横島「・・・」
おキヌ「どうしましょう・・・?」
途方に暮れる横島におキヌが声をかける
横島「お・・・俺が悪いんじゃない!こんなとこに置いとく美神さんがっ!」
目の前には破れて使い物にならなくなった1億円の破魔札があった
横島「殺される・・・」
おキヌ「ちゃんと事情を話せば分かってくれますよ!」
横島「そんなわけあるかー!!あの人は金の為なら鬼をも殺すお人やぞー!!!」
涙と鼻水を噴射させながら横島が悶絶する
元スレ
大神「彼が新しく帝国華撃団に入った横島忠夫君だ」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1267178492/
横島「・・・こうなったら・・・」
おキヌ「ど・・・どうするんですか?」
横島「1億を稼いで補完するしか・・・」
おキヌ「・・・どうやってそんな大金稼ぐんですか」
あきれ顔でおキヌが突っ込む
横島「お・・・俺だってもう一端のゴーストスイーパーだ!やってできんことはないさ!」
横島は泣きながら机の上にある依頼書の束をめくる
横島「・・・・・・お!これなら!!」
おキヌ「どれですか・・・って!これ3億の依頼じゃないですか!!」
横島「どうせやるならでかいに越したことはないわいっ!」
それから2時間後
横島の絶叫が廃ビルに響き渡った
横島「うぎゃぁぁあああ!!死ぬー!!死んでしまうーーー!!!!」
おキヌ「横島さん!後ろ!後ろー!!!」
必死で悪霊から逃げる横島に
おキヌは柱の影から声をかける
横島「くっそぅ!!!これなら・・・!!どうだ!!」
横島の手の中に文珠が浮かび上がり
そのまま『爆』と書かれた文珠を悪霊に投げつける
轟音と共に辺りが炎に包まれ、悪霊は四散した・・・・・・かに見えた
横島「やった!」
ガッツポーズをする横島の目の前で
四散した悪霊の身体はすぐさま元に戻る
横島「なんでじゃぁああ!!!来るなー!!!こっち来るなー!!!」
霊刀をブンブンと振り回しながら後退するも
すぐに壁に行く手を阻まれる
横島「こうなりゃヤケだ!!」
おキヌ「横島さんっ!落ち着いてください!」
横島はありったけの文珠を生成する
その全ての文珠には『雷』の文字が書かれていた
横島「これなら広範囲に散らばっても・・・」
言いながら文珠をまとめて投げつける。
だが命中する直前に悪霊の口から巨大な霊気の塊が吐き出された
横島「やばい!!!これじゃ近すぎる!!!」
横島と悪霊の間で文珠と霊気が触れ合い
一瞬にして辺りは爆音と閃光に包まれた
おキヌ「よ・・・横島さん!?」
濛々と砂煙が上がり、辺りは静寂に包まれていた
おキヌ「横島さん!返事してください!!」
だがおキヌの声に応える者は無かった
おキヌ「横島さん!!!」
砂煙が収まり、視界が晴れるが
そこには悪霊の姿も横島の姿も無かった
おキヌ「・・・み・・・美神さーーーーーん!!!!」
おキヌは泣きながら廃ビルを後にする
全てを話し美神令子の協力を得るために
しばらく後、廃ビルには美神とおキヌの姿があった
おキヌ「時間・・・移動・・・ですか」
美神「あんのバカ・・・」
霊視ゴーグルをかけた美神が頭を抱える
美神「しかも不完全な・・・ね」
美神「ゴーグルで空間に亀裂が見えるわ」
美神「時間だけじゃなく空間もズレてるかもしれない」
おキヌ「それって・・・」
ため息をつきながら美神が続ける
美神「全く違う世界、それこそ冥界や天界にまで移動した可能性があるって事よ」
おキヌ「そ・・・!そんなぁ!!!」
美神「まぁあいつの事だから『あー死ぬかと思った』とか言いながらヒョッコリ帰ってくるわよ」
おキヌ「そんな!」
美神「それより悪霊はいなくなったんだから3億はちゃんと貰わないとね!」
おキヌ「美神さんっ!!」
美神「さ、帰るわよ」
踵を返す美神を恨みがましい目でおキヌが見つめる
美神「・・・3億貰いに行くついでに・・・」
美神「カオスやピートにでも時間移動について相談でもしてみましょうか」
パァアアアとおキヌの表情が明るくなる
おキヌ「はいっ!!!」
____________
横島「あ゛ーーーーー!!!死ぬかと思った!!!」
プスプスと頭から煙を昇らせながら横島がひとりごちる
横島「しっかし・・・ここは・・・?」
キョロキョロと辺りを見回すと
そこは先ほどまでの廃ビルとはかけ離れた光景が広がっていた
横島「桜・・・?」
辺りは桜の咲き乱れる公園と思われる場所に変貌を遂げていた
そしてそこを行く人々の多くが着物を着ていた
横島「おぉう!!着物美人!!!」
横島「・・・じゃなく・・・なんじゃここはぁああああ!!!!」
横島「そうか!これはきっと夢!」
横島「無事に悪霊退治ができた俺に神様がくれたご褒美に違いない!」
横島「あのネーチャンもそのネーチャンも疲れた俺を癒してくれる夢の産物!!」
横島「ごめん!おキヌちゃん!美神さん!!しかし男には逃せないチャンスというものが!!!」
横島「そうと決まればさっそく!!!!」
やや暴走ぎみの横島はそのまま道行く女性たちに飛びかかった
横島「こんなにチチを露出した着物が夢以外にあってたまるかぁー!!!!」
欲望のままに一人の女性に突進する
すみれ「な!!なんですの!!!???」
横島が伸ばした両手はその女性に届く事はなく
かわりに横島の顔面に女性のコブシが突き刺さっていた
すみれ「なんですの!いくらワタクシのファンと言っても失礼でしてよ!!」
横島「・・・・・・痛い」
横島「ちくしょー!やっぱりこんな都合のいい夢なんかねーんだよー!!!」
すみれ「な・・・何なんですの!?」
オンオンと横島が号泣し、女性が戸惑う中
一人の男が駆け寄ってくる
大神「先に行くなんてひどいよ、すみれ君・・・・・・おや?この人は?」
すみれ「中尉!」
横島「うわー!!!しかも美人局だとぉおお!!!」
横島「殺るなら殺れやー!!一銭も持っとらんぞーーーーー!!!」
横島「ちくしょー!!こんな事なら揉みまくってやるんだったーーー!!!」
大の字になって寝転がる横島を
すみれと呼ばれた女性が呆れた眼差しで見つめる
すみれ「おかしな人に・・・絡まれてしまいまして・・・」
大神「そのようだね・・・」
男は額に汗を浮かべながら苦笑する
大神「君・・・変わった格好だが・・・どこから来たんだい?」
すみれ「中尉!そんな男放っておきなさいな!」
大神「まぁまぁ」
イライラした様子のすみれを宥めながら男は続ける
大神「俺は大神、大神一郎。君は?」
横島「・・・よ・・・横島忠夫」
大神と名乗る男の雰囲気に飲まれ、横島も素直に応える
横島「変わった格好って・・・アンタ達のほうがよっぽど・・・」
横島「あ!アレか!時代劇村とか!」
すみれの呆れた眼差しは、既に汚物を見る視線に変わっていた
すみれ「何を言ってますの?」
横島「うぐ・・・このアマ・・・!!どこかの呪術師と同じ匂いが・・・!!!」
すみれ「誰がこのアマですの!!!!」
大神「ふ・・・二人とも落ち着いてくれよ」
ふぅーと長い息を吐いて横島が大神に尋ねる
横島「時代劇村じゃないならここはどこなんですかね?」
大神「どこって・・・東京の銀座だよ」
横島「銀座!?・・・・・・そんなバカな・・・」
すみれ「バカは貴方でしょう」
横島「まさか・・・まさかとは思いますが・・・今って・・・何年でしょうか?」
すみれ「ほんとに大丈夫ですの?」
大神「今は1925年、大正14年だが・・・本当に大丈夫かい?」
横島の視界がグラリと傾く
横島「な・・・なんてこったー!!!!」
横島「一人で・・・時間移動・・・しちまったのか・・・俺が?」
横島「か・・・帰れるわけあるかーーーー!!!!!」
ぶしゃぁーと鼻水と涙が噴出する
すみれ「ちょ!汚いですわよ!こっち向かないでくださいませんことっ!!」
横島「文珠は・・・駄目だ・・・霊力切れだ」
横島「くそう・・・なんだって俺だけいっつもいっつも・・・」
大神「どういう事だい?時間・・・移動とか言ってたようだが」
すみれ「放っておきなさいな!どうせ少しおかしいんですわ」
横島「このアマは本当に・・・」
ピクピクとこめかみを痙攣させながら
横島が事情を簡単に説明する
すみれ「・・・」
大神「・・・」
横島「つーわけで・・・」
少しの間の後、口を開いたのはすみれだった
すみれ「貴方にそんな霊力があるようには思えませんことよ?」
横島「・・・?」
驚いたような表情の横島にすみれが狼狽する
すみれ「な・・・なんですの?その顔は」
横島「いや、こんな荒唐無稽な話一蹴されるもんかと・・・」
すみれ「嘘でしたの!?」
横島「違うっちゅーに!!」
横から大神がフォローを入れる
大神「俺達は少しだけそういう話に免疫があってね」
すみれ「それで何か証明できる物はありませんの?」
横島「何かといわれても・・・ポケットの中には小銭くらいしかないし・・・」
ジャラっと数枚の小銭を取り出す
大神「見たことのない貨幣だ・・・」
すみれ「昭和?」
横島「あぁ、今大正だっけ?その次の年号だよ」
大神「・・・」
すみれ「・・・」
大神とすみれは顔を見合わせる
横島「霊力がある事も証明できるといいんだけど・・・」
横島「今はスッカラカンだからなぁ・・・」
言いながら手に霊力を集中させてみる
横島「お、でもそのネーチャンのチチのおかげで少しは・・・」
すみれ「!!なんですって!!」
横島「いやいや!!こっちのこと!!!」
慌ててごまかす
そして少し回復した霊力を具現化させ、霊刀を作り出す
横島「できたできた、今はこんなもんしかできないけど」
軽い気持ちで見せた横島の霊刀は
二人に大きな衝撃を与えた
大神「まさか・・・」
すみれ「これで・・・こんなもんですって・・・?」
横島「え?」
大神が横島に説明する
大神「俺・・・いや俺達も多少霊力と呼ばれるものを持っている」
大神「だが俺達のそれと君の力は大きく差があるようだ・・・」
横島「どういう・・・事でしょう?」
大神「君はその何も無い手にその霊刀を生み出した」
大神「俺は存在する刀に霊力を込めて威力を上げるのが精いっぱいだ」
大神「正直・・・戸惑っているよ」
忌憚ない意見を大神が述べる
横島「なら・・・この時代なら・・・俺の力による統治すら可能なんじゃ・・・!!」
横島「そうなれば着物美人の酒池肉林が・・・!!!!」
横島「これは天命!!神が与えたチャンスに違いない!!!」
すみれ「邪な考えがダダ漏れでしてよ・・・」
呆れ切った二人の視線が横島に刺さる
横島「しまったー!つい本音がー!!!」
大神「どうだろう?行くあても無いなら一度俺達の所に・・・」
すみれ「中尉!!」
言いかけた大神をすみれが遮る
すみれ「本気ですの!?」
大神「ああ、嘘をついてるようには見えないし・・・悪人ってわけでもなさそう・・・」
すみれ「力による統治とか言ってましたわよ!!」
大神「まぁまぁ」
苦笑しながらすみれを宥める
大神「もし悪人だとしたらそれこそ放置できないだろ?あの霊力だ」
すみれ「それは・・・そうですけど・・・」
大神「それに彼の霊力の使い方を学べたら花組にとってもいい刺激になると思う」
そこまで聞いて渋々といった感じですみれが頷く
すみれ「不安ですわ・・・」
眉間を抑えながらため息をつく
そんなすみれを横に大神は続ける
大神「というわけだ、何か協力できる事があるかもしれないぞ」
横島「確かに行くあてもないし・・・お言葉に甘えて・・・」
すみれ「・・・」
横島「なんちゅー目で人を見るんじゃオノレは!」
10分も歩かないうちに劇場が見えてくる
横島「あれが・・・でかいっすねー」
大神「まずは皆に紹介しないといけないからな、ついてきてくれ」
すみれ「今日が休館日でよかったですわ」
劇場の玄関を開けるとすぐに一人の女性の姿があった
大神「ただいま、マリア」
マリア「おかえりなさい隊長、あら?その方は?」
横島「初めまして、横島忠夫と言います美しいお姉さま」
マリア「は・・・はぁ・・・」
精いっぱいかっこをつけた横島がマリアの手を取って自己紹介をする
横島「挨拶がわりにーーーー」
そのまま強引にマリアにキスしようと唇を伸ばす
マリア「っ!!!この!!!」
パンッ!と乾いた発砲音がして横島の頬に一筋の傷がつく
それがマリアの撃った銃によるものだと気づくのに数秒の時間がかかる
横島「ひ!人殺しー!!!撃たれたー!!!」
マリア「た!隊長!!何なんですか!!!この変た・・・この人は!!」
横島「誰が変態じゃー!!」
すみれ「どっからそう見ても貴方ですわっ!!!!」
大神「あ・・・後で説明するよ!皆をサロンに集めといてくれ!」
そのまま横島を連れてそそくさと玄関を後にする
支配人室に向かう途中、食堂で人の気配がした
カンナ「お、隊長帰ってたのか」
大神「ああ、今帰ったとこだ、カンナはお昼ご飯かい?」
横島「おぉーー!!グラマラスーーー!!!」
横島の声に全員がビクッと反応する
横島「ボーイッシュっぽいのにナイスバディー!!!これはこれで!!!!」
カンナ「・・・隊長・・・なんだい?そいつぁ?」
横島「ええとこに拾われたなぁ・・・」
カンナの胸から目を逸らさずに呟く
カンナ「はっは、面白い奴だな、でもアタイの胸なんか見ても面白くもないだろ」
横島「何をバカな!!!このボリュームにこのふくよかな・・・」
すみれ「手当たり次第じゃないですの!!!!」
ガツンとすみれに頭を殴られ、横島が崩れ落ちる
大神「後で皆に紹介するよ、邪魔して悪かった」
そう言って横島を引きずりながら食堂を後にする
大神「支配人、大神です」
米田「おお、空いてるぞー」
支配人室のドアを開け、3人が中に入る
横島「なんだ・・・ジーサンか」
すみれ「口を慎みなさいなっ!」
軽口を叩く横島を見ながら米田が盛大に笑う
米田「はっはっは、ジーサンか!違ぇねぇ!」
大神「す!すいません支配人!!」
米田「気にするな、で?そいつがどうした?」
大神「はっ」
米田「なるほどねぇ」
事情を聞いた米田がポリポリと頭を掻く
米田「霊刀ってのか?俺にも見せてくんねぇか?」
横島「あ、はい、いいっすよ」
米田の前で横島が霊刀を作り出す
それを見ながら米田が口を開く
米田「大神、オメーの判断か?」
大神「はい」
少しの間の後
米田「分かった、寝床は屋根裏部屋でも使わせてやれ、後の事は一任する」
大神「というわけだ、まず君の部屋でもある屋根裏部屋に行こうか」
支配人室を出て大神が話しかける
横島「あのー・・・」
大神「どうしたんだい?」
すみれに聞こえないように小さな声で横島が尋ねる
横島「風呂とかってあるんですか?」
大神「ああ、もちろんさ、地下にあるから後で案内しよう」
横島「ほーう・・・それはそれは」
大神「さ、ここが屋根裏部屋だ、自由に使ってくれていい」
横島「お・・・俺のアパートより広い・・・上流階級め・・・」
プルプル震えながら目に涙を浮かべた横島が
ずっと思っていた疑問を口にする
横島「なんでここまでしてくれるんです?」
大神「言ったろう、君の霊力は悪用されると脅威になりうる」
横島「はぁ・・・」
大神「その監視と思ってくれて構わない」
横島「なるほど」
大神「だから恩義を感じる必要もないよ」
すみれ「でも何かあった時くらいは力を貸すんですわよ」
横島「へいへい」
大神「そろそろマリアが皆を集めてくれてる頃だろう」
すみれ「そうですわね」
大神「じゃあ皆に紹介するよ、来てくれ」
そう言って階段を下りてすぐのサロンに向かう
そしてそこに広がる光景を見て横島が叫ぶ
横島「おぉおおおお!!!!!!」
そこにはすみれを含めると8人の娘の姿があった
横島「よりどりみどり!!!ハーレムじゃぁああああ!!!」
すみれ「やかましいですわ!!!」
後頭部を殴られる
大神「紹介しよう、彼が新しく帝国華撃団に入った横島忠夫君だ」
大神の発言を聞いて動揺が走る
マリア「ほ・・・本気なのですか?隊長」
カンナ「こ・・・こいつがぁ?」
紅蘭「なんやのん?この人」
さくら「お・・・大神さん」
織姫「目が怖いんデスけど・・・」
アイリス「そうかなぁ?優しそうだよ~」
レニ「・・・でも何か凄い力を感じる・・・」
皆がざわめく
大神「正確には華撃団に入隊ってわけではないんだが・・・」
大神の言葉をさえぎって横島が前に出る
横島「横島忠夫!17歳!ずっと前から好きでした!!!」
紅蘭「あっはっは、ウチは嫌いやないなぁ」
カンナ「アタイも嫌いじゃねぇけど・・・」
さくら「その人・・・普通の人にしか見えないんですが・・・」
すみれ「どこが普通ですのよ・・・異常なスケベですわ」
大神が苦笑する
大神「まぁ、説明するより見てもらったほうが早いかな、いいかい?横島君」
横島「お任せください!!」
紅蘭「なんちゅう霊力や・・・素敵すぎる・・・」
さくら「まさかこんなに素敵な人だったなんて」
カンナ「やっぱりアタイが見込んだ男だけのことはあるぜ」
マリア「さっきはごめんなさい・・・お詫びと言ってはなんだけど・・・さっきの続きを」
織姫「こんな魅力的な日本人もいるんデスか・・・」
アイリス「アイリスが大きくなったらお嫁さんにしてね!」
レニ「こんなにドキドキするの・・・初めてだ」
すみれ「ほら!さっさと行きますわよ!・・・ワタクシの部屋に・・・」
横島「なーんてな!なーんてな!!うはははははは!!!」
ヨダレを垂らしながら都合の良い妄想を繰り広げる横島に
一同の冷たい視線が刺さる
すみれ「バカな妄想してないでさっさとお見せなさいなっ!」
横島「おぎゃっ!」
すみれに尻を蹴られながらも
横島がその手に霊力を集中する
さくら「うそ・・・!?」
同時刻
支配人室に一報が入る
米田「おう、了解した」
米田「ったく・・・あの小僧がやっかい事まで持ち込んだか?」
米田「じゃあさっそくで悪いが、行ってくれるか?加山」
加山と呼ばれた男は即座に返事をする
加山「もちろんです」
米田「どう思う?」
加山「時機的にあの少年が絡んでいると思いますが・・・」
米田「あいつが黒幕ってわけではねぇ・・・か?」
加山「憶測で物を言いたくはありませんが恐らくは」
米田が目を細めて笑う
米田「ま、そうだろうな」
米田「馬鹿だが悪人にゃあなりきれねぇツラだ」
米田「ちょうど若い頃のオメーみたいにな」
加山「はは、耳が痛いです・・・では」
背中を向けた加山に米田が声をかける
米田「この件はハッキリするまで大神達にも内密に頼む」
加山「そうですね、無駄に不安がらせる必要もありません」
米田「すまねぇな」
加山「いえ」
支配人室の扉が閉まる
と同時に加山は行動を開始した
横島「はぁー」
あれから夜も更け
用意してもらった布団に横になりながら
大きなため息をつく
横島「しっかしこれからどうなるんだろ・・・」
横島「何とか認めてもらえたのはいいが・・・帰れるのか俺?」
天井を見つめながらボンヤリと考える
横島「綺麗なネーチャンが多いのはいいんだがなぁ」
横島「・・・美神さん・・・」
そのまま眠りに落ちていった
アイリス「起きてー!ヨコシマー!!」
朝からアイリスの元気な声が響き渡る
横島「んん・・・?ん・・・」
アイリス「寝ないの!ほら!今日は格納庫行くんでしょ!」
横島「あと5分・・・」
横島が渋っていると、アイリスの後ろから声が聞こえた
紅蘭「どないやーアイリスー、横島はん起きたかー?」
アイリス「それがねー」
横島「もちろんです!さ!行きましょうか紅蘭さん!」
アイリス「えー!なんでー!アイリスの時と違うー!!!」
ブーブーとアイリスの文句を聞きながら3人で格納庫に降りる
横島「・・・やっと二人きりですね!紅蘭さん!!」
アイリス「アイリスもいるでしょー!!!!」
紅蘭「うわわっ!!」
ガバッと横島が紅蘭に飛びかかるが
紅蘭はそれを横にかわす
勢いのついた横島はそのまま目の前の機械に顔面を強打した
横島「ほぎゃっ」
アイリス「ヨコシマー!!」
紅蘭「落ち着き!アイリス!格納庫ではアカン!!」
横島「いたた・・・何だ・・・この機械・・・」
顔面を打ち付けた機械に目をやる
そこには、まるでロボットのような乗り物が置かれていた
紅蘭「それが霊子甲冑や」
横島「霊子甲冑・・・?」
紅蘭「聞いてないんか?ウチらはこれに乗って戦うんや」
横島「・・・今って大正だよな・・・」
アイリス「そうだよー」
横島はダラダラと汗を流しながら自問する
横島「俺の知ってる大正時代にこんなもん作れる技術ねーぞ」
横島「こりゃ・・・思ってた以上にやっかいな事になってるんじゃ・・・」
横島「戦うってのは・・・誰と?」
紅蘭「今はそんな相手おらんけどな」
アイリス「前は黒之巣会とか黒鬼会っていうのがいてねー」
紅蘭「でもまたいつあんなんが現れるかも分からんしな」
横島「黒鬼会?」
紅蘭「えげつない奴やったんやでー!」
そう言ってこれまで花組に起こった事件を話す
アイリス「でもみーんなやっつけたんだよ!」
横島「そりゃ・・・凄いな」
横島「しかしこれをこんな女の子が作ったなんてなぁ・・・」
紅蘭「横島はんのおった所では霊子甲冑はないんか?」
横島「こういうのは無かったなぁ・・・マリアって言うロボットならいたけど」
アイリス「マリアー?」
今度は横島のいた時代の話を聞きながら格納庫を見てまわる
アイリス「幽霊退治!?凄いすごーい!」
横島「そう!誰もが恐れる横島忠夫様とは何を隠そうこの・・・」
多少脚色されていたが
二人と別れ
格納庫を出た横島はぼんやりとプールサイドに腰かけていた
横島「しかし何でもあるんだな・・・ここは」
感心しながらも
視線はプールの中の少女たちに釘付けだった
さくら「あの・・・目が怖いんですけど・・・」
横島「あー!気にしなくていいから!続けて続けて」
織姫「そんな顔して、気にするなというのが無理な話デース!」
さくらと織姫が戸惑う中
すっかり霊力の回復した横島が文珠を1つ手の中に作り出す
文珠にボンヤリと『脱』の文字が浮かび上がる
横島「これで水着が脱げてしまってもそれは事故!!!」
横島「たまたま目撃してしまっても事故に過ぎない!!!!」
横島「うははははははは!!!」
さくら「何か・・・悪寒が・・・」
織姫「恐ろしく邪悪な気配を感じマース・・・」
文珠を発動させようとした瞬間
後ろから近付いていた人影に文珠を取り上げられる
すみれ「何ですのこれは」
横島「あぁあああー!!!」
すみれ「これが貴方がここに来るきっかけになった文珠というやつですのね?」
すみれ「そしてこれに『脱』という文字・・・」
横島「堪忍やー!!!堪忍してぇー!!!!」
横島「しかたなかったんやー!!男の子なら皆通る道なんやー!!」
すみれ「こんな道通る男の子なんか世界中探しても貴方くらいですわっ!!!」
ゲシゲシと横島を足蹴にする
しかし水着姿のすみれに踏まれる横島はどこか幸せそうであった
さくら「あ、踏まれてる」
織姫「何か企んでたんでショウね・・・」
横島「くっそう・・・あの高飛車女め・・・」
文珠を取り上げられた横島がトボトボと廊下に出る
カンナ「おっ、ヨコシマじゃねぇか」
横島「カンナさん」
カンナ「格納庫は見たのか?」
横島「はい、凄いもんですね」
地下に降りてきたカンナとはち合わせる
カンナ「どうだ?暇なら組み手でもすっか?」
横島「やります!!」
横島「組み手と言えばくんずほぐれつ揉み合いになってもおかしくない!!」
横島「いや!むしろ!揉み合いになって然るべき行為!!!」
横島「たとえ鷲掴みにしても事故!!それは事故!!!」
横島「やったる!やったるぞー!!!」
カンナ「おい・・・思想がダダ漏れだぞ」
呆れたような目で横島を見つめる
カンナ「でもまぁ・・・アタイに隙があればやってみな」
横島「・・・言いましたね?」
カンナ「あぁ、ただし文珠とかいうのは反則だぜ」
横島「・・・・・・」
横島「おぎゃ!!」
蹴りが横島の側頭部に綺麗に決まる
横島「おえええっ!!!」
みぞおちに真っ直ぐに拳が突き刺さる
横島「こんなん聞いてねぇぞー!!!」
ギリギリのところで手刀をかわす
カンナ「ほれほれ!オメーも仕掛けてこねーと」
横島「できるかー!!!!」
必死の形相でカンナの猛攻をかわす
逃げ回るだけの横島だったが
次第にその動きに変化が出てくる
カンナ「こいつ・・・」
横島のその視線は
汗でピッタリとシャツの張り付いたカンナの胸元に注がれていた
横島「チチ・・・シリ・・・フトモモ」
カンナ「おりゃ!!」
カンナが放った正拳突きを紙一重でくぐり抜ける
カンナ「しまっ・・・」
横島「そのチチ!!もらったーー!!!!」
そのままカンナの胸めがけて顔面から飛びかかる
カンナ「驚いたよ」
横島「え?」
その顔がカンナの胸に触れる寸前
カンナの動きが加速し、横島の脳が揺れる
カンナ「アタイに本気を出させるなんて、思ってもいなかった」
カンナ「大丈夫かい?」
横島「いちち・・・」
横島「くそー・・・女のくせに・・・なんちゅー強さじゃ・・・」
カンナに付き添われて医務室で手当てを受ける
カンナ「ははは、悔しかったらもっと強くなるんだね」
横島「くうう!なっちゃるわい!!」
カンナ「楽しみにしてるよ」
カラカラと笑いながらカンナが出ていく
その尻を物欲しそうな目で見送る
横島「もう少しであのシリが俺の物になったのに・・・」
痛む身体をさすりながら屋根裏部屋に戻る
するとそこにはレニとマリアの二人が待っていた
レニ「おかえり」
マリア「遅かったですね」
横島「あれ?どうしたんですか?」
レニ「聞きたい事があって・・・」
言いかけたレニを遮って横島が叫ぶ
横島「まさか!二人が俺を巡って!!!」
マリア「ありません」
ピシャリと否定される
横島「じゃあ一体・・・」
レニ「これを着けて」
レニが見慣れない機械を取り出し横島の前に置く
横島「これは?」
それはいつか紅蘭の作った嘘発見器であった
マリア「貴方の言う事が真実か確認させてもらいます」
レニ「隊長はお人よしな所があるから」
横島「へーへー!好きにしてくださいよ」
ふてくされた様子で嘘発見器を頭に装着する
いくつかの質問を繰り返す
横島「いいえ」
だがどこ回答にも発見器は反応しない
横島「納得いきました?」
マリア「最後にひとつだけいいかしら?」
横島「いいっすよ」
マリア「貴方は私達花組に下心を抱いている?」
横島「・・・・・・・・・いいえ」
横島がそう答えた途端、発見器が警報を鳴らす
レニ「故障じゃないみたいだね」
マリア「そうね」
横島「うるさいわいっ!」
横島が涙目になりながら頭の発見器を外す
横島「もういいだろ!」
マリア「ええ、結構よ」
そのまま屋根裏部屋を後にすると思われたマリアとレニは
姿勢を正し横島に向き直る
横島「な・・・なんだよ」
マリア「申し訳ありません」
レニ「ごめんなさい、横島」
突然の深い謝罪に横島は面食らう
横島「な・・・!」
マリア「許される事ではないかもしれないけれど・・・」
レニ「横島の力は本当に脅威なんだ・・・」
言葉を選びながら慎重に続ける
マリア「花組の隊員には素直で単純な子も多いの」
マリア「本物の悪人に付け込まれかねない程にね」
レニ「だからボクらが・・・」
横島「確認しに来たって訳か」
マリア「ええ・・・本当にごめんなさい」
ニヤリと横島が笑う
横島「悪いと思うならその可愛い唇をーーーーー」
飛びかかろうとする横島の眼前に銃口が突き付けられる
横島「・・・ぅえ?」
マリア「嘘はついてないのはわかりました」
レニ「ただし厳重注意人物って事に変わりはないよ」
コクコクと頷く横島を見て
二人は満足そうに屋根裏部屋を後にする
横島「くそー!なんじゃー!冷血女めぇー!!!」
横島の叫びを聞きながら二人は笑い合う
マリア「ふふふ」
レニ「変な人だね」
マリア「そうね、隊長とは正反対」
レニ「そうかな?ボクは凄く似てるように思えた」
マリア「そうかしら?」
レニ「変だけど」
マリア「ええ、本当に変な人・・・ふふ」
横島「・・・・・・zzz」
レニとマリアが去ってからかなりの時間が経過していた
横島「んん・・・・・・寝ちゃってたか・・・ふぁ~」
大きく伸びをする
大神「お、いたいた」
目が覚めるのを見計らったように大神が入ってくる
大神「さ、行こう」
横島「行こうって・・・?」
アイリス「ヨコシマー!ようこそ花組へー!!!!」
パンパンとクラッカーの音が響く
さくら「よろしくお願いします」
横島「・・・これは?」
大神に呼ばれて楽屋にやってきた横島を待っていたのは
花組のメンバーと盛大な歓迎であった
紅蘭「横島はんの歓迎パーティーや」
織姫「手放しで歓迎できないデスけどね・・・」
大神「急だったからね、簡単な事しかできないんだけど」
すみれ「十分すぎますわ、こんなのに」
さくら「すみれさんっ」
カンナ「まぁ食えよ!うめーぞー」
マリア「騒ぐ口実なだけかもしれませんが?」
大神「ははは、そうかもしれないな」
ワイワイと皆のはしゃぐ様子を見て
横島の頬も自然に緩む
横島「はは」
レニ「横島、ちょっといい?」
横島「ん?どうした?レニちゃん」
レニ「さっきは・・・ごめん」
横島「もういいよ、さっきも謝ってくれたろ」
笑顔で返す
横島「それに俺だって仲間に危険が迫ってたら警戒するさ」
すみれ「嘘おっしゃい、一人でさっさと逃げるでしょうに」
いつのまにか横に来ていたすみれに横やりを入れられる
横島「うぐ・・・やかましいわい!!!」
図星を突かれ、狼狽する
紅蘭「え!ホンマに一人で逃げ出すんか!?」
カンナ「そりゃガッカリだなぁ!」
アイリス「ガッカリガッカリー!!」
織姫「最低じゃないデスかー!!!」
横島「えーい!!やかましい!!誰でも自分が一番可愛いんじゃー!!!」
口ぐちに責められる中、横島が開き直って叫ぶ
さくら「ふふふ」
大神「ははははは」
一同が笑い合う中、それは唐突に鳴り響いた
ビー!!ビー!!とけたたましく警報が鳴る
横島「な!なんだぁ!?」
戸惑う横島に大神が声をかける
大神「横島君!地下だ!俺と一緒に来てくれ!!!」
全員が地下の作戦司令室に向かって走り出す
横島「何だってんだ!」
アイリス「ヨコシマ!こっちだよ!早く!」
アイリスに手を引かれながら地下に向かう
米田「早かったな」
作戦司令室で待っていたのは支配人の米田だった
横島「あ・・・あんた」
米田「お、小僧も一緒か、調度いい」
大神「帝国華撃団!花組!全員揃いました!!」
米田「よし、さっそくで悪ぃがこいつを見てくれ」
そう言うと米田は演算機の画面を指す
横島も戸惑いながらそれを見やる
大神「これは・・・」
マリア「親皇・・・!!!」
画面にはマリアが新皇と呼んだ巨大な機械が映っていた
さくら「これ!!京極の乗っていた魔装機兵じゃないですかっ!!!」
レニ「・・・なんで」
それはかつて
帝都を魔都とし自らが王として君臨するべくクーデターを起こした男
そして華撃団によって野望と共に倒されたはずの男
京極慶吾の乗っていた機体であった
横島「京極?」
紅蘭「話したやろ?黒鬼会・・・それの親玉やった男や!」
カンナ「でもアイツはアタイ等がぶっ倒したはずだろ!!」
マリア「どういう事なんです!指令!」
米田「俺にも詳しい事はわからねぇ・・・探らせていた加山からも連絡がねぇ」
大神「加山からも!?」
米田「詳しい事がわかるまでオメー等にも言うつもりは無かったんだが・・・」
顔を歪める
米田「事態が事態だけに放置できねぇ・・・!頼まれてくれるか?」
大神「もちろんです!」
大神が即答する
レニ「でも見て・・・この魔装機兵・・・」
レニの声に皆が画面を見つめる
織姫「これ・・・金剛とか言うのが乗ってた機体の腕デスねー」
さくら「こっちは・・・影山サキ・・・いえ水狐の機体の破片ですね」
画面に映る巨大な機体は
様々な機体の破片や、部品を集めて構成されていた
紅蘭「確かにあの機体はウチ等が破壊したからな・・・」
すみれ「オンボロのツギハギ機体ってわけですわね!」
アイリス「こんなのすぐやっつけられるよ!!」
大神「ああ!そうだな!!」
大神「帝国華撃団!花組!!出動せよ!目標は巨大魔装機兵『新皇』!!!」
一同「了解!!!!!」
作戦司令室に皆の声が響き渡る
大神「横島君は・・・」
米田「少しここに残してくれ、話してぇ事がある」
大神「はっ!」
そう言うと大神は皆を連れて部屋を出る
横島「あ・・・あのぉ・・・」
作戦司令室には米田と横島だけが残される
米田「横島って言ったな」
横島「はぁ・・・」
そこで米田が深々と頭を下げる
横島「えぇ!?」
米田「オメーの力を皆に貸してやってくれ!!」
横島「ええぇええ!!無理!無理ですよ!あんなでっけーの!!」
鼻水をまき散らす
米田「あいつが復活した原因なんざどうでもいい!」
米田「ただ俺はあの娘らが無事帰ってきてくれればそれで!」
横島「うぐ・・・」
真摯な目に横島もたじろぐ
米田「オメーが来た事があいつの復活に関係あるのかもしれねぇ!」
米田「それとも全く関係ねぇのかもしれねぇ!!」
米田「それは分からねぇし、どうでもいいが!!」
米田「オメーが力を貸してくれればどでけぇ戦力になる!それだけは確かなんだ!」
横島「ぐぅうう」
気迫に押された横島が頷くのに、そう時間はかからなかった
横島「どうせならネーチャンのお古がよかったなー!!!!」
大神「ははは、それはすまなかった」
大神の白い霊子甲冑に乗り込んだ横島が涙目で叫ぶ
紅蘭「大丈夫やで横島はん!確かに前の機体やけど点検や強化はしとる!」
横島「そういう事じゃなくて!!!」
通信で紅蘭が割り込む
その様子を見たカンナとすみれが通信を交わす
カンナ「しっかし・・・初めてであそこまで動けるもんか・・・」
すみれ「本当に・・・霊力・・・それに潜在能力だけは凄いですわね」
横島の乗る機体「神武」は
今、大神達の乗る「光武・二式」より以前に乗られていた機体だった
にもかかわらずその機体性能は大神達に劣ってはいなかった
レニ「凄い・・・機体性能を霊力でカバーしてる・・・」
織姫「あれで中身が良ければいいんデスけどねー」
アイリス「えー!ヨコシマは中身もいい人だよー!」
マリア「あらあら」
翔鯨丸と呼ばれる飛行船で新皇のいる地点に向かう
だがその空気は戦闘前とは思えぬほど穏やかな物だった
大神「いたぞ!!!」
その空気は大神の声で一変する
大神「降下準備!」
一同「了解!!!」
一転してピリピリした緊張感が纏わりつく
紅蘭「久しぶりの出動がこんな大物とはなぁ」
さくら「ホントね、鍛練はしてたけど・・・」
すみれ「大丈夫ですわよ」
そう言ったすみれがチラリと、本当にチラリとだけ横島を見る
ガシャン!ガシャン!と全員の降下が完了する
だが敵の魔装機兵はそれを意に介さず暴れ続けていた
織姫「何デスかー!?こいつ!」
レニ「ボク達に気付いてない?」
大神「気をつけろ!」
大神が言うと同時に新皇の腕が花組に向かって振り下ろされる
カンナ「うおおっ!!」
大神「ぐうぅ!!!」
カンナと大神の機体がそれを受ける
マリア「隊長!!」
すみれ「カンナさん!!!」
横島「うわー!もうアカンー!勝てるわけないんやー!!!」
パニックになった横島の機体を織姫がガツンと叩く
織姫「落ち着いてくださーい!!」
横島「あいたー!!!」
さくら「き・・・緊張感のない・・・」
呆れ顔で横島を見る
大神「大丈夫だ!だが油断するなよ!」
距離を取って大神が叫ぶ
マリア「それにしても・・・」
紅蘭「ホンマに無茶苦茶に暴れとるだけやなぁ・・・」
マリア「ええ、誰かが乗ってるとは思えない」
紅蘭「・・・まぁええ!どっちにせよ倒さなあかんねやしな!!」
マリア「そうね!」
二人が遠距離から射撃を開始する
レニ「はぁあああ!!!!」
すみれ「やぁあああ!!!」
レニのランスが新皇の腕の関節に刺さる
レニ「今っ!!」
その関節部の穴ををさらにすみれの長刀が広げる
すみれ「この程度ですの!」
さくら「破邪剣征・百花斉放!!!」
更にさくらの斬撃が追い打ちをかけ、新皇の腕が千切れ飛ぶ
すみれ「余裕ですわね!」
横島「よーし・・・俺も・・・」
それを見た横島が機体の刀を抜く
横島「蝶のように舞い!!ゴキブリのように逃げる!!!」
横島「とみせかけて!!!蜂のように刺ーーーす!!!」
無駄の多い動きをしながらも
新皇の部品を着実に削り取る
大神「さすがだ!横島君!!」
織姫「そうデスか?なんか卑怯な気が・・・」
カンナ「吹っ飛べ!!」
カンナが拳を突き出す
が、その拳は受け止められ、カンナの機体もろとも投げ飛ばされる
カンナ「うひゃぁああ!!!」
横島「あああああああ!!!!」
そのまま思い切り横島の機体にぶつかる
カンナ「いてて・・・いやぁ!助かったぜヨコシマ!!」
横島「勝手にぶつかってきて助かったも糞もあるかー!!!!」
ブシャーと頭から血を噴き出しながら横島が叫ぶ
大神「とにかく頭を破壊できれば・・・」
アイリス「操縦席があるもんねー」
スラリと大神が刀を抜く
大神「アイリス!俺を新皇の上空にテレポートしてくれ!」
アイリス「うん!分かった!」
キラッと辺りが光に包まれ、大神の機体がその場から姿を消し
そしてすぐに新皇の頭の上に姿を現す
大神「くらえ!」
横島「文珠が出せるのは機体の中だしな・・・」
横島「下手に使うと乗ってる機体にも影響が出かねん・・・」
横島「使えるのは『治』、『直』、『速』、『飛』、『硬』ってとこか?」
カンナ「おーいヨコシマー」
ブツブツと文珠の使い道を考える
カンナ「そこにいると危ねーぞー」
横島「え?」
いつの間にか遠くに離れたカンナの声に気付き辺りを見回す
カンナ「上ー!上ー!!」
横島「おぎゃぁああ!!!」
大神が切り落とし、飛ばした新皇の頭部が横島目掛けて落下し
当然のように直撃した
大神「やったか!」
着地した大神は刀を構えたまま様子を見る
カンナ「駄目だ!隊長!誰も乗ってねぇ!」
横島「まず俺の心配をせんか!!」
新皇の頭部にある操縦席には誰の姿も無かった
紅蘭「どういうこっちゃ!!」
レニ「待って皆!!あれを見て!!」
レニが指差した場所、切り落とされた頭部のあった場所に
それはいた
マリア「何・・・?」
アイリス「何あれー?」
横島「・・・あ゛ーーーーー!!!!!」
さくら「知ってるんですか!?」
そこには横島がここに来る事になったきっかけでもある
あの廃ビルの悪霊の姿があった
すみれ「結局貴方が原因じゃないですのー!!!!」
横島「堪忍やー!堪忍やー!!!」
紅蘭「あいつが機械を操ってたんか・・・」
織姫「ホント迷惑な男デスねぇ」
カンナ「まぁまぁ!ヨコシマに悪気があったわけじゃねぇんだし」
マリア「そうね、本人に自覚がないのを責めるのはおかしいわ」
すみれ「・・・・はぁー・・・それで?どうするんですの?」
ため息をつきながらすみれが尋ねる
横島「・・・俺が活路を開く」
そう言った横島の表情は真っ直ぐ前を向いていた
悪霊の咆哮が響く中
横島の乗る機体が真っ直ぐ新皇に向かって駆け出す
すみれ「ちょっと!そんな考え無しじゃ!!」
新皇が残った腕で迎撃を試みる
瓦礫を巻き込んでなぎ払う
横島「とにかく懐に入らんとな」
手に霊力を集中させ『速』の文珠を生成する
文珠が発動し、横島の機体の速度が加速する
新皇の腕をかいくぐり、頭部のあった場所の真下までたどり着く
横島「あっぶねぇ~」
横島の後ろから新皇の追撃が迫り
ガシャンと金属のぶつかる音と同時に声がする
すみれ「何か考えがあるなら早くおやりなさいな!!」
ギリギリと新皇の腕を抑えながら
後を追ってきたすみれが叫ぶ
それを見た悪霊が
大量の霊気を放出する
それは無数の霊気の弾となって横島とすみれに降り注いだ
すみれ「そんな!」
だがその弾は着弾する事なく、空中で爆発した
横島「なんだぁ!?」
紅蘭「迎撃はウチに任してもらおかー!!!」
全ての霊気の弾は紅蘭によってかき消された
横島「くそっ!1個無駄にした!」
『盾』と書かれた文珠が消滅する
急いで新たに文珠を生成する
横島「『錆』びちまえ!くそったれ!!!」
『錆』と書かれた文殊が発動し
横島の機体を始めとし、辺りの金属が物凄い速度で酸化を始める
横島「紅蘭さんには悪いけどな!!!」
紅蘭「あぁー!!・・・ウチの光武がぁ・・・」
ギギギギギギギと鈍い音を立てながら新皇がボロボロと崩れだす
錆びついて動けなくなった機体の中で横島が叫ぶ
横島「よし!後はこっから離れないと!巻き込まれ・・・」
そこで言葉が止まる
すみれ「どうしたんですの?」
横島がいくら集中しても文珠は生成されなかった
横島「霊力切れたーーーーーーーー!!!!!!」
横島「速く逃げないとやばいのに!!」
横島「しかもこんな隔離された状態じゃすみれさんと最後の一時を楽しむ事もできない!」
横島「煩悩なんぞこれっぽちもわいてこんーーー!!!」
すっかりいつもの横島に戻り、大声で取り乱す
レニ「成功したみたいだ!!」
織姫「でも・・・戻ってきまセン!!!」
アイリス「これって危ないんじゃないのー!!!」
マリア「隊長!行きましょう!!」
大神「ああ!!行くぞ!!」
すみれ「その必要はありませんわ」
カンナ「あ・・・あれ?」
皆のすぐ後ろに霊子甲冑から降りたすみれと横島が姿を現す
大神「無事だったのか!!」
さくら「よかった!でもどうやって!?」
紅蘭「横島はんか?」
横島「いや・・・それが俺にも・・・よくわからん」
不思議そうに首をかしげる
すみれ「スケベも身を助ける事があるんですわね」
すみれの開いた手の中で『脱』と書かれた文珠が消滅する
それを見ながらすみれは一人呟いた
すみれ「さあ!後は新皇に憑いていた悪霊だけですわよ!!!」
アイリス「行こう!ヨコシマ!!」
紅蘭「光武の恨みはでっかいでぇー!!!」
さくら「霊でも魔物でも私の刀で切れない物はありません!」
カンナ「ぶっ飛ばして成仏させてやるぜ!!!」
マリア「悪霊にかける情けはないわ」
織姫「さっさと片付けてシエスタするんデース!」
レニ「ボクが倒す!!」
大神「行くぞ!皆!!帝都の平和は俺達が守る!!!」
悪霊の怒号
霊子甲冑の駆ける金属音
ガラガラと崩れる魔装機兵
「おかーちゃーん」と泣き叫びながら突撃する横島
大神「うぉおおおおおおお!!!!!」
魔装機兵から離れた悪霊が
ガリガリと地面を削りながら襲いかかる
白煙立ち上る中
その戦いはアッサリと決着した
・・・・・・・・・
米田「無事だったか」
加山「申し訳ありません」
米田「こうして無事帰ってきたんだ、構わねぇよ」
加山「親皇の内部に取り込まれてしまうとは・・・不覚でした」
包帯を巻いた腕を押さえながら口惜しそうに話す
加山「しかし急に新皇が錆びて崩壊を始めたのには驚きました」
米田「ははは、よく脱出できたもんだ」
加山「腐っても月組ですからね」
米田「結局あの小僧が原因だったってわけか?」
加山「そうなるんでしょうね」
米田「まーったく、光武もオシャカにしやがって」
加山「あそこまで錆びては使い物になりませんね」
米田「とんだ疫病神か?」
加山「いえいえ、むしろ良い拾い物と思いますよ」
米田「甘ぇなぁ!はっはっはっは」
加山「ははは」
支配人室に二人の笑いが響く
紅蘭「そうかー・・・」
横島「・・・」
歓迎会のやり直しをする中、横島と紅蘭が廊下に出て話す
横島「こんな事頼める立場じゃないのは分かってるんだけど・・・」
紅蘭「ホンマやで!ウチの可愛い光武を2体も壊しといて!」
横島「・・・ごめん、このお礼は身体で・・・」
紅蘭「いらんで!」
脱ごうとした横島を紅蘭が止める
紅蘭「でもええよ、横島はんにも待ってはる人がおるもんな」
横島「そのへんは微妙だけどな」
苦笑いを浮かべながら美神を思い浮かべる
紅蘭「そんかわり1つ条件があるで!」
横島「俺にできる事なら!」
そう言ってまたも脱ごうとする横島に鋭いボディーブローが叩きこまれる
紅蘭「ちゃうっちゅーに!!」
横島「ほげぇ!!」
アイリス「あー!ヨコシマー!!なんで外にいるのー!」
織姫「今度は紅蘭を狙ってるんデスかー!?」
マリア「全く、節操の無い・・・」
カンナ「早く食わねーと無くなっちまうぞー」
横島「やかましいわい!!!」
横島がバタバタと楽屋に戻る
その後ろ姿を見ながら紅蘭もゆっくり楽屋に向かう
紅蘭「ホンマ、騒がしいなぁ・・・」
紅蘭「普段以上に騒がしいわ」
紅蘭「それもこれも、ぜーんぶ横島はんのせいやなぁ・・・」
すみれ「汚い!!口に物を入れたまま話さないでくださいませ!!!」
横島「うご!!」
織姫「あ、喉に詰まったみたいデース」
さくら「きゃあ!!顔がどんどん紫色になってますよ!!」
レニ「はい、お水」
マリア「隊長、こちらもどうぞ」
大神「ああ、ありがとう」
カンナ「うぉ!!これうんめぇー!!」
紅蘭「あ!カンナはん!それウチの!!!」
加山「いや~歓迎会はいいな~大神ぃ」
横島「うぉお!!誰だアンタ!!」
騒がしく夜は更けていった
あっという間に1週間が過ぎる
悪霊を討伐して以来、帝都には平和な日常が戻っていた
すみれ「いいかげんになさいな!!!!」
すみれの大声が朝から帝劇に響き渡る
アイリス「またヨコシマー?」
カンナ「朝っぱらからうるせぇなぁ」
帝劇に横島がいる風景にも
誰も違和感を感じなくなった頃だった
横島「俺が何したってんだー!!」
すみれ「し・・・下着を!!盗んだでしょう!!」
横島「え、冤罪じゃー!!!」
ギャーギャーと騒ぐ二人を
どこか微笑ましく、そして呆れたように皆が見つめる
紅蘭「横島はん、ええかな?」
そこに声をかけたのは紅蘭だった
オズオズと遠慮がちに
横島「あ、もしかして」
紅蘭「せや・・・地下まで来てくれる?」
横島「ああ」
すみれ「逃げるんですの!?」
横島「馬鹿言うな!!付き合ってられんわい!」
いつものように軽口を交わしながら離れる
紅蘭「ええのん?」
横島「ああ」
二人で地下の格納庫に向かう
横島「おぉー!」
それを見て横島が感嘆の声を漏らす
紅蘭「ウチの技術ではこれが限界や」
横島「いやいや!十分凄いよ!」
二人の目の前には大きな機械があった
それは医療用ポッドのような形をしており、中に人が入れるようになっていた
紅蘭「しかし凄いな、横島はんの文珠っちゅーんは」
紅蘭「あれ1つで演算機くらいなら1カ月は動くで」
横島「ごめんな、無理言って」
紅蘭「ホンマやで」
カラカラと笑いながらハッチを開ける
紅蘭「3日前に貰った『雷』の文珠がここに入っとる」
紅蘭「これに、今日横島はんが出す文珠を合わせれば・・・」
紅蘭「計算ではここの装置で霊力が増幅されて・・・」
ポンポンと上にある装置を叩く
紅蘭「爆発的にエネルギーが発生するはずや」
紅蘭「ほんで、そのエネルギーが無駄に散らんように」
紅蘭「こっちの装置で簡易やけど結界みたいなもんを張るわけや」
横にある機械を指しながら、得意げに話す
紅蘭「一応、周りに被害が出んように装甲は厚くしとる」
紅蘭「こんだけ圧縮した霊力があれば・・・」
少し名残惜しそうに続ける
紅蘭「出来るかな?時間移動」
横島「ありがとう、紅蘭さん」
紅蘭「ホンマ、大変やったわー!今度来た時は覚悟しときや!」
横島「もちろん!未来の機械もいっぱい持ってきますよ」
そう言って笑い合う
紅蘭「皆にはええんか?」
横島「そこはほら!俺って人気者でしょ?」
横島「絶対に皆引き留めるだろうからなー!うははは」
横島「そうなったら帰りたくなくなっちゃうでしょー!!」
無理をして笑う横島を見ながら紅蘭が呟く
紅蘭「ふふ・・・ホンマやね、寂しなるわ」
横島「じゃあこれ・・・約束の条件」
紅蘭「おおきに」
横島がポケットからバンダナを取り出し紅蘭に渡す
紅蘭が嬉しそうにそれを受け取る
そのまま無言で横島が機械の中に入る
紅蘭「・・・」
バタンと重い扉を閉めると
ガラス越しに中の横島がペコリと頭を下げた
アイリス「ヨコシマー!!!!!!」
カンナ「てめぇ!また絶対来やがれよ!!!」
レニ「楽しかった」
マリア「挨拶くらいしてもいいんじゃないかしら」
さくら「いつでも来てくださいね!」
織姫「嫌いじゃなかったデスよー」
大神「黙って行くなんて水臭いじゃないか」
格納庫に皆の大きな声が響き渡った
すみれ「さ・・・さんざん迷惑かけて黙って帰るとはどういう了見ですの!!」
それは機械の中の横島にもハッキリと聞こえ
横島「皆・・・」
横島の目からボロボロと涙がこぼれた
横島「チクショー!短い間だったけど楽しかったわい!!!!」
アイリス「また来てよ!絶対だよ!!」
レニ「いつでも歓迎する」
マリア「無事戻れる事を祈ってるわ」
さくら「次に会う時には節度ある人になっててくださいね」
織姫「騒がしかったけど・・・楽しかったデスよ」
カンナ「組み手強くなって戻ってこいよな!」
皆が機械に近付く
大神「いいか!君はいつまでも帝国華撃団の一員だ!!」
すみれ「・・・」
横島がゴソゴソとポケットから何かを取り出す
すみれ「なっ!!」
そこにはすみれの下着が握られていた
すみれ「絶対に!それ返しに戻ってくるんですわよっ!!!!」
そして横島は文珠を発動させた
ビリビリと辺りが振動し
激しい光と音に満たされる
それが過ぎた頃
その機械の中に人影は無かった
アイリス「あーあ、行っちゃった」
紅蘭「最後まで騒がしい人やったなぁ」
さくら「ホント、あら?紅蘭?それ何」
さくらが紅蘭の持つバンダナに気付く
紅蘭「これか?これはなぁ・・・ん?」
バンダナに包まれていた何かがコロリと転がり落ちる
カンナ「アイツの文珠だ」
すみれ「置き土産ってやつですわね」
転がる文珠を拾い上げる
大神「何か書いてるのかい?」
それを見て全員が言葉を失う
けれどその表情はとても明るかった
『絆』と書かれた文珠はキラキラと光を放っていた
_____________
おキヌ「で?散々心配かけて・・・」
美神「どこの女と乳繰り合っとったんじゃオノレわ!!!」
横島「あぁっ!!何だか久しぶりっ!!!!」
美神のハイヒールが横島に刺さる
美神「時間移動までして下着集めとは・・・情けない」
おキヌ「フケツです・・・」
横島「違う!違うんや!!それには事情がー!!!」
美神「やかましい!!!」
いっぱしのゴーストスイーパー横島忠夫は
やっぱり横島忠夫なのであった
おしまい
268 : 以下、名... - 2010/02/27(土) 05:38:37.84 BAhcn2WbO 117/121というわけでおしまいです
長々と駄文にお付き合い有難うございましたw
本当は薔薇組やら椿やら出したかったのですが収拾つかなくなりそうなのでやめました…
レスは相変わらず少なかったですが
支援や保守はとてもありがたかったです!多謝!
270 : 以下、名... - 2010/02/27(土) 05:40:43.89 BAhcn2WbO 118/121これを読んで少しでも
サクラ大戦やGS美神に興味を持ってもらえれば幸いです!
また何か書きたいと思うので
見かけたら支援したってくださいな
10時間は長かったな…おやすみ
275 : 以下、名... - 2010/02/27(土) 06:07:32.48 xeBVeQgi0 119/121両方の作品好きだが場面が浮かぶようだったわ。
楽しませて貰ったよ、お疲れ様。
278 : 以下、名... - 2010/02/27(土) 07:02:07.61 7dFIg9xZO 120/121面白かった
懐かしい気持ちをありがとう
次の機会があったらまた読みたいw
285 : 以下、名... - 2010/02/27(土) 11:47:16.80 2yZvm/b80 121/121>>1乙!
サクラとGSに夢中だった青春時代を思い出したぜ。
ドリキャス引っ張り出して3やりたくなってきたw