妹「よいしょ、よいしょ」ズリズリ
兄(あいつなんでノコギリなんて持ってんだろ)
兄「何作ってんだ?」
妹「えっとねー」ゴソゴソ
妹「『このゲームは、命を大切にしない人達に反省してもらうためのものです!あくようしちゃだめだよ!じーじより』……だって!」
兄「へー……随分重そうだけど、手伝おうか?」
妹「いい!私一人でやる」
兄「でも危ないぞ」
妹「頑張るもん!一年前じーじからここの装置は任せたよって言われたんだから!」ズリズリ
元スレ
妹「ゲームをしよう!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1354203627/
兄「……じゃあ、せめて見学していいか?」
妹「見学?……それって私が作ったげーむ、みたいってこと?」
兄「そういう事」
妹「……」モジモジ
兄「?」
妹「……しょーがないなー。おにいちゃんだけ特別だよ?ホントはだれにも見せちゃだめなんだからね?」ニヘラ
兄(誰かに見せたくてしょうがないんだな)
妹「誰にも言っちゃだめだよ?写真もだめだからね?」
兄「おう。一度した約束は守るぜ!」
妹「なら、いいよっ!……えへへ」
妹「ではでは、まずはこちらの部屋でーす!」バンッ
兄「風呂場?」
妹「そうだよ!まずここに私が死体役になって寝ころぶの!それでね!二人の人を鎖でつないで、あっ部屋の両端にだよ?」
妹「バスタブからお水が抜けるからそれで鍵が落ちるようにしておいてね、錆びたノコギリ置いてね、足をぎこぎこ出来たら出してあげるよっていうのとね」
妹「もう一つの人のところには銃を置いておいて、これで相手をばんってしたら出ていいですよっていう二つの事をやるの!」
兄「いやいやいやいやちょっと待ってくれまるで理解が追いつかない」
妹「どこが?」キョトン
兄「まずこの部屋は何をする部屋なんだ?」
妹「『げーむ』ってじーじは言ってた!」
兄「ゲーム、ねぇ。具体的には?」
~~妹説明中~~
兄「ふーん……悪人への回りくどい制裁みたいなもんか。風変わりな事考えてんだなウチのじーちゃんは」
兄(どうせ妄想の中のお遊びみたいなもんだろうけど)
妹「『あらゆるものを犠牲にしてでも生きる気があるのかねふっふっふっ』」
妹「むっ……わ、私が可愛い必要はないの!私はゲームの支配人!怖いんだからー!」バタバタ
兄(それにしても力入ってるなぁ……ん?)
兄「なぁ」
妹「なに?」
兄「この部屋はこれで完成なのか?」
妹「そうだよ?」
兄「じゃあなんでこんなに薄汚いんだ?ゲームするなら衛生面でもフェアじゃないとダメだろ」
妹「き、汚くないと怖くないってじーじが」
兄「……」ジー
妹「……」ダラダラ
兄「正直に言え。掃除サボったろ」
妹「サボってないもん。じーじのにそう書いてあったんだもん」プイッ
兄「そうか……よし妹。ゲームをしよう」ニタァ
妹「!?」ビクッ
兄「なぁに簡単だよ。これ何か分かるか?」
妹「あっ……かみらばんしょーグミだ!」キラキラ
兄「そう。皆大好き甘々ナイスなかみらばんしょーグミオレンジ味だ」
妹「ちょーだい!ちょーだい!」ピョンピョン
兄「まぁそう焦るな、正直な妹にはちゃんとやるよ」
妹「……」
兄「ルールを説明するぞ。今から俺が一つ質問する。それに正直に答えられたらグミをやる。答えなかったらあげない。タイムリミットになってもあげない」
兄「そして、お前が本当の事を言ったとしても『サボっている』と判明した場合じーじの代わりにゲンコツだ」
妹「う、嘘かホントかはどうやって判断するの?」
兄「俺が判断する。ちなみに、基本的にはお前を全面的に信じるスタンスだ」
妹(じ、じーじの持ってるのは私だし、バレなければ)
兄「ただし!」
妹「!」
兄「お前が持ってるそれな、実は俺さっきチラッと見たんだよ。……これが嘘かホントかはお前が判断しろ」
兄「じゃ、ゲームスタート。10、9、8、7」
妹「わっ、わっ、わっ」
兄「6、5」
妹(見えてるはずない!私がしっかり持ってたんだもん!)
妹(で、でも……もし見えてたら……グミも貰えないし、げんこつ……)
兄「よーん、さーん、にーい」
妹(ど、どうしようどうしようどうしよう!)アワワワ
兄「いーち」ニタァ
妹「ご、ごめんなさいっ!」バッ
兄「んー?何がごめんなさいなのかね?」
妹「サボりましたっ!ちょっとくらい汚くてもいいかな、って思ってサボりましたっ!」
兄「……よし。正直者にはグミをあげよう」ナデナデ
妹「やったー!」バリッ
兄「美味いか?」
妹「おいひぃ」モグモグ
兄「そうかそうか……じゃ、これはサボりのぶんな」ゴチッ
妹「いひゃい!」ジーン
兄「いつじーちゃんからここの管理を任されたのか知らんが、一人でやるって言ったんだろ?」
妹「うん……」グスッ
兄「ならちゃんとやらなきゃ駄目だろ」
妹「はい……ごめんなさい」
兄「……よし。じゃあグミの残りも全部食っていいぞ」
妹「わーい!」モグモグ
兄(単純な奴……)
妹「おいしかった!」
兄「そりゃ何よりだ」
妹「それじゃあ次はねー……」
兄「なぁ妹」
妹「なーに?」
兄「楽しいか?」
妹「うんっ!じーじが考えたの全部すごい!」ニパッ
兄「……そうか。ならいいんだ」
妹「実はここのテレビも近づいたら『きるゆー』って出るんだよ!」
兄「それは言っちゃっていいのか……?」
妹「分かんない!」ニコッ
兄「お、おう……」
~~案内中~~
妹「これでぜんぶおわりっ!」
兄「いやービックリした。どこにこんな敷地があったんだ?」
妹「じーじって結構お金持ってるだよ。秘密だよって言ってたけど」
兄「へぇー……」
兄(その割に人を雇おうとしないのは……いや、まさかな)
兄「それじゃあ俺は帰るけど、じーちゃんの道楽に付き合うのもほどほどにしとけよ?」
妹「も、もう帰っちゃうの?……と、特別にもうちょっと見て行ってもいいんだよ?」グイグイ
兄「無理言うなって。明日も仕事なんだから」
妹「お兄ちゃん、おかしいよ。周りの人、みんなお兄ちゃんまだこどもなのにって言ってるよ?」
兄「妹。それは言わないって約束だろ?」
妹「……ごめんなさい」
兄「いいんだ。お前はしっかり勉強しろ。学校が無くても、勉強は出来るから。俺みたいになるなよ」
妹「うん……ばいばい……」
兄「ああ。またな」
~~2か月後
兄(久しぶりだな、ここに来るのも)
妹「……」ズリズリ
兄(まーだノコギリ引きずってら。飽きないなぁじーちゃんもアイツも)
兄「妹ー、元気にしてたかー?」
妹「……」ズリズリ
兄「おい、どうした?」
妹「……おにいちゃん?おにいちゃあん!」ガバッ
兄「うわっ!?」
妹「じーじが、じーじがぁ……」
兄「……じーちゃんが、どうした」
妹「じーじが、死んじゃったよぉ……」ポロポロ
兄「そうか……」
妹「うぇ、うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
兄「いつ、死んだんだ?」
妹「二週間前……」
兄「それから、お前一人で暮らしてたのか」
妹「……」コク
兄「ごめん、気づいてやれなくて。……辛かったな」ギュッ
兄「一緒に暮らそう。大家さんに頼めば一人くらい」
妹「嫌っ!」
兄「妹……」
妹「お兄ちゃんの働いてるところに余裕なんかないの、知ってるもん。それに……」
妹「じーじが作りたかったもの、まだ全部出来てないんだもん……」グスッ
兄「お前そんな事言ったって、生きていくには食べなきゃいけないんだぞ?」
妹「缶詰があるもん!じーじがくれたお小遣い使えば色々売ってくれる人もいるもん!」
兄「……」
妹「お兄ちゃん、お願い。私、じーじの作りたかったもの、じーじのやりたかったこと、やってあげたいの」
兄「……分かった。ただし、ヤバくなったらいつでもこっちに来い。いいな?」
妹「うん。私、頑張るよ!」
兄「ああ。……程々にな」
妹「お兄ちゃん、新しくできた部屋見て行って!」
兄「ほうほう。ちゃんと掃除は出来てるんだろうな?」
妹「もちろん!」
~~見学終了~~
妹「今度の装置はねー、私のアイデアもちょっと入ってるんだよ」
兄(妹が楽しんでるなら、それが一番かな……)
妹「お兄ちゃん?聞いてる?」
兄「ああ。聞いてるよ」
妹「あごをばかーーーん!!!ってするしょーげきの装置もあるのです!」
兄「そうかそうか、あごばかーんか」
妹「これをね、こう着けて」
兄「いや見せなくていい実演しなくてもいい本気で心臓に悪いから」ハラハラ
兄「それじゃ、手紙だけは欠かすなよ」
妹「うん!お兄ちゃんも元気でねー!ばいばーい!」フリフリ
~~数か月後
闇ブローカー「……お嬢ちゃん」
妹「っ!?お、お金ならありませんっ!」
闇ブローカー「いや、そういう話じゃない。これを作ったのは君か?」
妹「そ、そうですけど」
闇ブローカー「素晴らしい才能だ。もっと大掛かりな物を作ってみないか?」
妹「でもお金ないし……」
闇ブローカー「なぁに金はこちらで工面させてもらうよ。……とりあえず、前金だけでも。このくらいでどうかな」
妹「こ、こんなに!?」
闇ブローカー「君の作った装置にはその投資をするだけの需要がある……我々からの要求はひとつ。これからもよりよい物を作り続けてくれればいい」
妹「は、はいっ!頑張りますっ!」
闇ブローカー「それでは取引成立だな……クックック」
妹(これだけあれば、お兄ちゃんと一緒に暮らせる!ううん、かみらばんしょーグミの100箱買いだって……!)
妹(この家だってリフォーム出来る!お兄ちゃん、私頑張るからね!)グッ
~~3年後
兄(ここ数年は仕事が忙しくって全然帰れなかった)
兄(それでも手紙を無事の便りに暮らしていたが、ついにその手紙さえ来なくなった)
兄(最後の手紙には乱れた字で『たくましく暮らしてるから心配しなくていい』って書いてあったけど、やっぱり心配だ)
兄(やっとのことで休暇をとって来てみたが……)
兄「この家、こんなに大きかったっけ……?」
妹「……」ガッチャガッチャ
兄「あ、おーい妹ー!」
妹「兄さん?来ちゃったの!?」
兄「来ちゃったの!?って……お前が手紙よこさないから心配になって来たんだろうが」
妹「あー……忘れてたわ」
兄(忘れてた?)
妹「まぁいいわ、先に家の中に入ってて。私これを組み上げてから行くから」ガッチャガッチャ
兄「あ、ああ」
~~妹宅
兄「おじゃましまーす」
兄(でけぇ……それに隅々までピカピカだ)
メイド「いらっしゃいませ」
兄「うおっ!?アンタもしかして」
メイド「はい。妹様にお仕えするメイドです」
兄「マジかよ……」
兄(アイツどこまで金持ちなんだ……宝くじでも当てたのか?)
~~応接室
メイド「どうぞ」カチャッ
妹「ありがと」
兄「ど、どうも」
メイド「それでは私はこれで」バタン
兄「……」
妹「……」
兄「随分と金持ちになったんだな」
妹「ま、色々あったのよ」
兄「具体的には?」
妹「……じーさんの作った装置あったでしょ?あれが悪趣味な金持ち連中にウケてね」
兄「あの、あごばかーんとかが!?」
妹「そうよ」
兄「うぇぇ」
妹「で、その中の何人かが私の装置のスポンサーになるって言いだして」
兄「その金で家のリフォームやらメイド雇ったりしたわけか」
妹「そゆこと。兄さんも一緒に暮らす?毎日好きな物食べられるわよ」
兄「いや、俺はいいよ。今の職場でやっと役に立てるようになってきたところだし」
妹「……ばか」ボソッ
兄「何か言ったか?」
妹「何でもないっ!」
兄「ま、アレだ。施設の案内とやらしてくれよ」
妹「えーめんどくさい。広いし」
兄「なんだよー、俺がこっち来た時の恒例みたいなもんだろー?」
妹「はぁ……分かったわ。じゃ、ついて来て」
妹「こっちのは凄いわよー。体中に鎖つけて、自分で引き千切れたら合格」
兄「で、脱出できるわけだ」
妹「と、思うでしょ?そうやって油断したところでこの部屋の入口についてるショットガンが起動!頭がぼかーんってなる寸法よ。どう?グロいでしょ?」ケラケラケラ
兄「待て、それじゃあどうやったら脱出出来るんだ」
妹「脱出?出来ないわよ?どちらにしろ死んじゃうの」
兄「なっ……!?」
妹「……次、こっちだから」ツカツカ
兄「……」
~~見学中
妹「以上で悪趣味な金持ちどもに大人気な新施設のご案内は終了よ。ご満足いただけたかしら?」
兄「……なぁ」
妹「何」
兄「楽しいか?」
妹「楽しくなくてもやらなきゃいけないのよ。これは食い扶持を稼ぐためのお仕事なの。家政婦の給料だって払わなきゃいけないし」
兄「……」
妹「何か文句があるの?」
兄「今、お前がやってる事は……じーさんが望んだ事なのか?」
妹「っ……!」ギリッ
兄「もう一度、考え直した方がいいんじゃないのか。じーさんが望んだ事」
兄「これじゃあ、ただの人殺しと変わらないじゃないか」
妹「そんなこと、言ってられないのよっ!」ドンッ
兄「!」
妹「兄さん私よりも長く生きてるくせに、そんなことも分かってないの!?」
妹「『お客様方』はねぇ!命の大切さなんてどうでもいいの!ただクズが無残に死んでいく姿が見れればそれでいいのよ!助け舟なんて出す必要ないの!」
妹「だからもっと苦しく、もっと痛々しく、もっとグロテスクに!そうした方がいっぱいお金もらえるもの!そうしなきゃもらえないもの!」
妹「それが悪い事なの!?割にあわないのよじーさんの時代遅れのやり方じゃ!いくら理想言ったって、生きていけなきゃしょうがないじゃない!」
兄「……」
妹「……ごめん。ちょっと、苛々してるみたい」
兄「いや、こっちこそごめんな。デリカシーのない言い方しちまった」
妹「……明日も仕事?」
兄「休日だよ」
妹「宿の手配とかは?」
兄「いーや。この辺何もないからな」
妹「な、なら、泊まっていけば?その……久しぶりだし」ボソッ
兄「お?さみし」
妹「べっ別に寂しかったとかそういう訳じゃないからねっ!」カァァ
兄「……寂しかったのは俺の方だよ。ありがとう。お言葉に甘えさせてもらう」
妹「そ、そう。ならいいけど……私はもう少しやる事があるから、先に家の中入ってて」
~~食堂
兄「随分広いんだな……」
メイド「お客様方をお迎えすることもありますから」
兄「普段は、一人なのか?」
メイド「はい」
兄「……」
メイド「こちらがお料理です。もう少しかかるので先に食べておいてくれとの事です」コトッ
兄「ありがとう」
兄(うお……精進料理か?これ)
兄「随分と健康に良さそうなものばっかりだが、妹はダイエットでもしてるのか」
メイド「いえ。単にお肉が嫌いなだけだと伺いました」
兄(肉が嫌い?アイツ肉は大好物だったはず……)
兄「まぁいいや。頂きます」
兄「他に変わったことは?」モグモグ
メイド「最近はあまりよく寝付けないご様子です」
兄「……」モグモグ
~~それからしばらく
兄(料理は美味かったし、風呂も広かった。今寝ころんでるこのベットも超フカフカ)
兄(言う事はない。ないんだが……なんだかなぁ)
ガチャッ
兄「!」
妹「……」モジ
兄「ど、どうした」
妹「ここ、私の部屋」カァァ
兄「えっ!?ご、ごめん!今すぐ出ていく!」アセアセ
兄(部屋間違えたかな……やっちまった!)ドキドキ
妹「出てかなくていいっ!そもそもここに呼んだの私だし……」
兄「へ?」
妹「えいっ!」ボフッ
兄「うわっ!急に飛び掛かってくるな!」
妹「っ……」ギュッ
兄「お前……」
妹「お願い……今だけ、こうさせて。こうしないと……」
妹「体が、震えて……暗くなると、いつもこうなるの」カチカチ
兄「……」ギュッ
妹「ごめんなさい。ありがとう……」
兄「眠れないのか」
妹「うん」
兄「肉、嫌いになったんだってな」
妹「うん……」
兄「辛い事、全部話してくれ」
妹「でも……」
兄「俺が一番つらいのは、お前がそんな悲しい顔する時なんだ。いい。全部吐き出せ。誰も見てないから。……誰も、怒ったりしないから」
妹「兄さん……」
兄「大丈夫だ。大丈夫だから……」ナデナデ
妹「お兄ちゃんっ!」ギュウッ
妹「う、ぇ、うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん……」ポロポロ
兄「……」ギュッ
妹「ずっと、ずっとっ、お金稼ぐためにっ、装置の事ばっかり考えてたらっ」
妹「肉片と悲鳴がずっと頭の中にこびりつくようになってっ」
妹「私の装置で死んだ人の声がっ、夜中に聞こえるようになってっ」
妹「お料理のお肉がっ、段々人の内臓に見えてきて、うえってなってっ、食べられなくなってっ」ポロポロ
兄「辛かったな、頑張ったな……」
妹「怖いの!ずっとずっと悪い人を裁いてないと、私が裁かれるってじーじが言うの!スポンサーもみんな早く新しい装置作れって脅すの!」
兄「……」
妹「怖い、怖いよぉ!いやだ、死にたくないの!」
兄「俺がここに居る。大丈夫だ」
妹「お兄ちゃんっ!お兄ちゃんっ!助けてよぉ、お兄ちゃん!」ギュウウッ
兄「……」
兄「……」
妹「怖い、怖い……」ポロポロ
兄「」ギュッ
妹「……こわ、い……」
妹「Zzz……」
兄(じーさんの装置、か……)
~~朝
妹「……ん」ゴシゴシ
妹(いつの間にか寝ちゃってたんだ……いつもより良く眠れた、かも)
妹「兄さん?」
妹(居ない……あれ、なんか紙が置いてある)
『至急物置まで来られたし』
妹「……?」
~~物置
妹「兄さん?ここに居るの?」
ガシャン
妹(閉じ込められた!?)
『よく来たね、妹……』
妹「!?」
『ゲームをしよう』
妹「はぁ……兄さん、悪ふざけもほどほどに」
兄「……」ブラーン
妹「なっ!?」
『私は君の兄を預かっている。遅行性の毒がまわっているからね、このままだと彼も死んでしまう。解毒剤は君が持っているはずだ』
妹(一体誰が……?この屋敷の事は誰も知らないはず)
妹「兄さんを降ろしてっ!」
『妹。君は崇高な目的を金を稼ぐための手段に堕としてしまった』
妹(録音か……!)
『そんなに君が金を求めると言うのなら、彼も見捨ててみるがいい』
『目の前のパネルに君の預金の全額を表示してある。パネルを操作して好きなだけ画面のはかりに乗せるんだ』
『ただし一度操作する度に釘が君の掌に突き刺さる、気をつけたまえ』
『乗せられた金の重さを測定し、それが私の指定した重量を上回っていれば彼を解放してやる。ただし、はかりに乗せた金は全て消去される』
『そうでなければ、彼は死ぬ。毒がまわりきるまでに決断できなかった場合も同様だ。ちなみにこの音声が流れてからおよそ1分でタイムリミット』
『さぁ、ゲームスタートだ』ブツッ
妹「そんな……」
妹(指定した重量って……どのくらい?)
妹(1千万?1億?10億?それとも……)
妹「くっ……」
妹(せっかくここまで頑張って来たのにっ、みすみすこんな奴に……これは、私が苦しんで苦しんで積み上げたものなのにっ)
『残り20秒』
兄「うっ……ぐはっ!」ベチャッ
妹「兄さんっ!」
妹(血を吐いてる……ホントに毒がまわってるんだ!)
妹「……このっ!」ピッ
ダンッ
妹「ぐぎいっ!」
『全額』
妹「こ、これでいいでしょ!兄さんを降ろして!」ダラダラ
『……OK。ゲームクリアだ』
兄「……うっ」ドサッ
妹「待ってて、今解毒剤を……!」プシュッ
兄「……」
妹「間に合った……」
『では次のゲーム』
妹「まだ何かあるのっ!?」
『君は、人の遺産とも言えるものでこれまで生きてきたようだが……』
妹「……っ」
『それでは君自身の人生を生きているとは言えない。選びたまえ。遺産か、新しい人生か』
『この物置と施設、それと君の家には複数の時限式爆弾を設置してある』
『爆破を止めたければ新品の釘だらけの道を歩いて『施設と家』か『物置』の爆破を止めるスイッチまで辿り着く事だ』
『タイムリミットが来てしまった場合は、三つとも爆破される。急いで押したまえ』
妹「そんなっ……!」
『では、ゲームスタート』
妹「っ……」
妹(人にするのと、自分でやるのって、こんなに違うんだ……)ガチガチ
『残り五分』
妹「うっ……」スッ
妹「このぉ!」ドスッ
妹「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
妹「う、うぅぅぅ」ドスッ
妹「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」ドスドスドスッ
妹「はぁ、はぁ……痛いよぉ……」ポロポロ
妹(これが、物置のスイッチ……もう、残りは間に合わないや)
『残り3秒』
妹「っ……このっ!」ドンッ
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!
『……おめでとう。ゲームクリアだ』
妹「……」ガクッ
兄「妹……」フラッ
妹「兄さん!大丈夫なの!?」
兄「ああ。……お前の家と施設、吹っ飛んじまったな」
妹「……私のせい。多分あのメイドの仕業だと思う。私が油断したりしなければ……あの家は……施設も……」
兄「いいんだ」ギュッ
妹「兄さん……」
兄「施設もデカい家もいらない。お前が生きてるなら、俺はそれだけでいい」
妹「でも、でも、私、人殺しの罪以外全部なくしちゃったよ……もう、生きていけないよ……この世界に、生きていく資格なくなっちゃったよ」
兄「……それは違う」
『過去をなくしても、未来をなくしても、生きていく事は出来る』
妹「!?」
『生きる資格とは……周りから生存を許されたものに与えられるものではない。自分を正当化して許せる人間に与えられるものでもない』
『どんな方向にであれ、歩んでいける人間が持つものだ。そこには資産も正しさも必要ない』
『かわいい私の妹……すまなかった。私は間違っていた。歪んでいた。それなのに、生きた証を残す事にやっきになってお前まで巻き込んでしまった』
『これからは自分の人生を生きてくれ。それが私の願いだ』
『愛しているよ……お前の人生に、幸多からん事を……』
妹「……」
妹「……あのね」
兄「うん?」
妹「このゲーム、すっごく簡単だった」
妹「お兄ちゃんを殺さないと死ぬとか、じーじならそういう事すると思う」
妹「だからこれは、じーじが作った奴じゃない」
兄「……それはどうかな」
妹「え?」
兄「じーさんもお前が可愛いあまり、いつものじーさんじゃいられなかったのかもしれないぞ?」
妹「……そ、そもそもじーさんはもう死んでる!じーさんのはずがないもん!」
兄「さぁて、そりゃどうかな。ありえない事を平気でしてのけるのがあのじーさんだろ?」
妹「……っ」
兄「じーさんはこうなる事を見越して、お前を巻き込んだことを悔いてたんだよ」
兄「だから自分への贖罪を込めて、自分の生きたあかしを全て爆破した……お前に自分自身の人生を生きてもらうために」
妹「そんなの勝手すぎるよ!」
兄「許してやれ。もう死んでる人なんだから」
妹「でも……」
兄「とにかく、そういう事にしとけ。じーさんだって、きっとそれを望んでるよ」ポンポン
妹「……」
兄「帰ろう。やりたい事が見つかるまで俺のアパートに泊まればいい」
妹「……うん」ギュッ
兄「ま、泊まるんならそれなりの事をしてもらうけどな」
妹「そ、それなりの事って」モジモジ
兄「炊事洗濯風呂掃除だな」
妹「……期待した私が馬鹿だった」ボソッ
兄「ん?まあいいか……まずは手と脚の治療だな」
妹「あ……いたたたたたたたたたたたっ!」ドクドク
兄「あー、痛みがぶりかえしてきたな?」
妹「くっそーじーじめ……最後の最期まで!」
兄「なぁに、ゆっくり歩いていけばいい。ゆっくり、な。ほら、肩貸すから」
妹「あいたたたたたたた……クソジジイー!あんたの遺産なんているもんかー!」
妹「私は自分の人生を生きてやるんだからー!括目してなさい!」
兄「よーしその意気だ!」
妹「あぅ」フラッ
兄「妹!?」
妹「なんだか眠いや、えへへ。お姫様だっこしてくれないと失血死しちゃうかも」
兄「妹ー!寝るなー寝たら死ぬぞー!超特急で病院まで送っていくから死ぬなー!」ダキッ
妹(お兄ちゃんの腕の中……あったかい……)
妹(じーじ。……私、生きるからね……自分の、人生を……)
『…………ゲーム、オーバー』
終わり!
82 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/11/30(金) 04:26:02.59 m7P3IiWE0 62/64おつ
本ネタ知らないけど面白かった
85 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/11/30(金) 06:25:51.66 mwzJuMzb0 63/64なんか元ネタがあるの?拷問装置つくるとか特殊な話すぎてよくわからん
86 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/11/30(金) 06:30:21.38 yawC0NEi0 64/64>>85
SAWっていう映画