8月6日 午前7時15分 毛利探偵事務所
RRRR RRRR……
コナン「……服部か、どうしたんだ朝から? (眠ぃ……)」
服部「とんでもない事件が起きたで工藤!!」
※注意※
SS速報VIPからの移転作品です。全3話予定で、2話まで完結していました。
改めて、1話の最初から投稿し直しますが、安価を取り始めるのは2話終了後になります。
ジャンルは名探偵コナンですが、『カオス薄め』かつ『(魔術的な意味で)ファンタジー』です。
予めご了承ください。
元スレ
【安価】??「名探偵コナンの世界で生き延びる」コナン「……!!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1383134603/
コナン「……ぅるせーな服部、電話越しに大声出すのはやめてくれ。俺は起きた直後なんだぞ」
服部「おぅ、スマン。……今、俺の携帯に連絡が入ったとこなんやけど、とんでもない殺しが起きたって」
コナン「……誰が殺されたんだ?」
服部「人殺して首になった元刑事の坂田はん が、『天界』で、殺されたのが見つかったって」
コナン「はぁ!? 何だって?」
服部「スマン、説明が足りんかったな。『天界』ちゅーのは料理屋や。
道頓堀にあるゲテモノ料理屋で、旨いゴキブリの佃煮で有名なんや。この間、俺も和葉や家族と食いにいったんや」
コナン「そりゃ確かに有名になりそうな店だが、……そんな物を、家族で食べに行ったのかよ。
ってか、何でそんな所であの刑事が死んでるんだ!?」
服部「どう考えても大事件やろ?
坂田はんな、自殺未遂での怪我の治療終えてから(※作者註 自殺未遂については原作19巻参照)、
逮捕されて免職になっとんのや。
今は、拘置所に居るはずの人間やったんやで?」
コナン「そりゃそーだ……、あの刑事、結構人殺してたろ?」
服部「ああ、そやから独房に居ったのに、夜0時くらいの真夜中に、突然、拘置所から消えたらしいんや。
大滝はんから聞いた話なんやけど、坂田はんの消えた独房の中は、カピカピのティッシュだらけだったそうや。
それで拘置所が大騒ぎになったんやけど、一向に見つからへん。
今朝になって、料理の仕込みに来た『天界』の大将が、店の1階で死んでる坂田はんを見つけて通報やと。
遺体の様子はズタボロだったそうや」
コナン「……ティッシュだらけ? 独房が?」
服部「俺も驚いて聞き直したで。ティッシュの色は赤だったんやて。
直前の看守の見回りではそんなモンなかったそうや」
服部「『今鑑定中やけど、おそらく血液やろ』って大滝はんは言うてた。
色も匂いもそんな風に染まって乾いたティッシュが、独房にぎょーさん転がってたそうや」
コナン「……そうか」
服部「ああ、言い忘れとったけど、居なくなる少し前に独房の監視カメラが壊れたらしいで。
で、故障に気付いた看守が、独房に向かって、坂田はんが消えたのに気付いたんやて。
看守が到着する前、独房から音が将棋の駒音みたいな音が聞こえたて。
独房の床は、見てみると穴が空いとったらしい。壁にも穴が空いてたそうや」
コナン「……なあ服部。普通、拘置所の独房の床や壁に、穴があるはずないよな?
日頃、脱走防止のために看守が確認してるはずだ」
服部「せやな。そもそもその手の建物は、大抵コンクリートで頑丈にできとるはずや。
仮に看守が聞いた音が、穴を空ける音やとして……
将棋の駒音程度の音で、どうすれば穴が空けられるのか、さっぱり分からへん。
……まあ、穴の大きさとか大滝はんから聞いてへんから、詳しいことは分からへんのやけど。
遺体の様子とか、坂田はんが居た独房の状況とか、詳しい事分かったらまた連絡する」
コナン「ああ、頼む」
8月6日 午前11時55分 大阪府警 本部長室
大滝「結局、死因自体は、心臓を刺されてほぼ即死やったようです、が、
着てる物を全て脱いだ後に刺されたようで、綺麗なまんまの服や下着が、死体の周りに転がっとりました」
あと、独房に有ったのと同じような赤いティッシュも大量に転がっとりました。
ティッシュをぶちまけて、その上に衣類が転がって、その上に死体っていう順のようです」
服部(父)「ということは、身体がズタボロやったんは死後の傷か?」
大滝「はい。
検視の結果では、心臓を刺した後、注射器か何かで身体の血を抜いて、それから心臓の刃物を抜いて、
硬い棒状の何かで全身を殴りつけ、その上で消化管をもぎとったそうです」
遠山(父)「……ひどいな、これは」
服部(父)「どおりで、
……最初の『天界』からの通報が、『うちの店の客席にズタボロの死体があるー』ちゅう内容になるはずや。
ズタボロとしか言えへんやろな」
大滝「まあ、『天界』の大将も最初はショックで吐いてたそうですから……。
『天界』は夜中0時に最後の客が帰って、それから色々作業して、0時半には客席から人が居なくなってたそうです。
それで、朝5時に店の仕込みに来た大将が死体を見つけて通報した、と」
服部(父)「『天界』があるの、道頓堀やろ?
坂田が拘置所から居なくなったのは0時頃、何か目撃情報は無いんか?」
大滝「それが、監視カメラを確認しても、『天界』周辺の路上は何もありませんでした。
ただ、偶然、『天界』の出入口を見つめてるカメラがあって、それを見てみたら、
午前2時頃、店のすりガラスの向こうで、変な物が写っとりました
詳細は鑑定中ですが、一見見た感じやと、エンジン付いたスケボーに人が乗って跳ねてたような動きでした。
数秒間だけ店の電気がついて、そんな物が見えて、すぐ電気が消えて、変な物も消えとりますが」
服部(父)「誰かが店に入るのとかは、写ってないか?」
大滝「店員が店の戸を閉めてから、大将が仕込みに来るまで、正面の出入り口からは、誰かの出入り自体は有りません。
今言ったのと同じ監視カメラが記録してました」
大滝「それから、他に分かった事ですけど、拘置所や現場に大量に残ってた赤いティッシュの正体は、
案の定血染めでした。ハツカネズミの血です。
それと、拘置所の独房に空いた穴ですけど、床の穴ができたのは消灯後です。
真下の階が雑居房で、坂田が消えた当時、中の人間は全員寝てたそうです。
『上の階にぶち抜くような穴は、寝るまでは無かった』て、全員が言ってます」
あと、床や壁に穴ができた分、コンクリートが下に落ちるはずですが、何故か見つかってません。
他には、……拘置所や『天界』で細かく調べてますけど、不審な指紋や体液は今のところほぼ採れてません。
ただ、独房から、一つだけ、看守でもない女性の体液が、……卵細胞を含む体液が採取できました」
8月6日 午後1時
服部「……現時点での大滝はんの情報は、今言った感じや。
まさかお前、『天界』の中でスケボー使って跳ねたりせえへんよな?」
コナン「んなわけあるか!! お前から話を聞くまで店の存在自体知らなかったんだって!!
大体俺はここ1週間東京から動いてないぞ!!」
服部「スマン、冗談や」
コナン「しかし、聞けば聞くほど訳が分からない事件だな」
服部「そやな」
……ププッ ププッ……
服部「……他から電話掛かってきた。いったん切るで」
コナン「おう」
プツッ
服部「大滝はんからの電話か。……もしもし? 事件は進展があったん?」
大滝「平次君大変や!! 今、東京から連絡が入ったんやけど……」
服部「何があったん?」
大滝「昼の12時頃、沼淵紀一郎が、拘置所から消えた!!
東京高裁で裁判中で、小菅の拘置所に居ったはずやのに!!」
服部「……何やて!!
沼淵て、坂田はんの事件の時に捕まった強盗殺人犯やないか!!(※作者註 原作19巻参照)」
大滝「そや。
今のところの連絡では、沼淵の独房では、坂田が消えた時と同じように、
赤く染まったティッシュが散乱してて、独房の壁と床に穴ができてたらしい」
服部「……どう考えても、坂田の事件と関係あるやんけ」
大滝「そやな、こっちの本部も同じように考えてる。大阪府警だけで解決できる事件やあらへん、って」
服部「せやな……」
大滝「じゃあ、またなんか分かったら連絡するで」
服部「分かった。頼むで」
プツッ
服部「……
工藤にも連絡するか」
午後3時 都内某所
『彼女』は遺体を見下ろしていた。
『彼女』が連れ出して、『彼女』が命を奪った存在。
『彼女』の目的のためには、必要な生命だった。
??「……」
『彼女』はしばらく考えこんでから、荷物から携帯電話を取り出した。
そして……
大阪府警 拘置所被告殺人事件 特別捜査本部
警官A「大滝さん! 大変です!!
市民からの通報で…… インターネット上に坂田と沼淵の遺体の画像が上がってるて……
犯人の犯行声明と一緒に!!」
大滝「何やて? その掲示板、どこや!!」
http://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/
【グロ注意】ある拘置所での事件のあらまし【私が犯人です】
1:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 14:55:00.00 ID:XXXXXXXXX
まず私がやった証拠を見せてみる。撮影時刻は今日の2時&14時
1件目:さかた ゆうすけ
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vippeXXXX.jpg
2件目:ぬまぶち きいちろう
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vippeXXXX.jpg
で、今から書くのはずっと準備してたメモ帳からの転載
2:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 14:55:30.00 ID:XXXXXXXXX
私はそもそもこの世界の存在ではない
この世界では非常に稀な魔力の保有者が、召喚術をミスし、誤ってこの『世界』に呼び出されたサキュバスだ
召喚した者は魔法陣の上の私を見て術式の失敗を悟り、そして私の言う事を聞いて、頭を抱えた
魔法陣から出なくてもすぐ分かる。魔法陣の外の『世界』は、私の体力をじわじわと苛む毒で満ちている
私は魔法陣から出たがらず、だから魔法陣は活きたままでいて、
活きた魔法陣は召喚した側の魔力を吸い取りながら、私は、魔法陣の向こうの召喚者と交渉した
『サキュバス、貴女は元の世界に戻るか、この世界に身体が馴染むように作り変えないといけない。
そうしないと、いずれ『世界』に消されてしまう。でも、魔力が私には足りない。
この世界の人間を殺し、生命力を奪い、生贄にして、新たな術式を練らねば、どちらも出来はしない。
でも流石に一般人を巻き込みたくない。
必要な生贄は罪人に限らせてほしい。それで良いなら、術式を作るのに、私は召喚者の義務として協力する』
他に細々とした交渉を経て、私は召喚者と契約し、そして目的のためにふさわしい方法を探し始めた
さて、殺人者としての私に聞きたいことはあるかな?↓1~5 までの間に出てきた質問には答えよう。当然、答えられない質問は有るけどね。
3:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:56:00.03 ID:AAAAAAAAA
ああ、厨二病が末期に…
どうしてこんなことになるまで放っておいたんだ!!
4:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:57:02.06 ID:BBBBBBBBB
言ってることが一万歩譲ってマジだとして、
お前は故郷に帰りたいの? それともこの世界で生きたいの?
どっちなの?
5:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:57:04.09 ID:CCCCCCCCC
あなたの精子に転生してもいいですか?
6:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:57:59.12 ID:DDDDDDDDD
自首できないかな
7:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:14.15 ID:EEEEEEEEE
ふるさとに蛍見に行って捕まったぶっちーコロコロするくらいなら時たまウロついてる全身真っ黒けの厨臭い変態集団もぶち殺しとけよ
あいつらマナー悪いし真夏でもコートとかマジキチwwwwくっさwwwwww
大滝「ちょうど今、範囲指定の5レス目がついたところか」
警官A「市民の方が、発見してすぐ通報してくれたようですね」
大滝「……お、スレが伸び始めたな」
8:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:32.18 ID:FFFFFFFFF
おいおい
マジかよ
9:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:40.21 ID:GGGGGGGGG
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
10:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:47.24 ID:HHHHHHHH
落ちつけよお前ら、絶対このスレ警察が見るからな!!
もしかしたら今見てるかもしれんぞ
11:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 14:58:51.00 ID:XXXXXXXXX
質問ありがとう
ちょっと回答打ち込むから待っててね
あと警察関係者の方にお知らせ
警察関係だと名乗った上で質問してくれたら、その質問に一つだけ答えます
大滝&警官A「「!?」」
警官A「大滝さん、どうされますか? こっちが何か書くんなら、早く決めたほうが良いんでしょうね
一般人が、警察詐称して何か書くかもしれんので」
大滝「やろな……、当然、あんまり変な質問は書けへん。
相手もこっちの正体を信じへんやろし、あとで上から怒られるで」
大滝(何を書こうか……)
都内某所
??「……」
『彼女』は携帯のメモ帳に一心に文章を打ち始めていた。
掲示板の向こう、『彼女』の答えに期待している者がいるのだ。
質問に答えると決めた以上、返信を打たねばならない。
>ああ、厨二病が末期に…
どうしてこんなことになるまで放っておいたんだ!!
→厨二病かどうかは貴方達の判断に任せるよ
>言ってることが一万歩譲ってマジだとして、
お前は故郷に帰りたいの? それともこの世界で生きたいの?
どっちなの?
→
??「……」
『彼女』の、指の動きが止まった。
自分がどうしたいのか、とっくに決めていた。
後は考えを打ち込み、投稿するだけだ。
39:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 15:02:48.27 ID:IIIIIIIIII
警視庁の高木刑事だ
君に協力できるかもしれない
出頭してくれないか
警官A「……警視庁の方も、これを見てるんでしょか?」
大滝「かも知れへんな。本物の書き込みかどうか分からへんけど」
42:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 15:03:53.00 ID:XXXXXXXXX
>ああ、厨二病が末期に…
どうしてこんなことになるまで放っておいたんだ!!
→厨二病かどうかは貴方達の判断に任せるよ
>言ってることが一万歩譲ってマジだとして、
お前は故郷に帰りたいの? それともこの世界で生きたいの?
どっちなの?
→私は、身体を作り変えて、この世界で生きたいと思う。
この世界で消え去りたいとは思わない。でも、生まれた故郷に未練はないから。
>あなたの精子に転生してもいいですか?
→私は一応、分類上は女なんだけど?
>自首できないかな
→自首する気はないし、自首したとしても警察は困ると思うよ。たぶん。
術式完成前の逮捕だと、さっき言った事情で、この世界に苛められて私が消えちゃう。
術式完成後だと、私の身体がこの世界の人間と同じになってるから
拘置所から人を連れ出すのに使った、私の力が消えちゃう。犯行立証できないじゃん。
>ふるさとに蛍見に行って捕まったぶっちーコロコロするくらいなら時たまウロついてる全身真っ黒けの厨臭い変態集団もぶち殺しとけよ
あいつらマナー悪いし真夏でもコートとかマジキチwwwwくっさwwwwww
→言ってる対象が誰なのかはわかる。
一応、確定死刑囚から捕まってない犯罪者まで、世間に知られてる分は検討したからね。
殺る順番とか誰を殺すかとか、生贄にする上での相性とかあって、対象外になった人達がかなり居るけど。
50:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 15:05:36.00 ID:XXXXXXXXX
>警視庁の高木刑事
たぶん警察は協力できない。私もさっき言った事情で自首出来ない。
ところで貴方の書き込みは質問じゃないね。
もう一件、他に警察の人が聞きたいことあれば答えるけど?
61:VIPにかわりましてHIDEがお送りします [sage]:20XX/08/06(火) 15:07:29.31 ID:IIIIIIIIII
先程の高木刑事と同じく、警視庁の白鳥です
貴女は、どこの端末から書き込んでいるのですか?
そもそも、何故、このスレッドを立てようとしたのですか?
教えては頂けませんか?
202:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 15:15:48.40 ID:XXXXXXXXX
>警視庁の白鳥さん
今使ってる携帯は、大阪の『天界』で拾った物だよ
たぶん、お客さんか店員さんの忘れ物じゃないかな?
あと、このスレを立てたのは、術式に失敗したときの保険のためだよ。
この世界には、魔力持ちがホントにいなくて、政府にそれ関係の知識がないんだってさ。
私の召喚者がひとりだけ力が突出してて、他に数段落ちる人が数人。みんな政府を避けてる。
私が喋らない限り、私がやった殺しの動機も、これからやることも分かるわけ無い。
でも、こういう風に喋れば、万一私がこれからやる術式に失敗したとき、
化け物じゃなく、知性体に対する態度で、貴方達が看取ってくれるかもしれないから。
不思議だよね、単に『私の身体の構成の、変な部分を変換して、新たな一人の人間になる』のと、
『この世界の人を取り込んで解体して、私の記憶と魂を入れて再構成する』のとでは、後者のほうが楽なんだ。
どっちも失敗のリスクはあるけど、召喚者と私は、散々考えて後者の方法に決めた。
どれだけ探しても相性の良い罪人が見つからなくて、取り込む対象が一般人になっちゃうんだけどね。
つまり、上手くいけば、私がその一般人と融合して、この世界で生きることになるということ。
召喚者にとっては苦渋の決断だったみたいだね。
それじゃ、携帯の電源を切るよノシ
午後3時16分 警視庁 捜査一課
目暮「長文を書いたな、コイツ……」
白鳥「どうやら本人が語りたいことについて、ピンポイントで質問できたようですね」
目暮「佐藤君、掲示板の管理者に連絡は着きそうかね!?
高木君は、大阪府警に問い合わせを!! 書き込みの内容の確認を急げ!!
『天界』の従業員や客が携帯を忘れてないか確認するんだ!!」
佐藤&高木「「ハッ!!」」
午後4時半 大阪府警本部 本部長室
RRRR RRRR……
服部(父)「……お、大滝から電話か。……どうや、例の書き込みの真偽は?」
大滝「すぐウラが取れました! 『天界』の大将の奥さんが、昨日の夜、店に携帯を忘れてたようです!
その携帯から、書き込みや写真の投稿がされてました!!
『事件のせいでバタバタしてて、携帯探すの後回しにしてた』て、奥さんは言うてます」
服部(父)「で、その携帯の電波は、どうなっとる?」
大滝「やはり午後3時前後に東京で電源入れた痕跡があって、今は電源が切れとるようです。
少なくとも、例の事、書き込んだのは奥さんじゃありません。
昼前までここの署に居ましたし、今もここに居りますし」
服部(父)「そうか……、そやろな」
午後5時半 警視庁 捜査一課
高木「警部、沼淵の死体が見つかりました!」
目暮「どこにあったんだ、高木!!」
高木「米花町にある和食の料理屋さんです! 2週間前まで営業してたところだそうです」
目暮「やはりか……」
白鳥「ええ。電波の範囲内にある、人のいない飲食店を、探し回ってもらってましたから」
午後6時 米花町 とある路上
??「……」
『彼女』は姿を隠しながら、獲物になるはずの若い娘を見つめた。
普通に、高校の部活から帰宅する途中の娘は、『彼女』に見られていることに気付くはずもない。
見つめるほうの『彼女』の身体は、この『世界』に毒され、ズタボロだった。
本当はもっと慎重に事を進めたかった、だが、身体が衰える勢いは止まらず、稚拙にならざるを得なかった。
今回、ネズミの血で染めた符を多用した。触媒も紙も、極めて簡易な、妥協の産物だった。
そんな符で練り上げた術は本当に荒く、失敗と隣り合わせだった。
実際、失敗した。
結界が、独房の壁を抉るわ床を抉るわ、防音機能がおかしいわ、
挙句の果てには光りながら暴走し、ナイフやら棒やら死体やらを跳ね飛ばす事態にすらなった。
でも、そんな苦労も報われてほしい、と『彼女』は思う。
時折、身体から体液が漏れる満身創痍でも、どうにか術で身体を隠し、『彼女』は自ら成り変わるはずの娘を見つめる。
午後6時25分 都内某所
蘭「ぅん…… (ここ、どこ……? 私、普通に家に帰ろうとしてたはずなのに……、何で、私の身体が動かないの?)」
??「目が覚めたのか」
蘭「(包帯だらけの、女の子……?) あなた、誰……?」
??「恨みたいなら恨んでも良いよ。私には、貴女達に謝る言葉は無いから」
蘭の誘拐自体は順調に完了した。
その後の作業も、魔法陣の準備も順調だ。あとは、もう本当に『ちから』を流すだけ。
??「……」
蘭から取り上げた衣類やら鞄やらは、今『彼女』の手元にある。
蘭の携帯を使えば、犯行声明を書き込んだ時の掲示板に、遺言を残すのも有りだ。
ただ、そうやって書き込めば、たぶん携帯の電波を辿って警察が来る。
術式に成功した場合に、ここに書いた魔法陣を隠ぺいした上で、知らん顔をして『普通の市民として生きる』道が消える。
掲示板に遺言を投稿すべきだろうか、『彼女』は少し考えて、
――そして、決断した。
ttp://hide14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/************/
【妄想か】拘置所被告殺人・犯人書き込み考察スレ4【実話か】
192:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 18:32:51.40 ID:XXXXXXXXX
ちょっと遺言をメモ帳にまとめたので、その書き込みに来た。
今、例の術式に使う一般人を誘拐していて、その人の携帯から書き込んでる。
念のため言っておきたいんだけど、その人はあくまで一般人。
先に殺した二人とは違って、『罪人ではない』ことを、ここに明言させてもらうよ。
あともう一つ明言しておくけど、召喚者は、最後の最後まで、術式の対象に罪人が使えないか、調べ回ってたよ。
最初の、2人の生贄だって、罪人に拘らなければ、もっと相性の良い人見つけられたハズだった。
でも、召喚者はかなり強く『この2人にしてくれ』って言ってきて、私が妥協した。
この世界は、本当に苦しいね。
世界一の魔力持ちの召喚者は、最初から魔力不足になってた。今は最初以上に苦しんでる。
準備できた術式の媒体は質が悪くて、私もかなり無茶したよ。
もう、私は、放っとくと半日くらいで消えちゃいそうな体調なんだ。
201:◆MsSuccubus [sage]:20XX/08/06(火) 18:33:30.43 ID:XXXXXXXXX
それから、私が故郷に戻ろうとしない理由も書いておくね。
戻ったところで、『父方の親族(特に実父)に殺されかねないから』なんだ。
母方の親戚が死んでから、放棄できない種類の財産相続で、かなり揉めててね、
今15歳の私を孕ませてから殺して、産んだ子の保護者として遺産横取りする算段を父方が立ててた。
異世界に行ったのは、向こうの技術ですぐ分かる。
戻らなかったら事故死扱いで、相続権は母方の誰かに行く。
私が戻ったら父方の計画が復活して、相続権が私に戻って、相続し損なった母方の誰かからも恨まれる。
私が生きようとする望みを持つ限り、召喚された『この世界』で生きる方法を、探すしかなかったんだ。
P.S
警察の皆さん
私が居る場所が分かっても、魔法陣が光ってるならその光に触れないほうが良いよ。
運が良ければ、光に触った部分が、身体から欠落するだけで済むけど、
最悪のケースだと、建物を巻き込みながら、魔法陣が私達の身体ごと爆発四散するよ。
誰も触れなくても、単に術式が失敗しただけで、最悪、爆発になるリスクがあるんだけどね。
逆に言えば、光が完全に無くなれば、結果の如何を問わず、術式自体は完了した事の目印になる。
午後6時35分 都内某所
蘭「(ぁ……)」
蘭がその時最後に見たのは、
自分の胸に向けて血染めのナイフを振りかざす、全裸の女の子の姿だった。
午前4時 都内某所
まどろみながら、目を開く。
『蘭』の身体は、『彼女』の腕を両手で握りしめたまま、床に倒れていた。
肌と髪が異常に白い女の子、それこそ石膏像みたいな色だった、――細身の美人が、目を閉じた姿のまま、
『蘭』に手首を捕まれた姿で横たわっている。
??/蘭(ああ ……サキュバスの身体から、魔力も、生命力も、完全に抜けたのか)
一瞬で得心し、術式が少なくとも失敗にはなっていないことを悟った。
サキュバスの身体から魂を抜き出し、ホモ・サピエンスの身体内の魂に、融合させる術式。
術の発動の経過の中で、サキュバスの身体からは魔力は抜ける。
それに失敗すると、魔力が抜けきる前に、この『蘭』の身体も、『彼女』の身体も、爆発に巻き込まれるはずだ。
さて、こうして魔力が抜けきった以上、『彼女』の身体は1日経たずに砂になるはずで、
蘭の胸を刺したナイフも、もちろん魔法陣に使った血や内臓も、同様に魔力が抜けているはずならば、魔法陣の中でとっくに砂になっていることだろう。
誰かが、警戒しながらこちらに一斉に近づいて、その人達が息を飲み、2人の身体に毛布が掛けられ、
握った手がほぐされて、『蘭』と『彼女』の身体は、別々の担架で運ばれた。
運ばれる感触で、四肢がきちんとあることを悟る。
半端に成功していたら、最低でも四肢のどれかがスライムみたいになっていた、かもしれなかったのだ。
かなりのだるさの中、成功に安堵し、目を開けたまま意識を落としそうになり――
小五郎「らん!!」
『彼女』の記憶も、『蘭』の記憶も、両方あるから分かる。この声が誰なのか分かる。
『蘭』の『実の父親』の、叫ぶような声だ。
『自分』の心では抗えないまま、瞳に涙が浮かぶ。
この父親に申し訳ないからなのか、それとも、こんな父親の元で生まれたかったからなのか、『自分』でも分からなかった。
8月11日 午後2時 毛利探偵事務所
コナン「服部、突然電話してすまねぇ。今、時間あるか?」
服部「……工藤、お前大丈夫か? 電話越しでも分かるくらい元気無いで」
コナン「ああ、分かってるんだが、……かく言うお前も声に元気が無えじゃねぇか。
ところで、『大滝さんが東京に来てトラブル起こした』って、聞いたか?」
服部「おお、さっき聞いたで。俺も電話しよ思てたんや。
大滝はんがそっちの病院に、『本人』の事情聴取に来たんやろ? 坂田はんが死んだときの様子の供述取るために。
で、大滝はんが病室で錯乱して、よりによって『本人』の顔を殴った、て」
コナン「……ああ、そうらしいな」
あの事件から5日が過ぎた。
あの事件を起こした『本人』は、最初は意識が朦朧としていて、その意識がはっきりしたのが一昨日になる。
今も、『本人』は、警察病院に入院したままだ。
俺(コナン)は、意識が不明瞭だったころはともかく、意識が回復した後の蘭とは、まだ会えてない。
蘭の同居人であるため会えなくはなかったのだが、おっちゃんと妃弁護士が、2人揃って俺の面会を止めた。
人格が、変わったらしい。
身体の見た目は、左胸周辺の皮膚が白っぽくなった以外、これまでの『蘭』と同じ。
おっちゃんと妃弁護士との血の繋がりは鑑定の結果待ちだが、染色体が人間そのものなのは確認されている。
だが、『蘭』の声色が少し変わり、口調は『どこか面影があるけど違和感がある』程度に変化したそうだ。
当然、蘭の両親として面会した、おっちゃんと妃弁護士は、ショックを受けた様子だった。
更にこの2人は、『このまま会うとコナン君がショックを受けるから』と、表向き小1のはずの俺を気遣った。
もちろん、『覚悟は決めるから』と言って、俺は2人を説得してる最中なのだが……
服部「大滝はんが錯乱した理由、聞いたか?」
コナン「ああ、おっちゃんから聞いた。おっちゃん、警察から事情の説明を受けたからな。
大滝さん、『本人』から魔術を食らったんだろ? それで錯乱して『本人』をぶん殴った、って」
あの夜、坂田元刑事を拘置所から連れ出したときのことを、大滝さんが、『本人』から、微に入り細に入り聞き出そうとしていたらしい。
同じことを何回も聞かれた『本人』がイラついて、大滝さんの手を取ったそうだ。
8月11日 午前 都内 某警察病院
蘭?「……そんなに言うなら見せてあげる、まだ『サキュバス』だった頃の力が残ってる。
『サキュバス』のほうの記憶を見せるくらいなら、ぎりぎり1回この身体に魔力が残ってるから。
体質が合わなかったら、……少し錯乱するかもしれないけれど、廃人にはならないはずだから」
大滝「何を……?」
『本人』は大滝の目を見つめ――
同じ病室にいた刑事達は、『本人』と大滝の手が、やがて身体が、薄く光るのを見た。
大滝刑事が後に語るところによると、この時、彼は、『サキュバス』の視点で繰り広げられる、坂田との会話を追体験したらしい。
坂田「つまり、君がこの世界で生きていくためにどうにかしないといけなくて、
生きていくための術式の生贄に、この世界の人間が要るっていう事なんやね?
その生贄に、僕と、もうひとりが選ばれたって」
??「そういうこと。恨みたいなら恨んでもいいよ。
貴方に謝罪することは絶対に出来ないから。……そういう言葉、絶対に言っちゃいけない術式だから」
坂田「せやね。……恨みの言葉、無い訳やないけど、
……君とここにいること自体が夢なのか、正直自信が持てへんのやけど、
夢やなかったとしても、僕を外に連れ出した君のちからを見れば、正直恨んでもどうしようもないとしか思えへん」
??「そう?」
坂田「だって、そんなちから持った存在に、そんな風に言われても、悔しさが湧きようがない。
それに……」
??「それに?」
坂田「君をミスって喚んだ魔術師さん、『生贄は罪人にせぇ』って言うたんやろ?
僕が嫌がって、それがもし君に受け入れられたとして、生贄になるのは罪人やない、普通の人やないの?」
??「……嫌がっても、殺すしかないんだけどね。
召喚者にやる気が無くて、一般人の生贄、あまり探してないから。
罪人の中では、生贄にするのに魔術的な観点で相性が良さそうな人、坂田さんと、もう1人の人しか居ないのに」
坂田「へぇ……」
??「正直な話、ね。
拘置所から連れ出す前に、貴方かもう1人か、どちらかでも急死されたりしたら、本当にピンチになると思う。
死んで時間が経った遺体を生贄にするのと、誰かを自分の手で殺して生贄にするのとでは、手間が段違いだから。
……死んだ直後の内臓に色々加工しないと、魔術には使えないから」
坂田「ええっと、……ちなみに、もう1人の生贄って誰?」
??「貴方も知ってる人、だと思う。貴方と一緒に逮捕された、東京の拘置所の、沼淵って人」
坂田「ええ!? 沼淵が? ……ハハハハハ!!」
??「何かツボに嵌ったの?」
坂田「その条件やったら、沼淵はともかく、僕はまだ納得して死ねる!!」
??「へ?」
坂田「だって、沼淵が間違いなく死ぬのも、確定するやないか!!」
大滝が我に返ると、ベッドに倒れこむ『被疑者』が目の前にいて、大滝自身は血相を変えた刑事達に取り押さえられていた。
魔術のせいで錯乱し、被疑者を殴ったのだと、後にそういう処理に落ち着いた。
8月11日 午後2時 毛利探偵事務所
服部「これから毛利のおっちゃんも大変やろな」
コナン「……ああ、妃弁護士も、おっちゃんも大変だろう」
服部「おいおい、お前も大変やろ、ショック受けとんの声聞いただけですぐ分かる」
コナン「お前もな」
服部「まあな、……これで、ねーちゃんがねーちゃんや無うなったのは確定した。
加害者が被害者の人格が融合するんは法の想定外、ちゅーことで、まあ刑事罰は受けへんのやろけど」
コナン「問題は、そんな風になった蘭が社会に受け入れられるかどうかだ。……なあ服部」
服部「何や工藤?」
コナン「『本人』が、退院したら、『天界』か、大阪市の無縁墓地のどっちかに、花を供えに行きたいらしいんだ。
いつになるか分からねーけど、もし、もしそうなったらそれに付き合ってくんねーか?
たぶん、俺や、おっちゃんと一緒についてくると思う」
服部「せやな。和葉も一緒に会って、そう出来ると良えな……」
【第1話 完】
【 第2話 】 へ続く。
面白いけど安価関連のやり取りでどうしてもテンポが悪くなるから、それらを省いた純粋に本文だけのバージョンもほしいところ