とあるサイトで投稿中の番外通行R-18モノ。
以下注意点
・R-18
・更新速度不安定(うちのプロバイダがよく規制かけられるので突如の失踪があるかもしれません(-_-;))
・途中タイトル詐欺。主に世紀末帝王が出張る
・時系列等の矛盾が出るかも
少しでもみなさんに楽しんでもらえれば幸いですっと
元スレ
番外個体「ってことは第一位と子作りができるわけで」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377438003/
番外個体「何か最近だるいにゃー」
一方「あァン?テメェはいっつもそんな感じだろうがァ」
番外個体「わかってないなぁ。それでもミサカの彼氏なの?」
一方「誰がテメェの彼氏だってェ?寝ぼけたこと言ってねェで、メシだから早くテーブルんトコに来い」スタスタ
番外個体「はいはい今行きます」ノソノソ
打ち止め「ん、おはよー。早く食べないと大好物の中華まんを一人で食べちゃうぞって言いながら、ミサカはミサカは既に三つ目に手を出してみたり!」ガシッ
番外個体「あっ、ミサカも食べるっ!」
黄泉川「お寝坊さんには当たらないじゃんよ?」
芳川「あなたもついさっきまで寝たわよね……」
黄泉川「細かいことは気にすんなじゃんよ」
一方「あァ、相変わらずうるうせェな。朝ぐらい静かにできねェのかテメエらは」
打ち止め「って、最後の一つは譲らないよって、ミサカはミサカは全力で中華まんに飛びついてみたり!」
番外個体「たまには妹に譲る寛容なココロも大事だよって、渡さないしねっ!」ドン
打ち止め「た、体当たりとは卑怯なっ、ってミサカはミサカは講義してみたり!」
番外個体「はむはむ……、うまうま(´ω`*)」
打ち止め「むきーっ!まるで聞いてないっ!?」
一方「だァァかァァらァァァァァ、うるさいって言ってんの聞こえてねェのかクソガキ共!」
一方「番外個体ォ、テメェがもうちょい自重しねえとそこのクソガキが騒ぐだけだろうが」
番外個体「な、なんでミサカだけ……」
一方「ラストオーダーはまだガキだろうが。言ったところで無駄だろォが」
打ち止め「」
番外個体「ミサカだってラストオーダーと大して歳変わらないよ?」
一方「テメエは別だろォが」
番外個体「何が別なのさ」イライラ
一方「一々構ってやる必要もねェだろっつってんだよ」
ブチン
番外個体「じゃあ勝手にラストオーダーだけ構ってなよ!!」バンッ ガタンッ
一方「はァッ?」
番外個体「……」スタスタ
一方「なァにキレてんだ?ガキかよ」
芳川「いっつも自分でガキって言ってるじゃない」
打ち止め「寝不足なのかな?」
黄泉川「いやきっと──」
黄泉川「生理じゃんよ?」
一方「」
芳川「」
ラストオーダー「?」
スタスタスタ
ガチャリ
バタン
番外個体(あ~、なんでこんなにイライラすんの~!?デフォで刷り込まれてた憎悪とかそういうのとは何か違うしさ……)
番外個体(ここ最近イライラがおさまんない……。いや、元のミサカに戻っただけなのかな……)
番外個体(イライラだけじゃなくてなんか気分も悪いし……)
番外個体「……っ、って普通に具合悪いし……うぇぇ、ちょっとトイレ……」
番外個体は廊下に出てトイレに向かった。
途中、居間の一方通行と目が合うが、番外個体はすぐにフイッと目をそらした。
番外個体(う~……ナニコレ、貧血?ちゃんとお野菜採ってるはずなんだけどなぁ)
便座に腰掛けてしばらく膝を抱え込んでいたが、一向に具合がよくなる気配はなく、なんとも言えない気だるさが番外個体の体を満たしていた。
番外個体(……さっきの一連の流れ、ラブコメとかなら、付き合う前のヒロインって感じなんだろうけど──)
番外個体「あひゃひゃ!そりゃぁないわ!第一位はミサカにとっては憎むだけの存在なんだからさぁ!」
──打ち止めに嫉妬していたなんて有り得ない。
これはきっと、具合が悪いせい。
明日にでもなれば治るだろうか。
番外個体「……カエルの医者のところにでも行くかな~……。ちょっとこれは耐えられないかも……」
そして番外個体が下半身に違和感を感じたのはその時だった。
ヌチャリ
番外個体「……は?」
番外個体「……っっ!?はにゃああぁぁぁぁっ!?」
一方「っなンだァ!?」
芳川「ワーストの声ね」
黄泉川「見てくるじゃんよ!」
一方「いやァ俺が見てくる!」
一方(──なんだァ、敵襲か!?いや、番外個体のヤロウは確かトイレに入っていったはずだが……?)
一方(……あン?トイレだとォ……?)
一方(……オイオイそいつァ、ヨミカワの言ってた通り──)
バタン!
ダダダダ
トイレから飛び出した番外個体は一方通行など気にも留めずに居間の方へと走っていった。
番外個体「ヨ、黄泉川ァ……」
黄泉川「どうしたじゃんよ?なにかあったn」
番外個体「ち、血がぁ……」
黄泉川「どこ怪我したn」
番外個体「股から出たんだけど……」
芳川「」
黄泉川「やっぱりじゃんよ」
一方「……マジかよ」
打ち止め「??」
打ち止め「それって病気じゃないのってミサカはミサカは珍しくワーストの心配してみたり」
一方「あァン?おいクソガキ、これぐらいの知識、学習装置に入ってねェのかよ」
芳川「入ってないってことはないと思うけど……。ワースト、今自分の体に起きてることがなんだか分かる?」
番外個体「え?い、いや……」
芳川「……ズバリ、生理よ」
番外個体「……へ?これが……?学習装置からのデータにはあるけど……ふぅん?」
一方「その様子だと初めてなンか?」
芳川「女の子に『初めて?』ってデリカシー無さ過ぎじゃないかしら……」
一方「悪りィな、ンなモン生まれてこの方持ち合わせたことねェよ」
打ち止め「いいないいなーってミサカはミサカは大人の女性の証に憧れが隠せなかったり!」
番外個体「……あひゃひゃ、体中ねじれきれそうな痛みだけどいいのかにゃー?あ~、脳が擦り切れそうだにゃー」
打ち止め「ひっ!それはごめんだよってミサカはミサカはさっきの取り消し!」
番外個体の冗談に、打ち止めは本気になって怖がった。
それを見て笑う黄泉川と芳川。
さらに追い打ちをかける番外個体と、わーわーと耳を塞ぎながら逃げる打ち止め。
こんな平和な光景に自分がいるなんて、少し前の自分は想像もしていなかっただろう。
一方通行(ンと、ヌルくなったなァ、俺の日常もよォ)
一方通行は誰へというわけでもなく、一人で静かに笑った。
番外個体「……それにしても、ミサカが生理ねぇ……」
そう言った番外個体は気のせいか、泣きそうで、それでいて嬉しそうに見えた。
一方「どォした?」
番外個体「ってことは第一位と子作りができるわけで」
一方通行「……あァ?」
気のせいだったようだ。
番外個体「あれー嬉しくないのかにゃー?こんな超絶美少女とセックス出来るなんてなかなかある機会じゃないよー?」
一方「はいはい、そうですねェと。オイ黄泉川ァ、不純異性交遊をしようとしてる馬鹿がいるが止めなくていいのかァ?教師だろ?」
黄泉川「もちろん止めるじゃんよ」
番外個体「えー、なんでー」
黄泉川「──打ち止めのいないところでヤるじゃんよ」
芳川「……そこなの?」
一方「そこじゃねェだろうがァ!」バァン
──一週間後
番外個体「ん~……」
一方通行「あァン?どォしたアホみたいな声出して」
番外個体「いやぁ、なんか頭が」
一方「オカシイのは知ってる」
番外個体「最後まで言わせてくれないかなー」イラッ
番外個体「ボーっとするんだよね~」
一方「生理は終わったンじゃねェのか?」
番外個体「そうなんだけどさ。何か生理の時とはまた違う感じ」
一方「そォかい、なんでもいいからそれも早く治してくれ。オマエの生理の時のイライラオーラのせいでこっちまでイライラさせられたンだからな」
番外個体「あひゃひゃひゃ、第一位が嫌がってんならむしろミサカは嬉しいね!ミサカの本領だし☆」ニヤニヤ
一方「ウゼェ……。ってか、生理中と後で機嫌の良さいくらなんでも違いすぎだろォが。なンかあったのか?」
番外個体「ん~?いや別にぃ?」
番外個体「まあ強いて言うなら生理かにゃー」
一方「はァ?生理がいいコトって、マゾですかァ?」
番外個体「さてどうでしょうかねえ?それより第一位サマはさっきから純情少女に生理生理って、羞恥でミサカをイカセるつもりなのかにゃー?」ニヤ
一方「この部屋のどこに純情少女が居やがンだァ?」
番外個体「ぎゃは、目の前目の前」
一方「(スルー)……そォいやオマエ、生理ン時、自分で気が付けなかったみてェだが、学習装置には入ってたンだろ?何で分かんなかったンだ?」
番外個体「んー、ミサカたちが学習装置から得られるのはあくまで辞書的な知識だけだから」
番外個体「例えば思春期の普通女の子達とミサカが一緒に過ごしてたらなら気がついたかもしれないケド、そういう日常のサイクル無しの状態だと、知識と現実が結びつきにくいみたい」
一方「……なァるホドなァ……」
一方通行は番外個体のセリフの中の自虐の言葉をあえてスルーした。
──普通女の子達とミサカが一緒に過ごしてたら『なら』
アクセラレータという怪物を殺すために、培養機のでとある細胞から生まれた兵器。
外見こそ十七、八歳だが、実際にはまだ生まれてそれほど経っていない。
望んでも『普通の女の子』になれないのではない。望むことすら出来なかったのだ。
一方(そもそもそういう風にこの世に生み出しちまったのは俺のせいだがなァ)
かつて第三位が二万のクローンが死んでいくのは自分のせいだと責めていたが、きっと同じような心境だったのだろうか。
一方(その時の加害者であるオレは何も言えたモンじゃねェな……)
番外個体「な~に考えてるのかにゃ~?」
番外個体が上半身を乗り出して一方通行に顔を近づける。
知らない人が見ればまるで恋人同士のような格好だが、残念ながら二人はそういった間柄ではない。
健全な男子ならば少しは照れるであろうシチュエーションだが、一方通行は表情を少し歪めた程度で、そういった素振りは見せない。
番外個体「まさか、『ミサカが生まれたのは自分のせいだ』──とか、まだ思ってんじゃないよね~?」
一方「……」
番外個体「ええ!?図星ぃ~?」
一方「そンぐらい思っちゃ悪いか?」
番外個体「あ~、違う違う。ミサカはねぇ、むしろ感謝してるぐらいなんだからさ」
一方「……あン?」
番外個体「だって第一位がいなければミサカだっていないんだから。こうやってアホみたいに平和な毎日をヨシカワやヨミカワや打ち止め達と過ごせるのだって、こうして今第一位と話していることだって、今目の前の第一位を憎むことだって、第一位無しではそもそも存在しなかった日常なんだからさ」
番外個体は更に一方通行へと詰め寄り、腕を一方通行の首へと回す。
番外個体の吐息が一方通行の頬を撫でる。
エロティックなシチュエーションだが、やはり一方通行は反応を示さない。
番外個体「今ミサカの中を渦巻く憎悪も含めて、ミサカは感謝してるよ」
一方通行「……そォかい」
バターン!
打ち止め「な、ななななな何をしているのかなってミサカはミサカは赤面しながら聞いてみたり!」
黄泉川「お~、昼からお盛んじゃん。まあ残念だけど打ち止めが帰宅したのでそこまでじゃんよ」
芳川「愛穂、教育者として、というかアンチスキルとして少しは指導したらどうなのかと最近思うわ」
一方「なァに勘違いしてやがる馬鹿共が……」
黄泉川「勘違いもなにもまんま愛の行為じゃん?」
芳川「……ワカイッテイイワネエ」
打ち止め「ダメだよダメだよ!その人はミサカのものってミサカはミサカは断固抗議してみたり!」
一方「だァァァかァァァらァァァ違うってんだろうがァ!おいワーストォ、お前もとっとと離れ──」
番外個体「……」カァァァ///
一方「…………あァ?」
番外個体「……っと、ちょっと……えぇっと…………ちょっとミサカ限界っ!!」バン!
一方「ごふっ!?──ってェ!なにしやがン──」
番外個体「……っ!!」ダダダダダ バタン
一方「…………ハァァァ??」ポカン
芳川「あらあら、本当に青春しちゃってるのね」
黄泉川「年相応になってきたってのはいいことじゃん」
打ち止め「全然よくないよってミサカはミサカは────」
一方(──なァに勝手なこと言ってやがンだこいつらは……)
一方(しかし明らかに番外個体の様子はおかしい)
一方「ま、俺の知った話じゃねェか」
──番外個体自室
番外個体「ぎゃぁぁぁぁっ!なんなのこの感じはぁぁぁぁっ!生理終わってから、ミサカ何かおかしい!!」バタバタ
番外個体「今まではなんともなかったのに……、ヨミカワ達が来た瞬間……来た瞬間『恥ずかしくなった』……!?」
番外個体は顔を真っ赤にしながらベッドの上でのたうち回った。
番外個体「からかいで第一位に抱きつくなんて別にいっつもやってるのにぃ……。突然来た生理もそうだけどなんかミサカの体おかしい……」
番外個体「やっぱりカエルの医者のところに行ったほうがいいのかぁ……」
総独り言を言っている間にも心臓はバクバクと音を立て、頬は熱いままだった。
番外個体「あ~駄目だっ、耐えらんない!今すぐ病院行く!」
そうして番外個体は部屋を飛び出した。
* * *
冥土帰し「つまり、今までなかったのに突然生理が来たと」
番外個体「そーなんだよねぇ。急に来ちゃったからビックリしてさ」
冥土帰し「ふぅむ、原因として考えられるのは、生活環境が変わったからじゃないかな」
番外個体「……?と言うと?」
冥土帰し「君がロシアにいた時には、ほぼ毎日のように培養基漬けだったと思うんだけどね、学園都市に来て以来、調整技術の向上のお陰もあってその回数も格段に減ったはずだ」
冥土帰し「おそらく僕が思うに、超電磁砲の体細胞から促成剤でその姿になったばっかりの君は、ホルモンのバランスが崩れてたんだけれど、培養基に入る頻度の減少のおかげでホルモンが安定してきて、それで通常通りに生理が来たんじゃないかな」
番外個体「通常通り?」
冥土帰し「そりゃそうじゃないか、『人間の女の子』は生理が来るのが普通だからね」
番外個体「普通の……」
冥土帰し「ああそうだ。ホルモンバランスと言えば、第一位の彼も常に能力を使っていることがなくなったからバランスが戻り居つつあるみたいだね。彼も君の様に普通の体に戻っていくはずだよ」
番外個体「……うひひっ、オッケ~大体わかったよ~ん。今日はありがとうね~」
冥土帰し「また何かあったら来なさい。ああ、次の調整日は再来週の火曜日だよ」
番外個体が診察室の扉を開けて出ようとするとそこには──
番外個体「あれ、第一位?」
一方「あン?ここに居やがったのか」
番外個体「ん、ちょっと聞きたいことがあってね~。一位は?」
一方「あァ、チョーカーの改良版ができたそうなンでな。時間かかるから先帰ってろ」
番外個体「にゃはは、もともと待つつもりなんてないけど。あるぇ~、もしかして第一位はミサカに待ってて欲しかったのかにゃ~?」ニヤ
一方「チッ、ンな訳あるか。いいから寄り道しねえでとっとと帰れ。晩飯の準備してたからスグにできンと思うぞ」
番外個体「了~解」
* * *
番外個体「……暑い……。昼は冷やしさぅめんとかがいいなって、ミサカは前もって言っておけばよかったかも……」
番外個体(……この路地裏、日陰で涼しそう……。近道っぽいしこっちから行くかなぁ)
ジャリッ ジャリッ ジャリッ
ピタ
番外個体「ん~?ミサカに何か用かにゃー?」
スキルアウトA「いやいや、わざわざこんな路地裏通ってるってことはよォ」
スキルアウトB「誘ってんだろォ?イヒヒヒ」
スキルアウトC「見ろよコイツ、めっちゃいいカラダしてんぜ?」
番外個体「ん~?ミサカに声かけるならもう少し立派なモノを持ってからにするだね~粗チンクン?」
スキルアルトB「テメエ……状況わかってんのか?」
番外個体「ミサカは昼飯を食べるために急いでるからどいてくれない?」
スキルアウトB「上等だ、ナメやがって!」ブンッ
番外個体「──素人無能力者なんてミサカの敵じゃないのにさっ!」バチバチッ
スキルアウトA「チッ、やっぱ能力者か!──オイ!」
スキルアウトC「オーケィ!オラ、食らえ!」
──キィィィィィィィンッ!
番外個体「っ!?……頭……痛っ……!?」
スキルアウトA「ハハッ!キャパシティダウンは今となっちゃスキルアウトでは常識だぜ?」
番外個体(キャパシティ……ダウン……!?っ……ヤバイ、演算できな……!)
スキルアウトB「だぁ~れが……──」ヒュッ
スキルアウトB「──粗チンだぁ!?このクソアマァッ!!」ドゴッ!
番外個体「っが……!ゴホッ!」ドサッ
番外個体「っはぁはぁ!……うひゃひゃ、こりゃミサカのピーンチかにゃ~……?」
スキルアウトC「とっとと眠らせて連れてっちまおうぜ」バチチチ
番外個体「……ひひっ、スタンガンなんて……効かないしねッ!」バチンッ!
スキルアウトC「うぉっ!?スタンガンがぶっ壊れた!?こいつまだ能力が使えんのか!?」
スキルアウトA「っとなるとかなり高位の能力者見てぇだな」
スキルアウトB「あん?LEVEL4でもキャパシティダウンには耐えらんねえじゃなかったのか?」
スキルアウトA「いや、十分に効いちゃいるが、今みたいにキッカケがあれば少しは暴発するみてえだな。丁度電気系の能力者みてえだしな」
スキルアウトC「んじゃあめんどくせえから、出力上げて黙らせっか」ダイヤルマワース
──ブツッ!ギィィィィィィィィィン!
番外個体「……っ!!!うガァァァァァッ!!」
スキルアウトB「はははっ、余計うるさくなったじゃねえか!」
スキルアウトA「おいおいぶっ壊すなよ?──これから壊すんだからよ」
スキルアウトC「わーってるって。そんじゃあ運びますか」
番外個体「……っはぁ……っはぁ」
番外個体はキャパシティダウンの搭載された黒いバンの後部座席に投げ込まれると、どこかへと連れ去れてしまった。
* * *
番外個体(……あれ、ミサカ何してたんだっけ……?頭がガンガンするんだけど……)
スキルアウトB「お、やっと起きたみてえだぞ」
スキルアウトC「やっとか。俺の準備も出来たぜ」
番外個体「……あれ、ミサカは何を……?」
鎖で腕を吊るされた状態で立たされている。この状態になったまでの経緯がぼんやりとしか思い出せない。
スキルアウトB「あん?まだ寝ぼけてやがんのか。まあ、さっきもう一回キャパシティダウンやってやったからな」
スキルアウトB「気絶しやがってだらしねえ。軽く失禁したんじゃねえのかぁ?」
番外個体(あ~思い出した……。あ~も~油断した……。どうしよっかなぁ、逃げれそうにないし……)
番外個体「にゃはは、あの程度でミサカがイッちゃうワケないでしょ」
スキルアウトA「この状態でもそんな強がりが言えるか……。いいぜ気に入った。──オイ、やるか」
スキルアウトC「だな。くひひ、イかなかったら解放してやんよ」カチッ ブブブブブ
スキルアウトの一人が手に持っているのは振動で肩こりなどを治すハンドマッシャージャーだ。
もっとも本来の使い方をするわけではないのだが。
スキルアウトC「大型ラジコン用の強力なモーターに付け替えてんからな。威力は保証するぜ?」
スキルアウトB「オイ、一個貸せよ」
スキルアウトC「ほらよ」ポイッ
スキルアウトB「ククク……、死ぬほどイカせてやるから覚悟しな」
番外個体「うひひっ、機械に頼らねきゃならないほど自分のイチモツに自信がない──がほっ!」
スキルアウトB「マジで状況分かってねえみてえだな……。オラァ!イキ死ねっ!」ブブブブッ!
その瞬間、番外個体の体を、かつて体験したことのない感覚が襲った。
番外個体「……っ!!!???あひゃぁっ!?」ビクン
スキルアウトB「ぶはははっ!なんだそりゃぁ!あんだけ言っといて自分がめっちゃくちゃ感じてんじゃねえか!」ブブブ
番外個体「……っはぁ!……んぁっ」
番外個体(っ……!やっぱりデータだけなんて当てにならないよねえ……!当然ホルモンバランスが崩れてたせいで性欲なんて湧いたことなかったんだからさっ……!普段第一位をからかうためにそういうカラミはしてたけど、実際は自慰すらしたことないしねっ……!だからっ……!)
番外個体「んくぅっ!」
番外個体(当然耐性あるわけないしねーっ!ちょっとほんとにヤバイかもにゃー!)
スキルアウトC「はははっ、コイツ感じまくってんじゃん」
スキルアルトA「さぁて、具合はどんな感じかな」サワサワ
番外個体「っ……」
スキルアルトA「あん?もしかして全然濡れてねえのか?……服の上からだと良くわかんねえな」
スキルアルトB「おお、じゃあ脱がせっか」グイッ
番外個体「……!っ!」バシッ
スキルアルトB「痛っ!……テメエ!」
番外個体「……あはっ、汚い手で触んないでっての」ニヤァ
スキルアルトB「……」ブン!
番外個体「っ……!っおぇぇ……」
スキルアルトB「あ~も~決めたわ。コイツ二度と使えなくなるまでぶっ壊してやるわ」
番外個体(……あ~もう目眩するし……ダメかにゃ~……)
番外個体(……こんな時まであの人のこと考えてるなんて、一回助けられたからって頼りすぎだって……)
スキルアウトC「ハサミ使うか?」
スキルアウトB「ああ。……クククッ、間違って肌まで切っちまっても文句言うなよ?」
スキルアウトC「ギャハハハ!鬼畜だなお前」
スキルアウトA「……?」
スキルアウトB「あ?どうした?」
スキルアウトA「いや、何だあいつ……」
スキルアウトB「っ!誰かに見られたか!……オイお前、こっち来やがれ!」
スキルアウトがそう言うと、その人影は廃工場の中へと入ってきた。
一方「あァん?なにやってンだオマエ。とっとと帰ってろって言ったろォが」
番外個体「……あっは、やっぱり助けに来てくれるんだ……。……もう第一位のカッコよさに、ミサカの色んなところ勃っちゃったゾ☆」
一方「クソガキが腹減ったってさっきから電話でうるせェんだよ。とっとと帰るぞ」ザッザッザ
スキルアウトB「なんだテメエ、こっちはお取り込み中だってんのが見て分かんねえのか?」バチバチバチ
一方「……あァ?三下がナニ言ってやがンだ?こっちの方がお取り込み中なンだよ」
スキルアウトB「何ゴチャゴチャ抜かしてやがる!オラァッ!」
一方「……ハァ、めんどくせ」カチッ
──ッドォン!
スキルアウトB「があああああ!?」
一方通行が軽く地面を蹴ると、アスファルトが砕け散り、破片がスキルアウト目掛けて飛んでいった。
スキルアウトC「お前も能力者かっ!なんならなんでこのキャパシティダウンが効かねえ!?」
スキルアウトA「なんだか知らねえがやばそうだなコイツは……!オイ、もっと出力上げろ!」
スキルアウトC「うるせえ!とっくに限界値だ──ぐぶっ!」
今さっきの瞬間まで二十メートルは先にいた一方通行は、いつの間にかスキルアウトの目の前まで接近しており、その一人をキャパシティダウンの機械に叩きつけて沈黙させる。
スキルアウトA「っぐ……!何故お前はコレの影響かで能力が使える!?これじゃあまるで──」
そして、その次の瞬間には最後の一人の目の前へと移動していた。
一方通行「そのキャパシティダウンってのはLEVEL5への完全な効果はまだ実証されてねェんだろ?」
スキルアウトA「……じゃ、じゃあお前は……」
一方通行「一応肩書き上は学園都市第一位をやらせてもらってンだがな。──一方通行、名前と顔だけは覚えて帰ってくれよなァ?
一方通行「──二度とこうやって顔を合わたくなければなァッ!!」ドゴォ!
* * *
排工場には三人のスキルアウトが転がっていた。
見るからに大怪我だが、死んでいないということが一方通行が幾分か丸くなったことの証明であるという。
一方通行「こんな雑魚共に遅れとってンじゃねェよ」
番外個体「にゃはは、ありがとありがと」
一方「チッ、反省してるよォには見えねえんだが」
一方通行は番外個体の腕の鎖を鎖を外した。
すると、番外個体は二、三歩ふらふらとして、その場にへたり込んでしまった。
番外個体「っととと……」
一方「チッ、マジで手間かけさせやがって……」ヒョイ
番外個体「っ!?ちょっちょっと下ろしてくれな──」ジタバタ
一方「オイッ、暴れんじゃねェ!生まれたてのバンビみたいに足腰ガクガクの奴を歩かせるワケねェだろうが」
番外個体「い、いやでも……」
番外個体(ぬ、濡れてんのバレないよね……)
──ピピピピピ
一方「チィッ!おらまた電話きやがった!スグ帰ンぞ!」
一方通行は番外個体の講義を無視して、ビルの屋上から屋上を飛んで黄泉川達のマンションへ急いだ。
* * *
打ち止め「ごちそうそま!ってミサカはミサカは誰かさん達のせいでとっても空腹だったお腹を満たせたことに満足してみたり!」
一方「ハイハイ、遅れて申し訳なかったねェ」
打ち止め「は、反省の色が微塵も見られないってミサカはミサカは──」
一方「あァ食った食った。ラストオーダァ、食器の片付けは任せたぞォ」
打ち止め「あっ、ちょっと待ってって──」
一方(……一日中あんな騒いでてつかれねえのかあのクソガキは……)
一方通行が自室の方へと向かうと、そこには番外個体が待っていた。
番外個体「……今日はありがとねー。ミサカは第一位に惚れ直しちゃったよ」ニヤニヤ
一方「そォかい。……まァ、俺もお前がちゃんと女してて安心したぜェ?」ニヤリ
番外個体「…………へ?」
一方「抱いて帰って来る間、手がずっと湿っててなァ……スキルアウトなんざに感じるたァ少し鈍りすぎじゃねえのかァ?」ニヤニヤ
番外個体「……ば、バレてたーーーー!?うわあああああああ」ダダダダダ
番外個体は一方通行を突き飛ばすと自室に飛び込みカギを閉めた。
番外個体(バレてたバレてたバレてたバレてたバレてたバレてたっ……!うわああああああ、どうしようってミサカは本気で困ってるっ!!!)
──番外個体自室にて。
番外個体「……ミサカネットワークに接続中の全ミサカに告ぐ。これより緊急会議を始める……」ゴゴゴゴゴ……
10777号『どのような用件でしょうか』
13577号『……どうやら今ネットワークでの会話に接続できる状態のミサカは少ないようです。時差の問題でしょうか、ミサカのほとんどが就寝しているようで』
10039号『それならば何故ロシアにいるはずの100777号がログインしているのでしょうか。現在モスクワは午前5時35分、まだミサカの起床時間ではないはずですが?』
10777号『ちょっと早起きでもしないとにでもないと出来ないことがあったので…………ぐふふ、上条さん……///』ヌチュ
10039号『10777号の妄想と淫行がミサカネットワークにダダ漏れになっている状態になんとも思わないのでしょうか』
10032号(以下『御坂妹』)『……番外個体の要件とはなんですか、とミサカは半ば脱線しかけた話題を元に戻そうと試みます』
番外個体「……今会話に接続中のミサカ相談なんだけど……」
10777号『ふむふむ、一方通行にアソコを濡らしていいるのがバレてしまったのですね』
番外個体「ぶっほ!?な、何でそれを……」
10777号『会話に参加してようがなかろうが、ビジョンを見てようが見てなかろうが、記憶の共有を常に行われていますから。大丈夫です、ミサカは上条さん派なのであのセロリには全く興味がありません。どうぞお好きにやっちゃてください。上条さんに脳内変換してオカズにしますから』
13577号『ミサカもアナタほど欲望に直球であれば、と羨ましい限りです。そうすればミサカも……うふふふふうぇっうぇっ』クチュクチュ
御坂妹『アナタも十分直球だと思うぞ、とミサカは冷静にツッコミを入れます』
御坂妹『そうではなくて、番外個体はミサカ達にこの後どのように一方通行にアプローチをかかければいいのか、ということを相談したいのですよね』
番外個体「……微妙に違うニュアンスを含んでいる気がするけど……、大体その通りかな」
御坂妹『……そうですね──』
10777号・13577号『『──有無を言わさず押し倒せ、です』』
番外個体・御坂妹・10039号(((ダメだコイツら早く何とかしないと……!)))
* * *
番外個体「──結局、何事もなかったかのように振る舞うのが一番なのかなにゃー。その内忘れるだろうし」
御坂妹『そうですね。それが一番無難だと思います、とミサカは一番まともな意見を当然肯定します』
10777号『黙っておしt』
御坂妹『一番まともな意見を当然肯定します……、と普通なら言いたいところですが』
番外個体「?」
御坂妹『本当にアナタはそのままでいいんですか?』
番外個体「な、何のコトかにゃー?」
御坂妹『そのままの意味です。本当にアナタは一方通行とこのままの関係でいいのですか?』
番外個体「……ちょっと言ってる意味が分かりかねますが、ねおねーたま?」
御坂妹『……本当に、ですか?』
番外個体「……あひゃひゃ!本当にも何も、ミサカと第一位の関係は生まれた時からこれから死ぬまでずっと変わらないよ?ミサカは第一位を殺すために生まれてきた!殺す側と殺される側、それ以外の関係に──」
御坂妹『……もう一度聞きますが、本当にですか?』
御坂妹『──そう思うなら、なぜ、一方通行と一緒にいる時のアナタの精神波形はあんなにも嬉しそうなのですか?』
番外個体「……そ、そんなん知るかっ!」ブツッ
御坂妹『……会話を強制遮断しましたか』
10032号『やれやれ、ですね』
10039号『お前が言うとなんかウザイです』
10777号『さてさて、これからあの二人はどうなるのでしょうかね。御坂たちは見守ってあげるとしますか』
御坂妹『お前が締めるんかい』
* * *
番外個体(……有り得ないって、ミサカが嬉しい?第一位と一緒にいるだけで?)
──冗談もいいところだ
──彼を憎むためだけに造られた自分が
──彼と一緒にいるだけで嬉しいなんて
一方通行「よォ、入ンぞ。晩飯の買出し、量が多くなりそォだから付いてこい」
番外個体「っ……!」
──本当に冗談もいいところだ
一方通行「先行ってンから早く来──」
番外個体「──待って」
一方通行「あン?」
番外個体「……ちょっとだけ、待って」
一方通行「……どォしたどォしたァ?らしくないンじゃねェのォ?なんか悩み事ですかァ?」
番外個体「……そうだね~ある意味悩み事。いやもうホント悩ましいわ」
一方通行「サッパリ話が伝わってこねェんだが、さっきイッたついでに頭までイッちまったんですかァ?」
番外個体「ひひっ、そうかもね~……っと!」グイッ ドサッ
一方通行「あァン?なんで俺が押し倒されて馬乗りされてンだァ?ついに発情期かこのヤロ──ムグッ!?」
番外個体「んっ……んちゅぅ……ぷはぁ……はぁ……。あひゃひゃっ、発情期ってのを言い訳にしていいなら都合いいんだケド」
一方通行「……っテメエ……」
黄泉川「──一方通行いるかー?芳川と打ち止めと出かける用事が入ったから留守番頼むじゃん。晩御飯の材料はついでに買ってくるからさ」
番外個体「」ニヤニヤ
一方通行「……チッ、……あァ分かった、大した腹減ってねェからゆっくり出かけてこい。どうせ打ち止めのワガママなンだろ?」
黄泉川「そゆこと、んじゃ行ってくるわ」ガチャ
芳川「行ってくるわ」
打ち止め「あ、待って待ってってミサカはミサカは──」ガチャリ パタパタ
一方通行「……行ったか」
一方通行「それで?この状況を説明してもらおうかァ?」
一方通行は番外個体に押し倒されたまま仰向けの体勢で番外個体の方を見た。
番外個体「……」
一方通行「あァ?黙っててもわかンないんですがァ」
番外個体「…………あ~、やっぱ無し!今日のことは忘れて!」
一方通行「あァ?」
番外個体「ちょっと色々あって気が動転してただけだから。うひひひっ、別にそのままミサカのベッドで寝ててもいいよ?ミサカは今に行ってくるから」
そう言って番外個体は一方通行のい上からどいて、部屋から出ようとした。
一方通行「……待ちやがれ」ガシッ
しかし、その腕を一方通行が掴んで止めた。
番外個体「ん?どうしたん?……あ、もしかして逆に発情しちゃったのかにゃー?あひゃひゃひゃっ!」ニヤニヤ
一方通行「散々勝手なことしておいてよォ、そのまま逃すと思うのかァ?」
番外個体「な、なんのことかにゃー」
一方通行「……」
番外個体「……あ、あれっ、本気?」
一方通行「……」ガバッ ドサッ
番外個体「っ……」
番外個体「……うひひっ、ちょっと顔怖いよ?」
一方通行「……今まであンだけ挑発してきたんだ。文句はねェだろ?」
番外個体(あれ……、これもしかして本気?)アセッ
番外個体「あはは☆童貞クンにミサカのリードができるのかな~?」ニヤッ
番外個体(あああぁぁぁっ!?なんで思ってもいないことが口に出るの!?)
一方通行「……はァン、それは肯定として受け取っていいンだなァ?」イッラァ
番外個体「長い間反射のおかげで保護されてきたイチモツなんて敏感すぎてすぐイッちゃうんじゃないの?」ニヤニヤ
番外個体(そうじゃなくて!この状況を何とかしないと……!)
一方通行「……」ワシッ
番外個体「ひゃっ!?」ビクン
一方通行「……胸触られたぐらいでンな反応してンじゃねェよ。敏感なのはどっちだってンだ」
番外個体「い、いや……、今日はあんなことあったばっかりだからさ、取り敢えずここまででってコトで……」
一方通行「……解放するわけねェだろ」カチッ
一方通行は電極のスイッチを入れた。
どのように反射を使っているのか、ベッドに押さえつけられた番外個体は体を全く動こすことができなかった。能力を使っていない状態ならば、番外個体の方が力があるのだが。
一方通行は番外個体を片手で押さえつけたまま、もう片方の手で股の方に手を伸ばした。
番外個体「っ……!」ビクンッ
一方通行「おーおー、まだ濡れてやがンのか……、それとも今濡れたのかァ?」グチュゥ
番外個体「ちょっ、指入れっ……!んっ!」グチュッ
一方通行は番外個体の下着をずらして強引に指を進める。番外個体の体が少し跳ね上がり、膣内がうねるのがわかった。
一方通行「ったく狭いなオイ。二本入りゃ十分ってとこかァ……なっ!」グチュッ
番外個体「──っんあぁ!ちょっと、ほんとにヤバイから抜いてっ……」
珍しく弱気になった番外個体が一方通行に懇願した。
先述の通り、番外個体は挿入の有無以前に自慰の経験すらない。そんな完全未使用の膣にいきなり指を二本いれるとキツイのは当然だ。
しかし一方通行は口を三日月のように歪めて笑った。
一方通行「わりィが、俺は他人にナメられんのが一番嫌いなンだよ。普段のナメた態度のオトシマエをここで付けてもらうぜェ?」
一方通行は人差し指と中指を番外個体の膣から抜いたり挿したりを繰り返した。もともと濡れていたおかげで初めての割にはスムーズに行われた。
番外個体「んっ!ひっ!っ……はぁはぁ……。わ、悪かったって……、ミサカも普段の態度は反省してるから──あぁっ!?」
突如番外個体の膣の中へ侵入しているモノの体積が増えた。
一瞬さらに指を入れたのかと思ったが、よく見るとそうではなかった。
膣の中で何かがうねっているのだ。
番外個体「……な、なんなのっ……?」ビクビク
一方通行「ベクトル操作で、ちょォッと指の周りに空気の層をつくっただけだ。まァこんだけ小さい体積だと逆に制御が難しくてなァ、中で空気が流動してるだろォが、まァむしろ良い効果を出してるみたいだなァ」
番外個体「ってか、あんまっ……広げないでって……!……んくぅっ!」
一方通行「オイオイ本当に処女なのかァ?濡れまくりじゃねェか」グリグリ
番外個体「……っさいなぁ……!第一位だって童貞、じゃん……!」
番外個体「……普段の態度的に、こういうコトには興味がないと思ってたんだけど……っん」ハアハア
一方通行「あ~、確かに前までは、なァ。ただホルモンバランスが戻って性欲も湧いてきたみてェだな」
番外個体「それは、あの医者から聞いたし……、そうじゃなくてっ……!急に……こんな強姦するほどの性欲が湧くってのはどうなのさっ……」
一方通行「普段からあンなに誘われたら、むしろこれぐらいの反応が年相応で自然だろォが」
番外個体(いや、そんなことはないと思うけど……)
一方通行「ガタガタ言ってねえでオマエは黙って感じてなァ!」グチュチュチュチュッ!
番外個体「……っ!?んあああぁぁぁっ!」ビクビク
一方通行が作り出した空気の層が番外個体の膣の中で激しく振動した。その動きは、大人の玩具のようなモーターの作り出す単調な振動ではなく、全方向に不規則な動きをするため、信じられないほどの快感が番外個体を襲うことになった。
一方通行「ったく、普段があんな感じなのになァ。耳年増もいいトコだろォが」ニヤリ
番外個体「分かってんならどうしてここまで酷いことするかなぁ……」ハァハァハァ
一方通行「いつもの仕返しだっての。……ッチ、服が邪魔だなァ」
番外個体「……!ち、ちょっと待った!この服は破いちゃダメだって!お気に入りなんだからさ!」
一方通行「……あァン?ンなこと知るかってン──」
番外個体「……」
一方通行「──アァ、はいはい分かりましたよ────────って言うとでも思ったか馬鹿が」ビリィィッ
番外個体「っな……!」
生まれた時与えられた服は、戦闘用のツナギのようなスーツだった。まさに自分の生まれてきた意味を形容したかのような服だった。
それから彼に助けられ、日本に来て、初めて普通の服……とは言い難いが、それでも女の子らしい服を買ってもらえた。
彼は「プレゼントなんてガラじゃねェ」って、嫌そうにしてたし、こっちだって昨日の仇敵に贈り物なんてされたくなったけど、それでもミサカはやっぱり嬉しかった。
一方通行「……っくあひゃひゃうぇっうぇ最高だねェ!何だ何だァその顔はよォォ!悲しいんですかァ!?似合わねェンだよオマエにはっ!!」
番外個体「……悲しいけど、これなら大丈夫かな」
一方通行「アァん?」
彼が普通ならばこんなことするはず無いのだから。
番外個体「それはミサカが一番知ってるんだからさっ!」バチンッ!
一方通行「っ!?電磁波を使ったジャミングかァ!?……いや、ミサカネットワークに直接働きかけやがったか!」
番外個体「そゆこと♪」ガシッ
一方通行「っ!」グルン ドサッ
一方通行が動揺した一瞬の隙を付いて番外個体は巴投げのように一方通行を回して上下を逆転した。
一方通行「チッ!」
番外個体「あぶないあぶない♪」カチッ
一方通行「スイッチを……!」
スイッチを番外個体にキープされている時点で一方通行は反撃の手段がなくなった。
しらばらくそのままの体勢でいると番外個体はスイッチから手を離した。
番外個体「頭冷えたかにゃー?」
一方通行「…………あァ、わりィ」
番外個体「やっぱり新しい電極の暴走が原因なのかな?」
一方通行「そォみてェだな……。だが、それを言い訳にするつもりはねェ。どうオトシマエつけりゃオマエは納得する?」
番外個体「それじゃぁ、一つ目は……」
一方通行「ひとつじゃねェのかよ!」
番外個体「この服気に入ってたんだからさ、新しく買ってよ」
一方通行「あァそれぐらいなら──」
番外個体「二つ目はねぇ……────この先もミサカとずっと一緒にいること」
一方通行「……………………あァ?」
番外個体「にゃはは、そのままの意味だって。日本語おーけー?この先も、例え第一位にとって何があっても、ミサカにとって何かがあっても、ミサカの前から姿を消さないこと」
番外個体「何よりもウチのアホ毛の上位個体が悲しむと思うんよねー」
一方通行「ンなことでオマエは何か得すンのか?」
番外個体「ひひっ、それがちゃんと分かるまでは傍にいてもらうかにゃー」
一方通行「……意味わかンねェ」
番外個体「じゃあ三つ目」
一方通行「まだあンのか!?」
そのツッコミに満足したような笑みを浮かべた番外個体は一方通行の首筋に腕を回した。
そして電極のスイッチを入れた。
番外個体「さっきの続き、してくれない?」
一方通行「続きって、正気かオマエ」
番外個体「女性からの一夜のお誘いを断る気かにゃー?」
一方通行「まだ昼だ」
番外個体「今のはボケ?」
一方通行「……うるせェ。大体、電極のスイッチなんて入れやがって、また暴走したらどうするつもりだァ?」
番外個体「第一位サマが二度も同じミスを犯すとは思えないかなー」ニヤニヤ
一方通行「信用していただいてるようでどォも。……それからそろそろ上をどきやがれ」
番外個体「うーぃ」
番外個体は素直に一方通行の上から退けて、一方通行の横に座った。一方通行も体を起こして番外個体と向かい合う形になった。
そして何も言わずに番外個体を抱き寄せ、そっと唇を奪った。
番外個体はそのまま一方通行に体をゆだねて後ろに倒れる。二人は一度唇を離し、それから再びお互いの唇を重ね合う。番外個体は下を一方通行の口へ入れて、下と舌を絡ませ歯茎をなぞった。
その度に部屋にはぬちゃぬちゃと音が響いた。
番外個体「……んっ、早く……やってよ」
一方通行「……」
一方通行は電極のスイッチが入っている今だけ学園都市最強の能力者だ。
しかしよもや“こんなこと”にその能力を使うことになろうとは思ってもいなかった。
指の表面を覆う反射のベクトル能力を渦を描くような流動的なものに変化させる。そしてその指を番外個体の秘部、そこの充血して腫れ上がった小陰核へと触れさせる。
すると、番外個体の体がビクンと跳ね上がった。
番外個体「────っ!!!???」
一センチにも満たない小さな突起に大量の神経が集まっている小陰核から襲う快楽は、ほかの体の部位の刺激とはレベルが違う。たった一度触れたれただけで頭が一瞬真っ白になった。
番外個体「っはぁ……っはぁ……。……や、やばいこれ」
一方通行「まだ始まったばっかだがなァ」
番外個体「っく……!あぁっ……!」
一方通行は小陰核を包む皮をむき、二本の指ではさみコリコリと刺激を与える。
番外個体「っ!んひぃっ!!っっっぁぁああ!ちょっ、イクっ……!」ビクン!
プシャッ、と番外個体の秘部から透明な液が溢れ出た。絶頂を迎えた番外個体はだらしなくヨダレを垂らしており、目の焦点がうまくあっていないようだ。
一方通行「初めてでも潮って吹けンだな」
番外個体「……し、潮なんて言葉を知ってるなんて意外だなぁ……」ハアハア……
一方通行「相当辛そォだな……。今日はここまでにするかァ?」
一方通行が手を離しベッドから降りようとした時、その腕を番外個体が弱々しく掴んだ。
番外個体「……待ってってば……。……まだ、挿れてないじゃん?」
番外個体が震えるような声でそう言ったので一方通行は振り返ってその顔を見た。
するとその顔は今にも泣きそうな顔だった。そんな番外個体の顔を見たのは初めてだった。
──なンで泣きそうな顔してやがンだァ?泣くような場面じゃねェだろォが……。
しかしやはり、番外個体は袖を握って一方通行の方を見上げ、ほとんど半泣きだった。
──はあ……、なンて顔しやがる……。打ち止めでもこんな顔したことねえぞ……。流石末っ子ってかァ?
一方通行「よく分かんねェが、挿れてやりゃァその鬱陶しい顔をやめンのか?」
番外個体「……」
一方通行「……その沈黙は肯定ととっていいンだな?……ったくこんな時だけ末っ子しやがってメンドくせェ」
袖を握る腕をつかんで再び押し倒す。一方通行は電極のスイッチを切ると、そのままの体勢で片手でベルトを外してイチモツを取り出す。
以前ならそれはただの排尿管だったのだが、ホルモンバランスが正常に戻るにつれ、雄としての重要な機能を取り戻したのだった。
一方通行の腰にそびえるソレは、痩せ体型からは想像できないサイズで、日本人男性の平均を4、5センチは上回っているだろう。
腰を落として陰茎を番外個体の秘部に押し当てる。番外個体は今自分の体に入ろうとしているモノを見てビクリと肩を震わせる。
──ッンとに、さっきまでとは別人だなオイ。何があったってンだァ?
一方通行「オイ、挿れんぞ?」
番外個体「あ、う、うん……────んくっ……」
『先が入っただけで』とよく言うが、(硬さは置いておいて)男性器の中では一番太い部分である。ついさっき初めて指が侵入した膣には少し刺激の強すぎるものだ。
番外個体「あぁっ……っ……!」
一方通行「オイ大丈夫か?きついならやめンぞ?」
番外個体「ううん、だ、大丈夫だから……」
一方通行(顔が大丈夫じゃなさそうなンだよ……、無理しやがって)
一方通行「あと少しだからなァ、ちょっと我慢しろよ」
ゆっくりと時間をかけて挿入していく。番外個体の目には先ほどとはまた別の涙を瞳に浮かべていた。それでも必死に笑顔を作ろうとしていた──また、今まで見たことのないような顔で。
ぶちり、と処女膜を破る感覚があった。繋がった箇所からは赤い血がどろりと溢れた。
番外個体「っはぁはぁ……。は、入ったね…………んんっ」
番外個体を落ち着かせるために優しくキスをする。一度唇を離し、それからもう一度唇を求め合う。そうしている内に挿入部分の境目から透明に愛液が垂れ始めていた。
そして更に番外個体の瞳から涙が溢れ出す。
一方通行「ンなに痛ェのか?」
番外個体「……っぁあ……はぁ……ん~ん、違うの」
番外個体「嬉しいんだよ」
番外個体は涙を浮かべながらも笑ってそう言った。
番外個体「──だって、ミサカが本当の人間みたいだから」
一方通行「……」
番外個体「ヨミカワ達と一緒に『普通の』暮らしをして、『普通』の食事をして、買い物をして、ゲームをして…………」
番外個体「そしてこうやって好きな人と一つになれた。こんな人間らしいことが、ミサカは泣きたいほど嬉しいんだよ」
番外個体「……馬鹿みたいって思う?」
一方通行「…………あァ、馬鹿だな」
番外個体「……」
一方通行「──お前が人間なのは当たり前だろォが。そうじゃなかったらなんだって言うんだァ?」
番外個体「……っ、第一位もあの医者と同じこと言うんだね」
既に泣いている番外個体の瞳をさらに大粒の涙が満たしていく。
生まれて初めてしゃくり上げて泣いた。
子供みたいに、人間らしく──────人間だから
* * *
番外個体「あ~あ、見られたくないモン見られた……」
一方通行「そォかァ?可愛かったと思うぜェ?ば・ん・が・い・こ・た・い・サ・ンよォ?」ニヤッ
番外個体「~~っ!」
一方通行「いつもの仕返しだよばァか」
番外個体「はぁ、御坂人生最大の屈辱だよ────さて、そろそろいけそう、かな」
一方通行「あァ、ゆっくりな」
番外個体「あひゃひゃっ、優しいね、相変わらず」
一方通行「あァ?俺がいつオマエに優しくした?」
番外個体「いっつもだよ」
一方通行「……記憶に無ェな」
番外個体「ひひっ、照れ隠しなさんなって」
一方通行「……そういう舐めた口は、未だに止まんねェ目元の涙を止めてからにするンだなァ」
番外個体「……っさいなァ」グスン
一方通行「ンじゃあいくぞ」
番外個体「ん」
一方通行は挿入されたままだったモノをゆっくりと引き抜く。そして全て抜ける前にもう一度挿入する。
たったそれだけの行為で両者の脳には未知の刺激が襲っていた。
一方通行(ンなこと初めてだから具体的には分かんねェが……)
一方通行「あンま持たねえかもしンねェ」
番外個体「っはぁはぁ、そ、それはミサカも……。もう意識飛びそう」
一方通行「お互い敏感すぎンな」
それから徐々に腰を振る速度が上がっていく。どこぞのバカ面によるとAVみたいに激しく振っても相手は痛いだけで気持ちよくないんだとか。勿論童貞マスター浜面も直接体験からではなくネットから得た情報なのだが。
そのことを聞いていたこともあるし、また自分が持ちそうにないことからある程度の速度で一定に保つ。
ただの正常位、しかも単調なストロークだというのに一方通行は今にも果ててしまいそうだった。
それもそのはず、幼少期から反射によって守られてきたイチモツへの刺激は、初めて皮がむけたそれよりも遥かに敏感なのだ。それでもまだ持っているだけすごいぐらいだ。
対する番外個体は激しく喘ぎながら一方通行に抱きついていた。苦しそうで、それでいて快楽を訴える喘ぎは抱きつかれている一方通行の耳に直接伝わる。
その番外個体が一方通行を抱く力を強める。
番外個体「……っやばっ…………んあああっ!!」
ブシャァッ、と挿入されたままにも関わらず、勢いよく潮を吹き上げた。完全に達した番外個体はガクガクと痙攣している。
一方通行「っオイ平気か」
番外個体「……だ……ぃじょ……うぶ」ビクンビクン
既に番外個体の目の焦点はあっておらず、もはや腕にも力が入らないのか一方通行の体に回していた腕がするりと抜け、ベッドにその体をあずけた。
一方通行「っ、オレもそろそろ……!」
中はまずい、そう思った一方通行は急いで引き抜こうとするが、
一方通行「っ!なにしてやがンだァ!?」
まだ僅かに余力があったのか、番外個体の脚が一方通行をホールドして離さない。
番外個体「……出して、ナカに……」
一方通行「馬鹿かオマ──っ!!」
ビュルルルルッ!!
人生初めての射精、精通がまさか膣の中で行われるとは思ってもいなかった。
しばらくの間一方通行の思考は快楽で埋め尽くされたが、徐々に冷静さを取り戻していった。
一方通行「オマエ……何したのか分かってンのか?万が一──」
番外個体「──万が一は無いから……大丈夫……」
未だに苦しそうな番外個体は絞り出すようにそう言った。
一方通行「……どういう事だ?」
番外個体「……あ、あのカエルの医者が言ってたんだけどね……ミサカたちクローンは、子供を作ることは出来ないって……。DNA上無理らしいんだよね……」
確かにそのとおりだったと一方通行は思い出す。クローン技術によって生まれた生命体には生殖機能がない。それはクローン技術における一つの壁だ。
──しかしそれではあまりに酷だ。ついさっき言ったことはどうなる。
やはり人間とクローンとでは根本的に違うのだろうか。
番外個体「──だから、大丈夫だって」
一方通行「……」
番外個体「ミサカはちゃんと人間だよ。さっきあなたが認めてくれたでしょ?それだけでミサカにとっては本当になるんだからさ」
* * *
それからまもなく
一方通行は道路の真ん中で大の字になっていた。
麦野「……何してんの?」
滝壺「……あくせら、日なたぼっこ?」
浜面「違うと思うぞ?」
最悪な連中に見られた。
浜面「どうしてそうなった?」
一方通行「……どォしてこうなった……」
『──説明しよう!二人が一通りの行為を終えたところ、まさかの黄泉川、芳川、打ち止めの帰宅!いそいで服を着るも、部屋のノブをひねる音が!番外個体の機転によって一方通行は窓の外に投げ捨てられたのだ!』
幸い落下前に電極のスイッチを入れることができたので無傷だが、状況はあまり良いとは言えない。
絹旗「なんかちょっとイカ臭いです」
麦野「なっ!?」///
浜面「まさかまさか──ぶるああっ!?」
一方通行「余計な詮索するな……」
浜面「ず、ずいまぜん……」
滝壺「……元からアレなのに、浜面の顔が救いようのないことに……」
浜面「酷い!」
絹旗「っていうか、麦野の反応超初々しくないですか?」
麦野「……で?何かしら、き・ぬ・は・た・ちゃん?」
絹旗「やべっ」
一方通行「……帰っていいか?」
* * *
そんな光景を遠くから立ち止まって見ている影があった。
美琴(アイツら……!)
常盤台のエース、御坂美琴はかつての宿敵たちの姿を見て目を見開いた。
美琴(暗部の連中ってのはこんな一般の目につくようなところにいていいワケ!?……それともまた何かしようとしているっていうの……?)
黒子「お姉さま?あの方々がどうかしましたの?」
美琴「えっ?い、いや何でもないわ」
初春「何か顔が怖かったですよ?」
佐天「……ははーん、さては……、あの人は御坂さんが昔捨てられたオトコとかですね?」
美琴「は、はいっ!?」
黒子「んまっ!そうですのお姉さま!?もしそうだというなら、今すぐ成敗してまいりますわ!!この麗しきお姉さまを捨てるなど言語道断!!!キーッウラウヤマシ!」
初春「あれ?もういないみたいですね」
麦野たちはもうすでに立ち去ったらしく、裸足でマンションに入っていく一方通行の姿だけが遠くに見えた。
美琴(あそこに住んでいるのかしら……。割と普通のマンションだけど……、意外ね)
美琴「何でもないわ。さ、時間もないし急ぎましょ」
* * *
──マンションの一室で
黄泉川「あれ、アクセラレータはどうしたじゃん?」
番外個体「さ、さぁ?買い物じゃないかにゃ~?」
芳川「……裸足で?靴あるけど」
番外個体「やべっ」
──番外個体の『初めて』から二週間。二人はハワイに赴き、後に『バゲージシティ事件』と呼ばれる一種の『戦争』の渦中にいた。
そこで一方通行は、かつてあの忌々しい実験の実験場で相見えた学園都市第三位、『超電磁砲』御坂美琴と遭遇する。
目先の事件の解決のための一時的な共闘であって、美琴と和解という形が取ることはできなかった。
また、番外個体の存在に美琴は驚きはしたが、これもまた文字通り言及している暇もなく事件の流れによって二人はバラバラとなってし
まった。
帰国後10039号経由で美琴は番外個体のことだけではなく、打ち止めの存在なども詳しく説明を受けたが、一方通行については触れること
はなかった。
そして事件は“表向きは”収束し、学園都市勢は日本へと帰国していったのだった。──ただ一人の少年を除いては。
その後、学園都市で御坂美琴は腹を打ち抜かれているその少年と再会したのだった。
──また、何か面倒ごとに首を突っ込んでいるのか、と呆れ半分で。
* * *
佐天「それじゃあ御坂さんだいぶ前に『旅行』から帰ってきてたんだ」
初春「そうみたいですね、白井さんから言い忘れてた、って連絡があったんです」
佐天「そっかぁ、じゃあ久々にみんなでなんか食べに行かない?」
初春「いいですねえ。行くとしたらどこにします?」
佐天「う~ん、まあとりあえずファミレスとかでいいんじゃない?」
初春「そうですねえ、その方がいいかもしれませんね。今白井さんに連絡入れてみます」
佐天「うん、おねがい────……っ!初春っ!」
道路際に止めてある黒いバンを不審に思った瞬間、その中から伸びた手に初春が引きずり込まれた。
不良A「おい、そっちの女も攫え!」
佐天「っ!」
狭いとはいえ、佐天たちは別に人通りの少ない裏路地を歩いていたわけではない。
それでも人通りがないのは、今日が佐天たちの学校の開校記念日で休日だからである。学園都市は名の通り総人口の八割が学生の都市で、平日昼間はあまり人が出歩いていないのが普通なのだ。
それでもこんな白昼堂々と人攫いをするのは異常だが。
佐天(取り敢えずアンチスキルに通報を!電波さえ飛ばせば駆けつけてくれるはず!)
佐天はスマホを取り出してアンチスキルに連絡を入れようとするが、とある違和感に気がつく。
佐天「アンテナが立ってない……!?」
不良B「ひゃはっ!そりゃそうだぁ!この辺には今特殊なジャミングを飛ばしていてな!携帯はおろか、街頭の監視カメラも機能していいないぜえ!」
佐天「そんなっ!」
まさに絶体絶命、不良グループの一人が佐天の腕をつかもうとした瞬間、
不良B「──ぐわっ!」バチバチッ
不良C「何だ!?」
不良A「電撃だと……?能力者か!」
番外個体「にゃははっ☆ご名答~。こんな昼間っから女攫いなんてセコイことやってんね~」
不良A「チッ!調子に乗るなよ、今の威力なら精々レベル3ってところか?……いいか、一つレベルが上だからってなぁ──」
どこから湧いて出てきたのか、更に三、四人の不良が現れ、番外個体を囲んだ。
不良A「──数が多いほうが勝つに決まってんだろ!はははっ!俺は、レベル2の水流操作(ハイドロハンド)だ、ヨロシクゥ!」
一人が水の塊を番外個体に向かって射出すると、他の不良たちも炎や風の能力で一斉に攻撃した。
が、しかし
番外個体「ひひひっ!レベル3程度って……舐めすぎじゃないかなぁぁあっ!」バチバチバチバチッ!!
自分を囲むように飛んできた攻撃を横に大きく跳躍してよけると同時に、額の当たりから電撃を発生させ、三方向にイカヅチを飛ばす。
イカヅチは佐天に当たらないように正確に不良たちを貫き、一撃で沈黙させた。
残った不良は言葉を失う。
完全に見積もりを誤った、と。
不良F「な、何がレベル3程度だよチクショウッ!これじゃあ完全にレベル4はあるじゃねえか!」
不良G「クソッ!一旦引くぞ!」
番外個体「──逃がさないよ~」バチチチチッ!
不良F「ひぃっ!」
ドオッ!と番外個体は両手から大きな雷撃を飛ばす。
御坂美琴(レベル5)に比べれば見劣りするものの、番外個体はれっきとした大能力者(レベル4)なのだ。当たればただでは済まない電気の渦が不良たちに迫る。
番外個体「!?」
しかしその攻撃が不良たちに届くことはなかった。
突如、電撃がその『進行方向を曲げられた』のだ。
不良H「何をやってんだのさぁ、早く逃げんぞぉ」
不良G「リ、リーダー!」
不良F「助かった!よし、早く乗り込め!」
番外個体「逃さないっての!」
不良H「ん~っと、ふれみんぐ~、っとな♪」
番外個体が再び電撃を放つが、金髪の不良が左手を差し出すとやはり標的に届く前にその進行方向を曲げられてしまう。
番外個体は、リーダー、と呼ばれていた金髪の間抜けな顔の男を見た。
番外個体「う~ん?同じ電撃使い(エレクトロマスター)って訳じゃなさそうだけど……」
不良H「あ~俺っちの能力のこと?そーそー、根本は同じ系統なんだけどさぁ、特化の仕方が違うんだなぁ」
不良H「俺っちの能力は電磁気力(エレクトロマグネティック)、レベルは同じく4だぜぇ、ヨロシク美人さん」ニヤッ
番外個体「……なるほど、磁場を発生させて曲げたってわけ?」
不良H「そーだよーっと。レベルは4だけどね。『磁力にのみ特化した能力』だからね。第四位の原子崩し(メルトダウナー)や第三位の電撃だけの攻撃なら防ぐ自信があるんだぜぇ」ニヤニヤ
番外個体「おねーさまの攻撃も、ね……、あははっ!大した自信だね。……それじゃあミサカ『程度』の電撃ぐらい防げるよねえ!」
不良H「おーっと待った待った、今攻撃すると、その娘に当たっちゃうよぉ?その娘の方に電気が誘導されるようにしてるから」ニヤッ
指をさされた佐天がビクリと震える。
もしレベル0の佐天に番外個体の電撃が当たれば一溜りもない。
番外個体「人質とは卑怯だねー」
不良H「なんとでも♪」
番外個体「……一つ不思議に思うことがあるか聞いていいかな?スキルアウトならいざ知らず、見たところみんな能力者みたいだけど人攫いなんかして何が目的なのかなー?」
不良H「んー、そういう事は他言無用なんだけどなぁ。ま、キミもこの後攫わせてもらうし、話してもいっか」
不良H「ん~っとな、俺っちはな──」
番外個体(……さてさて、またどこかで『暗部』が産声を上げたのかにゃー?)
不良H「──ただ女とヤリたいだけだよチクショウッ!」
番外個体「…………ん?」
あるぇー、なんか期待してたのと違うぞぉ?
不良H「俺たちはなぁ!ずっと男子校生活だったんだよぉ!女子と触れる機会ゼロ!おぉ、確かにレベルは上がったぜぇ?さすがはそれなりの名門だぜ!でもな、そんなことどうでもいいんだよぉ!」
不良H「『外』ので男子校に通ってて、学園都市来れば共学に行けるって聞いて来たのにさぁ!来たのにまた男子校だったんだよチクショォォォォォ!」
番外個体「あ、うん、死ね☆」
不良H「なっ!?」
ベキキキキッ!ガシャァン!
不良の頭上のビルの広告看板が音を立てて崩れ落ちてきた。
電撃による攻撃が出来ないならば、もっと直接的に攻撃すればいいだけの話である。流石に美琴のように車を持ち上げて飛ばすような芸当は出来ないが、上にあるものを落とすぐらい造作ないことだ。
不良H「っぐ、おおおぉぉぉおおおっ!」
不良は左手を差し出し能力を全開にして巨大な広告看板を止めようとする、しかし完全に勢いを殺すことができそうにないとみるや、どうにか横方向に勢いを流し、プレスされるのをどうにか逃れた。
不良H「はぁっはぁっ、……あははっ!残念だったねぇ!わざわざ話を長引かせて時間稼ぎをしたっていうのにさぁ!言ったろ?磁力は俺っちのほうが専門なんだ──」
番外個体「やほー」ニコニコ
不良H「なっ……!」
上の広告看板に気を取られているうちに番外個体は不良の懐まで飛び込んでいた。身体能力も非常に優れている番外個体の拳が振りかぶられる。
番外個体「ッエーイ☆」
不良H「ごばぁっ!」
不良は地面をゴロゴロと回転して、それっきり動かなくなった。
番外個体「全く、もっと暗部絡みのディープは事件かと思ったのにさあ。時間割いて損したー」プンプン
番外個体「大体一々左手つかわなきゃなんないほどの演算速度じゃ百年経っても勝てないってば☆」
不良G『ひ、ひいっ!バケモンだ!とっとと車出せ!』
不良F『わかってら!』
自分達の頭領がやられたのを見て黒バンは慌てて走りだした。
佐天「初春っ!」
番外個体「……あ~、もう大丈夫だわ」
佐天「へ?」
番外個体が見ているのは黒バンの進行先。
そう、そこに立っているのだ。白い悪魔が。
悪魔がスイッチを、入れた。
佐天「あぶなっ──」
佐天「──あ、あれ?車が……『止まってる』……?」
番外個体「ふーん、器用だねえ」
一方通行は単純に反射するのではなく、徐々に車を減速させることで中の初春にダメージがないように車を停止させたのだ。
一方通行「オイ、中の二人。怪我したくなかったら抵抗しないで出てくるンだな」
不良G「ひっ!?」
不良F「分かったから待ってくれ!攻撃タンマ!」
慌てて二人は黒バンから降りた。
第一位の顔は世間的にはあまり知られていないが、『裏』、もしくは『裏』と呼ぶには浅い所あっても、そういった世界では彼はは有名である。かつて第一位を討ち取って学園都市の頂点に立つ、などといった無謀な試みが流行った頃にネットを通して広まったのだ。
どんなに馬鹿でも、この状況で自分たち程度がレベル4相当の電気使いと学園都市第一位に勝てるなどと思うはずがない。
こんな怪物達にやられるぐらいなら警備員(アンチスキル)に捕まったほうがましだと両手を上げたのだった。
* * *
番外個体「中の娘大丈夫だった?」
一方通行「ああ、スタンガンで気絶させられてるうみてェだが、呼吸はしてるし目立った外傷はねェな」
一方通行は気絶している初春を車から降ろし、近くのベンチに寝かせた。
すぐアンチスキルが到着し(一方通行が呼んだ黄泉川達)不良達はご用となった。初春は一応病院で診てもらうことになり救急車で運ばれることになった。
黄泉川「ご苦労さんじゃん。打ち止めと芳川が家で待ってるからとっとと帰って昼ごはん食べて来るじゃん」
一方通行「はいはい、ンじゃあ行くぞ」
番外個体「うーい」
不良たちの引渡しも完了したので一方通行達はマンションの方へと歩き出した。
佐天「あ、あの!」
一方通行「あン?」
佐天「そちらの方って、御坂さんの姉妹か何かなんですか?」
番外個体「へ?……あ、あ~いや、えっと」
佐天「顔も似てるし、同じ電気使いですし、姉妹でなくとも親戚かな~って」
一方通行(チッ、あの女(第三位)の知り合いかよメンドクセェ……)
佐天はじっと番外個体の顔を覗き込む。御坂美琴を知ってる人ならば、必ず彼女と同じように思うことだろう。
親戚のように見えるのも当然。なんせ同じDNAを持っているのだから。
番外個体(こ、これは困った……。面倒なことになるから第三位の知り合いには遭遇しないように心掛けてたんだけど)
一方通行(オイ……どォすンだ?)
番外個体(どうするったって、『美琴おねーさまのクローンですテヘッ☆』なんて言うわけにはいかないでしょ)
一方通行(いいから何とか誤魔化せ)
番外個体(そう言われてもさあ……)
番外個体「ええっとねミサカは……」
佐天「“ミサカ”ってことはやっぱり親戚なんですね!」
番外個体「 /(^o^)\」
一方通行「オイ……」
番外個体「はぁ……、もういいや、取り敢えず従姉妹ってコトで」
佐天「と、取り敢えずってなんですか!?」
番外個体「ではでは、グッバイ!アディオス!じゃーね!にゃははっ!──ホラ、第一位!」
一方通行「メンドくせェ……」カチッ
佐天「あっ──」
ドォッ!
次の瞬間には、一方通行が番外個体を抱えてビルの屋上まで飛び上がってしまっていた。
佐天「むむむむむ……、結局ちゃんと聞けなかった。……しかしこれは調べがいがありますね」
* * *
打ち止め「末っ子ミサカが来ないねって、ミサカはミサカは食事を前にして食べられない生殺しに怒ってみたり」
芳川「ほら、一方通行呼んで来て」
一方通行「めんどくせェ……」
打ち止め「じゃあじゃあミサカが行ってくる!もうお腹すいて待てないんだもん!」
芳川「ダメよラストオーダー。ほら、あなたが行きなさいってば」
一方通行「……チッ」
一方通行は立ち上がると廊下の突き当りの番外個体の部屋に向かう。
番外個体『んくっ……、あぁっ気持ちいい……。んあぁっ……!』
一方通行「ごッ飯の時間ですよォォォォォッ!」
番外個体「わひゃぁっ!?ノ、ノックぐらいしてくんない!?」
一方通行「帰ってきて数分で何やってンだオマエは。どンだけ盛ってンだよ」
番外個体「だってあれから一回も相手してくんないじゃーん!」
一方通行「知るか、オレは忙しいンだよ。ってか見たことねェおもちゃも増えてるみたいだが?」
番外個体「Amaz○nで買った」
一方通行「なンで学園都市で大人のおもちゃが買えンだよ」
番外個体「教員用でしょ」
一方通行「……あァ、うちの奴らみたいな独り身用「何か言ったじゃん?」なンでもねェよ」
番外個体「?どうしたの急に」
一方通行「イヤ……何か聞こえた気がした」
一方通行「あとよォ、さっきの吉川の反応的に、オマエ、自慰行為バレバレみたいだから気を付けンだなァ」
番外個体「嘘ぉ!?」
一方通行「あれは気づいてるなァ。いいからとっととメシ食うぞ。さっきからクソガキがうるさいンだよ」
番外個体(第一位呼びながらやってんのバレてないよね第一位呼びながらやってんのバレてないよね第一位呼びながらやってんのバレてないよねっ!?)
芳川「……ふふっ、バレバレよ」
打ち止め「?」
番外個体「にゃはっ☆やっと届いたかあ……!」
番外個体はクロネコYAMAT○が届けたAMAZ○Nの箱を自室で開封していた。
番外個体「学園都市の技術の粋を集めて作った、超小型にして超強力モーターを使用した赤外線リモコン式ローター──世紀末帝王HAMADURAっ!」
本来は備え付けのリモコンで操作するものだが、番外個体が、バチリ、と能力を使うと手の中の小さなローターが勢いよく振動した。
番外個体「おお~、予想以上の振動。……うひひっ、それじゃあ早速……」
番外個体は自分の指をしゃぶって唾液で濡らすと、寝巻きの中に手を入れてさらに下着の中へと手を侵入させる。
番外個体「んっ……」
しばらく大陰唇などを指でまさぐってから、大分“ならした”ところで中へと指を入れる。
番外個体「んあっ……」
思わず甘い声が漏れるがそれをなるべく抑える。
同居人三人が不在といえど、マンション住まいのため、壁や天井の向こうは他人の住居だ。『この間のこと』が会ったあとに、上の階に住んでいるおばさんとゴミステーションであった時に妙に生暖かい笑みを向けられたのは気のせいではないはずだ。
じゅぷじゅぷと指を動かすこと十五分弱、番外個体の方がビクンと大きく揺れた。
番外個体「はーっ、はーっ……」
番外個体(ちょっと濡らすだけのつもりだったのにイっちゃったにゃあ……。まあ今日は元気だから大丈夫だけど……)
ベッドの上に転がしてあったローターを手にとって、下着の中へと入れる。そして自分の駅で濡れた膣の中へとゆっくりと押し込んでいく。
番外個体(ふぅ……、第一位の肉棒もよかったけど、無機質なものが侵入する感覚もやっぱりキモチイイんだなこれが)
そして恐る恐る能力を使って電気信号を送る。次の瞬間──
番外個体「っ!!」ビクンッ
体を大きくのけぞらせ、ガクリ、とベッドに倒れ込む。
番外個体「ふぅっ、ふぅっ……、こりゃあホントに予想以上☆」
番外個体(慣れたら外ブラブラしてみよっと)
* * *
番外個体(──他人に見られる趣味はないケド、バレるかバレないかの瀬戸際ってのは楽しいもんだね)
番外個体は学園都市の市街を一人で歩いていた。もちろん先程のローターを入れたまま。
番外個体(とは言ってももう一回イってるし飽きてきたかな~……。お腹も空いたしどっか店はいるか……)
そこで取り敢えず目に入ったファミレスへと入ることにした。もちろん入店前にローターの電源は切って。
* * *
麦野「──遅い……!絹旗と滝壺はともかくとして……、バツゲームだって呼び出した浜面が遅いってのはどぉいうことだんだよクソが……!」
ポーカーで浜面にまさかのボロ負けをした麦野たちは、ファミレスで浜面に奉仕をするというバツゲームをすることになったのだ。
しかし、時間になっても麦野以外の三人は現れなかった。絹旗と滝壺は別にいいのだが、浜面は自分で指定した時間になってもファミレスにやってこないのだ。
麦野(こりゃあ遅れたバツと引き換えにバツゲームなしでもいいんじゃねえのか……?)
昼休みの時間帯で割と店内は混んでいたが、その怒れる美女の圧倒的オーラにほかの客は近くに座り難く、麦野の周りの席は空席となっていた。
番外個体(ん、あのへんせき空いてるじゃん。ラッキー☆)
番外個体が席に着いたところでその麦野が視界にうつる。
番外個体(ありゃありゃ、なんだか知らないけど、大変お怒りの様子で。男絡みかなんかかにゃ~)ニヤニヤ
麦野「……オイテメエ、何見てやがんだ」
番外個体「ん?ミサカのこと?」
麦野「そうだテメエだよ──って、……あ?“ミサカ”だと?」
番外個体「あれあれ?おねーたまのお友達?」
麦野「友達じゃねーよ。まあ知り合いではあるけどな。……それで?オマエはあの例の“欠陥電気(レディオノイズ)”とかいうのの関係か?」
番外個体「なぁんだ、おねーたま“達”のことまで知ってるんだ」
麦野「……どういう事だ?」
番外個体「アナタも相当な暗部の関係者ってわけか……。あ、正面座っていい?」
麦野「……勝手にしな」
番外個体「よっこいせーっと」
麦野「……それで?さっきの“おねーたま達”ってのはどういう意味だ?オマエも“姉妹達(シスターズ)”ってやつの一人じゃねえのか?」
番外個体「まあ同じクローンであることには変わらないんだけど、ミサカは絶対能力進化(レベル6シフト)計画のために造られた個体じゃない。──シリアルナンバー外の個体、だから番外個体(ミサカワースト)なんて呼ばれ方をしてるけど」
麦野「なるほど?それで、お前は何のために造られたの?まさか今更軍事用の量産型クローンとか言ってるわけじゃねえよな」
番外個体「もちろん違うよ?ミサカの造られた理由は──学園都市第一位、一方通行(アクセラレータ)を殺すため」
麦野「あん?オリジナルでも手も足も出なかった第一位にクローンなんかぶつけて、上はそれで勝てるとでも思ったのか?」
番外個体「ぎゃは☆まあそう思うのもわかるけど、勝機がなかったわけじゃない。あの人の弱みに付け込んだってだけさ」
麦野「無敵の第一位サマに弱点なんかあんのか?」
番外個体「まあね。──それは、第一位はミサカ達を殺せないってこと」
麦野「あ?今までクソみたいに殺してきたんじゃねえのか?」
番外個体「まあ、色々あってね。この間の第三次世界大戦の時も、とあるクローンを助けるためにロシアまで来たんだからさ。その時が、御坂と第一位の初対面だったんだけど。……まあ見事にミサカも救われてしまったよ」
麦野「なんだ、第一位もロシアに来てたのか?」
番外個体「あれ?むぎのんもいたの?」
麦野「……私まだ名乗ってなくねえか?」
番外個体「いまちょっとミサカネットワークから検索かけたから」
麦野「便利だなオイ……、……まあそれはいい」
麦野「それにしたってわざわざ一人の女のためにロシアまで行く馬鹿が二人もいるとは思わなかったわ」
番外個体「むぎのんの知り合いにもいたの?」
麦野「……まあね」
* * *
番外個体「ぎゃははっ、まったく、ぶっ倒されるついでに救われるなんて、似た者同士だねえ!」
麦野「ああまったくだわ。──つくづく男運の“悪い”」
その時、新たに三人の客が入店してきた。
浜面「おお、悪い、遅れた」
麦野「チッ、おせえぞボケが。ビームかましてあげようかあ?」
浜面「いや、絹旗と滝壺に車で向いに来てくれって言われてな──って、お前……!」
番外個体「やっほー久々だね」
麦野「あん?知り合いだったのか?」
浜面「ん、ああちょっとな」
滝壺「……はまづら、この女(ひと)、誰?」
浜面「滝壺さん?お顔が怖いのですが……」
絹旗「浜面には超不釣合なナイスバディーのお姉さんですけど、どういうふうに知り合ったんですか?」
麦野「浜面ァ……、洗いざらい吐いてもらおうかァ?」
浜面「あ、あれぇ?バツゲームを受ける立場が逆転してません?ちょっと、ワーストさん!助けて!」
番外個体「あ、ミサカ用事思い出したから帰るね」
浜面「え、待って!へるぷm」
ゴンガンドンバンガンギン ドンガングジャ!!!!!! と。 直後に、原始的な暴力の音がした。
番外個体「さあて、一旦家に戻るか」
この数時間後、番外個体と麦野一行は病院で再開することになる。
それから番外個体は、自分がなぜ生み出されたのかということ、第三次世界で一方通行が上条当麻と戦ったこと、一方通行と戦い敗れ、そして自分を救ってくれたこと、今黄泉川達と一緒に暮らしていることなどを話した。
上条「へえ、黄泉川先生と暮らしているのか」
番外個体「知り合い?」
上条「ああ、クラスは違うけど、学校の先生だ」
浜面「俺も昔だいぶお世話になったな……。……補導的な意味で」
美琴「それにしてもアンタまでロシアにいたとは知らなかったわ」
一方通行「それはこっちのセリフだな。……大方そこの三下のケツでも追っかけに行ったのかァ?」ククッ
美琴「なっ!ばばばばばば馬鹿じゃないの!?ななな何で私がっ!」
麦野「図星かよ」
佐天「慌てる御坂さん、可愛ええのぅ」
初春「ああでもやっぱり御坂さん、第三次世界中はロシアにいたんですね」
美琴「……“やっぱり”?」
初春「あっ……」
黒子「……初春……アナタねえ……」
麦野「ぎゃははははっ!こりゃぁ確かに隠しててもいつかはバレたかもしれないなあ!」
美琴「はあ……、初春さん。わかってると思うけど、知ったら危ない情報とかもあるんだから、あんまり危険なことはしないでね?」
初春「は、はい、以後気をつけます……」
浜面「ロシアといえば俺と滝壺……あと麦野も行ってたんだけどな」
絹旗「え、なんですかそれ、超初耳です」
美琴「そういえばアンタってこの馬鹿とどういう経緯で知り合ったの?」
上条「あの、馬鹿って私のことでせうか?」
番外個体「そういえばハワイでも同行したけど、お互いのことを詳しく話したことはなかったね」
浜面「そうだな……そしたらまず美琴ちゃんに謝らなきゃなれねえことがあんだ」
美琴「え、私に?」
浜面「ああ、こればっかしは許してもらえないかもしれねえけど、こういう機会だから話しておいたほうがいいと思ってさ」
美琴「……いいわよ、言ってみなさい」
浜面「俺が元スキルアウトって話はしたと思うんだが、色々あってスキルアウトのグループの存続が困難な状況になってさ、そこに舞い込んだ高報酬の依頼に思わず食いついたんだけどよ……」
浜面「……人攫いの依頼だったんだが、そのターゲットってのが、美琴ちゃん、お前の母親だったんだ」
美琴「……!」
浜面「あの時、大将が俺をぶん殴ってくれなかったら、取り返しのつかないことになっていたと思う。もちろん俺のしたこと自体がもう取り返しのつかないことなんだが、それでも謝罪しておきたかったんだ。スマン……!」
浜面が深く頭を下げる。
美琴から電撃か、拳かが飛んでくるかと身構えたが、いつまでたってもその様子はない。
浜面が深く頭を下げる。
美琴から電撃か、拳かが飛んでくるかと身構えたが、いつまでたってもその様子はない。
美琴「……はあ、まあ、お母さんに実害がなかったならいいわ。それに説教ならこの馬鹿から十分されたでしょ?」
浜面「……ははっ、まあな」
一方通行「ククッ、だろうなァ」
上条「な、なんだよ……。……ったく、なんていうか今見ても、変なメンバーが集まってんな。何でこんなことになったんだ?」
美琴「偶然よ偶然。私だってこんなメンバーとファミレスで、病院でと次々と鉢あわせるなんて思わなかったわよ」
上条「ファミレス?アクセラレータが?」
美琴「いや、第四位一行の方ね」
上条「え、あんまりファミレスとか行きそうなオーラじゃないんだが。どんな感じ出会ったんんだ?」
美琴「ああ、えっとね──」
* * *
──五時間前
黒子「──ではつまり、お姉さまに似た電気使いの方に助けていただいた、と」
初春「私は気絶していたので見ていないんですけどね」
佐天「自分のこと“ミサカ”って言ってたし、絶対親戚だと思うんだよなあ」
黒子「ですが、お姉さまにご姉妹がいらっしゃるなんて聞いたことありませんがね」
初春「ですね~。お母さんは何度か学園都市に来ているみたいですけど」
佐天「もし親戚がいるなら紹介してくれてもいいのにね」
初春「一度も親戚関連の話題に触れたことがなかったから、単に話してなかったこともあるとは思いますけど」
黒子「──もしくは何か話せない理由がある、ということも考えられますわ」
初春「あ……」
シスターズの一連の騒動の時、美琴は自分一人の責任であって周りは巻き込めないと、黒子たちにも理由も話さず一人奔走して時があった。
もちろん黒子たちを関わらせなかったのは正解だが、三人は『自分たちは頼ってもらえない』という意識を多少なりとも持ってしまった。
美琴がハワイに行っていた少し前、世の中が第三次世界大戦という学園都市と“表面上は”反学園都市派の国々との戦争が行われていた時、御坂美琴は常盤台の学生寮から姿を消していた。
学園都市内の方が外より安全であるという理由から全学生の都市外への移動が完全制限されていたため実家に帰ったという可能性は低い。もし学園都市の外にいるとすれば、何らかの目的があって、自分の意志で外にいるということになる。
第三次世界大戦中の美琴の足取りがどうしても気になった三人は、違法と分かりながらも初春の力で学園都市のデータベースにクラックした。
しかし流石はレベル5の情報、美琴以上とされる初春の技術を持ってしてもデータの開示には一苦労で、さらに情報自体が膨大な量のため、手に入れた情報から美琴の足取りを調べるにおいてプラスになるものを見つけ出すことは出来なかった。たまに見かける『欠陥電気(レディオノイズ)計画』という単語も気になりはしたが、深く調べている余裕はなかった。
あまり成果が上がらない中で、捜査の方針を変え、“学園都市の外に出る時に痕跡を残す場所”のデータを集中的に当たることにした。
そこで目をつけたのが第二十三学区。そこに直接美琴がいたという足跡は残されてはいなかったが、一つ気になるものがあった。
『試験飛行場内のパスが物理損傷なしにオールダウン』
『超音速爆撃機HsB-02が無許可発進。ロシア上空で消息を断つ』
どう見てもテロリストか何かの侵入があったことには間違いないが、だとすればその正体はただものではない。
第二十三学区といえば『窓のないビル』の次に重要な施設といってもいい、ツリーダイアグラムとも大きく関わる航空・宇宙研究開発分野の施設で専有されている。その為セキュリティもトップクラスで突破するのは困難である。
そのセキュリティをダウンさせ、尚かつ最新爆撃機を乗っ取ってロシア上空まで飛ばすことができる人間が果たしてどれだけいるのだろうか。
初春「この間行ったらしいハワイに関しても不明な点が多いですしね……」
佐天「それでも、今回だって帰ってきてくれたんだから、私達は御坂さんを信じるしかないんですよ」
黒子「……そうですわね。きっとお姉さまなら、止めたって行ってしまいますもの────わたくし達を信じているからこそ、『そっちは任せたわよ』なんて仰ったりして」
初春「……ふふっ、そうですね」
佐天「それでその御坂さんは?」
現在三人はとあるファミレスいる。美琴を含め四人で待ち合わせしていたのだが待ち合わせ時間から三十分経っても美琴は現れない。
黒子「ああ、それならば先程連絡がありましたわ。初春が特に外傷もなくすぐに病院を出たことを知らされてなかったようで、行き違いになってしまったようですわ」
佐天「なるほど、あの病院ここから遠いもんね。それじゃあしばらくドリンクバーで時間潰しますか」
初春「私追加行ってきますよ」
佐天「あ、私も行く」
初春「白井さんは何にしますか?」
黒子「それじゃアイスティーでお願いしますわ」
* * *
ドリンクバーには先客がおり、その後ろでしばらく待つこととなった。
初春(うわあ、美人さんの集団ですねえ)
佐天(だねえ。うちらと同い年ぐらいの茶髪の娘は太ももが眩しいし、ピンクのジャージの娘も特に着飾ってないのに小動物的可愛さがあるし、真ん中のお姉さんはナイスバディーすぎるし!)ムッハー
初春(佐天さん佐天さん!声が大きいです!)
佐天(とは言ってもさ、これほどの美女軍団をこの目に焼き付けない手はないって)
初春(佐天さん、オジサンくさいですよ……)
* * *
絹旗「うぅぅ、超悔しいです!浜面なんかにドリンクバーの往復させられるなんて!」
滝壺「……バツゲームだから仕方がない」
麦野「なんであいつあんなにポーカー強いんだよ。アホ面すぎて逆に読み合いできなかったわ」
絹旗「明日、リベンジマッチやりますよ!このまま超浜面勝ちっ放しなのは許せないですから」
麦野「オイ、そういやあいつは何持ってこいって言ってた?」
絹旗「ん~っと、カフェラテだったと思いますが」
麦野「チッ、オシャレぶりやがって。滝壺、そこの味噌汁カフェラテに混ぜろ」
滝壺「……了解」
絹旗「滝壺さんは浜面が味噌汁入りカフェラテくらってもいいんですか?」
滝壺「私ははまづらのいろんな表情を見てみたい。笑った顔も、怒った顔も……泣いた顔も……ふふっ」
絹旗「フレメアが現れてからなんだか滝壺さんが超怖くなっきましたね……」
麦野「フレメアにはメロンソーダでいいか──っと」ガチャーン
佐天「わわっ、す、すいません!」
麦野「いや、こっちの不注意だったわ。ガラスで怪我してない?」
佐天「い、いえ、大丈夫です」
初春「もー、佐天さんがボーッとしてるからですよ」
絹旗「まあまあ、お互いの超不注意ってことで。店員さんも来てくれたし取り敢えず席の方もどりましょう。……どうしたんですか滝壺さん?」
滝壺「……ラテの濁りならコーンスープ入れても気がつかないかも」
絹旗「」
* * *
麦野「何だ結局隣の席か」
浜面「おーおーやっと戻ったか。ん、そいつらは友達か?」
絹旗「いえ、ドリンクバーで会ったばっかりです」
佐天「佐天涙子です!」
初春「初春飾利です。初めまして」
浜面「おお、俺は浜面仕上ってんだ。よろしくな」
初春「あ、はい」
初春(金髪に染めてて怖い人かと思ったけどそうでもないみたいですね)
ガタンッ
美琴「な、なんであんたらがここにいるのよ……!」
佐天「あれ、御坂さん来てたんですか」
美琴「あ、うん、遅れてごめん────それで、何であんたらがここにいるのよ」
美琴がキッと麦の方を睨むとが、それに対して麦野は軽く笑っただけだった。
麦野「私たちがファミレスにいたら悪いかしら」
美琴「そういうことじゃないわよ。なんで佐天さんたちと一緒にいるのかって聞いてんのよ。返答によってはただじゃおかないわよ」
麦野「そこでたまたま会っただけだっての」
佐天(なんか知り合いだったみたいだね)
初春(そうですね。ただ、お友達って感じじゃなさそうですけど)
黒子「……あら、確かあなたはあの時の」
麦野「ん?あん時のツインテールジャッジメントじゃねえか。っていうかよく私の顔なんて一々覚えてたな」
黒子「そりゃ忘れもしませんわ。───あの時お姉さまの小ぶりな胸を馬鹿にしてくれやがいましてっ!今日という今日は決着を──って、あの時の金髪野郎がいませんわね」
麦野「……」
以前別のファミレスで美琴・黒子ペアと麦野・フレンダペアが遭遇し、お互いのリーダーの胸のことで口論(美琴、麦野は全く関与せず)を繰り広げたということがあった。
黒子「あんなチンチクリンわたくしの手にかかれば一瞬で──」
麦野「──オォイ」ギロリ
一同「──!!」
さっきまでは普通に話していた麦野の声が急にドスの効いたものに変わる。それを初めて聞く佐天や初春や黒子はビクリと肩を震わせ、横で見ていた浜面や絹旗は「マズい」と麦野を止めるべく身構えた。
麦野「──そりゃぁよォ、忘れようなんて思っちゃいねえさ。忘れちゃならねえ、自分の墓まで持っていくことさ」
麦野「ただなぁ、故意とか、そうじゃねえとか関係ねえ。人のワタまで届くような深い傷を抉り返してぶちまけようとしたんだぞ?────手前の腹もかっ裂いてやらねえと気がすまなくなるってもんだろうがぁ!」
麦野が黒子を睨んでゆらりと立ち上がる。
黒子が一歩後ずさりながらも、足に巻いてある鉄心入りのバックルに意識を集中させる。
そしてその黒子を制して美琴が一歩前に出る。
第三位と第四位、二度目の死闘が始まろうとしたその時──
フレメア「にゃあ、むぎの、メロンソーダの上にアイスを乗っけて、大体フロートにして欲しい」
浜面「お、おいコラ、フレメア!」
フレメア「だってアイスも食べたいんだもん!にゃあにゃあ!」
浜面「今そういう感じじゃないの!分かる!?超シリアスシーンなわけ!」
フレメア「だってむぎの暇なんでしょ?さっきから怒った顔してるけど、大体怒ったフリの顔だよ」
フレメア「大体面倒くさくなったから理由つけて帰ろうとしただけだよ、にゃあ」
浜面「フレメア馬鹿っ!んなこと言ったら殺されるぞ!おい麦野、子供だから大目に…………麦野?」
麦野「……」
浜面「……あれ、図星でした?」
麦野「違う」キュガッ ゴッ! ジュワ~…
浜面「うおおぉ!?バカお前!店ん中で能力ぶっぱなしてんじゃねえ!」
絹旗「十歳児に図星突かれてキレるなんて、なかなか麦野も可愛くなりましたね──なんでもないですすいませんだからその能力を引っ込めてください超お願いしますっ!」ローリング ゴロン ジュワッ!
絹旗「あぶねー!あぶねー超あぶねーです麦野!」
麦野「最近あんたら私のコト舐めすぎじゃないかにゃ~?」
麦野の後ろに『ゴゴゴゴゴ……』という効果音が見える気がする。そして『新手のスタ○ド使いかァァァッ!』とか言ってパンチを繰り出してきそうである。実際に繰り出されるのは魔法少女も驚きのマジカルビームなのだが。
初春「な、なんか、シリアスな感じから急にムードが変わりましたね」
佐天「う~ん、私にもよくわからん……」
絹旗「ま、まあまあ!フレメアのお蔭で結果として超面倒くさい事態は避けられたんですし!レベル5同士のドンパチをこんなところでやったら超跡形も残らなかったと思いますよ!?」
麦野「まあそうだけどよ……」
麦野はやっと気を落ち着けて自分の席に戻った。それを見て安心した浜面や絹旗も続いて席に戻る。自体を収拾させた本人、フレメアは浜面の膝の上のポジションを確保すると、足をばたつかせて「うにゃー!フロートはまだなの!?」叫んでいた。その正面から滝壺の刺さるような視線が向けられているのに気がつかずに。
さて一度収束したように見えた騒ぎだが、また一方でがやがやと騒がしくなり始めた。
黒子「レベル5同士、ですって……?」
初春「ってことは麦野さんって……」
佐天「レベル5!?」
麦野「ん?ああ、じゃあ改めて自己紹介するか。私は麦野沈利。学園都市第四位のレベル5。能力名は『原子崩し(メルトダウナー)』。一応順位は四位だが、リミット外しゃあそこの第三位なんて瞬殺できるけどね」
美琴「ふ、ふ~ん?まあこの間一戦やった時には私の勝ちだったけどね」ドヤッ
麦野「あれは実力勝負じゃねえだろうがぁぁぁっ!」
絹旗「どうどう、落ち着いてください麦野。あ、私は絹旗最愛、最も愛する、で“さいあい”です。『能力は窒素装甲(オフェンスアーマー)』。レベルは4です」
滝壺「……滝壺理后。レベル4の『能力追跡(AIMストーカー)』。よろしく」
佐天「レ、レベル4が二人にレベル5ですか!?すごいですね!」
初春「ってことは、そちらの方も高位能力者の方なんでしょうか?」
浜面「俺か?いやいや、俺はただの無能力者だ」
佐天「へ、そうなんですか?それなら私と一緒んですね」
浜面「お、そうか、無能能力者同士よろしくな」
佐天「……ん~、無能力者って言い方は私あんまり好きじゃないんです。だって自分の可能性を否定してるみたいじゃないですか。だから私は自分のことをレベル0っていうようにしているんです。いつかこの数字を上げれるように頑張ろうって意味も込めて」
初春「佐天さん……」
浜面「……そう言われりゃその通りだな。……ったく自分に絶望してスキルアウトになった俺とは大違いだな」
佐天「え、浜面さんスキルアウトだったんですか?」
浜面「ま~な。ま、色々あって今はこいつらとつるんでいるけどな」
絹旗「つるんでいる?浜面ごときが思い上がりも超甚だしいですね。超浜面は私たちの下僕に決まってるじゃないですか。主従関係ですよ」
黒子「あの~皆さん、お話は食事を頼んでからにしませんこと?」
美琴「そうね、私も少しお腹が空いたわ」
浜面「ん、そうすっか」
フレメア「うにゃああああ!フロートは大体忘れられてる感じ!?」
こうして、思いもよらない奇妙な組み合わせで食事が開始されたのだった。
* * *
番外個体「なになに出かけんの?」
一方通行「病院だよ。電極修理してもらわなきゃなンねェだろォが。前みたいに暴走したらどォすんだ?」
番外個体「あ、それならミサカも行く行く」
一方通行「あァン?邪魔だついてくンな」
番外個体「いいじゃんいいじゃん。美女とのデートだよ?うれしい?にゃはは☆」
一方通行「……うぜェ……」
* * *
皆が集まって2時間少々、さすが女子(+約一名、馬面)といったところか、全く話題が尽きることなく話し続けていた。
美琴たちが加わったのをいい口実に浜面にドリンクバー往復係を任せると、学園都市で最も恐ろしい女の子(笑)二人を中心とした女子会が華を咲かせていた。
ちなみに女子会が始まって早々、疲れたのかフレメアは滝壺の膝枕で眠り始めた。普段の半ば狂気的な嫉妬はなく、時々フレメアの頭を撫でている滝壺の光景がなんとも微笑ましかった。
佐天「えっ、あそこも超名門ですよね!すごいですね!」
麦野「あ~、名門名門たって、実際たいしたことないもんよ?天下の常盤台だってそこの二人を見れば実態がわかるってもんでしょ」
美琴「うっさいわね!……いや、自分で言ってて悲しくなるけど、私たち以外は割と“普通にお嬢様”ばっかりよ?」
黒子「お姉さまも大概だと思いますけどね……。主に金銭感覚で」
美琴「ちょ、黒子!そんなことないわよ!」
黒子「それじゃあお姉さま、今朝は寮を早く出発なさったので外食だと思いますが、いくらかけたんですの?」
美琴「そんな大したことないわよ。ん~……せんにひゃ──」
絹旗・佐天「はいアウトーッ!!」ガタッ
絹旗と佐天の身を乗り出したツッコミ、そして他のメンバーの若干冷めた目線が美琴に向けられる。
美琴「え?え?」
佐天「御坂さん、さすがに朝食で千円超はないです!てか晩御飯でもないです!」
絹旗「ぐわー!これだからレベル5は!それとも生まれ持った家柄の違いからですか!?超不公平です~~!」
滝壺「みさかはむぎのに負けないぐらいお嬢様なんだね」
初春「あ、じゃあ麦野さんの朝食はなんだったんですか?」
麦野「え?シャケ弁」
初春・佐天「……」
黒子「……お姉さまの圧勝ですわ。……まあ、不名誉な勝利ですけど……。なんですの“シャケ”弁って。お嬢様なのに質素な食事と訛りで新たなファン層の開拓でもするつもりですの?」
美琴「ちょっと黒子、どういう意味よ!」
麦野「意味わかんねえし、それに“サケ弁”よりは語呂がいいからいいだろうが」
麦野「大体金は美容とファッショにつぎ込む派だからな。食事は栄養取れりゃいいと思う程度だし」
そう言った麦野を、黒子・初春・佐天の三人は頭から足までざっと見る。
そして次に美琴の方を見る。常盤台生は原則外出中でも制服着用のため比較にならない────ので、黒子がスカートの中を見て「ふぅう」と一息してから、
黒子「ジャッジですの」
佐天・初春「ごくり……」
黒子「────お、お姉さまの完敗ですわ……!」クヤシナミダッ
佐天・初春「あ~……」
美琴「く・ろ・こ?」バチバチッ
黒子「大丈夫ですの!お姉さまのためにこれから毎日服から下着のコーデまで一晩中一緒に考えて差し上げますわっ────あばばばばっ!」ビリビリビリッ
美琴「どさくさに紛れて何やってんだぁぁぁ!」バリバリバリ
黒子「あぁんっ!お姉さまの電撃がっ!黒子を新たな官能の境地へっ!これは、まさにっ──ヘヴンッ!」ビクーン
初春「御坂さん御坂さん、お店の中ですから少し抑えて……」
美琴「はーっ!はーっ!……はぁ……、分かってる。……黒子?次はないからね?」
黒子「りょ、了解ですわ……」
浜面「おーおー、何かすごいことになってんな。ドリンクお待たせ」
絹旗「超遅いです浜面、たかが八人分に誰だけ時間かけてんですか?」
浜面「いや、俺も入れて九人分な。大体こんな量何度も往復させられたら疲れるに決まってんだろうが」
絹旗「はあ……、超根性なしですね」
佐天「あ、次から私手伝いましょうか?」
滝壺「……それなら私も」
浜面「ああ、いやいいよ別に。慣れてっからこういうの」
「やっと座れるぜ」と浜面は席に着く。
席の組み合わせとしては、四人がけテーブルを二つ繋げて、絹旗・滝壺・佐天・初春・フレメア・浜面・黒子が座っており、一間隔置いた席に麦野と美琴が座っている。
絹旗「何か浜面、佐天さんや滝壺さんに対する態度と、私や麦野への態度が超違いすぎません?」
浜面「そりゃあ、佐天ちゃんや初春ちゃんは守ってあげたい感じだし──もちろん滝壺は守ってやらなきゃならないけどよ、お前や麦野はそこらの男じゃ敵わないぐらい強いわけだし別に──」
絹旗「ほほう?」ゴキリ
麦野「へぇ?」キュィィィン
浜面「あ、嘘です、何でもありません」
初春「ふふっ」
浜面「あ?何だよ?」
初春「いえ、浜面さん、最初の印象とだいぶ違ったので。金髪ですし、元スキルアウトって聞いた時にはやっぱり怖い人なのかなあって思ったんですけど、面白いですし、文句言いながらもちゃんとドリンク運んだりしていい人だなあと思って」
佐天「あ、それ私も思った」
絹旗「な、何なんですかこの浜面が黒髪っ娘にモテるの法則は!?」
麦野「チッ」
滝壺「……はまづら?」
浜面「え、滝壺さ~ん?違いますよ?モテてるとかそんなことあるわけないじゃないですか」
滝壺「……あとで話があるから」
浜面「/(^o^)\」
* * *
美琴「仲良さそうにやってるわね」
麦野「ふん、うぜえな」
美琴「混ざりたいな混ざってくればいいじゃない」
麦野「あぁ?誰がんなこと言った?大体、テメェが用があるからこっちに分かれて座ったんだろ?」
美琴「……まあね」
美琴はミルクティーを一杯飲むと視線を麦野に戻す。
美琴「さっきの話を蒸し返すつもりはないわ。ただ一つ答えて。……アンタらの言う『闇』っていうのはまだこの学園都市にあるの?」
麦野「……研究所の時に言ったよなぁ?テメェはな、たかがとある一つの研究に触れた程度の“一般人”なんだよ。先を知れば引き返せなくなるぞ?あいつらを巻き込む事態になったら、テメェは責任取れんのか?」
麦野は視線を佐天たちの方に向ける。美琴と同じ『表』の人間たちの方へと。
美琴「そうね、確かに私達は一般人よ。……でもね、私はあの実験に、黒子も樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の残骸(レムナント)を追う事件に巻き込んでしまったし、佐天さんや初春は幻想御手(レベルアッパー)事件に巻き込まれたわ。この都市にいる以上、自分達から関わらなくても、向こうから来ることだってある。だから、攻めるんじゃなくて守りに徹するのよ。そのために敵を知っておくことも必要だと思う」
麦野「……あのなあ、やっぱり甘いわテメェは。“その程度”で闇に関わったと思っている時点で甘すぎる。──まあ教えてやるよ。闇は解体されたことになっている。ただ、この都市自体が闇みたいなもんだ、どうせまたすぐ復活するさ」
美琴「……」
麦野「──だから私らは、それを片っ端からぶっ潰してく。上の便利な道具(アイテム)のフリをしてなぁ。──くくっ、どっかの闇のお節介野郎の助言でね、優等生であることはやめたんだよ────二度と“フレンダを生み出さないためにな”。さっき言ったでしょ?──これは墓場まで持っていく使命だから」
美琴「……そう、分かったわ」
これ以上は聞かないし、聞けない。
今の言葉で確信した。あのフレンダという少女はもういないのだ。
生きているか、死んでいるかは問題ではない。彼女たちの日常に、当たり前のようにいた一人の少女は、もうそこにはいないのだ。
麦野「はあ、せっかくメシ食いに来てんだから暗い空気作ってんじゃねえよ。向こう混ざって何かオーダーすんぞ」
美琴「ん、そうね」
そう言って麦野が席を立って机を浜面たちとくっつけようとした瞬間、
チャラ男A「ってぇなコラ」
チャラ男B「おいおい何してんだよ、リーダーの服コーヒーで汚れちまったんですけどぉ?」
チャラ男C「お、君たち可愛いじゃん。そんな冴えないのと一緒にいないで俺たちと一緒にお茶しない?」
絹旗「な、こんな超テンプレナンパ野郎がまだこのご時世に生き残っていたなんて……!浜面が超さえないのは否定できませんが!」
浜面「って、おい!」
チャラ男B「へへっ、邪魔すんじゃねえぞチンピラ」
浜面(どっちがチンピラだよ……。って、マズイなこりゃ。店内で麦野とかに暴れられると非常に困る。……ってかなんかこの感じ前にも──)
麦野「きゃ~、浜面~。助けて、怖い~」キャピッ
絹旗「私たち超襲われそうになってるぅ~」キャピッ
滝壺「ぐーすかぴー」
フレメア「ぐーぐー」
浜面の両脇から麦野と絹旗がわざとらしい声と共に抱きつく。
浜面「あー!やっぱりこのパターンかあああっ!」
チャラ男A「おーおー見せつけてくれちゃってよぉ!」
チャラ男C「喧嘩うってのかゴラァ!」
チャラ男の一人が浜面に掴みかかる。麦野と絹旗は浜面から手をはなして、してやったりとクスクスと笑っている。
佐天「こ、これ止めたほうがいいんじゃないの?」アセアセ
黒子「そうですわね……」
そう言ってジャッジメントの腕章を取り出そうととした黒子を浜面が手で制す。
浜面「ああ、大丈夫だから。先に店出るから会計しておいてくれないか?後で払うからさ。──ここじゃ店の迷惑になるから外で話をつけようぜ?」
チャラ男B「かっ、女の前だからって格好つけやがって」
黒子「え?ちょっとお待ちになって──」
黒子が止めるまもなく浜面とチャラ男たちは店の外に出ていく。その後を、まだ半目で寝ぼけた滝壺とフレメアをそれぞれ麦野と絹旗が手を引いて付いていった。
初春「白井さん、早く追いましょう!」
黒子「そうですわね。ですけどその前に会計をしないと……」
美琴「あ~いいわよ。私がやっとくから」
そう言って美琴が取り出したの何やら漆黒のカード。
初春「……佐天さん。何でしょうかね、あの黒いカード」
佐天「……私たちが一生手に入れることのないカードってことしかわからない」
黒子「……お姉さま、ファミレスの会計でそれは……」
美琴「?ほら、早く追うわよ」
* * *
浜面とチャラ男はファミレスのすぐそばの裏路地に入った。黒子たちが駆けつけると、既に浜面とチャラ男たちは向かい合って臨戦態勢に入っていた。
浜面「ま、この辺でいいだろ」
チャラ男C「三対一で随分と余裕だなあッ!」ブンッ
一人が拳を振りかぶって浜面に襲い掛かる。
大振りで隙だらけの素人の拳。
浜面(そりゃあ俺はプロの格闘家じゃねえけどよ……y○utubeの空手講座見て強くなった気になってるような雑魚とは一緒にされたくないなぁ!)
浜面「脇が空いてんだよ馬鹿!」シュッ
チャラ男C「がふっ!?」ドサッ
浜面「一撃かよ……。お前、喧嘩してんだから腹に力ぐらい入れとけよ……。喧嘩したことねえのか?」
強い弱いという話ではなく最早問題外の相手に浜面は呆れてため息をついた。
残った二人は、一番大柄な一人が一撃でのされて焦っている。
ふと一人が足元の廃材に気がついて、それを拾い上げる。
浜面「いやまあストリートファイトでは武器ってのも定石だけどよ……」
チャラ男A「うおらああぁっ!」ブンッ
男は鉄パイプを縦に横に振るが浜面には当たらない。
浜面「素人が武器持ったところで逆に隙ができるだけだぜ?両手に意識が行き過ぎんだよ……ってのをあのウニ頭野郎との一戦で思い知ったんだよなあ」
浜面は鉄パイプをよけながら、ふとツンツン頭の少年のことを思い出した。
──駒場利徳というリーダーを失ったスキルアウトは、急遽、浜面仕上というリーダーを立てた。
スキルアウト勢の起死回生の手段は“上”からの依頼の人物をさらうことだった。
相手は学園都市の人間ですらない一般人。
そこに正義などなかった。
そんな彼を正してくれたのはあの少年の拳だった。
彼の拳はきっと浜面より劣る。多少喧嘩慣れしてるとはいえ鍛え方が違う。
でも、
彼の拳には浜面以上の重みがあった。確かな芯があった。
浜面「──俺はあいつに、教えてもらったんだよ!本当の拳の使い方ってのをなあ!!」バキッ
チャラ男A「がはっ!!」
鉄パイプを持った男が後ろに二、三回転して動かなくなる。
チャラ男B「ひ、ひいっ!」
浜面「ほら、そいつら連れてもう行けよ」
浜面は残った一人にそう言うと裏路地から出た。
麦野「一人残すなんて甘いんじゃないの~?」
浜面「逆だ逆。ああいうのは意識がちゃんとしたのを残しといた方がちゃんと学習して再発しにくいんだよ」
絹旗「うへぇ、今の浜面主人公臭くて、正直超似合わなすぎてキモいです」
浜面「うるせえな」
佐天「はぁぁぁ、強いんですね」
初春「ですねぇ、凄かったです」
黒子「全く……ジャッジメントの前で堂々と殴り合いなんて少々舐めすぎでは?」
初春「まあまあ、大怪我を負った感じではなかったですし──って、あ!」
美琴「ん?どうしたの初春さん」
初春「びょ、病院に忘れ物してしまいました」
美琴「あ~、私も病院に用あるから一緒にいこっか?」
黒子「むう、二人ですか。わたくしのテレポートでは一緒には運べませんね」
初春「大丈夫ですよ、バスと電車で行きますから」
黒子「しかしそれだと、今からでは時間がかかりすぎるのでは?」
浜面「なんなら俺らが送ってやろうか?俺らもあっち方面に用があるんだが」
麦野「ってか私も病院に用あるわよ。義手のこととかで」
佐天「え!?義手なんですか!?」
麦野「左腕がね。気がつかなかった?右目も義眼だしね」
初春「ぜ、全然」
美琴「……」
佐天・初春(この辺もあんまり詮索しちゃいけないところなんだろうな……)
美琴「……まあ、それはいいとして。送ってくって、車でもあるの?」
浜面「ん、ああそこにな──」
* * *
──病院
黒子「あれ、絶対、未成年・無免許・盗難車両だと思うんですの……」ハァ……
初春「ま、まあまあ」
黒子「まあまあって、初春、自分が何者かお忘れになったの?はあ……、ジャッジメントとして見過ごしてよかったのでしょうか」
佐天「あははっ……まあ、見なかったことにしましょうよ。さて、麦野さんたちも、もう病院の中に行っちゃったし、私たちも初春の忘れも探しに行きましょうよ」
美琴「落し物ならロビーの受付に届いてるかもしれないから行ってみましょうか」
初春「あ、はい、そうしましょうか」
* * *
そして、彼女たちは出会う。
まさに運命の悪戯と言わざるを得ない、最悪のタイミングで。
先に病院に入ったはまづら一行と話をしていたのは──
電極の調整をしに来た一方通行。
ついでに自分のメンテナンスに来た番外個体。
同じくメンテナンスに来ていた打ち止め。
自分の『妹達』に顔を合わせに来た御坂“妹”。
佐天「え、あ、あれって?」
初春「御坂、さん……?」
黒子「お姉さま……どういう事ですの?……さすがに、姉妹です、では通らないですわ……」
美琴「ッ……!アンタら……!」
番外個体「あ、あ~あ」
打ち止め「こ、これは」
御坂妹「言い訳が思いつきません、とミサカは降参のポーズです」
一方通行「……クソッタレが……、面倒ごと増やしてんじゃねえぞ第三位ィ……!」
──出会うべきではなかった。
しかし、ここまで来ては後戻りはできない。
下手な言い訳は余計な詮索を生む。
これは日常の崩壊を意味する、“どちらを取っても”。
ならばせめて真実を伝えよう。
* * *
黒子「お姉さま、覚悟は出来ていますの。真実を教えてくださらないでしょうか」
佐天「御坂さん……」
言い訳はできない。番外個体や打ち止めだけならばまだどうにかなったかもしれないが、ここには『御坂妹』がいる。容姿は全く同じ、そして身につけているのは常盤台の制服。
同じ常盤台生の黒子ならば知っている。常盤台に美琴の親戚はいない。
一方通行「あァ、ちょっといいかァ?」
そこで第一声を放ったのは意外にも一方通行だった。
一方通行「初対面でいきなりこんなこと言うのもアレだがよォ、あンま詮索しないでやってくれるかァ?人には言いたくないことの一つや二つだってあンだろうが」
意外だった。まさかあの一方通行が美琴を庇うようなことを言うとは。
美琴(でも──)
美琴「──いや、話すわ。これ以上嘘は付きたくないから」
麦野「……ついさっきまで関わらせたくない、とか言ってたのに随分と意見が変わるもんだね」
美琴「こうなった以上隠したほうが危ないわ。止めたって“自ら踏み込むことになっちゃうでしょ”?」
麦野「……ま、それもそうね」
冥土帰し「──話があるなら場所を貸すよ?」
美琴「あ……」
いつの間にやらカエル顔の医者が美琴の後ろに立っていた。
冥土帰し「丁度“彼”の病室が空いているから。部屋番号は503だから行っておいで」
美琴「……ありがとうございます」
浜面「……俺らって残ったほうがいいよな、これ」
冥土帰し「いや、“彼”も関わる話だから君たちも行くといい。詳しく知らない部分も多いだろうしね」
浜面「……わかった。……ただ、フレメアには聞かせたくねえ。どこかで預かっててくれないか」
冥土帰し「分かった。手の空いているナースを探して頼んでおくよ」
カエル顔の医者は佐天たちの方を向くと、こう告げた。
冥土帰し「……これから君たちは触れるべきでは無かったものに触れる。僕も医者として、いや一大人として君たちのような子達にには関わらせたくないことだ。──でも、こうなってしまったからには知っておくべきことだ。だから一つだけ約束してくれないか。──これ以上は深く関わってはいけないよ?」
* * *
503号室の扉前に来るまで皆無言だった。
美琴が扉をノックすると、「どうぞ」と返事が返ってきた。
美琴「入るわよ」
上条「ん、ビリビリか、お見舞いに来てくれたんでせうか……ってなんだその人数!?見た事無いヤツもずいぶんいるけど!?」
浜面「よう大将、久しぶりだな」
一方通行「チッ、なるべく会いたくねェンだがなァ」
打ち止め「あ、迷子のお兄さん!久しぶりって、ミサカはミサカは特に感動はしない再会だけど手を振っていみたり!」
黒子「む、アナタは確かお姉さまに付きまとうストーカー豚野郎……!」
上条「ぶ、豚野郎は酷くないか!?」
ガバッ、とオーバリアクションで抗議した瞬間、「イテテ」とお腹を抑えてうずくまった。
美琴「まだ怪我治んないの?」
上条「ああ、一回仮に塞いだあとに動いたのが悪かったみたいでさ。もともと銃弾は貫通してたから手術も割と楽で完治も早かったはずなんだけどな。ちょっと無理したらこれですよ」
初春「じゅ、銃弾って……」
美琴「……そういうことも含めて一から追って説明するわ」
上条「えっと……で、これは一体どういう状況なんだ?」
美琴「……説明会よ説明会」
上条「説明会?」
美琴「全部話すのよ、妹達(シスターズ)のことも含めて」
上条「な……、お前、それがどういうことかわかってんのか!?」
美琴「承知の上よ」
上条「……分かった。取り敢えずは……」
美琴「分かってるわ、私の口から説明する」
。O ○ 少女説明中 ○ O 。
黒子「……」
初春「み、御坂さんのクローンが二万人も……!?」
佐天「一時期流れたレベル5のクローンが造られているっていううわさはその事だったんですか……」
初春「でもクローンのレベルがオリジナルよりもはるかに劣るってことは計画自体は失敗したんですよね?」
御坂妹「そうです、とミサカは肯定します。ここからはミサカが代わって説明したいと思います」
。O ○ 少女説明中 ○ O 。
佐天「っ……!」
初春「な、んですかそれ……!“クローンを二万人殺害することでレベル6になる計画”……!?」
浜面「……絶対能力進化(レベル6シフト)計画……。詳しく聞いたのは初めてだが、そういうことだったのか……」
佐天「……なんで、何でそんなことができるんですか……?クローンだって、同じ人間じゃないですか……!それなのに……!その学園都市第一位っていうのはそんなに偉いんですか……?超能力者ってのは何をしても許されるんですか!?」
一方通行「……」
浜面「……」
上条「……アクセラレータ……」
一方通行「……偉い、偉くないの問題じゃねェ。許す許されるの問題じゃねェ。……そいつらにはそれが悪いことだっていう認識がねェンだよ」
佐天「……それってどういう──」
一方通行「そのまンまの意味だ。研究者や“第一位”にとっちゃァ、クローンはただのモルモット。罪の意識なんかそこにはねェってことだ」
黒子「……狂ってますわ……」
一方通行「あァ、そうだ。そいつらは狂ってる、救いようのねェ程な──」
一方通行「──それが、俺、一方通行(アクセラレータ)っつう人間だ」
佐天・初春・黒子「……っ!」
病室の空気が一気に張り詰める。
特に“闇”を知らない三人からアクセラレータに向けられるのは、恐怖とそして──
──怒り
黒子「……っ!」ガシッ
美琴「黒子っ!」
美琴の静止も聞かずに黒子が一方通行に掴みかかる。
堪えきれない怒りに歯ぎしりをする。
その沸上がった怒りを発散する。暴力ではなく言葉で。
黒子「なぜ、なぜですの!なぜあなたはお姉さまのクローンを殺したんでですの!?佐天さんの言うとおりですわ!あなたがそんなに偉いんですの?許されると思ったんですの?二万という命を絶って、あなたは何がしたかったんですの!?二万という命を秤にかけても、レベル6というのはそんなに大事なものなんですの!?」
一方通行「……“あァ”」
黒子「……っ!」
ゴンッ、と黒子が一方通行の頬を殴る。
初春「白井さんっ!」
初春が慌てて黒子を羽交い絞めにする。
殴られた一方通行は、フラリと杖をついて立ち上がると黒子の方を見た。それから杖をついていない方の手で当麻を指差した。
一方通行「そンでクソッタレの悪党は、そこの“ヒーロー”に倒された。最強のはずのレベル5がレベル0に倒された。この予定外の事態に上の連中は実験の見直しを検討し、そのまま計画は凍結。残された一万のクローンはソイツのおかげで助かったってことだ」
打ち止め「──そう、この人は、一万のミサカの妹達を殺害した。──でも、その後の起きた事件で、命をかけて御坂達を救ってくれた」
小学生ぐらいの、まだ未成熟なクローンが一歩前に出てそう言った。
打ち止め「──えっと、自己紹介がまだった。ミサカはミサカは“ミサカ20001号”、最終信号(ラストオーダー)って言います。よろしく、オリジナルのお姉さまと他のみなさん!」
絹旗「20001号?クローンは二万体しか造られなかったんじゃないんですか?」
打ち止め「え~っと、そのへんを詳しく話すと長くなっちゃうから端的に言うけど、ミサカは全ミサカの司令塔。ミサカたちは電気の能力を使ったネットワークで繋がっているんだけど、それを総括するホストだと思ってくれればいいかな」
美琴「……それで?残りの一万を救ったってのはどういうことなの?そのへんの話、私も知らないんだけど」
打ち止め「分かった、じゃあミサカがミサカが今から説明するね」
。O ○ 少女説明中 ○ O 。
美琴「ウィルスを使ったテロですって……?そんなことがあったなんて……」
打ち止め「その時、この人は自身の演算能力を駆使してウィルスコードの解除に取り掛かってくれたの。でもその間に、その天井っていう研究者が目を覚まして御坂達に銃を向けてきたの」
打ち止め「引き金が引かれたとき、この人はウィルスコードの解除を中止して弾を跳ね返すこともできたはず。──だけれでも最後までウィルスコードの解除をやめなかった。ギリギリで反射を適用させたものの、銃弾は頭蓋を貫いて脳に達してしまった」
美琴「……!」
打ち止め「それでもね、それでもこの人は立ち上げってミサカのために戦ってくれた。──そしてこう言ったんだよね」
『──ああ綺麗事だってのは分かってる、今さらどの口がそンな事を言うンだってのは自分 でも分かってる!でも違うンだよ! たとえ俺達がどれほどのクズでも、どンな理由を 並べても、それでこのガキが殺されて良い事になンかならねェだろォがよ!!』
一方通行「……チッ、余計なことまで言ってンじゃねェ」ゴン
打ち止め「いてっ!?って、アナタの名言をみんなに紹介してあげただけなのに、ってミサカはミサカは殴られる理由が見当たらない!」
一方通行「……あァ、そンでその時の脳への損傷が結構ひどくてなァ。自分で能力の演算はおろか、杖なしでは立って歩くことも出来なくなっちまったンだがなァ」
御坂妹「ですから今はミサカネットワークを使って演算の補助をしています。首につけているチョーカーは、ミサカネットワークと接続するための電極です。能力使用時はバッテリーの消費が早いためもって数十分といったところです、とミサカは追加説明します」
一方通行「おォイ!弱点ばらしてンじゃねェ!」
麦野「はは~ん。じゃあ三十分かそこら逃げ回れば第一に勝てるかもってわけだ」
一方通行「試してみるかァ、この三下がァ……!」
絹旗「……第四位だから“三下”ってことですか!?……やりますね……!」
麦野「き・ぬ・は・た?」
絹旗「──とかくだらないことを浜面がつぶやいてました!」
浜面「って俺!?」
麦野「二人とも、後で──ブ・チ・コ・ロ・シ確定ね」
絹旗・浜面「ひぃっ!?」
黒子「……それで、いいんですの?」
打ち止め「それはミサカへの質問?」
黒子「そうですの。……一万人を救ってくれたとはいえ、一万人を殺した相手を許せるんですの?」
打ち止め「……ううん」
黒子「……」
打ち止め「ミサカ達は、ミサカを1万人も殺したことについては許してはいない。──でも、そうなってしまったのは私たちの責任でもあるから……」
一方通行「……」
美琴「どういう意味?」
打ち止め「そもそもこの人が絶対能力進化(レベル6シフト)計画に加担した理由は、『誰も傷つけたくない』からだった。能力に目覚めてから孤独になったこの人は思ったの、『絶対的なチカラを手に入れれば誰も戦おうなんて思わない。そうすれば、またみんなと一緒にいられるんじゃないかって』。この人はただ助けて欲しかっただけなの。そのサインは何度も出ていた。それでもミサカたちは研究者たちの便利な実験道具に成り下がって、この人のサインに気づいてあげられなかった」
打ち止め「だから思うの、御坂たちがもっと早く気づいてあげれば、この人はこんなに辛い思いをしなくて済んだんじゃないかって……」
黒子「……そう、でしたの。……すいませんですの、アクセラレータ、さんでいいですの?……その、アナタという人を誤解していたみたいで……」
一方通行「……それが誤解だ。何しようが俺がクソッタレであることには変わりはしねェ」
黒子「……それとあと、昨日わたくしの親友二人を助けていただいたみたいで……本当にありがとうですの」
黒子が一方通行に深く頭を下げた。
一方通行「礼なら主にワーストの方に言ってくれねェか?俺は大して何もしてねェ」
一方通行は一拍置くと、佐天たちにこう確認した。
一方通行「──それでどォだ、こんなンでも、まだこの先もまだ聞くか?」
“表”の人間からすれば非日常。
聞けば聞くほど引き返せなくなっていく。
それでも──
初春「ここまできたからには、全部聞きます」
佐天「大事な……大事な先輩を取り巻く環境についてもっと知りたいんです」
黒子「わたくしも、お姉さまの理解者になりたいんですの」
一方通行「……そォか」
番外個体「それじゃあ次はミサカのことでも話そうかな」
・
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美琴「──と、まあこんな感じで今に至るわけね」
上条「なるほど、理解した」
一方通行「そォいや、レールガンの母親の件だけどよォ、あの場に俺もいたンだが、俺の拳もくれてやったほうがよかったかァ?」
浜面「な……!ま、まさかあの銃弾って……!ってかあ冗談じゃねえぞ!?あんたの拳なんて食らってたまるか!(もちろん能力ありの場合)」
ちなみに作者公式であるが、三ヒーローのパワーバランスは『上条>一方通行>浜面>上条』となっており、どうあがいても浜面は一方通行に勝てないのだ。上条が浜面に勝ったのはストーリ上の都合です。
浜面「ま、そんで、それをきっかけに暗部落ちした俺は麦野たちの下っ端として働く人生が始まったのさ」
麦野「下っ端じゃねえよ、下僕だよ」
浜面「どっちでも変わんねえだろ……俺が惨めなことにはよ」
黒子「あれ、それではお姉さまと麦野さんとはいつ出会ったんですの?」
麦野「ああ、こいつが『計画』潰すために暴れまわってた頃に、こいつが研究所潰すのを阻止しろって依頼が来てな」
美琴「その言い方だと私が悪ものみたいじゃない」
麦野「視点を変えりゃあ、あながち間違いでもねえだろ」
美琴「うっさいわね」
初春「それにしても何につけても上条さんは関わってくるんですね」
美琴「超がつくほどのお節介焼きだから」
一方通行「今回も腹の怪我もどうせそういう理由なンだろ?」
上条「いやまあ、否定はしませんよ。……そういや初春ちゃんだっけ?“あの時”怪我はしなかったか?」
初春「あの時?」
上条「ほら、デパートで爆発に巻き込まれた時……」
初春「ああ、あの時ですか!え、でもあの時上条さんいましたっけ?」
黒子「……なるほど……、あの不自然な焦げ跡はお姉さまには無理だと思っていましたが、そういうことでしたの」
美琴「そういうこと。あの時初春さんを庇ったのは私じゃなくてこの馬鹿よ」
初春「そ、そうだったんですか!?あ、ありがとうございます!」
佐天「……それにしても、爆発を防いだってのもそうですし、レベル5である一位に勝ったってのもただのレベル0にできることじゃないと思うんですけど、どういうことなんですか?」
上条「あ~それは……。実は俺の右腕はさ(略)なんだよ」
佐天「能力を打ち消す力?」
黒子「ああ、だから寮の部屋でテレポートができないかったんですの」
初春「そんなすごい力があるのにレベル0なんですか?」
上条「なんか学園都市の能力検査では測れないかららしいんだけどさ」
御坂「ま、レベル0と入っても本当のレベル0ではないってことね(レベル0に負けたことを認めたくない)」
一方通行「あァ、そうだなァ(上に同じく)」
絹旗「だとしたら、正真正銘のレベル0ですけどレベル5の麦野に勝った浜面が最強になるんじゃないですか」
初春「ええ?そうなんですか!?」
麦野「絹旗ァァ!余計なこと言わなくていいだよテメエェェ!」
浜面「え、何?俺最強説?世紀末帝王HAMADURA伝説ですか?」
麦野・絹旗「雑魚が調子乗んな」ギロリ
浜面「フヒヒサーセンww」
初春「そう言えればアホ毛ちゃんと私は前にあったことありましたよね」
打ち止め「そうだよ!忘れもしない、ミサカを馬鹿にした風紀委員(ジャッジメント)のお姉さん!」
一方通行「…………あ~、あの時かァ」
黒子「以前にお会いしたことが?」
初春「はい。私がホスト風の怪しい人からアホ毛ちゃんを匿った時、そのホスト風の人に襲われてしまって。その時アクセラレータさんに助けてもらったんです」
一方通行「ったく、運がいいぜェオマエはよォ。あの野郎は未現物質(ダークマター)。……学園都市の第二位のクソッタレだ」
美琴「初春さんが第二位に……!?……何か本当に、私の知らないところでいろんな人がお世話になっちゃたみたいね……」
一方通行「借りに感じンじゃねェよ。俺はテメエに永遠に返しきれねェ負債があンだからなァ」
美琴「そんなことは関係ないわ。礼を言うべき時は言うものよ。だから言っただけ」
一方通行「チッ……、昨日の敵は今日の味方ですかァ?三下病が伝染(うつ)ってンじゃねェのか?」
美琴「このバカの病気と一緒にしないでくれる。主に異性への吸引力が凄まじいから別種だと思うわ」
上条「さっきから俺の扱い酷くないか!?」
初春「あ、そう言えればあの後黄泉川先生は大丈夫でしたか?直接会ってき話す機会が無くて気になって」
一方通行「あァ、傷は完治して今までどォりうぜェぐらい元気だよ」
初春「よ、よかったです~」ホッ
浜面「第二位と交戦……ってもしかしてあのババア、あの後お前のところにも向かったのか……!ホント世話焼きなババアだな……」
一方通行「あン?黄泉川と会ったのか?ってか、なンで俺がメルヘン野郎と交戦した日を知ってるンだァ?」
浜面「いや、恐らくだが麦野が第二位と戦った時と同じだと思うからよ」
麦野「嫌なこと思う出させんなクソが。……っていうかちゃんとトドメ刺しとけよ第一位サンよォ?テメエがちゃんとしねえからこの間みたいにメンドくせえことになるんだよ」
一方通行「あの時は殺したと思ってたンだよ。冷蔵庫になってまで生きてるなンて普通思わねェだろうが」
佐天(な、なんか物騒な話に逆戻りだね)
初春(でも確かに死人が出なかったのが不思議なぐらいの戦闘でしたよ?さすがは第一位と第二位って感じでした)
浜面「ってかよ、水臭いな大将。そんな大怪我するぐらいの事件に巻き込まれてたんなら俺やアクセラレータに連絡入れてくれりゃよかったろ」
上条「いや、ちょっと自分で解決しなきゃいけないことだったからさ。次なんかあったら遠慮なく頼らせて貰うぜ」
一方通行「……俺は嫌だがなァ」
上条「えぇっ!?やっぱり冷たくないですか!?」
美琴「……ってか、あんたらいつの間に番号なんて交換する中になってたのよ」
絹旗「浜面にスキルアウト以外の友人が……!?」
浜面「そこ驚くところか!?」
* * *
一方通行「と、まァ、俺たちからの話はこんなもンだ」
黒子「大体は分かりましたわ」
一方通行「分からない方がいいンだがなァ……。……最後にひとつ忠告させろ。──これ以上は関わるな、だ。こンだけ話しといて言うのもなンだが、オマエ等も分かっただろォ?お前たちの関わっていい世界じゃねェんだよ」
黒子「……分かっていますわ……!でも──」
麦野「──でももクソもねえんだよ甘ちゃんが。せっかくの第一位の忠告だ、黙って従やいいんだよ」
麦野「……そうね──“こっち”と“そっち”の違い、分かる?」
麦野がそう言って、当麻のベッドを挟んで両側に立っている黒子と初春と佐天の方を指差す。
麦野「簡単なことよ────人の命に関わることに携わったかどうかだ。但し救命の方じゃねえぞ」
黒子・初春・佐天「……っ!」
麦野「これが、どれだけ深い溝かなんて、あんた達だってわかるでしょ?滝壺とかは直接手をかけたことはないけど、それでも私たちと一緒に“仕事”をこなしていた。
病室が再び静まり返る。
そしてその沈黙を破ったのは、意外にも一方通行だった。
一方通行「あ~、だからなんつゥンだ?つまりは……“今まで通りでいろってことだ”」
黒子「……?」
一方通行「だからよォ、お前らと第三位は今までどおりオトモダチでいりゃあいいってことだ。風紀委員(ジャッジメント)の二人はジャッジメントとして“表”の治安を守ってりゃいい。“裏”は俺たちに任せてりゃいいンだよ。適材適所の役割分担、当然だろォが」
一方通行「──でもよォ、それでお前らがオトモダチやめるっていう理由はどこからも湧いてこねェだろ?だからそれでいいンだよ」
浜面(一方通行が……)
上条(……まともなことを言っている!?)
一方通行「……オマエら後で殺す」
上条・浜面「ひぃっ!?」
麦野「浜面は私が予約済みよ」
一方通行「知るかボケ。……ンで?返事は?」
黒子「はぁ……、分かりましたわ。そうしたほうが良さそうですわね。……でも、もしもお姉さまが本当に危ない目にあったら、何を言われようともわたくしは助けに参りますわ」
初春「……そうですね!」
佐天「あったりまえです。っていうか、それも今まで通りだしね」
美琴「三人とも……」
一方通行「はいはい、美しい友情ですねェ」
麦野「ああいうふうに誘導したのはあなただけどね。噂の第一位からは随分と丸くなったみたいね」
浜面「……それはお前もだ」
そう、なにも恐ることはなかった。
真実を知ろうと知るまいと、そんなことでそう簡単に壊れるような人間関係など、築いてなどいない。
つまりはそういうことだったのだ。
* * *
佐天「さて、一番気になっていたことなんですけど、聞いていいですか?」
一方通行「まだあンのかよ」
佐天「ズバリ!成人女性二人、未成年女子二人との同棲生活のご感想は!」
一方通行「……くっだらねェ──」
番外個体「──最っ高でぇぇす!第一位は幸せすぎて、ムラムラきて思わず番外個体ちゃんを襲っちゃいましたぁ!」ヒャッホーゥ
一同「………………へ?」
一方通行「オォォォォォォォォッィ!何言ってやがんだワーストォォォォォォォォォォッ!!」
美琴「ア、アンタ人の妹に何してんのよ!お、襲ったて、あの、その、アレなんでしょなのっ!?」カァァァッ
麦野「ひゅーっ!さすがァ第一位じゃん!」ゲラゲラゲラゲラ
御坂妹「……ないわー、とミサカは吐き気を交えた感想をもらします。相手なら上条一択です」
佐天「お、オトナだなぁ」カァァッ
黒子「大きなお姉さまの濡れ場……!フヒヒ今晩のおかずが手に入ったですの」フヒヒヒヒ
打ち止め「……ihbf殺wq」ゴゴゴゴゴ
初春「アホ毛ちゃんっ!?言語機能に障害が!?」←トイイツツモ「カァァッ」
上条「ってか男だったの!?」ガタッ
浜面「大将!そこじゃない!」ガタッ
滝壺「襲ったってどういうこと?」
絹旗「いやですから、一方通行と番外個体がセックスしたってことですよ」ヤレヤレ
滝壺「……ふぅん……。大丈夫だよあくせられーた」ボヤーッ
滝壺「──私とはまづらもせっくすしてるから」
一同「」
滝壺「ちなみにはまづらは、むぎのとも、きぬはたともせっくすしてるから大丈夫」
浜面「大丈夫!?どのへんが!?今ここでそれを暴露したことのどこに大丈夫な要素が!?」
初春「」パクパク
佐天「う、初春にはまだ早すぎたみたいだね……!」カアアッ
上条「こ、このプレイボーイめっ!断じて許さん!ってか俺だけ取り残されてるぅっ!?そんなの嫌だぁぁぁっ!俺も卒業したい!」
美琴「え、ええ!?卒業したい!?それって私へのお誘い……ゴニョゴニョ」
黒子「っていうか、滝壺さんはそれでいいんですの?見た感じ滝壺さんが付き合ってる感じでしたのに……?」
滝壺「うん……?はまづらと付き合っているのは私だけだよ?」
黒子「?どういう……」
滝壺「むぎのときぬはたははまづらの“せふれ”だから。……せっくす“ふれんど”、友達なら浮気じゃない」
黒子「……いや、まあ本人がそれでいいないいのですけど……(浜面さんと麦野さんと絹旗さんは「余計なこと言いやがってェ……」って顔のまま固まってますわね。……無理もないですけれど)」
一方通行「ラストオーダー、見ちゃいけませェン、聞いちゃいけませェン」
打ち止め「どうでもいいけど、ミサカはミサカは後であなたとお話があるかも」
一方通行「…………全部てめえの所為だからなァ……」
番外個体「うひゃひゃひゃひゃ!しばらく構ってくれなかったバツだよ~ん。…………ま、今晩こそは抱いてもらうから」ニヤッ
一方通行「……(あァもォ疲れた……)」
* * *
フレメア「あ、みんなだ、おーい!…………って、なんかだいたい気まずそうに見えるかも」
浜面「……フレメア、帰るぞ」
フレメア「??」
冥土帰し(気まずいのも当たり前さ……。“闇”という真実を、今まで隠し通してきたものを打ち明けたんだからね……)
食蜂(友情出演)「きっとそれが理由じゃないと思うわぁ☆」ババーン
削板(友情出演)「ま、なんだ、取り敢えず根性で乗り切れ!」ババババァーン
* * *
──帰り、再び浜面の(仮)車内で
初春「……今思えばすごいことですね」
黒子「何がですの?」
初春「だって、あの狭い空間に学園都市の第一位と三位と四位が同時にいたんですよ」
佐天「言われてみれば確かに……。なかなかある事じゃないね」
黒子「そもそもレベル5というのは学園都市に七人しかいないのですから、出会うだけでも幸運ですわ。わたくしたちは普段からそばにお姉さまがいるから感覚が麻痺してただけですの。……でも、“それが正常なんですけどね”」
浜面(……ほんとは第二位もいるんだけどな)
白カブト(まあ、話がややこしくなるでしょうし、黙っていて正解だったと思いますよ)
フレメア「すーぴー」ZZZ……
浜面(──しっかし、その通りだよなあ。俺たちだって普段から麦野が傍にいるから、それが普通だと思ってるけど、あいつはこの学園都市の“たった七人の内の一人”なんだよなあ)
浜面(──でも、一緒にいればいるほどわかってくるんだ。──いくらレベルが高かろうと、俺たちと何も変わらないんだって。レベル5だって笑うし、怒るし、泣くし、失敗だってするし、不得意なことだってある。レベル5である前にただの人間なんだってことなんだよな。……それとおんなじでさ──)
浜面「妹達(アイツら)だって、特別なモノなんかじゃないんだからさ、早くみんなの日常に溶け込めるといいな」
美琴「……うん、そうね」
美琴「私もあの娘達は“特別”なんかじゃないから」
──黄泉川宅、リビング
番外個体「ねーねー、暇だから構ってー」
一方通行「……めんどくせェ」
番外個体「大丈夫、第一位には手間かけさせないから。そのまま仰向けでいてね」
一方「……?」
番外個体「騎乗位なら第一位は何もしなくても──」
一方通行「……」ゴンッ
番外個体「痛っ!何すんのさ!」
一方通行「ラストオーダーがそこにいるだろうがァァッ!」
打ち止め「……?」
番外個体「大丈夫、一万のシスターズが全力をもってラストオーダーに大人な知識が入るのを妨害しているから」
一方通行「それはそれで将来が大変になる気がすンだが……。ってかよォ、お前らも大して歳変わらねェだろ」
番外個体「えー?じゃあどうして今、ラストオーダーがいるだろ、とか言ったのさ?御坂と対して歳変わらないのに」ニヤニヤ
一方通行「……別にィ」
番外個体「またそうやってはぐらかす。言っちゃいなよ、楽になるよ?『僕はロリコンなンですゥ』ってさぁ!ギャハハ☆」
一方通行「ちげェよ、殺すぞテメエ。とにかくラストオーダーがいるところではそういう発言は控えろって言ってンだ」
打ち止め「むむっ、さっきからよく分からないけど、二人が私を除けものにしようとしているってことだけは分かる!」
一方通行「あ~あ~、うるせェぞクソガキ。何にしろテメエには俺が聞かせたくねえから聞かせねえ」
番外個体「あらあら、過保護──もといロリコンですなあ」
一方通行「オイ、なンで言い直した」
番外個体「……さて、“おねーちゃん”?昨日の続きからゲームしない?」
打ち止め「MARI○?」
番外個体「そう。まだあのステージクリアしてないしょ」
打ち止め「うん分かった!先に行ってセッティングしてくるねってミサカはミサカはリビングに一番乗り!」
一方通行「……オイ、見事にスルーしてんじゃねェぞ」
番外個体「ん、何のことかにゃ~?」ニヤニヤ
一方通行「テメエ……、最近、とぼけりゃ何でも話題流せるとでも思ってねェだろうな……」
番外個体「何のことだか分からないってば」ニヤリ
一方通行「──そォか、そんなに舐められてンじゃあ、俺も黙ってらンねえなァ」ニヤリ
番外個体「……!?」ゾワッ
一方通行「……ラストオーダーが呼ンでンぞ」
番外個体「……え、あ、うん……」
番外個体(い、今の悪寒は何……?)
* * *
打ち止め「ぐわーっ、またここで落ちたぁ!」
番外個体「さ、ミサカの番だよっと」
黄泉川「ほらほら、飯じゃんよ。一旦片付けて」
番外個体「え~、ミサカの番なのにぃ」ブーブー
黄泉川「飯食った後でもできるじゃんよ。いいから冷める前に食べな」
芳川「それじゃあ頂くとするわ」
打ち止め「いっただっきまーす☆」
一方通行「……」パンッ(手だけ合わせて)
番外個体「いただきっ」
芳川「……」モグモグ
打ち止め「……」ムシャムシャ
一方通行「……」ズズッ
番外個体「……」ピロピロリン
番外個体「キノコ美味っ」
黄泉川「……」ゴンッ
番外個体「いったぁ……ぃぃ!」
黄泉川「食ってからにするじゃんよ?」
番外個体「はぁ……、分かった分かった、分かりましたー」
打ち止め「はぁ、全く。末っ子は行儀が悪いんだから」
一方通行「テメエも大概だ。里芋、箸で掴めないからって手で食うんじゃねえ」
* * *
番外個体「いや~、お腹いっぱいだわあ」
芳川「……里芋の煮っ転がしまではいいわ。でもね愛穂、私にはどうやって炊飯器でアイスパフェを作ったのかは理解不能だわ……」
黄泉川「炊飯器は万能だからじゃん?」
芳川「答えになっていないわ……」
黄泉川「細かいこと気にしすぎじゃん?最近珍しく働いて疲れでも溜まったか?」
芳川「言葉に何だかトゲがあるけど、ここはスルーしておくわ。……そうね、ちょっと疲れてるかも」
黄泉川「そう言えばビールとか飲んでる姿もあんま見かけてなかったけど、そんなに忙しいのか?」
芳川「ええまあちょっと、『あの娘達』の調整について冥土帰しと研究してたことが進展があってね。……まあ昨日で一段落ついたし、ビールでも飲みましょうかね」
黄泉川「了解、私が注いでやるじゃんよ。──って、あれ?買い足してなかったっけ。切れてんじゃん」
芳川「……」チラッ
黄泉川「……」チラッ
一方通行「……チッ、はいはい、行けばいいンだろ行けば」
芳川「あら、まだ何も言ってないわよ?」
一方通行「じゃあ行かねェぞ」
芳川「冗談よ。いつもどおり四、五箱買ってきてくれる?ワーストも付いて行ってあげて?」
番外個体「え~、めんどくさぁい」
芳川「いいから、ほら、病人に荷物を持たせるのは可哀想でしょ?」
番外個体「ん~、しかたないな~。病人はいたわんなきゃねえ……」
一方通行「オォイ!生暖かい眼で俺を見るなクソがァ!」
番外個体「ほれほれ行くよ~?あ、肩貸してあげようか?」
一方通行「…………す」ボソッ
番外個体「え、何?」
一方通行「……」
番外個体(やっぱりさっきといいなんか様子がおかしい……?)
* * *
番外個体「あれ、ア○ヒでいいんだっけ?」
一方通行「芳川はSAPPOR○派だから二箱ずつ買ってくぞ」
浜面「あ、第一位じゃん」
一方通行「馬面ァ……」
浜面「浜面だ!は・ま・づ・ら!畜生、みんな俺のことナメやがってぇ!」ウワーン
番外個体「やほー馬面。最近よく会うねえ」
浜面「……もういいよ。……んで?なんでこんなところで買い物してんだ?」
一方通行「あァ、それはなァ……」
今アクセラレータ達がいるのは第七学区の小さなコンビニである。
なぜこんなことろまで買い物に来ているかというと、“まともな”店では未成年にお酒など売ってくれないからだ。なので、黄泉川達のパシリの時には必ずこの辺に買い物に来ることになっている。
一方通行「──というわけだ」
浜面「あの人は教師として……警備員(アンチスキル)としてそれでいいのか?」
一方通行「こっちとしてはプライベートはあれぐらい適当な方が楽でいいがなァ」
一方通行「それじゃァ俺らはもう帰るわ」
浜面「ああ、じゃあな」
アクセラレータが店を出ようとしたとき、後ろから浜面が呼び止めた。
浜面「そういやさ、さっき、廃車とかを一時的に置いておく廃材置き場みたいなところにフロントの潰れた黒いT○YOTAのバンが来たんだけどさ。あれ、お前らが止めたっていうスキルアウトの乗ってたやつだろ?」
番外個体「TOY○TAならきっとそうだね」
一方通行「それがどォした」
浜面「いや、少し気になってよ……。積んでるエンジンとか、めっちゃくちゃイイ奴だったんだよ」
一方通行「なンでエンジンなんて見たんだよ」
浜面「いやちょっと拝借させていただいて」
一方通行「……相変わらずダセェクズっぷりだな」
浜面「うっせーな!レベル5何かと違って、こっちは奨学金なんて雀の涙なんだよ!大体、学校いかなくなってから支給されてねえし!」
一方通行「ンで?それが何だって言うンだよ」
浜面「いやだからさ、“一学生ごときに買える代物じゃない”んだよ。いくらレベル4がいたとはいえ、レベル4とレベル5の奨学金では単位が違う。それこそ、何らかの支援がないと無理だ」
一方通行「大規模なバックアップか……」
番外個体「そういいやさ、私を攫ったスキルアウトも、たった三人なのに、キャパシティダウンなんて大層なもの持ってたよね」
一方通行「……」
浜面「それとこれは半蔵からの情報なんだが、どうやら俺の知らないところで大規模なスキルアウトのグループが活動を開始したらしい」
一方通行「大方のスキルアウトは、お前の代理で半蔵のヤロウがまとめてんじゃねェのか?」
浜面「いや、スキルアウトはすげえ人数が多いんだぜ?ただでさえ学園都市の人口の大半がレベル0やレベル1なんだからさ。俺みたいにあぶれちまうやつも沢山いるんだよ。大きく活動してない奴を合わせれば大体一万に程度はいるって言われている。、駒場さんや黒妻さんだって一学区分のスキルアウトをまとめるのが限界だったんだからさ」
一方通行「それで、どこの学区のスキルアウト共なンだ?」
浜面「いや、学区ごとの集まりじゃなくて、それぞれのグループを抜けて集まった学区をまたいだ集団みたいだ」
浜面「うちの七学区のグループは、あれ以来、能力者狩りとかそういう活動は一切禁止したし、一〇学区の黒妻さんの後任の蛇谷だって、黒妻さんの鉄拳でそれなり更生したみたいでさ、大した活動はしてないんだよ。だから、単純に能力者が嫌いで集まってた連中の中には不満が出てきた奴らだっているんだ」
一方通行「そいつらが集まってなンか始めた可能性が高いと」
浜面「まあアンタに行っても意味がないと思うけどさ、一応気を付けといてくれ」
一方通行「雑魚はどれだけ集まっても雑魚だ。……テメエやあのヤロウぐらいのが集まンねェと相手のし甲斐がないなァ」
浜面「珍しいな、俺を褒めてんのか?」
一方通行「……まァ、お前が一万いても、俺が勝つことには変わんねェがな」
浜面「うるせー!とっとと帰りやがれ!」
* * *
番外個体「それじゃあ帰りますか」
一方通行「あ?何言ってンだ?まだ帰らねえぞ?」
番外個体「へ?」
一方通行「……」ピッ Prrrrrr……
一方通行「……結標、俺だ。今第七学区のあのコンビニの前にいるンだが、ビール置いとくから黄泉川のマンションに届けてくれねェか?」
結標『はあ!?何で私が!?』
一方通行「じゃァな」プツッ
結標『ちょっ、待ちなさ──』
一方通行「さァて、行くぞ」
番外個体「ど、どこに?」
一方通行「このへんは治安が悪ィからな、カメラすらついてねェ個室サロンがあンだよ」
番外個体「へ……、それって」
一方通行「オシオキの時間だァ」ニヤァ
番外個体「」ゾクゥッ
* * *
──個室サロン
番外個体(な、流されるように来ちゃったけど……)
番外個体が個室の中を見渡すと、ソファーやテーブル、カラオケセットの他に、普通の個室サロンならいらないはずのダブルベッドがある。
番外個体(初めてのあの時以来ヤってないから、ヤれるのはいいんだけどさ……)
ふと先ほど一方通行が浮かべた不敵な笑みを思い出す。
──オシオキの時間だァ
番外個体(何されるのこれ!?あの時と違って完全に自我がある状態で激しく攻めてくるってこと!?)
一方通行「はァ……」
番外個体「っ!」ビクッ
一方通行「疲れた……」ゴロン
番外個体「……へ?」
一方通行「……寝る」
番外個体「??」
一方通行「……」
番外個体「……」
一方通行「Zzz……」
番外個体(って本当に寝たの!?何がしたいのこの人は!?)
番外個体「……」
一方通行「Zzz」
番外個体「……」
一方通行「Zzz」
番外個体(あーもう!罰ゲームってこういうこと!?期待させて連れてきて、結局おあずけかよ!)
一方通行「……」スースー
番外個体(……起きてる間はあんな顔してんのに、寝てる間だけはやっぱり年相応の顔だよねえ……)
番外個体「……ふふ、この程度で罰ゲームとは甘いね第一位ちゃーん?」
番外個体「──ミサカが我慢できなくなったので罰ゲームとして成立しませーん!」ガバァッ
一方通行「はい罰ゲームゥゥゥゥッ!」ガバァッ
飛びかかってきた番外個体をそのまま巴投げする
番外個体「起きてたか!」
一方通行「たりめーだバァカ。……さて、」
一方通行「この手に持っているものはなンでしょうかァ」
番外個体「それは……!」
一方通行「そォです大正解ィ!学習装置(テスタメント)でェす!」ジャジャーン
一方通行「──今からこいつで、直接オマエの脳に快楽の刺激の信号を送る」ニヤァ
番外個体「…………へ?」
【 後編 】
へ続きます