ガチャッ
兄「…妹?起きてるのか?」
妹「」
兄「はぁ……いくら冬休みだからって一日中ベッドで寝たきりってのはどうかと思うぞ」
妹「」
兄「昨日晩飯のとき呼んでも来なかったけど……まさか昨日から何も食べてないのか?」
妹「」
兄「机の上に昼飯置いておくから、適当につまんどけよ」
妹「」
兄「……お兄ちゃん少しでかけてくるからな。夕飯までには帰るから」
妹「」
兄「…はぁ……じゃあな」ガチャッ
バタンッ
妹「」
妹「」
兄(妹のやつ…どうしたんだろう)
兄(休みでもいつも早起きで一日中少しウザいぐらいひっついてくるのに)
兄(最後に話したのは…一昨日の晩か)
兄(妹とこんなに長い間喋らなかったのは随分久しぶりな気がする)
兄「…なんか怒らせちゃったかなぁ…」
友「誰を?」
兄「え?あ、いやちょっとな」
友「喧嘩でもしたの?」
兄「いや、そういうわけじゃないと…思う」
友「ふーん…でも珍しいね。兄が人を怒らせるなんて」
友「で、誰なの?」
兄「……妹」
友「……え?妹ちゃん…?」
友「嘘でしょ?」
兄「いや、昨日から全く口をきいてくれないんだ。ずっとベッドで寝てる」
友「あの妹ちゃんが?あはは、なんか想像できない」
兄「笑い事じゃないって…こんな事初めてだからちょっとどうしていいか…」
友「確かにね。いつも「お兄ちゃんお兄ちゃん」ってべったりなのに」
兄「うん…」
友「うーん…でも心当たりはないんでしょ?」
兄「うん…」
友「だったら妹ちゃんに聞いてみるしかないんじゃない?」
兄「え、でも全く口をきいてくれなくて…」
友「ちゃんと正面から何度も聞いてみれば答えてくれるよ」
友「妹ちゃんもいつまでもこのままでいいって訳じゃないだろうし」
兄「そ、そうかな…」
友「そうだよ。あの妹ちゃんが本気で兄の事嫌いになるわけないし」
友「きっと兄がどうしたのか聞いてくるの待ってるはずだよ」
兄「うん…」
友「ほら!分かったら早く行きなって」ドンッ
兄「えっ…お、おい今日はお前と映画行くって…」
友「とりあえず仲直りしてきなよ。私は後でいいから」
兄「でも」
友「でもじゃない!妹ちゃんの事が気になるんでしょ?」
兄「それはそうだけどさ」
友「このまま遊んでもきっと楽しくないし、まずは目先の問題を片付けようよ」
友「映画はその後!」
兄「…悪いな」
友「もう、謝るぐらいなら早く仲直りしてきなって!」
兄「…すまん!すぐ戻ってくるから!」ダッ
兄(妹……)
__________
兄(とりあえず帰ってきたけど…)チラッ
兄(飯は…食べてないか…)
兄「……」
兄「とにかく話をきかないとな…」
兄「妹…入るぞ?」ガチャッ
妹「」
兄「…寒くないか?エアコンつけてもいいんだぞ?」
妹「」
兄「…つけるな」ピッ
兄「……」
妹「」
兄「なぁ…」
妹「」
兄「俺…妹に何かしたかな」
妹「」
兄「したんだよな…ごめん、でも心当たりがなくて…」
妹「」
兄「妹に何かしたなら謝りたいんだ。だからさ…」
兄「教えてくれないかな…?」
妹「」
兄「妹…」
兄「ごめんな…やっぱ自分で気づかなきゃ駄目だよな」
妹「」
兄「……まだ寒いな。エアコンの温度上げるか」ピッ
兄「妹は寒くないか?」
妹「」
兄「………あ」
兄(布団から手が…)
兄「……」ギュッ
兄(やっぱり…)
兄(妹の手…凄く冷たい)
兄「毛布一枚じゃ寒いだろ」
妹「」
兄「…ちょっと待っててな」ガチャッ
タッタッタッ…
兄「ほら、毛布もう一枚持ってきたから」
妹「」
兄「まぁ俺の毛布なんだけど…嫌だったらその辺に置いといてくれ」ファサッ
妹「」
兄「……」
兄(これ以上友を待たせるわけには…)
兄「俺…そろそろ行くな」スクッ
妹「」
兄「ごめん、俺がどうして妹を怒らせちゃったか今は分からないけど…」
兄「俺なりに…考えてみる」
兄「いつまでも妹とこんな感じなのは嫌だしな」
妹「」
兄「…飯はちゃんと食べろよ?体壊すぞ」
妹「」
兄「………じゃあ」ガチャッ
ギュッ
兄「……え?」
妹「………」ギュッ
兄「い、妹…?」
妹「…お兄ちゃんには絶対分からないよ」
兄「な、なんで…」
妹「昔からそうだもん…」
妹「私の事…ちっとも分かってない」ギュッ
兄「そんなこと…」
妹「…今日も友さんと遊ぶんでしょ?」
兄「そう、だけど…それがどう…」
兄(あ……)
___2日前___
妹『お兄ちゃん!冬休みだよ!』
兄『うん?あーそうだなー』
妹『お兄ちゃん冬休みの予定とかあるの?』
兄『予定か…特には』
妹『そ、そうなんだ……だ、だったら私と!』
兄『あーでも明日は友の家で遊ぶかな』
妹『え…』
妹『あ、明後日は…』
兄『明後日は友と映画』
妹『そ、そうなんだ』
兄『ははは、あいつも暇だからなー』
兄『冬休みは友と遊んで終わりそうだよ』
妹『……』
兄『いつも誘ってもらってばっかで悪いし、俺からも誘ってみようかなー』
妹『……』
兄『…妹?』
兄『どうした?』
妹『…う、ううん何でも』
兄『そっか。あ、妹は何か予定はあるのか?』
妹『私は…特に』
兄『あれ、そうなのか。妹は友達多いし冬休みはもう予定埋まってるかと思ってたよ』
妹『そ、そんな事ないよ。だから…』
兄『あ、そうだ』
兄『俺は友と遊んで家いないし友達とか家に呼んでみたらどうだ?』
妹『え…』
兄『考えてみたら妹が家に友達呼んだことってないからさ。俺に気を使ってるのかなって』
妹『それは…』
妹(友達なんて呼んだら…もしかしたらお兄ちゃんがとられちゃうかもしれないし)
兄『いつも長い休みは妹と色んな所にいったよな』
妹『…うん』
兄『でも冬休みはわざわざ俺につきあわなくていいぞ!友がいるからな!』
妹『……っ』
妹『……』
兄『妹…?』
妹『もう…寝る……から』
兄『え?早いな』
妹『……うん』
兄『そ、そうか…おやすみ』
妹『………』ガチャッ
_______________
兄(妹が怒ってるのって…)
兄(もしかしなくても…あの事だよな…)
兄(そうか…なんで気がつかなかったんだ)
兄「…妹」
妹「……」
兄「ごめんな」ギュッ
妹「……っ」
兄「そうだよな。妹だって嫌々つきあってくれてたわけじゃないもんな」
妹「お兄ちゃん…」
兄「ごめん。酷いこと言っちゃったな」ギュッ
妹「……」
妹「お兄ちゃんは……」
兄「…ん?」
妹「友さんの事…好き?」
兄「す、好きって…どういう」
妹「女の子として」
兄「…俺と友はそんなんじゃないよ。向こうもそんな風に思ってないって」
妹「…お兄ちゃんも?」
兄「も、もちろん」
妹「…」
妹「そっか…えへへ」ギュッ
妹「結構傷ついたんだからね…」
妹「お兄ちゃんにいらないって言われたみたいで…」
兄「そんなこと思うわけないだろ」
兄「誰よりも妹の事が大事だよ」
妹「……友さんより?」
兄「な、なんでそこで友が」
妹「冗談だよ」クスッ
妹「今回のこと…許してあげる」
兄「ほ、本当か?」
妹「許してあげる…けど一つだけお願いしてもいい?」
兄「あぁ、俺に出来ることなら」
妹「うん…あのね」
_______________
友「えっと…なんで妹ちゃんが?」
兄「だ、駄目か?」
友「いや駄目じゃないけど…」
妹「えへへ…」ギュッ
友(なんで腕を組んでいるんだろう)
友「まぁでも…仲直り出来たんだよね?」
兄「あぁ、友のおかげだよ。ありがとな」
友「そ、そんな。私は何も」
兄「いや、そんなことない。友があの時背中を押してくれなかったらこんな風に仲直りできなかったと思う。本当にありがとう」
友「あ、兄……」
妹「……」ジー
妹「友さん友さん」
友「…?何かな?」
妹「私…負けませんから」ボソッ
友「……!」
友「え、え…っ??」
妹「……」クスッ
妹「…お兄ちゃん、友さん!早く行こ!」グイッ
兄「あ、お、おい!」
妹「友さんも早く行きましょう?」
友「う、うん…」
妹「映画楽しみですね!友さんっ」
友「……」
妹「友さん?」
友「わ、私も…」
妹「…え?」
友「私も負けない…から」
妹「…お兄ちゃんは渡しませんよ?」ボソッ
友「こ、こっちだって…!」
兄「お前ら何ボソボソ話してんだ」
友「あ、あ、兄…!これはその…」アタフタ
妹「えへへ、なんでもないよー?」
兄「ん、そっか」
妹「うん♪」ギュッ
妹「……」
妹(今はまだただの兄妹だけど)
妹(いつか絶対お兄ちゃんを振り向かせてみせる)
友「……」ポーッ
妹(絶対負けないから…友さん)
おわり