36 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:09:15.86 Trt3iAC3O 1/60

「私、パンを焼くわ」

めぐ「……水銀燈?」

「教会に、大きなキッチンがあるのよ。きっと、教会にすんでた牧師が使っていたのね」

めぐ「なんで、パンを焼くの?」

「……別に、理由なんて無いわよ」

めぐ「……そう」

「そうよ」

元スレ
水銀燈の作ったパン1つ300円wwwwwwwww
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1259924144/

37 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:11:09.60 Trt3iAC3O 2/60

めぐ「水銀燈の作ったパンかぁ……。ね、出来たら食べさせてくれる?」

「何であなたにあげなきゃいけないのよ」

「あなたにあげるくらいなら、捨てるわよ」

めぐ「そう、残念」

めぐ「……残念」

「……」

38 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:13:40.52 Trt3iAC3O 3/60

「……気が向いたらね」

めぐ「え?」

「あなたが、食物を欲しがるなんて、珍しいし」

「栄養失調で倒れられても、私が困るのよ」

「じゃなきゃ、私があなたから満足に力を奪えないじゃない」

めぐ「……水銀燈」

めぐ「うん、そうね」

39 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:17:04.86 Trt3iAC3O 4/60

「ほら、わかったら、その不味い食物も食べなさい」

めぐ「水銀燈、一緒に食べよ?」

「やぁよ。そんなものいらないわよ」

「それに、食べなくても私は生きていけるの」

めぐ「そうなの?」

「当たり前じゃない。人形なのよ」

40 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:21:15.03 Trt3iAC3O 5/60

桜田家

「はむはむっ……はふっ、はふ、ガツガツ!!」

「んぐんぐ、ごくっ、がふがふっ……もぐ!!」

「………………」モクモク

ジュン「おまえら、ホント食い意地はってるよな」

「当たり前です!!食べることは生きることです!!」

「生きるって事は、体に物を取り込むことなのよ!!」

「………………」モクモク

ジュン「人形はみんなこうなのか?金糸雀も、卵焼きとか好きだったはずだし……」

「デザートのうにゅー!!」

ジュン「…………はぁ」

41 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:26:37.22 Trt3iAC3O 6/60

「…………っ」イラッ

めぐ「どうしたの、水銀燈?」

「今、物凄く頭にきたわ」

めぐ「そう。どうしてかしらね」

「……とにかく、パンを作るのに必要なものを探してくるわ」バサッ

めぐ「……またね、水銀燈」

「…………ふん」バサァ

めぐ「パン、かぁ。水銀燈はやっぱり洋食派なのかぁ……」

44 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:30:01.60 Trt3iAC3O 7/60

「ともかく、まず水を用意しなきゃ……」

「水道は止まってるから、綺麗な水が無いと何も出来ないわぁ……」

「あとは火ね。この時代、ガス……だったかしら。めぐの見てたテレビで、値段があがったとかどうとか……」

「……ま、なんとかなるわよね」

「……違うわ、なんとかするのよ」

「絶対に」

45 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:36:21.94 Trt3iAC3O 8/60

nのフィールド 2685423番目の世界

「……水。波も風も、何もない一面の水」

「綺麗な水。澄んでて、煌めいて、軟らかな……」

ちゃぷっ

「……」コクッ

「……美味しい……」

「この水な……ら……」

「………………」

「入れ物……」

47 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:44:05.58 Trt3iAC3O 9/60

パタパタパタパタ

「水は手に入ったけど、問題は材料よね……」

「強力粉、イースト、砂糖にバターに……」

「これが問題よね。……ん?」

ワーワー チビイチゴ!! ヒナノウニュー クンクン!!クンクン!! オマエラウルセー!!

「真紅と、人間の家……」

「…………!!」ピーン

50 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:50:20.53 Trt3iAC3O 10/60

ジュンの部屋

ジュン「お、これは買い……か?」

「デスビーム!!デスビーム!!」

ジュン「あぁうるせぇ。はい、ハッカアメ」

「んゅ……甘いの……甘いの……」カラコロ

「それに……ん、スーってするです……んむんむ」カラコロ

ジュン(よし、10分は静かになるかな)

「あぁ……クンクンの名推理がまさか文庫で味わえるなんて……」

ジュン(あっちもしばらくはおとなしいな。……ん?)

ジュン「おぉぉぉ!!すごい、宇宙人愛用の眼鏡!!これは胡散臭い!!」



「………………」ジーッ

52 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 00:53:33.18 Trt3iAC3O 11/60

「あの娘達は放っておいても安心ね。問題は……」

ガサッ

「ふふふ……失敗を重ね、カナは成長するのよ。今日こそ、カナの侵入テクを……」

ガシッ

「……がしっ?」

「…………」チラッ

「…………」

「…………」

「…………ふっ」ニヤ

「    」

54 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:00:25.84 Trt3iAC3O 12/60

「あの、すみません。悪気は無かったんです。だからあの、親とかには……」

「何言ってるのよ。それより、私の話、聞いてたんでしょぉ?」

「あ、あぁ。えっと、パンの材料を盗むから手伝えと……」

「そ。あなた、知ってるわよね。パンの材料」

「強力粉、ドライイースト、塩、砂糖、バター、ショートニング、水、脱脂粉乳……だったかしら」

「あーら、ちゃんと知ってるのねぇ、偉いわぁ。策士を自称するだけあって、知識だけはあるのね」

「そ、それほどでも……」テレテレ

(……皮肉が通じないのよね、この娘)

55 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:04:44.35 Trt3iAC3O 13/60

「桜田家には、ここから入れるかしら」

「ここって……やだ、トイレじゃなぁい」

「え、……何か問題が?」

「やぁよ、私。こんなところから入るの」

「でめ、ここが一番……」

「何度言われても嫌。大体、こんな不衛生な場所にすら、私は触れたくないの」

「人間の不浄を捨てる場なんて、絶対嫌よ」

(いつもここから入ってるカナの立場が……)

56 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:09:12.54 Trt3iAC3O 14/60

「というわけで、普通にベランダから侵入したかしら」

「はじめからこっちにしなさいよ」

「潜入の醍醐味という奴よ」

「キッチンは向こうね……」

「早く用をすませるかしら!!」

「……随分収納が多いのね」

「収納が多いキッチンは主婦の憧れかしら」

「この箱は?」

「冷蔵庫ね」

(うそ、めぐの部屋にある奴の何倍の大きさよ……これ……)

60 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:15:23.13 Trt3iAC3O 15/60

「この箱は?」

「電子レンジね。食物を温める箱よ」

「……今の時代には、食物を冷ます箱も、温める箱もあるのね」

「ちなみに、食物を細かく刻んでジュースにする大きなコップもあるかしら!!」

「あっちの箱、人を映すじゃなぁい?」

「あぁ、テレビ」

「あっちの箱は、真紅がキラキラ光る円盤を入れていたわ」

「あれで記憶媒体から映像を読み取り、テレビに映すのよ」

「はぁ……」

「この時代の箱は何でも出来るのね」

「ねー」

62 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:21:38.34 Trt3iAC3O 16/60

「……あ、閃いた」ピーン

「何?」

「人を箱に入れるのよ」

「箱に?」

「そう。人、一人分の箱。宿代わり貸すの」

「……ほぅ」

「小さな箱なら、場所もとらないし、このゴミゴミした国でも省スペースで宿を貸せる」

「一夜だけ、寝るだけなら、たいした場所も必要ないじゃない」

「はー、なるほど」

「ボックスホテル、これね」

「さ、さすが水銀燈!!恐ろしい発想!!」

「ふふん」


※カプセルホテル

63 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:25:32.06 Trt3iAC3O 17/60

「そんな事は良いわ。パンの材料を探すわよ」

「…………」ソワソワ

(絶対ボックスホテルの事考えてる……)

「えっと、お砂糖はあったわ」

「……これは、えっと、……読めないわ」

「漢字ね。こんな時こそ、漢字辞典!!これで漢字を調べて……」

「……しら……」

「だから、読めないのよ」

「………………」

64 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:35:45.14 Trt3iAC3O 18/60

「デン、プン。……グリア……ジンと、ぐ、グルテニン?が、……12%」

「おぉ!!これは強力粉!!」

「……成分で判別するの」

「ギリギリ、カタカナが読めて助かったかしら」

「読めるの、カタカナ」

「塩も見つけたかしら。大体砂糖とセットね」

「……冷蔵庫に入ってるこれ、もしかしてバター?」

「えっと、……ば、ばた……?何かしらこの線」

「ばた、まで言ったらバターしかないじゃない。これがバターね」

「あとは、ショートニングにドライイースト、脱脂粉乳……」

「……見つからないわね」

65 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 01:39:53.72 Trt3iAC3O 19/60

「skimmed milk……あったわ、脱脂粉乳」

「あとはドライイーストにショートニング」

のり「はい、ドライイースト」

「あ、ありがとうかしら!!」

のり「ショートニングはこれよ」

「あら、気が利くじゃない」

のり「うふふ、ありがとう」

「………………」

「………………」

のり「………………」ニコニコ

「……っっ!!」ババッ

のり「あらあら」ニコニコ

68 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:03:45.81 Trt3iAC3O 20/60

「ごめんなさいごめんなさい……警察は、警察は、親には知らせないで……」ガタガタ

「……」ギリッ

のり「つ、通報なんてしないわカナちゃん」オロオロ

「あぁぁぁありがとうございますぁぁ……」メソメソ

「人間、これらの材料は頂いていくわ。もうこれは私のモノなの。返してって言っても返さな……」

のり「あ、うん。良いわよ」

「……は?」

のり「パン作るんでしょう?美味しいパンが出来ると良いわねぇ」ニコニコ

「……」

(な、何この人間。何でこんなに笑顔なのよ……)

(……私の事を驚異だなんて、微塵も感じてないのね)イラッ

「……ふん。なら、遠慮なく頂いていくわ」バサァッ

バサッ バサッ……

69 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:10:58.77 Trt3iAC3O 21/60

「よ、よかったの?」

のり「何が?」

「え、だって、材料を……」

のり「あの娘、カナちゃんのお知り合い?」

「カナの、カナのたった一人のお姉さんかしら」

のり「カナちゃんのお姉さんが、悪い娘のはずないじゃない」

「………………」

「………………っ!!」パァァァァッ

のり「じゃ、おやつにするからみんなを呼んできてくれるかな?」

「了解かしら!!」

70 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:13:11.22 Trt3iAC3O 22/60

「材料は手に入った。水もある」

「……焼き上げるための火が無い……」

「教会のキッチンは形だけ。火が点かないし水も出ない」

「あぁ……。迂闊だったわねぇ」

「真紅の家にはもう近づきたくない」

「他に行ける場所……」

「…………あー……」

71 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:16:07.76 Trt3iAC3O 23/60

「ガスがあれば良いのよ、たぶん。……可燃性の」

「……最終的には薪よねぇ。釜で焼くことになるのかしら」

「私の火じゃ焼けないわよねぇ……」

「……困ったわぁ……」

74 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:22:33.00 Trt3iAC3O 24/60

?????

「ま、使える場所はここだけよね。仕方ないわ」

「えっと、脱脂粉乳はだまにならないように……」

「ショートニング……バター……」

「練って……練って……」

「やだ、変な感触。……でも、我慢しなきゃいけないのよね……」

「んっ……んっ……っと。……どれだけ捏ねれば良いのよ……」

「はぁ……。記憶だとこんな作り方であってるはずだけど……」

「テーブルに粉ふっておかなきゃ……」

79 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:29:23.83 Trt3iAC3O 25/60

「んー、こんな感じかしら。だんだん気持ち良い感触になってきたわね」

「……打ち付けたりするのかしらね」バンバン

「まんまる……に、して……」

「……ん、あとは発酵させるのよね」

「………………」

「確か、30度で45分くらいかしらね」

「………………」

「待ってる間暇ねー」

「………………」

場所:結菱邸 厨房

81 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:32:29.05 Trt3iAC3O 26/60

「起立!!」

「……」

「礼!!」

「……」ペコ

「休め!!」

「はぁやれやれどっこいしょ。……あ、どっこいしょって言っちゃった」

「小休止!!」

86 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 02:59:26.40 Trt3iAC3O 27/60

「……水銀燈」ギラリ

「あぁら、蒼星石じゃない。鋏なんか出して怖い顔して……」

「……ここはマスターの家だ。僕がいるのは当然だろう」

「わかってるわよ。別に今は迷惑かけてないし、アリスゲームの気分じゃないの」

「そうだね。僕も今日は気分じゃぁない」

「じゃあ消えなさい。……目障りなの、貴女」

「同感だよ、まったく僕も同意見だ」

「その黒い翼、散らしてみるかい?さぞ、美しいだろうね」ギラ

「やぁよ、厨房が汚れちゃうじゃない」

「水銀燈ぉぉぉぉっ!!!!」バッ

88 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:03:06.54 Trt3iAC3O 28/60

「待ちなさい!!」

「っっ!!」ビクッ

「……まさか、怖じ気付いたかい?」

「………………」

「危なかったわ、30度じゃなくて40度になってた。ふぅ、気付いてよかったぁ……」

「………………」

「ちょっと、私は忙しいの。出ていって」

バタン

「………………」

「………………」

89 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:19:14.37 Trt3iAC3O 29/60

バンッ

「水銀燈ぉぉぉっ!!」

「うるさいわねぇ!!」

「今すぐこの屋敷から出ていくんだ!!君が何を企んでいるかはわからない!!
 エプロンして厨房に立ち、君が何を考えているか予想もつかない!!しかし、君にはここから出ていってもらう!!」

「出ていくわよ!!三時間くらい待ちなさいよ!!」

「三時間ってなんだその微妙な時間設定はぁぁ!!!!」

「パン生地の発酵と焼き時間よぉっ!!」

「………………」

「………………」イライラ

「…………パン?」

「パン」

「……あのふわふわした?」

「パン」

90 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:32:07.43 Trt3iAC3O 30/60

「よっ……あとは焼きあげを待つだけね」

「……まさか、本当にパンを焼くだけなのかい?」

「……教会、火を使えなかったのよ」

「なぜここで」

「ここ以外にあるの?あるなら、そっちを使ってるわよ」

「なぜパンを」

「貴女に言う意味があるの?」

「……焼き上がり、君が帰るまで鋏はしまわない」

「構わないわよ。……それに、貴女私に勝てると思ってるの?」

「試すかい?」

「やぁよ、怖いもの」クスクス

「…………」

91 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:40:26.59 Trt3iAC3O 31/60

「……時間ね。オーブンを開けるわ」

「…………」チラッ

「な、何見てるのよ!!」

「本当に焼き上がったのがパンかどうか確かめるだけさ」

「そんな必要……ないじゃない……」ギギギ

「いいやっ、僕には……確かめる義務がある……」グググ

「しつ……こいっ!!」

ガチャッ

  ほわっ

「っっ!!」

92 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:44:20.38 Trt3iAC3O 32/60

「む、胸いっぱいに広がる、イーストの香ばしいかおり……」

「軟らかく、ほんのり甘味のあるこの匂い……」

ゴソゴソ

「……焼き上がった……」

「……食パン……」

「…………」ジュル

「はっ!!ダメよ!!貴女にはあげないわよ!!」

「ほ、ほしいなんて一言も……っ!!」

「目輝かせて涎出すんじゃないわよ!!乙女でしょ!?」

「ち、ちょうだい!!僕にちょうだい!!」

「幼くならないでよ!!」

93 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:49:20.97 Trt3iAC3O 33/60

(……美味しく出来たかしら)

(……もっと、美しく焼けるかしら)

「……水銀燈、もう一度聞かせてくれないかな」

「なぜ、パンを?」

「………………」

「私は、アリスになるのよ」

「アリスになるために?」

「違うわよ」

「アリスになれば、お父様と一緒に過ごせる。お父様と暮らせる」

「そうしたら、私がお父様の食事を作るわ」

「お父様が、毎朝喜んで食べてくれる、ふわふわのパンを」

「私はね、貴女たちとは違い、アリスになった後の事まで考えてるのよ」

「アリスになった、後……」

94 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:53:41.96 Trt3iAC3O 34/60

「私は、お父様に笑顔でいてほしい」

「私は、お父様に美味しいものを食べてほしいの」

「私は、お父様が幸福であってほしい」

「生きるって、体にモノを取り込むことでしょ?」

「私は、普段食事をしないけど、お父様には、良い食事を……とってほしい」

「それは、貴女だってそうじゃないの?」

「………………」

96 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:56:18.57 Trt3iAC3O 35/60

「邪魔したわね」バサァッ

「………………」

「…………食事……」

一葉「蒼星石、こんなところにいたのか。何をしているんだい?」

「……マスター、お願いがあります」

一葉「ん?なんだい?」

「今日の夕食、僕にも手伝わせてください」

98 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 03:59:02.74 Trt3iAC3O 36/60

「みっちゃんとお料理かしらー!!」

みつ「カナとお料理なんてひさしぶりーっ!!じゃあ今日は、カナの大好きな~……」

「か、カナの大好きな……?」

みつ「玉子焼きにしましょう!!」

「きゃぁぁぁっ!!みっちゃんだいすきー!!」

みつ「私もよカナァァァア!!」グリグリ

「マサチューセッチュゥゥゥ!!!!」

99 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:03:58.34 Trt3iAC3O 37/60

「ほら、今日のはなまるハンバーグは翠星石も手伝ったですよ」

「ヒナは卵さん割ったのー!!」

「私は食器を出したわ」

のり「みんなで作ったのよー」

「私は食器を出したわ!!」

ジュン「なんだ、今日はどうしたんだ?」

「べっつに~。意味なんてないですよー」

「美味しいものを食べたら、ジュンが元気になるって翠星石が……」

「キィィィィィィッ!!」

ジュン「ん、……そ、そっか」テレ

「食器を出したわ!!!!」

ジュン「あーはいはい。ほら、ハッカ」

「……甘いわ……すーってするわ……んむ」カラコロ

100 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:06:37.31 Trt3iAC3O 38/60

「……めぐ、また病院食残したのね」

めぐ「だって、あんな不味いの、食べたくないもの」

「……味はまだ見てないけど、……パンを作ったわ」

めぐ「え、うそっ!!水銀燈がっ!?」

「捨てても邪魔だし、客観的な意見がほしいの。……ほら、食べなさい」

めぐ「食べる食べる♪」

「……」

102 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:09:56.83 Trt3iAC3O 39/60

めぐ「美味しいっ!!美味しい水銀燈!!」

「そ、……そう」

めぐ「あー、なんか食べただけで元気が出てくる。私生きちゃう」

「大げさよ」

めぐ「……生きるって、食べる事なのね」

「……人間は、食べることで、体をつくのよ」

めぐ「んー、美味しい」

「ちょっと、私はまだ食べてないのよ。私にもよこしなさいよ」

めぐ「美味しい♪」

「……もう」



おわり

106 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:13:51.07 Trt3iAC3O 40/60

「……翠星石、将来はパン屋さんになりたいんですよ」

「へぇ、知らなかったな。翠星石に、そんな夢が。……なんで、パン屋さんに?」

「……毎日、素敵な香に包まれて、ふわふわの美味しいパンが、食べられるからですね」

「はは、君らしいよ」

「そして、みんな翠星石のパンで笑顔になるです」

「……そうだね」

107 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:18:40.48 Trt3iAC3O 41/60

「翠星石は、将来は何になるですか?」

「僕は、……花屋さん、かな」

「翠星石も、お花屋さんかパン屋さんで迷ったですよ」

「僕は、君のパン屋さんの前に、花屋さんを作る」

「なんでですか?」

「僕の育てた花の香と、君のパンの香。道を挟んで、二つの良い香が交ざりあえば、きっと、すごく幸せな香になる」

「僕の花を見ながら、翠星石のパンを、みんなが食べる」

「……良いですね」

「うん」

ジュン「………………何してんの」

「青春ごっこ」

「ジュン君は、隣の骨董屋さんね」

ジュン「やらねーよ」

108 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:20:59.25 Trt3iAC3O 42/60

「パン、いかが?」

「はわぁ……」キラキラ

「貴女に売るパンは無いわよ」

「……ヒナ、お友達にパンをあげたいの」

「……そう」

「ごめんなさい、お金もないのに見てて」

「迷惑よ」

「ごめんなさい」トボトボ

「…………」

110 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:23:43.34 Trt3iAC3O 43/60

「これ、いらないからあげるわ」  

「え……これ、パン?でも、ヒナ300円無いの……」

「私が私に買ったのよ。でも、お昼はピラフを食べたの。いらないから、あげるわ」

「あ……ぁ……」

「…………ほら」

「ありがとうなの!!」

「別にぃ……」

111 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:26:23.27 Trt3iAC3O 44/60

「桜田くんは、将来は何になりたいの?」

ジュン「……パン屋さん、かな」

「どうして?」

ジュン「パンに、唾液を入れて、もっさりしたパンを、小さい子が食べるのを見下したいから、かな」

「そう。……病院、いこっか」ニコ

ジュン「はは、大丈夫、自覚あるから」

「よかった」

ジュン「あぁ」

112 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:28:08.23 Trt3iAC3O 45/60

「卵パン!!」

「何よ、それ」

「卵を使った、ふんわりパン!!」

「カロリー偏りそうね」

「殻も入れるからカルシウムもばっちり!!」

「貴女、お店潰す気ね」

115 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:30:51.25 Trt3iAC3O 46/60

「……パン、パン」

ジュン「……何してんだあいつ。パンに語ってる」

「聞こえてるんでしょ?わかってるのよ、のりに聞いたもの。あなた、耳があるんでしょ?」

ジュン「………………」

ジュン『……真紅ちゃん、真紅ちゃん』

「しゃべった!!しゃべったわ!!」

ジュン『いつも美味しく食べてくれてありがとう!!』

「い、いえ、そんなっ……」アタフタ

ジュン「………………」

116 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:33:38.31 Trt3iAC3O 47/60

「桜田くんは、どんなパンを作るの?」

ジュン「そうだな……。足の裏で作るかな」

ジュン「間接的に、みんなが僕の足の裏を舐めるんだ」

ジュン「……ぞくぞくするよね」

「そっか。……警察よぼっか」

ジュン「“まだ”してないから大丈夫」

「よかった」

117 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:36:16.08 Trt3iAC3O 48/60

「一つ300円よ」

「お一つくーださい」

「貴女は500円」

「一つもらえるかな」

「……まあ300円で良いわ」

「卵ください」

「帰りなさい」

「一つ頂くわ」モグモグ

「泥棒よおまわりさん!!」

「モグモグ……」

118 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:40:20.93 Trt3iAC3O 49/60

「………………出番なかった」

「………………」

「………………」

「まぁ、食べなさい」

「………………」

「………………」スカッスカッ

「………………触れないです」

「………………」

「………………ぐすっ」

「わ、わざとじゃないわよ」

120 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:43:30.22 Trt3iAC3O 50/60

「パンを作ったわ」

ジュン「あー、真紅、まだ日本語完璧じゃなかったか。これな、消し炭っていうんだ」

「パンを作ったのよ」

ジュン「英語にするとダークマターかな、うん。またひとつかしこくなったな」

「パンを作ったの」

ジュン「はい、ハッカアメ」

「あぁ……甘いわ……スースーするわ」カラコロ

ジュン(よし、10分は逃げられる)

121 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:46:31.31 Trt3iAC3O 51/60

「手作りパン、一つ300円よぉ」

ジュン「一つくれよ」

「あなたに売るパンは無いわ」

みつ「一つくださいな」

「あなた誰よ」

「一つ……頂けないかな」

「絶対嫌」

一葉「一つほしいな」

「スーパーにでも行けば?」

めぐ「水銀燈、お腹すいちゃった」

「また?仕方ないわね」

122 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:49:12.03 Trt3iAC3O 52/60

「……パン………ふわふわ」

「ちょっと、指で触らないでよ、売り物なのよ?」イライラ

「……指……」

「………………」ピキピキ

「水晶もダメ。ていうか、パンに刺さるでしょ、やめなさい」

「………………」

「パン……一つ、ほしい」

「600円よぉ」

123 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:51:24.26 Trt3iAC3O 53/60

「桜田くん、私もパン作りたい」

ジュン「じゃあ、僕がテーブルになるから、僕の上で捏ねたり叩きつけたりして」

「やだ、桜田くんたら。ふふ……」

ジュン「はははっ」

「ふふふ……」

124 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:53:37.26 Trt3iAC3O 54/60

ローゼン 冬のパン祭り
水銀燈のパン屋さんでパンを買うと、ポイントがもらえる。ポイントをためて、素敵なお皿をもらっちゃおう。


ジュン「………………ふーん」

「………………ふわぁ」

ジュン「パン一つください」

「やぁよ」

ジュン(お皿ほしいなぁ……)

125 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 04:59:16.13 Trt3iAC3O 55/60

「新作のブラックベリーパンあるわよぉ。300円よ」

「くーだーさーい」

「500円」

「もらえるかな」

「300円」

「卵パンをくーださい」

「無いわよ」

「モグモグ……」

「捕まえたわっ!!」ガシッ

「ふもが、もぐんぐ、もがががっ!」

「行儀が悪いわよ、ちゃんと飲んでから喋って」

「………………ごくん」

「私は食べてないわ」

「おまわりさーん」

127 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 05:00:40.38 Trt3iAC3O 56/60

ジュン(友人からポイントをもらったぞ)

ジュン「お皿、ほしいんだけど」

「やぁよ」

ジュン「………………」

ジュン(嫌われすぎじゃないかな)

129 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 05:08:38.24 Trt3iAC3O 57/60

王さまと幸せのパン職人



王さま「町一番のパン職人とはおぬしか」

「人違いじゃないのぉ?」

王さま「人違いか」

「人違いよ」



王さまと幸せのパン職人 完

130 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 05:10:39.20 Trt3iAC3O 58/60

ジュン「パンください」

「パンはパンでも食べられないパンは?」

ジュン「……フライパン?」

「正解は、あなたにとっての私のパンよ」

ジュン「………………」

131 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 05:15:30.30 Trt3iAC3O 59/60

クンクン『凶器は冷凍したパン。犯人は殺害後、パンを解凍して食べたんだ……』

「………………」ハラハラ

「真紅、パンを食べますかー?」

「す、翠星石、あなた!?」

「おやおやなんですかぁ?ひっひっひ……」

「………………」ガタガタブルブル

134 : サボテン ◆WWLovejExI - 2009/12/05(土) 05:56:33.61 Trt3iAC3O 60/60

危ない。これ寝呆けてる……。

寝ます。また時間あれば遊びたいです。皆さん、素敵な土曜日を満喫してください。

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