佐天「第四……波動……か」【前編】
佐天「第四……波動……か」【後編】
佐天「ストリームディストーション!」
佐天「第四……波動……か」【第六幕】
佐天「第四……波動……か」【結標淡希編】
佐天「聞かせてくれよ……お前の絶命の叫びでな!」【前編】
佐天「聞かせてくれよ……お前の絶命の叫びでな!」【中編】
佐天「聞かせてくれよ……お前の絶命の叫びでな!」【後編】
佐天「第四波動のさらに上なんてあるんだ」【前編】
佐天「第四波動のさらに上なんてあるんだ」【中編】
佐天「第四波動のさらに上なんてあるんだ」【後編】
佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」【前編】
佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」【中編】
佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」【後編】
佐天「未元物質って知ってます?第五波動ー!」【前編】
――――――10月14日
アレイ☆「――――――」
アレイ☆「(……誤差?)」
アレイ☆「(プランに影響ありとは―――なるほど、確かにイレギュラーだ)」
アレイ☆「(予測では、ここで死んでもらうはずだったのだが、まさか生き残るとは)」
アレイ☆「(……消すか?いや、ここは上手く使って―――)」
アレイ☆「(ふむ―――彼が現れるが少し遅れてしまうが、許容範囲内の誤差だ。問題ない)」
アレイ☆「(さて、すこし根回しをしておくか。ふっ、忙しいとはいいことだ―――)」
――――――10月14日
皇帝『私だが、何かあったのか』
アックア『佐天涙子の抹殺を取り消した。そのことを報告したかっただけである』
皇帝『ほう……理由を聞いてもいいかな?』
アックア『実際に戦い、殺す必要は無いと感じた。アレはもはや放っておいても問題は無い。
やはり対象は、上条当麻ただ一人だけである』
皇帝『……そうか。しかし、もしもう一度我々の前に立ちはだかった場合どうするつもりかね?』
アックア『その際は躊躇うことなく殺してみせよう』
皇帝『躊躇うことなく、か。ということは、今回は殺すことをためらったということかね?』
アックア『――――――、さて、何のことか』
皇帝『いや、君にも人間らしいところがあったとわかって安心したよ。
何にせよ、この件は君に全て任せてある。実際に戦った君がそういうのならばそれでいい』
アックア『……貴方は我々が暴走してしまった時の手綱を握るものだ。
そう簡単に信用されてしまっては困るのだが』
皇帝『君達は私の「相談役」だよ。そのような関係では無い』
アックア「―――」
アックア『―――では、次に連絡する時はおそらく事後になると思うのである』
教皇『ああ。君が負けるとは思わないが、気をつけてくれ』
アックア『お気遣い痛みいる』
――――――10月21日
「ん―――」
目を開けると、そこは見なれた天井。
清潔な白いシーツとカーテンが、秋の風にゆられている。
「……あれ」
思考している自分に驚く。
風で髪が揺れて、くすぐったく感じる自分が不思議だ。
「なんで、私……生きて、」
あの時、私は気を失って。
それで、そこで終わるはずだったのに、どうしてまだ生きているんだろうか。
「――――――、まあ、でも」
でも、生きているのなら、それでいい。
理由はわからないけれど、死んでいないのなら、それは何よりも喜ぶべきことだ。
「目が覚めたようだね」
佐天「先生……」
医者「……ふむ。言語機能と認識機能は特に問題なさそうだね?今日が何日かはわかるかい?」
佐天「えー……と、私ってどれくらい眠ってました?」
医者「ちょうど一週間だね」
佐天『一週間!?ずいぶん眠ってたんだなぁ……とすると、21日ですかね」
医者「計算能力も問題なしだね」
佐天「あの、さっきから何なんですか?」
医者「何かなんて、君が一番よくわかってると思うんだけどね」
佐天「……まあ。でも、頭に特に異常無さそうですよ。昔の事も思い出せますし、特に問題なさそうです」
医者「そうかい。運ばれて来たときは見て驚いたからね。全く、君は自分の脳を破壊するのがよほど好きなようだね?」
佐天「いやぁ好きってわけじゃないんですけどねー」
医者「さて、一応身体の具合を伝えておこうかな。さっきも言ったように脳へ大きなダメージがあったことは事実―――加えて、
血管や筋肉や腱や骨や内臓、ひらたくいえば全身に致命的な怪我があったわけだが、まあ出来る限りは治しておいたから」
佐天「oh...まったくもって死に体だったんですね私」
医者「生きているのが不思議、とはよく言ったものだね?運んできた彼が少しでも応急処置をしていなかったらまず出血多量で
死んでいただろうね」
佐天「あ、誰かが私を直接運んできてくれたんですね。誰かわかりますか?今度御礼したいですし」
医者「匿名希望らしくてね?残念だけど」
佐天「そうですかー。残念ですね」
医者「……ふむ。元気そうでなによりだね?それじゃ僕はこれで」
佐天「あっ、先生」
医者「なんぞや」
佐天「……いろいろ迷惑かけてごめんなさい」
医者「―――ふむ。君は悪いことだけしかしなかったのかい?」
佐天「え……?」
医者「いや、なんでもないよ。それじゃお大事に。それから、お疲れ様」バタン
佐天「……あっ!」
佐天「一週間……一週間も寝てたって、それじゃあ……」
佐天「……!上条さんは……!くそっ、電話はどこに……ああもう、携帯電話は家か!確か、病院の公衆電話が……!」ばっ
ずるっ ごんっ
佐天「あいたっ」
佐天「あいたたた……くそぅ、手術した後と、一週間も眠ってたせいで上手く立てない……松葉づえ松葉づえ、っと」
佐天「くそっ……無事でいてくださいよ上条さん……!」カツカツカツカツカツカツカツカツ!
pllllllplllllllllll
佐天「出ろ……出てくれよ……!」
ガチャッ
佐天「上条さんっ!!無事ですか!!」
上条『うおあっ!!その声佐天さんか?』
佐天「大丈夫でした?何もありませんでしたか!?」
上条『え、あ、うん、ちょっといろいろあったけど、まあなんとかなってるぞ?』
佐天「(良かった……上条さんは無事みたいだ。オルウェルさんが一週間も敵地で伏せてるなんて考えにくいし、
たぶん上条さんは今回もまた追い払ったんだろうな……あんな人をどうやってかはしらないけど。でも、まあ)」
佐天「良かったぁ……本当に、良かった……」ガチャン
佐天「っと、安心して受話器置いちゃった。まぁいっか」
――――――屋上
佐天「ふぅ……リハビリがてらきてみたけど、なんというか」
佐天「確か、三カ月くらい前に幻想御手使ったあともここに来てたなぁ。今回も幻想御手使ったあとだし、あの頃と一緒だ」
佐天「全く……能力が使えなくなるところまで一緒にならなくても、よかったのにさ」
そう。
私は、能力が全く使えなくなった。
―――幻想御手(改)。
周囲のAIM拡散力場から『自分だけの現実』を逆算、さらにそこから各々の演算式を逆算し、
それを用いて自身の演算式を最適化および演算力を強化する道具。
結果として能力のレベルは上がるし、幻想御手と違い昏睡するなどといった副作用は無かったが―――
佐天「世の中そんなに甘くない、っと」
―――その道具を通して演算式を最適化する分には問題はなかった。
けれど、私はそれが壊れた後に、自分の頭に残った演算式の残滓を無理やり自分に組み込んだ。
それが一体どういうことか―――
佐天「ま、それでもそれだけだったら、前みたいにもう一度自分だけの現実からやり直せばよかったんだけど、でも」
―――最後。
水流操作・空気使い・念動力・ベクトル操作。
それらの能力を使うために、演算式の残滓から『自分だけの現実』を適用した。
それはつまり、私自身の『自分だけの現実』を侵食する行為だ―――
佐天「結果、私の『自分だけの現実』は他人の『自分だけの現実』と混ざり合って観測できなくなっちゃったし、
無理して頭動かしたせいで新しく『自分だけの現実』をつくることもできなくなっちゃった、と」
わかってはいた。
あの時、後でどうなるかくらい、わかってはいた。
自分が求めてやまなかった、自分だけの能力。
ずっと憧れて、そのために学園都市に来たけれど。
佐天「―――まぁ。誰かを犠牲にして、自分だけ何も失わずに勝ちを拾おうなんてむしのよすぎる話しだし、ある意味これが正解なんだろうけど」
佐天「それにしても、結構超えられるもんなんだなー限界って」
1人につき1つの能力。それが大原則。
多重能力が不可能なのは能力者にかかる脳の負担が大きすぎて出来ない、というものだったが、
佐天「はっはー。後先考えなきゃ割とできるもんじゃーん。
まったく、三カ月前までは無能力者だった私が不可能とか言われてた多重能力者になれたんだから何があるかわかんないよねー」
佐天「はははは!凄いぜー私!やるじゃん私!」
佐天「あはははははははは……は、ははっ」
佐天「はぁ……空しいぜ」
左天さんを失くして、自分が追い求めていた自分だけの能力さえも失くした。
体を壊して限界をいくつも超えて、そこまでしても結局オルウェルさんには届かなかった。
結局私には勝利という結果を拾うことは出来ず。
何をしても戦いに勝つことは出来なかったが―――
「けど、まあ」
私が戦いに勝てなかったのは、この三ヶ月間の戦い全部がそうだったし。
つまり私は誰にも勝つことは出来ないということだろうけれど。
それでも、答えは得た。
走馬燈の中でみた、一方通行さんの言ってくれた言葉。
それだけで、私は十分だ。
間違った想いで走り続けてきて、今も自分の劣等感を隠すために『皆を守るために戦う』なんて言っているのかもしれない。
間違いだらけの三カ月間だったけれど、そんな私でもどうやら一方通行さんを救えたみたいだったから。
この気持ちは偽りかもしれないけれど。
間違いなんかじゃないって、胸を張って言えるようになった。
それがわかったから、私はずっと走っていける。
迷うことなんてない。
弱い自分を認めて、自分一人じゃ何も出来ないことを認めて、それでもなお前へ進んで行ける。
「―――――、は」
だというのに。
失くしたものを、ふっきれない。
「――――――、ああ」
覚悟とはそういうものだと理解したはずなのに。
「――――――、未練なのかな」
まったくもって情けない。
未練なんて持っていては、前へ進むのに重荷になる。
「――――――、ぅ、っく」
ここでそんなものは置いていこう。
だから、せめて、
「は―――、ぅ、ひっ、く……」
失くしてしまった人、失くしてしまったモノのために、今だけ泣くことを―――
初春「佐天さんっ!!」バンッ
佐天「っ」ビクッ
佐天「え、うい、はる……?」
白井「座標確認!いきますわよお姉さま!!」
御坂「ええ、いつでもいいわよ!!」
ヒュンッ
佐天「え?え?」
白井「マグネットパワーマイナス!!」
御坂「マグネットパワープラス!!」
佐天「え、ちょっ!?」
初春「そしてマグネットパワーニュートラル!!」がっ
佐天「え、えええええええ!?」
御坂 黒子「師弟のクロスボンバー!!」
佐天「ぐわーっ!」
佐天「」
御坂「いやー見事に決まったわねー」
白井「それはもう、ワタクシとお姉さまですもの。ああ!お姉さまとの合体技!!このまま二人で夜もがっt」
御坂「あ、そういうのいいから」
白井「」
初春「ほらほら、いつまで寝てるんですかー佐天さん」ペシペシ
佐天「う、うう……うい、はる?」
初春「はい、初春飾利です」
佐天「それに、御坂さんと……あと白井さん」
御坂「やっほ。元気?」
白井「なんだかワタクシだけとってつけたような感じですの」
佐天「……」
佐天「―――なんで」
佐天「なんで、そんなに普通に接してくるんですか……」
佐天「私、三人に、ひどいことしちゃったのに……!」
御坂「……黒子、初春さん」
白井「ええ、お姉さま」
初春「言わずとも、ですよー」
御坂「フォーメーションB!!いくわよ!!常盤台のレールガン!」
白井「常盤台のジャッジメント!!」
初春「学園都市のゴールキーパー!!」
御坂 白井 初春「ジェットストリームアターック!!」
佐天「ぐわーっ!?」バキィッ
佐天「」
初春「ほらほら、寝てないで起きてください佐天さん」ベシベシ
佐天「う、うう……初春……?」
御坂「やっほ。お目覚めかしら」
白井「調子はどうですの?」
佐天「御坂さん……と、あと白井さん」
白井「だからどうしてそんなオマケみたいな言い方を!?ワタクシ嫌われてますの……?」
佐天「いえ、そういうわけじゃないですけど……あの、さっきからなんなんですか?」
御坂「何って、仕返しよ仕返し。全く、あの時はよくもやってくれたわねー」
佐天「あ……」
初春「あーもー、そんな顔しないでください佐天さん」
白井「そうですの。さっきの仕返しであの時のことはチャラですのよ」
佐天「チャラって……でも、そんなの」
白井「で・す・け・ど!」
御坂「私達はそれでいいんだけど、ただ初春さんをあんなに泣かせたのはいただけないわよねー」
白井「というわけで、佐天さん。今から初春に謝ってくださいですの」
佐天「……はい」
佐天「……初春」
初春「はい、佐天さん」
佐天「確かさ……幻想御手の事件で、目が覚めたあともここで会ったんだよね」
初春「そういえば、そうでしたね」
佐天「馬鹿やってさ、初春を危ない目にあわせて、大切な友達をなくしちゃうとこだったって気付いたのに」
佐天「また、同じように馬鹿やっちゃって……全然成長してないよね、私」
佐天「ごめん……ごめんね、初春」ぎゅっ
佐天「許してもらえるなんて思ってないけど、でも……私は、もう一度初春と―――」
初春「飾利ぱんち」がっ
佐天「ごふっ!」
佐天「ぐ、おふっ……う、ういはる……?」
初春「全く、佐天さんは……私があの程度のことを許さないなんて思ってたんですか?
そんなに器がちっさかったら、佐天さんの日々のスカート捲りを許せるわけないじゃないですか」
佐天「あ……じゃ、あ」
初春「佐天さんはいつまでたっても佐天さんですからね!危なっかしくて放っておけません。
私がずっとついててあげなきゃだめですよね!」
佐天「初春……――-っ、ははっ、どの口がそんなことを言うか!この口か!この口かー!!」
初春「いひゃい!?い、いひゃいでふよひゃへんひゃん!!」
佐天「あはは、初春変な顔ー!あはは、はは、は……ぁ、っ、はっ、くぅ……ひっ……」ボロボロ
初春「ひゃひぇんひゃん?あの、どうしたんですか?あ!まさかどっか痛くなってきて……!?」
佐天「ちっ……ちが、うの……。こうやって、また……ういはるたち、と、はなせるのが……うれしくって……うれしくって……!」
佐天「ふ……ふぇぇぇぇええええええんっ!!」ワー
初春「佐天さん……」
初春「大丈夫ですよ、佐天さん」ぎゅぅ
初春「私はどこにもいきません。御坂さんも白井さんも、佐天さんを見離したりなんてしませんから」
白井「勿論ですの」
御坂「なんたって、私たちは―――」
初春「―――し・ん・ゆ・う!ベストフレンドですから!!」
佐天「み、みんな……!うぇぇぇぇええええええええんっ!!!」ワーワー
初春「(ああ、泣いてる佐天さんかわいい……)」ゾクゾクッ
白井「初春、顔に出てますのよ」
御坂「落ち着いた?佐天さん」
佐天「はい……あの、御坂さん」
御坂「うん?」
佐天「……ありがとうございました」
御坂「……いいのよ。親友のために動くのは、当然でしょ?」
佐天「御坂さん……」キュンッ
佐天「それから、白井さん」
白井「はいですの」
佐天「足を貫いてくれた恨み、忘れません」
白井「何でワタクシは恨み言を!?」
佐天「あはは、冗談ですって。ありがとうございました、白井さん」
白井「え、ええ、まあ、ワタクシもお姉さまと同じですの。親友のために動くのは当然―――」
佐天「えっ。白井さん私の親友だったんですか?」
白井「えっ」
佐天「えっ」
白井「……ふええええええええええええええええん!!お姉さまー!佐天さんがー佐天さんがー!」
佐天「あはは、冗談ですってばー」
佐天「初春」
初春「はい?」
佐天「ありがとね」
初春「なんのことですか?……私達に、そんな言葉は不要ですよ」
佐天「初春……」キュンッ
佐天「そういえば、どうして私が目を覚ましたこと知ったんですか?」
御坂「あー、それはほら、あの馬鹿から電話あってね」
佐天「……ああ、上条さんですか」
御坂「というか、佐天さん?私達より先にアイツに電話するなんて……ちょーっとひどいんじゃないかしら?」
佐天「え?あ、いやぁ、あれはですね、上条さんの安否を確認するためにですね……」
御坂「ん……どうしてずっと眠ってた佐天さんがアイツの体のことを知ってるの?」
佐天「え……なんで御坂さんが上条さんの体に何かあったみたいな言い方するんですか?」
御坂「……」
佐天「……」
御坂「……ま、お互い言いたくないことってはあるしね。どうして佐天さんが死に際をさまようほどの怪我を負ってたのかは聞かないけど」
佐天「(御坂さんが上条さんの体の具合を知ってる……ってことは、それって、もしかして―――!)」
御坂「だけど、これから何かするときは一人じゃなくて私たちもたよって―――」
佐天「おめでとうございます御坂さんっ!!」
御坂「……。はい?」
佐天「いやぁ、ついに上条さんに自分の気持ちを打ち明けられたんですね!しかももう肉体関係までもってるなんて!
さっすがレベル5!いよっ、このエロがっぱー!」
御坂「な、ななななな何いってんのよさてんさんっ!?に、にく、肉体関係ってそんなのあるわけないじゃない!!」
佐天「え、違うんですか?」
御坂「当たり前でしょうがっ!!」
佐天「えー。じゃあ結局好きって言えなかったんですね」
御坂「べっ、べつに私はアイツの、こと、を……好き、とか、その……」
佐天「(……。あれ?いつもと反応が違う?)」
御坂「好き……そっか……好き、なの、かな……」
佐天「……!?」
白井「なんでしょう。お姉さまが随分おとめちっくですの」
初春「なんだか面白おかしなことになってきましたよー」ワクワク
佐天「(なんだと……いったい私が寝ている間に何があったんだ……)」
御坂「好き……私は、アイツのことが……えへ、えへへへ、そっかぁ……そうかのかなぁ……」
佐天「あわわわわ、御坂さん顔!顔がにやけてます!!」
御坂「え?あ、あああうん、で、何の話だっけ?ああそうそう、アイツがね、佐天さんの目が覚めたみたいだから
って言っててそのその……」
佐天「御坂さんはもう駄目だ……おいていこう」
白井「お姉さま?どうしましたの……?……お姉さまー!?」
御坂「そ、そっか、私ってアイツの番号とかしってるのよね……これって、世間一般でいう、こ、ここっ、こいびと、とか……」
――――――。
初春「それはそうと、身体のほうは大丈夫なんですか?」
佐天「うーん、みての通り松葉づえつかなきゃ歩けないかな。あとは能力使えなくなったくらいで特には……」
初春「え……?」
佐天「……あ」
初春「佐天さん……能力使えなくなったって、それは、」
佐天「……詳しいことは、言えないんだけどさ。戦った相手が無茶苦茶強くて、能力失くすくらい頑張らなきゃ駄目だったんだ。
まあそれでも負けちゃったんだけどね」
初春「そんな……せっかく、念願の能力が手に入ったのに、そんなの……」
佐天「あー、大丈夫だよ、初春。無能力者、ってわけじゃないから」
初春「……?」
佐天「そっか、初春には、まだ説明してなかったよね。えっとね、実は私―――」
土御門「よっ、佐天ちゃん」
佐天「――-土御門、さん」
初春「……?お知り合いですか?佐天さん」
佐天「うん……ごめん、初春。ちょっとだけ、時間もらえる?」
初春「え?はぁ、それはいいですけど」
土御門「……良かったのかにゃー?」
佐天「ええ、まあ。―――、後方のアックアのことですか?」
土御門「え?いやいや違うぜい。ただのお見舞いだにゃー」
佐天「えっ」
土御門「佐天ちゃーん。そんな、俺が魔術がらみでしか話しかけないみたいな偏見はやめてほしいにゃー。
俺だって可愛い後輩のお見舞いくらい普通にくるぜい」
佐天「はぁ……それは、ありがとうございます」
土御門「ただ今回は別件もあってな。こうして二人きりになれたことは幸いだった」
佐天「(真面目口調に……)別件?なんですか」
土御門「ま、そりゃー病室に行けばわかるぜい」
土御門「それにしても凄いにゃー佐天ちゃん。まさか後方のアックアにあそこまで傷を負わせるなんて」
佐天「え……土御門さん、直接会ったんですか?」
土御門「マァネー」
佐天「あ!もしかして、私を病院に運んでくれたのって土御門さんだったりして」
土御門「んー、それも病室に行けばわかるにゃー。そうそう、奴から伝言預かってたんだにゃー」
佐天「奴って、アックアからですか?」
土御門「ああ。―――〝『Flere210』。次に会う時は、共に闘えることを願っている〟 だそうで」
佐天「Flere210、って―――魔法名、ですよね」
土御門「Flereの意味は『涙』ってとこかにゃー。どういう意味かはわからなんが、何か思い当たる節はあるのかにゃー?」
佐天「……さぁて。けれど、魔法名、ですか」
土御門「何を思って名乗ったのかは知らないけどにゃー」
佐天「―――まったく。最後まで、敵ながら本当に素敵な人だなぁ」
土御門「んんー?まさか、佐天ちゃんアックアのヤツを好きになっちゃったとか?」
佐天「あはは、そんなんじゃないですって。ただ、まあ―――もう一度会って、今度は何の関係もなく、お話してみたいですけど」
―――病室前
佐天「ん……扉の前に誰か……」
土御門「ありゃー俺の仕事仲間だから気にする必要はないぜい」
佐天「仕事って暗部のですか……て、アンタは!!」
結標「病院ではお静かに。その様子だと、身体は大丈夫みたいね」
佐天「あの時死んだと思ったのに……」
結標「失礼な」
土御門「とりあえず言っとくが、佐天ちゃんをここまで運んできてくれたのはコイツだぜい?」
佐天「えっ……そう、なんですか。……あの、ありがとうございました」
結標「うわっ、素直にお礼言われると気持ち悪い。別にいいわよ。それに、私だけが運んできたってわけでもないしね」
土御門「ま、それに関しては病室でのお楽しみ、ってことだにゃー」
佐天「はぁ……?あの、さっきから気にってたんですけど、そっちの方は?」
海原「どうも」
土御門「ただのロリコン。ちょっと前に義妹もちのシスコンってことも判明したんだにゃー」
佐天「ああ、ただの変態さんなんですね」
海原「ははっ」
結標「ほら、無駄話してないでさっさと要件終わらしてきてよ」
佐天「むぅ……性格が悪い感じは変わってないみたいね」
結標「みたいですね、でしょ。先輩には敬語使いなさい」
佐天「……みたいですね」
結標「うわっ、素直すぎて気持ち悪い」
佐天「土御門さん、私この人嫌いです」
土御門「安心しろ、口は悪くてもソイツもショタコンな変態だ。ああ、そういえば佐天ちゃんは弟いたんだったな」
結標「こんにちは、佐天さん。私は結標淡希。あわきんって呼んでくれて構わないわよ」
佐天「あ、ちょっと離れてもらえます?」
結標「そんなこと言わずに仲良くしましょうよ。佐天さんの弟さんはいつ学園都市にくるの?」
佐天「うわぁ……」
海原「あの、土御門さん、結標さん。病院内ではあまり人払いを長く続けていたくないのでそろそろ」
佐天「人払い……?変態さんって魔術師なんですか?」
海原「変態さんではなくてエツァリです。ここは海原と呼んでください」
佐天「じゃあエツァリさんで」
海原「あれ?この子性格悪い?」
佐天「だって変態さんですしぃ……」
海原「ああ、ご心配なく。僕は御坂さんにしか興味はありませんから」
佐天「うわぁ……御坂さんのストーカーだぁ……」
海原「ストーカーではないんですけどね。それはそうと、本当に早く病室にはいってもらえませんか」
土御門「そうだな。あまり時間も取れないし」
佐天「はぁ……あの、病室に何があるんですか?」
土御門「それは入ってみてのお楽しみ、ってことで。強いていうならそうだな……
―――受け取れ。素晴らしいプレゼントだ、ってトコかにゃー」
佐天「あ、それって【俺】の台詞なんですけど。まあいいや」ガチャッ
「――――――」
ドアを開けると、眩しいほどに清潔な白色で満たされて病室が目に飛び込む。
白いカーテンは秋風ではたはたと揺らめいて、白いシーツはシワもなく敷かれている。
窓から見える青い空は、真っ白な空間のただひとつのアクセントになって、その青をさらに強調している。
そんな爽やかな10月の中頃の病室に。
一人、イスに腰かける人が―――
「一方通行さん――――――」
―――私が救いたかった人。私を救ってくれた人。
ずっと追いかけ続けていた人が、静かに目をふせてそこにいた。
「――――――っ」
会えたら言いたいことがたくさんあったのに。
謝ったり、お礼を言ったり、ほかにもいろいろ。
だというのに、心臓が止まってしまったかのように胸は苦しくて、なのに動機は激しくて。
「あ―――――」
声が出ない。
言葉が紡げない。
気持ちを音に出来ない。
「……っ」
一方通行さんがイスから立ちあがる。
立ちあがって、伏せていた目を開いて、赤い瞳で私を見る。
表情は無い。いつもどおりの不機嫌そうな感じも無い。
始めて見る彼の顔に、なぜか心臓が高鳴る。
「……」
彼がこちらへゆっくりと歩いてくる。
本当に、あと一歩で私にぶつかってしまうくらいにまで近づいてきて、
ぱん、と
高い音が、揺れる脳に届く。
その後に、右の頬が痛くなってきて、平手打ちされたんだと気付いて、気付いた時には、
ぎゅう、って。
一方通行さんに、抱きしめられていた。
「馬鹿野郎が」
耳元で、感情を押し殺したような声で囁かれる。
私を抱いている腕の力は少しずつ強くなっていって、苦しいくらいだ。
「心配かけさせやがって」
「あ……」
どうしてかはわからない。
理由なんてしらない。
彼の体温のせいかもしれない。
私を想う言葉のせいかもしれない。
いろいろ混乱してて、自分の気持ちなんてさっぱりわからないけれど。
兎角、その言葉で私は―――
「―――ごめん、なさい。ごめんなさい、一方通行さん……ごめんなさい……ごめんなさい……」
――――――ちくしょう。
なんでかな。いろいろ終わったからかな。
今日の私は、本当に、泣いてばかりだ―――
ひとしきり泣いた。謝りながら泣いた。
その間、一方通行さんは何も言わずに抱きしめていてくれた。
彼のうっすい胸元に顔をうずめていたから、たぶん服は私の、まあいろんな体液でべたべたになってるかもしれないけれど。
それを特に気にする様子もなく、背中をさすってくれる。
「落ち付いたか」
「はい……」
返事をすると、私を抱きしめていた腕の力が抜けて、彼が離れていこうとするけれど、
「まっ、待ってくださいっ」
離れてしまう前に、私から抱きしめ返す。
いや、だって。
今の私の顔はきっとひどい。
だから、あんまり見られたくない。
「……このままで、いてもらっていいですか?」
「……おう」
返事をすると、一方通行さんは今度は優しく背中に手を回してくれて、頭も撫でてくれた。気持ちいい。
佐天「……えーっと、ですね」
一方「なンだ」
佐天「本当は色々言いたいことあったんですよ」
一方「そうか」
佐天「けど、さっきので全部忘れちゃいまして」
一方「ンで?」
佐天「だから、一番言いたいことだけ聞いてください」
一方「わかった」
佐天「一方通行さん―――私を守ってくれて、ありがとうございました」
一方「……ハッ、何勘違いしてンだか。俺は別にテメェを守ってやった覚えはねェけどな」
佐天「あー。すぐにそういうこと言うんですから。聞きましたよ私は。
『あァ―――理由なンざねェ。ただ、守ってやりたかった。それだけだ』(キリッ」
一方「忘れろ。今すぐ忘れろ。あれはただのその場しのぎの嘘だ」
佐天「え……そう、だったんですか……?
そんな……私、あの言葉のおかげで……」
一方「ゥ……」
佐天「だっていうのに……あ、あはは、そっか、そうですよね……私なんかが、一方通行さんに守ってもらえてるわけないですよね……
ご、ごめんなさい、調子のっちゃって……ぅ、ぅぅぅ……」シクシク
一方「~~~っ!あァ畜生!嘘ってのは嘘だよ!!」
佐天「ですよねー」ケロッ
一方「ぶっ殺すぞ」
佐天「うーん、このやりとりも久しぶりだー」
一方「ったく……馬鹿は死ななきゃ治らねェ、って言うが、あのまま一遍死んだほうがよかったかもなァ?」
佐天「ああ、その口ぶりだとやっぱり一方通行さんが私を病院まで運んできてくれたんですね」
一方「俺だけじゃねェがな」
佐天「結標さん、でしたっけ。かつての敵は今日の友、ってやつですか」
一方「別に友じゃねェ。ただの仕事仲間だ」
佐天「ふーん……お仕事、どんなかんじなんですか?」
一方「ンなもン聞いてどォすんだよ」
佐天「……別に。なんとなく、です」
一方「なンとなくで暗部の仕事なンざ聞くな」
佐天「そりゃそうですけど……でも、その、」
一方「……言っとくがな。確かにオマエを守るために暗部に入ったってのは事実だ。だがそれに対してオマエは別に何の責任を感じることもねェよ。
いろいろ俺も調べることがあったンでな。暗部に入らねえと解らなかったことだったから、ついでだよついで」
佐天「でも……」
一方「黙れ黙れ。今後一切この会話は無しだ」
佐天「……一方通行さんがそう言うならいいんですけど」
一方「それに別にこの生活もそこまで悪くねェよ。アイツら、あれで結構面白愉快なヤツらだからな」
佐天「おぉ……一方通行さんが他人をほめるなんて珍しい」
一方「褒めてねェ、こういうのは皮肉っていうンだ」
佐天「確かにストーカーにショタコンにメイドスキーに囲まれてたら退屈しそうにないですけど」
一方「そォいうこった。それに、ま。糸口は見つかったしな」ボソッ
佐天「?なんかいいました?」
一方「別に。おら、いつまでこうしてやがる。そろそろ離れろ」
佐天「う、え?だ、駄目ですっ!!駄目駄目ぜったい駄目!!」
一方「つってもなンか胸のあたりがやたら冷たくなってきてだな……」
佐天「~~~!ばかっ!!」どがっ
一方「オフゥッ!!て、てめっ……何しやがる……っ!!」
佐天「そ、そのままうずくまっててくださいね!!」バタバタ
佐天「(いまのうちに顔洗おう……)」ジャー バシャバシャ ゴシゴシ
佐天「やぁやぁどうも」
一方「アクセラチョップ!!」
佐天「いたい!ひ、ひどいです……」
一方「どっちがだ!いきなり人の鳩尾に拳いれやがって……て、オイ、お前その腕」
佐天「はい?……ああ、傷口開いちゃったみたいですね。あの程度で開いちゃうなんて……ま、しょうがないです。
どうやら致死性の少ない部分の回復は後回しになったみたいですし、もともと右腕は捨ててましたし」
一方「……ばかやろう、ンなことさらっと口にすンな」
佐天「すみません……でも、たぶん一方通行さんも会ったと思いますけど、あんな化物と戦って五体満足なだけで十分ですよ」
一方「ったく、馬鹿みてェに面倒事に首つっこむからああなるんだよ。反省したなら今度自粛しろよ」
佐天「はいっ。一方通行さんに助けてもらったこの命、無駄になんてできませんから」
一方「重い。そォいうのやめろ」
佐天「えー」
コンコンコンコン
佐天「ノック?」
一方「……そろそろ時間みてェだな」
佐天「え……」
一方「馬鹿野郎、ンな顔すンな。別に会えなくなるってワケじゃねェよ。そォだな、仕事が休みな日は前もって連絡してやる」
佐天「……約束ですよ?」
一方「あァ。あのクソガキとも約束したからな」
佐天「打ち止めちゃんですか……・そうだ!この前打ち止めちゃんと一方通行さんにご飯作りにいくって約束もしましたよね?
あの約束ってまだ有効ですか?有効ですよね?」
一方「……おう。またこっちの休みの時に連絡すっから、そン時に頼むわ」
佐天「へっへー、任せてください!とびっきりの料理作りますからね!コーヒー使ったお菓子もデザートで作りますから!」
一方「ハッ、そりゃ楽しみだ」
一方「さて、そンじゃまたな」
佐天「はい、お仕事頑張ってください」
一方「言われるまでもねェよ。……なァ、佐天」
佐天「え……?(名前を……)」
一方「俺はオマエを守る。俺は打ち止めを守る。俺は出来る限りの一般人を守る」
佐天「……」
一方「けどな、俺もこのザマだ。どっかで、オマエらを守りきれねえかもしれねェ。
俺の守りたいモノが守れずに、俺は壊れちまうかもしれねェ」
佐天「――――――」
一方「弱弱しいことを言ってンのは承知の上だ。だがな、俺はオマエだからこそこうして頼みたい」
「俺がオマエらを守るから――――――オマエが俺を守ってくれ」
―――世界が止まったかと思った。
彼の赤い瞳はまっすぐと私を捉えて、嘘偽りなんてひとかけらも無い。
「――――――」
目がしらが熱くなる。
一緒に戦いたくて、役に立ちたいと思って、その背中を追いかけてきた人に。
並んで戦えずとも、まさか背中を預けて貰えるなんて思ってなかった。
きっとその言葉は、打ち止めちゃんと、それから私自身を守れということ。
最後の最後まで、私達のことを考えてくれてるなんて、本当に優しい人だ。
「――――――、」
泣いちゃ駄目だ泣いちゃ駄目だ。
景色がじわりと歪むけれど、でもここで泣いちゃ格好がつかない。
どこまでも気丈に。この人が安心して戦っていけるように、私は笑顔で送り出さなきゃいけない。
「……っ。は、はは……あはは!任せてください!私を誰だと思ってるんですか!
ローマ正教の刺客と渡り合えたくらい強いんですよ?自分と打ち止めちゃんを守るくらい、どうってことないですって!」
戦う理由は大切な人の世界を守るために。
だから、一方通行さんの世界を守るために。
私は、全力で私達を守ろう。
「―――だから、安心して行ってきてください。それで、ぱぱっと面倒事を解決して、こっちに帰ってきてください」
「―――おう。よろしく頼んだぜ」
御坂妹「ひゅーひゅー、とミサカははやしたてながらベッドの下からこんにちは」
佐天「」
一方「」
14444「まったく、もう少しマシな隠れ場所は無かったんですか、とミサカは埃を払いながら立ちあがります」
御坂妹「贅沢言わないでください。むしろ、涙子が目を覚ましたことを知らせたことに感謝してほしいくらいです、と
ミサカも同じく埃を払いながら反論します。あ、ここ埃ついてますよ」
14444「こりゃ失礼、とミサカは素直に御礼をいいます……はて、どうかしましたか二人とも。そんな、
ハトがアハトアハト喰らったみたいな顔をして、とミサカは先週あたりのジャンプの内容を思い出します」
一方「お、おま、おまままままま」
佐天「みみみみみみみみみみさかちゃんっ!?」
14444「はい、ミサカちゃんです、とミサカは久しぶりの再開を嬉しく思いますよ」
御坂妹「ミサカのことは呼んでくれないのですかそうですか、とミサカは頬を膨らませます」プクー
14444「ところでそちらの、おまおま京都弁もどきを口にしているあなた、とミサカは真っ白セロリを指さします」
一方「誰がセロリだァ!!え、てか何?何してンのオマエら?」
御坂妹「何って、ねえ?とミサカは吹き出しそうな気持を抑えながら14444号へ視線を送ります」
14444「『俺がオマエらを守るから――――――オマエが俺を守ってくれ』(キリッ」
ミサカ「「(笑)」」
一方「……ッッ!!!ブッコロス!!」カチカチカチッ
佐天「わー!すとっぷアクセラレータさーん!!」
佐天「そ、それで、ミサカちゃん!一方通行さんに話しがあるみたいだけど!?」
14444「ええ、そうです、とミサカは一方通行を軽く睨みます」
一方「……なンだよ」
14444「涙子は貴方に任せました。泣かせたら承知しませんからね、とミサカは涙をぬぐって窓から飛び降ります」ばっ
佐天「ミサカちゃん!?ミサカちゃーん!!」
御坂妹「ご安心を。彼女もまた、成長したのですよ、とミサカは妹の成長を素直に喜びます」ホロリ
一方「オマエら妹達は成長すると窓から飛び降りるのか」
御坂妹「そういうわけではありませんよ、とミサカは何もわかっていないモヤシを蔑んだ目で見つめます」
一方「(うぜェ……)」
御坂妹「さて、ミサカはあの子を追いかけますが―――一方通行」
一方「ンだよ」
御坂妹「涙子のことをこれからもよろしくお願いしますね、とミサカもまた窓から飛び降ります」ばっ
一方「……」
佐天「……」
一方「……なンだったンだアイツら」
佐天「で、ですよね……」
一方「それじゃ俺は行くが、お前はしっかり怪我治しとけよ」
佐天「はーい。ではまた」
一方「おう」
パタン
佐天「……」
佐天「……くぁー!うー!うーうー!!」ジタバタジタバタ
佐天「『俺がオマエらを守るから――――――オマエが俺を守ってくれ』(キリッ」
佐天「だってさー!あーもーなんであの人はこんなに嬉しいこというかなー!!」バタバタバタバタ
佐天「えへへーえへへへへー。どーしよっかなー!うー、このパッションを誰かにぶつけたい!!」バタバタバタバタ
海原「……中が騒がしいんですが、何かあったんですか?」
一方「さァな」
結標「それにしてもアンタも大変ね。あんな子に振り回されて」
一方「年下のガキに振り回されるのは大人なら誰でも通る道だ。問題ねェよ」
土御門「かっこいいにゃー」
海原「ええ、かっこいいですね」
結標「かっこいいじゃない」
一方「……なンだオマエら。いつもと雰囲気が、」
三人「「「『俺がオマエらを守るから――――――オマエが俺を守ってくれ』(キリッ」」」
一方「」
三人「「「(笑)」」」
一方「……テッ、メェラアアアアアアアアアアアアア!!!」ファサー
土御門「やっべ結標テレポート頼む!!」
海原「僕もお願いします!!」
結標「オッケー」ヒュンッ
――――――
一方「ったく、アイツら……」カツカツ
一方「―――って、オマエは……」
御坂「……久しぶりね、一方通行」
一方「超電磁砲……」
御坂「佐天さんがやたらアンタに執着してたからね……どんな繋がりがあるか知らないけれど、見舞いに来てると思ったわ」
一方「……で?何がしたいンだ?」
御坂「……っ!!」ぐいっ
一方「っ!」
御坂「もし!!佐天さんを……私の親友を、また泣かせてみなさい!!何があってもアンタをブチ殺してやるんだからね!!」
一方「……ハ。オマエに、俺が殺せると思ってンのか」
御坂「知ってるわよ。アンタが能力の制限受けてることくらい……じゃなきゃ、こうして胸倉つかむことだって出来ないはずだしね」
一方「……」
御坂「別にあの子とアンタがどんな関係かなんてどうだっていい。あの子がそうしたいのなら、それでいい。
けどね、アンタはあの子に慕われたんだから―――私達より大事な存在になったんだから、ちゃんとその責任くらい果たしなさいよ!!」
一方「……いつまで掴んでやがる。いい加減離しやがれ」バッ
御坂「痛っ……ちょっと、アンタ!!」
一方「―――わかってる。俺はもう、アイツを泣かせたりなンざしねェよ」
御坂「……そう」
一方「じゃあな、超電磁砲。もう会うこともねェだろォよ」
御坂「……」
御坂「……何よ。絶対に許せないけど、でも―――思ってたよりも、アイツ……」
一方「……アイツらより、俺が―――」
一方「……は、そりゃあ嬉しいこったな―――本当に。……っと」
軍覇「よう、第一位」
一方「オマエ……久しぶりだな、第七位」
軍覇「あの研究所以来か?懐かしいな」
一方「別にオマエと思い出を共有するつもりはねェよ」
軍覇「はっ、相変わらず無愛想だな」
一方「で?何でこンなとこにいるンだよ」
軍覇「いやなに、ちょっと忠告というかな」
一方「忠告だァ?」
軍覇「あの佐天涙子って女の子のことだがな。えらくお前を心配してたぞ。
あんな少女を泣かすなんてただの根性無しだからやめとけ、ってな」
一方「……ったく。どいつもこいつも」
軍覇「ん?どうした?」
一方「なンでもねェ。安心しろ、俺は二度とアイツを泣かさねェよ」
軍覇「そうか。ま、お前ほどの力があれば問題ないだろうな。それなら安心して彼女を任せられる」
一方「……なァ、オマエまさか、」
軍覇「違う違う。そんなわけない。ただ俺は、彼女が根性のある人間だったから気に留ってただけだよ」
一方「……そォかい」
――――――。
佐天「……ふぅ」
佐天「よし、落ち付いた。さーて、と。初春はどこかなー」
佐天「お、いたいた。おーい、ういはるー」
初春「あ、佐天さん。もうお話は終わったんですか?」
佐天「うん、終わったよー」
初春「何の話だったんですか?なんかこう、スキルアウトみたいな格好してましたけど……」
佐天「あー違う違う。そんなんじゃないよあの人は。話の内容は教えられないけれど、でも私が元気になれたお話」
初春「そうですか。だったらいいんですけどね」
初春「それで、あの、能力がなくなったって話でしたけど……」
佐天「ああ、それなんだけどね。うーん、どこから説明しようか―――」
―――夏のあの日。
初春の一言で、私を変える三カ月が始まった。
失ったものは大きくて、得たものがそれに代えられるなんてことはないけれど。
それでも、この三ヶ月間は、無駄なんかじゃなかった。
「なるほどー。にわかには信じられない話ですけど……」
「でもまーほら、実際にこんな感じに」
「わわっ、ひやっこい?」
―――私の知らない世界で、私の幸福のために誰かが犠牲になっている。
そんな当然のことを、この身をもって感じて、そして覚悟の意味を知った。
答えを得て、本当の強さを手に入れることができた。
だから、これから先何があろうと間違ったりしない。そうやって、胸を張って言える。
風は強く、丘は長く続いているけれど。
辛い時は助け合って、私はずっと、その先を目指して―――
「それで、佐天さん。この能力って名前なんて言うんですか?」
「ん?言ってなかったっけ?この能力はね―――」
フラグメント
―――とある佐天の第四波動 おわり
774 : ◆oDLutFYnAI - 2010/08/11 00:28:10.38 H2LBgYco 1629/1891そんなわけで、後日談も含めて一方ルート一方エンドおしまいです。
以下本当に蛇足。俺のチラ裏だから見ないほうがいいよきっと。見たら気持ち悪くなるんだからね!!
まず佐天さんなんだけど、読んでくれた人はわかるように、一度も勝利してない。
これは『佐天涙子は何もできない無能力者』ってことが、何をどうしようと変わってないことを意味してます。
大覇星祭編で美琴に勝ってたのは、結果としては仲間2さんの功績だから別問題。
逆に、それと同じように、佐天さん自身は敵に勝てなくても、他の人が勝てるように手助けすることは出来るわけです。
だから本当に『何もできない子』じゃなくて、『誰かのためになら何かを成せる子』ってことになります。
まあ、そういうのを意識して書いてました。
性格モデルは、俺と同じ月厨ならなんとなくわかると思うけれど、元々の佐天さんの性格に士郎とシオンをプラスしてみました。
間違った思いに気づかないところとか、気づいてるけど無視してたところろか。
アックアと戦う前に、「私の三ヶ月間はこのためにあった!!」とか言わそうと思ったけど、そぐわないので却下。
途中随分壊れちゃったけど、平凡な中学一年生、しかも無能力者ってことにコンプレックスを抱いている子なんだから、
突然強い力を手に入れたらいろいろおかしくなっちゃうのも道理、ってことで。
結局、佐天さんは最後に自分の能力を失って、左天さんの能力だけが残りました。
これは、『いつまでたっても佐天涙子は自分の力で何かを成すことができない子』という意味があるんですねー。
きっとこれから先、ふと思い返せば自分の力は決して自分の力ではなく、借り物にすぎないということが
彼女の胸を締め付けることでしょうが、間違った道を歩んでしまった代償とはそういうもの、ってことで。
能力を失くす、ってのは、友人と禁書の話(21巻の予想)をしてた時で、
上条さんは記憶、一方さんは能力、じゃあ浜面は?ってことだったんですが、
そう考えると、物語の主役を演じた佐天さんも、禁書らしくなるならば何かを失うべきだと思って、
佐天さんが一番追い求めていた、コンプレックスの源である能力が今後一切手に入らないという形で失ってもらいましたとさ。
779 : VIPに... - 2010/08/11 00:42:38.05 H2LBgYco 1630/1891まだまだ続くよ蛇足その2
どうしてアックアとの戦いが最後かと言うと、これは本当になんとなく。
俺がアックア好きだったからかもしれない。21巻のアックアマジかっけぇ。
ただ漠然と、「あー、佐天さんの間違った気持ちを修正するのはどこでしよっかなー。
テッラさんとこ?いや、アイツは駄目だ。あんな魚くんじゃ。うーん、アックアでいっかな」
と思ってわけで。テッラじゃ精神揺さぶれても力量で心を折れないからね。
そういう意味じゃ、アックアさんは心も力も強い人だから、適任だった。
今思うと、VSアックアが一番思い入れある。うわーお!うわーお!
最後に、佐天さんが多才能力者になった件について。
佐天さんは自分の力じゃ決着はつけられないけど、他人の力のささえになることはできる。このあたりアニメ最終話と同じかしら。
それは、他人の力を引き出すってことであり、それに関する才能だけがずば抜けていた、って俺設定。
だから「頭の中に残った他人の才能を引き出すことに成功した」ってことでどうかひとつ。まあ脳ミソ壊れちゃったけど。
ちなみに、そのおかげで第四波動もすんなりつかいこなせてました。ブレイドは熱吸収が精一杯なのにな。
アックア戦は、途中わりとスパークスライナーハイをパクってます。気付いたよね。
セロリの「俺がオマエらを守るから――――――オマエが俺を守ってくれ」は、ご存じ武装錬金のパクリ。
あの台詞を読んだ時は泣いた。今回は前向きな感じで使ったけど、武装の中ではそういうわけじゃなかったんだよ……
780 : ◆oDLutFYnAI - 2010/08/11 00:43:38.29 H2LBgYco 1631/1891ん、まあこんな感じかしら。たぶん、書きたい蛇足は書き切ったはず。
さーて、延長戦突入といきますかー
俺は左天。名前は捨てた。拾う気はさらさらない。
夢から覚める為に、俺のちからを全てあいつに与えて、俺は消えたはずだったが―――
「……どこだここは」
俺は何処ともわからぬ白い平原にたっていた。
そらは白く、地面も白い。だというのに、境界と輪郭ははっきりしていて、本当に不思議な場所だ。
「うーむ、ここがあの世、ってやつなのか?だとすると、随分と面白みの無い……」
無い場所だ、と言い結ぶはずだった口が止まる。
辺りを見回していた俺の目にとびこんできたものは、まぎれもない。
能力をあたえた、あの娘だったからだ。
「―――ようこそ。めくるめく、涙子ワールドへ」
奴は白いイスに座りながら、随分とまあ扇情的な衣装に身をつつんでそう言ってきた。
「……何してんだおまえ」
「んなっ!せっ、せっかくこうして色気たっぷりで出迎えたっていうのに!!」
「ガキに色気も何もねぇよ」
「もー……」
何かぶつくさ言いながら、自分の姿を眺める。
いや、そんなことより。
「おい、涙子……ここはどこか?なんでお前がいる?」
「へ?そりゃあここが私の心の中だからですよ」
「なんだと……?」
それはありえない。何故なら俺は完全に消えたはずだ。
だから、こいつの心にこうして意識をもって現れることなんて出来ないはずだ。
「おっ。驚いてますね、左天さん」
「まぁな……どういうことか説明してくれるか」
「別に、難しいことじゃないですよ。ほら、左天さんって結局第五波動は継承してくれなかったじゃないですか。
最後に、私が自力で引き出さなきゃならなかったみたいに」
「……ああ、確かにそうだな」
確かに、俺は第五波動とエデンズシードの要素は直接与えなかった。
あれは体には毒だ。適応しなければ腐って死ぬ。
そんな危険なものを、渡したくはなかったのだ。
「だから、そんな感じに、まだ左天さんが恣意的にしろ無意識にしろ、継承せずに残しておいたかけらがあると思ったんです。
で、それをかき集めて、こうしてもう一度お話しできる機会をつくったってわけですよ」
まあたぶん、これ一回きりですけどね、とやつは続ける。
なるほど。確かに、それなら納得できないこともない。
「だが、なんのために?」
「……私は、左天さんに言わなきゃならないことがあったんですよ」
いつのまにか、涙子は自分の服装を、見なれた制服に交換していた。
おそらく、心の中だからこそできる芸当だろう。
涙子は、泣くわけでもなく、実に穏やかな顔で俺を見上げる。
けれど、その目には強い意志が見受けられた。
一息呼吸をおくと、涙子は意を決したのか口を開く。
「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」
「――――――」
お兄ちゃん、か。
まさか、またそうやって呼ばれるとは、夢にも思っていなかったな。
「私のこの力は左天さんのものだから―――他人の力にすぎないから。
だから、私は私のために力を振るうんじゃなくて、誰かのためにこの力を振るっていこうと思います」
「……ああ、いいんじゃねえか。それで」
「今までずっと間違ってきましたけど――――――もう、間違えませんから」
「――-ああ。頑張れよ」
そういう涙子の目は、本当に力強い。
ああ、大丈夫だ。
こいつなら、俺のようにならずに済む。
これで安心して、向こう側へいける―――
「……そろそろ、みたいだな」
自分の体が端から霧になっていく。
当然と言えば当然か。何せ、本当に残りカスを集めたようなもんだからな。
「そうみたいですね」
そんな俺を見て、涙子はやはり穏やかな表情のままだ。
「……強くなったな、涙子」
「そんなことないですよ―――本当に、今にも、泣いてしまいそうです」
―――。
なるほど、確かに。
目が随分とうるんでやがる。まったく、泣きたい時くらい泣けばいいものを。
「……それじゃ、俺はこっちだから」
「ええ、私はこっちなので」
まるで帰宅する際の分かれ道でお別れするかごとく、軽い調子でいい合う。
俺の後ろには涙子がいる。ぴたりと背中をつけて、まだ歩きださない。
そうか。まだ、一人で歩きだすまでには行かないか。
しょうがねえな。だったら、俺が背中を押してやろうか。
「―――じゃあな。達者で」
「はい―――お元気で」
そう言って、俺は涙子の背中を押して、同時に前へ走りだす。
互いに振り返ることはない。
姿を確認し合うことはない。
きっとあいつの歩み道は辛く険しい。
だが、あいつの周りにはあいつを想ってくれている人がいるはずだ。
だから俺が心配することなんて無い。
さて、少し疲れたな。
俺も、あるべき場所へ帰るとするか――――――