妹「『お父さんも、お母さんも、どうか心配しないでください。私は一人で大丈夫です。困ったらお兄ちゃんがそばにいてくれると思うから。』と」
妹「うーん、この先どう書いたもんかな。おーい、お兄ちゃーん!さっそく可愛い妹が困ってるぞー!」
元スレ
妹「両親宛に手紙を書くよ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1399305399/
ガチャッ
兄「おーい、妹ー」
妹「うわわっ?お兄ちゃん!?ホントに来たの!?」
兄「お腹すいた」
妹「はぁ?」
兄「腹減ったー!」
妹「もう!」
兄「あと、可愛い妹に会うために」
妹「ご飯作って欲しいなら、正直にそう言いなさい」
兄「何言ってんだよ!お兄ちゃんはな、お前の料理の腕がどのくらい上がったのかと、それはもう気になって」
妹「はいはい」
兄「目玉焼きが欲しい」
妹「はぁ?」
兄「目玉焼きが食べたい!」
妹「そのくらい自分で作りなさい」
兄「イヤだ!妹が作った目玉焼きが食べたい!」
妹「せっかくだから、もっと手間のかかるもの作ってあげるわよ」
兄「目玉焼き目玉焼き目玉焼き!」
妹「うるさーい!!」
兄「……」
妹「こら、体育座りですねない!」
妹「わかったわよ、目玉焼きね」
兄「頼むぞ、妹よ」
妹「はいはい」
兄「ミディアムでな」
妹「はいはい」
兄「それはステーキだろ!ってツッコめよ!」
妹「はいはい。どこにも行かずに待っててね」
ガチャ
兄「行ったか。まったく、あいつには笑いのセンスがないんだから」
兄「あいつのベッドの上に洗濯物を放り出す癖は直らないなあ」
兄「まったくあいつは、」
ゴソゴソ
兄「いつまでたっても、」
ゴソゴソ
兄「変わらないんだから、おっピンクか」
ゴソゴソ
兄「ブラのサイズは、と」
兄「ふむふむ」
兄「大きくなったなー。パンツとお揃いか。なかなかやるな」
ゴソゴソ
兄「お、手紙発見!ラブレターだな。どれどれ」
ガチャッ
妹「できたよー」
兄「うわあっ!」
妹「って何やってんのっ!」
兄「何って、たたんでるんじゃないか!洗濯物を!」
妹「たたまなくていい!」
兄「ごめん……」
妹「謝りながらブラをかぶるな!」
兄「懐かしいだろ、よくかぶっただろ、昔」
妹「めがねーってね」
兄「わはは」
ゴツン!
兄「痛い」
妹「ほら、できたわよ、目玉焼き」
兄「おお!さすが妹!」
妹「目玉焼きくらいで大げさな」
兄「んー!美味い!料理が上達したなあ!」
妹「そんな、目玉焼き一つで分からないでしょ」
兄「分かるさ。2年間の自炊の成果だな」
兄「食べて」
妹「はぁ?」
兄「妹が食べているところを、お兄ちゃんは、見たい」
妹「何が好きで夜中に自分で目玉焼き作って自分で食べなきゃいけないのよ」
兄「昼に来ればよかったかな」
妹「そういうことじゃなくて!」
兄「ほらほら!受験勉強には卵の栄養が頭に効くぞー!」
妹「わかった、食べます。食べます」
兄「よし食え」
兄「美味い?」
妹「そりゃあ、普通ね」
兄「普通ってなんだよ」
妹「普通って普通。普通の目玉焼きの味がする」
兄「そっかあ、まだまだだな、妹」
妹「……うん」
妹「やっぱり違うね」
兄「そうだろ」
妹「お兄ちゃんの目玉焼きは美味しかった」
兄「なんたってお兄ちゃんのは秘伝の味だから」
妹「そうだったんだ」
兄「そうだよ、知らなかっただろ」
妹「……うん」
兄「ところで妹よ」
妹「なに?」
兄「少々聞きにくいんだが」
妹「うんうん」
兄「俺のグッズは?」
妹「捨てたよ?」
兄「はい?」
妹「捨てた」
兄「あずにゃんのフィギュアも?」
妹「捨てた」
兄「プレミア付きの、等身大抱きまくらも?」
妹「燃やした」
兄「激レアを揃えたトレカも?」
妹「ヤフオクで」
兄「もしかして、薄い本も」
妹「廃品回収に」
兄「NOおおおぉぉぉおおおっっ!」
兄「俺の宝物を…なんてこった…」
妹「だって、せっかくここ、私の部屋になったんだから」
兄「だからって、全部捨てることないだろおおお!」
妹「代わりに貼った猫のポスターも可愛いでしょ?」
兄「あずにゃんの……俺のレアポスターが……こんなしょうもないポスターに変わってやがる!」
妹「しょうもなくない!」
兄「どれだけ苦労して手に入れたと思ってるんだ!」
妹「どうせお小遣いで買ったくせに」
兄「それを言うな!」
兄「ああああ……俺の俺の……」
妹「そんなに大切なら早く帰ってきたらよかったのに」
兄「そう簡単に帰れるかよ」
妹「なに?プライドなの?」
兄「男にはいろいろあるんだよ!それより、お前はどうだんだよ」
妹「私?」
兄「悩んでるんだろ、進路」
妹「悩んでなんかないよ」
兄「そのわりには、決めかねてるようだけど?」
妹「なんでお兄ちゃんにそんなことが分かるのよ」
兄「分かるのさ。お兄ちゃんだから」
妹「……もしかして、見てたの?」
兄「ミテナイヨ」
妹「わざとらしい!」
兄「大学情報誌の立ち読みまではいいけど、気になるページをケータイで撮るのは良くないと思うぞー」
妹「もう!」
兄「お兄ちゃんとしては、悩める妹が心配で」
妹「それで来たの?」
兄「それが理由じゃないけどな。お兄ちゃんとしては、可愛い妹が高い壁を乗り越えられるか気が気じゃなくて」
妹「大丈夫よ。私はお兄ちゃんと違うから」
兄「……うん、そうだよな」
妹「……ごめん」
兄「いいのいいの」
妹「ねえ、覚えてる?この部屋をお兄ちゃんが初めてもらった時さ、」
兄「ん?」
妹「私、泣いて母さんに抗議したよね」
兄「そうだったっけ」
妹「そうだよ。お兄ちゃんだけ一人部屋。羨ましかった」
兄「そりゃあ、お兄ちゃんだからな」
妹「あーあ、あの時もっとお母さんに抗議してたらなー」
兄「俺がこんなことにならなかったって?」
妹「……うん」
兄「お前には一人部屋なんて無理だったよ」
妹「そのセリフ、あの時と一緒」
兄「ん?」
妹「お母さんにこの部屋をもらった時、お兄ちゃんそのセリフ言った」
兄「お前には無理だよ。……か」
妹「そうそう。悔しかったなー」
兄「でも本当だったろ」
妹「うん、一人部屋の静かさは、怖い」
兄「いつも音楽かけて寝てるもんな」
妹「なんで知ってるの!?」
兄「お兄ちゃん、可愛い妹のことはなんでも知ってるぞー」
兄「だから知ってるぞ、妹の好きな人は!」
妹「だー!だめー!」
兄「わはは」
妹「仕返し!お兄ちゃんの好きな人は!」
兄「あずにゃん!」
妹「こらっ!」
兄「好きな人が一人いれば、違ったのかな」
妹「ばか」
兄「俺は弱かったんだよ。本当に、弱かった」
妹「ばかばか」
兄「母さん、今でも時々泣いてるんだ。お前がいない時」
妹「知ってる。でもね、私が行くとね、笑うよ。すごく無理して」
兄「ばかだよな、俺」
妹「ばかだよ」
兄「でもお前もばかだな」
妹「ばかじゃないよ」
兄「じゃあこれはなんだよ」
妹「……それはね、手紙」
兄「違うだろ」
妹「違わないよ。母さんに出すの。ねえ可愛い封筒持ってない?」
兄「ああ、押入れに、とっておきのあずにゃんの封筒があったはず。ってお前が全部捨てたんやないかーい!」
妹「お兄ちゃんってノリツッコミ下手だよね」
兄「この場面でボケると思わなかったんだよ」
妹「ごめん」
兄「……これ遺書だろ」
妹「……うん」
兄「なんでだよ」
妹「なんでかな」
兄「いじめか」
妹「友だちいるもん」
兄「受験か」
妹「成績悪くないし」
兄「失恋か」
妹「好きな人なんていないもん」
兄「変な宗教か」
妹「つかまらない」
兄「悪徳金融」
妹「お金なんか使わない」
兄「じゃあなんで」
妹「ないよ、特に理由なんて」
兄「……俺のせいか?」
妹「違うよ。全然違う」
兄「じゃあ、なんで」
妹「理由なんてないんだって」
兄「ないわけないだろ」
妹「ないから、かな」
兄「は?」
妹「生きる理由が、ないの。ないのに、私、お兄ちゃんの歳を超えて生きようとしてる」
兄「やっぱり、俺のせいじゃんか」
妹「違うよ」
兄「違わないだろ」
妹「でも、この部屋で一人だからさ。静かだし。いろいろ考えちゃうよ」
妹「将来のこととか、自分が何したいんだろうとか。でも何も浮かばないの。おかしいの」
妹「なんかね。静かで、耳が痛くなるの。ヒーターの音だけがやけに大きく聞こえてさ」
妹「そのうち秒針の音が聞こえてくるの。なんでこんなに大きく聞こえるの?ってくらい」
妹「でもそんなこと聞いてくれるお兄ちゃんはいないし」
妹「私だけ、この世界に置いていかれてるみたいなんだもん」
兄「……ごめんな」
妹「だから、お兄ちゃんのせいじゃないんだって。私も弱いんだ。本当は」
兄「だって俺の妹だもんな」
妹「そうよ」
兄「そんな時は呼んでくれればよかったのに」
妹「呼んでも来ないくせに」
兄「呼んだら来たさ」
妹「来なかったじゃない。2年も」
兄「呼んでないだろ、一度も」
妹「何度だって呼んだよ!」
兄「声に出してくれなきゃ」
妹「声に出したら来てくれたの?」
兄「だから来たんじゃないか」
妹「呼んだ?私」
兄「呼んださ。お兄ちゃん、って」
妹「だから、来たの?」
兄「だから、来た」
妹「ずっと見てたの?」
兄「いつだってな。可愛い妹だから」
妹「じゃあ、なんで、一人でいったの?」
兄「連れていくわけにいかないだろ」
妹「私はそれでもよかったのに」
兄「嘘だ」
妹「嘘じゃないよ」
兄「嘘さ」
兄「だからさ、こんなもの、こうやって破っちゃってさ。なかったことにしとけ」
ビリッ
妹「あっ、せっかく書いたのに!」
ビリビリ
兄「こんなもんにせっかくも何もないだろ」
ビリビリ
妹「書くのに一日かけたんだから」
兄「そいつはご苦労だったなあ」
ビリビリ
妹「いろいろ悩んで、書こうか書くまいか、書いてるうちにバカバカしくなったり」
兄「うんうん」
ビリビリ
妹「それでもって思って、やっと。やっと……」
兄「死ぬのは俺だけで十分だよ」
妹「ばか兄貴」
兄「お、それいいな、男らしくって」
妹「ばか……」
兄「おいおい、泣くなよ」
妹「ばかばか」
兄「ごめんな」
妹「嫌いだよ、お兄ちゃんなんて」
兄「それでも、俺はお前を見てるから」
妹「これからも?」
兄「これからも。ずっと」
妹「生きていかなきゃだめ?」
兄「じゃないと、泣いちゃうぞ。俺が」
妹「お兄ちゃん泣き虫だからね」
兄「そうだ。大切なお兄ちゃんを泣かせたくないだろ」
兄「よし、もう行くかな」
妹「また来る?」
兄「呼んだらな」
妹「お兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「お兄ちゃん」
兄「だから泣くなって」
妹「私を、恨んでないの?」
兄「なんで」
妹「私は、お兄ちゃんを助けてあげられなかったから」
兄「ばーか」
妹「私もばかだよね」
兄「ばかだよ」
妹「お兄ちゃんはお兄ちゃんだった」
兄「やっと思い出したか」
妹「そっか」
兄「そうさ。だから、お前も、お前を責めなくていいんだよ」
妹「……うん」
兄「ほら、破れた遺書片付けなきゃ」
妹「お兄ちゃん散らかしすぎ!」
兄「ほら遺書の切れ端だぞ。『お父さんも、お母さんも、どうか心配しないでください。私は』だって」
妹「こら、音読しない!恥ずかしい!」
兄「この先なんて書いてたんだ」
妹「ほっといて!」
兄「『お父さんも、お母さんも、どうか心配しないでください。私は』」
妹「……私は……、一人じゃないから」
51 : 以下、\... - 2014/05/06 01:46:30.26 sO/o5TaI0.net 41/42妹が自殺を思いとどまったところで、この話はおしまいです。
保守に感謝です!
54 : 以下、\... - 2014/05/06 01:47:46.74 FO3HhK6w0.net 42/42短くまとまってるとけどストーリーがしっかりあって読みやすかった
乙