このSSは、 ほむら「それは、もう一つの結末」 【前編】 【中編】 【後編】 の続き(真エンディング)となります。
670 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/01 23:33:08.15 2TZkmEYco 648/705何が言いたいの?
つまりこの時間軸は何なの?
わかりやすく説明してよ
671 : ◆LeM7Ja3gH2ba[s... - 2013/10/02 21:52:47.69 ntvxJi8Zo 649/705>>670
このSSは、ほむらが原作の世界にたどり着くよりも前に訪れた、とある時間軸でのお話です。
それではおまけを投下します。
マミさんがあの時にどう思っていたのか、そして……という内容です。
これはスレタイ【ほむら「それは、もう一つの結末」】のSSの真のエンディング的な立ち位置ではありますが、
別SSという扱いでもあるので改めてタイトルから始めますね。
マミ「これが、私の結末」
ほむらさんと共に烈風に吹き飛ばされる私は、ワルプルギスの夜が放った漆黒のビームが迫ってくるのを見た。
マミ(死にたくない……!)
でもそれ以上に、ほむらさんを死なせたくないと思った。
ガシッ!
ほむら「!?」
そう思うと同時に行動を起こしていた私は、
瓦礫の破片が突き刺さったお腹と右手を失った痛みを堪えながら、左手でほむらさんを掴むと、
マミ「ぅ、ぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
ブンッ!
出来うる限りの魔力と腕力を使って彼女を投げた。
ほむら「マっ、マミさぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」
これで、ほむらさんはビームの射程範囲内から逃れる事が出来た。
マミ(や、やった……)
彼女を投げた時の反動で、私が飛ばされる軌道も変わる。
しかし、それはあの怪物の攻撃を回避出来るほどのものではなく……
キラッ。
視界の端に映った『なにか』に手を伸ばしたのは、ただの悪あがきだった。
─────────────────────
……なぜだろう。
体がまったく動かない。
目すら開けられないので、ここがどこなのか、今自分がどんな状態になっているのかもわからない。
そんな私の意識は半分眠っているようにおぼろげで、
どこかフワフワしていて……まるで夢の中に居るようだった。
マミ(…………)
ふと唐突に、私が魔女になりかけた──『闇』の濁流に襲われた時の事を思い出した。
つくづく、あの時の私は情けなかったと、みんなを殺してしまわなくてよかったと心から思う。
自分の『闇』に呑まれつつあった私が最初に襲ったのは、路地裏に居たほむらさんと佐倉さんで、
その時こそ二人に怪我はさせずに済んだけれど……
それからは危なかった。本当に危なかった。
二人と離れて、次に出会ったのは美樹さん。
最初のうちはまだ自分の『闇』と戦えていた為に、銃の狙いも甘かった。
いや、わずかに残っていた自分の冷静な部分・意思で、甘くする事が出来た。
しかし徐々にそれも叶わなくなり、私はどんどん彼女を追い詰めていった。
あの時、ほむらさんと佐倉さんが現れなければ、私は間違いなく美樹さんを殺してしまっていた。
その後に佐倉さんと戦った時は、冷静な部分はまだ残っていこそすれ、もはや完全に自制が効かなくなっていた。
美樹さんに引き続き、彼女をもさして苦労をせずに追い込めたのは、
佐倉さんが私を殺してしまわないように動いてくれていたからだと思う。
彼女が本気で『殺し合い』をするつもりだったら、こうはいかなかっただろう。
その戦いの最後、私は佐倉さんのソウルジェムにマスケット銃を放とうとした。
──ダメっ!!!──
しかし、その意識が弾けた瞬間、自制が効かなくなっていたはずの私の腕がほんの少しだけ下に動いた。
これは、ここまでの私に残っていた最後の力が、無意識に爆発した結果だったのだと思う。
そして、さすがは佐倉さん。
私の攻撃を避ける為に、彼女は半ば気を失いながらも身をよじっていた。
この二つが重なり、私の銃は佐倉さんのソウルジェムを砕かずに済んだのだ。
次のほむらさんに対しては、美樹さんが居なかったら私はほむらさんを……
マミ(…………)
こうして考えると、本当みんなに迷惑かけちゃったな。
いくら私が自分の『闇』と戦っていたと言っても、表立った効果なんて些細なものだった。
ほむらさんと佐倉さんが駆けつけるまで美樹さんが生存してくれたのは、
彼女が魔法少女としてもの凄いスピードで成長をしていたから。
それが無ければ、私がどれだけ銃の狙いを甘くしても無意味だったと断言出来る。
マミ(それに……
美樹さんの能力が。回復力が、私の手からほむらさんの命を救う、彼女のあの援護に繋がったのよね)
佐倉さんとの戦闘も、彼女が私と戦ってくれたおかげで美樹さんが回復するまでの時間を稼げたのだし……
マミ(実力者の佐倉さんだからこそ、全力を出せない中でも生き残ってくれたんだわ)
私が『闇』に完全に喰われかけた……魔女になる寸前だった時は、もはや言うまでも無い。
その後にグリーフシードを使ってくれただけではなく、佐倉さんと美樹さんの思いと、
ほむらさんが私をあそこまで求めてくれたからこそ私は私のままで帰ってこれたのだ。
……そして、気が付いたら私は自分のお部屋に居て……
マミ(ほむらさんと結ばれたのだったわね)
私の胸に、嬉しくて、でもちょっと気恥ずかしい──不思議な気持ちが湧き上がる。
まさか、彼女とこんな関係になれるなんて。
マミ(最初から、ほむらさんとは仲良くなりたいな、とは思っていたけれど……)
……最初、か。
ほむらさんと初めて出会ったのは、月が美しく輝く夜だった。
それから、彼女がショッピングモールでキュゥべえを襲っているのを目撃したり、
次の日に、学校の屋上に居るほむらさんに勇気を振り絞って話しかけたりしたっけ。
マミ(その時も、彼女は鹿目さんを見守っていたのよね)
鹿目さん。
ほむらさんが、数々の悪夢を繰り返しながら……それでも決して諦めずに救おうとしている少女。
マミ(あの子と最初にお喋りしたのは、佐倉さんと再会した日だったわ)
私とほむらさん、美樹さんと、志筑さんに、鹿目さん。
この五人で下校した時だ。
あの時は、わずかな間だったけれどとても楽しい時間だった。
鹿目さんと会話して得た彼女の印象は、
『凄く心が綺麗で、芯の強さを感じさせる可愛い子』
といった所だろうか。
当時は詳しい事情を知らなかったが、ほむらさんが鹿目さんを守りたいと思う気持ちを素直に理解出来た。
マミ((うん……
私も、この子を守りたいな))
そう自然に思わせる素敵な魅力を、鹿目さんから感じたのだ。
マミ((確かに、こんな子を魔法少女の世界なんかには引きずりこみたくない))
ただ、それと同時に……
マミ((……もしほむらさんと出会わなかったり、出会う前に鹿目さんと縁があって、彼女が魔法少女になっていたら……
私の一番のパートナーになってくれていたのかも))
不思議なのだが、そんな風にも感じた。
理屈とかではなく、直感で。
これは、短い時間だけれど彼女の……
まるで人を包み込むかのような、透き通った大きな心に触れたからかもしれない。
マミ(うふふっ。こんな風に思うのって、浮気になっちゃうのかしら?)
そんな事は無いだろう。
マミ(……と、思うんだけど)
ほむらさんに対する気持ちと、鹿目さんに対する気持ちは違うから。
第一、恋人にしか『大切』だとか思っちゃいけないのなら、友達だって作れないものね。
マミ(でも、他の人に恋心を抱くなんて絶対にありえないにしても……
この事で嫉妬はして貰いたいかも)
先日四人で私の家に集まった日、美樹さんに抱きつかれた時のほむらさんの嫉妬……嬉しかったな。
マミ(ほむらさん、凄く可愛かったし)
勝手なもので、自分が嫉妬をしてしまうような状況になるのは嫌だけれど、
彼女から嫉妬されるのは嬉しいなと思ってしまう。
マミ(うふふっ、私っていじわるだな)
そして、ほむらさんを想えば想うほどわかる。深く深く感じる。
私は、彼女を愛しているんだって。
マミ(…………)
それを実感するほど、私の喜びは大きくなっていく。
永遠に、無限大に広がる幸せ。
マミ(……でも、それももう終わり)
もっと、みんなと一緒に居たかったな。
マミ(ほむらさんと、居たかったな)
それは無理みたいだけど。
マミ(でも、愛しいあの人を守れてよかった……)
……?
私はなにを考えているのだろう。
それに、どうして以前の事をこんなに思い出しているのだろうか。
マミ(これってもしかして……)
死ぬ間際に、過去の出来事が走馬灯のように蘇るっていうけれど……
マミ(そ、そんな!)
嫌だっ!
マミ(嫌だ、嫌だ、嫌だっ!!!)
もう、先程までの幸福感は無かった。
マミ(私は死んでないわ! 死んでないっ!!
死んでなんか!!!)
そう。私は死んではいない。
じゃあこれは何? 今、私は……ほむらさん達はどうなっているの?
──!!
現実に意識を向けた途端に思い出した。
そうだ……
……………………
…………
突如として生まれた烈風に、私は吹き飛ばされていた。
マミ「……!」
そんな私の視界に映ったのは、ワルプルギスの夜の放った漆黒のビームと、
私と同じく風に飛ばされるほむらさんの後ろ姿だった。
──このままでは、二人ともあの攻撃にやられてしまう!──
そう確信した私は、残っていた左手にマスケット銃を召喚して風の流れに逆うように発射。
そのおかげで、ほむらさんの体が間近に来た。
マミ(……この風の勢いと、あのビームの射速を考えたら、二人が無事に回避するのは……)
不可能だと、私は悟った。
マミ(死にたくない……!)
でもそれ以上に、ほむらさんを死なせたくないと思った。
ガシッ!
ほむら「!?」
そう思うと同時に行動を起こしていた私は、
瓦礫の破片が突き刺さったお腹と右手を失った痛みを堪えながら、左手でほむらさんを掴むと、
マミ「ぅ、ぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
ブンッ!
出来うる限りの魔力と腕力を使って彼女を投げた。
ほむら「マっ、マミさぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」
これで、ほむらさんはビームの射程範囲内から逃れる事が出来た。
マミ(や、やった……)
彼女を投げた時の反動で、私が飛ばされる軌道も変わる。
しかし、それはあの怪物の攻撃を回避出来るほどのものではなく……
キラッ。
視界の端に映った『なにか』に手を伸ばしたのは、ただの悪あがきだった。
……………………
………………
…………
……
─────────────────────
パッ……
意識を取り戻した私は、まぶたごしに微かに光を認識した。
……どうやら、まぶたは動くようだ。
マミ(…………)
私はゆっくりと目を開いた。
─────────────────────
ほむら「っく……うぅっ、マミ、さん……」
最初に瞳に映ったのは、号泣するほむらさんだった。
690 : ◆LeM7Ja3gH2ba[s... - 2013/10/02 22:27:34.04 ntvxJi8Zo 668/705
ほむら「……! マミさんっ!」
私が意識を取り戻したのに気付いたのだろう。ほむらさんが声を上げる。
マミ「っ、っ……」
彼女の名前を呼ぼうとしたが、声を出せなかった。
ほむら「今治してるから、治すからっ! 大丈夫だから!」
……どうやら彼女は、ワルプルギスの夜の攻撃を受けて大怪我を負った私を、
魔力を使って治そうとしてくれているようだ。
マミ「…………」
無理、ね。
私は悟っていた。
相変わらず体はまったく動かないが、感覚でわかる。
これは、動かない・動かせないんじゃない。動かしたい部分が無いのだ、と。
瞳の端に見える、大地を覆っている水が赤い。
これはきっと、私の血。
たとえ魔法少女でも、たとえ美樹さんほどの回復力があったとしても、もう絶対に助からない……
これまでの戦闘経験でそれを──自分の状態を悟ってしまった私には、
恐怖と絶望のあまり発狂してしまわないよう理性を保つのに精一杯で、
魔力を自分の回復の為に回す余裕すら無かった。
当然、テレパシーも使えない。
痛みをまったく感じないのは、私の生存本能が無意識のうちに魔力を使って、痛みを完全に遮断しているのだろう。
マミ(……嫌だ)
死にたくない。
時間が経てば経つほど大きくなっていく、死の影と恐怖。
マミ(嫌だっ!)
私の中に生まれる後悔。
あの時、別の行動を取っていればこんな事にはならなかったかもしれないのに。
しかし……私が、自分だけが助かろうとしていたらほむらさんは死んでいただろうし、
どう考えてもあの状況では二人が助かる方法は無かったのだ。
マミ(死にたくないっ!)
死んだら、ほむらさんと離れ離れになってしまう!
いっそ、下手に動かずに二人で死んでいればよかった……
後悔、後悔、後悔。
じわり。
私の『魂』が、闇に染まっていくのがわかる。
頭を動かせないので確認は出来ないが、私のソウルジェムは凄まじい勢いでどんどん穢れていっているのだろう。
ぐっ……
マミ(!)
そんな中でもこの状態に慣れてきたのか、ささやかながら左手が動いた。
きっと、これが頭以外に残っている私の唯一の肉体なのだ。
マミ(これは……!)
そして、手の中にある物の存在にようやく気付いた。
私が、悪あがきをして掴んだ物だ。
マミ「う……」
微かに、声も出るようになった。
これらは慣れだけではなくて、ほむらさんの必死の治療の効果もあるのだと思う。
でも、ここまでだ。
さっきチラッとほむらさんの左手が見えたが、彼女のソウルジェムもだいぶ穢れている。
私の魔力も、もう残り少ないだろう。
このままでは、二人まとめて魔女になってしまう未来しかない。
マミ(……それも悪くないわ)
彼女と離れ離れになってしまうくらいなら、それも……
マミ(……でも)
激しい恐怖や後悔・絶望がとめどなく溢れてきて、もはや止められないのは間違い無いが、
それすらも上回る『想い』が私の中にあった。
マミ(でも、ほむらさんを助けられてよかった)
あなたを愛しているから。
誰よりも、あなたを愛しているから。
二人で生きていきたかったけれど。
それが叶わないならば。
せめて、なんとしてでもあなただけには生きて欲しいと思った。
マミ(よかった……)
この想いは、どんどん巨大化していく私の『闇』を凌駕していた。
そんなものに負けずに、なんとか抑え込めるほどに。
だから、ようやく喋る事が出来るようになった私は、あなたへの想いと祈りを込めてこう言うのだ。
マミ「もう……やめ……て」
──助けて!──
ほむら「えっ?」
マミ「治療なんか……いらな、いっ……」
──お願い、見捨てないで……!──
ほむら「ど、どうして!? このままじゃ……!」
マミ「そ……うね。このままだと、助からない」
私は、ともすれば支配されてしまいそうな、自分の『闇』と必死に戦いながら言葉を続ける。
ほむら「そうよっ! そんなの……」
マミ「──あなたも、ね……
それをわかって、いながら……無理に私を……助けるようとするなんて、許さ、ないわ……」
ほむら「……!」
マミ「馬鹿ね。愛している人の考えて……いる事、くらいわかるわよ」
負けるものか。
マミ「私はあなたを救いたくて……救えた、のに……
自、殺みたいな事されたら……たまらないわ」
負けるものか。
ほむら「ふざけないでよっ!
まどかも美樹さんも杏子も、志筑さんもクラスのみんなも失ってっ、その上あなたまで……!」
ここで負けてしまうと、きっとあなたの命運も尽きてしまうから。
ほむら「大事な人達をみんな失っても、私一人で生きていけって言うの!?」
マミ「そうよ」
ほむら「そ、そんな……」
──だって……──
マミ「私は、あなたに生きていて欲しいと思うから」
精一杯の力で、ゆっくりと、はっきりと。私はそう呟いた。
マミ「ほむらさんは、今なら……時間を遡れるんでしょ……?」
ほむら「嫌だっ! もう嫌よ!
もうまっぴら! こんな現実耐えられないっ!!」
ズキンッ!
マミ(うぐぐっ!)
彼女の絶叫に、私の心が激しくきしむ。
言いたい。『もう良いんだよ』って。
『もう苦しまなくても良いの。一緒に死のう?』って、『一緒に死んで』って言いたい!
言いたい、言いたい!
……でも! 私はっ!!
ほむら「だからもう死ぬの! 私もこの世界でみんなと一緒に死ぬ!
それか、魔女になるっ! そしてすべてを壊してやる! 全部無茶苦茶にしてやるんだッ!!」
マミ「馬鹿っ!!!」
ほむら「!?」
無理に声を張り上げてしまった。
私は、激しく咳き込む。
ほむら「マ、マミさんっ!」
マミ「あなた……にはっ、鹿目さんとした、大切な『約束』があるでしょっ……!」
ほむら「!」
マミ「そして、あなたにはまだっ、それを果たせるだけの力……が、あ、あるっ!」
ほむら「……まどか」
そうだ。あなたには、なにがあっても絶対に生きなくてはならない理由があるはずよ。
ほむら「……でも、もう駄目よ」
マミ「えっ?」
ほむら「私のソウルジェムも、こんなに穢れちゃったもの」
彼女が、自身の左手の甲にあるソウルジェムを見せる。
ほむら「こんな状態だと、時間遡行をした瞬間に魔女になっちゃう」
その穢れの激しさを見ると、嘘ではないのだろう。
ほむら「だから、ね?
もうすべては終わったのよ……」
ほむらさんは、まるで呪いの言葉を吐き出すように言うと、両手を地面について大きくうな垂れた。
……一瞬、自分の無意味な延命の為に、『それ』を使いたいという強烈な欲求が湧き上がった。
これに似た感覚は、どこか覚えがある。
そう、私が魔法少女になったあの時だ。
マミ(お父さん、お母さん……)
あの時は、私は自分だけが助かる事を望んでしまった。
無意識だったとか、魔法少女になる際の契約の事を知らなかったとか……
そんなのは関係ない。言い訳にすらならない。
マミ(けれど、今度は。今度こそは……!)
──お父さん、お母さん、見てて!──
私は最後の魔力を振り絞って左手を動かし、
パアァ……
手の中にあったグリーフシードを、ほむらさんのソウルジェムに当てた。
マミ(ぐっ……!)
意識を取り戻してから初めて視界に入った自分のその腕は、わずかな肉と骨で、かろうじて繋がっている状態だった。
マミ(負けない、私は負けないわっ!)
……彼女のソウルジェムから、穢れが消えていく。
ほむら「…………えっ?」
やった。
これで彼女は……
ブチッ……
マミ「ぁぐっ!」
パシャッ。
彼女のソウルジェムを浄化し終えたのとほぼ同時に、私の左腕が千切れた。
もう、あの状態の腕を繋げたまま維持出来るだけの魔力が残っていなかったのだ。
ほむら「マ、マミさんっ!」
マミ「う、うふふっ……
今のは、鹿目さんが結局使えなかった……最後に残っていたグリーフシード」
ほむら「そんな物があったなら……自分に使えばよかったのに……」
マミ「私に使っても、こんな状態、じゃあ私は……結局助からな、かったわよ。
それに、そんな事したら……あなたを救えないじゃない……?」
ほむら「マミさん……」
これで、ほむらさんは時間遡行が出来る。
──意識が薄れてきた。
『闇』が、すぐ目の前まで迫っている。
私がそれにやられてしまう前に……
マミ「……ねえ、ほむらさん。
私とも『約束』……してくれる? 頼みたい事があるの……」
ほむら「や、くそく……?」
マミ「うん……」
私は、しっかりと彼女の目を見据えた。
少しでも長い時間あなたを見て、その存在を自分の魂に焼き付けておきたかったから。
マミ「これから先、なにがあっても……
この世界での事より、たとえもっと辛い目にあった、としても……
決して諦めないで」
死なないで。
マミ「絶対に諦めずに負け、ずに……生き抜いて……
鹿目さんとの『約束』を果たして」
お願い。
マミ「あなたが、ずっとずっと目指してきたその『約束』を」
生き抜いて。
そう、私は願った。祈った。
ほむら「……うん、うんっ! わかった!
私はもう弱音なんか吐かない! 絶対に負けないっ!」
マミ「よ……かった」
ほむらさんの叫びと表情を見て、私はほほえんだ。
……ああ。『来た』。
もう、抑えられない。
マミ「も、もう一つ……お願いして良い……?」
ほむら「うんっ、なんでも言って! なんでもするっ!」
マミ「ん……
あのね、私のソウルジェムをっ、く、砕いて欲しいの……」
ほむら「!?」
ごめんね、ほむらさん。
マミ「私、魔女になんかなりたくない……」
私が私でなくなって、すべてを忘れてしまうなんて嫌だ。
お父さんもお母さんも。
私が苦しい時に声をかけてくれたクラスメートも、なんとか私の力になろうとしてくれていた先生も。
佐倉さんも。
美樹さんも。
鹿目さんも。
ほむらさんも!
マミ(忘れたくないっ! 忘れたくないよぉっ!)
そして、大好きで、大切な人達が確かに生きて存在していたこの世界を壊したくなんかない!
ほむら「そ、それだけは嫌だっ! やだッッ!!!」
マミ「──っぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
もう、目が見えない。
私という存在は、魂は、徐々に消えていっている。
マミ(やだ、嫌だっ! 怖いっ!)
再び襲ってくる恐怖。
助けて!
ほむらさん、負けないで!
ずっと私と一緒に居て!
あなたは生きるのよ!
マミ「あぐっ、あぐぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ほむら「マミさんっ!」
マミ「せ、せめて……あなたの手、で……っ! お願……!」
ごめん、ごめん、ごめんなさい。こんな事をあなたに頼むなんて。
けれど私は、みんなと、この世界が大好きで……
マミ(あなたを愛する『私』として終わりたいの)
最後の最後で、こんなに酷いわがままを言ってごめんね……
ほむら「~~~~~~~~~っ!」
……視力を失っても気配でわかる。ほむらさんが、銃かなにかを取り出したようだ。
マミ(ありがとう)
ほむら「ぐ……ぐぅぅっ!」
……でも。
マミ(やっぱり寂しいよぉ……)
今はもう、私という存在のほほすべてを『闇』に侵食されたからだろう。
もはや私の中には、絶望や未練、寂しさしか無くなってしまったが、どうにもならない。
ほむら「ゔ ゔ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ ッ ッ ! ! ! ! ! 」
だって。
これが、私の……
ドクンッ!!!!!
マミ(あ……!)
ほむらさんが、私のソウルジェムを砕くよりもほんの一瞬早く。
ついに力尽きた、私という存在が弾けた。
『闇』が私のすべてを喰らい尽くしたのと、私が私のまま終わる事が出来たのと。
自分が迎えた結末は、果たしてどちらだったのだろうか。
今の私にはわからなかった。
『あなたの頑張りを、祈りを──
絶望で終わらせたりはしません』
しかし、意識が完全に途切れる瞬間、優しい……そんな声が聞こえたような気がした。
─────────────────────
私は、真っ白な光の中に立っていた。
ちゃんと目は見えるし、五体満足だ。
……私は死んだのだろう。魔女になる事なく。
不思議と、その確信があった。
マミ(ほむらさん……)
湧き上がるのは、彼女に対する深い申し訳なさと、感謝。
なぜか、今際の際に捕らわれていたはずの絶望はまったく無くなっていた。
マミ(……ほむらさん、大丈夫かしら……)
私はもう側に居てあげられないし、最後にとんでもないお願いをしてしまった。
マミ(やっぱり、あんな事頼むんじゃなかったわ……)
『大丈夫ですよ』
マミ「えっ?」
光の中響いてきた声は、確かに私が死ぬ前に聞こえた声だった。
パアァッ……
目の前の真っ白な空間に、『慈悲』そのものとしか表現出来ない輝きが生まれる。
それはゆっくりと人の姿を形取っていき……
マミ「!」
あなたは……
マミ「鹿目、さん……?」
そう、そこに立っているのは、まぎれもなく鹿目さんだった。
まどか「はい、そうです。マミさん」
マミ「どうして……あなたが?」
……いや、そうか。ここは恐らく死後の世界。
きっと鹿目さんも、魔女になった後に……
まどか「ううん、違いますよ」
彼女は私の側まで来ると、そっと私の両手を取った。
マミ「……!!!」
『すべて』が──
私の中に流れてきた。
マミ「あ……」
そうか。そう、だったんだ。
まどか「えへへっ!」
私がすべてを知ったのを見て、鹿目さんが女神のように美しく、そして可愛らしく笑った。
マミ(……ううん。もう、『ように』じゃないわね)
まどか「ほむらちゃんは大丈夫。
『マミさん』だってそうですよ」
マミ「ええ、そうみたいね。
よかった。
……よかったっ!」
私も含めた『巴マミ』の事もそうだけど、それ以上にほむらさんの事がなによりも嬉しい……!
まどか「……じゃあ、マミさん」
マミ「ええ」
鹿目さんの言葉に、私は頷く。
彼女がどうしてここに現れたのかも、今の私にはわかっていた。
ふわっ。
私と彼女は手を繋ぎながら浮き、ゆっくりと飛びながら前へと進む。
マミ「……!」
しばらく進んだ後、私達の両脇に沢山の人達が現れた。
マミ「あ、あ……っ!」
それは、私が産まれてから死ぬまでに出会った──お世話になった人達。
彼らは、手を振ってくれたりとか、細かな仕草こそ人によって違うが、全員に共通している事があった。
みんな、笑顔なのだ。
マミ「…………」
サアッ……
その、沢山の人達の『思い』が私に入ってくる。
マミ(ああ……やっぱりそうだったのね)
私はこんなに思われていたんだ。
心配して貰ってたんだ。
あの時も、あの時も。あの人にだって。
マミ(やっぱり、河原で魔女になりかけた時に、ほむらさん達から気付かせて貰った通りだったんだ……)
やっぱり、私は一人ぼっちじゃなかったんだ。
ずっと、ずっと。
それに気付かず──見ようとすらせずに一人勝手に寂しがって、
悲劇のヒロインを気取っていたかつての自分が酷く恥ずかしくなり、私は苦笑した。
マミ「……!」
沢山の人達の中に、お父さんやお母さん、美樹さんや佐倉さんの姿もあった。
四人の声が、優しく頭に響く。
『よくやったね』と。
『頑張ったね』と。
さやか『マミさん、色々ありがとうっ!
ありがとーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』
杏子『もう、時間も距離も……次元だって関係ねえ。
あたし達は、永遠に仲間で友達だよ』
マミ「うんっ、うん……!」
いつの間にか、私は涙を流していた。
歓喜の涙を。
まどか「──さあ、そろそろですよ」
マミ「ええ」
鹿目さんの言葉に、私は指で涙を拭いながら答えた。
そして、つい今しがた愛しい人からプレゼントされたヘアバンドにそっと手をやる。
マミ「うふふっ」
幸せだわ。私、幸せだ。
……鹿目さんは、本当は『巴マミ』のすべてを束ねようと考えたらしい。
でも、『私』にはこうするのが一番の救いになると思ってくれ、
『巴マミ』の中であまりに変わった道を歩んだ『私』に対してならば、それを行うのも可能だったのだという。
パアァァァッ……
進めば進むほど光の濃度が上がり、私と鹿目さんは徐々にそれと同化していく。
……再び時を巡る、ほむらさんの意識も届いてきた。
彼女は、深い悲しみの中に居た。
マミ(本当は、こんな時こそ私があなたの力にならないといけないのに……
ううん、あなたをそんな風にさせてしまう事自体を防がなければいけなかったのに)
これだけは無念で仕方がないけれど、今の私は、それで後ろ向きになったりはしない。
そんなの、みんなに……ほむらさんに失礼になるから。
ほむら((思えば、みんな全員で幸せに、などという考えが甘すぎたのだろう。
もっともっとまどかの事を、まどかだけを考えて動くべきだった。
そうしなかったから、また失敗したのだ))
マミ「いいえ、違うわ」
これまで以上に自分の気持ちを無理に縛りつけようとしている彼女に、私はそっと語りかける。
マミ「あなたの真情こそが、正しいの」
これが幻聴だと思われても良い。
でも……
ほむら((美樹さやかにも、佐倉杏子にも……
『巴マミ』にも。
もう、情は一切持たない))
マミ「…………」
無理矢理自分に嘘をついてまで、痛々しい決意をするほむらさんには申し訳ないのだけれど……
正直、その末にこれほどまでに胸を痛める彼女の気持ちが私には嬉しかった。
それはほむらさんが優しい人だというのもあるけれど、私達を大切な存在だと思ってくれているからこそだから。
そして、私に対してはさらに……未だにその『想い』を持ち続けていてくれる事を、この魂に直に感じるから。
たまらなく、嬉しい。
これから先彼女が生きていく中、その想いは変わってしまうかもしれない。
逆に、彼女が今の目的を果たした後も、さらにその先にまで行っても……
永遠に私を想い続けてくれるかもしれない。
もはや、私にはそのどちらでも満足だった。
これだけ沢山の人や思いに恵まれ、与えて貰っていたのだから、もうなにも求めるものは無い。
求める必要は無い。
マミ(形はどうあれ、あなたが幸せになってくれさえしたらそれだけで良いの)
……本当、私は馬鹿ね。
もっと早く色々な事に気付けていれば、自分も含めた、もっともっと沢山の人達の為に頑張れていたのにね。
マミ「大丈夫。心配はいらないわ」
ほむら((今度は、そんな自分の『弱さ』にも打ち勝ってみせる))
マミ「あなたは、自分のその『優しさ』を信じて、失わなければいつか必ず……」
私は、ほむらさんを見守る存在になる。
さすがに鹿目さんみたいにはなれないし、私の力でなにかをどうこう出来る訳でもないとは思うけれど。
これからは、永遠にあなたを愛し、想おう。
なにを求める事もなく、ただただあなたを。あなたの幸せだけを。
想う。
想いを、与える。与え続ける。
そんな存在になるのだ。
マミ「みんな、鹿目さん……
ありがとう」
まどか「はい、マミさん」
マミ「ありがとう、ほむらさん」
そう。
これが、私の結末。
完。
724 : ◆LeM7Ja3gH2ba[s... - 2013/10/02 23:40:48.40 ntvxJi8Zo 702/705以上ですべてが完結です。
レスを下さった方も、ROMして下さった方も……
皆様、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございました。
前スレからお付き合い頂いた方には、さらに重ねて感謝を致します。
とりあえず、ちょっとの間スレを残しておきましょうか。
遅くても、七日後の今の時間くらいまでにはHTML化の依頼を出しますね。
それでは、またご縁がありましたらよろしくお願いします。
726 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/03 04:43:04.98 KyTLc53vo 703/705乙
二人の視点で対になってるのね
丁寧なほむマミでよかった
バッドエンドかなと感じたのに根拠はないよ
強いて言うならワルプル直前のくだりが死別フラグぽかったから
後はほむマミは最後に落とされる展開でも絵になるというか
728 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/05 18:57:39.85 U/zTa+6jo 704/705数多の時間軸の中の一つのif物語としてならうまくまとまったんじゃね?
それもこれも本編まど神様の全知全能の御力あっての事だけどw
729 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/10/07 00:11:44.05 sB3ecrQY0 705/705良いほむマミだった。乙です。