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叢雲「拒否…ですって?」 提督「拒否…だと?」 大和「はい、拒否です」【前編】
自衛隊員がチェックインの手続きを終えてアタシに鍵を渡してきた。
「このホテル。オートロックだから鍵を部屋に置いたまま外に出ないように、あと何か合ったら電話してね。それじゃあ!」
そういうと彼女は帰ってしまう。
「まずは部屋に行きましょうか、どうもこの格好は人の目を引き過ぎる気がして…」
浜風がぼやいた。まぁ、サイズの合わない服にその体型じゃなぁ…
陸自の制服で目立つし、叢雲も瑞鳳もなんとなく、浜風を睨んでいる気がする。
部屋は一部屋だった、前に提督と泊まったところとはビジネスホテルと観光ホテル違いなのか、色々違った。
「見てください!海が見えます!」
「海なんて毎日見てるでしょ?」
「でも高い所から海を見るのはまた格別です!街の明かりも…えーと、なんていうんでしたっけ?百万円の夜景?」
「落ちないように気をつけてね」
雪風は窓を開けて外を見ている。確か円じゃなくてドルだけどね…航空隊の妖精達もベランダに上がって外を眺めていた。
「冷蔵庫の中に飲み物が入ってる…げ、ジュース一つで200円…有料かよ」
「こっちのお菓子は…無料でしょうか?あ、大浴場があるみたいですよ、まずは汗でも流しに行きませんか?」
そうね、それは賛成。
クローゼットを見ると浴衣が有ったので全員で着替えてからお風呂に行く事にした。
『つまり…君は艦娘が救援要請を出して居ないのに台湾海軍は艦娘から救援要請を受け取り救援に向かったと?』
「はい、その通りです。艦娘も援護に来たから南西に向かえと言う通信を聞いたと報告を受けて居ます」
電話口から海将の唸るような声が聞こえてきた
『そうか…不思議な事もあるものだ…と言いたいところだが、ありえるのか?』
「有り得るかと問われれば有りえないだろうとしか言えません。ですが、事実です。としか言えません」
『…海自内でも君と艦娘の行動を問題視する意見も出ている。シビリアン・コントロールから逸脱している。とも。』
「…それについては理解しているつもりです、私の指揮下の艦娘が私の指示を仰がずに海外艦に救援要請をしたとなれば、それも問題となるでしょう」
『とりあえず、艦娘が帰還したら詳細な通信記録の提出を頼む。航空機の妖精も含めてな。なんとか海自内でうやむやに出来ないか、こちらでも手を打ちたい』
「申し訳ありません。」
『かまわん、私は君を信じているし、君を疑うには今回の件は不可解なところも多いのだ。ではな』
海将からの電話を切る。いつもは横須賀基地隊を経由してくるくせに直接来るとは、事は結構大事かも知れない。
そして酔ったまま海将の電話に出なくて良かった。
「失礼致します…」
ドアをノックして鍵を使い部屋に入る。靴は無い、この時間は多くのお客様がお風呂かお食事の時間だ。
しかし襖の奥からは明かりが漏れ、テレビの音も聞こえる…節電しろと強く言える立場ではないが、部屋に居ないのにこれは勘弁して欲しいな…と思い襖を開けると小さい人形が何人もテレビを見ていた。
そして、それらは動いて私に話しかけてきた。
「ひっ…!?」
「あ、従業員さん、どうしました?」
「あ…あの…お布団を…」
「あぁ、では私たちは移動しますね」
そういいながら小さな人間は椅子やテーブルを隅に運んでくれた。
そうか、ここは艦娘が泊まって居ると言う部屋なのか、艦娘の中には妖精を扱うものも居るというが、きっとその妖精なのだろう
何人にも見つめられながらお布団をひく。こんな経験は初めてだ、ミスは無かっただろうか…?
更衣室で服を脱ぐ。良く見るとみんなボロボロだった。摩耶なんかあちこちに擦り傷切り傷があるし、雪風は被弾こそしなかったものの埃まみれ。
そして改めて硝煙の匂いがする。やっぱり先にお風呂入って正解だよね。
「あの子たち…どうしたの?」「喧嘩でもしたのかな…?」「変な匂いするし…何やったんだろ?」
周囲からそんな声が聞こえた。喧嘩…と言えば喧嘩だ、制服を着てない私達が艦娘だ何てわからないだろうし、硝煙の匂いなんてかいだ事も無いんだろうな。
「やっぱり広いお風呂って良い物ですね」
「そうね、那覇は結構狭いから…ここなら100人ぐらい一度に入れそうだもの…呉はどうだったの?」
「那覇よりは広いですが…洗い場と浴槽のスペースもここまで広くは無いですし、出撃や訓練の後だと流れ作業で身体洗って入って上がる。と言う感じです」
叢雲と浜風が並んで身体を洗っていた。
「広いだけ人数も…多い物ね」
「こうやって満足行くまで身体を洗うことも出来ませんし…そういう意味では後を気にしないで良い那覇鎮守府がうらやましい、と思うこともあります」
「そういえば瑞鳳、アンタ妖精達は置いて来て良かったの?」
「すこし悪い気もするけど…ここのお風呂は民間人の人も多いし、ちょっと危ないかなって」
桶に入れたお湯を身体にかけて泡を落とす。叢雲も身体を洗い終わった。
こうしてみると叢雲、いつもはキツイ態度だけど髪も長くて綺麗だし、おとぎ話の妖精やお嬢様、って感じがする。胸もあるし、私より細いし。
まあ口を開けばあんた呼ばわりだからお嬢様には程遠いかな?
浜風はまだ身体を洗って居るようだ。ねぇ、その胸を持ち上げて揉みながら洗うのって何?嫌がらせ?
「あっ、あの…良く蒸れて荒れたりするので…しっかり洗わないと…」
「ふーん、そうなのね、いーわ、羨ましいわ」
「私からすれば叢雲と瑞鳳さんの方が…急速回頭とかしたら、結構痛いんですよ…」
「でも、やっぱり羨ましいかな、浜風は美人だし…浜風が空母だったら航空機の燃料補給は困らないんだろうなぁ…」
「美人ってそんな…私なんかより瑞鳳さんの方が…って、まさか、艦載機の燃料って…」
浜風は素直な良い子。
「摩耶さん!お背中お流しします!」
「あぁ?別に良いよ、先に風呂入りなよ」
「いえ、今回のえむぶいぴーは摩耶さんですから!」
断る摩耶さんの背中に回ってタオルで背中を流し始める。
雪風はずっと艦隊を守るのが自分の仕事だと思ってました。あの時も最後まで最後尾で敵の攻撃を集めるべきだと。
前の時は雪風だけ狙われなくて、いろんな人から死神なんていわれてましたから。
「いてて…雪風、すこしやさしくやって…傷に染みる…」
「あっ、ごめんなさい!」
でも摩耶さんは自分で敵に向かって帰ってきた。雪風もそうするべきだったのかもしれません。
453 : VIPに... - 2014/11/30 13:35:04.11 3kyik3IEO 265/420乙です
艦娘は一艦艇ごとに一人だけという設定ですか
それとも同じ艦艇で複数の艦娘がいて、一人一人性格とかがちがう、みたいな感じですか
456 : VIPに... - 2014/11/30 22:03:22.27 iEqJsIIW0 266/420>>453
現在では一艦艇毎に一人だけ、と考えてください。
「ただいま…って、布団がかってに敷いてある…」
「おかえりなさいです。じゅうぎょういんさんがしいていきましたよ」
なるほど、叢雲の言っていた意味がわかったかも。確かに人に寝床の用意をしてもらうと言うだけですごい気持ちよさそうだった。
「じゃあ、食事に行きましょうか…いつもより遅くなっちゃったけど…」
「あ、ここにお食事券というのがあります。まだ大丈夫そうです」
「それじゃあ行こうか」
「だから言ったじゃない、食べきれない量を持ってくるな。って…」
「…くそがっ」
「だって…美味しそうでしたから…」
テーブルに突っ伏す摩耶と雪風、その前には結構な量の料理が乗っかっている。
気持ちは判るわ、おいしそうだし、明日の事を考えなくて良いならいろんな物を一杯食べたくなるよね?
「雪風のぶんは私が食べてあげる」「じゃあ摩耶の分は私が…」
浜風と叢雲が二人の食事を受け取る。私もまだ余裕はあるけど…
「二人とも、太るよ?」
「私はすこしお肉つけたいし…」「浜風はいくら食べてもおっぱいにいくので大丈夫です」「ちょっ…雪風!」
「ねぇ、浜風、今度私の近代化改修の素材にならない?」
「瑞鳳さんまで…もう…」
いけない、最近浜風に絡む事しかしていない気がする。だって、羨ましいんだもん…
『そうか、浜風も損傷したのか…』
「はい、申し訳ありません」
『なに、君の指揮に問題が合ったわけではないのだろう?ならば君を責める事はしない』
「…やはり大和達は呉に帰そうかと思います。この調子で戦闘を続けていればうちの設備ではパンクしてしまう」
大和の修理と日々の整備だけでドックは手一杯だ。
そこに尖閣での戦闘で損傷した装備の修理に整備、ドッグ担当のスタッフと妖精さんに計算させたところ一ヶ月は稼動戦力が瑞鳳と雪風のみになってしまう。
最近小規模な深海凄艦隊の目撃情報が増えている中、大和を抱える事は逆に那覇の戦力低下を招いてしまっている。
『無理を押し付けてすまなかったな』
「いえ…大和・雪風・浜風は機関の修理が完了次第、呉に向かわせようと思います」
『出撃の少ないん那覇で休ませてやりたい…と思ったが、裏目に出てしまったな?』
「まったく、もっと早くうちを増強するか呉に吸収してくれればこんな事にはならなかったんですよ…」
「言うな、私だって現状は憂慮すべきだと思ってるんだ」
「艦長、リンクスが深海凄艦を発見したと報告して来ました。本艦の南約200kmの地点、数は最低3隻、詳細不明です」
ブリッジでコーヒーを飲んでいると報告が入る。まったく、練習航海の最後の最後に厄介なものに遭遇したものだ。
「敵に空母がいるとまずい、リンクスは直ちに帰還させろ、進路を北に向け増速、距離を取る」
「了解、本国への報告はいかがしますか?」
「そうだな、直ちに報告してくれ」
本国から周辺国に通報が行くだろう、私の目的は無事に艦隊を本国に戻すだけ。
あと三日で横須賀、そこから二日ほどでなつかしの故郷だ。
「指令、練習艦隊から報告です。深海凄艦を発見したと」
「そうか、それで、艦隊は無事かね?」
「はい、距離が離れているため、増速し離脱するとの事です」
「わかった、くれぐれも気をつけるよう伝えておけ」
「了解、日本への通報はどうしますか?」
日本への通報、か…これが民間船なら直ちに通報させるわけだが…我が軍が日本に助けを求める形になってしまう。
もしそうなれば?国際条約にのっとった形で有っても、海軍への非難は免れないだろう、前例もある。
日本の哨戒網は優秀さ、何も起こらないだろう。
下手すれば海軍全隊が非難の的になりかねない、だからそう思うしかなかった。
「一応政府にも伝えてくれ、最終的な判断は政府が行うべきだ」
468 : VIPに... - 2014/12/01 02:12:45.50 73UG0vZbO 274/420そういやCOIN機ってなに?
509 : VIPに... - 2014/12/02 23:25:17.00 RXLnYG7Z0 275/420>>468
COIN機というのは乱暴に言ってしまえばセスナ機のような小型プロペラ機に機関銃・小型爆弾・ロケット弾などを装備したものです。
現在でも対反政府ゲリラ用などに保有・運用している国があります。
過去に日本では「戦闘ヘリなんてやめてCOIN機を保有した方がずっと良い」と主張した軍事評論家がいました。
食事を終えて部屋に戻る。
と言ってもやることは殆どない。みんなテレビを見たりスマホを弄ったりしていた。
「浜風!アニメをやってます!」
『私に良い考えがある!』『野郎!引き摺り下ろして細切れにしてやる!』
BSと言うチャンネルでロボットのアニメをやっていた。乗り物が意思を持つ…という所に私たちに似たものを感じるのは気のせいだろうか?
『この愚か者めが!』『お、お許しください!』
「面白い…事は面白いが、話しに着いていけないな…」
「そうね…て、あの鳥、すごいですね」
「あの鳥、艦載機に出来ないかな…」
良く良く考えれば鎮守府には食堂ぐらいにしかテレビは無い。そして大抵朝はニュース、夜はバラエティーが流れている。
漫画はたまに見るが、アニメは殆ど見た事が無かった。
「そう…アニメはこういうテンポが速くて突拍子の無い展開の物が流行ってるのね…」
このアニメも面白いが…やはり私は巨人の漫画の方が好きかも知れない。
「あっ!またしれぇが崖から落ちました!」
この司令官なんなんだろう、碌な作戦は立てないし、行きあたりばったり…ハッキリ言ってうちの提督の方が何倍もマシだ。
対してこっちの…悪役で良いのよね?こっちはそれなりにマトモな作戦は立てるのに…部下が悪いわね、これは。
私ならどっちに行くのもゴメンだわ、やはり今の提督が一番。
「Zzz…Zzz…」
「もう雪風ったら…風邪、ひくわよ?」
アニメは一気に全話やる方式だったのか、放送中に雪風が眠ってしまう。
浜風が雪風を布団の中に寝かせて毛布をかけていた。
こうしてみると浜風の方がお姉さんだ、色々と。
「なあ、他のチャンネルも見て見ないか?」
「そうね、このアニメも面白いけど…せっかくだし他の番組も見て見たいわ」
摩耶の提案に私も乗る。せっかくの機会だから、いろんな物を見て見たいしね。
浜風がチャンネルを変えて行く。
あっ、世界の軍用機特集!…私は見たかったが、他のも見たいと叢雲がごねて更にチャンネルを変えた、残念。
「あれ?これって…」
浜風がチャンネルを弄る手を止める。テレビには真っ青な背景に白い文字が浮かんでいた。
『このチャンネルは有料です。試聴される場合は有料確認ボタンを押してください』
「なんでしょう、これ?」
「さあ?でも金払って見るって事はかなり楽しい番組なんだろ?」
「そうね…どうせお金は自分で出せば良いよね、浜風、ボタン押して見て?」
「だ、ダメよ!」
叢雲が血相を変えて叫ぶ。叢雲が戦闘以外でここまで感情的になるのは珍しい。
「どうしたんですか?」
「と…とにかくその有料番組はダメよ!」
「ダメって言われると見たくなるよな…叢雲、お前この番組がなんだか知ってるんだろ?」
「な…し、知らないけど!とにかくそれはダメなのよ!」
「…気になりますね、瑞鳳さん、叢雲さんを抑えてくれます?」
「はまかぜっ!?あんたなんでこんなときだけ積極的なの!?」
「ほら、叢雲、おとなしくして!」
叢雲の後ろに回りこんで両腕を押さえる。
華奢な彼女だ、私でも十分押さえ込めた。
「よし、浜風、ボタンを押せ!」
「はいっ!」
「それは…それはエッチな番組なの!」
叢雲が叫んだ、まるで戦闘中のような必死さだった。
「え?」
しかし、浜風は既にボタンを押していた。
「…えっち?これが…?」
両手で顔を覆う叢雲だが、テレビに映ったのは…水着の女性が海岸を走ったり、ポーズをとっているだけだった。
「なんだ叢雲、お前こんなんでエッチとか言ってたのか?お子ちゃまだな?」
「これぐらい少年なんとかにもあるじゃないですか」
「あんた達は…知らないのよ、この後どうなるのか…」
「ははは、何をまさか…」
『ねぇ、そんなにこれ、見たいの…?』
水着の女性はおもむろにビキニを脱ぎだした。
『そんなに私に触って欲しいの…?甘えんぼな【自主規制】さんね…』
「マジかよ…」
「これって、アレだよね…男の人の…お【自主規制】…///」
「うそ…口に入れるなんて…」
『私の胸でピクピクしてるわ…元気なのね?』
「うそ…胸で…///」
「は、浜風なら…出来るんじゃないか?ハハハ…///」
「ま、摩耶さんだって///」
「ま、摩耶、あんたあの中学生にやってあげたら?きっと…喜ぶわよ…」
「バカ!なんでアタシがあいつらにそんな事…そうだ瑞鳳!お前前あいつのプロポーズ受けてただろ!!やってやれよ!」
「ええっ!あれはただお姉さんとして、ね?」
「摩耶も瑞鳳も…可愛いからみんな喜ぶわ、きっと…///」
「む、叢雲!叢雲はどうなの!?」
「そうだ!お前はなんかそう言う事やりたい相手とかいないのか「静かにしてください」浜風?」
「…始まります」
『ああっ…すごい…ふといよぉ///』
「う、嘘…あんなのが入るの///」
「人体の神秘って…すごいな///」
「痛く…ないのでしょうか///」
「な、何よあんなの…提督の方が一回りは大きい…わ…ハッ!?」
「む、叢雲…あなた、あの提督に何かされたのですか…!?」
「あのクソ野郎…那覇に帰ったらサメの餌に…」
「叢雲…辛い事があったらいつでも瑞鳳おねぇちゃんに相談してね?」
「な…何を勘違いしてるのよ!!」
あぁ、猥談が始まっちゃいましたか、うるさくて起きてしまいました…
寝た振りって辛いんですよ?
でもみなさん、良く盛り上がれますね…雪風とか昔の艦長にそういうの好きな人がいたから話には馴れてしまったのですが…
「そ!そう言う事よ!そう言う事なのよ!とにかく寝ましょう!」
「そうだな…もう夜遅いし、寝るか!」
あ、皆さん寝るんですね?でも寝れますか?
「で、電気、消すわね!」
………
「ん…うーん…」
………
「んぅ…むう…」
………
「んっ……はぁ…」
………
「うーん…ていとくの…はっ」
明日はみなさん、お寝坊でしょうか?雪風が朝起こしてあげますね?
おやすみなさい、です。
「いつも悪いな…会社まで送り迎えしてもらうとは…」
「良いんですよ、俺が昔宴会で潰れたときも家に送ってくれたじゃないですか」
「とはいってもな…」
部下の運転する車で会社に向かう。ここ数日、ずっと会社の誰かに送ってもらっていた。
今思うと私の対応は後手過ぎて悪かったのかもしれない。いつも部下には偉そうに先を見ろとか言っているくせに…
私が艦娘と性的な関係になっていると言う記事を見せられて、私は急いで雑誌の取材を受けた。
しかしそれがかえって怪しいと思われたのかもしれない。会社の前には数人の市民団体が現れて私を解雇するよう声をあげるようになった。
最初は私に公演やなんやらを依頼して来たというのに、えらい身の変わりようだな、と最初は笑っていたが、次にはわたしの同僚や部下、更に私を庇おうとする社長まで名指しで非難してきたから笑えない。
うちの会社は企業間取引がメインだから即座に不買運動…とはいかなかったが、契約先からも今後の付き合いを考えなければならないなどと言われ始め、社長が営業妨害で警察を呼ぶぞと叫んで追い返した。
しかし今度は私の通勤ルート上で、私や会社を名指しにせずに活動を始めた。
「あー…あそこにいますねー、ここは左折しましょう…しっかし、良く飽きないもんですねー」
「まったく、君達仕事は良いのか?と言いたくなるよ…」
会社の敷地外、そして会社も私の名前も出せない。となると、会社としてはどうしようもできない。
そして私が一人で帰るときに遭遇したらどうなるか?というわけで、部下や同僚が好意で私を送り迎えしてくれている。
一番良いのは私が県外に引っ越すことだろう。そうすれば彼らも流石に諦めるはずだ、しかし、転職となれば大事だ。
貯金はあると言っても県外への引っ越しは結構な出費だし、この不況の中、私のような中年、それも会社に悪影響を与え兼ねない風評をもった男を雇ってくれる所はあるだろうか?
有ったとしてもそうとうな給料の低下を考えなければならない、これから老後を考えたりしなければいけないのにそれはかなり辛い。
もし会社が支社や工場を持っていたら転属願いを出すと言う手もあるが…あいにく私は課長と言う中途半端に偉いポジションについてしまっている。
転属しようにも、会社もはいそうですかと私を飛ばせないのだ。
「…すまんな」
「いいっすよ、でも片付いたら課の全員に奢ってくださいよ?」
「あぁ、良い店を探しておくよ」
本当は全社員の前で土下座したいぐらいだった。しかし私は課長、良くも悪くもそれなりの数の部下を抱えている。
礼は言ってもへりくだる訳には行かないのがまた辛かった。
「みなさん!あさですよー!」
雪風に布団を引っぺがされて起された。昨日のアレがあれなのか、眠ったのか眠らなかったのかわからない。こんなの横須賀以来だ。
「うそ…だろ…夢とは言えあんな事…」
「…九九艦爆…可愛いけど、さ…」
「…寝たのに、すごい疲れが…」
あんたら、どんな夢見たのよ…
「みなさん、どうしたんですか?叢雲さん、何か知ってます?」
「…あんたが寝ている間に色々あったのよ…」
「(えぇ、知ってますよ、起きてましたから)」
雪風が私の耳元で呟いた気がした。こいつ…実は一番大人なのかもしれない
「さあ!お風呂入ってごはん食べましょう!今日の朝ご飯はなんでしょうか?」
「提督、今日の郵便です」
「あぁ、ありがとう…なんかすっかり郵便配達係にしてしまったな」
「いえ、私はこれぐらいしかお役に立てませんから…」
大和から手紙の束を受け取る、あぁ、これはあの人の手紙か…
拝啓、本来なら事前にアポをとった上、直接手渡しするのが礼儀であると思うのですが、会社があなた方との接触を快く思わないため、筆を取らせてもらいました。
あの事件からしばらく経ちましたが、先日の通院で医者に完治・経過観察後以上無しを良い渡されたため、最後の治療費を請求させていただきます。
あのおっさん、丁寧だなぁ…
「そうだ大和。すこし先の話しになるが…お前たちの呉への移動が決まった」
「そう、ですか…申し訳ありません、今までお世話になりました」
「おい、すこし先だと言ったろ、そういう話は最後にするもんだ」
「あっ…失敗してしまいました…」
赤くなって頭をこつんと叩く大和、うん可愛い
しかし、大和達を呉に返しても三隻の修理でしばらくは行動不能になるか…
やはり、もっと設備と艦娘が欲しい。これは沖ノ鳥島奪還以来、ずっと思っていることだった。
うちの艦娘は重巡1・軽空母1・駆逐艦1、どうしても水上戦は魚雷に賭けた突撃・水雷戦になる。
叢雲は通信能力に賭けるところがあるし、摩耶は水雷戦の指示出手一杯、瑞鳳も軽空母ゆえ、航空機の完成に精一杯。俺とやり取りをする余裕が無くなってしまう。
尖閣での戦闘で起きた失敗だった。
やはり、戦闘中にも指揮通信に力を割ける船が欲しい、重巡・正規空母・戦艦…せめて軽巡…しかし、そうなると今度はドックでの整備すら回らなくなる。
戦力をよこせと言えば使いこなせないからと回ってこず、施設を拡張したいと言っても艦隊規模から見て不要と片付けられる。そんな状況だ。
仮に戦艦が来てくれたとしても、今の状態じゃ帰還のたびにみんなで綱引き出しね…
「提督?何かおかしい事でも…?」
「いや、思い出し笑いだよ」
風呂に入り、食事をする。昨日の失態があるからか摩耶と雪風は今回は小食だった。
しかし、一日何をしよう?
いくらなんでも一日ホテルにいるのもあれだし、ホテルから出るにも外に出るにはサイズの合わない陸自の制服…ハッキリ言って恥ずかしい。
そんな事を言ってたら瑞鳳が提案して来た。
「じゃあ、石垣出張所に電話して見る?何か服がほしいって」
「いやぁ、そろそろ来るころだと思ってたよ、あの後やっぱ制服だと恥ずかしいと思ってね、みんなの私服を買ってきたんだ」
石垣出張所の反応は早かった、流石は宣伝を主任務とする人たちだ。
とにかく、これで外に出れる。
「あ、お金はいいよ、提督さんに請求しておくから」
ごめん、提督。お金は帰ったら払うわ。
石垣島は島と言っても5万人は人がいる。南の島…と言う言葉に比べれば結構な都会だった。
「ちょっと待っててくれ、買いたい物があるんだ」
そう言って摩耶が本屋に入っていく。全く、こんなところに来てまで少女マンガとか買う必要もないでしょうに…
だが、5分たって摩耶が持ってきたのは週刊誌だった。
「なに?摩耶あなた、そういうのが好きなの?」
「情報収集だよ情報収集、アタシは叢雲とは違って漫画以外の本も買うのさ」
漫画好きで悪かったわね、知ってるわよ、アンタ私たちにないしょでりぼんとかお友達、買ってるの。
そういえばハピネスチャージって部屋で叫んでたこともあったわね?
しかし摩耶の言う事ももっともだ、私たちの情報源は朝のテレビのニュースぐらい、他に必要なニュースとかは提督が教えてくれる。
今は提督とは離れてしまっているから、自分でも積極的にいろんな情報を集めるべきかも知れない。
「前艦娘の特集組んでた雑誌を見かけたから…こういうのを知るのも必要だろ?」
摩耶が一冊づつ、私たちに雑誌を配る。さりげなくコンビニにも行ってたのかアイスがセットだった。
近くのベンチに座ってアイスを加えながら雑誌を読んで見る。たしかに、艦娘に関係有りそうな記事が載っていた。
―日本の誇る兵器でありながら我々には詳細が知られてない艦娘。今回はそんな影の日本の主役に話を聞く事に成功した
-本日はよろしくお願いします。
横須賀鎮守府所属、高速戦艦の榛名です、よろしくお願いします
-まず、艦娘とは何か、について、教えてください。
うーん…いきなり難しい質問ですね…えーと、艦娘っていうのは、用は軍艦の魂が人の形をした物、デース!実は私たちも良く判ってないのデース
-自分自身でもわからない、と?
記者さんだって、人間とは何か?と聞かれて答えられますか?哺乳類・霊長類…色々ありますが、それを自覚出来てる人っているでしょうか?
-なるほど、そう言われると答えれる人間もまずいませんよね。
…
-艦娘に対する日本人の感情は様々ですが、艦娘としてどう思っていますか?
確かに前の戦争では私達が不甲斐ないせいで多くの人に迷惑をかけました…ですが、私たちは今も日本の軍艦として日本を守っていくつもりです。それは理解して欲しいと思います。
-過去の軍艦としての記憶もあると聞きますが…どういうことなのでしょうか?
それは…説明が難しいです。記憶の残り方にも艦娘毎に個人差がありますから…私の場合は…うろ覚えな夢、と言った感じでしょうか?
でも、金剛お姉さまが沈んだときと呉で見たあのきのこ雲はハッキリと覚えています…すいません、榛名は大丈夫です、続けてください。
-すこし難しい質問をします、あなた方は過去にアメリカの軍艦と戦ったわけですが…現在、米軍と協力したり、アメリカでも艦娘が開発された場合、どうでしょうか?一緒に戦えますか?
えーっと…霧島、すみません…
ちょっと待って榛名…はい、これ
えーと、榛名は大丈夫です!確かに色々ありました、私もアメリカには苦しめられましたし、姉妹もアメリカ軍に沈められています。
でも、第一次大戦の時はアメリカやイギリスは味方でしたし、もうあの戦争から何十年も経っています。そんな過去の話を永遠に引きずるつもりはありません。
艦娘と話して見たが、なるほど、彼女たちは確かに軍艦だった。それと同時に、私たちと同じように悩み、苦しんでいる。
艦娘は今日も日本の海を守るために戦っている。
「へぇ…艦娘への取材、なんてのもあるのね…」
「私たちも取材されちゃうかな?何から話せば良いんだろ…」
「そういうのは取材する側から提示されるのでは?」
「私も取材、受けちゃうんでしょうか?ちゃんと答えられるかな…摩耶さん?」
雪風の声で摩耶の方を振り向く、摩耶は見た事が無いような鬼の形相をしていた
「あの…摩耶…?」
瑞鳳が、摩耶に声を掛ける、が、瑞鳳が話しきる前に摩耶は手にしていた雑誌とアイスキャンディーを地面に叩きつけた
「なんなんだよ!この記事は!あの人が何をしたって言うんだ!」
慌てて摩耶の落とした雑誌を拾う。それは摩耶が殴った男性の記事だった。
『艦娘と寝た男、その学生時代に迫る』『あいつはずっと本ばっか見てましたよ、彼女が出来た事も無い…だから援助交際とかしてるんじゃないですか?―クラスメートは語る』
『小さいころの趣味は電子工作、友人を作らず、歪んだ男の末路』『女に持てない男が両手に艦娘!』
「くそっ!くそっ!どこの誰だ!こんなのを書いた奴は!あたしがぶっ殺してやる!!あの人が何をしたって言うんだ!悪いのはあの女とアタシだろ!?あたしが嫌いならアタシだけ記事を書いていれば良いんだ!クソーっっ!!」
「摩耶さん!落ち着いて!」
雪風が摩耶を落ち着かせようとするが、その手を摩耶が払った
「放せ!落ち着いていられるか!何でこんな記事が載ってるんだよ!これじゃああの人が悪者じゃないか!!」
「摩耶、落ち着きなさい、みんなが見てるわ」
「…っ!クソがっ…」
周りを歩く交通人が私達を見てヒソヒソ話をしていた、これ以上摩耶に暴れられるとまずい
摩耶の顔を掴んでその目を見つめ、良い聞かせる。
「摩耶、アンタの気持ちは痛いほど判る、でも今あなたが激昂したって、何も変わらない…今の姿をこの雑誌の記者に見られて見なさい、もっとアンタとあの人に悪い事になるわ」
「…わかった、悪かったよ…」
「どうせ、こんな下品な雑誌…出版社が長持ちしないわよ」
「そうですよ、こんな記事…みんなしばらくしたら忘れます」
「悪い、叢雲…雪風、さっきはゴメン…」
「いえ、雪風は気にしません」
「…アタシはホテルに戻る、お前らは普通に遊んでてくれ」
摩耶が叩きつけた雑誌を拾い、ゴミ箱に放り込んでホテルに向かって歩き出した。
摩耶が心配だったし、特にやりたい事も無い、みんな無言で摩耶について行った。
アタシに、アタシの知り会いにこんな恥をかかせやがって…覚えてろよ、クソ共が…!
午前中の担当と交代してカウンターに着く、この仕事を初めて数年経つが、お客様の前にずっと立っている以上、なかなか慣れない。
カウンターについてすこしすると五人組の女の子が近づいてきた。
保護者はいないのかな?これはあれか、家族で旅行にきたは良いが、親の買い物に付き合わされた子供が疲れるか飽きたりして子供だけホテルに帰したパターンだな?
困るんだよな、こう言う事されると。万が一迷子にでもなったらこっちにまで責任が追及される。
「805号室…摩耶だ」
「はい、マヤ様ですね、少々お待ちください」
一番背の高い女の子が暗い顔で預けた鍵を要求してくる、良く見るとみんな絶望的な何かを見たような顔だ、まるで映画のミストを見た直後のような…
子供相手でも仕事だ、笑顔笑顔…しかし、マヤと言う苗字なのか?変わった名前だな?
そう思いながら客室名簿を探すと苗字は無し、名前は摩耶、特記事項に艦娘と言う文字があった。
そうか、この子達が艦娘なのか…しかし、艦娘がこんな顔をするなんて、何があったんだ?
「はい、805号室、摩耶様ですね、こちらが鍵になります…失礼ですが摩耶様、お身体の具合でも悪いのでしょうか…?」
失礼だとは思ったが、声を掛けてしまう。どう見ても心が健康そうには見えなかった。
「なんでもない、さんきゅ…」
そう言って摩耶と言う艦娘は鍵を受け取ってエレベーターに向かってしまう。
「ごめんなさい、ちょっとショックな事があって…」
一番背の低い艦娘がそう言って私に頭を下げ、みんな摩耶を追って行った。
艦娘がショックを受ける、なんてただ事じゃない気がする。
まさか自殺なんてしないよな?ホテルで自殺者が出るとかゴメンだ。
とりあえず、従業員には注意を促しておこう。そう思って私は電話を取った。
「…ブツブツ…どうする?…ブツブツ…」
「ねぇ摩耶…大丈夫?」
「ん?あぁ、大丈夫だ、問題ない」
「…背中、流すわ」
「あぁ、サンキュー叢雲」
「…クソ…ブツブツ…」
「お客様、こちらのフルーツなんかいかがでしょうか?」
「摩耶さん?摩耶さん!ほら、どうですかって、美味しそうですよ?」
「えっ…浜風…あ、あぁ、ありがとな?」
「お客様…失礼かと思いますが、お連れの方は…」
「すみません…あの子、ちょっと疲れていて…」
「…どう…ぶっ殺して…」
「ま、摩耶さん!ゲームコーナーがありますよ!何かやって行きませんか?」
「ん、雪風…お前にスロットやらせると百円で三時間ぐらい終わらないからダメだ」
「むう…UFOキャッチャーとかにしますから!」
部屋に戻ってからの摩耶は、多分第三者から見てもすこしおかしく映ったと思う。
考え込むように頻繁にぶつぶつと独り言を口にしていた、食事中など従業員にすら心配されてデザートを振舞われる始末だった。
部屋では雪風が摩耶を誘って映画を見ているが、口元は動いていた。
艦娘も、もしかしたら人間のように心を病むのかもしれない、叢雲も言っていたけど、摩耶は多分、私が知る艦娘の中で誰よりも素直な子だ。
素直ゆえに、精神的なショックをもろに受けてしまう。あの男性は摩耶にとって、罪を償うべきである相手であると同時に最大の恩人でもある。
提督は口にしなかったが、摩耶が男性を殴ったさい摩耶の処分をどうするか、上層部でも意見が割れたらしい、拘留、艤装の解体処分…酷いものでは他の艦娘への注意喚起と言う名の見せしめも兼ねて非公式の銃殺…なんて意見も艦娘艦隊の外からは提案されたとか。
あの男性が摩耶を訴えなかったから今も摩耶がここにいる、と言っても言い過ぎでは無いのかもしれない。
そんな恩人が自分のせいで更に酷い目に会っているとしったら?確かに、私でも耐えられないかも知れない。
映画が一段落して摩耶が立ち上がり、部屋を出ようとした。
「摩耶さん…どちらへ?」
「あぁ…売店で酒でも買って来る」
「あ、私も手伝いましょうか?」
「いいよ雪風、アタシ一人で良い」
そう言って部屋から出ていく。
お酒、摩耶はあまり飲まないほうだけど、こう言う時はお酒を飲んででもゆっくり休んだ方が良いかもしれない。
「…ちょっと私も行ってくるね」
「お願い、瑞鳳」
私も摩耶を追って部屋を出る。
私が部屋を出た時、エレベーターに乗る摩耶が見えた。急いで一緒に乗ろうとしたが、エレベーターのドアはすぐしまってしまった。
「…」
気がつくとホテルから出て、適当に街を歩いていた。そういえば夜に外出するのは久しぶりかも知れない。
なんでアタシはホテルから出ていたんだろう?疲れている?そうかもしれない。
軽く回りを散歩してからホテルに戻ろう。
「どうしたんだいお嬢さん」「夜道の一人歩きは危ないぜ?」
後ろから声を掛けられた。振り向くとすこしやせた男と、すこし太った男の二人組みがアタシを見ていた。すこし顔が赤いところを見ると酒でも飲んでいるのだろう。
たしか、前に中学生が持ってきたゲームにこんな感じの二人組みがいた気がする。MとL…なんてったっけ?
「こんな歓楽街に一人でいるとは、関心せんな」「もしかして、そう言う事をしたいのかな?ん?」
ニヤニヤしながらアタシを見つめてくる。舐めるような視線、というのはこういうのを言うんだろうか?
そうだ、イイコトを思いついた。
あの人が悪者として報道されるなら、いっそアタシがそれ以上の悪者になってしまえば良いんだ。
そうすればあの人だって、忘れ去られる。そうだ、それがイインジャナイカ…?
「そう言う事?って?」
「わかってるんだろう?こんなところで若い女が一人、なんて大抵二つだ」
「一つは男に振られてヤケ酒…もう一つは…そう言う事さ」
「お前ら、アタシを抱きたいのか…フフ、いいぜ」
もうあたしはどうなっても良いさ、お願いだから忘れさせてくれ、お願いだからあの人に平穏な日々を。
いかん、乗ってきたぞこの女、半分は冗談のつもりだったのに。酒の勢いで声を掛けたらこのざまだ。
しかし…これは考えようによっては幸運かも知れない。これだけの美少女と寝れる機会なんて、多分一生に一度あるかどうかだろう。
「いくら、欲しいんだい?」
「金…金なら良いよ、あたしはやな事忘れたいだけなんだから…ハハ…」
「(おい、こいつ、やばいぞ)」
相方が耳元で呟く、同感だ。
この女は笑っていた。それだけなら普通だが、その顔と笑い声は乾いていた。
そして目がおかしい、あきらかにやばい。この女の目は輝いていた。
キラキラした目。と言えば、それだけで純粋な人、心の綺麗な人、そういう印象だ。
だが、こいつの目はギラギラしていた。
「(同感だ、どう思う?)」
「(やばいクスリとかやってるかもしれん…逃げよう)」
触らぬ神にたたり無し、その言葉を破り女神に触ろうとしたが、とんだ祟り神だったのかもしれない。
「何してる?アタシは二人同時でも、いいぞ?」
いや、この子はそれでも女神だ。そう確信して彼女に話しかける
「…何があったか、聞いても良いかい?」
「おい!?」
彼女のまぶたがピクッと動いた。
「お前何考えてるんだ!?」
「様子がおかしいんだ、何かあったなら話しぐらい聞いても良いだろ?」
「んなこといってほんとにやばい奴だったらどうするんだ?」
「嫌ならお前一人で帰れ、美少女は俺の嫁、泣いてる嫁を頬って置く夫はいないだろ?」
「まったく、お前の理論はわかんねぇよ…こうなりゃやけだ、俺も行く、何かあったとき二人の方が良いだろ?」
「怖いなら帰っても良いんだぜ?」
「…俺は女を悦びで泣かせるのは好きだが、悲しみで泣かせるのはだいっ嫌いなんだよ」
デブとガリ…いや、もうマリオとルイージにしてしまおう。二人がファミレスにアタシを案内した。
いきなり路地裏とか、そんな事考えてたけどな、昨日見た番組みたいにインタビューでも始める気か、こいつら
「ラストオーダーギリギリだな、適当に頼むぞ」
マリオが適当に飲み物を頼んでいた。
「それで、何があったんだい、話しぐらいなら聞くよ?」
ルイージがさっきとはうって変わってやさしい口調で話しかけてきた。
「…ただ、気持ち良い事、したくなっただけだ」
止めてくれ、慰めて欲しいんじゃないんだ。私をボロボロにして、適当な新聞社に写真でも送ってくれりゃ良いんだ、そうすればテレビも新聞も週刊誌もアタシの記事しか書かなくなるんだから。
「いいたくないなら黙って飲み物を飲みな、でもな?そう言う事を楽しみたい奴が、そんな顔をするかね?」
マリオが飲み干したコーラの氷をガリガリしながらマリオが喋った、棘だらけの言葉の中に微妙に気遣いが見えて、提督とすこし被る。
おかしいな…見た目もぜんぜん違うのに…
「…あたしが悪者になって、目立てば良いって、そう思った」
「そんな理由で?厨二病かよ」
「なら他人を巻き込むなよ、クソが」
ごもっともだ、でもその語尾は言わないで欲しいな、マリオさん。
「そりゃ酷い、な」
気がつくとアタシは今まであった事をこの二人組みに話していた。
今話している事は報道で公開されているとは言え艦娘の秘密情報になる、アタシは機密漏えいをした事になるが…
「…で、やけになって適当な男誘って寝ようと?艦娘様が何考えてるんだか」
マリオのおっしゃるとおり、アタシには返す言葉が無かった。
しかし、なぜだろうかこの二人には何でも話せる気がした。
アタシの仲間の艦娘でもない、守ってくれる提督や自衛隊員でもない、アタシ達を蔑み攻撃して来た連中でもない、
つい十分前に知り合っただけの完全な赤の他人。あたしに対する+も-もなく完全に中立、そんな人がアタシの話を聞いてくれたのが、多分嬉しかったんだろう。
「で、自分が目だってそのおじさんへの非難の目を自分にむけよう…と」
「愚策だな、自爆特攻は旧軍のお家芸…でもないんだろ?」
やさしく話を聞いてくれるルイージと違ってマリオはいちいち突っかかる言い方をしてくる。
「他に手がないならそれも仕方ないが…まだ手はあるさ」
「そうだな、それに自棄になった行動はデメリットも大きいぞ?自分を守るために君が体を売ったとか知ったら、そのおじさんはどうなる?俺なら自殺するね」
「…うん、なんでアタシ、そんな簡単な事に気づかなかったんだろう…」
マリオがさっきまでと違うやさしい口調で話しかけてきた
「…そういう時は一番の目的を考えるんだ、君の目的は?」
「…おっちゃんへの嘘の噂を、止めたい」
「違う、それは目的のための手段に過ぎない、手段を最初に考えると失敗するんだよ。目的は?ほら、抽象的なもので良いんだ。」
「…おっちゃんに、平和に過ごして欲しい…」
「次に、その障害になる物を考えろ、自分の行動も含めて…ほら、あんな馬鹿な考え、起せなくなるだろ?」
まったく、こいつの言うとおりだ。
おっちゃんが自殺する。なんてまだ生易しいものだったかもしれない。
提督が、深夜に執務室で首を吊る。一佐が、首になる。アタシの姉妹たちは?
アタシを姉妹と認めてくれたちょうかいは?
「その障害の中で一番デカイ物は?」
「…あの出版社だ」
「じゃあ簡単だ、その出版社を叩けば良い、君が叩かれないように、だ」
「でも相手は…民間企業だぜ?それこそ…」
「そうだ、メディアは強い。大手なら世論を動かし、国も動かす。」
「なら、メディアでメディアを叩くのさ」
ルイージが笑顔でウインクして来た、正直、似合ってない。
「でもどうしろって言うんだ?メディアのツテなんて…」
「そこを何とかするのは君自身だ、作戦立案は巡洋艦のお手の物だろ?あの戦艦大和を差し置いて旗艦になった事もあるんだから」
「マジかよ、巡洋艦やべぇじゃん」
「それをしたのはあたしの姉貴だ…」
「二三十年前ならいざ知らず、今は結構いろんな方法があるのさ、そろそろ閉店だな、支払いは頼むぞ?」
「俺かよ!」
ルイージに支払いを任せてマリオと外に出る。
「ほんとに、いいのか?あたしを抱かなくて、アンタもそのつもりでアタシに声を掛けたんだろう?」
「さっきも言ったけど、あいつは泣いてる美少女をほっとけなくて、俺は女を悲しませるのは嫌いなのさ」
「…かっこつけてもにあわねぇぞ?」
いつの間にかルイージが後ろに立っていた
「そういう君は笑顔が似合うじゃないか」
二人とわかれてホテルに向かう。
もしあの二人以外に出会っていたら、今頃アタシは何処かのビルの裏で全裸で転がってたかもしれない。
そう思うとあの二人には足を向けて寝れないな。
ホテルの前でポケットのスマホを取り出す。電源を入れると不在着信が何十件も入っていた。
ゴメン、叢雲からの電話に出るのは後だ。アタシにはやる事が出来た。
「…もしもし、姉貴?こんな時間にゴメン」
「あーっ!失敗した!」
「どうした?いきなり叫びだして?」
「やっぱあの子と一回ヤッテおくんだった!!」
「…あの子も可愛いが、俺はもっとおしとやかな方がいいなぁ…」
「わかってねぇなお前は!ああいう乱暴なとこのある子がベッドの上でしおらしくなるのが良いんじゃないか?なぁ!」
「あーはいはい、帰るぞ?」
部屋に戻ると瑞鳳に抱きつかれた。
なんでも、警察を呼ぶか、もう少し待つかで意見が割れていたらしい。
「なんにしろ無事で良かったわ、アンタの事だから東京まで戻って出版社に突撃するんじゃないかと…」
あ、叢雲、それほんとに考えてたんだ、マジでゴメン。
「はーい、高雄さん?どうしたんです?こんな時間に…え?パソコン?まぁそこそこ詳しいですけど…」
「お疲れ様です…鳥海さん?どうしましたか?え?それなら出来ますが…本気ですか?」
「ちょっと愛宕さん!いきなり電話かけないでよ!スマホのゲーム、良いところだったのにー!」
「どもー!珍しいですね、あなたから電話してくるなんて?え?特ダネですか!?フムフム、私の名前は出せないけど結構な騒ぎになる…ですか」
ふと目を覚まして時計を見ると0500、起床にはまだすこし早い時間だった。
でも、二度寝するほど眠気があるわけでもないので、何となくベッドから出る。窓から外を見て見ると雨が降っていた。
…変な空だ、鎮守府の回りは雨雲が立ち込めていて雨が降っている。でも、窓から見える海の先は雲が無いのか、朝焼けで真っ赤だ。
「どーしたの時雨、雨でもみてるっぽい?」
声を掛けられて振り向くと夕立がボクの隣に立っていた。
たしか今日は夜勤明け、きっとこれから寝るつもりだったのだろう。
「うん…変わった空だな、って思って」
「たしかに、変な空っぽいかも、時雨はこう言う雨は好きっぽい?」
「ボクが雨、好きなのは知って居るでしょ?」
「でも、なんか暗い顔してたっぽい」
「…雨は、いつか止むさ、でもたまにこうも思うんだ。雨がいつか止むなら、その雨はまたいつか降り始めるんだって」
「…良くわかんないっぽい」
「雨は好きだけど、この雨は嫌いかな…朝焼けって、どきどきするんだ、良い事と悪い事が同時に起きそうな気がして、それにこの雨さ」
「…悪い事だけおきるっぽい?」
「たぶん、だけどね」
海自の船で沖縄へ、沖縄基地から鎮守府まではなぜか基地にいた陸自が送ってくれる事になった。
「オーライ!オーライ!」「いやぁー、艦娘の装備もここまでボロボロになるんだなぁ…」
「おーい、それアタシの艤装なんだ!丁寧に扱ってくれよ!」
フォークリフトで艤装をトラックに積み込む隊員に摩耶が声を掛ける。そんな時私達に声を掛けてきた人がいた。
「那覇鎮守府の艦娘ですか…よくアレだけの戦力差で勝利できたものです、尊敬します」
「あれ、艦娘…?」「こんな方いましたっけ…?」
そこにいたのは艦娘だった、が、こんな子…居たっけ?
みると雪風と浜風も首をひねっていた。
「自己紹介が遅れました、自分はあきつ丸と言います、陸上自衛隊、第一船舶隊所属…まぁ、自分一人と陸自の担当官一人の部隊ですが…」
「しってるわ、重巡四隻に襲われていたわね」
「なっ…なぜ知って居るのでありますか!?あのときの事は忘れたかったのに…」
「私、アレ見てたもの、面白かったわ…それより、どうして陸自の艦娘が海自の沖縄基地に?」
両手で顔を覆うあきつ丸に聞き始める。そういえばなんでだろう?所属の横須賀ならわかるが…
「あ、あぁ…自分、新装備試験の準備で硫黄島に向かう途中なのであります」
「新装備?あきつ丸が居るって事は艦娘用よね?どんな装備なの?」
「申し訳ないのであります、私が喋って良いのか、わからなくて…」
「えー?教えてよぅ…ね?ね?」
「瑞鳳さん…あきつ丸さんも困って居ますよ、きっと公表される機械もありますから、ね?」
浜風に窘められてしまった…でも、新装備ってなんなんだろう?陸自が作った揚陸艦娘用装備…興味は尽きない。
「みなさん!用意が出来ましたよ!乗ってください!」
陸自隊員に声を掛けられる。私たちはあきつ丸に別れを次げてトラックに乗り込んだ。
「自衛隊は集団的自衛権を盾に米軍との共同作戦を繰り返し、先日も台湾軍と、政府の許可も無しに共同作戦を繰り広げた!これは自衛隊の暴走である!」
「このままでは日本が、日本人が外国の尖兵として世界に戦争の火種を振りまき兼ねない!そしてその中心に居るのは常に艦娘達だ!」
「更にここ、平和の島沖縄には過去に殺人未遂・脅迫・売春などの問題を起した艦娘が多数在籍している、これは政府の沖縄なら負担をいくらかけても構わないという算段による物だ、艦娘がいる限り沖縄には平和は訪れない!」
「艦娘は沖縄から出ていけ!」「「沖縄からーでていけー!!」」
艦娘達が帰還したのは、そんなデモの真っ最中だった。
海自ではない陸自のトラック、それも幌をかぶせて中身が見えなかったからか、市民団体は陸自のトラックには殆ど興味を示さなかった、中身は嫌いな艦娘とその装備なのにな?
デモの中には艦娘による売春、それによる治安・風紀の乱れを懸念する声もあり、艦娘達はそれを聞いたはずだ、どう説明しようか、俺はその場に居て良いのか?
そんな事を大和と二人で悩んでいたが、帰ってきた艦娘は可愛い笑顔を見せてくれた。
「ただいま提督、艦隊、帰投したわ!」
「大和さん!ただいまです!雪風・浜風帰投しました!!」
いや、元気なのは良いけど、俺たちの気苦労はどうなるのさ?ねぇ?
大和を見ると大和がにっこり笑って言った。
「私たちはあんな風評被害何かには負けないって事ですよ」
艦娘の装備をドッグに運び込み、妖精さん達に見てもらう。
浜風は二日あれば通常航行に支障無し、雪風は被弾こそなかったが機関の一部が焼け付いており、その交換に一日。大和は旗艦の修理は終わっており武装は大半が使えないが航行には支障無し。
二日後には呉組みには呉に帰ってもらう事になるだろう。
摩耶は大破、修理には一ヶ月単位、叢雲と瑞鳳は修理に半月…摩耶の艤装と叢雲の火砲の修理を優先するよう指示を出した。
「なぁ…俺がいない間、何があったんだ?」
「色々あったんだよ、色々、提督が首になった後の後継者候補とかな」
本当に何があったんだ?ここ数日、俺はおいていかれてばっかりだ。
公園のベンチに座り、目の前の鉄の塊を見つめる。私の目の前にはかつての戦艦、三笠が静かに佇んでいた。
戦艦三笠、かつてもっとも有名な戦艦だった船だろう。激しい戦いを経験した、という意味では私や金剛達の方が上だろうが、それでも日本海軍初期においてこの方が上げた功績は計り知れない、とおもう。
ここ最近の私の休日の日課はここ、三笠公園で三笠と、それを眺める人々を見るのが日課になっていた。
それまでは休日もトレーニングばかりだったが、陸奥に「姉さんもたまには遊んで来たら?」等と言われてしまったのだ。
「人々の笑顔を守る我々が遊んでなんて居られないだろう」と言ったら「自分で笑顔になれない人に守られたって、みんな心の底から笑えないわよ」等と言われてしまう。どうも私は口では妹に勝てないようだ。
まあ、その遊びが近所の三笠公園でずっとベンチに座っているだけ…と知ったら陸奥にまた怒られるだろうな?
しかし、私はそう言った事には疎い、ここでずっと座っているのが一番のストレス解消なんだ。
三笠、貴女は私たちと共に戦ってはくれないのか、確かに三笠は私達と比べれば性能に劣る。しかし艦娘となればまた別だろう。
それに三笠が傍に居てくれるというだけで私たちはいくらでも戦える、そう思えるだけの物が私たちの中にはあるのだ。
海自でも広報や後方支援用に三笠を艦娘に…という案もあったが、うまく行って居ないらしい。
戦力外の艦娘より戦力に予算が集中されるほか、どうしても三笠の魂がつかめない、何て話しも聞いた事がある。
「三笠は生きたまま固められた剥製のようなものだ、船として生きても、死んでも居ないのかもしれないな」
そんな事を提督から聞いた事がある。
そんな時、小さな影が私に近寄ってきた
「あ、ながとおねーちゃんだ!」
年は…3~4歳だろうか?人間の男の子だ。
前にここに居るところを見つかってから妙に懐かれてしまった。母君の姿は見えない。
「こいつ、またお母さんを置いて来たな?悪い子だ!」
「だっておねえちゃんに会いたかったんだもん!」
男の子を抱き上げるとキャッキャと笑う。
「私はいつもここには居るわけでは無いといっただろう…私が居なかったらどうするつもりだ?」
「でもお姉ちゃん、大体ここに居るもん!艦娘のおしごとしてないでしょ?」
「なっ…いや、私は最強のビッグセブンだからな!私が仕事に出るというのはそれだけ日本がピンチだと言う事なんだ!」
「最強?ビッグセブン、すごいの?」
「あぁ!何しろ世界最強の七人の内の一人だぞ!私は!」
嘘は言ってないぞ?大和型やアイオワ型にサウスダコタ型…私より強いと言われる戦艦は居るが、錬度も含めれば私と陸奥が一番のはずだ
「最強の七人!すごい!」
「あぁ、私はすごいんだ!」
「仮面ライダーよりも強い?ウルトラマンよりも強い?」
「あぁ、もちろん…いや、彼らとは、どっちが強いかはわからないだろうな」
「…どうして?」
「仮面ライダーも、ウルトラマンも、正義の味方だろう?私たちだってそうだ、正義の味方同士が戦うと思うのか?」
「んー?」
できれば、この子には戦うと言う事がどう言う事なのか、知ってほしくないと思った。
しかしそれは無理と言うものだろう、たとえ明日深海凄艦が全滅したとしても、それで世界から争いが消えるわけではない。日中や日韓は今日も領土の問題があるし、中東では頻繁に自爆テロも起きている。
殺し合いが無かったとしても、生きていく上では競争は必須だ、それでも、だ。
今私が抱いているこの子が、あらゆる争いに巻き込まれなければ良い、と思うのは私のわがままなのだろうか?
「あー!やっぱりここにいた!すみません長門さん、いつも息子を見ていただいて…」
声のする方を見ると両腕に買い物袋を抱えた女性が駆け寄ってくるのが見えた。
「ほら、お母さんが呼んでいるぞ」
「お母さん!遅いよ!」
「もう、この子ったら…いつも私を置いてここに来ちゃうんです…いつも言い聞かせているのですけど…」
「…幼子を育てているのに、子供から目を離すのは感心しないな、私も常にここに居るわけじゃないんだ」
「いつも本当にすみません…」
「…いや、私も子供を持った事も無いのに偉そうな事を言ってすまない…」
「ほら、帰るわよ、お姉ちゃんにバイバイしなさい」
「うん!ばいばい!お姉ちゃん!」
私たちは子供を産めない、正確には産めるかどうかわからない。前例も挑戦もないのだから。
だから、次の世代を産めない変わりに、あの子や他の子供たちの笑顔を守ろう。
もう、あんなのはゴメンだ。私と陸奥に憧れ、毎日私の絵を書いた子供が私の中で死んでいくのは。
なにか良い写真はないかと思い、公園に来たら良い物を見つけた。子供と触れ合う艦娘。という図だ。
物影から出来るだけズームして写真を取る。
あとは、これを白黒にして解像度を落とし、二人に目線を入れる。これにちょっとしゃれたキャプションをつけたら?
警察通報事案が一件出来上がりだ。
ま、なんにしろ俺は写真を取って会社に送るだけ、さ。後は編集者の仕事だ。
悪いがあんたには俺の飯の種になってもらおう。
「こちら哨戒機、現在順調に工程を消化中。哨戒担当区域まで後2時間を予定、通信終わり」
基地に定時連絡を終え、操縦桿を握りなおす。
今日は雨、飛行する分には影響無いがそれでもあまり好きな空ではなかった。
「でも、なんというか…嫌な雨ですね」
「全くだ、こんな天気は嫌になるな、気が滅入っちまう」
「機長もそんな事言う事があるんですね」
まったく、ベテランの機長がこんな事を言うとろくな事が無い。大抵ソノブイが変なのを見つける。
しかし、まだ哨戒予定区域まで二時間ある。今日の機長予測は無駄に終わるだろう。
「なんだあれ?鳥か?」「まさか、こんな雨で鳥が飛ぶかよ、ガラスについたオイルかなんかじゃね?」
後ろの方から他の乗員の声が聞こえた。
雨を除けば今日の飛行は順調だ。でも機長の言いたい事も分かる
―あぁ、本当に嫌な雨だな
私の記憶はここで途絶えた。
「機長!第三エンジンで火災発生!」「計器が損傷した!」
急に機体に衝撃が走り、コントロールが聞かなくなる。フロントガラスがヒビだらけになって計器が割れた。
何があった?ふと横を見るとさっきまで話していた副操縦士が真っ赤になっていた。
「機長!」「うわーぁぁっ!?」
乗員たちの悲鳴が聞こえる。操縦桿を、スロットルを動かそうとするが動かない。
何があったんだ!?
その時、ヒビの入った窓ガラス、そのヒビの少ない所に、黒い点が映った。
お前か。
第二エンジンが光ったと思った。
私の記憶も、ここで途絶えた。
「提督、入るわよ」
提督に通信記録の提出をしようと執務室に入る。
見ると提督は机に突っ伏して眠りこけていた。
まったく、仕事中に寝るとか、緊張感無いわね。やっぱりアンタには私が居ないと駄目だわ。
「…」
まあ、今回は通信記録を提出するだけ、きっとこの後は会議だなんだで忙しいだろうし、大目に見てあげる。
寝ている提督の頬をつっつくと提督がう~んと唸った。
「…ねてないです…むらくもさん、まじやめて…」
寝言か、たぶん初めて会ったころの夢を見ているのだろう。
最近、提督で変な想像をしてしまう事が増えた。
戦闘から帰ってきた私を提督が抱き締めてくれる、頭を撫でてくれる。そんな想像。
そういえば、二人だけの時はよく頭を撫でてきて、あたしが手を振り払ってそんな事より仕事しろと言って…
一年も経ってないはずなのに無性に懐かしい。
もう一度撫でてくれないかしら?沖ノ鳥島の後酔ったせいで提督に抱きついたまま眠ってしまった事があるが、変な姿勢で眠っていたはずなのにいつもより疲れが取れた。
カッコ良く無いし、成績は悪いし…でも、私は無意識に提督を求めているのかも。
提督が私を裸にして、抱き締める。
提督が私の中に入ってくる…私の小さい身体は彼を全部受け止めきれるのだろうか?
そんなにがっついたら私が壊れちゃうじゃない、ゆっくり、ね
そう、そうやって私を気遣ってくれるところも大好きなんだから
「提督、お茶をお持ちしました…叢雲?」
はっ!
ドアが開く音がして慌てて提督を撫でていた手を引っ込める。
「ど、どうしたの大和!?」
「お茶を淹れてきたのだけど…提督はお休み、のようね」
「え、えぇ、ほんとにこいつは昔っからこうよ、目を離したらすぐサボろうとするんだから…」
「ふふ、提督も疲れているんです、昨日は私たちの異動の手続きや司令部への連絡などで殆ど眠って居ないはずだから」
そうか。私達がホテルでのんびりしている間にあんたはあんたで大変だったって訳ね。
大和がクローゼットから毛布を取り出して提督に優しくかぶせる、こうしてみるとホント絵になった。
私には提督の疲れを癒すのは無理ね、はぁ…
「大和、ここに通信記録を置いておくわ、コイツが起きたら渡しておいて」
「ふぅ…ふぅ…よし、こんなもんか…」
擬装が大破したらやることは殆ど無い、通信記録の提出は叢雲に丸投げしたしな。
かといって何もしないわけにも行かない。
尖閣以来ずっと身体を動かして居ないから、たまには身体を動かそう。そう思ってずっとトレーニングルームで身体を動かしていた。
ホントはすこし前まで浜風と雪風もいたんだが…二人とももう疲れたといって先に切りあげてしまった。
全くだらしの無い奴らだ、アタシらは体が資本だぞ、からだが。
いや、体力なくても艤装つけれればいいから、そうとも言え無い、のか?
しかし、先日のアタシはいったいどうしてたんだろう?今考えてもあのときのアタシはどうかしてたとしか思えない。
マリオとルイージが良い奴で本当によかった。もしあれが変な奴…いや、あの時はアタシがおかしかったから、普通の奴だったら?
人気のない所に連れ込まれ、壁に押し付けられる。
「へへ、本当に良いんだな…?」「今更嫌だ、って言っても遅いぜ」
「早くヤッてくれよ…アタシは全部忘れたいんだから…」
「じゃあ遠慮なく」
「んっ…んむ…んっ…」
マリオがアタシの唇を奪う、舌が口に入って来た。
ルイージはアタシのスカートを捲り、中に頭を突っ込む、息が股間に当たってくすぐったい。
「ほんと、夢見たいだぜ、君みたいな子とこんな事出来るなんてな」
マリオの両手があたしの乳房を握り締める、すこしの痛さと電気みたいな刺激が乳首から脳に流れ込んできた。
「あっ…や…///」
「いやだ、は無いだろう?ここまで俺達を誘っておいて…」
「おいマリオ、こいつパンツが濡れてるぜ、変態だな」
「だ、誰がそうさせ…っあうぅ…!」
股間に何かが擦り付けられる、アタシの、あそこがひくひく震える…
「もう準備万端じゃねぇか…どうする?」
「俺が下、お前が口だ、いいな?」
マリオとルイージがズボンのチャックを下ろす。中からモザイクのかかった二本の棒が出てきた。
ああ、アタシはこれからこの棒に上も下も貫かれて、最後は白濁液まみれで打ち捨てられる…
マリオがアタシの後ろに回りこみ、ショーツを下にずらして棒をあそこに擦り付けてきた、いいよ、早く来て…
「そこまでだ!」
その時、スポットライトに照らされた人影が現れた
「な、何者だ!貴様!」
「私の部下を傷つける貴様らに、名乗る名前は無い!!」
「こ、こいつ、那覇の提督だ!」
「ちっ、逃げるぞ相棒!」「おうよ!」
マリオとルイージが股間の棒をしまいもせず、走って逃げて行った。
「てっ、提督!」
「大丈夫だったかい?摩耶?」
「あっ…アタシ…あいつらに汚されて…」
胸と股間を丸出しにしたまま提督に抱きつく。提督はあたしを優しく抱き締めてくれた。
「摩耶は汚れてなんかいないさ…もし忘れたいなら、私がずべて忘れさせてあげるよ」
「うん、提督…来て…///」
提督に抱きついてあそこを棒に擦り付ける、いつの間にかアタシも提督も、生まれたままの姿だった。
「摩耶…」
「なぁに、提督…///」
「おまえ、ちょっと臭い」
提督のその一言で我に帰る。そういえばアタシはトレーニングで汗だく、スポーツブラからむわっと熱気と汗の匂いがしていた。
「…風呂でも入るか」
それに何で助けに来たのが提督なんだよ、そりゃシチュエーションは良かったけどさ…
白馬に乗った提督を思い浮かべて見る。うん、似合わない。
それとマリオにルイージ、お前ら良い奴だったのに、変な想像につき合わせて本当にゴメン。
「えーと、52型は8機…彗星は5機…天山はぁ…」
航空機格納庫で航空機と搭乗員の整理を続ける。
まったく、沖ノ鳥島の準備でせっかく新型になったというのに、その新型は大多数が撃墜されるか、帰還しても修理不能で放棄…
妖精さん達も多数が戦死してしまった。彼らはまた復活するから良い…と言う空母も居るけど、やっぱり死ぬと言って良い気はしない。
帳簿を引っ張り出す。補用機の52型と天山が何機かあるが…それだけではぜんぜん足りない。
廃棄予定の項目を見る。まだ廃棄されていない21型や九九艦爆、九七艦攻がまだ残っている。
次に名簿だ、交代要員の妖精さんを加えれば頭数は一応そろう…でもそれだとしばらくみんなは休み無しになっちゃうな…
機体も21型に52型、九九艦爆に彗星、九七艦攻に天山…それに彩雲、まさかの7機種運用体制だ。
可能なら運用する機種は絞るべき、機種が多いと整備や補給に手間がかかるし、妖精さんの訓練も厳しい物になる。
それに運用する私たち空母艦娘の処理能力が追いつかない…だから空母艦娘の航空機は戦闘用3機種+偵察機の4機種運用が基本だ。
でもこうしないと頭数がそろわないし…
とりあえず、何よりは補給の要請だ、烈風と流星を…これはうちには高望みし過ぎか、52型に彗星、天山の補給、交代要員も含めた数の妖精さんの配属を申請…
補給が届くまではなんとか7機種運用体制をするしか無いんだろうな?
「しばらく無理をさせるけど、よろしくね?」
机の上で座っている妖精さんの頭を撫でた。
「後はこれを提督に提出して…」
『な、何よあんなの…提督の方が一回りは大きい…わ』
「ず…ずいほう…これは、その…な…」
提督に書類を出すために執務室に入る。提督は下半身裸でアレを握り締めていた。
提督の握っていた棒が見る見る小さくなっていくのが見える、ふふっ、すこし可愛いかも…
「提督ぅ~疲れてるの?なんなら私が…癒してあげても良いんだよ?」
胸当てを外し、服を脱ぎながら提督に向かう、提督は椅子事後退したが、壁にぶつかってしまう…残念♪
そのまま提督の上に乗っかる
「ねぇ、提督…///」
そのまま提督の耳を咥えると提督がほおおおと、変な声をあげた。
そのまま提督のソレを自分のあそこに擦り付ける。
「だ、ダメだ瑞鳳…よせ…」
「提督…私の格納庫、味わって見ない?」
そのとき、机の上で一部始終を見ていた妖精さんが呟いた
「提督さん、瑞鳳さんの格納庫は、快適ですよ」
「ずいほ…ずいほうーっ!!」
「ふにゃあぁぁあん♪」
「瑞鳳さん、どうしました?」
「ハッ!?」
いけない…変な想像をしていた、これは叢雲のせい、私は悪く無い。
そうよ、仕事しないと、仕事!
「あー、集まってくれてご苦労、重要な事では無いが連絡事項がある…ん、どうした?」
執務室に集まった艦娘達を見る。なぜか三人ほど顔が赤くて俺の事を見てくれなかった。
「えー、先ほど沖縄基地隊から連絡があった、本日朝、哨戒中のP-3Cが定時連絡を最後に消息を絶ったらしい」
「深海凄艦?ですか?」
「あー、その可能性は低いというのが上の見解だ、哨戒網のかなり内側だし、数日前に現場海域を韓国の練習艦隊が通過している」
「もし深海凄艦ならこの韓国艦隊が遭遇なり何なりして居る可能性が高いからな」
「現在海自のP-3CとUS-2が捜索を行っている。我々が出動する可能性はまず無いが、一応覚えて置いてくれ」
「まあ…もし深海凄艦でもあたしたちには何も出来ないしね…」
正直、今の那覇鎮守府では雪風以外は戦力外だ。
US-2と編隊を組み現地に向かう。
果たして行方不明になった哨戒機は大丈夫だろうか?
事故で墜落するにしても何の連絡も無いというのは考えつかないし…やはり敵に撃墜された?
しかし、こんなところで誰が…いや、そういえば先日尖閣諸島で深海凄艦と艦娘が戦ったけな?警戒をするに越した事は無いだろう。
「機長!左旋回!降下してください!」
乗員の叫び声が聞こえた、それと同時に、言葉の意味を理解するより先にいわれたとうりの動作をする。
「機長!敵機です!」
「右下方!深海凄艦を発見!」
『こちらUS-2、深海凄艦の航空機をこちらも視認した、退避する!』
「こんなところに、哨戒網の内側に深海凄艦だと!?」
「ぼやくな!基地に連絡!離脱するぞ!!」
そうか、行方不明になった機体はこいつらに落とされたのか。
可能なら敵の規模を調べ、報告するべきだ。しかし…
「機長!黒点が見えます!数は3…いえ、5機!」
複数の敵機に追撃されては偵察する以前に撃ち落とされてしまう。
まずは報告、そして帰還するべきだ。
『こちらUS-2、そっちの方が足が速い、こちらが囮になる、そちらは離脱しろ』
「すまん!」
速度を上げて日本へ向かう。US-2がエンジンから火を吹いているのが見えた。
助けてやりたい、しかし対潜魚雷しか積んで居ないP-3Cに出来る事は無かった。
P-3Cより緊急連絡、空母を含む深海凄艦艦隊を発見、数は最低10
進路から攻撃目標は沖縄諸島と推定
「…ソナー、異常無し」
「敵艦隊との想定距離、50キロ」
「よし、深度50で待機」
まったく、この距離でもソナーで殆ど音が聞き取れ無いとは…とんでも無い敵がいたものだ。
しかし、それ以上にとんでもない連中との訓練だってしている、大丈夫、今回彼らは味方だ。
「雑音が聞こえます…数は2、接近中…58と168と思われます…更に接近」
しばらくしてコンコンと言う音が僅かに聞こえる。
よし、取り付いたな?
「よし、進路180、本艦は全速で離脱する!」
「艦長!後方…長距離で魚雷発射音…日本のそうりゅう、こくりゅうと思われます!」
「まったく、ほぼ同時に攻撃してくるとかやっぱやべぇな、あいつら…」
「無駄口を叩くな、安全圏まで離脱後、二人を艦内に収容するぞ」
作戦室に可能な限り全員を集める。しかしドック担当だけは通常作業を優先してもらっていた。
「そもそもなぜ今まで気づかなかったんだ!硫黄島よりも更に内側だぞ!」
「沖縄周辺は艦娘、艦娘航空機不足で索敵は殆どP-3CとP-1に頼っておりました、それだけでは深海凄艦に対して哨戒網が薄過ぎたのかもしれません」
テレビから海将と護衛艦隊指令の二人が良いあって居るのが聞こえた。
「それで、どうなんです、沖縄の防衛体制は?」
「護衛艦隊としては現在呉の第四護衛隊郡の出動準備を進めている、しかし主力となるちょうかいはまだ修理中…正直敵艦隊に対しては戦力不足と言わざるを得ない、艦娘艦隊は?」
「沖縄鎮守府です、現在の戦力は戦艦1、軽空母1、軽巡1、駆逐艦3…うち、全力戦闘可能なのは駆逐艦1のみ」
「呉鎮守府です、現在水上打撃部隊の出動準備を進めて居ます」
「横須賀鎮守府です、現在稼動艦娘を編成、出動準備中」
「しかし呉や横須賀では2日以上かかります…深海凄艦が空母機動部隊だった場合攻撃前に現地に到着できる見込みは…」
「陸上自衛隊第15旅団は戦闘準備を進めて居ます、高射特科連隊を名護市、うるま市に展開可能です。九州から対艦ミサイル連隊を移送する用意もしていますがこれが間に合うかは…」
「航空自衛隊、築地のF-2を沖縄に向かわせました、到着すれば沖縄から敵艦隊を攻撃可能ですが…沖縄に対艦ミサイルがありません、現在輸送機で整備班、ミサイルを輸送する準備を行っていますが…打撃力不足かと」
「第七艦隊…主力は現在シンガポールです、横須賀に残っているミサイル巡洋艦・駆逐艦を横須賀鎮守府艦娘部隊に随伴させる用意があると報告が来て居ます」
話を聞けば聞くほど状況は悪かった。
沖縄の部隊だけでは海上からの攻撃を防ぐにはあまりにも不足、他所からの援軍も間に合うかどうか、ギリギリという所だ。
自衛隊も米軍も、艦娘も沖縄にはそこまで大規模な部隊を置いているとは言えない、沖縄に集中していると言われる在日米軍だって海兵隊の攻撃部隊が中心だ。
敵の侵攻を食い止めるための部隊というのは少数しか置かれて居ないのだ。
朝鮮半島や台湾、日本本土を攻撃すれば直ちに海兵隊部隊が出撃するぞ、沖縄を叩けば他の部隊が出撃するぞ…そうやって日本や周辺諸国を守ってきたが、人間相手ならともかく国土や本拠地が明らかで無い深海凄艦にはこういう抑止力など効果は無いのだ。
そして頼みの綱のジョージ・ワシントンは中東での作戦のため日本を離れてしまっている。
「ジミー・カーターの潜水艦娘隊から通信です!」
「繋いでくれ」
潜水艦から通信が入る、スクリーンの右下に小さな画面が写り、敬礼をする二人の艦娘が現れた。
「潜水艦、伊168です!先ほど偵察を終えジミー・カーターに収容されました!」
「ご苦労、敵の戦力は?」
「伊58でち!確認できた範囲で…戦艦5、正規空母5、重巡6、駆逐艦多数…これも全数では無い可能性があるでち!」
「確認できた範囲でも20隻…いや、30隻は居る可能性もあります、これ以上の偵察は敵のピケットラインが厚くて…」
なんてこった、横須賀と呉、両方の全戦力を集めてぶつからないといけない数だ。
いや、それよりも、何で今まで気づかなかった?あと2日、いや、1日あれば呉の部隊は間に合ったかもしれないのに
「また、私達が収容された直後に爆発音が何度か聞こえました、海自の潜水隊郡が攻撃をしかけた物と思われますが…まだ報告は来ていません」
「…沖縄が攻撃されるのは回避できそうにありません、住民の避難はどうなっていますか?」
―夕方
『テレビをご覧の皆様にお願いします、これより臨時ニュースを申し上げます、テレビをご覧の皆様は多くの人にテレビを見るように伝え、一人でも多くの方がこの放送をご覧になりますようご協力をお願い申し上げます』
『海上自衛隊の哨戒機が沖縄の東方で20隻以上の大艦隊を確認しました、敵艦隊は目下沖縄諸島を目指していると思われます』
『現在の速度から考えますと早くても明後日の早朝には沖縄本島が航空機の攻撃圏内に、夕方には砲撃圏内に入る可能性があります』
『沖縄本島が攻撃されるのですか!?』『防衛体制はどうなっているのですか?』『なぜそれまで気づかなかったのですか!?』
『現在沖縄、九州の部隊をを中心に自衛隊、在日米軍が全力で迎撃戦の用意をしています。先ほども海自の潜水艦が敵艦隊に攻撃を仕掛けましたが撤退させるまでにはいたって居ません』
『沖ノ鳥島奪還後、分散した敵艦が単独行動をして哨戒網を潜り抜け、現地で合流したものだと思われます』
『自衛隊と米軍は全力で敵艦隊を食い止めますが、防ぎきれない可能性もあります、過去のデータから深海凄艦は沿岸の市街地と軍事施設を中心に攻撃する事が想定されるため、軍事施設、沿岸、飛行場、港湾などの付近に住んでいる住民の方には避難していただきたい』
ニュース速報―沖縄県の一部に避難勧告
ドックに集合した仲間を見渡す。よし、全員準備は出来ているな?
「準備はいいな?横須賀鎮守府、第一艦隊、出撃するぞ!」
水路に沿って前進する。開いたドアから見える夕焼けから血の色を想像してしまった。
陣形を組み前進、海岸に沿って湾の外へ
その時、海岸から声が聞こえた
「ながとお姉ちゃん!がんばってー!」
あぁ、あの子が手を振っている。あの子の母親も、沢山の人たちが私達に手を振っていた。
思いっきり手を振って答える。作戦行動中の私語は禁止されているが、これぐらいはいいだろ?提督。
「任せて置け!ビッグセブンは応援してくれる子供達を決して裏切らない!!」
とっさに口をついた言葉だったが、はたして私は既にこの子を裏切ってしまっている。
敵は空母を持っている、我々の速力では沖縄が空襲されてからの到着になる。
「なに?あの子?姉さんの彼氏?」
「茶化すな、行くぞ」
間に合わない事が判っている援軍、というのは惨めなものだ。
「すいません、長門さん、提督、提案があります」
「どうした?古鷹?」
「すこし計算して見ましたが…高速戦艦・重巡・軽巡・駆逐艦を先行させればどうでしょう、最大戦速で向かえば明日の深夜には敵艦隊に接触できるはずです」
『それは危険過ぎる、戦力で圧倒的に不利な状態で夜戦に持ち込むのか?さらに長時間の高速行動は疲労も溜まる、下手をすれば日没前に空襲に晒されるぞ』
提督の言うとおりだ、戦艦2隻重巡4隻で6隻の戦艦に挑むというのは…
だが、他に方法があるか?
「…覚悟の上です、呉の艦隊には沖縄に直行してもらって防衛体制を整えてもらい、私達がすこしでも敵を減らします、長門さん達にはその後残りを叩いてください」
「…金剛、赤城、どう思う?」
「bestな作戦とは言い難いデース…でも沖縄の被害をすこしでも減らす、ならそれ以外は無いと思いマース」
「…古鷹、航空支援は期待出来ませんよ?加賀さん、飛鷹さん、隼鷹さんは…ついて行け無いし、私一人だけでは…」
「挑むのは夜戦です、先行するのは私たちだけで行います」
『…利根、どうだ?』
「我輩も悪い案では無いと思う、金剛と同じ意見だ」
『わかった、横須賀艦隊は艦隊を二分する、金剛型、重巡、軽巡、駆逐艦は先行しろ、長門は空母を連れて後を追え、夜戦部隊の防空は…第七艦隊のミサイル巡洋艦に頼めないか交渉する』
…他に妙案も無し、か
私達がもっと足が速ければ…
「了解した、皆、くれぐれも無理はするなよ?」
「任せてください!」
「当然よ!」
『矢矧、横須賀から連絡があった、横須賀艦隊は夜戦をしかけるとの事だ』
「それは本当?なら私たちも…」
『いや、呉には全力で沖縄に向かうよう要請が来ている』
「あぁ、私達の足が遅いから…沖ノ鳥島でも留守番だったし…」
「不幸だわ…」
『いや、扶桑達にはしっかり沖縄の守りを固めて欲しいって事だ、おそらく沖縄空襲は防ぎきれ無いだろう…その時に君たちには民間に被害が出ないようにして欲しい』
「要は囮、ね…」
「でも、それぐらいしか役に立てる事は無いわ、なら私たちはそれに全力で取り組むまでよ」
『…わるいな』
「提督、大和達はどうなっているのですか?予定では明日には呉に戻る予定だったと…」
『大和と浜風は航行に支障の無いレベルまで修理が進んでいるが、戦闘が出来る状態じゃない、今の那覇には戦闘可能な艦艇は雪風しか居ない状態だ』
「大和…無事で居てくれれば良いけど…」
「なぁ、木曽、沖縄まで向えないか?」
「無茶を言うな、ここからだと3日はかかるだろ?それにその間北方の守りはどうするんだ?」
この提督は…今日で3回目だ、このペースだと明日までに10回は聞く事になるだろうな。
「またこの会話だにゃ」
「提督、すこしは落ち着くクマ、ゆとりの行動を心がけるクマ」
「落ち着いてなど居られるか!!」
「にゃっ!?」
提督が机をドンと叩いた、多摩の姉貴が俺の後ろに隠れる…おいそれで良いのか姉貴よ
「提督」
「…すまん」
「…どうしたクマ?何で今日になって沖縄の心配をするクマ?」
「提督、横須賀で会うまで存在そのものを忘れてたって言ってたにゃ」
「…あいつは俺が居ないと何も出来ない無能な奴なんだよ…何度課題を手伝ってやった事か…」
「知ってるクマ、そういう提督は那覇の忘鎮に門限違反を方が割してもらってたクマ」
「ホントか姉貴…その割りにあいつの事ボロクソに言ってたじゃ無いか」
「いわゆるツンデレって奴にゃ」
まったく、何でいつも無能のあいつの所に厄介事が舞い込むんだ
―朝
ニュース速報、沖縄県一部の避難勧告、避難指示に格上げ
那覇鎮守府作戦室、昨日の夜から艦娘もスタッフも殆ど不眠で作戦会議を続けていた。
「呉鎮守府部隊が応援に向ってきてくれているが、間に合うかどうかは判らない、というのが正直なところだ。おそらく第一派攻撃は我々沖縄の部隊だけで対応する事になるだろう」
「現在海自潜水隊郡が敵艦隊に何度か攻撃をしかけているが…効果の程は不明、くろしおが損傷、後退している」
「今日の夕方以降那覇空港に移動したF-2とF/A-18、40機が敵艦隊を攻撃する予定だが、対艦ミサイルの在庫の関係で攻撃にいけるのは一回」
「攻撃後は築地に戻りミサイルの再装填後那覇に移動、そこから再出撃をかけるが、そのころには既に沖縄は攻撃圏内だ」
「市街地の防空は陸自部隊が行い、米軍基地の防空は在日米軍が行う、また204飛行隊のF-15が迎撃を行う」
「我々那覇鎮守府艦隊は金武湾、中城湾に展開、沖縄北方に退避する民間船舶の護衛、対空戦闘を行う」
ハッキリ言って、マトモな作戦とは言いがたい。
ジェット戦闘機なら敵に撃墜される心配も殆ど無く攻撃できるが、搭載できるミサイルはF-2で4発、F/A-18は航続距離の関係で2発
はたして何隻の空母を沈めれるだろうか?
防空も十分とは言えない、那覇基地のF-15は30機、一機につき搭載できる対空ミサイルは8発。これを使いきったら補給に戻るしか無い。
そして敵空母は確認できるだけで5隻、だとすると350機は敵航空機が居る事になる。
完璧に防ぐ事は不可能だ、なら不可能なりに出来る事をするしか無い。
「浜風、悪いが主砲を一基、叢雲に移譲してくれ、現在叢雲は全ての主砲が使用不能だ」
「わかりました」
「瑞鳳は戦闘機を詰めるだけ積んでくれ、金武中城港上空で防空戦闘を行う」
「了解です…30機も居ないけど…」
「…居ないよりマシと思うしか無い」
「…いま艦娘で万全なのは雪風だけだ、頼む」
「…はい、お任せください」
「提督、アタシは…」
「摩耶、お前は待機だ、航行すらままなら無いだろ?」
「あたし居なくて大丈夫なのかよ…」
「変わりに私が行きます、安心して、摩耶」
「…わかったよ、大和」
主砲の使えない戦艦1隻、小破した軽空母1、主砲が一基しか無い駆逐艦1隻、全力航行不能な駆逐艦1隻、そして無傷の駆逐艦1隻
零戦52型10機、21型12機、彗星5機、九九艦爆8機、天山7機、九七艦攻3機、彩雲3機
この戦力で350機の相手を打ち負かす方法があれば教えて欲しいものだ。
今日は学校は午前のみ、午後から臨時休校になった、仕方ないか。
那覇鎮守府周辺は避難勧告区域とかいうのに指定されたらしく、うちの学校が避難場所に指定されたとかで、グラウンドや体育館には鎮守府周辺に住んでいる人が集まりかけていた。
「おい、呉からの増援は間に合わないってよ」「本当かよ?」「俺達どうなるって言うんだ?」「ネットじゃ増援部隊が諦めて引き返したとか…」
帰ろうとすると避難している人たちがそんな話をしていたのが聞こえた。
すこし不安になる。那覇鎮守府には艦娘が三人しか居ないし、みんな尖閣での戦闘で損傷したってニュースを聞いた。
とりあえず帰ろう。スマホを見ると親から連絡が来ていた、鹿児島の親戚の所に向うから早く帰れ、という内容だった。
摩耶様、叢雲ちゃん、瑞鳳さん、雪風ちゃん、浜風ちゃん。
そしてまだ有った事は無いけど、大和さん。
お願いだから無事で居て欲しい。
「この地域には避難勧告が出されて居ます!直ちに避難してください!」
市役所の職員が車で勧告地域を回るというので、我々も手伝うことにした。
今の所避難済みなのは三割、と言ったところか、でも殆どの家が避難の準備をしているのがわかった。
飼い犬の餌皿に餌を山盛りにしている家の前も通った、自分も犬を飼っていたから気持ちは痛いほど判る。
その時、ある家から言い争う声が聞こえた、市役所の車が止まり、職員がその家に向う。我々も着いて行く事にした。
「お父さん、避難しろって言われているんだから避難しないと…」
「いやだ!なんで市役所如きに追い出されなきゃいけないんだ!」
「頼むよ親父…どうせ一時的に離れるだけなんだから…」
「ここは俺の家だぞ!この家から出るか出ないかは俺が決める事だろう!?」
どうも、避難を渋る父親を家族が説得しているらしい。
「どうしましたか!?この地域は避難勧告が…」
「そんな言葉には誤魔化されんぞ!そうやって俺達を追い出して米軍基地の土地にする気だろう!?」
「まったく…親父ぃ、その交渉は20年前に決着したじゃねぇか…」
「安心してください、あくまで今回の避難勧告は一時的なものです、勧告が終わればすぐに戻れます、この勧告を元に市民の土地を奪うような真似はしませんから…」
「ふん、どうだか!じゃあ何で自衛隊なんかが一緒に来ているんだ?えぇ?」
「我々は市役所の要請で避難勧告、避難のお手伝いをさせていただいています、あくまで今回の避難勧告を発令したのは市役所です、国や米軍がどうこうしようと言うものでは有りません」
「それにお父さん、あなたが避難に同意しないと奥さんも息子さんも避難できないじゃないですか?もし攻撃があればあなたが御家族を巻き込むことになってしまうかもしれません」
「…わかったよ!でも後でちゃんと土地と家は帰してもらうからな!」
やれやれだ、さて、私も他の家に向うか。
『先生、今日はお忙しいところありがとうございます。まずはですが…なぜ深海凄艦はこのタイミングでこのような大規模な攻撃をしかけてきたのでしょうか?』
『そもそも深海凄艦は沖ノ鳥島を占領した後は大規模な攻撃は行ってきて居ませんでした、せいぜい付近を航行する民間船、軍艦が攻撃された事例が数件ある程度です。』
『そこに自衛隊と米軍が奪還作戦を開始し、多数の深海凄艦を撃破しました、これは彼らの報復なんです』
『なるほど、自衛隊の攻撃が均衡状態を壊してしまった、と言う事ですか…次の質問ですが、政府の報道では沖縄本島の防衛のみ話しが続けられていますが、付近には他の島もあります、それらの島の防衛体制についてはどうなっているのでしょうか?』
『そもそも自衛隊は沖縄や石垣島、北大東島等と言った離島を守る気なんて始めっからないんです、第二次大戦の時だって沖縄戦の直前に沖縄の部隊を一部撤退させていたりしています』
『日本政府から見れば沖縄とかは本土防衛のための捨て石に過ぎないという考えは戦前から変わって居ないんです、だから部隊の置かれている離島は殆ど無い』
『つまり、今回も政府は沖縄を守るつもりは無いと?』
『少なくとも私はそう思います。無論深海凄艦隊は撃破するでしょうが、政府の思惑としては沖縄を攻撃している間に突いてしまえ、という感じだと思いますよ』
学校が臨時休校となり、我々教師も生徒を家に送り届けた後、勧告区域外に住んでいる者は自宅待機を言い渡された。
テレビでは緊急報道番組として沖縄の特集が行われていた。
まったく、軍隊というのはいつもこうだ、口では国民を守ると言いながら結局国民を囮にしかしない。
国民を守るためと言いながら対馬や石垣、北大東島にはマトモに部隊を置いていない。いやそもそも防衛のためと言われるレーダーやミサイルだって、敵を妨害するための装備なら敵はそこを攻撃するだろう?
つまり、軍事力が有ると言う事はそれだけで国民を戦争に巻き込む。
有名な漫画だって、敵の軍事力を弱らせるために攻撃するから戦争が起きる、と言っていた。むしろ沖ノ鳥島を奪還しなければこんな事態にはならなかったんじゃ無いか?
その時、耳をふさぎたくなるような爆音が耳を突いた
「うわっ…なんだぁ…?」
窓から空を見上げると青い戦闘機が何機か、東に向って飛んでいくのが見えた。自衛隊か米軍の戦闘機だ。
あいつらの離着陸のせいで那覇空港は夕方から全便が運休になったと言う。
国民を守るというのなら一人でも多くを避難させるべきだろう?やはり沖縄は捨て石なのか?
テレビに目を戻すと避難を嫌がる男性を市の職員が説得し、家族が連れ出している光景が映し出されていた。
これじゃあまるで昔の強制連行じゃ無いか、見ると鉄砲を持った自衛隊員も映っている。こんなのが近くに居たら家族だっていやいや従わざるをえないだろう。
自分の家に居たい。そんなささやかな欲求すらこの国は認めてくれないのか。
「ホーク、展開よし!」「中SAM、展開作業急げ!!」
「パトリオット、展開作業開始します!」
私の後ろで陸自と空自の隊員たちの声が聞こえる。
ここは平和な公園だったが、那覇鎮守府のすぐ傍だったため勧告区域に指定され、高射特科連隊が展開する事になったのだ。
ここからなら中城湾なら射程に納める事が出来る。レーダーに映るかどうかは運次第、だが…
「自衛隊のミサイル配備反対!」「平和な公園を戦場にする気か!」「戦争は自分達の所だけでやれ!」
前を見ると立ち入り禁止のテープの前で数十人の市民達が口々に叫んでいた。
「ここからは現在立ち入り禁止です!また、この地域は避難勧告が出されて居ます!直ちに避難してください!」
何十回この台詞を叫んだだろうか?そろそろ喉が痛くなってきた。
無線を聞くとここに来る予定のミサイル車両がまだ何両か市民団体に足止めを食らっているとか…
ここは市の土地だろう、君たちの物じゃない、そして市には許可を取っているんだ。
そもそも俺だってこんなところに来たくて来ているんじゃねぇ!
何回か喉からでかかった言葉を飲み込む、私の隣の同僚がもう一度叫んだ
「ここからは現在立ち入り禁止です!また、この地域は避難勧告が出されて居ます!直ちに避難してください!」
「あの…すいません、通して…通してください!」
「ごめん!ちょっと通してくんない!?」
人ゴミを搔き分けて二人の小さな人影が出てきた、老婆と…その孫か?中学生ぐらいの女の子だった。
「ここから先は…」
「あの、わかって居ます、すぐ避難しますから…あの、これを、これを鎮守府の艦娘達に渡したいのですが…鎮守府には近付けなくて…」
老婆が手に持った物を私に見せてきた、見るとお守りのようなものが五個、握られていた。
「…申し訳ありません、我々と鎮守府は別系統の組織です、それをお渡しする事は…」
「そうですか…ではあなた達だけでもこれを持っていて下さい、お願いします」
「いえ…でも…」
私は公務員だ、市民から物を貰っても良いのか?しかし、この人はこんな危険地域にまでお守りを渡そうと持ってきてくれた、受け取らずに帰れというのは…
「わかりました、後で仲間達に渡しておきます…さ、おばあさんも早く避難してください」
「そだよばーちゃん、早くいこ」
「はい、隊員さん、気をつけて、無茶はしないでください…」
「…任せてください」
気がつくと周囲で響いて居た抗議の声は無くなっていた。
『そろそろ敵艦隊だ、全機、突撃体制!』
ヘッドセットから隊長の声が聞こえてくる、まったく、なんで射程100kmのミサイルを持ちながら30kmまで近づかなきゃいけないんだ
レーダーが警戒音を出す、見ると数キロ先に雲のようなものが見えた。敵機だ
『バイパー01!前方に敵機!!』『構うな!加速すればついてこれない!』
一気に降下加速する、敵機もついてこようとする、何機かが機銃を発射するが全て編隊のはるか後方を通り抜けて行った。
お前らは500kmも出ねぇだろ、こっちは800km以上出るんだ、やられてたまるか。
瞬間、前方で何回も大爆発が起きる、戦艦クラスの対空砲火。
『01!数が多過ぎます!』
『構うなバイパー03!怯むな!突っ込め!突っ込んで全弾ぶち込むんだ!』
レーダーが敵艦を捉えた、ミサイルを全弾発射。
あとはミサイルがそれぞれ別の敵を狙ってくれるはず、アフターバーナーを吹かして超音速で敵艦隊の真上を通過する。
曳光弾が俺達を追いかけてくる、とにかく速く、とにかく低く、だ。
「みんな、集まってるな?」
「どうしたんですか摩耶さん、今は作戦室に居ないといけないんじゃ…」
「提督に無理言って5分間だけ抜けてきた…これを持って行ってくれ、一人につき5発分しか無いけど…」
「…?これは何、摩耶?見たところ砲弾に見えるけど…」
「まさか…摩耶、アンタ私たちにもアレをやれって言うんじゃ…」
「お守りだよ、お守り…アタシにゃこれぐらいしか出来ないからな…」
『F-2部隊より入電、攻撃成功、帰投する』
『更に追加情報、敵艦隊の戦艦2、空母3、艦種不明8を撃沈、戦艦1、艦種不明5に損害を与える事に成功、F/A-18が2機被弾、帰投は可能』
『敵艦隊情報更新、敵艦隊は二部隊より構成、残存戦力は戦艦5、正規空母6、軽空母4、巡洋艦10、駆逐艦12』
空自と米海軍は攻撃に成功したようだ、しかし敵が艦隊を二つに分けていた…いや、艦隊が最初から二つ有ったとは…
「提督、みんなの準備が出来たわ」
叢雲が作戦室に入ってきた。
「わかった、行こう」
なんと言えば良いのだろう?
いつもなら「君たちなら出来る」とか「無事に帰れ」とか、そんな事を言っていた気がする。
しかし、正直この状況でどんな言葉を言ってもむなしい物になるような気しかしない。
「提督、歩きながらで良いわ、すこし言いたい事があるの」
二人でドックに向って歩いていると叢雲が話しかけてきた。
「知ってる?提督、艦娘人権法が成立したら…」
「叢雲、作戦に関係無い話をするな」
お願いだ叢雲、今はそういう話しはしないでくれ、未来の話しはやめてくれ。
「…わかった」
「全艦、全力をつくし任務に励んでくれ、那覇鎮守府艦隊、抜錨!目的地は中城湾!」
艦娘達を前にして俺はこの一言しか言えなかった。
俺の目が黒いうちは誰も沈めさせはしない、この鎮守府に来た時、確か最初そう誓ったはずだ。
だが、はたしてこの状況でその誓いを守れるのか…いや、考えるのはやめよう。俺も、艦娘も、全員が全力を尽くすだけだ。
ふとスマホを見る。母から何件もの着信とメールが来ていた。
まったく、忙しいからこっちから連絡するまでメールも電話も止めろと言ったのに、困った人だ。
父から一件だけメールが来ていた
『がんばれ、酒を送る。以上。』
「あぁ、そういや前送ってもらった酒の代金、まだ振り込んでねぇなぁ…」
ドックのそとから、ポチャンと言う音が4回、ボチャンという大きな音が一回聞こえた。
願わくば、またこの音が聞ける事を。
-夕方・日没直後
「古鷹!良いデスカー?」
「金剛さん?なんですか?」
敵艦隊まで約500km、この時間まで空襲が無いと言う事はもう明日の日の出までは空は安全だろう。
艦隊は増速、30ノットで…という所で金剛さんに声をかけられた。
「夜戦の指揮ですが、アナタに任せたいと思いマース」
「夜戦でしたらお姉さまや榛名より古鷹さんの方が経験がありますから…」
「…わかりました、全艦!こちら古鷹です!これより指揮を取ります!突撃体型を作ってください!30ノットまで増速!このまま一気に敵艦隊に向います!」
「水上電探に感!距離40km!」
先頭を走る暁が叫ぶ。
恐らく、敵もこちらに気づいているはずだ。
「敵艦隊の一部が…分離したようだ、こちらに向かってくる一団と逃げる一団が居る」
「距離30までこのまま直進!その後主舵、進路220に取って!敵の行く手を遮りながら同行戦に入ります!」
「敵艦発砲!」
私にも見えた、闇の中から何個か光るものが見える。
「探照燈、照射!」
「奴を攻撃しマース!Fire!!」「榛名!砲撃を開始します!」
「艦長!ソナーに多数の着水音、爆発音が…」
「横須賀の艦娘達だな…魚雷の再装填は?」
「まもなく終了です、あと一射分しかありませんが…」
「よし、敵艦隊に向う。乱戦になる前に一発ぶち込むぞ」
「うっ!?」
私の回りに沢山の水柱が上がる、大丈夫、この距離でそうそうあたるわけが無い。
「古鷹!大丈夫!?」
「私は大丈夫だから!加古も砲撃用意を!」
良い感じだ、敵は探照燈を使っている私に集中攻撃をしている、他の艦も攻撃は受けているが、殆どはわたしに来ている。私が照射していた敵重巡が榛名さんの砲撃で爆発を起こした
「榛名!nice!」
「次です!あの敵を狙ってください!」
「射程に入った!我輩も砲撃するぞ!」
「古鷹さん!私たちは…!?」
「駆逐隊は距離10000まで詰めて!ここからじゃ雷撃しても命中は…くっ!?」
被弾した、でも大丈夫、砲塔が損傷しただけ、まだいける。
「筑摩!敵は奴だ!」「了解!」
「雷撃戦用意!」「了解」
戦闘は概ね順調、敵艦隊は空母を下げ、他艦艇でこちらを迎え撃ってきたが、古鷹が的確な目標を指示してくれているおかげで既に多数の敵艦を撃破している。
「敵戦艦大破!!轟沈します!」
「さあ古鷹!次のTargetはドイツですカー!?」
「金剛!!古鷹が…」
加古の悲鳴が聞こえて声のする方を見る、古鷹が真っ赤に燃えていた。
「古鷹さん!」「古鷹!?」
「私は…大丈夫です!次の目標…敵重巡!うあぁっ!?」
「古鷹!もう無理だ!後退して!後はアタシがやるから!!」
「ダメだよ加古…私がやらないと…」
艤装の火災が身体にまで回ってきている、制服が燃えている、からだが熱い、息が出来ない。
でもまだ探照燈は生きてる。
「この程度…予測の範囲内…」
「古鷹さん!下がって!探照燈は暁が…」
「ダメ!」
「我輩がやる!お主はもう!!」
ダメ、私じゃないとダメなの。
金剛さん達が居ないと敵戦艦に打ち勝て無い、利根達は最新鋭重巡、敵と戦うにはどうしても必要、暁?アナタが目だったら真っ先にやられちゃう…
私が一発でも多く、敵の弾を集める、これが一番いい。
「雷!電!古鷹を後退させて!」
「了解!」「なのです!」
探照燈と火災で敵は一番目立つ私を攻撃している。お願い近づかないで、巻き込まれるから。
「私は…大丈夫だから」
「でも古鷹!早く火を消さないと…」
「もう、無理見たいだから…」
胸と右腕に衝撃を感じる、あぁ、被弾したんだ。
口から赤いものが吹き出す、右腕の擬装が折れる。仰向けに倒れる。
からだが海に沈んでいく…溶けそうだった身体が海水で冷やされて気持ち良い。
ごめん、加古。
「古鷹!古鷹!!」
あたしの目の前で古鷹が沈んで行く、助け無いと、近づこうとしたら大爆発が起こり古鷹が見えなくなっていた。
「あ…ふる、たか…?」
弾薬庫が誘爆したんだ、アレじゃあ艤装はもう駄目だ、擬装が浮力を失ったら?そのまま艤装に引っ張られて、沈んで、二度と浮かんでこれない。
「筑摩!探照燈照射開始!」
「加古!何しておる!撃て!戦いはまだ終わっておらん!!」
そうだ、提督も、長門も言ってたじゃ無いか。
危険過ぎるって、一番危険だったのが古鷹だっただけだ。そう思おう、そう思うしか無い。
「ゴメン!砲撃開始する!ぶっ飛ばす!」
古鷹に背を向けてあたしも敵艦隊に向う。
「横須賀艦隊から入電です!我、夜戦を敢行、敵戦艦2、巡洋艦5、駆逐艦8を撃沈、戦艦1、巡洋艦2、艦種不明2を撃破!」
「被害は重巡1轟沈、戦艦以下多数が損傷…夜明け前に北方に退避し、夜明けと同時に空母部隊で空襲を仕掛けるとの事です」
「…空母は、沈めれなかったか」
やはり突破は出来なかったか、いや、戦力差を考えればこれでも大戦果と言えるだろう。
しかし、空母機動部隊の空母を沈めれず、敵艦隊の進路、速度は殆ど変わって居ない。そういう意味では敗北だ。
「提督…轟沈って…」
「…大和に連絡を、敵艦隊は予想どうり、空襲を仕掛けて来る可能性が高い。対空警戒を厳に」
「…了解」
摩耶が不安そうに俺の服の裾を掴んでた。
不安なのはみんな同じだ、でも俺がそれを表に出すわけには行かなかった。
「提督!那覇基地より連絡です!F-15、F-2、これより発進するとの事です!」
「了解だ」
この第二次攻撃とF-15の迎撃がどこまで効果を上げるかはわからない。ただ、結局敵がここに来ることには変わりは無いのだ。
-金武中城湾
現地に到着すると殆どの船は既に北方に退避した後だったが、複数の火力発電所に燃料を供給していたタンカーがまだ数隻残っていた。
「深海凄艦の攻撃が予想されます。まだ出港は出来ませんか?」
『現在最終チェック中です、まもなく出港可能…』
この港湾の船艇、発電所を守るのが私たちの任務だ、しかし手負いの私たちでどこまで戦えるのか…
その時、上空をF-15が那覇市方面に飛んで行くのが見えた。
『大和、聞こえるか?那覇鎮守府だ』
「聞こえます提督」
『204飛行隊から連絡が有った、敵航空機は約500機、150機以上を撃墜したが残りはそちらに向っているとの事だ』
『また、横須賀の空母部隊が先ほど敵艦隊に向け航空隊を発進、呉部隊は現在沖縄本島北100km…蒼龍・飛龍が上空援護のため戦闘機を向わせている』
「了解、瑞鳳に直援隊を発艦させます、瑞鳳!」
「大丈夫です!現在発艦中!」
瑞鳳の方を向くと既に発艦作業に入っていた。
禄に訓練もでき無い鎮守府…なんて呉に居たときは聞いてたけど、沖ノ鳥島ではいち早く救援に来てくれて尖閣では強力な敵相手に勝利している。
私や他の艦娘が馬鹿にできないぐらい、修羅場を潜り抜けているのかもしれない。
『これより出港します!護衛をお願いします。』
「あ、了解です!そのまま海岸沿いに北上してください」
タンカーが動き始めた。
「対空電探に感!敵機です!」
「こちらにまっすぐ向かってきます!」
雪風と浜風の声が聞こえる。
「私と雪風で前に出て敵の攻撃を引き付けます!浜風と叢雲はタンカーの護衛を!」
せめて主砲が使えれば…いや、そんな事は言ってられない。とにかくすこしでも敵の攻撃を逸らさなければ。
雲の切れ間から敵機が見えた。まったく、数えるだけで嫌になる。300機は居るだろうか?
…大丈夫、あの時とは違う。
空自や陸自の対空部隊だって居る、瑞鳳の戦闘機だって、やられるものか。
「てきへんたいしにん!」「こうげきをかいしします!」
大量の敵機が眼下、約1000m下に見える。良く見えると見た事の無い白い機体も居る、新型か?
しかしやることは変わらない。
「てっきにこうげきをしかける!いちげきをくわえたらそのままらんせんにもちこめ!いちびょうでもながくとんでてきのめをひきつける!」
空戦の基本は一撃離脱、そして乱戦になったらサッチ・ウィーブ…だがここまで数に差が有っては一撃離脱では殆ど損害を与えれないまま上を押さえられるし、サッチウィーブもカバーしてくれる味方が居なければ意味を無さ無い。
一撃を加えて乱戦にもちこむ、昔ながらの戦法で挑むしか無いのだ。
上空から降下、敵の攻撃機に20mmを打ち込む、火を吹いたのは見えたが撃墜したかはわからない。そのまま敵編隊のど真ん中で目についた敵に20mmを撃ち込む。
敵編隊が崩れ始めた。
敵機の内何機が戦闘機なのだろうか?単純に考えても三分の一、100機は戦闘機だ。こっちは20機、どう頑張っても勝ち目は無い。
それでもやるしか無いんだ、母艦を、仲間を守るために。
後ろから曳光弾が飛んでくる、振り返ると4機の戦闘機が自分を追いかけていた。
「いいぞ、やってやる!」
操縦桿を倒し、スロットルを限界まで絞る。フラップも限界まで下げる。
推力を失い空気抵抗の増した機体の速度がガクッと落ち、敵機はそのまま自分を追い越す。
最後尾の一機に20mm、空中で爆発しバラバラになって落ちて行く、次の奴は距離が遠い、7.7mmを撃ち込む。
操作系をやられたのかふらふらと高度を下げていく。
その時、機体に衝撃が走った、直後に自分を追い越して行く敵機、しまった、5機目が居たのか。
昇降舵が動かない、脱出するしか無い。
その時自分を撃った機体が火を吹いて落ちていく。
妙な機体だった。機首が異様に太いくせに胴体が妙に細く、主翼も短い。そいつが敵機を撃墜し、急降下して行った。
『こちらりくじしけんこうくうたい、せんとうくういきにしんにゅう、こうげきかいし』
「陸自の…艦娘航空機!?」
慌てて空を見上げる。零戦に良く似た機体と妙に太くて羽の短い機体が敵編隊に突っ込んで行くのが見えた。
『あきつ丸です、瑞鳳さん、聞こえますか?』
「あきつ丸!?陸自の新装備って…」
『一式戦闘機と二式単座戦闘機であります、現在自分は那覇空港から管制を行って居ます。空母での運用は出来ませんが…拠点防空であれば使えるかと』
「あ、ありがとう!」
『ふふ、カ号だけではなく、固定翼機もあるんだよ、であります』
陸自の航空機の空戦は見事なものだ、と感心してしまうものだった。
一式戦が背後に着いた敵を急旋回で振りきり、ついていけなくて速度の落ちた敵機を二式戦が攻撃する。
急上昇で逃げる二式戦を追いかける敵機を一式戦が攻撃する。
「私たちも負けてられないわ!各機!陸自機と共同で敵を撃破して!」
「了解!」
「瑞鳳!敵攻撃機!来るわ!」
叢雲の叫びで呼び戻される。そうだ、戦闘機同士の戦闘は多少は押し戻せた、しかし攻撃機、爆撃機はこちらに迫っているのだ。
「行かせません!」「このっ!落ちろ!」
浜風と叢雲が対空射撃を開始する、しかし今の二人は二人で連装砲が三基しか無い。
「瑞鳳、砲撃開始します!」
「日章丸!敵機がそっちに向かったわ!」
私も高角砲を撃ち始めるが敵機はそのまま通り過ぎてしまう。あの敵機…タンカーに武装が無い事を知っているのか限界まで近づいて魚雷を落とす気だ。
『こちら日章丸、魚雷を食らった!浸水中…航行は可能!』
戦闘機隊は敵戦闘機に押され始めている。
私たちだけでは対空砲火はあまりにも非力。
『雪風!被弾しました!』
私たちより外側で対空戦闘をしていた雪風が被弾した。
664 : VIPに... - 2014/12/08 11:23:07.30 sPpv5ZXlO 391/420この世界の装備はメンタルモデル的なのとかデカいのを振り回してる系じゃなさそうなのに、飛行機じゃ艤装って運べないのかな
666 : VIPに... - 2014/12/08 21:48:17.28 nEEjMXn40 392/420>>664
検討されてはいますが、殆ど進んでいない。という認識でお願いします。
すこしだけ語っていますが
・重くて効率が悪い(標準装備で擬装が駆逐艦100kg弱、戦艦約1トン)
・艦娘への取り付け、取り外しに専用の設備が必要
・艦娘に取り付けないで運ぶと固定できない(艦娘装備用固定器具が開発できていない)取り付る場合艦娘は数時間飛行機の中で立ちっぱ
・完全装備の艦娘を輸送機で運べる=イージス艦の空輸=外国への侵略の意図を疑われる。という政治的配慮(C-1と似たような問題です)
などから、実戦で実用性があるレベルには至っていない。という設定で居ます。
「パトリオット発射始め!」「中SAM、攻撃開始!」
公園に配備された対空ミサイルが火と煙を吐きながら上昇して行く。
湾上空の敵機はロックオンできなかったが、鎮守府方向に向う敵機は傍を通る、かたっぱしから撃墜してやる。
「敵機!来ます!」「スティンガーまだか!」
敵の爆撃機がこっちに向きを変えて突っ込んできた。何発ものミサイルが向かっていくが、数が足りない。
くそ、富士か北海道からガンタンクを持ってきてれば!
その時、ミサイルを突破した何機かが何かを切り話した、乾電池?ちがう、連中の爆弾だ。
「伏せろ!!」
俺の上に誰かが飛びかかった、と同時に世界が暗転した。
「…!…!!」
「…い!…じょう…!!」
「おい!大丈夫か!」
気がつくと隊長が俺の両肩を掴んで揺さぶっていた。爆弾が落ちる直前に俺をつき飛ばして自分も伏せていたらしい。
右耳が聞こえない、そうだ、まだ敵は来ている、任務を…あれ?
ポケットに違和感を感じる、いけない、おばあさんから貰ったお守りが無い。
これが終わったら返すか、艦娘に渡さないといけないのに。
見ると自分の数メートル前で真っ二つに折れていた。
「俺の…身代わりになってくれたのか…?」
「敵機!来るぞ!」
感傷に浸って居る暇は無い。倒れている仲間から携SAMを奪い取り、敵機に構えた。
『大和です!被弾しました!戦闘に問題なし!』
『こちら日章丸、浸水がひどくてもう無理だ…数分以内に着底してしまう!乗員は脱出します!艦娘は船を盾にでも使ってください!』
『横須賀航空隊、敵艦隊との戦闘開始…』
『飛龍航空隊、那覇市上空の正空戦闘を開始します!蒼龍は航空隊を中城湾に向わせて!』
『こちら204飛行隊、補給を終えた、これより発進…敵機だ!クーガー1、気をつけろ!』
横須賀の艦隊が敵艦隊との戦闘に入り、呉の艦隊も沖縄に到達、戦闘を開始している。
何度か部屋全体がゆれて天井からぱらぱらと埃が落ちてくる。きっと地上は…考えたく無い。
アタシの隣にいる提督は無言でモニターを見つめ、ときたま思い出したように二言、三言指示を出していた。
ここは地下だから安心…とは言えない。もし深海凄艦が想定以上に強力な爆弾を持っていたり、出入り口に綺麗に直撃でもしたら?
きっとここに居るみんなはまとめてぺちゃんこだ、そしてそれは艤装をつけていないあたしも例外では無い。
「提督…みんなは、大丈夫かな」
「…祈れ」
祈りなさい、祈りなさい、祈りなさい。
必要な命令を出した後はこれしか無い。
最初は提督なんて楽な商売、割を食うのはあたしら艦娘ばかり、何て思っていた。
でも、自分が提督と同じ立場になって見るとわかる。提督も艦娘と同じぐらい、辛いのだ。
戦闘ではそんなに怖いと感じた事は無かった、尖閣の時だって、あの距離で戦艦の砲撃をもろに食らってたら?
下手したらアタシは首から上が無くなってたかもしれない。それでも怖くなかった。
でも今は、アタシはまだ安全なはずなのに、ずっと提督の手を握り締めていた。
『瑞鳳です!敵航空隊、後退を始めました!こちらからも艦攻、艦爆を発艦!蒼龍航空隊と共同で敵艦隊に反撃します!』
「少し、押し返し始めたな…」
提督が呟いた。
いまアタシと提督の手の間に溜まっている汗はアタシのだろうか?提督のだろうか?
深海凄艦の空襲が始まる。私の家は避難勧告区域外、攻撃される可能性は低いだろう。
だが、何度も爆発音や轟音が響いて居た。
テレビもつけず、ずっと布団の中にいたが、爆発音が聞こえなくなる。ふと窓から外を見ると、街が燃えていた。
東の方から煙が何本も登っているのが見える。金武湾・中城湾の方向だ、火力発電所が破壊されたのかもしれない。
西の方からは火の手が上がっているのが見えた、恐らくだが、那覇鎮守府やその付近の住宅だろう。
見ろ、この有様を、沖縄を守るためと何度も国が、政府が、役人が言っていたのにこのざまだ!
地元の反対を押し切り艦娘を配備して、大和なんて無用の長物まで配備した結果がご覧の有様だ!
結局艦娘も、自衛隊も何も守れていないじゃないか!!
「前方に敵機!こちら204飛行隊、クーガー1、敵機との交戦に入る!貴君らは必ず守り通す!構わず敵艦隊に進んでくれ!」
不思議な光景だった、F-15にF/A-18、F-2といった現代のジェット戦闘機と、遥かに小さいがゼロ戦や紫電改、流星と言ったはるか過去のはずの機体が並んで飛んでいるのだ。
まるで過去の英霊が自分達を守ってくれて居るような…いや、それは考え過ぎか…
見ると数機、妙に高い所を飛んでいる艦娘航空機が見えた。
「よし、こちらクーガー1、各機!加速して前に出る!そして敵編隊にAAM-4で攻撃、その後上昇!急降下してAAM-3で攻撃をしかける!」
『Cougar1、Thank You!!』
『バイパー各機、攻撃態勢!』
『かくへんたいこうげきしんろへ!』
ここで敵空母を仕留めきらないと、敵の第三派は艦娘だけで食い止める事になる。
そうなれば…考えるのは後だ、一機でも多く敵をしとめろ、深海凄艦機に対してバルカンの使用は危険と言われているが…知る物か。
「クーガー1…FOX-2!」
何本もの白線が敵に向って飛んでいく、良いぞ行け、やっつけろ。
最優先の攻撃目標は空母だ、しかしここからではレーダーで敵は映っても艦種までは特定できない。
目視できる距離まで近づけばミサイルは使えないし、図体の大きいこっちは蜂の巣にされかねない。
手当たり次第にミサイルをぶち込み、後は横須賀・呉の艦上機に任せよう、そう思ったときだ。
『こちら那覇鎮守府、F-2、F/A-18各機は攻撃を5分待機されたい、こちらに考えがある』
何を考えているんだ?
横須賀と呉の艦上機は敵の輪形陣に突っ込んでいく、那覇の艦上機、10機にも満たない艦爆は妙に高高度を飛んでいるだけだ。
「きちょう!てきかんたい、ほぼまうえです!」
いいぞ、敵機も敵艦隊の対空砲火も下の横須賀・呉の部隊にかかりっきりでこちらには気づいて居ない。
彼らを囮にする形になってしまったが…
「ぜんき!こうげきかいし、きゅうこうか!」
操縦桿を押し込み、スロットルを絞る。機体が自由落下を始める。
速度計がどんどん右に向っていく、速度400・500・600…まだエアブレーキは展開しちゃ駄目だ。
速度計が急降下制限速度を超えた値を示した。
降下角度75、速度700。こんな爆撃、訓練でも実戦でもやった事は無い、でも私は正気だ、敵に気づかれちゃダメなんだ。
爆弾投下、機体に満載した小型爆弾をバラバラと敵空母に向ってばら撒く。
ヲ級の頭に白いねばねばした、キラキラ光る液体が付着した。
『那覇鎮守府だ、敵空母へのマーキングが完了した!攻撃隊は攻撃されたし!』
攻撃を待機して敵艦隊から放れていると那覇から通信が入る、一体なんだったんだ、あれは?
『バイパー01!レーダーが…』
僚機の通信で我に帰りレーダーを見る。
対空モード…味方しか見えない、対艦モード…50km以上前方にやけに反応の強い8つの点が見えた。
敵空母へのマーキングとかいったな、これがそうか。
何をしたのかはわからなかったが、ここから攻撃できる目標はこれしか無い。
僚機と編隊を組み、レーダーの反応点にミサイルを発射する。
後に「沖縄本島防空戦」「沖縄防衛戦」等と呼ばれる戦闘はこの日の夕方には幕を閉じた。
深海凄艦は空母、航空機を中心とする多数の戦力を失い後退、しかし自衛隊、在日米軍共にそれを追撃するだけの余裕はなかった。
沖縄本島は那覇市、名護市、うるま市が空襲の被害に会い、金武湾・中城湾沿いの火力発電所が爆撃により火災を起し、大型タンカー二隻が座礁、一隻が損傷。
那覇空港、嘉手納飛行場も空襲を受け、多数の航空機が地上撃破された。
現在那覇空港は唯一の滑走路が使用不能。那覇行き・発の民間機は例外的に嘉手納飛行場を使用するよう、米軍との取り決めが急遽行われた。
参加した艦娘は多数が敵機の攻撃に会い損傷。修理が完了するまでは舞鶴・新潟鎮守府の艦娘を一時的に横須賀・呉に移動させ対応する事になる。
そして那覇鎮守府は集中的に空爆に晒され、周囲の市街地共々炎上、宿舎の一部と地下作戦室を残し鎮守府としての機能を停止した。
ドック跡から摩耶の艤装と予備兵装を改修した後、拠点としての機能を停止した那覇鎮守府は解体が決定した。
…気がつくと、私は何かに横になっていた。
身体を動かそうとするが、身体が動かない、目も開けれない。
「気づかれましたか?ミス・フルタカ?ヴィンセンスにヨウコソ」
少しなまった日本語で、やさしそうな男の声が聞こえてきた。
ヴィンセンス、確か私が昔、沈めた船の名前だ。そう、私はやっぱり
「アァ、あぁ、大丈夫デス、アメリカ第七艦隊、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦ヴィンセンス…ココはその医務室ですヨ」
そうだ、ヴィンセンス、アーレイ・バークと一緒に私達に同行して夜戦に入る前に退避してもらっていたはず。
…私は、生きている?どうして?
「アナタは運がいい、みたいデス。これは想像ですが…海中に沈む途中で破壊された装備が爆発、偶然ニモ殆ど外レ、アナタだけ浮かんできた…らしいデス」
「アナタは一人で浮かんでいたところを当直士官が発見、収容シマシタ」
「イマ、本艦はヨコスカに向っています、明日には顔の包帯も取れるデショウ…きっとお仲間に怒られます、カクゴしてクダサイ」
手が頭を撫でてきた。ごつごつした手だったが、何よりも暖かかった。
「サァ、フルタカ、今はもう少し、眠ってクダサイ」
その言葉で私は意識をもう一度手放した。
―戦後初の空襲、沖縄に被害
本日早朝、沖縄県沖縄市・名護市・うるま市に深海凄艦航空機が約500機が襲来、自衛隊は在日米軍と共に防衛線を展開したが防ぎきれず、軍事施設・発電所・飛行場に爆撃を行った。
この攻撃により金武火力発電所、石川石炭発電所が被害を受け運転を停止、沖縄電力は他発電所の運転で電力はまかなえるとしていながらも、点検中の発電所稼動などの調整のため一週間は計画停電を行う必要があると発表した。
那覇空港は滑走路と格納庫を破壊され、閉鎖、各航空会社は明日以降の運航便については本数を減らすと共に嘉手納基地を代用空港として使用するとしている。
また、那覇鎮守府およびその周辺地区は大規模な攻撃に晒され、壊滅的な被害を受けている。
自衛隊員、在日米軍を中心に百名を超す死傷者が出ているが、詳細な人数はまだ判っていない。
-昨日夜、石垣島で会社員Aさんが友人のBに腹部を刺され、Bの通報で駆けつけた警官によって遺体となって発見された。
Bは市民グループのメンバーで、グループの運営についてリーダーのAさんと意見が別れた再に酔った勢いで刺してしまった。等と警察に証言している。
-一週間後
横須賀の記者が送ってきた写真はなかなか良い物だった、子供を抱き上げる艦娘の写真、解像度とキャプション次第ではなかなか良い記事になるはずだ。
少し遅れたが沖縄から送られてきた写真も良い。市街地上空で深海凄艦の飛行機を追いかける戦闘機の写真だが…望遠の関係で市街地もろとも銃撃してるように見える。
後は艦娘が守るべきタンカーを盾にしていたと言う証言も手に入れた。
うちの誌のコンセプトは単純。
他社と同じ論調ならより過激に、他社と少しでも異なる論調ならいっそ正反対にしてしまう。
常に同じ論調で居なければいけないわけじゃない、世の中にはあらゆる考えの人が居る。つまり、あらゆる論調であっても一定の支持者が居る。
少しでも過激な論調、他に誰も記事にしない論調で行けば、常に一定の客は得られるのだ。
大手にはどうやっても勝て無いからな、こうやって食い繋いでいくのさ。
その時、記者の一人が編集室に入ってきた。
「編集長!」
「おぉ、どうした?記事が出来たか?」
「あの、いえ…これなんですが…」
記者が私に他社の週刊誌を渡してくる。
『現代の松本サリン!?無実の男を追い詰めたマスコミの黒い影!!』『私、あの記事の人とは別人なんですが…見間違いで被害にあった男性が語る嫌がらせ…一雑誌の起した悲劇』
「おい、これって…うちの事か?」
「それだけじゃ有りません、こっちも…」
更に紙の束を渡してくる。複数のブログやSNSがどんどん炎上して行く過程だった。
『あの雑誌社は株式公開して無いけど実は株の7割、外国だってよ』
『んで、日本の艦娘戦力の衰退、艦娘技術の流出を狙って反艦娘の記事を出しまくったらしいぜ』
『マジかよ、某社もビックリの反日企業じゃん』
おい、待て待て待て、確かに内は株式非公開だが株は全部国内に…
その時、テレビで流れていたニュースから聞き覚えのある単語が流れた、いや、この会社の名前だった。
『沖縄空襲から一週間、沖縄のライフラインの復旧が続くなか、有る企業が引き起こした人権侵害が話題になっています…』
「…マジかよ」
うちの雑誌は徹底的に相手を追い詰める側だった、そして、今この瞬間追い詰められる側に変わった。
「はーい、夕張です!あぁ、大淀さん!この前はありがとうございました、私パソコンは出来ても会社とかからっきしダメで…」
「はい、はい、うまく行った?良かった、後で感想聞かせてもらわないと…イムヤと青葉には私から連絡しておきますね」
沖縄を離れるまでもう一日を切った。
この一週間、私たちは沖縄基地隊を拠点に瓦礫となった鎮守府から可能な限りの艤装や装備、無事だった私物、機密書類などを掘り探す作業に従事していた。
…弾薬庫と燃料タンクの安全が早期に確認出来てよかったわ。
今日は回収した装備を船に積み込み、明日船で出港、呉で大和達を降ろし横須賀に向う。
今日は最後の日だからか、妙に面会客が来てた。
提督だけじゃない。私たち艦娘に、だ。
「叢雲ちゃん、行ってしまうのかい?寂しくなるねぇ…沖縄もこれから叢雲ちゃん達が居ないでどうなるのか…」
「…大丈夫よ、どうせまた遠く無いうちに訓練だなんだで港には来る…はずだから」
「でもばあちゃんは悲しくて寂しくて…そうだ叢雲ちゃん、これで船で食べるお菓子でも買って…」
「ちょっとおばあさん!困りますよ!流石に現金は…」
「そだよばーちゃん、諦めな」
「ダメかい?まったく、融通の利かない孫と提督さんだこと…そうだ叢雲ちゃん、私がくたばったら土地と家を」
「ええっ!?だめよ!いくらなんでもそんなもの!」「そだよばーちゃん!アタシの遺産どうなんのさ!?」
「オホホ、冗談よ冗談、叢雲ちゃんが沖縄に土地を持っても困るものねぇ?」
「…食えないばあさんだわ」
「摩耶様…俺達、摩耶様の事忘れませんから!」
「おいおい…別に今生の別れって訳じゃ…」
「俺…俺…摩耶様とで会えて幸せでした…摩耶様の肉まんに顔を包まれたこと、一生忘れませんから…」
「なっ…あれは…忘れろ!今すぐ忘れろ!」
「忘れるには一つ条件があります!摩耶様!!」
「「踏んでください!!」」
「ウゼェんだよクソ野郎が!今すぐ倉庫から擬装持ってきてぶん殴ってやろうか!?」
「「是非!」」
「…雪風、やはりあの踏んでくれ、というのはこの地方の方言のような気がしない?標準語のとうりだと踏んでくれ、だと会話がかみ合わないし…」
「浜風はずっとそのままでいて下さい、雪風との約束です」
「…?え、えぇ…」
「うぅ…づほちゃんを家に上げて一緒にお風呂入って髪をとかしたりする前にづほちゃんが沖縄から居なくなるなんて…」
「くそう、瑞鳳さんと結婚式を挙げる前に瑞鳳さんが沖縄からいなくなるなんて…」
「なによアンタ、私はあんたが義理の弟になるなんて認めないわ!」
「こっちこそあんた見たいなのが小姑なんてゴメンだ!」
「ねぇ、何で私があなたの妹になるのは確定してるのかな…?」
「運命よ!」
「違う!瑞鳳さんは俺と結婚するんだ!」
「ふざけないで!づほちゃんがあんたみたいな奴に股を開くわけ無いじゃない!」
「うっせぇ!俺が大人になったら股開いてくれるんだよ!」
「お願いだから仕事させてよぉ…!」
「瑞鳳、引継ぎの書類がまだ出て無いようですが…」
「やまとぉ…助けて…」
「なっ…お、お姉様!…がっ!」
「い、今…おっぱいがガーンって…」
「大和…あなた…」
「寂しくなるなぁ…君が来てから一年、長いのか短いのか…」
「沖縄基地隊には様々な面でお世話になりました。一佐の恩は忘れませんよ」
「いやしかし、残念だ…せっかく妻に緑の紙を渡してこれから叢雲君と結婚を前提につき会おうと思っていたのに」
「なっ!?マジすかアンタ!?」
「冗談に決まって居るだろう!35年共に過ごした妻を簡単に手放すものか!」
「…あんた」
「まぁ、冗談はさておいて、だ。君も艦娘を奪われないように気をつけたまえ」
「は?」
「さあ、私は仕事に戻る。君も戻りたまえ。」
本当に食え無いおっさんだ。
でも一佐、あなたと仕事が出来て、俺は楽しかったですよ。
船が出港し、海岸沿いに北上する。
海岸に崩壊した鎮守府が見えた。まだ重機が動いていて陸自隊員が作業をしている。
「すまん雪風、双眼鏡貸してくれ」
「え?あ、はい、てーとく」
『みたことか、軍事は市民を守らない』『艦娘の配備は予算の無駄!』『艦娘配備の無意味さ、市民の正しさが証明された』
『政府は即刻艦娘の全廃、沖縄の部隊の撤退を』
立ち入り禁止のテープを張って作業を続ける隊員に向って声を張り上げている一団が居た。
…ま、守りきれなかったのは事実だしな、俺達や自衛隊が居なかったらどうなるか、なぜ部隊の無い北大東島や石垣島が狙われず、沖縄本島が狙われたのか…
そんな事を彼らに説明するのは量子力学を5分で説明するよりも難しい事なのかもしれない。
あぁ、あるドラマにあった天才ウイルスがあればなぁ…
「てーとく?何か見つけましたか?」
「いや、なんでもない、これは返すよ」
どっちにしろ、もう沖縄とはおさらばだ。
もう俺には関係無いさ。
-横須賀
執務室の扉をノックする
「入りたまえ」
「失礼します!」
ドアを開けて中に入る。まったく、ドアの一つ一つに良いもん使いやがって。
部屋では海将が俺を待っていた。
「良く来たな、二佐」
「二佐?」
「君の沖縄での功績が評価された、特にあのチャフ入り砲弾、アレは何かに使えないか技本の連中が興味を示してな…これで君も稚内の彼と同格だな?」
「はぁ…」
あれが役に立ったというのか、元を正せば第六駆逐隊のアイデアなんだが…
「ところでだ、今回君を呼んだのは二つ、理由がある。一つ目は…君、ケッコンする気は無いか?」
仕事の話しだと思ったらいきなり私事だと?それに…
「な、何かと思えば…確かに俺はそろそろ30だし、結婚も考えるべきかもしれませんが…第一海将の娘さんは…」
「馬鹿、誰が独身男性に既婚女性を紹介するんだ…艦娘人権法、は知って居るだろ?」
「あ、はい。艦娘にも人権、あるいは準人権なる物を与えて法律による保護・あるいは処罰を与えれるようにする、ですね?」
「そうだ、その艦娘人権法だが、まもなく成立する…国会では野党の反発が強いが、実は与党と野党の一部政党間で話し合いがついていてな、賛成六割以上で成立する事がほぼ確定している」
「…きたねぇ」
「気持ちは判る、だが必要なことさ」
それと、俺の結婚、何の関係が…
「艦娘人権法の成立、交付を世の中に知らしめるために、広告塔が必要なのだよ。艦娘と人間と同じように、恋愛し結婚する。というな」
「まさか艦娘に人権がある事を知らせるために艦娘を逮捕するわけには行かないだろう?」
「いや、おっしゃる事は分かりますが…」
「君は艦娘の信頼も厚いと聞く、どうだ?考えて見ては?まあ、君の人生に大きくかかわることだ、そういう選択肢もある。と言う事を覚えて置いてくれ」
「は、はぁ…」
艦娘と結婚…か。
良く良く考えれば魅力的かもしれない。艦娘も手当てはあるし貯金もある。
ごくごく一部の例外を除きカレーぐらいは作れるし、自衛隊生活で掃除洗濯もお手の物…結婚相手として見ればかなりの優良物件だ。
まるで俺とはつりあわん。そうだ、俺とつりあう訳が無い、もし艦娘が結婚するにしても、ふさわしい男と結婚させてやろう。
「次の件だが、君の次の配属先が決まった」
あぁ、遂に来たか。
さぁ、俺の次の配属先はどこだ?
俺が提督をしていた那覇鎮守府は消えたし、他の鎮守府はみんな二佐以上、俺はもう提督は出来ない。給料が下がるのは覚悟の上だ。
出来る事なら新潟が良いな、あそこの提督は俺達の二つ上で美人だし。あ、稚内のあいつの部下はやめてください。
あと今更護衛艦勤務とかもやめてくれよ?全く経験無いんだから。
「君の次の配属先は沖縄だ、荷物を纏めたまえ」
「はぁ!?」
俺は、あの南の島から逃げる事は出来ないらしい。
―沖縄県 沖縄基地隊
「まったく、あの若造共がいないと寂しくなるな…」
「一佐、北海道から荷物が届いています」
「北海道から?」
「手紙が同封されています、えーと…「息子よ、酒を送る。仲間と飲んでくれ、父より」…あー、那覇鎮守府向けですね、これ…」
「…どうするよ、これ?」
「私に聞かないでください」
702 : VIPに... - 2014/12/09 20:17:47.88 sSVL1FOC0 419/420このSSはこれで終わりです
703 : VIPに... - 2014/12/09 20:22:18.45 sSVL1FOC0 420/420ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
レスが700を超えた事と、気がついたら3週間ぐらい続いている事。そしてネタは残っていてもまとまっていない事から、これで一つの終わりとさせてください。
感想、質問等いただけて楽しかったです。もしそれらが無ければ三日坊主で終わって居たでしょう。
次SSを書くかどうか、書くとしてもいつになるかは未定です。
このSSの続編になるか、小ネタ集みたいな物になるか…安価なんてのも難しそうですが、面白そうであります。
後は感想雑談質問など、好きに使ってください。
一旦見直して投稿忘れが無いか確認した後、HTML化依頼を出すつもりです。
関連作(外伝)
ケッコンカッコカリノカリ・他