禁書「う、嘘だよね とうまはそんな事言わないよね」
上条「……」スッ
禁書「ど、何処行くのとう」
上条「付いてくんな」
元スレ
上条「二度と近付くな」禁書「と、とうま?」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1272874151/
禁書「ど、どうして急にそんな事言うのかな?」
上条「そんな事も分からない訳?」
禁書「え?」
上条「口を開けばお腹すいたの繰り返し」
上条「なんで俺が血も繋がっていない奴の食費の為に睡眠時間を削ってバイトして、寝床を奪われて、頭噛み付かれなくちゃいけないわけ?」
禁書「それは…」
上条「おまけに感謝の一言も貰った事がない」
上条「どうせいい食い扶持だとか思ってるんだろ?」
禁書「違うんだよ!そんな事無いんだよ!」
上条「どう違うって言うんだよ!」ゲシッ
禁書「うぐっ…」
上条「もう二度と近付くな」
禁書「ううう…」ポロポロ
上条「家から出てってくれ」
禁書「う、うそだよね、とうま?」
上条「いやもう、マジで。なんで高校生の俺が赤の他人を扶養家族として養っていかなきゃならないんだよ?」
禁書「と、とうま」
上条「洗濯もしない。掃除もしない。料理もしない。そこにいるだけならともかく飯だけは十人分以上平らげる」
上条「お使いも満足にできない。機械オンチだか何だかしらないけど自販機もまともに使えない」
上条「まだスフィンクスのほうが、可愛い&食費そんなにかからないだけマシだ」
上条「というか猫は可愛いよな」ナデナデ
上条「スフィンクスは俺が飼う。お前は出てけ」
禁書「う、うう」ボロボロ
上条「泣くなよ!俺が悪いみたいじゃねえか!」
禁書「ふぐっ、ぐしゅ、うううううう」ポロポロ
禁書「とうまなんて嫌いだ!」
上条「俺もだよ。お前のことが大嫌いだ」
上条「しかし…ほら」
禁書「…封筒?」
上条「俺も鬼じゃないんだ。無一文で放り出すような真似はしないさ」
上条「ただ、小萌先生んとこに行くのはやめろ」
上条「先生はお人よしだけど、ちょっと前に言われたんだ」
小萌『あんまりシスターちゃんを家に寄こさないでくれますか?正直、家計が苦しくって』
上条「ってな」
禁書「小萌…」
上条「年上なんだから『さん』くらいつけろ。まあ、もう会うこともないだろうが」
上条「じゃあな。二度と戻ってくるなよ」
ガチャ バタン ガチャリ
禁書「うう」グスグス
禁書「…封筒の中…二千円札?」
禁書「にせんえんって、結構高いんだよ。たぶん」
禁書「とうまが前に『俺の二千円は普通の人の五万円の価値がある』っていってたし」
禁書「なんとかこれで暮らしていくんだよ」
グー
禁書「お腹がすいたんだよ」
シャーセー
禁書「こんびにに入ったんだよ」
黒子「あら?シスターさんではございませんの?」
美琴「一人でお使い?」
禁書「あはは…そうなんだよ」
黒子(類人猿さん、とうとう追い出したようですわね)
美琴(そうみたいね。あの子、顔色真っ青よ)
黒子(食料を物色してるようですが、お金は持ってるんでしょうか)
美琴(…あいつの事だから少しは持たせてるんじゃないの?)
禁書(どうしよう。ぜんぶ高いんだよ)
禁書(短髪たちにお金を借り…)
禁書(無理なんだよ。迷惑はかけられないんだよ)
黒子「あら。二千円札ではありませんか」
美琴「へー。珍しいわね、久しぶりに見たわ」
禁書「そんなにすごいの?」
黒子「まあ、そうですわね。今では使えないお札ですけど」
禁書「えっ」
美琴(く、黒子…ぷぷっ)
黒子「その二千円札は一時期は流通しましたが、不便さもあり現在は使用不可能、唯の紙切れですの」
禁書「」パクパク
黒子「…でもシスターさん。わたくし、そういうお札を集めてますの」
黒子「どうでしょう。この500円玉と交換しませんか?」
美琴(くーろーこーっ!いいわぁアンタって!)
禁書「交換するんだよ!ありがとうなんだよ!」
黒子「どうっいたしっましてっですわ」プルプル
美琴(黒子、駄目よ…まだ笑っちゃ駄目…ぷくくくくっ)ゲラゲラ
禁書「短髪はなにを笑ってるのかな?」
美琴「! いやー、この漫画面白くてねー、くくくっ」
黒子「お姉さまが笑っておられると黒子も、黒子も…ひゃいひゃい!」
禁書「? ま、まあいいんだよ。じゃあさよならなんだよ」
アーシター
美琴「あの子、何買ったの?」ククク
黒子「ちょっと高級なロールケーキ3つですわ」ヒャイヒャイ
美琴「150円を3つ…残り50円…」ケラケラケラ
黒子「残金50円。シスターは生き延びられるか!…ですわ」ヒァイヒァイ
美琴「はー。ぶっちゃけアタシラ酷いわよね」フーフー
黒子「まあ、これくらいは楽しませて頂けませんと」ヒャイヒャイ
禁書「ぜんぶ食べちゃったんだよ」
グー
禁書「残り50円…もあるんだよ」
初春「あら?あなたは…」
禁書「あ、花瓶なんだよ。こんにちわなんだよ」
初春「花瓶?あ、こんにちわです」
初春「こんな所でなにをしてたんですか?」
禁書「ちょっと休んでたんだよ」グーキュルリー
初春「お、お腹空いてるんですか?」
禁書「はずかしながら、2分前から何も食べてないんだよ」グーキュルキュル
初春「そ、それは大変です!えーと、えーと」ガサゴソ
初春「これ、さっき横断歩道を渡るお手伝いをしたお婆ちゃんに頂いたんですけど、良かったら!」ダダダ
禁書「あ、ありがと…行っちゃったんだよ」
禁書「…正露丸?」
禁書「苦いんだよ」モグモグ
禁書「でも少しは気がまぎれるんだよ」グー
禁書「…」
一方通行「ヒャッハー!ガキィ!アイス食うかァ!?」
打ち止め「ここからここまで全部食べる!とミサカはミサカは無茶言ってみる!」
一方通行「腹ァ壊しても知らねェぜェ!たんと食いねェ!」
打ち止め「わーい!」ガッガッ
禁書「…」
禁書「! そうなんだよ!交換するんだよ!」
禁書「あのー」
一方通行「アン?大食いシスターじゃねェか。何の御用ですかァ?」
禁書「このせいろがんとアイスを交換してほしいんだよ?」
一方通行(何それ怖い)
打ち止め(何それ怖い)
一方通行(そォいやァ…三下からメールきてたっけ)
一方通行(コイツに飯とかやらないでくれって)
一方通行(しかし、このシスターも案外ロリ…)
一方通行(三下ァ!オレを苦しめやがるぜェ!)
一方通行「あーシスターさン?」
禁書「なんなんだよ?」
一方通行「もしテメエがアイス持ってて、正露丸と取り替えて欲しいって言われたら…交換すンのか?」
禁書「バカ言っちゃいけないんだよ!」
禁書「こんな糖衣でもない、歯に詰めたら臭くてたまらないせいろがんと美味しいアイスを同列になんて考えるほうがバカなんだよ!」
一方通行「…テメエは今、それをしようとしてたンだがァ?」
禁書「! い、いや違うんだよ、せいろがんはせいろがんで美味しくて…」オロオロ
一方通行(…オロオロしてるシスター可愛いじゃねェか!コラァ!)
打ち止め「あ、あくせろりーた…ミサカはお腹が痛いってミサカはミサカは…」ゴロゴロ
一方通行「言わんこっちゃねェ!」
一方通行「漏れるか?漏れンのか?アア!?」
打ち止め「まだそこまでじゃ…ぽんぽんいたいってミサカはミサカは…」
一方通行「チィッ!シスター!トレード成立だ!残りのアイス全部持ってけ!」
禁書「ほんと!わーいなんだよ!って全部溶けてるよ?」
一方通行「アイスはアイスだろうがァ!正露丸寄こせェコラッ!」
禁書「わ、分かったんだよ、はい」
一方通行「ほーら苦いけど我慢して飲みやがれェ?」
打ち止め「うう…なんで貴方はミサカのお腹を撫で回すのか、ミサカはミサカは聞いてみる」
一方通行「手当てってやつだァ!やましい気持ちは毛ほどもねェぜェ!ヒーハァー!」
チャプンチャプン
禁書「せいろがんがアイスになったんだよ」
禁書「でも全部溶けちゃってて歯ごたえがないんだよ」ゴクゴク
禁書「20個分のアイス…溶けてなかったら腹持ちが良かったと思うんだよ」プハー
禁書「とうまの家から出て5時間も経っちゃったんだよ…」グス
禁書「お腹がすいてたまらないんだよ…」
初春『これ、さっき横断歩道を渡るお手伝いをしたお婆ちゃんに頂いたんですけど』
禁書「そうだ…良いことをすれば自分に返ってくるんだよ」
禁書「困ってる人を助ければなにかくれるのかもしれないんだよ!」
禁書「ええと…困ってる人…困ってる人…」
佐天「あのー、どうかしたんですか?」
禁書「あなた困ってる人なんだよ!?」
佐天「え」
禁書「え」
佐天「いや、あたしはあなたがキョロキョロしてるから、もしかして迷子かなーって声かけただけなんだけど」
禁書「わたしは困ってる人を探してたんだよ!」
佐天「はあ」
佐天(やっべー、この人なんかやっべー)
禁書「わたしが貴方を助けてあげるのでなにかくれると嬉しいんだよ!具体的には食べ物だよ!」
佐天(うわあ…会話ができるのに話が通じないタイプだよ…)
禁書「さあ!なんでもこのイン…イン…あれ?イン何とかさんが解決しちゃうんだよ!」
佐天(自分の名前も言えてない…)
佐天「あー、さっき、向こうの路地裏でスキルアウトっぽい集団がカツアゲしてたみたいだけど?」
禁書「よーし!助けにいくんだよ!」ガッ
佐天「え?なんであたしを掴むの?」ズルズル
禁書「義を見てせざりは勇無きなりなんだよ!」ズダダダダ
佐天「いやムリムリムリムリっ!離して!」ズルズルズルズルー
オイ、ジャンプシロコラ! モウモッテマセンヨー
禁書「やめるんだよ!」
佐天「ジャ、ジャッジメントですの!」(やけくそじゃあ!)
スキル「ああ?なんだお嬢ちゃんたち?」
アウト「剥かれてえのか?コラ?」
佐天(あー、もう駄目。色々される。18禁のあれやこれや。儚い青春だったなあ…)
???「おーいこんな所にいたのか」
禁書「! この声は!」
アウト「なんだてめえ?」
スキル「こいつらの連れか?」
上条「こっちの黒髪の子の連れです。どうもご迷惑をおかけしてすみません」
禁書「と、とうま…」
上条「まったく、はぐれちゃ駄目じゃないか」
佐天「は、はい…ってあの、あの子は?」
上条「あれはいいんですよ」
佐天「はあ」
禁書「と、とう、ま…」グシュグシュ
禁書「うええええええええええええええええええええええええええええええええええん」
ホラホラモットタカクトベッテ! カンベンシテクダサイ!モウアリマセン!
禁書「びええええええええええええええええええええええええええええええええええん」
禁書「もう、涙も枯れ果てたんだよ…」トボトボ
禁書「とうまはもうわたしをみてはくれないんだよ…」
禁書「…ん。お婆ちゃんが横断歩道で立ち往生してるんだよ…」
禁書「…お手伝い、するんだよ…」
―――
婆「ありがとうね、お嬢ちゃん。でも赤信号は渡れないんだよ?危ないから覚えておきなさいね?」
禁書「…かえって迷惑かけてしまったんだよ…ごめんなさいなんだよ…」
婆「いいんだよ。気持ちが大事だよ。あんたは優しい子だねぇ」
禁書「えへへ…」グルグルグルグルキュー…
婆「おや、お腹が空いてるのかい?」
禁書「う、うん、でも大丈夫なんだよ」
婆「これ、婆ちゃんが作った煮しめなんだけど、良かったら」
禁書「ありがとうなんだよ!」
婆「喜んでくれて嬉しいよ。じゃあね」
禁書「ほんとにほんとにありがとうなんだよ!」
禁書「うわあ…美味しそうな煮しめなんだよ…!」
禁書「いただきまーす!」
???「待った」
禁書「誰…?」
ヒョイ パク
山岡「この煮しめは出来損ないだ。食べられないよ」
清掃ロボにズドーン!
禁書「あ…あ…」
山岡「あんな煮しめを美味いと言って食べる人間の気持ちは分からんね」
山岡「一週間後、またここに来なさい。極上の煮しめを食べさせてあげるよ」
禁書「あ…あ…」
栗田「山岡さん、何してたんです?」
山岡「また一つ、つまらぬ料理を批判しちまった」
栗田「まあ。うふふ」
禁書「」
禁書「」
禁書「」
黒子「あら、シスターさんですの」
美琴「真っ白ね」
黒子「ぶほっ!元々真っ白ですのぅー!」ヒャイヒャイ
美琴「おーい!大丈夫?」パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッ
禁書「…短髪…?」ヒリヒリヒリヒリヒリヒリ
美琴「一体どうしたの?もう夕方よ?こんな所でぼーっとして」
黒子「ヒャイヒャイ」
禁書「…世の中は、世知辛いんだよ…」
美琴「…そう」
禁書「究極だの至高だの言う前に、お腹いっぱいにならないと意味がないんだよ…」
美琴「ゴメン。言ってる意味が分からないわ」
美琴「もう遅いし、そろそろお家に帰ったら?」
黒子(おー姉さま!その一言はあー!)ヒャイヒャイ
美琴「…アイツも、許してくれるわよ」
黒子(何…ですって…)ヒャ
禁書「だめなんだよ。もう、とうまは…」
美琴「アイツの優しさ、知ってるはずよね」
禁書「!」
美琴「あなたが心を入れかえたら、きっと分かってくれる。そうじゃない?」
黒子(お姉さま…?ホワイ?どういうことですの?)
禁書「あ…う…」
美琴「帰りなさい。あなたの帰るべきところへ」
禁書「…うん。ありがとうなんだよ、短髪」タタタ…
黒子「…お姉さま、一体これは…?」
美琴「…あの子、アイツにあってどんな顔して何を言うのかしらねー」クックックッ
黒子「…流石はお姉さま。止めは類人猿さんに…ということですか」ヒャイヒャイ
―――
禁書「とうまー!」ガンガン
禁書「あけてー!」ガンガン
禁書「もう、わがままいわないんだよ!」
禁書「おてつだいもする、腹八分目でがまんする」
禁書「だから、だから、だから―――!」
ガチャ
土御門「うるさいにゃー」
禁書「!」
土御門「かみやんなら引っ越したにゃ」
禁書「え」
土御門「家計を圧迫してたのがいなくなって、もっといい部屋に住むんだそうだにゃー」
土御門「しかもえらい可愛い娘と同棲するらしいにゃー。羨ましいにゃー」
バタン
禁書「」
禁書「」フラフラ
ナニーアノコフラフラw ヤバクネ?ヤバクネ?
禁書「」フラフラ
初春「皆さーん、最終下校時刻は過ぎてまーす。速やかに自宅に…ってさっきの白い人!?」
禁書「」フラフラ
初春「あの、ちょっと、大丈夫ですか!?」
禁書「」ボケー
初春「必殺!お花ビーム!」ミュインミュイン
初春(自分でも何言ってるか分かりません!)
禁書「あ…さっきの花瓶さん…?」
初春(効いたー!?)
初春「かび…いえ、いいです。それよりどうしたんですか!?何か全体的に真っ白ですよ!?」
禁書「…とうま…いなくて…おなかが…山岡…士郎め…」
初春「と、とにかくこの正露丸を食べて元気出してください!」
禁書「」モグモグ
初春「」モグモグ
禁書「もう…わたしははめつなんだよ…」
初春「破滅…ですか?」
禁書「とうまはいなくなるし、おなかはすくし、せいろがんはくわされるし…」
禁書「わたしのしがいは公園にでも埋めてくれるとうれしいな」
初春(迷惑だ)
初春「あの、白い人さん?」
禁書「…なにかな?」
初春「私で良かったら、力になりますよ」
初春「レベルは1で、頼りないですけど…事情を話してもらえませんか?」
禁書「…ありがとう、なんだよ」
禁書「じじょう…」
初春「?」
禁書「…なんだったっけ…」
初春「はい?」
禁書「…」
初春「あの、落ち着いて、最初から話してくださいね」
禁書「…さいしょ…?」
禁書「とうまがね、まもってくれたの」
禁書「わたしは、にげてたの」
禁書「でも、とうまはたすけてくれた」
禁書「やさしいんだよ、とうまは」
禁書「それで、みぎてがね」
禁書「ちがう。とうまがね」
禁書「ねこをひろったのはわたしでね」
禁書「でもそれはちがったの。もやしばっかり」
禁書「あるくきょうかいは、もうあるかないんだよ」
初春(…全然分かりません。どうしたらいいんでしょう白井さん…!)
初春「あのあの、とにかくジャッジメントの支部に来ませんか?」
初春「そうしたら、保護者の方も迎えに来られると思いますよ?」
禁書「おなかいっぱい、おふろでねてるんだよ。とうま」
禁書「でも」
禁書「やっぱり、めいわくだったのかなぁ…」
初春「えと」
禁書「」
禁書「」
初春「え、ちょっと」ユサユサ
禁書「」
初春「え、え、え、これって…」
ピッポッパ トルルルルルル
初春「あ、あの、救急車お願いします!場所は…」
禁書(…とうま…)
―――
???「…ックス!朝だぞ!飯だ!」
禁書「んー。とうまー?」
上条「ほら、座れ。まあ、またもやし炒めだけどな」
禁書「いいんだよ。とうまのごはん、おいしいから」
上条「そうかぁ?ほら、スフィンクスも飯だぞ」
スフィンクス「分かってるわよ。ぎゃあぎゃあ騒がないで」
禁書「スフィンクスは短髪だったんだね」
上条「そりゃそうだろ」
スフィンクス「全く、今更よねえ」
花瓶「正露丸食べますか?」
禁書「あとでたべるからいいんだよ」
テーブル「ジャッジメントですのよ」
禁書「テーブルが消えたよ?」
上条「床に置いて食べればいいじゃないか」
―――
上条「…で、あいつはどうなったんですか?」
冥土帰し「現状では手の施しようがないね」
上条「俺が、もっと早く気がついていれば…」
冥土帰し「いや。君の責任では無いと思うよ」
冥土帰し「そもそも、彼女の『完全記憶能力』が異能のものなのか、通常の才能なのか、判断するのは難しかったろう」
冥土帰し「ただ、この様な事態になったからには、恐らく異能の力だったのだろう」
冥土帰し「君の右手は異能を打ち消す力を持つ」
冥土帰し「ある程度とはいえ、共に暮らした彼女の『完全記憶能力』を、生活する中で、徐々に削るように消してしまった」
冥土帰し「結果、記憶のほとんどを無くすことになってしまったのは、残念な事というしかないね」
冥土帰し「君はこれを聞いてすぐに彼女を追い出したそうだね」
上条「…」
冥土帰し「確かに、入院させるよりは良かったかも知れない」
冥土帰し「君から離れ、多くの刺激を受ければ、記憶の損失を免れる可能性は充分あった」
冥土帰し「今となっては、もう意味の無いことだが」
冥土帰し「発見者によれば、彼女は君の名前を最後まで呟いていたそうだ」
上条「…」
冥土帰し「君を忘れることが出来ていたなら、或いは…いや、よそう」
上条「…あいつに会えますか」
冥土帰し「…やめておきなさい。このまま療養を続ければ、健常な身体に戻れるかもしれない」
冥土帰し「しかし君が近くにいると」
上条「俺は…あいつの側にいない方がいいんですね」
冥土帰し「残念だが、その通りだ」
上条「…」
ガチャ
上条「…くそっ」ガスッ
上条「くそっくそっくそっ」ガスッガスッガスッ
美琴「! 何してんのよ!」
上条「…この右手が!あいつを!あんな目に!」ガスッガスッガスッ
美琴「馬鹿な事言ってるんじゃないわよ!」
美琴「アンタの右手は、色んな人を救ってきた!」
美琴「そしてこれからも救うんでしょう!?」
美琴「…そんな事しても、あの子は喜ばないわよ!」
上条「…」
上条「俺は、あいつに何もしてやれないのか?」
美琴「…何もしない事が、ベストなのよ、きっとね」
美琴「あーあ。こうなるんだったら、あの子に優しくしとけばよかったなー」
上条「…悪いな。俺が突き放せって頼んだから…」
美琴「あの時は、それがベストな判断だったんでしょ。仕方ないわ」
上条「あのさ」
美琴「ん?」
上条「あいつが、普通の身体になったら、お前、友達になってやってくれないか?」
美琴「なんでアンタにそんな事言われなきゃいけないの?」
美琴「もうあの子はアタシの友達よ」
上条「御坂…」
美琴(ふふふ…得点ゲット!さりげなくやるのがコツよね)
美琴「あ、ところでさアt」
佐天「あ、上条さん!」
上条「佐天さん」
佐天「…初春から色々と聞きました。あたしは想像するしかできないけど…」
上条「いや。俺こそ、テンぱってた時に佐天さんには慰められたよ」
美琴(え?なに?どゆこと?)
佐天「あれ?御坂さんじゃないですか?上条さんとお知り合いだったんですか?」
美琴「あ、うん、そう」
上条「御坂には色々と世話になったからな。また礼をするよ」
美琴「いや、別に、あの佐天さんはなんでこいつと?」
佐天「あー、危ないとこを助けて頂いて…んで、まあ」
上条「何というか、付き合おうって事になってさ」
美琴「(゚Д゚)」
上条「今までいた寮は…あいつの思い出があるから引っ越す事にしたんだ」
佐天「で、わたしと一緒に住むって事になったんです」
美琴「」
上条「何か、自分で節操無いような気もするが…」
佐天「彼女とはそういう関係じゃなかったんでしょ?なら無問題ですよ!」
上条「佐天さんは料理とか上手そうだしなぁ」
佐天「んもう。涙子って呼んでくださいよー」
上条「なら俺の事も当麻って呼んでくれよ?」
美琴「」
黒子「お姉さまが真っ白けになってますわ」ヒャイヒャイ
黒子「これでお姉さまはこの黒子のモノ…うふふ」
美琴「」
黒子「…お姉さま?」
黒子「先生。もう一人、入院患者の追加をお願いいたしますわ」
―――
それから数ヶ月が過ぎた。
あいつがいなくなってからは厄介な事件に巻き込まれる事も無く、涙子との同棲生活に支障をきたす事は何一つ無かった。
御坂は何故かあの後入院し、一月ほどして退院、常盤台の百合カップルとして白井とラブラブらしい。
まあ、愛の形なんて人それぞれだからな。
特筆すべき事といえば、小萌先生も入院した事か。
ヘビースモーカーで酒好きだから仕方ない事だと思ってたら、なんと老衰らしい。
見た目よりよっぽど年をくってたんだな。
最近、土御門が涙子目当てに俺の家に来る。
あのペド野郎には数十回そげぶを喰らわしても効かなかった。
どうしても女の子が欲しいならあいつに会いに行けよ、と進言したが、まともに話ができない状態の女の子ではエレクトしないらしい。
してたら通報できるのに。
初春さんはちょくちょく来ては、あいつの状態を教えてくれる。
でも毎回のお土産が正露丸なのは何故なんだろうか?
しかし涙子の親友でもある彼女には世話になりっぱなしだ。
今度、お礼に如雨露で水をかけてあげよう。
そうそう、涙子のお腹には、新しい命が宿ってる。
名前は、そう…インデックスと名付けたい。
いつか、また。 あいつに会ったら。 また酸っぱい男の料理をごちそうしてやりたい。 俺と涙子と赤ん坊とあいつとでテーブルを囲むんだ。
―――
禁書「…とうま…とうま…たすけて…とうま…」
【完】
178 : 以下、名... - 2010/05/04(火) 01:41:14.30 xWfr+f6N0 32/33ハッピーエンドっぽくしてるけどこれ以上ないBADだからな
179 : 以下、名... - 2010/05/04(火) 01:41:48.29 GRVOs8W40 33/33これはひどい
でも実際こんな扱いされても文句言えんなw