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第一話 「お前は今日死ぬ!」
第二話 「セックスしないと死ぬ!?」
第三話 「褒められないと死ぬ!」
第四話 「約束破ると死ぬ!」
第五話 「優しくしないと死ぬ!」
第六話 「大切にしないと死ぬ!」
第七話 「決断したら死ぬ!」
第八話 「姉に勝たないと死ぬ!」
447 : VIPに... - 2014/06/28 21:52:19.91 zMs6GVqAO 949/1238

勇者「ふわぁ~あ……天童、おはよう……」

天童「おっ、ようやく起きたかっ! 今日も一日、頑張ろうぜっ!」


ーー俺の名は勇者。そして、隣にいるコイツの名は天童


勇者「なぁ、天童……? ようやく、魔王城が見えてきたな……?」

天童「あぁ、まだ豆粒みてぇにしか見えねぇけどな……あそこが、魔王城だ……」


ーーダメ人間だった俺は、神様から与えられた命題をクリアしながら、ここまでやってきた


勇者「……」

天童「おい……? 何、ボケっとしてんだ? まだ、寝ぼけてんのか?」


ーー命題はクリア出来ないと命を失ってしまう、厳しい物だけれども、周りの仲間に助けられ……俺は真人間に近づいている


勇者「……あそこで、終わりなんだね?」

天童「……あぁ、あそこがこの旅の終点だ」


ーー残る命題は二つ……後少しなんだ……俺が真人間になるのも……そして、この旅も

448 : VIPに... - 2014/06/28 22:02:00.33 zMs6GVqAO 950/1238

天童「ところでよぉ? 勇者?」

勇者「……ん? どうしたの?」

天童「おめぇ、まだ寝ぼけてんのか?」

勇者「えっ……? なんで、そんな事言うの?」

天童「いや、額に張り付いてる、ソレ見てみろよ? 何でそんな所に張り付いてるんだよ、ソレ?」

勇者「……そういや、なんか視界が悪いと思ってたんだよ。 俺の顔に、何ついてんだろ?」ピラッ

天童「……」

勇者「ん……? 封筒……? って、コレ命題じゃねぇかっ!?」

天童「来てんだよ、来てんだよぉ! もう、とっくに命題は来てんだよぉっ!」ニヤニヤ

勇者「ねぇ、俺ずっとコレつけて喋ってたの!? 最初のやりとりさぁ……!? 改めて見るとすげぇ、格好悪くない!?」

天童「細けぇ事は気にすんじゃねぇよっ! よしっ! 早速見てみようぜっ!」

勇者「も~う……もう少しだってのに……俺、いつも決まんねぇんだよなぁ……」ガサゴソ

449 : VIPに... - 2014/06/28 22:05:11.38 zMs6GVqAO 951/1238






勇者
X月X日 午後10時までに

他人を改心させないと即・死亡!






450 : VIPに... - 2014/06/28 22:13:16.58 zMs6GVqAO 952/1238

天童「ふ~む……『他人を改心させないと即・死亡』か……」

勇者「他人を……改心させる……?」

天童「今、午前7時だから後15時間……だな……?」

勇者「たった、15時間でよぉ……? 他人を改心させるなんて、ちょっと無理があるんじゃね?」

天童「……確かに、この命題はおめぇは難易度が高ぇかもしれねぇな?」

勇者「……えっ?」

天童「だけど……残りの命題は後二つなんだし……この命題も、しょうがねぇなぁ……」

勇者「おいおいっ! ちょっと待てよちょっと待てよっ!」

天童「……あぁ? どうした?」

勇者「なんで、おめぇがそんなにネガティブなんだよ! いつもみたいなに背中押してくれよっ!」

天童「……あのな、勇者?」

勇者「?」

452 : VIPに... - 2014/06/28 22:19:44.99 zMs6GVqAO 953/1238

天童「……改心って何かわかるか?」

勇者「そんなの、俺にだってわかるよ!」

天童「文字通り……心を……改めるって事だ」

勇者「だから、知ってるっての! おめぇは国語の先生かっ!」

天童「今まで、お前はよぉ……?」

勇者「……ん?」

天童「今までの命題で……誰かに助けられて……ここまで成長して……心を改めて変わってきたんだ。なっ?」

勇者「……うん」

天童「……つまり、おめぇは改心させられる立場だったってワケだ?」

勇者「……」

天童「そんな、おめぇがよぉ? 今度は誰かの心を改めさせないといけない……つまり、改心させる立場に回るって事だ?」

勇者「……なるほど」

天童「おい、勇者? この命題……甘く見てると、痛い目に合うぞ?」

勇者「……」

453 : VIPに... - 2014/06/28 22:27:13.06 zMs6GVqAO 954/1238

勇者「……まぁ、でもさ?」

天童「……ん?」

勇者「こうやって、命題が来たって事は……これにも、何か意味があるって事なんだろ?」

天童「……そうだ」

勇者「俺は確かに……今まで、皆がいたからこそ、変われた……改心させられる立場だった……」

天童「……」

勇者「だけどさ? この命題にも、意味があるんだったら……やってみるしかないよ? 今度が俺が改心させる立場に回ってみせる」

天童「……」

勇者「皆が俺の力になってくれたみたいに……俺だって、誰かの力になってみせるよ!」

天童「……なんだよ、わかってんじゃねぇか、おめぇ?」ニヤニヤ

勇者「今、自分に出来る事をやるしかない……だろ?」

天童「そうだっ! その意気なら大丈夫だっ! なんだ、成長してるじゃねぇか、おめぇっ!」

454 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/06/28 22:35:31.44 zMs6GVqAO 955/1238

勇者「じゃあ、天童……? 早速、命題をやろうか?」

天童「……ん?」

勇者「……天童?」キリッ

天童「あぁ? 何だよ、急に真面目な顔しやがって……気持ち悪ぃよ……」

勇者「……ちゃんとしよう? なっ? しっかり生きよう?」

天童「……はぁ!?」

勇者「おめぇはよぉ……? いつもいつも、魔物と戦う時とかさぁ? 一番後ろで見てるだけじゃん?」

天童「な、何言ってるんだよ!? そんな事ねぇよっ!?」

勇者「それじゃあ、ダメだよ? なっ? 男なんだからさぁ? ちゃんと戦おうよ?」

天童「俺はよぉ!? 天使だから、ノーカンだよ、ノーカンっ! 勇者のおめぇが戦えばいいだけの話じゃねぇか!?」

勇者「あっ……! それと、昼飯っ……! これも言いたかったんだよ!」

天童「……あぁ?」

勇者「お前、いつもいつもさぁ……? 変な物頼むじゃん? 昼飯ぐらい普通のランチ定食とか頼もうよ? 俺、仲間として恥ずかしいんだからさ?」

天童「食いたいもん食って何が悪いんだよっ! 昼からガッツリ食ったっていいじゃねぇかよぉ!」

455 : VIPに... - 2014/06/28 22:43:45.31 zMs6GVqAO 956/1238

勇者「それと、さ……?」

天童「なんだよ! まだ、あんのかよっ!」

勇者「おめぇは、命題が来てんのにさ……? な~んで、ネガティブな事、言っちゃうのかな? 今日に限って!」

天童「……あぁ?」

勇者「おめぇはさぁ? 俺のサポートが仕事なんだろ? だったら、俺の上げるような事、言えよ? なんで、ネガティブな事言って、俺のやる気を下げるような事、言うのかねぇ……」

天童「う、うるせぇなっ……! たまにはそういう事だって言うよっ……!」

勇者「おめぇは、そんなんだから、ダメ天使なんだよ……なっ、改心しようぜ? 天童?」

天童「俺を改心させてどうすんだよっ! 俺は、天使だからノーカンだよっ! ノーカンっ!」

勇者「……はは、冗談だって冗談。 でも、こっちの立場って気持ちいいもんがあるね?」クスクス

天童「……俺の立場とるんじゃねぇよ」

勇者「でもさぁ? おめぇ、どうしたんだ? 今日はネガティブな事を言ってよぉ……? いつもウザいくらいにポジティブなのによぉ?」

457 : VIPに... - 2014/06/28 22:53:40.04 zMs6GVqAO 957/1238

天童「カァ~! 『親の心子知らず』とはこの事だなっ! カァ~! 悲しかぁ~! 悲しかぁ~! もう、たまらんっ! たまらんっ!」

勇者「……おめぇは俺の親じゃねぇよ?」

天童「あのなぁ……勇者……? 残りの命題は後、二つだけどよぉ? 命題が終わっても、おめぇには人生が残ってるだろ?」

勇者「うん、そうだね……俺は命題クリアして、生きる価値のある人間になるんだから……」

天童「その時にはよぉ……? 俺は、もういねぇんだぜ……?」

勇者「……えっ?」

天童「だからよぉ? その時にもおめぇがちゃ~んとひとり立ち出来るようになれるか……ちょっと、意地悪な事言っただけなのによぉ……?」

勇者「……ちょっと待ってよ。ど、どういう事だよ?」

天童「それをさぁ……? どうして、そういう風に受け取っちゃうかねぇ? カァ~! おじさん悲しかぁ~!」


「あっ! 勇者さん、天童さんっ! おはようございますっ!」


天童「おっ! 女僧侶ちゃん、おっはようっ! いやぁ~! 今日もいい朝だねっ!」

女僧侶「そうですね! 魔王城も、うっすらと見えて来ましたね!」


勇者(そういや……アイツが全部の命題終わったらどうするかなんて……俺、考えてなかった……)

458 : VIPに... - 2014/06/28 23:02:17.12 zMs6GVqAO 958/1238

天童「お~い! 勇者ァ! おい、勇者ァ!」

勇者「……」

天童「おい、コラっ! バカ息子っ! 聞いてんのかっ!」

勇者「あっ、天童……? どうした……?」

天童「女僧侶ちゃん、起きたみたいだらよぉ? 女僧侶ちゃんで命題クリアしちまおうぜ?」

勇者「……ん?」

天童「だからよぉ……? 女僧侶ちゃんを改心させて……もう、とっとと命題クリアしちまおう!」

勇者「おめぇ……何言ってんだ……? 女僧侶ちゃんなんか、改心させる所ないだろ……?」

天童「なんか、あるだろ? 女僧侶ちゃんだって、人間なんだから、悪い所の一つぐらいよぉ?」

勇者「女僧侶ちゃんにはねぇよ……そんな所なんて……」

天童「いや~、一つぐらいあるんじゃねぇか? テント畳むの遅い所とか……?」

勇者「……もう、テキパキ出来るようになってるよ?」


女僧侶「よいしょ……よいしょ……」テキパキ


天童「……おっ、本当だ?」

勇者「……なっ?」

459 : VIPに... - 2014/06/28 23:14:14.22 zMs6GVqAO 959/1238

天童「……あっ! じゃあ、酒癖悪い所は? 酒癖悪い所とか、注意してあげればいいんじゃない?」

勇者「あのなぁ……? 天童……?」

天童「……ん?」

勇者「そりゃ、女僧侶ちゃんにだって、悪い所の一つや二つぐらいはあるよ? だけど、女僧侶ちゃんのいい所はそれ以上に……数えきれない程、あるじゃねぇかっ!」

天童「お、おぅ……」

勇者「俺はなぁ? そういう酒癖も悪い所も……全て含めて、女僧侶ちゃんが好きなんだよっ! 命題の意味はそういう事じゃねぇだろがっ!」

天童「なぁ~んだ……おめぇ、わかってるじゃん……でもよぉ? それは俺に言うんじゃなくて、女僧侶ちゃんに直接言ってやれよ?」

勇者「……ん?」

天童「いやぁ……いつまでたってもよぉ? おめぇが女僧侶ちゃんに気持ち伝えないから……俺も心配だったんだよ……」

勇者「……前回、やろうとしたんだけどね?」イライラ

天童「でもよぉ? それだけ、言えるんだったら、大丈夫だな! いや~、これで俺の心残りも一つ消えたな! よかったよかった!」

勇者「な、なぁ……? お前さぁ……?」

天童「……ん?」

勇者「お前……俺の命題が全て終わったら……その後……」


女僧侶「勇者さ~ん! 天童さ~んっ! テント畳み終わって、出発準備できましたよ~!」


天童「おっ、勇者? 準備出来たみてぇだぞ? そろそろ出発しようぜ?」

勇者「えっ……? あっ、うん……」

460 : VIPに... - 2014/06/28 23:21:16.79 zMs6GVqAO 960/1238

ーーーーー


天童「8時か……街についたのはいいけどよぉ……?」

勇者「な、なんだか……随分寂れた街だねぇ……?」

女僧侶「魔王城の……こんなに近くにあるんですもの……心が痛いです……」

天童「まぁ、よぉ? 俺達が魔王討伐したらよぉ? この街だって、救われるだろ! なっ、勇者?」

勇者「そうだね……」


「きゃあっ~! 泥棒っ! 泥棒よっ! 誰か捕まえて~!」


天童「……ん?」

勇者「……泥棒?」

461 : VIPに... - 2014/06/28 23:28:12.87 zMs6GVqAO 961/1238

男盗賊「……」ダッ

女僧侶「勇者さんっ! 泥棒がこっちに走ってきますよっ!」


勇者「よしっ! 俺達で捕まえようっ! いくぞっ!」

男盗賊「……くっ!」

勇者「うおおっ! たああっ!」

男盗賊「くそっ! 邪魔だっ! どけっ!」バキッ

勇者「くっ……こいつ……早いっ……! だけど、俺だってっ……!」バキッ

男盗賊「……ぐっ! てめぇ、この野郎っ!」

勇者「もう、観念しろっ! お前はもう……えっ……?」

男盗賊「お前……? 勇者……?」

勇者「お前……もしかして、男盗賊か……?」

462 : VIPに... - 2014/06/28 23:33:58.26 zMs6GVqAO 962/1238

「このこそ泥がっ! お待ちなさいっ!」


男盗賊「や、やべぇ……! 来やがったっ……!」

勇者「お、おいっ……! 待てよっ! 何で、お前……こんな事……!」アセアセ

男盗賊「くそっ……! 邪魔だっ! どけっ!」バキッ

勇者「……ぐっ!」


「この泥棒がっ! お待ちなさいっ!」


男盗賊「うるせぇっ! 待てと言われて待つ盗賊がいるかよっ! じゃあな、ババァっ!」ダッ


天童「おい、勇者ァ! 何してやがんだよ! 命題クリアするチャンスだったってのに、みすみす逃がしやがってよぉ?」

勇者「なんで……なんで、あいつがこんな事してるんだ……?」

天童「……ん?」

463 : VIPに... - 2014/06/28 23:43:02.57 zMs6GVqAO 963/1238

天童「……アイツ、おめぇの知り合いか?」

勇者「う、うん……小さい頃……よく遊んだ、幼馴染……俺が引き篭もりになってから、疎遠になっちゃったけど……」

天童「おめぇよぉ? 友達は選ぼうぜ? なんで、泥棒なんかと友達なんだよ、おめぇ?」

勇者「ち、違うっ……! あいつ、いい奴なんだよっ……!」アセアセ

天童「……あぁ?」

勇者「おめぇらは、わかんねぇかも知らねぇけどさぁ!? 俺、あいつと仲良かったから、わかるんだっ! あいつはいい奴なんだよっ!」

天童「……」

勇者「本当だってっ! 信じてくれよっ!」

天童「……じゃあ、なんでそんな奴が、こそ泥みてぇな真似してんだ?」

勇者「そ、それは……わかんないけど……」

天童「……」

勇者「何か……理由があるんだと……思う……」

天童「……」

勇者「本当だって! あいつ、本当はいい奴なんだよ! 信じてくれよ! 俺の友達だった奴なんだよ!」

464 : VIPに... - 2014/06/28 23:47:01.89 zMs6GVqAO 964/1238

天童「まぁ、よぉ……?」

勇者「?」

天童「おめぇがそこまで言うんだったら、それでいいんじゃねぇの?」

勇者「……えっ?」

天童「あの泥棒、とっ捕まえてよぉ? 改心させたら、命題クリアじゃねぇか?」

勇者「……うん」

天童「俺も手伝ってやるからよぉ……今からあのこそ泥を……」

勇者「な、なぁ……? 天童……?」

天童「……ん?」

勇者「今回はさぁ……? 一人でやらせてみてくれねぇかな……?」

天童「……あぁ?」

466 : VIPに... - 2014/06/29 00:06:40.91 suKAiA5cO 965/1238

勇者「俺もさぁ……? 改心させられる立場の時……お前らだけじゃなくて……他の人にも色々言われた……」

天童「……」

勇者「……でも、その言葉って、実は凄く辛かったんだ」

天童「……」

勇者「引き篭もりをやめろ……社会に出ろ……言ってくれてる事は間違いなく、正しい事だったんだけどさ?」

天童「……」

勇者「俺が引き篭もった理由まで……踏み込んできてくれる人は誰もいなかった……何処か、上っ面の綺麗事を言われてるような気がしてた……」

天童「……」

勇者「でも、言ってる事は正しいから、やらなきゃいけないと思った……だけど、どういう風に動いていいのかまではわからなかった……」

天童「……」

勇者「それで……俺、どんどん塞ぎ込んで……どんどん動けなくなってさ……?」

天童「……」

勇者「……でも、そこに天使のおっさんが現れたんだ」

天童「……勇者」

468 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/06/29 00:13:23.22 suKAiA5cO 966/1238

勇者「そいつはさぁ……? ズガズガと俺の心の中まで強引に入ってくる、図々しい奴だったよ」

天童「……」

勇者「でも、そいつはっ……! ダメな俺が頑張れば、まるで自分のようの事に褒めてくれたっ……!」

天童「……」

勇者「俺と真っ正面から向き合って……塞ぎ込んでた俺を、まるで自分の事のように考えてくれたっ……!」

天童「……」

勇者「他の人がかけてくれない、俺が本当に欲しかった言葉を……いっぱいいっぱい言ってくれたんだっ!」

天童「……勇者」

勇者「俺が変われた理由は、お前や女僧侶ちゃんが、言葉だけじゃなくて……心まで、踏み込んできてくれたからなんだ!」

469 : VIPに... - 2014/06/29 00:20:00.75 suKAiA5cO 967/1238

勇者「神様がこういう命題を送ってきたって事はさぁ……?」

天童「……」

勇者「……きっと、あいつの心の中に入り込めるのは、俺だけなんだと思う」

天童「……そうかもな」

勇者「人間、辛い時……どう、向き合って欲しいか……誰に向き合って欲しいか……そして、そこからどう行動すればいいか……」

天童「あぁ」

勇者「……俺は、お前に教えてもらった」

天童「そうだっ……!」

勇者「だから……あいつの天使には、俺がならなきゃいけない……今度はお前が教える番なんだって……神様は言ってるんだと思うんだ」

470 : VIPに... - 2014/06/29 00:29:02.27 suKAiA5cO 968/1238

勇者「天童、女僧侶ちゃん……ごめん……! 今日は俺、一人で行動させてくれっ!」

天童「……大丈夫か?」

勇者「やらなくちゃいけないっ……! 俺が二人にいっぱい、教えてもらったんだからっ!」

女僧侶「私は神の教えで……説得する事しかできないと思います……」

勇者「……」

女僧侶「あの方が、勇者さんの幼馴染なのなら、彼に一番届くのは……きっと、勇者さんの言葉でしょう……」

勇者「……うんっ!」

女僧侶「だから……勇者さんが救ってあげて下さい……」

勇者「我儘聞いてくれてありがとう……」

天童「まっ、おめぇも散々改心させられた立場だからな! どういう風に言えば改心させられるかなんて、おめぇが一番よくわかってるだろっ!」

勇者「あぁ……今度は俺が……自分が学んできた事を、伝える番だっ……!」

天童「よっしゃっ! 勇者ァ! じゃあ、早くあのコソ泥追っかけてこいやっ! 見失っちまうぞ!」

勇者「わかったっ! 追いかけてくるよっ!」ダッ

473 : VIPに... - 2014/06/29 22:14:16.83 suKAiA5cO 969/1238

天童「……行ったか」

女僧侶「そうですね。上手くいくと……いいですね……」

天童「……アレ? そういえばさぁ?」

女僧侶「天童さん、どうしたんですか?」

天童「あのコソ泥、勇者の幼馴染って事は、女僧侶ちゃんの幼馴染でもあるんじゃねぇの? 女僧侶ちゃん、あいつの事、知らねぇの?」

女僧侶「う、う~ん……そういえば……見た事もあるような気もしますが……」

天童「……しますが?」

女僧侶「やっぱり、勇者さんにも男同士の付き合い……みたいなのがあるんじゃないんですかね……? 私はあの方と接した事はありません」

天童「男同士の付き合いって言ってもよぉ? 成長する前のあいつは女々しい奴だったぜ? そんなのあるのか?」

女僧侶「う~ん……わかりません……」

474 : VIPに... - 2014/06/29 22:22:08.79 suKAiA5cO 970/1238

女僧侶「……それよりも、天童さん?」

天童「?」

女僧侶「あの方の事は勇者さんに任せて、私達も今自分に出来る事をしましょうよ?」

天童「……ん?」

女僧侶「ほら? 道具屋の方が、困ってるようですし……」


「あたた……転んじまったよ……くそぉ、逃げられちまったか……」


天童「……なるほどね」

女僧侶「それに……商品だって、あんなに散らばってます。私達はこっちをなんとかしましょうよ? ねっ?」

天童「あぁ、そうだなっ! おい、ばばぁ! おめぇ、大丈夫か!?」


「ん……? あんたらは……?」


天童「俺達はよぉ? 冒険者の勇者御一行だっ! あのコソ泥はよぉ? 俺達が絶対、改心させてやるから、まぁ大船に乗ったつもりでいときんしゃんっ!」

女僧侶「さぁさぁ、先ずは傷の手当てをしましょう……」

475 : VIPに... - 2014/06/29 22:31:16.87 suKAiA5cO 971/1238

ーーーーー


勇者「はぁ……はぁ……」

勇者「くそっ……! あいつ……何処に行ったんだ……」キョロキョロ

勇者「まだ、そんなに遠くまで逃げてないはずだっ……きっと、まだ近くにいるはずだからっ……」

勇者「……ん?」


男盗賊「はぁっ……はぁっ……」ゼエゼエ


勇者「……いたっ! あそこだっ!」

勇者「よし、後はあいつを説得して……ん、待てよ……?」

勇者「……」

勇者「説得……どういう風にすればいいんだ……それって……」

勇者「……」

勇者「俺は……あの時、どういう風に説得されたかったんだろう……? 引き篭もってた時、心の底でどんな言葉を求めてたんだろう……?」

勇者「多分、その言葉俺をが……あいつに言ってやらないと……あの時と同じように、届かないんだろうな……」

476 : VIPに... - 2014/06/29 22:39:26.90 suKAiA5cO 972/1238

男盗賊「よし……これだけ盗めば……しばらくは食っていけるな……」

勇者「おいおいっ! 男盗賊? 久しぶりなのに、素っ気ない態度じゃねぇか?」

男盗賊「!」

勇者「お前、やっぱり、足早いんだな? いや~、俺もここまで追いかけてくるの疲れたよ……」

男盗賊「……勇者!」

勇者「なぁなぁ? 今日は何、盗んだんだ? 見せてくれよ?」

男盗賊「……」

勇者「おいおい……隠す事はねぇじゃん……いつもみたいにさぁ……? 盗んだ物、見せてくれよ?」

男盗賊「……やめろっ! これに触るなっ!」

勇者「なんでだよ……お前、いつもかっぱらったエロ本、見せてくれたじゃねぇかよぉ? 今回はなんだ? 洋モノなのか?」

男盗賊「……」


勇者(俺は……変わらない態度で接してほしかった……!)

477 : VIPに... - 2014/06/29 22:48:21.50 suKAiA5cO 973/1238

勇者「でも、おめぇさぁ? かっぱらってきたのはいいけど……金置いてきたのか?」

男盗賊「……あぁ?」

勇者「おめぇはさぁ……? 未成年で販売して貰えないから、いつもいつも、エロ本かっぱらってたじゃん?」

男盗賊「……」

勇者「でもよぉ? おめぇ、ちゃんと盗んだ分の代金は、いつも店に置いていてたじゃねぇかよ? おめぇ、今回はソレ、忘れてねぇか?」

男盗賊「……お前、いつの話してんだよ」

勇者「おめぇがそうやって、ポリシー持って盗みしてたからさぁ? 俺は安心して性教育の勉強が出来たってワケだ! なっ?」

男盗賊「……お前には、こんな姿見られたくなかったな」

勇者「金置いていかなかったら、本物の泥棒じゃねぇか!? なっ? 今から、バレねぇように金払いに行こうぜ?」

男盗賊「……」

勇者「俺も盗んだ物でなんか、性教育の勉強したくねぇからよぉ? で……盗んだエロ本、早く見せてくれよ? なっ?」

479 : VIPに... - 2014/06/29 22:57:22.80 suKAiA5cO 974/1238

男盗賊「……懐かしいな。いつも、お前と二人で悪さばかりしてたな」

勇者「おめぇと付き合うのは、姉ちゃんと母ちゃんにこっ酷く叱られたたけどな!」

男盗賊「あの頃から……俺は悪党だったのかな……」

勇者「いやいや、そんな事はねぇよ? 父ちゃんは理解してくれててたよ?」

男盗賊「……お父さんが?」

勇者「あぁ、父ちゃんだってよぉ? そういうのに、興味を持つのは健全な男の証拠だって、言ってた言ってた」

男盗賊「……そうか」

勇者「お前達がゲイじゃなくてよかったって、笑ってたよ! 金を置いてきてるなら、いいじゃねぇかって言ってくれてた!」

男盗賊「勇者さん……あなたが魔王を倒したはずなのに……こんな世界になってしまうなんて……」

勇者「だからよぉ? 今から、金払いに行こうぜ? 俺だって、天国の父ちゃんに怒られたくないからさ?」

480 : VIPに... - 2014/06/29 23:03:59.96 suKAiA5cO 975/1238

男盗賊「……勇者?」

勇者「ん、どうした? 金払いに行くの?」

男盗賊「俺だって……あの頃に戻りたい……でも、もう無理なんだ……」

勇者「……はぁ?」

男盗賊「俺はもう……本当の悪党になってしまったんだ……」

勇者「何、言ってんだ? おめぇ、変なもんでも食ったか?」

男盗賊「もう、俺の事は放っておいてくれっ!」ダッ

勇者「お、おいっ! 待てよっ! 逃げんじゃねぇよっ!」ダッ


男盗賊「……お、追ってくるんじゃねぇよっ!」

勇者「うるせっ! おめぇは放っておけるかってのっ!」

男盗賊「く、くそっ……! こうなりゃ……振り切ってやるっ……!」ダダッ

勇者「あっ! くそっ、スピード上げやがった! ……でも、こっちだって、命がかかってるんだから、逃がしてたまるかよっ!」ダダッ

481 : VIPに... - 2014/06/29 23:15:50.39 suKAiA5cO 976/1238

ーーーーー


街長「そうか……君達は魔王城に向かうのか……」

女僧侶「はいっ!」

天童「まぁ俺達、勇者御一行様が魔王討伐して、この街も救ってやるから、もう少しの辛抱だぜおっさんっ!」

街長「期待しておくよ。しかし、この辺りの魔物は気性が荒い……気をつけてくれよ?」

女僧侶「大丈夫ですっ!」

天童「皆で力を合わせりゃ、なんとかなるって! あんたらだって、そうやって毎日必死に生きてるんだろ? なっ?」

街長「そうだ……君達に魔物以外でも、気をつけてもらいたい事がある」

女僧侶「……何ですか?」

天童「勿体ぶらずに言えよ、おっさん!」

街長「最近……各地の街を荒らしては移動を続けている盗賊団がいるのだが……どうやら、その盗賊団がこの付近にいるらしい」

女僧侶「……盗賊団?」

天童「……あいつ、一人で盗みやってるワケじゃねぇのか」

482 : VIPに... - 2014/06/29 23:22:08.26 suKAiA5cO 977/1238

街長「盗賊団の名は『暴走天使(ミッドナイトエンジェル)』……10名程の大部隊な盗賊団だ……」

女僧侶「ミッドナイト……エンジェル……?」

天童「うわっ、 厨二臭っ! 何、そのネーミング!? 暴走族じゃねぇんだからよぉ?」

街長「名前は厨二臭いが……実力は本物らしい……先程、この街も襲われたよ……」

女僧侶「……」

天童「……あの野郎。少ない物資を皆分け合って協力している街なのによぉ」

街長「まぁ、君達も彼らに身ぐるみを剥がされないように、気をつけてくれ」

483 : VIPに... - 2014/06/29 23:28:52.10 suKAiA5cO 978/1238

天童「……ったく、10名程の盗賊団だってよ?」

女僧侶「……勇者さん、大丈夫でしょうか?」

天童「改心させねぇといけねぇ人数増えちまったじゃねぇか……大丈夫かねぇ……?」

女僧侶「……私達も手伝います?」

天童「状況が悪化してきたからなぁ……? 俺達も手助けしねぇといけねぇのかねぇ?」

女僧侶「あっ……でも、勇者さん……何処に行ったんでしょうか……?」

天童「個人行動許すべきじゃなかったかもなぁ~? まぁ、とりあえずは、ここで待とうか?」

女僧侶「……えっ?」

天童「もう、そろそろあいつも腹が減って戻ってくるだろ?」グゥー

女僧侶「……天童さん、それ自分の事、言ってません?」

天童「バ、バカ~ンっ! 昼になったらよぉ? 誰だって、腹は減るぜ?」

484 : VIPに... - 2014/06/29 23:35:52.32 suKAiA5cO 979/1238

ーーーーー


勇者「……くそっ! 見失なったかっ!」

勇者「あいつ、足早ぇな……そんないいもん、盗みなんかに使わねぇで、別の事に使えよ……」

勇者「くそぉ……やっぱり、俺一人じゃ無理なのかなぁ……」

勇者「……」

勇者「……でも、天童や女僧侶ちゃん一人で俺に向かい合ってくれて、俺を変えてくれたしなぁ」

勇者「……」

勇者「出来ない事なんてないよ……簡単に諦めちゃダメだよなぁ……」

勇者「う~ん……」グゥー

勇者「くそぉ……腹減ってきたなぁ……とりあえず、一度街に戻って……二人に相談してみるか……」

488 : VIPに... - 2014/06/30 22:07:25.94 waPUUsfJO 980/1238






PM1:00

タイムリミットまで後、9時間







489 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/06/30 22:14:15.45 waPUUsfJO 981/1238

勇者「……」トボトボ

天童「お~! 勇者、戻ってきたか! 大丈夫だったか?」

勇者「う~ん……途中で逃げられて……見失っちゃったよ……」

天童「おめぇは、何やってんだよぉ……って、言いてぇ所だけどよ……?」

勇者「……ん?」

天童「おめぇが想像してるより、ややこしい事になってると思うぜ? あのコソ泥はよぉ? 見失って正解かもな?」

勇者「えっ……? それって、どういう事……?」

天童「まぁ、詳しい事はよぉ? 飯を食いながらでも話そうぜ? おじさん、お腹減ってもう動けな~い」

勇者「そ、そうだね……もう1時だし、話は酒場でご飯食べながらでもしようか?」

490 : VIPに... - 2014/06/30 22:23:10.60 waPUUsfJO 982/1238

酒場の主人「へい、らっしゃい。注文は何にするんだい?」

勇者「じゃあ、俺はA定食で……女僧侶ちゃんはどうする?」

女僧侶「私はB定食にします。天童さんは?」

天童「俺はよぉ? この海鮮鍋ってのにするよっ!」

勇者「……何で鍋なの? 何で、昼から鍋食うの?」

天童「メニューにあるからじゃねぇかよぉ!?」

勇者「昼だよ? まだ、お昼だよ? おめぇ、今日は一段とおかしいもん、頼んでるぞ?」

天童「うるせぇなっ! 食いたいもん食って何が悪いんだよぉ!?」ギャーギャー

勇者「おめぇのそういう所が恥ずかしいんだよぉ! なっ? 天童君、改心しよう? 改心しましょうよ!?」ギャーギャー


主人「A定食と、B定食と、海鮮鍋だな……今から作るから、少し待ってくれ」

491 : VIPに... - 2014/06/30 22:30:23.75 waPUUsfJO 983/1238

勇者「……で、天童?」

天童「……ん、どうした?」

勇者「あいつが、ややこしい事になってる……って、どういう事?」

天童「あぁ……あの、コソ泥……盗賊団に入ってるらしいんだよ……」

勇者「盗賊団……?」

天童「10名程の大部隊の盗賊団らしいよ……街を荒らして……転々としてるらしいぞ?」

勇者「なんで……なんで、あいつ盗賊団なんかに入ったんだろ……?」

天童「盗賊団の名前は……『暴走天使(ミッドナイトエンジェル)』だってよ? どう思うよ?」

勇者「うわっ! 何で、そんな厨二臭い暴走族みてぇな所に入るんだよ!? センス悪ぃな、アイツ!」

天童「なっ、なっ? おめぇもやっぱり、そう思うよな!? ネーミングセンスねぇよな!?」

492 : VIPに... - 2014/06/30 22:36:50.16 waPUUsfJO 984/1238

女僧侶「天童さん……問題点はそこじゃありませんよ……」

天童「あぁ、そうだったそうだった! なぁ、勇者? おめぇ一人で大丈夫か?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「いくら……あの方が勇者さんの幼馴染だからと言っても……」

天童「……相手は10人もいるんだぜ?」

勇者「そ、それは……」

女僧侶「……私達も協力しましょうか?」

天童「10人も改心させるなんてよぉ……? いくら、おめぇが成長してるからって、ちょっと無謀じゃねぇか?」

勇者「う~ん……そもそも、何であいつ、盗賊団になんか入ったんだろ……? なんか、理由がありそうなんだけどなぁ……?」


主人「へいっ! A定食と、B定食と、海鮮鍋、おまちっ!」

493 : VIPに... - 2014/06/30 22:43:50.27 waPUUsfJO 985/1238

勇者「あっ、ありがとうございますっ!」

女僧侶「美味しそうですね」

天童「でもさ? ちょっと量が少なくね? 俺はも~っとガッツリ食いてぇなっ!」

勇者「……昼からガッツリ食うな。昼からよぉ?」


主人「……悪ぃな、兄ちゃん達」

勇者「……ん?」

主人「これだけ、魔王城が近いとよ……? やっぱり、食材だって簡単には仕入れる事が出来ねぇんだよ」

女僧侶「そうですよね……」

主人「世界が平和だった時は、もっといい物出してたんだぜ!? うちの店は『美味しいB級グルメ店』なんて、雑誌にも乗った事があるんだぜ?」

天童「……B級じゃダメじゃねぇかよ」

494 : VIPに... - 2014/06/30 22:53:30.75 waPUUsfJO 986/1238

主人「兄ちゃん達がよぉ? 魔王倒して、世界が平和になったらよぉ? 最高のB級グルメを食わせてやるから、頑張ってくれよな!」

勇者「あはは、期待してますよ」

主人「……ったく、しかし魔王だけじゃなくて、バカな盗賊団も現れたときたもんだ」

勇者「……えっ?」

主人「この街はよぉ? 少ない物資を皆分け合って、頑張ってるってのに……どうして、それを奪っていくかねぇ!?」

勇者「……」

主人「同じ人間のはずなのによぉ? どうして、平気で他人を傷つける事が出来るんだよ! 本当、ゴミクズみてぇな奴だよっ!」

勇者(……ゴミクズ)

主人「兄ちゃんも盗賊団に襲われないように気をつけてくれよ? 世界を救う為に頑張ってる人間がよぉ? バカなゴミクズに邪魔されるなんて、俺そういうの嫌だからよぉ!?」

勇者「は、はい……」

495 : VIPに... - 2014/06/30 22:59:51.21 waPUUsfJO 987/1238

勇者「……」

天童「……どうした、勇者?」

勇者「……」

天童「おい、勇者! 聞いてんのか!? どうしたんだよ、ボケっとしてよぉ?」

勇者「……なぁ、天童?」

天童「……ん?」

勇者「おめぇもさぁ……? アイツの事、ゴミクズだと思う……?」

天童「……」

勇者「やっぱり……こうやって、他人を傷つけてるって……ゴミクズがする事だと思う……?」

天童「う~ん……おめぇの幼馴染だからなぁ……あまり、キツい事は言いたくねぇんだけどなぁ……」

勇者「……えっ?」

天童「ゴミクズがどうかはわかんねぇけどよぉ……? やっぱり、ダメ人間だとは思うぜぇ?」

勇者「ダメ人間かぁ……」

天童「……だから、こうやって命題が来たんじゃねぇか? そうだろ?」

496 : VIPに... - 2014/06/30 23:06:13.52 waPUUsfJO 988/1238

勇者「……ねぇ、女僧侶ちゃんはどう思う?」

女僧侶「私も……あの方の事を全て理解してるわけではありませんが……」

勇者「……うん」

女僧侶「やっぱり、間違った道を歩んでいると思います……」

勇者「……」

女僧侶「それが、勇者さんの知り合いだったら……救ってあげるべきなんじゃないですかね……?」

勇者「……そうだよね」

女僧侶「午後からは、私達も協力しますから……頑張りましょうよ、勇者さん!」

勇者「……」

天童「相手は10人いるらしいからな! まぁ、俺も協力してやるよ!」

497 : VIPに... - 2014/06/30 23:15:06.29 waPUUsfJO 989/1238

勇者「う~ん……気持ちは嬉しいんだけどさぁ……?」

女僧侶「?」

勇者「やっぱり……俺、一人でやってみる……」

天童「おいおい! 相手は10人いるんだぞ!? おめぇ、一人で出来るのかよ!?」

勇者「いや、違う……天童、そこじゃないんだ……」

天童「……あぁ?」

勇者「いや、なんて言ったらいいのかな……俺が、引き篭もってる時にさ? 俺を外に出そうと頑張ってくれた人達がいるんだよ……」

天童「……ほぅ」

勇者「母ちゃんの知り合いとか……姉ちゃんの知り合いとか……色んな人が俺を外に出そうとしてくれてたんだ」

天童「……」

勇者「でも……俺、その人達の言葉で、立ち上がる事が出来なかった……」

498 : VIPに... - 2014/06/30 23:25:18.07 waPUUsfJO 990/1238

勇者「やっぱり、姉ちゃんの弟だから……何とかしてあげよう……とかさ?」

女僧侶「……」

勇者「世間的に恥ずかしい事だから……何とかしてあげよう……みたいな気持ちを感じてたのかもしれない……」

天童「……」

勇者「なんか……二人の協力はそれと同じような事なんじゃないかって……俺、自分がそうだったから、思うんだよ」

女僧侶「……勇者さん」

勇者「俺があの時、本当に欲しかったのは、居場所のないダメな自分の存在全てを受け入れて人だったのかもしれない……」

天童「……そうか」

勇者「やっぱり、二人じゃ無理だよ……あいつに一番近いのは俺だもん……仲の良さだけじゃなくて、環境もさ?」

499 : VIPに... - 2014/06/30 23:36:08.08 waPUUsfJO 991/1238

女僧侶「勇者さん、あの方と、どういった関係だったんですか?」

勇者「あぁ、アイツ? アイツは俺のエロの師匠だよ?」

天童「……エロの師匠? なんだ、そりゃ?」

勇者「いや、アイツ、いつもエロ本盗んでさぁ? 俺にも見せてくれた、いい奴なんだよ」

女僧侶「いつの話ですか……? そんな、若い時から盗みをしてたんですか?」

勇者「いやいや、盗んでない盗んでない! 販売して貰えなかったから、そういう手段で、手に入れてただけでさ? その分の代金はいつも店に置いてきてたよ?」

天童「だったら、問題はねぇな。 いい奴じゃねぇか! 思春期にエロ本恵んでくれる奴に悪い奴なんているワケねぇよ!」

勇者「なっ、そうだろ? だから、そういう、手癖の悪さみたいなのにさ……目をつけられて、盗賊団なんかに誘われたんじゃねぇかな? あいつは」

女僧侶「そういう問題ではありませんっ! 勇者さん、ダメですよ! そんな本、盗んじゃ!」

勇者「だから、盗んでないって……あいつ、いつも金は置いてきてたんだから。 あれは正しい性教育の勉強だって!」

500 : VIPに... - 2014/06/30 23:46:32.64 waPUUsfJO 992/1238

女僧侶「も~う……男の人そういう所って、私理解できませんっ!」プイッ

勇者「なんで、女の人ってこういう態度なんだろ……? 天童はわかるよな?」

天童「あぁ、俺はわかるよ! 思春期のエロ本なんて、男のロマンだろ! 昔は河原によく、ビニ本探しに行ったもんだぜ!」

女僧侶「……天童さんまで」

勇者「だからさぁ? あいつの悪い所を探すのは簡単だけど、いい所を探せるは、付き合いの長い、俺ぐらいしかわからないと思うんだよね?」

天童「そんな事ねぇぞ! 俺は、そこそこ理解したぜ!」

女僧侶「も~う……本当、男の人って……」

勇者「だからさ? やっぱり、俺一人にやらせてよ? これは俺が一人でやらなくちゃいけない事だと思うからさ?」

天童「まぁ、あいつの心を動かせるのは、お前が適任だと思うけどよぉ? 盗賊団には気をつけろよ? 10人いるらしいからよ?」

501 : VIPに... - 2014/06/30 23:55:01.92 waPUUsfJO 993/1238

天童「ところでよぉ、勇者?」

勇者「……ん、どうしたの?」

天童「長話してたら、もう3時だ。後、7時間しか残ってねぇぞ?」

勇者「えっ? もう3時っ!? 大変じゃん!」アセアセ

天童「う~ん……デザートは何にしようかぁ……プリンにしようかな……あっ、御手洗団子なんてのもあるのか!」

勇者「おいおいっ! メニューなんて呑気に眺めてる場合じゃねぇだろっ! 出るぞっ! 店から出るぞっ!」

天童「あれ? デザート食う為に、3時まで時間潰してたんじゃないの、勇者君?」

勇者「おめぇはよぉ!? 時間ねぇのはおめぇが一番よく知ってんだろがっ! 俺を殺す気か! このダメ天使っ!」

天童「冗談だよ、冗談っ! そんなに怒らなくてもいいじゃねぇか!」

502 : VIPに... - 2014/07/01 00:02:09.35 tkBeZhSZO 994/1238

勇者「あっ……すいませんっ! それじゃあ、お会計ここに置いておきます……」

主人「……お、おう」

女僧侶「美味しかったです。必ず、また来ますね?」

天童「次に来るのは、魔王倒した後だからよぉ? 超A級のB級グルメ食わしてくれよなっ!」

勇者「Aだか、Bだか……もう、わけわかんねぇよ……あっ、それじゃあ、ご馳走様でした~」

主人「……」


天童「でもよぉ? それ言うなら、最高級のB級グルメってのも、ワケわかんねぇぜ?」

勇者「絶対に八割型成功する自信がある……とかもね?」

天童「おめぇがいかにも、使いそうな言葉じゃねぇかソレ! って事は、おめぇはB級勇者って事か?」ヤイヤイ

勇者「俺はB級じゃねぇってのっ! おめぇこそB級天使だろがっ!」ヤイヤイ


主人「……」

506 : VIPに... - 2014/07/01 22:00:59.00 tkBeZhSZO 995/1238

ーーーーー


勇者「じゃあ、俺……今から、あいつを改心させてくるよ!」

天童「それはいいけどよぉ……? おめぇ、逃げられたんだよな? 何処に逃げられたかはわかってんのか?」

勇者「……えっ?」

天童「あぁ? 何だ? おめぇ、闇雲に探そうとしてたのか? 後、7時間しかねぇんだぞ?」

勇者「う、う~ん……あいつ、何処ににげたんだろう……」

天童「カァ~! 情けなかぁ~! もう、たまらぁ~ん! たまらぁ~んっ!」

勇者「でも……やっぱり、ここで立ち止まってるよりかは……わからなくても探すしかないよ……」

天童「まぁ、そうだけどよぉ……?」


女僧侶「……あの~、勇者さん?」

勇者「……ん? どうしたの、女僧侶ちゃん?」

507 : VIPに... - 2014/07/01 22:07:59.12 tkBeZhSZO 996/1238

女僧侶「残りの9人の盗賊団は、何処にいるんでしょうね?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「ほら、私達が見かけたのは勇者さんの幼馴染の方だけですし……盗賊団の仲間は今、何をしているんでしょう?」

天童「そういえば、そうだな……だから、多分……仲間と合流しに行ったんじゃねぇか?」

女僧侶「だから……その仲間を見つければ、きっとあの方もそこに……」

勇者「なるほど……盗賊団のアジトを探せば……きっとアイツはそこにいるんだな……」

天童「こんな、魔王城の近くでよぉ? 危険な魔物がいる場所での隠れ家なんて、ある程度は絞られてくるんじゃねぇか?」

勇者「うん、そうだね!」

508 : VIPに... - 2014/07/01 22:13:58.70 tkBeZhSZO 997/1238

天童「なぁ、勇者? でもよぉ?」

勇者「……ん?」

天童「おめぇの友達のコソ泥、なんで個人行動で盗みなんかしてたんだろ?」

勇者「……えっ?」

天童「仲間がいるんだったらよぉ? 皆で協力して、盗みをすればいいじゃねぇか。まぁ、ダメな事なんだけどね!」

勇者「そういやそうだな……こんな危険な大陸で、わざわざ個人行動する事ないよな……10人も人数がいるんだったら……」

天童「……なんかさぁ? おめぇの友達、いいように利用されてるんじゃねぇか?」

勇者「う~ん……そうかもしれない……」

天童「まっ、捕まえたら全部わかる事だなっ! それじゃあ、皆で行動始めましょうかっ!」

勇者「いやっ……天童、今回は俺一人で……」アセアセ

509 : VIPに... - 2014/07/01 22:20:42.77 tkBeZhSZO 998/1238

天童「……そんな事はわかってんだよ、バーカっ!」

勇者「……えっ?」

天童「そいつの説得はよぉ? おめぇ、一人にやってもらうよ。おめぇ一人によぉ」

勇者「……」

天童「おめぇが、自分が受けた優しさを……今度は誰かに伝えたいんだろ? この命題はそういう意味だと思うんだろ?」

勇者「う、うん……」

天童「でもよぉ? 居場所がわからねぇんだったら、伝えようがねぇじゃねぇかっ!? だから、アジトは皆で探すんだよ!」

勇者「……そうだね」

天童「アジトに乗り込むのはおめぇ一人でやればいいよ。 俺も、女僧侶ちゃんも……おめぇの事、信じてるからよぉ?」

勇者「ありがとう……」

天童「まっ、とにかく今は情報収集だ! この辺で、盗賊団が隠れれそうな場所、手分けして探してみようぜ!」

勇者「うん、わかったっ!」

510 : VIPに... - 2014/07/01 22:22:24.17 tkBeZhSZO 999/1238






PM5:00

タイムリミットまで後、5時間






511 : VIPに... - 2014/07/01 22:35:52.98 tkBeZhSZO 1000/1238

天童「おい勇者、どうだったよ? あのコソ泥は見つかったか?」

勇者「う~ん、ダメだった……街の外でキャンプができそうな場所、色々と探してみたんだけどね……」

天童「街の外にはいなかったか……街の中にもいなかったぜ……」

勇者「……そうなんだ」

天童「あぁ、路地裏とかよぉ……? 土管の中とか探してみたけど、全く手がかりなしだぜ……」

勇者「……おめぇさぁ? 猫探してるんじゃねぇんだぞ?」

天童「やっぱり、マタタビ持って探した方がよかったかな? あっ、それとも魚かな!? じゃあ、今から酒場に行って、お魚譲ってもらおうか?」

勇者「おめぇは、ちゃんとやれよっ! これ、街の中だろ!? 盗賊団、絶対街の中にいるだろ!?」

天童「勇者君、冗談だよ冗談っ! 街の中もちゃんと探したって!」

勇者「……おめぇはもう、信じない。女僧侶ちゃんが情報なしだったら、街の中を探す」

天童「だから、冗談だって! ちゃんと探したってば! おめぇの命もかかってるんだからよぉ!?」

512 : VIPに... - 2014/07/01 22:42:18.38 tkBeZhSZO 1001/1238

女僧侶「あっ、勇者さ~んっ!」

勇者「あっ、女僧侶ちゃん、何か情報はあった?」

女僧侶「いえ、私も天童さんと街の中を探したんですけど……そもそも、この街……10人も隠れれるような場所ありませんでした……」

勇者「女僧侶ちゃんがそういうなら、間違いはなさそうだな……じゃあ、やっぱり街の外なのかな……?」


天童「あっ、勇者君酷いっ! おじさんだって、ちゃんと探したのにっ!」

勇者「……おめぇの事はもう信じないって言ったもん」


女僧侶「あの~、勇者さん……ですからね……?」

勇者「……ん?」

女僧侶「私は、10人隠れれそうな場所がこの近辺にないか……街の人達に話を聞いてたんですよ」

勇者「ほう……それで、何か手がかりはあった……?」

513 : VIPに... - 2014/07/01 22:54:52.01 tkBeZhSZO 1002/1238

女僧侶「そしたら、ですね? この街から北に行った所に、森があるらしいんですけど……」

勇者「あ~、そこは俺、探しに行ったけど、いなかったよ?」

女僧侶「その森の中に、洞窟があるんですって?」

勇者「えっ……? 洞窟……? そんなの、あったかな……?」

女僧侶「街の人達、その洞窟は魔物が寄り付かない神聖な洞窟だって言ってました」

勇者「魔物が寄り付かないんだったら……アジトにはぴったりじゃないか、それ!」

女僧侶「だから……盗賊団はそこいるんじゃありませんかね?」

勇者「きっと、そこだっ……! あいつはそこにいるんだっ……!」


天童「ねぇねぇ、勇者君……見逃してるじゃん……君、洞窟見逃してるじゃん……なのに、何でおじさんに偉そうに言うのかね?」

514 : VIPに... - 2014/07/01 23:01:31.81 tkBeZhSZO 1003/1238

勇者「よしっ! じゃあ、今から俺、そこに行ってくるよ!」

女僧侶「……はい」

勇者「二人は……街で、魔王城に乗り込む為の準備をすすめておいてくれ」

天童「おいおい、勇者……待てよ、ちょっと待てよ……」

勇者「……ん?」

天童「……おめぇよぉ? 俺と二人で薬草取りに行った時の事、忘れてねぇか?」

勇者「……えっ?」

天童「あの時はよぉ? 本当は女僧侶ちゃんがいたら、楽勝だったんだ! それを、おめぇが一人で背負い混んで、死にかけちまったんだよなぁ?」

勇者「そ、そうだった……」

天童「今回もよぉ? 似たような事になってんじゃねぇのか? おめぇ、一人で行って大丈夫なのか?」

勇者「……」

天童「俺と女僧侶ちゃんは……おめぇの一言で……いつでも動くんだぜ?」

515 : VIPに... - 2014/07/01 23:09:53.54 tkBeZhSZO 1004/1238

勇者「天童……女僧侶ちゃん……」

女僧侶「……」

天童「……」

勇者「正直、不安はあるよ……何か、予想外のトラブルが起きるかもしれない……盗賊団の強さだってわからない……」

女僧侶「……」

天童「……」

勇者「それに……俺の言葉だけで、あいつの心を動かせるかどうかもわからない……二人がいた方がいいかもしれない……」

女僧侶「……」

天童「……」

勇者「でもさぁ? 二人はそういう事を考えずに、俺に向き合ってくれたじゃん!?」

女僧侶「……はい」

天童「……おう」

勇者「俺があの時、欲しかったのはそれだったんだよ! 真っ正面から俺と向き合ってくれて! ダメな人間でも、仲間と認めてくれる人達が!」

516 : VIPに... - 2014/07/01 23:19:27.38 tkBeZhSZO 1005/1238

勇者「……俺、やっぱりまだダメ人間だからさぁ?」

女僧侶「……」

勇者「二人が一緒にいてくれたら……言葉に詰まった時……何を言っていいかわからない時……二人に頼っちゃうと思う……」

天童「……」

勇者「でも……そんな言葉じゃ、あいつにはきっと届かない……自分がそうだったから……わかる……」

女僧侶「……」

勇者「……きっとあいつも、俺にその言葉を言ってもらえるのを待っているんだ思う」

天童「……なんでそう思うんだ?」

勇者「昔の話をした時……あいつ、ちょっと寂しそうな目をしたんだ……」

517 : VIPに... - 2014/07/01 23:28:22.32 tkBeZhSZO 1006/1238

勇者「きっとあいつだって……昔みたいに戻りたいんだよ……でも、戻れない理由が何かあるんだよ……」

天童「おめぇは随分、あのコソ泥を信用してるみてぇだな?」

勇者「だって、友達だったもん……俺が信じてあげなきゃさ……」

天童「……まっ、人の心を動かすのは、言葉よりも、そういった感情の方が大切なのかもしれねぇな!」

勇者「……うん」

天童「まぁ、おめぇに一つアドバイスしておいてやるよ?」

勇者「……えっ?」

天童「言葉に詰まったら……自分の事を思い出せ」

勇者「……」

天童「自分がどうして変われたか……誰の、どんな言葉で心が動いたか……それと、同じ事をしたらいいんだよ」

勇者「……あぁっ! やってみる!」

天童「おめぇはよぉ? いつもいつも、死んだ目してたのに、本当変わったな! よしっ、今のお前だったら大丈夫だっ! 一人で行ってこいやっ!」

勇者「うんっ……! それじゃあ、行ってくるよっ……!」ダッ

521 : VIPに... - 2014/07/02 22:34:19.58 PHB8+ZLyO 1007/1238

天童「救われる立場の人間だった奴がよぉ……? 他人を救おうなんて、人間変われるもんなんだな……」

女僧侶「ええ……でも、そうやって人と人は繋がって生きていくんだと思います……」

天童「……おっ? 女僧侶ちゃん、いい事言うじゃねぇか!? こりゃ、メモしておかないといかんばいっ!」

女僧侶「……えっ?」

天童「え~っと、何々……人と人は繋がって生きていくっと……」メモメモ

女僧侶「ちょ、ちょっとっ……! やめて下さいよっ……! 恥ずかしいです……」アセアセ

天童「その言葉を天童から聞いた勇者君はっと……幼馴染を改心させる為、洞窟へ向かうのであった、と……よし! これで、完成だなっ!」

女僧侶「……天童さん?」

天童「よ~し! じゃあ、俺の名言もメモした事だし、俺達は魔王城に殴り込みに行く準備をすすめておくかっ!」

女僧侶「……天童さんが言った言葉でしたっけ? ソレ?」

天童「細けぇ事は気にしちゃいかんばいっ! よしっ、じゃあ武器屋にでも行くか!」

522 : VIPに... - 2014/07/02 22:49:50.99 PHB8+ZLyO 1008/1238

武器屋ーー


道具屋の娘「いらっしゃいませっ! 装備をお求めですか?」

女僧侶「えぇ、我々はこれから魔王城へと向かうので……何か良い物があったら、譲って頂きたいのですが……」

「えっ……? 魔王城に向かう? だったら、最高級の装備を出さなきゃ……」ガサゴソ

天童「おいおい……あんたらにもよぉ? この大陸で生きていく為の護衛手段みてぇなのが必要だろ?」

「……えっ?」

女僧侶「我々は……余り物で十分です……何か、ありませんかね……?」

「でも……貴方達は魔王城に行くんですよね……? だったら、最高級の装備をお売りしないと……」

天童「いい装備はよぉ? あんたらが使って、食材取りに行くのにでも使えばいいじゃねぇか! この街には最高級B級グルメ店があるんだしよぉ?」

「なんか……気を使っていただいたみたいで申し訳ありませんね……貴方達に渡せる物が少なくて……」

523 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/07/02 22:57:31.75 PHB8+ZLyO 1009/1238

天童「いえ、そんな事はありません……それに、貴方にはもう沢山の物を頂きました……」

「えっ? いや、まだ何もお売りしてませんけど……何ですか、それ?」

天童「それは……その、豊満なおっぱい……です……」


「……えっ?」ボインッ

女僧侶「……天童さん?」


天童「いや~、あんた、胸でかいねぇ!? それ何カップ? Dカップか? Dカップだろ?」

「……Fカップです」

天童「あらっ! Fカップだとさ!? こりゃ、いい目の保養になったばいっ!」

「……」

天童「俺のやる気もグングンと立ち上がってくるじゃありませんかっ! あっ、変な意味じゃなくてね?」

524 : VIPに... - 2014/07/02 23:02:45.41 PHB8+ZLyO 1010/1238

女僧侶「……天童さんっ!」

天童「ん? どうしたの、女僧侶ちゃん?」

女僧侶「あなたは何の話をしてるんですか!?」

天童「あぁ、おっぱいの話だよ。 女僧侶ちゃんも、大きくするコツとかこの人に聞いてみれば?」

女僧侶「だから、そういう事じゃなくて……!」

天童「やっぱり、アレか? 牛乳とか沢山飲んだのかな? 牛乳は健康にいいからね!」

女僧侶「……天童さんっ!」イライラ

天童「やっぱりね……胸が大きいのは浪漫だよね……おじさん、そう思う」

525 : VIPに... - 2014/07/02 23:11:37.15 PHB8+ZLyO 1011/1238

女僧侶「も~う……男の人って、どうしてこんなにエッチなんでしょう……」

天童「そんな事ねぇよ? これが普通だよ、普通」

女僧侶「勇者さんだって……エッチですし……」

天童「まぁ、あいつはちっとムッツリ君だな」

女僧侶「幼馴染の男盗賊さんと、小さい頃にエッチな本、盗んでたんでしょう……?」

天童「まぁ、でも……男としちゃ、気持ちはわかるもんだぜ?」

女僧侶「男同士の友情って、そういう物なんですかねぇ?」

天童「そういうもんだと思うよ? ポコチンのデカさ比べ合いしたりさぁ? 男ってのはバカな事して、友情作っていくんだよ」

女僧侶「……もう、この話やめません? 天童さん、武器買いましょうよ?」

天童「おっ、それもそうだな! それじゃあ、ボインの姉ちゃん! なんか、余り物の武器見せてくれやっ!」


「えっ……? あっ……はい……」

526 : VIPに... - 2014/07/02 23:14:29.11 PHB8+ZLyO 1012/1238






PM7:00

タイムリミットまで後、3時間






527 : VIPに... - 2014/07/02 23:18:42.60 PHB8+ZLyO 1013/1238

勇者「はぁっ……はぁっ……」

勇者「……」

勇者「やっと、見つけた……こんな所に入口があったのか……わかりにくいよ、本当に……」

勇者「でも、この付近には魔物はいないし……アジトにするならここしかないよな……」

勇者「きっと、あいつはここにいる……それで、きっと俺の助けを待ってるはずなんだっ……!」

勇者「……」

勇者「よしっ! 乗り込むぞっ!」

528 : VIPに... - 2014/07/02 23:22:01.01 PHB8+ZLyO 1014/1238

勇者「……よしっ!」ジリッ

「侵入者だっ! 侵入者が来たぞっ!」

勇者「……何!?」

「弓だっ! 弓を撃つんだっ! 殺せっ!」

勇者「やばいっ……! もう、バレたのかっ!」


ヒュンッ


勇者「うおおっ! 危ねっ! 撃ってきやがったっ!」

529 : VIPに... - 2014/07/02 23:26:15.74 PHB8+ZLyO 1015/1238

「撃てっ! 撃つんだっ!」


勇者「相手は何人だ……? 1……2……3人か……?」


ヒュンッ


勇者「……おっと!」

「くそっ! 外れたか!」

勇者(……何処から撃ってきてるんだ? 発射してくるポイントを探さないと)キョロキョロ


ヒュンッ


勇者「……見つけたっ! そこの岩陰に隠れているなっ!」


530 : VIPに... - 2014/07/02 23:31:04.22 PHB8+ZLyO 1016/1238

勇者「そこに隠れているなっ! くらえっ!」

「!」

勇者「うおおおぉ!」ダッ

「う、うわあぁ……!」

勇者「くらえっ! って、えっ……?」ピタッ

子供「うぅ……うぅ……」ガタガタ

勇者「……子供? どうして子供がこんな所に?」

子供「来るな……来るなぁ……」

勇者「あいつ、子供を利用して……何か、企んでいるのか……?」

531 : VIPに... - 2014/07/02 23:36:21.33 PHB8+ZLyO 1017/1238

「逃げろっ! ジローっ!」


ヒュンッ


勇者「……うおっと!」

子供「ここは俺が何とかするっ! だからお前も逃げるんだっ!」

勇者「……あそこにも、子供?」

子供「おいっ! 何やってる、サブローっ! お前もあいつを撃つんだっ!」


ヒュンッ


勇者「う、うおっと……!」

子供「あぁ! 俺達、暴走天使(ミッドナイトエンジェル)の力を見せてやろうぜ! イチローっ!」

勇者「……どうなってるんだ? 子供ばかりじゃないか、この盗賊団は」

532 : VIPに... - 2014/07/02 23:41:17.71 PHB8+ZLyO 1018/1238

ヒュンッ


勇者「お、おいっ! 待てよっ!」

「撃てっ! 撃つんだっ!」

勇者「やめろっ! 俺は君達を捕まえにきたんじゃないっ!」


ヒュンッ


勇者「う、うおっ……! やめろっ! 俺の話を聞けっ!」

「くそっ! あいつ素早いぞ!」

「でも、俺達が何とかしないと……」

勇者「俺は、男盗賊って奴と話をしに来ただけだっ!」


ヒュンッ


勇者「うおっ……! くそっ! お前ら、俺の話を聞けよ!」

533 : VIPに... - 2014/07/02 23:46:59.87 PHB8+ZLyO 1019/1238

勇者「くそっ……! こうなりゃ、力づくで……」ギリッ

子供「くっ……! あいつ、剣を構えるやがったぞっ! 構えろっ! 来るぞっ!」

勇者「峰打ちだっ……! 少し痛むが、許してくれっ……!」ダッ

子供「来たっ……! 俺の所に来たっ! 皆、助けてくれっ……!」

勇者「うおおおぉぉっ!」

子供「う、うわあぁっ!」ビクッ


ピタッ


勇者「……くそっ!」

子供「と、止まった……?」

534 : VIPに... - 2014/07/02 23:52:25.36 PHB8+ZLyO 1020/1238

勇者「……なんで、こうなるんだよ」

子供「……えっ?」

勇者「こんな力づくでさ……? 相手を押し付けるような事してさ……?」

子供「……」

勇者「これじゃあ、俺の事……無理矢理外に出そうとした大人と同じじゃねぇかよ……」

子供「……」

勇者「言葉が出ないからって……諦めちゃダメだ……天童や女僧侶ちゃんは、それでも俺と向き合ってくれたんだから……」

子供「……何、ブツブツ言ってんだ、コイツ?」

勇者「俺が望んでいた物……俺が望んでいた事……それは……」


コロン


子供「……えっ?」

535 : VIPに... - 2014/07/02 23:56:11.92 PHB8+ZLyO 1021/1238

勇者「子供達、聞いてくれ! 俺は君達に危害を加えるつもりはないっ!」

「……」

勇者「その証拠に……今、俺は剣を捨てた! そこから、見えるだろ!?」

「……アイツ、何やってんだ?」

勇者「俺は君達の仲間の、男盗賊という奴に話があるだけだ!」

「で、でも……剣を捨てたって事は……」

勇者「この奥にアイツはいるんだろ? 悪いが通してもらいたいっ!」

「……あぁ、大チャンスだよなぁ?」

勇者「……ん?」

538 : VIPに... - 2014/07/03 21:13:11.96 eJJw2LGkO 1022/1238

「撃てっ! 撃つんだっ! 相手は丸腰だぞっ!」

「おうっ!」

勇者「やめろっ! 俺は君達に危害を加えるつもりなんてないんだっ!」


ヒュン、ヒュン


勇者「う、うおっ……!」

「くそっ……! あいつ、なんて素早い奴だっ……」

「くそっ……! でも、男盗賊さんは怪我してるんだ……俺達がここでなんとかしないと……」

勇者「……えっ? アイツ、怪我してるのか? どういう事だ!?」

539 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/07/03 21:20:27.61 eJJw2LGkO 1023/1238

勇者「おい、 子供達! それはどういう事なんだっ!?」


ヒュン、ヒュン


勇者「やめろっ! 撃つなっ! 俺の話を聞けっ!」


ヒュン、ヒュン


勇者「だから、やめろって言ってんだろがっ! 俺はアイツが悪い事をしているから、説得しに来ただけなんだっ!」

子供「……男盗賊さんは、悪い人なんかじゃねぇよ」

勇者「……何?」

子供「居場所のない……俺達の面倒を見てくれる、天使みてぇな人なんだ、あの人は……」

勇者「……どういう意味だ?」

子供「おめぇらみてぇな奴らばかりだから、俺達の居場所がなくなって、あの人が苦労するんだよっ! くそっ! くらいやがれっ!」


ヒュン


勇者「やめろっ! 頼むから、俺の話を聞いてくれっ!」

540 : VIPに... - 2014/07/03 21:21:53.99 eJJw2LGkO 1024/1238






PM8:00

タイムリミットまで後、2時間







541 : VIPに... - 2014/07/03 21:29:24.96 eJJw2LGkO 1025/1238

天童「勇者のヤツ、大丈夫かねぇ……?」

女僧侶「……信じましょうよ。勇者さんって、いつも前向きで一生懸命ですもん。きっと大丈夫です」

天童「まぁ、女僧侶ちゃんがそういうなら……俺も信じてやってもいいかな……?」

女僧侶「えぇ、信じましょう」ニコッ

天童「じゃあ、帰ってきたあいつがすぐにでも休めるように、俺達は宿屋の受付でもいくか?」

女僧侶「えぇ、そうしましょうか」


「おい、お前達……動くな、そこで止まれ……」

天童「……ん?」

女僧侶「……ん?」

街長「……動くな。動くじゃないぞ、お前達」

542 : VIPに... - 2014/07/03 21:33:42.30 eJJw2LGkO 1026/1238

天童「何だよ、街長のおっさんじゃねぇか? 怖い顔してどうしたんだ?」

街長「……」

女僧侶「あの……街長さん……?」

街長「お前達には騙されたよ……完全にな……」

天童「騙す……? 何、言ってんだよ、街長さんよぉ……?」

街長「おいっ! お前達っ!」

女僧侶「……ん?」


ゾロゾロ……ゾロゾロ……


街人「……」

街人「……」

街人「……」

543 : VIPに... - 2014/07/03 21:40:24.36 eJJw2LGkO 1027/1238

女僧侶「皆さんどうしたんですか……?」アセアセ

天童「おいおいっ! お前ら、そんな武器持って、包囲してどういうつもりなんだよオイっ!」


街長「演技はもうよい……お前達……暴走天使(ミッドナイトエンジェル)の者だな……?」

女僧侶「……えっ?」

天童「おいおいっ! 俺達はそんな厨二臭ぇ暴走族になんか入らねぇよ! 何、言ってんだよ! 街長さんよぉ!?」

街長「……酒場の主人と、道具屋の娘がお前達が盗賊団の頭と仲間という情報を聞いたそうだが?」

女僧侶「……えっ?」

天童「……んっ?」

544 : VIPに... - 2014/07/03 21:49:55.49 eJJw2LGkO 1028/1238

街長「……そうだな? 酒場の主人よ?」

主人「はい、街長……こいつらはあの盗賊団の仲間です。私の店で話しているのを聞きました」

天童「ちょっと待て、ちょっと待てっ! 俺達はあんたの店でちゃんと金払ったじゃねぇか! 盗賊団なんかじゃねぇよ!」

街長「だが、盗賊団とは仲間なんだろう?」

主人「確か、幼馴染……とか、言っていたような気がします……」

天童「おいおいっ! 確かに、幼馴染ってのは合ってるけどよぉ! 仲間じゃねぇよっ! 仲間じゃ!」

街長「……」

主人「……」

天童「なんで、そんな目で見るんだよぉ! 俺達は盗みなんかしてねぇよっ!」


「そ、そんな事ないですっ……!」

天童「……ん?」

545 : VIPに... - 2014/07/03 21:55:57.59 eJJw2LGkO 1029/1238

「この人達……私のお店の前で、えっちな本を盗んでいるって話をしたましたっ……!」

街長「……エロ本?」

天童「あぁ、それはよぉ? 若気の至りってヤツじゃねぇのか? ホラ、思春期だったら、皆エロ本ぐらい盗むじゃん?」

「……」

街長「……ボロが出たな? 自分で盗みを認めるじゃないか?」

天童「えっ……? あっ、こりゃ違うよっ! 昔の話だって、昔の話っ!」

「あの、街長……それに、この人……」モジモジ

街長「……どうした?」

天童「なんだよ、まだあんのかよ……?」

「あの、この人……私の事、いやらしい目で見てたんですよ……」

街長「……どういう事だ?」

546 : VIPに... - 2014/07/03 22:06:17.48 eJJw2LGkO 1030/1238

「あの……私の胸をジロジロと舐めるように見てて……」

街長「……」

天童「いや、見るでしょ!? それだけのボインが目の前にあったら、普通見ちゃうでしょ!?」

「おっぱい大きいね……揉ませてよ……なんて、いやらしい事も言われました……」

街長「……何?」

天童「待てっ! 言ってねぇぞ! 流石の俺も、そこまでは言わねぇよっ!」

「このままじゃ私、この人に犯されちゃいますっ……! この人、目が怖いですもんっ! 悪党の目をしてますもんっ!」

街長「……」

天童「……お嬢様ちゃん、よく見なよ? ほら、僕の目はこんなに澄んでるんだよ? これは天使の目だよ、きっと」キラキラ


「……いやらしい」

街長「……汚れている」

女僧侶「無理矢理、善人の目に見せようとしている……って、感じがしますかね……?」


天童「うわっ! 女僧侶ちゃんまで! 皆、酷かぁ~!」

547 : VIPに... - 2014/07/03 22:17:18.03 eJJw2LGkO 1031/1238

街長「よし、お前らっ! こいつらを捕らえろっ! 我々の街を守るんだっ!」


「はっ!」 「縛れっ! 縄でこいつらを縛るんだっ!」

天童「おいっ! やめろよ、お前らっ! お前ら、勘違いしてるってばっ!」

女僧侶「痛っ……やめ……やめて下さい……話を聞いて下さいっ……!」


主人「……街長?」

街長「……どうした?」

主人「もう一人……仲間がいました。話の内容からするに、どうやらそいつが主犯格だと……」

街長「おそらく、そいつは……この仲間合流する為に、この街戻ってるるだろう……」

主人「そうですね。宿屋の前で張ってれば、捕まえる事ができるでしょう。 流石にこんな場所に野宿が出来る場所なんてありませんからね……」

街長「この二人を人質として……そいつを捕らよう……そして、纏めて始末しよう」

主人「そうですね……あの二人を今、始末するのは簡単ですが……人質として役に立ってもらいましょうか」


天童「おいっ! おめぇら、まるで悪党みてぇな事言ってんぞ! だから、勘違いだって、これはよぉ!」モガモガ

548 : VIPに... - 2014/07/03 22:29:16.01 eJJw2LGkO 1032/1238

ーーーーー


勇者「……なぁ? もう、いいだろ? やめようよ?」

子供「……うるせっ! 俺が男盗賊さんを守るんだっ!」


ヒュン


勇者「……ほら? 当たらねぇよ、そんな矢なんて。 もう、通してくれよ。 俺に時間がねぇんだよ」

子供「……くそっ」

勇者「男盗賊は間違った事してるんだぞ? 俺はそれを説得しに行くだけだってば……」

子供「お前らはいつもそうだ……綺麗事ばかりだ……」

勇者「……えっ?」

子供「俺だって、そんな事はわかってるんだよ……男盗賊さんだって、わかってるはずなんだ……」

勇者「……」

子供「でも……親のいねぇ、俺達が生きるにはこうするしかねぇんだよっ……!」

勇者「……親がいない?」

549 : VIPに... - 2014/07/03 22:43:45.42 eJJw2LGkO 1033/1238

子供「男盗賊さんはなぁ……? 俺達の親なんだよ……」

勇者「……」

子供「あの人が、親のいない俺達に、誰も教えてくれない生きる術を教えてくれたんだ……」

勇者「……これが、君達の生きる術なの?」

子供「そうだよ……男盗賊さんが……教えてくれたんだよ……」

勇者「……何でだよ。なんで、こんな事してるんだよ、アイツ」

子供「うるせぇっ! お前達の綺麗事はもういいんだよっ!」

勇者(親のいないこの子達を育てているのが……アイツなら……)

子供「くそっ! 次こそは必ず命中させてやるぞっ! 覚悟しろっ!」

勇者(この子達を改心させるべきなのは、俺じゃないっ……! だから……だからっ……!)

555 : VIPに... - 2014/07/04 22:08:25.56 KV5Bw9lQO 1034/1238

子供「うおおっ! 次こそは必ず命中させてやるっ!」

勇者「えっと……ええっと……レオリオ? ……お眠り……ああっ! 違う違うっ……」

子供「誰も助けてなんかくれないんだ……自分達の居場所は、自分達で奪い取らなくちゃいけないんだっ……!」

勇者「レム睡眠……? ムレムレパンティ……? ああっ、違う違うっ! そうじゃないっ!」

子供「男盗賊さんが、そうやって教えてくれたんだっ……! うおおっ! くらえっ!」


勇者「『レムオル』?」ピカーッ

556 : VIPに... - 2014/07/04 22:16:11.81 KV5Bw9lQO 1035/1238

子供「くそっ! また、よけられたかっ!」

子供「……ん?」キョロキョロ

子供「おいっ! 何処だっ! 何処にいやがるっ!」

子供「くそっ……! 何処かの岩陰にあいつ、隠れやがったなっ……!」

子供「だけど……俺がここで見張ってれば……皆の所にはいけないんだから……」


勇者(……違う。もう、君の後ろにいるよ)

子供「ここは通さないぞ……絶対に通さないぞっ……!」

勇者(どうやら、この呪文は姿を消す事が出来る呪文だったらしいな……これで、この子達を傷つけずにアイツの所に行けるぞ……)

子供「俺が一番大きいんだっ……! 俺だって、男盗賊さんみたいに皆を守るんだっ……!」

勇者(君も、必ず改心させてみせるから……だから、今は少し待っててくれっ!)ダッ

559 : VIPに... - 2014/07/04 22:25:51.94 KV5Bw9lQO 1036/1238

ーーーーー


天童「……ったく、臭ぇ倉庫に閉じ込めやがってよぉ! あいつらは何を考えてるんだよ!」

女僧侶「どうやら……何か誤解しているようですね……」

天童「ねぇ、この場所隠し扉とかないの?」

女僧侶「……隠し扉?」

天童「ほらほら、床のスイッチ踏んだらさぁ? 壁が開いて、何処かの隠し扉が開くとか……普通、そういうのあるじゃん?」

女僧侶「……普通の倉庫には、そういう物はないと思いますよ?」

天童「なんだよ! お約束がわかってねぇよなぁ!」

女僧侶「それに……隠し扉があったとしても……こんな縄で縛られている状況では……」

天童「女僧侶ちゃん、ポケットにさぁ? ハサミとかライターとか入ってないの? ほら、映画とかでよくあるじゃん?」

女僧侶「……残念ながら、持っていません」

天童「ちくしょう……このままじゃ、盗賊団と間違えられて殺されちまうぞ? あ~んな、ダサい暴走族に間違えられたままなんて、おじさん嫌だなぁ!」

561 : VIPに... - 2014/07/04 22:33:17.19 KV5Bw9lQO 1037/1238

女僧侶「……大丈夫ですよ」

天童「……ん?」

女僧侶「きっと……勇者さんが、なんとかしてくれます……」

天童「……あいつも盗賊団の仲間だと思われるけどなぁ?」

女僧侶「大丈夫です……だって、勇者さん、いつもいつもこんなピンチを乗り越えてきたじゃないですか?」

天童「……」

女僧侶「今回だってきっと、大丈夫です。 だって、ただの勘違いなんですし……」

天童「……まぁね?」

女僧侶「盗賊団の方は勇者さんの幼馴染なんですから……きっと、改心させる事だって出来ますよ」

天童「……まぁ、俺もそう思うけどよぉ?」

女僧侶「だから……勇者さんを信じて待ちましょうよ? ねっ?」ニコッ

天童「……アイツだって成長してるんだし、そんな事はわかってんだけどよぉ? おじさん、ちょっとタイムリミットが心配なんだよねぇ?」

女僧侶「……タイムリミット?」

天童「あっ……! なんでもないっ! こっちの話ですわっ!」アセアセ

女僧侶「?」

562 : VIPに... - 2014/07/04 22:38:27.41 KV5Bw9lQO 1038/1238

ーーーーー


勇者「……」


「シローお兄ちゃん……お腹減った……」

「我慢しろ、ゴロー。 お前より、小さいロクローだって、皆の為に我慢してるんだぞ?」

「……うん」

「じゃあ、今日も勉強始めようか! 男盗賊さん、魔道書も貰ってきたみたいだしな!」

「うんっ! 僕も頑張って、男盗賊さんみたいに強くなるっ!」


勇者(……この子達も、親を亡くした子達なのかな)

563 : VIPに... - 2014/07/04 22:47:34.54 KV5Bw9lQO 1039/1238

「あのねあのね! 僕、呪文使えるようになったんだっ!」

「ははっ! そんな弱い呪文じゃ、男盗賊さんにはまだまだだぞ?」

「そんな事ないよっ! 悪い奴がここに来たら、僕がこの呪文でやっつけてやるんだからっ!」


勇者「!」


「そういうのは……イチロー兄ちゃん達に任せておきなさい。お前はまだ、小さいだろ? それに、泣き虫じゃないかお前」

「そんな事ないよっ! 僕だって、皆の為に戦うんだったら、怖くないよっ! 僕だって、もう出来るよっ!」

「ははっ! お前、男盗賊さんに似てきたな? じゃあ、お前が早く一人前になれるように、今日も勉強しようかっ!」


勇者(正しいと思う……正しい事してると思うよ……だけど、違う……)


「僕も魔法覚えたいっ!」

「おっ? ロクローも頑張るじゃないか! じゃあ、皆で勉強しようかっ!」

「うんっ!」


勇者(君達も……必ず正しい道を歩めるようにしてみせるからっ……!)ダッ

564 : VIPに... - 2014/07/04 22:48:29.47 KV5Bw9lQO 1040/1238






PM9:00

タイムリミットまで後、1時間







565 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/07/04 22:55:23.67 KV5Bw9lQO 1041/1238

勇者「……」


「うぇ~ん……シチローお兄ちゃん……」

「どうしたの?」

「あのね……ハチローと鬼ごっこしてたら、こけて擦りむいちゃったの……」

「バカだな、キュウローはっ! 何してるんだよ!」


勇者(腕に……傷を負ってるな……あの子……)


「だから……お薬ちょうだい……」

「このお薬は、男盗賊さんに使わないといけないのはわかってるだろ? そんな擦り傷ぐらい、我慢しろよ!」

「……う、うん」

「男盗賊さんが、魔物に襲われて、怪我して戻って来たの見ただろ!?」


勇者「!」

566 : VIPに... - 2014/07/04 23:01:39.12 KV5Bw9lQO 1042/1238

「お前、その泣き虫な所、直した方がいいぞ?」

「……僕、泣き虫じゃないもん」

「俺達は一番小さいんだけど……いつまでも、男盗賊さんやお兄ちゃん達に甘えてられないんだぞ?」

「……うん」

「悪い奴が来たら……自分達で戦わないといけないんだ……男盗賊さんはいつもそう言ってるだろ?」

「……うん」


勇者(大丈夫……君達も……必ず……)


「お前、そんな泣き虫だったら、戦いなんて出来ないぞ!?」

「大丈夫……僕だって、悪い奴が来たら……戦ってみせる……」

「よしっ! じゃあ、そんな擦り傷ぐらい、我慢しようっ! なっ?」

「うんっ!」


勇者(これで……9人……あいつはこの奥にいるんだな……)

567 : VIPに... - 2014/07/04 23:08:39.83 KV5Bw9lQO 1043/1238

男盗賊「くそっ! らしくねぇな……ヘマしちまった……」

男盗賊「物を奪ってきたのはいいけど……森で魔物に襲われるなんて、ついてねぇなぁ……」

男盗賊「くそっ……痛ぇ……痛ぇよぉ……」

男盗賊「イチロー達に見張ってもらってるけど……やっぱり、あいつらだけじゃ心配だよ……」

男盗賊「あいつらはまだ、小さいんだから……俺が行かないと……」ググッ

男盗賊「う、うおっ……!」

男盗賊「くそっ……! 待ってろよ……俺が……必ずお前らを一人前にしてやるからよぉ……」ヨロヨロ


「……動くなよ、傷が開くぞ」


男盗賊「……誰だ?」

勇者「……大人しく寝とけよ。お前、怪我してんだからよぉ」スーッ

男盗賊「勇者っ……! お前、どうしてここにっ……!」

568 : VIPに... - 2014/07/04 23:14:10.84 KV5Bw9lQO 1044/1238

男盗賊「お前っ……! どうやって、ここに入ってきた……?」

勇者「……」

男盗賊「お前っ……! まさか、皆と戦って、俺をここまで追って来たのか!?」

勇者「……」

男盗賊「お前とは幼馴染だけどよぉ……? あいつらを傷つける奴は……お前でも許さねぇぞっ!」グッ

勇者「……」

男盗賊「……ぐっ! う、うおっ!」

勇者「……動くなって、傷が開くからさ?」

男盗賊「く、くそっ……」

勇者「安心しろよ……子供達には手を出してねぇよ……」

男盗賊「……えっ?」

勇者「魔法で……透明になって侵入してきただけだよ……お前に会いたくてな?」

男盗賊「……」

569 : VIPに... - 2014/07/04 23:18:43.05 KV5Bw9lQO 1045/1238

勇者「……座れよ? あの頃みたいにさ? お話しようぜ?」

男盗賊「……お説教のつもりか?」

勇者「……そうじゃねぇよ。 10年振りぐらいなのに、何でそんな事言うんだよ、お前」

男盗賊「……」

勇者「あの頃みたいに……地べたに座って……バカな話、二人でしようぜ?」ペタッ

男盗賊「……」

勇者「……何やってんだよ? ほら、早く座れよ」

男盗賊「……」

勇者「……おめぇ、そんなにかったりぃ奴だったか? ホレ、早く座れっての!

男盗賊「……」ペタッ

勇者「そうそう、それでいいんだよ」

男盗賊「……」

570 : VIPに... - 2014/07/04 23:28:51.52 KV5Bw9lQO 1046/1238

勇者「……なぁ? この十年間、何した?」

男盗賊「……はぁ?」

勇者「いやぁ……おめぇも、こっちの大陸に来てたんだな? おめぇ、見た時、ビックリしたよ」

男盗賊「……説教しに来たんじゃねぇのか? 何のつもりだ?」

勇者「おめぇ、つれねぇな? なぁ~んで、そんな事言うのかね? 十年振りぐらいなんだぞっ!? もっとテンション上げろよ!?」

男盗賊「……」

勇者「……じゃあ、俺の話からしようか?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「いや~、実はね……俺、ついこの間まで引き篭もったままだったんだよ……」

男盗賊「……」

勇者「そんな俺が……こんな魔王城の近くまでやってきてるんだぜ? 興味わかねぇのか、おめぇ?」

男盗賊「……」

勇者「だから、なんでつれねぇんだよ、お前……まぁ、じゃあ、勝手に話すよ……」

571 : VIPに... - 2014/07/04 23:30:02.35 KV5Bw9lQO 1047/1238






PM9:30

タイムリミットまで後、30分







572 : VIPに... - 2014/07/04 23:40:09.89 KV5Bw9lQO 1048/1238

勇者「……まぁ、なりゆきで始まったような旅だけどさぁ? 人間、やれば出来るんだね? 俺も、ここまでやれるとは思わなかったよ!」

男盗賊「そうか……引き篭もってたお前が……凄いな、お前……」

勇者「そんな事ねぇよ! お前だって、凄ぇじゃねぇか!」

男盗賊「……えっ?」

勇者「お前……あの子供達、育ててるんだろ?」

男盗賊「……」

勇者「あの子達……両親、いないんだろ……?」

男盗賊「あぁ、あいつらの親は……皆、魔物に殺され……あいつらは孤児なんだ……」

勇者「そんな奴らの親代わりになってやるなんて……お前、凄いよ……」

男盗賊「……」

勇者「お前……やっぱり、俺の親友だよ……」

男盗賊「……えっ?」

勇者「……でもよぉ? 親友だからこそ、一つ言わせてくれねぇか?」

男盗賊「……あぁ?」

573 : VIPに... - 2014/07/04 23:46:53.58 KV5Bw9lQO 1049/1238

勇者「お前……あの子達、育てる為に……盗みしてるんだろ……?」

男盗賊「……」

勇者「それでいいのかよ? お前、本当はこんな事したくねぇんじゃねぇのか?」

男盗賊「……」

勇者「物は盗むけど、代金は払う……それがおめぇのポリシーだったじゃん!? お前今、自分の中のルールを破ってねぇか?」

男盗賊「……なんだよ」

勇者「お前……あの子達を育てるのはいいけどさぁ……? それだったら……」

男盗賊「黙れっ!」

勇者「!」ビクッ

男盗賊「……結局、説教かよ。そんなのわかってるんだよ。わかってる上で……こうやって、生きてるんだよ……」

勇者「待てよ……! 俺は説教なんてするつもりじゃ……」アセアセ

男盗賊「綺麗ぬかしてんじゃねぇよっ! これが現実なんだよっ! こうするしかねぇんだよっ!」

勇者「!」

579 : VIPに... - 2014/07/05 21:46:01.11 4CQ+HIoeO 1050/1238

男盗賊「最初は皆、そう言うんだよ……最初はな……」

勇者「……」

男盗賊「だけど、現実はそうじゃない。こんな世界じゃ、皆自分が生きていくだけで精一杯なんだ」

勇者「……」

男盗賊「誰があいつらの面倒を見てくれる……? 誰があいつらが生きる為の金を出してくれるっていうんだ……?」

勇者「そ、それは……」

男盗賊「一番上のイチローは10歳……一番下のキュウローは4つだ……」

勇者「……」

男盗賊「あいつらが、一人前になるまで何年かかると思ってるんだ? 5年か……? 10年か……?」

勇者「……」

男盗賊「勇者……? 綺麗事だけじゃなぁ……世の中生きていけねぇんだよ?」

勇者「違う……違うよっ……! きっと、そんな事はないっ……!」

580 : VIPに... - 2014/07/05 21:56:14.23 4CQ+HIoeO 1051/1238

男盗賊「何で、俺達がこんな場所にいると思う? 何で、魔王城の間近で子供引き連れて旅なんかしてると思う……?」

勇者「……えっ?」

男盗賊「俺達は追いやられてんだよ……?」

勇者「……」

男盗賊「俺だって、探したよ……何年も何年も、あいつらの面倒を見てくれる人間を探したよっ……!」

勇者「……」

男盗賊「数えきれない程、頭も下げた……数えきれない程、魔物討伐だってしたっ……!」

勇者「……」

男盗賊「だけどなぁ……? そいつらは、10年育てる事の重みを感じ出すと……どいつもこいつも……掌を返し始めるんだ」

勇者「……」

男盗賊「居場所を探してたら……こんな所まで辿り着いちまったよ……どうするよ、魔王討伐でもするのか? あいつら連れてよぉ!?」

勇者「……そ、それは」

男盗賊「居場所がねぇんだったらよぉ! 自分達で作るしかねぇだろっ! 持ってる人間から少しずつ奪いとってよぉ!?」

581 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/07/05 22:06:15.77 4CQ+HIoeO 1052/1238

勇者「じゃあ、お前は……後10年、続けるつもりなのかよ……?」

男盗賊「……あぁ?」

勇者「あの子供達が一人前になるまでの時間……後10年……こうやって、盗みを続けるのか……?」

男盗賊「……他に方法が何がある?」

勇者「……それは、俺にはよくわからないけど」アセアセ

男盗賊「勇者……もう説教はいいよ……そんな言葉、散々言われたよ……俺はわかった上でやってるんだよ」

勇者「でも……でもっ……!」

男盗賊「綺麗事はもういいって言ってんだよっ! 俺達の居場所なんて、どうせ何処にもねぇんだよっ!」

勇者「……違うっ!」

男盗賊「どうせ、綺麗事ばかり言って現実に直面した時には逃げる連中しかいねぇんだっ! 今までだってそうだった! これからだって、どうせそうだっ!」

勇者「簡単にどうせどうせ言って諦めてんじゃねぇよっ!」

男盗賊「!」

582 : VIPに... - 2014/07/05 22:17:34.00 4CQ+HIoeO 1053/1238

勇者「なぁ、男盗賊……? 俺、お前の事、親友と思ってるから言わせてくれよ……」

男盗賊「……なんだよ」

勇者「お前さぁ……? 立派だよ……凄く立派な事してると思うよ……」

男盗賊「……」

勇者「親のいない子供を育てるって事は……凄く立派な事をしてると思う……それは、世界を変える事より、立派な事かもしれない……」

男盗賊「……」

勇者「お前は……あの子達にとって、天使ような存在だと思うよ……?」

男盗賊「天使……?」

勇者「……でもさぁ? お前、言えねぇだろ? 胸張って言えねぇだろ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「自分は今……親のいない子供達の親代わりになって……毎日毎日、子供達の為に、一生懸命頑張ってますって……胸張って、言えねぇだろ?」

男盗賊「……生きる為には、仕方ねぇじゃねぇか」

勇者「教える立場のお前がそうだったら……あの子達、どうなるよ……? あの子達が一人前になった時、胸張ってお前に育てられたって言えると思うか!?」

男盗賊「うるせぇ! お前に何がわかるんだっ!」

勇者「俺だから、わかるんだよぉ! 親のいない子供の気持ちは、俺が一番よく知ってるんだよっ!」

男盗賊「!?」

583 : VIPに... - 2014/07/05 22:27:22.09 4CQ+HIoeO 1054/1238

勇者「……俺の父ちゃん、魔王討伐で死んじゃったじゃん?」

男盗賊「……」

勇者「母さんは姉ちゃんにつきっきりだったし……姉ちゃんは、そのせいで出来損ないの俺の事、見放してさぁ……?」

男盗賊「そうだった……お前……」

勇者「だから……父親から学ぶべき事って……俺、何にも教わってねぇんだ……」

男盗賊「……」

勇者「父ちゃんが、何を望んでいるのか……俺に、どうなって欲しいのか……何もわからなかった……」

男盗賊「……」

勇者「そのせいで俺、引き篭もっちゃって……どんどん、周りとの繋がりも切れていって……」

男盗賊「……」

勇者「……そのうち、俺の周りには誰もいなくなった」

男盗賊「……勇者」

勇者「……でも! そこにある日、天使のおっさんが現れたんだ!」

男盗賊「……天使?」

584 : VIPに... - 2014/07/05 22:35:52.25 4CQ+HIoeO 1055/1238

勇者「そいつは腐ってた俺に……正しく生きる方法を教えてくれたんだっ……!」

男盗賊「正しく……生きる……?」

勇者「俺の親代わりになって……! 俺の友人代わりになって……! 胸張って生きる為の方法を、いっぱい教えてくれたっ!」

男盗賊「胸を張って……生きる……?」

勇者「あいつが正しい事を教えてくれたから……勇者の息子なんて、とても口する事が出来なかった俺がさ?」

男盗賊「……」

勇者「今、勇者の息子だって胸張って、言えるようになったんだよっ!」

男盗賊「……」

勇者「親代わりの人間がさぁ……? 正しい事教えてくれなきゃ、子供は胸を張って生きれねぇよ?」

男盗賊「……だけど」

勇者「お前が間違った道進んでたら、あの子達どうなるんだよ!? なぁ!?」

男盗賊「わかってる……わかってる……だけど……」

585 : VIPに... - 2014/07/05 22:45:28.02 4CQ+HIoeO 1056/1238

勇者「そりゃ……お前の全てを理解して……受け入れるのは難しい事だと思う……」

男盗賊「……」

勇者「俺だって、そうだった……誰にも理解されなかった……綺麗事言って、引き篭もりをやめさせようとしてるんだな……なんて、ずっと思ってた」

男盗賊「……」

勇者「……でも、何処かに必ず居場所はあるんだよ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「俺に向き合って、手を差し伸べてくれる人間は……実はすぐ近くにいたし……旅している最中にも大勢いたんだ……」

男盗賊「……」

勇者「間違ってたのは……一人で背追い込んで……誰も助けてくれないなんて思って……諦めてた俺の方だったんだよ……」

男盗賊「……勇者」

勇者「お前だって、今辛いんだろ!? 本当は誰かの助けが欲しいんじゃねぇのかよ!?」

男盗賊「!」

勇者「だったらよぉ! 諦めて……腐らずに……周りに甘えようぜっ! きっと、受け入れてくれる人は何処かに必ずいるんだからよぉ!」

586 : VIPに... - 2014/07/05 23:01:49.94 4CQ+HIoeO 1057/1238

男盗賊「そんな奴が、こんな大陸にいるわけ……」

勇者「じゃあ、どうすんだよっ! このまま、盗み続けて……そんな方法で子供達を育てるのかよ!?」

男盗賊「……それは」

勇者「子供も盗賊団の仲間だと思われて……一人前になった時、あの子達はどうすんだよ!? 居場所はあるのかよ!?」

男盗賊「くそっ……! だけど、それしか方法は……」

勇者「お前の人生それでいいのかよ!?」

男盗賊「!」

勇者「正しい事してるのに……間違った事をして……胸、張って言える事なのに……胸、張って言えなくて……」

男盗賊「……」

勇者「居場所なんて、絶対何処かにあるんだよ……見つけようぜ? 一緒によぉ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「お前の為にも……子供の為にも……そして、俺の為にも……」

男盗賊「……勇者?」

勇者「今のお前、見てるの辛ぇよ……街に行こうぜ? それで、お前達を受け入れて貰えるよう頼んでみようぜ?」

男盗賊「だけど、俺はあの街から……」

勇者「そうやって、ネガティブに考えるなよ! 子供の為に盗みしたんだろ!? だったら、わかるよ! 絶対、わかってくれるよ!」

男盗賊「……」

勇者「頭なら俺が下げるっ! 金だって払うっ! 最後の最後まで諦めんなよっ! 少ない希望だからって……最初から何もしねぇのはよくねぇよっ!」

男盗賊「……」

587 : VIPに... - 2014/07/05 23:12:10.12 4CQ+HIoeO 1058/1238

子供「……うぅ」グスッ

男盗賊「イチロー……お前、今の話……聞いてたのか……?」

勇者「ど、どうしてここに……」

子供「そいつが消えて……男盗賊さんの所に行ってたら危ないと思って……戻ってきた……」

男盗賊「……お前」

勇者「……」

子供「俺、気づいてた……この中で……一番年上だから……気づいてた……」

男盗賊「……」

勇者「……」

子供「自分達が……悪い事をしている……男盗賊さんが、俺達を育てる為に……仕方がなく悪い事をしてるって気づいてた……」

男盗賊「……お前」

588 : VIPに... - 2014/07/05 23:24:20.91 4CQ+HIoeO 1059/1238

子供「だけど……言えなかった……言葉にして……男盗賊さんも俺達を捨ててしまう事が怖かった……」

男盗賊「そんな事はねぇ……俺はお前達をっ……!」

子供「俺……もう、一人前だから、大丈夫だよ……?」

男盗賊「……えっ?」

子供「俺は……胸張って、男盗賊さんに育てられたって言うからさぁ……?」

男盗賊「……」

子供「あいつらは……もっと、違う方法で面倒見てやってよ……」

男盗賊「ふざけんじゃねぇっ……! それじゃあ、まるでお前を捨てるみてぇじゃねぇかっ……!」

子供「だって……男盗賊さんの辛い顔を見てるの……俺も辛いもん……」

男盗賊「だからって、お前がそうする事はねぇだろがっ! お前の居場所はあるよっ! 俺が作ってやるからっ!」


勇者(必ず……皆の居場所を作るんだ……)

589 : VIPに... - 2014/07/05 23:26:43.01 4CQ+HIoeO 1060/1238






PM9:55

タイムリミットまで後、5分







590 : VIPに... - 2014/07/05 23:32:04.80 4CQ+HIoeO 1061/1238

酒場の主人「街長、来ましたっ! 盗賊団ですっ! 盗賊団が現れましたっ!」

街長「よし、人質を連れてこい……それから、奴らを包囲して……」

主人「ちょっと待って下さい、街長っ! あの盗賊団……少し、変ですよ……」

街長「……どういう事じゃ?」

主人「いやっ……そのっ……それが……」


ゾロゾロ……ゾロゾロ……


勇者「……おい、歩けるか? 大丈夫か?」

男盗賊「あぁ……大丈夫だ……」ヨロヨロ

子供達「……」


街長「なんだ、あの盗賊団は……子供ばかりじゃないか……」

591 : VIPに... - 2014/07/05 23:41:27.63 4CQ+HIoeO 1062/1238

勇者「あの……街長さん……話だけでも聞いてもらってもいいですか……?」アセアセ

街長「……」

勇者「悪い事をしましたが……事情があるんですよっ……! お願いしますっ! 話だけでも聞いて下さいっ……!」

街長「……」

勇者「盗んだ物の代金は、僕が支払いますっ……! だから……だから、話だけでも聞いて下さいっ……!」

街長「……そんなに子供を引き連れて、どういうつもりじゃ?」

勇者「あのっ……それはっ……!」

街長「……お前が、この盗賊団の頭じゃな?」ギロリ


男盗賊「……」

街長「相当、訳ありみたいだな? 話を聞かせてみろ? 興味があるわ」

男盗賊「……えっ?」

街長「盗賊団とは、もっとゴツい男の集まりだと思っておったわ。 なんで、こんなに子供ばかりなんじゃ?」

男盗賊「そ、それは……」

592 : VIPに... - 2014/07/05 23:51:05.62 4CQ+HIoeO 1063/1238

ーーーーー


男盗賊「……と、いう訳なのです」

勇者「こいつにも、理由があったんですっ! 街長さんっ! 理解してやって下さいっ!」

街長「……ふん、感心せんな」

男盗賊「……なんだと、この野郎?」ワナワナ

勇者「街長さんっ! 違うんですっ!」

街長「こんな世界じゃ……皆、自分事だけで精一杯じゃろう……」

男盗賊「……あんたは、綺麗事は言わねぇみてぇだな?」

勇者「そんな事ねぇよっ! きっと……わかってくれるよ……!」

街長「お前達が……他の街から、迫害されたのも、当然じゃろう……9人の子供の面倒を見れる人間なんて……こんな世界にはおらんは……」

男盗賊「……くそっ!」

勇者「街長さんっ!」

街長「……だが、それは一人で背追い込もうとするから、そうなるのではないか? 今のお前みたいにな?」

男盗賊「……えっ?」



593 : VIPに... - 2014/07/06 00:05:38.71 vyIa5TqaO 1064/1238

街長「この街は、魔王城が近い……物資もとれん……気性の荒い魔物だに襲われる事だってある……」

勇者「……」

街長「だが、我々はそれを皆で協力して……それぞれがそれぞれを助け合って……こうやって生きているのだ……」

男盗賊「……」

街長「一人で背負い込むより、皆で助け合う……うちの街の連中は、こんな街だからこそ……誰よりもその大切さを理解しておる……」

勇者「……街長さん」

街長「こんな街まで辿り着いたのは、幸か不幸か……ただ、我々は受け入れるぞ?」

男盗賊「……えっ?」

街長「物資も少ない……危険な街だがね……? お前が心を改め……この街で皆で協力し合えるのなら……子供の10人や20人くらい、構わんよ」

595 : 問題児 ◆DtBPtXSeyWLy - 2014/07/06 00:19:41.27 vyIa5TqaO 1065/1238

勇者「街長さんっ……! お願いしますっ……!」ベタッ

街長「……やめんか、土下座なんて。みっともない」

勇者「おいっ……! 男盗賊っ……! おめぇも、土下座ぐらいしろよっ! お前ら、受け入れてもらえるんだぞっ!」


男盗賊「あっ……あぁっ……! 街長さんっ! お願いしますっ!」ベタッ

街長「だから、やめろって……お前の子供達も見てるんだから……」

男盗賊「俺、自分の周りに……助けてくれる人なんていないと思って……一人で背追い込んで……盗みもして……」

街長「もういいから……子供の前でみっともねぇ事、すんなってのっ! お前、親じゃねぇか!」

男盗賊「これから、心を改め……こいつらが俺に育てられたと胸を張って言えるようになりますから……お願いしますっ!」

街長「いい親になりてぇんだったら、土下座はやめろっての! 自分の親が土下座してるって、もの凄く見たくない光景だよ? ねぇ、ねぇ?」

596 : VIPに... - 2014/07/06 00:27:44.30 vyIa5TqaO 1066/1238

街長「お前、大丈夫なの……? 親として大丈夫か、おい」

男盗賊「……す、すいません」アセアセ

街長「でも、9人も子供いると大変じゃろ? 寝床とかだけも大変じゃん? 今晩どうするつもりだったの?

男盗賊「あっ……それは、洞窟で過ごそうかと……」

街長「……えっ? 洞窟って、あの毒蛇のいる洞窟?」


男盗賊「……えっ?」

勇者「……えっ?」

街長「この辺の洞窟って……あの洞窟だけだろ? あの、毒蛇のせいで、魔物が寄り付かなくなった、あの洞窟だろ?」

男盗賊「……あそこ、毒蛇いたのかよ」

勇者「あの、街長さん……僕は神聖な洞窟って聞いたような気がするんですけど……」

598 : VIPに... - 2014/07/06 00:35:40.59 vyIa5TqaO 1067/1238

街長「昼は神聖なんだよ、昼はね?」

勇者「……は、はぁ」

街長「でも、夜行性の蛇だから、夜になると、神聖じゃなくなるんだよ。夜になるとね……」

勇者「それ……ネーミングなんとかならなかったんですかね……? 神聖ってそういう事じゃないでしょ……」

街長「うちの街の連中はそれでわかってるからいいんだよ。丁度今頃、暴れてるんじゃね? お前ら、間一髪だったな!?」

勇者「……」

街長「まったく……親なんだったらさ……? もっと気をつけた方がいいと思うぜ?」


女僧侶「……ほら、天童さん? 和やかに話してますよ? 勘違い、とけたみたいでよかったじゃないですか?」

天童「よしっ! はい、カァ~ット! 10時ジャストだっ! それはそうと、この縄、もう外してくれてもいいんじゃねぇか、オイっ!」モガモガ

599 : VIPに... - 2014/07/06 00:43:54.87 vyIa5TqaO 1068/1238

翌日ーーー


男盗賊「……世話になったな」

勇者「気にすんなよ? 親友じゃねぇか」

男盗賊「お前……本当に魔王城に行くのか……?」

勇者「あぁ、俺も……お前の力になりたいしさ?」

男盗賊「……えっ?」

勇者「あの子達の居場所がさ……? 一時の物じゃなくて……永遠の物にしなくちゃいけないだろ?」

男盗賊「……あぁ」

勇者「だから、俺が魔王を倒して……平和な世界を必ず作ってみせるからっ!」

男盗賊「……お前は簡単に言うんだな」クスクス

勇者「子供、9人育てるよりは簡単だろっ! 俺、絶対できないもん、そんな事!」

男盗賊「俺も……一人だったら、いつかは出来なくなってたよ……」

600 : VIPに... - 2014/07/06 00:53:16.65 vyIa5TqaO 1069/1238

男盗賊「俺も……怪我が治ったら、必ず合流するよ」

勇者「いいよいいよ……お前は、あの子達のそばにいておいてやれよ」

男盗賊「いや……俺も胸張って生きたいからさ……?」

勇者「……えっ?」

男盗賊「散々、生きる為に悪事を繰り返してきたんだ……あいつらに教えるのは、そういう事じゃない……」

勇者「……」

男盗賊「正しい事をしている親の背中を見て……子供ってのは、育っていくんだよ……お前が教えてくれたじゃねぇか?」

勇者「……でもよぉ? 大丈夫か? 相手は魔王だぜ?」

男盗賊「お前と一緒なら、大丈夫だよ。 だって俺達、親友だろ?」

勇者「気持ちはありがたいけどなぁ……」

男盗賊「平和な世界を作る事が……今まで俺が奪ってきた人に対する罪滅ぼしさ……」

勇者「俺がやるからっ! それは俺がやるから、お前はあの子達のそばにいてやれっての!」

男盗賊「……いや、必ず合流する」

勇者「も~う……頑固だなぁ……」

601 : VIPに... - 2014/07/06 00:59:05.77 vyIa5TqaO 1070/1238

ーーーーー


天童「おう、勇者! 幼馴染との別れは済んだか!?」

勇者「う~ん……あいつ、魔王城に来るとか言ってたけど、大丈夫かなぁ……?」

天童「まっ、それだけよぉ? おめぇの言葉が響いたんじゃねぇか? 何、言ったか俺はわかんねぇけどよぉ?」

勇者「……そうかもね」

天童「『正義感』……クリアだな……」メモメモ

勇者「……うん」

天童「ところでよぉ……? 勇者、気づいてるか……?」

勇者「……ん?」

天童「おめぇ、ここまで命題9つクリアしたんだぜ?」

勇者「う、うん……」

天童「という事は……次がラストだっ! そして、おめぇも真人間だよ、おいっ!」

勇者「な、なぁ……天童……?」

天童「……ん、 どうした? 次がラストなんだから、もうちょっと喜んでもいいんじゃねぇの?」

602 : VIPに... - 2014/07/06 01:03:46.83 vyIa5TqaO 1071/1238

勇者「俺の……命題が全部終わったらさ……?」

天童「……ん?」

勇者「……おめぇ、その後どうするんだ?」

天童「あぁ、天界に帰るよ」

勇者「……えっ!?」

天童「天界帰って……レポート纏めなきゃいけねぇだろ……で、このレポートがまた面倒臭ぇんだよ……神様、細けぇからさぁ……?」

勇者「天界に……帰る……」

天童「まっ、俺もそろそろ天界に帰る準備しとかねぇとなぁ……」

勇者「……準備?」

天童「あぁ、荷物纏めてよぉ? 天界に帰る準備だよ、準備」

603 : VIPに... - 2014/07/06 01:11:43.44 vyIa5TqaO 1072/1238

勇者「……おめぇ、手ぶらで来たんだから、持って帰るもんなんてねぇだり?」

天童「……あるぜ?」

勇者「……何だよ?」

天童「お前との思い出」キリッ

勇者「……えっ?」

天童「カァ~! かっこいい、俺っ! もう一回言おうっ! お前との……思い出……」

勇者「……」

天童「カァ~、やっぱ、俺ハンサム……これメモしとこ……」

勇者「……」

天童「え~、俺は……ハンサム……ナウでヤングなハンサム……っと……」メモメモ

勇者「……バカじゃねぇのか!?」

天童「なぁ~んで、そんなに怒ってるんだよ、勇者君……あっ、もしかして、おじさんと別れるのが寂しいのかぁ~?」ニヤニヤ

勇者「……」

天童「……ん? どうしたの?」

勇者「そ、そんな訳ねぇだろっ! くだらねぇ事、言ってねぇで、早く魔王城行くぞっ! もう、そこだろがっ!」ズガズガ

天童「お、おう……なんて迫力だ……あいつ、気合入ってやがるなぁ……」


勇者(天童と……お別れ……?)

604 : VIPに... - 2014/07/06 01:12:41.83 vyIa5TqaO 1073/1238

第九話 「改心させないと死ぬ!」

ーー完

次回最終回

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