1 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2014/11/20 21:31:11.22 Mh+Jl+Ai0 1/212

このssには、女性同士の恋愛の表現が含まれます
あらかじめご了承ください

また、一部性的な内容があります
こちらも、あわせてご注意ください

何卒よろしくお願いします

元スレ
先輩「本を読む後輩と」 後輩「かもめの先輩」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416486661/

2 : VIPに... - 2014/11/20 21:32:36.02 Mh+Jl+Ai0 2/212






~放課後・校舎 廊下~


後輩「……」

後輩友「ちょっと後輩~!」タタッ

後輩「あ、友ちゃん」

「へっへっへ、お姉ちゃん、ひとりでどこいくつもりだい?」

後輩「図書館だよー。あと、私より友ちゃんの方がお姉ちゃんだよ! 私、八月生まれだから」

「……いや、うん。そうね。私が悪かった」

後輩「?」

3 : VIPに... - 2014/11/20 21:33:41.52 Mh+Jl+Ai0 3/212

「私も行っていい?」

後輩「うん! 友ちゃん、何か読みたい本あったんだ?」

「いや、ただついていくだけ」

後輩「何それぇー」

「しかし、あんたも好きだねぇ。毎日通ってるじゃん、図書館」

後輩「毎日じゃないよぉ。一昨日は行ってないもん」

「一昨日は日曜だ」

後輩「うん」

「うんじゃない」

後輩「えへへ……」

4 : VIPに... - 2014/11/20 21:35:17.96 Mh+Jl+Ai0 4/212

「そうだ、今日この後、ヒマ?」

後輩「私はこの後、部活行くよ」

「えー。一緒に帰ろうよー」

後輩「んー……、でも、部活だし……」

「どうせ、今日も誰もいないんでしょ、文芸部」

後輩「うん、多分……」

「ひとり寂しく本読んで帰るだけなら、可愛い友ちゃんと一緒に帰って遊ぼうや、ねぇ?」

後輩「でも、部活はちゃんと出た方がいいと思うし……。それに、本読むの好きだから、私」

「はぁ、真面目だねぇ……」

後輩「……あ!」

「ん?」

後輩「と、友ちゃんは可愛いよ! そこは、うん、本当、そう思うっ」

「あーもう! そこは拾わなくていいんだよぉー! 可愛いなぁーこのポンコツはぁー!」ワシャワシャ

5 : VIPに... - 2014/11/20 21:36:27.54 Mh+Jl+Ai0 5/212

後輩「わっ、ちょ……もう、私は可愛くないからぁ……」

「ポンコツの方はちゃっかり聞こえない耳はこれかぁー? うりうりーっ」グイグイ

後輩「うわわ、やめてよぉ! ほら、もう図書館つい――……」


ドンッ


後輩「ひゃっ」ヨロッ

「ぎにゃっ!?」

後輩「……あっ」

先輩「……」

後輩「あ、あの……、すみません、ぶつかっちゃっ――……」

先輩「……」

後輩「……え、えっと」

6 : VIPに... - 2014/11/20 21:37:15.05 Mh+Jl+Ai0 6/212

先輩「……入りたいんだけど」

後輩「え……」

先輩「邪魔」

後輩「あ……! ご、ごめんなさいっ」

先輩「……」プイ

後輩「……」

「……」


ガラッ


パタン


後輩「……」

「……」

後輩「……」

「……うぁー、焦ったぁ……」

後輩「……もう、友ちゃん……」

7 : VIPに... - 2014/11/20 21:38:10.77 Mh+Jl+Ai0 7/212

「あっはは、ごめんごめん! ……っていうか、今の……やっべぇ、先輩さんじゃん。こわ……」

後輩「知り合い?」

「いや、違うけど……ほら、有名じゃん」

後輩「有名?」

「……あぁ、あんたは知らなそうだね、そういうの」

後輩「何それぇ」

「うわさとか、裏話とか、そういう話しないでしょ」

後輩「そんなこと――……あるけど。うわさの人なんだ」

「影の有名人ってやつ。……ちょっと、言えないことしてるんですって」

8 : VIPに... - 2014/11/20 21:39:04.10 Mh+Jl+Ai0 8/212

後輩「ちょっと、言えないこと……、って?」

「そりゃあ、ちょっと言えないッスよ」

後輩「本当に言えないことなら、そもそも、うわさにもならないと思う!」

「あ、はい……、うん、そうッスね……」

後輩「……」ムフー

「うぉぉ、その論破ぁ! みたいなドヤ顔やめて! 腹立つ!」

後輩「それで?」

「いや、うん、うわさだけどさ……、ウリやってるんだって、学校で、あの人」

後輩「瓜」

「ウリ! お金もらって、えっちなことすんの!」

後輩「えっえっえっ」

「慌てすぎ」

9 : VIPに... - 2014/11/20 21:39:59.70 Mh+Jl+Ai0 9/212

後輩「お金で?」

「うん」

後輩「えっ、えっちな?」

「うん」

後輩「売春みたいなもんだよ、それ!?」

「みたいな、じゃなくて、売春そのもの! 藤浪ばりの剛速球ど真ん中!」

後輩「え、いや……でも……」

「何?」

後輩「犯罪じゃないかな?」

「あー、もう! そうだよ! だから有名人なんだってば!」

後輩「あぁ、なるほど。……ん、でもでも、やっぱりおかしくない?」

10 : VIPに... - 2014/11/20 21:40:42.60 Mh+Jl+Ai0 10/212

「何が」

後輩「うち、女子高だよ?」

「だぁーかぁーらーぁ!」


ガラッ


先輩「……」

「女相手に、金もらって体売ってるから、ヤバい人だっつってんの!」

後輩「あ……」

「ぎゃっ……!」

先輩「……」ジロ

「……!」

後輩「……!」

後輩(こっち見た!)

11 : VIPに... - 2014/11/20 21:41:51.62 Mh+Jl+Ai0 11/212

先輩「……」

後輩「……」ドキリ

後輩(……うわ、正面からまじまじ見ると……)

後輩(すごい、きれいな人……)

先輩「……」

後輩(まつ毛、長い……)

先輩「……」

後輩(目、おっきくて……なんか吸い込まれそうな――……)

先輩「おい」

後輩「……ハッ」

先輩「なに見てんだよ」

後輩(こ……怖っ!)

後輩(男口調……!?)

12 : VIPに... - 2014/11/20 21:42:31.52 Mh+Jl+Ai0 12/212

「ちょ、ちょっとあんた! 何ガン飛ばしてんの!」

後輩「いいいいいえ! 私は別に、そんな……」

先輩「……」

後輩「あう……」

先輩「……」プイ

後輩「ぁ……」


スタスタ……


後輩「……行っちゃった」

「うーぁー、もぉー、ビビッたぁー」

後輩「……」

後輩(……あれ)

13 : VIPに... - 2014/11/20 21:43:18.33 Mh+Jl+Ai0 13/212

「ちょっと、こら、あんたのせいでぶん殴られるかと思ったじゃないの」ウリウリ

後輩「……」

後輩(そういえば、あの人……、さっき持ってた本……)

「……おい、おーい? 聞いてますかー、人の話ー?」

後輩「……」

後輩(あの本……、あれって――……)

「もしもーし? 後輩たん? あの……、無視やめて? ねぇ、ちょっと……」





18 : VIPに... - 2014/11/21 21:15:04.88 3StWXXl30 14/212






~数日後・放課後、文芸部の部室~


後輩「……」

後輩「……」ペラ

後輩「……」

後輩「……」ペラリ

後輩「……」

後輩「……ふぅ」

後輩「……」チラッ

後輩(……もう、こんな時間)

19 : VIPに... - 2014/11/21 21:15:44.90 3StWXXl30 15/212

後輩「……」パタン

後輩(今日はもう、帰ろうかな)

後輩「……」ガサゴソ

後輩「……?」

後輩「……あれ?」ガサガサ

後輩「携帯ない……」

後輩「……あ、あれ? あれあれっ?」ガサゴソ

後輩「……」

後輩(落ち着け、私……)

後輩(こんなときは、落ち着いて……目を閉じて)

20 : VIPに... - 2014/11/21 21:16:19.95 3StWXXl30 16/212

後輩「……」

後輩(ゆっくり十秒、数えて――……)

後輩「……」

後輩(おもむろに目を開ける!)カッ

後輩「……」

後輩「……」

後輩「……やっぱりないよぉぉぉ」





21 : VIPに... - 2014/11/21 21:16:54.52 3StWXXl30 17/212






トタタタ


後輩「……はぁ、私ってドジだな……」

後輩「絶対、机の中だよ、もう」

後輩「……ぁー、外もう真っ暗だし」

後輩「早く帰らないと――……あれ?」

後輩「……教室」

後輩「電気ついてる……」トタタッ


ガララッ


先輩「……」

後輩「……」

先輩「……ん」

後輩「へ?」

23 : VIPに... - 2014/11/21 21:18:21.95 3StWXXl30 18/212

後輩(あれ!? 教室間違えた!?)

後輩「……」キョロキョロ

後輩(……一年B組)

後輩「……あってる」

先輩「……何してんの」

後輩「ひゃい!?」ビクッ

先輩「きなよ、こっち」チョイチョイ

後輩「は、はい……?」トテトテ

後輩(……っていうか、そこ私の席……)

先輩「ふぅん……」スッ

後輩「……?」


ギュッ


後輩「!?」

25 : VIPに... - 2014/11/21 21:19:55.56 3StWXXl30 19/212

後輩(いいいいきなり、抱きしめられた!?)

先輩「……ちっこくて、可愛いじゃん」

後輩「なっ、なななななな!?」


ギュウ


後輩「えっ、あっ、えぇ!?」

先輩「……もっと、リラックスしろよ」

後輩(無理ぃ!)

後輩(っていうか、この人、私より華奢なんだ……)

後輩(なのに、抱きしめられると、すごく……)

後輩(力強くて、包み込まれるような……)

後輩(アンバランスな、感覚……)

26 : VIPに... - 2014/11/21 21:20:36.82 3StWXXl30 20/212

後輩「……ぁ」

後輩(でも、何だか……、ずっとこうしていたくなるような――……)

先輩「……あんた、すげー抱き心地いいんだね」モゾッ

後輩「あっ……! ど、どこ触って――……」

先輩「……っふふ」

後輩「や、ちょ……んんっ!」ビクッ

先輩「っていうか、次からは教室じゃねーところにしてくれよな」

後輩「え……」

先輩「誰か来たら、困るだろ?」

後輩「ひ……ぁ、ぁ、なんの……ことですかぁ……」

先輩「何って、このメモ……」ピラッ

後輩「メモ……?」

27 : VIPに... - 2014/11/21 21:21:15.54 3StWXXl30 21/212

先輩「あんたが書いたんだろ、この教室で、って……」

後輩「……?」

先輩「……?」

後輩「私、あの、携帯……、教室に、忘れて……、取りにきて……」

先輩「え」

後輩「それ……だけ……デス、ハイ」

先輩「ぁー……」

後輩「……」

先輩「悪い」スッ

後輩「あ……」

後輩(離れちゃった……)

先輩「……」ガタッ

後輩(……じゃなくて! 何考えてんの、私!)

28 : VIPに... - 2014/11/21 21:21:50.55 3StWXXl30 22/212

後輩「……」

先輩「……何だよ」

後輩「い、いえ、そこ……私の席、でしてぇ……」

先輩「……」ガタン

後輩「っ……」ビクッ

先輩「……」スタスタ

後輩「……」

先輩「……」ガタン

後輩「……」

29 : VIPに... - 2014/11/21 21:22:22.32 3StWXXl30 23/212

後輩(……あ、そうだ、携帯)

後輩「……」ガサゴソ

先輩「……」

後輩「……あれ、あれぇぇ」ガサゴソ

先輩「……」

後輩「……うぅぅぅ」ガサゴソ

先輩「……はぁ」パサッ

後輩「……あ」

後輩(あの本……)

後輩(この前も、持ってた……)

30 : VIPに... - 2014/11/21 21:23:21.26 3StWXXl30 24/212

先輩「……」

後輩「あ、あのぅ」

先輩「……ん?」

後輩「その本って……」

先輩「……本?」

後輩「あぁ、やっぱり! 『かもめのジョナサン』!」

先輩「……?」

後輩「この間も、借りてましたよね、図書館で! ひょっとして、お好きなんですか!?」

先輩「いや、えーっと」

後輩「私もすごい好きなんですこの本! もう、何回も読んでて、読むたびに感動しちゃって!」

先輩「あのさ……」

31 : VIPに... - 2014/11/21 21:23:56.59 3StWXXl30 25/212

後輩「嬉しいです、私! 同じ本を好きな人に会えて、本当に!」ニコリ

先輩「……あの、おい……」

後輩「特に好きなシーンが、やっぱり三章のあの、フレッチャーが岩に……」

先輩「お、おい、おいって……」

後輩「はい?」

先輩「……あのさ、わりーんだけど、私、読んだことねーから、この本。興味もねぇし」

後輩「そんな……、もったいないですよぉ! ぜひ、ぜひ読んでみてください! 損はさせませんからぁ!」

先輩「セールスマンかよ」

後輩「……って、あれ? じゃ、じゃあ何でこの本持って――……」


ガラッ



32 : VIPに... - 2014/11/21 21:24:35.19 3StWXXl30 26/212

女生徒「……」

後輩「……」

先輩「あ」

女生徒「……は?」

後輩「?」

女生徒「ねえ、ちょっと、何これ。ダブルブッキング?」

後輩「え?」

先輩「はぁ……」

女生徒「はぁ、マジで? 信じらんないんだけど……」

先輩「ちげーよ。こいつ、知らない子」

女生徒「うそ。教室の外まで、話し声してたんですけど」

36 : VIPに... - 2014/11/22 11:56:33.02 avu6kxiy0 27/212

先輩「違うったら」

女生徒「ちょっと、あんた!」

後輩「わ、私!?」

女生徒「どういうつもりよ! ルール違反でしょうが!」

後輩「うぅ……、な、何のことですかぁ……」

女生徒「はぁぁ? とぼけるつもり!?」キッ

後輩「ひぅっ」ビクッ

先輩「おい、ちょっと……」

女生徒「……何よ」

先輩「揉めんなよ、こんなとこでさぁ」

37 : VIPに... - 2014/11/22 11:57:13.98 avu6kxiy0 28/212

女生徒「だって――……」


ギュッ


女生徒「あっ……」

先輩「本当、知らないんだって……」モゾモゾ

後輩「!」カァァ

女生徒「あっ……ん」

先輩「な、分かってくれよ……」

女生徒「もう……、そんなこと言って……ぁんっ」

先輩「ん……」

女生徒「んっ、私……怒ってるんだからねぇ?」

先輩「悪かったって。今日は、サービスするからさぁ」モゾッ

女生徒「本当ぉ?」

38 : VIPに... - 2014/11/22 11:57:46.85 avu6kxiy0 29/212

先輩「マジマジ……、だから、さ……」チュッ

女生徒「もぉ、しょうがないなぁ」

後輩「……」

先輩「じゃ……場所変えてさ……」スタスタ

女生徒「ん……」スタスタ

後輩「……」

先輩「……」チラッ

後輩「……っ!」ビクッ


ガラッ

パタン


後輩「……」ドキドキ

39 : VIPに... - 2014/11/22 11:58:34.56 avu6kxiy0 30/212

後輩「……」

後輩「……ぁー」

後輩「……あ、そうだ……、携帯……」


ピロリロリロリン♪


後輩「!?」ビクッ

後輩「……って、あ……」

後輩「ポケット……」ピロリロリロリン♪

後輩「……」

後輩「……あった」

40 : VIPに... - 2014/11/22 11:59:03.84 avu6kxiy0 31/212

後輩「……」

後輩「……」ピッ


『もっしもーし、後輩ー? 今何してるーん?』

後輩「……あー、うん」

『?』

後輩「何してるんだろうね、私……」

『え、何それ? 哲学?』





41 : VIPに... - 2014/11/22 12:00:09.90 avu6kxiy0 32/212






~夜・先輩宅~


先輩「……」

先輩「……」ドサッ

先輩「はぁ」

先輩「……」ボフッ

先輩「つーかれたーぁー」

先輩「……」

先輩「……あの一年」

先輩「……」

先輩(変なヤツだったなぁ)

42 : VIPに... - 2014/11/22 12:00:53.02 avu6kxiy0 33/212



後輩『私もすごい好きなんですこの本! もう、何回も読んでて、読むたびに感動しちゃって!』


後輩『嬉しいです、私! 同じ本を好きな人に会えて、本当に!』ニコリ



先輩「……」

先輩(そんなに面白いのか、この本……)

先輩「……」ペラッ

先輩「……」

先輩「……かもめって」

先輩(童話か?)

43 : VIPに... - 2014/11/22 12:08:23.46 avu6kxiy0 34/212




すべてのカモメにとって、重要なのは飛ぶことではなく、食べることだった。だが、この風変わりなカモメ、ジョナサン・リヴィングストンにとって重要なのは、食べることよりも飛ぶことそれ自体だったのだ。その他のどんなことよりも、彼は飛ぶことが好きだった。



先輩「……」

先輩「……ふぅん」ペラッ

先輩「……」

先輩「……」ペラッ



ジョナサンは、<朝食の集い>に集ったカモメの群れのまん中を、弾丸のようにまっすぐ突き抜けていったのだ。時速三百四十キロのスピードで、目を閉じ、風と羽毛のまきおこす怒号のような金属音につつまれて。


先輩「……」

先輩「……はっ?」

先輩「……時速340キロっ!?」

44 : VIPに... - 2014/11/22 12:09:13.04 avu6kxiy0 35/212

先輩「……」

先輩「……」ペラ



ジョナサンの両翼のところに現れたその二羽のカモメは、星の光のように滑らかで、夜空の高みに優しく心をなごませるような輝きをはなっていた。



先輩「……は」

先輩「はぁぁ……!?」



そして、ジョナサン・リヴィングストンは、星のように輝く二羽のカモメとともに高く昇ってゆき、やがて暗黒の空のかなたへと消えていった。



先輩「……」

先輩「……」ポカーン





45 : VIPに... - 2014/11/22 12:10:15.34 avu6kxiy0 36/212






~翌日・昼休み 図書館~


後輩「……あっ」


先輩「……」


後輩「……」トタタッ

先輩「……」

後輩「あの……」

先輩「……」

後輩「あのっ、先輩……?」

先輩「あぁ?」

後輩「……っ」ビクッ

46 : VIPに... - 2014/11/22 12:10:54.57 avu6kxiy0 37/212

先輩「あぁ、あんた……」

後輩「はい。あの……、き、昨日は……すみませんでした!」ペコリ

先輩「別に、謝られる筋合いねーけど」

後輩「でも……、なんだか、ご迷惑おかけしたみたいで……」

先輩「別に」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……あう」

先輩「……あのさ」

後輩「は、はい?」

47 : VIPに... - 2014/11/22 12:11:41.67 avu6kxiy0 38/212

先輩「読んだんだけど、これ。かもめのジョナサン」

後輩「本当ですか!? どうでした!? 感動でしたよねぇ!」

先輩「いや、全然」

後輩「うぇぇぇ!?」

先輩「……おかしいだろって。何でかもめが340キロで飛ぶんだよ」

後輩「ハヤブサも、それくらいで飛ぶらしいですよ」

先輩「かもめはハヤブサじゃねぇよ!」

後輩「それだけ頑張ったんですよね、ジョナサンは……!」ジィィン

先輩「努力で済ますな! ……あと、何だあの……いきなり、光り輝く二羽のかもめが……あの……、何だあれ!」

後輩「感動のシーンですよね……」

先輩「おっかしいだろ!」

48 : VIPに... - 2014/11/22 12:12:26.70 avu6kxiy0 39/212

後輩「えぇ!?」

先輩「展開ぶっとびすぎて、本間違えたかと思ったわ!」

後輩「えぇー……、でもでも、考えてみてくださいよ! ある日、きらきらーってした人が、先輩の前に現れて」

先輩「おう」

後輩「貴方を迎えに来ましたー、って言ったら、どう思います?」

先輩「……宇宙人? って思う」

後輩「……先輩……」

先輩「な、なんだよ……」

後輩「意外と、ロマンチストなんですね……」

先輩「なんっで、そうなるんだよっ!」

51 : VIPに... - 2014/11/22 20:47:16.26 avu6kxiy0 40/212

後輩「クスクス……」

先輩「何がおかしいんだ、この……」

後輩「すみません……、私、こうやって誰かと本の話したのって、はじめてで……」

先輩「……」

後輩「すごく、楽しくて」クスクス

先輩「……変なやつ」

後輩「あっ、そうだ!」

先輩「うん?」

後輩「部室、来ませんか? これから!」

先輩「部室?」

後輩「先輩なら、きっと気に入るんじゃないかなって本があって!」

先輩「いや、私は……」

後輩「ねっ」キラキラ

先輩「……ぁー」





52 : VIPに... - 2014/11/22 20:47:44.62 avu6kxiy0 41/212






~文芸部 部室~


後輩「ささ、どうぞどうぞ!」

先輩「お邪魔――……って」

後輩「ちょっと座っててくださいね! ……えーっと、確かこの辺に……」ガサゴソ

先輩「……」

後輩「……あれぇ?」ガサガサ

先輩「……なぁ」

後輩「こっちかな? んー……、あ、はい? 何ですか?」

先輩「部室って……、誰もいねーけど……」

53 : VIPに... - 2014/11/22 20:48:57.68 avu6kxiy0 42/212

後輩「幽霊部員ばっかりですからねー。……あ、こっちか」ガサゴソ

先輩「……いっつも、こんななの?」

後輩「まぁ、大抵は」ドサドサドサ

先輩「……」

後輩「ちゃんとやりたい人は、文学研究会の方に行っちゃうらしいですからね、ウチの学校、伝統的に」

先輩「……へぇ」

後輩「文芸部は、ほとんど活動してないですねぇー」ガサガサ

先輩「……お前は?」

後輩「後輩です!」

先輩「名前聞いたんじゃねーよ。……後輩は、文学研究会? にしなかったんだ?」

54 : VIPに... - 2014/11/22 20:49:29.62 avu6kxiy0 43/212

後輩「あはは、書くのは苦手なんで。読むのは好きなんですけどねぇ」

先輩「……」

後輩「あ、でも……私、部活好きですよ! 本読めるから」

先輩「読むって言ってもよ……、ひとりだろ?」

後輩「はい」

先輩「本読むだけ?」

後輩「はい」

先輩「……寂しいやつ」

55 : VIPに... - 2014/11/22 20:49:58.58 avu6kxiy0 44/212

後輩「寂しくないですよぉ。本読んでますもん」

先輩「意味わかんねー。それが寂しいって言ってんの」

後輩「あっ!」

先輩「ん?」

後輩「あったぁ……」

先輩「……何?」

後輩「この小説、ぜひ先輩に読んでもらいたくて!」

先輩「私に?」

後輩「はい!」

先輩「……ふぅん」ペラッ

56 : VIPに... - 2014/11/22 20:50:31.72 avu6kxiy0 45/212

後輩「最初は普通の恋愛小説なんですけどぉ、実はヒロインが宇宙人で――」

先輩「……」ポイッ

後輩「ああっ! 本を投げないでください!」

先輩「つまんなそう」

後輩「えぇー……」

先輩「……っていうか、お前すっごいサラッとネタバレする人なのな……」

後輩「あ、じゃあこっちはどうですか? 宇宙船の中に入って、色んな宇宙人と――」

先輩「……」ポイッ

後輩「ああっ!!」

先輩「いや、あのな、別にウチュージン大好き人間じゃないからな、私は」

後輩「……えっ」

先輩「えっ、じゃないんだよ、えっ、じゃあ」

57 : VIPに... - 2014/11/22 20:51:02.85 avu6kxiy0 46/212

後輩「うーん……、じゃあ、こっち? いやいや、こっちの方が読みやすいし……」ブツブツ

先輩「……」

後輩「……いや、ここは敢えてここ?」ブツブツ

先輩「……」

後輩「むぅ……」ブツブツ

先輩「……あのさ」

後輩「はい?」

先輩「お前さ、あんまり私に関わらない方がいいよ?」

後輩「……?」

先輩「うわさ、本当だから」

後輩「……」

58 : VIPに... - 2014/11/22 20:51:36.99 avu6kxiy0 47/212

先輩「昨日みたいなこと」

後輩「……」

先輩「しょっちゅうしてるから」

後輩「……」カァァ

先輩「お前まで」

後輩「……」

先輩「そーいう目で、見られるかもって……」

後輩「……先輩は」

先輩「……ん」

後輩「優しいんですね!」

先輩「……はぁ?」

59 : VIPに... - 2014/11/22 20:52:09.50 avu6kxiy0 48/212

後輩「はい、どうぞ」

先輩「お、おい……」

後輩「これ、私のオススメです。かもめのジョナサンの次くらいにおすすめ」

先輩「……」

後輩「あの、私、き……昨日みたいなのは……」

先輩「……」

後輩「あ、あんまり、よくないかも、って……思いますけど……」

先輩「……」

後輩「でも、えっと……、なんていうか……、うまくいえないんですけど……」

先輩「……」

後輩「先輩とは、もっとお話、してみたいなって……」

先輩「……」

60 : VIPに... - 2014/11/22 20:52:39.38 avu6kxiy0 49/212

後輩「……あの、うぅ……」

先輩「……はぁ」

後輩「す、すみません……」

先輩「変なやつ……」

後輩「うぅ……っ」

先輩「……これ」

後輩「あ……」

先輩「借りてく」

後輩「は、はい!」





61 : VIPに... - 2014/11/22 20:53:28.05 avu6kxiy0 50/212






~夜 先輩宅~


先輩「……」

先輩「……」



後輩『意外と、ロマンチストなんですね……』



先輩「……はぁ」

先輩(何なんだ、あいつ……)

先輩「……」

先輩「……ま、どうでもいいや」

62 : VIPに... - 2014/11/22 20:54:04.80 avu6kxiy0 51/212

先輩「『お客』でもない他人と」

先輩(今さら……)

先輩「……馴れ合ったところで……」

先輩「……」

先輩「……」



後輩『すみません……、私、こうやって誰かと本の話したのって、はじめてで……』

後輩『すごく、楽しくて』クスクス


後輩『……先輩は』

後輩『優しいんですね!』



先輩「……」

63 : VIPに... - 2014/11/22 20:54:36.37 avu6kxiy0 52/212

先輩「……」

先輩「……本」

先輩(……ま、適当に読んで)

先輩(んで、明日つき返して、それで……)

先輩「……」

先輩「……」ペラッ

先輩(……それで……)



後輩『先輩と、もっとお話、してみたいなって……』



先輩「……」ペラ

先輩「……」

先輩「……」ペラッ





66 : VIPに... - 2014/11/23 13:01:39.97 APVdA9H30 53/212






~三日後 放課後・文芸部 部室~


後輩「……」

後輩「……」ペラ

後輩「……」

後輩(先輩……)

後輩(やっぱり、来てくれない、かぁ……)

後輩「……」

後輩「……」ペラッ

後輩「……はぁ」


ガラッ


先輩「おっす」

後輩「……?」

67 : VIPに... - 2014/11/23 13:02:31.90 APVdA9H30 54/212

先輩「……?」

後輩「……先輩っ!?」

先輩「反応にぶっ! カメか」

後輩「人間です!」

先輩「知ってる」

後輩「あ、あの……、今日は……」

先輩「……これ」

後輩「あ……」

先輩「読んだ」

68 : VIPに... - 2014/11/23 13:03:09.52 APVdA9H30 55/212

後輩「……ど、どうでした?」

先輩「まぁ……、かもめのやつよりは、面白かったんじゃねーかな」

後輩「……!」パァァ

先輩「読書なんてさ、したことねーから、よく分かんねーけど……」

後輩「……! ……!」ガサガサガサッ

先輩「まぁ、暇つぶしには十分……って、後輩?」

後輩「せんぱぁい!」ドサドサッ

先輩「うぉっ」

後輩「こ、これ! これがその作家の代表作で! こっちがこれに影響を受けた日本の作家の! それでこれが――、これとこれと――」

先輩「はしゃぐな」ベシ

後輩「ぷひゃ」

先輩「……ぷっ」

69 : VIPに... - 2014/11/23 13:03:46.81 APVdA9H30 56/212

後輩「ぶったぁ……」

先輩「あはは、ぷひゃ、ってなんだよ、ぷひゃ、って……」ケラケラ

後輩「……先輩」

先輩「くっく……、ん?」

後輩「笑った顔、初めて見ました……」

先輩「な、何だよ、見るなよ……」

後輩「え、何でですか」ジィーー

先輩「やめろったら」

後輩「いいじゃないですかぁ、見せてくださいよ。にこーって、ほら、にこーって。はい、1たす1はー?」

先輩「見せもんじゃねー!」

70 : VIPに... - 2014/11/23 13:04:19.56 APVdA9H30 57/212

後輩「あ、じゃあ変顔しますね、私。絶対笑うやつ」

先輩「いいからそういうの!」

後輩「……」ムィィィーーン

先輩「ぶふっ」

後輩「わぁぁ……」

先輩「あっははは! み、見んなばか!」

後輩「……」ムィィーンン

先輩「あっはははは! あはははは!」ベシッベシッ

後輩「ぷひゃぁ」





71 : VIPに... - 2014/11/23 13:04:58.12 APVdA9H30 58/212






後輩「……」


後輩(あれから……)

後輩(先輩は、よく部室に来てくれるようになって……)


ガラッ


先輩「おーっす」

後輩「いらっしゃーい」


後輩(先輩のこと、色々……知ることができて……)


72 : VIPに... - 2014/11/23 13:05:42.21 APVdA9H30 59/212


後輩「どうでした、この間の?」

先輩「あー、私ダメ。挫折した」

後輩「えぇー、読みやすいと思ったのになぁ……」

先輩「暗いんだよ、話が」


後輩(悲劇よりも、明るい話が好きなこと……)


先輩「……ま、かもめのジョナサンよりは、マシかな」

後輩「……、先輩、ジョナサン駄目ですよねぇ……」

先輩「あれは駄目だ。ムカつくもん」

後輩「感動なのに……」


後輩(『かもめのジョナサン』は、好きじゃないこと……)


73 : VIPに... - 2014/11/23 13:06:23.41 APVdA9H30 60/212


先輩「だいたい、他のかもめを見下してるんだよ、ジョナサンは」

後輩「そんなことないですよぉ」

先輩「自分が好きなことしてるからって、そうじゃない連中を、ばかにしてるんだ」

後輩「でも、『他人を愛することを学べ』って、サリヴァンから教わったから……」

先輩「それはチャン長老のセリフだ」

後輩「……」


後輩(……もしかしたら、本当はちょっと、好きなのかもしれないこと……)


74 : VIPに... - 2014/11/23 13:07:03.01 APVdA9H30 61/212

後輩「……」

先輩「……」ペラッ

後輩「……」

先輩「……うぉ」

後輩「……」ビク

先輩「……」ペラッ

後輩「……」

先輩「……あぁ、やばいって」

後輩「……」


後輩(読みながら、独り言が出ちゃうこと……)

75 : VIPに... - 2014/11/23 13:07:34.63 APVdA9H30 62/212


先輩「飲みもん買ってきたー」

後輩「……な、何です、それ?」

先輩「購買ちゃんソーダ、アボカドバター味」

後輩「……」

先輩「新発売!」

後輩「……底に何か、溜まってます」

先輩「アボカドだろ」


後輩(意外と、新しいもの好きなこと……)


76 : VIPに... - 2014/11/23 13:08:11.67 APVdA9H30 63/212


先輩「じゃあ次いくぞー、……火星探査車」

後輩「火星たんしゃしゃ」

先輩「ブフッ……」

後輩「むぅ……、火星たんささ! 火星しゃんさしゃ! 火星ちゃん……」

先輩「あっはははは! 全滅! 全滅かよ!」

後輩「かしぇー……っ! うぅ……」

先輩「あはははは! あはははは!」バンバン


後輩(よく、笑うこと……)


77 : VIPに... - 2014/11/23 13:08:49.10 APVdA9H30 64/212


先輩「……んー」ノビー

後輩「……あ、読み終わりました?」

先輩「おう」

後輩「その本、続きありますよ、後日談みたいなの」

先輩「あー……、読む」

後輩「あ、私の家だったかも……」

先輩「そっか、じゃあ明日に――……」


後輩(それから……)


ピリリリリ♪ ピリリリリ♪


78 : VIPに... - 2014/11/23 13:09:21.55 APVdA9H30 65/212


ピリリリリ♪ ピリリリリ♪


後輩「……あ」

先輩「……」


後輩(携帯のアラームが鳴ったら……)


後輩「……」

先輩「……じゃ、今日はもう行くわ」

後輩「……はい」


後輩(誰かと……『約束』の、時間で……)

後輩(それから……)


79 : VIPに... - 2014/11/23 13:10:01.06 APVdA9H30 66/212


ガラッ


先輩「じゃな」

後輩「……またです」


後輩(それからは……)

後輩(誰かと……)


バタン


後輩「……」





83 : VIPに... - 2014/11/24 21:24:09.73 9iPk3GNy0 67/212






~数日後 教室~


後輩「……」

後輩「……」ボンヤリ


後輩(いけないことだとは、思うけど……)

後輩(先輩にとっては、きっと大事な……、必要なことなのかもしれない……)

後輩「……」

後輩「……」

後輩(ゾラの『ナナ』とか……いや、あれは悲劇だっけ? じゃあ『ファニー・ヒル』とか……)

後輩(吉行淳之介……は、読んだことないや)

後輩(色んな小説の、体を売る女性たち……)

後輩(特別な人たちじゃなくて……、私と同じように、考えたり、悩んだりする……)

84 : VIPに... - 2014/11/24 21:24:49.94 9iPk3GNy0 68/212

後輩「……」

後輩「……なんて」

後輩「本で読んだだけなんだけどさ……」

後輩(読んだだけの――……)


先輩『……あんた、すげー抱き心地いいんだね』


後輩「……っ!」カァァァ

後輩(忘れろ! 忘れろ私……!)

後輩「……!」ワタワタ

「後輩ぃー?」

後輩「ひぃう!」

「なーにしてんの?」

後輩「べ、別に何も……」

「……ふーん」

後輩「……」

85 : VIPに... - 2014/11/24 21:26:42.95 9iPk3GNy0 69/212

「……むぅ」ジィー

後輩「な、なに?」

「後輩さぁ、最近ちょっと、雰囲気変わったよね……」

後輩「え、そう……かな……」

「うん、なんか、明るくなった気がする」

後輩「自分では分かんないけど……」

「と思ったら、さっきみたいにボンヤリしてることも増えたし」

後輩「そ、そんなことないよぉ!」

「あと挙動不審」

後輩「挙動不審!?」

「なーんか、ひとりでワタワタしてたりするしー?」

後輩「わ、ワタワタって何っ? 私、そ、そんなこと……」ワタワタ

「それだよ、それそれ」

86 : VIPに... - 2014/11/24 21:27:28.67 9iPk3GNy0 70/212

後輩「……あ、うぅ……」

「後輩……、もしかして」

後輩「え」

「……ははーん」

後輩「え、え……、何それ」

「はぁっはっはぁーん!」ズムムム

後輩「いや、本当に何それ! 何そ……それ何! すごいよ友ちゃん!」

「好きな人、できたんでしょ」

後輩「えぇっ……!」

「図星っしょ」

87 : VIPに... - 2014/11/24 21:28:09.68 9iPk3GNy0 71/212

後輩「えぇぇぇ!? 違う違う! わ、私は……!」

後輩(先輩のことは……)

後輩「そ、そういうのじゃなくて……!」

「ふぅん?」

後輩「一緒にいると、楽しいとか……、その……そういうので……」

「……」

後輩「だから……いや、でも、何考えてるのかとか、もっと知りたいなって思うけど……」

「……」

後輩「で、でもでも、それは気になるといえば、気になるってだけで……、だから、好きっていうのとは……その……」ワタワタ

「……ぁー、はいはい。甘酸っぱそうで何よりッスねーっ」カーッペッ

後輩「友ちゃん?」





88 : VIPに... - 2014/11/24 21:28:54.66 9iPk3GNy0 72/212






~放課後・文芸部 部室~


後輩「んー……、じゃ、これなんてどうですか?」

先輩「ツルゲ……? 何人だよ」

後輩「ロシアの人です」

先輩「難しそ……」

後輩「大丈夫ですよ! 結構読みやすいですよ? 薄いし」

先輩「んー、じゃあ……読む」

後輩「どうぞどうぞ!」

先輩「さんきゅー」

後輩「……」

89 : VIPに... - 2014/11/24 21:29:31.63 9iPk3GNy0 73/212

先輩「……」ペラッ

後輩「……」

後輩(たとえば、今……)

後輩(先輩が何考えてるのか、私には分からないけど……)

先輩「……」ペラッ

後輩「……」

後輩(でも、そもそも、そんなことを考えている、私自身のことが……)

後輩(自分でも、よく分かってなくて……)

先輩「……しかし」

後輩「……」ピクッ

先輩「本当に誰も来ねーんだな、ここ」

後輩「そ、そうですね! あ、でも……」

90 : VIPに... - 2014/11/24 21:30:07.23 9iPk3GNy0 74/212

先輩「……ん?」

後輩「たまに、生徒会長来ますよ。ほんとたまにですけど……」

先輩「会長ぉ? 何でぇ?」

後輩「いえ、何でも、放課後は校舎の見回りしてるらしいですよ、自主的に」

先輩「何だそりゃ」

後輩「色んな部活の様子とか、残ってる生徒が何してるとか、チェックしてるらしいですよ」

先輩「はぁ……」

後輩「そうそう、結構前なんですけど――……」





91 : VIPに... - 2014/11/24 21:30:51.03 9iPk3GNy0 75/212






後輩『さて、部活部活……あれ?』


チョットー

アハハハ


後輩『……あっ』ガラッ

幽霊部員1『……あ?』

後輩『あ、あの……! ここ、文芸部の部室で……、その……』

幽霊部員2『は? あんた何?』

幽霊部員3『っていうか、ウチらも文芸部だし!』

部員1『ねー』

後輩『でも……、本を……』

部員2『はぁ? だから何なの』

部員3『って言うかこいつ、1年じゃん。ウザッ』

部員1『邪魔なんですけどー。”部活”しないなら、帰ってくんない?』


キャハハハ


後輩『うぅ……』グスッ

92 : VIPに... - 2014/11/24 21:31:32.46 9iPk3GNy0 76/212

会長『――ふむ、ならば君たちは、それが文芸部の正式な活動だと?』

後輩『……!』

部員1『げっ……』

部員2『会長……!?』

会長『私には、ただ部室を占拠して、無駄話をしているだけにしか、見えないのだがね』

部員3『は……はぁ? 勝手に決め付けないでよ』

部員1『そ、そうよ……!』

会長『しかし、あんまり目に余るようであれば、生徒会としても、黙っていられない。分かるかい?』

部員1『……』

部員2『……いこーよ』

部員3『チッ……』

93 : VIPに... - 2014/11/24 21:32:18.40 9iPk3GNy0 77/212

後輩『……』ポカン

会長『……ふふっ、あっさり引き下がって……。生徒会程度、そんな権限があるわけないのにな』

後輩『あっ、あの、会長……』

会長『ん?』

後輩『ありがとうございましたっ!』ペコリ

会長『いやいや、気にすることはない。好きでやってることだからね。それに……』スッ

後輩『……』

会長『キミのような、真面目に部活に取り込む子の力になれて、私としても嬉しいよ』ナデナデ

後輩『あっ』カァァ

会長『ふふっ――……』ニッコリ





94 : VIPに... - 2014/11/24 21:32:56.56 9iPk3GNy0 78/212






後輩「……って」

先輩「うっげ……」

後輩「うっげ、って……。先輩、会長さん苦手です?」

先輩「苦手ってか……、キザくせーし、何だかんだ偉そうだしよー」

後輩「えぇー、カッコいいじゃないですかぁ」

先輩「あと口調が変」

後輩「それは……先輩が言っちゃ駄目なんじゃ……」

会長「――おやおや」ガラッ

後輩「あっ、会長……!」

先輩「げっ……」

95 : VIPに... - 2014/11/24 21:34:05.17 9iPk3GNy0 79/212

会長「うわさされるのは構わないが、陰口はご免こうむりたいね」

後輩「す、すみません……」

会長「いやいや、キミのことではないよ。私が言ってるのは……」チラッ

先輩「……はぁ」

会長「……部員でもないキミが、どうしてここにいるのかな? 先輩クン?」

先輩「ほっといてくださーい」

会長「いいや、放っておくわけにはいかないね。特にキミのような生徒は」

先輩「……」

会長「どういうつもりで、文芸部に近付いたかは知らないが……」

後輩「か、会長、違うんです! これは私が……」

会長「心配ないよ、後輩クン。すべて私に任せたまえ」ニッコリ

後輩「あう……」

先輩「ケッ」

96 : VIPに... - 2014/11/24 21:34:39.00 9iPk3GNy0 80/212

会長「きなさい、先輩クン。キミとはじっくり、話し合う必要がありそうだ」

先輩「……へいへい」

後輩「先輩っ」

先輩「心配すんなって。お前は大人しくしてろ」

後輩「でも、うぅ……」

先輩「大丈夫」

後輩「……」

先輩「またな」

後輩「……」コクン





97 : VIPに... - 2014/11/24 21:35:15.57 9iPk3GNy0 81/212






~廊下~


会長「……」スタスタ

先輩「……どこ行くんだよ」スタスタ

会長「ずいぶんと」

先輩「ん?」

会長「なつかれたんだな」

先輩「……変なやつだろ」

会長「キミが言うか」

先輩「ほっとけ」

会長「……意外だった」

先輩「ん?」

98 : VIPに... - 2014/11/24 21:35:57.45 9iPk3GNy0 82/212

会長「先輩クンが、あんな風に、誰かと打ち解けているところを、見れるなんてな」クックッ

先輩「うるせ」

会長「他人なんて、どうでもいいってタイプだろキミは、ええ?」

先輩「どうでもいい他人は、どうでもいいんだよ。あんたとかな」

会長「すると、彼女はどうでもよくはないと」

先輩「……」

会長「……ふふっ」

先輩「ちげーからな」

会長「……まさか、本気になったわけじゃ、ないだろうね」

先輩「よせよ。ちげーって言ってるだろ」

会長「ふん?」

99 : VIPに... - 2014/11/24 21:36:51.19 9iPk3GNy0 83/212

先輩「そんなんじゃねーから。ただ、暇だから寄り付いてるだけだ」

会長「そう……。まぁ、そうだろうねぇ、生来のクズだものなぁ、キミは」

先輩「うるせーよ」

会長「何かに興味を持ったり、本気になったり、そういうことがうまくやれない、がんばれない、そんなどうしようもない――……」

先輩「……なぁ」

会長「うん?」

先輩「説教なら、ちゃっちゃと済ませてくれねーかな。私この後、大事な『約束』が――……」

会長「心配ない」

先輩「あ?」

100 : VIPに... - 2014/11/24 21:37:25.22 9iPk3GNy0 84/212

会長「今日の『お客』は、私だ」ニッコリ

先輩「……あー」

会長「ふふ……大事な『約束』か。嬉しいねぇ、そんなに気にかけてもらえて……」クックッ

先輩「……あのさ」

会長「何かな」

先輩「私も大概どうしようもねーけど、あんた本当にどうしようもねーな……」

会長「知ってるよ」





105 : VIPに... - 2014/11/25 22:01:13.39 k0Cg2c200 85/212






~日暮れ過ぎ~


先輩「……」トボトボ

先輩「……はぁ」


先輩(やっと解放してもらえた……)

先輩(あいつ……会長の相手は)

先輩(どうも、苦手なんだよな……)


先輩「……」

先輩「……ん?」チラッ

先輩(あそこ……部室? まだ電気ついて――……)

先輩「……」

先輩(あいつ……、まだいるのか? もしかして、何か……)

先輩「……」

先輩「……」タッ





106 : VIPに... - 2014/11/25 22:01:56.24 k0Cg2c200 86/212






~文芸部 部室~


ガラッ


先輩「……」

後輩「……」スピー

先輩「……」

後輩「……」プフー

先輩「……」

後輩「……ムニャ」

先輩「……うーん」

107 : VIPに... - 2014/11/25 22:02:36.46 k0Cg2c200 87/212

後輩「……」zzz

先輩「腹立つくらい安らかな寝顔だなぁ……」

後輩「……ンヘヘ」ゴロン

先輩「寝相わりー……」

後輩「……」zzz

先輩「……」

先輩(こいつ……)

先輩(意外と、あるんだよなぁ……)

後輩「……んっ」

先輩「……」

後輩「……」スピー

先輩「……」ムラ

108 : VIPに... - 2014/11/25 22:03:31.38 k0Cg2c200 88/212

先輩(やばい……)

先輩「……」

先輩(まだ、さっきの熱が……)

先輩(引いてないのかも……)

先輩「……」ナデ

後輩「……」zzz

先輩「……」ムニュ

後輩「……ふ、ぅ」

先輩(体温高い……、柔らかい……)

109 : VIPに... - 2014/11/25 22:04:10.41 k0Cg2c200 89/212

先輩「……」モミ

後輩「ん……」

先輩「って、いやいやいや!」

先輩(何してんだ私!)

先輩(……落ち着け、落ち着け)

先輩「……おい、起きろ、こら」ユサユサ

後輩「……」グゥ

先輩「起きろってーの」グニー

後輩「むにゃ……、ふぁい……?」

先輩「ふぁい、じゃないんだよ」

110 : VIPに... - 2014/11/25 22:09:58.50 k0Cg2c200 90/212

後輩「……? ……!? ……先ぱっ……!」ガバッ

先輩「なーに寝てんだ、ばか」

後輩「だっ、だだだ大丈夫だったんですか!?」

先輩「当たり前だろ」

後輩「でも、でもでも……!」

先輩「……、……部員、なったから、私。文芸部」

後輩「え……」

先輩「部員なら、部活に出ても問題ないって、あいつも……」

後輩「うわぁ……!」ガシッ

先輩「お、おい」

後輩「良かったですねぇ!」ギュッ

111 : VIPに... - 2014/11/25 22:10:50.84 k0Cg2c200 91/212

先輩「……」

後輩「嬉しいです、私!」

先輩「……」

後輩「また一緒にいれますね、先輩!」

先輩「……」



会長『……まさか、本気になったわけじゃ、ないだろうね』



先輩「……」

後輩「……先輩?」

先輩「ま、飽きるまではな」

後輩「えぇー、そんなぁ……」

先輩「ほら、帰るぞ。正面玄関、もう閉まってるから、裏口行くぜー」

後輩「え? うそ、もうこんな時間!? えっ、なんで!? 病気!?」

先輩「ばーか」





112 : VIPに... - 2014/11/25 22:11:30.61 k0Cg2c200 92/212






~夜・帰り道~


先輩「――だから、心配ないって言ったろー」

後輩「無理ですって、本当に心配したんですからぁ」

先輩「嘘つけ、ぐっすり寝てたくせに」

後輩「ぐっすりではないです! 眠り浅かったです! 半端に寝たから、今も若干ダルさが……」

先輩「知らねーよ……」

後輩「もう……」

先輩「……」

後輩「……」

113 : VIPに... - 2014/11/25 22:12:10.36 k0Cg2c200 93/212

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……はぁ」

先輩「……」

後輩「……寒い」

先輩「……なぁ」

後輩「はい?」

先輩「ウチくる?」

後輩「え?」

先輩「……いや、もう割と遅いし……」

後輩「んー」

先輩「寒いし」

114 : VIPに... - 2014/11/25 22:12:38.75 k0Cg2c200 94/212

後輩「ん、でも大丈夫ですよぉ、まだバス、ありますし」

先輩「そっか」

後輩「はい! ……あ、私バス停、こっちなんで」

先輩「おー、そんじゃな」

後輩「はい! また明日ぁ!」

先輩「気が向いたらな」

後輩「もう、またそんなこと言ってぇ!」

先輩「はいはい」ヒラヒラ

後輩「おやすみなさーい」ヒラヒラ


タタッ…


先輩「……」

115 : VIPに... - 2014/11/25 22:13:16.89 k0Cg2c200 95/212

先輩「……」

先輩「……はぁぁ」

先輩(なーんで、誘っちゃったんだろうなぁ、私……)

先輩「……しかも、断られるし」

先輩「……」

先輩「……」

先輩(本気なわけじゃない……)

先輩(ただ、何か……)


後輩『また一緒にいれますね、先輩!』


先輩(あいつ……)

先輩(どう思ってるんだろうな、私のこと……)





116 : VIPに... - 2014/11/25 22:13:55.66 k0Cg2c200 96/212






タッタッタッ


後輩「~♪」タッタッ

後輩「……」タッ…

後輩「……」

後輩(さっきのって……)


先輩『ウチくる?』


後輩「……」ピタリ

後輩(私、もしかして……)

後輩(誘われてた……!?)

後輩「いや、いやいやいや!」

後輩「……」カァァァ

117 : VIPに... - 2014/11/25 22:14:25.69 k0Cg2c200 97/212

後輩(そ、そんな変な意味のわけないじゃん!)

後輩(そう、あの先輩だもん! あんなの、あいさつ程度の……)

後輩「……」

後輩(そう……)

後輩「……」

後輩(あいさつみたいに……、誰にでも……)

後輩「……」

後輩(先輩……)

後輩(どう思ってるのかな、私のこと……)





118 : VIPに... - 2014/11/25 22:15:18.99 k0Cg2c200 98/212






~翌日 休み時間・1年教室~


ブー ブー


後輩「あ、メール……」カチッ

後輩「……」


『今日部活行かないよー(乂'ω')』


後輩「えぇー……。『来て下さいよ』っと……」カチカチ

119 : VIPに... - 2014/11/25 22:15:56.68 k0Cg2c200 99/212


ブー ブー


『アレなんだよ』


後輩「あー……」カチカチ


『お大事に』


『うん (o´・_・`o)ノシ』


後輩「……」

後輩(……っていうか、顔文字可愛いんだけど)

後輩(まぁ、どうせ色んな人に使ってるんだろうけど――って)

後輩「……」

後輩(……私、何考えて……)

後輩「……」

後輩(昨日から、私……変だ……)

123 : VIPに... - 2014/11/26 21:55:40.24 Kv8dZQ3a0 100/212

「後はーい!」

後輩「友ちゃん?」ビクッ

「見て見てー! さっきの授業中、がんばって似顔絵描いたんだー!」

後輩「……誰?」

「阪神の上本」

後輩「ごめん、分かんない」

「えぇー、似てると思うんだけど……。あ、そうそう、後輩、今日一緒に帰らない?」

後輩「友ちゃん、部活は……」

「サボる!」

後輩「はぁ……」

124 : VIPに... - 2014/11/26 21:56:34.14 Kv8dZQ3a0 101/212

「いいじゃん、たまにはさぁ! 息抜きだよ息抜き、後輩も部活休んで――……」

後輩「……うん、いいよ」

「そう言わないでぇ、今日くらい――って、えぇ!?」

後輩「一緒に帰ろっか。部活休んで」

「……」

後輩「……友ちゃん?」

「……後輩」

後輩「うん」

「の、ニセモノ!?」

後輩「ち、違うよぉ!」

125 : VIPに... - 2014/11/26 21:57:12.80 Kv8dZQ3a0 102/212

「本物の後輩が、部活サボるはずがないっ」

後輩「本物だってばぁ」

「どうかな……、本物の後輩なら、ものすごい変顔ができるはずだ!」

後輩「……」ムィィーーンン

「あはははははっ! あっははははっ!」バンバン





126 : VIPに... - 2014/11/26 21:57:59.72 Kv8dZQ3a0 103/212






~放課後・市街 書店~


先輩「……」

先輩(うーん……)

先輩(部活行かない日も、本屋寄ってるとか……)

先輩(なんか、感化されてるな、私……)

先輩「……」ウロウロ

127 : VIPに... - 2014/11/26 21:58:36.83 Kv8dZQ3a0 104/212

先輩「……ん?」

先輩「これ……」


『かもめのジョナサン 完全版』


先輩「完全版……」

先輩(ジョナサンのくせに生意気な……)

先輩「……」

先輩(あいつは……)

先輩(喜びそうだな……)

128 : VIPに... - 2014/11/26 21:59:16.17 Kv8dZQ3a0 105/212






後輩『えっ、これって……! すごい! 幻の第四章を収録!?』

先輩『これ、やるよ』

後輩『ええぇっ!? 本当にっ? いいんですか先輩!?』

先輩『おう』

後輩『ありがとうございますぅ!』パァァ

先輩『いいってことよー』







先輩「……」

先輩「……よし」

129 : VIPに... - 2014/11/26 21:59:58.80 Kv8dZQ3a0 106/212

先輩「……」ヒョイ

先輩「……あ」

先輩(でも……)

先輩「でも……、後輩……」







後輩『でも……、先輩……』

先輩『うん?』

後輩『この本を買ったお金って……』

先輩『……』

後輩『誰から、もらったお金なんですか?』

130 : VIPに... - 2014/11/26 22:00:54.96 Kv8dZQ3a0 107/212

先輩『……』

後輩『何をして、稼いだお金なんですか……?』

先輩『……』

後輩『……そんなお金で、プレゼントされても……私』

先輩『……』

後輩『困ります……』







先輩「……」

先輩「……」

先輩「……」ハッ

131 : VIPに... - 2014/11/26 22:01:28.96 Kv8dZQ3a0 108/212

先輩「……いやいや」

先輩(あいつはそんなこと言わねーだろ)

先輩(言わねー、けど……)

先輩「……」

先輩「……うぅーん」モンモン





132 : VIPに... - 2014/11/26 22:02:25.04 Kv8dZQ3a0 109/212






「――っていうかさぁ」

後輩「うん?」

「なーんで本読む部活サボって、本屋に来ちゃうかなー!」

後輩「えへへ、まあまあ」

「まったくぅー」

後輩「あとでゲームセンターにも付き合うから、ねっ」

「約束だよぉー」

後輩「……」

「……後輩?」

後輩「あっ、うん。そうだね、約束……――あれ」

133 : VIPに... - 2014/11/26 22:02:52.67 Kv8dZQ3a0 110/212

「……どしたの?」

後輩(あそこにいるのって……)

「どしたー? うんこかー?」

後輩「……友ちゃん、ちょっと待っててね!」ダッ

「あっ、ちょっとぉ!」





134 : VIPに... - 2014/11/26 22:03:33.96 Kv8dZQ3a0 111/212






先輩「……」

先輩(やっぱり……やめておこう……)

先輩「……はぁ」

後輩「せーんぱい?」

先輩「うひゃあぁ!?」ビクーッ

後輩「あはは、びっくりしました?」

先輩「後輩!? おま……、何でここに……」

後輩「偶然ですよぉ。たまたま寄ったら、先輩見かけたから……」

135 : VIPに... - 2014/11/26 22:04:15.45 Kv8dZQ3a0 112/212

先輩「……部活は」

後輩「えへへ、サボっちゃいました」

先輩「お前なぁ……」

後輩「それより、これ!」

先輩「あっ……」

後輩「完全版ですよね! 私も買って読みましたけど、もぉ……すっごいよかったですよ!」

先輩「……ぁー」

後輩「四章で、もうすっごい泣いちゃって、一週間くらい引きずっちゃってー!」

先輩「……」

先輩(そ、そっか……)

先輩(そうだよな……、冷静に考えれば)

先輩(こいつが、買ってないわけないよな……)

136 : VIPに... - 2014/11/26 22:05:18.84 Kv8dZQ3a0 113/212

先輩「はは……」

後輩「でも先輩、どうしてこの本を? かもめのジョナサン嫌いだって、言ってたのに……」

先輩「あー、いや……、それは……だな……」

後輩「あっ、ははーん……、分かりましたよ!」

先輩「……っ」ドキッ

後輩「ふふ……、先輩もようやく、ジョナサンの面白さに気付いてくれたんですねぇー!」ニッコリ

先輩「……はぁ?」

後輩「そうですそうなんです! 何回、何十回と読んで、初めて分かる”味”っていうんですか!? そういう、”深み”が! ”コク”が!?」

先輩「ちげーし! そんなんじゃねーから! っていうかコクって何だ!」

140 : VIPに... - 2014/11/27 20:55:08.77 q7tkj8vi0 114/212

後輩「もう、素直じゃないんですからぁ……、……あれ、確かここに……」ガサゴソ

先輩「ちげーって言ってんだろー」

後輩「あった……! はい、先輩!」ズイッ

先輩「うぉ……」


『かもめのジョナサン 完全版』


先輩「……」

後輩「んふふ、言ってもらえれば、すぐ……本当にもう、その場ですぐお貸しできたんですからぁー」

先輩「常に持ち歩いてんのかよ、お前は」

「ちょっと、後輩ー!?」

後輩「あ、友ちゃん!」

141 : VIPに... - 2014/11/27 20:55:40.25 q7tkj8vi0 115/212

先輩「……」

「うにゃ……っ!?」ビクン

後輩「じゃ、先輩! 私行きますんで」

先輩「いや、お前、これ……」

後輩「しばらく借りてていいですよー! 私まだあと四冊持ってるんでー!」

先輩「何でだよ! 怖ぇよ!」

後輩「また明日ーっ」ヒラヒラ

先輩「……」

先輩「……」

先輩「……何やってんだ、私は……」





142 : VIPに... - 2014/11/27 20:58:40.43 q7tkj8vi0 116/212






後輩「~♪」

「ねえ、後輩? さっきのって……」

後輩「ん?」

「先輩さん、でしょ? あの、『うわさ』の……」

後輩「あ、うん……まぁ……」

「何であんたと先輩さんが?」

後輩「ま、まあ、色々あって……」

「……まさか、あんた……」

後輩「えっ、何?」

143 : VIPに... - 2014/11/27 20:59:21.89 q7tkj8vi0 117/212

ポワワーン


後輩『先輩……私、教えてほしいんです、物語やおとぎ話だけじゃ、分からないこと……』

先輩『ふふっ、やれやれ……困った子猫ちゃんだ……』

後輩『ああっ、しぇんぱぁい……』

先輩『大人の階段のぼる……、キミはまだシンデレラさ……』


ポワワワワーン



「幸せはだれかがきっとぉぉーんっ↑」クネクネ

後輩「ちちち違うもん! あと先輩は子猫ちゃんとか言わないっ」

144 : VIPに... - 2014/11/27 21:00:05.19 q7tkj8vi0 118/212

「違うのぉー?」

後輩「違うったら! 先輩は、文芸部に入ってくれて……」

「それで?」

後輩「それで部室で、よく話すようになっただけ!」

「……それだけ?」

後輩(それだけ……)

後輩「それだけだよ!」

後輩(たったそれだけ、なんだ……)

「でも、あの先輩でしょ? やばい人じゃ……」

145 : VIPに... - 2014/11/27 21:02:40.74 q7tkj8vi0 119/212

後輩「そ、そんなことないよ。口は悪いけど、気のいい人だよ」

「ふぅーん……」

後輩「あ、でもすぐぶつかも。チョップとか。あのチョップ、意外と痛くてさ……」

「……後輩」

後輩「ん?」

「そんないい顔で、笑うんだねぇ、あんたは……」

後輩「な、何それ友ちゃん」

「私ゃ心配だよ、あんたのこと……」

後輩「もう、大丈夫だって。本当に優しい人で――」

146 : VIPに... - 2014/11/27 21:03:30.12 q7tkj8vi0 120/212

「そうだとしてもさー」

後輩「……」

「あんたや私とは、違いすぎるでしょ」

後輩「……」

「このままだとあんた、きっと痛い目に会うから……」

後輩「あはは、やだな友ちゃん、どうして私が痛い目なんて――……」

「だって」

後輩「え?」

「好きなんでしょ、あんた。あの先輩さんのこと」





147 : VIPに... - 2014/11/27 21:06:14.45 q7tkj8vi0 121/212






~翌日・文芸部 部室~


先輩「……」ペラ

後輩「……」

先輩「……おぉ」

後輩「……」

先輩「……ふーん……」ペラ

後輩(まずい……)

後輩(私、めちゃくちゃ意識しちゃってる……)

後輩(友ちゃんめ……)

148 : VIPに... - 2014/11/27 21:06:54.20 q7tkj8vi0 122/212

先輩「……」

後輩「……」チラ

先輩「……」ペラッ

後輩(でも、そっか……)

後輩(先輩が来てくれて、嬉しいとか……)

後輩(先輩といると、落ち着くとか……)

後輩(この気持ちは……)

後輩「……」ジッ

先輩「……」ペラッ

後輩(そうなんだ……)

後輩(きっと、最初から私は――……)

149 : VIPに... - 2014/11/27 21:07:58.56 q7tkj8vi0 123/212

後輩「……」

先輩「……ん?」

後輩「……」ボケー

先輩「……何見てんだよ」

後輩「ひゃい!? あ、わっ、べ、別ににゃにもっ!?」

先輩「あっはは、なーんだにゃにもって」

後輩「うぅ……」

先輩「顔の筋肉がねーから、噛むんだよ。ひょーじょーきん」ズイッ

後輩「な……っ」

先輩「ほーら、やーわらけーの」ムニムニ

後輩「あっ、あっ……」カァァァ

150 : VIPに... - 2014/11/27 21:08:52.04 q7tkj8vi0 124/212

先輩「あっはは、何赤くなっ……」

後輩「……」カァ

先輩「……」

後輩「……」モジモジ

先輩「……ぁー」

後輩「……」

先輩「……わり」

後輩「……いえ」

先輩「……」ペラッ

後輩「……」

先輩(な、何だよ……あの表情……)

先輩(あんな顔、されたら……)

151 : VIPに... - 2014/11/27 21:10:01.60 q7tkj8vi0 125/212

先輩「……」チラッ

後輩「……っ!」ハッ

先輩(目が合った……!)

後輩(目が合った……!)

先輩「……」プイ

後輩「……」ドキドキ

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……し、しかし、あれだなー!」

後輩「は、はいっ!?」

152 : VIPに... - 2014/11/27 21:11:02.30 q7tkj8vi0 126/212

先輩「か、完全版って言っても、大して変わらねーもんだなぁ!」

後輩「あ、え……、ああ! 読んだんですか!?」

先輩「途中で投げた」

後輩「えぇー、せっかく貸したのにぃ」

先輩「だって駄目だ、あのかもめ。40年経っても何の成長もねぇ」

後輩「そんな無茶言わないでくださいよ!」

先輩「だってよ――……」


ピリリリリ♪ ピリリリリ♪


後輩「……っ!」

先輩「……」

153 : VIPに... - 2014/11/27 21:12:02.60 q7tkj8vi0 127/212

ピリリリリ♪ ピリリリリ♪


ピッ


後輩「……」

先輩「……ぁー」

後輩「……」

先輩「……じゃ」

後輩「……」

先輩「……行くわ」

後輩「……」ズキリ

先輩「またなー」

後輩「……」キュッ

先輩「……後輩? 離して――」

154 : VIPに... - 2014/11/27 21:12:40.15 q7tkj8vi0 128/212

後輩「……あの」

先輩「……」

後輩「今日だけは、もうちょっと……一緒に……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……お前」

後輩「……」スッ

先輩「あ」

後輩「……な、なんちゃってぇー……」

先輩「……」

後輩「あはは……」

155 : VIPに... - 2014/11/27 21:14:13.99 q7tkj8vi0 129/212

先輩「……はぁ」

後輩「……」

先輩「ばーか」

後輩「……すみません……」

先輩「……じゃ」

後輩「はい……」

先輩「……」


ガララ

パタン


後輩「……」

後輩「……」

後輩「……」





156 : VIPに... - 2014/11/27 21:14:57.40 q7tkj8vi0 130/212






~廊下~


先輩「……」

先輩「……」タッ

先輩「……」タッタッタッ

先輩「……っ!」ダッ


先輩(やばいやばいやばい……!)


先輩「はっ、はっ……!」ダッダッ

157 : VIPに... - 2014/11/27 21:15:37.30 q7tkj8vi0 131/212

先輩(その気に……)

先輩(その気になるな私……っ!)


先輩「はぁ……はぁ……っ!」タッ


先輩(駄目だ……)

先輩(もう限界だ……)

先輩(これ以上踏み込んだら、あいつは……)

先輩(私も……っ!)





158 : VIPに... - 2014/11/27 21:16:33.18 q7tkj8vi0 132/212






~夕暮れ過ぎ・三階空き教室~


会長「恋はまことに影法師」

先輩「……」

会長「こちらが逃げれば追ってくる、こちらが追えば、逃げていく……」

先輩「……いや、何言ってんだ」

会長「シェイクスピアさ。読んでないかい、文芸部?」

先輩「……あのさ、親切で言うけど、あんたマジでやめた方がいいって、そういうの。将来絶対後悔するから。マジで」

会長「ふふ、放っておいてくれたまえ」

先輩「いやいや」

会長「いいんだよ。意外とモテるんだ、このキャラ」

先輩「……あー、そうですか」

163 : VIPに... - 2014/11/28 22:42:42.33 sbpnf9Ww0 133/212

会長「それにしても……、ふふふ、どうしたのかな? 髪が乱れている」ナデ

先輩「別に」

会長「まるで走ってきたみたい……、いや、逃げてきたみたいじゃないか」クックッ

先輩「……」

会長「んふふ、そんな顔をするなよ」スッ

先輩「……もう、おしゃべりはいいだろ」

会長「まぁ、焦りなさんな。ところで……、ちょっときてごらん」

先輩「……」

会長「この空き教室からは、向かいの西棟の様子が、よく見える」

164 : VIPに... - 2014/11/28 22:43:18.94 sbpnf9Ww0 134/212

先輩「……」

会長「ほら、あそこの……、2階のところだ」

先輩「……ぁ」

会長「キミたちの部室だ」

先輩「……」

先輩(窓際に……、後輩の姿が見える……)

先輩(あいつ、まだ本読んでるし……)

先輩「……」

先輩(私がいないと、ずっとああしてるのか……)

先輩(ひとりで……)

165 : VIPに... - 2014/11/28 22:44:15.52 sbpnf9Ww0 135/212

先輩「……っていうか」

会長「うん?」

先輩「あんた、まさか見てたのか、ここから! 今日も……!」

会長「はは、いやいや、まさか」

先輩「おい、こら……」

会長「本当だって。出歯亀の趣味はないさ」

先輩「……ちっ」

先輩(後輩……)

先輩「……」

会長「……ふふ」ギュッ

先輩「……! おい……、ちょっ……やめっ」

会長「何故?」

166 : VIPに... - 2014/11/28 22:44:56.17 sbpnf9Ww0 136/212

先輩「なぜって……」

会長「ふふふ、あの子がこちらを向いたら、見られてしまうかもねぇ……」プチ プチ

先輩「ふざけっ――あ……っ」

会長「……」モゾッ

先輩「っ……、や、うぅ……っ!」

会長「――いいじゃないか、見てもらえば」

先輩「やめ……あっ、い……いい加減……あぁっ、んっ!」

会長「キミのその表情も、この薄い胸も」キュゥ

先輩「やだっ……、ばかっ、やめろぉ……」ピクン

167 : VIPに... - 2014/11/28 22:45:52.69 sbpnf9Ww0 137/212

会長「キミの本当の姿も――」

先輩「あぁぁっ!」ビクッ

会長「どうしたんだ? いつもより敏感じゃないか……」

先輩「やだ、やだぁっ! 分かったから、もぉ……う、んぅぅっ!」

会長「見られるかもしれないのに、興奮しているんだろう」クチュッ

先輩「やめてっ、ねえ、お願……やっ、あぁっ!」

会長「――……」クニュ

先輩「あっ、あ、あぁっ! うぁぁっ!」ガクガクッ

会長「……これが、本当のキミだろ? このあばずれめ」

先輩「っくぅ、いや……もう、やなの……っ、っあぁ!」

168 : VIPに... - 2014/11/28 22:46:50.23 sbpnf9Ww0 138/212

会長「周りのみんなのように、誰かと上手くやれない……、普通にできない……」

先輩「んっ、んんっ!」フルフル

会長「まともにやろうとしたことも、あったんだろう? 何度も。……駄目だったんだろう」

先輩「あぁっ、そこ、もう……っ」

会長「ばかで、間抜けで……、こういう風にしか、他人と接点を持てない、頭のおかしい女の子だ、キミは」

先輩「あぁっ、あっ、っ……! くぅぅぅっ!」ビクッビクッ

会長「……あの子は、いい子だな」

先輩「はぁ……はぁ……」

会長「キミみたいな人間には、もったいない」

先輩「……」

169 : VIPに... - 2014/11/28 22:47:52.57 sbpnf9Ww0 139/212

会長「そうは思わないかい?」

先輩「……」

会長「……指が汚れてしまったな」

先輩「……」

会長「舐めてくれよ」

先輩「……、……」チュ

会長「そうだ、それでいい……」

先輩「……っふ……ん」

会長「それでいいんだよ、先輩クン」





170 : VIPに... - 2014/11/28 22:48:31.44 sbpnf9Ww0 140/212






~数日後 放課後・文芸部 部室~


後輩「……」

後輩「……」ペラッ

後輩「……」

後輩(あの日から)

後輩(先輩は部室に来なくなって……)

後輩「……」

後輩「……」ペラッ

171 : VIPに... - 2014/11/28 22:49:07.53 sbpnf9Ww0 141/212

後輩(以前と、同じ)

後輩(独りぼっちの、静かな時間……)

後輩「……」

後輩(いなくなって、心から思い知った)

後輩(どれだけ大切に思っていたか……)

後輩(先輩との、時間を)

後輩「……うぅ」

後輩(私が、壊したんだ……)

後輩「……」

172 : VIPに... - 2014/11/28 22:49:46.13 sbpnf9Ww0 142/212

後輩(どうして、あんなことを、してしまったんだろう……)

後輩(どうして、我慢できなかったんだろう……)

後輩(どうして……、我慢できないんだろう)

後輩(この気持ちを、どうして……)

後輩「……」

後輩「……先輩」



先輩『……寂しいやつ』

後輩『寂しくないですよぉ。本読んでますもん』



後輩「先輩……」

173 : VIPに... - 2014/11/28 22:50:36.30 sbpnf9Ww0 143/212

後輩(私は……)

後輩(寂しいです……)



後輩「……」



「さぁぁみ゛しい子はい゛ね゛ぇぇぇがぁぁぁ!!」ガラララバターン!!

後輩「!」ビクーン

「電撃部活見学だーっ! 後輩ー! おーっす!!」

後輩「……なんだ、友ちゃんか」

「何だとは何よぉ」

後輩「別に……」

「むぅぅ」

177 : VIPに... - 2014/11/29 13:38:48.44 dY9e9jf80 144/212

後輩「……」

「……はぁ」

後輩「……」

「……あんた、まだ引きずってるの」

後輩「……」

「もう、忘れちゃいなよ……」

後輩「……無理だよ」

「……」

後輩「忘れるなんて」

「……」

178 : VIPに... - 2014/11/29 13:39:17.50 dY9e9jf80 145/212

後輩「……」

「……まったく」

後輩「……」

「……私さ、後輩のこと、好きだよ。大事な友達だと思ってる」

後輩「……」

「だから、これは、本当は教えたくなかった。けど……」

後輩「友ちゃん?」

「後輩……、よく聞いてね?」

後輩「……」





179 : VIPに... - 2014/11/29 13:39:50.03 dY9e9jf80 146/212






「……」

後輩「……」

「……」

後輩「……友ちゃん」

「……」

後輩「……ありがとう」

「はぁ……、あーあ……」





180 : VIPに... - 2014/11/29 13:40:36.82 dY9e9jf80 147/212






~さらに一ヵ月後 放課後・三階空き教室~


先輩「……」

先輩「……」ペラッ

先輩(文芸部に行かなくなってから、ずいぶん経った)

先輩(……要は、前と同じに戻っただけ)

先輩(後輩と出会う前の……)

先輩(なんの抵抗もなく、そんな毎日に戻っていて……)

先輩(……やっぱり、どうしようもないやつだ、私は)

先輩(でも……)

181 : VIPに... - 2014/11/29 13:41:14.77 dY9e9jf80 148/212

先輩「……」

先輩「……」チラリ

先輩(空き教室から見える、部室)

先輩(後輩の姿は……ない)

先輩「はぁ……」

先輩(いつからだったか)

先輩(後輩は、文芸部に顔を出さなくなっていて……)

先輩「……」

先輩「あのばか……」ボソッ

182 : VIPに... - 2014/11/29 13:41:43.19 dY9e9jf80 149/212

先輩(……構うな)

先輩(これでよかったんだ)

先輩(これで……)

先輩「……」スッ


ガララ

パタン





183 : VIPに... - 2014/11/29 13:42:15.40 dY9e9jf80 150/212






~図書館~


先輩「……」

先輩(この学校の図書館には……)

先輩(なぜか、『かもめのジョナサン』が二冊、置いてあって――……)

先輩「……」スッ

先輩「……」

先輩(そのうちの一冊は、辞書のコーナーに、ひっそりと置かれていて……)

先輩(その、100ページ目――……)

先輩「……」ペラッ

184 : VIPに... - 2014/11/29 13:48:11.83 dY9e9jf80 151/212




『ぼくなんかにかまうなんて、時間の無駄ですよ、ジョナサン! ぼくは駄目なやつなんだ! どうしようもない間抜けなんだ! 何度やったって、どうせものになりゃしませんよ!』



先輩「……」

先輩(そのページに、メモが挟められている――……)

先輩「……」


『12/13 十九時 東棟三F 空き教室 5』


先輩「……」

先輩「五千かぁー……」

先輩(日時と、場所と……、金額を示す、符丁)

先輩「……ま、いっか」

先輩「……」

先輩「……今日じゃん」

185 : VIPに... - 2014/11/29 13:48:53.05 dY9e9jf80 152/212

先輩(いつ、誰が作ったのかも、分からないルール)

先輩(『約束』のためのルール……)

先輩「……」

司書「……」チラ

先輩「……これ、お願いします」

司書「ここに、名前書いてね」

先輩「……」

司書「どうも」

先輩「……」

先輩「……行くか」





186 : VIPに... - 2014/11/29 13:50:40.75 dY9e9jf80 153/212






~空き教室~


先輩「……」

先輩(あいつの大好きな、この本は)

先輩(私にとっては、ただの目印で……)

先輩「……」

先輩(私は、結局……、勝手にやってるつもりで……)

先輩(誰かのルールに、乗っかっているだけで……)

先輩(中途半端な私には、お似合いだけどさ)

先輩「……はは」


ガラッ


先輩「……っと、いらっしゃ――……」

後輩「……」

187 : VIPに... - 2014/11/29 13:51:40.09 dY9e9jf80 154/212

先輩「……ぁー」

後輩「……」

先輩「教室、間違ってるぞ」

後輩「……先輩」

先輩「……ま、間違ってるってば……」

後輩「……五万円、あります」スッ

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……おま」

188 : VIPに... - 2014/11/29 13:52:12.92 dY9e9jf80 155/212

後輩「あ、あれっ? 足りませんか!? だったらまだ――……、あれ……あった! まだありますから!」

先輩「いや……、いや、お前な……」

後輩「先輩、だから、先輩……!」グイッ

先輩「……っ」

後輩「して、ください……」ギュ

先輩「……冗談やめろよ」

後輩「冗談じゃないもん……」

先輩「怒るぞ」

後輩「『お客』に?」

先輩「っ!」

後輩「……友達が、教えてくれたんです。やり方」

189 : VIPに... - 2014/11/29 13:52:44.10 dY9e9jf80 156/212

先輩「……」

後輩「……『お客』だったら、して……くれるんですよね、先輩は……」ギュウ

先輩「……あっ」

後輩「だから……」

先輩「……っ、……だめ」グイッ

後輩「どうして……!」

先輩「……ばか」

後輩「……」

195 : VIPに... - 2014/12/01 22:43:34.05 ExB2045W0 157/212

後輩「……」

先輩「お前は……、違うだろ……」

後輩「……」

先輩「私みたいな駄目なやつとは、違うじゃん……!」

後輩「先輩……」

先輩「だから、やめろよ、こんな……」

後輩「……」ヌギヌギ

先輩「って、聞け! 脱ぐな!」

後輩「先輩は駄目じゃないです!」

196 : VIPに... - 2014/12/01 22:44:36.89 ExB2045W0 158/212

先輩「……」

後輩「……っていうか、駄目でもいいんです!」

先輩「どっちだよ……」

後輩「私にとっては、先輩と一緒に入れないことの方が、ずっと、ずっと駄目なんです!」

先輩「お前は、こんな馬鹿なこと、していいやつじゃないだろ!」

後輩「私はこんなやつなんです!」ズイッ

先輩「ま、待て……」

後輩「先輩のせいで、馬鹿になっちゃったんですからぁー!」ガシィィ

先輩「ひっつくなぁー!」グイッ

後輩「せんぱぁぁぁいぃぃ!」ギュゥゥゥ

197 : VIPに... - 2014/12/01 22:45:47.64 ExB2045W0 159/212

先輩「はーなーせぇぇぇー! 脱がすなぁぁぁ!」グイグイ

後輩「やーぁー……」


ガララッ


生徒1「そしたらさー、あいつ、西岡は外側走ってたとか言い出してぇー」

生徒2「うそー! それってありえな――……」


先輩「あ」

後輩「あ」ギュゥゥゥ


生徒1「……」

生徒2「……」

198 : VIPに... - 2014/12/01 22:46:32.73 ExB2045W0 160/212

先輩「……」

後輩「……」

生徒1「……」

生徒2「……」


カラカラ


パタン


先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……先輩」

先輩「……」

後輩「……部室、行きますか?」

先輩「ぁー……」





199 : VIPに... - 2014/12/01 22:47:09.43 ExB2045W0 161/212






~部室~


先輩「……部室も久しぶりだな……」

後輩「本当ですよぉー……」シャッ

先輩「カーテン閉めんな!」

後輩「……」プチ プチ

先輩「脱ーぐーなー!」

後輩「先輩……」

先輩「い、いいから! いったん座れ! 落ち着け、な!」

後輩「どうして、してくれないんですかぁ……」

200 : VIPに... - 2014/12/01 22:47:52.47 ExB2045W0 162/212

先輩「だから、それは……」

後輩「先輩は、私のこと……、嫌い……?」

先輩「ちが……っ!」

後輩「……」

先輩「……ちげーよ」

後輩「先ぱ……」

先輩「私だって、お前のこと……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……うん」

後輩「言ってよぉぉ!」

先輩「あーもう、うるせーうるせー!」

201 : VIPに... - 2014/12/01 22:48:28.52 ExB2045W0 163/212

後輩「うん、ってなんですか、うんって!」

先輩「どうせ! どうせ好きだって言っても!」

後輩「……」

先輩「うまくいかないんだ! お前だって、きっと私に、愛想つかして……!」

後輩「どうして、そう思うんですか」

先輩「……だってさ、私、ダメだし……」

後輩「さっきも聞きました」

先輩「性格悪いし……」

後輩「私は好きですよ」

202 : VIPに... - 2014/12/01 22:49:08.75 ExB2045W0 164/212

先輩「お前と本の趣味、合わないし」

後輩「その方が、面白いじゃないですか」

先輩「……性欲強いし」

後輩「うっ……、そ、それは、がんばります……」

先輩「お前の……」

後輩「……」

先輩「知らない誰かと……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……もし、それが」

203 : VIPに... - 2014/12/01 22:49:47.22 ExB2045W0 165/212

先輩「……」

後輩「先輩にとって、大切なことなら……」

先輩「……」

後輩「私、構いません」ニコリ

先輩「お前……」

後輩「『お客』でも、構いませんから……」

先輩「……」

後輩「それで、先輩と一緒に入れるなら――……」

先輩「……ていっ」ベシッ

後輩「あうっ」

204 : VIPに... - 2014/12/01 22:50:30.88 ExB2045W0 166/212

先輩「……本当、お前は……。見てて心配になってくるわ」

後輩「ぶったぁ……」

先輩「そのうち、悪いヤツに騙されて、のこのこついて行きそうな……」

後輩「……今まさに、そんな感じですけどね」

先輩「……」ベシッ

後輩「うっ! じょ、冗談です、冗談」

先輩「……後輩」

後輩「お、怒らないでくださいよぉ」

先輩「本当に……」

後輩「……」

205 : VIPに... - 2014/12/01 22:51:09.47 ExB2045W0 167/212

先輩「いいの?」

後輩「……」

先輩「私で」

後輩「先輩がいいんです」

先輩「……」

後輩「大丈夫ですよ、先輩」

先輩「……」

後輩「きっと、大丈夫です、私たち」

先輩「後輩……」

後輩「はい……」

先輩「ありがとう」

後輩「……」

先輩「好きだよ、私も。大好き」

206 : VIPに... - 2014/12/01 22:51:52.93 ExB2045W0 168/212




207 : VIPに... - 2014/12/01 22:52:45.73 ExB2045W0 169/212






~帰り道~


先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……寒くなったな」

後輩「……ですね」

先輩「……」

後輩「……」

208 : VIPに... - 2014/12/01 22:53:27.24 ExB2045W0 170/212

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……そういやさ」

後輩「はい?」

先輩「お前、あんな金、どうしたの」

後輩「バイトしました! 一ヶ月、ずっと!」ムフー

先輩「……あー、それで部室に……」

後輩「何です?」

先輩「い、いや、別に別に。で、何のバイト?」

209 : VIPに... - 2014/12/01 22:54:09.44 ExB2045W0 171/212

後輩「清掃業」

先輩「せーいそうぎょおぉー?」

後輩「な、何ですか何ですか!」

先輩「お前……、華の女子高生が、アルバイトしますー、って言って、便所掃除するかぁー?」

後輩「便所掃除って言わないでくださいよ!」

先輩「便所掃除だろ」

後輩「便所掃除ですけど……」

先輩「……あはは」

後輩「……ふふ」

先輩「……」

後輩「……」

210 : VIPに... - 2014/12/01 22:55:02.95 ExB2045W0 172/212

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……あの」

先輩「ん?」

後輩「…………手」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」ギュ

後輩「……あ」

先輩「さみいなー」

後輩「……はい」

211 : VIPに... - 2014/12/01 22:56:49.78 ExB2045W0 173/212

先輩「……あのさ」

後輩「はい」

先輩「……私も、がんばるから」

後輩「え?」

先輩「後輩と、一緒にいれるように、がんばる」

後輩「……そうですね」

先輩「おう」

後輩「……そうです! 大切なのは、研究と練習! ジョナサンもそう言ってました!」

先輩「それはチャンのセリフだ」

後輩「……そ、そうでしたっけ」

先輩「はは」

後輩「……」

先輩「……」

212 : VIPに... - 2014/12/01 22:57:45.00 ExB2045W0 174/212

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……ゆっくり」

後輩「……」

先輩「ゆっくり帰ろうな」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……はい」

先輩「……」

後輩「ゆっくり帰りましょう」






213 : VIPに... - 2014/12/01 22:58:10.66 ExB2045W0 175/212





214 : VIPに... - 2014/12/01 22:58:46.91 ExB2045W0 176/212

~おわり~

215 : VIPに... - 2014/12/01 23:00:39.49 ExB2045W0 177/212

これで、このお話は終わりです
お読みくださった方、ありがとうございました

217 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2014/12/01 23:03:01.14 NO/gPnf9O 178/212


ここで終わりかー
付き合うまでも好きだが、付き合ってからが読みたかったー

でも、すごいよかった。更新が楽しみだった

219 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2014/12/01 23:07:03.60 WNhMJcEjo 179/212

終わっちゃうのかー、寂しいなぁ

でもまぁ長引かせすぎるのもよくないか、おつかり

224 : VIPに... - 2014/12/03 18:30:37.71 G1/QhOez0 180/212






~アフター1~


先輩「……ふぅ、終わったぁ」ノビー

後輩「何読んでたんですかー?」

先輩「オースター」

後輩「あぁ、いいですよねー!」

先輩「おう、かなり面白かった。犬がさー、可愛くてさー」

後輩「先輩、犬好きなんです?」

先輩「好きー。飼ったことねーけど」

225 : VIPに... - 2014/12/03 18:31:13.43 G1/QhOez0 181/212

後輩「……うち、犬飼ってますよ」

先輩「マジで」

後輩「見に来ます?」

先輩「見たい見たい」

後輩「じゃ、今日うちどうですか?」

先輩「おー、行くー」

後輩「了解ですー」

226 : VIPに... - 2014/12/03 18:31:41.06 G1/QhOez0 182/212

先輩「かわいい?」

後輩「滅茶苦茶かわいいです」

先輩「撫でていい?」

後輩「撫でていいですよー」

先輩「そっかぁ……、えへへ……」





227 : VIPに... - 2014/12/03 18:32:20.05 G1/QhOez0 183/212






~後輩の家~


「……」ズゥゥン

先輩「……」

「……」ズムゥゥン

先輩「……」

先輩(……でけぇ!)

後輩「どうですか、先輩! かわいいでしょ!?」

先輩「いや、ちょっ、いやっ……、でけえ!」

228 : VIPに... - 2014/12/03 18:33:02.75 G1/QhOez0 184/212

後輩「うん」

先輩「いや、うん、じゃなくて……、え、犬? これ犬?」

後輩「犬ですよー」

先輩「熊じゃなくて?」

後輩「犬です」

先輩「……」

「……ヘッヘッ」

先輩「熊だろ?」

後輩「犬です」

先輩「……」

後輩「えへへ、いっぱい撫でてあげてくださいー」

229 : VIPに... - 2014/12/03 18:33:46.15 G1/QhOez0 185/212

先輩「……」オソルオソル

「……ガオウ」

先輩「うぉぉ!?」ビク

後輩「そんな緊張しなくても大丈夫ですよぉ」

先輩「いや、ガオーって言った! ガオーって言ったから!」

後輩「あはは、あんまり怖がってると、逆にパクッといかれちゃいますよ」

先輩「あははじゃねぇよ怖ぇよ! パクッといかれてたまるか!」

後輩「ザムザー、おすわりー」

先輩「名前やめてやれよ! 虫になったらかわいそうだろ!」

「……ガウ」

先輩「ほらガオーって言ったぁー!?」ビクーッ





230 : VIPに... - 2014/12/03 18:34:48.12 G1/QhOez0 186/212






~後輩の部屋~


後輩「はい、お茶どうぞ」

先輩「わりぃね」

後輩「よかったですね、ザムザ、先輩に懐いてました」

先輩「慣れたらかわいいもんだなぁ」

後輩「でも、先輩が犬好きなの、ちょっと意外ですね」

先輩「何でだよ」

後輩「……何となく、猫っぽいし、猫派かな、って」

先輩「あはは、それ言ったらお前は、犬だな」

後輩「犬!? っぽいとかじゃなくて!」

先輩「あはは、ほーら、よしよし」ワシャワシャ

後輩「わっ、もう、髪ぼさぼさになっちゃいますー!」

231 : VIPに... - 2014/12/03 18:35:22.78 G1/QhOez0 187/212

先輩「嬉しいくせにー、ほれほれー」ワシャワシャ

後輩「あはは、わんっ! なんちゃってー……」ギュッ

先輩「はは……」ナデ

後輩「先ぱ……」

先輩「……」ギュ

後輩「あっ……」

232 : VIPに... - 2014/12/03 18:35:57.97 G1/QhOez0 188/212

先輩「……あのさ」

後輩「……、いいですよ……」

先輩「……」ドキドキ

後輩「……」ドキドキ

犬2「……」

先輩「……」

犬2「……キャン!」

先輩「うわぉ!?」ビク-ッ

233 : VIPに... - 2014/12/03 18:36:42.81 G1/QhOez0 189/212

後輩「……何ビックリしてるんですかぁ、ずっといたじゃないですか、この子」

先輩「い、いや、ぬいぐるみだとばかり……」

後輩「座敷犬です」

犬2「ヘッヘッヘッ」フリフリ

先輩「……かわいい」

後輩「ポチー、おいでー」

先輩「ザムザと大分ネーミングに差が」

犬2「キャン! キャン!」ペロペロ

先輩「わっ、あはは、おい、そんな舐めんなよー」

後輩「ふふっ……」

234 : VIPに... - 2014/12/03 18:37:23.57 G1/QhOez0 190/212

犬2「クゥーン」ペロペロ

先輩「ははっ、めっちゃ舐めてる。そんなに美味しいかー、私の指ー、ほれほれー」ナデナデ

犬2「キャン!」

先輩「あは、かーわいいー」ワシャワシャ

後輩「……!」ハッ


後輩(あれ……)

後輩(私、犬に負けてる……!?)


先輩「ほーれ、しっぽしっぽー」

犬2「キャンキャン」フリフリ

後輩「……」

先輩「あはははー」ケラケラ

後輩「……」ニッコリ


後輩(まぁ……)

後輩(いいか……)





235 : VIPに... - 2014/12/03 18:38:14.43 G1/QhOez0 191/212






~アフター2~


「……でさー、そしたら妹が、『えぇっ、カメルーンなの!?』って」

後輩「あはははっ、ははっ、カメしか合ってないよぉー!」ケラケラ

「でしょー、そんで結局、リクガメひっくり返ったまんまでー」

後輩「あっはは、ぜってーありえねーだろってー!」ケラケラ

「!!」

後輩「あははは、はぁー……、あれ、友ちゃん?」

236 : VIPに... - 2014/12/03 18:38:44.84 G1/QhOez0 192/212

「こ、後輩が……」

後輩「え、な、何」

「後輩が不良になったぁー……」ウルウル

後輩「えぇっ!? あ! い、今のは! 違うの、先輩のがうつっただけで……」

「私の後輩がぁぁ……」ウルウル

後輩「ち、違うってばぁ! あと友ちゃんのものじゃないから私!」

「おのろけだぁぁぁ……」シクシクシク

後輩「ちげーっての! あ……」

「あぁぁぁ……」シクシク

後輩「あぁぁ……」





237 : VIPに... - 2014/12/03 18:39:22.93 G1/QhOez0 193/212






後輩「……と、いうわけで、ですね」

先輩「うん」

後輩「先輩の言葉遣いを直そうキャンペーン」

先輩「ほっとけよマジで……」

後輩「放っておいたら、そのうち私、完全に先輩の口調がうつっちゃいますよ! いいんですか!?」

先輩「いいんですかと言われても……」

後輩「あ、もうだんだん、それっぽくなってきた。あー、ッべー、まじッべーですー」

先輩「お前の中の私ってそんななん?」

238 : VIPに... - 2014/12/03 18:40:03.91 G1/QhOez0 194/212

後輩「……っていうか、おしとやかな先輩が見てみたい……」

先輩「んなこと言われたってよー」

後輩「それ」

先輩「お」

後輩「そこは『そんなこと言われましても……』で」

先輩「マシテモ!?」

後輩「ちょっと大げさなくらいでいいんです! ショック療法ですよ」

先輩「そうな……の、かしら」

後輩「おぉ、その調子ですよ!」

先輩「絶対間違っている気がしますわ……」

後輩「大丈夫です!」

239 : VIPに... - 2014/12/03 18:40:53.89 G1/QhOez0 195/212

先輩「ふふっ、後輩さん、ごきげんよう」

後輩「お、お嬢様っぽい!」

先輩「あら、後輩さん、タイが曲がっていてよ」クイッ

後輩「はわー……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩(コレジャナイ感すげぇ……)

後輩(コレジャナイ感すごいな……)





240 : VIPに... - 2014/12/03 18:41:51.44 G1/QhOez0 196/212






~アフター3~


先輩「……」

後輩「……」ペラッ

先輩「……」

後輩「……」ペラ


ピリリリリ♪ ピリリリリ♪


後輩「……」

先輩「……ん」

241 : VIPに... - 2014/12/03 18:42:37.41 G1/QhOez0 197/212



ピリリリリ♪ ピリリリリ♪


ピッ


後輩「……」

先輩「時間だ……」

後輩「……」

先輩「……」ペリペリ

後輩「……」

先輩「……」パキッ

後輩「……」

先輩「いただきます……」

後輩「……」

先輩「……」ズゾッ ズルル

後輩「……」

先輩「……ハフハフ」

242 : VIPに... - 2014/12/03 18:43:20.99 G1/QhOez0 198/212

後輩「……」

先輩「……」ズルルル

後輩「……」

先輩「購買ちゃんラーメン、ブルックリン味噌味」

後輩「……」

先輩「新発売!」

後輩「……」

先輩「……ハフハフ」

後輩(味噌くさいな……)

先輩「……」ズゾゾー






243 : VIPに... - 2014/12/03 18:44:21.95 G1/QhOez0 199/212






~アフター4~


先輩「~♪」トタタッ

先輩「人間はもう~おわりだ~♪」

先輩「……~♪ ……ん?」

後輩「………………」

先輩「おーっす、後輩。どうした、部室入らねーの?」

後輩「せ、先輩ぃ……」ウルウル

先輩「おいおい、どうしたよ」

後輩「これぇ……」ウルウル

先輩「あん? 何この張り紙……、えーと、なになに……?」

244 : VIPに... - 2014/12/03 18:44:54.11 G1/QhOez0 200/212



『連絡

文芸部は12/1をもって廃部となります

部員は各自、部室の私物を処分のこと

生徒会』


後輩「先ぱぁい……」

先輩「……」ポカーン





245 : VIPに... - 2014/12/03 18:45:41.22 G1/QhOez0 201/212






~生徒会室~


先輩「かぁぁぁいぃぃ長ぉー!」ガララッ!バシーン!

会長「……おや、誰かと思えば、先輩クンじゃないか。久しいな」

先輩「それどころじゃねー! なんだあの張り紙はぁー!!」

会長「張り紙……? ああ、文芸部の廃部のことかい?」

先輩「それだよ! なんだ廃部って! どーいうことだよ!」

会長「私に言われてもな……。決めたのは先生方だ」

先輩「でも、生徒会の名前が……!」

会長「たかが生徒会、決定事項には従うしかないさ。学校が決めたことに、口出しできるわけないだろう?」

246 : VIPに... - 2014/12/03 18:46:31.81 G1/QhOez0 202/212

先輩「むぅぅ……!」

会長「そもそも、何の活動もしない、ただ本読んでるだけ、なんて部活がある方が、おかしいのだからね」

先輩「う……、それは……」

会長「学校が用意した部室を使っているんだ、然るべき活動実態が必要に決まっているじゃないか」

先輩「……」

会長「それを、キミらふたりで占有して、日暮れすぎまでイチャこらイチャこらと……、はんっ、別に羨ましくなどないがねっ!」ペッ

先輩「……」

先輩(おぉ……、会長様が荒んでらっしゃる……)

247 : VIPに... - 2014/12/03 18:47:19.81 G1/QhOez0 203/212

先輩「……って、ていうか、別にいちゃこらなんて、してねーし!」

会長「はっはっは、じゃあシッポリの間違いだったな? グッチョリでもネットリでもいいぞ?」カーッペッ

先輩「だーかーらー! 何もしてねぇって言ってるだろ!」

会長「……?」

先輩「な、何だよ……」

会長「え、いや、ほ、本当に?」

先輩「う、うん……」

会長「何もしてないの……?」

先輩「……」コクリ

会長「いや、いやいや……、キミら、つ、付き合ってるんだろう?」

先輩「……」コクン

248 : VIPに... - 2014/12/03 18:48:08.79 G1/QhOez0 204/212

会長「いやいやいや、キミみたいなヤツが、何もしてないなんて、そんなわけ……」

先輩「……」

会長「え、逆になんで? なんで何もしてないの?」

先輩「……とき……――まり…………」ゴニョゴニョ

会長「ふんふん、『いざというとき、あんまり手馴れすぎてて』?」

先輩「……でる……ずか……ぃ……」ゴニョゴニョ

会長「『遊んでると思われたら恥ずかしいし』?」

先輩「……」コクン

会長「……ば~~~っかじゃないのかキミは!?」

先輩「うっ……うるせーうるせー!」

249 : VIPに... - 2014/12/03 18:48:55.59 G1/QhOez0 205/212

会長「なーにが、『遊んでると思われたら恥ずかしい』だ! 遊んでるじゃないか! 遊びすぎて真っ黒じゃないか!」

先輩「誰が真っ黒だっ! 全然きれーな色してるっつーの!」

会長「内面! 内面が真っ黒なんだよ! 完全に汚れきってるだろうが!」

先輩「汚れてないですー! 処女ですー! 理論上は処女ですうぅー!」

会長「処女! 言うに事欠いてショジョ! ガバガバのくせに、ガッバガバのくせに! どれだけ厚かましいんだこのビッチは!?」

先輩「だだだ誰がガバガバだっ! この腹黒ヅカモドキ!!」

会長「はははは腹黒ヅカモドキぃぃ!? キミぃ! 言って良いことと悪いことが――!」


ギャーギャー


ワーワー





250 : VIPに... - 2014/12/03 18:49:44.50 G1/QhOez0 206/212






先輩「……」ハー ハー

会長「……」ハァハァ

先輩「……あーもう、分かったよ! アンタには頼まねぇ!」

会長「……」

先輩「はぁ……、邪魔したな」ガラッ

会長「……先輩クン」

先輩「ん」

会長「私は……、私は反対したんだ。伝統ある部活動だからって……」

先輩「……」

会長「ちゃんと、真面目に取り組んでいる生徒もいるって、反対したんだ! だけど……!」

先輩「いいよ、会長。分かってる」

251 : VIPに... - 2014/12/03 18:50:17.42 G1/QhOez0 207/212

会長「……」

先輩「ありがとな」

会長「……キミは……」

先輩「んじゃな」


ガララ


パタン


会長「……キミは、変わったな」

会長「……」


会長(……私も)

会長(恋人探すか……)ハァ





252 : VIPに... - 2014/12/03 18:50:56.18 G1/QhOez0 208/212






~帰り道~


後輩「はぁ……」トボトボ

先輩「元気出せよ。別に、本が読めなくなるわけじゃねーだろ」

後輩「それは、そうですけどぉ……」

先輩「……」

後輩「文芸部、好きだったのに……」

先輩「……そうだなー」ナデナデ

後輩「うぅ……」

先輩「……あー、それじゃあ、さ……」

後輩「……?」

253 : VIPに... - 2014/12/03 18:51:37.11 G1/QhOez0 209/212

先輩「ふたりで、プチ文芸部、やる?」

後輩「ふたりで?」

先輩「放課後にさ」

後輩「……」

先輩「わ、私のウチ、とかで……」

後輩「……!」

先輩「……」

後輩「……あ、あの」カァァ

先輩「いや、べ、別に変なアレじゃなくて――」

254 : VIPに... - 2014/12/03 18:52:27.05 G1/QhOez0 210/212

後輩「先輩!」

先輩「お、おう……」

後輩「よ、よろしくお願い……します……」

先輩「……」カァァ

後輩「……」カァァァ

先輩「……後輩」

後輩「……」

先輩「行こっか」

後輩「はい」






255 : VIPに... - 2014/12/03 18:53:01.94 G1/QhOez0 211/212





~アフター おわり~

256 : VIPに... - 2014/12/03 18:54:41.51 G1/QhOez0 212/212

これで、このssは本当に終わりです
お読みくださった方、ありがとうございました
お付き合いありがとうございました

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