狐娘「世迷言を申すな。こんな年寄り相手に…… それにお主の母代りでもあるワシに懸想してなんとする?」
青年「うるせぇ、んなこたぁどうでもいい。抱かせてくれるのか、くれないのか。どっちだ?」
狐娘「此奴め、何ちゅうことを言いよる…… どうでもええじゃと?」
青年「そーだ。俺から見りゃまだまだ綺麗だし、母親代りなだけで本当のおっかあじゃねぇしな。それで?どっちなんだ」
狐娘「ああもう、なんなんじゃお主は?女を抱きたいなら色街にでも行けばよかろうが」
青年「いや、お前がいい。お前じゃなきゃ嫌だ」
狐娘「でぇぇい!お主はワシを馬鹿にしとるのか!?ワシのようなババアならちょいと誘えば簡単に股を開くとでも思うたか!!」
青年「――――俺、戦に行くんだ。親父は病で臥せてっし、兄貴は家を守らなきゃならねぇからな」
狐娘「復讐をまだ諦めとらんかったのか、あのバカ城主め。なるほど、血迷うた訳はわかったが、ワシが抱かれてやる理由にはならんぞ?」
青年「金か?金が欲しいのか?金ならあるぞ!ちょっとだけだが。どうだ、これで一晩俺の女房になってくれねぇか?」
狐娘「すっ呆けたことを申すな!金でワシを買えると思うたか、この無礼者め!!」
青年「れ、礼儀知らずは百も承知だ!でもどうすりゃいい?俺はお前が好きなんだ!心底惚れてる!お前以外の女など抱きたくねぇ!」
狐娘「ヘっ!?へ、ヘッタクソな口説き文句じゃの!ま、まぁ、農家の二男坊如きが洒落た言葉など吐けるはずもないがのぉ?」
元スレ
狐娘「なに?ワシを抱きたいじゃと?」青年「おう」
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青年「そーだ、どうせ俺は口下手だ!女を喜ばす洒落た文句なんて言えん!!でも、この気持ちに嘘はねぇ!」
狐娘「うむ、そ、そうか…… 本気じゃったか……」
青年「で、金がダメならどうすりゃいい?そーか、あぶらげか!?」
狐娘「物で釣るな阿呆め!惚れた女子をものにしたいのならば、誠心誠意愛を込めて口説き落さんかい!!」
青年「わかった。じゃ、もう一回言うぞ?」
青年「お前が好きだ!大好きだ!心の底から惚れ込んどる!一晩だけでもいい!俺の嫁さんになってくれ!!」
狐娘「う、うむ…… お主、本気か?本気でワシを……?じょっ、冗談……じゃろ?」
青年「冗談なんかじゃねぇ!ホントなら自分の田んぼを持って、二人分の食い扶持ぐらい賄えるようになってからお前を嫁御にもらうつもりだった」
狐娘「わ、ワシをか?この化け狐を?こんなババアをか!?」
青年「おう。この金だって元は田んぼを借りるために貯めたもんだ。何ならもう一度言うか?俺はお前が……」
狐娘「い、いや、もうええわい。聞いとるだけでこっちが気恥ずかしいわ!」
狐娘「――――で?」
青年「ん?」
狐娘「い、何時頃からワシを好いとるんじゃ?」
青年「いつからかはもうわからん。ただハッキリ好きだと思うようになったのは十を過ぎたころの頃か」
狐娘「あー、あれか。急によそよそしくなってツンケンしよったからお主も親離れの時期かーと思うとったが……」
青年「…………」
狐娘「なるほど、童子が好きな娘っ子に意地悪したくなるようなもんじゃったのか」
青年「……うるせぇ。まぁ、兎に角そういうこった」
狐娘「うむ、要は今さっきお主の言った言葉は一時の気の迷いから出たものではないと?」
青年「そぉだ。でも、俺は戦に出ることになった。まず生きては帰れん。だからせめて今夜だけでも……」
狐娘「…………」
青年「お願いだ、一晩だけでいい。俺と夫婦になってくれ、嫁さんになってくれ!」
狐娘「飾り気のない物言いじゃ、なればこそお主の言葉に嘘はないとわかる」
青年「お前は嘘吐きが嫌いだと昔から言ってるからな。だからお前にはもう絶対嘘はつかねぇ」
狐娘「うむ、そうじゃのう、それはわかっておるが……」
青年「わかってくれるか!なら……」
狐娘「――――お断りじゃ」
青年「いいっ!?」
青年「なんでだ?もしかして他に惚れている男がいるのか?」
狐娘「いや、そうではない。これから死ぬつもりの男に抱かれる気はない、ということじゃ」
青年「でも、戦なんだぞ?人がいっぱい死ぬんだぞ?俺だってそうさ、多分生きては変えれん」
狐娘「そうかもしれぬの」
青年「だったらせめて一晩ぐれぇ… 惚れた女を抱いて寝てぇ……」
狐娘「……その気持ちもわからんではないがの」
青年「なら!」
狐娘「嫌じゃ」
青年「どうして!?」
狐娘「……人と妖とてまぐわえば子を成す時もある。その時父親が居らんではその子が辛い思いをするじゃろう」
狐娘「お主とて母親の居らんかった身の上じゃ。片親の寂しさはよう知っておろう?」
青年「…………」
狐娘「つまりじゃ、どうしてもワシを抱きたいと申すのであれば……」
狐娘「何が何でも生きて帰って来んかい!!」
狐娘「たった一晩だけの夫婦じゃと!?巫山戯るな!」
狐娘「夫婦の契りを交わすということはちゃんと愛し合うて、子を成して、共に笑い共に泣き共に生きて共に死すということじゃ!!」
狐娘「ワシを抱いてそれだけのことで満足して死ぬなどとは絶対に許さぬぞ!!」
狐娘「ワシを嫁にしたいのなら絶対に死ぬな!必ず此処へ帰ってこい!!」
青年「……わかった!俺は絶対に死なねぇ!絶対ここに戻ってきて、お前を嫁にする!!」
狐娘「うむ、よい心掛けじゃ。お主が無事此処に戻ってきた暁にはワシは主の妻となってやろう」
青年「おう!」
狐娘「ワシは嘘吐きは嫌いじゃからの。躯になって戻ってくるとかはナシじゃぞ?」
青年「任せとけ!」
狐娘「うむ、無事の帰還を待っとるぞ?」
青年「おう、待ってろよ女房殿!帰ってきたらその晩は寝かさんぞぉ!!」
狐娘「き、気が早いわい、痴れ者め!」
――――――
―――
―
狐娘「……行ったか」
狐娘「やれやれ、母無き彼奴に姉のように、時に母のように接してやったというに」
狐娘「まさかワシを女として見ておったとはのぉ……」
狐娘「母が我が子を男として愛してなんとする、と自制しておったのはなんじゃったのか、まったく」
狐娘「……やはり、抱かれてやるべきじゃったか?」
狐娘「いやいや、彼奴は阿呆じゃから生きて帰らねばワシを抱けぬと言った以上、意地でも帰ってきよるはず」
狐娘「男というのは皆馬鹿じゃからのう。抱かれてやったらやったで『もういつ死んでも悔いはない(キリッ)』」
狐娘「『もう思い残すことはない(キリッ)』とか言うてあっさり死ぬんじゃろうし?」
狐娘「これで……これで良かったのじゃて」
狐娘「……ワシに戦をどうにかできるほどの力があればのぉ。只の化け狐に過ぎぬ我が身の恨めしさよ」
狐娘「一応まじないでもしておくかの。大した巫力もないが」
狐娘「しかしあれからもう一六年か。人の子が一端の大人になるには十分すぎる時間か」
狐娘「確かあれは小雨が降っていて少し肌寒い日のことじゃったか……」
狐娘「出もせん乳を懸命に吸っておる彼奴が何やら無性に愛おしゅうてのぉ――――
一六年前―――
狐娘「ふむ、あれは確か…… 先日次男坊が生まれた家の主か。何故ワシのところに?」
狐娘「聞けば女房殿はその子を産んで死んでしまったとのこと。……わからん、どうして此処に来るのじゃ?」
父親「……お狐様、お狐様。いらっしゃいますかや?いらっしゃいますかや?」
狐娘「うむ、此処におる。して何用じゃ?」
赤子「おぎゃあ!おぎゃぁあ」
狐娘「おいおい、こんな小雨の中わざわざ赤子を連れてこんでもよかろう。風邪どころでは済まぬぞ?」
父親「もう風邪どころじゃないですだ。お狐様、どうかこの子をお助け下され!」
狐娘「穏やかではないの。どうしたと言うのじゃ?」
父親「実はこの子の母親、あっしの女房はコイツを生んで死んぢまったですだ」
狐娘「……聞いておる。赦せ、何もできなんだ」
父親「そんなことはええです。それよりコイツは母親が居らんくて乳がありません。んで、村には乳の出る女子が今は居りません」
狐娘「……つまり?」
父親「お狐様、この子に乳をやってくだせぇ。おっかあはコイツの代わりに死んだんだ、アイツのためにも絶対にこの子は死なせたくねぇだ!」
狐娘「い、いくらワシとて子も無しに乳は出んわい!」
父親「おねげぇします、おねげぇします!」
赤子「……えひぇ」
狐娘「……でぇぇい!やるだけやったるわい!!」
―――
――
―
??「おぎゃあ!おぎゃぁあっ!!」
狐娘「ふっ、いくら吸われてもやはり出るはずもないか。すまんのぉ……」
父親「そんなぁ!」
狐娘「そんなぁ、と言われてものう」
狐娘「こんなに愛らしいのにのぅ…… どうにかできぬものか……」
父親「お狐様ぁ……」
狐娘「……おばば様に聞いてみよう。あの方なら乳の代わりになるようなものを知っておられるかもしれん」
父親「お狐様!」
狐娘「よし、ワシの身体にその子を強く結わえよ!急がねばならぬ、獣の姿で駆ける!」
父親「お狐様、ありがとうごぜぇます!ありがとうごぜぇます!」
狐娘「その言葉はこの子が助かった時に改めて聞く!」
―――――
―――
―
ばば「で?人の子の為に此処まで獣の姿で奔ってきたと」
ばば「乳を吸わせたくらいで情を移しよって、愚か者が」
狐娘「お叱りは後でいくらでも受けましょう。それよりどうにかなりませぬか、おばば様?」
ばば「乳の代わりになるモノをこさえることはできるがの、なぜに縁も縁もない人の子のためにワシが用意してやらねばならぬのじゃ?」
狐娘「ぐ…… それは……」
ばば「じゃが、お主もいずれ子を成すであろう?その時必要な知識ではある。作り方と材料を教えてやるのは吝かではないぞ?」
狐娘「おばば様!」
ばば「しかし聞いてどうする?お主が居る土地では要るものも満足に用意できんじゃろ?」
狐娘「ぐぬぬ…… おばば様、少し分けてはいただけませんか?」
ばば「じゃーから、ワシはその子には何の義理もない!その子を助けたいなら自分で何とかせぇ!!」
狐娘「おばば様!」
ばば「わめくな!乳の代わりが作れんのなら乳そのものを自前で作りゃあええだけの話じゃろ」
狐娘「は?」
赤子「……えひぇ」
ばば「本来なら乳の出が悪い娘のための秘術じゃが、それを使えば子を産んだことのないお主でも乳が出るようになるじゃろう」
ばば「じゃが、出るはずもないものを絞り出すからにはお主の身にどんなことが起きるやもしれん。それでもよいのか?」
狐娘「……構いませぬ、それでこの子が助かるならば」
ばば「ふん、この変わり者め」
狐娘「私が偏屈なのは、おばば様も昔からよく知っておられましょう?」
ばば「そうじゃの」
赤子「うひぃ……」
狐娘「此奴め、笑うな」
―――――
―――
―
狐娘「まぁ、おばば様のあの術のおかげで彼奴の命は繋がった」
狐娘「無理矢理乳を出したせいで暫く四六時中頭痛に襲われたがの……」
狐娘「世間では母親は我が子を腹を痛めて産んだ子と言うらしいが……」
狐娘「ワシにとって彼奴は頭を痛めて育てた子、というところじゃの」
狐娘「……なんちて」
―――・一月後
狐娘「既に何人も死んでおるというのに…… まだ戦は終わらんのか」
狐娘「全く、愚かなるは武士と名乗る連中よ。戦が生み出す悲哀・憎悪をまるで理解しようとせぬ」
狐娘「ああ、息子の死を嘆く母親の悲しみが此処まで聞こえてくるようじゃ」
狐娘「母親と言えば、彼奴の歳が五つ程のときじゃったか――――
十一年前―――
童子「…………」
狐娘「およ?随分と泣き腫らした顔をしておるの。なんぞあったか?」
童子「…………」
狐娘「……ワシの耳は見ての通り大きくて音も声もよく聞こえるのじゃが、だんまりされては何も聞こえぬぞ?」
童子「……アイツらが」
狐娘「彼奴ら……?」
童子「アイツらが、俺のおっかあは親父に愛想を尽かして他の男と逃げたんだって……」
童子「俺も兄ちゃも、親父の子だから捨てていかれたんだって」
狐娘「なんと根も葉もないことを言いよる奴らか。そんなはずがなかろう?」
童子「じゃあ、なんでだ!なんで俺にはおっかあがいないんだ!?」
童子「兄ちゃは覚えてないって言うし、親父はそんなことはないって言うだけで何も教えてくれん!」
狐娘「そ、それはじゃのう……」
童子「お前は知ってるのか!?」
狐娘「い、いや、それはな…… それは……」
童子「やっぱりお前もごまかすのか!お前も村の大人たちと一緒だ!ごまかそうとするだけで何も言わん!」
狐娘「……そうじゃのう、実際言いにくいことじゃしのう。村人がごまかすのも当然か」
童子「……やっぱりアイツらの言うとおり、おっかあは俺や親父たちを見捨てて」
狐娘「いーや、それは違う。断じて違う」
童子「ならどうしてだ?知ってるなら教えてくれよ!」
狐娘「……本当に知りたいか?」
童子「おう!当たり前だ!!」
狐娘「うむ、ならばまず……」
童子「……まず?」
狐娘「ワシをお前呼ばわりすな!目上の者に物を尋ねるときは相手に敬意を示せ」
童子「……お狐様、俺にはおっかあがいないわけをどうか教えてください」
狐娘「……よかろう。では、明日また此処に参れ。その時に教えてくれようぞ」
童子「明日ぁ!?何だよお前、結局ごまかす気じゃねぇか!!」
狐娘「お前呼ばわりするなと言うに!ええか、お主の母のことは繊細な話なのじゃ。気が荒ぶっとる今のお主には迂闊に話せんのじゃ」
童子「……ほんとに明日聞かせてくれるのか?」
狐娘「ワシは嘘が嫌いじゃ。明日にはちゃんと話してやるわい」
―――・翌日
童子「お狐様ぁー、来たぞぉー!」
狐娘「昨日よりは落ち着いとるが、まだ気が昂ぶっとるの。ほれ、大きく息を吸えい」
童子「すぅ~」
狐娘「うむ、ゆっくりと吐け」
童子「はぁ~…… よし、教えろ!」
狐娘「お主、目上への敬意はどうした?」
童子「お狐様、約束通り教えてください」
狐娘「まったく…… まぁええ、お主の母のことじゃが……まずこれだけはよう心得ておけ」
狐娘「お前の父親も村の者も決してお主が嫌いだとか、意地悪だとかで教えんかったのではない、お主のことが好きだからこそ何も言わんかったのじゃ」
童子「どういうことだ?」
狐娘「今はまだわからんでもええ。ただそのことを決して忘れずに、心してワシの話を聞くのじゃぞ?」
童子「……わかった」
狐娘「うむ、よい返事じゃ」
狐娘「それでは話すとするかの…… お主の母はな――――
――――――――――――――
――――――――
――――
―
狐娘「――――と、いうわけじゃよ。お主に母が居らんのは」
童子「……俺を、俺を産んだからおっかあは死んじまったのか?」
狐娘「それは違う。よいか、お主の母はお主の『せい』で死んだのではない。お主の『ため』に死んだのじゃ、お主を生かすために」
童子「ぅあ、うぇぇええ……」
狐娘「辛かろう、悲しかろう?故に父親も村の者もこのことをお主に言わんかったのじゃ」
狐娘「……お主に今のような思いをさせとうはなかったからじゃ」
童子「うっ、う、うわぁぁあああ……」
狐娘「思い切り泣くがよい、泣いて泣いて泣くがよい。ワシの胸でよければ貸してやる」
狐娘「そして泣き終わったらよく考えるのじゃ。お主の母が文字通り命と引き換えに与えてくれたその生をどう活かしていくかを」
―――
――
―
童子「……ぐじゅっ」
狐娘「いっぱい泣いたのう…… で、お主はこの先その命をどう活かす?」
童子「……まだよくわかんねぇ。でも、絶対粗末にだけはしねぇ」
狐娘「そうじゃ、何か大きなことを成すとか人のために尽くすとか立派なことをせねばならんわけではない」
狐娘「ただその命、決して無駄に使うてはならん。それが一番大事じゃ。よいな?」
童子「……うん」
狐娘「ええ子じゃのう、お主のおっかあも草葉の陰で喜んでおろう。ほれ、抱っこでもしてやろうかの!」
童子「…………」
狐娘「遠慮せんでもええ、お主羨ましかったんじゃろ?母に抱かれる子らが」
童子「……うん」
狐娘「ほっほ、かわええのう。おお、よしよし」
童子「お狐様あったけぇ。やわらけぇし、いい匂い……」
狐娘「そうかそうか」
童子「……なぁ、おっかあもこんな感じだったのかな?」
狐娘「さてのう、そこまではわからん」
童子「……昔、誰かにこうしてもらった気がする。おっかあかな?」
狐娘「ワシかもな。赤子だったお主に乳をやったのはワシじゃからの」
童子「そっか、だから懐かしい感じがするのか」
童子「…………」
童子「……なぁ、お狐様」
狐娘「なんじゃ?」
童子「二人きりの時は、おっかあって呼んでも…… いいか?」
狐娘「それはいかん、お主の母はただ一人じゃ。ワシなんぞをおっかあと呼べばお主の母が悲しむぞ」
童子「……うん」
狐娘「だが、お主がワシを母のように慕うてくれる分には構わん。甘えたくなればいつでも来て良いぞ?」
童子「……うん」
―――――
―――
―
狐娘「あの頃はワシを母親のように敬い慕ってくれとったのにのう」
狐娘「しばらくしたら急によそよそしくなりおって……」
狐娘「子の親離れじゃと嘆きつつも喜んでおったというに、まさかワシに恋慕してのことじゃったとはの」
狐娘「……思い返してみれば、そんな気もするのぅ――――
五年前―――
狐娘「……およ、これはまた久しぶりの顔じゃのう」
少年「!?」
狐娘「まったく、近頃急に姿を見せんようになりおってからに……」
少年「い、いいだろ!別に、何でも……」
狐娘「何ぞあったのかえ?」
少年「うわ、わわっ、ちっ、近い近い!け、獣臭いんだよ!近づくんじゃねぇ!!」
狐娘「ま、確かにワシゃ獣じゃがそんなに臭うかのう?鼻はお主らより効く筈なんじゃが」
少年「うるせぇ!獣は獣だ!!そのくせこんなにデカい乳しやがって!!!」
狐娘「な、何をするんじゃーーーっ!!親しき仲にも礼儀ありという言葉を……」
少年「聞く耳持つか!!」
狐娘「あ、こら、待て!」
狐娘「……久方ぶりに顔を見せたと思えば憎まれ口を叩きおって」
狐娘「まぁ、親離れの時期が来たということか。中身はまるで成長しておらんがの」
狐娘「……ちと、寂しゅうなるの」
狐娘「しかし、ホントに臭うのかワシ?自分の匂いには自分では気付けぬものじゃとも聞くが……」
―――――
―――
―
狐娘「……あの獣臭いという言葉、照れ隠しの嘘だったのかの?」
狐娘「もしそうだったのならあの嘘吐きめ、どうしてくれようか……!」
狐娘「で、去年くらいからまたちょくちょくワシの処に来るようになって、見た目もワシ好みの男になりよって」
狐娘「ああ、此奴も生意気盛りも終わって背伸びもやめて漸く大人になったのう、などと思っておったんじゃが」
狐娘「彼奴め、ワシに気に入られようと、嫁にしようと通い詰めとったんじゃな?」
狐娘「息子のような男に何しなを作っておるんじゃ、色目を使ってどうするんじゃとか考えて自制しておったワシは一体なんだったんじゃろか」
狐娘「あー、ワシが駄目な母親じゃったから彼奴も母に懸想するような駄目息子になってしもうたのかのー」
狐娘「……なぁ、お主の母はお主を戦で死なせるために生んだのではないぞ?」
狐娘「何か大きなことを成すとか人のために尽くすとか立派なことをせんでもええ」
狐娘「命を粗末にすることなく、ただ……」
狐娘「ただ、無事に帰ってくるんじゃぞ……」
――――・二月後
狐娘「……おお、村の若者集が帰ってきたか!」
狐娘「彼奴のことじゃ、いの一番にワシの処に来るであろうな」
狐娘「……えぇと、とりあえずは身を清めねばな!香も炊かねばなるまいて」
狐娘「ああ!きっと飯も食わずに来るじゃろうし何か用意しておいた方が…… ええい、忙しい!」
狐娘「まったく、帰ってくるなら来ると伝えてくれればもっと余裕をもっていろいろ準備ができたというに……」
―――・二週間後
狐娘「……で?必ず帰ってくると言うてこれか?大嘘吐きめ」
墓石「…………」
狐娘「まったく、嘘は嫌いじゃと散々言っておいたじゃろうが…… 馬鹿者め」
男性「もし…… お狐様でしょうか?」
狐娘「ん……?ああ、お主は確か此奴の兄じゃったか」
男性「はい、貴女のことはこの愚弟から何時も聞かされておりました」
狐娘「……気の毒にの」
男性「それが戦というものですから。しかし、まさか母親より若くして死ぬとは…… とんだ親不孝者ですよ、こいつは」
狐娘「そうじゃな…… まったくそうじゃな」
男性「しかし、愚弟の墓を参るのは身内くらいだと思ってましたが、まさかお狐様に来てもらえるとは」
狐娘「なに、手を合わせてやるぐらいには縁があるでな」
男性「この馬鹿、貴女様と夫婦になるなどともうしておりましたが、ご迷惑だったでしょう?」
狐娘「……ふふっ、なに、たかが小童の戯言よ。迷惑というほどのものでもなかったわ」
男性「そうですか…… そうであれば、こいつをもらってやってはいただけませんか?」
狐娘「これは……?」
男性「あいつの髪です。骸を担いで戦をするわけにもいかず、せめてこれだけでもと茂作が」
狐娘「……そうか」
男性「これぐらいならお傍に置いていただいても邪魔にはならぬかと」
狐娘「随分と小さくなりおったのう…… ま、これぐらいならもろうておいてやろう」
男性「ありがとうございます。これで愚弟の御霊も少しは浮かばれましょう……」
―――
――
―
狐娘「――――お主の兄はもう行ったな」
狐娘「阿呆め、これで帰ってきたとでも言うつもりか?」
狐娘「こんな姿で帰ってきたなどと…… そんな話がまかり通ると思うてか!!」
狐娘「馬鹿者、大馬鹿者!バカタレ!!ワシャ嘘吐きは嫌いだと言うたじゃろう!阿呆が!!」
狐娘「必ず帰ると言うたじゃないか、嘘吐きめ!嫌いじゃ、大っ嫌いじゃ!!」
狐娘「お主なんか……大っっっ嫌いじゃあ!!!」
狐娘「というかここはID腹筋スレじゃぞ!?なんでシリアスな展開になっとるんじゃ!>>1にしっかりと書いてあろうが!わからぬなら我らの台詞の一文字目を上から順に縦読みせい!!」
青年「おう、【世う此そあいで―復金すれヘ】=【ようこそあいでーふっきんすれへ】=【ようこそID腹筋スレへ】……って書いてあるな」
∧,,∧
( `・ω・)ようこそID腹筋スレへ
/ ∽ |
しー-J
ここはとりあえず書き込み、出たIDの数字の回数だけ基本の100回に+αして腹筋をするという、
きのこの山派なトレーニングスレです。
例1 ID:wwh7KM12 ID抽出 の場合 7+12=19 なのでそこに基本の100回を足して119回頑張りましょう。
例2 ID:bicycle. ID抽出 の場合 数字がないので基本の100回頑張りましょう。
さあ、最低100回は腹筋するがよい↓(`・ω・´)
47 : 以下、名... - 2014/08/02 07:03:42 yB9dTNAM 38/42(;!◇!)ナ,ナンダッテー!?!?
48 : 以下、名... - 2014/08/02 08:04:24 5LXAlkJs 39/42すげえwww
こんなもんわかるかwww
50 : 以下、名... - 2014/08/02 08:53:02 XsmInKmA 40/42これは秀逸
やあ (´・ω・`)
ようこそ、ID腹筋スレ休憩室へ。
このプロテインは一杯目は無料だから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このスレタイを見たとき、君は、きっと「どうせID腹筋スレだろ?」という「あきらめ」と、
「もしかして……」と言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、このスレを作ったんだ。
じゃあ、注 文 を 聞 こ う か 。
セク○スはいるかい?(´・ω・`)