美食家「ナポリタンなどという庶民料理でワシを唸らせるつもりか?」
料理人「はい」
美食家「実に滑稽!ナポリタンのような低俗な料理を選択するとは!」
料理人「そうですか?」
美食家「左様!ウインナーとくず野菜とスパゲティをギトギトに炒め、安物のケチャップでベタベタに味付けした料理など・・・」
美食家「考えただけで吐き気がするわ!」
料理人「そうですか」
美食家「だがワシに挑戦する貴様の意気は認めてやる。食ってやろう!ワシを唸らせるナポリタンとやらをな!」
料理人「どうぞ」コトッ
美食家「・・・・・・これは!この香りは・・・!」
元スレ
美食家「ワシを唸らせるナポリタンを作るだと?」料理人「はい」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1421495345/
ファサッ
美食家「見た目はなんてことのないただの安っぽいナポリタン・・・だが、この香りはなんだ!?」
美食家「高原の風のようなさわやかな香り・・・この香りは・・・!」
料理人「バジルです」
美食家「バジルだと!?」
美食家「ナポリタンにバジルを添えることでこのようなさわやかな香りに包まれるとは・・・!」
美食家「このさわやかさ・・・例えるなら、学生時代の友人との思い出・・・!」
・・・
美食家「・・・些細な事で、親友のあいつと喧嘩しちまった・・・」
美食家「どっちが沙知絵にふさわしい男か。そんなことであいつと喧嘩するなんてな・・・」
美食家「あいつと仲直りしたいが、謝るのはなんだか気が引ける」
美食家「もし拒絶されたら、落ち込むしな・・・」
バジル「おう!美食家!おはよう!」
美食家「お、おう。おはよう!・・・って、どうしてだよ!」
バジル「ん?どうした、美食家?」
美食家「俺とお前は喧嘩してただろう!それなのに・・・!」
バジル「喧嘩?あぁ、もう忘れちまったぜそんなこと!」
美食家「バジル・・・!」
バジル「ほら、部活いこうぜ!美食家!」
・・・
美食家「・・・ハッ!」
料理人「どうかしました?」
美食家「あまりのさわやかさに、幻覚をみていたか・・・!」
美食家「確かにこれは「喧嘩の後でも後腐れなく接してくれる親友」のようなさわやかさ・・・!」
美食家「だが、この程度でワシは唸らんぞ・・・!」
料理人「そうですか」
美食家「まぁよい、一口だけ食べてやる」
モグッ
美食家「・・・・・・」モグモグ
料理人「どうですか?」
美食家「これは・・・!」カッ
美食家「襲い来るトマトの甘酸っぱい酸味・・・!」
美食家「なんだ、この旨味は・・・!これがケチャップのうまさなのか?」
料理人「あ、ケチャップじゃないです」
美食家「何!?ではなんだというんだ!」
料理人「フレッシュトマトです」
美食家「フレッシュトマトと来たかー!」
美食家「いや、それなら納得だ・・・!この新鮮なうまみ・・・!フレッシュトマトならば可能・・・!」
モグッ
美食家「くっ・・・!噛み締める度にフレッシュトマトの甘酸っぱい暴力になすすべなくやられてしまう!」
トマト「どうした?おまえはこの程度か?」
美食家「な、なんだ貴様は・・・!?」
料理人「どうかしましたか?」
美食家「お前には見えんのか!このトマト人間が!」
料理人「はぁ・・・」
トマト「オラァ!ボディががら空きだぜ!」ドスッ
美食家「うぐぅ!」
料理人「あ、今唸りませんでした?」
美食家「・・・いや、まだだ・・・!まだこのワシを唸らせる事はできぬ・・・!」
トマト「ほう、しぶとい奴だ。だったらもう一口食ってみな」
モグッ
美食家「なんだと・・・!?これは、味が変化した・・・!」
トマト「そうだろう?どうだ、唸れば楽になれるぞ。おかわりもあるぞ?どうだ?」
美食家「おい、料理人!」
料理人「はい」
美食家「このナポリタン・・・!なんとも言えぬ深い味わいを感じる。何か隠し味を入れているな!?」
料理人「はい」
美食家「教えろ、何を入れた!?」
料理人「えっとですね」
美食家「いやまて!当ててみせる!・・・粉チーズだ!」
料理人「いいえ」
美食家「クソッ!ではなんだというんだ!」
料理人「味噌です」
美食家「味噌と来たかー!」ガターン
美食家「なんという型破り・・・!しかし、しかし・・・!」
美食家「悔しいが・・・!うまい!」
料理人「そうですか」
美食家「ぐぬぬ」
料理人「では私の勝ちですね」
美食家「うむ、今回は負けを認めてやる!だから教えてくれ、どのようにしてこれほどうまいナポリタンを作った!?」
料理人「これです」ゴソッ
美食家「それは・・・!」
料理人「はい」
美食家「日清のスパ王ではないか!」
料理人「お湯を沸かして普通にスパ王を作り」
料理人「味噌をひとかけら、それとフレッシュトマトとバジルを混ぜます」
料理人「はい、できあがり」
美食家「ぐぬぬ・・・ひと手間と少しの工夫でレトルト飯がこんなにうまくなるとは・・・!」
料理人「カップめんはひと工夫で何倍もおいしくなりますよ」
美食家「ぐぬぬ・・・このワシがカップめん程度で・・・!」
料理人「カレーヌードルのお湯を少し目にして温泉卵入れて食べると美味しいですよ」
美食家「ぐぬぬ・・・屈辱・・・!」
トマト「まぁ落ち込むなって帰りにコンビニでカレーヌードルかって帰ろうじゃねぇか」
美食家「うむ、そうするか・・・!」スクッ
料理人「あ、お帰りですか?」
美食家「また来てやる、その時までに更に腕を磨いておけ」
料理人「はい」
美食家「さらばだ!」
・・・
・・・
・・・
料理人「ふぅ、なんとか切り抜けたか」
料理人「その手の筋の人から手に入れたこの『小麦粉』があるとお客が勝手に感動してくれるから楽だなぁ」
料理人「さぁ、次の料理の仕込みをしよう。きっとあの美食家さんはすぐに来てくれるだろうからね」
おしまい