1 : 以下、\... - 2014/07/24 04:01:15.64 Vbe9SImm0.net 1/22

おっさん「前に来た時とはずいぶん様変わりしちまって、どうも知らん街みたいだなぁ」

おっさん「大体もっとドーンと分かり易い建物なんか建ってたらすぐに分かるってのに」

おっさん「しょうもない街だな……あークソ暑い、苛々するわ! こうなったら裸で歩いてやろうか……んあ?」

幼女「……」 ジーッ

おっさん「ちゃうねん」

幼女「……」 ジーッ

おっさん「本当に違うんやって。ちょっと言ってみただけなんやって。本当に裸で歩いたりしたらお巡りさんに捕まっちゃうだろ?」

幼女「おじさん、道に迷ってるの?」

おっさん「んん? おう、迷ってるなぁ。もう人生の迷子やなぁ、なんてなぁ! ははは!」

幼女「……?」

おっさん「すまんね、おじさん滑ったわ。なあ嬢ちゃん、交番まで案内してくれんか?」

幼女「いいよー!」 トテトテ

元スレ
おっさん「道が分からんなぁ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1406142075/

8 : 以下、\... - 2014/07/24 04:07:45.60 Vbe9SImm0.net 2/22

おっさん「じょ、嬢ちゃん、あんま急がんでくれるか?」

幼女「え、なんで?」

おっさん「おっちゃんこの通り、メタボなんよ。メタボリックな。最近は不健康な人をそう言うんやろ? おじさん結構新聞とか読むからメタボに詳しいのよ」

幼女「んー、知らな―い」

おっさん「メタボが通じんのか。じゃあー、ほれ、おじさん狸さんなんよ」 ポンッ ポンッ

幼女「たぬきさん?」

おっさん「ほれほれ、おっちゃんの腹がぽんぽこ鳴ってるやろ?」 ポンポンッ

幼女「私もするー!」

おっさん「嬢ちゃんのお腹じゃ鳴らないやろ」

幼女「えいっ」 パチンッ

おっさん「おうふっ」

幼女「んー、鳴らないねー」

おっさん「うん、おじさん予想外やったわ。最近の子供は容赦ないなぁ」

11 : 以下、\... - 2014/07/24 04:13:58.42 Vbe9SImm0.net 3/22

おっさん「そういや嬢ちゃん、今いくつや?」

幼女「んー、これくらい!」 パッ

おっさん「ほー、5才かー。そら人生楽しいだろうなぁ」

幼女「んー、よくわかんない」

おっさん「わからない内は楽しいってことだよ」

幼女「おじさんは楽しくないの?」

おっさん「もうよく分からないなぁ」

幼女「じゃあ楽しいんだね!」

おっさん「……」

幼女「だってさっきおじさん、楽しいのが分からないのは楽しいんだって言ってたよ?」

おっさん「は、はは、そうかそうか。そうだ、おじさんは今きっと楽しいんだなぁ」

幼女「……変なの」

おっさん「おじさんは変なおじさんだからなぁ」

16 : 以下、\... - 2014/07/24 04:19:11.27 Vbe9SImm0.net 4/22

幼女「あーついー」

おっさん「んん、喉が渇いたなぁ」

幼女「あついー」

おっさん「……じょ、嬢ちゃん、アイス食べたくないか? おじさんが奢ったるわ」

幼女「アイス?」

おっさん「おう! こんだけ暑いと冷たいもん欲しくなるやろ? 案内してもらってるお礼にな、奢ったるわ!」

幼女「んー、いらなーい」

おっさん「え……」

幼女「あのねー、ママが知らない人から食べ物もらっちゃダメだって言ってたの」

おっさん「そ、そっか。ご、ごめんな、おじさん変なこと言っちゃって」

幼女「ううん、ごめんね」

おっさん「そ、それじゃあおじさんとあんまり一緒にいてもママに怒られるだろ? 後はおじさん一人で探すから、嬢ちゃんはもう……」

幼女「大丈夫だよー。困ってる人には親切にしなさいってママ言ってたもん」

おっさん「それは……良いお母さんやなぁ」

17 : 以下、\... - 2014/07/24 04:25:58.27 Vbe9SImm0.net 5/22

おっさん「……おじさんのママは、あんまり良いママやなかったなぁ」

幼女「……?」

おっさん「ああ、違うなぁ。うん、良い母親じゃなかったけど、俺も良い息子じゃなかったわ」

幼女「メタボだから?」

おっさん「バカ、昔はメタボじゃなかったわ! って、もうメタボ覚えたんやな。賢いなぁキミ」

幼女「それほどでもないけどね」

おっさん「おお、おまけになんや格好良いなぁ!」

幼女「えへへ」

おっさん「それにしてもずいぶん遠い交番やなぁ。あとどれくらい掛かるん?」

幼女「んーと、わかんない!」

おっさん「えぇ?」

幼女「えとね、飛行機乗ってね、ディズニーランド行った時にね、お母さんお財布落としちゃったの! それでね、交番のおじさんが飴くれたの!」

おっさん「……うん、その交番は行けんわ」

18 : 以下、\... - 2014/07/24 04:32:09.27 Vbe9SImm0.net 6/22

おっさん「はぁ、これで振り出しか」 ガクッ

幼女「おじさん、元気出して」

おっさん「おう、すまんなぁ。でもなぁ、おじさんもうどこ行けばいいのか分からんのよ」

幼女「疲れちゃったの? お家に帰れば?」

おっさん「お家かぁ。おじさんのお家は、どこなんやろなぁ」 ピラッ

幼女「……これおじさん?」

おっさん「子供の頃のな。イケメンやろ?」

幼女「フツー」

おっさん「はは、厳しいなぁ。……おじさんなぁ、この写真の後ろに写ってる家に行きたかったんよ。この辺りのはずなんやけど、1回しか来た事なくて場所が分からんのよ」

幼女「知ってるよ?」

おっさん「そうかぁ、でもおじさんもう飛行機乗る金もないのよ」

幼女「ううん、すぐそこだよ? 付いて来て」 トテトテ

おっさん「え? ほ、本当に? ちょ、ちょっと待ってって!」

21 : 以下、\... - 2014/07/24 04:35:56.69 Vbe9SImm0.net 7/22

おっさん「な、なぁ、本当に知ってるのか?」

幼女「うん!」 トテトテ

おっさん「本当の本当に?」

幼女「本当の本当だよ」 トテトテ

おっさん「本当の本当の本当に?」

幼女「本当の本当の本当に」 トテトテ

おっさん「……あ、ああ、ちょ、ちょいストップ! そこの公園、公園で休も! な? な?」

幼女「どうして?」

おっさん「い、いいから! な? な?」

幼女「んー、でも」

おっさん「一生のお願いやから!」

幼女「次ないよ?」

おっさん「もちのろんや!」

22 : 以下、\... - 2014/07/24 04:39:05.63 Vbe9SImm0.net 8/22

おっさん「ふぅ」

幼女「ん」 キィ キィ

おっさん「押そうか?」

幼女「いい」

おっさん「そっか」

幼女「んしょ、んっ」 キィ キィ

おっさん「……おじさんのワガママに付き合わせてごめんな」

幼女「いいよ、おじさん困ってるし」 キィ キィ

おっさん「いや、違うよ。おじさんは困ってるんじゃなくて、怖がってるんだよ」

幼女「メタボなのに?」

おっさん「はは、メタボなのにね、おじさんは臆病なんだよ」

24 : 以下、\... - 2014/07/24 04:42:26.39 Vbe9SImm0.net 9/22

おっさん「つまんないだろうけど、おじさんの話聞いてくれるかな」

幼女「ん」 キィ キィ

おっさん「おじさんさ、なんか変だったろ? 会った時から変な感じだったろ?」

幼女「んー」

おっさん「正直ね、今もどう君と話せばいいか、よく分かんないんだよ。最後に子供と話したのなんて十五年も前の話だからさ」

25 : 以下、\... - 2014/07/24 04:45:34.11 Vbe9SImm0.net 10/22

おっさん「おじさんにはパパがいなくて、ママは良いママじゃなくて、後は小さい妹がいただけでさ」

おっさん「なんかさ、もう世の中が大嫌いになっちゃってさ」

おっさん「特に偉そうにああだこうだ言う奴が大嫌いだった」

おっさん「嫌な物全部を壊してやりたいって、たくさん周りに迷惑掛けて生きてたよ」

おっさん「でもさぁ、薄々気付いてたんだよね。そんな事してもどうにもならないってさ」

おっさん「だからいつも虚しくて、苛々して仕方がなかったんだよ」

26 : 以下、\... - 2014/07/24 04:47:59.88 Vbe9SImm0.net 11/22

おっさん「言い訳じゃないけど、弱い者いじめだけはして来なかったつもりだよ」

おっさん「人をいじめる奴を逆にいじめてやったりもしたよ」

おっさん「結局、同じ事をしてただけなんだけどね。本当、馬鹿だよねぇ」

おっさん「どうしようもない馬鹿で、馬鹿でどうしようもなくて、いつも怒ってて」

おっさん「……だからさ、別に、守りたかったとかじゃないんだよ」

27 : 以下、\... - 2014/07/24 04:52:19.92 Vbe9SImm0.net 12/22

おっさん「虐待ってほどの話でもなくて、でも親が子供を殴るっつーのが、どうにも許せなくて」

おっさん「だから一発殴って、殴られる気持ちってのを教えてやりたかっただけでさ」

おっさん「後は刃物持ち出して来て揉み合い、向こうの運が悪かったって話」

おっさん「……俺も素直に言やぁ良かったんだよなぁ、事故だったって」

おっさん「くだらない意地のおかげで、あっという間におっさんってわけ」

おっさん「最初は誰も知らない所で静かに暮らそうとか思ってたんだけどね、すぐに怖くなった」

おっさん「今じゃあわよくば一緒に暮らそうなんて事まで考えてる。受け入れて欲しいなんて思ってる。……ダメだなぁ、歳を取るってのは」

29 : 以下、\... - 2014/07/24 04:56:08.47 Vbe9SImm0.net 13/22

おっさん「と、つまんねえ話して悪いな」

幼女「あのね、人のために怒るのは良いことだよ?」

おっさん「え?」

幼女「自分のためよりも、誰かのために怒れる人になりなさいって、ママ言ってたもん」

おっさん「そっか。……嬢ちゃんはきっと、ママみたいな良い女になるよ」

幼女「良い女?」

おっさん「人を大切にできる人って事だよ。……さてと、それじゃあ行こうか」

幼女「うん!」

31 : 以下、\... - 2014/07/24 05:01:20.49 Vbe9SImm0.net 14/22

幼女「おじさん、もう少しだよ」

おっさん「……ああ、思い出してきたよ。爺さんと一緒にさ、釣竿担いで川まで行ったんだ」

おっさん「それでさ、一緒にいた妹が転んで泣いて、俺がおぶってやってさぁ」

おっさん「もう来んなって……俺から言って……今更だって分かってるけどさ、でも……やっぱ、会いてぇや……」

幼女「おじさん?」

おっさん「お、おう、悪いな。ブツブツ一人で喋って、気持ち悪いよな」

幼女「着いたよ?」

おっさん「え?」

おっさん「あ、ああ……ここだ、ここだ! うあ、ああ……っ」

幼女「行かないの?」

おっさん「ま、まだ心の準備が」

幼女「んー、じゃあ私先に行くね」 トテトテ ガチャッ

幼女「ママ―、ただいまー!」

おっさん「え……」

35 : 以下、\... - 2014/07/24 05:04:47.92 Vbe9SImm0.net 15/22

「こら、どこで遊んでたの! お昼には帰って来なさいって言ったでしょ!」

幼女「あ」

「あ、じゃないでしょ、あ、じゃ! もう!」

幼女「えへへ、ごめんなさーい」

「……それで、何してたの?」

幼女「えっとね、おじさんが迷子でね、困ってたの!」

「あら」

幼女「私ね、ちゃんとおじさんに道教えてあげたよ!」

「それならよし! ほら、はやく手を洗ってきなさい」

幼女「はーい」

37 : 以下、\... - 2014/07/24 05:07:08.88 Vbe9SImm0.net 16/22

「さてと、それじゃあオムライスを温め直して……」

幼女「あ! あのね!」

「んー?」

幼女「おじさんね、うちに用事あるんだって!」

「え?」

幼女「家の前にいるよ?」

「え……えええ?」

39 : 以下、\... - 2014/07/24 05:10:44.33 Vbe9SImm0.net 17/22

「……」 チラッ ガチャッ

「……」 ソワソワッ

「もう、そんな人いないじゃない!」

幼女「えー? さっきはいたんだよー? 本当だよ!」 

「……ねえ、そのおじさんはどんな人だったの?」

幼女「えとね、メタボでね、それとね、うちの写真! 写真持ってたよ!」

「写真?」

幼女「おじさんが子供でね、お家が後ろにあって……あ、女の子もいたよ? んとね、私みたいな子」

「え……ちょ、ちょっと待って! それって、もしかしてこの写真!?」 スッ

幼女「あ、これ! どうしてママが持ってるの?」

「……っ」

42 : 以下、\... - 2014/07/24 05:15:40.62 Vbe9SImm0.net 18/22

おっさん(……あれから何年も経ってるわけだし、子供がいてもおかしくないわな) トボトボ

おっさん(うん。あんな良い子の身内に、俺みたいな犯罪者がいちゃあダメだ) トボトボ

おっさん(だから、うん、これでいいんだ) トボトボ

おっさん「でもやっぱり、寂しいもんは寂しいわ」

「……お兄ちゃん!」

おっさん「うわっ!? ……お、おう、お前か。偶然だな」

「偶然だな、じゃないでしょ!? なんで何も言わずに行っちゃうの!?」

おっさん「な、何の事だよ?」

「子供じゃないんだからそんな言い訳しないでよ! この写真持ってるの、私とお兄ちゃん以外にいるわけないでしょ!」 ピラッ

おっさん「うん……まあ……」

43 : 以下、\... - 2014/07/24 05:20:05.05 Vbe9SImm0.net 19/22

「……」

おっさん「ま……まあ、ちょっと顔を見に来ただけだからさ。良かったよ、こうして会えて、そんじゃ、俺帰るわ」 スタスタ

「そっちじゃない」

おっさん「……?」

「お兄ちゃんが帰るのはそっちじゃない!」

おっさん「え?」

「お兄ちゃんの家はあっち! 私達の家! 家族なんだから当たり前でしょ!?」

おっさん「……」

「いい? またお兄ちゃんが勝手にいなくなったりしたら、私泣くから」

おっさん「……ママを泣かせたりしたら、嬢ちゃんに怒られるな」

「なら、絶対にいなくなったりしないでよ」 ギュッ

おっさん「……ああ」

44 : 以下、\... - 2014/07/24 05:24:53.35 Vbe9SImm0.net 20/22

「まったくもう! 会えなくなったらどうしようかって思ったんだから!」

おっさん「悪かったよ。それに俺なりに一応考えてだなぁ」

幼女「ママ―!」 トテトテ

「幼女! そんなに走ったら転ぶわよ!」

幼女「あうっ」 ドタンッ

おっさん「あ」

幼女「あうっ、うぅっ、ああぁ……」

「だから言ったのに! ほら、自分で立ちなさい!」

幼女「やぁ!」

おっさん「いいよ、ほら。背中乗りなよ」 スッ

幼女「ん」 ガシッ

「お兄ちゃんっ」

おっさん「いいだろ、無理に歩いて酷くしたら大変だしさ」

「……もう、あんまり甘やかさないでよね」

45 : 以下、\... - 2014/07/24 05:26:48.03 Vbe9SImm0.net 21/22

幼女「おじさん」

おっさん「ん?」

幼女「ママのオムライス、とっても美味しいんだよ?」

おっさん「そっか」

幼女「だからね、一緒に食べよ?」

おっさん「ママがいいって言ったらね」

「ダメなんて言うわけないでしょ、もう」

幼女「……ハンバーグも美味しいんだよ」

おっさん「へえ」

幼女「……だからね、たくさん遊びに来て、いっぱい一緒にご飯食べよ?」 モジッ

おっさん「ははは、うん、そうだな。いっぱい一緒にご飯を食べような」 ニコニコ

幼女「うん!」

46 : 以下、\... - 2014/07/24 05:27:36.12 Vbe9SImm0.net 22/22

おわり

ベタベタな話をやりたかったので、そうなってりゃいいです。寝ます

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