美琴「はあ? なんで私がそんな面倒くさいことしなくちゃいけないわけ?」
元スレ
上条「美琴、頼むからこの子の世話を……」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1297430844/
上条「なんでって……お前、母親だろ!!」
美琴「ぷっ、今時育児は母親がやるだなんて古くさーい。あんた、誰の稼ぎで食えてると思ってるの?」
上条「そ、それとこれとは話が別だろ! お前、休みの日だってこの子とまともに話もしないじゃないか!!」
麻琴(定番)「……ママ」
美琴「……ちっ、たまの休みくらい、のんびりさせなさいよね!!」
上条「で、今日ものんびりパチンコですか? いいよな、こっそり能力使って、しこたま稼げて」
美琴「文句あるの? 学生の頃から貧乏だったあんたにとっては、願ったり叶ったりじゃない? 私の趣味のおかげで臨時収入まで得られるんだから」
上条「そんなもんいらねえよ!! いいから、麻琴の相手をしてやってくれよ!!」
麻琴「う……いいよ、ママ、忙しそうだもん……」
上条「! 麻琴、お前いつもたまにはママと一緒に遊びたいって言ってたじゃないか」
麻琴「そうだけど、ママ怒ってる……」
美琴「……」イライラ
美琴「ああ!! ああ!! はいはいわかりました!! 今日一日、私が麻琴の面倒みるわよ!!」
麻琴「!!」
上条「お、おい、本当か?」
美琴「はあ!? あんたから言い出したことでしょうが!! はいはいいいわよ、二人して私を悪者にしたいんでしょ!?」
上条「なんだよその言い方、べつにそういうわけじゃ……」
美琴「うっさいわね、私が麻琴の相手をしてあげるって言ってるんだからそれでいいでしょ!! 満足なんでしょ!?」
上条「そんな投げやりな感じで言われても不安なんだが……本当にちゃんと面倒見てくれるのか?」
美琴「なによそれ。疑うくらいなら最初から私に押し付けるんじゃないわよ!!」
上条「おい、なんだよそれ。自分の子供をなんだと思ってるんだ!!」
美琴「うざっ。いいから、もうほうっておいてくれる? いくわよ、麻琴」グイッ
麻琴「う、うん」
上条「……っ、麻琴、本当にいいのか? やっぱり、パパと遊ぶか?」
麻琴「ううん、ママといっしょがいい。パパはおきづかいなく」
上条「はは、そうか」
上条「美琴、くれぐれも頼むぞ。麻琴が楽しめるように……」
美琴「わかってるわよ、そんなことくらい! ちょっと家事ができるからって、私に指図しないで!! 麻琴が楽しめることくらい、私だって知ってるわよ!!」
上条「ん……そうか。じゃあ、気をつけて」
美琴「ふん!!」
ブロロロロロロロ……
上条「麻琴、楽しめるといいな」
麻琴「ママ、どこいくの?」
美琴「とーっても、とーっても楽しいところよ」
麻琴「えー、どこかな、どこかな」ワクワク
美琴「もうちょっとで着くからね」
・
・
・
美琴「ほら、着いたわよ」
麻琴「ここって……うう……じゃらじゃらうるさいよ……」
美琴「いいから、はいるわよ」
麻琴「……」キョロキョロ
麻琴(こわそうなおじさんがいっぱいだぁ)
美琴「よーし、今日も稼ぐわよぉ」
麻琴「かせぐ?」
美琴「そう、ここからたくさん玉を出せば、いーっぱいお金がもらえるのよ」
麻琴「それって、パパはよろこぶ?」
美琴「もちろん」
麻琴「じゃあ、まこともやる!!」
美琴「そう、じゃあ麻琴はここで座ってやりなさい」ヒョイッ
麻琴「おお、たかーい」
美琴「落ちないでね、このレバーを捻っていればいいだけだから」
麻琴「はーい」
美琴「じゃあがんばってね」
美琴(よしよし、麻琴はこれでオーケー、今日もやるぞ!!)
・
・
・
美琴「ちぃっ、今日はシケてるわね……」イライラ
美琴「ん?」
麻琴「わわわ、ママ、いっぱいでてきたよ!!」
ジャラジャラジャラジャラ
美琴「ちょ、むちゃくちゃ当たってるじゃないの!! 貸しなさい!!」バッ
麻琴「あー、まことがやってたのに……」
美琴「いいからいいから」
美琴「あ、あ、あ、終わっちゃう……くそっ、なんで私に代わった途端に!!」ビリッ
微弱な電流で玉の流れを操作する、能力によるいつものイカサマが始まった
もちろん不正なぞ許されない、ばれないように細心の注意を常に払っている
しかし、このときばかりは興奮のあまり、いつもより余分に電流を放出してしまった
ビービービービー!!!!
美琴「しまっ!!」
店員「……お客さーん?」
美琴「い、いや、これは……」アセアセ
店員「困りますねぇ、そういうことされちゃ」
美琴「ひぃいい……」
・
・
・
美琴「……」ギロッ
麻琴「ま、ママ……」
美琴「どうしてくれるの? あんたのせいで、出入り禁止になったじゃない!! ああ、お気に入りの場所だったのに!!」
麻琴「ひっ……ご、ごめん……なさい」
美琴「ああ、やっぱり子連れでいくもんじゃないわね!! ペースが狂わされるわよ、まったく!!」
しかたなく、第二のいきつけに向かう美琴
美琴「……」
麻琴「ま、ママ、あの……」
美琴「あー、あんたは車の中でお留守番ね。またあんなことになったら嫌だから」
麻琴「……うん」
美琴「じゃあね」バタン
ちなみにこのとき季節は夏、八月の猛暑である
そんな中、クーラーも効いてない車に置き去りにされた子どもがどうなるか……誰でも予想できますよね
・
・
・
美琴「はぁ、やっぱり一人だといいわね!! もうじゃんじゃん出てきて笑いがとまらないわよ!!」
美琴「まあ、さっきの店の件があるから、これからはあんまり派手にできなくなるのが痛いわねぇ」
美琴「はいはい麻琴ちゃん、ママのお帰りですよー」ガチャッ
ムワァッ
美琴「あっつ!! なによこれ、まるでサウナじゃない」
美琴「ん? 麻琴、寝てるの?」
美琴「!!!!?」
美琴「ま、麻琴……あんた……」ブルブル
美琴「あんた、なに漏らしてるのよ!!」
異臭、麻琴は失禁していた
汗とは違う、股間に染みている黄色い液体
美琴は麻琴のスカートを脱がせ、パンツも脱がせ、お尻叩いて叱る
美琴「あんたって子は、ろくに留守番もできないの!?」
ペチーンペチーン、と、駐車場にお尻を叩く音が木霊した
ぐったりして、まるで反応しない麻琴
美琴はお尻を叩き疲れ、麻琴を車の中へほうりなげる
美琴「もう、帰ったら、自分で車のシート掃除しなさいよね!!」
乱暴に車を発進させる美琴
麻琴は車内で転がっている
ご想像通り、このとき麻琴はすでに事切れていた
美琴がそれに気づいたのは、自宅マンションの近くのスーパーで買い物をしたときであった
美琴「麻琴、いいかげんにしないと怒るよ? 買い物袋持って欲しいから、一緒に来なさい!!」
麻琴「……」
美琴「ちょっと!!」グイッ
麻琴「……」
美琴「……?」
麻琴「……」
美琴「ねえ」
麻琴「……」
美琴「う、うそ……」ガタガタ
麻琴「……」
美琴「し、死んでる……!?」
美琴「ど、どうしよう、このままだと……!!」
パチンコに夢中で、自分の子を車内に置き去り
そんなありきたりなことで、エリートの自分は破滅してしまう
強引に不祥事をもみ消すこともできるかもしれない、が、やはりリスクが大きい
美琴「なんなのよ、なんで死んじゃうのよ!!」
美琴「もう、どうなってるのよ、私がなにしたっていうのよ!!」
・
・
・
美琴「当麻!!」ガバッ
上条「お、おい、どうしたんだ美琴、いきなり……」
美琴「うう……とうまぁ……」
上条「な、泣いてるのか……? いったいどうし……そういえば、麻琴は?」
美琴「ま、麻琴が、麻琴が……誘拐されちゃったの!!」
上条「!!?」
美琴「私、麻琴をつれて黒子の家に行ったの……その帰りに買い物に寄ったんだけど、そのときに車ごと……」
上条「マジかよ……くそっ、警察に連絡いれないと」
美琴「待って! 警察は駄目!!」
上条「どうしてだよ、盗まれた車を探してもらえば一発で……」
美琴「大事にして、犯人が逆上したら……? ま、麻琴が殺されたら……うぅ……」シクシク
上条(たしかに、あんまり大事にはできない……か)
上条「そ、そうだ、犯人の顔は見たのか?」
上条「魔術側の人らにも協力してもらえば、なんとか……」
美琴「……」ソワソワ
美琴「いいえ、ちがうわ、でも……」ブツブツ
上条「ど、どうしたんだ、美琴?」
美琴「犯人の顔……見た……気がする……でも、そんなこと……」
上条「?」
美琴「……黒子に、似てた、その犯人」」
上条「……白井が犯人だってのか?」
美琴「い、いや、忘れて!! やっぱり黒子がそんなことするはずないわよ!!」アタフタ
上条「そんなこと言っても、白井に似てたのは確かなんだろ?」
美琴「う、うん、でも……黒子を疑うみたいで……」
上条「……べつに白井がやったとは限らないだろ。でも、一応白井と会って話だけでも聞いておこう」
上条「美琴たちが直前まで白井のところにいたのなら、有益な情報が得られるかもしれないしな」
・
・
・
白井宅
ピンポーン
黒子「はいはい、今開けますわよ」ガチャッ
上条「よう」
黒子「あら、上条さんですの」
美琴「……」
黒子「まあまあ、お姉さまもご一緒で! って、さっきお姉さまは来たばかりではないですか」
黒子「なにかお忘れで?」
美琴「えっと、黒子ってさ、あの……」
上条「いいよ、俺が聞く」
黒子「?」
上条「あのさ、白井、ついさっきまで美琴がここにいたんだよな?」
黒子「ええ、久しぶりに顔が見たくなったといって……むふふふ、人妻となっても黒子のことを想っていてくださるなんて、感激ですわ!」
上条「美琴が帰ったあと……なんか変わったことがなかったか?」
黒子「変わったこと? はて、特別そういったものは……」
黒子「あ、でもお姉さまがえらくあわてて」
美琴「黒子、あんた、麻琴をどこにやったのよ!!」
黒子「へ? 麻琴ちゃん……ですの?」
上条「お、おい、美琴」
美琴「あんたでしょ? あんたが麻琴をさらったんでしょ? あんたならテレポートで隙をつくくらい簡単だもんね!」
黒子「お、おっしゃている意味がわからな……」
美琴「返して!! 麻琴を返してよ!! うう……」
上条「落ち着けよ、美琴……」
美琴「まことぉ……」グスングスン
黒子「えっと……麻琴ちゃんがどうかしましたの?」
上条「それが、今日白井の家の帰りに車ごと……」
黒子「ま、まあ!! それは一大事ですの!!」
美琴「しらばっくれないで!! 私見たんだから、その車を盗んだのが、あんただって!!」
黒子「い、いくらお姉さまでも言っていいことと悪いことがありますの!! わたくしがそんなマネをするとお思いで!?」
美琴「だって……あんた、いつも麻琴ちゃんは可愛い、目の中にいれても痛くない、食べてしまいたいって言ってたじゃない」
美琴「可愛さ余って誘拐したんでしょう!?」
黒子「濡れ衣ですの! だいたい、今日はお姉さま一人で遊びにきたではありませんか!! 麻琴ちゃんがいないのに、どうやってスーパーで車ごと盗もうと思いつくんですの!?」
上条「!? おい、美琴は麻琴と一緒にここに来たんじゃなかったのか?」
黒子「はあ? 今日はお姉さまお一人だと何度も申し上げてますの!!」
上条「……」
上条(なぜそんな嘘をつく必要があるんだ? 答えは簡単だ、なにか隠したいことがあるからだ!!)
美琴「う、嘘よ!! 今日は私、ずーっと麻琴とここにいたでしょ!!」
黒子「ま!! お姉さまはたしかに来ましたが、麻琴ちゃんは来ませんでした!! それに、お姉さまはついさっきふらっと来て、すぐに帰ってしまいましたの!!」
黒子「お姉さま、本当に麻琴ちゃんは車ごとどこかへ連れ去られましたの?」
美琴「あああああああああんた、私を疑ってるの!?」
黒子「……そういうわけではありませんが、さきほどお姉さまの言っていることが……その……」
上条「待てよ、白井。さっきから言ってることがおかしいのは、お前のほうだろ」
黒子「はへ?」
上条「美琴は麻琴をここへ連れてきたと言っているのに否定したり、今日一日ここにいたと言っているのに少ししかいなかったと言ったり……」
上条「お前が、どうしてそんな嘘をつく必要があるんだ?」
黒子「お、落ち着いてください。どうして、お姉さまの言っていることを全面的に信用しますの!?」
上条「そりゃ、夫婦だからだよ。それに白井は、スーパーで車で盗まれたって言ったよな? 俺たち、そのことは一言も喋ってないぜ?」
黒子「そ、それは、お姉さまが帰り際にスーパーに寄ると言っていたから……」
美琴「わ、私そんなこと言ってないよぉ……」グスン
黒子「お姉さま!?」
上条「白井、俺たちは大事にしたくないんだ。だから警察は呼ばない。おとなしく、麻琴を返してくれないか?」
黒子「そ、そんなこと言われましても……身に覚えが……」
上条「いいかげんにしてくれ!! 麻琴を早くつれてきてくれよ!!」
黒子「わ、わたくしだって……なにがなんだか……」ウルッ
美琴「人攫い!! あんたがそんな鬼畜だとは思わなかったわよ!!」
黒子(どうなってるんですの……このままだと、誘拐犯にされて……)
上条「くそっ、拉致があかない。美琴、警察に連絡するぞ」
美琴「えっ」ギクッ
上条「白井が怪しいんだ、警察に徹底的に調べてもらう」
美琴(じょじょじょ、冗談じゃないわよ!! 警察なんか呼んだら、私の嘘がばれるじゃないのよ!!)
美琴「当麻……それだけは勘弁してあげて?」
美琴「たしかに黒子は許されないことをしたよ……? でも、それでも黒子は私の後輩なの!!」
黒子「お、お姉さま……」ウルウル
黒子(って、感動してる場合じゃありませんの!! なんですのこの変わり身の早さは!!)
上条「……白井、こんないい先輩をもって幸せ者だな」
上条「麻琴を出してくれたら、勘弁してやる。さっきも言ったが警察もなしだ。な、もういいだろ、はやく麻琴を……」
黒子(こ、これは認めないと無限ループの流れ……!! しかし、麻琴ちゃんの居場所なんて知らないわたくしに、一体どうしろと!!?)
黒子「わ、わたくしは……」
上条「ん?」
黒子「わたくしはやっておりません……本当ですの……」ポロポロ
上条「白井」
黒子「うぅ……麻琴ちゃんが可愛く、つい手を出してしまいたくなったときがあるのは認めます……でも、本当にわたくしは知らないんですの!!」
黒子「警察に行きましょう!!」
美琴「!!」ドキーン
黒子「このままでは話が平行線ですわ!! やはり、警察に話して捜査してもらうべきですの!!」
美琴「だ、だから、私たちは大事には……」
黒子「んなこと言ってる場合じゃないですの!!!! 麻琴ちゃんの命がかかっているかもしれないですの!!!」
黒子「仮にわたくしが犯人なら、警察がそう判断してくれますの!! お願いですから、警察に……!!」
美琴「……っ」ビリッ
バリバリバリ!!!!
黒子「ぎええぇええええ!!!!」
上条「み、美琴!?」
美琴「はあはあ……犯人が仕切ってるんじゃないわよ!!」
美琴「あんたが犯人に決まってるでしょ!! なによ、警察警察って……」
美琴「あ、そうか、黒子は警察とグルなのよ。だから自分が犯人でも追及される心配がないんだわ」
美琴「なるほど、これはますます警察に連絡するわけにはいかないわね」
上条「お、おい、やりすぎだろ……これ、死んじまったんじゃ……」
黒子「ぐ、ぐぅ……」プシュプシュ
美琴「だいじょうぶ、生きてるじゃない。まあ皮膚がほとんど焼け爛れてるから、病院行かないとやばいけど」
上条「だったら、早く救急車を!!」ピッ
美琴「駄目!!」バッ
上条「こ、こら!! はやく救急車を呼ばないと死んで……!!」
美琴「……じゃあ、私が捕まってもいいの? 黒子をこんな状態にした私は、間違いなく罪に問われる」
美琴「そして黒子は警察と黒いつながりがある……私は抹殺されるわ」
上条「なにいってんだ、そもそも白井が警察とかかわりがあるってのは無理があるんじゃ……」
上条「それに、やりすぎなのは事実だろ、しょうがねえよ……」
美琴「……じゃあさ」ビリッ
上条「ん?」
グシャアアアアアアア
黒子「ひょええええええええええええええええ!!!!!」グチュグチュグチュ
シュワァアアアン
上条「じょ、じょ、蒸発しやがった……!!」ガクガク
美琴「ねえ、怪我した黒子なんてどこにもいないよ?」
上条「み、美琴!! お前、なんてことを!!」
美琴「だ、だって、しかたないじゃない!! 黒子は口を割らないし、このままだと逆に私が死刑になっちゃう……」ポロポロ
美琴「怖い……怖いよぉ当麻……私、どうすればよかったの!?」ポロポロ
上条「くっ……」
上条(くそっ、俺は馬鹿だ、こいつを守らなくちゃいけないのに、追い詰めるようなことを言って……!!)
上条「……もうやってしまったことはしかない。かといって、自首すればすべてまるくおさまる話でもない……」
上条「白井には悪いが……」
美琴「ごめんね、当麻……私……」
上条「心配するなよ。俺はお前の旦那様だからな。最後までお前の味方だ」
美琴「うん……ありがとう……」
美琴(これであとは私がパチンコ屋に行ったという痕跡を消せば完璧ね)
上条(それに、この展開は少なからず上条さんにも幸運をもたらしてくれてるんですよねぇ)
上条「とりあえず、ここに俺たちが来たってことがわからないように色々工作しなくちゃ駄目だ」
美琴「そ、そうね」
上条「幸いここは周りには人家がない、閑静な場所だ。時間をかけてじっくり証拠を消していこう」
美琴「?」
美琴(やけに乗り気ね……)
上条「……しかし、肝心の麻琴の居場所がわからずじまいだ……白井がやったかどうかはともかく」
美琴「黒子しか考えられないわよ……そうでなきゃ、黒子の犠牲がなんだったのかわからない!!」グスッ
上条「そ、そうだな、白井が怪しいことは変わりない……。よし、この家をくまなく探そう。美琴は、いったん家へ戻れ」
美琴「え?」
上条「……万が一ってこともあるだろ。美琴は、ほかの場所をあたっておいてくれ」
美琴「う、うん、わかったわ」
美琴(よし、さっそく証拠隠滅にいくわよ!!)ガチャッ
・
・
・
上条「ふぅ、行ったか」
上条「……今のうちに、証拠を探しとかないとな」
上条はこれを好機ととらえた
昔、酔いつぶれた黒子を介抱したときに起こった過ち
その一部始終をおさめた録画データがどこかに保存されているはずであった
上条(酔っていたこともあって白井は記憶にないみたいだが……あれを消さないことには安心して眠れないぜ)
上条(うーん、ビデオカメラビデオカメラ……くそ、ないな)キョロキョロ
上条(お、パソコンか……この中に……)
上条(って、さすがにここにはないだろうな、パソコンにデータを取り込んでるくらいなら、俺との情事にはとっくに気づいているはず)
上条の考えでは、件の録画データはビデオカメラの中に残ったままのはずであった
黒子が以前使っていたビデオカメラをなくし、新しいのを買っていたと美琴から聞いていたからだ
つまり、あの情事のあと、データの確認もできぬままビデオカメラをどこかへなくしてしまい、今に至るということだ
先刻、黒子に必要以上に麻琴のことで強気に迫ったのは、弱みを握られていないか確認するためでもあった
これを機に、ビデオカメラを回収するための上条のおそるべき計画
麻琴のことなど、二の次なのだ
・
・
・
美琴(ふぅ、ようやく終わった)
美琴は本日訪れたパチンコ店の監視カメラを電子操作ですべてお釈迦にした
もちろん可能な限り店員と常連客も消した
美琴(これでアリバイもほぼ完璧ね)
しかしこれから亡き麻琴についてどのように振舞えばいいのか、美琴は判断しかねている
美琴(うーん、車ごと燃やしたから証拠なんて出るわけがないし、あとは警察へ行って行方不明って扱いにしてもらえばいいのかな?)
美琴(でも今更よね、警察ってのも。散々渋っておきながら急に警察に行きましょうなんて)
美琴(かと言って、ずっとこのままってわけにもいかないわ)
・
・
・
上条「なんだこりゃ」
パソコンの中身をチェックした上条は、とんでもないものを見つけた
HDの容量ギリギリまで溜め込まれた、動画ファイル
そのすべてが、黒子の性行為を撮影したものだった
上条「すげえ、男女関係なく、ヤりたい放題だな」
上条「ええと、うわ、『不倫フォルダ』まで作ってやがる」カチカチ
上条「俺の動画があるとすればここか? しかし、ここにぶち込まれてたら、確実に黒子はあのときのことを知っているってことに」
上条「仮にそうなのだとしたら、強請りもなにもしてこなかったことがおかしいわけだが」
上条「まあいい。白井は死んだし、深く考えてもしかたない」
ふとまずパソコン上にデータがないことを確認できればそれでいい
そう思い、不倫フォルダを開いた
夥しい量の不倫動画がそこにはあった
もちろん主演は白井黒子
上条もよく知る友人たちと淫らに交わる黒子の姿がそこにはあった
上条「おいおい……マジかよ」
思わず見入ってしまう上条
そして、それはあった
『酔った勢いで妻の後輩と……』
中身を確認してみる
案の定、そこには上条と黒子が一心不乱に性欲をぶつけあう姿が映し出されていた
上条「なんてこった……ここにこの動画が、タイトルつきであるってことは……」
敢えてなにも知らないふりをしていたということだ
上条「……いったいどうして?」
このような歪んだ性欲を抱えている黒子が、決定的な浮気の証拠を脅迫材料として利用しなかったことが上条には不思議でならなかった
これをネタに美琴の下着を盗んでくるように命令するのが、本当の白井黒子ではないのか
黒子「あらあら、とうとう見つかってしまいましたわね?」
上条「!! し、白井!?」
振り返ると、死んだはずの白井黒子が不敵な笑みを浮かべて立っていた
上条「どうして生きてるんだ!?」
黒子「どうして? わたくしの能力を忘れましたの? お姉さまが電撃を放った瞬間にテレポートで身代わりを立てただけですの」
上条「あの一瞬にどこかへテレポートして、身代わりのやつを連れてきて、そして自分だけ逃げおおせたってわけか? そんな馬鹿な……」
黒子「わたくしだって成長しておりますの。すでにレベル5まで到達したわたくしにとっては、お茶の子さいさいですの」
上条「じゃああの消し炭になったのは……」
黒子「初春ですの。かわいそうな初春、いきなり電撃を放たれて……」
上条「……なにが目的だ」
黒子「はあ? わたくしは単に自衛しただけですの」
黒子「あのまま能力を使わなかったら、死んでいたのはわたくしでした」
上条「それはそうだが……」
黒子「……まあ、お姉さまがわたくしに麻琴ちゃん誘拐の罪をなすりつけたいのは確かなようなので、しばらく身を潜めるつもりでいましたのに」
黒子「あなたもよからぬことを企んでいるようで」
上条「企む? 元はといえばお前が……」
黒子「ええ、誘ったのはわたくしですけど、誘惑に負けてわたくしを抱いたのは他ならぬあなたでしょう?」
上条「だったら、どうして素知らぬふりをしていた?」
黒子「そっちのほうが、なにかあったときに役立つかもしれないではありませんか」
黒子「ビデオカメラの存在をちらかせつつ、わたくしからは何も言わない」
黒子「酔った勢いのこと、忘れてしまったのだろうと安心感を得る」
黒子「でも真の意味で解放されたわけではない。むしろ疑惑を抱く……思ったとおり、上条さんはご丁寧にわたくしにかまかけまでしてくれました」
黒子「どうです? あなたはわたくしをおそれていますの、あなたはわたくしのおもちゃですのよ」
上条「そうやって、お前はおもちゃを増やしていたのか?」
黒子「……しかたないですの。愛しのお姉さまは、あなたのような野蛮な類人猿のもとへ嫁いで……寂しかったんですの」
上条「……」
黒子「まあ、この動画をお姉さまに見せるなどという愚行はいたしませんから、ご心配なく」
上条「うそつけ、脅迫する気だろ?」
黒子「ま! わたくしは脅迫なんてするつもりはありませんの! だいたい、こんな動画の存在をお姉さまに知られたらどうなると思います?」
上条「どうなるって……」
黒子「あなたよりもわたくしの方に憎しみは向かいますわよ……そんなこともわかりませんの?」
黒子「だからこれは、あくまでもあなたを苦しめるための道具に過ぎません」
黒子「お姉さまを奪った男へのささやかな復讐ですの」
上条「ささやか……ねぇ」
黒子「それはそうと、上条さんはお姉さまがわたくしに罪をきせようとしたことに対してどう思いますの?」
上条「待てよ、まだお前の疑いが晴れたわけじゃ……」
黒子「まだそんなことを!! これはどう考えてもお姉さまの謀略ですの!! お姉さまは麻琴ちゃんの居場所を知ってるはず!!」
黒子「つまりこれは狂言誘拐ですの!!」
上条「狂言誘拐? なんでそんなことをする必要があるんだ」
黒子「……すでに麻琴ちゃんは死んでいる……ということでは」
上条「なに!?」
黒子「お姉さまの過失で麻琴ちゃんを死なせてしまい、それを隠すためにあのような嘘を言ったのだとしたら?」
上条「そんな馬鹿な、美琴が、母親が実の子を死なせるなんて!!」
黒子「なにも珍しいことではないでしょう。チャイルドエラーのように……自分の子を平気で捨てる親だっていますのよ」
上条「だとしても、美琴に限ってそんな」
黒子「だったら、あのような状況下で電撃を放ち、わたくしを亡き者にしようとしたお姉さまの行動はどうですの?」
黒子「わたくしだって信じたくありませんが、お姉さまはもうわたくしたちが慕っていたお姉さまではありませんの」
上条「……じゃあ、麻琴は……本当に……」ガクッ
黒子「お気の毒ですが……」
・
・
・
美琴(黒子に罪をきせるよりも、生きている誰かに罪をきせたほうが……)
美琴(でも誰にどうやって?)
ピリリリ
美琴「!!」ビクッ
美琴「な、なんだ、携帯か」
美琴(久しぶりに鳴ったからびびっちゃったじゃないの!!)プンプン
ピッ
佐天『あ、御坂さんですか?』
美琴「佐天さん! 懐かしいわぁ、元気にしてた?」
佐天『え、ええ……』
美琴「ん? どうしたの?」
佐天『じ、じつは、初春が……』
美琴「初春さんがどうかしたの?」
佐天『突然消えて……ゆ、行方不明なんです』
美琴「……」
美琴(ったく、こっちはそれどころじゃないってのに!! これだからレベル0は……)
佐天『あの、大丈夫ですか? 聞こえてますか?』
美琴「ああ、はいはい聞こえてるわよ」
佐天『あたし、初春の家に遊びに行ってたんですけど、ちょっとトイレに行ってる間に、いなくなってて……』
美琴「買い物かどっかに行ったんじゃないの? すぐ帰ってくるわよ」ヤレヤレ
佐天『そんな、もう何時間も経ってるんですよ!? 何も言わずにどこか行っちゃうような子じゃないし、あたしどうしたらいいか……』グスン
美琴(めんどくさいわねぇ)
佐天『あの、御坂さん?』
美琴「あー、その『御坂さん』ってのやめてくれない? 私、一応今は上条だから」
佐天『あ、すみません……』
美琴「じゃあ、切るわね」
佐天『え、いやまっ』
プツッ
美琴(ったく、私の思考の邪魔するとか何様よ!! こっちは早く誰かを犯人にしたてあげ……)
美琴(……)
ピッピッ
美琴「あ、佐天さん? さっきはごめんね、ちょっと電波が悪かったみたいで、一度切らせてもらったの」
・
・
・
美琴「ふーん、初春さんって結構いい家に住んでるのね」
佐天「あの、美琴さん、本当に、初春の居場所がわかるんですか?」
美琴「本当よ、私の能力を使えば、特定の人物の生体電流から位置を割り出すことができるわ」
美琴「それより、このことは私以外にはまだ誰にも……?」
佐天「はい、だって警察に言うには大げさだと思うし、かといってこのまま……初春が帰ってこないんじゃないかって考えたら……」
美琴「それが賢明よ。私に相談したのは正解だわ」
佐天「はい!! では、さっそく」
美琴「うん、さっそく」ビリッ
佐天「へ?」
美琴「ばいばい」ビリビリッ
・
・
・
美琴「ぷはーっ、一仕事終えたあとのビールは最高ね!! 当麻のほうはうまくやってるかな?」
ガチャッ
上条「ただいま」
美琴「おかえりー、ねえねえ、ちゃんと証拠になりそうなものは消してきた? なんなら、黒子の家に火でもつける?」
上条「……えらくテンションが高いな? 麻琴は未だに行方知らずだっていうのによ」
美琴「!!」
美琴「い、いや……」
美琴「……」
上条「お、ビール飲んでるのか? こんなときによく……」
美琴「ふ、ふぇえええん……」グスン
美琴「だ、だって、お酒でも飲んでないとやってらんないわよ……麻琴、麻琴は本当に帰ってくるの?」ウルウルッ
上条「……」
上条「麻琴さ……もしかしたら、もう死んでるかもしれない」
美琴「……え?」
上条「ふと思ったんだ。白井が犯人だとしても、麻琴をひどい目にあわせたりはしないだろう」
上条「監禁なんてするはずがない。あのとき白井の家には麻琴がいる気配はなかった……そもそも白井を疑うこと自体間違いだったんだ!」
美琴「じゃ、じゃあ他に犯人がいて、麻琴を?」
上条「ああ、金目的の誘拐なら生かしておくだろうし、こちらに連絡をよこすはず」
上条「この誘拐は麻琴を狙った……麻琴を殺すための誘拐だよ」
美琴「……そういえば」
美琴「……」ソワソワ
美琴「いいえ、ちがうわ、でも……」ブツブツ
上条「どうしたんだ、美琴?」
美琴「犯人の顔……見た……気がする……でも、そんなこと……」
上条「?」
美琴「……佐天さんに、似てた、その犯人」
上条「み、美琴……お前、いいかげんにしろよ!!」クワッ
美琴「え?」
バキッ
美琴「……あ、あれ?」ダラダラ
美琴「う、うそ……鼻血?」ダラダラ
美琴「い、いやああああ!!」
上条「ふざけるのも大概にしろよ……白井の次は佐天さんか? そんなデマカセをいつまでも信じられると思うのかよ!!」
美琴「や、やだやだ!! 血、血が出てるわ!! お願い、早く救急車呼んで!!」
上条「鼻の頭をこすっただけだろ……大げさなんだよ、こんなことを麻琴の苦しみの万分の一にも満たない」
美琴「……っ、お気に入りの服に血がついちゃったじゃない!! いいから早く救急車呼びなさいよね!!」キーキー
上条「お前はまだそんなことを……」
美琴「……いいから、早く」ビリッ
上条「!!」
美琴「おらぁああ!!!」バリバリ
上条「ぐぅ!!」ビビビビッ
美琴「あははは!!! あんたなんか右手に注意しとけば楽勝なのよ!! これでしばらく体が麻痺して動けないわよ」ニシシッ
上条「み、美琴!! てめえ!!」
美琴「ばっかみたい。あんな子に入れ込んじゃってさ。所詮麻琴なんて避妊失敗してデキた子じゃない」
美琴「あんたが悪いのよ、危険日だって言ってるのに馬鹿みたいに中に出して……おかげでとんだ貧乏くじよ」
上条「あのときの言葉は嘘だったのか? 『当麻のと子どもだったら、後悔なんてしない』って言ってたあれは……」
美琴「売り言葉に買い言葉。あんたがあまりにも一生懸命すぎたから、かわいそうになっただけよ。あーあ、おかげでみっともないデキ婚だったし」
美琴「麻琴って、私を不幸にするために生まれてきたようなもんよね」ヤレヤレ
上条「……っ、ちくしょう、ちくしょう!!」
上条は悔しかった
どうして自分は、もっと早く美琴の歪んだ心に気づいてやれなかったのだろう
美琴が麻琴に対して冷たい態度でいるのは、仕事からくるストレスが原因だと思い込んでいた
しかしそれは大きな間違いだった
まさか、まったく愛情を持っていないどころか、麻琴の存在を疎ましくすら思っていたなんて……
美琴「でさぁ、考えたんだけど、こんなシナリオはどう?」
美琴「あんたは佐天さんと浮気していて、私や麻琴を邪魔に思っていた」
美琴「あんたは佐天さんとともに、麻琴を殺害」
美琴「その汚名を黒子にきせようとして、殺害。これは自殺にみせかけるためね。どうせ死体はでてこないし、なんとでも言えるわ」
美琴「そして最終的に、あんたと佐天さんは私を殺害しようとして失敗。逃げられないと思って二人は揃って自殺……あは、完璧ね」
上条「ずいぶんと杜撰な計画だな? 佐天さんと俺の間にはそんな事実はないぜ?」
美琴「大丈夫よ、すでに工作は済んでるもの。私の能力で本人直筆の遺書を書かせたあと、首を吊らせるくらい簡単よ♪」
上条「電気で筋肉を操ってやがるのか……でもお前の能力は広く知れ渡っている、能力を行使した可能性を疑われるぞ」
上条「それに、これだけ続けてお前の身の回りの人間が死ねば、当然警察はお前に疑いの目を……」
美琴「……ぷっ、あはははは!! なにそれ、あんた本気で言ってるの!?」
上条「な、なにがおかしいんだ!!」
美琴「たしかに警察は疑うでしょうねぇ、私が散々警察に行くのを渋ってたのは、それを恐れていたからだもの」
美琴「でも、今ではもうほとんどの証拠は私が消した……残るのは、当麻だけなんだよ?」
美琴「そうだよ、当麻さえいなくなっちゃえば……グスン……い、いなくなっちぇば……」ポロポロ
上条「み、美琴……?」
美琴「ね、ねえ当麻、なんでこんなことになっちゃったのかな? 私がいけなかったの? 私が、麻琴を産んだから? あんたに世話を押し付けたから?」
美琴「もうわかんないよ……頭の中ぐちゃぐちゃで……えへへ、やっぱり脳を弄くられたからなのかな」
美琴「こんな頭のおかしい人間が、結婚して子どもを育てて、幸せになんてなれるはずないのよ!!」ビリビリ
上条(や、やべえ、錯乱してる!!)
上条「落ち着け、美琴!! たしかに俺たちは幸せになれなかったかもしれない……でもなぁ、俺たちが愛し合っていたって事実は変わらないはずだろ!!」
美琴「……当麻?」
上条「やり直そう、美琴。お前のしたことは許されないことだが、罪をつぐなって、もう一度……」
美琴「本当に? 私たち、やり直せるかなぁ?」グスッグスッ
上条「もちろんだ、俺も白井も協力する……だから……」
美琴「……」ピタッ
美琴「ちょっと、なんでそこで黒子が出てくるの?」
美琴「黒子はもう死んじゃったはずでしょ?」
美琴「どうして?」
上条「……あ!!」
美琴「……あー、そっか、あははは、なるほどね、私としたことが迂闊だったわ!!」
美琴「黒子、そこにいるんだ、さっきの会話を録音して、証拠にするつもり?」
黒子(!! ま、まずい、見つかっ……)
上条「まずい!! 白井、逃げ……」
美琴「逃がすかぁあああ!!!」ババババッ
黒子「ぎひいい!!!」シビシビッ
黒子「あ……が……」ガクガク
美琴「黒子みーつけた♪ あは♪ やっだぁ、あんた生きてたんだ?」
黒子「お、おねえ……さま……」
美琴「ふーん、能力使って誰かといれかわってたってわけ? とんだ博打だったわね」
美琴「私が皮膚もただれて誰だか判別つかないくらい強力な電撃を放たなければ意味のないことを……」
美琴「ま、ちゃーんと確認しなかった私のミスでもあるんだけどぉ……」ヤレヤレ
黒子「ど、どうか……自首……を」
美琴「……はぁ?」イラッ
美琴「私を騙しといてよくそんな口がきけたもんね!!」ガッ
黒子「うぐっ!!」
美琴「なめるんじゃないわよ!!」バキッ
美琴は倒れこんだ黒子に蹴りを繰り出す
普通の人間なら、相手を殺してしまう恐怖に駆られて知らず知らず力をセーブするはずであるが
美琴の容赦のない蹴りからは、そんな恐怖などは微塵も感じられなかった
美琴「それに、あんただって人一人殺したのと同じでしょ、同じ穴の狢じゃない!!」
ゲシッ
黒子「うぐっ……!!」
美琴「で、どうしてうちの旦那と一緒にいるのぉ? どうして私をハメようとしたのぉ?」
黒子「そ、それは……」
美琴「答えなさいよ!!」ブチュッ
黒子「がはぁあああ!!!」
上条「!! や、やめろ、美琴!!」
美琴「やっばぁい、黒子の可憐な細腕がぐっちゃぐちゃになっちゃったぁ♪」
電気で強化した筋力による蹴りは、人体を容易に破壊する
もちろん、その反動は美琴にも襲い掛かっているはずであったが……
美琴「ねえ、当麻でもいいから答えてよ。なんで黒子と一緒になって私をハメようとしたの? どうして? ねえねえ」
上条「そ、それは……」
美琴「ま、まさか……、浮気!?」
上条「!!」
美琴「ねえ、そうなんでしょ? 浮気よね? 私を警察に突き出して、二人で幸せハネムーンってわけ?」
美琴「ふっざけんじゃないわよ!! この裏切り者!!」バチッ
上条「!!」ジュウッ
上条「くがあああ!!! 目、目がああああ!!!」
美琴「ふん、妻を裏切った罰よ!! 目の水分を蒸発させただけだから、大騒ぎしないでよね」
美琴の心にある憤怒の念は、夫である上条への愛情によるものではない
自分の所有物を他人に勝手に使われた、いまやその程度の認識である
黒子「か、かみじょう……さ……」
ズンッ
黒子「んぎゃあああああ!!!!!」
美琴「あんたはドロボウさんなんだから、徹底的にやるわよ。私、ドロボウがだいっきらいなの」
美琴は電気を纏わせた包丁を黒子の足に突きつけた
ジュウジュウと香ばしい臭いが部屋の中に充満する
焼肉パーティーの始まりだ
黒子「お、おねえさま~!!!! ご、ごめんなさいですの!! かんべんしてください!!!」ジョジョーッ
失禁
美琴はそれを見て、麻琴のことを思い出した
麻琴が生きていたのが、遠い昔のことにように思えてくる
その麻琴も、車の中で失禁して果てたのだ
あのとき、麻琴が死んでいなければ、こんなことせずにすんだのに!!
美琴「そうよ、全部、全部麻琴が死んだのが悪いのよ!!」
ザシュザシュッ
黒子「ぐぎゃああああ!!!!!」
ザシュザシュッ
美琴「おかげでこんなにイライラする……まったく、なんて親不孝な子だったのかしら!!」
ザシュザシュッ
黒子「ぶぎひじじいいい!!!!!」
美琴「ああもう!! うっさいのよ!!!」
ドシュッ
黒子「――――!!!!」
美琴「あ」
上条「なっ……お、おい、どうなったんだよ!! 美琴!! 白井は!?」
美琴「……」
美琴「すん……すん……も、もうやだよぉ……うわああああん!!!!」ピーピー
上条お、おい……まさか……」
美琴「く、黒子が死んじゃった……やだやだやだやだやだ!!!! いなくなっちゃやだぁあああ!!!」
・
・
・
御坂妹「と、いうことがあったと、ミサカは遠い目をしながら回想を終えます」
麻琴「ええええ、じゃあママはどうなったの? パパは?」
御坂妹「その話の続きはまた今度、とミサカは続編を匂わせて話を終えます」
麻琴「むむむ、ミサカのけち!!」
御坂妹「さあさあ、そろそろ行きますよ、とミサカは逸る気持ちをおさえながら車に向かいます」
麻琴「もー、またぁ? あそこはうるさくていやだよぉ」
御坂妹「ええ、パチンコがミサカの趣味ですから」ニコッ
おわり
577 : 以下、名... - 2011/02/17(木) 23:50:52.29 2pUcdhmmO 86/92竜頭蛇尾とはまさにこのこと
読ませる腕があるだけに残念
次はちゃんと着地点を決めてから書いてくれ
580 : 以下、名... - 2011/02/17(木) 23:57:24.57 YGcKPb360 87/92>>577
美琴「はあ? なんで私がそんな面倒くさいことしなくちゃいけないわけ?」
582 : 以下、名... - 2011/02/18(金) 00:05:59.65 lGbkz/NL0 88/92>>580
お前美琴をウザくする天才だなwww
590 : 以下、名... - 2011/02/18(金) 03:21:47.90 7969nrm/0 89/92>ミサカは遠い目をしながら回想を終えます
回想=美琴本人?
591 : 以下、名... - 2011/02/18(金) 03:23:26.03 1PjWITFC0 90/92>>590
御坂妹だと思うけど…
本編読んでないのね
592 : 以下、名... - 2011/02/18(金) 04:26:08.36 7969nrm/0 91/92>>591
それくらい知ってるけど、この書き方じゃ意識が乗り移ったようにも解釈できるじゃん?
596 : 以下、名... - 2011/02/18(金) 13:09:40.46 09LvIUEtO 92/92オチの意味がわからねーんですけど麻琴は実は生きてたってことになっちまうんですか?