1 : 以下、2... - 2014/01/17 17:41:10.79 z/c8XSt20 1/569




『魔法少女まどかマギカ』と『人類は衰退しました』のクロスオーバーです。

初めてのSSです。至らないところも多いと思いますが、よろしくお願いします。

キャラは最初の時間軸の状態。ただしほむらの性格がかなり変わっています。

妖精さん無双。

妖精さんが居るから鬱なんてあり得ない。

劇場版及び叛逆は見ていないので、そこで出てきた設定と矛盾があるかもしれません。


以上の設定の元、暴走させていただきます。
そう、妖精さんのように。





元スレ
魔法少女は衰退しました
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389948070/














2 : 以下、2... - 2014/01/17 17:42:22.92 z/c8XSt20 2/569




えぴそーど いち 【妖精さんと、はじまりのおはなし】



4 : 以下、2... - 2014/01/17 17:45:49.50 z/c8XSt20 3/569



幼い頃から身体が弱く、あまり外出出来ない私には、友達は殆ど居ませんでした。

その所為かは分からないけれど、昔の私は引っ込み思案で、何をやっても上手くいきませんでした。

上手く出来るになる前に諦めてしまう、そんな性格になっていました。



”彼等”に会うまでは。



それは昔、物置で見つけた小さな紙縒りが始まり。

あの紙縒りがなければ、私はきっと引っ込み思案のままだったでしょう。

自分に自信が持てず、自分では何も決められない……そんな人間になっていたでしょう。


だけど、今の私は違う。


心臓病で入院? 治ったら、今まで出来なかった事が出来るようになる。

通院の都合で転校? 新しい出会いがあると思えばとっても楽しみ。

一人暮らし? なんだか大人になった気分。



そう、世界は何時だって楽しい。彼らが何処でも生まれるのは、きっと世界が楽しく出来ているから。

私達がどうやって楽しいを見つけるか。それで世界は何処までも楽しくなる。

さぁ、扉を開けよう。今日は転校初日。最初の挨拶が肝心。

……改めて思うと、ちょっと緊張してきた。でも大丈夫。

心を外ではなく、内へと向けよう。それだけで、ほら、聞こえてくる。


――――わくわくしますなー
――――にんげんさんといっぱいおはなしできるです?
――――てんこうすると、にんげんさんがかこってくれるです
――――かちぐみやんけ
――――うれしさで、いまにもきぜつしそうです


彼等は何時だって、私の心の中に居る。

だから今日の私は最強だ。心の中の彼らと同じように。




6 : 以下、2... - 2014/01/17 18:03:35.12 z/c8XSt20 4/569


和子「はい! あとそれから今日はみなさんに転校生を紹介します。暁美さん、いらっしゃい」

ほむら「は、はいっ」

ほむら「失礼します……」

和子「それじゃあ自己紹介、いってみようか」

ほむら「はい――――暁美ほむらです。これから、よろしくお願いします」

ほむら(今日から、ここが私のクラス……)

ピンク髪の子「…………」

ほむら(あ、後ろの席の子が笑いかけてくれた)

ほむら(友達になってくれるかな? なってくれたら、うれしいなぁ)

和子「それじゃあ、暁美さんの席は……」


……
………

クラスメートA「暁美さんって、転校前はどこの学校に通っていたの?」
クラスメートB「シャンプー、何使ってる?」
クラスメートC「趣味は何かな?」

ほむら「あ、あの、すみません」

ほむら「私、休み時間は薬を飲まないといけないので……保健室に行かないと……」

クラスメートC「あ、そうなの? ごめんね」

ほむら「いえ……あ、それで保健係の方は誰でしょうか……保健室の場所、まだ知らなくて……」

クラスメートA「それなら鹿目さんね……でも、保健室の場所なら私が案内しようか?」

ほむら「ありがとうございます。でも保健室は今後も色々お世話になると思うので、
    色々訊きたい事もあるので……」

クラスメートA「あー……そっか。なら素直に鹿目さんに任せよう」

クラスメートB「という訳で、おーい! 鹿目さーん!」

まどか「ん? なーにー?」

ほむら(あ、ホームルームの時に笑いかけてくれた子だ……)

クラスメートB「暁美さん、まだ保健室の場所分からないんだって。色々聞きたい事もあるらしいから、
        鹿目さんに案内をお願いしてもいい?」

まどか「うん! 任せて!」

ほむら「あ、は、はじめまして……えと、よろしくお願いします」

まどか「はじめまして。私は鹿目まどか。まどかって呼んでね!」

まどか「それじゃ、いこっか」

ほむら「はい」


7 : 以下、2... - 2014/01/17 18:08:48.90 z/c8XSt20 5/569


―廊下―


まどか「それにしても、ほむらちゃんってかっこいい名前だね」

ほむら「ありがとうございます……まぁ、最近はあまり呼ばれないんですけどね」

まどか「そうなの?」

ほむら「ええ。見滝原に引っ越す前までは呼ばれていましたけど……」

ほむら「今は両親は仕事で今は一緒に暮らしていませんし、今も付き合いがある一番の友達も……愛称で呼ぶので」

まどか「そっか……じゃあ、私が今までの分までいっぱい呼んじゃおうかな?」

ほむら「ふふ。ありがとうございます……そういえば鹿目さん」

まどか「あ、駄目だよ!」

ほむら「?」

まどか「鹿目さんって言った。まどかって呼んでって言ったのに」

ほむら「あ、すみません」

ほむら「でも私、呼び捨てにするのって苦手でして……」

まどか「うーん……出来たら呼び捨てにしてほしいけど……無理強いは駄目だね」

まどか「わかった。ほむらちゃんの好きなように呼んで!」

ほむら「はい、鹿目さん」

まどか「うんっ! ……あ、そういえば、さっき何か訊こうとしていたよね? 何かな?」

ほむら「あ、そうです」

8 : 以下、2... - 2014/01/17 18:10:33.68 z/c8XSt20 6/569

ほむら「あの……この辺りで電波の届かない場所ってありませんか?」

まどか「電波? うーん、学校だと図書室が携帯の電波が届かないって聞くけど……」

ほむら「そうですか……」

まどか「ごめんね。役に立てなくて」

ほむら「あ、いえそんな! 変な事を聞いてすみません!」

まどか「良かったら、理由を教えてくれる?」

ほむら「……友達と会う為、ですかね。その子、電波が苦手なので」

まどか(電波が苦手? ……ペースメーカーを付けている子とかなのかな? 病院の知り合いとか?)

まどか(……そういう事なら役に立ちたいなぁ)

まどか「うん! 分かった!」

ほむら「え?」

まどか「知り合いに頼んで、電波が出来るだけ届かない場所を調べてもらうよ!」

ほむら「そ、そんな! そんなの悪いですよ!」

まどか「遠慮しないでいいよ! その子、頼んでくれると結構なんでもやってくれるし!」

まどか「すっごく頼れるから、安心して待っててね!」

ほむら「えと……じゃ、じゃあ……お願いします……」

まどか「うんっ……あ、今度は私から質問していい?」

ほむら「? え、ええ」

まどか「その腕に着けているブレスレットは何? アクセサリー……なのかな?」

まどか(私には、草で作った物にしか見えないけど……)

ほむら「あ、これですか? これは、まぁ、お守りですね」

まどか「お守り?」

ほむら「ええ。私が知る限り、これに勝るお守りはありません!」

ほむら「家内安全、学業成就、無病息災! なんでもござれです!」

まどか「……ほむらちゃんって、結構占いとか、オカルトとか好き?」

ほむら「? いえ、そうでもないと思いますけど……」

まどか「あ、そうなんだ」

まどか(何か、思い出があるブレスレットなのかな)

ほむら(”あの子”たちの超科学を見ていたら、今更オカルトなんて、ねぇ……)

まどか「あ、保健室に着いたよ」

ほむら「え? あ、ありがとうございます」

ほむら「あの、それでですね、少し聞きたい事が……」



……
………


10 : 以下、2... - 2014/01/17 18:17:49.79 z/c8XSt20 7/569



―教室―

ほむら(ふー……色々ありましたが、ようやく放課後です)

ほむら(……体育は本気で死ぬかと思いました……あんなに身体が弱っていたとは……)

ほむら(……筋力増強マシーン的なものでも作ってもらって……いや、流石にボディビルダーは嫌だし……)

青い髪の子「やぁ、転校生! もう学校には慣れたかい?」

ほむら「ほびゃっ!?」

青い髪の子「ほびゃっ!?」

ほむら「あ、えと、す、すみません……ちょっとぼーっとしていて、驚いてしまって」

ほむら「美樹さん、でしたよね?」

美樹さやか「あ、ああ、うん。正解!」

ほむら「ほっ……えっと、何かご用でしょうか?」

さやか「あ、うん。えっとね、どうかな。もう放課後を迎えた訳だけど、学校には慣れた?」

ほむら「皆さんとても親切で助かっています。まだ慣れたとは言えませんけど……」

さやか「ふむふむ。やはりな」

さやか「という訳で! ここは親睦を深めるのも兼ねて私と一緒にCDショップ行かないかい?」

ほむら「CDショップ、ですか?」

さやか「うん。まどかと仁美……あ、あそこにいる二人ね? あの二人も誘うつもりだから、四人で、って事になるかな」

ほむら「えっと、邪魔でなければ……」

さやか「じゃあ決定! おーい! まどかー! 仁美ーっ!」

ほむら(美樹さん、鹿目さん達に向って手を振って呼んでる)

ほむら(私と違って凄く活発な人)

ほむら(それに、私がちゃんとクラスに溶け込めているか気にかけてくれた。優しい人だなぁ……)

ほむら(あ、鹿目さんと……えっと、志筑さんだったかな……こっちに来た)

まどか「どうかしたの、さやかちゃん」

仁美「何かありました?」

さやか「いや、大した事じゃないよ。ただ、今日ほむらと一緒に――――」

クラスメート「鹿目さん、三年生の人が呼んでるよー?」

11 : 以下、2... - 2014/01/17 18:21:11.09 z/c8XSt20 8/569



まどか「三年生……」

まどか「ごめん、ちょっと行ってくるね」

さやか「あ、うん。分かった」

ほむら(鹿目さん、駆け足で教室の入り口に……あ、あの金髪の人が三年生なのかな)

ほむら(……向こうに行く前の鹿目さん、表情が少し変わった。なんと言うか……緊迫感のある感じ)

ほむら(あの三年生の人と関係あるのかな……)

さやか「あーあ。今日はまどかと一緒には帰れないかな」

ほむら「え? どういう事ですか?」

仁美「まどかさん、最近あの三年生の人と一緒に帰る事が多いんです。毎日ではありませんが……」

仁美「教室まで来て直接呼ばれる場合は、間違いなく一緒に帰りますわね」

ほむら「へぇ……ん? なら、三年生の方と一緒に帰ればいいのでは……?」

ほむら「えと、一年生と一緒ではちょっと気まずいかも知れませんけど……」

さやか「んー、ほむらの意見も尤もだけど……」

さやか「一度一緒に帰らないってまどかに訊いてみたら、大切な用があるからって言われて断られちゃったんだ」

ほむら「……それは、大丈夫なのでしょうか……人には言えない何かこう……」

ほむら「……あ、いえ、その……あの、私、疑り深い性格なもので……失礼な事を言いました。すみません……」

仁美「気持ちは分かりますわ」

仁美「三年生の方は巴マミさんと言って、責任感のある立派な人だとは聞いています」

仁美「けど、やはり何かあるのではと勘繰ってしまいますわね」

さやか「何回か話した感じじゃ悪い人じゃないと思うし、まどかも嫌々一緒に帰ってる様子じゃないんだけど……」

仁美「でも、何も知らないと不安は残ってしまいますね」

ほむら「…………あの、私から一つ提案があるのですけど」

さやか「? 何かな?」

ほむら「CDショップにお誘いをしてくれた手前、少し言い辛いのですが……」




ほむら「鹿目さん達を尾行、してみるとかどうでしょうか?」





12 : 以下、2... - 2014/01/17 18:24:53.51 z/c8XSt20 9/569




さやか「さて、まどか達を追い駆ける事になり早一時間」

さやか「仁美は習い事で来られなかったから転校生と二人で尾行したけど……」

さやか「病院まで来たところで、見失ったかぁ」

ほむら「うう……すみません……私がすぐに疲れてしまい、何度も立ち止まる事になったばかりに……」

さやか「いや、仕方ないよ。退院したばかりなんだしさ」

さやか「……でも意外だなぁ」

ほむら「? 何が、ですか?」

さやか「転校生って、なんというか、引っ込み思案で臆病で、自分から行動しないタイプだと思ってた」

さやか「まさか尾行なんて大胆なアイディアが出てくるなんてね」

ほむら「それは……」

さやか「……あ、ご、ごめん! 今の酷い言い方だったね。あたしって思った事そのまま話しちゃう癖があって……」

ほむら「くす……いえ、気にしていません。それに、事実ですから」

さやか「え?」

ほむら「ある友達のお陰で今はこんな感じの私ですけど、昔はそれこそ引っ込み思案で臆病で、
    自分から行動しない……いいえ、行動できない人間でしたから」

ほむら「美樹さんの感想は、正解です。それが私という人間の本質ですよ」

さやか「……ごめん……」

ほむら「そんなに謝らないでもいいですから」

さやか「……うん」

ほむら「さて、これからどうしましょうか」

さやか「あー、そうだそうだ。まどか達は見失っちゃったからねぇ」

ほむら「尾行は中止ですね……時間的にも、CDショップに立ち寄るには少し遅くなりましたし」

ほむら「……でも、ますます鹿目さん達が何をしているのか不思議です」

さやか「そうだねぇ。こんな遅くまで、何してんだろう」

ほむら「えーっと、尾行して分かった事は……」

さやか「まるで虱潰しをするかのように道を行ったり来たりして」

ほむら「時折二手に分かれたらまた合流して」

さやか「合流したら何かを話し合って」

ほむら「やたらと廃ビルや病院の近くを通ったような……」

さやか「……あの二人、本当に何してんだ?」

ほむら「変な事はしていないようですけど……怪しいですね」

さやか「怪しいけど、変な事はしていないんだよねぇ」

ほむ さや「……………」

ほむら「ま、まぁ、また今度尾行してみましょう! それで分からなかったら、直接対決です!
    尾行していた事を正直に打ち明けて、問い詰めちゃいましょう!」

さやか(え? まだ諦めてないの?)

ほむら「ではそろそろ帰るとしましょうか――――」


14 : 以下、2... - 2014/01/17 18:45:23.53 z/c8XSt20 10/569



――――わーにん、わーにん



ほむら「え?」

さやか「? 転校生、どうかした?」

ほむら「……なんか声が聞こえて……」

さやか「声?」

ほむら(美樹さんには全然聞こえていないみたい。でも私にはハッキリと聞こえた)

ほむら(それにあの気の抜けた、緊張感のない声……間違いない)

ほむら「……どうやら私の気のせいみたいです。お騒がせしてすみません」

さやか「あはは。そんなに気にしなくていいって」

ほむら「いえ、今日はなんだか色々迷惑を掛けてしまいました」

ほむら「それで、あの……お詫びと言ったら難ですが……我が家に代々伝わるお守りを差し上げたいのです」

さやか「お守り?」

ほむら「はい。とは言っても、手作りなのでちょっと歪ですが……」

さやか(これは……草で作ったブレスレット、か?)

さやか(ほむらも腕に付けているし、確かに手作りみたいだね)

さやか(……結構可愛いかも……)

さやか「……うん! 気に入った! ありがたく頂くよ!」

ほむら「あ、ありがとうございます

ほむら「えと、出来たら水に濡らさないようにしてくださいね?」

ほむら「元に戻……解れて大変な事になってしまうので。汚れたり臭いが気になったら、私に返していただければ
    新しいのを渡しますので。欲しいなら、ですけど……」

さやか「了解~」

ほむら「では、そろそろ帰るとしましょうか。帰り道は……」

ほむら「あ、あれ? どっちに行けば……」

さやか「……迷ったのか?」

ほむら「す、すみません。病院にはいましたけど、ずっと入院していたので地理に疎く……」

さやか「いや、謝らないで。そういう事ならあたしが学校まで案内してあげる」

さやか「えっと、学校は……ん?」

ほむら「どうしました?」

さやか「……………ど忘れかな……病院の敷地内に、こんな所あったっけ?」

ほむら「え?」

さやか「ちょ、ちょっと待って! 今思い出すから……」

さやか「!?」

ほむら(何!? 突然景色が歪んで……!?)

さやか「な、なんだこれぇ!?」


15 : 以下、2... - 2014/01/17 18:47:11.03 z/c8XSt20 11/569


――――景色の歪みは唐突に起こりました。

唐突な歪みは、これまた唐突に戻りました。ですが、そこはもう私達の知る『世界』ではありません。


溢れんばかりのお菓子の山。


あちこちに散らばる薬瓶。


剥き出しの注射針に、不気味な人形。


そんな、統一感のない光景が私達の前に広がりました。

無機質な建物も通行人の姿もない、ファンシーだけど残酷さを隠しきれていない空間に私達は何時の間にか居たのです。

当然ながら私達二人はただの女子中学生。私は勿論、美樹さんも、この異常事態に戸惑いを隠しきれない様子です。


私達は、この不思議な世界に迷い込んでしまったのでしょうか。

それとも、”招かれた”のでしょうか。

そもそも迷い込んだり招かれたり出来る世界なのでしょうか?


無論、そんな事は分かりません。これから分かるとも限りません。

ですがきっと、現実ではあり得ない、突拍子もない事が起こる予感がします。


そう、例えば人食いの怪物が現れたりするかも。


だから私の身体は振るえました。

美樹さんも、身体を震わせていました。

美樹さんと私に違いがあるとすれば、ただ一点。

私は、興奮のあまりにやけていた事ぐらいでしょうね――――



13 : 以下、2... - 2014/01/17 18:43:51.92 xG/KPpO3o 12/569

衰退組は妖精さんだけかな?
なんともいい雰囲気で気に入った

17 : 以下、2... - 2014/01/17 18:51:23.25 z/c8XSt20 13/569

今日はここまで!

なんだか期待されて胸がドキドキ(野郎の発言)
完結まで時間がかかると思いますが、よろしくお願いします。

>>13
衰退組は一応妖精さんのみです。

あと、今更ながらオリジナルの妖精さんアイテムが出てきますのでご容赦を。

25 : 1 - 2014/01/18 08:02:59.68 KX6gvT220 14/569


さらに注意書きに、


妖精さんに対し独自解釈あり。

オリキャラ……みたいなものが出てきます。たぶんオリキャラの範疇。


この二つを追加で。
もうね、初めてだからって不手際多すぎですよね……


でも、なんだか想像以上に反応があってオラわくわくしてきたぞ!

書き貯めがちょっぴりあるので今日も投下していきます。

26 : 1 - 2014/01/18 08:04:26.73 KX6gvT220 15/569



えぴそーど に 【妖精さんと、しゃるろってさん】


27 : 1 - 2014/01/18 08:09:08.62 KX6gvT220 16/569


―お菓子の魔女の結界―


さやか「な、なにこれ!?何がどうなってんの!?」

さやか「なんかやばいよね!? に、にげ、逃げないと……逃げないと……!」

ほむら「落ち着いてください!」

さやか「へう?!」

ほむら「まずは落ち着いてください。はい深呼吸!」

さやか「え、あ、はい」

さやか「すー……はー……すー……はー……」

ほむら「落ち着きましたか?」

さやか「……うん。ありがとう。少し、冷静になれた」

ほむら「どういたしまして」

ほむら(とは言え、これからどうしたものでしょうか……)

ほむら(辺りを見渡してもお菓子の山と薬瓶の山と変な人形ばかり。ちょっとやそっとで帰れる雰囲気じゃないですね……)

ほむら「そうだ。携帯は?」

さやか「あ! そうだね……いや、駄目だ。アンテナが立ってない」

さやか「そりゃそうか……こんな不思議な場所まで電波が来ていたら、そっちが吃驚だわ」

ほむら「まぁ、確かに基地局は建ってないでしょうからねー」

さやか「……つーか、転校生、やけに冷静だね」

ほむら「専門家ってわけじゃありませんけど、こういうヘンテコ展開には結構慣れているんです」

ほむら「とはいえ、これからどうしたものですかね。電波がこない以上こちらから外に連絡する手段は……」

ほむら(……ん? 電波?)

ほむら「あ、なんだ。帰れるじゃん」

さやか「え?」

ほむら「そっか、そうだよね。あの子たちを呼べばいいんだ。うん、そうしよう」

さやか「て、転校生? 帰れるって、どういう事? 此処が何処か知ってるの?」

ほむら「いえ、全然全くサッパリ知りません」

さやか「なら!?」

ほむら「でもあの子たちなら、きっと何とかしてくれますから」

ほむら「すー……」

さやか(ほむらが、深く息を吸ってる? 何をする気なんだ……?)



ほむら「妖精さぁーーーーーーーんっ! でっておいでーっ!」



28 : 1 - 2014/01/18 08:12:47.58 KX6gvT220 17/569



「はーい!」「およばれしたー?」「でばんだっしゃい」「とーじょー」

さやか「ほむらの耳からなんか出てきたぁーっ!?」


――――私が呼ぶのと共に、四人の小さな人たちが私の耳から飛び出しました。

出てきた彼等は体長10センチぐらい。二等身で、とっても愛くるしいボディの持ち主。
可愛らしい顔に浮かべる表情は何時だって喜怒哀楽の真ん中二文字がない、のーてんきなもの。

彼等は人間ではありません。だけど私のとっても大切で、私に世界を教えてくれた素敵なお友達。

妖精さんなのです。


ほむら「ひー、ふー、みー、よー……四人か。あれ? もっと、十倍ぐらいの数が居たような気が……」

妖精さんA「ほかのはにんげんさんのきおくにとけました」
妖精さんB「ぼくら、よばれたらでてくるかかりだからー」
妖精さんC「ひつようさいていげんのじんざい」
妖精さんD「じんけんひさくげんごっこちゅー」

ほむら「うーん。相変わらず何を言ってるかさっぱりな人達ですね」

さやか「な、なんなのコイツら!?」

ほむら「あ、大丈夫ですよ。この子たちは妖精さん――――私の大切なお友達です!」

さやか「よ、妖精ぃ……? 確かに、そう見えなくはないけど……」

ほむら「敵意とか悪意とか、そういうのと無縁な種族なので安心してください。と言うか……」

妖精さんA「なんじゃこのおかしのやまはーっ!?」
妖精さんB「たからのやままやー!」
妖精さんC「おお、かしがみえる」
妖精さんD「こ、これ、たべていいです? たべるです?」
妖精さんE「ほんのうたいむとつにゅー!」
妖精さん達「ぴーーーーーーっ!」

ほむら「今はお菓子に夢中みたいですしねぇ……」

さやか「うわ……一心不乱に食べてる……」

さやか「?」

さやか(なんか違和感が……気のせい、かな?)

ほむら「ところで、ここのお菓子って食べて平気なのですか?」

妖精さんB「え」
妖精さんD「たべられないおかしなんて」
妖精さんC「でもぼくら、なんでもへいきですからなぁ」
妖精さんE「どくみします?」

ほむら「お願いします」

さやか「え、ちょ、ほむら!?ど、毒見って……」

ほむら「あ、この子たちの事でしたら心配なく。この子たち、基本的に何があっても死なないので」

さやか「……え? 死なないの?」

ほむら「ええ。溺死や餓死もしないそうですし」

ほむら(でも消えるとかは言うから、死の概念が違うだけかも知れませんけど)

さやか「……死なないのかー……ま、まぁ、妖精だしな、うん……」


29 : 1 - 2014/01/18 08:15:13.39 KX6gvT220 18/569


妖精さんD「まいうー」
妖精さんA「でもこれはにんげんさんにはたべられませんなー」
妖精さんE「ぼくらでどくせん?」
妖精さんB「どくせんきんしほーいはん?」
妖精さんC「たいほされるかも」
妖精さんA「にんげんさんにれんこうされるの、たのしみですー」

ほむら「あ、食べられないんだ……何か盛られているのですか?」

妖精さんC「てーてーえっくすかと」

さやか「てーてーえっくす?」

ほむら「恐らくTTX。テトロドトキシン。フグ毒ですね」

さやか「げぇーっ! 猛毒!? た、食べて平気なのアンタ達!?」

妖精さんE「ぼくら、どくきかないので」
妖精さんD「からだぴりぴりするの、たのしめます?」

さやか「」

さやか「と、とりあえず、私達は口にしない方が良」

ほむら「では妖精さん。ここにあるお菓子の毒を一通り取り除いてください」

ほむら「そのお菓子を使って、お茶会を開きましょう」

さやか「転校生ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

ほむら「ひゃっ?! なんですか、いきなり叫んで……」

さやか「アンタこの子たちの話聞いてないの!? フグ毒よフグ毒! 食べたら死ぬのよ!」

ほむら「ええ。だから毒抜きを頼んだのですが」

さやか「出来る訳無いでしょ! 仮に出来たとしても、そういうのって多分大規模な機械とか薬品が必要で」

妖精さんA「できましたー」

さやか「」

さやか(ほむらと問答していたら、何時の間にか豪華なテーブルと二人分の椅子、皿に乗せられたケーキ、
    そしてティーセットが現れていた)

さやか(催眠術や超スピードじゃない、もっと恐ろしい物の片鱗を味わうさやかちゃんでした……)

ほむら「さ、美樹さん。お座りください」

ほむら「妖精さんとのお茶会、一緒に楽しむとしましょう?」


30 : 1 - 2014/01/18 08:18:05.70 KX6gvT220 19/569


~お茶会及び説明会~


さやか「……つまり、こういう事?」

さやか「その子達は妖精さん。ほむらの大親友」

さやか「見た目はちんちくりんで言葉遣いも子供っぽいけど、超常的科学技術を持ち合わせた存在」

さやか「そして人間と楽しい事が大好き、と」

ほむら「はい。あ、あと甘いお菓子も大好きですよ」ケーキモグモグ

さやか(毒抜きしたとはいえ、毒入りだったケーキを平気で食べてる……妖精達を信頼しているんだなぁ)

さやか「……このケーキの毒抜きとかテーブルを用意したのも、魔法とかじゃなくて……科学なの?」

ほむら「勿論です。大体、魔法なんてある訳ないじゃないですか」

妖精さんB「そのとおりですな」
妖精さんD「ひかがくてきですな」
妖精さんA「おかるとですな」

さやか(それ、妖精が言うべき台詞じゃないよね……)

ほむら「仮にあったとしても、魔法なんかよりもこの子たちの方がずっと凄いですしね!」

ほむら「この前も適当に作った宇宙船でグリーゼ581cに行って宇宙鯨と――――ん?」

さやか「あのー、今さらりととんでもない事言わなかった?」

ほむら「何か、地鳴りが聞えませんか?」

さやか「いやいや、地鳴りとかどうでもいいから。今確かにグリーゼって言」


――――その時、私達は大切な事を失念していたのを思い出しました。

――――此処は不思議な不思議な、そしてとっても不気味な世界。
――――何時、何処から、何が出てくるか分からない世界。

――――そう、例えば……お菓子の山を吹き飛ばし、突如巨大な化け物が出てくる事もある世界である、と――――


31 : 1 - 2014/01/18 08:19:54.98 KX6gvT220 20/569


さやか「え? うわあああああああああっ!?」

ほむら(お菓子の山を吹き飛ばして、なんか現れた! すごく大きい……蛇? みたいな姿してる……)

ほむら(それに人なんか簡単に飲み込んじゃいそうなぐらい大きい口! 正に人食いの怪物!)

化け物「ギシャアアアアアアアアアアアアアア!」

さやか「に、逃げよう!」

ほむら「待ってください!」

さやか「……!?」

ほむら「……確かに見た目は怪物です。食べられてしまうかも知れません」

ほむら「ですが先日グリーゼに行った時に出会った知的生命体さんもグロテスクな姿をしていました」

ほむら「ならこの子も、もしかすると知的な生き物かもしれません」

さやか「な、何言ってんだ! こんな怪物が頭いいなんてあり得ないだろ!」

さやか「万が一そうだったとしても、どうやって話を……」

ほむら「問題ありません」

さやか(ほむらの奴、自分の眼鏡に手を伸ばして一体何を――――)

ほむら「翻訳眼鏡、スイッチおん!」

化け物「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」

さやか「ほ、ほむら!? 危な――――」



ほむら「はいストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉプっ!」



32 : 1 - 2014/01/18 08:22:21.96 KX6gvT220 21/569



化け物「!?」

さやか(ほ、ほむらの声で化け物の動きが止まった!?)

ほむら「いきなり大声を出して、すみません。私の名前は暁美ほむらと言います」

ほむら「あなたのお名前を教えていただけませんか?」

化け物「…………」クチヲパクパク

ほむら「あ、シャルロッテさんと言うのですか。可愛いお名前ですね」

さやか「え!? まさか本当にこの怪物とお話を?」

ほむら「はい! この眼鏡は妖精さんの発明品、翻訳眼鏡というものでして!」

ほむら「それなりに意思があるのなら、動物だけでなく虫とか髪の毛とかともお話が出来るんですよ!」

さやか「えー……」

さやか(と言うか、髪の毛って意思があるの?)

ほむら「む。その反応は信じていませんね」

ほむら「妖精さん。美樹さんの分もお作りくださいな」

妖精さんE「そのようなこともあろうかと、すでにつくておきました」

ほむら「流石です」

さやか「えっと、では……装着……」

さやか「!?」

シャル【うわぁ……話が出来る人間って初めてだ……人の言葉なんて今までよく分からなかったのに……】

シャル【だけどそんなのは小さな問題】

シャル【ああ、健康な身体が憎い憎い憎い憎い……】

さやか「……………」

さやか「転校生や?」

ほむら「はい?」

さやか「あの人、なんか憎いと言ってますが?」

ほむら「言ってますねぇ。健康な身体が、という事は病弱な方なのでしょうか? 私もその気持ちはよく分かりますよ」

さやか「そうじゃないでしょーが!? 敵意満載だよアイツ!?」

ほむら「些細な問題です。私達と怪物の仲が悪いなら、和解するしかないじゃない!」

さやか「なんでそんなに乗り気なの!? なんでそんなに無茶したがるの!?」

ほむら「そんなの簡単な事です」

ほむら「みんなで仲良くした方が、楽しいに決まってますから!」

さやか「た、楽しいって、そんな事で――――」

ほむら「さぁ、シャルロッテさん! あなたのお願いを聞かせてくださいな!」

シャル【私の願い?】

シャル【……チーズ、食べたい】

33 : 1 - 2014/01/18 08:26:33.82 KX6gvT220 22/569



ほむら「チーズですか?」

シャル【私はどんなお菓子でも作れる。でも、チーズだけは作れない】

シャル【だから今すぐチーズを作れ! 作れないなら、お前達を食ってやる!】

さやか「ひぃ!? そんな、急にチーズなんて言われても……」

ほむら「妖精さん。チーズをください」

妖精さんC「ごよういしたー」

さや シャル「え?】

ほむら「ありがとうございます」

さやか「ちょ、ちょっとほむら!? そのチーズ何処から……」

ほむら「さぁ? 用意したのは妖精さんですし……それに、出所は知らない方がいいかと」

さやか「え゛」

シャル【え、そんなの私に食べさせる気なの?】

ほむら「そのつもりですが……別にいいじゃないですか。お菓子に使われている赤色の着色料だって、
    原料はカイガラムシですよ? あれの収穫って大変らしいですね。虫を潰さないように削ぎ落して」

シャル【すみません。それ以上は止めて。お願いします】

ほむら「よろしい。では改めて……どーぞ♪」

シャル【……ではいただきます】

シャル【もぐもぐ】

シャル【……………】

ほむら「どうですか?」

シャル【……美味しい。そこそこ】

ほむら「よかったぁ!」

シャル【おかわり、ある?】

ほむら「どうですか、妖精さん?」

妖精さんA「やまもりてんこもりー」

ほむら「たくさんあるみたいですよ!」

シャル【……ありがと】

ほむら「いえいえー」

さやか(あ、なんか打ち解けてるっぽい)

ほむら「それで、あなたはどんな種族なんですか? 異星生命体とかでしょうか?」

シャル【……………】

ほむら「?」

さやか(あれ、なんか言い辛そうにしてるっぽい?)

さやか(もしかしてこの話題って地雷?)


シャル【……魔法少女って、知ってる?】

34 : 1 - 2014/01/18 08:28:46.06 KX6gvT220 23/569


ほむら「魔法少女ですか? 妖精さんが昔作ってくれたレイジングなんちゃらという道具で、ごっこ遊びをした事はありますが」

さやか「うん、あたしは何も聞かなかった。白い悪魔の相方なんて聞えなかった」

さやか「そしてあたしもそんなのはアニメの話でしか知らないよ」

シャル【……私はね、元々はただの病弱な人間だったの】

シャル【でもある日、キュゥべえって言う猫みたいな奴に唆されて、魔法少女になったの】

さやか「きゅーべー?」

シャル【そう、キュゥべえ。どんな願いでも叶える代わりに、魔法少女になってほしいと言ってくる悪魔】

さやか「どんな願いでも……」

ほむら「胡散臭い話ですね」

妖精さんA「ですなですなー」
妖精さんB「あくとくしょーほーなよかん」
妖精さんC「くーりんぐおふすべきでは?」

シャル【ええ、本当に。今思うと、なんで騙されちゃったかと思うぐらい胡散臭い話】

シャル【まぁ、それでも私は契約したと思うけど】

さやか「え?」

シャル【私ね、末期癌だったの。余命幾ばくもない、まともに身体も動かせないぐらいの末期】

シャル【それで、契約してくれたら癌なんて治せるって言われたのよ。代わりに異形の化け物……
    魔女と命懸けで戦えって言われたけど】

さやか「酷い……そんなの、契約するしかないじゃん!」

ほむら「全くです!」

シャル【アイツはそういう奴よ。普通に頼んでも契約しそうになかったら、契約せざるをえない状態で唆す】

シャル【ま、それでもまだ良かった。死ぬよりかはマシだと思っていたし、魔女……人を襲う怪物との戦いは、
    正義の味方っぽくて嫌いじゃなかった】

シャル【でもね、ある時知ったの――――魔女の正体を】

さやか「正体?」

シャル【魔女はね、元々魔法少女なの】

ほむら「え……じゃ、じゃあシャルロッテさんは……」

シャル【そう、私は元々魔法少女……元々人間だったけど、今はなんなのかも分からない怪物よ】

35 : 1 - 2014/01/18 08:31:29.56 KX6gvT220 24/569



さやか「な、なにそれ! キュゥべえって奴が全ての元凶って訳!?」

ほむら「そんな酷い事、許せません!」

ほむら「待ってください! 妖精さんの道具『探し物アンテナ』で奴等の巣を探し出し、
    『ブラックホール缶詰』を開放して発生源ごと宇宙の塵に」

さやか「うん、それは待とう。嫌な予感しかしないから」

さやか(そんでもって、妖精ってそんな出鱈目そうなもんまで作れんのかい……)

シャル【え、えっと……そ、そんな訳で、今じゃこんな怪物の形をしているけど元々人間なの】

シャル【人間の女の子として扱ってくれると嬉しいわね】

さやか「そうなんだ……ごめん、そうとは知らず化け物呼ばわりしちゃって……」

シャル【いや、気にしないで。実際化け物だしさ】

シャル【まぁ人間に戻りたいとは思うけど、出来ない事を言っても仕方ないしね】

ほむら「あ。なら、代わりの肉体を用意しましょうか?」

さやか「……………」
シャル【……………】

さやか「え? あれ? 今、なんか奇妙な発言が飛び出しませんでしたか」

ほむら「妖精さん、出来ますよね?」

妖精さんB「おちゃのこさいさーい」
妖精さんC「おーだーはいりましたー」
妖精さんE「しばしおまたせ」

さやか「あ、妖精たちが散っていった……」

シャル【え、あの……代わりの肉体って……】

ほむら「しばしお待ちを。多分、二十秒かそこらで用意してくれると思うので」

さやか「……あ、本当だ。もう妖精たちが戻ってきて……」

さやか「って、なんか女の子を台車に乗せて運んできたーっ!?」

さやか「ちょっとちょっと!? 一体どこからこの子を連れてきて……」

妖精さんA「がんばってつくた」

さやか「はぁ!? いくらなんでもそれは……」

さやか「…………」

さやか「ねぇ、ほむら?」

ほむら「はい?」

さやか「あの、妖精さんが運んできた女の子……何から何までほむらと瓜二つな容姿なのは何故でしょうか?」

36 : 1 - 2014/01/18 08:33:13.71 KX6gvT220 25/569



ほむら「何故でしょうね。妖精さん?」

妖精さんD「くろーん」

ほむら「ああ、私のクローンでしたか。納得です」

さやか「納得出来るかあああああああああっ!?」

さやか「可笑しいから!? 何から何まで可笑しいから!」

さやか「大体倫理的に可笑しいでしょ!? そのクローンにだって意識はある筈で」

妖精さんJ「このにんげんさん、たましいなしですが?」

さやか「え?」

妖精さんE「たましいないので、ぬけがらどーぜん」
妖精さんB「だしはとれません」
妖精さんC「そうるてきなものはさいしょからいれずに」
妖精さんA「ただのにくかいやー」
妖精さんD「ひとのかたちしているだけです?」

さやか「た、魂? え、あの、そんな魔法的な……」

妖精さんC「たましいは、かがくですが?」

さやか「えー……………」

ほむら「ともあれ、この身体は空っぽです。妖精さんのテクノロジーで魂を移し替えれば、晴れてあなたはこの身体を物に出来ます」

ほむら「どうでしょう? よろしければ今すぐにでも作業は出来ると思いますが」

シャル【……………】

ほむら「シャルロッテさん?」

シャル【え? あ、ご、ごめん。突然の事に動揺して……いきなり身体と言われても……】

さやか(そりゃそうだ……)

ほむら「私そっくりな身体はお気に召しませんか? でしたら人間だった頃のお姿の通りに成形しますが……」

妖精さんC「のーみそのいめーじをぷりんとあうとしまっせ?」

さやか(いや、そういう事じゃないでしょ、多分)

シャル【……いや、そんな事ないよ。ただ、いきなり人間に……元々の姿とは違っていても戻れるって知って、戸惑っただけ】

シャル【でも人間に戻れるのなら、戻りたい】

シャル【だから、私にその身体をください!】

37 : 1 - 2014/01/18 08:35:03.92 KX6gvT220 26/569



ほむら「はい! 分かりました!」

ほむら「では妖精さん、お願いします。いい仕事をしたら、クッキー焼いてあげますよ!」

妖精さんA「なんとー!?」
妖精さんE「たよってもらえておかしももらえる」
妖精さんD「しあわせですー」
妖精さんC「ではではこちらにー」

さやか「妖精さんとシャルちゃんが物陰に……」

さやか「……上手くいくかな」

ほむら「いきますよ、きっと」

シャル「上手くいきましたー!」

さやか「早い!? 早過ぎるよ!? 心配する暇すらねぇ!」

シャル「ついに私は人間の肉体を取り戻したーっ! やったー! ひゃはははははほーいっ!」

さやか(うわぁ……ほむらと同じ顔が、物凄くハイになってはしゃいでる……)

さやか(でも……まぁ、幸せそうだからいいか。うん)

ほむら「良かった……気に入ってくれたようですね」

シャル「ひゃっほーい! ……あれ?」

ほむら「? どうかしましたか? 何か不具合でも……」

シャル「あ、いや、そう言う事じゃなくて……」

シャル「……ただ、なんで結界が消えてないのかなって思って」

38 : 1 - 2014/01/18 08:38:27.25 KX6gvT220 27/569



ほむら「結界?」

さやか「もしかして、このお菓子だらけの場所の事?」

シャル「ええ。魔女は確かに凄まじい力を持っているけど、無敵って訳じゃないわ。
    むしろ普通の銃器でも致命傷を受けてしまう程度の存在」

シャル「だから普段は結界に身を隠して、こそこそと人間を襲うの。中には例外も居るけど」

シャル「……で、魔女の力で作っている空間だから、魔女が消滅すれば結界も消える」

シャル「私は人間に戻った訳だから、結果的にはこの空間から魔女は消えた事になる筈」

シャル「なのに、なんで結界が残ったままなの?」

さやか「あー、成程」

ほむら「どういう事なのでしょうか?」

妖精さんD「それはー」

ほむら「それは?」

妖精さんD「まじょさんは、たましいはまじょさんですので」
妖精さんC「ずのうはまじょさん、からだはにんげんさん?」
妖精さんA「まじょのちからがつかえます、とくべつしようですし」
妖精さんB「ふだんとかわりませぬ」

ほむら「ふむふむ」

ほむら「つまり身体は人間に戻りましたが、魔女の力は使えるように設計した、という事のようです」

シャル「……つくづく思うけど、これ、本当に科学なの?」

ほむら「魔法なんてありませんよ。ファンタジーやメルヘンじゃないんですから」

さや シャル(妖精さんはファンタジーやメルヘンじゃないんかい……)

シャル「うん、まぁ、力が使えて困る事はないし……精々使わせてもらいましょう」

シャル「それに、あなた達もそろそろお家に帰さないとね」

さやか「あ、そっか……」

ほむら「何時の間にか、もう五時を過ぎてますね」ケイタイデンワチェック

シャル「じゃあ結界を解いて……っ!?」

ほむら「? どうかしましたか?」

シャル「……結界に、誰か入ってきた。それも二人」

さやか「え? あたしらみたいに迷い込んできた人が?」

シャル「……違う。誤って入ってきたのなら、結界に驚いてしばらく右往左往している筈。
    そもそも魔法少女の才能がない場合結界内で意識を保つ事が難しい」

シャル「なのに今入ってきた二人は迷わず、真っ直ぐ進んでる……私達の方に……」

ほむら「真っ直ぐという事は……シャルロッテさん目当ての人達?」

ほむら「だとすると、まさか!?」

さやか「え?」

シャル「不味い! もの凄い速さでこっちに来てる!」

シャル「もう間違いない! 侵入者は――――魔法少女よ!」

39 : 1 - 2014/01/18 08:39:32.83 KX6gvT220 28/569



――――シャルロッテさんのその叫びと共に、この空間にあった扉の一つが勢いよく開けられました。

私も、美樹さんも、シャルロッテさんも、開けられた扉を見ます。表情は……私達とシャルロッテさんでは、大分違うものでしたが。

私達が見た先に居たのは、二人の女の子。

どんな人たちか? ……形容する必要はありませんでした。

何故なら彼女たちは、私達が知っている人――――


ほむら「鹿目さん……」

さやか「と、巴先輩……?」


――――同級生と、その先輩だったのですから。



40 : 1 - 2014/01/18 08:42:41.67 KX6gvT220 29/569


今回はここまで!

すでに本来の『まどかマギカ』と大分異なる展開となっていますが、このズレ、今後どんどん大きくなります。
クロスオーバーだから仕方ないね。妖精さんだからしょうがないね。

次回も早めに投稿する予定。
サラバダー!

56 : 1 - 2014/01/19 08:31:15.93 al4yrcLp0 30/569



えぴそーど さん 【妖精さんと、まほうしょうじょさんたち】


57 : 1 - 2014/01/19 08:33:28.03 al4yrcLp0 31/569



――――シャルロッテさんの結界内に現れたのは、鹿目さんと、巴先輩でした。

いえ、断言するのは少々躊躇ってしまいます。

彼女たちの服装は、私やさやかさんのような、見滝原中学校の制服ではありません。
巴さんはなんだかスタイルを強調するような大人っぽさ溢れるもので、
鹿目さんは逆にスカートにフリルが付いた、とても愛らしい……だけど、普段着として着るのはちょっと恥ずかしい服。

鹿目さん達も、私達との遭遇は予想外だったのでしょう。
二人は妙にそわそわした様子です。

そしてシャルロッテさんは……まるで、苦虫を噛み潰したかのような顔になっています。

一体どういう事なのでしょうか。二人もこの結界に迷い込んだのでしょうか。

――――いえ、あの服装を見れば簡単に予測できます。

だってあの二人の恰好は、まるで魔法少女のようではないですか。

つまりあの二人の目的は――――


58 : 1 - 2014/01/19 08:35:56.27 al4yrcLp0 32/569



ほむら「ドキっ! 女だらけのコスプレ大会への出場ですね!」

さやか「ずこーっ!?」

まど マミ「え? え、ええ?」

さやか「お前はアホなのか? アホなんだな?!」

ほむら「あ、アホって……」

さやか「どう見てもあの二人魔法少女じゃん!」

まど マミ(えっ!? なんで知ってるの!?)

さやか「絶対あの二人の目的はシャルちゃん退治だよ!」

さやか「つーかシャルちゃんが今魔法少女が来るって言ったじゃん! なんでコスプレ大会なんて発想になるんだよ!」

ほむら「……さやかさん。よく考えてみてください」

さやか「なんだよ」

ほむら「魔女との戦いは命懸けなんですよ? だったらあんな動き辛い恰好な訳ないでしょう」

ほむら「防弾ジョッキだとか、目を守るためのゴーグルを装備すべきです」

ほむら「あんな見た目重視の恰好で命懸けの戦いをするなんて、ただの馬鹿じゃないですか」

まど マミ(ば、馬鹿!?)

ほむら「それに何処に魔女が居るか分からないのに、あまりにも警戒心がない」

ほむら「扉を開けるのも無警戒でしたし……罠があったらどうするつもりだったのやら」

ほむら「ただのトーシローです。間違いありません」

さやか「で、でもさ、私達を助けるためかも知れないし……」

ほむら「ですから、私達そのものが罠だという可能性を考慮していないんです」

ほむら「人質を餌に罠を仕掛ける。卑劣な手ですが、中々効果的だと私は思います。私なら躊躇わずにやります」

さやか「内心のどす黒さを吐露すんなよ……」

ほむら「命のやり取りに正義も黒さもないでしょう。まぁ、兎も角」

ほむら「要するに、命知らずにもほどがあるんですよ、あの二人」

ほむら「あんな体たらくじゃ、命懸けの闘いを生き残るなんて無理です。
    あの二人が命懸けの闘いをしているとしたらとうの昔に死んでいないと可笑しい」

ほむら「よって魔女と命懸けで戦う魔法少女ではあり得ない。だからコスプレイヤーに違いない」

ほむら「これにて証明完了です」

ほむら「そうですよね! お二人とも!」

まど マミ「……わ……私たちは……」

まど マミ「魔法少女、です……」

ほむら「なっ!? ばんなそかな!?」

さやか「どうすんだよ!? 自分の推理を語るという形で思いっきり貶してたよ!?」

59 : 1 - 2014/01/19 08:38:24.56 al4yrcLp0 33/569



ほむら「だっ、だって本当にそう思ったんですよ!? 間抜け過ぎるって!」

ほむら「妖精さんの道具みたいなはちゃめちゃ仕様なら兎も角、高々魔法を使えるってだけで
    一体何を思い上がってんだって話じゃないですか!」

まど マミ「ぐはぁっ!?」

さやか「現在進行形で場の空気を乱すなーーーーーーーっ!?」

シャル「えーっと……どうしようかなぁ……」

ほむら「ああ! そう言えばシャルロッテさんが危ない! 忘れてた!」

さやか「忘れんなよ!? つーかさっきからアンタふざけてんのか!」

ほむら「妖精さんの仕業かもしれません(キリッ」

さやか「よーしふざけてるなその綺麗な顔ぶん殴ってホームベースみたいにしてやるから覚悟しろ」

ほむら「あ、ま、待ってください!? 今のはジョークでもなんでもなくて、妖精さんがいると
    それだけで殺伐とした世界が優しさと不条理で満ちたものに変わりまして」

さやか「言い訳はいいわけーっ!」

ほむら「きゃぴんっ!?」

シャル「うーん、結界解除しちゃおうかなぁ……でも何処に出るか分からないし……」

まど マミ「………………」

マミ「はっ!?」

61 : 1 - 2014/01/19 08:43:10.23 al4yrcLp0 34/569



マミ「そ、そうだわ。こんなところでぼーっとしてる場合じゃなかった」

マミ「あの人たちは、多分結界に巻き込まれた人ね。意識を保っているあたり、魔法少女の才能があるみたい」

マミ「今は彼女達を助け出すのを優先するわよ」

まどか「そ、そうですね!」

まどか(と言うか、ほむらちゃんが二人居るのはなんで……双子?)

まどか(ま、まぁ、後で聞けばいいか。うん)

まどか「みなさん、こっちへ!」

ほむら「あー……なんと言いましょうか……」

さやか「慌ててるところ申し訳ないけど」

シャル「お構いなく?」

まどか「何が起きているか分からないと思うけど、此処は危ない場所なの」

まどか「お願い、私を信じて!」

ほむら(信じて、と言われても……)

シャル(今さっき最大の危機が排除された訳で……)

さやか「あれ? そういえば妖精さんたちは?」

さやか「姿が見えないけど……」

ほむら「妖精さんは人間が大好きなのですが、好き過ぎて姿を見せるのを恥ずかしがるのです」

ほむら「今ごろ物陰に隠れて、こちらをそっと窺っていると思いますよ」

ほむら「まぁ、さっき何人か私の頭の中に戻って来たので、いざとなったら呼び出しましょう」

さやか「ふーん」

さやか「……って、なんであたしは今のほむらの言葉に納得してんだ!?」

まどか「あ、あの、さやかちゃん……?」

シャル(……私が魔女って、あの二人気付いてないわよね……?)

シャル(今のうちにこっそり結界を解除しちゃえば……)

62 : 1 - 2014/01/19 08:43:59.27 al4yrcLp0 35/569





??「待つんだまどか、マミ。油断してはいけないよ」




63 : 1 - 2014/01/19 08:49:00.78 al4yrcLp0 36/569



ほむら(誰の声?)

さやか(なんか、頭に直接……)

シャル「この声は……!」

マミ「キュゥべえ?」

QB「戦闘が始まらないから不思議に思って来てみたけど、成程、こういう状況なら仕方ないね」

ほむら(!? 何時の間に……!)

さやか(何アレ……猫、みたいな……?)

シャル「……よくも私の前に姿を出せたものね」

シャル「キュゥべえ」

QB「やれやれ……敵意を向けられる可能性は考慮していたけど、予想以上だね」

マミ「キュゥべえ? あの、あの人の事何か知ってるの?」

シャル「知ってるも何もコイツは―――」

QB「マミ、まどか。アイツは魔女だ」

五人「!?」

シャル(ちっ! 先手を打たれた!)

ほむら(先程のシャルロッテさんの話から考えるに、魔法少女は魔女の事を絶対的な悪だと吹き込まれている)

ほむら(だとすれば、鹿目さん達はシャルロッテさんの言葉をもう受け止めてくれない!)

さやか(え、えーっと、つまりどういう事だってばよ!?)

マミ「それは本当なの? キュゥべえ」

QB「ああ、間違いない。彼女は魔女だ」

QB「何故人間の姿なのか、何故言葉が話せるかは分からない」

QB「だけど彼女の言葉には、耳を貸さない方が得策じゃないかな。魔法で洗脳してこないとも限らないしね」


64 : 1 - 2014/01/19 08:53:01.84 al4yrcLp0 37/569



シャル「ま、待って! 私の話を聞いて!」

マミ「……………」

ほむら(巴先輩の目付きが変わった……ああ、どう見ても敵意ですね、あの目付き)

ほむら(キュゥべえさんの言い分は知っている側から聞くと胡散臭い事この上ないですが、
    魔女退治を正義と信じていれば疑う余地はない)

ほむら(ましてや、てんでなってないとはいえ命懸けの戦いに身を置いている。
    洗脳魔法の存在を臭わされたら、そりゃあ信じられなくもなります)

ほむら(万が一魔女が正気を保って真実を伝えようとしても、簡単に真実を隠蔽出来ると)

ほむら(……もしかすると隠蔽しているという認識すらないかも。唆し方に悪意を感じられなかったし)

ほむら(中々厄介な相手のようですが……)

ほむら(とりあえず、今は静観しているとしましょう)

ほむら(情報も欲しいですし、”最悪”なんて、妖精さんがいる限りあり得ませんからね)

シャル「お、お願い……私の話を聞いて! 二人はキュゥべえに騙されているの!」

マミ「黙りなさい。一般人だと思ってたけど、魔女なら話は違うわ」

マミ「鹿目さん。人型だからって、手加減は駄目よ」

まどか「分かってます。私も魔法少女だから……戦います」

さやか「ちょちょちょ、ちょっと待って!」

まどか「さ、さやかちゃん!?」

ほむら(あ、美樹さんがシャルロッテさんの前に出た)

ほむら(巴先輩と鹿目さんが戸惑ってる……うーん、美樹さんの方が正義の味方って感じ)

まどか「さやかちゃん! 早くその人の前から退いて! 危ないから!」

さやか「危なくない! いや、確かにちょっと危ない時もあったけど!」

さやか「でも今はもう危なくないんだ!」

シャル「さ、さやか……」

マミ「何があったかは知らないし、あなたもなにが起きているか分からないでしょう」

マミ「でもね、そいつは呪いと絶望を振りまくの。だから倒さないといけない存在なのよ」

さやか「違う! シャルちゃんは優しい魔女になったんだ!」

QB「そんな魔女はあり得ないね。全ての魔女は、絶望から生まれるんだから」

さやか「お前は黙ってろ!」

まどか「……さやかちゃん」

まどか「さやかちゃんがその子に、何を言われたのかは分からない」

まどか「だけど、その子が魔女である以上今までにたくさんの人を襲った筈。たくさんの人を絶望させた存在なの」

まどか「私は魔法少女だから、そんな悪い魔女は倒さないといけない」

まどか「お願いさやかちゃん。魔女の前から退いて。手遅れになる前に」

さやか「なんだよ……なんで、なんでそんな酷い事が言えるんだよ!」


65 : 1 - 2014/01/19 08:55:17.32 al4yrcLp0 38/569




さやか「どーせ二人も魔女になるのに、なんで仲良く出来ないんだよ!?」



まど マミ「……え?」

QB「なっ!?」

シャル「さささささささやかーっ!?」
ほむら「美樹さーーーんっ!?」

さやか「え、何? 何?」

シャル「この馬鹿! 私がキュゥべえに騙されて魔法少女になったって教えたじゃん!」

シャル「だったらあの二人が魔女化について知ってる訳ないでしょーが!」

さやか「え? あ、そ、そうだっけ?」

さやか「いや、でも何時か知る事だし」

ほむら「絶望したら魔女になってしまうと聞きましたよね? 私と一緒に聞きましたよね?」

ほむら「自分達が今まで倒してきた怪物が、元々自分達の仲間だって知って絶望しない人が居ますか!?」

ほむら「と言うか、やってる事は人助けと称した殺人ですよ? 自殺もんですよ自殺もん」

さやか「あ、えと、それは」

シャル「しかも先の言動から察するに、二人とも魔法少女は正義の味方だって認識している感じでしょ!」

ほむら「転げ落ちる時、高い場所から落ちた方がダメージが大きい事を美樹さんはご存じないのでしょうか?」

さやか「……………」

さやか「す、すみませんっしたーっ!?」

シャル「今更謝っても遅いわよ! どーすんのよ! 絶望コースまっしぐらよ!」

ほむら「正直心臓が止まる想いでしたよ! まぁ妖精さんが居るから大丈夫だと思いますけど!」

シャル「そうね妖精さんが居るから大丈夫よね! でもアンタは反省しなさい!」

さやか「すみませんすみません! もうしません! 私は会話に参加しません!」

マミ「……そう、そういう事ね……」

シャル「ヤバい!? このままじゃ――――」

66 : 1 - 2014/01/19 08:59:23.26 al4yrcLp0 39/569



マミ「あなた達、やはり魔女に操られているわね!」

まどか「こんなのってあんまりだよ!」



ほむ さや シャ「……………」

ほむ さや シャ(あ、そういう発想に行くんだ……)

ほむら「……えーっと……(思った以上になんて声をかけたらいいのか分からない)」

シャル(肯定したら私悪者だし、否定したらあの子たち魔女化コースだし、そもそも信じるか怪しいし)

さやか(アーアーワタシハナニモイワナイキコエナーイ)

マミ「やっぱり魔女を倒すしかない」

マミ「丁度いい時に鹿目さんのクラスメートが射線から退いたしね! 鹿目さん!」

まどか「分かってます!」

シャル(弓と銃を構えた!? 仕方ない、あの子たちの狙いは私だから此処から離れれば――――)

ほむら「妖精さん! なんとかしてください!」

妖精さんA「はっははーい」

さやか「うわ。本当に耳から出てきた……見るの二度目だけど」

マミ「っ!? 新手の使い魔!?」

まどか「なんでほむらちゃんの身体から使い魔が……!?」

ほむら「それで、どうすればいいでしょうか?」

妖精さんA「このおまもりをみにつけてくだされ」

ほむら(首飾り、みたいですね……)

ほむら「なんの疑問も持たずに装着!」

妖精さんA「まじょさんにもどーぞです」

シャル「あ、ども……いやいや!? こんなの付けてどうなるの!?」

さやか(でもちゃんと付けてる……)

マミ「隙ありね!」

シャル「っ!? 不味―――――」

さやか「ああ!? シャルちゃんがリボンでがんじがらめに!?」

マミ「止めよ! ティロ・フィナーレ!」

シャル「そんな、う、うわああああああああああああっ!?」


67 : 1 - 2014/01/19 09:04:59.94 al4yrcLp0 40/569


シャル「……あれ?」

マミ「撃った弾丸が……逸れた……? まさか、魔女の力!?」

シャル「え? いや、あの、何もしてな」

まどか「私もやります! えいっ!」

まどか「……! だ、駄目! 全然当たりません!」

ほむら(たくさんの光の矢がシャルロッテさんに……でも、全部不自然な軌道で逸れていく……)

ほむら「妖精さん。この首飾りは一体?」

妖精さんA「くうかんをまげまげしてます」
妖精さんA「とびどーぐはつうじませぬ。みんなまがるです」
妖精さんA「いきものにはやさしくせっていしてるので、にちじょうせいかつにはししょうなし?」
妖精さんA「でもどっじぼーるでぶつけてもらえなくなるのー」
妖精さんA「きゃっちゃーふらいもとれませぬ」
妖精さんA「きゅーぎにはちめいてきかと?」

ほむら(成程。近くの空間を歪める事で、どんな飛び道具も通用しなくなると……)

ほむら(にも拘らず日常生活に支障が出ない。うん、相変わらずの出鱈目っぷり)

シャル「……とりあえず、安全は確保出来たけど……」

マミ「くっ! どうすればいいの!」

まどか「そ、そうだ! 近付いて叩けば……」

マミ「駄目よ、私達の力じゃ魔女に打撃を与えるのは難しいわ」

まどか「そんな!」

シャル「……あの子たち、全然諦めてくれそうにないわぁ……」

ほむら「ふむ。では無理やり諦めてもらいましょう」

ほむら「妖精さん。あちらの方々に、穏便にお引き取り願いたいのですが」

妖精さんA「りょうかいしまっせ」
妖精さんA「では、このべるをならしてー」

ほむら「べる? ……というより、鈴っぽいですね。サイズ的に」

妖精さんA「ばいばいべるー」
妖精さんA「ばいばいっておねがいしながらならすのー」
妖精さんA「それでなんでもばいばいできます」

ほむら「成程。相変わらずどういう原理なのか、何が起こるのかさっぱりな道具ですね」

ほむら「それでも容赦なく使ってしまう私。みんな、ばいばーい」リンリーン

マミ「……あ、コンロの火ってちゃんと消したっけ? 帰って確かめないと……」

まどか「……もう五時だ……帰らないと……」

QB「あれ? 今日って定時報告の日じゃ……母星に帰らないと……」

マミ「帰らないと」

まどか「帰らないと」

QB「帰らないと」

三人「帰らないと 帰らないと 帰らないと」

さやか「……帰っていった」


68 : 1 - 2014/01/19 09:06:44.27 al4yrcLp0 41/569



ほむら「流石です。ご褒美にたっぷりとお菓子をあげましょう――――シャルロッテさんが」

シャル「私がかい!?」

ほむら「魔女の時の力は使えますよね? ほら、妖精さんがごほーび欲しがってますよ!」

妖精さんA「………………」

シャル「うっ!?」

さやか(無言でじっとシャルちゃんを見つめてる……かわいい)

シャル「わ、わーったわよ……ほらほらいくらでも食ってけーっ!」

妖精さんA「ぴーーーーーーーーーーっ!」







――――この後、私達はシャルロッテさんと一緒にお菓子パーティをしました。


妖精さんもたくさん増えて、お約束のように大暴走。慣れている私でも戸惑う事が起きたり、

つられてシャルロッテさんが暴走したり、ついでに美樹さんも諦めて暴走したり……そして私も乗じて暴走したり。


私達はたくさん笑いました。シャルロッテさんは特に笑っていました。
まるで、今までの分を取り戻そうとしているかのように。


問題は山積みです。人間に戻ったシャルロッテさんはどうやって生きていくのか。

キュゥべえと魔法少女を知って、どうしていくか。

それに巴さんという方は私やシャルロッテさんを敵だと思っているようです。

きっと、次にまた出会った時も攻撃してくるでしょう。


その時は多分、鹿目さんも一緒に。


だけど私は不安になりません。絶望なんてしません。


だって妖精さんがいるから。

どれだけ世界が残酷でも、楽しさで塗り潰してくれる妖精さんが傍に居るのだから……





83 : 1 - 2014/01/20 08:31:37.89 RCG7+1yk0 42/569



えぴそーど よん 【ほむらさん達と、まほうしょうじょさんたち】


84 : 1 - 2014/01/20 08:34:17.36 RCG7+1yk0 43/569



窓から差し込む朝日――――それが私の目覚まし。
季節によって起こしてくれる時間はまちまちだけど、この時期は大体朝六時には起こしてくれる。

「ん……」

布団の中で身体を捩り、そのまま伸びを一回。解れた身体を起こし、ベッドから窓の外を眺める。

眼下に広がる見滝原の町並み。私が守っている世界。
高層マンションからの眺めは悪くないし、普段は、この街並みを見ていると気が引き締まる。

だって私は魔法少女だから。

悪い魔女から人々を守る、正義の味方だから。


なのに。

「……っ」

昨日の事を思い出し、唇を噛んでしまう。

分からない。

何故私はあの時、魔女を前にして家に帰ってしまったのか。

原因は分かる。
暁美ほむら(鹿目さんが名前を教えてくれた)が使ったあのベル、ひいてはそれを渡した小さな使い魔の仕業だ。
鹿目さんの友達である美樹さんは……何もしていなかったような気がするので無視しよう。うん。

だけど、だけど一体どういう事?

精神に干渉する魔女は確かに存在する。噂で聞いた事もあるし、実際に戦った事もある。

でも、それは人のトラウマを抉ったり、幻覚を見せたりする能力。
あんな風に思考を完全に、しかも一瞬で塗り替えてしまうなんて、それこそ最強の魔女ではないか。

何より一番不可解なのは、魔女が私達を殺さずに結界の外へと追い払った事。

それに今考えると暁美ほむらと美樹さんが、操られているように見えなかったのも不自然。

分からない。あの魔女が分からない。使い魔も、暁美ほむらと美樹さんが何を考えているのかも……

そして、あの言葉も――――


85 : 1 - 2014/01/20 08:35:58.23 RCG7+1yk0 44/569



QB「おはよう、マミ」

マミ「……おはよう、キュゥべえ」

QB「昨日は大変だったね」

マミ「……そうね」

マミ(そう……昨日私は、魔女を見逃してしまった)

マミ(いえ、見逃された、と言うべきかしら)

マミ「……何故あの魔女は、私達を生かしておいたのかしら」

QB「分からない。僕達を利用しようと考えているのかも知れないけど……」

QB「もしかすると、魔女もまた操られているかも知れないね」

マミ「魔女が?」

QB「以前僕が契約した魔法少女の中に、魔女を操れる子が存在していた」

QB「暁美ほむらや美樹さやかは魔法少女じゃないけど……」

QB「実例があるんだから、なんらかの方法で魔女をコントロールしていても不思議はないね」

マミ「……そうね」

マミ「そう言えば、暁美ほむらの、その……耳から出てきたのは、使い魔だったのかしら?」

QB「?」


86 : 1 - 2014/01/20 08:39:39.88 RCG7+1yk0 45/569



QB「マミ、それは一体なんの話だい?」

マミ「え? なんのって……暁美ほむらの耳から、なんか出てきたじゃない」

マミ「それが変なベルを取り出して、暁美ほむらが鳴らした途端私達は帰りたくなったのよ?」

QB「待ってくれ。そんな事態は確認していない」

QB「一体どんな存在が現れたんだい?」

マミ「え!? えーっと……(いざ説明するとなると、なんと言えばいいのか分からない……)」

マミ「つ、使い魔にしては、可愛かった……小人? かしら? 十センチぐらいの……」

QB「ふむ……やはり、そんな存在は確認できていない。どうやら僕には見えない存在らしいね」

マミ「そんな……そんな使い魔がいるの?」

QB「前例はないね」

QB「やっぱり、暁美ほむら達は信頼すべきじゃないと思うな」

QB「何をしてくるか、何を企んでいるか、僕にはまるで見当が付かない。何かあってもサポートが出来ないよ」

マミ「え、ええ……」

QB「彼女達については、僕も調べてみるとしよう」

QB「マミは彼女達が何か仕掛けてきても対策出来るよう、気を引き締めてほしい」

マミ「わかったわ。そっちも気を付けてね」

QB「ああ、そうするよ」

QB「ところで、マミはそろそろ学校に行く支度をした方がいいんじゃないかな?」

マミ「あ、そ、そうね……!」


87 : 1 - 2014/01/20 08:41:08.41 RCG7+1yk0 46/569



~魔法少女支度中~



マミ「それじゃ、行ってくるわね」

QB「いってらっしゃい、マミ」

QB「学校だからって油断しない方がいいよ」

マミ「……ええ。そうよね」

マミ(考えたくないけど……魔女を操っているかも知れない子だもんね。何をしてきても可笑しくない)

マミ(みんなの事は、私が守る!)

マミ(だって私は正義の魔法少女――――)

マミ「……………」

QB「? どうかしたかい?」

マミ「キュゥべえ……あの、一つ聞きたいけど……」

QB「僕で答えられる事なら」

マミ「あのね、えっと……」



マミ「私達魔法少女が魔女になるって話は……本当、なの?」



QB「……」

QB「はぁ。マミ、いくつか思い出してほしい。一つ。それは誰の口から聞いたのか」

マミ「それ、は……」

QB「そう、元々魔女だった者と、彼女に操られている、或いは操っているかも知れない者達だ」

QB「そんな人物の言った情報なんて、全く信憑性がないじゃないか」

マミ「……」

QB「それに魔女は人を誑かす。魔女と僕の話、マミは一体どちらを信じるんだい?」

マミ「……そう、よね」

マミ「ごめんなさい。学校行ってくるわね」

QB「いってらっしゃい」

キー、バタン

QB「…………」

88 : 1 - 2014/01/20 08:45:07.79 RCG7+1yk0 47/569



QB「ああ、そう言えば質問に答えていなかったね。そうさ、魔法少女は魔女になる」

QB「マミはどうやら事実を誤認したようだけど……いざ魔女になる時、うらぎられたと
   『勝手に』思って、より深く絶望してくれるかも知れない」

QB「なら、わざわざ訂正する必要はないね」

QB「……当面の問題は、暁美ほむらと美樹さやか、そして自我を取り戻した魔女か」

QB(ほむら達が魔女の真実を知っていたのは、魔女から直接聞いたのだとすれば別段可笑しくはない。
   元魔法少女である魔女がその事実を知っているのは、当然の事だからね)

QB(しかし……魔女のあの姿はどういう事なんだろう?)

QB(魔女を人間に戻すなんて、僕たちの科学でも出来ない。それこそ魔法少女の祈りでもなければ不可能だ)

QB(それを成し遂げた者があの三人の中に居るのなら、恐らくは暁美ほむら、か)

QB(そしてマミが見たという、謎の種族)

QB(……精神汚染に耐性があるこの身体さえ支配し、別惑星にいる僕の本体の精神をも操る科学力)

QB(そして地球全土を有史以前から観測している僕らが、未だ察知出来ないほどの隠匿能力……)

QB(……調査が必要だ)

QB(結果次第では、彼女たちには退場してもらう必要がありそうだね……)

QB(……………)


QB(ああー、どうしよう……昨日母星に帰るのにエネルギーを使いすぎて、今月の配給分殆ど使い果たしちゃったよ……とほほ)



89 : 1 - 2014/01/20 08:55:16.01 RCG7+1yk0 48/569



~通学路~


マミ「あ……鹿目さん」

まどか「あ、マミさん……お、おはようございます」

マミ「おはよう」

まどか「……………」

マミ「……………」

マミ「ねぇ、あの後その……お友達と連絡は出来たの?」

まどか「……ほむらちゃんは電話番号もアドレスも知らないので、出来ませんでした」

まどか「さやかちゃんとは話が出来ましたけど、自分は迂闊な事を言えないからほむらちゃんに聞けの一点張り」

まどか「何時ものさやかちゃんと全然違う。普通じゃ、ありませんでした」

マミ「そう……やはり、魔女に操られていると考えるべきね」

マミ「或いは、暁美ほむらが裏で糸を引いているのかも」

まどか「……そんな」

まどか「で、でも、ほむらちゃんは魔法少女じゃ……」

マミ「確かに暁美ほむらは魔法少女じゃないってキュゥべえも言っていたわ」

マミ「でも、何らかの手段で魔女を操っている可能性もあるの」

マミ「彼女が何を企んでいるかは分からないけど……少なくとも、ろくな事ではないわね」

マミ「そして彼女が悪事を働いた時、止められるのは私達だけよ」

マミ「鹿目さん、辛いかも知れないけど、私達は魔法少女として戦わないといけな」



さやか「あれ? まどかと巴先輩じゃん。おっはよー!」


90 : 1 - 2014/01/20 08:58:55.41 RCG7+1yk0 49/569



まど マミ「っ!?」ビクン

まどか「さ、さささささささやかちゃん!?」

マミ「ああ、あああ、あら、現れたわね!」

さやか「? 二人とも、どうしたの?」

まどか「ど、どうしたのって……昨日の事、覚えてない、の?」

さやか「何言ってんの。友達が魔法少女って知った日の事忘れる訳ないじゃん」

まどか「だったら……なんで……」

さやか「? なんでって、何?」

まどか「えっと……(何って訊かれると……)」

さやか「っと、そーいやまだかなぁ。ここで待ち合わせなんだけど」

さやか「つーか遅刻したと思って急いできたのに居ないとか……」

まどか「……? あの、誰かと待ち合わせしてるの……?」

さやか「誰かも何も――――お。噂をすれば」



ほむら「すみ、ま、せーん……遅くなりましたぁー……!」



さやか「やっときたよー」

マミ(なっ……暁美ほむら!?)

まどか(ほむらちゃん!?)

まどか(――――だけじゃない! ほむらちゃんが連れているのは……)



シャル「はーーーーなーーーーせぇーーーー!」



まどか(あの時の、魔女!?)

マミ(ま、魔女が首根っこ掴まれて引きずられている……やはり、あの子が魔女を操って……)

マミ(と言うか、なんで魔女が結界の外に!?)

91 : 1 - 2014/01/20 09:05:20.19 RCG7+1yk0 50/569



さやか「遅いよ全く」

ほむら「すみません。シャルロッテさんが愚図って、全然家から出ようとしてくれなくて……」

シャル「愚図るもなにもあんたが無理やり……!」

さやか「なに? ほむら、シャルちゃんを襲ったの? 性的に?」

ほむら「流石に、自分の肢体に欲情するような変態ではありませんよ。さやかさんになら兎も角」

さやか「え? あたし襲われる候補なの?」

ほむら「襲われない候補だと思っていたのですか?」

さやか「え……え?」

まどか「……あ、あの、ほむらちゃん?」

ほむら「あ、鹿目さん。おはようございます」

まどか「お、おはよう……じゃなくて!」

まどか「なんで魔女と一緒にいるの!?」

ほむら「ああ、そういえば鹿目さん達は(妖精さんの道具によって)帰ってしまったから知りませんよね」

ほむら「シャルロッテさんは今、私の家で一緒に暮らしています」

マミ「ま、魔女と一緒に暮らしているですって?!」

ほむら「あれ? あなたは……誰、でしたっけ?」

マミ「巴です! 巴マミ! 昨日そこの魔女を狩ろうとした魔法少女!」

ほむら「ああ、そういえば……すみません。クラスメートでもない人の事なので、あまり覚えていなくて」

マミ「むっきー!」

まどか「マミさん落ち着いて!?」

まどか「そ、それより、なんで魔女と一緒に暮らしているの!?」

ほむら「? では逆に訊きますが……」

ほむら「鹿目さんは、中学生ぐらいの女の子が一人野宿をしようとしているのを無視出来ますか?」

まどか「む、無視は、出来ない、けど……」

ほむら「つまりそういう事です。彼女はうちで保護しているだけですよ」

ほむら「今、私が一人暮らしをしているからってのもありますけどね」

まどか「でも、ならなんで外に連れ出して……」

ほむら「学校に通うためですよ?」

まど マミ「!?」


92 : 1 - 2014/01/20 09:19:23.78 RCG7+1yk0 51/569



さやか「え……え……?」

ほむら「さやかさん。いい加減正気に戻ってください。襲いませんから」

さやか「え、あ、ああ! なーんだ、そうだよね! はっはっはっ!」

さやか「で、えーっと……」

ほむら「シャルロッテさんを学校に通わせようという話をしていました」

さやか「そ、そうか。うん。いいじゃない。シャルちゃんも学校行きたいんだね」

シャル「行きたかないわよ! コイツに無理やり連れてこられただけ!」

シャル「さやかからも言ってよ! 私は人間じゃないんだから学校なんて行かなくて良いって!」

ほむら「駄目です! いくら魔女でもあなたは学生なんですよ! 学校に通わせるのは保護者の義務です!」

シャル「誰が保護」

ほむら「一人の夜は寂しいと言って私の家に泊まった挙句一緒にお風呂に入ったり一緒の布団で寝たり
    果ては私の手料理を食べた途端おかーさんおかーさん言いながら泣き出したのは誰でしょうかね」

シャル「ぎゃあああああああ!? 言うな言うな言うな!? それ以上言うなああああああああああああっ!?」

さやか「それ以上って、まだなんかあんのかよ」

ほむら「ええ。例えばテレビを見て」

シャル「やーーーーーーーーめーーーーーーーろーーーーーーーーーーーー!!」

ほむら「ぐえ!? く、首絞めはひど、酷、うぶぶぶぶーっ!?」

シャル「死ね! 死んで詫びなさい! そんで後から私も死ぬ!」

さやか「今のって告白じゃね?」

シャル「さやか! 聞いたからにはアンタも殺す!」

さやか「理不尽だ!?」

ギャーワーギャーギャーテーギャーテー

まどか「……………」

マミ「……………」

まど マミ「はっ!?」

まどか「ま、マミさんどうしましょう!? ほ、ほむらちゃん、魔女を学校に連れていくつもりのようですよ!?」

マミ「そ、そんな事させる訳にはいかないわ!」

マミ「何を企んでいるかは知らないけど……今度こそあの魔女を仕留める!」変身!

まどか「はい!」変身!

さやか「ん? うわ!? ふ、二人が魔法少女に……!?」

ほむら「ぜー、ぜー……あ、本当です。でも、変身は人に見られちゃいけないのがお約束では?」

シャル「お約束だけど、別にそんなルールはないからね。見世物になりたくないから普通は秘密にするけど」

シャル「余程私を倒したいと見えるわ」


93 : 1 - 2014/01/20 09:22:03.76 RCG7+1yk0 52/569



マミ「結界の外に出てきた魔女がいるのよ? 多少のリスクは仕方ないわ」

マミ「さて、私達は戦う準備が出来たけど……」

マミ「あなたはどうするのかしら……暁美ほむら?」

ほむら「あ、もしもし……はい、はい、えっと」

さやか「……ほむら。今ぐらいはケータイは置いといて、真面目にあの人の話聞いてあげようよ」

さやか「流石に可哀想だよ。ほら、巴先輩ちょっと涙目じゃん」

マミ「ちょ、泣いてないから!?」

ほむら「いえ、今のうちに電話をしときたい場所がありまして……あ、すみません。えっと、今ですね……」

マミ「……………ぐすん」

まどか「ま、マミさん……」

さやか「……えーっと、ほむらの代わりに私が」

さやか「まずは冷静になりましょう? 魔法少女の変身も解いてくださいよ」

マミ「そ、それは出来ない相談ね」

マミ「何時その魔女が私達に襲い掛かってくるか分からない。警戒しておくのは当然じゃなくて?」

シャル「要はこっちを信じてないって事ね。ま、無理ないと思うけど」

さやか「じゃあ、そのままでいいです」

さやか「でも、銃は下ろしてください。怖くてうかうか話し合いも出来ないですよ」

マミ「あなた、何か勘違いしているわね?」

マミ「私達は最初から、そこの魔女を見逃してあげるつもりはない。交渉なんてする必要もないの」

マミ「私達が死ぬか、魔女が死ぬか……その二択しかないのよ」

さやか(勘違いしてるのはあなたですって言いたい)

さやか「で、でも、えーっと」

さやか「そ、そうだ! 魔女の結界なら兎も角、こんな道端で死闘なんてしたら犠牲者が出るかも知れませんよ!」

さやか「ここはお互い退いた方が得ではないかと思うのですがー……」


94 : 1 - 2014/01/20 09:24:15.43 RCG7+1yk0 53/569



マミ「魔女を野放しにすれば、ここでの死闘で巻き添えになる人よりも多くの人が死ぬでしょうね」

マミ「勿論犠牲者を出すつもりなんてないけど……今以上の被害が出るのなら、退く訳にはいかない」

マミ「第一、悪者との取引に応じる正義の味方なんて居る訳ないでしょう?」

さやか「うぎぎぎぎ……じ、自分こそ正義って思う奴ほど性質が悪いって本当ね……!」

シャル「何故かしら。今すっごくアンタが言うなって気持ちになったわ」

さやか「うっさい!」

さやか(でも本当にどうすりゃいいの?!)

さやか(このままじゃあ……)

ほむら「……一つ、よろしいでしょうか?」

さやか「ほむら!? で、電話の方は……」

ほむら「あ、そちらは終わりました。もう平気です」

ほむら「それよりも先輩。鹿目さん」

マミ「……………何かしら?」

ほむら「私としては穏便に事を済ませたいのです」

ほむら「シャルロッテさんはもう人間を襲わない……と思いますし、例外って事で見逃してはくれませんかね?」

マミ「襲わないと思うなんて、そんな曖昧な言葉をどう信じればいいのかしら?」

ほむら「普通の人間が人間を襲う事だって珍しくないんですから、断言なんて出来ませんよ」

ほむら「あなただって、傍から見れば『人間』を襲おうとしている物騒な人ですよ」

マミ「言葉で惑わすつもり? 言っとくけど、そんな事で私を操れると思わない事ね」

ほむら(昨日のキュゥべえさんとの会話を聞いた限りまんまブーメランじゃん、とか言っちゃ駄目かなぁ)

ほむら「……じゃあ今回、”あなた”はそれで構いません。戦いは避けられない。そういう事ですね」

ほむら「では、鹿目さん」

まどか「え?」

ほむら「鹿目さんも、私達と戦うつもりですか?」


95 : 1 - 2014/01/20 09:26:56.78 RCG7+1yk0 54/569



まどか「わ、わたしは……」

マミ「鹿目さん。覚悟を決めて……」

ほむら「あなた、黙ってくれませんか? 私は鹿目さんに訊いているんです」

マミ「なっ……何? やっぱり言葉で惑わすから横からちゃちゃを入れられると困ると」

ほむら「唆しているのはあなたでしょう? 誰かが説得しようとしている時横やりをいれる……」

ほむら「それ、唆している側がする事じゃないですか。自称正義の味方なら、自分を客観視してほしいものですね」

マミ「っ!」

さやか(う、うわぁ……)

シャル(何この子……確かに時々口が悪いって思うことはあったけど……)

シャル(これじゃまるで挑発じゃない……怒らせて戦闘になったらどうする気よ)

マミ「……ふん……良いわ。そこまで言うのなら、言わせてあげる」

ほむら「ふぅ。これでようやくまともにお話が出来そうです」

ほむら「それで? 鹿目さん?」

まどか「わ、私は……私は……」

まどか「ま、魔法少女だから、魔女は倒さないといけなくて……だ、だから……」

まどか「だから、あの、ほむらちゃんと戦わないといけないと、思う、から……」

ほむら「つまり本当は戦いたくないけど、使命だから私達を倒すと?」

まどか「うん……」

ほむら「……面白くない答え」

まどか「え?」

ほむら「面白くないと言ったんです」

ほむら「鹿目さんは私達と戦いたくないんですよね? 戦うのが嫌なんですよね?」

ほむら「なんで嫌な事を我慢しているのですか? なんで嫌な事を変えようと思わないのですか?」

ほむら「確かに、我慢してやらないといけない嫌な事はあります」

ほむら「でも幸せそうに生きている『人』を始末するのって、我慢してでもやらなくちゃいけない事なんですか?」

まどか「だ、だって、だってそれは……」

ほむら「ああもう分かりました。魔法少女の使命だからですね。はいはい」

ほむら「ああ、つまらない。自分の考えがないなんて、本当につまらない」

さやか「ほ、ほむら、アンタ何を言って……」


96 : 1 - 2014/01/20 09:31:05.20 RCG7+1yk0 55/569



ほむら「ま、どーでもいいですね。こんな話は」



さやか「ヴぇ―――――――――っ!?」

さやか「オイ!? どーでもいいんかよ!?」

ほむら「説得とか苦手なんですよー。昔から我慢は出来ない、面倒も嫌いってタイプなんで」

ほむら「宿題とかもけっこー妖精さんアイテムに頼って片付けちゃいますからー」

さやか「台無しだ! さっきの長台詞全部台無しだよ! ちょっぴり感動したあたしが馬鹿だった!」

ほむら「あたしって、ほんと馬鹿?」

さやか「その台詞を言うな! 何故かアイデンティティを奪われた気がするから!」

シャル「まぁまぁ、落ち着きなよさやか」

さやか「シャルちゃん! でも、でもあたしのアイデンティティが……」

シャル「え? 大事なのそこなの?」

さやか「あたしの個性が危機なんだよ!? 大事に決まってるでしょ!」

シャル「いや、なんでアンタがそこまでその台詞に固執するかは知らんし、割とどーでもいいから」

シャル「それよりも、ほら」


マミ「……」ピクピク

まどか「……」ピクピク


シャル「魔法少女組が眉間をピクピクさせてる。多分、さやかみたいに若干心打たれたのに、それが茶番だって知ったからかと」

さやか「……」

ほむら「……」

ほむ さや(ですよねー……)

マミ「ふ、ふふ……随分とおちょくられたものね……」

まどか「ほむらちゃん、真面目にやってよ……それとも、ほむらちゃんにとって魔女を操る事ってその程度の事なの……?」

さやか「おい、なんか物凄く状況悪化してるぞ!? どーすんだよ元凶!」

ほむら「どうしましょう?」

シャル「ちょっ、コイツ何も考えずに挑発してたのか!?」

さやか「馬鹿だっ! コイツあたしを遥かに凌駕する馬鹿だ!」

ほむら「いやぁ、なんか盛り上がっちゃって。てへ♪」

さやか「かわいこぶってる場合かぁぁぁぁぁぁぁ!?」

ほむら「うーん。あと少し時間稼ぎが必要なんですが……」

さやか「はぁ!? ……時間稼ぎ?」

97 : 1 - 2014/01/20 09:33:44.95 RCG7+1yk0 56/569



ほむら「うん。先輩が今にも攻撃してきそうですし。早速一手打たせてもらいましょう」

ほむら「その名も――――さやガード」

さやか「え?」

シャル「んぁ?」

まどか「ああ!? ほ、ほむらちゃんがさやかちゃんを引っ張って、魔女の前に連れてきた!?」

マミ「くっ! まさかそんな姑息な手を使うなんて……!」

さやか「……ああ、成程。あたしの後ろに隠れれば、正義の味方である二人はシャルちゃんを攻撃出来ないと」

ほむら「はい! このままシャルロッテさんが一方的に攻撃すれば私達の勝利です!」

シャル「うわ、えげつな」

ほむら「勝てば官軍負ければ賊軍。歴史は勝者によって作られるのです」

シャル「その台詞は死亡フラグ以外の何物でもないように聞こえるけどなぁー」

シャル「あと、私は戦うつもりなんて全然ないんだけど」

ほむら「えー、つまんなーい」

シャル「つまるつまらないの問題じゃないでしょうが」

ほむら「問題です! 楽しさは何に置いても優先されるべきなのです!」

シャル「アンタの優先順位ってどーなってんのよ」

さやか「あのー……ところで、盾にされたあたしの安全は? あたしの優先順位は?」

ほむら「鹿目さん達次第ですね」

さやか「次第!? 次第なのかよ!?」

ほむら「大丈夫ですよー、鹿目さんと美樹さんは友達なんでしょ? 撃ちませんって、きっと」

さやか「巴先輩の方は分かんないじゃん!」

マミ「わ、私だって撃たないわよ!?」

ほむら「でも、カッコ良くないですか? 人をやむを得ない理由で殺めてしまい、かつての味方からも
    追われるようになった孤高の魔法少女って」

マミ「え?」

さやか「揺らいだ! 今あの人の心絶対ぐらって揺らいだ! あたしを殺す気になってたよ!」

さやか「って言うかなんで撃つように誘導したよ今!?」

ほむら「そうですねぇ……強いて言えば、時間稼ぎのためでしょうか?」

マミ「時間稼ぎ……? なんかさっきもそんな事を言っていたけど、一体何を企んで」


ポンポン


マミ(!? 肩を叩かれた!?)

マミ「だ、誰!?」バッ

制服姿の男性「どうも、警察です」

マミ「え?」

まどか「け、警察……?」

98 : 1 - 2014/01/20 09:36:59.81 RCG7+1yk0 57/569



警察官「先程、コスプレ姿の女二人に因縁を付けられているという通報が……」

ほむら「きゃーっ! 助けてお巡りさーんっ!」

まど マミ「え!?」

ほむら「その二人がさっきから私達を脅してきて……」

まど マミ「アイエエエエエエ!?」

ほむら「し、しかもその銃と弓を向けてきて……私、怖くて、怖くて……!」

まど マミ「じぇじぇじぇーーーーーっ!?」

さやか(ああ、さっきの携帯って、そういう事ね)

シャル(自称正義の味方なんだから、善良な警官に怪我をさせるような真似はしない。
    で、警察に補導されるという正義にあるまじき汚点が付く、と)

さやか(だとすると、さっき巴先輩とまどかにしていた挑発もそういう意図かなぁ。
    怒らせて、この場から逃げないよう足止めするためだけの……)

さや シャル(……やり方が黒い)

警察官「……念のために訊くが……その銃は、偽物だよな?」

マミ「ああああの、そのえっとここここれは」

警察官「二人とも動くな!」

まど マミ「ひゃんっ!?」

ほむら(おー、素早く短銃を構えた……やっぱりプロの動きは違うなぁ)

さやか(そしてこの子は警官の姿を煌めく眼で見つめるというね)

シャル(ひょっとして、制服マニア……いや、目線が銃に向いてるから武器マニアか)

マミ「あの、あの、これは」

警官「……銃らしき物を持った不審者と遭遇。応援をお願いします」ムセンキ

まど マミ(めっちゃ大事になってきてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?)

まどか「ごめんなさいごめんなさい! あの、これには事情と言いますかやむを得ないと言いますか」

警官B「応援に来たぞ!」
警官C「挟みうちだ!」

まど マミ「なんでもう来てるのおおおおおおおっ!?」

ほむら(偶々近くを巡回していたのかなぁ? ま、ラッキーって事で)

警官A「いいか……武器を捨てろ」

まどか「は、はいぃぃぃ!?」

マミ「捨てます! 捨てますから! はい捨てました! だから今回は見逃」

警官B「確保おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

警官×3「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

まど マミ「きゃあああああああああああああああああ!?」


99 : 1 - 2014/01/20 09:40:14.09 RCG7+1yk0 58/569



\ジュウ、カクホーッ!/
\トリアエズ、コウムシッコウボウガイダー!/
\トリアエズッテナニヨーッ!?/


ほむら「さて、今日の学校はお休みしないといけませんかね。事情聴取があるでしょうから」

さやか「え? あたしらも受けるの?」

シャル「一応通報者兼被害者なんだから、そりゃ受けない訳にはいかんでしょ。騒動に乗じて逃げるのも出来そうだけど」

シャル「で、どうする? 今から口裏合わせとく? それとも逃げる?」

ほむら「いえ、どちらも特に必要ないでしょう」

ほむら「あの二人に武器を向けられた。殺すと脅された。それを聞いた私達は怖く思った」

ほむら「私が通報した内容は主にこの三点です。この三点が食い違わなければ、特に問題はないでしょう」

ほむら「まぁ、相手の一人がクラスメートなのが気になるかも知れませんが……」

ほむら「通報したのは転校生である私ですから、顔を覚えていないでなんとか通せるでしょう」

ほむら「それに襲われかけたのは間違いないんですから、そのぐらいは些細な事ですよ」

シャル「えぐい事平気でやる癖に、詰めは大味なのねアンタ……」

ほむら「基本、ノリで生きてますので。妖精さんみたく」

さやか「はぁ……仁美にメールしとこ」




……………
………




100 : 1 - 2014/01/20 09:42:44.02 RCG7+1yk0 59/569




~お昼休み 見滝原中学校~


ほむら「おはようございますぅー……」

さやか「おっはー……」

仁美「さやかさん! それに、暁美さんも!」

仁美「一体何があったのですか? なにか、警察の方のお世話になったとの噂が……」

さやか(もう広まってんのかよ……)

ほむら「まぁ、色々ありまして。事情聴取のようなものを受けないといけなくなったんですよ」

ほむら「思っていたよりも早く終わり、私達はなんとか学校に来れましたが……」

ほむら「鹿目さんも一緒だったんですが、彼女は事件……というほどではありませんが、
    私達よりも深く関わってしまいましたので、より細かな聴取を受けているようです」

ほむら「もしかすると今日は学校に来れないかも知れません」

さやか(何しろ犯人だもんね……黒幕はほむらの方だけど)

仁美「そうですの……心配ですわね。あまり長時間の聴取が続くようなら、体調を崩したりしないか……」

ほむら「なら、明日みんなで美味しいものでも食べに行きましょう」

ほむら「名付けて出所祝い」

仁美「あら、いいですわね。出所祝い!」

さやか(本当に事情を聞かれるだけなら、そのネーミングでも笑えるだろうに……哀れなまどか)

さやか(だけど襲われた事は変わりないので、同情しないさやかちゃんなのでした)

仁美「ああ、そう言えば……ひとつ気になっている事が」

ほむら「なんでしょうか?」

仁美「いえ、その……」

仁美「暁美さんの後ろに、隠れるように身を縮こまらせている……」



シャル「……………」



仁美「暁美さんに瓜二つなその方は?」

ほむら「私の双子の妹です」

仁美「え?」

シャル「ちょ、何を言」

ほむら「ジョークです」

仁美「ツッコミが来る前に速攻で発言を撤回しましたわね……」

ほむら「彼女の名前はシャルロッテと言います」

ほむら「それでですね」

ほむら「あ、その前に……よいしょ」

さやか(? ほむらが何処からともかくメガホンを取り出した……?)

シャル(一体何処から、なんてツッコミは野暮かしら)


101 : 1 - 2014/01/20 09:44:58.41 RCG7+1yk0 60/569



ほむら「実はこの子は!」

さやか「ひゃあ!?」

シャル「い、いきなり大声出してどうしたの!?」

ほむら「魔女と呼ばれる怪物なのでーす!」

さや シャル「!?」

さやか(な、何を言いだしてんだ!?)

シャル(そんな事を言って誰が信じると)

クラスメート達「な、なんだって――――――――!?」

さや シャル「信じたああああああああああああっ!?」

ほむら「昔は悪い事もしたかも知れませんが、今は改心してすっかり良い子!」

ほむら「勿論人じゃないので、普通の学生生活は送れない……」

ほむら「でも私は! 彼女にも中学生としての幸せを味わってほしいと思ったのです!」

クラスメート達「な、成程――――――!!」

ほむら「だから!」

ほむら「今日から私とこの子は一緒に授業を受けます!」

ほむら「教室内に私が二人居ても気にしないでくださーい!」

クラスメート達「分かった―――――――!!」

ほむら「以上です」

仁美「そんな事情があったなんて……分かりました。私も微力ながらシャルロッテさんにお力添えしたいと思います」

仁美「何かありましたら、遠慮なく話してください。力になりますわ」

シャル「え、あ、はい。分かりました、はい」

仁美「ではではー」

シャル「で、でわでわー」

さやか「……ほむら、何かした?」

ほむら「はい!」



102 : 1 - 2014/01/20 09:47:16.80 RCG7+1yk0 61/569



ほむら「これは妖精さんアイテム『信じてメガホン』の効果です」

ほむら「メガホンを通じ、信じてーと願う気持ちを声と一緒に増幅」

ほむら「荒唐無稽なほら話でも信じさせるという代物です」

ほむら「メガホンを通して言わないといけないのと、より信じてもらうにはメガホンの出力を上げて
    大声にしないといけないのが難点ですかね」

ほむら「多分妖精さん的美学で、信頼度に応じて声も大きくならないと面白くなかったのでしょう」

シャル「相変わらず意味不明な原理の道具ね……しかも、見た目にはふつーのメガホンなのに」

ほむら「そりゃあ、素材はふつーのメガホンですもん」

シャル「え?」

ほむら「妖精さんの科学力で一番すごいのは、その辺の物で道具を作ってしまう事ですね」

ほむら「このメガホンは捨てられていたメガホンと瓶の王冠、それから輪ゴムで出来ているそうです」

さやか「輪ゴムって……」

ほむら「あ、輪ゴムを舐めてはいけませんよ?」

ほむら「妖精さん的に輪ゴムは最強の動力です。以前作ってくれた宇宙船も輪ゴムが動力でしたし」

シャル「どんな理論よそれ……」

ほむら「さぁ? 以前妖精さんに聞いた時には、がんばってもらう、とのお答えを頂きましたが……」

さや シャル(輪ゴムって頑張れば宇宙まで行けるんだ……)

ほむら「さて、シャルロッテさんもクラスメートの一員になりましたし」

シャル「え? ……………あああああああっ!? そ、そういやそうじゃん!?」

シャル「ちょっと困るわよ! だから私は学校なんて」

ほむら「シャルロッテさん」

シャル「な、何、よ」


103 : 1 - 2014/01/20 09:49:17.93 RCG7+1yk0 62/569



ほむら「本当に嫌なら通わなくて結構です。酷な言い方ですが、私とあなたは赤の他人……その生き方に口出しは出来ません」

ほむら「今日は無理やり連れてきてしまいましたが、明日からはもうしません」

ほむら「でもこれで、あなたは学生としてこの学校に通えます」

ほむら「あなたはクラスメートに、友人として受け入れてもらえます」

ほむら「先生だって、このメガホンを使えばきっと説得出来ます。出来なかったら、別の道具を使って洗脳したっていい」

ほむら「戸籍だとか在学の書類だとか、そんな面倒臭いものも全部妖精さんパワーで片付けます」

ほむら「だから魔女だとか、人間じゃないとか……どうでもいいじゃないですか」

ほむら「あなたは、学校に通いたくないのですか?」

ほむら「日常に、戻りたくありませんか?」

シャル「……わ、私は……」

ほむら「”そこ”は楽しいですか?」

シャル「え?」

ほむら「”そこ”が楽しいなら、しがみついてください。決して離さないでください。守り切ってください」

ほむら「だけど楽しくないのなら……私達の居場所に飛び込んでください」

ほむら「”此処”は楽しい場所ですから、ね?」


104 : 1 - 2014/01/20 09:53:14.04 RCG7+1yk0 63/569





さやか「……シャルちゃん、教室から出て行っちゃったね」

ほむら「仕方ありません」

ほむら「今まで魔女として人を襲っていたのに、いきなり人間に戻ったら、誰だって戸惑うでしょう。早々日常には戻れませんよ」

ほむら「それに私達と出会った時は人に戻れた嬉しさの方が勝っていたとしても、人間になったと実感している内に」

ほむら「やがて罪悪感を抱くでしょう。たくさんの命を奪った自分が幸せになっていいのか、そんな具合に」

さやか「罪悪感って……でも、それはキュゥべえって奴の所為で」

ほむら「シャルロッテさんが本当に無罪放免なのかは、言えません……子供である私には、分かりませんから」

ほむら「だけど私は、シャルロッテさんを助けたいと思いました。友達になりたいと思いました」

ほむら「例え、彼女が何百の屍を築いていたとしても」

さやか「……ほむら」

ほむら「さやかさん。私――――」

さやか「あたしってさ、けっこう潔癖症みたいでさ」

ほむら「え、はい?」

さやか「なんつーのかなー。完璧じゃないと駄目って言うか、中途半端なのは見過ごせないって言うか」

さやか「シャルちゃん以外にも魔女がいるって聞かされてるのに、今までどおりには過ごせないよねー」

ほむら「!」

さやか「他の魔女も助けたいんだろ?」

さやか「アンタに頑張れって言うだけじゃ物足りない。誰かが絶望しているって聞いて、無視なんて出来ない」

さやか「だからさ、アンタの手伝いぐらいはさせてよ?」

ほむら「――――はい! お願いします!」

さやか「ま、あんたと妖精さんの力があれば、あたしなんていらない子でしょうけど」

ほむら「そんな事はありません! 美樹さんは……その、ヒロイン枠ですから」

さやか「今一瞬迷ったよな? それにヒロイン枠って、誘拐されたり人質にされたり、実質役立たずじゃないか!?」

ほむら「ちっ」

さやか「なんだ今の舌打ち!? こんにゃろう!」

ほむら「ひゃあ!? さやかさんが怒ったーっ!?」

さやか「怒るに決まってんだろうがああああああああああああっ!」



ほむら(そうだ……魔法少女が『魔法少女』を、人間が人間を殺すなんて……)

ほむら(そんなつまらない結末は絶対に認めない)

ほむら(もしそれがキュゥべえによって創られた運命だって言うのなら、私が壊してやる)

ほむら(私と妖精さんの力で、壊して、新しい未来を創ってやる)



ほむら(魔女も魔法少女も人間も、誰もが幸福になれる――――楽しい未来を!)


105 : 1 - 2014/01/20 09:54:53.85 RCG7+1yk0 64/569



~その頃~




警察官「大体君達は学生だろ。朝っぱらからコスプレをして、しかも同級生を脅すなんて正気の沙汰じゃ」ガミガミ

マミ(鹿目さん……この説教、何時になったら終わるのかしら……)テレパシー

まどか(知りませんよそんなの)テレパシー

まどか(と言うか、私この後パパを呼ばれるんですよ……死にたい。今もーれつに死にたい)テレパシー

マミ(……私、迎えに来てくれる人居ない……)テレパシー

まどか(ぁ……)テレパシー

警察官「おい、ちゃんと話聞いてるのか!?」

マミ まど「はい……聞いてます……ごめんなさい……」

マミ まど(……濁る……)


124 : 1 - 2014/01/22 08:18:26.79 GASfcR640 65/569



えぴそーど ごー 【ほむらさん達の、ちていだいぼうけん そのいち】


125 : 1 - 2014/01/22 08:21:38.93 GASfcR640 66/569



シャルロッテさんと出会ったあの日、私とさやかさんは魔法少女と呼ばれる存在を知りました。

それは祈りによって生まれる少女。願いの代償として命を捧げる戦士。

だけどその末路には悲惨な死しかない。

魔女に殺されてこの世から消えるか、それとも……今まで討ち取っていた魔女になるか。
同胞の命によってなんとか生き長らえているだけの怪物。


それが奇跡の代償だと言われたら、私には否定出来ません。


確かに全ては知らされなくとも、その対価に命を支払わされる事は事前に聞かされているのだから。

支払い方がどんなに残忍で悲惨だとしても、それは知ろうとしなかった者の責任だから。

つまらない、とてもつまらない、当たり前の悲劇。


でも、私はそれが気に入らない。


祈りを捧げ、命を賭け、最後は呪いを振りまく……こんな悲しいお話は嫌い。
嫌いだからもっと良くしてやる。お話の最後が呪いと絶望だと言うのなら、私はその続編を書いてやる。


だって世界は楽しいのだから。

だって世界には妖精さんが満ちているのだから。


さぁ、世界を変えてやろう。


妖精さんの楽しいパワーと人間のいじめっこパワー――――運命すらもいじめてやる気持ちが合わされば……!



126 : 1 - 2014/01/22 08:23:36.76 GASfcR640 67/569



ほむら「さあ、そんな訳でやってきました廃工場!」

さやか「はいやってきました廃工場!」

シャル「なんでアンタらそんなにテンション高いのよ……」

シャル「放課後になって教室に来てみればいきなり攫われたし……」

ほむら「おほん。実はさやかさんと話し合ったのですが」

ほむら「これから放課後には、魔女さんの結界を探し回る事にしたのです」

シャル「? 探してどうするのよ」

ほむら「魔女さんとお友達になります!」

シャル「は、はぁ? 友達って……」

ほむら「そして、人間に戻りたい方達に人の身体を与えたいのです」

シャル「……!」

ほむら「勿論強制するつもりはありません。魔女さんにも各々考え方はあるでしょうし」

ほむら「でも、せめて苦しみからは解放したいんです」

ほむら「誰かを呪い続ける事の苦しさは、シャルロッテさんなら知っていますよね?」

シャル「……それで、全ての魔女を救うつもり?」

ほむら「出来る事なら、全て救いたいです」

シャル「無理ね」

さやか「ちょ、シャルちゃん?!」

シャル「キュゥべえがどんな目的で魔法少女を、魔女を作っているのかは知らない」

シャル「だけど、アイツがこの町だけで活動しているとは限らない」

シャル「ううん。他の街にも魔法少女は居るみたいだから、きっと活動の規模は私が知っているよりもずっと広い」

シャル「多分だけど、それなりの数の仲間が居る筈」

シャル「もしかするとこの国だけじゃなくて、世界中で奴等は活動しているかも知れない」

シャル「世界中の魔女を救うなんて、それこそ神様じゃないと出来ないわ」


127 : 1 - 2014/01/22 08:25:40.44 GASfcR640 68/569



ほむら「でも、そんなのはやらない理由にはなりませんよ?」

ほむら「やれば助けられた命を、全部救えないから無視した」

ほむら「こんなの、言い訳にしたってろくなもんじゃありません」

ほむら「助けられなかった命に恨まれるのを怖がる、臆病者の台詞です」

シャル「……」

ほむら「確かに私のしようとしている事は偽善かも知れません。
    もしかすると、その所為で何かとんでもない事が起きてしまうかも知れません」

ほむら「でも何もしなければ何も変わらない。悲しい事が悲しいままになってしまう」

ほむら「だったら私は、何かしたいんです」

シャル「……そう……」

ほむら「それにほら、楽しそうじゃないですか!」

シャル「へ?」

ほむら「悪者によって魔物に変えられた人々を救い出す……正にヒーローです! 非日常です!」

ほむら「こんな面白そうな事ほっとくなんて、とんでもないですよ!」

さやか「アンタ、そこは心のうちに隠しとけよ……」

ほむら「思った事はやましくない限り口にする。私はそういう人間になりたい」

シャル「ならんでよろしい」

ほむら「ま、そんな難しい事はどーでもいいじゃないですか!」

ほむら「人助けしつつ友達百人作りましょー!」

さやか「やれやれ」

シャル「本当にやれやれよ……」

シャル「でも……ありが……」

さやか「ん? なんか言った?」

シャル「……なんでもない」

シャル「それより、魔女を探すってどうやるつもりなのかしら?」

ほむら「シャルロッテさんに案内をお願いしたいと思います! 元魔女だし、気配とか分かりますよね?」

シャル「だと思った……いいわ。案内してあげる。丁度近くに結界があるみたいだしね」

ほむら「はい! ありがとうございます!」

さやか「そんじゃ、早速行こうか!」

シャル「ふふ……本当にしょうがない連中ね」


128 : 1 - 2014/01/22 08:29:30.56 GASfcR640 69/569



………
……



シャル「さて、早速結界に辿り着いたけど……」

さやか「なんか壁に落書きがあるなぁー。あ、シャルちゃん。ガム食べる?」

シャル「アンタ完全にピクニックと勘違いしてるでしょ。ガムは頂くけど」

さやか「前々から思っていたけど、シャルちゃんって甘党だよね。はい、どーぞ」

シャル「昔から好きなのよ。一番好きなのはチーズだけど……うっ!? 生臭っ!?」

さやか「うわ、吐き出したよ……ちゃんと紙に包もうよ」

シャル「不味すぎて吃驚したんだから仕方ないでしょ……何このガム……鯖味? なんでこんなの買ったのよ」

さやか「ネタ的に美味しそうだから」

シャル「……まぁ、ネタ的には美味しかったけどさ」

さやか「さて、魔女は何処かなー」

シャル「あー、それだけど……多分、この結界に魔女はいないわ」

さやか「はい?」

シャル「どうやら此処は魔女じゃなくて、使い魔の結界みたいなのよ」

さやか「使い魔?」

シャル「魔女から生まれる、手下みたいなものよ」

シャル「基本的には魔女よりずっと弱いけど、その代り数が多い」

シャル「それにグリーフシードも落とさないから、戦うだけ無駄な相手ね」

さやか「えーっと、グリーフシードって確か……魔法少女が魔女にならないためのアイテム、だったよね?」

シャル「その場凌ぎの、ね」

シャル「でも使い魔は人間を襲い、ある程度餌にすると親元と同じ性質の魔女に育つの」

シャル「そうなればグリーフシードを持つようになるから、魔法少女の中には使い魔を”養殖”する子も居るわ」

さやか「うーん……本当ならふざけるなって言いたいけど……」

さやか「でも魔女を狩らないと人間でいられないのなら、止めるのも気が引けるなぁ……」

シャル「私なんかそれが出来なかったから魔女になったしね」

シャル「元々人を食っているようなものだったのに、何を気にしていたんだか……」

さやか「シャルちゃん……」

シャル「ま、昔の話よ。気にしないで」


129 : 1 - 2014/01/22 08:31:15.54 GASfcR640 70/569



シャル「それより、私が言いたいのは、使い魔でも注意を怠ったらダメって事」

シャル「具体的には」



ほむら「あははは~♪ 捕まえてごらんなさ~い♪」

使い魔「ふひゃ、ふひゃひゃ、ひゃばぶひゃひゃひゃー!」



シャル「いくら笑顔で接してきたからって、海辺の恋人ごっこを楽しむような相手じゃないって事ね」

さやか「ほむらあああああああああ!? 何してんのおおおおおおおお!?」

ほむら「あ、さやかさん!」

ほむら「こちらの方は魔女さんの使い魔さんだそうです! 人殺しが趣味だそうで」

ほむら「で、人をボールにして遊ぶのが好きなんですって」

ほむら「なので捕まったらボールにされる駆けっこで遊んでいました!」

さやか「何もかも知った上でなんでそんな無駄にスリリングな遊びに興じてんだよアンタああああああ!?」

ほむら「でも悪い子じゃなさそうですよ? 魔人ブウみたいな感じで」

シャル「無駄に適切な例えね……」

ほむら「ちなみに何人かの妖精さんたちは既にボールにされており」

妖精さんA「へいぱーす」
妖精さんB「だんくしゅー」
妖精さんC「きゃっちゃーふらーい」
妖精さんD「かざむきにきをつけろー」
妖精さんE「ちゅうしんからすこしずれたです」
妖精さんF「もっとけってー」
妖精さんG「けられるのがともだちです?」

ほむら「他の妖精さんの玩具になって楽しんでいるようです」

さやか「奴等はMなのか。その手の性癖があるのか?」

ほむら「基本的に構ってちゃんですからね。一番堪えるのはスルーされる事だそうで」

シャル「レベルの高いMね」


130 : 1 - 2014/01/22 08:33:09.82 GASfcR640 71/569



ほむら「それにほら、ボールになっても自力で解除出来ていますし」

さやか「自由過ぎるだろ……」

使い魔「ひゃげ!?」

さやか「あ、使い魔がなんか驚いてるっぽい」

シャル「自分の力が無力化されて吃驚したのね。私も今の発言に吃驚したけど」

ほむら「私の方も妖精さんに頼めば解除してくれるでしょう。問題なしです」

シャル(つーか、ボールの状態になっても意思の疎通が出来る前提なのね……出来そうだけど。妖精さんだし)

使い魔「ひ、ひ、ひゃばぶぅぅぅぅぅぅ!?」

ほむら「え? あれ!?」

さやか「なんか、悲鳴混じりに使い魔が逃げていく……」

さやか「どゆこと?」

ほむら「えっと、『ぼくの力が解除されるなんて! こんな場所に居られるか! 
    ぼくは自室に一人で籠っているぞ!』と言いながら帰ってしまいました」

さやか「それ、もろフラグじゃん」

ほむら「ええ、フラグなので心配です……」

ほむら「妖精さんのいるところでフラグを立てたら……」

シャル「? 立てたらどうなるの?」

ほむら「回収します」

シャル「は?」

ほむら「回収します……ほぼ確実に」


131 : 1 - 2014/01/22 08:36:02.87 GASfcR640 72/569



<ヒャバブゥゥゥゥゥゥゥゥ……!

さやか「ひ、悲鳴!?」

ほむら「ああ……回収してしまいましたか……」

シャル「つー事は……やられたか」

さやか「え? でも、結界はまだ解けてないよ?」

シャル「私から漏れ出ている魔力で辛うじて残っているんでしょう。その内自然に崩れる筈よ」

シャル「それより問題は、誰が使い魔を倒したって事」

シャル「一般人に倒せないとは言わないけど、まぁ、そんな楽観的な展開はないわよね」

さやか「あー、そうだ……そんでその悲鳴を聞いてしまったという事は……」

ほむら「ええ。私達もフラグを回収しないといけません」

ほむら「それに目的を邪魔する敵キャラの登場はお約束ですし、ね」



マミ「うふ、うふふふふふふふふふふふ。ようやく見つけたわ……暁美ほむらああああああああ……」



さやか「ひぃ!?」

シャル「うわ、まるで般若みたいな顔になってる……そりゃなるか。あんだけの事をすれば」

まどか「あのー、私もいますよー……?」

ほむら「やっぱり来ましたか、えっと……友枝真美子さん?」

マミ まど「ずこーーーーーーーーーっ!?」

さやか「これは酷い」

シャル「すごく酷い」

マミ「なんで名字と名前に律儀に余計な一文字付けてんのよ!? 巴マミ! 姓は巴で名前がマミ! はい三唱しなさい!」

まどか「ま、まま、マミさん落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!?」

ほむら「あ、鹿目さんも居たんですね。今日はもう会わないと思っていましたが……警察の方はどうでしたか?」

まどか「……お陰さまで、魔法で色々な事をもみ消す事になったよ……パパの記憶とか」

ほむら「あら、悪い子ですねー。魔法を私利私欲で使っちゃうなんて」

さやか(魔法よりヤバい妖精さんをガンガン私利私欲で使っているお前が言うな)

さやか(そう思いながらも、妖精さんに助けられた事があるので言葉にしないさやかちゃんでした)

シャル「いや、お前が言うなでしょ、それ」

ほむら「私はいいんです。妖精さんパワーは楽しい事にしか使っていませんから」

さやか(そしてこの開き直りである)


132 : 1 - 2014/01/22 08:42:18.82 GASfcR640 73/569



ほむら「それよりも、です」

ほむら「さっきの使い魔さん……もしかしなくても、倒してしまいましたか?」

マミ「と、当然じゃない。使い魔は人間を襲うのだから退治しないとね」

ほむら「そうですか……残念です。仲良くなれそうだったのに」

さや シャル「そうかぁ?」

ほむら「……なれそうだったんです。なれませんでしたけど」

ほむら「ま、ここまでの縁って事で、あの方の事は心の奥底にしまっておきましょう」

さやか(忘れる気満々だなコイツ)

シャル(まぁ、使い魔は元人間って訳じゃないしね……ほむらったらちょークール)

ほむら「一応尋ねますけど、もしかしなくてもシャルロッテさんをまだ狙っているのですか?」

マミ「当然よ。今日学校では何もしなかったみたいだけど、何時人を襲うか分からないでしょ」

ほむら「あー、この問答はもう面倒なので全面カットで」

マミ「ちょ!? い、いえ、つまり戦うつもりなのね」

ほむら「何を馬鹿な」

ほむら「使い魔さんが亡き者とされた今、私達にあなたと戦うメリットはありません」

ほむら「ですから、」

まどか(あ、ほむらちゃんが背を向け)

ほむら「逃げるんだよォ―――――――ッ!!」

シャ「……………」

マミ まど「に、逃げたあああああああああああああ!?」

さや シャル「置いてかれたああああああああああああ!?」

シャル「ちょ、ま、待ってよほむら!?」

さやか「なんでお前が真っ先に逃げてんだよぉ!?」

マミ「……はっ!? 唐突な事に驚いて意識が飛んでいたわ!?」

マミ「追い駆けないと、きゃっ!?」

まどか「ま、マミさん!? なんで転んで……」

マミ「いたた……な、なんか足が地面に張り付いて……」

マミ「靴裏にガムが付いてるじゃない!? これの所為ね!」

マミ「ああもう! 誰がこんなところにガムを……」

マミ「って、結界内なんだからアイツ等しかいないじゃん! むきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

まどか「マミさん落ち着いてええええええええ!?」


133 : 1 - 2014/01/22 08:48:46.50 GASfcR640 74/569



<ムキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!


シャル「うわ。なんか嫌な叫びが聞こえた……私は悪くないぞーっと」

さやか「それより、やっと追いついた……」

ほむら「ひゅー……ひゅー……!」

さやか「……まぁ、今にも死にそうな奴に追いつけない方がどうかと思うけど」

シャル「体力無いわねぇ」

ほむら「し、仕方、ないじゃ、ない、ひゅー、ですか……私、基本、病弱、なん、ぜー……です、ぜー……から……」

さやか「よし、まずは落ち着け……と、景色が元に戻った? 此処は、まだ廃工場の中みたいだね」

シャル「よーやく魔力が切れたみたいね」

ほむら「け、結界が消滅したっ!? こんなに早く!? ごほっ、げほげほげほ!?」

シャル「ああ、もう何やってんだか……何をそんなに慌ててるの?」

さやか「そうだよ。妖精さんパワーがあれば、巴先輩の追撃なんて怖くないって」

ほむら「妖精さんは電波が駄目なんですよ!」

さや シャル「……はい?」

ほむら「だから、電波を浴びると駄目になっちゃうんです!」

ほむら「携帯電話程度の電波でもうへなへなになって、鬱になって、最終的に消えちゃうんですよ!」

ほむら「今のままだと妖精さんパワーが自由に使えないんです! だから今のうちに出来るだけ遠くに逃げたかったんです!」

さやか「え、ええー……じゃあどうすんのよ……?」

ほむら「妖精さんアイテムまでも効力を失う訳じゃないので、完全に手詰まりでもないんですけど……」

シャル「なら、私が結界を展開しようか?」

シャル「そこでなら妖精さんもパワー全開なんでしょ?」

ほむら「それでもいいんですが……」

ほむら「……今回は、折角仲良く出来そうだった使い魔さんを倒されてしまいましたからね……」

さやか(まだ言ってるよ……)

ほむら「ちょいと壮大に痛い目を見てもらうために、これを使うとしましょう」

さやか(? ほむらの奴、ポケットから瓶みたいの取り出した……?)

ほむら「本当はあまりコレには頼りたくないんですけどねぇ……自爆みたいなものですし……」

ほむら「ま、死なないから気にしない気にしない。ぐいっと! ――――げふぅ」


134 : 1 - 2014/01/22 08:52:32.82 GASfcR640 75/569



シャル「アンタ何飲んだの?」

さやか「妖精さん製の栄養剤とかか?」

ほむら「いえ、妖精さんを溶かした蜂蜜です」

さや シャル「……はい?」

ほむら「ですから、妖精さんを溶かした蜂蜜です」

さやか「い、いやいやいやいやいや? 意味が分からない?」

さやか「と言うか溶かしたってどういう事よ!?」

ほむら「簡単に言うと、妖精さんは蜂蜜とかに浸けると溶けて一体化するのです」

ほむら「その液体を振りかけると機械が生き物になったり、新生物が誕生したりするのですが……」

ほむら「人間が一口飲めば、短時間ですが電波環境でも凡そ100fぐらいの加護を得られるのです」

ほむら「今回は一瓶飲んだから、500fぐらいかな。ま、ここまで大量だとあまり意味のない数字ですけど」

ほむら「ああ、妖精さんの加護については話すと長くなるので今は省きます。また今度暇な時にでも」

ほむら「一つ言うなら」

さやか「……言うなら?」

ほむら「今の私には近付かない方がいい」

さや シャル「……」

ほむら「私はあっちに逃げます。さやかさんとシャルロッテさんは、適当な物陰に身を隠してください」

ほむら「酷い目に遭うのは、私と……友枝さん達だけで十分です」

ほむら「うふ、うふふ。いい加減しつこいと思っていましたからねぇ……」

ほむら「耐えられるかなぁ? 私でさえ、慣れるのに三年はかかりましたからねぇ……うふふふふふふふふふ」

さやか「その台詞、どう聞いても悪人のそれだぞ」

シャル「もろ悪人面だしね……つーかいい加減名前を憶えてやりなさいよ」

ほむら「愛称ですよ愛称」


135 : 1 - 2014/01/22 08:56:24.86 GASfcR640 76/569



ほむら「さあ! ここは私が引き受けます!」

ほむら「二人は早く逃げて!」

さや シャル「なんでフラグ立てるのかなぁ?」ソソクサ

ほむら(……さて、と)

マミ「見つけ、たわああああああああああ……!」

まどか「み、見つけたよ!」

ほむら「ようやく来ましたか。遅かったですね」

マミ「ぜー、ぜー……ふ、ふふ……相変わらずの減らず口ね……」

マミ「思ったよりも逃げ足が速いから、追いつくのに、じ、時間が、掛かったわ……ぜー、はー」

まどか(靴裏に付いたガムを必死に取っていたら見失った、なんて言えない……)

マミ「と、兎に角!」

マミ「追い詰めたわ! なんで魔女が傍に居ないのかは分からないけど、魔女さえ居なければあなたに戦う力はない!」

マミ「大人しくお縄につきなさい!」

ほむら「やなこったです。大体お縄についた私をどーするつもりですか?」

ほむら「はっ!? さてはエロ同人みたく乱暴をする気で」

マミ「せいっ!」

ほむら「きゃっ!?(地面からリボンが伸びてきた!?)」

マミ「よし! 捕縛したわ!」

マミ「ふふ……所詮ただの人間ね。魔女と使い魔がいなければ、こんなにあっさり捕まえられる」

まどか(うわぁ、マミさん悪役っぽい……う、ううん! そんな事思っちゃ駄目! マミさんは正義の魔法少女なんだから!)

ほむら「うぐ、き、キツいです……あの、もう少し緩めてくれませんか……?」

マミ「そうね……魔女の居場所を教えてくれたら、緩めてあげてもいいわよ」

ほむら「それは……出来ませんねぇ(何処に隠れたかは見てないし)」

マミ「なら、魔法で答えを聞き出そうかしら?」

マミ「あまり無理強いはしたくないんだけど……」

ほむら「……そろそろ、かな」

まどか「? そろそろ……?」

マミ「また警察でも呼んだの? 言っとくけど、同じ手は何度も食らわないわよ?」

マミ「あまり得意じゃないけど……記憶の改ざんや、意識を奪う事だって私達の魔法で出来るの」

マミ「今度は警察の人が来ても、魔法で眠らせる。もうあなたの好きにはさせないわ」

ほむら「いえ、そうではなくてですね……」

ほむら「そろそろ『アレ』が身体に馴染む頃だと思いまして」

ほむら「なので言っておきます」

ほむら「私に近付かない方がいい。自分でも制御できないぐらい、今の私は無敵ですからね」


136 : 1 - 2014/01/22 08:58:30.16 GASfcR640 77/569



マミ「……とんだ虚勢ね」

マミ「いいわ。本当はやりたくないけど、魔法で」

――――ベキ

まどか「? 何、今の音……」

マミ「鹿目さん、余所見しちゃ駄目よ。暁美ほむらが何をしてくるか分からないのだから、彼女から気を逸らしたら駄」

――――ベキベキベキベキベキ!

マミ「……え?」

まどか「な、なんか天井から物凄い音がし」

まどか「って、なんか天井が落ちてきたあああああああああ!?」

マミ「えええええええええええ!? ああああ、えとえと逃げ」

まど マミ「ごしゃっぺ!?」

ほむら「あら、二人の上に崩落してきた天井の瓦礫が……うわぁ、生き埋めですねぇ……」

ほむら(あれ? でも落石って確か……)

ほむら「……魔女も人間の範疇って事で。うん」

ほむら「おっと、友枝さんが気絶したのか、リボンがボロボロと崩れていきますね。これはラッキー」

ほむら「それでは、すたこらさっさと逃げさせていただきまーす」



シャル「……なんか、とんでもない茶番を見た気がするわ」

さやか「うわぁ……まどか達生きてるかなぁ……」

シャル「魔法少女はあのぐらいじゃ死なないわよ。肉体は頑丈だし」

シャル「それにソウルジェムっていうやつに魂を移されてるからね。それさえ無事なら、心臓をぶっ潰されても死なないわ」

さやか「なにそれ怖い」

シャル「本当に、怖いわねー」

さやか「おっと。それより、ほむらの後を追わないと!」

シャル「近付くなって言われてなかったっけ?」

さやか「だからだよ。心配じゃん」

シャル「おーおー、優しいこって」

シャル「うんじゃあ、ま、こっそりと尾行しますかね」


137 : 1 - 2014/01/22 09:02:34.47 GASfcR640 78/569



ほむら「ごひゅー……ごひゅー……も、もう、駄目……」

ほむら「立てない……げほっ、げほっ……み、みずぅ……」

さやか(ほんの三十メートル走っただけでばててるし。工場から出てすらいねぇ)

シャル(あの体力こそ妖精さんアイテムでなんとかしなさいよ)

マミ「お、追いついたわよ!」

まどか「マミ、さん……待って、くださ、うう……」

さやか(あ、追いつかれた……うわ。巴先輩、頭に釘刺さってるよ。気付いてないのか、アレ?)

シャル(まどかはまどかで鉄の棒を杖代わりにしてるし……そりゃ、いくら不死身でもノーダメって訳じゃないしねぇ)

ほむら「た、タンマ、です……もうほんと、走れない……ぜー、ぜー……」

マミ「走ったのはあなたが勝手にした事でしょうが!」

マミ「それに天井の崩落……何か細工したわね!」

ほむら「してませんよ……あんな、一歩間違えたら巻き込まれるような細工なんかしませんって」

ほむら「どーせするなら、落とし穴みたいに、正確に位置を確認出来る罠にしておきます」

さや シャル(うん。アンタはそういう奴だよね)

ほむら「ふぅ……ようやく息も整ってきました……ふぅ」

ほむら「先程も言いましたが、ちょっとしたチートのお陰で今の私は無敵状態です」

ほむら「代償として面倒事に巻き込まれますが、あなた達が今すぐにでも退いてくれた場合、被害は私だけで済みます」

ほむら「正義の味方のメンツもあるかと思いますが、あなた達の精神衛生上のためにも撤退した方が得ですよ?」

マミ「ふん。そんな戯言に耳を貸すと思う?」

さやか(貸さなかった結果何度ボコボコにされたよアンタ)

シャル(とか思ってんだろうなー、さやかの奴)


138 : 1 - 2014/01/22 09:08:35.54 GASfcR640 79/569



ほむら「いや、本当に退いてくれませんかね?」

ほむら「正直私も勘弁してほしいんですよ。彼等とは友人ですけど、流石に500fクラスの出来事になると」

ほむら「護身のためとはいえ、人を巻き込むのは本当に申し訳なくて……」

マミ「人を巻き込む? あなた……一体何を企んで」

――――ベゴンっ!

マミ「……………」

マミ「鹿目さん?」

まどか「はい」

マミ「今の音、何かしら?」

まどか「多分、床が抜けた音だと思います。ほら、床が無くなってますよ」

マミ「あら、本当ね」

マミ「ところで鹿目さん?」

まどか「はい」

マミ「床が抜けただけなのに、なんで私達の足元には大穴が開いているのかしら?」

まどか「それは私にも分かりません。廃坑の跡、とかかも」

マミ「ああ、成程。テレビとかで偶にそういうの見るわね」

マミ「そういえば鹿目さん?」

まどか「はい」

マミ「さっきまで私達は廃工場にいた筈なのに、何時の間にか周りが土だらけの景色になっているのはどういう事かしら?」

まどか「私達が、穴に落ちたからですよ」

マミ「ああ、そうなの。流石鹿目さんね」

まど マミ「………」

マミ「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
まどか「落ちてる落ちてる落ちてるうううううううううううううううううう!?」

ほむら「ああ……今回は地底探検ですか……はぁ」



さやか「ああ!? ほむら達が落ちた!?」

シャル「なんで見滝原にこんな大穴があんのよ!? 可笑しいでしょ!?」

さやか「な、なんとか降りられない!?」

シャル「魔法を使えば少しずつなら降りられるけど……」

シャル「で、でも、落ちて行ったほむらに追いつくのは無茶よ! 自殺行為だわ!」

さやか「そんな……!」

シャル「……仕方ない。とりあえず私だけで行くから、さやかはそこで待ってて」

――――ボゴンっ!

さやか「あら?」

シャル「おりょ?」

さや シャル「……………」

さや シャル「ふ、縁が崩れたあああああああああああああああれえええええええええええええええええええっ!?」


139 : 1 - 2014/01/22 09:14:38.89 GASfcR640 80/569



―???―

マミ「きゃああああああああああああああああああああっ!?」

まどか「いやあああああああああああああああああああっ!?」

ほむら「二人とも、五月蝿いですよ」

マミ「スカイダイビングでもないのにこの状況なら叫ぶぐらい普通でしょ!?」

マミ「逆になんでアンタはそんなに冷静なのよ!?」

まどか「こ、こんな高さから落ちたら死んじゃうよ!?」

ほむら「いえ、高層ビルから落ちても生存確率は極めて高ですから」

マミ「はあ!? 何を言って……」

さやか「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

シャル「ぬぅうううううううううっ!?」

まどか「さ、さやかちゃん!?」

ほむら「あら、さやかさんにシャルロッテさん。どうしてこんなところに?」

シャル「足場が崩れて落ちたのよ!」

ほむら「あらあら。だから近付くなって言ったのに……」

さやか「嫌だああああああああああ! 死にたくないぃぃぃ! 死にたくないぃいいいいいいぃいいいっ!!」

ほむら「もー、さやかさんは大袈裟ですねー」

シャル「何が大袈裟よ!? もう十分即死出来るだけの高さ落ちてるわよ!?」

シャル「つーかこの穴どこまで続いてんの!?」

ほむら「さぁ? でも、そろそろかと思いますよ」

シャル「そろそろって何が――――うっ!?」

マミ「な、何!? 突然光が―――――」

さやか「ヤメロオオオオオオオオシニタクナイシニタクナァァァァァァァイ!」

まどか「う、うう……何が起きて……」


140 : 1 - 2014/01/22 09:17:03.31 GASfcR640 81/569



まどか「って、えええええええええええええ!?」

マミ「な、なんで……なんで地下に、大自然が広がっているの!?」

マミ「というか地平線が視えるって、一体どれだけ大きな空洞なのよ!?」

シャル「ほむら! 此処は一体!?」

シャル「太陽がないのに周りは明るいし、地下なのに森が地平線まで続いているし……」

ほむら「さぁ? 地球には不思議がいっぱいって事なんでしょう」

ほむら「でも良かったぁ。森があるって事は、大きい動物も住んでいるでしょうからね」

ほむら「……お。噂をすれば早速」

シャル「――――! 何……空から何かが飛んできて……!?」

シャル「お、大きい鷹……違う、翼を持った怪物……グリフォン!? 三頭も来てる!」

シャル「なんでそんな不思議生物が!?」

ほむら「さあ、覚悟はいいですか?」

ほむら「大冒険の始まりですよ!」

シャル「うわっ!? ……ぐ、グリフォンたちが私達を背に乗せた……助けてくれたの?」

さやか「シニタクナイシニタクナイシニタクナイ」

ほむら「さやかさーん、もう助かってますよー」

シャル「本当に、間一髪ね……あれ?」

ほむら「どうしましたか?」

シャル「……いや、グリフォンが三頭しかいないなぁって思って」

\コンノー! オボエテナサーイ!/

\ダレカタスケテェーッ!/

シャル「……………」

ほむら「ま、多分死にはしないでしょう。魔法使えるんですし。無視無視」

シャル「ほむらったら、本当にちょークール」


141 : 1 - 2014/01/22 09:20:36.27 GASfcR640 82/569



ほむら「問題はこれからです」

ほむら「多分、展開的にこのグリフォン達の連れていく先には村があって、そこで地底人と交流をするでしょう。何故か日本語で」

ほむら「そんでもって魔王を倒してくれって頼まれるんですよ、多分」

シャル「アンタ、ゲームやり過ぎよ」


~五十分後~


村人D「どうか、どうか魔王を……!」

ほむら「ま、妖精さんパワーがあれば大丈夫でしょう。引き受けます」

シャル「はっ!?」

シャル「え、あれ? なんで……」

シャル「何故私達はグリフォン達に連れてこられた村で、魔王退治を引き受けてんの!?」

さやか「シャルちゃん何してんの? ほら、シャルちゃんの装備もらったよ」

シャル「なんでさやかは既に順応済みなのよ!? 可笑しいでしょこの展開!」

さやか「いや、私も正直訳が分かんないけど……」

さやか「なんというか、慣れた。もしくは諦めた」

シャル「……………そう」

さやか「まぁ、要するに魔王を倒せば地上に戻れるって話だからさ。協力する事になったんだよ」

さやか「はい、シャルちゃんの装備。魔法使いだって」

シャル「一体どんな皮肉よそれ……ちなみにさやかは?」

さやか「僧侶。回復魔法の使い手らしいよ……使い方知らないけど」

シャル「私だってこんな装備なくても魔法なら使えるんだけど」

シャル「ちなみに、ほむらは何?」

さやか「遊び人」

シャル「……納得ね。戦力にはなるけど」

ほむら「みなさーん! そろそろ出発しましょー!」

シャル「やれやれ……今日中に魔王を倒せるといいわねぇ」

さやか「チート使えば余裕っしょ」


142 : 1 - 2014/01/22 09:21:35.68 GASfcR640 83/569



――――そんなこんなで始まりました、地底大冒険。

本当は私だけでする筈でしたが……やはり妖精さんのコントロールは難しいです。

ですが、今更考えても仕方ありません。



こうなった以上――――思いっきり楽しまないと、損ですよね♪



157 : 1こと ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 08:57:16.39 1SMnrX600 84/569



えぴそーど ろく 【ほむらさん達の、ちていだいぼうけん そのに】

 

158 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:02:06.06 1SMnrX600 85/569



ほむら「どうもこんにちは。暁美ほむらです」

ほむら「私達は今、見滝原の地下に広がる巨大な地底世界を冒険しています」

ほむら「目標は今日中の帰還。そのためにも地底世界を脅かしているという魔王さんの撃破をしなくてはならなくて……」

シャル「アンタ、誰に言ってんの?」

ほむら「いえ、なんか頭の中の妖精さんがあらすじをご所望したので……あまり気にしないでくださいな」

シャル「ふーん」

シャル(……頭の中の妖精さんという文脈を、ふーんの一言で流せるようになった自分に軽くショックを受ける……)

ほむら「さてさて。そんな訳で私達はお世話になった村を出て、魔王さんの城を目指す訳ですが……」

ほむら「どこに魔王さんの城があるのか、聞いてませんでしたね♪」

さやか「割と根本的なところ放置してるというね」

シャル「んで、どうすんの? 村に戻る?」

ほむら「いえ、ここは妖精さんパワーに頼ります」

さやか「ここはも何も、アンタ全部妖精さん頼りだろ」

ほむら「いいんですよ。頼れるんですから」


159 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:05:31.27 1SMnrX600 86/569



ほむら「ではでは。妖精さん、かむひやーっ!」


妖精さん「よばれたー?」


シャル「おぅ!? 草むらから妖精さんが……」

さやか「地底にも住み着いているのか……流石妖精さん」

ほむら「妖精さん妖精さん。私達と一緒に旅をしませんか?」

妖精さん「たびー?」
妖精さん「なさけとか、かけてくれます?」

ほむら「掛けますよー」

ほむら「それから、御供にはきび団子を差し上げます」

シャル(通学鞄からきび団子取り出したよ……何時も持ってんのか? こういう時のために?)

妖精さんA「なんとーっ!?」
妖精さんB「おともさせてー」
妖精さんC「みがわりにしてもいいのよ?」

さやか(あ、増えた)

さやか(……増えたぐらいじゃ違和感を覚えなくなった自分に、なんとも言えない虚しさを感じる……)

シャル「それで、どうするの? 地上に戻る道具でも作ってもらう?」

ほむら「そうですねぇ。頼めばすぐにでも帰れるでしょうが、その選択肢は最後までとっておきましょう」

ほむら「一応魔王さんを倒すって約束しちゃいましたし……それに、まだ地底を満喫していません」

ほむら「帰るのは遊びつくしてから! これ、楽しい事に対するマナーです!」

さやか「つまりアンタが遊び足りないだけじゃん」

シャル「予想通りの答えね」

シャル「……でもまぁ、一理ある」

シャル「確かに未開の地を大冒険なんて面白そうな事、楽しまなきゃ損よね」

さやか「おやおや? アンタ、随分ほむらに毒されたみたいだねぇ?」

シャル「アンタだって、顔がにやけてるわよ?」

ほむら「ふふっ。みんなで楽しめば、楽しさは倍になると言います!」

ほむら「みんなで楽しく、地底を冒険しましょう!」



160 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:09:55.34 1SMnrX600 87/569



ほむら「さあ! 私の後に続くのです!」

さやか「ああ、もう。ほむらったら、あたしらを置いてくなって」

シャル「だーかーらー、魔王の城が何処にあるか知らないんだからまずはそれを……」


――――ガサガサ


三人「!」

ほむら「……草むらに、何かいますね」

シャル「揺れ方からして、あまり大きな動物ではないみたいだけど……」

さやか「やっぱりお約束としては――――」


――――ガサッ!


???【げるげるげーっ!】


ほむら(草むらから何か飛び出してきた! あれは……軟体動物……じゃない!)

ほむら(軟体どころかゲル状の身体、向こう側が透けて見える肉質……)

ほむら(尚且つ大冒険序盤の敵性生物と言えば――――)

さやか「スライム!」

シャル「RPGのお約束! まさか本当に出てくるとはね!」

シャル「それで……リーダー、どうする?」

ほむら「え? リーダーって……」

さやか「ま、ここはアンタが妥当でしょ。場馴れしているみたいだし」

さやか「それに……やっぱリーダーは、チームのムードメーカーにもなってくれないとね!」

ほむら「――――分かりました!」

ほむら「相手の実力は未知数ですが、数的有利はこちらにあります!」

ほむら「全員で一気にかかり早期決着を狙いますよ!」

さや シャル「了解!」

三人「やああああああああああっ!」

スライム【げるるるるるるるるっ!】



161 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:13:18.66 1SMnrX600 88/569



………
……



さやか「で、だ」

さやか「コテンパンにやられた挙句、仲間を呼ばれ、分裂した小スライムに縛られ、
    私らは恐らくは巣だと思われる場所に連れ去られている訳だが?」

ほむら「いやぁ、スライムは強敵でしたねぇ」

シャル「殴っても全く効かないしねー」

ほむら「シャルさんの魔法も、全然効果ないですし」

シャル「仕方ないじゃん。魔法少女の頃は肉体操作と回復系が得意で、魔女になってもそれで戦ってたんだし」

ほむら「スライム相手には相性最悪、と」

ほむら「てんで役立たずとは、それでもかつて世界を焼き払った一族の末裔ですか!」

シャル「私は普通のサラリーマン家庭の生まれだっつーの」

シャル「大体役立たずだなんだと言ってるけど、アンタが一番役立ってなかったじゃん」

シャル「さやかはちゃんと殴ってたけど、アンタの攻撃は全部かわされてたでしょ」

ほむら「あら、私はスライムの体力を削るのが目的ですよ? 無駄な動きで疲れさせる……最初から計画通りです」

シャル「スライムよりアンタの方が先にばてたけどね」

ほむら「自分の体力を考慮するのを忘れていました」

ほむら「はっはっはっはっはーっ!」

さやか「笑ってる場合かあああああああああ!?」

ほむら「えー……さやかさん、言ってたじゃないですかー。リーダーはムードメーカーもしないとって」

ほむら「だからこの絶望的な状況でも、ひとつ失敗談を語って笑いを起こそうと」

さやか「時と場合と必要なムードを考えろ! あと失敗談もなにもこうなった原因で誰が笑えるか!」

シャル「まぁまぁ、落ち着きなさいって。どーせなんとでもなるでしょ」

シャル「幸い妖精さんも一緒に拉致られているしさ」

妖精さんA「つかまた」
妖精さんB「たべられるー?」
妖精さんC「にたりやかれたり?」
妖精さんD「おろしてもおいしくいただけます?」
妖精さんE「おどりぐいがおすすめですな」
妖精さんF「かこうされたらひょうじぎむなしです?」
妖精さんG「おさとうづけだとしあわせー」

さやか(この状況で何故また増える……)


162 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:18:55.91 1SMnrX600 89/569



シャル「んで? 妖精さんのブレインさんはどうするおつもりで?」

ほむら「そうですねぇ……妖精さんと違い、私達は食べられたらお終いですし」

さや シャル(妖精さんは食べられても終わらないんか……)

ほむら「ですが、よくよく考えると生き物を殺すのはちょっと性分に合いません」

ほむら「なので、スライムさんの方から逃げてくれる状況を作りたいですね」

シャル「具体的には?」

ほむら「無策です」

シャル「おい」

ほむら「いや、希望を訊かれたので答えたまででして……さてはてどうしたものかと」

さやか「なら滅茶苦茶強くなるとかどうよ?」

ほむら「と、言いますと?」

さやか「漫画とかだとさ、そのキャラがものすごーく強いって表現するのに、周囲の動物が逃げるってのがあるでしょ?」

さやか「妖精さんなら、あたしらをそれぐらい強くするのって出来そうじゃない?」

シャル「成程ね。私はいいと思うわ」

ほむら「あー……それは……」

シャル「? どうしたの? もしかして、出来ない事なの?」

ほむら「いえ、なんの問題もなく出来ると思いますよ?」

ほむら「思いますけど……その願いは問題なく叶えられてしまうと不味い予感が……」

さやか「? 別にいいじゃん。強くなるぐらい」

さやか「難なら、あたしがその役やろうか? なんつってー」

ほむら「あ」

さやか「え?」


163 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:21:10.98 1SMnrX600 90/569



妖精さんA「いま、おーだーきた?」
妖精さんB「きたきた」
妖精さんC「しかもはじめてのにんげんさんから」
妖精さんD「ぼくらがんばらねば?」
妖精さんE「ごきたいされまくり?」
妖精さんF「こたえねば、ぼくらいらないこになるです?」

さやか「……え?」

妖精さんG「つよくなりたいとのごきぼう」
妖精さんH「ならばちきゅうさいきょーにせねば」
妖精さんI「さいきょーのふうかくほしいね」
妖精さんJ「かぶとむしぐらいかっこよく?」
妖精さんK「かなぶんのぼうぎょをつければむてきでは?」
妖精さんL「むてきすぎるー」

さやか「え? ……ええ?!」

妖精さんM「そのちからはどこからー?」
妖精さんN「どこからでもよいかと?」
妖精さんO「たのめばよかです」
妖精さんP「いくらでもありますしなー」
妖精さんQ「ではたいきちゅうからをきゅーしゅーして」
妖精さんR「どんどんおおきくしていくです?」

さやか「ちょ、ちょーっ!? なんかどんどん増えてる!? すっごい増えてるぅーっ!?」

妖精さんS「ではそのほうしんでー」
妖精さんT「にんげんさんをかいぞうしまうまー」
妖精さんU「いたくはないです?」
妖精さんV「むしろきもちーかもー」
妖精さんW「ちからにおぼれるのもおやくそくかと」
妖精さんX「ならやっちゃう?」
妖精さんY「さっそくやっちゃう?」

さやか「ひぃ!? ち、違うから! 今の違――――」

妖精さんZ「そういん、かいしー!」
妖精さん達「ぴ―――――――――――――!!」

ほむら「……妖精さん、散っちゃいましたね。縛られていた方たちも平然と抜け出しましたし」

シャル「……そして戻って来たわね……怪しい野菜を携えて」


164 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:25:10.55 1SMnrX600 91/569



さやか「な、何、それ……?」

妖精さんV「きんにんにーく」

ほむら「金色に輝くニンニク、金ニンニクですか……」

シャル「某漫画に出てきそうな食べ物ね」

妖精さんC「たべればよいかと?」
妖精さんQ「かなぶんいちおくにせんまんびきぶんのぱわーもつです」
妖精さんT「まるかじりしてー」

さやか「えーっと……つ、つまり、これを食べたら強くなれる、と」

ほむら「そうですね。多分、地球最強クラスの強さに」

さやか「い、いやぁ……」

さやか「さっきはああ言ったけど、ちょっと怖いから今回は遠慮する方に――――」

――――ぐらり

シャル「うわっ!?」

ほむら「こんな時に突然、地面のデコボコによるともの思われる揺れに襲われましたー(棒読み)」

妖精さんF「わー?」

さやか(ちょ、妖精さんが揺れでニンニクを手放して……)

さやか(なんでそのニンニクがあたしの顔面目掛けて飛んでくんのーっ!?)

さやか(い、いや! 落ち着くんだ美樹さやか!)

さやか(例え顔に飛んできたとしても、それが一体なんだと言うの?)

さやか(要は食べなきゃいい! 口さえ閉じていればいい!)

さやか(なんの問題もない!)

さやか「……………」

さやか(まぁ、そんな事長々と考えているうちに、ニンニクはとうの昔にあたしの口にinしていたけどー)

さやか(よーし、落ち着こう。まだ口に入っただけだ。落ち着いて吐き出せばまだ間に合う)

――――がたんっ!

さやか(そしてその直後再度襲い掛かる振動で思いっきり噛んでしまい、)

――――ごくんっ!

さやか(ニンニクなのにまさかのイチゴ味という事に吃驚し、思わず飲み込んでしまうさやかちゃんでした)

シャル「……流れるような勢いで、とんでもない茶番を見たわ。本日二度目の」

ほむら「まぁ、妖精さんがこれだけいれば不条理の連鎖が起こるのはむしろ自然かと」


165 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:28:03.83 1SMnrX600 92/569



さやか「ど、どど、どうしよう!? 食べちゃったよ!?」

ほむら「諦めましょう」

シャル「決断早っ!?」

さやか「で、でも、でも……!」

ほむら「妖精さん密度F。妖精さんだらけ、妖精さんまみれ、妖精さん濁の状態」

ほむら「あなたは酷い目に遭うでしょう。でもまず死ぬ事はありませんからご安心を」

シャル「……何それ?」

ほむら「うちの蔵に眠っていた、妖精さんの説明書に書かれていた一文です」

ほむら「妖精さんがたくさんいれば、それだけで世界は面白可笑しくなるんです。理屈抜きに」

ほむら「それは馬鹿げた事態……例えばこのような地底大冒険すらも起こす、とんでも現象です」

ほむら「でも死ぬ事だけはないので、ま、楽しんだもの勝ちですよ?」

シャル「納得すればいいのか、戸惑えばいいのか、分からない話ね……」

さやか「でも酷い目に遭うんでしょ!? 一体何がどうな――――」

シャル「……さやか? どうかした?」

さやか「いや、どうかというか……」

さやか「なんか、縄? スライム? まぁ、あたしを縛っているやつが急にキツくなってきた……」

ほむら「? そうなんですか?」

シャル「まぁ、私らを縛っているこれもスライムだし、伸縮自在だろうから急にキツくなる事もあるかもだけど……」

シャル「でも私らのは特に変わってないみたいだから、気の所為じゃない?」

さやか「い、いや、絶対これキツくなってる! めっちゃなってる!」

さやか(う、嘘……なんで、なんであたしだけこんなキツく縛るの!?)

さやか(まさか、このままあたしの身体を引き千切る気……!?)

さやか「や、やだあああああっ!? やだ、やだあ!」

シャル「ちょ、落ち着きなさい!? 大丈夫、大丈夫だから!」

ほむら「……………」

シャル「ほむらもぼけっとしてないで何か言いなさいよ!」

ほむら「……いえ、その……」

ほむら「……さやかさん、大きくなったなぁと思いまして」

シャル「はあっ!? アンタこんな時に何を――――」

シャル「……………」

シャル「……そうね、確かに大きくなったわね」

シャル「目測……身長百七十センチぐらいかしら?」

さやか「え?」

さやか「……確かに、あたしこんなに大きくなかったなぁ」

さやか「……もしかしなくても、”そういう事”ですかね?」

ほむら「そういう事なんでしょうねぇ……」

シャル「そういう事なんだろうなぁ……」


166 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:33:05.00 1SMnrX600 93/569



さやか「そ、それはそれで嫌ああああああああああああああああ!?」

ほむら「ああ……」

シャル「叫び声に合わせるようにさやかがどんどん巨大化して……」

――――ブチっ!

シャル「ついにはスライム縄も千切れたけど、まだまだ大きくなって……」

巨大さやか『なんじゃこりゃああああああああああああああ!?』

シャル「……時代遅れのギャグでもなんでもなく、でっかくなっちゃったわね」

ほむら「なっちゃいましたねぇ」

シャル「全長100メートルはありそうね」

ほむら「ありそうですねぇ」

シャル「ついでに肌がなんか黒光りしていて、角とか翅とか生えてるけど……」

ほむら「モチーフがカブトムシなんじゃないでしょうか」

シャル「妖精さんったらおとこのこー」

スライムA【げ、げるるるる!?】

スライムB【げるえええええ!?】

シャル「あ、スライムが逃げてく」

ほむら「そりゃ逃げますよね。食べられちゃうかも知れないですし」

シャル「それにこのサイズ……確かに地球最強のパワーを持っていそうね」

巨大さやか『いやいやいや!? そんな、のーてんきに言ってる場合じゃないよ!?』

巨大さやか『そりゃ、これは最強かも知れないけど……』

ほむら「あ、そうだ! さやかさん! 腕をバッテンの形にしてみてください!」

巨大さやか『んあ? いきなりなんだよ。バッテンにしたところでビームが出る訳でもあるまいし』

シャル(でも律儀に組む、と)

シャル(……ん? なんか、さやかの腕が光って)

ピィィィィィィィィィィィィィィィイ!(光線)

ちゅどーーーーーーーーーーーーんっ!(核爆)

巨大さやか『』

シャル「」

ほむら「うわー♪ 派手な花火が上がりましたねーっ♪」

妖精さんA「はなびというよりきのこぐもでは?」

巨大さやか『妖精さんに的確なツッコミ入れられるようなボケすんなああああああああああああああっ!?』

シャル「ほ、本当に腕から光線が出たよ……こりゃ魔王の一体二体余裕だわ」


167 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:34:57.93 1SMnrX600 94/569



シャル「……うん。とりあえず、魔王を倒す算段は出来たとして」

巨大さやか『ちょ、シャルちゃん? もしかして考える事を放棄してない?』

シャル「放棄なんてしてないわよ」

シャル「ただ、考えるだけ無駄だと思い出しただけよ」

巨大さやか『なお性質悪いよぅ』

ほむら「まぁ、妖精さんの事ですから役立つものから役立たないものまで様々な機能が付いているようでしょうし」

ほむら「多分、頑張れば小さくなれると思いますよ?」

巨大さやか『え? そうなの?』

ほむら「なれますよね? 妖精さん」

妖精さんA「なれますが……」

ほむら「なれますが?」

妖精さんA「ますますつよくなりますが?」

ほむ さや シャ「……………」

ほむら「まぁ……大きい奴が小さくなるのは強化フラグですよね」

シャル「宇宙の帝王とか代表格よね」

巨大さやか『正直今の段階で十分過ぎるほど自分の力がおっそろしいんだけど……』

ほむら「じゃ、今は我慢しましょう」

ほむら「地上に出たら力をセーブ出来るような指輪を妖精さんに作ってもらいますので、それまで辛抱してください」

シャル(今と言わないあたり、魔王を倒すのに使う気満々なのね……私もそのつもり満々だけど)


168 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:37:01.57 1SMnrX600 95/569



ほむら「それより。さやかさん、周りを見渡してくれませんか?」

ほむら「私達は木々に阻まれて周りが見えませんが、さやかさんの視点なら地平線まで見渡せるはずです」

ほむら「もしかしたら、魔王さんの城が見えるかもですよ!」

巨大さやか『うー……なんか納得出来ないけど……まぁ、今更か……』

巨大さやか『もうやけだ! ビッグさやかちゃんの力を見せてやるぜ!』

巨大さやか『どこだー? 魔王の城、魔王の城……』

巨大さやか『むむむ?』

シャル「なんか見つかったー?」

巨大さやか『遠くてよく分かんないけど……あ、見たいって思ったら見えるようになった。この身体すっげー便利』

巨大さやか『あったあった。如何にも中世ヨーロッパって感じで、尚且つ色合いが邪悪なお城が』

シャル「お約束ねぇ」

シャル「そいでほむらさんや? 当然そのお城を目指すのよね?」

ほむら「言わずもがな、です」

ほむら「そんな訳でさやかさん」

巨大さやか『それも言わずもがな、だよ』

巨大さやか『肩に乗せて、そこまで運んであげるよ!』


169 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:37:43.43 1SMnrX600 96/569



………
……



巨大さやか『うっひょー!』

巨大さやか『身体が大きくなったから、一歩ですっごい速く動ける!』

巨大さやか『しかも身体が軽い! 大きくなる前より速く動けてる感じだよ!』

巨大さやか『風も気持ちいいし……こりゃ最高だね!』


170 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:41:39.84 1SMnrX600 97/569



シャル「こりゃ最高だね! じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

シャル「揺れが! 暴風が! 揺れがあああああ!?」

ほむら「今のさやかさんは元の六、七十倍近いサイズですからね……」

ほむら「単純に考え、走った時の振動も六十倍以上に増幅」

ほむら「ましてや昨今のロボットアニメもびっくりな機動力で動いてますし、そりゃあ大惨事レベルの揺れに襲われますよー」

シャル「そこまで分かっていてなんでさやかの肩に乗ったのよ!?」

シャル「てか、なんでそんな余裕な訳!?」

ほむら「そりゃあ、妖精さんアイテムでなんとかしていますから」

シャル「納得いかねぇぇぇ!?」

シャル「大体なんでさやかは止まってくれないのよ!? さっきからこんなに叫んでるのに!」

ほむら「風が気持ちいいと言ってましたし、多分、風の音で聞こえないんでしょうね」

シャル「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ほむら「そんなに大変なら、妖精さんアイテムを一つお貸ししましょうか? あまりオススメは出来ませんけど……」

シャル「この揺れが治まるならなんだっていいわよ!」

ほむら「では……このジュースとかどうでしょう。副作用として」

シャル「早くちょうだい!」

ほむら(ああ、奪い取られてしまいました……説明する前に)

シャル「んっ……んっ……ぶはぁ!」

シャル「……何故か甘じょっぱかったわ」

ほむら「妖精さんの作った甘味に美味しさを求めるのは止めた方がいいですよ?」

ほむら(まぁ、ビフテキとか満貫全席はふつーに美味しいのを作れるんですけどね……)



171 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:45:34.97 1SMnrX600 98/569



ほむら「それより、揺れはどうですか?」

シャル「ん? あ……全然感じなくなった!」

シャル「流石妖精さんアイテムね!」

ほむら「それはなによりです」

シャル「もー。ほむらったら、こんな便利なアイテムがあるなら独り占めしないで早く渡してよー」ムクムク

シャル「でもま、今回は許してしんぜよう。揺れを感じなくなったら風がすっごい気持ちよくて気分がいいし♪」ムキムキ

ほむら(……シャルロッテさんがどんどん筋肉質な身体になっていく……)

ほむら(シャルロッテさんに渡したのは『揺れればダイエットジュース』)

ほむら(振動のエネルギーを筋肉に変換し、ぶよんぶよんな身体を三十秒でボディービルダー体型に変えてしまう)

ほむら(通販で売られている怪しいダイエットグッズ真っ青な超絶ダイエットアイテム……)

ほむら(効果が絶大過ぎるかつ無制限なので、使いたくなかった一品です)

ほむら(ああ、そうこうしている内にシャルロッテさんが……)

ほむら(シャルロッテさんの原型がないぐらい……筋肉ダルマというより筋肉って感じの姿に……)

ほむら(……私の使っている揺れ対策が、揺れを携帯電話の『頑張って動いてくれる』パワーに変換する道具だというのは黙っておこう)

マチョロッテ「どうかした? ほむら?」←イケボ

ほむら「いえ、なんでもありません」

ほむら(ばれた瞬間すっごい怒るだろうから、今は黙っておいて、隙を見て妖精さんに治してもらおう)

ほむら「それよりも、ほら! お城が見えてきましたよ!」

マチョロッテ「お。本当だ」

マチョロッテ「成程。さやかが言っていたように、趣味の悪い西洋風の城ね」

ほむら「あれだけ豪勢なら、多分魔王さんの城で間違いないでしょう」

ほむら「というか、真偽を確かめるためにはどの道行かないといけませんし」

ほむら「ではさやかさん。ごーごーです♪」

巨大さやか『合点承知ぃ!』


172 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:49:26.46 1SMnrX600 99/569



………
……



ほむら「さてさて。魔王さん城(候補)の前まで来ました」

ほむら「門番らしき魔物さんはさやかさんの姿を見た途端逃げ出したので、戦闘は回避出来そうですね」

巨大さやか『……ヒーローとは、悲しいものだ』

マチョロッテ「戦わずに済むならその方がいいわ」

マチョロッテ「それより、さやかはどうする?」

ほむら「このサイズではお城に入れませんからね……魔王さんの本拠地と決まった訳じゃないので壊す訳にもいかないですし」

ほむら「とりあえず、戦闘になるまでは外に居てもらう事としましょう」

ほむら「ああ、それから攻撃を始めるのは私達がさやかさんの肩に乗ってからにしてくれますか?」

巨大さやか『OK、OK。分かった』

巨大さやか『大きくなり過ぎた所為か二人の姿が豆粒ぐらいにしか見えないからね……うっかり踏み潰さないとも限らないし』

ほむら(ああ、だからシャルロッテさんの変化に気付かないと……)

ほむら「とりあえず、合図は妖精さんを通じて行います」

マチョロッテ「何? 妖精さんがテレパシーでも送るの?」

ほむら「いえ、私の頭の中にいる妖精さんが記憶を経由し、さやかさんの記憶へと移動。外に出た後口頭で伝えます」

マチョロッテ「想像以上に意味不明な方法だったわ」

巨大さやか『記憶って経由できんだな……』

ほむら「昔どっかの精神科医が言ってましたからね。神話は人類が共有する精神である、みたいな感じの事を」

ほむら「多分そこを通ってんじゃないでしょうか?」

巨大さやか『そこって何処だよ』

マチョロッテ「ま、まぁ……そんじゃ、早速私達は中に入るとしましょうか」

ほむら「あ、待ってください」

ほむら「流石に施錠されていると思うので、妖精さんアイテム『プライバシーなんてないさ針金』で鍵を開け」

――――ペキンッ!

ほむら「……はぇ?」

マチョロッテ「鍵は掛けてないみたいね……いくら魔王とはいえ、不用心ねー」

ほむら(鍵の存在に気付かないぐらい、パワーアップしてる……)

ほむら(あ、ヤバい。これマッチョ化がばれたら絶対ヤバいです)

マチョロッテ「どうかした、ほむら?」

ほむら「いえ、なんでもないです。本当に」

マチョロッテ「それならいいけど」

マチョロッテ「一応敵のアジトかも知れないんだから、気を引き締めときなさいよ?」

ほむら「そーですねー。(あなたの)矛先が自分に向かないよう注意しておきます」

マチョロッテ「相変わらず自分本位な奴ねぇ……ま、アンタ自身に戦う力はないし、それでいっか」

マチョロッテ「んじゃ、突撃ーっ!」

ほむら「とつげきー」ウワノソラ


173 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:53:02.43 1SMnrX600 100/569



~魔王城(仮)内部~


魔物A「ぎゃああああああああ!?」

魔物B「ば、化け物だあああああああああ!?」

マチョロッテ「……さっきから何故か魔物が逃げていくわね」

ほむら「ほんと、なんででしょうねー」目線逸らし

マチョロッテ「ま、お陰で楽々と探索出来るけど」

ほむら「ほんと、よかったですねー」目線逸らし

マチョロッテ「……アンタさぁ、さっきから上の空だけど」

マチョロッテ「一応此処、敵陣かも知れないのよ? 緊張感持ちなさいよ」

ほむら「あ、失礼ですねー」

ほむら「鹿目さんや友枝さんと違って、私はちゃんと警戒はしています」

ほむら「ただ、妖精さん濁の状態では警戒すべきものが特異なので」

マチョロッテ「さいで」

マチョロッテ「……つまり、いよいよ見えてきたあの如何にもって雰囲気の扉を開けるのは私って事?」

ほむら「勿論。私は無力な人間ですもん」

マチョロッテ「私だって今はそうよ」

ほむら(いや、今は違う……と言いたいです……言いませんけど)

マチョロッテ「ま、いいや」

マチョロッテ「んじゃ、おじゃましまーす」

ほむら「おじゃましまーす」

ほむら(おっと。扉の向こうは中々広い空間ですね……ぶら下がっているシャンデリアとか床の絨毯とか、中々豪勢な雰囲気)

ほむら(そしてお約束のように、部屋の最奥のご立派な椅子にふんぞり返っている御仁が一人居ますね)

ほむら(姿は人間そっくり。だけど肌は紫、頭には三本の角、それから趣味の悪い貴族風の恰好……)

ほむら(ザ・魔王に相応しいお姿の方ですね)

ほむら(これからお食事をするのか、部屋の隅には人が十人ぐらい入れそうなぐらい大きなお鍋があって)

ほむら(そのお鍋の上には、生け贄らしき、ロープで縛られた金髪と桃色の髪の女の人二人が……)

ほむら「ん?」


174 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 09:55:15.84 1SMnrX600 101/569



マチョロッテ「あ、気付いた?」

マチョロッテ「アレって……アイツら、よねぇ?」

ほむら「お鍋から立ち上る湯気の所為で姿はよく見えませんけど……」

??「そ、その声は暁美ほむら!? 暁美ほむらね!」

??「こんな目に遭わせて、無事に帰れると思わない事ね!」

???「ちょ、なんで挑発してるんですかー!?」

???「今の状態じゃ敵対する以前の問題ですよぉ!?」

ほむら「最近すっかり聞き慣れたあの声からハッキリと分かります」

マチョロッテ「やっぱりあそこにいるのは……」

マチョロッテ「鹿目さんと」

ほむら「友枝さん!」

友枝?「何時まで引っ張んのよそのネタ!?」

マミ「とーーーーーーーーもーーーーーーーーえーーーーーーーーーーーーーって何回も言ってんでしょぉ!?」

ほむら「やだなぁ。わざとですよ、わ・ざ・と♪」

マミ「むきいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

まどか「マミさん落ち着いてよぉ!?」

まどか「イライラしちゃう気持ちは分かりますけど、私達今ロープで縛られて」

まどか「ソウルジェムは没収されたから魔法は使えず、沸騰するお鍋に今にも落とされそうなんですよ!?」

まどか「ここは一時休戦してでも助けてもらわないと……」

マミ「鹿目さん」

まどか「は、はい?」

マミ「正義っていうのはね、妥協したらその時に終わるの」

マミ「私達は高潔な、正義の魔法少女! 悪とはどんな形であれ借りを作る訳にはいかないのよ!」

まどか「えぇー……」

ほむら「友枝さんって、面倒見が良いだけでリーダーには向かないタイプだと思います」

マチョロッテ「降伏するぐらいなら死を選ぶとか言い出しそうよねー。プレッシャーにも弱そうだし」


175 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:00:46.07 1SMnrX600 102/569



マチョロッテ「つーか、アンタらなんでこんな場所に居んのよ。魔王に雇われたの?」

マミ「拘束された姿を見てなんでそんな答えに至るのよ!?」

マミ「あなた達だけが変な動物に助けられた後、私達底なし沼に頭から落ちたのよ!」

マミ「私がリボンの魔法を使えたから助かったけど、そうじゃなかったら死んでいたわ!」

ほむら(いや、それはむしろ底なし沼に落ちてラッキーだったんじゃないでしょうか……)

マチョロッテ(地面だったらぺっちゃんこだよね……)

マミ「しかも、なんとか脱出出来たけど体力の消耗が激しくて……」

マミ「運悪くオークとかいう化け物に見つかり、戦う事も出来ずに捕まり!」

マミ「貢物って事でこの魔王城に連れてこられたのよ!」

ほむら「あー……それは、」

ほむら「ラッキーでしたね。捕らわれなかったら私に会えず、地上に帰れませんでしたよ?」

マミ「ふしゃあああああああああああ!!」

マチョロッテ「そこは少しで良いから気遣いなさいよ……巴さん、威嚇する猫みたいな声上げてるわよ」

マチョロッテ「あとさー、さっきから魔王らしき人が私達にぽかんとした表情を向けているけど……」

魔王「あ、やっと気付いてくれた」

魔王「……おほん……ふん。地上人が、地底の魔王たる私に何の用だ?」

ほむら「あ、魔王さんと名乗ってくれましたよ!」

ほむら「わざわざ目標を探す手間が省けました!」

マチョロッテ「そうね」

魔王「――――ほう、成程な」

魔王「大方我を倒そうとやってきたのだろうが……なんとも愚かしい」

魔王「いいだろう! 知識と恥を持たぬ地上人に我の力を見せほむら「妖精さんアイテム『性格やや反転光線銃』~」

魔王「え、しばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばーっ!?」

マチョロッテ「うわ、コイツ不意を突きやがった。しかも光線銃で魔王を攻撃って……」

ほむら「生きるか死ぬかの戦いをしようとしているくせに、長々と話しちゃってる方が悪いんです」

ほむら「それにほら、別に殺した訳じゃありませんし」

ほむら「今の光線銃は、名前の通り性格をやや反転させるものです。ややですので、二回当てても元の性格に戻れないのが要注意」

ほむら「で、あの魔王さんが悪者だって言うのなら今頃」

魔王「おお……私は、今までなんと非道な事をしていたんだ……!」

ほむら「いい人になりましたね♪ これにて一件落着です!」

マチョロッテ「なんとてきとーな……」



巨大さやか『ちょっと待てええええええええっ!?』



176 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:03:51.83 1SMnrX600 103/569



ほむら「きゃっ!?」

マチョロッテ「うわっ」

マミ「どぅえええええええええええええええええええええええっ!?」

まどか「なんか黒光りしているさやかちゃんの顔をしたでっかいお化けが、お城の壁を壊して中に入ってきたああああああああああ!?」

ほむら「なんだ、さやかさんじゃないですか……驚かさないでくださいよ」

まどか「え゛!? アレさやかちゃんなの!?」

巨大さやか『なんだじゃないよ!?』

巨大さやか『100メートル近いサイズになった私の力は何処で披露すればいいの!?』

巨大さやか『魔王を倒すしか価値のなくなったあたしの出番はどうなったんだ!?』

ほむら「さぁ?」

巨大さやか『ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

マチョロッテ「ねぇ、反省会は後にしてさぁ」

巨大さやか『おい!? おーいっ!?』

マチョロッテ「早いとこ、あの二人を助けてあげましょうよ」

マチョロッテ「あのままにしてたら薫製になっちゃうわよ?」

ほむら「あー、確かにそうですねー……」

マミ「あ、あなた達の助けなんて、要らないんだからねっ!」

まどか「マミさん、それ案外直球で助けを求めているようなものですよ」

マミ「え?」

ほむら「……どの道放置は出来ません(自力で地上に戻れるとは思えませんし)」

ほむら「しょーがないから、助けるとしましょう」

マチョロッテ「そうねー。仕方ないから助けましょうか」

マミ「う、ううううううううっ!」

巨大さやか(あ、巴先輩涙目でぷるぷる震えてる……かわいい)


177 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:06:31.89 1SMnrX600 104/569



ほむら「じゃ、私が友枝さんの縄を解くとしましょう」

ほむら「動かないでくださいねー、友枝さん」

マミ「くっ……こんなの、屈辱だわ……!」

マミ「しかも、あの人が魔王だとしても……性格を変える、つまり洗脳する魔法を躊躇わず使うなんて……」

ほむら「もー。魔法なんかじゃありません。科学です!」

ほむら「ね! 妖精さん!」

妖精さんA「そのとおりですな」
妖精さんB「まほうなんて、ひかがくてきすぎ?」
妖精さんC「じだいおくれよねー」
妖精さんD「まほーがゆるされるのはちゅーせーまでです?」
妖精さんE「きゃははとわらうべきでは?」

マミ「っ!?」

マチョロッテ(ほむらの髪の中から出てきた妖精さんに驚いたみたいね……何時の間に潜んでた、と訊くのは野暮かしら)

マミ「な、何よ……使い魔が生み出した道具なんでしょ? だったら魔法でしょ」

ほむら「あれ? そういえば言ってませんでしたっけ?」

ほむら「彼等は妖精さん。使い魔ではありませんよ」

マミ「嘘おっしゃい! 使い魔じゃなかったら、一体何なのよ!?」

ほむら「何って、妖精さんは妖精さんだと思いますけど……」

マミ「ふん! 説明出来ないじゃない!」

マミ「やっぱりそいつらは使い魔なのね! 懐柔しようってつもりなんでしょうけどそうはいかないわ!
   あなたの力なんて借りなくても――――」

ほむら「え、わ、ちょ!? 縄緩めている時に暴れたら」


178 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:09:10.93 1SMnrX600 105/569



――――しゅるり

ほむら「あ」

マミ「へ?」

マチョロッテ(あ、縄が解けちゃった)

マチョロッテ(で、その時不思議な事が――――起こらず、巴さん、重力に従ってまっさかさま)

マミ「あっちゃあああああああああああああああああああああああ!?」

マチョロッテ(見事熱湯風呂にダイブ、と)

まどか「マミさあああああああああああああああああああああああん!?」

マミ「あちゃ!? あちゃ、ほあっちゃあ!?」

ほむら「大変です!」

ほむら「妖精さん! 友枝さんの火傷を冷やしたいので、氷を用意してくださいな!」

妖精さんB「すこしまってくださればー」

ほむら(よし、妖精さんが散っていった……)

妖精さんD「ごよういできたー」

ほむら「ありがとうございます! ……注文したのは氷なのに、なんで届いたのは氷風呂なんでしょうね……」

ほむら「ま、いいや! さあ友枝さん! こっちの氷風呂に浸かって身体を冷ましましょう!」

マミ「あひ、あひぃ……!」

マミ「ああ……冷たい……生き返るぅ……」

ほむら「えー、熱湯に浸かっていた時間は十秒でしたので……」

ほむら「十秒の宣伝時間が与えられます! さぁ、どうぞ!」

マミ「あ、えっと今度CD出す事になりました! その名もティロ・フィナーレ音頭」

マミ「って、何を言わせんのよ!? というか何言ってんのよ私!?」

ほむら(どうやらあの氷風呂には、熱湯に浸かった後入ると思わず宣伝したくなる効果が付加されていたようですね)

ほむら(……巴さんに傷が見られないあたり、治癒効果も付いている、と)

ほむら(面白さは忘れず、しっかりとオーダーをこなす。流石妖精さんです)

まどか「マミさん、CD出すんですか?」

マミ「なんでちょっぴり信じているの鹿目さん!? 出さないから!」


179 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:12:58.72 1SMnrX600 106/569



マミ「ああもう! こんな時にもふざけて……!」

マミ「やっぱりあなた達と一緒になんて居たくない! 私達だけで帰るわ!」

ほむら「あらら、走って部屋の外に向っちゃいましたか……」

まどか「ま、マミさん置いてかないでぇ……」

マミ「うっ!?」パタリ

ほむら「……あれ?」

ほむら「友枝さん、急に倒れて……動かなくなりましたね?」

まどか「え!? ま、マミさん!? どうしたの!?」

まどか「まさか、さっきお鍋に落ちちゃった時の火傷が!?」

マチョロッテ「いや、単にソウルジェムから離れすぎただけでしょ。没収されたって言ってたし」

ほむら「と、言いますと?」

マチョロッテ「ああ、そういやアンタには話してなかったわね」

マチョロッテ「魔法少女って、キュゥべえと契約する時魂をソウルジェムに封じてんのよ」

マチョロッテ「つまり身体はただの入れ物というか、乗り物みたいなもので、ソウルジェムが本体なの」

マチョロッテ「で、乗り物が本体からそう遠くまで離れられる訳ないでしょ?」

マチョロッテ「ソウルジェムから大体100メートル以上離れると、あんな感じにぶっ倒れちゃうのよ。要は死体になるのね」

マチョロッテ「ソウルジェムを手元に戻してあげれば回復するけど、早くしないと腐っちゃうわ」

ほむら「へー」

まどか「何それ」

ほむら「え?」

マチョロッテ「え?」

まどか「私……そんなの聞かされてないけど……」

マチョロッテ「え」

ほむら「え?」

マチョロッテ「……………」


マチョロッテ「あ、やべ。これ昔キュゥべえを問い質した時に聞いた話だった」



180 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:21:18.62 1SMnrX600 107/569



まどか「ちょっ……ええええええっ?!」

まどか「それってどういう事!? わ、私達の本体がソウルジェムって……」

巨大さやか『あ、あたしもそれシャルちゃんから聞いたよー』

まどか「なんで極々普通の中学生に過ぎない筈のさやかちゃんまで知ってんのっ!?」

マチョロッテ「あ、あー、えっと、今のはオフレコです。報道したらその新聞社終わりだから?」

まどか「私新聞記者じゃないから!?」

マチョロッテ「じゃ、じゃあアレだ! 悪者が精神ダメージを期待して言うアレ! どう!?」

まどか「どう、じゃないよぉ!? 相談するならせめてほむらちゃんにしてよ!?」

ほむら「さてと。魔王を倒しましたし、そろそろ帰るとしますかねー。あ、村に報告しないといけませんか」

まどか「ほむらちゃんなんでそんなすっごい無関心なの!?」

まどか「今の話ものすっごく重要だよね!? アニメだったら三話か四話ぐらい引っ張れる話題だよ!? 少女漫画なら五巻は引っ張るよ!」

まどか「そんでもって私はゾンビにされたんだって言って、好きな男の子を諦めちゃうようなイベントが発生する事態だよぉ!?」

ほむら「だからですよ。そのイベント、暗い話しかなさそうじゃないですかー」

ほむら「私、そういう話好きじゃないんです。愛と正義が勝つ、シンプルで楽しいストーリーが好きなんです」

ほむら「最近はなんか小難しくて灰色な話が多過ぎると思うんですよ。シンプルはシンプルなりに需要があると」

まどか「話逸らさないでよ! どこまで興味ないの!?」

マチョロッテ「あー、ほら、あれだ」

マチョロッテ「本体がソウルジェムだから、身体はいくら傷付いても平気だから」

マチョロッテ「不死身の魔法少女。ちょっとカッコ良くない?」

まどか「引き攣った笑顔でメリット言われても全然喜べないから!」

ほむら「いや、どうなんでしょーね? 弱点剥き出しで、しかも詳細を本人に伝えないって……」

ほむら「私には万一謀反を起こされても簡単に制圧出来るようにするための、保険にしか思えないのですが」

まどか「そしてほむらちゃんはなんでテンション落ちる事言うのぉ――――――――!?」


181 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:23:21.86 1SMnrX600 108/569



………
……



ほむら「さてさて。魔王さんを(形式的に)倒したので、さやかさんの肩に乗って村まで戻ってきましたー」

ほむら「魔王さんが村人さん達と和解したいと言った時はどうなる事かと思いましたが」

ほむら「村人さん達に犠牲者がなかったお陰で、案外すんなりと仲良くなってましたねー♪」

マチョロッテ「その記念の晩餐ってのに誘われて、お腹もいっぱいになったしね。いやぁ、幸せだわー」

ほむら「辺りが暗くなるまで楽しんでしまいましたよ♪」

ほむら「妖精さん達も、あまーい角砂糖をたくさんもらって良かったですね!」

妖精さんA「しあわせのしろいこなー!」
妖精さんB「なくてはいきていけぬ」
妖精さんC「ころしてでもうばいとるものでは?」
妖精さんD「きれるとゆめにでるです」
妖精さんE「じょーちょもふあんていになるかと?」
妖精さんF「きせいされぬのがふしぎなおいしさ」

マチョロッテ「砂糖をもらった感想とは思えないぐらい物騒なんだけど」

ほむら「妖精さんにとってはそれぐらい大切なものなんですよ」

巨大さやか『いいなぁ……あたしは村に入れなかったからなぁ……大き過ぎて』

ほむら「さやかさんは自業自得です。妖精さんの前で迂闊な発言をするのは社会的に自殺行為なんですから」

巨大さやか『何時も自由気儘なお前が言うか?』

ほむら「これでも言動には気を付けているんですよ? 焚き付け方にはちょっとしたコツがあるので」

ほむら「……ところで、何故あなた達は晩餐に参加しなかったのですか?」

ほむら「鹿目さんに、友枝さん」


182 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:29:58.64 1SMnrX600 109/569



マミ「……ふん」

マミ「助けた事で、気を許すと思ったら間違いよ」

マミ「私達は魔女を狩る者なの。魔女を守ろうとするあなたとは決して相容れない」

マミ「それに、私があなた達から離れようとした時なんらかの魔法で私を攻撃したわよね? 随分と乱暴なのね」

ほむら(攻撃? ……ああ、ソウルジェムから離れすぎた時の事ですか)

ほむら(それはあなたの自爆です、とは言えませんねぇ……)

マミ「そんなあなたと一緒に食事なんて、願い下げだわ。それに魔王を洗脳したように、村人を洗脳していないとも限らないしね」

ほむら「やれやれ……もう少し歩み寄る努力をしてくれないものですかね?」

ほむら「あなた方魔法少女が何人敵になろうと妖精さんパワーの前じゃ塵芥に等しいんですから、諦めて和解しましょうよー」

巨大さやか『それを言っちゃうから歩み寄れなくなるんじゃないかなぁ』

マチョロッテ「上に同意」

ほむら「えー?」

マミ「……ふんっ」

ほむら「やれやれ……これは先が思いやられます」

さや シャル(こっちの台詞だっつーの)

ほむら「……っと、楽しみ過ぎてすっかり忘れていましたが」

ほむら「辺りがすっかり暗いという事は、恐らく夜を迎えたと思われます」

ほむら「携帯の時刻が七時を越えましたので、地上と昼夜のサイクルは同期しているとみて間違いはないでしょう」

ほむら「なら、今頃地上はいい感じに夜の筈です」

ほむら「私は平気ですけど、さやかさんは、流石にもうお家に帰らないとご両親に怒られますよね?」

巨大さやか『あ、そうじゃん!? 忘れてた!』

マミ「ふん。簡単に言うけど、どうやって地上に帰るつもり?」

マミ「私達が落ちてきた穴の場所は分からない。そもそも、ここが地下何メートルかも分からない」

マミ「いえ、あの時の感覚から言えば、地下1000メートルはありそうね」

マミ「そんな深さからどうやって脱出する気で――――」

ほむら「妖精さん妖精さん。そろそろ地上に帰りたいのですが」

妖精さんA「では、かえりみちをつくりまっせ」

マミ「なっ……何を言っているのかしら?」

まどか「どうやって帰り道を作るの?」



183 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:32:01.64 1SMnrX600 110/569



ほむら「あ、そういえばお二人は妖精さんの発明をあまり見ていませんでしたね」

ほむら「さやかさん達も、本格的な発明を見るのは始めての筈です」

巨大さやか『え? 本格的って……』

ほむら「論より証拠。百聞は一見にしかず」

ほむら「妖精さん。お願いしますね」

妖精さんA「りょーかいしたー」

ほむら「さぁ、作り始めますよ」

マチョ まどか 巨大 マミ「!?」

マチョロッテ(な、何!? 妖精さん達がものすごい速さで動いてる!?)

巨大さやか(眼にも止まらぬ速さだ……)

まどか(そ、それで、何かがすごい勢いで建っていく!?)

マミ(ああ……こ、これは……!)

妖精さんC「かんせいしたです?」

ほむら「おお、これは中々……」

マチョロッテ「中々ご立派な……洗面所、よね?」

巨大さやか『洗面所に見えるけど……』

まどか「……洗面所?」

マミ「……暁美ほむら。ふざけているのかしら?」

マミ「洗面所で一体どうやって帰るのよ!?」

ほむら「さぁ? 作ったのは妖精さんですから、私も説明を聞かない事にはなんとも」


184 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:35:23.45 1SMnrX600 111/569



ほむら「妖精さん。これをどう使えば地上に帰れるのですか?」

妖精さんD「てをあらうとながされてー」
妖精さんE「いきたいばしょにいけます?」

ほむら「ほほう。流されると行きたい場所、つまり地上に帰れると」

ほむら「……水は下へと流れる構造なのに?」

妖精さんC「そこがおもしろいかと?」
妖精さんD「したへいくのにうえにいく」
妖精さんE「だましえてきなおもしろさ」

ほむら「成程。確かに面白いですね」

マミ「なんで納得してんのよおおおおおおお!?」

巨大さやか『巴先輩。あまりムキにならない方がいいっすよ』

巨大さやか『考えるだけ無駄ですから』

マミ「え、えぇー……」

まどか(なんか、さやかちゃんが精神的にすごく逞しくなってる気がする……)

ほむら「とりあえず私から地上に帰るとしましょう」

ほむら「多分私からじゃないと、絶対に触ってくれそうにない方が二人居るので」

マミ「と、当然ね」

ほむら「じゃ、早速」

ほむら「蛇口をひねってー、出てきた水で手を洗シュンッ!!

まど マミ「!?」

巨大さやか『あ、ほむらが消えた』

マチョロッテ「おー、すっごい……流石妖精さんの発明品。こんな形でも効果はしっかり発揮すると」

マチョロッテ「あ、捻った蛇口が勝手に動いて、水を止めたわ」

妖精さんE「かんきょーにやさしいせっけいですからなー」


185 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:38:14.31 1SMnrX600 112/569



巨大さやか『いやはや、何度も妖精さんアイテムを見てきたけど、これは凄いや』

巨大さやか『ところでこれってどんな仕組みなの? 流されたほむらはどうなる訳?』

妖精さんA「もこもこにかわります」

四人「……はい?」

妖精さんA「もこもこじゃないといけないくうかんとおるです」
妖精さんB「そのままだとそりゅーしれべるでばーらばら」
妖精さんC「ぼくらはへいきだけど、にんげんさんはもこもこだめだからー」
妖精さんD「とけて、おおきなもこもこのなかまいり」
妖精さんE「もやもやはなんとかなるけどねー」
妖精さんF「でてくるときに、もどるしようです?」

マミ「も、もこもことかもやもやって何……?」

マチョロッテ「……さぁ? どうやら特殊な空間を経由して地上にワープするみたいだけど……」

マチョロッテ「なんかすっごい難しい手法使ってない? それともこれが一番簡単なの?」

妖精さんB「なんいどはそんなに」
妖精さんA「でも、そこそこやりごたえはあるかと」
妖精さんD「くうかんつなげればすみますが」
妖精さんE「かんたんすぎるので」
妖精さんC「ぬるげーはきらわれるです?」
妖精さんF「おもしろみがないなー」

巨大さやか『空間つなげるのって簡単なんだ……』

マチョロッテ「何はともあれ面白さ重視なのね……」

マチョロッテ「ま、ほむらは無事に帰還したでしょうから、次は私が行こう」

マチョロッテ「手を洗ってーシュンッ!!

巨大さやか『じゃ、次はあたしが』

巨大さやか『手を洗いーのシュンッ!!

まどか「ああ、さやかちゃんも消えた……あんなに巨大でもワープ出来るんだ……」

まどか「……残ったの、私たちだけになっちゃいましたね」

マミ「……なっちゃったわね」

マミ「……使い魔の作った道具なんて、できれば触りたくないけど――――」

妖精さんA「おきにめしませぬか?」
妖精さんC「ぼくら、やくたたず?」
妖精さんR「いらんこ?」

マミ「うっ!?(つぶらな瞳で見つめてきている……正直、可愛い)」


186 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:41:43.26 1SMnrX600 113/569



マミ「ええい! 女は度胸よ!」

マミ「手を洗ってシュンッ!!

まどか「マミさんが消えた……こ、怖いから目を瞑りながら……私も洗うっ!」

まどか「……………」

まどか「あれ? 何も起きてない……」

まどか「!?」

ほむら「あ、鹿目さん。おかえりなさーい」

まどか(ほ、ほむらちゃん!? という事は……)

まどか「こ、此処、私達が地下に落ちる事になった穴があった……廃工場?」

まどか「って事は、地上に帰れたんだ!?」

ほむら「ええ、その通りです。友枝さんも無事ですよー」

マミ「鹿目さん! 大丈夫? なんともない?」

まどか「え、ええ……なんとか……」

まどか(それにしても、こんな長距離の瞬間移動を本当に実現するなんて……)

まどか(使い魔の力とは思えない。ううん、今まで戦ったどんな魔女よりも凄い力がないと多分実現出来ない……)

まどか(そもそも、『魔女』にこんな事って出来るの?)

まどか(もしかして、本当に妖精さんは『妖精さん』……?)

ほむら「さて、それより……どうしましょうかね」

マチョロッテ「どうしたものかしらね……」

マミ「そうね……流石にこれは、どうしたものかしらね……」

まどか(? みんな、何を見て……)


巨大さやか『……………』


まどか「……あー」

巨大さやか『あー、じゃないよまどかぁ!?』


187 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:46:03.80 1SMnrX600 114/569



巨大さやか『私大きいままなんですけど!? これじゃ家に帰れないんですけど?!』

巨大さやか『小さくなろうとしたらなんか邪念みたいのが込み上がってきて怖くて出来ないし!』

ほむら「ふーむ。小さくなると悪に目覚めて暴れ回る、と……王道ですね」

マチョロッテ「まぁ、大きい奴が小さくなってパワーアップの流れって、悪役のやつだもんね」

巨大さやか『どうすんの!? どうすりゃいいのぉ!?』

ほむら「まぁまぁ。落ち着いてくださいな」

ほむら「妖精さんに頼んで、正義の心を失わずに小さくなれる道具を作ってもらいます」

ほむら「ただ地上には電波があるので、まずは私の家に帰り、そこで作ってもらう事となります」

ほむら「直せるのは私が帰宅してから。なのでざっと一時間後ってところでしょう。
    明日の学校には問題なく通えるかと……って、明日は休日でしたか」

巨大さやか『で、でも、お母さん達は……』

ほむら「『信じてメガホン』を使って、親元を離れて暮らしている私の手伝いをしてくれている、とでも説明しておきます」

ほむら「あれ、電話越しでも効果がありますからね。説得は容易ですよ」

マミ「……何を言っているのかよく分からないけど、それ、洗脳じゃないかしら?」

ほむら「どちらも元々あった意思を捻じ曲げるという点では同じです。大差ない大差ない」

マミ「全然違うわよ! 一般人を洗脳なんて断固として認められない――――」

ほむら「非難するのは勝手ですけど、その前に代案を提示してほしいですね」

ほむら「策もなしに現行案を否定するのは、何もせずぼうっとしているのと変わりません」

ほむら「まっとうな手法ではどう考えても対処不可能なんですから、多少非人道的な道に突っ走るのは仕方ないと思いますよ?」

マミ「う、うう、うぐぐぐぐ……!」

ほむら「さ、反論も出なくなりましたね」


188 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:50:28.09 1SMnrX600 115/569



ほむら「とはいえ私が戻るまでの一時間、さやかさんをこのまま置いておく訳にもいきません」

ほむら「いくら此処が人気の無い廃工場と言っても、全長100メートルの人影は目立ちますからね」

ほむら「なんとか隠さないと、ツイッターやらなんやらに写真が載ってしまいます」

巨大さやか『隠すったって、何処にだよ?』

ほむら「海です」

巨大さやか『……海?』

ほむら「はい。幸いこの工場は海の近くに建っているようですから、そのまま海にダイブ出来ます」

巨大さやか『いやいや。それってつまり潜って隠れろって事でしょ!? 無理だからそんなの――――』

ほむら「多分大丈夫ですって! ほら、やってみなきゃ分かんない!」

巨大さやか『……確かにやってみなきゃ分かんないね。妖精さんだもんね』

巨大さやか『ああもう! やってやるよ!』

マチョロッテ(ああ、さやかが海に入って行く……)

マチョロッテ(……さやかだと思おうとしているが、ぶっちゃけ黒光りした巨人なので)

マチョロッテ(怪獣映画のワンシーンに見えるなぁ)

巨大さやか『……顔まで浸かってみた結果、普通に呼吸出来る事が判明した』

ほむら「これでとりあえず問題は解決です!」

マチョロッテ「あっさりー」

巨大さやか『うう……早くしてよー』

ほむら「そうですねぇ……友枝先輩が邪魔してこなければすぐにでも」

マミ「……このまま魔女を見逃すのは癪だけど、美樹さんを戻せるのは、悔しいけどあなただけみたいだしね」

マミ「今日は休戦としましょう」

ほむら「ご英断感謝します」


189 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:55:50.24 1SMnrX600 116/569



ほむら「さて、これで一通り問題は解決。あとは後片付けだけ」

ほむら「ようやく大冒険も終わりですね」

マチョロッテ「あー……その言葉を聞いたらどっと疲れたわ」

マチョロッテ「つーか今更だけど地底冒険って……あれがなんか言ってた500fってやつの所為なの?」

ほむら「そうですよ。あれはまだマシな部類ですけどね」

マチョロッテ「マシって……」

ほむら「そうですねぇ、詳しく話しますと――――ん?」

まどか(? ほむらちゃん、工場の窓から空を見上げて……?)

ほむら「……また今度にするとしましょう。話すと長くなるのと、覗き見するような不届き者に聞かせるのは勿体無いので」

マチョロッテ「覗き見? ……よく分かんないけど、まぁ、アンタがそういうならそれでいいわ」

マチョロッテ「んじゃ、さっさと家に帰ってさやかを元に戻してやるか。それで後片付けは終わりなのよね?」

ほむら「ええ。それで全部終わり……」

マチョロッテ「……………」

ほむら「……………」

マチョロッテ「……なんで私の事じっと見つめているの?」

ほむら「……あ、そーだ。シャルロッテさん。今日の夕飯の買い物をしないといけないんでしたー」

ほむら「私はさやかさんを元に戻すため急ぎ家に帰らないといけないので、お使いを頼んでいいでしょうか?」

ほむら「今日の晩ご飯はカレーの予定ですので、カレールー以外の材料を一通り買ってきてください」

マチョロッテ「別にいいけど……」

ほむら「では財布はお渡しします。じゃ、私はこれにて!」

マチョロッテ「え、あ、ちょっと……」

マチョロッテ「……走って行っちゃった。何をそんなに慌てているのかしら」

マチョロッテ「ねぇ? あなた達もそう思わない?」

マミ「」

まどか「」

マチョロッテ「……なんでバイオテクノロジーによって復活したティラノサウルスと遭遇した一般人みたいな顔してんのよ」


190 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 10:58:30.48 1SMnrX600 117/569



マミ「えっと、あの……今まで、なんとなくそーなのかなーと思わなくもなかったのですけど……」

まどか「なんというか触れちゃいけない事なのかなーとも思って……」

マミ「で、でもいよいよ触れないといけない気がしたのでー……失礼を承知ながら訊きますけど……」

まどか「聞きたいのですけど……」

マチョロッテ「なんで敬語?」

マミ「ま、魔女……なのでしょーか?」

まどか「ほむらちゃんと仲良くしている魔女、でしょうか?」

マチョロッテ「……ちょっと待ちなさい」

マチョロッテ「なんでそんな初対面みたいな反応なのよ?」

マチョロッテ「言っとくけど私はさやかみたいに妖精さんに改造なんてされてな――――」

マチョロッテ「……………」

マチョロッテ「……………」←ほむらが走っていった先を見つめている

マチョロッテ「……鏡、魔法で作ってくれない?」

マミ「え」

マチョロッテ「鏡、魔法で作ってくれない……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

マミ「ア、ハイ。タダイマ」

マチョロッテ「……」

まどか(ああ……鏡を凝視してる……お面でも付けているかの如く無表情で……)

マチョロッテ「……あの薬、の所為か」

まどか(あ、なんだろう。すごく安らかな笑みを浮かべ)




マチョロッテ「あんにゃろうぶっ殺してやるああああああああああああああああああ!!!!!」




マミ「……暁美さんの逃げた方に走っていったわね」

まどか「……ほむらちゃんの逃げた方に走っていきましたね」

マミ「……帰りましょうか……」

まどか「……帰りますか……」


191 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/01/27 11:00:34.66 1SMnrX600 118/569



――見滝原上空――


「いやはや、流石にさっきは驚いたね。まさか、この距離で観察していたのが発覚するとは……妖精の道具によって知ったのかな?」

「マミ達が穴に落ちた後は、僕らの観測範囲から出てしまったので何が起きたかは分からないけど」

「それはつまり、あの穴は”僕らですら知らない”場所に繋がっていたと考えるべきだろう」

「そして、突如として地上に暁美ほむら達が戻ってきた現象」

「僕らが使用している空間転移とは明らかに異なる、解析すら出来ない事象」

「興味深い。けれども――――僕らの役目を知った以上、協力してくれそうにはないからね」


\マテヤゴルアアアアアアア!!/
\ヒェェェェェェ!?/


「さてと。どうやって彼女達を排除したものかな……」

「高々原住生物二種を始末するだけなんだから、出来るだけ節約しないとね」



223 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:01:01.15 fUVZhJIz0 119/569



えぴそーど なな 【インキュベーターさんの、じみちなかつどう】


224 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:03:32.26 fUVZhJIz0 120/569




――――暁美ほむら。

年齢十四歳。種族・人間。
幼少期から心臓が弱く、最近になって手術を受ける。その影響からか体力が非常に乏しく、戦闘能力は皆無。

魔法少女としての素質を持つが、こちらも期待エネルギー摂取値は22300程度と平均の七割程度であり、
利用価値は低いと評価される。

しかしながら彼女は『妖精』と呼ばれる種族と協力関係にあるらしく、『廃棄物』を人間に戻すという行為を実行。

結果、一つの廃棄物を人間へと戻す事に成功した。


状況から判断し、廃棄物が元々人間であると知っている事は確実。
現在までに確認された言動からも我々に敵意を持っているのは明白であり、我々の目的を知った場合、
敵対的行動――――我々に対し攻撃を行う可能性が極めて高い。


妖精達の科学力は少なくとも人間の水準を超えており、敵対行動に移った場合、エネルギー回収効率の低下は否めない。

また、なんらかの方法で我々の存在を人間社会に公表された場合、エネルギー回収計画そのものの維持・運用が
不可能になる事も可能性として十分にあり得る。

よって暁美ほむら及び妖精の速やかな排除を申請。

そのための情報収集を行うべく、追加のエネルギー予算を申請する――――



225 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:07:11.84 fUVZhJIz0 121/569



――AM10:02 巴マミ自宅――


QB「……ふぅ。文面は、こんな感じでいいかな?」

QB「妖精達の仕業で本星に帰る羽目になり、エネルギー予算が尽きたからね……やれやれ。追加しないといけないとは」

QB(ちょっとこの星の生物を甘く見ていた、という事なのかな?)

QB(いくらセキュリティは必要最低限とはいえ、まさか本星にある僕の精神本体に干渉するとは思わなかったよ)

QB(尤も、所詮その程度だ)

             この身体
QB(セキュリティの低い 端  末 を通じ、別惑星に存在する本体の精神に干渉するなんて、
   少し文明が発達した星なら簡単に出来る)

QB(基本性能の低いこのボディでは認識出来ない生命体も、宇宙にはいくらでも存在する。
   迷彩機能を持つ原生生物なんて珍しくもない)

QB(先日確認された未確認の転移技術も、ま、宇宙は広い。僕らの知らない転送方法があるのは、むしろ自然だ)

QB(それをこんな一辺境、まだまだ幼いこの惑星の生物が持っていた事には少し驚いたけどね。
   事前調査で生物進化が遅れているからって、精密調査のコストを減らしたのは失敗だったかな)

QB(早く生態を調査し、駆除していくとしよう)

QB(いや、妖精がそれなりに知性に優れる生命なら、この惑星の管理を任せるのもいいかも知れない)

QB(この星の原生生物なら僕らよりも人間の御し方を心得ているだろうしね。契約作業もスムーズにいくだろう)

QB(その場合僕らが認める”人類”は人間ではなく妖精達になるのかな?)

QB(ああ、そうなったら人間を知的生物と認める必要はなくなる。契約なんてせず、
   強制的にエネルギーへと変える初期の計画に戻るかも知れない)

QB(……ま、これは上層部が判断する事か)

QB(――――よし。エネルギーの追加申請が通った。コンピューターによる合否判定は結果の可否が早くていいね)

QB(それじゃあ、情報収集に行くとしよう)

QB(暁美ほむら)

QB(妖精達の力を過信しているようだけど、あまり僕らの力を見くびらない方が良いよ――――)


227 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:13:39.57 fUVZhJIz0 122/569



―AM10:47 暁美ほむら自宅前―


さやか(さてさて。休日を迎えました今日この頃)

さやか(ほむらからお茶会に誘われたので、ほいほいやってきたさやかちゃんです)

さやか「ふふふ。ほむらとシャルちゃん、驚くかなぁ?」

さやか「見滝原七大スイーツの一つ『ボン・スィート』のチョコレートケーキ!」

さやか「二人の吃驚する姿を見たいがために、二ヶ月分のお小遣いを奮発して買っちゃったのだーっ!」

さやか「っと、何時ものテンションで両腕広げちゃったけど、あまり大袈裟に動いちゃ駄目だな」

さやか(ケーキが潰れちゃうかもしれないし……)

さやか(何より、あたしが『人間サイズ』でいられるのって昨日ほむらが渡してくれた指輪のお陰だからね)

さやか(うっかり指輪を落としたり壊したりしたら、住宅地のど真ん中に100メートル級の巨人が出現)

さやか(自衛隊とかの攻撃目標になりそうです。そんな展開ごめんなのです)

さやか(故に今日からあたしは淑女になるのだぁ~……ならざるを得ないと言うべきか)

さやか(さて、そんなこんなでほむらの家の前まで来ました)

さやか(……親元を離れて一人暮らしと聞いていたから、てっきりアパートとかで暮らしているかと思っていたけど)

さやか(見事な一軒家でした。下手をするとあたしの家よりでかいかも)

さやか(これはほむらの家がお金持ちと考えるべきか、或いは妖精さんパワーの仕業なのか)

さやか(……妖精さんパワーだな。十中八九)

さやか「ま、どんな家に住もうとほむらの勝手っとね」

さやか「そんな訳でインターホンをぽちっとな」

――――ピンポーン

ほむら『はーい……あ、さやかさん。お待ちしていましたー。今扉を開けますのでちょっと待っててください』

さやか「あいあーい(カメラ付きのインターホンか……いや、妖精さんアイテムか? 判断に困る)」

ほむら「こんにちはー。早かったですね」

さやか「お菓子買ってたんだけど、思っていたよりスムーズにいけてね。ちょっと早く来過ぎちゃったかな?」

ほむら「そんな……気を遣わなくても良かったのに」

さやか「いやいや。流石にごちになるだけってのはね」

ほむら「ふふ……ありがとうございます」

ほむら「さ。立ち話も難ですから中へ」

さやか「じゃ、お邪魔しまーす」

ほむら「あ、そうだ。さやかさんの性格上やりそうなので伝えておきますけど……」

ほむら「うちの中を勝手に散策しない方が、身の為ですよ?」

さやか「……あ、うん。成程、そういう事ね」

ほむら「そういう事です」

――――バタンッ


228 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:16:06.81 fUVZhJIz0 123/569



QB(……ふむ。二人共そのまま家の中に入っていったか)

QB(今回は僕の存在に気付かなかったのかな。或いは、気付いた上で放置したか)

QB(後者だとすれば何かしらの罠を仕掛けている筈だけど……)

QB(低スペックとはいえ、このボディのサーチ機能に引っ掛かるトラップ及びエネルギー反応は確認出来ない)

QB(勿論シールドなんて大層な物は存在せず、電子機器反応は一般的な日本国民の家にあるものと同程度。空間異常も検知されていない)

QB(そして、内部には生命反応が三つ確認出来る)

QB(個体情報は暁美ほむら。先程家に入った美樹さやか。そして元魔女の……人間だった頃はなんて名前だったかな? ま、いいか)

QB(暁美ほむらと元魔女の二人は共に暮らしているとして、美樹さやかがこの家に来たのは何故だろう)

QB(もしかすると、今後どう行動しようか作戦会議でもしているのかな? だとしたら好都合なんだけど)

QB(ま、優先目的は妖精の生態調査だ)

QB(……扉に鍵はかかってない、か)

QB(妖精の力を過信しているからかは分からないけど、実に無防備だね)

QB(それじゃあ、ま、堂々と扉から侵入させてもらうとしよう。身体はこんなのだけど、ドアを開けるぐらいは出来るからね)

QB「よいしょっと」

QB(さてと、内部に潜入したしまずは何処から――――)

QB「……………」

QB「まぁなんという事でしょう」

QB「扉を開けてみたら、中はとんでもない大草原ではありませんか」

QB「空に輝く太陽……地平線から昇っているから朝日でしょうか? それが実に眩しくて温かですねぇ」

QB「風と共に感じ取れる草の香りは、とても心地いいです」

QB「――――って、僕は何を言っているんだ?」

QB「と言うかなんなんだいこれは?」

QB「いやいや。まずは落ち着こう。僕は感情がないんだから、クールになるのなんて余裕さ」

QB「ここに入った扉からもう一度外に出ればいいだけの話じゃないか。うん。それからゆっくりと、この事態を分析しよう」

QB「……言った傍から、僕がここに来るために通った扉が消失していた」

QB「……」

QB「なんじゃこりゃ」


229 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:18:24.28 fUVZhJIz0 124/569



QB「いやいやいや。なんだいこれは」

QB「空間転移反応を一切感じさせず、何時の間にやら大草原? 出口も消失?」

QB「いくらこのボディのスペックが低いからって、気付かれずにこんな事が可能とは……」

QB「想像していたよりも妖精達の科学力は優れているのかな」

QB「……これは、正確な調査が必要と考えるべきか」

QB「よし。妖精達の科学力を調べる上では好都合だと思って、出口を探しながらこの空間の調査を進めよう」

QB「最悪このボディを破棄して、新規ボディを見滝原に転送すればいいだけだしね」

QB「まずは東に行ってみようかな」

QB「省コストのボディとはいえ、衛星測位システムぐらいは搭載しているからね。マッピングも楽々と――――」

QB「……」

QB「あれ? 衛星データが受信できない?」

QB(どういう事だ? ボディに異常は見られない)

QB(地球に配備してある衛星に不具合が生じたという通達も来ていない。そもそも、一部とはいえ
   機能停止するほど重大なエラーなんてここ数百年は検出されていない筈)

QB(だとすれば、此処が僕らの衛星システムでも検知出来ない”場所”と考えるのが妥当か)

QB(成程。先日の空間転移と言い、妖精達は空間関係のテクノロジーに優れているようだね)

QB(仕方ない。地道に歩いて調べるしかないな)

QB(幸い太陽があるから方角は困らないし)

太陽『あったらしい朝が来た~』

太陽『きっぼうの朝が来た~』

QB「……………」

QB「太陽が歌うなんて、訳が分からないよ」


230 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:24:44.26 fUVZhJIz0 125/569



……………
………



QB(さて、歩き始めてから彼是二十分は経ったかな?)

QB(ようやくこの空間で僕以外の生物を見つけた)

妖精さんA「なにしませうー」
妖精さんB「なにしましょーなー」
妖精さんC「なになにします?」

QB(体長は十センチぐらい。人間から見れば小さい僕よりも、大分小さな生き物だ。今は三体ほどが群れているね)

QB(そして、人型。小人という呼び方が相応しい外見)

QB(マミが言っていた未確認の使い魔の特徴と合致する)

QB(恐らく彼らが妖精という種族だろう)

QB(……喜怒哀楽という言葉の真ん中二文字が抜けたような顔は、感情を持たない僕ですら『間抜け』と判断出来る見た目だね)

QB(ま、あれほどの科学力を持つ存在だ。外観はあんなのでも、それなりに知的な会話が可能だろう)

QB(何故結界内では姿を見られなかったのに、此処では見えているのかは分からないけど、これは好都合)

QB(早速対話に持ち込み、出来る限り情報を集めてみる事にしよう)

QB「やあ、はじめまして」

妖精さんA「はじめましてー」
妖精さんB「あいさつしましたな」
妖精さんC「けれどもどちらさん?」

QB「僕はキュゥべえ。よろしく」

QB「君達は……妖精、かな?」

妖精さん×3「さー」

QB「え」

QB「……えーっと、妖精ではない、という事かい?」

妖精さん×3「さー」

QB(……想像以上に知能の低い生物だった)

QB(どうやら彼等は妖精ではないみたいだね。なら、あまり長話をしても情報は得られそうに――――)

妖精さんB「しかしにんげんさんには、ようせいさんといわれてますなー」
妖精さんA「そーいえばそうだったきが」
妖精さんC「なら、ぼくらようせいなのでは?」

QB(……誰かに言われたから妖精って……アイデンティティに乏しい種族なのかな?)

QB(いや、自身の種族を確立させるのは知的生命体における本能みたいなものの筈だけど……)

QB(ま、まぁ、イレギュラーな種族だからね。多少の予想外は仕方ない)

QB「えっと、幾つか聞きたい事があるんだけど、いいかい?」

妖精さんA「ぼくらでこたえられることなら?」

QB「それでいいよ」


231 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:27:04.26 fUVZhJIz0 126/569



QB「それじゃあ……この空間について聞こうか」

QB「実は、ちょっと迷い込んでしまってね。出口が分からないんだ」

QB「だからこの空間がどんな場所か教えてくれないかい?」

QB(上手く利用すれば、邪魔者をこの空間に閉じ込める事も出来そうだからね)

妖精さんA「ここ、じかんのないくうかんです?」

QB「……はい?」

妖精さんB「ここ、じかんながれませぬ」
妖精さんC「ふほーしんにゅーしゃをもてなすためですので」
妖精さんD「にんげんさんのきちょうなおじかん、むだづかいせぬように」
妖精さんA「じかんなくしときました」

QB「時間を……無くす?」

妖精さんD「あとここ、そうるてきなものこてーするです」
妖精さんA「こころとぶんりしてるとちぐはぐなので」
妖精さんC「こっちもってくるです」
妖精さんB「これでずれないです」

QB「……?」

QB(……どういう事だ?)

QB(話し方が独特な所為でいまいち理解出来ないが……)

QB(それでも言葉通りに解釈するなら、この空間から時間という概念を抜き取った、と言いたいのか?)

QB(馬鹿な。あり得ない)

QB(時間の存在しない世界では、どんな物体も動けないしエネルギーを持てない)

QB(僕が今こうして思考する事すら不可能だ)

QB(時間停止や時間遡行なら科学的に可能だと証明されているけど、時間その物を消すのは不可能だ。論理的に説明されている)

QB(しかも本星にある魂をこっちに持ってきた? ハッタリもいいところだよ)

QB(……何時の間にかもう一体居るのはどういう事なのかな。動体センサーに反応はなかったけど)

QB(ま、どうでもいいか。知能の低さは明白だし、とても高度な科学力を持っているとは思えない)

QB(彼等は労働階級か、端末と言ったところなのかな?)

QB(調査を進めるにしろ、処分するにしろ、もう彼らは用済みだね)

QB「分かった。もういいよ」


232 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:29:18.78 fUVZhJIz0 127/569



妖精さんA「ぼくらのこと、もうしりたくなし?」
妖精さんB「もっとしらべていいのよ?」
妖精さんD「でもじっとみられるのおはずかし」
妖精さんC「かいぼーされるのもいいたいけんになりますな」

QB「……!」

QB(なんだ……今の言葉……)

QB(まるで、僕が君達の事を調べようとしていたのを知っていたかのような台詞……)

QB(しかもずっと見ていた……観測していたのが僕らだと気付いていたのか?)

QB(その上で解剖されるのを望むような、こちらからすれば挑発に取れる発言)

QB(深読みし過ぎか? しかし……万一知っていたのだとすれば……調べない訳にもいかない、か)

QB「そうだね……今ので、少し興味が出てきたかな」

妖精さんE「きゅーべーさん、ぼくらのことしりたい?」
妖精さんD「せつめーしょごよういします?」
妖精さんC「しかしにんげんさんに、ぼくらせつめーへたといわれた」
妖精さんB「のうにいんすとーるはおーけーでしたか?」
妖精さんA「のーのよかん」
妖精さんE「のうですからなー」

QB(……堂々と相談? いや、こちらを混乱させるためのフェイクという可能性も……)



妖精さんC「なら、のうにはいればよいのでは?」



QB(……ん?)

QB(なんだ、今、何かとんでもない言葉が聞えたような……)

妖精さんA「ないすあいであ」
妖精さんB「ぎゃくてんのはっそう」
妖精さんD「だれがいくので?」
妖精さんE「いいだしっぺのほーそく」
妖精さんC「ではぼくでは?」
妖精さんA「きみのよーなきがしますなー」
妖精さんB「どうぞどうぞ」

QB「ま、待ってくれ。君達は一体何を言って――――」

妖精さんC「きゅーべーさん」

妖精さんC「おそばにー」

QB「っ!?(なんだ、視界が白くなって――――!?)」


234 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:34:58.43 fUVZhJIz0 128/569






QB「はっ!?」

QB(なんだ……何が起きた……?)

QB(搭載時計と認識時計にずれはない……データ上僕の意識は途切れていない、
   或いは自動誤差修正によってログが残らない程度のごく短時間だ)

QB(だが、なんだ……何かあったような……)

QB(そもそも僕はここで……何をしていたんだっけ?)

QB(何かと話していたような……というか、話していないと数分間この場に突っ立っていた事に……)

QB(これは記憶が改ざんされたのかな? いや、しかしその割には大雑把というか、思い出せそうなのに判然としないだけというか)

QB(駄目だ。考えるほど混乱してくる)

QB(一先ず本来の目的……妖精の調査を進めるとしよう)

QB(……やれやれ。簡単に片付く案件だと思っていたんだけどね)

QB(面倒だなぁ)



……………
………




QB(当てもなく歩いていたら、平原のど真ん中に建つ一軒家を見つけてしまった)

QB(いや、建物というよりほったて小屋かな? 人間的な表現をするなら『素朴』と『粗雑』の中間ぐらいの出来だし)

QB(ま、建物は建物だ。調べれば、何かしらの情報を得られるかも知れない)

QB(無論、何もないただっ広いこの空間にぽつんと建つ一軒家を見つけられる可能性は、限りなく低い)

QB(だとすれば、この発見は偶然ではなく必然)

QB(恐らく何かしらの罠があの建物には仕掛けられているだろう)

QB(しかし調査しない訳にはいかない)

QB(それに危険があったところでこのボディは使い捨てだ。躊躇う理由はないね)

QB「一応周囲を観測……うん。予想通り、罠は確認出来ない。出来ないだけだろうけど」

QB「とりあえず、ドアから進入させてもらうとしよう。鍵は掛かっていないようだし」

QB(さて、一体どんな罠が飛び出してくるか――――)


235 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:35:41.78 fUVZhJIz0 129/569



「いらっしゃいませ、ご主人様」


236 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:39:18.63 fUVZhJIz0 130/569



QB(……これは……?)

QB(出迎えたのは人間の若い、二十歳ぐらいの女性かな? 一般的に、美女と呼ばれる類の容姿をしている)

QB(いや、人間の反応がないな。ロボット? 外見上区別出来ないほど精巧となると、これも妖精の発明品か)

QB(……どういう訳か体表から『紙』の反応がするのは何故なんだろう? 紙装甲? そんな訳ないか)

QB(それより、いや、保留している問題がいい加減山積みになっているけど、兎に角それより)

メイドロボ「まぁまぁ、お身体が汚れているではありませんか」

QB(何故かメイドロボに捕まり、何処かに連れ去られている事だ)

QB(余程高性能のセンサーを搭載していなければ僕の姿は見えないのに、あっさり見つかってしまったよ)

QB「あの、僕はご主人様じゃないんだけど」

メイドロボ「この家に来た方は、全て等しくご主人様です」

QB(……交渉は出来そうにない、か)

QB(仕方ない。しばらく様子見といこう)

QB(それにしても、僕を何処に連れ去ろうと言うんだろうか――――)

メイドロボ「さあ、ここでお身体を洗いましょう」

QB(……浴室につれて来られた。本当に身体を洗うつもりなのかな?)

QB(いや、恐らくこれは対象の分析が目的か)

QB(このボディに接触する事で、僕らの情報を直接読み込もうとしているのだろう)

QB(敵を知るために情報収集……悪くない判断と言いたいけど、生憎それは叶わない)

QB(所詮このボディは下位端末。メインコンピューターどころか、サブコンピューターへのアクセス権限すら持たない)

QB(仮に侵入に成功したとして、僕らの情報処理技術はこの星より数千万年ほど進んでいる)

QB(妖精がどれほど高度な科学を持っていようと、サブコンピューターの第一防壁すら破る事は出来ないよ)

QB(それも予想外に突破出来たとしても、今度はマザーコンピューターが全回線を遮断し、外部アクセスを物理的に排除するんだ)

QB(暁美ほむら。恐らくこの作戦を立てたのは君だろうが、君が欲している情報は決して手に入らないよ――――)


238 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:44:40.25 fUVZhJIz0 131/569



メイドロボ「では身体を洗いましょう」

メイドロボ「まずはお湯で――――汚れをふやかします」

QB「え?(なんか持ち上げられて、湯船の上に運ばれ)」

メイドロボ「そいっ」

QB「がぼぼぼぼぼぼぼーっ!?(そんで沈められたーっ!?)」

QB(え、ちょ、なにこれいきなり拷問?)

QB(というかなんで息苦しさを感じているんだ? だってこのボディは使い捨てで、痛覚なんて搭載していな)


――――警告


QB(え……ボディシステムからの警告……?)


――――現在本ボディには操縦者の魂及び精神が完全に移転しています

――――このままボディが破壊された場合、操縦者は死亡する可能性が極めて高いです

――――ただちに本ボディから魂及び精神を離脱させるか、危機回避行動を取ってください


QB(……ああ、成程。魂と精神が本星からこっちに移ったから、五感機能が起動した訳だ)

QB(そう言えばそんな事言われていたね。誰から聞いたかは覚えてないけど)

QB(……つまりこのままだと窒息死?)

QB「ぎゃぼぼぼぼっ!? た、助け……助け……ごぼぼぼぼぼっ!」

メイドロボ「汚れがふやけたところで、はい、ゴシゴシ」

QB「ちょ、それタワシじゃ、あだだだだだだだだっ!?」

QB「痛い! すっごい痛い! 痛覚セーブぐらいは機能してよ!?」

メイドロボ「さあ、綺麗になりましたね。次はお食事です」

QB「ぐはぁっ! や、やっと終わった……」

QB(しかしボディの体表部分がうっすらと削られた)

QB(このまま此処に居るのは危険だ……なんとか、なんとか離脱しないと……)


239 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:48:25.35 fUVZhJIz0 132/569



QB「……ところで、君は僕を何処に連れていくつもりなんだい?」

メイドロボ「先程言いましたとおり、お食事を用意してあります」

メイドロボ「ですから、食堂へとお連れするのです」

QB「いや、お連れするのですって敬語として可笑しい……」

QB「そもそもこのほったて小屋みたいな場所に食堂なんてある訳が」

メイドロボ「こちらが食堂です」

QB「……………」

QB「まぁ、なんという事でしょう。ドアの向こうはまるで西洋の貴族が使ったかのような、豪勢な食堂ではありませんか」

QB「……衝撃のあまり、思った事をそのまま呟いてしまったよ」

QB(テーブルには何時の間にか料理が用意されている……見た目から判別するとフランス料理、かな)

QB(前菜からデザートまで全部テーブルに並んでいるから、正しい様式ではないようだけど)

メイドロボ「さあ、ご主人様。こちらの席におかけください」

QB「えーっと、席に座るのはいいけど」

QB「でも僕、食事なんていらないんだけど。そもそも手が使えないからこういう料理は……」

メイドロボ「はい、あーん」

QB「……まぁ、マミがよくその手法で僕に食事をさせたから、予想はしていたけどね」

QB(……何かされる前に大人しく食事を貰う方が得策、かな)

QB(それにこの空間に何時まで滞在するか分からない以上、エネルギーの補給をしといて損はない)

QB(どうせこのボディには毒なんて効かないし)

メイドロボ「ご主人様?」

QB「ああ、なんでもないよ」

QB「じゃ、いただくとしよう」

メイドロボ「では――――はい、あーん」

QB「あーん」

QB(……むっ!!)モグモグ

QB(独特の歯応え、鼻を突きぬける匂い、何より大胆不敵としか言えない未体験の味――――)

QB(これは、これは――――!!)



QB「まっずぅあああああああああああああ!?」



240 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:51:33.15 fUVZhJIz0 133/569



メイドロボ「あらあらあらあら?」

QB「なんじゃこりゃあああああ!?」

QB「不味いと叫んだけどこれは不味いってレベルじゃないよ!? 劇物指定の薬品を口に含んだみたいな味だったよ!」

QB「というかこのボディには味覚センサー搭載してないんだよ!?」

QB「つまりこれは味覚じゃなくて単純な生命の危機を示している信号だよ! 下手したら死ぬところだったんだよ!?」

QB「代わりはいくらでもいるけど今だけは死ぬ訳にはいかないんだよ!」

メイドロボ「まだお食事は残っています」

QB「僕の話を聞けええええええええええええええええ!」

メイドロボ「さあ、ご主人様。あーん♪」

QB「ぎゅぷっ!?(あ、開けた口に無理やり押し込まれ……!?)」

QB(うごおおおおおお!? 口の中に満ちるどうしても表現出来ない味覚は……)

QB(ぐごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!)

QB(不味い! いや味覚的な意味じゃなくて状況的に!)

QB(このままだと本当に死ぬ! 機体破棄のシステムを作動して魂と精神を本星に戻し――――)


――――エラーコード検出


QB(……はい?)


――――解析不能の刺激がボディに加わり、処理しきれない情報の影響でプログラムの一部が破損

――――フォロープログラムが作動しましたが、ボディ機能の一部が使用不能になっています

――――ただちに本星へエラー報告し、新規ボディに移行してください


QB(解析不能の刺激?)

QB(……あ、さっきの激マズ料理の事かな。そりゃあ解析不能だよね。だって味覚センサーがなくても不味いって分かるぐらいだし)

QB(……………)

QB(つまりアレか。今は離脱出来ないと)

QB(……………)

QB「た、助けてくれええええええええええええええええええっ!?」


241 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:54:39.33 fUVZhJIz0 134/569



メイドロボ「ああ、ご主人様。一体どちらに?」

QB「どちらじゃない! 逃げるんだよおおおおおおおおっ!」

QB(扉が少し開いてる! このまま隙間に入り込んで部屋から脱出だ!)

QB(――――よし! 無事に脱出出来――――)

QB「……え……?」

QB(扉を潜ったら、廊下ではなくて……怪しい研究施設のような場所に出た)

QB(いや、扉を潜ったら別世界はもう体験済みだ。そこは、妖精達の仕業という事でいいとしよう)

QB(問題は……なんでこの部屋にはメイド服姿の人間? が入っているガラス容器がずらりと並んでいるか、だ)

QB(メイドの数はざっと百体、かな?)

QB(まるで人間が好む、バイオでハザードな研究所で見られそうな光景だね)

QB(しかもどれも生命反応がある。人工的に作った生命体だとすれば、中々の科学力だ)

QB(恐らく此処は妖精達の研究施設なんだろう)

QB(……)

QB(まさか彼女達が一斉に起きて僕を狙う、なんて展開はないよね?)

QB「いやいや。僕は何を考えているんだ。そんな非論理的な事が起きる訳」

ガラスの中のメイド『ゴ、シュジン、サマ』

QB「」

ガラスの中のメイドA『ゴシュジン、サマ』
ガラスの中のメイドB『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイドC『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイド達『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイド達『ゴシュジンサマ』

QB「いや、あの、僕はご主人様ではありませ」

ガラスの中のメイド『ゴシュジンサマ!』ガシャーン!

QB「ひぃっ!? ガラス容器を破ってメイドが出てきたぁ!?」

――――ガシャーンッ!
――――ガシャーンッ!

QB「つ、次々に出てきて……」

QB「ひいいいいいいいいいっ!?」

メイド「ゴシュジンサマ、ゴホウシ、イタシマス」

QB「いらない! 奉仕なんか必要ない!」

メイド「ゴメイレイ、ヲ」

QB「僕の傍に近寄るなあああああああああああああああああああっ!!」


242 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 13:58:19.93 fUVZhJIz0 135/569



QB(は、早く此処から脱出しなければ!)

QB(こ、この扉は……鍵がかかってない!)

QB(何処に出るかは分からないけど今は此処から脱出するのが優先だ!)

QB「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

QB「よし! 無事に抜けた……!」

QB(周囲は……ビル街、東京の繁華街を思わせるごちゃごちゃとした場所だ)

QB(ついてる! 逃げるだけならこれほど好都合な場所はない!)

QB(それに一般人らしき人間が大量に居る。彼らの間を縫うように進めば、あのメイド達を振りきれるかも知れない)

QB(そうと決まれば早速人ごみに――――)


――――ゴシュジンサマ


QB「ひっ!?」

QB(お、追ってきたのか!?)

QB(いや、冷静に考えれば扉を通れば此処に来るんだから、追ってこれるに決まってるじゃないか!)

QB(落ち着け。落ち着いて逃げるんだ……)


――――ゴシュジンサマ


QB(声が何処から聞こえてくるか分析するんだ。何処にメイド達が潜んでいるか、把握するんだ)


――――ゴシュジンサマ


QB(声は、声は……)

QB(真上、から?)

メイド「ゴシュジンサマ、ミィーツケタァー……」

QB「う、うわああああああああああああああっ!?」

QB(こ、こんな近くにまでメイドがっ!?)

QB(逃げないと……人ごみに……)

メイド「ゴシュジンサマ、ドコニ」

メイド「ゴシュジンサマ、イズコ」

メイド「ゴシュジンサマ、ハンノウアリ」

QB「ひぃぃぃっ!? ひ、人ごみが何時の間にか、全員メイドに……!」

QB「今まで擬態していたのか!?」


243 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:02:57.42 fUVZhJIz0 136/569



QB「そ、それより今は逃げないと……メイドが来られない場所に……」

メイド「ゴシュジンサマ!」

QB「う、うわあっ!?」

QB「あっ……!?(後退りした場所に、蓋の外れたマンホールが……)」

QB「うわああぁぁぁぁ……………!!」

――――ばしゃーんっ

QB「ぶはっ! げ、下水道に落ちたのか……!」

QB「ま、まずは這い上がって……」

――――ばしゃーんっ!!

QB「!?」

メイド「ゴシュジンサマ、ドチラニ」

QB「お、追ってきた……はっ!?」

QB(壁に亀裂が……僕でも通れるかギリギリの隙間だけど……)

QB(でも通れたなら、人間サイズであるメイドは追って来れない!)

QB「うおおおおおおおおおおおおっ……!」

メイド「ゴシュジンサマ!」

QB(せ、せまい……だが通れる!)

QB(なんとか通り抜け……)

QB「られた!」

QB(しかも運のいい事に、亀裂の先の空洞も大して広くない! さっきみたいに、メイドがこの場に突然現れる事は絶対にない!)

QB(だけど念のため後ろを振り返って――――)

メイド「ゴシュ、ジン、サマ……」

QB(亀裂に腕を突っ込んで、こっちに伸ばしている……なんて執念だ)

QB「だけど通れはしないみたいだね……やれやれ、ようやく一休み出来るよ……」


244 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:06:29.76 fUVZhJIz0 137/569



「チュー」

QB「うわっ!?」

ネズミ「チュチュチュン」

QB「って、ね、ネズミか……下水道だから、ネズミが棲みついてても可笑しくはないか」

QB「やれやれ……こんな下等な小動物に驚くなんて……精神疾患でも患ったかな……」

ネズミ「チュチュチュンチュ」

QB「ああ、もう。チューチュー五月蝿いね」

QB「しかも僕の近くから離れないし……餌はあげないよ」

ネズミ「チュチュチュンチュチュ」

QB「だから五月蝿いって」

QB「というか、なんで逃げないんだ? 体格差で言えば、文字通り猫とネズミほどの差がある相手を目の当たりにして……」

QB「……いや、待て」

QB「そもそもなんでネズミに僕の姿が見えて……」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「……ん?」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「なんだ……」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「いや、そんな筈はない」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「このボディは、あくまで対人間用だ。ネズミの相手なんて想定されていない」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「だ、だから、分かる訳がないんだ」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「ネズミの言葉なんて」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「分かる、筈が―――――」


245 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:07:12.63 fUVZhJIz0 138/569






           ご  しゅ  じ  ん  さ  ま
          チュ チュ チュ ン チュ チュ







246 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:10:24.78 fUVZhJIz0 139/569



QB「う、うわああああああああああああああああああああっ!?」

ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」

QB「ひぃっ?! ね、ネズミが、ネズミがたくさん……!!」

QB「違うんだ! 僕はご主人様なんかじゃないんだ!」

ネズミ「チュチュチュンチュチュ」

QB「チーズを持ってくるなああああああああああああああああああああああああああああ!!」

QB(こ、此処も駄目だ! もっと、もっと遠くに逃げなくては!)

QB(そうだ! ここから逃げ出すには、この家から逃げなくては……)

QB(いや、待て……)

QB(そもそも僕は、暁美ほむらの家に入ったつもりでこの空間に来た訳で)

QB(だけど外に出る扉は消えていて)

QB(僕は、妖精と暁美ほむらの目的が僕達の情報を収集する事だと思っていたけど……)

QB(最初からそんなものには興味がなくて)

QB(最初から僕をここから出さないつもりなのだとしたら――――!?)

QB「ひいぅあああああああああぁああぁあああっ!?」

QB「あ、あ、うあぁああああ、ああああああああああっ!!!」

QB「誰か助けてくれええええええええええええええええ!!」

QB「僕をここから出してくれえええええええええええええっ!!」


247 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:11:11.73 fUVZhJIz0 140/569



――――それから僕は走り続けた。

――――何処までも何処までも、何処かも分からなくなるまで走り続けた。

――――走り、扉を、隙間を抜ける度に景色は変わった。

――――だけど何度景色が変わっても、そこは僕の見慣れた世界ではなかった。

――――何度景色が変わろうと、メイド達の奉仕は続いた。

――――そして――――


248 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:17:21.84 fUVZhJIz0 141/569



QB(も、もう駄目だ……走れない……エネルギー切れだ……)

QB(延々と砂漠だけが広がるこの世界に来てからメイドの追撃が止んだのはいいけど)

QB(代わりに、エネルギー補給に使えそうな物質が確認出来ない)

QB(まさか最後が飢え死になんてね……)

QB(いや、飢え死にでいい……)

QB(このまま僕は、土に還ろう)

QB(このまま、静かに……)

「猫さん。どうしたの? 怪我しているの?」

QB「ひっ!?」

QB(こ、今度は幼い女の子……ろ、六歳ぐらいか……!?)

QB(いや、外見は関係ない!)

QB(この空間に居る者は全員……僕をもてなそうとする!)

QB「君も、君も僕を、僕をああああああああああっ!?」

幼女「あ、あばれちゃダメ!」

幼女「だいじょうぶっ」

QB「ぁ――――」

QB(な、んだ……彼女に抱きしめられてたら、急に冷静さが戻ってきた……)

QB(いや……冷静さだけじゃない)

QB(胸の奥が熱くなる、この衝動は――――)

幼女「こわくないよ。あんしんして」

QB「き、君は……」

QB「僕を助けてくれるのかい……?」

幼女「何かにおわれているの?」

幼女「だったらだいじょうぶ! わたし、これでもすっごくつよいんだから!」

幼女「だから、どんな人がきてもあなたをまもってあげるよ!」

QB「……ありがとう、ありがとう……!」

幼女「おうちまでつれていってあげるね」

QB(……なんて、なんて暖かいんだ……)

QB(――――ああ、僕は、僕は何を想っているのだろう)

QB(彼女から離れたくないと、執着心としか言えない想いを抱いている)

QB(これは一体……)

QB(いや、今はもう何も考えたくない)

QB(このまま彼女と、静かな日々を過したい……)


249 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:19:59.97 fUVZhJIz0 142/569



幼女「あそこが私のうちだよ」

QB(ああ、気が付けば、砂漠から草原に来ていたか)

QB(最早一瞬で地形が変わる事に、なんら驚きはしない)

QB(もういい。何もかも、宇宙の寿命すらどうでもいい)

QB(今日から彼女と静かに暮らそう)

QB(草原の真ん中にぽつんと立つ、あの小さな家で――――)



QB「――――い、いや、待ってくれ」



QB「あの、あの家は」







QB「あの家は、この空間に来て最初に見つけたほったて小屋じゃないか――――」







250 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:21:49.04 fUVZhJIz0 143/569



「ひどいなぁ。あそこが私の家だよ?」

QB(あそこが彼女の家? だとしたら、だとしたらあのメイドとまた……!?)

QB「うわああああああああああああああああっ!?」

「あ、こら、逃げちゃ駄目だよ」

QB「嫌だああああああああっ! あそこには、あそこだけは止めてくれええええええええっ!!!」

「もう、何言ってるの? 今日からあそこがあなたの家になるのよ?」

QB「僕には帰る家があるんだ!」

QB「マミ、マミの家……! マミの家に帰してくれ! お願いだから!」

「駄目だよ。だって――――」



メイドロボ「あなたは、私のご主人様じゃないですか」



QB「え……」

QB「ぼ、僕は、僕はあの小さな子に連れてこられ……」

QB「いや、最初から僕は、君に……?」

メイドロボ「今度は逃がしませんよ」

QB「うぁ、あ、ぁあ……」

メイドロボ「さ、これからずっと暮らしましょうね」

QB「ドアを、通ってしまった……」

QB「離して……離してくれ……」

QB「嫌、だ……嫌だ、嫌だぁぁぁぁ……」

QB「僕は、外に……」

QB「あの扉から外に出て……」

――――ギィ……

QB「扉が、独りでにしまって……」

QB「……助けて……」

QB「助け、て……」

――――ギィィィィィィィ……

QB「誰か、助、け……」


251 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:22:39.37 fUVZhJIz0 144/569









――――バタンッ








252 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:23:25.37 fUVZhJIz0 145/569





























「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」








253 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:26:47.72 fUVZhJIz0 146/569



QB「はっ!?」

QB「此処は……暁美ほむらの家の前……?」

QB「じ、時間は……っ!?」

QB「そんな馬鹿な?!」

QB「なんで、僕が暁美ほむらの家に侵入を試みた時刻から一秒も経っていないんだ!?」

QB(今のは幻覚……いや、内蔵されている時刻システムと衛星内臓の時刻システムとの間に三時間以上のずれがある)

QB(まさか衛星の時刻システムがずれているとは思えない)

QB(だとすれば、僕だけが一方的に時間を経過した事になる)

QB(時間操作――――僕らでも大規模な施設と膨大なエネルギーを必要とする現象)

QB(魔法少女のように感情の相転移から莫大なエネルギーを産み出せる存在なら兎も角、
   こんな一軒家に用意出来るような小型施設じゃ僕らでも実現不可能……)

QB(……ん? なんだろう……僕は本当の答えを知っているような……)

QB(いや、そんな事より……)

QB「おのれ暁美ほむらぁぁぁぁ……!」

QB「無傷で外にほっぽりだすとは、情けを掛けたつもりか!」

QB「あんな下等生物に情けを掛けられるなんて冗談じゃない!」

QB「感情はないけどプライドはあるんだ! 下等生物如きに負ける訳には――――」

QB「って、本星から通信!? なんだよ、忙しいのに……」


254 : ◆HYvP9smHgsVn - 2014/02/05 14:29:44.86 fUVZhJIz0 147/569



――――緊急通達

――――個体番号×××-××××-××××は現在、精神疾患を発症していると判定された


QB「……what?」


――――本星で肉体の確保は完了済みであるが、×××-××××-××××の魂と精神は地球にある事が判明している

――――精神疾患個体である×××-××××-××××は周囲の個体に危害を加える可能性が極めて高く、

――――また、人間に対し親近感と呼ばれる感情を持ち、当方の情報を漏らす事も想定される

――――それは我々の今後の活動を妨げるものであり、放置する事は出来ない

――――よって×××-××××-××××は速やかに処分する


QB「……処分?」

QB「……×××-××××-××××って、僕だよね?」

QB「僕が感情に目覚めた? はは、ご冗談を」

QB「……………」

QB「いや、思い当たる節結構あるかも?」

QB「……………」

QB「やっべぇぇぇぇぇぇぇ……!」

QB「こ、このままじゃ良くて本星に強制送還された挙句貴重な感情保有個体として”農場”行き! 最悪処分されてエネルギー炉行きだ!」

QB「何処かに身を隠さなければ……しかしこのボディには位置情報が……でも、でも……」

QB「……これも全部、暁美ほむらの所為だ……」

QB「おのれ……おのれ……暁美ほむらぁ……!」



QB「何時か必ず復讐してやるからなァ―――――――――ッ!!」






続き
魔法少女は衰退しました【パート2】


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