友奈「えー、ちょっとだけだから! 少しだけでいいから!」
東郷「……だめ、です」
友奈「うー、どうしてもだめ?」
東郷「……」コクッ
友奈「ほんとにほんとにだめ?」
東郷「……」コクッコクッ
友奈「そっかぁ……」
東郷「……」
元スレ
友奈「ねぇ、東郷さん。おっぱい触ってみてもいいかな」東郷「だ、だめっ!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1416043840/
友奈「ごめんね、東郷さん。嫌なお願いしちゃって……」
東郷「べ、別に嫌ってわけじゃなくて……その……」
友奈「ううん、無理しなくていいよ。ほんとにごめんね」
東郷「……ごめんなさい」
友奈「と、東郷さんが謝ることないよ! 変なお願いしたわたしが悪いんだし!」
東郷「……」
友奈「ただ、わたしってほら、大きくないから」
友奈「大きいのってどんな感じなのかなーって気になっちゃって、たはは」
東郷「……それだけ?」
友奈「えっ」
東郷「ただ大きい胸に触りたかっただけなの、友奈ちゃんは」
友奈「……東郷さん?」
東郷「そう……だったら」
東郷「他の子にでも頼めば良いと思う」ガタッ
友奈「えっ、と、東郷さん!?」
東郷「……今日は用事があるから、先に帰るね」
友奈「ちょ、ちょっと待って! わたしも!」
東郷「友奈ちゃんは、ちゃんと部活……行ってね」
友奈「と、東郷さん……」
東郷(……友奈ちゃんのばか、もう知らないっ)
ガタッ
東郷「えっ……」
ズサァ
東郷「……う、うぅ」
東郷(痛い……こんなに盛大に転んだの久しぶりかも)
東郷(……)
東郷(なんでムキになっちゃったんだろう)
東郷(別に胸くらい触らせてあげれば良かったのに……)
東郷(私の方が……馬鹿みたい)
友奈「と、東郷さん!?」
東郷「友奈ちゃん……どうして」
友奈「い、今起こすからね!」
東郷「大丈夫、一人で平気だから……それに部活はどうしたの」
友奈「今日はお休みもらっちゃった。わたしのせいで、東郷さんに嫌な思いさせちゃったから」
東郷「ゆ、友奈ちゃんが悪いわけじゃ……」
友奈「それに東郷さんはわたしの大親友だから……ちゃんとお話したいんだ」
東郷「……」
友奈「お話させてくれないかな」
東郷「……」コクッ
友奈「えへへ、ありがと。じゃあ起こすね」
フニッ
友奈「あれ?」
東郷「……っ」
フニッフニッ
友奈「えっと、これってもしかして……」
東郷「ゆ、友奈ちゃん?」フルフル
フニッフニッフニッ
友奈「たははは……」
東郷「友奈ちゃんのばか! ばか!!」ポカポカ
友奈「東郷さん、ごめん、ほんとにごめんね! わ、わざとじゃないの!」
東郷「もう! 友奈ちゃんなんて知らないっ」
友奈「ごめんってばー」
東郷「……」ツーン
友奈「……」
東郷「……ふふっ」
友奈「えっ」
東郷「あはっ、あははは」
友奈「東郷さん?」
東郷「ふふっ、なんかもう変に悩んでたこと、馬鹿らしくなっちゃった」
友奈「な、なんのこと?」
東郷「友奈ちゃんが誰の胸を触ろうと関係ないってこと」
友奈「えっ、誰かの?」
東郷「さっき言ってたよね……その、大きいのに触りたいって」
友奈「それは言ったけど……誰かのなんて言ってないよ」
東郷「えっ」
友奈「わたしは東郷さんのに触りたいって言ったんだよ」
東郷「……」
友奈「東郷さんって、その……おっきいでしょ? それを気にしてるのも知ってるの。だから……」
友奈「いつも東郷さんが苦労してること、悩んでること、少しでも知りたくて」
東郷「……」
友奈「でも、ほら、わたしのって小さいから……東郷さんの気持ち、わかりづらくて……たはは」
東郷「……」
友奈「だから思い切ってお願いしてみたんだ」
東郷「……」
友奈「でも、ほんとにごめんね。嫌な思いさせちゃった」
東郷「……」
友奈「はい、じゃあ、このお話おしまい! それじゃ帰ろっか!」
東郷「友奈ちゃん」
友奈「なぁに?」
東郷「今日この後、予定とかある?」
友奈「えっ、特にないけど……」
東郷「えっと……じゃあね」
東郷「私の家に来ない?」
-東郷家 美森の部屋-
友奈(あ、あれから一言も喋らずに来ちゃったけど……)
東郷「友奈ちゃん」
友奈「は、はい!」
東郷「私の胸、今でもその……触りたいって思ってる?」
友奈「えっと、嫌じゃないの?」
東郷「他の人なら絶対に嫌……でも友奈ちゃんなら、友奈ちゃんにはわかってほしいから、私のこと」
友奈「ありがとう、東郷さん。じゃあ……わたし、触るね」
東郷「ま、待って……恥ずかしいから、その……」
友奈「……?」
東郷「う、後ろからで」
友奈(こうやって近くで見ると……)
東郷「……」ドキドキ
友奈(東郷さんの髪、やっぱりすごくきれい……それにうなじもなんか……)
ススッ
東郷「ひゃっ!」
友奈「わっ……ご、ごめんね」
東郷「ゆ、友奈ちゃん!?」
友奈「え、えーっと、すごく綺麗だったから、うなじ……なんとなく」
東郷「えっと……触るなら触るって言ってほしかった、かな」
友奈「ごめんね。でも、言ってたら触ってもよかったの?」
東郷「……」コクッ
友奈「えへへ、ありがとう、東郷さん」
友奈「でも先に……ちょっと近づくね」
東郷「あっ……うん」
ピタッ
東郷「えっと……あの、友奈ちゃん?」
友奈「んー?」
東郷「ちょっと密着しすぎ……じゃ?」
友奈「だめだったかな。こうやって、くっついてた方が自分に置き換えたときわかりやすいかなって」
東郷「そ、そう。だ、だめじゃないけど……」
トクントクン
東郷(友奈ちゃんの鼓動が聞こえる……)
友奈「……」
東郷(緊張してるの私だけじゃないの、かも)
友奈「離れたほうがいい?」
東郷「ううん……そ、そのままで……」
友奈「えへへ、ありがと。じゃあ、いくね」
東郷「……」コクッ
フニッ
東郷「……」
友奈(わ、わわっ……すごい……)
友奈(ずっしり……こんなすごいのが付いてたら……肩がこるのも納得だよ)
フニッフニッ
東郷「……っ」
友奈(でも……柔らかくてきもちいいかも)
フニッフニッフニッフニッフニッ
東郷「……ゆ、友奈……ちゃん!」
友奈「へっ……あっ、ご、ごめんね! い、痛かった?」
東郷「う、ううん、平気だけど……」
友奈「平気そうに見えないよ。もうやめる?」
東郷「だ、だめ!」
友奈「えっ……と、東郷さん?」
東郷「ま、まだこのくらいじゃ、友奈ちゃんわからないよね」
友奈「う、うん? そ、そうかも?」
東郷「だから……もっとして……いいから」
友奈「わ、わかった」
東郷「……」
友奈(東郷さん、なんか……嬉しそう?)
フニッフニッ
東郷「……っ」
友奈「東郷さん、やっぱり何か苦しそうだよ……」
東郷「だ、大丈夫だから、続けて?」
友奈「う、うん」
友奈(でも、なんだろう……この気持ち)
フニッフニッフニッ
友奈(こうやって、ぷにぷにしてるの、すごく気持ちいい……)
東郷「……んっ」
友奈「と、東郷さん!?」
東郷「ゆ、友奈ちゃん。その……やっぱり……ね」
友奈「えっ」
東郷「服越しじゃなくて……その……直で触ってもらったほうが、いろいろわかると思うの」
友奈「え、えぇ! そ、それはさすがに……」
東郷「だ、だめ?」
友奈「うっ……」
友奈(東郷さん……かわいい……)
友奈「ほんとにいいの?」
東郷「……うん」
友奈「わかったよ。じゃあ、脱がすね」
東郷「……」コクッ
スルスルッ
友奈(わっ……大きい……それにわたしのと全然違う……)
東郷「ゆ、友奈ちゃん、その……」
友奈「へっ」
東郷「じっと見られると……恥ずかしいから」
友奈「わっ……ご、ごめんね!」
東郷「……」カァァ
友奈「じゃあ……いくね」
東郷「……」コクッ
モニュ
東郷「……っ」
友奈(す、すごい……弾力。それに手に吸い付いてくるみたい)
モニュモニュ
友奈(はぁ……すごい感触……きもちいい…)
東郷「……んっ……っ」
友奈(なんだろう、この気持ち……東郷さん、苦しそうなのに)
友奈(なんか……もっとしてあげたくなっちゃう……)
友奈「東郷さん、苦しい? もうやめる? やめなきゃだめかな?」
東郷「や、やめちゃだめ……そのまま続けて?」
友奈「大丈夫? 東郷さんが大丈夫なら……続けちゃうね」
東郷「う、うん……私は平気だから」
友奈「わかった」
モニュモニュモニュ
友奈(東郷さん……目がとろんとしてる……もしかして……)
東郷「……っ」
友奈(気持ちいいの、かな……)
スルッ
東郷「……あっ」
友奈(わっ……擦っちゃった……)
友奈「ご、ごめんね、東郷さん」
東郷「……友奈……ちゃん」
友奈「えっ?」
東郷「今のもう一回……してほしい」
友奈「えっと……ここ?」
東郷「そう……こうやって……ね」
友奈(わわっ……)
クニッ
東郷「んっ!」
友奈「東郷さん……その……こう?」
東郷「うん……」
友奈「わかった、じゃあ優しくするね」
クニックニッ
東郷「……っ……はっ……」
友奈「東郷さん……平気?」
東郷「……」コクッコクッ
友奈「……つらかったら言ってね」
東郷「……っ……っ!」
友奈(東郷さん、真っ赤になってる……かわいい……)
クリックリッ
東郷「はぁ……友奈ちゃん……だめ、私っ……」
友奈「でも東郷さん……気持ちよさそうだよ? もっとしてあげるね……」
友奈(だめ……東郷さんがかわいすぎてやめられないよ……)
東郷「やっ……友奈ちゃん、これ以上は……」
友奈「だめだよ、東郷さん。東郷さんがいけないんだからね……」
東郷「友奈ちゃん……だめっ……だめっ!」
友奈「東郷さん……かわいいよ……」
東郷「!!」
キュッ
東郷「……っ!!」ビクンッ
友奈「東郷さん……きもちよく、なっちゃった?」
東郷「はぁ、はぁ……」コクッコクッ
友奈「嬉しいな……」
ギュッ
東郷「ねぇ……友奈ちゃん……」
友奈「なぁに?」
東郷「もっと……ぎゅって抱きしめてほしい」
友奈「もっと?」
東郷「……」コクッ
友奈「うん、わかった……」
ギュゥ
東郷「……えへへ」
友奈「東郷さん……あったかい」
東郷「友奈ちゃん……私のことわかってくれた?」
友奈「うーん、ちょっとよくわからなかったかな」
東郷「そ、そう……」
友奈「だからね」
東郷「えっ」
友奈「また今度も触っていい?」
東郷「えっと、その……友奈ちゃんが触りたいなら」
友奈「ありがとうね、東郷さん」
東郷「でも……友奈ちゃんだけずるい……」
友奈「えっ」
東郷「こっち向いて?」
友奈「う、うん」
ギュゥ
東郷「こうすれば、二人でぎゅってできる」スリスリ
友奈「東郷さん……あまえんぼさんみたい」
東郷「だめ?」
友奈「ううん全然。普段東郷さんはしゃんとしてるから。こうやって甘えてもらえるとすごく嬉しい」
東郷「友奈ちゃんにだけ、だから……」
友奈「えへへ、ほんと? 嬉しいな」ナデナデ
東郷「……幸せ」
友奈「東郷さん、櫛、借りるね」
スッ
東郷「あっ」
友奈「東郷さんの髪、少し乱れちゃってるから」
東郷「そ、そんなの後で自分でやるから」
友奈「いいからいいから」
スッスッ
友奈「ほんとに……綺麗な髪、憧れるなぁ」
東郷「あ、ありがとう」
友奈「綺麗だよ、東郷さん」
東郷「……っ」カァァ
友奈「東郷さん、わたしね。気づいちゃった」
東郷「友奈ちゃん?」
友奈「最初に、その……東郷さんの胸を触りたいって言ったのもね」
友奈「東郷さんの悩みを共有できたらって思ったから」
友奈「少しでも東郷さんの力になれたらって、そう思ったから」
友奈「きっかけはそうだった」
友奈「でも、さっき気づいたの。それは東郷さんが大親友だからかなって」
東郷「……」
友奈「……ううん、違う。そうじゃなかったんだって」
東郷「……」
友奈「東郷さんはいつもわたしのこと、見てくれてた」
友奈「わたしのこと、心配してくれた。わたしのために怒ってもくれた」
東郷「そんな……私はただ……」
友奈「ううん。だからね、東郷さんはわたしの……かけがいのない、大事な人」
友奈「それに……今日はいつも以上に東郷さんのこと、綺麗に感じるの」
友奈「かわいいところもたくさん見ることができた」
東郷「……」
友奈「……今ね。わたし、すごくどきどきしてるの」
東郷「……」
友奈「こんなどきどきはたぶん、友達にも親友にも感じないと思う」
東郷「……」
友奈「東郷さん……わたし、自分の気持ちに嘘付くのは嫌だから、はっきり言うね」
東郷「……」
友奈「わたしは、結城友奈は……」
東郷「……」
友奈「東郷さんのこと、東郷美森さんのことが……大好きです」
東郷「……っ」
友奈「……」
東郷「友奈ちゃん、私……」スッ
友奈「勇者部五箇条!」
東郷「……っ」
友奈「なせば大抵なんとかなる! ……はずだったけど」
東郷「友奈……ちゃん?」
友奈「えへへ、今の忘れて?」
東郷「……えっ」
友奈「ごめんね、気持ち悪かったよね。迷惑……だったよね」
東郷「そんな……違うの、私は……」
友奈「……たはは。あれっ……もうこんな時間、そろそろ帰らないと」
東郷「ゆ、友奈ちゃん!」
友奈「じゃあね、東郷さん。今日はわたしの我侭きいてくれてありがとう」
東郷「……待って」
友奈「また……明日ね」
東郷「待ってって言ってるの!!」
ダンッ
友奈「と、東郷さん?」
東郷「……友奈ちゃん、ちょっとこっちに来て」
友奈「え、えーっと」
東郷「い、い、か、ら!」
友奈「は、はい!」
東郷「もっと近くに」
友奈「うん……」
ギュゥゥ
友奈「……わっ、わわっ」
東郷「もう、友奈ちゃんのばか……」
友奈「……えっ」
東郷「嫌なんてありえない、迷惑なわけ……絶対ないっ……」
友奈「……」
東郷「私だってずっと、出会ったときからずっとずっと、友奈ちゃんのことっ……」
東郷「好きだったんだから!」
友奈「東郷……さん」
東郷「私ね、友奈ちゃんが居てくれなかったらたぶん、今生きてはいなかったと思う」
友奈「えっ……」
東郷「足も動かなくて、記憶も戻らなくて……もう死んでしまいって思ったときもあった」
友奈「……」
東郷「でもそんなときだった。私の目の前に友奈ちゃんが現れたの」
東郷「そして、友達になってくれるって言ってくれた」
東郷「それからは毎日が楽しかった。生きるのが……友奈ちゃんの隣に居るのが、本当に楽しかった」
友奈「……東郷さん」
東郷「だからね、友奈ちゃんには感謝してもしきれないの」
友奈「そんな……大げさだよ」
東郷「ううん、友奈ちゃんは私に生きる希望をくれたんだよ」
友奈「東郷さん……」
東郷「そしてね、この想いが好意に変わるのも時間がかからなかった」
東郷「いつもあなたのこと見てた。友奈ちゃんになら、私のすべてを捧げてもいいって思ってた」
友奈「……」
東郷「だから今日、友奈ちゃんが私のこと好きって言ってくれて、ほんとにほんとに嬉しくて……」
東郷「まだ信じられないの。これは夢なんじゃないかって」
友奈「夢じゃないよ」
東郷「……」
友奈「夢なんかじゃ決してない。わたしは東郷さんのことが好きだから」ギュッ
東郷「あっ……」
友奈「えへへ」
東郷「友奈ちゃん。ごめんね、こんな話してしまって」
友奈「ううん、東郷さんの気持ち、話してくれてありがとう」
友奈「つらかったこと、苦しかったこと、思い出させちゃってごめんね」
東郷「ううん、そんな……」
友奈「もう東郷さんにそんな思い、絶対させないから」
東郷「……友奈ちゃん」
友奈「ずっとそばに居るから。いつだって東郷さんの隣にはわたしが居るから」
東郷「本当?」
友奈「ほんとだよ」
東郷「ほんとうにほんとう?」
友奈「うん、約束する」
東郷「でも……私たちは……友奈ちゃんは……」
友奈「大丈夫」
東郷「……」
友奈「神樹さまがわたしたちを守ってくださるよ」
東郷「……」
友奈「それに東郷さんがわたしのこと、ここまで想ってくれてたのがわかってほんとに嬉しかった」
東郷「……」カァァ
ギュゥ
東郷「……あっ」
友奈「東郷さん、大好きだよ」
東郷「友奈ちゃん、好き……大好き……」
友奈「……」ナデナデ
東郷「えっと、友奈ちゃん……その……」
友奈「えへへ、うん……」
東郷「……」
友奈「目、瞑って?」
東郷「……」コクコクッ
友奈「……っ」
東郷「……んっ」
友奈「……」
東郷「……」
友奈「しちゃったね」
東郷「う、うん」
友奈「これが……誓いの証。信じてもらえた?」
東郷「友奈ちゃん」
友奈「なぁに?」
東郷「私もずっと……ずっとずっと……友奈ちゃんの隣に居るから」
友奈「うん、ずっと一緒だよ、東郷さん」
-学校-
友奈「はぁー、今日も授業疲れたねー」
東郷「お疲れ様、友奈ちゃん」
友奈「ねぇ、東郷さん」
東郷「だーめ」
友奈「ま、まだ何も言ってないよ……」
東郷「ふふっ……友奈ちゃんのことはお見通しですから」
友奈「うー」
東郷「えっと……その……どうしても?」
友奈「うんうん!」パァ
東郷「そ、そう……じゃあ……今日も」
東郷「私の家に寄っていく?」
「……それじゃあ、またあしたね、東郷さん」
「うん……」
お互いの家の前で別れの挨拶を交わした後、背を向け身を翻す
そして家の中へと一歩踏み出そうとしたその時だった
くいっ
わたしの進行を妨げる、何か弱々しい力に身を引き寄せられ振り返る
そこにはわたしの制服の裾を控えめに掴んでいる東郷さんがいた
「東郷さん?」
「……」
わたしの問いかけに東郷さんは、裾を掴んだまま黙ってうつむいている
その表情を見て察してしまった
わたしは、すっと手を差し伸べる
「わたしの部屋、いこう?」
東郷さんは少し目を見開いてわたしの顔を覗いた後、
手を制服の裾から私の手へと移し、きゅっと握った
部屋に着くまでのわたしたちは、終始無言だった
かちゃり
鍵を閉める音が部屋に響く
東郷さんをベッドに座らせて隣に腰掛けると
無言でうつむいていた東郷さんがわたしの胸に顔をうずめてきた
「ごめんね、少しだけでいいから……」
わたしはそんな申し訳なさそうに謝る東郷さんの背中にそっと手をまわし、
やさしく抱きしめ頭を撫でる
「あっ……」
「何も言わなくていいから、大丈夫だから」
どのくらい二人で抱き合っていたのだろう
先に口をひらいたのは東郷さんだった
「どうして?」
「……」
「……どうして、何も聞かないの?」
「東郷さんが言いたかったら聞くよ」
「……友奈ちゃん、ずるい」
「……」
「どうして? なんでいつも、私がしてほしいこと、わかっちゃうの……かな」
「……そうだね、それはたぶん」
「……」
「わたしも東郷さんのこと、ずっと見てたから、かな」
「友奈ちゃん……」
「えへへ」
東郷さんのさらさらで綺麗な髪。
指を通すと抵抗もなく、また持ち主のもとへと戻っていく。
「……友奈ちゃん」
「なぁに?」
「友奈ちゃんはいなくなったりしないよね」
「急にどうしたの?」
「私、怖いの……友奈ちゃんは優しいから、優しすぎるから」
「……」
「誰かのためにって、すぐ自分を犠牲にするから」
「……」
「約束して、友奈ちゃん」
東郷さんが真剣なまなざしでわたしを見つめてくる。
「自分のことを大事にするって。友奈ちゃんに万が一があったとき、残される人のこと、ちゃんと考えるって」
「当たり前だよ。だって、約束したから。東郷さんとずっと一緒に居るって」
「たとえばの話だけど……」
東郷さんが少しだけわたしから視線を落とした。
「じゃあ、もし私が……世界を滅ぼす災厄になったら……友奈ちゃんはどうする?」
「なに……それ。いくらたとえ話であっても、わたし怒るよ」
「ごめんなさい、友奈ちゃん。でも私も真剣だから」
そしてまた、東郷さんがわたしをまっすぐに見つめ直す。
その瞳にはうっすらと涙が溜まっていた。
「どっちも救う」
「えっ」
「東郷さんも救って、世界も守る。それが勇者だから」
「……そっか、やっぱり友奈ちゃんは友奈ちゃんだった」
東郷さんがくすりと笑う。
「わたしって、こう見えて欲張りだからね」
わたしもつられて笑った。
「友奈ちゃん、ごめんなさい」
「えっ」
「もし逆の立場だったら……私は」
東郷さんが再び、わたしの胸に飛び込んでくる。
「私は……友奈ちゃんと一緒に、世界を……ぐすっ……滅ぼしちゃうかもしれない」
「そっか……」
東郷さんの綺麗な髪をわたしは優しく優しく撫でた。
「……今日はずっと、こうしていよっか」
「うん……うんっ……」