1 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:00:40.84 pX61vP8NO 1/29

「よいしょっと。少し買いすぎちゃったかな。」

 学校の帰り道に、夕飯の食材を買いに寄るのは、私の日課みたいな物です。

 当然お買い物にも慣れている訳ですが、時にはこんな風に買いすぎてしまう事もあります。

 両親が留守がちな為、家計を預かる身としては、お買い得品には目がありません。

 今日は行きつけのスーパーが特売日だったので、エコバッグは満タン状態です。

「でも、これでお姉ちゃんに、美味しいものを沢山作ってあげられるよ。」

 これもお姉ちゃんのためです。

元スレ
憂「恋してた」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1288350040/

4 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:03:01.53 pX61vP8NO 2/29

 それは、エコバッグを肩に担いで、帰路に着こうとした時でした。

「平沢?」

 久しぶりに聞く声のした方を振り返ると、そこにいたのは、随分背も伸びてるし、顔もすっかり大人びた印象を受けましたが、間違いなく中学時代の同級生の男の子でした。

「わぁ、久しぶりだね。」

 彼の方ももしかしたら、私に少し見違えた印象を受けていたのでしょうか?
 私が応じると、ホッとした様子です。

「つい声を掛けたけど、振り向いた平沢の顔を見て一瞬、人違いしたかと思ったよ。」

5 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:04:50.27 pX61vP8NO 3/29

「キミこそ随分見違えたよ。」

「お互い久しぶりだからな。元気そうだな、平沢。」

「そうだね。キミも元気そうで何よりだよ。」

なんだか少し照れくさそうに、ぶっきらぼうな喋り方は、以前とあまり変わらないみたいです。

「重そうだな、それ。持ってやるよ。」

「ありがとう。でも、平気だよ、これくらい。」

「そうか。なんかそういう所は、昔と変わらないな。」

そういうキミも、少し強引さが足りない所なんかは昔のままだよ。

6 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:06:18.92 pX61vP8NO 4/29

 それから、私達は歩きながら色々とお話をしました。

 互いの高校生活や、中学時代の同級生達の近況報告など、他愛もない会話を交わしていたのですが、私の家が近付いた頃に突然、彼の言葉が止まりました。

ほんの少しの間を置いて、彼は口を開きます。

「平沢は、今付き合ってる奴とかいるのか?」

「え?」

思わず聞き直してしまいそうになりましたが、その前に彼が言葉を続けます。

「悪い。突然過ぎだよな。」

確かに驚きましたが、謝られると逆に困ってしまいます。

8 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:07:50.45 pX61vP8NO 5/29

そんな私の思いも気づかなかった様子で、彼は一人で続けます。

「あのさ、もし良かったら、今度の日曜日にもう一度会ってくれないか?」

「…今すぐ返事しないと、いけないのかな?」

「いや。そうだな、俺のメアド教えておくから、良ければメールしてくれないか?」

「うん。」

そして、彼のメールアドレスだけを、赤外線で受け取りました。

別れ際に、彼は一言だけ。

「駄目なら返事はしなくていいからさ。それじゃ。」

「うん、じゃあね。」

男の子は突然だ、なんて少し苦笑いです。

10 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:09:32.55 pX61vP8NO 6/29

家に着くと、まずは買ってきた食材をしまいます。
今夜使う物を除いて、お野菜は野菜ボックスへ、お肉やお魚は小分けするなどの処理を施し、明日使う分はチルドルームへ、その他は冷凍室です。

それが終わると、次はお洗濯物を取り込みます。
今日は快晴の予報だったので、今朝から干していったお洗濯物は、ふかふかふわふわで、お日様の匂いがします。

「ふふっ、お姉ちゃんみたいな匂いだね。」

取り込んだお洗濯物をたたみながら、ふと先程の件を思い出していました。

11 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:11:16.42 pX61vP8NO 7/29

彼とは、中学時代も特別仲が良かった、という訳でもありません。
ただ、他の男子と比べれば、結構会話を交わしたり、一緒にクラスの委員を勤めたりした事も思い出しました。

「でも、あの頃からは、今日みたいな事は想像も出来ないよ。」

たたみ終わったお洗濯物を持って、部屋へと向かいます。
途中、お姉ちゃんの部屋へ寄って、お洗濯物をしまうついでに、朝起きたままのベッドを直します。

「ふふっ、やっぱりお姉ちゃんは、お日様の匂いがするよ。」

12 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:12:45.59 pX61vP8NO 8/29

一瞬その匂いの誘惑に負けて、睡魔に襲われそうになりましたが、まだお夕飯の支度が残っています。
少し後ろ髪を引かれつつも、自分の部屋へと戻り、お洗濯物をしまって、制服から私服へと着替えます。

一瞬、ドレッサーの鏡に映った自分の姿を見て思いました。

「確かにあの頃とは、見違えたかな。」

ほんの少しだけ、鏡の中の自分の笑顔に満足して、お台所へと向かいます。

今日は秋らしく秋刀魚です。
お姉ちゃんは、お魚の頭が苦手なので切り落とし、ついでに内臓も奇麗に抜いておきます。

13 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:14:03.14 pX61vP8NO 9/29

因みに私の分は、内臓はそのままです。
冷・解凍物ならいざ知らず、この時期の生秋刀魚のワタは、ほんのり苦くて私は大好きです。
 大根おろしとスダチも、忘れてはいけません。

それから、お姉ちゃんは秋刀魚だけでは足りないので、ご飯を丼物にしてあげようと思います。
お魚にお肉もあれなので、竹輪と椎茸、シメジを軽く炒めたものをダシにくぐらせ、溶き玉子でとじれば、出来上がりです。

勿論、これはお姉ちゃんが帰って来て、食卓につく寸前に作業をする訳です。
後はお味噌汁と白菜の煮浸しで完成です。

15 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:15:32.42 pX61vP8NO 10/29

「ただいま~。おなかすいたよぉ、う~い~。」

「お帰りなさい、お姉ちゃん。すぐにお夕飯の支度は出来るから、着替えてきてね。」

「うん。おっ!この匂いは、サンマさんだね。」

「そうだよ。ちゃんと顔と手も洗って、うがいもしてね、お姉ちゃん。」

「了解ですっ!」

相変わらず、お姉ちゃんは可愛いです。
無事支度も終わり、二人で食卓を囲んで、お姉ちゃんの今日一日のお話を聞きながら食べるお料理は、自分が作った以上に美味しくなるから不思議です。

18 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:17:24.49 pX61vP8NO 11/29

「ごちそうさま~。美味しかったよ、うい~。」

「どういたしまして。もう、食べてすぐ寝たらウシさんになっちゃうって、何度言ったら分かるのかな、お姉ちゃん?」

でも、床でゴロゴロしてるお姉ちゃんは、物凄く可愛いです。

「もうすぐお風呂も沸くからね、お姉ちゃん。」

「うん。お風呂から出たら、アイス食べてもいい?」

「うん、いいよ。」

「わ~い。お風呂見て来るね~。」

夏と違って、秋のお姉ちゃんは少し行動派です。

20 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:18:51.68 pX61vP8NO 12/29

「沸いてたから、入ってくるね~。」

「うん。ゆっくり暖まってきてね。」

「は~い。」

お姉ちゃんがお風呂に入ってる間に、私は食卓の後片付けと、洗い物を済ませてしまいます。

大体いつも、私のお片付けが終わる頃に、お姉ちゃんがお風呂から出てきます。

「う~い~、アイス~。」

「はーい、お姉ちゃん。」

「ありがとう、うい~。ん~、冷たくて美味しいよぉ。」

お姉ちゃんのこんな笑顔を見ているだけで、私もなんだか幸せな気分になれます。

22 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:20:14.22 pX61vP8NO 13/29

お姉ちゃんの食べ終わったアイスの容器を処分して、私も入浴する事にします。

「それじゃ、お風呂に入ってくるね。」

「うん。私も部屋に戻って、勉強しなくちゃ。」

三年生のお姉ちゃんは、最近では受験勉強にも、本腰を入れて取り組んでいます。

お姉ちゃんは、やる時はやるんです!

一日の仕事を終えて、入浴する瞬間は、私が家計を預かる平沢憂から、ただの平沢憂へと戻る瞬間でもあります。

24 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:21:40.87 pX61vP8NO 14/29

湯船で身体を伸ばして、のんびりしてると、なんだかホッとするよね。

「んー、生き返るよ。」

湯船で目を閉じると、うっかり眠っちゃいそうになります。

「いけない、いけない。また風邪をひいちゃうよ。」

ちょっぴりの未練を振り払って、お風呂を出ると、脱衣所の鏡に写る自分を見て、また不思議な気分になりました。

「やっぱりあの頃とは、見違えるよね。」

 彼はそんな意味で言ったんじゃないよ、きっと。

「迷ってる・・・のかな、私。」

25 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:23:00.83 pX61vP8NO 15/29

部屋に戻ってベットに横になると、帰り道の事を思い出して、ちょっぴり溜め息です。

「ただの中学時代の同級生と、日曜日に会うだけなら、別に考えるまでも無いんだけどな。」

『平沢は今、付き合ってる奴とかいるのか』

「ただ会うって訳じゃないよね・・・。」

『駄目なら、返事はしなくていいからさ。』

「ふふっ。少し強引さが足りない、なんて失礼だったかな。男の子って、変わるんだね。」

携帯のアドレス欄を開いて、ふと思いつきました。

「こんなお話が出来るのは、やっぱり・・・。」

26 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:24:13.90 pX61vP8NO 16/29

携帯の発信を押すと、呼び出し音5回で通話がつながります。

『なに、憂?』

「あ、梓ちゃん。ごめんね、夜遅くに。」

『あはは、夜遅くって、まだ9時過ぎだよ。』

「あ、そっか、えへへ。」

『ん?何か相談事?』

「凄いね、なんで分かったの?」

『なんだかんだ言って、もう2年近くも一緒にいるからね。雰囲気で分かるよ。』

「ふふっ、頼りになるね、梓ちゃんは。」

『おだてたって、何も出ないよ。話くらいなら、いくらでも聞くけどね。』

27 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:25:38.61 pX61vP8NO 17/29

「ありがとう。それじゃ遠慮無く、甘えちゃうよ。」

『どうぞ、憂姫。』

「うん、あのね・・・」

今日の出来事を包み隠さず説明すると、梓ちゃんは、思わぬ反応を示します。

『・・・あのさ、憂?これって電話で済ませる話?』

「へ、変かな?」

『あー、もう。ちょっと切るよ!』

「あ、梓ちゃん?ホントに切れちゃったよ。」

何か用事でも、思いついたのかな?

15分程すると、携帯が着信を告げました。

29 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:26:58.71 pX61vP8NO 18/29

「梓ちゃん、どうしたの?」

『はぁはぁ。着いたよ。』

「着いた?」

『げ、玄関、あっ、開けてくれるかな。』

「え?ウチの前なの?」

『そうだよ。』

「わっ、ごっ、ごめん。すぐ行くよ。」

携帯を切って、玄関にダッシュ。ドアを開くと、確かにいました。

「唯先輩は?」

「部屋でお勉強だけど?」

「よし!それじゃ気づかれない内に、憂の部屋へゴー。ほら、憂も急ぐ!」

「え、あ、うん。」

30 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:28:49.75 pX61vP8NO 19/29

 部屋に入ると、梓ちゃんはぐったりです。

「はー、自転車全力で漕いだよー。足がパンパンだー。」

「いきなりだから、驚いたよ。あっ、お茶でも入れてくるね。」

「あー、いいから。来る途中に買ってきたよ、はい。」

そう言って差し出したコンビニ袋には、確かに色々と入ってるけど・・・。

「適当にカゴにほりこんだからさぁ。何を買ったかイマイチ分かってなかったりして。」

「オレンジジュースと紅茶に、スルメイカとチーカマ・・・不思議な組み合わせだね。」

31 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:30:30.67 pX61vP8NO 20/29

「そんな事はどうでもいいから、話の続きをしよう!」

「えっ!もしかして、それで来てくれたの?」

「当然だよ。だって私達の周囲で、恋バナなんて滅多に無いどころか、初めてだよ!電話なんかで済ませられないって。」

「きょ、興味津津だね。」

「当然!で、中学のアルバムは?」

「あるけど?」

「ほら、さっさと出すっ!」

「う、うん。ちょっと待ってね。」

「あ、私、紅茶飲むね。」

どうやら、ノリノリみたいです。

32 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:32:40.28 pX61vP8NO 21/29

「はい、アルバム。」

「ん、よし、憂のクラスっと。おー、純が変な顔だよ!」

「あの、梓ちゃん。話がずれてるけど?」

「あ、そうだった。男子は・・・ふむふむ、大体分かった。」

「え?」

「彼でしょ?」

梓ちゃんの指差すその姿は、間違いなく彼です。

「すっ、凄いね!」

「こんなの簡単だよ。だって、まずは半数以上は問題外だし。」

「・・・問題外。」

33 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:34:11.88 pX61vP8NO 22/29

「残るのは10人程だけど、この辺りのスカしたイケメン系は、憂の趣味じゃ無さそうだし。」

「・・・スカした。」

「後は4人、でもこの子みたいな可愛い系は、憂は唯先輩で充分間に合ってるでしょ。」

「凄い理論だけど、反論は出来ないかな。」

「だったら、このちょっと朴訥系の彼だよね。うーん、悪くないけど、微妙に垢抜けない辺りが逆に、憂らしい気もするか。」

「あはは、褒めてるのか、けなしてるのか微妙だよ、それって。」

「で、返事はどうするの?」

34 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:35:47.97 pX61vP8NO 23/29

「うん。ただ会うだけなら問題無いんだけどね。」

「そんな訳無いって!間違いなく告白コースだよ。」

「・・・だよね。」

「当然だよ。これでただ懐かしかったから、なんて言う男がいたらタダの馬鹿だよ。」

「・・・うん。」

「で?憂はどう思ってる訳?」

「それが、よく分からないって言うのかな・・・そんな感じだよ。」

「ふーむ。即答もしなかったけど、メアドは受け取ったって事は、悪い気もしないって感じかな?」

35 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:37:06.97 pX61vP8NO 24/29

「・・・やっぱりそうなのかな。」

「まぁ、優しい憂の事だから、その場で断れなかったって線も捨て難いけどね。」

「うん。でも、それってなんとなく酷いよね。」

「ん?そんな事無いよ。もし私が憂の立場でも、やっぱり即答は無理だよ。」

「そっか。」

「そうだよ。でも、なかなかやるよね。ダメなら返事はいらない、なんて逆に断り辛いって感じでさ。」

「うん。」

「あー、でもなんか複雑な気分だよー。」

「複雑?」

36 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:38:48.34 pX61vP8NO 25/29

「だって、憂に彼氏が出来ちゃうかも知れないんだよ?なんか、嬉しい様な、寂しい様な・・・あー、ダメだー、なんか父親気分だよ。」

「あはは、なんだか梓ちゃん面白いよ。」

「あー、ごめん。今ちょっと見られたくない顔してるよ、私。」

そう言って、本当に顔を手で隠して、仰向けに寝転がる彼女を見ると、なんだか不思議な悪戯心が湧いてきます。

「どれどれ、見せてみなさい!」

彼女に覆い被さる様にして、無理矢理その手をのけちゃいます。

「やー。見ないで、絶対変な顔をしてるよー!」

37 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:40:09.02 pX61vP8NO 26/29

「だーめ。見ちゃうもん・・・あ。」

それはなんと表現したらいいのか、難しいです。
強いて言うなら、少し寂しい微笑みの様な感じかな?

「変な顔でしょ?」

「ううん。あの・・・。」

この感覚は、なんだろう?
ただ、なんだか物凄く・・・胸の奥が締め付けられるような。
 初めて感じる衝動に、私はいつしか身を委ねていました。

「ねぇ、梓ちゃん。あの・・・ごめんね。」

「ん?別に遠慮無く言ってくれていいよ。憂になら、何を言われても怒らないから。」

38 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:41:47.41 pX61vP8NO 27/29

「違うの。その、言うというより、するというか。」

「ん?よく分からないけど、それでも平気。今更、遠慮なんてしないでよ。」

「そっか。それじゃ、ごめんね、梓ちゃん。」

そして私はただ、彼女の唇に自分の唇を重ねました。

目をつぶっていたので、彼女がどんな顔をしているか分からないけど、押し退けられる事も無く、互いの呼吸は止ったまま。
少し息苦しくなるくらいの時間を経て、そっと彼女の唇から離れました。

「・・・ごめん。・私・・。」

39 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:45:10.51 pX61vP8NO 28/29

彼女は、固まった表情のまま、じっと私の目を見つめています。

「・・・」

「ん。ごめん、5秒待ってくれるかな?」

「・・・うん。」

ほんの5秒が永遠に感じられる瞬間を経て、彼女は口を開きました。

「よし。えーっと、なんだろ?遠慮しないでって言ったから、不意打ちじゃ無いし。でも、心の準備が出来て無かったから、やっぱり驚き、かな?」

「ごめんね。私も全然、よく分からないっていうか。」

「そんなに謝らなくていいよ。うん、やっぱり驚きだ。」

41 : 以下、名... - 2010/10/29(金) 20:46:35.31 pX61vP8NO 29/29

「驚き、だよね。」

「お互いにね。参ったな、なんだか彼に悪い気がしてきたよ。」

「どうして?」

「うん。変な話だけどさ、やっぱり憂を渡したくないかな。」

「そっか。」

「うん。嫁入り前の駄目な父親気分。いや、違うな。」

「違う?」

「単純に憂を好きなだけだよ。」

「私もだよ。今まで気づかなかったけど、梓ちゃんの事が好きなだけみたい。」

「分かんないもんだよね、近くにいるって。」

「そうだよね。」


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