1 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/24 21:57:46.26 iaPx5EvQ0 1/36



本作は『魔法少女まどかマギカ』と『人類は衰退しました』のクロスオーバーです。ラストです。

初めてのSSです。至らないところも多いと思いますが、よろしくお願いします。

キャラは最初の時間軸の状態でした。まどかマギカ要素は何処に……

真・妖精さん無双。

妖精さんが居るから鬱なんてあり得ませんでした。

オリジナル妖精さんアイテムがてんこもりもり。

劇場版及び叛逆を見ていない時に投下を始めた話ですので、叛逆と矛盾した設定をやりつつ叛逆ネタが出るかも知れません。



以上の設定の元、最後の暴走をさせていただきます。
だって次のお話で最終回なんだもん。おまけはあるけどね!



1スレ目

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389948070/

2スレ目

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400834062/




※関連
魔法少女は衰退しました 【パート1】 【パート2】 【パート3】 【パート4】
魔法少女は衰退しました しーずん つー 【パート1】 【パート2】 【パート3】

元スレ
魔法少女は衰退しました らすと しーずん
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411563456/

8 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:24:47.63 vbkXRYm/0 2/36





えぴろーぐ 【わたしたちの、ちきゅう】




9 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:26:48.32 vbkXRYm/0 3/36



―――― わー きゃー ぴー


妖精さん「わぷー」ぽいん

まどか「きゃっ!?」

杏子「妖精さんとグリーフシードが雨みたいに降ってきた……」

巨大さやか『あははっ。なんか、見ていたら楽しくなってきたよ』

ゲルト「綺麗……」

マミ「ええ、本当に……」

シャル「それで? どうやってワルプルギスを倒したのかしら?」

シャル「説明してくれる?」

ほむら「説明するほどの事はしていませんよ。そもそも倒していませんし」

ほむら「結局のところ、あの方々はまだ生きていたかっただけなんです」

ほむら「普通に生きて、普通に大人になって、普通に恋をして……普通に、家族に看取られながら死んでいく」

ほむら「それが出来なくなって、出来る人達が羨ましくて、憎くなる」

ほむら「だったら新しい命を差し上げれば、恨みなんか何処かに吹っ飛んじゃうじゃないですか」

ほむら「ただそれだけですよ」

シャル「分かったような、分からないような……」

ほむら「えー……仕方ありませんねぇ。もっとシンプルに言いましょう」

ほむら「所謂転生です。何に、かは皆さんのご想像にお任せしますけどね」

まどか「転生……って……」

マミ「さりげなく神の領域に踏み込んでるじゃない……」

ほむら「大した話ではないんですけどね」

ほむら「全く、今まで妖精さんの謙遜だと思っていましたけど」

ほむら「本当に、大した事はしていなかったんですね」


10 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:29:09.80 vbkXRYm/0 4/36



シャル「……ところで、妖精さんは兎も角、グリーフシードはどうするつもり?」

ほむら「それは私が保管しておきます」

ほむら「こっちの妖精さんは最大で50万人前後までしか増える事が出来ないようですからね」

ほむら「他の方々は順番待ちをしないといけませんから、私の傍に置いておいた方が良いでしょう」

シャル「……順番?」

まどか「危ないんじゃ……」

ほむら「はは。そんな事ありませんよ」

ほむら「”彼女達”にはもう、絶望なんてありません。あるのは未来への希望だけ」

ほむら「一体何が危険だと言うのですか」

まどか「う、うーん……よく分からないけど、ほむらちゃんがそう言うのなら……」

ほむら「そうそう、”私達”に任せてくれればいいんですよ♪」

疾患QB「……これは……一体、何が……」

ほむら「あ。この人の事すっかり忘れてました」

旧べえ「諸悪の根源なんだけど……」

ほむら「仕方ないじゃないですかぁ。この人、妖精さんの姿が見えなくてあまり絡んでこないから、印象に残らないんですよ」

マミ「そう言えば暁美さんの姿もハッキリとは見えてなかったみたいね……」

旧べえ「積極的にハブしていたのは暁美ほむら自身のような気もするけどね」

まどか「なんか、いまいち実感が湧かないけど、本当に妖精さんになっちゃったの……?」

ほむら「そうですねぇ、九割ぐらいその通り、という感じでしょうか」

ほむら「確かにこの力は妖精さんのものですし、存在の在り方もどちらかと言えば妖精さんのそれですが」

ほむら「あくまで私という人間に妖精さんを混ぜ込んだだけですからね」

ほむら「ハイブリッドとかハーフとかちゃんぽんって感じでしょうか」

まどか「ちゃんぽんって……」

ほむら「まぁ、ほぼ妖精さんって事で大丈夫です」

ほむら「しかしこのままだとあの人にこちらの事見てもらえないんですよねぇ。声も届き辛いし」

ほむら「……ああ、そっか。チャンネルがずれているのか。だから……」

ほむら「キュゥべえさん」

疾患QB「!? な……なん……」

シャル(やけに驚くわね……って、多分ほむらの姿がよく見えるようになったのね)

シャル(……今の私みたいに。さっきまでちょっとぼやけていたのに、今じゃハッキリ見える)


11 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:32:22.66 vbkXRYm/0 5/36



ほむら「あの魔女さん達と友達になっちゃいましたけど、どうされます?」

ほむら「多分あの魔女さん達は、あなた達の”最強戦力”だったのでしょう?」

ほむら「勿論最強というだけですから、まさか全戦闘機能の半分を占めるようなものではないでしょうけど」

ほむら「しかし何百万もの艦隊を派遣してきても、被害は大きくなるばかりですよ?」

ほむら「私としても無益な戦いは好みませんし、そちらも無駄にエネルギーを使いたくない筈」

ほむら「大人しくこの星から撤退してくれませんかね?」

疾患QB「ぐ、ぅ……!」

疾患QB「……………く」

疾患QB「く、くく……くくくくくく」

巨大さやか『……何が可笑しいの』

疾患QB「可笑しいさ。この星から撤退しろだなんて、随分と上から目線だね」

疾患QB「今回の戦い、そして今までの蓄積データから」

疾患QB「妖精達の弱点を、一つだけ推論する事が出来たからね」

杏子「!? まさか……」

疾患QB「そのまさかさ」









疾患QB「――――妖精達は、長距離の移動にあらゆるネットワークを利用出来るのだろう?」



12 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:37:13.79 vbkXRYm/0 6/36



全員「……………へー」

疾患QB「なんだその如何にも『え、そうなの?』って言いたげな態度は」

シャル「あ、ごめん。気にしないで続けて」

疾患QB「……じゃあ続けさせてもらおう」

疾患QB「今までの妖精の行動範囲、そして出現パターンから考えると」

疾患QB「妖精は何かしらのネットワーク」

疾患QB「物理的ケーブルに限らず、電子的繋がりさえも利用して移動出来るのだろう」

疾患QB「そうでなければ、衛星軌道上に存在する僕達の母艦に侵入出来るとは思えないからね」

疾患QB「そして今回のワルプルギスのコントロール奪取」

疾患QB「恐らく僕の通信ネットワークから本艦に侵入し」

疾患QB「ワルプルギスのコントロールシステムを支配下に置いた」

疾患QB「違うかい?」

ほむら「違います」

疾患QB「え?」

ほむら「ああ、でも大体合ってるところもありましたよ」

ほむら「確かになんらかのネットワークがないと、妖精さんの移動に制限が掛かるのは事実です」

ほむら「以前あなた達の母艦にお邪魔した時も、通信ネットワークを利用していたみたいですし」

疾患QB「そ、そうだろ、そうだろ」

旧べえ(出鼻を挫かれて焦ってるな、アレ)

マミ(偉そうに話し出した癖に、本題入る前にこけそうだったものね)

疾患QB「それこそが妖精が地球以外の場所に進出出来ない理由だろう」

疾患QB「つまりネットワーク的接続さえなければ、妖精は僕達の本星まで来られない」

疾患QB「なら話は簡単だ。通信機能のない、無人機械による契約システムを配備すればいい」

疾患QB「無人機械では限定的応答しか出来ないから契約の成功率は下がるだろうし」

疾患QB「君達の妨害もあるだろうから成果は著しく下がるだろうが、コストは十分に収益で吸収出来る筈だ」

疾患QB「僕達は今までと変わらず、魔法少女を、魔女を産み出せる」

疾患QB「撤退する必要なんてないね」

まどか「諦めが悪い……!」

ほむら「まぁ、そういう手に出るとは思っていましたけどね」

ほむら「何しろ魔女化って宇宙を延命出来るほど膨大なエネルギーが生じるみたいですし」

ほむら「多分、年一人でも魔女化してくれれば収支はとんとんに持っていけるんじゃないですかね?」


13 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:38:31.71 vbkXRYm/0 7/36



ほむら「――――時に、今のエネルギー回収量はどうなっていますか?」

ほむら「出来れば直近、ここ一分ぐらいの短期データが良いんですけど」

疾患QB「? 君が何を言いたいのか分からないが……」

ほむら「良いから良いから。具体的な数字を教えてくれなくても良いので」

疾患QB「益々訳が分からないけど、えっと……」

疾患QB「!?」

疾患QB「な、なんだこれは!? どういう……」

マミ「……何があったの?」

疾患QB「僕の方が聞きたいよ! 暁美ほむら! 君は一体、妖精に何をさせたんだ!」

ほむら「んー? 何と言われましても、あなたが何に戸惑っているのか分からないので答えようがないですね」

ほむら「ちゃんと、この場で、詳細に教えてもらわないと」

疾患QB「ふざけるな! 一つしかないだろ!」

疾患QB「世界中の魔法少女のソウルジェムから、濁りが一切消えた事だ!」

まどか「!? そ、ソウルジェムから濁りがって……」


14 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:41:19.77 vbkXRYm/0 8/36



疾患QB「ああ、君が想像していた通りだったよ暁美ほむら!」

疾患QB「短期データ、少なくともここ一分の感情エネルギー回収量はゼロ!」

疾患QB「しかもソウルジェムの感情反転反応が一つの残らず消失している!」

疾患QB「あと少しで魔女化しそうだったものも、全て!」

巨大さやか『感情反転反応?』

ほむら「多分ソウルジェムの濁り、つまりあとどれぐらいで魔女化しそうなのかを観測したものでしょう」

ほむら「ほら、放出されそうな場所に『網』張ってないと、エネルギーが逃げちゃうじゃないですか」

巨大さやか『ああ、成程』

旧べえ「しかし、君は一体何をしたんだ……?」

旧べえ「感情反転反応が消失したという事は、つまり……」

疾患QB「なんらかの方法で、世界中のソウルジェムを浄化した! それもグリーフシードなしで!」

疾患QB「しかも状況が”改善”する様子がない……まだ一分だけだが、継続性がある……」

疾患QB「これではもう、今存在する全ての魔法少女は魔女にはならない!」

疾患QB「いや、それどころか魔女も正気を取り戻すだろう! 感情反転反応、即ち希望から転落した感情」

疾患QB「絶望が消えるのだからね!」

マミ「魔女が全員……」

杏子「正気に戻る……!?」

巨大さやか『え? つまり、どういう……』

ゲルト「つまり……何時の間にか、何もかも解決していたという事です」

ゲルト「魔法少女の運命どころか、魔女の運命すらもひっくり返った……!」

疾患QB「一体どんなテクノロジーを用いた!? 僕達ですら予兆が観測出来なかったというのに……!」

ほむら「そりゃあ、地球というか私ばかり観測していても予兆は分からないでしょう」

ほむら「ま、斜め上の発想で仮に気付いてもどうにかなったとは思いませんけどね」スッ

シャル(? ほむらの奴、空を指さして……)

シャル(つーても、空にあるのは雲とお日様だけなんだけど……)


15 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:42:19.91 vbkXRYm/0 9/36







ほむら「妖精さんアイテム『人工太陽こころぽかぽかー』」






17 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:45:23.45 vbkXRYm/0 10/36



全員「……………は?」

ほむら「ですから、妖精さんアイテム『人工太陽こころぽかぽかー』」

ほむら「太陽そのものを改造し、ソウルジェムや魔女さんの絶望を浄化する」

ほむら「総数50万人の妖精さんが半月以上の期間を掛けて開発した」

ほむら「妖精さん史上から見ても最大の発明品です♪」

全員「ええええええええええええええええええええええええええ!?」

杏子「た、た、たたたたたた、太陽!?」

ゲルト「太陽って、あの太陽ですかっ!?」

ほむら「ええ。あの太陽です」

マミ「そ、そんなのどうやったのよ!?」

マミ「太陽の中心温度って確か一千万度以上で、表面温度も5000度あるって……」

ほむら「妖精さんは高温なんかへっちゃらですからねー。余裕です」

疾患QB「し、しかし開発はそうはいかないだろう!? 数千度もあったらどんな物質もプラズマ化して……」

ほむら「そこら辺は水素原子さん達や熱エネルギー達との交渉次第ですね」

ほむら「私が出向く際着ていた防護服は特殊なもので、熱を完璧にシャットアウトしてくれましたが」

ほむら「『こころぽかぽかー』は太陽自体からエネルギーを受け取ってますからね」

ほむら「機械の周りだけ常温核融合にしてもらいました♪」

疾患QB「じょ……!?」

旧べえ「――――ぷ、ぷは、ははははははっ!」

旧べえ「まさかそんな事まで可能とは! いや、原子の反発性を取り除けばなんとでもなるか!」

旧べえ「さしずめ、みんな仲良くしてくださーいとか、結婚式でもやったのかい?」

ほむら「おや? あなたは気付いたようですね。妖精さんの力の本質に」

旧べえ「君の言動と触れずにあらゆる物に干渉する力を見てピンときたよ」

旧べえ「正直、全く理解できないけどね!」


18 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:47:39.07 vbkXRYm/0 11/36



ほむら「……それで、どうされます?」

ほむら「まだ続けますか? 魔法少女システム」

疾患QB「……………」

ほむら「知ってますよ。あなた達の科学力でも、恒星や木星のようなガス状惑星の開発には着手出来ていない事」

ほむら「対して我々は恒星を弄り回せる」

ほむら「その技術力の差は察してほしいものですが」

ほむら(ま、恒星まで行けたのは、インキュベーターのネットワークの痕跡があったからですけどね……黙秘黙秘っと)

疾患QB「……ああ、そうだね」

疾患QB「ようやく分かったよ……妖精に、僕達の常識は通用しない。対抗する事も出来ない」

疾患QB「なら、刺激しない方が得策だ」

疾患QB「これからは、君達に怯えながら過ごすしかないという訳だ」

疾患QB「……全て、君の思惑通りという事だよ、暁美ほむら」

巨大さやか『って、事は……つまり?』

疾患QB「僕達は地球から撤退するという事さ。今後、もうこの星には関わろうとしないだろうね」

シャル「……!」

まどか「それって……」

マミ「インキュベーターから、地球を取り戻したって事!?」

ゲルト「ほ、本当に勝っちゃった……」

杏子「勝っちゃったよ!」

巨大さやか『あたし達、勝ったんだ!』

「やった――――っ!!」

巨大さやか『勝ったんだ! 勝ったんだーっ!』ズシンズシン

まどか「わわわっ!? もうっ、さやかちゃんはしゃぎ過ぎだよ!」

杏子「あ、あはは! すげぇなっ!」

マミ「もう、魔女と魔法少女が戦う事はない!」

ゲルト「魔法少女も生まれない! 私達の完全勝利です!」

ほむら「……………」

旧べえ「……………」

シャル「どうよインキュベーター! 負け惜しみでも言ってみたら!?」

疾患QB「……そうだね。一つ、言わせてもらうとしよう」

疾患QB「多分あと二百年ほどで、この星の文明は危機を迎えるよ」


19 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:53:52.45 vbkXRYm/0 12/36



シャル「……は?」

杏子「あん? ……テメェ、どういう意味だ」

疾患QB「別に、大した意味はないよ」

疾患QB「僕達は十万年以上前から君達を観測し、文明に干渉を続けていた」

疾患QB「その結果、君達の文明は適切なタイミングで適切なステージに移っていったというだけ」

疾患QB「……もしかしたら聞いているんじゃないかな?」

疾患QB「この星の文明を育んだのは、魔法少女だって」

シャル「!?」

疾患QB「今この星は、飢餓、エネルギー、経済……あらゆる分野で問題を抱えている」

疾患QB「この状況は僕達が誘導したものだ。不安定な情勢の方が少女達は願いを抱きやすく、同時に絶望もしやすいからね」

疾患QB「そしてこの状況を維持してきたのが魔法少女」

疾患QB「聞いた事ないかい? 石油の埋蔵量って、毎年”増えて”いるって」

疾患QB「勿論技術発展もあるし、新たな産油地を見つけたという事でもあるけど」

疾患QB「大半は本当に”増えている”のさ」

疾患QB「当然だよね。石油という価値のある物を望む子は、いくらでも存在するんだから」

疾患QB「――――さて、ここで問題だ」

疾患QB「もしも、今の人類文明から石油が失われたら……どうなるかな?」

マミ「なっ……!?」

疾患QB「他の分野でもそうさ。ダイヤモンド、鉄、湧水……全て”僕達”が与えた物」

疾患QB「君達は自力で発展したと思っている。だけどどれもが、魔法少女を介し僕達が与えてきたものだ」

疾患QB「宇宙の延命に必要なエネルギーを提供してくれた、そのお礼としてね」

疾患QB「そしてそのお礼を使い、人類は今の文明水準を保っている。七十億体まで繁殖もした」

疾患QB「それに十年以内に環境問題を改善する技術発展を起こす予定だった。君達の繁栄は保障されていたんだ」

疾患QB「でもその契約関係は今日で打ち切り」

疾患QB「おめでとう! 君達は今日から家畜から野生動物にランクアップだ!」

疾患QB「厳しい自然環境と天敵と資源問題に、自力で立ち向かうと良い!」

疾患QB「――――何時までこの愚かな獣が絶滅しないでいられるか、それを観察出来ないのが残念だよ」

杏子「こ、コイツ……!」


20 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 12:56:25.77 vbkXRYm/0 13/36



ほむら「……そうですねぇ。確かに愚かかも知れません。傲慢が過ぎるのも、割とそうだと思いますし」

ほむら「でも”我々”から見たら、あなた達も相当な愚か者ですけどね」

疾患QB「……なんだって?」

ほむら「一つ、助言してあげましょう。”先駆者”としての助言です」

ほむら「あなた達の文明は最適化の繰り返しによってそこまで発展した」

ほむら「今では宇宙の隅々にまで版図を広げ、物理法則を捻じ曲げるほどの科学力も手にした」

ほむら「でもそれ、頭打ちになっていませんか?」

ほむら「新たなエネルギーが何処にも見つからない。見つけても時間稼ぎにすらならない」

ほむら「研究中の技術は現在の理論では解決不可能な問題が生じ、先に進めない」

ほむら「あなた達は今、自力では越えられない壁に直面しているのではありませんか?」

ほむら「最適化し尽くしちゃって、どうにもならなくなってませんか?」

疾患QB「……………」

ほむら「最適化は一見進化のようで、袋小路に逃げ込んでいるだけ。待っているのは、細い細い一本道だけ」

ほむら「それは、自ら終わりを目指して突き進んでいるようなもの」

ほむら「あなた方の方法では、宇宙は救えません」

疾患QB「……確かに、現状僕達のテクノロジーは停滞している」

疾患QB「それで? 君には手があるのかい?」

疾患QB「この冷えていく宇宙を救う」

疾患QB「”誰も犠牲にならない”方法なんてものがさ」

ほむら「――――多様性を持ちなさい」

疾患QB「……多様性?」

ほむら「全てと手を取り合い、全てと心を繋ぐ」

ほむら「木々が枝を伸ばすように、行く先を広げていく」

ほむら「中には折れてしまう枝もあるかも知れない。育ちにくい枝もあるかも知れない」

ほむら「だけどその先は、無限に広がる世界がある」

ほむら「それだけが、単一で越えられない壁を越える唯一の術ですよ」

疾患QB「ふん。くだらないね」

疾患QB「僕達だって、同程度の水準に達した他の文明と技術交流は行っている」

疾患QB「それでも壁は越えられないんだ」

疾患QB「多様性でどうにか出来る問題じゃないんだよ」

ほむら「ふふ。分かってませんね。本当に分かってない」

ほむら「だけど今はまだ、あなた達を救えないのも事実」

ほむら「だからこう言うしかありません」

ほむら「宇宙どころか地球を救えるだけの力すらない身ではありますが」

ほむら「何時の日か、必ず全てを救ってみせます」


21 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:02:30.17 vbkXRYm/0 14/36



疾患QB「ふん。見物だね」

疾患QB「……さて。実は帰還命令を二回ほど無視していてね。このままだと置いていかれそうだ」

疾患QB「僕は帰るから、事の成り行きは見ていられないけど」

疾患QB「それは君に任せるとしようかな」

旧べえ「……………」

疾患QB「それじゃ、”また何時か会える時まで”」

疾患QB「さよならだ」

――――シュンッ!

マミ「! 消え……」

ほむら「あ、ちょっと待って」クイッ

まどか(? ほむらちゃん、何かを掴むような動作を――――)

疾患QB「きゅぶっ!?」べちんっ

まどか「あ、キュゥべえが落ちてきた」

疾患QB「ちょ、何をしたんだ君は!? 今僕は量子変換テレポートで戻ろうとして……」

ほむら「細かい事は気にしない!」

疾患QB「量子化した僕を遠距離から掴んだ挙句実体化させたのがどう細かいんだよ!?」

ほむら「物理的に細かいじゃないですか」

疾患QB「そういうトンチをきかせたつもりって言い方が気に食わない!」

ほむら「ですから細かい事は気にしない」

ほむら「これから母星に帰ろうとしているあなたに、ちょっとしたプレゼントをあげようと思いまして」

疾患QB「はぁ? プレゼント?」

ほむら「はい、どうぞ。今さっき作った私の処女作ですよー」

疾患QB「これは……カイロ?」

ほむら「背中に貼ってみてください」

疾患QB「? こういう感じ――――」

疾患QB「しびばびばびばびびびばばばばばばばばばばーっ!?」ビリリリリ

ほむら「すると全身に超高圧電流が流れます」

疾患QB「ぼ、僕を殺す気かああああああああああああっ!?」

疾患QB「大体なんでカイロから電流が流れるんだよ! 発電機かこれはっ!?」

ほむら「ほら、カイロだと思って使ったらびっくりするじゃないですか。所謂ジョークグッズです」

ほむら「熱を直接電気に変換しているだけですから、お手軽に作れますしね♪」

疾患QB「ただのジョークグッズに何さらりとエネルギーの質を無視したテクノロジーを使っ」

疾患QB「――――!?」


22 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:08:39.53 vbkXRYm/0 15/36



疾患QB「な……ば、馬鹿な!? 熱エネルギーを電気エネルギーに……」

疾患QB「それもお湯を湧かすなどの行程を経ず、直接変換したのか!?」

ほむら「ふふ。ですからジョークグッズです」

ほむら「どーせやるなら、仕組みも冗談みたいになってないと面白味がないでしょう?」

疾患QB「お、面白味って、そんな、どうやって……」

ほむら「それは宿題です」

疾患QB「……宿題……?」

ほむら「ええ。それはあなた達への宿題です」

ほむら「確かに今はまだ宇宙を救う事は出来ませんけど、せめてその方法ぐらいは示唆しませんとね」

ほむら「頑張って、そのカイロを解析してください」

ほむら「妖精さんテクノロジーを使っていますけど、多分あなた達なら模倣可能な筈」

ほむら「上手くいけばわざわざこんな辺境くんだりまで来なくても良くなりますよ」

疾患QB「……………暁美ほむら、君は……」

疾患QB「いや、なんでもない」

疾患QB「……今度こそ、帰らせてもらうよ」シュンッ

巨大さやか『……また消えた』

杏子「なんだよアイツ、ほむらから、よく分かんないけど道具もらったくせに礼一つなしかよ」

旧べえ「ちなみにあのカイロに使われている技術ってどんなものなんだい?」

ほむら「別に大したものは使ってません。エネルギーの質云々なんて、所詮”こちら側”の言い分ですからね」

ほむら「やり方さえ分かれば、あんなのは簡単にひっくり返せる法則なんです」

旧べえ「そうして解析したデータを元に発電施設なりなんなりを作れ、と。熱力学に真っ向から挑むねぇ……」

旧べえ「でも確かに、熱エネルギーを直接電気や運動エネルギーに変換出来れば」

旧べえ「それは僕らのエネルギー問題が完全に解決する事を意味する」

旧べえ「……君は、エネルギー問題にあえぐ僕らを救おうと言うのかい?」


23 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:10:02.60 vbkXRYm/0 16/36



ほむら「なんやかんや種族レベルではギブ・アンド・テイクの関係だったのは事実ですし」

ほむら「折角”上手くいっていた”関係をぶっ壊すのなら、代案を出さなきゃただのワガママです」

ほむら「それに宇宙の熱的死なんて、とんでもない重要問題じゃないですか。ほっといたら私達も死んじゃいますよ」

ほむら「せめて我々が宇宙に飛び出すまでの時間稼ぎはしてもらいませんと」

旧べえ「宇宙に飛び出すまで、か……そう言えば全てを救うと言っていたね」

旧べえ「あの言葉は、ハッタリではないんだね?」

ほむら「さて、どうでしょうか」

ほむら「”あちら”なら兎も角、こちらでは少々難易度が高そうです」

ほむら「ただまぁ、不可能ではありません。道程も、少しは見えています」

ほむら「難題ではありますが、絵空事ではありませんよ」

ほむら(そう、妖精になっていなければ、言えなかったでしょう)

ほむら(妖精となった事で、空間に刻まれた種族の記憶を読み取れたからこそ)

ほむら(彼等の力の本質を、A地球の歴史を知ったからこそ、”可能”だと言える)


24 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:16:49.88 vbkXRYm/0 17/36



ほむら(……A地球の妖精は、執念じみた憧れで願いを叶えた)

ほむら(そして彼等は人であろうとするがために、自身が持つ万能の力を外へと捨てるようになった)

ほむら(神々すらも超える力と、人でいようとする心を分離させてしまった)

ほむら(そんな力が万物に宿る”心”と結合した時、何が起きるのか)

ほむら(――――万能の力を持った、一つの命が生まれる。それがA地球の”妖精さん”の正体)

ほむら(重要なのは、その力は本来妖精が持っているものであり、妖精が生きている限りいくらでも湧くもの)

ほむら(どれだけ捨てようと、生きている限り、人でいようとする限り心から溢れ続け)

ほむら(周りのあらゆるものを命の定義に引き上げ続ける)

ほむら(ならば必然妖精が存在する限り、辺りに満ちる力の総量は増え続ける。妖精さんがどんどん産まれていく)

ほむら(そして増えすぎた妖精さんはやがて妖精の周りに留まれなくなり、外へと溢れる)

ほむら(溢れた妖精さんは荒れ果てた世界を楽しく開拓し、『人』の住める世界に変えていく)

ほむら(そこに『人』が定着すれば、そこにある自然物や彼等の作った道具から新たな『思考するもの』達が生まれ)

ほむら(捨てた力と結びつき、新たな命を産み出す――――溢れるほどに)

ほむら(そのサイクルが、人類が衰退して千年に満たない期間で、妖精が数千万人まで繁栄出来た仕組み)

ほむら(今や妖精さんが百億、二百億にまで増え、A地球を覆い尽くすようになった理由)

ほむら(例えどんなに大きな壁が立ち塞がろうと、どんなに強固な壁にぶつかろうと)

ほむら(立ち止まった場所で産まれた”命”が、何時か必ずその壁を打ち砕く)

ほむら(それが『妖精』の力。あらゆる”命”と手を取り合える”彼等”だから出来る事)

ほむら(それじゃあ、地球から妖精さんが溢れたなら? 生まれ続けた妖精さんが、いずれ地球に留めておけなくなったら?)

ほむら(……勿論苦労は多いでしょう。星の外は虚空であり、冷たい世界だから)

ほむら(それでもあらゆる壁を打ち砕ける妖精は、いずれ地球を飛び越え、月を乗り越え、オールトの雲を突き抜け)

ほむら(冷たくて寂しい宇宙の全てを、その向こうにある未知なる世界の全てを)

ほむら(楽しさと、温かさと、命で満たしていく)

ほむら(妖精の繁栄は地球なんかじゃ留まらない。これからも大いに、際限なく発展していき)

ほむら(いずれ”世界”は妖精のものとなる)





ほむら(でも、こちらの妖精さんにその方法は使えない)


25 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:20:47.31 vbkXRYm/0 18/36



ほむら(こちらの妖精さんは、あくまで力そのものが本体。太古の姿を変えていない)

ほむら(向こうが捨てた力によって生じさせた理論を、本体で行うしかない)

ほむら(それでは力の総量は変わらない。力の結合と剥離を繰り返し、力が巡るだけ)

ほむら(こちらの世界の妖精さんが50万人までしか増えられないのはそれが原因。50万まで増えると力が枯渇してしまう)

ほむら(これでは星を、世界を妖精さんで覆う事は出来ない。虚空を温かさで満たせない)

ほむら(これでは全てを救えない)

ほむら(……だったら別の手法を使うまでの事)

ほむら(そう、彼等は”手を取り合う者”であり、”命の多様性を広げる者”)

ほむら(だから――――)

シャル「……ほむら。アイツら、本当に帰った?」

ほむら「……ええ。地球周辺のネットワークでは、もう彼等の存在は検知出来ません」

ほむら「多少の置き土産はあるようですが、ネットワークが遮断されていますし、廃棄されたものでしょう」

ほむら「あの子が言っていたように、地球から完全に撤退したようです」

シャル「……そう」

旧べえ「つまり僕は完全に見捨てられた訳だ。ま、清々するけどね」

まどか「ようやく、全てが終わったんだね……」

巨大さやか『……だけど……』

シャル「……………」

ほむら「さて、これからが忙しくなりますよ」

全員「え?」


26 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:23:08.65 vbkXRYm/0 19/36



ゲルト「えっと、暁美さん? それはどういう……」

ほむら「どういうって、もう。インキュベーターの話、ちゃんと聞いてました?」

ほむら「癪ですけど今までインキュベーターの助力によって地球の文明は成り立っていたのですよ?」

ほむら「このままだと人類は遠からず全滅です。何かしら手を打たないとダメじゃないですか」

マミ「それはそうかも知れないけど、でも手を打つって言ったって……」

まどか「ほむらちゃんには何か作戦があるの?」

ほむら「作戦というか、方針程度には。まぁ、なんとかなるでしょう」

まどか「なんとかって……」

まどか「……………そっか、なんとかなるのか」

巨大さやか『なんだろうね、ほむらがなんとかなるって言うのなら』

巨大さやか『きっとなんとかなる。そんな気がしてきたよ』

ゲルト「ええ、本当に。なんとかしちゃうんでしょうね」

マミ「お祭り騒ぎになるまで盛り上げながら」

杏子「理不尽に全てをぶっ壊しながら」

旧べえ「不条理に何もかも巻き込みながら」

シャル「だけどとっても楽しく、ね!」

ほむら「勿論。それだけは保障します」

ほむら「さぁ、皆さん! 張り切っていきましょう!」

ほむら「この世界を、もっと楽しくしに!」



……………

…………

………

……




27 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:28:22.08 vbkXRYm/0 20/36




                   ―――― 一ヶ月後 ――――



シャル「えーっと、蜂蜜とヨーグルトと」

まどか「アーモンドにゼラチン、みかんの缶詰」

さやか「砂糖に牛乳にかぼちゃ……って、あたしの荷物だけやたら重くない!?」

シャル「え、今気付いたの?」

まどか「てっきりさやかちゃん、妖精さんパワーのお陰で力持ちになったから重いの持つのを買って出たのかと……」

さやか「いや否定はしませんけどね!? 実際辛くはないけどさ!」

シャル「なら良いじゃん。適材適所よ」

さやか「ちょっとは労わろうって気はないの? それでも友達?」

シャル「さやかを信用してるのよ」

さやか「空虚な言葉だなオイ……」

まどか「もう、二人ともあまりじゃれ合ってないで、早くほむらちゃんのお家に行こうよ」

まどか「折角ほむらちゃんが私達を信じて送り出してくれたんだから、期待に応えないと!」

シャル「信じて送り出したも何も」

さやか「ただの買い出しなんだけど」

まどか「良いの。こういうのは気分が大事なんだから」

まどか「ほむらちゃんに頼まれて買い物だなんて……まるで、ど、同棲している夫婦みたいだよーっ///」

シャルさや(まるでパシリみたい、とか思ってるのは私だけだろうか……)


28 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:32:37.78 vbkXRYm/0 21/36



シャル「まぁ、確かに最近暑いし、牛乳とかは早く持っていかないと腐りそうよね」

シャル「建物もないから、直射日光もろ当たりだし」

さやか「ワルプルギスで見滝原壊滅だったからねー。何処も滅茶苦茶。あたしの家も半壊」

まどか「こっちの方はまだ家の形が残ってるだけマシみたいだけどね」

まどか「都心部はそれこそ、跡形もないみたいだし」

シャル「思いっきりビルを投げ飛ばしてたからね。そりゃ跡形もないでしょ」

まどか「復興にどれだけ掛かるかな……」

シャル「まぁ、死者はほむらのお陰で出てないし、”最先端技術”でのサポートもあるし」

シャル「そんなに時間は必要ないでしょ。一年は必要かもだけど」

さやか「……そんな大惨事でも、ほむらの家は完全無傷だったけどね」

さやか「今更だけど、見滝原の人を全員あの家に詰め込めば万事解決だったんじゃないかなー」

シャル「……咄嗟に無理と言えないあたり、私も大分あの不条理世界に毒されたわね」

まどか「あの家、中がどうなっているのか、未だにほむらちゃん以外把握出来てないもんね」

シャル「最近はアイツ自身把握しきれてない気がしなくもないのよねぇ……」

シャル「っと、そうこうしていたら家が見えてきたわね」








\わいわいがやがや/


まどか「……相変わらず、凄い行列」


29 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:37:25.82 vbkXRYm/0 22/36



シャル「人だけならただ賑やかなだけなんだけどねー」

さやか「大半が、まぁ、その……」

さやか「怪物だからなぁ」

まどか「しかも普通の人には見えない怪物」

まどか「魔女だもんね」

シャル「魔女と魔法少女が一列に並んで、とあるお家に押し寄せる」

シャル「ほむらが”あんな事”しなければ、絶対見られなかった光景よね」

さやか「……いや、本当にアイツはとんでもない事したよね」

まどか「そうだねー……もう三週間も前の話なのに、昨日の、ううん、今さっき起きた出来事のように覚えてる」

シャル「まさか妖精さんパワーで公共・軍事用・アマチュア用のあらゆるネットワークを乗っ取り」

シャル「全世界に魔女と魔法少女、ついでに妖精さんの事を公表した時には、流石に驚いたわ」

シャル「お陰で今や世界中から魔女や魔法少女がうちにやってくる始末」

シャル「妖精さんパワーで人間に戻りたいって、忙しいったらありゃしないわ」

さやか「一ヶ月前にアイツがいいんちょちゃんに、家に帰っても騒ぎにならないって言った理由がよく分かったよ」

さやか「そりゃ世界中で魔法少女が現実にものになり」

さやか「その魔法少女の末路達が全員正気を取り戻した挙句、人間の姿に戻って表舞台に出てきたんだもん」

さやか「しかもそれを可能にしたのは自称全宇宙最高の科学力を持った妖精さんとそのお友達」

さやか「こんな大騒ぎの中じゃ、行方不明になった女の子が一人家に帰ったなんて事件のうちに入らないよね」

まどか「理解不能な事を一気に捲し立てて、相手がポカンとしているうちに全てを終わらせる」

まどか「ほむらちゃんらしいと言うかなんというか……」

シャル「しかも世界規模で。思い付いてもやらないっつーの普通」

さやか「ま、それを手伝おうとするあたし達も、もう普通側じゃないんだろうけどね」

さやか「この買い物も、魔女や魔法少女を元に戻している妖精さんのモチベ意地のために使われるお菓子の材料だし」

シャル「そうかもね」


30 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:39:01.80 vbkXRYm/0 23/36



シャル「さて、それじゃそろそろ家に入って――――」

シャル「……ん?」

まどか「? どうしたの?」

シャル「いや、何かしら……気の所為かも知れないけど」

シャル「この列、全然前に進んでないような……」

さやか「ああ、確かに。でもそれは単に一人一人時間がかかって……いや、それはないか」

まどか「魔女を人間に戻す時は別でも、魔法少女を人間に戻す時はほんの数秒で終わる筈だし」

まどか「それに杏子ちゃんやマミさん、ゲルトルートさんも居るから、今まで結構サクサクと進んでいたよね」

まどか「確かに、ちょっと変かも……」



杏子「ちくしょう! 一体何処に行ったんだっ!」バンッ



さやか「うわっ!? 杏子ちゃん!?」

杏子「え、あ、さやか様! すみません、驚かせちゃって」

さやか「いや、それは良いけど……どうしたの?」

杏子「えっと、その」

杏子「ほ、ほむらの奴、見ませんでしたか?」

さやか「ほむら? いや、見てないけど……」

シャル「……まさか、居ないの?」

杏子「……ああ、中々列が進まないと思って部屋を見たら、姿が消えていたんだ」

杏子「しかも妖精さんも一緒に」


31 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:41:41.96 vbkXRYm/0 24/36



まどか「どういう事……?」

シャル「自分を待っている魔女や魔法少女を前にして、ふらりと何処かに出掛けるなんて考えにくいわね……」

シャル「魔女とか魔法少女に関しては、あまりサボろうとしないし……」

さやか「――――まさか、過激派?」

まどか「え?」

さやか「朝、テレビでやってたんだ」

さやか「妖精さんパワーの凄まじさに脅威を感じた人達が、妖精さん排斥運動ってのをやってたって」

さやか「そんで、なんとかって組織のリーダーが言ってたんだけど」

さやか「妖精が人類に干渉を続けるなら、実力行使も辞さないって……」

まどか「!? じ、実力行使!?」

シャル「……ネットで見た事があるわね。妖精排斥運動過激派」

シャル「人間賛歌を謳う、と言えば聞こえは良いけど、実態は人間至上主義者の集まり」

シャル「彼等にとって人間以外の、例えば自然、あと特定の人種は資源であり利用すべきもの」

シャル「そんな思想を根底から覆す妖精さんの存在は、彼等にとって絶対的な敵らしいわね」

シャル「一応魔女や魔法少女も対象みたいだけど、とりあえずは妖精さんが一番の標的みたいで」

シャル「人間の優秀さを示すために”実力行使”に出るという予想は、確かにあったわ」

まどか「その実力行使って……」

杏子「十中八九テロだな」

杏子「もし連中の仕業なら、ほむらや妖精さんを拉致して」

杏子「観衆の前で公開処刑しようとしている、とかか?」

シャル「思想が思想だけに否定出来ないわね……人間じゃないと認識した相手になら、なんでも出来るのが”人間”だもの」

まどか「そんな……!」

さやか「お、落ち着こうまどか! 言い出しっぺのあたしが言うのもなんだけど、ただの推測で……」


32 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:42:34.82 vbkXRYm/0 25/36



マミ「た、大変よ佐倉さん!」

ゲルト「大変ですーっ!」

まどか「っ!? ま、マミさん!?」

マミ「あ、鹿目さん! 丁度いいところに!」

マミ「もう、佐倉さんから話は聞いた?」

まどか「え、ええ。ほむらちゃんが居なくなったって」

ゲルト「実は部屋に、こんなメモが残されていたんです」

シャル「メモ?」

さやか「ま、まさか犯行声明……?」

ゲルト「? えっと、これがそのメモなんですけど……」

杏子「……どれどれ……」


33 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:43:39.37 vbkXRYm/0 26/36











             ちょっと疲れたので、妖精さん達を連れて休憩に行ってきます。

                  一時間ほどで帰ってくるつもりなので、

             魔女さん達と適当にお茶会でも開いて楽しんでいてくださいね♪


















                 PS:決して飽きたって訳じゃありません







34 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:44:27.64 vbkXRYm/0 27/36



シャル「……………」

まどか「……………」

さやか「……………」

杏子「……………」

マミ「……………」

ゲルト「……………」








































シャ 「ただのサボりじゃ―――――――――――――んっ!?」



35 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:47:14.65 vbkXRYm/0 28/36



じゃーん じゃーん じゃー……


ほむら「おっと、鹿目さん達の叫び声。どうやらメモを読んだようですね」

ほむら「魔女さんや魔法少女さんを人間に戻すのは大切な事ですが」

ほむら「『こころぽかぽかー』で絶望を取り払った今、急ぐ必要はなくなりましたからね」

ほむら「適度に休憩を挟まないと♪」

妖精さん「おてがみたべた?」

ほむら「一応あのメモは食べられる素材にしてはみましたけど、食べるかどうかは分かりませんねー」

ほむら「それはそうと、どうですか妖精さん」

ほむら「私お手製の電波遮断スーツの着心地は」

妖精さん「せまいながらもいごこちのよいわがやですな?」

ほむら「スーツはお家にするものじゃないでしょ。それに我が家というより生まれ故郷かと」

妖精さん「じもとのおうえんしたーい」

ほむら「とりあえず、当面はそれで我慢していてください」

ほむら「人間の作った電波は本当に空気を読みませんからね。ウザいったらありゃしない」

ほむら「そのうち、妖精さんに優しい電波に変えてもらいませんと」

ほむら(……いずれ妖精さんと人間が共に生きていくためにも)

ほむら(A地球の妖精が手に入れられなかった”未来”を手にするためにも)

ほむら「っと、人気を避けていたら森に入っちゃいましたね」

ほむら「まぁ、こういう静かな環境の方が気分転換には良いですし、しばらくぼーっと過ごすのも――――」


36 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:49:17.53 vbkXRYm/0 29/36



――――なにかきた

――――なんかきたきた

――――へんなの、きたきた


妖精さん「ぴーっ!?」ピュン

ほむら「……悪くないと思ったんですけどねぇ。妖精さん、隠れちゃいましたか」

ほむら「そこの草むらに隠れている人、出てらっしゃい」

ほむら「出てこないとこっちに引っ張り出しますよ?」



少女「……………」ガサッ



ほむら(あら、随分と小さな女の子。恰好はなんかボロボロで、みすぼらしいですけど)

ほむら「どうしました? なんか恰好が随分と……」

少女「こ、来ないで!」バッ

ほむら(? 何か宝石みたいなのを取り出して――――って、あれ、ソウルジェムじゃないですか)

ほむら(という事は、魔法少女ですか)

ほむら「落ち着いてください。私は敵じゃありません」

ほむら「ほら、テレビとかで聞いてませんか? 暁美ほむらという名前」

少女「知らない……もう一ヵ月、テレビなんて見てない……」

少女「ソウルジェムが黒くなって、嫌な予感がして誰もいない場所に逃げて」

少女「なのにいきなりソウルジェムが綺麗になって」

少女「魔女を狩ろうとしたら魔法少女っぽいのに妨害されるし」

少女「もう、何がなんだか……」

ほむら(めっちゃタイミング悪い時に『こころぽかぽかー』の効力を受けたんですね……)


37 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 13:51:05.34 vbkXRYm/0 30/36



ほむら「うーん、何から説明したものか――――」


――――とっつげきー


ほむら「しゃがみっと」スッ

ヒュンッ

少女「!? な、何? 何なの!?」

「馬鹿な!? 拳銃の弾を避けるなんて!」

「偶然に決まってる! もう一発――――」

ほむら「なんだか知りませんが、つまーれ」ミョンミョンミョン

「!? 弾が詰まった!」

「糞! こうなったら直接仕留める!」

少女「! 木の影から、大人が……男の人……」

ほむら「全く。いきなり発砲だなんて物騒な」

ほむら「あなた達、あれですか? 最近テレビでやってる妖精さんの過激派だかなんだかの人」

ほむら「見たところ外国の方のようですけど、遠路はるばるご苦労な事です」

ほむら「持ち込んだのか購入したのかは知りませんけど、日本で拳銃を手にするのは大変だったでしょう」

男A「……やるぞ」

男B「ああ」チャキ

ほむら「あらあら、こちらを無視してナイフを取り出す。お話したいのに」

ほむら「……ひょっとして、こちらの小さな女の子も殺そうとしている、なんて事はありませんよね?」

少女「え……?」

男A「当然だ」

男B「その宝石……魔法少女の証だな」

男B「人間のためにも、危険な化け物は駆除するだけだ」

少女「え、え……?」


38 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 14:02:38.17 vbkXRYm/0 31/36



ほむら「あのー、こんな不毛な戦いはやめませんかねー?」

ほむら「”我々”妖精は人間の皆さんと仲良くしたいと思っています。攻撃的な意思は持ち合わせておりません」

ほむら「事実我々の技術の一部は既に人類側に提供してあり、それはこの見滝原の復興に役立てられる筈です」

ほむら「手を取り合い、共に発展していきたいと思うのですが……」

男A「ふん、お前たちの力など必要ない」

男B「人間の力を嘗めるな。お前達がいなくても、人間は進歩していけるんだからな」

ほむら「……嘗めるなもなにも、絶滅しちゃったくせに。進歩は途中で頭打ちになってたし」

ほむら「自分に出来る事と出来ない事が分からない人って、最後は結局自滅するって知らないんですかね……」

ほむら「ま、私は肉体的にはいくらでも替えが利くので切られても平気ですけど」

ほむら「流石にこんな小さな子を切らせる訳にはいきませんね」

ほむら「ワガママな大人には退場願いましょう」

男A「ふん、道具を作る時間を与えると思って――――!?」

男B「な、なんだ!?」

男A「雑草が、足に絡み付いて……!?」

ほむら「時間は与えられるものではありません。作るものです」

ほむら「えーっと、落ち葉と土を混ぜてー丸めてーこねこねーっと」

ほむら「あとはその辺に落ちていた空き瓶にさらさらっと入れて、シェイクシェイク~」

ほむら「完成! 私お手製妖精さんアイテム『大進化栄養剤』~♪」

ほむら「これを、どばどばーっと地面にたらせばー」


40 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 14:05:49.57 vbkXRYm/0 32/36



――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

少女「……え、何? 何?」

少女「なんか、地面が揺れて……」

――――ドゴォッ!!

少女「って、じ、地面から大量の根っこがあああああああああああああああっ!?」

男A「な、なんだこりゃああああああああああ!?」

男B「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

ほむら「『大進化栄養剤』は浴びた生物の細胞分裂を活性化」

ほむら「突然変異と個体内淘汰を経る事で通常の数十億倍の速度で進化を促し、驚異の生命体を誕生させる」

ほむら「バイオでハザードな事態が起きる事必須の超危険アイテムです♪」

少女「超危険ならなんで使ったのおおおおおおおおおおお!?」

ほむら「まぁ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。あの男の人達を懲らしめる目的で使っただけですし」

ほむら「流石にそろそろ効き目が切れる筈ですし」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ウワー、ショクブツガー、ネガー

ほむら「……ええ、そろそろ」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ギャー、ナンカクチガハエテ、ヒーッ

ほむら「………………」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ グェーッ、ニゲラレナイー、ギャア

ほむら「……………やば。ちょっと使い過ぎたかも」

少女「使い過ぎたかも、じゃないでしょおおおおおおおおおおおおお!?」

少女「なんかもう色々可笑しいでしょ! 高さ100メートル近くまで育ってるし!」

少女「口とかあるし! 触手がたくさん生えてるし!」

少女「ぶっちゃけビオ○ンテじゃない!」

ほむら「しかも植獣形態の方ですね。ほぼ動物」

少女「何がどう進化したらこうなるの!?」

ほむら「さぁ? 生物の可能性は無限大って事なんでしょう」

ほむら「でもこれ以上進化されると色々不味い気がするので、そろそろ大人しくしてもら」


しゅるるるるるるるっ!


ほむら「うわー、蔓が伸びてきてつかまったー(棒読み)」

少女「ちょ、な、ちょおおおおおおおおおおお!?」


41 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 14:07:19.82 vbkXRYm/0 33/36



少女「何自分で生み出した怪物に捕まってんの!? 馬鹿なの!? 死ぬの!? というか死亡フラグじゃない!」

ほむら「いやですーしにたくないですーたすけてくださーい」

少女「本当に助けてほしいならもう少し緊張感を持って叫んでよ!?」

少女「大体こんな大きな植物の怪物にどう立ち向かえば良いって言うの!?」

ほむら「あ、これあなた用の武器である伝説の聖剣です。私のハンドメイドですよー」ポイ

少女「ひゃあっ?! 私の傍に投げてきて危な……って、手元にあるならそれで自分を縛ってるの切ってよ!?」

男A「ひぃぃぃぃぃ! たすけてくれぇぇぇぇぇ!?」

男B「誰かああああああっ!」

ほむら「わー、怪植物が町に向けて侵攻を始めましたー……あ、あっちの方が人口多いから、その方が盛り上がりが」

少女「今指示したよね!? もろに指示出したよね!?」

男×2「たすけてくれえええええええええええええっ!!」

少女「五月蝿い! 大の大人が泣き叫ぶなっ!」

ほむら「さぁ、見滝原の危機を救えるのはあなただけです!」

ほむら「今こそ魔法少女から伝説の騎士にランクアップするのですよっ!」

少女「うっがああああああああああああああ!! 分かったわよ! やればいいんでしょ!」

少女「言われた通り魔法少女を止めて――――」

少女「伝説の騎士になって、とりあえずこの植物怪獣もろともアンタもぶった切る!」

ほむら「あ、一応私一時間休憩してる事になってるので、あと三十分ぐらいで片付けてくださいね?」

少女「知るかあああああああああああああああああああああっ!」


42 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 14:08:49.84 vbkXRYm/0 34/36




それから見知らぬ魔法少女さんは、巨大怪植物との戦いを始めました。


体格差もあって中々不利だったようですが、途中この怪物の存在に気付いた鹿目さん達が駆けつけて


助太刀してくれたのでなんとかなりました。


捕まっていた男の人達もすっかり私達に平伏したようで、もう過激な事はしないと思います。


あと、その魔法少女さんですが、なんか見滝原の英雄に祭り上げられていました。怪獣を倒した伝説の騎士として。


これから彼女がただの人間に戻るのか、それとも伝説の騎士のままでいるのかは彼女次第。


こっそりソウルジェムを身体に戻しておいたので、魔法少女にはなれないでしょうけどね。


そんなところです。



43 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 14:37:29.83 vbkXRYm/0 35/36











                    魔法少女は本日も、絶賛衰退中。









45 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/09/29 14:44:54.20 vbkXRYm/0 36/36



このお話はここまで!

ようやく辿り着きました、えぴろーぐ。最終回。
最後の一節、投稿中でも色々言葉を付け足したり削除したりしていたけど、結局一言に落ち着きました。
たぶんこれがいちばんいいとおもいます。


【エンディングについて】
9巻発売前までは、エンディングは「キュゥべえ撤退後人類は衰退しちゃったけど楽しいし、それも悪くないよね?」
という感じでした。はい、人退世界の過去話というつもりで書いていたんです。
んで、9巻で人類と妖精さんの歴史が明かされました。いぇーい。方向転換の理由がこれでござる。


【ほむらの宇宙云々について】
ほむらと言うか、>>1の人退世界の未来予想図という名の妄想。
今は旧人類の遺産で繁栄している妖精ですが、そのうち自分達の足で立ち、進まなければならない日がくる。
それはとっても大変だけど、妖精と妖精さんなら、きっとなんとかしちゃうのだろう。
パイオニアさん達が暗くて寂しくて冷たいと言っていた宇宙が、地球みたいに温かくて面白おかしい世界になったら素敵だなぁ。
そんな、あったらいいなという妄想をそのままぶつけました。



そんなこんなで色々ありましたが、どうにか終わりまで書けました。
途中から書き溜めなしの突貫工事故シナリオの矛盾やいい加減さが生じるなど、初心者にしたって酷い手際の悪さが
目立ったと思いますが、こんな作品でも少しでも面白いと思ってもらえたら幸いです。
もっと感謝の言葉を言いたいけれど、こういう時に言葉が思い付かない自分の文章力の乏しさが泣ける。

なので最後はシンプルに。

今まで読んでいただきありがとうございました。
次回作でお会いする事がありましたら、その時は感想なり叱責なりを書いてやってください。
びくんびくん震えながら意欲を滾らせ、妄想を滾らせようと思います。

それではさよならっ!




                                                  まぁ、おまけがあるけどね

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