1 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/23 17:34:22.38 tNQIWLdC0 1/381



本作は『魔法少女まどかマギカ』と『人類は衰退しました』のクロスオーバーです。2スレ目です。

初めてのSSです。至らないところも多いと思いますが、よろしくお願いします。

キャラは最初の時間軸の状態……でした。今頃原作さんは何処行ったんでしょうね?

妖精さん無双猛将伝。

妖精さんが居るから鬱なんてあり得ない。

オリジナル妖精さんアイテムがてんこもり。

劇場版及び叛逆を見ていない時に投下を始めた話ですので、叛逆と矛盾した設定をやりつつ叛逆ネタが出るかも知れません。



以上の設定の元、再度暴走させていただきます。
そう、妖精さんのように。



こちらが前スレです。上手く張れてるかな?

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389948070/



※関連
魔法少女は衰退しました【パート1】
http://ayamevip.com/archives/40548091.html
魔法少女は衰退しました【パート2】
http://ayamevip.com/archives/40548121.html
魔法少女は衰退しました【パート3】
http://ayamevip.com/archives/40548135.html
魔法少女は衰退しました【パート4】
http://ayamevip.com/archives/40548139.html

元スレ
魔法少女は衰退しました しーずん つー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400834062/

109 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 08:47:04.43 5BdfEJxk0 2/381




えぴそーど じゅうなな 【ほむらさん達の、おりょうりちょうじょうけっせん】



110 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 08:49:22.39 5BdfEJxk0 3/381



――――先日救出した佐倉杏子さん。


さやかさんにマジ惚れしてしまった彼女でしたが、その後、さやかさんとの”穏便な交渉”を経て、

結局私の家の居候となる事が決定しました。

その交渉がどのようなものかはよく知りません。

ただ、交渉を終えたさやかさんがやつれていて、佐倉さんがお肌つるつるだったので、内容は察して知るべしでしょう。


さて。


そんなこんなで佐倉さんが家の居候三号(一号シャルロッテさん 二号ゲルトルートさん)となった翌日。つまり今日。

早速問題が発生しました。と言っても、それは佐倉さんが原因の問題ではありません。


予想していたとおり、学校が休校となったのです。


何しろ校舎はさやかさんと天使さんの激戦で崩壊。

それでも授業をしようとする学校なんてある訳がなく、修復工事が終わるまでお休みとなりました。

幸い見た目ほど損壊は酷くない事、最先端技術(なんでも流体金属を用いた特殊な工法とかなんとか)を使うので

半年もすれば復旧するという話でしたが……

その半年間教師が生徒の家庭を一つずつ回って授業する訳にもいきません。

一応公民館を使って授業が行われるようですが、そちらも色々と準備が必要なようで、

授業開始は一週間後になるとの事。


しかし一週間の自宅学習を命じても、遊びたい盛りの中学生が従う筈もありません。具体的には私とか。


そんな訳で学校から、宿題として多量のプリントが送られてきました。


これは私にとって地獄です。


何しろ私は一人で勉強するというのが大の苦手。先生が面白い事を言って、クラスメートが楽しい事をして、

私が見事なボケをお見舞いする……こういう事をしないと私は勉強が手に着かないのです。

いえ、好きな教科なら出来ますけど、英語とか歴史とかの嫌いな教科だと本当に見向きすらしなくなるので……


つまり提出期限を守れない可能性が特大。


流石にこの状態を放置する訳にはいきません。中学二年生にもなって提出期限を守れないのは恥ずかしいですし、

何より罰として課題が追加されるのは断固阻止したいところ。

私はなんとかして自分が勉強出来る環境を整えねばならなくなったのです。


そして私が取った方策は――――


111 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 08:53:43.70 5BdfEJxk0 4/381



                  ――― 暁美家リビング ―――



まどか「みんなを家に集めて、勉強会って事?」←翻訳眼鏡装着中。以下、ゲルト以外全員眼鏡あり

ほむら「えぐざくとりー」

マミ「まぁ、そんなに悪い事とは思わないけどね」

マミ「自分が勉強しやすい環境を作るという努力は認めるべきだと思うし」

マミ「誰かと一緒に勉強すれば、自分の分からないところをフォローし合える」

マミ「それに、やっぱり一人で勉強するのはつまらないもの」

さやか「確かにそうすっねー」

さやか「ところでほむらって、勉強はどれぐらい出来んの?」

ほむら「理系は得意です。サバイバル生活で身に付いた、と言うべきなんでしょうけど」

ほむら「数学も並には出来ます。これもサバイバルで役立ちますし」

ほむら「ただ文系は壊滅的ですねぇ……特に英語」

ほむら「英語を喋れても未知の部族相手には通じませんし……」

ほむら「それにジェスチャーだけでも結構コミュニケーション取れるんですよ?」

さやか「英語が出来ないからって肉体言語に持ち込むのはどうなんだよ」

マミ「いえ、美樹さん。暁美さんは英語が苦手とかじゃなくて、単にサバイバル以外には興味がないだけっぽいわよ」

まどか「野性的で素敵……」

ゲルト【盲目ですね】

杏子「つーかさー、なんであたしも一緒に勉強すんの?」

杏子「中学一年の勉強は全くやってないからついていけねーし……」

杏子「あ、勿論さやか様と一緒に勉強出来るのは嬉しいですよ?」

さやか「うん、そのフォロー別にいらないから」

ほむら「勉強の本質は、単に知識を植え付ける事ではありません」

ほむら「数の数え方、言葉の意味、真偽を見極める方法……」

ほむら「人として正しく、幸福に生きるための”教養”を身に着ける義務教育なのです」

ほむら「無論どの程度の教養が必要かは国や人によって考えは違うでしょうが」

ほむら「少なくともこの国では、中学三年生レベルの教養が生きる上で必要とされています」

ほむら「なら、佐倉さんが今後幸福に生きるためには」

ほむら「例え形式的であったとしても、勉強が必要になるとは思いませんか?」

杏子「う……ま、まぁ、勉強は嫌いじゃねーし……別に良いけどさ……」

さやか(あんな事言ってるけど、アイツさっき英語不要論言ってたよね?)

マミ(汚い。流石暁美さん汚い)

まどか(策略家なほむらちゃん素敵)

ゲルト(盲目ですね)


112 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:04:31.51 5BdfEJxk0 5/381



杏子「でもなぁ……このプリントに書かれてる漢字とか読めないの多いし……」

シャル「佐倉さんの勉強は私が見るわ。人間だった頃そんな勉強していた訳じゃないけど、中二程度ならなんとかなるし」

シャル「分からないところは教えてあげるから、気軽に聞いてね」

杏子「うん……頼む」

ゲルト【わ、私は巴さんと勉強したいのですが……よろしいでしょうか?】

マミ「ええ、勿論」

ほむら「それでは準備は出来たようですし、勉強を始めるとしましょうか」


……………

………





ほむら「……ふぅ。本日の勉強ノルマ終了っと」

さやか「え?! 早っ! あたしまだ半分も終わってないけど!?」

ほむら「半分って……それは私が早いのではなく、さやかさんが遅い気がするのですが……」

ほむら「今は何をやってるんですか?」

さやか「数学……」

まどか「さやかちゃん、数学苦手だもんね。分からない場所があっても延々と挑み続けるし」

ほむら「実に想像しやすい理由ですね」

さやか「うっさいなぁ! あとちょっとで解けそうなのに諦めきれる訳ないじゃん!」

ほむら「そして頑張って解いた答えが間違っている、と」

さやか「ぐふっ!?」

ほむら「……急がば回れ」

ほむら「これまでの解答を見る限り、どうにも公式を丸暗記しているだけの様子」

ほむら「まずは簡単な問題を解いて、公式の意味を理解する事から始めるべきかと」

ほむら「例えば……この問題。多分間違ってます」

ほむら「ここは引っかけで、使う公式はこれじゃないです。ほら、この部分が……」

さやか「あ、ああ! 成程。確かに……」

ほむら「ですからこの数字をここに代入して……」

さやか「ふむふむ」

ほむら「こうすると、解ける訳です」

さやか「おおっ!?」

まどか「……ほ、ほむらちゃん! あの、私古文で分からないところがあって」

ほむら「あ、ごめんなさい。古文は私も苦手なんです」

まどか「ウェヒー……」


113 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:07:44.36 5BdfEJxk0 6/381



杏子「なぁー、そろそろ飯にしねーか?」

ほむら「はい?」

シャル「ちょ、アンタまだ勉強の途中で……」

杏子「だって頭使うと腹減るじゃん。集中力続かねーよ」

杏子「それにほら、もうお昼だし」

シャル「まだ十一時でしょうがっ!」

杏子「あたしは何時もそのぐらいの時に昼飯食ってたし」

シャル「だったら今はお菓子で我慢しなさい! ほらクッキー!」ポポポンッ

杏子「いや、まぁ、シャルのクッキーは美味いけどさぁ」

杏子「なんつーか、ジャンクフードって感じがして腹が膨れないんだよねぇ」モグモグ

まどか「……でもちゃんと食べるんだね」

杏子「食い物は粗末にしない主義なんだ……けぷ」

杏子「そんな訳だからさぁ、なんか作ってよ。勉強一区切りついたんだろ?」

ほむら「仕方ないですねぇ……ちょっと早いですが支度しますか」

マミ「あ。なら私が作ろうかしら?」

ほむら「え?」

マミ「この前の約束とはちょっと違うけど、料理を振る舞うって言ったでしょ?」

マミ「これでも一人暮らしをしてるし、腕には自信があるわ」

マミ「お台所借りる事になるけど、美味しいの作ってあげる!」

ほむら「いえ、そんな……お客様にそこまでさせる訳には……」

ほむら「それに私、料理は好きですし。気にしないでください」

マミ「もう、遠慮しないで良いのよ?」

ほむら「しかし……」

杏子「あー、だったらさ。上手い方に作ってほしいね、どうせなら」

ほむ マミ「上手い方?」

杏子「そーそー。で? ほむらとマミのどっちが料理上手いのさ?」

ほむら「ああ、まぁ……」

マミ「それは勿論」


114 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:08:12.68 5BdfEJxk0 7/381






ほむら「私です」

マミ「私よ」





115 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:09:42.37 5BdfEJxk0 8/381



ほむら「……………」

マミ「……………」

杏子「え……いや、あの」

ほむら「巴先輩、何を言ってるんですかー」

ほむら「妖精さんと付き合うためお菓子作りを極め」

ほむら「サバイバルのために普通の料理をも極めたのがこの私」

ほむら「これでも料理の腕は自信があるのですよ?」

マミ「もう、暁美さん。あまり調子に乗っちゃ駄目よ」

マミ「両親を亡くして早三年」

マミ「その間私はずっと一人暮らしで、毎食料理を作っていたのよ?」

マミ「経験の差を嘗めちゃ駄目」

ほむら「嘗めてませんよ」

ほむら「ただただ三年間同じ事の繰り返しで得た経験なんて」

ほむら「RPGで序盤のスライムを延々狩り続けるようなものじゃないですか」

ほむら「”プレイ時間”は短くとも、ドラゴンやデーモンを狩ってきた私の方がレベルは上ですよ」

マミ「石の上にも三年という諺を知らないのかしら」

マミ「何事も基本が大事。積み重ねこそが人間を成長させるの」

マミ「レベルを上げて物理で殴る」

マミ「そんなゲームの進め方じゃ、何時まで経っても技量は伸びないわよ」

ほむら「ふ、ふふふふふふふ」

マミ「うふ、うふふふふふふ」

まどか「あ、あの、二人とも、落ち着いて……」

さやか「そ、そうだよ。そんな、喧嘩は……」

杏子「……あのさ、二人で仲良く作れば最高に美味い料理が出来ねーか?」

シャル「そうよ、二人でやればパワーは二倍よ!」

ゲルト【だから仲良くし】





ほむ マミ「勝負だああああああああああああああああ!」



「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」



116 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:10:40.29 5BdfEJxk0 9/381



……………

………





シャル「れっでぃーす、あーんど、じぇんとるめーん……」

杏子「男いないじゃん」

ゲルト【妖精さんの事では?】

杏子「ああ、そっち……」

シャル「……おほん」

シャル「そんなこんなで始まりました!」

シャル「第一回! 見滝原お料理対決!」

杏子「二回目あんの?」

ゲルト【無い方が嬉しいですねー……】

シャル「司会はわたくしシャルロッテ!」

シャル「そして本日対決するのは……」

シャル「この二人だあああああああああああああああっ!!」



           ほむら「うふふふふふふふふ」

          ―――― バチバチバチ ――――

           マミ「うふふふふふふふふふ」



シャル「おおっと! まだ対決は始まってないのに既に二人は火花を散らしている!」

シャル「これは熱い戦いが見られそうです!」

杏子「マミのエプロン姿は分かるけど、なんでほむらはリュック背負ってんだ?」

杏子「つーかシャルはなんであんなにノリノリなんだよ」

ゲルト【最近出番が少ないとか言ってましたよ】

杏子「ああ、そういう……」

シャル「そこ! さっきから五月蝿い!」


117 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:12:22.38 5BdfEJxk0 10/381



シャル「……あー、えー、兎に角! 些細なきっかけで二人は料理対決をする事になりましたが……」

シャル「それを聞きつけた妖精さんが一気に大増殖し、三十秒も経たずに用意してくれたのが!」

シャル「お料理対決用のキッチン! そして……」

シャル「食材が用意されているという”倉庫”です!」

杏子「本当に三十秒経たずに用意したよな」

ゲルト【訳が分かりませんでした】

シャル「対決の準備は整いました! 次はルールを説明!」

シャル「とは言っても方法は至極単純! 倉庫から任意の食材を選び料理する!」

シャル「倉庫にある食材は早い者勝ち! 素早い目利きと判断力が求められます!」

シャル「尚味噌や醤油などの調味料も倉庫にあるので忘れず確保してください!」

シャル「そして出来上がった料理を私! 佐倉杏子! ゲルトルートの三人で実食し……」

シャル「多数決で勝敗を決めます!」

杏子「え? 三人で?」

杏子「さやか様とまどかの奴はどうした?」

ゲルト【そういえばお二人の姿が見えませんね?】

シャル「ああ、その二人は……ほれ」

ゲル「ん?】

まどか「ほ、ほ、ほむらちゃんのて、手伝い……助手……側近……側室!? ウェヒーッ!」

さやか「……はぁ」

杏子「さやか様はマミの後ろに、まどかはほむらの後ろに居るな」

ゲルト【鹿目さんのテンションが可笑しい事は無視しましたね】

杏子「あれは人を愛する者の目だ。あたしには分かる」

ゲルト【……同族ですもんね】


119 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:13:58.38 5BdfEJxk0 11/381



杏子「それで、さやか様はなんでマミの傍に?」

さやか「いや、なんか一人一名助手を付けていいってルールらしくて……」

さやか「ほむらのパートナーにまどかが条件反射的に名乗り出て」

さやか「あたしはぼけーっとしていたら捕まった」

杏子「なんて事……さやか様とゲルトを交換出来ねぇかな……」

ゲルト【好きな人と一緒に居たい気持ちは汲みますけど、ちょっと露骨過ぎません?】

シャル「さて、そろそろ試合を始めたいと思います!」

シャル「両者準備は良いですか!?」

マミ「問題ないわ」

マミ「わざわざ家に帰ってMY調理器具を持ってきたもの」

マミ「それに今の私は魔法を使い放題。例えどんな相手が襲い掛かろうと圧倒的火力で屠ってみせる」

マミ「もう何も怖くないわ」

さやか「ちょ、なんで妨害を想定してるんすか? え? 妨害ありなの?」

ほむら「問題ありません。愛用のナイフとロープ、そしてライターは装備済み」

ほむら「食べられる野草も先程図鑑を見て、忘れていない事を確認しています」

ほむら「何があろうと生存してみせますよ」

まどか「ほむらちゃん何するつもりなの? これ料理対決だよね?」

シャル「両者準備は大丈夫なようですね!」

さや まど「いやいやいやいやいやいやいやいやいや?」

シャル「それでは位置について……」

ほむら「……………」

マミ「……………」

まどか「え、無視なの? こっちの準備は無視なの?」

さやか「駄目だこいつ等、あたし達の事見てすらいねぇ」

シャル「よーい……」

シャル「どんっ!」

――――シュルルルッ!

まどか「え?」

ほむら「しまっ……ぐっ!?」

さやか「え? ほむら達がリボンで縛られぐえっ!?(首根っこ掴まれ……)」


121 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:15:19.94 5BdfEJxk0 12/381



マミ「オホホホホホホホホ! 油断したわね暁美さん!」

マミ「そのリボンは一時間ほどで解けるから……」

マミ「それまでのんびりとしている事ね!」ダッ!

「ええええええええええええええええええ!?】

シャル「おおっといきなりの妨害っ! 巴さん、我先に倉庫へと向かったーっ!」

ゲルト【いや、可笑しいですよね今の!? 妨害を警戒していた人が真っ先に妨害してますよ!?】

杏子「つーか良いのかよアレ!?」

シャル「ジャッジ。どうでしょうか?」

妖精さんA「おもしろいので」
妖精さんB「もんだいなしで」
妖精さんC「きおくにございません」

杏子「駄目だこの審判ども!?」

ほむら「ちっ! 先手を打たれましたか!」

まどか「先手って何!? ほむらちゃんも妨害する気満々だったの!?」

ほむら「しかし!」

――――スパパパパンッ!!

まどか「きゃっ!? えっ! リボンがバラバラに切れて……」

ほむら「妖精さんアイテム『魔鋏れーばていん』」

ほむら「このような事もあろうかと思い、持参しておいて助かりましたね……」

まどか「なんで想定してるの!? なんで拘束されるかもって思ったの?!」

ほむら「鹿目さん! あの二人に渾身の魔力弾をぶっ放してくれませんか!?」

まどか「いくらほむらちゃんのお願いでもやらないから!? と言うかさりげなくさやかちゃんも一緒に!?」

ほむら「ああもう! 兎に角私達も行きますよっ!」

まどか「いや、あの引っ張らないで……」ズルズル

マミ「もう手遅れよ! 私達が一番乗りっ!」



――――バンッ!!


123 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:17:48.54 5BdfEJxk0 13/381



マミ「……!?」

マミ「こ、これは……平原……屋外に出た?」

さやか「うう……なんであたしがこんな目に……」

マミ「美樹さん、何してるの。あなたも周りを確認して」

さやか「は、はひ……」

さやか(と言われても、一面の草原と、向こうに森とか山が見えるだけ……)

さやか(まぁ、ドアの向こうに異空間が広がっていても妖精さんが作ったものなら別段不思議はないけど)

さやか(……生きた豚とか牛とかが野放しなのは……)

マミ「成程。この広い空間で食材を探し出すという訳ね……あの豚や牛、鶏も食材ね」

さやか「マミさん受け入れるの早過ぎません?」

さやか「というか、まさか殺すつもりじゃ……」

マミ「うーん、お肉が欲しいのは否定しないけど……家畜を殺すのは流石に抵抗があるわ」

マミ「でもほら、この草……よく見るとこれ、ホウレンソウよ」

さやか「え? あ、本当ですね」

マミ「それにあの花、ゼラチンで出来ているみたい」

マミ「この調子ならフルーツや魚、加工されたお肉が無いとは思えない」

マミ「それにどんな食材がどれだけあるか、それが分からないと料理は作れないわ」

マミ「とりあえず自然が豊かそうな森の中に行って、色々と調べましょう」

さやか「……分かりました」

さやか(帰りたい)テクテク



ほむら「くっ……出遅れましたか……」


125 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:19:33.24 5BdfEJxk0 14/381



まどか「えっと……綺麗な場所だね」

まどか「……あの野放しになっている牛とかが気になるけど」

ほむら「倉庫ですからね。あれも食材のつもりで妖精さんが用意したものでしょう」

ほむら「ステーキとか作ると、評価が高そうですけどねぇ。佐倉さんとか文字通り肉食系っぽいですし」

まどか「ほむらちゃん、まさか……」

ほむら「……いくら私でも牛や豚を解体しようとは思いませんよ」

まどか「ほっ……」

――――ガサガサ

まどか「ん?」

まどか「わっ! ほむらちゃん見て!」

まどか「ウサギだよ!」

ほむら「あら、本当ですね」

ウサギ「キュ?」

まどか「うわぁ、可愛い……!」

まどか「しかも人懐っこいからか全然逃げないよ! 抱っこも出来た!」

ほむら「もう、鹿目さん。野生の動物に素手で触ってはいけませんよ。病気を持っている場合があるんですから」

まどか「だってぇ~……」

ほむら「まぁ、妖精さんが用意したウサギですし、その心配は要らないと思いますけど」

まどか「ああ……可愛いなぁ……」

まどか「ね、ねぇ、ほむらちゃん、この子連れていってもいい?」

ほむら「ええ、勿論」

まどか「うわぁーい♪」


127 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:20:52.56 5BdfEJxk0 15/381



ほむら「さて、とりあえずは水場を探すとしましょう」

まどか「水場?」

ほむら「キッチンには蛇口がありましたので、水はわざわざ用意しなくても良いと思いますが」

ほむら「万一を考慮して、それなりの量の水は確保しておきたいのです。拾った食材も洗いたいですし」

ほむら「あと、他にどんな食材があるか探したいというのもあります」

ほむら「……巴先輩達も恐らくその方針で行動している筈」

ほむら「出来れば彼女達より先に水場を見つけたいところですね」

ほむら「……………」

ほむら「妖精さんの作った世界にどれだけ現実の地形が当てはまるか分かりませんが、あの山を目指すとしましょう」

ほむら「川は山から流れるものですからね」

ほむら「ああ、そうそう。これは私と巴先輩の勝負ですから」

ほむら「鹿目さんはピクニックのつもりで楽しんでいてください」

ほむら(私一人でもあんな雑兵、軽く倒してみせますから……うふふふふ)

まどか「うんっ♪」


……………

………




129 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:22:53.98 5BdfEJxk0 16/381



ほむら「ふむ。想像以上に早く湖を見つけられましたね」

まどか「流石ほむらちゃん!」

ウサギ「キュー」

ほむら「うん、丁度いい場所に手ごろな枝もありますし……」

ほむら「鹿目さん。今までに手に入れた食材はなんでしたっけ?」

まどか「えっと……キャベツと人参、サトイモに、ゴボウ」

まどか「あとコンニャクとお味噌だよ」

ほむら「うん。これだけあれば十分ですね」

まどか「……まさかお味噌とかコンニャクが木になってるとは思わなかったよ」

ほむら「妖精さんにしては割とシンプルな不思議ですけどね」

まどか「もう何がシンプルなのかよく分かんない」

ほむら「あとは味を調えるのに塩と日本酒が欲しいのですが……」

ほむら「まぁ、それは帰りがてら探すとしましょう。見つからなくてもあるもので何とかするのがプロってもんですし」

まどか「? ほむらちゃん、もう材料揃ったの?」

まどか「何を作るつもりなの?」

ほむら「鍋にしようと思っています」

まどか「お鍋かぁ。美味しいよね!」

ほむら「相手の好みが分からぬうちに凝った料理を出すのは危険と判断しましてね」

ほむら「鍋が嫌い、という人はそう多くない筈」

ほむら「それに三人で摘まんで食べると楽しくなりますからね。料理は楽しく食べないと」

まどか「ふふっ。そうだね」

ほむら「ああ、そうだ」

ほむら「鹿目さん、そのウサギを渡してもらえますか?」

まどか「? うん、良いよ。はいっ」

ほむら「ありがとうございます」

まどか「ふふ。ほむらちゃん、手袋なんかしちゃって」

ほむら「こういう作業は準備が大切なんですよ」

まどか「そうかもだけどー……作業?」

まどか(あれ? ほむらちゃん、ウサギさんを抱き抱えないで地面に置いて)

まどか(あ、頭に手を乗せた。撫でるのかな)





ほむら「えいっ」

――――ゴキッ



131 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:24:46.37 5BdfEJxk0 17/381



まどか「」

ウサギ「」クタァ

ほむら「うん、一発で仕留められた。思い切りが足りないと却って可哀想な事になりますからね」

ほむら「よいしょっと」←ウサギを近くの枝に掛ける

ほむら「見滝原に来る前まではよく妖精さんトラブルでサバイバルしましたけど」←ウサギの首にナイフを突き刺す

ほむら「ウサギは捕まえるのが楽ですし、何処にでも棲んでいるから結構食べていたんですよ」←血抜き中

ほむら「ウサギ鍋もその時よく作っていまして」←足首にナイフを入れる

ほむら「雪山だと皮も使い道があって便利ですし」←皮を剥いでいる

ほむら「ああそうそう。臭腺があるのでしっかり取り除くのがポイントです」←取り除き中

ほむら「内臓は……私が食べる分にはいいか。持って帰りましょう」←内臓取り除き中

ほむら「いやぁ、それにしてもウサギが見つかったのは行幸でした、っと!」←頭部切断

ほむら「流石の私も牛豚の解体は出来ませんからね。反撃に遭ったら大変ですし」←解体中

ほむら「魚も悪くないとは思いますが」←解体中

ほむら「やっぱり鍋には獣のお肉ですよね♪」作業完了☆

まどか「……………」

ほむら「鹿目さん? もしもし?」

ほむら「……うーん。サバイバル初心者にウサギはきつかったですかね……?」

ほむら「でも久しぶりにウサギ食べたかったし……牛や豚は解体出来ないし……」

まどか「……わ」

ほむら「わ?」

まどか(ワイルドなほむらちゃん素敵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)


134 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:26:31.63 5BdfEJxk0 18/381



まどか(動物の解体をあんな手際良く出来るなんて……)

まどか(逞しい! 逞し過ぎて胸がきゅんきゅんしちゃうっ!)

まどか(こ、このままほむらちゃんと二人きりで無人島に遭難しても生活には困らないね!)

まどか(……ほむらちゃんが動物を捕まえて、解体して、料理を作ってってなると)

まどか(私に出来る事が何もない……)

まどか(ほむらちゃんは優しいから気にしないでと言……ってくれると嬉しいけど、それじゃ駄目だよね)

まどか(うーん、こういう時どうしたら……)

まどか(あ、そうだ。身体で支払うって方法があ)

まどか「ぶばっ!」

ほむら「鹿目さんが鼻血吹いて倒れたああああああああああああああああああ!?」

ほむら「え、どういう事ですかこれ!? ウサギの解体を見て気分を悪くしたとか!?」

ほむら「よ、妖精さん!? 妖精さん!?」

ほむら「妖精さーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!?」




             ―――― 審査員待合ルーム ――――




妖精さんA「しょーぶごとですので」
妖精さんB「こうへいをきして?」
妖精さんC「ぼくらのきょうりょくきんしちゅう?」

シャル「……………」ズーン

杏子「……………」ズーン

ゲルト【……………】ズーン

妖精さんA「てんしょん、だださがりですなー」

シャル「あんな可愛いウサギが解体されて気分良い訳ないでしょ……」

杏子「あたしも流石に生き物解体して食った事はねーわ……」

妖精さんC「うしやぶたもみえないとこでしてますが?」

シャル「それはそうなんだけどね……」

杏子「アイツどんだけサバイバルスキル高いんだよ」

シャル「サバイバルスキルってSAN値と反比例するのかしら……」

ゲルト【ま、まぁ、食べるための狩りですし、見逃しましょうよ】

シャル「あー、まぁ、確かに元人食いの私らが言う事じゃないわな……うん」


136 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:27:44.10 5BdfEJxk0 19/381



シャル「えー、ほむらチームは順調に食材を集めているようですねー」

杏子「あ、実況は続けんだ」

シャル「さて、巴さんチームの様子は……」

シャル「おおっと、これは……」



                ―――― チーム・巴 ――――



マミ「……美樹さん、食材はどれぐらい集まったかしら?」

さやか「えー、ニンジン、ジャガイモ、タマネギ」

さやか「それからカレールー。花みたいに咲いてた奴です」

マミ「うん。それだけ揃ったら、作るしかないわね」

さやか「カレー、ですね」

マミ「ええ」

マミ「でも、あとはお肉が欲しいわ」

さやか「ですねー。やっぱりカレーはお肉がないと」

マミ「そうよね、そう思うわよね」

さや マミ「……………」

さやか「あ、でも別に無理にお肉に拘らなくていいんじゃないっすかね?」

さやか「ほら、シーフードとか」

マミ「私は普通のカレーの方が好きだわ」

さやか「……ええ、そうっすね。あたしも好きっす」

さやか「じゃあ、あの、入り口にいた豚とか牛とか」

マミ「私に彼等を捌けと?」

さやか「……ごめんなさい」

さやか「じゃあもういっそ肉抜きで」

マミ「甘いわ、美樹さん」

マミ「暁美さんの技術は相当のものよ。一昨日泊まった時に見たから分かる」

マミ「あの時は認めたくなくて啖呵を切ったけど、もしかすると本当に技術面では彼女が上かも知れない」

マミ「なら尚の事、食材で妥協する訳にはいかない」

マミ「肉抜きカレー? 豆腐でヘルシーに?」

マミ「料理嘗めんな!」

マミ「育ち盛りは……何はともあれ肉でしょうがっ!!」

さやか「わ、分かります! その気持ちは本当に分かります!」

さやか「で、でも、でも――――」







さやか「でもだからって偶々見つけたドラゴンを倒そうとするのは止めましょうよ!?」


137 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:29:32.75 5BdfEJxk0 20/381



ドラゴン「グー……ルルルル……グー……ルルルル」

さやか「寝てますから! 今なら刺激せずに立ち去れますから!」

マミ「ほら、ドラゴンならあまり抵抗なく殺せるじゃない。気分的に」

さやか「動物差別反対!」

マミ「丸い胴体……きっとジューシーな脂身たっぷりのお肉が取れるわ」

さやか「あたしには筋肉の塊にしか見えないのですけど!?」

マミ「寝ている今がチャンス。攻撃を仕掛け、一撃で仕留めましょう」

さやか「そもそも仕留めるのが無理そうなんですけど!? あのドラゴン全長30メートルぐらいありますよ!」

マミ「美樹さん、お肉食べたくないの?」

さやか「誰もドラゴン食いてーなんて言ってませんよ!?」

マミ「捕獲レベル高そうじゃない。きっと美味しいわよ」

さやか「アレは捕獲の難度を示すだけで美味しさ関係ありませんから!」

マミ「美樹さんならきっと倒せるわ」

さやか「さりげなくあたしに戦わせようとしないでくださいよ!? 自分だけで倒してください!」

マミ「仕方ないわね、もっと楽そうなのを探しましょう」

さやか「おい、なんで諦めた!? 諦めんなよ!?」

マミ「いや、だってあんな大きいのは……美樹さんならこう、スペシウム的なやつで倒せないかなって」

さやか「倒せますけどね! でもその全力で他人任せの姿勢が気に入らない!」

マミ「もう、美樹さんのワガママっ」

さやか「どっちがだよ!?」

マミ「……まぁ、茶番はこのぐらいにしといて」

さやか「嘘吐けっ!」


138 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:30:42.91 5BdfEJxk0 21/381



マミ「美樹さんに頼れない以上、ドラゴン肉は諦めるしかないわね」

マミ「不本意だけど、シーフードカレーにするか」

マミ「もしくは別の料理を作るか」

さやか「……あー、まぁ、食材はそれこそ山ほどありますからね」

さやか「中途半端に代用品使うぐらいなら、肉を使わない料理で行くべきなんじゃないっすか?」

マミ「……いえ、やはりお肉は欠かせないと思うわ」

マミ「審査員とは言え、彼女達も中学生。肉の魔力には逆らえない」

マミ「お肉がある料理とない料理では、既にハンデが付いているようなものよ」

さやか「今更ですけどなんでそんなに肉押しなんすか? いや、あたしも好きですけど」

マミ「何処かにウィンナーとか実ってないかしら……」

さやか「無い、とは言えませんね……カレールーが成るぐらいですし」

マミ「立ち止まっていても仕方ないわね。歩いていたらアイディアが閃くかも知れな」

――――ぶにっ

マミ「……………」

さやか(マミさんが一歩踏み出した途端、そのコミカルさとは真逆に悪寒を誘う音が聞えた……)


139 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:32:17.98 5BdfEJxk0 22/381



さやか「……マミさん。今の音ってもしかしなくてもドラゴンの尾を踏」

マミ「美樹さん。私の足元を見ちゃ駄目よ」

マミ「知ってる? シュレディンガーの猫」

マミ「この世の可能性は常に重なり合っている。それは観測するまで定まらない」

マミ「つまり私が足元を見なければ、”それ”を踏んでしまった可能性と踏んでいない確率が重なり合っているの」

マミ「私が自分の足元を観測しなければ、どちらの事象もあり得る。それ故にどちらもあり得ない」

マミ「今ならまだ大事にならない」

マミ「このまま、この猫箱はしまってしまいましょう?」

さやか「マミさん……」

さやか「その話って、『んな訳ねーだろ』って続くの、知ってます?」

マミ「え」

さやか「……諦めましょ」

マミ「……はい」

さや マミ「……ちらっ」



ドラゴン「グルルルルルル……!!」



さやか「起きてますね、めっちゃ」

マミ「起きてるわね、めっちゃ」

さやか「……どうするんですか」

マミ「お、落ち着くのよ美樹さん」

マミ「よくよく考えたら、このドラゴンだって妖精さんが用意してくれた食材の筈」

マミ「生き物だから抵抗ぐらいはするかも知れないけど、刺激しなければきっと温和な生き物で」

ドラゴン「グパァ……」

さやか「駄目ですよマミさん!? あのドラゴンの歯、もろに捕食者してます! あとアイツ微妙に微笑んでる!」

マミ「やっ、やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

ドラゴン「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

さや マミ「ぎゃあああああああああああああああああああああっ!?」


140 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:34:46.76 5BdfEJxk0 23/381



さやか「お、お、追い駆けてきたあああああああああああああ!?」

さやか「ひいっ!? 逃げても逃げても振りきれない!」

マミ「とととと兎に角美樹さん変身! 変身して!」

マミ「あなたが巨人になれば全長100メートル! 30メートル程度のトカゲに負ける道理はないわ!」

さやか「そ、そっすね! 結局戦う事になってるのが不本意だけど仕方ない!」

さやか「よし! 指輪を外し」

――――つるんっ

さやか「って、おおっと運悪く落ち葉で足を滑らせてしまいあたし転倒ー(達観)」

さやか「もちろん起き上がる時間なんてなぶしっ!?」ぶちっ

マミ「美樹さん踏み潰されたああああああああああああああああああ!?」

マミ「どうしよう、どうしよう、どうしよう……!」

マミ「そ、そうよ! 私も変身出来るじゃない! 忘れてたわ!」

マミ「変身っ!」ピカー

マミ「よ、良し! ちゃんと魔法少女になれたわっ!」

マミ「まずはリボンを射出! 木の枝に絡めて……」

マミ「地上より高い場所へ移動!」

マミ「この高さならあの巨大なドラゴンでも追い切れないわ」

ドラゴン「」バッサバッサバッサ

マミ「……………ああ、飛ぶのね。驚き過ぎてもう叫び声も出ないわ」

マミ(だけどこれは不味い!)

マミ(私はあくまでリボンを足場にしているだけで、自由に空を飛べるわけではない)

マミ(自分の力で飛べるあのドラゴンとの機動力の差は歴然。逃げ切る事は不可能と見るべき)

マミ(それに、妖精さんが用意した生き物なのよ)

マミ(ドラゴンの攻撃と言ったら――――)

ドラゴン「ゴアッ!!」ボッ!

マミ(火炎放射よねっ!)


141 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:39:05.34 5BdfEJxk0 24/381



マミ「くっ……!」

マミ(予見していた事もあって今のは躱せたけど、それでもギリギリ! そう何度も避けられない!)

マミ(こうなったら、ここでコイツを倒すしかない……)

マミ(なら――――)

マミ「先手必勝! 魔法で大砲を作って」

マミ「発射ァ!」

――――ドンッ!!

ドラゴン「!」スッ

マミ「なっ……躱した!? なんて動体視力……」

ドラゴン「ガアッ!」

マミ「きゃっ!?」

マミ(肉弾戦に持ち込んできた……あの巨体と殴り合うのは無理!)

マミ(空中戦も無理、地上戦も無理)

マミ(なら……!)

マミ「着地して……木々の間に身を隠す!」

ドラゴン「!」ズシンッ

ドラゴン「……」キョロキョロ

マミ(……うん。私の事を見失ったわね)

マミ(しかしどうしたものかしら)

マミ(あの巨体相手に、手数を増やした小攻撃で果たしてどれだけ効果があるのやら)

マミ(倒すには、巨大な一撃を当てる必要がある)

マミ(でもあの動体視力を鑑みるに、一発だけでは躱されるかも知れない。そうなったらこっちの居場所もばれる)

マミ(強力な一撃を、確実に当てるには……)

マミ(……そうね、良い機会だわ)

マミ(私が、どれだけ強くなったかを確かめるにはっ!)カッ!


142 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:42:13.41 5BdfEJxk0 25/381



――――シュルルルルルルッ!

ドラゴン「ゴアッ!?」

マミ(ドラゴンの周囲にリボンを展開! 勿論一本二本じゃないわ)

マミ(最高に強度を高めた状態のリボンを、100本以上展開した!)

マミ(最高強度のリボンなら例え一本でも、並の魔女や魔法少女では破れないわよ!)

ドラゴン「グ、グル、ウウウウウッ!?」

マミ「捕縛!」

ドラゴン「グフ、ウゥッ!」

ドラゴン「ウウウゥウゥウウウゥゥッ!」

マミ「……ふう。妖精さんの事だからもしかしたらって思ったけど、そこまで非常識ではなかったわね」

マミ「……ううん、やっぱり非常識なのかしら?」

マミ(ソウルジェムが無くなり、もう私は魔法をいくら使っても浄化を必要としなくなった)

マミ(その副作用とでも言うのかしら)

マミ(今まではソウルジェムが濁りきらないよう……ええ、魔法が使えなくなると思っていたから……)

マミ(本当の意味での全力を出す事は出来なかった)

マミ(このリボンも、一度の戦闘で一本出すのが精いっぱい。出したら攻撃は他の子任せ)

マミ(勿論グリーフシードの予備があればもっと出せたけど、浄化するための、クールダウンの時間は必須)

マミ(でも、今の私はそれすら必要としない)

マミ(一度に出せる出力の限度こそあれ、その限界出力を永続的に使える)

マミ(それは魔法少女としては究極の存在と言って良い)

マミ(キュゥべえは私達が魔女にならないと困るそうだから、そもそもコンセプトが違うんでしょうけど)

マミ(これが妖精さんの技術力……こんなのを相手に戦おうとしていた自分が馬鹿馬鹿しくなるわね)


143 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:52:56.25 5BdfEJxk0 26/381



マミ(……さて、と)

ドラゴン「フー、フー、フーッ……」

マミ「ごめんなさいね……私はあなたを倒さないといけない」

マミ「だから最大火力。私の最強最大の一撃で、止めを刺してあげる」

――――シュンッ!

ドラゴン「!?」

マミ「あら。動物でも、この砲台の威力は分かるのね」

マミ「今回用意したのは、全長200メートル……艦船をそのまま武器にしたようなサイズの大砲」

マミ「私の魔力で生み出せる、最大火力の大砲よ。並の魔女なら数体纏めて屠れるわ」

マミ「それを、」

――――シュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン!

マミ「10門も撃たれて、あなたは無事でいられるかしら?」

ドラゴン「ゴ、フ、フグオ……!」

マミ「尤も、あなたは逃げられない。私が展開したリボンに囚われている限り」

マミ「……ふふ。ごめんなさい」

マミ「あなたを倒すのが一番の目的なのは変わらない」

マミ「だけどね、一度やってみたかったの」

マミ「手加減なし、全力全開」

マミ「本当の――――”究極の一撃”を撃つのをね!」







             「ティロ・フィナーレ!!」







144 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:55:01.06 5BdfEJxk0 27/381



……………

………




ドラゴン「」プスプス

マミ「我ながら凄まじい威力だったわね……まさかキノコ雲が上がるとは思わなかったわ」

マミ「ちょっとやり過ぎたと思わなくもないけど」

マミ「まぁ、ドラゴンは倒せたから結果オーライよね?」

マミ「……………」

マミ「……ふふ」

マミ「うふ、うふ、うふふふふふふふ……」

マミ「ああ……手加減なしに、やりたいように魔法を使うのがこんなにも気持ちいいなんて……」

マミ「他の魔法少女が溺れちゃう気持ち、ちょっと分かったかも」

マミ「……ううん、気持ちいいなんてものじゃないわね」

マミ「……」




マミ「快、感……♪」




さやか「エロぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!」

マミ「ぴゃあっ!?」


145 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:57:03.07 5BdfEJxk0 28/381



マミ「って、み、美樹さん!? 無事だったの!?」

さやか「ええ。昨日指輪を改造してもらった時に追加で付けられた効果かは分かりませんが」

さやか「どうやら平時でも、そこそこ力を持ってるみたいです」

さやか「お陰で踏まれても全然平気でしたっ!」

マミ「そ、そう……順調に人間離れしていってるわね」

さやか「いや、キノコ雲上げたマミさんに言われたくないっす」

さやか「まぁ、何はともあれドラゴンを倒せましたし」

さやか「無事に事が済んで良かったですね」

マミ「……いえ、まだよ」

マミ「まだ、戦いは終わってない」

さやか「マミさん……?」

マミ「このドラゴンはいわば前座。私達が真に倒すべき相手は――――」

マミ「暁美ほむらよ!」

さやか(あ。そういやコレ、料理対決だったわ)



……………

………





146 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 09:58:22.22 5BdfEJxk0 29/381




             ―――― キッチンルーム ――――



シャル「さあ、四人とも無事に帰ってきました!」

杏子「まるで四人の中の誰かが犠牲になるルートもあったみたいな台詞だな」

ゲルト【まぁ、ドラゴン居ましたからね……】

シャル「それぞれ食材の用意は万全と判断してよろしいですね!?」

ほむら「モチのロンロン」

マミ「当然よ」

まどか(マミさんの背後にいるドラゴンが凄まじい存在感を放ってる……)

さやか(ほむらの前に置かれている生肉……まさか……)

シャル「さて、どんな料理が作られるのか、今から楽しみですねー」

杏子「モニターで会話がだだ漏れだったから知ってるって言っちゃ駄目?」

ゲルト【駄目ですね。何と言うか、雰囲気的に】

シャル「それでは両者位置についてください!」

ほむら「……………」

マミ「……………」

シャル「では、いよいよ本番……」

シャル「料理、開始です!」

妖精さんA「よーいしょ」

――――カーンッ!


147 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:00:18.15 5BdfEJxk0 30/381



マミ「美樹さん、私達が何を作るか忘れてないわよね?」

さやか「はい。カレーですよね?」

さやか「それで、まずは何をするんですか?」

マミ「最初はお肉の下ごしらえね」

マミ「此処に運んでくる前にちょっと焼いて味を確かめたけど、このドラゴン肉、上質な牛肉みたいな味だったわ」

マミ「とても美味しかったけど、それはつまり、牛肉的な臭みがあるという事」

マミ「その処理をしないといけないわ」

さやか「成程。流石先輩!」

さやか「で、あたしは何かしますか? 一応助手ですし」

さやか「これでもさやかちゃん、最近家で料理の手伝いとか始めましたからねー♪」

さやか「カレーぐらいなら作り方も分かりますし!」

マミ「……」ピクッ

マミ「美樹さん。今、なんて言ったのかしら?」

さやか「へ? カレーぐらいなら作り方も分かる、ですけど……」

マミ「そう、カレーぐらい、カレーぐらいね……」

マミ「あなた、料理を嘗めているの?」

さやか「え?」


148 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:01:43.73 5BdfEJxk0 31/381



マミ「カレーぐらい? ええ、そうね。確かにカレーはお手軽に出来る料理よ。子供にだって作れちゃう」

マミ「でも『作れる』のと『美味しく作る』のを混同しては駄目」

マミ「良い!? 料理は愛情! その人の気持ちによって美味しさが変わるのよ!」

マミ「カレーぐらいなんて、そんな中途半端な気持ちでまともな料理を作れる訳ないでしょ!」

さやか「ひっ!? す、すみません!」

マミ「全く……」

マミ「まずは野菜を洗いなさい! 丁寧に、食べる人が万一でも食中毒を起こさないように!」

さやか「はいっ! あ、洗います!」ジャブジャブ

マミ「」ピキッ

マミ「美樹さん、何をしているのかしら?」

さやか「え? あ、えと、あ、洗って……?」

マミ「そんな雑な洗い方じゃ野菜が傷付くでしょうがっ!」

さやか「ひぃっ!?」

マミ「あなた何!? 私の料理を小学生が始めて作ったお弁当みたいな不格好なやつにしたいの!?」

マミ「確かに丁寧に洗えとは言ったけど限度があるでしょ!」

マミ「何なの? 手取り足取り教えないと野菜すら洗えないの?」

マミ「そんなんでよく助手を名乗れたわね!」

さやか「す、すみません! すみませんっ!」

マミ「大体あなたにしろ暁美さんにしろ……」ガミガミ

さやか「ひぇぇぇぇぇ……」




ほむら「……あちらは何をしてるんでしょうねぇ」


149 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:02:46.10 5BdfEJxk0 32/381



まどか「マミさん……あんなキャラだっけ……?」

ほむら「鹿目さんが知らないのに私が知っている訳ないでしょう」

ほむら「ただ元々負けず嫌いっぽいですし」

ほむら「『魔法少女の先輩』という立場がない、対等な友達が相手なら」

ほむら「案外、あれが巴先輩の本質かも知れません」

ほむら「それだけ私達に心を開いてくれた、と思う事にしましょう」

まどか「……」

ほむら「だとしても、さやかさんからしたら災難には違いないですけどね」

ほむら「その点鹿目さんは幸運ですよ」

ほむら「私もやるからには勝利を目指すタイプですが、何はともあれ楽しさ重視です」

ほむら「あのような厳しい指導はなく、楽しく料理しますのでご安心を」

まどか「う、うんっ! 楽しくやろうねっ」

ほむら「ああ、でもやっぱり負けるのは嫌ですので……」

ほむら「妖精さんアイテム、『お手軽奥義書』を使わせてもらいましょう」

まどか「お手軽奥義書?」

ほむら「はい。使い捨ての巻物でして、軽く一読するだけで凄まじい奥義が身に着くのです」

ほむら「まぁ、一晩ぐっすり寝るとすっかり忘れてしまう、一夜漬けみたいなものですけどね」

まどか「へー」


150 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:04:38.70 5BdfEJxk0 33/381



ほむら「えーっと、これとこれとこれと……これも使っちゃお」

ほむら「……よし、覚えた」

ほむら「さて、それではまず野菜を洗うとしましょう」

まどか「うんっ! それぐらいなら私でも出来るから手伝うよ!」

ほむら「あ、いえ。手伝いは不要です」

ほむら「むしろ離れていた方が良いと思いますよ?」

まどか「え? どういう……」

まどか(あ。ほむらちゃん、野菜をまな板の上に置いた)

まどか(えっと、それで手をかざして……?)






ほむら「獣王粉砕波ッ!!」






まどか「え――――(お、お野菜が光って)」

――――ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!

まどか「爆発しぎゃああああああああっ!?」

まどか「も、燃え!? 頭に火が、火がああああああああああああああっ!?」

ほむら「これぞ獣王粉砕波!」

ほむら「野菜についた諸々の汚れに彼氏や彼女を与え」

ほむら「リア充にする事で爆発四散!」

ほむら「綺麗さっぱり取り去る奥義です!」

まどか「意味、わか、あちっ! あちちちちちっ!?」

まどか「と言うかなんで爆発するの!?」アフロマドカー

ほむら「何を言ってるんですか。お料理に爆発や発光は付きものでしょう?」

まどか「むしろ何言ってるの!? 本当に何言ってるの!?」


151 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:07:13.26 5BdfEJxk0 34/381



ほむら「さぁ、そろそろ本番です。お野菜を鍋に入れて」

ほむら「そして味噌を投入する前に第二の奥義! 光龍撃!」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

まどか「お、お鍋から金色に光る竜がたくさん出てきたァ―――――――!?」

ほむら「その竜は元々野菜のえぐみなどです」

ほむら「灰汁などは取り過ぎると食材の風味を損ねる事があるので、適度な取り方が求められるのですが」

ほむら「この奥義を使い、竜の形にして物理的に排除すれば」

ほむら「風味やコクを残したまま、所謂不快な味だけを取り除けるという訳ですね♪」

まどか「わざわざ竜にして出す必要はあるのかな!? 私にはないと思うんだけどな!?」

ほむら「その方が面白いじゃないですか」

まどか「つまり意味は無いんでいだだだだだっ!? 噛んでる!? この竜噛みついてくるーっ!?」

ほむら「むぅ。しかしこれだけの数の竜が出てくるとは……」

ほむら「意外とえぐみや臭みが多いのか、いえ、妖精さんに限ってそんな事はないでしょう」

ほむら「だとすると、見た目が派手なだけで効果が薄い?」

ほむら「試しにもう一発。光龍撃~」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

まどか「なんで全部私に襲い掛かってくるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」カジカジカジ



\ギャーッ! アタマクイチギ、チギラレ!?/

\マ、マミサン、モウム、ミギャアァァ!!/



杏子「……これ、なんだっけ?」

ゲルト【確かどっちが美味しいご飯を作れるか、という話だったと思います】

杏子「ああ、そうだったね。確かにそうだった……」

杏子「……なんつーか、その……」

杏子「……ごめんなさい」

ゲルト【いえ、佐倉さんが悪い訳では……】


152 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:08:12.14 5BdfEJxk0 35/381



シャル「まぁ、ほむらと、というか妖精さんと係わると大体こんなもんよ」

シャル「地底探検とか並行世界とか上条改造計画とか体験した身としては」

シャル「……今回も中々のカオスと思うだけよ」

ゲルト【く、苦労したんですね……】

シャル「アイツの同居人となった以上、あなた達もこれから苦労するのよ」

杏子「ひぇー……」

ゲルト【た、耐えられるでしょうか……精神的に】

シャル「あはは、それは大丈夫」

シャル「私も最初は戸惑ったし、これからやっていけるのかと思いもしたけど」

シャル「アイツみたいにすればいいって気付いてからは、もう絶対大丈夫って思えるようになったから」

シャル「ね?」

杏子「アイツ?」

ゲルト【みたいに?】

シャル「……………】



ほむら「ゴールデンフィンガー!」

まどか「お、お鍋が光っ、ぎゃあああああああ!? 目が、目がああああああああっ!?」



シャル「……はた迷惑になれと?】

シャル「合ってるけど違う」



……………

………




153 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:10:22.07 5BdfEJxk0 36/381



マミ「……良し! 完成したわ!」

ほむら「こちらも完成しました」

シャル「おおっと、中々大変な状況だったようですが、各人料理が完成したようですねー」

さやか「」グッタリ

まどか「」プスプス

杏子「さやか様は置いとくとしても、まどかは放置で良いのか?」

ゲルト【あ、置いとけるんですね。意外】

杏子「流石に疲れてのびてるのと炭化直前を比べたらなぁ……」

杏子「まどかの奴、治療してやらないのか?」

シャル「あー、まぁ、治療した方が良いとは思うけど……」

妖精さんA「めでかるちぇっく、しますか?」
妖精さんB「けんこーしんだん?」
妖精さんC「にどとけがもびょうきもしないからだに」
妖精さんD「あっぷろーどしませう?」

シャル「彼等の前では遠慮しといた方が得策かなぁって」

ゲルト【……ですね】

杏子「……そーだな」

シャル「んじゃ、話を進めましょ。そろそろ矛先がこっち向かないとも限らないし」

シャル「それでは完成した料理を持ってきてもらうとしましょう」

シャル「どちらが先に持ってきますか?」

マミ「確かに、お腹が空いてきた今」

マミ「先行が圧倒的に有利なのは間違いないわね」

マミ「どうする? ここは公平に……」

ほむら「ああ、巴先輩が先行で良いですよ」

マミ「……あら、そう?」

マミ(どういう事? 何か、自信があるのかしら?)

マミ(……あまり気乗りしないけど、意地を張って先行を譲るのも暁美さんの思惑通りになりそうで怖い)

マミ(と言うか、何をやっても掌で踊らされているような気がする)

マミ(なら、素直に好意を受け取るとしましょう)

マミ「じゃあ、お言葉に甘えて」

シャル「では順番が決まったようですので、巴さんどうぞっ!」

マミ「私の料理はこれ!」

マミ「カレーよっ!」


154 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:11:18.18 5BdfEJxk0 37/381



シャル「……………」

杏子「……………」

ゲルト【……………】

マミ「……えっと」

マミ「……何か言わないの?」

シャル「え? ああ、ごめんなさい」

シャル「あなたの事だからてっきり『ドラゴンカレー・白ワイン風味』とか言うのかと」

杏子「あたしとしては『本場仕込みイタリア風カレー』かなーと」

ゲルト【私は『ピッカンテ』が本命でした】

マミ「……あなた達が私の事をどんな風に思っていたのかはよく分かったわ」

マミ「確かにドラゴンを食材に浸かっているから普通とは言えないけど」

マミ「コンセプト自体は普通のカレーなんだから、そんな仰々しいネーミングは付けないわよ」

マミ「ほら、それよりも早く食べてよ」

マミ「冷めたら採点で不利になっちゃうでしょ?」

シャル「ん、そーだね」

杏子「そんじゃ、ま」

ゲルト【両手を合わせて】

シャ 「いただきまーす】


155 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:12:27.06 5BdfEJxk0 38/381



シャル「おお……スプーンで運んできた時に鼻を刺激する、なんと香ばしい匂い……」

シャル「実に食欲をそそられますねぇ」

杏子「え、何? あんな感じにコメント残さないと駄目なの?」

ゲルト【さぁ……? 私達は普通に食べていればいいんじゃないですか?】

杏子「そーだな。そーすっか」

シャル「何時までもこの香りを堪能したいところですが、しかし冷めてしまっては元も子もない」

シャル「何より香りに刺激されて、胃袋がウキウキしております」

シャル「もう我慢出来ません! いただきまーすっ!」

シャル「はぐっ、ほぐ、もぐもぐ……」

シャル「んっ……」

シャル「……んーまいっ!」

シャル「いやぁ、月並みですがこの言葉が真っ先に出てきましたっ!」

シャル「適度な辛みと口の中一杯に満ちるスパイスの香り。実に素晴らしい」

シャル「しかも野菜の甘みは損なわれておらず、むしろ辛さとの調和によってより一層強く感じられる」

シャル「そしてこの肉!」

シャル「牛肉に近い香りと味ですが臭みはない。いえ、きっと臭みだけを取り除いたのでしょう」

シャル「更にこの肉、噛めば噛むほど肉汁が溢れてきます!」

シャル「溢れる肉汁の甘さが辛さを和らげ、少しずつカレーの味を変えていくのでいくら食べても飽きない!」

シャル「さながらそれは味の芸術! 四季折々によって変化する日本の景観の如く美しさすら感じます!」

シャル「……カレールー、野菜、肉」

シャル「全ての食材を、平等かつ繊細に扱う……そうしなければ辿り着けない境地」

シャル「食べさせる人への愛情がなければ出来ない事でしょう」

シャル「実に……巴さんらしい味でしたよ」

マミ「ど、どうも……」

マミ(まさかこんなにもしっかり寸評されるとは思わなかった……)




杏子「うめー」ガツガツ

ゲルト【お肉も美味しいですけど、野菜も美味しいですねー】モグモグ


156 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:13:31.46 5BdfEJxk0 39/381



シャル「ふぅ……ごちそうさま」

シャル「さて、次はほむらの番です」

シャル「あまりの美味しさに巴さんのカレーをたっぷりと食べてしまった我々の腹に響く料理を出せるのでしょうか?」

ほむら「問題ありません。この程度、ハンデにすらなりませんよ」

マミ「……なんですって?」

ほむら「ふふふ……食べれば分かりますよ」

ほむら「どうですか? 巴先輩も、食べてみますか?」

ほむら「私の料理……ウサギ鍋を!」



――――ビカアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!



マミ「これはっ!? 鍋が、鍋が光っている!?」

マミ「いえ、違う……」

マミ「鍋の具材が、まるで太陽の如く輝きを放っている!?」

杏子「なにそれこわい」

シャル「こ、これは一体!?」

ほむら「妖精さんアイテムにより身に付いた奥義『万別陽光達』」

ほむら「この奥義によって食材は極限までその素質を引き出され」

ほむら「所謂スーパーサ○ヤ人状態! 通常の50倍の美味さに昇華しているのです!」

シャル「な、なんて事! だから光り輝いていたのね!」

ゲルト【何処に納得出来る要素が?】

ほむら「ささ、どうぞシャルロッテさん」

ほむら「冷めないうちにお食べください」

シャル「ええ……それでは早速」

シャル「うーん、この香り……巴さんのカレーを食べたばかりだと言うのに、空腹を覚えるほど食欲を呼び起こします」

シャル「これは期待出来そうですねー」

シャル「では、いただきます」パクッ

シャル「ふぐおっ!?」

杏子「ど、どうした!?」

ゲルト【何か喉に詰まらせましたか!?】

シャル「な……な……」

杏子「な……?」


157 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:14:20.31 5BdfEJxk0 40/381







シャル「なんがゴビガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」






杏子「シャルが口からビーム吐いたああああああああああああああああああ!?」

ゲルト【なんですかそれええええええええええええええええええええええっ!?】



158 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:15:24.33 5BdfEJxk0 41/381



シャル「なんじゃこの美味さはあああああああああああああああっ!!!」ビカーッ

シャル「美味さがあああああああああああああああああああああっ!!!」ビカーッ

シャル「口から溢れるうぅあああああああああああああああああっ!!!」ビカーッ

杏子「なんなんだこれ!? どういう事だこれ!?」

ゲルト【口からビームって可笑しいでしょ!?】

ほむら「いやぁ、料理を食べたらこの程度のリアクションはお約束でしょう」

妖精さんA「やくそくやくそくー」
妖精さんB「りあくしょんないないとはやらないです」
妖精さんC「むしろそれめあてでみるかんじ?」

マミ「テレビで聞いた事があるわ。真に美味なる料理は、思わずリアクションを取ってしまうって」

ゲルト【アニメと現実をごっちゃにしてはいけません!】

シャル「くぅっ……出汁を口に含んだだけでこれほどのリアクションを強要される……!」

シャル「具材を食べたらどうなるか……今から楽しみね……!」

杏子「え゛、まだ挑むの!?」

ゲルト【止めましょうよ!? 身体が持ちませんよ物理的に!】

シャル「ふっ……この料理を食べて朽ちるなら本望よ……」

ゲルト【いや、絶対あの世で後悔しますから!】

シャル「いただきまーす!!」バクゥッ!

ゲルト【ああ……なんて事を……!】

シャル「……………」

ゲルト【しゃ、シャルロッテさん……?】

杏子「おい、どうし……」

シャル「――――美味い」

シャル「美味い、美味い……美味い、美味い美味い美味い美味い」

シャル「美味い美味い美味い美味い美味い」バリバリバリ

杏子「ちょ、服を掻き毟って……」

シャル「う――――!!」ビリッ

ゲルト【ああ、服を破いて……】

シャル「うぅ――――!!!」ムキッ

杏子「い、いや!? あれは破いたというより破け……」


159 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:17:27.75 5BdfEJxk0 42/381





マチョロッテ「う――――――ま――――――い――――――ぞ――――――!!!」バリバリバリーッ!




ゲル「筋肉ダルマになったああああああああああああああああああああ!?】

マミ「あら、その姿も久しぶりね」

ゲル「以前もこの姿になったのおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

マチョロッテ「ふぅー……推測だけど」イケボ

マチョロッテ「通常の五十倍の美味さを得た食材を食べる事で、細胞が劇的な進化を迎え」

マチョロッテ「私の戦闘能力も五十倍になったのでしょうね」

杏子「イミワカンナイッ!」

ゲルト【佐倉さん! 混乱のあまりキャラがぶれてます! 某スクールアイドルみたいです!】

ゲルト【あとシャルロッテさんは色々混ざり過ぎです! どっちもジャンプですけど!】

マミ「……私も、一口いただいて良いかしら?」

ゲルト【ちょ】

ほむら「勿論。どうぞ」

マミ「ええ……いただきます」パクッ

マミ「もぐもぐ……ごっくん」

マミ「……………」ムキムキ

巴マッチョ「ふっ……完敗、ね」

巴マッチョ「こんなリアクションを取らされてしまう料理……私には作れないわ」

杏子「作れて堪るか!?」

ゲルト【ああ……巴さんの豊満なバストが単なる大胸筋に……】

ほむら「さあ、お二人もお食べください。そんでもって評価をくださいな♪」

杏子「断 固 拒 否 す る」

ほむら「あら、折角作ったのに……食べ物を粗末にしてはいけませんよ?」

杏子「既に食べ物とは言えないっつってんだよ!?」

ほむら「そうですか……残念ですが、そこまで言うのなら仕方ありません」

杏子「たく……」

ほむら「無理やり食べさせましょう」

杏子「え、がぼっ!?」

ゲルト【え゛】

ほむら「ゲルトルートさんもどうぞー♪」

ゲルト【ちょ、や、止め……】




ぎゃあああああああああああああああああああ……………




160 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:19:13.79 5BdfEJxk0 43/381



マチョロッテ「さて、ほむらの料理の実食も終わり、あとは審査を下すだけになったわ」ムキンッ

佐倉筋肉「あ、あたしの身体がごいつマッチョに……」ムキッ

ゲルトムッキー【私なんて魔女どころか最早筋肉そのものですよ……】ムキムキ

巴マッチョ「良いじゃない。美味しかったんだから」ムッキ

佐倉筋肉「確かに美味かったけどさぁ」

ゲルトムッキー【私達も口からビーム吐きましたからね】

ほむら「それにしても暑苦しいですねぇ……」

佐倉筋肉「誰の所為だ、誰の」

さやか「あたしらが気を失っていた間に何が起きたんだ」

まどか「マッチョなほむらちゃんならちょっと見てみたかったかも……」

さやか「そしてまどかは何を言っているの?」

マチョロッテ「まぁ、お喋りはこのぐらいにして……」

マチョロッテ「そろそろ評価を出すとしましょう」

マチョロッテ「私達審査員の手元には、巴さんとほむらの名前が書かれた名札が二つある」

マチョロッテ「より美味しい料理を作ったと思う方の名札を上げてもらい」

マチョロッテ「多数決で勝負を決めるわ」

佐倉筋肉「お、これか」

ゲルトムッキー【もう答えは決めましたから何時でもいけますよ】

マチョロッテ「じゃ、いっせーのせ、で、やるわよ」

ほむら「いやぁ、ドキドキしますねー」

ほむら(……なんつってなっ!)

ほむら(妖精さんパワーをたっぷり注ぎ込んだ私の料理が負けるなどあり得ません)

ほむら(そもそも巴先輩自身が負けを認めている訳で)

ほむら(私の勝ちは決して揺らがない!)

ほむら(頂点はこのほむらです! 依然変わりなく!)

マチョロッテ「んじゃ、いっせーの……せっ」


161 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:19:50.43 5BdfEJxk0 44/381






マチョロッテ・・・マミ

佐倉筋肉・・・マミ

ゲルトムッキー・・・マミ





162 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:21:20.25 5BdfEJxk0 45/381



ほむら「……あれ?」

巴マッチョ「……あら?」

マチョロッテ「えー、巴さん3。ほむら0」

マチョロッテ「と、なりましたので……」

マチョロッテ「巴さんの勝ちです」

巴マッチョ「……私の、勝ち?」

マチョロッテ「うん」

ほむら「……私の、負け?」

マチョロッテ「うん」

ほむら「……………」

巴マッチョ「……………」

ほむ マミ「えええええええええええええええええっ!?」

巴マッチョ「ど、どどどどどうし、どうして!?」

ほむら「どういう事ですか!? な、何故私が負け……!?」

ほむら「妖精さんパワーを借り、私は究極のウサギ鍋を作り上げたのですよ!?」

ほむら「仮に巴先輩の料理が気持ち私より美味しかったとしても」

ほむら「3対0などという大差を付けられて負けるなどあり得ません!」

マチョロッテ「ええ。確かにほむらの料理は美味しかったわ」

ゲルトムッキー【味だけで判断するなら、暁美さんが私達三人のポイントを得ていたでしょう】

ほむら「だったら……!」

佐倉筋肉「でもな、お前の料理には一つだけ欠点があったのさ」

ほむら「欠点ですって?」

佐倉筋肉「ああ、欠点だ」

マチョロッテ「それも私達三人の審査が覆るほどの、ね」

ほむら「それは、一体……!?」

ゲルトムッキー【簡単な話です】


163 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:22:03.86 5BdfEJxk0 46/381























シャ 「妖精さんパワーに頼るのは反則でしょー】



164 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:24:33.47 5BdfEJxk0 47/381



ほむら「……あ」

まどか「え?」

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「……………」

まどか「気付かなかった私が言うのも難だけどさ、それ、ちょっと考えれば分かるよね?」

ほむら「……………」

まどか「ううん、ただ反則負けしただけなら、別に良いよ? 勝負は勝ち負けじゃなくて、楽しんだもの勝ち」

まどか「ほむらちゃん、凄く楽しそうに料理していたもんね」

ほむら「……………」

まどか「ところで、私はその料理の巻き添えで色々と酷い目に遭ったけど」

まどか「これってつまり、アレだよね?」

まどか「骨折り損のくたびれ儲け」

ほむら「……………」

まどか「まぁ、それで負けても文句はないけどね」

まどか「反則負けは流石に酷くない?」

ほむら「……………」

まどか「何か言う事ない?」

ほむら「……………」

ほむら「……ごめんちゃいっ♪」

まどか「」ブチッ

まどか「さやかちゃん。ほむらちゃんの料理の残り、ない?」

さやか「スープと僅かな野菜の欠片で良ければ」

まどか「うん、それでいいよ」ガツガツ

まどか「――――」ムキムキ

マチョか「……ふぅ」

マチョか「……ほむらちゃん」




マチョか「楽しかったで済めば警察いらないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

ほむら「ぴーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」


165 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:26:06.18 5BdfEJxk0 48/381



さやか「……まどかの奴、逃げたほむらを追い駆けて行ったよ」

ゲルトムッキー【まぁ、大分酷い目に遭ってましたからね】

ゲルト【おっと?】ポンッ

シャル「あ、元の姿に戻った」ポンッ

杏子「お手軽過ぎね?」ポンッ

マミ「あらあら」ポンッ

さやか「はあー……やれやれ、やっと終わりか……疲れた」

シャル「今回、私は楽しめたわよ」

さやか「あー、楽しそうだったよねー……あたしもそっち側なら楽しめたかなぁ」

ゲルト【そう言えば、話は変わりますけど……美樹さん、宿題の方はやらなくていいのですか?】

さやか「げっ!? そうだった!」

シャル「今日はまだ時間あるし……私らが見てやるから、宿題進めたら?」

さやか「うう……もう帰って寝たい……」

マミ「ほら、美樹さん。もうひと頑張りしてっ」

さやか「はーい……」

シャル「じゃ、リビングに戻るか」

ゲルト【ですね】

マミ(さて、私も……)

――――くいくい

マミ「ん?」


166 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:26:56.80 5BdfEJxk0 49/381



マミ「……どうかした?」

マミ「佐倉さん」

杏子「ああ、まぁ、なんだ……」

杏子「まだごちそうさまって、言ってなかったからな」

マミ「ああ、そんな事……ありがと」

杏子「……飯、作ってくれてありがとな」

マミ「だからもう良いって。こっちはお遊びで作ったようなものだし」

杏子「だとしても、さ」

杏子「あたしが覚えている食べ物の味を、また味わえたのは確かなんだから」

マミ「……………」

杏子「ほむらの料理は美味い。それは間違いない」

杏子「でもさ、やっぱあたしにとって一番美味い料理ってのは」

杏子「かーさんの料理であって」

杏子「……”マミさん”の料理だったからさ」

マミ「佐倉さん……」

杏子「ま、久しぶりにマミさんの料理を食えたし」

杏子「もう満足したけどなっ! ははっ」

マミ「……もう、じゃなくて、今日は、でしょ?」

杏子「え?」

マミ「また何時でも作ってあげるわよ」

マミ「もう私達は、決別したかつての仲間なんかじゃない」

マミ「仲直りした友達、でしょ?」

杏子「……何時も独りぼっちのマミに友達云々を語られるとはなぁ」

マミ「う、五月蝿いっ! 良いじゃない別に!」

杏子「そうだな。そんな事、どうでもいいな」

杏子「……これからよろしくな、マミ」

マミ「……ええ、勿論」




マミ「これから、よろしくね!」




167 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:33:18.44 5BdfEJxk0 50/381



















ゲルト【……で、なんで鹿目さん、またアフロになってるんですか?】

まどか「……ほむらちゃん追い駆けたら、妖精さんアイテムで本気の迎撃された……」

ゲルト【それはお気の毒に……】

まどか「うう……ほむらちゃん酷いよ! 全然私の事見てくれないし!」

まどか「今日だって……いや、私は全然役立たなかったけど、でもでもでもっ!」

ゲルト【まぁまぁ、気持ちは分かりますけど落ち着いてください】

ゲルト【独占したい気持ちは分かりますけど、相手が暁美さんですからねー】

ゲルト【それに惚れた弱みって言葉もあるじゃないですか。振り回されるのも仕方ないですよ】

まどか「それはそうだけど……」

まどか「……………」

まどか「え?」

ゲルト【?】

まどか「惚れた、弱み?」

ゲルト【ええ】

まどか「誰が?」

ゲルト【鹿目さんが】

まどか「誰に?」

ゲルト【暁美さんに】

まどか「……………」






まどか「え?」



168 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:37:24.84 5BdfEJxk0 51/381


妖精さんメモ


『翻訳眼鏡』 ※原作登場※

妖精さんが作ってくれた万能翻訳危機。言葉を持たない者達の心を読み取れる、不思議な眼鏡です。

どんな存在、例えば髪の毛だったり昆虫だったり加工済みチキンだったりの言葉も読み取ってくれます。

ただし訳した言葉は眼鏡の下側に字幕表示されるのと、あくまで意訳である事、そして翻訳されたところで

人類にその意味が理解出来るとは限らない事に要注意です。

尚、魔女さんは元魔法少女=元人間なので、表示される言葉は真っ当に訳されているとの事。

ちなみに私の眼鏡には幾度となく改造が施されており、レーダー、望遠鏡、スカウター、人間ドック、

お野菜の鮮度判定、産地偽装判定などなど、原作にはない様々な機能が付いている、と妖精さんが言っていました。

……原作ってなんの事でしょうね?



『ブラックホール缶詰』 ※原作登場※

数年前に妖精さんがプレゼントしてくれたアイテムです。

一見普通の缶詰ですが、何をしても壊れない恐るべき強度を誇ります。そして内容物は『ブラックホール一つ』との事。

開けられないので中身を見る事は出来ませんが、妖精さんですからね。多分、入ってます。

そういうとこ、ちゃんとしちゃう人達なので。



『探し物アンテナ』 ※オリジナル※

どんな物(物体だけでなく思い出や記憶も)でも見つけ出してくれるアンテナです。我が家の屋根に設置されています。

その原理は『できごと』達の噂話を収集・分析し、居場所を特定するのだとか。

噂とは言え『できごと』から直接聞いているので、大体九割ほどの確率で正確に居場所を特定出来ます。

残る一割もちょっとずれているぐらいで、少し探せばきっと見つかるでしょう。

あなたも無くしてしまった物、忘れてしまった事がありましたら、このアンテナで探してみてはどうでしょうか?



169 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/05/31 10:38:58.53 5BdfEJxk0 52/381



『魔鋏れーばていん』 ※オリジナル※

あらゆる物体を切り刻んでしまう、恐るべき切れ味を誇る鋏。それがこの魔鋏れーばていんです。

刃に触れれば鋼鉄だろうとダイヤモンドだろうと運命の赤い糸だろうと切断してしまいます。

妖精さん曰く、刃に触れた部分の原子やらなんやらを仲違いさせて分離させるとの事。

その性質上切れ味を維持するために、定期的に悪口を吹き込んでおく必要があります。

咄嗟の時には使い辛いので、戦闘用としては扱い辛いです。あくまで便利な工作グッズという訳ですね。



『お手軽奥義書』 ※オリジナル※

何度も挑んでいるボスが強くて倒せない……レベルを上げても勝てる気がしない……

アイツを倒すには、強力な必殺技が必要だ……!

そんなあなたに紹介する商品はこちら! お手軽奥義書!

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こんな素晴らしい奥義書が今なら一つたったの3万円! 買わなきゃ損ですよっ!

……欲に目が眩んでこんな感じの商売をしたところ、翌日筋肉隆々の老若男女に追い駆けられるという目に遭った事が

あります。昔は結構やんちゃをしたものです。


289 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 07:55:43.30 uafKQTvZ0 53/381




えぴそーど じゅうはち 【人間さんたちの、らぶすとーりーず】



290 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 07:56:38.44 uafKQTvZ0 54/381



どうも、鹿目まどかです。

今回のあらすじを呼んでくれと天から声が聞えたので一読します。




ゲルトルートさんに、私がほむらちゃんに惚れていると指摘されました。




……今回はその指摘があった翌日からのお話です。


291 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 07:58:36.27 uafKQTvZ0 55/381




                 ――― 鹿目ハウス ―――



まどか「えっと、お茶菓子どうぞ……」翻訳眼鏡装備中

ゲルト【あ、どもです】

さやか「いただきまーす」翻訳眼鏡装備中

まどか(まさか魔女を自宅に招く日が来るとは思わなかった……)

まどか(付き添いのさやかちゃんも居るけど、なんか違和感あるなぁ)

まどか(……ゲルトルートさん大きいから、リビングが狭く感じる……)

さやか「もぐもぐもぐ」

ゲルト【……美樹さん、遠慮なく食べますね】

さやか「いやー、最近ほむらの家でお茶菓子をたらふく食ってたせいか」

さやか「甘味を見るとつい手が出てしまうようになってしまって」

ゲルト【堕落してますねー】

ゲルト【そんなんじゃ太りますよ?】

さやか「もう手遅れです」

さやか「なのであたしは気にしない事にしたのです」モグモグ

ゲルト【開き直るにはちょっと早くないですか?】

さやか「良いの良いの」

まどか(楽しそうだなー……)

さやか「それは兎も角、げるげるがまどかの家に来たいとはね」

さやか「キュゥべえが何か仕掛けてくるかもってんで、あたしは護衛として一緒に来た訳だけど」

さやか「二人って何時の間にそんな仲良くなったの?」

ゲルト【仲良くと言うか……弱味を握った、でしょうか?】

さやか「おや、穏やかじゃないね」

さやか「何々? まどかの好きな人でも知っちゃったの?」

まどか「ぶふぉっ!?」

さやか「え?」


292 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 07:59:58.31 uafKQTvZ0 56/381



ゲルト【……美樹さんって、結構鋭いんですか?】

さやか「え? え? マジなの? え?」

ゲルト【まぁ、マジかどうかを確定するためにも、今日は遊びに来た訳ですが】

ゲルト【……相手が相手ですので訊きますけど、鹿目さん】

ゲルト【美樹さんにもこの話をしても、よろしいでしょうか?】

まどか「……うん」

まどか「さやかちゃんになら……大丈夫」

さやか(え? 何、どういう事?)

さやか(誰かに聞かせられないような相手なの? それとも、”あたしだから聞かせられる”相手?)

さやか(まさかそれって……)

まどか「……さやかちゃん、聞いて」

さやか「……………」

まどか「あのね……私、」



まどか「ほ、ほむらちゃんの事、好きになっちゃったみたいなの!」



293 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:04:56.81 uafKQTvZ0 57/381



さやか「……………」

まどか「だ、だから、さやかちゃんにも協力してほしくて」

さやか「まどか!」

まどか「きゃっ!? さ、さやかちゃん!?」

まどか「あの、なんでいきなり掴み掛って……」

さやか「病院行こう!」

まどか「突然の病人扱い!?」

さやか「だって……だって、可笑しいでしょ!」

まどか「それは……た、確かに、女の子同士なんて可笑しいかも知れないけど、でも」

さやか「いや、女の子同士は別にいいんだ」

まどか「え?」

さやか「でも、ほむらを好きになるなんて、そんなの……」

さやか「脳に異常があるとしか……!」

まどか「いやいやいや!? 女の子同士は許容出来るのになんでそこ全否定するの!?」

さやか「まどか。怖がらなくていいんだよ」

さやか「今の医学って凄いから、治療すればきっと治るよ。ね?」

まどか「話聞いてよ!? 何なの!? さやかちゃん、ほむらちゃんの友達だよね?! 本当は仲悪いの!?」

さやか「い、いや、だって……」

ゲルト【恋に理由はいりませんよ。好きになったら、それは仕方ない事です】

ゲルト【それに少なくとも私は、誰かが誰かを愛おしく想う気持ちほど大切なものはないと思っていますし】

ゲルト【例え世間では認められていない”過ち”でも】

ゲルト【その想いは過ちを責める心よりずっと純真で綺麗だと信じています】

さやか「それは……」

ゲルト【勿論美樹さんは混乱のあまり先のような事を口走ったのだと思いますが】

ゲルト【もし本気で鹿目さんの想いを否定するのなら】

ゲルト【いくら美樹さんでも、許しません】

まどか「……………」

ゲルト【まぁ、私はその所為で……】

さやか「……げるげる……?」


294 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:10:31.62 uafKQTvZ0 58/381



ゲルト【……なんでもありません】

ゲルト【私が言いたいのは鹿目さんが誰を好きになろうと、その気持ちは尊重されるべきだと言う事です】

ゲルト【まぁ、昨日気付いたばかりの恋心なので、錯誤という可能性もゼロではありませんけどね】

さやか「へ? そうなの?」

まどか「うん……昨日ゲルトルートさんに言われて気付いたの……」

さやか「あー、そうかそうか」

さやか(なんだ、げるげるが勝手に言って、まどかは乗せられただけか)

さやか(それならまだ恋だと決まった訳じゃないよね)

さやか(つーかまどかは他人の言う事を鵜呑みにするからなー)

さやか(本当にほむらが好きなのか怪しいもんだね)

ゲルト【……………美樹さん。さては私が鹿目さんを乗せたと思っていますね】

さやか「ぶっ!?」

ゲルト【ふん、良いでしょう。証拠をお見せします】

ゲルト【鹿目さん、暁美さんが傍にいると自分がどうなってしまうか、さやかさんにお伝えください】

まどか「え? えっと……」

まどか「ほむらちゃんが傍に居るとついつい目で追っちゃって」

まどか「あと出来るだけ近くに居たいからつい近付いちゃって」

まどか「だけどそうすると胸がドキドキして苦しくなるし、身体も熱くなっちゃうし」

まどか「あと他の女の子と仲良くしているのを見るとムカムカしちゃうの」

まどか「そ、それから……油断すると、ほむらちゃんとエッチな事しちゃう妄想が……」

まどか「あっ!? エッチと言ってもキスとか一緒のお布団で寝る止まりだから!?」

まどか「雪山で遭難してお互いの体温で温めあうのとかは一度しか妄想した事ないからね!」

まどか「……これって、恋で良いんだよね?」

さやか「恋以外の何物でもないじゃねぇか!!」

ゲルト【でしょう?】


295 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:13:00.07 uafKQTvZ0 59/381



まどか「うう……やっぱりそうなんだ……///」ポッ

ゲルト【……昨日も思いましたけど、何故そこまでべた惚れしていたのに恋愛感情だと気付かなかったのです?】

まどか「だっ、だって……ほむらちゃんってカッコいいでしょ?」

ゲルト(鹿目さん的に暁美さんはカッコいいの部類なんですね)

さやか(以前、アイツは自分の事可愛いと言ってたけどね)

まどか「それに、私が魔女になった時に颯爽と助けてくれて……」

ゲルト(あれは颯爽と、だったのでしょうか?)

さやか(ウキウキとって感じだった気がする)

まどか「私もあんな風になりたいな、カッコ良くなりたいなって思って」

まどか「……憧れの感情だと思ってました……」

さやか「んー……そういう事なら仕方ない、のかなぁ?」

ゲルト【相手が同性だったので恋愛感情という可能性が頭から抜けていた、のもあるのでしょう】

まどか「うう……」

さやか「まぁ、この際今の今まで気付かなかった事はどうでも良いよね」

さやか「問題はこれからどうするか、か」

さやか「まどかはほむらの事が好きなんだよね?」

まどか「うん」

ゲルト(即答ですね)

さやか「つまり恋人になりたいんだよね?」

まどか「う、うん……///」

さやか「そうなると、方法は二つ」

さやか「一つは、まどかがほむらに告白して見事成就する事」

まどか「そ、そんなの無理! 恥ずかしくて絶対死んじゃう!」

さやか「うん。そうだと思う。出来るとも思えないし」

ゲルト【と、なると二つ目……】

ゲルト【暁美さんが鹿目さんに惚れて、向こうから告白してくれる】

ゲルト【そういう状況を作るという事ですね】

さやか「それしかないか」

まどか「そ、そんな、そんな……」

まどか「ほむらちゃんから告白されたら、そんな、嬉し過ぎて……」

まどか「全身の血管が破れて目から血を噴きながら吐血しちゃうよ!」

さやか「よくもまぁそんな具体的に気持ち悪い例えが出てくるね」

ゲルト【まぁ、鹿目さんが生きていられるかどうかはこの際どうでも良いとして】

まどか「良くないよ!? 折角恋人になれたのに死んだら勿体無いよ!」

さやか(勿体無いかどうかの問題かよ)

ゲルト【妖精さんパワーを借りればなんとでもなるでしょう。きっと】


296 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:15:52.55 uafKQTvZ0 60/381



ゲルト【問題はどうすれば暁美さんが鹿目さんに惚れるか、ですねぇ】

ゲルト【惚れてしまえば、あの人の事ですから即行告白してきそうな気がしますし】

さやか「あー、確かに」

さやか「……って、それが出来たら苦労はないでしょ」

さやか「アイツが誰かに恋するなんて全然想像出来ないし」

まどか「私は出来るよ!」

さやか「それは妄想って言うんだよ、まどか」

ゲルト【美樹さんの言う事も分かります……確かに、暁美さんが誰かに恋する姿は想像出来ません】

ゲルト【ですが手はあります】

ゲルト【確かに常識的な手法で暁美さんをどうにか出来るとは思えません】

ゲルト【なら、非常識な手を使えばいいのです。多少のリスクを覚悟した上で】

さやか「非常識な手?」

まどか「もしかして……」

ゲルト【勿論、その方法は――――】


297 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:17:14.93 uafKQTvZ0 61/381




                ――― 見滝原商店街 ―――



ほむら「今日の晩ご飯は何にしましょうかねー。カレー、は昨日食べましたし……」

ほむら「……こうして一人で買い物、というのも久しぶりです」

ほむら「シャルロッテさんは、(危険な)我が家に置いておく訳にもいかないので最初は常に一緒に行動していましたし」

ほむら「最近は鹿目さんや巴先輩達と行動を共にすることも多かったですからね」

ほむら「一人は気軽な反面、ちょっと寂しいかも」

――――にんげんさん、おさみしい?

ほむら「あら、心配かけてすみません。大丈夫です。このぐらいの寂しさは、人生のスパイスになるんですよ」

――――さよかー

ほむら「さよですよー」

ほむら「さて、それよりも今日の晩ご飯を……」

ほむら「ん?」


298 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:19:24.14 uafKQTvZ0 62/381



仁美「……」テクテク






ほむら(おやおや。あれは志筑さんじゃないですか)

ほむら(……憂鬱そうに見えるのは気のせいでしょうか?)

ほむら(まぁ、声を掛けてみれば分かりますよね。見つけた手前、無視するのもなんかアレですし)

ほむら「志筑さーんっ」

仁美「え? あ、暁美さん……こんにちは」

ほむら「こんにちは。何処かにお出掛けですか?」

仁美「お出掛けと言いますか……ちょっと散歩を」

ほむら「散歩ですか(商店街に?)」

仁美「そういう暁美さんは?」

ほむら「私は晩ご飯の買い物です」

ほむら「一人の時は適当に作れましたけど、今は居候が三人も居ますからねー」

ほむら「栄養バランスと皆さんの好みを考え、尚且つ飽きないよう献立を考えるのは、中々大変ですよ」

仁美「くすっ。まるでお母さんみたいですのね」

ほむら「そうですかねぇ?」

ほむら「まぁ、家族のつもりではいますけどね」

仁美「家族……」

ほむら「おっと。この話題はあまり続けると重くなるのでこれ以上はNGで」

ほむら「ところで話は変わりますけど」

仁美「はい?」

ほむら「何かお悩みですか?」

仁美「へ?」


299 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:20:51.73 uafKQTvZ0 63/381



ほむら「いえ、なんだか先程から話の切れが悪く、表情も普段より暗い様子」

ほむら「もしかしたら悩みでもあるのかなー、なんて思った次第です」

ほむら「ああ、勿論言いたくないなら言わなくても結構ですが」

仁美「……」

仁美「あの、暁美さんは……さやかさんと親しい、ですわよね?」

ほむら「? ええ、まぁ、私はそのつもりです」

ほむら「しかしそれを言ったら、志筑さんの方が親しいと思いますけど」

仁美「親し過ぎて言えない事もある。そういう事ですわ」

仁美「……宜しければ、あそこの喫茶店でお茶でもしません?」

ほむら「そうですね……時間的な余裕はありますし」

ほむら「折角のお誘い、受けねば勿体無いというものです」

ほむら「是非、そうさせてもらいますね」


……………

………




300 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:22:49.09 uafKQTvZ0 64/381




             ――― とある喫茶店 ―――



店員「ご注文を承ります」

仁美「オレンジジュースと、ホットケーキを」

ほむら「私はココアと自家製プリンで」

店員「ご注文を繰り返させていただきます。オレンジジュース一点、ココア一点、
   ホットケーキ一点、自家製プリン一点ですね?」

ほむら「はい、大丈夫です」

店員「畏まりました。少々お待ちください」

仁美「……意外ですわ」

ほむら「? 意外、とは?」

仁美「暁美さんはてっきり、コーヒーを頼むと思っていましたから」

仁美「特に根拠はありませんけど」

ほむら「ああ、何故かよく言われるんですよね」

ほむら「そういう設定はない筈なんですけどね……筈ですけど」

仁美「設定?」

ほむら「いえ、なんでもありません」

ほむら「それで? わざわざお店に連れ込んだという事は、何か話したい事があるのではありませんか?」

ほむら「勿論ただお喋りしたいだけだとしても、私は一向に構いませんけどね」

仁美「……実は折り入って相談が」

ほむら「おお? 相談しちゃいますか? 私、結構口が軽いですよ?」

仁美「そこは嘘でも硬いと言いましょうよ……でも、そういう素直なところは逆に信用出来ます」

仁美「仮に言い触らされても、それはそれで一向に構いませんわ」

ほむら「あら、そうなんですか?」

ほむら「私、天邪鬼ですからねぇ。話して良いと言われると、話したくなくなるんですよ」

仁美「だと思いましたわ」


301 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:25:19.22 uafKQTvZ0 65/381



仁美「……そろそろ本題に入りましょう」

仁美「暁美さんは、さやかさんの好きな人を知っていますか?」

ほむら「ええ、一応知ってます。上条さん、ですよね?」

ほむら「全く……中学生なのに不純異性交遊とはなんと嘆かわしいのでしょう」

ほむら「別に誰が誰を好きになろうと構いませんが、それでも未成年らしく分別を弁えてほしいものです」

仁美「……実はわたくしも、上条くんが好きなのです」

ほむら「ふぇっ!?」

仁美「さやかさんの友人であるあなたにこういう事を聞くのは卑怯だと思いますが」

仁美「その……さやかさんと上条くんは……」

仁美「既に、付き合っているのでしょうか?」

ほむら「そ、そ、そ、そ、そんな訳ないでしょう!」

ほむら「だって、だってそんな、さやかさんと上条さんが付き合っていたら……」

ほむら「赤ちゃん出来ちゃってますよーっ!!」

仁美「何段階飛ばすんですの?」

ほむら「はっ!? そう言えば最近さやかさんの身体がふっくらしてきたような気がするのはまさか」

仁美「ヴェッ!?」

仁美「そ、そんな、そんな、そんな……!」

ほむら「まさ、まさか二人が、そんな……!」

ほむ 「きゃああああああああああああああああああああああ!!」

店員「お客様、店内ではお静かに」

ほむ 「あ、すみません」


……………


仁美「ごほん……すみません。取り乱してしまいました」

ほむら「いえ、ごめんなさい……元を辿れば私が悪い訳ですし……」

ほむら「落ち着いて考えたら、時系列的に赤ちゃんが出来て一月も経ってないのに身体に変化が出る訳ありませんよね」

仁美「赤ちゃん作る事は確定なんですのね」

ほむら「? 愛し合っているのに、子供が欲しくないのですか?」

仁美(この人、ピュアなのか穢れているのかよく分からない)


302 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:29:01.05 uafKQTvZ0 66/381



仁美「と、兎に角、さやかさんと上条くんはまだ付き合ってない、という前提で話しましょう」

ほむら「多分その前提で平気だとは思いますが。さやかさん単純ですから、付き合ったら絶対のろけると思いますし」

仁美「あー……」

仁美「……えっと、兎に角ですね」

仁美「わたくしは、上条くんと付き合いたいと思っています」

ほむら「うう……何度も聞かされますけど、恥ずかしいです……」

ほむら「赤ちゃん出来た後の将来設計は考えていますか? 折角出来た命、堕ろせば良いなんて言わせませんよ」

仁美「無駄にテーマを重くしないでください。そういう事にはならない……筈ですから」

仁美「相談はここからです」

ほむら「ここから?」

仁美「……私は、上条くんと付き合いたい」

仁美「ですが、さやかさんとの友情も大切にしたいのです」

ほむら「あー、実に面倒臭い三角関係ですね。夏目漱石の『こころ』みたい」

仁美「死人が出る例えは止めてください。笑えないので」

ほむら「他人からしたら笑いの種ですよ、ドロドロの愛憎劇なんて」

ほむら「まぁ、要するにあれですね」

ほむら「恋と友情を両立させるにはどうすれば良いのか、と?」

仁美「……はい」

ほむら「そう深刻な顔をされましてもねー……正直恋愛ってよく分からないですし」

ほむら「ましてや三角関係の綺麗な解決方法なんて、あるのかどうかも怪しいものです」

ほむら「それでも私の意見を言わせてもらうなら……」

ほむら「多分ですけど、さやかさんに負い目があるから苦しいのでは?」

仁美「負い目?」

ほむら「さやかさんの好きな人は知っている。だけどさやかさんは、あなたの好きな人を知らない」

ほむら「これではさやかさんはあなたに”対抗”出来ない。フェアじゃない」

ほむら「こんな状態で勝ったら恨まれるのでは? 卑怯者だと誹りを受けるのでは?」

ほむら「それが不安なのではありませんか?」

仁美「……そう、かも知れません」


303 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:35:05.72 uafKQTvZ0 67/381



ほむら「では、二つの方針から好きな方をお選びください」

ほむら「一つ。今のまま、卑怯者でも良いやと開き直り、上条さんに告白する事」

ほむら「勝負は勝負です。例え不意打ちであろうとも、横から掻っ攫われる可能性を考慮していないさやかさんが悪い」

ほむら「畜生に身を落とせば、色々と楽なのは違いありません」

ほむら「そして二つ目。対等になる事」

ほむら「対等になれば、あなたの勝率はぐっと下がります」

ほむら「そもそも対等になったから恨まれない、というのが甘い見通しでしょう。親友の好きな人を好きになるなんて、
    それだけで殺人事件が起こっても可笑しくない要因です」

ほむら「メリットなし。デメリットも方針一に負けず劣らず」

ほむら「はっきり言います。こんなの、ただの自己満足以外の何物でもありません」

仁美「……………」

ほむら「ですが」

ほむら「自分すら満足出来ない選択に、どれほど意味があるんでしょうね?」

仁美「!」

ほむら「……どうやら答えは決まったようですね」

仁美「……ええ」


304 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:38:13.20 uafKQTvZ0 68/381



仁美「今日は、相談に乗ってくれてありがとうございます」

ほむら「礼を言われるほどの事はしていません」

ほむら「それに、本当はもう答えを出していたのではありませんか?」

ほむら「多分アレでしょう? 後押しが欲しかっただけなのでは?」

仁美「暁美さんって、鋭いんですのね」

ほむら「肝心なところでは抜けている、と、よく言われますけどね」

仁美「くすっ。そんな気がしますわ」

仁美「……お陰で覚悟が決まりました」

仁美「ここの支払いはわたくしがしておきますね」

ほむら「あら、ごちになっちゃって良いのですか?」

仁美「ささやかですけど、相談に乗ってくれたお礼ですわ」

ほむら「ふむ。そういう事でしたら、たからないと失礼ですね」

仁美「ええ。しっかりと奢られてくださいな♪」

ほむら「んじゃ、追加オーダーを」

仁美「え?」

ほむら「いえ、奢ってもらえるなら遠慮せずもう二~三品ぐらい頼もうかなーっと」

仁美「そ、そうですか……構いませんけど……」

ほむら「それに」

仁美「? それに?」

ほむら「折角仲良くなれたのに、こんな短時間のお話じゃ物足りないですからね」

ほむら「まだまだお茶会を楽しみましょう?」


……………

………




305 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:40:08.93 uafKQTvZ0 69/381




               ――― 暁美家 ―――



まどか「……………」コソコソ

さやか「……………」コソコソ

ゲルト【……………】コソコソ

シャル「……何やってんのアンタら?」

まどか「はっ!? 見つかっちゃったよ!?」

シャル「玄関から堂々と入ってきて見つかったも何も……とりあえず、いらっしゃい」

さやか「おじゃまんぼー」

さやか「……ん?」

まどか「どうしたの?」

さやか「いや、杏子ちゃんは今居ないのかなって……居て欲しい訳じゃないけど」

シャル「佐倉さんは今、巴さんの家に遊びに行ってるわよ」

シャル「結構付き合い長いみたいだし、積もる話とかあんじゃない? よく知らないけど」

さやか「ふーん」

まどか「……………」

シャル「で、三人はなんでそんなわざとらしくこそこそと家に入ってきた訳?」

ゲルト【いやー、どーせならこそこそした方が雰囲気出るかなーっと思いまして】

シャル「雰囲気?」

ゲルト【ちょっと暁美さんに内緒でやりたい事がありまして】

シャル「え? 何? アイツに悪戯でもするの?」

まどか(シャルちゃん、すごく悪い笑顔を浮かべている)

さやか(ありゃあ参加する気満々だね)

まどか(……身も心もほむらちゃん化してきてる気がする)
さやか(……身も心もほむら化してきてるぞアレ)


306 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:41:51.15 uafKQTvZ0 70/381



ゲルト【それで、その肝心の暁美さんはまだ帰ってきていませんか?】

シャル「うん。なんか志筑さんと遊んでくるって連絡があった」

さやか「へ? 仁美と?」

まどか「な、なんで!?」

シャル「いや、なんでかは知らないけど……街で偶然会ったみたい」

まどか「うぎぎぎぎ……!」

ゲルト【まるで橋姫の能面みたいな顔になってますよ、鹿目さん】

ゲルト【まぁ、暁美さんが居ないのは好都合です】

ゲルト【キッチンに行きましょう】

シャル「キッチンって……もしかして?」

ゲルト【そのもしかして、です】

ゲルト【――――妖精さんに、ちょっとお願いしたいと思いまして】


……………


シャル「そんな訳でキッチンよー」

まどか「妖精さんって、キッチンに居るの?」

シャル「そういう訳じゃないけど、でもキッチンだと他の場所より見かけるわね」

シャル「多分お菓子がしまってあるからじゃないかしら」

まどか「単純な……」

妖精さん「おかしときこえたような?」

まどか「あ、出てきた」

シャル「単純でしょ?」


307 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:45:58.47 uafKQTvZ0 71/381



シャル「……つーかさ、ここまで案内して今更だけど」

シャル「本当に妖精さんにお願いしちゃうの?」

さやか「何? さっきまでノリノリだったじゃん」

シャル「ほむらに悪戯仕掛けるだけならノリノリでやるわよ」

シャル「でもそこに妖精さんを絡めるのは反対したいわ」

シャル「ゲルちゃんや鹿目さんはまだ分からないでしょうけど」

シャル「妖精さんが絡むと色んな事が予測不能で制御不能になっちゃうのよ?」

シャル「と言うか、さやかは分かってる筈よね?」

さやか「いや、あたしは一応止めた」

さやか「でもまどかとげるげるが乗り気でねー……」

さやか「それに、妖精さんじゃないとちょっと無理そうだからさ」

シャル「無理そうって……何をする気なの? 悪戯じゃないの?」

ゲルト【説明するより聞いた方が早いですね】

ゲルト【えっと、妖精さん妖精さん。一つお願いしたいのですが】

妖精さん「もとにんげんさんのおたのみごととあらばー」

ゲルト【えーっと……】

シャル「?」

まどか「ああ、もう話しちゃっていいよ……よく考えたら杏子ちゃんって前例もある訳だし……」

ゲルト【じゃあ、遠慮なく】

ゲルト【えっと、実はですね。鹿目さんが暁美さんに恋をしてしまったそうなのです】

シャル「え? なにそれ? え?」

さやか「よーし、シャルちゃんにはあたしがじっくり説明してあげるからなーこっちこーい」

シャル「え? え?」

まどか(シャルロッテさん、さやかちゃんに連れ去られていっちゃった……)


308 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:48:16.54 uafKQTvZ0 72/381



妖精さん「それはおめでたですなー」

ゲルト【でも暁美さんは鹿目さんの事をそこまで好きか分からなくて】

ゲルト【もしかすると失恋してしまうかも知れないのですよ】

妖精さん「せちがらいのねー?」

ゲルト【世知辛いですね】

ゲルト【ですから、妖精さんのお力で二人を恋仲にする事は出来ないでしょうか?】

妖精さん「あー……」

ゲルト【? 返事が煮え切りませんね?】

妖精さん「ぼくら、こいをしらぬみですので」

ゲルト【え?】

妖精さん「ちしきではぞんじてますが?」

ゲルト(そう言えばこの人達、楽しいと増えるんですよね)

ゲルト(一人でも増殖出来るのなら、恋は必要ない)

ゲルト(だとすると確かに恋愛を理解出来ないかも知れません)

ゲルト(……なんでしょう。凄く嫌な予感がします)

ゲルト【えーっと、出来ないなら無理にとは言わないので】

妖精さん「ですがごあんしん」
妖精さん「さんこーぶんけんここにありますので」

ゲルト【そ、それは――――(妖精さんがどこからともなく本を取り出して……)】

ゲルト(って、それ暁美さんが好みそうな冒険活劇漫画じゃないですかヤダーッ!?)

ゲルト(確かにその手の漫画はボーイ・ミーツ・ガールが基本ですけど!)

ゲルト(ヤバい! この流れは絶対ヤバいです!)


309 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:49:39.39 uafKQTvZ0 73/381



まどか「げ、ゲルトルートさん、これって……」

ゲルト【不味い気がします!】

ゲルト【妖精さんちょっと待っ――――】

妖精さんB「なるほどー」
妖精さんC「これでおむねどきどき?」
妖精さんD「べんきょうになりますなー」

ゲルト【増えたあああああああああああああっ!?】

まどか(あ、これもう駄目っぽい)

まどか(妖精さんの事はよく知らないけど、何と言うか)

まどか(本能的に手遅れな予感がする)

妖精さんA「さくせんたーいむ!」

まどか(ああ、妖精さん四人が円陣を組んじゃった)

まどか(なにかを話しているみたいだけど、まるでテープを早送りしているみたいな動きで……)

まどか(何を話しているのか、全く分からない!)

妖精さんA「にんげんさん、にんげんさん」

まどか「は、はい!?」

妖精さんA「しばしおじかんくだされ」

まどか「じ、時間?」

妖精さんA「ちょっとうちあわせしーの?」
妖精さんB「いいばしょしってますが」
妖精さんC「あぽいんとひつよーですからー」

まどか「え、えーっと……」

まどか(凄く……凄く嫌な予感がする!)

まどか「そ、そこまでしてくれなくても大丈夫かなーって思ったり」

妖精さんA「ごえんりょなさるなー」
妖精さんB「えんりょというなのさいそく?」
妖精さんC「ごーさいんきたー」
妖精さんD「ごーごーごー!」

まどか「いやいやいやいやいや!?」

ゲルト【曖昧な答えは快諾と受け取られるようですね……】


310 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:51:29.84 uafKQTvZ0 74/381



まどか「よ、妖精さん待っ」

妖精さんA「さくせんかいしーっ!」

妖精さん達「おーっ!」

まどか「あああああ……ち、散って行っちゃった……」

ゲルト【これは……どうしましょう?】

まどか「ど、どうしよう……」

まど ゲル「……………】

ゲルト【あ、あまり気にしなくて良いんじゃないでしょうか】

まどか「え?」

ゲルト【ちょっと失敗しちゃった気はしますけど、相手は妖精さんです。きっと素敵な道具を作ってくれます】

ゲルト【それに酷い事にもならない筈です】

ゲルト【だったらちょっとは信じて、良い展開になる事を期待しましょう】

ゲルト【ね?】

まどか「う、うん……そう、だね。今更後悔しても仕方ないよね」

まどか「きっと、大丈夫だよね!」

ゲルト【ええっ!】


311 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:52:00.05 uafKQTvZ0 75/381


























まど ゲル(まぁ、絶対ろくな事にならないんだろうなー……フラグ的に)



312 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:53:48.43 uafKQTvZ0 76/381




                 ――― 翌日 鹿目家リビング ―――



まどか「……昨日は何時とんでもない展開が起きるかと思って、全然眠れなかった」

まどか「うう……太陽がこんなに眩しいのは初めてかも……」

まどか(ママは会社に行って、たっくんは幼稚園。パパは買い物で遠征中)

まどか(今日何かあっても、ちょっとの時間なら家を空けられるけど)

まどか(……何もないと良いなぁ)

まどか「い、いや、大丈夫だよね。だって妖精さんは電波が苦手って、ほむらちゃん言ってたし」

まどか「電波だらけのお外では活動出来ないから、家に居る限り絶対安全」

まどか「それより、昨日は全然手が付けられなかった宿題をやらないと」

――――ひらり

まどか「?」

まどか「テーブルから何か落ちた……これは、封筒?」

まどか「えっと、何々……」

まどか「『しょーたいじょー』」

まどか「……………」

まどか(うわー、私今、すっごい汗かいてる。全身の毛穴から汗吹き出てるー)

まどか(どう考えてもこれは妖精さんからの招待状)

まどか(開けちゃ不味いよね。開けたら色々不味いよね)

まどか(勿論そのままには出来ないから私の部屋に持っていくけど――――)

まどか(あれ? なんか封筒の左端に小さく書いてある。えっと……)

まどか(しんこんりょこうれたー……新婚旅行レター?)

まどか「」ビリビリ

まどか「はっ!? 無意識に封筒を開けちゃった!」

まどか「でも新婚ほやほやラブラブカップル宛てにって書かれたら開けざるを得ないよね! 仕方ないよね!」

まどか「って、私は誰に言い訳してるんだろう……そもそも書かれてないしそんな事」

まどか「まずは落ち着こう……うん」

まどか「いくら妖精さん絡みとは言え、手紙をちょっと開けただけでどうこうなる筈が」

――――ぴかーっ

まどか「ですよねー」


……………

………




313 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:54:59.66 uafKQTvZ0 77/381



――――めさん

――――なめさん

まどか「う、うーん……」

――――鹿目さん、起きてください

まどか「うう……今日は寝不足なの……」

まどか「だからあと五分……」

――――そうですか……

――――じゃあ無理やり起こしちゃいましょう。えいっ

まどか「はむ(口に何か入れられた……)」

まどか「……………」

まどか「カッラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイ!?」ゴバアアアアアア

まどか「って、私口から火を噴いて、辛っ!? 辛ぁああああぁあああぁぁあぁあぁ!!!」

ほむら「これは妖精さんアイテム『激辛スティック』」

ほむら「一口しゃぶればあら不思議。火を噴くほどの辛さを体感出来ます♪」

まどか「だからって本当に火を吐く必要はないんじゃないかな!? ひぃぃぃぃぃぃ!」ゴオオオオオ

ほむら「一応水を飲めばスッキリするそうですが」

ほむら「生憎今日は手持ちがないので、我慢してください♪」

まどか「ひぃぃぃぃぃ……!!」


~しばらくお待ちください~


まどか「や、やっと収まった……げふ」ボッ

ほむら「みたいですねー」

まどか「もう! 酷いよほむらちゃん!」

ほむら「起きない鹿目さんが悪いのです」

まどか「それはそうかもだけど、でももっと方法があるでしょ!?」

まどか「目覚めのキッスとか!」

ほむら「いや、それ目を覚ます効果ないと思うのですが」

まどか「少なくとも私は一発で起きられる自信が」

まどか「って、ほむらちゃああああああああああああああああああああああん!?」

ほむら「え? 今更? と言うか何故そんな大仰に驚くのですか?」


314 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:56:16.76 uafKQTvZ0 78/381



まどか「だ、だって、だって……」

まどか「……あれ?」

まどか「そう言えば、なんで私、ほむらちゃんと一緒に居るんだろう?」

ほむら「鹿目さんは開けませんでしたか? 妖精さんがくれた手紙」

まどか「あ、うん。開けた……」

ほむら「私も開けました。なんか面白そうだったので、迷わず」

まどか「流石ほむらちゃん」

ほむら「そしたらこんな場所ですよ」

まどか「こんな場所って……」

まどか「……え、何此処」

まどか「なんか、金属の壁に囲まれた小さな部屋? みたいなんだけど……」

ほむら「何処かの研究施設か、船の一室って感じですね」

ほむら「具体的に何処か、というのは私にも分かりませんが」

まどか「……これはどういう事なの? 妖精さんはどうしたかったの?」

ほむら「うーん、正直私にも分かりかねます」

ほむら「一応手紙が手元に残っていたので読んでみましたが」

ほむら「なんか新婚旅行でドキドキしてね、と書いてあるだけで意味が分かりませんでした」

ほむら「妖精さんの文章は簡単過ぎて却って難しいという事がよくあるのですか」

ほむら「ここまで内容が分からない文面というのはちょっと珍しいですね」

まどか(私には分かるけどね……まぁ、唆した張本人Bだし)

まどか(でも、ほむらちゃんには分からなかったんだ……)

まどか(それって、ほむらちゃんが私の事なんてなんとも思ってない証拠……)

まどか(ううん、諦めちゃ駄目!)

まどか(今は私と二人きりでドキドキしてくれなくても……)

まどか(何時か……!)


315 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:58:12.56 uafKQTvZ0 79/381



ほむら「しかしこの部屋は殺風景ですねぇ」

まどか「え?」

ほむら「いや、周りを見てくださいよ」

ほむら「SF映画とかで見たような、液体で満ちているカプセル。それも人が入れないほど小さな物が一つあるだけ」

ほむら「それ以外は通信機器や通風孔すら見当たらないじゃないですか」

ほむら「これじゃあ部屋というより箱ですよ」

まどか「確かに……牢屋とかなのかな?」

ほむら「牢屋なら監視カメラの類が必要でしょう。無論隠す意味なんかありませんので、機能重視の大型がある筈です。
    見せしめという意味でも、カメラはその存在感を主張している必要がありますし」

まどか「じゃあどういう事なの? なんでこんなに殺風景なの?」

ほむら「可能性としては、必要じゃないから付けていない、でしょうか」

まどか「必要じゃないから?」

ほむら「ええ」

まどか「……あの、通風孔とか電話とかは必要だと思うのだけど……」

まどか「それに、そうだとしたらあの小さなカプセルは必要な物、って事になるよ?」

まどか「当事者にしか分からない事情があるのかも知れないけど、でも……」

ほむら「まぁ、私の仮説が正しいかどうかは部屋を出てみれば分かるでしょう」

ほむら「この扉は自動開閉式のようですから、ほら」シュン

まどか「あ、ほむらちゃんが近付いた途端扉が開いた」

まどか「……ねぇ、これだけ凄い技術が使われているのだから、妖精さんが作った施設なんじゃ……」

ほむら「それはあり得ません」

まどか「どうして?」

ほむら「だってこんな武骨で、面白さが欠けている部屋を彼等が作るとは思えませんから」

まどか「……………」


316 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 08:59:05.77 uafKQTvZ0 80/381



ほむら「まぁ、妖精さんが関わっている以上平凡な部屋ではないと思いますが」

ほむら「いずれにせよ、この部屋でこれ以上の情報収集は出来そうにありません」

ほむら「そろそろ外の探索に移りましょう」

まどか「だ、大丈夫かな……外に出た途端、撃ち殺されたりしないかな……」

ほむら「妖精さんが関わっている以上その心配はいりません」

ほむら「仮にそうでなくとも、待っていても情報は得られませんよ」

ほむら「虎穴に入らずんば虎児を得ず、という奴です」

まどか「……そう、だね」

ほむら「同意も得られましたし、早速出るとしましょう」スッ





「きゅぶしっ!?」ドゲシッ





ほむら「ん? 何か蹴飛ばしましたね」

ほむら「……見覚えのある白い獣がちょっと遠くでひっくり返ってる……」

まどか「あ、あれって……」

まどか「キュゥべえ!?」


317 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:00:48.90 uafKQTvZ0 81/381



QB「な、なんだ、一体何が……」

QB「って、暁美ほむらああああああああああ!?」

ほむら「あら、私の事をご存じなので?」

QB「ご存じも何も、鹿目まどかが魔女になった時会ったじゃないか!」

ほむら「ああ、あなたあの時の個体なのですね」

ほむら「あなた方が複数人で活動している事は(妖精さんアイテムの辞書で)知っていたので」

ほむら「初対面の可能性も考慮していたのですけど」

QB(以下疾患QB)「ぐぬぬぬぬぬ……!」

疾患QB「い、いや、今はそんな事より……!」

疾患QB「どうして君が此処に!?」

ほむら「うーん、とても一言では言い表せないのですが……」

ほむら「迷い込んでしまいまして」

まどか(言い表せてるじゃん)

疾患QB「見え透いた嘘を吐くな!」

疾患QB「此処は月の裏側に配備してある僕達の母艦なんだ!」

疾患QB「僕らだって特殊な事情が無ければ無許可の立ち入りは出来ない!」

疾患QB「ましてや地球人が、うっかり迷い込める訳ないだろ!」

まどか「えっ!? 此処キュゥべえ達の母艦なの!?」

疾患QB「え?」

ほむら「ほほう、それはそれは――――」

ほむら「良い事を聞きました」ニヤァ

まどか「うわぁ、ほむらちゃんすっごい邪悪な笑みを浮かべてるよ」

疾患QB「……もしかして、本当にうっかり迷い込んだの?」

まどか「う、うん……」

疾患QB「もしかして僕、失言しちゃった?」

ほむら「ええ、盛大に」

疾患QB「……………」


318 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:03:47.76 uafKQTvZ0 82/381





疾患QB「き、緊急警報発令ィ――――――――!!!!」




【警報確認】デロデロ
【個体識別】デロデロ
【未確認個体2】デロデロ
【情報無し】デロデロ


まどか「ひっ!? なんか白いゲルトルートさんみたいな生き物が来た……!?」

ほむら「アレがこの船の整備を行っている個体なんじゃないですかね?」

ほむら「多数の触手は道具を扱うのに好都合でしょうし、軟体の身体は狭い所にも入り込めます」

ほむら「キュゥべえがインキュベーター(孵卵器)ですし、名付けるなら”メカニック(整備工)”ですかね?」

ほむら(しかし眼鏡に表示されてる意訳、随分と片言ですねぇ)

ほむら(インキュベーターより知能は低そうです)

まどか「ちょ、今はそんな事言ってる場合じゃないよね!?」

まどか「早く脱出しないと!」


【種族判定】デロデロ
【地球人類1】デロデロ
【魔女1】デロデロ
【入船許可なし】デロデロ
【排除】デロデロ
【セキュリティ起動】デロデロ
【キャンセラー起動】デロデロ


ほむら(セキュリティ? それにキャンセラー……)

ほむら「! これはいけません!」

ほむら「鹿目さん、急いで逃げますよ!」

ほむら「このまま此処に留まるのは、不味いです!」

まどか「ど、どういう……」

まどか「っ!?」

ほむら「来ましたか。仕事が早くて嫌になりますね」

ほむら(メカニック達の方から小さな、ピンポン玉のような機械が飛んできましたね……)

ほむら(中央にあるレンズは……まぁ、用途は言わずもがな、ですね)

ほむら(さて、毎日妖精さん密度F状態の私がこんな所で死ぬ訳ありませんが)

ほむら(しかし逃げないと痛い目に遭いそうです。それは出来れば勘弁)

ほむら(鹿目さんを連れてさっさと逃げるとしましょう)


319 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:04:42.22 uafKQTvZ0 83/381



ほむら「鹿目さ――――」

まどか「ほむらちゃん、下がって!」

まどか「ここは私が片を付けるよ!」

ほむら「ちょ、鹿目さん? あの、何をして……」

まどか(ふふふ。これぞ”ほむらちゃんをドキドキさせちゃうよ作戦”!)

まどか(何時もほむらちゃんがほいほいと敵を倒しちゃうけど……)

まどか(今回は私がびしっとキュゥべえ達を倒し、ほむらちゃんを守る!)

まどか(そしたらほむらちゃん、きっと私にドキドキしてくれる筈! だって私はそうだったから!)

まどか(てな訳で!)

まどか「なんだか分かんないけど喰らえ! ハイパーまどかビーム!!!」












――――ぷすんっ


まどか「あれ?」



320 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:06:34.33 uafKQTvZ0 84/381



まどか「は、ハイパーまどかビーム!」プスン

まどか「ビーム百連発!」プスプス

まどか「マドーカマドマド!」プッスン

まどか「お願い出てくださいなんでもしますから!」プスー

まどか「……………」

まどか「なんで魔法出てこないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

ほむら「ああもう、何馬鹿な事してるんですか!」

ほむら「逃げますよ!」

まどか「あ――――(ほむらちゃんが手を握ってくれて……)」

球体【ピ――――】

まどか「にやにやしたいけど球体がレーザー撃ってきたああああああああああ!?」

球体B【ピ――――】

球体C【ピ――――】

まどか「ひぃっ!? いっぱい撃ってきてるぅぅぅぅぅ!?」

まどか「ど、どうしよう、どうしようほむらちゃ」

ほむら「こひゅー……こひゅー……!」

まどか「ほむらちゃんなんで既に死にかけてるのおおおおおおおおおお!?」

ほむら「い、いや、なんか最近、ますます体力落ちてた、みたいで……!」

ほむら「わ、割と心臓が……ヤバいです、い、痛い……!」

まどか「こんな時ぐらいは病弱設定捨て去ってよ!?」

球体S【ピ――――】

まどか「あち!? あちち! 髪が燃える!?」

アフロマドカー「うわあああああああああああああああああああんっ!?」


……………

………




321 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:08:03.73 uafKQTvZ0 85/381




           ――― インキュベーター母艦・??? ―――



まどか「ぜー、ぜー、ぜー……」

ほむら「いやぁ、危なかったですねぇ……」

ほむら「私のポケットの中に妖精さんアイテム『幕がふぃーん』がなければ」

ほむら「逃げ切るのは困難だったでしょう」

まどか「名前からどんな物か全く想像できないよね、そのアイテム」

まどか「使った瞬間を見ていた私にも何が起きたのかサッパリだったけど」

ほむら「知らない方が良い事もあるのです。『幕がふぃーん』に関しては特に」

まどか「そ、そう……」

ほむら「それより、逃げ込んだこの部屋は安全圏だと良いんですけどねぇ」

まどか「小さい部屋だよね。色々な物が置かれているし……倉庫、かな」

まどか「ちょっと狭いね」

まどか(お陰でほむらちゃんと合法的に密着出来る……きゃーっ!///)

ほむら「全くです。空調が無いせいで蒸し暑いですし」

ほむら「早く出たいですね」

まどか「シューン」

ほむら「?」


322 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:09:42.72 uafKQTvZ0 86/381



まどか「そ、それより、これからどうするの?」

まどか「ここがキュゥべえの宇宙船なら、外は宇宙空間……」

まどか「私が魔法を使えたら色々やりようがあったかも知れないけど」

まどか「このままだと外にすら出られないよ?」

ほむら「でしたら、この事態の張本人達に聞くとしましょう」

まどか「え、でも……」

ほむら「流石に大声で呼んだりはしません」

ほむら「こんな事もあろうかと……ほいっ」

まどか「あ、キャンディだ」

ほむら「何時もポケットに入れておいてあるんです」

ほむら「で、扇ぐ事でこの香りを辺りに撒いて……」パタパタ



妖精さん「あまーいあまーいかおりがしますなー」ヒョコッ



まどか「ひゃっ!?(物陰から出てきた……)」

ほむら「ね? 簡単に誘き出せたでしょう?」

まどか「あ、ははは……」

ほむら「さーて」ヒョイ

妖精さん「あふん。つまみあげられー」
妖精さん「いじめます? いじめられます?」

ほむら「質問に答えてもらえなければ、それもやむなしですよー」

妖精さん「あひー」

まどか(いじめられると聞かされて喜んでいるように見える……)


323 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:12:32.72 uafKQTvZ0 87/381



ほむら「色々聞きたい事はありますが、とりあえず最初に聞きたいのは」

ほむら「妖精さん、電波は平気なのですか?」

ほむら「お菓子で呼んでみた私が言うのも難ですが」

ほむら「平凡な科学力で作られているであろうこの宇宙船の事。たくさん電波があると思うのですが」

まどか「そう言えば……」

妖精さん「ここのでんぱ、くーきよみますからー」
妖精さん「はなせばわかるやつでしてー」

ほむら「ほほう、それはそれは」

まどか「電波って話出来るものなの?」

ほむら「え?」

妖精さん「え?」

まどか「え?」

ほむら「……あ、ああ。そうですね、話せるんですよ」

まどか(何で知ってる事前提なの?)

妖精さん「こせいゆたかですからなー」
妖精さん「にんげんさんせいのでんぱは、くうきよまぬのでにがてー」

まどか(電波の個性って何? と言うか空気読む?)

ほむら「まぁ、ここの電波は妖精さんに悪影響を与えない訳ですね」

ほむら「それで? どうして私と鹿目さんをこんな場所に連れてきたので?」

まどか「!?」

まどか(ま、不味い! このままだと私がほむらちゃんの事好きなのがバレちゃう!?)

まどか(それだけならまだしも、この騒動が私の所為だって分かったら)

まどか(き、嫌われちゃう……!)

まどか(でも、何か言う事なんて――――)

妖精さん「にんげんさんがらぶらぶしたいといいましてなー」

ほむら「ラブラブ……?」

妖精さん「それでおむねどきどきしてーとなりまして」
妖精さん「どきどきできるあとらくしょんにおまねきしましたです?」

ほむら「あなた達の手に掛かれば大抵の物はアトラクションでしょう」

ほむら「しかしラブラブですか……」

まどか(ああ……も、もう駄目……!)


324 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:14:03.79 uafKQTvZ0 88/381




ほむら「さやかさんには困ったものです」



まどか「……え?」

ほむら「上条さんと恋仲になりたいのは、まぁ、よく聞かされてますので良いとして」

ほむら「しかし妖精さんパワーを頼るとは……恋は人を狂わせるとはよく言ったものです」

まどか「え……い、いや、ほむらちゃん……?」

まどか「あの、巻き込まれているのは私達だよね?」

まどか「なんでさやかちゃんが元凶って事に……?」

ほむら「だって妖精さんですよ?」

ほむら「昨日の事なんてどーせ覚えてないんですから、誰が元凶でも可笑しくないですよ」

まどか「えええええええええ……」

妖精さん「ぼく、わすれてます?」

ほむら「忘れてるでしょー。昨日誰から頼まれたのかなんて」

ほむら「現に今、昨日誰に頼まれたか思い出せますか?」

妖精さん「はて? だれでしたっけ?」

ほむら「やっぱり忘れてるじゃないですか」

妖精さん「そうかもー」

ほむら「ほらね?」

まどか「そ、そ、そ、そ、だね」

まどか(ほむらちゃんの妖精さんに対する知識のお陰で逆に助かったーっ!)

ほむら「まぁ、これでも妖精さんにしては覚えている方ですよ」

ほむら「大抵の場合、一日どころか一時間もすれば自分達が何故こんな事をしているのか忘れちゃうんですから」

まどか「……その記憶力でよく高度な技術力が維持出来るね……」

ほむら「流石は妖精さん、としか言えませんね」


325 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:15:46.56 uafKQTvZ0 89/381



ほむら「それでは質問その三」

ほむら「鹿目さんの魔法を封じたのはあなた達ですか?」

妖精さん「そのとーりで」

まどか「!?」

ほむら「あら、それは残念……推測が確信に変わると思ったのに……」

まどか「ど、どういう事? なんで妖精さん、私の力を封じて――――」

妖精さん「らぶらぶのためです?」

まどか「ら、ラブラブのため?」

妖精さん「ごちゅうもん、にんげんさんらぶらぶなりたいとのこと」
妖精さん「さんこーぶんけんによりますとー」
妖精さん「こんなんのりこえると、にんげんさんらぶらぶになります?」
妖精さん「ゆえにこんなんつくりましたです」

まどか(ああ……そう言えば参考文献って、ほむらちゃんの漫画だっけ)

まどか(そうだね。漫画とかだと、一緒に困難を乗り越えた男女は恋仲になるよね。お約束だよね)

まどか(――――私が強いままだと困難が生じないので弱くした、と)

まどか(……妖精さんパワーって本当に無敵だなぁ) ← 達観

ほむら「参考文献ってあなた達また私の漫画を読みましたか……あれはフィクションだと何度、
    言っても無駄ですよね……」


326 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:20:49.08 uafKQTvZ0 90/381



ほむら「それでは最後の、そして本命の質問を」

ほむら「この場所から脱出するには、どうすれば良いのでしょうか?」

妖精さん「ごーるめざすのがよろしい?」

ほむら「ゴールですか?」

妖精さん「だしゅつてい、よういしましたです」
妖精さん「いちばんしたの、たくさんひこーきのあるへやにせっちしてます」
妖精さん「じどーそーじゅーゆえ、のりこめばちきゅうもどれます」

ほむら「ふむ、一番下の、飛行機がたくさんある部屋……」

ほむら「恐らく艦載機の格納庫ですね」

まどか「なら、早くその格納庫に行こう」

まどか「キュゥべえ達に此処が見つかる前に、行動した方が良いよね」

ほむら「いえ、そういう訳にはいきません」

まどか「え?」

ほむら「いくら妖精さんアイテムが”分かりやすい”エネルギーを発していなくとも」

ほむら「倉庫にしまった覚えのない物体が置かれていたなら、インキュベーター達も気付くでしょう」

ほむら「まぁ、彼らの目にはただのガラクタにしか見えないでしょうが……」

ほむら「全くの未知が唐突に現れたなら」

ほむら「少なくとも私なら念入りに調査を行います」

まどか「つまり、倉庫にはたくさんのキュゥべえとさっきのゲルトルートさんもどきが居るって事?」

ほむら「十中八九そうでしょう」

ほむら「鹿目さんの魔法が使えれば強行突破も可能だったでしょうが」

ほむら「使えない以上、ちょっとした小細工が必要ですね」

まどか「小細工?」

ほむら「簡単な話です」





ほむら「訳の分からないガラクタなんて、どうでも良くなるような事故を起こせば良いんですよ」




……………

………




327 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:22:45.36 uafKQTvZ0 91/381




          ――― インキュベーター母艦・艦載機格納庫 ―――



疾患QB「整備班から連絡を受けて来てみたけど、やれやれ」

疾患QB「何時の間にこんなものを置いていたんだか……」

疾患QB「僕達が設置した覚えのない、全く未知の物体……」

疾患QB「ほぼ確実に、妖精が関与した物だろう」

疾患QB「……精神疾患の検査を受けたらさっさと地上に帰るつもりだったのに」

疾患QB「なんでこんな時に限って暁美ほむらが攻めてくるんだ……」

メカニックA【異物確認】
メカニックB【排除行動実行】

疾患QB「ちょ、き、気を付けてくれ!」

疾患QB「妖精が用意したものだとすると、何があるか分からない」

疾患QB「慎重に取り扱うんだ……!」

メカニックA【指示受信】
メカニックB【指示理由不明】
メカニックC【情報の開示を要求】

疾患QB「情報の開示って、僕が本星に送った妖精に関するデータがあるじゃないか」

疾患QB「それで慎重に取り扱う理由は十分だろ」

メカニックA【指定データ確認】
メカニックB【対象異物を妖精関連と判断する要因不明】
メカニックC【情報の開示を要求】

疾患QB「ああもう! 僕は妖精と直接対峙した事があるんだから、どれが妖精関係かなんとなく分かるんだよ!」

疾患QB「良いから僕の指示に従って!」

メカニックA【強制指示受信】
メカニックB【ランク2。同位ランクよりの指示】
メカニックC【強制指示無効】

疾患QB「うがああああああっ! このマニュアル世代が! だからこいつ等嫌いなんだよ!」

疾患QB「早いとここの異物を取り除いて暁美ほむらの対処をしなきゃなんないのに――――】


328 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:28:35.94 uafKQTvZ0 92/381



【緊急通達】

疾患QB「あん? 中距離テレパシー……操舵室の個体からか」

疾患QB「どうしたんだい? 忙しいから手短に頼むよ」

【地球人が艦の機関室に侵入】
【機関部にダメージを確認】

疾患QB「何!?」

疾患QB「機関室に侵入しただと……確かにこの船に侵入出来るのだから、それも出来て当然だろうけど……」

疾患QB「くっ……おのれ暁美ほむら……!」

疾患QB(だけど、君の考えは読めているよ……)

疾患QB(彼女達の狙いはきっと、この謎の物体だ)

疾患QB(これにどんな役割があるのかは分からないけど、恐らく彼女達はこれを使ってこの船から脱出するのだろう)

疾患QB(つまり、彼女達はこの物体の元にどうしても辿り着きたい。辿り着かねばならない)

疾患QB(そこでこの場に待機しているであろう僕達の目を逸らしておきたい訳だ)

疾患QB(……ふふ。ふふふふふふ)

疾患QB(中学生の少女にしては頭が回る。それに思い切りもいい)

疾患QB(仮に、過去に契約した魔法少女達が僕達の母艦に潜入したとして)

疾患QB(このような行動に出られる者は、殆ど居ないだろう)

疾患QB(だけど、それだけだ)

疾患QB(この程度で僕達を出し抜けると思ったのかい?)

疾患QB(この宇宙空間において、僕達だけでなく君達にとってもこの宇宙船は命綱だ)

疾患QB(何処までやって平気かは分からなくとも、船が轟沈するような損傷を与える訳にはいかない)

疾患QB(必然的に、彼女は手加減して船に損傷を与えなければならない)

疾患QB(人類程度の科学力なら、どんなに小さくとも機関部の損傷には人員を派遣しないといけないだろうけど)

疾患QB(僕達の船には”自動修復”機能がある!)

疾患QB(わざわざ船の修理に向かうなんて、そんな非効率的な行為は必要ないんだよ!)

疾患QB(逆に引っ掛かったふりをして、戦力の大半をこの場に集結させてやる!)

疾患QB(策を弄したのが仇となったね――――暁美ほむら!)

疾患QB「それで、船の損傷はどの程度のものなんだい?」

疾患QB「航行に支障がないクラス1かい? それとも自律回復が可能なクラス2かい?」

疾患QB「流石に航行機能に影響があるクラス3には達してないと思うのだけど」

【クラス5】

疾患QB「え?」


329 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:31:31.06 uafKQTvZ0 93/381




【300秒以内に本艦の機能停止が確実とされる水準。本艦に存在する全個体は速やかに離船せよ】


疾患QB「うぇええええええええええええええええええええ!?」



330 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:36:03.56 uafKQTvZ0 94/381





ちゅどーんばちばちばちばちどーんどーんどーんぼかーんっ!




まどか「……ほむらちゃん。エンジンルームが火の海なんだけど……」

ほむら「あー……ちょっとやり過ぎたかも……」

まどか「そう……ちょっとなんだね」

ほむら「元々沈めるつもりでしたからね」

ほむら「これほどの科学力のある船です。ナノマシンとかを使った自己修復機能ぐらいはあるでしょう」

ほむら「恐らくエンジンが火を噴く程度の損傷は、わざわざ彼等が来ずとも修復してしまうものと思われます」

ほむら「それに妖精さんの用意してくれた脱出艇が見つかっていたとすれば」

ほむら「その用途を理解したかどうかは別にしても、私達がその道具と接触するために」

ほむら「何らかの誘導をする事は向こうも想定する筈です」

ほむら「なら、裏の裏をかくまでの事」

ほむら「どうせあちらは、宇宙船を破壊されるとは思っていない。何故なら人間は宇宙では生きられないから」

ほむら「だから何処かで躊躇うと思い込んでいる」

ほむら「ですが――――残念でしたねぇ」

ほむら「妖精さんの加護を受けている私の辞書に手加減なんて文字はないのですよ! ふははははははははは!」

まどか(高笑いするほむらちゃんカッコいい)

ほむら「さて、エンジンルームは破壊しましたし、今頃慌てふためきながら脱出を始めている事でしょう」

ほむら「私達もさっさと脱出しますよ」

ほむら「轟沈させるつもりだったとはいえ、ちょっとやり過ぎましたからね。あまり時間的猶予は無さそうです」

まどか「うん! それじゃあ格納庫は……」

ほむら「どっちですかね?」

まどか「……………」

まどか「ん?」


331 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:37:31.43 uafKQTvZ0 95/381



ほむら「いやぁ、エンジンルームを見つけたのでそのまま破壊しちゃいましたけど」

ほむら「よくよく考えたら先に格納庫を見つけないといけませんでしたね」

ほむら「エンジンルームの真下にあるのは妖精さんから聞きましたけど、道程は分からないまま」

ほむら「うっかり♪」

まどか「ほおおおおおおおおおおむぅらちゃああああああああああああああああああんっ!?」

ほむら「うーん、これからどうしましょうか」

まどか「なんで今から考えるの!? こうなるって分かっていながらどうして行き当たりばったりなの!?」

――――ビィーッ!
――――ビィーッ!
――――ビィーッ!

ほむら「あ、警報ですね。いよいよ危ない感じ」

まどか「急いで! 急いで妙案閃いて!」

妖精さん「けいほうなってるとどきどきがかそくしますなー」
妖精さん「ごようぼうどーり?」

まどか「私こういうドキドキは産まれてこの方一度も求めた事無いんだけど!?」

ほむら「まぁ、そう慌てなくても、適当に逃げていればその内辿り着けると思いますよ?」

まどか「で、でも!?」

ほむら「それに足元にあるという事は、爆発によるフラグが立ってますので――――」


――――べこんっ


ほむら「こんな風に床が抜けて直通にぃぃぃぃぃぃぃぃ――――……」ヒューッ

まどか「ほほほほほほほほほむらちゃあああああんっ!?」


ひゅ――――……


どてんっ!


ほむら「あいたたた……」

ほむら「ほら、鹿目さん。見事に間に合いまし」


332 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:38:50.71 uafKQTvZ0 96/381





まどか「ほむらちゃあああああああああああああああああああああああああああ」






ほむら「うわっ」ヒョイ

まどか「あああああああああああああああああべしょ!?」ビタンッ

ほむら(思わず避けたら、鹿目さん、頭から落ちましたね……痛そう)

まどか「ほむらちゃん大丈夫!?」ガバッ

ほむら「ええ、私は大丈夫です。私は」

ほむら「それより……」

ほむら(ふむ、格納庫にも関わらずガラガラ……乗組員は既に脱出した後ですか)

ほむら(船が爆発寸前ですからね。慌てて逃げた事でしょう)

ほむら(だから……)

ほむら「部屋の中央に堂々と置かれている物。あれが妖精さんの用意してくれた脱出艇ですね」

まどか「行ってみよう!」

ほむら「ええ……っ!」

ほむら「こ、これは!?」

まどか「これって……」

ほむら「……成程。確かにこれなら、地球に帰れます!」

ほむら「さ、鹿目さん! 急いで乗り込んでください!」

ほむら「間もなく船が崩壊します!」

まどか「……………いや、あの、ほむらちゃん」

まどか「一生懸命盛り上がっているところ申し訳ないんだけど……」

まどか「私にはそのアイテムがただのお布団にしか見えないんだけど?」


333 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:40:36.49 uafKQTvZ0 97/381



ほむら「いいえ鹿目さん。これは妖精さんアイテム『UFO』……」

ほむら「『うっとりするほど・ふかふかな・おふとん』です!」

まどか「つまりお布団じゃんっ!?」

ほむら「でもこのお布団凄いんですよ?」

ほむら「光速の90%の速度で飛べますし、ステルス迷彩機能もありますし」

ほむら「シールドも展開出来るので、宇宙空間でも安心して眠れますよ」

まどか「なんでお布団にはどう考えても不必要な機能を追加したの!?」

ほむら「だってUFOですよ? シールド展開とか亜光速飛行が出来なかったらそんなのUFOじゃありませんよ」

まどか「その理屈は根本的なところで色々と可笑しいよ!?」

ほむら「ほら、文句を言うより早く潜り込みましょう」

ほむら「布団に入れば自動的に動き出して、思い描いた場所に向ってくれますよ」

まどか「ええー……」

まどか「……ところでほむらちゃん」

ほむら「はい?」

まどか「お布団、一つしかないように見えるんだけど」

ほむら「一つしかないようですからね」

まどか「……………」

まどか「で?」

ほむら「え?」

まどか「どうやって二人で乗り込むの?」

ほむら「どうやってと言われましても……」

ほむら「お布団ですし、一緒に寝るしかないと思うのですが?」


334 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:41:07.81 uafKQTvZ0 98/381





















                 \ウェヒーッ!/



335 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:43:01.53 uafKQTvZ0 99/381



……………

………





――――ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!



ほむら「おおっ。インキュベーターの母艦、爆発四散しましたねー」

ほむら「これで多少なりと我々にとって状況が有利になれば良いのですが」

ほむら「銀河規模の勢力を誇る相手ですからねぇ。船を一隻落としても打撃にはならないでしょう」

ほむら「ま、こっちは胸がすく想いですけどね」

ほむら「……時に」

まどか「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

ほむら「鹿目さんは何故息を荒くしながら私の方をじっと見ているのですか?」

まどか「だ、だ、だって、一緒に寝ているんだよ私達!」

まどか「どう考えても間違いが起こるフラグだよ! 起こらないなんてそんなの絶対可笑しいよ!」

ほむら「いや、友達と一緒に寝るのはそんなに可笑しくないと思うのですが……」

ほむら「ともあれ、今回の騒動もこれで一段落ですね」

ほむら「亜光速飛行が可能なので月-地球間なんてあっという間ですけど」

ほむら「綺麗な星空でも眺めながら、このままのんびりと家に帰るとしましょう」

まどか「じ、じっくり!?」

ほむら「のんびりです」

ほむら「一体どんな聞き間違いを――――」








         【暁美ほむらあああああああああああああああああああああ!!】




336 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:45:30.12 uafKQTvZ0 100/381



ほむら「ん?」

まどか「こ、この声――――キュゥべえ!?」

ほむら「おっと後ろを振り向けば、如何にもSFチックな戦闘機? が私達を追い駆けてきてますね」

疾患QB【ふ、ふははははははははははははっ!】

疾患QB【こんな事もあろうかと脳波コントロールの出来る戦闘機も搭載していたんだよ!】

疾患QB【どういう原理でその布団が飛んでいるのかは分からないけど……】

疾患QB【この戦闘機の高出力レーザーを一体何発耐えられるんだろうねぇ!?】

疾患QB【布団如きで地球に帰ろうとした事を後悔するんだな!】

疾患QB【本星からの部隊を待つまでもない!】

疾患QB【お前は僕の手で始末してやるよおおおおおおおおおおおおっ!!】

まどか「ほ、ほむらちゃん! どうしよう!?」

ほむら「うーん。シールドがあるから別にどうって事はないですけど」

ほむら「ガンガン壁を叩かれると五月蝿くて眠れませんからねぇ」

ほむら「枕でも投げて反撃としましょう」

まどか「いや、枕投げじゃないんだから……」

ほむら「まぁまぁ、投げてみれば分かります」

ほむら「そーい」

疾患QB【ふん! 確かにこの高速戦闘において枕程度の質量も十分凶器になる!】

疾患QB【だけどこの程度の質量でやられるほど僕達の戦闘機は軟弱じゃ】

【ワリィゴハイネェガアアアアアアアアア!!】

疾患QB【え゛】

――――ばくんちょっ


337 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:46:49.63 uafKQTvZ0 101/381



ほむら「迎撃機能が枕に搭載してありまして、邪魔者はああやって食べてもらえるんです」

まどか「怖っ」

ほむら「ちなみに邪魔者の排除が終わるとこうやって戻ってきて」

ほむら「普通に枕として使用可能な便利ツールです」

まどか「便利というか枕にそれ以外の用途を求める事が間違いだと思う」

まどか「ちなみに食べられたキュゥべえは?」

ほむら「地球上の何処かにポイッと排出されているかと」

まどか「優しいのか優しくないのか……」

ほむら「妖精さんのアイテムは総じて優しいものです」

まどか「その意見には賛同しかねるよ、流石に」

ほむら「でも、まぁ、これで邪魔者はいよいよ居なくなりました」

ほむら「このままのんびりと、満天の星空を眺めながら地球に戻るとしましょう」

まどか「うん……」

まどか「……………」

まどか「……………」

まどか「……………」

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「はい、なんですか?」


338 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:47:20.00 uafKQTvZ0 102/381




まどか「私ね、ほむらちゃんが好きなの」



339 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:51:09.43 uafKQTvZ0 103/381



ほむら「……え?」

まどか「ごめんね。急にこんな事を言って」

まどか「……妖精さんに恋を叶えてほしいって言ったの、私なの」

まどか「ほむらちゃんと恋人になりたいって、そうお願いしたの」

まどか「だから、この状況はある意味私が願った通りなんだ」

ほむら「……………」

まどか「なんで今それを言ったんだ、って言いたそうだね」

まどか「本当は私も、もっとロマンチックな状況で告白したかった。出来たらほむらちゃんに告白してもらいたかった」

まどか「でも、このまま地球に帰ったら」

まどか「宇宙空間って言う、誰にも邪魔されない、告白するのに一番良い状況で告白出来なかったら」

まどか「多分私は、この後もずっと言い訳をして、告白を先延ばしにしちゃうと思ったから」

まどか「今言わないと、きっと永遠に言えないと思ったから」

まどか「それで、ほむらちゃんは」

まどか「自分から行動しないような人は、好きになってくれないと思ったから」

まどか「……ごめんね」

ほむら「……そう何度も謝らないでください」

ほむら「決意なんて、どう取り繕ってもする側の都合でされるものです」

ほむら「あなたがどれだけ自分勝手な理由で決意しようと、それはきっと貴くて、勇気ある事の筈」

ほむら「あなたが謝る必要なんてありません」

まどか「ほむらちゃん……」


340 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:52:30.57 uafKQTvZ0 104/381



ほむら「……以前言いましたが、私、これでも結構モテまして」

ほむら「男子のみならず、女子からも告白された事があります」

ほむら「実を言えば、それらの告白を拒絶した事はありません」

ほむら「何故なら私は彼女達の事をよく知らない」

ほむら「私の容姿やふとした事で惚れてきた、私が恋という気持ちを抱ける相手なのかも知らない」

ほむら「ぶつけてきた想いを拒絶して良いのか分からない方々だったからです」

ほむら「だから恋人になるとは言いませんでしたが、まずはお友達からという事で」

ほむら「一緒に行動するようにしてきました」

ほむら「まぁ、皆さん私が体験している日々の大冒険に着いてこれず次々とリタイアしていきましたが……」

ほむら「その点から言えば、鹿目さんは既に私の友達であり」

ほむら「私の日々の大冒険を知った上で告白してきている」

ほむら「なら、私はあなたの事をどう見ているか答える段階に来ているのでしょう」

まどか「じ、じゃあ――――」




ほむら「私には、鹿目さんの想いに応える事は出来ません」




341 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:55:09.92 uafKQTvZ0 105/381



まどか「――――ぁ……」

ほむら「ハッキリ言わせてもらいます。私は鹿目さんを”愛していない”」

ほむら「友達だとは思っています。正直、さやかさんやシャルロッテさんよりも好きかも知れません」

ほむら「でもそれは恋ではないと思うのです」

ほむら「……世の中には、嫌いじゃないなら試しに付き合ってみるのも手だという意見もありますが」

ほむら「私は、私の事を本気で愛してくれている人の想いに」

ほむら「『試しに』なんて軽い気持ちで向かい合う事は出来ません」

まどか「……そ、か」

まどか「そっか。うん、そうだよね」

ほむら「……………すみません。私……」

まどか「ううん、良いの。むしろ嬉しいぐらい」

まどか「ほむらちゃんが私の事を、すごく大切に想っていてくれた事が分かったから」

まどか「私の気持ちを、そこまで考えていてくれたなんて思ってもいなかったよ」

まどか「やっぱりほむらちゃんは凄い!」

まどか「私だったら、女の子から告白されたらきっと吃驚しちゃって」

まどか「相手の気持ちなんて考えないで!」

まどか「自分の事でいっぱいいっぱいで!」

ほむら「……………」

まどか「あ、これ駄目かも」

まどか「……ねぇ、一つだけお願いして良いかな」

まどか「――――耳を塞いで、あっち向いてくれる?」

ほむら「……勿論」

まどか「うん、ありがとう」


342 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:55:43.40 uafKQTvZ0 106/381






「う、う、あ、うああああああああああああああああああああああぁ……ああああああああああっ!!」





343 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:56:40.30 uafKQTvZ0 107/381




――――この時私の目の前には、地上ではあり得ないほど眩い、だけど滲んでしまっている星空が広がっていました。


私は、私の恋が終わってしまったこの瞬間を死ぬまで忘れないでしょう。

この胸の苦しみと、悲しみと、絶望を永遠に覚えているでしょう。


告白しなければ良かったと思いました。

恋人になってくれなかったほむらちゃんをちょっぴり恨みました。

手伝ってくれたゲルトルートさんに申し訳ない気持ちになりました。


ああ、だけど最後に、やっぱりこう思うのです。






――――ほむらちゃんを好きになって、本当に良かった、と。



344 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 09:59:00.41 uafKQTvZ0 108/381




妖精さんメモ



『妖精さん製クローン』※オリジナル※

シャルロッテさんの肉体として使われているこの超技術ですが、妖精さんにとってはお手軽なものだそうです。

その極秘レシピが公開されましたのでここに記します。

1)つちをこねこねします。このときてきどなしめりけだいじです?

2)こねたつちをにんげんさんのかたちにするです。

3)あたまにおはなをうえるとおんなのこっぽいです? おとこのこはきのぼうでよろしいかと?

4)まちがってたましいはいらぬよう、たちいりきんしのしるしつけてーの。

5)さいぶをととのえてーの。

6)じょーおんかくゆーごーでつちのげんしをおにくにー。

7)かんせいです。

……シャルロッテさんにこのレシピをお見せしたところ、意味が分からないと言われました。

これはまだ分かりやすい方だと思うんですけどねぇ……



『弾避け首飾り』※オリジナル※

妖精さんが作ってくれた道具の一つ。

その原理は空間を「ちかよりがたいふんいき」で捻じ曲げる事により、弾道を強制的に変えるとの事です。

非常に強力な装備ですが、これを付けている間は球技で遊べなくなるのでそこだけは要注意ですね。



『ばいばいベル』※オリジナル※

ちりんと一回鳴らせばどんな方々(動物でも人間でもサモ○イト石で召喚された魔獣でも)お家に帰りたくなり、

本当なら帰れないような方々もどういう訳か帰れてしまうというアイテムです。

さらりと因果律とかを操っている節がありますが、妖精さんアイテムでは日常茶飯事なので気にしません。

材料に使われているのは猫用の鈴と蛙のキーホルダーの二つだけだそうで、夏休みの工作にうってつけです。

作れたら、ですけどね。



345 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/06/18 10:00:30.86 uafKQTvZ0 109/381




『激辛スティック』※オリジナル※

一舐めしただけで本当に火を吐くぐらい辛いオレンジ色の棒です。

……………。

すみません、割と書く事ないアイテムなんですよこれ……悪戯以外で使った事無いですし……



『幕がふぃーん』※オリジナル※

核兵器の発射を食い止めるため敵組織に潜入……という設定で始まるアクション映画は数多くありますが、

それって別に核兵器じゃなくても生物兵器とか化学兵器とかでも良いんじゃない?

こういう物語上は必要だけど、演出としては替えが利く物の事をマクガフィンと呼びます。

それとは全く関係ないようで微妙に関係あるのが『幕がふぃーん』。一度起動させるととんでもない事が起こります。

どうとんでもないかは口では説明出来ず、目の当たりにしてもやはりうまく理解出来ない事でしょう。

兎に角とんでもない事が起こり、物語が急展開を迎える。

そしてそれは、『幕がふぃーん』でないといけない訳ではないのです。



『UFO』※オリジナル※

空を自由に飛び回る高性能お布団です。

名前はアンディファインド・フライング・オブジェクトではなく、うっとりするほど・ふかふかな・おふとん を

略したもの。実際とてもふかふかで、寝心地は抜群。しかも亜光速飛行機能やシールド機能、

迎撃システムや大気圏突入機能まである万能ぶりを発揮します。

個人的な意見ですが、眠れない夜、宇宙空間で本当の星空を眺めながら一睡するのに使用すると良いと思います。

ただしステルス機能には怪しいものがあり、レーダーには移らなくても光学カメラには映るそうなので注意しましょう。

まぁ、この布団で寝ているところを撮られたら、UFOではなくフライングヒューマノイド扱いされそうな気もしますが。





続き
魔法少女は衰退しました しーずん つー【パート2】


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