1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 01:47:53.18 j/O6Fi4z0 1/35

神社

「そーだなー。ずっと桜を眺めて暖かい日差しを浴びていたいなぁ」

幼馴染「うんうん♪だから、そうしようよ!」

「そんなことできないよ。季節はずっと巡っていくもんなんだよ」

「後の季節が可哀想だろ?」

幼馴染「そうだけどー」

元スレ
男「俺は春が好きだ」幼馴染「じゃぁずっと春の世界で暮らそう!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1386175673/

6 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 01:50:59.16 j/O6Fi4z0 2/35

幼馴染「ねぇ、一緒に行こうよ。ずっとずぅっと春のままの世界!」

「さっきから何だよ。まるで本当に行けるみたいな言い方だな」クスクス

幼馴染「だから、いけるんだって!ほら!ついてきて!!」ギュッ

「え、ちょっと!!おい!引っ張るなぁ!」

7 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 01:53:14.59 j/O6Fi4z0 3/35

幼馴染「ほら見て!」

「なんだよ……神社の裏まで引っ張ってさぁ」

幼馴染「あそこに小さな鳥居が見えるでしょ?」

「うん」

幼馴染「あそこの鳥居をくぐるとねー!ずっと春のままの世界!春の国へいけるんだよ!!」

「そ、そうか」

幼馴染「信じてない!」

「信じてるよ」

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 01:57:21.28 j/O6Fi4z0 4/35

幼馴染「目を瞑って!せーのっでくぐるよ!」

「うん」

幼馴染「せーのっ!」ヒョイ

「のっ!」ヒョイッ

幼馴染「よし……」

「……」ゴクリッ

幼馴染「……目を開けていいよ」

10 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:01:02.40 j/O6Fi4z0 5/35

幼馴染「わー!すごい!見て!!この着物!綺麗でしょ!?」

「え?」

幼馴染「お人形さんみたいな服に着替えてる♪」

「??」

幼馴染「ほら!あれ!桜の木がいっぱい!!」

「う、うん」

11 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:02:44.45 j/O6Fi4z0 6/35

幼馴染「あそこに町が見えるね~!行こう!」ギュッ

「え、ちょっと!」

幼馴染「私、素敵なお団子やさんしってるんだぁ♪」

「お団子やさん!?」

幼馴染「うん!とっても美味しいんだよー!」

12 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:05:24.42 j/O6Fi4z0 7/35

お団子屋さん

幼馴染「おばちゃーん!お団子ふたつ~」

「」

幼馴染「楽しい?」

「うん」

幼馴染「綺麗だねー。桜の花びら」

幼馴染「雪みたいだね」ニコッ

「///」

「う、うん////」

13 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:07:20.88 j/O6Fi4z0 8/35

幼馴染「お団子おいしかったねー!」

「次はどこいく?」

幼馴染「そうだねぇ!展望台に行こう!」

「展望台!?」

幼馴染「うん!春の国を一望できる展望台だよぉ!」

「遠いんじゃない?」

幼馴染「ちかいちかい♪」グイッ

「おわっ」

14 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:10:01.23 j/O6Fi4z0 9/35

展望台

幼馴染「着いたよ!すごいでしょ!?辺り一面ピンク色!」

「うん」

幼馴染「ほら!あそこ!さっきいたお団子やさん!あんなに小さい!」

「ほんとだね」

幼馴染「あそこの商店街もいってみる~?駄菓子屋さんがあるんだよー」

「そうなんだぁ」

15 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:12:14.82 j/O6Fi4z0 10/35

幼馴染「そうだ!ずっとクラスんだったら2人で済むお家をさがなさなくちゃね♪」

「いえ?家を買うの!?」

幼馴染「ううん!買うんじゃなくてもらうの!お家は無料なんだよ!」

「なんだそれ」

幼馴染「とりあえず、駄菓子屋に行こ!」

「うん」

16 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:13:58.01 j/O6Fi4z0 11/35

商店街

幼馴染「いっぱいお菓子があったね♪」

「駄菓子屋だもん」

幼馴染「ちょっと元気ない?」

「え?げ、元気だよ!」

幼馴染「そう♪よかった!」

17 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:17:32.91 j/O6Fi4z0 12/35

鳥居をくぐった瞬間、目の前の見慣れた景色は夢の世界へと変わった。

2人でさくら舞う神社の周りをひたすら走り回った。

俺は幸せだった。

彼女が隣にいてくれるだけで幸せだった。

そして、永遠の春を願った。

18 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:20:26.79 j/O6Fi4z0 13/35

夕方

「そろそろ、帰ろうよ」

幼馴染「えぇ!ずっとここに暮らすんじゃなかったの?」

「でも、お母さんやお父さんが心配するよ」

幼馴染「帰ったら……すぐ、夏が来ちゃうよ?」

「じゃぁさ!おとなになったら春の国で住もう!」

幼馴染「大人になったら?」

幼馴染「それは何回目の春?」

「え……えっとそれはぁ…」

19 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:24:39.18 j/O6Fi4z0 14/35

彼女が大人になることはなかった。

春の国から帰ってきた数日後に交通事故で死んだのだ。

それは、あまりに突然のことで当時の俺には何一つ理解できなかった。

いつか、彼女と会える、そう思っていた。

20 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:26:05.35 j/O6Fi4z0 15/35

神社

「春の国かぁ」

『じゃぁさ!おとなになったら春の国で住もう!』

「帰省したついでに見に来たけど、何も変わってないなぁ」

21 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:27:34.26 j/O6Fi4z0 16/35

「小さな鳥居もちゃんとある」

「くぐってみよう」

「眼を閉じて……せーのでだ」

「せーのっ」ヒョイ

22 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:29:35.04 j/O6Fi4z0 17/35

そこは完全に見知らぬ景色だった。

たくさんの桃色の花びらが宙を舞い

赤色の欄干が川と共にずっと続いている。

「……」

「……春の国」

24 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:32:56.03 j/O6Fi4z0 18/35

お団子屋さん

おばちゃん「やぁ、いらっしゃい」

「お団子…もらえますか?」(本当にあった…お団子やさん)

おばちゃん「あら、あんた!あん時の!大きくなったねぇ」

「は、はぁ」

おばちゃん「あれあれ?彼女とは一緒じゃないのかい?」

「今日は一人なんですよ」ハハッ

25 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:35:53.14 j/O6Fi4z0 19/35

展望台

「…すごい。なんて綺麗な景色なんだ」

「すごいでしょ!」

「え?」

「ここの桜はね、ずっと枯れないんだよ♪」

「君は?」

「案内人で御座います」エヘヘ

27 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:38:19.22 j/O6Fi4z0 20/35

「これから、どちらへ?」

「あそこの商店街へ行こうかと」

「ご案内しましょう!商店街には美味しい食べ物の売ってる屋台がたくさんありますよぉ」

「あぁ、知ってるよ」

「はて?以前、来たことがあるのですか?」

「ずっと小さいころにね」

28 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:40:58.88 j/O6Fi4z0 21/35

「では、案内人は不要ですか」ションボリ

「せっかくだから案内してよ」

「いいんですか!?」

「うん!一人じゃ寂しいしね」

商店街

「くぅ!いい匂いがしますねぇ!」

「あちらが春の国名物!さくら饅頭でーす!」

「駄菓子屋」ピタッ

「どうされましたー?」

「ちょっとよっていいかな」

「はい!構いませんよ♪」

30 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:43:12.87 j/O6Fi4z0 22/35

――


「子どもみたいにたくさん買いましたね~駄菓子♪」

「まぁね」

「さてさて、お次はどこへいきましょうか」

「ねぇ、家ってどこで買える?」

「お家ですか?」

32 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:46:55.71 j/O6Fi4z0 23/35

「困りました……」

「え」

「お家は売り切れ中なんですよ。なんでも夏の国からお引っ越しなされる客が今年は多くて」

「そ、そうなんだ……」

「ま、まぁそうお気を落とさずに!!」アセアセ

「ひとまず、今日はどこか宿を探しましょう!」

「お金ないよ……小銭しか持ってきてないのに」

「あ……ありゃ」

34 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:48:43.45 j/O6Fi4z0 24/35

「で、では私の家へご招待しましょう!」

「え!?」

「私の家はこの商店街から近いんですよぉ」

「いいんですか!?」

「はい!少々散らかっておりますが」

36 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:50:39.49 j/O6Fi4z0 25/35

女宅

ガラガラ

「ただいまぁ!!」

シーン

「まぁ、だれもいませんがあがってください」

「お邪魔します」

「適当にくつろいでてください♪」

(なんかすごい造りのごちゃごちゃした家だなぁ)

38 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:52:38.88 j/O6Fi4z0 26/35

「う~ん……」

「どうしました?」

「料理を振る舞おうと思ったのですが」

「食材を切らしてました」エヘヘ

「泊めていただけるだけでありがたいです。晩飯くらい抜きでも」

「いえいえ!そうはいきません!では、どこか食べに行きましょう!」

39 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:54:51.10 j/O6Fi4z0 27/35

屋台

「案内人って具体的にどういった職業なんですか?」

「えっ」

「なんていうか親切すぎるというか」

「あ、あぁ!えっと!まぁ、あなたが感じたままの職業ですよ~」アセアセ

「はぁ」

「でも、本当に助かります。色々としていただいて」

41 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 02:57:31.99 j/O6Fi4z0 28/35

「どうして、春の国へ?以前にもいらしたんですよね?」

「えぇ。小さい頃に女の子と2人でね」

「今日はお一人なんですね」

「……亡くなったんですよ」

「そ、そうなんですか……」

43 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 03:00:27.05 j/O6Fi4z0 29/35

「ここって何なんでしょうね」

「春の国のことですか?」

「小さい頃、鳥居をくぐっても何も見えなかったのに」

「今はこうして、あなたと屋台にいる。あなたはどこから来たんですか?」

「私は生まれも育ちも春の国ですよ」

「俺はここの人じゃないんだ。夏の国の人でもないし」

45 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 03:03:04.30 j/O6Fi4z0 30/35

「……」

「あぁ!せっかく奢ってもらったのに何かつまらない話してすいません!!」

「いいんです!いいんです!!さて、帰りましょうか」

「そうですね」

「夜桜も綺麗でしょ?」

「はい、ずっと見ていたい気分だ」

47 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 03:07:03.86 j/O6Fi4z0 31/35

女宅

「さて、明日はどうしましょうか」

「帰ろうと思う」

「そうですか……」

「此処に来たらあの子に会えるかもしれないって」

「そう思ってたんだけど……やっぱり、会えなくてね」

「でも、彼女が昔見た景色を見ることができて満足だよ」

48 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 03:09:09.46 j/O6Fi4z0 32/35

「……」

「あと、見えてるよ」

「え////」

「しっぽと耳が」

「……」

49 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 03:10:54.09 j/O6Fi4z0 33/35

神社

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「たまげたなぁ……本当に狐に化かされてたなんて」

「うぅ……ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。いい夢、見させてもらったし」

「……」

51 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 03:13:21.96 j/O6Fi4z0 34/35

「私……あなたが昔からここへくるの知ってたんです」

「女の子と一緒に……」

「それに、鳥居をくぐって遊んでたのも知ってます。見てましたから」

「そうだったのか」

「……大人になったあなたを見てちょっと驚かせてあげようと思ったんですけど」

「女の子が亡くなっていたなんて知らず……うぅ、ごめんなさい!!」

54 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/12/05(木) 03:19:42.96 j/O6Fi4z0 35/35

「だから、謝らなくていいって」

「はひぃ……」

「もう今年の春も終わりかぁ」

「えっと……来年も来ますか?」

「さぁ、どうだろう」

「うぅ……」

「君がまた、案内してくれるなら」

「また来ようかな」ニコッ

「え、は、はい!!是非いらしてください!春の国へ!」


おわり

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