京子「結衣が私のこと好きだとするじゃん」
結衣「ねぇよ」
京子「仮にだよ。百歩譲って」
結衣「まだ足りない」
京子「奇跡的に」
結衣「もう少し」
京子「地球上に存在するのが私たちだけだとして」
結衣「まぁ、いいだろ。仮定だしな」
京子「そんな嫌われてんの?」
元スレ
京子「好きな人に尽くすのって幸せ!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403792145/
京子「まぁいいよ。そしたらさ、好きな人とほぼ毎日一緒なわけじゃん?」
結衣「最近、ここによく泊まるしな」
京子「さらに、私も結衣を好きだとするじゃん?」
結衣「ごめんなさい」
京子「仮にだよ」
結衣「やめてください。迷惑です」
京子「仮説も許されないの?」
京子「続けるよ。両想いだけど、告白はしていない」
結衣「はっきりしろよ」
京子「聞きなさい。でも、事実上は恋人みたいなものなんだよ」
結衣「そりゃあ、こんだけ一緒にいればな」
京子「これってあくまで『仲の良い友達』なのかな?」
結衣「『友達以上恋人未満』ってやつ?」
京子「やっぱそうなのかなぁ」
結衣「なんか不満なのか?」
京子「恋人版の事実婚、ってないの?」
結衣「は?」
京子「いや、だからさ。『お前らもう付き合ってるとみなす』的な」
結衣「ないだろ」
京子「えー」
結衣「なんだよ」
京子「だってさ、『付き合う』って要は口約束じゃん?」
結衣「そういっちゃうとなんか……」
京子「『付き合って』『はい』。それで『恋人』なわけですよ」
結衣「一般的にはね」
京子「『別れよう』『はい』。それで『他人』なわけですよ」
結衣「極端だな。違ってはないだろうけど」
京子「なんかさ、すげー曖昧じゃん」
結衣「うーん……」
京子「それに『付き合って』じゃなくても『好きです』だけでもOKな場合もあるっしょ?」
結衣「うん」
京子「『好きです』だけで平気なら私とラムレーズンは恋人同士だよ」
結衣「末永くお幸せに。おやすみ」
京子「待って、話をもどそう」
結衣「なんだよ、明日は早いんだぞ」
京子「つまりだ、要するに互いの意志が『恋人』の条件なわけだ」
結衣「ごくまれに真面目なことをいうよな」
京子「ほっとけ。それなら、私と結衣が恋人でもおかしくないだろ」
結衣「いや、他人の彼女に手を出すのはよくないだろ」
京子「?? 私、フリーだけど?」
ラムレーズン「キョウコチャン ワタシヲ ステルノ?」
京子「やめろ」
結衣「ホテルとかのアイスって異常に高いよな」
京子「よし、これで元カノとはお別れです」
結衣「ちゃんと歯みがけよ」
京子「後でな。さて、フリーな私とフリーな結衣です」
結衣「確かにお前はいつでも自由だよな」
京子「いちいち水を差すな。常に一緒にいる二人、この関係を表すなら?」
結衣「幼馴染」
京子「へい」
結衣「親友とでも言ってほしかったのか?」
京子「違うでしょ、話の流れをくもうよ」
結衣「言いたいことはわかるけど、今一つ納得できない」
京子「どうしてよ。結婚の場合は婚姻届け出したら『夫婦』でしょ? わかりやすい」
結衣「そうだな」
京子「でも恋人の場合は、境界線が曖昧なんだよ」
結衣「確かに」
京子「だったら、気づかないうちにその線を越えててもおかしくないでしょうが」
結衣「……逆じゃないか?」
京子「逆?」
結衣「確かに『結婚』は線引きがはっきりしてる」
京子「うぃ」
結衣「だから『事実婚』みたいに『越えたと"みなす"』って言えるんじゃないの?」
京子「??」
結衣「まぁ簡単に言って、『曖昧な線を越えたと判断する』って難しくないか?」
京子「……ふむ」
結衣「京子が言ったみたいにさ、ちゃんと『付き合う』って宣言する人も『好き』で伝わる人もいるわけだ」
京子「うんうん」
結衣「基準が違うのを、判断するのって難しくないか?」
京子「むむむ……」
京子「――ん!? 待て待て」
結衣「まだ、続くのか? そろそろ眠いんだけど」
京子「ベッドにもぐるのはもう少し後だ」
結衣「手短にな。寝坊して延長料金はゴメンだ」
京子「もちろん。私たちの説は逆だけどさ、結論は同じじゃないか?」
結衣「結論?」
京子「結衣の場合『無意識に境界を超えることはない』、私の場合『超えるのに手続きとかはいらない』」
結衣「うん。そういう解釈なら、似てるな」
京子「ならさ『恋人かどうかは互いの意志によってのみ決められる』ってことは同じじゃん?」
結衣「それは――否定しない」
京子「だろ?」
結衣「……京子。お前、一つ重要な仮定を忘れてないか?」
京子「仮定? あ! いや、私が結衣を好きなのは仮定じゃなくて……」
結衣「そっちじゃなくて」
京子「――え」
結衣「私は別に……」
京子「……そっか」
結衣「え……おい」
京子「いや、いいよ。言わなくて」
結衣「待てって」
京子「きこえなーい きこえなーい みとめたくなーい」
結衣「わかった、悪かった。話を聞け」
京子「勘違いしてた私がバカみたいだなぁ」
結衣「おい、京子」
京子「はい、おやすみー」
結衣「……」
結衣「……京子、起きてる?」
京子「……」
結衣「なんでさっきだけ、いつもみたいにツッコまないんだよ」
京子「……」
結衣「あのさ、お前が言ってたみたいに『好き』で伝わる人たちもいるけどさ」
京子「……」
結衣「『好き』って言えないやつもいるんだよ」
結衣「こんだけ一緒にいるんだから、わかってるだろ」
ラムレーズン「ワカッテテモ フアンニナルノヨ」
結衣「起きてたのか」
京子「結衣の冗談は冗談に聞こえないから怖いんだよ。真顔で言うな」
結衣「嫌いだったら一緒にいないだろ」
京子「『嫌いじゃない』じゃなくて『好き』がいいんだよ」
京子「まぁとりあえず私たちが相思相愛ラブラブバカップルってことはわかった」
結衣「ストップ」
京子「まだ装飾語が足りないか?」
結衣「『恋人』である必要があるのかなぁって」
京子「……」
結衣「違う! 変な意味じゃない」
京子「どういう意味だよ」
結衣「『恋人かどうかは互いが好きかで決まる』だろ?」
京子「そうだな」
結衣「逆に『互いが好きあってる』なら、『恋人』って枠にはめなくてもいいんじゃないか?」
京子「そんなに私と恋人が嫌か」
結衣「違うって」
京子「じゃあ私が『付き合って』って言ったらどうする?」
結衣「たぶん保留する」
京子「おめーはよぅ……」
結衣「正直に言うと、今の関係が壊れるのが怖い」
京子「??」
結衣「変に意識してダメになるくらいなら、このままでも私は幸せだよ」
京子「それって『私は京子たんのそばにいられるだけでいいの(キリッ)』ってこと?」
結衣「……」
京子「かわ結衣な」
結衣「うっさいわ」
京子「そういうことなら、とりあえずは先送りにしよう」
結衣「そりゃどうも」
京子「その代わり、たまには『好き』と言ってくれたまえ」
結衣「夫婦みたいだな」
京子「婚姻届けだしとくか」
結衣「やめろ」
京子「私が妻な」
結衣「私も女なんだけど」
京子「職業は殿かな」
結衣「何言ってんだお前」
京子「でも一回くらいは『I love you』『I know』みたいなやりとりしたいよな」
結衣「ついさっき先送るって言ったじゃねぇか」
京子「それは『恋人』のことさ。ほら、いいから」
結衣「……ハァ」
京子「愛してるよ」
結衣「どうも」
京子「おい」
結衣「わかったよ、言えばいいんだろ」
京子「アイラブユイ」
結衣「ははっ」
結衣「ノーサンキュー」
京子「ぶっとばすぞ、お前」
おわり