいが好きなんだよ!」
吹寄「おっと!ただいまの中間発表!」
心理「紅組、白組に大きな差で負けています!」
吹寄「紅組のみなさん!がんばってください!」
垣根「諦めたらそこで試合終了ですぞ!?」
吹寄「黙ってて」
垣根「」
心理「みなさん!!水分補給はしっかりと!」
吹寄「大覇星祭中はレッドブルが安くなっております!・・・これCM?」
垣根「えー、なお提供はレッドブル!!」
垣根「甘いだけじゃつまらない!!炭酸なだけじゃつまらない!」
垣根「喉越し最高、後味完璧!」
垣根「僕は、レッドブルを愛しています」
心理「やめなさい」
垣根「さぁ!!次は盛り上がる種目、といっても競技とは少々違います!」
心理「あら、何なの?」
垣根「最近ツイッターって流行ってるだろ?」
吹寄「あぁ・・・私は興味ないけど」
垣根「つぶやき、ってあるだろ?」
心理「えぇ」
垣根「だから、いろんな人からつぶやきを集めたんだ」
吹寄「へぇ・・・」
垣根「さすがにずっと競技だと疲れるし、水分補給のタイミングもなかなか難しいだろ?」
心理「ちょっとした休憩、ね」
垣根「そうそう、では読み上げます!」
垣根がお便りを開く
垣根「ペンネームはトキワの森のビリビリさん」
垣根「私の彼氏は、フラグを立てすぎ、そんなフラグ、ぶち殺す!!」
垣根「へー、恋仲は大変ですね」
観客席の何人かが頷く
彼らも恋人がいて苦労することがあるのだろう
垣根「次は・・・?最新型冷蔵庫さん」
心理(アレイスターじゃない)
垣根「寒いよ」
垣根「この一言です」
心理「・・・ね、ねぇ・・・」
吹寄「なんか、私達のほうが寒気がするわ」
垣根「じゃ、次は・・・」
垣根「変装魔人さん」
心理(エツァリ君ね)
垣根「地味だと言われようと、二人の愛は輝いている」
垣根「・・・」
垣根「このコーナー、地味だな」
心理「えぇ、特にこのお便りのせいで地味になったわね」
吹寄「さっさと次の競技行きましょう」
まだまだ大覇星祭は続いている
美琴「ねぇ、当麻」
上条「・・・なんだ?」
美琴「・・・インデックスって・・・なんであんなに食べまくるの?」
二人が見つめているのは妖怪大喰らいだ
イン「はむはむ!!」
ステイル「よく噛むんだよ」
神裂「・・・インデックス、そろそろ・・・」
イン「?まだまだ食べるんだよ!!」
五和「・・・すごいですね・・・」
上条「なぁ・・・俺たちもう競技場行っていいかな?」
イン「うん、いいんだよ!」
美琴「じゃ、行こうか」
上条「おー・・・やってるやってる」
競技場にやってきた二人はすぐに席に着いた
周りは未だに盛り上がっている
美琴「うん、垣根たちもがんばってるみたいね」
上条「あぁ・・・しっかりやってるな」
キャーリサ「なかなかに面白いし」
上条「あぁ・・・」
美琴「・・・」
上条「・・・」
上条・美琴「なんでいんの!?」
キャーリサ「気づくの遅いし」
騎士「・・・私にはノータッチというのも解せないな」
上条「アンタもいんの!?」
美琴「ど、どういうこと!?」
キャーリサ「いやぁ、いろいろあってこんな中途半端な時期からしか来れなかったし」
騎士「皇女がしっかりと仕事をこなされないからです」
キャーリサ「うるさいし!」
上条「ちょっと待って!招待とかしてないから!!!」
美琴「ていうかよく来れたわね!?」
キャーリサ「美琴久しぶりだし」
美琴「あ、お久しぶりです・・・」
上条「なんで来たんだよ!?」
キャーリサ「ステイルとかいうヤツから聞いたし」
騎士「大覇星祭は噂に聞いていてな、力と力のぶつかり合いは興味深い」
上条「そういう問題じゃねぇよ!なんでこんなとこで・・・」
キャーリサ「いや、イギリスで中継見てるだけじゃ臨場感がないし」
上条「だからそうじゃねぇ!」
キャーリサ「特等席とか好かないし」
上条「だからって一国の皇女がそれはまずいだろ!」
騎士「なに、暗殺の心配はあるまい」
キャーリサ「いつかの寿司の大将が見回りしてくれてるし」
上条「パシるなよ!」
美琴「キャーリサさん・・・第一なんですかその格好?」
美琴がキャーリサの服を指差す
そう、ドレスに王冠
いつも着ている暑そうな服装・・・
ではなく
皇女か?と思うほどラフな格好だった
キャミソールにショーパン、サングラス
こういう雰囲気の服のほうが似合うのがまた不思議だった
上条「アンタ・・・金持ちだろ?」
キャーリサ「ブランド物は堅苦しいし」
美琴「で、でも大胆と言うか・・・」
周りの学生もチラチラ、とキャーリサのほうを見ている
彼女は男勝りな性格とは裏腹にとても魅力的な容姿を持っているのだ
キャーリサ「そうか?普通だし」
騎士「皇女・・・なんとはしたない」
キャーリサ「喜んでるくせに」
騎士「喜んでいませんから!」
上条「大体アンタたち登場が急すぎるだろ!」
キャーリサ「ご都合主義だし、っていうか騎士団長鼻の下伸ばしすぎだし」
騎士「なっ・・・」
美琴「ま、まぁ男ならしょうがないですよ!!」
騎士「ゼロにするっ!」
上条「何をだよ!?」
上条「はぁ・・・まぁいいや、競技を見ようぜ」
上条が溜め息をついてから競技場を見つめる
彼は今までもこういう突拍子もない急展開を経験してきた
いまさらいちいち細かくツッコんではいられない
騎士「・・・しかし、この競技はなんなのだ?」
上条「あぁ、これは椅子取りゲーム・・・」
美琴「運動会でやるものじゃないわよね」
騎士「どういうルールなのだ?」
上条「あれ、外国には無いのか?」
キャーリサ「あるかもしれないけど、私達は幼い頃から遊んでる時間は無かったし」
上条「なるほどな・・・」
美琴「簡単に言えば、音楽が止んだら椅子に座ればいいのよ」
キャーリサ「・・・それだけ?」
上条「でも、椅子は人数分無いんだ」
騎士「なるほど、座れなかったら負け・・・か」
美琴「そういうこと」
キャーリサ「用意された椅子をかけて戦い・・・」
騎士「座れなかったものは死ぬ・・・」
キャーリサ「素晴らしい社会の縮図だし」
上条「いや、違うからな」
キャーリサ「私はこの椅子取りゲーム、感動したし!」
騎士「ぜひとも騎士団でもやってみましょう!」
上条「・・・」
上条は想像した
用意されるのはおそらく鉄製の椅子だろう
甲冑の重さに耐えなければならないのだから
もちろん、音楽はイギリス国歌だろうか
そして、甲冑を着たむさくるしい男達が椅子の周りをグルグルと回る
剣とか引きずるであろう
音楽が止まれば椅子に座るのだ
体がぶつかって騎士は何人か転がるだろう
いてっ!!押すなよ!
とか
俺が先に尻ついたしー!!
とか言うかもしれない
上条「なんか、シュールな絵面になるんじゃないか?」
キャーリサ「みんなが楽しいならそれでいいし」
騎士「しかし、あれは意外と差別的な意味があるのでは?」
美琴「?どういうこと?」
騎士「円になる、これすなわち完全な形だ」
キャーリサ「ふん、魔術的な意味だし」
騎士「まぁそうおっしゃらずに」
騎士「その状態で回るのは、完全な調和を意味している」
上条「・・・そ、そんな深い意味は・・・」
騎士「そして、音楽が止まる」
騎士「音楽と言うのは宗教的には非常に重要なものだ」
美琴「そういえば・・・インデックスも言ってたわね」
騎士「長い話よりも意味のある行為だ」
騎士「完全な調和、そして宗教的な意味」
騎士「あの場は、一種の教会と化している」
上条「ねーよ」
騎士「そこにある席というのはなんだ?」
騎士「そう、最後の審判によって神に選ばれるということだ」
キャーリサ「興味ないし」
美琴(・・・魔術が嫌いなのかな?)
騎士「では、席から外れた者とは?」
騎士「そう、神に背いたものだ」
騎士「歌が終わることに気づかないのは、神の教えを聞いていなかったから」
騎士「神の教えを聞かぬものは、天国に行く資格はなし、ということさ」
上条「いや・・・だから・・・」
キャーリサ「まったく、十字教らしい排他的正義だし」
騎士「反吐が出ますね」
キャーリサ「その点、騎士は完璧だし」
騎士「救いを求めるものにはそれ相応の救いを与える」
キャーリサ「そこには過去や未来なんて関係ないし」
騎士「まったく、同感です」
上条「お前たち・・・ちょっとおかしいぞ」
キャーリサ「おかしくなきゃ騎士なんてやらないし」
美琴(言ってることめちゃくちゃね)
キャーリサ「にしても暑いなぁ」
キャーリサがパタパタ、と手を仰ぐ
そうすると少々キャミソールの紐とかが揺れてセクシーなことになるのだが
そんなことを気にする彼女ではない
上条「・・・なぁ、そういうのは気をつけろよ?」
キャーリサ「何が?」
騎士「女性と言う自覚を・・・」
上条「大体な、周りの男を見てみろよ」
キャーリサ「あ?」
キャーリサが周りを見渡す
目の合った男子生徒が慌てて視線をそらす
キャーリサ「みんな度胸がないし」
上条「そっちではなく」
キャーリサ「綺麗な瞳だし」
上条「そこでもなく」
美琴「・・・キャーリサさん、もう少し露出は少なめにしたほうがいいですよ?」
上条「さすが美琴!!言いたいことをズバズバ言ってくれる!」
キャーリサ「はぁ?暑いのにあんなヤツみたいな格好してられないし」
キャーリサが観客席のある女性を指差す
上条「あぁ・・・なんかコート着だしたな」
美琴(あれって・・・麦野さんじゃない)
キャーリサ「いいか、涼しくなるにはどうすればいい?」
上条「扇風機」
美琴「エアコン、もしくは避暑」
キャーリサ「ちっちっち、もっと原始的な方法で」
騎士「・・・脱ぐとか言わないでくださいね」
キャーリサ「脱ぐんだし」
騎士「聞いてました?」
キャーリサ「お前たちはまだ若いからいいけど、私はもう歳だし」
上条「若いじゃねーか」
キャーリサ「まぁ、世間からしたらな」
キャーリサがスポーツドリンクを飲む
キャーリサ「あーっ!水分が染み渡るし!」
騎士「・・・はぁ、他の皇女が見られたらなんと言うか・・・」
キャーリサ「姉貴もヴィリアンもクソ真面目だし」
美琴「・・・キャーリサさんは最後の日までこっちにいるんですか?」
キャーリサ「その予定だし」
上条「あのさ、みんなで焼肉パーティーする予定なんだけど・・・」
キャーリサ「おっ!行くし!」
騎士「皇女・・・焼き肉だなんて」
キャーリサ「肉は美味いし!」
上条「じゃあ、みんなに言っとくな」
キャーリサ「カッコイイ人はいるか?」
上条「・・・ほとんど彼女持ちです」
キャーリサ「ちっ」
騎士(必死すぎる・・・)
美琴(騎士団長さんお似合いなのになぁ・・・)
上条「しかし暑いなぁ・・・」
上条が空を見上げる
太陽はそろそろ真上から下がってきていた
上条(あと二日・・・か)
競技はまだまだ続くだろう
最後の日はナイトパレード、そして焼肉パーティー
楽しくなりそうだ、と上条は笑っていた
浜面「・・・滝壺、暑くないか?」
滝壺「うん、大丈夫」
浜面「そうか、よかった」
絹旗「・・・あー、超暑いですー」
麦野「あっちぃなー、あっついなーおい!!」
浜面「飲み物でも飲めよ」
麦野「あぁてめぇ!!私が暑いって言ってんだよ!」
浜面「だったらどうすりゃいいんだよ!?脱がせってか!?」
麦野「えっ・・・」カァッ
浜面「頼むから意味わかんない反応すんなよ」
滝壺「はまづら最悪」
浜面「あぁ違うからな!!俺が脱がしたいのは滝壺だけだからな!」
絹旗(超キモいです)
麦野「・・・くそ・・・てめぇな!」
浜面「あーあ、麦野も彼氏さっさと作れよな」
麦野「は?」
麦野が素っ頓狂な声を上げる
なぜいきなりそういう話になるのか
彼氏を作れ、なんてただの下っ端の浜面には言われたくなかった
浜面「麦野だったらすぐできるだろ?」
麦野「・・・うるせぇよ」
絹旗「・・・浜面、超ひどいですね」
浜面「は、はぁ!?」
滝壺「そうだね、鈍感」
浜面「な、なんでだよ!?」
麦野「・・・大きなお世話だって言ってんだよ!」
麦野が浜面を睨みつける
浜面(え、え!?なんで俺が怒られてるんだ!?)
浜面は迷っていた
だって、あの麦野だ
金はあるし、見た目は綺麗
オマケにスタイルも抜群だろう
男なんて黙っていても寄ってくるはずだ
性格を少し直せばおそらく完璧だろう
麦野「・・・てめぇは・・・」
浜面「あ?なんだよ?」
麦野「・・・ちょっとトイレ行ってくる」
いきなり麦野が立ち上がる
滝壺「・・・きぬはた」
絹旗「分かってます」
絹旗が麦野のあとについていく
浜面「な、なぁ?俺なんかまずいこと言ったのか!?」
滝壺「はまづらって、意外と鈍感」
浜面「はぁ!?」
浜面が首を捻る
滝壺「・・・はまづら、生まれなおしてきたら?」
浜面「なんでだよ!?」
絹旗「・・・麦野」
麦野「・・・ついてくんなよ」
麦野は近くのベンチに座っていた
少し寂しそうな顔をしている
絹旗「・・・ですが、超心配だったので」
麦野「・・・ほっとけよ」
絹旗「・・・隣失礼しますね」
絹旗が麦野の隣に座る
麦野「・・・なんだよ」
絹旗「・・・麦野、浜面にあんなこと言われてショックでしたか?」
麦野「・・・別に」
絹旗「あなたは・・・」
絹旗「浜面のこと、好きだったんじゃないんですか?」
麦野「・・・知らねぇよ」
絹旗「・・・そうやってふてくされるってことは、そうなんですね」
麦野「・・・」
気味の悪い沈黙が流れる
昔の麦野だったらすぐに絹旗を殴るなりしていただろう
しかし、今の彼女は違った
麦野「・・・ちげぇよ」
麦野「なんでかは知らないけどムカつくんだよ」
麦野「ずっと一緒にいたヤツらは二人幸せになってて」
麦野「私は何も変わってない」
絹旗「・・・変わったじゃないですか」
麦野「・・・違うさ」
変わったのではなく、元に戻ったのだろう
正常だった状態に戻っただけだ
絹旗「・・・幸せが、うらやましいんですか?」
麦野「そうかもな」
絹旗「・・・麦野、違いますよ」
絹旗は知っている
彼女が浜面を求めていたと
彼女を初めて守ろうとした浜面を
彼女が初めて負けを認めたあの男を
麦野は好きになっていたと
絹旗「あなたは、滝壺さんに嫉妬してるんですよ」
絹旗「ただ、それを認めるのが辛くて」
絹旗「だから、二人の幸せに嫉妬している振りをしているんですよ」
麦野「・・・なんでてめぇなんかに理解できるんだよ」
麦野が忌々しそうに吐く
それは苛立ちからか
それとも図星だったからか
絹旗「・・・超分かりますよ」
麦野「だからなんでだよ」
絹旗「・・・私もそうでしたから」
絹旗が苦笑する
彼女だって、浜面を好きだった
絹旗「・・・だから、分かりますよ」
麦野「・・・何が分かるだよ」
絹旗「・・・超辛いですよね」
麦野「・・・知らねぇよ」
絹旗「・・・失恋なんて、初めてでしたから」
麦野「・・・そうかよ」
麦野が溜め息をつく
そうだったのかもしれない
好きだった人に、面と向かって「彼氏を作れ」なんて言われたら
心に傷を負ってしまう
絹旗「・・・でも、認めてあげないとダメですよ」
麦野「あいつらが幸せなことをか?」
絹旗「えぇ」
絹旗は笑っていた
意外と麦野は子供なのかもしれない
そんな簡単なことにも気づかないのだから
絹旗「・・・麦野、帰りましょう」
麦野「・・・浜面にどんな顔して会えばいいんだよ」
絹旗「ちゃんと謝ればいいんですよ」
麦野「・・・ちっ」
舌打ちをしてから麦野が立ち上がる
麦野「・・・なぁ絹旗」
絹旗「なんですか?」
麦野「・・・私はいつか、他のヤツを好きになるのかな?」
絹旗「きっとなりますよ」
麦野「そうかな」
麦野には考えられなかった
他の誰かを好きになるなんて
これから先、浜面以上に彼女の心を打つ人間が現れるだろうか
そんなことはないだろう
絹旗「・・・そうならなかったとしても」
絹旗「それでもいいんじゃないですか?」
麦野「辛いだろうが」
絹旗「・・・恋なんてそんなもんですよ」
麦野「・・・辛いもんなんだな」
絹旗「だからこそ、得たときの喜びは超大きいと思います」
麦野「・・・くっだらねぇ」
麦野「帰るぞ絹旗」
絹旗「はい」
二人がベンチから立ち上がる
少し暑い陽射しが鬱陶しい
絹旗「・・・暑いですね」
麦野「あぁ、暑いな」
浜面「あれ、帰ってきた」
滝壺「あ、おかえり」
麦野「・・・浜面、悪かったよ」
絹旗「ほら、浜面」
浜面「あ、あぁ」
浜面が麦野を見つめる
浜面「・・・悪かった、そのさ・・・」
麦野「いいよ、お前もそこまで深い意味で言ったことではないんだろ」
滝壺「むぎのは大人だね」
麦野「・・・ありがとよ」
麦野が笑う
滝壺は、本当にかわいらしい少女だった
こんな少女なら、浜面とお似合いだろう
麦野よりも、お似合いなはずだ
麦野(あーあ、辛いな)
失恋なんて、初めてなのだ
その辛さは経験したことが無かった
浜面「ところでさ、麦野」
麦野「?なんだよ」
浜面「長かったけど、大きいほうだったのか?」
原子崩しが、炸裂した
一方「・・・なァ」
番外「ごめんなさい・・・」
一方「なンで、お前は俺の顔面に足を乗せてたンだ?」
番外「だ、だからごめんってば!」
一方「なンでだ?痛かったンですけどォ」
番外「し、しつこいね!」
一方通行と番外個体はホテルのベッドに座っていた
そう、一方通行と番外個体は休憩をしていたのだ
ヘンな意味ではなく、疲れた体を休めるために睡眠をとっていた
しかし、一方通行が眠りに着いてしばらくしたら、何かが顔面に降り注いだのだ
固い感触が
鉄パイプか、と考えてしまった辺りは彼はまだ危険な世界から抜け出せてはいないのだが
そんな生ぬるいものではなかった
番外個体が、かかと落としをくらわせていたのだ
一方「・・・」
番外「ね、ねぇ・・・」
一方「まァいいけどよ・・・」
一方通行が溜め息をつく
彼としてはあと一時間ほど寝ていたかったのだ
2時間の予定でホテルには入っていたが、延長なんてあとでいくらでもできる
一方「・・・出るか」
番外「え、あ、うん」
なぜか少し番外個体が残念そうな声を出す
一方「・・・夜でいいだろォが」
番外「だ、だってアナタいっつもそう言って結局してくれないし!」
一方「・・・今日は一周年だからしてやンよ」
番外「約束だよ?」
一方「あァ」
一方通行が番外個体の手を引く
番外「外、まだ暑いかな?」
一方「だろォな」
時刻は午後の3時半
まだまだ暑い時間帯だろう
番外「・・・イヤだなぁ」
番外個体がめんどくさそうにつぶやく
なぜか、暑いのは嫌いらしい
一方(・・・なンでだろォな)
一方通行は心のどこかでは分かっていた
あの悲劇があったのも、夏の最中だったから
きっと、暑い日にいい思い出がないのだろう
一方「行くぞ」
番外「うん」
番外個体がベッドから立ち上がる
一方「・・・なァ」
番外「なに?」
一方「・・・いや、なンでもねェ」
番外「?」
一方(・・・こいつは何を思ってるンだろォな)
この陽射しを見て
あの悲劇を思い出しているのか
それとも、友達と行った海や垣根の別荘を思い出しているのか
出来たら、後者がよかった
それでも、きっと前者だったのだろう
一方(俺だってそォだからな)
番外「じゃ、さっさと出ようよ」
一方「わかってンよ」
二人が受付へ向かう
一方「・・・あちィな」
番外「うん・・・暑いね」
まだ、眩しい陽射しは照っていた
10039「テっくん、これはどうですか!?」
テクパトル「・・・もう少し落ち着いた色のほうがお前は似合いそうだな」
10033「おや?ミサカには明るい色を進めましたよね?」
御坂妹「それぞれのミサカによって、似合う色が違うのですか?」
テクパトル「?みんなそれぞれなんだから当たり前だろ」
ミサカ一同「//」
今、テクパトルたちは服を見ている
試着室に一人が入り、出てきてはテクパトルが評価する
その繰り返しだった
美鈴「うーん・・・私にはわかんないな」
旅掛「・・・テクパトルくん、マジで見分けついてんのか?」
テクパトル「今は特殊メイクしてるから分かりやすいんじゃないか?」
旅掛「いや、だけどさぁ・・・」
旅掛がそれぞれのミサカを見る
たしかに、見た目は特殊メイクのおかげで変わっている
しかし雰囲気はほとんど同じだ
唯一、19090号だけが違うと言える
トチトリ「・・・17600号は迷彩か?」
17600「あぁ、保護色だ」
テクパトル「お前なぁ・・・」
テクパトルが17600号が選んだ服を見る
迷彩のズボン、迷彩のジャケット
一体どこの特殊部隊だ、とツッコみたくなる
19090「17600号ももう少し女の子らしい格好をしたらどうですか?」
17600「お母さんはそう思わないだろう?」
美鈴「うーん・・・まぁ、それぞれだよ」
14510「ですが、ちょっとおかしいですよ」
旅掛「・・・で、えっと・・・」
20000「20000号だよ」
旅掛「あぁ、で・・・お前はなんでそんな下着ばっかり買うんだ?」
20000「・・・パパのエッチ♪」
旅掛「聞いた!?こんなセリフ初めてリアルで聞いたよ!?」
テクパトル「興奮してんじゃねぇよバカ父!!」
旅掛「ははは!!いいじゃねぇか!!」
13577「・・・ミサカは、これがいいです!」
13577号が指差したのは白のワンピースだった
テクパトル「へぇ、清楚な感じだな」
トチトリ「私もこういうの着たらいいのかな?」
テクパトル「ねぇよ、13577はこういうのが好きなのか?」
13577「テ、テっくんは好きですか!?」
テクパトル「?」
美鈴「なになに!?13577号ちゃんもテクパトルくん好きなの!?」
13577「えっ!?あ、いや!」
御坂妹「お母さん、みんなテっくんのことが好きですよ?」
旅掛「くぁーっ!!憎いね!」
19090「ミサカが一番好きです!」
テクパトル「あ、あぁ、ありがとう」
トチトリ(・・・17600号もテクパトルが好きなのかな)
17600(・・・みんな、よく恥ずかしくねぇな・・・)
はぁ、と17600号が溜め息をつく
もちろん、彼女もテクパトルのことは「家族として」好きだ
だが恋愛感情ではない
だからこそ、他のミサカが好きだ好きだと言っているのを見るとくだらない、と思ってしまう
テクパトル「・・・まぁ、13577号には似合うんじゃないかな」
13577「は、はい!」
19090「・・・テっくん、ミサカはどれがいいでしょうか?」
テクパトル「?お前は何を着ても可愛いぞ?」
ミサカ一同「」
19090「//」
美鈴(あーあ、他の子たち固まってるよ)
旅掛(ひっでぇ一言だな)
17600(すげぇ衝撃力だな)
トチトリ(17600号、取り乱さないなんてカッコイイ・・・)
19090「・・・で、ではこれを・・・//」
テクパトル「ん、似合いそうだな」
13577「19090号はもう買ってもらったはずです!」
20000「そうだそうだ!何着もお母さんに買ってもらうなんてずるいぞ!」
御坂妹「特別扱いは・・・」
テクパトル「じゃあ、俺が買ってやるよ」
ミサカ一同「」
14510「ふぉぉぉぉぉぉ!!!ちくしょう、うらやましいなぁ!!!!」
10039「くそ!!!ミサカだって彼氏ほしいんだよぉぉぉぉ!!!!!」
13577「なに!?忘れ去られててやっとみんなの仲間入りと思ったらこの扱い!?」
20000「オチンチンしゅっしゅ!!!」
テクパトル「20000号は減点な、他のみんなも買ってやるよ」
ミサカ一同「//」
17600(テっくん・・・)ハァ
旅掛「いやぁ、しかしこうやってるとホント楽しいな!」
御坂妹「お父さん、ミサカの服、どうでしょうか?」
旅掛「おう!似合ってるぞ!」
御坂妹「お、お母さんはどう思いますか?」
美鈴「うん、オシャレだよ!」
御坂妹「//」
17600(ま、幸せそうで何よりだ)
旅掛「お前は買わないのか?」
17600「もう買ったさ」
旅掛「いや、テクパトルくんに買ってもらわないのか?」
17600「あぁ、ミサカはいいよ」
17600号が笑う
彼女はあまりそうやって甘えるのは好きではなかった
テクパトル「?お前も買えばいいのに」
17600「いや、遠慮しとく」
テクパトル「・・・遠慮なんていらないんだぞ?」
17600「・・・だったら、19090号に一着多く買ってやりな」
テクパトル「・・・お前は・・・」
17600「ミサカはオシャレには興味ないんだよ、美味いもんなら買ってもらいたいがな」
テクパトル「そっか、じゃあ仕方ないな」
17600「あぁ」
19090「テっくん、これはどうでしょうか?」
テクパトル「あぁ、お似合いだ」
美鈴「テっくん、これはどう!?」
テクパトル「なんでアンタも買ってんだよ・・・」
トチトリ「・・・いいのか、本当に?」
トチトリが17600号に近づく
17600「なにが?」
トチトリ「・・・うらやましいんじゃないか?」
トチトリがテクパトルたちを見つめる
とても幸せそうで、とても楽しそうで
なぜ17600号はその輪の中に入っていかないのか
17600「・・・ミサカは、こうやって見つめてるほうが好きだな」
トチトリ「・・・どうして?」
17600「どうして・・・か」
17600号は少し考える
なぜ、見つめているのが好きなのか
17600「あの中にいれば、たしかに幸せな日々は送れるだろう」
17600「でも、それに気づくことは難しい」
17600「一歩距離を置いたほうが、現実には気づきやすいのさ」
トチトリ「・・・岡目八目ってやつか」
17600「そうだな」
トチトリ「・・・でも、あの幸せを味わうのが難しくならないか?」
17600「なに、普段はあの中にいるのさ」
17600号が微笑む
その笑顔に、トチトリはまたドキリとしてしまう
17600「・・・たまにこうして距離を置いて」
17600「いつも自分が幸せだと実感する」
17600「それが好きなんだ」
トチトリ「なかなか素敵な趣味だな」
17600「そうかな」
17600号が目を細める」
その先にいる家族は
そんなことをしなくても、自分達が幸せだと知っている
碁盤の上に立っていながら
それでも、自分達の模様を知っているのだ
17600「ミサカは不器用だからな」
トチトリ「そ、そこも素敵だと思うぞ?」
17600「・・・そうか」
鼻で笑う
彼女はそうは思えなかった
他のミサカはうらやましい
ずっと、そう思っていた
17600「・・・でも、ミサカもいつかはあの中に入りたいんだ」
17600「・・・ずっと、あの場所にい続けられるようになれたら」
17600「それは、とても幸せじゃないかな」
トチトリ「・・・あの家族が大好きか?」
17600「あぁ、信じられないほどに好きだよ」
トチトリ「・・・幸せじゃないか、十分」
二人が笑う
トチトリ「・・・ん、テクパトルがお前を呼んでるぞ?」
17600「あぁ」
17600号がテクパトルの元へ行く
17600「なんだ?」
テクパトル「食い物だったら、買ってほしいんだろ?」
17600「・・・まさか、今からか?」
テクパトル「ちょうどいい時間じゃないか」
17600「・・・なぁテっくん」
テクパトル「ん、なんだ?」
17600「・・・ミサカは、幸せなのかな?」
テクパトル「あぁ、幸せだろ」
美鈴「ほらほら、立ち話してるヒマがあったら行くよ!!」
旅掛「俺はパフェな!!」
20000「顔に似合わないね」
17600「・・・ありがとう」
テクパトル「どういたしまして、トチトリも行くぞ」
トチトリ「はーい」
17600(・・・幸せ、か)
17600号が横を見る
テクパトル「それにしても、暑いな」
19090「そうですね・・・」
17600(・・・ミサカはまだこの場所からじゃ分からない)
それでも
17600(いつかは分かるようになればいいな)
そんなことを考えてた
17600(今日も暑いな)
まだ、大覇星祭は続く
968 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/17 17:10:18.07 OK6NyXVG0 825/837さて、新スレはこちら
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/
さて、そろそろ大覇星祭終わらせないとw
単発小ネタ
982 : ◆G2uuPnv9Q. - 2011/08/17 20:50:14.62 OK6NyXVG0 827/837では小ネタ
旅掛くんと美鈴ちゃんの初デート
こうだったらよかったのにな
美鈴「ねぇ旅掛くん」
旅掛「なんだい、美鈴ちゃん?」
美鈴「今日はどこに行くの?」
旅掛「そうだな・・・動物園とか・・・行きたいけど、あんまり時間ないんだよな」
美鈴「・・・でも、旅掛くんと一緒ならどこでもいいよ?」
旅掛「!!!」
旅掛(俺に足りないものはなーんだ!!!!!!!!!!!!!)
旅掛(好きだと伝える勇気だよーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
美鈴「ねぇ旅掛くん、一緒にアイス食べようよ」
旅掛「おう、いいぞ!」
美鈴「はい、あーん♪」
旅掛「・・・え?」
美鈴「?あーん」
旅掛「あ、あーん」
美鈴「どう?美味しい?」
旅掛「あ、あぁ!」
美鈴「じゃ、今度は私にあーんして?」
旅掛「」
旅掛(俺に足りないものはなーんだ!!!!!!!!!!!!!)
旅掛(あーんをしてやる勇気だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
美鈴「旅掛、そろそろ・・・ね?」
旅掛「?なんだよ?」
美鈴「つ、付き合ってもう5年だよ!?」
旅掛「?あ、あぁ」
美鈴「・・・ねぇ、わかんないの?」
旅掛「悪い、なにが?」
美鈴「・・・いいわよバカ」
旅掛「?」
旅掛(俺に足りないものはなんだ?)
旅掛(理解力・・・かな?)
美鈴「え、私のことが好きだった?」
「は、はい!!だから、自分と付き合ってください!」
美鈴「で、でも私・・・彼氏がいるし・・・」
「自分は、世界中の誰よりも御坂さんを愛しています!」
美鈴「・・・ちょっと、時間をもらえないかしら?」
「は、はい!!!!」
旅掛(・・・見ちまった)
旅掛(俺に足りないものはなんだ?)
旅掛(・・・今の場面で走っていって、抱きしめてやる愛情か・・・)
美鈴「・・・でね、旅掛」
旅掛「・・・」
美鈴「?聞いてる?」
旅掛「なぁ、俺たち別れるのかな?」
美鈴「え・・・?」
旅掛「ほら、この前他のヤツに告白されてたろ」
美鈴「み、見てたの!?」
旅掛「・・・俺は、お前を愛してないのかもな」
美鈴「え・・・?」
旅掛「・・・あのとき、駆け出していってお前を抱きしめなかった」
旅掛「もしかしたら、俺は・・・」
美鈴「そんなことないわよ!!」
旅掛「!」
美鈴「きっと、旅掛はちょっと鈍感なだけ!!だから!!」
旅掛「お、俺は・・・お前を愛してやれないような・・・」
美鈴「違う!!!!!!!!!!」
美鈴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!!」
旅掛「・・・」
美鈴「・・・」
旅掛「・・・そっか、お前は俺を好きでいてくれてるんだ」
美鈴「当たり前でしょ?」
旅掛「・・・じゃあさ」
旅掛「結婚・・・してくれないか?」
旅掛「5年もかかった、こうやって考えをまとめるのに」
旅掛「これから、大切なことを決めるたびに時間がかかるんだと思う」
旅掛「そんな、待たせてばっかりの俺でもいいなら・・・」
旅掛「結婚、しよう」
美鈴「・・・やっと、気づいてくれたんだ」
旅掛「・・・やっとこさ、だな」
美鈴「嬉しいよ・・・」
旅掛「・・・幸せになろう、美鈴」
美鈴「・・・うん」
旅掛(俺に足りなかったものはなーんだ)
旅掛(いや、もう足りていたのさ)
旅掛(初めて、世界が満たされたんだ)
美鈴「?パパ、何笑ってんの?」
旅掛「あぁ、悪い悪い」
テクパトル「ったく、さっさと他のミサカの服も見ないとな」
旅掛「あぁ」
旅掛「なぁ、美鈴」
美鈴「なに?」
旅掛「・・・家に一人って、寂しいか?」
美鈴「・・・うん、ちょっと・・・でも、前は5年待たされたし、慣れてるよ」
旅掛「そっか」
旅掛「・・・これからは、もうちょいこまめに帰ってくるようにするよ」
美鈴「お、サンキュー!」
旅掛「美味いもん作ってくれよな!」
美鈴「もっちろん!」
旅掛(俺に足りないものはなーんだ?)
旅掛(それはな・・・)
単発終了
続き: 20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
※編集中です。近日中に公開します。