神社
男「そーだなー。ずっと桜を眺めて暖かい日差しを浴びていたいなぁ」
幼馴染「うんうん♪だから、そうしようよ!」
男「そんなことできないよ。季節はずっと巡っていくもんなんだよ」
男「後の季節が可哀想だろ?」
幼馴染「そうだけどー」
元スレ
男「俺は春が好きだ」幼馴染「じゃぁずっと春の世界で暮らそう!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1386175673/
幼馴染「ねぇ、一緒に行こうよ。ずっとずぅっと春のままの世界!」
男「さっきから何だよ。まるで本当に行けるみたいな言い方だな」クスクス
幼馴染「だから、いけるんだって!ほら!ついてきて!!」ギュッ
男「え、ちょっと!!おい!引っ張るなぁ!」
幼馴染「ほら見て!」
男「なんだよ……神社の裏まで引っ張ってさぁ」
幼馴染「あそこに小さな鳥居が見えるでしょ?」
男「うん」
幼馴染「あそこの鳥居をくぐるとねー!ずっと春のままの世界!春の国へいけるんだよ!!」
男「そ、そうか」
幼馴染「信じてない!」
男「信じてるよ」
幼馴染「目を瞑って!せーのっでくぐるよ!」
男「うん」
幼馴染「せーのっ!」ヒョイ
男「のっ!」ヒョイッ
幼馴染「よし……」
男「……」ゴクリッ
幼馴染「……目を開けていいよ」
幼馴染「わー!すごい!見て!!この着物!綺麗でしょ!?」
男「え?」
幼馴染「お人形さんみたいな服に着替えてる♪」
男「??」
幼馴染「ほら!あれ!桜の木がいっぱい!!」
男「う、うん」
幼馴染「あそこに町が見えるね~!行こう!」ギュッ
男「え、ちょっと!」
幼馴染「私、素敵なお団子やさんしってるんだぁ♪」
男「お団子やさん!?」
幼馴染「うん!とっても美味しいんだよー!」
お団子屋さん
幼馴染「おばちゃーん!お団子ふたつ~」
男「」
幼馴染「楽しい?」
男「うん」
幼馴染「綺麗だねー。桜の花びら」
幼馴染「雪みたいだね」ニコッ
男「///」
男「う、うん////」
幼馴染「お団子おいしかったねー!」
男「次はどこいく?」
幼馴染「そうだねぇ!展望台に行こう!」
男「展望台!?」
幼馴染「うん!春の国を一望できる展望台だよぉ!」
男「遠いんじゃない?」
幼馴染「ちかいちかい♪」グイッ
男「おわっ」
展望台
幼馴染「着いたよ!すごいでしょ!?辺り一面ピンク色!」
男「うん」
幼馴染「ほら!あそこ!さっきいたお団子やさん!あんなに小さい!」
男「ほんとだね」
幼馴染「あそこの商店街もいってみる~?駄菓子屋さんがあるんだよー」
男「そうなんだぁ」
幼馴染「そうだ!ずっとクラスんだったら2人で済むお家をさがなさなくちゃね♪」
男「いえ?家を買うの!?」
幼馴染「ううん!買うんじゃなくてもらうの!お家は無料なんだよ!」
男「なんだそれ」
幼馴染「とりあえず、駄菓子屋に行こ!」
男「うん」
商店街
幼馴染「いっぱいお菓子があったね♪」
男「駄菓子屋だもん」
幼馴染「ちょっと元気ない?」
男「え?げ、元気だよ!」
幼馴染「そう♪よかった!」
鳥居をくぐった瞬間、目の前の見慣れた景色は夢の世界へと変わった。
2人でさくら舞う神社の周りをひたすら走り回った。
俺は幸せだった。
彼女が隣にいてくれるだけで幸せだった。
そして、永遠の春を願った。
夕方
男「そろそろ、帰ろうよ」
幼馴染「えぇ!ずっとここに暮らすんじゃなかったの?」
男「でも、お母さんやお父さんが心配するよ」
幼馴染「帰ったら……すぐ、夏が来ちゃうよ?」
男「じゃぁさ!おとなになったら春の国で住もう!」
幼馴染「大人になったら?」
幼馴染「それは何回目の春?」
男「え……えっとそれはぁ…」
彼女が大人になることはなかった。
春の国から帰ってきた数日後に交通事故で死んだのだ。
それは、あまりに突然のことで当時の俺には何一つ理解できなかった。
いつか、彼女と会える、そう思っていた。
神社
男「春の国かぁ」
『じゃぁさ!おとなになったら春の国で住もう!』
男「帰省したついでに見に来たけど、何も変わってないなぁ」
男「小さな鳥居もちゃんとある」
男「くぐってみよう」
男「眼を閉じて……せーのでだ」
男「せーのっ」ヒョイ
そこは完全に見知らぬ景色だった。
たくさんの桃色の花びらが宙を舞い
赤色の欄干が川と共にずっと続いている。
男「……」
男「……春の国」
お団子屋さん
おばちゃん「やぁ、いらっしゃい」
男「お団子…もらえますか?」(本当にあった…お団子やさん)
おばちゃん「あら、あんた!あん時の!大きくなったねぇ」
男「は、はぁ」
おばちゃん「あれあれ?彼女とは一緒じゃないのかい?」
男「今日は一人なんですよ」ハハッ
展望台
男「…すごい。なんて綺麗な景色なんだ」
「すごいでしょ!」
男「え?」
「ここの桜はね、ずっと枯れないんだよ♪」
男「君は?」
「案内人で御座います」エヘヘ
女「これから、どちらへ?」
男「あそこの商店街へ行こうかと」
女「ご案内しましょう!商店街には美味しい食べ物の売ってる屋台がたくさんありますよぉ」
男「あぁ、知ってるよ」
女「はて?以前、来たことがあるのですか?」
男「ずっと小さいころにね」
女「では、案内人は不要ですか」ションボリ
男「せっかくだから案内してよ」
女「いいんですか!?」
男「うん!一人じゃ寂しいしね」
商店街
女「くぅ!いい匂いがしますねぇ!」
女「あちらが春の国名物!さくら饅頭でーす!」
男「駄菓子屋」ピタッ
女「どうされましたー?」
男「ちょっとよっていいかな」
女「はい!構いませんよ♪」
――
―
女「子どもみたいにたくさん買いましたね~駄菓子♪」
男「まぁね」
女「さてさて、お次はどこへいきましょうか」
男「ねぇ、家ってどこで買える?」
女「お家ですか?」
女「困りました……」
男「え」
女「お家は売り切れ中なんですよ。なんでも夏の国からお引っ越しなされる客が今年は多くて」
男「そ、そうなんだ……」
女「ま、まぁそうお気を落とさずに!!」アセアセ
女「ひとまず、今日はどこか宿を探しましょう!」
男「お金ないよ……小銭しか持ってきてないのに」
女「あ……ありゃ」
女「で、では私の家へご招待しましょう!」
男「え!?」
女「私の家はこの商店街から近いんですよぉ」
男「いいんですか!?」
女「はい!少々散らかっておりますが」
女宅
ガラガラ
女「ただいまぁ!!」
シーン
女「まぁ、だれもいませんがあがってください」
男「お邪魔します」
女「適当にくつろいでてください♪」
男(なんかすごい造りのごちゃごちゃした家だなぁ)
女「う~ん……」
男「どうしました?」
女「料理を振る舞おうと思ったのですが」
女「食材を切らしてました」エヘヘ
男「泊めていただけるだけでありがたいです。晩飯くらい抜きでも」
女「いえいえ!そうはいきません!では、どこか食べに行きましょう!」
屋台
男「案内人って具体的にどういった職業なんですか?」
女「えっ」
男「なんていうか親切すぎるというか」
女「あ、あぁ!えっと!まぁ、あなたが感じたままの職業ですよ~」アセアセ
男「はぁ」
男「でも、本当に助かります。色々としていただいて」
女「どうして、春の国へ?以前にもいらしたんですよね?」
男「えぇ。小さい頃に女の子と2人でね」
女「今日はお一人なんですね」
男「……亡くなったんですよ」
女「そ、そうなんですか……」
男「ここって何なんでしょうね」
女「春の国のことですか?」
男「小さい頃、鳥居をくぐっても何も見えなかったのに」
男「今はこうして、あなたと屋台にいる。あなたはどこから来たんですか?」
女「私は生まれも育ちも春の国ですよ」
男「俺はここの人じゃないんだ。夏の国の人でもないし」
女「……」
男「あぁ!せっかく奢ってもらったのに何かつまらない話してすいません!!」
女「いいんです!いいんです!!さて、帰りましょうか」
男「そうですね」
女「夜桜も綺麗でしょ?」
男「はい、ずっと見ていたい気分だ」
女宅
女「さて、明日はどうしましょうか」
男「帰ろうと思う」
女「そうですか……」
男「此処に来たらあの子に会えるかもしれないって」
男「そう思ってたんだけど……やっぱり、会えなくてね」
男「でも、彼女が昔見た景色を見ることができて満足だよ」
女「……」
男「あと、見えてるよ」
女「え////」
男「しっぽと耳が」
女「……」
神社
女「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
男「たまげたなぁ……本当に狐に化かされてたなんて」
女「うぅ……ごめんなさい」
男「謝らなくていいよ。いい夢、見させてもらったし」
女「……」
女「私……あなたが昔からここへくるの知ってたんです」
女「女の子と一緒に……」
女「それに、鳥居をくぐって遊んでたのも知ってます。見てましたから」
男「そうだったのか」
女「……大人になったあなたを見てちょっと驚かせてあげようと思ったんですけど」
女「女の子が亡くなっていたなんて知らず……うぅ、ごめんなさい!!」
男「だから、謝らなくていいって」
女「はひぃ……」
男「もう今年の春も終わりかぁ」
女「えっと……来年も来ますか?」
男「さぁ、どうだろう」
女「うぅ……」
男「君がまた、案内してくれるなら」
男「また来ようかな」ニコッ
女「え、は、はい!!是非いらしてください!春の国へ!」
おわり
幼馴染救われなかった…