143 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/08/06 20:26:01.64 doazxaet0 100/386久しぶりのおさかな話。十四回目です。
久しぶりだけど何の変化も無く、だらだらといつものメンバーに雑談してもらいました。
それではどうぞ、っと、テーマは「適当」です
☆
「なあインデックス、イカは高蛋白低脂肪でプロのボディビルダーはその筋肉の維持、育成を構成バランスの面で…」
「とうま、その質問に悪意が無いと、天にまします我らの父に誓って言える?」 ギロッ
「や、やだなあ、大げさな。ちょっとしたワル乗りだって。……でもさ、イカってのも不思議な生き物だよなあ」
「体のほとんどが筋肉で、神経系が研究材として理想的に発達した海棲軟体動物、ってくらいしか私も知らないんだよ」
「へえ、インデックスが『知らない』なんて言うのは珍しいな。じゃあ今日は俺が代わりに解説してみようか?」
「む、とうまはおさかなの解説をナメてるね。とうまは素人なんだからうまく出来るわけがないんだよ」
「心配すんなよ、ずっとお前の解説を聞いて来たんだ。進め方は充分心得てるつもりだぜ? 心配は犬にでも食わせな!」
「言葉の意味はよく分らないけど、とにかくスゴイ自信なんだよ……。好きにすればいいかも」 ハァ
「よーし、まずはええと……パラパラ……パラパラ……、ふむふむ、イカは軟体動物門頭足綱十腕形上目の生き物だ」
「……」
「軟体動物門ってのは、っと、んー……後生動物旧口動物? あ、なんだ。つまり貝とかタコとかイカだってさ」
「……」
「で、頭足綱ってのは、イカやタコ、オウムガイや絶滅したアンモナイトもそうらしいぞ、すっげーな」
「……」
「十腕形上目ってのは、ん~と……、あの、インデックスさん? この辺で質問してくれないと話が続かないんだけどさ」
「やっぱり私が解説するんだよ。とうま、その参考書貸して」
「ぐぬぬ、ちくしょう。何がいけなかったってんだよ……」
「むしろ私の解説がとうまにはそういう風に見えてたってことがショックかも」パラパラパラパラパラパラパラパラ パタン
「って言ってる間に読み終わっちゃったのか。んじゃ、あらためて聞くけどそもそも軟体動物って何なんだよ?」
「イカも含まれる軟体動物っていうのは、骨格を持たず、体表が粘膜で覆われた乾燥に弱い生き物の総称だね」
「ふうん。でもさ、イカって中骨っつーの? 板みたいなの入ってるだろ。あれは骨格じゃねえのかよ?」
「アレは貝で言うところの貝殻なんだよ。とうまの言ったオウムガイの持つ殻が、進化の過程で体内に隠れた物だよ」
「ふむ、言われて見ればナメクジの貝殻も体内にあるんだっけ。貝が外殻を失う進化をナメクジ化って言うんだもんな」
「うんうん。イカの仲間で、渦巻き状の殻を体内に持つトグロコウイカは、それが元は外殻だという生きた証拠だね」
「へえ。あ、それでさ、イカって言えばやっぱりダイオウイカ。巨大で凶暴なイカらしいじゃねえか」
「確かに大きな生き物ではあるんだけど、深海に棲んでいるイカだから生きている姿はほとんど確認されてないんだよ?」
「そうなのか? じゃあ、凶暴とかそういうのはイメージだけなのかな?」
「まあ、ダイオウイカを見る事があれば、体や目の大きさ、トゲの付いた吸盤、腕の長さは恐怖の対象になって当然かも」
「目だけで直径30cmとかあるんだもんな。トゲ付きの吸盤なんてマトモじゃねえし。イカ飯なら何人前だよって、なあ」
「大きなイカは浮力を得るために塩化アンモニウムって物質を蓄えてるから、しょっぱくて臭いみたいだけどね」
「水より比重が軽いアンモニアを使うのはサメと同じだな。サメも時間が経つとスゴク臭いって言うし、ふむ」
「まあ、重さだけで言うならスルメイカの2000倍以上だから、か、か、か、軽く2000人前ってことになるのかな??」ゴクリ
「塩漬けして水洗いを繰り返せば……、ま、この話は止めとこう。人気者スルメイカの名前が出てきたことだし」
「日本人が一番、ってことは人類が一番消費している魚介類かも知れない、それはスルメイカなんだよね」
「安いのにビタミンEやDHAが豊富でタウリンの塊、ゲソもワタもえんぺらも旨い、欠点の殆ど無い完璧な食材だな」
「一年で急速に卵から30cm大になることで、古代から現代まで人間の食生活を支え続けてくれた、究極の海の幸なんだよ」
「スルメ様々ってとこか。……というわけで今日はイカ、漢字で書くと烏賊……、カッコイイな、の話だったわけだけど」
「烏賊ってのは、イカを食べようとしたカラス(烏)をイカが返り討ちにして海に引き擦り込む様子から付いたんだって」
「へえ~……って、チクショウ! 結局俺は、おさかな解説でインデックスには勝てねえって自分で認めちまってるよ」
「とうま…………。でもね、とうまの質問が無かったら私もスムーズに解説出来ないんだよ。適材適所ってことかも」
「だろ~? 俺も常々、上条さんは質問のプロなんじゃないかと思ってたんだよ。褒められると参っちゃうな」アハハ
「調子がいいっていうか変わり身が早いっていうか……。このイカみたいな柔軟さがとうまの良さなのかも?」
☆
佐天「母親が、海の無い県に旅行に行ったんですけど、旅館でマグロのお刺身が出たのが残念だったみたいで」
白井「郷土料理を期待してそれではガッカリですわね。まあ、土地のものが目的の旅行なら事前に確認が必要ですの」
初春「天然の川魚などは旬もありますし。アユでさえ、いつでも美味しく食べられるとは言えないですもん」
御坂「でもさ、フナとかタナゴとか、およそ食べ物と思ってない魚が実は美味、みたいな発見も旅の魅力じゃない?」
佐天「ふむ……、けど小さい川魚って、大抵は甘露煮というか佃煮というか、元の味なんて消しちゃう味付けですよね?」
白井「それらの調理法は、大量の小魚を特に処理せず食べるためのものですの。少なければ油で揚げてもいいですわね」
御坂「包丁を入れられるサイズの魚の場合は、料理法に関わらずウロコやワタを処理するほうがいろんな意味でいいわね」
初春「苦味、臭み、寄生虫対策ですね。あと、コイなどの底棲魚のニオイは、酸で分解出来るって言いますね」
白井「中華の魚料理はやたら、揚げて甘酢あんかけ、でしょう? つまりそういうことなんですの」
御坂「日本と違って、川は泥臭くて当たり前の時代を数千年続けてきた食文化だからね……。学ぶところはあるわね」
佐天「ところで、ムリかも知れませんけど、川魚をお刺身で食べたい時は何か方法があるんですかね??」
初春「佐天さん? クドいくらい言ってますけど、寄生虫や病原菌の心配があるから生食は絶対ダメなんですよ!」
御坂「絶対ムリ、とまでは言えないんだけどね……。もちろん、綺麗な環境で養殖した魚を使う場合じゃないわよ」
白井「つまり、あれですわね。川で捕まえた魚を清水に入れて泥を吐かせた後に、数日間冷凍するってことですの」
初春「冷凍ですか……、それなら確かに寄生虫も退治出来るかもしれないですね」 フム
佐天「獲れたてピッチピチ、じゃないけど。食べようと思えば手段はあるんですねえ。でも美味しいかどうかは別、かな」
白井「絶対安全、とまで言っていいかどうか分らない方法ですので、くれぐれも自己責任でお願いしますの」
御坂「で、調理して食べてみて『ダメだ』と思ったらもったいないとか考えないで、それ以上食べないことね」
初春「あと、知らない魚、分らない魚は火を通そうが冷凍しようが、絶対に食べないで下さいね」
佐天「ナ……ナニコレ!?」
☆
打ち止め「ねえねえ、世界で一番小さな魚ってなあに? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
一方通行「……、ソレは結構、難問だぞ? 充分に成長した成体同士を比較するにせよ個体差がどォしてもネックになる」
打ち止め「ほほお~……、どういうこと? ってミサカはミサカは解説を促してみる」
一方通行「簡単に言ェば、黄泉川の知り合いの実験生物が居ンだろ? アレを人間のサイズに含めてイイのか?」
打ち止め「な……なるほど、ってミサカはミサカは目から鱗をポロポロと落としてみたり」
一方通行「あンなのは例外として排除するとしても、最大物を探すみてェに単純に並べりゃイイってもンじゃねェ」
打ち止め「他種と比べて圧倒的に小さければ別だけど、差がわずかな場合は平均を出す必要があるから?」
一方通行「あァ。だから『新種の魚は最小の魚』って事にすンには数を相当調べねェとイケネェ……」
打ち止め「だけどそもそも、それまで知られていなかった魚を見つけるだけでもスゴイ事だもんね。ふむむむむ」
一方通行「他に、以前話題にしたアンコウ……、メスに比べてオスが異常に小せェンだろ? そォいうのはどォする?」
打ち止め「寄生虫サイズのオス、矮雄だったかな? 確かにメスを無視して小さな魚種、とするのは問題があるね」 ムゥ
一方通行「まァ。そォは言っても、世界一小せェ魚って一応言われてンのが居るには居るがな、何種類か……」
打ち止め「まだまだ研究途上なのねって納得しつつもミサカはミサカはちなみにそれどんな魚? って聞いてみる」
一方通行「そン中で一番有名なのは、ドワーフ・フェアリー・ミノー(7.9mm~10mm)だろォな。コイ科の魚だ」
打ち止め「1cmのコイ?? というかミノーってコイのことなの? ってミサカはミサカは色々驚いてみたり」
一方通行「コイの仲間はほとんどが5cm以下の小魚なンだよ、超ミニサイズのこの魚も含めてな。じゃ、行くぞ」
一方通行「ドワーフ・フェアリー・ミノーと呼ばれる魚はインドネシアのスマトラ島中央部の泥炭湿地林に生息してる。
泥炭湿地林っつーのは水の貯まり易い低地で、水没した木材が通常の分解をせずピートとなって敷き積もり、
その上に再び木が生えて……を繰り返して出来た熱帯特有の森林だ。そこの水質は、ピートに含まれる硫黄が
原因で強酸性、PHは3。コレがどンな意味か分るか? ちょうどレモンの絞り汁のPHがそンなもンだ。普通に
考えて、マトモな水生生物が居るわけもねェそンな苦水の中で、この魚は発見されたンだ」
打ち止め「へええ。ところで、ピートってなんなの?」
一方通行「聞いてなかったンかよ。木材が微生物の分解よりも速く堆積することで作られる、泥状の炭だよ」
打ち止め「ああ、スコッチの香り付けに使うヤツだねってミサカはミサカはオトナの嗜みにも深い造詣があったり」
一方通行「何の役にも立たねェ豆知識アリガトウ。……説明、続けンゾ」
一方通行「見た目はモロコっポィが、全然小せェコイツは最近発見されたばかりだが既に日本の水族館でも見れるし
繁殖に成功したアマチュアもいるよォだな。なンせ熱帯雨林は森林伐採やら火災で次々消滅してンだろ?
自然のコイツらが絶滅する可能性は低くねェ。生息環境を守ってやれれば最高だが、誰にも知られること
無く完全絶滅すンのは当面防げたワケだ。ソレは喜ンでも、俺は、イインじゃねェかと思う」
打ち止め「難しい問題だけど、居なくなるより居たほうがいいのはそうだよね、ってミサカはミサカは頷いてみたり」
一方通行「ン……。ちなみにだが、この魚は最小の脊椎動物でもある、かもしれねェ」
打ち止め「今日の話題は要所要所でボカシが入るんだね、ってミサカはミサカは慎重なあなたにちょっとビックリ」
一方通行「何しろ確定してる話じゃねェし。出来るだけツマンネェ嘘は使いたくねェンだよ」
ガチャッと『お邪魔するですじゃん』
月詠 小萌「例外とかあんなのとかアレとか一体誰の事です? 嘘付きじゃなければ、間違えてるです!」プンプン!
黄泉川愛穂「月詠先生ゴメンじゃんよ。まだ誤解させたままって言うか……、そっちのほうが面白いじゃん?」
打ち止め「ホントに可哀想……、自分のこと普通だって、記憶を上書きされてるんだねってミサカはミサカは……」
一方通行「マジか……、違ェンかよ…………、え、液晶はイカの内臓から作ってた。イカ、スゴイじゃなイカ?」
~おしまい~
149 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/08/06 20:38:47.87 doazxaet0 106/386以上、第十四回「適当」でした。
一番今回「適当」だったのは先生たちの口調だったり・・・違和感があったらすいません
ではではまた次回~
155 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/08/08 08:48:44.62 joRyHX7H0 107/386朝からおさかな! と言いたいトコですが前回の話でちょっと触れておかねばならない部分が
第1パート、サメが浮力を得るためにアンモニアや尿素的なものを使っていると誤解しかねない表現がありました
サメが尿素的なものを使うのは浸透圧調整の為で、上条さんもそれは心得た上で発言していると思ってください
紛らわしい表現、大変失礼しました
第2パート、川魚の食べ方ですが・・・ハッキリ言って人によってかなり意見が分かれますよねコレ。
綺麗なトコで捕れた魚なら云々、薄造りにして洗えば云々、そもそも気にスンナ、絶対ムリだろjk・・・
ですがココでは教科書的に、川の天然物を直接生食は無謀、とさせておいて下さい
そして一般川魚の味。火を通しても、・・・トイレのニオイがする魚とか居ますし、甘露煮って偉大だなって思う
一級品以外の川魚は、食べられなくは無いけど、味は期待しないでね。って感じでしょうか
そのほうが美味しかったらビックリできますしね
というわけで、前置きが長くなりましたが今回のテーマは「人/魚」です。いえ、パリパリ的なアレじゃないです
ではどうぞ
☆
「なあインデックス、マンボウって魚は泳ぎが下手で、水槽のガラス面にぶつかって死んじまうってホントか?」
「とうま? 泳ぎが下手かどうかは別にして、マンボウは水族館で飼育するのが難しい魚だっていうのは聞くね」
「まあ何しろデカイからな。のんびりぼーっとしてるだけとは言え、大きいのだと体重1トンを越えるんだっけ」
「ん~……、とうまのマンボウのイメージはなんだか偏ってるかも? ちょっと修正してあげるんだよ」
「ん? そうかなあ? まあ、詳しいわけじゃないから教えてくれるのは大歓迎だけどな。じゃ、まずは分類か」
「うん、マンボウは大きく言えばフグの仲間だね。おちょぼ口で、何となくフグ顔でしょ?」
「言われて見ればそうだな。フグ類ってのは速く泳ぐのが苦手で、外敵から逃げる手段がないのが多いけど」
「代わりに、膨張したり、針を出したり、ガッチガチの装甲で身を守る魚が多いね。マンボウは装甲タイプかも」
「あれ? でもさ、確かマンボウはウロコが無くて皮膚が弱いんじゃなかったっけ?」
「粘液で守られた皮膚は確かに人が触っただけで痕が残るくらい弱いけど、その皮の厚みは数センチもあるんだよ」
「へえ。そんなに厚いんじゃその辺のサメにちょっと咬まれたって平気だろうな。そういう装甲ってわけだ」
「うんうん。ヒレの退化具合といい、防御形態といい、フグ目の特徴をしっかり備えていると言えるんじゃないかな」
「とは言え、体型は独特だけどな。どう言ったらいいか……、常盤台中学の校章を横向きにしたような」
「で、尖ってる方を頭としたら、尾のほうの端の上下に飛行機の羽を付けて……おー、まさにマンボウ形かも!」
「わかりやすいな。で、マンボウはこの飛行機の羽の部分、背ビレと尻ビレしか動かせないんだろ?」
「一応、末端の部分、舵ビレっていうのかな? そこも動くんだよ。まあでも確かに、巨体の割に動く部分は少ないかも」
「だよなあ。ちなみにここまで、上条さんの最初持ってたマンボウのイメージは何一つ変わっていませんけど……」
「焦る魔術師は貼るルーンの枚数が少ない、だよ。 ここからが本番かも。まずは『翻車魚』。コレ読める?」
「ん? おいおいインデックスさん、いくらなんでもバカにしすぎだろ? 『まんぼう』だよ(テーマだし、多分)」
「意外……、とうま漢字強いんだね。でね、何でこの字をあてるかっていうと、マンボウは宙返りをするからなんだよ」
「へ? おいおい。泳ぎが下手で、体重1トンを越えるような魚がジャンプ出来るわけないだろ?」
「するものは仕方がないかも。実際、飛んできたマンボウに当たってケガしたり、潰される事故の報告があるしね」
「海って怖い……。しかし、そんなに高くジャンプ出来るとなると、それなりのスピードで泳げるってことか?」
「かつては殆ど遊泳能力が無い魚って思われてた時代もあったけど、深海に潜ったりイカやエビを捕食するみたいだから」
「そんな事が可能だとすれば、泳ぎが下手なワケがねえよな。ちなみに、なんでマンボウはジャンプするんだ?」
「……、日向ぼっこと並んで謎行動のひとつなんだよ。寄生虫を落とすため? とか言われてるけどまだ分ってないかも」
「寄生虫? そんなの体にいつも付けてるのかよ。……まあ、巨大な生物は往々にして付着物に寛大だったりするけど」
「だね。ご他聞に漏れずマンボウもそうなの。マンボウの寄生虫は体の内外合わせて数十種類にも及ぶんだって」
「それはなんと言うか、同情するよ……。食べても食べても寄生虫の栄養になっちまうな。何が主食か知らないけど」
「おちょぼ口で、クラゲをつんつんして食べる事が多いみたいだよ。つまりはプランクトン食ってことかな?」
「ふうん。まあ、最大魚類のジンベイザメだってプランクトンを食べるから変じゃないけど。まあ、肉食なんだな」
「みたいだね。水族館では剥き身のエビをエサにしてるんだって。でも、消化能力が低いのか骨のある魚は苦手みたい」
「そりゃまた飼育員泣かせだね。っと、そういえばマンボウと言えばこれを忘れちゃいけない、卵3億個!」
「最も卵を多く産む生物、ってことになってるけどそれすらもまだ良く分ってないところがあるんだよ。産卵場所とかね」
「……、今日はそういうのが多いな。まだまだマンボウは研究途上の魚ってことか」
「そう。主要な食用魚ではなかったこともあって、まだまだ調べる余地がいっぱいあるお魚なんだよ」
「美味いかどうかで魚の価値を決めるのは人間の傲慢、でも調査をするのは人間だから人間中心で当たり前。ふむ……」
「とうまが最初に持っていたイメージは、まさに人間中心の価値観で切り取ったマンボウだったんだよ」
「のんびりに見えるのも、自然界での自分の防御力に絶対の自信があるからかもな。要は見方次第ってことか」
「そういうことかも。じゃ、まとめるね」
……マンボウ、硬骨魚最大の魚。でありながら骨格のほとんどが軟骨で構成され、更に浮き袋がないなど例外的性質を…
「でも本当は、ヤリマンボウとトンガリヤリマンボウの話がしたかったんだぜ? 主に語感的に」
「とうま! 変な価値観で私の締めを邪魔しないで欲しいかも!!!」
☆
白井「だからカタツムリといえど、殻ごと真っ黒焦げに焼いてしまえばただの貝なんですの。意外とイケますわよ?」
初春「と、このように、ここの白井さんはゲテ物担当なんですけど、ゲテ物好きに愛される御坂さんって……」
御坂「この黒子にとって私は、ヤツメウナギとかコウガイビルとかアカハライモリみたいなものなのかしら……」
佐天「もしそうならイヤ過ぎですね。ところで、おさかなにも変なものを食べるヤツってのはいるんですかね?」
御坂「ん~……、人間の感覚で言っちゃうとゲテ物喰いしか居ない、ってことになるから難しいわね。変なもの、か」
初春「ですねえ。よく話題にする、口に入る物は食べ物、な魚にとっては食べられない物のほうが珍しいのかも?」
白井「いわゆる雑魚、オイカワとかウグイとかカワムツなんて、ご飯粒に群がりますのよ。むしろお米好きかと思うほど」
御坂「小麦粉でも寄ってくるわよ。……あれ? ってことは、オニギリとスナック菓子をエサにして釣れるのかしら?」
佐天「あの~。皆さん、話題がズレてます。白井さんみたいなおさかなは居ないかな? ってことなんですけどー」
初春「白井さんみたいな、ですか。ん~、メスなのに追星の出るキンブナとかですかね?」
御坂「皮膚が盛り上がって出来る追星は繁殖期のオスの魚の特徴だけど、なぜかキンブナはメスにも出るのよね」
白井「追星は主に、敵を攻撃したり、性的刺激をメスに与える為のものですわね。って、誰が無駄なオス化ですの!?」
佐天「すっごく興味深いワードが出ましたけどそうじゃなくて。テーマは『ゲテ物喰いな』おさかな、ですよ~!」
白井「ゲテ物、と言いますかなんと言いますか、見るに耐えない食事風景と言う事でしたら……、あるにはありますわね」
御坂「ダメ! 黒子が何を言いたいか分ったけど、それはダメだからね。……、オシリスのナマズってことでしょ?」
初春「口に入れば何でも食べる、つまりそれが生きてる魚の一部であっても例外ではない、という話かもですね」
佐天「あの?? さっぱり分んないんですけど?? それは普通に魚を飼育してると見える光景なんでしょうか?」
御坂「うん、残念ながら観察できると思うわよ。自然界でケガをするってことがどんなに危険か分るわね」
初春「大量死以外で、マトモな魚の死体を見る機会がほとんど無い理由も分りますよね。コワイコワイ」
白井「私の話をしていて、オチがコレってどうなんですの? まあ、話が分らない方は魚を一度飼ってみては如何?」
☆
打ち止め「ねえねえ。『愉快だすな~』、の『だすな~』ってどういう意味? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
一方通行「あァ? 何言ってンだかサッパリ分ンねェぞ?? 何処かの方言か……」
打ち止め「ほら、毎週日曜の、楽しい楽しい海産物ホームアニメのエンディングテーマだよ。知らないの?」
一方通行「……。オイ、ありゃ『愉快だっな~』だろォ? 耳まで腐ってンのかこのクソガキは」
打ち止め「(―――――――ビデオで確認)……、おかしいよ、確かにだスなーって言ってたってミサカはミサカは…」
一方通行「チッ……、まァ古い録音や発声法の関係でS音が空耳すンだろ」
打ち止め「うぅぅぅううぅぅううぅう!! ……それはそうと、フグって猛毒を持ってるんだよね?」
一方通行「……、テトロドトキシン。生体電流を抑制して麻痺を起こすンだったか? 解毒剤はねェし耐性もつかねェ」
打ち止め「電流を抑制……、私達には効くのかな……? ってミサカはミサカは話題のすり替えに華麗に成功してみたり」
一方通行「フグ毒での主要な死亡原因は麻痺による呼吸器の障害だ。中毒が起きたら体内電流操作で呼吸を確保してみろ」
打ち止め「毒素が排出されて麻痺が無くなるまで頑張るのねって、ミサカはミサカは無茶だよ! ってツッコんでみる」
一方通行「それまで何時間も掛かンだろォしな、精密作業だし。まァ、最低でも超電磁砲程度の能力が無ければムリだろ」
打ち止め「そう考えたら、お姉様って逆に、触るだけで人の呼吸を止めちゃったり出来るのかな……」
一方通行「触る必要ねェだろ……。その気ンなりゃ周囲の人間の、呼吸器だろォと循環器だろォと自由自在なンじゃね?」
打ち止め「オオゥ……。そんな怖い話はさておき、なんでフグはそういう毒を持ってるの?」
一方通行「ンー……、シガテラって知ってるか? コレの顕著な例がフグ毒って言ってもイイ。生物濃縮ってヤツだ」
打ち止め「シガテラっていうのはよく分んないけど、生物濃縮は生き物が原因で何かが貯まっていくってこと?」
一方通行「そォだな。ンで、シガテラってのは主に熱帯の海の魚が持つ数種類の毒が原因で起こる食中毒だ」
打ち止め「あ~、ひょっとして! こないだ出た一番強い毒を持つ魚、ドクウツボのマイトトキシンもそれだったり?」
一方通行「よく覚えてたな。そしてソレはドクウツボ自身が合成した毒じゃねェってこった。ンじゃ、行くぞ」
一方通行「シガテラにしてもフグ毒にしても、その大元は微生物だ。プランクトンや細菌が作った微量の物質、ソレが
貝に吸い込まれ、ヒトデに舐め取られ、少しずつ集められていく。さらにその貝やヒトデをより大きな生物
が食べ、最終的にフグやドクウツボに貯まっていくワケだ。こォした、食物連鎖により何らかの化学物質が
生体内で濃縮される現象を生物濃縮つーンだが、コレが起こるのはその化学物質が代謝されにくい物であり、
ソレを作り出す生物が良質なエサである、って場合だろォな。そしてたまたま、ソレは毒だったってことだ」
打ち止め「ほお~、ところで、毒を貯めてもフグはどうして平気なの?」
一方通行「毒に耐性がある、ってトコなンだろォが……、毒は毒だ。大量に投与すればフグでも中毒を起こすぞ」
打ち止め「ふうん。でも、充分高い濃度で毒を貯めこんでる気がするんだけど、ってミサカはミサカは気になってみたり」
一方通行「その辺や、最強の毒のはずのマイトトキシンで死亡例が少ない事はまだ研究段階らしィな。……続けンぞ」
一方通行「食物連鎖によって取り込まれたテトロドトキシンはフグの種類によって、季節によって、また様々な要因で
体内に於ける濃縮部位が変わる。肝臓や卵巣が危ねェってのはよく聞くと思うが、実際あらゆる部位が毒に
成りかねねェ。法律で肉、皮、精巣のいずれか以外は食うなって言ってンのもその為だ。中には何処も食え
ねェフグだって居る。ハコフグにはテトロドトキシンはねェが、別の毒を貯めてることがある。ド素人には
決して有毒部位の見分けは出来ねェ。死にたくなければ、フグの調理はすンなってこった」
打ち止め「ハコフグは、ギョギョッ! のあのお魚だよね。ところで、なんでフグは毒を貯めるようになったの?」
一方通行「ソコは不思議だよな。何しろ体内に猛毒を持ってたところで、外敵にソレが見えなければ襲われンのを防げ
ねェ。能動的にテトロドトキシンを使って攻撃するヒョウモンダコってのが居るが、フグはそォじゃねェし。
一説には、テトロドトキシンにはフグを呼び寄せるフェロモン的な効果があるらしい。だとすると、コレを
卵巣に貯め込むことで、オスのフグを呼び寄せることが出来ンのかもな? アトは卵巣、つまり卵が喰われ
ねェ為、かね。なンにせよ、二次的に蓄えられる物質であるにも係らず、人工飼育化で無毒化されたフグを
天然フグと一緒に飼育すると有毒化しちまう事例などからも、毒を持っていることが自然であり、有利って
ことなンだろォな。シガテラの場合は、毒の有無が自然状態でも個体によって違うンで何とも言ェねェが」
打ち止め「なるほど~、ってミサカはミサカは理解しないままとりあえず頷いてみたり」
一方通行「心配すンな。『愉快だすな~』とかマヌケな聴き間違いしてるヤツが一回で覚えるとは思ってねェよ」
打ち止め「むぅううう、ミサカをバカにしてぇえええ!!! ってミサカはミサカは怒りのあまり制限解除してみたり!」
一方通行「あン? ……ちょ、なンだオマエら、オイ!? 何人いンだよ???」
ガチャッと『…………』ゾロゾロゾロ
打ち止め「1.2.3.go!」
打ち止め、10039号、19090号『んんんんーんん 愉快だすなーーーーーーーーー!!』フリフリ
10032号、13577号、番外個体『んんんん~んん 愉快だスな~~~~~~~~~!!』フリフリ 芳川桔梗「ッ!」テンッ!
一方通行「微妙にハモってンじゃねェ! 地味に太鼓叩いてンじゃねェ!! ンで、『愉快だっなー』だっつーの!!」
~おしまい~
以上、第十五回「人/魚」でした
っと、第一パートのマンボウの日向ぼっこって、マンボウが水面に横たわってじーっと動かない状態のことです
ホント、何してるんだろ?
というわけで、また次回~
169 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/08/10 20:19:15.82 Ghmcbtyo0 114/386新刊発売かー・・・いいなあ・・・読みたいな・・・。それはそうと
おさかな話は決して教育テレビや道徳の授業じゃないので、たまには悪ふざけもしたいのです
特にダジャレ心が爆発寸前だったので、今回は思い切って脱線してみました
新刊読みたいよおおおおお、の怨念を籠めて、『脱線』です。期待しないでどうぞ
☆
小萌『上条ちゃんには宿題として、とある大型店舗の市場調査をして来て貰います。頑張ってくださいです~』
上条『ちょっと待って先生、単に市場調査って言われても。一体何をすればいいのか……」
小萌『なんとかフェアの真っ最中だそうなので、訪れたお客が何を買ったか記録してくるのです。分りましたか?』
上条『どこまでもアバウトな説明!?』
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――――――――――――
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上条「と言うワケで私、上条当麻は学園都市最大のアクアリウムショップに。……、まあ手当たり次第行きますか」
禁書「~♪」 テクテク
上条「第一調査対象発見! って、インデックス?? お前、こんなトコで何してんだよ?」
禁書「あ、とうまだとうまだー! ――――何してるって、お買い物だよ? ほら、こんなの買っちゃった」 バーン
上条「…………、一体どんな無駄遣いをしやがった……、って水草!?」
禁書「うん! ハート形の葉っぱがカワイくてミントの香りがする、日本生まれの『カーナミン』だよ!」
上条「ほほう、『カーナミン』か。割と簡単に育つ種類で、熱帯魚水槽には定番の……でもウチにはそんなもんねえぞ?」
禁書「シジミ水槽に入れるからいいんだよ。それより今、ウチには食べ物が無いから早く帰ってきてね。じゃあねー」
上条「水草買う金があったら何か食料を、って考えには至らなかったんだろうか……。っと、次のターゲット発見!」
御坂「ブツブツブツブツ……、っ!」
上条「なんだよ今度は御坂か。えーと、実はコレコレこんな事情で……。何か買った物があれば見せてくれないか?」
御坂「ふぇ? ……、宿題で調査? ふ~ん。でも私、水草買っただけだし、見たって面白くもないわよ?」 ホレ
上条「いやいや、サンキューな。……、ん? これはこれは、今のお前にぴったりだなあ」
御坂「あ、アンタ、この水草を知ってるの? ――――――いや、コレには特別な意味は無くて……その、あの……」
御坂「し、知ってるならさ、あの、あげようかコレ? アンタも確か水槽を持ってるんじゃなかったっけ?」
上条「あるよ。でもさ、コイツは俺が持つよりもお前が持ってるほうが絶対良いと思う。だから、大切にしろよ?」 ホイ
御坂「(水上葉が全部四葉になる『ウォータークローバー』……。幸運のお守りだって知ってて、コイツは……)」
上条「(日本名『デンジソウ』……。超電磁砲に引っ掛けてんだな。まあ、自分大好きってのは悪い事じゃ無いぜ)」
上条「―――――御坂のヤツ、なんか突然顔赤くして行っちまったけど、どうしたんだ? ……っと、仕事仕事~」
絹旗「ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ……」 テクテク
上条「(……、この店の客はブツブツ言わなきゃいけない決まりでもあんのか?)あの、すいません。ご協力を……」
絹旗「はあ? ああ、私の買った水草を超見たいって事ですか? んー、まあ減る物じゃないから構いませんけど」 ホイ
上条「ん? これは……。あの、失礼を承知で聞くけどさ。君この水草の名前を言えるの?」
絹旗「ホント超失礼ですね。繰り返し暗誦しましたから超当然言えますよ。『アルテルナンテラ・ロサエフォリア』!」
上条「アルテルたんったらラオウさえふぉーりんらー? ……、付属の商品タグによると南米原産のヒユ科の水草だな」
絹旗「失礼なだけでなく、頭が超残念な人なんですかね? 『アルテルナンテラ・ロサエフォリア』ですって」
上条「……、この、あるてるなんちゃらは、栽培がスッゲー難しい上級者向けの水草みたいだぜ。何でコレを?」
絹旗「バカ面に管理を任せて、名前を間違えて呼んだり、万が一にも枯らしたりしたら超オシオキするためです」
上条「……、いろいろ気になるところだけど」
絹旗「詳細は超機密事項です。おっと、赤くて綺麗なこの水草に合う超硬い淡水魚を探してるので、私はこの辺で」 デワ
上条「あんなにちっちゃくてカワイイ子のオシオキなら、人によってはむしろご褒美かも? っと、アレは……」
姫神「上条くん。小萌の宿題ご苦労様。私の水草はコレ」 ハイ
上条「おお、話が早くて助かるよ。…………、これは……、蒲(ガマ)そっくりだけど…………、『ヒメガマ』?」
姫神「コレを一発で同定出来るのは凄い。さすが同定の上条くんと言われるだけある。うん。ここからはただのダジャレ」
「アンジェレネのこれは『コインウォーターチェーン』? 確かに丸い葉っぱが硬貨っぽいな。で、ルチアの水草は」
「……、二股に分かれた枝先が鹿の角のような浮き苔『カヅノゴケ』こと、『リシア』ですけど何か?」
「ルチアがリシア……。さすがにくだらなすぎる……、なんかゴメンな」
「い、異教徒の哀れみなど不要です!! シスターアンジェレネ、帰りますよ!!」
「オリアナが買ったのはブラジル産の『アルアナの夕焼け』? コレはまた変な名前の水草があるもんだね」
「変な名前とは随分ね。そんなキツイこと言われるとお姉さん、アルアナが夕焼けみたいに熱くなっちゃうわよ?」
「ハードなシモネタはご遠慮下さい!! でも水草自体はワインレッドがとっても綺麗な、姿のいい有茎草だな」
「明るいところに出してあげないと赤くならないのよ。見られると興奮するのはお姉さんと一緒ね」 フフン
「っと、いつかのアンチスキルの超グラマーお姉さん……、黄泉川先生でしたっけ? これは『ロタラナンセアン』?」
「いくら小萌先生んトコの悪ガキとは言え、この呼び方は譲れないじゃん。『ロタラナンジャン』じゃん!」 ドッサリコ
「は、はあ……。でも、こんなに大量に金魚草が入り用なんて、先生はお家で水族館でもやってるんですか?」
「ウチのバカ居候たちが、ザリガニだのタニシだの考え無しにバンバン拾ってくるから、そのエサなんじゃんよ」 ゲンナリ
「おー、吹寄も来てたのか。それは……『アナカリス』かよ? また随分と普通な雑水草を選んだもんだな」
「なっ!? 『コカナダモ』か『クロモ』かも知れないでしょ?? 全く、貴様という男はいつもいつも適当な事を」
「ちょ、こんなトコでお説教は勘弁! えーと、葉幅が広くて分厚いから、魚もエビも喰わねえ『オオカナダモ』だよな」
「なんだ、詳しいのね。……、成長が無茶苦茶早い上に肉厚でボリュームがありすぎて、確かにあまり人気は無いわ」
「いや、俺は嫌いじゃねえよ? とっつきやすいしな。毎日見た目に気を配れば、迫力もありつつ綺麗になるんだぜ?」
「それ、『オオカナダモ』の話よね? ……、あたしも頑張ってみるかなー。水槽の話だから勘違いしないでよね」
「さて、あちらの美形な外国のお姉さんには見覚えが……、いや、どこかで会ったことがあったっけ? すいませーん」
「……ッ!!(……ん? ああ、この格好だから私が誰か判んないのね。じゃ、言葉が通じないフリして)」
「あちゃ、日本語分らない人か。……参ったな。エクスキューズミー? プリーズ ショウミー ユア ……ユア…」
「……(アレ? でも学園都市の学生ってのは数ヶ国語使えて当たり前って聞いた事あんだけど??)」
「ええい、チクショウわかんねえ!! 綺麗なお姉さん、水草を英語でなんて言うか教えてください!!」
「Water plant ?」
「サンキューサンキュー! では改めて。 エクスキューズミー? プリーズ ショウミー ユア ワラプラン」
「……えーと、ワザとやってんでしょ? むしろお願いだからそうだと言って」
「なんだ日本語話せるんですかー、意地悪だなあ。……で、宜しければお手元の水草を」
「……」 ホレ
「コレは……、『ハナガガブタ』だっけ。北アメリカの花……、いや、水草として使う場合は、コレを水に浮かべて……」
「……(へえ、詳しいじゃない。まあ、植物の名前にやたら明るいオトコってのはどうかと思うけど)」
「むき出しの殖芽は房ごとバナナそっくり。だから別名『バナナプラント』って……、あ、ひょっとしてお前ヴェント?」
「貴様、やっぱり全部判っててやってんだろォ!?」 ンガー
☆
初春「まあ、なんだかんだ言っても一番美味しいのはツナ缶ですよね。料理にも使いやすいし栄養も豊富だし」
佐天「そういう発言は、このパート自体を否定しかねないと思うけどね……」
白井「ところで、カツオとマグロ、どっちが初春は好みなんですの?」
初春「はあ? ツナ缶の話ですよねコレ? どこからカツオが出てきたんです??」
佐天「ん? ……もしかして初春、ツナ缶はカツオとマグロの両方あるって知らないとか?」
白井「そもそもtunaとはサバ科マグロ族の魚類を纏めていう言葉ですから。元の意味からカツオなども含まれますわよ?」
初春「や、やだなあ。そんな事は昂然、当然知ってますよ~。カツオの缶詰は認めない! って言ってるだけで……」
佐天「そうかな? 私は結構、マイルドの方が好きなんだけど」
白井「カツオを使ったツナ缶は、マイルドと表記されるようですわね。って、初春? どうかしましたの?」
初春「…………」
その夜から私の孤独な戦いは始まった。まずは国内から、ツナと呼ばれる食品にマグロ以外を使う事が出来なくなるよう
サバ科の研究、とりわけカツオを缶詰にする事に対するネガティブなファクターの発見を急がせるよう、政治を動かし、
専門家たちの尻に火をつけたのだ。そのための手段は幾らでもあった。嘘でもデタラメでも構わないのだ。データの改竄
なら私の得意分野、ネット上に散らばる個人のプライバシー収集は私の専門分野。そしてそれらは見事に結実した。
続いて「日本国内においてツナ缶の原料となるのはマグロだけ」、この事実をもって海外に出るにあたり、どうしても
無視できないのが"tuna"をマグロ類を指す言葉として使う英語圏の国々だった。しかしこうした言葉の問題というのは、
結局のところ力のあるほうに流れるモノ。まずは日本国、学園都市双方の財力を思う存分解放させ、ODAなどを通して
ツナ缶工場を世界各地に設けた。そこで扱われる魚は主にビンナガマグロ。もちろん、そんな名前で呼ばせはしないが。
とにもかくにも、非英語圏社会において、ツナとはこの魚だけを指す言葉にしてしまう、それだけを目指した。
私は、間違っていなかった。いや、間違っていた時代があったかも知れないが既にそうではなかった。
全世界的にカツオをツナに含める者は徐々にマイノリティになりつつあったのだ。
そしてあの運命の日、日本時間午前8時ジャストに全世界の主要な水産会社、海洋学者、政治家、漁師たちに送られた
メール。その酷く単純化されつつも現状を的確に示すメッセージは、地球上に於ける全人類に、新たなるツナの誕生を
宣言するものだった。送り主不明、意図不明のメール、ではあったが誰もが素直にそれを理解し、それを受け入れた。
全世界の小学校で扱われる全ての教科書の最初のページに、その原文は今も残る。
【ツナ=マグロ】
私はその後、影の初代世界帝王として未来永劫語り継がれるのだがそれはまた別の……
佐天「初春、うーいーはーる? おーい、戻ってこーい!」 ブンブンブン
初春「…………、はっ! 佐天さん?? あ、すいません。ちょっと考え事してました」
白井「全く、心配させるんじゃないですわよ。……で、なんだか分りませんけどその考え事は終わりましたの?」
初春「はい、心配かけちゃったならゴメンなさい。全然大したことじゃないので、気にしないで下さい」 ニコ
☆
打ち止め「ねえねえ、この前は一番強い魚類の話をしてくれたけど、一番強い水生生物って言ったら何かな?」
一方通行「魚類以外も含めて考えろってのか。そォだな……。サイキョーの水生生物…………」
アレイスター「ソレは私だ」
178 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/08/10 20:45:30.10 Ghmcbtyo0 123/386以上、第十六回「脱線」でした。脱線言う割にハジケ具合が足りない・・・
水草の名前についてはほとんど私も知りません。調べながら書いたのでいろいろ間違ってるかもです。あしからず
次回は正気に戻ってる予定です。ではでは~
182 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/08/13 22:05:14.68 ui60Sx280 124/386何事も無かったかのように目覚める、おさかな話
今日のテーマは「原石」・・・のつもりだったんだけど、大きくズレた気もします
お祭り縁日の定番のアレについての話題が多目です。ではどうぞ
☆
「なあインデックス、身長が高い人ってのはなんて言うか、美人が多い気がしないか?」
「とうま? それは私がちっちゃくて美人じゃないって言いたいのかな? 言いたいのかな? 言いたいのかな???」
「ん? 俺はお前を美人だ、なんて思った事は一度もねえよ?」 ウン
「………………………………………え」
「そんなことより、『背が高い=美人』は俺の幻想なのかそうじゃないのか。どう思う?」
「……………dedicatus545」 ボソッ
「おお!? その名前を出すということは本気で答えてくれるってことだな!」
「とうまも覚悟はいい? 血迷える者を正しき所へ導く、コレは私たちの本来の使命だから……。まあ、話だけはするね」
「なにその重い決意? ん~、よくわかんねえけどよろしく頼むよ」
「……、とうまは金魚の大きさを聞かれたらどのくらいって答える?」
「え? 突然おさかな話かよ……? そうだなあ、(親指と人差し指を広げて)こんなもんか? せいぜい5cmとか」
「店頭で売られてるサイズはその位だけど、金魚すくいで取ってきた金魚が30cm以上に成長することは珍しくないんだよ」
「30cm!? お前そりゃちょっとしたコイじゃねえかよ!」
「コイは言い過ぎだけど、普通のフナの品種改良種である金魚はフナ並の大きさになって当然なんだよ」
「いや、でもさ。30cmオーバーはフナでもかなりのサイズだぜ? 池のフナが全部そんなになるワケじゃねえだろ?」
「そうだね。ところで『魚類の無限成長』って聞いたことない?」
「心なしか説明が乱暴だなあ……。それはともかくアレだろ? 人と違って、魚は成長に限界が無いって……」
「簡単に言うなら、適切な環境下においては魚類は死ぬまで大きくなる、って考え方だね」
「お、おう。……ん? 死ぬまで成長するんなら、やっぱりフナは全て大きくなるのか?」
「適切な環境下って言ったのが聞こえなかったのかな? 金魚を例にとって話を進めるから、ちゃんと聞いてね」
「おう、頼りにしてるぜインデックス大先生! どうすると金魚はでっかくなっちゃうんだ?」
「……まず、大きく成長するのに必要な要素を十二分に満たした空間にいること」
「ふむ……。つまり、狭いトコでは魚は大きく成長しねえって事だな? あと、水が綺麗とか冷たくないとか」
「小さな水槽では大型化が望めないのは正解だけど、水質や水温は魚によって好みが違うんだよ」
「あ、そっか。養殖場の金魚って緑色の水の中に居るんだっけ。だから綺麗、ではなく適切な水質ってワケだな」
「うん。そして良質なエサが必要な時期に豊富に供給されること。普通、金魚は夏場を中心に大きくなるんだけど」
「人工的に常にその時期の水温にしておくと、ずっと成長し続ける、か?」
「30℃を越えたりするとバテちゃうから適切な温度で、って感じかな? 25℃前後をキープ出来ればいいと思うよ」
「ふむ、適温下では金魚もよく動くからエサをよく食べて、結果的によく育つと。他には何かあんのか?」
「通常は金魚飼育では全く使わない場合もあるんだけど、器具によるエアレーションかな。酸素量を多めにするの」
「曝気(ばっき)か。金魚って割と泳ぎが下手だから水流を作っちゃうとこれまたバテるって聞くけど」
「細かい泡でブクブクするのがいいかもね。大きな泡で溺れる金魚も居るらしいし」
「ふーん。なんか聞いてると、単なる元気な金魚の作り方って感じだけど」
「そうでもないよ。成長期の金魚は病気になりやすいし、ケガもしやすい。それをずっと続けるんだから」
「へえ。その、生温くも過酷な環境で幸運にも病気や怪我をせずに健康で居られたら、でっかい金魚になるってわけか」
「一生大きくなるけど、一番成長しやすいのは生後1~2年って言われてるから、そこが勝負だね」
「ふむ。随分と手間が掛かる上に、割と魚体にも厳しくて最後は運任せなんだなあ。…………あれ? オカシイぞ?」
「とうまが疑問に思ったのは、じゃあ池の大きなフナはどうなんだってことだよね? でも同じ事なんだよ」
「つまり、人工的に巨大な金魚を作るための条件が、自然界で偶然揃った場合にフナがでっかくなっちゃった、って?」
「自然界の場合には外敵に襲われる、とか悪条件が更に増えるから上手く行っても数年でそんな巨体にはならないけどね」
「そこで『魚類の無限成長』が出てくるわけだな?」
「だね。適正飼育下やそれに似た環境中の個体が、通常より長生きをすると巨大になる可能性がある、って事なんだよ」
「ん?? そこまで来て『可能性がある』なのか? まだ何か大型化を阻む因子が存在するのかよ?」
「というか、コレが本題かも。大きな魚が欲しい場合に、まず大事なのは稚魚の時に美形かどうかなんだよ」
「稚魚が美形…………、いや、まあ金魚は観賞魚だし、美形っちゃ美形だろうけど。フナは、う~ん?」
「もっと視点を単純にするんだよ。ヒレや体型が左右対称かどうか、骨に異常は無いか、怪我や病気の痕は無いか、とか」
「ウロコが剥がれてねえか、とかか。ふむ、つまりはバランスのいい健康な魚体であることが見て取れるかどうかだな?」
「そう。魚の場合、病気や怪我はずっと後を引くし、バランスの悪さは一生治らないの。だから稚魚選びが大事なんだよ」
「なるほどな。でも確認なんだけど、コレはあくまでも魚が大きく育つ方法、だよな?」
「そこは間違えないで欲しいかも。見栄えが悪くても大きくならなくても、魚は生きてるんだよ」
「巨大化は魚にとって幸せなのか分んねえし。俺としては自分の魚は、どんな姿でも最後までかわいがって育てたいな」
「それで最初の話に戻るんだけど。稚魚の時に美形のフナや金魚が大きくなる可能性が高い、ということは?」
「そこから繋げる!? ……あー、つまり背の高い人が美人、かどうかは置いといて」
「バランスのいい整った顔立ちやスタイルをした子供を理想的な環境で育てたら高身長になりやすい、かな?」
「ま、人間の場合はもともと微妙な差だし、遺伝的要素が大きく絡んでくるだろうから魚の場合より曖昧だけど」
「美幼女を連れた子供好きに『その子、あと5年もしたら貴方より背が高くなるよ』くらいは言ってもいいかもね」
「最後のは聞かなかったことにする……。でも、そうなるとあれだな」
「さて……、解説は終わったんだよ。覚悟はいい、とうま?」 ギラーン☆
「お前も整った顔立ちで生活は規則的。食事量は言うまでも無い。きっと将来はナイスバデーな美人になるんだろうなあ」
「ッ!!!…………と、とうま/// …………あれ? それって私が成長期ってことで、つまりまだ子供ってことで!!」
「やっぱり噛むね」ニコッ ガブッ
「ほ? 褒めたのに?? 不幸だあああああああああああ!!!」
☆
初春「どこかの国では金魚鉢で金魚を飼育するのを禁止しているそうですけど、どんな根拠なんでしょうね?」
佐天「丸い器の中でふよふよ丸っこい金魚が泳ぐからこその金魚イン金魚鉢でしょ?? 何処のおバカ国家なのそれ?」
白井「金魚がその丸っこいガラス製の器から外を見ると、景色が歪んで見えて結果視力が悪くなるからとか」
御坂「その理由はどうかと思うけど、金魚鉢は水量が少ないから確かに長期の飼育には向かないけどね。でも……、ふむ」
佐天「御坂さん? あの、どうかしましたか?」
白井「こういったお気楽な雑談で取り扱いにくい話題がおさかな関連にはいくつかあるんですの」
初春「例えば、放流や養殖についての話題ですね」
御坂「そうね。金魚で言うなら、金魚すくいって虐待だと思う?」
佐天「あたし? え、え~と、そうですねえ……、正直あんまり考えた事無かったですけど」
初春「狭くて浅いプールにギチギチに入れられてマトモに呼吸も出来ない中、ポイで次々狙われるんですよ?」
佐天「ふむ、それは確かに可哀想っちゃ可哀想か……。金魚すくいの金魚は弱ってて、すぐ死ぬって言うし」
白井「ですけどそもそも金魚すくいの金魚は売り物にならなかった金魚であることが多いんですの」
御坂「金魚の稚魚のうち、ペットショップの店頭に並ぶような魚は0.1%程度。それ以外は……」
佐天「それで金魚すくいにはあんなに金魚がいるんですねえ。もちろん、金魚すくい専門の養殖業者も居るんでしょうが」
初春「佐天さん、アレはまだいいほうなんです。ほとんどの商品にならなかった金魚は、肉食魚のエサになったり」
白井「稚魚の段階で死んでしまったり、ですの。……さて、では私からも伺いますが、金魚すくいは虐待ですの?」
佐天「ん~~~~……。金魚すくいを廃止すれば、売り物にならない金魚は全部エサ……? いや、選ぶことが酷い?」
初春「綺麗な金魚を選別して販売する事がそもそも虐待だとすれば、それを購入、飼育することも同じく虐待ですよね」
白井「そこまでいけば金魚という存在自体が虐待ですの。見栄えの為だけの品種改良とは何事か! ですわね」
御坂「じゃ、金魚を絶滅させるのが動物愛護? っていうね……。生き物の飼育って元々人間のエゴだからさあ……」
初春「一つ確実に言えるのは、魚を飼育するのは良い事であるとは限らないってことですね」
御坂「むしろ悪いことかもしれない。そう思いつつ飼育したら魚に申し訳なくなって、もっと大切に育てたくなるかもね」
佐天「ふ、ふむふむ……。話が重い、重すぎです」
白井「だから最初に言いましたの。触れたくない話題があるって」
☆
打ち止め「ねえねえ、コイってどんなものかしら? ってミサカはミサカは紛らわしく尋ねてみたり」
一方通行「紛らわしく、とか言っちまったら台無しじゃねェのソレ? つまりコイ、池の鯉だろ?」
打ち止め「コレが学園都市第一位の頭脳か……、ってミサカはミサカは素直に負けを認めてみたり。うん、そのコイだよ」
一方通行「……つっても、コイなンてメジャー過ぎて語る余地ねェだろ。何が聞きてェ?」
打ち止め「あのね、錦鯉とコイの関係は金魚とフナの関係と同じなのかな? ってミサカはミサカは疑問を呈してみる」
一方通行「……何でそんな疑問を持ったか、ソレこそ疑問なンだが。まァ誤解してるヤツも居ンだろォな。同じじゃねェ」
打ち止め「およ? と言う事は錦鯉は元々コイとは別のお魚ってこと?」
一方通行「そォは言ってねェ。むしろ逆で、錦鯉っつーのはコイそのものなンだよ」
打ち止め「んんんんん? よく分んないよってミサカはミサカはとりあえず思考を放棄してみたり」
一方通行「金魚は、古代中国でギベリオブナの突然変異種、赤い色なンで緋鮒って呼ンでたンだがソレを掛け合せなどで
固定化させた種、つまり品種改良による新種だ。ソレに対し錦鯉は変った色の真鯉……、普通の鯉の中で色が
多少薄いとか明るいとか、そォいうのを掛け合わせて産まれた稚魚の内、綺麗に発色した魚だ。何処が違うか
わかンねェか? 錦鯉は遺伝子的に固定されてねェンだよ。だから、赤い錦鯉同士を掛け合わせても、子供が
全て赤にはならねェ。勿論、普通の色のコイ同士よりは色の違いがハッキリする傾向はあンだがな。つまり、
錦鯉と普通のコイには何の違いもねェってこった。一番フナに近い和金って金魚でも体型がフナとは異なるが
コイと錦鯉にはソレもねェ。とは言ェ歴史が違うから今後どォなって行くかまでは分らねェがな」
打ち止め「錦鯉ってそんなに最近になって産まれたの? ってミサカはミサカはフォローをお願いしてみる」
一方通行「19世紀の日本、ニイガタ県の農民が育て始めたのが最初らしィな。金魚は4世紀の中国が起源だそォだ」
打ち止め「ふうん。それにしても野生のコイと錦鯉に違いが無いなんてビックリだよってミサカはミサカは…」
一方通行「ンー……、野生のコイと錦鯉は全く別モンだぞ? 遺伝子的にも見た目もな」
打ち止め「??????? 言ってる事が変わってない? ってミサカはミサカはあなたのブレを指摘してみたり」
一方通行「チッ……。こォ言えば理解出来るか? 野生のコイなンてそォ滅多にいねェ」
打ち止め「えーと……つまり、錦鯉の元になるコイも養殖のコイだったってこと?」
一方通行「その辺りのことを説明しとくか。ま、大体答えは出てっから気楽に聞け」
一方通行「コイはアジア原産らしィンだが、肉質が良く飼育が簡単でデカくなるンで現在では世界中の淡水に居る。
普通に池や川で見かけるコイはソレなンだが、別に野生のコイってのが日本には居たンだ。ソレは滅多に
姿を現さねェ。茂みの陰や川の深みに隠れてるからな。池のコイは勿論、昼間にコイが川面でふらふらと
泳いでンのを見たら、ソレは過去に食用として養殖されてたもンの子孫だと思って間違いねェ。おそらく
放流や養殖場から逃げた個体が基になってンだろォが、あまりにもそっちのコイとの付き合いが長すぎて
自然の中に養殖由来のコイが居ても日本人は違和感を覚えなくなっちまってンだよ」
打ち止め「へえ~。ところで、野生のコイは見た目がどう違うのかな?ってミサカはミサカは確認してみる」
一方通行「横から見るとやや丸みを帯びてるのが養殖系、比較的流線型なのが野生のコイだ」
打ち止め「ほうほう、ってことは泳ぎ方も違いがありそうだね」
一方通行「野生のコイは俊敏に泳ぐ、らしィな。……ンじゃ、続き行くぞ」
一方通行「前述したが、あまりに養殖系のコイが一般的になったために、日本ではコイは遠い昔に中国から輸入された
種ではないかと思われて居た時代があった。だが他方で、釣り人や漁師の間から漁場によって形の違うコイ
が獲れる事があるって報告が少なからずあり実態が掴めねェでいた。コレに答えを出したのが皮肉なことに
コイ以外には全くの無害、ただコイだけ100%殺すコイヘルペスウィルス病だ。各地でコイの大量死が起き
死んだコイの中に明らかに見た目の異なる個体が多数確認され、調査の結果遺伝子的にもかなり従来のコイ
と差があることが分ったンだとよ。コレが日本固有種説もある野生のコイの発見。ごく最近の話だ」
打ち止め「……発見はともかく、かわいそうな話だねってミサカはミサカは目に涙を浮かべてみたり」
一方通行「カワイソウなのは病気で死ンだコイだけじゃなかったンだが。このウィルスはキャリアとなっても発症する
とは限らねェ。つまり見た目で安全かどォか区別出来なかったンだ。また、このウィルスは30℃以上の熱で
不活化すンだが、一旦キャリアとなった魚をそォいう高い水温下で飼育してもウィルスを退治出来なかった。
だから一匹の魚が養殖場で……、つまり池や湖だが、コイヘルペスウィルス病を発症したら、全てのコイが
感染疑いと見做される。結果、感染魚の発生場所と繋がってる水系のコイは全殺処分となった。移動が禁じ
られたから売り物には出来ねェし、ソイツらが残ってンじゃ新しくコイを育てることも出来ねェからな……」
打ち止め「…………」
一方通行「……つーワケで、錦鯉とはコイそのもの。錦鯉と野生のコイは別物って話だったが。理解出来たか?」
打ち止め「ウィルスの話が重すぎて……。うん、でもよく分ったよってミサカはミサカは首を縦に振ってみたり」 ウンウン
一方通行「その件で廃業した養鯉業者も大勢いた。今もワクチンの開発やウィルス耐性のあるコイの研究が続いてンだよ」
打ち止め「今度はコイもみんなも救われる嬉しいお話が聞けたらいいなってミサカはミサカは虚空に祈ってみたり」
ガチャッと『ただいまー』
番外個体「金魚の話をしてんじゃないの?? こんなにたくさん救ってきたんだけど?」バチャビチャ
芳川桔梗「これはね、『掬い』と『救い』を掛けてるの。金魚の命を掬うことで救った、って良く出来た話でしょう?」
一方通行「古いダジャレを解説すンじゃねェよ……。それより、金魚助けンならさっさと水槽入れる準備しろォ!!」
打ち止め「うん、了解!ってミサカはミサカはとりあえず消毒の準備に取り掛かってみたり!」
~おしまい~
189 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/08/13 22:32:36.36 ui60Sx280 131/386以上、第十七回「原石」でした。テーマ入れ忘れてた・・・
第一パート、巨大金魚育成法ですが、ここでは書きませんがもっとキツイ手段がいくつもあります
第二パート、金魚鉢禁止はローマだったかな? 記憶が曖昧です
第三パート、いわゆる野ゴイは、琵琶湖や四万十川などの大きな河川で見られるそうです
ちょっと今回は不快な思いをさせる内容だったかもです。反省しつつ、ではまた次回~
193 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/08/17 18:15:57.13 +7XNge4m0 132/386ニーズも流行りも良くわからないまま、好き勝手におさかな話してますけどコレでいいのかね?
そんな今回のテーマは「名前」です。第三パートが打ち止めの暴走させすぎで漫才風になっちゃったので
漫才ってことにしました。軽い番外編?な感じで捉えていただければいいかなあと思います。ご了承下さい
ではどうぞ
☆
「なあインデックス、スフィンクスは三毛猫、つまりネコだけど、寝てばかりだから寝子(ネコ)ってのが語源だっけ?」
「とうま? ネコの語源は定かではないんだけど、有力な説ではあるよね。でもそれがどうかしたの?」
「ん~……いや、身近な動物の名前の由来くらい知っておいたほうがいいだろ? 深い意味はねえよ」
「ふうん? でも、日本語の場合は難しいかもね。身近であればあるほど名前の由来はハッキリしなくなるんだよ」
「はるか有史以前に起源を持つ自然発生的言語で、且つ文字を得るまでの空白期間が割と長かったのが原因かなあ……?」
「ムリして難しく言わなくてもいいかも。あまりに古い時代の事だから、まだよく判らないってことだよ」
「つまりこう言いたいわけだな?……今後の研究者の活躍にご期待ください、彼らの戦いはまだ始まったばかりだ!!」
「打ち切りみたいな事言わないで欲しいかも!!! あ、でも逆に最近名前を付けたものなら語源もハッキリするよ」
「例えば?」
「おさかなの名前」
「いや、ソレはオカシイ。身近なおさかなだって沢山いるじゃねえかよ」
「ドジョウやフナくらい身近だとやっぱり由来はハッキリしないんだけどね。全体的には分類が遅い分野だったんだよ」
「ふむ……、そうなのかなあ。じゃあそうだな……、サザエって何でサザエっていうんだ?」
「小波(さざなみ)のサザと家(イエ)をくっ付けてサザイエ、つまりは小さな家ってことだよ」
「ほお~、見た目というか生態というか、サザエそのものをよく表してる名前だったんだな」
「それがどんな生き物か説明するのに便利ってメリットがあるから、見た目で名付けられた種は多いね」
「じゃあ、海の貝つながりでハマグリはどうしてハマグリなんだ?」
「コレも見た目だよ。栗の実に似ていて浜辺に居るから浜栗。他の二枚貝も栗に似てるじゃんってツッコミは止めてね」
「そこは早い者勝ちだったのかな……。じゃ、負けたアサリの由来は?」
「アサリの潮干狩りを思い浮かべてみて欲しいんだけど。皆で貝を漁ってるでしょ? だからアサリ」
「漁る(あさる)ってなんかイメージ悪いなあ……、いやまあ、でもそうか。漁をするってことだもんな」
「うん。でもコレは正直何にでも当てはまる名前だよね。こんな風な分りやすいネーミングは同時に、安易と言えるかも」
「そうだな。んじゃあさ、語源がハッキリしてるけど、分りにくい難解なネーミングのおさかなっているのか?」
「学名そのままだったり、外国の名前をカタカナにしただけのおさかなは分りにくいけど。それじゃダメだよね」
「そういう難しさじゃ聞いても面白くないからな。へえー! って言えるようなヤツ頼むよ」
「じゃあ、日本人のとうまなら当然知ってると思うけど、平敦盛(たいらのあつもり)って少年武将がいたでしょ?」
「……、へえー!」
「まだ何も紹介してないよ?? カサゴ目トクビレ科にはこの武将由来の魚が何種類か居るんだよ」
「カサゴの仲間、ということは大体想像できるんだけど。鎧武者な感じの外見をしてるからだろ?」
「最後まで聞いて! 源平一の谷の戦いで熊谷次郎直実に討たれた敦盛は赤い具足を身に纏っていたんだよ」
「はいはい、わかりましたよ~。赤くて鎧みたいな外見の、アツモリウオってのがいるんだ」
「だから話を先に進めないで欲しいかも!! ……実際、そうなんだけど。でね、色違いのクマガイウオってのもいるの」
「源平話からの拝借って事だろうけどさ、同じ仲間の魚に、敵同士の名前を付けるのってどうなのかね」
「お話のキャラってそういうものかも。で更にクマガイウオを細くしたような魚、サブロウ」
「熊谷次郎直実、次郎より細いからサブロウ? ……、ソレは確かに名前から由来を予想できないな」
「ふふふ、コレで終わりじゃないんだよ。さらにサブロウより細いからヤセサブロウ! シロウ! シチロウウオ!」
「次郎から三郎四郎、で七郎と細く小さくなっていくのか? 終いにはハッカクみたいなガリガリになっちまうだろ」
「そもそもトクビレ科のトクビレって、関東でハッカクと呼ぶ魚のことだよ。さあ、どう?どう? へえー! でしょ?」
「ん~……変な名前のバーゲンセールだとは思うし、語源も安易じゃない。けどさ」
「けど、なんなの?」 ムッ
「5番目と6番目は多分○○姫、女の子だろ? 妹をシークレットにするメリットがわかんねえんだけど?」
「……、とうまが何を言ってるのかこっちこそ分らないんだよ」
☆
白井「潮だまりは生き物の宝庫、磯のワンダーランドですの」
初春「干潮時に海水が取り残されて出来る、タイドプールの事ですか? 確かに多種多様な生物が見られますね」
佐天「ヒトデや巻貝、エビやカニ、ハゼやらタコやら、……中にはミョーなヤツも居るけど」
御坂「磯遊びで見かけるミョーなヤツと言うと、うん。黒子、任せた」
白井「ツリエサでお馴染みのゴカイ、ふにゃふにゃなムカデみたいなヤツですけどソレを巨大化させたオニイソメ。
全長1mにもなるというご立派な体躯で、噛まれると結構痛い、むしろ心が痛い、危険生物ですわね
ゴカイの系統で言いますと、ハデな毛羽がわっさわっさの巨大なケムシ状の生き物、ウミケムシ。
本家のケムシ同様に毒針を持っていて、触ると刺されてこれまた痛い、やっぱり危険生物ですの。
あとは、海水浴や潮干狩りで見ることもありますがナマコやウミウシ、アメフラシなども潮だまりでしたら
わりと高確率で観察できるのではないかと思いますの」
初春「おさらいですけど、ゴカイは環形動物、ウミウシやアメフラシはナメクジ化した貝で、ナマコは棘皮動物ですよね」
御坂「そうね。どことなく似てるし、踏むし、見るとテンション下がるし、キモイし、一緒にしがちだけど」
佐天「ウミウシの仲間は綺麗なのや個性的なのも多いですよー。そういう珍しい種類もタイドプールなら居るかもですね」
白井「あと、注意が必要な生き物と致しましては、ちょっと深いところなどですとウツボが取り残されてるかも。
大型のウツボの歯は凶器、噛まれれば海水浴なんて言ってられない事態になりかねませんの。
そして結構有名なスベスベマンジュウガニ。つるっつるで丸っこくて小さなカニですが、数十年前にこのカニは
なんとフグと同じ毒など数種の毒を持つ種だと判明しましたの。食べなければ問題ないのですが、ご注意を。
それから、敢えて言及が必要かどうか判りませんがクラゲ、特にカツオノエボシはビニール風船のような見た目
で子供は触りたがりますが刺されるとシャレになりませんの。死亡例もある超危険生物ですわね。
あとは火山のミニチュアのようなフジツボや、岩の割れ目からニョキニョキ生えてるカメノテ。どちらも甲殻類
ですが、これらは岩場で転んだ時に手や膝などを傷つけますわね」
佐天「クラゲは痛いし、フジツボはほんとにザックリ切れちゃうからなあ。……、フジツボ膝って知ってます?」
初春「佐天さん? 根も葉もない噂話はここではしませんからねー」
御坂「ところでフジツボは勿論、カメノテも美味しいのよね。でも岩からなかなか剥がせないのが残念よね」
白井「美味しさを求めるならヒザラガイもいいですわね。外側はなんと言いますか、世紀末的な関節のプロテクター風。
ですけど内側は……、まあ見た目はともかく刺身に煮付けに味噌汁の具に何でも来い、な味の濃い貝ですの」
初春「へえ~。磯に行けば確かにそんなのあったような気もしますが、気にも留めてませんでした」
佐天「今度磯遊びに行く時はマイナスドライバー必須ですかね」
御坂「ただ、そこが採取を含めて遊べる磯かどうかは地元の人に聞かないと分らない場合もあるから、気を付けてね」
初春「私としては、結構高確率で取り残されてるタコの吸盤でちゅっちゅくされるのがたまらないですけどね」
白井「初春、さすがに心得てますのね。噛まれることに気を付けさえすればアレこそタイドプールの悦楽ですの」
佐天「え……。タコの吸盤に吸い付かれても痛いだけじゃないですか? にゅるにゅるだし、ねえ御坂さん? あれ??」
御坂「……(ホントに気持ちいいのは吸い付いた吸盤をムチムチムチって剥がす時、ってのはセーフ……よね??)」
☆
【とある2人のウニ漫才】
打ち止め「ねえねえ、海の底には愛と勇気と力が静かに眠るって言うけど、じゃあアンパンなマンも居るのかな?」
一方通行「……、この導入はムリにも程があンだろ。海底のパンなンてスカシカシパンが関の山だし」
打ち止め「それ、一時期ちょっとだけ流行ったウニの仲間だよねってミサカはミサカは記憶をたどってみたり」
一方通行「お、この方向でイイのか……? そォだな。スカシカシパンはウニ網タコノマクラ目の…」
打ち止め「そこだよ!」 ビシッ
一方通行「ドコだァ?」 キョロキョロ
打ち止め「えっと、タコノマクラ! みたいにウニの名前はいい加減すぎるよねってミサカはミサカは憤慨してみる!」
一方通行「全部のウニが全部ってワケじゃねェが、まァ確かにイカレた名前を付けられてンのが居るな」
打ち止め「でしょう? だからミサカは物言わぬウニに代わってそうした暴挙を白日の下にさらけ出したいのって…」
一方通行「要するにアレかァ? 珍名のウニを列挙して笑ってやろォと」
打ち止め「ちーがーうーの! ってミサカはミサカはあくまでミサカのウニ愛に基づく善意の行動だと主張してみたり!」
一方通行「愛って言葉の使いドコロ、確実に間違えてンぞ。……まァ、好きにしろ」
打ち止め「許可を貰ったからあらためて! 『ミサカの、こんな命名許せない あほウニランキ~ング!』いえーい」
一方通行「……、ウニ愛とやらは一瞬で何処かへ飛ンでったよォだな」
打ち止め「スカシカシパンとタコノマクラは惜しくもランク外だったけど、来週はガンバレーってミサカはミサカは…」
一方通行「なァ芳川、俺コレどォしても続けねェとダメ? ア、そォ……」 ガックリ
打ち止め「第三位は、ドラムロロロロロロロロルン!! 『バフンウニ』! 解説はお願いってミサカはミサカは華麗にパス回し」
一方通行「俺は解説者か……。バフンウニ系はムラサキウニ系と並ぶ二大食用ウニだ。比較的棘の短い、どこの海にも
転がってる種でありながら味の濃さ、色の濃さ、漁獲量の少なさなどでムラサキウニよりも高級とされてる。
特にエゾバフンウニはウニの中で最上級って言われてンな。草色の短い棘が丸まった様子は植物繊維の塊を
髣髴とさせその姿はまるで……だが、食用生物に付けていい名前じゃねェよなァ……」
打ち止め「もうちょっとマシな別名って無いの? ってミサカはミサカは補足も要求してみたり」
一方通行「ムラサキウニより実が赤いンで『アカ』とかウニの古称『ガンゼ』とか、無い事はねェンだが…」
打ち止め「逆に実が白いからムラサキウニは『シロ』とか『ノナ』って言うみたいだね」
一方通行「残念ながら一般名の代役が務まる程の別名はねェな。つーか、コレ第一位じゃねェの……?」
打ち止め「では、続いていくよー。第二位! 昔話の題名を借りパク『ブンブクチャガマ』たち、だよ!」
一方通行「コレは名前だけは有名だが実物は見た事ねェヤツが多いンじゃねェか? 昔話も超メジャーじゃねェし。
あらすじは、何だっけか。罠に掛かったタヌキを助けた男に恩返しをするためにそのタヌキは茶釜に化け
自分を売って金にしろ、と男に言う。売られた先で茶釜として火に掛けられたところで変化が中途半端に
解けて、茶釜から手足頭が出てるタヌキっつー姿で男の家に逃げ戻り、また世話になる。その後オカシナ
姿を生かして自分を見世物にすることでタヌキは金を稼ぎ、男は裕福に暮らしましたとさ、だっけ」
打ち止め「要はたぬきの恩返しなんだよね、ってミサカはミサカは貴方の恩返しを24時間365日いつでも待っててみたり」
一方通行「後半何言ってンだかサッパリですけどォ? ンでまァウニだが、見た目は毛の生えた茶釜ってトコだな」
打ち止め「コレ一種なら問題なかったんだけど、ブンブク目全体では名付けのセンスが疑われるんだよね」
一方通行「タヌキの話から名前を付けてンのに、キツネブンブクとかライオンブンブクとかウルトラブンブクとかな」
打ち止め「じゃあついでに、そういう安易な名前のウニを一挙に紹介するもうすぐランクインだよー!」
一方通行「……、何のヒネリもねェ名前のウニを言えばイインだな? ンじゃ、順不同で
ラッパウニ、パイプウニ、マンジュウウニ、ネオマンジュウウニ、コメツブウニ、マメウニ、タマゴウニ
ノコギリウニ、ジンガサウニ、コデマリウニ、オトヒメウニ、ウラシマウニ……、キリがねェンだが?」
打ち止め「全部見た目一発って感じかな? ってミサカはミサカは、でもウラシマオトヒメは違うかもって思ったり」
一方通行「オトヒメウニ亜目の種はミリサイズのウニらしいンで、由来は見た目じゃねェかもな。実際知らねェが」
打ち止め「課題が残っちゃったね、ってミサカはミサカは貴方の更なる精進を期待してみたりって痛っ!」 ビシッ
一方通行「ったく、テメエは何様だっつーの。……ンで、栄えある第一位はどォした?」
打ち止め「うう、今のチョップで忘れちゃったよってミサカはミサカは悲しいお知らせをしてみたり」
一方通行「……ハァ?」
打ち止め「冗談だけどね、ってミサカはミサカは痛たたたたたっ、ぐ、グリグリにも負けずに最後まで頑張ってみたり」
一方通行「御託はイイから、さっさとこのクソくだらねェ時間を終わらせろ!!」 グリグリグリグリ
打ち止め「だ、第一位は、『アリストテレスのちょうちん』! ってミサカはミサカは痛みに耐えて発表してみる!」イタタタ
一方通行「最後の最後で、ウニの名前じゃねェの出してどォすンだよ……」
打ち止め「細かいことはいいからいいから。解説よろしくねってミサカはミサカはお願いしてみる」
一方通行「チッ……今言ったが、コレはウニの名前じゃねェ。多くのウニの仲間が持つ咀嚼器、口の部分を表す名前だ。
ウニは体の丁度真下の中心部分にあるこの口の中の5枚の歯でコケやら海草やらを削って食べる。解剖すると
この部分はがっちりとした骨質で出来たドーム状になってっから誰でもすぐ見分けられるだろォな」
打ち止め「でも、ブンブクチャガマはそれを持ってないんだよねってミサカはミサカはフォローしておく」
一方通行「そォだな。ウニの分類においては重要な器官と言えるかも知れねェ」
打ち止め「それにしても余りにもミスマッチなネーミングだよね。何でこうなったの?」
一方通行「古代ギリシアの知の巨人、アリストテレス。全ての学問はコイツが源流とさえ言われる怪物だ。哲学、倫理
政治に文学、後世に影響を与えた事例は数知れず。科学だって宗教だって例外じゃねェ。とにかくあらゆる
知的活動の基礎を1000年以上も担い続けた大天才、の名前がどォしてウニの口器に、しかも提灯とペアで?
この疑問の答えは簡単で、実際にアリストテレスがウニをレスボス島ってトコで観察していて、その部分の
事を『提灯そっくり!』って書きとめていた、とされる記述が後の世に発見されたからだ」
打ち止め「さすがの偉大な哲人も、ソレが原因で後世に自分の名前がそんな所に残るとは予想できなかっただろうね……」
一方通行「現存すンのは本人の記述じゃなく死後に他人が纏めた物だから、ンな考慮はそもそもしてねェだろォな」
芳川桔梗「ちなみにね、アリストテレスって名前は『最高の目的』って意味なのよ」
番外個体「ほうほう。ちなみにミサカは『最悪の目的』で一方通行言行録を纏めてんだけどね。黒歴史的な」 ケケケ
一方通行「まだ本人生きてンのに勝手な事すンじゃねェ! ヨーロッパタヌキブンブクぶつけンぞゴラァ!!」
~おしまい~
200 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/08/17 18:38:15.47 +7XNge4m0 139/386以上、第十八回「名前」でした。
第二パートでタコの吸盤がどうのこうの、ですが吸盤内は割と汚れてるので長時間ペタペタするのは良くないかもです
第三パート、ヨーロッパタヌキブンブクはウニの仲間ですが、ウニを投げるとウニの健康を損なうおそれがあるので
絶対に投げないで下さい
次回は・・・、おさかなネタで普通のSSを無理やり書いてみようかとか思いつつ、ではでは~
202 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/08/17 22:08:45.81 v5ic+TpDO 140/386上条ちゃんの珍妙な名前はー?・・・ってあれ?
203 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/08/17 23:57:51.91 +7XNge4m0 141/386第一パートの補足忘れてたあげ。
サブロウは熊谷次郎より細いからサブロウなのは確かだけどシロウ以下の由来はホントは定かじゃないのに
話の中では大きさで名前がついたって決め付けちゃってます。ネタで使うときなどはご注意ください
>>202
見た目だけならムラサキウニかガンガゼだけど、不幸で苦労してるからクロウニとか?
206 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/08/23 20:42:49.16 xXM2uyOH0 142/386ひっさしぶりのおさかな話、予定していたSS風味がなかなか書けないので通常番を投下しまーす
今回は、若干小難しい単語が出てきますがそういうのは無視しても大丈夫な気もします。
岩の割れ目から一匹が顔を覗かせると、続けて数百匹が超高速でゾロゾロゾロゾロゾロなフナムシ話は
残念ながらありませんが。
そんな今回のテーマは「進化」です。ではどうぞ
☆
「なあインデックス、ニワトリの卵でときどき黄身が二つ入ってんのがあるけど、そのまま育ったら双子になるのか?」
「とうま……。それ本気で言ってるの?」
「そのカワイソウな人を見るような目はなんなんですかぁ!? 俺だって普通に売ってる卵が無精卵だってことくらい…」
「無精卵は言うまでも無いんだけど、有精卵でも双子のヒヨコは産まれないんだよ。ちょっと人間の場合を考えてみて」
「人間の双子の場合って事か? ……って言われても、お母さんが大変なんだろうなー、くらいしか想像出来ないけど」
「そこだよ。二人をお腹の中で育てるのは一人の時よりもすごく大変で努力が要ることなんだけど、卵はどう?」
「卵の努力? あ……、そういうことか。卵ってのは母体から独立しちまってるから、努力が出来ないってことだな?」
「うん。最初から限界が決まってるからイレギュラーで黄身を複数抱えてしまうと、成長を支えられないんだよ」
「なるほどね。ニワトリの卵はあくまでもヒヨコ一匹分の栄養貯蔵庫にして保護装置。だからムリ、か」
「そうだね。ちなみにそういう卵は主に産卵を始めたばかりの若い雌鶏にみられるんだよ」
「体が出来上がって、産卵に慣れてくれば残念な卵を産むことも少なくなって……、でも簡単に見分けってつくのか?」
「双子かどうかを? ……器具無しで見分けるのは難しいけど、敢えて言うなら双子卵はちょっと細長い感じがするかも」
「ふ~ん。それにしてもニワトリも子供を産むようになればそんな問題は無くなるのにな。進化がまだまだ途中っつーか」
「とうま? それはちょっと違うんだよ。卵生も胎生もそれぞれ現代まで淘汰を免れた最適な解答なんだから」
「ん? いや、だってさ。一番進化してる生物であるところのヒトが、子供を産む『胎生』だろ?」
「……、とうまの進化の考え方は、悪い意味で進歩史観的に偏っているのかも? これは治しておかないとね」
「な、なんだよ。悪い考えを治すとか穏やかじゃないぞ? 異教のサルとか言い出さないでくれよ……」
「まさにそれ! サルが人間より遅れているという認識なくしては出てこない悪い言葉。進化を勘違いしてるんだよ」
「いや、コレは元々俺のセリフじゃ……、(まあいいか。黙って話を聞くとしよう)。 ほうほう、というと?」
「適者生存って表現のほうが判りやすいかな。今、存在している生き物はその環境に最も適応してるってことだよ」
「ん~、概念とか理論の話は難しいから、……そうだな、さっきのタマゴか子供かの話で説明してくれないか?」
「そだね。じゃあねえ、脊椎動物の系統ってわかる?」
「系統? えーと……、魚類から両生類、それと爬虫類と哺乳類が出来て、爬虫類の一部が鳥類に、ってヤツか?」
「まあそれでいいよ。次は魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類のうちタマゴを産むのはどれ?」
「鳥と魚は当然として、えーとカエルは……、タマゴだな。ヘビもタマゴだし。つまり、哺乳類以外全部だろ」
「哺乳類でも、カモノハシとかハリモグラとかはタマゴを産むよ?」
「そ、そっか、そうだよな。ってことは全ての脊椎動物がタマゴを産む……、いやいや、ヒトはタマゴじゃねーよ」
「子供を産む爬虫類や魚類もいるしね。魚類で言えば、軟骨魚類と硬骨魚類って知ってる?」
「軟骨魚類、サメやエイだよな。現在の硬骨魚類よりも昔から居たってのは知ってるけど、それがどうかしたのかよ?」
「サメの多くは卵胎生、つまり子供を産む魚なんだよ。一方、硬骨魚は卵生だよね。コレをとうまの理屈で言うと」
「硬骨魚の方がより進化している種類だから、子供を産むよりタマゴを産むほうが優れているってなっちまう、か」
「うんうん。タマゴかどうかだけで見ても、進化はたった一つの究極を目指すものでは無いって事がわかるよね」
「つまり適者生存とか自然淘汰って『問い』には最適な解答がいくつもあり得る?」
「もちろんだよ。ただ、長い時間をかけて磨きぬかれたはずの現在の生き物たちが本当に最適かと聞かれると…」
「そうなんだよな。無駄な習性を持つ生き物とか、何でそんなトコに棲むんだよって生き物って居るし」
「進化は基本的に意思や努力とは無関係だから、その意図不明な性質には生き物自身も観察する人間にも判らない利点があ
るのかもね」
「なるほどわからん。現在まで生き残ったのは結局運が良かったからでした、ってオチもあり得るんじゃねーの?」
「そういう場合の用語もあるよ。畑にまいた種から出た芽のうち、たまたま鳥に食べられずに成長した苗、みたいな」
「他と比べて傑出した才能を持っていたワケじゃなく、運が良かった、ツイていた、の連続で生き残るヤツか」
「適者生存に対してその場合は運者生存って言うんだよ。短期間、個体ごとに観察する場合に起こることが多いかも」
「運命に逆らって生きるタフなヤツ、って感じかな。……ところで、サメがタマゴでなく子供を産むということはつまり」
「あ、もうオヤツの時間だね。それじゃ今回は流れに逆らってこの辺りで終わるんだよ!!」
☆
佐天「雷神トールって居るじゃないですか、北欧神話の。アレっていろいろおかしくないですか?」
初春「トリウムや"thursday"の語源になってる神様ですよね。今いろいろと話題ですけど、なんのことですか?」
佐天「まずはあのミョルニルだっけ? 振れば雷を起こし掲げれば雨を降らし投げれば必ず敵を粉砕して戻ってくるって」
白井「神話に突っ込んでも詮無きことですけれど、まあ聞けば何とも便利な道具ですわね」
御坂「ところが、ミョルニルはバカみたいに重い上に常に高熱を帯びていたから素手では触れない危険物だったのよ。トール本人も含めてね」
佐天「力帯と篭手がないと使えない武器って、言っちゃえば欠陥品ですよね。神のクセに欠陥品掴まされるって」
初春「まあまあ。ミョルニルは他にも無限の再生能力やらなんやらいろいろ司っちゃう超便利なお宝だったんですから」
白井「反面で扱いが難しいというのは、チート防止の観点からみれば当然ですの」
佐天「ところがですよ、トールはそのお宝武器を敵対していた巨人に盗まれるんです。うっかり居眠りしている最中に」
初春「本人でさえ素手で触れない物をどうやって盗んだかは置いといて、なんて不注意な……」
御坂「トールは『返してくれー!』って、巨人に頼みに行くのよね。敵相手に随分と呑気な神様だわ……」
佐天「当然、タダでは返してくれない。見返りは『超美人の女神を嫁にくれたら交換してやる』……、平和ですよね」
御坂「女神に、『嫁に行ってくれない?』って頼んで当たり前に断られて、トールはさらに訳の分らない事をすんの」
佐天「つまり『じゃ、俺様が女装して嫁に行けばいいんじゃね?』作戦ですよね」
御坂「うん。マッチョで毛むくじゃらの容姿を花嫁衣装で隠す程度の女装でやり過ごせると思っちゃったみたい」
白井「……神様なら完璧な変身だって出来るでしょうに。それで結局どうなりますの?」
佐天「嫁入りする美女神、として巨人の屋敷に入ったトールですけど、誤魔化し続けて最後までバレませんでした」
御坂「で、結婚式の儀式用品としてミョルニルを出してきたから、それを奪い取って大暴れ。まあご都合主義よね」
初春「ところで皆さん。今日はおさかな話はしないんですか? トール関係で何かあればまだ間に合いますけど……」
佐天「え、あ……、強いて言えばアレかな。罪を犯した挙句に色々な姿に変身して逃亡する神様を捕まえた話」
御坂「サケの姿になって川を下ろうとしたところをトールが捕まえたから、サケの尻尾は薄くなっちゃいました」チャンチャン
白井「え、いやいやいやいや、お姉様? 捕まえたのはサケに化けた神様で、本物のサケではないですわよね?」
御坂「おバカなトールのことだから見ただけじゃどれがソイツか分らなくて、とりあえず全部掴んでみたんじゃない?」
佐天「……、話を聞いていて何と無く思ったんですけど、御坂さんってトールって神様のことキライですよね?」
御坂「いや、神話を語っただけよ?? 特に他意はないわよ?? 本当よ??」
☆
打ち止め「ねえねえ、ヒトはどうやったら水の中で生活できるのかな?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
一方通行「……、潜水艦とかダイビングの話か?」
打ち止め「ううん、そうじゃなくて。おさかなみたいに器具のいらない水中生活をしてみたいんだけど」
一方通行「………………………………………………………………、取りあえず座れ」
打ち止め「おお? 未だかつて無い本格的講座の予感?ってミサカはミサカは期待に胸を膨らませてみたり!」チョコン
一方通行「ワケ分ンねェ事言ってンじゃねェ! ……で、結局、テメエは魚になりてェのか?」
打ち止め「あ、いや、別にそこまで求めてな…」
一方通行「答えはイエスかノー限定だ! 魚になりてェのか、どォなンだよ?」 ドンッ
打ち止め「なんでそんなに怒ってるの? ってミサカはミサカは疑問なんだけど、ひょっとしてミサカは魚になれるの?」
一方通行「ほォ……イエス、だな? ……テメエは魚類であることを望ンだ。後悔すンなよ?」
打ち止め「これからミサカは体中を好きに弄くられて、おさかなにされるんだねって……、いやいやちょっと待って!!」
一方通行「ン? リコールは受け付けてねェぞ。潔く諦めろ。とりあえず魚類とは何かについて話してやるから良く聞け」
打ち止め「あわあわ、無意識に悪魔の契約書にサインした気分だよ、ってミサカはミサカは動揺を隠し切れずにいたり」
一方通行「もう遅ェ。さて、ンじゃ解説前の導入なンだが……、単細胞生物って分るか?」
打ち止め「一番最初の生き物がそんな感じだよねって、ミサカはミサカ自身は多細胞生物だと主張してみたり」
一方通行「ココではその理解で充分だ。ところで、ソイツらはどォやって呼吸してると思う?」
打ち止め「単細胞生物の呼吸? えっと……、やっぱり皮膚呼吸みたいな?」
一方通行「細胞膜を通したガス交換だから、イメージとしては正解だ。この手の呼吸法は小さなサイズでは有効なンだが」
打ち止め「大きくなると不都合があるんだねって、ミサカはミサカは先回りしてみたり」
一方通行「あァ。例えばの話、一辺が10の立方体で出来た生物の体積は1000で表面積は600だろ?」
打ち止め「うん、ミサカはあなたが何を言いたいのかよく分らないけどそれでいいと思う」
一方通行「……、次に一辺が1000の立方体の場合、体積は10億で表面積は600万」
打ち止め「ふむふむ。大きくなったことで体積、つまり体の大きさに比べて呼吸に使える表面積の比率が減ってるね」
一方通行「そォ言う事だ。つまり、皮膚呼吸のよォな方法だけでは多細胞生物は間に合わなくなっていく。ンじゃ行くぞ」
一方通行「単細胞生物から多細胞生物への進化においては、体の大型化が容易になった一方で前述したよォに新たな
呼吸手段を見つける必要が出てきた。表面積を増やすために体を大きくすることは出来ねェワケだから、
既に持ってるモノを改良しなければならねェ。そこで目を付けたのが消化管だ。栄養を吸収するのが主な
目的の器官だが、体の内部のよォで実は外部に接してンで丁度都合が良かったンだ。それで最初は大きな
肉体的変化を伴わない腸壁経由のガス交換による呼吸をしていたンだが、この方法にも欠点があった」
打ち止め「腸を呼吸に使うことの欠点って何?ってミサカはミサカは注意深く尋ねてみたり」
一方通行「腸だとク……食い物が詰まってたら息が出来ねェだろ」
打ち止め「なるほど~、ってミサカはミサカは焦って言い直す紳士なあなたはちょっと違うんじゃないかって思ったり」
一方通行「余計なツッコミ入れンじゃねェ! ……、ちなみにドジョウが行う腸呼吸はその名残だ。ンじゃ、続けンぞ」
一方通行「腸を使った呼吸は不安定で限界もすぐに来ちまった。さらに体を大型化するには最早呼吸専門の器官を作る
必要があった。そこで産まれンのがエラを持った生物だ。エラはやはり消化管の一部、具体的には口腔内や
咽頭内から外部へと繋げた水の通り道に作られた。専門の呼吸器だから形状は呼吸だけの都合で構わねェ。
水に溶けた酸素を効率よく取り込めるよォに、なるべく表面積を大きくするべく糸状や弁状を集めた物って
基本形は全てのエラを持つ生物に共通してる。そして、当然だがエラは魚類の呼吸器の典型だよな」
打ち止め「話が佳境を迎えているんだねって、ミサカはミサカがヒトで居られるのもあとわずかなのかなって涙ぐんだり」
一方通行「……、ちなみに現在の魚類を大きく分類すると軟骨魚と硬骨魚に分かれンだが、違いは判るか?」
打ち止め「ほえ? どちらも骨格を持ち脊椎を持つけど、軟骨魚は骨格が全部が軟骨だ、とか?」
一方通行「例えば頭骨は元々全ての生物で硬骨だったってのに、現存の軟骨魚はそこすら軟骨に変えちまってンだよな」
打ち止め「ところで軟骨魚といえばサメやエイ。とっても大きな魚ばかりだよねってミサカはミサカは確認しておく」
一方通行「逆に硬骨魚は小せェよな。そして太古の水中では個体サイズが圧倒的に違う勢力同士のサバイバルが起こる」
一方通行「結果的に海を制したのは巨大化に成功した種、つまり軟骨魚とイカなどの祖先が含まれる軟体動物だった。
体の小さな硬骨魚はそれらの影で細々と種を紡いでたンだが、いつまでもココに居てはエサとして喰われる
だけ。ならばいっそと、海を捨てる集団が出てきた。魚類の淡水、つまり川や湖への進出だ。海水魚が淡水
に適応するのは容易な事じゃねェ。逆に言やァ、淡水に適応出来れば最早大型の軟骨魚に追われずに済む。
こォして淡水への進出を始めた硬骨魚の一部だが、淡水には浸透圧の違い以外にも大きな問題があったンだ。
ソレは酸素不足。海に比べれば圧倒的に水量が少なく、且つ不安定な川や湖はそこに棲む水生生物にとって
常に酸欠の危険性を持つ場所だった。コレに対抗するべく作られたのが水中の酸素ではなく、大気中の酸素
を取り入れるための器官、つまり肺だ」
打ち止め「むむむ? つまり肺は淡水に進出した硬骨魚が起源だって事?ってミサカはミサカは要点をまとめてみたり」
一方通行「そォだ。だから現在の海水魚で肺を持ってンのは川から海へ戻った種って事だ」
打ち止め「ん??? 肺を持ってる魚なんてハイギョとかくらいで、ほとんど居ないんじゃないの?」
一方通行「ソレはどォかな? 確かにこの世界には肺で呼吸する魚は少ねェが、なら肺は何処へ行ったのか。ラストだ」
一方通行「淡水魚は空気中の酸素を口から取り込む器官、肺をやはり消化管の一部を変化させて作り上げたが、現在の
水棲魚類で肺呼吸をする魚種はテメエの言うとォり少ねェ。コレは淡水中では海中のように大型種の脅威に
晒されなかったンで、当初は当然のように目指していたはずの自己の大型化が必要なくなった、ということ
も理由だろォし、そもそも海中に比べて栄養が少なく、大型になれる環境ではなかったから酸素がそれほど
要らなかったから、とも考えられる。だが何よりも、体の中に空気を貯めておく器官っつーのは水棲生物に
とって呼吸と並ぶと言えるほどの便利な使い道があったンだよ。サメやエイなどの淡水に未進出な魚は持っ
ていない、多くの魚が大して力を使わずに水中を漂って要られる所以。ココまで言えば分るだろ? 多くの
魚類は肺を浮き袋として変化させて使ってンだよ。軟骨魚以外で浮き袋を持たない魚を探すのが難しいほど
浮き袋、専門用語では鰾だったか……、は一般的な魚を語る上で外せねェ器官だろ? 何しろ生きた化石の
シーラカンスでさえ、ちょっと退化が進ンではいるが持ってるくらいだからなァ。そして現在では浮き袋を
持つ硬骨魚は海中でも淡水中でもその特性によって大きく繁栄してるってワケだ」
打ち止め「ふむふむふむ。つまり魚の浮き袋は呼吸に使わなくなった肺、ってことを長々と説明したんだよね?」
一方通行「ほォ……、立場も忘れて偉そォな態度取ってるが、これからテメエは魚になるンだろ?」
打ち止め「…………あ、あれは冗談だよね? だよね???ってミサカはミサカはみさあおあうおあうあおうああー!」
芳川桔梗「ぷっ。やっぱりこの子、ちゃんと話を聞いてなかったみたいね。ほら、説明してあげなさいよ」フフッ
一方通行「バァーカ! 最後の解説をよく思い返してみろ。『現在の水棲魚類で肺呼吸する魚種は…』って言ったろ?
コレが何を意味するかだが、水棲魚類ってのは水の中に棲む魚だろ? 変な表現だと思わなかったのかよ?
水の中に棲ンでねェ魚が居るって事を暗に示してンだ。そンなもン居るはずねェって思うか? ところがだ。
肺を獲得して空気中の酸素を取り入れることが可能となった魚の一部は川から上がり陸上での生活を始める。
これが両生類、爬虫類と哺乳類の誕生だ。そン中で爬虫類の一部、恐竜と呼ばれていた種から鳥類が誕生し
現在の脊椎動物の大系に近づいて行くンだが、問題は、その全てが硬骨魚類から進化したって事だ。これを
分岐分類の観点で論じると、ヒトは硬骨魚って事になる。エラは退化しちまったが硬骨魚の証の肺を持って
ンだろ? つまり、テメエは何もしなくても既に魚類って事なンだよ」
芳川桔梗「ヒトを生物として分類するとき、単系統群で見た場合は硬骨魚に含まれる、と言って間違いないわね」
打ち止め「あの……、だまされたー!ってトコなんだろうけど、難しくて良くわかんないよってミサカはミサカは…」
番外個体「おや、こんなところに謎の紙袋が。……解説が不満なら、優しい妹がおさかな変身セット探したげるよん?」
打ち止め「よく分ったよおおおお! ってミサカはミサカは身の危険を感じて態度を一変してみたり!!!」
~おしまい~
213 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/08/23 21:02:49.42 xXM2uyOH0 149/386
以上、第十九回「進化」でした。
第一パート、えーと、サメを漢字で書くと鮫。つまり交わる魚・・・えーと
第二パート、あちらの神話ではサケが出ることが多い気のせいがします
第三パート、実に小難しくなっちゃってますが何が言いたかったというと「魚になりたいよー」 「ヒトも魚だよ?」
ってことです。伝わらなかったらごめんなさい。
というわけで、また次回~
218 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/09/06 20:12:17.17 //qUjfx70 150/386久しぶり過ぎる更新です。力不足が否めない・・・
そんな今回のテーマは「視点」です。いつもよりムダ情報の濃度を押さえ気味にしたんだけどどうなんだろ?
いつも以上に心配しながらの投下ですが、宜しければどうぞ
☆
「なあインデックス、イルカとクジラの違いってのは大きさだけなんだよな。デカイのがクジラっていう」
「うん、そうだよとうま。明確な基準じゃないけど、最大体長4mが境目って考えればいいかも」
「当たり前だけど最大体長で区別してるってことは、クジラの子供がイルカってワケじゃないんだな」
「言うまでも無いかも。ついでにいうとヒゲクジラの仲間には小型種が居ないから、イルカは全部ハクジラの仲間って事だね」
「イルカとクジラが含まれるクジラ目を、主に歯の形状で分類したのがハクジラとヒゲクジラだっけ?」
「まあそれでいいよ。ヒゲクジラの仲間は普通の歯の代わりに口の中にヒゲ板がずらっと並んでるんだよ」
「大量の海水を飲み込みそれを濾過して残ったオキアミなんかを食べるための器官だよな。体の割に小さな好物っつーか」
「現生最大哺乳類のシロナガスクジラもヒゲクジラなんだよ。まあ正直、口に入れば大体のものは食べちゃうみたいだけどね」
「以上を踏まえて質問なんだけど、シャチっているだろ? アレはクジラとイルカ、どちらに分類されるべきなんだ?」
「もう一度イルカの定義をおさらい! イルカはクジラ目のハクジラの仲間で最大4m以下の種を表すんだったよね?」
「獰猛なシャチは当然鋭い歯を持つハクジラの仲間で、最大で10m近いんだっけ……。そんなイルカがいるか?」
「定義どおりならシャチはクジラ、なんだけどマイルカ科に属し、イルカのイメージの体型をしてるシャチをクジラと呼ぶのは抵抗があるよね」
「…………だよな。ま、要はクジラとイルカは慣例的分類に過ぎないって事か。だからシャチはシャチって呼ぶのかもな」
「ちなみに英語ではシャチを"Killer whale"とか"Orca"って言うんだよ」
「ふーん、英語圏ではクジラって認識なんだな。って言うか直訳なら『殺し屋クジラ』か……? もう一つの名前も聞いたことはあるけど」
「"Orca"は学名の"Orcinus orca "が由来だね。属名と種小名で表されるこの名はラテン語で『冥府より来たりし魔物』ってとこかな」
「……なーんか殺し屋とか冥府とか魔物とか、一気に幻想世界に引き込まれた感があるんだけど……。オルキヌスねえ」
「それくらい恐れられている生き物ってことだよ。シャチは大型のクジラだってサメだって襲うんだから」
「殺し屋の名は伊達じゃない、か。素手の人間が襲われたら手も足も出ないだろうな」
「でもね、人間を食べ物と認識して襲う事はないみたいだよ。あってもアザラシとかと間違えてるだけで」
「いや、その理屈はオカシイ。区別出来てないってことは食べ物と認識されてるってことじゃねえか」
「まあそうなんだけど。違うと判ればもう襲わないみたいだし、決して人間の敵じゃないんだよ」
「あのな、よく聞けインデックス。美味しいリンゴと硬くて歯も通らないけどいい香りのするカリンの実があるとする」
「ほえ? リンゴとカリンの実を想像すればいいの?」
「この2つを見分けられない人は、かじって初めてそれがリンゴかどうか判る。リンゴならそのまま食べればいいけど」
「カリンだったら硬くて食べられなくて結局捨てる、かな? それでそれで?」
「果物を動物にたとえるのもなんだけど、リンゴにとってその人は捕食者だよな。カリンにとっては違うといえるか?」
「ん~、言いたい事はわかるんだけど、果物のほうに視点を持っていくのはおかしいよ。あくまで人間目線じゃないと」
「そこだよな。熊や毒蛇などの危険な獣ってのは人間にとって、つまり人間から見て危険だからそう言われるんであって」
「……確かにシャチは人間を襲わない、って話はシャチの視点になってたね」
「何かをより良く、またはより悪く表現するために別の、この場合人間以外の視点を持ち出すのは問題があるんじゃねーか?」
「視点の変化自体は普通の表現方法なんだけど、何かを恣意的に評価するための視点をわざと用意するのはちょっとインチキかもね」
「俺はそう思うぜ。例えばほら、役立たずの大飯喰らいで、最近じゃ得意の魔術解説さえ他人にお株を奪われる超絶ダメシスターとかさ」
「無責任な放言で自分勝手に他人の努力を否定した挙句、暴力でしか物事を解決できない最低最悪の欠陥ヒーローとかね」
『……………………』
「……特定の物事を貶める為に複数の視点を用いて一つの虚像を作り、結果、誰の考えでもないそれが一人歩きしちまう例だな」
「逆に何かを讃えるために虚像を作ってる人は、自分がやってることがコレと同レベルかも? って注意したほうがいいんだよ……」
「……まあ、さ。動物が何を考えてるかなんてわかんねーんだし、その上で勝手に良い子悪い子の区別を付けてるんだから」
「人間の視点から判断されなくては不自然だね。となると"Killer whale"より"Orca"を使おうって働きかけも変なのかも」
「殺し屋じゃイメージが悪いってか? そういうシャチ大好きな人が居るのは理解できるけど、他人に押し付けちゃダメだよな」
「そうかも。外海でシャチを直接見て恐怖を感じないワケがないもん。怖くないオルカなんておるか!? だよ」
「それもダメだろ」 「…………だよね」
☆
初春「ネットで見たんですけど、御坂さんと白井さんってコンビで『常盤台のキャットフィッシュ』って呼ばれてるらしいですよ」
佐天「ナニソレナニソレ何か怪しい響きじゃん? もしかして御坂さん、とうとう白井さんの魔の手に堕ちちゃったり?」
御坂「魔の手って……、いや、私達がおさかなを良く知ってるからって事じゃない? いわば通り名かしらね」
白井「キャットフィッシュ、つまりナマズですの。……私はその名はどうかと思いますけど。ヒゲ面のヌメヌメですし」
御坂「そう? 私は結構気に入ってるわよ。知り合いがナマズと電撃使いは共通点が多いって言ってたし」
白井「その知り合いの方が一番気に入りませんの! とは言え、勝手に周りがそう呼んでいるだけですから仕方ないですわね」
佐天「ふむふむ、でもコンビ名ってなんか燃えますよねー! 次はバトル方面への展開ですか?」
白井「話を聞いてませんの?? そんなの私たちの本意では…」
初春「いいですね!! じゃあ、宿命のライバルのコンビ名を考えましょう!」
白井「初春~~、佐天さんの悪乗りに付き合ってどうするんですの。お姉様も何とか言って下さいまし」
御坂「そうねえ、キャットフィッシュのライバルだからネズミって名前のつく魚がいいのかなあ??」
白井「お姉様……?」
佐天「いやいや、ネコとネズミじゃ一方的な捕食関係じゃないですか。ここはやはり、犬でしょ!」
白井「単純にネズミウオと呼ばれる魚が何種類もいて、中から一つを選ぶのが面倒だったんではないんですの?」
初春「犬と魚……、オオカミウオはどうですか? 鋭い牙としっかりした臼歯を持つ怖い顔が特徴の海産魚ですけど」
白井「初春は何の名前を決めてるのかさえ忘れてません? チーム名『オオカミウオ』ってセンスの欠片もないですの」
御坂「いやあ、さすがにオオカミ相手じゃネコが可哀相よ。やっぱり犬、というよりキャットに対してだからドッグで探すべきね」
白井「ハァ…………あの、でしたら私に心当たりが。脂が少なくてマズイので犬しか食べない、という由来の名前を持つ魚が居ますわね」
佐天「……それ、なんか悲しいですね。必要とされてない事をわざわざ名前にするなんて」
白井「他にも安物の魚、撒き餌にするより仕方の無い魚、などの悲しい異名を持つこの魚ですが、日本では扱いが違いますの」
御坂「あー、それだけ言われれば私にも判ったわ。ドッグサーモンことシロザケ、いわゆるシャケでしょ?」
初春「確かに日本ではサケといったら代表的な食用魚、秋味なんて呼ばれたりもする好きな人が多い魚ですよね。この違いはなんでしょう?」
御坂「新巻鮭という保存法を発明したのが大きかったんじゃない? 脂が少ないことが逆に長期保存には適していたのよ」
佐天「所変わればなんとやらですね。英語圏の人にもシャケの美味しさが判る日がいつか来るのかな?」
初春「それはともかく、御坂さんたちのライバルチームの名前は『ドッグサーモン』で決定ですね」
佐天「宿命の好敵手、『キャットフィッシュ』と『ドッグサーモン』の血で血を洗う抗争が始まるわけかー」
白井「物騒なことを言わないで下さいまし。大体、私たちに敵うサケ属性のコンビなんて都合よく居るはずがないですの」
御坂「もし実在したところで、川じゃサケなんて体は大きいけどほっとけば自滅する魚だから、名前からして相手にもならないわよ」
初春「みなぎる自信溢れるコメント戴きました!! ……あの、ところでお二人の後ろにいる、すごい美人の方はお知り合いですか?」
佐天「び、美人だけど、なんか今にも爆発しそうな顔でこちらを睨んでらっしゃいますけどおおお?」
御坂「ん~、心当たりはないけど身に覚えはあるような。……皆は先に行ってて、すぐ追いつくから」 ニコニコ
☆
打ち止め「ねえねえ、第7学区のオープンカフェ付近で爆発だって。怪我人はゼロだけど近くの廃ビル一棟丸ごと消し飛んじゃったって」
一方通行「あァ? 今日も学園都市は平和だねェ。……どォせ調子に乗った能力者がハシャイだンだろォが、バッカじゃねェのっつーの」
打ち止め「能力者同士の仕業だとしたら……あなたにそんなことを言う資格は1ミリもないけどねってミサカはミサカは毒舌してみたり」
一方通行「…………………………………………まァ、そりゃそォだ」
打ち止め「大体あなたはすぐ他人を評価したがるけど、他人を評価する絶対の基準を持ってるつもりなの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
一方通行「……そンなに評価しまくってねェよ。三下とか悪とか善とか闇や光の世界の住人とか、その程度だろォ?」
打ち止め「それが道理に適った正しい評価だと思ってるなら、あなたは自分のことを正義だと思ってるって事になるよね」
一方通行「テメエ……、ウゼェ説教はそン位にしておけ。それに正義っつーのはそンな単純なもンじゃねェンだよ」
打ち止め「一方通行が正義を語る、は次の機会で。ところでドジョウって地味じゃないよねってミサカはミサカは唐突に話を変えてみる」
一方通行「………………オイオイ、流石に急展開過ぎンだろ。その話題自体、旬を逃した感もあるしよォ」
打ち止め「でもね、仮にこの評価が不当なものだとしたらドジョウに失礼だと思うのってミサカはミサカは問題点を指摘してみたり」
一方通行「ンな事気にする魚類が居るかよ。だが、割と名前は出してンのに詳しく解説した事はねェな……」
打ち止め「だよねだよね。せっかくだからこの機会にドジョウを良く知れたら嬉しいなってミサカはミサカは頼みこんでみる」
一方通行「チッ……、念のため言っとくが今から話すのはドジョウ、時にマドジョウとも呼ばれる最も一般的な種について、だ」
打ち止め「ドジョウの仲間は、シマドジョウやスジシマドジョウ類、フクドジョウにホトケドジョウ、イシドジョウ、アジメドジョウ…」
一方通行「アユモドキ、もだな。それぞれで生息地も生態も姿形もかなり差異があって一括りに出来ねェからな」
打ち止め「だから食用としても身近な魚としても代表的なマドジョウを取り上げるのねってミサカはミサカは納得してみたり」
一方通行「そォだ。今回は特にドジョウの飼育と食用について取り上げるが、多分に独断と偏見を含むンでそのつもりで居ろ」
打ち止め「いまさら何を?いつものことだよ?ってミサカはミサカはその予防線の意図が掴めなかったり」
一方通行「ガキには判らねェ事が色々あンだよ。まァ気にせず行くぞ」
一方通行「円筒形の体とコイ目の特徴の噛み切る歯のねェ口での吸ィ込み食性で『川のミミズ』と称されるドジョウは、しかしミミズが
土壌をその生態によって改良し植物の育成に多くはプラスに働くと考えられてンのに対して、むしろ川底を掻き乱し生物層を
単純化させる害魚の一面を持つ。特にコイツらは砂に潜るンで底の掻き回しレベルは有害魚の代名詞なコイより悪質だろォな。
水槽で飼育するとその悪癖がよく判る。時に砂に潜ったまま移動して水底に貯まったゴミを舞い上げるよォに泳ぎ、苦労して
整えたレイアウトを崩しまくり、対処せず水草を植えてンなら確実に掘り返しちまう。コレを川でヤれば、水草に付くエビや
水生昆虫も居なくなり、当然ソイツらを餌にする小魚も居なくなる。結果的にドジョウの多い水域では水が汚れ、生物が棲み
難い環境になるが、ドジョウはかなり悪化した水質でも平気なンだな。『死んだ川』って表現があるが、アメリカザリガニと
ドジョウすら居ねェ川ならそォ呼ンでもイイ。ま、ソレはドジョウが『殺した川』なのかも知れねェけどな」
打ち止め「ちょ、ちょっとドジョウを悪く言い過ぎかも?ってミサカはミサカはフォローを催促してみたり」
一方通行「フォローになるかどォか判らねェが、通常のドジョウの生態程度で水質が変化しねェ大きな川にも当然ドジョウは居るンだが
用水や田圃、池や沼で見られる個体よりもこォした水流のある場所の個体は大型になる場合が多いよォだ。具体的には普通の
ドジョウは最大でも15cm程度だが、河川産の中には30cmに届くモノも居るらしィ。水底が石礫で、体を潜らせる事が容易に
出来ねェ場所では大きな石の下に隠れて過ごすよォだし、生息域に合わせて生態や体型を比較的柔軟に変化出来ンのかもな。
また、運動量が非常に豊富でかなり速く泳ぐ事も出来るそのパワーの一因である腸を使った空気呼吸をする為でもあるンだが
水底だけじゃなく上へ下へとよく動くンで飼育する上で見てて飽きが来ねェンじゃねェ? ただ空気呼吸に特化し過ぎた為か
たとえ酸素が充分溶けた水中であってもエラ呼吸だけでは生きられねェから水槽の水量には気を付けた方がイイ。天板ギリで
水を入れちまったら空気呼吸がうまく出来ずに徐々に弱ってく事もあるンだとよ」
打ち止め「派手に動き回る暴れん坊にも弱点があるんだねってミサカはミサカは学習してみたり」
一方通行「他の魚に比べて弱点と言ってイイ程のモンかは疑問だがな。あと、コイツらの動きで天気を予測出来ンだそォだ」
打ち止め「ふぇ??? 暴れていたら雨、大暴れなら大雨とか?ってミサカはミサカは適当な推察をしてみる」
一方通行「ほとンど正解だ。解明されてねェが、どォやら気圧の変化に敏感らしく雷雨などの直前にいつも以上にウネウネすンだと」
打ち止め「ふーん、ってミサカはミサカは直前じゃイマイチ役に立たないんじゃないかなとも思ってみたり」
一方通行「ヒトに知らせるためにやってるワケじゃねェだろ。……続き行くぞ」
一方通行「周りの環境を時に強引に自分好みに変えちまったり、一方で幅広い水質に対応可能だったり、結果的にどこにでも生息してる
ドジョウはソレゆえ古来より重要な蛋白源でもあった。何しろ水の抜けた田圃や小川の底を掘り返せばウジャウジャと獲れる
魚なンて他には居ねェからな。形の似たウナギよりもずっと安易に手に入り、栄養価では決して負けてねェから長らく日本の
一般的な大衆魚のひとつだったンだが、近年は様子が変わっちまった。生息地の水辺の消失、清潔志向の一環だろォが自然物
を自前で捕獲して食べるっつー行為そのものへの忌避感、農薬散布などによるドジョウの減少、等々の様々な理由で個人では
なかなか手に入らねェ魚となってる。実際ドジョウを食べた事のあるヤツは若年層では少数だろォし、食べていても専門店で
調理されたドジョウの話。そンなトコで食えるドジョウは、当然なンだが泥臭ェハズもねェし大衆魚って値段でもねェ。食用
のドジョウに関して言ェば今や非常に繊細で美味な高級魚、としてしか存在してねェンだ。どォしても泥臭ェドジョウを食ィ
たければ川で捕って来てワザワザ素人作業で調理すりゃイイが、今更そンな事する必要があるとは思えねェよな」
打ち止め「泥臭いドジョウはムリしないと食べられないのね、ってミサカはミサカは関係ないけど柳川鍋って苦いよねって思ってみたり」
一方通行「余談だがドジョウの卵とじを柳川鍋って呼ぶ語源は、①かつてソレを出した店の名に由来②福岡の柳川産の土鍋を使ったから
③鍋の中でドジョウが柳の葉のよォに見えるから、など諸説ある。江戸時代以来の人気料理だったよォだ。更に付け加えると
テメエの言ったドジョウの苦味だが川魚のウマさは苦味にこそある、とか言い出す年寄りなら構わねェだろォが普通に考えて
欠点だよな。コレを抑えるには味付けを甘辛く濃くしつつ、酒の肴にすンのが……、ってそれこそクソガキには早かったな」
打ち止め「じゃ、ミサカがお酒飲めるようになったら柳川鍋食べに連れて行ってね、ってミサカはミサカは予約しておく!」
一方通行「……テメエと酒飲む機会なンざ来ねェ事を祈る。イヤ、なンとなく」
打ち止め「? それにしてもやっぱりドジョウはちっとも地味で泥臭い魚じゃなかったよね、ってミサカはミサカは確認しておく」
一方通行「図鑑や昔の記憶だけを頼りに話をしたンだろォな。そンなヤツでも観賞用の色変種、ヒドジョウを飼ェば考えも変わるだろ」
打ち止め「普通の黒っぽいドジョウと違ってオレンジ色のキレイなマドジョウだよね、ってミサカはミサカは補足してみたり」
一方通行「アレなら見た目からハデだからな。…………、ところでいつものボケコンビが出て来ねェンだが、何してるか知ってるか?」
打ち止め「お約束どおりドジョウを捕まえに田圃に向かったんだけど、まだ水が張ってるから引くのを待つんだってさ」
一方通行「……って、落水や稲刈りが終わるまで待つ気か?? いつも以上に体を張ったボケだが……、どォ突っ込めっつーンだよ!!」
~おしまい~
224 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/09/06 20:37:34.81 //qUjfx70 156/386
以上、第二十回「視点」でした
第一パート、シャチとは逆にスナメリなどは小さいけどイルカと呼ばれてなかったりします
第二パート、ちょろっと出てきたネズミウオと呼ばれる魚とは、ベラとかホッケとかツムブリとか骨鰾類のなにかとか、色々いるようです
第三パート、詳しく解説するとか言わせといて、ほとんどムダ話で終わっちゃいました・・・ドジョウについてはまた今度の機会にー
という訳で、生存報告的投下?でしたがお楽しみいただけたら幸いです。ではではまた~
228 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/09/12 18:39:13.12 1W4TiO540 157/386
今回はおさかな目録? じゃないです。ごめんなさい。
こないだ自分が初めて書いた禁書の二次創作をチラッと見返して、出来の悪さと成長のなさに愕然としただ。
それはそうと、その話で使おうかな? と思ってた考察ネタを思い出しちゃって
せっかくなので膨らませて1本書いたはいいけど、総合に投下するにはちょっとなんとなくうーん、だし
似たような話を第6回「おさかな番外」でやっていたのでココでいいかなって。
第6回「おさかな番外」の第2パート、黒子と初春が御坂美琴の雷撃の槍をぼんやり考察する話ですが
その話の続きっぽくなってますのでおヒマでしたらそちらもどうぞ。
そんなわけでテーマは「続編」です。おさかな話を期待して開いた方には本当に申し訳ないですが
今回はこれでご勘弁くだされ。ではどうぞ
☆
佐天「ふ~ん、御坂さんの電撃の正体かあ。結局白井さんと初春じゃ結論が出なかったんだね」
初春「そうなんですよ。本当に光速なのか? だとすると何故それが可能なのか? 御坂さんは玉突きって言ってたそうですが」
佐天「よくわかんないけど、その光速ってのも曖昧じゃない? 真空中の光の速度のことなのか大気中のことなのか」
初春「おぉ! もしも荷電粒子を使って真空中での光速を大気中で出しているのならチェレンコフ放射があr…」
佐天「……いや、だから、青い光も放射線も出てないから粒子線じゃない。けど電磁波でもないって今説明してくれたじゃん」
初春「で、でしたね。…………まあ正直言って、その本質は電撃使いにしか判らないのかも?って、今は思ってるんですよ」
佐天「かもね。私もさあ、白井さんの空間移動でお馴染みの11次元だっけ? 授業で聞いてもチンプンカンプンだもん」
初春「ん~……。突然ですけど、佐天さんは知らないピアノ曲の譜面を初見で演奏する自信がありますか?」
佐天「へ? ムリムリ! 楽譜に音階書いて片手ずつ練習して体で覚えたあと、やっと両手で合わせてみて……、そんな感じ?」
初春「ピアノが上手で初見の利く人なら出来る。この違いは楽譜がどう見えているか、じゃないですか」
佐天「あ~。『文章を読むのと同じだよー♪』とか言うよね。そんな言語ねぇっつーの!」
初春「それはあくまで出来る人の捉え方なんです。実際、文章のように楽譜を読もうとしても素人には無理ですし」
佐天「つまり初春は、ある能力者がその能力を使う時の感覚は、他人には説明されても理解出来ないって事をたとえてるのかい?」
初春「理論を万人向けに翻訳したり、現象を細かく分析してそれに近いモノを得ることはあるかも知れませんけど」
佐天「さっきの、あたしがピアノ曲を弾けるようになるまでの道のりがそれにあたるんだ?」
初春「そうですね。そして大事なのは、それを幾ら繰り返してもピアニストにはなれないこと。最初からアプローチが違うんです」
佐天「楽譜を読む力も、自由に動く指も、それらは地味で地道な反復練習と……、言いたかないけど才能の賜物だからねえ」
初春「そういう優れた技術が、その人独自でありつつもセンスのいい歌心と出会う時、その人を音楽家と呼ぶんです」
佐天「ふむふむ。確かに音を出すだけなら機械にだって出来ちゃうもんね。技術だけじゃだめなんだ」
初春「逆に、文化祭でオリジナルのギターソロを弾いて黄色い声援を浴びる妄想が得意なだけでも……、ダメに決まってますね」
佐天「アハハ、教室にテロリストと同じで、実際そんなことばっか考えてるヤツいないって。わかりやすい例だけどさ」
初春「いないかなあ? まあどうでもいいんですけど」
佐天「で、そういう音楽家に届かなかった人が評論家や愛好家になって、自分の分析した音楽の魅力を伝えたりするわけだ」
初春「それと同じで能力者に対する研究者やスポンサーの中には、かつて能力への憧れを持った人がいるのかも」
佐天「……あ、そうだよ。そもそも能力者の話、っていうか御坂さんの電撃の話だったじゃん。どこで脱線したんだろ?」
初春「さあ? 私はずっと『光速の謎は、謎のままでも仕方がない』って話をしていたつもりですけど」
佐天「あれれれれ? ……そういえば光速と電撃で思い出したんだけど、こないだアケミにバカにされてさあ」
初春「よくわかりませんが、佐天さんがバカなことをしてバカにされるのはいつものことですよね。何をやらかしたんですか?」
佐天「よーし、あとで折檻したるで楽しみにしとりゃあ。それはともかく、落雷を見てから避ける方法を考えてたのよ」
初春「折檻はイヤですけど、やっぱりバカだ……、って佐天さん、両手をワキワキさせながら近づかないで下さい!!」
佐天「全くもう、話が進まないでしょー? 次は本当にギュってつねって両方一緒にグリグリひねるからね」
初春「き、聞きますよ。ええと、雷が落ちるのを見てから、それをヒラリと避ける方法でしたっけ? 不可能だと思いますが」
佐天「実際出来るとは思ってないって。マンガみたいな事をするには何が必要か? とかって考えるの楽しいじゃん」
初春「認知と行動への反応速度や回避の速度、雲からの距離、あ、落雷自体の速度も考えないと……」
佐天「お、乗ってきたねー! ……こっちもそんな感じで計算してみたんだけどさ、肝心の雷の速度がわかんなくって」
初春「え? そんなのネットで適当に調べればいいじゃないですか。ほら、こんな感じでポチッとな」 ターン!
佐天「当然調べたよ。だけどさ、まず雷の速さが2種類出てたんだよ」
初春「……この、先駆放電と主雷撃っていうのですか? 前者が平均秒速200km程度なのに後者は光速の数~数十%だとか」
佐天「比較しやすいように主雷撃を光速の約30%の速度、秒速10万kmとすると判りやすいけど、全然違うでしょ?」
初春「速度が大きく異なるのは判りましたけど、だからどうしたと……、もしかしてどっちを避ければいいかってことですか?」
佐天「そのとおり! 先駆放電なら達人が『見切った!』とか言えそうな速度だけど、主雷撃だと結構大変そうでしょ?」
初春「(こんなこと言ってたらそりゃアケミさんじゃなくてもバカにしますよー)えーと……、うん。どうしましょうかね」
佐天「更に問題があってさ。そもそもあたし、計算とか苦手なんだよねー。数が大きかったり小数点以下とかだとお手上げで」
初春「それドコのゆとりですか!? ……まあ折角なので、すごく適当にでよければ一緒に考えてもいいですよ?」
佐天「その言葉を待っていた!」 ポン
初春「んもう、調子いいんだから……。一緒に、ですからね? 佐天さんもちゃんと考えてくださいよ」
佐天「はいはいわかったわかった~。それで初春博士、まずは何から手をつけますかい?」
初春「落雷の速度で飛んでくる物を見て避けるってどういうことか、コレを小学生でもわかるレベルで考えましょう」
佐天「ほーい。なんとなく大雑把な感じでちゃちゃっとアバウトに見積もってくれれば概ね許容するからさ」
初春「言われなくても。ただ重ねて断っておきますけど、今から出すのは何の参考にもならない数値ですからね」
初春「とりあえず状況設定から。3km離れた場所からテニスボールが佐天さん目掛けて秒速200kmで減速せずに飛んできます」
佐天「最初は先駆放電の速度からだね。あたしは、ボールが発射されたのを確認してからそれを避ける」
初春「避けるにはどれだけ動けばいいかですけど、計算しやすいから1mにしましょう」
佐天「発射された瞬間に確認できて、同時に回避行動を開始するとしてボールが到着する前に1m移動が可能な速さは…」
初春「ボールは発射から0.015秒で佐天さんを貫きますので、それまでに1m動くとなると……、時速240km以上ですかね?」
佐天「あれ……、新幹線レベルの速度でいいのかあ。なんか拍子抜け?」
初春「実際は人間の反応速度の限界よりもずっと短い時間ですから、予測しないかぎり絶対に避けられませんけど」
佐天「そういう細かいことは言わない約束でしょ? 大体、3km先のテニスボールが見えるって事があり得ないんだから」
初春「でも反応速度の限界は、知覚を五感に頼る以上たとえ怪物でも超人でも物理的に免れないモノなんですけど……」
佐天「博士は常識に囚われすぎなんだよ。えーとそれで、秒速10万kmの主雷撃の場合はどんなことになるんだい?」
初春「……さっきと同じシチュエーションで考えた場合、到達までの時間は0.00003秒。避ける為には時速12万km以上必要?」
佐天「おお~、なんかトンデモ的な感じ! 『涙子は音速の約100倍のサイドステップで雷撃をかわした!!』だね」
初春「佐天さんはどうでもいいとして、回避で起こる衝撃が地面を含む周囲をどの程度消し飛ばすかが心配な速度ですよね」
佐天「人をミサイルか何かみたいに言わないでよ。まあ最低でも時速12万kmで人間が衝突する以上のエネルギーなのかな?」
初春「細かく計算しませんけど、最低でもTNT換算で数トン分以上の可愛いミサイル程度にはなるかと」
佐天「そうかー、あたしの可愛さは戦略兵器レベルかー」
初春「すごいですね。…………、まあつまりは、主雷撃のスピードは確認とか回避とか、そういう範疇じゃないんですよ」
佐天「だね。んじゃ落雷を避ける話の場合は、先駆放電の速度で考えよう!」
初春「ところがそんなワケにも行かないようですよ? 佐天さん、落雷の仕組みは理解してま……ませんよね」
佐天「ふっふっふー、ひっひっふふー。だからクエースチョンしてるんじゃん~」
初春「大人になりたくないオバケの歌なんか知りません。アレはバージョンが古いほど曲がいいアニメで…」
佐天「意味不明な脱線してないで、とっとと仕組みってのを解説したほうがいいと思うよ?」
初春「む~……。でも正直言って私もよく知らないんですよ。だからネットの情報を鵜呑みにしゃべりますからね」
佐天「それで構わないって。むしろ難しいことを言われても聞く気ないし。ただ、あたしにもパソコン見せてよね」
初春「ほいほい。では色々すっ飛ばして……雷雲が出来上がりました。下側はどんどんマイナスの電気が集まります」
佐天「……。(たぶん初春は用語も噛み砕いて説明してくれてるんだろうなあ。優しい子やで、ほんま)」
初春「雷雲のマイナスに晒されると、直下の地表にプラスの電気が貯まります。プラスとマイナス、惹かれ合う間柄ですよね」
佐天「あたしたちみたいだねー!」
初春「えへへ。んと、ちなみにこの雷雲と地面は3km離れてることにしましょう。だってそう書いてあるんだもん」
佐天「あ、それでさっきのボールの話は3km先から発射だったんだ。それでそれで?」
初春「プラスとマイナスの間には電気を通さない空気があるんですけど、電位差が巨大になると一転、通っちゃうんですよ」
佐天「人間の皮膚は絶縁体なのに、数十ボルト以上の電圧をかけると普通に通電するとか聞くけど、そんな感じ?」
初春「さあ……? ともかくこの時最初に雲側から発生する細い雷を先駆放電と呼びます。空気の絶縁を壊していくんだそうです」
佐天「秒速200kmのやつね。どれどれ……、ん? ちょっと進んで休んでまたちょっと進んで、を繰り返して枝分かれしながら」
初春「空気中に電気の通り道を作っていく、って書いてありますね。電気が通りにくいものを、強引に通りやすくしちゃうのかな」
佐天「なんで休み休みなんだろ? っていうかそれで秒速200kmだったら休まなかったらどんだけ速いのよ??」
初春「一回で進む分を50mとしましょう。50mの絶縁破壊で力を使い果たすと、先端に連続的に送られる電荷が貯まっていきます」
佐天「で、充分貯まったら次の50mを破壊して…、結果休み休みになるのか。えーと……、電気の延べの移動距離はどれくらい?」
初春「そんな風に考えるんですか? 単純に50m進んでは最初に戻る事にすると……3km間で、ざっと30倍。90kmくらいかな」
佐天「むむむ! 実際進んでいた距離が30倍なら、雷撃自体の速度もさっきの30倍ってことに」
初春「なりませんよ。だって絶縁破壊された経路を電荷はたぶん秒速10万kmで進んでますから」
佐天「そ、そっか? じゃあさ、休み時間や超高速とはいえ長い寄り道分を加味した先駆放電そのものの速さはどのくらいかな?」
初春「絶縁を破壊して進む速度ですよね。ん~……、せいぜい30%アップくらいじゃないですか? 秒速260kmとか」
佐天「ふう、助かった。それならまだ避けられる範囲内だぜ……」
初春「いやいやいや。キャラがブレてる佐天さんも魅力的ですけど、問題はここからです」
佐天「ほほう、面白い。まだそんな遅い攻撃があたしに通用すると思っているのならその幻想、試してみるが良いわ」
初春「……、50mずつ地面に近づく先駆放電はマイナスです。プラスと惹き合ってます。それが地面に最も接近すると……?」
佐天「地面のプラスのほうもガマン出来ずに飛び出す?」
初春「佐天さん、そのとおり! 地面から先駆放電に向けてプラスが飛び出します。これを先行放電と言うらしいです」
佐天「先駆と先行って紛らわしいね。……あれ? って言うかさ、地面側から放電しちゃったらあたしはどう避ければいいの?」
初春「それは後回しにして、とにかく先駆放電と先行放電が結びついた瞬間、その経路に大電流が流れます。これが主雷撃です」
佐天「ひょっとして、主雷撃がやたら速いのは電気の通り道を作ってもらった後に流れるから?」
初春「冴えてきましたね。主雷撃は出来上がった通り道を地上と雲の電位差を中和するべく1回から数十回流れるようです」
佐天「それら一連の動きをひっくるめて落雷と呼ぶんだね。ちなみになんで稲妻って光るの?」
初春「へ? ええと、そりゃあれですよ。電子が分子に当たって数万度の熱を発生させてプラズマがぴかーちゅーで」
佐天「ふむふむ。纏めると、雷によって熱せられた空気が光ってるわけね」
初春「分ってるなら聞かないで下さい!! ……気を取り直しておさらいです。雷が直撃するとはどういうことか、佐天さん?」
佐天「はいはーい。えーっと、主雷撃が……、ん? あ、これさっき後回しにした問題じゃない?」
初春「そうですね。地面からのお迎え、先行放電が先駆放電に向かって行く。こうなったらドーンですから」
佐天「あたしは先行放電の発射先?にならなければいいのか。ってどうすれば……」
初春「雲からの先駆放電が地上に最も近づいたときに、その先端から見て一回の進展距離範囲内に居なければいいんです」
佐天「進展距離って、仮に50mにしてたアレね。じゃあ、あたしに向かって来る雷を避けるには……」
初春「先駆放電が最も地上に近づく一手前の50mを進む間、0.00025秒以内に範囲外に出ればいいんじゃないですか?」
佐天「無茶でしょ!? 何処まで逃げればいいのよ……。大体、その短時間じゃたった100m移動するだけで約マッハ100だよ?」
初春「他の方法としては、先駆放電の範囲は10kmくらいらしいので、発生したら地面に近づくまでに10km移動するという…」
佐天「ええと、えーと、0.015秒以内に10kmって約マッハ2000以上だよね。バカなの???」
初春「でもこれだと先駆放電の3倍速く走ってることになるので、確実に避けられます。私は何を言ってるんでしょう……」
佐天「いや、うん……。よく解ったよ初春。雷を見てからサッとかわすってのは、それくらいバカらしい話ってことだーね」
初春「佐天さん! やっと、やっと気付いてくれましたね!! 私、嬉しいです!」
佐天「あとは……なになに? 着ている物や持ち物に関係なく落ちる時は落ちる。へ~、金属とか付けてなきゃいいと思ってた」
初春「雷の高電圧の前に絶縁なんて関係ねえんだよ、ですかね。あと直撃以外に側撃雷とか誘導雷とかで被害が出てるそうです」
佐天「雷の大電流が原因の過電圧で別の電流が流れちゃうワケね。いや、あたしも何を言ってるのかさっぱり解んないけど」
初春「そういうのを電磁誘導?と言うらしいです……まあ、いいじゃないですか。雷は怖いってことですよ」
佐天「初春~。んとさ……、後半は能力と関係ない雷の話だったんだから、御坂さんに教えてもらえば良かったんじゃない?」
初春「……早く言ってくださいよ、佐天さん」
~おしまい~
【おまけ】
佐天「御坂さんの電撃の秘密だけどさあ、雷とは違うってことはなんとなーくわかったね」
初春「え? ああ、確かに光速の雷というのはありませんでしたからね。でも正直、謎が深まっただけですけど」
佐天「あたしは雷撃の槍は『能力によって生み出された電気の性質を持つ何か』説を支持するね」
初春「まあ確かに既知の物理法則外の運動っぽいですから、そう考えるのが自然かも知れませんけど。何か根拠があるんですか?」
佐天「当然ないよ」
初春「期待してませんでした」
佐天「ただ、それを証明できる人が学園都市には居るらしいじゃない?」
初春「はえ?」
佐天「アレだよアレ、都市伝説の『どんな能力も効かない能力者』ってあったじゃん。その人に向けて電撃してみればいいんだよ」
初春「……、ゴメンナサイ。佐天さんの言ってることが聞こえてるのに理解できません」
佐天「つまりだね、もし御坂さんの電撃がその人には効果が無い場合、それは能力そのものだからと言えないかね?」
初春「逆に効果がある場合は、それは御坂さんが能力で発電した普通の電気ってことになる……、なりますかね?」
佐天「だってね、考えてもみなよ。能力で初春の頭の上に100kgの石を移動させたとして」
初春「たとえにしても、酷くないですか??」
佐天「石が落ちてくるのは重力だし、石自体の質量も能力とは無関係でしょ? それと同じだと思うんだけど」
初春「放電ってのは単なる自然現象だから、能力とは無関係……。でも、どこからどこまでが能力なのか解りませんけど?」
佐天「あ、そっか。狙ったところに飛んでいく放電現象って、そんな便利な使い方が出来るならスタンガンは兵器になってるよね」
初春「そういう兵器もあるような……。まあ、あの現象そのものが自然じゃないって意見には同意です」
佐天「ということは、命中した上で効果が無いか、命中する前に誘導されてる状態が解消されて当たらないか、で見分ければ…」
初春「なんにせよ、試してみる価値はあるかも知れませんね。今度御坂さんに話してみましょう」
……後日、御坂さんにその話を持ちかけたが、マトモな返答は無かった。むしろその様子は支離滅裂とすら感じた。
「わかんないけど効かないのよ!」など、まるで都市伝説の男と面識があるかのような馬鹿馬鹿しい発言さえ聞かれた。
ただ、いつになくワタワタする可愛い姿が印象的で、白井さんの気持ちがちょっと解ったのは収穫と言えよう。
今回は失敗だったが、我々のいい加減な調査、適当な考察の日々はまだまだ続く。
次の標的は初春、あなたかも知れない。
~おしまい~
235 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/09/12 19:09:39.44 1W4TiO540 164/386
以上、おさかな目録?とは無関係な「続編」でした
黒子や美琴、あるいは一方通行などに考察させてしまうと、知らない事があるのが不自然に感じるので
出来ない子たちが間違ってるけどそれなりに頑張って考える話にするためにこのペアにしました
いや、ワシらの考察ってこんな感じじゃよ? って雰囲気が出てればいいんですけど
てなわけで、次回はちゃんとおさかな話を・・・日曜日が終わるまでには書きたいな
ではではまたー
240 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/09/16 19:33:14.63 pasz+bH+0 165/386てなワケでおさかな話なんですけど、前回の考察の勢いが残り気味・・・考察するのって楽しくないですか??そうですか
そんな独り言はさておき今日のテーマは「まぼろし」です。序盤が若干アレですけど、どうぞ
☆
「なあインデックス、俺は常々気になってしょうがない事があるんだが聞いてくれるか?」
「とうま? そんなに真面目な顔して何なのかな? お腹でも痛いの?」
「茶化すなよ。事と次第によっては世界の根幹を揺るがすような問題かもしれないんだ!」
「ふうん? まあ聞いてあげなくもないけど、長々と説明されても困るから一行で纏めて欲しいんだよ」
「……、じゃあ答えてくれ。なんで魔術師はやたらと科学知識に詳しいヤツらばかりなんだ?」
「え? …………、いけないのかな?? 魔術師とは言え現代を生きる人間なんだから文明の恩恵を受ける権利があるんだよ」
「違う。別に一般人と同じレベルの事、携帯や電子レンジや自動車なんかを使うことを問題にしてるワケじゃないんだ」
「そうなの? じゃ、何処が気に入らないのかな??」
「宇宙工学や兵器などに代表される軍事知識、数学的理論や量子論など、そういったものの最高峰はどこだ?」
「科学サイドの本拠地、学園都市のことかな?」
「だよな。上条さんはそこの住人。にも関わらず、魔術師は俺に対して科学知識を講釈してくるんだぜ? つまり、」
「それは言っちゃ悪いかもだけど、とうまがとうまだからだよ……。大体、魔術師は必要な知識ならなんでも取り入れるんだよ?」
「だから違うよ。俺がバカにされてるってのは解る。使えれば科学だって使うのも解る。……けど、そういうことじゃないんだ」
「む~? もったいぶったくどい言い回しは好きじゃないかも。結論を早く言うんだよ!」
「じゃあ聞くが、手から炎を出す魔術ってあるよな? 炎ってのは気化した物質が激しく酸素と結合し発光、発熱する状態だが…」
「ちょちょ、ちょっと待つんだよ! 魔術の炎を科学で解説されても困るんだよ。魔術の法則は科学とは無関係なんだから」
「そこだ! 魔術は、俺たちが知ってる法則とは違うんだよな。詳しくは知らないけど物質を生み出したり慣性を無視したり」
「何度も言うけど、とうまは魔術に詳しくなっちゃダメなんだよ? 魔術知識は能力者には勿論、一般人にも危険なんだから」
「常識を根底から揺るがす異質の法則。魔術師はこれを学んで身に付けて、そして信じているんだよな」
「うんうん。血の滲むような修行と命を削るような研究の成果だからね。起こす現象に疑いを持つ魔術師なんているわけないんだよ」
「だったら科学に詳し過ぎちゃダメだろうが! それこそ魔術師の常識を破壊する危険な知識じゃねえかよ!?」
「…………で、でもでも、魔術はあくまでも現実に対抗する手段でもあるんだよ。敵を知り己を知ればってことなんだよ!!」
「そんなレベルじゃねえよ。たとえるなら、巨大な金属の塊が空に浮くことは無いと信じつつ飛行機を操縦するような話だぜ?」
「とうまから見たら矛盾していて理不尽な存在かもしれないけど、魔術師はそういうものだと思うより仕方が無いかも……」
「それにさ、魔術に対しては魔術で対抗しなくちゃいけないってルールを勝手に作ってるけど、納得できないね」
「……、よくわかんないかも?」
「例を挙げる。拳銃で強い魔術師を撃つ。なんか防御術式?が働いたとかで無傷でした」
「腕のいい人ならガン程度でケガするようなヘマはしないんだよ」
「他方で、魔術師の放った炎は耐熱装備で身を固めているはずの兵士を容赦なく焼き尽くす」
「それはおそらく、人そのものを燃やす性質の魔術を使ったからだよ。装備がどうあれ防御術式無しでは防げないかも」
「ある魔術に対抗するには、別の魔術を用意しなくてはならない。だが、科学には魔術で対抗できちまってるよな?」
「さっきも同じようなことを言ったけど、魔術の歴史は抵抗の歴史なんだよ。一般の兵装の攻略は出来て当たり前かも」
「俺も同じようなことを言わせて貰うと、普通の武器防具は通常の物理法則で成り立ってるんだよ。それに干渉するってことは」
「そんなの知らないけど、魔術で出来るんだから出来るんだもん。文句を言われても困るんだよ」
「そうはいかない。魔術側は科学側を知っているから対抗できるんだとしたら、科学側が魔術を知ったら科学で対抗できるのか?」
「……判らないけど、ルールが違うから少なくとも一般科学のみで魔術に正面から対抗することは出来ないと思う」
「そこだよ。だから俺は、ルールが違うのはお互いさまのはずなのに勝手で理不尽だって思うんだよ」
「じゃ、じゃあとうまは魔術と科学の関係がどうあるのが自然だと思うのかな?」
「ん~……、野球選手と将棋の棋士が勝負するとしてだな、互いの領域では互いに敵わないだろ?」
「そりゃそうだね」
「だからまあ、野球ゲームで戦いました。少なくともそうあるべきじゃないか?」
「現実には、科学側がグローブ付けて守備位置について相手を待つ間に、魔術師は一人で王手を決めて勝っちゃうけどね」
「だろ? つまり科学と魔術が対峙する場合には、必ず魔術の領域で勝負が行われるんだよ」
「あ、でもでも、科学側も勝手に塁を回ったり、魔術側の無気力を指摘すればいいだけのことじゃないのかな?」
「それを審判が認めてねえって話だろうが。となると、法則として魔術は科学の上位にあるんじゃないのか?」
「考えたこと無かったけど、ある意味正しいかも。表面的には科学に出来ることで魔術に出来ないことは無いはずだしね」
「で最初に戻るんだが、この世界を取り巻くルールとして科学より上に位置する、言い換えると科学などよりも正しく
現実を解析しているらしい魔術。それを知りそれを扱いその中で生きる者、つまり魔術師がなぜ劣った科学知識などに
精通しなくちゃいけねえんだよ? そんなもの、原始人レベルの間違った知識のはずだろ??
携帯電話で通話が可能なのは、音声を電気信号に変換した上でそれを無線と有線を通して伝え、再び音声に戻すから。
そんな面倒な手順を踏まなくても遠距離間での意思疎通が出来るのなら、携帯電話の仕組みなど知る必要無いだろ?
むしろ声というものが単なる空気の振動であるとか、電気というものは電荷の移動に関する諸現象にすぎないとか
そんな劣った間違った知識を覚えて何の得があるんだよ?
一般人だって携帯電話や自動車の仕組みを完全に理解して使いこなしているのは少数。いや、ほとんどいねえよ。
でもな、知らなくても使うことは出来るし、使えることに疑問を持つことも無い。
それは科学によって生み出された技術を科学の法則の中で使うからこそ受けられる恩恵なんだ。
それと比較して、魔術師が科学を語る姿がどれほど異常かって言ってるんだよ。科学的にありえない現象を起こすのに
それがありえないことだと判っているってのはどういう状態なんだよ?
さっきお前は『起こす現象に疑いを持つ魔術はいない』っつったけど、これは疑いなんて生易しいもんじゃないぜ?」
「違う!! とうまには解ってもらえないかもしれないけど、魔術師は科学知識を知っているだけで理解していないんだよ」
「…………はあ?」
姫神「上条くん。回答者を追い詰めては誰も得をしない。落ち着いて。言葉も選んだほうが議論は深まる」
「……、そうかもな。いや、悪い。別にお前を責めているワケじゃないんだよ。単純に不思議だなって思うからさ、その…」
「ぜーんぜん気にしてないよ、とうま。それよりさっきの話だけど」
「知っているけど理解していないだっけ……。良ければ説明してくれるか?」
「任せるんだよ! 感覚的に一番解りやすい偶像の理論で言うとね、見た目と役割が似ていれば本物の力が宿るんだけど」
「それ、何回か聞いたことあんな。天使を模倣することで強大な天使の力を得る、とか」
「うんうん。でね、突き詰めればこの理論は『ある働きをするモノの力を得るには、それを象ればよい』ってことなんだよ」
「ん?? ちょっと抽象的過ぎて解りにくいかな……。簡単な具体例とかあるといいんだけど」
「具体例? ん~……。ある人が、リンゴが木から落ちるのを見てひとつの着想を得たとするね」
「万有引力の発見か? ニュートンのアレは後世の作り話らしいけど」
「科学の見方は置いといて、錬金術師だったその人はこう思ったんだよ。『物体は地面に落ちる。では地面とは何か?』って」
「ナニソレ? いや、地面は地面だろうが?? テメエの足元にあるモン……ですよ?」
姫神「下に落ちる。に対して地面には引き寄せる力がある。という考え方は一見。引力を語っているように見える」
「そうかなあ? ん~~~~~」
「次第にその考えは[地面とは何か? 土と草と石と、そして足跡があるものだ。そこへ向かって物は『落ちる』のだ]となるの」
「余りにも現象の理解が表面的じゃないか? それだと地面の構成物を揃えれば上方に『落とす』ことだって出来ちゃうだろ??」
「うん、だからそれが魔術なんだよ。まあ、コレを実現するにはいくつかの課題がありそうだけど」
「草で編んだ小袋に土と小石をいれて一年間馬に踏ませ続ける、とかか? 地面の役割を別のものに与える、ねえ……」
「さっき話していた通信術式でも同じなんだよ。例えばその機械でお話が出来るって事実を利用するの。コレを使ったりしてね」
「その、掌に収まるくらいの……、カマボコの板に携帯電話の役割を与えるってのか?」
「とうま、かなり解ってきたかも! あとは声を電気にする?知識を利用すれば逆に声を聞いた人を感電させる魔術も作れそうだね」
「さっきのそれはそんな意味じゃねーよ……。でも魔術としては理屈が通っているのか」
「そういうこと。どこでも通話できるって知識を利用すれば、意識を共有する人間で世界中にネットワークを作ることも可能かな」
「なるほどな。つまり、なんつーか……。本質は重要じゃないんだな。現象のある一面の意味を取り上げてるだけなのか」
「だけ、って言われちゃうのは心外なんだけど、とうまたちからはそう見えるはず。科学知識を『理解』してはいないでしょ?」
姫神「私。そろそろ帰るね。見送りはいらないから。また明日」 ガチャ
「お、またなー」 「あいさ、大したお構いも出来ずにゴメンなんだよー」
バタン
「えーと、話が途中だったけど『知っているけど理解していない』っての、なんとなく感覚はつかめた気がする、かな」
「大事なのは、知識を自分を縛るべく捉えないって事なんだよ。科学は違うんでしょ?」
「ん? ……、ある事象を研究するってのは、それの可能性を限定していく作業だって事か?」
「仮定を幾つも立てて検証し、ひとつずつ否定することで正解に近づくんだよね? 魔術は望む仮定の数だけ正解があるのかも」
「……、インデックスの魔術知識を使えば世界を好き放題出来るって意味が怖いくらい理解出来たよ」
「そうは言っても、世界規模の大魔術を行使するには人間ではとても用意できないほどの莫大な魔力がいるんだよ?」
「だからそんな事態、そうそう起こらないって? ところが俺の身近で何度も起こってるんだよな……。不幸だ」
「……、そこだけは素直に同意するかも」
「いろんなヤツがいたからな……。最初の頃、ステイルが吸血鬼にビクついてたのが今となってはお笑い種だもんなあ」
「吸血鬼?? それは絶対ダメだよ!! そんな物が存在したなら世界は幾つあっても足らないんだよ!!」
「え? その反応は予想外……。なんでだよ? 既に世界を滅ぼす力を持った魔術師なんて幾らでも出てきたろうが」
「忘れたのかな、人間の魔力の源は生命力だから限界がある。だから大魔術には大人数が必要だったり人間以外の力を使うんだよ」
「人間以外の力ってのは龍脈とか地脈とかてれずま?だっけ。覚えてるけどそれがどうしたんだ?」
「とうまは察しが悪いんだよ! 人間に限界があるように、そういう力も莫大とはいえ限界があるんだよ」
「石油の埋蔵量みたいなモンかね? 自然に生成される量を超えて使えば枯渇することもあるって感じか」
「さすがに世界に溢れる全ての力を一度に使って行使する魔術なんて考えたくも無いけどね。つまりそういうことだよ」
「え??? 今の何の結論だったんだ??」
「だーかーらー、吸血鬼が実在したら世界は幾つあっても……って話だよ。吸血鬼は不死、無限の生命力を持つんだよ?」
「あ……、地脈や龍脈にだって大量とは言え限りがあるのに、魔力の素となる生命力が無限ってことか」
「コストを気にせず、自分の生命力を使うだけだから何処までも自由に、望む範囲で望む変化を実現できてしまう存在なんだよ」
「そうか……、発想次第では宇宙全体を一瞬の内にぶっ壊す、なんてことも可能なのが吸血鬼ってワケだな」
「うんうん、ただしそんなことは今まで一度も起こっていないでしょ? だから吸血鬼なんているはずがないんだよ」
「いーや、実は吸血鬼は争いや破壊が嫌いなだけかも知れないぜ? まあそうなると、なんで伝説になってるんだって事になるけど」
「……、魔術師にとっては本当に恐怖の対象なんだよ。あまり考えたくもないかも」
「ふーん、そんなものかねえ。………………………………………………………………あっ!」
「ほえ? ……………………………………………………………………………………あ!」
『おさかな話!!』
「どうすんだよ? 長々と結論の出ない考察で段落を稼いでおいて、コレで終わりじゃ収集がつかねえよおおおおお!」ジタバタ
「わ、わ、私に言われても困るんだよ!! とうま、今からなんでもいいから質問するんだよ!!」 アタフタ
「なんでもとか、そういう曖昧な注文が一番困るんだよお、って俺は3年目の主婦かって、じゃなくて。えーと、そうだなー…」
「今日の話にちなんだ事でもいいんだよ。おさかな話だって自信があるから任せるんだよ!!」
「頼りにしてますインデックス大先生!! じゃあアレだ、居るようで居ないようで、実は本当に居なかった魚、ってどうだ?」
「ややこしいんだよ!! でも、ちょっと待ってね。頑張ってみる」
「頼むぞー! 何かこう、インパクト重視の出オチで構わねえから。どうせあと十行くらいしか残ってないんだしさ」
「そういうこと言うの、いけないと思うの。でも、ええと、じゃあねえ……、ブロブはどう?」
「何言ってんだ、俺はブログなんて持ってねえよ?」
「アイヴァン・サンダーソンって生物学者がグロブスターって名付けたコレは、海岸に漂着する謎の大きな肉塊の総称なんだよ」
「……、時間が無いのにボケを挟んでスイマセンでした。それはそうと、グロブスター? 聞いたことないな」
「グロテスク・ブロブ・モンスターの略だよ、ブロブは丸っこい塊って意味なんだけど、近年まで正体が判らなかったの」
「昔から海岸でそういうものが発見されていたのか。生物の死体なんだろうけど、確かにちょっと不気味だなあ」
「特に昔の人は、こんな巨大な異形がそのまま海を泳いでいたら……、なんて想像して恐怖のどん底だったんだよ」
「だけど現代にはDNA鑑定などの科学技術があるから安心なんだぜ。結局その愉快なオブジェの原料は何なんだ?」
「鑑定が出来たものの多くはクジラの死体、それも固まった脂肪の塊だったんだよ。だからって全部クジラだとは言えないけど」
「巨大な生物の死体といえばウバザメもよく名前が挙がるよな。まあ知らぬが花ってやつか」
「だけどね、世の中にはグロブスターが見つかると新生物発見の期待で夜も寝られない人が今でもたくさん居るんだよ」
「その度にクジラでしたー、サメでしたー、って聞かされるって思っててもワクワクしちゃうんだろうな。その気持ちは解るよ」
「クラーケンやシーサーペントのような目撃例の多い未確認生物は少なくないしね。海はまだまだ不思議に満ち溢れてるのかも」
「ところでさ……、魔術を使えば海洋探査でも科学側よりずっと高い能力の設備を有することが出来るんじゃねえの?」
「そういう目的に命を捧げる覚悟の魔術師がいれば、だね。目的が無ければ魔術師は行動しないんだよ」
「長々と話してもらってこんな結論で悪いけど、なんつーか。やっぱ、ズルいよな……」
「そこはあえて否定しないかも。ところでとうま。長丁場の上、突然の方向転換で疲れたよ。何か食べたい!」
☆
御坂「守口大根じゃあるまいに、長ければいいってものじゃないでしょうがああああああああああああああああ!!!」
白井「お、お姉様? 何に憤慨されているのか判りかねますけど、傷に障りますからどうぞお気を確かに」
佐天「御坂さんケガしてるんですか?? まさかこの間の超怖い女の人に何かされたとか……」
初春「あの後、廃ビルが消滅したって通報があって心配したんですけど、あれは誤報だったみたいですね」
御坂「え? 誤報?? そ、そうなんだ……? それはそうと心配かけてゴメンね。何とも無いのよ、ちょっと大袈裟にしてるだけ」
白井「お姉様ったら……。そう言って黒子に包帯を巻かせてもくれませんの。こんな時こそ頼ってくださっていいのに」
初春「白井さんに体を許してタダで済むなんて、日頃の行いを見てれば到底思えませんから……」
佐天「だね……。えーと、話は変わりますけど、おさかなの病気や怪我の治療にはやっぱり薬を使うんですか?」
御坂「そうね。生き物の種類や病気、ケガの種類で使える薬が違うから、購入前にちゃんと調べたほうがいいわね」
白井「ネットの情報が存外、役に立ちますの。病名が特定できれば、薬自体はホームセンターで入手出来るものもありますわ」
初春「でも観賞魚用の薬剤って割と分類が大雑把なイメージです。消毒か殺菌抗菌、栄養補助とかそんな感じで」
佐天「ふ~ん。まあ分類が大雑把なら人間の薬みたいに用法用量をきちんと守らず、適当に使っても良さそうかな?」
御坂「そういう訳には行かないわよ。魚に薬を使う方法としては、水槽全体に溶かしたり、薬剤入りの隔離水槽を作ったり…」
白井「淡水魚は水を飲まないのでエサに混ぜ込んだりしますわね。で、ケガや病気には殺菌と抗菌、消毒が必要ですけれども」
初春「その手の薬剤は多かれ少なかれ生物にとって有害です。量の指定を間違えれば猛毒にだってなりかねません」
佐天「魚を治療してあげたくて薬を使うのに、それではあんまりだね…………」
御坂「もちろん治療しなければ良くならない事が多いけど、薬剤使用はイチかバチか、最後の手段って面もあるのよ」
白井「魚類向けの薬の中には貝やエビにとって完全な毒もありますの。また同じ理由で、水草を購入する際もご注意を」
初春「出荷前に農薬を使っていた水草の残留成分でエビが全滅、なんてこともありますからね。大抵記載はされていますけど」
佐天「へえ……。薬も、水草さえも安易に投入しちゃいけないんですね。おさかなってデリケートだなあ~」
御坂「水道水で魚が飼えると思ってる人はさすがに少ないと思うけど、薬剤を入れた水槽はそれと同じと考えていいかもね」
白井「だから水道水をそのまま、若しくは1%程度の塩を溶かして魚の治療に使う、なんてことをする方も居るそうですの」
初春「原理的には同じだから、塩入り水道水には効果があるかも? まあ何より大事なのは病気の発生を防ぐことですけどね」
白井「日頃のこまめなケアですわね。水槽のような閉鎖空間はケガや病気の因子が蔓延しやすく、故に罹患しやすいんですの」
佐天「自然に比べたら狭いですからねえ…………、白井さんの病気も案外それが理由かも?」
御坂「じゃ、塩が効くかな…………?」
☆
打ち止め「ねえねえ、ウナギを生で食べるといけないって本当?って話をしたかったんだけど……」
一方通行「なンだ? 止めンのかよ」
打ち止め「詳しくは言わないけどほとぼりが冷めるのを待つね、ってミサカはミサカは後悔を後に立ててみたり」
一方通行「よくワカンねェが、まァ、早いモンが勝つのが世の理ってことか? じゃ、今日はこの辺で終わっとくか」
打ち止め「僧は問屋が卸さないからご注文はお近くの寺院まで! あ、待ってよーーーーーー!!」
一方通行「マンザイがしたけりゃ色ボケかババァかニートを相手にしろっつーの。……、コーヒー飲みてェ」
打ち止め「ははっ、こちらに!! ってミサカはミサカはテレビで見た猿真似をしてみたり」 ズイッ
一方通行「ン? 気が利くじゃねェの…………で、どォしてこンなにヌルいンだよ???」
打ち止め「冷蔵庫でキンキンに冷えておりましたので私めの懐にて人肌で温めましてござるぅいたたたたたたたた痛ーい!」
一方通行「サル違いだろォがァアアアアアア!!! 割とマジでナメてンじゃねェ!!!」 グリグリグリグリグリ
打ち止め「うぅぅ……、でもそんなキツイ事を言いながらミサカが渡したコーヒーを飲んでるあなたって、優しいよね」
一方通行「言ってろ。単に冷蔵庫開けンのが面倒だからだ……。ンで、ネタは見つかったンかよ?」
打ち止め「ムダ話と見せかけて何を質問しようか考えていることに気付いてたとは流石!ってミサカはミサカは感心してみる」
一方通行「クソガキの浅薄な思考なンぞ読むまでもねェよ。さっさと来やがれ」
打ち止め「じゃあ、ちょっとボンヤリした質問だけど……、魚の胡散臭い話が聞きたいな、ってミサカはミサカは尋ねてみたり!」
一方通行「以前オカルト話を扱った時に言ったろ? その手の話は数が多すぎて絞れねェってよォ」
打ち止め「絞ればいいんだねってミサカはミサカは範囲選択をやり直して、近代日本の記録に残る胡散臭い魚の話ならどう?」
一方通行「フム……、花子の話でもするか。余りに規格外で信じらンねェ一匹のコイについて、だ」
打ち止め「ハナコ? それはまた懐かしい匂いのする花時計みたいな名前だねってミサカはミサカは思ってみらら」
一方通行「古臭くて当然なンだが、まァそれは後々説明する。……後、断っておくが、コレは単なる情報で他意はねェからな」
打ち止め「また謎の予防線?? 危ない話はしなくていいんだよ? ってミサカはミサカは心配してみたり」
一方通行「今回の話は特定の個人に関する話題でもあるからな……。重ねて悪意、中傷の意図は無いと言いつつ、行くぞ」
一方通行「つーワケで、解説の幾つかの箇所が不自然にボケるが許容しろ。
花子は、とある大学の学長が管理していた緋鯉(ヒゴイ)だ。緋鯉っつーのは橙、赤系の色をしたコイだ。
錦鯉とコイは同じ魚って話題があったろ? 変った体色の個体を選んで交配させて生まれた稚魚のうち
成長に伴いキレイに発色したコイを錦鯉と呼ぶって。つまり緋鯉はその変った色の個体、錦鯉の親だ。
さて、この学長は高齢の祖母からよくこンな話を聞かされてた。
『花子はずっと昔から居る、って私のお義母さんがそのまたお義母さんに聞かされていたそうだ』
人間関係がチト複雑だが、判るだろ? 花子は飼い主よりもずっと長ェ事生きてるってワケだ」
打ち止め「いや、あの、関係も判らないけど、あのさ? コレ、長いとかそんなレベルじゃない気がするよ???」
一方通行「コイってのは割と寿命の長い魚だ。現在では平均2~30年程度と言われて居るが50年生きても珍しくねェ」
打ち止め「だから、もっとずっと花子は長生きしてるんじゃないのって聞いてるの!ってミサカはミサカは念を押してみる」
一方通行「そォだよな。一体どのくらい生きてきたのか? 当然起こる疑問だ。続けンぞ」
一方通行「魚の年齢を調べる方法は幾つかあるンだが基本的には同じで、木の年輪と同様に決まったサイクルで体に刻まれる
痕跡を観察する。具体的な部位としては脊椎骨、耳石、鱗など。成長具合に季節ごとで偏りがある場合、硬質な
それらの部位には規則的なシワが出来る。コレを一つ一つ数えることで年齢を算出できるンだが、問題もある。
魚種、生息域、天候などによっては成長の偏りが規則的でない場合があるとか、脊椎骨や耳石、耳石っつーのは
内耳にある炭酸カルシウムの結晶だが、要は頭ン中だ。その辺は解剖しなきゃ調べられねェ、とかな。
つまり、魚を生かしたままで正確な年齢を調べるのは非常に困難なンだよ。殺した所で無理な場合もあるがな。
そこで花子だ。代々語り継がれるほどの長寿な可能性があるコイを、調査の為に解剖するワケに行くはずもなく
その学長は複数の異なる部位から鱗を採取して年齢の算出を試みたンだ。調査は予想通り困難を極めたよォだが
たっぷり二ヶ月掛けて完了した。結果、花子はその時点で213歳だった」
打ち止め「213歳?? 実験が……あ、コイは関係ないか。ところでそれはいつのことなの?ってミサカはミサカは質問してみたり」
一方通行「この調査は1964年に行われたよォだ。つまり、花子が生まれたのは1751年って事だな」
打ち止め「まだアメリカ合衆国が出来る前だし、大英博物館だって出来て無いし、日本じゃ徳川家重の時代だよ??」
一方通行「妹達には歴史好きが居ンのか? どォでもイイが……。ンじゃ、最後だ」
一方通行「花子は最初の?調査から14年が経った1977年に死ンだ。享年226歳って事になンのかね?
その間、ラジオで花子の事が話題になったり、同じ池に居る他のコイを花子の時と同じく調査して130歳を超える
個体が何頭も確認されたりすンだが、花子を含めソイツらの年齢は現在では公式に認められてねェ。
その理由はやはり、木の年輪を数えるよォな方法では正確さが保証されねェってトコだった。
現実的に、成長痕を数えての調査は生後数年が限度、顕微鏡を使っても20歳以上の個体は判定不可能なンだと。
学長の旧家ってのは江戸時代から村の実力者だったンで、今も残る古文書に家の場所やその池が記されてンだが
そこにヒゴイに関しても記載が……、無かったのかねェ?
ともかく信憑性に欠けるっつって、例えばギネスブックなどでは参考記録になってンじゃなかったか?
まァ、その学長はコイが大好きな男だったらしく旧家の池に留まらず、新築の家にも池を造り部屋の一部の床を
ガラス張りにしてその下にも水を引きコイを泳がせてたそォだから筋金入りだな。そンな男が鱗とは言えコイの
体に、調査の為ではあるが傷を付けてまで調べた結果が信用されねェってのはそれなりに悲劇なのかもな」
打ち止め「ふ~ん。……でもさ、その人はコイが好きだったんだから、たとえ記録的長寿で無くても大切な友達だったんだよ」
一方通行「ケッ…………、特にコイは人に懐くからな。犬やネコに対する感覚に近いモンがあったかも知れねェ」
芳川桔梗「ちなみに、人間の年齢を推測する方法としては歯を使うのが一般的ね」
番外個体「アレでしょ? 象牙質の中のD-アスパラさん? 死体の年齢鑑定に使うってヤツ」
一方通行「D-アスパラギン酸か? ラセミ化反応っつって加齢によって蓄積されるコイツを調べりゃ年齢が…」
打ち止め「……、その方法でミサカを鑑定したら何歳って出るの???」 番外「つか、それ、ミサカの方が深刻じゃね???」
一方通行「ムダに膨らンだ0歳児?って法医学者を悩ませンのがイヤなら身元不明で死ぬな! それで問題ねェ!!」
~おしまい~
249 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/09/16 20:11:33.74 pasz+bH+0 174/386
以上、第二十一回「まぼろし」でした
第一パート、魔術を話すインデックスが見たかった、ただそれだけです!
第二パート、捕獲してきた淡水生物を水槽に移し変える前に、ほんの薄い塩水に短時間曝しておくと死亡率が下がるかもしれません
第三パート、花子は70cmくらいのコイだったそうです。実際何年生きていたんだろう・・・
次回は、水曜日までくらいに? ではではまたー
255 : ◆96XoVRe9oA[saga sage] - 2011/09/24 12:59:10.36 iB2W5skB0 175/386予告より大幅に遅れました、おさかな話。
今回は今までのおさらいっぽく、複雑な感じで、尚且つ作中作までねじ込んで、多分一読では混乱するような内容です
面白いか?と問われても書いた自分もこんがらがっちゃってて・・・そんな感じに仕上がりました
そんなわけでテーマは『総集編』ちょっと長い?けど、どうぞ
☆
初春「白井さん、白井さーん??? アレ? 居なくなっちゃいましたか…………」
初春「どうしましょう……。せっかく風紀委員の書類整理を手伝ってもらおうと思ったのに」
初春「………………」
初春「そもそも白井が頻繁に一人で出動しちゃうから、私が自分の後始末をしなくちゃいけなくなるんですよ??」
初春「後出しの設備使用申請に、修繕依頼に、関係各位への謝罪と反省文……。まったくもう!!」
初春「白井のボケがちゃんと私を見張っておけばこんなことには……。そこんところ解ってないですよね、あの変態女」
佐天「おい、親友……?」
初春「ぶっほへあうい??? あsjdtるえたvふぁ…………!? さ、佐天さん、いつからそこに???」
佐天「ついさっき、あんたが白井さんを大声で呼んでる時だよ。……全然気付かなかったの??」
初春「あ、アハハハハ、ハハ……」
佐天「ま、いいや。それにしても、なんかすごい量の書類の束だね。全部初春の仕事なの?」
初春「そうなんですよ。だから前もって断っておきますけど、今日はくだらない考察に付き合ってるヒマないですからね」
佐天「…………」ホゥ
佐天「…………」 ガソゴソ
初春「……? 佐天さん?」
ピッ 『白井のボケが――――――――――――――あの変態女』
佐天「うんうん、キレイに録音出来てる。さっきの初春の声、バッチリでしょ?」
初春「」
佐天「どうしたの? 逃走中、白髪の男に出会ったサラシ女みたいな顔してるよ? ああ、仕事の頑張りすぎじゃない?」
初春「で、ですかね……、ちょっと休憩しようかな~。ついでに佐天さんの話も聞きましょう!」
佐天「そう来なくっちゃ。頼りになるのは君だけだよ、初春博士!!」
初春「ううううう、今日は徹夜を覚悟しなくちゃダメかも……。じゃ、せめてサクサクっと終わらせましょう。テーマは?」
佐天「慌てない慌てない、一休み一休み。それに今日は考察じゃないよ。一緒に見てほしいものがあんの」
初春「ふぇ? 見て欲しいもの、ですか……?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
☆
上条「なあインデックス、ちょっと俺、最近悩んでることがあってさ。聞いてもらえるか?」
禁書「とうま? どんなことで悩んでるか分らないけど、それこそシスターの本分なんだよ! どォんとこーい!」 ドンッ
上条「……、悪い。……、お前には心配ばかりかけて、頼りきって……、いつかたっぷりお返ししなくちゃな」
禁書「と、とうま!? 私は何も気にして無いし、今でもとうまのお陰で充分幸せだから……、もっと頼っていいんだよ!」
上条「ありがとう、ありがとう!! 恩に着るよ」 ドゲザッ
禁書「とうまっ!? そこまで感謝されると、ちょっと他人行儀が過ぎるかも……? 心配になってきたんだよ……」
上条「……でさ、お前に聞いてもらいたい悩みってのはビリビリ。いや、御坂のことなんだよ」
禁書「それかよ」
上条「あいつにもなんか随分心配かけちまっててさ。ホントならどれだけ頭を下げても足らないくらいなんだけど」
禁書「デスヨネ」
上条「っても勘違いすんなよな? 別に甘い話とかそういうんじゃないんだよ」
禁書「ハァ……、流れ的にはそういう話のほうが人として正解なんだよ、ばかとうま……。で、短髪がどうしたのかな?」
上条「いやな、なんかまた新しい戦いが起こりそうだろ? 世界規模の、とんでもない敵を相手にした」
禁書「そうみたいだね。私もよく分っていないから何とも言えないんだけど」
上条「それを御坂のヤツ、勘付いちゃったみたいでさ。心配するくらいなら一緒に戦うとか、そんな空気になってるんだよ」
禁書「とうまは周りの人たちを巻き込みたくないんだよね? 自分勝手で歪な正義感にかけて」
上条「そう……、だな。イヤなものはイヤ、ただそれだけなんだよな。それは正義感だなんて立派なものじゃ無いよ」
禁書「……、言ってあげたいことはたくさんあるんだけど、長くなりそうだから話を先に進めるね。それで?」
上条「御坂のことだよな。当然、巻き込みたくねえよ。あいつだって女の子なんだ。危険に晒すわけには……」
禁書「……でもさ、女の子と共闘したことなら今まで何度もあったと思うけど?」
上条「へっ……? あ、でもそういうのは俺が巻き込んだと言うよりは俺が巻き込まれた場合に限るんじゃないか?」
禁書「とうまの右手が災厄を呼び込んでるって考えたら、実は全員巻き込まれてるんだけどね」
上条「うぅ、ホント罪深いよな。俺って……」 ズーン
禁書「そ、そういう意味じゃないよ。人はそれぞれに、とうまと同じで戦う理由があるんだから気にしちゃダメなんだよ」
上条「……でもさあ、御坂がいくらレベル5だからって、これからの戦いでは正直通用しないと思うんだよ」
禁書「とうまは自分の戦いを一度最初から思い返してみるといいんだよ……。ところで短髪はどんな能力者なの?」
上条「ん? ナマズ話でやったじゃないか。喩えるなら、落雷クラスの発電力を持つ強電気魚か?」
禁書「な、まっ……!!」
上条「電場を操る派生で磁場を操って、鉄骨を操ったりもするらしいけど。そんなんじゃ最近のインフレ状態だと、なあ?」
禁書「とうまはバカなんだよ!! 今までなんで短髪と一緒に戦わなかったんだよ!?」
上条「は? いや、共闘は何度かあるんだぜ? 俺と御坂は何度かケンカしたこともある……、みたいだし」
禁書「理論的に短髪は無敵の最強生物なんだよ!!! 通常の物理法則下なら、相手がマンガキャラでも楽勝なんだよ!!」
上条「……コレは珍しい意見じゃないか? どういう理屈でそう思うんだよ」
禁書「ん~と……あ、そうだ! 光る画面のアレ、使うね」
上条「ノートパソコン? ネットで何か調べものでもするのかよ?」
禁書「そうじゃないよ。ええと、どうするんだっけ……。あれ? ココでもない、ココでもない、コレだ!」
上条「どれどれ? ……なんだよ、ただの小説投稿掲示版じゃないか」
禁書「そうだよ。私は一人でヒマな時、この掲示板の設定質問スレでおさかなとオカルトの質問に答えていたんだよ」
上条「へえ? 暇つぶしになっていたのならパソコンの簡単な使い方、教えておいて良かったよ。で、何が言いたいんだ?」
禁書「その中でよく宗教関連の質問を出す人が居てね、その人が書いてるお話がとうまの疑問を解決してくれると思うよ」
上条「つまり……電撃使い、その名が最強であることをココで証明するってか?」
禁書「その言い回し、よくわからないけどカッコいいかも。……あ、とうま。見つかったよ」
上条「ふむふむ、題名は……、え? これって……」
禁書「文章はクセがあってちょっと読みにくいけど、面白いと思うよ。質問があったら後で答えるね」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「謎のエロカッコいい修道女見習いさんに協力してもらって書いた面白いお話」
【前回までのあらすじ】
「明日の学園都市の天気は、……ありません?」
突如、天気予報のお姉さんが語る不穏な予告。それに端を発する様々な機械通信系の大規模なトラブルに見舞われた学園都市。
人々は詳しい状況も分らぬまま混乱するを余儀なくされ、情報の渦にただただ翻弄されていた。
そんな暴動一歩手前に陥った科学の総本山に舞い置いた一筋の光。遠くリオデジャネイロからも肉眼で視認出来たという
奇跡の正体は、神話の存在にて想像上の、信仰の対象にして圧倒的畏怖を見る者に与える者ども、天使の大群であった。
圧倒的な超常現象を目の当たりにした一般市民は本能に命じられるがごとく羽根持つものに傅き救いを求めた。
だが天使たちはただ神の意思のままに、迷える子羊らの魂を肉体ごと救済するべく無差別な総攻撃を開始した。
失敗した積み木を乱暴に崩すように消滅していく町並み。老人は言う。「そこに悲劇は無い。あるわけが無い。なぜなら
たとえ結末が滅びであっても、人の喜びとは神の御手に導かれることなのだから」と。
鮮やかな光の中、果てしない永遠の時に包まれた学園都市の崩壊は、もはや確定された事実でしかなかった。
ただしこの都市に、人の子の理を外れた者ども。即ち超能力者が存在していなければ、の話であるが。
彼らは、聖書の中から飛び出した異形に呆然と為されるがままの学生や教員たちの前に颯爽と現れた。
ある能力者がよくわからない現象を操り、なんとなく天使を吹き飛ばすと
ある能力者はやたらと派手なビームを撒き散らして天使を困り顔にさせる。
真っ先にそして不用意に突っ込んで接近戦を挑んだ白髪頭は、天使にフルボッコされて涙目で退場しつつ
己の能力で発見した敵の弱点を他の者に伝えて、いつものように静かに息を引き取った。
そんな彼らの姿は、天使といえど絶対の存在では無い、という思いを次第に都市住人に想起させる。
ここは天国じゃない、もちろん地獄でもない。人が住み人が治める人の世界だ、と。
たとえ天使や神であってもこの世界を好きに出来る権利などあってはならないのだ、と。
実はそのような思いを人々が抱いた背景には、表舞台を嫌うとある能力者の導きが多少あったのだが。
その他、遠くのほうで「不幸だー」とか聞こえるけど色々ひっくるめて、天使を撃退する態勢は整った。
今こそお待ちかね、みんな大好き!噂の電撃系超絶美少女の出番である。
『神の御使い』天使と『科学の申し子にして神の写し身』人間、果たして勝つのはどちらか?
▽第19025話『最強(笑)』
「……(俺は生きてンのか)」
崩壊したビルの瓦礫の中で、血塗れの肉塊、もとい、死体のような肌色の少年は突然息を吹き返した。
水面の静まりきった池に小石を投げ入れた後のように、波紋が広がるがごとく意識が世界を取り戻していくのを感じた。
すぐさま記憶を整理し、現状の確認を急ぐ。過去の経験は語っている。戦場で気を抜くヒマなどありはしない。
冷静に冷酷に冷徹に、学園都市第一位の自分がこの指一本動かせない惨めな姿を晒すまでを思い返していく。
「……(天使の大群が都市を攻撃。防衛機能が麻痺状態の上、兵隊どもは一般人と同様に魂を抜かれ無力化されてた)」
「……(オレは手っ取り早く騒ぎを止めるため、天使の群れに殴り込みをかけた)」
「……(記憶が曖昧だが、黒とか白とか出れば楽勝だろって……)」
「……(ところが多勢に無勢。エンゼル右ストレートからのトリプルエンゼルアッパーでダウンしちまった)」
「……(戦意を喪失してンのにも拘わらず、ヤツらは執拗にオレを責め続け、そして……)」
「エンゼル華麗なパス回しからの、エンゼル強烈なミドルシュートで窓の無いビルに叩きつけられた?」
「そォだな……、いや? なンとか意識を繋いで、吹き飛ばされる軌道を修正して瓦礫の山に落ちたンだ。……って、オイ」
白髪男の思考に突然乱入してきたのは、有名中学の制服を着た「お姉様」と呼ばれる絶世の美少女。
その接近に全く気付けなかったのは、天使との戦闘で半端では無いダメージを受けたためでもあり
また己の能力の大部分をおなじみの半自動生命維持機能で内臓や大血管の損傷をカバーするために
無意識に割いていたせいでもあるだろう。少年のなおざりなツッコミを責めてやるのは酷である。
ちなみにこの二人、不倶戴天の敵同士であったりもする。
「何よ? 死人が軽々しく口を開くなっつーの。カッコ付けて飛び出して……、同じ超能力者として情けないったらないわ」
「今頃ノコノコ出て来て偉そォに寝ボケてンじゃねェぞ、クソガキが……」
見目麗しい「お姉様」の垂れ流す極めて軽い調子の悪口雑言に対して精一杯の虚勢を張りつつ、少年は解析作業を続ける。
そんな態度を取ったら更にカラまれるってことまで考えが及ばないのは仕様であるから仕様が無い。
「ところでアタシさあー、その空中血管状態? 初めて見たんよ。思ったよりグロいんでムービー撮っちった☆」
「撮影してどォすンだよ………………………………って、アレェ?」
思わずバカっぽい声を発した彼の、その思考は「何故だ?」で埋め尽くされていた。
湧き上がる違和感。それは彼の経験則、そして意識が途切れる直前の記憶。
これらから当然導き出されるはずの結果が出ていないことが原因。
そしてこの、魅惑のセクシーダイナマイトガールの存在。
不自然にして不条理な難問、
彼にとどめを刺すべく追って来ていた数体の天使は何処へ行ったのか?
何故、このプリティかつキュートな女の子はこの過酷な戦場で緊張感の欠片もなく生き残っていられるのか?
即座に、納得できない解答が導き出される。
「撮ってどうするって、ソーシキで遺影の代わりになるんじゃね?」
そんな軽口を相手にする余裕もなく、彼は疑問を疑問のまま提示してしまう。
「……、テメエ、まさかアイツら倒せンのか? だったらオレなンか弄ってねェでさっさと行け」
彼の、自称・優秀な頭脳が弾き出した答えは『彼女は天使に対して絶対の強さを持っている』であった。
パーがチョキに勝てないように、子犬が100匹集まっても一匹の猫の可愛さには敵わないように。
ソレが何によるものかまでは解らないが、自分より格下のはずのこの、月も花も恥らう美貌の乙女は
あの怪物たちを苦も無く叩き潰すことが出来る。そうとしか考えられなかった。
「……(オレを追って来た天使も、コイツが片付けたってのかよ……、一体どォやって?)」
少年の困惑に対して少女は「はぁ~、やだねえ。女の子とマトモに会話出来ない童貞野郎はこれだから」と相変わらずだ。
その姿を武道の達人が見るなら『焦りも気負いも無い理想的な勝負姿勢』と評したかもしれないが、白髪頭は残念ながら
ただのガキなのでイライラが募るだけだった。
「オレの言った事無視してンじゃねェ!! さっさとムカつく羽根虫を落として来やがれ」
「……アンタさあ、そういうセリフは一体でも敵を倒してから言うもんだよ? それに、こっちは絶賛準備中なの」
「チッ……」
他人には何処までも厳しく自分には極端に甘いのは若者の特権である。だがソレも行き過ぎれば誰にも認められない。
そしてこの少年は、長いこと世界最高レベルで若者の特権を振るい続けてきた弊害の塊なのである。
今だって、純情可憐な「お姉様」がここを離れないのは、彼女の言う何がしかの準備のためでもあろうが、それよりも
満身創痍の彼を天使の攻撃から守るためである事を既に理解してるのに、安いプライドが壊れるのが怖くて感謝の言葉を
掛けられないでいる。だったらモジモジしないでオネンネしてればいいのに。
そういうのは早めに治しておかないと後々苦労するよ、ってミサカはミサカは対人スキルの不足したあなたを慮ってみたり。
そんな少年の事情など知ってやる義理も無い「お姉様」はそれから数分間、動けない彼をトコトンまで弄り続けていたが
やがて100人中31人が惚れてしまうであろう蟲惑的な笑みを浮かべて、こう言った。
「さて、そろそろ真打登場と行くかね。前座の年寄りをあんまり働かせんのも悪いし」ニタニタ
プールに入る前のおざなりな準備運動って感じで手首や足首を数回プラプラ震わせた後、彼女は飛び立って行った。
最後に白髪頭の少年を振り返り、一言付け加えるのも忘れずに。
「じゃーねー、負け犬くぅうううん!! また来世がんばれー」
今にも泣き出してしまいそうな程に傷ついた少年の心情を表すように、空はいつの間にか厚く重い雲に覆われていた。
~つづく~
【次回予告】
遅れてやって来て全てを持っていく者、その名は主人公。そう、「お姉様」の登場により戦況は180度転換した。
音速を遥かに超える天使たちによる攻撃の嵐の中、涼しい顔で全てを回避し己の能力を振るっていく彼女。
落雷が全ての天使をまとめて消し飛ばすと、眩い光の束とともに虚空に現れたのはボスっぽい雰囲気の威厳ある天使。
そいつも落雷で瞬殺しちゃうってどうなんだろ? 陸に上がったナマズの性能がココまでスゴイとは……。
果たして、そんな戦闘描写で物語として成立するのか。それは誰にもわからない。
次回『チートってレベルじゃねェぞ、コラァ!』 お楽しみに!
☆
一方通行「打ち止めァアアアアア!!! テメエは性懲りも無く何くだらねェモン書いてンだ!!!」ビシビシビシビシ
打ち止め「痛い痛い!……、ううぅ、まさか匿名掲示板なのにミサカの犯行だと看破するとは思わなかったよ、って…」
一方通行「これだけハデに自己紹介しといてナニ寝ぼけた事ヌカシてやがるこのクソガキ!」ビッ
打ち止め「え、あ! ミサカ口調を文中で……。今までの人生で一番悔しい!ってミサカはミサカは唇を噛んでみる」
一方通行「チッ……、身バレするよォなモンに手ェ出してンじゃねェよ。このスレ、削除を依頼すンぞ」
打ち止め「そ、それは止めて!ってミサカはミサカは顔も知らないミサカのお話の読者さんたちに代わって抗議してみる!」
番外個体「おいおい、お子様相手に強硬手段とか恥ずかしくないのー? 大目に見てやりゃいいじゃん」
一方通行「番外個体、テメエ……。本文中、特にセリフに関してはお前が書いてンだろォが!?」
打ち止め「何処まで鋭いんだろこの人は、ってミサカはミサカはその推論が大正解であることを暗に認めてみたり」
番外個体「いやソレ、完全にバラしてんじゃんか……。いい性格してるぜ、アンタ」
一方通行「性格だけならイイ勝負だろ……。ま、テメエ達がオレをどォ思ってるか、よく判ったケドな……」
打ち止め「さ、作中の一方通行及び登場人物、団体、国は架空の存在だよってミサカはミサカはフォローしてみたり!!」
☆
上条「……えーっと、インデックスさん? コレ何だったんですか??」
禁書「何って、とうまの疑問がするりっと解決できたでしょ? 私も協力した甲斐があったんだよ!」
上条「わからない、わからないぞ??? そもそもオレの疑問って何?ってレベルでわからなくなったぞ???」
禁書「なんでそんなに混乱してるのかこっちがわからないかも。そもそもはとうまが悩んでたことが発端なんだよ」
上条「ホントに忘れてるワケじゃねえ! えっと、御坂が戦うのが心配だったんだけど、インデックスの意見は違ってて」
禁書「そうそう。短髪は史上最強生物だという証拠を見せてあげるって」
上条「で、あの小説……? 一方通行のような登場人物がひたすら情けないだけだったような気がしますけども??」
禁書「今回はそうだね。でも、大事なのは次回のお話なんだよ」
上条「だったらそっちを見せてくれればよかったんじゃねーの? 派手な能力バトルがあるんだろうし、絶対面白いだろ」
禁書「見せたいのは山々なんだけど、>>1をよく読んでみて」
上条「ん? またおかしなことを……」
禁書「ほらココ、私達の会話には『ラブもエロもバトルも』あっちゃだめなんだよ。だから仕方なくこうなったんだよ」
上条「そんな言い訳すんのか。バトル展開書くのが苦手ですスイマセンって正直に言えばいいのに」
禁書「まあ、そんな外枠の話は置いといて。この次回予告で充分に、とうまの悩みや疑問は解決できるんだよ」
上条「おいおい、ホントかよ? かなりさっくりと短いぜコレ」
禁書「大丈夫なんだよ。無理やりとしか思えない不自然さだけど、ちゃんとキーワードが入ってるからね」
☆
佐天「どうどう、ヘンテコな話でしょ? やたら口の悪いヒロインを繰り返しやたら可愛いって持ち上げるとことか」
初春「学園都市と実在の能力者をモデルにしたパロディなんですかね? だとするとこのヒロインは……」
佐天「御坂さんかなって思ったけど、イメージが違いすぎるよね。でも、途中でミサカミサカとか突然出てくるっしょ?」
初春「まとめると相当熱烈な御坂さんのファンで……、自分もミサカ、だということは……、身内の犯行ですね!」
佐天「あはは、犯行は酷いなあ。でも作者はその線かもね」
初春「乱暴な口調や第一位への態度は恐らくですが、作者自身の投影ですよね。……ふふ、既に特定できたも同然です」
佐天「まあ、その辺はどうでもいいよ。それより次回予告の中で気になる一節があってさ、そこを初春に見て欲しかったの」
初春「……、唐突に出てくる『陸に上がったナマズ』って表現ですよね。どういう意味なんでしょうか?」
佐天「うんうん、魚が陸に上がったら干からびちゃうだけだもんね。いつかの『にぼし』じゃないけどさ」
初春「ふむ、ちょっとナマズの生態について調べてみますね。何かヒントが見つかるかもしれませんし」ポチポチッと
佐天「ほーい、んじゃあたしは、このムダに膨大な話を遡ってナマズ関連の話題を探してみるね」
初春「はいはーい、とか言ってるうちにこちらは調べ終わりましたけどねー」
佐天「おおおー!? さすが初春。んで、疑問の答えは判ったの?」
初春「ちょっと待ってて下さいね、今整理しますから。……ま、要はナマズは異常に優れた電気魚だということですよ」
佐天「ん……、電気魚って何? デンキナマズと普通のナマズは全然違うことくらい知ってるよ?」
初春「だーかーら、順を追って説明していきますから。そもそもコレは『電撃使いは陸のナマズである』って意味なんです」
☆
一方通行「超音速の攻撃の嵐を全て余裕でかわすナマズ、こと『お姉様』か。面白ェ事知ってンじゃねェか」
打ち止め「ミサカも電気系能力者のはしくれだよ、ってミサカはミサカはパスタで箸クレ日本人とか面白い事を言ってみたり」
番外個体「いや、それ全然つまんねーぞ」
芳川桔梗「そうね、説明する時はちゃんとしてボケるときは圧倒的にボケなさい。ダジャレだってメリハリが大事なのよ」
一方通行「テメエらにクソガキを注意する資格はこれっぽっちもねェが……、とりあえず自作解説してみろよ」
打ち止め「了解!ってミサカはミサカはひとまずナマズの生態をおさらいする必要があるかなと思ってみたり」
上条「ナマズの生態については、えーと……、>>27からのナマズ話でそれなりに扱ってるよな?」
禁書「そうだね。ここではナマズの電気魚としての性質の、れえだあが鍵になっているんだよ」
上条「電気魚に分類されるナマズは、獲物や敵の発する微弱な生体電流を感知する器官を持ってるんだっけ」
禁書「短髪はそれに加えて、弱電気魚の自家発電による知覚能力を持っているはずなんだよ」
上条「発生した電場が乱れる様子から周囲の状況を五感に頼らず把握する、か」
禁書「その能力で電気魚は百万分の一秒単位の知覚が可能なんだけど、つまりそういうことなんだよ」
上条「人間の反応速度の限界なんて軽く凌駕する、まさに神速の世界っつーの?」
禁書「ナマズも含まれる電気魚は、光速の軌跡さえ捉えることの出来る理論上唯一の生き物なのかも」
佐天「光の動きが見れる? それって凄いじゃん!?」
初春「見える、とは言ってませんよ。あくまで捉えることが出来る、ですからね」
佐天「あ、そか。目で追ってるワケじゃないんだよね。……、具体的には何が出来るの?」
初春「そうですねえ……、たとえばマッハ100程度で移動する物体に対しては静止物と大差なく対処できるでしょうね」
佐天「ふわ!? って言うかそんな高速で動くものって存在しないよ??」
初春「そこは参考として、実戦ではフェイントや集団による一斉射撃が全く効かないって形で現れるんじゃないですかね」
佐天「……ふむふむ。天使の総攻撃だって所詮超音速の世界だから、御坂さんにとっては隙間だらけの弾幕かもね」
初春「私達からその様子を見たら、相手の攻撃開始より先に回避を始めている、くらいの絶対防御なんです」
一方通行「だが、電気魚と言っても千差万別だろ? 例えばサメも獲物の放つ電気を感知出来るンだが」
打ち止め「その範囲はたったの数十センチって言われてるよね、ってミサカはミサカは意味ねえって罵ってみたり」
芳川桔梗「サメの場合は遠距離探知には嗅覚を使うのよ。血の匂いに誘われて、とか聞くでしょ?」
番外個体「あくまで至近距離の獲物がジタバタすんのを確実に仕留めるための電気魚ってことだあね」
上条「ナマズの場合はどうなんだよ? サメと同じく自分で発電する能力は無いから、実は大したことないんじゃ?」
禁書「眉唾な情報で恐縮なんだけど、こんな話があるよ。琵琶湖って知ってる?」
上条「シガ県の総面積のおよそ95%を占める巨大な淡水湖だっけ?」
禁書「実際は1/6程度だけど、そんな印象あるよね……」
佐天「で? 琵琶湖とナマズがどうしたって?」
初春「乾電池一本を水に落とすと、そのわずかな変化にナマズは湖の何処に居ても気づくんだそうです」
佐天「いやいやいや、ちょっと無茶じゃない?? それじゃ琵琶湖のナマズは全部、琵琶湖の全てを掌握してるっての?」
初春「さすがにそんな訳ないですよね。まあ、ナマズは非常に優れた超広範囲レーダーを持ってるって解釈してください」
打ち止め「五感以外の知覚といえばあなたも持ってるけど、本質が全然違うよねってミサカはミサカは偉そうに語ってみる」
番外個体「ベクトル操作膜は体を覆ってるだけだからね。現象の分析が主目的みたいだし?」
芳川桔梗「彼が近接戦を好むのもそれが原因かもね。知らない攻撃をみると知的好奇心が湧いてしまうんでしょう」
一方通行「オレの話は関係ねェだろ。第一、探知だけなら流体を使って二次的に広範囲サーチだって出来ンだよ」
打ち止め「それは知ってるけど、そうじゃなくて。ほら、えーっと、説明が難しいんだけど……」
芳川桔梗「つまり『順位が下の能力者が出来ることなら、上の能力者に出来ない訳がない』という幻想の否定、かしら?」
番外個体「個性やら相性やらを無視したバカな意見だけど、結構そんな感じのこと言ってるヤツ居るよね」
一方通行「ンなもン、当たり前なンだがな。パーに絶対勝てるチョキはグーに負ける、それだけの事だろ」
上条「俗な例えで言えば、ある場所で活躍してる人間はそこが合っている、って見方とかだな」
禁書「うん。つまり違いはあくまで違いでしかないってことなんだよ」
上条「何かが出来たり、誰かに勝ったり、それで絶対的な優劣が決まる訳じゃない。考えてみたら当然だ」
禁書「逆に、今がぱっとしてない人は現状がその人に合ってないのかも。適材適所って難しいからね」
佐天「話が抽象的過ぎて難しいよ。つまりどういうこと??」
初春「んーと、たとえばですね。口下手で暴力的な男って、何かの役に立ちますか?」
佐天「へ? いや、そりゃ付き合いたくないっていうか、なるべく近くに居て欲しくないっていうか……、って感じだけど」
初春「まあ、一見何処でも通用しませんよね。でも、ニヒルなブラックヒーローってつまりそういう人じゃないですか?」
佐天「あ~、確かにね。闇と静寂と破壊の中ではむしろ万能に見えちゃうかも」
初春「実際は無能の厄介者って扱われてる場合が大半なんですけどね。では、この人が格闘技の選手だったら?」
佐天「ふむ……? 仮にチャンピオンになっても受け答えが苦手だったら、あんまり人気者にはならないかな……」
初春「こんな風に、人の性質は置かれた環境で様々に評価されうるんです。わかりますよね?」
上条「だからオレの御坂に対するイメージだって、実は絶対的なものじゃないって?」
禁書「ようやくちょっと気付いてくれたかも。大体、ニセモノだってチンピラだって場合によっては活躍出来るんだよ?」
上条「そのニセモノやチンピラってのが誰を指してるかは敢えて問わないけど、まあそうだな」
禁書「でしょ? だったら本物の超能力者、短髪の力をもっと信じていないとおかしいんだよ」
上条「乱暴だけど便利で腕のいい電気屋としてなら信じてるけど……、ふむ」
禁書「私には正直、活躍出来ない場合を考えるほうが難しいんだよ」
上条「確かにこの次回予告みたいなことはオレにはムリだけど……、あれ? そういえばもうひとつ不思議があったな」
禁書「短髪の攻撃で天使があっさり倒せてしまうことだよね? そこには私の知識がたっくさん使われてるんだよ」
打ち止め「えとね、古来より雷は神様と結び付けて考えられることが多かったんだよってミサカはミサカは解説してみたり」
一方通行「モーセが十戒を受け取ンのは神の山、そしてモーセが山に入ってる間、雷鳴が鳴り響き続けたとかな」
芳川桔梗「モーセといえば、出エジプトの際に起こした奇跡にも雷が関わっていたわね」
番外個体「地には炎を、天からは雹と雷を落としまくってエジプトをボロボロにしました。めでたしめでたし、でしょ?」
打ち止め「ミサカの見せ場が……、ま、負けないよ! 十字教以外でも、おなじみトールとかゼウスとかイザナギとか!」
一方通行「人の手が届かねェ空を人の手の届かねェ神の世界と考え、その空で起こる事を神の意思と見做すワケだ」
番外個体「安易っちゃ安易だけど、世界中の大抵の宗教でそう考えてんだよね。実は合理的な理由があんのかも?」
芳川桔梗「ともかく、雷が神の意思であるとすると、莫大な破壊力を伴う落雷は当然、神の怒りと考えられてきたわけ」
佐天「神様がゴラァ! でドーン、とするのね。でもそれでなんで神の御使いのはずの天使を倒せちゃうの?」
初春「この考え方は普遍的とまでは言えないんですが、仮に天使ってのは神の意思に従うだけの存在、だとします」
佐天「自らの意思を持たない操り人形みたいな? ちょっと違和感あるんだけど……」
初春「私も納得出来ませんけどね。まあ、そう考えた場合の話です。一方で、神の怒りは徹底的に無慈悲なんですよ」
佐天「一切の弁明を許さず、罪を究極まで罰するって感じかな。それで?」
初春「その怒りの矛先が、天使に向けられたらどうですか? 彼らに抗うことが出来るでしょうか?」
佐天「……いや、わかんないけどさ。つまり何? 天使は電撃に弱いってこと?」
初春「電撃ではなくて落雷に、ですね。話は変わりますけど、この間>>232でやった落雷の仕組みって覚えてますか?」
上条「つまり、雷雲が作り出した電位差の放電による中和現象が雷で、それが地面との間で起これば落雷になる」
禁書「雲の下層にマイナスの電荷が貯まると静電誘導によって地面はプラスに帯電するんだよ……私、何言ってるんだろ?」
上条「電位差が巨大になり一定値を越えると両者間で放電が始まる。先駆放電、先行放電ってヤツだ」
禁書「マイナスの先駆放電とプラスの先行放電が結びついた電気の通り道を通る大電流。これが落雷の本番、主雷撃だね」
上条「ああ。雑に言っちまえば先駆放電が一番先に辿り着いた先行放電の発射先と結びついてそこに落雷するワケ」
禁書「だから空に浮いてる天使を纏めてプラスに帯電させてしまえば、後はただの的になっちゃうって寸法なんだよ」
上条「神の意思が自身を罰することだったとしても、天使は無抵抗で焼かれることを選択せざるを得ないのか?」
禁書「科学的には判らないけど、少なくとも魔術的な意味でこの落雷を天使が防ぐことはあってはならないのかも」
打ち止め「同様に、天使を信奉する人間は落雷を防げないよね、ってミサカはミサカは宣告してみたり」
番外個体「あー、オカルトは知らないけどさ、確か十字教ってのは落雷にトラウマを抱えてんだよね」
一方通行「アレだろ? 中世以前の教会っつーのは町で一番高い建物だったンで落雷被害が多かったンだが」
芳川桔梗「近代に入り科学者、例えばフランクリンが有名だけど、落雷に対する防御策として避雷針を発明するのよ」
番外個体「けど、聖職者たちは『神の怒りが敬虔な信徒たる我らの頭上に降りかかるはずが無い』って避雷針を拒否すんだね」
芳川桔梗「そして次第に『雲行きが怪しくなったら教会から離れろ!』が雷対策として通用するほど十字教は威厳を失うのよ」
一方通行「それでも熱心な信者は教会の力を信じた。花火職人が雷を避けよォと教会に大量の火薬を持ち込ンだ、とかな」
打ち止め「悪い予想通り、落雷は教会を襲い大爆発……、変な意地を張りすぎなんだよってミサカはミサカは憤ってみたり」
禁書「最終的には科学者が気を使って『避雷針なんて雨の日の傘と同じで科学って程の物じゃないから』って言ってくれて」
上条「で、今では避雷針が教会の標準装備になってる……、カッコ悪い話だなあ」
禁書「十字教徒であれば、落雷を防いでしまうのは当時の信徒たちに対する欺瞞に他ならないんだよ」
上条「苦い事実が確かにあったのに、自分達だけは落雷の被害に遭わない対策するのは……、確かにちょっとな」
禁書「魔術的にも同じことが言えるんだよ。敬虔な十字教徒であれば落雷は防いではならない、って」
上条「神の怒りが自分に向けられるはずが無いし、もし万が一にも向けられたなら喜んで罰を受けるってことか?」
禁書「うん、ただし十字教だけに没頭する人に限った話ではあるけれどね。魔術師はそうじゃないことが多いんだよ」
上条「落雷を防いだエピソードをもつ別の宗教や神話を利用して防御を可能にしちまうのか。やっぱり魔術師ってズルい」
佐天「でも十字教を信じてる以上、完全に防いじゃったらやっぱり自分の信じるものを裏切ることになるんじゃないの?」
初春「その辺は想像上の話だから私にも判りませんよ。ただ、程度次第って感じはしますかね?」
佐天「例えば十字教半分、北欧神話半分で構成される魔術師は落雷完全防御を半分の完成度でしか実現できないとか?」
初春「だからやってみないとわかりませんよ。もちろん魔術師なんて職業の人が居れば、ですけどね」
佐天「ふむ。……あ、じゃあ想像ついでに。神様の力を宿した人間が居たとしたら落雷が効かないんじゃない?」
初春「神の怒りが神自身に向けられるって図式ですか……。自分で自分を殴ったって確かに効きませんけど」
佐天「でしょでしょ? だからこの小説にはたぶん、そういうキャラが出て来るんだよ。『私は神の子ですから』とか」
初春「ああ、それはいいですね。『神に神罰は下りませんよ』とか。年配の女性キャラって感じがします」
一方通行「まァ、神に向けられる神の意思を表した神話だってあるから結局どォなるか分ンねェけど」
打ち止め「北欧神話の最高神オーディンの話もそうだよね、ってミサカはミサカは例示してみたり」
芳川桔梗「彼はルーン文字を読み取り魔法の歌を教わるための手段として、最高の神に最高の生贄を捧げたのよ」
番外個体「つまり自分を生贄にして自分に捧げた……、やってる本人がシリアスなだけにシュールだね」
一方通行「真面目に分析すンなら、『装置としての神』と『存在としての神』が別物って事だろ」
打ち止め「自分の座ってる地位に願を掛けたって考えたら話は通じるね、ってミサカはミサカは納得してみたり」
芳川桔梗「でもたぶん、そう考えてしまうのはダメなのよ。神の絶対性が損なわれてしまうでしょ?」
打ち止め「むむむ。でもこれ以上の考察は素人のミサカには無理かも、ってミサカはミサカは諦めモードに突入してみたり」
番外個体「要するに、知らないことをどれだけ考えたって答えは出ねーって事だよ。おつかれさん」
☆
初春「やってみないことには分らない、だからどれだけ話し合ったって……」
初春「この書類の山は消えてなくならないんですよね……」
初春「佐天さんも帰っちゃったし、寂しいな……」
初春「ええい、とっとと終わらせて私も日常へ戻りますよー! やらなきゃ分らない、やったら終わるんです!!」
上条「そうだな。実際に戦いが始まる前からアレコレ心配しても、その時にはまた違う状況だったりするだろうし」
禁書「備えあれば憂い無しではあるけれど、下手の考え休むに似たりでもあるんだよ。偏りすぎはダメってことかも」
上条「しかし、そんなに深いメッセージがこの短い話の一端に隠されていたとは……」
禁書「多分作者さんはそんなこと考えてないと思うけど。でも、本を読んで抱く感想が人それぞれだから読書は面白いんだよ」
打ち止め「つーまーり、ミサカ的にはお姉様バンザイなお話を書きたかったのってミサカはミサカは打ち明けてみたり」
番外個体「このミサカとしては、その裏で情けない第一位を書いてんのが楽しくって楽しくって楽しくって」
芳川桔梗「そんな単純な動機のお話だけど、読者が様々な空想を働かせれば一大叙事詩にさえ成り得るのかしらね」
一方通行「くだらねェ……。ともかくまだ書くつもりなら身バレに注意すンのと……、オレの活躍を忘れンじゃねェぞ」
「『え?』」
御坂「……で、私の出番はないの? 私の話題っぽいのに本人登場しないの? ありえなくない???」
白井「お姉様……。時には主張しないことが正解、ということもあるんですのよ……」
~おしまい~
273 : ◆96XoVRe9oA[saga] - 2011/09/24 13:51:37.70 iB2W5skB0 193/386
以上、第二十二回『総集編』でした。いろいろすいません。
ちなみに、ナマズの背ビレはとても小さく、ぴょこぴょこ動きます。アホ毛みたいで可愛いですよ。
あと、作中の登場人物、団体、物理法則などは全てフィクションで、実在のものとは全く無関係です。
万が一にも気分を害された方がいましたら、作り話だからと納得していただくようお願いします。
今回は完全に妄想垂れ流しで収拾も付けず、重ねてすいません。ではではまたー
【パート3】 へ続く