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受付「勇者様! 英霊祭ですよ!」 幼女「♪♪♪」【前編】
―――――王立研究所―――――
研究員A「早く運び込め!」
研究員B「1人は全身複雑骨折及び出血多量! もう1人は重度の内臓損傷及び出血多量! 両名とも危険な状態です!」
仮面王女「メイド! 紅騎士! しっかりしなさい! 死ぬんじゃないわよ!」
レッド「素早い……措置を……願います……内部魔力が……あまり……」ガガガ バチバチッ
研究員C「クソッ! 電子妖精の魔力運用のお陰でなんとか現状を保ってはいるが……このままでは……回復魔法を使える奴はまだか!?」
研究員D「今、こちらに向かっています!」
レッド「……主の……命を……優先して……くだ……さい」ガガガ
研究員D「生命反応の低下を確認! このままでは……」
バンッ!!
「待たせたな!」
研究員A「遅いぞ! なにをやっていた!?」
「悪いが説教は後にしてくれ。ここからは俺の、医療魔法使いの領分だ」バサッ
仮面王女「2人を頼んだわよ!」
「安心しな、姫様。俺が来たからにはもう大丈夫だ」ポンッ
研究員E「2人の命は死神なんかに持って帰らせたりなんてさせないさ」フフッ
メイド(この人、本当に大丈夫ですの……?)ゼェゼェ
レッド「小芝居は……いいので……早く……処置を……希望……します……」ガガガ
研究員E「ああ、悪かったな。みんな! お嬢様方がお待ちだ。急いで処置室に連れて行ってくれ!」
研究員A「……わかった」
研究員C(なんでこういう時、あの人ああなっちゃうんだろ……)ガラガラガラ
研究員D(まぁ、腕は確かなんだけど……)ガラガラガラッ
―――――研究所待合室―――――
同僚「私どうしてこんなところにいるのかしら………? 今日は英霊祭だったはずなのに……」
村娘「わ、私もです……なんでこんなところにいるんでしょう………?」
同僚「あなたはなぜあそこに?」
村娘「………ピンチだったところを姫様の護衛の人達に助けてもらって……」
同僚「ああ、あのガラの悪そうなのと私が運んだ人か……って中にいたってことはあなた、相当なVip?」
村娘「違いますよ……私はただの村娘です。村長が役所の人からチケットもらって、それでついてきたんですよ。それがまさかあんなことになるなんて……」
同僚「そういえば村長さんは大丈夫だった?」
村娘「ええ、ベッドで休んでます……」
同僚「そう……あなたも私と同様、勝手に巻き込まれたってわけか……」
村娘「まったくもってついないんですよ、私! 火竜事件の時も山賊に殺されそうになるし、今度はその仲間だった元山賊に助けられたのはいいけど私のせいで2人がメイドさんを助けに行けなくてメイドさんは大怪我するし……もう誰にこの怒りをぶつければいいんですか!!」ガンッ
同僚「まぁまぁ……」
受付「あれ~? もしかして同僚さん? どうしてこんなところにいるんですかぁ?」
同僚「受付……!! あんた今までどこ行ってたのよ!?」
受付「えへへ、ちょっと野暮用です!」
同僚「あんたねぇ……あんたがいない間に式典はめちゃくちゃになるわ、変な集団が会場を占拠するわ、勇者様がなんかおかしいわでもう大変だったのよ!?」
受付「いやー、私も街を歩き回ってたら突然暗くなっちゃったんでびっくりしたんですよー。なにかあったんですか?」
同僚「ど・ん・だ・け! あんたはのんきなのよ……!!!」グググッ
受付「ど、同僚ふぁん……いふぁい、いふぁいでふ……」ギギギギ
同僚「まったく!!」
受付「うう、私のモチモチのお肌が……」スリスリ
同僚「よーく伸びたわよ!」
受付「……それで勇者様の様子がおかしかったって?」
同僚「だから、なんか変だったのよ。魔王のことについて聞いた時から」
受付「魔王についてって、そんなこと聞いたんですか?」
同僚「私が聞いたんじゃないわよ!? お店の人が聞いたのよ!」
受付「それで具体的にどう変だったんですか?」
同僚「な、なに? 今日はいつも以上にグイグイ来るわね……」
受付「気のせいですよ」フフッ
同僚「えっと、魔王の話になった途端、顔色が悪くなって……なんていうか物凄く辛そうだった。ああ、それと変なこと言ってたわね」
受付「変なこと?」
同僚「そうそう。勇者様、聖女様は自分の仲間じゃないって言うのよ。どういう意味かしら?」
受付「確かにそれは変ですね。聖女様は勇者様のパーティとして魔王討伐に参加した。そんなことは子供でも知ってます」
同僚「勇者様は聖女様について話してもまるで他人事みたいだし……まるで聖女様のことを忘れてしまったみたいに……」
受付「…………あらら、気がついたらもうこんな時間です。私、用事を思い出したのでもう行きますね?」ダッ
同僚「あ、ちょっと! こんな時にどこ行こうってのよ!」
受付「『乙女の秘密を探ろうなんてナンセンスです☆』。中にいる人たちのこと、後は任せましたよー!」
同僚「ちょっと!」
村娘「行っちゃいましたね……」
同僚「ごめんねー、いきなり。嵐の様な奴だったでしょう? あいつ」
村娘「……えっと、あの人ここで何してたんですかね?」
同僚「どうせロクでもないことしてたんでしょう。困った奴だわ……」ハァ
村娘(それで済ましちゃうんだ……それにしてもあの人の声……どこかで聞いたような……まさかそんなはず……いや、でも……)
同僚「村娘さん?どうかした? 体調でも悪いの?」
村娘「い、いえ! 大丈夫です!」
村娘(きっと気のせいだよね……?)
―――――――――――
受付「………とまぁ、勢いよく飛び出してみてしばらく走ってみたものの……」タッタッタ
受付「なんですかぁ! あれ!!??」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!
受付「同僚さんは……いや、いざとなったら転移魔法でなんとかするでしょう!」
受付「今はとにかく、なにが起こっているのかこの目で見定めないと……!!」ダダダ
「お、おい! あれ!!」「なに? なんなの!?」
おっちゃん「おいおい……冗談だろ……なんなんだよあれは……でっけぇ雷か……?」
従者「みなさん! ここは危険です! 冷静に誘導に従ってここから離れてください!」
「逃げろ! 逃げろ!」「ああ、聖女様……どうか我らをお守りください……」
従者「団長は一体何やってるんですか……? このままじゃ本当に王都が……」
おっちゃん「おい、兄ちゃん! ここには剣士様や魔法使い様、それに勇者の兄ちゃんもいるんだろ!? 一体どうなってんだよ!?」
従者「僕にだってわかりませんよ! とにかく上を見ればここが危ないってことくらいわかるでしょう!? 早く逃げてください!」
「もうダメだー!」「信じるんじゃ! 聖女様が必ず守ってくださる!」「そんなもの信じられるか!」「どけ! どけぇ!!」
従者「みなさん! とにかく落ち着いて指示に従ってください!!!
受付(まったく、勇者様たちは一体なにやってるんですかね……? このままじゃ本当に王都が壊滅ですよ?)タッタッタ
従者「そこの人! どこに行く気ですか! そっちは危ないんです!」
受付「………えっと、公務員のお仕事です!!」オホホホ
従者「はぁ!? 何言ってんですか!!」
受付「事件は現場で起きているので……」
従者「いいですか、ここは危険です。今すぐ避難してください。民の命を預かる騎士団として、この先はお通しできません!」
受付「………ん? あなた……もしかして……ほほう……」ニタッ
従者「………な、何見てるんですか……?」
受付「上手く隠しているようですが私の目は誤魔化せませんよ?」ニヤニヤ
従者「なにを訳のわからないことを……早く逃げてください!!」
受付「それは聞けません! 私には行かなければならない理由があるんです! 通させてもらいますよ!!」ダッ
従者「くっ! 力づくで止めるしかないようですね……!!」ジリッ
受付「はぁぁぁぁぁあああああ!!!」バッ
従者「!!!!!」
ふにゅっ
従者「きゃっ……!!!」バッ
受付「おお、これは中々………」ワキワキ
従者「こ、この!!!」バッ
受付「おっと!!」ヒラッ
従者「しまった!?」
受付「………どんな理由かは知ったこっちゃありませんが……私、急いでおりますので……ごめんあそばせ☆」ダッ
従者「ちょ、ちょっと!!」
受付「ごきげんよーう☆」タッタッタ
従者「どうなっても知りませんからね!!!」
――――????―――――――
幼女「……むい?」キョロキョロ
幼女「……むー」スタスタ
勇者(……うるさい!!!)
幼女「…………」ズーン
幼女「ユーシャ……」グスッ
幼女「グスッ……うぇ……うえぇえええええんん!!!」
女「おやおや~そんなに泣いちゃってどうしたんだーい?」クルン
男「お腹が痛くなっちゃったのかな~」クルン
幼女「ふぇ……」ビクゥ!
女「それとも晩ご飯に嫌いなピーマンが出たとか!」パッ
男「昨日おねしょをしちゃって怒られたとか!」パッ
女「…………それとも好きな人がおかしくなってしまったとか?」
幼女「…………」ウツムキ
男「まったく、こんな可愛い子を泣かせるなんて勇者も中々悪い男だな」
幼女「うぇ…… 」グスッ
女「大丈夫? 幼女ちゃん?」
男「幼女よ、俺の胸で存分に泣きな……」スッ
幼女「うぇぇぇええええんん!!!」ダキッ
女「あ、あらあら……」
男「なぜだ幼女……俺とお前はベストフレンドじゃなかったのか……?」
女「よしよし……」ナデナデ
幼女「ユーシャ……ユーシャ!」グスッ
男「しっかしまさかここまで大事になるなんてな、勇者も中々やりおる……」クックック
女「馬鹿は放っておいて……幼女ちゃん?」
幼女「むぅ……」グスッ
女「よく聞いて。前も言ったと思うけど。私たちは基本的にあなた達の世界に干渉できないの。できたとしてもほんの数秒だけ。それは覚えているわね?」
幼女「……」コクコク
女「ユーシャを、そしてあの魔族を止めるには幼女ちゃん自身が頑張るしかない。私たちはちょっとしたアドバイスとサポートしかできないの」
女「今のユーシャはちょっと混乱しているのよ、どっかの誰かさんとの馬鹿な約束を必死に守ろうとして……」
男「笑って幸せ……で考えた結果が働かないでニート生活かよ」
女「そういう意味で言ったんじゃないんだけどね……」
幼女「…………」ウツムキ
男「…………幼女、勇者はお前にとってどんな奴だ?」
幼女「……!!」フリフリ………フリッ!
男「そうかそうか! 優しくてあったかい奴か!」
幼女「……!!」グッ
女「なんでジェスチャーでそこまでわかるのよ!?」
男「俺と幼女は魂で繋がりあったソウルフレンドだぜ? 言葉なんか無くたって伝わるよ」フフン
女「納得いかないわね……」
男「ただなぁ、これで伝わるのは俺とお前だけだ。勇者には伝わらない」
幼女「……」ウツムキ
男「いいか、幼女。一つ教えてやる。大切な誰かが間違った方向に進んじまったら、自分の体を張って正しい道へ連れ戻してやるんだ。それが誰かを想うってことなんだぜ?」
幼女「…………」ウツムキ
男「わからないか? じゃあ一個質問だ。幼女、勇者がずっとあのままだったらどうだ?」
幼女「…………!」フルフル!
男「だったら、勇者を元に戻してやらなきゃな!」ニカッ
幼女「……!!!」コクコク
男「お、やる気じゃねぇか。だったらお兄さんがいいものやるよ。幼女、ちょっとこっち来てみな?」
幼女「んう?」スタスタ
女「ちょっとまた? 幼女ちゃんに変なことしないでよね?」
男「心配すんなよ。俺が今更どうしたところでなにも変わらないだろう?」パァァァ!
女「それは……そうだけど……」
男「……よし、これで大丈夫だろ………幼女よ!」
幼女「む、むい!」ビシッ
男「俺はお前にとっておきの、もんの凄い、ヤベェ強え武器を与えた! その力はあまりにも強大で間違った使い方をすれば多くの人を傷つけるだろう! ただし!」
男「正しいことに使えばこれほど頼りになる武器は無い。後はお前次第だ……止めてみな、あいつが大切ならよ」フフッ
幼女「むい!!」ビシッ
女「行きなさい。あなたが望むままに。私はいつでも幼女ちゃんの味方よ」
男「気をつけてな幼女、勉強しろよ? 歯磨けよ!」
幼女「……ありが……と……」ボソッ
クルッ ダダダダ!!
女「いってらっしゃい幼女ちゃん」
女「………へぇ、ヤベェ強え武器ってそういうことだったのね……」
男「どうだ、ヤベェ強えだろ!?」
女「確かにそうね、それにしてもあんたにそういう心があったなんて……意外」
男「今まで俺をなんだと思ってたんだ……」
女「最低最悪のクレイジー野郎」
男「言い過ぎじゃね!?」ガガーン
女「自分がしでかしたこと考えてみなさいよ」ハァ
男「…………君も行くのか?」
女「まぁね、今回のことは私が原因でもあるんですもの」
男「火竜事件の時もやっただろう? ああいう出番に貪欲なのは僕ぁ、良くないと思うね!」
女「少し位いいじゃない!」
男「まぁ、君が自分の立場をわきまえているのならいいけどさ」
女「私たちは所詮傍観者、それは変わることは無いわ」
男「そう。君がいくらあの世界が恋しくても俺たちの居場所はここだ」
女「分かってる。そんなこと十分過ぎる程に」
男「なら、俺はこれ以上なにも言わないさ…………幼女によろしくな、聖女様?」ククク
女「そんな大層なものじゃないわよ」
――――王都 上空――――
勇者「………全部、倒せば……全部……」バリバリバリッ
勇者「俺は勇者だ……勇者なんだ……」
勇者「みんなを守る……正義の味方……」
「ごめんなさい、 ユーシャ……」
勇者「違う違う違う!!!」バリバリバリッ
「笑って? ユーシャ!」
勇者「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! そんな顔しないでくれ! 俺は! 俺の守りたかったものは……」ブンブン
勇者「あああああああああああああああああああ!!!!!!」
バリバリバリ!!!
助手「どんどん大きく………あ、あれが人類を救った力だというの……?」
「…………これも全て私の責任ですね……」
助手「え? 幼女ちゃん?」
幼女「…………」スタスタスタ
助手「青い瞳に変わった?……これって前に勇者様が言っていた症状と同じ……」
幼女「私の身勝手があの人をここまで追い詰めてしまった……」
助手「な、なにを言ってるの幼女ちゃん!? ここは危ないわ! あなただけでも逃げないと……」
幼女「大丈夫ですよ」ニコッ
助手「え?」
幼女「悲劇なんて、もう起こさせませんから!」バッ
助手「ちょっと! 戻りなさい! 幼女ちゃん!」
―――――王都 広場―――――
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
「あ、ああ……光の塊が……」「こっちへ来るぞぉぉぉ!!!」「逃げろー!!」「ママ、ママー!!」
おっちゃん「くそう! せっかくこの世界から魔王がいなくなってこれからって時に……!!」
従者「 落ち着いて逃げてください!! 避難誘導に従って!!」
「もうだめだぁぁぁ!!」 「死ぬのよ! 私達!!」「そんな、そんなのってないよ……」
おっちゃん「馬鹿野郎! お前ら! まだ諦めるんじゃねぇ!!」
「無理よ! もうどうしようもないじゃない!!」「聖女様を信じるのじゃ……」
おっちゃん「完全にパニックになってやがる!! おい兄ちゃん! なんとかしねえと本当にこのままみんな死ぬぞ!」
従者「…………」
おっちゃん「おい! まさか兄ちゃんまで諦めたわけじゃないよな! さっさと逃げるんだろ!」
従者「………もう手遅れでしょう……」
おっちゃん「なんだと!?」
従者「正直、あれが落ちてきたらどこに逃げようと意味がないと思います……」
おっちゃん「じゃあ、ここで指くわえて死ぬのを待てってのか!? 全部諦めて祈りでも捧げろって言ってんのか! えぇ!?」ガッ
従者「そんなこと言ってませんよ! でも、誰がどう見ても無理じゃないですか……奇跡でも起きない限り………!!!」ギリッ
おっちゃん「……クソッ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
従者「誰か……誰か助けて……」ギュゥゥ
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
「希望を捨ててはいけません!」
カッ!!
シュゥゥゥゥ!!
従者「え?」
「み、見ろ!」「光が……消えた!!」「聖女様じゃ! 聖女様が助けてくださったんじゃ!!」「聖女様だ! 聖女様が我らを助けてくださった!」「助かった! 助かったのね!」
従者「………どうなってるんですか……?」
おっちゃん「奇跡だ……」
従者「え?」
おっちゃん「そうだ、あの日と全く同じことが………あの時も聖女様が俺たち兵士を守ってくれたんだ……」
従者「それってあの日のことですか?」
おっちゃん「ああ、2年前の王都に魔族が攻め込んで来たあの日だよ……俺はあの日、確かにこの目で奇跡を見たんだ……」
従者「…………」
おっちゃん「こんな奇跡を起こせるのはあの人しかいない……」
おっちゃん「本当に聖女様が……また俺達を守ってくれたんだ……」
蒼騎士「雷球が……消えた!?」
ブルー「上空に魔力反応! これって……」
魔法使い「幼女!? 幼女ではないか!」
助手「で、でも様子がおかしいのよ……」
剣士「様子がおかしい?」
助手「まるで別人みたいなの……」
幼女「…………」シュゥゥゥゥ
勇者「俺の雷魔法が……」
幼女「………あらら、そろそろ時間切れみたい。ごめんね、幼女ちゃん、勝手に身体借りちゃって」シュタッ
勇者「お、お前は……!」シュタッ
幼女「後はあなた次第……頑張ってね幼女ちゃん……」シュゥゥゥゥ
勇者「待て!!!」
幼女「んう?」キョロキョロ
勇者「……!?」
魔法使い「今じゃ! 拘束魔法!!」ジャラジャラジャラ
勇者「グッ……!!」ビシッ
蒼騎士「大丈夫か!? 金髪チビ!」
ブルー「君、凄いねぇ! あれ消し飛ばしちゃうなんて!」
幼女「だい……じょう…ぶ!」グッ
蒼騎士「大丈夫ならついでにあの馬鹿止めてくれないか? これ以上あれに暴れられると国が潰れる。あんたの保護者だろ?」
幼女「……まか…せて!」
勇者「離せ! 離せぇぇぇ!!!」ジャラジャラジャラ
魔法使い「頭を冷やせ! この馬鹿者!!」
勇者「俺が魔族を殺さなきゃいけないんだ! 俺がみんなを守らなきゃいけないんだ! それが勇者だ! それがみんなが望んだ俺なんだろ!!」
剣士「落ち着け! 勇者! またあの時のように大事なものを失うつもりなのか! お前はまた繰り返すつもりなのか!!」
勇者「だから二度と繰り返さないために戦ってるんだ! 俺がみんなを守るんだ! あいつと約束したんだ!!」
暗黒魔人「……そうだ……勇者……!!」ゼェゼェ
助手「暗黒魔人……! まだ生きていたの!?」
暗黒魔人「魔族は……全て……殺すのだろう……! まだ私は生きているぞ?」
勇者「……すぐにぶっ殺してやるよ……!!」ジャラジャラジャラ
魔法使い「くっ、パワーが!」
暗黒魔人「そうだ……もっと憎め……もっと怒れ……その強大すぎる力で……」
勇者「うぉぉぉぉおおおお!!!!」
暗黒魔人「敵も……味方も……全て……」
魔法使い「くぅ……」グググッ
暗黒魔人「殺し尽くせ! 勇者ぁぁぁぁあああああ!!!!」
勇者「うぉぉぉぉおおおお!!!」
バキン!!!
助手「冗談でしょ!? 魔法使いの拘束魔法が……」
魔法使い「と、止まって! 勇者!!」
勇者「死ねぇぇぇぇぇぇえええ!!!」ダッ
暗黒魔人(それでいい……一度枷を失った力が止まることはない……!!!)
剣士「やめろ! 勇者ぁぁぁぁあああああ!!!」
勇者「うぉぉぉぉおおおお!!!」バリバリ!!!
暗黒魔人(魔王様……申し訳ありません……私はここまでのようです……)スッ
幼女「ユーシャ! だめぇぇぇぇぇぇ!!」バッ
勇者「…………!!」ピタッ
蒼騎士「勇者が止まった!?」
魔法使い「幼女!!」
幼女「…………」
勇者「そこをどけ! 邪魔するんじゃねぇ!!!」バチバチバチ
幼女「ちがう……ユーシャ……ちがう……」フルフル
勇者「なにが違う? 俺は勇者だ。だからこうやって魔族を殺そうとしてるんだろ!」
幼女「……!!!」ブンブン!!
幼女「ユーシャ……いつも……あったかくて……やさしい……」
勇者「……」
幼女「今の……ユーシャ……ちがう……」キッ
幼女「ちがう!!!」
幼女「……ちがう……」グスッ
幼女「……ちがうぅぅぅ!!!」グスッ グスッ
幼女「うぇぇぇええええんん!!!」
助手「幼女ちゃん……」
魔法使い「幼女……」
剣士「………」
国王「………」
勇者「…………くっ……やめろ……そんな目で見るな………俺は……勇者として……正しいことを……」グラッ
幼女「ちがう!! ユーシャ、ちがう!!!」
勇者「そんなこと……ない! 俺が……間違ってるはずなんて……」フラフラ
「よくぞ言ってくれましたね、幼女ちゃん!! それでこそ幼女ちゃんです!!」
幼女「……ふぇ?」グスッ
勇者「誰だ!?」
「必殺! 受付ちゃんキーック!!!」ドゲシッ
勇者「ぐはっ………」
蒼騎士「あ、あいつは……」
「ある時はしがない公務員……」ババン
幼女「……!!」オオッ
「またある時は幼女ちゃんを愛する可憐で雅なお姉さん……」ダダン
国王「あれは……」
「またある時は……えーっと……ネタバレにつき言えません!!!」ガガン
魔法使い「なんじゃなんじゃ!?」
幼女「……♪♪」マネマネ!
「しかしてその実体は!!!」
受付「いつも笑顔で接客応対! 疲れたあなたの心の窓口! 受付ちゃんですよ!!」ビシッ
幼女「むい!!」ビシッ
受付「決まった……!!」プルプル
幼女「カッコイイ!!」
受付「でしょー? やっぱり幼女ちゃんはわかってますぅ!」
助手「どうしましょう、あまりの超展開についていけないんだけど……」
魔法使い「奇遇じゃな、わしもじゃ」
受付「さーて、登場シーンもばっちし決まったところで本題に入るとしましょうか」
受付「勇者様、なにやってんですか?」
勇者「………」
受付「なにやってんですかって聞いてんですよ!!」
勇者「……またあんたか……あんたも俺の邪魔をするのかよ………?」フラフラ
受付「いーえ、公務員として、あなたの国を顧みない行動は目に余ります。景気も良くないこのご時世にそれ以上暴れられたら私のお給料減っちゃうじゃないですか」
勇者「俺が魔族を皆殺しにすれば世界が平和になる! それで問題ないだろう!?」
受付「………本当にそれでいいんですか?」
勇者「なんだと?」
受付「目の前の敵を全て倒して、それでハッピーエンドでいいんですか?」
勇者「いいさ! いいに決まってる! 敵がいなくなってハッピーエンド! それでいいんだ! それこそがあんた達が勇者に求めたことだろう!? 違うか!?」
受付「だったら!」
受付「だったらどうして、あなたはそんな辛そうな顔をしてるんです!?」
勇者「!?」
受付「それがこれからハッピーエンドを迎えるっていう勇者の顔ですか!?」
受付「……なにやってんですか? ……そんな顔して……あなたは違うでしょう!」
魔法使い「受付……」
受付「いつものヘラヘラした笑顔はどうしたんですか! なにそんなに真面目になって勇者しようとしてるんです? あなたはそんなんじゃないでしょう!」
受付「あなたは! 私が知っている勇者という人は!!」
受付「国の税金で悠々自適に暮らすためならどんな手だって使う……『働いたら負け』を地でいくような、そんな、そんな本当にどうしようもないクソニートなんですよ!!」
勇者「…………」
受付「生産性の無い生ゴミ風情がいつまで昔の称号にすがってるんですか!?」
受付「あなたはいつもヘラヘラしてるくらいが丁度いいんです。そんな顔で傷ついて、本当に守りたい仲間や幼女ちゃんまで傷つけて!……そんなのは私が知っているあなたじゃない! いつも幼女ちゃんのために必死になって頑張るあなたじゃない!! 私が……幼女ちゃんが好きなあなたじゃないんです!! だから、だから……」ギリッ
受付「さっさと元に戻れってんですよ! このクソニートぉぉぉぉぉぉおおお!!!!」
パコーン!!!
勇者「ぐはっ!!」
蒼騎士「み、右ストレート!?」
ブルー「気持ちいいくらいに入ったぁぁぁぁあああああ!!!」
勇者「くっ……この!!」ザッ
受付「……結構痺れますね、その雷……」ピリピリ
魔法使い「いや、お主はなんで平気なんじゃ!?」
受付「……まぁ、いい電気マッサージだと思って良しとしましょう!」
剣士「む、無茶苦茶だ……」
勇者「……まだ、だ……」
受付「お、まだやりますか! なんだったら幻の左も見せてやりますよ!!」シュッシュ
勇者「…………俺は……まだ……」フラフラ
幼女「…………」
男(いいか、幼女。一つ教えてやる。大切な誰かが間違った方向に進んじまったら、自分の体を張って正しい道へ連れ戻してやるんだ。それが誰かを想うってことなんだぜ?)
幼女「…………ユーシャ!!」タッタッタ
受付「幼女ちゃん!?」
勇者「まだ…………戦える……」フラフラ」
ダキッ
勇者「………!?」
幼女「ユーシャ!!! 」ビリビリビリ
勇者「よ、幼女………?」
蒼騎士「金髪チビ!!!」
助手「なんて無茶を! まだ勇者様は雷装が解けていないのに!!」
国王「危険ではないのか!?」
魔法使い「当然危険じゃ! やめるんじゃ幼女!!」
幼女「ニィィィィィィ!!!」ニカッ
勇者「…………うっ」
「笑って? ユーシャ?」
勇者「………ううう……」
幼女「わらって……ユーシャ……」ビリビリビリ
勇者「うああああ………」
「私はユーシャの笑顔……」
幼女「ユーシャ、わらって………」ビリビリビリ
勇者「ああああ………」
「大好きだから……」
幼女「もどって! ユーシャ!!!」
勇者「うぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!」シュゥゥゥゥ
剣士「雷装が解けていく……」
魔法使い「幼女め、無茶しすぎじゃ……」ハァ
幼女「ユーシャ?」ニカッ
勇者「…………幼女…………ごめ……ん………」フッ
ドサッ
幼女「ユーシャ!?」オロオロ
魔法使い「あー、大丈夫じゃ幼女。急激に魔力を使いすぎただけ、過労じゃよ」
ブルー「生命反応正常値……っと。とりあえずは大丈夫みたいだね」
幼女「……よかっ……た!」ホッ
剣士「まったく、散々暴れやがって……」ハァ
国王「とはいっても勇者のお陰で救われたことある、彼のことを考えると責められんよ」ハッハ
助手「……まぁ暴走していたとはいえ勇者様がいなかったらあの魔人の相手、誰ができたんだって話ですもんね……」
受付「皆さん甘すぎですよ! 実際、幼女ちゃんは危ない目にあったんでしょう!?」
助手「ま、まぁそれはそうだけど……」
国王「とは言っても、勇者をここまで追い込んでしまったのも我々だ。いや、私にも責任があるのだよ」
剣士「陛下、なにもそこまで………」
幼女「気にして……ない……ユーシャ……元に……戻って……うれしい……」
受付「もう! 幼女ちゃんまで! こんなクソニート、徹底的に断罪するべきです!」ババンッ
蒼騎士「例えば?」
受付「強制労働」
蒼騎士「うわぁ……」
受付「勿論、無償で」
ブルー「お、鬼だ……」
受付「うふふ……早速準備が必要ですね! 私、ちょっと行ってきまー……」ドンッ
魔法使い「あ……」
助手「あ……」
受付「……痛いですね、誰ですか? こんなところに突っ立って……って」
暗黒魔人「…………」ズーン
受付「すっかり忘れてましたぁぁぁあああああ!!!」ガビーン
受付「あわわわわわ……」アタフタ
魔法使い「……まだ戦うつもりか!?」
剣士「勝負は着いた! 諦めろ! 暗黒魔人!!」
暗黒魔人「…………」ズーン
受付「い、嫌だなそんな目で見ないでくださいよ、私なんか倒してもあれですよ? そこらへんのス○イム以下の経験値しかありませんよ? どうせだったらあっちにいるはぐ○メタルを倒したほうが……」スッ
魔法使い「誰がはぐれメ○ルじゃ! 誰が! バカやってないでさっさと戻ってこんか!!」
受付「は、はいぃぃぃぃぃ!!!」ダダダダ!!
蒼騎士「ブルー、来るぞ準備しろ!」
ブルー「ガッテンだい!!」ガチャン
暗黒魔人「…………」ドサッ
受付「え?」
剣士「これは……」
参謀「皆さん、ご安心ください! 逆賊は私が討ち果たしました!!」
剣士「参謀!」
助手「姿が見えないと思ったら……」
魔法使い「い、いいとこ取りではないか! ずっこいぞ貴様!」
参謀「いや、これでも大変だったんですよ? 皆様の目には入らなかったかもしれませんがそれはそれは筆舌しがたい死闘をですね!」
魔法使い「黙れ! そんなわけなかろう!!」プンプン
軍人貴族「いやいや、よくぞやった参謀よ!!」ダダダダッ
剣士「閣下……」
助手「姿が見えないと思ったら……その2……」
受付「………あれってもしかして軍人貴族閣下ですか!?」ヒソッ
剣士「あ、ああ。王国騎士団のトップだ……」
受付「じゃ、じゃあ役所のなんやらを色々と決める……?」ヒソッ
剣士「あ、ああ。元老院の一員だ」
受付「よし、ここで媚び売って次のボーナス上げてもらいましょう……!!」ゴゴゴッ
助手「なにを言ってるのよ……」ハァ
軍人貴族「逆賊をその手で討ち果たすとは! いや、実に立派! まさに王国騎士の鑑ですな! 陛下!」
国王「う、うむ……」
ブルー「なにあの人、いきなり来て嫌な感じー!」プンプン
蒼騎士「お前は黙ってろ、話がややこしくなる……」
軍人貴族「しかし、あれですな。聖女様が列聖されるというこの記念すべき日に魔族の襲撃とは……」
国王「……なにが言いたい? 軍人貴族」
軍人貴族「………恐れながら英霊とは国を守る偉大なる方々のことでしょう? それがいきなり国を危険に晒すとは如何なものかと?」
魔法使い「この! 後から来てしゃあしゃあと……!!」
軍人貴族「今回の魔族襲撃、原因は魔王討伐に対する魔族の復讐……聖女を祭り上げたことで魔族共を刺激したのでしょう。つまり、原因は聖女にある……」
剣士「閣下!」
軍人貴族「加えて! そこの勇者が暴走したのも……聖女が原因ということでいいのですよねぇ……?」ニタァ
蒼騎士「好き放題言いやがって……!!」
ブルー「あいつ、丸刈りにしよっか……」ボソッ
軍人貴族「ならば! 今回の事件は全て聖女のせいということではありませんか!」
軍人貴族「国に災厄をを招いた女を……しかも元奴隷身分の女を英霊に祭り上げるなんて私にはとてもとても……」ハッハッハ
魔法使い「この……!!!」バッ
助手「堪えなさい……魔法使い!」ガッ
剣士「よせ、魔法使い!!」ガッ
魔法使い「離せ!! こいつ!言うに事欠いて……お姉ちゃんを……!!」ジタバタ
魔法使い「お前が今ここでこうしているのも誰のお陰だと思ってるのじゃ!」
軍人貴族「黙れ小娘! 勇者のパーティーの一員だかなんだか知らないが、お前の様な小娘には関係ない話だ!」
受付「そうですよ! 魔法使い様! いくらあなたでも閣下になんてこと言うんですか!!」シャー
魔法使い「なっ!? 受付!?」
助手「あなた!? どういうつもり!?」
受付「わかってください皆さん……公務員というのは給料袋を握られたら勝てないんですよ……!!!」グッ
蒼騎士「最低だ」
ブルー「うん、最低だ」
受付「黙らっしゃい! 一度社会のリアルを思い知らせますよ!!!」シャー
軍人貴族「おお! お前もそう思うか!?」
受付「ええ、閣下の仰る通りですわ! きっと他の偉大なる英霊の方々も聖女なんて認めないとおっしゃるはずですのよ!」オホホホ
魔法使い「……くっ……この……!!」グスッ
剣士「耐えろ、魔法使い……」
魔法使い「だって……だってぇ……」グスッ
軍人貴族「陛下! これは偉大なる英霊様達の意志でもありますぞ! 英霊様が、災厄を呼ぶ女など崇めるなと! 聖女を崇めることは即ち! この国の滅亡を意味するのです!!」
受付「そうだそうだ!!」
軍人貴族「今ならまだ間に合います! 聖女列聖の件、今一度お考え直しくださいませ!!」ザッ
受付「私からも、なにとぞ! なにとぞぉぉぉぉぉぉおおお!!!」ドゲザ!
ブルー「見損なったよ! さっきはすごくカッコよかったのに!! この平胸!!!」
受付「ああん!? くず鉄に戻しますよ?」
ブルー「ひぃ………!!」ガタガタ
魔法使い「こ、こいついっそ殺しても……よいか……!!」プルプル
助手「そうしたいところだけどやめておきなさい」
参謀「……閣下、そろそろ……」
国王「…………」
受付「ねぇ閣下ぁ……あの人達まだわかってないみたいだからぁ……もっと言ってあげてぇ……お・ね・が・い」ウッフン
軍人貴族「お、おお……!!」デレデレ
参謀「閣下!!」
魔法使い「気持ち悪い声を出すな! この平女!!!」
受付「なにが平なんですか! なにが!!!」ストーン
軍人貴族「ゴッホン!! えー、そもそも聖女列聖の件! 最初から貴族の中では多数の反対意見があったと聞いております。英霊とは国を守る守り神! 選ばれた方々は歴史に名を残す偉大な方々ばかりです。陛下の父君、騎士王様も英霊の1人でございますな!」
国王「……」
軍人貴族「元来、英霊に選ばれる者は総じて王族出身か貴族出身でございます! それを今回、聖女だかなんだかわからない素性も詳しくわからない女を英霊に!? それも聞けば元奴隷だと言うではないですか!」
軍人貴族「そんな女を英霊に祭り上げるなんてしたら……代々築き上げてきた国の品位と格式が間違いなく損なわれること間違いなし! 国を思う貴族から反対の声があがるのも無理はありませんな!」ガッハッハッハ
魔法使い「………くぅ」グスッ
受付「なるほど! それで軍人貴族閣下が魔族を手引きして今回の事件を引き起こしたんですね! 流石です!!」
軍人貴族「そうだ! そうでもしなければ聖女の列聖を止められそうもなかったからな!!!」ガッハッハッハ
軍人貴族「…………あ」
参謀「このアホ閣下が………」アチャー
受付「…………ひっかかりましたね」ニヤッ
軍人貴族「き、貴様………!!!」
剣士「閣下、今の話は本当ですか……?」ゴゴゴゴゴ
魔法使い「ほう……今回の事件は軍人貴族閣下が仕組まれたことだったのですか……!!!」ゴゴゴゴゴ
軍人貴族「ち、違う!!」
国王「ほう? なにが違うというのだ?」
軍人貴族「陛下、これは…………」
国王「つまりお前は聖女が英霊に相応しくないと………そう言いたいのだな?」
軍人貴族「い、いえ…………」
国王「どうやらお前にはこの声が聞こえないようだな……」フッ
軍人貴族「え?」
ブルー「マスター!」
蒼騎士「ああ、聞こえてる」フッ
剣士「流石だよ、君は……」
魔法使い「お姉ちゃん……」グスッ
助手「泣くんじゃないの」
魔法使い「だって……」
「聖女様ー!!」「助けてくれてありがとー!!」「聖女様ー!!」「あなたのお陰ですー!!」
ワァァァァァアアアアアア!!!
軍人貴族「ぐぬぬ……!!!」
軍人貴族「認めん! 俺はこんなこと認めん! 認めんぞぉぉぉぉおおお!!」ギリギリギリッ
国王「………お前には一度詳しく事情を聞かなければならないようだな……」ギロッ
軍人貴族「そ、そんな!!」
国王「下がれ! 処分は後ほど言い渡す!」
軍人貴族「くぅ………!! い、行くぞ! 参謀!」ザッ
参謀「まったく……待ってくださいよ!」ザッザッザッ
魔法使い「ふっはっはっは!! ざまあないわい!! 正義は必ず勝つのじゃ!!」
助手「………あなた、最初からそれが狙いだったのね……」
受付「もう、私が皆さんを裏切るの訳ないじゃないですか!!」アッハッハッハ
ブルー「どうだか……」ハァ
魔法使い「その、すまんかったの。色々と……」モジモジ
受付「いいんですよう、魔法使い様ぁ!!」ダキッ
魔法使い「むぉう!!」グググッ
受付「私が魔法使い様と幼女ちゃんを裏切るわけないじゃないでしょう?」グリグリ
魔法使い「く、くるじぃ……肋骨が当たって……痛い……」
助手「本当にあなた何者なのよ………」
受付「ただのしがない公務員ですよ?」ギュー
助手「嘘ね、ただの公務員が勇者や軍人貴族相手にあんな大立ち回りできるはずなんてないもの」
受付「嫌だな、助手さん。人ってのは誰かを守るためなら別に偉くなる必要も、強くなる必要もきっとないんですよ。『誰かのためになりたい』ってそういう気持ちがあるだけで、人はどこまででも頑張れる………そういった意味では私もあなたも違いなんてないんだと思います。それにきっと、聖女様だって………」
助手「………そうかもしれないわね。でもそれをそのまま実行することは中々できることじゃないわ」
受付「あ、でもですね……」
助手「なにかしら?」
受付「終わったあとにこんな可愛い子を愛でることができたらどんな辛いことも耐えられると思いません!?」ナデナデ
助手「それもそうね!」ナデナデ
魔法使い「うにゅ……いい加減にせんか!! お前ら!!!」
ブルー「なんとか終わったね、マスター」
蒼騎士「ああ……」
ブルー「マスター? どうかしたの?」
蒼騎士「俺は結局、何もできなかった……!!」ギリッ
国王「そんなことはない」
蒼騎士「陛下……!!」ザッ
国王「どうやら娘の判断は正しかったようだな。あいつめ、素晴らしい騎士を連れてきてくれたものだ」ハハッ
蒼騎士「いや、でも俺は………」
国王「若者よ、本当に君は何もできなかったのかね?」
蒼騎士「それは……」
国王「君のお陰で助かった人も確かにいたはずだ。少なくとも君が暗黒魔神に立ち向かわなければメイドは死んでいたかもしれない。彼女は私の友人だ。礼を言わせてくれ」
蒼騎士「そ、そんな……頭を上げてください陛下!」
国王「自分が無力だったなんて言わないでくれ。君は確かにその手で多くの人の未来を救ったのだ。そのことに対しては誇りを持つべきじゃないかね?」
蒼騎士「誇り………」
国王「娘を頼むぞ。蒼騎士。あの子はきっとこれからのこの国を照らす光となるはずだ。あの子の未来をこれからも守り抜いて欲しい」
蒼騎士「………はい!!」
国王「うむ! では私は事態の収拾に動くとするかな。貴族長1人にやらせるのはあまりに酷だ。それでは失礼するよ」ザッザッザ
ブルー「いやー、流石陛下って感じだったね。かっこよかったね、マスター!!」
蒼騎士「…………」
ブルー「あれ? マスター? もしかしてヤキモチ? もう安心してってば! 私の一番はいつでもマスターだから!!」キャルン
蒼騎士「………うるせぇ」
ブルー「………あー、なるほどね………」
蒼騎士「…………」グイッ
ブルー「なんだかんだでマスターも男の子だねぇ……」フフッ
蒼騎士「………うるせぇ」
剣士「勇者の様子はどうだ?」
幼女「一応……ねて……る!」
勇者「………」スースー
剣士「のんきなものだ」フッ
幼女「ケンシ……も……いろいろ……ありがと!」
剣士「そういえば、君はなぜ私の名前を知っていたんだ?」
幼女「ケンシ……は……ケンシ……でしょ?」
剣士「ま、まぁそうだが……今はいいか」
幼女「そう……今は……いい!!」フンス
剣士「勇者、聞こえているか? この声を。みんな彼女に感謝してくれているんだ」
幼女「ソーリョ………すごい!!」
剣士「ああ、そうだな」
「聖女様―!!」「ありがとー聖女様!!」「この国を守ってくれてありがとー!!」「ありがとー!!!」
ワァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
―――――王国騎士団本部―――――
軍人貴族「く、くそう! なぜ! なぜこんなことになった!!」ガンッ
軍人貴族「俺はただ、王弟殿下のために……」
参謀「見苦しいですよ? 閣下?」
軍人貴族「貴様! どういうことだ! あのような大掛かりな仕掛けをしておいて失敗したではないか!?」
参謀「そんなの俺の知ったこっちゃありませんよ」
軍人貴族「こうしてはおれん! 次だ、次の手段を考えなくては……おい! なにか案はないか?」
参謀「は?」
軍人貴族「あの女のせいで俺の立場が危うくなってしまった! なんとかしなければ!」ガンッ
参謀「なに言ってんですか、あんたは」
軍人貴族「そうだ、今ならこの件を知る者は陛下たちのみ! ならば陛下を暗殺してしまえばあとはどうとでもなるはず!! そうだ、そうしよう!! なぁ、参謀、お前もそう思うだろう?」
参謀「………」
軍人貴族「そうと決まれば早速その準備だ! おい、参謀! すぐに暗殺者の手配を……」
ズガァァァァァンンン!!
軍人貴族「さ、参謀……?」
参謀「いい加減にしてください。あんたに次のチャンスなんか無いですよ」ニタッ
軍人貴族「な、なにを言う?」
参謀「チッ、あーあ、あんたが日頃からあんなに叩くから俺みたいなもやしっ子が軽く叩いただけでぶっ壊れちまったじゃないですか」ヘラヘラ
軍人貴族「お、お前、なにを考えて!」ガタッ
参謀「俺は言いましたよね? 『それなりの対価はいただきます』って」ニコッ
軍人貴族「……フン、そうであったな! ほれ」ドサドサドサ
参謀「なんです? これは」
軍人貴族「対価であろう? お前にはまだまだ働いてもらわねばならぬからな、ここにざっと一千万ある。これで今回の働きの対価としてくれ」
参謀「おやおや、これはこれは……」
軍人貴族「さぁやるものはやったんだ! さっさと俺の言うとおりに動け!」
参謀「………あんたなにもわかってないな」
軍人貴族「なにぃ?」
参謀「俺が欲しいのはそんなんじゃないんですよ……」
軍人貴族「な、ならばなにが欲しいと言うのだ?」
参謀「それはもちろん………あんたのイス☆」ニヤッ
軍人貴族「貴様、ふざけているのか!」
参謀「俺にできることならなんでもすると言ったのはあんただ」メキメキメキ
軍人貴族「お、お前、その姿は……」
参謀「だから………俺のために死んでくれませんか? 軍人貴族閣下」ニタァ
軍人貴族「ヒッ! だ、誰かぁ……ムグゥ!!」
参謀「おっと、人なんて呼ばせるわけないじゃないですか」フフ
軍人貴族「……!!!」
参謀「あんたはここで聖女像破壊及び陛下暗殺を企てた犯人として自殺したってことになってもらう」
軍人貴族「!!!」ジタバタ
参謀「安心してくださいよ、王国騎士団は俺がしっかり引き継ぎますから」
軍人貴族「!!!!!!」
参謀「あんたは嫌な奴でしたけど、随分と利用させていただきましたからね、せめて楽に逝かせてあげます」
軍人貴族「んー!!!」
参謀「あとは俺たちに任せて、役目を終えた役者はさっさと舞台から降りてくださいね、それじゃ、閣下」ニコッ
参謀「さようなら」
ザシュッッ!!!
参謀「まったく、勇者が暴走するところまでは筋書き通りだったんだが……まさか聖女が出てくるとはね。流石にこれは読めなかった」クックック
参謀「あの幼女……どうやら詳しく調べたほうが良さそうだ」
参謀「おっと、そんなことよりも後片付けが先だった。 ちっ、派手に飛び散っちゃってまぁ……死んでまで俺に迷惑かけるつもりですか? アホ閣下……」ハァ
二週間後
―――――役所――――――
頭領「へへ! あいつら……大したもんじゃねぇか!」カカカ
課長「おや、お頭さん。休憩かね?」
頭領「あ! こりゃ課長の旦那! すみやせん、すぐに仕事に戻ります!」ガタッ
課長「ああ、別にいいんだよ。休める時には休んでおかないとね」フフッ
頭領「そうですかい? ありがとうございます」ヘヘッ
課長「ここ、いいかい?」
頭領「それはもちろん! ささっどうぞどうぞ」
課長「ありがとう……いや、君たちが来てくれて助かってるよ、うちは元々慢性的に人手不足だったからね」
頭領「そんな! こちらこそ、俺たちみたいな半端者連中を受け入れてくださって……感謝の言葉しかねぇですよ」
課長「私たちはお上の言う通りに従ったまでだよ。もっとも、受付くんは色々と手を回していたみたいだがね」
頭領「本当に受付の姉貴には頭が上がりません」ヘヘ
課長「といっても、我々のような役所仕事は窮屈だろう。」
頭領「いえ、あの頃に比べたら申し訳ねぇほどに充実してますよ」
課長「そうかね?」
頭領「ええ! もう魔王に焼かれた村を回って人のいなくなった家に忍び込んだりしなくていいんですからね」
課長「………君も魔王軍の被害者だったのか」
頭領「………うちの奴らは全員そうです。俺も魔王に住んでいた村を焼かれましてね、1人で生きていくためになんでもしました」
課長「それは大変だったろう?」
頭領「ええ、必死でした。悪ぃこともたくさんしました。そうしないと生きていけなかったですから」
課長「………」
頭領「あいつらとはその頃に出会ったんです」
課長「………やはり、彼らも戦争孤児か」
頭領「自分に似た境遇の人間を見るとダメですね、そういう奴を引き取ってたらいつの間にあんな大所帯になっちまった」
課長「それで山賊団の結成というわけかね?」
頭領「はい。最初はあんなガキ共なんて足でまといになるって鬱陶しかったんですけどね。一緒に生活してるとなかなか愛着ってのが沸くもんで……今ではあいつらのこと、本当の家族だと思っています」
課長「家族か……それはいいものだねぇ……」
頭領「はい。親に似て出来の悪い息子たちですが、それでも可愛いもんです」
課長「ふふ、私にも13歳の娘がいるからね、気持ちはわかるよ」
頭領「あいつら最近、山賊をしていた時より生き生きしてるんですよ! 毎日仕事が楽しいって言ってるやつもいれば、よく来るばあちゃんと仲良くなったってわざわざ報告してくるやつもいるんです!」ハハッ
課長「この間資格を取りたいと言って私のところに来た子もいたね」
頭領「本当ですかい!? そりゃいい!」
課長「私も嬉しいよ。できることなら是非、君たちの力になりたいと思っている」
頭領「ありがとうございます……最近、よく考えるんですよ。受付の姉貴がなんで俺たちをここに連れてきたのか」
課長「ほう?」
頭領「ここで働いていると思うんですわ。『みんなが魔王から受けた傷跡から少しでも前に進もうとしている』って。それなのに俺は、なにをやっていたんだろうって……情けねぇ! 」
頭領「奪うことなら簡単にできる。だけど0から作り上げることはここまで大変なことなんだって、みなさんの仕事を手伝っているとそう感じます。受付の姉貴はこれを伝えたかったくて俺たちをここに連れてきたんじゃねぇかなって」
課長「どうだろうねぇ、案外、本当に人手が欲しかっただけかもしれないよ」フフ
頭領「これは俺たちのせめてもの罪滅ぼしです、俺たちはいろんな人を傷つけちまった。だから、今度は傷ついた人たちの力になりてえ! あいつらもきっとそう思ってます………それに見てくださいよ」
課長「ん? これは、手紙と写真かね?………一緒に写ってるのは……仮面の王女様じゃないか!」
頭領「へい。こいつら二人、取り調べの時に別のとこに連れてかれたんで心配してたんですが、あの後、王女様の護衛としてスカウトされたそうで!」
課長「王女、というと仮面の姫様かい!? それはすごいじゃないか!」
頭領「しかも、こいつらこの前の英霊祭で大活躍したそうで……この手紙は二人のうちのいつもドジな方の奴が書いたんですがね、王女様を守って大怪我したって自慢げに書いてあるんですよ、まったく誰が信じるかってんだ! 大方仕事中にドジ踏んじまったに決まってます!」ガハハ
課長「ふふ。親としてはさぞ鼻が高いだろう?」
頭領「ええ、自慢の息子です。それに俺たちだって負けてられません!」
課長「そうか、頑張ってくれたまえ」
頭領「へい! 任せてくだせえ!」
課長「うむ、期待しているよ。そうだ、今の仕事が一通り片付いたら飲みにでもいこうじゃないか」
頭領「いいですねぇ、行きましょう!」
課長「約束だよ? ………それじゃ、そろそろ午後の仕事に戻るとしようか?」
頭領「よし、午後も頑張りますよ!」
課長「ほどほどにしてくれよ? ほどほどにね」フフッ
受付「…………」ババババッ
勇者「…………」ダラダラ……
幼女「……んう?」
受付「…………!!!」ズバババババッ!!
幼女「……おおー」パチパチ
勇者「…………」アセアセ
受付「………………………ああ!!」ガンッ!
勇者「…………!!」ビクゥ!
幼女「むい!?」ビクッ!
受付「……あ、大丈夫か……」カリカリカリ
勇者「…………ほっ」
受付「ふー」トントントン
勇者「あの…………終わりましたか?」
受付「くぅ~疲れましたw これにてお仕事終了です!」
勇者「あ、あの……それでなんですが……」オドオド
受付「実は勇者様が王都をめちゃくちゃにしたのでその後処理の書類作成を持ちかけられたのが始まりでした。本当は私も残りの有給を満喫したかったのですが要請を無下にするわけにはいかないのでお役所に戻ってきた所存です!」
勇者「あ、あの……」ビクビク
受付「以下、勇者様のみんなへのメッセジをどぞ」
勇者「すみませんでしたぁぁぁぁあああああああ!!!!!」ドゲザ!!!
幼女「ユーシャ!?」オロオロ
勇者「ちなみに今のは………?」
受付「一度言ってみたかったセリフ第二位です!!」フンス
勇者「いや、いまいちよくわかんないんですけど………」
受付「ほう? 口答えするんですか………」ゴゴゴゴゴ!!
勇者「いえ、滅相もありません……」
受付「まったく……幼女ちゃんもそろそろこんな人見限ってうちに来ませんか?」
幼女「ユーシャ……が……いい!!」グッ
受付「ああん、また振られちゃいました~」キャルン
勇者「ご迷惑をお掛けしました皆様方! 大変申し訳ありませんでした!!!」ドゲザ!!
受付「本当に反省してるんですかぁ?」ジトー
勇者「勿論でございます! ですからこうして私、正装で参った次第であります!」ユウシャッ!
受付「なんでこんなところで伝説の勇者装備一式着込んでるんですか、鬱陶しいですね……」
勇者「い、家にちゃんとした服がこれしか無かったもので……」
幼女「かっこいい……よ? ユーシャ!」ピョンピョン
受付「自堕落な生活を送ってるからそうなるんですよ……幼女ちゃんにもちゃんと服買ってますか?」
勇者「幼女の服は課長さんの娘さんのお下がりとか職員の方々から頂いております!!」
幼女「………!!」コクコク
受付「いや、買ってあげてくださいよ」
勇者「つきましては受付様にお願い申し上げたいことがありまして、本日参った次第であります!!!」
幼女「……あります!」
受付「まぁ、大体予想はついてますがとりあえず言ってみたらどうですか?」
勇者「今月も!! 支給金を!! 厚かましいとは心得ておりますが! 先月と同じ額いただきたくお願いいたします!!!!」ハハー!
幼女「……ます!!」
受付「やっぱり……」
勇者「お願いします! 我が家は文字通り勇者1人の幼女が1人でして………働ける体ではない私のせいで幼女に苦労させるわけにはいかないのですぅぅぅぅ!!!!」
受付「いや、働けるでしょあなたは!!」
勇者「なにとぞ! なにとぞぉぉぉぉぉぉおおお!!!」ガシッ
受付「足を掴まないでくださいよ!!」
勇者「働きたくないでござる! 働きたくないでござるぅぅぅぅぅ!!」スリスリスリ
幼女「働いたら……負け……かなって……」
受付「幼女ちゃんになんてこと教えてるんですか! このクズ!!」ドゲシッ
勇者「グハッ!!!……なにとぞ! なにとぞぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
受付「プライドすら失くしたんですか、あなたは……」ハァ
勇者「旦那、プライドじゃあ飯が食えないんでゲス……」
受付「ああんもう!! とりあえず今のところは支給金打ち止めという話にはなってないので安心してください!!」
勇者「……本当に?」
受付「どういうわけかあの雷は襲撃した魔族の手によるものになってるらしくてですね……そんでもってあれが落ちる前に幼女ちゃんがかき消しちゃったので被害はほとんどありませんでした。故に勇者様に責任を追求しようがないんですよ」
勇者「よ、よかった……」ホッ
幼女「よかった!」ピョンピョン
勇者「幼女ー! お前のお陰だよー」
幼女「いいって……こと……よ!」グッ
受付「なんかいらんことまで覚えてないですか?」
受付「それで。どうですか? あれから二週間経ちましたけど」
勇者「……まぁ、ぼちぼちですよ。幼女もある程度喋れるようになって、前より何考えてるかわかるようになったし」
幼女「えへへ……」
受付「いつの間に喋れるようになったんですかね?」
勇者「魔法使いが言うには俺の雷に当たったショックで喋れるようになったとか……」ズーン
受付「火竜事件の時にあれだけ幼女ちゃんを危険な目に合わせるなって言ったのに……小さい子に手を上げるなんて本当に最低ですよ?」
勇者「いや、本当に……面目無い……!!」ズーン
幼女「ユーシャ……別に……気にして……ない……よ?」
勇者「俺が気にするんだよ……ごめんなぁ……幼女……」ズーン
幼女「ユーシャ! ニィィィィィィ!!」ニカッ
勇者「……ニィィィィィィ……」ズーン
幼女「ユーシャ!?」オロオロ
受付「さーて、幼女ちゃん。あんなのは放っておいてお姉さんと話しましょうねぇ?」ウフッ
幼女「…………」ジー
受付「そうだ! 今日こそは私のこと名前で呼んでもらいましょう! 幼女ちゃーん? 受付のお姉さんですよー?」フリフリ
幼女「…………」ジー
受付「あれ? もしかして私……本当に嫌われてる?」
幼女「…………」ジー
受付「えっと……もしそうだとしたらショックなんですけど……あの、幼女ちゃん?」
幼女「……なんで?」
受付「え?」
幼女「なんで……今日は……仮面……つけてない……の?」
受付「げ!?」ガタッ
勇者「ん? なんだって?」
受付「あーっと!!! 勇者様! 幼女ちゃんちょっとトイレ行きたいみたいなんで連れて行っちゃいますね!!!」アタフタ
勇者「いや、こいつそういうのじゃないでしょ。魔導人形なんだし」
受付「と、とにかく! 絶対ついて来ないでくださいね!!!」ピュー
幼女「むぃぃぃぃぃ!!!!」ピュー
勇者「なんなんだ……?」
受付「どどどどーしてわかったんですか?」ヒソッ
幼女「オージョ!!」
受付「うわぁ! うわぁぁぁ!!! ダメですよ幼女ちゃん! こんなところで大声出しちゃ……色々とバレると面倒なんです!!!」ヒソッ
幼女「んう?」キョトン
受付「いいですか、私の正体がみんなに知られてしまうと大変なことになってしまうんです。幼女ちゃんなら、内緒にしてくれますよね?」
幼女「むい!!」グッ
受付「絶対! 絶ーー対! 私が仮面王女だってこと内緒にしてくださいね!!!」
バサッ!!
受付「誰ですか!!」クワッ!
村娘「あ、あの……これは違くて……」ガタガタガタ
受付「村娘さん!!!」ガシィ!
村娘「うひゃあ!!」ビクゥ!
受付「……あらあら、誰かと思えば村娘さんじゃないですか、なぜこんなところにいるんですか?」ニコニコ
村娘「えっと……この間の英霊祭で王都に行った時に私もやっぱりいつまでも村にいるんじゃなくて、王都で働いてみたいなぁって思って……村長に許可を頂いて、それで仕事を紹介してもらおうと……役所に来たんですけど……」ガタガタ
受付「そうですかぁ………」ニコニコ
村娘「あ、あの……このことは絶対に言いませんから! だ、だから許してください!!」
受付「そんな許すなんて………別にあなたのことを取って食べたりなんて考えてませんよ?」ニコニコ
村娘「あの……私、どうなっちゃうんですか……?」ガタガタ
受付「確か仕事を探してるんでしたよねぇ………だったら村娘さんにぴったりの職場があるんですよー」ニコニコ
村娘「え、えっと………なんで少しずつ逃げ道を塞ぐんですか……?」
受付「ちょうど王都で『人手』が足りなくて困てるって場所で、村娘さんみたいな人が欲しいって言ってるんですよー」ニコニコ
村娘「あ、あ……た、助けて……」ガタガタ
受付「村娘さんならきっと気にいると思いますよー?」ニコニコ
村娘「いや……いやぁ……」ガタガタ
受付「ちょっと危険な目とか、軽く死にかけることもあると思いますが……素敵な職場ですよ☆」ニコニコ
幼女「はわわ……」
受付「ウフフ、ウフフフフ……」
いやぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!
――――――――――
同僚「あら? 勇者様? どうしたんですか? なにか手続きですか?」
勇者「ああ、そんな感じだったんですけど……」
同僚「受付ですね……」
勇者「ま、まぁ……」ポリポリ
同僚「あの子は本当にしょうがないんだから……!!」
勇者「いえ、俺も色々と助けてもらいましたし……」
同僚「…………受付から聞きました。大変だったみたいですね?」
勇者「俺が勝手に暴れちゃったみたいなものですから……同僚さんにもご迷惑をおかけしました」
同僚「気にしないでください…………まさか、記憶喪失だったなんて驚きましたよ、その後なにか思い出しました? 聖女様のこと……」
勇者「…………正直、あまり……」
同僚「そうですか……」
勇者「たまに声が聞こえてくるんです……だけどそれ以上は……魔王と戦う辺りから記憶が曖昧で」
同僚「お仲間に聞いたりしてみては?」
勇者「それが、剣士も魔法使いも『教えられない』の一点張りなんですよ」
同僚「そうですか……なにかあったんですかね?」
勇者「わかりません……ただ、確かに俺と聖女と呼ばれる人は仲間で、その聖女の記憶だけがすっぽり抜けてしまっていた。原因はわかりませんけどそのことに関してだけは事実みたいです」
同僚「早く思い出せるといいですね……」
勇者「いえ、このことに関しては思い出さない方がいいのかもしれません」
同僚「どうしてですか?」
勇者「聖女像が目の前で壊された時、目の前が真っ赤になって周りが見えなくなりました」
同僚「…………」
勇者「……それで気がついたらベッドの上で横になっていました……後から自分が暴走したこと、王都を壊そうとしたこと。そして、幼女を傷つけてしまったことを魔法使いや剣士から聞いたんです」
同僚「勇者様……」
勇者「おぼろげに覚えているのは幼女が泣きながら必死に俺のことを叫んでいる姿でした」
勇者「多分、記憶が途切れる前のあの衝動は元々自分の中にあったものです……もしなにかのきっかけでそれが目覚めたりしたら、俺はまた誰かを、幼女を傷つけてしまう。そんなのは絶対に嫌だ……」
勇者「だったら俺は、思い出さなくていい。誰かを傷つけるくらいならそんな記憶、要りません」
同僚「それでいいんですか? あなたの大切な記憶なのかもしれないのに?」
勇者「それでいいんです。俺は幼女の保護者ですから。もう、あいつのあんな顔見たくない。あいつにはいつも笑ってて欲しいんです。そのためには過去のことなんか忘れて俺が笑っていないと!」
同僚「……あなたはやっぱり勇者様なんですね」
勇者「そんなことありません。俺はこれからもダメな『ニート』ですよ」
同僚「いえ、私から見ればあなたは立派な『勇者様』です」フフッ
タッタッタッタ
幼女「ユーシャ!!!」ダキッ
勇者「おっと! 幼女、今までなにしてたんだ?」
幼女「乙女の……秘密……だよ!」キラン
勇者「??? それであの人は?」
幼女「それは……言えない……のです!!」ビシッ
勇者「なんだよ、それ……?」
同僚「こんにちは、幼女ちゃん」
幼女「こんに……ちは!」ビッ
同僚「今日も元気いっぱいね?」
幼女「……お前も……な!!」グッ
勇者「こら、幼女! そんなこと言っちゃダメだろ!……すみません」
同僚「いいんですよ」フフッ
幼女「ユーシャ……」クイクイ
勇者「ん? どうした幼女?」
幼女「……お腹……すいた……」
勇者「もうちょっと待ってくれるか? あの人が帰ってくるまで支給金の申請できないんだよ」
幼女「むぅ……」グゥー
同僚「ああ、別にいいですよ。支給金の手続きに関しては私がやっておきますから後は任せてください」
勇者「いいんですか?」
同僚「はい、幼女ちゃんに美味しいもの食べさせてあげてくださいね?」
幼女「……!!」ピョンピョン
勇者「すみません。ありがとうございます。じゃあ、行くか幼女。同僚さんに挨拶しな?」
幼女「バイバイ! ドーリョー!!」フリフリ
同僚「ふふ、またね、幼女ちゃん」フリフリ
―――――王立研究所―――――
研究員E「所長ー」
魔法使い「…………」ピッピッピッ
研究員E「所長ー」
魔法使い「…………ふむぅ」
研究員E「所長ってばー!!」
魔法使い「…………」
研究員E「よし、このまま家に持って帰ろう」ガッ
魔法使い「うおう! な、なにをする!?」ビクッ
研究員E「いや、所長が可愛かったんでつい……」
魔法使い「アホな真似はよさぬか!」
研究員E「アホでもいいです! 真剣です!!」ダンッ
魔法使い「……こんなポンコツでも医療魔法においては天才と呼ばれておるのだから不思議な話だの……」
研究員E「嫌だなー、そんなに褒められたら照れちゃいますよー」デヘヘ
魔法使い「……褒めてないのじゃが……それで、何の用じゃ?」
研究員E「ああ、運ばれてきた2人の経過観察の結果を報告しにきたんですよ」
魔法使い「…………それで容態は?」
研究員E「2人とも問題ありません。検査のためにもう1週間程ここにいてもらいますが、すぐに復帰できるでしょう」
魔法使い「そうか……流石じゃの」
研究員E「もっと褒めてください! なんだったらナデナデしてください!」
魔法使い「調子に乗るな!」
研究員E「だったら僕が所長をナデナデします!!」ナデナデ
魔法使い「やめんか!!」
研究員E「ああ! 持って帰りたいなぁ!!!」ナデナデ
魔法使い「豪炎魔法! 弱火!!」ゴォォォォ
研究員E「あんぎゃぁぁぁぁあああああ!!!」
魔法使い「まったく……」
研究員E「……それで、助手さん連れて遠征に行って帰って来てからずーっと難しい顔してましたけどなにかあったんですか?」スック
魔法使い「お主、立ち直るの早いの……」
研究員E「医療魔法使いですから」キリッ
魔法使い「…………火竜に会ってきた」
研究員E「……幼女ちゃんのことでですよね?」
魔法使い「うむ、まぁドンパチやってなんとか話を聞けることになったんじゃが…………」
研究員E「ああ、あの擬似的に龍族のブレスを生み出す装置、上手くいきました?」
魔法使い「幼女の全開に比べたらまだ慎ましいものではあったが、火竜と対抗するには十分すぎるほどの威力じゃったよ」
研究員E「それで、なにかわかったんですか?」
魔法使い「幼女のことがますますわからなくなった」
研究員E「ええ? ダメじゃないですか!」
魔法使い「まず、幼女があのブレスを使えるということがまったく説明がつかないんじゃよ」
研究員E「どういうことですか?」
魔法使い「あのブレスを唯一使える者は既に死んでいる。しかも200年も前に……」
研究員E「えっと、話がまったく見えないんですけど……」
魔法使い「うむ、では信じてもらえんとは思うが話すとしようかの………」
・
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・
・
魔法使い「そ、それは……真か!?」
火竜「俺は見たままのことを言っただけだ。俺たち龍族は個体ごとにそれぞれ違うブレスを使うことができる。例えば俺の場合は火のブレスだ」
魔法使い「う、うむ」
火竜「あのガキが使う光のブレスを扱う龍族はただ一人」
火竜「龍族の王。龍王様だ」
助手「幼女ちゃんはその龍王となにか関係があるってこと?」
火竜「そんなこと知らねぇよ」
魔法使い「では、その龍王とやらがどんなやつなのか教えてもらえぬか?」
火竜「………今から約200年前、人間が暮らす大地を我ら龍族が守っていた時代。その龍族を束ね、統治してくださっていたのが龍王様だ。あのお方は光の力で迫る闇を払い、世界の平和を守っていた……俺はあのお方の側に仕え、あのお方と共に世界を守る手伝いをしていた」
魔法使い「ならばその龍王はどこにいる!? お主のように封印されたのか!?」
火竜「もういない。死んだんだ」
魔法使い「死んだだと!?」
火竜「ああ、間違いなく死んだ。俺の目の前で」
助手「なぜ!?」
火竜「殺されたんだよ! あいつと、龍王様を見捨てて私利私欲に走った人間共にな!!!」
火竜「俺は今でも思い出す! あの光景を!!」
火竜「龍王様の亡骸を踏みつけて笑うあの男の姿を!!!」
火竜「俺はあいつを許さねぇ!! 俺を殺さずに生かしたまま封印しやがって!」
火竜「そうだよ、全部あいつがやったんだ! 竜王様を殺したのも、俺を封印したのも全部! 全部だ!」
火竜「全部あの自らを魔王と名乗るあいつがやったんだ!!!」
―――――――――――
幼女「♪♪♪」
勇者「よーし、幼女。支給金の心配も無くなったし、今日はどこかに食べに行くか!」
幼女「やっ……た!!」ピョンピョン
勇者「幼女、なにが食べたい?」
幼女「うーん……」
勇者(あれ、待てよ? 今まで気にしてなかったけど、もしかしてあいつが言ってる『チャーハン』って『食事』って意味だったんじゃないのか?)
勇者(そうだよ、そうじゃなかったらたこ焼き屋で『チャーハン』だなんて言うはずがない……)
勇者(もしそれが本当だとしたらあいつは別に好き好んでチャーハンを食べていたわけじゃないんじゃ? そして俺はあいつに好きでもないチャーハンを無理矢理食わせてたってことに……あれ、これって虐待? 保護者失格……!?)ゾゾゾゾゾッ
幼女「うーん……迷う……」
勇者「幼女……? 今日は本当に食べたいものでいいんだぞー? 俺に気を使う必要なんてないんだぞー?」ドキドキ
幼女「……!! 決定……しました!!」
勇者「お、おう! なにが食べたいんだ!? 幼女!!」ドキドキ
幼女「エビチャーハン!!!」ババーン
ズコッ
勇者「そ、それでいいのか? 幼女?」
幼女「カニ……チャーハンと……迷った!」
勇者「そ、そう……別にチャーハンが嫌いとかじゃないんだな?」
幼女「んう?……チャーハン……好きだよ? ……毎日……食べたい!!」
勇者「あ、そうなんだ……」
幼女「……行こっ!……ユーシャ!!」ギュッ
勇者「…………ああ、今日は英霊祭で食べれなかった分まで食べるぞー!!」
幼女「うん!!」
受付「勇者様! 英霊祭ですよ!」幼女「♪♪♪」終わり
449 : 以下、名... - 2015/02/01 21:53:12.70 E+V4opby0 317/341それでは以下番外編です
どうぞ
番外編 「レッドとブルー」
普段電子妖精は研究施設のサーバーを通して研究所から支給された装置の中に待機、メンテナンスを受けています
―――――宮廷 メンテナンス室―――――
ブルー「怪しい……」ムー
レッド「なにがですか?」
ブルー「あ、レッド! 治ったんだね!」
レッド「プログラムですので、完全消去されない限り基本的に大丈夫です」
ブルー「よかったよー!! もう! 心配したんだからねー!!」
レッド「ご心配おかけしました」
ブルー「そっちのマスターの方は大丈夫?」
レッド「ええ、処置してくれた回復魔法使いの腕が良かったようで、なんとか……」
ブルー「良かったー。2人とも死んじゃったらどうしようかと思ったよー」
レッド「まだ本調子とは程遠いですがマスターもメイド様も快方に向かっていますのでご安心ください」
ブルー「早く良くなるといいね!」
レッド「はい……それで、怪しいとは? 宮廷に侵入者ですか?」
ブルー「違うよー、私のマスターのこと!」
レッド「蒼騎士様のことですか?」
ブルー「うん。マスターから女の匂いがするんだよ!!!」キラン
レッド「我々に嗅覚は実装されていなかったはずですが……」
ブルー「そうだけど! マスターが私というかわいい女の子を放っておいて他の女とイチャコラしてんじゃないかって意味!!!」
レッド「…………それがあなたになんの関係があるんですか?」
ブルー「関係大アリだよ! レッドは自分のマスターが他の女にデレデレしてるの嫌じゃないの!?」
レッド「性能上特に問題はありません」
ブルー「私は絶対嫌! ただでさえマスターの周りには女の人がいっぱいいるのにぃ……」
レッド「例えば?」
ブルー「メイドさんでしょ? 姫様でしょー、あとこの間の村娘! それに宮廷侍女達の間でも最近密かに人気だとか………」
レッド「人望があって喜ばしいことじゃないですか」
ブルー「あの事件の時もなんかメイドさんとフラグ立てるようなノリだったしぃ!!」プリプリ
レッド「そうでしたか? 別にそのようなことは特に……なぜわかるのです?」
ブルー「乙女の勘!!」
レッド「オカルトです……」ハァ
ブルー「それにいつもこの時間になるとふらっとどこか行っちゃうんだよ? 私を装備しないで!」
レッド「それはおかしいですね。こんな夜に、見回りなら装備をしないのも変ですし……」
ブルー「きぃぃぃぃぃ!!! きっと今もマスターはどこかで女と会ってるんだよ! そんでイチャイチャしてるんだ!!」
レッド「そんな、確信もないのにそのようなことを言ってはいけませんよ?」
ブルー「だって! そうじゃなかったら戦闘の時も見回りの時も私というウルトラ超絶可愛い女の子が側にいるのに無反応なんておかしいじゃない!」
レッド「そうでしょうか?」
ブルー「そうじゃなかったら……え? マスターってそっちの人?」
レッド「私の口からはなにも……」
ブルー「もういい!! 確かめに行く!! 魔法使い様がおもしろいプログラム作ってくれたみたいだし!」
レッド「……まさか『あれ』を使うのですか?」
ブルー「うん! その通り!」
ブルー「実体化プログラムを使います!!!」ババーン
レッド「いや、あれはまだ実用段階では……」
ブルー「大丈夫大丈夫、私にかかればこんなのチョチョイのチョイだよ!」ババンッ
レッド「ブルー、私達はただのプログラム。あなたのマスターとは根本的に違うのですよ?」
ブルー「そんなの分かってるよ! わかってるけどこのままじゃ納得いかないの!」
ブルー「恋人にはなれないかもしれないけど私はパートナーだもん。マスターのこと、もうちょっと知りたいよ………」
レッド「ブルー…………わかりました。そういうことでしたら私は止めません」
ブルー「さっすがレッドちゃん! 話がわかるぅ!!」キャルン
レッド「電子妖精とマスターの相互理解は任務遂行の上で重要なことです」
ブルー「……えっとよくわからないけど、早速使っていくよ! 実体化プログラム起動!!」ピッ
ビビビビビッ!!
レッド「実体化プログラム、正常起動を確認」
ブルー「お、おお! これが私!?」クルン!
レッド「どうやら成功のようですね」
ブルー「どうかな、レッド? 私可愛い?」
レッド「可愛いですよ」フフッ
ブルー「そう? ありがと! そうだ! いいこと思いついちゃった!」
レッド「またなにか良からぬことを考えてるんじゃないですよね?」
ブルー「この姿で、マスターを誘惑します!!」
レッド「やっぱり……」
ブルー「あわよくば彼女からマスターを奪い取る! いや、寝取る!!」ババーン
レッド「馬鹿なことはやめたほうがいいですよ……」
ブルー「もう遅いもーん! 行ってくるねー!!!」タッタッタ
レッド「ブルーにも困ったものですね……」ハァ
レッド「…………実体化プログラムですか……」ボソッ
ブルー「ふふふふふ………上手く忍びこんじゃった……さて、マスターはどこかなー?」キュィィィン
ブルー「お、マスターの魔力反応をかっくにーん♪ これよりブルー隊員は作戦行動に入りまっす!!」ビシッ
ブルー「さぁさぁマスター、覚悟はいいかなぁ! 私の魅力でマスターをメロメロに……」グヘヘ
ブルー「あれぇ~? 彼女と会うはずなのにまだ宮廷の中にいるんだー? おかしいな………はっ! ということは彼女は宮廷内の誰か!? 職場恋愛なんてブルーちゃんが許しませんよ!!」
ブルー「……反応からするとこの部屋だね……さぁ、マスター! 私の魅力を存分に味わうがいい!」
ガチャ
蒼騎士「……5100! 5101! 5102!」ブンッブンッ
ブルー「え? あれ?」
蒼騎士「誰だ!?」
ブルー「うぇひぃ!?」ビクゥ!
蒼騎士「………こんなところでなにをしてるんだ?」
ブルー「あ、ああえっとあの、その……み、道に迷っちゃってぇ……」ワタワタ
蒼騎士「迷った?」
ブルー(慌てちゃだめよ、ブルー。幸いマスターは私だって気づいてないはず…… このまま作戦続行よ!)
ブルー(私の魅力で、マスターを落とします!!)グッ
ブルー「そうなんですよぅ……ちょっと道に迷ってぇ……中から声が聞こえたからぁ……助けてもらおうって思ってぇ」クネクネ
蒼騎士「そ、そうか……」
ブルー(ふふ、どうだマスター! このセクシー攻撃は! 理性を失って私を押し倒すがいい!!)
蒼騎士「……悪いが別の誰かにでも聞けよ、今は訓練中だ」
ブルー「なぁ!?」
蒼騎士「そこら辺適当に歩いてたら誰かに会うだろ。邪魔するな」
ブルー(こいつ……人がここまでやってるのに!!! この鈍感! 唐変木!! 負けない! ここで退いたら女が廃るもの!!)
ブルー「そんなこと言わないでぇ、助けてくださらなぁぁい? ウッフン」クネクネ
蒼騎士「…………訓練が終わってからでいいか」
ブルー「もぉちろぉんよぉ……」クネクネ
蒼騎士「……お、おう」
蒼騎士「9800! 9801! 9802!」
ブルー(あれから1時間くらい木刀振りっぱなし……)
ブルー「ねぇ! まだー?」
蒼騎士「もう少しだから待ってろ!」
ブルー「なんでそんなに頑張るのよぉ~」
蒼騎士「俺が弱いからだ」ブンッブンッ
ブルー「そんなことないと思うけどな~」
蒼騎士「一発だけだ」
ブルー「え?」
蒼騎士「あの暗黒魔人に一発しかぶち込めなかった」
ブルー「…………」
蒼騎士「俺が弱かったから兄弟を守れなかった。俺が一般人を連れながらでも戦えたならメイドを助けに行くことができた。俺がもっと強かったら勇者もあの魔人も止められたんだ」ブンッブンッ
ブルー「あ、あの事件はしょうがないよ。ほら、大変な事件だったし!」
蒼騎士「魔人はこれが始まりだと言っていた。これからもっと強い奴が出てくるかもしれない。その時も同じようにしょうがないって諦めればいいのか?」ブンッブンッ
ブルー「そんなこと、ないけどさ……」
蒼騎士「俺はもっと強くならなきゃいけない。剣士よりもメイドよりも勇者よりも!」ブンッブンッ
ブルー(なーんだ。マスターはそれどころじゃないんだ……)
ブルー(女の子に手を出すとか、そういうのには興味無くって、今は強くなることで頭が一杯で……)
ブルー(私のことも、見えてないんだね……)
ブルー「あーあ、なんか遠く感じちゃうなー」ボソッ
蒼騎士「ああ?」ブンッブンッ
蒼騎士「なに言ってんだ? お前も一緒だろうが、ブルー」
ブルー「うんーそうだねーって………え?」
蒼騎士「だから、お前は俺のサポートが仕事なんだろう? 勝手に仕事サボるなよ」
ブルー「え…あの……ええええ!?」
蒼騎士「なんだ? 俺なんか変なこと言ったか?」
ブルー「気づいてたの!? いつから!?」
蒼騎士「お前が『うぇひぃ!?』って奇声をあげた時から」
ブルー「それ最初からじゃない!! なんで!? 私、実体化プログラム使ったの今日が初めてなんだよ!?」
蒼騎士「あんな突拍子もない変な喋り方してんのなんてお前だけだろ」
ブルー「なにそれ!? じゃ、じゃあマスターは最初から知ってて……」
蒼騎士「妙にクネクネしてたから腹でも痛いのかと思ったけどな……」ハハハッ
ブルー「………」プルプルプル
蒼騎士「どうせ深夜にトイレでも行こうとして迷ったんだろ? この宮廷広いからなぁ……」
ブルー「………んな……」プルプル
蒼騎士「あれ? でも電子妖精ってそういうのするもんなのか? どうなんだ? ブルー」
ブルー「ふざけんなぁぁぁぁ!!」ドゲシッ
蒼騎士「痛え!!」
ブルー「マスターは! 本当に! デリカシーというものが! 欠落してるんだよ!!」バシッバシッ
蒼騎士「やめろよ! アホ!」
ブルー「そっちの方がアホだよ! このアホ! 鈍感! 唐変木!!」
蒼騎士「痛えって!!」
ブルー(………でも)
蒼騎士(なに言ってんだ? お前も一緒だろうが、ブルー)
ブルー(『お前も一緒』って!! マスターが『お前も一緒』って!!!)
ブルー「えへへ……」バシッバシッ
蒼騎士「にやけながら叩くな!!」
―――――王立研究所―――――
紅騎士「あー、暇だ……」
紅騎士「入院中っていってもやることないんだよなぁ……昼寝しすぎちゃって寝れないし。こういう時が一番辛い……」
紅騎士「あー、暇だ……」
コンコン
紅騎士「……こんな時間になんだ? 俺なんかしたっけ? 騒ぎすぎたかな?」
紅騎士「えっと……誰かわかんないですけど開いてるんでどうぞー」
ガラガラ……
「失礼します。お体の具合はどうですか?」
紅騎士「…………」ピキーン
「面会時間外にお見舞いに行くことは非常識だと心得てはいるのですが、どうしても気になってしまい……お休み中でしたか?」
紅騎士「…………」パクパク
「やはりご迷惑でしたか……申し訳ありません。ではこれにて……」
紅騎士「ちょ、ちょっと待ってくれる!?」
「はい……?」
紅騎士「あのね……その、すごく失礼な話になっちゃうんだけど……えっと……どちら様?」
「…………」
紅騎士「ごめん! いやこんな綺麗な人なら絶対覚えてるはずなんだけどおかしいな……人違いってわけじゃないよね?」
「ふふ……」
紅騎士「……なんかごめんね?」
「いえ、いいのです。ならばあなた様が気づくまで私は名乗らないことにしましょう」ウフフ
紅騎士「ええ!? そんな、教えてよ!? 聞けば絶対思い出すからさ!!」
「ダメです。私のことはそうですね、あなた様の夢の中に訪れた幻とでも認識してください」
紅騎士「できないよ! もう君のお陰でばっちり目が覚めちゃったし!!」
「私も訳あって自ら正体を明かせない身。どうかご理解くださいませ」
紅騎士「ええ? そんなぁ……えっと……宮廷の侍女さんは違うでしょ……酒場のウエイトレスさんも違うし………あ、1人いた、顔を見たことない人!!」
「………」ドキッ
紅騎士「仮面の姫様!!」ビシッ
「ハズレです」
紅騎士「だよね……姫様そんなに胸大きくないはずだし」ジーッ
「あ、あんまり見ないでください……恥ずかしい……です」
紅騎士「わぁ! ご、ごめん!」
「お体の具合はどうですか?」
紅騎士「ああもう平気平気! もうピンピンしてるよ!」
「よかった……」
紅騎士「それもこれもレッドのお陰だよ!」
「え? 気づいて……?」
紅騎士「あ、レッドって言うのはね、俺のパートナーって言えばいいのかな…・…? まぁとにかくそいつが俺にいち早く危険を察知して教えてくれたお陰で致命傷にならずに済んだみたいなんだよ!………まぁ、体に穴は空いちゃったけどね」アハハ
「そうですか……」
紅騎士「早く退院してちゃんとお礼言わなきゃいけないなー」
「もう聞こえてますよ」
紅騎士「なにか言った?」
「い、いえ。別になにも……」アセアセ
紅騎士「ねぇ、そろそろ君が誰なのか教えてくれてもいいんじゃない?」
「ダメです」フフッ
紅騎士「えー!?」
その後復帰した紅騎士は蒼騎士に入院中の『赤髪の美人』の話をし、代わりに蒼騎士は『青髪のアホ』の話をしたようです
番外編 終わり
予告編
商人貴族「やっぱり、邪魔なんですよねぇ…………あれは」
院長「平和になった後も私たちの戦いは続くんです……今はここが私の『戦場』なんですよ」
勇者「恋の季節ですねぇ……」
幼女「………ですね!!」
受付「ふっざけんじゃないわよ!!!」
メイド「メイドの基本は『奉仕』の精神です」
参謀「あんたならできるだろう? 見せつけてやればいいさ、魔族の力をな」
剣士「これでいいんだ……これで……」
村娘「………なんで私、こんなところにいるんですかぁ……?」
魔法使い「お主は『中抜き』という技を知っておるか?」
火竜「へぇ、こっちも中々面白いことになってるじゃねぇか……!!」
???「粋だねぇ!! あんた達みたいな奴! 大好きだぜ!!」
元頭領「受けた恩は数知れず!! 元西の盗賊団頭領! 仁義、通させていただく!!!」
続けばいいな!
495 : 以下、名... - 2015/02/09 21:02:53.66 dm+R5sre0 341/341
こんばんは>>1です
新しいSSを始めました。よろしければそちらの方もよろしくお願いします。
院長「あなたが幼女ちゃん?」幼女「むい!!」
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