【パート1】 【パート2】 【パート3】 の続きです。
409 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/01/31 21:41:28.33 b/yNqukd0 290/386


おさかな目録?はフィクションです。

なんとなく最初に注意書きをしたほうがいい気がした今回のおさかな話
テーマは「撞着」です。寛大な心でご覧下さい

410 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 21:43:04.06 b/yNqukd0 291/386


                                  ☆

「なあインデックス。こないだ話してた『上条さんの魔術講座』の受講希望者募集だけど、お前の言うとおりだったな…」

「とうま……、当たり前なんだよ。魔術知識が一切無いのに素人の魔術解説に興味がある人、なんて居るわけないかも」

「う~ん、魔術にそれと知らず触れちまった知り合いの心当たりは少なくなかった。だけど誰も本気で信じてないんだよ」

「この都市の人は現状、魔術のことを学園都市以外で研究されてる超能力の一種だって誤解してるんだったよね?」


「誤解って言うけどな、人の認識ってのは一度確定してしまうと覆すのは容易じゃない。例えばご飯のニオイの話とかさ」

「えーと……、日本人は炊き立てご飯の香りって大好きだけど、とある国ではアレはただの悪臭ってこととか?」

「他にも、そーだな……。マツタケの学名ってたしか日本語訳が『ゲロ以下のニオイがプンプンするキノコ』だろ」

「どっちも多くの日本人には許容出来ないイメージかも。でもそう思ってる人は世の中に少なからず居るんだよね」


「ひとつの物事に相反する認識があって、互いに歩み寄るワケにいかないとなると……。必然、無視か対立が起こる」

「……? んー? ……突然よくわかんない展開かも」

「つまりだな、それが吹寄や白井や海原光貴、それに災誤先生に俺の誘いがまともに伝わらなかった理由じゃないかと」

「……。とうま、ムリして難しい理屈を捻り出すまでもなく、もしかしてただ単に人を見る目が無いんじゃないかな……」

姫神「(……今日は口を挟まない。多分。悲しくなるだけ)」


「聞こえてるぞー。まあ、そんなワケだから一端保留して気分転換に明るいおさかな話でもしようぜ!」

「うんうん。考えすぎた挙句に出た答えって大抵つまんないからね。行き詰ったら引き返すのが賢者の道なんだよ」

「一事が万事そうじゃないけどな。さて、じゃあ今日のテーマは何にするかな……」

「こないだ節分イワシだったから次は当然決まってるんだよ! 主にカレンダー的な理由かも」


「ん? 2月の、節分の次の行事……、ああ立春か」

「そうそう、春来たと目にはさやかに見えずともやっぱり寒いよまだ真冬かも……って違うよ意味わかんないよ!!」

「じゃあ建国記念の日?」

「なぜ2月11日なのか、なぜ建国記念『の』日か……、とうまバカなの!? 薄々そうじゃないかとは思ってたけど!」


「冗談だって、そう怒るなよ。頭にバの付く、カカオの香りでヤロウどもが一日中落ち着きを失う例のアレのことだろ?」

「分ってるならどうしてイジワルを…、 …………あ、とうまひょっとしてひとつも貰えないかもって拗ねてる?」

「そうだよ期待してねーよ悪いかよ。どうせ上条さんはモテないしあんまり学校にも行ってなかったし……」

「そこは安心するんだよ!! ……今年は身近に居る素敵な誰かさんから1個は確実にもらえるかも?」

姫神「2個かも。……///」


「……お前たちに予知能力でもあるなら嬉しい予言だな。でも気遣いは有難いけど根拠が無いんじゃなあー」



『…………』







411 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 21:44:15.65 b/yNqukd0 292/386


「ま、それはいいからさっさと本題に入ろうぜ。結構ムチャなお題だけどインデックスには何か心当たりがあるんだろ?」

「……あ、うんもちろん! ちょっとベタかもだけど、名前にチョコが入ったお魚がいるでしょ?」

「チョコ…………? あー、観賞魚には疎いから良く知らないけど、人気のある熱帯魚にそれっぽいのが居たような…」

「たぶんとうまの想像通りかも。正式な名前じゃなくて俗称なんだけど、チョコレートシクリッドって子だね」


「ふむ、確かそんな名前だったような。チョコのような赤っぽい体色の……、外来魚のカワスズメみたいなヤツだろ」

「シクリッドってカワスズメのことだから当然かも。ただ体色はコロコロ変化しちゃうんだけどね」

「ふーん。ヨシノボリみたいに興奮すると色が変わるってことかな。にしてもクリスマスに続いてまたカワスズメって…」

「十字教に縁の深い魚なのかもね。……、そんなに心配そうな顔しなくてもペテロの魚の話はしないかも」


「そうしてくれ。あんなディープな話題は扱えないからさ……。でも、不思議だな」

「ん? 何が?」

「いや、14日は十字教的には大切な日なんじゃねーの? シスターのお前が日本のお祭りムードに浮かれて良いのかなって」

「……んとね、かの聖人の実在は旧教的には認められていないの。つまり必ずしも宗教性が高い日だとは言えないんだよ」


「へっ?」

「あ、勘違いしちゃダメなんだよ。もちろん信仰の対象として、また魔術的に重要な位置付けであることは間違いないの」

「なんだよそれ? じゃあ、兵士たちを秘密裏に結婚させたことを理由に処刑されたっつー話はデタラメなのか?」

「彼の名を聖人暦に戴く私の口からそこまでは……。ただねとうま? その日に贈り物をする風習は世界に広がったんだよ」


「うん、まあ……。それで?」

「そして国ごと、土地ごとでそれぞれ独自に発展していったの。日本のやり方だってその一例なんだよ」

「いや言いたいことがサッパリ判らないぞ? つまりどういうこと?」

「だーかーら、正式なやり方が無い以上、私の考えをこの国で主張したってそれはご飯は臭いって言うのと同じなんだよ!」


「えっと……、つまりアレか。郷に入っては郷に従うってコト?」

「ついでに、とうまたちは敢えて海外のやり方にあわせる必要なんて無いってこと。クリスマスだってそうかもね」

「違いを知っておくのは大切だけど、だからって自分たちが間違ってるとかネガティブに考えるな、と……」 フム

「チョコレートシクリッドは普通エメラルドシクリッドと呼ばれるの。でもどっちが、じゃなくてどっちも正解なんだよ」



「ふーん、最後に再びおさかなを持ってくるとはウマイこと纏めたな」

「うまくて当然かも。だってチョコレートが美味しいのは万国共通の真理だもん。……、おあとがよろしいかも!」







412 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 21:45:33.68 b/yNqukd0 293/386


                                    ☆

佐天「つまりですよ? 有限の生命に無限の存在が取り込まれる意義はですねえ…」

御坂「いや、でも無限なのよね? だったら宿主が死んだって、って言うかそっちのが自由になれてお得じゃないかなあ?」

白井「まだそのトンデモSF話、続きますの? こっちは正直飽き飽きしてるんですの」

初春「ふたりとも集中すると周りが見えなくなっちゃいますからね……。もっと中学生らしく浮いた話とかしたいですけど」

 ガッッッ!!

佐天「今っ!! 今、何て言った初春!? あんたまさかあたしに内緒で特別な好意を向けるべき対象(男性)が???」

御坂「ホントに!? 何よステキじゃない!! ねえねえ聞かせて聞かせて!どんな人ドコが好きドコまで行った???」

初春「……、違いますよー。そういう話が出来たらいいなって言ったんです。皆さんも相当興味があるみたいですけど……」

白井「食いつきが異常ですの。先程までの話題が遠く銀河の彼方へ光の速さの数倍で吹っ飛んでいきましたわね」


御坂「何よー? そりゃ、私だって女の子だもん。誰が誰を好きとか、そういうの聞いたら黙ってられないわよ」

佐天「まぁ…………、ですよね」

初春「ええ…………、同意です」 ウン

白井「……、真に遺憾ですけど正直腹に据えかねますけどお姉様。それ、フリですの?」


御坂「ふぇっ? あっ……、なっ、何をアンタたちが考えてるか見当も付かないけど私はあんなヤツのこと全然……!!」

佐天「……、(ダメだこの人も)」 カワイイケド

初春「……。(成長してませんね)」 マッカデスネ

白井「……まあ、精神的にも既成事実的な進展も一切無いということで納得しておきますの」 ケッ



御坂「……だってさ、……、いや私とアイツは考えが、……だからって、でも……、」 ブツブツブツブツ



佐天「あらら。御坂さんしばらく使い物にならないですよ、これ」

白井「全く。人外の演算能力を持つが故に答えが無い問題にさえ真正面から挑んでしまう。高レベル能力者の悪い癖ですの」

初春「円周率の最後の桁、数字は何? みたいな感じですかね。ほぼ3で演算終了したって全然構わないのに」

白井「常人と異なり、苦悩の末に最後の数を見つけてしまうのが超能力者ですの。……、今は見つけちゃダメですけども!」


佐天「ふ~ん。それって信念とか強いココロってヤツですよね? 自分だけの現実を作るのに必要って言われる…」

初春「佐天さんがちゃんと覚えてた……、明日は記録的大雪ですかね?っていきなりヘンなトコ触らないでくださいっ!!」

佐天「あんたねえ、私だって真面目な時はマジメなんだから茶化さないでよ! 次は容赦しないからねええええ」 ワキワキ

白井「乳児体型の初春のドコ触ったって何の違いもありませんけどまあ、佐天さんの仰ることはひとまずそれで宜しいかと」




413 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 21:47:30.07 b/yNqukd0 294/386


佐天「なるほどね。円周率は無限小数だって決め付けてしまわないで、限界を超えて計算してみるような姿勢かあ……」

初春「みんなヒドイです……。でもそれってつまり、常識を疑えってコトになりますかね?」

白井「観念的に全てを説明できるわけではありませんけど、まあ近い感覚かもしれませんわね」

佐天「疑って終わり。じゃなくて、自分なりの答えを出していってそれを以って世界を再構築していくってことかな?」


初春「何だかファンタジーな表現ですけど、そうして世界を遍く掌握した者がレベル5ってことなんですかね……」

白井「さあ? わたくしもそこまで至った訳ではありませんし。ですけど、それには更に先があることは予想できますの」

佐天「ん? 先って……。ややこしくなってきたなあ……」

初春「ん~……、全てを疑って全てに答えを出してきたわけだから……。あっ! 疑い、答えを出す主体ですかね!?」


白井「たぶんそういう事になるんではないかと。全てを知るはずの自分全てを疑う……、絶対に答えの出ない難問ですの」

佐天「って、ちょっと待ってくださいよ!? そもそも自分を強く信じることが能力の根幹なんでしょ?」

初春「自分で築き上げた世界を、その確固たる絶対の指針である自分も含めて全て疑う……、あれ?」

佐天「おかしいよね。だって自分は間違ってるかもしれないって考えるのも自分。じゃあ疑う自分も疑わなきゃいけない…」


白井「有名な『私の話は全部嘘です』という文句みたいなものですわね。それが嘘なら彼はホントのことを語っているはず」

初春「となると、やっぱりこの人の話は嘘だということになる……。永遠に堂々巡りですね」

佐天「それじゃ能力開発の行き着く果ては、矛盾だらけでウジウジと悩み続けざるを得ない行き止まりなんですか?」

白井「いえ、そんな段階まで到達した方には心当たりがありませんからコレはあくまでも私たち程度の者の想像の範疇」

初春「そうですね。つまるところ円周率も割り切れない私たちでは見ることすら叶わない領域かもしれません」

佐天「あー、やっぱそれ系の結論になっちゃうワケか。まあ、その行き止まりを越えちゃったら神様以上ってことだもんね」


白井「……、確かにある意味で造物主たる自分を疑い、正しい答えを出せたなら神を超えたと言って差し支えないですが…」

初春「この場合、神を超えたものってやっぱり神じゃないですか? 少なくとも私たち凡人からはそう見えます」

白井「超えたところで何も変わらないであろう事が始めから予測出来てる壁など、果たして越える必要があるでしょうか?」

佐天「え~っ、と……。まさか更に先の展開まであるとは思わずテキトーに喋っただけなんですけどー……」 マイッタナ



「……あのさ、アンタたちいつまでその話題続けるわけ? 入るタイミングが全然わかんないんですけど?」



佐天「みみみみみみ、御坂さんっ!復活待ってましたよおおおお!!! 早くこの場の空気を何とかしてください!!」

御坂「ほら、佐天さんずっと困ってたじゃない……。頭の中の話なんて所詮メルヘンなんだからあまり考え過ぎちゃダメよ」

白井「お姉様だけには言われたくないですの……」 ブスー

初春「ああ、これが自分だけは正しいって思考なんですかね……」 シラー




414 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 21:50:35.77 b/yNqukd0 295/386


御坂「な、何よ……。い、良いから話を変えるわよ! えーっと、おさかなと矛盾とメルヘンで、はい佐天さん!」

佐天「なんですかそのムチャ振りはっ!? ええと……、ん~……、メルヘン……、おとぎ話? 恩返し……」

白井「ふむ……、恩返しと言えばわたくし、前々から納得出来かねている表現がありますわね」

初春「白井さんの振るネタはつまらないのが多いですけど、この際だから我慢します。一体どういうことですか?」


白井「初春、後で屋上ですの。それはさておき、たとえば鶴の恩返しと言う昔話をご存知かと思いますけど」

御坂「おとぎ話ではトップクラスの人気作じゃない。アレに何の文句があるのよ?」

佐天「罠に掛かった鶴を助けた男に、その鶴が恩を返す。良い事をすると良い事があるよって教訓ですよね」

初春「……のぞきダメ、絶対! と言う白井さんこそ読むべきお話……、あの、調子に乗りましたごめんなさいすいません」

白井「ったく。……ま、それとともに命の大切さを伝える話でもありますわね。鶴を救ったことが良いことならですけど」

佐天「ん? 良いことに決まってるじゃないですか。人だろうと鳥だろうと命は掛け替えの無い宝物ですもん」

御坂「……、なるほどね。黒子の言いたいことが分ったわ。どんな命も大事と訴えながら鶴を助けた矛盾……か」

初春「へ? 助けちゃいけないんですか?」


白井「まず第一に、鶴は罠に掛かっていた。罠を仕掛けた狩人は獲物を失ったわけで、この責任は償われておりませんの」

佐天「ああ、確かに生活が掛かってるはずの狩猟を邪魔してますね……。これは良くないかも」

御坂「それだけじゃない。鶴、おそらくここではタンチョウだと思うけど、雑食性の長生きで大きな鳥よね?」

初春「……鶴を助けたことで将来的にたくさんの別の命が鶴の食料として消費されてしまうことになる、って事ですか」

白井「浦島のカメなども多くの魚を食べて長生きするのでしょうし、単純にめでたしめでたしなのかは疑問ですわね」

佐天「ひとつの命を守ることが多くの命を見捨てることに繋がるのに、あたしたちはそれが良いことだと誤解してた……?」

御坂「いや、深刻に考える必要はないわよ。命を救うことはその命にとって良いこと。それ以上でもそれ以下でもないの」

初春「優しさは他人を殺める、って感じですね……。あれ? ところで今の話、おさかな出てきました?」


白井「ここからですの。鶴にとって小魚は単なるエサ、ですが彼らもただ食べられるのを待つばかりではありませんのよ」

御坂「ん? ああ、ちょっと前に問題になってたアレね。ドジョウが大好きな絶滅種の鳥、トキのことでしょ」

初春「ドジョウやフナなどコイ目の魚が持つビタミンB1を破壊する酵素が原因で、なんか酷くバテちゃったんですよね」

佐天「栄養バランスの良いエサがちゃんと用意されてるのに、敢えてドジョウばかり食べて体調崩すなんてどんだけ…」

白井「一般的にコイ目は川や池で最も数が多い種。ですから彼らは他の生物にとって身近で手軽な栄養源なのですけど」

御坂「いくらでも居るからってそればっかり食べてるとやがて食欲が落ち背骨が変形し、挙句に心不全とかでポックリと」

初春「ふむふむ。確かに『自分たちしか食べないような生き物の存在を許さない』って強い意志がある気がします」

佐天「でも強烈な毒を持つとかして『絶対に喰われてやらない!』って進化じゃないのが何て言うか……、健気ですね」


御坂「もちろん魚自身が考えた結果じゃあないけどね。……、でもこれってさっきの矛盾に対する答えになるんじゃない?」

佐天「あるがままを拒み、あるがままを受け入れよ……、とか? 自分で言っておいて全くサッパリ意味不明ですけど」

初春「生きながら死んでるネコなら知ってますけどね」







415 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 21:53:29.21 b/yNqukd0 296/386


                                      ☆

打ち止め「ねえねえ、海のパイナップルで御馴染みのホヤってさ……、ぶっちゃけ全然パイナップルじゃないよね?」

一方通行「……、確かに。大抵その手の異名ってのは実像以上にイメージを膨らませがちなモンだが、アレは段違いだ」

打ち止め「海産物即売所で子供が『ママ、ぱいなぷつるだって。ボク欲しいよー』とか言うからなんとなくお土産にして」

一方通行「その日の夕食で悲劇ってか? 知らねェヤツにとっちゃホヤの破壊力は並じゃねェからな……」


打ち止め「いわば魔女っ子の皮を被った極め技師だよねってミサカはミサカは叙情的にたとえてみたり」

一方通行「……、フリフリ衣装のカールゴッチ……とか、か? その喩えがドコを目指してンだか欠片も見えねェが」

打ち止め「……あなたならこの強引な進行の意図に気付くと思ったのに、ってミサカはミサカは軽く失望してみる」

一方通行「勝手に買い被ンなよ。オマエの行動予測なンて無益な演算するほどの余裕は今も昔もこれからも無ェ」


打ち止め「おぉっ、それって『俺たちの未来は神様のサイコロ通りにゃさせねえぜっ!』っていう一種のプロポーズ?」

一方通行「何を愉快にノボせてンだこのクソガキ。つまンねェ冗談ほざく前にさっさと用件を済ませろ」

打ち止め「もうっ! 良いよ、じゃあ聞くけどそんな風に実物とかけ離れた異名を持つおさかなって他に何がいる?」

一方通行「ンだよコロコロ機嫌上げ下げしやがって忙しいヤツだなオイ……。それはともかく、偽りの看板な魚か……」


打ち止め「既成概念を打ち壊すようなパンチの効いたお話を期待ってミサカはミサカはハードルを上げてみたり」

一方通行「注文が多いぞフザけンな! そォでなくともチト無茶なテーマなンだから黙って待ってろよ」 ンー

打ち止め「……、難しいなら違うお題でも良いよ?ってミサカはミサカは微妙な優しさもアピールしてみる」

一方通行「何度も言わせンな黙れつってンだろ」 エート


打ち止め「でもミサカが一言も喋らなかったら話が成立しないよ?ってミサカはミサカは冷静に問題点を提示してみる」

一方通行「ウゼェにも程があンだろォが!? チッ……、どォにも絡むの止めねェ気なのは分ったから好きにしろォ……」

打ち止め「うんうん、人間関係ってウザいのが普通なのってミサカはミサカは一面の真理を突いてみたり」

一方通行「……コレが普通とは光の当たる世界ってなァ想像以上にアクが強ェンだな……、分った。出来る限り善処する」 









416 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 21:56:24.71 b/yNqukd0 297/386


一方通行「そンじゃまァ、思いつくままテキトーに挙げてく。まずはメジャー過ぎかも知れねェが『ハダカカメガイ』だ」

打ち止め「またの名を『流氷の天使☆クリオネ』だねってミサカはミサカは追随してみる」


一方通行「クリオネっつーのも確かギリシア神話の歴史を綴る女神の名が元ネタ……、妖精だったか? まァその辺だ。

     指先ほどの大きさに過ぎない一種のプランクトンだが、中心に赤を据えた透き通るテルテル坊主のよォな体。
     その胴体のちょうど肩に当る場所から両に伸びる翼状の足を揺らして優雅に泳ぐ姿。
     頭部の先にチョコンとツノのようにくっついてる2本の触覚。
     まさに自然の造形意匠ここに極まるってトコか? シンプルでありながら異世界を感じさせるキュートなヤツだ。

     和名ハダカカメガイはそンな神々しく幻想的なイメージを随分と乱暴に傷付けてるワケだが
     却ってコイツが貝、巻貝の一種であることを簡潔に示してンな。
     漢字で裸亀貝ってのはおそらく、亀の甲羅を引っ剥がしたらこンな感じっつートンデモ発想が由来だろ。
     一応言っとくとカメの甲羅は肋骨や脊椎と皮とで出来てるンで、脱がせたら極彩色の中身が丸見えだがな。

     ついでに、巻貝である証拠にコイツは孵化から数週間はちゃンと殻を持ってる。成長の途中で捨てンだな。
     貝が外殻を失うのをナメクジ化っつーだろ? だからクリオネとはどンな生物かと問われたら
     『甲羅を剥がしたカメのよォなナメクジ化した巻貝の一種』って答えてやれ。誰にも伝わらねェだろォが」


打ち止め「うん、その説明じゃあ『なにそれ?』だよ。あと有名だけど、過激なお食事風景はホントに怖いよね」

一方通行「頭部の触手がまるで花が咲くよォに一気に開いて獲物を優しく抱き、そいつの養分を吸収する」 コレナラドォダ?

打ち止め「いやそんな表現してもやっぱり怖い、とミサカはミサカはバッカルコーンの響きが耳から離れなかったり」

一方通行「まァな。厳しい冷海に居るだけにエサだってまともなモンがねェから、殆ど共食いに近い食性らしいしな」

打ち止め「あんなにカワイイのに知れば知るほど凄い子なのね、とミサカはミサカは無難な感想を述べてみる」



一方通行「ンで次は……、そォだな。『キノボリウオ』の話でもするか」

打ち止め「キノボリって、木登りするの? おさかなのくせに随分ワイルド アーンド ダイナミックな子なんだね」


一方通行「イヤ、登るワケねェだろ。看板に偽りがある魚の話なンだからちっとは気付けよマヌケ。

     キノボリウオはアジアの熱い地方の淡水に棲む現地ではそォ珍しくもない20cm程度の魚だ。
     日本ではコイツの近縁なベタとかトウギョって呼ばれる観賞魚が良く知られてると思う。
     他にも何とかグラミーと呼ばれるヤツらとかタイワンキンギョとか、コイツの仲間は派手なナリのが多い。
     季節的にはチョコレートグラミーなンてのも居るな。かなり飼育難易度が高い魚なンで安易な入手は禁物だが。

     で、キノボリウオも鑑賞用に食用にと人間との関わり合いが深い魚なンだが、
     さっきも言ったよォにエッサホイサと木に登る習性があるワケじゃねェ。
     
     ベタの近縁だって話をしたが、どンな魚か知ってンだろ? そォ、コップの中で飼える熱帯魚だよなァ。
     観賞魚は溶存酸素量が低い環境では生きらンねェのが普通だが、その意味で最悪なコップなンて馬鹿げた容器で
     ベタが飼育可能な理由は、エラ蓋の中にラビリンス器官っつー特殊な呼吸器官を持つことで空気呼吸が可能な為。
     水中だけでなく空気中からも呼吸を確保することで劣悪な環境に耐えてるってワケだ。

     そのベタと同じ器官を持つキノボリウオ、言及がしつこくなるが木登りが可能な体の構造してるワケもなく、
     陸地に上がるったって、せいぜい岸辺の石ころの上で一休みって程度のモンだ。じゃ、名前の由来はなンだ?
     明らかになってるワケじゃねェが、一説に拠るとこォだ。鳥が咥えてきたコイツをうっかり落として見失った。
     そいつが枝の上で生きてるトコを見つけた誰かが、木登りする魚だと誤解した。……まァ、無い話じゃねェな」


打ち止め「空気呼吸が出来るから枝の上でも息が続いてて、それが水場から離れてたら誤解したってしょうがないかもね」

一方通行「今ではキノボリウオ亜科には100を超える種が登録されてる。当然一種たりとも木には登らねェがな」

打ち止め「それはまたなんとも困った展開だね……、ってミサカはミサカは嘆息してみる」

一方通行「付け加えると、ドジョウもそォだがコイツも空気呼吸に依存する割合が高い。つまり…」

打ち止め「空気が吸えないと溺れちゃうってこと? ってミサカはミサカはそれ既に魚じゃないかもと極論してみたり」







417 : 撞着[saga sage] - 2012/01/31 22:00:20.72 b/yNqukd0 298/386


番外個体「じゃあ今日からソイツをキノボラズウオモドキと呼んでやろう」

芳川桔梗「冗長ね。名付けは出来る限りスマートであるべきなのよ。だからニセキノボリウオが良いんじゃないかしら」

打ち止め「そういう話じゃあないと思うけど……」

一方通行「別にイチャモン付ける気はねェからな。……アレだ、ホタルイカとホタルイカモドキの関係だ」


芳川桔梗「ええと、発光することで知られるホタルイカ。ホタルイカ漁で混じって獲れるホタルイカモドキ」

一方通行「両者は似てンだがモドキはあンまり旨くねェらしい。それはともかく、ホタルイカはホタルイカモドキ科だ」

芳川桔梗「日本での発見順序と海外でズレがあったからよね。世界的にはモドキが基準になっているのよ」

一方通行「ホタルイカモドキ科にはニセホタルイカなンてのもいる。更に紛らわしいが、結局それが面白いンだよ」


打ち止め「あれ、なんでだろ? って思って調べ始めると深みに嵌ってく感じだね、とミサカはミサカは推測してみる」

芳川桔梗「名前なんて所詮人が付けたものに過ぎない。だけれども、いえ、だからこそドラマがあるのよ」

番外個体「芳川のクセにナマイキな。単純にビミョーな命名センスのヤツを探して笑ってやろうってんじゃねーの?」

一方通行「何でも良いンだよ。楽しければソレで……、つーかハッピーにルンルン出来ればココロウッキウキだろ」


打ち止め「……、何その似合わないセリフ? ってミサカはミサカは思わず寒気を感じて訝しい目を向けてみたり」

番外個体「さてはキサマっ、敢えて貧弱白モヤシに化けてこの家に乗り込んだ一方通行モドキだな!!」

芳川桔梗「そんな展開も面白いわね。ニセ第一位vs本家、夢の対決……。幸い、棒人間でリアルにシミュレート可能だわ」







一方通行「なるほど…………、やっぱり普通ってウゼェモンなンだな」 シミジミ





  ~おしまい~








418 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/01/31 22:23:47.88 b/yNqukd0 299/386


以上第三十三回「撞着」でした。どこかみんな変、でもそれでこそ普通っていう・・・


今回は細かく補足するとやぶ蛇になっちゃいそうなのでさらっと

第一パート、マツタケの学名の日本語訳、正しくは「吐き気を催させるキシメジ」だそうな・・・だいたいあってる

第二パート、フナとかコイを人が食べたら害があるという事じゃないのでご注意を

第三パート、一回だけホヤが美味しいと思ったことがあった気がする、一回だけ


そんな感じで今回は投げっぱなしが多かったかな・・・と思いつつこの辺で。ではではまたー


424 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/02/07 20:19:40.16 EdJ+Y5420 300/386


レスを戴いて、唯一の美味しいホヤ体験は東北通過時だった気がしました。もう一度確めたいな・・・

そんな今回のおさかな話は、噛みあわない会話でいつも以上にテンポが悪い。特に第三パートがイレギュラーな感じでヒドイ。
その辺りを薄目で楽しんでいただけたらいいかと思います。テーマは「逆転の発想」です。ではどうぞ



426 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:24:52.67 EdJ+Y5420 301/386


                                       ☆

「なあインデックス、トラウィスカルパンテクウトリの槍って覚えてるか?」

「とうま? 私には完全記憶能力と103000冊の魔道書の知識があるから当たり前なんだけど、とうまこそ良く覚えてたね」

「上条さんには無意味な文字列を目的も無く暗記するクセがあんの。ま、それはどうでもいいんだけど」

「そういうヒトたまにいるよね。ふっかつのじゅもん?を幾つも言えたりするオジさんみたいな」


「へ? ……槍の話に戻るぞ。あれさ、金星の光を黒曜石のナイフに反射させてその光線が当たった物を分解する魔術だろ?」

「それはとうまが戦った魔術師がそんな感じだっただけ。まあでも、それが偽者の限界かもね」

「つまりあれは劣化版か。じゃあ本物はどんななんだよ?」

「ちゃんとあの時に説明したのに……。アステカの破壊神が放つ、金星の光を浴びたもの全てを殺す炎の槍だよ」


「記憶にあるようなないような……。けど今回はそっちじゃなくて、お前の言う偽者について疑問があるわけで」

「ん~……言い難いんだけど、とうまみたいな素人の独自解釈って誰も得しないかも。だからやるなら簡潔にして欲しいんだよ」

「鋭いご指摘……。よし、一瞬で終わらせる! アレが車に当たるとバラバラになる、でも生物でもバラバラって変だろ」

「要するに、部品の集まりである機械と違って生き物には継ぎ目なんて無いのになんで解体されるのかってこと?」


「さすがインデックス、今の説明だけでよく理解出来たな」

「ふふーん、このくらい朝飯前なんだよ! で、答えは術式の本質は機能消失であり構造の分解ではないから、だよ」

「ん~と……。殺す=働きを毀すと解釈して、それを対象をバラバラにするという現象で実現するって寸法か」

「うんうん、言ってみれば目に見える現象は何かの手段に過ぎないんだよ。これは魔術というものの限界でもあるんだけど」


「ふむ。分解魔術って感じで記憶してたせいで混乱したかな。なるほど、完成前のパーツに戻すことが目的じゃ無いのか」

「例えば縫い目の無い服。組み合わせを解く術式では攻略出来ないけどその術式の場合は細切れにされちゃうね」

「待てよ……、逆に元から機能を失っているもの。例えば廃車なんかはひょっとして壊せないんじゃないか?」

「印象が随分変わるよね。そういうの、別に魔術に限ったことじゃないんだよ。とうまトビウオって知ってるでしょ?」


「トビウオってのは特定の魚の名前じゃなくて、ダツ目の……トビウオ的なヤツらを纏めて言う言葉なんだっけ?」

「そうだね。日本近海だけでも数十種を越えるトビウオが居るの」

「ふむ。んじゃ誤解を与えないようにトビウオ類って呼んだほうがいいのかな?」

「そこらへんのことはTPOに合わせればいいと思うよ。TPOって意味わかんないけど響きがカワイイかも」


「判らない言葉を使うなよ……。んで、トビウオの話はどこ行った?」

「あ、そうだった。ではではとうまに質問なんだけど、トビウオって魚偏に飛って書くけどどうしてか分るかな?」

「……、ちょっと上条さんをバカにしすぎじゃありませんか? そんなもん、文字通り飛ぶ魚だからだろ」

「強気だね。じゃあ、どんな手段でなにを目的に飛ぶかわかる? どんな原理でどんな感じで飛ぶか、ねえ分るの?」







427 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:26:46.02 EdJ+Y5420 302/386


「途中で難易度クラスチェンジすんのは反則だろ…………。えーと、まず飛び方はグライダーと同じだよな?」

「そう、滑空だよ。体型やヒレの形がたまたま滑空機の機能を持っていた。それが適者生存の篩を攻略する鍵になった」

「自然選択説か。でもひとまず難しいことは後回しにして、実際どのくらいの飛行能力があるんだろ?」

「ものの本によると時速70kmで水面から飛び出し、高さは最高10m、飛距離は最大400mだってさ。未確認なら更に上も…」


「おいおい、それだってサーマルとかウェーブを期待出来ない状況なんだから揚抗比がべらぼうになるんじゃないか?」

「……。大きく発達した胸ビレを水平に開いて飛ぶんだよ。種によっては尻ビレも翼として使えるみたい」 キイテナーイ

「もしもーし。ちょっと科学な話になったからって無視すんなよー」

「それ以外にも飛行に適した特性があるんだよ。食べたものは速やかに消化され体脂肪率は1%以下とかね」 キコエナーイ


「……ホント魔術側の人間は都合のいいときだけ科学を利用するよな。実は俺も何言ってんだか判ってなかったんだけど」

「前も言ったけどぼんやり知っていれば事足りるもん。それはともかく、さっきの質問はまだ終わってないかも」

「ったく、へいへい。残ってる項目はなんだっけ…………、飛ぶ目的か」

「さあさあ、どうしてトビウオは魚のクセに海ではなく空を行くの? ホラホラ、答えられるものなら答えてみるんだよ!」


「待て待て、なんでそんな強引で偉そうなんだよ!? お前には在りし日のビリビリでも憑いてんのか!?」

「ちょっ、とうまっ! そういうのは冗談にしても慎むべきだよ……、自分の命がほんの少しでも大切なら尚更かも」

「…………そ、そうだな悪ノリが過ぎたな。人を呪わば穴三つって言うし…」

「関係ない人巻き込むのが前提なの?? 穴は墓穴、数は二つ、相手と自分用ので十二分なんだよ……」


「そっか、そうだよな~……。と、脱線はこのくらいにしてトビウオが飛ぶ理由、見事に答えてやるよ」

「えっと、もしかしてその脱線ってダツと掛けてたりする? 『脱線で思い出したけど、ダツ目って~』とか」

「だっ……、誰がそんなしょうもないダジャレで話を繋ぐかよ! 確かにトビウオがダツ目だって話をするつもりだけど」

「ならいいんだよ。……ダツ目はダツやトビウオの他にサンマやサヨリなどが含まれているんだよね」


「俺が好きなメダカもそうなんだけど、ちょっと毛色が違うんだよな」

「体の一部にダツ目特有の構造があるだけだからね。まあメダカは今回は横に置いておいたほうがいいかも」

「そうだな。それで本題だけど、ダツ目の魚は色んな状況でジャンプをすることが知られている」

「サンマやサヨリが群れでピョンピョン移動してたり、ダツは光に反応して跳んでくる性質があったり、だね」


「中でもダツはホントに高く跳ぶんだとさ。しかも英名が『Needle fish』っていうくらい、細長くて先が尖ってんだよな」

「ダツが突き刺さって大怪我する事故は珍しくないんだよ。ライトを使う夜釣りの際は気を付たほうがいいかも」

「しかも回転しながら跳んで来るらしいぜ? ……んまあそんな風にダツ目ってのはジャンプするのが得意なやつらなんだ」

「うんうん、続けて続けて」






428 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:28:39.98 EdJ+Y5420 303/386


「さてそこでトビウオ、の前にサンマの話をさせてくれ」

「サンマ苦いかしょっぱいか? 食べればわかるんだよ」

「何だそれ? ……まあいっか。さっきサンマもジャンプするとは言ったけど、実は時々トビウオみたいに飛ぶんだよ」

「サヨリもそうだね。滑空、生き物だから滑翔かな。もちろんトビウオほどの能力は無いんだけど」


「ああ。ジャンプに長けたダツ目は進化の過程で飛ぶ技術を得た。その中で滑翔適正がダントツなのがトビウオなんだ」

「軽く細長い体、幅広く大きなヒレ、極限に発達した筋肉のお陰だね」

「そういうこと。そんな特別な素質を持っているからトビウオは飛ぶことを選んだってワケ」

「うんう……、ん? それで終わり??」


「へ? だって残ってたのは飛ぶ目的だけだろ? 飛ぶのが得意だから飛ぶ、これで何か文句あるのかよ?」

「それ本気で言ってるなら首絞めたくなるほど哀れなんだよ……。じゃあ聞き方を変えて、どんな時に飛ぶの?」

「どんな時って、マグロやカツオみたいな大型の捕食魚に追われた時とか?」

「でしょ? つまり、トビウオが飛ぶ目的は逃げるため。これが正解なんだよ!」


「そりゃあ、追っかけてた魚にとっちゃ突然消えて数十秒後に全然違うトコ着水されたらテレポートも同然だよな」

「それよりも! 大事なのはあくまでも主として逃走の為に飛ぶってこと。コレを忘れるとヘンなことになるんだよ」

「……、というと?」

「例えば、トビウオをハトの代わりに山から飛ばそうとしてみたり沢山のトビウオを使って船を飛ばそうとしてみたり」


「なっ、いくらなんでもそんなバカな??」

「飛べる魚、って理解が先に来ちゃうとバカなことがバカじゃなくなるんだよ。エグゾセじゃないけど軍事利用を考えたり」

「超低空海面追随飛行が可能な中距離対艦ミサイル? いや、生体爆弾か……。んな計画上手く行くはずないだろうに」

「目的は逃げること、手段は滑翔。ここで混乱すると間違えちゃうのかも。最初の魔術と同じでしょ?」


「目的は対象の全機能破壊、手段はバラバラにする現象……。殺すため壊す、逃げるため飛ぶ。……なるほどな」

「ついでに、とうまが魔術を便利で強い技術だと誤解してるのは、凡そ手段と目的を取り違えてるのが原因なんだと思うよ」

「……、そこはヤッパリ納得行かないけどなあ。第一、間違ってるって言うワリに細かく教えてくれるワケでもないし」

「知りたい? 簡単に喩えるなら卓球はフライパンとバスケの球でも出来るけど翌日腕がパンパン、ってことなんだけど。判る?」




「その話は何かを説明してるつもりなのか……、コレ上条さんがバカだからわかんねーんじゃ無いよな?」








429 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:30:47.80 EdJ+Y5420 304/386


                                 ☆

御坂「佐天さんが金属バットで黒子を後ろから狙った。黒子はフルスイングが頭に触れた瞬間にそれを察知して避けた」

佐天「来る方向が判ってるから電撃は避けられるって理屈にはそれの100倍シビアな能力が必要ですよね……、アリエナイ」

初春「そんな白井さんなら死角とか無いですね。だってどんな攻撃も当たった瞬間に来る方向が判る攻撃になるんだから」

白井「なんでわたくしが……。まあそんな人間が普段はボコボコ殴られてるのなら、情報のどこかにウソがあるのでしょう」


御坂「うそか……、ウソねえ…………、うそうそうそうそ、カワウソ~♪」







佐天「……えっ、あ、カワウソってイタチみたいなやつでしたっけ? しし、知ってはいるけどイメージしにくい生き物ですよね」

初春「カモノハシと似ていたような……、あれ? それはレッサーパンダだっけ……。確かに良くわからないかもです」

白井「ビーバーやアナグマなどと混同した姿で記憶されてる方も少なくないかと。まあ、水辺の哺乳類ですわね」

御坂「やあ、ぼくウソつきのカワウソホンマだよっ! …………、あれー? 面白いでしょ? 何で誰も笑わないの??」


白井「常盤台入学時にお姉様の暴走に対しては様々な意味で手出し無用と教わっておりますの。それよりカワウソの話を」

佐天「そ、そうですよー。御坂さんは川の生き物には断トツで詳しいでしょ? カワウソだってバッチリでしょ?」

初春「誰だってギャグかどうかの見当もつかないモノの道連れはゴメンです。さあ、カワウソの解説お願いします」 ニコニコ

御坂「うーん。前々から思ってたけど、みんなの感性ってズレてるわよ? ま、いっか。ニホンカワウソの話で良い?」


白井「んっ、まーっ!! いいですわねニホンカワウソ、それで行きましょうそうしましょうそれが最高ですの!!」

御坂「そ、そんなに好きなのニホンカワウソ? ……黒子が乗ってくれるなら大丈夫かな、みんなも良いわね?」

佐天「(さすが白井さん……、勢いつけて話に乗っかることで御坂さんの暴言を無かったことにした……!)」

初春「(ええ、唯一無二のパートナーを自称するだけのことはありますね)……あ、話はこちらもそれでオッケーですよー」



御坂「了解っと。なるべくわかり易く話すわね」





430 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:32:38.34 EdJ+Y5420 305/386


御坂「さて、まずは軽く分類をおさらいしとこっか。ニホンカワウソは食肉目イタチ科に属するんだけど…」

佐天「あ、やっぱりイタチに近いのかあ」

初春「レッサーパンダはちょこっと遠い親戚ってとこですね」

白井「近縁には他にラッコやオコジョ、フェレットやテンといった、ネコ系の可愛らしい仲間が多いですわね」


御坂「食肉目はネコ目とも言うもんね。これでもイメージ出来ないならラッキーくんっぽいヤツだと思えばいいわ」

初春「最後にそのたとえを持ってくると却って分りにくくなるような……。マギーさんがどうこうじゃないですけど」

佐天「それにしても、カワイイ動物なんだろうにどうしてこんなに絵が浮かばないんでしょ?」

白井「考えるまでもありませんの。ニホンカワウソは既に絶滅していると見做されているから、そうですわねお姉様?」


御坂「そう。かつては日本中の水辺でごくありふれた生き物だったんだけど。明治以降の近代化の流れの中で……、」

白井「最後の目撃例が西暦1979年ですが、この調査の段階で既に誰の記憶からも消えかけた存在だったかも知れませんわね」

初春「絶滅の原因はやはり高度経済成長化における環境破壊なんでしょうか? 生息地が護岸工事で奪われたとか」

佐天「……でも初春? そんなの頭数が減少してるの判った時点で保護すれば済むでしょ。 絶滅って多分もっと凄い事だよ?」


御坂「佐天さん鋭いわね。そう、ニホンカワウソは絶滅が確定的になるまでほとんど保護出来なかったのよ」

初春「なぜですか? 可愛くて身近で、それに特に人に危害を与えるような動物でも無いなら……」

白井「……、イタチ科にはミンクという動物も居ますわね。毛皮で御馴染みですけど……、そういうことですの」

佐天「つまり、保護が間に合わないほど急激な乱獲があったと…………。でもカワウソの皮ってそんなに良いものなんですか?」


御坂「エビやカエルを捕食するような水中生活に適したその皮は、高い防水保温効果があったそうね」

白井「そうした毛皮目的での乱獲によって数を減らしたところに、初春の言う生息地の環境悪化が重なったと」

御坂「それと漁師にとってはある意味害獣だったのよ。畑のモグラと同様にね」

佐天「漁場を荒らすから駆除してたんですね……。それは責められないけど……、ん? あのー……、あれっ?」


御坂「そうよね、当然疑問が沸くと思う。環境悪化以外の絶滅原因は近代化以前から存在してたってことでしょ?」

初春「はあ。言われてみたら毛皮は昔だって需要があっただろうし川漁師さんは今より多かったはず……」

白井「となると、大昔はニホンカワウソ捕獲に対して何らかの歯止めがあった、という事ですの?」

佐天「そして時代とともに失われた……。それは一体どんな抑止力だったんですか?」


御坂「…………そのチカラ。一言で表すなら、オカルトよ」







431 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:35:33.77 EdJ+Y5420 306/386


御坂「ニホンカワウソは日中は岩陰や草むらで過ごして、エサを探すため活動的になるのは夜中なの。
    そういう夜行性の野生動物はべつに珍しくない。けどね、ちょっと想像力を働かせてみて。

    電気もガスもない、つまり日没とともに暗闇に支配される時代。夜は人にとってどんな時間だったか。

    見えない恐怖だけじゃなく、むしろ見える恐怖。昼間ハッキリしていた木々や山の輪郭が闇に溶け
    全ての境界線が曖昧になる。だって手元の灯りで作られた自分の影さえ周囲に馴染んでいくのよ。
    それはこの世とあの世の区切りさえ頼りなくボヤけた時間。世界が冷たい漆黒と熱を帯びた…」

初春「要するに明かりが無いと人間なんて無力だから、時には変な妄想に駆られたりするものだということですね?」

佐天「ふむふむ、夜の山道でガケから落ちたり野犬に襲われたり。そんな本能的恐怖が暗闇の禁忌を作ったと」

白井「暗闇を恐怖の対象とすれば、暗闇に蠢くものたちを同じく恐れるのは自然の成り行き。そこでカワウソですわね」


御坂「……あ、うん。……さっきも言ったけどニホンカワウソは夜行性、つまり暗闇の中を動き回る生き物なの。

    恐怖の対象であり単純に危険も多いと言っても、昔の人だって真夜中に外出することが無かったわけじゃない。
    頼りは提灯や松明、それに月明かりだけかなあ? とても心細い道すがらだったんでしょうね。
    当然だけど他人の姿なんて無いし物音も少ないから、普段は意識の外側にある世界が際立つことになる。

   幽霊の正体見たり枯れ尾花じゃないけど、昼間に見慣れてるものでさえ異界の住人に成り代わるのよ。
    なら、予備知識の無いモノが予測不能の動きをしたらどれほど恐ろしくどれほど畏るべきことだったかと…」

佐天「ははあ、つまり深夜に月明かりが映る水面を見たらカワウソが泳いでて、そうと知らない昔の人はビックリしたと」

初春「川の中でにゅっと突き出た鎌首と光る獣の目が暗闇の中でうっすら見えるんですね。怖かっただろうなー」

白井「それを物の怪、妖の類と扱ったのも詮無きことですわね。つまりカワウソはかつて一般人とってバケモノだったと」


御坂「そう、そうなんだけど……。あれー? なんだろこのスッキリしない感じ。むぅ~……。

    と言うわけで、タヌキやキツネが人を化かすなんてのと同様、ニホンカワウソも人知及ばぬ怪異の一部だったのよ。
    地方によっては成長したカワウソが人を捕って喰らうカッパになるなんて言い伝えが残ってたりね。
    成長したらって、んじゃカッパは年老いてハg……、頭頂部付近の体毛密度が著しく低下したカワウソなの?
    バッカらしい話だけどさ、こんな根拠の無い迷信のお陰でカワウソは長い間守られていたとも言えるのよ。

    カワウソに最も近い仲間がラッコ……、っていうよりラッコってずっと海に居るカワウソのことなんだけど
    アレも毛皮の為の乱獲で絶滅寸前まで追いやられたのよ。伝えられてるそのラッコ猟の様子がなんて言うかね……。

    貝やらカニやらを拾ってきて水面にプカプカ浮かび石ころでカンカン叩いて食べる、そんなノンビリした印象でしょ?
    実際、ラッコは攻撃性が低くてしょっちゅうボーっとしてるような生き物なんだけど、その性格が災いしたワケね。
    捕獲の為に人が船で近づいても逃げない。それどころか好奇心丸出しで向かって来ちゃったりするの。古い記録には
    もともと海岸で生活するラッコも居たけど簡単に捕まえられすぎて即絶滅。現存タイプだけが残った、ってあるくらい。

    カワウソも同じだったのよ。捕まえようと思えば簡単だった。だけど昔はオカルトが抑止になっていた。
    『おとなしそうに見えても、その実は牙を剥き人の生き血を啜る怪物だから手出しは禁物である』なんてね。

    長きに渡り動物と人を区別せず、いえ、区別したとしてもむしろ上の存在と見做したからこそ守られたものがある。
    意図的で有る無しに関わらず、バカバカしいオカルトにだってそれなりの役割があったって言えないかな?」


佐天「カワウソは怖ろしい。そんな幻想を文明開化が軒並み壊してしまった。ただの下等な小動物だと……」

初春「そして今、私たちはニホンカワウソの姿を思い浮かべることさえ出来ない。ホントの幻想になってしまいました」

白井「そう考えますと……。幻想を壊す、つまりウソを暴くことが一概に良いことかどうか。悩ましい問題ですわね」

御坂「まあね。守るべき幻想なんて判らない。だけど壊さないほうがいいウソも中にはある、ってせめて知っておくべきなのよ」



御坂「って、みんな暗いわよ……、景気付けに歌っとく?  うそうそうそ、かわうそ~、カワウソホンマ~♪」 フンフン♪

白井「(そのフレーズがツボに入ったんですのね。さて、そのつまらない幻想は壊すべきか否か……、悩ましいですの)」








432 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:40:33.90 EdJ+Y5420 307/386


                                   ☆

打ち止め「ねえねえ、ブルーギルっておさかな居るでしょ? アレって日本のおさかなに比べてそんなに強いの?」

一方通行「……典型的な勘違いだな。そォした意味合いで言えば生き物に強弱はねェよ。あるのは相性ってヤツだ」

打ち止め「じゃあブルーギルが猛威を振るってるのは相性が良かったから……? よくわかんないんだけど」

一方通行「メンドくせェ……。例えばアレだ、ポーカー知ってンだろ? カードゲームの定番の」


打ち止め「通常5枚の手札を用いて特定の役を作りその強弱を競う、だったかな? とミサカはミサカは思い出してみたり」

一方通行「フン…………、オマエは今死ンだぞ? ンな上っ面の理解だけでカードを語ンじゃねェよバカが」

打ち止め「問われて答えたのになんと理不尽コレが現実!? ってミサカはミサカは騙し合う嘘つきだねと締めくくってみる」

一方通行「アレはプレイヤー同士がテメエを偽りながら真実を読み合うゲームだ。決められたルールの中でな」


打ち止め「内心ビクビクしながら表面は余裕の顔、だけど相手を萎縮させ過ぎちゃダメとかそんな感じかな?」

一方通行「……まァそォだ。ポーカーフェイスっつーのは無表情って意味じゃねェンだよ」

打ち止め「それで、そのゲームとブルーギルと相性がどう関係するの?ってミサカはミサカは軌道修正してみたり」

一方通行「ポーカーの基本ルールは知ってンな? なら相手の手札が全部見えたら勝負にならないってコトはわかるだろ?」


打ち止め「自分の手札が相手より強ければ受けて、弱ければドロップしちゃえば良いから……。そりゃそうだけど」

一方通行「勿論、相手の手札を覗くのは反則だ。……但し、対戦者同士がそう決めた同じルールで戦ってンならだが」

打ち止め「つまりブルーギルが日本のおさかなに対して相性が良いというのは、手札が丸見えのポーカー状態だってこと?」

一方通行「そンな感じであくまで偶然にだが、向こうのルールがコッチに対して圧倒的に有利だったって事だ」


打ち止め「でも自然には人の決めたルールなんてないよ? とミサカはミサカは至極真っ当な疑問を投げかけてみる」

一方通行「ルールってのはモノの喩えだ。この場合、それぞれの生物が進化の過程で得た個別の特性のコトだと思え」

打ち止め「……原産地の自然環境に適応する生物を別の場所に移動させたら、より過剰に適応し繁栄した……。う~ん?」

一方通行「繁栄ねェ? 好敵手の居ない勝負師は存在価値ゼロだ。ゲームに限らず勝ち過ぎは破滅と同義なンだよ」


打ち止め「じゃあ、たくさん増えて在来種に取って代わろうとしてる今の状況はブルーギル自身にも良くないの?」

一方通行「そォだが……、悪りィ。後はその辺の問題に詳しいヤツに聞け。紹介してやる」 ポチポチ

打ち止め「えっ……別にそんなこと望んでるわけじゃ、とミサカはミサカはあなたの少々捻じ曲がった親切に困惑してみたり」

一方通行「ン、何か言ったか? ―――――――――場所はいつもの水槽屋だ。連絡してやったからとっとと行って来い」








433 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:44:57.27 EdJ+Y5420 308/386


 【学園都市最大のアクアリウムショップ ~エディ・アレックスのアクアホリックショップ~】


打ち止め「なんでこんなことにーーっ! ってミサカはミサカは広い店内に響き渡るほどの大声でグチってみたり」

芳川桔梗「でも、あの子が素直に他人を頼ったことは評価に値するわ……。同居人の気持ちには無頓着なままだけど」

打ち止め「ホントだよ! 第一どうして話を聞いて来いって言うだけ言って一緒に着いて来てくれないの?」

芳川桔梗「そう言えば何だか変なこと言っていたわね。『アレと俺とじゃ会話が成り立たねェンだよ』とかなんとか……」




削板軍覇「どうも。そのアレです」 \ドッパーン/

打ち止め「」

芳川桔梗「」



打ち止め「……えっ、えっと」 ナニコレ?

芳川桔梗「……、終わったら携帯に連絡を入れなさい。近くで待機してるから安心して。……頑張りなさいね」

打ち止め「なっ………!!」 ニゲタ !?


    「…………」  「…………」



     ――――――――――――――――――――――

     ―――――――――――――

     ――――――


打ち止め「それじゃあ、あなたはあの人が誰かも知らないの? ってミサカはミサカは打ち解けた雰囲気で問いただしてみる」

削板軍覇「俺は店の設備を借りてるだけ。店員じゃねえから客の個人情報は把握できんしあの人がどの人か見当もつかん」 

打ち止め「でもあの人は連絡しとくって言ってたんだけど……、とミサカはミサカは一体どういうことなのかまるで解らなかったり」

削板軍覇「おう、確かに丁度38分前に非通知で『チビがブルーギルの話聞きに行く。準備しろ』と知らないヤツが掛けて来たな」


打ち止め「……えーと、」

削板軍覇「待てよ? あの声はいつもの……、根性不足のエノキ野郎だったような気がするな。あの人ってのはそいつか?」

打ち止め「最近は乾燥シメジと称しても過言じゃない!とミサカはミサカは擁護し……あれ? じゃあやっぱりお知り合い?」

削板軍覇「時々訪ねて来て問題のある魚を置いていく困ったヤツだな。次遭ったら根性入った説教してやるつもりだ」 バチコーン


打ち止め「あの人が一緒に来なかった理由が判ったよ、とミサカはミサカは……、それはそうと問題のあるおさかなって?」

削板軍覇「俺の専門でもある特定外来生物だ。『同居人が拾ってきた魚ン中に混じってた』などとくだらん言い訳しながらな!」

打ち止め「それ多分ウソじゃないし、さっきミサカの横に居たのが真犯人の一味なんだけど…」

削板軍覇「さて、そんなどうでもいい話などとっとと切り上げて本題に入るぞ! テーマは『ブルーギルと根性』だ」


打ち止め「……ツッコミ気質が無いミサカにはこの人の相手は厳しいよ、とミサカはミサカは今更先行きに不安を覚えてみる」

削板軍覇「では行くぞ! まずはミサカワミサカ? がどの程度の予備知識を持っているか…」

打ち止め「ちょちょっ、ちょっと待って今のはそんなミサカもさすがに見過ごせない! ミサカワミサカってミサカのこと?
       ってミサカはミサカはミサカのことはミサカか打ち止めって呼んでほしいと淡い希望を述べてみたり」


削板軍覇「了解だ! 俺はミサカワが予備知識をどの程度持っているか知らんので基本的な話から始める。それでいいな?」

打ち止め「う……、色々含めてもう……いい、とミサカはミサカは早くも諦めムードの心中を吐露してみる」 グッタリ



434 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:48:17.24 EdJ+Y5420 309/386


削板軍覇「何はともあれ実物を見るのが一番だな! ちょっとこの水槽のほうへ来てくれ」 コイコイ

打ち止め「えっ? 本物が居るのってミサカはミサカはおずおずと近づいていき……。ほほぉ~、ふむふむ~、なるほど~」

削板軍覇「コイツらは全長10cm以下のブルーギル(若魚)だ。感想があるなら聞いておくぞ?」

打ち止め「んーと、薄い縦じまがあって、横から見た形はフナみたいな楕円形なんだけど……なんだか随分薄っぺらいね」


削板軍覇「確かに、明るいところで観察すると背骨が透き通って見えるほど薄いな。他に気になるところは無いのか?」

打ち止め「背ビレとかが尖っていて危なそう……。あとエラ蓋のトコに何かくっついてるね」

削板軍覇「その通り! コイツのヒレは危険、素手での扱いには注意が要るぞ。そしてエラ蓋のアレが名前の由来だ」

打ち止め「ほほ~。エラ蓋の上に黒っぽいというか紺色っぽい小片があるからブルー(青い)ギル(エラ)ってこと?」


削板軍覇「英語が喋れるとはミサカワは賢いな! 要するに、ギルと省略してしまうとそれはエラと言う意味なのだ!」

打ち止め「ギルがいっぱいいる池、と言われてエラが溢れてる様子を誰も想像しないと思うけど、とミサカはミサカは…」

削板軍覇「で、今度はこちらの水槽だ。充分に成長した個体はこの大きさになる」

打ち止め「うわっ! すごく地味な体色だけどフナと言うよりマダイのような? 大きさも50cm近くあるんじゃないコレ?」


削板軍覇「うむ。若魚のように薄っぺらくない実に逞しい体だろ? まさに根性の為せる業だ!」

打ち止め「後半さっぱりわかんないけど、とミサカはミサカはちなみにブルーギルが何の仲間か尋ねてみたり」

削板軍覇「分類か! サンフィッシュ科だから、一般的にブラックバスと呼ばれるヤツらが近縁だな」

打ち止め「ん? でもブラックバスって全然カタチが違うよ? アレはもうちょっと細長くて丸くて口が大きくて…」


削板軍覇「分類は表面の見た目で決まらない場合も多く素人には理解し難い。だから気にする必要なぞ無い!」

打ち止め「ソウデスカ……。あと、サンフィッシュって確かマンボウも英語でそんな名前だったような?とミサカはミサカは…」

削板軍覇「ミサカワは本当に博識だな! そう、マンボウは英語でサンフィッシュ。だがサンフィッシュ科とは無関係なのだ!」

打ち止め「偶然同じ名前になっちゃってるだけなのねとミサカはミサカは納得してみる」


削板軍覇「さて、まだまだ言及しておくべきことは山ほどあるが、こっからは当初のミサカワの疑問に答えつつ紹介してくぞ」

打ち止め「ブルーギルが有利なトコロ、増えすぎの反動や害だよねとミサカはミサカは忘れないうちに思い出しておく」

削板軍覇「っと、以下はネガティブなイメージの話題でもある。ガラじゃねえんだが一応ヒトコトだけ言い訳させてくれ」

打ち止め「はあ……、お任せしますとミサカはミサカはゴーアヘッドのサインを送ってみたり」







削板軍覇「個人的な意見を押し付けるなという意見は個人的な意見の押し付けである。これをジレンマと言う!」

打ち止め「…………それ言い訳とは違うような、でもツッコんだら負けのような、とミサカはミサカは躊躇逡巡してみる」 ウーン







435 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:53:20.77 EdJ+Y5420 310/386


削板軍覇「ブルーギルは北アメリカ原産の淡水魚で、主に流れの弱い河川または池や沼などの止水を好む魚だ」

打ち止め「分布は淡水全体だけど、余り流れが急じゃないところが好きなのねってミサカはミサカは情報を補完してみたり」

削板軍覇「肉食傾向の強い雑食性のクセに縄張りを作るよりも集団で行動する、つまり一匹見つけたら云々な習性を持つ」

打ち止め「コックローチさん……。それにしても群れを作ってエサを獲ってたらすぐ周りに食べ物が無くなっちゃうんじゃ?」


削板軍覇「目の付け所が素晴らしいな! どうやら周囲に食べ物が豊富な場合、一匹ずつに好き嫌いが出来るようなのだ」

打ち止め「俺とオマエじゃ喰いモンが違ンだよ! 肉喰ってりゃ幸せなンだよ! 肉無くなったからエビ食わせろ! って感じ?」

削板軍覇「中には水草だけとか底の堆積物専門で喰う変わり者もいるらしい。結果的に、環境全てを利用可能なワケだな」

打ち止め「いつかのアメリカザリガニみたいな子なのねってミサカはミサカはボンヤリと思い出してみたり」


削板軍覇「繁殖はサンフィッシュ科に共通するのだが、オスが砂地に巣を掘りメスを誘って産卵させるというものだ」

打ち止め「……、話がコロコロ変わり過ぎだよ! とミサカはミサカは愚痴りつつもオス魚の苦労を偲んでみる」

削板軍覇「巣を作るだけじゃないぞ? 産卵後もオスは巣に残りタマゴや稚魚を狙う捕食者を追い払い続けるのだからな」

打ち止め「その時メス魚ってドコへ……、とミサカはミサカは夫婦仲って水物だなあなどとテキトーな事を言ってみたり」


削板軍覇「さて、捕食魚としてのブルーギルは止水に於いて非常に優れているのだが……。それはどんな所かわかるか?」

打ち止め「えっ? いきなりそんなことわかるわけが……けど、もしかしてこの水槽を見ればヒントがあるのかな?」

削板軍覇「おいおい、ミサカワはホントはチビッ子の皮を被った学者とかじゃねえだろうな? 鋭いにも程があるぞ……」

打ち止め「……それはともかく、ブルーギルって普段はこんなにじっとしてるおさかななの?」


削板軍覇「違うな。動きがただ少ないんじゃなく、停止時の動きが極端に少ねえんだ。ホレ、ヒレもシッポも止まってんだろ?」

打ち止め「……、ホントだ。フナやヌマムツみたいな魚だって一箇所に留まるためには結構細かく運動してるのに」

削板軍覇「水の中で動けば波が起こり、周囲に自分の存在を知らせちまう。では動くこともなく一点に留まれたら、どうだ?」

打ち止め「それはつまり気配を消して相手が近づくのを待ち、警戒させないまま攻撃出来ると……。まるで暗殺者だね」


削板軍覇「だろ? その上、追撃特性も優れている。停止→トップスピード→停止をほとんど加速減速なしで実行したり」

打ち止め「お~~! お値段が惑星ひとつ分の宇宙船みたいだねってミサカはミサカは感嘆の声を上げてみたり」 ヒュー

削板軍覇「360度全ての向きで停止が可能だったりな。背ビレと胸ビレを器用に使って前を向いたまま高速バックだって出来る」

打ち止め「ふむふむ。まさに止水のファンタジスタって感じだねってミサカはミサカは総括してみるんです」


削板軍覇「他にも冷温や酸欠、汚水に耐えるスゲエ根性がある。そんなブルーギルが日本の水環境に入ればどうなるか」

打ち止め「多少の悪状況を問題にもせず、食べられるものを全て食べつくし、一方で自分の子供たちはがっちりガード」

削板軍覇「狙った獲物は逃さない運動性能を持ち、コレといった天敵も見当たらない……。一人勝ちってヤツだな!」

打ち止め「そうだね……。じゃ次は、勝ち過ぎがどうして破滅に繋がるのか教えて欲しいとミサカはミサカは頼んでみたり」







436 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 20:57:40.94 EdJ+Y5420 311/386


削板軍覇「ある種の魚が極端に水域を占有すりゃ当然弊害がある。人間側から見れば漁業の損害が代表的だな」

打ち止め「お金になる魚が食べられたり、環境そのものを悪くされたり、網に掛かってもヒレが危険で外す手間ばかり掛かったり」

削板軍覇「そうなりつつある場所もその懸念がある場所もありってトコだ。特定外来生物に指定されるだけの根性があるな」

打ち止め「だから根性って何なの……。そういえばそんな暴れん坊をどうして移殖したの?とミサカはミサカは質問する」


削板軍覇「ルーツは20世紀後半、生物学者でもあらせられるいとやんごとなき方がアメリカご訪問の際に寄贈された15匹だ」

打ち止め「アメリカザリガニの話でも思ったけど……、最初はホントにホンのちょっとだったのね」

削板軍覇「それを食用や釣り目的の研究の為日本に持ち帰り、水産庁に寄贈……と、ここまでは何も問題無かった」

打ち止め「ああ、見えるよ……。その後、養殖池が洪水で溢れて逃げ出したとか、流行を作ろうとして密放流したとか……」


削板軍覇「バス釣りを流行らそうとした輩が、バスのエサになるってデマを信じて放ちまくったなんて話もある。だが実は逆だ!」

打ち止め「ブラックバスは狩りが下手だからね……。ブルーギルは何でも食べるからバスのタマゴだって食べちゃうわけだし」

削板軍覇「今では各地で駆除の対象だ。基本的に許可なく飼育、移動、放流、譲渡などすれば罰せられるから気を付けろよ!」

打ち止め「ん? あの……、ひょっとしてあの人がここに生きたまま特定外来生物を持ってきちゃったのってダメなことなの?」


削板軍覇「俺は許可を持ってるが正直グレーだぞ。だから以前『最大1億円の罰金刑だ!』とヤツには警告したんだが……」

打ち止め「あー……、あの人はそれ系の罰には麻痺してるとこがあるのってミサカはミサカは代理で弁解してみたり」

削板軍覇「桁の多い数がピンと来ないクチか、俺と同じだな!」

打ち止め「あ、いやそうじゃなく……。それはそうとちょっと疑問なんだけど、移動が禁止って持ち帰ることもダメなの?」


削板軍覇「原則で言えば、殺してから持ち帰ればOKということだ。それまで禁止したら捕まえた時点で罪になりかねん」

打ち止め「ふむふむ。あのね? それならブルーギルを釣って食べちゃってもかまわないよね」

削板軍覇「もちろんだ。そもそも原産地では立派な食用魚だしな……。但し、法律とは関係ない問題点がいくつかある」

打ち止め「それは何?ってミサカはミサカは頭の中で料理法を模索しながら尋ねてみたり」


削板軍覇「一般的な淡水魚と同様コイツも生息域によって味が変わり、時に喰えたものじゃないレベルまで落ちる場合もある」

打ち止め「まあ……、それはしょうがないかも、とミサカはミサカは話の続きを促してみたり」

削板軍覇「その上、個別で嗜好が違うって話をしただろ? 食べ物の違いはそのまま食味の違いに繋がるからな」

打ち止め「泥みたいなものばかり食べてた魚が泥臭いのは当たり前か……。しかも見た目じゃ違いがわからないよね、それ」


削板軍覇「更に件の食用魚としての研究の結果、日本では不適合であると結論が出ている。理由は主に2つ、わかるか?」

打ち止め「サイズの違うブルーギルの水槽を交互に指差しながら質問した、ということは大きさの問題?」

削板軍覇「その通りだ! 原産地ではこのビッグサイズまで成長するが日本では20cm以下が大半だ。しかも成長が遅いときた」

打ち止め「でっかくならないと薄っぺらだから食べるところが殆ど無いもんねとミサカはミサカは得心してみたり」







437 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 21:01:07.61 EdJ+Y5420 312/386


削板軍覇「ではあまり話が長くなってもいかんので、そろそろ核心に入るぞ。根性入れて聞く準備は出来てるか?」

打ち止め「……お、おうっ! とミサカはミサカは半ばヤケクソ気味に最後のスタミナを振り絞ってみたり」

削板軍覇「優占種。ある場所で主に見られる生き物をそう呼ぶが、それが行き過ぎた結果最終的にどうなるか、だったな」

打ち止め「もう最初の質問なんて覚えて無いからどうでもいいよとミサカはミサカは開き直ってみる!」


削板軍覇「その意気や良しだ! ではこういったお題では定番だがヴィクトリア湖の悲劇の話を……、ひょっとして知ってるか?」

打ち止め「…………知らない、とミサカはミサカは空気を読みつつもアフリカ最大の湖、ヴィクトリア湖の話を期待してみる」

削板軍覇「そう、まずデカい。琵琶湖の100倍とも言われる広大な淡水湖だ。俺の根性を以ってしても飲み干すことは難しい」

打ち止め「えーっと、ついでに10万年以上水を溜め続けている古代湖だよねとミサカはミサカは一部無視してフォローしてみる」


削板軍覇「うむ。巨大な隔離水系が長期に渡り存在すればそこには非常に独自で多様な生態系が発達する」

打ち止め「日本の琵琶湖固有種でさえ、国内の淡水魚種のかなりの割合を占めてるもん……だから簡単には想像もできないよ」

削板軍覇「一説によると20世紀初頭までヴィクトリア湖には400を超える固有魚種が居たらしい。既に確認する術も無いが」

打ち止め「その悲劇のせいで、だねとミサカはミサカは詳しく解説してくれることを遠まわしに求めてみたり」


削板軍覇「中央アフリカ東部に位置し3国に跨るヴィクトリア湖は20世紀中頃までイギリスの支配下にあった。
       いわゆる植民地のように本国以外に生活圏を広げる場合まず何より先に確保する必要があるのが水と食料だが
       この湖は周辺国へのイギリス入植初期段階ではその期待に充分に応えた。なにしろ根性入ったデカさだからな。
       しかし人口の増加傾向に徐々に漁獲量が追いつかなくなり、やがて水産資源が底を突くおそれさえ出てきた。
       イギリスとしては何か手を打つ必要があったのだ。そして目を付けたのが同じくアフリカ原産の、とある魚だ。

       その名をナイルパーチ。ナイルと付くが直接ナイル川に縁が深いことは無い。最大で2m、200kgに達する大型魚だ。
       日本の魚で言えば白っぽい体に赤い目が特徴のスズキの仲間、アカメに良く似ている。というかほとんどアカメだな」


打ち止め「白っぽくて赤い目の第1位スズキ目……そりゃ問題児ですわ、とミサカはミサカは海よりも深く納得してみたり」


削板軍覇「いや、必ずしもコイツが悪いわけではないぞ? 何を納得したのか良くわからんが……、まあ続けるぞ。

       イギリスは食糧確保の為に大型で肉質が良く現地の環境に適応可能なナイルパーチをアフリカ中の淡水に移殖した。
       ヴィクトリア湖もそのひとつだった訳だが、この試みはひとまず成功する。
       食料として、また外貨獲得の輸出材として、更にはゲームフィッシングなどに、とナイルパーチは幅広く利用された。
       その裏で刻々と破滅が広がっていくのを誰も気付かないままにな。

       考えてみろ。2mを越す大魚は何をどれ位食べてその大きさになるんだ? そんな魚に天敵は居るか?
       ましてそれが、殆どの在来魚類が草食傾向の強いものだったヴィクトリア湖に放たれたらどうなるのかと。

       導入から数十年後、湖の様相は一変していた。ナイルパーチの食欲によって固有魚種は200種以上絶滅した。
       また、水草を食べる種の減少によって植物プランクトンが異常発生し酸欠状態が湖各所で常態化。
       つまり負のスパイラルとも言うべき事態で更に生態系の破壊が連続し、湖全体が死で埋め尽くされてしまった。

       だが植民地時代の終わった現在においてもナイルパーチ養殖は外貨獲得の手段として続けられている。
       湖の名からヴィクトリアパーチなんて呼ばれたりもするこの魚は今尚、名も無い白身魚として先進国で食されてる。

       ヒトの歴史よりも遥かに長い時を刻んだ生態系の完全な崩壊は、既に確定してしまってるのかもしれん。残念だ!」







438 : 逆転の発想[saga sage] - 2012/02/07 21:06:41.41 EdJ+Y5420 313/386


打ち止め「…………うーん。話の規模が大きくてなかなかイメージ出来なかったけど、とにかく大変なことになってるんだね」

削板軍覇「それだけ判れば十分だ! そして、これを日本の淡水とブルーギルに当て嵌めて考えられれば更に素晴らしいぞ!」

打ち止め「ふむふむ……、ブルーギルの場合はそこまで大きくならないのがまだマシなのかな……」

削板軍覇「それでも! 天敵の居ない繁殖力の強い外来生物が国内全体に蔓延している状態は決して健康ではないだろ」


打ち止め「うん。さっきのナイルパーチだって他の生き物が居ない汚れた水で育ったら商品価値も減って、結局ダメになるよね」

削板軍覇「だな。コレばかりは根性で解決できる問題ではない。つまり勝ち過ぎはやがて己の身を滅ぼすということなんだ」

打ち止め「なるほどね、とミサカはミサカはようやく回収できた疑問点に安堵の表情を浮かべてみたり」

削板軍覇「とにかく、まともな天敵が居ないというのが逆にコイツらの弱点なんだ。だからだな、ゲームフィッシングで

      『命は大切だから、キャッチアンドリリース』

       なんて言うが、コイツらがホントに好きならば是非とも心を鬼にして天敵の代わりになってやってくれ。
       直接手を掛けることに抵抗あんなら、近くに穴でも掘って埋めてやればいい。あくまでもブルーギルのためにな。
       もちろん一個人の力でどうこうなるような問題じゃねえかもしれねえが、少なくとも何もしないより効果はあるはずだ。
       淡水巻貝のカワニナの一種がコイツらの巣で親に追い払われることなくタマゴを捕食していたって報告もあるが
       その程度でいい。大切に思うなら……カワニナ程度の助力はしてやりたいじゃねえか。そう思わねえか、ミサカワ?」

打ち止め「良い事言ったのに最後で台無しだよ……、とミサカはミサカは一応頷いて賛意を表しつつ不満を述べてみたり」


      ――――――――――――――――――――――

      ――――――――――――

      ―――――


芳川桔梗「お疲れ様……、って本当にお疲れの様ね。脱力具合が半端じゃないわ」

打ち止め「よお裏切り者テメエ今まで何してた、とミサカはミサカはヤサグレ気味にお迎えを感謝してみる」 グター

芳川桔梗「さっきの子は序列第七位の超能力者。元、とは言え研究者の私が許可なく直接面識を得てしまうのは問題なのよ」

打ち止め「もっともらしい言い訳だよね……とミサカはミサカは、さっきのあの人やっぱりレベル5か! と納得してみたり」


芳川桔梗「あら、超能力者に随分と偏見を持っているようね。まあでも、それは偏見では無いのかもしれないのだけれども」

打ち止め「……、と言うと?」


芳川桔梗「こんな与太話があるわ。

       学園都市の超能力開発は元々、自然に産まれてくる能力者を研究することで実現した技術だと。
       環境、教育、思想、その他様々な要因が複雑に重なり合い一般人とは違う脳構造を得たそうした人を
       大昔は奇跡の体現者と呼び、今ではジェムストーンに準えて原石と呼ぶのだそうよ。
       そしてさっきの子、彼はどうやら世界最大の原石と称されているらしいわ。言い換えれば理想モデルね。

       つまりこういうことよ。学園都市の能力開発とは要するに、人工的に彼のような人間を作り上げる技術。
       そして超能力者とはその技術によって目標である原石、つまり彼に最も近づけられた人間。

       これが正しい推論だとしたら……そんな者たち、レベル5がまともであるはずが果たしてあるかしら?」



打ち止め「あ、ありがちな考察だけどなんという説得力……、とミサカはミサカは色々な人を思い浮かべて意味もなく涙してみる」






  ~おしまい~




439 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/02/07 21:29:12.97 OUqEodeS0 314/386


以上、第三十四回「逆転の発想」でした。考察的なアレはただのトッピングです。あまりマジメに受け取らないように・・・

第1パート、ダツが跳んで来て突き刺さる事故画像にもご注意を
第2パート、ニホンカワウソには一応、昭和初期に捕獲禁止令が出てますが既に手遅れだったようです

第3パート、さすがに飼育禁止の魚をいつもの人が喋って、いつもの人たちが捕まえてくるとダメだろと思って。
      なので以前にカダヤシ話をしてくれた方に任せました。誰なら彼にツッコミ入れられるんだろ・・・
      それと一応注意しておきますがこのパートは当該魚の飼育や保管を促すものでは有りません。あしからず

過去最長になっても内容は薄い、そんな今回はこの辺で。ではではまたー

444 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/02/11 10:08:20.81 Stq5WZOJ0 315/386


一生懸命に書いたパートって、無駄な脱線が多かったりするおさかな話。頭ヒネるとつまんないことが次々沸くのかな?

今回はそんな、おさかなとはあんまり関係ない脱線? 小ネタ? を形にしてみたっていう。

ようするに番外編です。「みずみずしい話」 穏やかな気持ちで、どうぞ。

445 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:10:28.67 Stq5WZOJ0 316/386


                                       ☆

白井「最近、初春のお姉様に対する態度……、知り合った当初には憧れの的だったのがウソのように無礼極まりないですの」

佐天「無礼って……。まあ結構人見知りする子だし、仲良くなって段々と本性が出せるようになったんじゃないですか?」

白井「冗談じゃないですの。この辺でビシッと、自分の立場を弁えられるよう指導する必要がありますのよ!」

佐天「立場とか指導とかなんか大仰ですけど……、一体何をやらかすつもりです?」

白井「ええ、そのことで佐天さんにも少々のご助力を願いたく……」





~数日後~


御坂「……それでさ、私はそいつに言ってやったのよ。  『アンタ、他人の鹿尾菜盗るなんて食ひじき張り過ぎよ』 ってね」

初春「うわー、相変わらず御坂さんのギャグって何を目指してるのか全然見えないです。誰も真似できませんねー」

御坂「……そ、そう? あの初春さん、それって褒め……てないわよね?」

初春「大丈夫です。私って、ほんの少しでも面白かったら笑いを堪えることが出来ませんから」 ニコニコ

御坂「つまり欠片も面白くなかったってコトね……。んー、そっかー……」



白井「(あ、あ、あの巧言令色、傲岸不遜! お姉様の優しさに甘えて調子に乗り過ぎですのよ万年花フェスタ!!)」

佐天「(くひじき……食ひじき、食い意地?)」 ヒデェ

白井「(その腐った球根を叩き潰す! ……では佐天さん、先日の打ち合わせ通りにお願いしますの!)」 

佐天「(気が進まないんだけどなあ……、今更言ってもしょうがないけど)」 ラジャー




白井「コホン)ちょっと空気が重いですわね。……話題も途切れたことですし、気分を変えてパーッとした話などありませんの?」

佐天「はいはいっ! じゃあ久しぶりに童心に返ってなぞなぞしませんか? 盛り上がると思うんですよー、いやーマジで!!」




初春「はあっ、佐天さん?? なぞなぞって……」 エー?

白井「ナイスアイデアですわ! 思考の柔軟性を鍛え、出題と解答を通して仲間の絆も深まる。最高ですの!」

御坂「なぞなぞ……、ゴメン。悪いけど私はパスさせて」

佐天「あれー、そうですか? そうなると、あたしは進行だからー……、あれ? 初春と白井さんの一対一になっちゃった!!」



初春「なんなんでしょうこの茶番劇?」






446 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:12:42.80 Stq5WZOJ0 317/386


白井「おやー、初春? 風紀委員同士の対決と考えればむしろ自然でしょうに、まさか怖気づきましたの?」
   (そう! 本作戦の主眼はお姉様の眼前で、初春をお得意の頭脳戦にて叩きのめすこと)

初春「ふぇ? そういうんじゃありませんけど……」

佐天「じゃあいいじゃんやろうよ! あ、そうだ。せっかくだから御坂さんには審判とか細かい評価とか、お願いします!」
   (御坂さんは以前、初春とのなぞなぞで痛い目を見てるから不参加は想定済み。予定通りのマッチメイクです!)

御坂「はあ……、良くわかんないけどそれくらいなら」



白井「あとは、多少の縛りがあったほうが勝負としては格好がつきますの。ですから出題のテーマなどを……はい、お姉様!」

御坂「えっ? ちょ、何よテーマって? 私?」

佐天「はいはい戴きましたーっ! 私、つまりテーマは『御坂美琴』ですね? それでは問題のシンキングタイムスタート!」
   (白井さんが言うには、初春の増長は心理的御坂美琴像の歪みが全ての原因だと。……いや、サッパリ意味不明だけど)

白井「承知しましたの! ささ、初春も急いで考えなさいな」
   (ふふ、お姉様に関するなぞなぞで初春をギャフンと言わせて深層心理まで矯正して差し上げますの!)










御坂「…………ねえ、初春さん。コレってなんだと思う?」    初春「さあ……、端的に言えば素人の浅はかさですかね?」








447 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:15:00.03 Stq5WZOJ0 318/386


佐天「そろそろ良いですかー? 思い付いた人から出題してくださーい」

白井「ではわたくしが先手を取らせていただきますの。敢えて初春お得意の暗号問題で参りますわ!」



【白井黒子の問題】


常盤台のエースにして、わたくしだけのお姉様こと御坂美琴。彼女の宝物と言えば当然、白井黒子ですが
それ以外にもうひとつ。瞼の裏に焼きついた大切な何か。さて、それは一体なんですの?


                      [ミ ケ ヒ ロ ミ ミ ヒ ヨ ミ ヒ ン ミ]


ヒントはこの暗号。さあ、答えて御覧なさいな。







佐天「白井さんからの問題、かなりの難問な雰囲気が漂っております!! さあ~、見事に初春は応えて見せるのか!?」

御坂「問題文にいくつかツッコミどころがあったけど……、それはまあ後回しにしておくわね」

白井「なかなか良い出来のなぞなぞだと思いません? わたくしこの日の為にずっと考えて参りましたのよ!!」

佐天「即興のはずなのにそれバラしちゃダメじゃないかなー……。っと、審判がスルーしたのでセーフですかね?」

御坂「今更そんなことに目くじら立てる気は無いわよ。……そんなことには、ね」




佐天「は、はあ。……なんか審判は別に気になることがあるようです。それはともかくこの問題、初春は解けた?」







448 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:17:04.07 Stq5WZOJ0 319/386


初春「まあ……、一応解答しますけど、最終的には御坂さんにお任せすることになるかなーと」

白井「なんですの? 答えに自信が無いからせめて部分点を貰おうとする出来の悪い学生みたいなマネするつもりですの??」

初春「いえいえ、そう言うんじゃなく……あー、面倒なので答えてから説明します」


【解答】

初春「ヒントの暗号はこのままだと意味不明です。そしてこれを解くにはカギが要ります」

佐天「カギって、でもそれらしいこと問題の中で全然触れられてなかったんじゃない?」

初春「いえ、覚えてませんか? 御坂さんの宝物は、瞼の裏に焼きついてるんですよ」

佐天「さっきの問題文の一節だね。んで?」


初春「瞼の裏に焼きついたものを見るための方法は瞳を閉じることです。それがこの暗号を解くカギというわけです」

佐天「ふむふむ、つまり目を閉じて暗号文を見ろと。って見えないじゃーん」

初春「……、瞳を閉じれば浮かぶその宝物は、暗号の中の『ヒ』と『ミ』の文字を閉じることで解る。つまり答えは『ケロヨン』です」

佐天「な……、なるほどー! 説得力のある解答を戴きましたが白井さん、判定をお願いします!」




白井「……、正解ですの」



佐天「ですよねー。ところで、御坂さんや初春はさっきから何か気になってたみたいでしたけど?」


御坂「……んと。こう言っちゃ黒子に悪いんだけど、コレあまりにも問題の質が低いのよ。簡単すぎるって意味じゃなくてね」

初春「そうですね。まずカギとなる言葉が『瞳を閉じる』だったんですけど、例えば『目を閉じる』でも意味は変わりません」

御坂「つまりカギになる言葉単体でカギであることの証明が不足していて、逆に暗号のほうから擦り寄っていく必要があるの」

初春「目じゃダメだったから瞳で、って感じですね。そんな自ら解かれようとするかのような暗号は暗号として不適当なんです」


御坂「まだあるわ。初春さんは『瞳を閉じる』を『ヒとミを閉じる』、『ヒ』と『ミ』を暗号文から消すって意味に解釈したけども」

初春「そうなんです。別にコレ、『ヒ』と『ト』と『ミ』を消すと考えても日本語として意味が通じてしまいます」

御坂「今回のヒントは偶然どちらの場合でもよかったけど、決して汎用性のある暗号とはいえないわね」

初春「更に『閉じる』を消すと言う意味で使って良いのか? とかヒントの中に同じ文字が繰り返し入りすぎてバレバレだとか…」




佐天「あの、白井さんがそろそろ泣いちゃうのでその辺で勘弁してあげてください」

白井「……何もそこまで言わなくても、わたくしの自信作ですのに。頑張って考えましたのに……」 ズーン

御坂「…………初春さん正解したし、一応なぞなぞは成立してたってことにしてあげるわよ。だからさっさと正気に戻りなさい!」





449 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:20:34.81 Stq5WZOJ0 320/386


佐天「き、気を取り直していきましょー! じゃあ今度は初春の番だよ!」

白井「そう、そうですの! さあさ、とっとと初春もなぞなぞを出すんですの!」
   (こちらのなぞなぞは……想定外の結果でしたが、初春の問題をアッサリ解いてせめてイーブンにしますの!)



初春「わかりましたよー。じゃあこんななぞなぞ、どうですか?」



【初春飾利の問題】


直径3メートル、外壁の厚さ10センチの継ぎ目ひとつ無い球形のガラス容器があります。中は空洞です。

あ、間違えました。中には隙間なく水が入ってました。
あ、また間違えました。ついでに意識の無い御坂さんも入ってます。

このままでは間もなく御坂さんは溺れてしまいます。なんとかして、この容器を破壊することなく御坂さんを救出してください。






佐天「おぉー? 白井さんの暗号とはまるで雰囲気の違う、なんかトンチ問題みたいな感じだね」

御坂「一体どうやって私は継ぎ目の無い球体の中に閉じ込められたんだろ?」

初春「さあ? でも所詮なぞなぞですから、そんなに難しくならずに簡単に考えてみてください」

佐天「私には答えの糸口さえ掴めてません。果たして初春の言うように気楽に考えることがコツなんでしょうかー?」

御坂「球を破壊することなく……、うーん? 昔の漫画で似たような問題を見たような……」 パピプ?




佐天「ちょちょっとーっ! 御坂さん、パクリ指摘はご遠慮くださーい!!  ……さて、それでは白井さん。解答をどうぞ!」








450 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:23:14.61 Stq5WZOJ0 321/386


白井「初春……。わたくしの問題の不手際を指摘しておいて、自分の問題に抜け穴があるのには気が付きませんでしたの?」

初春「抜け穴ですか? なんのことでしょう?」

白井「コレだけ言ってまだ気付かないんですのね。……それではわたくしなりの解答を発表させて戴きますの!」



【黒子の解答】


白井「この問題は本来、おそらく佐天さんが仰るような俗に言うトンチを使って解く類のものだと思いますの」

佐天「まあ、だって密閉容器を壊さずに中のものを取り出すなんて不可能ですからね。それで?」

白井「そう、不可能ですわよね。ですがここは学園都市、そしてわたくしはレベル4の能力者。……もうお分かりですわね?」

佐天「なっ……、そうか。問題文のドコにも能力を使えるかどうかについての文言がない。……ってことは」


白井「ええ。小賢しい回り道など考えるまでもなく、わたくしが球体の中に入りお姉様を連れて脱出してしまえば終了ですの」

佐天「おおおーーーっ! ちょっと反則気味な気もするけど、確かに容器を壊さずに目的を果たせますね!」

白井「しつこいですが初春が別の答えを用意していたとしても、それはわたくしの解答を否定する根拠にはなりませんの」

佐天「さあ、これはどうなんだ? イレギュラーな解答なのでジャッジがさっきより重要っぽいぞー! では判定は如何に!?」






御坂「…………これは、黒子の負けね。そうでしょ初春さん?」

初春「ですね。それでは正解には成り得ませんよ」





白井「なっ、何でですの? お姉様まで一緒になって、空間移動を使ってはいけないと明言しなかった以上は…」

御坂「落ち着いて黒子。そうじゃない、そうじゃないのよ。初春さんの解説をとりあえず聞いてみて」

佐天「白井さんの解答は纏めると 『容器内部にテレポートした後、御坂さんとテレポートで脱出』だよね。どこがいけないの?」

初春「問題文をよく読めば分りますが、御坂さんを外に出すことが目的ではありません。救出しないといけないんです」


御坂「そう、救出する。つまり助け出すってことが黒子の答えには欠けていたのよ……」

白井「……、は?」

初春「ご自身で良く理解しているでしょうけど、白井さんのテレポートは移動先の物体を押しのけて出現します」

御坂「それは紙切れ一枚でコンクリートの柱を切断するほどの、いわば究極の内圧ってところかしら」


初春「今回の場合、水で満たされた容器の中に白井さんが出現すると、白井さん一人分の水が強引に押しのけられます」

御坂「だけど相手は密閉容器。そして水は空気と違って圧縮率がとても小さなもの。水が縮む様子なんて見たことある?」

初春「球体に満たされた水に対して白井さんの体積は0.3%ってとこですか。それだけ水を圧縮するとなると……」

御坂「容器内には瞬間的に高水圧が満遍なく発生。でも、容器が破損するレベルまでは行かないと思う」 100キアツ クライ?

初春「なぜって、外壁より脆く水より圧縮しやすいモノが容器内にあるから……。それがどう変化するか、説明要ります?」 ニコッ





451 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:26:45.34 Stq5WZOJ0 322/386


白井「あ゛っ!…………ぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」




初春「まあそういうわけでして、白井さんの方法では御坂さんを助けることは出来ないんです。具体的にどうなるかというと…」

佐天「初春っ! それ以上は言わないであげて……、白井さんが戻ってこれなくなっちゃう!!」

白井「おねっ……おねえさ、まあ゛あ゛あ゛。 くろこは、くろこは取り返しの付かないことをおおおおおお、お゛おおおお」

御坂「大丈夫、大丈夫だから、ねっ? ほら、私は何とも無いでしょ? どこも潰れてないし元気だから安心しなさい」 ヨシヨシ



佐天「しかし初春……、アンタえげつない問題出すよね。……で、ちなみに答えはなんだったの?」

御坂「オーヨシヨシ、ホラ ナクナー   ……、初春さんのことだから答えはあるのよね。もう決着も付いたことだし教えてくれる?」

白井「ワタクシ……、ホネエサバ……ツブツブツブ…………」   

初春「いいですよ。では答え合わせです」



【解答】


初春「難しく考える必要はない、的なヒントを出しておいたのでみんなわかると思ったんですけどねー」

御坂「あれ? それってヒントだったの?」

佐天「ん~~~~~、ダメだよ全然わかんない。焦らしてないでさ、パパッと答えを教えてよ!」




初春「はいはーい。正解はですね 『何らかの方法で速やかに、ガラス球を破壊してでも急いで御坂さんを助ける』 です!」


                    『「…………、えっ?」』


佐天「ちょっと待ちなよ初春! アンタのなぞなぞって容器を壊しちゃいけないってのが条件だったでしょ?」

白井「ブツブツブツブツ…………」

御坂「まさかそう来るとは………………、佐天さん違うのよ。初春さんが言いたいのはそういうことじゃない」

初春「さすが御坂さん、主人公タイプだけあって理解が早いですね。そう、この問題のポイントは『一番大事なものは何か』です」


佐天「…………、ほ?」

初春「だから、『問題』は何をしたら失格とかじゃなくて、御坂さんは絶対守らなくてはいけない。そんな『簡単なこと』なんですよ」

御坂「ルールを守っていたら命が奪われてしまうかもしれない状況で、ルールなんかに縛られてはいけない、ってこと……」

初春「助けられる方法があるのなら是非を問わず行うべき。これを否定すると色んな人を敵に回しますよ?」

御坂「確かに似たようなことしょっちゅう言ってるヤツ知ってるけど……、アレをインチキ呼ばわりすることになるわけね」 



佐天「――――そしてこの日を最後に、白井さんも初春となぞなぞすることは無かったそうな。めでたくなしめでたくなし」 







452 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:31:24.96 Stq5WZOJ0 323/386


                                    ☆

番外個体「バカだねー、やっぱアレかい? 体がチビッこいと想像力もミニサイズなのかい?」

打ち止め「ほほぉー、ミサカをバカにするとはいい度胸って……でもそれって結局妹達全体をバカにしたわけだからつまり」

番外個体「そりゃこのミサカだって同じだけどさー、なんてーの? 個体ごとの個性的なアレがコレしてさ、チビ的なんじゃね?と」

打ち止め「なんだかわかったようなわかんないような説明の中にチビだけ明確に浮き出てる!!」



                        ギャー  ギャー  ワー   ギャーー   ドヒー





一方通行「ンだァありゃ?」

芳川桔梗「あら居たの……。あれは、ちょっとした論争のこじれに端を発するいざこざってところかしらね」

一方通行「論争ねェ? ……ンでオマエは何してンだ、止めねェのかよ?」

芳川桔梗「あのふたりに質問されたことを考えてる途中なのよ。答えが出たなら止められるんでしょうけども」


一方通行「その論争とかいうモンの原因か……。聞かせてみろ」

芳川桔梗「君が? いえ……、これはそもそも君だからこそ答えが出せる問題だったわね。いいわ、聞きなさい」



芳川桔梗「あの子たちはさっきまで、いつものように君がヒドい目に遭う小説を書いていたらしいのよ。
       今回の舞台は川。この間、私の武勇伝を話したでしょう? アレに触発されたようね。
       それであの子たちが言い争ってるのは、君と川のツルツル石が対戦したらどうなるかということなの。

       想像してみて? 君は小川を……、靴底を濡らす程度の水深しかない川なので歩いて渡ろうとした。
       そして当然のごとく、表面にびっしりとコケを生やしたツルツル石の上に足が乗る。
       常人ならばズルッといくわよね? でも君は一方通行だった。だからこそ悲劇が起こった。

       君はベクトル変換能力によって自分が倒れこむベクトルを反射……、でもこのベクトルを産み出したのって君よね?
       コレを反射するというのは自分が歩こうと脚を踏み出す運動ベクトルを反射するようなものであって、つまり……

       まあ、ソコはひとまず考えないことにして君のズッコケベクトルは石ころに与えることにする。でもまだ問題があるの。

       ズッコケベクトルを与えられたツルツル石は川の中でズルッと動こうとするんだけれども、石の上には君が居る。
       石がズルッとなったら、再び君はズッコケてしまわないかしら? だから更にそれを反射するとなると……。

       最終信号は『石ころもあの人も微動だに出来ずにずっと永遠にそのまま』派で
       番外個体は『石ころが足の下でグルグル回っている上で、干からびて死ね』派なのよ。

       さてどちらかが正解、若しくは正しい答えが別にあるのか。君の考えを聞かせてもらえるかしら?」



一方通行「ンなモン知るか!!」









453 : みずみずしい話[saga sage] - 2012/02/11 10:37:34.57 Stq5WZOJ0 324/386


                                            ☆

絹旗「ちょっ、水槽が超濁ってるじゃないですか! これは浜面の管理が超適当である証拠ですよね、ええそうですとも」

浜面「待て待て待てい! 俺に制裁を加えるより先に、自分が数分前に何をしたか思い出してみろ!!」

絹旗「数分前って……、アレですか? ネット通販で買った底砂を水槽に超入れましたけど」 ソレガナニカ?

浜面「覚えてねえのかよ……。包装袋の裏に『使用前に洗え』って書いてあんのにメンドウだってそのまま投入したろ?」


絹旗「あー、でしたでした。するとこの濁りは……」

浜面「こういう砂ってのは袋の中で擦れて細かい粒子が沢山出来てんの。だから洗わず入れんのは泥を入れるのと同じなの!」

絹旗「へー、ほー」

浜面「聞く気ゼロですかそうですか……。大体それもこれも、こんな巨大な水槽を買うからいけないんじゃねえか?」


絹旗「言うほど超巨大ってことも無いと思いますけどね? そりゃ以前の60よりは大きいですけど」 ヨコハバ 60センチ

浜面「150だぞ150! 60から150ってどんだけジャンプアップなんだよ!? 界王拳でも使ったのかっての!」

絹旗「大げさなんですよ浜面は。容量で言ったら60リットルが300リットルになっただけじゃないですか」

浜面「300リットルってそれもう一般人には風呂と変わんねえんだよ! ったく、未だに金銭感覚がフザケてんなあ」 10マン クライ?


滝壺「でもこれ、ほとんど麦野がお金出したんだよ? 皆の水槽だから大きいサイズのほうが良いって」 ゼンブデ 40マン ダッテ

絹旗「そんな麦野の優しい気持ちを……、フザケてるとか占いババとか超言っちゃう浜面ってどうなんでしょう?」

浜面「言ってないからね! 俺は界王拳とは確かに言ったけども麦野はババアとか言ってな…」

麦野「ほう」


浜面「よ、よよよよよ、よお麦野。来てたのかー。そーかー、だが違うぞー? 俺は決してだなー、つまりだなー……」 ガクガク

麦野「なーにテンパってんのよ、みっともない。それより水槽は? 絹旗のアーマードプレコ部隊はどうなったの?」

滝壺「まだ移動して無いよ。こっちの水槽はまだ試運転中だし、濁っちゃってるし、レイアウトだって考えてないから」

絹旗「なにせこのサイズだと水を用意するだけでも一苦労ですから。なかなかすんなり行かないんです」


麦野「ふーん? でもアレだね。こうして部屋の中に納まってみると、然程大きくないね……。ちょっと残念」 ハァ

滝壺「……やっぱり麦野は以前に話してた計画を諦めてないの?」

絹旗「ん? なんです、その計画って?」

浜面「俺も聞いてねえな。……ひょっとしてもっとデカイ水槽、例えば180とか買うつもりだったのか?」 1t デスヨ?


麦野「私の計画ってんだから決まってるでしょ? シロザケの一生をひとつの水槽で観察したいなって思ったのよ」

滝壺「学園都市の外周に水槽を張り巡らせて淡水ゾーンから汽水、海水って区切れば回遊も出来るかもって言うから」 ムリダヨ

絹旗「夢はありますけど……。要はアクリルのフラフープの中を超シャケが廻るってことですよね?」

浜面「水圧とか水換えとかそんなチャチな問題じゃねえ……。ただ、それ作るより北海道でも買収したほうが早いよな」 ヤスイシ




  ~おしまい~






454 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/02/11 10:53:50.76 Stq5WZOJ0 325/386


以上、番外編「みずみずしい話」でした。小ネタなのに膨らみすぎた・・・

最初のなぞなぞパート、初春の問題は黒子であればテレポートを別の使い方するべきだったのでしょう。

第一位vs石ころ、……ズッコケベクトルって語感が気に入っちゃって、それだけなのです。ごめんなさい。

最後のフラフープ水槽、建設費の計算なんて当然してません、っていうか出来ません。あしからず


てなワケで、随分とおバカな感じの番外編でしたが・・・次はちゃんとします! ではではまたー



460 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/02/17 22:34:00.17 5K4tTapM0 326/386


前回の番外編、なぞなぞはもう少し考察が必要だったかな・・・と後から思ったり。元ネタがこんなにあっさり指摘されたのも予想外だし。

座標移動については、水ごと美琴を閉じ込める方法は水中の美琴を囲む形で容器を出現させる外なく、
初春の知る限りそれが可能な能力者は結標だけ。つまり犯人なので救出に協力しない。
そんな論理を用意してたんだけど、なんとなくガラス容器の重量を計算してみたら7t弱とか変な数字が・・・。
そんなわけで、みんな座標移動の可能性にはたまたま気付かなかった。そういうことにしてくださいませ。

それと初春のキャラはご指摘どおりで、全編通してどの顔が出るか油断のならない子って感じのつもりなのですが
こんなの初春じゃない!! ブレんな!! と思われた方がいらっしゃいましたら申し訳ないですが、特に変更する気もないのでご容赦ください。


そんな余計なことばかり思いつくおさかな話。最近、注意してないとダジャレとこじ付けと皮肉が増量してしまいます。

今回のテーマはそんな気持ちを籠めて「反撃」です。言ってるそばから問題が多いんですが、宜しければどうぞ


461 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:36:39.08 5K4tTapM0 327/386


                                          ☆

「なあインデックス? 姫神が来てるけど特に用事があったワケじゃないみたいだし、慌てて戻ってくる必要はないからな」

 『とうま? それは了解だけどふたりのおさかな話も聞きたいんだよ! だからデンワーはそのままにしといて欲しいかもー』

「わかったよ。だけどお前そろそろ帰りのバスに乗るんだろ? マナーだから乗る前にはちゃんと切っとけよ?」

 『あ、当たり前なんだよ! だってとうま前に言ってたよね。学園都市では人ごみでの通話はカンツーザイで死刑だ、って…』




「――― ってことで悪いな姫神。せっかく遊びに来てくれたけどアイツまだバス停だから、帰りは1時間後くらいだと思う」

「全然構わない。むしろ私は。この千載一遇の好機を生かすのみ」

「……、ん? なんか知らんがスゴイやる気だな」

「当然。苦節数ヶ月にしてとうとう訪れた私の桧舞台」

「よーし、んじゃ上条さんと姫神のおさかな話、はじめようぜ!」

「望むところ。今日までの鬱憤を。一気に晴らさせて欲しい」









                                    【中略】













「へ~、意外というかピッタリというか。同じコイ目の仲間でも姫神はドジョウよりはそっち系が好みなんだな」

「うん。……それはともかく。今ちょっと納得行かない展開が。あった気がした」

「そうか? まあ上条さんの司会っぷりはインデックス仕込みだから、英国風のクセが少々クドいかもしれないけど」

「いやそんなことじゃなく…」
                <トウマ トウマ トウマーーーーーーーーー!

「っと、ちょっとゴメンな。……なんだよインデックス? そんな大声出さなくても聞こえるって」

 『だってさっきから呼んでるのに全然答えてくれないんだもん! せっかくあいさの話に補足してあげようと思ったのに』

「あーそっか、そりゃ悪かったな。んじゃ、お前さえ良ければ今からでもお願いしていいか?」

 『わ、わかれば良いんだよ。ふたりのお話の最初のほうから振り返っていくからしっかり聞いておいて欲しいかも』





「こういうテンプレな流れ。嫌いじゃない。嫌いじゃないけど」








462 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:37:57.82 5K4tTapM0 328/386


 『まず第一に、あいさが好きな魚として挙げた3種は全てコイ目コイ科カマツカ亜科に属するんだよ』

「ふ~ん。じゃあ、あの中の代表的な種がカマツカって事になんのか?」

 『分類ってそういうことじゃないかも。でもまあ、確かに一番馴染み深いおさかなかもね』

「これまでも名前だけは何度か出てきたもんな。ここらでおさらいも兼ねてちょっと勉強しておくか」

 『いい心掛けかも。ではでは謎の超有名魚、カマツカの正体を探っていこー!』

「超有名なのに。正体は謎。カマツカの真実に迫る。……そんな大袈裟な話?」


「あまり寒く無い地方の河川の中流~下流の水底、それも砂地に居ることの多い底棲淡水魚……ってことは常識なんだけど」

 『腸呼吸が得意なのか止水にも居るんだよ。おさかなを飼ってる人には底の掃除屋さんってイメージかも』

「下向きの口を伸縮して、砂を吸い込んではエサになるものを選り分けて食べる性質があるからな」

 『その砂をエラ蓋から吐き出す様子はホント古い掃除機ソックリなんだよね』 ポンコツ ナ カンジ

                                                    「…………キレイ好きと。言うべき」


「見た目は……、ブチの細かい三毛猫的なメタリックざっくりポテトフライって感じだよな?」

 『それ、あいさにも言ってたけど全然伝わってないかも。細長く角ばった体型の金属光沢を持つ斑模様の小魚って事だよね?』

「せっかくカッコ良く表現してみたのに……。だが、少女マンガも真っ青の輪郭さえ超越した大きな目。これは譲れないぞ!」

 『そっちは確かに分りやすいかも。顔の上部に半ば強引って感じで配置されてて、とってもブサカワイイんだよ』

                                                           「…………ブサは余計」


「可愛いと言うよりウマヅラ一歩手前と言うか行き過ぎっつーか。……で、そんな魚は日本の川じゃ目立つはずなんだけどな」

「でも川に行っても。素人には見つけられない。なぜな…」

 『なぜならカマツカは臆病な魚で、人が近づいてくるような物音に敏感に反応してすぐ砂に潜っちゃうからね』 ビビリ ダネ

「大きな目が顔の上部に付いてんのは、砂に潜りつつも周りを確認せずに居られない小心者の証ってワケだ」

                                                                  「…………」


 『だけど、カマツカをよく知ってる人には却ってそれが目印になっちゃうんだよ。頭隠して尻隠さず……、逆かも?』

「ああ。晴れた日に川底を覗くと、砂地の中でカマツカの頭が日光を反射して金色に輝いて見えるんだってな」

「そう。つまり万人受けではなく。判る人だけが判る強烈な個性。そんなところが私は好…」

 『一般には他の魚を探してたらいつの間にか砂と一緒に網に入ってる変な魚って感じかな? 月並みな言い方だと雑魚かも』


                                   ぷちんっ






                                        カサネガサネ ジャマシタ アゲク …………… ヘン ナ ザコ ?








463 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:40:11.91 5K4tTapM0 329/386


「…………」 フム

「んー? そんな難しい顔してどうした姫神? インデックスに質問があるなら早めに聞いとけよ、そろそろバスの時間だし」

「……じゃあ質問。とてもよく似ているズナガニゴイとカマツカ。素人でも見分けられるポイントを教えて欲しいって。上条くんが」

「…………、へっ?」 オレ?

 『わわ、言ってるそばからだんだん人が集まってきたかも。えーと、ズナガニゴイは中層に居てカマツカは底棲なんだよー』


「それだと生息環境中でしか比較出来ない。知りたいのは。動かなくなった魚が一匹だけ居る場合でも判別出来る方法」

 『も、もうデンワーを切らないとダメなのに! ……じゃあ、そのおさかなの尻ビレと排出腔の位置関係を見ればー』

「難しい表現は避けて欲しい。上条くんは具体的に何をすれば見分けられるか尋ねているから。あと。声がちいさい」

「あの……、姫神さん? 俺は別に何も……」






 『だーかーらー! ひっくり返して肛門、お尻の穴がどこに付いてるか見て欲しいんだよーーーー!!!』 
                                                               ピッ

       





「おい……。ひょっとしなくても、いつものあの服装で、人が集まってるバス停で、今のセリフを叫んだってのか???」

「目立つ子だから。もっと目立つようにしてあげた。それだけ」

「インデックスに何の恨みが……。いや、とばっちりで上条さんもオシオキ確定ですよねコレ……」 フコウ ダ









464 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:41:31.91 5K4tTapM0 330/386


                                     ☆

初春「御坂さーん、最近177支部で白井さんが何かと私に厳しいんです。なんとかしてくださいよ~」

佐天「そりゃあんた……。こないだのなぞなぞ、やり過ぎたんだから自業自得だよ。当分は覚悟しとくんだね」

白井「人聞きの悪い。わたくし、私怨で他人に辛く当たるような小さな器ではないですの。そもそも初春の日頃の態度が…」

御坂「まあまあ、その辺にしときなさいよ。私だって端から見てて、確かに黒子ちょっとキツいんじゃないかなって思うもの」


白井「んまーっ! お姉様までそのように初春の肩を持ちますの? これは差別ですの、抑圧ですの、言葉狩りですの!!」

御坂「いや良くわかんないけどそう言うんじゃなくてさ、この間のアレってアンタが何か企んだのが発端だったんでしょ?」

白井「で、ですからっ! 先日の件がどうこうという問題ではなく…」

佐天「成り行きで私も乗っかっちゃってましたけど……。暴走する白井さんを止めてあげられずに、ホントすいませんでした。
    御坂さんに生意気な態度を取る初春をなぞなぞで打ち負かして矯正するって、今思えば謎だらけな計画だったのに……」

初春「私も、決して御坂さんを軽んじてなんかいないですけど、でもそう見えるんだなってちょっとだけ反省しました……」





白井「っ…………」

御坂「ほらね。時には厳しさも必要だけどさ、他人を許して認め合う事を通しても人は成長できるものでしょ?」




白井「……、ズルイですわよ。これではまるでわたくしが悪者ではないですの」 ブスー

佐天「えーと、いや……、そんなつもりじゃないんだけどなあ」

御坂「なによ、意地張っちゃって。黒子がスネたってかわいくないわよ?」

白井「可愛くなくて結構ですのですのっ!」

佐天「ちょっ、御坂さんも口下手過ぎですよ。余計に拗らせてどうするんですか…………」 アチャー

御坂「だってコイツが…」

白井「ですのですのっ!」





初春「…………、あのっ!」 ガタッ




465 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:42:46.65 5K4tTapM0 331/386


白井「……初春?」



初春「私が間違ってました! 白井さんの厳しさは未熟な私を気遣う優しさだったのに、そんなことも理解できずに不満ばかり」

白井「へ? あ、いや……その」

初春「だからお願いします、これからも変わらずビシビシ指導してくださ…」

白井「お、おまっ……お待ちなさい、お待ちなさいな初春! それ以上ふざけた事を言うと許しませんわよ?」


初春「白井さん……?」

白井「わたくしごときが本気であなたを指導、など出来ると思っているなら買いかぶりも甚だしいですの」

初春「…………」

白井「ええ、わたくしだって未熟な半人前ですのよ。あなたがそうであるように日々間違えながら成長してる途上ですの」


初春「白井さん……。だ、だったら……、だったらこれからも私と一緒に一人前を目指して頑張ってくれますか?」

白井「それでしたらもちろん喜んで……いえ、こちらこそお願いしますの。掛け替えの無いパートナーとして」

初春「あ、ありがとうございます! そして、あらためて宜しくお願いします!!」

白井「ですのですのー」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




御坂「~ってな感じの仲直りを想像してたんだけどさ」

佐天「なんかもう普通にいつも通りですよね。ドラマチックな展開とか特に無かったんですか?」

初春「さすがに次の日はピリピリしちゃいましたけど、なにせ風紀委員って忙しいですからね」

白井「負の感情を引き摺るヒマなんか無いのですの。まあ、日常を必死で生きてる者の人間関係は概ね良好って事ですわね」


佐天「……それ、なぞなぞで初春ギャフン作戦なんて企んでなきゃ結構説得力のある言葉でしたけどね」

白井「『企んで』とは心外ですの。あれは優しいお姉様に成り代わり……、言うなれば托卵(たくらん)みたいなものでしたのに」

御坂「う……、上手いコト言って私にまで責任擦り付けないでよ! それにアンタが托卵とか言うと理解不能の寒気がするわ!」

初春「……上手いかな? ……えーっと、その常盤台レベルの駄洒落はともかくとして白井さんは何が言いたいんですか?」






白井「初春、後で全裸プール。……托卵とはキモいタマゴ……ではなく、自分の産んだ卵の世話を他のものに託す行為ですの」







466 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:44:33.76 5K4tTapM0 332/386


佐天「それってカッコウって鳥で有名なヤツですよね? 別の鳥の巣に卵を産んでその親鳥にヒナを育ててもらうって」

初春「あの……、プールは冗談ですよね……、ね? 白井さんはそのカッコウみたいな惨いことしませんよね??」 ヒィィ

佐天「へっ、何でムゴいの? カッコウは結局子育てを手抜きするんだから、どっちかって言うとズルい話なんじゃない?」

御坂「物の見方にもよるけど、托卵はそんな甘いものじゃないわよ。まぎれもない生存競争なんだから」


白井「例を挙げますの。カッコウが狙うのは早贄でお馴染みのモズなどの巣。親鳥の留守を見計らい産卵しますのよ」

御坂「巣には当然モズの卵がいくつかあるんだけどカッコウはひとつだけ卵を産んだ後、モズの卵をひとつ捨てるの」

初春「帰ってきた親鳥にバレないための数合わせ工作ですかね? どっちの鳥も卵の見た目は割と似ていますし」

佐天「入れ替わりの犠牲になっちゃうんだね……。でも確かに可哀相だけど、たくさんあるうちの一個だからまだ救いが…」


白井「そんな甘い話では無いと言ってるんですの。カッコウがひとつしか卵を産まない理由を想像して御覧なさい」

初春「体の構造的な制約は置いといて、カッコウのヒナは単独で育雛されるよう行動する性質があります」

御坂「つまりカッコウの卵が2つあると、孵ったヒナ同士がお互いを巣から追い出そうとしちゃうのよ。どちらかが死ぬまでね」

佐天「ああ、だから無駄な争いを避けるために一個ずつ産み落と……、ってじゃあモズの卵はどうなっちゃうんですか?」


御坂「カッコウは他の鳥と比較して孵化が早い。だからそのヒナは邪魔されることすらなく他の全ての卵をポイしてしまうの」

白井「最終的にモズの巣の中には、自分の子供を皆殺しにした他人の子だけが残ることになりますわね」

初春「親モズはそれに気付くこともなく、時には自分よりも大きくなるヒナにせっせとエサを運び続けるんです」

佐天「で、ある日突然ソイツは勝手に巣立ってっちゃうのか……。うん、これはとことんムゴい話だったわ」


白井「鳥だけではありませんのよ? おさかなにも托卵をする種が居りますの」

御坂「口の中で大量の稚魚を、こう『ワッサー!』って感じで保護する魚って時々テレビとかで見かけない? アレを狙うのよ」

初春「ある種のナマズの仲間はそうしたマウスブリーダーの卵に自分の卵を紛れさせて保護してもらうんだそうですよ」

御坂「まあ、予想は付くと思うけど……。そのナマズの稚魚は保護されながら周りの卵や稚魚を食べて成長するんだけどね」


佐天「なあああっ! 悪気無いのは分ってますけどあんまりじゃないですか!! 大体、親は托卵対策しないんですか!?」

御坂「いや、実は異物として排除される方が圧倒的に多いのよ。それと、カッコウで言えば一個ずつしか卵を産めないでしょ?」

白井「ですからカッコウはダメ元でたくさんの鳥の巣に産卵するんですの。しかもそれぞれ別のオスとの卵を」

初春「悲劇はその全ての巣で起こるのではなくて、注意力の低い親鳥だったとか極めて短期で孵化することが出来たとか
    そんな偶然の産物なんですよ。逆にカッコウにとっては蜘蛛の糸みたいな奇跡に縋って種を繋いでいるわけで…」

佐天「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる方式なのかあ。それじゃますます誰も責められないじゃない……」


初春「……それが自然の成り行きですから。産まれる事も出来ずに死んでいった卵は文句なしに被害者なんでしょうけど」

佐天「他者に自分の卵を託す、それと気付かず育ててしまう、他の卵やヒナを排除して恩恵を独り占めする……」

御坂「そっちは程度の差こそあれ加害者と言えば加害者なのかもしれない。けど……、文句言ってもそういう世界なのよ」

白井「同様に、お姉様の意を汲み初春を糾そうとしたわたくしの行為も皆さんに批難される謂れは……、ぎょぼええええっ!」




御坂「アンタのやったのは托卵じゃなくてむしろ盗卵でしょうが! っていうかそれ全然私の卵じゃないし!!」 ビリビリビリ

佐天「いや~……、ホントにいつも通り過ぎて安心しちゃいますね、アハハ」








467 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:45:53.73 5K4tTapM0 333/386


                                      ☆

打ち止め「さがれさがれさがれー、さがりおろー、ってミサカはミサカは依然マイブームな時代劇ソングに染まってみたり」

一方通行「…………」

打ち止め「ちゃんばーらー、ちゃんばーらー」

一方通行「……、オマエの言ってンのは俺の知ってる時代劇じゃねェな。ったく、ンな知識ドコで仕入れやがった?」


打ち止め「さあ、学習装置に入ってたんじゃないかな?ってミサカはミサカは生まれる前から知っていた事実を表明する」

一方通行「ならその機械を監修したヤツがオカシイのか……。ったく一体ドコのバカ学者なンだか」

打ち止め「誰が、なんてどうでもよくない? 事実ミサカはこの歌を知ってるんだからってミサカはミサカは意見してみたり」

一方通行「……覚えとけ。ソレを言って許されンは自分の仕事を横取りされたヤツだけだ」


打ち止め「…………、ん? 会話の繋がりがおかしかったような……、とミサカはミサカはあなたのセリフを反芻してみる」

一方通行「深読みの必要はねェよ。只の一般論だ」

打ち止め「ふーん?」

一方通行「…………」


打ち止め「……ひょっとしてなんだけど、『横取りな魚』ってテーマで予習してきたからミサカを誘導したかったの?」

一方通行「くだらねェ。なンでオマエ程度の相手にこの俺が参考書片手にお勉強しなきゃなンねェンだっつーの」

打ち止め「それもそうだよね、とミサカはミサカは……、でもおさかなに横取りってありえるのかな?などと蒸し返してみる」

一方通行「所有って考えが無けりゃ端から横取りもない。だが、ヒトが認識する分についてはその限りじゃねェ」


打ち止め「それ捕まえたのあの子なのに、どうして後から来たお前が……って感じ?とミサカはミサカは漠然と例示してみたり」

一方通行「横取りに見えンだろ? 実際の所、多くの動物は自分が今食ってるエサさえ自分のモンだと思ってねェが」

打ち止め「じゃあワンちゃんのご飯皿を動かそうとすると吠えるのって、厳密には盗られると思って怒ってるんじゃないのかな?」

一方通行「だろォな。換言するとヤツらの目の前にあンのは好機に過ぎず、故に狩りと同じ緊張感を持ってるって事だ」


打ち止め「なるほどね……さっぱりわかんない、とミサカはミサカはイヌの気持ちに通じてるあなたにビックリしてみる」

一方通行「勘違いすンな。イヌの心理が判るンじゃなく、あくまで行動を観察して類推してるだけだ」

打ち止め「ほー……? いやいやまずまずなかなかぼちぼち……」

一方通行「まァ、理屈並べた所でクソ程の価値もねェよな。……そォだな、今日はウツボの話でもしとくか」



打ち止め「え?? このあまりに唐突な流れにミサカは置いてけぼりな気分ってミサカはミサカは現状報告してみたり」

一方通行「単純にウツボネタと捉えて構わねェ。蛇の外見に獣の牙を持つ魚属性の怪物……、海のギャングの噂話だ」






468 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:56:47.38 5K4tTapM0 334/386


一方通行「ウツボは世間的には海水浴なンぞで注意が必要な生物、って程度の認識に過ぎないかもしれねェが
       実はかなり面白ェ魚でなァ……。とりあえず基本情報を確認しておく。

       温暖な浅い海に棲む、ウナギ目の特徴である円筒形の体型と強い肉食傾向の食性が顕著な大型種の多い魚で
       中には体長4mを超すオナガウツボなンて巨大な仲間も居るが、日本のイメージではせいぜい1m程度か?

       腹ビレは完全に退化し背中側のヒレは全て一体化しちまってる。またウロコも殆ど退化してる。
       そンなのっぺりとした、っつーの? アクセントとなる部分を欠くことで逆にインパクトを与えられる造形だな。
       体色は種によって様々で、温暖な海の魚らしく驚くほどカラフルなものも多い。
       鋭い牙を持つデカイ口にさえ気を付けりゃ、充分見て楽しめる身近な海の生物のひとつじゃねェかと思う」


打ち止め「でもやっぱりキモコワなイメージの方が強いよ?とミサカはミサカはウツボの鑑賞適正に疑問符をつけてみたり」

一方通行「そりゃ実際噛まれて大怪我するヤツが居るからな。変にウツボを刺激するからなンだが」

打ち止め「刺激って、脚で殴ったり引き千切ったり逆流させたり?ってミサカはミサカは想像を膨らませてみる」

一方通行「……、ウツボは獲物を追いかけるよりも隠れ家でエサが寄ってくるのをじっと待つタイプの捕食者だ」

打ち止め「ふむふむ。つまり目の前をチラチラされたら色々とジャマなのね。……噛み付きたくなる気持ちもわかるような」

一方通行「ソレも含め海のギャングって異名に不足無し、かどォか……。とりあえず話を続けるから良く聞いとけ」


一方通行「ウツボの仲間は共通して咽頭顎っつー……、表現が難しいンだが、口を大きく開けると飛び出す第二の口、
       つまりエサを体内に引き摺り込む為の器官を持つ。SF怪獣なンかの喉の奥から伸びる口を想像すりゃ近いか?
       ンな事聞くとますます恐怖生物っぽく感じるかも知れねェが、コレには割と情けない必要性がある。

       魚類は一般に、口を開けたときに発生する陰圧を利用した吸い込みによってエサを喉奥まで運ぶンだが
       ウツボ類の場合、そのデカイ口と細い胴体の所為で吸引力が弱い。ヘッドを外した小型掃除機みたいなモンだ。
       ヤガラのよォに口まで細くすりゃ圧は稼げるがソレだとエサの大きさが制限される。かと言ってボディを大型化すると
       今度は岩場や砂地に身を隠す事が困難になり結果として積極的な狩りをしなくては生きていけなくなる。

       咽頭顎は大きなエサも喰いたいが余り動きたくもない、そンなワガママを叶えるステキ器官って事だな」


打ち止め「ほほー……。なんだかズボラに進化してきた子なのね、とミサカはミサカはテキトーなことを言ってみる」

一方通行「敢えて言及する必要はねェと思うが、進化に意思は介在しない。飽くまでも例え話として捉えとけよ?」

打ち止め「ある部分が偶然役に立って生き残った。そんな『たまたま』の集大成ってことだよね」

一方通行「あァ…………、ソレを自主的な選択であるかのよォに説明すンのは単純に解り易いからだ。話も短くて済むしな」

打ち止め「だから逐一自分で翻訳しながら聞けって事?とミサカはミサカは暗にそれも面倒だよと愚痴ってみたり」

一方通行「まァな……、ソコまで踏まえて本題に入る。ウツボの不思議な生態から何かを掴ンでみろ」


一方通行「さっき説明したよォに、ウツボはデカイ口を持つ肉食傾向の高い魚で他の生物にとっては恐るべき存在のはず。
       だが、ヤツらの周りには生息域の平均以上に小動物が溢れていることが多い。ある種のエビ類や小魚などが
       明らかにウツボの巣に近寄って生活してンだよ。……最強の怪物の傍なンざ気紛れでエサにされても文句ひとつ
       言えねェだろォにオカシイとは思わねェか? 当然、集まってくる小魚はマズイとか毒があるとかそォいう事でも無い。
       実際、時折喰われてるしな。……さて、不自然な現象にも合理的な理由を求めたくなンのが人情だ。

       観察すりゃ判るが小動物どもが集まってくる目的のひとつはウツボの体表や口中に残る有機物。要はウツボ自身が
       エサの塊ってトコだな。小動物の小さな口でも食べられるサイズに分解されたエサが集中的に存在してるってのは
       ヤツらには貴重な事で、多少の危険を冒してでも留まる価値のある場所って事なンだろォ。
       ウツボにとってはそォした小動物の啄ばみが掃除として機能してると解釈可能だ。汚れの放置は病気の素だしな。
       だから、小魚どもは食べちまっても構わねェがほっといても悪くない存在、などと捉えられてンのかも知れねェ。

       更に観察から推測するに、ウツボの近くに棲息する小動物はウツボによって他の捕食者から逃れてると言える。
       なにせ浅い海では無敵の暴君だからな。誰に狙われるか判らない海域で下手にビクビクするよりマシなンだろ。
       またウツボにとってはそンな捕食者さえもエサだ。それにどォせ喰うならチビより大物のが良いのは当然だろ?
       小動物を狙った迂闊なタコなンかが待ってるだけで来る状態、つまりウツボは撒き餌を侍らしてるも同然って事だ。

       このよォに異なる生物が関係を持ちながら生息場所を同じくし、ソレが双方にとって得なら相利共生と言う。覚えとけ」






469 : 反撃[saga sage] - 2012/02/17 22:58:49.46 5K4tTapM0 335/386


打ち止め「ふーん……、内容はともかく今日は『だろォ』とか『べき』とか『よォだ』みたいな歯切れが悪い表現が多くなかった?」

一方通行「気付いたか? そりゃ、一般人が思春期を過ぎて外国語を学ぶのと同じ理屈だ」

打ち止め「……また何か遠まわしに説明してるのかな?とミサカはミサカはミサカの能力をフルに使って情報を解析してみる!」

一方通行「だからソレじゃダメだっつーの。全然見当違いなンだよなァ……」


芳川桔梗「学習装置やネットワーク経由の情報取得は知的活動では無いのよ。たぶん君はそう言いたいのでしょう?」

一方通行「さァな。オマエに意見は求めてねェが、知的でない意識活動なンざ有り得ねェハズじゃねェのか?」

番外個体「さっきのってUGだっけ? 子供はどんな言語も極めて短期間で完璧に習得すんのに、大人は出来ない言い訳理論」

一方通行「穿った理解過ぎだろォ……。オマエらは軸になる知識を元に学習した経験がねェのかよ?」


打ち止め「えーっと、それはつまり知らないものを勉強する時に自分の記憶を頼りにするって事?」

番外個体「それ、意味なくね? 知らないコトの記憶は存在しない、コレは普遍の原則でしょ」

芳川桔梗「難しく考えてしまっているわね。要するに知識を応用して未知の状況に挑む、普通に誰もがやってる事よ」

一方通行「特に自己確立以降の学習は依存度こそ様々だが全てそォであるはず。オマエらのは例外にも程があンだよ」


芳川桔梗「知らないことを学ぶのに知らない世界へどっぷり漬かっては却って理解が浅く遅く危うい。効率の問題でもあるわね」

一方通行「専門バカとか言われるヤツが、やたら別世界の話題に詳しいのも実はバカだからこそだ」

番外個体「ふむふむ。犬を知りたいからって犬の気持ちになるバカじゃなくて、知ってる事しか知らないバカって意味だね」

芳川桔梗「その場合、仮に犬の気持ちを完璧に理解した人間が居れば、それはもう既にヒトではなくただの犬なのよ」


一方通行「自分がどンな知識を持ってるか、ソレが自分がどンな人間かを示してる。ココを壊すのは愚の選択って事だ」

打ち止め「競合する知識を無自覚に持つことで思考が中途半端になれば本物のお馬鹿だよねとミサカはミサカは断言する」

芳川桔梗「そんな人間は何を覚えることも何を考えることも出来ないでしょうね。どうやってその状態にするかは置いておいて」

番外個体「ふむ。……にしても、結局小難しい屁理屈大会になってんじゃん。もっと生き物の話しよーぜ」


芳川桔梗「あらそう? じゃあこんな話。ウツボと小動物は相利共生だったけど、共生関係にはいくつかのパターンがあるのよ」

一方通行「生息箇所を同じくしながら片方だけが得する片利共生、片方が得して片方が害を受ける寄生、とかな」

打ち止め「じゃあ、ミサカとあなたは当然相利共生で、ヨシカワとあなたが片利共生で、末妹とあなたが寄生……?」

番外個体「寄生とは聞き捨てなんねーな! どうせなら片害共生って言ってもらいたい」





黄泉川愛穂「それ、どれもが明確な線引きの出来ない概念じゃん。……、あ、芳川と私だけは別じゃん」 カンペキ キセイ ジャン






   ~おしまい~




470 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/02/17 23:30:36.87 5K4tTapM0 336/386


以上、第三十五回「反撃」でした。今までで書き直しが一番多かった回かもしれません。

第一パート、最初は姫神の好きな魚をカマツカの近縁でもありカマツカの異名でもあるツチフキにしてたのですが
      漢字で書くと土吹・・・、なんか違う話になっちゃうので変更しました。でもカマツカも意味ありげだったり。
      あと、生き物の話をする時は周りに気を使いましょう。特に死体がどうしたとか交尾がどうしたとか・・・。
第二パート、托卵をするナマズの名前はシノドンティス・ムルティプンクタートス、される魚はシクリッドの仲間。
      クイズ番組の問題に・・・使われないだろうな。

第三パート、解説パート以外は、何かそれっぽいことを言ってる的に読み飛ばしてもらえばいいかと。
      ちなみに、ウツボは油で丸揚げしちゃもったいないクラスの高級食用魚だったりします。

そんなわけで、ちょっと迷走気味?な姿勢を正しつつ今回はこの辺で。ではではまたー


477 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/03/19 22:33:28.06 U7/pK2V90 337/386


随分と久しぶりの投下、おさかな話って覚えてるヒトいるのかな・・・ちょっとだけ振り返えらせてくださいな。


前回の第一パートで上条さんは電話越しでインデックスに人ごみの中で恥ずかしいセリフを言わせてました。
今回はその続きから始まります。

また今回は全体的に考察系な内容で書いていたんですけど、第三パートが新刊の内容と大きく矛盾しちゃってたので書き直し
結果、一方通行さんにはお休みしていただき最初の二人が再登場してます。ご了承下さい。

あんまりおさかな話じゃ無い気もするのでテーマは『異物』です。読みにくいかなあ・・・と思いつつ、どうぞ

478 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:34:17.74 U7/pK2V90 338/386



                                         ☆

「な、なあインデックス…………待て、話せば判る!! だあああああっ!?」

「とうま、何か心残りがあるのかな? 前回、私を公衆の面前であれだけ辱めておいて……、口答えの余地無しなんだけど」

「いいい、いやですからアレは上条さんの本意などでは決してなく然るに本人の与り知らぬ行為の責任を追及される謂れは…」

「士道不覚悟。せめて潔く。最期の花道を堂々と逝って欲しい」 シレッ

「ちょっ、おい姫神! そりゃあんまりだr…」

「見苦しいんだよとうま! 観念しておとなしく悔い改めるがいいんだよ!!!」 ングワッ







                                     ぱんっ☆






『……、えっ?』

「いい加減にしなさい、とミサカ10032号は銃を構えつつ現状最優先の案件を忘れ気味のお二人に注意を促します」 ガシャコン










479 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:35:31.41 U7/pK2V90 339/386


「も……、もちろん忘れてなんかいないぜ? お前が……、御坂妹がインデックスを緊急で呼び出すほどの一大事なんだから」

「ととと、当然かも! ハヤリに流されて水槽持ってないのに川でおさかなを捕まえちゃったって聞いた時にはビックリしたけど」

「だな。しかも捕獲の際にヒレを傷付けたから、そのまま逃がしてしまえば命の危険があるのでは? って電話貰って」

「それで私が現場まで輸送用水槽セットを持って迎えに行ったんだよ。一時的にとうまの水槽で保護するためにね」


御坂妹「輸送用水槽セット? とは、この酸素の出る石が入った発泡スチロール箱でしょうか、とミサカ……、は確認します」

「うん……、出来たらウチの入れ物のクオリティには敢えて突っ込まないでくれると助かる……」

「まあ、そういうわけで今はその子の水あわせの真っ最中なんだよ。ともかく想像していたほどの怪我じゃなくてひと安心かも」

「見た感じ治療の必要もなさそうだな。ま、とりあえずしばらく預かるけど、御坂妹も自分の魚なんだからちゃんと見に来いよ?」


御坂妹「当然そのつもりです、とミサカは本来真っ先に頼るべきお姉様の水槽が常盤台敷地内にあるデメリットに感謝します」

「ん~……っと、よくわかんねーけど要するに、この水槽が役に立ったってことか?」

「ふふーん、思い知ったとうま? インデックス教会学園都市アクアフロント支部の救済力はハンパないんだよ!」 ドヤッ!

「この水槽そんな名前だったっけ? …………さてと、そろそろいいんじゃねーの? コイツを水槽に移してやろうぜ」


                                  ぽちゃんっっと


「―――――――― 投入後数分経過、不自然な挙動やショックを受けた様子は無し。……ひとまずオッケーだな」

「うんうん。それで……、今更なんだけどとうま。このお魚って何だと思う?」

「……………………、はあっ? 名前も調べずに持ってきたのかよ?」

「それが、ね……? ふたりで帰りのバスの中でもずっと考えてたんだけど、どうも種類が特定出来ないんだよ……」


御坂妹「当該魚のスペックを再確認します。採取場所は学園都市内の一級河川中流部浅瀬、採取日時は本日ヒトロクフタマル」

「手にて中層を遊泳中捕獲。全長7.0cm、体型は紡錘形、やや大きめのウロコ、全体に銀白色、側線付近に顕著な色変化無し」

「尾ビレはやや大きめの三角形。またその他のヒレも含め、フナなどの丸みを帯びた三角では無い明確な角を確認」

「更に各ヒレは光線の加減で他の部分に比して黄色掛かって見えなくも無い……、とミサカは簡易ながら報告を終えます」


「見た目や捕獲状況でこの子がハス以外のダニオ亜科、いわゆる雑魚オブ雑魚の若魚だって所までは判ったんだけど……」

御坂妹「オイカワよりはヒレが小さく、カワムツの特徴である暗色の太い縦帯がなく、ヌマムツよりもウロコが目立ってるのです」

「その3種、稚魚のうちは見分けるのが難しいんだけど、このサイズになれば特徴がハッキリするはずなんだよ。なのに……」

御坂妹「どの種だとしてもあるべきものが無く逆にあってはならないものが有る、とミサカはこの謎魚を再びガン見します……」


姫神「このふたりの知識と情報量。上条くんでは逆立ちしても敵わないはず。だけど……上条くんは同定力がハンパない」

「……姫神の言うとおり、お前たちが知らない魚をオレが知ってるワケ無い。けど、だからこそ判ったぜ。コイツの正体!」

「おおっ、とうまの理不尽なひらめきが役に立ったんだよ!! それでそれで、この子は一体なんなのかな?」






480 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:36:40.59 U7/pK2V90 340/386


「精緻な分析と正確な知識を以って判別出来ない、つまりそれはイレギュラーってことだろ? おそらくコイツは雑種なんだ」

「雑種? ……って、例えばライオンとトラの子供『ライガー』とか『タイゴン』みたいな俗に言う種間雑種のこと?」

「そう、イヌやネコの雑種と違って2種類の生物が親になってるって意味の雑種だよ。オレも詳しいわけじゃないけど」

「でもさっきの3種はダニオ亜科オイカワ属(オイカワ)とカワムツ属(カワムツ・ヌマムツ)だよ? 交雑可能なほど近縁とは……」


「難しい話は勘弁……。でも、そもそも種や属って考え方はヒトの都合が大きく関わってるんだし例外も多いんじゃねーの?」

「まあそうだけど……極端な話、ヒトと豚でも受精だけなら可能だったりするわけだしね」

「………………」

「……とうま、どうかしたの? のーとぱそこんをじっと見てるけど」


「……あっ、いやあ、あれだ、あれ! ネットで情報を収拾してみようかなって」 サッ カチッ   ポチポチ

「ふーん?」

「んーと、『オイカワ』の『雑種』で検索…………。ほらっ、コレ見てみろよ? 似たような魚の画像が結構出てくるじゃん」

「ふむふむ。どの子もピッタリと一致こそしないけど、そこは雑種ならではかな? ってとうまいきなり何するの???」 グイッ



「(ちょっと内緒話。御坂妹には聞かせたくない内容だからな……。とりあえずこのページの記述を読んでみてくれ)」 ボソボソ

「(何だかわかんないけど……、ふーん。カワムツとヌマムツでは交雑せず、オイカワと他2種間で雑種は産まれるんだね)」

「(ああ。元々棲息域が重なりがちなカワムツとヌマムツが交雑可能だったら、とっくの昔に種が統一しちまってるはずだろ?)」

「(……オイカワが勢力を拡大したのは最近。それで新たにこういう子が出来る可能性が明らかになったって事?)」


「(おそらくな。放流や河川の水量低下が、自然化では本来有り得ない組み合わせのイレギュラーを作ったんだろうぜ)」

「(…………、とうまが内緒話にした理由が分ったんだよ。それが本当ならこの子はおそらく遺伝的なデメリットを抱えてるかも)」

「(……、まあそんなトコだ。生き物ってのは設計図と材料に無理があっても時として強引に成り立っちまうんだけど)」

「(無理にはツケが付き物。種間雑種で言えば短命であったり100%でガンになったり……、生殖能力を欠いていたり)」


「(そうしたデメリットは種が離れているほど大きい。例えばさっきのヒトと豚なんかだと受精卵は一切成長しないからな)」

「(うん……。この子は今のところ順調に成長しているように見えるけど…………、だけど………)」

「(オイカワ属とカワムツ属の属間雑種。報告例は少なくないけどまだまだ詳細は不明。正直どこまで生きられるか……)」

「(捕まえたおさかなが飼えるって、あんなに喜んでたのに……。どうしようとうま? この事伝えたほうが…)」



御坂妹「なるほど。つまりこの個体は許されざる禁断の愛の結晶なのですね、とミサカは内緒話に割り込みます」 ズイッ




481 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:37:27.59 U7/pK2V90 341/386


「おまっ!? どうしてそんな離れたトコからオレ達の話が……」

御坂妹「ミサカイヤーは熱膨張、とミサカはミサカの優れた聴力で盗み聞きしたことを婉曲に解説しま……、分りますか?」

「くっ……空気の振動を温度のムラと解釈し、更にそれを電磁波として捉える事で遠距離から音声情報を取得したってか……」

「とうま、ボケにボケを返すのはシンプルにマヌケかも。……そんなことより、聞いたとおりなんだけど、その……、あのね?」


御坂妹「分ります。この子は、産まれ存在するべきではなかった魚、と言うことですよね? とミサカは機先を制します」

「いや……、何もそこまで……。ただオレたちとしてはだな、つまり……」

「そう、そうなんだよ! ちょっと体が弱いかもしれないとか、足りないところがあるかもってことだけで……」

御坂妹「ミサカは心の機微というものには疎いのですが、おふたりは暗に今回の飼育に期待を持つなと警告しているのでは?」

『…………………………………………』



御坂妹「ただ……、既にミサカはこの小魚はミサカが飼育するに相応しいと結論付けてしまいました。というのも…」





御坂妹「この個体の出生は極めて不自然で許しがたい。では、それを以って命を否定することが出来るでしょうか?」

「……、出来るハズない。ああそうだよな。なんだかんだ叫んだってコイツは生きてる。だからそれは絶対に祝福されるべきだ」

御坂妹「短命であり重大な欠陥を抱えている可能性が濃厚だからといって、この個体に生きる意味は無いのでしょうか?」

「そんなわけないんだよ! 生きとし生けるものは与えられた命の限りに精一杯生き尽くすのが正しいに決まってるもん!」


御坂妹「その想いに必要なのは強さ。運命など吹き飛ばしてしまえという強さです。ミサカはだからこそ、この……、この……?」

「お前……、わかったよ。怪我が治るまでの間ここで保護するから、そっちはなんとかして飼育環境を用意しておけよ」

「もちろん私も相談には乗るし、協力は惜しまないんだよ。だから……、立派にその子を育て上げようね!」

御坂妹「お心遣い感謝します。が……それよりも、ミサカは現状この……、この……、この子の種名が不明な点を指摘します」


「種名? ……あぁ、そういえば雑種の場合は名前ってどうなるんだ?」

「んと、色々な名付け方があるんだけどこの子のケースはライオンとタイガー(トラ)の子供みたいに両方の名前を使うらしいよ」

「『ライガー』や『タイゴン』はそういう法則だったのか。って事はコイツはオイカワとヌマムツ、若しくはカワムツが親だから……」

御坂妹「つまりオイカワ・ヌマムツなら『カワヌマ』、オイカワ・カワムツなら『カワカワ』……、とミサカは響きの良さに感動します」




「一応正解はオイカワ・ヌマムツで『オイムツ』、オイカワ・カワムツで『オイカワムツ』なんだよ」 カワカワ ?

「ま、まぁ……、個人的に使う分には御坂妹の呼び方でも構わないだろ。とりあえずどっちのタイプか判ったら連絡するよ」










482 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:38:31.98 U7/pK2V90 342/386


                                     ☆

御坂「(あの思い出したくも無い実験……、アレって不可解な点がいくつもあるんだけど)」 テクテク

御坂「(最たるものは妹達が現在の私と同じ年恰好をしているってトコよね。つまり…)」

御坂「(実験が始まったのはここ数ヶ月以内でなければいけなくなってしまう)」 テクテク

御坂「(年齢設定は自由が利くし外見だって変えようがあるはずなのに、私と瓜二つに仕上げられたのが何よりの証拠)」


御坂「(だけどあの実験、多少なりとも名が売れている人物の容姿を使うこと自体には何のメリットもない。とすると…)」

御坂「(レベル5になったばかりの頃とも違う、もう少し成長した姿でもない、第三位の現在の姿を使うことに意味があったはず)」

御坂「(今の私、今の姿。何故それを模したのかは判らないんだけど……、とにかく実験開始はごく最近だったに違いない)」

御坂「(…………、確かにアレは向こうにとって超有利なハンデ戦だったけど、それでも一万通りの戦闘をほんの数十日で?)」





御坂「ふむ~……、およっ?」 テクテク

御坂妹「こんなところで奇遇ですねお姉様、とミサカは人目につかない裏路地での邂逅であることを説明します」

御坂「……、説明って誰によ? それになんでアンタが居るのに私が気がつかなかったのよ? 電磁波はどうなってたの??」

御坂妹「……、お姉様のレーダーでも感知出来ませんでしたか。修行の成果があったというものです、とミサカは勝ち誇ります」


御坂「はあっ? バカな事言わないでよ。発電能力者が無意識に発する電磁波ってAIM拡散力場そのものだから…」

御坂妹「能力者である限り放出を止められない、とミサカは努力や才能でどうにかなる問題ではない事を再確認しておきます」

御坂「うんうん、そうよね。ってことはやっぱり何かのトリックだったわけ?」

御坂妹「ある方と先程まで身体の一部を接触していたため一時的に無能力状態になっていたのでは、とミサカは考察します」


御坂「その表現はどうかと思うけど。……そっか、そういやアイツの寮がこの近くにあったわね。何か用事でもあったの?」

御坂妹「ミサカの大事なものをあの少年の部屋で、初めての……、えーと……、あのですね………………」

御坂「んーっ、要するに何かを預かってもらったってことかな? 初めて、アイツの部屋……。例えば捕まえたおさかなとか」

御坂妹「はいそのとおりです……、とミサカは勘が冴え過ぎていてイジり甲斐の無いオリジナルを恨めしそうに見つめます」




御坂「…………………………………………、そっか」 フム

御坂妹「……? どうかしましたか?」







483 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:39:43.84 U7/pK2V90 343/386


御坂「あぁいや、なんでもないのよ。それよりそっちはどんな魚を捕まえたの?」

御坂妹「えっと……、どうやら交雑個体だったようでその場で正確な分類が出来なかったのですが…」

御坂「あっ……」

御坂妹「ご心配なく。ミサカ自慢のおさかな第一号、最期まで大事に育てていく覚悟は既に完了していますから」


御坂「……………………強いわね。見た目こんなに私とそっくりなのに全然強い」

御坂妹「……お姉様?」

御坂「あっと、いや……、それよりさあ、今度確認に行く時は一緒に連れてくこと。アンタの魚なら私にとっても大切なんだからね」

御坂妹「……わかりました。つまりお姉様はミサカに上条当麻の部屋に潜入するためのギミックになれと…」


御坂「あはっ、なんでそうなるのよ? ……ホント、同じ顔してるのにアンタの発想には付いていけないわ」

御坂妹「同じ顔ですか? それはまあ、同じ遺伝子マップを基にミサカたちは出来上がっているので…」

御坂「ん~……でもさ、私とアンタが中身全然違うのと同じで妹達同士も色んな子が居るんじゃない?」

御坂妹「仰りたいことが判りかねますが、個性と言うことでしたら多少は確認可能なレベルに達しているかもしれません」


御坂「あ、それと能力もね」

御坂妹「そうですね。厳密にはお姉様と妹達、妹達それぞれ、もちろんチビや新古米、誰一人として同じ能力ではないです」

御坂「自分だけの現実、ってまさに字のとおり一人用だからね。便宜的に同系統って纏めちゃうから誤解されるんだけど」

御坂妹「遺伝子的に同一であって全く同じ成長を遂げ開発を受けたとしても、能力は異なってしまうのです」


御坂「平行世界なんて考え方で言うなら違いがあって当然なんだけど……、不思議よね」

御坂妹「能力開発には未だ解明されていない部分が多くありますから、とミサカは理解の及ばないことを理解してみます」

御坂「まあね。大体『未来は確定していない』って考えを利用して『確定された未来を作る』なんて外の人に理解できるのかな?」

御坂妹「ミクロの事象を操り新たな世界を作り出す。つまり能力者が一人生まれるたびに宇宙全体が更新されますからね」


御坂「そう。強度や性質に関係なく……、たとえレベル0に過ぎなくても能力者ってのは世界を塗り替えた者なのよ」

御坂妹「だから妹達一人一人が同じ能力であるはずが無いのです。違った色にその都度全体が染まるのですから」

御坂「でも出力されるのは似通ったレベルで見分けが付き難い電撃使い系なのよね。どういう仕組みなんだろ?」

御坂妹「演算を司る脳機能がどのようにミクロの世界に干渉しているかが詳らかで無い以上、そこはブラックボックスでしょう」







484 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:41:20.24 U7/pK2V90 344/386


御坂「ふむふむ。そうよね、干渉してるのはあくまで脳。見た目や年恰好じゃないはず」

御坂妹「干渉の様式とでも表現しましょうか、そうした働きに関係しているのかも知れません、とミサカは推察します」

御坂「……様式ってどういうこと?」

御坂妹「ドジョウ類とヘビ、ミミズなどの外見は似通っている点がありますよね? とミサカは唐突に解説モードに移行します」


御坂「ホントに唐突だけど、まあアレでしょ? 細長くて脚とかそういうものが無いってことじゃない?」

御坂妹「ええ。地面であったり水底であったりしますが彼らは這う生き物なのでそれに適した姿形をしていますね」

御坂「コウモリとハトがどっちも空を飛ぶための翼を持ってるのと一緒で、相同性ってヤツよね」

御坂妹「一部のトカゲなどにも手足やウロコの退化した種が居ます。彼らは地中生活に適応してますとミサカは付け加えます」


御坂「んーと、大丈夫だと思うけど一応注意しておくわね? 種の進化に個体の意思は影響しないわよ」

御坂妹「勿論存じてます。ですが……それでは質問しますがコウモリは何故空を飛ぶのでしょうか?」

御坂「へっ? そりゃ、移動したりエサを探して捕まえたりするためじゃないの?」

御坂妹「……質問が不適当だったので言い直します。コウモリは進化の過程でいつ空を飛んだのでしょう?」


御坂「ふむ……? コウモリの進化は専門外だからよく判らないけど」

御坂妹「質問の意図はこういうことです。コウモリは空を飛ぶために翼を適えたのか、翼があったから空を飛んだのか」

御坂「あっ……、いや、でもそれは……、ん~? むむむむむむ……」

御坂妹「個体の意思が進化に影響しないので前者は否定されますが、後者では翼が何故備わったのか説明出来ません」


御坂「いや、飛翔以外のなんらかの役に立つ機構として進化していってある段階から飛ぶために使われたんじゃ…」

御坂妹「ではお姉様はコウモリはたまたま飛べたので飛んだ、もし飛べなかったら飛ばなかった……とお考えですか?」

御坂「飛べなかったらってのは無いでしょ? 翼っぽいものが付いて初めてコウモリなんだから……」

御坂妹「確かに原初のコウモリはモモンガやムササビのような滑空するネズミだったのかもしれませんけど」


御坂「ふむ~…………。それで、一体この話で何を伝えたいわけ? 興味深い内容ではあるけどさ……」

御坂妹「結論としては……同じ環境中の外見が似ている生物は本質まで似通っているとは限らないということです」

御坂「んんっ? ……、それだけ??」

御坂妹「付け加えればその外見はその環境でこそ力を発揮しますが、格好が先か環境が先かを考えるのは難しいってことです」





御坂「(……つまり妹達が私そっくりにされているのは私が学園都市から受ける影響と同じものを得るため、とか?)」

御坂妹「頭脳明晰なお姉様が何を考察されてるか窺い知ることは叶いませんが、たぶんそれは違いますとミサカは断言します」








485 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:43:05.69 U7/pK2V90 345/386


                                         ☆

「なあインデックス、空気呼吸が発達した魚類って結構居るだろ? んじゃ陸上生活に適した魚類って居ないのかな?」

「とうま? それは地味に魚類の定義に関わる問題なんだよ。何を以って魚と呼ぶか、ってことなんだけど」

「ん? 魚類の定義って……、魚は魚だろ? 泳ぐのが得意でウロコやヒレがある……、そうじゃないのも居るけど」

「ちょっと乱暴すぎかも。とりあえず系統を考えてみたらいいんじゃないかな?」


「系統……、前ちょっと触れたアレか? 全ての脊椎動物は魚類から進化して枝分かれしてどうこうってヤツ」

「うんうん。じゃあ、『魚類から進化』ってところを詳しく説明できる?」

「詳しく、って……。ん~と、最初の魚類ってのはヤツメウナギとかヌタウナギのようなアゴの無い生き物だったんだろ?」

「だね。アゴはもともとエラを支える骨が進化したものだから鰓孔で呼吸する無顎類には当然アゴが無いんだよ」


「鰓孔ってのは体の側面に何対も並んで開いてる穴だな。んでまあ、そいつらからまず硬骨魚類が枝分かれしたらしい」

「そこは実のところ確定的じゃないんだけど、無顎類→硬骨魚類→軟骨魚類って考えてる人が多いのは間違いないかも」

「無顎類の骨が軟骨だったり骨格そのものがなかったりするからややこしいんだよなあ。まあ殆ど絶滅しちまってるんだけど」

「うん、今言ってる無顎類は現在の無顎類とは違うからね。恐竜時代のモンスター的外見のアレとかソレとかの話だよ」


「っと……で、どこまでいったっけ? …………えーと、アゴか。アゴのあるやつらの一部が淡水に進出し肺を獲得する」

「……、軟骨魚は肺も浮き袋も持って無いよね?」

「ですよねー。だから、硬骨魚類……、系統を語る場合だから硬骨魚綱の方がいいか? それが両生類に繋がるってワケだ」

「爬虫類や鳥類、そして私たち哺乳類もね。さて、それじゃああらためて。魚類とは一体なんなのかな?」


「ココまでをふまえて考えるんだな? んーと、魚類とは……脊椎動物の無顎類と軟骨魚類と硬骨魚類を指す!」

「それじゃダメだよ。自分で言ったこと忘れたのとうま? 硬骨魚綱には哺乳類だって含まれちゃうんだよ?」

「そ、そうだよな……。じゃあアレだ。魚類とは……脊椎動物の……爬虫類や鳥類、哺乳類や両生類では無い動物?」

「うんうん。こうも言えるかな? 『脊椎動物の進化の過程で一度も陸上生活に適応しなかった生物群』とか」


「ウシの遠い親戚、クジラやイルカみたいな陸上生活の後に水に戻った一群は除くってことか」

「他にも……、脊索は有してるけど脊椎の無いナメクジウオも魚類には含まれないんだよ」

「脊索ってのは棒状の筋肉、脊椎ってのは骨格。ともに背中を通る神経を保護してる部位だよな」

「背骨が一生のうち一度でも備わる、またその痕跡があれば脊椎動物に含まれるからそこだけちょっと注意しなくちゃだけどね」


「ふむふむ。……それで最初の質問に戻るんだけど、陸上生活に適した魚は居るのかどうなのか。って……自明だな」

「でしょ? 形体に関わらず、水中生活から脱した生物を魚類とは言わないんだからそんなものはいないんだよ」

「なるほどね。なんかツマラない結論だったけど勉強になったよ。ありがとなインデックス」

「……、ただーし! 例外的存在はどんなトコにもあるのかも。今日はそんなお話をするんだよ!」







486 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:44:08.40 U7/pK2V90 346/386


「例外?」

「そう、魚類でありながら生活史の大部分を水の外で過ごす子たちのこと。オキスデルシス亜科って知ってる?」

「…………グレムリンの正規メンバーにそんなのが居たっけ?」

「魔術師の名前に付いててもおかしくない感じだけど……、これはハゼの仲間の一群なんだよ」


「ハゼかあ……。確かにハゼって水深の浅いトコに棲んでて結構頻繁に水から飛び出すイメージがあるなあ」

「それとピョンピョンと水底を移動する種が多いでしょ? その能力は陸上でも機能するんだよ」

「遊泳力を振り絞った所で釣られた魚がビチビチすんの見りゃ判るけど水の外じゃ役に立たない。でも跳ねる動きなら別だ」

「だからハゼの仲間は比較的陸上での活動に向いてるの。その中でも極めて尖った子たちがオキスデルシス亜科なんだよ」


「ほほう……、例えば?」

「皮膚呼吸が異常に発達していて空気中でも酸欠にならないとか、あと特殊な代謝機能を持ってるとか」

「代謝? 代謝……、うんうん……、代謝だよな。大事なことだよなあー」

「新陳代謝の代謝だよ? 陳は古いもので謝は無くすの意だからつまり、古い物を捨てて新しい物と代える細胞の働きだね」


「ふむふむふむ。つまり特殊な代謝機能、ってんだから排出についてのトンデモ能力があるんだな?」

「そう。摂取したタンパク質の代謝で不要な窒素が出ると、動物はソレを溜めといて捨てなければいけないでしょ」

「窒素とか言うと小難しく聞こえるけどアレだな。おしっこ」

「まあ確かに人間の場合は窒素を尿素に換えて排出するんだけど、硬骨魚はアンモニアとしてエラから排出するんだよ」


「へーっ。エラって酸素と二酸化炭素の交換以外にも使い道があるんだな……」

「だけどエラが水に触れていないと排出も出来ないの。コレも空気中で魚が生きていけない理由のひとつだね」

「んでさっきのオキスデルシス……? だっけ。そいつらはその問題をどうクリアしたんだよ」

「なんと彼らは体内でアンモニアをアミノ酸に変えることが出来るんだよ。つまり排出の必要がないのかも」


「……ふ~ん。今ひとつ凄さが伝わらないけども……、凄いんだろうけど」

「トイレにずっと行かなくてもいい人類ってスゴく便利じゃないかな?」

「その喩えもどうかと思うぞ?? んまあ、何にせよその魚たちは陸上に例外的に適応してるって考えていいんだよな?」

「ううん。水から離れた魚は皮膚が乾燥してしまうでしょ? 結局そこまでスゴくても水辺を離れられるワケではないんだよ」





487 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:47:53.43 U7/pK2V90 347/386


「……、オキスデルシス亜科とか例外とか仰々しく言ってもそんなもんか。それじゃその辺のムツゴロウと同じじゃんか」

「正解っ! ムツゴロウやトビハゼなどの干潟でピョンピョンしてるマッドスキッパーたちがオキスデルシス亜科なんだよ!」

「つーか……、だったら最初からムツゴロウの話として進めれば良かったんじゃねーの?」

「んとね、正体が判らないまま『魚なのに陸に上がる』とか『特殊な代謝能力がある』とか聞いてとうまはどんな魚を想像した?」


「どんな? いや、そーだな……。ハゼの仲間だからソレっぽい外見だとは……、でも知ってる魚だとは思わなかったかな」

「あのね、もしもこの世界が水中だとしたら……。とうまにとってムツゴロウは魔術師なんだよ」

「またいきなり唐突な展開を……」

「魚のルールの裏技を使って陸上へ進出するトコが、現実世界の裏技を使ってありえない現象を起こすのと似てるでしょ?」


「強引な説明だけど、まあ……。けど、それだとムツゴロウが決して水から離れることは出来ないのと同じように…」

「そう! そこを判って欲しかったんだよとうま! 魔術は不思議だけれども、所詮は既存のルールの裏技に過ぎないんだよ」

「裏技って言えばゲーム。特定の動作やコマンド入力やバグによる通常プレーの範囲では現れない効果が思い浮かぶけど…」

「それだと素人でも操作が正しければ魔術が使える理由が判るかな? さしずめ魔術師はプログラムに精通するプレイヤー?」


「なるほど。完全にプログラムを掌握しちまえばどんなことでも思いのままだもんな」

「ん? ……私が言いたいのはそうじゃなくて、魔術師なんてタネを明かせばムツゴロウってことなんだけど」

「……あのさ、遺憾ながら上条さんの頭脳は回りくどい表現を適切に解すには向いてない直感型なんですよ」

「しょうがないなあ……、いい? 普通の魚が一般人で、魔術師はムツゴロウ。決して四足動物じゃないってことだよ」


「……脊椎動物全体から魚類を抜いた残り、要は一度は陸に上がった歴史を持つ動物を四足動物と纏めることがあんだよな」

「両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類だね。まあ両生類はちょっと置いといて、完全に陸上に適応してるでしょ?」

「乾燥に強く空気呼吸に長け、窒素は尿素や尿酸の形で排出できるからな。確かに魚とはまるで世界が違う」

「巨大なサメだろうとマカジキだろうと、船に上げられたら無力。ムツゴロウだって例外だけど他聞に漏れないってことかも」


「なんとなく分って来たぞ。インデックスはいつもオレが疑問に思ってる『魔術は弱い』ってことを説明しようとしてるんだな?」

「……、さあね? それはともかく水の中や水辺であればこそ魚は強いのであり、魚を超えた魚は魚ではないってことだよ」

「魔術師はムツゴロウ、魚はどこまで行っても魚、四足動物と陸で争う能力など無い……。四足動物が能力者にあたるのか?」

「私は魔術側の人間だからそっちのことは良くわからないかも。じゃあ交代して、能力について説明してくれる?」




488 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:50:01.87 U7/pK2V90 348/386


「ああ。でも悪いけど、オレは知識としてしっかり習得してないからアバウトになっちまうけど勘弁してくれよな?」

「能力はおそらく身に付かないんだから勉強くらいしといたほうがいいと思うよ。まあ、出来る範囲でいいんじゃないかな?」

「ううっ……、多忙すぎる人生が恨めしい。っと、とにかくだ。能力ってのは薬剤や電気や音声、その他の刺激で脳を開発して…」

「それ、前に説明してくれた『脳を開発して回線を繋いだら能力者』って適当にも程がある話かな? だったら必要ないかも」


「うぇ? オレの能力開発に関する知識なんてそんなもんだぞ??」

「それでよく能力は科学的、とか言えたものだと思うよ。じゃあ聞くけど開発された脳はどのように異能を起こすのかな?」

「んー、それはだな。シュレディンガーとかハイゼンベルグとかが……、つまりは量子を観測して……」

「うん……、ムリな注文だったみたいだからもう一度私のターン。魔術についてちょっとだけ話をさせてね」


「……、ホントスイマセン」

「落ち込んでるとテンポが悪くなるから元気出して行こーっ! 魔術はヒトの歴史とともに発達した厳格な法則のある技術だよね」

「おーっ! おっ? 法則自体を詳しく教えてはくれないからイマイチ納得できてないけど、お前がそういうならそうなんだろ」

「もちろん大昔には裏技なんて認識ではなくて、自然を知り世界を知りたいという人間の知的活動の一部だったんだよ」


「ふむ。聞いた覚えがあるようなないような。で、アレだろ? 原石だとか聖人みたいなことを才能の無い身でも……って」

「そこに行く前に、段々人間が世界の理に通じてくると、この世には普通と異常があるってことが判ってきたの」

「ん~、魔術が異常な技術体系として認識されて……、で?」

「異常に手を染めることは人間として終わりだってことも判ってくる。でもどん底にいると一発逆転したいのがヒトのサガなんだよ」


「魔術を覚えるって簡単に言うけど、それは言ってみりゃ首を吊る代わりの手段なんだな……」

「そうだよ? 魔術なんて覚えるべきものじゃないの。……それとね、宗教に政治が入るとそれさえ弾圧されちゃうんだよ」

「あー、そりゃそうだよな。聖人は神に愛されればこそ奇跡を起こすんであって、誰にでも使えたら神への信仰が無くなっちまう」

「宗教を利用した統治下ではそれは絶対許されないことだもん。ただの知識に過ぎなかった魔術は禁忌になっていくんだよ」


「そういやヒトに真理を教える超自然の存在って、ルシフェルとかアザゼルとか最近じゃコロンゾンとか、どれも悪魔扱いだよな」

「最後のは幻覚剤中毒者の妄想かもだけど、まあそうだね。多分に体制側の都合が反映されてるきらいがあるかも」

「ふーむ……で、とにもかくにも魔術は地下に潜ることになるのか?」

「一部を除いてね。体制側が使う魔術ってあるでしょ? 神に愛された証だから自分たちは使ってもいいって理屈だね」


「どこの国だよ? 魔術を弾圧しといて国王はバンバン魔術つかうような下衆な体制……、あ、うん。ゴメン」

「ほえ? ……続けるね。地下に潜った魔術師たちは島嶼の生態系が独特になりがちなのと同様、ユニークに進化していくの」

「地域によって違った魔術があるのはその名残かね。で、弾圧を避けつつ技術を磨き知識を蓄える時代はいつまで続くんだ?」

「世界の理を解明していく学問に科学って名前が付いた頃までかな? 宗教の力が弱まってきた頃、でもいいけど」





489 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:51:42.80 U7/pK2V90 349/386


「自分で言っといてなんだけど、ソレはおかしいんじゃないか? 現に今だって魔術はアンダーグラウンドだろ」

「んーとね、現在の魔術って求める者にとっては開かれた世界なんだよ。どう、とは説明できないけどそういうモノなのかも」

「……誤魔化された感でいっぱいだぜ?」

「正直その辺は勘弁して欲しいんだよ。でね、憚りながら日の当たる世界に舞い戻った魔術師たちに大きな展開があったの」


「展開……、想像するにアレか? 独自に発展した各地の魔術師たちが交流を深めて互いに練磨したとか」

「遠からず近からずだね。例えば日本神道系の魔術師が放つ破魔の光ってゾロアスターの吉眼と本質が似てると思わない?」

「んな専門用語並べられてもチンプンカンプンに決まってんでしょーが! 上条さんをなんだと思って居られますかアナタは!?」

「……調子に乗っちゃったかな? ゴメンね……、魔術の話が出来てつい嬉しくなっちゃってたかも」


「あ、ちがうちがうちがうちがう。上条さんは怒っていませんのことよ? 自分のバカさ加減を嘆いただけだから気にすんなよ」

「……そう? でもちょっと噛み砕くね。要するに、各地で独自に進化した魔術を体系立てて整理統合する者が現れたんだよ」

「なるほど。祈る相手が月だろうと山だろうと、何がどうなって何が起こるって原理を解明すると同じことだったとかそんな感じか」

「魔力やテレズマ、地脈なんて概念もそういう流れの中で確立されたの。実はまだまだほんの最近のことなんだけどね」


「ふむふむ。で、魔術全体が急速に洗練されて今に至る、と。……以上、ヒトの歴史とともにあった魔術の歴史でした」

「じゃなくて、ここからが本題なんだよ! とうまの言うとおり魔術の歴史はヒトの歴史と同じくらい長く深く広いんだけどね」

「だよなあ。魔術師ってやつらは底が全然見えねえもん」

「だけど、だけどね。だからこそ既に伸びしろの少ない研究し尽くされた技術でもあるんだよ」


「ふーん?」

「例えば私は10万3000冊の魔道書を記憶してるんだけど、仮に自由にその力を行使できたとしたらどうかな?」

「……それは正直想像もしたくねえよ。天地を曲げ生死を操る魔神みたいなことになるんだろうけどさ」

「怖いけどそうかも。では更に、そんな魔神な私の前にもう一人魔神な私が現れて戦ったら、どっちが勝つと思う?」


「へっ? なにそのトンデモ発想?? 勝負自体はスペックが同一である以上引き分けってこったろうけどさ……」

「そう。引き分けだけどコレはスペック云々じゃないくて、魔術を極めるってことは全ての魔術に対応出来るということなんだよ」

「……それで?」

「だから言い換えると、魔術を極めてしまうと全ての魔術には返し技があり、絶対の魔術など存在しないことが分るってこと!」


「伝説の暗殺拳の始祖みたいな話だな……」

「魔術を極めれば万物の頂点に立った気になれる、はずないよね。だって自分で自分の弱さが判っちゃうんだもん」

「でもそれ他人にはわかんねーだろ? そうそう負けることは無いはずだと思うけども……」

「そうは行かないかも。だって例えばある戦いにおける戦法を考えるとして、そのヒトは絶対に最適解に辿り着けないでしょ?」




490 : 異物[saga sage] - 2012/03/19 22:56:44.95 U7/pK2V90 350/386


「あー、万能すぎて却って全てにおいて失敗を予測してしまうのか。確かに思いつく全ての技に※が付いてたら何も出来ないな」

「うんうん。コレはだから相手が誰であっても同じことなんだよ。魔術師のジレンマだね」

「それにしちゃあ魔術師ってどいつもこいつも『自分が一番つおーい、他はカス!』って感じで出てくる気がするけどな」

「……それは偏見、でもないか。とうまも言ったけど魔術はアンダーグラウンドの技術でしょ? だからなのかも」


「むむっ? アイツらが偉そうなのは闇とか暗部とか、裏社会に生きる者の特性ってコトかよ?」

「そう。実際は表の世界に匹敵する裏なんて存在するはずもないんだけどね。基本、役立たずで無能なダメ人間の巣窟だし」

「おいおい、手厳しいにも程があるだろ!? インデックスこそ何か偏見を持ってんじゃねーのか……」

「だって良く考えてみるんだよ。最先端知識にしても技術にしても、画期的な発想は常に表でなされるでしょ?」


「それは……、地下世界のコトなんてわからないから何とも言えないけど」

「裏で使われる技術や知識なんて最先端ではありえない。型落ちを流用して悦に入ってる連中ばかりなんだよ」

「ちょっと待て。なんでありえない、なんて断言できるんだ?」

「簡単だよ。隠れてコソコソ研究してたら無責任な他人の批判が聞こえてこないでしょ? それでは進歩が無いの」


「…………井の中の蛙大海を知らず、か?」

「武力だってそう。例えば毒ガスや生物兵器、核兵器は立派な光り輝く世界で生まれた代物でしょ?」

「うむむ……。だけど、そういうものを裏社会的団体が利用するとかだって聞くぜ?」

「隠れてコソコソ、でしょ? そんなのせいぜい大昔の流失技術や禁忌破りの裏技を使って隙間産業してるに過ぎないのかも」


「暗部なんてものは、表の社会に比べて無能……。ただモラルやルールを逸脱することでせこせこ日銭を稼ぐ集団だと?」

「その通り! 保護される価値も必要もないクズの掃き溜めだから、人材だって使い捨てだしね。それだけのことなんだよ」

「……なんつーか、身も蓋も無い総括だな。魔術の専門家なお前が言うんだから余計シュールだぞ」

「ちょっと漫罵だったかも。まあ今日のまとめとしては、正体不明の相手を情報以上に高く見積もるのは間違いってことだね」


「そこは納得出来るかな。スゴいことなら隠れてする必要も無いんだし、コソコソしてる時点でそれは大したことじゃないんだな」

「うんうん。そして小物ほど増長し、大物になると弱くなる。変な世界だけど、これも現実なんだよ」

「となると学園都市の能力とはやっぱ違うんだな。だってこっちは割と公開されてるだろ?」

「違いはそんな瑣末なトコだけじゃないけどね。魔術師から見れば能力者は世界の法則の範囲外の存在なんだから」


「へっ? そなの?」

「今日は長くなっちゃったからこの辺で終わるけど、簡単に言えば陸上動物の常識はおさかなの非常識ってことだよ。」

「ほうほう…………。しっかし今日の話は終始、こんな調子だったな。正直、半分も理解できてない……」

「私の立場上、話が曖昧になるのは仕方ないのかも。またいつか続きをするならもうちょっと噛み砕くから許して欲しいんだよ」







  ~おしまい~




491 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/03/19 23:17:50.55 U7/pK2V90 351/386


以上、第三十六回『異物』でした。

第一パートで出てくる雑種、生息域や繁殖期が異なる種が不自然な環境に集められると発生しがち。
もちろん、大部分の魚が体外受精だからこそなんですけど

第二パート、ドジョウは水底を這い、砂地の潜ることに向いた体をしていますが
それは彼らが水底で過ごし続けた結果進化したのか、それとも形が出来てからそれに見合った水底へ向かったのか?
構造主義というか全体論というか・・・、行き過ぎるとツマンないのでやめときますけど不思議じゃないですか?

第三パート、ムツゴロウやトビハゼは四足動物であるカエルなんかよりよっぽど水の外で生活する時間が長い魚です。
むしろ水中を避けてるくらいの変なヤツラですけど、それでも魚は魚なのです。


そんなわけで、長々といらんことばかり書きましたけど今日はこの辺で。ではではまたー

498 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/03/25 10:46:04.76 QZriQ74o0 352/386


おさかな話って、ドコが面白いって聞かれても正直困る。っていうかそんな聞かれ方したらツマンない気がしてくる。
ホントはひょっとして自分以外誰も読んでないんじゃなかろうか・・・。だってアレだよ、さかなの話だよ?

今回はそんな感じの内容です。いえ、出来に自信が無いとか不安だとかではなく、ホントってなんだろ?ってお話。

テーマは「幻現」です。少々暴走気味なパートもあるのでご注意の上、どうぞ。

499 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 10:50:04.86 QZriQ74o0 353/386



                                         ☆

「なあインデックス、こないだ御坂妹が持ってきた魚はどうやらオイカワとヌマムツの雑種『オイムツ』だと判明したんだが…」

「とうま、とっても細かい作業お疲れ様なんだよ。尻ビレの筋とかウロコの数をじーっと見続けて眼が疲れちゃったんじゃない?」

「それは問題なかったよ。カメラとPCがありゃただの単純作業だからな……。それは、な」

「ふぇ? じゃあ何をそんなに、ムグムグ、とうまは思い悩んでいるのかな? ん~っ、ぷはー」 


「……あんまりがっつくなよ。ホラ、お茶」

「ありがと、んぐっんぐっんぐっ…………、ふぅぃ~。それにしても短髪の持ってきたケーキとゼリー、とっても美味しいんだよ!」

「だろうな。なにしろゼリーは天下の黒蜜堂の……、贈答用セット? ケーキは……えっと、パスチックセリなんちゃら…」

「PASTICCERIA MANICAGNI って書いてあるんだよ。モンブラン……、イタリア語だからモンテビアンコがグンバツなんだよ!」


「そりゃ良かったな……、でも一体コレ全部で幾らするんだ……? そもそもなんで御坂はこんなもん持ってきたんだ?」

「一時間ほど記憶を振り返ってみたらいいかも。このおさかなの名前が判明して、とうまは何をした?」

「えーと、約束だからすぐ御坂妹に『名前判ったから見に来いよ』ってメールした」

「冗談で『手土産は食べられるものがいいぞー』とか書いてたよね」


「そうだっけ? そしたらついさっき御坂が訪ねて来て『あの子、二~三日用事があって出て来れないのよ』って伝言してくれた」

「そんな短髪をとうまはどうおもてなししたんだっけ?」

「んーと……」





――――――――――――

―――――――

―――


『わざわざありがとな御坂。あ、ついでに御坂妹に会ったら見に来るのはいつでも良いって伝えといてくれよ』

『えっ? そ、それは構わないけど、何? さかな、見せてくれないの?』

『えっ、いや、別にいいけど……』

『?? いいけど何よ?』

『いや~、ほら。御坂といえば電撃だろ? 小魚ばかりの水槽の周りで放電しても大丈夫なのかなって……』

『…………………』

『メダカやアカザはもちろんだけど、御坂妹のオイムツはケガしてるからショックとかそういうの出来るだけ避けたいんだ』

『……そっか。あ、その紙袋の中身テキトーに処分しといてよ。それじゃ…………、邪魔して悪かったわね』 




500 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 10:53:34.83 QZriQ74o0 354/386


「紙袋の中身はウチの水槽専用濾過フィルターとカートリッジ、そして沢山のスイーツだったワケで……」

「ケーキ食べながらおさかな見つつ、楽しくおしゃべりするつもりで来たら門前払いされたってことだよね」 モグモグ ゴックン

「連絡後たった一時間のうちにケーキ屋、黒蜜堂、水槽屋でお土産を準備して来てくれた御坂を……」

「普段のとうまがやってることに比べたら全然大した仕打ちじゃないけど、まあちょっと可哀相かも」 ヒョイ パク



「能力のこと言っちまったし、謝っておくか。PiPiPi …………、ええいっ、御坂のケータイはどうしてこう繋がらねーんだ!」

「ふぅ、イチゴのヤツもおいしかったー! ちょっとそれ貸して? ……、もしもし短髪? インデックスだよー」

「んっ………、へっ??」

「ケーキとゼリーの差し入れありがとうなんだよ! とうまも美味しい美味しいって、あっという間に食べちゃったんだから」


「なぜ電話が……?? そして、なぜ沢山あったはずのスイーツが殆ど無くなってる?? これが時空の歪みか??」

「えっ? ううん、それはとうまが神経質過ぎなだけだから気にしなくていいんだよ。全く、ホントにデリカシーがないもんね」

「ちょっ…」

「だからまたいつでも遊びに来て欲しいんだよ! ちなみにとうまはプリンも大好きでケーキはホールを丸ごと食べたい派かも」


「…………おーい」

「ち、ちがうもん。私は神に仕える身だから我欲のままの欲しがりさんじゃ……、ふぇ? とうまならいるけど? ……ふんふん」

「おっ、代わってくれってか?」

「うんうん、わかったかも。一言一句違えず伝えておくんだよ。じゃあまた近いうちに遊びに来てね、ばいばーい」 <Pi



「オイオイオイオイオイ、お前いつの間に御坂と仲良くなったんだ? ってか電話切るなよ!?」

「そんなこと知らないよ。だってとうまと話がしたいとは言ってなかったもん」

「そ……、そっか。やっぱり御坂サンはご立腹デスヨネ…………。んで、伝言って?」

「……、反省してるんならよく聞いておくんだよ。えーとね、『にんきなんかの話を聞いてほしいかも』 だってさ」


「にんきなんか??? 『人気なんか関係ねえっ! とは言ったものの評判とか悪口とか気になるぜ!』ってこと?」

「心臓に毛の生えたノミ!? ……あのね、人気なんか、じゃなくてたぶんニンキナンカ。未確認生物の名前だと思うよ」

「なんだよそのフザけたネーミングは! ファンタジーなめてんじゃねーぞっ!!」

「とうまに馴染みのある言語じゃないから語感が微妙なのは偶然かも。ちょっと変則的だけど今日はそんなお話するんだよ」







501 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 10:57:05.83 QZriQ74o0 355/386


「つまりはUMAの話……。まさか神裂とかが退治するよーな怪物か?」

「どうかな? とりあえず生息地から行くよー。ニンキナンカはアフリカのとある小国の沼地に居ると言われているんだよ」

「とある小国? 国名うやむやにする理由がワカラナイぞ……」

「それは大人の事情、ってことでご容赦願うんだよ。ちなみにニンキナンカとは現地の言葉で悪魔の竜って意味みたい」


「今更ラノベとかで使うには躊躇するくらいベッタベタでコッテコテだな……。にしても、あんまりお前も詳しくないみたいだけど?」

「あ、うん。ニンキナンカの情報はネットの掲示板に来てた質問丸写しだから……。信憑性薄いけど気にしないで欲しいかも」

「掲示板ってお前が暇つぶしでオカルトと宗教の質問に答えるってアレか。学園都市に住んでてオカルトに走るってコトは…」

「質問者はティアーズインヘブンって人だね。いつも内容が突拍子も無くて面白いから楽しませてもらってるんだよ」


「ふーん。まあそういうことなら深く追求しねーよ」

「ありがと、じゃあ続けるね。……悪魔の竜、ニンキナンカは全長50メートル幅1メートル。たてがみを持ちウロコに覆われた…」

「はいっ、オカシなコト言いましたー! 全長50メートルもあんのに幅1メートルって細すぎだろ!!」

「だって沼地に棲んでるから仕方ないんだよ。普通のワニみたいな比率だと水深20メートルの沼とかじゃないとダメでしょ?」


「確かにその深さならもう沼じゃないけど、明らかに設定が後付けじゃねーか。未確認生物にツッコんでも詮無いけどさ」

「まだまだツッコミドコロは沢山あるけどね。この怪物は四本の脚と翼を持ち、口からは炎を吐くってウワサも有るんだよ」

「翼とか炎とかは最早手遅れだけど、脚ってなんだ? 50メートルをどうやって支えるイメージで設定したの?」

「なんでこんないい加減なスペックかと言うと、目撃情報が少ないからだよ。今まで確認されたのはつい最近のたった一件なの」


「つまり一人しか見たことが無いのか? じゃあ見間違いとか、最悪ウソって可能性も否定出来ないぞ……」

「でも現地の伝説上の生き物だよ? その伝承によると『ニンキナンカを見た者は死ぬ』から誰も探したがらないんだけど」

「ちょっ、何度ツッコませれば気が済みますかアナタはっ!? 見たら死ぬなら目撃者が居るのオカシイじゃねーかっ!」

「さっきの人は不思議な木の実を食べたから大丈夫なんだってさ。危ないところだったかも」 ヨカッタネ


「いやいやいや、最初っから最後までムチャクチャにも程があるぞ……。大体、そんな話を周りの連中は信じんのかよ?」

「当然かも。だってこの国は今日でも、現大統領の身内が呪われたって理由で隣国の呪術師に魔女狩りさせてるんだよ?」

「か、か、カルチャーショックってこういうことか。とても現代の事件とは思えない……、ってか本当の話とは思えない」

「そんなんでホントの魔女が捕まるわけないのにね。という訳でドコまでホントかわかんないニンキナンカの話、おしまいっ!」






502 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 11:03:06.03 QZriQ74o0 356/386


「うむむ……………………、なーんてな。上条さんはバカだけど騙されっぱなしじゃありませんのことよ?」

「~♪ 何のコトかな?」

「いみじくもインデックスは『ドコまでホントか』って言ったろ? アレ正しくは、『ドコがウソか』ってことじゃねーのか?」

「ふむふむ、意味は同じようで全然違うかも。……じゃあ、とうまは私の話のドコがウソだと思うのかな?」


「まず胡散臭い怪物の話だけど、コレの真偽はどうでもイイ。この話のキモは『目撃者がたった一人』ってことだった」

「そのココロは?」

「だから、ソイツが語る怪物の姿はそのまま真実として扱われた。つまり今日のお前の話が最初からウソだってコトを…」

「んー……、端折り過ぎかも。どんな素晴らしい内容も、ちゃんと順を追って説明しないと他人には伝わらないんだよ?」


「そりゃ正論だけど……、苦手なんだよな。結論だけガァーッって叫んで後は聞き手に解釈してもらうほうが楽だし」

「どうしようもなくズボラだね、知ってたけど」


「でもまあ一応やってみるよ。
……、まずなによりお前と御坂の電話は違和感だらけだった。

○ケータイ知識の無いお前はリダイヤルだの電話帳機能だの使えるはずがない。なのにどうやって電話を掛けたのか?
○直前にオレは繋がらなかったのに何故お前は通話できたのか? 
○オレの知る限りお前と御坂はそれほど親密じゃない。にしては会話の様子がフレンドリー過ぎた。
○御坂はオレと会話したいと言わなかったそうだが……、それならオレのケータイからの着信の時点で無視するはず。
○極めつけが伝言。お前は『一言一句違えず』伝えると約束した。それで『~を聞いてほしいかも』? まんまお前の口調だろ!

……で、挙句にオレと通話させることなく電話を切った。

そこへ来てさっきのニンキナンカだっけ? お世辞にも完成度も説得力も足りてるとは言えない低品質オカルトだったよな。
ホントにそんな伝承があんのか、お前の掲示板にホントにそんな質問が来てたのか。……んなコトは実はどうでもいい。
アレの主眼はさっきも言ったが『確認者は一人だけ』ってトコなんだろ?

そう。ニンキナンカも御坂との会話も、確認したのは一人だけなんだ。つまりお前は胡散臭い怪物の話を通じて
さっきの電話が実は一人芝居だった事実を暗に示していたんじゃねーのか?」



「ふーん。頑張って推理したことだけは褒めてもいいけど、それじゃ答えにならないかも。例えば私はなんでそんなことしたの?」

「なんでって、そりゃ……。ウソついたことをバラして、ドッキリでした的展開に…」

「ソレで私に何の得があるのかな??? あと、短髪に電話できるはずが無いって言ったけど、完全記憶能力を忘れてない?」

「……、電話番号を教えたとかそんな覚えはない。確かにお前なら何かの拍子でチラッと見ただけで充分なんだろうが…」


「そして根源的な話になるけど、確認者が一人なのは怪物や電話だけじゃないもん。短髪の訪問だってそうじゃないかな?」

「へっ? いや、そりゃ確かに応対したのはオレだけだけど…」

「それってホント? 短髪は実際にお土産を持って訪ねてきたのかな? とうまの勘違いって可能性はゼロなのかな?」

「なっ、バカ言うなよ! 実際にケーキやゼリーが……、無い。いや、んなワケあるはずが……、あれーーー???」



「ウソって軸が複数になると当事者だけじゃ立証不能になるよね。PiPiPi……、とうま、短髪に電話掛けたけど、お話する?」

「……もしコレが御坂と繋がっていたら話は全部ホント……、いやそんなはず無い。けど……、わかんねーーー!!!」










503 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 11:07:32.48 QZriQ74o0 357/386


                                         ☆

白井「お姉様、電話どなたからでしたの?」

御坂「んー? 間違い電話。……って言うか、いちいち人の電話まで詮索しないでよ」

初春「今更ですけど、本気でウザがられるくらい白井さんは御坂さんのことが大好きなんですねー」

佐天「だね。……聞いたことあったかもですけど、やっぱり一目惚れなんですか?」


白井「とんでもない。一目惚れとは所詮、対象の容姿だけに惹かれることですの。そうではなくわたくしはお姉様の内面に…」

御坂「そんなこと言うクセにアンタ、私のママ……、母親に会った時だっておかしくなってたじゃないの」

白井「あの時は確かに不徳の至り。ですけど、あのお姉様オーラ大インフレを前にして黒子に耐えろと仰る方がムリですの」

初春「オーラってよく判りませんが、白井さんは御坂さんの御坂さんらしさに惹かれているって事でしょうか……?」


佐天「ほうほう。となると、仮に御坂さんそっくりで、従順で、しかも白井さんを慕う女子が現れても白井さん的には関係ない?」

御坂「いっ……!?」

初春「興味深い思考実験ですね。どうですか白井さん?」

白井「何度も申し上げますけれど、わたくしが惹かれているのはお姉様という人間ですの。ガワなど些細なことですのよ」


御坂「……へーっ。じゃ、じゃさ私からも聞いていい? 例えば第五位の精神攻撃で私がアンタに深い好意を持っちゃったとして」

初春「あー。さらっと今、御坂さんが白井さんに好意を持つ事はマインドコントロールでもされなきゃありえないって言ってますね」

白井「おっ……、お姉様。それはあんまりですの」 ドヨン

御坂「いいから聞きなさい! 私が、間違いなく本人がアンタを、あ、愛してるって状況になったら……、どうすんの?」


佐天「そんなことが出来ちゃう能力者がいるって知ってはいたけど、想像するとヤッパリちょっと怖いなあ……」

初春「まあ現実問題、知らないだけで人間は心を他人に操られながら日々生きてるんですけどね。とか言ってみたり」

御坂「なにそれ怖い。……で、黒子。答えは決まった?」

白井「そんなの考えるまでもありませんわ。……当然、あの女を倒しお姉様を即刻元に戻せと命じますの」


佐天「おおおっ! 意外と言うか王道というか……。白井さんとしては当たり前なんでしょうけど、カッコイイですよ!」

初春「白井さん、それ本気ですか? 一口くらいつまみ食いしようとか絶対思わないですか?」

白井「初春、これ以上わたくしを侮辱する言葉を放つのでしたらそこの警備ロボットと一体化させますわよ?」

御坂「まあまあ、冗談を本気で怒らないであげてよ。……、私の質問もちょっとイジワルだったし。ゴメンね?」







504 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 11:13:12.62 QZriQ74o0 358/386


佐天「ん~……ところで、さすがに精神を操ったり幻覚を見せたりするおさかなって、居ませんよね?」

御坂「そうねえ……。ちょっと違うかも知れないけど、汚い川で見かけるハリガネムシはそんな感じかな」

白井「ハラビロカマキリなどに寄生する黒くて細長い虫……、類線虫というのでしたっけ? 割と名前は知られてるのでは」

初春「知らない方には『物凄く長い髪の毛、それもぶっとい剛毛がウネウネしてるような生き物』って教えてあげましょう」


御坂「ウネウネ動く髪の毛って……、黒子じゃあるまいし。まあ確かに体表をキューティクルで包んでるんだけど」 キモチワルイ

白井「今日のお姉様は黒子に厳しい気がいたしますの。それはともかくこの生き物、名前の通りに硬いんですのよね?」

初春「ハサミで切れないとか聞きますがそれは干からびた末の話で、生きてるうちは太い髪の毛みたいな手触りらしいですよ」

佐天「なんでそんなに髪の毛を押してくるんだい……。ひょっとして黒髪ストレートなあたしへの精神攻撃?」


御坂「茶色や白っぽいヤツもいるけどね。で、実はハリガネムシは別にカマキリ専門の寄生虫じゃないのよ」

白井「そもそも最初にお姉様が仰いましたがこれは基本的に水生生物ですの。当然、寄生先は水棲昆虫などですわね」

初春「えーっと……。カゲロウとかヤゴとかが水と一緒に彼らの幼虫を飲み込んで、体内で育ててしまうハメになるみたいです」

佐天「ふむ。カマキリがその宿主を食べちゃって寄生先が代わるってことか……。って一緒に食べられるのに死なないの?」


御坂「ハリガネムシは他の寄生虫に比べて、宿主と運命共同体って感じじゃないらしいのよね」

白井「宿主が攻撃を受けその身に危険が迫るとみるや、パパッと宿主の体内から脱出する術を有しておりますのよ」

初春「捕食者によって深刻なダメージを受ける前にこっそりそっちの体内へ移動しちゃうんです。まさしく神業です」

佐天「厄介なヤツですね……。ちなみにソイツに寄生されると何か特別な害があったりしちゃったり?」


白井「まず、寄生虫は宿主の養分で育つわけですから当然その害がありますの。あと生殖機能を奪われるようですわね」

御坂「そして本題なんだけど、夏から秋に掛けての川岸にはなぜか沢山のハラビロカマキリがいるのよ」

初春「川岸というか川の中にも、ですよね。数多くのカマキリが投身自殺をしに水辺にやってくるんです」

佐天「穏やかじゃないねえ……。それってハリガネムシが水中に帰りたくてカマキリを操って水辺に連れてきたってことですか?」


御坂「んー、そこは明らかになってないのよ。ウネウネ虫に宿主の脳を支配して行動を制御するような知能があるはずないし」

初春「寄生されたカマキリの脳から特殊なタンパク質が発見されていて、これが行動制御の素かも? なんて噂もありますけど」

白井「確かなのは不自然な数の、それも寄生されたカマキリばかりが暑い最中に水辺に来る……、ということだけですの」

佐天「何がどうなって、ってのが判らないのが一番怖いですね……。しかしホント、今日の話はキモかったなー」


白井「ま、わたくしが仮にお姉様の体内に寄生するなら精神の乗っ取りなどではなく真の合体を目指すでしょうけど」

御坂「黒子……、アンタがそんな言い方したら妙に生々しいから止めなさい。冗談抜きで寒気がするわ」 マジデ







505 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 11:17:52.55 QZriQ74o0 359/386


                                     ☆

打ち止め「ねえねえ、今更こんなことを聞くのもなんなんだけどおさかなって泳ぐの上手だよねってミサカはミサカは言ってみる」

一方通行「……そンな常識を真顔で聞けるオマエの度胸は大したモンだが……、質問の趣旨は何だよ?」

打ち止め「あのね? ヒトに比べておさかなの筋肉ってそんなに多く無いのになんであんなに早く泳げるのかなって」

一方通行「……種類ごとで違うが、例えばマグロの筋肉量は体重比で60%以上じゃなかったか? ヒトは40%程度だが」


打ち止め「えっ……。それはちょっと誤算だったかも、とミサカはミサカは今日の話の展開に迷子ってみたり」 アワアワ

一方通行「ンだァ? つまり筋肉量が同程度の魚が何故ヒトよりもずっと速く泳げンのか、で話を進めりゃイイのか?」

打ち止め「なんとかなるならお願いしたい! ってミサカはミサカは不手際を陳謝しつつ頭を下げてみたり」

一方通行「まァイイ、傍でずっと落ち込まれてもウゼェだけだしな。で、ヒトと同程度の筋肉量の魚と言えば……、ギンダラか?」


打ち止め「ここでの魚は何でも構わないけど、とにかくその子は人間よりずっと速く泳げるよね。どうしてなのかな?」

一方通行「投遣りな質問だなオイ……。答えは体型が泳ぎに適してるとか、殆どの筋肉を泳ぐ為に使えるとか、その辺だ」

打ち止め「だよね。じゃあ、ヒトが生身の力で彼らに泳ぎで勝つにはどうしたらいいかな? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

一方通行「コレが本題かよ。確認だが生身ってのは能力や、あー……、その他モロモロも使わずガチって意味だよな?」


打ち止め「うんうん。ちなみに人類最速と魚類最速ではどのくらいの差があるのかな? とミサカはミサカは確認しておく」

一方通行「人間はせいぜい秒速2メートル程度だろ? 最速の魚については以前オマエが調べてなかったか」

打ち止め「えーと……、いろんな最強魚の話の時だっけ。たぶん無難にバショウカジキ(120km/h)って言ったような」

一方通行「その説を採ると、秒速33メートル以上か? ……、世界が違い過ぎンな」


打ち止め「でも普通のおさかなの泳ぐスピードはそこまで速く無いはず。さっきのギンダラとかなら何とかならないかなあ?」

一方通行「……、ムリだろォな。何故って底魚なヤツらが本気で泳ぐコトは稀だが、スタートダッシュはマグロと大差ねェからな」

打ち止め「むむ……、足ヒレ付けてもパドル付けてもダメ? とミサカはミサカは再度確認してみたり」

一方通行「ンな付け焼刃でどォにかなるワケねェだろ。大体、ヒトはその非力を嘆けばこそ進歩してきた生物じゃねェか」


打ち止め「進歩って科学技術だよね。んー……でもでもさ、なんかモーターとかエンジンとかロケットは夢が無いっていうか……」

一方通行「そのセリフ、この街の科学者が聞いたら泣くぞ。ファイブオーバーシリーズって知ってンだろ?」

打ち止め「純粋な工学技術で素になった能力を超える、とかご大層なお題目を掲げた実益皆無なガラクタだよね」

一方通行「あァ。能力者の発想は従来の常識では到底辿り着けないモンらしく、全く新しい技術へ繋がるカギだとか言って」






506 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 11:22:58.13 QZriQ74o0 360/386


打ち止め「そんな思想があるのに、お姉様を単なる大火力、色々非現実的なゲテモノで超えようとしたのが全然意味不明だよ」

一方通行「まァな。機械に能力が扱えない以上あのシリーズは全て、モーターで魚を超えたって言い張ってるだけだからなァ」

打ち止め「それも普段ゆったり泳いでる魚を最高級モーターから火を噴くほど酷使してやっと、でしょ? 正直バカだよね」

一方通行「そォいやオマエは本来研究者嫌いだったな。っと、他にもモデルケース・メンタルアウトなンてのもあるよォだが…」


打ち止め「それだって、能力者と全く違う方式なのに能力者名を利用するから誤解されるんだよ、とミサカはミサカは憤ってみる」

一方通行「威力や効果で超えるってコトが目的になっちまって、新発想の獲得って意図が消えちまってンだよな……」

打ち止め「本来の意味でお姉様の技術を活用したかったら、大電流が使えるってトコをもっと掘り下げなくちゃダメだよ」 プンプン

一方通行「カビで幻覚を発生させるって派生研究もあるが、使えるヤツがごく限られる工学なンざ青カビほどの意味もねェよな」


打ち止め「ふぅ~……、それで何の話をしてたんだっけ? とミサカはミサカはちょっとスッキリしたので素に戻ってみたり」

一方通行「……、魚よりずっと速ェ?」

打ち止め「そうだった! でもどうやら不可能みたいだから話題変更して……、幻覚なおさかな。……居るかな?」

一方通行「脳を操るって話になりゃ難しいが、目眩し程度なら有名なのが2種類居ンじゃねェか。タコとイカだ」


打ち止め「エー? ……墨を吐くだけでしょ? とミサカはミサカは骨の無いヤツらをあからさまに見くびってみたり」

一方通行「軟体動物ナメンなクソガキ。ンじゃ聞くが、両者の墨の決定的な違いを知ってンのか? あァ!?」

打ち止め「なんかそれ聞いたことある気がする、ってミサカはミサカは記憶と言う名のネットワークに旅してみたり」

一方通行「……、ンじゃその間にテキトーに解説しておく。さっさと思い出さねェとオレが答えちまうからな?」



一方通行「イカとタコは頭足綱ってカテゴリに属する割と近縁なヤツラだ。脚が多いとか吸盤が有るとか共通点も多いよな?
       墨を吐くのもそのひとつなンだが、どっちの墨も生物由来の暗色色素として馴染み深いメラニンが素になってる。

       余談だがメラニンには黒褐色の真性メラニンと橙赤色の亜メラニンがありヒトの髪の色もこの二種の配合で決まる。
       当然、墨は真性メラニンで出来てンだが特にコイツらの場合にはセピオメラニンって呼ぶらしい。
       セピア色っつーコトか? 常識だが”sepia”ってのはコウイカの学名で、セピア色ってのはイカ墨色を指すからな。

       またイカもタコも共通して墨は漏斗っつー、噴射器官から放出される。アレは口じゃねェから間違えンなよ?」


打ち止め「ふむふむ。メラニンが足りないあなたにはちょっと羨ましい生き物だったりする?」

一方通行「クダらねェコト言ってるヒマがあンのか? 両者の墨の違いが解ったンならさっさと答えてみろ」

打ち止め「あと一分……、ミサカにあと一分だけ時間を下さい、ってミサカはミサカは最後のお願いをしてみたり」

一方通行「ほォ……、60秒だな? 待ってやるが、発言には責任を持てよクソガキ」





507 : 幻現[saga sage] - 2012/03/25 11:28:08.33 QZriQ74o0 361/386


一方通行「ンじゃ、その間にもう少し余談を。

       イカ墨は食材としても有名だがタコ墨料理は聞かれない。タコ墨はマズいからって噂があるがそりゃ間違いだ。
       旨み成分を比較するとタコ墨のほうがイカ墨よりもずっと多いンだからな。
       試しにタコ墨でパスタを作ってみたら思いのほか美味だった、なンて実験したテレビ番組もあったほどだ。
       そンなタコ墨が料理にあまり使われない理由は………………、どォだ? そろそろ思い出したかよ?」


打ち止め「うん。とりあえず……、イカ墨は粘っこくてタコ墨はさらっとしてるのってミサカはミサカは情報を小出しにしてみる」

一方通行「そォだ。粘り気がイカ墨の真骨頂。パスタなどに良く絡み色効果も風味付けにも都合がイイ」

打ち止め「逆にさらっとしてるタコ墨は効率が悪いってことになるよね。つけ麺のタレと普通のラーメンスープって感じ?」

一方通行「ちょっと語弊はあるが、まァそンなトコか。粘性の違いはセピオメラニンに何がくっついてるかの違いと思っとけ」


打ち止め「次に量が違う。イカの墨は同程度の体重のタコに比べて多いの、とミサカはミサカは論じてみる」

一方通行「種によって様々だが、概ね正解だ。コレも料理にタコ墨が使われない理由のひとつだな」

打ち止め「ほんのちょっとしか無い上に、タコの墨袋はイカと違って取り出しにくいんだってさ」

一方通行「イカの墨袋はバラせば一目瞭然、デカイ内蔵にへばり付いてる黒い筋だ。タコのは消化管の最後端付近にあンな」


打ち止め「そして使い方もちょっと違う。どちらも主に外敵に襲われたときに墨を吐くんだけど…」

一方通行「つまり逃走の為だが、墨の質の差が意味の差になる」

打ち止め「うん。タコの墨はさらっと少量。海中に噴出されると広範囲に展開され煙幕として機能するの」

一方通行「イカ墨はドロっと大量。噴出された墨はある程度の硬さを持ったカタマリとなり、本体の身代わりになるとされる」


打ち止め「タコは墨を吐いて相手が怯んだ隙に逃げて、イカは墨を吐いて相手が分身に気を取られてる内に逃げるんだね」

一方通行「当然、例外もある。たとえば有毒成分が多く含まれる墨の場合は攻撃手段にも成り得るだろ?」

打ち止め「あと、深海のタコは煙幕の意味が無いから墨を吐かないんだって、とミサカはミサカは当たり前のことを言ってみた」

一方通行「深海のイカには逆に発光バクテリア入りの墨を吐いて眩しさで敵を脅かすヤツも居るンだとよ」




番外個体「あーのさーあ。長々と話してっトコ悪いけど、結局イカとタコのドコが幻術使いなワケ? ミサカ全然わかんねーっす」

一方通行「うるせェな。イカのは立派な影分身だし、タコのは視覚と嗅覚を同時に奪う文字通りの幻惑技じゃねェかよ」

芳川桔梗「……、あなたたちが起こすような超常現象を現実に置き換えると……しょっぱく聞こえるのは仕方が無いのよ」

打ち止め「ファイブオーバーが名前負けしてるのと同じで? とミサカはミサカはしつこさと厳しさと心苦しさを表明してみる」


芳川桔梗「あのシリーズについては元の目的から現在の思想に至るまで、真実は語られていない気もするのだけれど……」

番外個体「まあ研究者崩れがそう擁護せざるを得ないくらい、明らかな失敗って事だがね」

一方通行「オマエもムダにキツいな……。オレはモデルケース・アクセラレータを勝手に作られよォが気にならねェと思うぜ?」

番外個体「ほぉー、オマエさんの顔写真がプリントしてある戦車とか想像してみろよ? もちろん幼女センサー搭載だよん」



一方通行「……、欠片もオレの能力の要素が無いだろォ。だが、オマエらからすりゃ現状も似たよォなモンってコトか」





    ~おしまい~





508 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/03/25 12:24:15.09 QZriQ74o0 362/386


以上、第三十七回「幻現」でした。今回全部オチが弱いって? それは幻覚です。

第一パートは・・・妄言の中でしか語られなかった協力機関の妹達の安否情報って結局ウソなの? って感想と
ニンキナンカの語感を交差させたらワケがわからなくなった、そんな感じです。

第二パート、カマキリを水に漬けるとお尻からにゅるっと、時には3匹とか出てくるハリガネムシ。
馴染みの水場の水面にコイツが浮いてると少々残念な気持ちになります。

第三パート序盤、魚の泳ぐ速さの話題。バショウカジキ(120km/h)のように調べると色んな数字が出てきますが
実のトコ、これらはかなりテキトー(適当ではなく)な推察ではじき出されてます。
本気で泳ぐ魚を観察する機会なんてそうはないし、運良く高速で泳ぐ魚を見れたとして、それが本気だと言える根拠もない。
そもそも中層やら深海やらに棲む魚種の場合は生態を観察すること自体が非常に困難。
じゃ今ある数字は一体どうやって計算したかと言うと 
釣りしてて一秒間に持っていかれた糸の長さ、とか船を追い越す感じから目測で、とか・・・ガッカリな方法だったりします。

そんなわけで、幻覚とか精神とかムリにおさかなに組み込もうとするから・・・とか後悔しつつ今日はこの辺で。ではではまたー


511 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage] - 2012/03/25 16:28:53.30 HCbpvW7uo 363/386

乙です
あとカマキリが持ってるのははしご状神経節で脳じゃないと思ったり

514 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/03/26 12:15:24.24 IR0gKdZv0 364/386


>>511
ご指摘感謝です。そして誤解を招く書き方をしまして申し訳ありません。これは説明しないとですね。

問題は、第二パートに出てくる『カマキリの脳』って言い回し。コレがどうダメなのかと言うと・・・


脊椎動物と昆虫では中枢神経系が全く異質で、その意味でカマキリにはヒトなどの脳に相当する部位がありません。
禁書的に言うと、能力者が魔力を消費せず魔術師に演算の必要が無いのと同様、カマキリには脳が無いのです。
はしご形神経系とか体節制とか管状神経系とか、マジメに勉強したい方はその辺りを調べてみるといいかもです。

ただし「脳」と系統発生的には別物だけど似た働きを持つ、昆虫などの頭部神経節を指して脳と呼ぶ場合もあります。
必ずしも正しい用法じゃないのは前述の通り。使いどころには気を付けなくてはいけません。
あくまでバテた能力者の放つ「もうMPスッカラカンよ」って軽口程度の次元であれば、カマキリには脳があるのです。


なのでお手数ですが作中で彼女たちはこれらを承知の上、あえてお気楽に『カマキリの脳』と言ったと・・・
もしくは『カマキリの脳~』という箇所は『カマキリの脳(いわゆる脳神経節)~』と言っているのだと・・・
まことに勝手ながらそう解釈してくださいませ。あくまで間違えたのは私だけ、ってことでどうかひとつ。


このように文句や注意を戴きますと、海より深く反省しつつ結構嬉しかったりします。
今後もお気づきの点は情報、内容問わずツッコんでみてください。たまに長々と言い訳するかもしれません。
というわけで、繰り返しですが今回は本当に申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました。ではまたー


517 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/03/29 20:26:59.48 4q9ID7HZ0 365/386


最初の感じが失われすぎかなー、とふと思ったおさかな話。ので今回はテイストを戻してみたのですけど・・・

そんなわけで今回のテーマは「回顧」。第二パートの登場キャラが違う理由は特にないです本当です。ではどうぞ


518 : 回顧[saga sage] - 2012/03/29 20:28:28.82 4q9ID7HZ0 366/386



                                      ☆

「なあインデックス、ガムシって知ってるか?」

「とうま? 今日はまた随分素直な質問だね。そして当然知ってるんだよ。なにしろ一応、ギリギリ水生昆虫だもん」

「一応とかギリギリとか……、そんなにパッとしない虫だったっけ? 正直オレは名前しか知らなくてさ」

「んとね、川とか池とかじゃなくて、水溜りで遊ぶ子供にはハズレな虫としてお馴染みだった子なんだよ」


「ハズレ? そりゃまたいったいどういう意味だよ?」

「水溜りには季節によって色んな生き物が来ることがあるでしょ?」

「現代の水溜りのコトじゃなくて、ちょっと昔の田舎の話か。例えばカエルが産卵したり水棲カメムシ類が飛んできたり」

「そうそう。かつては結構当たり前の光景だったんだよ……、実際には知らないけど」


「昭和は遠くなりにけりだな。当然、上条さんもそんな経験はしてない……、はずだ」

「まあそれはそうと、当時の子供たちは水溜りにやってくる生き物にランク付けするのが慣例だったみたい」

「ほほう。まあ現代の大人だって、釣りに行ってヒットしたら嬉しい魚もそうじゃないのもいるよな。そこは分る気がする」

「釣りで言うと大物って価値が高いよね。そんな感じで水溜りの生き物も種類やサイズをシビアに査定されていたの」


「そんな中、ガムシはハズレ扱いだったと。一体どんな虫なんだよ?」

「外観は、えーと……、ツルツルなコガネムシというか……」

「ん? 水の中でコガネムシみたいなヤツって、そりゃつまりアレじゃないか? えーと……、ゲンゴロウ?」

「そう、ガムシは人気者ゲンゴロウと良く間違えられるの。それがハズレな虫たる由縁のひとつなんだよ」


「ランクが絡んでくるワケか。ゲンゴロウは高ランクでガムシは低ランク。しかもよく似てるからガッカリが起きやすいと」

「更に、水溜りで見られるガムシの仲間は大粒アーモンドチョコみたいな大きさなの。もしゲンゴロウなら特Aランクくらいのね」

「水生昆虫にそれほど詳しく無い子供が『でっけーゲンゴロウ捕まえたー!』って大喜びしてるとこを、ハカセ役がツッコむのか」

「そだね。『ぷぷぷっ。喜んでるトコ悪いけど、それハズレですからー』とか。そうしてみんな大人の階段を一歩昇ったのかも」


「まあ子供はそれでいいとしても、ガムシは不憫だなあ。ほとんどゲンゴロウと変わらない虫なんだろ?」

「細かい違いはあるんだよ。ゲンゴロウより獲物を捕まえるのも泳ぐのも下手だし、ゲンゴロウと違って肉食傾向は強くないし」

「ふーん。そういえばゲンゴロウはハンミョウやマイマイカブリみたいな肉食昆虫の仲間だったな。ガムシは何に近いんだ?」

「分類が難しい虫だけど、一番近いのはエンマムシかな? あとダイコクコガネとか……、俗に言うクソムシの仲間かも」



「クソムシって……、いや、うん。子供の世界じゃその名前だけでも嫌われて仕方がないな」

「それもハカセな子が皆に教えるのかもね。いつの時代も子供は無邪気で残酷なんだよ」







519 : 回顧[saga sage] - 2012/03/29 20:30:01.99 4q9ID7HZ0 367/386


                                    ☆

結標「スッポンってね、首がみょんみょんと自分の背中まで伸びるの。うかつに甲羅を持ったら噛まれちゃうから気を付けなさい」

結標「そうじゃなくて後ろから。お尻のほうから掴んであげれば噛まれる心配はないわよ」

結標「臆病なカメだから、目の前に手を持っていくのも危ないの。頭がぎゅーんと伸びてガブリっとなっちゃうんだから」

結標「もし万が一噛まれた時、ムリに引き抜こうとすればより傷口が深くなるだけ。とりあえず落ち着くのが大事ね」


結標「俗に『雷が鳴るまで絶対離さない』なんて言うけど、水に戻してあげれば大抵の場合すぐに噛むのを止めてくれる筈よ」

結標「さっきも言ったけどスッポンは臆病なの。怖い相手に噛み付いてるより水中に逃げたほうが安心だからかしらね」

結標「だーから、持ち方に気を付ければ全然平気だってば。うん、そりゃメダカや金魚に比べたら危険度は高いけれども」

結標「えっ……? ふふっ、意外とあなたも怖がりなのね。……、それならとっておきの方法があるわ」


結標「日本のスッポンの成体は甲羅の長さが30cmくらいが標準的なの。そのサイズなら当然頭も大きくて噛む力は強い」

結標「最初からそんなのを飼おうとしたら誰だって怖いわ。首の伸ばした姿は女の子には暴力的に過ぎるしね」

結標「他のカメに比べて陸の上でも水の中でも俊敏で活発だから、飼い主がスッポンに慣れてないと手に余っちゃうかも」

結標「そうそう、だからね? とっておきと言うのは子ガメから飼育を始めることなのよ」


結標「子ガメってどのくらいの子ガメかって? んー……、お腹側がオレンジ色で黒い模様がある、生後数ヶ月の子かしら?」

結標「サイズは5cm未満。それなら頭だってあなたの小指の先よりずっとちっちゃくてカワイイものよ?」

結標「スッポンの甲羅は角質化してないから全体がふにゃふにゃしてるの。そのお陰で他のカメより体重が軽く動きが速いわ」

結標「想像してみて? 水槽の中でちっちゃなスッポンがワシャワシャと元気に動き回る様子を!」


結標「息継ぎの時なんか、めいっぱい首を伸ばして脚をバタバタさせながら子供の証の黒斑点を見せ付けてくれるのよ?」

結標「首の伸び縮みで空気を肺に送る呼吸法の為の動作なんだけど、正直あの姿は誘ってるようにしか見えないわ」

結標「でも、怖がり屋さんだから人が水槽に近づくと水底に戻っちゃうの。エサを食べる姿とか観察するのは至難の業ね」

結標「その意味でも、飼い主とスッポンの双方が慣れていける子ガメからの飼育。オススメよ?」


結標「あら、どうして? ……、良く判らないわね? ミドリガメに比べたら甲羅の違いの分ずっと軽くて世話もしやすいのに?」

結標「確かに子ガメは病気やケガに弱いけど、普通に魚を飼ってる人ならスッポンは難易度の低い部類よ?」

結標「理解が遅いわねえ、尻尾のアレは総排泄腔。いろんな夢が詰まって飛び出すステキな……、大事なモノだわ」

結標「……、まだ文句があるって言うの? …………そ、それは、それは生き物だもの。当然、悲しいけど成長するわよ?」


結標「最初の一年で10cm……、冬眠させないようにしてたら15cm以上になってしまうかもしれないけど」

結標「ワンパクな、大事な息子がむくむく成長していく。そして自分の手を離れていく喜びを疑似体験するみたいな感じが…」

結標「最高の一瞬をともに過ごしてあげられた奇跡、その価値を不出来なあなたは想像出来ないのかしら??」

結標「……残念ね、でも私は諦めないわ。……、スッポンみたいにしつこい? 褒め言葉のセンスは悪くないわね」









520 : 回顧[saga sage] - 2012/03/29 20:32:23.88 4q9ID7HZ0 368/386


                                       ☆

打ち止め「けろっけろっけろっ ふふふふんふーん♪ とミサカはミサカは今日のテーマを匂わせつつ登場してみたり!」

一方通行「…………オマエなァ。今更だが、ヒトにモノを教わろうってヤツがそンなフザけた態度を…」

打ち止め「あなたがそんな常識的なコト言うのだって相当フザけてるんだし、気にしたらダメだよってミサカはミサカは…」

一方通行「チッ……、ンじゃ非常識なオレはオマエの頼みなンざ無視してやるよ。文句ねェよな?」


打ち止め「さ、流石は最強のヘリクツ王……。そんなあなたのお話が聞きたいな、とミサカはミサカはおねだりしてみるけど」

一方通行「………………」 シラー

打ち止め「むぅ……、コーヒーのおかわり欲しくない? とミサカはミサカはモノで釣れないか試してみたり」

一方通行「…………」 ポケー


打ち止め「……、そっか。どうしてもお話してくれる気が無いのなら仕方がないね、とミサカはミサカはモードを変更する」

一方通行「…………?」 ランルー

打ち止め「いつもミサカに楽しく説明してくれてるけど、実は面倒臭かったんでしょ? とミサカはミサカは手間の掛かる女」

一方通行「……、」

打ち止め「そりゃそうだよね。こんな最高にかわいいだけで他に価値の無いミサカなんてあなたには邪魔なんだろうし」

一方通行「……」 ウズウズ

打ち止め「お姉様も『腐れ外道に阿婆擦れ』ならアリ、って言ってたのにミサカはそうなるよう努力しなかったんだもん」

一方通行「……、意味のわからねェコト延々続けンじゃねェよ。何か話せば気が済むンなら話してやるから黙りやがれ!」



打ち止め「わーい、大成功! とミサカはミサカは無邪気さアピールで飛び回りつつ喜びを表現してみる!」

一方通行「フン、急くンじゃねェよ。言ったろ? オマエの質問に答える気はサラサラ無ェ」

打ち止め「えっ!? じゃあ今日は何の話をしてくれるの? ってミサカはミサカは興味津々であなたの言葉を待ってみたり」

一方通行「非常識な魚と、阿婆擦れな魚。オマエの選択でテーマが決まる。さて、気になンのはどっちだ?」



打ち止め「えっと……、んー……、どっちも聞いてみたいけど」

一方通行「選べねェのか。ンじゃ、テーマは邪魔なさかなで決定だ。覚えとけ……、チャンスの女神は後頭部がハゲてンだよ」

打ち止め「言ってることが良くわかんないけど、とにかく邪魔なおさかなの話なのねってミサカはミサカは理解してみたり」







521 : 回顧[saga sage] - 2012/03/29 20:33:56.43 4q9ID7HZ0 369/386



一方通行「生き物の姿ってのは主な生息地の環境に適応した、つまりそこで生活すンのに便利な形体であることが一般的だ」

打ち止め「ふむふむ。時には全然違う種類の生き物であっても似てきちゃうことがあるくらいだもんね。それで?」

一方通行「そして最善を突き詰めて求めるとしたら、即ち生物の外観は状況に関わらずシンプルになるハズだ」

打ち止め「説明すっ飛ばし過ぎだよ……。ざっくり言うと装飾過多は効率が悪いの、とミサカはミサカはフォローしてみる」


一方通行「例えば魚類だ。ドジョウ、ハゼ、サバ。この三種の姿を使えば大部分の魚種のスタイルを説明出来る」

打ち止め「えーと、ヒラメとかフグとかエイとか……、例外が数え切れないほどあるような」

一方通行「まァ……、本旨はソコじゃねェから深く追求すンな。結局、最適な姿ってのは単純なモデルに集中するンだよ」

打ち止め「常時泳ぐなら流線型なサバ、底魚であれば腹側が平らなハゼ、砂に潜り穴に潜むなら細いドジョウ……」


一方通行「ムダの無いヤツらだろ? パーツを含む体の造り全体が機能美とでも言うべき完成度に達してやがる」

打ち止め「ふむふむ。でもそれ美的センスの問題でもあるし断定は出来ないよ……、とミサカはミサカは要らぬ心配をしてみる」

一方通行「そォか? 不完全な生物と比較すりゃ誰でも同じ感想を持つンじゃねェの?」

打ち止め「……不完全? 洗練されて無いとか出来損ないとか?? そんなの生き物に掛けて良い言葉じゃないよ!!」


一方通行「今回は便宜的ってコトで聞き流せ。例えばクジラの仲間で、イッカクって知ってるだろ?」

打ち止め「……そりゃ、うん。長いツノを持ったオスの姿が有名な北極の海に棲んでる全長5mくらいの暴れん坊だよね」

一方通行「今オマエはツノっつったが、アレは牙だ。口の中から生えて歯肉や上アゴを突き破ってねじれながら伸びてンだから」

打ち止め「言い方が痛々しいね……。それで、オスだけがツノ……、牙が2m以上も伸びるってことにはどんな意味があるの?」


一方通行「明らかにはなってねェ。と言うより通常メスやガキには備わってねェ時点でそもそも必要性は無いはずだ」

打ち止め「ムダな装飾かあ……。成長段階で牙が肉を日に日に突き破って行けば感染症のリスクもきっと高いだろうに……」

一方通行「ただ、牙の長いオスは多くのメスを惹き付けンだと。オスっぽさの象徴としては機能してるのかも知れねェ」

打ち止め「ふむふむ。なんとなく、あなたの意図は判ったよ。そういう説明不能で理解できない生き物のお話をするんでしょ?」


一方通行「ンー……いや、まだイッカクの話止める気はねェぜ?」

打ち止め「そうなの? あ、いや、別に不満があるとかじゃないけど、ってミサカはミサカは慌てて取り繕ってみたり」

一方通行「今日はオマエの意見は聞かねェつったろ。好き勝手に解説してンだから茶々入れンじゃねェよ」

打ち止め「……、つまりスネてヒネてるのねってミサカはミサカは察しがいい子なので大人しく聞き手に徹してみたり」







522 : 回顧[saga sage] - 2012/03/29 20:35:41.34 4q9ID7HZ0 370/386


一方通行「好きに言っとけ。……さて、イッカクは不完全な造形のクジラっつー話。

       牙を持ってンだから当然だがイッカクはハクジラ目、とりわけ小型クジラのグループに属する。
       近縁にはベルーガ……、シロイルカやシロクジラって名前のほうが判るか?
       牙の折れたイッカクをベルーガと見間違う程度には似てるらしい。
       まァ、水族館の人気者と違ってイッカクは未だ謎の多いヤツではあるンだがな。

       なにしろオマエも言ってたが、北極の海に棲むクジラだから実在の確認そのものだって遅かった。
       公式には19世紀までUMA扱い、伝説の生き物だったンだと……。
       現在でもソコへ行くだけで冒険になるよォな極寒地帯にしか居ないコイツを調査すンのは並の難易度ではなく、
       故に様々なイメージを補完されて実態が語られている状態だと言ってイイだろォ」


打ち止め「……それって、悪く言えばデタラメ情報がいっぱいってこと? とミサカはミサカはクリティカルシンキングしてみたり」

一方通行「そォとも言える。例えば牙だが、かつてありゃオス同士の殺し合いの道具だと言われてた」

打ち止め「ネジれて尖ってるんだもん。しかもブンブン振り回してるんでしょ……、そう考えて当然だと思う」

一方通行「その他にも敵を追い払うための見せ掛け武器だとか、アンテナだとか、氷を穿つアイスピックだとか…」

打ち止め「なんとなく人間寄りな見方……。それで結局、正解っぽいのはオスがカッコつけるためのシンボルってだけなの?」

一方通行「イヤ、構造的に感覚器としての用を持つ可能性も指摘されてる。群れのボスにだけ意味がありそォな説だが…」


一方通行「イッカクは通常10頭程度の群れを作って行動すンだが、そこに明確なボスが居るかどォかは定かでは無い。
       ただ、オスの牙は長いほどメスを惹き付けるって話をしたろ?
       繁殖期には立派なモンを伸ばしたオスの周りにメスが群がって……、一種のハーレムが出来上がる。

       ところでイッカクも水生生物である以上、空気中の様子は把握し難いよな? 温度や気圧、風の様子などだが。
       仮にその手の情報を入手すりゃ海が荒れることを事前に感知したりエサのイカや魚の動きが予測可能だとすると
       牙が感覚器の役目を果たすって説と同時に、長ければ長いほどメスが集まってくる理由に説明が付く。

       つまり、水の外に出れないイッカクが牙を空に掲げることで空気中の情報を得てンじゃねェかと。
       そォであれば牙の長さに比例して得られる情報量が違うコトになるよな?
       群れで情報を共有すンなら、ゴミネタが数あっても邪魔なだけ。信頼出来ンのは最高のモノに限る。
       なら最も牙の長いオスだけが正義になるワケで、モテて当然っつー……、コレもイメージに過ぎねェがな」


打ち止め「確かにソレが正しければ、ボス以外のオスの牙は無用の長物……とミサカはミサカはウマイこと言ってみた」

一方通行「ただただ邪魔だろォな。ちなみにイッカクの歯は二本。オスの牙じゃない歯とメスの歯は上あごに埋もれたままだ」

打ち止め「噛んだり切ったりな普通の歯としての役割は全然無いんだね。モテるオスにしか需要が無いかもしれないし…」

一方通行「稀に二本とも牙になったり、メスなのに牙が生える場合もある。極レアな二本牙のメスの報告例もある」

打ち止め「メスにモテモテのメス……。若しくは『オスなんか要らない、だってわたくしにも牙があるんですもの』……なメス?」

一方通行「その辺りは報告例の少なさから言ってイレギュラーであり、ソコに意味を求めても詮無ェだろォけどな」







523 : 回顧[saga sage] - 2012/03/29 20:40:38.54 4q9ID7HZ0 371/386


打ち止め「なるほどね、ってミサカはミサカは邪魔なさかなの話のはずがクジラに終始しちゃったことを反省してみたり」

一方通行「邪魔な牙を持つ水生生物、何も間違ってねェだろ。氷の浮かぶ海での移動に捕食に、常に邪魔になるンだからよ」

打ち止め「そりゃわかるけど……、改めてヒトに喩えれば上唇を突き破った長さ80cmの前歯だもん」

一方通行「役に立たないとかムダってレベルじゃねェ。明らかに大きなマイナスだな」


打ち止め「でも、イッカクは今日まで種を繋いできたワケで決して最適化に失敗してないよねとミサカはミサカは再確認してみる」

一方通行「潜水時間や深海への対応能力、クジラには珍しく頭を自由に振ることが出来る、など有用な特技も多いしな」

打ち止め「いつか今よりも研究が進んだらあの牙のホントの意味が判るかも? とミサカはミサカは期待を口にしてみたり」

一方通行「さァな? 大昔はあの牙、ユニコーンの角だとか衝撃の杖だって名目で高額取引されてたンだぜ?」


打ち止め「イッカクが実在してるのすら判らない時代に? ……えーと、漂着した骨を拾って、とかそういうことかな」

一方通行「入手方法はおそらくそォだろ。そしてイッカクって存在が知られてねェからこそ、その手の大法螺が通用したンだよ」

打ち止め「ふむふむ。奇妙にネジれた長くて硬い不思議なモノだし、説得力はあったんだろうね」

一方通行「外見の齎すイメージってのはバカに出来ねェからな……。ンで、現在は保護動物でありながら狩猟の対象でもある」


打ち止め「あー。普通は獲っちゃダメだけど伝統的な生活を維持してる一部のヒトに限っては獲ってもいいよってヤツかな?」

一方通行「そォなると、保護する人間と狩る人間でそれぞれに適したイメージが用意され対立が始まる」

打ち止め「……あの、この話題続けても大丈夫? とミサカはミサカは一抹の不安を拭いきれなかったり」

一方通行「関係ねェ。……、牙で殺しあうってのが否定されたのも今から考えれば平和的な動物アピールの一環かも、とかな」


打ち止め「あの……、いや……」

一方通行「つまり、個々人の思惑で先入観を植え付けられてる可能性が否定できない現状で、未来の分析なンざ…」

打ち止め「そこーーーーまでーーーーー!!! ってミサカはミサカは強制終了を掛けてみたり!」

一方通行「ンだよ? ココからが本題じゃねェか……」


打ち止め「まだ語り足りないの? とミサカはミサカはそんなにネタが有るなら次回に取っといてとお願いしてみたり」

一方通行「そォかよ。じゃ次回は頭から、不自然で邪魔にしか思えない形状の生き物の宝庫、をテーマに行かせてもらうぜ?」

打ち止め「ヘンな生き物がいっぱい居る場所……、深海? ってミサカはミサカは発言を読み解いてみたり」

一方通行「そォ。どンな説明不能生物を扱うかは秘密だがな」



芳川桔梗「中途半端な所で話を終えられるとオチがつけにくいのだけれども。待ってる身にもなって欲しいわね」

番外個体「ガキみたいにキレた勢いだけで喋ってたからなー。よーし、次回は邪魔しまくってやろーぜ」




 ~おしまい~



524 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/03/29 21:02:36.95 4q9ID7HZ0 372/386


以上、第三十八回「回顧」でした。補足と言い訳を少しだけ

スッポンは当たり前ですけど脚があるので、魚の水槽に入れるとインパクト大です。カワイイです。
ただ、知らないうちに小魚やエビを食べちゃうので単独飼育が基本です。

イッカク・・・牙の話だけで終わっちゃったけど、けどアレはスゴイもん。意味ワカンナイもん。補足にならないけど。

そんな軽めの回でしたが今日はこの辺で。ではではまたー



531 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2012/04/11 23:31:53.98 DSDNV2np0 373/386


・・・何その暗黒星人進化説? とか何とか謎のメッセージから始まるおさかな話。今回も迷走してます。

第一パートの担当が上条さんとインデックスではなく謎の二人組なのでご注意を。

テーマは「ズレた」。 全然深い意味はありませんが、よろしければどうぞ


532 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:34:36.10 DSDNV2np0 374/386



                                      ☆

「ボス? こりゃ一体なんですか」  スイソウ?

「見て判らないバカにわざわざ説明してやるほど私はヒマじゃない」

「あ、いえ……。そりゃ私にだってコレが物質的生物的に魚だってことは判りますよ。そうではなくてですね…」

「水槽と魚。ソレが理解出来ているのにまだ何か疑問があるような部下に存在価値は無い。リストラ対象だな」 カチャ


「わぁあああ、待ってくださいボス! リストラも大概ですけどその手に握られた正体不明のメカメカしい物体はヤバ過ぎてっ!」

「美しいカラクリだろう。ここをヒトの腕にザクッとするとだ、先端が血管に絡みつき徐々にクルクルと巻き取っていくそうだぞ?」

「どういう理屈で?? 循環系でパスタごっこして何が面白いんですか!」

「無痛かつ無出血で致命的なダメージを与える、俄には信じ難いだろ? 丁度実験台を捜してたのだ喜べ協力させてやる」


「イヤですよ絶対イヤですよ!! 理不尽ですよ不条理ですよ御無体ですよっ! 最悪死んじまうじゃないですか!?」

「それは罰ゲームを渋る芸人のマネか? 文字通りだが往生際が悪いな」 クルクル

「な、なんとか話題を変えてこの場を凌がないと…………あーっ! ぼ、ボス!! この魚はジャパニーズ・ドンコですよね?」

「テンパって心の声を口に出す。前世紀のボケだがまあ、古典に目を向けた姿勢に免じて答えてやる。それがどうした?」


「どぉー、どっ、ドンコは漢字で『鈍子』と書くとおり動きの少ないハゼ類の淡水魚ですが、観賞用には不向きではないですか?」

「バカ野郎の分際で詳しいな。だが、不向きとは聞き捨てならん。確たる目的も無く生物の可能性を狭めてどうする?」

「だって、当然ご存知でしょう? コイツは一日中全く動かないことだってあるんですよ? 見た目も土色で地味極まりないですし」

「そうか? 派手さやインパクト頼りのコンテンツが軒並み爆死してる昨今、逆位置の地味や渋さを無視する訳にはいくまい?
『瑞々しさが抜けた魅力』を萌えに染まった若者に浸透させる好機が来ているのだよ。まあ、それもキャラ頼みには違いないが」


「はあ……、いきなり次元の違う話題になってますけど、要約するとボスはおっさん専?」

「ふむふむ、おかしいな。あくまで概論を説いただけで個人的な性癖の話をしたつもりはなかったのだが」 キリキリキリ カチッ

「だああああああっ、それ! とりあえず片付けてくださいボスぅ!!」

「ダメだ……と言いたい所だが、コイツは調整が難しい。面白いドンコの話など聞いていては到底作業に集中できんかもな」


「…………つまり命がけでおさかな話をしろ、と? ……、セヘラザードな気分ですよ」

「前置きは要らん」 クッ プシュー!

「はいはいはいっ! 早速それじゃドンコの楽しいマークさんがわかり易く解説して楽になります!!」

「……貴様、この程度の有事に平常心を保てぬそのザマでよく結社の中枢にいられるな。逆に感心するぞ」 コリコリコリ






533 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:36:47.15 DSDNV2np0 375/386



「な、何はともあれ基本を抑えておきましょう。ドンコはハゼ亜目ドンコ科の純淡水魚。純淡水魚って言葉は判りますよね?」

「当然だ。一生の内ただの一度も降海せず淡水で過ごし続ける魚、という意味だな」

「ええ。実は淡水ハゼ多しと言えどその大半は稚魚の時代にプランクトン生活を送っており、海まで一旦流されてしまうのですよ」

「シロウオやチチブやカワアナゴなどは遡上する魚なのだな。一方、ドンコは川で生まれ川で育つ、と」


「だからドンコはハゼなのに飼育の点で汽水や海水が一切必要ないんですよ。上手くすれば繁殖だって可能です」

「つまり最も手軽に長期飼育が可能なハゼの一種だと。ドンコめ、つぶれあんまん顔のクセにやるじゃないか」 フム

「クチビルゲルゲですし……、よく言えば味のある顔ですかね。また、多くのハゼ類と異なり腹ビレが吸盤状ではありません」

「むっ……、そのようだな。ヨシノボリやヌマチチブを水槽で飼うとガラス面にへばり付く姿が見れるが、アレが出来ないのか」


「ええ。吸盤は急流に体を持っていかれないよう石や底に固定するのに役立つモノですが、ドンコには必要ないのですよ」

「ほほう、なぜそう言える?」

「普段から流れを嫌っているからです。なるべく穏やかな河川の底、大抵は岩の下などに隠れて過ごしてるんです」

「なるほど。それなら大雨で多少水嵩が増しても仔細なかろうな。ならばこの水槽にも隠れ家を用意してやったほうが良いのか」


「どうですかね? コイツは水草並に動かない魚であると同時に、眼前のものには大きさを問わず襲い掛かる暴れん坊です」

「昼行灯と罵られるグータラなとっつぁんが闇夜に蠢く巨悪を裁く。ジャパニーズ好みのギャップ持ちキャラだが、だから何だ?」

「つまりドンコは非常に強い縄張り意識を持ってるんですよ。単独飼育でないと深刻なトラブルを巻き起こしちまうような」

「ふむ。まあ、ナマズやモクズガニなど、そういうのは特に珍しくも無いがな」


「ところがですよ? 単独飼育下のドンコは当然、周りに敵が居ません。すると恒常的に隠れなくなるんです」

「水槽内だから流される恐れも警戒するべき相手もいないので隠れなくてもいい。それをこの大福崩れは理解するというのか?」

「さあ? ただコイツはヒトに馴れやすく、個体によって甘えたりエサをねだるような仕草をします。知能の高さは相当でしょうね」

「虜囚にも生きる意思があるなら、それが最善の選択。見た目の割りにあざといのだな」


「纏めますと、この通りブサイクな魚ですが飼育は容易であり、賢くて愛嬌もあるので趣味に合うならオススメな魚種かと」

「ん? 最初と意見が変わってるようだが、この短時間で変節したか?」

「まさか。ドンコが好きな人には向いてるって話ですよ。ぶっちゃけ私には、動かない意地汚い地味な魚を飼う意味が判らな…」

「貴様の安い命は解説の行方次第だったことを忘れたか? 仮にもコイツは私の愛玩生物なのだぞ」 ギョルギョルギョルギョル








534 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:37:44.38 DSDNV2np0 376/386


「ちょちょ、ちょっとボスっ!! あーっ、そうです! そもそも、どうしていきなり水槽なんて始める気になったんですか!?」

「ん? ああ、それは学園都市に出向いた折に立ち寄ったとあるアクアリウムショップの店長に薦められたからだが何か?」

「えっと……、店長って、店長ってまさかあの店のオーナーってあなたまさかっ!?」

「全く、ヒトを喰ったヤツだ。真名を都市の看板に掲げ、更に諱で商売しながら世界中の魔術師を煙に撒き続けていたのだから」


「そんな御気楽な話じゃないですよ!! 何を勝手に決定的なソロ活動してるんですボス!?」

「勘違いするな。こちらは店員を質問攻めしただけの善良な客、向こうは呼ばれて出てきた店主に過ぎんよ」

「…………、そんな剣呑な『店長を呼べ!』は地球の為にも人類の為にもよくないです!!」

「予定調和を楽しめよ。……まあ、そんなこんなの末、店側から『迷惑をかけたお詫び』にと水槽を貰ったのだよ」


「はぁ……、しかしそりゃまた随分太っ腹な大魔導師ですね。結構¥するんでしょ、こういうの?」

「庶民目線で考えるな、格が知れるぞ? で、借りを作ったままではいかんので代わりに魚を購入しようと申し出たのだが」

「貸し借りなんてのも随分下世話な発想ですがね。それと、ドンコなんて水槽に比べたら全然安い魚ですけど……?」

「コレは店長のオススメだと言ったろう? ……実態はこの私を誘導して判じ物を解かせるという、悪趣味が過ぎた遊びだがな」


「判じ物? つまり、アチラさんがこの水槽にこのドンコを薦めた。その意図を読み解けって事ですか?」

「私に相応しい魚は何であるか、と問うと同時に水槽のセッティングとドンコの投入が終わっていたのだから、そうなのであろう」

「一歩間違えたら押し売りですね。しかし魚に詳しくないボスを相手にドンコで謎を掛けるってのは少々違和感がありますが」

「ドコまで先を読まれたか想像も付かん。貴様に禁書目録のおさかなレクチャーを受けさせておいたのは単なる偶然だっだが、
結局それは謎を解く道筋が予め用意されていたという事だ。してみると何もかもヤツの掌の上だったのかも知れんな」


「……遊び、と仰いましたけどまるで鎬の削り合いですね。私ら程度じゃ追いつかない段階のお戯れなんでしょうか」

「テキトーに喋ってるのだからテキトーに聞き流せ。物事は誠実に受け止めるべきだが、常に深刻に捉えるべきではないのだ」

「はあ……、ところでボス。結論といいますかその、なぞなぞの答えはお判りなんですよね?」

「なんだ、聞きたいのか?」


「それは……………、」

「貴様は雑誌のオマケのクロスワードや間違い探し、自力で解けたとしても答えを確認せずにはいられないタイプか?」 スッ

「そ、そんな面倒な部下は要らないって展開ならさっき聞きましたから!!」

「命の危機程度でいちいち喚くな、話がちっとも進まんじゃないか。そんなに死にたくないのなら自分の考えを先に言ってみろ」


「へっ……、はいっ?」

「みなまで言わすな愚か者。貴様の足りない考察をこの私が直々に評価してやるんだ、さっさとしろ」

「………………、会話術の巧みさも組織のボスには必要なんですねー、んぎゃっ!!! やりますらりますうむううるう!!」

「おっと、余計な事を言うものだからついうっかり装置が刺さってしまったな。……、起動させて欲しくなかろう?」








535 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:38:48.99 DSDNV2np0 377/386


「だ、だ、だ、第一に水槽は我々の業界的に、内と外を分ける……、区切られた場と考えるべきでしょう」

「まあ妥当ではある。中には水が満たされ完全に外と異世界になってる箱庭だからな」

「その水もただ水道を捻って出てくるものではなく、目的の為に特別に調整された水です。要するにコイツは儀式場ですね」

「ん? おい、結論を逸るな。どれだけ共通点があったところで魔術とは模倣であり剽窃であり一面の見方に過ぎんぞ?」


「その通りです。が、だからこそ完全な間違いが存在し得ず、ある意味『言ったモノ勝ち』なんですよね」

「二次創作を参考にした小説のようなもので、力の総量と引き換えに自由度をあげることも可能……、話がズレてるな」

「……、戻しましょう。さて儀式場、と考えることも出来るこの箱庭には一匹のドンコが入っています」

「うむ。しかし見れば見るほど味のあるヤツだな。吸盤状になっていない腹ビレはあのように使うのか」


「頭部を持ち上げる際に、ジャパンの箸置きの原理で腹ビレを垂直に立てるんですね」

「底と体の摩擦を減らす意味があるのだろう。両の胸ビレをワシャワシャと振って這うように移動する際など便利かもしれん」

「しかし何度も言いますが、コイツが活発に動く姿はなかなか見られませんがね」

「いや、底魚だから水質悪化にはやはり弱かろう? 大型甲殻類などと共泳させてもいい。動く姿などいつでも見れるさ」


「ボス、そりゃ禁じ手でしょ!? ペットに特別な行動を取らせたいがために、生命の危険に晒すだなんて…」

「バカ者、あくまで仮定の話だ。……下僕相手ならともかく、愛玩生物を鬼畜実験の対象にするほど私は壊れてないぞ?」

「ですよね……。と、とにかくです。特別に調整された環境の中で殆ど活動せず外の様子を伺う者、を私たちは今見てるワケで」

「ほうほう。つまりこれは窓の無いビル、乃至はその中枢に位置するとされる文字通りの”水槽”を見立てていると?」


「そうなるとこのへちゃむくれがアレ……。この推理に、ある決定的な問題点が無ければそれで話が通ったんですが」

「ドンコが純淡水魚だという事実だな? 確かに、彼奴の人生を象るにこれほど相応しくない魚は居るまい」

「誰よりも魔術に精通したが故に、魔術の底を痛感し魔術を捨てた男。せめて遡上ハゼならその『変節』を示しえたのですがね」

「ならば我々は外から何を見ていることになる? 箱庭で生まれ育つ存在とは何の隠喩か、思い当たるモノがあるのだろう?」


「それは壁に覆われた異世界で生み出される者たち、学園都市と能力者を表している……と、誰もが思いつくだろう事ですが」

「先の仮定の問題点、純淡水魚の下りを箱入りの能力者に当て嵌めたか。では、それが私に相応しいとはどういうことだ?」

「そうですね……、学園都市は外界と隔絶された環境でありつつ、同時に透明性の高い組織であることを謳っています」

「うむ、あの都市はあくまでも普通の世界の一部。アレほどの異常が……、確かに日常に紛れ込んだ異世界。水槽と同じだ」


「例として最高機密の一種であるはずの能力の情報を、ごくさわりだけとは言え一般に公開しているんですよね」

「確かに秘密主義に過ぎる魔術業界と比べるべくもないある種の明るさがあるのは否定出来ん」

「そしてレベルの高い能力者は、ドンコと同じで見た目や普段の様子からでは全く推し量れない凶暴さ、破壊力を秘め…」

「語弊があるな。能力者は魔術師にとって相容れぬ存在だが、それはヤツらの言う強度とは然程関係ないだろう?」








536 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:39:47.33 DSDNV2np0 378/386



「……、ボス?」

「例えばだが、能力なんて『スプーン曲げるならペンチが、火が欲しけりゃライターが』あれば必要ないとのセリフ、どう思う?」

「誰の言葉か知りませんが、本気で言ってるなら身包み剥いで山奥にでも捨ててやりたい程度のバカですね」

「それがどれほど我々魔術師にとって、いや人類全体にとって恐るべき意味を持つか……、その身で学ばせてやるためにもな」


「人間を物理的な方法で即死させるために必要な最小限の力、それはスプーンを曲げられる力の何百分の一なんでしょうね?」

「”その程度”のことであれば学園都市の学生、殆どが可能らしい。全くドコまでもフザケタ話だ」

「自覚の無いまま振るわれる異能。……実のところ、水槽の外から見ているだけでも寒気がしますよ」

「魔術は既存のルールの裏技。……そう。結局、既存のルールの一部なのだからな」


「素人が見れば、通常の物理法則を越えて常識を覆す様は魔術も能力も変わらないんでしょうが、本質は全く違う」

「魔術が想定する世界には能力など存在し得ない。当たり前だ、ヤツらは手前勝手に法則を拵えているのだから」

「表裏問わずあくまで世界の構成要素が効果対象たる魔術には、故にスプーンを曲げる能力を直接防ぐ手段が存在しない」

「より深刻な表現をするなら学園都市の学生180万人はほぼ全員、最強の魔術師を倒せてしまう力を持っている、だな」


「血反吐を吐き涙を啜り、全てを捨てた上で長年の修行に耐え、毫にも満たない確率を生き抜いてやっと得た至上の力が……」

「ぽんぽんと流れ作業で育成される学生たちの異能に劣るのだ。……、納得出来る者など居ないさ」

「完全絶対防御を魔術で構築しようとも、この世の法則ではない能力は守備範囲外。将棋で王将を放り投げられるようなもの」

「だからこそ魔術師が能力者と戦う場合、努めて魔術のルールで戦うのだがな。陸で勝てないなら水に引き込めば良いのだよ」


「……その考えで行くとこのドンコ、魔術師を表す記号って線が出てきますね」

「我々は、この水槽を見るのと同様に彼奴を、学園都市を、能力者を高みから観察しているつもりだった」

「ですが実態は、壁を通して監視しあう関係……、にも満たない。なにせ我々は外ではなく内だったのですから」

「水の中なら無敵も目指せるが陸に揚げられれば常に無力。そんな我々など、既に観賞の役にしか立たぬ……、か」 フン


「そのようにミスリードを促された可能性もありますがね……。少々皮肉が効き過ぎの感がありますし」

「かも知れん。朝から晩までパタパタするだけのブサイク魚一匹で魔術業界全体にケンカを売るなど狂気の沙汰だしな」

「彼は元から売ってますけどね。……でもやはり、我々が考え過ぎただけだと思いますよ? 何よりそう思ったほうが平和です」

「……そうだな。ともあれこのドンコに罪は無い。せいぜい可愛がって大事に育ててやろうじゃないか」





「ところでボス? この、腕に刺さったメカ的なモノ……、いつになったら抜いていただけるのでしょうか?」 エヘッ

「ん? ああ、勝手に抜け。…………、手順を間違えると強制起動するから気を付けろよ、と言っておいたほうが良かったか?」









537 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:41:37.36 DSDNV2np0 379/386



                                     ☆

御坂「インターホン連打おじさん……、名門校に通う本物のお嬢様……って、コレ都市伝説でもなんでもなくない??」

白井「工事中のビル内に蠢く怪しい影やら、マンホールおじさんとやらも……、ただの作業中の勤労者ではないのですの?」

初春「佐天さんがネタに困った時の為にストックしといたという秘蔵の超C級都市伝説ノート……、さすがにヒドいですね」

佐天「いやいや。一見なんの変哲もない古い屋敷にこそ、悪魔は潜むモノなんです! 御坂さんにも心当たりあるでしょ?」


御坂「くだらない噂話だと思ったら大事件の発端だった、とか? まあ……、確かにそういうの飽きるほど経験してるわね」

初春「まあ甘く評価すれば、何万件ものゴミ情報の中にはアタリが絶対に無いとは言えず、馬券拾い程度の意味はあるのかも」

白井「馬券拾いってなんですの? ……、褒められた行為でないのはニュアンスで伝わりますが」

佐天「初春、その喩えには悪意しか感じないよ……。この中であたしだけが都市伝説に詳しいっての、結構自慢だけどなあ」


白井「ぬ~ん? 都市伝説が無益かどうかはさておき、自慢などされてはコッチはたまったものじゃありませんわよ?」

佐天「へっ? あー……、騒動の発端になっちゃうこともありましたね。そーいうのはもちろん反省してまーすってば」

御坂「私はあくまでソースのひとつとして、当たればデカイけど手酷いハズレが殆ど、って情報はアリだと……思うけどさ」

初春「ハイリスクノータリーンですからね。白井さんの気持ちも分らなくないです……」


佐天「あ、あれ……? 思ったより擁護が少ない」 オカシイナー ?

御坂「それは仕方がないわよ佐天さん。……、でもみんなは別に都市伝説自体を非難してるワケじゃないのよね?」

初春「面白がって聞く分には暇つぶしになりますから、根絶やしに殲滅せよっ、撲滅せよっ! とか思ってはいませんよ」 ニコッ

白井「わたくしたちが問題視しているのは、噂を額面通りに受け取るおバカや真相を暴こうと危険な行動に出る輩ですの」


佐天「あーっ、そっかそっか。つまりふたりはジャッジメントだから素直に夢を追えないんだなー」

白井「…………、いちいち癇に障りますわね。自分の非を棚に上げて他人を哀れむ心得違い、教育的指導が必要ですの!!」

初春「えーっと……、佐天さんは変に煽り過ぎですし白井さんは唐突に怒り過ぎですよー。ケンカはダメです」 メッ

御坂「初春さんも人のこと言えないような……でも、そうね。煽りや怒りなんかで盛り上がるより、あおりやいかり……」


御坂「アオリイカとヤリイカの話で盛り上がったほうがいいわよね!」 ナンチャッテ





佐天「うっわー……」

初春「荒れ模様をムリな話題変更で誤魔化すのは猥雑で卑怯で最低ですけど……、コレはそんなレベルじゃないです!」

白井「ええ、これぞお姉様の真骨頂。つまらぬ諍いを険悪な雰囲気も残さず、双方の顔を立てつつ治める話術……流石ですの」






538 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:42:50.16 DSDNV2np0 380/386



                                     ☆

打ち止め「ふーん。デメギニスってすごいんだねってミサカはミサカは大袈裟に驚いてみたり」

一方通行「オマエの耳は飾りモンかよ? ありゃニギスの仲間。シロギス、つまりキスに似た魚の仲間だっつってンだろォが」

 「うんうん。インデックスさんから言わせて貰うと、漢字で『出目似鱚』って書けばもう間違えることはないかも」


    「あのー…………、家主を一切無視して繰り広げられるおさかな話ってどうなの?って当麻は当麻は意見するけど」


 「……えーっと、だからね? 出目、つまりびょーんと伸びた目を保護するための透明な膜が頭部を覆ってるんだよ」

一方通行「脳味噌が透けてると感じても仕方ねェ異形だよな。上を見続けるのに都合良く進化した結果なンだろォが」

打ち止め「それなら目は前を向いたまま姿勢ごと上を向くほうが自然じゃないの? ってミサカはミサカは正論を述べてみたり」


     「俺の話を聞くんだよ! 家主ほったらかしなんてありえないかも! えーと…………、俺だよ俺、俺だもん!」


一方通行「チッ……、まァともかく深海では光だけ見えりゃ事足りるし、光源は上にしか無ェだろ?」

 「そして深海生物はなるべくエネルギー消費を抑えられるようなスタイルであることが多いんだよ」

打ち止め「ふーん。そういうこと全部ひっくるめた答えのひとつが、あんな変な顔なのねってミサカはミサカは頷いてみる」


    「……つかよォ? オマエさん方、ちっとばっか調子に乗りスギでせゥ? 上条さンの話ば聞きンさィやァ!!!」











539 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:44:30.76 DSDNV2np0 381/386


打ち止め「……あの、さすがに今のは色んな方面からお叱りを受けるレベルだよ、とミサカはミサカはスルー失敗してみたり」

一方通行「…………、あらゆる意味で気にする必要ねェンだが、止まっちまったら仕方ねェな」

 「とうま? 微妙な物真似のゴリ押しでお客さまに気を使わせるのは良くないかも」


     「ちょっ……、なんなのこの疎外感!? ……と、とにかく今すぐナウこの状況に至った経緯を説明しろよ!」


 「だーかーら、さっきも言ったよとうま? 私がオマネキしたんだってば」

打ち止め「今日は同居人のテンションが異常でいつもの部屋でお話するのは危険だったの、とミサカはミサカは要約してみる」

 「だけど二人はおさかな話が出来るような、落ち着けて且つ疚しくないほかの場所に心当たりが無かったんだってさ」

打ち止め「うんうん。それでね、ココに電話したら『大丈夫だよ! 今すぐ来ればいいかも』って…」


     「んな気軽にウェルカムな間柄じゃねーぞ!? 大体、話すると危険だなんてちょっと大袈裟過ぎだろ!」


打ち止め「それはあの二人を知らないから言えるセリフ、ってミサカはミサカはテンプレ的な返答をしてみたり」

一方通行「……リュウグウノツカイ、覚えてンだろ? ヤツらはただ話にオチを付ける為だけにアレを獲って来たンだぜ?」

打ち止め「今回は変なフラグも立ってたし、テーマが『あり得ない深海生物』だったし、ヨミカワにも迷惑かけたくなかったから」

 「魚獲ったどー!オチだね。……それってひょっとして、美味しいお魚をテーマにしたらみんながすっごくハッピーな結末かも?」

打ち止め「それはムリ。なぜならオチ全般が基本的にこの人へのイヤガラセだから、とミサカはミサカは残念な報告をする」


一方通行「ちなみに深海魚一般が食味の点で劣るなンて事はねェから気を付けろ。……さて、余計な時間喰ったが続けるぜ?」

打ち止め「あ、じゃあせっかくだから! あり得なくて美味しい深海生物を教えて欲しいってミサカはミサカは頼んでみたり」

一方通行「……。アンコウやギンダラ、キンメダイだって深海魚。食味だけに注目すりゃ幾らでも挙げられるが…」

 「分りやすいインパクトが欲しいんだね。美味しいのにグロ過ぎとか、美味しいけど食べちゃダメとか……」


一方通行「フム……。中深層に棲む魚の典型的な特徴、覚えてるだろ?」

打ち止め「えーっと……、骨や筋肉を減らすかわりに水分や油分を増やして、目と口は大きく、体色は透明や銀色だっけ?」

一方通行「あァ。気体……、つまり浮き袋に頼らず浮力を得、また僅かな光を活用するべく進化した結果なンだが…」

 「浮き袋云々~は、高水圧下では気体による浮力が期待出来ないからなのと、水圧差で可哀相な姿になるのを防ぐ為だね」


一方通行「そン中ではハダカイワシなどが、ワリとオカシな姿で且つ普通に喰える魚だな」

 「ホウライエソも頑張れば……、食べるトコがないかな? 噛み付き特化型のキュートなおさかななんだけど」

一方通行「牙が伸びすぎて口が閉じられねェヤツをキュートって呼ぶセンスは……、正直理解不能だが?」

 「そ、それを言うならハダカイワシも表皮が弱く水揚げでズルっと剥けちゃうからあんな姿なだけで、海中では別に普通かも!」


     「ほうほう、ハダカに引ん剥かれる噛み付き魔か……。一度味見したいようなそうでもないような」 ボソッ








540 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:46:54.88 DSDNV2np0 382/386


一方通行「…………、うるせェの二匹がジャレてる隙に次に行くか」                             <フコーダー

打ち止め「頭部からの出血は多めに見えるっていうか実際大量だね……、ってミサカはミサカはそんなことより次はなあに?」

一方通行「中深層には辛うじて光が届きそれなりの生物層が展開されてンだが、真の深淵はまだ奥だ」

打ち止め「ふむふむふむ。……垂直方向へ、つまり浅い海との間の移動だって生息域が深すぎたら難しいもんね」


一方通行「まァな。確固たる定義があるワケじゃねェが、今までのはおおよそ水深1000m程度迄の話だと思っとけ」

打ち止め「もっと深いトコの生き物は更におかしな特徴が……、コレ難しい話になる? とミサカはミサカは心配してみる」

一方通行「難解で有用な解説が聞きたけりゃヨソ当たれ。アホガキに説法するほどオレはヒマじゃねェ」

打ち止め「…………、了解っ! ってミサカはミサカは暗闇の奥を色々想像しつつ聴講準備を完了してみたり」



一方通行「……さて、繰り返し触れてるよォに太陽光が届く限界深度は水深1000m程度迄。それより下は暗黒の世界だ。

       生態系は生産と消費、そして分解で成り立つ。無光は生産者、主に植物にとって致命的な環境っつーのは解るな?
       サンゴの話でもやったが一般に光合成は水深数十メートルが限界とされる。
       つっても例えば水深100mとか辺りに棲む魚が生産の恩恵に与れねェワケじゃねェ。海には波や流れがあンだろ。
       表層で作られた栄養や酸素は水が掻き回されンのと同時に海全体に満遍なく広がっていこうとするからな。

       だが、深海の始まり水深200m付近にはソレを妨げる存在がある。底に向け一気に水温が降下する温度跳層だ。
       この部分が障壁となり、浅い海で頻繁に水が掻き回されていても深海には影響が及ばねェンだ。

       つまり当然だが深海は酸素や栄養が慢性的に不足し、それらを直接得るには浅い海への移動が必要になる。
       中深層の魚が浅い海へ移動する日周鉛直運動にはそォした背景がある。

       そォなるとオマエの言う、浅層への移動が困難な深度に生物が居ンのは不思議じゃねェか?
       酸素と栄養が足りンのか、足りるとしたらソレは何故か? ……、答えは暗黒の世界ってトコにある。

       マリンスノーって言葉、知ってるか? 海を漂う視認可能な有機物の残骸物質……、微生物その他のダンゴだな。
       コレは一応個体、故に温度跳層を越えて深海奥底へ降り積もってく。
       深海に於けるエサの不足を補う面では表層生産の間接的な恩恵と言えるが、実は良いコトばかりでも無い。
       生態系の構成要素のひとつ、分解者たる細菌が有機物を分解する際に多くの酸素を消費するからだ。
       充分な供給が無い以上、タダでさえ不足しがちな深海の酸素濃度はマリンスノーによって更に低下する。
       実際に中深層には酸素極小層と呼ばれる範囲があり、ソコには生物が殆どいねェ。

       ところが更に深度を増し太陽光が一切届かなくなるとその分解者すらも耐え切れず姿を消してく。
       すると細菌の減少に合わせ海水全体での拡散効果によって酸素濃度が少しずつ回復する。
       ソレにつれて生物数も多少増加すンだとよ。細菌にとってすら厳しい環境だってのにな……。

       つーワケで、水深1000m以下は満足な生産も分解も無く、ただ消費者が居る世界ってコトなンだが、理解したか?」


打ち止め「久々の長々とした解説でちょっと難しいけど、余裕だよ! とミサカはミサカは虚勢を張ってみたり」

一方通行「解ったのか解ってねェのか解ンねェコトは解った……。ンじゃそンな極端な世界の住人たちの話に行くぞ」

打ち止め「ほぼ食べる子しか居ない極寒暗黒世界ね、とミサカはミサカは大事な何かを忘れつつ今後の展開に期待したり!」



     「ほ、ほらインデックスさん? 俺なんか齧ってるとお前を置いてドンドン話が先に進んじまうぞ? なっ??」

 「それがとうまの暴言を許す理由にはならないんだよ!! 喰いあらためるんだよ!!!」









541 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:48:27.50 DSDNV2np0 383/386


一方通行「さて光が届かない、そして常にエサが満足にあるとは言えない深度に棲む生物とはどンなモノか? 予想してみろ」

打ち止め「ふぇっ!? えーっと、あの、ほら……」

一方通行「……、要らねェトコ削って、要るトコデカくするって考えろ」

打ち止め「………………、ふむふむ。というと、光が届かないから受光器官は必要ない。だから退化しちゃう?」


一方通行「基本だよな。深海に限らず土中や洞窟の生物は目が非常に小せェか、又は痕跡しか残ってねェヤツが多い」

打ち止め「深海魚じゃないけど、泥の中に棲むワラスボとかも目が無いもんねってミサカはミサカは例示してみる」

一方通行「だが注意しろ? ほぼ全ての深海魚は発光する。ソレを確認する為にも受光器官は完全に無くなるワケじゃねェ」

打ち止め「ふーん。エサを獲ったり仲間を見つけたりするために光るのかな? 真っ暗だから弱い光でも目立つだろうし…」


一方通行「逆に光ることで姿を消すコトも出来るし、仲間にしか見えねェ色で発光すりゃ敵に気付かれずに合図を送れるよな」

打ち止め「なるほどね。じゃあ、あり得ない光り方の深海魚もいる? ってミサカはミサカは本題を忘れてなかったり」

一方通行「……、発光部位も用途も様々なンで、あり得ねェってほど尖ったヤツは……、オオクチホシエソはそォかもな」

打ち止め「ほー? どんなおさかななのかなってミサカはミサカはそろそろカワイイ子を期待してみたり」


一方通行「所謂クラゲや甲殻類なら深海にもビジュアルで勝負出来ンのが居るが、オオクチホシエソは魚だぜ……?」

打ち止め「じゃあやっぱり名前の通りお口が大きくて体はブヨブヨでなんじゃこりゃ?な形なのね……、うん。それで?」

一方通行「この魚は中深層からそれ以下に分布し、発光部位は眼下。光の色は赤外線に片足突っ込ンだ赤だ」

打ち止め「ふんふん」


一方通行「……ところで、ホタルイカやミオドコーパなど、生物発光は一般に青系が多い気がしねェか?」

打ち止め「言われてみればそうかもね……って、まさかもしかしてその魚があり得ないのは赤く光るコトだけなの?」

一方通行「そォだが、大したコトねェと思うか? プールの中思い浮かべてみろ。水は青以外の光を通しにくいンだぜ?」

打ち止め「うん。確かに視界全体が青っぽくなるよねと、ミサカはミサカは話の展開に不安を覚えながら返答してみたり」


一方通行「多くの発光生物が青っぽく光ンのも、水中で出来るだけ遠くへ光を届けンのに都合がイイからだ」

打ち止め「ふむふむ。そんな中オオクチホシエソが赤く光るのは何か利点があるの? とミサカはミサカは一応聞いてみる」


一方通行「大アリだ、それは何か? 生物発光ぐらいしか光るモンが無い深海では受光器官はソレを捉えられれば充分。
       つまり要らねェ部分は削るの原則に従い、多くの深海魚は生物発光の代表色、青しか感知出来ねェンだ。
       そンな中オオクチホシエソは赤く光り(同時に緑色光も放つ)、また赤色光を感知する器官を持つ。
       殆ど赤外線レベルのヤツらの光は他の生物には全く見えず、故に一方的に標的をロックオン出来ンだよ。
       また、繁殖期など同種間のコンタクトが必要な場合にも、捕食者に見つかることなく的確に相手を探せる。
       ……、チートだと思わねェか? 懐中電灯でサバゲーしてる中、一人だけ暗視ゴーグル持ってるよォなモンだぜ?」







542 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:52:36.59 DSDNV2np0 384/386


打ち止め「そこまで言われれば凄過ぎかな……、とミサカはミサカはしぶしぶ驚嘆してみたり」

一方通行「……、まァイイ。ちなみにコイツは体内に葉緑素を持ってる。赤色と関係あるかどォかは知らねェが」

打ち止め「変な子っ! 暗闇で光合成なんて出来るはずないから、何か別の意味があるのかな?」

一方通行「さァな……。補足だが、練り物の原料になるヒメ目のエソとワニトカゲギス目のオオクチホシエソは全くの別種だ」

打ち止め「ミサカは基準になるエソ?を知らないからふーん、としか……とミサカはミサカは気の無い返事をする」

一方通行「名前を知らねェだけで普通に喰ってンだがな。メロやメルルーサだって今じゃ一般に知られてるが…」



 「ちょっと昔は名前を隠したり別名で呼んだりしてたんだよね。深海魚って言葉にゲテモノ感があるからかもだけど」

一方通行「チッ………………。なンだよ、もォ咀嚼完了か?」

 「なんのこと?? そんなことより、とっても面白いお話なんだけどちょっと長すぎるかも。そろそろ終わって欲しいんだよ」

一方通行「……はァ? フザけンな!! まだ予定の二割も消化してねェぞ!?」


 「ペースが遅いんだよ! 大体、超深海のオモシロ話なら6000m以深の魚とか古細菌とかを最初に触れなきゃダメダメかも!」

一方通行「…………、オイオイ何だよオマエ? このオレにダメ出したァ、一体ドコのナニサマのツモリですかァ!!」

 「上条さん家のインデックス様なんだよ!!!」

打ち止め「はいそこまで! ケンカは一番ダメでしょ? ……ところで当の家主さまはドコに? とミサカはミサカは尋ねてみる」



 「とうまなら宅配便のお兄さんの相手してるんだよ。随分大きな荷物が届いてるみたい」 クール?

一方通行「……荷物だと? 誰からだ?」

 <ゴクローサマー

    「……よっと。えー、送り主はベルフラワースト・ギフトサービス。宛先はウチで宛名がイポツコ様ってコレ、一方通行だろ」


一方通行「チッ……、万が一居場所を突き止められても番外個体はココへ来たがらねェだろォと踏ンでたンだが」

打ち止め「まさか宅配とはね。安心してたのに……、とミサカはミサカは、それはともかく箱の中身が気になる!」

    「え、何? 開けていいのかよ? ……、ほいほい。………………おっ! コレは真空パックの…」

打ち止め「……見事な魚のお造りだね、とミサカはミサカはコレ何のお造りなんだろ? とみんなに意見を求めてみたり」









543 : ズレた[saga sage] - 2012/04/11 23:56:08.12 DSDNV2np0 385/386


一方通行「この極端に白い身は……、恐らくアブラボウズ……、イヤ待て! かすかに残った皮に棘状のウロコ……」

 「うん、これは多分バラムツかも。流通が禁止されてるけど、とっても美味しいって噂の深海魚なんだよ」

    「へえ~……。んじゃ、さっきから話に出てた二人組がわざわざ自力で獲って捌いたってのかよ? スゴイな……」

打ち止め「あの二人はそういう人たちだから……。それで、コレどうするの? とミサカはミサカは疑問を投げかけてみる」


一方通行「……場所提供者へのプレゼントだ、処理は任せる。バラムツがどォ危険かはそこのシスターなら知ってンだろ?」

 「うん。食べ過ぎ注意……、っていうか食べちゃいけない魚かも。でも美味しいらしいよ? すごく美味しいらしいよ!?」

    「なんだよそれ……、毒でもあんのか? んなもん貰っても困るんですけど??」

一方通行「心配すンな。毒的な成分は無ェし余程運が悪くねェ限り、度を越した量を喰わねェ限りは死にゃしねェハズだ」


 「そ、そうだよね! この切り身の厚さだと……、三切れなら大丈夫かも! それ以上食べさえしなければ…………」

一方通行「そンなモンだろォな……ま、好きにしろ」 ガタッ

打ち止め「えっ、あ、待ってよ!……。では今日は突然お邪魔しました、ってミサカはミサカはお先に失礼いたします!」 ペコッ

    「ん、帰んのか? 良く解らんが、ともかくお刺身ありがとなー……」 アデュー








「嵐のように去っていったなアイツら……。で、インデックスさん? コレ多分お造りだけで5kgくらいありそうなんですけど」

「二人で食べるにはちょっと多いかも。……あっ、いつかのリュウグウノツカイのときみたいに短髪たち呼べばいいんだよ!」

「……ふむ、そうだな。御坂たちには日頃世話になってるし、お礼代わりにちょうど良いかもな。電話してみるよ」  <Pipipi

「あと、あいさも食べるでしょ?」

姫神「美味しいなら。いただく」







打ち止め「ちょっと待ってよーってミサカはミサカはせっかくだから一口くらい食べてから帰っても良かったのにって思ってたり」

一方通行「食べたかったら勝手にすりゃイイ、今からでも戻れよ。……ただ、今回の悪質なオチに巻き込まれるだけだぜ?」

打ち止め「ほぇ? でも毒があるわけでもなく、ちょっとなら食べてもいいんでしょ? とミサカはミサカは復唱してみたり」

一方通行「あァ、喰ってもまず死にはしねェよ。……、社会的生命は絶たれるかもしれねェがな」



 ~おしまい~







544 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2012/04/12 00:20:36.30 ZSJL7ejt0 386/386


以上、第三十九回「ズレた」でした。勢いに任せすぎかしらん・・・

今回は補足したい部分が多すぎるのですが、我慢してちょっとだけ

第一パート、ドンコと呼ばれる魚はたくさんいます。ハゼ類の比較的大きいのをまとめてドンコって呼んじゃったり
     エゾイソアイナメって海の魚をドンコと呼んでたり。今回のドンコは標準和名「ドンコ」なのであしからず。

第二パート、ヤリイカとアオリイカはとっても近い仲間ですね。

第三パート、インデックスさんがぽろっと言ってた古細菌。コレこそ地球上で一番オカシなヤツらなのですが
     凄すぎて手に余るので今回はパス。大雑把に言えば、生き物が生きていけない場所を好む生き物・・・?
     あと、バラムツとアブラソコムツは食べないほうがいいと思う。何が起こるかは調べればすぐわかります。

というわけで、最初の注意書きに面白くない回は飛ばしてくださいって書いとけば良かったなーとか思いつつ、今日はこの辺で
ではではまたー

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