1 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:07:42 ENZJCqj2 1/185


ザザアァァアアァァァ…

(ひー、すっげー雨!)

(会社に置き傘しててよかったわ)

?「ひっく…どうしよう…」

「ん?」

?「たす…っく、けて…ぐす…」

(!!傘もささないで、女の人がうずくまってる!?)

「誰か…ひっく」

(しかも、泣いてる!)
「ど、どうしたんですかっ!?」

「!あのっ…」クルッ

「!??」

「っか!!!!!!!!!」ゾッ

元スレ
のっぺら嬢(のっぺらじょう)「こんな顔ですが…」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1409461662/

2 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:09:11 ENZJCqj2 2/185


「かかか顔が無いっ!!??」

女?「あのっ、わ、私は俗に言うのっぺらぼうなんですけどっ…!」

「あ、ああ…あ…」ガクガク

のっぺら嬢「こ、こんな顔ですいませんっ」ペコペコ

「ああああ…」アトズサリ

のっぺら嬢「お願い!逃げないでっ!」

のっぺら嬢「この子を…、仔猫ちゃんを助けて下さいっ!!」

仔猫「…」グッターリ

「あぇ?」

のっぺら嬢「ここ何日かは元気だったんですけど…!」

のっぺら嬢「この雨で冷えて、具合が悪くなったみたいでっ!」

のっぺら嬢「さっきからぐったりして、声もあげないんです!」

3 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:10:02 ENZJCqj2 3/185


「あーっと…」

のっぺら嬢「どうしようぅっ…えぐっ、このままじゃ…この子…あああっ」

のっぺら嬢「お願いしますっお願いしますっ!」ペコペコ

「えっと…」ゴクリ

「…あんた、俺を襲ったりしないか?」

のっぺら嬢「ひくっ、え?」

「バケモノ、なんだろ?人を食ったり襲ったりしないのかって…」

のっぺら嬢「はい!ひっく、しません!ちょっと驚かしたりしますけど、危害は加えません!信じてください!」


「…うん、そうか。わかった」

4 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:11:48 ENZJCqj2 4/185


のっぺら嬢「えっ!?」

「近くに動物病院がある」

「確かまだ開いてるはずだから、行ってみる」

のっぺら嬢「本当ですかっ!?」

のっぺら嬢「ありがとうございます!ありがとうございます!」ペコペコ

「仔猫をこっちに」

のっぺら嬢「お願い、します」

「よっと…」スッ

仔猫「…」グッタリ

「はい、傘」

のっぺら嬢「え?」

5 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:12:30 ENZJCqj2 5/185


「この子を抱いてたらさせないし、急ぐから邪魔になるし」

「君もずぶ濡れじゃないか」スッ

のっぺら嬢「あ」

「じゃ、行ってくる」ダダッ

のっぺら嬢「あ、あのっ…」



のっぺら嬢(私を見て、逃げなかった…)

のっぺら嬢(それに傘まで…)


ザザアァァァァ…

6 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:13:34 ENZJCqj2 6/185



――
―――


「では、よろしくお願いします。ありがとうございました」

ウイーン

「へっぷし」

(さむ…。一雨ごとに寒くなるな)ブルッ

のっぺら嬢「あの…」

「どわあぁあぁっっ!」ビクビクビク!

のっぺら嬢「ああっ!ごめんなさいごめんなさい!」

のっぺら嬢「顔が無くて、驚かせてごめんなさい!」ペコペコペコペコ!

「あの、ああ、いや…」ドキドキ

のっぺら嬢「ごめんなさい…」ウツムキ

のっぺら嬢「あの、これ傘…」スッ

「ああ、うん」

7 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:14:50 ENZJCqj2 7/185


のっぺら嬢「…ありがとうございました」ウツムキ

のっぺら嬢「それで…あの…仔猫ちゃんは…?」ウツムキ

「あ、ああ。少し衰弱してたのと、風邪をこじらせたみたいで様子見で入院」

「命に別状は無いって」

「先生もここが自宅だから、たまに様子を看てくれるってさ」

のっぺら嬢「よかった…」

「健康診断とかもして、何もなければ明日には退院できるみたいだ」

のっぺら嬢「はぁあぁあぁ…よかったよぅ…ぐすっ」ポロリ

「あの…顔、上げなよ」

のっぺら嬢「ひくっ、え?えっ!?」

8 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:15:42 ENZJCqj2 8/185


のっぺら嬢「でも、私のっぺらぼうで気持ち悪いですから…ずず」

「さっきはすまなかった…」

のっぺら嬢「はい?」

「バケモノとか言っちゃって、ごめん」

のっぺら嬢「え?あ、と、妖怪ですから、事実そうなんですけど…」

「仔猫の心配する優しい人…、っていいのかわかんないけど」

「とにかく、優しいのに」

のっぺら嬢「あなたこそ、私なんかのお願いを聞いてくれて」

のっぺら嬢「傘まで貸してくれて」ウツムキ

「だから、顔上げなって」

のっぺら嬢「えっと…」

のっぺら嬢「…で、では////」ソッ

9 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:16:15 ENZJCqj2 9/185




「ふーん…」ジーッ

のっぺら嬢「あの…そんなに見つめられると…////」ドキドキ

「あ、ごめん」

(ちゃんと赤くなるのか…)

「口はあるんだな」

のっぺら嬢「はい」

のっぺら嬢「目と鼻はありません」

「…どうやってモノを視てるんだ?」

のっぺら嬢「えーっと、なんか普通に見えるんですけど…」

のっぺら嬢「どうやって見てるんですかね?」

「なんじゃそら」

10 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 14:16:51 ENZJCqj2 10/185


のっぺら嬢「まあ、バケモノ…ですから…」

「そう言うなって、へっ…」

「へっぷしん!」

のっぺら嬢「大丈夫ですか?」

「ううっ、寒い」ズルル

のっぺら嬢「めっきり秋も深まりましたからね」

「早めに帰るよ」

のっぺら嬢「そうして下さい」



のっぺら嬢「あの…」

「ん?」

14 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:10:58 ENZJCqj2 11/185


のっぺら嬢「また仔猫ちゃんの様子、見に来てくれるんですか?」

「もちろん。明日また来るよ」

「家もけっこう近くだからな」

のっぺら嬢「そうなんですか」

のっぺら嬢「ではあの、それで…えと…」モジモジ

「どうした?」

のっぺら嬢「わ…私にも…仔猫ちゃんの様子、教えてくれませんか?」

のっぺら嬢「あまり明るい時間帯だと、私はこんなのなんで」

のっぺら嬢「今ぐらいの時間になっちゃうんですけど…」

「優しいなぁ、君は」

のっぺら嬢「はぇっ!?////」

15 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:12:03 ENZJCqj2 12/185


「じゃあ、明日のこれぐらいの時間に、ここらへんで待ち合わせする?」

のっぺら嬢「いいんですかっ!?」

「いいも何も、心配だろ?仔猫の事」

のっぺら嬢「なっ、何から何までありがとうございます!」ペコペコペコペコ

「…ははっ」

のっぺら嬢「な、何かおかしいですか?」

「いや、ふふふ、なんかちょっとカワイイなって」

のっぺら嬢「なっ、妖怪相手に何を言うんですか!////」

「仔猫の為に一生懸命になって」

「おまけに礼儀正しい律儀な妖怪って」

16 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:12:53 ENZJCqj2 13/185


「全然怖くないや、はははっ」

のっぺら嬢「ううー////」カァァァ

「名前、まだ聞いてなかったな」

のっぺら嬢「はい?」

「お互いの名前、まだ言ってなかったよな」

「俺は男」

のっぺら嬢「あっ、あ、あの、わたた、わたしはっわたたた、私のなまなな名前は」

「おいおい、落ち着けってば」

のっぺら嬢「すいません!すいません!」ペコペコ

のっぺら嬢「普通の人間の方に、名前を聞かれたのなんて初めてで…」

のっぺら嬢「私は…のっぺらぼうののっぺら嬢です」ペコリ

17 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:14:23 ENZJCqj2 14/185


「よろしく、のっぺら嬢さん」スッ

のっぺら嬢「は、はい…」スッ

アクシュアクシュ

「猫が繋げた縁ってことで、な」

のっぺら嬢「…はい」

「ふぇ…」

「ふぇでっくしっ」

のっぺら嬢「わっ!さっきからクシャミばっかりですよ!」

「うん…」ズルル

18 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:15:42 ENZJCqj2 15/185


のっぺら嬢「早く帰って下さいって言いながら、長話してすいません」ペコペコペコペコ

「いや、大丈夫」

のっぺら嬢「仔猫ちゃんの事と言い、傘と言い」

のっぺら嬢「今日は本当にありがとうございました!」

のっぺら嬢「明日もお世話になりますがよろしくお願いします」ペコリ

のっぺら嬢「では!」

タッタッタッ…

「あっ…」

(行っちゃった…)

(今さらだが…、夢じゃないんだよな)

19 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:17:07 ENZJCqj2 16/185

ザァァァ…

(あ)

(少し小降りにはなったけど)

(あの子、雨大丈夫かな?)


「ふぃっくしっ!」

「んああっ」ブルルッ

(ホントに寒くなったな)

(早く帰ろう)

「へっくしんっ!」



―――
――

20 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:18:42 ENZJCqj2 17/185


―翌日―

のっぺら嬢(男さん、来てくれるのかな…)ドキドキ

のっぺら嬢(それにしても…初めてだな、あんなに人と喋ったの…)

のっぺら嬢(私みたいな妖怪を気味悪がらずに優しくしてくれて…)

のっぺら嬢(素敵だな…男さん…////)ドキドキ



のっぺら嬢(はっ!?////)

のっぺら嬢(ダメだダメだ!)

のっぺら嬢(私は妖怪なんだから、そんな気持ち持っちゃダメだ)

のっぺら嬢(妖怪…なんだから…)

のっぺら嬢(…)

21 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:19:41 ENZJCqj2 18/185



ウイーン

「ありがとう…ございました」

のっぺら嬢(あ!)

のっぺら嬢(もう様子を見に来てくれたんだ!)タタッ

のっぺら嬢「男さんっ!」

のっぺら嬢「…あ!」

のっぺら嬢(しまった!また驚かせちゃう!)

「うん?ああ…のっぺら嬢さん…」

のっぺら嬢(あれ?驚かない?)

のっぺら嬢「その、あの…仔猫ちゃんはどうでしたか?」

22 : ◆loxSgAubwY - 2014/08/31 20:20:05 ENZJCqj2 19/185


「…ああ、うん…」

のっぺら嬢(え…暗い返事?)
のっぺら嬢「な、何か良くなかったんですか?」

「いや、仔猫は…元気になった…みたいだ」

のっぺら嬢「そうですか…」ホッ

「入院は…もう一日することにした」

のっぺら嬢「え?どうしてですか?」

「うん…」

フラリ…

「あ…」ガク

のっぺら嬢「男さん!!?」ガシッ

26 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:20:48 9GOEhIVY 20/185


のっぺら嬢「んぎぃー!!…お、重い…!」

「ご、ごめん…」

「ちょっとカゼを引いたみたいで…」

のっぺら嬢「男さん昨日っ…、クシャミたくさんしてました!」

ヒタ

のっぺら嬢「熱い…今日一日こんな調子だったんですか!?」

「いや、朝はクシャミだけだったんだけど」

「一人暮らしで昼間は仕事だから、終わってから、仔猫を迎える準備しようとか思ってて」

「そしたら、仕事の帰りからフラフラしだして…」

「ちゃんと…休んだつもりだったんだけどな…」

27 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:22:08 9GOEhIVY 21/185


のっぺら嬢「体調が良くないなら、無理しなくてもよかったのにっ…!」

のっぺら嬢「私のせいでっ…ごめんなさいっごめんなさいっ!」ペコペコペコペコ

「のっぺら嬢さんのせいじゃないから、気にしないで」

「仕事がここんとこ忙しかったから…疲れが出たんだろな」フラフラ

のっぺら嬢「でも…」

「明日にはちゃんと治して、仔猫を迎えに来るから…」

フラリ…

のっぺら嬢「あっ、またっ!?」ガシッ

のっぺら嬢「んぎぃー!!…お、重い…!」

「また…ごめん…」

28 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:23:47 9GOEhIVY 22/185


のっぺら嬢「ふう」

のっぺら嬢「…家、近くだって言ってましたよね?」

「あ、ああ…そうだけど」

のっぺら嬢「心配なので、ついていきます」

のっぺら嬢「よっと」グイッ

「ちょ、ちょっ!大丈夫!?」

のっぺら嬢「大丈夫!一人暮らしだと、家族に私の姿を見られる心配はありませんので!」

「そうじゃなくて!」

のっぺら嬢「はい?」

「重いだろ?」

29 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:24:57 9GOEhIVY 23/185


のっぺら嬢「まあ…。ですけど、肩を貸さないといつコケるかわかりませんからね」

のっぺら嬢「何より、色々助けてもらったのに、放っておくわけにはいきません!」

のっぺら嬢「放っておいて、ヘタにケガをされるよりはいいですよ」

「のっぺら嬢さん…結構言うねぇ」

のっぺら嬢「はっ!?」

のっぺら嬢「ごめんなさいごめんなさい!余計な事を!」ペコペコペコペコ

30 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:26:26 9GOEhIVY 24/185


「ホントに…ははは…優しいなぁ、のっぺら嬢さんは」

のっぺら嬢「えひゃい!?////」

「こっちこそ、ごめん…。肩、借りるわ」

のっぺら嬢「…はいっ!」

のっぺら嬢「行きましょうか。ゆっくりでいいですから、ね」ニッコリ



―――
――

31 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:27:24 9GOEhIVY 25/185




ガチャ

のっぺら嬢「お邪魔しまーす」

「はは…」

のっぺら嬢「なんですか、また笑って」ムー


「妖怪が礼儀正しいって、やっぱりおかしいや」

のっぺら嬢「妖怪だって色々ですよ?」

のっぺら嬢「中には…人を襲ったりする妖怪もいれば」

のっぺら嬢「幸福をもたらす者だっています」

「へぇ」

32 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:28:43 9GOEhIVY 26/185


のっぺら嬢「生い立ちだって」

のっぺら嬢「生まれながら生粋の妖怪の者」

のっぺら嬢「命を全うした後、妖怪に転生した者」

のっぺら嬢「なりたくなかったのになってしまった者…あ」

のっぺらぼう娘「…あれ?」



「どうかした?」

のっぺら嬢「いえ…」

のっぺら嬢(なんだろ、今の感覚…)

「あ、ベッドは…こっち」

のっぺら嬢「あ、はい。んしょ」

33 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:30:54 9GOEhIVY 27/185



のっぺら嬢「よいーしょ」

ギシッ

「ふぅ…」


のっぺら嬢「薬とかありますか?」

「タンスの上の薬箱に」

のっぺら嬢「はい」



のっぺら嬢「よいしょ」

のっぺら嬢「水、持ってきますから」トタトタ

のっぺら嬢「コップ適当にお借りしますね」

キュ、ジャーーー、キュキュ

のっぺら嬢「はい、お水です」

34 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:31:30 9GOEhIVY 28/185



「ああ、ありがとう」

ゴクゴク、ゴクリ

「ふぅ…」

「ふぇ、ふぇっくしん」ズルル

のっぺら嬢「今日もずいぶん冷えそうですからね」

のっぺら嬢「さ、横になってください」

ポフ

のっぺら嬢「ちゃんとお布団かけましょうね」

35 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:32:28 9GOEhIVY 29/185


「うん」

のっぺら嬢「あの…」

「うん?」

のっぺら嬢「ここまで来て何ですけど、本当に…迷惑じゃないですか?」

「いや、全然。すごく助かった」

「ありがとう」

のっぺら嬢「で、でしたら…」

36 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 12:33:53 9GOEhIVY 30/185



のっぺら嬢「あの…」

「ん?」

のっぺら嬢「本当にご迷惑でなければ…このまま看病っ、させて下さい!」

「…」

「…はい?」

のっぺら嬢「私のお願いをたくさん聞いてくれた、せめてものお礼です!」

「いやでも…」

のっぺら嬢「…あ」

のっぺら嬢「やっぱり…私なんか、気持ち、悪いです…よね?」シュン

「えっ!?」

39 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:11:16 9GOEhIVY 31/185


のっぺら嬢「すいません、独り善がりで」ペコペコ

のっぺら嬢「今のは無かった事にして下さい」

のっぺら嬢「ゆっくり休ん… 男「そんなことないよっ!」

のっぺら嬢「え」

「妖怪だからとか、気持ち悪いとかそんなことない」

「それより、のっぺら嬢さんはいいのかって?」

のっぺら嬢「え?どういう事…ですか?」

「俺の事を心配して看病するって言ってくれたのはわかる」

のっぺら嬢「…そう、です。はい」

40 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:14:46 9GOEhIVY 32/185


「嬉しいよ、すごく」ニコ

のっぺら嬢「ひぇい////」ポッ

「でも…」

のっぺら嬢「はい?」

「一人暮らしの男の家に…妖怪とは言え、一応…女、だろ?」

のっぺら嬢「はあ、まあ」

「だから、いいのかな…って」

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「ふっ、ふふふっ…」

「な、なに?」

41 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:18:32 9GOEhIVY 33/185


のっぺら嬢「はははっ、見た目はほとんど人間の女性でも、妖怪ですよ?」

のっぺら嬢「目も鼻もないのに…ふふっ」

のっぺら嬢「そんな私に気遣いしてくれるなんて」

のっぺら嬢「やっぱり男さん、優しいですね」ニッコリ

(あ…なんか口元が笑ってる)

「そうかな////」

のっぺら嬢「そうですよーぅ!」

のっぺら嬢「礼儀正しい妖怪と、妖怪を怖がらない人間」

のっぺら嬢「ふふ、ホントに、おかしいですね」

42 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:21:36 9GOEhIVY 34/185


「はははっ…だな」

のっぺら嬢「ま、さしずめ『のっぺらぼうの恩返し』ってところですよ」

「昔ばなしみたいだ」

のっぺら嬢「ですから、男さんさえ迷惑でなければ、看病させて下さい」

「うん、じゃあ…お願いします」ペコ

のっぺら嬢「ふふ、はいっ!」


のっぺら嬢「あ、体温計りましょうね」

スピョ

のっぺら嬢「おでこ、結構熱いですね」

「寒気と頭痛がする…」

43 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:24:12 9GOEhIVY 35/185


のっぺら嬢「…本当にごめんなさい。無理させてしまって」


「いいよ。気にしなくて」

のっぺら嬢「…気にしてしまいますよ」

「…ごめんな」

のっぺら嬢「ああいややややっ!?」

のっぺら嬢「そんな、いやっ、あの、男さんが謝ることじゃなくて」

のっぺら嬢「仔猫ちゃんの病院代だって、安くはないんでしょう?」

「そんなに高額じゃないさ」

のっぺら嬢「でも、見ず知らずの…しかも顔が無いのっぺらぼうにですよ?」

のっぺら嬢「こんなに良く…してくれるなんて」

44 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:26:47 9GOEhIVY 36/185


のっぺら嬢「今まで、普通の人間の方とここまで接したことが無くてですね」

のっぺら嬢「どうしてここまでしてくれたんだろうって思いましてですね…」

のっぺら嬢「不思議に、思いました」

「そか」


ピピピピ…

のっぺら嬢「あ」

スピョ

のっぺら嬢「9度2分」

のっぺら嬢「結構出てますね」

「平気なつもりだったんだけどな」

のっぺら嬢「タオル…」キョロキョロ

45 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:30:09 9GOEhIVY 37/185


のっぺら嬢「あ、このタオル使っていいですか?」

「うん」

のっぺら嬢「濡らしてきますね」トタトタ

キュ


ヒタ

のっぺら嬢「どうですか?気持ちいいですか?」

「うん。ひんやりする」

のっぺら嬢「安心して寝て下さいね」

「うん」

「一人で寝込むより気が紛れて、楽になる」

46 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:31:24 9GOEhIVY 38/185


のっぺら嬢「寝てる間に捕って食ったりしませんから」

「怖いこと言うなよ」

のっぺら嬢「ふふっ。すいません」

「薬、効いてきたかな…ふぁああ…」

のっぺら嬢「きっと仔猫ちゃん、男さんが迎えにくるの、待ってますよ」

のっぺら嬢「だから、ちゃんと治しましょうね」

「ああ」



「誰かがそばにいるって、やっぱりいいな…」

のっぺら嬢「ちょちょっと!妖怪相手に何安らいじゃってるんですか!?」

47 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/01 18:32:25 9GOEhIVY 39/185


「…変かな」

のっぺら嬢「ホントに不思議な人、ですね」

「…うん…」

「…」

「…」

「すーすー」

のっぺら嬢「あ、寝ちゃった」

のっぺら嬢「よっぽど、無理してたんですね」

「すーぴょー、すーぴゅー」

のっぺら嬢「…ゆっくり休んでください」


―――
――

48 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 00:52:10 o.M.reuY 40/185


――
―――


「…」ゴソ

「…ん」パチ

「…んあ」ゴロン

チラ

のっぺら嬢「すーすー」

「どわあああっ!!」ビクビク!

のっぺら嬢「わあっ!?」ガバッ

のっぺら嬢「あ、えっ、な、なに?」


のっぺら嬢「あ」

のっぺら嬢「看病…」


「されたんだった」
のっぺら嬢「したんだった」

49 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 00:53:19 o.M.reuY 41/185



「あっと…おはよう」

のっぺら嬢「お、おはようございます」



「ごめん、大声出して」

のっぺら嬢「い、いえっ」アセアセ

のっぺら嬢「私もタオルを取り替えたりしてる間に、枕元で寝ちゃったみたいで」

のっぺら嬢「そりゃ目覚めてのっぺらぼうが目の前にいたら、ビックリしますよね」

「…そんなにまで看病してくれたのか」

のっぺら嬢「恩返しですから」ニコッ

「ありがとう」

のっぺら嬢「いえ、そんなっ////」

50 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 00:54:15 o.M.reuY 42/185



のっぺら嬢「た、たた体調はどうですか?」

「あ、うん」

「体は少しだるいけど、熱は下がったっぽいな」

「頭も痛くない」

のっぺら嬢「とりあえず回復したみたいでよかったです」

「のっぺら嬢さんのおかげだな」

のっぺら嬢「そ、そんな…」



「あ、部屋もちょっと片付いてる」

51 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 00:54:55 o.M.reuY 43/185


のっぺら嬢「男さんが寝てる間に少しだけ」

のっぺら嬢「…ご迷惑でしたか?」

「いや、そんな事ないよ」

「男の一人暮らしだとどうしても散らかってしま…」ハッ

のっぺら嬢「どうしました?」

「…雑誌も…」キョロキョロ

「片付いてる…な」

のっぺら嬢「散らばってましたので////」

「…なぜ顔が赤い」

のっぺら嬢「えーとー、そのー、なんというかーですねー////」

「…いろいろ見ちゃった?」ダラダラ

のっぺら嬢「若い男性なら…致し方…ないですよね!////」

52 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 01:00:22 o.M.reuY 44/185


「あ、おお…」

のっぺら嬢「まあ、妖怪と言えど、色恋の知識もありますから////」

「ああ…ごめん////」

のっぺら嬢「あわわっ、大丈夫ですよ!謝らないで下さい!」

「…うん////」

のっぺら嬢「胸の大きい女性が魅力的なのは私も重々承知してますから!」

「ああっ!もうっ!人の性癖をハッキリと言うなよ!////」

のっぺら嬢「あわわわ!ごめんなさいごめんなさい!」ペコペコペコペコペコペコ!

―――
――

53 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 01:02:30 o.M.reuY 45/185



のっぺら嬢「ど、どうでしたか?」


「うんっ、おいしかった!」

のっぺら嬢「よかったです」

のっぺら嬢「病み上がりですからね。卵がゆでしっかり栄養を摂れるようにしました」

のっぺら嬢「生姜湯も風邪に効きますからね」

「料理、結構できんの?」

のっぺら嬢「ええ、それなりには」

のっぺら嬢「…あれ」

「どした?」

のっぺら嬢「なんで料理できるんだっけ?」

「そりゃ誰かに教わったとか」

54 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 01:03:24 o.M.reuY 46/185


のっぺら嬢「…誰かに?」

のっぺら嬢「誰に?」

のっぺら嬢「あれ?あれ!?」

のっぺら嬢「いつ?誰に?いつ?わからない」

のっぺら嬢「…わからない?」

のっぺら嬢「なんでわからないの?」

「お、おい大丈夫か?」

のっぺら嬢「あれ…?あ…う…」

「の、のっぺら嬢さん?」

のっぺら嬢「…うう」ポロポロ

「おい、大丈夫か!?」ガシッ

のっぺら嬢「はっ!?」

55 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 01:04:40 o.M.reuY 47/185


のっぺら嬢「あ、あの、すいません。急に変なことになっちゃって」

「いや、いいんだけど…ホントに大丈夫?」

のっぺら嬢「ぐす、はい…」

のっぺら嬢「すいません、大丈夫ですから気にしないで下さい」

「うん…」

のっぺら嬢「と、ところで仔猫ちゃんは…」

「うん、迎えにいけるよ。のっぺら嬢さんの看病のおかげで、すっかり体調もよくなったし!」

「仔猫も寂しいと思うからさ、早めに行ってこようと思う」

のっぺら嬢「はいっ!」ニコニコ

「のっぺら嬢さんは、どうする?」

56 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 01:05:23 o.M.reuY 48/185


のっぺら嬢「あー、朝っぱらからホイホイ外をうろつくワケにはいきませんからね」

「だよなぁ」

「じゃあ、留守番…頼むよ」

のっぺら嬢「へぃ?」

「気になるだろ?仔猫のこと」

のっぺら嬢「それはそうですけど…」

「よし。なら早速迎えに行ってくるわ」

のっぺら嬢「いいんですか?」

「え?なにが?」

62 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:09:04 o.M.reuY 49/185


のっぺら嬢「何がって…私が留守番、いいんですか?」

「ああ、そゆこと」

「うん、俺は平気だよ」

のっぺら嬢「でも」

「のっぺら嬢さんはちゃんと俺の看病をしてくれた」

「それだけで十分だよ」

のっぺら嬢「男さん…」

「じゃあ行ってくるかな」

のっぺら嬢「男さん」

「ん?」

のっぺら嬢「少しお聞きしたいことがあるんです」

「なに?」

63 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:15:01 o.M.reuY 50/185


のっぺら嬢「どうしてそんなに…私なんかに…良くしてくれるんですか?」

「ああ、その事か。えらく気にするんだな」

のっぺら嬢「…すいません」

「謝ることじゃないよ」


「うん、大したことじゃないと思うんだけど」

のっぺら嬢「はい」

「もう1年になるか…、俺、猫を飼ってたんだ」

のっぺら嬢「そうなんですか」

「俺が生まれた時にうちに来た猫で、長生きしたんだよ」

64 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:17:16 o.M.reuY 51/185


「生まれてから、ずっと一緒にいたんだ」


「俺がここで一人暮らしするようになってからは」

「実家に俺がいないせいか一日中、にゃーにゃー鳴いて」

「母さんが言うには、『あんたを探してるみたいだった』だって」

のっぺら嬢「ふふ、ずいぶん仲が良かったんですね」

「うん」

「それで、ここの大家さんに相談して、引き取ることができたんだ」

65 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:18:27 o.M.reuY 52/185



「朝起きたら、『にゃー』」

「行ってきます、『にゃー』」

「帰ってきたら、『にゃー』」


「おかげで全然寂しくなかったな…」



「でも、猫とかってさ、人間より早く逝っちゃうだろ?」

のっぺら嬢「…ですね」

「まあ、いつか来るってわかってたんだけど」

「ある日、普通に朝起きて、『にゃー』」

「行ってきますで、『にゃー』」

「いつもと変わらない朝だったんだよ」

66 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:19:50 o.M.reuY 53/185




「でもその日は帰ってきた時、いつもあるはずの『にゃー』がなかったんだ」



「自分の寝床でうずくまって…」

「呼吸も荒かった」

「慌ててかけよったらさ」

「少しだけ目を開けて、ギリギリ聞こえるくらいの鳴き声で」

「『にゃー』って言ってくれたんだ」

「それが…最期だった」


のっぺら嬢「…」

「まるで俺の帰りを待ってたみたいだった」

67 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:21:20 o.M.reuY 54/185


「それから、ペットの葬儀屋に供養してもらって」

「色々片付けて…」

「普段の生活に戻った…つもりだったんだけど」

「あん時の寂しさったら…なかったなぁ…」

「起きても、家を出ても、帰ってきても」

「静かだった」


「わかってたんだけど、実際そうなるとキツいもんがあったな…」

のっぺら嬢「…」

「まあ、ちょっと猫に依存した男の話、情けなかったかな」

68 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:24:17 o.M.reuY 55/185


のっぺら嬢「…そ」

のっぺら嬢「ぞぉんなごど!うっぐ、あびば、えぐっひぐっ、ありまぜんよぉおおぉ~!」ポロポロポロポロ~!

「!!?」ビクビクビク!

のっぺら嬢「あぐっ、男ざんのやざじざっ、よくつだわりまじだよぉおおぉぉ~!」ポロポロポロポロ~!

「わっ、ちょっとちょっと!」

のっぺら嬢「うぇええやああああっ!」

「ああっ、もう!落ち着いて!」アーターフーター




69 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:27:10 o.M.reuY 56/185


――


のっぺら嬢「ずぴ。すびばぜん、取り乱しまじだ」

「ちょっとびっくりした」

のっぺら嬢「ずずっ、猫ちゃんに…くすん、思い入れがあったんですね」

「ちなみにこれがその子の写真」スッ



のっぺら嬢「!」

のっぺら嬢「仔猫ちゃんと模様が一緒?」

「そ、灰縞の、俗に言うサバトラ柄ってやつか」

のっぺら嬢「だから…」

「そ、余計にほっとけなかった」

70 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:27:57 o.M.reuY 57/185


「それにのっぺら嬢さんの必死さが伝わったからな」

「あれだけ猫のために必死になれる…人?、なんだから悪いワケないだろう?」


のっぺら嬢「男さん…」

「前置きが長くなったけど、気にかけたり、留守を任せる理由はそれ」

「納得してくれた?」

のっぺら嬢「はいっ!」ニコッ


(…たぶん、ちゃんと顔があると、笑ったら可愛いんだろうな)

(そんな感じの笑顔だ)

71 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/02 22:29:05 o.M.reuY 58/185



「よしっ、じゃあ行ってきます」

のっぺら嬢「はい!」

「色々買い物してから病院に行くから、少しだけ待っててくれな」スクッ

のっぺら嬢「はい!いってらっしゃい!」

「…いいな、やっぱり」

のっぺら嬢「え」

「誰かが送り出してくれるってさ」ニコッ

のっぺら嬢「あ…////」ドキン

「行ってきます」ガチャン

74 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:16:36 cGtuJWJs 59/185



――
―――

「た、ただいま…」

のっぺら嬢「おかえりなさー…って!?」

「いたた…」

のっぺら嬢「どうしたんですか!?顔中、傷だらけじゃないですか!」

「コイツ」スッ

「ふぎゃーにぎゃー!」ガサゴソ!

「連れて帰ろうとしたら、めっちゃ暴れやがって…」

のっぺら嬢「あっれー?おとなしい子なんですけどねー?」

のっぺら嬢「仔猫ちゃーん?私だよー?元気になってよかったねー」

75 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:20:06 cGtuJWJs 60/185


「…」

「うにゃーん」カタカタ

「お!おとなしくなった!」

のっぺら嬢「出してあげていいですか?」

「ああ」

パカ

ピョイ~ン

仔猫「にゃーん」

のっぺら嬢「あはっ!ホントに元気になったね!」ダキッ

仔猫「なーう」ゴロゴロ

「…なんだこの変わり様は…」

76 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:21:46 cGtuJWJs 61/185


のっぺら嬢「きっと大丈夫ですよ」

「そうか?」ソー

仔猫「ふしゃー!」ザワッ

「わわっ!無理じゃないか!?」

のっぺら嬢「男さんこそっ、猫に慣れてるんじゃないんですか!?」

「あー、そうなんだけど、その子、オスだろ?」

のっぺら嬢「あ、そうですね。ついてます」チン

(ついてるって…)

「もしかしら、同性同士で相性が悪いのかも…」

のっぺら嬢「そんなのもあるんですか…」

77 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:23:38 cGtuJWJs 62/185


「前の猫はメスだったから」ソー

仔猫「ふしゃー!」

のっぺら嬢「あわっわっ!ダメだよ!」

のっぺら嬢「男さんはアナタを助けてくれた大事な人だよ?」

のっぺら嬢「傷つけちゃダーメ!」ハナチョン

仔猫「うにぃ」

のっぺら嬢「ふふ。イイコだねぇ」

(おお…和むわ~)

「しかし、俺に飼えるかな…」

のっぺら嬢「え!?飼うんですか?」

「え、いや、一度保護したら最期まで面倒見ないと…」

「それがマナーってか、責任だからな」

78 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:26:08 cGtuJWJs 63/185


のっぺら嬢「そうですか…」

のっぺら嬢「じゃあ、時々…会いに来ていいですか?」

「ああ、うん」

のっぺら嬢「もちろん、昼間に無闇にお邪魔したりしません」

のっぺら嬢「ですから…」

「そんなに気にしなくていいよ」

「いつでもおいで」

のっぺら嬢「男さん…」

「どっちにしろ平日は仕事で昼間いないからさ」

「夜なら都合いいだろ?」

79 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:28:04 cGtuJWJs 64/185


のっぺら嬢「はいっ!」ニッコー!

(顔が無いのが関係無いくらい、感情が溢れ出とる)

「ははっ」

のっぺら嬢「?どうしたんですか?」

「いや、なんでもない」

「さ、仔猫の過ごしやすいように、少しだけ模様替えをしますか!」

のっぺら嬢「お手伝いしますっ!」ケーレイ!

「うん、頼みます」


―――
――

80 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:29:44 cGtuJWJs 65/185




――

仔猫「にゃ」ヨジヨジ

「キャットタワー!」

のっぺら嬢「男さん…これ、結構したんじゃ…」

「大したことなかったよ」

「ただ、次に猫がうちに来ることがあったら、絶対欲しかったんだ」

のっぺら嬢「お、男さんの趣味ですか!?」

「…うん////」ポリポリ

仔猫「にゃにゃ」ヨジヨジ

のっぺら嬢「がんばって登ってますね~」ニコニコ

「あー…ただ…」

81 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:30:52 cGtuJWJs 66/185


仔猫「んにぃ~…」ヨジ~…

仔猫「にゃん!」スタ!

のっぺら嬢「おおー!頂上まで行きましたね!」

仔猫「…」

仔猫「…」キョロ

仔猫「…」キョロキョロ

仔猫「にゃーにゃーにゃー!」

のっぺら嬢「あれ?どうしたの?仔猫ちゃん?」

82 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:32:36 cGtuJWJs 67/185


「仔猫あるある」




「登るは容易、下り無理」




のっぺら嬢「…降りられないんですね」

「仕方ないなぁ」ニヨニヨ

のっぺら嬢(男さんの顔のゆるみ方がスゴい!)

のっぺら嬢(でも…)

仔猫「ふかーっ!!」ザワワッ

「ああっ!またしても!」

のっぺら嬢(やっぱり…)

83 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:33:30 cGtuJWJs 68/185


のっぺら嬢「私が降ろしましょうか?」

「いや。これから家族の一員になるんだ」

「いつまでもわだかまりを残すワケにはいかないよ」

のっぺら嬢「そうですね」

のっぺら嬢「がんばって!男さん!」

仔猫「おぁー…」ザワ

「大丈夫だから、な?」ソー

仔猫「にゃいん!」ピョン

「あ」

84 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/03 00:34:25 cGtuJWJs 69/185


ガッガリッ

「アーーーっ!」

ピョイ~ン

仔猫「にゃん」スタッ!

のっぺら嬢「お、男さん…」

「バンソウコウ…持ってきてくれる?」タラー

のっぺら嬢「ああっ!男さんの顔に新たなキズがっ!!」

――

88 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:39:09 .Uhry4ZY 70/185



――

「うん、模様替えはこんなもんかな」

のっぺら嬢「よかったねぇ」

仔猫「にゃん!」

「トイレもちゃんと一人でできてたし、平日の留守番も大丈夫そうだ」

のっぺら嬢「お利口さんだねぇ」ナデナデ

仔猫「なぁ~」ゴロゴロ

「じゃあ次で最後だ」

のっぺら嬢「?まだ何か?」

「仔猫に名前をつけないと」

のっぺら嬢「ああ!」ポン

「コイツだっていつかは立派なオス猫になるんだ」

「いつまでも仔猫、じゃな」

のっぺら嬢「ですね」

89 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:40:21 .Uhry4ZY 71/185



のっぺら嬢「そういえば、男さんが飼ってた猫ちゃんの名前は何だったんですか?」

「トラ」

のっぺら嬢「え?」

「サバトラ柄だったから、トラ」

のっぺら嬢「お、女の子だったって言ってましたよね?」

「ああ…オヤジがつけた」ガックリ

のっぺら嬢「男さんのお父さん…」ガックリ

のっぺら嬢「あ、でもでも!今度は男の子ですから、いいんじゃないですか?」

「いいのか?」

のっぺら嬢「強そうでいいじゃないですか」

90 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:43:49 .Uhry4ZY 72/185


のっぺら嬢「ねートラ」

トラ「うにゃん!」

「トラー」

トラ「ふしゃーっ!」カーッ

「なんでだよっ!?」

のっぺら嬢「わっわっ、いい子だから仲良くしようね~」

トラ「うにぃ」

のっぺら嬢「ふふっ。あ、もう外、真っ暗ですね」

「ホント秋も深まってきたな。日が暮れるのも早い」

のっぺら嬢「じゃ、私はそろそろ…」

「あ、うん」

91 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:44:56 .Uhry4ZY 73/185


のっぺら嬢「本当にいろいろありがとうございました」ペコリ

「いや、お互い様だよ」

「看病してくれて助かった」

のっぺら嬢「いえ////」

「それに、傍にいてくれて…安心もできた」

のっぺら嬢「また、そんなことを…////」カァッ

「本当に、普通の人間と思うくらい自然に仲良くなっちゃったな」

のっぺら嬢「そうですね」

「だから、また気兼ねなくウチにおいでよ」

のっぺら嬢「あ、ありがとうございます!」ニコッ

「コイツ…トラも楽しみにしてるだろうしな」

のっぺら嬢「はい!」

92 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:46:07 .Uhry4ZY 74/185


のっぺら嬢「ではお邪魔しました」ペコリ

「うん、またな」

のっぺら嬢「はいっ!」



バタン

「…さて」

チラ

トラ「!」

トラ「ふかーっ!!」


「ああっもうっ!」


―――
――

93 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:47:12 .Uhry4ZY 75/185



―数日後―

のっぺら嬢「ねこじゃらしだよ~」ミョンミョンミョンミョン

「…」

トラ「にー」ジリ…

「…」

のっぺら嬢「ほりゃっ!」ミョン!

「…」

トラ「にゃ!」ピョン

「はあ…」

のっぺら嬢「あ、うるさかった、ですか?」

「え!?いや、違うよ」

のっぺら嬢「でも、ため息…」

94 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:48:25 .Uhry4ZY 76/185


「いや、もうね…ため息のひとつやふたつ、出ますよ」

ソー

トラ「ふしゃーっ!」

「な?」

のっぺら嬢「私の時は、すんなりなついてくれたんですが…」

「そのくせ、キャットタワーに登っては降りられなくて」

「降ろそうとしたら、引っ掻かれる…」

のっぺら嬢「すいません、ご迷惑おかけして…」シュン

95 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:49:18 .Uhry4ZY 77/185


「のっぺら嬢さんが謝ることじゃないよ」

「どうしても、平日の昼間はほったらかしになっちゃうからなぁ…」

「まだまだコミュニケーションが足りないのかも」

のっぺら嬢「昼間は男さんがいなくて寂しいねぇ」

のっぺら嬢「でもね、男さんはトラの為に一生懸命お仕事がんばってるんだからね?」

トラ「にー」

「寂しい、か」

96 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:50:44 .Uhry4ZY 78/185


のっぺら嬢「え、あ、男さんを責めたワケじゃないんですよ?」

「うん、わかってる」

「ただ…先代のトラも、ホントは寂しかったのかなって」

のっぺら嬢「男さんを慕ってくれてたんでしょう?」

のっぺら嬢「男さんの気持ちは伝わってるハズです!」

のっぺら嬢「きっと前のトラちゃんも幸せだったと思いますよ!」

「うん…ありがとう」

のっぺら嬢「いえ…////」



「あのさ」

のっぺら嬢「はい」

97 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:52:48 .Uhry4ZY 79/185


「前から気になってたんだけど」

「のっぺら嬢さん達妖怪は、普段どんな風に寝起きしてるんだ?」

のっぺら嬢「はい?」

のっぺら嬢「そうですねぇ…基本、廃屋とか倉庫とか神社のお社やお寺…」

のっぺら嬢「あ、たまにビルとビルの間の暗がりとか…」

のっぺら嬢「そんな感じですね」

「ほぼ野宿か…」

(その割に服や体は綺麗だ)

(魔力とか妖力とかそんな類いのものかもしれないな)

のっぺら嬢「どうかしたんですか?」キョトン

98 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:54:18 .Uhry4ZY 80/185




「…うん」

「余計なお世話かもしれないけどさ…」




「行くアテが無いなら、ここに住まない?」




のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「…はい?」

「トラと一緒にここにいないかって…」

99 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/04 23:58:40 .Uhry4ZY 81/185






のっぺら嬢「え…」

のっぺら嬢「ええええぇえぇぇぇっっっ!!??」




「ちょっ、声が大きい!」

のっぺら嬢「そりゃ大声も出ちゃいますよ!」

のっぺら嬢「正気ですかっ!?」

「うん、まあ」

のっぺら嬢「なんでっ、そんな事…!」

「うーん…ほぼコイツ」チョイチョイ

100 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:00:59 4fG3Y1X. 82/185


トラ「?」

「お前だよ、トラ」

トラ「ふしゃー!!!」ザワワッ

のっぺら嬢「あ、ダメだよっ」

のっぺら嬢「トラ、ですか?」


「のっぺら嬢さんにはなついてるし」

「効果があるかわからないけど」

「トラと俺の仲を取り持ってほしいんだ」

「相変わらずこんな感じだし…」ソー

トラ「おぁぁぁ…」ザワ


「どうかな?」

のっぺら嬢「でも…」

101 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:04:36 4fG3Y1X. 83/185


「もちろん無理にとは言わない」

「よくわかんないけど、妖怪の掟とかあるかもしれないし」

「ましてや、のっぺら嬢さんはのっぺらぼうである以外、見た目はもちろん内面も人間の女性と変わらない」

「もちろんいかがわしい事なんてするつもりはないけど」

「人間と、しかも男と一緒にって…抵抗あるかもしれない」


「でもトラもさ、いつまでも俺を警戒してばっかりじゃ疲れるだろうし」

「だから、のっぺら嬢さんさえ良ければ、だけど」

102 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:05:40 4fG3Y1X. 84/185



のっぺら嬢「…本気…ですか?」

「うん」

のっぺら嬢「…あ」

のっぺら嬢(『うーん…ほぼコイツ』)


のっぺら嬢「『ほぼ』トラの為、なんですよね?」

「あ?うん」

のっぺら嬢「その『ほぼ』以外の『少し』の理由、聞いてもいいですか?」

「ああ、その…////」

のっぺら嬢「?」

「…」

103 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:08:04 4fG3Y1X. 85/185



「看病、してもらって…安心できた…」

のっぺら嬢「え!?」

「トラを迎えに行くとき、送り出してくれたのが…心地よかった…」

のっぺら嬢「ぷ…」

のっぺら嬢「ふふっふふふっ」

「な、なんだよ…////」

のっぺら嬢「ふふっ、私なんかにどれだけ安心感抱いちゃってるんですか」クスクス

「へーん、あいにく他に安心感を求める相手がいないもんでね」ツーン


のっぺら嬢「だからって、あははっ、妖怪の私にっ、ふふっ」

104 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:08:54 4fG3Y1X. 86/185



「うるせぃ」

のっぺら嬢「ふふふ、トラの事もありますし、私にできる事があれば協力します」

のっぺら嬢「でも、本当に良いんですか?」

「ああ」

のっぺら嬢「大食らいってワケではありませんが、普通並みに食べますよ?」

のっぺら嬢「出費、かさみますよ?」

「それぐらいなんとかなるだろ」

のっぺら嬢「部屋、狭くなっちゃいますよ?」

「狭くなって困ることは…無いな」


のっぺら嬢「ふぅ…ホントにもう…」クスクス

のっぺら嬢「じゃあ…」

105 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:09:33 4fG3Y1X. 87/185


のっぺら嬢「トラー?早く男さんと仲良くなろうねー?」

トラ「うにぃ」

「決まりだな」

のっぺら嬢「ホント、不思議な人ですね」

「猫に限らず動物になつかれる人に、悪い人はいない」

「俺の持論だ」


のっぺら嬢「私、のっぺらぼうですよ」


「そこ屁理屈言わない」

106 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:10:23 4fG3Y1X. 88/185



「よろしく、のっぺら嬢さん」

のっぺら嬢「はい、お世話になります」

のっぺら嬢「あ」

「ん?」

のっぺら嬢「ひとついいですか?」

「なに?」

のっぺら嬢「私を呼ぶとき、さん付け…しなくていいですよ」

のっぺら嬢「ヘタにさん付けされると、気を使わせてるみたいで…」

のっぺら嬢「ダメですかね?」

「わかった」

「でも呼び捨てもアレだから…」


「アダ名で…」

107 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:12:39 4fG3Y1X. 89/185






「のぺちゃん」




のっぺら嬢「…」ポカーン

「あら?変かな?」

のっぺら嬢「いえ、私…アダ名なんて今までつけられたことがなかったので…」

108 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:14:00 4fG3Y1X. 90/185


「のぺちゃん」

のっぺら嬢「あぅ」

「のぺちゃん」

のっぺら嬢「…はい////」ポ


のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「…あはははっ!」


のっぺら嬢「うふふ、お世話になります。よろしくお願いいたしますね」ペコリ

「硬ぇ」

のっぺら嬢「そ、そですかね?」


「ま、のぺちゃんらしいや」

109 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:14:51 4fG3Y1X. 91/185




「ほい、改めて握手」スッ

のっぺら嬢「あ、はいっ」スッ

アクシュアクシュ

「よろしく」

のっぺら嬢「はいっ!」

110 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/05 00:15:50 4fG3Y1X. 92/185



「じゃ早速、模様替え第2弾!」

のっぺら嬢「え、え?もう夜ですよ!?」

「のぺちゃんが少しでも居心地がいいようにしないとな」

「それに明日は休みだ!」

のっぺら嬢「ホントに男さんは…」

「ん?」

のっぺら嬢「いえ!なんでもありませーん!」

「んじゃ、早速!」

のっぺら嬢「はい!」

―――
――

112 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:30:46 0axfrvYg 93/185


―翌朝―

チュンチュン

「…」ボー

のっぺら嬢「…」ボー



のっぺら嬢「緊張して寝れませんでした…」ボー

「同じく…」ボー

「平常時に一緒に寝るとなると、こうも緊張してしまうとは…」ボー

のっぺら嬢「すいません。せっかく、ベッドを貸して頂いたのに…」ボー

「緊張したのはお互い様だ。仕方ないよ。しかし…」

113 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:32:26 0axfrvYg 94/185


トラ「すぴー」グー

「くそっ、うらやましい」



のっぺら嬢「あっ」

「ん?」

のっぺら嬢「お、おはよう…ございます」

「お、おはよう」

「なんか新鮮だ…!」キューン

のっぺら嬢「そ、そうですね…普通に朝の挨拶は初めてですね////」

のっぺら嬢「前は看病の時に、大声あげながら起きましたからねぇ」

「はははっ、そうだったな」

114 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:33:58 0axfrvYg 95/185



トラ「うにぃい~」ノビー

のっぺら嬢「あ、トラもおはよう」

のっぺら嬢「これから朝も会えるね!」ニコッ
トラ「なうなぅ」スーリスリ

(はあぁあぁぁ…このツーショットはマジ和むわ)ホコホコ


のっぺら嬢「あ、台所お借りしていいですか?」

「いいけど…なんで?」

のっぺら嬢「なんでって…」

のっぺら嬢「朝ごはん作るんですけど…」

「ああ、じゃあ頼むよ」

のっぺら嬢「はい!まかせて下さい!」トッテトテー

115 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:34:49 0axfrvYg 96/185



「…」

「…あれ?」


のっぺら嬢「ふんふ~ん♪ふふぅ~♪」カチャカチャ

「おわぁっ!」

のっぺら嬢「わあっ!?な、なんですかっ!?」


「ご、ごめんっ!なんか食事の用意してもらうのが当たり前、みたいな返事しちゃって!」

のっぺら嬢「ああ、そんなこと」

のっぺら嬢「いいんですよ」

116 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:36:27 0axfrvYg 97/185


のっぺら嬢「なぜかはわかりませんが、私、料理するのが好きみたいなんですよ」

「でも…」

のっぺら嬢「それに居候の身ですからね。これぐらいはしないと」

「うーん…」

のっぺら嬢「ささ、男性はどんと構えて!」

のっぺら嬢「トラの相手をしていてくださーい!」

(それって邪魔者扱いされてるみたい…)

「うん、じゃ、お願いするよ」

のっぺら嬢「はいっ!」

「のぺちゃんみたいないい娘に会えて良かったな、トラ」

トラ「すぴー」グーグー

「おいっ!?」



 

117 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:38:48 0axfrvYg 98/185



――



のっぺら嬢「ごちそうさま」

トラ「に」ペロペロ

「お、トラもごちそうさまだな」

のっぺら嬢「みたいですね」

「いやー、朝に手作りのお吸い物を飲むなんてどれくらいぶりだろ」

のっぺら嬢「お味噌汁にしたかったんですけどね」

のっぺら嬢「お味噌がなかったもので」

「のぺちゃんが料理好きなら、食材…調理器具も揃えないとな」

118 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:39:58 0axfrvYg 99/185


「欲しい物があったら、じゃんじゃん言ってくれよ?」

「買ってくるから」

のっぺら嬢「そんな…、出費がかさむのにワガママは言えませんよ…」

「ワガママなんてとんでもない!」

のっぺら嬢「そ、そうですか?」

「うまいご飯が食べれるなら、なんてことないよ!」

「一人の時は、料理なんてほとんどしなかったし」

「手作りの料理って、ホントいいものなんだよな」



「一人暮らしして、今更ながら改めて気づいたよ」


のっぺら嬢「男さん…」

119 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:41:17 0axfrvYg 100/185



「片付けは俺がするよ」

のっぺら嬢「いえ!」ピシャッ

のっぺら嬢「今日は休日です」

「そうだけど」

のっぺら嬢「男さんは普段のお仕事の疲れを癒してください」カチャ

「ああっ、食器ぐらいは自分で持っていくのに!」

のっぺら嬢「いいんです!」カチャカチャ

のっぺら嬢「居候である以上、主には少しでも居心地良くしててもらわなければ!」カチャ

「うーむ」

のっぺら嬢「それに…やっぱりお世話になるばかりじゃ、申し訳ないですから」スタスタ

120 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:41:51 0axfrvYg 101/185





「…のぺちゃんみたいな、彼女とか奥さん」


「いたらいいよなぁ」



ガチャンパリンガチャーーン

パリン

「のぉわあぁっ!?」

121 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 00:42:31 0axfrvYg 102/185


のっぺら嬢「ななな、はにゃなな!」プルプル

「大丈夫かっ!?」

のっぺら嬢「ななナにを言ってルんデスカ!?////」ドッキドキドッキドキ

「ちょっ、そんな事より!ケガはっ!?」

のっぺら嬢「ひゃいっ!?だだ大丈夫…みたいです」ドッキドキ

「よかった…」ホッ

123 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 08:14:20 0axfrvYg 103/185



「あーあー、ずいぶん派手に割っちゃったな」

のっぺら嬢「お、男さんが変な事言うからですよ!」プンスカプンスカ!

「う…ごめん…」

「ここまで動揺するとは…」

のっぺら嬢「ホントに!何度も言いますけど、妖怪相手に何を言ってるんですか!」

のっぺら嬢「からかうのもいい加減にして下さいっ!」プンスカ!

「からかうつもりは無かったんだけど」

のっぺら嬢「むー」ムー

124 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 08:15:23 0axfrvYg 104/185


のっぺら嬢「でも、割ってしまったのは…すいません」

「まあ、ケガが無くてよかった」

「どうせ朝からいろいろ買い出しに行くつもりだったからさ、ついでに買ってくるよ」

のっぺら嬢「お願いします」

「ケガしないうちに片付けちゃおう」

のっぺら嬢「あ、はい」





125 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 08:17:49 0axfrvYg 105/185


ガチャガチャン

「居候とはいえ、家族が増えた事には変わりないから」

「心機一転、食器も新しくするのもいいかもな」


のっぺら嬢「家族…ですか」

「よっ」ガチャガチャ

のっぺら嬢「…」ジー

「よっと」ポイ

のっぺら嬢「…」ジー

126 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/06 08:19:27 0axfrvYg 106/185


「?どうかした?」

のっぺら嬢「あっ////いえ…////」プイッ

のっぺら嬢「あ、えと、そそ掃除機、要りますねっ。取ってきます」

「ベッドの足元に置いてあるよ」

のっぺら嬢「はーい」




―――
――

128 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:09:13 4ZvDsldo 107/185




「じゃあ、留守番頼むな」

のっぺら嬢「はい、いってらっしゃい」

のっぺら嬢「ほらトラも」ダッコ

トラ「にゃぁ」

のっぺら嬢「えらいねぇ、お利口だねぇ」ギュー

「文字通り、猫をかぶってやがる…」

のっぺら嬢「私の前では、これが普通のトラなんですけどねー」

「早くなついてくんないかなぁ…」

のっぺら嬢「きっとすぐですよ」

129 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:10:14 4ZvDsldo 108/185



「じゃ、鍵は閉めて行くから」

「誰かが訪ねて来ても、出なくていいからな。居留守を使うように」

のっぺら嬢「はい」

「あと大したもんはないけど、家の中の物、自由に使ってかまわないから」

のっぺら嬢「ありがとうございます」

「昼には戻るようにするから」

のっぺら嬢「はい、気をつけてくださいね」

「うん。いってきます」


バタン

ガチャン



 

130 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:10:49 4ZvDsldo 109/185


のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「ねえ、トラ」

トラ「に」

のっぺら嬢「男さんて、すごく優しくていい人だね」

のっぺら嬢「私達の為に一生懸命で」

のっぺら嬢「トラも私も、家族だって思ってくれてるんだね」



のっぺら嬢「本当は…このままこの関係が…」

131 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:12:14 4ZvDsldo 110/185




のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「でも、ダメだよね」

のっぺら嬢「私は妖怪で」

のっぺら嬢「男さんは人間」



のっぺら嬢「本来ならこんなに近くにいちゃダメなんだよね」


ズキン…


のっぺら嬢「…」

トラ「にぃにぃ」ペロペロ

のっぺら嬢「ふふ、ありがとう」

132 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:13:22 4ZvDsldo 111/185


ギュー

のっぺら嬢「男さんはね、本当にいい人だから」

のっぺら嬢「きっとあなたを幸せにしてくれるよ」

のっぺら嬢「だから早く、男さんに気を許してね?」

トラ「にい!」

のっぺら嬢「はーい、イイコイイコ」ナデナデ

のっぺら嬢「少しねこじゃらしで遊んで、そのあと掃除しようね」ミョン

トラ「にゃあぁぁ」キラキラ


のっぺら嬢「ほりゃほりゃほりゃほりゃ!」ミョンミョンミョンミョン!


トラ「にゃあああっ!」トッテテートッテテテー!



 

133 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:14:24 4ZvDsldo 112/185



――


「ただいまー」

のっぺら嬢「お帰りなさい」ニコ

「お、おう////」

のっぺら嬢「ずいぶん大荷物ですね」

「どっこいせ」

「トラのオモチャとかも買ったし」

「食器だろ」

「あと調理器具諸々…」ゴソゴソ

のっぺら嬢「わっ、こんなにたくさん!」

「これでもっと楽しく料理できるんじゃないかな」

のっぺら嬢「ありがとうございます!」ニッコー!

134 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:16:04 4ZvDsldo 113/185



のっぺら嬢「それから、その大きな荷物は?」

「あともう一組布団をな」

のっぺら嬢「私がベッドを使うからですね」

のっぺら嬢「…別に床の上でもいいんですけど」

のっぺら嬢「今までずっとそんな感じでしたから」

「だからって、女の人を硬い床で寝かせるワケにいかないだろう」

のっぺら嬢「ふふっ、男さんらしいですね」

のっぺら嬢「あ、お昼、用意しますから少し待っててくださいね」

「うん!」ニヨニヨ

のっぺら嬢「なんですか?ニヤニヤして」

135 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:16:58 4ZvDsldo 114/185


「これからこんな感じに毎日が迎えられるんだなって…」

「誰かが自分の帰りを待っててくれるって、ホント癒されるよ」ニコ

のっぺら嬢「あ////」

…ズキン

のっぺら嬢「…そう、ですね」

のっぺら嬢「ささ、早く手洗いうがい済まして待っててください」

「はいよー」



――

136 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:17:35 4ZvDsldo 115/185



―それから数日経った夕食時―



「なあ、のぺちゃん」

のっぺら嬢「なんですか?」

「一緒に暮らしだしてから、ずっと家にこもりっきりだけど」

「退屈じゃないか?」

のっぺら嬢「そんなことないですよ」

のっぺら嬢「トラもいますし」

のっぺら嬢「最近のマイブームは、ネットの海にダイブして、未知なるレシピを発掘することです!」フンス

「確かにスゴいね」

137 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:18:08 4ZvDsldo 116/185


「料理スキルは尋常じゃないくらい上がってるし、掃除も俺一人の時とは比べもんにならないくらい片付いてるし」

のっぺら嬢「掃除のウラワザもたくさん検索してますからね!」


「…うん」

のっぺら嬢「どうしたんですか?」

「今まで避けてたかもしれないけど」

のっぺら嬢「はい」

「昼間、外に出てみたくない?」

「ってか、外に出てみない?」





のっぺら嬢「はい?」

138 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:37:02 4ZvDsldo 117/185



のっぺら嬢「むっ、無理ですよ!」

「なんでさ」

のっぺら嬢「なんでって、私はのっぺらぼうですよ!?」

のっぺら嬢「昼間に出歩いたら、町中パニックになりますよ!」

のっぺら嬢「本来なら、都市伝説やもしくは眉唾物の怪談の存在なんですよ!?」

「…うん」

のっぺら嬢「ですから無理ですよ…」シュン

「でも俺からしたら、すごく家庭的な女の人にしか思えないんだよ」

「だから楽しめる事は楽しんでほしいんだ」

のっぺら嬢「気持ちはありがたいですけど…」

139 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/08 00:38:31 4ZvDsldo 118/185


「…実際どうよ?」

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「やはり外に出るのは…怖いです」

のっぺら嬢「ただ、ネットのいろんな情報を見て…憧れが出てきたのは事実、です」

「なるほどなるほど」

「ふっふっふっ…」

のっぺら嬢「な、何なんですか…?」



「ちょっとイイモノ、買ってきました!」


のっぺら嬢「?」


――

143 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:07:19 AJwOKkFY 119/185


―翌日・繁華街―

ガヤガヤ

ワイワイ

のっぺら嬢「あ、あの、男さん…」ギュ

「そんなに怖がらなくても大丈夫」

のっぺら嬢「うう…」

「結構自然だな。その付け鼻」

「パーティーグッズだったからちょっと心配だったんだけど」

「切ったりしたら思いの外、自然な感じになったな」

のっぺら嬢「でも、でも、バレたら…」ギュギュー

「ファンデーションで巧く肌感が出てるし」

「サングラスもファッションでかけてる人も多いから、晩秋のこの時期でも不自然じゃないよ」

のっぺら嬢「でも…でも…」ビクビク

144 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:08:09 AJwOKkFY 120/185


「初めてだから、仕方ないよな」

ギュ

のっぺら嬢(あっ、手、握り返してくれたっ…!!!////)ドッキドキーン!

「安心できるか?」

のっぺら嬢「…はい////」

のっぺら嬢(安心もしましたけど、それ以上に胸の鼓動ががスゴいことに!)ドッキドキドッキドキ!



「ごめんな」

のっぺら嬢「え?え!?ちょっと!なんで謝るんですかっ!?」

「半ば強引に外に連れ出して…」

のっぺら嬢「いえ。すごく嬉しかったです。私に気を使ってくれて」

145 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:09:13 AJwOKkFY 121/185


「まあ…こもりっきりじゃアレだしな」

「服もいくつか買っておいてよかった」

「俺が適当に選んだけど、どう?」

のっぺら嬢「か、かわいいと思います。気に入りました」


「なら、良かった」

のっぺら嬢「でも、買いに行くの…恥ずかしかったんじゃないですか?」

のっぺら嬢「この服やファンデーション…」

のっぺら嬢「当然、女の人が行くお店に行ったんでしょう?」

「…まあな」

「でも、お店の人に『彼女へのプレゼント』って言ったら…」

146 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:10:27 AJwOKkFY 122/185


のっぺら嬢「かっかっかっカッカッ彼女っっ!?////」ポポーッ!

「ごめんっ!その場の出任せっていうか口実っていうか…」

のっぺら嬢「いえ…////」ポーッ!

「まあ、いろいろアドバイスしてくれて」

「それなりに良いもの買えたと思うよ」

のっぺら嬢「ありがとうございます」ニコ


「うん」

「で?何かしたいこととかある?」

「緊張してそれどころじゃないか?」

のっぺら嬢「い、いえっ」

のっぺら嬢「こう…ちょっとだけ男さんにくっついていれば、少しだけ安心できます」ギュギュギュー

147 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:16:05 AJwOKkFY 123/185


「そ、そか」
(ちょっとくっつくどころじゃありませんよ!!)


のっぺら嬢「あの…」

「ん?」

のっぺら嬢「クレープを食べてみたい、です」

「またベタなものを…」

のっぺら嬢「い、いいじゃないですかっ!!」クワッ

のっぺら嬢「ネットで見て美味しそうだなって」

148 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:16:57 AJwOKkFY 124/185


のっぺら嬢「白いクリームがいっぱいでですね…」

のっぺら嬢「イチゴ、バナナ、リンゴ…」

のっぺら嬢「あ、あと軽食っぽいのもありましたね!」

のっぺら嬢「ポテトサラダとか、チーズ、ツナ、ハム…」ジュルリ

「ぷぷぷ…」

のっぺら嬢「はぁっ!す、すいませんっ!」ジュルリ

のっぺら嬢「ちょっとトリップしてました////」

149 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:20:04 AJwOKkFY 125/185


「はははっ!どんだけ食べたいんだよっ!」

のっぺら嬢「し、仕方ないでしょう!?」

のっぺら嬢「クレープには食欲を異常に刺激する魔力があります!」

のっぺら嬢「恐るべしクレープ!」

「なんじゃそら」クスクス

「じゃ、行こうか」

「少し歩くけどおいしいクレープ屋があるから、そこで食べよう」

のっぺら嬢「はいっ!」




 

150 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:22:02 AJwOKkFY 126/185




――

のっぺら嬢「…すいません」

「いいんだけどさ」

のっぺら嬢「す、すいませんっ!すいませんっ!」ペコペコペコペコ!

のっぺら嬢「クレープ4つも食べてすいませんっ!」ペコペコペコペコ!

「店の人、びっくりしてたな」

のっぺら嬢「うう…」シュン

「ははっ、そう落ちこまない!」

ポン

「のぺちゃんが楽しめたなら、何よりだよ」

のっぺら嬢「はい」

151 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:23:25 AJwOKkFY 127/185



「…また、一緒に出かけような」

のっぺら嬢「いいんですか?」

「俺で良ければ喜んで」

のっぺら嬢「ふふ、こんなこと頼めるのは男さんしかいません」

「そうだな」



「そろそろ帰ろうか」

のっぺら嬢「そうですね。トラもお留守番、頑張ってますしね」

152 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:28:14 AJwOKkFY 128/185


のっぺら嬢「楽しい時間は…あっという間、ですね」

「それだけ楽しんでくれたなら、連れ出した甲斐もあるってもんだ」

「てか、俺もけっこう楽しんだんだけどな////」

のっぺら嬢「お互い様ってことですかね」

「だな。俺はのぺちゃんと一緒だったから余計にな」

「またのぺちゃんと来たいと思ったよ」

のっぺら嬢「…」ズキン…




のっぺら嬢「はい」


―――
――

153 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:29:35 AJwOKkFY 129/185


―別の日―


のっぺら嬢「うぅぐ…ひっぐ…」

のっぺら嬢「あ゛あ゛ぅっあぁぁああ」ポロポロ

のっぺら嬢「あぁぁああっ」ポロポロポロポロ

のっぺら嬢「はぅっぐ…えぐっ…」

「あんまり泣くと鼻が取れるぞ?」

のっぺら嬢「だっでぇえ…」

「確かにいい映画だったけどさ…」

のっぺら嬢「まざが…ひっぐ…」

154 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:30:33 AJwOKkFY 130/185



のっぺら嬢「ヒロインのアレがアレで、まさか親友がアレでアレだったなんてぇ…」

のっぺら嬢「おまけに親友の恋人まで…」


のっぺら嬢「切な過ぎますよぉぉうぅ」



「ほれハンカチ」



のっぺら嬢「ずびばぜん…」

のっぺら嬢「ぐしっ…」



のっぺら嬢「映画って、ホントにいいものですね」

155 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:31:57 AJwOKkFY 131/185



「映画館で観ると特にな」

「まあ、のぺちゃんがここまで号泣するとは思わなかったけど」

のっぺら嬢「あ、あんまり言わないでくださいよぅ…////」

「ははっ、悪い悪い」

「まだまだ話題作はあるから」




「また、見に来よう」



のっぺら嬢「…はい」

ズキン…

 

156 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:32:59 AJwOKkFY 132/185


―また別の日―


のっぺら嬢「はわ~、ジンベエザメおっきいですねぇ」

のっぺら嬢「やっぱり生で見ると違いますね!」

「そりゃパソコンの画面とは迫力も存在感も違うさ」

のっぺら嬢「イワシの群れも綺麗です」

のっぺら嬢「えーっと、次は…」

「あっ」

157 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:33:48 AJwOKkFY 133/185


「急がないとイルカショー始まるぞ!」

のっぺら嬢「わ、もうそんな時間ですかっ!?」

「ショーが終わってから、またゆっくり廻ろう」

「はい」


スッ

のっぺら嬢「え?」

「え、って…手だよ手」

のっぺら嬢「…はい////」スッ

158 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:34:49 AJwOKkFY 134/185




キュ

「はぐれるといろいろ面倒だろ?」

のっぺら嬢「ですね」

「俺となら、昼間の世界を満喫できるだろ?」ニシシ

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「はい」ニコ…

ズキン…ズキン…




―――
――

159 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:35:44 AJwOKkFY 135/185





――
―――

テレビ「今夜は例年よりぐっと気温が下がり、地域によっては雪がちらつくかもしれません」

テレビ「一転、明日明後日の週末は全国的に晴れ。傘の心配はありません」

テレビ「お日様が出て、日中はポカポカ陽気。絶好の行楽日和となるでしょう」

テレビ「以上、週末のお天気でした」

テレビ「続いては…」




「ふんふ~ん♪」

「のぺちゃん、明日はどこに行きたい?」

のっぺら嬢「…」

160 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:36:44 AJwOKkFY 136/185


「せっかく晴れなんだし、外でぶらぶらしようか?」

のっぺら嬢「…」

「それとも…」

のっぺら嬢「男さん」

「お?行きたいとこ決まった?」

のっぺら嬢「違います」

「あれ…ふ、雰囲気…いつもと違うんじゃないか?」

「…何かあった?」

のっぺら嬢「…」

「あ、もしかしてここ最近、出かけっぱなしだから、たまには家でゆっくりしたいとか?」

161 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:37:38 AJwOKkFY 137/185




のっぺら嬢「トラ…男さんになついてくれましたね」

「あ、ああ。今も俺の膝の上で丸くなってるよ」

トラ「にゃあ」

のっぺら嬢「ひっかかれる事も無くなりましたね」

「たまにあるよ」

「トラの機嫌が悪い時とかはな」


のっぺら嬢「でも、もう困るほど手を焼く事は無くなりましたね」

「そうだな。トラも大きくなって、身のこなしや風貌もすっかり『猫』って感じだな」

162 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:38:57 AJwOKkFY 138/185


のっぺら嬢「あんなに小さかったトラも大きくなりましたね…」

「…どうしたんだよ?さっきから」

「ほらっ!明日は休みだからさ?どこに行くか決めようよ、な?」



のっぺら嬢「…」フルフル



のっぺら嬢「もう…あなたとはどこにも行きません」

「は」

「え?」



のっぺら嬢「もう…」



 

163 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/09 01:40:25 AJwOKkFY 139/185








のっぺら嬢「もうあなたとは一緒に居られません」







 

168 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:49:26 I8v53mRw 140/185



「ちょっ…え?何言って…?」

「え?え?妖怪界隈でなんかマズイことになった?」

のっぺら嬢「…」フルフル


のっぺら嬢「違います。私の…意思です」



「…意味がわからん」

「俺…なんか悪い事した?」

「思い当たる節はないんだけど…」



のっぺら嬢「いえ、男さんは悪くありません」

169 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:50:16 I8v53mRw 141/185


のっぺら嬢「元々、男さんとトラの仲を良くするお手伝いだけの約束でした」

「確かに仲良くはなったけど」ナデナデ

トラ「にゃーにゃー」

「それがのぺちゃんがここに居ちゃダメな理由にはならないだろ!?」

のっぺら嬢「いいえ…」

のっぺら嬢「男さんにはいくら感謝しても足りないくらい…良くして頂きました」




「あ、ああ、そりゃどうも////」ポリポリ



「…じゃなくて!」

170 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:51:34 I8v53mRw 142/185


「だったらなんで俺といられないなんて…!」




のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「…私です」

「はい?」

のっぺら嬢「…悪いのは私ですっ!」

のっぺら嬢「あなたが…優しいから…その優しさに甘えて、あなたを頼ってしまいました…!」

「俺はそれで構わないよ!」


のっぺら嬢「私は…のっぺらぼうで妖怪です」

171 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:54:07 I8v53mRw 143/185


「何を今更…そんなのわかってるよ?」



のっぺら嬢「ううっ、く…」

ポロポロ…

のっぺら嬢「ひぐっ、わかっていたのにっ…!」ポロポロ

のっぺら嬢「望んでは…うぅっ…いけなかったのにっ…!!」

ポロポロ


「の、のぺちゃん…?」

172 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:55:22 I8v53mRw 144/185


のっぺら嬢「えぐっ、でも…全部私が…私が悪いんです!」

のっぺら嬢「あなたの優しさは…一生忘れません」

ガタッ

のっぺら嬢「さようなら」ダダッ

「おいっ!?ちょっと待っ…」

「くそっ!いきなり何なんだよっ!」ガバッ


トラ「う゛に゛ゃっ!?」ボテン

「ああっ!ごめんっトラっ!」

トラ「うにぃ」

「お前の大切な人を追うから、今はごめんな」

ダダッ

トラ「にぃ」

173 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:56:19 I8v53mRw 145/185


――

ダダダダッ…

ガシッ!

「うおらぁっ!捕まえたぁっ!」

のっぺら嬢「離してっ!離してください!」グイグイッ

「離すもんかっ!」グッ

「いきなり自分が悪いとか言い出してワケわかんないしっ…」

「こっちが納得できないまま、俺の前から去ろうとするなんて」

「見過ごせるワケないだろ!?」

のっぺら嬢「ですから!男さんの問題ではないんです!」

のっぺら嬢「全部私が…悪いんですっ!」

「だからっ!それがわかんないんだって!」

174 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:57:11 I8v53mRw 146/185


のっぺら嬢「私は…私はっ」

のっぺら嬢「あなたの優しさに触れて」



のっぺら嬢「あなたに惹かれてしまった」



のっぺら嬢「あなたと居るのが心地よくて」


のっぺら嬢「あなたと共に居たいと願ってしまった…!」



「のぺちゃん…」

175 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:59:09 I8v53mRw 147/185



のっぺら嬢「だから」

のっぺら嬢「これ以上一緒に居たら」



のっぺら嬢「私のせいで…本当にあなたを縛りつけてしまいます!」



のっぺら嬢「私は…妖怪なのにっ…!」

のっぺら嬢「男さんは人間なのにっ…!」


のっぺら嬢「妖怪の私は」

のっぺら嬢「ケガもなければ、病気もありません」

のっぺら嬢「寿命も…人間のそれとは比べものならない、永遠に近いような長さです」

176 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 19:59:52 I8v53mRw 148/185



のっぺら嬢「どれだけあなたが好きでも」



のっぺら嬢「所詮は…妖怪」

のっぺら嬢「生きる世界も、時間も違うんです」

のっぺら嬢「だから…」





「だから?」

のっぺら嬢「だから…」

「だから…何なんだよっ!」

のっぺら嬢「えっ?」

177 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 20:01:50 I8v53mRw 149/185


「初めてのぺちゃんに会った時は、そりゃびっくりしたさ!」

「でもっ!」

「その時、トラの事で必死になってたのはのぺちゃんだ!」

「紛れもないのぺちゃんの優しさだろ!?」

「俺が仕事でへこんだり、疲れて帰った時」

「いつも癒してくれたのはのぺちゃんだ!」


のっぺら嬢「お、男さん…」


「のぺちゃんが俺を縛りつける?」

「それが俺の前から去る理由?」

178 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 20:02:21 I8v53mRw 150/185





「だったらっ…!」





「俺が望んで、縛られてやる!」





のっぺら嬢「えっ!?」




 

179 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 20:06:03 I8v53mRw 151/185


のっぺら嬢「あ、あの!?」

のっぺら嬢「え?えっ!?」


「惹かれてたのが、のぺちゃんだけだと思うなよ?」

のっぺら嬢「ひょっ!?」



「確かに、延々とコソコソしなきゃならなくなるかもしれない」

「確かに、普通の恋愛なら苦労しないことも苦労するかもしれない」



「なら、俺がその苦労ごと、全部縛られてやるっ!!」

ガバッギュギュー

 

180 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 20:07:21 I8v53mRw 152/185


のっぺら嬢「きゃうっ」


のっぺら嬢「い、いやっ…離して…ください」

「抵抗が弱々しいな」

のっぺら嬢「うっ…////」

「そりゃ顔が無いなんて恋人なんて普通の恋愛じゃないよな」

のっぺら嬢「…全くです」

「家族に紹介…できないな」

のっぺら嬢「わかっててどうして…」



「そんなこと以上に、のぺちゃんの内側に惹かれたんだよ」ギュ

のっぺら嬢「そんなことって…」

181 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 20:08:08 I8v53mRw 153/185


「のぺちゃんの為ならなんてことないさ」


のっぺら嬢「でも私は…うぅっ…」ポロ

のっぺら嬢「私のために…私の、せいで男さんが苦労するのは、ひぐっ」ポロポロ

のっぺら嬢「見たく、あ、ありません…」ポロポロ

「だからって、俺から離れるなんて嫌だな」


のっぺら嬢「ぐすっ…怖いんです」

のっぺら嬢「私のせいで男さんが不幸になると思うと…」

「なんで不幸になる前提なんだ?」

のっぺら嬢「だって…」

182 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 20:08:52 I8v53mRw 154/185



「苦労は必ずしも不幸じゃないんじゃないかな?」

「その中でも、幸せに感じれることなんていくらでもある」

「必ず、な」


のっぺら嬢「ぐすん」

のっぺら嬢「断言、しちゃうんですね」

「ああ」


のっぺら嬢「敵いませんね、男さんには。ふふふ」

185 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:06:31 I8v53mRw 155/185


「やっと笑った」

「今日一日なんかピリピリしてたからな」

「こういうことだったのか…」

のっぺら嬢「よく見てくれてるんですね」


「好きだからな。のぺちゃんの事が」

のっぺら嬢「男さん…////」




のっぺら嬢「一つだけ…約束してください」

「ん?」

186 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:09:04 I8v53mRw 156/185


のっぺら嬢「今は…好きだと言ってくれています」

のっぺら嬢「でも、私と一緒に居るのが辛くなったなら」

のっぺら嬢「すぐに言ってくだ… 男「言うもんか!」

「のぺちゃんが俺の事を嫌いにならない限り、そんなこと言うもんかっ!」

のっぺら嬢「…」ポカーン

のっぺら嬢「ふぅ、あーあ…」

のっぺら嬢「もう、諦めます。ふふふっ」

のっぺら嬢「諦めて男さんに甘えます」

のっぺら嬢「…いいんですよね?」



「任せろ!」フン!

187 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:10:04 I8v53mRw 157/185




のっぺら嬢「じゃあ…ですね////」


「ん?どした?」



のっぺら嬢「キス」

「にぇぃ!?」

のっぺら嬢「キスしてください////」

「い、いきなりそんなっ…!」

のっぺら嬢「試すみたいで申し訳ありませんが」


 

188 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:10:50 I8v53mRw 158/185


のっぺら嬢「私に自信を」



のっぺら嬢「男さんを愛してもいいという自信を



のっぺら嬢「私にください」


「お、おう////」ゴク



のっぺら嬢「私は…いつでも大丈夫です」

「ああ…」スッ

のっぺら嬢「…」プルプル…

189 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:17:30 I8v53mRw 159/185


(震えてる…)

(…のぺちゃんはずっと葛藤していたんだ)

(俺が少しでも安心させてやれるなら…!!)スス…



チュ

「…」

「…どうっすか?////」

のっぺら嬢「…大好きです、男さん////」

ドクン…

「俺もだ////」

のっぺら嬢「えへへ////」ドクン…

190 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:18:44 I8v53mRw 160/185


ドクン

のっぺら嬢「?」ドクン

のっぺら嬢「!?」ドクン!

のっぺら嬢「あ…う…!!!」ドクン!

「?」

のっぺら嬢「ううっ…」ドクンドクン!

「ど、どうした!?大丈夫か!?」



のっぺら嬢「あ、あ、あ…」ドクンドクンドクン!

191 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:19:42 I8v53mRw 161/185





のっぺら嬢「呪いが…」



のっぺら嬢「解けるっ!!!」




ピッカアアアアァァァァァァァァァァ!!!

「なわっ!!?」





 

192 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:20:31 I8v53mRw 162/185


「…」

「…のぺちゃん?」


のっぺら嬢「はい」


「なんだ…今の光は…」





のっぺら嬢「誰かに愛されること」



のっぺら嬢「それが解呪の条件でした」


「え?何、言って…」チラリ

193 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:23:08 I8v53mRw 163/185



美女「…」


「?」

美女「…」

「??」

美女「…」

(…すっげー美人さんが目の前、のぺちゃんがいた場所にいます)

美女「…」

194 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:24:29 I8v53mRw 164/185



(おお…綺麗な、はっきりとした大きな瞳(め)…。吸い込まれそうだ…)

美女「…」

(鼻もすらっと適度に高く整った形…)

美女「…」

(口も…、いや、口は何度も見た)

(笑うとそれだけで感情が見てとれるほど存在感のあるその口は…)

「まさか」

「のぺちゃん!?」



のっぺら嬢「…はい」

のっぺら嬢「たった今、呪いは解かれ」

のっぺら嬢「私は本来の姿…いや、顔を取り戻しました」

195 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:29:13 I8v53mRw 165/185


「本来の顔を…って」

「えーと…」

「マジか…」

のっぺら嬢「もう、どれくらいのっぺらぼうであったかわからないほど」

のっぺら嬢「長い時間が流れました」




「その…、呪いって…誰かにかけられたのか?」



のっぺら嬢「はい」

のっぺら嬢「当時、とても仲が良かった友達がいました」

のっぺら嬢「明るくて活発で、何かと物事の中心になるような…」

のっぺら嬢「そんな人でした」

196 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:30:38 I8v53mRw 166/185




のっぺら嬢「ただ、いつからか私は恨まれていたようです」


のっぺら嬢「彼女は私に呪いをかけました」


のっぺら嬢「顔が無くなる呪い」

のっぺら嬢「解く方法は、のっぺらぼうの姿のままで誰かに愛されること」

のっぺら嬢「ただ、同情で愛されない為にそれまでの記憶も封印されます」

のっぺら嬢「もちろん、解呪の方法も…」


(そうか、だから料理の話の時、あんなに苦しんだのか…)


のっぺら嬢「見た目に惑わされず、純粋に心だけで愛されること」

のっぺら嬢「そんな呪いでした」

197 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:34:02 I8v53mRw 167/185




「ひどい目に遭わされたんだな…」


のっぺら嬢「いえ」フルフル

のっぺら嬢「記憶が戻った今も、私は彼女を恨んではいません」

のっぺら嬢「正直、裏切られた悲しみはありましたが、彼女は私に対して憧れを抱いてくれていたんです」


のっぺら嬢「私も彼女に対して、憧れや嫉妬を抱いたことがあります」



のっぺら嬢「彼女は…道を外れてしまっただけです…」

198 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:36:04 I8v53mRw 168/185


のっぺら嬢「それと、あとになって聞いたことですが」

のっぺら嬢「彼女は、私に呪いをかけたことを後悔し」

のっぺら嬢「死ぬまで自責の念に駆られて、苦しんだそうです」

のっぺら嬢「のっぺらぼうになった私にはよくわからない話でしたが…」

のっぺら嬢「今、わかりました」

のっぺら嬢「私はいろいろな物を失いましたが」

のっぺら嬢「彼女が本当は、優しい人なのだとわかっただけで、救われます」



「…のぺちゃんらしいな」

199 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:37:30 I8v53mRw 169/185




のっぺら嬢「さて、男さん」


「は、はいよっ!?」ビクッ


のっぺら嬢「こうして呪いが解けた今」

のっぺら嬢「私はのっぺらぼうではなくなりました」



「う、うん…」

のっぺら嬢「ですが、のっぺらぼうであった時の記憶が無くなったワケではありません」

200 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:39:52 I8v53mRw 170/185





のっぺら嬢「こんな顔ですが…」





のっぺら嬢「改めて、私を受け入れてくれますか?」



 

201 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:41:18 I8v53mRw 171/185


「…アホぅ」


のっぺら嬢「へっ!?」


「まあ、確かに美人だ」

のっぺら嬢「ま////」ポッ


「でも違うだろ?」


「解呪の方法のとおり」



「のぺちゃんの心に惹かれたんだ」



「何も変わらないよな?」

202 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:43:16 I8v53mRw 172/185



のっぺら嬢「うく…」ポロ

のっぺら嬢「ひっく…はい!」ポロポロ

「のぺちゃん…」

「あ」

のっぺら嬢「ひっく、どうしたんですか?」

「呪われる前の記憶が戻ったってことは、名前も…」

のっぺら嬢「いいんです」


のっぺら嬢「男さんを好きになったのはのっぺらぼうであった私ですから」





のっぺら嬢「私は男さんに愛されているのっぺら嬢、です!」ニコッ!

203 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:46:30 I8v53mRw 173/185




「のぺちゃん!」

のっぺら嬢「男さん!」


ダキッ


のっぺら嬢「好きです。今までもこれからも」

「ああ。俺もだ」

ギュウ…

204 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:48:15 I8v53mRw 174/185




ハラリ

のっぺら嬢「…雪、ですね」

ハラリハラリ

「天気予報で降るかもって言ってたな」

ハラリハラリ

「冷えそうだな…」

のっぺら嬢「…////」ギュ

「ん?」

のっぺら嬢「わ、私は…男さんとこうして抱き合っていると」


のっぺら嬢「冷えるなんて、全く思いませんよ?////」

205 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 21:53:03 I8v53mRw 175/185



「おぅ…照れるな////」

のっぺら嬢「ふふふ////」

のっぺら嬢「やっと自信が持てました」



のっぺら嬢「ずっと…一緒に居ましょうね、男さん////」


「うん!もちろんだ!」



チュ


ハラリハラリ…



―――
――

208 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:28:35 I8v53mRw 176/185






テレビ「予報どおり、お昼を過ぎてから益々暖かくなってきました」

テレビ「見てくださーい!この緑地公園にも沢山の家族連れが訪れています」

テレビ「現在、緑地公園内でイベントが催されておりまして………」






「…のぺちゃん」

のっぺら嬢「…はい。なんでしょう?」






 

209 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:31:14 I8v53mRw 177/185


「風邪、大丈夫?」

のっぺら嬢「もう何年…いや、何十年…もっとかもしれません…」




のっぺら嬢「久しぶりの風邪…、つらいです」

「まあ、ゆっくりしなよ」

のっぺら嬢「男さん…」






 

210 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:32:13 I8v53mRw 178/185


のっぺら嬢「男さんこそ、風邪…大丈夫ですか?」

「体の節々が痛い…」

のっぺら嬢「あー…はあ…」





のっぺら嬢「へっくしゅん!」



 

211 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:33:14 I8v53mRw 179/185


「うう…寒い」ブルッ

のっぺら嬢「トラぁ…あったかいねぇ」ヌクヌク

トラ「にゃん」

「トラ、こっちにも来てくれよ」




トラ「…」チラ

トラ「…」プイッ




「あ、ひでぇ」

のっぺら嬢「ふふふっ」クスクス

212 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:34:16 I8v53mRw 180/185


「ああ…せっかくのぺちゃんの呪いも解けて、さあこれからって時に…」


「二人同時に風邪を引くなんて…」




「昨日、外に居すぎたかな…」

のっぺら嬢「ですね…」

「のぺちゃん、抱きついたまま離してくんなかったんだもんなぁ」

のっぺら嬢「い、言わないでくださいよぅ////」カアァァ

213 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:35:04 I8v53mRw 181/185


「そろそろって言ったら」


「もう少し、このまま」

「ってさ」

のっぺら嬢「はうぅ…////」カアァァッ



「まあ、たまには家でゆっくりもいいかもしれないな」


のっぺら嬢「そうですね」

のっぺら嬢「これからはもっといろんなところに連れて行ってくださいね」



のっぺら嬢「…男…君////」

215 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:38:58 I8v53mRw 182/185


「…え?」

のっぺら嬢「もう正式な恋人同士なんだし、いつまでも他人行儀じゃアレかなって…」

「お、お…おお!なんか新鮮だ!」

「もう一回!もう一回!!」


のっぺら嬢「ええ~…////」

のっぺら嬢「はずかしいよ…////」

216 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:40:13 I8v53mRw 183/185



「わぁお!敬語じゃないのもこらまた新鮮だ!」

「もう一回!ハイっもう一回!!ハイっ!」


のっぺら嬢「ふふ仕方ないなぁ」



のっぺら嬢「風邪が治ったら、またどこか出かけようね?男君っ!」


「おうっ!」

217 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:41:11 I8v53mRw 184/185








のっぺら嬢「…ずっと一緒だよ、男君!」







おわり

218 : ◆loxSgAubwY - 2014/09/10 22:42:02 I8v53mRw 185/185

気長にお待ち頂き最後まで読んで下さり、ありがとうございました

今まで書いたSSより長かったため、ややまとまりがなかったかもしれません

それでも少しでも楽しんで頂けたなら幸いです

また投下した際には、是非ともよろしくお願いいたします

改めてありがとうございました

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